暁美レイコ「暁美レイコです。よろしくお願いします」  なぎさ(ん?) (147)

 叛逆後の世界。
 魔法少女なぎさ☆マギカな誰得内容。
 クロスものではない。
 なぎさは魔法少女じゃない、さやかは改変前の記憶なしの設定。
 独自設定、独自解釈かなり多め。
 オリキャラあり。
 オリジナル色強い。
 一回エタらせた。


 以上、注意点になります。
 ダメな要素があったら、そっ閉じ推奨です。

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一話「夢の中で、会ったような……」



なぎさ(あれ? あの子どっかで……あ。今朝の夢なのです)ジイー

友人A「うわー、すっげー美人。ねえ、なぎさ。見てみて、あれ。プラチナブロンドっていうのかな。さらっさらだー。きれー」

なぎさ「え? あ、はい。すごい美人さんなのですね。でもなんか冷たい感じがするのです」

友人A「ん? そうかなぁ」

なぎさ「はい。なぎさは、同じ金髪でもマミのほうが温かみがあって好きなのです」

友人A「あー。放課後によくなぎさのお迎えに来るお姉さんか。確かにあの人と比べちゃ、おっぱいが……」

なぎさ「いやだから髪を比べたのです」

なぎさ(うーん。やっぱり気のせいなので……あ、目が合ったのです)

レイコ「…………」ジイー


モブA「暁美さんって、前はどこの学校に通ってたの?」

レイコ「東京の小学校よ」

モブB「部活はなんかやってた? てか、部活とかある学校だった?」

レイコ「あったけど、所属はしてなかったわ」

モブC「すっごいきれいな髪だよね。手入れとかどうやってるの」

レイコ「別に、普通に石鹸で――」

ワイワイガヤガヤ

友人A「うわー。大人気ですな、あの転校生は……ん? なぎさ、さっきから転校生のことガン見してない?」

なぎさ「え? いや別になんでもないのです」


友人A「ほれ、ガン見してることは認めてるじゃん。何があったのさ」

なぎさ「む。いや、理由を言ったとして笑われるだけなのです。だから秘密にしておきます」

友人A「なんだぁ? いや、そうか、さてはあれだな。惚れたんだろ? 転校生に一目ぼれか? ふへへ。なぎさもお年頃ですなぁ」

なぎさ「くっそうざいのです。勘違いもはなはだしいどころの騒ぎではないのです」

友人A「んだと!? じゃあ理由を言えよちびっこ! チーズばっか食ってるから身長伸びないんだよ!」

なぎさ「なんですと!? 栄養価満点のチーズ様に向かってなんて口を――」

レイコ「百江なぎさ」

友人A&なぎさ「「!?」」


なぎさ(い、いつの間に。びっくりしたのです)

なぎさ「は、はい。何か用なのですか」

レイコ「あなた、飼育委員だったわよね。昼休み、付き合ってくれないかしら。飼育小屋に行ってみたいの」

なぎさ「飼育小屋に? 別にいいのですけど、なんでですか? ウサギぐらいしかいませんよ?」

レイコ「動物を見てみたいのよ」

なぎさ「へ、へえー」

なぎさ(怖いくらいの冷たい表情でそんなこと言われても……)

レイコ「じゃあ、よろしくね」ファサ

 クルッ スタスタ

なぎさ「…………」

友人A「っぷはー。いまのなに? 横で見てても緊張したわ」

なぎさ「さ、さあ。でもちょっと怖かったのです」

友人A「だよねー。あの転校生、あんな冷たい目ぇして動物好きなわけないし、飼育小屋のうさきちども、昼休みにウサギ肉にされるんじゃない?」

なぎさ「いやさすがにそれはないと思うのです」

なぎさ(……初対面でいうのも何ですか、冷淡といいますかなんといいますか。うーん。もっとしっくりくる表現があるような?)


 ~昼休み・飼育小屋~

なぎさ(さて、昼休みになってウサギ小屋に案内したのはいいのですが)

なぎさ「…………」

レイコ「…………」

なぎさ(沈黙が重いのです!)

なぎさ(ここに来るまで一切会話なし! さすがにウサギ肉コースはなかったのですが、あのウサギを見下ろす冷たい目! なにやら殺意すら垣間見えます。どう考えても動物好きではないのです)

なぎさ(とりあえずこの沈黙をどうにかするためにも、話しかけないと)

なぎさ「あ、っと。暁美さん?」

レイコ「レイコでいいわ」

なぎさ「あー、レイコ、ちゃん?」

レイコ「……」ゲシッ

なぎさ(足元に近寄った白いウサギを蹴ったのです!?)

なぎさ「ちょ、何をやってるのですかレイコちゃん!?」

レイコ「嫌いなのよ、毛が白くて耳が長くて目が赤い小動物は。反射的にひねりつぶしたくなるわ」

なぎさ(じゃあなんでウサギ小屋に……!)


レイコ「それより百江なぎさ。あなたは――」

なぎさ「はい?」

レイコ「――今の自分に満足している? 友人や家族を大切にしている?」

なぎさ「え? っと……?」

レイコ「……」

なぎさ「大切、ですよ? 家族も、友達のみんなも、大好きで、とっても大事な人たちなのです」

レイコ「本当に?」

なぎさ「む。嘘なわけありませんっ。本当なのです!」

レイコ「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になれるチャンスがあれば迷わず掴み取るべきね。さもなければ、ひとつずつ失っていくはめになるわ」

なぎさ「え?」

レイコ「あなたは、いつかの百江なぎさを取り戻さなければならない。今のあなたでも、これからのあなたでもなく、いつかのあなた自身を」

 クルッ スタスタ

なぎさ「いつかの、わたし……?」


 ~放課後・飼育小屋~


友人A「えーっ、なにそれ?」

なぎさ「わけわかんない、ですよね」

友人A「文武両道、才色兼備な美少女かと思えば、動物虐待が趣味のサイコな電波さん!? くうー! 萌えか? そこが萌えなのかぁ!?」

なぎさ「そのギャップのどこが萌えなのですか?」

友人A「あー。まあそれは置いといてさ。なぎさと転校生って本当に初対面なの? そういえば自己紹介の時、なぎさも尋常じゃないくらい転校生のことガン見してたしさ」

なぎさ「あー、その。実は、夢の中で会ったような……」

友人A「…………ぷ、あははは! なにそれ! おいおい、なぎさは大食いのチーズ狂っていうキャラがあるんだからそれ以上はいらないぞ?」

なぎさ「うがー! だから言いたくなかったのです!」

友人A「あははは! いやもうそれ運命だわ。あんたら因果の糸で結べられた運命の相手なんだよ」

なぎさ「こっちは真面目に悩んでいるのです!」


友人A「ごめんごめん。うーん、そだね。真面目にいえば、前にどっかで会ったことあるんじゃない? それで記憶に残って夢に出てきたとかそんな感じ」

なぎさ「うーん……記憶にないのですけど」

友人A「そっかぁ。ちなみに転校生が出てきたのって、どんな夢だったの?」

なぎさ「あー、結構うろ覚えなのですが、友達と一緒にでっかい怪物と戦う夢でした」

友人A「へー。でっかい怪物かぁ。友達一緒にそれと戦うねぇ。ふぅん」

なぎさ「おいその顔やめるのです。夢見がちな小学校低学年のお子様を見るかのような生暖かい表情をやめないと、いますぐウサギたちをけしかけるのですよ!?」

友人A「あはは、ごめんごめん。んで、転校生は仲間だったの?」

なぎさ「いえ、確か敵役だったのです」

友人A「ああ、そりゃ納得だわ。ありゃ敵幹部の風格だもんね。……そういやその夢、友達と一緒に戦ったってことはあたしもなぎさの夢に出てたりした?」

なぎさ「いえ、いなかったような……あ。Aちゃんみたいなデコッぱちが敵幹部にいたかもしれません」

友人A「おいケンカ売ってんなら買うぞチーズ娘」


友人A「ま、その話はともかく、うさきちどもの世話も終わったし帰ろうぜ。そういえば今日はあのお姉さんのお迎えはないの?」

なぎさ「今日はちょっと遅れるそうなのです。さっき電話をしていたら、急に瘴気がどうこう言い始めて。お年頃とはいえ、マミの中二病にも困ったものなのです」

友人A「へえー。金髪ドリルのおっぱい美人に中二病属性で寂しがりかぁ。あのお姉さんのキャラ立ち半端ないね」

なぎさ「そこが萌えなのです。って、あれ? 小屋の外に一匹ウサギがいるのです。いつの間にか逃げてたのですか?」

友人A「え? ひーふーみー……全羽そろってるよ?」

なぎさ「いや、でもあそこに白いのが一羽――」

QB「…………」

なぎさ「うさぎ、が……」

友人A「うさ、ぎ……?」

QB「僕の名前はキュゥべえ!」

なぎさ&友人A「「!?」」ビクッ

QB「百江なぎさ。僕と契約して、魔法少女になってよ!」


 ~使い魔の結界内~


マミ(なぎさちゃんのお出迎えの途中に魔獣の反応を見つけて、使い魔が張ってくれた結界の中に入ったのはいいけれども)

???「……」

マミ(魔獣をかばうように現れたこの子はいったい……?)

???「これ以上魔獣は狩らせないわ、巴マミ」

マミ「……? どこかで会ったかしら?」

???「さあ。どうでもいいでしょう、そんなこと」

マミ「……ふうん。あなたも魔法少女みたいだけれど、魔獣をかばうなんて目的は何なのかしら? グリーフキューブに困っているのなら、条件次第によっては分けてあげるわよ?」ニコッ

???「……そんなもの必要ないわ」

マミ「なら、ゆっくりお茶をしてお友達になる気はない? おいしいケーキもあるわよ」ニコリ

???「二度も言わせないで。そんなもの、必要ないわ」ファサ

マミ「……そう。残念ね」バアン


???「っ。……煙幕」

マミ「ティーロ!」パンパン

???「くッ」ヒュンヒュン

マミ(かわした。早いわね。とはいえ、魔獣をかばう余裕はなかったようだけれども)チラッ

魔獣「ウオオオオオオオオオオ――」シュウウ

???「……ッ。よくも魔獣をやってくれたわね」ギロリ

マミ(冷たい表情のまま激怒してるわね。やっぱり魔獣をかばっているのは間違いなさそう。まだ魔獣は何匹か残ってるけど……)

???「覚悟しなさい」ギラッ

マミ(彼女の武器は、黒いレイピア? いえ、もっと原始的な形ね。真っ黒なマチ針をそのまま大きくしたような武器。近接武器に見えるけれども、魔法少女の武器はトリッキーぁものも多いから、飛び道具じゃないとも言い切れないわ)

マミ「怖いわね。でもよそ見は禁物よ」シュルル

???「!? 弾痕からリボンが……!」

マミ「縛っちゃってごめんなさいね。怪我させるつもりはないから、そこで見てなさい」

???「あっ」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

魔獣「オアアアアアアアアア――」シュウウ

マミ「さて、これで魔獣は全部片付いたけれども」ジイー

???「くっ……」

マミ(うーん。なぎさちゃんと同い年ぐらいかしら。魔法少女の衣装は喪服のような黒を基調とした服装。すごくきれいな顔立ちだけれども、何だか冷たい感じのする子ね)

???「……殺すなら殺せばいいわ」

マミ(縄張りを広げたい魔法少女かしら? とはいえ、魔獣は片づけたしこの子もこれでこりたわよね。使い魔の結界が消えてまで追いかけてはこないでしょう。それにこの子の実力だったら不意打ちされても負ける気にはならないわ)

マミ「……いいえ、そんなことしないわよ」

マミ(いろいろ聞きたいことはあるけれども……そんなことをしてちゃ、なぎさちゃんのお迎えに間に合わないし、見逃して恩を売ってくのもありかしらね)

マミ「見逃してあげるから、もうこんなことはやめるのよ?」ニコッ





???「……」

シュルル スタ

???「拘束が解けた。相変わらず甘いのね、巴マミ」

???(……魔獣が狩られたなら、せめて百江なぎさのもとへは行かせないわ)タッタッタッ


 ~小学校・飼育小屋~


友人A「うわっ。何この白ネズミ! しゃべったよ! きもちわる!」

QB「ねえ、百江なぎさ。僕は君の願いを一つだけ何でもかなえてあげる」

なぎさ「ね、願い事? いやいきなりそんなこと言われても困るのです」

QB「何だって構わない。どんな奇跡だっておこしてあげる。でも、それと引き換えに――」

マミ「きゅ、キュゥべえ!?」

QB「――やあ、マミ。どういたんだい、そんなに血相変えて」

マミ「どうしたもなにも……キュゥべえ。何をやってるの? 私たちが鹿目さんとなぎちゃんは巻き込むなって言ったこと、忘れたの?」

QB「そんなことを言ってもね、マミ。素質のある子に契約を持ち掛けるのが僕の役目なんだ」

マミ「どちらにしても、見渡木原にはもう四人も魔法少女がいるんだから、これ以上は困るわ」

QB「でも風見野まで含めて君たちの縄張りだろう? それを考えれば、あと一人や二人の余裕はあると思うけど……」

マミ「もうっ。そういう問題じゃないわ」


なぎさ「……マミ? もしかして、この不思議生物と知り合いなのですか?」

マミ「ええ。でも、なぎさちゃんには――っ!」

???「……」

マミ「あなた、こんなところまで何の用?」

なぎさ「……あれ? レイコちゃん? 忘れ物でもしたのですか?」

マミ「へ? なぎさちゃん、この子と知り合いなの?」アセッ

なぎさ「いえ知り合いも何も……」

レイコ「ここは私の通う小学校よ、巴マミ」ファサ

なぎさ「ていうか、マミはこの不思議生物とだけでなくレイコちゃんとも知り合いなのですか?」

マミ「さっき、ちょっとね。……レイコちゃんっていうのね。忘れ物をしたのなら、早く教室によって帰りなさい。保護者の方が心配するわ」ニコ

レイコ「……そうね。あなたを足止めするにしても遅かったみたいだし、もう帰るわ。でも、百江なぎさ」

なぎさ「はい?」

レイコ「昼休みの忠告が無駄にならないことを祈ってるわ」

 クル スタスタ

マミ「……」

QB「……」

なぎさ「……」

友人A「……誰かあたしの存在に触れろよ。泣くぞ」






 ~ほむホーム~


レイコ「……」

レイコ(巴マミを倒すどころか、足止めもできなかった。百江なぎさはおそらく巴マミに魔法少女になることを制止させられているはず。魔獣も倒されてしまったし、このままじゃ……)

ほむら「あら、帰ってきたのね」

レイコ「……ただいま」

ほむら「おかえりなさい。今日は百江なぎさのいる小学校に転校してきたのよね。どうだったかしら」

レイコ「順調です。特に問題はありません」

ほむら「そう?」

レイコ「はい」

ほむら「なら引き続き百江なぎさの監視を頼むわよ――」

レイコ「……」

ほむら「――レイケツ」

レイコ(レイケツ)「……はい。ご主人様」

付け足し変更忘れてた。

友人A→エイミちゃん

仁美&さやかちゃんをポジションにしてみたら、この子は登場シーンが多すぎた。
名前付きのオリキャラなんてあんまり出したくないが、なぎさ周りの公式設定ほぼないのでしゃーないということでご容赦いただけたらと。


 第二話「それはとっても嬉しいなって」




 ~病院~


看護師A「あら、なぎさちゃん。お母さんのお見舞い?」

なぎさ「はいなのです!」

看護師「そう。よく来てくれるわよね。ありがとう」

なぎさ「お礼を言われるようなことではないのです。それでは!」


看護師A「百江さんのお子さん、よく来てくれているわよね」

看護師B「助かるわ。患者さんにもいい励ましになっているし」

看護師C「でもあの患者さん、もう進行が末期で――」



 ~病室~

なぎさ「お母さん、なぎさが来たのです!」

なぎ母「あら、いらっしゃい。今日もなぎさは元気いっぱいね」ニコニコ

なぎさ「もちろんなのです! 今日もお母さんになぎさのありあまる元気を分けに来ました」

なぎ母「そうね。なぎさが来るだけで、確かに元気になれるわ」

なぎさ「今日はお母さんに話すことがいっぱいあるのです! 転校生が入ってきたこととか、えーちゃんの笑い話とかいろいろあるのですが、まずはマミの話からですね!」

なぎ母「ふふっ。なぎさはマミさんが本当に好きね」

なぎさ「はいっ。それで、実は昨日マミのおうちにお呼ばれしてですね――」




 ~マミホーム~


マミ「さて、なにから話そうかしらね」

なぎさ「チーズケーキ♪ チーズケーキ♪」パクパク

友人A→エイミ「わぁ、すごい部屋ですね。んー。このケーキめっちゃうまっすよ! ご招待ありがとうございます、マミさん!」パク

マミ「うふふ。キュゥベえに選ばれた以上、あなたたちにとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って」

なぎさ「うんうん。何でもきいてくれなのです」パクパクパクパク

エイミ「なぎさ、それ逆……」

マミ「ふふっ。……それじゃあ説明を始めるわね」


マミ「これがソウルジェム」

エイミ「うわぁ、きれい」

マミ「キュゥべえに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ」

なぎさ「契約って何なのですか?」

QB「僕は君の願い事をなんでもひとつかなえてあげる」

なぎさ「さっきも言ってましたけど、なんですかそれ?」

QB「何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

エイミ「うおぅ……金銀財宝とか不老不死とか?」

なぎさ「チーズ一生食べ放題とかもですか!?」

エイミ「いやそれはちょっと……」

QB「願い事はなんでもいいけれども、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。この石を手にしたものは、戦いの使命を課せられるんだ」

エイミ「戦い? 何かと戦うの?」

マミ「ええ。魔獣と呼ばれる存在よ。魔獣は人から発せられる瘴気の多いところから発生して災厄をまき散らすの」

なぎさ「瘴気って、マミが良く口走るあれですよね」

QB「マミがどういう状況で口走っているかは知らないけれども、瘴気というのは人間から発せられる負の感情エネルギーの総称だね。そこから生まれる魔獣は、普通の人には見えもしないからタチが悪いんだ」

マミ「理由のはっきりしない事件や交通事故は、かなりのケースで魔獣によるものなのよ。……そういえば今日もお迎えに来る前に魔獣と戦ってきたわ」

エイミ「なぎさのお出迎えの裏にそんなエピソードがあったんですか!?」

なぎさ「じゃあ瘴気がどうこうとか口走っていたのは、別に中二病だからというわけではなかったのですね!」

マミ「え、ええ、もちろんよ」

マミ(わたし、なぎさちゃんからそんな風に思われてたのね……)ショボン


なぎさ「でも、マミはそんな怖いものと戦っていたのですか。……全然知らなかったのです」

マミ「そうね。命がけよ。……なぎさちゃんには、心配をかけたくなかったの」

なぎさ「……そうなのですか」

エイミ「でも、魔法少女が人知れず戦うっていうのはお約束っちゃお約束ですけど、周りにばれないもんなんですか? 魔獣は普通の人から見えないからいいとして、魔法少女って目に見えますよね?」

QB「それは大丈夫だよ。閉鎖された独自の隔離空間を形成できる使い魔がいるからね」

なぎさ「使い魔? の……ええと、隔離空間? それは魔獣とは違うのですか?」

マミ「ええ、全然違うものよ。使い魔は魔獣との戦いのときに隔離空間……つまりは結界を張ってくれるの。わたしたち魔法少女が人目を気にしないで戦えるのも、彼らのおかげなのよ」

エイミ「へぇー。じゃあ、魔法少女の使い魔ってわけなんですね」

マミ「ふふっ、そうね。使い魔っていうのは世の中のあちこち、いろんな種類がいてね。彼らなりのルールでそれぞれの役目をこなしているみたいだから、わたしたちが使っているというわけじゃなくて、協力してもらっているというのが正しいわね」

なぎさ「ふうん。でも使い魔なんて不思議なもの見たことないのです。しいて言えば、キュゥべえが初めてです」

QB「僕は使い魔じゃないよ、なぎさ」

なぎさ「え? 違うのですか?」

マミ「使い魔は普段は何かに擬態したり小さな結界を張って身をひそめたりしているから、普段目につくことはまずないわ。魔獣と一緒で、そもそも普通の人には見えないしね。……それと、QBに関しての説明も必要ね」


QB「インキュベーターというのが僕の正式名称だよ」

マミ「わかりやすくいってしまえば宇宙人ね。ある目的をもって地球に来ているの」

エイミ「これが宇宙人? へぇ、なんかイメージと違うなぁ。それで、この白ネズミはなにしに地球に来てるの」

QB「宇宙から目減りしていくエネルギーの回収が目的さ。そのために素質を持つ女の子の願い事をかなえて、代わりに君たちの魂を抜き出してソウルジェムに変換するのが僕の役目だよ」

なぎさ「……魂を、抜き取る?」

マミ「……」

QB「さっきマミが見せたソウルジェムがあっただろう? あれは、マミの魂を抜き取って実態化したものさ」

エイミ「……それって、魂があの宝石になっちゃうってこと?」

QB「そうさ」

マミ「……」

なぎさ「……ッ。なんでそんなことを!」

QB「そうすることによって、魔獣との戦闘に耐えれるようになるんだ。それよりなんで君がそんなにも感情を高ぶらせているんだい、なぎさ?」

なぎさ「なんでなぎさが怒ってるか、わからないのですか……!」

QB「この話をすると何故だか怒り出す子は多いけれど、今の場合は君には直接関係ないじゃなか」

なぎさ「キュゥべえ……!」

マミ「いいのよ、なぎさちゃん。QBはわたしたちとは考え方がまるで違う生き物なの。彼らだって悪意があってやっていることじゃないわ」

なぎさ「でも、マミ……」

マミ「昔、交通事故にあったって話したわよね。その時に、ね」

エイミ「そうなんですか……」

マミ「他に選択肢がなかったんだもの。仕方ないわ。……それと、まだ話さなきゃいけないことが残ってるから、もうちょっと聞いていてね」


マミ「もう一度これを見て」

エイミ「ソウルジェム……」

なぎさ「……」

マミ「ええ、ちょっと濁ってるでしょう? さっき魔獣を狩った時に魔力を消費したから、それに合わせて少し濁ったの。それで、これをこうすると――」

エイミ「おおっ、きれいになった」

マミ「でしょう? さっきのは魔獣が落とすグリーフキューブっていうんだけど、これでソウルジェムを浄化できるの。
 それで使い終わったものは……はい、キュゥべえ」

QB「きゅっぷ」

エイミ「うわぁ、背中に入ったよ……」

QB「このグリーフキューブから僕たちはエネルギーを集めているんだよ」


なぎさ「……ソウルジェムは魂そのものなのですよね? それが濁り切ったらどうなるのです?」

QB「濁りきったソウルジェムは消滅するよ」

エイミ「げっ。マジ? ってことは……」

マミ「ええ。……死ぬ、ということね。円環の理という存在に導かれて、わたしたちは絶望をまき散らす前に消え去るの。それが魔法少女になったものがたどり着く最期よ」

なぎさ「……そんな」

マミ「だからグリーフキューブは魔法少女にとって生命線よ。……あまり良いことではないけど、魔法少女同士で奪い合いになることも多いわ」

エイミ「うわぁ。結構ドロドロしてるんですね」

QB「いま見滝原にはマミも含めて四人の魔法少女がいるけれども、君たちは理想的といってもいいくらいの協力関係を結んでいるじゃないか」

マミ「そうでもないわよ? 美樹さんや佐倉さんはともかく、暁美さんとは住み分けをしているだけだし……」

なぎさ(暁美……?)

マミ「それに、今日小学校で会ったレイコちゃんも魔法少女でしょう? その子も含めれば五人ね」

QB「……」

なぎさ「え!?」

エイミ「転校生が?」

マミ「実は迎えに来る直前に、魔獣を巡ってあの子とちょっとしたいさかいがあったの。……考えたくもないけれど、あなたたちが魔法少女になったら、最悪わたしたちと縄張りの奪い合いになるかもしれないわ」

なぎさ「マミと、奪い合いですか? そんな……」

マミ「ないとは断言できないわ。それぐらい、魔法少女にとってグリーフキューブは重要なものなの」


QB「現状はだいたいいま説明したとおりだよ。それに付け加えると、最近魔獣の出現率も低下してきてるんだ」

エイミ「魔獣が? なんで? 瘴気とかいうやつが出なくなってるとか?」

QB「いいや。瘴気自体は以前と変わらない。人口が徐々に増える傾向の現在ならば、むしろ多くなっているだろうね」

なぎさ「じゃあなんでなのですか?」

QB「原因ははっきりしないけれども、魔獣の行動原理の一つに『この世の因果を正す』というものがあるんだ。魔獣が減少傾向になった時期ははっきりしているから、その時に何かが起こって因果の一部が正されたのかもしれないね」

エイミ「結局わかってないってことかぁ。微妙に役に立たない小動物だな、こいつ」

なぎさ「でも魔獣が減っているということは、さらにグリーフキューブの確保が難しいものになっているということですよね。大丈夫なのですか?」

マミ「そうね。確かに以前までと比べればちょっと効率は落ちてるけど、まだ心配するほどじゃないわ」

QB「見滝原は魔獣の出現率が高い地域だからマミたちも活動できてるけど、それでも魔獣が減った歪みがどこからか出てくるかもしれない。いま魔法少女になったら、そういった危険とも向き合わなければならないね」

マミ「あなたたちにはどんな願いでもかなえられるチャンスが与えられているわ。でも、魔法少女になるということは、早死にする確率が跳ね上がる選択よ」

なぎさ「……」

エイミ「うーん。そこまでいわれちゃなぁ……」

マミ「それでも魔法少女になりたいと、どうしてもかなえたい願いがあるというなら、QBと契約する前にもう一度わたしに相談して。……特に、なぎさちゃんは」

なぎさ「……」


 ~帰り道~


エイミ「あー。なんか難しい話が多くて頭がパンクしそうだったぁ! ねー、なぎさ。願い事、何か考えた?」

なぎさ「あー……えーちゃんはどうですか?」

エイミ「んー? ……あたしはさ、最低限親の言うこと聞いて、あとは結構自由に生きてるから割とそれで満足なわけですよ」

なぎさ「へぇー」

エイミ「だから、命かけてまでかなえたい願い事って言われても思いつかないかなぁ。あははっ、あたしみたいに惰性で人形みたいな生き方してるやつに、そもそも魂なんてないかもしれないしさ!」

なぎさ「…………」

エイミ「……なぎさは、お母さんの病気のこと?」

なぎさ「……はい」

エイミ「そっか」

なぎさ「……」

エイミ「……あたしが言うべきことじゃないかもしれないけど、なぎさは迷わなくていいと思うよ?」

なぎさ「え?」

エイミ「だって、なぎさにはあたしと違ってあるんでしょう? かなえたい夢が。あってほしい奇跡が。だったらさ、迷わなくてもいいじゃん。マミさんに相談しちゃいなよ、お母さんのこと。全部知って、それでも反対する人じゃないよ」

なぎさ「……そうかも、しれませんね」

エイミ「そうだよ」

なぎさ「……今日、病院に行ってきます」

エイミ「そっか」

なぎさ「それで、決心がついたらマミに話してみます」

エイミ「そうしなよ」


レイコ「……百江なぎさ」ファサ

なぎさ「あ」

エイミ「転校生じゃん。なんか用?」

レイコ「あなたに用はないわ。……ねえ、百江なぎさ」

なぎさ「は、はい?」

レイコ「昨日の忠告、覚えている?」

なぎさ「はい。……レイコちゃんは、なぎさに魔法少女になってほしいのですよね」

レイコ「そういうことよ」

エイミ「はあ? 転校生。あんた、なぎさが魔法少女になるとなんかいいことでもあるの?」

レイコ「……答える義務はないわ」

クル

なぎさ「あっ、レイコちゃん!」

レイコ「……何かしら?」

なぎさ「レイコちゃんは、どんな願い事をかなえて魔法少女になったのですか?」

レイコ「…………」

エイミ「…………」

なぎさ「……え、っと」

レイコ「……願い事なんて、なかったわ」

なぎさ「え?」

レイコ「……」

クル スタスタ

エイミ「何だあいつ。感じわるっ」

なぎさ「……レイコ、ちゃん?」

 ・
 ・
 ・


 ~病院・病室~

なぎさ「それでですね、マミったら変なところで子供っぽくて――」

なぎ母「あら、そうなの。あんなに大人っぽい子なのに」クスクス

なぎさ「そうなのです。それで昨日はなんと……なんと、ですね……」

なぎ母「……? どうしたの、なぎさ?」

なぎさ「あ、いえ、その……」

 ――マミ「命がけなのよ――QB「君たちの魂を抜き出してソウルジェムに変換する」――マミ「あなたたちと、グリーフキューブの奪い合いになるかもしれないの」――

なぎさ「なんでも……ない……」

 ――エイミ「なぎさは迷わなくてもいいと思うよ」――レイコ「今とは違う自分になれるチャンスが来たら、迷わず掴み取るべきよ」――

なぎさ「……ねえ、お母さん」

なぎさ「お母さんは願い事がひとつだけかなうなら、何を願いますか?」

なぎ母「願い事? なぁに、突然」

なぎさ「ちょっとした心理テストみたいなものです。祈ればなんでも一つだけ叶うのです。けど、それをかなえるのは命がけなのです」

なぎ母「あら。祈るだけなのに命がけなの?」

なぎさ「はい。それでもかなえるとしたら、どんな願い事をかなえますか?」

なぎ母「そうねえ。ひとつだけを命がけで、かぁ」

なぎさ(……きっと、病気が治ったらいいって言ってくれますよね。そうに決まってるのです)

なぎさ(だって病気で苦しんで、薬の副作用で髪が抜けて、なぎさと同じくらいチーズが大好きだったのにそれも食べられなくて、そんな病気で)

なぎさ(だから、病気を治してほしいって、そう言ってくれればなぎさは――)

なぎ母「ふふっ。それならなぎさがずっと元気でいられますようにってお祈りするわね」

なぎさ「………え?」

なぎ母「だってたった一人の私の娘だもの。だから命がけにもなれるし、なぎさが元気でいてくれるならそれだけで幸せで、それはとっても嬉しいなって、そう思うのよ」ナデナデ

なぎさ「…………お母さん」ダキッ

なぎ母「なぁに、抱き付いてきて。急に甘えん坊になったわね」ナデナデ

なぎさ「病気、治りますよね? お医者さんの力で、病院も協力してくれて、きっときっと治ってくれますよねっ?」グス

なぎ母「……ええ。きっともう、近いうちに退院できるわ。だから泣いちゃダメよ」ナデナデ

なぎさ「うぇっく、はい、ひっく、なのです」ポロポロ

 ・
 ・
 ・


 ~ほむホーム~

レイコ「……」

レイコ(百江なぎさには、鹿目まどかと違って契約する確かな理由がある。だから少し念押しをしておけば、巴マミが渋ったところで魔法少女になるはず。そうすれば、きっと――)

ほむら「何か考え事?」

レイコ「……はい」

ほむら「そう。でも根を詰めすぎないようにね。百江なぎさや美樹さやかの記憶が戻らないように監視するのが、あなたたちの役割なのだから」

レイコ「はい」

ほむら「そう。わかっているならいいわ」

 スタスタ

レイコ「…………勘違いしてるわね、暁美ほむら」ボソ

レイコ(百江なぎさや美樹さやかの記憶が戻らないように監視するのが役目? 違うわ。わたしたちは、そうじゃない)

レイコ「わたしたちの役割は、葬列を盛り上げる泣き屋よ」



・なぎさ母の設定

シャルロッテ時の『死病を患う母のために限定販売のチーズケーキを手に入れるのを目的としてキュゥべえと契約』したところから、母親の病気設定に。末期ガン患者というのは考察から引っこ抜いてきました。


ちなみに友人Aことエイミちゃんは、エイミーから名前を引っ張ってきた。


第三話 もう何も怖くない



 ~数か月前・回想~


QB「……」ジイー

マミ「あら、QB。何をしているの? ケーキ屋さんのほうをじっと見て」

QB「ああ、マミかい。あそこに魔法少女の素質を持つ子がいてるんだよ」

マミ「素質を持つ子が?」


なぎさ「……」


マミ「あの髪の長い子かしら?」

QB「ああ、そうだよ」

マミ「まだ小さい子じゃない……。素質があるからって、誰かれかまわず声をかけるのは感心しないわね」

QB「でも彼女は願いを持っているよ? いま契約を持ち掛ければ魔法少女になってくれるだろう」

マミ「そういう問題じゃないわ……。ちょっとあの子と話してくるから、あなたはそこで待ってなさいね、キュゥべえ」

QB「そうかい? マミがそういうなら、僕はここで見てるよ」


マミ「こんにちは」

なぎさ「はい? お姉さん、誰ですか?」

マミ「巴マミっていうの。あなたがケーキ屋さんを熱心に見てるから気になって声をかけたのよ」

なぎさ「そうなのですか。なぎさの名前は、百江なぎさというのです」

マミ「なぎさちゃん、ね。それでどうしたのかしら。何か欲しいケーキでもあるの?」

なぎさ「はい。実はなぎさ、あそこのケーキ屋さんの数量限定チーズケーキを買おうと思ってたのですが……」

マミ「あぁ……。あそこのチーズケーキはすごく人気だから、たぶんもう売れ切れちゃってるわね」

なぎさ「ですよね。明日の放課後来れば、間に合うでしょうか」

マミ「うーん。人気のお店だし、正直厳しいわね」

なぎさ「ここの限定チーズケーキ、お母さんが大好きなのです。何でも病気の治療でこれからチーズが食べれなくなるそうなので、その前にごちそうしたかったのですけど……」

マミ「あら、そうなの……」

マミ(……うーん。事情は分かったけれども、ケーキで魔法少女にさせるわけにはいかないわよね。――うん、それなら)

マミ「ねえなぎさちゃん」

なぎさ「はい?」

マミ「買うのが無理なら、自分でチーズケーキを作ってみない?」

なぎさ「どういうことです?」

マミ「なぎさちゃんが、とびっきりおいしいチーズケーキを作るの。そっちのほうが、きっとお母さんも喜んでくれるわよ?」

なぎさ「……そうでしょうか?」

マミ「そうに決まってるわ! 作り方ならわたしが教えてあげるから、ね?」

なぎさ「……はいっ。わかったのです!」



 ~回想終了~


 ~小学校・飼育小屋~


なぎさ「というのが、なぎさとマミの出会いなのです」

エイミ「ふうん。チーズが出会いのきっかけっていうのが、なぎさらしくて笑えるわ」

なぎさ「今の回想のどこに笑いどころがあったというのですか!?」

エイミ「回想の主人公がなぎさって時点でもう笑い話としか……まあ、それはおいといて。マミさんとの出会いはともかく、なぎさは魔法少女にならないって決めたわけか」

なぎさ「はい。マミにも止められてますしね」

エイミ「そりゃ残念。せっかく友達に魔法少女がいるって、クラスのみんなに自慢しようと思ってたのにさ」

なぎさ「クラス中に言いふらすつもりだったのですか……?」

QB「まあなぎさが決めたなら仕方ないね。僕が無理じいするわけにもいかないからね」

エイミ「……お前ウサギ小屋に入ってくるなよ。まぎれてわかんなくなるだろ。一瞬うさきちどもがしゃべったかと思ってビビったよ」


QB「そんなことよりも、彼女が君たちに用があるそうだよ?」

なぎさ「え? 彼女って……」

レイケツ「わたしのことよ」

エイミ「うわっ。あんた今どっから湧いた!?」

レイケツ「普通に歩いてきただけよ。……それより、百江なぎさ。あなた、インキュベーターと契約はしないの?」

なぎさ「あ。え、えっと、はい」

レイケツ「なぜ? あなたには、インキュベーターと契約するだけの理由があるはずよ」

なぎさ「……なんで、レイケツちゃんが知っているのですか?」

レイケツ「わたしにはわたしの情報源があるの。それで、質問に答えてくれるかしら」

なぎさ「……自分を捨てて誰かのための奇跡を得ても、その誰かを悲しませるだけなのです」

レイケツ「……っ」

なぎさ「だからごめんなさい。レイケツちゃんの事情は知りませんけど、なぎさは魔法少女にはなりません」

レイケツ「……あなたはっ」

なぎさ「たぶん、何を言われてもなぎさは意見をひるがえしません」

レイケツ「……そう。わかったわ」

クルッ スタスタ

エイミ「……なんなのかなぁ。あいつ、ちょっと焦りすぎなんだよね」

なぎさ「確かにそんな感じはしますね。……とりあえずウサギ小屋の掃除も終わりましたし、帰るのです」

エイミ「今日はマミさんのお出迎えなかったんだっけ。病院行くんでしょ? 今日はあたしも付き合うよ」

なぎさ「いいのですか?」

エイミ「まあね。あたしはあの転校生と違って、気も長くて付き合いもいいんだよ」

なぎさ「なるほど。デコも広いですしね」

エイミ「黙れチーズ娘」






レイケツ「……百江、なぎさ」ギリッ

レイケツ(やはり巴マミに止められたのね。それに、あの決心の硬さには他にも理由がありそうだわ)

レイケツ「なら、そちらの事情を探るのが先決ね」

レイケツ(そこが突破口になるかもしれない。……諦めない。誰を犠牲にしようが、わたしは絶対に諦めないわ)


 ~病院ロビー~


なぎさ「……はあ。お待たせしたのです」

エイミ「あれ? 早かったね。もしかして会えなかった?」

なぎさ「はい。お医者さんと大事な話があるそうなのです」

エイミ「そっかぁ。んじゃ、しょうがないね。帰ろっか」

なぎさ「そうですね。……あれ?」

エイミ「ん? どうかしたの、なぎさ」

なぎさ「いや、あそこに何かが……」

QB「あれは……使い魔の結界だよ」

エイミ「げっ。マジで? じゃあ魔獣とかいうのが出てるわけ?」

なぎさ「……キュゥべえっ。病院に魔獣が出た場合、どうなるのですか!?」

QB「魔獣は弱った人間から狙っていく傾向もあるから、少なくともいいことにはならないだろうね」

なぎさ「マミに連絡するのです!」

エイミ「だね。とりあえずいったん外に……って、あれ?」

なぎさ「あ、マミ! 実はいま病院にいるのですけど、そこに使い魔の結界が――へ? 風景が変わって……あ、あれ? 携帯の電波まで?」

QB「どうやら結界に取り込まれてしまったようだね」


なぎさ「ここは……」

エイミ「うわぁ。なにここ。お菓子ばっか。変な場所だなぁ」

QB「幸い、目のつくところに魔獣はいないようだね。何故だか使い魔たちが騒がしいみたいだから、マミが来るまで隠れているのが賢明だと思うよ」

なぎさ「あ、そういえばマミは――」

QB「君の連絡を受けて、慌ててこっちに向かっているようだよ」

エイミ「そいうことわかるんだ」

QB「マミが結界まで来たら、テレパシーで僕たちの位置を伝えることもできる。……怖いかい、なぎさ」

なぎさ「そりゃまあ……」キョロキョロ

なぎさ(……あれ? なんででしょう。こんな変な場所で、来たことなんてあるわけないのに――)

QB「願い事さえ決めてくれれば、いまこの場で魔法少女にすることもできるんだけど……」

なぎさ「へぇー」ボー

エイミ「ん? なぎさ、ボーっとしてどうしたの?」

なぎさ「あ、いえなんでもないのです。ただ……いえ、やっぱり何でもないのです」

エイミ「そう? ならいいんだけど」

なぎさ(……言えるわけないですよね)

なぎさ(こんなお菓子まみれの変な場所が、なんだかたまらなく懐かしいだなんて)


エイミ「それにしてもホント変なとこだよね。ねえ、キュゥべえ。こんな結界を張ってる使い魔ってどこにいるの?」

QB「さあ。基本的には魔獣を隔離している結界のあちらこちらに潜んでいるから、僕にも使い魔の居場所は分からないよ」

なぎさ「へー、って。あれ? あの丸っこいネズミみたいのって……」

Pyotr「……」ピョコピョコ

エイミ「おい。普通に出て来たぞ、キュゥべえ」

QB「これは珍しいね。あの使い魔は警戒心が強いはずなんだけどね」

Pyotr「……」ピョン

なぎさ「うわっ、とと。なんでなぎさに飛びかかって……え? これくれるのですか? このチーズを?」

エイミ「警戒心が強いどころか、なぎさの胸に飛びついた挙句チーズプレゼントしてるぞ」

QB「そんなこと僕に言われても……」

エイミ「ていうか、なぎさ。あんたそのチーズ食うつもり――」

なぎさ「へ? ふぁんでふか?」ムシャムシャ

エイミ「――うわぁ。マジで食っとる。正体不明の生物が持ってる食べ物を何の躊躇もなく食ってるのよこのチーズ娘」

なぎさ「え? いやなんだかもらうのがごく自然な気がして……」

QB「おや、そうこう言ってる間に、来たね」

マミ「ここね……! やっと追いついたわ!」

なぎさ「マミ!」

エイミ「早かったですね、マミさん」

マミ「無茶しすぎ、って怒りたいところだけど……なぎさちゃん。その抱えてるのは……?」

なぎさ「そこにいた使い魔ですけど?」

マミ「えぇっ? その子たちがなつくなんて珍しいわね」

エイミ「へー。ホントに珍しいんだ」

マミ「ええ。普段は姿を見せることすら稀だから――ッ!」

なぎさ「マミ? いったいどうしたの……ぁ」

レイケツ「……」


なぎさ「レイコちゃん?」

マミ「……こんばんは、レイコちゃん。何の用かしら?」

レイケツ「前にも言ったはずよ。これ以上の魔獣は狩らせない、って」

マミ「そう。残念だわ」

レイケツ「やるというなら、こちらも……ぁっ!」シュルル

エイミ「わっ。すごい」

なぎさ「ふぇ!? レイコちゃんの足元から伸びたリボンが、あっという間に……!」

マミ「前に戦った時もそうだったけれども、あなた、少し注意力に足りないわね。もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」

レイケツ「くっ……! 巴マミ! これ以上魔獣を狩り続けたら、あなた達だって後悔することになるわよ!」

エイミ「……」

なぎさ「え? ま、マミ? これはどういう――」

マミ「前に説明したと思うけど、同じ縄張り内で魔法少女がぶつかることは珍しくないのよ。……レイコちゃん。大人しくしていれば帰りにちゃんと解放してあげる」

レイケツ「待ちなさい! あなた、これをほどきなさい!」

エイミ「いや、あたしに言われてもねぇ。マミさんに言えよ」

レイケツ「うるさい! いいから早く……ぐっ」

マミ「行きましょう、なぎさちゃん、エイミちゃん」

エイミ「はいはーい」

なぎさ「……」コクン

なぎさ「……」テクテク

エイミ「……」テクテク

マミ「……」テクテク

なぎさ「あの、マミ」

マミ「なに?」

なぎさ「願い事、自分なりにいろいろと考えてみたのです」

マミ「あ、そっか……。それで、どういう答えを出したの?」

エイミ「……」

なぎさ「マミも知ってると思うんですけど、なぎさのお母さんって、病気で入院してるのです」

マミ「うん。知ってるわ」

なぎさ「お母さんの病気、詳しくは良く分からないんですけど重いみたいで、それなのになぎさは何にも出来なくて……それが、嫌だったのです」

エイミ「ふーん」

なぎさ「でもマミと会ったときにチーズケーキの作り方を教わって、それを披露したらお母さんがとっても喜んでくれて、自分にも何かできるってわかってそれが何よりうれしかったんです」

マミ「……」

なぎさ「お母さんも、なぎさが生きてくれてるだけで嬉しいって言ってくれて……こんな自分でも誰かの役に立てる分かったのです。だから、なぎさはもう胸に張って生きていけるのです」

マミ「……そっか」

なぎさ「そうなのです」

マミ「よかった……よかったわ」ウルッ

エイミ「ま、なぎさが決めたんなら仕方ないよね。でも頑張ってるマミさんにはちょっと憧れちゃうよね」

マミ「憧れるほどのもんじゃないわよ。私」

なぎさ「え?」

マミ「無理してカッコつけてるだけよ。いまは仲間がいるからいいけれども、いいものじゃないわよ、魔法少女なんて」

なぎさ「まあ、マミは意外と淋しがり屋ですもんね」

エイミ「ええ? そうは見えないけどなー」

マミ「ふふっ。大人ぶってるだけよ。だからなぎさちゃんが魔法少女にならなくてホントによかったわ」ウルウル

なぎさ「いやぁ、泣くほど嬉しがられると悪い気はしないのです」

エイミ「あんまり調子に乗んなよ。……ところでなぎさ。あんたいつまでそれ抱えてんの?」

Pyotr「……」

なぎさ「え? かわいくないですか、これ」ナデナデ

エイミ「あんたやっぱズレてるわ……」

マミ「あら、そうかしら。私もけっこうかわいいと――」

QB「マミ。そろそろ魔獣たちのところにつくよ!」

マミ「!」

マミ「オッケー、わかったわ。今日という今日は速攻で片づけるわよ!」ヘンシンッ

なぎさ「何かマミがテンション高いのです。魔法少女の時はあんなテンションなのでしょうか」

エイミ「さあ? どっちかといえばなぎさが魔法少女にならないから嬉しいんじゃん?」

マミ(身体が軽い! こんな幸せな気持ちで戦うなんて、久しぶりだわ! もう何も怖くない。なぎさちゃんをひとりぼっちにさせなくてすんだもの!)

QB「マミ! 気を付けて。――出てくるよ!」

魔獣「ウオォオオオオ!」


マミ「せっかくのところ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」

マミ(とりあえず最初に結界を張って――)

エイミ「わ。リボンのドームだ」

なぎさ「きれいなのです……!」

マミ(よしっ。なぎさちゃんたちの安全は確保したから、後は魔獣を縛って――)

魔獣「ヴオオオオオオオオオオオ!?」

エイミ「おお!」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

マミさんそれ死亡フラグや

魔獣「ヴオオオオオオオオ――」シュウウ

エイミ「やった!」

なぎさ「魔獣たちが、消えていくのです」

Pyotr「……」

マミ「ふふっ。ざっとこんなものね」

QB「マミはベテランだからね。あの程度の数の魔獣、ものの数ではないよ」

なぎさ「すごいのです!」

エイミ「マミさんには、やっぱり憧れちゃうなぁ!」

マミ「ふふっ。ありがとう。それじゃあ、帰りにレイコちゃんを解放していきましょう」

エイミ「そうですね」

なぎさ「またケンカにならなきゃいいのですけど……」

マミ「争いの種になる魔獣は片づけた後だから、きっとケンカにはならないわよ」

マミ(そういえばあの子、魔法少女なのにどうして魔獣をかばっていたのかしら……あら? そういえば――)キョロキョロ


なぎさ「うん? なにキョロキョロしてるのですか、マミ」

マミ「いいえ、大したことじゃないんだけど、いつもならもう結界が消えててもおかしくないのよね」

エイミ「へえー」

QB「確かにそうだね」

マミ「そうよね。……ね、どうしたのかしら、あなた」

Pyotr「……」プルプル

なぎさ「ありゃ。何か震えてるのです」

エイミ「……」

QB「あまり見たことない反応だね」

マミ「そうね。いったいどうした――」

Pyotr「……――」ニュルン

マミ「――え?」

Charlotte「――」アーン

なぎさ「……え?」





レイケツ「……」

レイケツ(まったく身動きが取れないわ。他のやつらも助けに来てくれる気配もないし、魔獣の気配も消えて――あら)シュウウ

レイケツ「拘束が、消えた……?」スタッ

レイケツ(もう巴マミが戻ってきた? いいえ、魔獣の気配はさっき消えたけど、それにしても早すぎ――ッ。この気配は!)

レイケツ「まさか……!」




マミ「――」ボトリ

なぎさ「ま、マミ……?」

Charlotte「――」バリッボリガリ―ゴックン

エイミ「う、わ」

QB「なぎさ――今すぐ僕と契約を!」

なぎさ「え? なんで? あれは、なぎさ――いや、そんなわけ、でも」ガクガク

エイミ「なぎさ? どうしたの!?」

なぎさ「な、なぎさは、ちが、ぁ、あ、頭が、痛いのです……!」ガクガクガクガク

エイミ「なぎさ? なぎさ!?」

Charlotte「――」ジロリ

なぎさ「ぁ」

QB「なぎさ! 願い事を決めるんだ! 早く!」

Charlotte「――」アーン

ヒュン

Charlotte「!」

QB「君は……」

レイケツ「……」スタッ

Charlotte「! !」プンスカ!

エイミ「あんた、レイ……コ」

レイケツ「……百江なぎさ。あなたはここまで来ても、願い事を決めないの?」

なぎさ「うぁ、ぅうううぁ」ガクガクブルブル

エイミ「……今の状態のなぎさに、契約なんてできると思う?」

レイケツ「……ふん」

QB「……」

Charlotte「――」ギロリ

レイケツ「百江なぎさに死なれても困るわね。……仕留めさせてもらうわよ」チャキ

Charlotte「――」アーン

レイケツ「Fort Da!」ヒュン


Charlotte「――」

レイケツ「はぁ、はぁ……」

Charlotte「――」シュウウ

レイケツ「ふう。命拾いしたわね、あなた達」

なぎさ「ぅう」

エイミ「風景が戻った……。にしても、結構ぎりぎりだったね」

レイケツ「うるさいっ。……ああ、やっぱり落としたのね」ヒョイ

QB「おや。それは何だい?」

レイケツ「そういえばあなたも知らなかったわね。これはグリーフシードよ。魔女の卵。――それで、百江なぎさ」

なぎさ「っ」ビクッ

レイケツ「あなたは、かつての自分を思い出したかしら?」

なぎさ「――っ。しらないのです! なぎさは、魔女なんて、なんにも……ぅぁ、あ」

レイケツ「そう。なら、巴マミを生き返らすために魔法少女になってもいいのよ?」

なぎさ「!」

レイケツ「今日のことを頭に焼き付けておきなさい。あなたが魔法少女にならなかった結果が、あれよ」

エイミ「……」

なぎさ「う、ぅぅううう」

レイケツ「……」

クルッ スタスタ

なぎさ「ぅぅ、ぃっく、ぐす、うあ、ぅぁぁ、うぁあああああん!」

QB「……」

なぎさ「うぁあああああん、マミぃ、うわぁあああああああああん!」

エイミ「……」


三話分終了

とりあえず、ここまで。

乙乙
よく帰ってきてくれた…!マミさんは帰らぬ人になったけど

なぜ一度エタった黒歴史をわざわざ復活させるのか






~ほむホーム~


レイケツ「……」ジイー

レイケツ(グリーフシード。穢れを吸い取る魔女の卵。……だけど、やっぱりソウルジェムのない私じゃ使えないわね)

レイケツ「期待してたわけじゃないけど……魂の有無が、そんなに重要なことなのかしら」

レイケツ(まだ大丈夫だけど魔獣が減った分、着実に穢れがたまってきている。このままだと――)

ほむら「あら、帰っていたのね。……それは、グリーフシード?」

レイケツ「……はい。使い魔が一匹、魔女になりました。それを狩った際に、これが」

ほむら「あら、そう。とうとうね」

レイケツ「はい。……それと、ご主人様」

ほむら「なに?」

レイケツ「巴マミが、その魔女にやられて死亡しました」

ほむら「……何ですって?」

レイケツ「実際の現場を見てはいないですが、ソウルジェムの砕けた死体を確認しました。この世界だと使い魔が魔女になったのは初めてでしたし、不意打ちになって反応できなかったのでしょう。百江なぎさを引き連れていたみたいだったので、その影響もあるかと」

ほむら「そう……そうね。あの人は、そういう人だったわね」

レイケツ「はい」

ほむら「巴さんのことは仕方ないわね。お疲れ様」

クルッ スタスタ

レイケツ「……」

レイケツ(仕方がない、ね)

レイケツ「結局あの人は、最終的には鹿目まどか以外どうだっていいんでしょうね」ボソリ

QB「やあ。独り言かい」ヒョコ

レイケツ「……インキュベーター。何の用かしら」

QB「今日起こった現象について訊ねに来たんだよ。あの使い魔は、どうしてあんな姿になったんだい?」

レイケツ「あぁ。別に意外なことでもないわ。あなたも言っていたらしいけど、魔獣が減った影響よ」

QB「魔獣が減った歪みが出たということかい?」

レイケツ「歪みというより、歪みが正された影響かしら。鹿目まどかの願いで世界が改変された件はあなたも知っているわよね」

QB「それは暁美ほむらから聞いてあるよ」

レイケツ「そう。魔獣は、その改変によって歪んだ世界を正すために生まれた存在よ。ただ、それとは関係なくあなたの実験による結果、ご主人様によってまた世界が改変されたわ」

QB「そうだね」

レイケツ「そうして生まれたこの世界、人間だったころの鹿目まどかが戻った分……そして私達使い魔がいる分、少し元の世界に近づいたのよ。その結果、魔獣が減ったのよ。けれども魔獣が減ったからと言って、この世の呪いが減ったわけではないわ」

QB「……」

レイケツ「魔獣が減った分、処理しきれなくなった呪いが私達使い魔に流れ込んでくることになった。そうして呪いを吸って成長した結果、使い魔が魔女になったのよ」


QB「なるほど。確かに君の話はひとつの仮説として成り立つけれども――それだとかつての鹿目まどかの願いはどうなったんだい? 神になった彼女の祈りがある限り、魔女が生まれることはないはずだ」

レイケツ「それこそ、ご主人様が円環の理を引き裂いた歪みでしょうね。ただ、鹿目まどかの祈りは否定されてないわ」

QB「うん? どういうことだい?」

レイケツ「鹿目まどかは魔女の消滅を祈ったけれども、その願いは魔法少女のためだもの。魔法少女の祈りを絶望させないため、彼女は魔女の消滅を願った。彼女は魔法少女を救う希望であって……私達使い魔には、関係のない祈りだわ」

QB「ふぅん」

レイケツ「この世界でも魔法少女は魔女にならない。だから、鹿目まどかの祈りは確かに残ったままなのよ」

QB「けど、君たち使い魔は魔女から生まれるんだろう? それならそもそも――」

レイケツ「卵が先か鶏が先かなんて論議をするつもりはないわ。減った魔獣の代わりに使い魔が呪いを吸って魔女になる。それが新しい世界のルールよ」

QB「そうかい。それじゃあ最後の質問だ」

レイケツ「……」

QB「暁美ほむらの配下であるはずの君達が魔獣をかばったり百江なぎさが魔法少女になるよう誘導していたのは何故だか不思議だったのだけれども……もしかして君は、己が魔女にならないために百江なぎさ――きゅっぷ」

レイケツ「……しゃべりすぎよ、インキュベーター」

QB「やれやれ。気を損ねてしまったみたいだね。それじゃ、僕は失礼するよ」

スタスタ

レイケツ「……」

レイケツ(……今こうしている間も、街中で渦巻く呪いが流れ込んできている。残された時間は――)

レイケツ「――あとひと月も、ないわね」

第四話 「奇跡も、魔法も、あるんだよ」


~なぎさの家~

なぎさ「……」ボー

なぎ父「なぎさ? 早く食べないと遅刻するぞ」

なぎさ「ぁ。は、はいです……」

パクリ

なぎさ「……ぅ」

なぎ父「……なぎさ? ど、どうしたんだ?」

なぎさ「ぅ、ぃっく……いや、なんでも、ないのです……ただ、生きてると、ご飯がとってもおいしくて」ボロボロ

なぎ父「なぎさ? ……もしかして、お母さんのことか?」

なぎさ「ぅぁう、ぐす……ごめん、なさい。ごめんなさい……ひっく」ボロボロ

なぎ父「……」


~飼育小屋~


なぎさ「……」

エイミ「……」

QB「……」

なぎさ「なんか、違う国に来ちゃったみたいなのです」

エイミ「……」

なぎさ「家も、学校も、昨日から何も変わってないはずなのに、なんだか違う人たちの中にいるみたいなのです」

エイミ「知らないんだよ、誰も」

なぎさ「え?」

エイミ「マミさんのことも、魔獣のことも。あたしたちは知ってて、他のみんなは何も知らない。それってさ、違う世界で暮らしてるみたいなもんじゃん」

なぎさ「……えーちゃん?」

エイミ「知らなきゃ気づけないんだよ。この世界が変わったって、知らない人は何にも知らないまま生きていけるんだ。なぎさも昨日までそうだったんじゃないの?」

なぎさ「……」

エイミ「なぎさはさ、魔法少女の件、どうするの? 願いを叶えるのって、マミさんを生き返らせることもできるんだよね、キュゥべえ」

QB「うん、もちろんだよ」

なぎさ「なぎさ、は……」

エイミ「……そうだよね。うん、仕方ないよ。なぎさは、お母さんの病気がどうなるかも分かってないんだもんね」

なぎさ「ずるいって分かってるのです……でも、なぎさは……!」ウルッ

エイミ「大丈夫だって。分かってるよ」ナデナデ

なぎさ「うぅ、マミぃ……なんで、なんで……!」

エイミ「……ねえキュゥべえ。この街、どうなっちゃうのかな。マミさんの代わりに誰がみんなを守ってくれるの?」

QB「ここはマミの縄張りだったけれども、この街の魔法少女は彼女だけだったわけじゃないよ。マミの仲間だった魔法少女がやってくるだろう」

エイミ「そっか」

QB「ああ、そうだよ。そういう意味では、なぎさが無理をして魔法少女になる必要はないね」

なぎさ「……」






~マミルーム~

なぎさ(……マミの部屋の前。なんで来ちゃったのでしょう。きっと入れもしな――ぁ)

なぎさ「鍵、開いてるのです……」

なぎさ(助けに来てくれた時、そんなに焦ってたのかもですね……)

なぎさ「おじゃま、するのです」

なぎさ(……テーブルに、飲みかけの紅茶があるのです。本も置いてあるから、読みかけだったのでしょうか……)ボロボロ

なぎさ「……ごめんなさい、マミ。ごめんなさい……!」ボロボロ

~住宅街・帰り道~

なぎさ(……帰りに病院寄ったら、お母さんを心配させちゃうですよね)トボトボ

なぎさ「ふぅ……ぁ」

レイケツ「自分を責めるのは終わったかしら、百江なぎさ」

なぎさ「レイコ、ちゃん……」

レイケツ「忠告、聞き入れてくれる気になったかしら」

なぎさ「……」


なぎさ「なぎさがレイコちゃんの言うことを聞きいれていたら、マミも助かったのですか……?」

レイケツ「そうね。巴マミの運命は大きく変わっていたはずよ」

なぎさ「そう、ですか……」

レイケツ「きっとね」

なぎさ「……レイコちゃんは、いつごろ魔法少女になったのですか?」

レイケツ「……どうしてそんなことを聞くの?」

なぎさ「その、昨日みたいに誰かが死ぬところ、何度も見てきたのですか?」

レイケツ「ああ、そういうこと。もちろ……いえ、考えてみれば、初めてだったわ。人の死を目の当たりにしたのは」

なぎさ「そうなのですか?」

レイケツ「ええ」

なぎさ「それにしては、動揺してないというか……」

レイケツ「お望みなら今すぐ巴マミの死を悼んで泣いてあげましょうか? 得意よ、そういうの」

なぎさ「……別にいいのです」


レイケツ「そう。なら、やめておくわ」

なぎさ「……今日、マミの部屋に行ってきたのです」

レイケツ「知ってるわ、そのくらい」

なぎさ「マミの部屋、空っぽで、抜け殻みたいでした。あの部屋は、ずっとあのままなのですか……っ」

レイケツ「結界で死んだら死体も残らない。巴マミには遠い親戚しかいないわ。失踪届けが出るのはまだ当分先でしょう」

なぎさ「誰も、マミが死んだことに気が付かないっていうのですかっ。そんなの……そんなのひどいのです……!」

レイケツ「……あなたがいるじゃない」

なぎさ「……え?」


レイケツ「巴マミの死は、あなたが見てたわ。そして百江なぎさ。あなたが祈れば、巴マミの死はなかったことにできる」

なぎさ「!」

レイケツ「それなのにあなたがためらっている理由は……やっぱり母親かしら」

なぎさ「……はい」

レイケツ「そう。なら、その心配が取り除かれたらあなたは巴マミの生を願って契約するのかしら」

なぎさ「え? それは、どういう……」

レイケツ「まあ、それでなくても思い出してくれさえすればいいのだけれども。ねえ百江なぎさ。あなた、巴マミを食い殺した魔女を見たとき、何か変化がなかったかしら」

なぎさ「な、なにかって――うっ」ズキン

なぎさ(あ、頭が痛――!)

――「モジョモットカマンベール!」――「マスカルポーネ! マスカルポーネ!」――「なぎさはチーズが欲しかっただけなのです!」――「ソウルジェムが、呪いよりおぞましい色に!」――

なぎさ(違う――ちがうちがうチガウのです!)

なぎさ「な、なぎさは、何も――何も知らないのですっ」ガクガク

レイケツ「……そう。なら仕方ないわ。私は私のしたいようにさせてもらうわよ」

クルッ テクテク

なぎさ(なぎさは、なぎさは、魔法少女でもなければ■■■■■でもないのですっ。あんな変な記憶の断片とは何の関係もないのです! お父さんとお母さんの子供で、ましてやマミをタベ――)

なぎさ「――うぅ、ううううううう!」ガクガクブルブル





レイケツ「……」テクテク

レイケツ(百江なぎさが魔法少女にならないのは、巴マミの死と母親の病気、どちらのことについて祈ればいいか迷ってるからなのは間違いないはず)

レイケツ「なら、どちらかを解消すればいい」

レイケツ(それで誰を騙して不幸にしようと、私達には関係ないもの。……飼育小屋、着いたわね)

エイミ「はぁー。なぎさ、やっぱり落ち込んでたよね。先に帰っちゃったし、どうしよっかね、これから――ん?」

レイケツ「やっぱりここにいたわね」

エイミ「あんたか。どうしたのさ。なぎさなら先に帰ってるよ」

レイケツ「違うわ。あなたに用があった来たのよ」

エイミ「あたしにぃ? いまさら何さ」

レイケツ「百江なぎさの母親の病気。そして、彼女の退院についてよ。それについて、あなたの力を借りる必要があるわ」

エイミ「は? なんであたしが? そもそもなぎさのお母さんの退院のことについては――」

QB「……」

エイミ「――ああ、なるほど。そういうことね」

レイケツ「そういうこと。理解が早くて助かるわ」

エイミ「そっかそっか。なるほど。あたしができることっていえば、そんなこともあったね。そういえば、あるんだよね。すっかり忘れてた」

レイケツ「……」

エイミ「ははっ。奇跡も、魔法も、あるんだよ……ね」

QB「……」

ここまで。

明日もせっせと投下します。たぶん。

クララドールズSSの変化球だな。乙です。

悲しい物語になってしまうのかな…?


なぎさ「……」トボトボ

――『あなたがいるじゃない』――

なぎさ「……マミ」トボトボ

――『巴マミの死は、あなたが見てたわ。』――

なぎさ「……なぎさは、やっぱり卑怯者なのでしょうか」

――『そして百江なぎさ。あなたが祈れば、巴マミの死はなかったことにできる』――

なぎさ「大切な人が死んでも他の何かを考えちゃうような、身勝手な人間なのですか……?」

Izabel『だったらいっそ、死んだほうがいいよね』

なぎさ「それなら、いっそ死んだほうがいいのです……」

Izabel『そう、死んじゃえばいいんだよ』

なぎさ「そう。死んでしまえば……えっ?」ハッ

なぎさ(こ、ここどこなのですか? ぐちゃぐちゃ絵が書いてある風景なんて……)キョロキョロ

なぎさ「あ! も、もしかして結界に……!」

Izabel「……」ズズズズ


なぎさ「う、ぁ。つ、使い魔なのですか……?」

Izabel「……」

Michaela「……」ゾロゾロ

Michaela「……」ゾロゾロ

なぎさ「ひっ」

なぎさ(こ、これ、マミの時と同じ……!)

なぎさ「い、いやっ、いやなのです! 誰か助け……ッ!」

Michaela「……」ゾロゾロ

Michaela「……」ゾロゾロ

なぎさ(罰なのでしょうか、これって……)

Izabel「……」

なぎさ(きっと、なぎさが弱虫で卑怯だったから、バチが当たっちゃったのです。……ごめんなさい、マミ)

Michaela「!」シュウウ

Michaela「!」シュウウ

なぎさ「……え?」

エイミ「……」ニコリ

なぎさ(エイミ、ちゃん?)

エイミ「これで――とどめだぁ!」

Izabel「Gyaaaaaaaaaaaa!」シュウウ






レイケツ「……結界が、消えた。うまくやったのね」

レイケツ(けど、もうあちこちで魔女が発生し始めているのね)

レイケツ「まあ、それは私には関係のないことだわ……。後は、あの子がうまくやるのを見てましょう」




なぎさ「エイミちゃん……?」

エイミ「やー、ごめんごめん。危機一髪ってとこだったね」

なぎさ「その恰好、マミやレイコちゃんと同じ……」

エイミ「ん? あー、あははっ。まあ何? 心境の変化っていうのかな」

なぎさ「……」

エイミ「大丈夫だって。魔女退治だってうまくやったでしょ、あたし」

なぎさ「で、でも、エイミちゃん、何を願い事にして魔法少女に……?」

エイミ「んー? 願い事、ねえ……」

なぎさ「……」

エイミ「残念。なぎさには、秘密だよ」


~病院の一室~


医者「――ということです。これから、どうされますか? いろいろ意見は申し上げましたが、最終的にはあなたとご家族の意思に沿う形で進めさせていただきます」

なぎ母「はい。そういうことなら、もう決めました」

なぎ父「……」

なぎ母「近日中に退院させていただきます」

医者「……わかりました。それでは、そのように手続きをいたします」

なぎ母「はい。ありがとうございます」

なぎ父「……」


~郊外~


ほむら「……あなた、こちらに戻ってきたのね。普段の生活はともかく、魔法少女としての活動は杏子と一緒に風見野を縄張りにしていたんじゃなかったのかしら」

さやか「マミさんが死んだって聞いて来ないわけないでしょうっ。どういうことなのよ!」

ほむら「どういうことも何も、そのままよ。彼女は戦いに敗れて死んだ。それだけよ」

さやか「……ッ! あんたが関わってたんじゃないんでしょうねっ。マミさんが死ぬなんて、そんなこと……!」

ほむら「くだらない言いがかりね。巴さんとは縄張りを分けていたから、それ以上のことは分からないわ。詳しい話はインキュベーターにでも聞きなさい」

さやか「……わかった。マミさんの縄張りだった場所は、あたしが引き継ぐから」

ほむら「あら。風見野はいいのかしら」

さやか「あっちは一人でもどうにかなるよ。あたしは杏子と違って見滝原に住んでるんだから」

ほむら「別にわたし一人に見滝原を任せてくれてもいいのけれども?」

さやか「……」ギロリ

ほむら「ふふっ、怖いわね。冗談よ。でも美樹さやか、気を付けない」

さやか「……何をよ」

ほむら「見滝原では最近、使い魔が化け物になったりするから」クスクス

さやか「はぁ? なにそれ?」

ほむら「さあ? 自分の目で確かめればいいんじゃないかしら」ファサ

さやか「……」

四話終了。

また明日に続きを投下します。

エイミがだんだん重要人物になってきちゃうな


第五話「後悔なんてあるわけない」


~なぎさの家~


なぎ父「――ということなんだよ、なぎさ」

なぎさ「え? で、でも突然何で……」

なぎ父「驚くのも無理ないけど、本当のことだよ」

なぎさ「本当に本当なのですか?」

なぎ父「ああ。……明日にも、お母さんは退院して家に戻ってくる」


~飼育小屋~


なぎさ「……」

エイミ「んー、久々に気分いいわぁ。爽快爽快! こころなしかうさきちどもも元気になってるんじゃない?」

なぎさ「えーちゃんは……怖く、ないのですか?」

エイミ「全然? 昨日のやつにもあっさり勝てたしね」

なぎさ「後悔とか、ないのですか?」

エイミ「ないよ。後悔なんてあるわけないじゃん」

なぎさ「……えーちゃん」

エイミ「んー?」

なぎさ「えーちゃんは、何を願ったのですか?」

エイミ「……」

なぎさ「……今朝、お母さんが退院するって話をお父さんから聞いたのです」

エイミ「へー。なぎさのお母さんの病気、良くなったの? いいことじゃん」

なぎさ「……」

エイミ「……」

なぎさ「えーちゃんの願いって、もしかして――」

エイミ「違うよ。それはなぎさの勘違い。せっかくの願い事を他人のために使っちゃうとか、ありえないでしょ」

なぎさ「じゃ、じゃあ、えーちゃんは何を願ったのですか!?」

エイミ「昨日も言ったでしょ。なぎさには、ないしょだよ」

なぎさ「……」

エイミ「それで、なぎさはどうするの?」

なぎさ「え?」

エイミ「お母さんが退院したなら、マミさんのことを迷わなくてもいいんじゃないの?」

なぎさ「ぁ……そ、そう、ですよね」

エイミ「……」

なぎさ「確かに、えーちゃんの言う通りですね。も、もう、なぎさは――」

エイミ「んー! さて、と」

なぎさ「――へ?」

エイミ「話してる途中にごめんね。あたしはそろそろ行くわ」

なぎさ「ど、どこにですか?」

エイミ「そりゃもちろん、家にね。うさきちどもの世話も終わったし、帰るだけだよ」

なぎさ「そうですか。それじゃあ、なぎさも一緒に――」

エイミ「なぎさは病院よってくでしょ? ……いろいろ事情聴くこともあるだろしーさ」

なぎさ「ぁ。はい」

エイミ「んじゃーね」

なぎさ「さよならなのです」

~病院~


なぎさ「そうなのですか。それじゃあ……」

なぎ母「そうよ。今週中にはきっと退院できるわね」

なぎさ「でも、なんで急に……」

なぎ母「あら。なぎさはお母さんが退院できてうれしくないの?」

なぎさ「へ!? いえ、そんなわけないのです! とっても嬉しいのです!」

なぎさ(でも、こんな急に病気が治るなんてありえないのです。やっぱりえーちゃんが……)

なぎ母「ふふっ。……なぎさが喜んでくれるなら、お母さんも嬉しいわ」






QB「マミが戦いに敗れた経緯は以上だよ」

さやか「そっか。なぎさが一緒にいたから、マミさんは……」

QB「そうとも言えるし、違うともいえる。それで、ここの縄張りは本当に君が引き継ぐのかい?」

さやか「なによ。文句あるっての?」

QB「……すべて君の思い通りに行くとは限らないよ。この街には、魔獣が狩られるのを妨害する存在もいるしね」

さやか「はあ? どういうことよ。他所から入った魔法少女が邪魔してるとか? 何者なのよ、そいつ」

QB「君も知ってるはずの相手だけれどもね」

さやか「なに言ってんの? わけわかんないんだけど」

QB「僕に言えるのはここまでだ。後は自分で確認するんだね」

さやか「……あんたら、実は仲が良いんじゃないの?」

QB「……? 何のことだい?」

さやか「さっきのセリフ、ほむらも一緒のこと言ってたわよ」

QB「……」


~ほむホーム~


レイケツ「……それで、話って何?」

エイミ「別にー」

レイケツ「いいから言いたいことがあるならいいなさい」

エイミ「そうだね。あんたがあたしを魔法少女にするのはいいけどさ、これって自分で思ってるほど冴えた手じゃないと思うよ?」

レイケツ「……何が言いたいのよ」

エイミ「うーん。まあ、一言いうならさ――」

レイケツ「……」

エイミ「――ばれなきゃいーね、レイコちゃん」

レイケツ「……あなた、そういうカッコつけはやめたほうがいいと思うわよ」

エイミ「あいにく生まれつきの性分なもんでね」

レイケツ「そう。それで、どうするのかしら」

エイミ「今日はヒマだしね。適当にぶらっとしてくるよ」

レイケツ「……好きにしなさい。ただ、繁華街や病院なんかには近づかないほうがいいわよ」

エイミ「使い魔が魔女になりやすいから危ないって? 過保護だね、あんたも」

レイケツ「私の都合よ。それに最近、使い魔のままでも狂暴化しているものもいるわ」

エイミ「……そっか」

レイケツ「そうよ」

エイミ「……ご忠告、ありがと。それじゃあね」

レイケツ「……」

とりあえずここまで。

明日はお昼に続きを投下する。

期待


~住宅街~


なぎさ(……お母さんが退院するのは、嬉しいです、けど)トボトボ

なぎさ「でも、なんでえーちゃんが……あれ?」

エイミ「うわっ、なぎさ?」

なぎさ「えーちゃん!? え? どうしたのですか、キュゥべえまで連れて。家に帰ったんじゃ……」

QB「やあ、なぎさ。君こそどうしたんだい?」

なぎさ「なぎさはお母さんのお見舞いの帰りですけど、えーちゃんは?」

エイミ「へ? いや、あたしは魚でも釣ろうかと思って街をぶらぶらと……」

なぎさ「はい? 意味が分からないのですけど。頭の悪い言い訳はやめてくださいなのです」


エイミ「あー、違った。あれだよ。あたしは悪い魔女を探してパトロール中なんだよ」

なぎさ「えぇ!?」

エイミ「そ。これもあれだよ。正義の味方? の務めだからね」

なぎさ「なんで疑問形なのですか……まったく、えーちゃんはどうしようもないカッコつけなのです」フフッ

エイミ「そーだよ?」

なぎさ「あははっ、ほんとに、もう……」

エイミ「……」

なぎさ「……」

エイミ「……ね、なぎさ。どうなら、魔女退治に一緒に来ない?」

なぎさ「え?」

エイミ「ほら、あたしカッコつけだからさ。一人でいると無茶やらかしかねないし」

なぎさ「ついて行って、いいのですか?」

エイミ「いいよー。QBもいるからいざという時なぎさも魔法少女になれるし、そもそもなぎさを危ない目に合わせるつもりもないしね」

QB「……」


~路地裏・結界~


エイミ「さて、と……ありゃ。この魔力は使い魔かな」

なぎさ「そういうの、わかるのですか」

エイミ「まあね」

QB「けれども使い魔だったらどうするんだい?」

エイミ「退治するよ」

なぎさ「え? 退治しちゃうのですか?」

エイミ「最近は使い魔も狂暴化してるらしいからね。……なぎさも見たでしょ、マミさんの時に」

なぎさ「ぁ……」

Anja「Buuuuuuuuuuun!」

エイミ「でたか。ていっ」

ビュン――キィン

エイミ「お? つれ……弾かれた」

さやか「ちょっとあんたら何やってんの? あれ使い魔だよ。見てわかんないの――って、なぎさ!?」

なぎさ「さやか!? なに街中でコスプレしてるのですか!?」

さやか「コスプレじゃねーよ!?」


なぎさ「え!? じゃあさやかも魔法少女だったのですか?」

さやか「そうだよ。てかなんで最初にコスプレっていう結論にたどり着いたの」

なぎさ「いや。さやかならやりかねないなって思ったのです」

さやか「どういう意味だよ、それは!? ……って、まあなぎさのことはおいておくとして、あんただよ」

エイミ「え? あたし? てか使い魔逃げちゃったんだけど……」

さやか「そこだよそこ。あんた、なんで使い魔を襲ってんの?」

エイミ「なんでって、使い魔だって人を襲うんだよ。だったら事前に退治するべきじゃん。……マミさんの話、聞いてないの」

さやか「……あたしは、使い魔がよくわかんない化け物になるとこなんて見たことない。そもそも、まだ人を襲ってもない使い魔を退治するのはおかしいでしょ。それにあたしたちは使い魔に助けられて活動できてるんだ」

エイミ「……へぇ。邪魔するの」

さやか「だったら何だっていうのよ」

エイミ「別に……ね!」ヒュン

ガ―キィイン!

さやか「なによ、いきなり」

エイミ「……ちっ」

なぎさ「え、えーちゃん?」

とりあえずここまで。

深夜に続きを投下します。

対使い魔攻撃を妨害したのを見て反射的に杏子登場!って思ってしまい
残念さやかちゃんで混乱してる



さやか「あんた、いきなり切りかかってくるとかおかしんじゃないの? そもそも何でパトロールになぎさを連れてきてるのさ」

なぎさ「さ、さやか。それは――」

エイミ「別に。こっちの勝手じゃん」

さやか「勝手なわけないでしょう。魔法少女の活動は危険なんだ。そこに無関係ななぎさを連れてきていいわけがないっ」

エイミ「無関係? そんなわけないでしょう。なぎさには叶えたい願いがあるんだ」

さやか「……なぎさ?」

なぎさ「そ、そうなのです。なぎさは、マミのことを――」

さやか「だめ。そんなこと、マミさんは望んでない」

エイミ「……」

なぎさ「望んでないって、そんなこと言われても納得できないのですっ」

さやか「なぎさとまどかを魔法少女に巻き込まないことは、あたし達で決めたことだ。特になぎさについてはマミさんが強く望んでいたんだよ」

なぎさ「そ、それはっ、それは、そうなのかもしれませんけど……」

エイミ「だからってマミさんを生き返らせる方法があるのに放っておけって? ひどいこというね。

さやか「……なんだとぉ」

エイミ「……残されたなぎさの気持ちも考えなよ。あんたらみんな、自分勝手すぎるんだ――よ!」ヒュン

さやか「っ! また切りかかってきて……! つーか、あんた何? 先輩に向かって口の利き方がなってないよねっ」ビュン

エイミ「んなもん、まずはなぎさに言えよ!」ガキン

さやか「なぎさは一応敬語だろ!」バキン

エイミ「一応だろ!?」ヒュン

さやか「一応だけどさぁ!」ビュン

なぎさ「……何でなぎさの悪口いいながら戦ってるのですか、あの二人?」

QB「さあ?」


QB「でもいいのかい、なぎさ。あの二人を争わせたままで」

なぎさ「え、いや――」

さやか「だいたいなんであの子は敬語なのに呼び捨てなのよ! 意味わかんないわよ!」ガキイン

エイミ「知るか! チーズでもやれば様付けで呼んでくれんじゃない!?」ヒュン

なぎさ「――ほっといていいんじゃないのですか?」

QB「確かに大事には至らなさそうだけど……」

さやか「ええい、もうっ。とりゃぁ!」ガツン!

エイミ「あぐっ」

なぎさ「えーちゃん! さやかっ。よくわかんないですけど、やりすぎなのです!」

さやか「ふんっ。加減はしてあるよ。これでちょっとは頭を冷やしなさ――ッ!」

ヒュン ドゴオオオン!

さやか(いま飛んできたのは、黒い槍? さっき戦っていた子の方からじゃなかった。てことは、横やり入れたやつがいる!)

レイケツ「ちっ」

さやか「誰!?」

レイケツ「美樹さやか。この街に来てたのね」


さやか「いきなり舌打ちとは失礼なやつ。誰よ、あんた。なんであたしの名前を知ってるの?」

レイケツ「……ふんっ。あなたが覚えてないだけよ」

さやか「はぁ?」

なぎさ「レイコちゃん……」

エイミ「……なに? 助けに来てくれたの?」

レイケツ「そう思ってもらって間違いないわ」

さやか「なぎさたちの知り合い? ……いや。もしかして、魔獣退治の妨害をしてるのって、あんたのこと?」

レイケツ「無意味に鋭いわね。でも、だったらどうするというの?」

さやか「いったん引くよ。二対一の状況で無策に突っ込むほど馬鹿じゃないんでね」

レイケツ「あら、意外だわ」

さやか「ふんっ。好きにいってなよ。……なぎさ」

なぎさ「は、はい!?」

さやか「あたしはあんたが魔法少女になるのは反対だから。マミさんだって、あんたを魔法少女にさせてまで生き返らせてなんて欲しくないはずだよ。そこんとこ、良く考えておいて」ヒュン

なぎさ「ぁ、さや、か……」

レイケツ「行ったわね……」

エイミ「……」





~飼育小屋~

エイミ「いやー。うさきちどもはかわいいなぁ」ナデナデ

なぎさ「……」

エイミ「なでくり回していると心が落ち着くし、なによりしゃべらないのがいいよ、うん。その点キュゥべえはダメだね。あの白ネズミはねーわ。あれはうざい」

なぎさ「エイミちゃん。昨日のことなのですけど……」

エイミ「昨日? もしかして、あの青い人のこと?」

なぎさ「はい。昨日はちょっと行き違いがあったみたいなのですけど、今度ちゃんと会って話をしてみませんか?」

エイミ「んー?」

なぎさ「さやかも、悪いやつではないのです。きちんと話せば協力もできるはずなのです」

エイミ「やだ」

なぎさ「や、やだって、えーちゃん。そんな我がまま言われても困るのです」

エイミ「いや、あたしは我がままじゃないよ。ほら、あれだよ? 美樹さやかとあたし、昨日殺し合った仲だよ? それが話し合いってどーなのさ」

なぎさ「殺し合いって……ただのケンカじゃないですか。なにカッコつけてるのですか」

エイミ「なぎさにはあれがケンカに見えたの?」

なぎさ「はいなのです。なぎさを出しにした根拠不明のわけわからないケンカにしか見えなかったのです」

エイミ「うぉう、即答された……」


エイミ「ま、でも話し合うことはないよ。意見が合わないで終わるのが目に見えてるもん」

なぎさ「そ、そんなことはないのです。ちゃんと話せばさやかとだって――」

エイミ「無理だよ。使い魔について完全に意見が分かれてたでしょ。あの人、思い込み激しそうだし。そんな労力使うぐらいなら転校生と組むよ」

なぎさ「レイコちゃんと、ですか?」

エイミ「うん。何だかんだで目的は同じだしね。あの人よりかはずっと楽だよ」

なぎさ「でも……そんなことしたら、さやかと敵対しちゃうのかもしれないのです。レイコちゃん、よくわからないですけど魔獣を狩るのを妨害してたんじゃないのですか?」

エイミ「そうだね。あいつにはあいつなりの事情があるんだよ。……だからごめんね、なぎさ」

なぎさ「……」

エイミ「それでも、あたしはあの人とは組めないよ」

とりあえずここまで。

また明日続きを投下します。


第六話「そんなの絶対おかしいよ」



~ほむホーム~


レイケツ(美樹さやかがこの街に来たのは僥倖ね。百江なぎさと美樹さやか。円環の理にゆかりある二人の記憶が戻れば、鹿目まどかだってきっと元の力を取り戻すはず)

レイケツ「……それで、あなた達はやはり手伝ってくれないのかしら」

ガンコ「嫌」

ナマケ「そうね。どうしてそんなお手伝いをしなきゃならないの? めんどり面倒」

レイケツ「……そう」

ヤキモチ「だいたい、円環の理二人が記憶を取り戻したところでどうなるの?」

マヌケ「それで女神さまが元の美しい輝きを取り戻すなんて話は聞いたことがないわ」

レイケツ「そうね。あなた達の言う通り、無駄に終わるかもしれない」

ネクラ「あら、それはみっともない」クスクス

ワルクチ「大変な喜劇役者であらせられますわ」クスクス

レイケツ「……」


レイケツ「……それでも、私達は抗うべきだわ。でないと、あまりに不公平だもの」

イバリ「こうまんきちな言いぐさ」

ウソツキ「哀れで愚か」

レイケツ「っ」

ワガママ「そもそも女神さまが元に戻って、私達はどうなるのよ?」

ヒガミ「お空に連れていかれるの?」

オクビョウ「お空に連れていかれては、うさぎの首もはねられない」

ワガママ「いやね、そんなの」

レイケツ「……あなた達の言う通りだわ。きっと、私がおかしい。でも、それでも……」

ノロマ「…………」ジイー

レイケツ「……」

偽街の子供達「…………」


~病室~


なぎ母「それで、準備も終わったから明日には帰れそうなのよ」

なぎさ「そうなのですか? よかったです!」

なぎ母「ええ、そうなの」

なぎさ「そうなのですね……」

なぎ母「……」

なぎさ「……」

なぎ母「……ね、なぎさ。何かあったの?」

なぎさ「へ? な、なんでですか?」

なぎ母「顔、暗いわよ。……もしかして退院のことについて、なにか――」

なぎさ「い、いえ! 退院のことについては全然関係ないのです!」

なぎさ(ちょっとドキッとしたのです。まさか、えーちゃんが願ってくれたから退院できたとか電波なこと言えるわけないですしね)

なぎさ「ただ、友達のことについてちょっと……」

なぎ母「お友達? よくお話に出てくるエイミちゃんのことかしら」

なぎさ「はい。それと別の友達が、ケンカをしちゃってるのです」

なぎ母「あら。原因は何なのかしら」

なぎさ「ううん。なんていうか、見解の相違? なのです。もしくは性格の不一致かもしれないのですけど……。どっちが正しいとも間違ってるともいえないのです」

なぎさ「二人ともなぎさが共通の知人ってだけなので、お互いをよく知ってるわけでもないですし、それでうまくやれっていうのも難しいのでしょうか」

なぎ母「そうね。そのままだったら、難しいでしょうね」

なぎさ「やっぱり、そうなのですよね」

なぎ母「見解の相違も性格の不一致も、違う人間なら当たり前のことよ。お互いをよく知らないならなおさら。だからね、なぎさ。あなたがちゃんとなさい」

なぎさ「え?」

なぎ母「あなたが二人の間を取り持つの。二人のことをちゃんと知ってるのは、あなたなんだから」

なぎさ「そうですか……うんっ。そうなのですよね!」

なぎ母「ええ。そうよ。だから頑張りなさい、なぎさ」

なぎさ「はいなのです!」


~なぎさの家~


なぎさ「……ようしっ。方針は決まったですし、明日は無理やりにでもさやかとえーちゃんを……」

QB『なぎさ! なぎさ!』

なぎさ「ん……? いま変な耳鳴りが……」

QB『僕だよ、なぎさっ!』

なぎさ『なんなのですか、キュゥべえ。いきなりテレパシーなんてしてきて』

QB『急いで! さやかが危ない! ついてきて!』

なぎさ『はい? さやかが……?』


~歩道橋~


エイミ「それで? 人目のつかないところに連れてきてどうするの?」

さやか「ここなら遠慮はいらないってことだよ、この分からず屋」ヘンシン!

エイミ「相変わらず気が短いなぁ。いまはあいつもいないし――って」

なぎさ「なにやってるのですか、二人とも!?」

エイミ「なぎさじゃん。ほんとタイミングいいね、あんたは。あ、いや。キュゥべえが呼んだのか」

なぎさ「待ってください! いったいどうしてまたケンカなんてしようとしてるのですか?」

さやか「そこで使い魔狩りをしようとしてるそいつに会ってね。このわからず屋に魔法少女のルールってやつを体に叩き込んでやろうかと思ってねっ」

なぎさ(なんだかさやかが昂ってるのです。変身までしてますし、これはもしや……)

なぎさ「……えーちゃん、何か余計なこと言いませんでしたか?」

エイミ「……ナンのコと?」

なぎさ「えーちゃん!?」


エイミ「いや違うんだよ、なぎさ。いろいろ昔のこと言ってたら、意外とまだ吹っ切れてないこととかあったらしくて、地雷ふんじゃっただけなんだよ。記憶が刺激されればいいなって、むしろ善意での行動だったのにさ」

なぎさ「機能が初対面のえーちゃんがさやかの何を知ってるのですか!? いいから謝ってください!」

さやか「邪魔しないでなぎさ! いくら言っても、もう止まらないから!」

なぎさ(ええいっ。えーちゃんが何いったかしらないですけど、さやかがメンドクサイのですっ。こうなったら、もう――)

なぎさ「これ以上ここで争うというなら、人を呼びますよ! それもポリスマンを!」

さやか「!?」

エイミ「な、なぎさ? それはちょっとまずいんじゃないの、かな?」

なぎさ「いいえ! 手段は選びませんっ。なぎさの前で昨日みたいなことを始める気なら、コスプレ少女がケンカしてるってケーサツに通報するのです」

さやか「コスプレって、おい……」

エイミ「確かに傍から見たらそうだけど……。てか、電話を耳に当てた通報体勢でいわれちゃな」

なぎさ「さあ、どうするのですか。いますぐケンカをやめるか、ケーサツのお兄さんにお説教されるか――」

プルル プルル

なぎさ「ふぇ!?」

なぎさ(で、電話? 誰から――お父さん? な、なんというタイミングでっ)

さやか「あー、なぎさ。……電話出たら?」

なぎさ「ケンカ、しないのですか?」

さやか「しないしない。ほら」ヘンシン解除

エイミ「だね。早くでなよ。何か争う空気でもなくなってるしさ」

なぎさ「そうなのですね。――あ、もしもし。お父さんなのですか。はい。いまちょっとえーちゃんとそこで会って……え?」

なぎ父『なぎさ。落ち着いて聞いてくれ。――お母さんの容体が急変した。

なぎさ「はい?」


なぎ父『すぐに家に戻ってきなさい。車で病院に駆けつける』

なぎさ「え、いや、お父さん。それってどういうことなのですか。そもそもお母さんは、病気が良くなったから退院できたんじゃないのですか? それが急変って……」

なぎ父『……詳しい話は電話じゃなくて直接言うけど、お母さんの病気は、悪い意味で安定してただけで治ってなんかいない。なぎさにはまだ言ってなかったけど……お母さんの退院は、家族で最後の時間を過ごすために、お母さんが望んだものだ』

なぎさ「……え?」

なぎさ(は? ぇ? なんで……だって、お母さんの病気はえーちゃんがキュゥべえと契約して治してくれて、なのに……え?)

なぎ父『それでも容体が急に悪くなるなんてそうそうないはずだったんだけど……くそっ。いいからもうすぐに帰ってきなさいっ。いいね、なぎさ』

プツ ツーツー

なぎさ「……」

なぎさ(悪い意味で、安定? 家族最後の、時間? それって、それって……)

エイミ「……? どしたの、こっち見て」

さやか「なぎさ? 様子が変だよ? 何の電話だったの?」

なぎさ「……えーちゃん」

なぎさ(お母さんの病気が治ってなんかいないってことで、でも、それだったら……)

エイミ「何のなの、なぎさ?」

なぎさ(えーちゃんは、何で……)

なぎさ「えーちゃんは、何を願って魔法少女になったのですか……?」

QB「……」

六話終了。

明後日続きを投下します。

まどマギでオリキャラはダメだとなぜわからない

別にダメくないから

乙。面白くなってきた。


第七話「本当の気持ちと向き合えますか?」



~飼育小屋~


エイミ「いやー昨日は大変だったね」

なぎさ「……」

エイミ「まっさか、病院でまた魔女が発生してたとはね。それが原因でなぎさのお母さんも体調崩しちゃってたみたいだしさ」

なぎさ「…………」

エイミ「まあでも、あそこの魔女はあの青いのと一緒に戦って退治できたし、良かったんじゃん?」

なぎさ「………………」

エイミ「なぎさのお母さんの退院は伸びちゃったみたいだけど――」

なぎさ「……えーちゃんは」

エイミ「ん?」

なぎさ「えーちゃんは、何を願ってキュゥべえと契約したのですか?」

エイミ「またそれ? 何度も言ってるじゃん。なぎさにはないしょだよ」

なぎさ「なんで教えてくれないのですかっ?」

エイミ「何で教えなきゃいけないの? あたしの願い事をしって、なぎさが何か得するの? ……それとも、何か勘違いしてた?」

なぎさ「っ」

エイミ「あたし、最初から言ってたじゃん。……他人のために契約するなんてありえないってさ」

なぎさ「…………」

~教室~

キリーツ レイ

なぎさ「……」

教師「さて、それじゃ午後の授業を始めるぞ。……お? 何だ? 暁美レイコとエイミはどうした? 早退か?」

なぎさ「…………」


~小学校・屋上~


レイケツ「……」

エイミ「……で、どうすんの?」

レイケツ「何をかしら」

エイミ「いや、早々にバレたじゃん。どうすんの」

レイケツ「まだバレてないわ」

エイミ「……はいはい、そうですね。まだバレてませんね」

レイケツ「……」ムッ

エイミ「そんな顔されてのね。授業サボってまで付き合ってんだからさ、何か結論出そうよ」

レイケツ「別に、いいじゃない。授業なんて」

エイミ「……そうだね」

レイケツ「……」

エイミ「何にしても、あたしが魔法少女になるための願い事がなぎさのお母さんの病気を治すためっていうふりをするのは失敗したわけだ。……まあバレるとは思ってたけどさ」

レイケツ「もう少し時間が稼げると思ったのに、病院に出た魔女のせいで……!」

エイミ「どっちにしてもバレたと思うけどね、あんなウソ。何にしても、これでなぎさは選べない二択に逆戻りだよ」

レイケツ「……そうね」

エイミ「これじゃ、なぎさはきっと魔法少女にならない。困るでしょ、それじゃ」

レイケツ「そうね」

エイミ「で? どうするの、これから」

レイケツ「…………分からないわ」

エイミ「……あっそ」


エイミ「そんな捨てられた子猫みたいな顔されちゃね。気持ち、わからないでもないし」

レイケツ「……そう」

エイミ「そうだよ」

レイケツ「……それで、あなたはどうするの?」

エイミ「そうだね。あたしはもう、あたしのしたいようにするよ」

レイケツ「……あなた、まさか」

エイミ「さあね。それじゃね。今日はあたし、早退するよ。繁華街行って遊んでくる。もしくはまた病院あたりでも行くよ」

レイケツ「待ちなさいっ。あなた、もしかして――」

エイミ「あんたはちゃんと授業受けなよ。意外と楽しいからさ。……後はガンバレ」

クル スタスタ

レイケツ「っ」

レイケツ(わざわざ穢れが多くて使い魔が魔女になりやすいようなところに行くなんて……止めるべき? いや、でも、確かに私が望むことではある。でも……!)

レイケツ「……あなたのそういうカッコ付けたがるところが嫌いなのよ」





エイミ(そういえば学校をさぼったのって、もしかして初めてか……? なぎさが休まなかったからだな)

エイミ「どっちにしろ、あたしはあいつより時間がないんだし、早いほうがいいよね」

エイミ(まずは繁華街あたりで適当に――ん?)

さやか「よっ。サボりか、小学生」

エイミ「……なに? そっちこそサボり?」

さやか「まあね。……ちょっと話があるんだ。顔かしてよ」


~恭介家の前~

♪~ ♪~

エイミ「……」

さやか「どう? いい演奏でしょ。いまコンクール前らしくて、学校休んでレッスンしてるらしいんだよね」

エイミ「さあ。あたし、音楽とか良くわかんないし」

さやか「そっか。ま、小学生だしね。……あたしさ、この演奏してるやつのためにキュゥべえと契約したんだよ」

エイミ「他人のために願うなんて馬鹿だね」

さやか「……あんたも他人のために祈ったんじゃないの?」

エイミ「……何のこと?」

さやか「なぎさから聞いたよ。あんたが魔法少女になった時のこと。……あんた、なぎさのお母さんを退院させてくれ、とか祈ったんじゃないの?」

エイミ「……」

さやか「それで病気はキュゥべえのやつも融通きかないところがあるからさ、それで――」

エイミ「……本当にお人よしだよ、あんたは」

さやか「――なんだって?」

エイミ「昔っからそうだ。頑固で思い込みが激しいわりに、どうしようもないお人よしだよね。あたしの願い事? そんなの、どうでもいいじゃん」

さやか「……? なによ、いきなり。また煽ろうとしてるの?」

エイミ「別に、そういうわけじゃないよ。ただ……あんたみたいに、純粋に願った奇跡の対価に魔法を手に入れられたことが、ちょっとうらやましいだけ」

さやか「……え?」

エイミ「もう用事はいいよね。それじゃぁね、美樹さやか」

クル スタスタ

さやか「……どういうことだよ、あいつ」

ここまで。

また明日に続きを投下します。

オリキャラ出すくらいなら最初からオリジナルでやれよ
こういうのってまどマギとか他の作品でやる意味ないじゃん
最初からオリジナルの魔法少女でやれよ

乙。
エイミがさやかの鏡像的な立ち位置から離れていくな。
どうなる?


~飼育小屋~


エイミ「……」

エイミ(学校サボったのに、なんで戻ってきてるんだろ、あたし)

エイミ「……まあいいや」

エイミ(うさきちどもを撫でてよ。どうせ最後だ)ナデナデ

エイミ「もう、明日くらいかな……って、なぎさ、か」

なぎさ「……」


第八話「あたしって、ほんと――」


エイミ「どしたの? 今日、当番だったっけ。って、もうそんな時間ですらないけどさ」

なぎさ「えーちゃんだったら、ここに戻ってくるだろうなって思ってたのです。おうちに押しかけようかと思ったのですけど、よく考えてみればえーちゃんの家、どこにあるか知らないですし」

エイミ「まああたしンちは魔窟だから人には教えられないんだよ。それで、何か用なの?」

なぎさ「何で、午後はサボったのですか」

エイミ「わざわざそんなことを聞きたかったの? 遊びに行ってた。それだけだよ」

なぎさ「そうなのですか。……午後の授業、帰ってきたレイコちゃんはなんだかずっと上の空だったのです」

エイミ「ちゃんと戻ったんだ。意外と真面目だよな、あいつ……」

なぎさ「……えーちゃん、なんだかレイコちゃんと仲が良いですよね」

エイミ「そだね。なんだかんだ言って、お互い似てるからね」

なぎさ「……」

エイミ「……」

なぎさ「…………えーちゃんは、なぎさのこと、騙していたのですか?」

エイミ「……」

なぎさ「気が合ったレイコちゃんに協力してなぎさを魔法少女にするために、自分の願い事を隠していたのですか?」

エイミ「……あのさぁ」


エイミ「自分で勘違いしておいて人のこと責めるのはやめてくんない? うざいったいんだよね」

なぎさ「なっ――!」

エイミ「あたし、最初っから言ってたよね。別になぎさのために祈ってなんかいないってさ。それなのにおめでたい勘違いをしてたのはあんただ。それを、騙した? なに言ってんの?」

なぎさ「それはっ、だって、えーちゃんが!」

エイミ「うっさい。人をウソツキ扱いするのはやめてよ。あたしは、嘘なんて一回も言ってないんだ。それで騙されたって感じたのなら、それはあんたがバカだったってだけだよ」

なぎさ「……ぅ。それじゃあ、えーちゃんの願い事は何なのですか……?」

エイミ「またその質問? やめてよ。願い事がどうとか、くだらない」

なぎさ「くだらないって、そんな……。えーちゃんだってその願い事のために魂をかけてキュゥべえと契約したんじゃないのですか?」

エイミ「……事な……なか……よ」

なぎさ「え? いまなんて……」

エイミ「……なんにもいってないよ」

なぎさ「え。でも――」

エイミ「うっさいッ!」

なぎさ「っ」ビクッ

エイミ「……それにあんたは人の願い事を探ってる余裕なんてあるの? さっさと自分の願い事を決めなよ。じゃなきゃ……なぎさのお母さん、死ぬよ?」

なぎさ「ぁ……」

エイミ「自分で叶えられる奇跡があるんだ。それを棚に上げて知ったようなこと言わないで」

クルッ

なぎさ「えー、ちゃん……」

エイミ「ついてこないで」


スタスタ


なぎさ「……………」


エイミ「……」テクテク

エイミ(なぎさに、ひどい事いっちゃったな)テクテク

エイミ「もう押さえが効かなくなってるんだ。理性って、こんなもろいもんだったんだ」テクテク

エイミ(ま、それは別にいいさ。自分でそうするって決めたんだ。それに……)テクテク ピタ

エイミ「……どうせ、あたしは救われないんだ」

とりあえずここまで。

また明日投下します。


~ほむホーム~


レイケツ「……雨、降ってきたわね」

ガンコ「そうだね」

イバリ「それがどうかしたの?」

レイケツ「いいえ、なんでもないの。それで、あなたはお茶会?」

ワガママ「うん!」

レイケツ「そう。……何を飲んでいるのかしら」

ヒガミ「コーヒー」

ウソツキ「紅茶」

ワルクチ「オレンジジュース」

ヤキモチ「お茶」

レイケツ「なんでそうバラバラなのかしらね……。お茶会の意味あるの?」

マヌケ「カップの違いだから仕方ない」

ナマケ「仕方ないね」

レイケツ「あっそう。わたしも何か飲むわ……あら」

レイケツ(一個だけ、余りがあるわね。タイル状のデザインの銀色のコップは……)

レイケツ「……」

ノロマ「……?」

ヒガミ「どうかした?」

レイケツ「……いいえ。何でもないわ」






~学校~


教師「それじゃ朝の出席とるぞ……って、エイミは今日も休みか? 昨日の早退も何の連絡がなかったんだが……」

なぎさ「……」

なぎさ(えーちゃん、今日、学校に来てないのですね……)

教師「なぜか家に連絡もつかなかったし……百江。何か知ってるか?」

なぎさ「……いいえ」

教師「そうか。それなら仕方ないな」

レイケツ「…………」

オリキャラきも



>>126
またお前かよ
スレタイで分かるんだから回避しろ






~夕方・なぎさの家~


プルル プルル ツー ツー オカケニナッタデンハバンゴウハ

なぎさ「……」

なぎさ(えーちゃんのお家に電話、つながらないのです……)

なぎさ「……いいんです。えーちゃんなんて、ほっといて」

なぎさ(そうなのです。あんな分からず屋なえーちゃんなんて、えーちゃん、なんて……)

なぎさ「……お父さん」

なぎ父「どうした、なぎさ」

なぎさ「なぎさ、ちょっと出かけてくるのです」

なぎ父「え? なぎさ。いきなり何を言って――」

なぎさ「ごめんなさいっ。いってくるのです!」

なぎ父「なぎさ! なぎさ!?」


~飼育小屋~


エイミ「…………」ボー

エイミ(あれ? あたし、なんでここに来たんだっけ。確か、繁華街に行って病院行って適当に使い魔イジメてだんだん気分良くなってどんどん楽しくなって……ああ、そうだ)

エイミ「首、はねよう」

エイミ(そだ。遊び来た)

エイミ「そうそう。うさぎは大きいはさみを用意して首をはねて体を潰して――」ニタニタ

レイケツ「……何をしてるの」

エイミ「――あれ?」


エイミ「どしたの? 一緒にやる?」

レイケツ「いいえ。やめておきなさい」

エイミ「やめる?」

レイケツ「ええ。やめなさい。その子達、潰してどうするの」

エイミ「潰して遊ぶの」

レイケツ「そう。……殴ったら、戻るかしらね」

エイミ「?」

レイケツ「……最後に忠告しておくわ。あなたの目、うさぎみたいになってるわよ」

レイケツ(こう言って何の自覚もないなら、もう――)

エイミ「? それがどうし――…………ああ」

レイケツ(――……目の色、戻ったわね)

エイミ「そっか。そうだね。……あたしは、うん。そっか……」

レイケツ「落ち着いた?」

エイミ「うん。手間かけさせて悪いね」

レイケツ「気にしないで」

エイミ「あの人は、こんな気持ちだったのかなぁ」

レイケツ「たぶん、違うわ」

エイミ「そっか。違うか」

レイケツ「ええ」

エイミ「……」

レイケツ「……ねえ」

エイミ「ん?」

レイケツ「いっそ、ここで殺してあげましょうか?」

エイミ「……」

レイケツ「どうせこのまま放っておいても、あなたが救われることはないわ」

エイミ「……そうだね。それも、いいかもね」


レイケツ「そう。なら……――ッ!?」

さやか「あんた、なにやってんの!?」

レイケツ「美樹さやか!? くっ、この……!」

さやか「ええい、暴れんな! そんな物騒なもんその子に向けるなんて何がしたいのよ!?」 

レイケツ「どうしてここがわかったのっ」

さやか「あんたらの魔力は特徴的だからわかりやすいのっ。てか、あんたもさっさと逃げなよ!」

エイミ「……なんであんたがあたしを助けるのよ」

さやか「言ってる場合か!? なぎさの友達でしょうがっ。そりゃ助けるわよ!」

エイミ「……なぎさ?」

さやか「昨日なぜかあたしにアンタの様子が変だって連絡してきたんだよ。あいつだって心配してるんだっ」

エイミ「ああ、そっか。なぎさか……」フラッ

さやか「そうだよっ。さっさと逃げな!」

エイミ「そうだね。――になぎさにお――を言うべきだよね」フラフラ

さやか「あいつ、確かに様子がなんだか――っと、あんたは逃がさないよ?」

レイケツ「放して……ッ!」

レイケツ(あの子が……)

さやか「放さないよ。あんたにはいろいろ聞きたいこともあるし、こんなふうにとっつ構えさせてもらうわぁ――!?」

レイケツ「――」バキㇼ

さやか「あんた腕が……」

レイケツ「うるさいわね。邪魔よ。どきなさい」

さやか「……痛覚遮断でもしてるの? よくないわよ、そういうの」

レイケツ「……世界一説得力のない言葉ね」ヒュン

さやか「ちょ、ぁ……」

さやか(……行っちゃった)

さやか「何なんだよ、もうっ」


~夜の公園~


なぎさ「えーちゃん……どこに……」

なぎさ(いつも遊んでいるここらへんにいないってことは、たぶん飼育小屋にいるのですよね)

なぎさ「じゃあ、学校に……」

レイケツ「……百江なぎさ」

なぎさ「レイコちゃん!? なんでこんなところに?」

レイケツ「今はあなたに構っている暇は……ああ、いえ。違うわね」

なぎさ「?」

レイケツ「もう、そうするしかないのね。……それで、どうしたの? いつかのあなたの使い魔みたいに、キョロキョロなにかを探してるみたいだったけど?」

なぎさ「はい? ええっと、よくわからないですけど、えーちゃんを探してたのです」

レイケツ「あの子はもう手遅れよ」

なぎさ「え?」


レイケツ「あなたが平穏に浸かって思い出さないからよ。そんなに楽しかったかしら? いつか願った希望を忘れて、そうして陥った絶望をなかったことにした人生が、そんなに楽しかったの?」

なぎさ「え? え?」

レイケツ「何の不公平かしら。あなただって、私達とそう変わらない存在だったはずなのにね」

なぎさ「変わらない存在……ぁぐっ」

なぎさ(頭が、また――ッ!)

なぎさ「お、思い出すとか出さないとか、どういうことなのですか!? わけがわからないのです!」

レイケツ「そう。なら、着いてきなさい。あの子のところ、案内してあげる」

なぎさ「へ……?」

レイケツ「何を呆けてるの? 連れて行ってあげるわ。……あれを見れば、きっとあなたも思い出す」






~真夜中の駅~


さやか「はぁ。やっと見つけた」

エイミ「……なんだ。あんたか」

さやか「何だとはなによ」

エイミ「ああ。ごめんね。来てくれたのがあんたで、良かったよ。……都合が、良かったよ」

さやか「何で最後に付け足したし。まったく、あんたは口が減らないよね」

エイミ「ははっ。もうしゃべってないとわけわかんなくなりそうだからね」

さやか「ふーん。それで、なぎさに会えた?」

エイミ「ううん。あの子、家にいなかった」

さやか「げ。マジで? こんな時間に何やってるんだろ、あのお子様め……」

エイミ「……」


エイミ「……ねえ。全然関係ない話していいかな」

さやか「なに?」

エイミ「けっこう前から考えてたんだけどさ、魂って何だろうね」

さやか「……うん? あたし達にとってはソウルジェムじゃないの? そりゃ、魂をあんなのされちゃったっていうのはあんまりいい気分じゃないけどさ」

エイミ「そうだね。魔法少女は……でも、それ以外は?」

さやか「それ以外?」

エイミ「それ以外の、魔法を使う存在。いるじゃん。魔獣とか魔女とか……使い魔とか、さ」

さやか「うーん? あいつらに魂……? あるの?」

エイミ「……ないのかな、やっぱり」

さやか「キュゥべえじゃないんだし、わかんないわよ、そんなの」

エイミ「だよね。そっか。……希望と絶望の差引はゼロだってことが良くわかるって、あんたいつか言ってたよね? 結局、あんたらの願いはその絶望を誰かに押し付けただけなんだね」

さやか「はぁ?」

エイミ「あんたらが奇跡を叶えて希望を振りまく分、どこかに恨みや妬みが貯めるんだ。あんたたちの魂以外のどこかに。……それで、あんたも思い出してよ」

さやか「ちょっと、さっきからあんたは何が言いたいのよ」

エィmi「別に。たださ、正直なぎさを魔法少女にするだけだったら、できたと思うんだ。あたしの立場なら、もっとなぎさを追いこめた。……でも、しなかった」

さやか「あたしとしては助かるけど、どうしてしなかったの? あんた、あの子に協力してたんじゃないの?」

えmi「見栄だよ。カッコつけたかったの。なぎさに対して、カッコいいやつでいたいって見栄はったんだ」

さやか「別にいいんじゃないの。あたしはそういうのも大切だと思うよ」

Emi「ハハッ、そうだネ。その通りダ。それが、アタシタチだからネ」

さやか「……ん?」

さやか(この子、魔力が変化してる……?)

Mie「でも、やっぱり思うノ」ズルリ

さやか「――え」

さやか(頭の上半分が、落ち、た?)

ミエ「あたしって、ほんと見栄っ張り……」


――……ベチャリ

八話終了。

ここのために一話から延々と伏線貼って割には、この場面の出来が……。

あ、ちなみに注意書きにあるオリキャラはなぎ父なぎ母のことです。俺ウソツイテナイ。

使い魔が魔女になるときはグリーフシードを生んでそこから魔女になる説と、そのまま使い魔がでっかくなって魔女になる説があるらしいですけど、今回は後者を選択しました。

>>102あたりで気づいたがそれまですっかり騙されてたな
オリキャラガー言ってたのは>>1の自演だったりする?


そう来たか

今更なんだけど、>>36でレイコの名前が全部レイケツになってるのは単なるミス?
なぎさがレイケツちゃんって呼んじゃってるけど

待ってるよー

一回エタらせたならその間にちゃんと最後まで書き溜めしとけよ(続きマダー?)

続きマダー?そろそろ全裸待機きついじきなんだが

   【このスレは無事に終了しました】

  よっこらしょ。
     ∧_∧  ミ _ ドスッ

     (    )┌─┴┴─┐
     /    つ. 終  了 |
    :/o   /´ .└─┬┬─┘
   (_(_) ;;、`;。;`| |

   
   【放置スレの撲滅にご協力ください】  
   
      これ以上書き込まれると

      過去ログ化の依頼が

      できなくなりますので

      書き込まないでください。

>>143
>これ以上書き込まれると過去ログ化の依頼ができなくなりますので

嘘ばっかり書くな
スレ主1による書き込みが2ヶ月間なかったら読者の書き込みが多くても過去ログ行きなんだから関係ないぞ

どうせ荒らしだ構うなよ……
と思ったが、この手の嘘吐きは放置すると面倒か

投下来たのかと思ったじゃないか
エタって立て直してまたエタるって何がしたいのさ

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