アムロ「涼宮ハルヒ…」シャア「神の力、か」(139)

シャア「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ! そのララァを殺したお前に言えたことか!」

アムロ「お母さん? ララァが…? …うわっ!?」

その時、サイコフレームの光がアクシズ全体を包んだ。

~ラー・カイラム艦内~

ロンド・ベル兵「アクシズ進路変更確実! 地球から離れます!」

ブライト「あの光は…」

~宇宙空間~

ハサウェイ「まるで、虹みたいだ…」

ユウ・カジマ(蒼い宇宙にかかった、虹か…)

~???~

アムロ「…こ、ここは…!」

シャア「こ、これは…我々はサイコフレームに呑まれたというのか!?」

???「…人は、今戸口に立っている…そこをくぐれる日が来るのかもしれない…」

シャア「その声…ララァ…ララァ・スンなのか…?」

ララァ「人の思いは、時間も、空間さえも超えることができる…」

アムロ「…人はいつか、時間だって支配することができる…」

シャア「しかし…その人の思いが地球さえ破壊するんだ…!」

ララァ「そうではありません、大佐。この空間は、人の心の光の結晶…この虹の彼方に、道は続いているんです」

シャア「何…?」

ララァ「大佐…アムロ。これが、あなた達が望んだ人の心の光が満ちた世界…」

シャア「私が、望んだ…?」

アムロ「ララァ、君は俺たちをどこへ連れて行くつもりだ!?」

ララァ「………」

アムロ「答えてくれ、ララァ! この虹の彼方に、何があるっていうんだ!? …うわっ!?」

~ラー・カイラム艦内~

ロンド・ベル兵「…艦長!」

ブライト「どうした?」

ロンド・ベル兵「アクシズが…消滅しました!」

ブライト「何…!? 消滅だと!?」

~北高・SOS団部室~

キョン「………」

今日もいたって暇である。
最近ハルヒはおとなしいし、事件も全然起きないので、平和な日常を送れている。

古泉「また負けてしまいました」

キョン「古泉、お前相変わらず弱いな」

古泉「返す言葉もありませんよ」

みくる「みなさん、お茶が入りましたよ~」

朝比奈さんがお茶を入れて、長門が本を読んで、俺と古泉がボードゲームをする。

ハルヒ? 掃除当番で遅れるんだと。

そんな平和な日常がただ単に過ぎていくと思っていた。

そう思っていたとき、突如地震が起きた。

キョン「な、なんだ!?」

古泉「地震ですよ! とりあえず皆さん机の下に!」

キョン「お、おう!」

数十秒もすると収まっていった。

朝比奈「ふぇぇ…怖かったですぅ…」

キョン「もう大丈夫ですよ、朝比奈さん」

古泉「しかしいきなり来ましたね…」

ハルヒ「みんな、無事!?」

キョン「ああ。そっちも無事だったっぽいな」

ハルヒ「…ちょっと。あの窓に映ってるの、何よ」

キョン「はあ? 窓? んなもんいつもの景色に…」

その時俺は見た。何か馬鹿でかい鉄の物体が学校のグラウンドに立っているのを。

長門「…ユニーク」

古泉「…いや、全然ユニークな事態じゃないですよ。なんですかコレ」

朝比奈「わからないです…」

ハルヒ「…巨大ロボットか何かかしら? とりあえず校庭に出てみないとわからないわね」

キョン「あ、ああ…そうだな」

長門「………」

~νガンダム・コクピット~

アムロ「う…こ、ここは…?」

シャア「…目が覚めたか、アムロ」

アムロ「シャア!? 何故ここに…!?」

シャア「…私にもよくわからん」

シャア「だが、異常な事態であるということは分かっている。モニターをつけてみろ」

アムロ「あ、ああ…」

νガンダムのモニターが起動する。そこに映し出されたのは地球の街だった。

アムロ「これは…!? シャア、これはいったい…」

シャア「私にもわからん。もしかしたらララァが言ってた虹の彼方にある人の心の光が満ちた世界なのかもしれん。認めたくはないがな…」

アムロ「とりあえず出るぞ、シャア」

シャア「…この高さでか? ここは地球なんだぞ?」

アムロ「…シャア」

シャア「…なんだ、アムロ」

アムロ「…どうやって出ようか」

シャア「知らんな」

~北高・グラウンド~

ハルヒ「外から改めて見てみると相当なデカさね、コレ…」

キョン「なんだこりゃ…」

長門「………」

古泉「どうかしましたか、長門さん?」

長門「…なんでもない」

朝比奈「な、なんかあそこが動きましたよ!?」

キョン「なんだ? …これがロボットだとすると、ハッチみたいなものなのか?」

古泉「だとしたら、人が入ってるというのですか?」

ハルヒ「人が入ってるなら大変よ! 助けないといけないじゃない!」

キョン「どうやってだ? 学校の屋上からでもあの高さには届かないんだぞ?」

ハルヒ「それをどうにかするのよ!」

キョン「無茶を言うな!」

古泉「あ…ロープを使って下りてきましたよ」

アムロ「よっと…地球か。久しぶりだな」

シャア「………」

キョン(…誰だ?)

ハルヒ「ちょっとあなた達!」

アムロ「ん? 俺達のことかい?」

ハルヒ「そうよ! なんなのよコレ!?」

アムロ「これはνガンダム。俺が設計したモビルスーツだ。今はボロボロだけどな」

キョン「モビル…スーツ?」

朝比奈「というより、あなた達はいったい…」

シャア「初めましてお嬢さん方。私はシャア・アズナブル。ネオ・ジオンの総帥であります」

アムロ(…なんか急に態度が変わったな)

朝比奈「ネオ・ジオン…?」

アムロ「俺はアムロ・レイ。ロンド・ベルの大尉だよ」

キョン「大尉…? ってことはこの人、軍人なのか?」

古泉「しかし、ロンド・ベルという軍隊は聞いたことがありませんね。長門さんはどうです?」

長門「…ネオ・ジオン、ロンド・ベルともに情報統合思念体のデータにはない」

アムロ「…いまいち、話がかみ合わないようだが」

キョン「そのようですね…」

ハルヒ「ところで…」

ハルヒ「このロボットって乗れるの!?」

アムロ「!?」

キョン「はあ!? 何言ってんだハルヒ!?」

ハルヒ「だって、こんなロボットなんてめったにお目にかかれないのよ! 乗っておかなきゃ損でしょ!?」

アムロ「気持ちはわかるけど、これは俺専用に作られたようなものだからな。君には乗れないよ」

古泉「それより…まずい事態になってますよ」

キョン「は?」

古泉「どうやら警察や自衛隊が何事かと思い、出動し始めたようです」

シャア「何…? やはり、地球にいる人間は心が狭いのだな」

アムロ「待て、それはおかしい。…どうやらこの世界に、モビルスーツはないらしい」

シャア「何故そう言いきれる?」

アムロ「νガンダムだって連邦の兵器だ。連邦の識別信号を出しているのだから普通なら通信が飛んでくる」

アムロ「それかモビルスーツが来るはずだ。それなら巨大な機影が見えてもおかしくはない」

アムロ「…それに、宇宙世紀では常識であるはずのモビルスーツを、この子たちは知らない」

シャア「…だから、モビルスーツはないと?」

アムロ「あまりに無茶な論だがな」

シャア「で、どうする気だ?」

アムロ「νガンダムを壊されても困る。ここはどこかに隠したいところだが…」

キョン「…長門、できるか?」

長門「…可能」

古泉「なら、僕たちで涼宮さんの気を引きましょう」

朝比奈「ど、どうやってですかぁ…?」

キョン「…そうだな」

キョン「…ハルヒ!」

ハルヒ「何よ?」

キョン「あっちにもっとでっかいのがいるぞ!?」

ハルヒ「本当!?」

キョン「ああ! 今度は赤いやつだ!」

ハルヒ「どこ!? どこにいるの!?」

アムロ「赤いやつだと…!?」

シャア「まさか、サザビーか!」

古泉「長門さん!」

長門「………」

長門が高速で呪文を唱えると同時に、νガンダムはそこから消えた。

ハルヒ「いないじゃないの!」

キョン「すまん。見間違いだったようだ」

ハルヒ「どうやったら見間違えるのよ! このアホキョン!」

ハルヒ「…あれ? さっきのデカいのは?」

長門「消えた」

アムロ「消えた!?」

シャア「どういうことだ…?」

ハルヒ「つまらないわね…とりあえず今日は解散よ、解散!」

キョン「お、おう…」

アムロ「νガンダムはどこに消えたんだ…」

シャア「諦めろ、アムロ。それが運命という物だったのだろう」

古泉「…すいませんが、この後少々付き合ってはもらえないでしょうか?」

アムロ「…俺は構わんが。シャアはどうする?」

シャア「無論、行くしかなかろう。我々はこの世界のことを知らねばならない」

~長門の家~

長門「………」

古泉「お邪魔します」

朝比奈「お邪魔します~」

シャア「先ほどの活発な少女はいないのかね?」

古泉「涼宮さんなら来ませんよ」

アムロ「では、もう一人の少年は?」

朝比奈「キョン君ならあとから来ます」

アムロ「キョンというのか…」

古泉「今日、我々があなた達をお呼びしたのはほかでもありません」

シャア「回りくどい言い方は嫌いだな。実直に話せ」

古泉「あなた達は、異世界から来たのではありませんか?」

アムロ「異世界…?」

シャア「私たちが…?」

古泉「宇宙人の長門さんに聞けば分かることです。ですよね、長門さん」

長門「二人は確かに異世界の人間。間違いない」

古泉「申し遅れました。僕は古泉一樹といいます。超能力者です」

朝比奈「朝比奈みくるです…ここから見たら、未来人です」

長門「…長門有希」

アムロ「宇宙人に超能力者、未来人…?」

シャア「そして我々が、異世界人というわけか」

シャア「では、君たちならわかるのかね? なぜ我々がここに来たのかが」

古泉「それは彼が来てからにしましょう」

アムロ「彼…?」

キョン「すまんすまん、待たせたな」

シャア「噂をすれば影、だな」

古泉「ところで突然ですが、涼宮さんが自己紹介の時になんて言ったか覚えていますか?」

キョン「はぁ? そりゃ…『宇宙人、未来人、超能力者、異世界人がいたら私のところまで来なさい』だけど…」

キョン「…まさか」

古泉「そう、そのまさかです。彼らが異世界人なのですよ」

キョン「マ、マジでか…」

シャア「涼宮とは…先ほどの活発な少女の名かね?」

古泉「そうなりますね」

アムロ「しかし、その言葉が何の意味を持つ? まさか、彼女の願望が好きにかなえられるというわけでもないだろう?」

キョン「…そのまさかなんですよ」

アムロ「…何?」

朝比奈「涼宮さんには、願望をかなえる能力があるんです」

アムロ「…嘘だろ?」

古泉「嘘なら、ここにあなた達を招き入れる必要はありません」

キョン「そもそも、嘘ならあなた達もここに来てないだろうし…」

シャア「…馬鹿げているな。それではまるで神ではないか」

古泉「そう、僕たち超能力者の集まりである『機関』は彼女を神とも認識しています」

シャア「その神の力によって、我々はこの世界に転移させられたのか」

古泉「おそらくは」

アムロ「だが、何故俺達なんだ? 異世界人ならもっと他にもいるだろうに」

古泉「…わかりません」

キョン「ハルヒが望んだから、と言ってしまえばそれまでですけどね」

アムロ「…そうだな」

シャア(だが、それだけでは我々が選ばれる理由にはなりえない…)

シャア(…涼宮ハルヒの能力に、何らかの干渉があったなら…)

シャア(それはララァ…お前の望んだことなのか…)

アムロ「…それで、俺たちはどうすればいいんだ?」

アムロ「どうやって元の世界に戻ればいい?」

長門「…不明」

シャア「冗談ではない。我々にもやらねばならないことがある」

キョン「やらねばならないこと…?」

シャア「地球にいる人間を粛正する。それが、今の私の役目なのだ」

古泉「!?」

アムロ「シャア、貴様! 貴様だって、サイコフレームの光は見たんだろう!」

シャア「しかし、あの光を持った人間が地球さえ破壊するんだ! それをわかるんだよ、アムロ!」

アムロ「ふざけるな! お前にはそこにいる彼らが地球を破壊するような存在に見えるのか!?」

キョン「シャアさん、それは聞き捨てならないですよ!」

シャア「何…?」

キョン「ハルヒは確かに何度も世界をピンチに陥れたかもしれない! けど、そんなことになったって、必ず俺たちが阻止してみせる!」

古泉「今まで色々とありましたからね…」

アムロ「シャア、この言葉を聞いてもまだ信じないつもりか!」

シャア「………」

シャア「…ならば、見せてもらおうか。アムロ、お前の言う人の心の光の力とやらを」

アムロ「………」

古泉「一件落着…のようですね」

朝比奈「…こ、こわいひと…」

長門「…話を、戻す」

シャア「ああ…話を止めてすまなかったな」

キョン「…で、どうやったらこの人たちは元の世界に戻れるんだ?」

古泉「…やはり、涼宮さんにそう望ませるしかないでしょう」

キョン「難しすぎないか、それ?」

キョン「なんだって!?」

アムロ「閉鎖空間…?」

キョン「ハルヒの機嫌が悪くなると生まれる空間です! 何とかして消さないと世界がそれと入れ替わるんですよ!」

シャア「…アムロ」

アムロ「わかっている!」

シャア「わかっているとはいうが、どうやって閉鎖空間に入るつもりだ?」

アムロ「え…」

古泉「安心してください、僕が案内します。それより今日の神人はいつもより強力だそうです、急ぎましょう!」

キョン「…ああ」

長門「………」

~閉鎖空間~

アムロ「…これが、閉鎖空間?」

シャア「いちいち目を瞑らねばならんとは…いささか不便ではないか?」

キョン「慣れてくるとそうでもないんですよ」

古泉「…妙ですね」

キョン「どうした、古泉? …ってアレは…」

シャア「馬鹿な、アレは…!?」

アムロ「武装はないが、あれはνガンダムじゃないか! 誰かに乗っ取られたというのか!?」

シャア「しかし、アレの周りを飛び回っている赤い玉は何だというのだ…?」

古泉「あれが僕の仲間…『機関』の超能力者ですよ」

シャア「では、君もあの赤い玉になれるというのか」

古泉「はい」

シャア「…どういう仕組みなのだ?」

古泉「聞かないでください。それよりも…」

長門「…あの神人をどうにかする」

アムロ「神人…? なんだ、それは?」

キョン「めんどくさいから詳しい説明は省きますけど、あれが神人っていってハルヒのストレスみたいなものです! アレを止めないと、閉鎖空間が広がって現実と入れ替わるんですよ!」

シャア「…厄介なものだな」

アムロ「しかし、苦戦している! あのままでは…!」

古泉「それでも諦めるわけにはいかないのですよ」

キョン「おい、こっちに来るぞ!」

古泉「…参りましたね。ここまで巨大な神人は初めてです」

アムロ「くそっ! こんな時にνガンダムがあれば…!」

シャア「しかし、その肝心のνガンダムがアレだろう? やはり、人の力とはこんなものなのだな」

アムロ「人の力は、どんな苦難だって乗り越えられる…!」

みくる「ど、どうするんですかぁ…?」

キョン「長門! アレを出すことは…」

長門「…可能」

キョン「今すぐ出してくれ! 頼む!」

長門「了解」

長門が高速で呪文を唱えた瞬間、一行の後ろにνガンダムが現れた。

シャア「!? こ、これは…」

アムロ「νガンダム…!? これがあるなら…!」

シャア「そんなボロボロの機体で何をする気だ、アムロ!」

アムロ「コイツを止める!」

シャア「正気か…!? 馬鹿なことはやめろ!」

アムロ「予備のサーベルが残っている! いけるさ!」

古泉「まさか…戦う気ですか!?」

アムロ「やれることは全てやる! それが俺の仕事だ!」

アムロがνガンダムのコックピットに乗り込む。

シャア「しかし、νガンダムはどこから出てきたのだ…!?」

長門「私が復元した」

シャア「それも、宇宙人故の能力だというのか…!!」

長門「………」

シャア「ならば、長門君。私の持つデータを基に、MSを造りだすことは可能か?」

長門「…不可能ではない」

シャア「では、このデータから造ってくれないか」

長門「了解した」

古泉「では、僕も…!」

古泉が赤い球体へ変化し、νガンダムの形をした神人へ突っ込んでいく。

アムロ「古泉君か!? 下がれ、来るんじゃない!」

古泉「これが僕の仕事でしてね…!!」

しかし、古泉はあっさりと神人に跳ね飛ばされてしまう。

古泉「あぐっ…!?」

アムロ「チィッ!」

みくる「ふぇええ、古泉君が~!」

キョン「長門、あの神人どうにかできねーのかよ!?」

長門「…不可能。あの神人にプロテクトがかかっている」

アムロ「おおおおおおっ!」

νガンダムが左腕にある予備のビームサーベルを引き抜き、神人に斬りかかる。

しかし、そのサーベルをなんと神人は己の拳で受け止める。

アムロ「何…!」

古泉「ダメです、後退してください!」

アムロ「できるわけないだろ!」

サーベルを持っていない左手で殴り掛かるが、あまりにも損傷が激しかったのか左腕は自壊してしまう。

アムロ「くっ…!」

シャア「ええいっ、見てられん…! 長門君、まだか!」

長門「現在統合思念体からのデータの改良案を元に構築している。あともう少し待って」

シャア(…改良だと?)

キョン「…いよいよ本当にまずくないか…?」

みくる「ど、どうするんです…?」

古泉「参りましたね…機関もあの神人には全く対抗できないようです…」

キョン「おい、どうするんだよ! このままじゃ本当に世界が…」

長門「構築完了」

アムロ「片腕が無くたって…!」

νガンダムが蹴りを入れる。神人はひるみこそすれども、ほとんどダメージは負っていないようだ。

アムロ「今なら!」

ひるんだ瞬間に予備のサーベルで斬りかかる。がしかし、エネルギー切れを起こしたのかビームサーベルの刃が消えてしまう。

アムロ「…!?」

神人が拳を振り上げ、νガンダムのコクピットを狙う。

アムロ「ここまでなのか…!?」

古泉「まずい!」

キョン「おい長門、本当にどうにかならないのか!?」

長門「問題ない」

「いけ…ファンネル!」

その瞬間、赤いファンネルが神人を迎撃し、攻撃をやめさせた。

アムロ「馬鹿な…アレは…」

キョン「なんだ…あの赤いやつは…!?」

長門「シャア・アズナブルが提供したMSN-04『サザビー』を改良した機体」

長門「MSN-04Ⅱ」

シャア「アムロ、お前はもう下がれ。あとは私が相手する」

アムロ「シャア!?」

シャア「なに、この機体…『ナイチンゲール』なら、奴ごときに遅れはとらんよ」

アムロ「だが、お前は…!」

キョン「アムロさん! 貴方のロボットじゃもう無理です!」

古泉「おとなしく後退を…ここはシャアさんに任せてください!」

長門「情報統合思念体が改良した機体…そう簡単にはやられない」

シャア「確かに私は地球つぶしをしようとした男だ。だが、今は信じてほしいな、アムロ」

アムロ「…わかった。任せるぞ、シャア」

みくる「アムロさんのロボットはどうするんです…?」

長門「私が回収する」

アムロ「すまない、任せる」

アムロが下りたνガンダムは、再びどこかへと消え去った。

シャア「…さて、問題は私にこの機体が使いこなせるかどうかだが…」

シャア「…やってみるさ!」

神人はナイチンゲールに向かって、拳を突き出してくる。

が、それを避けるのは簡単なことで、避けたナイチンゲールが反撃にライフルを撃って命中させる。

シャア「甘いな!」

少しの間、拳とライフルの撃ちあいが続いた。

シャア(…なんだ?)

神人との戦闘の中、シャアは妙な感覚に襲われる。

シャア(なんだというのだ…この感覚)

シャア(まるで憎しみが…怨念が吸われていくような…そんな感覚)

シャア(奴め…いったいなんだというのだ?)

そして神人が、別の攻撃パターンを使ってきた。

神人はどこからかビームライフルを持ち出して、撃ってきたのだ。

アムロ「ビームライフル…!? しかしあんなタイプは見たことがないぞ!」

みくる「ど、どこから出てきたんですかぁ!?」

長門「…別世界より、召喚された」

古泉「別世界ですって…!?」

長門「…あの神人は、涼宮ハルヒの支配から逃れている」

キョン「はあ!? 神人ってのはハルヒのストレスみたいなものじゃなかったのかよ!?」

長門「…あれは、違う」

みくる「どういう意味です…?」

長門「あれを動かしているのは、もう誰でもない」

古泉「もしかして、機関の攻撃が通用しなかったのも…?」

長門「私の情報操作が効かないのも、それが原因」

キョン「んじゃいったいなんだってんだよ…」

アムロ「しかし、なんだ…このプレッシャーは? さっきまでは感じなかったが…」

シャア(なんだ…私は何に何を吸われているというのだ!?)

神人が長いビームライフルで、ビームを発射していく。

それを避けながらビームライフルで応戦するナイチンゲール。

キョン「お…おい! なんか形が変わっていくぞ!?」

アムロ「あの機体は…なんだ!?」

シャア「…! 白いサザビー…いや違うな。似ているが…なんだ、これは?」

神人「…フ」

古泉「ん…?」

アムロ(…奴め、笑っただと?)

変異した神人が目にもとまらぬ速さでナイチンゲールにせまる。

シャア「! 早い!」

しかしその神人はナイチンゲールに迫ったところで動きを止める。

シャア「…!?」

キョン「…止まった…?」

神人「シャア・アズナブル。あなたは、自分が何に吸われているのか知りたいのだな?」

シャア「…!?」

神人「お見せしよう。その答えを、世界の真実を…」

そのセリフが聞こえた瞬間、神人は眩しい光を放つ。

古泉「うわっ!? これはいったい…!?」

長門「膨大な情報爆発を確認」

アムロ「どういうことだ!?」

キョン「説明してる暇は…!」

みくる「うわああああああ!」

全員が目を開ける。そこには、何もない。

シャアも何故かナイチンゲールから降りている状態だ。

アムロ「ここは…どこだ?」

シャア「宇宙…だが、星がない…」

キョン「…冷たい。これがあの世って奴なのか?」

古泉「そんな、まさか…」

みくる「怖いこと言わないでくださいよぉ!」

長門「…全員、生存している。安心していい」

キョン「だけどよ、俺たち以外誰もいないのか? ここは…」

?「そう…ここが、宇宙の深淵…」

アムロ「シャア!?」

シャア「違う、アムロ。今のは私ではない」

アムロ「だがしかし、今のは!」

?「地球は遠く、星の光に埋もれて判別できない…」

キョン「星の光…?」

?「あの虹色の光も、ここには届かない…いや、届いたとしても意味がない…」

シャア「虹色の光…? …まさか…」

アムロ「アクシズを押し出した時の、サイコフレームの共振のことか…」

?「ここには、光を光と認識できる命が存在しない…」

キョン「な…どういうことだよ!?」

古泉「変ですね。僕たちは今、ここで生きています」

?「文明はおろか、大いなる力を持った生命体すら、認められない…」

アムロ「…俺たちの世界のことか…?」

古泉「あるいは、涼宮さんのことを言っているのかもしれません」

?「それは願いか必滅か…この世界には、底なしの闇が広がるばかりだ…」

?「これが答えだよ。人類は一瞬の光にしか過ぎない」

キョン「さっきからわけわかんねーことばっか言いやがって…誰だよアンタ!」

?「私は人類を生かし続けるべく行動を起こす、人類の総意の器」

どこからか、仮面の男が現れる。

シャア「…お前は…」

?「私の名はフル・フロンタル。シャア・アズナブル、貴方が吸われたものに意志と肉体が宿った姿だと言えよう」

フロンタル「もしくは、あの神人をベースにシャアの意志が上乗せされた肉体ということでも構わない」

アムロ「フル・フロンタル…お前はいったい…」

キョン「そんなことよりも、ここはどこなんだよ? アンタなら何か知ってるんだろ!?」

フロンタル「言ったはずだ。ここは、宇宙の深淵…そして、世界のなれの果て…」

みくる「ど、どういうことですか…?」

シャア「…まさか」

フロンタル「君の考えてる通りだ、シャア。ここは、涼宮ハルヒが世界を滅亡させた後の世界だ」

アムロ「馬鹿な! それでは俺たちは未来にいるということに…!」

キョン「でもそれじゃおかしいだろ。なんで朝比奈さんがここに存在出来てるんだ?」

古泉「おそらく、夏休みをループしていたのと同じ理屈じゃないんでしょうか?」

アムロ「それか、彼女が並行世界の未来から来たということもあり得るな」

キョン「並行世界?」

アムロ「認めたくはないが、ここが本来の未来で彼女は別の未来から来たのかもしれない…ということだ」

キョン「そんな…!? 嘘ですよね、朝比奈さん!」

朝比奈「…禁則事項です」

シャア「未来は『可能性』によって揺らぐ。逆であってもおかしくはない」

古泉「こちらが並行世界の未来である、ということですか…」

シャア「あるいは、我々の辿る世界の果てなのかもしれん」

アムロ「どういうことだ、シャア!?」

フロンタル「さすがはシャア・アズナブル。そこまで気づいていたか」

シャア「私を甘く見てもらっては困るな」

フロンタル「そう。ここは涼宮ハルヒが全てを滅ぼした未来であると同時に、宇宙世紀の世界のなれの果てでもあるのだ」

アムロ「そんな馬鹿な…人間は自滅したって言うのか!」

フロンタル「そういうことになるな」

長門「………」

フロンタル「長門有希。君なら、わかるのではないかね?」

長門「…情報統合思念体との交信が途絶えている。私にはわからない」

フロンタル「全てが滅びた未来だから交信が途絶えるのも当然ともいえる」

シャア「フル・フロンタル…お前は…」

フロンタル「アムロ・レイ、シャア・アズナブル。一ついいことを教えよう」

シャア「なんだ?」

フロンタル「あなた達の帰る場所はもうない」

アムロ「なんだと!?」

みくる「…私たちの世界とあなた達の世界では、時間の流れが違うからですね?」

フロンタル「その通りだ」

キョン「よくわかりましたね、朝比奈さん」

みくる「ふぇ!? あ、そのー…禁則事項です!」

フロンタル「そして私は、人類の総意の器として行動する…人類を生かし続けるために」

フロンタル「我々の世界も。この世界も。すべての人類が生きられるようにするために」

キョン(なんだ…自分の理想を語っているのに、まるで他人事みたいじゃないか…)

フロンタル「手始めに私は、この世界の神…涼宮ハルヒを殺す」

キョン「!?」

シャア「なんだと!?」

フロンタル「だがしかし、私の肉体はそちらの世界にはない…」

古泉「肉体が無ければ、世界に干渉することはできない。それではあなたに、涼宮さんを殺すことなどできはしませんよ」

フロンタル「それが、可能なのだよ。私が行うわけではないのだがな」

アムロ「まさか…フル・フロンタル、貴様!?」

フロンタル「そう。彼らが君たちの世界に来る前に押し返していた小惑星アクシズ、その後部…」

フロンタル「かつてシャア・アズナブルがやろうとしたのと同じように、小惑星アクシズを落とさせていただく」

みくる「そ、そんな…!」

キョン「そんなの、長門の手にかかればすぐに消せる!」

フロンタル「やめておいたほうが身のため、とだけ言わせてもらう」

シャア「どういうことだ?」

フロンタル「先ほどその長門有希が私への干渉ができなかったように、アクシズへの干渉もできないはずだ。涼宮ハルヒの力でもな」

アムロ「やってみなければわからん!」

フロンタル「わかるのだよ。私には…」

古泉「しかし、そのアクシズとやらをあなたはどうやって落とすつもりなのです?」

フロンタル「アクシズは私の意志で落ちるのではないよ。ただこの世界に転移したアクシズが地球に引かれて落ちていく、それだけだ」

キョン「クソッ、なんとかしてアクシズを止めねえと…!」

フロンタル「人類を死滅させたいのなら、そうするといい。では私は、これで失礼させてもらう」

アムロ「どこへ行くつもりだ!?」

フロンタル「言ったはずだ。私は全人類を生かすべく行動を起こす、人類の総意の器だと」

フロンタル「私は宇宙世紀の人々の総意に従って動く。それだけだ」

キョン「おい! 待て、待てよ!!」

キョンが叫んだ瞬間、彼らは光に包まれた。

次に彼らが目を覚ましたのは、長門の家でのことだった。

キョン「…! 長門の家…?」

長門「間違いない。情報統合思念体とのリンクの回復を確認した」

アムロ「フル・フロンタル…何者だったんだ…」

シャア「…もし、奴が私の怨念から産み落とされたのなら…」

シャア「私が落とした怨念を、回収しに行かねばなるまい…」

古泉「そういえば、彼は小惑星が地球に落ちるとか言っていましたが…」

その時、キョンの携帯が鳴る。

キョン「はい、もしもし?」

ハルヒ『キョン! 大変よ!!』

キョン「のわっ!? いきなり大声を出すな! で、何が起こったんだよ!?」

ハルヒ『TV見てみなさいよ! 小惑星が地球に落ちようとしているのよ!?』

キョン「はあ!?」

キョンが慌ててテレビをつける。

TV『ただいま、NASAより正式な発表がありました。このままでは、小惑星は地球に落ちるとの…』

アムロ「クソッ…! このままでは核の冬が来るぞ…!」

ハルヒ『こんな世界に一大事にじっとしてるなんてできないわ! あの小惑星を止めるわよ!!』

キョン「小惑星を止めるったって…どうやってだ!?」

ハルヒ『それを今から考えるのよ!』

キョン「すでに手遅れじゃねーか!」

シャア「…長門君。ナイチンゲールはどこにある?」

長門「νガンダムと同じように格納してある。召喚可能」

シャア「サイコフレームはついているな?」

長門「サザビー従来の仕様と同様」

シャア「わかった。私が行こう」

アムロ「シャア! 何を!?」

古泉「MS一機で小惑星に立ち向かうつもりですか!?」

シャア「アムロにできることが、私にできないはずはない。やってみるさ」

アムロ「しかし、どうやって大気圏を突破する気だ!」

長門「問題ない。ナイチンゲールには統合思念体からの提案で『大気圏突入・離脱機能』を搭載してある」

アムロ「しかし!」

シャア「信じてほしいな、アムロ。長門君、ナイチンゲールを外に出してくれ」

長門「了解した」

みくる「やっぱり一人じゃ無茶ですよ!」

長門「シャア・アズナブル。準備完了した」

シャア「了解した。行ってくる」

アムロ「シャア!」

シャア「なんだ、アムロ?」

アムロ「…死ぬなよ!」

シャア「わかっているさ」

シャア「シャア・アズナブル、ナイチンゲール! 出る!」

ナイチンゲールが、空に飛んだ。

ハルヒ『ああ、もう! とりあえず学校に集合よ! いいわね!?』

キョン「チッ、しゃーねーな…!」

古泉「では、行きましょうか」

キョン「…ああ!」

アムロ「俺も行く…! このまま黙って見過ごすわけにはいかない!」

~北高・グラウンド~

ハルヒ「遅い!」

キョン「全速力で飛ばしたんだ、勘弁してくれ!」

古泉「涼宮さん、今はそんなことを言っている場合ではないはずですよ?」

ハルヒ「わかってるわよ! あの小惑星を止めなきゃ…!」

みくる「でも、どうやって止めるんですか?」

古泉「そうですね。まずはそれを考えないと」

長門「………」

~アクシズ表面~

シャア「さて…問題は、私にサイコフレームの力を発揮させられる力があるかどうかだが…」

シャア「私の後ろには、地球がある。迷ってはいられんな」

シャア「…やってみるさ。ナイチンゲールとて、伊達ではないのだよ」

ナイチンゲールから、緑色の光が漏れ始めた。

~北高・グラウンド~

空を眺めていたハルヒは、はっと思いつく。

ハルヒ「…祈るのよ!」

キョン「はあ!?」

古泉「これは…いったい、どういうわけで?」

ハルヒ「私にだってなんで思いついたのかわからない…でも、空に一瞬見えた緑色の光を見たとき、そうするべきだって、感じたのよ!」

アムロ「緑色の光…? …! サイコフレームか…!」

みくる「でも、それしかないんなら、そうします!」

キョン「結局最後は祈るだけかよ…!」

アムロ「長門さん! 修復はしなくてもいい、そのままνガンダムを出してくれ!」

長門「…? 了解した」

後ろにいきなりボロボロのνガンダムが現れた。

ハルヒ「うわっ!? 何コレ!? あの時のロボ!? やたら壊れてるけど…」

アムロ「説明はあとだ! みんな乗ってくれ!」

ハルヒ「乗っていいの!?」

アムロ「早くしてくれ!」

キョン「この際できることならなんだってしますよ…!」

~νガンダム・コクピット~

アムロ「よし、サイコフレームは生きてるな…!」

古泉「アムロさん、いったい何を…?」

アムロ「みんな、この中で祈るんだ。サイコフレームがみんなの意識を集束、増幅する。そして俺がそれをアクシズに飛ばす!」

ハルヒ「よくわからないけど…祈ればいいんでしょ!?」

キョン「ああ、そうだ! さっさとやるぞ!」

アムロ(シャア、わかるか…! これが人の力だ…!)

νガンダムから、緑色の光が漏れ始め、それは宇宙へと向かって行った。

~アクシズ表面~

シャア「!? この光…なんだ? 地球から…? 暖かい…安心を感じる…」

シャア「そうか、アムロのサイコフレームを使って…」

シャア「…やれる!」

~νガンダム・コクピット~

アムロ(!? なんだ、この感覚!? サイコフレームが…俺の命を吸おうとしている!?)

アムロ(いや、違う! なんだ…!? まさか、ハルヒを乗せたからサイコフレームが異常な反応を示しているのか!?)

アムロ(…おおおおおっ!!)

νガンダムから放たれる緑色の光が強くなると同時に、アムロは気づかなかったが、νガンダムに取り付けてあるサイコフレームの部分が結晶化していた。

~アクシズ表面~

シャア「強くなった…む!?」

ナイチンゲールが放っていた緑色の光が一層強くなる。コクピットの中にも、どうやら緑色の光が出ているようだ。

シャア「サイコフレームの共振…これならば、やれる!」

シャア「あと一息なのだ…! ララァ、私を…世界を、導いてくれ!!」

アクシズを、緑色の光がつつんだ。

~???~

ハルヒ「!? こ、ここは…!」

シャア「ここは、この世界に来るときにも見た…」

アムロ「サイコフレームが生み出した空間…」

古泉「…何がどうなっているんです?」

キョン「俺が知るか」

みくる「私たち…どうなったんですか?」

長門「不明。生きているとも、死んでいるともとれる」

ララァ「そう…ここは、人の心の光が生み出す世界…」

アムロ「ララァ…!」

ハルヒ「人の心の光…これが…暖かい…」

シャア「…ララァ」

ララァ「わかっています、大佐。落し物を拾いに行くんでしょ?」

アムロ「俺も行くぞ、シャア」

シャア「ああ、行こう」

ララァ「あなた達も、ありがとう。涼宮さんが居なければ、きっと彼らはここまでは来れなかった…」

ハルヒ「へ…? どういうこと?」

キョン「ま、なんでもいいだろ」

古泉「世の中にはいろんな不思議がある。それでいいんじゃないですか?」

みくる「ふふっ、そうですよね」

長門「………」

ハルヒ「…そう、ね。不思議っていうのは、こういう物だもんね」

ララァ「彼らは今、そっちの世界にいる…また、これが終わったら彼らはそっちに帰すわ…」

古泉「…わかりました」

ララァ「それじゃ…行きましょ、大佐、アムロ?」

アムロ「ああ」

シャア「わかっているさ」

~北高・グラウンド~

長門「…現実世界への復帰を確認」

キョン「…あれ? 俺達、確かコクピットにいたよな?」

ハルヒ「…ええ、いたわね」

みくる「なんでグラウンドに…?」

古泉「きっと、あの女性のおかげなのでしょう」

キョン「あとは…」

ハルヒ「ええ、後はあの二人よね…」

みくる「無事に帰ってくるといいですけど…」

ハルヒ「…ちゃんと帰ってくるのよ、二人とも…」

長門「………」

~宇宙世紀0096年~

フロンタル「奇跡もまた、繰り返す。そして何も変わらない。見ろ、バナージ君」

バナージ「あ…あぁっ…!?」

映し出されるのはアクシズを押し返すνガンダム。一年戦争を戦い続けたガンダムの姿。

そして、爆破された首相官邸ラプラス。

地球が映し出され、何かの波動が世界に広がっていくさま。そして、暴れている神人を止める四人の人間達。

フロンタル「これが事の始まりだ。やはり君にも見えるようだな。では、この宇宙の…いや、この世界と向こうの世界の時の果てまで、行こうか。バナージ君」

バナージ「…!」

そして、何も映らなくなった。光と呼べるものが、ここには存在していない。

フロンタル「光無く、時間すら流れを止めた完全なる虚無。これがこの世の果て、刻の終わりに訪れる世界だ。人がどれだけ足掻こうと、結末は変わらない」

フロンタル「この結果が、彼女が願ったからか、それとも人間の果てなき争いが原因なのか。それは私にもわからない」

フロンタル「だが、君にもわかるはずだ」

フロンタル「希望も可能性も、この虚無の入口で人が見る一刻の夢。なぐさめにもならない幻だ」

フロンタル「それが人を間違わせ、無用な争いを生みもする。この真理を知るものがニュータイプ」

バナージ「…それでも…」

バナージの中から光が生まれだす。

フロンタル「ただ存在し消えてゆくだけの命に、過分な期待を持たせるべきではない」

バナージ「それでもっ!!」

バナージの中から光があふれ、ユニコーンガンダムにも光が灯る。

そして、ユニコーンガンダムがネオ・ジオングに触れると、ネオ・ジオングにも光が灯った。

フロンタル「…熱。暖かな光…こんなものがいくら積み重なっても、何も…そう、何も……! …ん?」

ララァ『この熱が、宇宙を温めるのでしょ?』

フロンタル「あっ…」

シャアの怨念『潮時か…』

ララァ『大佐が大佐だったときの想いは、充分に伝わったでしょうから』

フロンタル「…あぁ…」

バナージ「この光は…」

ユニコーンガンダムとネオ・ジオングが、宇宙に戻ってくる。

それと同時に、ネオ・ジオングと中にあったシナンジュは崩壊していった。

シャア『君に、託す。成すべきと思ったことを…』

バナージ「………」

リディ「バナージ!」

リディの声でバナージは我に返る。

バナージ「リディさん! メガラニカが狙われています! この宙域も危ない、急いで連絡を!」

リディ「おい、バナージ!?」

ユニコーンガンダムとリディの乗るバンシィが、どこかへと、飛んで行った。

シャア『…これでいい。私の全てが、これで私に戻った』

崩壊したシナンジュから、3つの光が飛び出す。

アムロ『この世界のこと…もういいのか?』

シャア『あとは彼らに任せよう』

ララァ『フフフ…』

シャア『我々も帰ろうか、アムロ』

アムロ『そうだな、シャア…』

~北高・グラウンド~

古泉「…! 見てください!」

古泉がνガンダムのコクピットを指す。

するとハッチが動きだし、二人の男が下りてきた。

キョン「アムロさん! シャアさん!」

アムロ「やあ、みんな」

シャア「どうやら心配をかけてしまったようだな」

みくる「あなた達なら帰ってくるって、信じてました!」

キョン「でも、なんでシャアさんがコクピットから…?」

シャア「ララァが導いてくれたのさ」

ハルヒ「小惑星は…? 小惑星はどうなったのよ!?」

シャア「アクシズなら、私がモビルスーツで押し返してきたさ」

ハルヒ「モビルスーツ…ああ、ロボットで押し返したのね!」

古泉「どうやら、そのようですね。NASAも今、『地球軌道上から離れていく』という正式な発表をしたようです」

ハルヒ「すごいじゃないの、二人とも!」

アムロ「俺は何もしてないぞ?」

ハルヒ「私にはわかるわ、あなたは思念で押し返すのを手伝ったのよ!」

シャア「アムロ、この子はもしや…」

アムロ「ああ、ニュータイプかもしれないな…」

ハルヒ「何二人でこそこそ話してるのよ! あなた達も今日からSOS団の団員よ!」

アムロ「俺たちが?」

キョン「ちょっ! お前、アムロさんとシャアさんにだって事情があるだろ!」

ハルヒ「地球を救った英雄が二人もSOS団に入るのよ!? これでSOS団もかなりの名誉を得るわ!」

キョン「なんでそうなるんだ!?」

アムロ「ハハッ、俺たちは構わないさ。なあ、シャア?」

シャア「そうだな。この世界では我々は無職だ。こういうことに付き合うのも悪くはない」

キョン「本気で言ってます!?」

ハルヒ「よし、決まりね!」

アムロ(ララァ…君の言っていたことは正しかったよ)

アムロ(この虹の彼方にある世界には、確かに人の心の光が満ち溢れていた)

アムロ(俺達は当分、この眩しい光の中で過ごしていくことになりそうだ)

アムロ(俺にはまた帰れる場所ができたんだ。こんなに嬉しいことは、ない)

アムロ(わかってくれるよな? ララァには、いつでも会いに行けるから…)


完 ありがとうございました


長門の親玉万能すぎぃ!

乙ー

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