提督「大和撫子ねぇ・・・」 (973)

SS初投稿新参者がお送りする、艦隊これくしょんのSSです。

口調など、崩れている場合等ある場合がございますが、生暖かい目で見守ってください。
設定につきましても、文を書いていく上でお分かりいただけると思います。


シリアス有りです。ロストもあり。日常もあり。

更新は不定期です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412335650

扶桑「やっぱり、そういうのがお好きなんですね・・・」

提督「お、おいおい、そんな不幸オーラ漂わせながら出てくんなよ、ぞっとしないな」

扶桑「そんなに大和撫子が好きなら「ていうかさ」

提督「俺のなかではやっぱり扶桑が一番大和撫子な気がする」

扶桑「!?」

扶桑ルートだと思いましたか?すいません、まだ始まりません。

そして時は遡る。四年前。某年、夏。

気温37℃。本日猛暑日なり。熱中症に気を付けよ...

提督「ま、まい、まいづる、舞鶴鎮守府、でいいのかな?」

大本営より送られた異動命令書を見る。

提督「それにしても随分趣があると言うか、なんと言うかこう、古いな。
   他の鎮守府はコンクリート主体でできてんのに、うちは煉瓦か。
   これはこれでいいけどさ」

そこで、前方からこちらをキラキラした目で見る少女を発見した。

提督「(なんかこっち見てるぞ・・・、俺から声をかけるべきなのかやっぱり・・・)」
  
提督「ふ、ふむ。
   そ、それで?君は誰だ?さっきからずっと俺を見ているようだが」

??「わからないんですか!?」

提督「し、知らないです」

??「」ウルッ

提督「(泣くのか!?誰だったか、どこで見たような、ん、いや、待てよ・・・?)
   そうか、なるほど!わかったぞ」

??「ですよね、さすがにわからないはずないですよね!」

提督「同情はしてやるがな?それでもな、少女よ・・・」

??「・・・」

提督「な、なんだよ、そんな目で見てもお金なんかやらないぞ!どっから聞き付けたかは不問にしてやるが「待ってください!」

??「わ、私は案内役兼秘書として配属され「知ってるよ」

提督「いや、その、悪かった悪かった。
   すまんな、ちょっとからかってみたかっただけなんだ。すまんな。」

??「なんですかそれ!
   (うぅ、なんで私こんなところに・・・?ドジッ娘だから・・・?)」

??「私、なんで・・・、本気で泣きそうです!」ウルウル

提督「落ち着けって!仕方ないだろ?
   俺は何も説明をうけてないに等しいんだぞ。
   さっきっからずっと疑問に思ってはいたんだ。
   見渡しても軍艦らしきものは一隻も見当たらないし。鎮守府のわりに小さいようなきもしないでもないし。
   ここ本当に鎮守府なのか?
   もしかして俺って騙されてるのか?新手の新人いじめなのか?」

??「勝手にいじめられてればいいじゃないですか!」

提督「(全俺が泣きそう)」

??「そ ん なことよりも、とにかく!私の名前は五月雨って言います!今日から新しい提督さんが着任すると聞きましたので。ここに配属されたんです!」

提督「(そんなことだとぅ?おのれ五月雨ぇ・・・)
   とにかくではすませられない問題な気がするけど。
   ま、その件についてはあとでじっくりこってり話すとしようか」

提督「五月雨くん、君が秘書官ってことでいいのかな?」

五月雨「なんか漢字が違うような気がしますが・・・。そうです。
    とりあえず中を御案内しますね!」

提督「それにしても水色か。綺麗な髪の毛だな。地毛なんだろう?手入れに時間がかかるんじゃないか?
  失礼かもしれないけど、触っても---」

五月雨「わかってるんだったらやめてください!汚いです!
    も、もういきますよ!」

提督「(全俺が泣いた。うわあああああああああ)
   あ、あぁ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

提督「(しっかし見渡してみれば、大きい建物であることに違いはないか・・・。ん?あれは巡視兵か?なんだ?なんか来る、来る!)」

短いですが、今日はここまでで。

次回より本格始動します。

なかなかつたない文ですが、ご容赦ください。

期待

ああこれはあれだな

あれやな

>>7 ありがとうございます

>>8 >>9 そうですあれですよ。わかっちゃいましたか?

では、ぼちぼちはじめていきます。
そうそれと、若干安価もするかもしれない、です?

提督「(キャーコッチクルー(/ω\)キャー)」

警備兵「敬礼ッ!」ビシィッ

提督「」ビクッ
提督「お、おつとめご苦労様です!」

警備兵「いえ!国民を、鎮守府を守るためならば如何なる苦労も苦労ではありません!」

提督「(;´_ゝ`)ヾ」

五月雨「なんで提督がびびってんのよ・・・」

提督「こういうとこ任されるようになったのはついこの間なんだ。
こう、人に敬われるのは性に合わないっていうかさ。落ち着かないんだよ」

五月雨「そんなもん?」

提督「そんなもんだ」

五月雨「ふーん」

提督「・・・」

移動したかもしれないよ。
舞鶴鎮守府 ドック前

五月雨「ここが艦娘の艤装とかを修理する場所です!
    このバケツの水を使えば一気に直すことが―――」

提督「え?艦娘?なんぞそれ
   新しいゲームの話でもしてるのか?」

五月雨「・・・」

五月雨「提督、本当に、何も、説明、うけてないんですか?」

提督「説明だって?いや、俺はただ異動命令を受けてここに飛ばされてきただけだぞ」

五月雨「はぁ・・・」

提督「俺がため息つきてぇよ」

五月雨「とりあえず、わかりました。執務室まで案内してあげますから、そこでじっくりこってりお話ししましょう」

提督「おう。最初からそうしてくれるものと思ってたんだけどな」

移動したかもしれないよ。
執務室兼司令ブース

五月雨「ここは基本的に事務仕事とかをする場所です」

提督「ほう?」

五月雨「あそこにある扉は、開ければそのまま司令室につながってます」

提督「ほうほう」

五月雨「ちなみに、執務机の隅に置いてあるマイクはそのまま館内放送につながってます」

提督「ほうほうほう」

五月雨「聞いてます?」

提督「返事してるじゃないか」

五月雨「う、うん」

五月雨「じゃ、じゃあこれからじっくりこってりお話しします!」

提督「やっとか(くどいな・・・)」

五月雨「・・・」

五月雨「十数年前に、海に少女が浮かんでいた事件はおぼえていますか?」

提督「あーあー、覚えてるよ。
忘れるわけないさ、あんなに衝撃的な事件。まだそのころ俺は下っ端だったからな・・・。毎日トレーニングばかりだったから詳しい情報は入って来てないけど、なんだかこう、少女、戦艦とかそういった断片的なことは耳にしたな」
   
提督「そんときには艦娘とかいう単語も聞いていたような気もするけど、その当時はまだ正真正銘の護衛艦隊に乗ってたからな。噂と思ってね、聞き流してた」

五月雨「そうでしょうね・・・。
    でも提督が馬鹿みたいにトレーニングしてた時、海軍の上層部はてんやわんやの大騒ぎだったんです!
    

五月雨「なんてったってその時浮かんでた少女は今いる中の、いわゆる、大和型戦艦の一番艦、大和だったんですから!46cm3連装砲を積んでいたり、史実と全く同じ装備、沈んだ場所で浮かんでいたんだそうです!」

提督「待て待て待て。
   話が飛躍しすぎてるだろ。
   第一、どうやって大和だと分かった?46cm三連装砲を積んでいただと?順序立てて説明してくれないとわかるもんもわからん」

五月雨「す、すいません。ちょっと熱くなっちゃいました・・・。
    事の発端は、大和の歴史上での轟沈場所を偶然通りがかった海軍護衛艦隊がその少女を発見し、意思疎通を図ろうと「待て待て待て」

五月雨「なんですかぁ、もう?」

提督「その少女は心肺停止状態で、引上げられたときには息を引き取っていたっていう発表だったじゃないか」

五月雨「そんなところも説明されてないのですか・・・」

提督「お、おう?」

五月雨「実際は、引上げられた時点で、意識ははっきりとしていたそうです」

提督「ナ、ナンダッテー」

五月雨「そこで、海軍はその少女と意思疎通を図ろうとしたんです」

提督「そんで?」

五月雨「最初は会話なんてできる状態じゃなかったらしいんですけど。段々とこちらの話に相槌を返すようになったんですって」

提督「ほう」

五月雨「次第に、自分が史実の中の大和だ、とか話し始めたらしいです」
    
提督「おおう?」

五月雨「最初の頃は、海軍も精神的疲労によるものだと取り合わなかったそうですが、その少女が実際に、どこからともなく大和の主砲を持ち出し、砲撃をしてみせたところで、信じざるを得なかったというか?そんな感じらしいです」

提督「はっは、少女があの当時艦砲の中で世界最大と言われていた46cm三連装砲を撃つ?ましてやどこからともなくとは」
   
提督「馬鹿も休み休み言えとはまさにこのことだな」

五月雨「その場での情景説明は以上で・・・、それ以降は私も詳しいところを聞いていなくて。申し訳ありません」

提督「いやいや、大丈夫だ。大体話の内容はつかめたからな」

提督「しかし、なぜ少女になってあがってきたのやら・・・」

五月雨「っと、その話なんですが、どうやらその少女と一緒にいた、妖精?のようなものも関係してくるようです」

提督「妖精だと?
   妖精ってあの、ちっちゃいおっさんとかみたいな感じの妖精か?」

五月雨「お、おっさんではないですけど・・・。
    大体その解釈で合ってます」

提督「つかめたと思った話が自分の手から離れていくぞ」

ちょっと休憩

五月雨「でもその妖精さん、どうやら人語を解するようで「なんだって!?」

五月雨「落ち着いてください!言いたいことは分かります!
    そこで要請に何か聞かなかったのかって言いたいんでしょ?」

提督「おう」

五月雨「海軍もそりゃあ試しましたよ。でも妖精は何も教えてはくれなかったそうです。
    戦艦が何故、人間として出てきたのか、そもそもどうして女なのか、とか」

五月雨「砲塔だとかそういった艤装に関しては、妖精が動かしているという証言を得られたのですが・・・」

提督「だが?」

五月雨「それ以外に関することには、だんまりをきめこんでいたそうです」

提督「さながら国家機密と言ったところかね」

五月雨「彼らがいた場所が国なのかどうかもわかりませんがね・・・」

提督「それもそうだな。
   それにしたって十数年も経つって言うのに、彼らは何も話してくれないわけだ?」

五月雨「そうですね・・・」

提督「そんな意味ありげな顔したって何も答えられませんよ!」

提督「そうか・・・」

提督「それにしても五月雨よ」

五月雨「はい?」

提督「よくそんなこと詳しく知ってるな」

五月雨「提督の元に配属される前は、元帥殿にお仕えしてましたから」

提督「(恐ろしい娘・・・!)
   へ、へー、すごいな、そりゃ。
   でもそれなら知らないってことはないだろう?」

五月雨「私のような駆逐艦には教えてくれませんでした」

提督「そ、そうか・・・」

五月雨「気にしないでくださいね。
    それにしても、今思えばあそこは息苦しかったです。丁度舞鶴みたいな雰囲気が、一番好きですね」

提督「そいつはうれしいな」

五月雨「あなたには言ってませんよ」

提督「ワカッテタ」

忙しいので今日もここまでで。
本格始動何て言ったわりになんて短さなんだ!

これから10日ほど更新しませんが、ちゃんとかきだめしておきますのでどうかお許しを。
かきだめが割りと速くいけば、もうちっとはやめにいけます。
乞うご期待。

他人がいるといいけれど・・・。

なにか出してほしい艦娘がいたら言ってください。
大型建造以外でおねがいします。

よかった、結構いた。

と思いきや、ビスマルクって大型建造じゃないですか?あれ?
俺、大型建造は除くって言ったはずなんだけどな・・・。

まぁ何はともあれ自分の独断と偏見で暁さんをとりあえず出しますね。

熱烈な要望が重複すればそちらも採用することもあるかもしれません。

※書き溜め進捗状況・・・13%

建造ではないが明石さんと大淀さんは
最初からいるので出して欲しい

まだ先の話ですが山城はちゃんと出します安心してください。

それでですね・・・、もう一人、募集したいと思います。
大型建造以外でお願いします。
山城以外でww

安価直下

早すぎるぜ・・・。

赤城さんですね、了解です。

申し訳ない、見逃してました>>31

今のところ明石さんと大淀さんの登場は予定していません・・・。申し訳ないです。

かきだめようと思ったんだけど、やっぱり性に合わないので、一日置きながら書いていくことにします。

と、いうわけで、ちょっと寝てから投下開始。

俺は寝落ちなんかしない。

皆様、ありがとうございます。

順次怒涛のごとく投下していきます。

移動したかもしれないよ。
舞鶴鎮守府 ドック内

五月雨「では、改めて案内しますね。ここが、艦娘がつける艤装が破損した場合の修理場です。破損具合によって大幅に修理にかかる時間が変わりますが、この高速修復材を使えばすぐに直すことができます」

提督「妖精の技術、恐るべし、だな」

五月雨「ええ、そうですね」

提督「って、それで終わりか?え?もう行くの?」

移動。舞鶴鎮守府。工廠内。

五月雨「ここは艦娘を建造する際に使用するブースですね」

提督「艦娘を、建造?人間を?どうやって作るんだよ」

五月雨「建造過程は全て極秘なんです。妖精さんたちが渡してくれたレシピ通りに資材を渡してあげれば、狙った艦種を建造できるらしいので、気にしないでいきましょう」

提督「はーい(めっちゃきになるぅ!)」

提督「(それにしてもサクサクいくなぁ・・・)」

移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「ひ、広いな・・・」

五月雨「今は私しかいませんけど、これからそれなりに増えていくと思いますから。ゆくゆくは、狭く感じるようになるかもしれないですね!」

見渡していると、厨房内に動く影を発見した。

提督「お、おい、誰かいるぞ」

となりの五月雨を肘で小突き、その人影を指差す。

五月雨「ホントだ・・・、どうやってはいったんだろう」

五月雨「って、もしかして・・・」

提督&五月雨「「泥棒!?」」



二人してビビりながら、抜き足差し足で忍び込むと、厨房の奥のほうで、なにやらまな板とにらめっこをしている人がいた。見る限り背は低いし、髪の毛も長い。女の子のようだ。

しかし、そこで提督は、その後姿をどこかでみかけた事があるかのような感覚を覚えた。

提督「(あいつは・・・、どっかで会ったことがあるはずだ・・・)」

提督「(どこでだったか・・・、そうだ!確か、俺がまだ少佐だったころ・・・)」

回想開始。(提督は少佐として書かさせていただきます)

某護衛艦内。食堂。

教官の座学を受けたばかりの部下と、上官による指揮の手解きを受けていた少佐は、並んで廊下を歩いていた。

少佐「そろそろお腹が減ってきたんじゃないか?」

部下「そうですね・・・。
   そうだ、久しぶりに海軍カレー、とか食べたいです」

少佐「そうだな、最近はずっと定食ばかり食っていたっけな」

苦笑交じりの声で少佐は答えた。

少佐「(こいつとこうして話すようになったのも、食堂がきっかけだったかな)」

少佐「(もうどんなふうに仲良くなったかまでは思い出せないな・・・)」



談笑しながら食堂に向かっている途中で、彼らは廊下の端っこで泣いている少女を発見した。

少佐「(びびったわ・・・、座敷わらしかと思った)」

少佐「おいおい、子供がなんでこんなところにいるんだよ?
    道に迷ったのか?いや、道に迷ってもこんなところに来るか・・・?」

??「」

嗚咽をこらえるようにしながら、その少女はこくこくと首を動かす。

少佐「(迷子ですってか・・・?)」

少佐「はぁ・・・。
    すまん、先に席を取っておいてくれないか。俺はこいつをちょっと外まで案内してくる」

部下「お安い御用ですぜ旦那ァ、あっし、いってきやす!」

少佐「(なんかキラキラしてたぞあいつ・・・)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少佐「いったいどうしてこんなところに・・・、まだ出港していないうちだったからよかったものを・・・」

??「ご、ごめ、んなさい」

その少女はまだ必死に嗚咽をこらえていた。

少佐「ん、んん。ま、とりあえず外まで案内するさ」

少女は一体なんの意思表示なのか、ぎゅっと手を握ってきた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少佐「ほれ、着いたぞ」

??「ありがとうございます・・・」

さすがに泣き止んでいた。

少佐「どうか御気になさらず。
   レディーが泣いていたら、そこをエスコートするのがジェントルマンの務めだからな」

??「レ、レディー?」

少佐「あぁ、立派なレディーだよ、うんうん」

なんとなく、頭を撫でようと手を伸ばすと、

??「り、立派なレディーなんだから、頭をなでなでしないでよ!」

なんだか全力で拒絶された。

少佐「おおおう?(いきなりどうしたこいつ)」

少佐「それはそうと、さ」

??「?」

提督「早く行ったほうがいいんじゃないか?こっち見てるあいつら、お前の友達なんじゃないのか?」

??「えっ」

少女が振り向いた先では、少佐と少女を見比べながら、どう声をかけたものかと悩む三人のこれまた少女がいた。

少女?「暁ったら、全く。長女が真っ先に迷ってしまってどうするんだい」

少女!「なのです!雷も電も響も、いっぱい探したのです!」

少女!?「ウンウン」

少佐「(少女三人はなるほど妹か・・・。こりゃきまずいぞ・・・。それで、どうやらこいつはアカツキとか言うらしいな。あいつらはどれがイナヅマでどれがヒビキかとかはわからんが)」

少佐「いいから早く行っておいで。アカツキ、妹たちが待ってるじゃないか」

暁「うぅぅ」

アカツキは顔を真っ赤にしながら走っていった。


少佐「もうこんなところに来るんじゃないぞー!」

手を振りながらそういうと、アカツキは笑いながら手を振り返してきたのだった。

少佐「あんな少女が迷い込むとは・・・、警備もなにもあったもんじゃないな・・・。後で陳情あげとくか」


足早に、部下が待っているであろう食堂へと戻っていったのであった・・・。


回想終了。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「って、アカツキじゃないか!こんなところで何してるんだよ、全く」

五月雨「えっ、提督、あの娘のこと知ってるんですか!?」

提督「そりゃあ覚えてるさ、忘れるわけもな「うわあぁぁああぁぁああ」

暁は出会った時と同じように、泣いていた。
違う事と言えば、そのまま勢いよく提督に抱きついたことか。

提督「なんでまたこんなところに迷い込んだんだ・・・・。
   第一、どうやって入ったんだ?」

五月雨「どうやってって・・・、そりゃ入れますよ!艦娘なんですから!」

提督「えっ、おまえ、艦娘だったのか!?」

暁「知らなかったの!?」

ガバッ、と、暁は勢いよく顔を上げた。

提督「わかるわけないだろ・・・(それなら昔あそこに入れたのも納得がいく・・・、え?いくのか?)」

提督「まぁいい、それで、何しにきたんだ?」

暁「司令官に会いに来たの!」

提督「どうしてここがわかったんだ・・・?」

暁「ゲンスイ?っていう人に聞いたら教えてくれたもん!」

提督「(やだなにこの子達怖い)
   そ、うか、なら、もう俺の艦隊に所属する準備も整ってるのか」

暁「あったりまえじゃない!一人前のレディーだもの!それぐらいできるわ!」

提督「(レ、レディー、そういえばそんなことも言ったな・・・)」

提督「そんで?艦隊に所属するお前が、厨房でなにやってたんだ?」

暁「司令官にサプライズ?で料理でも作ってあげようかと思ったんだけど・・・、作り方とかぜんぜんわからなかった・・・」

提督「(まな板とにらめっこしてたのはそういうことかよ・・・)」

提督「ありがとうな。
   でも大丈夫さ。うちの鎮守府にはマミヤさんっていう、料理を作ってくれる人がきてくれることになってるから」

暁の頭をなでながら、そういった。

暁「もう、頭をなでなでしないでよ!」

また睨み付けたかと思いきや、

暁「・・・って、今なんて?」

突然真面目な顔になった。


一方の五月雨は頭を撫でられている暁をうらやましそうに眺めていた。
だが、マミヤという言葉を聴いた瞬間表情が変わる。

五月雨「ま、間宮さんが配属されることになってるんですか!?」

提督「あぁ、もうそろそろきてもいい時間だよ。
    ・・・、それにしたってすごい驚きようだな、なんかすごいのか?」

五月雨「あの人が作る料理はどれも本当においしくて!有名なんですよ!なんで提督は知らないんですか!」

暁「そうよ!そんなんじゃジェントルマンじゃないわ!」

提督「そう、なのか(有名なのか?マミヤなんて聞いたこともないぞ。フィルムカメラのああいうのしか知らん)。
   なんとなく、漠然とした期待が膨らんできたぞ」

五月雨「期待してもしすぎることはないです」

五月雨「もう案内するところは案内したし、ここで待ってましょうよ!」

提督「はーい」

暁「はーい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
間宮「あ、あの、舞鶴鎮守府はここでいいん、ですよね?」

提督「(なぜ俺は正門で待つという選択をしなかった。ていうか間宮さんきれい!汗をかいて髪の毛じゃっかん貼りついてるのもやばい!)
    す、すいません、出口でお出迎えするべきでしたね。本当に申し訳ないです」

間宮「ほんとですよ、全く。こんな暑い日に」

提督「(ガチオコじゃないですか・・・)
   すいませんでした」

予想と反して、間宮さんはいたずらっぽく笑みを浮かべた。

間宮「冗談ですよ。ふふ」

間宮「とにもかくにも、もう夕飯の支度を始めないと、ですね」

突然の返しに若干呆けてしまった。

提督「え?なんで・・・って、もう五時過ぎか。ここにきたのは三時ごろだったけど、もう二時間もたったのか?」

腕時計を見ながらぼやく。

五月雨「夕飯と聞くともうお腹がすいてきました・・・」

暁「私も・・・」

間宮「六時にはできると思いますから、それまで待っていてくださいね」

提督「ありがとうございます。
   それじゃあ、執務室にでも行こうか。その他もろもろ事務仕事があるからな。
   当面は五月雨を秘書とするけど、まだ人数が少ないしな。暁もおいで」

暁「行く!」

提督「(執務室に行くといったときは悲しそうな目をしていたくせに、一緒にいこうといった瞬間これか・・・。
    忙しい奴だ。でも、案外子供も、悪くない、のかな?)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「ただハンコを押すだけの簡単なお仕事だと思っていたらいろいろ面倒くさいぞ」

五月雨「当たり前ですよ」

暁「なんだか単純すぎてつまらないわ・・・」

ポンポンと軽快な音が響いていた中、提督が手を滑らせ、ハンコが落ちた。
それをとろうと手を伸ばすと・・・、

提督「ああぁ、ワイシャツにインクついちまったよ」

運悪く、袖に赤いインクがついてしまった。

五月雨「私がクリーニングしといてあげましょうか?」

提督「え?お前クリーニングなんてできるの?」

提督はニヤニヤしながら言い返す。

五月雨「私を何だと思ってるんですか!クリーニングくらいできますよ!伊達に元帥さんの秘書やってたわけじゃないんです!」

提督「拗ねるなよ・・・」

五月雨「提督のバカ!」

提督「お前ってまだ小さいからさ、できるとは思ってなかったんだよ。
   その年でできるようになるとは、すごいじゃないか。
   じゃ、頼めるんだったらよろしく頼むわ」

笑いながら頭を撫でる。
暁と違って嫌がったりはしなかった。


・・・一方の暁はそれをうらやましそうに眺める。

オレンジ色の夕日が差し込む、執務室のドアがノックされた。

提督「お、間宮さんですか?」

ドアの隙間から、間宮が顔をのぞかせる。

間宮「ご飯の用意ができましたので、おいでください」

五月雨「待ちくたびれました・・・」

暁「ほら!司令官!早く行くわよ!」

提督「あわてても飯は逃げんよ・・・」

腕をつかまれながら、食堂へと向かう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「まだ人数が少ないからか、ずいぶん広く感じるな」

五月雨「そうですか?私はこの感じ、好きですよ!」

暁「・・・」

間宮「さて、できましたよ。みなさん、どうぞ召し上がってください!」

間宮が盆を皆に配っていく。

提督「間宮さんのぶんはどうされたんです?」

間宮「あぁいや、私は後でで「そんなことおっしゃらずに、さ」

提督「みんなで食べましょうよ」

間宮「で、でも・・・」

提督「俺らと一緒じゃ嫌ですか?」

間宮「提督さん、それはずるいです。
   でも、提督さんがそういうなら・・・」

提督「そう来なくては」

提督「ほいだら、いただきまーす」

皆「いただきまーす」

------------------------------------------------------------------------
提督「いやぁ、五月雨のいうことに間違いはなかった。こりゃとまらんわ」

五月雨「でしょ!」

暁は話すこともなく、ただただ無言でがっついて(?)いた。

間宮「我ながらうまくできたと思います。
   それよりも何よりも、皆さんが喜んでくれて、私はそれだけでも幸せです」

柔らかな微笑を浮かべながら言った。

提督「(間宮さんめっちゃきれい。やばい。だきしめたくなってきた)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動。舞鶴鎮守府。工廠内。

提督「妖精さんちっす」

妖精「ちーっす」

提督「建造オナシャース」

妖精「うす」

五月雨「(まるで旧知の仲みたいにしてるけど、提督が緊張してるのがなんとなくわかる・・・)」

提督「とりあえず、駆逐艦を狙うかな・・・」

などとウンウン唸っていたら、工廠のドアを開けて先ほどの警備兵がドタドタと入ってきた。

提督「どうした?」

警備兵「あの、それが艦娘の雷、電、響と名乗る少女が、ここに配属されることになったと聞かないのです・・・」

提督「え?配属予定なんだったらいれてやればいいものを」

警備兵「それが、配属予定者名簿にそのような名前は載っていないのです。
     なんでも、アカツキ?が走っていったのを追いかけてきたとかで・・・」

提督「あぁ!あのときのやつらか」

警備兵「まさか、彼女らのことをご存知で?」

提督「そうだよ。
   俺が配属するよう手配しておこう。通してあげてくれ」

警備兵「了解しました」

寝ていたわけではありません。遅れました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動。舞鶴鎮守府。工廠内。

提督「妖精さんちっす」

妖精「ちーっす」

提督「建造オナシャース」

妖精「うす」

五月雨「(まるで旧知の仲みたいにしてるけど、提督が緊張してるのがなんとなくわかる・・・)」

提督「とりあえず、駆逐艦を狙うかな・・・」

などとウンウン唸っていたら、工廠のドアを開けて先ほどの警備兵が入ってきた。

提督「どうした?」

警備兵「あの、それが艦娘の雷、電、響と名乗る少女が、ここに配属されることになったと聞かないのです・・・」

提督「え?配属予定なんだったらいれてやればいいものを」

警備兵「それが、配属予定者名簿にそのような名前は載っていないのです。
     なんでも、アカツキ?が走っていったのを追いかけてきたとかで・・・」

提督「あぁ!あのときのやつらか」

警備兵「まさか、彼女らのことをご存知で?」

提督「そうだよ。
   俺がこの鎮守府に配属されるよう手配しておこう。通してあげてくれ」

警備兵「了解しました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
??「あ、やっぱり。あのときの少佐さんじゃあないか。
   響って言うんだ。よろしく」

提督「よろしく」

??「なんだか緊張するのです・・・。
   わ、私は雷っていいます。よろしくなのです!」

提督「あいあい」

??「司令官!私は雷っていうの!よろしくね!」

提督「ほいほい」

提督「そら、暁さんや、かわいい妹たちがお出迎えにいらしたぞ」

ごめんね!連投ごめんね!

今日はここまでです。乙でした。

暁の提督に対する呼び方があらぶっている。。。

そして赤城さん登場は明後日です。。。

ほんとだー、雷が二人いるー。

暁の口調を勘違いしていました。こんなところでつまずくとは!

次からはないよう訂正していきます。

本日、投下予定、六時ごろ。

量は少ないです。

だめだ、投下できるほどかけなかった。

今夜です

更新かと思った方々、ごめんなさい。

風邪を引いたようです。今日はありません。

待っててくれた方がいたら、お詫び申し上げます。

や、やべぇ、設定がわかるように書いていきますってなにいってんだおれ・・・。
ていとく

や、やべぇ、設定はわかるように書いていきますってなにいってんだおれ・・・。
提督はアルビノっていう設定のもとやっていってます。
描写なくてホントすんません。
今かきだめてて気づきました。

いまのところ長袖長ズボンだから、艦娘は不思議ってるだけってことで、描写はしていませんでした。
なんでもしますからゆるしてください。

投下は明日。コレは絶対。

暁「・・・え?お出迎え?」

途端に泣き出しそうな顔になる。

提督「言い方を間違えたな。
   (普通にいらっしゃったぞと言えばよかったのか)
   別に連れてかれるわけじゃないさ」

暁「ほんと?」

雷「なにべそかいてるのよ!曲がりなりにもお姉さんなんだから!しっかりしてよね」

暁「べ、べそなんてかいてないし!」

目をこすりながらでは説得力はない。

雷「じゃ、司令官、そういうことだから、よろしく頼むわね!」

そういうと雷は何を思ったか、提督に腕を絡ませると

雷「早速執務室に行きましょ!」

と、声高に叫んだ。

その発言に、いつのまにかついてきていた五月雨が反応しないはずもなく、

五月雨「何いってるんですか!秘書は私です!あなたじゃありません!」

ムキになったのか、強めの口調で言い返してしまう。

・・・今度は雷が涙目になる番だった。

なんでだろう。コテハンがおかしい。まぁ作者です。御気になさらず。


雷「ひ、秘書って・・・、そんな、もう決まってたの?司令官?」

提督「(この笑顔、守りたい・・・。妥協案を考えろ、俺!)
   すまんな、雷。秘書は五月雨なんだ。
   
雷「そう・・・」

提督「でも、みんながこの鎮守府に慣れてきたら、ちゃんと交代を組むようにするからさ。そそれまで我慢しててくれ」

雷「うん・・・。
  そうだ!秘書以外にできることはあるだろうし、そのときは私を頼ってもいいんだからね?」

提督「期待してるよ。
   まぁ、その、なんだ、別に執務室に来ちゃいけないなんてことは言ってないぞ」

五月雨「ちょ、ちょっと」

提督「いいよな?曲がりなりにも俺の秘書の五月雨が駄目だなんていうわけないよな?」

五月雨「ヒッ・・・。
    い、言うわけないですよ」

雷「ほんと!?ありがとう!」

と、それまでべそをかいていた暁含め、彼女を慰めていたほかの子らが口を出した。

響「もちろん、私たちもいいよね」

電「な、なのです!」

暁「し、司令官。私もいくからね!」

提督「(賑やかになりそうだ・・・)」

心の中で軽く、溜め息をついた。


それまで忘れていたが、提督はあることを思い出す。

提督「あ」

五月雨「どうかしたんですか?」

提督「妖精さんらに、空母のレシピを渡したんだ。それで・・・、高速建造材も使っていいっていってたんだった!」

五月雨「そんな!何で今頃!早く行きますよ!早く!」

提督「誰だ、誰が来たんだ・・・!」

移動。舞鶴鎮守府。工廠内。

??「あ、あれ・・・?誰もいない・・・?
   私、どうしてここに・・・?
   

??「お腹もすいてきた・・・」

新しい空母が建造早々弱音を吐き始めた時、勢いよく工廠の扉が開かれた。

提督「も、申し訳ない!ちょっと立て込んでて!席を少しはずしちゃってたんだ」

??「(よ、よかった・・・。よし、気を取り直して)
   航空母艦、赤城です。
   空母機動部隊を編成するなら、私にお任せくださいませ。」

提督「赤城さん、だね。これからよろしく頼むよ」

五月雨「ていうか、提督」

提督「ん?どうした」

五月雨「うち、まだそんなに成長し始めてるわけでもないのに。もう空母ですか?」

提督「なに、序盤はボーキサイトは節約しながらいくさ。聞くところによれば、ちょいちょいと資源採掘のたびに出れば割と手に入るって言う話しじゃないか」

五月雨「そういう話じゃないです」

赤城「(え・・・?節約・・・?え・・・?)」

提督「なんだよ?」

五月雨「なんで空母を作ろうと思ったんですか?

提督「・・・・」

何かしゃべろうと思ったが、結局何も言わないことにした。

提督「って、いうことなんだ。「ちょっと!?」

五月雨の口を提督の手がふさぐ。

提督「しばらくボーキサイトを使いまくるわけにはいかない。
   それでも運用させていただくってことになるけど・・・、いいかな?」

赤城「は、はぁ・・・。大丈夫ですよ、大丈夫です」

提督「それならよかった」

赤城「(はぁ・・・)こういう時に加賀さんがいれば・・・」

思わず本音が出たことに気づき、ハッと口を押さえるが、時すでに遅し、であった。

提督「加賀ってあの、姉妹艦の?」

赤城「そ、そうです」

五月雨「提督、はやまっちゃだめです!」

提督「そうは言うがな五月雨よ。俺とてさみしそうにしている女性を置いておくわけにはいかないんだ」

赤城は若干顔が赤くなった、ような気がした。

五月雨「でも!「よしそうと決まれば建造するしかないよな妖精お前もそう思うだろうじゃあ早く造りたまえ」

五月雨「狙った艦種をだすことはできても、狙った娘を建造することはできないんですよ!?」

提督「ええい黙れぃ!愛さえあればそんなもの乗り越えられるわ!」

五月雨「んな無茶な・・・」

言いかけたところで、新造艦ができあがってしまった。

話に夢中になっていたのと、高速建造材を使っていたせいで建造時間を見ることはできなかった。

皆が固唾を呑んで見守る中・・・。光の中から現れてきたのは・・・。

加賀「航空母艦、加賀です。
   あなたが私の提督なの? それなりに期待はしているわ」

提督「この笑顔は守られた!」

赤城「加賀さん!」

いったい何があったのか、若干涙声で自分の下に飛び込んでくる赤城を前にして、

加賀「提督、なにをしたんですか?」

、加賀はぎろりと鋭い目で提督を睨みつける。

提督「違う違うって。なにもしてない。その、ちょっと赤城さんは悲観的になりすぎてるだけなんだ」

加賀「悲観的になるような状況を作り出したのは提督ですよね」

提督「うっ・・・」

それまで加賀に抱きついていた赤城が顔を上げた。

赤城「ふぅ・・・」

加賀「赤城さん?」

赤城「ごめんなさい。加賀さんが来てくれてうれしかっただけなの。
   ちょっと大袈裟でした。大丈夫ですよ、加賀さん。提督の言うとおり、悲観的になりすぎていただけですから」

加賀「でも」

赤城「大丈夫ですから」

加賀「赤城さんがそう言うなら・・・」


提督「な、なんだか慌ただしかったけど!
   改めて、舞鶴へようこそ。間宮さんもいるから、ゆっくりできると思うしね」

間宮という言葉が出た瞬間、二人の顔と、いつのまにかついてきていた響と雷と電の顔が変わった。

赤城「間宮さんがいるんですか!?」

加賀「さすがに気分が高翌揚します」

響「それはいいね。スパシーバ」

電「間宮さんがいるって、本当なのです!?」

雷「もう明日の朝が待ちきれないわ!」

提督「ま、間宮さんってやっぱりすごい」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
移動。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「さて、と。戻ってきたな。もうすっかり夜だ・・・

五月雨「ですねー」

そのとき、扉がノックされた。

誰ですかね?
出てきた娘の中でお願いします。安価直下。

加賀って姉妹艦だっけ?

扶桑さん、確かに出てる!出てるけど・・・。

申し訳ない。俺の説明不足です。
時間がさかのぼってから出てきてる娘らでお願いします。

暁・響・雷・電・間宮・赤城・加賀

>>75あれ?姉妹ってもしかして誤用なのですか!?
 安価を踏んでたら下です。

ご指摘感謝、ご教授感謝、圧倒的感謝・・・!

ありがとうございます。

心の中(来年、アニメ開始されたら詳しい設定とか公表されそう。それまでに完結させねばならん・・・)

言い訳のしようがないですわ・・・。

まぁめげずに書いていきます。

今日中に投下します。

今日はかきだめず、書いたら順次出していくことにします。


提督「あ、間宮さんじゃないですか?
どうしたんです?こんな時間に」

置時計は午後八時を指していた。

間宮「いえ、その・・・、お菓子を、作ってみたので」

提督「さっきの今で?一体何を作ったんです?」

間宮「ふふ、それは来てからのお楽しみですよ」

提督「気になる・・・。
   五月雨も行くだろ?」

そう言いながら、一日中つけ続けていた帽子を取った。

五月雨「はい!私もいき、ま・・・す・・・?」

そのまま固まってしまった。

間宮さんも同様である。

提督「どうした?」

五月雨「その、髪の毛、きれいだなと思って」

提督「髪の毛?
   ああ、これか」

提督「俺もよく詳しいことは知らないんだ。
   物心ついたときに、アルビノっていう色素異常なんだとは説明された。
   紫外線にとことん弱いらしいってことぐらいかな、注意してるのは」

五月雨「太陽とか、どうしてるの?」

提督「外じゃあ服は脱げないな。一応医者からもらう日焼け止めクリームっぽいので多少の薄着でも大丈夫なのさ」

提督「それのお蔭で、下っ端の頃はいつもトレーニングは俺だけ室内だったから。
   ヒッキーだとかいじめられたな・・・」

五月雨「なんか・・・、ごめんなさい」

提督「なに、気にするな。昔の話だ」

提督「深海棲艦とか呼ばれないだけ、まだマシだ」

間宮「そんな!言う訳有りませんよ!」

それまで黙っていた間宮さんが頬を赤くしていった。

提督「(そ、そんなに興奮しなくてもいいんじゃないか?)
   ありがとうございます。そういってくれるだけで嬉しいですよ」


提督「さぁ、五月雨。しばらくは見慣れないだろうが、なれてもらうしかないんだ。
   お菓子が待ってる、早く行こう」

五月雨「うん!」

間宮「(いけない・・・、一目惚れ、しちゃったのかな?)」

移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「なるほど、クッキーか」

提督「あっつ・・・!
   だ、大分焼きたてな感じだな」

間宮「申し訳ありません!火傷しましたか?」

間宮さんが血相を変えて走ってくる。

提督「なんの、大丈夫ですよ。
   冷めるまでの間、話でもしましょうか」

五月雨「(なんだろう、間宮さん、さっき提督が帽子脱いだらへんから、態度とか目が変わってる気がする・・・)」

五月雨「(でもほんとに、キレイだな・・・)」

透き通るような肌の色、白金色の髪の毛。全てが作り物のようだった。

提督「おーい五月雨。聞いてるのか?」

五月雨「え?あっはい!
    すいません、聞いてませんでした」

提督「どこ見てたんだよお前・・・。
   ちょっとせわしないけど、もう明後日から鎮守府近海の哨戒にいきはじめようか」

五月雨「明日からじゃ、ないんですか?」

提督「まだちゃんと響らと話できてないじゃないか」

五月雨「そういうことですか」

提督「つまらなさそうな目をするなよ、艦娘とのコミュニケーションだって大事なんだぜ」

五月雨「そ、それぐらいわかってますよ!」

提督「ならいいんだけどさ」

そのまま顔を間宮さんのほうへ向けると。

提督「にしてもこのクッキー、美味しいですね」

間宮「本当ですか?ありがとうございます。
   紅茶クッキーなんですよ、これ」

提督「紅茶クッキーですか。どうりで、いい香りです。
   少し残して、暁型と空母のやつらにも食べさせてや「本当ですか提督!?」

加賀「流石にこれは、我慢できないかもしれません」

提督「っとぉびっくりしたぁ!」

提督「お前らいつのまに・・・。
   ていうか赤城、口を開けててもやらんぞ。自分で取れ」

赤城「ハ、ハイ」



提督「随分すごい勢いで食べてるけどなお前ら。暁たちのぶんも考えろよ」

赤城と加賀が手を止めた。

赤城「ぐっ・・・!ここは1つ、我慢するしかないようですね・・・!」

加賀「そうですね・・・」

提督「とりあえずお前ら、手、とめろよ」





加賀「ところで提督、その髪の毛、どうしたんですか?染めたんですか?」

提督「は?地毛だよ」

赤城&加賀「「は?」」

提督「は?じゃないよ」

五月雨「提督!提督、彼女たちには何も説明してないですよ!」

小声で五月雨が指摘する。

提督「そうだったっけ?」

五月雨が頷く。

提督「いやぁすまんすまん。実はかくかくしかじかでな・・・」

赤城「ほぅ・・・」

提督「じろじろ見られるのもあんまりいい気分じゃない・・・」

そこで、間宮さんが思い出したようにいった。

間宮「そういえばお風呂、わいてますよ」

提督「おお、まじか。じゃすぐはいるわ」

これ幸いとばかりにすぐに提督は食いついた。

今まさに髪の毛に触ろうとしていた赤城が、名残惜しそうに手を眺めていた。




提督「ま、間宮さん?」

間宮「はい?」

提督「その、さすがに脱衣場まで一緒ってのはちょっと・・・」

間宮さんの顔がみるみるうちに真っ赤に染まった。

間宮「す、す、すすいませんでした!」

間宮「か、勘違いされちゃったかな・・・?」
   
間宮「でもなぁ、艦娘ならまだしも、私みたいな脇役と恋仲になったなんて話、聞いたことないなぁ・・・」

急いで閉めた脱衣場のドアにもたれながら、独り呟く。

提督「なんか言いましたか?」

聞こえていた。

間宮「あっ、いっ、いえ、なんでもないです」

移動。舞鶴鎮守府。提督私室。

提督「よし、寝よう」

五月雨「はい!」

提督「まるで一緒に寝ようとでもするかのようだな」

提督「お前にはお前の部屋があるだろ」

提督「まさか、独りで寝れないとか言い出すんじゃないだろうな?」

五月雨は俯いて何も言わなかった。

提督「(図星かよ)」

提督「わかったよ。一緒に寝るのはいいけど、涼月がでるまでだからな?」

五月雨「はい!」


経過。舞鶴鎮守府。提督私室。午前六時。

提督「(五月雨はまだ寝てるか)」

顔を洗ったあと、なんとなくボーッとしていると、五月雨が起き出してきた。

提督「起こしちゃったか」

五月雨「いえ、秘書ですから、同じ時間に起きないと・・・」

目を擦りながら洗面所へ向かっていった。

提督「眠かったらまだ寝てていいんだぞ」

五月雨「だから大丈夫ですって・・・。それより、カーテン開けましょうよ」

言うが早いか早速開けようとする。

提督「ちょっと待ってくれさみd」

もはや遅かった。もともと光に極端に弱い目に、強烈な朝日が射し込んだ。

とっさに目を閉じるが、もう遅かった。あまりの痛みにうずくまる。

提督「五月雨・・・、カーテンを、カーテンを閉じてくれ・・・」

声も消え入りそうだ。

自分がしてしまったことの大変さに気づいた五月雨があわてて閉めた。

五月雨「すい、すいません提督!すいません・・・!」

すでに涙声だった。

提督「少し経てばすぐなおる。
   だから泣くなって、それでも秘書かよ」

無理に笑おうとするが、うまくいかなかった。

五月雨「私、どうすれば?」

提督「そうだな。洗面器のそばに、サングラスがあるだろう?それを取ってくれ」

五月雨「はい!」

急ぐ足音が聞こえる。

提督「あと二・三時間横になれば治るから。食堂に行っておいで。ただの体調不良で寝てるって言ってくるんだ」

五月雨「そんな、でも「いいから、もう六時半だぞ。みんな待ってる」

五月雨「はい・・・」

せめて、この鎮守府だけでもいい子になろうと思ったのに。

そんな五月雨の頭を、提督が撫でた。

泣き出しそうになりながらも、部屋を出る。

ちと休憩。

予測変換のおバカさんですね、はい。

今夜大規模投下。

すまぬ、リアルに残業三昧だったんですww言い訳はいらないですか、そうですよね。すいませんでした。



移動。舞鶴鎮守府。食堂内。(提督は私室だよ!)

暁「司令官が体調不良なの!?」

響「あとで見に行こうか」

電「みんなでいけば、きっと司令官さんも元気になるのです」

雷「それにしても元気ないわね?五月雨?
  そんなんじゃだめよ!秘書なんだから!」

五月雨「うん」

どうやら、上手く誤魔化せたようだ。

加賀「赤城さん、がっつきすぎです。曲がりなりにも女性なのに・・・・」

加賀と赤城はご飯に夢中だった。

間宮「どうしたの?もしかして風邪、移っちゃったんじゃないの?」

五月雨「い、いえ!別にそんなんじゃありませんよ!」

間宮「そ、そう?
    (一緒に寝てたことでからかってみようと思ってたのに)」


間宮「(でもやっぱり心配かな)」

間宮「じゃあ私、見てきますから。みんなで食べててくださいね」

五月雨「はい(私もいきたいけど、ここは間宮さんに任せた方がいいのかな)」



移動。舞鶴鎮守府。提督私室。

間宮「失礼しまーす」

提督「えっと・・・、間宮、さんですか?」

まだ光の残像が残ってるせいで全然見えない。

間宮「はい。提督さんが体調を崩されたと聞いたので」

提督「(よかった・・・、ちゃんと言ってくれたんだな、五月雨)」

間宮「それはそうと提督?」

提督「どうしました?」

間宮「窓、開けたほうがいいと思うんですけど。なんだか薄暗いですよ。これじゃあ気分も暗いままです」

提督「この際だし、間宮さんにも話そうかな」

間宮「はい?」

提督「自分の体質のことは前に話しましたよね」

間宮「色素異常のお話ですか?」

提督「そうです。色素が足りないってことは、メラニンも足りてないってことなんですよね、ほら、紫外線から皮膚を守るやつ。
   それって、目も例外じゃないんです。
   だから朝はカーテンあけないようにしてるんですよ」

間宮「まさか-------」

提督「五月雨を責めないであげてください。
   一緒に寝る前にそういうことも説明したんですけど、寝起きでしたから、しょうがないんですよ」

提督「目のほうはもうほぼ大丈夫なんですけどね。あと30分はこうしておこうとおもいます」

間宮「安心してくださいね。私はここにいますから」

提督「なんだか恥かしいですね」

間宮「なんでです?」

提督「そりゃあ間宮さんだって立派な女性なんですから・・・。
   自分の部屋にあげてるとおもうと、ね?」

間宮「り、立派、ですか?」

提督「そりゃあもう」

間宮「ありがとうございます・・・」

間宮さんが顔を赤くしていると、扉がノックされた。

提督「おう、入っていいぞ」

響「失礼するよ」

雷「やっぱり司令官はわたしがいないとだめじゃない!」

電「失礼するのです」

暁「司令官、大丈夫?」

提督「こんなに心配してもらえるとは。提督冥利に尽きるってやつだな」

扉の前で、水色の髪の毛がチラとみえた気がした。

提督「ほら、五月雨も来いよ。秘書なんだから」

すると、

五月雨「失礼します!」

心なしか目を潤ませた五月雨が、大きな声を上げて入ってきた。

提督「ほら、おいで」

自分のベッドのそばの脇に腰掛けるよう促す。

五月雨「はい」

提督「もう俺はおこってないぞ。そんなに落ち込まなくてもいいんだ。
   ・・・ただまぁ、次からはないようにしてほしいけどな」

電「何かあったの?」

提督「全員来てから話せばよかったな・・・。
   お前らにも話しておこうか­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­---------」


響「ふーん・・・。そんなの聞いたこと無いけど」

提督「まぁ俺が気をつければいいだけの話なんだ、お前らはあんま気にせんでいい」

五月雨「私はがんばりますよ!」

提督「おうおう、頼むよ」

そういいながら頭をなでる。

提督「っと、お前らが着てくれたからすっかり調子もよくなったようだ。
    だいぶ遅刻しちゃったが、朝食でも食べに行くかね」

間宮「あ、ごめんなさい。持ってくればよかったんですけど」

提督「お気になさらずお気になさらず」

移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「やっぱまだ食ってたかあいつら・・・。全く、自分以外がいないのにどうして気付かないかね・・・」

赤城「おほかったでふねていとふ。はにやっへはんでふか?」

加賀「食べながら話さないでください赤城さん」

提督「なんでもねぇよ・・・。ちょっと寝坊しただけだ」

赤城「へー、ていとふもそういうほほあるんへふね」

提督「(激オコスティックファイナリアリティプンプンドリーム)
   さてと・・・、食べるかね」

まるで当然であるかのようにすとんと間宮さんが隣に座る。

提督「いただきまーす」

間宮「はい、提督さん、どうぞ」

満面の笑みである。

提督「ん?いや、一人で食べますって」

間宮「本当に一人で食べられるんですか?」

提督「え?」

間宮「もう、彼女たちはきづいてないみたいですけど。すぐ後ろを歩いてたんですから、私にはバレバレですよ。足元もふらついてましたし。
   まだよく見えてないんでしょう?」

提督「いやぁはっは、間宮さんにゃかなわんな・・・」

間宮「ほら、今朝はパンですから。口開てくださーい」

提督「いやパンならなおさら一人でムグッ!?」


電「はわわわわ、なんだか夫婦みたい、なのです!」

五月雨「なんか複雑な気分だなぁ・・・」

暁「どうかしたの?」

五月雨「う、ううん。なんでもないです!」




提督「さてと、ちゃんと体調も元通りになった」

ちゃんと治った。

提督「ここに来てもらったのは他でもない。
   暁・響・電・雷・五月雨、それぞれの能力を測ろうと思う」

五月雨「どうやって?」

提督「まぁそう急ぐな我が秘書官よ。
   この度、他の鎮守府に頼み込んでな、お前らに見合った錬度の艦娘を派遣してもらったんだ」

響「つまり?」

提督「つまり、演習だ」

雷「な、なんか演習って聞くと緊張するわね・・・」

五月雨「でも空母の方たちはどうするんですか?」

提督「それはまた後日行う。今日は駆逐艦のみの測定だ」

五月雨「わかりました」

提督「開始は相手の都合上、急遽二時間後に決まった。ちょっと急だが、やってくれるな?」

皆「はい(なのです)!」

移動。舞鶴鎮守府。会議室。

菊月「私が菊月だ...」

長月「長月だ」

文月「文月っていうの~!」

皐月「皐月だよっ!」

望月「望月で~~~す」

相手提督「よろしく頼む」


五月雨「今回はよろしくお願いします」

長月「五月雨、あなたが旗艦だな?
   こっちは私、長月が旗艦だ。よろしく頼む」



相手提督「今回はよろしくな」

提督「すみません、無理言ってしまって。お手柔らかにお願いしますね」

相手提督「教え子に負けるわけにはいかないけどな」

提督「こっちこそ、もう卒業したんですよ。いつまでも教え子じゃいられません」

相手提督「そうそう、別に俺は駆逐艦しかよこさないなんて、一言も言ってないからな」

提督「なっ!?」


雷「ねぇ、あの人ってこの前、沖ノ島海域を制覇した英雄とか呼ばれてる人じゃない?」

電「そうなのです?」

響「今回は一筋縄ではいかないかもしれないね・・・」


移動。舞鶴鎮守府。地下。大規模演習場。

提督「(ここに来るのは初めてだが、でかすぎる。向こう側まで見えないぞ・・・。リアルに島まで配置しやがって。
    日本に四つしかないというだけはあるな。ここに配属されるってのはもしかして、意外に名誉なことだったりするのかな?)」

そんなことを思うが、頭を振って思考を整理する。

提督「うしうし。
    備はと整ったかぁお前ら」

皆「大丈夫(なの)です!」


ちと休憩。

移動。舞鶴鎮守府。会議室。

菊月「私が菊月だ」

長月「長月だ」

文月「文月っていうの~!」

皐月「皐月だよっ!」

望月「望月で~~~す」


五月雨「今回はよろしくお願いします」

長月「五月雨、あなたが旗艦だな?
    こっちは私、長月が旗艦だ。よろしく頼むぞ」


相手提督「今回はよろしくな」

提督「すみません、無理言ってしまって。お手柔らかに頼みますよ」

相手提督「教え子に負けるわけにはいかないけどな」

提督「こっちこそ、もう卒業したんですよ。いつまでも教え子じゃいられません」

相手提督「そうそう、別に俺は駆逐艦しかよこさないなんて、一言も言ってないからな」

提督「なっ!?」


雷「ねぇ、あの人ってこの前、沖ノ島海域を制覇した英雄とか呼ばれてる人じゃない?」

電「そうなのです?」

響「今回は一筋縄ではいかないかもしれないね・・・」


移動。舞鶴鎮守府。地下。大規模演習場。

提督「(ここに来るのは初めてだが、でかすぎる。向こう側まで見えないぞ・・・。リアルに島まで配置しやがって。
    日本に四つしかないというだけはあるな。ここに配属されるってのはもしかして、意外に名誉なことだったりするのかな?)」

そんなことを思うが、頭を振って思考を整理する。

提督「うしうし。
    備はと整ったかぁお前ら」

皆「大丈夫(なの)です!」

暁「演習用の艤装・・・、なんだかしっくりこない」

提督「全ては妖精さんが作ってくれたものだ。不良はないだろ。
   まぁ、慣れるんだ」

暁「はーい」

移動。舞鶴鎮守府。司令室。(隣には観戦室)。

提督「練習は本番のように、本番は練習のように、だ!」

提督「(落ち着けぇ俺・・・。落ち着くんだ・・・)
    

提督「ひぃ、ふぅ、、みぃ・・・。え?
    よし」

提督「各員、単縦陣に就け!
    敵を発見し次第報告せよ!」 

五月雨「(いつもとはぜんぜん違う提督です。でもなんか、これだとやる気が出てきました!)」







五月雨「敵艦目視確認、数、五!一時の方向!」

響「っ!?もう撃ってくるのか!」

こちらがまだ構え終わらないうちに敵の砲塔が炎を噴いた。

提督「大丈夫か!?」

五月雨「だいぶ手前に落ちました!全員被弾なし!」

提督「よかった・・・」

提督「(五人か、あのジジイ、思わせぶりなこと言いやがって・・・。
    とはいえ、回り込んでは来ないようだな・・・。どう出るつもりだ・・・?)」

提督「各員、砲雷撃戦用意!」

皆「よし!」

提督「撃ぇ!」

五人の演習用艤装に装備された12.7cm連装砲が一斉に火を噴く。装填されているのは実弾ではない。ゴム弾が弧を描いて飛んでいく。

無線越しに指令を出しているとはいえ、遠く離れていても聞こえる火薬の炸裂音に思わず耳をふさぎたくなる。

提督「弾着は!?」

五月雨「遠すぎます!全弾外れました!」

提督「砲撃開始はあっちのほうが先だ!次はもっと精密なのが来るぞ!」

言うが早いか、

電「きゃあっ!?」

電に着弾した。

艤装に内蔵された損害判定を計算する機構が、三つある砲搭のうち、一つが使えなくなったことを告げる。

提督「構わん!目標!敵全駆逐艦!撃ぇ!」

再び轟音。

五月雨「暁、響による砲撃の弾着を確認!すごい!敵、二人無力化確認!」

暁「やっぱり暁が一番よ!」

響「恥ずかしいな・・・」

提督「二人とも、よくやってくれた」

そこで、先ほどの相手提督との会話を思い出す。

提督「(そういえばあの人、別に五人しかよこさないとも言ってないぞ・・・。
    とは言え、さ、さすがにそこまではしない、よな・・・?)」

そうは思っていても・・・、胸の中を不安が満たす。

提督「敵を二人無力化したといってもまだ残っている!油断はするな!敵がいつ何を仕掛けてくるかわかったものじゃないぞ!」

暁「何か来るの!?」

提督「わからない、そこがわからないんだ!とにかく、警戒を怠るな!」

五月雨「あっ!」

提督「どうした!?

五月雨「敵艦見失いました!島の影に退避したようです!」

刹那、

暁「何!?」

暁のエンジンの速力が大幅に低下した。

暁「・・・!司令官、魚雷よ!
  なんで!?潜水艦がいる!こんなの聞いてない!」

提督「潜水艦だと・・・!」

提督「クソジジイ、なんちゅう伏兵を用意してやがる!そこまでして勝ちたいか!」

提督「(にしても卑怯だぞあのジジイ!さっき望遠鏡で見えた水泡で判断するなら潜水艦は二人・・・。総数七人いることになる!)」

ただただ、航跡が見えない酸素魚雷でないことを祈ることしかできない。

雷「見えたわ!」

だがそれは杞憂だったようだ。

提督「回避するんだ!」

叫びながら、観戦席に居る加賀ではなく赤城を大声で呼ぶ。

回避が遅すぎたのか、

響「くっ・・・!」

続いて、響のエンジンも機能不全に陥ってしまう。

提督「暁、響!転進!現存する機関の最大速力で退避せよ!」

暁・響「了解!」



提督のそばに、赤城が走って現れた。

赤城「どうしたんですか?提督?今日は確か駆逐艦だけの­------」

提督「さすがの俺もイラついてんぜ」

赤城「は?」

提督「赤城、出てくれ。彼女らの援護をするんだ」

赤城「でも「頼む」

赤城「わ、わかりました」

赤城「一航戦赤城、出ます!」



残され、魚雷を回避することしかできない電・雷・五月雨の頭上を、突如艦載機が通過していった。

電「あれは・・・?」

五月雨「提督ってば・・・、全然そんな説明無かったじゃないですか!」

提督「ははっ、悪かったな!」

艦載機から次々と海中へ当てずっぽうで魚雷が投下されていく。

提督「無茶言って悪い、艦載爆撃機はまだ配備が間に合ってないんだ」

赤城「いいですよ、そんなこと!下手な鉄砲、数打ちゃ当たる、ですから!」

彼女たちの後方で弓を番えながら赤城は興奮したように言った。



第三波目の雷撃でようやく、潜水艦の浮上、停止を確認した。



伊58「うぅ・・・、魚雷の弾幕なんて聞いたことないでち・・・」

伊19「ここはイクの負けなのね・・・」

相手提督「このやろう、やってくれるじゃないか・・・」



提督「赤城、どうだ?偵察のほうは」

赤城「艦攻はこんな使いかたしませんよ・・・」

赤城「って!大変です!六時の方向、敵、三です!回り込まれてます!」

提督「俺としたことが、潜水艦にうつつを抜かしすぎたか!各員、聞こえたな!」

皆「はい(なのです)!」



五月雨「さっきと大体同じぐらいの距離ね・・・。
    外す気がしませんよ!」

提督「撃ぇ!」

相手よりもこちらのほうが砲撃のタイミングは早かった。



響「どうかな?」

電「なのです!」

五月雨「全弾着弾!敵、すべての無力化を確認しました!」

提督「(どんなもんでぇ!)」

提督「よくやった、各員、帰投せよ!」

無線での会話なり。

相手提督「ありゃあ卑怯じゃないか!空母を出すなんて聞いてないぞ!」

提督「確かに規定はしてませんでしたけど、潜水艦を二人も出してきて・・・」

提督「総数七人もだしてきたあなたに言われたくは無いですよ。こちらはそれでも六人でやったんです。感謝してほしいぐらいです」

相手提督「口もずいぶん達者になったじゃあないかこの野郎」
       
相手提督「ふぅ・・・、まぁなにはともあれ、見事だった。さしもの私も彼女らの砲撃の精度には驚かされたよ。最初に会敵した時とある程度同じ距離であるとはいえ、第一射で止めまで刺されるとは」

提督「俺も驚いてます」


相手提督「・・・そういえばお前、サングラス、かけなくてもいいのか?」

提督「え?あぁ、これ、妖精さんに作ってもらったんですよ。俺の場合気にするのは虹彩と瞳だけなんで、コンタクトでありながらサングラスってのを」

相手提督「妖精、おそるべし?」

提督「おそるべし」

どちらからともなく、笑い出してしまった。

移動。舞鶴鎮守府。地下。演習場控え室。

提督「よくやったじゃないか!ええ!?」

膝を折り、駆逐艦達を全員いっぺんに抱きしめながら彼はそういった。

響「司令官、さすがにちょっと苦しいよ・・・」

提督「おおっと、すまんな」

響「って、そんな、泣くことないじゃないか。本気で怒ってるわけじゃ・・・」

提督「はっは、違うさ。まさか勝てるとは思わなくってね。嬉し涙ってやつだ」

袖で涙をぬぐう。

と、そこへ、

赤城「あの・・・提督?」

赤城が静かに声をかけてきた。

提督「なんだ、夕飯はまだだぞ」

赤城「違いますよ!」

提督「じゃなんなんだ?」

相変わらず駆逐艦らを抱きしめながら首をかしげる。

赤城「私は、ほめてもらえないのでしょうか?」

まさかそんなことを言い出すとは思いもしなかった。

提督「・・・。いや、こういうことするのはだめかなと思って」

赤城「少なくとも私は気にしませんよ」

提督「そうかいそうかい」

落ち着いたトーンになって、立ち上がると照れた風も無く言った。

提督「よくやってくれた。爆雷も装備してなかったあいつらじゃあ潜水艦を無力はできなかった。赤城のおかげだよ」

赤城の頭をなでた。

赤城「は、はい・・・」

顔が真っ赤だった。

提督「(・・・加賀がめっちゃ見てる)」

「普通は」六人までしか出せないんだから仕方ないじゃないか・・・。

提督「(どっちかっていうと赤城のほうが声をかけやすかったなんて言えない)」

提督「さ!もういくぞ!まだ五時だが、もう腹もすいたろう!」

途端、加賀の目がキラキラしはじめる。

提督「さっきは夕飯はまだとか言ったけど。間宮さんに頼んで、今夜は盛大なのにしてもらった。今夜は食べるぞー!」

控え室に歓声が響き渡った。

そのまま退出しようとする相手提督と艦娘たちにも声をかける。

提督「先生もどうです?久しぶりに飲みましょうよ。彼女らも一緒に食べたいって言ってますよ。

提督「あ、そうだ!もういっそあなたの鎮守府に居る艦娘も呼んでしまいしょうよ」

相手提督「うーん実際とても申し訳ないがお前から誘われてしまったんじゃあ断るわけにも行かないなよしじゃあ一緒に食べるとしよう。よし、長月」

長月「わかった。すぐに呼んでくる」

提督「・・・ロリコンが」

相手提督「おんおん?何か言ったか?おん?」

提督「いえ、何でもないです」

長月と相手提督の指にはめられた指輪を見つけてしまった。

提督「(このジジイ、長月みたいなまだ小さい女の子とケッコンしてんのか。こんなやつが先生だったとはなぁ・・・)」

相手提督「何かよからぬことを考えてないか?」

提督「そんなわけないですよ。全く、何を言うんですか」

出てきてほしい艦娘安価(大型艦除く)。
連投回数無制限。安価矢印↓15

↑あ、ちなみに相手提督のとこにいる艦娘を募集してます。
安価踏んじゃったらした。

いくらでも連投したっていいんだぜ!連続取得もいいんだぜ!安価下。

ちょいとレス稼ぎの様相を呈してきそうなので安価終了。ありがとうございました。

なお、すべてが今すぐ出てくるわけではありません。
今後ストーリーが進む上で出てきます。

主は現在中部海峡にさしかかっておりますが、深刻な資材難のため大型建造ができておりません。

それと、ここで切ってしまったせいですね、このあとしっかり長月に対する勝因等の会話があって、できあがっております。何卒、お待ちくださいますよう。

移動。舞鶴鎮守府。宴会会場。(以下、相手提督=先生)

提督「食堂を使わない・・・だと・・・」

食堂ほどの広さはないが、優に30人以上は入りそうな会場を見渡した。

五月雨「そうですね・・・、ていうか舞鶴鎮守府、なにもかもが規格外です・・・」

提督「あぁ・・・」

二人して口をあけていると、

先生「おおい、呼んできたぞー」

後ろからぞろぞろと艦娘がついてくる。

加賀がその中にいた瑞鶴をめざとく発見した。

加賀「・・・」

提督「ん?どうかしたのか?」

加賀「いえ、なんでもありません」

向こうでは白い髪をもった娘が加賀と睨み合っている娘を慰めている。

提督「?」

??「おょ?あなたが噂の提督ですかぁ?」

右側から突然顔を出てくる。

提督「びっくりさせんなよ・・・」

??「白い髪の毛・・・、白い肌・・・、おぉー、噂どおりです!」

提督「はぁ・・・?」

??「おっと!自己紹介が遅れましたね!睦月です!」

提督「睦月・・・な。うん、わかった」

睦月「はい!」

提督「(なんか調子狂うなぁ)」

利根「ふむ!そなたが我が提督率いる艦隊を撃破したといわれる提督じゃな!我輩は利根と申すぞ!」

左側からの奇襲。

提督「マジで心臓とまるわ」

筑摩「ちょっ、と、利根姉さん?失礼ですよ。
   すいません、本当に。あ、私は筑摩と申します」

提督「気にしないでいいよ。ただ、こういう場にあんまり慣れてなくてね・・・」

五月雨「提督!」

なんで白いのww
作者ですのであしからず。

提督「おーう五月雨、どうしたどうした」

五月雨「もうみんな待ってるよ!提督が主催者なんだから!ほら、急いで!」

提督「そういえばそうだった、と、そんな引っ張ったら転ぶだろ!」

コケそうになりながら宴会の一番奥に設置されたステージに上がる。

提督「マイクテスト・・・」

提督「えー・・・、今回は、急な私の招待に応じてくださり、わざわざご足労頂いて、ありがとうございます。間宮さんの料理を手伝ってくださった高翌雄さん、矢矧さん、鈴谷さんには感謝申し上げます。
   前置きが長くなりましたね」

提督「それではみなさん、乾杯!」

皆「乾杯!」

宴会場が壊れんばかりの大音響であった。


先生「ほらほら、もっと飲めよ」

提督「いくら俺が酒に強くても、さすがに久しぶりですから・・・、ほどほどにしてくださいよ・・・」

提督「ていうか、彼女らのところにいかなくていいんですか?」

先生「大丈夫だろ」

提督「行ってあげたらどうですか?提督がそばにいれば彼女たちもうれしいと思いますよ」

先生「そうやって私を遠ざけようとしてるんだろ?」

提督「してませんから!早く行ってください!」

先生「最近の若者は怖い怖い。今行くからそんなに手を振るな」

提督「はぁ・・・」

提督「五月雨もなんとか仲良くやれてるようで何より。いいねぇ、こういうの」

と、そこへ、

間宮「もうお疲れなんですか?」

間宮さんが隣に腰を下ろした。

提督「いやぁ、ね」

苦笑しながら答えた。

提督「それよりも、こんな量の料理、間宮さん、ありがとうございます。
   もう頭があがりませんよ」

間宮「いえいえ、料理を作ることが私の仕事ですから」

おしぼりを拾い上げると、自然な手つきで彼は間宮さんの額の汗をふき取った。

間宮「え?」

提督「あっ、もしかして嫌でしたか?」

間宮「そういうんじゃ、ないですけど・・・」

間宮「わざとですか?」

提督「えっ、何がですか?」

間宮「もう、なんでもないです!さ、早く食べてください!ほら」

提督「!?
   さすがに一人で食べますよ!勘弁してください!」

間宮さんから箸を取ると、食べ始めた。

間宮「ふふ」

間宮「(可愛いなぁ・・・)」

一人で言って一人で赤面してしまった。

間宮さんがデザートの準備をしてきますといって席を離れると、今度は加賀が座った。

提督「おう、どうした加賀」

加賀「いえ、一緒にお酒でもと思いまして」

提督「赤城はどうした?」

加賀「誘ったんですけど・・・、顔を赤くしてきてくれませんでした。何かしたのですか?」

提督「(こいつ見てたくせによく言うよ・・・)
    知らんなぁ、いいから呼んでこいって」

加賀「はい」

一瞬睨まれた気がしたが、気にしないことにした。

赤城「失礼します・・・」

提督「お、来たか。何を遠慮するんだよ、ほら、お酒、飲むんだろ?」

加賀「そうですよ、赤城さん。遠慮することなんてないんです」

赤城「で、ですよね!私、食べますから!」

提督「おうおう、それでいいんだそれで。ほれ、加賀も飲みたまえ」

加賀「いただきます」

三人で注ぎながら、提督は酔った勢いで自身の昔話を披露しはじめた。

今までの恋の数々、学校時代の友人との思い出話、語れば語るほどでてきた。


と、忘れかけていたことを思い出す。

提督「そういや、そろそろ間宮さんらが作ってくれたデザートが運ばれてくる頃合じゃないか?」

赤城「本当ですか!?」

加賀「さすがに気分が高翌揚します」

提督「(こうも単純なのも考え物だな・・・)」






間宮「今回は演習とは関係なく、歓迎会を想定してケーキを作ってみました!どうぞ、召し上がってください!」

提督「ミルフィーユだと・・・、甘すぎず薄すぎもしない、そしてこの食感!
    さすがですよ間宮さん」

間宮「ありがとうございます」

提督「さて・・・、そろそろ駆逐艦のやつらのとこにいくかね」

お皿をもって立ち上がる。

五月雨「でね!提督がさ・・・」

提督「とーう、お隣失礼するよー」

五月雨「あっ、提督!遅かったじゃないですかぁ!」

提督「ワルカッタナー」

五月雨「むむむ・・・」

五月雨のコップから水を一口飲むと、

提督「ふむ・・・」

なんてため息をついてみる。

五月雨「どうしたんですか?」

提督「いやさ、それにしても、よくまぁあんなやつらに勝てたものだと思って。今でもまだ信じられんよ」

提督「長月にいたっては提督と結婚することが許されるまでの錬度を大本営に認めてもらえるほどだったのに」

五月雨「というよりも、長月さん以外の娘たち、本当に実戦経験がないような感じばかりだったじゃないですか!」

提督「そりゃまぁ、お前らと同じレベルでっていう要請だったし。
    五月雨に関しては元帥殿の下で任務に当たっているほどだから、それを見越した先生は長月を寄越したのだろ」

暁「ひょっとして提督?」

提督「んー?」

暁「私たちのこと、もしかしてまだ実戦経験もないような子って思ってるの?」

提督「え?違うのか?」

電「話すと少し長くなるのです」

提督「ん?」

響「初めて提督と会って、二週間後ぐらいかな?暁が司令官と会いたいとか言い出して」

途端に暁が顔を真っ赤にする。

暁「わーわーわー!」

暁の口を電がふさぐ。

電「静かにするのです!」

暁「おへぇひゃんにはいひへほのはいほははひよ!?(お姉ちゃんに対してその態度は何よ!?)」

響「それからあらゆる鎮守府を転々としたのさ。
  さすがに入ってすぐ出て行くことは許されなくてね・・・、大体2年はいなきゃいけなかった」

響「提督求めて三千里・・・。
  今年になって、暁がようやく見つけたってわけさ」

提督「俺が暁と会ってまた会うまでって、少なくとも5年以上はあいてるぞ」

響「まぁつまり暁が言いたいのは「私たちもそれなりに実線を経験してるってことよ!」

暁「まったく、司令官は私たちを過小評価しすぎなんだから」

提督「そう、だったのか」

提督「何か、悪い事したかな。すまん」

電「そんな!司令官さんが謝る必要はないのです!」

提督「ありがとうな」

ポンポンと電の頭をなでる。


提督「そういえば・・、雷は?」

電「あそこで寝てるのです」

指差した先にはケーキも食べずに座布団に横になっている雷がいた。

提督「思いもよらないところで寝顔を拝めたな」

ニヤついてしまう。

電「何か言ったのです?」

提督「いいや、なんでもない。とりあえず、風邪をひかれても困るし、俺はこいつを部屋までつれていくけど。
   お前らはどうする?」

響「どうしようか?」

暁「んー、私たちも一緒にいきましょ」

電「なのです」

提督は雷を抱き上げると、おんぶした。

提督「行こうか」

そのまま顔を先生に向けると、

提督「すいません先生!すぐ戻りますから!」

先生「わかったよー」

赤ら顔の先生が手を振って答える。

提督「(飲みまくってるな・・・)」

創作意欲を喪失していました。なんたる倦怠期。
でも復活です。

移動中。舞鶴鎮守府。廊下。

暁「そういえば司令官」

提督「どうした?」

暁「さっき赤城さんたちと何の話ししてたの?」

提督「聞こえてたか・・・」

暁「だって全然声小さくなかったし」

提督「マジか・・・」

提督「ちょっとした俺の昔話だよ。そんな改めて話すようなことじゃない」

響「私も聞きたかったな」

提督「・・・また今度な」


提督「あ、そういえば、今日って何日?」

電「確か、八月の十一日、なのです」

提督「(今年もそろそろ、両親の命日だな・・・)」

父の最期の声を思い出した。

提督「あんたのせいで、俺まで死ぬのが怖くなったよ・・・」

なんとなく思い出しただけで目頭が熱くなる。

暁「え?
  って、どうしたの司令官!?」

すでに泣いてしまっているのは自覚していた。
-----なんと涙もろい事か。これじゃあ威厳もへったくれもない。もう何年たつと思ってる。

自分を叱責してもなお、涙はとまらなかった。

響や電も同様に心配そうに顔を覗き込む中、苦し紛れに言った。

提督「お前らは、気にしなくて良いんだ」

響「話してくれないのかい?」

提督「今度、またみんな揃った時にな」

話すつもりはなかった。

響「わかった」

無言で響の頭をなでる。

移動。

提督「部屋、ここだよな?」

暁「もう、着いたんだ」

部屋に入って雷を横たえると、狙ったように寝言を言った。

雷「やっぱり、私がいないとだめじゃない・・・」

引っ込みかけた涙が再び溢れてきそうになるのを必死にこらえる。

提督「ははっ、お前らがいないと、俺はもうだめかもしれんな」

帽子のつばで目を隠しながら、背中に刺さる視線を無視して足早に部屋を出て行った。

移動。舞鶴鎮守府。宴会場前。

便所に行って顔を洗った後、宴会場の前でもう一度目元を袖でぬぐった。

襖を開けて中に入ると、五月雨が駆け寄ってきた。

提督「悪い、待たせたな」

五月雨「ううん、いいんです。
    それより、目、赤いけどどうしたんですか?」

もう少し間を空けたほうがよかったか。

提督「いや、特になにもなかったけどな」

努めて平静を装う。

提督「ケーキ、食べたか?」

五月雨「まだです」

提督「そっか、じゃあ一緒に食べよう」

五月雨「はい!」



五月雨「はい、提督」

提督「待てよ、そりゃあお前の分だろ?俺はもう食べたんだからいいよ」

五月雨「いいから!」

提督「恥ずかしいんだよこういうの・・・」

ぶつぶつ言いながらおとなしく従う。

五月雨「おいしいですか?」

提督「お前も手伝ったんだっけ?」

五月雨「そうです、最初のほうだけですけど」

提督「それは知らなかった。
   ・・・おいしいよ」

五月雨「ありがとうございます」

提督「ほら、口あけろ」

五月雨「そんな、いいですって!」

提督「なんだ、俺の時はあんなに押し付けがましかったのに。
   自分の事となると嫌なのか?」

五月雨「そういうんじゃないですけど!」

提督「ほら早くしろって」

提督「(顔真っ赤どころの騒ぎじゃないなこれは)」

笑いながら、スプーンを動かした。

五月雨がまだ顔真っ赤なまま一人でケーキを食べているのをそのままにして立ち上がる。

先生に目で合図を送った。

提督「えー、今宵もそろそろ閉会の時間です。改めて、お集まりいただいてありがとうございました」

時刻はすでに12時。

その声を皮切りにみなが帰りの支度を始める。


移動。舞鶴鎮守府。正門。

先生「今日は楽しかったよ」

提督「えぇ、私もです」

長月「機会があればまたやりたいな」

五月雨「望むところですよ」

両者ともに握手を交わすと、先生は車の方へ歩いていった。

その後ろを艦娘たちがついていく。

一瞬飲酒運転かと思ったが、どうやら運転手は別に雇っていたらしい。そのまま走り去っていった。

五月雨「静かになりますね」

提督「そういうな五月雨。これからうちの鎮守府の艦娘も増えていくんだから」

五月雨「ですね!」

そこでふと思い出したように、

提督「すまん五月雨。さきに寝ててくれ、俺は間宮さんの手伝いをしてくる」

五月雨「私も行きますよ!行こうと思ってましたし!」

提督「そういってくれると思ってたさ」

移動。舞鶴鎮守府。宴会場傍。厨房。

提督「さすがに多いなこれは・・・」

間宮「ほらほら、頑張ってください!」

提督「はい・・・」





提督「書類仕事のほうがまだマシだったぜ・・・」

五月雨「ですねー・・・」

間宮「お疲れ様です」

くたびれた顔で宴会場に横たわっていると、お茶がさしだされた。

受け取りそうになってハッとする。

提督「いいですって!むしろ休むべきは間宮さんですよ!」

間宮「そうですか?
   じゃあ・・・」

提督「何です?」

間宮「肩でも揉んでくれますか?」

提督「そんなことでよろしいなら、お安い御用です」


間宮「うーん・・・、そこ、いいです」

提督「ここですね?」

間宮「そう、そこです・・・」

提督「(こいつは・・・なかなか)」

経過。舞鶴鎮守府。九月一日。午前。

提督「少々遅くなりすぎたかもしれない」

暁「何が?」

提督「鎮守府近海の哨戒活動だよ」

暁「ふむ・・・」

提督「お前らのことだ、明日出撃でも問題はないだろう。そのための作戦会議として五月雨・暁・響・電・雷に集まってもらったわけなんだけど・・・」

五月雨「空母さんたちはいかないんですか?」

提督「この前の演習でボーキサイトを大量消費したからね・・・、毎月一日の二時頃に物資輸送トラックが来るんだけども」

提督「俺のようなヒヨっこにはまだそんなにわけてもらえないんだ。これからどんどん戦果をあげてかないと」

五月雨「いつまでも元帥さんにお仕えしてたからその時の感覚でした・・・。すいません」

提督「いや、いいんだ」

提督「何にせよ、明日、舞鶴鎮守府正面海域の敵深海棲艦の掃討に出てもらう」

五月雨「はい」

提督「おそらく我が鎮守府に対する偵察艦隊、その向こうに主力艦隊がいるだろう」

提督「俺は滑れないから司令室から無線で指示を飛ばすことになる」

五月雨「わかりました」

提督「話すことは以上。それと、中破した場合はその場の俺の判断に従ってくれ。大破した場合は即時撤退を心がけるように」

五月雨「はい」

提督「万が一動力源を破壊された場合は、担いででも帰還するんだ。一人も削れちゃいけないからね」

電「はい、なのです!」

提督「予想以上に話すことがなかったな・・・。各自、解散、明日の出撃に向けて十分休養をとるように」

皆「わかりました(なのです)!」

皆が敬礼をして部屋を退出していった。

提督「やっぱり、実戦となると緊張するな・・・」

ため息がこぼれた。


翌日。舞鶴鎮守府。10:00。

提督「昨日は特になにも事故がなかったようでなにより」

提督「予定通り出撃してもらう、準備はできたか?」

すでに艦娘は港に出ており、提督は司令室にいた。

五月雨「無線、感度良好です」

提督「あまり無駄だまを撃つわけには行かない。射撃管制を俺が取るに当たって、本作戦においては五月雨、暁、響、電、雷をそれぞれ一番、二番、三番、四番、五番と呼ぶことにする」

五月雨「了解です、それでは、出撃します!」

提督「各員、複縦陣を組み、警戒しつつ敵主力艦隊方面へ向け航行せよ」

五月雨「了解です」

いうや否や、水平線に影が見えてくる。

五月雨「敵目視確認、一時の方向、駆逐ハ級です」

皆「了解!」

提督「一番、二番、目標、敵、駆逐ハ級、撃ぇ!」

砲撃音が無線から聞こえてくる。

五月雨「二番、弾着!敵艦、轟沈を確認しました!」

暁「・・・やっぱり暁が一番ってことよね!ね、司令官?」

提督「よくやった、でも油断するなよ」

暁は完全に口元が緩んでいた。

五月雨「ほ、ほら、行きますよ」

悔しいのか、若干ムッとした顔で言った。

五月雨「雨が降ってきましたね・・・、なんだか空も暗くなってきました」

提督「そうか?こっちは全然降ってないけど」

提督「もしかしたら一つ集中豪雨でもくるかもしれない。そうなったら厄介だな・・・。
   万が一、豪雨になったら一度態勢を整えるために引き返してくれ」

五月雨「そんな、私たちならやれます!」

雷「そうよ、司令官!私たちを頼ってもらわなきゃ」

提督「そうも行かないだろう、お前らがいた鎮守府じゃあ電探やら味方艦娘の偵察機やらがいたのかもしれんけど・・・、うちにそんなものはないんだ、すまん」

五月雨「偵察機なしでだって「駄目だといっているんだよ」

提督「豪雨になったら引き返せ、これは命令だ。頼む、俺の気持ちも少しは察してくれ」

五月雨「私たちを信じられないんですか?」

提督「そういうことを言ってるんじゃないだろ・・・・」

口論をしている場合じゃないのに。





そのとき、積乱雲から雷鳴が轟くとともに、

暁「敵艦、目視確認、えっと・・・」

提督「どうした、言え」

暁「敵艦の位置ではすでに雨が降ってるみたいで、よく見えない!」

提督「お前らがいる場所は?」

暁「まだ降っては・・・」

突然、無線機からバケツをひっくり返したような雨音が聞こえてくる。

提督「くそ、敵艦種類がわからないんじゃあだめだ、さっき言ったとおりだ、引き返してくれ」

普段通りの口調で言ったはずが、

五月雨「嫌です!」

五月雨の言葉に、しばらく声が出せなかった。

提督「ど、どうしたっていうんだ、五月雨?」

五月雨「伊達に今までやってきたわけじゃありません!私たちを信じてください」

提督「何を言ってるんだ。万が一にでも敵偵察機に捕捉されでもしたらひとたまりもないんだぞ!」

五月雨「そんなの、戦艦やら空母がでてくるわけじゃないじゃないですか!」

提督「どうしたっていうんだよ、五月雨。冷静に考えてくれ。そういう問題じゃないってことぐらい」

響「信じてくれ」

響まで加勢する。

思わず声を荒らげる。

提督「轟沈でもしたら!元も子もねぇんだぞ!」

一瞬怯んだ様子の五月雨が、

五月雨「轟沈なんかしません!実戦だって経験してるんです、たかが視界不良でやられるなんてことありえません」

提督「他のやつらも何とか言ったらどうなんだ、五月雨に言ってやって」

と、普段大人しい電が遮った。

電「私たちを信じてほしいのです、司令官さん」

提督「それが油断だって言って」

しかし、言葉は届かなかった。





無線が、

切られた。

一気に心の中に不安が押し寄せてくる。

もし、轟沈でもさせれば、俺の責任になるのは間違いがない。命令不行き届きで片付けられ、軍法会議に・・・。

それに無線を切るなんていう横暴がまかり通っていいはずがなかった。

信じてないわけじゃなかった。

彼女らと違って俺は実戦なんて経験したことがないだけなのだ。

ただ怖いだけだった。

祈ることしかできなかった。

そう思っていながらも、彼女らならできるだろうという思いも、多少ならずあったかもしれない。




響「無線を切るなんて、そこまでしなくったってよかったんじゃないかい?」

五月雨「信頼されてないのだけは、嫌なんです」

響「別に司令官は信用してないわけじゃあなかったと思うけど」

そんなことはわかっていた。でも、なんか嫌だった。

言葉を返そうとしたとき、

雷「きゃあっ!?」

五月雨「何が­­-------」

瞬く間に響、暁の装甲が大破した。




「艦娘の生態はいまだに判明していない。

だが、装甲の耐久度と艦娘の生命が密接につながっているのだけは判明している。

体に直接的な外傷は現れない。ただ、装甲が傷つくことはそのまま、生命が削り取られることを意味する。

少破は軽症、中破は重症。

大破は人間で言う、瀕死に値する」

そう、どこかの文献で読んだ気がする。

思い出し時すでに、提督は、司令室にはいなかった。



万が一にでも偵察機に捕捉されたら!

五月雨の脳裏を彼の声がよぎった。

普段はあんな声を荒らげたりはしないのに。

この視界不良で、偵察機による弾着観測でも、離れ業と言ってよかった。

五月雨「ここでやられるわけには!」

電「・・・」

雷「なにしてるのよ!?早く撤退しないと!あんなこと言っといて合わせる顔がないなんて、っそんなこと言ってる場合じゃないのよ!」

雷が五月雨の手を引っ張り、若干パニックに陥っている電が震える腕で気を失った暁を担ぐ。

五月雨「でもっ、でも!」



提督「もっと速度を出せないのか!」

加賀「これで精一杯よ」

赤城「焦る気持ちはわかりますが、今は彼女らの無事を祈るしかありません」

提督の目には涙が浮かんでいた。もっと強く、命令しておけば・・・。



未だに駄々をこねる五月雨の傍を、12.7cm主砲の砲弾が掠めた。

その時ようやく、目が醒めた。

五月雨「(死にたくない・・・)」

電と同様にパニックになりそうになるのをこらえ、無言で、響を抱き上げる。どうやらまだ意識はあるようだった。

五月雨「ごめんなさい・・・」

涙をこぼしながら言った。

響「い、いいんだ・・・。私た、ちも、同じよう、な、もんだよ・・・」

五月雨「ごめんなさい!」

雨粒と同じぐらいの涙だった。

ありったけの全力で撤退しながら、無線の電源を入れる。



無線のイヤホンから空電雑音が聞こえた。

無線の電源が入った。

提督「今そっちに赤城と加賀が向かってる!総員、無事か!?」

五月雨「暁、響、大破です」

思わず怒鳴りつけそうになったが、こんな弱弱しい声を聞いてはなにもできない。

五月雨「・・・」

提督「今は救助を優先するぞ。赤城、加賀、準備はいいか?」

赤城「視界不良のなかでやってくれるかは不安ですけど・・・」

加賀「やるしかないんですね」

赤城「全機、爆装完了しました」

提督「よし、第一次攻撃隊、発艦を許可する」



提督「(これは集中豪雨じゃない、嵐だ)」

雨が降り始めた鎮守府の外を見やる。





荒れる海の上でなんとか姿勢を制御しつつ、弓を射る。

ある程度まで矢が飛ぶと、分裂して艦載機に早変わりする。

赤城「みんな、大丈夫!?」

五月雨「赤城さん・・・、また、助けられちゃいましたね」

笑ってはいなかった。

加賀「手間のかかる子達だわ、本当に」

赤城「そんな微笑みながらじゃあ説得力ないですよ、加賀さん。
   とにかく、さっき提督の言ったとおり、今は救助優先、さっさと撤退して」

五月雨「はい!」

そういう五月雨たちの頭上をいつぞやかの演習場のときのように、艦載機が通過していった。


妖精搭乗員「敵艦、発見。爆撃開始」(以下、搭乗員)

赤城・加賀「了解」

搭乗員「こう風強いんじゃあ狙いも定まらないな・・・」

赤城「がんばって、としか言えないです・・」

搭乗員「言われなくても全力を尽くしますよ」

搭乗員B「高度、2200m、目標への突入ルート、まもなく到達します」

搭乗員「・・・」

搭乗員「全機、爆撃開始ィ!」

瞬間、全機の急降下制動版が目いっぱい開かれ、45度の角度で急降下に入った。

敵の対空砲火が始まり、いくつかの艦載機が火達磨となり墜落していく。

中には風に煽られ再突入を図らざるを得ない機もあった。

妖精は仲間の死を悲しまない。

目標の上空50mに達した艦載機から次々と250kg爆弾が切り離される。





命中率は30%といったところで、損亡率は60%を超えたが、なんとか全敵深海棲艦を沈めることができた。






移動。舞鶴鎮守府。執務室。

五月雨、暁、響、電、雷が一様に顔を俯けて立っていた。

提督「・・・」

無言で前に立ち尽くしていた提督が突然動いた。

しかられるかと彼女らは首をすくめたが、違った。

抱きしめられていた。

提督はただ泣いていた。

提督「無事で良かった」

演習に勝利したときの涙とは違う、悲しさから来るものだった。


彼女らも、提督の体に顔を押し付け、ただ泣いた。

時間経過。

すでに五月雨以外の姿はなかった。

今回のことはすべて五月雨が自分の責任だと言い張って譲らなかったためだ。

提督「上官の命令無視、だな」

五月雨「すいません・・・」

提督「元帥殿に仕えたこともあるという五月雨がやるとは思えないな」

五月雨「・・・」

提督「まして無線の電源を切るとは」

五月雨「・・・すいません」

五月雨の頭に手を載せる。

提督「お前らは戦闘になれていたのかもしれないけど」

提督「俺はまだ新人なんだ。信じてないわけじゃあなかった。理解してくれ」

五月雨「わかってます・・・」

提督「さてと・・・、そう機嫌を直してくれないんじゃあなぁ」

提督は扉に顔を向けると、

提督「おい、もう入ってきていいぞ」

五月雨「え・・・?」

五月雨が顔を上げると、扉の前には笑っている涼風がいた。

涼風「どうしたのさー、そんな落ち込んじゃってさー!」

ずかずかと執務室に入ってくると、五月雨の肩をたたきながら笑う。

五月雨は涼風と提督を交互に見た後、迷うようにしながら、それでも勢いよく涼風に抱きついた。

涼風「って、どうした?まさか、提督、五月雨に何かしたのかい・・・?」

提督「なんもしてねぇよ・・・」


今日はここまで。すいませんでした、俺、頑張ります故。

正規空母二隻で救援

一応鎮守府海域制圧?

ジリ貧だな

気合入れて遠征乙

>>159さんの言う通り、ちょいと資材復活のために少々出撃までインターバルがあります。

その間、やってほしい絡みなどどしどしください。
できれば、今現時点で舞鶴にいる艦娘で。

建造で出しちゃってもいいですが・・・、扶桑さんは除いてくださいね。

おっとみすった、↓5までで。

遠征の合間、空母の訓練に付き合ってる駆逐艦'sもいい

演習用のペイントまみれになった駆逐艦'sを洗ってあげる一航戦

それでは全部書いていきますのでので。
お待ちください。

ここで誤解解きをば。
>>168さん、すまぬ、うちの演習はペイント仕様じゃないのです。

わかった、わかりました!
安価はここまででお願いしますよ!全部取りますから!

翌日。舞鶴鎮守府。食堂内。昼食時。

提督「みんなもう食べ終わったようだな。
   と、そこでだ。思い出させるようで悪い。
   ・・・昨日の鎮守府近海掃討作戦の結果はあまりにもひどすぎた」

響「うん・・・」

提督「怒ってるわけじゃないんだけどね。
   そこで、またという言い方はアレだけど、また先生に演習を申し込むことにした。
   どうやらここの演習場は視界不良での戦闘も再現できるらしいからね」

五月雨「っ、そ、それもまた初耳です」

提督「俺もこの前妖精さんから聞いたばかりだよ。
   演習予定日は五日後、九月七日の午後三時。今度は向こうも容赦するつもりはないそうだ。さすがに前回のようなことはしないとは言ってたけど」


提督「・・・それで、だ」

赤城と加賀のほうを見る。

赤城「ほうひはんへふか?(どうしたんですか?)」

加賀「赤城さん、食べながら話さないでください」

提督「お前らの演習は別に準備しようと思ってたんだが・・・」

加賀「はい」

提督「今回の演習に参加してもらうことになった」

加賀「でもそうすると、七隻になってしまいますが」

提督「いや、電には抜けてもらう」

すると、

電「どうしてなのです!?」

提督「落ち着けって、あとで話すさ」

加賀「確かに、それならば問題はありませんが・・・」

加賀の声をさえぎり、

提督「うん、そういうことだ、赤城、加賀、五月雨、暁、響、雷は怪我や風邪の引くことの無いよう、準備しておいてくれ」

皆(電を除く)「わかりました」

移動。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「単刀直入に言おうか」

電「はい、なのです」

机の上におかれた書類をめくりながら、

提督「君が以前所属していた鎮守府、横須賀鎮守府のことだが」

いったん言葉を切る。

提督「天候状態:濃霧。
   視界不良による作戦失敗ヲ危惧されたが、三十三号対水上電探、及び、零式水上偵察機の併用による着弾観測射撃により、辛   勝ながら、一応の成功を達成した」

報告書を読み上げていく。

電「・・・」

提督「編成:(旗艦)電、如月、睦月、長月、最上、利根」

提督「他の暁とかはいないんだな」

電「・・・し、司令官さんを探すために、散らばっていた時期もあったのです」

提督「そうか・・・」

頷くと、

提督「それはいいとして」

提督「君は、電、電探と偵察機なしでの、この場合は濃霧だが、視界不良での戦闘の危険さを知らないはずが無いんだ」

電「・・・」

提督「なんでだ」

電「・・・」

提督「もう一回聞こうか、なぜ、あの時、作戦中止を進言せず、作戦続行を選択したんだ。お前が言えばみなも従ったろう」

電「ごめんなさい」

提督「謝れなんていってない。聞いてるんだ、質問に答えてくれ」

電「・・・ると思ったんです」

提督「え?」

電「私たちなら、できると思ったんです」

提督「できると思った?俺がさっき危険さを知ってるといったのは、さっきの報告書、最後の記述の、喪失艦娘に如月、睦月の二人   も名前が載ってたからだぞ」

電「・・・」

提督「いや、すまない」

提督「その、ここまで言うつもりは無かった」

提督「少し熱くなってしまった。
   この件については他言しないけど、今回の作戦に対して不問にするわけじゃない」

電「はい・・・」

提督「ともかくも、電はその後の視界不良状態での作戦の中で優秀な戦績を修めている。だから今回の演習からははずさせてもらっ   た。演習の時までには電探及び観測機の開発をすませるよう、妖精さんにも頼んでおいたからね」

電「はい・・・なのです」

提督「ほら、おいで」

膝をぽんぽんと叩く。

電「え・・・?」

突然のことに困惑してしまう。

提督「悪かった。蒸し返されて、いい気分なはずがなかっただろ」


すると、電は無言で抱きついてきた。抱きつくというよりか、膝の上に座っている感じかもしれない。

電「司令官さん」

耳元で囁く。

提督「ん?」

電「謝りたいなら・・・」

電「ご両親のお話を聞かせてほしいのです」

提督「そ、そうだなぁ・・・・」

提督「・・・」

まだこいつらとは一緒になって半年にもなってない。

電「無理はしなくてもいいのです」

これからわだかまりができるぐらいならいっそ話してしまったほうがいいのかもしれない。

提督「いや、話そうか。
   丁度ドアの前にもやつらが集結し始めていることだし」

ドアがぴくっと動いた。

提督「ほら、入ってこいよ」

ゆっくりとドアが開くと、ぞろぞろと入ってきた。間宮さんも。

提督「いったいいつからいたんだ・・・」

五月雨「いえ、みんな今きたばかりですけど」

聞かれてなくてよかった。

提督「なんだ、驚かないのか?」

電「私も、気づいてたのです」

提督「そうかいそうかい」

思わず笑ってしまった。

提督「なに、そんなに長い話にはならないから楽に聞いてくれ。ほんとに短いぞ」


提督「最初から話すわけには行かないから・・・、そう、父さんはただの町工場の社長さんだった。
   
   ある日、確か、特攻兵に志願するとか言い出したんだったかな。思えばもう終戦間際の頃だったか。
    
   それはそれは母さんも俺も必死に止めたよ。
    
   でも父さんは俺らが寝静まったところを狙って家を出て行ってしまった。
    
   もう、探しても意味が無いことはわかっていたんだけどね。よもやどこかで酒でも飲んでいるんじゃないかと血眼になっ   て探した。

   結局、見つからなかったんだけど。
     
   父さんは第155振武隊隊長として、鹿児島の知覧基地に配属されていたってことを知ったのは、戦死報告書が家に届いてか   ら。
     
   母さんはその日からおかしくなってしまった。誰もいないところへ向かって話しかけるようになったんだ。父さんと話を   しているようだった。

   ずいぶん楽しそうにしていたよ・・・。
      
   だけど、目はもう常人のそれじゃあなかった。
      
   そんな生き地獄みたいな生活に転機があったのは玉音放送があった一週間後。
 
   三式戦闘機に特攻隊員として搭乗したがエンジン不良のために引き返さざるを得ず、結局終戦まで整備が間にあわなくて   、幸か不幸か死なずに済んだって言う人が来てね。
      
   父さんは、『我、突入ス』という入電の前に、隊員に無線で言っていたことがあるらしい。
      

   『俺はな、死ぬのが怖い。俺が死んだ後、何事も無かったかのように世界が続いていくのが怖いんだ。意識がなくなると    いうのは、どんな感じなんだろうな』

 
     
    あぁ、あとその後、

      

   『でも、俺が死んで、妻や息子の生活が少しでも平和に近づくなら、本望だ。つまるところ、これが志願理由なんだけど    な』
      
    なんていったんそうだ。

    隊員はそれを伝えたかっただけだって言って、帰って行った。
      
    でもそれを聞いた母さんは号泣してた。俺は、泣かなかった気がする。
      
    別に見捨てられたわけじゃなかったってわかって安心してたのかもしれない。逆に笑ってたぐらいだ。
      
    でも、母さんは翌日、今まで築いてきた財産と遺書を残して首を吊ってしまった」



そして俺は気付く。

やべぇ深海棲艦の出現について何も話してねぇじゃん、と。

ごめんなさい!脳内補完を!

頭の中で思っていただけで文章にしていないとは!なんたる初心者っぷり!

突如出現した出来不明の敵艦。護衛艦では動きが追いつかないため、成行き的に艦娘が奴らと戦うことになった。

許してくらはい・・・。

気を取り直して!


提督「さっき泣かなかったとはいったけど、俺は米軍が憎くないわけじゃない」

皆「・・・」

提督「いつの日か、俺は現れた深海棲艦を米軍の化身のように見るようになった。もしかしたら俺は八つ当たりをしているのかもし   れない」

提督「やつらを一人、また一人と沈ませても、ちっとも俺の傷は癒えやしなかった。
   俺の父さんが突入した艦を知りたかった、けどやつらは深海棲艦だ」

提督「いったい誰が父さんを殺したのか」

提督「せっかく終戦して、父さんの死も含まれ、訪れた平穏な生活をぶち破るやつらが許せない」

提督「だから俺は海軍の提督を志したんだ」

五月雨「・・・。・・・そう、だったんですね」

提督「結局志した理由まで喋ってしまったけど・・・」

そこまで話したところで、彼は途端に微笑むと、

提督「あーーーー、こういう空気になるのがいやだから話したくなかったってのもあるんだぞ、電、感動したのか知らんけど、泣いてないでなんとか言ったらどうなんだ」


電「司令官さんは・・・、昨日、この前の宴会で、泣いてたのです」

五月雨「え?それってどういう「司令官さんは」

電「我慢してるだけ、なのです」

なんのことだ?、なんてばっくれそうになるのをこらえる。

提督「そうかな?」

微笑みながら、まだ泣いている電の頭をなでる。

電「・・・」

誤魔化されてくれたのか、それともただ黙っているだけなのかわからない。

提督「俺がまいた種ではあったけど、とんだことになったな」

提督「それじゃ、解散」

間宮「い、いきなりですね」

提督「解散なんじゃ!」

間宮「・・・」

特に何も言わず退出している所を、

提督「あ、五月雨は秘書だから残って仕事を手伝ってくれ」

涼風「えー!」

提督「ん?じゃあお前も手伝うか?」

涼風「うん!」


提督「(なん・・・だと・・・)」

出て行くほかの娘らを見ながら、ため息をついた。

うるさくなりそうだ。


仕事を開始して30分。

涼風「うあーー!めんどくさいよー!」

五月雨「静かにしようよ・・・」

提督は気にすることなく、淡々と書類に目を通していく。

すると、

提督「あ・・・」

五月雨「どうかしたんですか?」

提督「いや、その、妖精さんからあがってくる資材残量報告書なんだけど・・・」

五月雨「はい」

提督「焦って鎮守府前を掃討しようとしたのがいけなかったのかな・・・」

五月雨「えっと、話が見えないんですけど・・・」

提督「わからないのか?」

五月雨「はい」

提督「資材がないんだ」

五月雨「ど、どれくらいですか?」

提督「ないんだ」

五月雨「え?」

提督「駆逐艦六隻編成で一回出撃して、補給できる分しかない」

提督「ふむ、五月雨、今日は何日だろうか」

五月雨「4日です」

提督「十月一日の資材輸送トラックまで27日・・・」

五月雨「どうしますか?」

五月雨「って」

提督「うん?」

五月雨「演習の時の資材、どうするんですか?」

提督「いってなかったか?」

五月雨「何も聞いてないですよ」

提督「そうだったっけ。いやさ、今度の演習は先生のほうの鎮守府が消費資材を肩代わりしてくれることになってるんだ」

五月雨「はやくいってくださいよ!」

提督「悪かった悪かった。
   ま、なにはともあれ、出撃ができないんじゃあ仕方ないだろう。
   他の娘らには休暇ってことで、伝えておいて」

涼風「えー!早く戦いたいよ!」

まるで小学生の様に足をばたばたさせる。

いや、小学生なのか。

五月雨「まぁまぁ涼風」

五月雨「わかりました、提督」

今日中にまた投下します。


時間経過。

提督「やっと静かになった・・・」

五月雨と涼風は自室に帰しておいた。

時計は午後三時をさしている。

提督「今日の分は終わったしなぁ、寝ようかなぁ」

扉がノックされた。

提督「誰だー」

扉から顔をのぞかせたのは、暁だった。

提督「暁・・・」

作戦でなにかしらダメージをうけていなければいいが。

提督「どうだ、体の調子は」

暁「司令官?」

提督「ん?」

暁「なんで深刻そんな顔してるのよ?」

提督「え?」

提督「いや、だってお前がここにきたのって」

暁「暇だから来たに決まってるじゃない」

提督「なっ!?」

杞憂だったようだ・・・。

暁「司令官っていっつもどんなことしてるの?」

ひょいと適当に紙を持ち上げる。

提督「おい、勝手にとるんじゃないよ。お前らが読んだってわからんさ」

暁「ふむ・・・」

暁「司令官が仕事してるの見てみたい」

提督「見てて面白いことなんかないぞ」

暁「見てみたいの!」

提督「はぁ、もう勝手にしてくれ・・・」

さも当然のように、ひざの上に座った。

提督「うん?」

暁「?」

こちらを振り返りながら上目遣いで見つめる。

思わず言葉に詰まってしまった。

提督「い、いや、なんでもない」

提督「(実際やることないんだよなぁ・・・。
    見直しでもしようか・・・)」




提督「何もしゃべらなくなったと思えば、なんだ・・・、やっぱり寝るんじゃないか」

起こさないよう、そっとお腹から抱き上げる。

提督「こいつの部屋まで運ぶのめんどいな・・・。
   部屋で寝かせようか」



移動。舞鶴鎮守府。提督私室。

提督「寝顔かわいいな」

自分も横になってその顔を見つめる。

だが、そのまま自分までねむくなってきて・・・。




暁「きゃあ!?」

提督「どうした!?」

思わず飛び起きる。

暁「な、な、なんで、司令官なにしてるのよ!?」

寝てしまったのか俺は。

提督「お前が寝るのが悪いんじゃないか!」

暁「私のせい!?だったら私の部屋まで運んでくれればいいじゃない!」

提督「ぐっ・・・」

暁「・・・ま、まぁ、悪い気はしなかったけど・・・」

ボソッと何事かつぶやいた。

提督「え?」

暁「な、なんでもないし!」

提督「お、おう・・・」

思わず目をそらした先に、時計があった。

提督「!?
   もう六時前じゃないか!」

夕飯の時間は六時である。

提督「(何時間ねたんだ!?)」

提督「ほら、暁、急ぐぞ!」

暁「うん!」

移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

息を切らして食堂に駆け込む。

五月雨「もう、提督、遅いですよ。
    って、なんで暁までおくれるの?」

提督「すまんすまん、昼寝してたら予想以上に眠りこけてしまった」

五月雨「だからなんで暁まで」

提督「一緒に寝ちゃったんだよ、だから怒らないでやってくれ」

電「はわわわ!?」

加賀「・・・」

赤城「・・・」

提督「まるでクソ男を見るような目じゃないか、え?
   お前らが想像するようなことはおきてないぞ。ただ添い寝っぽくなっちゃっただけだ」

五月雨「ぐぬぬ・・・」

間宮「・・・」

提督「(やべぇ間宮さん目がマジだよ)」

提督「なにもしてないっていってんだからそれでいいだろうが、まったく」

提督「ほら、もう六時回ってんぞ、食べようぜ」

響「司令官が遅れてきたんだろうに・・・

皆「いただきまーす」

予定通り投下できず申し訳ないです。

予想以上に戦闘シーンの描写にてこずっております。

明後日には出します。

逝きます。

赤城「ふぅ・・・」

提督「食べるなぁ・・・」

赤城「わたし、そんな一番の大食い女ってわけじゃないんですけど・・・」

提督「またまた、この前の先生の話じゃあ、赤城の腹は四次元だって話だったぜ」

赤城「そ、そりゃあ食べるほうではあるかもしれませんけど、一番ってわけじゃありません!」

提督「ほぅ?そうなのか?」

赤城「そうですよ・・・」

提督「でも・・・、あぁ確かに、お前ただ食いながら喋ってただけだったなそういえば」

赤城「そうですよ!」

提督「それもだいぶ行儀悪いけどな・・・」

加賀「ほんとに、いったい誰がこんな噂を・・・」

提督「(けっこう食べる方なのは事実だろ・・・)
   まぁ早く食い終わることに変わりはないよな」

赤城「はい」

加賀「だから早くデ「だからって早くデザートをいただけるわけじゃないけどな」

提督「我慢しとけ」

赤城&加賀「・・・」

提督「そんな目でみても無駄だ」




間宮「今日はですねー」

提督「お?」

間宮「なんと!」

提督「おお!?」

間宮「チーズケーキをつくってみました!」

皆「おおおお」

提督「さすがっす間宮さん!」

隅のほうで一人で食べていたところへ間宮さんが隣に座ったのだ。

間宮「おいしいですか?」

提督「そりゃあもちろん」

それほどの人数ではないにしろ、みなが笑いながら食べているのを見ると、思わず目を細めてしまう。

間宮「日頃がんばってる提督さんのためでもあるんですよ」

提督「はっは、そいつはありがたいですわ」

間宮「大丈夫ですか?」

提督「ん?なにがです?」

間宮「この前の出撃のことですよ」

提督「ああ」

間宮「ごめんなさい、蒸し返すつもりじゃなかったんですけど」

提督「いいんですいいんです」

提督「あれは俺の力不足だったんですし」

間宮「でも「心配性ですなぁ」

提督「あんなことはもうさせません。もう少し強く言っていれば、で後悔するのはもうたくさんです」

間宮「・・・」

提督「ほら、間宮さんも食べましょうよ。口あけてー」

いわれるまま口をあける。

しかし、していることに気づくと、

間宮「っっっっ~~~~!」

みるみるうちに顔が赤くなった。


提督「ほら、おいしいですよね?」

間宮「おいしい、です・・・」

立上がり、

提督「それじゃあ、みんなも食べ終わったようだし!ごちそうさまでした」

皆「ごちそうさまでしたー」



提督「五月雨も自分の部屋でくつろぐといい。今日やる分はもう終わった」

五月雨「わかりました」

涼風「はやくいこ!ほらほら!」

五月雨「そんな急がなくってもいいじゃん、引っ張らないでー!」

移動。舞鶴鎮守府。厨房。

間宮「いつもすいません」

提督「食って終わりじゃあ申し訳ないじゃないですか。それに今までも食器洗ってたんですから、いまさら、ですよ」

間宮「それもそうですよね」

ふふ、と笑った。




移動。舞鶴鎮守府。執務室。

館内放送。

提督「えー、まもなくフタフタマルマル。消灯時間です」

マイクの電源を切る。

提督「もうこんな放送はいらないかな・・・」

着任した日からなんとなく初めているんだけど。


そのまま私室へ向かい、ベッドに横たわる。

提督「・・・」


提督「・・・・・・・・」



提督「昼寝なんかしなきゃよかった・・・、寝れない・・・」

夜風でも浴びよう。

ベッドから身を起こす。

移動。舞鶴鎮守府。港(端っこ?ほとり?)。

仰向けになって、月を見る。

提督「そうか・・・、今日は満月だったんだな」

まだ夏が抜けきっていないのか、ちょうどいい気温だった。


どれくらいこうしていただろうか、ちょうど眠気がおそってきたころ。

気付くと後ろに人が立っていた。

よもや巡視兵かと後ろを振り返ると、間宮さんだった。

間宮「帽子」

提督「え?」

間宮「地面に置いてたら、汚れちゃいますよ」

提督「そうですか?」

間宮「そうですよ」

間宮「・・・提督さんって」

提督「?」

間宮「綺麗ですよね」

提督「はっ?」

間宮「ふふ、なんでもありませんよ」

提督「・・・?」

提督「(一体なにがどうなってるんだ!?)」

間宮「今日は月がきれいですよね」

提督「ええ、こうしてると、なんだか時間も忘れてしまいそうです」

風になびかれるに任せて、目を閉じる。

間宮「提督さん?」

間宮さんの声が遠くの方で聞こえた気がした。


提督「ハッ」

いつの間にか寝ていたらしい。

間宮「ずいぶん気持ちよさそうに寝てましたよ」

提督「すいません、なんか」

間宮「大丈夫です。私も寝てましたから」

口が裂けても寝顔をガン見していたとは言えない。

提督「今何時ですか?」

間宮「もうあれから二時間はたってると思います」

提督「そろそろ、戻りましょうか」

間宮「そうですね」

帽子をかぶりなおすと、肩を並べて鎮守府へと戻って行った。



時間経過&移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

午前六時。

電「おはようございます、なのです!」

提督「おう、おはよう」

食堂にやってくる面々と彼はいつものように挨拶を交わす。

間宮「おはようございます」

提督「間宮さんも、おはようございます」

なんで、提督はこんなにも綺麗なのだろう。

戦闘シーン(演習)が終わり次第順次投下します。

今日ではない、と思います・・・。

五月雨は俺の二人目のお嫁さんです。

(あなたの発言で少しエンドが変わったのは知るよしもない・・・)

逝きます。

九月七日。舞鶴鎮守府。演習場。

提督「準備はいいな?」

皆「はい!」

提督「偵察機はないが、水上・水中電探・爆雷の配備はなんとか間に合ったようだな。暁と響の分しか用意できなかったが、十分だろう」

提督「今回は、演習場を見てのとおり、濃霧での演習だ。相手からすればこちらの編成はわからない」

提督「だが逆もまた然り、こちらも敵の事は全く分からない」

一同が緊張した面持ちで提督を見つめる。

提督「作戦については先ほど話したとおりだ、それでは、各自、持ち場につけ」

提督は司令室へ、艦娘は出撃位置へと走って行った。


時間経過。

提督「こちら司令室、聞こえるか?」

五月雨「感度良好、問題ありません」

提督「各員行動開始。複縦陣をとれ」

皆「了解」



響「電探に敵影反応、数、六、十一時の方向。単縦陣でつっこんできてる」

提督「赤城、加賀、爆装、攻撃開始だ」

加賀「わかりました」

赤城「了解です」

矢をつがえ、次々と放っていく。

提督「ここまでは順調に進んでるな。
   (だが九九式ももう時代遅れだ。そろそろ新鋭機を用意しないと・・・)」

搭乗員「見えてきたな」

搭乗員B「さすがによくは見えませんね・・・」

搭乗員「なんだ?もう失敗したときの保険をかけてるのか?」

搭乗員B「そ、そんなんじゃ!」

搭乗員C「高度2100、降下ルート到達しました」

搭乗員「当たると当たらざるとにかかわらず、やるしかないんだよ。各員、降下角度60、突撃!」

搭乗員B「60度!?」

あまりの加速に急降下制動板が軋む。

対空迎撃判定がなされた艦載機は強制的に突撃ルートから外される仕様になっている。

司令室からではその様を見ることはできない。


提督「弾着報告」

搭乗員「敵艦無力化数1。敵編成は駆逐艦二隻、無力化したため一隻、軽巡二隻、しかしほか視認できず」

提督「おそらく視認できていないのは潜水艦と思われる。
   やつらの雷撃を食らったらたまったもんじゃない。各員対潜厳警戒、単横陣をとれ」

五月雨「了解です」

雷「濃霧って、ほんとに見えないじゃない」

提督「目を頼るな。何のために電探を配備したと思ってる?」

雷「そういえば、そうだったわね・・・」

提督「忘れてたのか・・・?」

ため息をついてしまった。

暁「・・・?」

提督「どうした?」

暁「何か、前の方から音が・・・、どっかで聞いたことがあるような・・・。あっ!」

提督「?」

暁「司令官、前方から魚雷、四本接近中!」

提督「面舵、回避しろ!」

暁「いわれなくてもやってるわよ!」

避けたすぐそばを、魚雷が高速で通過していった。

魚雷の航跡はほとんど見えない。

提督「本気だな、今度は酸素魚雷か!」



響「敵、射程圏内に入ったよ」

提督「了解、目標敵全駆逐艦、全砲門、撃ぇ!」

爆音。



提督「弾着報告!」

五月雨「レーダー敵影、駆逐艦一隻の減速を確認!」

提督「各員単横陣を保ち取り舵!絶対に魚雷がすっとんでくるぞ!」

五月雨「回避します!」

再びそばを魚雷が高速で駆け抜けていった。

提督「敵は魚雷攻撃ばかり仕掛けてくるな・・・」

提督「考えてもわからんもんは仕方がない。予定通り、駆逐艦は赤城達の第二次攻撃の援護射撃だ、弾幕を張れ」

雷「任せなさい!」


提督「赤城、加賀、雷装準備はどうか!?」

加賀「言われなくても作戦通りにやってるわよ」

提督「直ちに発艦せよ」

赤城「了解!」


搭乗員「今度は雷装か・・・」

搭乗員B「俺にとっちゃ急降下爆撃のあの感覚はなかなか好きになれませんよ」

搭乗員「今度は敵の対空砲火にまんま晒されることになる、この方が怖いと思うが」

搭乗員B「なーに、当たらなければいいんですよ」

搭乗員「なんだそれ・・・」

搭乗員C「まもなく魚雷投下地点」

搭乗員「全機全速、エンジンが火を噴くぐらいまで回転数を上げろ!」



提督「弾着報告!」

搭乗員「敵駆逐艦一隻、小破であります」

提督「他、報告はどうした!」

搭乗員B「申し訳ない、姿勢を保つので精一杯なんだ!」

提督「どういうことだ?」

搭乗員「敵の対空砲火が激しいんです。あまりいいたくはなかったですが、少々速度が、この機じゃあ足らんのです」

提督「(くっ、艦載機の配備も急がせるべきだったか・・・!)」

時間経過。同所。

提督「・・・まずいな、時間がたちすぎてる、夜戦に入られたら潜水艦に対して勝ち目はない。
   暁、響は敵潜水艦を排除することに専念し続けてくれ!」

暁「わかった」

提督「あれ以来一向に攻撃してこない。いつまでにらみ合いを続けるつもりだ、先生?」



先生「そろそろ攻撃の頃合かね・・・、大井、北上、いいな?」

大井「やっと、敵を・・、ふふふ」

先生「よもやただの軽巡じゃなく、重雷装巡洋艦だなんて思いもしないだろうな」

北上「スーパー北上様が火を噴くよー」

先生「大井、北上。二人合わせた40門の酸素魚雷、喰らわせてやれ」



五月雨「敵二隻の回頭を確認」

提督「回頭だと・・・?何をするつもりだ・・・?」

響「よっと、敵潜水艦二隻、無力化した、司令官」

響「なんだか随分簡単にやれてしまったよ」

提督「水中電探のおかげ、じゃないか?」

提督「了解、各員単縦陣に変更。五月雨の後ろにつけ」

響「了解」


響「・・・水中電探のおかげだといいけど、なんだか囮のような気がするんだ、司令官はどうおも」

その時、

暁「ッ!?」

提督「どうした!」

暁「前方からさっきと同じ音がする!」

提督「また魚雷か・・・!」

暁「いや!30本以上の魚雷がきてる、司令官!」

提督「三十本以上だって!?」

提督「それだけの魚雷を一気に・・・、まさか、軽巡じゃなく、雷巡だったっていうのかッ!?」

暁「横一列に向かってきてる、よけられない!」

提督「到達まであとどれくらいかわかるか!」

暁「後30秒って所だと思う!」

提督「潜水艦の排除は完了してるんだったら・・・、全員、ありったけの爆雷を前方に投下しろ!」

五月雨「それってどういう「魚雷を迎撃する!」

響「なっ!?」

提督「装填急げ!」

五月雨「りょ、了解!」

五月雨「装填完了しました。当たってくれるといいけど・・・」

提督「時限信管セット、六秒」

五月雨「六秒、了解」


提督「機雷じゃないからな、うまく誘爆するかどうか・・・」

暁「敵魚雷、到達まで15、14」

提督「発射!」

五月雨「発射しました」

提督「・・・」

暁「3、2」

言い終わる前に彼女らの前ですさまじい爆発が発生した。

五月雨「雷、無力化されました!」

提督「さすがに全部は無理だったか!」

五月雨「って、まさか、そんなっ!」

提督「何があった!」

五月雨「魚雷が、何本かすり抜けて・・・!」



先生「よもやそんな手で魚雷をよけるとは。なかなか頭が柔らかいじゃないか。
   でも、駆逐艦しか狙わない?そんなことあるわけなかろう?」

北上「当たってくれるかなー?」

先生「さすがに二人共は無理だろうが、果報は寝て待て、そういうだろ?」

北上「先生、顔が怖いよー・・・」

赤城「避けられません!」

提督「くそが・・・!」

五月雨「赤城、被弾、無力化されました」

加賀「よくも赤城さんを・・・」

加賀「さすがに頭に来ました」

提督「全機、爆装」

加賀「もうしてあるわよ」

提督「敵を、許すな!」

提督と加賀が敵のいるほうを強く睨みつける。


搭乗員D「よくも姐さんをやってくれたじゃねぇかッ!ええ!?許すまじ!」

搭乗員E「高度4200!」

搭乗員D「ええい!角度70!急降下!」


長月「敵機飛来、急降下、来るぞ!」

先生「やはり逃したかッ!回避行動をとれ!」






北上「うへぇ、装甲は薄いんだよぉ・・・」

大井「そんなぁ!」

長月「北上、大井が無力化された!」

先生「なかなかやるじゃないか」

先生「しかし、もう残るは二人か・・・」

雪風「しれぇ、どうしますか?」

先生「なに、心配するこたぁない。そろそろ夜戦の時間だ。魚雷と主砲の強攻撃のお時間だよ・・・」

長月「それは楽しみだ・・・」


雪風「お、お二人とも顔が怖いです・・・」

時間経過。施設内暗転。

提督「(暗闇じゃあなかなかコンタクトを取るのは難しいな・・・)」

一人目に手を当て四苦八苦していた。



提督「夜戦突入だ、加賀?」

加賀「わかってる、もう後ろに下がったわ」

提督「暁、五月雨、聞こえるか?」

五月雨「はい」

提督「敵に攻撃開始の準備を与えるな、主砲、弾幕張りつつ魚雷全斉射!」

五月雨・暁「了解!」

静かな闇で、遠くのほうで何かが光った。

暁「敵の砲撃を確認」

提督「・・・あぁ、俺にも見えたよ」



五月雨「いったぁ!」

提督「弾着・被害報告!」

暁「五月雨無力化、敵駆逐艦一隻無力化!」

それを聞くと同時に、提督はその場にへなへなと座り込んだ。




戦闘終了です。また後日投下いたします。



辛勝?

あ、あれ?申し訳ないです、一部投下できていなかったようですね。
確認すればよかった・・・。


提督「なんだか疲れたな・・・」

提督「どっちも一隻を残して無力化だが、こっちは旗艦の五月雨をやられた。戦術的敗北ってやつか・・・」

五月雨「すいません・・・」

提督「なんで謝る必要があるんだ。先生相手にここまでやれたんだぜ、誇ってもいいと思うんだけどな」




移動。舞鶴鎮守府。玄関への道中。午後七時。

先生「なかなかやれるようになってるじゃないか。しっかしまぁ実線経験もそんなにない若造にここまでやられるとは。」

提督「いえ、実際彼女らの練度に助けられてるだけですよ」

先生「謙遜なんかするな、お前は昔からそうだ。せっかくほめてやってるってのに」

提督「そういえば先生、今日は寄ってかないんですか?もうこんな時間ですよ?」

先生「寄っていきたいところなんだがね、うちの翔鶴が夕飯を作って待っててくれるって言うからな・・・」

提督「いいですなぁ」

先生「おまえんとこは間宮さんがいるじゃないか」

提督「いやぁ、間宮さんの料理も飽きないんですがね。たまには艦娘の料理も食べてみたいんですよ、俺としてはね」

先生「それはわかるようでわからんな」

提督「おっと、それでは先生、今日は本当にありがとうございました。今後も何かと頼ることもあるかと思いますけど、よろしくお願いします」

先生「気にするな。じゃあ、またいつか」

提督「ええ」

手を振り、車を見送る。

その隣へ、

加賀「提督」

提督「ん?どした?」

加賀「提督は、肉じゃがはお好きですか」

提督「あぁ、好きだけど」

加賀「そうですか」

提督「?」

そのまま加賀は食堂へと向かっていった。

提督「はて、今夜は肉じゃがなのかな?」

ん?初めの爆撃で雪風は無力化させてるんだよね、そうなると相手全滅させてないか?

>>203 搭乗員「敵艦無力化数1。敵編成は駆逐艦二隻、無力化したため一隻、軽巡二隻、しかしほか視認できず」

>>206 響「よっと、敵潜水艦二隻、無力化した、司令官」

>>209 長月「北上、大井が無力化された!」

>>210 暁「五月雨無力化、敵駆逐艦一隻無力化!」

ミスです。

最後に詰めを誤ってしまいました。

不快な思いをさせましたことを申し訳なく思います。

すこし自分で書いていて頭の温度が上がっていたようです。

脳内補完でなく、書き直しを直ちに用意します。同じ物では意味がないので戦闘内容も大幅変更いたします。

今日の投稿はお忘れください。

そう気にしないで、楽しませてもらってるのはこっちだから

たまたま気に入った作品を隅々まで読む暇人がいただけだから

気楽に行こう

それでは演習開始まで時間を遡っていきます。

九月七日。舞鶴鎮守府。演習場。

提督「これより作戦概要を説明する」

五月雨「なんかすごい本格的なんですね・・・」

提督「演習とは言え戦闘は戦闘だろ、作戦ぐらい作るさ」

提督「事前に全員に水上電探を配備、暁、響には水中聴音機、爆雷投射機を配備した」

五月雨「敵に潜水艦が出てくるってわかってるんですか?」

提督「前回の演習での潜水艦の練度、見ただろ?」

五月雨「確かに、相当でした」

提督「先生はああ見えて負けず嫌いだ。今度も魚雷の先制攻撃を頼ってくるかもしれない」

五月雨「でも、可能性ってだけで「可能性があるだけで」

提督「警戒するには十分だ」

五月雨「そう、ですね」

提督「今回の先頭において、目を頼ってはならない。万一にでも敵を見間違えたりしてはいけない。これが作戦遂行の上での大前提となる」

提督「まず、赤城、加賀による爆装での急降下爆撃での先制攻撃を仕掛ける」

提督「その後駆逐艦による―――――――――――――――――」

時間経過。午後三時。舞鶴鎮守府。大演習場。

提督と艦娘らが、それぞれの持ち場へと走っていく。


提督「聞こえるか?」

五月雨「感度良好。問題ありません」

提督「各員、空母を囲め。輪形陣をとるんだ」

皆「了解」




響「レーダーに敵影、数、六、三時の方向。単縦陣」

提督「赤城、加賀、爆装準備はどうか」

赤城「問題ありません」

加賀「いつでも」

提督「了解、直ちに発艦」

視界不良の中、敵影反応の方向へ矢を放つ。


搭乗員「ああああ、今日は何だか荷が重いな・・・」

搭乗員B「日頃の疲れがたまってるんじゃないですか?全く。
    別に爆弾の重量は変わってないですよ、むしろ演習だからいつもより軽いぐらいです」

搭乗員「減らず口をたたきやがって・・・。そういうんだったら、よほどの戦績をたたき出してくれるんだろうな?」

搭乗員B「うぜぇ・・・」

搭乗員「あん?何か言ったか?」

搭乗員C「高度、2500、突入ルートです」

搭乗員「お前は変わらんな、いっそ清清しいよ。各員、角度60度、降下開始!」

搭乗員B「6、60!?」

それまで水平に隊列を組んでいた編隊が、次々と急降下を開始する。

対空射撃による迎撃判定がなされた艦載機は、強制的にルートから外されていく。

翼が打たれれば、適宜欠損箇所に即した姿勢ペナルティが加わる。

提督「弾着報告!」

搭乗員「駄目です、あいつらちょこまか動きやがって・・・。かすり傷程度しか当てられませんでした」

提督「そうか・・・、敵編隊の状況は確認できたか」

搭乗員「それが何とも・・・、単縦陣で、敵影と思しきもの三隻、他は見当たりませんでした」

提督「他は?」

搭乗員B「っ、すいません、被弾しました。ですがこちらも先輩と同じです・・・!」

提督「潜水艦か・・・?」

搭乗員「申し訳の仕様もないです、もう少しよく見ていれば。ですがひとつ言わせていただきたいのです」

提督「ん?」

搭乗員「言い訳、としか聞こえないかもしれませんが、・・・九九式では速度に劣るのであります」

提督「・・・了解。その旨、頭にとどめておく。次回までには新型機を用意する。今回は、すまないがこれで頑張ってもらうしかない」

搭乗員「ありがとうございます。ほら、お前らさっさと帰還して雷装に転換するぞ」

搭乗員B「へいへい」


提督「五月雨、敵艦の状況は」

五月雨「依然、動きなし。たった今私たちの射程圏内に入りました」

提督「撃ってくれとでも言いたげじゃないか・・・。いいじゃないか、乗ってやる」

提督「全員、目標的敵艦、全主砲、撃ぇ!」

爆音がとどろく。



提督「弾着報告!」

五月雨「駄目です!当りません!」

提督「第二射用意!次弾装填しろ!」

刹那、

暁「司令官!」

提督「どうした!」

暁「前方から高速推進音、数、四!魚雷だと思う!」

提督「全員取り舵!魚雷回避に専念しろ!」


瞬く間に傍を魚雷が通り過ぎていく。

暁「航跡が見えなかった・・・」

提督「酸素魚雷だからといって怯むな、こっちには水中聴音機がある。異音を聞き逃すな」

暁・響「了解」


提督「弾着報告しろ!」

五月雨「一隻に命中、ですが致命傷は与えられず。依然敵艦隊速度変わらず!」



先生「電探を配備したというから多少の警戒はしていたつもりだったが」

木曽「かすり傷程度、話にならないな、こんなんじゃあ」

北上「ていとくー、まだ撃たないのー?」

大井「やっぱり作戦が悪いのよ・・・、さっさと沈めてしまえば・・・、北上さんを傷つけようとするやつらを・・・」

北上「お、大井っちー・・・?」

先生「このまま夜戦にもちこまれればこちらも被害を受けるだろう。できればそれは避けたい」

先生「58、19、168、準備はいいか?」

58「大丈夫、でち!」

19「いつでもいくのー!」

168「いつでもいけるわ」

先生「今回は囮役となってもらうが・・・、今回だけだ。申し訳ない」

58「気にしないでくだち!」

先生「そう言ってくれると助かる」

先生「木曽、大井、北上。魚雷、片舷全門斉射の準備にかかれ」


響「三時の方向、敵潜水艦と思われる推進音を探知。排除する」

提督「了解、暁、響、かかれ。赤城、加賀は艦載機の全機雷装転換を急げ。五月雨、雷は敵への弾幕を張り続けるんだ」

五月雨「軽微ですが、敵への弾着確認!」

提督「よし、そのまま撃ち続けろ」



木曽「潜水艦三隻、魚雷発射管無力化されたようだぞ」

先生「かかったな・・・。この機を逃すな!爆雷で海中の音がかき回されているうちにいくぞ!魚雷、撃ぇ!」

木曽・北上・大井「了解!」



提督「赤城、加賀、全機発艦!」

赤城・加賀「了解しました」


搭乗員「いくぞ!」

搭乗員B「来ましたね、他の人には申し訳ないですけど、手柄は俺らのもんです」

搭乗員C「申し訳ありません、少しトラブルです。機体の上昇ができません」

搭乗員「了解、可能でなければ帰投しろ」

そして、母艦から500m程の地点。

搭乗員Cが、訝しげに海面を見ている。海面間近であるため、目がよければまだ波まで識別できるほどだ。

搭乗員C「ん・・・?」

搭乗員「どうした?」

搭乗員C「いえ、今何かが通り過ぎて行ったように見えたのですが・・・。まさか!?」

搭乗員C「艦攻搭乗員より司令部へ!」

搭乗員「おいおい、いったい何が」

提督「こちら司令室、何か問題が起こったか」

搭乗員C「本艦隊より500m程の地点にて、微かながら魚雷の航跡を確認!数、30、いや、数えられない!!まっすぐそちらへ直進し    ています!」

提督「なッ!?」

酸素魚雷の速度は約50ノットといわれている。とすると、到達まであと20秒もないことになる!


提督「爆雷の装填はどうか!?」

五月雨「あと10秒ほどで完了します!」

提督「やむを得ん、駆逐艦、空母を護れ!」

皆「了解!」

赤城、加賀の前方へ五月雨・暁・響・雷が全速力で飛び出す。

瞬間、艦隊の目の前で水飛沫があがった。


提督「被害報告!」

赤城「駆逐艦全員無力化されました。ですが」

提督「うん?」

加賀「敵艦の三隻撃沈を確認」

それを聞くとともに、その場に提督はくず折れた。




提督「・・・やってやったぜ、先生。俺はもう子供じゃあない」


移動。舞鶴鎮守府。玄関への道中。午後七時。

先生「なかなかやれるようになってるじゃないか。実線経験もそんなにない若造にここまでやられるとは」

提督「いえ、彼女らの練度に助けられてるだけですよ」

先生「謙遜なんかするな、お前は昔からそうだぞ。せっかくほめてやってるのに」

先生「はぁ、それにしても・・・、魚雷で静かに敵艦を叩こうなどわが身のおごり。この俺としたことが、最後に詰めを誤った   か・・・」

苦笑しつつ、

提督「そういえば先生、今日は寄ってかないんですか?もうこんな時間ですけど」

先生「間宮さんの料理だろう?是非に、と寄っていきたいところなんだがね、うちの翔鶴が夕飯を作って待っててくれるって言うからな・・・」

提督「いいですなぁ」

先生「おまえんとこは間宮さんがいるだろうが」

提督「いやぁ、間宮さんの料理も飽きないんですがね。たまには艦娘の料理も食べてみたいんですよ、俺としてはね」

先生「・・・さっぱり共感できん」

提督「おっと、それでは先生、今日は本当にありがとうございました。今後も何かと頼ることもあるかと思いますけど、よろしくお願いします」

先生「気にするな。じゃあ、またいつか」

提督「ええ」

手を振り、車を見送る。

見送った後、帰ろうとしたところへ、

五月雨「すいませんでした・・・」

雷「もう少し当ててればあんなことには・・・」

提督「仕方ないじゃないか、視界不良でのまともな戦闘はこれが初めてなんだろう?成功は失敗の元というし、次やってくれ    れば、それでいい」

提督「全員、夕飯まで部屋で休んでおいで」


その隣へ、

加賀「提督」

提督「ん?どした?」

加賀「提督は、肉じゃがはお好きですか」

提督「あぁ、好きだけど」

加賀「そうですか」

提督「?」

そのまま加賀は食堂へと向かっていった。

提督「はて、今夜は肉じゃがなのかな?」


果たして、夕飯が普通にさんまの塩焼きであったことにますます首をかしげる提督であった。


今度こそ大丈夫なはずです・・・。一応先まで書いていますが、今日のところはここまでです。

まだちと戦闘シーンの書き方が慣れないみたいです。

何はともあれこれからまた日常風景に戻っていきます。あ、ちなみに卯月さん持ってないので勘弁してください。

また何か欲しい絡みとかあれば↓2です。描写は先になりますが。

今後ともよろしくお願いします。

料理好きですな皆様。

わかりました。

いやはや皆様そう俺が書いている書き溜め内容を言い当てられてはマジで困ります。

軽巡駆逐はもう出てきておりますよ。イベントで追加された秋月とか秋月とか秋月とか。

明日には投下します。

翌日。舞鶴鎮守府。間宮私室。

間宮「料理、ですか?」

赤城「私たちは聞いてました・・・、提督が、間宮さんだけでなく、私たちの料理も食べてみたいとおっしゃっていたのを・・・」

間宮「そうなんですか?でも、好きな料理とか・・・」

加賀「そこはもう聞いてきました」

間宮「え?」

加賀「肉じゃが、だそうです」

赤城「(自分が好きなのを適当に聞いただけじゃないですか・・・)」

間宮「これまた微妙な難しさの料理を選びましたね・・・」

間宮「二人とも、料理は初めてなんですよね?」

赤城「はい」

間宮「まぁ、私が教えながらになると思うけど、早速今夜、頑張りましょう」

赤城「はい!」

舞鶴鎮守府。執務室。午前。

提督「あと二十三日も・・・、ぐへぇ」

五月雨「そういえば、ここの鎮守府はどれくらい資材もらえるんですか?」

提督「鋼材とかそれぞれ三万ずつぐらいだなー」

五月雨「へ、へぇ、そうなんですね」

提督「うるせぇ、心の中ばれてるぞ。元帥殿と一緒にすんな」

五月雨「あはは、それもそうですよね」

五月雨「それで」

提督「うん?」

五月雨「来月資材が届いたら何をするつもりなんですか?」

提督「あぁ、大体はもう決まってる」

五月雨「というと?」

提督「ここの鎮守府、他の製油所から直接輸送される燃料ももらっているのは知ってるよな?」

五月雨「知らなかったんですけど!?」

提督「そうか、電話でいろいろあったんだ。とにかく今言ったしそれでいいだろ」

提督「その製油所なんだけども、問題が発生しているらしい」

五月雨「ぐぬぬ・・・。そ、それで?問題って?」

提督「その輸送ルートが深海棲艦の野郎どもにばれたらしい」

五月雨「え!?」

提督「今までずっとお金まで払って懇意にしてきた製油所なんだ。見捨てるわけにはいかない」

提督「つまり、来月資材が届いた折には、製油所輸送ルート及び製油所周辺の深海棲艦の掃討作戦を実行する」

五月雨「みなさんには知らせておきますか?」

提督「そうだな・・・、いや、まだ知らせなくていい。本当は急ぎたいところだが、あと一ヶ月は製油所周辺に設置された砲台で対   処をしてもらっているから大丈夫だろう」

提督「ま、その前に」

五月雨「?」

提督「届いたら急ピッチで戦艦を建造せねばなるまい」

五月雨「確かに、忘れかけてました」

提督「あぁ、正直空母機動部隊じゃあ火力に欠けるからな。正直言うと製油所防衛戦は駆逐艦には抜けてもらうしかないんだけど・   ・・」

五月雨「そんなことで拗ねるほど子供じゃありませんよ」

提督「それならよかった・・・。にしても」

五月雨「にしても?」

提督「にしても腹が減るじゃないか!」

五月雨「いきなり叫ばないでください」

提督「昼飯何なのか聞いてないの?」

五月雨「間宮さんは教えてくれない人じゃないですか」

提督「んーーー聞いてきてよーー五月雨っちー」

五月雨「さ、さすがにちょっと・・・」

尋常でない引き方だった。

提督「ふむ、五月雨、ちょっとこっちきてくれ」

五月雨「嫌です」

提督「そんな警戒すんなって」

五月雨「・・・」

無言で提督の下へと歩いていくと。

提督「ほら、座れ」

五月雨「は、はぁ」

五月雨「って、なにするんですか!?ちょっと、やめてください!」

思わず顔を上げた先に、雪のように真っ白な髪と、肌が目に入ってくる。思わず息を呑んでしまった。

そのころ、ご飯の支度ができたといいに来た間宮さんは扉の前で固まっていた。

間宮「え・・・?」

五月雨の悲鳴と、やんだ声。

間宮「(え!?)」

間宮「ちょ、ちょっと何を・・・」

果たして飛び込んだ先では、提督が五月雨の髪の毛を櫛で梳いていただけだった。

提督「お、間宮さん!もしかしてご飯の用意できたとか!?」

爛々と目を輝かせている提督がいた。

間宮「・・・そうです、早く来てください」

顔を真っ赤にしてそのままそそくさと部屋を出て行く間宮さん。

提督「お?」

五月雨「・・・」

五月雨は顔を見合わせかけて直前で思いとどまった。

提督「ふむ・・・肉じゃがか」

五月雨「何気に初めてじゃないですか?肉じゃが出たのって」

提督「なんにせよ、いただきます」

皆「いただきまーす」


提督「なんだか間宮さんらしくもないな・・・」

五月雨「なんですかそれ」

提督「間宮さんの料理を食べ続けてきたからこそ気づくこの違和感。ぎこちなさの残っているこの感じ」

提督「でもまぁ普通においしいぞこれ」




一方、提督の前に腰掛けていた正規空母の方は・・・、

赤城「加賀さん?」

加賀「なんですか?」

赤城「そんな済ました顔したって、私にはわかりますよ。うれしいんだったら素直に言えばいいのに」

加賀「・・・」

提督「(なるほど、そういうことだったのか・・・。でも気づかずに食べれてよかったわ)」

五月雨「そうですね・・・」

提督「え?」

五月雨「え?」

提督「皆も食事を終えたことだし、そろそろこの鎮守府も補給物資の配達では回らなくなってきていることについて話すことにしよう」

提督「燃料に関しては心配は要らない。
   そこで、駆逐艦らにはボーキサイトと弾薬、および鋼材の確保に向かってもらいたい」

雷「任せときなさ

提督「はっはっは、そういわい!」

提督「頼もしいよ」

やわらかく微笑む。

提督「具体的には一ヶ月に一度のペースでいってもらう。直近で言えば来週だな。
    目的地には敵の元製錬工場やらなにやらがある。そこはすでに我が軍の管轄化で稼動しているから問題はない。ルート上にも敵を発見したとかの報告はないから身構える必要はあんまりないだろう。それでも警戒はするに超したことはないけど」

五月雨「でもそんなにうち、人員に余裕ありませんよ?」

すると提督は、ニッと笑った。

提督「言われると思ってたよ。ほら、入ってきていいぞ」

食堂入り口から人が登場し、提督の隣へ並んでいく。

提督「それでは各自自己紹介を」

秋月「秋月、推参しました」

春雨「は、春雨です。輸送任務が得意です」

村雨「はいはーい、村雨だよ。みんなよろしくねー!」

夕立「夕立よ。よろしくね!」

名取「名取といいます。皆さんに少しでもお役に立てるよう、が、がんばります!」

準鷹「商船改造空母、準鷹でーす」

飛鷹「ちょっと準鷹、よろしくぐらいいいなさいよ。あ、私も商船改造空母の、飛鷹です」

扶桑「扶桑型戦艦一番艦、扶桑です。よろしくお願いします」

山城「妹のほう、山城です」


五月雨「・・・こりゃまた随分と、道理で資材確保を急ぐわけですね・・・、呆れます」

提督「そう怒るなって。うちの鎮守府にも火力が必要なんだ。そんなわけで、扶桑、山城には結構頑張ってもらうことになると   思う」

扶桑「お任せください」

提督「と、ずいぶん話がそれたな。
   なんにせよ、駆逐艦と軽巡洋艦らには来週からほぼ総出で遠征に言ってもらうことになると思う。急がせる用で悪いけど   、いけるか?」

名取「私は大丈夫です!」

他の者も異は唱えなかった。

提督「よし、そんじゃあ五月雨、すまんが鎮守府を案内してやってくれ」

五月雨「わかりました」



加賀「どうして軽空母を?」

提督「それに関しては何もいえないよ。正規空母を狙って作れるわけじゃないんだ」

加賀「あぁ、なるほど」

提督「ただ少し怖いな・・・。ルートに敵の目撃翌例がないとはいえ、これからもないとはいえない。遠征終わったらぼちぼち演   習場使っていくか・・・」

提督「そんときは赤城と加賀、それぞれわかれて訓練に付き合ってやってくれないか」

赤城「でも、私たちまだ実戦なんてそんなに」

提督「そんなことはない、初めての実戦のときも演習のときも実によくやってくれていた。人に教えられるぐらいはすごいほう   じゃないか」




予想以上に中途半端ですが。この先も中途半端なのでここで一旦とめます。

すこし遠出をします。

Wikiは外国からだとアクセスできないので、申し訳ありません。一週間程度です。

テスト。
ポケットWifiで書き込めたかどうか。

久しぶりの一人旅もいいものですね。
ドイツの海軍記念館でビスマルクとプリンツ・オイゲンの縮小模型を拝んできて、いまはすっかり町の光景を楽しみ始めてます。
のどかでいいですな、本当に。






赤城「そうでしょうか・・・」

提督「なんにせよ、よろしくな」

加賀「ええ、わかりました」

赤城「加賀さんがいいというなら・・・」

提督「あんま身構えんなよー」

快活に笑いながら提督は執務室へと戻って行った。


移動。舞鶴鎮守府。執務室。電話での一部会話。

提督「・・・被害はどれくらいまで広がっているのでしょうか」

製油所工場長(以下、工場長)「今はまだもっているんですがねぇ・・・」

提督「弾薬が不足し始めていますか?」

工場長「いやぁ、弾薬はたんまりあるんすよ?
    ですが、敵も馬鹿じゃないっていうか、ついに航空機による爆撃が始まりまして」

提督「まさか」

工場長「いいや、今はまだ三式弾が頑張ってくれてるんすけどね」

提督「しかしそれでけでは不安だ。
   とすると、対空火器も発注しなければなりませんね・・・。あと二か月はかかるかもしれません」

工場長「まぁ、余裕でしょう。節約して敵を進ませない程度に抑えればね」

提督「なるべく急ぎますから」

工場長「おう、頼んだよ」

提督「それでは、失礼しました」

工場「うっす」

受話器を掛けると、大きなため息をついた。

提督「(予想以上にまずいな・・・。もしタンクが爆発でもしたらひとたまりもないだろう)」

提督「結構、デカい戦いになるかもしれない」

九月十二日。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「扶桑、山城、赤城、加賀、隼鷹、飛鷹、名取、五月雨、涼風、暁、響、電、雷、夕立、村雨、春雨、秋月、か」

難しい顔をして、提督は名簿を繰っていた。

五月雨「何してるんですか?」

顔を上げると、

提督「いやね、作戦の人員選定をと思って」

五月雨のほうへ顔を向ける。

五月雨「来月のですか?」

提督「んまぁ、合ってるっちゃ合ってるんだが、少し余計に砲台を運ぶ必要が出てきたから。作戦実行は再来月になった」

五月雨「でも・・・、工場、それまでもつんですか?」

提督「さっき電話で話した限り工場長は大丈夫だと言っていたけど・・・、急いで出撃するにはまだ戦艦たちの練度が     たりない」

五月雨「いきなり本番、というわけには行か「無理だ」

提督「今度の戦いはお前が予想するより規模が大きいぞ。生半可な練度じゃこちらがやられる」

五月雨「そんなに、ですか」

提督「大本営も見逃せなかったんだろう。司令部が直々にとばした偵察機によれば、戦艦と空母が少なくとも合わせて10隻   は確認されたそうだ。たぶん、他の鎮守府との共同作戦になる」

五月雨「十隻ですか!?」

提督「その上、Eliteと思しき艦が半数を占めていると来た」

五月雨「うちの鎮守府でいけるんですか?」

提督「練度に関しては二か月間、演習及び近海での実戦演習で急ピッチで進めるよりほかない。そこでだ、・・・重巡洋艦   が、あと二隻はほしい」

指先で机と叩きながら、頬杖を突く。

五月雨「もう資材ないですよ!?」

提督「ぐぬぬ・・・」

提督「他の鎮守府に配属されてなさそうな・・・。五月雨、何か、フリーそうなのいないの?」

五月雨「フリーそうって・・・。あ」

五月雨が手をたたいた。

提督「どうした?」

五月雨「そういえば聞いたんですけど、ドイツから重巡洋艦が来るらしいですよ。それとなんか、青葉、だったかなぁ、そ    んな感じの重巡洋艦がまだ無所属です。
    まぁ、ドイツ艦に関しては海外艦に手を出し渋っている鎮守府が大半なんだと思いますけど」

提督はしばらく考えた後、

提督「・・・どっちにしろそれしかあるまい、さっさと手続きを済ましてしまえ」

五月雨「わかりました」

提督「具体的な編成はやはりもう知らせておいた方がいいだろうな。明日、食堂で食事が終った頃に発表を行おう」

五月雨「了解です」

提督「んじゃ、俺はちょっと街に出てくる」

そういうと提督は、椅子から立ち上がり私服に着替えはじめる。

五月雨「どちらにいかれるんですか?もう日が暮れ始めてますよ」

提督「なに、耳かきを買いに行くんだ。
   それとも、一緒に来たいのか?」

五月雨「行ってもいいなら、行きます」

提督「お前はその服のままで・・・」

すでに着替えていた。
行く気満々だった。

提督「・・・あ、いや、なんでもない。にしてもえらくはしゃぐじゃないか」

五月雨「は、はしゃいでなんかないですよ!早く行きましょうよ!」

玄関へ移動中。舞鶴鎮守府。

秋月「あっ、提督!どこか行かれるんですか?」

提督「ん?秋月か、少し買い物に出かけようと思ってね。
   そうだな、どうだ、鎮守府には少しは慣れてきたか?」

秋月「ええ、それなりには。それで、その買い物」

提督「うん?」

秋月「ご一緒してもよろしいでしょうか?」

思わずいいよ、と言ってしまいそうになってしまった。

あいにく俺はどこぞの小説に出てくる鈍感主人公補正なんてものはない。

提督「すまん、また今度な。今日は五月雨とデートなんだ」

秋月「で、で、でで、でーと、ですか!?」

あたふたと五月雨が提督に詰め寄る。

五月雨「ちょっと提督!?」

提督「ほら早く行くぞ」

五月雨「別に、私は他の子がいてもいいですよ?」

提督「え?」

なん・・・だと・・・。

移動。舞鶴近辺。商店街。

秋月「何を買うんでしょう?」

提督「耳かきだ」

秋月「ほぅ・・・、なるほど」

提督「ふむ、ていうかどこにあるんだ・・・?ってか暑い・・・」

秋月「そりゃあ長袖長ズボンじゃ暑いと思いますよ?」

提督「あっそうか、秋月は知らないんだった」

あっ、という感じで五月雨もうなずく。

五月雨「そういえばそうですね」

秋月「え?あの、何のことですか?」

提督「またみんなが集まったときに話すよ。それまで我慢してくれ」

秋月「わかりました」

早く帰らねば、お肌が悲鳴を上げてしまう。

と、

五月雨「提督!あそこにあるんじゃないですか?」

人ごみの中、跳ねながら指をさす姿はなんともかわいらしい。

提督「それじゃあ見えないだろ。そら、肩車でもしてやる」

五月雨「えっ、えっ提督!?」

あっという間に五月雨は提督の肩の上にのせられていた。

提督「なんだ、怖いのか?」

五月雨「・・・ちょ、ちょっと、怖い、です」

提督「じゃあ降ろそう「いや、いいです」

秋月が若干羨ましそうな顔をしているのには気づかないふりをした。

店内。

提督「これでいいや」

五月雨「もう少し悩んだりしてもいいんじゃ?」

提督「たかが耳かきだろ、別にひとにみせびらかすもんでもないのに」

提督が手に取ったのは、自分で耳をかきやすいよう親切設計が施されたものだった。

五月雨「(まさか私がしてあげたいだなんていえるわけがない)」

しかし秋月は違った。

秋月「でも提督、こちらのほうがいいんじゃないですか?」

と言って、違うものを手にする。

提督「どっか違うのか?俺的にはこっちの方がやりやすそうなんだけど」

秋月「私が耳かきしてあげるにはやりづらいです」

五月雨「うぇ!?」

思わず変な声が出てしまった。

提督「秋月が?」

秋月「私じゃ、だめでしょうか?」

上目遣いで見上げてこられては断れないじゃないか。

提督「いや、だめでは、ないんだけど・・・」

そっぽを向き頬をかいてそんなこと言う。

五月雨「(提督は肝心なところで鈍感になる・・・)」

秋月「じゃあ早く、買いましょう」

提督「そ、そんなに焦らんでもいいだろう」

秋月はニヤニヤしつつ、五月雨は果たして耳かきをしている間何をしていればいいのかと不安になっていた。

帰還。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「なぁ五月雨」

五月雨「なんですか?」

提督「お前耳かきしたかったんじゃないのか?」

手持ち無沙汰にしていた五月雨に足のマッサージでもどうかと頼んだ直後のことである。

五月雨「そんなこと、あるわけないです」

頬を染めながら途切れ途切れに言った。

そこへ、

秋月「はい、提督、終わりましたよ」

提督「おっと、ありがとさん」

頭をポンポンと軽くたたいて、秋月の顔を見ながら言った。

秋月「・・・あっ、いえ、その、ど、どういたしまして」

提督の顔を見た秋月が真っ赤になっていた。

五月雨「むー・・・」

提督「さっきっから何を五月雨は不満なんだよ」

笑いながら席に戻る。

五月雨「いえ、不満なんかじゃないですよ!別に!」

提督「やれやれ、お嬢様はご機嫌斜めじゃないか。
   秋月、もう下がってゆっくりしていいよ」

秋月「はい、失礼します」

ドアが閉まったのを見送ってから、

提督「どれ、髪でも梳いてやるよ」

引き出しから櫛を取り出す。

言うや否や、五月雨は若干顔を緩ませ、膝の上に座った。

提督「(かわいいやつだ、本当に)」





しばらく梳いていると、

五月雨「提督は、怖くなったりしないんですか?作戦のときとか」

提督「どうしたんだ、いきなり?」

五月雨「私は怖いですよ?」

五月雨「敵の弾がとんでくるのを見ると、逃げて提督の膝の上に戻りたくなります」

提督「そうかいそうかい」

さすがにクスッと笑ってしまった。

五月雨「真面目に話してるんですよ!?」

提督「はいはい、そう怒るなよ、どうどう」

櫛を脇に置いて、そっと抱きしめた。

片手を上げると、そのまま頭をなで始める。

提督「・・・日頃こんなことをしていると、俺らが戦争をしているってことを忘れそうになることがあるんだ」

五月雨「え?」

提督「深海棲艦を俺は直接見たことがあるわけじゃないけど、そりゃもちろん怖いんだぜ。
    
   俺の作戦を信頼してくれた上でお前らは動いてくれてる。
    
   でもその作戦に欠陥があったら、お前らは戻ってこないかもしれない」

五月雨「そんなこと「まぁ聞けって」


本文中失礼します作者です。青葉、書き直したはずがなぜか入ってました。青葉好きには申し訳ありませんが、なにとぞ脳内削除のほうをお願いします。




提督「もし戻ってこなかったらどうなるか、そんなこと考えたくはないんだ。    
   
   現場の人間は現場で死亡する危険をはらんでる、でも計画する人間はそのせいで、失敗することで、お前らを失った   りする理由をつくりたくないんだ。

    
   もちろん怖い度合いはお前らとは比べ物にならないかもしれないけどな」

五月雨「・・・はい」

提督「こんな話しをしてたらもう五時半じゃないか、もうみんな食堂に集まりだしてるころだぞ」

そういって海軍服に着替えだした背中を、五月雨はなんとなく見つめていた。

すると、

五月雨「あっ!」

提督「ん?」

五月雨「そういえば、提督に言われて、着替えた後に急いで大本営に電報を送ってたんです!」

提督「なんの?」

五月雨「重巡洋艦のですよ!」

提督「あぁ、それで?それがどうかしたのか?」

五月雨「六時にはつくことになってるんです!」

提督「いつの話だそれ、明後日とか?」

五月雨「今日ですよ!」

一拍おいて、

提督「はぁ!?早すぎだろお前!?」

声を上げた。

五月雨「す、すいません」

提督「どうする、料理とかどうすんだよ・・・」

五月雨「そこですか・・・、でも、どうしましょう!?」

そこで、はたと提督は思いついた。

提督「いや、ひとつ案がある」

五月雨「え?」

移動。舞鶴鎮守府。食堂内。

提督「こういうわけだ、新しい子が来ること、急な話ですまない」

赤城「気にしないでください。ね、加賀さん?」

加賀「ええ」

提督「そういってくれると助かる。
   で、そこでな?一つ、一航戦たるお前らにお願いがある」

加賀「はい、なんでしょう」

提督「今日のおかわり、我慢してくれないか・・・?」

加賀「ん、なんでですか?」

顔には表れずとも雰囲気で若干キレかけているのが分かる。

提督「その、今から急いで作ってもらって間宮さんに迷惑をかけるわけにもいかないだろ?」

加賀「はい」

提督「これから来る二人分のためだ、我慢してくれ!頼む!」

赤城「そ、そういう理由ならしょうがないですけど・・・」

加賀「じゃあ提督」

提督「うん」

加賀「今度何かおごってください」

提督「お、オッケー・・・」

ふっと加賀から危険なオーラが消えた。

そんなにお金を持ってるわけじゃないんだけどなぁ・・・。


そこへ、ひょっこり顔を出してきた人影があった。

目ざとく提督はそれを見つけると、

提督「お、来たか来たか。こっちに来てくれ」

招かれ、すたすたと壇上へと上る。

提督「それでは自己紹介を」

プリンツ・オイゲン(以下、プリンツ)「えっと、私は、重巡洋艦のプリンツ・オイゲン、よろしくね!」

提督「こういうわけだ、みんな、なかよくしてやってくれ。
   プリンツ・オイゲン、だったよね、ありがとう、すきなところにすわっていい」

言うや否や雷がとなりに空いた席を主張し始めた。

誘われるがまま、プリンツはその場へ向かう。

電「重巡洋艦、ここにはいなかったから新鮮なのです!」

雷「それに海外から来たんでしょう?なんかすごいわ!」

提督「ま、まぁ詳しい話は食べ終わってからにしよう」

その光景を見、苦笑しながら、

提督「いただきます」

皆「いただきまーす!」


プリンツ「ここの提督、髪の毛真っ白だけど・・・」

響「そこらへんの話も、全部してくれると思うよ。なんたって他の多くの艦も、最近来た子が多いしね」

ほー、とプリンツは顔をかしげる。

暁「なんか、大きな作戦でもありそうな感じ」


時間経過。

提督「さて、皆も食べ終わったことだし、そろそろ話そう」

プリンツのために急造された壇に向かいながら、適当にアルビノのことやらを話すと、

提督「こんなに急遽新造艦を招いたりしていることに疑問を感じているものも少なくないと思う。それは他でもない、十一   月に予定されている作戦でのことだ」

一旦口を閉じる。

提督「まず、話しておくと、我が鎮守府は、海洋に浮かんでいる製油工場から燃料を輸送してもらっている。それもかなり   の量だ。
   
   問題はその輸送ラインだ。今までも警戒はしてきたつもりだったが、とうとう深海棲艦に見つかってしまった。
    
   奴らはそこを潰そうと躍起になっている。もしそこが途絶えればこちらへの燃料供給も止まり、遠征も頻繁には行    えなくなる。それはなんともよろしくない事態なんだ。
    
   今は俺が念のためにと配備しておいた要塞砲で凌いでいるが、もってあと二ヶ月。

   無論、これはわれ等が製油所へ送る支援物資の準備の期間も含まれている。
    
   大本営より派遣された偵察機によれば敵には相当な量のElite級戦艦・空母が確認されている。そこで我々は、数日   間に及ぶヒットアンドアウェイによる波状攻撃をしかけることとした。
    
   また、本作戦においては、他の鎮守府とも連携をとるよう、大本営より指令が来ている。
    
   次に、作戦における編成内容だ」


皆の顔が一気に引き締まる。

提督「第一艦隊は扶桑、山城、赤城、加賀、プリンツ・オイゲン、秋月。
   第二艦隊は空母機動部隊として、隼鷹、飛鷹、暁、響、雷、電」

そこで、隼鷹が口を挟む。

隼鷹「ちょっとまってぇ、提督!うちら、軽空母だよ!?」

提督「ん?だからどうしたっていうんだ?できないのか?」

隼鷹「できないわけじゃ、ないけどさ・・・」

提督「二ヶ月間みっちり叩き込んでやるさ、覚悟しておくがいいさ」

隼鷹「うぇーい・・・」

返事のようなものを返して、隼鷹は飛鷹となにやら話し始めた。

提督「続いて、第三艦隊は水雷戦隊、名取、五月雨、涼風、春雨、夕立、村雨」

秋月「あ、あのー」

秋月がぴしっと手を挙げた。

提督「秋月には第一艦隊の主要防空担当として動いてもらう。異例だが、異例はつくるものなんだ。まぁもちろん他の艦に   も対空火器は用意する」

秋月「わっわかりました!」

提督「以上だ、詳しい動きなどのブリーフィングは後日、また、定期的に作戦前日まで繰り返し行う。
   なにか、質問のあるものは?」

手は挙がらなかった。

提督「以上、解散」

皆が思い思いに食堂を後にしていった。

がんばって書いたつもりがレス数的に考えると少ない・・・。

あと、地文に関してですが、量はこのままでもよろしいでしょうか?

さすがになくすことはできませんが、少ないほうがいいという方がいればと思いまして。

申し訳ない!まさかスペースが出てきていたとは。

以降改善します。

皆様よいメリークリスマスはお過ごしになられたでしょうか。

私はメリークルシミマスで一人仕事帰りに小説を書いていました。

明日、必ず、投下します。

九月十八日。食堂。ブリーフィングルーム改造後。

提督「今回の作戦においては、我々はとにかく敵の殲滅に専念する。
   
   輸送船の護衛は、先生に頼むことになった。先生の道を切り開くためにも、全火力をもって敵を食い破らなければならない。
   
   主力第一艦隊は、敵の索敵及び、水上艦を発見次第、敵艦種を報告、許可を待たず即砲撃を許可する。

   赤城・加賀には制空権の確保を優先してもらうため、紫電改二を複数開発するよう妖精に頼んでおいた。
   
   空母機動部隊、隼鷹、飛鷹には敵への奇襲のため、天山を用意した。

   赤城か加賀からの航空優勢の報せが入り次第即刻発艦するんだ。

   駆逐艦には、他の敵水上・潜水艦からの護衛を任せる。
   
   水雷戦隊は、機動力を生かした魚雷による奇襲を仕掛けてもらう。
   
こちらに関しては敵発見の報告があり次第、俺の指示に従ってくれ」

その後、詳しい砲撃の連携、艦載機の動きなどの説明が、約30分かけて行われた。

ようやく終わりかと艦娘たちも一息ついたころ、提督の口から爆弾発言が発せられた。

提督「言い忘れていた。本作戦においては、俺も同行する」

五月雨が、呆けたように口を開き、はっと我に帰ると、

五月雨「何をおっしゃっているんですか!?」

提督「いや、そのままの意味だよ」

五月雨「でも、作戦海域上空には敵の艦載機が大勢飛んでいるかもしれないのに!」

提督「工場長と話をしなければいけないんだ」

五月雨「そんな!もし死んでしまったらどうするんですか!?」

提督「そこは少しでもばれないようにと、高高度を時速700kmで飛ばせる機を昔の部下から用意してもらった」

五月雨「でもそんなの海軍には「陸軍から譲ってもらうのさ」

提督「昔、仲が良かった部下がいてね。キ94Ⅱ型を貸してくれることになったんだ」

飄々と答えて見せる提督に、必死に五月雨は食い下がる。

五月雨「でも!舞鶴からじゃ発着なんてできませんよ!」

提督「近くの昔使われてた防空基地の峰山を使わさせてもらう」

五月雨「第一、操縦できるんですか!?」

提督「これもまた昔の話だけど、一時期海軍の水偵を操縦したことがあってな。まぁ、今でもできるかどうかはわかんないんだけど・・・」

五月雨「別に、工場長となんて無線を使えばいいじゃないですか!わざわざ会いに行く必要なんてないはずです!」

提督「深海棲艦に傍受されたらどうする?直接会って、いろいろ話し合いたいのさ。なぁ五月雨、頼むよ」

五月雨「そんなに大事なんですか!?死んじゃったら、どうするんですか!?」

五月雨はもう涙目だった。

提督「・・・まったく、俺は死にゃあせんよ」

困ったように笑いながら、五月雨の頭をなでる。

その時、赤城が出てきた。

赤城「それならば、何機か護衛をつけましょうか?」

提督「そうだなぁ・・・」

抱きついたまま離れようとしない五月雨を見た後、

提督「迷惑にならなければ、お願いしようか」

五月雨をそっと抱き上げ、執務室へ帰ろうとして振り返ると、

提督「そうだ、赤城」

赤城「はい?」

提督「この後の事、忘れてないよな?」

赤城「この後の事・・・?」

提督「お、おいおい・・・。訓練に付き合ってやってくれって、お願いしたはずじゃないか」

赤城「あ、あぁ!そういえば!」

提督「任せてもいいんだよな・・・?」

赤城「え、ええ、もちろんですよ提督!」

提督「すまないけど俺はこれからやることがあるから。くれぐれもよろしく頼んだぞ」

赤城「提督も心配性ですね、大丈夫ですって」

だといいが・・・、などとぶつぶつ呟きながら、提督は去って行った。

赤城「それじゃ、行きましょうか加賀さん」

加賀「はい」

移動。舞鶴鎮守府。大演習場。

赤城「今回は赤城班と加賀班にわかれて対空演習を行います」

隼鷹「あたしたちはどうすりゃいいんだ?」

赤城「赤城班は、私、隼鷹、扶桑、プリンツ・オイゲン、春雨、五月雨、暁、響、村雨。
   加賀班はそれ以外のかたになります」

皆が顔を見合わせつつ、赤城と加賀の後ろへそれぞれ移動していく。

五月雨「あのー、対空演習って具体的にどういうことをやるんでしょうか?」

赤城「飛来する、遠隔操作されている艦載機をひたすら撃ち落とすんです」

五月雨「ひたすら数を重ねるってことですか」

赤城「まぁ、そんな感じです」



加賀班。

涼風「随分テンション高いじゃないか」

秋月「そりゃもちろんですよ!防空駆逐艦秋月、本領発揮です!この長10cm砲ちゃんがいれば・・・!」

涼風「お、おう・・・」

思わず気圧されていた。


再び加賀班。

秋月「素直に狙ったって当たるわけないじゃないですか」

春雨「ご、ごめんなさい・・・」

秋月「少し先を狙うんです。そうすれば信管が作動して、落としてくれますから」

春雨「こ、こう、ですか・・・?」

恐る恐るといった感じで25mm三連装機銃を言われた通り構え、発射した。

秋月「そうですそうです、コツを掴めばむずかしくなんかないですから」

春雨「はい!」

赤城班。

五月雨「扶桑さん、すごいですね・・・」

扶桑「そうかしら、初めてなんですけど・・・」

言いながら次々と艦載機を撃ち落とす姿には恐怖を覚えた。

赤城「私の班は初めての人も相当うまいですね。
   加賀さんのほうは大丈夫でしょうか・・・」

五月雨「加賀さんの班なら、みる限り秋月さんが教えてくれてるみたいなので大丈夫だと思いますよ」

若干苦笑しつつ、加賀班のほうを見ながら言った。


時間経過。

提督「そうかそうか、ならもういきなり演習から入っても良さそうな感じかな?」

五月雨「ええ、大丈夫だと思いますよ」

提督「よしきた、ならまた先生をたよるかな。あの人なら受けてくれるだろう」

言うや否や受話器を取り上げ、

提督「あ、先生?申し訳ありません、またよければ演習をと思いまして・・・、ええ・・・、思う存分しごいてやってください・・・」

九月二十日。移動。舞鶴鎮守府。大演習場。

演習班、扶桑 ・山城・隼鷹・飛鷹・プリンツ・秋月



58「相手は違えど、相手の司令官は憎きあの提督。今度こそ、容赦はしないでち!」

168「いくわよ・・・!」



プリンツ「偵察機より入電、敵艦発見できず」

提督「あの野郎、また潜水艦か・・・。
   飛鷹・隼鷹、爆装準備はどうか」

隼鷹「いつでもいけるよ」

提督「秋月、敵潜水艦の所在は特定できたか」

秋月「十一時の方向、距離は正確にはわかりません」

提督「いいだろう。
   飛鷹・隼鷹、直ちに発艦」

隼鷹「おっけー!いくよ!」


搭乗員α「いやぁ、彗星ですねぇ」

搭乗員β「そうだなぁ・・・。いつまでも九九式じゃあつまんないですしなぁ」

搭乗員γ「全くです。しかしこいつは、全く本当に新品同様。気持ちええです」

搭乗員α「と、目標降下地点ですよぉ」

搭乗員β「ほいじゃあいきますかー」

彗星に装備された時限爆破機雷を次々と海中へ放り込んでゆく。


提督「軽空母の搭乗員ってあんななのか・・・?随分穏やか、っていうか穏やかすぎるだろ・・・」



58「見くびってたでち・・・」

168「本当に初めてなの・・・?」

先生「嘘だろ、そんな、主力艦隊が・・・」

提督「魚雷を当てられたときはさすがに寿命が縮みましたがね」

はっはっは、と誇らしげにむねをはりな胸を張りながら、白々しくそんそんなことを言ってのけた。

第二演習班。名取、春雨、夕立、村雨、涼風。

提督「今回の演習は作戦行動にたいするものとして考えてくれ。基本は弾幕をははりつづけろ。でみ主力兵装は魚雷だ、いいね?」

名取「わかりました!」

夕立「頑張っちゃうっぽい!」


名取「敵空母二隻、駆逐艦四隻」

提督「今度は空母機動部隊か。春雨、夕立、村雨、涼風、魚雷発射準備」

涼風「がってんだ!」

提督「装填している間も弾幕をゆるめるな」

名取「任せてください!」

絶え間ない主砲による牽制射撃が続くなか、敵艦載機の影が見えだす。

春雨「全問発射準備できました」

提督「直ちに対空火器用意しろ、敵爆撃、くるぞ!」

急降下爆撃の凄まじいエンジン音と、機銃が火を噴く音ががなりたてる。

提督「被害は!」

名取「全員損傷軽微です!」

提督「隙を見せるな、魚雷準備、撃ぇ!」

十月一日。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「・・・五月雨、俺はとんでもない幸運にあやかったのかもしれない」

五月雨「どうしたんですか?」

提督「新入りの艦娘たち、初戦からぶっとばしまくってるんだ」

五月雨「はぁ・・・」

提督「なんだよ、随分反応薄いじゃない」

五月雨「いえ、なんかそうなりそうな気がしてたんです」

提督「なにいってんだお前・・・」



時間経過。

提督「五月雨」

五月雨「はい」

提督「言いたいことがあるんだったら言ってくれ。そうもチラチラみられてるんじゃ気が散るんだ」

五月雨「はい、あの・・・、やっぱり、危険ですよ」

なんのことかはすぐにわかる。

提督「別に死にゃあしないさ。護衛までついてるんだ。余程のことがなければ「余程のことが」

五月雨「余程のことがおきたらどうするんですか?」

・・・・こいつは、厄介だな。

提督「信じてくれよ、五月雨」

五月雨「どうやって信じるんです?」

提督「曲がりなりにも俺は提督なんだぜ?早死にするつもりはないし、お前らをおいて死ぬわけにもいかない」

五月雨「感情なんかでどうにかなるものでは「五月雨」

提督「物分かりが悪いぞ。
   護衛もついてるんだ、大丈夫、赤城の妖精なら守ってくれる」

五月雨「それは、そうかもしれませんけど・・・」

提督「こっから一ヶ月、俺も操縦に関してはまたやり直す。油断はしない。
   だから五月雨、そんな顔しないでくれ」

五月雨「・・・死んじゃ嫌ですからね」

俺は死なないよ、そう言って、笑いながら五月雨を撫でた。

そろそろ戦闘シーン。

やっと書ける・・・。大投下、待っていてください。

とりあえず最初から読んで書きまちがいがありましたので、そこから。
戦艦大和出現が数年前とかいてありますが、これは十数年前。数年前では提督の発言に続きません。
今更ですいませんでした。

また、深海棲艦の出現の時期をぼかしているのは「主人公が」知らないからです。
さすがに、指摘がありましたので、大雑把にですが書いておきます。
深海棲艦が出現したのはまだ提督が提督になっておらず、座学を受けていた時代。そのため、意図的に、出現の詳しい時期を言及するのはいまのところ避けています。

それと米軍に関しては回想シーンで第二次世界対戦のころの米軍であり、実際に出てきたわけではありません。回想シーンにおいて混乱をおこさせてしまったようです。

つまり、少し補足しますと、
1 子供時代:第二次世界大戦終戦(敗北、父親特攻。米軍とはこのころのこと)

2 海軍護衛艦隊搭乗時代:艦娘大和出現

3 時期不明:深海棲艦出現&艦娘を対深海棲艦戦力として投入(主人公はまだ上官から指導をうけていた時代)

4 2から十数年後:提督舞鶴鎮守府着任

5 4から4年後:冒頭

描写に齟齬が生じたこと、謝ります。
またなにかありましたら質問してくだされば幸いです。

戦力維持というのは資源のことをおっしゃっているのか、登場した護衛艦、どちらのことをおっしゃっているのでしょうか。

護衛艦に関しては、いわゆる昔運用されていた警備艦のことをさしています。戦力と言うほどの量は想定していませんでした。

資源については、アメリカからの技術供与、他国からの輸入を頼っています。
本文中において、国内の工場の話をしていないのはそのためです。

正直いいますと護衛艦に関しては今考えたものです。
申し訳ありません。

今夜、出します。

申し訳ない・・・!

ここまでくると自分でも笑っちまいましたが、敵を発見しだい即砲撃を許可する。この部分、即砲撃準備、準備の二文字が抜けています。

提督「ならこれでどうだ、俺は作戦開始前にあっちについてしまうっていうのは。
   今はあっちも一時的にではあるけど攻撃もやんでるらしいし」

五月雨「それなら、まだ、いいですけど・・・」

提督「その上護衛もつけりゃじゅうぶんだろ?」

そんな話をしていると、五月雨があっと声を上げた。

提督「どうした?」

五月雨「そういえば、大本営から電報を頂いてたんでした」

提督「おいおい、そんな大切なものを忘れるなよ」

受け取ると、

提督「なんだって・・・?35.6cm三連装砲・・・だと・・・?」

五月雨「えっ!?」

提督「現時点において最も功績を重ねている物に、この装備を贈る・・・だと・・・。なぜ全鎮守府に配備しないんだ・・・。そんなの不公平じゃないか!」

五月雨「ま、まぁ落ち着いてくださいよ」

提督「落ち着いてられるか!
・・・ん?え、あ、いや、なんでもない」

五月雨「え?」

提督「そうだったそうだった。俺としたことが。こんなことを忘れるとは」

五月雨「ちょっと、なんなんですか?」

提督「なに、身内の話だよ。気にしなくていい」

五月雨「そう、なんですか?」

提督「そうなんだよ」

十月十五日。舞鶴値鎮守府。ブリーフィング室。

提督「作戦開始まで残すところあと半月となったところで申し訳ない。
   
重大な作戦変更がある。注意して聞いてくれ」

提督「本作戦は従来われわれが先行する予定だった。だが、大本営からの報告によると、こちらに向かっている敵艦隊がひとつ

確認されたらしい。
   
   そこで、急遽先生の、舞鶴の我々に少しでも被害を出したくないとの意向により、牽制攻撃艦隊として、重巡洋艦隊が派遣されることになった。
   話によると艦娘のほうから申し出があったそうだが・・・。とにかく、その意向を支持して、大本営から支援機が飛ばされるそうだ。

   また、確認されていないとはいえ、警戒をするに越したことはない。
   
   水雷戦隊にはそれぞれ九十三式・三式水中探信儀、三式爆雷投射機を配備しておいた。
   
   以上、変更はその点のみで、我々の作戦に直接の影響はない。

   彼女らの意思を無駄にすることなく、今までどおり先の敵艦隊殲滅を受け持つことになっている。」


一同が頷いた。




時間経過。

提督「最後に、この前同行すると言ったが予定変更だ。万全を期するためにも、作戦開始前に俺はここを発つ。作戦開始までには指揮を執るための準備をしておく」

複雑そうな顔をしてないものなどいなかった。



隼鷹「このブリーフィング。最初こそやる気あったけど、続くとなかなかつらいもんだね・・・」

飛鷹「隼鷹、めったなこといわないでよ!」

愚痴をこぼす隼鷹を飛鷹が嗜めていた。

提督「悪いね、これもみんなのためと思ってやってるんだけど」

誰かと振り向いた隼鷹の顔が固まった。

提督「別に皮肉で言ったつもりはないんだ、そんな身構えないでくれ」

提督「・・・とにかくも、後はもう一回を残すのみ。作戦前日は休んでほしいから、次は30日だな。
   見放すようで悪いけど、演習、頑張ってくれ」

飛鷹「いえいえ、任せてください!」

隼鷹「うん、任せといて。大船に乗った気持ちでいてくれて構わないからねー」

提督「それは頼もしいもんだ」

少しだけ笑って、提督はその場を後にした。

・・・よもや提督たる自分が怖がっているなどと、言えるはずがあるだろうか。

十月三十日。舞鶴鎮守府。執務室。午後九時。

たった今最後のブリーフィングが終了した。

手が震えていたのはばれていないだろうか。

いつもより手を忙しなく動かしているのを不自然に思った者はいるだろうか。

艦娘には、少し早いがもう自室で寝るよう指示しておいた。

・・・五月雨もだ。

しかし、それほど年齢があるとは言えない五月雨も、真剣な顔で俺の説明を聞いてくれた。

まだ新米の俺の説明をだ。

なんにしても俺がこんな調子でいいいわけがない。

こんな俺にできるだろうか。

なに、たかが戦艦じゃないか。

・・・違う、エリート級だった。

俺の指揮なんかで太刀打ちできるだろうか。

駄目だ、ますます怖くなってくる。

作戦前々日に、執務室で両手で顔を覆っているような俺にできるのだろうか。

明日、製油所へ飛び立つ。やはりやめるべきだったか。

必要に迫られているとはいえ、作戦前日に一番皆をはげましてやりたいのは俺なのに。

皆に話さねばならないのはわかっている。なぜそこまでして同行するのかと問い詰められたら、言い逃れができる自信がない。

ただ、製油所に新兵器の設計図がある、急遽召集された先生の牽制攻撃部隊の指揮を執るため、そこにいる妹のためだと言えばいいだけなのだ。こんな御大層な理由ぐらい、さっさと言ってしまえばいいものを。

牽制部隊の指揮は他の鎮守府の提督に任せてしまいたかったが、まだなり立ての俺にそんなことができるはずもなく。あれよあれよと押し付けられてしまった。


・・・終戦後、首をつった母の遺書を読んで、初めて妹がいるのを知った。

父の不倫相手の子供らしかった。

その子とは手紙でしか話したことがないが、聞く限り製油所で働いているらしい。

実際は一週間前には発とうと思っていたのだ。

それなのに、深海棲艦ときたら、微妙なタイミングで攻撃を仕掛けてきてしまった。

何はともあれ明日の早朝に発てば、丁度艦隊に追随して飛行できるだろう。

万全を期するなどとどの口が言ったのだ。火中に飛んでいくだけなのに。

五月雨の心配している顔を思い出す度、胸が締め付けられる。

俺はどうすればいい。俺にできるのか。

あぁ、堂々巡りじゃないか。結局は怖いだけなんだ。

いくら怖いからといっても、最後にはやりとげなければならない。

いつまでも先生に心配されているようではいけない。俺は艦隊の指揮を執る立場なのだ。

そう、結局は。

やるしかないんだ。

同時刻。五月雨自室。

提督が怖がっているのは手に取るようにわかった。

他の皆は気づいていなかったかもしれないけど、わかる人にはわかるはずだ。

隅でみていた間宮さんも気づいていたはず。

さっき執務室へ向かおうかとも思ったけど、ドアをあけかけたところで間宮さんが向かっているのを見てやめた。

ここは間宮さんに任せるのが一番なのかもしれない。

というか、なんで私はこんなに胸が苦しいのだろう。

舞鶴鎮守府。執務室。午後九時半。

扉がノックされた。間宮さんだろうか。

提督「どうぞ」

間宮「提督、さん・・・?」

提督「間宮さんじゃないですか、どうしたんです?」

間宮「いえ、その・・・」

先を言うかと思ったら、いきなり抱き付かれた。

提督「ちょっ、間宮さん!?」

間宮「やっぱり、明日の飛行はやめてほしいんです・・・!」

泣いているようだった。

急展開すぎて何を言ったものか考えてしまう。

提督「間宮さんまで・・・」

間宮「お願いします!」

この鎮守府は抱き付くのが習慣にでもなっているのだろうか・・・?

提督「間宮さん、きっと大丈夫ですから。心配しないでもいいですよ」




そこでハッとした。

間宮「すいません、提督さんをはげましにきたのに」

提督「お気持ちだけもらっときますよ」

体を離そうとする間宮さんを抑え、

提督「こうしているだけでも十分楽になりました」

そういって、今度こそ間宮さんを送り返した。

十月三十一日。午前四時。峰山防空基地。

滑走路はエンジンの唸るような轟音で満たされていた。

そこに提督以外に人影はなかった。

提督「(妖精を連れて行くわけにいかない。無駄な資材の消費は避けるべきだ)」

操縦席に乗り込むと、エンジンの回転数を徐々に上げていく。

果たして、無傷で行けるかどうか。

作戦開始までにつけば、心配をかけさせるのは少しですむだろう。やらなければ。

同日。午前七時。舞鶴鎮守府。

五月雨「・・・ひどいです」

涼風「これは、さすがに・・・」

皆困惑していた。朝皆が起きたら、提督だけがいなくなっていたのだから。

ただ、一人残らず提督が急いだ理由を知らないのが不幸中の幸いだった。

時間経過。海上上空。キ94Ⅱ型機内。

提督「こちらは舞鶴鎮守府責任者だ。聞こえるか」

利根「うむ、問題ないぞ」

提督「宴会のとき以来だな」

利根「そういえばそんなこともあった」

提督「何はともあれ、今日はよろしく頼む。
   利根・筑摩・愛宕・高翌雄・摩耶・鳥海。問題ないな?」

筑摩「問題ありません」

提督「各員単横陣をとってくれ」

提督が先行し、S字に飛行をしつつ、艦隊の指揮を執る。

提督「このまま何もないままいければいいんだが・・・。実は味方でした、的な」

利根「そうはいかないんじゃないかのう」

提督「そりゃそうだよなぁ・・・、ん?」

なにやら水平線上に黒い影が見える。影は一つしか見えない。

このあたりに島やら何やらは地図を見る限りなかったはずだ。ならば、

提督「総員戦闘準備、陣形、単縦陣をとれ!」

利根「皆の者、聞こえたな!」

徐々に高度を上げていき、偵察に入る。

提督「敵艦は、戦艦一隻、重巡洋艦ハ級一隻、軽巡洋艦ロ級四隻。
   エリート級はいないようだ。おそらくこれが確認された艦隊だろう。
   電探で確認できたか?」

利根「ばっちり見えるぞ」

提督「敵は単縦陣。軽巡洋艦が先頭のようだ。今回ロ級に関しては前から一番、二番、三番、四番と呼称する」

提督「敵艦隊依然速度変わらず、突っ込んでくるぞ。だが、すれ違う前に戦艦以外の奴は蹴散らしてしまいたいな」

そこまで言うと、

提督「全員主砲発射準備!」

利根「了解、発射準備!」

提督「利根、筑摩は一番を狙え!愛宕、高翌雄は二番、鳥海は三番、摩耶は四番だ!」

それぞれが、砲撃目標を修正する。

提督「撃ぇ!」

両艦隊が斜めに向かい合い、海上で砲炎が光るのが見える。

提督「弾着・被害を報告しろ!」

利根「敵軽巡洋艦四隻撃沈を確認、愛宕が被弾!損傷は小破!」

愛宕「んん、ちょっと油断しちゃったみたいね~」

提督「第二射用意しろ!」

利根「了解、第二射用意!」

提督「愛宕・高翌雄は目標敵重巡洋艦、それ以外のものは目標敵戦艦!」

そのとき、敵戦艦の大口径主砲が火を噴いた。しかし、全砲門ではなく、搭載された三門のうち一つだけだった。

利根「なっ!?」

提督「一撃目でこれか・・・、やってくれるじゃないか!」

筑摩の動力部分から煙が上がっていた。

筑摩「直撃は避けましたけど、掠ったみたいです!」

提督「動力低下は無視できる程度だな。良かった。筑摩は後ろに下がれ!
   全砲門、発射!」

利根「戦艦損傷軽微、重巡洋艦、弾着確認できず!」

提督「直ちに魚雷発射準備!」

利根が復唱する間もなく、敵戦艦の残り二門が利根と摩耶を捉える。

提督「敵が砲撃準備に入った!全員取り舵一杯!直撃弾を受けるな!」

再び大噴炎。

利根「全員被弾なし!繰り返す!損傷はゼロ!」

そして、両艦隊が綺麗に交錯する瞬間、

提督「摩耶、鳥海は重巡、他は戦艦を狙え!」

利根「了解、目標、敵戦艦!」

摩耶「重巡、だな!」

提督「撃ぇ!」

魚雷が敵のわき腹へ突っ込んでいく。

提督「・・・はっ、いまさら回避行動をとったって遅い!」

次の瞬間には、壮絶な水飛沫が上がり、収まったと思ったときには、そこにはなにもいなかった。




提督「久しぶりに叫んだぜ・・・」

利根「ふぅ・・・、久々に興奮したのう。にしても、提督の指揮はうちのとは一味違っていいものだな」

提督「・・・?
何を言ってるのかさっぱり分からんけど、各員単横陣に戻ってくれ。帰投する」

筑摩「了解しました」

利根「しかし、これじゃあ牽制どころじゃないではないか。潰してしまったぞ」

提督「まぁ、いいんじゃないか、牽制以上のことができてよかったよ」

操縦席から見ると、夕日が見えた。

提督「そうこうするうちにもう日が暮れ始めてるな・・・。危うく夜戦に入るところだった」

利根「なにかいけないところでもあるのか?」

提督「俺は夜目があんまり利かないんだよ」

そういえば、窓に紫外線遮断効果を付与するようには言ってなかった気がする。

部下が気付かなかったら今頃俺はどうなっていたのだろう。

提督「ていうか、見えてるな。製油所が」

利根「そうかの?わしには見えんが」

提督「あぁ、俺は上空だから見えるのか」

筑摩「あとどれくらいなんでしょうね?」

提督「さすがに豆みたいにちっさいけどな・・・。
それじゃ、各員道中気をつけろよ。俺はこのまま向かう」

利根「うむ、提督も気をつけるのだぞ」





提督「こちら舞鶴責任者、着陸許可を」

管制員「了解、着陸を許可する」

しかし、

管制員「いや待て。提督、ただちに着陸を中止せよ。繰り返す、直ちに旋回せよ!」

提督「え?いったい何を「急げ、死にたいのか!?」

慌てて機体を傾ける。だが、間に合わなかった。

管制員「こちら管制塔。司令部、聞こえるか!?」

工場長「何があった」

管制員「対空迎撃翌用意!敵機来襲!繰り返す!敵機来襲!」

筑摩「そんな!?提督、聞こえますか!?」

提督「風防の留め金をやられた!だめだ、出れないぞこれ・・・ッ!」

利根「すまない、もう少し気をつけていれば「そんなことを言っている場合じゃない!」

提督「くそっ、やつら一体どっから来やがった!」

旋回する機の視線の先で、切り離された増槽が落下していくのが見えた。

提督「そうかいそうかい、決死隊ってやつかよ!この製油所にそこまでするか!」

状況確認のために後ろを振り向こうとした提督の目が見開かれた。

翼が炎上している。

提督「こんな結末、あって、たまるかよ!」

必死に風防をこじ開けようとするが、ゆがんでいるせいでびくともしない。

利根「提督!」

瞬間、提督が乗っていた機体が爆発した。

体中になにかが刺さっている。血が止まらない。

骨がかなり折られていた。それでもなんとか爆発寸前つかみとった落下傘を開く。減速の衝撃だけでも痛みのせいで意識が刈り取られそうになる。

どうやら敵機の数はそれほど多くはなかったようだった。すでに騒ぎは収まりつつある。

落下傘を見たらしい、救護班が落下していく提督の先で、毛布と担架を抱えて待機していた。

提督「全然笑えないぞ、これ」

担架に乗せられる直前まで、なんとか目を開けていたが、もう限界だった。

時間経過。製油所。医務室。

提督「ん」

工場長「あ、起きましたか」

提督「今は何時だ?」

工場長「日付変更線をこえたところっすよ。妖精さんが全部やってくれました」

提督「彼女らの指揮を執る準備は「まだ動いちゃだめっすよ」

工場長「作戦開始ンときになったら鎮痛剤を打ってもらいましょう。さすがに指揮を執らないわけにいかないんすよね?」

提督「・・・」

静かに頷く。

工場長「電話のときと口調が違うのは、なかなか慣れられるもんじゃないっすよ、やっぱ」

提督「電話だとなんか、自然と敬語になっちゃうんだ」

工場長「彼女らにこれ見られたら、どうなるんすかね?」

悪そうな笑みを浮かべながら、提督の体を見る。

そういったところで医務室の扉が開いた。

??「あのー、お兄さん・・・?」

提督「おや?まさかあなたが「そうですそうです」

妹「お兄さん、大丈夫ですか?」

提督「あぁ、大丈夫だ、うん、近いぞ近いぞ」

顔を覗き込んできたせいで、思わず顔が赤くなってしまった。

俺の妹がこんなに綺麗な・・・、可愛いかったとは・・・。

妹「すごい心配したんですよ。来るのかと思って喜んでたら、こんなことになってしまって」

こんな華奢そうな女の子が製油所の一体どこで働いてるって言うんだ・・・?

妹「でもお兄さん本当に真っ白なんですね。女性かと思っちゃいました」

どこにも油汚れは見当たらない。コスプレで作業着を着ているようにしか見えない・・・。

妹「あの、聞いてますか?」

提督「あ、ああ聞いてるぞ。いや、なんだ、その、よろしく」

手を挙げたら絶対に痛いので声だけで挨拶しておいた。

妹「この後もなんかやることがあるって聞きましたけど、無理しないでくださいね?」

提督「心配しなくていいよ。激しく動くわけじゃない」

果たして大声を出そうとするだけで胸が痛い状態でいけるだろうか。

提督「とりあえず俺は寝るよ。五時ぐらいになったら起こしてくれ」

妹「午前ですか!?」

提督「そう、だけど・・・」

妹「そんな、寝てなきゃだめですよ!」

さっきっから我関せずといった感じの工場長に助けを求める。

工場長「まぁまぁ妹さん、妖精がついてれば大丈夫っすから。さ、いきましょう、ね?」

そっと腕を引っ張っていく。

妹「でも・・・」

提督「いいからいいから、別に死ぬわけじゃないんだし」

妹「そういう問題じゃ」

言い終わる前に、扉がしまった。

提督「・・・マジで五月雨たちに見られたらどうすんだよ、これ」

作戦のことよりもそっちのことを心配し始めていた。

十一月一日。午前六時半。製油所臨時司令室。

提督「モルヒネってこんなに効くんだな」

工場長「だからって立っちゃだめっすよ?」

提督「お前はお母さんかよ」

慎重に周波数を合わせると、おそらく舞鶴の司令室で待機している五月雨へ向け喋った。執務室に置いておいた手紙を読んでいてくれれば、だが。

提督「こちら製油所司令部。五月雨、聞こえるか?」

返事がない。

提督「いるんだったら返事をしてくれ」

沈黙。

提督「お、おいさみだ「ひどいです」

五月雨「どうして何も言ってくれなかったんですか!?ひどいです!」

提督「見送るのを許したらあの手この手で妨害しようとしたんだろ、どうせ?」

苦笑しながら、返事をする。

五月雨「そりゃそうですよ!」

率直な回答に思わず窮してしまった。

提督「悪かったよ」

五月雨「?」

提督「悪かった。こっちにきたらなんでもしてやるから」

五月雨「なんでもですか?」

提督「おう。だから準備をしてくれ。一応資材輸送の時間を早めるよう手配はしておいたが」

五月雨「みんなもう補給もし終わって港に出てますよ」

提督「それならよかった」

五月雨「この無線も聞いてると思います」

扶桑「提督・・・?なんでもって言いましたよね・・・?」

赤城「期待してます」

暁「電、いい加減泣きやみなさいよ」

電「な、泣いてなんかないのです!」

提督「・・・なにはともあれ期待しとけ」

一拍おくと、

提督「作戦規定にのっとって、暗号回線を使用する。」

提督「舞鶴連合艦隊、第三警戒航行序列にて、作戦開始」

扶桑「了解」

時間経過。洋上。

扶桑「現在製油所までの道のりの、三分の一をこえたところを航行しています」

提督「偵察機は?」

扶桑「作戦通り交互に飛ばしていますが、今のところ報告はありません」

提督「後ろについている輸送船団も問題はなさそうですね。先生?」

無線で呼びかける。

先生「全く以て問題ない。我々はここから見物させてもらうとするよ」

長月「それは少し、不謹慎だろ・・・」

ため息とともに長月の声が挿まれる。

扶桑「それよりも、提督?」

提督「どうした?」

扶桑「随分声に張りがないような気がするんですが「気のせいじゃないか?」

扶桑「そう、でしょうか?」

提督「俺はぴんぴんしてるぞ。扶桑のほうこそ疲れてるんじゃないか?」

扶桑「・・・?」

随分早口になったじゃないか、俺よ。

コホンと誤魔化すように咳払いする。

提督「私語は慎めよ、扶桑?」

扶桑「すいませんでした」

山城「ちょっと、提督?調子に乗らないでください」

提督「聞こえなかったのか?私語は慎め」

山城「ぐ・・・」




緊張した沈黙の中、突然、

扶桑「偵察機より報告!敵艦隊を捕捉しました!」

提督「やっとおでましか。艦種を報告しろ」

扶桑「空母ヲ級二隻、戦艦二隻、重巡洋艦二隻。いずれも従来の敵艦です、エリート級は確認されず」

提督「赤城・加賀?」

加賀「とっくに準備ならできてるわ」

提督「直ちに発艦。水雷戦隊、聞こえるか?」

名取「はい、聞こえます!」

提督「敵の位置は捕捉できたな?」

名取「はい、問題ありません!」

提督「魚雷を発射しろ、偏差射撃だ。訓練の成果の見せ所だぞ」

名取「わかりました!」

提督「第三艦隊回頭、魚雷全門発射!」

名取「いきます!」

提督「(酸素魚雷なら、届く距離のはずだ)」




搭乗員「紫電改二かぁ、いいなぁこれ!」

搭乗員B「速度がちげぇんだよ、速度が・・・」

搭乗員「口調、気をつけろよ」

搭乗員B「おっと」

搭乗員C「まもなく敵艦載機との交戦区域に入ります」

搭乗員「おうおう、爆撃しか能がないだなんて、思ってくれるなよ!」

搭乗員B「行きますよ!」

扶桑・山城・プリンツによる凄まじい弾幕と、秋月の継続的な対空射撃が続く。

扶桑「魚雷命中を確認!重巡洋艦二隻撃沈。私たちの砲撃により、戦艦一隻、空母一隻の撃沈を確認」

提督「赤城、どうだ?」

赤城「航空は優勢です、今ならいけると思いますよ」

提督「第一艦隊、撃ち方やめ!
    隼鷹・飛鷹、飛ばせ」

隼鷹「待ってました!」


搭乗員α「天山・・・、夢のようですなぁ・・・」

搭乗員β「彗星とは違う、この感覚。いやぁ・・・」

搭乗員γ「行きますよーみなさーん」

搭乗員α「いっちょ、空母でも、潰してきますかねぇ」

飛鷹「敵空母一隻、撃沈を確認、敵戦艦大破炎上!」

提督「扶桑!撃て」

扶桑「わかりました」

一度、35.6cm主砲による斉射音が響き、戦艦は沈められた。

夜戦にもちこむことなく、昼のうちに行われた出来事だった。


提督「なかなか出だしは幸先がいいな」

五月雨「みんな無傷です」

提督「といっても、まだ道のりは長いぞ。この先どうなるかわかったものじゃない」

扶桑「今のところ、敵発見の報告はありません」

提督「しかしおかしいな・・・、重巡洋艦は発見されなかったはずなのに」

扶桑「・・・そういえばそうですね」

提督「さすがにすべてを把握するのは無理だったってだけだといいが」

扶桑「巡回しているのか、それとも進行ルートを予想でもしているんでしょうか」

提督「さぁなぁ、奴らの思考パターンは一向に読めない」


時間経過。

提督「すっかり日が暮れてしまった・・・」

扶桑「ええ」

提督「偵察機はあてにできないだろう。各員、電探の反応に細心の注意を払うように」

扶桑「了解」

名取「あれっ?」

提督「名取、何か見えたか?」




ちょっと休憩しますね・・・。また何時間か経ったら投下します。

もう少し行きます。

名取「いえ、今何だか、水中から音が聞こえた気がするんです」

提督「・・・どんな音だった?」

名取「なんというか、小っちゃいモーター音のような・・・?」

提督「名取、よく捉えた。
総員、第一警戒航行序列をとれ!対潜「ちょっと待ってください!」

扶桑「電探に反応有り!十二時の方向!感二、敵艦種は不明です!」

提督「くそ、挟まれたか!」

扶桑「申し訳ありません、もう少し早く気づいていれば・・・」

提督「悔やんでいる暇はない。
名取!貴艦隊は直ちに対潜戦闘に入れ!いいな!
第一艦隊は直ちに砲撃開始!」

名取「りょ、了解!」

第一艦隊が迎撃を開始する。

提督「五月雨、敵潜水艦の位置をつかめ次第爆雷を投射しろ!数は報告しなくていい!
   扶桑、弾着報告!」

扶桑「提督!敵艦載機がっ」

提督「そんな馬鹿な!夜に艦載機を飛ばせるなど、エリート級ではそれは確認されていなかったはずだぞ!」

加賀「どうしますか、提督」

後ろには潜水艦隊、前方には少なくともエリート級以上のの空母が複数いる。

提督「夜に飛ばすのは無謀だろう。
第一、第二艦隊は直ちに艦砲射撃を中止!対空戦闘に入れ!」

しかし、すでに潜水艦からプリンツへ向け魚雷が発射されていた。

プリンツ「うわぁ!ぎょ、魚雷!?なんでこんなに、直撃はしませんでした!」

提督「狼狽えるな!名取、そっちはどうだ!」

名取「潜水艦四隻の爆発を確認しました、被害は軽微!」

爆雷とソナーがなければどうなっていたことか。

提督「直ちに転進!第一・第二艦隊の前へ出て援護しろ、魚雷発射準備だ!
   秋月、プリンツ、魚雷は撃てそうか?」

秋月「すいません、対空射撃だけでも精一杯です・・・!」

プリンツ「こっちはなんとか撃て・・ます!」

提督「第二艦隊、そっちはどうだ!」

隼鷹「こっちは暁ちゃんたちが頑張ってくれてるから、ギリギリって感じだねぇ!」

こうして被害を確認している間にも、少しずつ被害は増加していく。

提督「水雷戦隊全発射管開け!」

名取「準備完了!」

提督「放てぇッ!」

だが、そう上手く行くはずも無く、

扶桑「あっ」

提督「どうした?」

扶桑「副砲に被弾、砲塔が動きません!」

提督「砲塔は装甲が薄いからな・・・」

名取「魚雷弾着まで、あと10秒!」

提督「外してくれるなよ・・・ッ!」

山城「姉さま、大丈夫ですか!?敵艦反応、四隻消滅を確認!」

提督「水雷戦隊、後ろに下がれ!第一艦隊、主砲発射用意!」

扶桑「っ!主砲発射用意!」

提督「撃ぇ!」

主砲の轟爆音の後、しばし沈黙。

扶桑「敵艦反応、すべて消失!」

その声に一息つくと、

提督「・・・各艦隊は、被害状況を報告せよ」

扶桑「第一艦隊、私、扶桑が中破、秋月さんが小破」

隼鷹「こっちは駆逐艦たちのお蔭で被害はなしだよ」

名取「潜水艦の魚雷を受けて、皆さん、軽微ですがダメージを受けました」

提督「小破にはいたらなくてよかったよ・・・。さて、どうしたものか」

扶桑「動力は問題ありません、まだいけます」

提督「しかし、そうはいってもなぁ」

山城「そうですよ、姉様。大事を取らないと「足は引っ張りませんから!」

提督「そういう問題じゃないだろう。旗艦である扶桑がそこまで被害を受けてしまった以上、撤退しなければ」

尚も扶桑は食い下がる。

扶桑「提督、お願いします。ここで引き返したら、製油所の皆さんも、もしかしたら提督までいなくなってしまうかもしれないなんて、いやです!」

提督「・・・」

提督「・・・総員、第二警戒航行序列。
第一艦隊最大戦速、他はそれに続け」

山城「何を考えてるんですか!提督!」

提督「扶桑は後ろへ移動しろ」

扶桑「しかし「下がれ」

扶桑「・・・了解」

提督「現時刻を以て連合艦隊旗艦を山城へ引き継ぐ」

山城「絶対に、姉様は私が守りますから」

提督「今貴艦隊は道程の半分を超えたところだ。
   戦艦・空母少なくとも4隻は最初の戦闘で沈めた。だがさっきの奴らの艦種がわからないな・・・」

五月雨「そうですね・・・」

名取「あ、あのっ」

提督「ん?どうした名取」

名取「さっき、魚雷を発射したときに少し見えたんですけど・・・。空母二隻がいました」

提督「なに、見えたのか?」

名取「あの形は、空母以外ありえないと思います!」

提督「よく見えたな・・・。
それで戦艦特有の大口径主砲による砲撃は確認されなかったとすれば、あと残り四隻はいることになるのか」

隼鷹「でも今みたいに行けば案外行けるんじゃない?」

提督「そしてさっき沈めた空母がエリート級・・・?」

五月雨「違うと思います。今まで戦ってきた中で、夜戦でも攻撃をしてくる空母はフラッグシップ級しか確認されてません」

提督「大本営によればフラッグシップは確認されていないんじゃなかったか?」

五月雨「そうですが・・・、今、現れたのは事実です」

提督「エリートかフラッグシップかも分からない戦艦と空母があと四隻はいるってことか」

五月雨「そうなると思います」

提督「そこまでの戦力をどうして投入するんだ・・・。
・・・まさか、しかしどうやって・・・」

思わず声に出してしまった。

五月雨「え?何がですか?」

提督「えっ?あ、いや、別に大したことでは「隠し事はよくないですよ」

五月雨「話してください」

提督「後でって訳には、いかないよなぁ。
   目的地の製油所には兵器関連に詳しい技術者が結構いてね。新しい装備の開発を頼んでいたんだ」

五月雨「何を頼んだんです?」

提督「この前大本営が試製35.6cm三連装砲を開発したのはおぼえてるよな」

五月雨「ええ、なんか提督がおかしなことを口走ったときのことですね」

提督「お、おう、そうだよ。実はなぁ、あの案はすでに俺が考えていたのだ」

五月雨「・・・まさか」

提督「全設計を製油所の技術師たちが担当していてな・・・。すでに、完成形が保管されているんだ」

五月雨「ええ・・・」

提督「どこでバレたのかな・・・、さっぱりわからん」

五月雨「でも、その三連装砲ってそんなに強いんですか?」

提督「さすがに41cm砲には適わないが、35.6cmを主砲とする扶桑型の火力を上げるにはあれしかないんだ」

五月雨「で、それがバレたと」

提督「なんでバレたのかねぇ・・・。
   うちの鎮守府は大してそんな戦力を持ってないんだがなぁ。不安要素はすべて潰していくつもりなのか」

五月雨「そんな大事な話、もっと早く言ってください。
あ!忘れてましたけど。
ちゃんと今回の事全部、詳しく説明してもらいますからね」

提督「わかってるよっと。あっ!?」

ふとした拍子に背伸びをしようとしてしまった。

五月雨「どうしたんですか!?」

体中に鉄片が突き刺さったときの痛みがぶり返してくる。

提督「(さすがにモルヒネ突っ込んでも無理だったか)」

五月雨「どこか悪いんですか!?」

提督「すまん、食あたりでもしたかもしれない」

五月雨「なんですかそれ・・・」

近くに置いてあるベッドに静かに横たわる。

提督「話はこれぐらいにしておこう。総員、夜が明けるまで警戒を怠るな。偵察機が飛ばせない以上、突然の接敵が有り得る」

山城「了解です」

沈黙のまま、長い時間が過ぎた。




遠くの方で太陽の光が覗き始める。

呻き声を聞いて駆けつけた工場長が心配そうに提督を見つめる。傷口が開きかけているのかもしれない。

その静寂を破ったのは山城の緊迫した声だった。

山城「偵察機より入電です。十二時の方向に、戦艦1隻、空母三隻、ほか二隻は確認できず、おそらく潜水艦であるとのことです」

提督「魚雷、来るぞ」

山城「回避します」

一時的に、隊列が乱れてしまったが、敵艦に気取られた気配はない。

提督「第二警戒航行序列。水雷戦隊は潜水艦をつぶせ」

名取「いきます!」

提督「赤城、加賀、全機発艦、空母に波状攻撃をしかける。
   扶桑・山城は戦艦を狙え、残っている弾薬をすべて撃ち尽くせ。
   プリンツ・秋月、第二艦隊は弾幕を張り続けろ」

ゆっくり息を吸うと、

提督「弾薬をすべて撃ち尽くす勢いでいけ。ここが正念場だ」

重く、低い声でそう言った。

提督「(一艦隊ずつ撃破するのに精一杯だとおもって、一度母港に帰りつつ出撃を繰り返すことになると思ってもうひとつの作戦も立てておいたが・・・。このままいけるか)」

名取「私が敵をひきつけます!その間に皆さんは潜水艦を!っっ!」

山城「名取さん!大丈夫ですか!」

名取「な、なんとか!」

五月雨「爆雷投射完了しました!」

涼風「あたってくれよー!」

水面が、爆発で盛り上がる。

夕立「いけたっぽい!?」

村雨「まだわからないよ!」

五月雨「大丈夫、敵艦反応ありません!やりました!」

涼風「い、いったぁい!」

名取「第三艦隊、名取・涼風大破です・・・!」

提督「後ろに下がれ!後方からの援護射撃に切り替えろ!」

名取「了解!」

加賀「まずい・・・、制空権をとられてしまうかもしれない」

少しずつ減っていく味方機を見上げながら、不穏なことを口にする。

赤城「だめですよ加賀さん!諦めちゃいけません!」

赤城の声に、我に返る。

加賀「ええ、そうでした。鎧袖一触、問題ないわ」



搭乗員B「先輩!大丈夫ですかッ」

翼を折られ墜落している機を見、叫んだ。

搭乗員「おいおい、妖精らしくないぞ。戦いに集中しやがれ」

搭乗員B「でも、そのままでは!」

搭乗員「いちいち味方が死んでるのを気にしてたらやってらんねぇぞ」

搭乗員B「そんなことを言っている場合じゃ「つべこべ言ってる暇があったら敵機を落とせ!」

搭乗員「いつまでも甘ったれたことほざいてんじゃねぇぞ!」

搭乗員B「くそがあああああああああああああああああッ!」

機首を上向かせ、高度を上げていく。



提督「山城、戦艦はどうだ!」

扶桑「だめです、全然砲撃が通らない!装甲が厚すぎます!」

提督「(フラッグシップだとそこまでいくものなのか・・・?)」

隼鷹「提督!見てるだけじゃたまんないよ!」

提督「被害は避けたかったが、仕方がない!隼鷹、飛鷹、発艦!」



搭乗員α「舞鶴、万歳!」

搭乗員β「特攻隊員にでもなったつもりかね」

搭乗員α「いきますよー!」

搭乗員γ「はぁ・・・」


提督「(まだ戦闘開始から一時間もたってないってのに・・・)」

マイクを離すと、

提督「工場長!」

工場長「はいはい、なんすか?」

提督「ここの砲台の射程距離はいくつだ」

申し訳なさそうに工場長が言った。

工場長「さすがに、41cm榴弾砲でも、あそこまでは届きそうにないっす。戦闘機を飛ばしますか」

提督「いや、その間にここが攻められたら元も子もない話だった。
   今のは忘れてくれ」







時間経過。

艦隊は、損亡こそ出していないものの、皆が疲労し始めていた。

戦闘開始から瞬く間に戦力を削られた。

今はひたすら防衛に徹している。

そうしている内、さっき見え始めていたはずの太陽が、見えなくなってきている。

山城「扶桑、赤城、飛鷹、隼鷹、暁、電、秋月、大破!プリンツ中破!
   提督、このままでは!」

提督「非常事態に対する作戦001を敢行する!」

万が一、戦局が著しく不利であり、被害が甚大である場合にのみ、後ろにつく輸送船を護衛している先生の艦隊に応援に来てもらうものだ。

本来ならば、輸送船の護衛に穴が開くようなことはしてはならなかったが、非常事態に限るとして、先生が提案したものだった。

先生「了解、作戦001を開始する。19、168、58、8、行けるか!」

19「任せて、なの!」

提督「プリンツ、他駆逐艦、魚雷発射準備!」

先生「提督の号令に続け」

五月雨「名取さん、涼風さん以外ならみんな、行けます!」

提督「潜水艦隊は戦艦を、他は空母を!撃ぇッ!」

十数本にわたる酸素魚雷が水中を航走する。

そして、

五月雨「全弾命中!敵艦反応消えました。よかっ」

た、といいかけて、やめる。

提督「どうした」

五月雨「敵旗艦の戦艦が」

その声は一瞬にして怯え、震えていた、

提督「どうした、何があった」

五月雨「当たったはず、完全に致命傷だったはず・・・、動力に致命傷を・・・」

先生「まずい、提督!ありゃあフラッグシップじゃない!戦艦棲姫だ、一度戻って態勢を立て直すぞ!」

提督「姫・・・、そんなの、本当にいたんですか・・・!?」

先生「驚いてる場合じゃないだろう!」

提督「っ、総員撤退!母港に帰れ!」

山城「しかし工場は「何を言ってる!」

提督「舞鶴に戻って、態勢を立て直すんだ!繰り返す、総員撤収!」

五月雨「でも提督はどうなるんですか!?」

提督「ここに残るよりないだろうが!早く戻れ!死傷者が出てからでは遅い!」

山城「・・・五月雨さん、ここは提督の言うとおりです」

五月雨「でも、あんなのが工場に攻撃し始めたらッ・・・!」

工場長「たまにでかい砲撃をしてくる野郎がいるとは思ってたんすけど・・・。
    ・・・あいつだったんすか、今度は、本気でやってこられるかもしれないっすね・・・」

幸運にも、その声は提督にしか聞こえなかった。

五月雨「そんな!提督、提督ッ!」

すでに無線機の電源は切られていた。

提督「まずいな・・・」

工場長「それよか提督の傷も相当やばいことになってますよ。早く、横になって」

妹「今は安静にしてください」

いつの間にか来ていた妹と共に医務室に運ばれ、麻酔を打たれ、開いた傷口を再び縫合された。



同時刻。海上。全速撤退中。

しんがりを潜水艦が勤め、先頭を舞鶴の艦隊が走っていた。

先生「姫級が出てくるとは・・・」

長月「今まで戦ったことがあるのか?」

先生「いや、報告書でしか読んだことがない。金剛型の41cm主砲ですら、貫通できなかったそうだ」

長月「では、どうするんだ」

先生「やつの装甲が最も厚いのは水上に出てる部分と、艦橋付近・・・。艦橋は無理でも、さっきのとおり魚雷攻撃ならばまだ希望がある」

先生「しかし・・・」

長月「?」

先生「舞鶴の責任者さんはそろそろ自分の艦娘への影響力を学習したほうがいい」

長月「・・・それには同意だ」

軽口をたたいたつもりでも、笑い声はなかった。

今度こそ終わりです。

今日書き込もうと思ってたんです・・・。

データ全部吹っ飛んでしまいました。もっかいかいてきますw

連投失礼します。

書いたところだけだと思っていたところ、文書全部吹き飛んでいました。

投下はしばらく先になりそうです。

皆さんのコメントとても励みになります。

ただいま怒涛のごとき勢いで追い上げております。

今夜投稿できます。例によって二回に分けそうです。

同日。移動。舞鶴鎮守府。食堂。

間宮「五月雨さん、大丈夫でしょうか・・・?」

涼風「あの落ち込みようは今まで見たことないね」

視線が向かう先では、五月雨がうつむいたままご飯に手すらつけようとしていなかった。

赤城「五月雨さん、ご飯食べないとだめですよ」

横に居る赤城が声をかける。

五月雨「・・・わかってます」

涼風「しょうがないなぁ」

すたすたと歩み寄ると、

涼風「一回部屋で休も、ご飯はとっとくからさ」

五月雨は為されるがままに、手を引かれ部屋へ戻っていった。



十一月四日。五月雨・涼風自室。

涼風「そっかー、五月雨は提督が好きになっちゃったんだねぇ」

五月雨「そんなんじゃないって!」

涼風「そんなこといって、顔真っ赤じゃん」

五月雨「・・・」

涼風「だったらなおさた落ち込んでる場合じゃないって!

   一緒に提督、助けに行こ!」

五月雨「・・・うん」

若干でも、元気を取り戻せたようだった。






十一月五日。舞鶴鎮守府。ブリーフィングルーム。

先生「今回の作戦において、敵旗艦の姫級の特徴は圧倒的防御力と圧倒的火力だ。
   
まともに砲撃をしたのではおそらく蚊に刺された程度にしか思われない。

   また、姫級は一回撃沈したのでは意味がない」

五月雨「ではどうすれば「まぁ聞け」

先生「彼女との戦いを経験した提督からの報告によると、やつは全力攻撃の五回目、つまり五回の撃沈でようやく完全無力化が確認

できたということらしい。また、彼女は一ヶ月以内に撃破しなければ、全ての装甲が回復する、との報告もある」

扶桑「そんな・・・」

先生「そして、報告書に、奴に唯一有効な攻撃手段は魚雷であると明記されているんだ。

   それを踏まえ、申し訳ないが、こちらで艦隊の再編成を行った。

   提督、聞こえるか?」

提督「ばっちり聞こえてますよ。

   ところで、この無線、大丈夫なんですか?」

先生「大本営の暗号回線を使ってる。大丈夫だろ」

提督「なら大丈夫、か。

   おーい五月雨ー、泣いてる場合じゃないぞー」

五月雨「泣いてません!」

五月雨の嗚咽と、鼻をすする音を聞いて思わず笑ってしまった。

提督「では先生、どうぞ」

先生「ああ。

   前置きはなしだ。聞き逃すなよ」

机上に置いてある紙を見つめる。

先生「艦隊編成を発表する。

   道中、敵旗艦までの道のりのことだ、戦闘を支援する、利根、筑摩、摩耶、鳥海、夕立、村雨」

夕立「い、意外と責任重大っぽい?」

村雨「あはは・・・」

先生「敵旗艦との決戦の支援艦隊、翔鶴、瑞鶴、祥鳳、涼風、秋月、春雨」

秋月「え!?」

春雨「が、頑張らないと」

涼風「ん、あれ?」

先生「涼風は空母護衛の際に優秀な成績を収めたと聞いた。五月雨には申し訳ないが、この編成で頼めるか?」

涼風「がってんだ!」

五月雨「涼風がそういうんだったら」

それを見ていた提督が、小声でつぶやく。

提督「・・・やべぇ、さすが先生だな・・・、全然出し惜しみしない」

先生「黙らないか」

提督「うっす」

先生「主力、第一艦隊、扶桑、山城、赤城、加賀、飛鷹、隼鷹。

   第二艦隊、名取、五月雨、暁、電、電、響。

   編成はこれで以上だ、何か質問のあるものは?」

手を上げるものはいない。

先生「それでは、作戦決行日時を発表する。往復と、補給.休養の時間も考慮した上での作戦だ。

   次の第二次総攻撃は、十一月七日。

   第三次総攻撃は、十一月十五日。

   第四次総攻撃は、十一月二十二日。

   最終総攻撃は十一月二十八日。

   最終総攻撃以外では、輸送船団は同行しない。余計な被害を避けるためだ。

次の作戦までの猶予がもう二日しかないが、一ヶ月以内という制約がある以上、電撃作戦でいくしかない。皆、いいな?」

それにも、異議を唱えるものはいなかった。

先生「作戦行動中の動きは今までと同じだ。それでは、解散」



十一月七日。舞鶴鎮守府。港。

提督「全員、第二警戒航行序列をとれ」

扶桑「了解、第二警戒航行序列」

提督「十一月七日。〇七〇〇。製油所輸送線、製油所近海に対する第二次総攻撃を開始する」







大時間経過。十一月二五日。ブリーフィングルーム。

提督「次の総攻撃が最後になる。本作戦では、先生の輸送船団も同行する。

   また、敵の反抗も今までとは比べ物にならないものになると予想される。

   皆、各装備品の点検を怠るな。不備があった場合はすぐに申し出ること」

皆が、緊張した面持ちで頷く。

提督「それでは、先生、何か言いたいことはありますか?」

先生「いや、ない」

提督「それでは、以上、解散」

十一月二十八日。最終総攻撃。

提督「十一月二十八日。〇六〇〇。最終総攻撃を開始する。

   第二警戒航行序列、行動開始」

扶桑「了解」

舞鶴鎮守府から、大艦隊が出撃を開始した。




〇六三〇。

提督は海図を睨み、連合艦隊は電探と果てしなく続く海を交互に、見落とすことがないように睨む。

私語を交わすものは一人もいない。艦隊は程よい緊張に包まれていた。



〇八〇〇。

扶桑「敵艦隊、依然発見できず」

提督「こちらからも目立った動きは見られない」

名取「こっちも潜水艦らしきものは発見できてないです」

提督「了解」

予想していた接触地点に×印を書き込んでいく。



一○〇〇。

提督「(今までだったらすでに遭遇していた頃なんだが・・・、やはりいつもと違う)」

扶桑「偵察機から、目立った目撃情報は入っていません」

提督「了解」

提督「各員、警戒を怠るな。隊列を」

維持し続けろ、と言おうとしたところで、敵の戦艦棲姫が提督の視界に現れた。

主砲はまっすぐ製油所を向いている。

輸送船かと思ってしまった。

何が起こっているのか理解できない。あいつは誰だ?

口をあけたまま、固まってしまう。

息せき切った工場長が部屋に転がり込んできた。

工場長「伏せろッ!」

耳を劈くような爆音、一隻だけとはいえ、戦艦、それも姫級の艦砲射撃の威力は島ひとつを焼け野原にすると言われていた。

司令室のが破壊され、天井から大きなコンクリート片が落下してくる。

工場長「サイレンを鳴らせッ!クソ共が!ここまで近づかれてはじめて気づくってなぁどういうことだッ!」

一緒に走ってきていた隊員に喝を飛ばす。

隊員「申し訳ありません!」

蒼白な顔で一言謝ると、急いで引き返していく。

一分もしないうちにけたたましいサイレンが工場内に鳴り響く。

工場長「作戦規定どおり砲台に装填は済ませてあるんだろうな!?

     ・・・よし、目標はあのデカイやつだけだ。とにかくぶっ放せッ!ここがつぶれたら終わりだぞ!」

提「あぁ・・・」

手を突こうとするが、思うようにいかない。

工場長「大丈夫っすか!?立てますか!」

提督「・・・腕が一本お釈迦になったみたいだ」

ははっと笑おうとするが、さすがに無理だった。

工場長「クソッ、すいません、俺のせいで!艦隊のほうはどうしましょう!?」

提督「あっち、は先生に頼るしか・・・、ない」

工場長「早く、止血しなければ・・・!」




同時刻。

五月雨「提督!?返事をしてください!提督!」

爆音が鳴ったかと思ったら、無線の接続が切れてしまったのだ。

遅まきながら、主砲の射撃音が五月雨たちの耳に届く。

扶桑「先生、どうしますか!」

先生「敵は発見されていない。我々は作戦通り航行する。変更はない」

五月雨「しかし、それでは提督がっ「うるさい!」

先生「私だってこうしてはおられん。だが、急いては事を仕損じるというだろう。

   彼女らは我々が来る方角を大体把握しているだろう。待ち伏せでもなんでもできるのだ。

   それに対し我々は探すしかない。無理に速度を増し、敵に感づかれでもしたら、作戦そのものが立ち消えになる

    ここは、一つ、あの生意気なガキにがんばってもらうしかないのだ」

五月雨「提督・・・っ!」

唇をかみ締める。


一二○○。

提督「ここは・・・?」

工場長「もう目、覚めたんすか!?」

ジメジメした所だ。

工場長「・・・いわゆる防空壕っすよ」

提督「工場は大丈夫なのか?」

工場長「艦橋に集中砲火の狙いを変えたんす。そんで、必死に撃ち続けてたら退いてくれましてね。割と被害を与えられたかと思い
ますよ。幸い、燃料槽には引火しませんでした」

提督「妹は・・・?」

工場長「さっき連絡がありました。そいつによると無傷で、いま違う壕にいるそうです。

    もしまた砲撃がくるとも限らないんで、ずっと隠れてるんすよ」

提督「・・」

工場長「はぁ・・・、一応と思って、無線器具がもともと置いてある壕なんすよ、ここ。一通り整ってるんで、指揮もできますよ」

提督「それを早く言ってくれ」

工場長「本当に、無理だけは勘弁っすよ?」

提督「寝たままってのは性に合わないが、仕方ないか。天井に海図をはっつけてくれ」

工場長「へいへい」



一時間後。

提督「こちら製油所司令部。聞こえるか」

扶桑「提督!」

先生「まったく、寿命が縮んだぞ」

電「響、泣いてる場合じゃないのです」

響「な、泣いてなんかないよ!」

五月雨「本当に、良かったです・・・!」

提督「作戦中だぞ、泣くのは後にしろ。先生、何か変わったことは」

先生「何もない、異常なほどに」

提督「了解、速度そのまま、隊列を維持しろ」

扶桑「了解しました」



一三○○。

扶桑の切迫した声が無線機から飛び出してきた。

扶桑「偵察機より報告、複縦陣、敵戦艦四隻、空母二隻、全てフラッグシップとのこと!」

提督「総員隊列そのまま!」

扶桑「了解、隊列そのまま」

提督「支援艦隊、撃ち方始め!」

利根「了解、撃ち方始め!」

全弾命中を狙っているわけではない遠距離砲撃。

そうと言えども、気を抜く理由にはならない。

扶桑「戦艦、空母、それぞれ一隻ずつ命中。中破です!」

提督「赤城・加賀、発艦始め。隼鷹・飛鷹は後に続いて、戦艦四隻を叩け!

   扶桑、山城、目標的戦艦、空のほうは赤城らに任せるんだ」

扶桑「砲撃準備完了しました」

提督「主砲、副砲、一斉射!」

扶桑「撃ち方始め!」

一斉射の爆音のことを失念していたせいで、無線機を当てていた左耳が耳鳴りを起こしてしまった。

右耳に切り替えると同時に、赤城から報告が入る。

赤城「制空権確保しました」

提督「制空権確保、了解。

   扶桑、弾着報告せよ」

扶桑「戦艦二隻撃沈を確認。敵砲撃による被害はなし!」

提督「第二射用意!」

扶桑「装填完了済みです!

   加賀より報告、艦載機が残り戦艦二隻を撃沈しました」


提督「直ちに目標修正、敵空母二隻を狙え!」

扶桑「了解、目標修正」

提督「撃ぇッ!」

扶桑「発射!」

発射された砲弾が弧を描き、敵空母の甲板と脇腹を貫いた途端、爆炎と共に姿を消した。

提督「被害を報告しろ」

扶桑「被害はなし、装甲消耗もありません」

提督「無事でよかった・・・。隊列を維持しろ。航路変更は無しだ」

扶桑「了解です」

一瞬の提督のため息に、皆も同様にため息を漏らす。

提督「どうやら次は、第二艦隊の出番のようだぞ」

防空壕から顔を出すと、外はいよいよ夜になろうとしていた。

名取「精一杯がんばります!」

提督「だからってあんまり固くなるなよ?」

山城「提督、私語は禁止ですよ」

提督「お前、嫌われるぞ」

山城「え!?」

扶桑「ちょっと、提督!?」

提督「冗談だよ、冗談」

全く、この前の仕返しのつもりかよ!?

提督「偵察機は格納しろ。第一艦隊は後方へ下がっておけ。

   各員、電探の反応を見落とさないよう注意しろ」

扶桑「了解しました」


一七○○。

名取「レーダーに敵影!感6、輪形陣です!」

提督「まずは敵攻撃の第一波はなんとしても避けろ、いいな?」

名取「了解です、任せてください」

言うや否や、砲弾が風きり音と共に降り注ぐ。

提督「機動力を活かせ!なるべくジグザグに動くんだ!」

無線からの応答は無いが、皆言うとおりに動いているようだ。

名取「敵の砲撃、止んだみたいです!」

提督「了解、魚雷発射菅開け!準備出来次第発射しろ!」

名取「了解、発射します!」

提督「前回とは一味違うってところ、見せてやれ。一撃でしとめて見せろ!」

名取「できますよ!」

音の無い中、提督は水しぶきが上がる音を聞いた。

名取「全艦撃沈を確認!やりました!!」

提督「・・・よし」

前回のとおりいけば、残るは姫級とその随伴艦。

無傷というわけにはいかないだろう。

勝つための準備は全てしてきた。後は出し切るだけだ。


二二○○。

扶桑「敵艦隊、反応なし」

提督「了解」




○四○○。

扶桑「敵艦隊、発見報告ありません」

提督「どこに行きやがったんだ・・・?」

あの時は威勢よく飛び出してきたくせに。

提督「第二警戒航行序列を維持しろ、作戦変更はない。先生、そっちも何もありませんか」

先生「何もない。本当に何も起こらない」


○七○○。

扶桑「提督」

提督「どうした、敵艦か」

扶桑「いえ、その」

提督「遠慮せずに言ってくれ」

扶桑「着きました」

提督「どこに?」

扶桑「製油所です」

提督「どこの製油所だそれは?」

扶桑「作戦目標です」

提督「なに!?」

体の痛みも忘れ、防空壕から這い出す。

紛れもない、大艦隊の姿が見えた。

提督「おかしいぞ・・・」

奴らが狙っているのは設計図の焼却ではなかったのか。

提督「一度ここに現れて、確かに被害を受けたのだろうな・・・。その後退いてから、補給に向かったのか・・・?」

そこで、思い出した。

道中、確かに航行ルート上には何もなかったが、遠回りしたそのルートの内側には、油田がある。この製油所の第二掘削場が。

提督「工場長」

工場長「なんすか?」

提督「第二掘削場に、今人はいるのか?」

工場長「いるわけないじゃないすか、こんな時に」

五月雨「提督、入港してもいいですか?」

提督「望遠鏡をよこしてくれ」

手を伸ばし、渡されたそれを受け取る。痛がっている場合じゃない。


五月雨「あの、提督・・・?」

望遠鏡を目に当て、艦隊の後ろの水平線を眺める。

提督「まずい」

六つの影が見えた。

提督「工場長!ぶっ放せ!○-一-八、敵艦発見!繰り返す!敵艦見ゆ!

   総員転進せよ!第四警戒航行序列、戦闘態勢ッ!」

突然の報告に、皆は戸惑うことなく、再編成を完了した。

すでに、敵機が急降下に入っていた。

提督「対空迎撃を開始しろ!支援艦隊、直ちに発艦!赤城、加賀もそれに続け!」

翔鶴「わかりました」

加賀「鎧袖一触、問題ない」

上空を飛ぶ敵機の下から、味方艦載機が急上昇を開始する。



搭乗員B「いくぞ!」

搭乗員C「なんかすごい威勢・・・」



提督「艦種は判明したか?」

工場長「戦艦棲姫、フラッグシップ空母四隻、フラッグシップ重巡洋艦一隻」


提督「扶桑、山城は空母に火力を集中させろ!

   第二艦隊は魚雷発射準備が完了しだい、重巡洋艦への砲撃を開始せよ!」

扶桑「了解」

名取「了解です!」

提督「赤城、空はどうなってる?」

赤城「巻き返してきました。航空優勢、いまなら爆撃機も飛べると思います」

提督「飛鷹、隼鷹、聞こえたな!」

飛鷹「聞こえてますよ」

隼鷹「ひゃっはー!待ってました!」



搭乗員α「ふぅ・・・」

搭乗員γ「ん?」

搭乗員β「え?」



扶桑「弾着確認、敵重巡、空母二隻撃沈しました!」

その直後、魚雷攻撃を終えた飛鷹、隼鷹から報告が入る。

隼鷹「こっちも空母二隻撃沈したよー、あとは姫だk」

すさまじい爆音に、声がかき消された。

工場が襲撃されたときと全く同じのものだ。

提督「何があった!?」

扶桑「敵戦艦の一斉砲撃です!

   飛鷹、隼鷹、大破!」

飛鷹「やってくれるじゃない・・・」






一六○○。

あれから何時間がたったか。

あと残るはあいつだけであるのに、当の本人は気にした様子もなく、こちらの砲撃をよけるでもなく、着実にこちらの戦力をそいで
いる。

扶桑「支援艦隊全員大破!赤城、山城大破!第二艦隊、名取、五月雨両名のみ小破!

   提督、このままでは・・・っ!」

艦娘の疲労もそろそろ限界かもしれない。




提督も、頭痛が激しくなり、緊張のせいか鼓動が激しい。

提督「夜戦に、突入する・・・!」

海上はすでに暗闇だった。




戦闘もしていない俺が、疲れているなど悟られてはならない。

視野狭窄が起こるのも構わず、声を絞り出す。

提督「魚雷発射管開け!主砲とうまく組み合わせるんだ!」

名取「了解、発射します!」

その声を聞くと同時に、提督は貧血で倒れてしまった。

最後の、五月雨のほっとしたため息が聞こえたような気がした。




小休憩入ります。



十二月十五日。製油所。医務室。

提督「ふむ」

提督の目覚めの第一声だった。

部屋を見渡して、ここが医務室だとわかった。

・・・扶桑と五月雨がベッドの脇にもたれ寝ているのも。

提督「おい」

起きろよ、と、言いかけた直後、

五月雨「お目覚めですか!?」

提督「うおおびっくりさせんじゃねぇよおい」

五月雨「私、提督がいなくなったらどうすればいいんですか!」

起きた直後の目に、すでに涙がたまり始めていた。

提督「ほら、泣くなって。扶桑も狸寝入りしてんじゃねぇよ」

扶桑「だ、だって」

提督「だってじゃないから・・・」

提督「ていうか、すごい腹減ってきたな。今何時だ?」

五月雨「しち、七時です」

嗚咽をこらえる姿は少女そのものだった。

提督「お前ら飯はどうした。確かここって夕飯七時からだろ」

扶桑「今から行こうかなと」

提督「寝てたじゃん・・・」

五月雨「とにかく、一緒に食べましょうよ!きっとみんな驚きますよ!」

目元をぬぐうと、提督の手を引っ張る。


提督「おっ、ちょ、引っ張るなって!俺は怪我人なんだぞ!」

五月雨「そういえばそうでしたね」

とんでもない棒読みだった。

提督「はぁ、じゃあいくか」

医務室の扉を開け、肩を借りて廊下の突き当りの階段を下りる。

提督「(医務室は一階に置いとけよ)」

心の中でひとりごちた。





提督「ありがとう、もう大丈夫だ」

貸してもらっていた肩を外す。

扉越しでも、食堂内で食器のぶつかる音が聞こえてくる。

だが、活気がない。話し声がなかった。

提督「・・・俺が死んだわけでもないのに」

大分痛みが引いた腕を前に出し、食堂の大扉を開け放つ。

製油所職員全員を食わせるためとあって、広さは鎮守府の比ではない。

提督の姿を認めたとたん、全ての音がやんだ。

それには構わず、空いている席を探す。


丁度三席空いているのを見つけた。

だが一席、盆がない。

それに気づいた工場長が俊敏な足取りでお盆を持ってくる。

提督「ありがとう」

見渡す限り、欠けているものはいない。

工場長「気づいてますか?ちゃんと腕二本あるじゃないすか」

提督「え?」

工場長「提督、腕が一本お釈迦になったなんて言うから俺相当びびりましたよ」

提督「そういえばそんなようなことも言った気がする」

苦笑しながらそう言った。

そこで皆が提督の事を見つめているのにようやく気付いた。

誰一人欠けている者はいない。

提督「終わったんだな、やっと」

思わず涙がこぼれた。


提督「またお前らと会えて本当によかった」

そっと、席へ歩き出す。

着席し、前に座っている第二艦隊の皆へ目を向ける。

提督「もちろん、第一艦隊の功績もすばらしいものだ、疑問の余地はない。

   だが、お前らのおかげで、今回の最後の作戦を達成できた。本当に、よくやってくれた」

名取「・・・提督が無事だったことのほうが、よっぽど嬉しかったです」

村雨「私もそんな感じかな」

暁「ほめてくれたっていいんだから!」

響「・・・うん」

雷「どうしたの響?顔が赤いわよ?熱でもあるの?」

電「風邪を引いたのです?」

響「そ、そんなんじゃないけど!」

村雨「なに?夕立も風邪引いちゃったのー?」

夕立「ちょっとこの部屋、暑いっぽい!」

突然ぱたぱたと手で顔を仰ぎ始めた。

提督「何してんだお前ら・・・。

んじゃ、いただきます」

小さく、手を合わせる。

提督が食べ始めると同時にほかの皆も食べ始めた。

談笑する声も聞こえ始める。








時間経過。製油所食堂。

提督「紹介しとこう、妹だ」

五月雨「え!?提督、妹さんいらっしゃったんですか!?」

妹「は、初めまして」

提督「それでこいつらが俺の鎮守府にいる子達だ。

   いや、あっちのテーブルにいるのは違うぞ」

妹「すごいんですね、お兄さんって」

提督「お、おう」

五月雨「よろしくお願いします・・・。それで、提督」

提督「ん?」

五月雨「ちゃんと話してくださいね」

提督「なにを?」

五月雨「今回のことですよ!」

提督「え?」

五月雨「とぼけないでくださいよ!一人で行っちゃったことですって」


提督「あ、あぁ、わかってたとも、おう」

妹のことを、かいつまんで話す。すると、

工場長「隠し事はよくないっすねぇ」

肩をたたきながら外野が割り込んで来た。

提督「人聞きの悪い事言うなよ!俺は隠し事なんて」

五月雨が疑惑の目で睨みつけていた。

提督「いや、ほんとになにもしてないって・・・」

最後のほうは尻すぼみになってしまった。

五月雨の視線に耐えかね、決まりが悪そうに、口を開いた。

提督「・・・実際、左腕の怪我以外はこの前の製油所襲撃のせいじゃないんだ」






最後まで話し終えるころには、五月雨だけでなく、舞鶴の皆も若干涙目になっていた。


提督「その、よく言うあれだよ。心配をかけたくなかったんだ。工場長も変な事いわないでいてくれればこんなこと言わずにすんだ
   のにな」

ははは、と笑うが、五月雨は黙したまま。

提督「・・・すまんかったって」

一体何度、今回のことだけでこの言葉を口にしたか知れない。

一体何度、五月雨のことを抱きしめたか。

腕の中で五月雨は今までにないぐらいの大声で泣いている。

提督「一体何度、俺は秘書を泣かせれば気が済むんだ・・・」

さすがにくるものがある。

いい加減ちゃんとした提督にならないと。


翌日。十二月十六日。製油所港。

扶桑「提督はどうやってお帰りになるんですか?」

提督「乗ってきた飛行機でまた峰山まで戻って、これを返してから車で帰ることになるだろうな」

扶桑「ということは、私たちよりも早くつくんですね?」

提督「まぁ、そうなるな、と、言いたいところだが」

扶桑「ん?」

提督「この怪我が治ったとはいえ、とてもじゃないけど空なんか飛べっこない。

   機は妖精に任せて、俺は輸送船に乗って帰るさ。

   お前らと一緒に帰るよ」

扶桑「わかりました」

先生「おい、そろそろ出るぞ」

提督「わかってますよ。それじゃあな。ほれ、五月雨も早く離れろ」

朝起きてからくっついたままの五月雨をそっと振りほどく。

工場長「もう少し残ってってもいいんすよ?」

後ろからひょこっと顔を出してくる。

提督「なに子供みたいなこといってんだよ。また今度くるさ。あ!」

工場長「見事に忘れてましたね」

提督「渡す積もりあるのかよ・・・」

工場長「忘れててもこっちから渡してますよ。どうぞ」

結構な厚さの紙束を渡される。

提督「ほんと、助かる」

工場長「いいんすよ、お役に立てられるだけで幸せっすから」

妹「またくるんですよね?」

提督「あぁ、またくる」

肩をたたいてから、その場を去った。





提督「先生、そのこと一緒に乗るんですか?」

長月「?」

先生「当たり前だろう」

提督「(先生の鎮守府、修羅ってそうだな・・・)」

長月「あぁ、結構大変なんだ。

   こいつ、翔鶴とかを見るとすぐに鼻の下を伸ばすもんだから」

先生「よ、余計なことを言うな!別に、私は鼻の下を伸ばしてなんかない!」

長月「まだこの程度だからいいが、本当に浮気したらただじゃおかん」

先生「すまん・・・」

提督「全員出航、一度舞鶴に寄港し俺と、舞鶴の諸君が離脱する。

   その後、先生は鎮守府へ向かう」

扶桑「了解です」

後ろではまだ口論が繰り広げられている。

五月雨「そういえば、先生はどこの鎮守府なんですか?」

提督「呉だったと思う」

五月雨「思うって・・・」


提督「ほれほれさっさと帰るぞ、早く出るんだ」

五月雨「はいはい」

艦娘が全員動き出し、輸送船のエンジン音を確認すると、設置されている医務室へ足を向けた。

先生「ん?どこに行くんだ?」

提督「少し寝てきますよ」

長月「ゆっくり休んでくるといい。私はまだこいつと話すことがある」





時間経過。

輸送船の警笛で目が覚めた。

何事かとデッキへ飛び出すと、舞鶴鎮守府が見えてきていた。

提督「・・・なんだか懐かしいな」

後ろから足音がする。

先生「やっと目を覚ましたか。危うく私が起こしに行くところだったぞ。お母さんみたいな真似事はしたくないんだ」

船が港に入り、錨が下ろされ、繋留ロープが巻かれるのをぼんやりと眺める。

船員によって下ろされた階段に足をかけるまで、二人とも無言だった。

提督「それでは、またいつか」

先生「いつかってのは、そろそろ無しにしてほしいものだ」

その発言は無視しよう。

海軍敬礼をして、階段を降りていく。

先生「ああ、そういえば、ひとつ言いたかったことがあるんだが」

提督「なんです?」

顔だけ振り返る。

先生「別に積極的になっても、彼女らは引いたりしないぞ」

提督「そうですか(何言ってんだこのジジイは)]

そこではたと疑問が頭に浮かんだ。

そういえば五月雨の練度はどれくらいなのだろう、聞いてみるか。




移動。舞鶴鎮守府。玄関。

間宮「無事、とは言えませんね、それ」

間宮さんの姿を認めると、提督は突然敬礼した。

提督「間宮さん、ただいま戻りました」

間宮「・・・お、おかえりなさい」

提督「申し訳ありませんが、お部屋で寝てもよろしいでしょうか」

間宮「え?」

提督「この所自分の部屋で寝るというのは久しぶりでありますので、申し訳ありませんが、お話は後ででよろしいでしょうか」

間宮「でも私、初めてですし・・・」

提督「夕飯に関しましては大丈夫です。日が暮れかけておりますが、間に合うようにいたしますので」

間宮「ほ、本当に言ってるんですか?」

提督「駄目でしょうか?」

間宮「べ、別に駄目、というか、なんというか・・・。うまくできるかどうか・・・」

提督「船の中では確かに目いっぱい寝たような気がしますが、心労がまだのこっているようなのです」

間宮「え?」

提督「それでは、失礼します」

提督は謎の喋り方をしたどころか、間宮さんの勘違いに気づくこともなく、自室に戻っていった。



提督「はじめて・・・?何のことだ。ていうかまた腹減ってきたなぁ・・・」


十二月十九日。


戦闘報告。

作戦名:製油所近海及ビ輸送線付近掃討作戦

連合艦隊編成:第一艦隊:扶桑、山城、赤城、加賀、プリンツ・オイゲン、秋月。

       第二艦隊:隼鷹、飛鷹、暁、響、雷、電。

       第三艦隊:名取、五月雨、涼風、春雨、夕立、村雨。





十一月二日。一一三八、戦艦棲姫ト遭遇ス。

35.6cm連装砲、41cm榴弾砲、共ニ姫級ノ装甲貫通認メズ。

同日。一八○三。51cm魚雷ニヨル一斉射後、轟沈ヲ確認シタガ、短時間ノ再生ヲ認ム。

大破:扶桑、赤城、飛鷹、隼鷹、暁、電、秋月

中破:プリンツ・オイゲン

小破:




十一月七日。

第二次総攻撃ヲ実行ス。

戦闘ヲ踏マエ、編成変更ヲ行フ。

連合艦隊編成:第一艦隊:扶桑、山城、赤城、加賀、飛鷹、隼鷹。

       第二艦隊:名取、五月雨、暁、電、電、響。

     前衛支援艦隊:利根、筑摩、摩耶、鳥海、夕立、村雨。

   艦隊決戦支援艦隊:翔鶴、瑞鶴、祥鳳、涼風、秋月、春雨。

大破:

中破:プリンツ・オイゲン、名取

小破:

主力兵装ヲ魚雷ニ転換。

魚雷攻撃ノ有効性ヲ認ム。


十一月十五日。

第三次総攻撃ヲ実行ス。

大破:

中破:

小破:秋月

以下同文。




十一月二十二日。

第四次総攻撃ヲ実行ス。

大破:扶桑、山城、加賀

中破:赤城、暁

小破:

以下同文。




十一月二十八日。午前八時。

最終総攻撃ヲ実行ス。

戦艦棲姫ノ装甲、及ビ、火力ノ大幅上昇ヲ認ム。

魚雷攻撃ニヨリ、轟沈ヲ確認。

大破:利根、筑摩、摩耶、鳥海、夕立、村雨、翔鶴、瑞鶴、祥鳳、涼風、秋月、春雨、山城、赤城

中破:

小破:名取、五月雨

作戦、成功ヲ修ム。


備考:沈間際ハ形態変成カ?


五月雨「何かいてるんですか?」

提督「収支報告書だよ」

五月雨「え?」

提督「突っ込んでくれよ・・・。作戦のあの報告書だよ」

五月雨「あぁ、すごい真剣にやってたので気になったんです」

提督「めんどくさいよまじでこれ」

五月雨「でも武勲とかで功績が認められたら配給資材の量が増えるんですよ」

提督「そうなのか!?」

五月雨「知らなかったんですか、もしかして」

提督「全然知らなかった・・・。マジか・・・。
   で、悪いんだが」

五月雨「これ、出してくればいいんですか?」

提督「そうなんだよ、助かる」

五月雨「いえいえ、これでも秘書ですから」




提督「・・・この一年、半年か、いや半年もない、本当にいろんなことがあった」

五月雨が、ドアを開けようとした手を止める。

提督「俺がここに来てまだ半年もたってないんだぜ?

   それなのに、こんな大規模作戦をやってのけてしまった。

   正直疲れたよ。こんなことが起こるなんて、夢にも思わなかった。

   しばらくはそんな大事も起こらないだろうからいいけど」

五月雨「どっち道、資材が足りませんよ」

提督「でもお前らは本当によくやってくれた。短い間に無理をさせてしまった」

五月雨「それなら、私にじゃなくて、ちゃんとみんなに言ってください」

提督「それもそうか」

笑いながら、ひょいと机の上にある妖精からの資材収支報告書を手に取る。

ほとんどが三桁だいに突入していた。

提督「あっちゃー、こりゃ本当に無理だな」

五月雨「それじゃ、いってきますね」

提督「おう、いってらっしゃい」

扉を開けて、小走りに駆けていった。

提督「いやぁ、本当にいろんなことがあった・・・」

積もり積もった雪と、いまだ降り続く雪が作り出す銀世界を窓から眺めながら、思いをめぐらす。

提督「炬燵でも出してみるか。ていうかあるのかな炬燵。日本海に面してるだけあってずいぶん冷えるな、京都は」

部屋の隅においてある暖炉の前に、右手にしっかり握られていた枕を置き、横たわる。

木が爆ぜる音を聞きながら、ゆっくりと眠りに就いた。









五月雨「ただいまー、て」

提督が暖炉の前で寝ていた。

五月雨「こんな寒い思いしてきたのに、お迎えのひとつもないんですか!」

返事はない。

すごく気持ちよさそうに眠っているのを見るとこっちまで眠くなってくる。

誰もいるわけがない執務室をキョロキョロと見渡してから、提督のおなかのほうへ潜り込む。

枕はどうやら長めのようで、五月雨も頭を置く隙間はあった。

五月雨「これは、眠らないわけには・・・」


時間経過。

間宮「あのー、お昼ご飯の用意、できましたよー」

執務室のドアを開けると、そこには親子のように寝入る二人の姿があった。

間宮「もう!提督さんも五月雨さんも!起きてください!」

提督「んんん、今何時ですか、間宮さん」

腕を伸ばしながら、提督は体を起こした。眠そうに眼を擦っている。

間宮「もう十二時ですよ!みんな食堂にいます!」

提督「なんてこった。五月雨ー起きろー」

頬を引っ張って遊んでいるうちに段々楽しくなってきた。

提督「にひひ・・・」

後ろから殺気を感じた。

そそさくと五月雨をおんぶすると、食堂に向かうことにする。

提督「そんな怒らないでくださいよ、ちょっと眠かったんですって」

間宮「提督さん、皆さんのリーダーなんですから・・・、全く」



移動。舞鶴鎮守府。食堂。

涼風「あれ、五月雨、なんでおんぶされてんのー?」

五月雨「・・・、え、ここどこ・・・?」

提督「俺の背中じゃないか?」

五月雨「え!?ちょっと、降ろしてくださいよ!」

提督「えーどーしよっかなー」

五月雨「恥ずかしいんですって!」

提督「暴れんなよ、うまく背負えないだろ」

ジタバタする五月雨を抑え付ける。

提督「このまま食堂に入ってみるってのは「だめです!」

五月雨「そんなことしたら許しませんから!」

提督「いやそんなキレんなよ・・・。冗談だから」


膝を曲げて、五月雨をおろす。

提督「すでに食堂にいたとは、本人は知る由もなかったのであった・・・」

五月雨「えっ!?」

五月雨に視線が集まる。

提督「突っ立ってねぇで席着けって」

五月雨「うう・・・」

提督「なるほど、うどんか・・・。

   それじゃ、いただきます」

皆「いただきます!」

五月雨「い、いただきます」




提督「そろそろ年賀状の準備しなきゃいけないのかそういえば。夕立は送るのか?」

前にいたからというだけの理由の突然の振りにたじろぐ夕立。

夕立「私は送らないっぽい」

提督「そっか、そうだよな、そりゃそうだ。うちにしかいなかったのにな、何言ってんだ俺」

自分でいって自分で笑ってしまった。

村雨「提督は送らないの?」

提督「俺は送るさきっつったら製油所と、友人ぐらいかな。ほらこの前の飛行機を貸してくれた陸軍の奴とかな。そういえば親しい

といえるのはそれぐらいしかいないな・・・」

もしかして俺って寂しい奴なのかともやもやし始める。

夕立「で、でも私たちがいるっぽい!」

提督「お前らがいるのは当たり前じゃないか・・・」

夕立「え、えっと」

扶桑「困らせるようなこと言ってはだめですよ、提督」

提督「おら、年賀状書いてくるだよ」

何となく嫌な予感がしてきたので執務室へ向かおうとしたが、

名取「ふぇ?まだ早いんじゃないですか?だってまだ二十日?ですよ」

提督「ぐっ」

秋月「司令官、お買い物にでも行きませんか!お暇なら!」

提督「なっ」

春雨「は、春雨もご一緒したいです」

プリンツ「私も行きたいかも!」


第六駆逐隊やら一航戦やらの目がものすごく痛かった。

仕方あるまい、給料もずいぶん溜まったことだし、たまにはいいかもしれない。

提督「いっそ、夕飯は皆でどっか食いに行くか」

静かに立ち去ろうとする巡視兵を呼び止める。

提督「おいおい、遠慮しなくていいから」

巡視兵「で、ですが、警備はどうすればよろしいのでしょうか」

提督「あっ・・・。
   どうしようか」

五月雨「決まってなかったんですね」

巡視兵「私どものことは気にせず「そうだ」

提督「すしを食いに行こうと思ってたんだけど、それなら出前でもとるか。それならいいだろ?」

巡視兵「しかし・・・」

巡視兵B「いいじゃないか、せっかく言ってくださってるんだし。ほかの兵にも声をかけてよろしいでしょうか?」

提督「もちろんだとも、うん」

巡視兵「ありがとうございます」

五月雨「お財布、だいじょうぶなんですか?」

ニヤッと笑うと、

提督「提督って、わりと羽振りいいんだぜ」

五月雨「ひっ」


電「今夜はおすしなのです?」

提督「おう、そうだ、いくらでも食っていいからな。この前なんでもするっていう約束、どうやら皆は忘れてるみたいだけど、俺は
覚えてるからな」

赤城「そういえばそんなことも」

加賀「おっしゃってましたね」

山城「とりあえず姉様から離れてください」

提督「俺からくっつきにいってるわけじゃないぞ別に」

扶桑「す、すいません、その・・・」

提督「(花も恥らう乙女みてぇなことになってんじゃねぇか)」

山城「提督!姉様になにをしたんですか!」

提督「いやなんもしてないから、じゃあ俺は部屋に帰る。まだいろいろやんなきゃいけないこと残ってるんだよ」

五月雨「えっ、やることってングっ!?」

五月雨の口を押さえ、肩に担ぎ上げると早歩きで部屋へ引き返した。



移動。舞鶴鎮守府。執務室。

五月雨「何するんですか提督!」

提督「お前が余計なこと言いそうになるからだろー。危うくこんな寒いのに買い物にいくところだった」

五月雨「行けばいいじゃないですか、きっと彼女たち悲しがってますよ」

提督「お前は来なくていいのかよ?」

五月雨「私は、大丈夫ですよ?」

提督「そうなのか?
   お前がいいんならいいんだ。じゃあちょっといってくるか」

立ち上がると、箪笥の中から外套を取り出す。

五月雨「えっ、ちょ」

ゆっくりと五月雨に振り返る。

提督「・・・来たいんだろ?」

五月雨「それは・・・」

提督「素直じゃないやっちゃなー、何だよ全く、はっきりしてくれよ」

五月雨「行きたい、です」

提督「最初っからそう言えって。ほら、行こう」

外套を着終わり、差し出された手を握る五月雨の顔は赤かった。




提督「秋月と春雨、確か同じ部屋だったよな」

五月雨「はい」

扉の前に立ち、ノックする。

提督「秋月ー春雨ー、買い物行かないのかー?」

部屋の中から声がかかった。

秋月「ちょっと待っててくださいね、今準備しますから!」




移動中。

春雨「んー」

提督「どうした」

春雨「提督と五月雨さんの髪の毛の色って、雪に似合うなぁって思ったんです」

提督「俺は合うもくそもあるのかな」

春雨「提督って、女性に言い寄られたりしなかったんですか?」

提督「どうだったかなぁ、そういうのは全然なかったと思う。あれ、どうだったかな・・・」

??「この男は言い寄られてもずっとのらりくらりとかわし続けてきただけなんですよ」

提督「誰だって、お前、会うのは、え、久しぶりじゃないか!今はもう大佐ぐらいになったのか?なんだ来てるなら言ってくれればよかったのに!」

大尉(部下)「いえいえ、そんな出世街道じゃないです。今は大尉ですよ」

提督「あの頃はまだ軍曹ぐらいだったよな?ずいぶん偉くなっちまって」


五月雨「あの、この方は?」

大尉「あぁ、失礼しました。私は提督の友人の、たぶん部下ってことで話には出てると思うんですが」

五月雨「もしかして、陸軍の?」

大尉「そうですそうです。この節は本当にすいません。私だってまさかあんな目的で使うとは知らなかったんですよ」

提督「余計なこと言うなって」

そこで、大尉の後ろにいる女性に目を留めた。

提督「その女性は?」

大尉「あっと、すいません、紹介し忘れてました。俺の家内です」

大尉の嫁が進み出て、お辞儀した。

嫁「いつもうちの夫が世話になっております」

提督「まさかお前に先を越されるとは思わなかったよ・・・。

   んで、何しに京都まで来たんだ?」

大尉「結婚式を挙げるいいところでもないかと思って、な?」

嫁「だからって意気込んでこんな時期に連れてくるんですもの。寒くて・・・」



大尉「おま、行こうって言ったとき喜んでたじゃないか!」

嫁さんはぷいとそっぽを向いてしまった。

提督「まぁ、なんだ。飛行機を貸してくれたのはほんとに感謝してる。いつか借りは返すよ。じゃあな。
   また来たら言ってくれよ。そん時はどっか飲みに行こう」

大尉「ええ、是非。それじゃ、また」

手を振ってその場を離れた。

秋月「やっぱり提督って人気だったんですね」

提督「もうそんな昔のことは忘れたよ。ほら、さっさと買うぞ。何を買いにきたんだ秋月たちは」

秋月「日用品、ですね」

提督「なんにせよ行こう、ほんとに寒くなってきた」

襟を立て、片手で手袋をポケットから取り出す。

提督は五月雨と繋いだままの手を見つめると、五月雨が気づいて手を放す前にいっぺんに手袋の中へ押し込んだ。

提督「お前って結構手ちっちゃいんだな」

五月雨「うふ、そうですか?」

提督「やけに上機嫌だな・・・」


時間経過。移動。舞鶴鎮守府。

提督「予想以上に寒かったな外は!手がまともに動かないぞ!」

五月雨「そんなに大声で仕事をサボる理由叫ばないでください」

提督「あれ、今何時?」

五月雨「一五○○です」

提督「なんだかんだ結構買い物してたんだな。今のうちに電話しとくか」

五月雨「どこにですか?」

提督「出前だよ」

そう言うと、受話器を取り上げ番号をダイヤルし始めた。

一分ほど話し込んだ後、満足げな表情で受話器を置いた。

提督「六時につくように注文しといた」

五月雨「お金はどれくらいですか?」

提督「お金お金ばっか言ってると嫌われちゃうぞ五月雨。やめとけやめとけ」

五月雨「わ、わかりました」






本日はここまで。

そろそろ料理対決の安価を消化していきたいと思います。


年賀状出さないって事は自分にも来ないって事だよね
寂しくね?
提督とか巡視兵とか鎮守府の兵が夕立てとか秋月、春雨に出してあげたら良いんじゃないかな

乙です

>>406
先生とか長月、あと工場長に提督の妹から年賀状来るんじゃないか
「年賀状来たっぽい!」
「提督さん!年賀状まだある?返事の書き方教えて!」
って執務室に飛び込んでくるよ

料理対決

おせちとかよくね?勝ち負け関係なくいろんな料理ワイワイ食べれて

>>406>>407確かに寂しいですね・・・、加筆しておきます。

>>409それ、いいです。使わせていただきます。

>>322
嫌な予感がしたので読んだところ不安的中。
敵艦四隻反応消滅、訂正します。敵艦二隻です。

逆にお正月に雑煮を食べないなんてことがあるんでしょうか?

深夜に投下します。

まだ今回の投下ではおせちは登場しません。しばしお待ちを!


時間経過。午後五時。舞鶴鎮守府。

暁「いつ来るの・・・」

提督「来るの早すぎだろ・・・。あと一時間ぐらいだぞ」

暁「一時間も待てないっ!」

提督「レディーたるもの、それぐらい我慢しろよ・・・」

食堂にはすでにほとんどの艦娘が集結していた。

提督「楽しみなのはわかるんだけどさ。いつも夕飯六時からだろ?」

響「でもお寿司なんだろう?」

提督「お寿司補正半端なさすぎだろ」

はぁ、とため息をつく。

提督「お前らがここで待ってたいんならとやかく言わないけどさ」

皆と話していた間宮が提督のもとへ歩み寄る。

間宮「何か、皆さんに夕飯に差しさわりのない物をお出ししましょうか?」

提督「それだと余計に腹減るんじゃないですか?」

すると、提督は、ん?という思案気な表情になった。

提督「もしかしてこいつら寿司食ったことないのかな」

間宮「それは・・・赤城さんとか、ここの鎮守府が初めてならわかりますけど、さすがに暁さんとか五月雨さんは食べたことあると
思いますよ」

提督「なんだかんだ言って間宮さんお寿司は作ったことないですもんね」

間宮「そうでしたっけ?

   あら、そういえば、五月雨さんは?」

提督「多分涼風と一緒に部屋にいると思います」

暁「お寿司、食べたことない」

突然かなり気落ちした様子の暁が話し出す。


暁「前にいた鎮守府で食べてるのは見たことあるけ「いや、もういい!」

提督「俺が悪かった!でも夕飯の時間だけは守ってくれ、いいな!」

黙ってその場を立ち去る提督の後に、間宮が続いた。

間宮「食堂にいなくていいんですか?」

提督「十分前くらいになったら行きますよ」

自分としては別れるつもりだったのだが、なぜか間宮さんは隣に並んでいる。

提督「どうかしたんですか?」

間宮「え?」

提督「いえ、その」

間宮「たまにはいいじゃないですか、こういうのも」

提督「そう、ですか?」

間宮「はい」

提督「(心なしか距離が近い気がする・・・!)」

間宮さんって小さいんだなぁなどと思わず見つめてしまった。

間宮「・・・顔になにかついてますか?」

提督「ん、なんでもないです」

努めて平静なふりをして誤魔化しておいた。










提督に見つめられているのに気づき異常に体が火照ってしまった。

だから、執務室に入ると、変なことを喋ってしまった。

間宮「この部屋、暑くないですか?」

ぎょっとした顔で提督が振り向く。

提督「暑い、ですか・・・?」

でもすぐに消せないし、とつぶやく提督。

何を思ったか再び薪をくべはじめた。

提督「大丈夫ですよ、これは意図的に湿らせてあるやつなんです。こうやって火を調節するんだって、先生に教わりました」

間宮「あ・・・」

一気に頭が冷えた。

ゆっくり話をしたいだけだったのに。

間宮「すいません、暑いなんていってしまって」

提督「いいんです、少し暖め過ぎたのかもしれません」

どこからともなく、肘掛け椅子を取り出すと座るよう促された。

提督は執務机のほうの椅子へ腰掛ける。

まるで何事もなかったかのように世間話を始めたのだった。





時間経過。舞鶴鎮守府。執務室。午後五時五十分。

提督「じゃ、そろそろ行きましょうか」

間宮「はい」

食堂への道中、さりげなく提督の手を握ってみる。

提督は笑って握り返してくれた。

彼の手は冷たかった。




移動。舞鶴鎮守府。食堂。

雷「遅いじゃない!全く、何してたのよ!」

提督「そうカッカすんなって」

五月雨「むー」

提督「そんなに寿司が待ち遠しいか」

五月雨「むー!」

なんだこいつと思ったところで、ベルが鳴った。

提督「来たか」




さっさと勘定を済ませると、十箱の寿司が詰められた丸箱を持って食堂へ取って返す。

それをテーブルに並べた。

提督「よし、それでは、いただきます」

皆「いただきます!」



おいしそうに食べている姿を見られるだけでも、これだけ出費した甲斐があったというものだ。

・・・実際かなり痛かった。






十二月二十二日。大浴場。夜。

提督「ほんと、舞鶴は至れり尽くせりだよなぁ・・・」

あーーーーー、と声を上げて湯につかる。

・・・大浴場の更衣室の扉が開いた音が聞こえた。

提督「すまーん、俺入ってるから、後にしてくれないかー」

巡視兵だろうか?

大声でよびかけたが、返事がない。

提督「おーい、聞こえてなかったn」

提督はちょうど、浴場の入り口に背を向ける格好だ。

そのまま顔だけ振り向いた視線の先には体にタオルを巻いた扶桑がいた。

提督「入ってくるなってッ!聞こえてただろ!?」

思わず大声を出して、慌てて元に向き直る。

扶桑「・・・提督は、その、クリスマス?というのを知ってますか?」

それを気にした様子もなく、唐突に扶桑は話し始めた。

提督「お前ってこんな大胆なやつだったっけ・・・」

扶桑「知ってますか?」

提督「ん?なんだっけ、くりすます、だっけ?聞いたことないな」


扶桑「クリスマスは十二月二十五日に、皆で祝会をするのもそうですけど、贈り物を渡すんですよ」

提督「ふむ」

扶桑が隣に入ってきた。

提督「贈り物なら、戦艦にならもう準備できてるけどな。ていうかここ、混浴じゃないぞ」

扶桑「中身がわかってちゃ面白くないです。それと、男性なんて一人しかいないのに、ここを独り占めなんてずるいですよ」

提督「ずるいとかそういう話じゃないだろ・・・。
っつってもなぁ、贈りものねぇ・・・」

考えるふりをして顔をそらす。

提督「・・・適当に考えとくさ」

扶桑「教えてくれないんですか?」

提督「さっき中身がわかってちゃ面白くないって言ったのは扶桑じゃないか!」

扶桑「ふふ、そういえばそうでしたね」

そこで、自分が下半身にタオルを巻いていないのに気づいた。

俺の頭はどうかしてる。

提督「・・・俺はここら辺であがるよ」

背中を向けて立ち上がると、更衣室へ向かうことにした。

扶桑「もう出るんですか?」

提督「・・・勘弁してくれ」

大きくため息をついて、浴室を出た。

贈り物・・・。

明日は忙しい一日になるぞ、再びため息をついた。


十二月二十四日。舞鶴鎮守府。深夜。

先生にくりすますなるものについて聞いてみたところ、どうやらさんたくろーすとか贈り物とかがいろいろあるらしい。

要するに朝起きて贈り物が枕元にあれば良いそうだ。

長月が、

「なんてかわいくないやつなんだ!」

と息巻いていたが。

扶桑と山城には新しい髪飾りと、36.5cm三連装砲の設計図。

・・・正直紙束を置いていく行為には何となく罪悪感を覚えた。

赤城と加賀には、日がなほしいといっていたリンスと、加賀には髪の結い紐。

隼鷹にはとりあえず有名な銘柄の日本酒、飛鷹には雰囲気に見合う香水。

五月雨、涼風には簡単なものだが、星型の飾りがさがったネックレス。

暁たち第六駆逐隊はお揃いがいいだろうと思い、貝殻のブレスレット。

名取には、マフラーと、店員が選んでくれたよくわからんもの。

夕立と村雨も、うまい具合に腕時計がほしいと言っていたので、お揃いにするか迷った挙句、二つとも店員に選んでもらった。

名取が二人と同じ部屋だったことには驚いた。

部屋取りも知らないとは、と落胆しながら次の部屋へ向かう。

秋月と春雨には、日用品を買いに行った日、飛鷹と被ってはしまうが、高くて手を出せないと言っていた香水を置いておいた。

プリンツ・オイゲンも秋月と春雨と同室とは知らなかった・・・。








お金はもう諦めていたにせよ、ばれないように部屋を渡り歩くのは想像以上に神経を使った。

それとあの店員め、にこやかに俺をガン視していやがった。

こっちは必死なのに。




十二月二十五日。舞鶴鎮守府。食堂。午前。

みんなが、お互いに贈り物を見せ合っていた。

・・・夕立が名取のマフラーを羨ましがっていたのは想定外だった。

扶桑と山城の金色の髪飾りも中々映えている。

提督「何はともあれどうにかなってよかった・・・」

扶桑「提督」

提督「ん?」

山城「この設計図、もう工廠にもってっちゃっていいですか?」

提督「別に禁止したりしないから、いつでも作ってくれ」




去っていくの見送ると、

提督「間宮さん間宮さん」

呼ばれた間宮が近寄ってくる。

提督「今夜、何かケーキでもと思うのですが」

耳に口を近づけ、内緒話を始めた。

間宮「クリスマスケーキ、ですか?」

提督「大体そんな感じです。そこで、こう言っちゃなんですが、プリンツのためにもドイツ料理を作ろうと思うんです」

間宮「でも、私さすがにドイツの料理は作ったことないですよ?」

不安そうに眉をひそめる。

提督「いや、俺が作るんです」

間宮「何を作るんですか?」

提督「シュトーレンですよ、シュトーレン」

間宮「確かに、ことあるごとに食べたい食べたいって言ってましたね」

提督「そういう訳です。もう昼から準備を始めたいんですが、間宮さんは大丈夫ですか?」

間宮「もちろんです。頑張って作りましょう」

二人して笑っている光景に、嫉妬や、不思議そうな目線が集まった。




移動。舞鶴鎮守府。執務室。まだ午前。

五月雨「何話してたんですか?」

提督「んー、なんでもないよー」

五月雨「教えてくださいよ」

提督「また今度な」

黙々と年賀状を書き続ける提督を五月雨が睨む。

五月雨「二人して笑って、何話してたんですか!」

ムキになる五月雨を見上げる。

五月雨「何ですかその目!」

提督「・・・早くお前もかけよ年賀状。出す相手いるんだろ?」

五月雨「そりゃあいますけど・・・」

暖炉の前に置いてある椅子を提督は自分の机に近づける。

提督「ほら、書けって」

万年筆とハガキを差し出した。

提督「たりなくなったら言ってな」

五月雨「はぁ・・・」

その時、扉がノックされた。

提督「はい、どうぞー」

巡視兵「提督、書簡を預かってまいりました」

提督「書簡?」

茶封筒を受け取ると、端を破り捨てる。


提督「大本営からだな・・・」

五月雨「提督、何かやらかしたんですか?」

提督「俺が悪いことした前提で話すなよ、ええっと、なんだって・・・?」

黙って読み進めていく。

提督「ふむ」

巡視兵「中身はどんなものなのでありますか?」

提督「要するに、俺の功績を称えて、鎮守府への資材搬入量を増やすうんぬんかんぬんだ」

五月雨「表彰とかはないんですか?」

提督「あくまでも俺個人の利害のための作戦だった、というのを作戦報告書にも公式にもそう認知されてるからうんぬんかんぬんだ」

五月雨「端折りすぎです」

提督「要するにないんだ」

五月雨「でも戦艦棲姫を撃沈したんですよ!何かあってもいいはずです」

提督「何も書いてないんだよな・・・、まぁ配給量が今の二倍の六万ずつになるらしいぞ」

五月雨「二倍、ですか・・・?」

信じられないと言った風に言葉を失った。

提督「つってもしばらく作戦行動をとるつもりはないし、いやぁすごいたまりそうだなぁ」

五月雨「それって良い事なのかな・・・」

提督「文書の配達ご苦労だった。もう下がっていいよ」

巡視兵「失礼します」

ピシッと敬礼をして、執務室から去って行った。




同日。夜。食堂。

赤城「こ、これは・・・!なんでしょうか!」

目の前に置かれている丸焼きに目を奪われていた。

提督「なんか大本営から送られてきたんだ、七面鳥が二羽」

加賀「つまり七面鳥の丸焼きってことね」

提督「間宮さんはなにやってもうまいなぁ」

間宮「それほどでもないですよ」

かなり嬉しそうに照れていた。



皆は既に丸焼きにナイフを入れ、各々楽しそうに食べ始めていた。

提督「ちゃんと野菜も食えよー」

駆逐艦らに声をかけると、

電「うるさいのです!」

提督「何!?」

反応に文字通り絶句してしまった。

提督「電、お前・・・、反抗期か・・・」

五月雨「違うと思いますよ・・・」

提督の隣の机で涼風と一緒に食べていた五月雨が呆れていた。

提督「はぁ・・・、俺も食べるとするか」

五月雨「切りましょうか?」

提督「いくら秘書でもご飯のお世話までされるつもりはない!」




時間経過。午後七時。

食卓の上にあったはずの料理は既になくなっていた。

提督「まだケーキ残ってるけど、お腹、入るのか?」

赤城「甘いものは別腹って言うじゃないですか!」

提督「ならいいけどさ」

そう言うと奥の食堂に引っ込んでいく。







しばらくして、間宮がケーキの皿を持って出てきた。

後ろにはシュトーレンの皿を持った提督もいる。

プリンツ「シュトーレンだ!」

提督「俺が作ったんだけど、うまくできてるかな」

プリンツ「外見もいい感じだし、すごい!DankeDanke!ありがとう提督!」

満面の笑みを向けられてしまった。

提督「う、うん、遠慮せず食ってくれよ」


時間経過。午後九時。

五月雨「どこ行くんですか?」

提督「年賀状、ポストにだすの忘れてたんだ」

五月雨「でももう夜遅いですよ?」

提督「今のうちに出さないと忘れそうだし」

五月雨「あっ、じゃあ私もいきますよ。私の分もありますし」

提督「そうか?」

五月雨「はい!」

提督「ふむ」

海軍制服の上にそのまま灰色の外套を羽織り、手袋をはめ、年賀状が入った鞄を手につかむ。

五月雨「その外套、似合ってますよ」

五月雨がニコニコしながらそんなことを言った。

提督「な、なんだよ?」

五月雨「なんでもないですよ?」

提督「はぁ?」




巡視兵B「どちらに行かれるのですか?」

提督「年賀状を出しに、郵便局まで」

巡視兵B「それでしたら私共がだしにいきますよ」

提督「・・・俺は人を使うのはあんまり好きじゃないってことにしてくれ」

五月雨「でも私この前報告書出しにいかされましたよ?」

提督「だって、五月雨だし」

五月雨「なんですかそれ!」

巡視兵B「では、まぁ、いってらっしゃい」

提督「すぐ戻る」


提督と、提督の外套の袖を握った五月雨一行は、親子にしか見えない。





同時刻。舞鶴鎮守府。食堂。

加賀「どうして?」

夕立「その、日ごろの感謝みたいな?年越しっぽいし」

加賀「そう・・・、まぁ、いいけれど」

夕立「ホント!?嬉しいっぽい!」

暁「何の話してるの?」

トイレから帰っている途中、暁が話を聞いてしまった。

夕立「今度のお正月に、私がおせち?を作るっぽい!」

暁「おせちって、あのお正月料理の?」

夕立「それを提督に食べてもらうっぽい!」

その時、暁の中に突然闘争心が燃え上がった。

暁「わ、私だって作るんだから!」

夕立「え?」

暁「夕立なんかに、絶対負けないんだからっ」

夕立「と、突然すぎるっぽい・・・?」

しばらく考るように顔を下に向けた後、

夕立「じゃあ、勝負でもするっぽい?」

顔を上げて言い放った。

暁「受けて立つわ!」


響「暁、なんであんなこと言ったんだい?夕立さんには加賀さんがついてるみたいなのに」

暁「うぅ・・・」

夕立と加賀がいなくなった食堂で暁は突っ伏していた。

響たちは帰りが遅い暁の姿を探しに来たのだ。

雷「じゃあ、赤城さんに助けてもらってみたら?」

暁「赤城さん、お料理できるイメージあんまりないんだけど・・・」

その時、お風呂へ向かう時に通りがかった赤城が話を聞いていた。

赤城「どうしたんですか?私、料理ならわりと得意ですよ?」

暁「ホント!?」

赤城「・・・え、ええ、まぁ、そんな驚くほどでもないけど」

響「悪いけど、暁がどうやら夕立と料理対決っぽいことをするって約束したみたいなんだ。あっちには加賀さんがついてるっていうし、できれば、手伝ってほしいんだ」

赤城「そんなことならお安い御用ですよ!加賀さんに、料理に関しては、負けられませんし!」

電「・・・なのです?」



幸か不幸か偶然が重なり、かくして準備が始まった。





時間経過。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「おそろしく寒かったな・・・」

五月雨「だから言ったじゃないですか・・・」

提督「お前は夜遅いとしか言わなかったぞ」

五月雨「子供みたいなこと言わないでください」

提督「子供とは何だ!子供とは!」

五月雨「だって子供じゃないですか」

提督「俺は大人だぞ!」

五月雨「じゃあ提督は何歳なんですか?」

それとなく五月雨は歳を聞いてみた。

提督「十二歳だ」

五月雨「・・・」

提督「そんな目で俺を見ないでくれ、言いたくないことだってあるだろ」

五月雨「女性でもないくせに、教えてくださいよ」

提督「30代、とだけ言っとく」

五月雨「年功序列の階級社会で三十代で提督なんですか!?」

提督「悪いかよ!」

言葉の端に軽い苛立ちが表れていた。

五月雨「いえ、なんでもないです・・・」

気を取り直すように、提督は大きなため息をついた。

提督「なぁ五月雨」

五月雨「はい」

提督「お前って・・・、練度、どれくらいなんだ?」

五月雨「え・・・」

提督「いや、言いたくないならいいんだけどさ」

五月雨「・・・ケッコンできるぐらいには」

提督「マジか」

五月雨「はい」

会話はそれで終わったという風に、提督は事務作業に戻ってしまった。

五月雨「それだけですか?」

提督「ん?ただ確認したかっただけだ。すまん、いやなんだったら謝るよ」

五月雨「嫌とかそういうんじゃ、ないんですけど・・・」

その時、凄まじい音と共に執務室の扉が突然開かれた。

暁「司令官!」

提督「ノックぐらいしろよ」

暁「司令官は、お雑煮は、すまし汁と味噌、どっちが好き!?」

提督「俺は・・・、すまし汁、かな」

それを聞くや否や執務室から走り去っていった。




数分後、凄まじい音と共に執務室の扉が突然開かれた。

夕立「提督さん!」

提督「ノックぐらいしろよ」

夕立「提督さんは、お雑煮は、すまし汁と味噌、どっちが好きっぽい!?」

提督「俺は・・・、味噌、かな」

それを聞くや否や執務室から走り去っていった。

五月雨「・・・提督」

提督「ん?」

五月雨「すまし汁が好きだったんじゃないんですか?」

提督「なんとなく、変えてみた」

五月雨「どうなっても知りませんよ」

提督「お雑煮って言うと正月だよな?」

五月雨「そうですね」

提督「なんだかいやな予感がするなぁ」

五月雨「いやな予感ですか?」

提督「なんでもないよ、さぁ、仕事を片付けるぞ」




十二月三十一日。舞鶴鎮守府。玄関。

提督「くそが!こりゃキリがないぞ!」

提督が雄叫びを上げていた。

巡視兵「昨日の夜はずいぶん降ってましたからね・・・」

正門前に積もった雪を、提督と巡視兵が息を切らして総出でかいているのだ。

巡視兵C「艦娘たちも手伝ってくれればいいのに・・・」

提督「あいつら、なんか料理作っててさっ」

シャベルにたまった雪を山になっている方へ投げる。

提督「なんか、料理対決みたいなことっ、するらしいぞっと」

手が痺れてきた。

巡視兵「料理対決でありますか?」

提督「そうそう、正月のおせち料理を作るんだってさ」

巡視兵B「料理対決って言うと、いったい誰がです?」

提督「夕立と暁がやるっぽいな。でもなぁ、なんか鎮守府の中で二つ分かれてるんだよな」

巡視兵「夕立派と暁派、というように?」

提督「全く、それを見るこっちの身にもなってほしいもんだ」





大分片付いた雪を見やると、

提督「このぐらいにしておこう。・・・もう限界だ、俺は」

巡視兵「わかりました」

適当なところにシャベルを置いて、中に戻っていった。

移動。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「五月雨はどっちについたんだ?」

ふいに、書類から目を上げて五月雨に尋ねた。

五月雨「どっちって?」

提督「とぼけんなって、ばれてんだから。料理対決のことだよ」

五月雨「五月雨さん、です」

提督「そりゃまたどうして?」

五月雨「なんとなくです」

提督「お前、俺みたいになってきたな」




時間経過。移動。資材倉庫。

提督「大分たまった・・・」

うずたかく詰まれた木箱とドラム缶を眺めて言った。

妖精「そうですねぇ」

提督「新しい艦娘、新年祝いって感じで作ってみるか?」

妖精「何がほしいんですかぁ?」

提督「空母とか戦艦とか軽巡とか重巡とか」

妖精「そ、それは・・・。
   目ぼしい艦はもうほとんどほかの鎮守府いっちゃってますからねぇ」

提督「そうだよなぁ、大和とか欲しいなぁ」

妖精「でも、いまだに発見できてない艦もいるにはいるんですよぉ」

提督「んなことは知ってるよ。阿賀野型とかそういうのだろ?」

妖精「そうですそうです」

提督「あいつらはうちじゃ無理だろうな、もっと他のでないと」

妖精「他のといわれましてもねぇ・・・」

提督「名取も同じ型のやつがいないとさみしいかもしれない、なんて」

妖精「なるほど!」

提督「手始めに長良だな」

妖精「了解です!」



同時刻。食堂の厨房。

ルールとして、間宮さんからは一切の助言を受けてはならない。というものがあるために、間宮は隅で見守っているしかなかった。

加賀「何度も言っているけど、包丁で切るとき、添える手は猫の手にするのよ」

夕立「そ、それはわかってるっぽい・・・」

加賀「それさえ直せばもっとスムーズに行くと思うわ」

夕立「んーーーー」

そこにいるのは、加賀、夕立はもちろん、村雨、名取、プリンツ、秋月、春雨、飛鷹、隼鷹。主に新参組だ。

名取「頑張って、夕立さん」

夕立「そういうなら手伝ってほしいっぽい・・・」

隼鷹「料理をしていいのは二人って、自分でいってたじゃないか」

夕立「んーーー!」

プリンツ「策士策におぼれるっていう日本語、知ってる」

プリンツがニコやかに追い討ちをかけていた。




時間経過。宴会場の厨房。

赤城「うまくできてますよ、暁さん!」

暁「あ、ありがと」

響「照れてる場合じゃないよ、暁」

暁「照れてないし!」

電「響、なんか怖いのです・・・」

響「どうして?」

電「な、な、なんでもないのです!」

そのまま雷の胸に顔を埋めてしまった。

雷「どうしたの電?」

響「さぁ?」

電「なんだか響が本気なモードなのです!」



赤城「あっ海老の皮はそのままにしてください、食べるときに剥くんですから」

暁「そうなの?」

赤城「そうですよ」

提督「おっ、頑張ってんねぇ」

資材倉庫に寄ってから、五月雨の元に戻るのもと思い、暇すぎて鎮守府内を歩き回っていた提督が声をかける。

暁「まだ食べちゃだめだからね!」

提督「わかってるわそんぐらい、子供じゃあるまいし」

提督「てか、準備を早めにするのは構わんけど、あんまり量、作りすぎるなよ?
   まぁ余ったら赤城か加賀が食べてくれると思うけど」

赤城「今なんていいましたか?」

提督「何も言ってないぞ、ほら、料理に集中したまえ」

厨房から宴会場に向かうと、特に何をするでもなく暁一派の面々がたたみの上で寝転がっていた。

提督「なんか、俺も眠くなってきたな・・・」

山城「姉様の隣は空いてませんよ!空いてませんからね!」

提督「なんで二回言ったし。別にここで寝るなんていってねぇし。ていうかなんで五月雨ここにいるんだ・・・」

五月雨と涼風はといえば、涼風は寝ていたが、五月雨のほうは提督に気づいていた。

五月雨「すいません、なんか」

仕事を手伝わなかったことを言っているのだろう。

提督「別に珍しいことじゃないだろ?謝る必要はないさ」

戻る気はなかったなんて言えるわけがない。

ポン、と手を合わせると、

提督「んじゃ、俺は夕立んとこいってくる」

山城「いってらっしゃい」

提督「悪意しか感じない・・・」



移動。舞鶴鎮守府。食堂の厨房。

提督「うーっす」

加賀「提督、何か御用でしょうか?」

提督「用がなきゃ来ちゃいけないのか・・・」

夕立「提督さーん!」

提督を視界に捉えるや、抱きつこうとしにかかる夕立を加賀が抑え込む。

加賀「これが終わったら、好きなだけ抱きついていいから、後にしなさい」

夕立「はーい・・・」

提督「加賀、恐ろしい子・・・!」

加賀「聞こえてますよ」

提督「まぁ頑張ってくれたまえ、古参のやつらに負けてられないもんな」

ならばと提督自ら頭を撫でに行った。

夕立「うん!」

加賀「煽らないで」

提督「目が、目が怖いよ」


食堂。

提督「これ、応援っていえるのかよ・・・」

さっきの宴会場での光景がテーブルの上に変わっただけであった。

提督に気づいたのは間宮さんだけだった。

提督「悲しいもんだな、全く。間宮さーん」

間宮「?」

提督「今日の夜ごはんはやっぱり年越しそばですよね」

間宮「そうですけど・・・、不満ですか?」

提督「いえいえ、そんなんじゃありませんよ。聞いただけです」

暇だなぁ、とかなんとかほざきながら、再び提督は歩き出した。

ふと廊下を歩いている途中思いついた。

提督「カマクラを作ろう」




港に出て、まだ雪かきが終わっていない辺りまでいくと、とりあえず山を作る。

そして穴を開けるだけの簡単なお仕事のはずだった。

提督「でかい、山をでかくしすぎたかもしれないっ!」

掘る作業に予想以上にまごついていた。




時間経過。同所。

提督「随分かかってしまった・・・」

目の前には提督の背の数倍はあるカマクラが建てられていた。

提督「不思議な達成感があるな、これ」

扶桑「提督!風邪を引きますよ!」

後ろから扶桑が走ってきた。

提督「おお扶桑か、みてくれ、これを」

扶桑「カマクラ、ですか?」

提督「よくできてるだろ」

扶桑「随分大きいですね・・・」

提督「お陰で日焼け止めを塗りなおすなんてことをしなければならなかったほどに大変だったんだ」

扶桑「一人で作ったんですか、まさか」

提督「そりゃそうだろ、こんなの作るのに付き合ってくれるやつなんていないし」

扶桑「・・・そこはわかってるんですね」

提督「今何時なんだ?」

扶桑「もうそろそろお昼の時間です」

提督「四時間ぐらいかかったのか、ん、なんか四時間ってしょぼいな」

扶桑「暇人だったんですね」

提督「なぁ、扶桑」

扶桑「はい」

提督「外は寒いな」

扶桑「戻りますか?」

提督「うん」




まだ書き溜めは残ってますが、明日、仕事が休みなので午前中、できなければ午後投下します。

眠すぎて死にそうなのです。それでは・・・。


そば、雑煮、おせち
正月太り確実

せいぜい、雑煮の前に餅つきで運動もありかな


さて
かまくらで一緒に年越しそば
食べれるのはだれ?

>>449 カマクラで年越しそば・・・!魅力的な状況だ・・・!
   しかし!さすがに年越しそばは皆で食べたいので・・・。
   でもまだカマクラを使う機会はありますから、その時に考えておきます。

>>448 正月太りなんて・・・、そこまでは考えてなかったです(苦笑)




舞鶴鎮守府。食堂。昼。

提督「厨房、空いてたんですか?」

間宮「割と広いので、昼食とかを作る分には不自由しないんですよ」

提督「ほー」

大分疲れた様子の暁と夕立が席に座る。

加賀と赤城がそれ以上に疲れて見えるのは気のせいだろうか。

提督「いくらなんでも頑張りすぎだろ・・・」

涼風「すんごい頑張っててさ、なんかこっちが申し訳なくなってくるっていうかさー」

五月雨「午後は少し休むみたいです、夜にまたはじめるとか」

提督「それはそうと、カマクラ作ったんだよ俺」

五月雨「は?」

提督「暇だったからちょっと頑張ったんだ、後で見てくれ」

五月雨「私も作りたかったんですけど」

提督「だってお前、寝たそうだったし」

実際五月雨と話していた時は考えてすらいなかった。

五月雨「言ってくれればよかったんです!」

提督「落ち着け落ち着け」

夕立「私も見に行きたいっぽい!」

暁「私も」

二人が身を乗り出して話に割り込んできた。

提督「おうおう、皆食べ終わったら見に来てくれ」



カマクラ前。

五月雨「で、でかい」

夕立「すごいっぽい!」

暁「ほんとにすごい・・・」

山城「余程暇だったんですね」

赤城「なんというか」

加賀「子供みたいです」

秋月「でもほんとにすごいですよ、提督!」

春雨「私じゃ作れないなぁ・・・」

名取「さすが提督です・・・」

提督「何名か呆れて物も言えねぇみたいな感じになってるけど、これでも俺の努力の結晶なんだ」

村雨「子供っぽいなぁ・・・」

提督「童心に帰りたいときもあるのだよ」

五月雨「でもこれ、皆は入りきりませんよ?」

提督「さすがにそこまででかくするつもりはなかった」

五月雨「どうするんですか?」

提督「作りたいといったやつに作らせてあげようと思うんだ」

五月雨「つまり自分ではやらないんですね」

提督「おう」


そんなことを話している隙に、暁達は本物を見ながら作り始めていた。さすがに小さいものだったが。

村雨「五月雨も作ろうよー!」

暁とは離れ、夕立や秋月、名取と一緒に作っている村雨が声をかける。

駆逐艦や軽巡洋艦以外は作る気はなく、見ているだけにしたらしい。

涼風「ほら、早く!」

五月雨「そんな引っ張らなくてもいいって!」

提督「いいねぇ、こういうの」

赤城「学校みたいですね」

飛鷹「こういうの見てると落ち着くわね」

隣で隼鷹は酒を飲みながらただ笑っていた。

提督「お前らは作らないのか?」

赤城「せっかく提督が作ってくれたんですから、使わないと」

提督「そ、そうだな」

いつもは傍にいる加賀を探す。

赤城「加賀さんですか?
   加賀さんならもう提督のカマクラでなんかしてますよ」

提督「ん?」

入り口から中を覗き込むと、椅子を運び込み既に置いてあった七輪をいじっている加賀がいた。

提督「おい!それ俺がやるつもりなんだぞ!」


幸い、加賀は自分で椅子を持ってきたらしい。元々置いてあった椅子を流用されなくてよかった。

建物まで取りに戻るのはめんどくさいのだ。

提督「はぁ・・・」

加賀が温かい目でこちらを見ていた。

加賀「ホントに子供みたいね」

提督「今日だけで子供という単語を何回聞いたかわからんな」

加賀からマッチを受け取ると、ポケットから新聞紙の端切れを取り出す。

さっと新聞紙に火をつけると、予め小さくした薪を詰めた七輪の底へ投げ込んだ。

提督「加賀ー」

加賀「はい」

提督「うちわ、扇いでくれよ。七輪の器に通風孔みたいなのあるだろ?そこに頼む」

加賀「提督はやらないの?」

提督「俺は炭を持ってくる。あ、いや、やっぱ加賀が持ってくるか?それ暑いだろ」

加賀「じゃあ持ってくるわ」

提督「頼んだ」

さっさと炭も準備可能にしてしまいたいので、火力を上げていく。

冬とはいえ、さすがにここまで火が近いと相当暑い。

カマクラが溶ける心配はいらないだろう。

帽子を置いて髪を後ろに撫で付け、タオルを取り出す。

提督「この暑さがたまらんのだ・・・」



五分ほどすると、

加賀「持ってきたわ」

提督「案外早かったな」

木炭が詰まった箱を受け取ると、軍手をはめ、トングで木炭を七輪へ突っ込む。

そこからはただただ無言で火を起こし続ける。

首にタオルを巻き、汗をかいて必死にうちわを扇ぐ姿はもはや提督のそれではなかった。



時間経過。同所。

提督「あー涼しいわー」

火が落ち着いて、炭の表面が全体的に白くなったところで外へでてきた。

加賀「提督、汗かいてるわよ」

加賀が、タオルで提督の汗を拭う。

提督「それ俺のタオルだけどな、濡れてるだろ、触んなくていいぞ別に」

加賀「そんなこと気にしないわ。それで、あの七輪を使って何をするつもりなの?」

よくぞ聞いてくれたといわんばかりに、カマクラの中に入ると、提督は手で隅のほうを掘り始める。

加賀「何をして」

出てきたのは醤油と取り皿、そして切り餅の山だった。

全て冷えている。

加賀「用意周到すぎる・・・」





網を載せ、餅を焼いていると、入り口から視線を感じた。

まさかと思い顔を向けると、予想通りの奴がいた。

赤城「私の分、ありますよね?」

提督「予想以上に早くばれたな」

仕方ないといわんばかりにもう一袋取り出し、網に載せる。

提督「椅子は自分で持って来いよ?」

赤城「それ、他の皆にばれたらどうするんですか?」

提督「心配することなかれ、全員分ある」

赤城「ばれるのは想定してたんですね・・・」

提督「当たり前じゃないか」






その後あっさり全員にばれ、提督が全員分焼くことになった。

提督「赤城、絶対お前言いに行っただろ」

赤城「知りませんねぇ」

提督「くたばっちまえ」



時間経過。舞鶴鎮守府。二十三時四十分。

おせち料理もどうやら完成したようで、今日は皆で年越しそばを食べている。

さすがにこのときぐらい、消灯時間を守る必要はない。

巡視兵も来たいものは来るといいといったら夜勤で眠いはずの者まで全員来た。

刻一刻と、日付変更時刻が迫る。




そして、0時0分、皆が拍手する中、提督は用意された演壇を登った。

提督「諸君、昨年は、ありがとう。
   思えばこの半年、俺は皆に無理ばかりを強いてきたような気がする」

主にこの鎮守府で生まれた者から野次が飛ぶ。

提督「でもそんな中、本当によくやってくれた。俺から、最高の感謝をささげたい。ありがとう。
   もしかしたら今年、もっと辛いことだってあるかもしれない。また無理を強いることもあるかもしれない。だが、一つ忘れないで欲しい。
   俺は何も君らが嫌いなんじゃない。失いたくないのだ。艦隊は、一人も欠けるようなことがあってはいけないんだ。全ては諸君らのため、それを忘れるな。
   それでは、今年一年、舞鶴鎮守府で、楽しくやっていこう」

再び拍手が沸き起こった。

照れくさそうに、提督は演壇から降りると元いた席に戻り、すでに空になっている器を見つめた。

提督「ん・・・?」





本日はここまでです。

すこし考えた結果、重巡洋艦と軽巡洋艦を増やそうかと考えております。

↓2まで。レア度が高い者は抜きでお願いします。つまり、水色背景です。

那珂ちゃんだよ

高雄ですか・・・、思わず書きかけてしまいましたがそういえば先生の鎮守府にいるんじゃないか?と製油所作戦を見直したところいました。申し訳ない、注意書を書くべきでしたね。

利根、筑摩、愛宕、高雄、摩耶、鳥海以外の重巡洋艦。水色背景のみ。
↓直下です。

今日、投下します。時間帯は分かりません。

一月一日(元日)。舞鶴鎮守府。食堂。朝食。

酒を飲める年齢に達したものとおとそを飲んでいると、料理が運ばれてきた。

提督「こりゃまた、随分張り切ったなぁ」

おそらく二つ同じような料理があるってことは、どちらかが暁で、一方が夕立なのだろう。

提督「(とりあえず右から食べてみるかね)」

と、雑煮に箸を伸ばそうとしたところで、夕立が、

夕立「提督は味噌が好きなんじゃなかったっぽい?」

提督の眉がぴくりと上がった。

暁「でも、私が聞いたときは澄まし汁って言ってたけど」

夕立「ん?」

夕立と暁に見られ、箸をつける直前で硬直する。

夕立「提督さん、どういうことっぽい?」

提督「あ、いや、その、なんでもないんだ。
・・・そ、そう!両方好きなんだよ!」

苦しそうな提督を五月雨が言わんこっちゃないといった風に眺める。

提督「お、この伊達巻きよくできてるじゃないか」

無理やり話を引き戻すことにした。

途端に、暁がうれしそうに照れ始める。

提督「たたきごぼうも田作りも、こりゃうまいわ」

暁「レディーなんだから、当たり前よ!」

提督「ほうかほうか」

既に誰のものかは判明してしまったが、左の箱を食べてみる。

提督「このブリ、うまいな・・・」

夕立「結構頑張ったっぽい!」

提督「海老もよくできてるし、本当に頑張ったんだな」

栗きんとんも食べ比べてみるが、

提督「優劣つけがたいな・・・」

夕立と暁が期待のまなざしで見つめている。

提督「お前ら二人とも頑張ったんだろ?」

二人が同時にうなずいた。

提督「だったら勝敗なんてつけたくはないな」

五月雨「無難すぎる・・・」

提督はその発言を無視することにした。

提督「どれ、今日は初詣ついでに何か二人のいう事でも聞いてやる」

夕立「まぁ、それはそれでいいです・・・。約束っぽい!」

憤懣やるかたないと言った様子ではあったが承諾してくれたようだ。

暁「男に二言はないわよ!」

暁は逆に昂ぶっている。

提督「俺のできる範囲で頼むぞ、頼むからな」

五月雨「って、初詣ってどこに行くんですか?」

聞いていただけの五月雨が話に入ってきた。

提督「行くとしたら金剛院か、興禅寺か」

五月雨「天橋立神社とか、どうですか?日本三景に入る天橋立ですよ!」

提督「あそこは遠いぞ・・・、第一俺仏教だからな、寺社がいいんだけど」

五月雨「そんなのどうだっていいじゃないですか」

提督「罰が当たるぞ五月雨・・・」

五月雨「お願いです!天橋立神社に行きたいんです!」


提督「なんかその神社にあるのか?」

五月雨「そ、その、日本三景を見たいんです!」

苦し紛れの言い訳のように聞こえなくもなかったが、ここまで言うなら仕方がない。

提督「わかったよ、じゃあ天橋立神社だっけ?そこに行こう。車はどうしようかな・・・、タクシーでも呼ぶか。これぐらいもう鎮守府の経費から落としてやる」

提督は頬杖を着いて暗算を始める。

扶桑「何であんなに神社に行きたがるんでしょう・・・」

涼風「大体の予想はつくんだけどね」

扶桑「え?」

涼風「天橋立神社、恋愛成就で有名なんだ」

扶桑「なるほど・・・」

ならあそこまで五月雨が必死なのもなんとなく察しがつく。










移動中。タクシー車内。

提督「四台となると、結構かかるかなぁ」

五月雨「結構どころじゃないですよ、多分」

提督「さっきも言ったとおりこれは鎮守府の経費から削られる。つまり俺には何の被害もないんだ」

五月雨「大丈夫なんですか?それ?」

提督「一回ぐらいいんじゃないか?初詣だし」

五月雨「まぁ、大丈夫ですよね」

無論五月雨、涼風は同じ車内だった。

提督が乗る車にはほかにプリンツが乗っている。

提督は助手席に収まっている。

プリンツ「すごい雪景色ですね・・・!
     こんなの、見たことない!」

プリンツがやけに喋らないと思ったら外を眺めていた。

プリンツ「Admiralさんの出身はどこなんですか?」

提督・五月雨「Admiral?」

プリンツ「あっ、提督さんってことです」

五月雨「Admiralっていうんだ・・・」

提督「俺の出身は・・・」

おいおい・・・。

すっかり忘れていた。

俺の両親の命日はとっくに過ぎている。父はわからないが、母は十一月三日だったのだ。

なんてことだ、作戦に従事していたとはいえ、思い出すことさえしなかったなんてとてもじゃないが許されることではない。

軽く自己嫌悪に陥りかける。

プリンツ「提督さん?」

提督「あ、あぁ、俺の実家は新潟だ」

プリンツ「そこもたくさん雪が降る所じゃないですか!?」

提督「ま、まぁな」

いつ行こう。

正月に鎮守府を留守にするのは正直気が進まないが、そうするしかない。

できれば早めにいきたい。

しかしどうやって行こうか・・・。

京都から新潟の列車は・・・。

提督「運転手さん」

運転手「はい?」

提督「京都から新潟までの特急列車とかって、ありますか?」

運転手「でしたら、特急日本海とかじゃないですか?寝台特急なので、結構時間かかりますけど、一本ですから。
でもご飯は自分で用意しなきゃいけないんで、気をつけてくださいね」

提督「新潟の停車駅、わかりますかね?」

運転手「どこだったかなぁ・・・、新津駅とかだったと思いますよ」

提督「そうですか、ありがとうございます」

提督「新津駅か・・・、意外と近いな、徒歩10分程度か・・・」

小声で反芻する。


涼風「どうしたってんだ?」

後ろから涼風が首を伸ばしてきた。

提督「ん?実家の帰りついでに墓参りでもしようかと思ってね」

五月雨「いつ行くんですか?」

提督「できれば早いうちに行きたいんだ、来週には出ようかと思う」

五月雨「随分急じゃないですか、それ」

提督「早く行きたいんだよ、いやー今思い出すとは俺も年をとったのかな・・・」

プリンツ「Admiralさんはずばり28歳と見た!」

提督「それは若すぎるだろ、ありがとうな」

プリンツ「お世辞のつもりじゃないんだけど・・・」

提督「そうだなぁ・・・、一月のー・・・、十日ぐらいに行こうと思う」

五月雨「じゃあじゃあ、私もご一緒していいですか?」

提督「秘書でもそこまでしてもらうことはないって、休んでてくれ。
   事務仕事も帰ってきたら俺がやっとくから」

プリンツ「連れてってあげればいいじゃないですか」

提督「そうは言ってもなぁ、疲れるぞ?」

来てほしくないわけじゃないのだと理解するや、五月雨は粘る方へ方針を転換する。

五月雨「大丈夫です!」

提督「泊まることになるぞ?」

五月雨「大丈夫です!」

提督「一等席とりたいから・・・、お金も考えて俺と一緒の寝台だぜ?」

五月雨「も、問題ないです!」

提督「今一瞬迷ったろ?狭いし、やめと「いいですから!」

五月雨「行きましょう!」

五月雨「(願ったりかなったりだ!)」

提督「そこまで言うんなら、いいけど」

プリンツ「いいなぁ」

五月雨「ふふん」

提督「・・・?
ていうかプリンツ、連れてってあげたらって言ったの自分だからな」





天橋立。

提督「扶桑ー、景色にみとれるのは構わんけど、置いてくぞー」

駐車場が思いのほか遠いところにしかなかったのが幸いし、景色を眺めることが出来た。

扶桑「そんな、提督は見ていかないんですか?」

斜めに走る天橋立はなかなか綺麗だ。

提督「もう十分見たよ、ほら、急げって」

時間経過。天橋立神社。

提督「案外人少ないのな」

五月雨「ですねー」

扶桑「まぁここまで来る人も少ないかもしれません」

提督「じゃあ一丁行っとくか」

皆に小銭を渡す。

隣で顔を赤くしながら手を合わせる五月雨を提督は不思議そうに、扶桑は微笑みながら眺めていた。



一月九日。舞鶴鎮守府。夜。

夕立「急すぎるっぽい!」

突然の提督の、「あ、俺明日から三日か四日ぐらい鎮守府留守にするから」発言。

そして五月雨の「私も行くことになってます」発言のせいで夕飯の席は騒がしくなっていた。

どうやらプリンツは広めるという行為をしなかったらしい。我関せずという風にご飯を食べていた。

暁「い、いい、いつ決めたのよ!?」

提督「この前の初詣の時、車ん中で決めた」

電「私たちにももっと早く話してほしかったのです!」

提督「いやー悪い悪い。忘れてたわー」

事も無げにそんなことを言ってのける提督に非難の視線が集まる。

村雨「夕立も早く、ご飯食べないの?」

村雨が夕立を落ち着かせようと声をかけた。

夕立「んーーー!」

声にならない叫びを上げる夕立は目が潤んでいた。

提督「悪かったって」

困ったように笑いながら、夕立の頭をなでる。

ついでに暁の頭も撫でておく。

提督「今度また二人でどっか行こう、それでいいよな?」

夕立「・・・うん」

すっかり不貞腐れてしまったようだ。

暁「司令官、私は?」

提督「お前のことも忘れてないよ、とりあえず今回は我慢してくれ。もう席とっちゃったからさ」

暁「別に許したわけじゃないからね!」

提督「はいはい」

どこかに連れて行くというだけで何とかなるとは、なんて楽な奴らなんだ。





各々食事をし終え、さて帰るかというころ、間宮が提督に耳打ちした。

間宮「私の分も忘れないでくださいね」

えっ、と振り返ったときには間宮さんは食器を片付けにかかっていた。

扶桑は山城に引っ張られていったようだ。




移動。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「こりゃ大変だぞ・・・」

机の上に手を組み、顎を乗せてため息混じりに言った。

暁と夕立と間宮・・・。

五月雨「なんか言いましたか?」

提督「いんや、なんでもない。荷物の準備しとけよ」

五月雨「できてますよ」

提督「そこまで子供じゃないよな、すまんかった」

五月雨「はい」

提督「いずれにせよ明日は出るの早いからな、もう寝とけ」

五月雨「何時に出るんです?」

提督「朝の四時ぐらいだ」

五月雨「早すぎますよぉ!」

提督「だからさっさと寝ろって」

五月雨「・・・はい・・・」

提督「(俺が起こしに行かなきゃ行けないかもしれないぞこれは)」





時間経過。タクシー車内。午前四時半。

五月雨「朝はすいませんでした」

提督「なに、予想はしてた」

五月雨「・・・」

提督「どうした?さみだ    」

最後まで言う前に、五月雨は提督のひざの上で寝息を立てていた。

提督「すこし無理をさせたか・・・」

これからまだ京都駅まで少し時間がかかる。寝かせておくことにしよう。




時間経過。タクシー車内。

提督「おーい、五月雨ー、着くぞー、起きろー」

誰かに頬を引っ張られている。

まだ眠いのに、誰がこんなことを・・・。

懸命に瞼を開けると、提督の顔が間近にあった。

一気に今の状況を整理しようと頭が動き出す。

五月雨「京都駅ですか?」

顔を逸らしつつ、尋ねる。

提督「おう、もうすぐだ」

徐々に車の速度が落ちていき、京都駅前で停車した。

運転手がトランクに積まれた荷物を提督たちに渡していく。

提督「ありがとうございました」

運賃を支払うと、五月雨の手をとって駅へ歩き出す。

五月雨「今何時ですか?」

提督「大体六時半ぐらいだな」

五月雨「電車は?」

提督「七時二十五分発だったはず」

五月雨「あと一時間もあるじゃないですか!まだ寝ててもよかったんじゃないですか!」

提督「朝ごはんとか食べてれば自然と過ぎるんじゃないか?」

五月雨「そういう問題じゃないですって・・・。
駅で食べるんですか?」

提督「他にどこで食べるんだよ?」

五月雨「電車の中かな、と」


提督「中でもいいけど、お弁当になるからなぁ。俺お弁当ってあんま好きじゃないんだよ」

五月雨「はぁ」

生返事をするしかなかった。

京都駅の中にかなりの人がいるせいで、頭が混乱しているのだ。

提督「どれ、蕎麦屋にでも入るかね」

五月雨「は、はい、わかりました」

提督「ん、お前は蕎麦でいいのか?」

五月雨「提督についていきます」

提督「そうかい」


時間経過。特急「日本海」車内。

五月雨「意外と寝台って大きいんですねー」

適当に荷物を片付け、二段あるうちの下段に入る。

提督「小さかったらお前別部屋だったぜ」

五月雨「えっ」

上手く反応できなかった。

提督「ていうかさぁ、眠いなぁやっぱり・・・」

それには何も言わず、提督はすぐに寝台に潜り込む。

提督「五月雨は寝なくていいのか?いや、車の中で結構寝たからいいのか・・・」

すでに提督の声は小さくなってきていた。

五月雨「・・・提督?」

五月雨「本当に寝ちゃったんですか!?」

いるはずもない人影を恐れ見回すと、五月雨も寝台へ入っていった。

慌てて通路側のカーテンを閉めた。



時間経過。同所。昼。

さすがに目の前に五月雨の顔があるとビビる。

駆逐艦とはいえ、五月雨は可憐というか、なんというかマジマジとは見れない部類ではあるのだ。

提督「今何時だ・・・?」

懐中時計を見ると、十一時四十分を指していた。

提督「もうご飯食べようかな・・・」

荷物を探ってみると、朝間宮さんが作ってくれたお弁当が入っていた。

市販ではない、間宮さん手作りのものなのだ。弁当が苦手とかそういう次元じゃない。

そこでふといや事を思い出す。

夕立、暁と間宮さんそれぞれ、個人的にどこかいく約束をしていたのだった・・・。

若干憂鬱になりながら、弁当箱に箸をつけていると五月雨がおきだした。

五月雨「提督・・・?何してるんですか?」

声は寝起きそのものだった。

提督「お腹減ったら食べてくれ」

ん、と五月雨はお弁当箱を受け取る。

五月雨「唐翌揚げ弁当ですか?」

提督「間宮さんの唐翌揚げはうまいよな」

五月雨「わかります、それ」

二人でもぐもぐしていると、不意に五月雨が質問した。

五月雨「あとどれくらいかかるんですか?」

提督「もう四時間だから・・・、あと10時間ぐらいじゃないか?」

五月雨「10時間ですか!?」


提督「声が大きいぞ・・・。
   だから言ったろ?疲れるって?」

五月雨「提督はずっと何してるつもりなんですか?」

提督「寝るしかないだろう」

五月雨「そうですよね・・・」





食べ終わった弁当箱をごみ箱に捨ててくると、再び横になった。

提督「あぶな、コンタクト外すの忘れるとこだった」

慌ててはずすと、今度こそ横になる。

五月雨も提督のお腹に抱っこされるような格好で寝ることになった。

さすがに向き合ってはいない。





時間経過。

起きて時計を見るともう午後八時に差し掛かっていた。

途中起きて五月雨と話したりしていたのだが、五月雨が寝てしまったので自分も寝ていたのだ。

でも、これ以上はさすがに寝れそうにない。

目的駅にはあと二時間程度でつくだろう。

これだけ時間がたてば、電車はもう新潟に入ったころだ。

閉めていた車窓のカーテンを開けてみれば、景色は真っ白だった。

降り積もった雪が夜の闇の中でも銀色に輝いている。

提督「・・・こりゃ寒いぞ」

思わず声を出してしまったが、五月雨が起きた気配はなかった。

ただぼーっとしていると、徐々に空腹を感じ始める。

提督「駅で握り飯を買ったんだった、そういえば」

一人、外を眺めながらすっかり冷えてしまった御握りを頬張る。





目が覚めた。

提督がなにやらがそごそやっている。

見ればやっぱり何か食べていた。

五月雨「提督ー」

提督「お前は犬かなにかなのか?」

五月雨「は?」

提督「ご飯のにおいだけに反応する嗅覚組織でも持ってるのか?」

五月雨「何いってるんですか?」

提督「いや、なんでもないわ、お腹減ったらいってくれ」

五月雨「はーい」

んー!、と上半身だけ伸びをする。

提督「本でも読むか」

今思いついたように言った。

五月雨「本、ですか?」

提督「まだ読み始めてないからな、それぐらいしか暇つぶし手段ないし」

ご飯を食べ終え、難しいやつかなと身構えてしまったが、予想に反して冒険小説だった。

確かにこの提督に難しい本は似合わない。




時間経過。新津駅。

提督「んーーーーーーーーー!」

駅に降り立つと、荷物を置いて、全力で伸びをする。

提督「はぁっ」

そして勢いよく元に戻った。

五月雨「どこか泊まる場所あるんですか?」

提督「そんなの決まってるじゃないか」

五月雨「予約してあるんですか?」

提督「いやいや、俺の実家しかないだろ。近所の人がたまに掃除してくれてるから埃まみれってことはないはずだ」

五月雨「てことは、お墓って言うか、仏壇があるんですか?」

提督「そうすりゃよかったんだけどね・・・」

五月雨「まさか」

提督「少し歩かなきゃいけない」

五月雨「山の上、とかですか?」

提督「そんなんじゃないけど、15分ぐらい歩くことになる」

五月雨「それぐらいならよかったです」

駅を出て、二人は話しながら通りを歩いていく。

住民はもうほとんどが寝てしまっているようで、物音はしない。

聞こえるのは雪を踏みしめる二人の足音と、話し声だけ。

五月雨「提督の家って、工場と一緒なんですか?」

提督「工場は違うところにあるんだ。うちは別なのがちゃんとある」


五月雨「あ、そういえば。妹さんはお墓参りってしてるんですか?」

提督「腹違いだからなぁ・・・、やってないと思う」

五月雨「そうですか」

提督「どうかしたのか?」

五月雨「いえ、聞いてみただけです。
    ・・・、腹違いかぁ・・・」

提督「なんて?」

五月雨「妹さんって綺麗な方でしたね」

提督「確かに綺麗だったが・・・、どうしたんだ・・・?」

五月雨「なんでもないです」

提督「勝手に機嫌悪くなられても困るわ」

面白くなさそうな顔をする五月雨を、提督は何を言うでもなく眺めた。





静かに歩いていると、急に提督が立ち止まった。

提督「さぁ、着いたぞ」

典型的な日本家屋と言った感じの家だ。

五月雨「割と近いんですね・・・、ていうかすごいお屋敷ですね」

提督「不自由がないくらいの生活ができるぐらいにはそれなりの家庭だったから」

引き戸に鍵を差し込んで、中に入る。

玄関にある配電盤をいじり、家の明かりをつけた。

提督「ここを右に行った突き当りの部屋のところに炬燵があるはずだから、電源入れて待っててくれ」

五月雨「何かすることでもあるんですか?」

提督「お茶をいれてくるから」


五月雨「それでしたら私がやりますって」

提督「いいからいいから、待っててくれ。たまにはいいだろ」

五月雨「提督がそう仰るならいいですけど・・・」

言われるままに指示された部屋に行き、炬燵の電源を入れて、中に入る。

部屋には大小の箪笥と、ほかに押入れがあるだけだった。

小さいほうの箪笥に写真が載っている。

五月雨「ん?誰だろう?」

色褪せた写真には、提督と、彼に抱きつく女性が写っている。

五月雨「付き合ってた女性なのかな?」

その時、部屋の障子が開いた。

提督「あぁそれか、まだあったんだな」

五月雨「誰ですか?この方は?」

提督「妹だよ、ほら、この前紹介した」

五月雨「あぁ、なるほど・・・って、それはおかしいです!この前、小さいころは知らなかったみたいなこといってたじゃないですか」

提督「くっ、覚えてたか・・・」

五月雨「そりゃ覚えてますよ。
で、誰なんですか?」

提督「さっきは見もしないで言ったけど、こりゃ本当に妹だな」

五月雨「でも「俺が知らないころに撮った写真なのかもしれない」

提督「見ればこれ中学生ぐらいのころだし、覚えてないのも無理ないわ」

炬燵に入ると、考えるのはやめることにした。

提督「にしてもやっぱり冬は寒いな」

持ってきた日本茶を静かに飲む。




同時刻。舞鶴鎮守府。

間宮「提督さんがいないからって、さすがに夜更かしはだめですよ」

暁「今頃五月雨と司令官は二人っきり!気になって眠る気にもなれないのに!」

雷「いっそ突撃してやろうかしら・・・」

響「一人をひいきにするなんて、提督の風上にも置けない」

電「み、みんな落ち着くのです!」

夕立「落ち着いてられないっぽい!」

プリンツ「私も行きたかったなぁ、新潟。admiralさ~ん・・・」

隼鷹「みんなでぱーっと、お酒でも飲めば忘れられるって!」

飛鷹「ちょっと、みんなに変なこと言わないでよ・・・」

赤城「・・・」

加賀「赤城さん、どうかしたの?」

ぼんやりしている赤城を見ていった。

赤城「な、な何でもないです!」

目に見えて動揺していた。

秋月「みんなすごいですね・・・、食堂が怨恨だらけです」

春雨「司令官が帰ってきたら、どうなっちゃうんでしょう」

夕立「村雨も寝てる場合じゃないっぽい!」

当の村雨は揺すられても起きる気配すら見せない。

名取「提督も、たまにはのんびりしたいんです、きっと」

夕立「ちょっとずれてるっぽい・・・」

名取「ふぇ?」


間宮「それなら、何か夜食でも出しましょうか?」

山城「そういう間宮さんは、提督のことどう思ってるんですか?」

間宮「えっ、そ、それは・・・」

目に見えて赤くなっていた。

山城「あんな提督のどこがいいんだか・・・」

扶桑「山城、そういうことを言ってはいけないわ」

山城「でも・・・」

たまにでも、一瞬であれど提督に見蕩れている自分に腹が立って仕方がないのだ。




時間経過。翌日。午前八時。提督側。

台所で沸かした水を入れたやかんを五月雨と提督、それぞれ一つ持って外へ出る。

五月雨「いくらなんでも寒すぎますよ!」

出たとたん、五月雨が叫んだ。

提督「やかんで暖まっとけ・・・」

そういう提督の声も震えている。

昨日の夜よりもかなり冷え込んでいた。

こっから十五分の行軍は厳しいものになりそうだ。



移動。霊園。

提督「遅れたけど、ただいま、母さん、父さん」

お湯で、墓石に積もった雪を溶かしていく。

提督「知ってるか?この間、戦艦棲姫を撃沈したんだ」

静かに、ここにはいない両親に語りかける。

提督「あ、そう、伝えてなかった。僕舞鶴鎮守府の提督になったんだ」

舞鶴にいる艦娘の話をひとしきり話した。

その間、ずっと線香を上げたり、周りの雪をはいたり、提督は動き続けていた。

提督「それじゃあ、また来年来るよ。大丈夫、今度はちゃんと来る」


空になったやかんを二つ持って腰を上げると、空いた手で五月雨の手を握る。

しばらく歩くと、五月雨が口を開いた。

五月雨「提督、僕っていうんですか?」

提督「恥ずかしいところ見せたな・・・」

五月雨「恥ずかしくなんかないですよ。
    ・・・それに、名前も知れましたし」

提督「名前って、お前は元から知ってるだろ?」

五月雨「それが、知らなかったんですよ?
    舞鶴に来るときも、元帥さんは何も教えてくれませんでした。
    こっちに着てからも、資材運搬とかは妖精さんがやってくれてますし、書簡とかも、提督の手紙も全部『舞鶴鎮守府責任者』とか、『舞鶴鎮守府司令官』とかでしたもん」

提督「ほー、その調子だと本当に知らなかったんだな」

五月雨「龍花(タツハナ)さん、ですか」

提督「やめろよ、恥ずかしい」

五月雨「下の名前教えてくださいよー」

提督「100年後ぐらいに教えてやるよ」

五月雨「死んでるじゃないですか!」

提督「うるさいなぁ」

五月雨「こうも提督が子供っぽいとやってられませんね」

提督「五月雨、あんまり調子に乗るなよ?」

五月雨「放しません」

振りほどこうとした手を本気で掴まれた。

気付けばもう500レス近いですか・・・。

最初の頃は400ぐらいで終わるかと思ってました。

本日はここまでです。次回早めの投下頑張ります。

初詣ついでに言うことを聞くという約束をすっぽかしたクソ提督がいます。

すいませんでした・・・。

もしよければ欲しい絡みとかお願いします。

次の戦闘までは空きがありますから。

2~3個ほど欲しいです。

一航戦の背中を流してあげる

ありがとございます。

投下お待ちください

秋月と収穫しておいた大根を漬ける
漬けておいた沢庵の味見がてら一服する

今日投下します。時間帯はわかりません。

>>504までのすべての要望は飲み込むつもりです(まだ全部は書いていない)。

>>506、だ、大根、ですか・・・?

>>506 OKですww


移動。提督実家。炬燵にて。

提督「なぁ、五月雨、どっか行きたいところとかあるか?」

五月雨「え?」

提督「このまま帰るのもあれかと思ったんだ。帰りたいなら帰るよ」

五月雨「じゃあせめて何かお土産でも買っていきませんか?」

提督「あ、そうだ」

提督が微笑む。

提督「せっかく新潟まで来たんだ、米でも買って帰ろう。魚沼のほうとかなら間宮さんも喜んでくれるかもしれない」

五月雨「ここから近いんですか?」

提督「全然近くない」

五月雨「まさかいくんですか?」

提督「こんなこともあろうかと連絡はすでにしてある。お金は着払いだ」

五月雨「持って帰るのがお土産なのに・・・」

提督「きっと間宮さんも喜んでくれる・・・」

五月雨「まぁ間宮さんなら、提督からなら何でも喜びそうですけどね」

提督「そうなのか?」

五月雨「はい」

それからしばらくして、提督が五月雨に尋ねる。

提督「俺舞鶴のやつらに三日四日で帰るとか言ったっけ?」

五月雨「言ってましたよ」

提督「じゃあもう少し泊まっていこう」

五月雨「早く帰ったほうがいいと思うんですけど・・・」

提督「帰りたかったのか?だったら言ってくれてもよかったぞ」

五月雨「何でもないですもう少し泊まっていきましょう!」

提督「どっちなんだ?」

五月雨「泊まりましょう!」

提督「はいはい」

最近、五月雨の様子が何やらおかしい。

提督「何かあったのか?」

五月雨「え?何でですか?」

提督「なんか、よそよそしくないか?」

五月雨「えっ」

提督「いや、なんでもないんならいいんだけどさー」






翌日。朝。

提督「どっかすべりに行くか?」

藪から棒にそんな突拍子もないことを言い出した。

五月雨「でも道具なんかないですよ?」

提督「橇だよ、橇」

五月雨「橇、ですか?」

提督「知らないのか?じゃあ行くか、結構楽しいぞ。少し歩けば山があるだろうし」

五月雨「・・・?」





用意された橇に入り、紐をつかむ。

五月雨「これ、落ち葉とかいれるちり取りみたいなやつじゃないんですか?」

提督「そんなことないって。ほれ、いってこい!」

掛け声とともに押し出された。

五月雨「ちょっと、これ、どうやって止まるんですか!?」

提督「安心したまえ、すぐ終わる」


言うとおり、斜面はすぐ途切れ速度はそれほど上がらなかった。

後から提督も滑ってきていたようだ。

・・・それほどといってもかなりのものではあったが。

これほど楽しそうに提督がしているのだからいいか、と思う。

提督「もっかい行くぞー!」

五月雨「はい!}





時間経過。提督実家。午前十時。

提督「結構疲れたな」

五月雨「はい・・・」

五月雨「提督」

提督「どうした」

五月雨「ご飯どうするんですか?朝何も食べてないせいで大分辛いんですけど」

提督「・・・」

提督は固まっていた。

五月雨「何も考えてなかったなんて・・・、ないですよね!?」

提督「あのお姉さんいやだなぁ・・・、さすがに結婚してるよなぁ・・・」

五月雨「どうしたんですか?」

提督「買いに行く当てはあるんだ」

五月雨「なら行きましょうよ!」

提督「でもあそこの姉さん少し病んでるんだよ」


五月雨「病んでるって?」

提督「昔言い寄られた女性の中にいた一人なんだけど、すごいストーカー気質で・・・」

今会いに言ったらどうなるか、不安げに言った。

五月雨「私もついていきますから」

提督「お前が来ると余計面倒なことになるぞ多分。ちょっと行ってくるけど帰り遅くなっても心配せずともいい、絶対帰ってくるから」

五月雨「・・・なんかすいません」

提督「いずれは行かねばならぬのだ、行ってくる」





駅から来たほうとは逆にしばらく行くと八百屋はある。

提督「ごめんくださーい」

受付で寝ている亜麻色の髪をした女性に声をかける。

提督「(綺麗な人ではあるんだが・・・、人は見かけによらずとは言いえて妙だ)」

同じせりふを幾度となく繰り返し続けるとようやく目を覚ました。

提督を見るや、すぐにしゃきっとして立ち上がった。

姉さん「帰ってきたならいってくれればよかったの・・・」

提督「(こんな内気なところもまったく変わってないな・・・)」

提督「連絡先なんか教えてくれなかったろ、お前」

姉さん「そうでしたっけ・・・?というかお前だなんて・・・、夫婦みたいですね・・・」

提督「(めんどくさいぞこれは!まだこいつ結婚してなかったのかよ!)」

カゴに野菜やら肉類やらを放り込んでいく。

姉さん「私のところに来る気になったの・・?」

提督「忙しくて結婚どころじゃねえって」

姉さん「そっか・・・、そうだよね、ごめんね・・」


提督「はい、これ頼む」

ドンとカゴを台に置く。

言われた代金を支払って、極力目をあわさないように袋に荷物を入れて立ち去ろうと外に出た時、腕を掴まれた。

提督「(五月雨、帰り遅くなるわ・・・)」

八百屋の入り口の脇に、そっと袋を置いた。




時間経過。二時間後。

提督「ただいまー・・・」

五月雨「遅かったじゃないですか!心配したんですよ!」

そういう五月雨の目は本気だった。

提督「悪い。すぐ作るから」

キスをせがまれただの、男女の営みをされそうになっただの、監禁されそうになったなどと言えるはずがない。

便所に窓があって本当によかった。

あの時袋を外に出しておかなかったら詰んでいた。

連絡先も住所も教えなかった昔の俺によくやったと言いたい。

五月雨「何作るんですか?」

そんな提督の頭の中のことなど露知らず、五月雨が問いかける。

提督「焼きそばでいいよな」

五月雨「提督って料理できたんですね・・・」

提督「当たり前じゃないか」

五月雨「(私も練習しないとなぁ・・・)」

しばらく眺めていると、予想よりも早く出来上がった。

五月雨「おいしいです」

一口食べて、間宮さんほどではないにしろおいしいと感じた。


提督「よかったよ」

提督とこうして二人で食事をしていると何だか夫婦みたい、などと考えていた五月雨だった。





時間経過。夕暮れ。

綺麗な夕日の明かりが居間に流れてきていた。

仰向けに並んで天井を眺める二人を赤く染めている。

五月雨「この家って娯楽機器みたいなのってないんですね」

提督「ずいぶん前に売っちゃったからな、買っとけばよかったな。
   やっぱ・・・、こういうの嫌か?」

五月雨「あいや別に、そういうわけじゃなくって」

あたふたと弁解する五月雨をよそに、提督は夕飯のことを考える。

提督「五月雨、夕飯は何がいい?」

結局聞くことにした。

五月雨「夕飯、ですか?」

提督「うん」

五月雨「どんなのが作れそうですか?」

提督「今ある材料とかだと、肉料理は無理だな。米は買っといたし、魚はまぁ買ったけど近所の人にあげればいいから気にしないでくれ」

五月雨「お魚って、何を買ったんですか?」

提督「ヒラメ」

五月雨「じゃあヒラメの煮物とか食べてみたいです」

提督「わかった」

五月雨「提督!」

突然五月雨が叫んだ。

提督「どうした五月雨!?」

五月雨「太陽、大丈夫なんですか?」

提督「ずいぶん今更だぞ、その質問」

五月雨「今気づいたんです」

提督「だろうな・・・。
   家は大丈夫だ、父さんが窓とかは全部やってくれてるし、その他日焼け止めやらは塗ってあるから。
   心配してくれてありがとうな」

五月雨「お医者さんからもらってるって聞きましたけど、配達してもらってるのですか?」

提督「うちの医務室の妖精にすべてまかせっきりだ」

五月雨「なるほど・・・」

会話はそこで途切れた。


静かにしていると、提督が体を起こした。

提督「ご飯を作ってくる。もう五時だ」

二人ともうとうとしていたせいか、気づけば外は暗くなっていた。




ご飯を食べ、風呂に入り(交代で)、布団を敷いた。

五月雨「明日には帰るんですよね」

提督「さすがにな」

五月雨「ですよね」

提督「どうかしたのか?」

五月雨「今日はとても楽しかったです」

提督「それなら連れてきた甲斐があったよ」

五月雨は照れくさそうに笑った。

五月雨「一緒に寝てもいいですか?」

提督「一緒に寝てるじゃないか」

五月雨「一緒の布団でってことですよっ」

強引に潜り込んで来る。

提督「・・・明日は早いから、さっさと寝るぞ」

五月雨「はい」





一月十三日。移動。舞鶴鎮守府。午後八時。

提督「やっと戻ってきたわー」

五月雨「疲れましたねー・・・」

正門前に直立している巡視兵に敬礼する。

提督「只今戻りました」

巡視兵C「一月十三日、二○一二、であります。ご無事で何よりです」

提督「寒い中よく頑張るもんだわ、ほんとに」

巡視兵C「お気遣い感謝いたします」

その言葉に頷くと、なかに入っていった。

提督「まだ八時だから寝てはいないだろうな」

五月雨「どうでしょう、もしかしたら食堂で待ってるかもしれませんよ」

提督「そんなわけないだろ、もう夕飯から二時間も経って」

食堂には皆が勢ぞろいしていた。

提督「た、ただいま、みんな、どうしたんだ、そんな集まっちゃって」

暁「ずいぶん遅かったじゃない!」

夕立「遅すぎるっぽい!」

代表二名が抗議してきた。

提督「遅いも何も、最初から三日ぐらいで帰るって伝えてたじゃないか」

夕立「明日!」

提督「明日何かあるのか?」

夕立「明日つれてってほしいっぽい!」


提督「おいそりゃないぜ夕立、こんな疲れてるんじゃまともに楽しめないって。
   せめて一日ぐらいおいてくれても」

発言をさえぎり夕立が言う。

夕立「五月雨さんは三日も二人っきりだったっぽい」

提督「五月雨は悪くないから・・・。
わかった明日な、だから落ち着いてくれ」

当の五月雨は涼風と合流しすでに土産話に興じていた。

夕立が頬を膨らませて怒っている様子には不覚にも笑ってしまった。

それからというもの、暁からも約束をとりつけられ(夕立の翌日)、二人を宥めすかすのに一時間を要した。



時間経過。

一仕事終えたところで、間宮さんに言った。

提督「間宮さんはいつがいいですか?」

間宮「えっ?」

提督「覚えてないとでも思ったんですか?」

ニヤニヤしながら問いかける。

間宮「えっと、その・・・、暁さんの次の日で、いいです」

提督「わかりました」

それだけ聞くと、提督は離れて行った。

間宮「服、用意しないと・・・」




翌日。午前八時。舞鶴鎮守府玄関。

提督「ほれじゃ行ってくるわ」

五月雨「はい」

提督「別に何もしないって」

若干怒りつつも、一緒に旅行にまで行った手前行かないでくれとは言えないのだろう。

夕立「早くするっぽいー!」

提督「まだ上着着てないんだよ、すぐ行くから」



移動。舞鶴鎮守府前。

巡視兵「あれ、またどこかへ行かれるのでありますか?」

提督「すまん、帰ってくるのは遅くなるかもしれない」

夕立「♪」

巡視兵「了解であります」

夕立「提督はオーバーコートが好きっぽい?」

コートに手を突っ込んで歩道を歩く。

提督「最近は雪も落ち着いてきたな」

夕立「冬の間はぜんぜん外に出てなかったから、知らないっぽい!」

提督の右腕を夕立が両手で掴む。

提督「ところで、今日はどこに行くとか決まってるのか?」

夕立「とりあえず歩くっぽい」

提督「なるほどな(疲れそうだな・・・)」

夕立「提督は、やっぱり疲れてるっぽい?」

提督「そうでもない、心配しなくていいよ」

夕立「じゃあ早く行くっぽい!」

提督「走るのはいいけどペース考えろよっ?」

引っ張られるまま商店街を走り出す。



宝石店の前で夕立が立ち止まった。

提督「?」

ショーウィンドウ越しに夕立は見つめていた。

提督「どうした?」

夕立「これ欲しいっぽい!」

見れば指輪をしきりに指差している。

提督「値段見ろ値段、そんなの買えるわけないだろ」

店員「何か御気に召すものがありましたでしょうか?」

押し問答をしていたら中から店員が出てきてしまった。

夕立「これ、同じのもうひとつあるっぽい?」

提督「勘弁してくれって、買えないって」

頭を下げて、夕立を引っ張っていく。

提督「はぁ・・・、冗談もほどほどにしてくれないと困るわ・・・」

夕立「冗談のつもりじゃなかったっぽい」

提督「はいはい、ほら、さっさと行くぞ。次はどこに行くんだ」

夕立「提督さんが行きたいところでいいっぽいー」

提督「なら水族館とかどうだ?電車でいけばそう遠くないはずだしな」

夕立「すいぞくかん?」

提督「知らないのか夕立」

夕立「水賊館?」

提督「随分不穏な館じゃないか、行ってみればわかる」



午前九時半。水族館内。

夕立「見て!魚が!魚がこんなに!」

提督「見ればわかるって、おい!走るなよ!」

人気がまばらな館内を夕立は走っていってしまった。

提督「これじゃまるで引率の先生だぞ・・・」

その時、

夕立「ていっ!」

提督「なっ!?」

後ろから思い切り抱きつかれた。

提督「心臓が止まるかと思っただろうが!」

夕立「提督さんめっちゃ驚いてたっぽい?ねぇ?」

提督「うぜぇ・・・」

腕を引きはがし、先を歩く。



時間経過。同所。

夕立「見て!イルカさんすごいっぽい!」

提督「ああいうのってどうやって教え込むんだろうな」

夕立「飛んでるっぽいー!」

提督「もう少し声を抑えてくれ夕立」

うれしそうに微笑む夕立の笑顔に、不覚にも心臓が跳ねた。

その後も声を上げて夕立ははしゃぎまくっていた。


午前十一時半。飲食店内。

夕立「はい、提督さん、あーんして、あーん」

提督「・・・」

無言でそれに応じる。

二人とも同じオムライスを頼んだはずなんだけどな・・・。

そのスプーンで自分の分を口に運ぼうとした夕立の動きが止まった。

提督「どうした?食欲ないのか?」

夕立「う、ううん、なんでもないっぽい!」

そっぽを向きながらそれを口に含んだ。

提督「・・・?」





時間経過。同所。

提督「少し休んでいくか」

自分が疲れただけなのだ。

夕立「うん」

言うと、夕立は提督の方にもたれかかる。

本を読みつつ、若干店員の目線が痛くなってきたところで店を出た。

提督「次はどこへ行くのでありますか」

夕立「提督さんは?」

提督「俺はどこでもいいんだがなぁ」

夕立「・・・もう帰りたいっぽい?」

不安げにたずねた。

提督「そういうわけでもない、行く当てがないだけだ」

手近なところにあった町内地図を見ていると、動物園らしきものを発見した。

提督「なぁ、動物園とかどう・・・。
   ・・・夕立?」

その先で悲鳴が上がる。

見れば、夕立が肩に担がれ男に連行されようとしていた。

提督「白昼堂々、よくやってくれるもんだな!?ええ!?」

何が怒っているのかわからずとまってしまったが、すぐに思考を取り戻した。

怒号を上げて、猛然と地面を蹴り上げる。

後ろを振り返った男も走っていたが、振り返りざまに肉薄する提督を見るや顔が硬直する。

提督「ラァッ!」

走る勢いを殺さず、容赦なく顔面に拳を叩き込むと、男が文字通り「吹っ飛んだ」。

ずり落ちた夕立を手で引き上げる。

夕立「提督ッ!」

横から殴りかかってくる仲間らしき者が鈍器を振り上げるのを見、その腕を引っ掴む。

出し得る限りの腕力で、腕を掴んだまま振り飛ばす。仲間の男の肩が外れるいやな音がした。

泣きそうな夕立を後ろに回す。

提督「とんだ不貞野朗もいたもんだな、おい」

起き上がろうとする男に踵を叩き込む。

騒ぎを聞きつけた憲兵が提督を止めんと拳銃を構えた。

落ち着きを取り戻し、肩で息をしながら、ポケットに仕舞い込んでいた軍隊手帳を差し出した。

それを検分すると、憲兵は非礼を詫びる。

一通りの事態の経緯を聞かれたため、時系列を追って説明する。

そのまま男二人は連行して行かれた。

夕立「提督さん、大丈夫っぽい・・・?」

提督「すまん、少し度が過ぎたかもしれない」

情けなさそうな顔をする提督を夕立が見上げる。

夕立「でも、すごくかっこよかったっぽい」

提督「そ、そうかね・・・]

沈黙の後、

提督「行くか」

夕立「うん」

何事もなかったかのように、その場を後にした。

ミス発見。

すいません、今日はここで打ち切って書き直します。また明日投下します。

イベントの乙難易度にハゲかかっています(幌筵泊地より




午後四時半。

提督「まさか動物園もあるとは思わなかったな、あんなところにあったとは」

日が暮れた道を歩いていると夕立が言った。

夕立「提督さーん、おんぶー」

提督「でかい子供がいるぞ、ここに」




移動。舞鶴玄関前。午後五時。

巡視兵B「帰りが遅いものですから、心配しましたよ。と、夕立さんは?」

提督「背中で寝てるよ」

巡視兵B「気づきませんでした・・・」

提督「いや、気づくだろ」

巡視兵B「一七○五、おかえりなさい」

提督「おう」

肩をたたいて、鎮守府に入る。

丁度目の前を村雨が通った。

村雨「あ、提督だ」

背中にのっている夕立を興味深そうに眺めている。

提督「部屋はどこなんだ、さっさと降ろしたい・・・」

夕立を部屋まで送り届けると、どっと疲れが押し寄せてきた。

私室に戻ってからの記憶はない。




一月十五日。舞鶴鎮守府。執務室。

提督「ハッ」

時計を見ると午前五時半近くをさしている。

昨日の六時ごろ寝てから、ずっとそのままだったようだ。

提督「夕飯食べてないの、間宮さん怒るだろうな・・・。
   これだけねれば暁とは行けるにせよなぁ」

水を飲むために食堂へ行くと、厨房で間宮さんがご飯を作っていた。

提督「頭が上がらないな、間宮さんには」

シンクの蛇口にコップをあてがい、直接水を注ぐ。

間宮「昨日はお疲れみたいでしたから、起こさないようにしておきました」

提督「夕飯の件、ほんとすいませんでした」

間宮「そんなことより、夕立さんが心配してましたよ。自分のせいだとかなんとか」

提督「少し気を抜きすぎたかもしれないか・・・、後で謝っておきます」

間宮「そのあと五月雨さんがそんなことはないってちゃんと言ってましたし、大丈夫だと思いますけどね」

提督「(若干怒ってないか・・・?)」

水を一息に飲み干すと、自分でコップを洗いもとの位置に戻しておいた。

提督「間宮さん」

間宮「?」

提督「明日、行くところちゃんと考えといてくださいね」

間宮「私が考えるんですか?」

提督「お願いしましたからね」

間宮「えっ、ちょっと」

提督は早歩きで厨房を出て行った。





時間経過。午前五時五十分。

ぼつぼつ皆が食堂に集結し始める。

まだ欠伸をしている者もいた。

皆が席に着いたところで、いつものように頂きますと声を上げる。

提督「あれ?扶桑はどこにいるんだ?」

いつもなら隣にいるはずの扶桑は、山城の隣に座っていた。

五月雨「山城さんが話したいことがあるとかで、あっちにいるみたいですよ」

提督「なるほど」

暁「今日は何時ごろ出るつもりなのよ?」

提督「何時でもいいぞ」

さりげなく隣に着席した暁が聞いてきた。

暁「何時でもいいって言っても・・・、司令官の予定だってあるし」

提督「八時ぐらいでいいんじゃないか、それなら」

暁「八時ね、わかったわ」

五月雨「またどっか行くんですか?」

提督「またどっか、って、俺が怠け者みたいじゃないか」

五月雨「十分怠け者ですよ」

提督「そんなことより暁」

そんなことじゃないですよ!と五月雨が抗議」するのを聞き流し暁に顔を向ける。

暁「ん?」

提督「行きたいところとかもう決まったのか?」

暁「そのことなんだけど・・・」


提督「なんだ?はっきり言ってくれ」

響「私たちも行っていいかな、と」

いつもなら向かい側に座っている夕立達は他へ移り、第六駆逐艦の面子が揃っていた。

なぜ気付かなかったのか。

提督「暁はいいのか?」

暁「え?」

提督「いやお前、二人がよかったんじゃないのか?」

さらりと恥ずかしいことを言う提督。

だが暁はそれに固執していたわけではなかったらしい。

暁「別に大丈夫よ、みんなが行きたいって言ってるんだから、私も姉として頑張らないと」

提督「そ、そうか」

拍子抜けしてしまった。

提督「なんでもいいけど、行きたいとこ考えとけよ」

暁「いきなり行きたいところって言っても・・・、釣り、とか」

提督「正気かよ」

暁「レディーに向かってそんな言い方ないじゃない!」

提督「そんな怒るようなこと言ってないだろ、俺はただ冬に行くなんてありえないと思っただけで」

提督「なんだ?はっきり言ってくれ」

響「私たちも行っていいかな、と」

いつもなら向かい側に座っている夕立達は他へ移り、第六駆逐艦の面子が揃っていた。

なぜ気付かなかったのか。

提督「暁はいいのか?」

暁「え?」

提督「いやお前、二人がよかったんじゃないのか?」

さらりと恥ずかしいことを言う提督。

だが暁はそれに固執していたわけではなかったらしい。

暁「別に大丈夫よ、みんなが行きたいって言ってるんだから、私も姉として頑張らないと」

提督「そ、そうか」

拍子抜けしてしまった。

提督「なんでもいいけど、行きたいとこ考えとけよ」

暁「いきなり行きたいところって言っても・・・、釣り、とか」

提督「正気かよ」

暁「レディーに向かってそんな言い方ないじゃない!」

提督「そんな怒るようなこと言ってないだろ、俺はただ冬に行くなんてありえないと思っただけで」




時間経過。

八時半。鎮守府玄関前。

巡視兵「今日はどちらか行かれるのでありますか?」

提督「暁達と行くことになってるんだが・・・、三十分以上も待たせていったいどういうつもりだ」

巡視兵達と他愛もない話をし続け、結構時間が経っている。

と、ようやく彼女らが現れた。

電「遅れて申し訳ないのです」

提督「何かあったのか?」

暁「響がお腹痛いとかで、出るのが遅れたのよ」

響「待たせちゃったよね、やっぱり」

雷「そんなこと気にしないでいいじゃない、ほら、行きましょう!」

提督「・・・お前が言うな」










時間経過。移動中。

電「た、高いのです!」

いつの間にか電を肩車していた。

提督「今日は快晴だな、絶好の散歩日和だ」

道行く人々が四人の『子供』と『父』が歩いているのをすれ違い様に微笑ましく見ていた。

暁「何か、見られてない?」

提督「見られるっていうと悪意がある響きだな」

響「え?」

提督「響、響き、響ちゃん、とか」

響「何を言ってるんだい?」

提督「何でもないです」




移動。水族館。午前十時頃。

受付で昨日と同じ人に会った。

違うぞ、夕立と俺はそんな関係じゃない、と目で訴えようとするが意味はあるはずもなかった。

電「魚さんがいっぱい泳いでいるのです!」

雷「司令官、この魚は何?」


提督「それはサメ科だな、種類はわからんけど」

雷「サメって人を食べるんでしょ?どうやって与えてるのかしら・・・」

おぞましい勘違いをしていた。

近くにいた子供が目に見えて怯え始める。

提督「違うぞ、サメは確かに人を襲うやつもいるがなにも人しか食べないわけじゃない。少なくともここにいるサメは人食いじゃないだろう」

子供が胸をなでおろした。

雷「そうなの?」

提督「ていうかそんなこと誰から聞いたんだ?」

雷「赤城さんに聞いたわ」

提督「なんてことを・・・」

赤城・・・。

暁「司令官」

司令官?、と、ようやく周りの人々が不審に思った。

提督「どうしたー暁ー、なんだ?クラゲか?お父さんなぁ、クラゲに刺されたことがあってさぁ」

暁「お、おとう、さん?」

異変に気付いた提督が、暁を抱っこして違うところに行こうとする。

暁「ちょっと、しれ「お父さんと呼んでくれ」

提督「周りの人が気付きかけてる、こういうところであんまり身分を知られたくないんだ」

おそらく昨日の騒動では詳しいことは広まらなかったのだろう。

暁「で、でも・・・」

腕の中で暁が耳まで真っ赤にしている。

電「お父さん!この魚は何なのです?」

提督「これは秋刀魚じゃないか?すごい群れてるな」


なんだ聞き間違いか、と周りの人々は注意を逸らした。

当の暁は提督にしがみついたまま黙りこくっている。

響「暁、どうしたんだい?」

暁「なんでもないんだからっ」

暁は自分で降りてしまった。

提督「まだお前らも子供なんだなぁ、軽いもんだ」

暁「子供じゃないし!」

提督「レディーだったか、すまんな」

電「司令官さん、そろそろ時間なのです」

提督「時間って?」

電「あれなのです!」

今日もやるのか、イルカショー、口まででかかった言葉を寸出で止める。

提督「もうそんなに時間ないな、急ぐか」


移動。会場。

スタッフ「じゃあこのイルカさんに触ってみたい子供さんはいるかなー?」

提督「誰か行かないのか?」

響が手を上げていた。

ほかの子供たちは怖いのが勝っているようで、手を上げようとしていない。

スタッフ「じゃあそこの、水色の髪の毛の子、こっちへきてくださーい!」

響が出ると、観客から黄色い声援が飛ぶ。

提督「あの髪の色はあんまりいないもんな、珍しいか」

おそるおそる響がイルカを撫でている。

ひとしきり触った後戻ってきた。

電「どんな感じだったのです?」

響「なんか、可愛かったよ」

暁「噛まれたりは?」

響「見てただろう?されなかったよ」

雷「触り心地はどんなだったの?」

響「なんか、ぬめぬめしてたけど、気持ち悪くはなかったかな」

スタッフはもうほかの子供たちを募集し始めていた。

時間経過。動物園。午後一時。

昨日とまったく同じ店で同じメニューを食べた後、動物園に向かった。

なんだか昨日よりも疲れている気がする。

電「司令官、あれは何なのです?」

提督「ありゃキリンだな」

響「じゃああれは?」

提督「あれは・・・、コアラ、だと思う」




時間経過。

彼女らはほとんどの動物を知らないらしい。

そんなことをしながら回っているうちに日が暮れ始めた。

提督「そろそろ帰るか?」

暁「なんだか疲れてきちゃった・・・」

通りかかるタクシーを呼び止めて、舞鶴鎮守府まで送ってもらうことにした。


移動。食堂。午後六時。

五月雨「着々と仕事がたまってますけど、大丈夫ですか?」

提督「急ぎの案件はないはずだし、明日過ぎればちゃんとやるよ」

夕飯の席で仕事について五月雨に訊かれた。

五月雨だけに押し付けるわけにも行かず、ここ数日は溜めっぱなしなのだ。

五月雨「明日は誰といかれるんですか?」

提督「間宮さんだよ」

駆逐艦の娘達とご飯を食べている間宮さんを見ながら言った。

五月雨「間宮さんですか?」

提督「うん」

五月雨「どちらにいかれるんでしょう?」

提督「いや、詳しいことはまだ何も聞いてないな」

五月雨「提督が決めるんじゃないんですか?」

提督「俺が行きたい所に行ってもしょうがないと思ったから間宮さんに任せた」

五月雨「そうなんですか」



提督「今日はもう寝るとするかね・・・」

皆が食べ終わったのを確認し、ごちそうさまの掛け声をかけると、一人私室へ引き返す。

提督「まだあれから三ヶ月しかたってないのか・・・」

十一月作戦と呼ぶようになったあの激戦を思い出す。

今でもあの砲撃の音は耳に焼きついたままだ。

あの後、各鎮守府から賛美の手紙が送られてきたのことも思い出して、笑みを浮かべる。

提督「そういえば建造のほうはどうなったんだろう」

工廠へ顔を出してみる。


妖精「先ほど開始しまして、あともう少しですぅ」

提督「海から出現する艦娘もいればこうして出てくるのもいるのってなんだかおかしくないか?」

妖精「私にはお答えできませんよぉ」

提督「そうだよな、今のは忘れてくれ」

そして、

妖精「できました」

長良「軽巡、長良です。よろしくお願いします!」

提督「舞鶴によく来てくれた。この鎮守府の責任者兼総指揮官の龍花だ、よろしく」

今後は名前を名乗っていくことにしようと突然思い至ったのだ。

長良「よろしくお願いします、提督」

提督「早速で悪いけど、名取に会ってくれないか?」

長良「名取がここにいるんですか!?」

提督「たぶん、今頃食堂でご飯を食べてるんじゃないかな」

長良「すぐに行きます!」

提督「こっちだ」

移動。舞鶴鎮守府。食堂。

五月雨「あれ?提督?どうし」

後ろにいる艦娘を見て言うのをやめた。

長良「今日からお世話になります、長良です」

名取「長良!どうしてここに!?」

長良「提督のおかげですよ」

名取「提督、ありがとうございます!」

提督「感謝されるほどのことじゃないって、じゃあ俺は戻るから。名取、鎮守府を案内してやってくれ」

名取「わかりました」

二人は手を取り合って食堂を後にした。



一月十六日(翌日)。鎮守府玄関前。午前七時五十分。

提督「だんだん俺が遊び人なんじゃないかと思えてくるんだ」

巡視兵「そんなことはないでありますよ。あの十一月作戦以降、皆一層提督への尊敬を深めております」

提督「そうだといいんだがな・・・」

例によって待っているのだ。

今回は提督が早すぎるだけではあるが。

間宮「すいません、お待たせしてしまいましたか?」

いつもの服とは打って変わって、全体的に落ち着いた雰囲気の私服だった。

体の線はコートで見えなかったが、足に関してはほっそりしているのが一目でわかった。

提督「いえ、大丈夫ですよ」

巡視兵に手を振り、出発した。





移動中。

提督「どこに行くのかはもう決めたんですか?」

間宮「そうですね、大体は決まりました」

提督「楽しみですな」

そう言って連れて行かれたのは果たして水族館だった。

予想はしていた。嫌ではないのだ、間宮さんとなら苦ではない。

受付で、あぁなるほど、と納得顔をされたのが堪らないのだ。

提督「(あの職員め・・・)」

間宮「どうかされましたか?」

提督「何でもないですよ」

間宮「?」



時間経過。移動。飲食店。

提督「本当にショー、行かなくてよかったんですか?」

間宮「いいんです、だって提督さん、お疲れでしょう?」

間宮「そんなことはバレバレですよ」

間宮「全然隠せてませんから」

提督「マジですか」

間宮「マジです」

提督「こりゃ困ったな・・・。でも、さすがにどこか行かないわけには行きませんよ。まだ言うほど疲れてるわけじゃありませんから」

間宮「私は提督さんと居られれば十分ですよ」

提督「そ、そうですか」


電車に乗ったりしているだけで、いつの間にか日が暮れ始める時間になってしまった。


移動。玄関前。

巡視兵C「一六四五、おかえりなさい」

提督「ただいまー」

晴れやかな気分で鎮守府に戻ってきた。

提督「今日は楽しかったですよ」

間宮「ええ、私も楽しかったです」


二月四日。夜。

プリンツ「セツブン・・・?って、なに?」

提督「知らないのかプリンツ」

プリンツ「はい」

提督「要するに豆をぶつければいいんだ」

プリンツ「提督に投げればいいんですか?」

提督「違う!俺じゃないって!」

五月雨「もう鬼役は提督でいいじゃないですか、何で嫌なんですか?」

提督「だって、痛いし・・・」

プリンツ「鬼はー外ー!」

その発言を無視し、プリンツは全力で豆を提督にぶつけた。

提督「いっ!?おい、手加減してくれよ!」

プリンツ「セツブンって楽しいのね、こんな行事があるなんて知らなかった!」

提督「笑顔が怖い!」

三月一日。午前九時。

京都の当たりも寒波が引き始め、寒さはそれほど辛いものではなくなり始めた頃。

提督「燃料が・・・、17万3255、弾薬17万1028、鉄鋼19万34、ボーキサイトが19万4828。いくらなんでもありすぎだろ」

五月雨「12,1,2,3、もう四ヶ月も何もしてませんからね。たまに他のところと演習してるせいで、大体各資材六万ほど消費してます。
    12月は三万、3月の今日まで六万ずつで、それに遠征分も加えればこんなになっちゃったんですね」

提督「なっちゃったって、俺も好きでこんなに溜め込んだわけじゃない。
   おかげで資材倉庫増設しなきゃいけないほどに増えてる」

どうするかなぁ、とため息をつく。

提督「作戦といっても、何かあるとは到底思えない」

なぁどうする?、と資材収支報告書から顔を上げた時、

隼鷹「てーとくーーーーーー!」

提督「朝っぱらからなんだよ、声抑えろや」

飛鷹「すいません・・・」

提督「飛鷹は謝らなくていいんだぞ・・・」

提督「で?どうしたんだ?」

隼鷹「焼肉に行こう!」

提督「却下」

隼鷹「そう言わずに頼むよ、このとおりだって!」

提督「朝っぱらから焼肉になんざいきたかないわ、時間を考えろ時間を」

隼鷹「つれないねぇ提督-」

飛鷹「だから言ったじゃない、どうせ無理だって」

提督「む・・・」



意外と少ない・・・。本日はここまでです。ありがとうございます。

乙です
ところで資材って各種最大でどこまで保有できるんだっけ?

>>547 30万なので問題ないであります

>>531 >>532で謎のループが発生してるじゃないですか。
前々きづきませんでした。脳内削除しといてくださると助かります。

ノロウイルスはやばいですね。

明日、投下します。

どうせ無理という言葉に提督が反応した。

隼鷹「そうはいっても提督だってよくデートみたいなことしてるし、いけるかなと思ったんだよ」

提督「別にいやなわけじゃないんだ、その、時間を弁えてくれればな」

隼鷹「じゃあ今夜はどうよ?」

提督「夕飯は・・・、なら、みんなでってのは駄目なのか?」

隼鷹「それはだめだ」

提督「どうして?」

飛鷹「どうしてもです」

提督「だけどなぁ・・・」

さすがに夕飯を抜けるのは気が引けるのだ。

しかしそんなことを気にするのは今更か。

提督「五月雨がいいって言うなら行ってもいい」

五月雨「え」

提督「どうかね?」

五月雨「そうですね・・・、一日ぐらいなら良いと思います。
    私も随分わがまま聞いてもらってますし、たまには」

隼鷹「五月雨ちゃんありがとう!じゃあ提督、夜五時に玄関で待ってるから!」

提督「あっちょっとま」

引き止めるまもなく彼女らはいなくなった。

提督「予約とか申してあるのかな・・・、第一どこで食べるんだ・・・」

時間経過。午後四時五十分。

提督「十分前行動を心がけるよう言ってるのに、まだ来てないとは」

巡視兵B「今宵はどちらへ?」

提督「焼肉に行きたいらしい、軽空母連中が」

巡視兵B「焼肉かぁ、いいですねぇ・・・」

提督「間宮さんが来月かそこらにやってみましょうかって言ってたぞ」

巡視兵B「ホントですか!?間宮さんの料理なら安心ですね」

提督「期待していいと思う、うん」



隼鷹「さすが提督、早いねぇ」

飛鷹「もっと早く来るつもりだったんですけど・・・」

提督「俺も今来たところだよ。それじゃあ行ってくる」

巡視兵B「いってらっしゃい」

移動中。

提督「どこで食べるんだ?俺は焼肉店なんてこの辺りじゃ聞いたことないんだ」

隼鷹「この近くにはないよ、もう少し歩くのさ」

提督「どれくらい歩けば着くんだ?」

隼鷹「あと十五、二十分ぐらいで着くと思う」

提督「そうか」

飛鷹「提督」

提督「ん?」

飛鷹「ここまできてこの話題もあれかと思ったのですが・・・」

提督「ん?言ってくれ」

飛鷹「最近作戦行動をしないのはなぜでしょう?」

提督「他の鎮守府は一ヶ月か二ヶ月に一回は出動しているみたいだな」

飛鷹「私達は?」

提督「もっぱら佐世保鎮守府のやつらが担当しているんだ、ほとんどの異変は南西諸島のほうで起きているからな。
   あそこの鎮守府は装備も整っているから、助けはほとんど要らないんだろう」

飛鷹「でも「心配するな」

提督「俺らの出番は必ず来る。心配せずとも、勝手に作戦要請は来るさ」

現に、秘書にも知らされていないが、東部オリョール海において弾薬・燃料の輸送船が相次いで撃沈された旨の報告が多数上がっている。

すでに佐世保が迎撃に当たっており、手こずっているとのことらしい。今のところ連絡はない。

提督「ま、呉だろうなぁ・・・」

隼鷹「何の話?」

提督「いや、なんでもない、ほら、着いたんじゃないか?」

と言って、目の前の店を指差す。

隼鷹「あぁそうそう、ここだよここ!」

飛鷹「安心してください、割り勘ですから」

提督「心底ほっとしたよ・・・。赤城とか加賀にばれるんじゃないかとびびってたところもあったけどな」

隼鷹「終わりよければ全てよし、っていうだろ?」

提督「もう何でもいいから入るぞ」

時間経過。

提督「(とても女性とは思えない食いっぷりだった)」

正直最初の注文でカルビ五人前と豚トロ四人前、牛タン五人前をかまされたときは肝を冷やした。

その後も三人という人数に合わない注文をされ続け、提督も大分腹が膨れている。

隼鷹「いやぁ久しぶりに食ったよー!」

飛鷹「そうね・・・、私ももう歩けないわ・・・」

提督「すいません、タクシー呼んでもらえますか」

受付で勘定をしながら(割り勘で)頼み込む。

受付「わかりました」

時間経過。移動。舞鶴鎮守府執務室。

隼鷹と飛鷹に別れを告げ、提督は五月雨が待っているであろう執務室へ向かった。

時刻はすでに八時を回っている。

提督「すまん五月雨!遅くなった!」

五月雨は執務机の椅子に座り、何かの資料を読んでいた。

五月雨「おかえりなさい、大丈夫です。私も寝てただけですから」

提督「とりあえず風呂入ってくる、もうみんな出たよな?」

五月雨「はい、もうみんな入った後だと思います」

提督「さっと入ってくるわ」

五月雨「あっ、そういえばまだ一航戦の」

二人が入っていません、言う前に提督は走っていってしまった。

五月雨「まさか、そんなことないよね・・・?」

移動。大浴場。

提督「あぁ・・・」

提督「髪本当に切らないとな・・・」

髪の毛を後ろに払い、顔を上げて、それぞれのシャワーに備え付けられた鏡を見る。

・・・。

提督「(やべぇ誰かいる!)」

後ろに誰かがいる!

頭の回転が一気に速まる。

巡視兵か?いや、それはない、彼らの入浴時間はもっと遅くにと決まっている。

だとしたら、・・・艦娘以外にありえない。

赤城「背中、流しましょうか?」

提督「どうして・・・、赤城、全員もう風呂から上がったって五月雨が」

突然のことに動揺を隠せなかった。

扶桑のときは事前に接近を察知できていたが、今回は違うのだ。

加賀「私たちはまだ入ってなかったのよ、五月雨さんが勘違いをしたみたいね。提督がいるのは予想外だったけれど」

提督「すまん、今出るから」

立ち上がる提督の腕を赤城が掴んだ。

赤城「お背中、お流ししますから。じっとしていてください」

提督「いいって、自分で洗うから!」

手元にあったはずの手ぬぐいはすでに奪われていた。

もうあがいても無駄か・・・。

赤城に全てを任せた。

突然背中を手が這う。

提督「ちょっ!?」

赤城「綺麗な肌ですね・・・、羨ましいです。後ろから見たらがたいの良い女性にしか見えません」

提督「女性とは、失礼な」

何とか言葉を搾り出した。

一時間に思われた時が過ぎ、ようやく提督は解放された。

冷えた体をあっためようと大浴槽へ向かおうとする提督は再び腕を掴まれた。

加賀「私たちの背中は流してくれないのかしら」

提督「じょ、冗談だろう?」

加賀の無表情からでは本意を読み取れない。

仕方なしに、赤城と加賀のふたりの背中を流してやる。

提督「こんなもんだろ」

よいしょ、と腰を上げる。

赤城「触ってもいいんですよ?」

提督「馬鹿を言うのもそれぐらいにしとけ」

今度こそ湯船につかり、二人を見ないようにしながら浴場を出た。



三月十一日。舞鶴鎮守府提督私室。夜。午後十一時。

提督「寝れない」

三十分近く格闘した挙句、彼は起きることにした。

どうしたものか、今日は特に何かしたわけでもないのに寝付きが悪い。

外に出るか・・・、立ち上がった途端にドアがノックされた。

突然のことに腰が抜けそうになった。

提督「誰だ?」

村雨「提督、起きてる?」

提督「あぁ」

村雨「お願いがあるんだけど」

提督「なんだ?」

村雨「一緒に寝て欲しいんだけど」

提督「は?」

よりにもよってこのタイミングで・・・。

村雨「だめ、ですか?」

提督「駄目ではないんだけど・・・」

村雨「なら入りますよー」

提督「・・・」

枕を抱えて、人目を気にしながら村雨は部屋に体を滑り込ませた。

提督「寝れないのか?」

村雨「ま、まぁね」

提督「俺が寝てたらどうするつもりだったんだ」

村雨「無理やり入ったと思う」

提督「俺も寝れなかったところだったんだよ、ほれ、寝ようか」

ベッドを指差す。

村雨「・・・」

提督「なんだよ?」

村雨「ひ、ひざ」

提督「聞こえないぞ・・・」

村雨「膝枕を!していただけないでしょうか!」

提督「俺寝れないじゃないかよ」

村雨「・・・」

提督「わかったよ、わかったわかった」

壁に上半身を凭せ掛け、足を投げ出す格好になる。

いそいそと村雨が、太腿の辺りに頭を乗せる。

提督「(恥ずかしいな・・・)
   それ寝れるのか?」

村雨「・・・」

提督「おい?」

村雨「・・・」

提督「寝るの早すぎるだろ・・・」

手持ち無沙汰な手を村雨の体にかける。

翌日。舞鶴鎮守府提督私室。朝。五時半。

提督「ん・・・」

足が重いな・・・、と思い見ると村雨がまだ寝ていた。

提督「そういえば昨日・・・」

提督「村雨、朝だぞ」

村雨「んー、先行ってて・・・」

提督「朝ごはんまでには来るんだぞ」

寝違えたかな・・・、首を揉みながら提督は部屋を出て行った。

村雨「ん・・・」




移動中。舞鶴鎮守府廊下。

五月雨「昨夜はお楽しみでしたか」

提督「は?」

五月雨「は?じゃないですよ!こっちのセリフです」

提督「俺が何をしたって言うんだ」

五月雨「見ましたから」

提督「だから何を」

五月雨「その、村雨さんが、提督の部屋に入るのを」

提督「あぁ、そのことか。ていうかなんで見たんだ?」

五月雨「丁度トイレに行こうとしてただけです!否定しないんですか!」

提督「いや見たんだったら言い逃れのしようがないだろ・・・」

五月雨「何をしてたんですか?」

提督「ただあいつが寝れないって言うから一緒に寝てやっただけのことだ」

五月雨「起きてたんですよね」

提督「俺も寝れなかったからな」

五月雨「なにか、約束でもしてたんじゃないんですか?」

提督「やけにしつこいな・・・、ただ一緒に寝ただけじゃないか。やましいことなんてなんもしてないぞ」

五月雨「そういう問題じゃないんですって!」

提督「はぁ?」

食堂の扉を開けるが、まだ間宮さん以外には誰もいなかった。

五月雨「だから!どうして村雨さんなんですか!」

提督「どうしても何も、俺が選んだわけじゃないんだけど」

五月雨は何もいえずにただ腕にしがみつくしかなかった。

時間経過。舞鶴鎮守府食堂。食事後。

提督「ごちそうさまでした」

間宮「お粗末さまでしたー」

間宮が皿を片付ける中、提督は内ポケットから書簡を取り出し、隣の席の扶桑に渡した。

扶桑「何ですか?」

提督「見てみればわかる」

扶桑「?」

慎重に茶封筒の封を切る。

扶桑「これって・・・」

提督「大本営に航空戦艦扶桑、まぁつまりお前の近代化改装をしてはどうかと提言したんだ、随分前、12月ぐらいにな。
   三ヶ月近くたってやっと返事が来た」

扶桑「どのような改装がなされるのでしょう?」

提督「詳しくは俺もまだ見てないからわからないんだが・・・、装甲の強度上昇、速力上昇とかだったはずだ」

扶桑「・・・あ、ありがとうございます!」

提督「いつまでも不幸だなんだとほざかられてたんじゃこっちも堪らんのだよ。
   うちの戦艦は扶桑型だけなんだから、お前らが気張ってくれなきゃ主火力艦の名が廃るぞ」

扶桑の頭に手を置いた後、皿を洗うために厨房へ向かっていった。



間宮「提督さんって、そういうところがあざといんですよね」

提督「あざといって、何が?」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府屋上。午前十時。

本日快晴、気温最高17度、最低13度・・・。

提督「過ごしやすいわ・・・」

今頃五月雨が俺を探しているに違いない。トイレに行くと言ってから戻っていないのだから。

提督「にしても、・・・なんか臭くないか?」

辺りを見回す。

貯水タンクの陰で何かが動いた。

提督「誰だ?」

秋月「あっ、いえ、その、何でもありません!」

秋月があわてて何かを隠した。

提督「そうか」

秋月「えっ」

提督「ん?」

秋月「聞いてくれないんですか」

提督「何を?」

秋月「何してたの、とか」

提督「何してたの?」

秋月「・・・、大根を干してたんです」

提督「?」

秋月「だから!大根を干してたんです」

提督「大根って、どっから持ってきたんだ?」

秋月「その、市場で」

提督「そうか」

秋月「納得しちゃうんですか!」

提督「はぁ?」

秋月「どうやって買ってきたっていうんですか!」

提督「だって秋月たまに外出てるから、そのときに買ってるのかなと思ったんだ」

秋月「ご、ご存知だったんですか・・・?」

提督「知らないわけないだろ、曲がりなりにもここの管理者なんだぜ。
   毎晩出入り報告書ぐらい目を通すさ」

秋月「いいんですか?」

提督「外出て何かあっても自己責任だからな」

秋月「とにかく、この大根は私が収穫したんです」

提督「どこで育ててたっていうんだ、ていうかいつから・・・」

秋月「ここに来て、一週間か二週間ぐらいに始めました」

提督「へぇ・・・」

秋月「今丁度つけてたのを取り出すところだったんです、どうしますか、食べますか?」

提督「是非、と思ったけどすまん、お前の部屋にまた行くから。用を思い出した」

秋月「そんな」

提督「すまん!すぐ行くから!」

先週に重巡洋艦を建造するよう頼んでおいてそのままだったことを突然思い出した。





移動。舞鶴鎮守府。工廠。

妖精「もうすっかり忘れられてるのかと思いましたー」

提督「申し訳ない、どうだ、建造のほうは」

妖精「うまくいきましたよ、手違いで二隻建造してしまいましたが・・・」

提督「両方とも重巡洋艦なら大丈夫だ」

妖精「古鷹さんと、加古さんですぅ」

加古「古鷹型重巡の2番艦、加古ってんだ、よっろしくぅー!」

古鷹「古鷹と言います。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです」

提督「燃費と火力に関しては信頼してるよ、ようこそ舞鶴鎮守府へ。
   提督の龍花だ」

二人と握手を交わした。

他に任せる艦娘がいないため、今回は提督が案内を担当することになった。

時間経過。午前十一時半。

古鷹と加古に部屋を割り当てた後、提督は急いで秋月の部屋へ向かった。

提督「ごめん秋月遅くなっ」

秋月「もう来てくれないのかと思いました!」

提督「その、ご飯食べてからで良いよな?」

秋月「はい!」





時間経過。移動中。舞鶴鎮守府。


提督「なんでまだ大根なんか作ってるのかね」

秋月「おなか減ったりしませんか?」

提督「今?」

秋月「いえ、ご飯が足りないなぁ、とか思ったりしませんか?」

提督「おかわりをすればいいのでは・・・、あぁ、なんでもない」

秋月「ですから自分で作って食べているんです」

秋月が部屋の扉を開ける。

秋月「とりあえず食べてみてください」

春雨「秋月さんが作ってくれる大根漬けは本当においしいんですよ!」

秋月「どうぞ、口あけてください」

提督「ん」

大根の若干の苦さが広がっていき、損なわれていない歯ごたえは実に食欲をそそるものだった。

提督「こいつは・・・、間宮さんにあげたらどうだ?」

秋月「え、でも」

提督「なにかだめな理由でもあるのか?」

秋月「嫌なんじゃなくって、おいしいと思ってもらえるかなって」

提督「大丈夫だろう、充分うまいぞ。ちょっと持ってってみるか?」

秋月「いいんですか?」

提督「おう、急げ急げ」

移動。舞鶴鎮守府。間宮自室。

提督「秋月が作ったものなんですが、どうですかね?」

間宮「ん・・・」

秋月と提督が固唾を呑んで見守る。

間宮「おいしいです」

秋月「ホントですか!?」

間宮「今度、お料理に出してみましょう」

秋月「ありがとうございます!」

提督「秋月が漬物好きだとは、意外だったけどな」

秋月「そうですか?」

提督「赤城たちも喜んでくれるだろうさ」

秋月「楽しみですね、抱っこしてください、抱っこ!」

提督「調子に乗るんじゃねぇよ・・・」

秋月「えーいいじゃないですかー」

提督「とんだ子供がいたもんだ、お前も随分な年長のほうなのに」

秋月「五月雨さんだったら抱っこしてあげてたんじゃないですかー?」

提督「さぁ、知らん」

秋月「じゃあおんぶでいいですから!」

提督「うるさいな、俺はまだ仕事が残ってるんだ」

秋月「食べてってくれるんじゃなかったんですか?」

提督「い、いや、冗談だ、忘れてなんかない」

秋月「そうですか・・・」

提督「(えぇ・・・)」

移動。秋月(&春雨)自室。

秋月「おいしいですか?」

提督「さっきも答えた気がするぞ、それ」

秋月「そうでしたっけ」

春雨がお茶を運んできた。なぜかライターが入っている。

提督「これは、なんだ?」

春雨「使わないんですか?もしかして、御自分のをお持ちで・・・?」

提督「いや、なんのことだ?」

春雨「タバコをお吸いになられるのではないかと」

提督「吸うわけないだろ・・・、仮に愛煙家だったとしても女性の部屋で吸うわけないじゃないか」

春雨「でも、司令官はタバコを吸うって皆さんおっしゃってましたよ?」

提督「誰から聞いたんだそんなこと」

春雨「確か・・・」

提督「確か?」

春雨「あれ・・・、プリンツさんです」

提督「あいつなんてことを」

秋月「結構有名になってますよ?」

提督「めんどくさいことしやがってあの野郎」

箸をおいてお茶を最後まで飲み終わる。

提督「ありがとう、おいしかった」

春雨「また来てくださいね、司令官」

提督「時間があればな」



結局提供いただいたものをしっかり使わせていただきました。

少ないですが、本日はここまでです。

ノロウイルス様が僕を苦しめるのに飽きるまでお待ちください。

体力も創作意欲も消し飛んでいます、1です。

スローペース、どうかお許しください。

今日投下します

三月二十九日。執務室。午後三時。

五月雨「そろそろ資材が入りきらなくなりますよ」

提督「そろそろじゃないかな」

五月雨「何がですか?」

提督「まぁもしかしたら呉鎮守府が出動して一件落着ってのもありうるけどな」

五月雨「話が見えないんですけど」

提督「佐世保鎮守府が担当している東部オリョール海通商破壊艦隊殲滅作戦の雲行きがあやしくなってるんだ」

五月雨「そんなこと全然知りませんでしたよ?」

提督「口外するなと言われてたからな・・・、佐世保は無駄にプライドはあると先生が仰っていたし」


佐世保についてもう少し話そうと口を開いた時、ベルの音ともに突然モールス信号の受信を知らせる通知が鳴った。

話を止め提督は急いで司令室に駆け込む。

吐き出される紙には、所属鎮守府、現在地点を表すと思しき座標、SOS信号が書き記されていた。

無線機に電源を入れる。

提督「こちら舞鶴総司令官、佐世保鎮守府応答せよ」

応答がない。

提督「佐世保鎮守府、この無線が聞こえるならば応答されたし」

10秒ほどの間。

佐世保「感度良好、何か」

提督「たった今貴艦隊と思しき所から救難信号を受信した。発信場所は舞鶴から距離約300海里。この信号の発信主が貴殿の艦隊のものであるかを確認されたい」

佐世保「・・・十中八九間違いない。東部オリョール海に出撃中の艦隊と私も連絡が途絶えていたところだ。支援の余地は」

提督「少し待ってくれ」

電話を取り上げる。

先生「もう演習は「先生、支援艦隊の出撃は可能ですか」

先生「なんだっていうんだ一体」

提督「佐世鎮の艦隊、おそらく東部オリョール海に出撃中の艦隊からSOS信号を受信したのです」

先生「・・・すまない、うちは無理だ。主力戦艦と空母は他の出撃で出払ってしまっている。駆逐艦だけでは対処しきれないだろうな、佐世保のやつらが逃げ出すほどとなると」

提督「了解です」

電話を置くと同時に、彼は支援了承の合図を送った。

提督「直ちに空母機動部隊にて全速で駆けつける」

モールス信号に書かれていた地点を佐世保に教え、疑問に思っていたことを問うた。

提督「オリョールから日本海までは相当な距離だぞ。一体どうしてここまで来ている」

佐世保「わからない、何もわからないんだ。でも、出撃の際補給艦を同行させた。そこまでは行けない距離ではない。
    すまない、どうか、頼む」

舞鶴鎮守府湾内。

提督「今回の任務は佐世保鎮守府から東部オリョール海へ出撃していた艦隊の捜索および救助だ。時間との戦いになる」

赤城「了解です」

提督「敵には正規空母のヲ級が多数確認されている。
   赤城には紫電改二を渡されたはずだ。制空権の確保を一任する。
   加賀には流星を装備させた。制空権確保を確認次第攻撃を開始しろ。
   駆逐艦らは対水上電探及び水中探信儀を装備させた。潜水艦、水上艦の索敵を一任する。
   聞こえたな?」

赤城「了解です」

五月雨「命令通り遂行します」

提督「全艦複縦陣にて出撃、第二いく戦速」

赤城「了解、複縦陣を取ります」

もう一台の無線機を引っ張りだす。

つまみを慎重にひねり、周波数を合わせた。

提督「こちら舞鶴鎮守府司令官、応答せよ」

??「よかった!受信してくれたんですね・・・!」

提督「艦種を教えてくれ」

??「金剛、榛名、比叡、霧島、飛龍、蒼龍です」

提督「あなたは」

榛名「榛名です。旗艦の金剛大破により、撤退行動中です」

提督「撤退とはどこに」

榛名「佐世保です」

チラと、提督の心を影が掠めた。

提督「何を寝ぼけたことを言ってる。お前らがいる場所は見当違いも甚だしい、舞鶴に近付いているようなものだが」

榛名「そんな、どうして」

提督「おい、その道順を指示したのは誰だ」

榛名「金剛、お姉様です」

提督「・・・」

無線のマイクを切り、彼は机を拳で叩いた。

その手で顔を覆う。

金剛はもう手遅れになっている可能性が高い。

轟沈寸前、轟沈した艦娘はすぐには死なない。否、死なない。

沈むか、沈む寸前の彼女らは、時間が経つといずれかの段階で深海棲艦に変わる。

妖精に関すること以外、もうほとんどが研究し尽くされている。おそらく、金剛は・・・、行こうとしている。

榛名「あの・・・」

提督「金剛は、喋れるか」

榛名「はい、金剛姉様、聞こえますか?」

金剛「・・・?」

提督「金剛、お前の所属鎮守府を答えろ」

榛名「何を「黙れ」

提督「金剛に聞いているんだ」

金剛「?」

提督「お前の、所属している、鎮守府はどこだ」

金剛「それハ・・・、・・・」

榛名「え・・・」

五月雨「提督、敵艦隊です。方位○-○-八、感六、輪形陣!空母は二隻と思われます!」

提督「榛名、ひとまずここから退避しろ!金剛はその後だ!」

榛名「は、はい!」

提督「赤城は直ちに発艦!敵機を蹴散らせ。
   お前らにかまけてる暇はないんだ、深海棲艦共が!」

赤城「了解です」



搭乗員B「嫌な予感がするな」

搭乗員C「・・・」



提督「五月雨以下駆逐艦は弾幕を張り続けろ」

五月雨「了解です」

提督「敵も機動部隊か・・・、駆逐艦目標修正、敵駆逐ハ級四隻を沈めろ」

五月雨「了解!」

12.7cm主砲が容赦なく敵駆逐艦のど真ん中を貫く。

赤城「提督、制空権確保!今なら行けます!」

提督「加賀!」

加賀「わかってるわ」

加賀の艦載できうる限りのすべての流星が飛び立った。

目標手前で、水中を夥しい数の矢が疾走する。

瞬く間に水飛沫が上がった。

加賀「敵目標、全撃沈を確認」

提督「了解」

早業に見とれている時間は残されていない。

提督「加賀」

加賀「はい」

提督「攻撃対象変更、目標艦隊旗艦金剛だ」

加賀「は?」

提督「・・・金剛を狙え」

意味の分からない命令に加賀は動くことができなかった。

それまで黙っていた比叡が無線に入り込んでくる。

比叡「黙って聞いていれば訳の分からないことを!金剛お姉様が何をしたと言うんです!」

無線機からの音が割れるほどの大声で叫んだ。

提督「金剛はもう手遅れだ」

榛名「でも、まだ自分で走っているんですよ!」

提督「深海棲艦だって、自分で走るさ」

心を無にする。

榛名「っ!」

加賀「その命令は、受け入れられない」

提督「・・・そうか、わかった、すまない、忘れてくれ」

あまりにあっさり引き下がったことにみなが拍子抜けした。

榛名がほっと胸をなでおろす。

提督「榛名、佐世保に帰るには燃料が足りるまい。近くに製油所がある、そこで補給していくといい。俺が誘導する」

優しい声でそう言った。心の中は嵐だ。

榛名「ありがとうございます」

無線電源を落とす。



時間経過。執務室。

再び電話をかける。

工場長「はい?」

突然数字を読み上げられ、工場長は素っ頓狂な声を出してしまった。

提督「聞こえなかったんですか、メモしてください」

工場長「はぁ」

鉛筆で書く音が聞こえる。

工場長「座標ですか?」

提督「そこに砲撃をお願いします。射程圏内だろうし、あなたがたならできるはずです」

工場長「なんでまだこんなところに」

何も教えずにここに砲撃しろと命令され従う部下はいない。

全ての事情を話すしかなかった。

工場長「それ、は」

提督「できませんか?」

工場長「犯罪になるんじゃ」

提督「こういう場合の、故意の撃沈は認められています。無線内容、榛名の作戦証言を照らせば理解してもらえます」

工場長「艦娘には撃たせられないから、俺、ってことっすか?」

提督「・・・」

工場長「俺だってわかってますよ、好きでそんなことを命令するようなあんたじゃないってことぐらいは。でも・・・、いや」

相当の間があった。

工場長「これはでかい貸しですよ」

提督「・・・お願いします」

工場長「わかりました」

製油所中央砲塔が仰角を取り、徹甲弾が発射された。

一方。榛名側。

金剛「カエラナキャ・・・、カエラナイト・・・」

榛名は目に涙をため、主砲を金剛に向けていた。

さっきの指示以来、一向に舞鶴から指示はない。

暗に撃てといっているとしか思えなかった。

榛名「無理です・・・!そんな、できませんよ・・・!」

涙声で叫んだその時、一発の砲撃音が届いてきた。

まさか他の艦が、と思ったが、周りには他の金剛型、空母以外誰も居ない。よもや同艦隊の隊員が発射するはずがなかった。

ふと目を上げると、上方から降ってくる砲弾が見えた。

・・・見えるほどの距離に近付くまで、それに気づけなかった。

榛名「金剛姉様ッ、危ないッ」

だが、距離をとっておいたことが祟り、金剛を逃がすことはできなかった。

徹甲弾が容赦なく金剛を貫く。爆発の後には、何も残ってはいなかった。

榛名「うぅ、あぁ・・・」

おそらく舞鶴による砲撃だろう。絶対にそうだ。このことを知っているのは・・・。

榛名は舞鶴がやってくれたことに、自分がやらずに済んだことにほっとしている自分に知らぬふりをした。

時間経過。四月一日。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。

提督が着替えているそばに五月雨が詰め寄った。

五月雨「昨日未明、金剛さんが行方不明になりました。提督」

提督「それがなんだ」

五月雨「あなたがやったのではないですか?41cm砲なら金剛さんを一撃で、その、沈めるのも不可能ではないかと思います」

提督「どこにそんなものがあるっていうんだね」

五月雨「とぼけないでください。製油所へ誘導したのはそのためなんですか」

提督「知らないな。俺は用事があるから話は後だ」

五月雨「用事って、何が「告別式だ」

提督「その話は金輪際するんじゃない、わかったな」

執務室の扉を、音を立てて乱暴に閉めた。

用意した偵察機に乗って、一直線に佐世保へ向かう。




時間経過&移動。告別式会場。午後二時。

佐世保「責任者の岩崎だ、よろしく」

提督「お目にかかるのは初めてですね」

岩崎の隣には榛名がこちらをじっと見ながら立っている。

岩崎「無論、今回のことだ」

提督「・・・」

岩崎「言わずともわかっているさ、やってくれたのだろう」

提督「・・・はい」

岩崎「わかってはいるのだ、ああするしかなかったことぐらい。でもな、俺はお前が許せない」

岩崎の指には指輪がハマっている。榛名にははまっていない。

そうか、金剛は・・・。

提督「許してもらおうなどとは思っていません」

岩崎「当たり前だ、許せるわけねぇだろうが!」

テーブルを回り、提督の胸ぐらをつかむ。

岩崎「助けてもらったことを感謝こそすれ、怒るなど筋違いなのはわかっている!だが!俺はお前が許せない!」

新米のくせしやがってッ!

怒号をあげて、岩崎は提督に蹴りを入れた。顔を殴るつもりはないらしい。

榛名「提督、さすがに・・・」

しばらくたって榛名に言われ、ようやっと岩崎は手を離した。

岩崎「言いたかったのはこれだけだ。告別式が終わったらとっとと帰れ。顔も見たくない」

提督「失礼しました」

ものの数分の出来事であった。

歯を食いしばって何とか自力で立ち上がった。

午後十一時。舞鶴鎮守府。食堂。

赤城「提督、帰ってきませんね・・・」

五月雨「もう帰ってる時間、なんですよね」

赤城「ええ」

廊下に、玄関扉が閉まる音が響いた。

そのまま階段を登っていく足音が聞こえる。だが、

五月雨「怪我をしたんでしょうか」

引き摺るような足音が混じっている。五月雨は急いで提督を追いかけた。

執務室の扉を開けると、何事もないように提督が座っていた。

提督「おお、五月雨か。どした」

五月雨「いえ、お怪我でもされたのかなと・・・、それは?」

提督「マスコミはどこから湧いて出てくるんだろうな」

投げてよこされた新聞を見る。

『日本の主力艦日本軍が撃沈か』それが一面を飾っていた。

顔こそ出ていないが、撃沈したのは舞鶴司令官であると匂わせる文章がこれみよがしに書かれている。

五月雨「報道規制は」

提督「そんなものはとうの昔に消えたってことぐらいわかってるだろ。言論の自由にかまけてこんなことを書きやがる。嘘じゃないから反論もできない」

宙をしばらく見つめた後、

提督「古いセリフっぽくて悪い、しばらく一人にしてくれ」

五月雨「・・・わかりました」

言外に出て行ってくれと言われ五月雨は少なからずショックを受けた。

提督「舞鶴の奴らに、嫌われたな・・・」

扉を閉じる寸前、提督がそう言ったのが聞こえた。

そんなことはない、皆わかっているのだ。そう伝えたかった。

一方。食堂側。

加賀「私があの時従っていればよかったの・・・」

隣に座る赤城がなんとか落ち着かせようと声をかける。

赤城「どっちみち、結末は変わらなかったと思います。加賀さんは悪くありませんよ」

加賀「じゃあどうすればよかったんですか?せめて、私達だけでも提督の苦しさをわかってあげるべきなのに!」

赤城は突然の加賀の剣幕に怯んだ。

五月雨が食堂に戻ってきた。

夕立「どうだったっぽい?」

五月雨「嫌われたか、って」

夕立「提督さんが?」

五月雨「はい」

夕立「そっかー・・・」

五月雨も、今まで艦娘の撃沈処理が行われるのを聞いたことはない。今回が初めてなのだ。

皮肉にも、法律にはその場合の有罪無罪について事細かに記してあるのだが。

それに金剛といえば名のしれた高速戦艦だ。佐世保鎮守府提督の嫁としても知られている。

戦艦棲姫の艦橋を吹き飛ばし撃沈した武勲も有名だ。

それを失った佐世保の心情は推し量るに余りある。

村雨「提督も大変だね・・・、まだ着任して一年も経ってないのに」

村雨が口を挟んだ。

村雨「大丈夫かな、提督」

執務室。

提督「お気遣い感謝します・・・いえ、そのようなことは・・・岩崎さんがそのように?・・・はい、失礼します」

受話器をそっと置いた。

先生から電話が来ていたのだ。

提督「そろそろあいつらも寝ないと」

食堂に向かうことにした。



移動。舞鶴鎮守府食堂。午後十一時。

提督「お前らもさっさと寝ろよ、遅くまで起きると体に障る。あと、しばらくは外に出ない方がいい。取材班がたかってる」

その声に皆が驚いて提督を見た。

提督「それだけだ」

立ち去る提督を五月雨が追いかけた。

時間経過。提督私室。

提督「何だ?」

五月雨「その」

提督「ん?」

五月雨「皆、提督のことを嫌いになったりなんかしてませんから」

その言葉に少なからず提督は安心したようだった。

提督「・・・ありがとう、でもしばらくははしゃげそうもない。明日また佐世保に行ってくる」

五月雨「またですか・・・?その怪我は佐世保の」

続けようとする五月雨を提督が制する。

提督「いいんだ」

五月雨「いいわけないじゃないですか、足を怪我されたんじゃないんですか?」

提督「・・・告別式に出なきゃいけないんだ。殴られて怖いから行きませんでしたなんて言い訳にもならない」

五月雨「そんなの、なんで提督が怒られなきゃならないんです!」

提督「落ち着いてくれ、金剛をやったのは俺なんだ。命令を下したのは俺だ。責任は「責任はあなたにあるといったって!」

五月雨「止むを得ない状況だったんですよね!?榛名さんたちを考えた上での行為だったはずです!それを、佐世保は、なんで・・・!」

提督「俺がいいって言ってるんだよ。五月雨は気にしなくていい」

五月雨「・・・」

提督「五月雨、もう、寝よう」

一拍置くと、

提督「今日は一緒に寝ないか」

五月雨「・・・わかりました」

四月二日。移動。舞鶴鎮守府玄関。午前五時。

提督「おい、こいつらを下がらせろ。敷地内に入れていいなんて一言も言ってないぞ」

巡視兵「申し訳ありません」

巡視兵が手を広げ取材班を追い立てる中、質問が飛ぶ。

「なぜ金剛を撃沈したのですか!?」
「金剛は日本の主力艦ですが、お気持ちを教えて下さい!」

お気持ちだと?ふざけたことを抜かすな!

努めて平静を装い、顔を向けないようにする。



時間経過。佐世保鎮守府。午前十時。

佐世保の艦娘他、全国の鎮守府司令官、元帥、天皇までが参列していた。

停泊した護衛艦から、佐世保鎮守府司令官の階級が大将であることから、金剛にもそれが適用され、17発が撃たれた。

水葬される棺に中身はない。遺体はないのだから。

これほどまでに厳かな、壮大な葬式は今までにほとんど類を見ない。

岩崎はただ、涙を流すばかりであった。



式の終了を告げる三発の弔銃の銃声が、水平線に響き渡った。

時間経過。某会場。午後一時。

岩崎「あの時のことを謝るつもりはないが、艦隊を派遣してくれたことに感謝はしている」

提督「はい」

岩崎「君がやってくれなかったら、榛名は立ち直れなかっただろう。
   もし榛名自身が撃ったらと思うとな。その点では感謝している」

提督「・・・そうですか」

岩崎「差し当たって、東部オリョール海の通商破壊艦隊殲滅を君に任せることにする」

提督「私に?」

岩崎「うちはしばらく喪に服すことにする。
   俺もいずれ乗り越えるだろうが、君もいつまで傷ついている場合じゃないだろう」

提督「わかりますかね?」

岩崎は若干微笑み、

岩崎「今日は呼んですまなかった、さっさと帰るといい。怪我も治らないんだろう」

提督「ありがとうございます」

いきなり優しくしたところで、俺の気持ちが変わるわけじゃない。

提督は心の中で罵声を浴びせた。




時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後四時。

舞鶴鎮守府周辺にはかなりの兵が派遣され、マスコミの姿はなかった。

誰がこんなことをしてくれたのかと思いながら、鎮守府に入る。

提督「ただいまー」

五月雨「結構早かったですね」

提督「あぁ、いろいろあったんだ」

まだ提督の顔には陰りが残っているが、大分元気を取り戻しつつあるようだ。

提督「俺が暗いんでは鎮守府が腐ったみたいになっていかんなぁ、これはいかん」

五月雨「そうですかね?」

提督「んーーー、エイプリルフールにひとはしゃぎしようと思っていたんだけどなぁ」

五月雨「不謹慎ですよ!」

提督「やっぱりこうでもしないとやってられんわ」

突然必要以上に抱き締められたが、やめてくれなんて言えなかった。

何分かそうした後、提督は離れた。

提督「ちょっと昼寝してくる」

五月雨「ご一緒しますよ」

提督「それはありがたいわ」

四月五日。舞鶴鎮守府執務室。午前十時。

提督「・・・」

五月雨が来ない。

起こしに行っても部屋にいなかった。

朝ご飯は間宮さんとふたりきりだった。間宮さんに聞いてみてもはぁ、とか曖昧に返されるばかりで埒が明かない。

提督「ふむ・・・」

もう一回探しに行ってみるか。



時間経過&移動中。午後一時。

提督「ええ・・・」

昼ごはんを済ませた後も探したがどこにもいない。

間宮さんすらいなかった。

巡視兵に聞いてみても手がかりになることは何もつかめなかった。

四月五日、エイプリルフールにしては、質が悪い。

時間経過。午後六時。

いくら艦娘がいないとはいえ仕事はいなくならないのでやるしかなかったのだった。

夕飯を摂るために食堂へ降りて行くと、何故か電気がついていない。

提督「ブレーカーでも落ちたか・・・?でも廊下は点いてるしな・・・」

手探りで食堂の電気をつけると、現れた光景に言葉を失った。

五月雨「早くこっちへ来てください!」

提督「いや、一体何を・・・」

言うと、五月雨の隣にいた扶桑がひどく悲しそうな顔をした。

扶桑「今日がなんの日か、わからないんですか?」

提督「エイプリルフール・・・?」

山城「自分の誕生日ぐらい覚えていたらどうなの」

提督「はっ」

そういえば今日は俺の誕生日だった。

道理でケーキがあるわけだ。

エイプリルフールなるものを知ったのは舞鶴に来てからというのもあったが、ここ数年誕生日を祝われたことなどなかったから忘れていたのだ。

提督「誕生日会をしてくれるのはいいが、本気で不安になったからやめてくれよ」

軽く五月雨の頭を叩く。

五月雨「すいませんでした」

提督「でも、嬉しいよ」

それにしても、と提督は続けた。

提督「俺の歳知ってるのか?」

村雨「そういえば」

夕立「蝋燭も適当に立てたっぽい」

明らかに30本は立っていない。

提督「なるほど・・・」

雷「とりあえず電気を消さないと!」

電「消してくるのです!」

電がたたたっと走り、食堂の電気を消す。

提督「蝋燭の火を付ける前に電気を消してどうするんだ」

電「そうだったのです」

再び電気がついた。

春雨が蝋燭にライターで火をつけ、今度こそ電気が消えた。

提督が蝋燭の火を消すと、拍手が沸き起こった。

暁「それで、司令官は何歳なの?」

提督「ふむ・・・」

響「歳ぐらい教えてくれたっていいじゃないか」

提督「三十・・・四、これで三十五だな」

場が静まり返った。

提督「な、なんだよ?もっと年いってると思ってたとかそういう感想はいらないからな」

村雨「もっと若いかと思ってた」

提督「それはないだろう」

村雨「なんで?」

提督「なんでってそりゃ、もう三十路も大分過ぎてるしさ」

村雨「そういう問題?」

提督「ほかにどういう理由があるんだよ?」

間宮「と、とりあえず、せっかく皆さんが作ってくださったんですから、食べましょう」

提督「作ったのか!?」

涼風「提督が仕事してたりご飯食べてる間うちらずっと厨房にいたんだ」

提督「なんてこった・・・、すぐそばにいたとは・・・」

間宮「はい、あーんしてください」

提督「さすがに、ね?」

さすがに自分で食べた。

提督「甘すぎないし、苺もいい感じだ。こんなケーキ食べるの初めてだわ」

暁「しょーとけーきって言うんだって」

提督「聞いたことないな・・・」

提督「そういえば、これだけで皆の分あるのか?」

加賀「もう一つ焼いてあります」

提督「・・・準備のよろしいことで」

隼鷹「なんだ、酒はダメなのか!?」

注がれる紅茶を見ながら隼鷹が悲鳴を上げる。

飛鷹「普通駄目じゃない、常識で考えてよ・・・」

赤城「提督も三十五歳ですか、なんだかしみじみしますね」

提督「そりゃ一体どういう意味かね」

赤城「結婚とかは考えたことないんですか?」

提督「あんまり考えたことないな、女っ気なんてほとんどなかったし」

秋月「女っ気はあったけど提督がスルーして覚えてないだけですよ」

提督「・・・とりあえず結婚を考えたことはないな」

赤城「何でですか?」

提督「何でですかって、難しい質問だな・・・」

赤城「それはそうと、私いつかお見合い結婚をしてみたいんです」

提督「お見合いか、なるほどな。赤城はどんな人が好きなんだ?」

赤城「そうですねぇ、とりあえず髪は白い人が好きです」

提督「白か」

赤城「それと、引き締まりすぎてるわけでもなく、たるんでない体の人が好きです」

提督「無難だな」

赤城「性格は優しい人が好きですね」

提督「髪が白いのを除けばいそうだな」

赤城「・・・」

提督「え?」

赤城他大勢が提督を見ている。

提督「なに、俺の好みも言わなきゃいけないのか?」

加賀「そういうことじゃないんだけど・・・、それでいいわ」

提督「そうだなぁ・・・、性格に関しては明るいか落ち着いてるか、どっちかが好きだな」

夕立「うちって明るいかな?」

村雨「まぁまぁ?どうだろうねぇ」

夕立「教えてほしいっぽい!」

村雨「とりあえず提督の話を聞かないと」

教えて!という声を村雨は無視した。

提督「髪の毛は長い人が好きだな」

プリンツ「え・・・」

加古「あれ?」

古鷹「あれぇ・・・?」

提督「いや、でもやっぱり短いのも捨てがたいな、うん。髪型に関して特に執着はない」

赤城「えー、なんか大雑把過ぎないですかー」

提督「そう言われてもなぁ・・・」

詳しく言ったら修羅場になりそうなんだよなぁ・・・。

涼風「提督は無駄なところで勘がいいのがやりづらいなぁ」

五月雨「そうだよねぇ・・・」

提督「どういうことだ?」

五月雨「何でもないでーす」

提督「なんかうざいな」

赤城「大丈夫ですって、髪型に拘りはないって言ってたじゃないですか。結んでるときだけ短いんであって、解けばいいだけなんですし」

加賀「いやっ、なんでも、ないですから・・・」

髪をいじっていた手をあわてて引っ込めた。


秋月「んー、伸ばそうかなぁ」

春雨「気にしすぎですって」

秋月「春雨さんの髪の毛ほしいなぁ」

春雨「ピンクと黒は合いませんって」

秋月「絶対、積極さなら絶対に負けないんだから・・・!」

春雨「切り替え早いですね・・・」

雷「司令官、気を使っただけよ・・・、きっと・・・」

電「みんな落ち込みすぎなのです!気を遣ったんじゃないのです、きっと!」

雷「肩までって、長髪よね?」

電「当たり前なのです!」

雷「よかったぁ・・・」

暁「司令官は何が起こってるのかぜんぜんわかってないし」

響「これはこれで面白いと思うけどね」

今日はここまでです。ありがとうございました。

金剛はケッコン後レベルカンスト戦艦装甲補正ということで(長月様はまだ駆逐でしたから)。

秋月、あれ、長かったのか・・・、俺の勘違いでしたか・・・。

投下は来週の予定です。

那珂ちゃんそういえば、あれ、長良ちゃんになっちゃってますね・・・。

勘違いじゃないです。投下と一緒に言いたかったのですがお詫びは早めにと。>>457コメ殿。安価の時は採用しますので。

今日投下しますね。

あれ・・・、docファイル開いたら文字化けらったーしてるんですけど・・・。

グーグル先生に聞くも効果はありませんでした。今日の投下は中止です・・・。申し訳ない!

http://gyazo.com/5f55601ab55aa13aa5a2646d02949de3 ありえへーん、ということで。

http://jisaku-pc.net/hddhukyuu/archives/783
ここを参照に文字コード変えたり開いて修復を試して見ればどうだ?

>>617文字エンコードや互換パックをやるも意味がありませんでした。

docファイルをWord2010じゃ開けないようです。

明日中に投下します。

家のパソコンを修理にだしてしまっていたので、XPのころのを引っ張ってきたんです。
それでdocxが開けないものですからApacheOpenpfficeというフリーソフトでかいて、保存したんですね。
そのまま7時頃に修理からかえって来たパソコンに差したら全部?になってた、というのが詳細なところです。

やろうとしたんですがね、そっちでも文字化けしてまして・・・。

多少なりとも待っていた皆さんには申し訳ありません。急いで書き揃えるので、明日までお待ちを。

昨日はすいませんでした(苦笑)


時間経過。同所。

各々食べ終わり、休憩しているところで提督が言った。

提督「あと一ヶ月もすれば桜の季節だな」

扶桑「私はどこかへいくよりも、ここで花見をしたいです」

提督「そうか?」

五月雨「でもここの鎮守府って桜なんてありましたっけ」

提督「確かに、ここって庭とかないしな」

扶桑「鎮守府の海に面してるのとは反対側の敷地、この前見たらここの所有物だったんです」

提督「ほぇー、あそこの広場っぽいところってうちの管轄地だったのか・・・」

五月雨「私はまだしも、なんで提督も知らないんですか」

提督「・・・まさかあの木って桜なのか!?」

五月雨の発言は聞こえていないようだ。

扶桑「樹齢百年はいってそうですよねぇ」

提督「まさに大木って感じだもんな・・・、周りが全部芝生だったらなおよかったんだけどな・・・」

扶桑「花見が終わったころに買えばいいんじゃないですか?」

提督「あそこ敷地全部埋めるだけの量となると相当だぞ」

扶桑「それはそうですけど、それじゃあ夢がないですよ」

五月雨「それって予算から落とせないんですか?」

提督「施設改善費用として落とし込めばいけないでもない」

五月雨「自分で言っといてあれですけど、なんか大人の改竄を見たような気がします」

提督「でも芝生って水やったりしないといけないんだろ?めんどくさそうだな」

扶桑「水の散布装置を買えばいいんじゃないですか?」

提督「工事費用が馬鹿にならないんですが」

扶桑「そこも経費から落とせば・・・」

提督「わたくし、怖いからそんなことしたくないわ」

五月雨「・・・気持ち悪いです」

提督「上にばれたら懲戒じゃ済まされないかもしれないんだぜ」

扶桑「そんなに厳しいんですか?」

提督「巡視兵にやらせるったってざっとあそこは二千坪は下らないだろうし、骨の折れる作業をやらせたくはないな」

扶桑「じゃあうちの艦娘たちに交代でやらせるっていうのはどうでしょうか?」

提督「三日坊主で終わりそうな気がするのは俺だけじゃないはずだ」

暁「私は頑張るわよ!」

提督「一番年上だもんな、当たり前だな」

響「暁がそう言うんだったら私もやるよ」

電「めんどくさそうなのですー」

雷「私もやるんだから、電もやりなさいよ」

提督「四人じゃ絶対足りるまい・・・、やっぱ雑草のままじゃ「駄目です」

五月雨「芝生じゃないと駄目です!」

五月雨の頭のなかには夏にピクニックをする構図が描かれていた。

提督「仕方ないかぁ・・・、工事頼むかぁ」

扶桑「やっぱりそうすることにするんですね」

提督「手近な工事業者なんてあったかな・・・、あ」

頭を掻いていた手を止める。

提督「製油所の奴らなら・・・」

五月雨「さすがに無理だと思いますよ?」



時間経過。同所。午後九時半。

提督「やってくれるってさ」

夕立「じゃあピクニックもやれるっぽい!」

村雨「眠い・・・」

提督「でもまだ、もう九時半か・・・、お前らさっさと風呂入ってくれよー」

赤城「」

提督「もうしないからな」

赤城「残念です」

五月雨「やっぱりあの時合っちゃったんですね」

提督「次からは気をつけてくれ、くれぐれも」

五月雨「はーい」





片付け中。食堂(同所)。

提督「結局俺らが片付けることになるんだからやってらんねぇ」

間宮「片付けるの私好きですよ」

提督「よく出来た人だわ・・・、間宮さんもお風呂入ってくださってよかったのに」

間宮「あの」

提督「はい?」

間宮「そろそろ、やめませんか」

提督「えっ、何を?」

間宮「敬語を使うの、やめませんか」

提督「でも間宮さんも敬語使ってますし」

間宮「そりゃ提督さんですから」

提督「いや、でも」

間宮「とりあえずさん付けはやめましょう」

提督「間宮さん、どうしたんです?」

間宮「さん付けはやめてください」

提督「ま、まみや」

少女漫画の中に飛び込んだのだろうか、俺は。

間宮「はい」

提督「どうか、したのかね」

間宮「まぁそれでもいいです。何となく気になったのが今日ってだけです」

提督「・・・そっか」

30分後。

村雨「なんかお風呂入ると眠気醒めちゃってイライラするから嫌だな」

夕立「それは村雨だけっぽい」

村雨「そうかな?」

飛鷹「隼鷹、起きてよ!」

隼鷹「えー、そこはなぁ・・・、えぇ・・・」

飛鷹「寝言言ってる場合じゃないって~」

提督「赤城と加賀はまだなのか?」

五月雨「なんかすごいゆっくり入ってましたよ」

提督「(俺は待つぞ、お前らが出てくるまで)」




更に30分後。

加賀「あぁ・・・」

赤城「・・・」

提督「のぼせたのは俺のせいじゃないからな」

洗面用具を持って、二人の横を歩き去った。

五月十三日。舞鶴鎮守府庭。午前十一時。

涼風「提督は何をしてるんだーーーーー!」

五月雨「ほんっとに遅いね」

プリンツ「なんか腹いてぇとか言ってましたよ」

加古「・・・」

古鷹「こんな時になって寝ないでよ、加古、聞こえてる!?」

鎮守府所有物のブルーシートのようなものを広げ、あとは提督を待つばかり。

皆に日陰を作っている大木には桜が咲いている。

提督「いやー悪い!髪の毛切ってたりしたら遅れたわ」

五月雨「お腹痛いって言ってたんじゃないんですか?」

襟にかからない程度まで短くなった白髪を見ながら五月雨は聞いた。

提督「髪を切りに行ってたんだよっと」

五月雨の隣に胡座をかく。

隣に普通に座ってくれる提督を見ると、何となく優越感を感じてしまう五月雨である。

提督「よーし、そんじゃいただきます」

隼鷹「酒が飲めるぞ!ほらほら、提督も飲みなよー!」

遠くに座っていたはずの隼鷹が近くにいる。

五月雨「まだお昼ですよ!」

提督「いいじゃないかたまには」

五月雨がムスっとした顔でご飯を食べ始めるのを見、扶桑が声をかけた。

扶桑「仕方ないですよ、ああいう人ですから。五月雨さんもわかってるでしょう?」

山城もむすっとしていた。

扶桑「山城?どうしたの?」

山城「な、なんでもないですから」

扶桑「?」

隣ではいい飲みっぷりだねぇ!と隼鷹がはしゃいでいる。

提督「おーい、危ないって、やめとけよ」

お酒を飲みかけた提督が、木に登ろうとしていた村雨をひっぺがした。

村雨「登らせてよー!」

提督「落ちて怪我でもされたら困るんだよ」

村雨「降ろしてください!どこ触ってるんですか!」

提督「どこも触ってなかっただろ、なんかテンション高いなお前」

そんなこんなでようやく巡視兵たちも到着したようだ。

提督「おい、そんな物騒な物どうしたんだよ」

巡視兵「申し訳ありません、いつでも出動できるように、窃盗されないよう持ってくるしかなかったのであります」

提督「・・・それなら仕方ないか」

少し離れたところで、入口が見えるような位置に彼らは陣取った。

脇に小銃を置いて、ご飯を食べているのはなかなか滑稽にも思える。

五月雨「提督って好きな髪型とかあるんですか?」

唐突な五月雨の振りに自分に話しかけたのだとわからなかった。

提督「ここでその話するか、普通?」

五月雨「皆の前だからこそするんです」

提督「そうねぇ、髪型なぁ」

五月雨「執着しないなんていう答えは求めてませんから」

提督「でも実際、あ、いや、なんでもないぞ」

五月雨「言ってください」

提督「俺、髪を二つに分けてるのってあんま好きじゃないんだ」

小声で五月雨だけに聞こえるように言った。

五月雨「えっ、じゃあ村雨さんとか、プリンツさんとかは・・・」

提督「口外無用で頼む」

加賀「言ってくださらないんですか」

提督「さすがに、な」

村雨とプリンツも提督を見ている。

提督「髪型だけでそいつのことが嫌いになるとかじゃなく、ただこう、髪型だけが嫌いなのであってな」

五月雨「言いたいことは何となくわかります」

提督「その・・・」

涼風「早く言っちゃえ、楽になるぞ」

下を向いてしばらくなにか考えたようにした後、

提督「すまん、言えない!俺には無理だ!」

ばっと顔を上げて叫んだ。

さすがに人としてどうかと思うのだ。

五月雨「でもそれを知らないまま過ごしてる本人たちの気持ちも考えてください」

五月雨が耳打ちした。

提督「そうは言っても、落ち込むだろう?」

五月雨「知らないままのほうが傷つきますよ。早めに教えてあげてください」

提督「もうすでにかなり経ってるぞ、彼女らがここに来てから」

五月雨「ごちゃごちゃ言わずに教えてあげればいいんです!」

提督「おうふ」

皆を眺め渡し、心なしか深呼吸する。

提督「・・・ツインテールは、苦手なんだ」

静まり返った。

プリンツ「なんだ、そんなことだったんですか」

村雨「言ってくれれば変えましたよ?」

二人ともあっさりと紐を解いてしまった。

提督「あれ・・・」

赤城「提督、もしかしてストレートが好きなんですか?」

提督「ポニーテールも好きだ、あ、加賀のも好きだぞ」

加賀「・・・そう」

村雨「でも五月雨さん聞いてくれて助かった」

プリンツ「危うくこのままでしたもんね」

髪型の話をしていると、巡視兵が駆け寄ってきた。

巡視兵B「提督、ご来客です」

提督「誰だ?」

巡視兵B「製油所の管理者様です」

提督「どうしたんだろ、電話じゃ話せないのかね」

花見でもどうか?みたいな話ならいいのだが、工場長だけというのはおかしい。

提督「少しはずすわ」

五月雨「わかりました」

提督「・・・こんな時になぁ」

移動。舞鶴鎮守府玄関。

工場長「いきなり押しかけてすいません、急いでるので本題に入らせていただきます」

提督「あぁ」

工場長「この前命令された金剛についての話です」

提督「・・・」

工場長「実は最近、うちの工場の周りに戦艦タ級が出現したのです」

提督「・・・別に珍しいことじゃないだろ」

工場長「確かに現れてもおかしい海域ではないです。ですが、最近は精々軽巡洋艦しか出てきませんでした」

口調もいつもの砕けた調子とは一変している。

工場長「あれほどの作戦を成功させたわけですから、損害もそれなりだったのでしょう。ですが、今になって戦艦タ級が現れたんです。フラッグシップでした」

提督「あの作戦からもう三ヶ月以上たってる。出てきたっておかしくないんじゃないのかね」

工場長「隊員によれば、彼女は46cm三連装砲を持っています」

提督「馬鹿な、戦艦タ級の主砲は16インチ、41cmだぞ」

工場長「高倍率望遠鏡で彼女を補足した際、判明したのです」

提督「高倍率といったって、しかし」

工場長「間違いないです」

提督「そこまで言うか・・・。わかった、ついてきてくれ」

聞くしかない。

移動。舞鶴鎮守府執務室。

提督「佐世保鎮守府総司令官の岩崎に代わってくれ」

榛名「わかりました」

間。

岩崎「なんだ」

提督「金剛の最終出撃時の装備を教えてくれませんか」

岩崎「どうしてそんなことを教える必要がある?」

提督「お願いです、事態は急を要するんです」

岩崎「まぁ別に構わんが・・・、どれだったかな・・・」

岩崎が探すのを歯噛みしながら待ち続ける。

岩崎「46cm三連装砲、35.6cm連装砲、15.5cm連装副砲、13号対水上電探だ」

提督「46cmを積んだのですか?」

岩崎「彼女が積みたいといったのだ。できたから積んだ、理由はそれだけだな」

提督「了解です、ご協力感謝します。詳しい事情は後で必ずお話しますので」

受話器を置いた。

提督「おそらく」

工場長「金剛、ですか」

工場長が後を継いだ。

俺が大本営にばれないよう殲滅作戦を起こすべきか。岩崎に任せるか。工場に設置された砲塔でも倒せる相手ではあるだろう。工場は十分すぎるほどの火力を備えているから無理ではない。

提督「(深海棲艦から元に戻ったなどという話は聞いたことがないしな)」

提督「遺体があがらなかったのはそういうことか・・・、だがよりにもよって男で今なんだよ・・・」

砲弾が当たる直前に、深海棲艦化し装甲値が上昇、41cm 榴弾砲を喰らったが耐え、そのままその場から姿を消した、なんて話が有り得るのだろうか?

提督「俺がやるべきじゃないことだけは確かな気がする」

工場長「どうするんです?」

また電話をかける。

岩崎「なんだよ何回も。しつこいぞ」

提督「岩崎さん、落ち着いて聞いてください」

事のあらましを説明した。

岩崎「・・・で?俺にどうしろと?」

提督「彼女を捕らえてください」

岩崎「撃沈ならまだしも、そんなことできるわけないだろう!」

提督「彼女に興味がないのだったら我々が撃沈します。
   ですが、判明したことには、彼女らは意識が完全に変わってるわけではないのでは、ということです」

岩崎「そんなの一部の妄信野郎がほざいてることだろ。沈む前にこちらに手をさし伸ばすのを見たなど、未練からきた幻覚に決まっている。君も頭がおかしくなったんじゃないか?判明してるわけでもないだろう、そんなこと」

提督「彼女には何の未練もないのですか?」

岩崎「それは」

提督「希望に賭けるのもまた悪くはないはずです」

岩崎「第一どうやって捕らえろというんだね」

提督「あなたがたの艦隊があれば砲塔を破壊し無力化するのはたやすいと思います」

岩崎「そんなことができると?本気で言ってるのか?」

提督「できるできないじゃなく、やってみればと提案しているのですよ」

岩崎「はぁ・・・」

脇で何やら話す声。

岩崎「そうだな、やってみる価値はあるだろう。何としても、まずはこちらで皆と話してみる」

提督「それでは、失礼しました」

工場長「捕らえる、ですか?」

提督「俺らがやるんじゃない、佐世保のやつらがやるのさ」

工場長「はぁ・・・。それじゃ、俺は帰りますよ」

提督「あんたも花見していけばいいのに」

工場長「桜ならうちの工場にだってあるんすよ。ふぅ、失礼しやした」

提督「妹に近いうちにそっちに行くと伝えておいてくれ」

工場長「うっす」

その時突然工場長は思い出した。

時間経過。移動。午前十二時。舞鶴鎮守府庭。

提督「もう食べてるのかよ、ちったぁ俺のこと待ってくれたっていいだろ」

電「司令官が遅いのです!」

提督「お、おおう」

五月雨「何を話されていたんですか?」

提督「ただ確認したいことがあっただけらしい。電話じゃ怖いらしくてな」

五月雨「そうですか?」

提督「そうなんだよ。それでこれ全部間宮が作ったのか?」

間宮「赤城さんと加賀さんにも手伝ってもらいました」

提督「これは三人で作ったにしたって大分すごい量だぞ」

しげしげと料理を見つめる。

間宮「そんなことに気を遣わないでいいですから。早く召し上がってください」

提督「あっと、その前にだな」

五月雨「はい?」

提督「驚けよ?新入りのお出ましだ。
   ドイツから来た戦艦、ビスマルク、よし!出てきていいぞ!」

どこかに向かって合図をすると、誰かが歩いてくるのが見える。

ビスマルク「随分待たせるじゃない」

ご飯を口に運びかけていたプリンツが箸を止めた。

プリンツ「ビス、ビスマルク、姉様、どうして!?」

提督「ふっ」

ビスマルク「え!?なんであなたがここに!?」

提督「さすが俺ってところだな」

五月雨「えっちょっ、え!?建造したんですか!?」

提督「まぁそれについちゃ聞かないでくれ」

五月雨「ええ・・・」

時間経過。同所。午後一時。

提督「ビスマルクも案外簡単に打ち解けることができたようで何よりだ」

若干プリンツがくっつきすぎているのが気になるが。

提督「・・・それにしても食い過ぎたな・・・。・・・それはそうと、皆」

その声に提督に視線が集まった。

提督「勝手ながら演習を組ませてもらうことにした。ビスマルクは初戦だが、いい機会だと思ってくれ。
   相手は例によって先生だ。今回は負けてしまう艦隊も出てくるかもしれないが、落ち込まずに踏ん張ってくれ。成功が必ずしもいい事とは限るまい」

五月雨「誰がやるんです?」

提督「全員だ」

五月雨「全員、ですか!?」

提督「空母機動部隊同士の演習をまず行うことになった。
   隼鷹、飛鷹、春雨、秋月、夕立、村雨だな。
   その次に水雷戦隊。
   名取、長良、暁、響、電、雷。
   そんでもってまた空母機動部隊。
   赤城、加賀、五月雨、涼風」

赤城「四人だけでやるんですか?」

提督「まぁ実際はただ足りないだけだが、君らの練度を試させてもらういい機会だ。敵六隻の空母機動部隊に対し君ら四隻だけで戦ってもらう」

加賀「俄然やる気が出てくるわね」

提督「期待してるさ。
   それで最後、主火力艦隊同士の殴り合いだ。
   扶桑、山城、ビスマルク、プリンツ・オイゲン、加古、古鷹だ」

ビスマルク「本当にいきなりなの?」

プリンツ「一緒に頑張りましょうね!」

ビスマルク「う、うん」

扶桑「演習ですから、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

ビスマルク「ありがと・・・」

五月雨「で、いつやるんです?」

提督「来週だから、五月二十日の予定だ」

提督「そして空母らには紫電改二を艦載出来うる限り載せてもらわねばならない。先生の制空力は凄まじいぞ」

赤城「受けて立ちます」

提督「お前らの対空力、練度があれば十分戦える相手だと信じてる。
   次に、先生の主火力艦は長門型二隻だ。扶桑、山城にはこの前開発した35.6cm三連装砲を活用してほしい」

山城「長門・・・、航空戦艦の力を侮ってほしくないです」

提督「そして・・・、先生の奥の手、水雷戦隊にはもっとも注意してほしい。大井、北上、木曽の雷撃には注意しろ。避けられる本数じゃない、必ず水中聴音機と爆雷を持って行くこと。これで破壊するしかないからな」

長良「いきなりでかなり緊張してるんですけど」

名取「演習って、やっぱりここの演習場でやるんですか?」

提督「いや、舞鶴鎮守府沖、安全海域で行うことになってる」

名取「はぁ、そうなんですか」

提督「以上だ、花見の後にすまない。早めに伝えておきたかったんだ。皆、準備を怠るなよ」


一方。

先生「祥鳳、瑞鳳、長月、菊月、皐月、文月、聞こえるな」

祥鳳「問題無いです」

先生「烈風に勝てるかねぇ、私は無理だと思うがな」



戻。舞鶴鎮守府沖。

提督「○九○○、総員、輪形陣、第二船速を維持せよ」

隼鷹「了解!」

始まったとはいえ、まだ両者の距離は20km以上ある。

提督「敵は爆撃を組み合わせてくるか、艦戦だけで制空権を奪ってくるか、どちらだろうな」

隼鷹「私は前者に賭けるね」

秋月「未だ電探に敵影なし」

提督「了解、索敵を続けろ」

春雨「機銃ちゃんと動いてくれるかなぁ・・・」

春雨は二十五ミリ連装機銃を心配そうにいじっていた。

夕立「昨日あれだけ整備してもらったのに、春雨は心配しすぎっぽい」

春雨「そうかなぁ」

村雨「提督ー」

提督「なんだ?」

村雨「なんでもなーい」

提督「はぁ?寝ぼけたこと言ってないで集中しろって」

○九二○。

秋月「電探に反応あり。敵機多数、30以上」

提督「総員、対空戦闘準備」

春雨「いつでもいけます。電探問題なし、機銃問題なし」

隼鷹「それじゃあ、行っといでぇ!」


乗員α「烈風ごときに負けるものかねぇ」

乗員β「紫電改二も傑作機のはずだ・・・」

乗員γ「行くぜ」

駆逐艦の長10cm砲・高射装置、電探の組み合わせが立て続けに発射され、みるみるうちに敵艦載機を落としていく。

乗員θ「敵駆逐艦主砲が動き出したぞ!あいつら主砲積んでやがる!」

提督「敵艦載機の中に偵察機が混じっている可能性があるな。弾着観測射撃を狙ってくるようだな。乙字運動、回避しろ」

隼鷹「了解っと!」

避けた航路のかなり手前に砲弾が水柱を上げた。

秋月「航空は拮抗しています。敵艦載機による撃墜数が尋常じゃありません!私達が撃って精一杯です!」

提督「おちおち空も見てられないな。敵の主砲も装填が終わるぞ。第二観測射撃が来る。構えろ!」

飛鷹「くっ!」

隼鷹「提督、飛鷹中破だ!」

提督「駆逐艦、準備しろ」

輪形陣が乱れ、駆逐艦だけが敵から向かって真一文字に並んだ。

提督「魚雷発射管開け」

春雨「いつでもっ、ちょっと、敵爆撃機もいるの!?」

提督「敵はもう目の前だ、とにかく発射しろ!」

機銃を掃射しながらの魚雷攻撃は命中精度が落ちるが、仕方がない。

隼鷹「提督!ごめん、制空権とられたみたいだ!」

乗員α「申し訳ない」

そこに隼鷹からの無線が入る。

提督「やはり烈風にはかなわないか・・・!」

春雨「魚雷発射しました、目標へ偏差射撃、航走中です!」

提督「爆撃機来るぞ、回避行動!」

全艦その場で急旋回を開始し、爆撃ルートを免れようとするが、

隼鷹「ダメだ、よけきれない、駆逐艦二隻、うちと飛鷹大破!」

提督「っ、旗艦大破か!」

春雨「敵空母、一隻大破、駆逐艦一隻中破です・・・」

提督「戦闘続行は絶望的だ、やむを得ない。投降する」

一旦休憩します。また後程。

移動。舞鶴鎮守府湾内。

先生「元より勝てると思っちゃ困るがね。まぁたかが演習というつもりはないが、反省点を見なおせば成長するだろうよ」

提督「いやぁ、先生の空母にゃ敵いませんね」

先生「とはいえ瑞鳳が大破したのは想定外だった。よくやったと言いたいところだな」

提督「明日は負けませんぜ」

先生「威勢がいいのは結構だが、あんまり根を詰め過ぎるなよ」

提督「それはご老体にゃ言われくたくない言葉ですな」

先生「黙れ。楽しみにしとるぞ」



隼鷹「なんか、負けってのはいい気持ちがしないねぇ」

提督「練度の差を言い訳にさせるつもりはないが、精進してくれや」

隼鷹「あぁ、この前の十一月作戦のことで少し慢心してみたいだよ」

提督「総反省会は全演習が終わり次第やる。終わるまでは休んでてくれていい」

春雨「私がちゃんと当ててれば・・・」

しおれる春雨。

それを見つめる提督。

春雨「やっぱり私のせいだったんですか・・・?」

提督「・・・」

春雨「・・・」

春雨が泣きそうな顔になってきたところで、

提督「春雨は可愛いなぁ!練習すればいいんだって!そんな泣きそうな顔しなくても責めないって!」

頭をわしゃわしゃしてしまった。

春雨「な、何するんですか!髪が乱れるじゃないですか!」

夕立「私には?私には何も言ってくれないっぽい?」

提督「ふむ、秋月も夕立も村雨も頑張ってた。あの調子ってわけじゃないが、これから重ねていけばこんなことはなくなるはずだ」

言いながら春雨をくしゃくしゃにする。

秋月「対空が得意なだけじゃ、やっぱりだめですよね。頑張ります」

提督「おう」

翌日。一四○○。舞鶴鎮守府湾内。

提督「無線感度試験、聞こえるか」

名取「感度良好、問題ありません」

提督「装備、各自問題ないな」

名取「主砲、魚雷、爆雷、電探、問題ありません。長良の水中聴音機も問題なし」

暁「主砲、魚雷、爆雷、問題ないわ」

提督「おそらく今回は夜戦にもつれ込むだろう。時間帯からして夜戦に突入する前提での演習だからな」

名取「わかってます」

提督「敵はおそらく魚雷攻撃を主力にしてくる。今までの演習でそれは間違いない。大井、北上の先制魚雷には注意するように。あと、厳重警戒して欲しいのは夜戦突入直前の奇襲雷撃だ。数十本は飛んでくる、合図で爆雷を投射するように」

名取「作戦通り、ですね」

提督「そうだな。それでは総員、複縦陣、第二船速を維持しろ」

名取「水雷戦隊、出撃します!」

一四五○。

名取「電探に敵影反応なしです。目視でも視認できません」

提督「燃料を消費させるつもりか・・・?全艦機関の回転数を下げろ、燃料消費を抑えるんだ」

名取「皆、聞こえた?」

暁「聞こえてるわ」

提督「水平線の向こう側にいるとしたら、水上電探じゃ映らないのかもしれないが、ここまで近づいておいて気づかないってのはおかしいな・・・。
   名取、今まで偵察機を見たか?」

名取「目視では確認できてないです」

提督「回避能力を下げた状態で魚雷で一網打尽にするつもりと見える。だがそうは問屋が卸さない。三式爆雷の時限信管を着水後約二秒に設定しろ」

暁「二秒じゃ逆にこっちが被害を受けちゃうんじゃないの?」

提督「三式爆雷の加害半径は教科書通りなら5.60mだったはずだ。三式投射機なら100mは飛ばせる。理論上は問題ない」

暁「なんか怖いんだけど・・・」

提督「大丈夫さ。聴音機に耳を傾けてれば100m以上向こうから聞こえる」

暁「ま、司令官なら信じるわ」

提督「信じてくれ」

そして提督は声を潜める。

提督「その近辺、5000m半径には大きめの島が点在してる。後ろに隠れているのかもしれない。一発目の魚雷攻撃は回避、音がした方向に駆逐艦が弾幕を張る。駆逐艦無理に当てようとする必要はない。いいな」

名取「了解です」

提督「混乱を避けるために、長良が魚雷探知を担当する。万が一、長良が大破した場合、響に搭載しておいた聴音機を代わりとする」

長良「わかりました」

響「準備は大丈夫だよ」

提督「機関への燃料噴射量を急激に増加させる事になるからな。準備をしておけ」

名取「はい」

提督「総員走行停止。肉を切らせて骨を断つ。初っ端主砲を喰らっても動じるな」

名取「・・・」

静寂が艦隊を覆う。

五分経過。

十分経過した時。

長良「方位三-一-二、魚雷航走音、二。距離は不明。ですが、100m以上はあるはず」

提督「甲標的だが魚雷の迎撃を優先せよ。爆雷投射」

名取「了解、発射」

勢い良く滴系の爆雷が発射され、着水した。

提督「駆逐艦、確認を待っている暇はない、主砲、全斉射」

言っている間に海面から約10m程度で爆発が起こる。

暁「了解!主砲、全斉射!」

名取、ほか四人の駆逐艦の砲が振り向きざま、島から顔を出した艦隊を捉え、容赦なく砲弾を発射する。

暁が伝えてきた敵位置を海図に☓として書き込む。

名取「敵艦目視確認、軽巡二隻、駆逐艦二隻、雷巡二隻、単横陣です!」

提督「魚雷発射のために体制を崩したか。当たらなくて残念だったじゃないか」

名取「敵主砲がこちらを捉えました、皆、回避して!」

動力への燃料噴射が急激なせいで、不完全燃焼による黒煙が立ち昇る。

突然の動きに敵艦隊も主砲から目を離してしまい、主砲は明後日の方向へ飛んでいった。

提督「第二射用意、撃ぇ!」

名取「弾着確認、敵駆逐艦二隻を無力化しました!」

提督「次は敵の主砲だ。全員面舵、方位一-二-○まで最大船速で回頭せよ」

だが、タイミングが悪かった。

敵弾が長良、暁、雷を直撃、大破させてしまう。

提督「大丈夫か!?」

長良「問題ありません、動力には問題なし。装備一部使用不能に陥りました」

提督「敵の長距離魚雷が来るぞ!構えろ!」

先生がほくそ笑むのが目に浮かぶようだ。これが決まれば勝負の軍配は先生に上がる。

予想通り、二隻が回頭を瞬時に終了させた。

響「魚雷着水音多数。数えきれない、どうする、司令官」

提督「慌てるな。爆雷時限信管を着水後一秒に変更し、直ちに発射せよ」

名取「了解敵方位二-二-○、爆雷投射します」

頭の中で迫りくる酸素魚雷を思い浮かべる。

正直いつまでもこの方法で魚雷をよけているわけには行かない。

爆雷投射による迎撃は緊急時のみ使用する、という姿であるべきだ。これが癖になってしまったら、いずれ爆雷の不発や、自爆といった事故が起こった際対処することが不可能になる。

潜水艦に魚雷を囮に使われたら一瞬で崩れ去る戦法とも言える。

名取「魚雷誘爆を確認しました!」

提督「全艦主砲着弾目標を敵艦隊進行方向50m先に修正、準備が出来次第即発砲せよ。奴らの動きを誘導する」

名取「目標修正完了、撃て!」

誤差30mの範囲にまばらに水柱があがるのを確認した敵艦隊がその場で180度旋回を開始したことを名取が報告する。

提督「魚雷発射管開け」

名取「砲炎を確認、どうしますか!」

提督「怯むな、魚雷発射!今なら確実に当てられるはずだ!」

いやな爆発音が響いた。

名取「暁、響、雷が大破!」

長良「敵旗艦軽巡洋艦一隻、他二隻に魚雷命中、大破を確認」

提督「旗艦撃破か・・・。勝ったな」



移動。無線にて。

先生「ありゃあまぐれ当たりだろう」

提督「あの砲撃で誘い出したのがばれてなくてよかったですわ」

先生「お前の艦隊にしてはずいぶん狙いがそれたなとは思ったのだが、やはりそういうことだったのだな」

提督「連敗なんてしませんからね」

先生「明日は楽しみにしとるよ。果たして四隻で勝てるかね?」

提督「今に見てろクソじじい」

捨て台詞とともに、無線をきった。

翌日。舞鶴鎮守府食堂。○七○○。

加賀「提督、話したいことがあるの」

提督「明日の事だろう」

加賀「ええ、いくら私たちの艦載数があっても烈風から制空権を奪うのは無理よ」

提督「無理かね?相手は五航戦だぞ」

加賀「・・・」

提督「冗談だからそんな怖い目をするな。わかっている、いくら赤木とお前といえど烈風相手に紫電改二相手に勝てないということぐらいは」

加賀「じゃあどうするつもりなの」

提督「敵の全艦載数は翔鶴瑞鶴合わせて150機。先生は確実に制空権を取ってくると見て、大体百機は艦上戦闘機に回すとすると、それを圧倒するのに必要な紫電改二は百三十以上・・・」

考え込む提督を加賀がじっと見据える。

提督「三十六機程度では足りない二隻の火力を補うのは難しいぞ。紫電改二じゃ勝てない、か・・・」

五月雨がたたたっと提督の元へ走ってきた。

五月雨「私たちが対空火器を持てばいいのでは?」

提督「そういってくれるのはいいんだけど、そしたらますます火力不足になってしまう」

五月雨の意見を無慈悲に一刀両断した。

五月雨「そうですね・・・」

加賀「私たちも烈風を持つわけには行かないのですか?」

提督「まだ量産体制には程遠い状態だ。
   発動機にまだ不具合が多い。試験飛行もまだままならないのでは無理だ」

再び黙考した後、

提督「加賀に16機の流星を装備させる」

加賀「十六機だけで足りますか」

提督「残り百五十機全てを制空戦闘機に捧げるとしよう」

五月雨「でも、それでは敵を全て撃沈できるのでしょうか」

提督「こちらも主力を魚雷にしてやればいい。一発当たれば大損害だ。16本と五月雨涼風の四連装魚雷があれば十分いける」

涼風「随分信頼されちゃってるね、あたいら」

提督「烈風なしじゃやれないなんてそんなこと言わないでくれよ」

加賀「言われなくても言わないわよ」

五月二十三日。演習海域。○九○○。

提督「旗艦赤城、無線感度試験、応答せよ」

赤城「感度良好、問題ありません」

提督「舞鶴航空隊長」

乗員B「はい?」

提督「紫電改二でも乗組員が違えば真価はその倍にも発揮することができる。烈風なんざに乗ってるぬるま湯操縦士に負けるなよ」

乗員B「ぬるま湯とは随分言いますねぇ」

提督「勝てないのか?」

乗員B「確かに烈風に乗って最強風ふかしてるあいつらにはイラつきますわ」

提督「二度と俺たちと戦いたくないと思えるほどにぶちのめしてやれば目が覚めるだろ」

乗員B「了解了解」

マイクを切り、それぞれ百五十機につけられた番号を読み上げ、点呼を開始した。

提督「五月雨は水上電探に敵影を確認すると同時に報告しろ。赤城、加賀はその報告があり次第俺の許可を待たず発艦させるように」

赤城「了解」

提督「流星機各機、聞こえれば応答せよ」

乗員i「全員問題なし。感度良好」

提督「流星十六機は紫電改二の百五十機の尻につけ。敵艦との距離千mまで近づいたところで直ちに魚雷を投下」

乗員i「距離千mで切り離し、了解」

提督「五月雨は敵艦発見後、射程に入り次第弾幕を張り続けろ。流星からの魚雷切り離しの報告が入り次第俺の許可を待たず発射を許可する」

五月雨「了解です」

ひと通りの作戦の再確認を終えた。

五月雨が敵艦発見を報告し、魚雷発射までの間に提督が入る余地はない。

何がしかの緊急事態発生時のみ、提督が介入することになっていた。

○九三○。

五月雨「敵艦反応あり、感六、輪形陣、距離約30000m」

赤城「舞鶴航空隊、発艦」

次々と飛び立っていく紫電改二が空を埋め尽くし、その後方に流星がつく。

乗員B「各員装備問題なし、敵機は確認できず。まだ発艦していない模様」

発動機の回転数を引き上げ、一気に速度を上げた。



一○○○。

乗員B「敵機視認、朗報だな。予想通り烈風はそれほど多くない。ざっと百機程度だろう」

乗員B「これより交戦に入る。流星は遅れるなよ!」

機銃の発砲炎が瞬き始める。

乗員i「言われんでも遅れねぇよ。敵艦まではまだ10000m以上ある。落とされる訳にはいかないからな。守ってくれよ?」

乗員C「でかい赤ちゃんだな全く」

乗員B「敵機は各個撃破する」

烈風はかなりの対空格闘能力を見せるが、一機の追撃を避けた先で待ち受けていた紫電改二に撃破されるのがオチであった。

数で怯ませ、策略で士気をドン底まで引き落とす。これが提督の考えた数の暴力だった。

五十機の差を前に無残に烈風は戦線を強制離脱させられる。

赤城「航空優勢の兆しです」

乗員B「こちらは今残り百一機です」

赤城「了解。敵機の数はわかりますか」

乗員B「見たところあと五十」

赤城「引き続き交戦を続けて」

了解、と返答を返す。

乗員i「敵艦との距離5000m、そろそろ気づかれる頃だ」

乗員B「安心しろ、敵編隊は大分数を減らした。百二十~百五十番機は流星の護衛に付け」

乗員D「百二十番から百五十番までは撃墜数を入れると十四機です」

乗員B「すまん、九十番機聞こえるか」

九十「九十から百十番までの残存機は私含め十三機です」

乗員B「流星護衛編隊についてくれ」

九十「了解」

乗員ⅱ「敵艦との距離2000m、完全に気づかれたぞ!」

移動してきた十四機が上空から急降下爆撃よろしく機銃を仕掛ける。

乗員i「敵艦との距離1100m、これ以上近づけば撃墜は免れない!」

提督「了解、魚雷を投下しろ」

乗員i「了解!投下する!」

五月雨「涼風、用意はいい?」

涼風「がってんだ!」

五月雨「魚雷発射!」

提督「烈風で慢心、敗因はそれだけだな」

敵艦は主力爆撃編隊を失い、魚雷攻撃に移る前に空母は轟沈判定が出されていた。

長月率いる駆逐艦は第一次魚雷攻撃を免れたが、五月雨涼風の発射した魚雷までは避けきるのは叶わなかった。




本日はここまでです。

夕立とプリンツ・オイゲンがストレート髪になってしまいました。

・・・俺の好みです。

何か絡みを、という人は今舞鶴の中にいる艦娘の中からお願いします。

三個程募集します。

※訂正:電探には水平線より向こう側は映らないというような描写をしました。あれは間違いです。

※村雨です

今思ったのですが・・・、皆さんはベタな展開のほうがいいのでしょうか?
そういうのは俺がもう勝手に決めちゃっていいのですか?

お下げの安定感は最高。

ということで、五個、承りました。

支店出張してくることになりましたので、少々投稿遅れます。

出張先で書けや、と言われそうですが意外と忙しくて、申し訳ない。

お久しぶりです。今夜です。

時間経過。無線にて。

先生「お前と演習すると皆が興奮して困るんだ」

提督「は?」

先生「あんな奴らに負けちゃ生きてる価値がないとか言い出す奴まで出る始末だぞ」

提督「士気が上がっていいじゃないですか」

先生「たしかにそうっちゃそうなんだが・・・」

提督「俺は疲れたんでもう寝ますよ、それでは」

先生「おい!まだ話は」

すでに提督はいびきをかき始めていた。



最終日。舞鶴鎮守府提督私室。○七○○。

扶桑「提督、提督!起きてください!」

提督「・・・」

扶桑「もう七時を過ぎているんです!起きてください!」

提督「もう、七時・・・?」

扶桑「朝食にも現れないから心配してきたら寝ていらっしゃるんですから、もう呆れました!」

提督「なんてことだ!」

飛び起きると寝巻きから制服にその場で着替え始める。

扶桑は必死に目を逸らしていた。

移動。舞鶴鎮守府湾内。一三○○。

提督「扶桑他二隻の戦艦は偵察機から敵機確認の報告が入り次第陣形、艦種を報告。その報告と同時に弾着観測による精密射撃を開始せよ。
   重巡洋艦三隻は弾幕、魚雷要員として出撃するように。
   各員装備問題ないな」

扶桑「主砲二門、副砲、動作問題なし。偵察機異常なし」

プリンツ「こちらも火力兵器問題なし。電探も通常通り動作中」

提督「了解、複縦陣、第三船速を維持しろ」

扶桑「了解、艦隊、出撃します」

一三五○。

扶桑「偵察機より入電、敵艦六、単縦陣、戦艦二」

そこで口を止めた。

扶桑「訂正、戦艦四、重巡洋艦二」

提督「伊勢型と長門型だ。扶桑、砲撃を開始しろ」

偵察「緊急報告、敵艦発砲!回避せよ!」

提督「くそ、先手を取られたか!」

言い終わった瞬間、後続重巡洋艦二隻のほんの手前に着弾した。

加古「いやぁ、ヒヤヒヤするねぇ!」

古鷹「そんなこと言ってる場合じゃないって!」

提督「主砲全門砲弾装填、内一本のみ観測射撃、撃て!」

扶桑「了解、撃て!」

偵察「敵艦手前百二十メートルに着弾を確認」

扶桑「了解、誤差修正します」

偵察「敵艦主砲に動きあり、副砲が」

通信が途切れた。

提督「(重巡洋艦達の火力を戦艦に集中させたいが・・・。彼女らの練度では、敵重巡洋艦の砲撃を受け止めるのは無理だ)」

提督「全艦機関に以上はないな?」

扶桑「機関以上ありません。何をするつもりですか」

提督「機関増速、最大船速にて敵の精密射撃を回避しろ。
   このまま同航戦に持ち込む」

扶桑「しかしそれでは火力の差が!」

提督「主砲、副砲に弾丸装填。一斉砲撃の準備をしろ!
   プリンツ以下三名に関しては魚雷発射管を開いておけ」

扶桑「了解」

プリンツ「了解です!」

速度が上がった舞鶴艦隊の思惑を察し、旗艦長門は勝利の笑みを浮かべた。

長門「同航戦は好きだよ、諸君」

提督「扶桑は長門、山城は陸奥、ビスマルクは伊勢へそれぞれ全火力を集中させろ。

加古と古鷹は後続の重巡二隻に火力を集中、魚雷目標は任せる。プリンツは魚雷と火力を同時に日向へかましてやれ。
   砲弾を喰らっても怯むな!」

扶桑「了解です・・・!」

艦隊が丁度横に向かい合った時、両者はほぼ同時に砲撃を開始、一瞬で演習の決着はつくと思われた。

提督「状況を報告せよ!」

扶桑「全艦大破です。敵旗艦は小破、日向が中破、それ以外は大破です」

提督「だめだったか・・・」

その時、完全に試合が決着したと思い込んでいた旗艦長門、日向にもろに魚雷が炸裂した。

プリンツ「魚雷に気づかないなんて、慢心はだめですよ?」

長門「いつの間に・・・!?}

提督「完全に忘れてた」

プリンツ「自分で言ったんじゃないですか!ひどいですよ!?」

提督「しかし魚雷をくらっても中破か・・・、長門型の装甲は伊達ではないのだな・・・」



時間経過。無線にて。

先生「二勝二敗か・・・、全勝は無理か・・・。それにしてもなぜ負けるのかね・・・」

提督「あなたが脳筋だからですよ」

ボソッと批判する。

先生「なにか言ったか」

提督「いえ、なんでもないです。火力任せのままではだめと言ったんですよ」

先生「ふん、小僧め。口だけは達者になりよってからに」

提督「そろそろ夕飯なので切りますよ」

提督はそれを無視して言った。

先生「本当に生意気になったな貴様は」


時間経過。舞鶴鎮守府食堂。午後六時。

秋月「提督」

提督「なんだよ?食べた後じゃ駄目なのか?」

秋月「食べながら話しましょう」

珍しく今日は提督の向かい席を秋月が座っていた。

提督「それで、それ程に急ぐ用とは何かね」

秋月「そのですね」

提督「ん?」

秋月「一緒に街に行きませんか、という」

提督「それ前もやっただろ」


秋月「んー、いいじゃないですかー」

提督「日用品買いに行くんだろ?そんなの他のやつと行けばいいじゃないかよ」

秋月「提督と行きたいんですー」

唇を尖らせて秋月が食い下がる。

提督「それならせめて他のことにしれくれないか」

秋月「他のことですかー?」

提督「ああ」

秋月「そうですね・・・」

顎に手をやって真剣に考え始めた。

秋月「一日秘書をやらせてもらうというのは、どうでしょう」

提督「いや、それは、五月雨がいいのかという問題になるだろ・・・」

秋月「聞けばずっと五月雨さんは秘書だそうじゃないですか。一日ぐらいいいじゃないですか~」

子供みたいにぶーぶー文句を垂れ流し始めた。

秋月「いっつも執務室から笑ってる声とか聞こえてきますしー、一日ぐらいいいじゃないですか~」

五月雨「なに盗み聞きしてるんですか・・・」

提督「五月雨はどうなんだ?お前の意見を聞きたいな」

五月雨「確かにずっと私って言うのもアレなのかもしれないです。

    他の鎮守府では一週間ごとに交代制にしているところもあるそうですし」

提督「そうなのか、初耳だな」

五月雨「何かやましいことしないなら交代してもいいですよ」

秋月「しちゃいけないの?」

提督「第一俺が許さねぇよそんなこと」

秋月「提督ってば、臆病なんだからん」

提督「・・・」

秋月「なんでもないです」

五月雨「いつ交代するおつもり何ですか?」

秋月「んー、明後日とかでいいかな?」

五月雨「わかりました」




移動。舞鶴鎮守府執務室。午後八時。

提督「たかが一日ぐらいでこんなにくっつく必要ないだろ・・・」

五月雨「今のうちにこういうことをしておかないと一日持たないですから」

提督「いや仕事できねぇよ・・・」

提督の膝の上に五月雨が陣取っていた。

五月雨「提督が許可するからいけないんです」


提督「事実が捻じ曲がってるぞ、お前がいいよっていったんだからな。そこんとこ忘れんなや」

五月雨「まだこんなに読まなきゃいけないの残ってるじゃないですか、読み聞かせてあげないといけないんですか?」

提督「自分で読むわ阿呆かお前は」

五月雨が手にとった紙をひったくる。

提督「資材が・・・」

五月雨「足りないはずないと思いますよ?」

膝の上に座ったまま五月雨が振り返るのと同じくして収支報告書に目を戻す。

提督「今回の演習でそれぞれ5万は使ったな」

五月雨「五万も使ったんですか」

提督「24万もあっても困るだけだ・・・、ちょっと工廠に内線をかけてくれ」

五月雨「はーい」

操作をした後、受話器を提督に手渡す。

提督「艦載機をそろそろ新装備に切り替えようかと思うんだが」

妖精B「いや、紫電改二も大分新装備なんですけど」

提督「烈風とかに「何機作るつもりなんですか?」

提督「三百機ぐらい」

妖精B「三百ですか!?」

提督「資材がありすぎるんだ、まだ弱小鎮守府のうちには余りある」

妖精B「そうは言われましても・・・」

提督「艦首魚雷とか作れないのか?」

妖精B「その設計図は大本営からの任務を達成しないともらえないじゃないですか」

提督「製油所の奴らなら作れたりして」

妖精B「それはさすがに無理でしょう」

やれやれといった顔をしているのがなんとなくわかる。

提督「・・・だったら建造するしかないな」

妖精B「また何を建造するおつもりなんです」

提督「駆逐艦を二隻頼む」

妖精B「二隻、ですか」

提督「頼めるか?資材は十万までならいくらでも使っていい」

妖精B「本当ですか!?ほほう、それならやらさせていただきますわ!」

提督「お、おう、頼むわ」

電話を切った。

五月雨「十万って、何を勝手に決めてるんですか!」

提督「何が来てくれるのか楽しみでしょうがない」

五月雨「駆逐艦を二隻って言ってましたけど、もしかして白露型ですか?」

提督「よくわかったな五月雨」

五月雨「二人でちょうど当てはまるのってそれぐらいじゃないですか。
    傾向的に、型系の艦をそろえてるみたいですし」

提督「しかしなぁ・・・、今更だが、建造ってどうやってるんだろうな。海に浮かんでたりするんだろ?」

五月雨「何がですか?」

提督「艦娘の話に決まってるだろうが。建造って何なんだ、召還魔法かなにかなのか?」

五月雨「空想の話を持ち込まないでくださいよ」

提督「妖精やら深海棲艦なんかがいるこの世界に空想もクソもあるかよ」

五月雨「それは、そうですけど・・・。なんなんでしょうね?」

提督「俺が知ってると思うか?大体訳も大して説明されずに現場投入させられている俺にとっては考える暇も無かったよ」

五月雨「じゃあ提督も敵のことは何も知らないってことですか?」

提督「お前のほうが良く知ってるぐらいだ」

五月雨「そうなんですか・・・」

気まずい静寂が部屋を満たす。

五月雨「やめましょう、この話は」

提督「そうだな、俺の頭じゃついていけないわ。ていうかお前の髪の毛本当に良い匂いするな。石鹸の匂いって好きだな」

五月雨「石鹸使ってないですけどね」

提督「なんだ、そうなのか?」

五月雨「露骨に残念そうにしないでください」



翌日。午前十一時。

提督「秘書艦って、やっぱり憧れだったりするのだろうか」

若干部屋が暖まり始めた頃、提督が突然言った。

五月雨「そりゃあそうじゃないですかね」

提督「それをしってて五月雨は独占してたわけだな」

五月雨「人聞きの悪い言い方しないでください。言われれば交代ぐらいするつもりでした」

提督「でもそれって一週間ぐらいだったら、の話だろ?」

五月雨「え?」

提督「完全に交代ってなったらやっぱり嫌だろ?」

五月雨「・・・意地の悪い質問しないでくださいよ・・・」

提督「ともかく明日だけだから、我慢しておくんなはれや」

五月雨「嫌な予感がするなぁ・・・」

提督に聞こえないように呟いた。

次の日。午前五時。提督私室。

秋月「提督、起きてください!」

提督「うるせぇ・・・、五月雨はいつも起こすのが早すぎるんだよ・・・」

秋月「私は五月雨さんじゃありません!」

提督「・・・何言ってんだ、・・・ついに頭の中までドジになっちまったのか・・・そうか・・・」

秋月「もう!早く起きてくださいよ!今日だけなんですから!目いっぱい遊びますからね!」



時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時。

提督「すまんな」

秋月「すまんな、じゃないですよ。意外と傷つくんですから」

提督「朝起きたばっかだったんだぜ?寝ぼけてたんだって」

秋月「五月雨さんは隣の席もう座っちゃってましたし」

五月雨「へ?・・・、あ、すいません」

謝っただけで動こうとはしなかった。

秋月「さすが最初期からいる艦ですね・・・、やりおる・・・」

提督「さっさと食ってしまえ。朝でも仕事はあるんだから」

秋月「急いで食べたら胃に悪いです」

提督「始めてそんな事言われたわ」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

秋月「・・・」

提督「あいつらどんだけ資材使い込んでるんだ・・・」

秋月「・・・」

提督「ボーキサイトだけ異常に減ってるな。艦載機の開発もやってくれてるのかな・・・」

秋月「・・・」

提督が独り言を言いながら書類をめくり、秋月は提督の隣の椅子に座っていた。

秋月「あの、提督」

提督「ん?」

秋月「い、いえ、なんでもありません」

目が合った瞬間何を言おうとしていたのか忘れてしまった。

気を取り直し、

秋月「提督」

提督「・・・ん?」

秋月「提督は、いつ着任されたのですか?」

提督「去年だけど」

秋月「何月ぐらいだったんです?」

提督「そうだな・・・、八月、いや、七月?それぐらいだったと思う・・・、あれ、そうだっけ・・・?」

秋月「なるほど」

提督「で、それがどうかしたのか?」

秋月「すると、五月雨さんとはもう十ヶ月近いお付き合いなんですね」

提督「確かに、言われてみればもうそんなに経ったか」

持っていた書類を机に置いた。

提督「十ヶ月か・・・」

秋月「提督は今まで何人の女性と付き合ったことがあるんですか?」

提督「は?」

秋月「何人ぐらいですか?」

提督「話し変わりすぎだろ秋月・・・。そんなに多くないけどな。言っても二人ぐらいだ」

秋月「よほど長く付き合われたとか?」

提督「いや、そうでもない」

秋月「どうして別れたんですか?差し支えなければ教えてください」

提督「振ったとも言えるし振られたとも言える」

秋月「?」

提督「浮気されたんだよ」

秋月「・・・浮気、ですか」

提督「どうやら俺は生涯浮気される質みたいでなぁ・・・、二人目も浮気されてしまった」

秋月「嫌なことを思い出させてしまいましたか・・・?」

提督「気にするな、もう笑い話みたいなもんだよ」

秋月「浮気した女性にはやっぱり怒りますよね」

提督「ん?怒らなかったね。」

背もたれに体重を預ける。

提督「喧嘩はすきじゃないんだ」

秋月「でも、普通怒るものじゃないですか」

提督「それはわかってるんだけどね。めんどくさいんだよ、そういうの」

秋月「めんどくさい?」

提督「怒って口論するのがめんどくさいんだ。だから俺は何も言わなかったと思う」

秋月「そこまでめんどくさがりだと逆に呆れますね・・・」

提督「なんで怒ってくれないの?とまで言われたほどだからな」

秋月「あらら」

提督「早々で悪いけど、これ以上は恥ずかしいからやめないか。女子ってこういう話好きらしいけど俺は全然好きじゃないし」

秋月「もうやめちゃうんですか?」

提督「話したって長くなるだけだし」

秋月「そういえば提督」

仕方がないと言わんばかりにため息をつくと、秋月が話を変える。

提督「あん?」

秋月「私と同型の駆逐艦ってまだいないんでしょうか?」

提督「それは防空駆逐艦という種類が同じってことを話してるのか」

秋月「そうです」

提督「まだそういう発見報告とかはないな・・・。建造でもそういう話は上がってない。秋月が初めてだ」

秋月「でも提督はこの舞鶴で私を建造してくれたじゃないですか」

提督「それは、まぁ、そうなんだが・・・」

秋月「本当のことを言うと寂しいんです。秋月型はまだ私しかいないんですから」

突然のテンションの変化についていけなかった。

提督「そう言ったって俺にはなにもできないぜ」

秋月「・・・もー、もう少し慰めてくれたっていいじゃないですかー」

提督「別に同型艦なんていずれ来るからいいだろうが。それまで待ってろとしか俺は言えねぇよ」

秋月「相談事をきっぱり切り捨てるのはめんどくさいからですね!?」

ギクッ、と提督の肩が震えた。

秋月「そこまでめんどくさがりと嫌われちゃいますよ?」

提督「でも俺相談に乗るのとか苦手でさ」

秋月「言われてみれば確かに提督がまじめにそういうことをしてるのは似合わないです」

提督「五月雨にも言われた気がする・・・」

時間経過。舞鶴鎮守府食堂。正午。

春雨「司令官、朝の間ずっと秋月がいなかんたんですが・・・、知りませんか?って、なんで司令官と一緒なんですか!?」

食堂に入って早々、待ったましたと春雨が質問してきた。

すでに食堂には秋月と提督以外全員揃っている。

提督「秋月は今日だけ秘書をやるって一昨日ぐらいの晩に言ってたじゃないか」

春雨「いつもの冗談とかじゃなかったんですか!?」

提督「そんな軽い男じゃないと自分でも思うけどな・・・」

暁「司令官わざと黙ってたんじゃないの・・・?」

続々と駆逐艦が集まる中、他の艦は恥ずかしいのかその輪に加わろうとはしなかった。

提督「いや、みんなもう知ってるもんだと思ってて」

響「それは聞き捨てならないね」

五月雨「嫌な予感的中なんですけど・・・」

涼風とともに椅子に座りながら五月雨は拗ね始めている。

雷「秋月さんがだめで私達がダメな理由がないわ」

電「そうなのです!」

夕立「私も秘書艦やりたかったっぽいー!」

村雨「私も、まぁ、やりたくないわけでは、ないし・・・?」

提督「一気に喋られてもわかんないって」

うるさくなってきた駆逐艦を押しのけ自分に席に座る。

五月雨「だからこうなるっていったじゃないですか」

提督「予想して然るべき事態であったことは認めざるを得まい・・・」

五月雨「これじゃあ一週間も秘書交代されるのと変わらないじゃないですかー」

完全に拗ねていた。

提督「じゃ、じゃあ、一日間を置くっていうのはどうだ?例えば、そうだな、暁、五月雨、電、五月雨、みたいな感じで」

五月雨「そ、それならいいです」

提督「おおう(それでいいのか)」

提督「とりあえずそういうことだから、お前らは席にもどれー」

しっしっと手で追い払った。

間宮「私も立候補してもいいんでしょうか?」

提督「間宮、あなたまでそんなことを・・・」

間宮「だめ、でしょうか・・・?」

提督「うっ、あ、いや、だめ、では、ない、の、かも、しれない、けど」

五月雨は完全に提督から顔を離してしまった。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後一時。

提督「めんどくさいことになった・・・」

その発言には気づかず、秋月は立っていた。

秋月「一日秘書になったはいいですけど、何をしたらいいんでしょう」

提督「さぁなぁ」

秋月「五月雨さんはどんなことをして過ごしてるんでしょうか」

提督「あいつは俺の邪魔をするだけだな」

秋月「邪魔、ですか?結構真面目そうに見えるますよ?」

提督「お茶いれたりとかはしてくれるけど、それ以外は膝に乗ったり書類を勝手にとったりしてるだけだな」

秋月「元帥のお傍についていたことがあるといいますから・・・、なんか意外です」

提督は再び紙に手を伸ばし、業務を再開する。

秋月「そういえば私が入れたお茶、苦かったですか?」

提督「え?」

秋月「全然口を付けないものですから」

提督「あ、あぁ・・・、猫舌なんだよ」

秋月「熱いのが苦手なら最初から言ってくださいよ!私無駄なことしちゃったじゃないですか」

提督「でも大分冷えてるから、そろそろ飲もうと思ってたところだった」

秋月「・・・猫舌だったんですねぇ」

嫌な笑みを浮かべている。

提督「別に俺は恥ずかしいと思ったことはないぞ」

秋月「あら、そうでしたか」

提督「ていうか秋月や」

秋月「はい?」

提督「俺はてっきりまたどこかへ連れだされるのかと思っていたんだが」

秋月「こうしてただ傍にいるのも悪く無いですよ?」

提督「五月雨はそうとう長い間その位置に収まってたけどな」

秋月「どうなんでしょう、そんなに長い間やったことないですから五月雨さんの気持ちまではわからないです。でも、退屈ではないと思いますよ?」

提督「・・・いつもつまんないとかほざいてるけどな」

秋月「・・・、ほ、本心じゃないんですよきっと」

提督「俺も提督だからな、艦娘ばかりに気を配ってもいられないのだよ」

秋月「それはみんな理解してます」

提督「本当に理解してるのかどうか怪しい奴が大半だけどな、うちは」

秋月「まぁまぁ・・・」

愚痴に入りそうになったところで秋月が話を切り替える。

秋月「そ、そういえば舞鶴鎮守府には火力艦隊も水雷戦隊も空母機動部隊も揃ってるんですね」

顔は秋月に向けず、そのまま答える。

提督「ふむ。艦が全体的に駆逐艦多めだけど、全体的に散らばってるな。ていうかそんな特別なことでもないだろ。先生の鎮守府だってそうだし」

秋月「でも先生と提督の鎮守府だけですよ、全部揃っているのは」

提督「そうなのか?」

秋月「何で知らないんですか・・・。中央の横須賀は大和や長門型とかの弩級戦艦ばかりが揃ってて、佐世保は高速戦艦の金剛や、最上型。空母機動部隊まで所有してるのは前までは先生だけだったみたいです」

提督「今言った他の鎮守府は?」

秋月「水雷戦隊が専らのようです。長距離雷撃による援護射撃や、電撃戦に従事しているんですよ」

そこまで聞いて提督はなんだか居心地が悪そうに顔をそむけた。

提督「もう少し俺も勉強したほうがいいのかもしれんな・・・」

秋月「私のほうが新人ですよ、一応」

提督「・・・確かに弩級戦艦も火力が高いから悪くない。しかしあれはただの静止目標みたいなもんだと俺は思ってるな。思いだけで速力なんて出やしない。いつも『輝かしい戦績』を携えて帰ってくるが、ほとんどが空母機動部隊で十分なほどだ。過剰演出で貴重な資材を溶かすのも程々にしてほしいものだね」

秋月「それ、絶対に外で言わないでくださいね」

提督「言われなくても言うわけ無いだろうが」

秋月「でも最大船速は大和のほうが「黙り給え秋月君」

提督「言ってはいけないこともあるのだ」

秋月「は、はい・・・。では、他に戦艦はいらないのですか?」

提督「そんなもの必要ない。扶桑型だけで十分すぎるんだから。ビスマルクだってもったいないぐらいだっていうのに」

秋月「他の戦艦はもういらないと?」

提督「戦艦が三、正規・軽空母合わせて四、重巡が三、軽巡二、駆逐十二。これだけでもう二十四もいるんだぜ。これ以上はいらないさ」

秋月「え?駆逐艦は十人ではないのですか?」

提督「お前も一日とはいえ秘書だから教えとこう。今度白露型二隻がうちの鎮守府に籍を入れる」

秋月「というと・・・?」

提督「白露と時雨だろうな」

秋月「なんと」

提督「この前の演習で駆逐が二隻足りないことに気づいてな・・・」

秋月「そういえばそんなこともありましたねぇ」

提督「ぶっちゃけるとその為なんだ。どっちにせよ白露型が揃えば彼女らも喜んでくれるだろ?」

秋月「間違いないです」

提督「駆逐艦に関しては五月雨筆頭とする古参たち六人が戦闘については教えてやれるだろうが・・・。それ以外は徐々に演習で慣らすしかないか・・・」

ひと通り話し終えたところで提督がお茶を飲み、言った。

秋月「いくら十センチ砲でも敵戦艦の装甲は貫けませんしね・・・」

提督「早いところ扶桑型を航空戦艦にして命中率を上げたいところだ」

一息で飲み干し、空になった茶碗に秋月がお茶を注ぐ。

そこからあがる湯気を見て提督は顔を顰めた。

秋月「横須賀みたいに主砲も副砲もバルジも、みたいにはしないんですね」

提督「それこそただのハリボテになるだけじゃないか。あんなん結局数撃ちゃ当たる戦法だよ」

秋月「ビッグセブンとか、欲しくないんですか」

提督「・・・おい、秋月、しつこいぞ」

隣の席に戻った秋月の頭を、手刀で軽く叩いた。





また明日続き出します。

秋月「駆逐艦ではありますが、提督が本当に戦艦が欲しくないのかと勘ぐってみたのであります」

提督「余計なお世話だっての」

秋月「こうして性格を垣間見ていると、提督が好かれる理由もわかります」

提督「指導者たるもの、慕われなくてはやっていかれんからな」

秋月「まぁ、慕っているとも言えますね」

提督「どういうことだ?」

秋月「提督は本当に気づいてないんですか?」

提督「なにに?」

秋月「質問を質問で返さないでください・・・。本当に気づいてないんですね」

提督「何の話かさっぱりわからんのぅ」

秋月「道のりは長そうです・・・」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午後五時半。

夕立「じゃあまず明日は五月雨で、明後日が夕立がやるっぽい!」

村雨「何勝手に決めてるの?」

夕立「早いもんがちっぽいー!」

響「ここは公平にじゃんけんでいいんじゃないかな」

提督「時間かかりそうだなぁ・・・。間宮さんも混じってるし、お前らも入るのかよ」

提督「(艦娘全員が入り乱れてじゃんけんとかうるさいだけだろ)」

秋月「面白そうですねぇ」

提督「お前はもう今日やったんだからあの輪には入れないぞ」

秋月「わかってますよ!」

夕立「んー・・・、加賀さんが最初っぽい・・・。譲って欲しいっぽい!」

加賀「ここは譲れません」

赤城「目が本気ですね・・・」

春雨「ていうか、司令官には知られないようにしましょう!」

提督「は?どうしてそうな「じゃあ一旦出ましょうか」

秋月「邪魔しちゃいけませんよー」

提督「いや、ちょ、秋月!?おい!」



時間経過。

秋月「提督、あーんしてください」

提督「しねぇよ」

秋月「最後なんですから、いいじゃないですかー。せっかく扶桑さんも隣を空けてくれたんですから」

提督「自分で食べるわ」

秋月「つれないですねー。間宮さんは食べてくれたって言ってましたけどねー」

提督「なっ!?」

五月雨の鋭い視線を感じる。

間宮「あの時は楽しかったですね、提督」

提督「(ここでさん付けをやめるのか!?)」

秋月「あーんしてください」

提督「(もうどうにでもなれ)」

黙って口を開けた。

五月雨「私もやったことないのに!」

提督「こんなつもりではなかったんだが・・・」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時。

秋月「もう後一時間で終わりですか・・・」

提督「一日っていう約束だったろ」

秋月「伸ばしてくれてもいいんですよ?」

提督「五月雨が嫌がるだろうが」

秋月「五月雨さんばっかじゃ妬いちゃいますよ?」

提督「恋人でもあるまいに、何を言うのやら」

秋月「じゃあ最後にお願いを1つ」

提督「ん?」

秋月「お姫様抱っこしてください」

提督「本気かよ?」

秋月「本気です」

いかにもめんどくさそうな雰囲気を出しつつ、椅子を立ち上がった。

提督「いちいちどこ触ったとか言うんじゃないぞ」

秋月「わかってますよぉ」

咳払いをすると、秋月の背中に手をかける。

秋月「早くしてください、誰か来たらどうするんですか?」

提督「あーだこーだうるさいな、やればいいんだろう」

一気に腰まで抱き上げた。

秋月「こっち見てくれないんですか?」

年端もいかない少女を執務室でお姫様抱っこしている姿が窓に写っている。

秋月「こっち見てくれないんですかー?」

扉が鳴った。

加賀「入りま」

秋月は提督を見、提督は加賀を見、加賀は両者を見て固まった。

加賀「失礼しました」

提督「違う!これはそういう意味ではない!」

言い終わらないうちに扉は閉められた。

秋月「見られちゃいましたね」

提督「顔赤くしてる場合かよ!」



翌日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

五月雨「提督ー、起きてくださーい」

提督「起こすの早過ぎるんだよ・・・」

五月雨「みんなの指導者なんですから、もっとしっかりしてくれないと困るんですが」

提督「はいはい、わかったよー」

五月雨「せっかく戻ったんですから、喜んでくれてもいいんじゃないですか?」

提督「いつもの日常に戻っただけじゃないか」

五月雨「これがマンネリ化というやつですか・・・」

提督「まんねり?なんかの食べ物なのか?」

五月雨「提督はいつまでも英語勉強しないままじゃ駄目です!」

提督「いや、少しはしたんだが・・・」

五月雨「私達の言葉ぐらいわかってくれないと!」

提督「外来語は苦手なんだって」

五月雨「逃げないでください!」

提督「逃げるもクソもないだろ!まだ着替えてないんだから引っ張らないでくれよ!」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時。

提督「いただきまーす」

皆「いただきます」

提督「ちゃんと寝たんだけどなぁ・・・、眠いわー」

五月雨「熱でもあるんじゃないですか?」

提督「だるくはないからそれはないと思うけどさ、部屋帰ったら三十分ぐらい寝るか・・・」

五月雨「お仕事はどうするんです?」

提督「大した物はないはず。演習も近々やるからその約束ぐらいはしておかなければならないか・・・」

五月雨「また先生とやるんですか?」

提督「他の鎮守府の人怖いし」

五月雨「子供ですか・・・」

提督「いや、人見知りとかではないんだが」

五月雨「どうしたんです?」

提督「化け物呼ばわりされて平気な人間はいないだろ?」

五月雨「私達はそんな風には思いませんよ」

提督「日本に生まれてよかったぜ」

意味もなく五月雨の頭を撫でる。

五月雨「ご飯食べてください」

提督「悪かったな」

五月雨の耳が少し赤くなっていた。


時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

五月雨「三十分たちましたよー」

椅子の背にもたれたまま寝ている提督の方を強く揺すった。

提督「もう三十分か・・・」

目を瞬かせながら背を伸ばす。

提督「だいぶ楽になった、気がする」

五月雨「お茶いれておきましたから」

提督「さっさと始めるか・・・」

丁度いいタイミングで扉が叩かれた。

巡視兵「提督、お手紙が」

提督「入ってくれ」

静かに手紙を受け取ると差出人を確認してから封を破る。

五月雨「誰ですか?」

提督「くだらん内容だ。気にすることはない」

五月雨「教えてくれたっていいじゃないですか。機密ならしょうがないですけど」

提督「お前のことを欲しがってる鎮守府があるんだよ」

五月雨「は?」

提督「だってほら、五月雨は練度が高いだろ?是非うちの鎮守府に来ればもっと活躍できるなんてほざいてやがるんだ」

五月雨「提督は「そりゃ断るだろ」

提督「下心丸見えなんだよ・・・。お前は舞鶴で十分だ」

五月雨「それって私が決めることじゃないんですかぁ」

非難めいた視線を提督に送る。

提督「行きたいのか?」

五月雨「そんなわけないじゃないですか!」

提督「じゃあいいだろ・・・」

五月雨「ちなみに、どこの鎮守府なので?」

提督「大湊のほうだ」

五月雨「寒そうですねなんか」

提督「別に駆逐艦なんて十分すぎるぐらいあるだろうに。なんで五月雨をなぁ」

五月雨「わ、私は行きたくないですからね」

提督「言われんでも渡さないわ。最古参でもあるんだから」

五月雨「ですよねー」

28レス・・・、増やしていきたいところですが、今回はここまでです。

秘書交代イベントがあった、と、途中で思い出しました。

とりあえず全員分やるには長すぎるので、少しずーつやっていきますね。



本営通さずダイレクトに引抜とかありなのか
逆に、ブラ鎮ほどではなくても不遇な子を引き取るのもあり?

>>704ヘッドハンティングの件はまだ終わってないのです。
   今は見守ってくださいw

一日ごとに投下するとかほざいていたのは誰でしょう。はい、僕です。

はい、今日の夜中、割と多めに投下できます。

お待たせしてしまいました。

時間経過。同所。午後二時。

提督「暇やのぅ」

五月雨「・・・眠いです」

提督「ちょっと寝るか」

五月雨「朝も寝たじゃないですか・・・」

提督「お前の眠そうな顔見てるとこっちも眠くなってくるんだわ」

五月雨「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

提督「(今日はやけに眠いな・・・)」



時間経過。

提督「・・・ん?」

目を覚まし、部屋を見るとすっかり暗くなっている。

提督「やば、夕飯逃したか」

急いで壁にかけてある時計を確認すると、午前一時を指していた。

提督「・・・は?」

提督「確か寝たのが二時ぐらいで、え!?」

布団がやけに濡れているのに気付いたが今は気にしていられない。

嘘だろおいと慌てて執務室に戻ろうと扉を開けると、丁度五月雨も開けようとしていたところだった。

提督「悪い、俺一体何時間」

五月雨「もう起きないかと思ってみんな心配してたんですよ?」

提督「なんか今日は疲れてるらしい」

起きてからやけに視界が揺れているのが気になる。

五月雨「大丈夫ですか!?」

バランスをとろうと五月雨の肩を思いっきり掴んでしまった。

提督「悪い、・・・ちょっと医務室行ったほうがいいかもしれん」

五月雨「運動でもしてたんですか?やけに脈が早いですよ!今まで何ともなかったのに!」

肩を貸されつつ、廊下に出た。

提督「風邪でも引いたのかな・・・」

移動。舞鶴鎮守府医務室前。

五月雨「そういえば鍵が」

提督「俺の右ポケットに予備があるから」

震える手で鍵を差し出し、連れられるまま寝台に横になる。

五月雨「すぐお医者様呼んできますから」

提督「(風邪にしてはおかしい、かな)」

五分ほどで飛び起きた妖精が駆けつけた。

医師「ちょっと脈を測ろう」

何かの器具で腕を締め付けられた。

医師「・・・112か、随分早いな」

額に手を当てるが、

医師「熱はないけど汗はある、と。冷や汗のようなもんだろう」

診断書のようなものに諸症状を書き込んでいるようだ。

医師「他に何か症状はありますか?」

提督「目眩、とか」

それを聞くや、医者は黙りこんでしまった。

五月雨「あの・・・」

医師「・・・わからんな、ちょっと電話してみるか」

立ち上がると、どこかに電話をかけ始める。

五月雨「提督?」

提督「ん・・・?」

五月雨「いえ、今話すことじゃありませんでした」

提督「そうか・・・」

医師「心因性のものもありうるな、精神科医は今出てるかな。
   ・・・、家の番号を教えてくれ」

それから十分以上いろいろ質問していた。

ため息をついて、提督に医者は言った。

医師「心因性の症状らしい。それにしちゃかなりひどいが、一日ぐらい寝れば治るでしょう。本当は薬を飲んで欲しいところですが、大丈夫だろうとのことですから」

五月雨「心因性っていうと、どういうことでしょうか」

医師「精神的に負担が重なってたんだろう。そこまで働いてない癖して割りと気苦労はあるわけだな。仕事はやらせないほうがいい。つってもやるんだろうが」

五月雨「わかりました」

五月雨「執務室の整理、しておきますね」

提督「・・・もうこんな時間だ。寝ておきなさい」

五月雨「もう眠気なんかなくなっちゃいましたよ」

移動。舞鶴鎮守府執務室。午前二時。

提督には悪いが、家探しをさせてもらうことにした。

症状が出るほどのストレスはいったいどこからやってきたのか、原因を探さなくては対処の仕様がないのだ。

五月雨「失礼します」

断ってから、机の引き出しを開けていく。

すると、一番下の、大き目の引き出しに茶色の箱が収まっていた。

五月雨「いかがわしいものではない、よね?」

意を決して蓋を取ると、中にはかなりの量の封筒が入っていた。

五月雨「全部大湊からだ・・・」

かなり乱雑にしまってあるために、新旧正しく並べられていなかった。

仕方なく、一枚ずつ読んでいくことにする。

日付は九月三日だ。

『舞鶴鎮守府責任者、龍花殿へ。
 再三に亘る要請に対し、若輩である貴官が一言の返事も寄越さないのはどういうわけか。黙するは了解の意、そう解釈する』

五月雨「要請・・・?」

二枚目。八月十五日。

五月雨「着任したすぐのころだ」

どうやら最初の手紙を引き当てたらしい。

『舞鶴鎮守府責任者、龍花殿へ。
 まだ暑気が残る中、提督着任を大湊は多いに歓迎する。
 そこで、駆逐艦五月雨を我が大湊に譲ってはくれまいか。五月雨程の連度となると、貴官の鎮守府で扱うにはいささか困難が』

そこで五月雨は読むのを止めた。

ざっと数えても大体100枚程度。もはや脅迫といってもいいレベルだ。

おそらく温厚な態度らしくしているのは最初だけなのだろう。後半は読みたくても、心のどこかが読むなと叫んでいる。

五月雨「・・・こんなの「五月雨」

提督「まさかと思えば・・・、秘書とはいえ、勝手に読むのは頂けないな」

五月雨「お医者さんは!?」

提督「もう部屋にお帰りになられたよ」

五月雨「お教えしてくれてもよろしかったのではないですか?」

提督「教えたところで何になる?気に病んで任務に支障が出るのはよくないだろ?」

五月雨「でしたらせめて、今から抗議だけでも」

五月雨の頭に提督が手を置いた。

提督「近頃は手紙の量も減ってきてる。そろそろ諦めてくれるはずだ」

五月雨はその手を払いのけた。

五月雨「だったらなおさらではないですか!もし実力行使にでも出られたら!」

提督「そう言われてもなぁ、相手のほうが俺よりも歳は十以上も高いんだ。とてもじゃないが大きな行動に出ることはできない」

五月雨「だったら提督は、ずっとこの手紙を送られ続けることになるのですよ?」

提督「別にそれでもいい、俺は「大丈夫なんてそんな台詞言わせませんよ」

五月雨「現に大丈夫じゃなかったじゃないですか!今だって寝ていろといわれたのに勝手に起きてる!面倒くさがるのも程ほどにしてください!」

提督「大きい声を出すな、皆が起きるだろう」

五月雨「私は秘書なんですよ!?こんなもの、大体どうしてとっておいたんです!燃やせば良いのに!」

箱の中身を部屋中にばら撒いた。

提督「五月雨、いい加減にしなさい」

提督が言ったときには、加賀が既に部屋の扉を開けていた。

加賀「いったい何事ですか」

床に落ちている封筒を拾い上げる。

弁解しようと提督が振り向いた時には、加賀は中身を取り出していた。

提督「加賀、やめるんだ。今すぐそれを「これは」

加賀「どういうことなのでしょうか」

中の手紙を提督に見えるように広げた、

加賀がいったいいつの手紙を読んだのか、それによって大きく変わってくるが、不運にも、その日付は二月三日。言葉の調子が激しくなりだしたころだった。

提督「この事は艦の皆には知られたくない」

加賀「そういうわけには行きませんが。もう私が知ってしまったことですし。というか、私の後ろにももうみんな居ますし」

提督「こりゃ参ったな・・・」

途方にくれて頭をかいた。

扶桑「提督」

提督「ん?」

言いながら提督は椅子に座る。

何も言わずにひざに座ってきた五月雨をどうしたものかと迷っているうちに扶桑が話を続けた。

扶桑「いっそ演習で負かしてしまってはどうでしょう」

提督「おいおい、どうしてそうなる?」

扶桑「五月雨さんを旗艦に据え、駆逐艦のみの編成で」

反論しようとしたが、それが現状思いつく中で一番の案であった。それで負かすことができたらなら、かなりの効果を見込めるだろう。

五月雨の頭をなでながら、考え込んだ後、

提督「とりあえずそう急ぐ必要はないだろう。先ほども言ったとおり、手紙の頻度も落ちてきているから、もしまた次の手紙が来るようならその時考える」

加賀「提督がそうおっしゃるのなら特に口を出すような真似はしませんが」

提督「心配をかけて悪かった。とりあえずこの件は一応忘れてくれ」

五月雨「・・・」

加賀「提督」

提督「ん?」

加賀「今日の秘書は私ですが」

提督「そ、そういえばそうだったな・・・」

五月雨「絶対また送ってきますって」

提督「いいから今日は休んでくれや」

涼風を呼んで、部屋に戻らせた。

五月二十八日。時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。

加賀「提督は眠くないのですか?」

提督「昨日は随分寝たからな・・・、あの後寝ようと思っても寝れなかったし」

提督「加賀、眠いんだったら仮眠をとってもいいけど」

加賀「いや、遠慮しておきます。色々怖いので」

提督「どんだけ信用されてないんだ・・・」

加賀に説教を始めようと口を開きかけた刹那、扉が突然開かれた。



時間逆行。舞鶴鎮守府付近。数分前。

妹「あんなドヤ顔でまた来るとかいいながら全然来てくれませんでしたね」

工場長「お、怒るなって。あの人だって忙しかったんだろうし」

妹「そんなことあるわけないじゃないですか!ずっと作戦なんか発動されてなかったんですよ!?ていうか、あんた誰ですか!」

慌てて工場長が妹の口をふさぐ、

工場長「おいやめろって!呉の提督だろうが、それぐらいなんで知らないんだよ!?」

妹「だって駅からずっと私たちの後ついてきてるんですよ!?」

工場長「行き先が同じだっただけだろ!?被害妄想だろ!いいから謝れって!」

先生「別に気にしてないが。というより、もうついたぞ。・・・ん?」

舞鶴鎮守府に入っていく人物がいた。

先生「あれは、神埼か・・・?」

妹「神埼?」

工場長「だからせめて敬語ぐらいは・・・」

先生「大湊鎮守府の司令官だよ。とりあえず私たちも入ろう」

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。

加賀に説教を始めようと口を開きかけた刹那、扉が突然開かれた。

提督「せめて叩くぐらいは、って」

神埼「大湊の神埼だ。声を聞くのは初めてかな?龍花殿」

予想外の訪問者に提督は驚愕の表情を禁じ得ない。

提督「何の約束もなさらずに・・・、今日はいったい何の御用でしょうか?」

神埼「とぼけるなって」

提督「果たして、何のことでしょう」

神埼「いやいや、それよりもまず、椅子に座ったままというのが最近の上官との会話の態度なのか?」

提督の襟を掴み無理やり立ち上がらせようとした所で、

加賀「失礼。いくら上官といえども、私たちの司令官に手を出す行為を見過ごすことはできません」

神埼にどこからか取り出した矢先を押し付けていた。

提督「(執務室に武装を持ち込むなとあれほど・・・)」

神埼「加賀か・・・、お前もどうやら頭がおかしいようだな」

提督「落ち着きましょう。手を出すのはいささか早計です。まずは話し合いませんか」

神埼「話しあいねぇ・・・」

そこで、ようやく先生が到着した。

先生「何してるんだ貴様ら」

現場を見とがめた先生が鋭い声を発した。

神埼「ひっ」

パッ、と神埼が提督の襟を離した。

よろめきながら何とか提督は立ち続ける。

襟を直しながら先生の方へ首を向けた。

提督「先生、どうしたんです?せめて連絡のひとつぐらいは寄越してくださいよ」

連絡の一つぐらいをことさら強調して喋った。

先生「ちょっと話したいことがあったんだ」

工場長「どうも」

妹「どうも」

提督「お前らまで一体」

妹「後でじっくりお話しましょうね」

提督「そんな怖い顔するなよ。俺が何かしたのか?」

先生「そんなことはどうでもいい。これは・・・、何があったんだ?」

神埼「それでは、私はこれで」

先生「何してんだお前。さっきまで暴力行為を仕出かそうとしてた張本人が出ていけると思うな」

神埼「さっきのは事故です。そうだよな?」

キッと提督を睨めつけるが、彼はそれを無視する。

提督「突然胸倉に掴みかかられたのですが」

神埼「貴様・・・」

先生「落ち着きなさい。それで?一応は何かしらの用があったのだろうが?」

神埼「それは、とても個人的なことでして」

目に見えて言うのを渋っている。

先生「いいから言え」

有無を言わさない口調で神崎に問いかける。

神埼「舞鶴鎮守府の、五月雨を譲ってくれませんか、とお願いしていたところです・・・」

先生「あの態度はとてもお願いには見えなかったがね」

神埼「・・・」

この沈黙は続けてほしくないと思った提督が口を出す。

提督「じゃ、じゃあこういうのはどうでしょう。演習をして、それでケリをつけるというのは」

先生が提督に目を移す。

先生「お前がそれでいいのなら私もかまわない」

提督「勝ったら五月雨は渡さない、負ければ五月雨を譲る。これなら文句はないだろう?な?」

神埼「あぁ・・・、上等だ」

勢い半分覚悟半分、我ながら相当な条件を出してしまったかもしれない。

時間経過。同所。

妹「お話、終わりました?」

ずっと隅で見守っていた工場長らが先生と神埼の退出を確認して口を開いた。

提督「それで、どうしたんだ?」

工場長「俺はただ連れて来られただけっすよ」

妹「去年の作戦の帰りの時、なんて言ったか覚えてますか?」

提督「え?」

妹「舟に乗るとき、私と話したことですよ」

段々と目の色が変わりつつある様子を見て、なんとか思い出した。

提督「忙しくてな?その、さ、あんまり暇がなかったんだよ」

妹「忙しいわけないじゃないですか、軍事行動なんて何もなかったんですよね?」

提督「作戦行動だけが職務じゃないって、演習とかさ、いろいろあってさ」

妹「一週間程度も来れないほどの忙しさで毎週毎週演習をとっていたんですか?」

提督「いや、それは・・・」

妹「とりあえず今から来てください」

反射的につかもうとする手を避けてしまった。

妹「いいじゃないですか!演習の日程はまだ決まってないんですし!」

提督「そういう問題じゃないだろ!?艦娘にも早めに話しておかないといけないし、作戦だって計画しないといけないんだから!せめて今回の件が片付いてからにしてくれ!」

妹を納得させようと言葉を選んでいく。

提督「な?今度行くときはなんかお土産とか持って行くから。今回のところはなんとか!」

妹「じゃあ一ヶ月以内に来てくださいね」

提督「あ、ああ、わかった」

当分は五月雨を何としても守りぬくことだけを考えよう。

最悪妹の約束を破ってでも。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂(ブリーフィング室)。午後七時半。

提督「相手が何を出してくるかわからない以上、こちらも万全の装備を整えておく必要がある」

暁「さすがに潜水艦対策も艦載機対策もっていうわけにはいかないんじゃ?」

提督「なんでもあり、と伝えた以上、相手は六席編成とは限らない可能性が限りなく高い。二つ同時に来る可能性もある」

響「さすがに戦艦はいない、よね?」

提督「安心してくれ、いても空母ぐらいだ」

涼風「それでもやばいけど・・・。どうすんのさ?」

提督「とりあえず助っ人を呼んでおいた」

五月雨「また先生ですか?」

提督「いや、違う。ちょっと待っててくれ。工廠に行ってくる」

走る提督を見ながら、

五月雨「私たちが負けたらどうするつもりなんだろう・・・」

涼風「何か策でもあるんかね?」

五月雨「あるといいけど」

涼風からは五月雨の表情は窺い知れない。

二十分後。

時雨「お、おひさしぶりー」

白露「お久しぶりー!」

提督「なに恥ずかしがってんだよ。しゃきっとしろ、しゃきっと」

五月雨「また建造したんですか!?」

提督「いいじゃないか別に。まず再会を喜べや」

五月雨「私に一言ぐらいあってもいいじゃないですか!」

夕立「しーぐれーーーーーーーー!」

時雨「夕立、驚かさないでよ・・・」

提督「・・・なんにせよ、道中でも説明したとおりのことが今起きてるんだ」

時雨「でも僕達、まだ実戦経験ないよ?」

夕立を引き剥がしながら時雨が不安そうに意見する。

提督「だけど基本的な射撃能力ぐらいはあるだろ?」

白露「あんまり当てになるとは思えないけど」

提督「いいっていいって、安心しろ、演習なんだから」

時雨「それはそうだけどさ・・・」

手を一つ叩くと、

提督「聞いてくれ、編成としては五月雨、涼風、暁、響、雷、電を第一艦隊とする。
   それで、連合艦隊とはいえないかもしれないけど、夕立、村雨、秋月、春雨、時雨、白露を緊急要員として部隊編成しておくことにした」

夕立「どこにいればいいっぽい?」

村雨「いや、夕立さ。私達まだ演習の場所も日程も知らないんだよ?」

提督「場所は話し合いの結果佐渡ヶ島周辺の安全海域に決定した。
   日付は丁度来週だな。○五○○に海域に侵入した前提で作戦が進められる」

五月雨「こちらが到着してるしてないにかかわらず時間になったら開始、そういうことですね?」

提督「そういうことだ」

時雨「作戦は、もちろんあるんだよね?」

提督「時雨は俺のことをボンクラか何かかと思ってるのか?」

時雨「そういうわけじゃないよ!」

慌てて手を振って否定した。

提督「着任早々作戦に従事するのはウチじゃ珍しいことじゃないからな。安心してくれ」

白露「何を以てして安心って言ってるの・・・?」

提督「色々だ」

白露「い、いろいろ」

提督「そうだ」

白露「そっかー、いろいろかー!」

提督「それにしても、嫌なのは佐渡ヶ島の周りに大きい島がないことなんだよなぁ」

五月雨「待ち伏せでも考えてたんですか?」

提督「そうなんだが、どうしようかね」

佐渡ヶ島の地図を机の上に広げながら、地図の上で指を適当に滑らせる。

夕立「安全海域っていうのは、どこらへんっぽい?」

提督「佐渡ヶ島沿岸から十六海里だ」

夕立「結構広いっぽい!」

提督「(なんか馬鹿っぽいな・・・)」

夕立「今なんか失礼なこと考えてたっぽい!」

夕立が頭を叩こうとするのを抑えつつ、

提督「絶対に駆逐艦だけで叩きたいんだよ」

五月雨「どうしてそこに拘るんですか?相手は何を出してくるかわからないんですよね?」

提督「駆逐艦だけで潰してやれば、水雷戦隊を主力にしてる大湊の面目を潰すことができるからな」

五月雨「な、なるほど」

引き気味に五月雨が答えた。

秋月「空母が来るかもしれないのなら、対空装備がかなり重要になってくるんじゃないでしょうか」

提督「まぁそう焦るな。少し考えさせてくれ」

椅子に座り、頬杖をつく事約15分程。

提督「作戦考えるのが馬鹿らしくなってきたな」

五月雨「へ?」

提督は唐突に、諦めきった様子で呟いた。

提督「五月雨率いる第一艦隊は敵艦発見と同時に俺に知らせてくれ。艦の数によっては第二艦隊の出撃を必要性をその場で考える」

五月雨「つまり」

後を遮り、

提督「お得意の弾幕作戦だ」

五月雨「勝てるんでしょうか・・・」

提督「どんな手を使っても勝ってやるさ」

五月雨「ンっ!」

五月雨の頭を掴んで引き寄せながら、提督は不安を笑い飛ばした。

時雨「(やっぱりボンクラだった・・・)」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時。

加賀「・・・」

提督は気まずそうに加賀を見上げる。

椅子に座っているから、加賀のつまらなさそうな目が上からというのも相まって、かなり刺さってくるのだ。

加賀「何か私の顔についてますか?」

目線に気づいた加賀が提督を見る。

提督「な、なぁ加賀」

加賀「はい」

提督「嫌なら秘書変わってもいいんだぜ・・・?」

加賀「どうしてそうなるのでしょうか」

提督「だってほら、つまんなさそうにしてるからさ・・・」

加賀「そ、そんなふうに見えるでしょうか」

加賀は動揺しているのか声が若干掠れた。

提督「加賀がいいんだったらいいんだけどな?すまん、今のは忘れてくれ」

加賀「私は好きですよ」

提督「それならよかった」

艦上が表に出ないタイプか・・・、と一人で納得した。

加賀「あの、お茶を」

提督「ん?」

加賀「お茶、お注ぎしましょうか」

提督「悪い、助かるわ」

加賀「いえ」

時節走るペンの音が響く執務室に、内線電話が鳴った。

提督「はい」

技術主任妖精(以下技主)「どうも」

提督「何かあったか?」

技主「この前おっしゃってた改装作業ですよー」

提督「扶桑型はさすがにまだ無理だろ?」

技主「当たり前じゃないですか・・・、まだ許可も出てないですし、どこを改善するかなんてのも決まってないんですから」

提督「・・・それで、一体誰が改装できるって?」

技主「とりあえず白露、時雨除く白露型全員ですね。暁型も改装可能です」

提督「五月雨と暁たちに関してはなぜ改装されてなかったのか気になるところだ」

技主「あと秋月、春雨さんの改装が可能です」

提督「随分早いな・・・」

技主「急かしてくる人がこの鎮守府にはいますからね」

提督「誰だろうなそんな奴この鎮守府にいるのかな」

技主「烈風の開発に関しては少し難航してます。大本営からの設計図が間違ってるのか知りませんけど、速度が出ないんですよね」

提督「わかった。烈風の開発に関しては、急に必要というわけではないからな」

技主「そう言ってくださると幸いです」

量産に移れない歯痒さが妖精の声には滲んでいた。

技主「あっちょっとまだ電話切らないでくださいね」

提督「お、おう、別に切ろうとはしてなかったぞ」

技主「今度の改装でどうやら春雨さんの兵装に新しい主砲を搭載できる見込みです。秋月さんには電探ですね」

提督「新しいって言うと?」

技主「12.7cm連装砲B型改二、13号対空電探改、と設計図にはそうなってます。大本営は設計図じゃなくて完成品をポンと送ってくるんですよねぇ。どうにかなんないんですかあれ」

提督「どうにかって言われても・・・」

技主「設計図をくれれば簡単なのに、完成品を分解して一から設計図を作るのは骨が折れるんです」

提督「俺に言われても困るって言っただろうが」

技主「ですよね、わかってました。とにかく、お伝えしたかったのはこれだけです。それでは、失礼しました」

提督「了解、頼んだ」

静かに受話器を置くと、加賀が話してきた。

加賀「烈風はまだ無理、なのでしょうか」

提督「今の話を聞く限りそうなる」

加賀「というか、私の改装はまだなのでしょうか」

提督「そういえばさっきの主任なにも言ってなかったな・・・」

加賀「まだなのでしょうか」

ぐい、と加賀が提督に迫ってきた。

提督「いや、改装の案がうちの工廠で出てから、まだ大本営から許可が出てないだけ、なんじゃないかな」

加賀「その改装可能かどうかの基準って何なんですか」

提督「なんて言えばいいんだろうな・・・。先生から教えられたことなんだが、その改装を受けた際にそれが更なる練度向上につながるか、みたいな?」

加賀「そんなの改装すれば当たり前じゃないですか。最初から改装すればいいということになりますよ」

いつになく饒舌にしゃべる加賀を見て、若干怒ってるな・・・、とようやく察する。

提督「俺もよくわかんないんだって、彼らの独断と偏見に寄ってるところがあるんだ。詳しいことは言えない」

加賀「・・・そうですか」

提督「そう焦らないでくれ。そう遠くはないはずだから」

加賀「わかりました」

話が一段落したのを確認すると提督が切り出した。

提督「で、だ」

加賀「はい?」

提督「なにかやりたいこととかあるか?」

加賀「?」

提督「今日一日あんまり執務室にいなかっただろ?だからこう、その埋め合わせと言っては何だけどさ」

加賀「そうですね」

顎に手をやててやけに芝居がかった動作で考え込んだ。

加賀「それでは絨毯も敷いてあることですし」

提督「お?」

加賀「ここに寝てください」

加賀が正座している。

提督「(何という直接的膝枕要求・・・)」

提督「それでいいのか?」

加賀「早くしてください」

提督「わかったわかった」

言われるまま身を横たえると、どこから取り出したのか耳かきをし始めた。

提督「こんなことでいいのか・・・?」

加賀「十分です。接吻でも良かったのですが、さすがに遠慮しておきました」

提督「せっ、せ、接吻!?」

加賀「あまり動かないでください。怪我をしますよ」

提督「・・・」

翌日(五月二十九日)。舞鶴鎮守府私室。午前五時。

五月雨「な、なに、なに、何をしてるんですかッ!」

五月雨の叫び声で提督は叩き起こされた。

提督「驚かすなよ・・・。もう五時か・・・」

右腕が上がらない。

何か引っかかってるのかと思って見ると、加賀が右腕を思い切り抱き込んで寝ていた。

提督「(やわらかい物が・・・、いつもの道着をつけていないせいで直接)」

そこで思考を停止させた。

提督「あかん、俺としたことが・・・」

五月雨「一体何をしていたんですか!」

提督「待ってくれ五月雨、俺達は何もやましいことなんてしてない!」

そこで加賀が目を覚まし、さっと身を起こした。

加賀「もう朝ですか・・・」

眠たげに身を起こし、既に目を覚ましている提督を見ると、

加賀「昨夜はありがとうございました。まさか提督があそこまでしてくれるとは、断れると思っていたものですから」

五月雨「・・・っ!」

提督「違う!加賀も誤解を招くような言い方をするなよ!違うんだ五月雨、落ち着け、とりあえずその手を下げろ!」

加賀「あら、五月雨さん、どうしたんですか?」

何とか弁解し、五月雨がようやく落ち着きを取り戻した所で、

提督「とりあえず風呂入ってくるからさ・・・。間宮に言っといてくれ」

加賀「そういえば私も入っていませんでした」

五月雨「昨日はお風呂も入らずお二人は一体何をしていたんですか?」

落ち着きを取り戻したはずの五月雨の機嫌が再び悪くなりかける。

加賀「ただの耳掃除よ」

五月雨「ただの耳掃除に何時間かけるんですか!?」

加賀「提督が寝てしまったものだから、寝室へ運んだの」

五月雨「それでどうして加賀さんが隣にいたんですか?」

加賀「隣で寝たからに決まってるじゃない」

五月雨「提督」

提督「ど、どうした」

五月雨「今日は私とですよ」

提督「でも「でもじゃないです」

五月雨「いいですか?」

提督「わかりました・・・」

途端、加賀がしおれた声を出す。

加賀「これであなたともお別れなのですね・・・」

提督「お別れって何だよお別れって」

五月雨「あなたってなんですか!」

加賀「提督のことです」

五月雨「それぐらいわかりますけど!」

嫉妬している五月雨を見て、口元がニヤけそうになるのを抑えるので精一杯であった。

移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時五十分。

五月雨「提督分を補充せねば・・・」

提督「俺を養分にすんじゃねぇよ」

五月雨「今日一日は離れませんから」

提督「・・・」

五月雨「今めんどくさいって思いましたね」

提督「流石だな、正解だよ」

五月雨「何と思われようと私は自分のしたいことをするまでです!」

提督「はいはい、わかったわかった」

喉が渇いていたので、先に五月雨を座らせて厨房で水でももらいに行くことにする。

提督「間宮さーん」

間宮「・・・」

提督「間宮さん?」

間宮「・・・・・・」

提督「ま、間宮」

間宮「あら、提督さん。どうしたのですか?」

どうやら呼び捨てにしないと間宮の耳には呼びかける声は届かないらしい。提督の声だけ特殊フィルターがかかってしまった。

提督「水をもらいたいんだ」

間宮「どうぞー」

そういって蛇口の前から間宮がどいた所で、提督はさりげなく聞いてみる。

提督「間宮も、秘書艦交代メンバーには入ってるのか?」

間宮「気になりますか?」

隣で意味ありげな声で答えた。

提督「そ、そりゃあ気になるって」

いつの間にか提督は水を注いでいたはずのコップを洗っていた。

間宮「・・・入ってますよ」

提督「ほんとに?」

間宮「む、いやだったんですか?」

提督「嫌な訳ではないん、だけども、ねぇ」

間宮「明日かどうか気になるって顔してますね」

反射的に間宮から顔をそらしてしまった。

間宮「明日ではありませんよ」

提督「じゃあ明日は誰が「教えません」

間宮「それに関してはいってはいけない約束になってるんです」

提督「そうか・・・」

かなり念入りに洗ったコップに入れた水を飲み干すと、厨房を出た。

正直言ってランダムであるために、明日誰になるかなど予想できるはずが無い。

だから間宮に聞こうとしたのだが・・・、

提督「答えてくれるわけ無いよなぁ・・・」

諦めるしかないかと息をついて席に戻った。

五月雨「何をしてたんですか?」

提督「ん?ちょっと水を飲んできただけ」

五月雨「そうですか」

提督「それじゃ皆も来たみたいだし、そろそろ食べるか。いただきます」

皆「いただきます」

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後十時。

提督「本当に一緒に寝るつもりだったのか」

五月雨「当たり前じゃないですか」

提督「お、おう・・・」

五月雨「じゃあおやすみなさーい」

提督「お休み」

展開の速さについていけなかったが、とりあえず寝る事にした。

明日起こす人が秘書艦だ。期待半分不安半分、といったところか。

五月三十日。同所。午前五時半。

時雨「これって、起こしてもいいのかな・・・」

家族のように丸まって寝ている提督と五月雨を前に時雨は困惑していた。

時雨「とりあえずカーテンでも、あ、いや、だめなんだっけ」

伸ばした手を引っ込め、提督の肩をゆすると割りと簡単に目を覚ましてくれた。

提督「もう朝なのか・・・、それで、時雨が今日の秘書なわけだな?」

時雨「うん」

提督「ほれ五月雨、起きろ」

起きだす気配が無いのでいつかのようにおんぶして運んでしまうことにする。

時雨「五月雨、全然起きないね」

提督「いつもは俺が起こされる側のはずなんだけど、どうしたのかね」

時雨「僕に聞かれても困るよ・・・」

提督「すまんな、なんか」

時雨「え?」

提督「うちの艦娘は少し容赦が無いからな・・・。まだ馴染めてないかもしれないけど、一日頑張ってくれ」

時雨「そんな、別に頑張るというか、嫌ではないから気にしなくても良いよ」

提督「あれ、そうなのか?」

時雨「秘書を嫌がる人って、いないんじゃないかな」

最後のほうは恥ずかしくなって消え入るようになってしまった。

提督「よく聞こえなかったんだが」

時雨「ううん、なんでもない」

提督「ふむ」

階段を降り始めたところで、背中でようやく五月雨が目を覚ました。

五月雨「ここは・・・?」

提督「俺の背中じゃないか?」

その言葉に五月雨の眠気は吹き飛ばされた。

そして隣を歩く時雨に気づき、顔を赤くする。

提督「別に恥ずかしがるようなことじゃないだろ」

時雨「そこを代わってほしいぐらい」

五月雨「ここは譲りませんよ!」

ぎゅっと提督の背中の服を掴む。

提督「お前のものじゃねぇから・・・」

五月雨「私のものです!」

提督「わかったから降りてくれ。そろそろ着くぞ」

五月雨がすっと背中から滑り落ちた。

早歩きで提督の隣に追いついた。

時雨「秘書って、具体的に何をすればいいのかな」

提督「五月雨、教えたれ」

五月雨「そうですねぇ、大体は書類整理とか、お茶注ぎとか、提督の邪魔とか」

提督「お前わかっててやってたんだな、とんだ野郎だ」

五月雨「野郎って言い方は無いじゃないですか!」

時雨「何となくだけどわかった」

提督「こんな説明でいわかるのか?」

時雨「とりあえず頑張ってみる」

提督「そうか、まぁよろしく」

時雨「うん!」

時間経過。移動。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

提督「さみ、じゃない、時雨」

時雨「どうしたの?」

提督「見えないんだ」

時雨「何が見えないの?」

提督「五月雨は確かに座高が低いからこの姿勢でも問題なかったけど、時雨は訳が違うだろ?」

時雨「でも邪魔するのが仕事って五月雨は言ってたよ」

提督「本気なわけ無いだろ・・・」

提督が椅子に座るなり、時雨はお茶を注ぎ、提督の膝にまるで普段の習慣でもあるかのように腰を下ろしたのだ。

必然的に顔を上げて、書類も一緒に持ち上げなければいけないのだが・・・。

これがかなり腕が疲れてやっていられない。

時雨「じゃあ僕が読んであげる」

提督「こういうことは後でいくらでもしてやるから、今はとりあえず隣の椅子に座っててくれよ」

時雨「いくらでもっていった?」

提督「言ったから、はよどいてくれや」

時雨「男に二言はないよ」

提督「わかったって」

時雨「しょうがないなぁ」

腰を上げると、隣の椅子をやけに提督に近づけて座った。

提督「そんなに嬉しいのか?」

時雨「そりゃ嬉しいさ」

提督「そんなもんなのかね・・・。まだ会ってそんなに立ってないからあんまり接し方とかわかんないんだよな」

時雨「僕と白露のこと?」

提督「それ以外居ないだろう」

時雨「僕は僕で今の姿勢で提督を攻めていこうと思う」

提督「は?攻める?」

顔を赤くするでもなく、平然と言ってしまうあたり、正直時雨の性格を掴めず少し居心地が悪い。

時雨「でもライバルが結構多いのがなかなか大変だね」

提督「・・・」

なのでとりあえず無視することにした。

冷静に業務を遂行していると、赤い文字で緊急と書かれた書類を見つけた。

資材倉庫が容量上限に到達しようとしているため、その処分を早急に決めよとのことだった。

提督「鋼材がもう29万か・・・、あーーー確かに出撃してねぇからなぁ。改装を急がせるしかないな」

提督「極秘でもあるまいに、直接言ってくれればいいのに。・・・いや、忙しくさせてるのは俺だったな・・・」

気付けば隣で時雨が黙り込んでいた。

時雨「僕って、ここにいていいのかな・・・?」

提督「まだ五分程度しか経ってないんですが、構ってちゃんにも程があるぞ」

時雨「どうやって五月雨は時間をつぶしてたの?」

俺の膝に居た時間が大半だとは言えなかった。

提督「五月雨なら寝てたぞ」

時雨「え、どこで?」

提督「その絨毯の上で、自分で枕持ってきて」

時雨「それ秘書やってるって言えるのかな・・・」

提督「そのほうが静かで楽だったけどな」

膝の上に座っていると五月雨はとたんに静かになるのだ。

時雨「提督、嘘ついてるでしょ」

提督「い、いいいや?嘘なんてついてないさ」

時雨「仮にも秘書なのに、そんなことするわけないじゃないか」

提督「そ、そうかな?」

時雨が頬を膨らませて抗議の視線を送る。

時雨「別に良いじゃないか、提督だって女の子が傍にいたら嬉しいでしょ?」

提督「決め付けるなや」

時雨「そうだ!提督!」

何を思いついたのか、どうせろくでもないことだろと思って聞くことにする。

時雨「お姫様抱っこしてよ」

提督「やらん」

即答だった。

秋月との一件があったばかりだ。五月雨でも入ってこようものなら今度は泣き出すかもしれない。

時雨「それは何?僕が重そうだって言う遠まわしな悪口なのかな?」

提督「そういうことじゃない」

時雨「じゃあなんでだめなのさ?」

提督「それは・・・、誰かが入ってきたらまずいだろ?」

時雨「見せ付けてあげれば良いんじゃないかな」

やだなにこの子怖い、と提督はかなり引いていた。

時雨「じょ、冗談だって。まぁ確かに、変な誤解を招きそうだね」

提督「だろ?わかってくれる子は俺好きだぞ」

時雨「えっ」

提督「ん?」

時雨「・・・なんでもない」

時雨の顔は見ていないが、どうやら諦めてくれたようなので一安心だった。

時間経過。舞鶴鎮守府食堂。午後十二時半。

提督「野菜食えよ時雨」

時雨「や、野菜なんて食べなくても死なないと思うんだ」

提督「食べないんだったら午後から五月雨と交代させるぞ」

時雨「食べます」

一気投下する前に若干の校正作業を行ってはいますが間違いがありそうでビクビクしているのは秘密です。

と、いうわけで今回はここまでです。ありがとうございました。

(日付を追うのに苦労したなんて言えない・・・

特に理由はないが欲しい、ただそれだけ。という解釈で進めています。

五月雨は元元帥の元に仕えていた駆逐艦(秘書艦)ですので、言い換えれば最初からレベル99だったわけです。

それとそうですね、この世界観では同名鑑はいない設定にしています。

あと、ブラウザのほうの艦これの設定を割りと踏襲していないので悪しからず、です。

来る大湊との演習において空母がいるの確定みたいな雰囲気になっているのは何故だろうと思った方。はい、ミスです。投稿していない文があります。正確には誤って削除していたもののまま投稿したのです。

以下文を挿入していただけると幸いです。

>>719

神埼「大湊の神埼だ。声を聞くのは初めてかな?龍花殿」

予想外の訪問者に提督は驚愕の表情を禁じ得ない。

提督には目もくれず、入るや神崎は加賀を不躾な視線で睨めつけた。

神埼「加賀じゃないか、こんな鎮守府じゃいるのも辛いだろう。その表情からでもわかるがね」

加賀「・・・」

神埼「どうだ、うちも最近空母を入れてみたんだ。軽空母だがね。仲良くやれると思うぞ」

空母保有発言の時、提督の方を見ていた。

提督「(ハッタリか・・・?たかが空母一席程度で何を)」

加賀「・・・」

加賀は無言でその視線を受け止め、睨み返す。

事態が膠着化するまえに提督は口を挟む。

提督「何の約束もなさらずに・・・、今日はいったい何の御用でしょうか?」

五月雨って元帥のとこでも秘書艦だったのか?昼寝してるけど
ちなみにその元帥は退役?

>>747

元帥に秘書として仕えていた、という発言は50レスまでの間にはったはずです。

元帥は登場すらしていませんが、生きてます。

五月雨が現役の元帥とこからわざわざ提督の下に来た理由、それもその内に明かになるかな

演習は軽空母なら秋月改で押さえられるか。ぽいぬは改二なのか、改と改二でえらく違う。
でも相手にも島風出てきそう

楽しみにしてます!

>>749 改装する際はちゃんと描写します。

元帥のところから来た理由、確かに書いておくべきですね。先になりますが書きましょう。ご指摘圧倒的感謝。

少々小出しになってしまいますが今日中に大湊と決着を付けさせていただきます。時間はわかりません。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後三時。

時雨「この部屋ってお菓子とか置いてないの?」

部屋の棚という棚を開けては閉め開けては閉めを時雨は繰り返していた。

提督「そういうのだったら間宮に頼んでくれ」

時雨「でも間宮さん食堂に居なかったよ?」

提督「そりゃそうだろ・・・。部屋に行けば居ると思うぞ。もらえるとは保障できないけど」

時雨「よし、じゃあ提督の分もとってきてあげる」

提督「別に俺の分は」

いらない、と顔を上げたが、時雨はいなかった。

ため息をつきながら、調べられなかった執務机の一番下、一際大きい引き出しを開けるとなかから冷気が漏れてきた。

提督「妖精に頼んでこの机を改造させてもらったぜ・・・」

中には日ごろから溜め込んでいた間宮アイスが15個ほど保管されていた。

五月雨に家捜しされた時はまだ改装を頼んでいた段階だったので免れた。

この改装を機にあの手紙共も燃やさせてもらった。

・・・時雨が帰ってこないうちに引き出しを閉じる。

提督「これバレたらどんな顔されるんだろうな、俺」

時雨「戻ってきたよ!」

閉めるや否や、時雨が袋を持って飛び込んできた。

提督「二分経ってないって、どういうことなの・・・」

がさがさと袋からアイスを取り出すと、

時雨「はい、提督、あーんして」

提督「お前、俺の分取ってきてくれるって言ってなかった?」

時雨「だから二人で分けるの」

提督「そういうことだったのかよ」

時雨「早く口あけてー」

言われたとおり口をあけたが時雨は単純な奴ではなかった。

時雨「と、みせかけて僕が食べる」

・・・時雨がアイスが乗ったスプーンを口に入れてしまった。

怒りでもなんでもないなんとも言えない感情がふつふつと沸き上がってきた。

提督「ふざけんじゃねぇよっと」

そう言って提督は時雨の手からスプーンを強奪し、無理やりアイスを一口だけ食べた。

時雨「ちょっ、待っ」

袋から取り出したもうひとつのスプーンを見、提督が口に入れてしまったスプーンを見、時雨は固まったまま動かなくなった。

提督「たかが間接だろうが・・・」

そう言いつつ反射的にやってしまった行為を恥じている提督。

それには気づかずうつむいている姿を、不覚にも可愛いと思ってしまった。

提督「おい時雨、アイス溶けるぞ」

雑念を振り払い、気にしていない風を装った。

時雨「う、うん・・・」

さすがに提督のを使うのは憚ったのか、新しい方で食べ始めた。

時雨「調子狂うなぁ」

提督「それ俺の台詞だからな」

時雨は背を向けてしまった。

提督「俺には分けてくれないのか?」

時雨「提督にはあげないもん」

提督「へいへい、そうかいそうかい」

スプーンを机に置かれたままの袋に入れると、烈風の開発状況報告に目を通す。

提督「・・・、めぼしい不具合はなしか・・・」

乗員の操縦試験も難なく全員が通過できたようだ。

要求される資材目安、予算額に目を通し、提督のサインを書き込み終わると、時雨が声をかけてきた。

時雨「演習勝てそうなの?」

単刀直入に聞いてくる。

提督「んー、俺にもわからんのだ。
   ・・・どうしてこう、うちの鎮守府は厄介ごとにばかり巻き込まれるのか   ね。平和に暮らしたいぜ・・・」

時雨「提督、もう一個アイスもらってきていいかな」

提督「太るぞお前」

時雨「女の子に対して太るなんて言い草ひどいと思わないの!?」

提督「さぁなぁ」

既に心は違うところにあるようで、時雨の言葉に不明瞭な返事をする。

思いの外提督の言葉が引っかかっているのか、時雨は結局諦めることにした。

時間経過。同所。午後八時。

時雨「もう終わりだね」

提督「楽しかったか?」

時雨「十分すぎるぐらい楽しかったよ」

提督「そうかい」

時雨「うん」

暗くなった外を見ながら時雨は、神妙な面持ちで言った。

時雨「提督さ、その体質、嫌だと思ってるの?」

提督「アルビノの事か?」

時雨「そう」

提督「・・・好きか嫌いかで言われたら嫌いだけど、随分今更だな」

時雨「五月雨に、提督の、そのあるびの?の話するとあんまり嬉しそうな顔しないんだよね。僕もその理由を知りたいかな、なんて」

提督「別に機密でもないし、聞いてくれれば教えてたぞ」

時雨「そ、そうなんだ」

提督「嬉しいもんじゃないぜ、親は理解のある人達だったからよかったけど。周りからは人外扱いだからな」

時雨「・・・」

提督「提督になってからは、俺のことを深海棲艦呼ばわりする奴までいるし」

時雨「提督は気にしてないの?」

提督「俺はこの舞鶴っていうか、関係のある人が理解してくれてるだけでいい。一々他の奴らからの好意までもらおうとは思わないな」

時雨「割り切ってるんだね」

提督「割りきらないとやっていけんだろ」

時雨「それもそうか」

提督「そんなもんだよ。長話するようなことでもないし、仕事せねば」

時雨「はーい」

提督「お前別に何もやってないだろ・・・」


六月一日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

段々と五月雨の密着具合が増しつつあるのは気のせいだろうか。

日毎に比例的に増していくとなると、最後の艦娘の時は大変なことになっているのでは・・・。

五月雨に起こされるうち早起きの習慣が身についた提督は、目を閉じたままそんなことを考えていた。

下らん、と体を起こすと、丁度入ってきた人物と目があった。

山城「あ」

提督「お?」

たっぷり十秒ほどその場で山城は固まっていた。

提督「おお、今日の秘書は山城だったんだな。よろしく」

言いながら提督は着替え始めた。

山城「ちょっと、着替えるんだったら言ってください」

提督「皆普通に見てるから気にしたことなかったわ・・・」

山城「それ、見てるんじゃなくて見せてるんじゃないですか?」

提督「人聞きの悪い事言うなよ!・・・、着替え終わったぞ」

山城「あ、夏服になったんですね」

提督「一週間以上前から夏服なんですけど」

どんだけ俺のこと気にしてないんでしょう。

山城「あら、そうでしたか?」

わざとらしい顔で笑ってみせた。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時十分。

提督「扶桑はいつなんだ?」

扶桑「秘書の話なら言いませんよ」

提督「やっぱりそうだよなぁ・・・」

扶桑の声が遠かったので顔を向けると、「丁度」提督を見ていた山城と目が合った。

提督「山城、今日はそこなのか」

山城「そりゃあまぁ、秘書ですし」

提督「そうか」

山城「はい」

食べているうち、お茶を飲もうとコップに手を伸ばすと中身がない。

「丁度」コップに自分もコップの中身が空だった山城が魔法瓶を提督に渡した。

山城「どうぞ」

提督「(注いではくれないのね・・・)」

さすがにそれは図々しいかと思い、お礼を言って受け取る。

その様子を見ていた扶桑が温かい目で山城を見つめていた。


時間経過。同所。

提督「皆も食べ終わったようだし、六月四日に行われる演習に参加するものは残ってくれ。再確認を行いたい」

山城「私はどうすればいいですか」

提督「好きにしてくれてていいぞ」

山城「ありがとうございます」

提督「(わかりましたじゃないのか・・・)」

食堂の卓を移動させたりしていると、総十二名が揃った。

提督「これが佐渡ヶ島周辺の地図だが、今回は役に立ちそうにない。戦略的な作戦を採れそうな地形をしてないからな。
   とりあえず水上打撃部隊には三十三号水上電探の装備を義務付ける。対空に関してだが、電、雷、響、第二艦隊は秋月、春雨、村雨に対空電探を装備してもらう」

五月雨「空母は出してくると予想しているんですね?」

提督「有り体に言えばそうなるが、ここからは少し複雑になるから注意して聞いてくれ。
   もし、敵空母がいて六隻編成とみられる場合は第二艦隊は待機。
   また、敵空母がおらず六隻編成とみられる場合は第二艦隊の対水上艦が、第一艦隊の対空艦と交代。
   敵空母がおらず六隻編成以上だった場合は第二艦隊は直ちに第一艦隊と合流する。
   敵空母もいて敵艦が六隻編成以上だった場合は対空艦部隊と対水上艦部隊に分かれて隊列を組め」

皆が飲み込むまでだいぶ時間がかかった。

思案顔から全員が戻ったのを確認すると、

提督「敵空母がいるかどうかはおそらく敵艦隊発見よりも前に、艦載機の接近で判明するだろう。対空艦は電探を優先して確認してくれ」

提督「攻撃優先目標に関しては空母は二の次だ。駆逐艦に主砲での攻撃、隙を見せるか、敵駆逐艦の無力化を確認したら魚雷攻撃を以て敵空母に仕掛ける」

五月雨「提督、それでは敵空母がいた場合後手に回る可能性があるのではないですか?敵艦載機を撃墜している間に、敵水上打撃部隊が六隻以上の編成だった場合、かなりの苦戦を強いられることになります。
三三号電探は二二号を射撃用にしただけです。駆逐艦の索敵距離は大目に見ても十八キロ。12.7cm砲の最大射程は19kmですよ。敵水上部隊の数を確認するよりも前に、敵砲撃が来ます」

提督「・・・確かにお前の言う通りだな・・・」

五月雨の反論を聞いて、提督は人差し指で机をゆっくり叩きながら、考え始めた。

提督「(駆逐艦主砲の射程はこれ以上伸ばせないとなれば・・・、これって結構まずいんじゃないのか)」

大湊の主砲は12.7cmB型を主砲としている、左右砲が独立運動するタイプだ。

かなり厄介なことになりそうになった頭を振り払い、もう一度最初から考え直す。

提督「・・・、いや、作戦は続行する」

五月雨「しかし・・・」

提督「安心しろ、舞鶴は負けない」

五月雨「・・・わかりました」

移動。舞鶴鎮守府執務室。

山城「遅かったですね」

提督「悪い」

山城「・・・もしもの時は私達が行きますから」

提督「そうか、そりゃ心強いなぁ」

背を伸ばした拍子に、山城の赤いスカートが目に入る。

提督「てか、スカートって涼しそうだな」

山城「どこを見てるんですか?」

提督「スカートを見てるんだよ」

山城「確かに、長ズボンって暑そうですね。もう六月ですよ?」

提督「ほんとだよなぁ・・・。半ズボンにしたいわ」

山城「そんなに足を見せびらかしたいですか」

提督「なんでそうなる・・・、それで言えば山城だって十分綺麗じゃないか」

山城「どこ、どこが、ですか」

提督「足が」

山城「どこ見てるんですか!」

提督「足だけど」

堂々巡りの気配を察知した山城が話を変えた。

山城「そんなことより、提督、負けたらどうするおつもりなんですか?」

提督「いや負けないから」

山城「そういうことを聞いているのでは・・・」

提督「そうだなぁ、山城、俺はどんな手を使ってでも五月雨を渡す気はない。絶対にだ。五月雨が不安がっていることぐらいわかる。でもそれで、俺が負けた時の対策なんか考えているとしれたらどうなると思ってるんだ」

山城「そう、ですね・・・」

提督「五月雨は渡さない、どんな手を使ってでも、だ」

山城「提督、何をするつもりですか。まさか」

提督「物騒なことをするつもりはない。ただの加勢だよ」

山城「加勢・・・?」

提督「深海棲艦のために艦娘が使われている。艦娘のモデルは昔の艦艇だ。昔のレーダー、昔の艦砲、昔の魚雷、全てが旧式にしか対応していない。それでも彼女らこそが、彼女らの身軽さこそが日本の深海棲艦への切り札だ。でも考えてくれ、今まで、アメリカから譲渡された護衛艦隊で、深海棲艦を一隻も落とせなかった、なんてことはなかったはずだろ?」

山城「はい」

提督「もしもの時は、プライドなんて捨ててかかるつもりだ」

山城「できるんでしょうか・・・?」

提督「曲がりなりにも俺は提督だぜ。指揮ぐらい取れるし、筋を通せば人だって集められる」

聞いていた山城が笑った。
   
山城「初めてです」

提督「何が?」

山城「提督のことをかっこいいと思ったのは、ですよ」

提督「突然何を言い出すんだ!?」

山城が赤くなっているのを見て、思わず提督まで赤くなってしまった。

でもそんなことよりもまず、あと三日しかない。急がなければ。

六月三日。舞鶴鎮守府執務室。午前五時。

昨日の五月雨の様子はいつもとほとんど変わりはなかったが、とりあえず俺も不安を感じさせないよう過ごせたことだろうとは思う。

明日に控え、準備のために、提督はかなり早起きをしていた。

書類に必要事項を記入していると、扉が開かれた。

まさか起きているとはしらず、ノックする必要はないと思ったのだろう。

プリンツ「あれっ、提督、起きてたんですか!?」

提督「ちょっと色々用事がね」

プリンツ「朝は色んな事をして起こしてあげたかったのに・・・、ふふ・・・」

提督「プリンツ、その笑い方は受けないぞ、やめてくれ・・・」

プリンツ「とりあえずグーテンモルゲンです」

提督「ぐ、ぐーんもるだん?」

プリンツ「グーテンモルゲン」

提督「ぐーてんもるげん」

プリンツ「おはようってことです」

提督「最初から日本語で言ってくれよ・・・」

プリンツ「そういう訳には行きません。これから提督にはドイツ語も勉強してもらいます。お姉様のためにも」

提督「なんでビスマルクのためなんだよ」

プリンツ「秘密です」

提督「そっすか・・・」

プリンツ「さぁさぁ、お仕事を始めましょう。お膝、私も座らせていただきます」

提督「重巡洋艦のわりには時雨よりちっさいな・・・」

プリンツ「ん?なんか言いましたね?もう一回言ってください」

提督「背後霊でもついてるんじゃないか、プリンツ」

プリンツ「えっ、提督が背後霊ってことですか?」

提督「ちげぇよ・・・」




時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後三時。

プリンツ「提督、なにかお急ぎの用事でもあるんですか?」

慌ただしげに各所へ連絡を入れ、ようやく終わった様子の提督に声をかけた。

提督「ちょっと明日の準備のためにね・・・。使わないで終わるといいんだが・・・」

プリンツ「?」

六月四日。舞鶴鎮守府湾内。午前六時。

提督「各員装備点検、問題ないな?」

五月雨「問題ありません。というか提督、今どちらに?」

提督「一足先に向かわせてもらってる。現地集合場所は座標通りだ」

五月雨「わかりました」



時間経過&移動。佐渡ヶ島沿岸距離50km。午前三時。

提督「聞こえるか」

五月雨「感度良好、問題ありません」

提督「総員機関微速、五時丁度に戦闘海域に侵入する」

五月雨「了解、第一船速」


時間経過。午前四時半。

電「距離約78km、敵機編隊、数45、接近中なのです!」

提督「間違いないのか?」

電「電探にはしっかり映ってるのです」

提督「まだ五時になってないぞ・・・。何でもありってのはそういう意味じゃなかったんだが」

怒りと興奮、久しぶりの戦闘の感覚に全神経が鋭くなっていた。

提督「総員対空迎撃用意、輪形陣」

響「了解、戦闘用意、輪形陣を組む」

提督「機銃射程範囲内に入ったと同時に迎撃を開始しろ」

対空艦は25mm三連装機銃、対空電探の装備により、水上部隊への火力が減ってしまっているが、その分対空戦闘でのメリットは大きい。

電「距離52km」

全機を撃ち落とすのは恐らく無理なはずだろうが、ないよりマシだ。

背後で電が迫り来る敵機との距離を読み上げていく。

提督「・・・」

電「距離10km」

提督「・・・」

電「距離6km」

提督「対空迎撃開始、撃ち方始め」

響「了解!」

まだ完全には射程内には入っていないが、軌道をそらすための威嚇程度には6kmでも役に立つし、撃っている間に有効射程に入るはずだ。

爆撃を開始する前に、次々と敵急降下爆撃機を撃ち落とす。といっても、演習であるため本当に撃ち落としているわけではない。

五月雨「敵雷撃機、十五機が魚雷投下確認。回避行動!」

提督「さすがに全機は無理だよな・・・、回避行動、取舵120度」

提督は艦隊の様子をレーダーで確認しつつ、提督が声をかける。

五月雨「了解!」

今の今までいた場所を魚雷が横切っていった。

提督「全艦第二船速、敵艦隊の発見を優先せよ」

五月雨「了解、第二船速、・・・、え?」

提督「どうした」

五月雨「緊急事態です。敵艦隊発見、数多い!数十八隻!提督、これはあまりにもっ」

言うが早いか、一斉に敵艦による対艦射撃が始まった。

提督「交代している暇はなさそうだ。第二艦隊は直ちに第一艦隊と合流、迎撃を開始しろ」

第二艦隊が機関の出力を上げ、瞬く間に連合艦隊を完成させる。

提督「主砲装填、目標敵艦隊、全門斉射」

五月雨「撃ぇ!」

隙を見せるどころじゃない、敵空母は一隻のようだが、随伴艦の数が多すぎて対処で精一杯の状態だ。

提督「弾着を報告しろ」

五月雨「敵艦五隻無力化!二隻中破です!」

例え十二隻の砲撃でも、一度の一斉放射で五隻を大破に持ち込んだのは五月雨、涼風、暁型達の成果だ。

提督「落ち着くんだ、焦るんじゃない」

五月雨「わかってますっ!」

だが五月雨の声は不測の事態に上ずったままだ。

夕立「敵艦直進、同航戦っぽい!」

提督「怯むな、第二射用意、撃て」

五月雨「負けるわけにはッ」

慎重に距離を測り、主砲が噴煙を勢い良く吹き出す。

五月雨「敵艦三隻大破、無力化!」

・・・これでもまだ十隻も残っている。いや、十隻だけだ。

時雨「みんな!距離が近すぎる!このままじゃあ!」

その先を提督は遮った。

提督「艦隊転針。十時の方向に最大船速」

五月雨「了解!」

夕立「了解っぽい」

実戦を経験したことのない艦は連れて来るべきではなかったかもしれなかった。五月雨は徐々に落ち着きを取り戻してはいるが、第二艦隊が慌てすぎている。

五月雨「っ、夕立!あなたの艦隊に砲身が向いてます!」

提督「第四警戒航行序列。被弾はやむを得ない、耐えろ」

五月雨「ですがそれでは「従ってくれ」

提督「落ち着け、お前らの今の状況じゃ当たるものも当たらない」

五月雨「・・・了解です」

目の前で艦隊を編成し始めるなど言語道断、いい的だ。

しかしこうでもしなければ皆混乱状態のまま。艦隊戦以前の問題なのだ。

五月雨「完了しました」

提督「被害状況を報告しろ」

五月雨「第一艦隊は無傷です」

夕立「第二艦隊は私と時雨が中破っぽい」

提督「それなら上出来な方だ。全砲門目標敵艦隊、落ち着け、全残存火力を的に集中させるんだ。砲弾など人参程度に思っておけ」

五月雨「そんな図太い神経誰も持ってませんよっ!」

掛け声で再び噴煙。

砲弾が横を掠っても、絶対に動じてはならない。それだけは皆守っていた。

提督「弾着報告」

五月雨「敵艦二隻大破、他命中確認できません!」

となれば二隻中破、残り八隻が無傷のままだ。

続いて敵艦も発砲を開始する。

提督「五月蠅いな、くそっ、被害状況は」

五月雨「涼風小破、村雨夕立時雨白露大破です!」

第二艦隊の面々のほとんどがやられたが、気にしてはいられない。

提督「魚雷発射準備出来しだい直ちに発射せよ、猶予はない」

五月雨「提督、敵艦隊が全速で後進を開始しましたが」

提督「距離を離すな、追え」

すでに日が暮れかかっている。夜戦前に少しでも数を減らしたかった。

それに恐らく彼らは本分とする長距離雷撃を開始しようとしている。

追いかけ、追いかけられている艦隊の丁度中央で、発射された魚雷が行き違う。

五月雨「・・・」

五月雨からの応答がない。

提督「被害状況は?」

五月雨「私、暁は中破です。他の艦はおそらく全員無力化されました!」

提督「魚雷攻撃は」

五月雨「二隻大破です!」

提督「五月雨と暁は後方へ下がって我々と合流しろ」

五月雨「どういうことですか?」

提督「敵艦、数は八隻。お前ら、やれるか?」

五月雨「ですが」

船務長「レーダー問題なし。いけます。まだ日は暮れていません。ありあけも十分ついてこれるでしょう。少々敵の数が多い気もしますが、いけますよ」

砲雷長「換装したMk.56射撃指揮装置、問題なし」

提督「最大船速、第一艦隊へ接近しろ、四隻で単縦陣をとれ。魚雷には最大の注意を払え」

航海長「了解、最大船速」

蒸気エンジンが唸りを上げた。

機関長「機関室、最大出力です。問題ありません」

提督「了解、合流までどれくらいかかると思う?」

航海長「彼女らも動けばおそらく10分程かと」

それを聞いて、

提督「大破艦は佐渡ヶ島へ寄港せよ。五月雨と暁は出しうる限りの速度でいい。方位1-5-0へ動け」

五月雨「ですから一体何が・・・?」

提督「来ればわかる」

砲雷長「敵艦補足、距離8252m、方位2-3-2。自動追尾開始させます」

提督「五月雨との合流を優先する」

砲雷長「了解」

それから丁度8分経った頃、

五月雨「提督、それは!」

提督はありあけ型護衛艦、はるかぜ型護衛艦を率いていた。

正直五月雨もかなり小さく見えてしまう。

それはそれとして、彼らは第二艦隊の水上電探の探索距離範囲外で待機していたのだ。

船務長「方位1-3-2、距離3280m。敵艦接近中」

提督「了解、撃ち方始め!徹底的に打ちのめしてやれ。ありったけの弾丸を叩きこめ。空母は無視していい」

提督「なんでもあり、そういったのは俺だし、同意したのもお前だよ。神崎」

突然の登場に圧倒されていたが、小さな砲塔に油断した敵艦娘が近付く。

だが彼女らは避けることすら叶わず、アメリカ貸与のMk.12砲塔に補足され、無力されていった。

撃ち漏らしたものは五月雨と暁が大破に持ち込む。

船務長「四隻大破、無力化を確認。五月雨、暁による中破艦の無力化を確認」

提督「後は空母を除いた一隻だけだな」

ありあけ「緊急、敵艦載機、数18、方位0-0-2、速度820km毎時で接近中」

提督「対空戦闘開始、艦砲射撃は五月雨、暁に委任する」

砲雷長「了解、撃ぇっ!」

化け物のように自動的に敵艦載機を補足、自動旋回する砲塔を見ながら五月雨は口に手を当て、小さく笑いつつ言った。

五月雨「提督・・・、そこまでしなくてもいいのに」

提督「言っただろ?どんな手を使ってでもお前は渡さないんだよ」

最後に放った魚雷が最後の駆逐艦の横腹にぶち当たった。

時間経過。佐渡ヶ島仮港。

神崎「貴様、反則だろ」

提督「いいじゃねぇか別に。なんでもありなんだろ?」

神崎「それとこれとは話がっ「しかも!」

大きな声で声を遮る。

提督「しかも、時間も守らないしな、あれぐらいしてやっとおあいこだろ?」

神崎「クソが、いきがってんじゃねぇぞ・・・?」

提督「負けは負けだ、認めろクズが」

殴りつけたい衝動を抑え、鋭く睨む。

神崎「っ・・・!」

五月雨「提督、そこらへんで・・・」

提督「・・・すまん、取り乱した。こんな奴とは二度と口をきかないことにする」

唾を吐き捨てると、

提督「帰ろう」

そして、ありあけ型護衛艦とはるかぜ型護衛艦の傍で提督に敬礼する乗員に、提督も敬礼を返した。

砲雷長「あなたのお陰でまたこんな機会ができた。楽しかったです。どう感謝すればよいものか・・・」

提督「勝ってくれただけで十分です。こちらこそ、今回は無理難題を申し込み申し訳ございませんでした」

船務長「こちらこそ、です」

提督「それではまた、なにか機会があればお会いしましょう」

提督は握手をした後、その場を後にした。

しばらく歩くと夕立が提督の隣まで走ってきた。

夕立「ていうかあんなの用意してたんだったら言って欲しかったっぽい!ていうか!負けそうになったときの対策とか!ひどいっぽい!」

提督「悪かったよ、五月雨のためだったんだ」

夕立の頭をなでて、抗議の声を引っ込ませた。

提督「ていうか、演習装甲、治ったのか?」

夕立「ふん」

ぷいと目を背けられてしまった。

夕立「むー!五月雨もなんか言ってほしいっぽい!」

五月雨「え、ええ・・・。・・・、提督あ、ありがとう、ございました」

提督「お安いご用だ」

夕立「感謝して欲しいなんて言ってないっぽい!裏切りっぽいー!」

五月雨「ええ・・・、でもなんかいってっていうから」

夕立「そういう意味じゃなかったっぽい!」

夕立の声を背後に聞きながら、暁が尋ねてきた。

暁「にしても、あれはどういう仕組なの?艦娘によく当てられてたわね」

提督「説明してもわかんないだろうからなぁ」

暁「仕方ないじゃない!わ、悪かったわねっ!
  ・・・でも、皆もああいうの使えばいいのに」

提督「そう言うな。艦娘が出てきてるのは他の国も同じだが、米国とかは自前の護衛艦で事足りてるらしいぞ。敗戦国日本ならではの、艦娘運用といったところだろう」

暁「外国の艦娘は一体何をしてるの?」

提督「さぁ、普通の一般人として過ごしてるのかもな。まぁビスマルクとかはよく事情は知らないんだけどな」

方や戦場で生き、方や平穏に暮らす艦娘もいる。そういうことはあまり考えないようにしていたが、いざこういう時になると無性に悲しくなるのであった。

ようやく夕立から開放されたのか、五月雨が戻ってきた。

五月雨「そういえば、今日の秘書はどうするんです?」

提督「五月雨じゃないのか?」

五月雨「え?」

提督「だってさすがに、今日は演習だし、夜だけってのはひどいだろ?いやっていうか、帰ってきたら寝る時間だし」

五月雨「私なら別にそれでいいっていうんですか!」

提督「だって五月雨だし」

五月雨「じゃあ今日は涼風も一緒に提督と寝ますからね!いいですか!?」

提督「はぁ!?なんでそうな「楽しそうじゃん」

涼風「あたいも一緒に寝てみたかったし、気にしないからさ!」

提督「俺が気にしてるんですが」

五月雨「提督に拒否権はないです」

提督「まじかよ・・・」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府提督私室。

帰り際に心配そうな顔をした巡視兵に会った。

ゆったりとベッドに身を横たえると、両際で寝ている五月雨と涼風を気にしつつ、提督は目を閉じた。






本日はここまでです。護衛艦の射撃方法、詳しい所をもう少し良く調べるべきだったかと後悔しつつ・・・。

それでもお楽しみいただけたら嬉しいです。


五月雨たちと一緒に寝て、提督反応しないの?

>>777 ご、ご想像にお任せします。

明日、投下します。

六月五日。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

提督「今日秘書艦なしな日なのかしら、ひどくない?」

起床時間も過ぎ、朝食も済ませた後であるにもかかわらず、提督の部屋には未だ今日の当番の秘書艦が現れていなかった。

提督「アイスでも食べるかー」

提督は鍵を開け、引き出しを引っ張りだす。

その時、扉のノブがガチャリと鳴った。

ビクッと提督はそちらを見て、来たばかりの秘書と目が合った。

シュー、と引き出しをそっと閉じる。

響「司令官、今のは何だい?」

提督「な、なんでもないんだ」

静かに鍵をかける。

響「今冷蔵庫みたいな音がしなかった?」

提督「気のせいじゃないか?ほら、耳掃除してやるよ」

響「誤魔化さないで」

提督「誤魔化してなんかないって」

響「どうして嘘をつくの?」

スタスタと歩み寄り、今問題になっている引き出しを触る。

響「冷たい」

提督「っ、い、いや、それはお酒が入ってるんだ」

響「でもさっきアイスでも食べるかーって「言ってないな」

提督「アイスってのは、そう、氷のことなんだ」

今思えばどうしてこんなことに嘘をついているのだろう。何だか大人気なく思えてきてしまう。

響「教えてくれないの・・・?」

提督「いや、その・・・」

響「お願い」

提督「だ、誰にも言うなよ?」

響「うん」

提督「はぁ・・・」

鍵を開け、中身を見せてやった。

響「司令官」

提督「ん?」

響「これはやっぱり皆に「そんなことしたら」

提督「今日の秘書官交代だぞ」

響「む、そこまでしなくてもいいと思うんだけど」

提督「確かにこれだけ集めたのを皆に取られるのが嫌だと思う気持ちもある」

響「大人げないね」

提督「・・・、でも、ここに入り浸るようになるのも嫌なんだよ」

響「なるほど・・・、司令官は私達がいるのが嫌なの?」

提督「いや違うそうじゃない」

響「じゃあどういうこと?」

提督「せっかく楽しみにして来てくれる秘書に申し訳ないだろ?」

響「それって主に五月雨さんのことだよね」

提督「お、おう?」

響「でもさすがに皆は嫌に思ったりはしないと思うよ」

提督「そうかね・・・?」

ああ見えて五月雨は嫉妬深そうに見えるのだが、俺だけだろうか。

響「というか、いずれバレるし、教えてもいいよね」

提督「まぁ、いいか・・・」

響「まず私と司令官で食べよう」

提督「いいよ、一人で全部食べてくれていい」

引き出しを開けると、カップを一つ取り出して響に手渡した。

響「一緒に食べたいって言ってるんだよ」

提督「ん・・・、わかった」

響「じゃあスプーン取ってくるよ」

提督「おうおう」

靴を鳴らしながら響は廊下を駆けていった。

提督「なんか響の調子に完全に乗せられてたな俺」

仕事するかー、と伸びをして机に向き直る。

提督「・・・お?」

烈風の整備全工程終了、後は提督の許可を待つという旨の報告書がいつの間にか置いてあった。

提督「いつの間に・・・」

朝工廠の妖精の面々が食堂に顔を出すのが送れたのはそのためだったのかもしれない。

無断でこの部屋に入ったのか・・・。

提督「万事問題なしですよー」

どうでもいいか、と一人嘆息して承諾の判子を勢い良く押す。

今度は書類を届けるのは響に頼むか自分で行こうかと悩み始めた。

と、

響「持ってきたよ」

提督「おお、案外早かったな」

響「はい、あーんして」

提督「まだ開け終わってもないのに言うなよ」

響「今開けてるんだよ」

爪を切ったばかりなのか、響は蓋をあけるのに手こずっていた。

提督は敢えて手伝わずそれを眺めた。

響「・・・はい、あーんして」

提督「ん」

響「おいしい?」

提督「そりゃあ、まぁ、おいしいよ」

響「そっか」

提督「何でお前が照れるんだよ・・・」

顔を俯かせる響を我に変えさせると、二人でアイスを食べ終わる。

なんか寒くなってきた、と言い始める響に、

提督「そうだ響、よければこれを工廠に届けてきてくれないか」

響「秘書のお仕事?」

提督「やってくれるか?」

響「工廠に届ければいいのかい?」

提督「そうそう」

響「わかった、いってくる」

提督「頼んだー」

そういえばアイス、一緒のスプーン使ってたような気が・・・、いいか。

提督「というかもう二ヶ月ぐらいで俺の一周年記念的な感じなんじゃないのか?」

着任が確か八月の・・・、あれ・・・、二日か、一日だったか。

提督「祝ってくれるかなぁ、五月雨ならやってくれそうな、やってくれなさそうな感じだ」

益体もないことを考え続けていると、内線が鳴った。

受話器を取ると、響も丁度部屋に帰ってきたようだ。

響は足がとても速いのだろうか。

届けてきたよー、と口を動かして伝えてくれた。

手を上げてそれに応え、

提督「はい」

技主「烈風の量産に関してですがね」

取るやいなや突然本題を切り出してきた。

あれを受け取って確認した同時にかけてきたのだろうか。

提督「どうした?」

技主「何機でしたっけ」

提督「とりあえず資材が余り過ぎてるのもあるから、手始めに百六十機だ」

技主「了解です。それでは失礼致しました」

提督「ああ」

提督「(業務連絡、純粋なただの業務連絡だった)」

電話を切ると、提督は何かを思い出したのか再び受話器を取る。

技主「な、なんでしょう」

提督「改装準備は整ってるんだよな?」

技主「艦娘のですか?」

提督「そうだ」

技主「ええ、いつでも大丈夫ですよ」

提督「明日、一斉改装作業を開始したいんだ。ここに丁度大本営からの扶桑の再改装の許可状もあることだしな」

技主「了解です。お待ちしております」

満足そうに頷くと、受話器を置いた。

響「誰が改装されるの?」

提督「とりあえず何故か改装されてない扶桑、山城、ビスマルク、プリンツ、加古、古鷹、赤城、加賀、隼鷹、飛鷹、名取、長良、暁、響、電、雷、五月雨、涼風、村雨、夕立、春雨だな」

響「よく噛まなかったね」

提督「当たり前だろうが、これでも司令官なんだぜ」

響「・・・でも、やっぱり時雨と白露はまだなんだ」

言われて、そうなんだよなぁ、と苦い顔をして提督は言った。

提督「仕方ないさ、まだ入ったばかりなんだから」

響「扶桑さん、再改装されるって言ってたけど、どんな風になるんだろう」

提督「神のみぞ知るってやつだろ」

響「大本営も知ってると思うよ」

提督「ああ言えばこう言う・・・」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。正午頃。

響「今思えば、間宮さんの料理って本当に美味しいと思う」

提督「食べ慣れるってのは怖いな」

五月雨「でもまぁ幸せなことじゃないですか。毎日間宮さんのご飯なんですから」

提督「最近は赤城と加賀も手伝ってるらしいけど」

ちら、と加賀の方を見ると目があいドヤ顔をされた。

響「へぇ、そうなんだ」

提督「何かあいつらにもやってあげないとなぁ・・・」

五月雨「秘書になった日には一体何をしでかすのやら・・・」

提督「間宮さんはそんなことしないと思うけどな」

響「さぁ、どうだろう」

扶桑「私の番はまだなのかしら・・・」

隣のテーブルで扶桑がなにか言っているが喧騒のせいでよく聞こえなかった。

五月雨「あの、その事なんですけど」

提督「ん?どの事?」

五月雨「秘書艦のことなんですけど、やっぱり私を一日挿まなくても大丈夫ですよ」

提督「なんだ、どうしたんだ急に?」

五月雨「心変わりってやつです」

提督「ほーん」

不思議そうな目で五月雨を眺めた後、まぁいいけど、と言うと視線を移し、

提督「というか暁たちもやっぱりこっちに来るんだな」

雷「当たり前じゃない。響一人だったら何をしですか分かったもんじゃないわ」

暁「私はお姉さんだし」

電「私も雷と同じ、なのです」

提督「随分信頼されてないな響」

響「司令官のこととなると皆すぐこうなるんだ」

提督「そうなのか?」

響「ん、司令官は鈍感がすぎるよ」

提督「鈍感、のつもりはないんだが・・・」

響「自覚症状もなしか・・・、ひどいね」

提督「う、うるさいな」

五月雨「(私がばっかりじゃだめだもんね・・・)」



時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時頃。

響「・・・」

提督「寝てんのかよ・・・、五月雨と変わんないじゃないか・・・」

絨毯の上で寝転がったまま寝てしまったので、寝違えてはいけないと思い担ぎ上げる。

私室に運んでやろうとも思ったが、思い直した。

提督「随分軽いんだな」

ふと目を横に向ければ響の寝顔がある。

気持ちよさそうに寝ているのを見るとこちらまで眠くなってきた。

しばらく歩くと、暁達の部屋についた。

部屋の扉をノックして、

提督「入っていいかー」

暁「司令官?」

提督「響が眠いらしいから、休ませてやってくれ」

暁「別にいいけど」

暁が扉を開けた。

提督「ていうかお前腹出てんぞ」

ささっと指で暁のへそをくすぐった。

暁「ひゃあ!?」

耳まで赤くして、服を掴んでへそを隠したのを見て思わず笑ってしまう。

暁「何笑ってるのよっ!」

提督「怒んなって」

響をベッドに横たえると、じゃあな、と手を振りながら部屋を出た。

廊下に出て、

提督「あ」

提督「そういや夕飯の時に改装の話すんの忘れてたな・・・」

六月六日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

提督「今日の秘書艦は誰だろうなぁ」

結局昨日は響も寝てしまったから、あまり遊ぶことができなかった。

言うやいなや、

加古「うっす提督!起きてるかー!」

扉を思い切り開け放って加古が飛び込んできた。

加古「提督ー!」

提督「起きてる!起きてるから枕で叩くな!」

加古「よし!じゃあ提督、おはよう」

提督「あぁ、おはよう」

先に起きていなかったら最悪の目覚めになっていたに違いない・・・。

加古「おー、提督っていい体してんねー」

寝間着を脱いだ体をさらさらと触ってくるのでなかなか着替えられない。

提督「ちょ、ちょっと触んないでくれ。着替えさせろ」

加古「ごめんごめん」

提督「(今日は賑やかな一日になりそうです)」

移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時半。

古鷹「加古が何か変なことしませんでしたか・・・?」

提督「安心してくれ、寝起きに枕で十数回殴られたぐらいだから」

古鷹「ちょっと、加古!」

加古「いやだって提督起こすにはこれぐらい必要かなって思ってさー」

古鷹「すいませんでした」

提督「古鷹は良く出来た子だよ・・・、俺嬉しいよ・・・」

いつもの調子で古鷹の頭をなでた。

古鷹「そんなこと、ないです」

食堂から香る朝ご飯の匂いを吸いつつ、席に座ると、既に五月雨が座っていた。

提督「おはよー」

五月雨「おはようございます」

提督「おうおう」

やはりいつもより若干距離が縮みつつある。もちろん椅子の距離のことだ。

提督「(確実に狭まっている!)」

加古「提督、お願いがあるんだ」

人差し指と親指で距離を測っていると、唐突に加古が真剣そうな顔で提督を見る。

提督「なんだ?」

加古「もし」

提督「もし?」

加古「もし朝ご飯に、その」

提督「?」

加古「ピーマンが「だめだよ」

古鷹「その歳になってまだピーマンも食べられないなんて恥ずかしいと思わないの?」

加古「古鷹はお母さんみたいなこといわないで・・・」

提督「要するに食べてくれって言いたかったんだな」

加古「そ、そう!そうなんだ!」

提督「安心しろ、俺も好きじゃないから」

加古「え・・・」

古鷹「ちょっと!提督!?」

加古「だよね、やっぱりピーマン食べられないよね!」

程なくして料理が運ばれると、狙ったようにピーマンが野菜として盛られていた。

それを苦もなく口に運ぶ提督。

それを驚愕の眼差しで見つめる加古。

加古「裏切られた・・・」

提督「食べられないなんて言ってないぞ」

加古「馬鹿な・・・」

古鷹「ほら、食べないと育つところも育たないよ」

加古「う~、古鷹~・・・、やっぱり提督は大きいほうが好きなのかな・・・?」

提督「何いってんだか・・・、阿呆なこと言ってねぇで食え」

加古「教えてくれたっていいじゃーん」

提督「口に物入れながら喋るな」

時間経過。同所。

提督「皆、食べ終わったな。突然です漫画ちょっと午前中までに終わらせたいことがあるんだ」

五月雨「提督が突然重大なことを言うのにはもう慣れました」

それは無視し、手を叩いて注意を集めた。

提督「一斉改装作業を開始したい」

観衆がどよめいた。

提督「時雨と白露を除く艦娘は「っと待ってください!」

そこへ思いがけない声が上がった。

技主「その事で!時雨と白露も改装できるかなと思うんです!」

提督「そうは言うが、許可が降りてないぞ」

技主「うちの鎮守府の中でやればばれませんから!」

提督「でもその、どんなふうに改装するのかわかってるのか?」

技主「二人だけ仲間外れみたいで可哀想ってことで、昨日皆で考えたんです!」

提督「お前らだけでなんとかなるのか・・・?」

技主「大丈夫です」

見つめ合うこと三十秒ほど経って、

提督「そうか・・・、まぁ、それならいいか・・・、いや、いいのか?」

ばれたら・・・。

しかし、皆の期待にこたえるほうが優先だろう。ばれなきゃ犯罪ではないのだ。

提督「わかった、じゃあ皆ついてきてくれ」

五月雨を先頭にして、皆が続いた。

白露「一斉改装って言うから、思わず悲しくなりかけてたよー」

時雨と白露が隣に並んだ。

時雨「提督、ありがとう」

提督「俺じゃなくて工廠に感謝してやれ」

白露「それもそうだねー」

しばらく歩き続けているうちに工廠の前に着いた。

ちなみに加古は提督の真後ろで迫る改装の緊張のあまり言葉を失い、古鷹が励ましている。

提督「それじゃあ頼んだ」

扉の前に立っていた技術主任に呼びかけた。

技主「それじゃあ艦娘の皆さんは入っちゃいましょう」

五月雨「提督は入らないんですか?」

提督「お前らの裸を見ようと思うほど堕落した覚えはない」

五月雨「裸になるんですか!?」

提督「当たり前だろ、いや当たり前なのかどうかは知らないが」

五月雨「すいません、そうとは知らず・・・」

提督「いいっていいって。食堂で待ってるから、終わったら来いよ」

五月雨「む、間宮さんとお話をしようという魂胆ですね」

提督「暇なんだから仕方ないだろ」

五月雨「お仕事はどうなさるんですか?」

提督「お仕事なんてものは存在しない」

五月雨の肩に手を置いて言った後、提督は歩き去った。

時計は午前七時を過ぎたあたりを指していた。

移動。舞鶴鎮守府食堂。

間宮「あら、どうしたんですか?」

食堂に入ってみると、間宮が一人で椅子に座り、お茶を飲んでいた。

提督「暇なんだ」

間宮「それで私を暇つぶしの道具として選んだわけですね?」

提督「なっ、道具とまでは!」

さすがにそこまで考えてはいなかった提督があわてて弁明しようとした。

間宮「わかってます。冗談ですよ」

演技なのかどうかが間宮はわからない。

提督「人が悪いわ・・・。なぁ、改造って、どれくらいかかるんだろうな」

間宮「そうですね・・・。一人なら二十分もかかりませんけど。二十四人となると・・・」

提督「なんだ、一人十分程度ってことなのか」

間宮「どうでしょう、十五分ぐらいです」

提督「え、というかなんで間宮は知ってるんだ?」

間宮「今まで何回か他の鎮守府で働いたこともありましたから」

提督「てことは、やめたこともあるのか?」

間宮「そりゃあ嫌な鎮守府だってありましたよ。大湊とかはもうセクハラをしようとしてくるものですから、二日でやめました」

提督「神埼・・・」

間宮「横須賀は元から雇ってもらう期間を決めていましたから」

提督「ほー、無期限は舞鶴が初めてってことか」

間宮「でも後悔はしてませんよ。提督にも会えましたし」

提督「お、おう」

間宮「艦娘の皆さんも提督がお好きなようですし」

提督「五月雨か誰かが前にも同じようなことを言っていた気がする」

間宮「やっぱりそうじゃないですか」

提督「そう見えるもんかね?」

間宮「見えないわけないじゃないですか」

提督「艦娘の皆さんって、間宮も艦娘だけどな」

間宮「そういえばそうでした」

そういって微笑んだ。

提督「・・・、間宮は改造とかないのか?」

間宮「改造、ですか?」

提督「だって艦娘じゃないか」

間宮「改造といっても、何を改造するんですか?戦闘する為の船じゃないですよ、私?」

提督「改造したらますます料理がうまくなる、とか」

間宮「そんな簡単に料理がうまくなったら苦労しませんよ」

提督「そうだよなぁ」

ふぅ、と提督は息をついた。

間宮「・・・」

提督「改造ねぇ」

間宮「はい」

提督「彼女らはまだ、戦艦や空母は除いて、二十人近くがまだ成人すらしてない年齢だよな」

間宮「はい」

提督「俺は彼女らに戦闘を強いている」

間宮「でも艦娘というのは・・・、そういうものです」

提督「わかってる。でも彼女たちは兵器であって人間じゃないか。こんなの神風特攻隊とやってることは大差ないと思わないか」

間宮「それは言いすぎです」

提督「特攻隊は馬鹿げてたな・・・。改造ってのは、つまるところ戦闘に精進しろ、と暗に強要しているようにしか思えない」

間宮「・・・」

提督「敗戦国だからと軍備の強化が制限されているにしても、普通に考えてみればおかしいことじゃないか」

間宮「・・・」

提督「そう思えば、父さんの気持ちもわかるような気がする」

間宮「提督、それはだめです」

提督「冗談だよ」

にっと笑顔を見せると、

提督「仕事でも片付けてくるわ。みんな戻ってきたら伝えておいてくれ」

間宮「・・・わかりました」

提督「(あんなことを言うつもりじゃなかったんだが・・・)」

時計は七時二十分を指している。

結局大して時間をつぶすことは出来なかった。

提督「・・・これだからああいう女性は困るんだ。すぐに相談したくなってしまう」

移動。舞鶴鎮守府玄関。

提督は、舞鶴鎮守府の大扉に続く三段程度の階段に腰掛け、巡視兵に話しかけた。

仕事をする気にはあまりなれなかったのだ。

提督「あれ、何かあったのか?」

前方で地元住民と思しき者と話している巡視兵を示した。

巡視兵C「近頃夜中に深海棲艦を見たという報告が、地元住民からあるんです」

提督「それを何で俺に知らせなかった?」

巡視兵C「そういうわけではないのです。住民の方は一度大本営にも陳情状を出したらしいのです。それで実際に偵察機が飛んだのですが・・・、異常なしとなったみたいで」

提督「それでまだいるとかで来てるわけだな?」

巡視兵C「そうです」

提督「ちょうど改造も進んでいるところだ。舞鶴が船を出してみよう」

巡視兵C「そうしてくだされば、皆様も納得してくれると思います」

提督「どうかなさったのですか」

大きな声で声をかけつつ、提督は住民のほうへ向かった。

提督「軍の可能範囲内なら、舞鶴がお聞きしますよ」

本当はこんなことするのは軍人として少しはしたないことだが、あいにく俺はそういう精神を持ち合わせていない。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前十一時。

提督「B型改二砲塔と、十三号対空電探改・・・。扶桑は瑞雲、ん・・・?十二型ってなんだ・・・?」

煩雑な書類仕事を片っ端から片付け続けていると、もう三時間以上もたっていた。

廊下の方から足音が聞こえたきたので、帰ってきたかと扉を見る。

五月雨「終わりましたー」

五月雨が声をかけてきたので席を立った。

さすがに執務室の中に二十四人もいるのは狭苦しくなってしまうのだ。

提督「今出るから待っててくれ」

それから皆の状態を確認するのに三十分以上を費やした。

提督「まだ改造の余地が残ってる艦がほとんどだろうが、なんだ、これからもよろしく」

外見が大きく、変わったのは扶桑型くらいのものだった。

・・・鉢巻きはやめて、髪飾りだけに戻すとは言っていたが。

提督「どちらにしろ、全体的な軍備強化は出来たわけだな」

五月雨「演習でも実戦でも早く戦いたいです!」

提督「がっつくながっつくな。勢いよすぎだろお前ら・・・」

白露「でも演習ばかりじゃつまらないですよー」

提督「そこまで言うなら、駆逐艦のお前らに朗報だな」

白露「ほ?」

提督「殲滅任務についてもらうかもしれない」

時雨「え?」

提督「開始日はまだ未定だが、ここらへんで潜水艦が目撃されてるらしいんだ。見間違いか本当か判断して、本当だったならその場で撃滅しなければならない」

五月雨「出撃要員は誰でしょうか」

提督「それに関してはまだ後日決めることにするよ」

長良「・・・それだったら私たちはだめなんでしょうか?」

名取と長良が物欲しげな視線を投げてきたが、

提督「まだ決まってないんだ、な?」

諭すように声をかけた。

名取「わかりました」

長良「しょうがないかな」

プリンツ「重巡洋艦は対潜攻撃できませんもんね・・・、しょうがないですよね・・・」

加古「そこは諦めるしかないって」

重巡は重巡で一人で納得している。

扶桑「瑞雲だけじゃ無理ですよね・・・」

扶桑型はよくわからなかった。

ビスマルク「プリンツ、部屋に帰りましょう」

プリンツ「はい、姉様」

提督「すまんな・・・、軽空母も入れようと思ったんだが今回は高速編成で以降と決めてたんだ」

隼鷹「いいのいいの、気にしないでー」

飛鷹「それでは、部屋に戻りますね」

駄々をこねる暁を響達がなだめつつ、秋月は春雨と食堂に向かったようだ。

涼風「いつかまた大規模作戦でもあるといいなぁ」

皆が帰っていく中に混じって帰ろうとする加古の肩を掴んだ。

加古「で、ですよねー・・・」

提督「一日だけなんだからがんばってくれよ」

古鷹「私は戻ってもいいでしょうか?」

提督「部屋、一人が嫌なら今日合同で秘書やってもいいけど」

加古「ぜひそれでよろしくお願いします」

加古は即答だった。

古鷹「て、提督がそれでいいのなら」

提督「それじゃあ入ってくれ」

提督「(合同でやるっていう選択肢もあったな・・・)」

その日から執務室前に、その旨要望があるものは名乗り出ること、という張り紙が出された。

六月七日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時半。

もはやこの時間に起きて秘書官に備えるのが習慣になった。

提督「・・・」

じっと扉を見つめていたから、そっとノブが回されているのも確認できた。

気遣いか、果たして驚かせる為の準備か・・・。

昨日あの紙を張り出してから、第六駆逐隊の面々と、名取と長良が言いに来ていた。涼風はなぜか一人では不安だという理由で伝えてきたはずだ。

そっと開いた扉から四つの顔が覗いた。

電「起きてるのです?」

提督「早起きなんだよ。おはよう」

暁「びっくりさせようと思ってたのに」

提督「そんなところだろうと思ってたわ」

雷「はい、提督」

いつとったのか、雷が制服を差し出してきた。

提督「何で雷は俺の征服の収納場所を知ってるんだ・・・?それでやっぱり響もいるんだな・・・」

響「二回もなってしまった」

提督「お前らがそれでいいなら俺は気にしないけども」

着替えているところを見ながら暁が言う。

暁「昨日の、潜水艦の話、していい?」

提督「編成のことか?」

暁「そうじゃなくって」

提督「なんだ?」

暁「地元の人たちが目撃するほど近くにいるって、そういうことよね?」

提督「そこについては俺もわかってる。でも敵の深海潜水艦には対地攻撃能力はないはずだからな。でももし何かしらの通報があった場合は出撃させることになるから、それが今日だったらすまんな」

暁「その話をしようとしてたけど、それならしょうがないのかな」

提督「一応出撃員の装備は対潜装備に取り替えてあるから、手間取ることもないだろう。潜水艦だけなら、俺も出れるからな。峰山まで車を飛ばせば偵察機があるし」

暁「いろいろ考えてあるのね」

提督「・・・これでも司令官なんだから当たり前だろ」

提督「それじゃ行くぞー」

雷「提督、帽子は?」

執務室の机の上に置かれている帽子を指差して雷が聞いた。

提督「いや、いいよ。そういうのは飽きた」

雷「そうなの?」

響「でも被ってないほうが、綺麗だと思うよ」

提督「どこが?」

響「頭とか」

提督「なるほど・・・」

髪の毛をいじりつつ、そういう見方もされるのか、と一人考え込んだ。



移動。舞鶴鎮守府食堂。

提督「(もはや間がない!)」

五月雨と提督の椅子の間にはもはや隙間がなかった。

明日には膝にまで侵略してくるのでは・・・、五月雨の顔を窺うが、当人は気にした様子もなく朝ごはんを食べている。

暁「パンとかもたべてみたいなって思うの」

提督「そうか?俺はあんまり好きじゃないんだが」

響「でもこの前はシュトーレンを食べてたじゃないか」

提督「あれはパンというよりケーキに近いだろ・・・」

提督「というか、パンなぁ、パサパサしてるし、どうなんだろうな」

暁「だからジャムとかをつけるんじゃない」

提督「じゃむ?弾詰まりのことか?」

どこかで、弾詰まりを起こしたときの言葉だと聞いたことがある。

暁「違うわよ!パンにつける、なんというか、ご飯にかけるふりかけみたいなものなの」

提督「なんかいまいちピンと来ないな・・・」

電「間宮さんには頼めばきっと作ってくれるのです」

雷「それもそうね」

提督「食わず嫌いってのは俺もあんまり好きじゃないしな」

ジャムとやらの想像をしてみるが、やっぱりだめだった。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。電話中。

提督「朝から申し訳ありません。お伺いしたいことがありまして」

先生『言ってみろ』

一通り目撃証言についての情報を話す。

先生『それがそいつらの言うことなら、双眼鏡で見えた、と?』

提督「そういうことらしいのです」

先生『なら待ち伏せに気をつけたほうがいい』

提督「・・・そんなことはわかってますよ」

先生『馬鹿にしたわけじゃない。大体そんなことを言ってるんじゃないんだ。これは単純な罠だろうが、戯け』

提督「罠、ですか?」

先生『対潜装備を重視した艦隊はどうなるかぐらいわかるだろう』

提督「対水上艦攻撃に弱い、ですか?」

先生『対潜艦を待ち伏せしてる迎撃艦隊がどこかにいるはずだ』

提督「そいつらが司令塔ということなんでしょうか」

先生『いや、おそらくその主力艦隊も超えた先にいるのだろう。そいつも潜水艦だろうな。大掛かりなことをやってくるやつといえば、フラッグシップだろう』

提督「小規模高速艦隊で片付けたほうがよさそうですね」

先生『最高でも四隻編成で行ったほうがいい』

提督「一応緊急部隊も用意しておきます」

先生『そこはお前の好きにしろ』

提督「ありがとうございました。それでは、失礼します。よい一日を」

電話を切って、思索にふける。

暁「また何か大変そうね」

声をかけられた。

暁「出撃メンバーはもう決まったの?」

目を上げると、暁が提督の隣に椅子を持ってきたところだった。

提督「あぁ、一応な」

暁「誰?」

提督「夕立、白露、村雨、時雨に任せようと思ってる。改造も終わったし、それなりに戦えるはずだ」

暁「とか言いながら司令官って救援部隊用意したりして、意外と心配性よね」

提督「余計なことは言わなくていいの」

暁「それで、空母機動部隊は誰を組むの?」

提督「はぁ・・・、第六駆逐隊と赤城・加賀だよ」

電「お見通しなのです」

提督「お前らにはかなわんな・・・。とは言え、潜水艦が一番厄介なんだ。水上レーダーと違って、こっちから探すにはこっちでソナーを打たなきゃならない」

電「何かまずいのです?」

提督「音波を聞かれたら、近くにいるということをばらすようなもんなんだろ?」

提督「あーーー、やっぱり対潜攻撃を経験したことがないやつらに任せるべきじゃないかもしれんな・・・」

暁「私たちは提督に任せるわよ」

提督「そうだな・・・、危ないときは俺が何とかしよう」

暁の頭をなでたが、思いがけず彼女はされるがままだった。


時間経過&移動。舞鶴鎮守府ブリーフィング(以下作戦会議で統一)室。午後二時。

提督「三式爆雷投射機、三式水中探信儀の装備を義務付ける。なお本作戦では常の低速移動をしなければならない。音を立てすぎないようにしてくれ」

白露「私たちで、大丈夫なの?」

白露が不安げな声を出すが、

提督「大丈夫だろう」

白露「言い切ったー・・・」

提督「改造もされたんだ、夕立と村雨もいる。そんなにむずかしくないはずだ」

夕立「ちょっと期待されすぎっぽい?」

村雨「提督の言うことだし、大丈夫なんじゃない?」

提督「作戦開始は明後日だ。明日は十分休んでおくように」

白露「ちょっと、潜水艦のことは五月雨に聞いてみようかな」

提督「そうしてみるといい」

提督「正直潜水艦の発見は困難を伴う。自分たちの機関音も邪魔をするからな。まぁ、そのための三式なんだが」

夕立「提督、質問っぽい!」

夕立がビシッと手を上げた。

提督「?」

夕立「潜望鏡は水上レーダーで探知できないっぽい?」

提督「ふむ・・・。確かに、その通りだが、今まで敵が目撃されたのは浮上している最中。潜望鏡を見たという報告はひとつもない。そこからしておそらく敵は機関音でわれわれの接近を確認しようとしているのだろうと思う」

夕立「潜水艦は嫌いっぽい~」

それには提督も苦笑するしかなかった。

時間経過。舞鶴鎮守府五月雨&涼風私室。

五月雨「基本的に提督の言うとおりに動いてれば問題ないよ?」

白露「そ、そうはいっても・・・」

五月雨「私たち艦娘は提督のことを信じないと、やっていけないのはわかってるくせに」

白露「五月雨が言うなら、頑張ってみるかなぁ」

五月雨「応援してるから」

白露「一番艦なのに、なんか情けなくてごめんねー」

五月雨「私も最初はそんな感じだったから、大丈夫だって」

白露が出ようとするときに、

五月雨「でも、三式ソナーと爆雷の時限信管の操作方法は練習しておいたほうがいいと思う」

白露「ん、ありがとー」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府私室。午後十時。

電「一緒に寝るのです!」

提督の私室では乱闘が起こっていた。

提督「四人はさすがにはいんないってっ!」

暁「いいから寝るの!」

提督「わかった!わかったから!押すな!」

提督「(こいつらまだ子供だわ、やっぱり!)」

六月八日。同所。午前五時。

体を起こすと、暁たちはまだ寝ていた。

果たして今日の秘書官は誰だろう、と思ってなんとなく予想してみることにした。

昨日何かそわそわしていたようなやつはいなかったか。いない。

昨日俺に何か言おうとしていたようなやつは・・・。いない。

考え始めて五秒で考えるのをやめた。

視線を落とすと、暁たちの寝顔が見える。

無性に愛しくなって、頬を触ってみたりしてしまう。

名取「お父さんみたいですね」

提督「うおあっ!?」

いきなり声をかけられて、思い切り驚いてしまった。

長良「大きな声を出すと起こしちゃいますよ」

提督「全然気づかなかったぞ・・・」

見れば既に扉は開いていた。

暁「今何時・・・?」

提督「悪い、・・・起こしちゃったな」

暁「ん、起床時間よ、当たり前じゃない」

続々とおきだした雷たちを連れて、部屋に帰っていった。

暁「また秘書やるときがあったら、よろしく」

眠いのか、目をこすりながら、眠そうな声で言ってきた。

提督「おう」

提督「・・・。それで、今日の秘書は名取と長良というわけだな」

長良「名取一人じゃ心配だったから」

名取「そうかなぁ?」

提督「よろしく」

名取「あ、よろしくお願いします」

長良「秘書ってなにやればいいのかな?」

名取「えー!長良もわかってなかったんじゃん!」

長良「だって私秘書なんて初めてだし」

名取「だってじゃないよぉ・・・」

名取「って、提督、着替えるんだったら言って下さいっ!」

提督「ん、あ、すまん。いつもの事だったから・・・」

名取はその場で顔を覆ってしまった。

提督「(部屋から出ればいいのに・・・)」

制服を着終えると、提督は名取を連れて部屋を出た。

提督「・・・最近はもうこのパターンばっかりだな」

名取「このパターンって、何の話ですか?」

提督「部屋で着替えてそのまま食堂に行くっていうことがだよ」

名取「ほぅ、なるほどです」







本日はここまでです。ありがとうございました。

(五月雨に手を出すと言っても、まだあんな年端もいかぬ少女に・・・)

年齢は見た目でやってます。

五月雨が20歳を越えてるとは考えたくないです。

コメントがあれば意欲も湧いてくるものです。ありがとうございます。

最初の方は自分でも恥ずかしい文体で見れたもんじゃないですね・・・w

何を書けばいいやら少し脳内崩壊を起こして一文字も進んでいない現状です。

投下がかなり遅れそうなので一応書いておきます。

こんばんはみなさん。

明日投下します。以上であります!

小投下になりそうです。そして少し投降に間があるかもしれませんが、本日はここまでですを言うまで終わりではありませんので安心してください。




移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時半。

名取「提督の隣に座るのって、なんか恥ずかしいです・・・」

長良「たいていいつも扶桑さんと五月雨さんだもんね」

提督「喧嘩にだけはならなくてホッとしてる」

名取「そうですね、提督は怒ったら怖いですもんね」

提督「・・・え?俺怒ったことあるか?」

名取「響さんから聞きました」

右斜め前に座る響を見る。

響「一回だけあったじゃないか」

提督「そうか・・・?」

響「嵐のときの事、覚えてないのかい?」

提督「あー、あのときのことか。あれは怒ったのとはちょっと違くないか」

響「あれは提督以外の目で見れば怒ったっていうんだよ」

提督「怒ったように見えたのか・・・。いや、確かにあれは怒ったのかもしれない。どうでもいいけど」

名取「そうです、それで、私が言いたいことがあったんです」

提督「どうした?」

おなかが減っているから、本当はあまり話したい気分ではないのだが・・・。

名取「あと二ヶ月ですよ!」

提督「いや・・・、まだ二ヶ月も先の話するなよ・・・」

名取「何のことかわからないんですか?」

提督「わかると思ったのか?」

名取「結構大事な日ですよ」

提督「大事な日ねぇ」

五月雨「提督の着任日のことですか?」

名取「あ、五月雨さん!言っちゃだめですよ!」

提督「あー・・・、なるほど」

五月雨「提督、なんかおじいさんみたいですよ。あーあー言ってたら」

提督「思い出せなかったんだから仕方ないだろ!」

五月雨「提督、着任したの八月何日か覚えてますか?」

提督「三日だっけ」

五月雨「一日、ですよ」

提督「よく覚えてるな五月雨」

五月雨「なんか前にも同じことを話した気がします・・・」

提督「忘れっぽくて悪いのぅ」

名取「とにかく!何か、一周年ですけど、何かしようと思いまして」

提督「なぁ、それだったら俺聞いちゃいけないんじゃないのか?」

名取「そ、それもそうですね」

提督「俺がいない時に決めといてくれ。とりあえず朝ごはんだ」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府作戦会議室。午前八時。

提督「説明したとおり、第一回偵察・殲滅任務は鎮守府周辺海域を大きく時計回りする様に行われる。航行ルートについては俺が指示する」

白露「魚雷の音なんて本当に分かるの?」

提督「聞けばわかる」

白露「えー・・・」

提督「耳で聞いたほうが早く対応できるといっても、一応俺も魚雷の航跡に関しては目を光らせておくから安心してくれ」

白露「はーい」

夕立「提督」

夕立が手を上げた。

提督「どうした?」

夕立「迎撃艦隊にあったらどうすればいいっぽい?」

提督「言うまでもないけど、直ちに転針、最大船速で海域を脱出してもらう」

夕立「追撃してくるときは?」

提督「迎撃艦隊に遭遇した場合は準備してある空母機動部隊が出撃する手はずになってる。教えるのが遅れてすまない」

夕立「それを聞いて安心っぽい~」

本当に安心したようだ。

提督「変に砲火を交えようとしないように、お前らの任務はあくまでも潜水艦の殲滅であることを忘れるないでくれ」

時雨「でもちょっと、怖いかな」

村雨「私も怖いけど、提督のために頑張っちゃうから」

提督「期待していいのか?」

村雨「大船に乗った気分でいてね!」

提督「あまり油断はしないようにな・・・」



時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時半。

提督「正直名取と長良、お前ら二人が一番やりやすかったよ・・・」

今日一日程何もなく、ただ普通に過ごせた日はそうそうない。

名取「それってほめ言葉ですか?」

提督「当たり前だろう。普通に秘書をやってくれてこれほどやりやすい日はなかったって言ってるんだ」

名取「おお・・・」

長良「ありがとうございます」

提督「明日は朝からたぶんいないけど、五月雨が何とかしてくれるだろうと思うから。ほいじゃあ、お休み」

名取「おやすみなさい」

長良「提督もお休みなさい」

提督「おうおう」

六月九日。峰山防空基地。一○○式司令部偵察機四型内。

管制官「離陸を許可します。御武運を」

提督「任せろ」

今回の搭乗機は陸軍から貸しうけたものじゃない。正式に舞鶴に譲渡されたものだ。

提督「無線も問題ないな?」

白露「無線、感度良好です」

白露「あ、それと、迎撃艦隊にだけは気をつけてくださいよ?五月雨からくれぐれもって言われたんですからー!」

提督「落とされたら骨ぐらいは拾っといてくれ」

夕立「縁起でもないこと言わないで欲しいっぽい!」

本気で怒られた。

提督「落ち着けって、夕立そんなかっかするなよ。冗談だから」

夕立「はぁ・・・」

提督「いや、大丈夫だって、この偵察機なら普通の敵機ぐらいなら振り切れる」

時雨「信じていいんだね?」

提督「もちろんだとも、あぁ、もちろんだ」

また誰かののため息が聞こえた気がした。

白露「第一艦隊出撃準備完了、ご指示を!」

早々に舞鶴鎮守府の影が見えてきた所で白露が作戦準備完了の合図を送った。丁度港湾部の、入り組んだ海岸線付近にある、妖精に建造を依頼していた艦艇の影も見える。

提督「了解、白露、夕立、村雨、時雨、準備はいいな」

操縦桿を握り直し、気を引き締める。

皆「問題なし」

提督「○六三○、西号作戦を開始する。総員単横陣、第一船速、十時の方向へ」

西号、名前の通り日本から見て西で展開される作戦ということで大本営が名づけたものだ。安易ではない、と思う。

白露「了解、単横陣、第一船速」

発動機の回転数を下げ、対地速度毎時300kmまで落としこむ。

今回はいつも以上に注意を払わなければならない。間違っても迎撃艦隊に遭遇してはならないのだ。

提督「(大丈夫だろうとは思うが・・・)」

提督「敵を発見するまで無駄な音を立てないように。聴音機に耳をすませるんだ」

白露「ソナーをうつタイミングはどうするのー?」

提督「基本的には説明したとおり受動的に動くつもりでいる。敵の先制魚雷を回避した後、ソナーで敵潜水艦の正確な位置を把握する」

白露「魚雷ってそんな簡単に避けれるのかな?」

提督「魚雷の航走音は聞き取りやすい方だ」

白露「不安でいっぱいです・・・」

提督「海の中に異常な、違和感のある音に耳を澄ませるんだ。聞き逃さないようにな」

白露「ぐぬぬ・・・」

時間経過。○七一七。

出発からかなりたっている。

敵について考えつつ、提督が上空で偵察を続けていると、

白露「敵魚雷航走音複数確認、回避行動!」

白露の第一声で、戦闘が始まった。

いつもの海戦とは違い、かすり傷というものが存在しないため皆の緊張はかなりのものだった。

夕立「了解っぽい!」

提督「敵艦は貴艦隊から一時の方向、魚雷の発射源はわからないが、少なくとも三隻はいる」

白露「了解、ソナー打ちますー!」

提督「やはりこちらから見つけるのは難しそうだな」

停止してただ音を聞けばいい敵とは違って、こちらは進み続けなければならないのだ。機関音もかなり邪魔をする。

白露「敵艦距離約700m、方位0-8-2!」

提督「艦数は!」

白露「すいません、三隻です!」

提督「爆雷時限信管設定十秒、100m手前で射出しろ」

白露「設定十秒、最大船速、接近するよー!」

提督は艦隊周辺海域に目を凝らし続ける。

白露「爆雷装填完了、発射!」

提督「爆発に巻き込まれるなよ」

白露「そんなのわかってます!」

手間取りそうになりながら、無事に射出させた。

提督「艦隊転針二時方向、敵艦隊の右を通過する時に撃ち漏らしを片付けろ」

白露「敵潜水艦三隻無力化しました!了解、転針します!」

提督「了解」

白露「第一船速、巡航速度を維持します。提督、進路はこれでいいの?」

提督「あぁ、作戦通りだ」

静かな戦闘になりそうだ。



○一○○。

依然変化のない海に、提督は嫌な予感がしていた。

白露「魚雷航走音!九時の方向!」

ようやく敵潜水艦と遭遇する。

提督「近い!艦隊進路そのまま、最大船速!」

白露「了解!」

だが、敵潜水艦との距離があまりにも近すぎた。奇襲に対する冷静さを持ち合わせていないのも災いしたようだ。

時雨「避けきれなかったよ・・・」

白露「時雨、大破です、提督!」

提督「了解だ。時雨、速度はどれくらい出せる」

時雨「・・・最大の半分出せるか出せないかだね」

提督「それだけだせれば上等だ。これ以上の戦闘は危険だ。直ちに帰還する。舞鶴鎮守府、応答せよ」

赤城「迎撃艦隊ですか?」

すぐに赤城が応答した。

提督「念には念をだ。時雨が大破した、敵迎撃艦隊に知らせが行ったかもしれない。急いでくれ」

赤城「了解、出撃します。皆、準備はいい?」

暁「いつでも行けるわ」

赤城「最大船速、輪形陣、出撃します!」

時雨「ごめんね・・・」

提督「気に病むな。戦争なんだ、損傷なんて日常茶飯事だ」

時雨「ありがとう」

提督「あぁ」

提督の声はどこか上の空だった。

時雨「提督?どうかしたの?」

提督「まさかな・・・?」

白露「ど、どうしたの」

慎重に操縦桿から右手を放し、足元から双眼鏡を取り出す。

敵空母らしき艦影が水平線の彼方に六隻は見え、丁度横切っている最中だった。

敵艦載機は既に飛び立っている。あれは鳥じゃない。

黒い点を思わず提督は渡り鳥だと勘違いしてしまったのだ。白露たちも反応していないし、とまで考えた所で、対空電探を装備していない白露たちが反応できないのは当然だと想い出す。

提督「赤城、加賀、聞こえるか!」

赤城「無線感度良好です」

提督「迎撃隊は直ちに発艦!方位は」

双眼鏡を放り、狭い機内で片手で四苦八苦しながら羅針盤を確認する。

提督「方位は羅針盤上で北西微北!大雑把で済まない!」

赤城「それだけ方角がわかれば十分です。了解、直ちに発艦!」

加賀「全機発艦、行ってきて」

提督「烈風への換装は!」

赤城「万事問題ありません」

搭乗員B「・・・新機って少し緊張するな」

搭乗員C「そんな贅沢な文句言わないでください」

白露「提督、どうしよう」

不安のあまり白露はうまく喋れていない。

提督「後ろを見るな。今は逃げることだけを考えるんだ」

白露「りょ、了解」

提督「急かすようで悪いが、航空隊、到着まで後どれくらいかかりそうだ?」

搭乗員B「十分程度です」

提督「・・・十分か・・・」

だが、ほっとしたのも束の間、五分と待たずうち無線に悲鳴にも似た声が入った。

赤城「提督、これはまずいです!敵艦載機の数が四百は超えてる!」

搭乗員B「おいおい冗談だろ・・・」

提督「全機、何とかもちこたえてくれ!最悪舞鶴鎮守府まで下がってでも爆撃だけは許すな!」

司令室を飛び出し、二度目の緊急出撃の警報を鳴らす。

提督「敵機大編隊が当該地域に接近中、全艦直ちに対空兵装を装備、鎮守府沿岸十五キロに出撃後迎撃体制に入れ」

提督「(まさかこんなことになるとは!)」

平穏とまでは言わないが、それほどの作戦ではないと思った作戦が一転、大規模武力衝突が起ころうとしていた。

赤城「提督!聞こえますか!」

提督「なんだ!」

司令室に戻りつつ、声を張り上げる。

赤城「航空隊被害甚大、敵艦載機が百五十機以上が迎撃隊を躱しました!」

提督「工場長を出せ!」

無線予備機を取り出し、震える手でなんとか製油所の無線周波数に合わせる。

製油所「工場長はただ今手が離せません。要件を「そっちの要撃戦闘機を直ちに発艦させてくれ!」

提督「このままでは本土侵入を許すことになる!理由を話す暇はない!」

製油所「了解、直ちに!」

秋月「提督、敵機編隊レーダー反応あり、迎撃開始します!」

結果、秋月ら、及び途中で駆けつけた製油所所属の航空隊が落としたのは百四十二機に及んだ。

それだけでも大功績だが、二十機程度の爆撃機の本土空爆を許してしまった。

幸い市街への被害に入る前に防げたが、舞鶴鎮守府が集中的に爆撃され、資材倉庫、港湾部はほとんどが使用不能に陥った。

大破艦は出なかったが、被害を受けていない艦などいなかった。

同日。舞鶴鎮守府作戦会議室。午後一時。ラジオにて。

「大本営は国家非常事態宣言を発動・・・京都府、福岡県、鳥取県の沿岸から100km県内にいる住民に対し避難命令、及びその地域には戒厳令が発令され、撤回される目処は立っておりません・・・」

男の声で、重々しい調子で決定が読み上げられている。

提督が今回の事態について大本営に報告すると、

『本作戦の指揮は龍花少将に委任する』

との通達がくだされ、今の状況に至っている。

赤城「私達との連合艦隊で挑む訳にはいかないのですか?」

提督「あぁ、最初からそのつもりだ」

作戦から帰投後、総出で舞鶴鎮守府施設の一応の修繕は完了させた。だが修繕されただけで資材の、事故を防ぐため地下に埋設されている石油・弾薬以外が全て吹き飛ばされており艦載機、その他補給活動ができない状態だった。

急いでいたため、作戦会議室(食堂)には全艦娘が残ったままだ。

加賀「敵空母がすぐそこまで来ています。明日には市街地が空爆対象になりかねません。早急に空母を撃滅しなければ」

提督「敵艦隊の旗艦を潰せば空爆を阻止させ、もしかしたら奴らも帰還せざるを得なくなるかもしれんな」

加賀「確かに、それはそうかもしれませんが・・・」

赤城「提督、出撃させる娘達の安全はどうなさるおつもりですか」

すかさず赤城が反対の声を出す。

提督「そんなことはわかってるんだ、赤城」

白露「提督、わ、私達なら」

白露の細い声を提督は手で制し、

提督「お前らはまだ出撃させるわけには行かない」

提督のその答えに白露はどこかほっとうしたような表情を見せた。

提督「とりあえず、早急に呉鎮守府、佐世保鎮守府にも支援艦隊の出撃を要請したが、五月雨、返事はあったか?」

五月雨「両鎮守府とも鋼材とボーキサイトを満載した補給艦十数隻と空母機動部隊を出撃させたとのことです。無事到着するといいのですが・・・」

提督「絶対に着くさ。鋼材等の搬入が終了次第ただちに艤装の修理を完了させるぞ」

内心、感謝で一杯だった。

提督「空母らに本土防空は任せることになる」

赤城・加賀、隼鷹・飛鷹が頷く。

以前ならあった選択肢の陸軍の飛行師団だが、戦後の軍解体により、航空機のほとんどが解体され、実戦投入できる機はないのが現実だった。

言うと、提督が席を立ち、皆が見つめる。

提督「作戦概要を纏めよう」

提督「呉鎮守府からは翔鶴・瑞鶴らが来てくれるはずだ。佐世保からは飛龍と蒼龍といったところか」

提督「全空母はとりあえず制空権の確保を最優先事項にする。名取、五月雨、涼風、秋月、春雨。長良、暁、響、電、雷。両水雷戦隊は敵艦載機の迎撃もそうだが、本作戦で出動する連合艦隊への潜水艦の接近を許してはならない。軽巡洋艦は先頭について敵に目を光らせてくれ」

提督「敵空母群の直接打撃にはうちの主力艦隊を用いる。扶桑、山城、ビスマルク、プリンツ・オイゲン、加古、古鷹だ。夕立、白露、村雨、時雨は主力第一艦隊の後方につき、敵空母の殲滅を確認後、連合艦隊を解除、四隻第二艦隊はそのまま潜水艦殲滅作戦の任についてもらう」

詳細な航行進路、編成、攻撃順序等指示し、

提督「作戦は以上だ、質問がある者は?」

ビスマルク「魚雷の回避方法は?さすがに爆雷での迎撃は考えられないわよ」

提督「爆雷での迎撃は今後一切、緊急事態でもない限り用いない。
前方警戒で敵潜水艦を能動的に探知、発見し次第それを撃滅。魚雷発射が確認された場合は増速か、緊急回避でこれを回避する」

ビスマルク「わかった」

それ以外に手は挙がらなかった。

だが、その後前代未聞の提案が提督より提出された。

五月雨「提督、あなたという人は・・・」

提督「これは決定事項なんだ。五月雨」


六月十日。舞鶴鎮守府湾内。○六○○。

翔鶴「呉、佐世保鎮守府艦隊ただいま到着いたしました」

補給艦の接岸が終了すると、資材の搬入が急いで行われ、出撃準備を完了させた。

提督「敵艦は確認できたか?」

翔鶴「五隻の潜水艦と遭遇し、同行した駆逐艦が撃沈させました」

提督「空母が居ないとするなら、あいつらもまだ補給中か。ならもう終わっている頃かもしれんな」

翔鶴「作戦通りでよろしいのですよね」

翔鶴らには、作戦内容は無線で既に知らせてある。

提督「顔合わせもできず申し訳ない、作戦通りだ。第三、第四水雷戦隊、出撃準備は大丈夫か」

名取「第三、四艦隊問題ありません」

提督「空母部隊は」

赤城「出撃準備、問題ありません」

提督「第一、第二艦隊は」

扶桑「出撃準備完了しています」

提督「舞鶴連合艦隊、全艦第二船速、第一警戒航行序列、十時の方向へ」

第三水雷戦隊が大きく傘状に名取を中心に展開、第四水雷戦隊がその後方6kmに、第三水雷戦隊よりもやや狭めに残りの戦艦、空母群を覆うように傘状に展開。

更に第一艦隊は扶桑を中心に、更に狭めに後方2kmに展開し、これも傘状に空母群を囲む。囲われた空母群はその後方2kmに複縦陣の陣形で縦に並び、潜水艦殲滅作戦を担当する四隻の駆逐艦は、鶴翼の形で空母群後方500mについていた。

そして、艦隊司令部艦が、その連合艦隊の更に、更に後方についていた。

あらゆる状況に対応するために超長波から超短波通信用アンテナが張り出し、甲板には、兵装が長十センチ高角砲が三基ある以外電子装備で固められていた。後は32号対水上電探、14号対空電探、九三式水中聴音機が申し訳程度に装備されている程度だ。
他に、揚陸艦をモデルに船内にドック式格納庫が作られ、大破した艦娘の応急修理を行う施設が用意されていた。

指揮艦艇の建造を一週間前から妖精に打診し、具体的な設計などを急ピッチで行わせ何とか今日にこぎつけたのだ。大本営の許可は一昨日とったから大丈夫。

五月雨に、

『提督まで守らなきゃいけないんですか!』

と言われたが、一人安地にいるのは堪らないのだと感情論に訴え、艦隊大きく後方で速度10kn以下の隠密行動を取ることを条件に無理矢理呑ませたのだ。

兵装運用は全て妖精任せ。命中精度も文句はない。というか妖精の命中精度は艦娘にも十分当てられるほどで、都合がいいにも程があると思わずにはいられなかった。

扶桑「了解、第二船速、第一警戒航行序列、十時の方向へ。出撃します!」

提督「さて、行こうか」

妖精『了解!』

五月雨「兵装運用が妖精さんじゃなかったら全力反対ですからね」

提督「まだ怒ってるのか・・・」

○七○○。舞鶴から約三十キロ。

秋月「敵艦載機編隊反応あり!大編隊、距離約120km!」

舞鶴からまだ三十キロ程度しか離れていない所で、秋月が報告した。

提督「迎撃隊、全機発艦せよ。偵察機も発艦、他空母の索敵をしてくれ」

赤城「了解、迎撃隊、全機発艦!」

扶桑「了解、偵察機発艦させます」

正規空母六隻、軽空母二隻。計四百機以上の烈風、紫電改二が飛び立った。

搭乗員B「艦隊には指一本触れさせねぇぞ・・・」

搭乗員C「一つ制空権でもとってきますよ」

搭乗員D「交戦空域に突入します」

提督「第三水雷戦隊は引き続き対潜警戒を続けてくれ。第三水雷戦隊以外、敵機が射程範囲内に入った場合に備え、対空砲火準備せよ」

秋月「了解です!」

慌ただしく戦闘態勢に入る中、名取が危険を察知した。

名取「魚雷航走音、方位0-4-4、直進してきます!」

提督「もう撃ってきたか!混乱させるつもりだったのだろうが、そうはさせん」

提督「第三水雷戦隊は魚雷回避しつつ本艦隊より一時離脱、敵潜水艦を発見後撃沈、他艦は面舵一杯、回避!」

扶桑「面舵一杯、回避します!」

水測員「今のところ付近に敵潜水艦と思われる異常音は探知できていません。存在はバレていないようです」

潜水艦捜索担当の妖精が、指揮艦の目下の安全を報告した。

提督「了解だ」

名取「ソナーうちます!」

名取「距離約820m、方位0-5-2、数三隻です!」

提督「爆雷時限信管六秒、射出しろ」

名取「了解、時限信管六秒、射出!」

響「魚雷は一本だったみたいだね、左舷で通過を確認した」

第四水雷戦隊の左端にいる響が回避成功の合図を送ると同時に、

名取「爆発まで、・・・三・・・二・・・一・・・」

低い音が響いた。

名取「敵潜水艦、沈黙です」

提督「赤城、そっちはどうだ」

赤城「航空は優勢ですが、損耗が増えつつあります!」

提督「了解、航空隊隊長に知らせ!貴編隊損耗甚大なり、交戦区域を後ろへずらせ、水雷戦隊が対空援護を行う」

赤城「航空隊隊長、応答願います!」

妖精B「なんでしょう!?」

旋回中なのか、歯を食いしばり、絞りだすような声だった。

赤城「提督より通達、貴編隊損耗甚大なり、交戦区域を後ろへずらせ、水雷戦隊が対空援護を行う!」

妖精B「了解!」

提督「第三水雷戦隊は定位置に、舞鶴連合艦隊、進路戻せ!」

扶桑「了解、進路戻せ!」」

提督「舞鶴連合艦隊全艦両舷増速、黒二○、対空砲火準備。第一艦隊は第三、第四艦隊を超え艦隊前方へ。敵空母への砲撃準備を整えよ」

扶桑「了解、艦隊前方へ、増速、黒二○!第一艦隊の皆さん、全砲門、弾丸装填してください!」

名取「了解、第三艦隊各艦距離開けます」

長良「第四艦隊、名取に続き各艦距離開けます」

丁度第三、第四艦隊の隙間を縫うように第一艦隊が前進する形だ。

提督「敵編隊が射程圏内に入った、第一艦隊は前進を続けろ。他艦は対空砲火、射撃開始!」


秋月「了解、撃ち方始め!」

名取「再びソナーに潜水艦反応あり!第四艦隊の皆に対空砲火を任せます!」

長良「わかった!」

名取「敵潜水艦数四、距離約800m、方位2-5-1、魚雷発射音、第一艦隊に四本突っ込んでいきます!」

提督「時限信管5秒、射程圏内に入り次第射出せよ!第一艦隊、空母機動部隊は増速、面舵40度!」

名取「了解、増速、時限信管5秒!」

山城「提督、避けきれないっ」

潜水艦との距離が近すぎるせいで、探知した時には遅かった。

扶桑「山城、加古大破です!」

古鷹「加古、大丈夫!?」

提督「大破艦は後ろに下がれ!今はまだ修理を行う訳にはいかない!」

加古「当たっちゃったかー・・・」

山城「姉様、どうかご無事で!」

赤城「制空権確保!制空権確保しました!」

慌てた声で赤城が朗報を提督に通達する。

時刻は○九○○を指していた。

提督「制空権確保、了解。扶桑、偵察機から報告は?」

扶桑「たった今、付近に敵空母は発見できず、との報告が入りました。そろそろ敵空母が射程圏内です」

提督「わかった。空母機動部隊は第三、第四艦隊と共に鎮守府へ帰還せよ」

長良「帰りも気をつけますよ、皆さん、どうかご無事で」

名取「周囲半径15km程度、ソナーに潜水艦の反応なし。作戦続行問題なしです」

提督「了解、第四艦隊、第一艦隊と交代。扶桑、空母を一隻残らず沈めてやれ」

扶桑「皆、出ますよ!」

ビスマルク「やっと私達の出番ね」

扶桑「敵空母発見!」

提督「全門斉射、我々に歯向かったことを公開させてやれ」

扶桑「主砲、副砲、撃ぇ!」

全艦が、全ての弾丸を命中させる。

提督「弾着報告せよ」

扶桑「敵空母全滅、撃沈確認しました」

提督「これで作戦の一つ目の峠は超えたわけだな・・・。第一艦隊、帰投しろ、帰り道で瑞雲の回収も忘れるなよ。加古、山城は俺と合流、応急修理を行う」

扶桑「了解です。提督、御武運を」

提督「任せておきたまえ」

提督「夕立、出番だぞ」

夕立「待ちくたびれたっぽい!」

提督「第二艦隊、第二船速、単横陣をとれ。周回ルートをとるぞ、作戦通り、徐々に時計回りに航行してくれ」

夕立「了解、第二船速、単横陣!」

提督「これで終わらせてやる・・・」

提督の額はじっとりと汗ばんでいた。


○九○○。作戦海域洋上。

提督「今までに対峙、撃沈した潜水艦が、翔鶴ら空母機動部隊含めても十二隻。この海域のほとんどの潜水艦はもう蹴散らしたはずだ。残りはフラッグシップだけだな」

階下で加古と山城が応急修理を終え、帰路についた。

夕立「どうするっぽい?」

提督「奴らに魚雷を撃たせよう。総員増速、最大船速、一発目の先制雷撃を躱した後、ソナーで敵潜水艦隊の位置を特定、可及的速やかに排除する」

夕立「了解、最大船速!」


一三○○。

夕立「提督、折り返し点に到達したっぽい」

提督「作戦に変更はない、そのまま鎮守府への帰還ルートを辿りつつ敵潜水艦警戒を続ける」

夕立「ハズレっぽい・・・?」


一四○○。

夕立「もう三時間で鎮守府に」

言い終わる前に、提督が乗る指揮艦に報告がはいった。

水測員「提督、金属が岩場にこすれるような異常音を探知しました」

提督「擦れる音?機関音は聞こえないのか」

水測員「我々は重大な点を見落としていましたよ。提督、ここは対馬海流が通っていますよね」

提督「あぁ、そのとおりだが・・・」

水測員「敵は潮流に乗って無音航行していると思われます」

提督「なら、もう指揮艦の存在はバレたと判断したほうがいいな。こんだけ音をまき散らしてるんだから。それにしてもなぜ奴らは撃ってこないんだ」

水測員「こちらの速度は今は8knです。気づかれていないのかもしれません」

提督「俄には信じがたい推測だが、信じるしかあるまいな・・・」

だが彼らに考える暇など与えられていなかった。

水測員「敵潜水艦の音波発信を検知!どうしますか!」

提督「夕立!」

夕立「はい!」

提督「今の話を聞いていたな?」

夕立「聞いてたっぽい」

提督「合図で俺の艦が長十センチ砲を三基全て海中に一斉掃射する。敵の注意を引きつけてる間に夕立がソナーを打つ、敵潜水艦の位置を特定したら爆雷を投射してくれ」

夕立「て、提督が囮になるっぽい!?」

提督「一か八かやってみる」

夕立「でも、五月雨が「四の五の言わずにとっととやるんだ」

提督「死にはしないから安心してくれ」

夕立「・・・了解っぽい」

提督「第二艦隊転針、こちらへ接近してくれ。最大船速だ」

夕立「了解、転針、最大船速!」

提督「航海長、最大船速!砲雷長、撃て!」

砲雷長「了解、全門発射、撃て!」

勢い良く弾丸が水面を叩いた。

航海長「機関最大全速、夕立さん、後は任せましたよ!」

夕立「皆急ぐっぽい!」

提督「この戦闘で敵司令艦も巻き込めれば万々歳なんだがな」

副長「水中にいるのでは、敵潜水艦の種類の特定は困難を極めます。正直、撃沈したかどうかはわかっても・・・」

提督「わかってる。だがとりあえずここの潜水艦を叩くぞ」

副長「叩くのは彼女らですけどね」

夕立「指揮艦目視確認、ソナー反応あり、数四、距離約1200m!」

提督「時限信管六秒、射程に入り次第直ちに発射せよ!」

夕立「速度、上げるっぽい!」

水測員「魚雷発射音、複数、方位0-2-9!近いです!」

提督「面舵一杯、回避!」

航海長「面舵一杯!避けてくれ・・・っ!」

急制動で、艦体が傾いた。

水測員「魚雷回避成功、次弾が来る前になんとかしてくれ!」

夕立「爆雷射出するっぽい!」

敵潜水艦の魚雷発射管への注水が完了する前に、全潜水艦の撃沈が何とか成功した。

夕立「潜水艦、近くにはもういないっぽい!」

提督「冷や冷やしたぜ・・・」

水測員「こっちの台詞ですよ・・・」

夕立「提督もしっかりついてくるっぽい」

提督「残りの距離はまだそ四時間程度残ってる。最後まできを緩ませないでいくようにな」

夕立「そんなことわかってるっぽい!」


時間経過。午後九時。舞鶴鎮守府執務室。

提督「この鎮守府も手酷くやられたが、市街地の被害はゼロか・・・。それだけでも僥倖と思うべきだな」

五月雨「明日の秘書艦、誰でしょうね」

提督「五月雨、お前わかってるだろうが」

五月雨「あ、そうでした」

提督「ふん、白々しい。明日はお前が秘書艦だぞ」

五月雨「え、え?何でですか?」

提督「叙勲式だよ。元帥がお前も来いと仰っているからな」

五月雨「伊藤元帥、久しぶりですねぇ・・・」

提督「その時に俺のところに来た理由でも聞いてみるか」

五月雨「ですね、私も気になってましたし」

提督「佐世保鎮守府の奴らも金剛の鹵獲には成功したようだしな。いやー、これからどうなることやら」

五月雨「今さらっとすごいこと言いましたね。どうなってるんですかね、佐世保は」

提督「今のところは金剛への面会は岩崎中将しかやっていないそうだぞ」

五月雨「まぁ、そりゃそうですよね。独房に入れられてるんでしょうか」

提督「翔鶴が言うには、独房の壁は鉄鋼30cmでできてるらしいぞ。格子じゃなくて四方八方鉄鋼で覆ってるんだとよ」

五月雨「嫁に、そこまでできるもんなんでしょうか・・・」

提督「俺の知るところじゃない、佐世保は佐世保でうまくやるだろうさ。今日のところはもう寝よう。明日には飛行機が迎えに来る」

五月雨「お休みなさい」

提督「五月雨もよく寝とけよー」

六月十二日。東京。皇居内。午後一時。

五月雨「提督、礼装、似合ってますよ」

五月雨が小声で提督に話しかけた。

提督「馬鹿、喋るんじゃない。礼は言っておくけども」

それにしても五月雨はその服のままなんだな・・・。

提督「というか、これってそんな大壮な物をもらえるほどの功績なんだろうか・・・」

五月雨「一応提督も司令官なんだし、金鵄勲章ももらえますよそりゃあ」

提督「功一級ってお前、相当だぞ・・・」

天皇が準備を終えたらしいのを見て、五月雨も提督も、気をつけのまま直立不動の姿勢を取る。

緊張しすぎてそれ以降の記憶はほとんどないに等しかった。


時間経過&移動。皇居庭園にて。

伊藤「龍花君だな」

提督「伊藤元帥、お目にかかれて光栄です」

声をかけられるや、敬礼する。

伊藤「五月雨もよく頑張っているようだな。噂はよく聞いている。今回の戦績も、陛下は大変に喜んでいらっしゃった。もっと誇り給え」

提督「身に余る光栄です」

口ではそう言ったが、軍国主義の気配が復活した日本を提督はあまり好きではなかった。

戦後において、一時は防衛費が削減され、軍縮が始まり天皇はあと一歩で日本国の象徴的存在として君臨することになるはずだったのだ。

それが深海棲艦のせいで、政府内に隠れていた右翼の者達が力を持ち始めた。

連合国軍最高司令官総司令部も自国の安全を再優先してしまったがために、日本は瞬く間に以前の大日本帝国に戻ってしまった。

五月雨「伊藤元帥、お聞きしたいことがあるのです」

伊藤元帥が背を向きかけた所で、五月雨が口を開いた。

伊藤「なんだ?」

五月雨「伊藤元帥はどうして、私を舞鶴鎮守府に配属なさったのでしょうか?」

伊藤「理由はたしかに話していなかったな。なに、簡単な事だ」

伊藤「確かに五月雨の練度は高かった、水上艦への射撃、雷撃能力も評価するに値するものだった」

五月雨「はい」

伊藤「だが、水上艦への攻撃は戦艦に任せればいいだけの話だと思ったのだ。そうだろう?龍花君」

伊藤「横須賀鎮守府が火力艦主導に移るにあたって、艦隊の大きな改変をするときに、駆逐艦の存在は少し厄介だったのだ。駆逐艦は他の鎮守府が育ててくれればいい。大体、装甲の薄い駆逐艦など必要なのか?必要ないだろう?君はどう思う」

五月雨「っ」

提督「お言葉ですが伊藤元帥、駆逐艦は夜戦、対潜、高速性能において十全に運用価値があると私は考えております」

伊藤「圧倒的火力、圧倒的防御力、それ二つがあれば海戦など取るに足らんだろうが」

この老人、大艦巨砲主義のことで頭が固まってやがるのか?

提督「ですが、先の大戦でも空母機動部隊の有力さが重要視される中で、それは「我が艦隊を必要ないと言うか貴様は!」

元帥は明らかに気分を害していた。

提督「いえ、決してそのようなつもりでは・・・」

伊藤「あんな小口径砲がなんの役に立つ!?魚雷だってまともに当てられるものでもないのに、習熟しなければ当てられないなど言語道断!そんなことするならば大口径砲で砲弾を雨霰と降らせるほうが話しが早いだろう!」

伊藤「大和と武蔵はこの大日本帝国が建造した中で最高傑作だ。あれを圧倒する火力を持つ艦などこの世に存在しない!まだわからんのか!?」

その時、補佐官と思われる一が伊藤を呼び、渋々といった体でかれはそのばをあとにした。

提督「五月雨、あいつの言うことを真に受けるなよ」

五月雨「・・・私って、必要ないんでしょうか」

人目を憚ることなく、提督は五月雨をひしと搔き抱いた。

提督「そんなこと、あるわけがないだろう!大艦巨砲主義の時代はとうに過ぎ去ったんだ・・・!確かに戦艦が必要ないわけではない、戦艦の火力は信頼できる。でも、潜水艦を発見して、誰が速やかに排除する!?誰が高速で飛来する航空機を迎撃する!?駆逐艦の最大の長所は身軽に、高速で動き回って雷撃で敵艦船を沈黙せしめる点じゃないか・・・!軽巡洋艦も必要だが、彼女らは航続距離、火力、装甲で艦隊の目としての役割を担うべきなのであって、何でも屋じゃない!五月雨、君は必要なんだよ!」

提督は涙ぐんでいた。

五月雨「提督に会えて、本当に良かったです・・・」

提督「・・・帰ろうか」

五月雨「はい」

こんな戦争、さっさと終わらせたい。戦争で幸せになる人などいやしない。



六月十三日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

提督「あと秘書に来てないのは・・・・、ビルマルク、赤城、隼鷹、飛鷹、白露、夕立、涼風、村雨、春雨、かな?」

隼鷹「提督ー、起きてるかー」

提督「起きてるぞー」

隼鷹「起きてたのか・・・」

提督「何をするつもりだったんですかね」

隼鷹「なんか飛鷹が早く秘書艦やりたいらしくってさ、ついてきちゃったみたいだけど大丈夫?」

飛鷹「隼鷹!そんな事一言も言ってないでしょう!?」




本日はここまでです、ありがとうございました。

五月雨は押し倒しませんよ・・・。イエスロリータノータッチ。五月雨はロリではありませんがw

もしかしたら主語が抜けている箇所がある可能性があります・・・。

その際は質問等してくださって構いません。

元帥と五月雨はそれほど仲良くなかったのかな

>>846さんのお陰で気づきました・・・。次スレで少し番外編のような感じで五月雨と元帥の日常のようなものを書いてみますね。

少し日常に詰まりかけたどうも私です。

春雨と料理してほしいという提案は次投下で処理しますが、ただ、この娘もう少し書いてくれないかな!?というのがありましたら。

直下↓、お一人様募集します。

白露ですね、ありがとうございました

明日、投下します。時間帯はわかりません。

ここで少し恥ずかしいことを告白します。細かいことで申し訳ないのですが・・・w

実を言いますと、爆雷の時限信管の設定ですが、沈降速度を全く考えずに描写してました。奇跡的に、5~6秒程度であっていたのですが、これからは深度など描写を増やします。
出来る限りリアルに描きたいと思う故に、自白させていただきました(苦笑

訂正が多い本スレ。

飛鷹の口調ですが、勘違いしていました!敬語だと思い込んで艦これを開いてみれば、お嬢様だった!

今気づきました・・・。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時四十五分頃。

提督「おい」

隣で座っている五月雨の頭に手刀を叩き込んだ。

五月雨「あだっ。何するんですか!痛いじゃないですか!」

提督「しゃきっとしろよ。作戦行動は終ったにしても、一ヶ月は様子を見なきゃいけないんだからよ」

実際は昨日の元帥の発言が原因なのかも知れないが。

五月雨「痛い・・・。一ヶ月も?なんでなんですか?」

頭をさすりながら五月雨が尋ねた。

提督「俺らがやったのが司令艦じゃなかった可能性がある以上、一ヶ月様子を見て、何ら変化がないとわかるまで住民はここに戻ってこれないんだよ」

五月雨「そうだったのですか・・・」

提督「これだから潜水艦ってのは嫌いなんだ」

五月雨「そう思うのは多分敵も同じですよ。んー、うちも潜水艦ほしいですねー」

提督「いや、いらないだろ」

五月雨「私はほしいですよ?なんとなくですが」

提督「潜水艦って服装がきわどすぎるんだよ。伊号潜水艦とかやばすぎだろ。先生やばいだろ」

五月雨「そういう目で見る提督が悪いです!」

村雨「落ち着きなって五月雨」

提督の席の後ろに座っている村雨が話題を変えてくれた。

村雨「前も言ったけど、提督さんも本当に大変じゃない?着任したばかりなのに」

提督「忘れがちになるけど、一応これでも戦時中だからな。別にどうってことはない」

五月雨「戦時中、ですか・・・。敵は無尽蔵に沸いてきますから、終わりはあるんでしょうか、この戦争」

提督「いずれは終わるんだろうが、先が見えないのは同意だ。そろそろこっちも戦力増強して反攻に出る頃じゃないかなんて考えてるよ」

五月雨「でも、定期的に遠征隊が敵司令部中枢の捜索をしているんですよね?」

提督「横須賀鎮守府の最上とかの航空巡洋艦のことか・・・。何年も前からやってる割には成果は出てないみたいだぞ」

五月雨「さすがに巡洋艦だけで遠洋に出るのは危険ですから。仕方がないことですよ」

提督「補給艦も付き添う大規模偵察もそろそろやったほうがいいんじゃないかとも思うな・・・、うん・・・。というか!」

五月雨「な、なんですか」

提督「俺も重雷装巡洋艦が欲しい!」

五月雨「突然何を言うかと思えば、またそんなことを・・・」

提督「まさかまさかだが、加古と古鷹を改造すればいけるのでは?」

五月雨「賭けてもいいですけど本人たちが拒否しますよ」

提督「はぁ・・・、そうだよなぁ。戦艦から魚雷とか撃てたりしないのかね?」

扶桑「さすがに無理がありますよ・・・」

提督「そんなすぐに否定しないでくれよ」

扶桑「でも事実ですから」

提督「辛口ですなぁ。それよりも、隼鷹と飛鷹はどこいったんだ?」

五月雨「今日の秘書艦ですか?彼女たちならいつもの席にいるみたいですよ?」

提督「あれ、そうだったのか。秘書になるやつって大体俺の隣に来てたからさ。気づかなかったわ」

扶桑「隼鷹さんと飛鷹さんは、なんというか色恋沙汰には無縁に見えますよね」

提督「確かに、それは言えてる」

村雨「早く私の番来ないかなぁ」

提督「あと一週間もないんだから、それぐらい待ってくれよ」

村雨「それはそうなんだけどね」

間宮「提督、私のことも忘れては困りますよ」

間宮が赤城たちを連れて朝ごはんを運んできた。

提督「だれも間宮のことを忘れたなんて言ってないぞ」

間宮「提督のことですから、心配したんですよ」

提督「俺は痴呆症じゃないんだから・・・」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。

隼鷹「提督・・・、お酒持ってない・・・?」

提督「発言がアル中みたいになってんぞ」

隼鷹「だって!街の人がいないせいでここの鎮守府のお酒が品薄になってるのさ!毎日毎日節約して飲まなきゃいけないだなんてあまりにも惨めじゃないか!?」

提督「俺はそこまで言うほどお酒は好きではないから」

隼鷹「何本かぐらい持ってるんじゃないの?一本ぐらいでいいからわけて・・・?」

飛鷹「隼鷹、執務中なのよ?少しは弁えなさいよ」

提督「飛鷹の言うとおりだ。そんなんじゃ結婚すらできんぞ」

隼鷹「あー、結婚ねぇ・・・、結婚なんてするつもりないんだけどなぁ」

飛鷹「提督のこととか、どうとも思ってないの?」

隼鷹「だって提督は私たちの上司じゃないか。あんまりそういう目では見れないんだよねー」

提督「たまにいるよな。俺も別に悪いと思ってるとかそういうんじゃないけど、かっこいいと思ってしまう」

隼鷹「お、私の事かっこいいって言った?おお?」

飛鷹「隼鷹、口調に気をつけなさいって」

隼鷹「飛鷹は硬いなぁ。もっと柔らかく行こうよ

飛鷹「柔らかくって何よ・・・。そんなことはいいんです。提督、何か手伝うわ」

提督「お、そりゃ助かる。早速ですまんがこれを表の巡視兵に届けてきてくれないか」

飛鷹「二通、これは?」

提督「作戦で援護をしてくれた佐世保と呉に補償金を出すんだよ」

飛鷹「金額の方はどれくらいになるの?」

提督「すまん、さすがにそれは教えられない」

飛鷹「そうよね、ごめんなさい。じゃ、届けてくるわね」

提督「頼んだ」

飛鷹が出て行くのを見届けた隼鷹はなんとなく、提督の隣にいすを持ってきて座っていた。

視線を感じて提督が横を向くと、隼鷹が顔を背ける。

それを三回繰り返して、

提督「なんか俺の顔についてるのか?」

隼鷹「え?あ、いやぁ、綺麗な顔してるなぁとおもって」

提督「お、おう?」

隼鷹「な、なんでもない!忘れて!・・・それで、さっきから何を書いてるのさ?」

提督「作戦報告書だよ。公式作戦は大本営に報告書を提出することが義務付けられてるんだ」

隼鷹「ほー。ね、うちもなんか手伝えることない?」

提督「資材収支報告書と、搬入資材量、使用資材、残存資材、喪失資材報告書の照合でもしてもらおうか」

隼鷹「初っ端からめんどくさそうなものをぶっこんできた・・・」

提督「周りの艦娘から隼鷹と飛鷹の字は綺麗だって聞いたからできると思ったんだよ」

隼鷹「字の話じゃないんだけど・・・、ま、やりますかー」

しばらくして飛鷹が帰ってきた。

提督「遅かったな、なんかあったのか?」

飛鷹「退避命令の中で出歩いてる人がいたから、巡視兵が慌ててたのよ」

提督「安全のためにも、避難してくれてたほうがこっちとしては気が楽なんだがなぁ。暴動なんて起こされたら卒倒してしまいそうだ」

飛鷹「そうね・・・」

飛鷹は隼鷹を見ると、

飛鷹「帰ってから思ってたけど、隼鷹が真面目にやってるの久しぶりに見たわ」

隼鷹「失礼じゃないか!」

飛鷹「普段の行動を考えればだれでもそう思うわよ」

提督「今日のところの仕事はそんなもんだから、さっさと終わらせれば午後は自由にしてていいからな」

隼鷹「マジか!よっしゃ、隼鷹さん頑張るからね!」

飛鷹「提督、いいの?」

提督「たまにはゆっくりしたっていいだろう」

飛鷹「さっき警戒を続けろといってたのは誰でしたっけ・・・」

提督「覚えてない」

時間経過&移動。指揮艦「舞鶴」上。午後三時。

ぶらりと立ち寄った港にいた妖精に艦名を決めたといって、舞鶴に命名した。

舞鶴鎮守府の舞鶴をとっただけだが、こんなものでいいだろと思ったのだ。

甲板に立つと、

提督「結構空間空いてるもんだな・・・。もう少し埋め尽くされていたような気がしたのに」

長十センチ砲の砲身を眺めていると、

技主「提督ー!気をつけてくださいよー?」

下から他の技術妖精の報告を受けた主任が下から声をかけた。

提督「こんな所から落ちて怪我するほどばかじゃねぇよ・・・」

小声で言ってから、大丈夫だと返事をした。

舞鶴を見上げつつ、提督はしみじみとしていた。

提督「(の船だけで鎮守府の予算をいくら削ったか・・・)」

提督「舞鶴君、君には終戦まで頑張ってもらおうか」

さすがに返事が聞こえたと言うほど俺の頭はお花畑じゃない。

提督「来たはいいけど、ここで寝たらどこか痛めそうで怖いな・・・、でも冷たいから気持ちよさそうだな・・・」

結局自分の服を畳んで枕がわりにすることにした。

時間経過。同所。午後六時。

隼鷹「提督、こんなところにいたのかい?」

長い髪を海風に靡かせつつ、隼鷹が提督を起こした。

提督「いや、寝るつもりはなかったんだが・・・」

寝癖がついた髪を撫で付けつつ、提督が目を開けた。

隼鷹「枕まで作って寝る気満々じゃないか。こんな所で寝て、肌が大変なことになっても知らないからなー」

提督「 ・・・忘れてた。今何時かわかるか?」

隼鷹「もう六時だよ。みんな食堂に集まってるのに提督がいないから心配してたんだ」

提督「眠いぜ・・・」

隼鷹「ほら、はやくしなって。世話の焼ける提督を持ったわほんとに」

内心その発言に違和感を覚えたが、寝起きの頭ではわからなかった。


移動。舞鶴鎮守府食堂。午後六時十分。

提督「遅れてすみませんでした」

食堂の前に立っていた間宮に頭を下げた。

間宮「早くしてください」

提督「(おうふ、怒ってらっしゃる・・・)」

五月雨「もう!提督待ちですよー」

技主「だから気をつけてっていったじゃないですか」

提督「なっ、そういう意味じゃなかったよな!?」

五月雨「喋ってないで早く座ってください!」

提督「す、すまん」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時。

提督「もう九時になったのか」

飛鷹「一日って早いわよね」

隼鷹「あたし達は風呂入ってくるけど、どうする?提督も来る?」

飛鷹「隼鷹!?」

提督「行く訳ないだろ・・・」

隼鷹「いいじゃんたまにはさー」

提督「いや良くねぇから!やめろよ、他の娘が着たらどうするつもりなんだよ」

隼鷹「それは考えてなかった、はっはー」

提督「はっはーじゃねぇから・・・。とっとと入って来い。俺は後ででいい」

六月十四日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

提督「そろそろ駆逐艦が来る頃では・・・、夕立に賭けるぞ俺は」

誰かがドアをノックした。

提督「夕立だなっ!?」

夕立「なんでばれたっぽい!?」

夕立が入ってきたのを見ると、

提督「勝ったっ」

夕立「え!?」

提督「今日の秘書官が誰かを当てる賭けをしてたんだ」

夕立「誰とっぽい?」

提督「え?」

夕立「え、じゃなくって、誰と?」

提督「俺しかいないじゃないか」

夕立「・・・」

提督「いやーにしてもやっと夕立の番が来たんだなー」

提督はなかったことにした。

夕立「やっとっぽい!」

夕立もとりあえず話の転換についていく。

提督「夕立はこういう時気が利くから好きだぞ」

夕立「?っぽい?」

提督「さて、今日も一日頑張ろうじゃないか、夕立君」

夕立「頑張るっぽい!」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時五十分。

夕立「お腹すいたっぽい!」

さっきから三回ほどこのフレーズを聴き続けている。

提督「夕立は犬か何かなのか?」

夕立「違うっぽい!犬じゃないっぽい!」

提督「そんなことはわかってるよ・・・」

五月雨「私、同じこと前にも言われました」

五月雨が非難の視線で提督を見た。

提督「え?いつだ?」

五月雨「覚えてないならいいですよーだ」

夕立「?五月雨は夕立と同じっぽい?」

五月雨「同じっていうのはちょっと」

夕立「同類っぽい?」

五月雨「変わってないから」

提督「なんだなんだ、漫才か?」

突っ込みのつもりで頭をたたこうとした手を夕立が掴んだ。

夕立「提督は今日一日ずっと夕立と一緒っぽい!」

五月雨「提督は渡さないから」

電「さ、三角関係なのです・・・?」

暁「三角形どころじゃ絶対にすまないと思うけど」

提督「訂正しておくけど、俺は誰のものでもないからな、そこんとこ間違えるなよ?」

五月雨「えー」

提督「なんだよ?じゃあ俺は五月雨のいったい何なんだよ?」

五月雨「えっ」

脇を向いてしまった。

提督「えー・・・」

赤城「提督は皆の提督ですよ」




二時間後ぐらいに再び投下開始します。


配膳しつつ赤城が答えた。

提督「それはそれでなんかむずがゆいな」

間宮「じゃあ提督は私のものになりたいですか?」

提督「いやいや、なんでそうなるんだよ」

五月雨「否定する割にはまんざらでもなさそうな顔ですね提督」

提督「もう俺は何も言わないぞ。言ったら泥沼にハマるのは俺でもわかるからな。朝ごはんだ朝ごはん」



時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。

提督「白露型といい暁型といい俺のひざに乗るのがはやりか何かなのか?」

夕立「でもこの姿勢じゃ提督の顔が見えないっぽい」

提督「だからって向きを変える必要はないから。ただでさえ捗ってないのにこれ以上はやめてくれ」

夕立「じゃあどうやって顔見ればいいっぽい?」

提督「自分で考えてくれ」

夕立の頭を下に押しつつ、身を乗り出して書類に署名する。

夕立「そういえばこの前響が執務室には秘密があるっていってたっぽい」

提督「・・・」

夕立「露骨な沈黙・・・、何があるっぽい!?」

提督「資材減ってるなぁ、どうしたもんかね」

夕立「答えるっぽい!」

提督「俺の膝の上からどいてくれたら教えてやるよ」

夕立「それは無理な話っぽい」

提督「どくぐらいしてくれたっていいだろ。隣に座るぐらいにしてほしいんだ」

夕立「別に知りたくもないからここに座ってるっぽい」

提督「性質悪いなこいつ」

夕立「こいつ呼ばわりはひどいっぽい!」

膨れっ面の夕立に提督はため息をついた。

提督「はいはい、わかった、わかったからせめて静かにしてて・・・くれ・・・?」

夕立「どうしたっぽい?」

適当に取り上げた手紙に、差出人が提督の妹の名前になっている封筒があった。

提督「・・・完全に頭の中から消え去ってた」

手紙にはこうあった。

『今朝、お兄さんが金鵄章功一級を受賞されたと工場長から聞きました。
 この度は受賞、おめでとうございます。
 祝辞はここら辺にしておいて、本題に入ります。
 何時の日かお約束した一ヶ月以内にこちらに来るというお約束ですが、すでに半月が過ぎていることをお知らせしようと思っていたのです。以上です』

提督「行かなきゃ・・・」

夕立「どこにいくっぽい?」

提督「いや・・・、製油所の話なんだけどね。誰か連れて行ったほうがいいのかな・・・。舞鶴なら24人ぐらいなら泊められるか」

しかし正直水上船で製油所まで行くのはかなりの危険が伴うし、鎮守府を空にする訳にはいかない。

提督「俺だけで飛行機で行ったほうがいいかもしれないな」

夕立「今日行っちゃうっぽい?」

提督「いや、来週ぐらいに行くことにするよ」

夕立「妹さんはせっかちっぽい」

夕立が封筒を見て眉をひそめた。

夕立「・・・むむ、永野琉璃、これなんて読むっぽい?」

提督「ながのるり。腹違いだから苗字は違うんだ」

夕立「可愛い名前っぽい!」

提督「外見はな・・・」

夕立「製油所に帰るのは来週にしても、一人でいくっぽい?」

提督「誰か一人を選べって言われても困るんだよな。一人選んだところでほかの皆が嫌がるだろうし」

夕立「確かにそれもそうっぽい」

提督「昼食のときにでも皆に言うことにする」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午後十二時三十五分。

提督「そんなわけで、来週から二日か三日ほどここを離れることになった」

五月雨「引き止めるようで悪いんですが、その時に襲撃が起きたらどうするんですか?」

提督「製油所から指示する」

五月雨「誰も連れて行くつもりは無いと?」

提督「一人だけって言ったらまためんどくさいことになりそうじゃないか」

夕立「提督、浮気はダメっぽい」

提督「浮気なんかしねぇよ、家族だぞお前」

五月雨「まぁ家族なら大丈夫ですね」

提督「俺そんなに女ったらしに見えるか?え?」

扶桑「ただ提督が無自覚なだけです」

提督「・・・とにかくそういうことなので、覚えておいてくれ」

村雨「ところで、あと秘書艦で残ってるのは誰なの?」

提督「夕立は今日やったとして」

夕立「むふふ」

夕立が提督に体を寄せつつ、五月雨がそれを咎めるような視線を投げている。

提督「あとはプリンツ、はやったんだったな。ビスマルクと、村雨だろ、それで
、あれ、扶桑やったっけ?」

扶桑「やっていませんよ・・・」

提督「・・・すまん。扶桑と、赤城、白露、涼風、春雨、間宮の八人だな」

春雨「早く秘書やりたいです・・・」

涼風「あたいは別にいいんだけどねー」

五月雨「涼風、やりたくなかったの?」

涼風「やりたいわけでもやりたくない訳でもないっていうかさ」

提督「別にやりたいってわけでもないなら無理にやる必要はないぞ?」

涼風「実際五月雨といれれば楽しいかんね。あ、別に提督のことが嫌いとかそういうわけじゃないよ!?」

提督「取り繕わなくてもいいよ別に。逆に傷つきそうだわ」

五月雨「私は嬉しい、のかな?」

提督「なら涼風は辞退するとして、そうなればあと七人だ」

赤城「秘書になったらなんでもしてくれるんですよね?」

赤城が期待に満ちた目で提督を見つめる。

提督「そんなことは一言も言った覚えはないし約束するつもりもないから安心してくれ」

赤城「そんな!?ひどいです!楽しみにしてたのに!」

提督「じゃあ赤城も辞退で「いえ!」

赤城「秘書はやらせていただきます!」

提督「騒がしいやつだな・・・。となれば丁度最終日の娘だけ一日我慢してもらうことになりそうだ」

動揺させて秘書艦を一人でも特定しようという提督の作戦は果たして、全員徹底して無表情を決め込んだせいで失敗に終わった。

提督「(悪手だが、餌を吊り下げてでも割り出すぞ。相手によって対応を変えなければ)」

提督「複座機で行くっていう手もあるがな・・・」

得てして話題になっている人物は、話し手に意識を集中するものだ。

こうして秘書艦として専任されようとしている娘ならなおのこと。

提督の小さな声で言った言葉に間宮が反応した。

提督「(扶桑ならまだよかったが・・・、間宮となるとなんだか可哀想だな・・・)」

もし連れて行くのだとするなら二日か三日、一日秘書としては過剰な日数を担当することになる。

提督「そうだな・・・、やっぱり行くのはやめておこう」

扶桑「あれ、どうしてですか?」

提督「警戒期間、一ヶ月経つまではやはり離れる訳にはいかないな。我ながら少し早まった計画を立てていたよ」

春雨「でも一ヶ月たったら、お一人で行ってしまわれるのですよね?」

提督「そりゃあな、仕方ないじゃないか。皆で行くわけにもいくまい」

間宮「そこはしょうがないですよ、皆さん。行かせてあげましょう?」

ビスマルク「しょうがないわね・・・」

春雨「ですかね・・・」

夕立「一人ぐらいなら問題ないっぽい!」

だが夕立は納得出来ていなかった。

提督「全くうるせぇなこの口はっ、もう決まったことなんだから諦めろっ!」

口を手で塞いで黙らせる。

夕立「んんんんん!」

提督「うわっ馬鹿!手舐めんなよ!」

夕立「拭かせないっぽい!」

反射で離そうとした手を夕立が全力で掴んだ。

提督「やめてくれ!さすがに唾は汚いって!」

夕立「マーキングするっぽい!」

提督「夕立、離してくれ!拭かせてくれッ!」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。

夕立「提督にマーキング完了っぽい」

提督「ふざけんじゃねぇよ・・・」

トイレにいく名目で石鹸で洗っておいたが・・・。

夕立「でもでも、一ヶ月後には間宮さんと結婚して帰ってきてもおかしくないっぽい!」

提督「そんなことあるわけないだろうが」

呆れた、と提督は魚のような目で夕立を睨んだ。

夕立「間宮さんは外見に反して肉食系っぽい」

提督「やましい気持ちなんかないから気にしないでくれ。いいからほら、仕事手伝え」

夕立「っぽい?」

提督「仕事するぞ」

夕立「仕事するっぽいー」

提督「さっさと片付けてしまおう」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午後五時五十五分。

白露「ど、どしたの、提督?」

提督「夕立は仕事を量産するだけの産廃野郎だ・・・」

白露「夕立、あんた何したの!?」

夕立は何処吹く風と提督にひっついている。

五月雨「はぁ・・・」

五月雨のほうが練度は上だが、年上だから声をかけづらいのだろうか。

提督「いい加減離れろって、ゆっくりさせてくれ」

夕立「たった一日の辛抱っぽい」

提督「されど一日、だ」

夕立「そんなこと言って!五月雨は毎日こうしてるっぽい!」

提督「してねぇよ・・・、五月雨は夕立みたいなベッタリな性格じゃないの」

離そうと手を伸ばすと、手自体を口に咥えられそうになった。

提督「くっそ!わかったぞ!?お前は犬か!?犬なんだな!?そうなんだろ!?白状しろ!化けの皮を剥がしてやる!」

夕立は勢い良く揺さぶられつつ、

夕立「私は人間っぽい~」

提督「いいや人間じゃないね!所構わず舐めようとするあたりおよそ人間の取る行動とは思えないね!」

五月雨「舐めっ、夕立、なんてことを・・・」

夕立「これは私なりの愛情表現っぽい!」

提督「犬じゃねぇか!」

間宮「はいはい、食堂で暴れないでくださいねー」

夕立「ご飯っぽい!」

一瞬で注意がそれた。

加賀「赤城さん、他の人のお茶碗からご飯をとって自分のに盛りつけないでください。せっかく均等に分けてあるんですから」

赤城「ば、ばれたっ」

加賀「お代わりなんてあとでいくらでも出来るんですから、我慢して下さい」

赤城「またそうやって私を食いしん坊扱いするんですね!?」

加賀「少なくともこの鎮守府の中ではよく食べる方ですよ」

赤城「違います!加賀さんだって私と同じぐらい食べてるじゃないですか!」

加賀「そっ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

赤城「否定するんですか!?ひどいです!加賀さんは私の味方だと思ってたのに!ひどいです!」

加賀「あ、いや、そんなつもりは・・・」

赤城「もう加賀なんて知りませんから!」

加賀「呼び捨、えっちょっ、赤城さん待ってください!そんなつもりじゃなかったんです!」

間宮「なんだか今日はやけに騒がしいですね」

盆を受け取りつつ、

提督「今日、も、騒がしいんですよ」

間宮「そうでしたね・・・」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時。

夕立「あと一時間で終わっちゃうっぽいー」

提督「せいせいするわ・・・」

夕立「乙女に向かってそれはひどいっぽい!」

提督「お前改二になったら犬になりそうだよな」

夕立「尻尾なんか生えてこないっぽい!」

提督「冗談と本気の区別くらいつけろよ・・・。わからんのか?やっぱり犬か?犬なんだろ?」

夕立「夕立は人間っぽい!」

提督「次の改装でお前に尻尾と耳を生やすように工廠に言っておく」

夕立「そ、それはやめてほしいっぽい!」

提督「いっそ犬になってくれたほうがこっちも吹っ切れるんだが」

夕立「提督の都合を押し付けてほしくないっぽい!」

提督「その台詞、そっくりそのままお前に返してやるよ」

六月十五日。舞鶴鎮守府執務室。午前五時半。

提督「・・・」

扉の傍に提督は隠れていた。扉が開けば、入って来る者からは死角になる。

ゆっくりと、執務室の扉が開いた。

提督「(今日は村雨か・・・)」

村雨のツインテールが揺れている。

村雨「起きてるのかな・・・、皆、五時には起きてるって言ってたけど・・・」

村雨「・・・あれ?」

私室に入り、提督の姿がどこにも見当たらないのに気づいたようだ。

提督「(・・・あ、この後どうするか全然考えてなかった)」

普通に振り向いた村雨は、特に驚いた様子もなく、

村雨「提督、何してるのかしら?」

提督「なんでもない、忘れてくれ」

村雨「もしかして私の事驚かそうとしてた?」

提督「いや、なんでもないんだ」

村雨「ふーん?」

提督「な、なんだよ」

村雨「なんでもないけど?」

提督「はぁ・・・、白露型って変なやつ多いと思わないか?」

村雨「え、それ敢えて私に言う必要ある?」

提督「涼風はなんか普通の活発な女の子って感じなんだけどな。涼風ぐらいしか普通の女の子、白露型にいないんじゃないかまでいく」

村雨「えー・・・」

提督「とりあえず食堂行こうか」

村雨「はーい」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時半。

夕立「村雨、羨ましいっぽい!」

食べ終わった席で、夕立が言い始めた。

村雨「昨日の私よ、それ」

提督「秘書はあと五人かー、あと少しだのー」

提督は独りまったく違うことを考えていた。

村雨「ねぇ、女の子の前で他の娘の話しないでくれない?」

提督「そんな怒るなって、ただ残り人数を数えただけじゃないか」

村雨「提督、まさか速く終わって欲しいなとか思ってない?」

提督「え?」

本心からそんなことを思ったことはなかった。

村雨「思ってない?」

提督「思ってない、それは誤解だ、断言できる」

村雨「そう?」

提督「断じて、速く終わって欲しいとは思ってない。変な誤解を生むのはやめてくれよ・・・」

村雨「ま、今日一日は提督は私のものってことよね?」

提督「物って、所有権が移動するとかそういう類じゃないだろ?」

村雨「五月雨が独り占めしてた期間の分、全部凝縮しますから」

語尾に音符がつく勢いだ。

提督「俺のできる範囲内でしかやらないからな。無茶ぶりとかは無視するぞ」

村雨「わかってるわかってる」

夕立「村雨、提督に変なことしたらゆるさないっぽい!」

提督「夕立も十分変なことしてたぞ、忘れんなよ?」

村雨「えー、あんなことしてた夕立の頼みは聞けないなー」

夕立「約束してほしいっぽい!」

白露「もう、ほら夕立、もういいじゃない。行こ」

夕立「んーーー!」

白露が引きずられていった。

提督「さて・・・」

食堂には誰もいなくなった。

提督「演習もやっていかなければならんな。いつまたこの前のようなことが起こるとも限らないし」

村雨「ねぇ、聞いていい?」

提督「ん?」

村雨「深海棲艦って、やっぱり総司令官というか、元帥みたいな人っているのかしら」

提督「いきなりだな」

村雨「いいじゃない、たまには」

提督「そうな、少なくとも俺はいてほしいと思うよ」

村雨「どうして?」

提督「司令官がいないなら、この戦争に終わりはないことになるからだ」

村雨「それだけ?」

提督「深海棲艦が二年以上生産され続けている以上、そろそろ終わりは来なければならない。日本も精神的に疲弊し始めてる頃だろうしな」

村雨「来なければならないって、私たちの都合じゃどうにもできないよ」

提督「艦娘たちだって、このまま守りに徹し続けるわけには行かないって事ぐらいわかってるはずだ。必ずいつか、奴らは攻めに来るぞ」

村雨「攻めにって、・・・どこに?」

わかっているだろう答えを村雨は聞いた。

提督「弄んで、弄びつくして疲弊させた上で、日本を攻めに来るつもりなんじゃないか。深海の奴らは。俺はそう踏んでる」

村雨「その為にも、司令部を見つけないとってこと?」

提督「そういうことだ」

小さく微笑んで村雨の頭をなでた。

提督「部屋に戻ろう」

村雨も提督と一緒に席を立った。

村雨「司令部、もしかしたら海底にあったりして」

提督「縁起でもないこと言わないでくれ。それじゃあ一生終わりそうにないじゃないかよ」

村雨「冗談よ」

執務室前に到着したところで村雨が言った。

村雨「ねぇ、もしこの戦争が終わったら私たちってここに住めると思う?」

提督「舞鶴鎮守府にか?」

村雨「そうそう」

提督「たいていの鎮守府は跡地とかで展示されそうだが、まぁ土地ごと買い取ればいけるんじゃないか?」

村雨「ほんとに?」

提督「俺の口からあんまり言えるようなことじゃないんだけどな」

村雨「楽しみにしちゃってもいいのかしら」

提督「・・・期待するだけなら誰も咎めないだろ」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前十時。

静かに書類仕事を片付けていると、村雨があっと声を上げた。

村雨「そういえば春雨から伝言を頼まれてたの」

提督「なんて?」

村雨「私が秘書になった日は、一日中空けておいてほしい、だって」

提督「理由は何か話してたか?」

村雨「司令官とお料理したいんです!って言ってた」

提督「別に料理ぐらいならかまわないけど、秘書になる日がわからないのに一日あけろってのはなかなかとんでもないこと言うもんだな」

村雨「春雨はそういうところあんまり頭回らないから」

提督「どっちにしろ暇だから問題ないって言っといてやってくれ」

村雨「はいはーい」

会話が途切れて、しばらく仕事を続けていた村雨が

村雨「・・・暇ね」

提督「それは多分村雨だけだぞ」

書類から顔を上げずに提督が言う。

村雨「そうだ、次の演習、誰を相手にするの?」

提督「潜水艦にしようと思ってた所だ」

村雨「潜水艦ねぇ」

提督「さすがに潜水艦への攻撃はもう俺が指示すべきじゃないからな」

村雨「潜水艦の深度とかを詳しく把握できるのは艦娘だけだしって?」

提督「そういうのもあるし、潜水艦をソナーで発見せずに音で索敵する腕も必要な頃だ」

村雨「それはさすがに九三式じゃ難しい気がするけど」

提督「今のところ工廠が精度を上げるために改造してくれているところだ。それにこの書簡を信じていいなら零式水中聴音機がそろそろ来るはずだ。重巡以上じゃないと搭載できないようだが」

極秘と銘打たれた紙を掲げて見せた。

村雨「零式・・・、響きはかっこいいわね」

提督「それなりに性能も上がってるし、有名無実化はしないんじゃないかね」

村雨「だといいけど」

提督「加えて魚雷の回避運動も練習しておきたいしな。あー、やること結構あるんだよなぁ。やっぱ提督って忙しいわ」

村雨「魚雷の回避ってひたすら練習するかないのが嫌なのよね」

提督「後半は無視か・・・。確かにそこなんだよな、一番の鬼門は戦艦なんだよ。小回りがきくわけじゃないし」

村雨「よく小説とかで、錨で無理やり方向転換とかやってみたら?」

提督「深度が700mぐらいあるところじゃそれは無理だぞ。それぐらいわかるだろう」

村雨「錨の長さってこと?」

提督「当たり前だ」

村雨「深度700以下って、国土周辺とかしかないってことになるのね」

提督「大陸棚もあるけどな、当てに出来るほど広くない。錨を使用した回避はできるとわかってる時じゃないと駄目なんだよ」

村雨「提督も色々考えてるのねー」

提督「これでも司令官だからな?」

村雨「こうしてるとたまに忘れそうになるのも無理はないと思わない?」

提督「知らんわ・・・。そうだ、もう今のうちに電話しておくか」

番号を押して、呉鎮守府に電話をかけた。

長月「呉鎮守府司令官補佐の長月だ」

すぐに受話器が取られる。

提督「舞鶴鎮守府司令官龍花だ。先生に代わってくれないか」

長月(龍花提督から電話だ)[小声です]

先生「どうした、どうせ演習だろうから言っておくが来週からなら空いてるぞ」

提督「その通りです。うちの娘達に対潜練習をさせたいんですよ。そのことで先生の潜水艦と演習を行わせていただけないかと思いまして」

先生「うちの艦に標的艦になれと言いたいわけだ」

提督「聞こえの悪い言い方はよしてくださいよ・・・」

先生「日時は?」

提督「ということは、引き受けてくれるんですね?」

先生「だから日時を聞いているんだろうが」

提督「来週、六月、そうですね・・・二十五日とかどうでしょう」

先生「六月二十五日だな、わかった。準備しておこう。場所はそっちの演習場で問題ないな?」

提督「問題ありません」

長月(伊19達が承認してくれると思うか?)

先生「この前も戦艦三隻を沈めたばかりだ。あの機嫌の良さならなんでも許してくれそうだがね」

提督「それでは、失礼します」

提督「・・・昼食の時にでも知らせておこう」

村雨「一本とかの魚雷ならまだ避けられるけど、三射線とかになると難しいと思うのは私だけかしら」

村雨が悩んだ風に言った。

提督「理屈で言えば、増速かその場で取舵か面舵をすれば大抵は回避できる。でも複数本の場合は、敵魚雷と水平に船を動かして祈るしかないかもな」

村雨「そう考えれば重雷装艦は恐怖よ・・・」

提督「確かに、二十本の魚雷を扇状に撃たれたら回避はほぼ不可能だわな。まぁ敵にそんなやつはいないだろう」

村雨「さぁ、わからないわよ?」

提督「魚雷を撃つ戦艦までいるのに、これ以上はやめてほしいものだ」

村雨「なんにせよ、とりあえずは単独魚雷を確実に避けられるようにしなきゃってことね」

提督「どうにかして魚雷を迎撃する特殊兵装でも開発されないかな、欲しいわ」


村雨「どっかの提督は爆雷で迎撃したことがあるそうだけど?」

提督「あれは演習だからな。実践でやったら誘爆で甚大な被害を被る可能性があるからもう二度とやらんぞ」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午後十二時半。

提督「そんなわけで、二十五日に決まった」

五月雨「二十五日ですか」

提督「ん?何か予定でもあったか?」

五月雨「いえ、ただ言ってみただけです」

提督「そうか。今度の演習は西号作戦のようなことも想定した上でやっていく予定だ」

白露「魚雷の回避練習は重要だよねー」

提督「だな」

白露がうんうん頷いている。

提督「そういうことだ。以上解散ということで」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後四時頃。

提督「六月も中盤に差し掛かり・・・、徐々に蒸し暑くなって来ている・・・」

村雨「もう少し冷房の温度下げる?」

提督「頼む」

村雨「今日、気温何度って言ってたの?」

提督「二十五度は超えてるはずだ・・・。紙が手にくっつくのどうにかなんないのか、くそ!」

村雨「私としては、この時期に作戦行動はあんまりとってほしくないかなぁ。提督の乗ってる船は冷房設備が在るみたいだけど」

提督「お前らはずっと海上水飛沫上げながら突っ走ってるんだから、そこまででもないんじゃないのか?」

村雨「余計なこと考えてないで仕事してください」

提督「都合が悪くなったら撤退か・・・、ふぅ・・・。冷やし系の物が食べたいな・・・」

村雨「そうめんとか食べたいかしらね」

提督「そうめん、そりゃいいな」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午後六時。

提督「蕎麦・・・だと・・・」

五月雨「蕎麦ですねぇ」

提督「いや、蕎麦でも十分だ!そうめんのほうがよかったけど!」

間宮「もう暑くなってきましたからそろそろかなと思って蕎麦にしました」

村雨「私は、さっきはああ言ったけど、どっちかっていうとそばのほうが好きかな」

提督「そうか?確かに蕎麦も歯ごたえがあっておいしいっちゃおいしいか」

村雨「そうめんってあんまり食べてる感じがしないきがしない?」

提督「そうかねぇ・・・?」


時間計か&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後九時。

村雨「教えておいてください!って言われたから教えてあげる」

提督「は?何を?」

静かに作業していた中で突然村雨が口を開いた。

村雨「明日は秘書は春雨なの」

提督「そうなのか」

村雨「だから一日空けといてくれって言ってた」

提督「俺がいつでも暇だってことは言ったんだよな?」

村雨「明日しか空いてないって言っといた」

提督「おま、なんてことを言うんだ!春雨が可哀想じゃないか!」

村雨「・・・春雨の困った顔を見たい気持ち、提督ならわかってくれると思ったんだけどなぁ」

提督は村雨とがっしり握手した。


六月十六日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時半。

提督はまた扉の傍に隠れていた。

春雨「失礼しまーす・・・」

そこに春雨が入ってきた。

提督「(ん?そういえば俺が艦娘に起こされる習慣はいつからついたんだろうか)」

春雨が提督に背を向けて歩き出した所で、春雨をがしっと抱え上げた。

春雨「ひゃっ!?」

提督「いやぁ春雨は可愛いなぁ!すまん、今日は秘書が春雨だって言うから早めに起きてたんだ!」

春雨「し、司令官、離しっ、苦しいですぅ・・・!」

提督「おおすまんすまん。つい抱きしめすぎてしまった」

でも抱っこの体勢は継続するようだ。

春雨「起きてるんだったら言って欲しかったです・・・」

提督「うわ、待て、悪かった!そんな泣くほどとは思わなかったんだ!すまん!」

春雨を前に抱え、涙で潤んだ目を見つめる。

提督「(か、可愛い・・・!こんな時でもかわいい!)」

春雨「もう、しないでくださいね・・・?」

提督「おう絶対にしないぞ」

今度また秘書にしようと心に誓った。

春雨「もう少しこのままでいいですか?」

提督「抱っこしたままで食堂まで行くのか?」

春雨「違います!やめてください!」

提督「なんだ・・・駄目なのか・・・」

春雨「あぅ・・・」

ここらへんでようやく提督が正気に戻った。

提督「・・・!はっ俺は一体何をっ。春雨、下りたくなったら言ってくれていいからな!」

提督が扉の取っ手に手をかける。

春雨「なんで扉開けるんですか!?」

提督「下りるか!?」

春雨「違います、抱っこは、このまま、でいいですけど・・・。って、戻ってください!」

提督はそのまま廊下を歩き出す。

春雨「待ってください!へ、部屋に!部屋に戻ってぇ!」

提督「(下ろしてくれとは言わないんだな・・・)」

春雨「恥ずかしいですからぁ!戻ってぇ!」

響「司令官?」

トイレに行こうと着替えて来た響が丁度その場に居合わせてしまった。

提督の足が止まる。

響「春雨が嫌がってるのに、何をしてるんだい?」

提督「・・・春雨?」

春雨「・・・はい」

提督「悪かった」

春雨「いえ・・・、私も、嫌じゃなかったですから・・・」

提督「響、このことは誰にも、あ、響?」

響はもうそこにはいなかった。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時。

隣りに座った春雨はずっと顔を赤らめたままだった。

五月雨「最低です」

春雨「落ち着いて?司令官も謝ってくれたし、その・・・、嫌ではなかったし・・・」

五月雨「春雨は甘いって!提督にちゃんと言わないと!」

春雨「もう二度とやらないって言ってくれたよ?」

提督「二度とやらないぞ」

五月雨「絶対やりますね、その顔は。わかりますよ?」

提督「や、やらねぇよ・・・?」

顔を逸らしてしまった。

春雨「まぁまぁ・・・、それはそうと、司令官!」

提督「どうした?」

春雨「ちゃんと約束、お願いしますね!」

提督「おう、わかってるぞ」

春雨「にひひ」

春雨が照れたように笑った。

・・・対して五月雨は完全に不貞腐れてしまった。

提督「すまんすまん、悪かったよ」

今日はすまん、と悪かったしか言っていないような気がする。

五月雨「笑いながら言ってちゃ説得力ありません!」

提督「なんだ?全くどうしたっていうんだ?五月雨らしくもない」

春雨「五月雨も秘書やりたいの?」

五月雨「ち、違うし!」

提督「あと四日の辛抱だから我慢してくれ」

五月雨「だから違いますって!」

提督「正直になれよ」

五月雨「もーーー!」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前九時。

提督「で、何を作るかはもう決めてあるのか?」

春雨「はい!」

提督「何を?」

春雨「春巻きをつくろうと思ってるんです!」

提督「春雨じゃないのか?」

春雨「どうせならもう少し工夫をこらしたものがいいかなと思ったんです」

提督「春巻きか・・・なにげに食べたことないな」

春雨「絶対一回は食べたほうがいいですよ。美味しいと思ってもらえると思います!」

提督「そんなにおいしいのか春巻きってのは。それで?昼の分なのか?それとも夜?」

春雨「私は一応夕食に出すつもりでいます」

提督「なるほど、じゃあ作り始めるのは午後ってことだな?」

春雨「そういうことです!」

提督「材料は?」

春雨「間宮さんが、今冷蔵庫にある材料で十分足りるけど、春雨シート?だけないって言ってました」

提督「え、どうするんだそれ」

春雨「え?」

提督「春雨シートなんて買いにいけないぞ。街は今誰も居ないんだぜ?・・・いや、いい考えがある」

春雨「考えですか?」

内線で巡視兵詰め所を呼び出す。

巡視兵B「はい、龍花提督。何か御用でしょうか」

受話器の口を手で塞ぎ、

提督「いいか春雨。春雨シートが欲しいですって言うんだ。いいな?」

春雨「私が言うんですか!?」

提督「いいからいいから」

春雨「は、はい、わかりました」

巡視兵B「龍花提督?」

春雨「あ、あのっ」

巡視兵B「は、春雨さん!?どうかなされましたか!」

電話の向こうでどよめきが広がるのを感じて、春雨が不安そうに提督を見上げる。

提督(大丈夫だ)

春雨「今晩、春巻きをつくろうと思ってて」

巡視兵B「はい!」

春雨「春雨シートだけ、材料が足りないんです。でも、街に買い物しに行くわけに行かないし、鎮守府からあんまり離れるわけにも行かないし・・・」

巡視兵B「買いに行けばいいんですね!?」

春雨「できるんですか・・・?」

巡視兵B「隊長!行ってきてもいいですか!」

巡視兵A「春雨さんのためなら仕方あるまい!急いでいってこい!」

巡視兵D「お、俺もついていかせてくれ!」

巡視兵B「すぐに買いに行ってきます!待っててください!」

春雨「ありがとうございますっ!」

巡視兵B(っしゃあ行ってくるぜぇ!)

春雨が嬉しそうに受話器を提督に返した。

提督「な、うまく行っただろ?」

春雨「でも、結構遠いのに、何で皆あんなに喜んでたんでしょうか?」

提督「春雨だからだよ」

春雨「?どういうことですか?」

提督「いいや、気にしなくていい。今のままが一番だ」



本日はここまでです。ありがとうございました。

春雨は天使です。異論は認めません。春雨は天使です。

皆さんからコメントをいただけると嬉しいですね・・・、にやけそうです。

さて、目下鋭意制作中ですが、おそらく中途半端に1000レスまでいかないと思います。
なので一区切りついた所で1日程、HTML提出を待って質問か絡みなどでも受け付けようかなと思っています。

お伝えすることは以上でありますっ

アップデートにビビって思わず声をあげて笑ってしまいました・・・。
あれ?五月雨の水着は?

明日、投下します。時間帯はわからないです。

申し訳ありません、投下中止です。

読み直しを図ったのですが、再度手直しを行います。今日の投下は中止させていただきます。

些細な修正であるのと投下はまだなのでsageで。

六月十一日がタイムワープして消し飛んでいました。今気づきました。六月十二日から以降は一日ずつひいてあげてください。

こ、今度こそ明日投下です。

創作意欲的なものが右肩下がりになっているため書いては消しを繰り返してますが、完走まで全力で参ります故。

投下小さめですが、日付変更頃に投下します。

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後二時。

執務室の扉がノックされた。

提督「はいってくれ」

巡視兵B「失礼します」

巡視兵D「指示の通り、買ってまいりました」

袋が春雨に手渡される。

春雨「ほ、本当に買ってきてくれたんですか!?」

帰りの遅い巡視兵達への不安が募っていた春雨の顔が、中身を確認するや輝いた。

巡視兵B「喜んでもらえたのでしたら、恐悦至極です」

提督「遅かったようだが、大分遠いところまで行ってきたのか?」

巡視兵D「制限区域外でも店はどこも閉まっておりました故、探し当てるのに時間を要してしまいました」

提督「そうだったのか・・・、この前の襲撃はかなり打撃だっただろうな・・・」

巡視兵B「思い出せば、訪れた店でも、住民に私の所属を尋ねるものがありましたね」

提督「そりゃあ制服を着てれば聞かれるだろうさ。それで、舞鶴って答えたのか?」

巡視兵「舞鶴と答えて怪訝な顔をされましたから、食料の調達という名目にはしておきました」

提督「賢明な判断だ。それで?他には何も言われなかったか?」

巡視兵B「提督の仰る通り、怯えておいでです。海の様子はどうなのかとしつこく聞かれましたため、舞鶴鎮守府にお任せくださいとだけ答えておきました」

提督「・・・そう言っておいて今から俺たちは料理を作るのか・・・。なんだか複雑な気分になってくるな」

春雨「・・・」

見上げる春雨の潤んだ瞳と目が合った。

提督「でも、なんだ、艦娘達の息抜きぐらいなら許されるだろ」

春雨「はい!」

提督「じゃ、なんにせよ、手間をかけさせたな。ありがとう」

春雨「本当にありがとうございました!」

巡視兵D「い、いえ、お気になさらず」

春雨「また今度、何かあったらよろしくお願いしますね?」

満面の笑みだった。

巡視兵B「なんなりとお申し付けください」

巡視兵D「では、失礼したしました」

敬礼を決めた後、彼らは部屋を出て行った。

提督「さて・・・」

春雨「ここの鎮守府の皆さんはやさしいです」

提督「今更だな」

春雨「あ、そうだ。ご飯は五時ぐらいになったら作り始めたいと思ってるんです」

提督「五時だな、わかった。準備しておく」

春雨「なんかあんまり嬉しそうじゃないですね」

提督「え、そんなふうに見えるか?」

春雨「司令官はわかってないみたいですけど、春巻きっておいしいんですから。期待しちゃっていいんですよ?」

ストンと春雨が膝に座った。

提督「春雨もちっちゃいなー」

春雨「ち、ちっちゃいのは当たり前です」

提督「なんか娘を見てる気分になってくるわ」

春雨「・・・司令官?」

提督「いやねぇ、俺ももう結婚とか考えたほうがいいのかなぁと思って」

春雨「ど、どど、どうしたんですか・・・?」

提督「年なぁ・・・、春雨って何歳なんだ?」

春雨「年齢、ですか?」

提督「それよりも、今思ったんだが艦娘に年齢っていう概念が在るのか?」

春雨「自分の年齢ですか?」

提督「そうそう」

春雨「そうですね・・・、考えたこともなかったです・・・」

提督「お前らの進水日を誕生年にする訳にはいかないしな」

春雨「大変なことになっちゃいます。年上になっちゃいますよ」

提督「身長に限って言えば十三、十四ぐらいに見えないこともない」

春雨「十三歳・・・」

提督「まぁ実際子供だしな。仕方ないかもな」

春雨「ん、その言い方はなんだかムッとします」

提督「ムッとする春雨も可愛いから安心してくれ」

春雨「冗談でもそんなこと軽くい、いわないでください!」

提督「それはいいとしても、どんなに見ても外見からは案外そんなもんだと思う」

春雨「それは、わかってますけど・・・。はぁ、一応誕生日は、進水日ってことでいいんでしょうか?」

提督「とすれば、九月二十一日か」

春雨「ついでに言うと、開発されたのも舞鶴なんです」

提督「ほー」

そーなのかー、と提督は呟いた。

春雨「まさか、知らなかったんですか?」

提督「さすがに全ての艦の誕生地を覚えようとは思わなかったんだよ・・・」

春雨「せめて舞鶴で生まれた娘たちのことは覚えてあげてください。私が教えますから」

提督「まさか部下に教えを請う日が来ようとは」

春雨「いいですか?私入れてたった三人なんですから。覚えてくださいね?」

春雨が膝に座ったまま提督と向かい合う。

提督「舞鶴海軍工廠で開発が始まったってことでいいのか?」

心なしか春雨の顔が真っ赤な気がする。それは心なしとは言わないのか。

春雨「そういうことです」

提督「では、一人目は一体誰なのでしょうか」

春雨「まず私、春雨です」

提督「そうだな」

春雨「もっとなんかないんですか?」

提督「そんなこと言われても・・・、さっき自分で言ってたし・・・」

春雨「・・・二人目は、響さんです」

提督「響って舞鶴海軍工廠の生まれだったのか?それは知らなかったぞ」

春雨「はい次です。続いて最後、三人目は・・・、なんと」


提督「お?」

秋月「提督、失礼してもよろしいでしょうか?」

提督「お?」

春雨が口を開こうとした所で、秋月が執務室の扉を開けた。

提督「もう失礼しちゃってるよね。礼儀ぐらいわきまえ」

秋月「先程、新兵装に関する事で工廠に呼ばれていたんですが、提督も呼んでくれと頼まれましたので」

提督「上官の言葉を遮るとは・・・。えー、なんだ、今行かなきゃいけないのか?」

秋月「・・・春雨さんとそんなに大事なお話をしていたんですか?」

春雨「そう、三人目は秋月さんです!」

提督「・・・何が?」

錯綜する会話に提督はついていけていない。

春雨「だから、舞鶴海軍工廠でうまれた最後の三人目は秋月さんなんです!」

提督「おおお、秋月がそうだったのか!」

秋月「?何の話ですか?」

春雨「司令官に舞鶴海軍工廠生まれの艦娘を教えてあげてたんです」

秋月「そういうことだったのですか・・・」

提督「春雨と響と秋月らしいぞ」

秋月「知ってます」

提督「そ、そうか・・・、知ってたか・・・」

秋月「春雨さん、申し訳ないけど少し司令官を借りますね」

春雨「ちゃんと返してくださいね」

秋月「すぐに返します」

提督「俺は物ではないのよ・・・」


移動中。舞鶴鎮守府廊下。午後二時。

秋月「随分お楽しみのようでしたね」

提督「?」

秋月「とぼけないでください」

提督「そりゃあ楽しかったが・・・、どうした、なんか機嫌損ねるようなこと言ったか?」

秋月「春雨さん、可愛いですもんね」

提督「お、ああ、可愛いな」

秋月が提督を睨みつけた。

提督「どうしたんだ?」

秋月「春雨さんとあんなにくっついて・・・、あんな姿勢で・・・。私もあんなことしたことないのに・・・」

提督「俺の記憶が正しければお前は膝枕で耳掃除をしたことがあるはずだが」

秋月「それとこれとは話が違います!」

提督「どう違うの・・・?」

提督の切り返しを喰らうが、秋月は咳払いすると、

秋月「とにかく、技術主任さんとのお話をしに行きます。十三号対空電探改、FuMO25対空電探、2cm四連装FlaK38、Ar196改、38cm連装砲、41cm三連装砲、15cm連装副砲の量産体制が整ったそうですから」

提督「・・・日本語で話してくれ」

秋月「平たく言えば2cm四連装FlaK38は対空機銃、Ar196改は偵察機のことです」

提督「性能に関してはこれから話があるということなのかな」

秋月「そうです。場合によってはボツになる装備も致し方無いと言ってました」

提督「武器の話は大好きだ」

秋月「子供ですか・・・」


移動。舞鶴鎮守府工廠。午後三時半。

提督「具体的な性能差はどうなんだ?偵察機のAr169改ってのは瑞雲12型とくらべるとどうなる?」

提督と技主が一緒になって武器の試射、運用している様子をひと通り眺めた後ようやく話し合いが始まった。

技主「実際に言えば、瑞雲十二型のほうが、総性能的に見れば、Ar169改は見劣りする部分が多いですね」

提督「瑞雲十二型の量産はまだできそうにないということだったかな」

技主「部門を設けて急ピッチで進めさせてはいますが、もう少しかかると思われます。これもまた発動機が厄介でして・・・」

提督「もう少しというと、一ヶ月以上か、以内なのか?」

技主「・・・いじょ、いえ、一ヶ月以内です」

提督「ならAr169改の量産は見送ってくれ」

技主「了解です」

Ar169改偵察機に関する同意書が脇へ退けられた。

提督「FuMO25についてだが、対空電探と見ていいのか?」

技主「問題ありません」

提督「大型装備の部類に入るようだが、大型対空電探としての性能は?」

技主「大型としては、他の物とは突出した性能を発揮できます」

提督「なら決まりだな。十三号対空電探改に関しては、小型の対空電探ではこれぐらいしかない。これも量産に回してくれ」

二枚の同意書が提督の傍へ寄せられた。

提督「38cm連装砲改と、15cm三連装砲に関しては、今回の41cm 三連装砲と15.5cm三連装副砲で事足りると考えたが、どうだ?」

技主「そうですね、火力、射程、艦娘の練度で射撃精度も十分底上げできるでしょうから、問題無いです」

提督「なら41cm三連装砲を量産に回してくれ」

三枚目の同意書が提督の前に置かれた。

提督「これで最後だな、2cm四連装FlaK38。これは?」

技主「二門ずつの運用を心がければ弾薬を装填している間の隙もほとんど生じませんから、25mmよりかは有用だと思われます」

提督「慣れが必要な装備ってことか」

技主「はい」

提督「そうだな・・・。なんにせよ、プリンツとビスマルクとか使用者が問題なく使えているのならば、慣れればだが問題ないだろう。2cm四連装FlaK38も量産に回そう」

合計四枚の同意書に提督が名前を署名し、技術主任に手渡した。

技主「配備数はどれくらいにしましょうか」

提督「とりあえずそれぞれ装備可能な艦娘の数だけ頼む。舞鶴にも搭載しておきたいから、その分も」

技主「了解です」

提督「さて・・・、俺は戻っていいのか?」

技主「ええ、戻られても大丈夫です。秋月さんがかなり睨みつけてきているようですけど」

提督「気にしなくていい」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府厨房。午後四時頃。

春雨「で、では・・・、始めます」

提督「そういえば春雨」

春雨「はい?」

提督「春巻きは作ったことはあるんだよな?」

春雨「・・・ん」

なにかすごく小さな声で春雨が答えた。

提督「・・・え?」

春雨「・・・ありません」

提督「え・・・?だってお前おいしいってさっき」

春雨「レシピ本にそう書いてありました」

提督「な、なるほど」

春雨「大丈夫、です。手順通りやればうまくいきますから」

提督「まぁ手順通りやればな、うまくいくだろうな」

春雨「なんですか、馬鹿にしてるんですか!」

提督「カッカすんなって・・・。よしじゃあ作るぞ。それで、俺は何をすればいい?」

春雨「私は野菜を切りますから、その間に司令官は春雨を戻しておいてください」

提督「了解だ。春雨を戻せばいいんだな」

そのまま手を春雨に伸ばす。

春雨「っ、どこ触ってるんですかっ!?」

提督「わ、悪い、柔らかそうなものが隣にあったから・・・」

春雨「私のほっぺです!」

提督「そんなことわかってるわ・・・」

鍋に水を入れている間も、包丁を操る春雨が危なっかしくて提督がビビっていた。

提督「沸騰するまで待ってる間が暇やの」

言いながら春雨を見つめ続けていた.

春雨「あの、司令官?」

提督「なんだ?」

春雨「・・・あんまり見られると恥ずかしいです」

提督「お、おう、すまん」

丁度いいタイミングで沸騰し始めたのを確認すると、春雨を投入した。

春雨「司令官?」

提督「今度は何だ?」

春雨「司令官ってもう三十五歳なんですよね?」

提督「そうだな」

春雨「結婚とかってさっきお話してましたよね」

提督「そ、そうだな」

春雨「艦娘とも条件を揃えれば結婚できるっていう話は、知ってますか?」

提督「そりゃあ、先生も長月と結婚してるわけだし・・・、知ってるけども」

春雨「そこで質問です」

提督「おう?」

春雨「この鎮守府でお嫁さんにするとしたら誰がいいですか?」

厨房の入り口付近で何か物音がしたが、見た限り誰もいないので気にしなかった。

提督「言われて初めて考えるって感じだ、そんなこと。結婚相手、そうねぇ・・・」

春雨「司令官は年上の方が好きなんでしょうか?」

提督「どうしてそう思うんだ?」

春雨「だってよく間宮さんとお話してますし、最近司令官呼び捨てになってますし・・・」

提督「そ、それはお前、色々あったんだよ」

春雨「色々、ですか?」

提督「いや、決してそういう意味じゃないぞ。事情とか、そういうことなのであってさ」

春雨「・・・そうなんですか?」

提督「そうなんだよ」

春雨「いずれにしても、私以外にも司令官のことが好きな娘はたくさんいるんですから、ちゃんと考えたほうがいいと思います」

提督「そう言われても・・・」

春雨「どうせ司令官のことですから、一人を贔屓するわけにはいかないってことだと思います」

提督「そりゃあだってそうだろ?一人を選んだら他の奴らが黙ったままでいるわけないと思わないか?」

春雨「案外皆受け入れるかもしれませんよ」

提督「考えるまでもなく展開は予想できそうな気がするのは俺だけか・・・?」

春雨を鍋から取り出した。春雨を。

提督「さて、結婚の話は後にするとして、この後はどうすればいい?」

春雨「春雨を冷やしたら、水洗いして、食べやすい長さに切ってください」

提督「春雨、なんか俺簡単な仕事しか任されてないような気がする」

春雨「春雨が、春雨を作りたいんです」

提督「春雨ねぇ・・・」


時間経過。舞鶴鎮守府食堂。午後七時。

間宮「ふたりともよくできてました、おいしかったですよ」

春雨「ですよね!司令官は、おいしかったですか?」

提督「案外うまくできるもんなんだなぁと思いました」

春雨「それ、褒めてるんですか・・・?」

提督「それよりもお前が油で火傷した部分のほうがよっぽど心配で味になかなか集中できなかった」

春雨「だってあれは司令官が話しかけるからじゃないですか!」

提督「え、俺のせいなの!?」

春雨「あんな、可愛い、なんて・・・」

提督「(そんなこといったかな・・・)」

六月十六日。舞鶴鎮守府私室ベッド上。午前五時。残り秘書:扶桑、白露、間宮

赤城「そろそろ西号作戦終了から一週間が経ちますね、提督」

提督「お前はそこで何をしてるの?」

赤城「提督と床を共にしていたのです」

提督「いつからそこにいたの?」

赤城「提督が寝た後ですから、夜中の三時頃に移動してきました」

提督「加賀が心配するんじゃないの?」

赤城「話を通しておきました」

提督「はぁ・・・」

むっくりと上半身を起こすと、衣装箪笥まで歩いて行き着替え始める。

赤城「また提督とお風呂でも入りたいですね・・・」

提督「俺は入りたくないぞ」

赤城「釣れないですねー」

提督「釣られたいとも思わねぇよ」

時間経過。舞鶴鎮守府食堂。午前六時十分。

赤城「な、なんでしょうか」

自分の膳から目をはずし、赤城の横顔を見つめていた。

提督「よく食べてるなぁと思って」

赤城「私、そんなに食べる方なのでしょうか・・・、加賀さんのほうが食べてる気がしないですか・・・?」

提督「ふむ、確かにそうだな」

何食わぬ顔で、いつもの無表情で赤城を上回る量のご飯を食べている加賀を見やる。

赤城「なんで私大食いのイメージが付いちゃったんですかッ!?」

ガタッ、と椅子を鳴らして立ち上がった。

提督「んなこと俺が知るわけ無いだろう。最初に配属されたのが舞鶴だから、お前が鉄鋼製の戦艦か空母だった時代になんかやらかしたんじゃないのか?」

いいから座れ、と赤城を引っ張る。

赤城「そう、なんでしょうか・・・」

提督「五月雨は何かしらないのか?」

五月雨「私も特には、赤城さんのことで元帥とお話したことはありませんから。すいません」

赤城「どうやったら払拭できるんでしょうか・・・」

提督「払拭も何も、俺はもうお前のこと大食いとは思ってないけど」

赤城「ほんとですか!でもさっきよく食べるとか言ってましたよね!」

提督「それは言葉の綾ってやつだ」

赤城「冗談ってやつですね」

提督「赤城が大食いという程でもないってのは、お前のいつもの食事風景を見てるこの鎮守府の奴らなら皆わかってるはずだし」

赤城「他の鎮守府からの評判まで気にしてたらキリないでしょうか」

提督「そんなん、一々他の鎮守府まで出向いて誤解をときに行くのか?」

赤城「それは嫌ですね・・・。やっぱり初期の空母だから、皆さんが燃料の消費に驚いてしまった、とかだったり?」

提督「でも最初の空母は鳳翔だし、燃費って言ってもそれぐらいわかってるだろうし、金剛型戦艦も以前からいたしなぁ・・・。その線はどうなんだろう」

赤城「でも、舞鶴がわかってくれてるなら・・・、私はそれでいいと思うことにします」

提督「そうしておけ」

時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

提督が険しい顔で海図と睨めっこしていた。

赤城「何かあったのですか?」

提督「もし奴らがまた奇襲を仕掛けてくるとしたらどこに陣取るだろうかと思って」

赤城「私のことを放っておいてそのようなことを考えていたのですね」

提督「少なくともお前の言っていることよりか1000倍は正しいことだと思います」

赤城「不安ならいっそ舞鶴鎮守府にも要塞砲を備え付けてみては?」

提督「施設維持費が嵩むし、そんなの絶対に大本営が許可しない」

赤城「すぐ却下されては話が広がらないじゃないですか」

提督「俺は雑談するために仕事をしてるわけではないんだよ・・・?」

赤城「施設維持費が嵩むというなら、なぜ製油所の武装化は許されたのでしょうか」

提督「戦時に必要な燃料を供給できる数少ない大規模製油工場なんだから、
保護するのは当たり前ともいえるんじゃないか?」

赤城「なるほど・・・。提督もいいことを言うんですね」

提督「むしろ良いことしか言ってないまであるな」

赤城「製油所の要塞砲って、41cm砲でしたよね?どっから持ってきたんですか?」

提督「廃艦になった戦艦の砲塔を改造してそのまま備え付けたんだよ、確かな」

赤城「でもそれって、人が操作するんですよね?」

提督「あそこは妖精はいないから必然的に人が操作することになる。お前のイワンとすることはわかる。確かに人じゃ深海棲艦への命中精度はほとんど期待できないな。この前の十一月でもよく当てられたもんだといえるレベルだ」

赤城「自動照準装置とか開発されないんですか?この前提督が演習で使った護衛艦みたいに」

提督「それよかミサイルのほうがいいんじゃないのか?」

赤城「みさいる?」

提督「なんだ知らないのか」

赤城「知らない子ですね、新しい艦載機ですか?」

提督「違う、艦載機じゃない。俺が言ってるのはロケットとかの推進力で、目標に向かって飛んでいってくれる誘導兵器のことだ」

赤城「なんですかそれ!百発百中じゃないですか!?」

提督「撃ち落とされることもあるようだけど、ほとんど当たるって話だ」

赤城「自分で言い出しておいてですけど、現代兵器のことを考えると、なんだか私達が必要なのか不思議に思えてくるんですよね」

提督「戦力というよりも、艦娘は費用対効果を考えた上での案って感じだと思う」

赤城「コストパフォーマンスを考えて私達が採用されたということですか!」

提督「まぁ、そうなるな(こすとぱふぉーまんす・・・)」

赤城「もし、もしですよ?私達が採用されてなかったら、どうなったと思いますか?」

提督「どうなったって?」

赤城「戦力として後で投入されることになるだけかもしれない、とか」

提督「あー・・・。お前らが出てきた理由もあんまりよくわかってないから、採用不採用の話は野暮な気もするけど、採用されてなかったら普通の女の子だったかもな」

赤城「提督と会うこともなかったということでしょうか」

提督「それはどうだろう。もしかしたら目が合うぐらいはあるかもしれないぜ」

赤城「でも今のような親密な関係性には発展しませんよね」

提督「親密、そりゃあ発展する可能性はほとんど零に近いわな」

赤城「戦い以外のことを考えると、舞鶴鎮守府に出てくることができて良かったなぁって思うんですよね」

提督「どんな形でもそう思ってもらえるなら嬉しいよ」

そこで話の一区切りとしたのか、赤城は手を叩いた。

赤城「さぁ、今日も一日お仕事しましょう!なんだかやる気がみなぎってきました!」

提督「言うてすることあんまないぞ・・・」

赤城「とりあえずお食事の用意は手伝ってくださいね?」

提督「まぁそれぐらいなら」

赤城「あとデートしましょう」

提督「それは無理だな」

赤城「それで一緒にお風呂入りましょう」

提督「いつもみたいに加賀と入ればいいだろうが」

赤城「加賀さんとも一緒に入るんです」

提督「俺が嫌だし、第一五月雨がキレるし」

赤城「ん!また五月雨さんですかっ!」

提督「・・・え?どうした?」

赤城「女の子の前で他の女の子のはなししちゃ駄目です!いつもいつも五月雨さん五月雨さんばっかりじゃないですか!」

提督「あ、その、そんなつもりではなかったんだが・・・」

赤城「では!じゃあこういうのはどうでしょう。髪を洗い合うというのは!」

提督「遠回しに風呂はいろうって言ってんのと同じだよな」

赤城「何で嫌なんですか!」

提督「だってお前らめんどくさいもん・・・」

赤城「どこがですか!」

提督「全部」

赤城「ぜ、全部」

予想以上に傷ついた顔をするので、いたたまれず思わず口をついて出た。

提督「・・・水着かなにか、体を隠すものをつけてくるなら、考えてやらんでも、ない、かもしれない」

赤城「わかりました加賀さんに言っておきますね準備しておきますね!」

提督「あと、外出は何度もいうけど無理だぞ」

赤城「了解です!」

提督「て、あ、おい!仕事するんじゃなかったのかよ!」

ドタバタと赤城は執務室を走り去った。

提督「こういうのがめんどくさいんだっていうんだよ・・・」

静かになった今の内にと、伝達事項が入った封筒を入れてある引き出しを開けて業務を再開した。

時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前十一時。

提督「誰もいねぇじゃねぇかっ」

厨房は空っぽだった。

提督「来るのが早すぎたのか?いやいつもはこれぐらいの時間に準備は始まってたはずだ・・・」

間宮「あら、提督?」

提督「お、間宮か」

間宮「どうかなさったんですか?」

提督「赤城と加賀と一緒に料理をつくるって約束したはずだったんだけど、あいつら今どこにいるかわかるか?」

間宮「彼女たちならさっき提督を呼びに行くって言ってましたよ?」

提督「入れ違ったか・・・、すぐ戻る」

提督「(執務室には無断侵入を避けるためにも最近はカギをかけてるから、また入れ違えそうだな)」


移動。舞鶴鎮守府執務室。

提督「加賀さんそれ俺じゃなかったら懲戒処分になってるよ」

加賀「いえ、提督が何者かに暴行されていたら大変だと思いましたので」

提督「だからって矢でドアをこじ開ける必要はないでしょう?」

背中に隠してるつもりなのだろうが、矢尻が肩から覗いている。

加賀「それでは行きましょう。ご飯が遅れたら一大事です」

赤城「そうですね、急ぎましょう」

提督「はぁ・・・」

時間経過。舞鶴鎮守府食堂。正午。

配膳をし終わって、提督が席につくと、

五月雨「あれ、提督、どこに行かれてたんですか?」

提督「赤城達と料理の手伝いをしてただけだよ」

五月雨「きゅ、急に手伝いなんてどうしたんですか」

提督「そんな珍しいことでもないだろ・・・」

五月雨「そうですかね?」

赤城「五月雨さん。今日は私が秘書ですから、私が提督にお願いしたんですよ」

五月雨「赤城さんがお願いしたんですか・・・、提督がいい人になったのかと思ってびっくりしてました」

提督「五月雨め・・・、秘書になったら覚えておけよ・・・」

赤城「提督、ささ、早く食べましょう。もう耐えられないです」

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後三時。

赤城「偵察行動、進展はなしですか・・・」

提督「本拠地発見どころか損害しか被ってないな」

たまに送られてくる偵察隊帰還報告書を赤城と見ていた。

赤城「国民の怒りは溜まりつつあると思いますよ。ただでさえこの艦隊のために税金を注ぎ込んでるんですから」

提督「暴動になって、それを軍隊て鎮圧しようものなら信用は地に落ちるのは火を見るより明らかだ」

赤城「飛行場を埋め立てて作るとか、そういう話は持ち上がっていないんですか?」

提督「飛行場の話、噂によれば、南鳥島の奪還を大本営は目論んでいるらしい」

赤城「南鳥島って、最東端のあの島ですか?」

提督「あぁ、お前が言ってる島で合ってる」

赤城「道中だけでも相当危険が伴います。辿り着く前に轟沈艦が出てもおかしくないですよ」

提督「噂は噂でしかないだろ。さすがに大本営もそこまで考えなしではないと信じたい」

赤城「この奪還作戦が発令されたとしたら、こちらが初めて反撃に出る作戦になるんじゃありませんか?発令はされてほしくないですが」

提督「南鳥島は敵の飛行場姫に占領されているはずだ。たどり着いたとしてもどうなることか・・・。反撃がただの玉砕万歳攻撃になりそうだ」

赤城「どこかと同盟でも組む、とか?」

提督「ドイツのことか?」

赤城「まぁ、そういうことです。ドイツは今巨大戦艦の建造を進めているという話を聞いたことがあります」

提督「その話は俺も聞いたが、ビスマルクに聞く限り設計だけしかされてなかったって話だぞ?実用化するには火力以外に短所がありすぎるんだろうな」

赤城「聞けば70万t級だそうですし・・・。連携は絶望的かもしれませんね」

提督「ドイツとの同盟は無理だとして、本拠地が見つかったらどうなるんだろうな。アメリカやらソ連に託しておいて欲しい、個人的に言わせてもらえれば」

赤城「大本営と、今までの日本の性格を考えるに、むしろ隠蔽して陰で準備を整え始めそうです」

提督「うわぁ・・・、それもありうるから怖い」

赤城「・・・」

赤城が話をやめて提督を見ていた。

提督「ん?」

赤城「提督は、真面目な話をしてればそれなりに提督って感じです」

提督「貶してるようにしか聞こえんのですけど・・・」

赤城「そうですね、普段の提督を貶してるのは否定しないです」

提督「一緒にお風呂入りましょうとか上官に平気で言ってのける奴に言われたくない」

赤城「今更嫌ってのはナシですよ?」

提督「他の艦娘の目が痛いんだよなぁ・・・」

赤城「言い訳は聞きません」

提督「加賀と二人で入って来いって」

赤城「いえ、提督はもうすでに承認済みなので今更撤回はありえません。言質はとってありますから、言い逃れしようものなら問答無用で引きずり込みます」

提督「暴力反対!暴力は行き過ぎだと思います!」

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後八時。

提督「具体的には何時頃はいるつもりなのよ」

赤城「何なら今からでもいいですよ?」

提督「今からって、さすがに他の奴らとかち合うじゃないか」

赤城「私と加賀さんが話し合った結果で言えば、十時以降にしようかなと」

提督「さすがにそれは規律的にもまずいと思うので却下だな」

赤城「そういうと思ったので九時半ごろに決まりました」

提督「九時半か・・・、その時には全員入った後かね」

赤城「皆さん早く寝たいですから、いつもなら私達もその時間までに入っていますよ」

提督「お風呂といわれて思い出したのだが」

そういえば、というふうに提督が切り出した。

赤城「いきなりどうしたんですか」

提督「フランスとかの人は週に一回ぐらいしかお風呂に入らないらしいぞ」

赤城「えっ」

提督「そんなあからさまに嫌そうな顔するなよ・・・」

赤城「もしかしてビスマルクさんとプリンツさんも・・・」

提督「少なくともあいつらは毎日風呂に入ってるのはお前でも知ってるだろうが」

赤城「そ、そういえば毎日はいってらっしゃいますね・・・。フランス・・・、週に一回・・・。に、臭いとか気にしないんでしょうか」

提督「さすがに夏はどうかは知らんよ?でも臭いか・・・、汗臭いときはシャワーぐらい浴びるんじゃないかね」

赤城「シャワーだけで満足できるんですか!?」

提督「いやだから俺に聞かれてもわかんないよ・・・」

赤城「絶対夏とか汗臭いじゃないですか!」

提督「汗の臭い確かにやばそうだよな」

赤城「しゅ、週に一回ですか!?ええ!」

提督「すまん俺が悪かった!この話はやめよう!」

赤城「だって週に一回ですよ!さすがにだめですって」

提督「し、しつこいな・・・」

まだ喚く赤城から目を外して、事務仕事に戻ることにした。

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後九時半。

九時半になったと同時に執務室の扉が鳴った。

提督「誰だ?」

加賀「提督、私です。赤城さんもそこにいらっしゃいますか?」

赤城「時間通りです、加賀さん」

提督「本気でいくつもりなのかよ・・・」

加賀「まさか今の今まで冗談だと思っていたんですか」

扉を勢い良く開けながら、憤然と加賀が言った。

提督「大事なことだから聞くけど、タオルかなにか持ってきてあるんだろうな?」

赤城「大丈夫ですよ。ちゃんと約束は守りますから」


移動。舞鶴鎮守府大浴場。

一応提督自身も腰にタオルを巻き付けておく。絶対に落ちないように。

赤城と加賀がすでに入って、念の為に30秒ほど待ってから中に入った。

提督「よかった・・・」

赤城「約束は守るといったじゃないですか」

水着ではなくタオルなのが気にかかったが、一応は守ったようだ。

加賀「さ、流石に気分が昂揚します」

赤城「さぁ提督!お背中流しますね!」

提督「優しくしてくれ・・・」

赤城「とりあえず背中は残しておきますね」

提督「お背中流しますねって言ってなかったかお前」

赤城「お背中流しますねは、お背中は後で流しますねということですよ」

提督「わかるわけねぇだろ・・・」

赤城「はい、暴れないでくださいねー」

提督「いや、まて、背中流さなかったらどこを流すつもりなんだ!?」

赤城「そりゃあ前しかないじゃないですか」

提督「意味のわからん小説みたいな展開にするのはやめてくれ!背中だけでいいから流すのは!」

赤城「仕方ないですね・・・、とっておこうと思ってましたのに・・・」

すっと音もなく加賀が立ち上がった。

提督「どうした加賀、ん、お前は流さなくてもいいぞ?」

加賀「赤城さん、大丈夫よ」

赤城「・・・加賀さん?」

加賀「私が抑えておくから、赤城さんが前を流してください」

提督「・・・は?」

事態を飲み込むより先に加賀が提督の腕を完全に固定した。

赤城「加賀さん、感激です・・・!じゃ、じゃあ、失礼します・・・」

提督「やめろ!やめろ赤城!こんなのは間違ってる!やめろっ!」

赤城「・・・」

加賀「・・・?」

赤城「・・・これだけ拒絶されてる上でやるのは、あまり気分のいいことではないですね」

提督「はぁ、はぁ・・・、あ、赤城?」

赤城「背中、流しますね」

加賀「赤城さん・・・」

提督「なんて赤城は優しいんでしょう、みたいになってるけど全然そんなことないからな」

加賀「だめでしたか」

赤城「この状況で私から辞退することで好感度の上昇を狙っていたのですが・・・」

提督「・・・下心丸見えだから意味無いです」






本日はここまでです。少ないですがありがとうございました。

にしても赤城さんの大食いキャラはどうしてついたんでしょうね?未だによくわからないです。



赤城さんはかなり初期に貰えるから
駆逐艦や軽巡しかいなかった鎮守府にいきなり正規空母が来ればその資材消費量に驚く
それで大食いキャラが定着していた・・・

実際は戦艦のほうがもっと資材使うから、ゲーム進めていけば大食いだと思わなくなるけど
赤城さんには責任はまったくないんだよね

>>931 赤城さん可哀想です。公式にも認められてしまって・・・w

間宮さんどうやって書けばいいの・・・。

ということで、皆様の力添えを頂きたいのであります。
何かこういう絡みとかどうですか、という感じのご意見を二つほど教授願いたいのです。

皆さんの間宮愛が伝わってきますね、はいw

ありがとうございます、これだけ頂ければいけます。

明日、小規模投下で一区切り後、次スレを建てます。
(新スレ分も少しだけ書きます)

一応このスレは三日間だけ残しておきます。

ZとHJKLを組み合わせて打つと矢印打てるんですね・・・。大発見です。






六月十七日。舞鶴鎮守府私室。午前五時。

白露「提督ぅー!」

提督「・・・」

提督「(なんでもう部屋の中にいるの・・・)」

白露「提督ー!起きてー!」

提督「起きてるよ・・・」

白露「よし、今日も一日はりきっていきましょー!」

提督「もう白露だけでいいよ・・・張り切って仕事しといてくれよ・・・」

提督「(姉妹艦といるときはもう少しおとなしいのに・・・、加古よりかはマシと思えば幾分気分もいいかもしれない)」

白露「でも提督、もう五時半だよー?」

提督「・・・え?」

白露「もう五時半だよー!」

提督「そんな馬鹿な!だって目覚ましは五時に設定してあるんだぞ!?」

白露「でも五時半に設定してあるよ?」

提督「だって昨日俺が寝る前にちゃんと五時に設定してあることは確認済みなのに・・・」

白露「まぁ白露がずらしたんだけどねー」

提督「許すまじ、白露型一番艦白露・・・。なにか正当な理由があるんだろうな?」

白露「だって提督が先に起きてるのつまんないし」

提督「この鎮守府の奴らは少し上官に対する礼儀ってのが欠けてる気がするよ・・・」

白露「さっ提督、早く早く!」


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時。

白露「提督、あーんして」

提督「白露、お前なぁ・・・」

五月雨「・・・」

白露「間宮さんとか、他の人ともやってたのに私とはやってくれないんですね・・・」

提督「上目遣い戦法はもう俺には意味ないぞ」

白露(チッ)

提督「おいお前今舌打ちしただろ」

白露「してないです」

提督「ここの艦娘たちの本性のようなものがたまに垣間見えて怖いんだよなぁ・・・」

白露「はい、提督、あーん」

提督「・・・ん」

五月雨「提督!?」

まさかやるとは、といった顔で提督を睨みつける五月雨。

提督「落ち着けって。別にやましいことなんか考えてないし」

白露「本当に考えてないのー?」

提督「誰が駆逐艦に欲情なんかするかってんだよ」

山城「それは扶桑姉様には欲情するということでしょうか万が一にでも万々が一にでも姉様に手を出そうものなら私が許しませんから」

扶桑「山城、提督に向けて失礼よ」

山城「姉様は提督の毒牙にかかるのが怖くないのですか!」

扶桑「あら、山城は怖いの?」

山城「いざとなれば私の体でも差し出す覚悟です!」

提督「展開させんな止まれ止まれ。俺そんな男じゃねぇから、部下に欲情するほど猿じゃないから・・・」

名取「それって、私達にも欲情するっていうことなのでしょうか?」

ぽけーっと口を開け、首を傾げつつ名取がなんとはなしに呟いた。

長良「名取、間違ってもそんなことこれから言っちゃ駄目だからね」

名取「ほぇ?なんで?」

プリンツ「重巡以上の戦艦のビスマルク姉様にはもっと私以上に欲情するということなのでしょうか!これはいくら姉様といえど負けられません!」

ビスマルク「ちょっとプリンツ!馬鹿なこと言わないで!」

顔を真赤にしながら目を白黒させていた。

五月雨「さっきの発言で、駆逐艦に限定したのは失敗でしたね」

提督「白露、食べ終わったなら戻ろう」

白露「え、なんで?」

提督「無理に抑えたら余計広がるだけだろうし。勝手に冷めるまであいつらからは離れている方がいいかなと」

白露「確かに、このまま質問攻めで提督がとられたら嫌だし、執務室に戻ろっか」

提督「友達目線やめろ」

移動。舞鶴鎮守府執務室。午前十時。

提督「もうさすがにあいつらも落ち着いたかね」

十時の時報を告げる時計を見つつ、提督は眉間を揉みながら顔を上げた。

白露「そうだねー、夕立も結構テンションあがっ」

と、扉がノックされた。

提督「・・・誰だ?」

夕立「白露ー!」

悲痛な夕立のSOSの声が聞こえてきた。

白露「え、夕立?」

夕立「大変っぽい!大惨事っぽいー!」

扉を開けて中に入ると、腕を振り振り白露に駆け寄った。

白露「今仕事中なのに、どうしたの?」

夕立「ゴキブリ!」

白露「ゴキブリ?」

夕立「部屋にゴキブリが出たっぽいー!」

提督「・・・ゴキブリ」

いうや、夕立は白露の腕を引っ張りだした。

白露「で、でも提督との仕事終わってないって!」

提督「行ってやれ。お前がいたほうが助かるけど、一人でもこなせるから。そっちを優先していい」

白露「ん、んー」

少しの間夕立と提督を交互に見た後、

白露「もう!ゴキブリなんかで一々騒がないでよ!」

ぶつぶつ言いながら執務室を出て行った。

提督「失礼しましたぐらいは・・・、まぁいいか」

提督「一番艦、ねぇ・・・」

部屋の中にゴキブリが出たのかと思って飛び上がりかけたのは誰にも言わないことにした。

巡視兵「提督、お手紙です」

扉がノックされた。

三十分後。

白露「はぁ・・・」

巡視兵「失礼いたしました」

心底疲れた、と言った様子で白露が、巡視兵に敬礼しつつ執務室に戻ってきた。

提督「おう、お疲れー。ゴキブリそんなにいたのか?」

白露「それがさ、一匹だったんだけど・・・」

提督「だけど?」

白露「帰らないで!って中々放してくれなかったんだよー!」

提督「いやー一番艦ってのは頼りにされて大変そうだな、え?」

ニヤニヤしながら提督が問いかけた。

白露「提督のバカ!仕事するよー!」

頬を膨らませて怒る姿は、時雨と夕立と似ていた。白露の遺伝なのだろうか。

提督「仕事はずっとしてたぞ」

白露「知らないもん!」

提督「もんって・・・、わかったから、ほら、これやってくれよ」

隣に椅子を持ってきた白露の前に報告書の清書してあるのを出す。

白露「警戒期間中って毎日これ書かないといけないんだ」

提督「いや、毎日じゃない。今日で作戦終了翌日から一週間だから書かないといけないんだ」

白露「つまり誤字脱字を見つければいいの?」

提督「そうだ」

白露「了解ー」

白露が作業に入ったのを見た後、何気ない風に次の書類を取り出すようにさっき届いた佐世保鎮守府からの便箋を開けて藁半紙を取り出す。

色々警備状況について話し込んでいる間に白露が帰ってきてしまったのだ。

『舞鶴鎮守府総司令官龍花殿宛。
 
今回は金剛の様子に少々進展があった為、報告することにした。一応貴殿も当事者なわけである故だ。

 
金剛はほぼ完全に我々への警戒を解いたようだ。独房からの開放も許し、今では榛名達とも片言なりと会話の様子も見られる。これではまるで敵であることを認めるかのようだが、事実を記しておこうと思ったまでだ。   
 
若干の感情表現、具体的に言えば、本当に微かなものだが微笑みなども見られるようになった。

 
記憶が戻ったわけではないのだろうが、他の事例が言う手を伸ばしてきたなどというのはこれに関連する現象であるのかもしれない。
 
大本営にこのことが知られれば彼女の拘束は免れ得ない。
 
門外不出、部下にも口外することは厳禁する。
                  
                    佐世保鎮守府総司令官岩崎』

ちらと白露を見るが、集中しているようでこちらに気づいた様子はない。

鋏を取り出すようにマッチ箱を取り出した。

提督「すまん、少しトイレにいってくる」

白露「はーい」

部屋を出た後、階段を登って屋上に出ると、近くの段差に腰掛け紙を地面においた。

マッチに火をつけ、紙の上に投げた。

提督「言われんでも、誰にも言いやしませんよ、岩崎提督」

全部燃え、灰になるまで見守った後執務室に引き返した。


時間経過&移動。舞鶴鎮守府食堂。正午。

白露「昨日も言ったけど、今日はせっかく提督の秘書の番なんだからあんまり邪魔しないでよ?」

夕立「でもゴキブリは仕方なかったっぽい!」

白露「ゴキブリぐらい自分で処理してよ・・・」

春雨「む、むむ、無理だよぉ!」

白露「時雨もちょっとびびりすぎじゃなかった?」

時雨「そ、そう、かな・・・」

白露「村雨は大丈夫そうに見えたけど、なんで手伝わなかったの?」

村雨「さ、触るのは・・・」

提督が聞こえるように咳払いする。

提督「食事前にゴキブリの話をするのはやめてくれお前達」

夕立「はーい」



時間経過&移動。舞鶴鎮守府執務室。午後二時。

春雨「白露、大変!」

扉を開けて春雨が入ってきた。

提督「ノックをしたまえ春雨」

春雨「あ、あぅ、すいません・・・」

白露「それで、今度はどしたの?」

春雨「空調が動かなくなったの!」

白露「えー・・・」

提督「それは工廠に頼んでこい。あいつらなら治せるはずだ。俺が呼んでおくから」

春雨「ありがとうございます!」



時間経過。同所。午後三時。

時雨「し、白露!」

扉を開けて時雨が入ってきた。

提督「・・・ノックをしたまえ時雨」

時雨「ご、ごめん・・・」

白露「それで、今度は何?」

時雨「トイレが詰まっちゃったんだ!僕達だけで治したら壊れるかもしれないって話になって!」

白露「それ私でも変わらないよー・・・」

提督「それも工廠に頼んでこい。頼めばやってくれるはずだ。この鎮守府の保守点検はあいつらの仕事だからな」

時雨「恩に着るよ!提督!」


時間経過。同所。午後五時。

涼風「大変だ!五月雨が怪我したんだ!」

提督「なんだってっ!」

思わず提督が立ち上がり駆け出しそうになるが、それを白露が止めた。

白露「私が行くから!」

提督「そ、そうか・・・?」

白露「提督はちゃんと仕事しててくれれば、こっちでなんとかするから!」

提督「ふむ・・・」

提督「(白露型のゴタゴタは一番艦の白露に集約されていくのか・・・。姉としてみればそれも当然といえば当然なのかな)」

何故か姉と思ったら墓参りの時の八百屋のお姉さんを思い出した。

提督「外見は綺麗なんだが、どうにも中身がなぁ・・・」

言いつつ次の封筒を取り出す。

提督「なんだ、宛名も書いてないな」

中の半紙を取り出すと、ただ一行書いてあった。

『次はいつ帰ってくるの?』

提督の顔から血の気が引いた。

字体がなんとなく、昔の姉さんのに似ている。

提督「(宛名が書いてない状態で間違ってもうちに届くはずはない。まさかここまで来て手渡ししたのか!?あいつら受け取るなとあれほど言ったのに!)」

提督「まだ入って来られずに済んでるだけ不幸中の幸いと見るべきなのか・・・?次、次かぁ・・・、帰りたくねぇなぁ・・・」

製油所にも行かなきゃいけないし、その上にまた遠出の約束が押し付けられた。

提督「なんて世知辛い世の中なんだ・・・」



時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午後九時半。

白露「ふぅ・・・」

提督「今日は随分と慌ただしい一日だったな」

白露「そうだねー・・・」

提督「いつもあんな風なのか?」

白露「提督の目についてなかっただけで、いつもこんな風なんだよねー」

提督「それなりに信頼はされてるわけか」

白露「あれって信頼って言えるの・・・?」

提督「信頼というよりか、頼られてるというべきなのか、一番艦として認識されてるってことだろ」

白露「でもま、今日の秘書は意外と楽しかったよー!提督の五月雨愛も見れちゃったし!」

提督「な、あ、愛なんてもんじゃないぞ」

白露「いいのいいの、この鎮守府のみーんな知ってることだしねー」

提督「ばっかお前、誤解だし!」

白露「それじゃあ仕事も終わったみたいだし、お風呂入ってきます。それでそのまま寝ます。失礼しました!」

白露は終始笑顔のまま執務室を出た。

提督「五月雨愛って・・・、どんな愛だよ」

六月十八日。舞鶴鎮守府提督私室。午前五時。

提督「ん、あ・・・」

目覚ましを止めようと手を伸ばそうとするが、何かに引っかかっているのか動かない。

提督「・・・」

無理やり引っこ抜いて目覚ましの耳障りな音を止めた。

提督「ふぅ・・・」

体を起こそうとするが、下腹部に何かが当たって起き上がれない。

提督「・・・?」

眠い目をこすりながら毛布の中を覗いた。

毛布を掛け直した。

提督「・・・」

間宮「あれ、提督・・・、もう朝ですか・・・」

提督「・・・嘘やん」

いや、赤城の時と同じか?いやいや、同じではない。

赤城は体に手など回してこなかったし、毛布の中に潜り込んでもいなかった。あれでも少しは遠慮していたのだろうか。

それよりも今はこの状況の説明である。

提督「間宮、その、何を・・・」

間宮「すいません、眠れないものですから、移動してきてしまいました」

提督「とりあえず手をどかしてくれ」

間宮「あ、はい」

間宮はただのワンピースしか着ていなかった。

その下に下着のような影が見え

そこで思考を停止した。

提督「待て間宮、食堂の、朝の料理は大丈夫なのか?」

間宮「赤城さんと加賀さんに頼んでおきました」

提督「なるほど・・・」

間宮「それでは行きましょう、提督」

提督「お、おう」



移動。舞鶴鎮守府食堂。午前五時十分頃。

提督「なんだ?今日は第六駆逐隊の諸君は朝が早いな。暁、どしたんだ?」

暁「な、なんでも・・・」

間宮「昨日の夜、食事の後この娘達食堂から全然帰らなくって」

電「部屋にお化けが出たのです!」

提督「お、お化け?」

間宮「でも、どこの鎮守府にもこういうことはあったんですよ?」

提督「学校の七不思議みたいなやつか?」

間宮「はい」

提督「お化けかぁ・・・」

電「もしかして提督も怖いのです?」

提督「御年37の俺が怖いわけないだろ。お化けたって、どう対処すればいいんだ?」

間宮「え、そこですか」

提督「え?」

間宮「お化けなんかいないっていうところじゃないですか?普通?」

提督「幽霊ぐらいいるだろう。なんでいないなんて嘘をつかなきゃいけないんだ?」

電「や、やっぱりあれはお化けなのです・・・?」

提督「違うの「提督、ちょっとこちらに」

間宮「お話があります」

そのまま食堂の隅へ連れて行かれる。

間宮「子どもたちへの配慮を少しは考えてください」

珍しく間宮の口調には若干の苛立があった。

提督「幽霊の存在は信じさせておいたほうがこれからすることに意味があるからな。あれはしょうがなかった」

間宮「・・・え?」

提督「あのなぁ間宮。幽霊に対するなら除霊だろ?」

間宮「は、はい」

提督「除霊をする前にお化けなんかいねぇって言ったら除霊がただの形式行為になってしまうじゃないか」

間宮「・・・そ、そういうことだったのですか・・・。すいません、そうとは露知らず」

提督「とりあえず巡視兵に除霊の真似事をさせておこう。間宮、除霊とか頼めるか?」

間宮「お経を唱えながら塩を撒けば、大丈夫だろうと思います」

提督「あぁ、それでいこう」

間宮「ですが、提督」

提督「ん?」

間宮「それで、幽霊でないとしたらあの、人影というのは・・・」

提督「なんだ、そいつなら今食堂の入り口の陰で息を潜めて俺が出てくるのを待ってるぞ」

さっきから視線を感じていた方向を指差した。

姉さん「あ、あは、あはは・・・」

顔に冷や汗を浮かべながら、いつぞやの八百屋の姉さんが出てきた。

間宮「え、犯人がいるのならそれを言えばいいんじゃないですか?」

提督「間宮の巫女服を見てみたいんだ」

間宮「み、巫女、服・・・ですか・・・」

エプロンの端をきゅっと掴んで、顔を赤らめる姿はさすがに突き刺さってきた。

姉さん「ねぇ、いきなり私は除け者?」

提督「どうやって入ったんだ」

五月雨達に見つからないよう、食堂に入ってくる前に、執務室へと足を運ぶ。

姉さん「姉だって話したら、通してくれたの」

提督「警備が雑だな・・・、あいつら・・・」

姉さん「だって、あれ以来全然帰ってきてくれないから!」

提督「あのなぁ、俺だってもう鎮守府を任されてる軍人なんだ。暇なんかあるわけ・・・、ていうかお前」

姉さん「どうしたの?」

提督「制限区域にどうやって入った?」

姉さん「資材運搬車に潜り込んだの」

提督「・・・親類だって騙して入ったんじゃなかったのか?」

姉さん「親類は嘘じゃないし?」

提督「確かにそれはそうだが」

姉さん「実を言えば潜り込んで少し様子を見てたの」

提督「ストーカーじゃねぇか・・・」

姉さん「あんなのと一緒にしないでよ!」

提督「まぁ騒動のせいで資材運搬車が来たのは昨日だし。それならあいつらの話とも合う。どうせ俺以外の部屋にも入ったんだろ?」

姉さん「な、なんで知ってるの?」

提督「お前のことを見たって言ってる奴がいるからな。抜かり無くやったんだろうが、少し派手にやり過ぎたんじゃない か」

姉さん「怖がらせちゃった?」

提督「思いっきり。それはそうと、お前なんとなく雰囲気変わったか?」

姉さん「そうかな?」

提督「前はもっと暗い印象だったけど、明るい感じになった、気がする」

姉さん「今までじゃだめかなと思って、地元を出たらなんか束縛から解放された感じ。嫌?」

後ろに手を組んで、上目遣いで聞いてくる。

提督「(あざとくなっただけだな・・・)」

提督「で、ここに来たからには何か用事があるんじゃないのか?」

姉さん「用事なんてないよ?」

提督「じゃあ帰ってくれよ・・・」

姉さん「帰らないよ?」

提督「帰ってください」

姉さん「私ここに住もうかなって思って」

提督「いやいやいやいやいや、それは無理だ」

姉さん「えー、なんで?」

提督「ここは軍の施設だ。一般人がいていい場所でないというのもあるし、女性が増えると厄介なことになるんだよ」

姉さん「・・・もしかして龍花君告白されたの?」

提督「そういうわけじゃないが、もっと言えば誰かもわからんが・・・、俺のことをそれなりに思ってくれている子は多いらしいんだ」

姉さん「そっか・・・、龍花君だもんね、しょうがないよね」

提督は答えられないまま、執務室の中に入る。

姉さん「おー、結構広いんだ」

提督「帰りの代金はこっちが受け持つから安心してくれ」

姉さん「・・・そんなに帰ってほしいんだ?」

提督「帰ってほしいとかじゃなくて、ここにいてはだめなんだって」

困惑した表情で提督は説得にかかる。

姉さん「ねぇ、知ってる?」

提督「な、なにを」

姉さん「私ね、ずっと龍花君のこと好きだったんだ」

提督「そんなの初耳なんだが」

姉さん「龍花君が無視してるのも知ってた。でもね、もう我慢できないんだ」

じりじりと壁に追いやられ、背中が壁についてしまった。

姉さん「私のこと、嫌い?」

提督「・・・はぁ」

姉さん「・・・」

ギリギリのところで提督は彼女を突き放した。

姉さん「・・・え?」

提督「帰ってくれ」

姉さん「どうして?」

提督「俺はもう大丈夫だ、姉さん」

姉さん「何言ってるの。私がいないとだめだって、子供の頃そう言ってたじゃない」

提督「やっぱりそういうことだったのか・・・。子供の頃は子供の頃だ。今とは違うんだぞ」

姉さん「そ、そんなのわかってるし」

提督「今まで姉さんが、いや、子供のとき家族として過ごしてきてくれたことはありがたいよ。でももう、姉さんが気にする必要はない」

姉さん「・・・どうして」

提督「だって俺にはもうこれだけの部下がいるし、俺を慕ってくれる子もたくさんいる。もうひきずっちゃいない。姉さんのことは忘れることなんてない」

ひきずっていない、と言ったところで彼女が脱力したように微笑んだ。

姉さん「・・・そっ、か。徒労だったのかなぁ・・・」

提督「また今度帰る。そのときはそっちに泊まるよ」

姉さん「ほんとに!?」

ぐっと身を乗り出してくるのに仰け反りつつ、

提督「だからとりあえずは戻ってくれ」

姉さん「帰るときは手紙でも出してね」

提督「ああ。車を手配しておくから、料金も俺が払う」

姉さん「そんな、悪いよ」

提督「これぐらいさせてくれ」

予想外に速く説得されてくれたので、提督は安堵の息を吐いた。

提督「性格がああもかわると、少しさびしい気もするが・・・」

舞鶴鎮守府食堂前。午前六時半。

提督「もう三十分も経ってたのか・・・、まずいな」

慌てて扉を開けると、皆はまだ待っていた。

提督「すまん、遅れてしまった。先に食べていてもよかったのに」

間宮「提督を置いて食べ始めるなんてできませんよ。それと、さっきの人は?」

提督「もう帰った」

間宮「随分仲がよさそうでしたね。執務室に連れこむだなんて」

提督「いや、そういうわけでは」

間宮「巫女服姿なんて絶対に見せませんから」

提督「え、なんで!?」

間宮「遅れてきた罰として、今日一日は鎮守府の雑用の仕事を手伝ってもらいます」

提督「何だって!?」



舞鶴鎮守府洗濯兼リネン室。午前八時。

間宮「とりあえずここで洗濯物を洗う手伝いをしてもらいます」

提督「りょ、量が尋常じゃ、間宮は毎日これだけの量をこなしていたのか・・・」

間宮「まぁ慣れていますし、この手の仕事は好きですから苦ではありませんので」

籠に入っている服の中の、一番上のものを掴んだ。

提督「これは暁たちの服か、まだちっさいなぁ」

間宮「制服は普通に選択をしては皺がついてしまいますので、後でクリーニングルームに運びますからわけてください」

もう一方の籠には下着が詰まっている。

提督「あ、俺の下着だ」

間宮「一々発見報告しなくていいので、始めてください」

提督「了解了解。間宮、なんか怒ってないか?」

間宮「いえ」

提督「もしかしてさっきの「全然気にしてませんから」

提督「気にしてないって、さっきの女性のことか?」

間宮「全然気にしてないので、ちっとも気にしてませんから」

提督「超気にしてんじゃん!」



午前九時半。

間宮「これで一通り終わりましたね。洗濯が終わるのが一時間後ですので、少し休憩しましょう」

提督「鎮守府全体の掃除は非番の巡視兵に任せてあるんだよな?」

間宮「はい」

提督「間宮には頭が上がらないな。こんなことまでしてもらっているのは頭ではわかっていたんだけど」

間宮「私が仕事することで、提督の仕事もはかどるのだと思えば苦ではないと先ほど言いましたよ。あ、それと」

提督「ん?」

間宮「第六駆逐隊の皆さんはもう克服したようなので、午後の除霊作業は中止になりました」

提督「は!?こ、克服出来たのか!?ええ!」

間宮「巫女服を見せることはたぶんもうありません」

提督「ほ、そ、そんな、馬鹿な・・・。間宮、そんなに怒るなって、な?」

間宮「知りません」

時間経過。舞鶴鎮守府中庭。午前十時半。

提督「・・・これどうやって干せばいいんだ?」

間宮「それはこれに吊るしてください」

提督「おお、これか・・・。こんなの見たことないんだけど」

たくさんの鋏の形状をした何かをしげしげと眺める。

間宮「いいから仕事してください」

提督「はいはい・・・」


午前十一時。

間宮「たまねぎを千切りにしてください」

提督「千切りだな、了解だ。米はまだとがなくていいのか?」

間宮「私がやっておきます」

提督「わかった」

提督「・・・くっ、たまねぎめ、これだから俺はお前が嫌いなんだっ」

涙のにじむ目を押さえつつ、必死で包丁を振るった。


午後二時。

間宮「それでは制服のクリーニングを行います」

提督「アイロンっていうんだっけ、これ結構重いな」

間宮「まずスイッチを入れてください」

お?これか?と迷っていると、間宮が指示してくれた。

提督「いれたぞ」

間宮「持ち手の下にあるつまみを中の部分まで回してください」

提督「回したぞ」

間宮「台の上にこんな風に制服を広げて、ゆっくり動かして皺を伸ばしていきます。同じ場所におき続けてしまうと服が焦げてしまうので気をつけてください」

提督「了解だ」


午後四時。

間宮「そろそろ服が乾くころだと思いますから、中庭に取り込みに行きましょう」

提督「畳み方を知らないけど、大丈夫なのか?」

間宮「私が教えますから、大丈夫ですよ」

提督「あ、おう」




午後五時。

間宮「今日の夕飯は鯖の塩焼きですから、提督、鯖の下ごしらえをしてください」

提督「鯖の塩焼きか・・・、魚は大好きなんだよなぁ」

間宮「聞いてますか?」

提督「聞いてる聞いてる。下ごしらえだろ、やるからそんな怖い顔しないでくれ」

午後八時。

提督「・・・はぁ」

執務室の椅子に深く凭れ掛かった。

間宮「お疲れ様です。これ、どうぞ」

言うと、間宮は羊羹ののった皿を差し出した。

提督「え、これ、もらっていいのか?」

間宮「手伝っていただいたお礼ですよ」

提督「でも・・・」

間宮「いいですから。今度出してみる甘味なんです」

提督「そうだったのね」

切り分けて食べてみた。

提督「これかなり、美味いな。アイスもいいが、これなら艦娘たちも喜びそうだ」

間宮「そういっていただけると嬉しいです。それで、今日一日の仕事、どうでしたか?」

提督「・・・総数的にやることは少ないけど、一つがでかい・・・。こりゃ疲れる」

間宮「ですよね、私も最初はとてもじゃないけど慣れっこないって思ってたんです」

間宮が隣に座りながら言った。

間宮「でも段々慣れてきて。艦娘の皆さんが私の洗った服を着て、提督が私がアイロンをかけた制服を着て、それを眺めているうちに楽しくなってきちゃったんです」

提督「献身的だな・・・。間宮はいい嫁さんになれそうだ」

間宮「嫁さん、ですか。そうですね、いいお嫁さんになれるかもしれないです」

提督「あと、だな」

間宮「?」

提督「そんなに怒らないでくれよ。あの人は別にそういう存在じゃないんだ」

間宮「・・・すいません、我ながら少し大人気なかったです」

提督「俺はこの鎮守府のやつらが好きだよ」

間宮「提督がそう仰っていても、周りは納得出来ないかもしれませんよ」

提督「ん?」

間宮「いざとなったら、決断を迫られるのは提督なのですから。覚悟だけはしておいたほうがいいです」

提督「・・・おう?」

六月十九日。舞鶴鎮守府執務室。午前五時。

扶桑「提督」

提督「・・・」

扶桑「て、い、と、く」

提督「・・・」

扶桑「提督?」

提督「・・・」

扶桑「提督!」

提督「はっ、どうした!敵襲か!?」

扶桑「・・・何言ってらっしゃるんですか?」

提督「あれ、扶桑・・・。そうか、今日は扶桑か・・・」

扶桑「不覚にも、最後に回ってしまって・・・」

提督「てことは、秘書官交代イベントも今日で終わりかー」

扶桑「そうですね、五月雨さんも寂しそうにしてましたし」

提督「・・・寂しそうにしてたのか?」

扶桑「提督は鈍感が過ぎますよ。あなたが秘書の方とお話しするたびに、五月雨さんはずっと提督の事を見ていたのです」

提督「人の視線を感じるとか、あんまりないんだよな・・・」

扶桑「気づかなかったことを気にしてもしょうがないですから、早く着替えて食堂に行きましょう」

提督「わかった。明日は盛大にかわいがってやらんとなぁ」



移動。舞鶴鎮守府食堂。午前六時。

五月雨「おはようございます」

提督「おう、おはようおはよう」

五月雨「扶桑さんなら、なんだか安心しますね・・・」

扶桑「そうでしょうか?」

五月雨「なんだかそんな気がします」

夕立「他の娘たちは不安に思われてたっぽい?」

五月雨「不安って言うか、提督をとら、・・・いえ、なんでもないです」

提督「俺が、なんだって?」

夕立「提督を?」

五月雨「な、なんでもないですから!」

提督「どうした、五月雨?」

五月雨「もう、なんでもないですって!」

扶桑が苦笑いしながら提督を引っ込めた。

時間経過。舞鶴鎮守府執務室。午前八時。

扶桑「こうして提督の傍に控えるというのは落ち着かないものですね」

提督「落ち着かないんだったら、別に無理して秘書やることもないぞ」

扶桑「あ、いえ、そういうわけではありませんから」

提督「・・・」

扶桑「どうかしましたか?」

提督「扶桑って今までこう、言葉を、なんだ・・・。いつも落ち着いてる雰囲気だよな」

扶桑「そう、でしょうか?」

扶桑「(お風呂に入った時は、落ち着いていたつもりはないのですが・・・)」

提督「お前と話してるとこっちまで穏やかな気持ちになってくるんだ」

扶桑「?」

提督「仕事をしたくなくなるんだよ」

気づいたら提督は机に突っ伏していた。

扶桑「提督、執務を疎かにするのは・・・」

提督「明日やればよくね?駄目なのか?明日めっちゃ頑張れば今日の分取り返せるんじゃね?」

扶桑「それは明日になってもやらない人が言うことですよ」

提督「秋月だったら喜んで賛同するだろうな・・・、そうですね!では一緒に寝ましょう!とか言いそう」

扶桑「私は秋月さんではありませんよ。今日の秘書は私なんですから」

提督「しっかりしとるのぅ扶桑は」

扶桑「明日やればいいと思う馬鹿者。今日でさえ遅すぎるのだ。賢者は既に昨日済ましている。という言葉を知ってますか?」

提督「それは先生も同じようなことを言ってたよ。ここで教鞭を垂らされるのは御免だ。お母さんじゃあるまいし」

ぶつくさ文句を言いながらペンを手に取り、作業を再開する。が、

提督「・・・あれ?」

手を止めた。

扶桑「?どうかされましたか?」

提督「お前、朝最後の秘書だって言ったよな?」

扶桑「は、はい」

提督「・・・ビスマルクは?」

扶桑「・・・あら、そういえば・・・。でも、表の秘書艦交代表には名前がありませんでしたよ」

提督「でも辞退届は俺に届いてないぞ」

扶桑「どうしたんでしょうか・・・」

提督「直接聞いてみるか」

扶桑「私も同行します」


移動。舞鶴鎮守府ドイツ艦部屋。

提督「部屋の前に来る前から物音がするとは思っていたが」

扶桑「喧嘩、でしょうか?」

提督「おい、ビスマルク、いるか?」

中指で三回扉を叩いた。

途端に部屋の中が静かになり、扉が薄く開いた。

プリンツ「ビスマルク姉様ならいませんよ?」

提督(嘘だな)

扶桑(嘘をついてますね)

すかさず革靴を扉の隙間にねじ込んだ。

提督「秘書艦についてビスマルクに聞きたいことがある。ビスマルク、返事をしてくれ」

プリンツ「だ、だからビスマルク姉様は・・・」

提督「あん?」

上からプリンツを睨み下ろす。

プリンツ「ひっ」

扉から後ずさったのを確認して押し入り、ビスマルクを探すと、猿轡を噛まされてベッドに寝転がっていた。どうやら手も縛られているようだ。

扶桑「提督、怖がらせるような真似しないでください。ごめんなさいねプリンツさん、怖かったですよね」

プリンツ「ずごぐごわがったでず!うぅ」

泣きながらプリンツが扶桑に抱きつくのを尻目に、ビスマルクを救出した。

ビスマルク「ちょっとプリンツ!私だって秘書やりたいんだからこんな真似しないでよ!」

提督「とりあえず事情を聞こうではないか、ふむ」


十分後。

提督「朝起きたらこうなっていたわけか」

プリンツ「提督に姉様を取られるんじゃないかと思って・・・」

提督「それでいてプリンツは俺の秘書になったわけだな」

プリンツ「そ、それは・・・」

唇を尖らせてそっぽを向いた。

提督「とりあえずビスマルクの秘書についてはまた時間を取ることを約束するよ。今回については少々事情が絡んでるから修正が効かないんだ」

提督(五月雨のこともあるし)

ビスマルク「じゃあいつにするのよ」

提督「警戒期間が解けてから二週間以内に必ず秘書にする」

ビスマルク「範囲広すぎないかしら、それ」

提督「じゃあ一週間以内」

ビスマルク「じゃあって・・・、まぁ、それならいいわ」

提督「決まりだ。それでプリンツも、以降同じことがあったら即応的な処罰を検討することは辞さないからな」

プリンツ「は、はい!」

涙目でプリンツは声高に返事をした。

移動。舞鶴鎮守府執務室。

扶桑「何もあそこまでしなくともよかったのではないですか?」

提督「緊急出撃命令が出た時にあんなではいけないだろ?」

扶桑「・・・確かに」

提督「もう今後は自粛してくれるよう願うばかりだ。それよりもプリンツの行動力に脱帽だな」

扶桑「山城もあんなことしたことありません」

提督「山城の場合、お前を神格化してる節があるから・・・、それをやること自体選択肢にないんだろ」

扶桑「それを言うとしたら、涼風さんは、提督に好意を抱く五月雨さんのこと、どう思ってるんでしょう?」

扶桑「あ、いえ、好意というのは、慕うとか、部下として、といった意味です」

すかさず言い繕った。

提督「?」

提督「でも涼風、なんか竹を割ったような性格だし、割り切ってるようにも見える」

扶桑「涼風さんは他の人と違って、姉に甘えるといったことがありませんよね」

提督「この前白露に駆け込んだことはあったけどな。でもありゃあ甘えるとは少し違うか」

扶桑「五月雨さんが怪我をした時のことでしょうか?」

提督「そうそう。白露型ってがっちり姉妹してる感あるわ」

扶桑「白露さんの性格からも想像がつきそうにないですよね」

提督「だろ?俺もそう思うんだ」


白露「・・・?」

村雨「どったの、白露?」

白露「なんだか他の人が噂話でもしたような気が・・・」

村雨「気のせいだって、ほら、ババ抜き白露の番だよ」

白露「あ、うん」

時間経過。舞鶴鎮守府提督私室。午後五時半。

提督「ふぁーよくねたわー」

言いながら執務室に戻り時計を確認し、まだ六時になっていないことを確認した。

提督「警戒期間中に寝るとか俺まじ緊張感足りなさすぎだろ・・・」

こればれたらクビだな俺、とかほざきながら扶桑を起こした。

扶桑「もうそんな時間なのでしょうか・・・」

扶桑の寝顔をもう少し見ていたかったが、そんなことをしてる間に起きでもしたらいいわけがつかない。

提督「そろそろだ。食堂に行くぞー」

扶桑「わかりました」

提督「それと、服、直しとけよ」

扶桑「え・・・?あ」

赤面しつつ、はだけた部分を元に戻した。

移動。舞鶴鎮守府食堂。午後六時四十分頃。

他の皆がいなくなった食堂に、五月雨と提督が残っていた。

五月雨に呼び止められたのだ。

五月雨「もしかして昼寝でもしてたんですか?」

提督「な、なぜわかった」

五月雨「目を見ればわかりますよ。それに扶桑さんも一緒だったみたいですね」

提督はいつもと同じように軽く返そうとしたが、なんだかいつもと様子が違うのにようやく気づいた。言葉にも若干の刺があるような気がする。

五月雨「・・・」

俯いたままの五月雨に伸ばした手を、果たして五月雨は跳ね除けた。

提督「・・・五月雨?」

五月雨「・・・提督は」

提督「・・・っ」

五月雨「提督は、何もわかってないですね」

提督「さみだ、れ・・・」

キッと睨み付けて顔を上げた五月雨の瞳は涙にぬれていた。

五月雨「いつもそうでした。提督はッ、いつも、いつもいつも」

そういって、五月雨は食堂から走り去った。


移動。舞鶴鎮守府中庭。

こんなはずではなかった。

明日から提督のそばに戻れる。そう思っていただけのはずだったのに。

いつもと同じように私が糾弾して、提督が笑って私に謝ってくれる。いつもの日常風景になるはずだった。

明日になれば戻れる、二十日程度秘書でいられないという環境が予想以上に心に響いていたのは事実だ。

あまりの突飛な行動に自分でも驚いていた。

わかっていたのだ。提督は言わなければ気づいてくれない。

阿呆なほどに、馬鹿すぎるほどに、どこぞの男みたいに鈍感が過ぎるのだ。

それに、提督のことが好きなのは私だけじゃない。

こんなのはひどく独善的で、自己中心的で、幼稚な行為でしかない。

提督は必ず追いかけてきてくれるだろう。あの人はそういう人だ。

そして私はそれに頼っている。

それを認めるのがたまらなく嫌だった。

熱帯夜のじっとりとした湿気が、五月雨を包んでいた。

五月雨「ごめんなさい、ごめんなさい・・・っ!」

中庭にそびえる大木の幹に打ち付けようとした手は、提督が掴んだ。

提督「五月雨?」

五月雨「・・・提督・・・」

私は今いわなければならない気がした。

提督「どうしたんだ?」

五月雨「・・・」

そこで言葉に詰まってしまった。

この先言おうとしていることを言うのだと思うと、果てしなく恥ずかしくなってきたのだ。

提督「・・・?」

それでも提督は待ってくれていた。

五月雨「私は、」

提督「・・・」



五月雨「・・・」

突然の赤面と、なんだか雰囲気がいつもと同じに戻ったのを感じて提督は戸惑ってしまった。

ギャグ的に返すのはまだ少し早いだろうか?

提督「・・・?」

五月雨「私は、」

提督「・・・」

五月雨「提督を、お慕いしています」

提督「それは」

前にも聞いた、と言おうとするのを五月雨は遮った。

五月雨「わ、私はっ」

急展開にすぎるせいで思考が追いついていなかったが、ようやく気づいた。

この状況で、この五月雨の躊躇、なるほどどうしてわからなかったのか。

五月雨「てい、提督のことが」

俺もだよ、とか。

提督「(我ながらなんて臭いセリフ・・・)」

五月雨には悪いが、自分で自分にニヤけそうになるのをこらえるのに必死だった。

五月雨「す、・・・、はぁ・・・」

五月雨が深呼吸し始めた。

答えてやらないわけにはいかんのだろうし、思えば俺はずっと五月雨のことを気にかけていたような気がする。

提督「(もう会って一年近く経ったのだ。こうなってもおかしくはなかったのかね)」

なんて答えようかなともう一度五月雨に視線を戻した途端、

五月雨「好きです!」

純情な乙女が告白するように、五月雨が胸に両手を当てて叫んだ。

提督「・・・」

まだもう少しかかると思っていたのだが・・・。

五月雨が見上げると、提督はニヤていた。

五月雨「・・・」

たまらないと言った風に提督は吹き出した。

五月雨「ちょっ」

提督「なら、結婚するかね?」

提督は更にニヤけた。

あっついですね7月。三十三度です。

というわけで一区切り、です。

次スレです。

提督「狙うは旗艦ただ一隻、全残存火力を集中させろ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437281255/)

このスレは三日間放置した後、主がHTML化依頼を提出します。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月16日 (金) 02:15:58   ID: WQK2RnXo

面白い 期待してます

2 :  SS好きの774さん   2015年03月03日 (火) 04:49:12   ID: tDQyRQdc

面白いssを久しぶりに見つけました。 ノロウイルスに負けず頑張ってください!

3 :  SS好きの774さん   2015年03月12日 (木) 23:22:03   ID: UY9JL1hL

復活おめです

4 :  SS好きの774さん   2015年04月18日 (土) 19:19:19   ID: rK8UVL7F

乙乙
新潟出身のワイ、提督が新潟民であることに歓喜

5 :  SS好きの774さん   2015年06月04日 (木) 13:02:58   ID: gmwkK7HI

加賀は姉妹艦じゃないぞ

6 :  SS好きの774さん   2015年06月26日 (金) 16:17:53   ID: mgp1L_Ki

続き期待してます!

7 :  RO/TgQj9wk   2015年08月07日 (金) 14:05:30   ID: 53Jv4f6J

どうも、スレ主です。

まとめ速報に載ってるとは知らず、コメントに気づいていませんでした。

声援、感謝です!

8 :  SS好きの774さん   2016年09月10日 (土) 11:41:12   ID: -yGyVFPI

頭を空っぽにしてみるぶんには面白い。

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