少女「神様、助けてください」(12)

<コンビニ前>


少女「うぅ…つい勢いでやっちゃったけど、やっぱりかなり危ないんだよね、これ……」

少女「いくら家に帰るのが辛いからって知らない男の人の家に一晩お世話になるって……やっぱり無理だよ」

少女「家に帰るのは辛いけど、やっぱり断ろう。怒ったりとかしない……よね?」



男「あれだよな……多分」

男「やぁ」

少女「っ!?」

男「間違ってたらごめん。ひょっとして、君が少女ちゃん?」

少女「あ、はい……少女です……」

男「へぇ、ホントに学生だったんだ……あ、ごめんね疑って。ネットって顔も年齢も偽れるから、ただの釣りだったり30過ぎのオバサンだったりするんだよね」

少女「いえ、別にそんな、大丈夫ですよ(なんか普通に良い人っぽい…けど)」

男「ありがとね。えーと、それじゃどうしようか?このまま俺の部屋に直行ってのもなんだし……あ、お腹空いてる?なんか食べに--」

少女「あ、あの……ごめんなさい!!」

男「え?」

少女「せっかく誘ってもらったのにこんな事言うのって、失礼な事かもしれないんですけど……やっぱり、私……」

男「あー……大体わかった」

少女「ご、ごめんなさい!」

男「いやいや、いいよ謝んなくて。普通に考えたらあんまり良い事でも無いんだから」

少女「お、怒ってませんか……?」

男「怒る理由も無いでしょ?他の奴ならどうかは知らないけど、少なくとも俺は怒らない」

少女「良かったぁ…」

男「それじゃ、これで二人の関係はおしまいだ」

少女「はい、すいませんでした」

男「良いってば。あ、そうだ」

少女「?」

男「これ、一応渡しとく」

少女「え、これって……」

男「直アド。寂しくなったりやっぱり家出したくなった時にメールちょうだい。いらなきゃごみ箱にポイしてくれ」

少女「えっと……はい」

男「じゃあね」

少女「さよなら…」

『神様』

別に宗教的なものでも無く、本当にこの世界の神という意味でもありません。

元は複雑なご家庭故に家出したい少女のような子、ぶっちゃsexしたい人、寂しさを紛らす為に人との交流を求める女性等を無償で匿ったり相手したり構ってあげたりする男性の事を、彼女達は『神様』と呼ぶそうです。



男「ん?知らない奴からのメール……?ハ、まさかね」



これは『神様』と呼ばれる様になった変な男と、『神様』を待つ女の子達『神待ち』のお話し。



件名:少女です
本文:すいません。やっぱり匿ってもらえませんか?



男「ありゃりゃ、またコンビニに戻るのか」

<コンビニ前>

男「お、居た居た」

少女「男さん…」

男「随分早く気が変わったもんだ。もう終わったもんだと思ってたけど」

少女「き、今日はちょっと家に居るのが辛くなりまして」

男「ふーん。複雑なご家庭なのか」

少女「ごめんなさい…また呼び出すような事しちゃって」

男「今日明日は仕事休みだし気にしなくて良いよ。むしろ呼んでくれて嬉しい」

少女「嬉しい?」

男「人に頼りにされるって悪い気分じゃないでしょ?それに俺ってこう見えて結構寂しがり屋だし」

男「さて、とにもかくにもお泊まりが決まった訳だし、そろそろ行こっか」

少女「は、はは、はいっ!」

男「……そ、そんな緊張しなくて良いよ。取って食うなんて事絶対しないから」

少女「あぅ…」

男「あ、ゴメン。やっぱりちょっと待って。コンビニでお菓子とジュース買ってく。少女ちゃんも欲しいのあったら言ってよ」

少女「へ!?い、いえ、そんなお気遣いしなくても!」

男「……先に言っとくけど、今俺の家に食糧と呼べる物は何も無いからね?それでも良いなら買わないけど」

少女「うっ……で、でも私としては泊めてもらえるだけで充分有り難い事なんです。その上食事なんて……」

男(うーん、食糧無いとか嘘言ってみたけどこりゃ駄目だな。適当なもん買ってあとで無理矢理食わせるか)

少女(おかずよりお菓子の方が多い……甘党なのかな?)

男「さて、買い物終えて徒歩5分。俺の住むアパートに到着です」

少女(あわわっ…知らない男の人の家に来ちゃいましたよ!?もう後戻り出来ない!)

男「……そこまで信用無いか俺?いや無理も無いか。とにかく入るよ」

少女「ひゃい!」

男「いかん。一瞬愛おしく感じる程可愛かったぞ今」



<男宅>

男「玄関狭いのは勘弁な」

少女「い、いえ。お気になさらず…」

男「トイレはここ。風呂と洗面台が一緒になっててちょっとアレだけど、そこは我慢してくれ」

少女「うわぁ…こう言うの初めて見ました。て言うか、玄関先に台所があるんですね……」

男「うん。おかげで飯作る時は寒くて困る。まぁ玄関先でこれだけ密集してる分、部屋は結構広いんだぜ?」

少女「あ…お、お邪魔します……」

少女「ふわぁ…」

男「な?広いだろ」

少女「はい」

男「これだけ広いと持て余しちゃってな。その上にアレだ」

少女「梯子?……て、二階があるんですか!?」

男「ロフト的な感じだな。只でさえ広い部屋なのにこんなもんがあれば人恋しくもなるさ」
あ、書き忘れてたけどアパートの二階の角部屋な。

少女「そうですよね、一人じゃ勿体無いですよこれ!」

男「うんうん。さて、少女ちゃん?今日はこのまま泊まってく訳だけど、着替えとか持って来てる?」

少女「ふぇ!?あ、え、あう、あぁぁ…」

男「……忘れた訳か」

少女「すいません…飛び出して来たもので」

男「はぁ、仕方無い。人様のだが借りるとしよう。押し入れ下の収納ケースに女物の服と下着があるから、とりあえずそれ使って」

少女「……今さらりと凄い事言いませんでした?」

男「俺のせいじゃない。仕事柄生活が不規則になりがちな女が交通の便が良い事を理由に何日か泊まることがあってな。いつの間にかそんなものが置かれる様になってた」

少女「そ、そうですか…」

男「さて、少女ちゃんも着替えて一息ついた所で……何しようか?」

少女「な、何って…え?な、何するんですか?」

男「いやそれを聞いてるんだが…時間は18時過ぎだし夕飯にはちょっと早い気もするが、もう食っちまうか?白米はあるしおかずはレンジですぐだ」

少女「あ、別に私食事まで頂くなんて事は……」

男「あぁ、うん、もう黙って食べなさい。あんまり人の好意を拒否し続けるとそれはそれで失礼だからね?」

少女「…はい」

男「待ってる間テレビでも見なよ。でかい液晶じゃなくてちっこいブラウン管のやつでしか見れないけど。ほれ、リモコン」

少女「あ、ありがとうございます」

男「いただきます」
少女「いただきます」

男「………」モグモグ
少女「………」モグモグ

男「………」モグモグ
少女「………」モグモグ

男「………」モグモグ
少女「………」モグモグ

少女(……か、会話が欲しい!)

少女(男さんが黙々と食べている。その間一切の給水無し。あまりにも黙々とし過ぎて話しかけ辛い!そもそも私と男さんはサイトの掲示板で二、三回しか話しておらず今日が初対面。うまく話題が作れる訳がない!)

少女(どうしよう……何か、何か話題が無いと居心地が悪い……あ、)


少女「……男さん!」

男「……っぷはぁ!え、何?」

少女「え、えぇと、あの液晶テレビって何に使ってるのかなって気になっちゃって(食べ終わってるよ……)」

男「あぁ、あれはゲーム用だ」

少女「ゲーム用…ですか?」

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