ハルヒ「古泉君をモスグリーンに染めるわよ!」 (23)

放課後、俺たちはいつも通りダラダラと団室で過ごしていた
するとハルヒが突然意味のわからんことを言い出した

「古泉君をモスグリーンに染めるわよ!」

何がしたいんだこいつは
俺にとってはこいつの頭の中が一番の不思議だ

不思議を見つけたぞハルヒ、よかったな
灯台もと暗しとはまさにこのことだ
不思議探索はもう終了でいいんじゃないか
なんて思うだけで口には出せない
神様の逆鱗に触れたらどうなることやら分かったもんじゃないからな

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「おやおや、それは一体どうゆうことでしょう?」

古泉が苦笑いしながら答える
そりゃあそうだ
一度に理解しちまう方が怖い

「いった通りよ!体をモスグリーンに染めるの!ほら、あれよアレ!ドラゴンボールに出てたえーと、たしか…そう!キッコロみたいな感じに!」

「おい、それは別の緑の毛玉だ、モリゾーとか言うやつの手下だったはずだ」

「そんな小さいことはどうでもいいの!ほら!考えてみなさい!モスグリーンの古泉君を!不思議でしょ!」

「不思議というか変態チックだな」

「はぁ!なにいってんのよ!それはキッコロに対する侮辱!?」

「何故そうなる…まぁ確かに不思議でもあるか…」

「でしょ!でしょ!じゃあさっそく染めましょうよ!」

「まぁまて古泉の意見も聞かんとな…で古泉はいいのか?」

「んっふ…愚問ですよ団員は団長に従うものですから」

「さっすが古泉君!どっかのどぶざらい兼ATMとは頭の出来が雲泥の差ね!」

「おい…そりゃあ誰のことだ…」

「お褒めに預り光栄です」

「よし!そうと決まれば実行よ!…あっ、モスグリーンに染めるものがなかったわ!美術部から強だt…借りてくるから少し待っててね!」

バンッ!

そういうとハルヒは美術室に向かったようだ
ったく嵐のようなやつだ
いや下手な嵐より実害がありそうだな

「…あいつ強奪してるって自覚あったんだな…」

「そうみたいですね、ああ見えて涼宮さんは常識のある方ですから」

「いや、常識があるやつは強奪なんてしない」

「あのぉー…古泉君、大丈夫なんですかぁ…体をモスグリーンに染められちゃうなんて…」

「心配ないと思いますよ朝比奈さん、涼宮さんはああ見えて常識のある方ですから、大事にはいたらないでしょう」

「いや、常識があるやつは人をモスグリーンに染めようとしない」

「んっふ、そうでしょうか?涼宮さんは人をモスグリーンに染めることを不思とおっしゃっていましたよ。これは常識を踏まえての発言だと思いますが」

「いや、常識があるやつはそもそもそんな発言をしないし、どぶざらい兼ATMなんて愛称で団員を呼ばない」

「それはそういう発言をしても大丈夫だと涼宮さんが信頼している証拠ではないですか。一般的にも友達同士でそういうおふざけを言ったりすることはあるとおもいますが」

「にしても度が過ぎているぞ」

「そうですかね…」

「前に言いましたが涼宮さんは神の力をもっています。涼宮さんが願えば世界はとうの昔に狂っているはずです。ですが今世界は狂ってない、つまりこれは涼宮さんが常識人だという証明になるのではないでしょうか」

「いや、神の力をもっている時点で非常識じゃないか」

「…何故あなたはそこまで涼宮さんを常識のない人だと言い張るのですか?」

「そりゃあ、いつも迷惑かけられるわ、罵られるわでイライラしてるからな、あんなやつのどこに常識があるんだって思うようにもなるさ」

「…僕からしたら羨ましい限りですよ」

「ん?なんか言ったか?」

「いえ…何も」

「…まったく迷惑かけられて罵られるのが羨ましいってか、お前もとんだマゾ犬…

ガタンッ!

「…聞こえてるんじゃあないですか…」

「おいおいいきなり立ち上がるなよ…椅子が倒れてうるさい」

「……あなたに僕の気持ちがわかりますか…?」

「…なんだいきなり?」

「僕は昔から涼宮さんをしっています、ずっとみてきましたから…最初はただの観察対称でしたが…次第に僕は涼宮さんの魅力に引かれて行きました。…そしてそれが僕の初恋でした。それからしばらくは涼宮さんと接することすら出来ないまま時間だけが流れて行きました。ですがついに僕は涼宮さんと接することができるまでになりました!僕は歓喜しましたよ!うれしくてつい感涙をながしたほどです…ですが涼宮さんの隣にはすでにあなたがいた…これほどの絶望を僕は生まれてはじめて感じましたよ…………勝手に僕がフラれただけですが、選ばれたあなたには涼宮さんを侮辱してほしくないのです…僕の気持ち分かっていただけましたか…」

「……すまんが分からんな、嫌いなもんはきら…

俺が言い終わる前にグイッと胸元を掴まれ、無理矢理立ち上がらされ古泉と向かい合う形になった
古泉の目はうっすらと潤んでいた

「あなたのせいですッ!僕がこんなに辛いのは!それなのにあなたはそんな態度を取るんですか!僕にはあなたの方がよっぽど常識のない!心ない人間に見えますよ!」

「おいおい古泉、そんなのてめぇのエゴじゃねぇか、知るかよお前のことなんか」

「きええええええええええ!こいつ!まだ言うかッ!」

古泉はそう叫ぶと
俺の胸元を掴んでいた右腕を放し、そのまま殴りかかってきた

「うわっ!やめろ古泉!暴力は無しだろ」

だが胸元を掴んでいた右手を放したことで、俺は自由に行動できるようになり、間一髪古泉のパンチを避けることができた
古泉は興奮していて冷静な判断ができなくなっているようだ

「ふええん!二人ともケンカはダメでしゅー!」

朝比奈さんが泣きながらなだめようとしてくれるが、古泉にはその声は届かない

「僕は涼宮さんを四六時中みています!僕は涼宮さんのすべてを知っています!つまり!僕が涼宮さんの最高の理解者なんですよォ!それなのに何故!何故あなたが選ばれたんですかァ!ウオオオオオオ!」

古泉は雄叫びをあげるとなぐりかかってきた
とっさに腕を前に出し、防御の姿勢をとる

「うっ!やめろっ!っ…いてぇ!」

しかし何発もパンチをもらってしまう
腕、頭、腹…このままじゃヤバイ…

「はははははは!しねぇっ!しねえっ!」

古泉は容赦なく殴りかかってくる

このまま後退りしつづけたらいずれは壁に追い詰められて…

ガツン

ジ・エンドかと思い後ろに目をやる
これは長門の椅子?
見ると長門は入り口の方に避難していた

この修羅場を脱するには

よし!これしかない!

「ウラァ!」

俺は防御の姿勢をやめ、後ろの椅子を手にとり古泉のパンチを防ぐ

「ぐうっ!」

勢いよく俺を狙っていた拳は止まることが出来ずにモロに椅子にぶつかった

「オラッ!オラッ!オラァ!」

怯んだ古泉を立て続けに殴る

「んふ!うっ!グアアツ!」

古泉の頭部から血が流れる
それを見て手の力が抜けそうになるが

「ウオオ!殺す!お前を絶対!」

殴られながらも鬼の形相でこちらを睨み付ける古泉を見て、さっきよりいっそう力が入る

「びえええええん」

朝比奈さんはこの惨状を見て腰が抜けてしまったらしい

「くたばれ古泉!くらえ!くらえ!」

殴り続けていると古泉は倒れた

「ぬおお!おのれぇ…!」

まだ気は抜けないようだ

「そいや!えいや!どっこいしょ!」

「いっ!やめ!うぅっ!」

まだ何かを言っている危険だ

ドカッ!バキッ!グシャッ!
グシャッ!グニャッ!ピシャッ!

倒れている古泉が動かなくなるまで椅子を降り下ろし続けた

「はあっ…はあっ……やった…やってやった…!」

部屋には鉄の香りが漂う

「ブクブクブク」

朝日名さんは恐怖から泡を吹き気絶していた

古泉を叩き続けた椅子にはべっとりと血がつき、古泉を叩き続けた俺自身も古泉の返り血を浴びていた

「ははっははははははは」

…ふぅ俺はこれからどうなるのだろう…

バン!

ドアが勢いよく開かれる

「古泉君!モスグr…てなによこれ!えっ!
嘘っ…嘘よ……なんで…これまさかアンタが…?」

ハルヒは驚愕した表情だ

「ああ」

俺の人生もここまでかよ…
くそっなんでこんなことに…

俺は終わりを覚悟していた



しかし



「すごい!すごいわキョン!こんな素敵な古泉君初めてみたわ!モスグリーンなんかよりもよっぽどいい!真っ赤な古泉、いいじゃない!」

そんな予想外の言葉を発するハルヒ
ハルヒは興奮しているようでよだれが口から垂れているのに気にも止めていない

「ひゃひゃひゃーっ!いいわ!最高よ!」

なにかおかしいぞ…

「長門これはどういう…?」

怖くなり長門に助けを求める

「いくない薬の乱用者は色を統一したがる……とどこかで見たような気がする」

なるほど!

「サンキュー長門!謎は解けたぜ!」

ピポパポ
プルルルルル

「あっもしもし警察の方ですか…




その後古泉は殺人未遂罪で懲役5年が言い渡された
朝日名さんと長門が古泉が先に手を出し、「殺す!」と言っていたと証言してくれたらしい
あと俺が与えたケガは1ヶ月の入院で完治したそうだ

ハルヒは然るべき施設にぶちこまれた

そして俺が古泉に行った行為は正当防衛として罪を問われなかった

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