俺「寝過ごした…」(15)

待ちに待った16歳の誕生日
他の家庭ではどうか知らないが
うちでは旅立ちは16歳からと決まっている

時刻は午前6時
待ち遠し過ぎて昨夜は一睡もできなかった
窓から見える朝焼けは旅の門出を祝っているかにも感じた

朝食は簡単に済ませて
研究所に向かう

俺「…」

俺は少し後悔した
家訓とは言え
16歳で旅に出るのはうちくらいだと言われたからだ

博士が3つのボールを指差す
旅の相棒が入ったボールだ

赤いボールを手に取る
中には尻尾に火を灯したオレンジ色のトカゲ、ヒトカゲが入っている

博士が言う
「炎のヒトカゲにするのか?」

俺「いや…」

俺はボールを戻した

水色のボールを手に取る
中にはふわふわな尻尾をした水色のカメ、ゼニガメが入っている

博士が言う
「水のゼニガメにするのか?」

俺「いや…」

俺はボールを戻した

緑色のボールを手に取る
中には背中につぼみを背負った緑色の…、フシギダネが入っている

博士が言う
「草のフシギダネにするのか?」

俺「いや…」

俺はボールを戻した

博士も俺も困ってしまった

選べるのはこの3匹から1匹
しかし、俺が欲しいのはどれでもない

博士「では、何なら良いんじゃ」

俺は間髪入れずに答えた

「ライチュウが欲しい」

……………
………


俺はヒトカゲを連れてトキワ町のフレンドリーショップに向かっている

博士が通販した物を受け取りに行く為だ

俺が何故、ヒトカゲを連れているのか
それは…

ライチュウを手に入れる為だ

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