男「男であるなら突貫すべし」 (70)

男「明日、俺は女さんに告白しようと思うのだが」

友「おー、そっかそっか、頑張って」

男「全然心がこもっていないのだが?そんなものでは俺の気合いも入り損ねるのだが?」

友「だがだがうっせぇ!いいんじゃねえの、よく色々話したりしてんだろ?」

男「まぁ、そうなのだが………如何せん、彼女は掴み所がなくてな、その……」

友「脈があるか不安ですーってか?」

男「その通りだ。一回振られてしまったら俺……立ち直れない気がします」

友「ダッセェなぁ。男なら当たって砕けてなんぼだろ?一回ぐらい玉砕してもリトライすればいいじゃん」

男「何度も告白するとかストーカー扱いされてもおかしくないのだが……」

友「お前、何回リトライするつもりだよ……」

男「ともかく、俺は怖いのである」

友「やってみなきゃ成功も失敗もないんだからさ、行ってこい」

男「ううぬ……」

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男「やっぱり、またの機会にします……」

友「お前なぁ、またの機会またの機会~って先延ばしにしてばっかだと誰かに取られたりそのまま何もできないまま終わっちまうぞ?」

男「仕方がないではないか!あの可愛らしい瞳!艶やか、かつ綺麗でさっぱりした髪!スレンダーな姿!!熱く燃えるような輝く精神!!!」

友「あーはいはい、落ち着いて落ち着いて」

男「ともかく、憧れの存在なのだ。女さんは」

友「ゾッコンならなおさら頑張れよ」

男「あの。話聞いてました?手が届かないような気がするんです」

友「じゃあやめとけば?どうせ悩むだけ悩んで結局行動には移らないんだろ?」

男「ぐ……やめるわけないだろう!この俺の想いは、何物にも変えられんのだ」

友「そういうのは言葉と行動一致させてから言えよ……」

男「いいだろう!!俺の生き様をとくと目に焼きつけるがいい!!」ガタッ

友「お、いいねぇ。見させてもらいますよー」

男「ついてこい!従者よ!」

友「はいはい」



男「うーっす」

女「ん、男か。どうした?」

男「暇だったから積もる話をしようと思ったのだ」

女「そっかそっか」

友(さて、きっちり見させてもらうぜ、男さんよー)コソコソ

男「最近寝て起きると枕がベッドの下に消えている事があるのだが、俺はこれを枕バニッシュと呼んでいるのだ」

友「おいコラ」

女「おー、友もいたのか」

友「ちっすちっす」

男「従者!話の腰を折って現れるとはどういう事だ!!」

友「テメーの消えた枕の話なんて誰も期待してねぇからだよタコ」

男「俺はここから話を盛り上げていこうとしてたのだが?」

友「盛り下がる内容しか捻り出せねぇのかお前の頭は」

女「相変わらずだね、喧嘩ばっかりしてるけどなんで二人とも一緒におるん?」

男「従者だから」

友「コイツがヘタレてるから」

女「腐れ縁みたいなもんか、ふふ」

男「笑顔も最高、すっごい可愛い……」

友「声、声」

女「あはは、サンキュー男。男もばっちりだよ」

男「そ、そう?俺、格好いい?」

女「?……うん、格好いいよ」

男「(うっしゃぁああああああああああああああ!!!!!)ダッ

友「あ、コラお前どこに………行っちまった…」

友「で?何か言う事は?」

男「女さんに褒められてつい舞い上がってしまいました」

友「お前本当に大丈夫なのかよ」

男「………俺告白諦めようかなぁ……」

友「話して吃るとかそういうのはないにせよ、わけの分からない話しか出来ないのはどうにかしないといけないな」

男「え、もしかしてまだ女さんと話させようとしてる?」

友「別に~、お前が嫌なら無理にそこまではさせんよ。お前が、嫌ならな」

男「嫌なわけあるはずなかろう!俺を誰だと思っている」

友「へたれ」

男「羨望!誰もが向ける熱い眼差し!この身に宿った輝く力!そう、俺こそは!!」バッバッ

友「あ、女さんじゃん、さっきは悪かったなー」

男「天下むひぇきのおとこなり………」ヘロヘロ

友「ダメダメじゃねえか」

男「あれ?女さんいないの?」

友「いねぇよ」

男「はっはっはっ!!そうと分かれば問題無し!そう俺こそは天下無敵の男なり!!!」シャキーン

友「俺よ、中学入ってお前とつるみ出したけど、友達やめていい?」

男「なんでそんな事言うん?俺寂しくて泣くよ?泣くのだが?すでに涙が一杯なのだが?」ウルウル

友「あーはいはい」

男「さて、とりあえず何かしら行動をせねばならんな」ズビビ

友「はぁ……じゃあお前が女さんと出会って、一番最初に魅力的に感じた事でも思い出せよ。そこを褒めていって上手い具合に仲良くなっていけばいいんじゃね?」

男「俺は女さんと仲いいのだが?」

友「………上手い具合に信頼関係築いてけばいいんじゃね」イラ

男「友、お前今面倒だなって思ったな?おい、そっぽを向くな、泣くぞ?あ、すみませんすみません、グーパンはダメです」

友「…………」

男「……そう、アレは去年の夏頃だったか……」

友「なんだ、女さんが丁度転校してきた時じゃん。一目惚れか」

男「ち、違う!正直最初廊下で会った時、”なんだこの綺麗で整った女は。どうせ顔でモノ言わすタイプの面倒なヤツなんだろ”と思ったぐらいだ!」

友「お前、最低だな、歪んでんな」

男「そしたらさ、女さんがすれ違う時、こう言ったんだ」

女『ちょっと待てや、そこの男子』

男「とな」

友「それ女さんに聞こえてんじゃねえか。第一印象お前最悪じゃん」

男「そして説教された」

友「ダメダメじゃね?」

男「説教され続けて、少し目頭が熱くなり始めた時、俺は気づいた!なんて気高く美しい精神の持ち主なのだろう、と」

友(あー、ダメだコイツ)

男「まぁ、それが馴れ初めだったのだが……その後もちょくちょく指導を受けてな。気がついたらそこそこ仲のいい友達になっていたのだ」

友「お前やっぱりなんかズレてるよな」

男「なぁ従者よ、人は育つと何によって生かされていると思う?」

友「なんだよ急に」

男「俺は今までの自分と、思い出達に生かされていると思うのだ」

友「はぁ」

男「詰まる所、心に生かされていると」

友「まぁ、そんな感じかな」

男「女さんは、ただ明日が来るから、と答えた。何故だと思う?」

友「お前そんなわけの分からん質問までしたのかよ……人それぞれ価値観違うんだしいいんじゃね?」

男「そうか……」

友「……………」

男「なんか腹減った」

友「おい」

男「ん?」

友「今の話になんか意味あったのかよ」

男「……………さて、今日もさっさと我が根城で休息を……」

友「ぶん殴るぞテメー」

男「あ!今日は女さんと帰る約束する予定だったんだ!急がねば!」ダッ

友「なんだその予定は!」

男「俺の女さんが待っている!!」ダダダ

友「どの口が言ってんだタコ!」

男「発見!女さん!一緒に帰りましょう!!」

女「?……またそうやって暴れてるん?」

友「ふんっ」ゲシ

男「」

女「お、友も一緒か」

友「いや、俺はコイツぶん殴りたかっただけだから、今日は一人で帰る」

男「……殴るって言ったのだが?蹴っているのだが?」

女「はは……」

友「まぁいいや、この馬鹿、頼むわ」

女「はいよー」

男「く、情けない所を……」

女「楽しそうだね」

男「どこを見てそう捉えるのだ……」ヨロ

女「友達がいる所を見てさ」

男「女さんも友達、いるではないか」

女「こっち来て大分経ったからね。でもダメだ」

男「?」

女「確かに仲は良くなったけど、よく分からないから」

男「またそれか……」

女「男は今の友達、大切にしなきゃダメだよ」

男「ふむ……前の友達の事はとりあえずこれ以上詮索しないようにしよう」

女「それがいい」

男「と、いうことで、今の友達について聞かせてもらおうか」

女「ええー……今の友達かぁ」

男「…………」

女「あの……そんなキラキラした目で見られても困るんやけど」タジ

男(俺!俺!俺!!)

女「ごめん、ものすっごい聞こえてる……まぁ、友達と言えばまず男かな」

男「と、友達とか言われても別に……その……続けて」

女「………右も左もわけ分かんない状況の中のアタシにまっすぐな道を教えてくれる面白い人……かな」

男「ふふ……常命の者の暗き道を照らす大いなる導き手とは俺の事」

女「それと男の友達の……」

男「あ、別の男の話はいいです」

女「話聞く気あるん?」

男「最近一緒にいる彼女、えーと、名を女友と言ったかな?」

女「ああ、いるね」

男「あの子は友達ではないのか?」

女「なんて言うんだろ……友達、なのかな?」

男「ではその者は友達である。友達とは知り合いと言えば知り合いだが、ただの知り合いとは違うちょっと意味不明な感覚があって初めて友達なのだ」

女「うーん、向こうはどう思ってるんかなぁ……」

男「そこっ!別に!相手がどう思っていようと自分がそう思うならそうなのである!」

男「俺が女さんを好きなように!女さんもまた俺の事が好きなのである!」

女「うん、そうだね。そういうもんなのかもね」

男「うぬ。さぁさぁ聞かせろ。俺は女さんの友人の話を聞きたくてウズウズしているのだが?」

女「はいはい、うーんと、あの子は明るくて、ちょっと抜けてるようだけど実は色々考えてくれてる子だね」

男「なるほど、腹黒」

女「違う、そうじゃない」

男「俺の中では明るくて考え事をするのは腹黒だという認識である」

女「腹黒いっていうのは捻くれてたり、悪い事よく考えるような人の事だよ」

男「つまりまじゅty」

男「…………悪の手先というわけだな!ははは!!!」

女「噛むなら無理しなくてもいいのに……」

男「無理などしていないのだが?もともと言おうとしたこととちょっと違ってアレ?と思ったが、別にどうでもいいのだ!」

女「なんていうか、最初の頃から変わらずぶっ飛んでるよね、男って」

男「ふふ、だろうだろう、なんたって俺は男の中の男だからな!」

女「うん、まぁそういう事にしておくよ」

男「そうだ、連絡先を交換しないか?」

女「連絡先?」

男「ふふ、最近ではな、メンコのような形の情報端末が溢れているのだ」ジャジャーン

女「あー、なるほど」

男「さぁ、さぁ!」

女「ごめん、アタシの携帯電話、壊れちゃって持ってないんだ」

男「へ?」

女「また買ったらその時交換しよ?」

男「……………」

男(俺は知っている。今時の高校生は系単電話が必需品である事)

男(俺は知っている。興味なかったり相手にしたくない人に対して連絡先を教えたくないときは携帯電話を持っていない事をアピールする事を)

男(俺は知っている。こういう時、もはや目も当てられない悲惨な状況である事を)

女「?……おーい、男?」

男「このまま消えてなくなりたい……」ズーン

女「大丈夫?」

男「や、優しくしたぐらいで俺が好きになるとか思ってるんじゃあないぞ!!!」

女「うん?」

男「俺は!」ダッ

男「俺は人の心が真っ黒だって知ってるんだからなぁー!!!!」ダダダダダダダダ

女「…………」

女「え?」

女(行っちゃった……家近いなら言ってくれれば挨拶ぐらいしたのに)




男「友ー!!友ー!!!友ー!!!!!!」ガンガンガン

ガチャ

友「なんだようっせぇな」

男「俺は、もうダメかもしれません……脈がないです……」ビクンビクン

友「あー、そうか」バタン

男「待て」ガチャ

友「んだよ面倒くせぇ」

男「俺の話を聞け」

友「やだ、忙しい」バタン

男「待て、相談に乗って欲しいのだが」ガチャ

友「明日にしろ」バタン

男「今じゃなきゃ死んでしまう」ガチャ

友「マジで帰れよ」グググググ

男「やだ、お願い!!!」グググググ

友「……………」

男「………………」

友「あー、もう……上がってけよ、仕方がない」

>>8
すみません誤字です。
男(俺は知っている。今時の高校生は系単電話が必需品である事) ×
男(俺は知っている。今時の高校生は携帯電話が必需品である事) ○

友「連絡先の交換を断られた、と」

男「………」

友「まぁ仕方がないかもな。俺もお前の連絡先知らないし」

男「え?中学の時交換したのだが?」

友「ああ、消したからな」

男「おい」

友「家も近いし、お前何かあったらすぐ俺んち来るんだしいいじゃん」

男「どうしても外で連絡取らなければならないときもあるだろうに!」

友「お前のメール解読困難だし、正直あってもなくても関係ないしな」

男「俺のメールのどこが解読困難だ!馬鹿なの!?」

友「おはよう」

男「は?」

友「おはようって、メールでなんて打つ?」

男「日輪が世界を包んでいる」

友「今日暇?」

男「天、流れる時に身を任せるか」

友「よかったら遊ばない?」

男「行くぞ」

友「全部合わせて?」

男「日輪が世界を包んでいる……天、流れる時に身を任せるか…行くぞ」

友「わけ分かんねぇんだよタコ」

男「シンプルで良いではないか!」

友「三つ目しかシンプルっつー言葉に該当するもんがねぇんだよ。だから連絡先持ってても意味ねぇから消した」

男「酷い!」

友「そう悲観すんな。女さんが携帯電話持ってねーのは知ってた」

男「ぬ……本当なのか?」

友「ああ、らしいぜー」

男「ふむ……そうか、そうなのか」

男(誤解して酷い事を言って立ち去ってしまったぞ……うう、謝らねば)

友「ま、おかしな事でもねーよ。必要でもない携帯電話持ってても無駄なだけだ」

男「前の学校の友達がいるではないか。連絡はとっておきたいものだろう」

友「さぁ、女さんがどう思ってるのかなんて知らねーし、案外向こうの学校で虐められててコッチに来たのかもな」

男「はっはっは、女さんに限ってそんな虐められるだなんて……テメー表出ろや」

友「かもしれない、ってだけの事言っただけでなんでお前はキレてんだよ……」

男「なんか俺の女さんが馬鹿にされた気がして」

友「待て、そもそもお前のじゃない」

男「とりあえず問題は解決したので、帰ります」

友「おー、帰れ帰れ」

男「………別にお礼を言ってやらない事もないのだが?」

友「いらねーよ」

男「本当だったらお前なんかにお礼を言ってやるのも馬鹿馬鹿しくて嫌なのだが、長い付き合いであるし、特別にお礼をしてやる」

友「いらないんだけど」

男「ふふ、そんなに照れるな。だが俺からのお礼はとてもレアだからな。そんな気持ちになるのも分からん事はない」

友「さーて、暇だしゲームでもやろう」

男「…………」ンブブ

友「むくれてねーで早く帰れよ……」

男「いいさいいさ!!帰ればいいんだろ!!っけ!!」

友「おー」

男「それじゃ、今日はありがとな」

友「おー」

ガチャ バタン

友「……」

友(男は普通にしてりゃあそこそこ人気あると思うのにな)

友(何より痛々しすぎるのがマイナスイメージ過ぎる……小学生の時からあんなんだって聞いた事あるけど)

友「………馬鹿だなぁ」



男「ふ……風が心地いいな……俺の心の枯れた稲穂が柔らかく撫でられ、囁いている……」

男「オトコクン、サイコウニカッコウイイヨー」ウラゴエ

男「ふふ……はっはっはっはっは!!!!」

男「………」

男「ふむ……大聖堂か………久々に堕天使のゆりかごで遊んでいくか……」スタスタ

男「ふふ、今日はどこまで飛べるか挑戦だ」

男(どこまで漕げるか挑戦した時は一回転して投げ出されて骨折したからな……もうあんなヘマはしない)

男「…………」キィ

男「よいしょー」キィコ

男「はー、どっこいしょー」キィコ

男(……俺は特別なんかじゃあない)キィコ

男(何か秀でた才能があるというわけでもない。ただただ、虚構の中で生きている)

男(いつも一人になると、考え事をしてしまう。誰かに、俺の存在を覚えておいて欲しくて、必死になっている)キィコ

男(目立ちたくて、必死になってても誰も見てくれる人なんていない)

男(昔からそうだ。ヒーローの真似事をしても、馬鹿をしても、他人から興味を持たれるのはほんの少しの間だけ)キィィコ

男(俺はずっと、誰かの特別な存在になれることを望んでいた)

男(だけど、そんな迷った行動ばかりしているうちに、”誰かの特別とは”ということを考えるようになってしまった)

男(特別って、なんだろう……)キィイ

バッ      ドシャ

男「………いってぇ……やっぱりブランコなんて二度と乗るか」

男「ふーんふふふっふーん、ふふーんふーんふーん」

友「ちっす」

男「おう、昨日はよく眠れたか?一応お前に向けて呪いの藁人形打ち付けてたんだが」

友「朝までぐっすり安眠だった」

男「っち」

友「今日こそ進展させろよな」

男「ふん、言われなくてもそのつもりなのだが?」

友「よく言うよ……」

男「…………」ドキドキドキドキ

友「仕方がねー、俺が一皮脱いでやる」

男「何をするつもりだ?」

友「まぁ、お楽しみだ。今日の昼飯の時、一緒に飯食えねぇからよろしく」

男「ふん、どうせくだらん事でも考えているのだろうが」

友「くだらなくするかどうかはお前次第だ。これ以上お前の俺の中の評価を下げさせるなよ」

男「……ちなみに、今どれくらい?」

友「そうだなぁ……パセリぐらいか」

男「」

男「ついでに聞くが……下がると?」

友「リモコンに付いてる使い道のないボタン辺りか」

男「お前酷いな!!」

友「彩りになるぐらいは評価あるんだし、気にすんなって」

男「まぁ、とりあえず頼んだぞ」

友「はいよー」

男「………従者よ、どういうつもりだ?」

友「どうもこうも、お前がいつまでもへたれてるから機会を与えてやってんだ」

女「おーす」

女(キカイってなんだろ?)

男「突然そんな事されてもどうすればいいのかなんて分かるか!」

友「なるようになるだろ。ほら、いったれいったれー」

男「…………」チラ

女「?」

男「女さんって、肌白くて、羨ましい」

友(四十路のババァかよテメェは……)

女「そう?どうもどうも」

男「だっていつ見てもふんわりと柔らかそうな雰囲気がたまらないじゃないですか?触りたいじゃないですか!」ワタワタ

友「おい」ゲシ

男「……はは……可愛いです、好きです……愛してるよー」ボソボソ

女「あはは、ありがと」

友(こりゃあ、脈はなさそうだな……)

女「そんな風に想ってくれてるのは、嬉しいよ」

男「出来たらその……付き合っ……ゲフン……あーあーあー、従者!助けろ!!!」パクパク

友『男なら男らしく玉砕しろ』ジェスチャー

男『首かっ切ってやる!!!』ジェスチャー

女「うーん、友、ちょっと席外してくれる?」

友「お、おう……」ガタ

男「え?へぇ!?待って!置いてかんといて!!!」

友「じゃ、そういう事で」ケイレイ

男「」

男「置いてけぼりくらったん」

女「……一つ質問!いいかな?」

男「ふ……ふっふふ、いいだろう俺に答えられぬ事はないぞ……」

女「アタシがいつか消えるとしても、男はアタシの事を好きでいられる?」

男「はい?」

女「はい、答えてみて?」

男「……人はいつか消え逝くものだ……しかし、たとえこの身が消えようとも、想いの炎は永遠に輝き続けるのだ」

女「真面目に答えないと、怒る」

男「結構真面目に考えたのだが……」

女「………」ジー

男「あう……………もし消えても、記憶から消えるわけじゃないし……変わらないと思う」

女「ふんふん……じゃあ、アタシ達付き合おうか」

男「はい?」

男「え?」

男「え、ちょ………え?」

女「どう?結構良い提案だと思うんだけど」

男「提案も何も、いきなりそんな……」

女「いや?」

男「嫌ではない……嫌ではないが、女さんはいいのか?」

女「少なくとも今のアタシはどうってことないよ」

男(それは後々気が変わるかもしれないという事ですか……)

女「それでね、もし付き合う事になったら、頼みたい事があるんだ」

男「ほう」

女「その時のアタシの事、ちゃんと思い出にしておいて欲しいの」

男「えー……どういう事ですかな?」

女「今は特に気にしなくていいよ。ただ、この先の事だね」

男「この先、か」

女「さあさあ、乗るか乗らないか」

男「ふん、まぁいいだろう…………あ、少しここで待っててもらえる?」

女「はいはい」

男「………」ガラガラ

パタ

女「……………」

ガラッ

男「今日は女さんに言わねばならない事がある!」バーン

女「え、あ、うん」

男「…………」ズカズカ

男「どうか!!!俺と付き合って欲しい!!!!」

女「うん、さっきその話はしたよね?」

男「ノーッ!!!!あんな微妙な感じでできた関係などナンセンス!!!」ビシ

女「つまり、やり直しって事かな?」

男「男は常にロマンで溢れてる!!!!そこ!やり直しとか言わない!」

男「これが”初めて”の告白なのだ」

女「なんだか面倒だねー」

男「そこは何も考えずによろしくお願いするのだ」

女「はいはい」

男「えー、では、コホン、女さん、俺と付き合って下さい!」ペコ

女「うん、ありがとう、喜んで」ニコ

男「……ホントに俺でいい?」

女「きっちりやるなら最後まで格好良くしようよ……」

男「く……女さんは今この時より俺の彼女だからな!絶対に誰にも渡さんのだからな!!」

女「ふふ、ありがと」

男「くぅ」カァアアア

男「なんで俺ばっかり照れて女さんが照れてないのだ!!理不尽なのだが!!」

女「惚れた弱みってヤツだよ。これから頑張ればアタシを動揺させれるかもね」

________________

男「従者よ、紹介する。我が伴侶となった女さんだ」

女「ちっす」

友「あーはいはいおめでとー」

男「もう少し面白い反応を見せてくれてもいいではないか」

友「いや、なんつーか面白くねーなーって」

男「お前、性格悪い」

友「お前に言われたくねーよ」

女「いやー、なんか男取っちゃってゴメンね」

友「この馬鹿は面倒だから丁度いい。そもそも俺のじゃあないしな」

男「馬鹿でも面倒でもないのだが?むしろそういう従者の方が馬鹿だし面倒なのだが?」

友(だがだがうっせぇ……)

女「こら、そういう事言わない」

男「む……」

友「はーあ、仲良くカップルしてろ。俺は関わらん」シッシッ

男「ふん!関わられてたまるか!」

女「じゃ、授業もあるしアタシは教室戻るねー」フリフリ

男「ではな!!!」ブンブン

ガララ

友「……………」

ガラ

男「俺教室こっちだったん……」

友「アホか」

男「く…………くく、どうだ、羨ましいだろう」

友「おー、羨ましい羨ましい」

男「しゅ、週末にはデート行っちゃうもんね!」

友「はいはい」

男「楽しく過ごしてきてやるんだからな!」

友「はいはい」

男「従者は寂しくお留守番だ!!ふっはは!!どうだ!!」

友「はいはい」

男「……どうしよう……デートなんて初めてでどうしたらいいか分からない……助けたってー…」

友「お前煽っといてよくそんな事言えるな」

男「助けろ!!」

友「やだ、そのまま消えろ」

男「ごめんなさい助けて下さい!!」

友「…………はぁ……ちょっとぐらい知恵貸してやる」

男「流石従者だ!!その言葉を待っていた!!!!!!」ビシッ

友「…………」

友(やっぱ面倒くせぇ)

友「まずどこに行くとか決めてんのか?」

男「うぬぬ……特に決まっていないのだ」

友「正直今の状態じゃあ好みとかもよく分かってねー。そんな時に映画だの遊園地だの行っても好みの違いで微妙な空気になる事があるな」

男「ふむふむ」

友「かといって買い物に出かけてもどっちも楽しめる共通の物がなけりゃあ片方はつまらない思いをするだけになる」

男「ほう、そして?」

友「まぁそんな状態でどこに行っても大抵失敗する。ということで諦めろ」

男「おい」

友「なんだよ」

男「成功するように知恵を貸せと言っているのになんで失敗の事しか言わんのだ」

友「どうせお互いの好みもよく分かってねーんだ。逆に失敗しまくって改善しろ」

友「良いように言えば……そうだな、失敗しても怖くない」

男「あ、詰んだ」

友「テメーがもう少し女さんについて何か知ってれば話は変わってくるんだよ。それなのにテメーは……」

男「むむぅ……」

友「………男、お前私服って普段どんなんだっけ」

男「いつもは黒いズボンに黒いパーカーだ」

友「………あ、そう」

男「今のになんの意味があるのだ」

友「いやぁ、デートに行くのに私服センス皆無とか残念だなぁって」

男「何を言うか!俺のパーカーには真ん中にNo.1と書かれているのだぞ!!ナンバーワンだぞ!ONE!!!」

友「ちょっと黙れ」

男「あ、はい」

友「うーん………」

男「あ、それとなそれとな!背中の方には英語で色々書いてあるんだぞ!格好いいぞ!!」

友「黙れっつてんだろ」

男「……おす」ショボン

友「女さんと買い物行ってこい。で、女さんに服選んでもらえ」

男「はぁ?」

友「それで少しはどういうのが好みかって判断できるだろ。まずはそこからだ」

男「そんなんで大丈夫が不安なのだが……」

友「腹へったらどっかの店で適当に飯食って、ブラブラするだけでも結構変わるだろ」

友「女さんの持ってる小物とか、そういうのを見る限りセンスも偏ってないし手堅い感じだと思うぜ」

男「従者よ……お前意外と多角的にモノを判断できるのだな」

友「………うっせ」

男「まぁいい!ミッションコード01……完遂してみせるさ」キリリ

友「はいはい………あ、そうだ」

男「なんだ?」

友「さっき言ってたダッセェパーカー着てくのだけはやめとけ」

男「酷い!」

男「……………」

男(デートに誘えたのはいいが……待ち合わせ場所、間違ってないよな)

男(駅前の自販機の前、時間は13時……間違いないのだ、大丈夫なのだ)

男(くっ、せめて女さんが携帯電話を持ってさえいてくれれば良かったのだが……まぁそんな事思っても仕方がない)

男「…………」ポケー

ポン

男「ぬ?」

女「お待たせー、ゴメン、待った?」

男「俺には人間の時間という概念などどうでもいいのだ。それよりもなぜ俺の頭に手を置くのだ」

女「ふふ、男のふわふわの癖っ毛、一回触ってみたかったんやおねー」ワシワシ

男「…………」ワシワシ

女「わっわっ、何するんだよ」

男「仕返しだが?実は一度こうしてみたかったのは心の中に秘めておくのだ」

女「聞こえてる、聞こえてる」

男「では、行くとしようかっ!」バッ

女「はいはーい」

男「………」

男(女さん、可愛いなぁ……なんかゆったりした感じで……ああ……)

男(キュロットにブラウス……すらりと伸びた健康的な足が俺の煩悩を……煩悩を……)

女「?……どしたん?」

男「ふくっ……や……何でもないでやんす」

女「あんまし人の身体見るのは感心しないぞー」

男「見てないのだが?勘違いしないで欲しいのだが?別に足綺麗とか、けふん」

女「変に動揺すると気持ち悪い。男なら一言似合ってるって言ってくれればいいの」

男「………似合ってる」

女「サンキュー。さてさてー、今日は男の私服をどう弄っていこうかなー」

男「お手柔らかに頼むのだ」

女「正直男は可愛い感じが強いと思うんだよね」

男「俺は強そうな感じだと思ってたぞ」

女「そういうのが好きなら色々と変えなきゃね」

男「ふむ……」

女「例えばー……ナヨナヨして迫力も何もないような人がミリタリー系の服着てても残念に見えるでしょ?」

男「迫力がなくても渋みが……」

女「歳重ねなきゃ渋みなんて出ないもんだよ」カチャカチャ

男「むむむぅ」

女「着こなしが出来てれば話は別になってくるんだろうけどさ、そういう組み合わせがしっかり出来ないうちは自分の身の丈に合った物の方がいいね」カチャカチャ

男「ふあ?」ドサ

女「とりあえず手頃な感じで上下選んだから、試着してきなよ」

男「試着……?」

女「一度にたくさん抱え込むのは店側から遠慮するようになってるからとりあえず、ね。さぁさぁ、往復が始まるよー」ニコニコ

男「おうふ……」



ガチャ

男「ふんっ」キリ

女「うーん……次」

ガチャ

男「とうっ」ドヤァ

女「あ、やっぱこれはないね。次」

男(俺が選んだのは即却下なのん……)

ガチャ

男「ほいさ」

女「なーんか着られてる感じかなー……ん、次これね」

男「あ、うす」



男「」チーン

女「うんうん!随分マシになったんじゃないかな!」

男「足、しんどいです……」

女「そう?」

男(女性は何故こんなに元気なのでしょうか)

女「じゃあちょっと手直しするね」ス

男「う、うぬ……」

男(近い、近いです……ああ、手が……こそばゆい……)

女「はい、どうぞっ」

男「うん?……んおお?」

男「なんか凄い!いつものアレじゃない!!」

女「でしょ?ちゃんとすれば男はもっと格好いいんだからさ」

男「ふおおおおおおおおおお……」

男「それにしても色々と面倒なのだな、私服という物は」

女「まぁ、ね。下手すれば変だし、上手くやっても変だし……周りから浮かない程度の服装をするのが一番面倒な所だよ」

男「よしよし……では我が伴侶に俺のおすすめの甘味処を教えてやろうぞ!!!」

女「いや、普通にそこはお菓子屋とか、そういうのでいいよ」

男「お菓子ではない!甘味だ!!」

女「はいはい」

男「とりあえず清算はしておくから、女さんはちょっと待っていて欲しいのだ」

女「はーい」

男「ふふ、女さんが選んでくれた服だからな、買わないわけにはいかんのだ」

女「………そ」

男「すみませーん」テクテク

女(ちょっとは、それらしく照れくさい言葉も言えるじゃん……一応、顔には出てなかったと思うけど……多分)

女(好きか……こんな風にちょっと嬉しく感じるのも、好きとかいう感情の一部なのかな)

女(今のアタシの中ではこれが好きだと思うけど、合ってるか不安だ……)

男「ふふん!済ませたぞ!」

女「ん……うん」

男「あのー、なんかマズい事でもありました?」

女「え?」

男「いや、なーんか……んん……何でもないのだ!」

女(何気に鋭い……)

男「大方甘い物の事で頭がいっぱいになっていたのであろう!!そう!脳内スイーッツワールド!!!」

女(わけなかったよ)

男「では行くぞ!」

女「はいはーい」

男「まずこっちの路地へばばーっと進みます」テクテク

女「ふんふん」テクテク

男「信号なので待つのだ」

女「車通り少ないのに長いね」

男「ま、そういう所だからな」

ドク

男「で、まっすぐ進んで交差点……」

ドクン

女「うん……」

男「で、路地を越えればーもうすぐそこだ!!」

男「………」

男「……………?」

女「」ヘタ

男「え?ど、どうしたん?足、疲れた?気分悪い?」

女「」ガクガク

男「ヤバい!なんかマズい!女さん、落ち着いて、ゆっくり息して」ガシ

男「きゅ、救急車?いや、交番?え?市役所!?」

女「……ハッ……ハぁッ……」

男「携帯……ああ、とりあえず、道の脇に移動して……」グッ

男「大丈夫、大丈夫……うん、何がなんだか分からん!!」ギュウ

女「……………」

男「………」

女「…………………」

男(……お、落ち着い……た?)

女「……あ、えと……すみま……いや……ごめんなさい?」

男「女さん、大丈夫?」

女「う、うん。大丈夫、だから」

男「無理はしない方がいいと思うぞ。今日はもう帰ろう」

女「…………あー、うーん……えと、何してたん……でしょうかね?」

男「へ?何って、買い物ついでに歩いてて……」

女「あ、あー、そうだった?……そうでした。まだ途中ですもんね、うん。早く目的の物買わなきゃですし」

男「体調は、大丈夫なのか?」

女「大丈夫ですよー。ほら!ピンピンしてますし!」

男「そう、か……でももしも事もあるから、やっぱり帰るのだ」

女「あ……少しごめんなさい」ケイタイポチ

男「うぬ」

女「………………」

男「………」

女「あ、ごめん、ね?えーと、買い物は、終わったんですよね?」

男「へ?まぁ、終わって……これから甘味処に行くつもりで」

女「?……普通にそこはお菓子屋とか、そういうのでいいんじゃないですか?」

男「え?」

女「えっ、あっ、すみません。そうでしたよね!甘味処、甘味処……さぁ、行きましょう」

男「本当に大丈夫なのか?」

女「大丈夫ですよ!ほら、行きましょう?」

男「……うぬ……こっちなのだ」テクテク

女「はい」

男(……さっき、同じ事を話したのだが……うん、あれだな、ちょっとショックで混乱してるに違いない)

男(でも……)

女「……………」オドオド

男(……なんか、変だ……)

男「女さんって、何か発作とかあったりするのか?いや、ほら、俺も伴侶の事を分かっていなければならないと思ってな、はは!」

女「大丈夫ですよ、そういうの、私は持っていませ…ん…持ってない、から」ニコ

男「それならいいのだが……」



男「あーそうだ。女さん、携帯電話、持ってたんだな」

女「あっ……わ……いや、その……はい」

男「どうして、連絡先を教えてくれなかったのだ?」

女「あっ、あっ……その……その…………」

男「…………」

女「最近、買って……あ、ちが……」

男「…………」

女「えと、家族に、借りたんです」

男「……そっか。そうか!そうだったのかー。納得である!!」

女「ふふ、今日は買い物ですしね。借りたんです」

男(……なんか、一人で舞い上がって、悲しいやら切ないやら……辛い)

男(俺が、一方的に想ってて、遊ばれてただけなのか?)

女「……ごめんなさい」

男(どうしてだ……)

男「なぜ謝るのだ?」

女「……いえ………その……」

男「今日、やっぱり帰った方がいいと思うのである。女さん、少し疲れてるのだ」

女「そんな事っ」

男「もういいのだぞ。ただし、心配だから送っていくのである」

女「………送ってもらうのは、悪いです」

男(どうしてだ……)

女「今日は、なんか迷惑かけちゃってますし……」

男「俺はそんなに、馬鹿に見えるのか?」

女「えっ」

男「俺だって、俺だって男だぞ!仲が良ければ好きになるのも当然なんだぞ!それでやっと彼氏になれたと思ったのに、どうして色々隠すのだ……」

女「…………」

男「俺は、おもちゃじゃないのだ」

女「……ごめんなさい、では……送っていってもらいます」

男「………」

女「今から帰るって、少し連絡しますね」

男「うぬ……」




女「今日は、なんかごめんなさい」テクテク

男「気にしていないのだが?むしろ感謝しているくらいなのだが?」テクテク

女「いえ……ありがとう、ございます」

男(急に他人行儀になって……今日はもう散々だ……もうなんか、いやだぁあああ…)

「女ー」

女「あ、迎えです。お姉ちゃんです」

男「お姉ちゃん?」

姉「…………」ペコ

姉「女、車に乗ってなさい」

女「うん……今日はありがとうです。えっと……」

男「ふん、俺も楽しかったのだ。ただ、少し気分を悪くさせてしまったであろう、謝っておく」

女「ううん……私こそ。じゃ、明日、ね」

ガチャ バタン

姉「……………」

男「どうも」

姉「……アンタ、女の友達?」

男「ふふ、友達などではない!前世で結ばれし者だ!」

姉「…………あっそ」

男「あの、そんな反応は辛いのですが」

姉「女は……アンタの事なんて知らない。全部忘れて……覚えてないし、この先思い出す事もない」

男「はい?」

姉「…………」

男「あの、今日一日遊んで、その言い方はないかなーと、思うんですけども」

姉「どうせ、アンタも愛想を尽かしていなくなるからさ………どうでもいい」

男(こ、この人……すっごく頭に来る物言いするのだ……)

姉「………もう関わるな。女に付きまとうのはやめとけ」

男「……」カチン

男「そんな言い方されるとムカつくのだが?」

姉「……ムカつくように……言ってるから」

男「ほっほーう。そうやって俺を女さんから遠ざけようとしても無駄なのだが?なんせ俺と女さんは前世で……」

姉「……うっせぇぞ、クソガキ」

男「くっ!?」

姉「どんな関係だろうと、そんな事はどうでもいい。………今日、そんなものは消えた」

男「消えたって……」

姉「アンタと遊んでる間に、消えたの……それでおしまい」

男「………今日、急に倒れてから様子がおかしくなった事を言ってるのか?」

姉「………………さぁ」

男「消えたとはなんなのだ?さっきの覚えてないとはなんなのだ!?」

姉「…………今日はお手数かけてすみませんでしたー」

男「待つのだ、話は何も終わっていないのだが?」

姉「……何も始まってねぇよ、クソガキ」ガチャ バタン

男「まっ………」ブゥーン

男「……………」

男「なんなのだアイツ!!凄く嫌みでムカつく!頭おかしいのだ!!!」ガンガン

男「………今日は散々だ……」


男「以上が報告である」

友「ほーん」

男「俺はどうすれば良かったのだ……」

友「俺に聞かれても知らねぇよ」

男「とりあえず連絡取ろうにも今日は日曜日だし、明日にならなければ女さんにも会えない!辛い!!」

友「普段通りの感じでいいんじゃね?」

男「付き合ってたかが数日……といったところでも、隠し事をされるのは辛いのだ」

友「バーカ、付き合ってても隠しておきたい事なんていくらでもあるっつーの」

男「そういうものなのか?」

友「付き合ってるってもたかが他人だぜ?口約束の仲だ。そんなのになんでもかんでもさらけ出すのは馬鹿だ」

男「俺は女さんの事なら全部知っておきたいぞ!それに、自分の秘密だっていくらでも出してやるのだ!!」

友「お前がそうだとしてもなぁ……例えば、過去に人を虐めていましたー、とかってのはわざわざ言うか?」

男「女さんはそんな事しないのだが?」

友「例えだっつの。お前がそう思ってるって事は、そういう事してる女さんの事を知ったら幻滅するだろ?」

男「ぬぅ……むむむ……」

友「それと同じで、触れられたくない何かが女さんとこにはあるんだろ」

男「だから俺を突き放すような言い方をお姉さんがしてきたと?」

友「さぁな。その辺りはどうしたって分からん」

男「…………」

友「女さんの事、嫌いになったか?」

男「ぶっ飛ばすぞ」

友「なら大丈夫だ。そのまま好きでいてやりな」

男「………」

友「これからお互いの事を知っていくのが大事だろ。躓いてどうすんだタコ」

男「ふ、ふふ……そんな事は百も承知なのだが?言われるまでもないのだが?」

友「あーっそ」

男「それにしても流石は我が従者であるな!」ワシワシ

友「触んなカス!うっとおしい!」バシ

男「ふん、可愛げのないヤツめ!ともかく苦い所もあったが記念すべき一ページなのだから、幸せなのだ」

友「はいはい」

男「………………」

友「………どした?」

男「女さんは、昨日の事を忘れてしまったのだろうか」

友「明日聞け。今そんな事考えてもどうしようもねーっつの」

男「そう、であるな……」

男(昨日の変わりよう………本当に抜け落ちたようで、不安だ)

男(以前言われた、思い出にしておいて欲しい、という言葉……それは、そういう事なのか?)

友「おいバカ、用が済んだならさっさと帰れ。これから俺風呂入るし、いられると迷惑なんだけど」

男「くっくっく……言われずともそのつもりだ!!さらばだ従者よ!また会おうっ!!」

友「おー帰れ帰れ」

_________________

男「新しい朝………だが俺にとっては刹那にしか過ぎないこの時間……はっはっは!!!」ダンダンダン

ガチャ

友「…………」

男「くく、我が声に導かれし者よ!!おは……」ドカ

友「朝から近所迷惑だっつの」

男「せめて最後まで言わせて欲しかったのだが……」

友「いつまでも俺の所こなくてもさ、一人で行きゃいいじゃんか」

男「それは寂しいから嫌なのだ!」

友「テメーには女さんがいるだろうが、いつか刺されても知らねーぞ」

男「ふ……俺の心臓は神に授けられし紅の……」

友「あーはいはい、着替えてくるからちょっと待ってろ、すぐだから」バタン

男「槍で、さえ………最後まで聞いていくべきなのだ……」

男「……………」

男「……」

男「……………」

男「まだー?」ガチャ

友「……」

男「……………………」

友「………死ぬか?」

男「あ、いえ」バタン

男(あー、今日も空が綺麗だなー)

ガチャ

友「行くぞタコ」ガン

男「ぐみっ!!」

友「普通だったらお前は警察に突き出されてもおかしくない罪を犯してんだからな。グーパンなだけ助かったと思え」

男「すみません……」

友「それと、女さん裏切るような真似すんじゃねーよ、クズ」

男「すまんのだ……」

友「罰として今日女さん送ってけよ。で、明日から女さんと登校しろ」

男「そ、それはハードル高すぎるかなーと思うのだが?」

友「ハードル高いも何も、それぐらい大した問題じゃない」

男「くっ……ああいいさいいさ!俺にかかればそんな事雑作でもない!!後でヘルプは任せたぞ従者よ!!」

友「結局俺が手伝わなきゃ何もできないのかよ……」

男「ふっ……それぐらい従者として当然の仕事であろう!!」

友「…………はぁ」

男「………あ、あり?」

友「あーもう、いつまでも俺に頼ってんじゃねぇよバーカ、たまには自分の力でなんとかしろっつの」

男「そんな!!」

男「………」

男(行ける、大丈夫だ。昨日もそつなく行動できただろう、俺!)

男「頼もーう!」ガラ

ワイワイ

男(ふむ……女さんは……ああ、一番後ろ、真ん中の席か)スタスタ

男「ご機嫌麗しゅう、我が伴侶よ」

女「………あ」

男「くく、どうしてここにいるのか不思議だ、という顔をしているから答えてやろうか……そう、これこそは愛の成す力っだ!!」

女「うん、えっと……男さん、ですよね。一昨日は楽しかったです」

男「うぬ、俺も楽しんだぞ。その後、体調に問題はないか?」

女「特に何もないですよ。心配してくれてありがとう」

男「敬語など背筋がむず痒くなる。いつも通りで結構なのだ」

女「うん、はい……あ……うーん……」

男「…………」

女「……ごめんなさい」

男「い、いや、無理ならそのままでも構わんのだが、いつもと違って困っているのだ」

女「ごめっ……ひぐ……え、あれ?……」ポロポロ

男「ちょっ!えーと、あー、そんな虐めているわけでは……」

女「ちが、違うんです……っぐ……ぐす」

『なんか泣かせてね?』

『あれ、一組の変人じゃん』

『違う組に来てまで何してんだよ』

男「」

ガラッ

友「おいアホ」パカン

男「ふあっ!?」

友「…………いや、ちょっと覗かせてもらってたけど、今はちょっと面倒だし帰るぞ」グイ

男「まっ、俺はまだ何も……!」グイグイ

友「あー、女さん?ちょっとまた後で話しにくるわ」

女「…う……すみ、ません………はい」

友「それと、フォローはよろしく。流石にそこまで悪い事してねーのにいらん噂立てられても面倒なんだよね」

女「……はい」

友「………はぁ」

バタン

男『待てー!離せー!!俺は何もしてないぞー!!』

友『話がややこしくなるから黙ってついてこいタコ!』

男『従者!助けろとは言ったが邪魔をしろとは……』

女「…………」

女(一昨日の、男さんとかいう人と……また知らない人……)

女(ああ、なんで……なんで私は、こんな面倒な人間なんだろ……)

男「従者よ、何故邪魔をしたのだ?」

友「なんか様子がおかしかったからな」

男「おれはいつも通りで問題なんてこれっぽっちもなかったのだが?」

友「お前が良くても、女さんが問題だったんだよ」

男「…………」

友「お前の話聞いて、からかわれてるだけだと思ったけどよ、どうもそんな雰囲気じゃなかった」

男「ふん、俺は本当の事しか言わないのだ」

友「……まぁ今回はそういう事にしておいてやんよ」

男「今回だけではなく今後もそうであると嬉しいのだが」

友「で?お前、どうすんだよ」

男「どうするも何も、今まで通りに接するに決まっているだろう」

友「あんな状態で今のまま付き合っていけるって思ってんの?」

男「ふっはっは、当然!」

友「…………」

男「なんなのだ?」

友「いや……なんでもねぇよ」

男「まぁ、さっきは何故か泣かせてしまったが、次は問題などないであろうなぁ!」

友「お前は能天気で幸せそうだな」

男「それは馬鹿にしているのか?」

友「褒めてんだよ、脳みそのお花畑具合をな」

男「ふはは、こやつめ」

男「やっぱし馬鹿にしてるではないか!!」ギャー

友「あーうるせーうるせー」

男「もう従者の事など知らん!俺はもう行くからな!!」

友「行くって、教室同じだし結局意味ないじゃん……」

男「ぬぐぐ……別にいいだろう!バカー!意地悪!ヤンキー!!」ダダダ

友「あ………」

友「………」

友「ふざけんな、馬鹿。俺がどんな気持ちで……」

友(まぁ、今俺がどう思っても仕方がない。色々と準備しておいてやるか……)

友(いや、別に男がどうなろうと知った事じゃないけど、アイツ俺が準備しといてやらねーと何も行動しないし、キレるし)

友(何より面倒くさいからな、うん)

友「はぁ……」

男「………」ムス

友(何むくれてんだか……)ガタ

男「……………」

友「…………」ガサゴソ

男「…………」ソワソワ

友「…………はぁ」

男「…………!」ピク

友「なんだよ」

男「は、はぁ?俺は何もしてないのだが?別に友とか知らんのだが?なんなのな?」

友「挙動不審すぎるだろ」

男「きょ……ふん、知らんな」

友「あっそ」

男「べ、別にお前がどうしても、どうしてもー!!というのなら、先程の件は水に流してやろう」

友「いや、俺が流す方で、お前がお願いする立場だろ」

男「ゴメンナサイ」

友「あ?」

男「申し訳ございませんでした」

友「それでいいんだ。さっきみたいな事、次ぎしたらはっ倒すからな」

男「うす」

友「で、女さんの呼び出しは俺がなんとかしてやる。お前だけじゃ面倒そうだし、今回は俺もついてく」

男「ええー」

友「今までお前に任せてたけど、なんかダメだ」

男「どこがだ!」

友「任せるのが怖くなってきた。本当にお前男かよ?」

男「くくく……俺は人間でいう性別に捕らわれない存在……」

友「はいはい」

男「まぁ……すまない、ありがとう……」ボソボソ

友「……」ニイ

男「と、とでも言っておこう!俺の未来は従者!貴様にかかっているのだから責任重大であるぞ!」

友「まったく……」

友(お前はいつも、俺がいなきゃダメなんだな)

友(………なんてね。頑張れよ、男)

男「まずシミュレーションでもしておくか……んん、やぁやぁ女さん!!ごきげんよう!さっきぶり!!!」

『またなんかやりだしたぜ……』

『いつものことだろ』

『友ー、男うるさいよー』

友「悪い悪い」パカン

男「……痛いのだ」

__________________
友『いいか?女さんの事については俺が質問してくから、テメーは余計な口出しすんなよ』

男『ええー』

女『お前が変な話し出すと、話がまとまんねーんだよ。分かったな?』

男『………うぬ』

___________________

男(と、言ったものの……)

女「………」

友「じゃあ、次な、女さんは俺の事、覚えてるか?」

男(どうやら、女さんは遊びに行った時の事を覚えていないらしい。正確には、倒れる前の事を、だ)

女「……ごめんなさい、男さんのお友達、としか……」

友「ふむふむ、前にもこんな事は?」

女「……実は、これが初めてではないんです。こんな風に、忘れるの」

男「な、なんだとっ!?」ガタタ

友「座ってろ」ゲシ

男「あ、うす」

女「転校してきた時も、前の学校の事……何も憶えてないままで」

友「……家族はなんて?」

女「何も心配いらないから、とだけ」

女「しかもコレ、この学校に来て初めてじゃあないみたいなんです」

友「……と言うと?」

女「こっちに来てから、私は細かく日記をつけるように言われたので、つけていたんです」

女「その記録を見ると、今回で十一回目みたいです」

友「十一回……」

男「そんなのでどうやって生活を……クラスメイトはおかしいと思わなかったのか?」

女「そういう生活に関する事は日記に書いてあります。でもクラスメイト以外に書いてあったのは、男さんの事だけで……」

友「記憶を何回もなくしてる、と」

女「………はい」

男「な、なんだと………」

友「おいおいどうする?また関係深めて付き合えるまで頑張らなきゃだぜ?」

男「ぐ、ぐぐぐ………」

女「…………」

男「ふっ、俺を誰だと思っている?男様だぞ?たかがそんな事で契約を破棄できると思ったか!!!」

友「って言ってるけど、女さんはどうするつもり?」

女「どうするって……」

友「知らないコイツと、付き合える?」

女「………少し考えさせて下さい」

男「え?俺のハッピーライフおしまいなの?ちょ、マジか……?」

友「ま、忘れちまったなら仕方がねーよ。無理にこの馬鹿に合わせなくてもいいからさ」

女「はい」

男「」

男「………」トボトボ

友「……………」

男「お前は一体、どっちの味方だ!!」

友「んだよ、急に」

男「苦節……長き日々の間募った俺の想いを踏みにじりおって」

友「別に踏みにじったわけじゃねーだろ?」

男「いいや!踏みにじったのだが。いかにもさっさと別れちまえ!みたいな言い方しやがったのだが」

友「俺はお前の味方だからそう言ったんじゃねーかよ」

男「味方だったらもっと押してくれてもいいのではないか!?」

友「ちっ……」ガシ

男「あ、痛い痛い!髪の毛掴まんで!抜けるん!頼んます!!」

友「この先何回もテメーの事なんて忘れてくんだぞ、女さんは」グイ

男「痛いのだ!!怒るぞ従者!!」バタバタ

友「その度にテメーは毎回悩んで、辛い思いして、傷つくだけなんだぞ」

男「べ、別に俺はそんなことないのだ!」

友「いいや、現にそうなってるから言ってんだよ」

男「そんなのは従者には関係ないのだ!!!!離せ!それよりも毛根が悲鳴をあげている!死神に毛根から刈られる!!!」

友「なんで死神が草刈り鎌持ってるみたいに言うんだよ……」パッ

男「ああ……ああ、大丈夫か我が黒き生命達よ……」サスサス

友「それに……」

男「なんだ?今俺は非常に頭にきているのだぞ」

友「お前が関係ないって思ってても……俺はそんな男見るの、辛いよ」

男「う……」タジ

男(卑怯なのである)

友「なぁ、もうやめようぜ。女さんも難しい事情があるんだしよ」

男「くっくっく……くくくくく」

男「笑わせるな!俺を誰だと思っている!天下無敵の男だぞ!!男としてこの世に生まれ!男としての道歩む!!!」ビシッ

男「そう……男であるならば、突貫して進むべきなのだ!!ふはっ」ジャキーン

友「……本当は寂しがり屋の素直なヤツだろ」ダキ

男「っ……ちょー?じゅ、従者?冗談キツいぞー」

友「…………」

男「あの……その……」

男「俺の胸元に頭押し付けて、あの、何してんの、おい」ドキドキ

男「あ、いい匂いする……」

友「………」ドスゥッ

男「ヘンェ!?お、ま……みぞおちは無しなのだ……」

友「忘れろ」カァ

男「はぁ?」

友「忘れろっつってんだよ!今の無し!!何でもねー!!!勝手に色恋してろタコ!!!」

男「な、なんなのだ一体……俺が何をしたというのだ……」

男「風が………止んだ……」

男「はぁ……」

男(おかしい、おかしいぞ)

男(友があんなに可愛く感じるなんて、俺は頭がどうかしてしまったのだろうか)

男(友と出会って、つるみ出した中学の時の事……どう考えても腐れ縁の友人だと思っていた)

____________________________

男「ふっ、身を潜めるには丁度いい場所だな、学校と言う物は」

男「…………」ポツーン

男(えーと、小学生の時って、どうやって友達とか作ってたっけ)

男(なんか、結構知らない間に、サラサラッとでき………)

男(あ、コレはもしかしたら、詰む……?)

男「ふはっ、ふはは!」ゴソゴソ

男(とりあえず右目の下辺りに紋章を書き加えておこう)

男「選ばれし男……くく、辛いぜ」

「よう、どこ小の出身?」

男「無礼なヤツめ、俺がなぜここにいるかも分からんのに良く話しかけれたものだ」

「は?キッモ」

男「」



男「コミュニケーションは間違いなく取れていた。俺に落ち度はない」

「今日はグループで作業してもらいまーす」

「どうもー、隣小出身でーす、よろー」

男「ふん、群れるのは性に合わん。勝手にやってるといいのだ愚民ども」



男「流石に言われれば一応、手伝いぐらいはするのだ。俺もそこまで迷惑なヤツではないのだ」

「給食の時間は好きなように席移動してもいいですよー」

「はーい」

男「くく、食事か。俺の食事は特殊だからな。この干し肉があればいい」


男「ぼっちなんなー」ポツン

男「………ここでの隠れ家的な場所でも探すか……」

男「ふふ、フェンスに囲まれたこの建造物。フェンスと建造物の間というのは誰も来ないいい隠れ家になるのだ」

男「ふっふっふふーん」テクテク

男「ふ……?」

「で?俺に何か用?」

「つれねぇなぁ。お前と俺の仲だろ?いいじゃん一回ぐらい」

「必死すぎてキモいっつの。俺そういうの嫌いだし」

「お前もさぁ、一人で寂しいだろ?俺と付き合えば毎日楽しいぜ」ガシ

「くっせぇ顔寄せんな……おい、マジでやめろって」

男(オランウータンが金髪プリンヘッドで装飾品ジャラジャラの人に……関わらない関わらない)

男(俺は風の吹くまま気の向くまま、ふらりと消えてく枯れ草さ……退散っ)

男(だが待てよ?ここで格好良い所を見せれば……)クル

金髪プリン「…………」ガルルルルル

霊長類さん「はっは、睨んでるのも可愛いじゃん」

男(ないわー、あんな不良っぽいのなんて助けるだけ損です……自分でなんとかするでしょう)クル

霊長類さん「そんなに悪くないと思うんだけどなぁ」ス

男(うわー!すっげー積極的!アレが肉食系っすか!オランウータンが虎に向かってる!アレが肉食系ですか!!)キラキラ

金髪プリン「それ以上鬱陶しいと、その少ない髪引きちぎるぞ」

男「………」コソコソ ガタ

霊長類さん「誰だ!」

男「……………」チラ

男「なんだ、誰もいないではないか」

霊長類さん「そこのお前だよ!気持ち悪いヤツ!」

男「………気持ち悪いヤツ?」チラ

男「おい!誰もいないぞ!続けてどうぞ!ハイ!!!」ヤレヤレー!

霊長類さん「テンメー、何してやがん……ふぬうんっ」ゴキンッ

霊長類さん「」プルプル

男「oh……」

金髪プリン「ぶっさ、いい加減にしとけっつの………おい」

男「退散たいさ……はい!」ビシ

金髪プリン「なんだかわかんねーけど助かったわ。サンキュー」

男「………ふっ……助けたのではない……偶然、通りかかったのでな」キリ

金髪プリン「でもテメー、煽ってたよな。完璧に」

男「気のせいなのだ。一応助けてやったからな、貴様には我が従者になる権利を与える。うん、さらばさらば」ススス

金髪プリン「……男、か」

男「へ……?」

金髪プリン「名前と顔、憶えたからな」チョイチョイ

男「はっ!名札を見たのか!………しかしこれは俺の仮の名、なのでもう二度と会う事はないでしょう」スタコラー

金髪プリン「…………変なヤツ」



男「今日の事はもう忘れるのだ。無、そして無、さらに無」

金髪プリン「おーす」ガラガラ

男「」

金髪プリン「男ってヤツいますかー?……あ、いるじゃん」

男「ヒト、チガイダト、オモウニャン」

ザワザワ ミロヨ、フリョウダゼ ウワーカワイソー

金髪プリン「コレ、今日の礼な」ガサガサ

男「い、いや、礼など求めていないのだ。帰ってくれるとありが……ぷぷーっ!ロールケーキとか、貴様そんな柄じゃないであろう!」プークスクス

金髪プリン「ああ?」ギロ

シンダナ アア…ダナ…

男「おろろー?顔が赤いぞお我が従者よ!はは……ははは……たすけてー」

男「痛いのだ」ボロ

金髪プリン「ふん」

男「もう用事は済んだのだろう?さっさとどこへなりと行くがいい」

金髪プリン「お前さぁ、明日の昼もあの場所にこねぇ?」

男「もう二度と行かんのだ」

金髪プリン「あ?」

男「行きます」

金髪プリン「今日みてーな事あると俺も面倒だし、助かるぜー」ケラケラ

男「やれやれ、従者の世話をしなければならん俺の身にもなって欲しいものだ」

フリョウトハナセテル…… スッゲー

男「…………」

男(加速する孤独ルート………)

金髪プリン「俺の名前は友だ。よろしく」

男「また可愛らしい名前だなぁ!ふはっふふは!!」

友「しばくぞテメー」

男「やめてください」

友「ふん」

男「くっ、扱いづらい者を従者にしてしまった………」

友「……変なヤツだな」

男「貴様ほどおかしくはないのだ」

友「そんだけ噛み付いてくるならこっちも気楽でいいわ。変にビビられてもダルいし」

男「ふん、俺はもっと恐ろしいものを知っているからな……そう、あれは二百年前の事だ……」

友(あ、やっべぇ、面倒くさいかも)

_______________________

男(なんだかんだ、あの一件以来ずっと友と一緒にいたな)

男(ただ、中学三年でそれも終わりかと思ってた)
_______________________

友「お前さー、進路どうする?」

男「急に真面目な話とは珍しい事もあるのだな」

友「ま、どうせお前みたいに馬鹿な事してるようじゃあ、行く高校なんて知れてるけどなー」

男「くっ、この仮の姿を保つためにも人間界に合わせた行動をしなければならない制約がっ……」

友「はいはい、どうせ隣高だろ?あの馬鹿学校。俺もさぁ……」

男「何を言うか!俺はあんな所ではなく公立ながらもそこそこ偏差値の高いA高志望なのだ!」

友「あそこ、に………は?」

男「人間界の学問は興味深いな……この全知全能の俺でも悩む。あ、全知全能と言っても同じクラスの眼鏡さんには人間界トップの座を渡してやろう」

友「…………」

男「流石にすべて俺がトップでは人間もやる気が起きないだろうしな!はっはっはっはっは!!で、従者はどこなのだ?」

友「は、はは………だよな。あんな馬鹿学校、行ってもな……」

男「隣高の話などどうでもいいのだ、早くお前も聞かせるのだ」

友「あー、悪い。用事思い出したから帰るわ」

男「なっ、なにぃ!!?従者貴様卑怯だぞ!」

友「卑怯でもなんでもねーっつの。テメーもいつまでも馬鹿やってないで少しは真面目にやれよ」

男「ふん!明日も貴様をここアトランティカに召喚してやろう。遅刻するでないぞ!評定下がるぞ!」

友「うっせーっつの、テメーに言われたくねぇよ。じゃなー」スタスタ

友「………マジか……」



男「お前、ここんとこずっと暗いのだが?イメチェンか?暗黒に染まっちゃった系なのか?」

友「……うっせーよ」

男「くくく、いよいよこの場所ともおさらばか」

友「そうだな」

男「人生何があるか分からんな。俺が従者のような人間と関わりを持つとは思わなかった」

友「ああ」

友(初めて会った時なんて、ヒョロヒョロで、俺よりチビだったのに……今じゃあ俺の方がちっせーし)

男「髪、黒染めしたのだな」

友「色々やってたけど、流石に受験だしな」

男「まぁ、なんだ、道は違えど従者よ。貴様とはいいコンビだったぞ」

友「お前が馬鹿やらかすから、俺がフォローして、な。どっちが真面目なのか分かったもんじゃねぇ」

男「それは従者も結構ギャップなのだが?お互い様なのだが?」

友「だがだがうっせぇ……それと、俺もA高だし、最後じゃないんだなー、これが」

男「なにぃ!?貴様なぜそれをもっと早く言わなかったのだ!友達できるか不安だったのだぞ!!」

友「サプライズだよ、サプライズ。テメーの馬鹿面みてるとおもしれーもん」

男「馬鹿にしすぎなのだが?いい加減俺も怒るぞ!」

友「はいはい」

友「…………」フゥ

__________________
男「………腐れ縁、だよな」

男(兎にも角にも、まず俺は女さんとの友好関係を再び築き上げなければならぬ)

男「そして、俺の輝ける高校生活を!!!」

男「……輝いてんのかなぁ」



男「朝!輝く太陽と共に輝く俺!!俺こそは!そーう!!!」ビシィ

男「………従者のヤツ、もう登校時間だというのにいつまで部屋でダラダラしているつもりなのだ」

男「仕方がない、出来るだけ使いたくはなかったが、必殺技をやるしかあるまいっ!!」

男「必殺!!!ドアノック!!!……いや、ドラミングドアーとかのがいいか……?でもゴリラっぽいしなぁ」

男(それに、なぜか分からんがいつものようにドアを叩くはずが、できんのだ)

男「…………」

ガチャ

友「うーす、今日は随分とノックが小さいんじゃねーの?」

男「ノックをせずとも従者を呼び出せるか実験である!!俺の力にかかればこんな事雑作でも」

友「……」スタスタ

男「待ってー、置いてかんといてー」

友「いやぁ、遅刻しちまうじゃん。お前面倒だし」

男「それは貴様が家を出るのが遅いから悪いのだ!!」

友「んなもん俺の勝手だろ。さー進め進めー」

男「ふん、今日は髪型が違うのだな」

友「んー、まーな、伸びてきたし」

男「だが流石従者だ!しっくりきているぞ!!俺の従者たるもの、常に奇抜かつ洗練された状態でなければならんよなぁ!!!」

友「お前は気を遣わな過ぎだから美容院行けよ、キモいぞ、髪型」

男「う、うるさい!!!俺は近いうちにそうするつもりだったのだが?……ねぇ、マジでキモい?」

友「そこまで酷くはねーけどボサボサになってきてるぞ」

友(少し髪型変えただけなのによく気づくよなー、馬鹿のくせに)スタスタ

友(勉強、今も男の方が上だけど、中三の時は……まぁ酷かったな、俺)

友(必死こいてわけわかんねー問題頭に詰め込んで、受験のために不良崩れの格好もやめて……)

友(コイツといると、馬鹿みたいな毎日を過ごすのも悪くないって思えて、つまらなかった毎日が楽しくって)

友(いつの間にか離れるのが我慢ならなくなってるって……初対面の時からは想像つかなかったな)

友(いや、男は放っとくと馬鹿やるし、面倒だし、俺がフォローしなきゃどうしようもないアホだし)

友「…………」

男「従者よ、何をみているのだ?」

友「いや、男ハゲねぇかなー、って」

男「冗談でもやめるのだ!辛い!!」サッ

友(いいコンビ、ね。まったく、酷いヤツだよなー)

友(俺だってそこそこスタイルは……大きくはないけど、形には……ぐぐぐ、っと…)

男「くっ……どうした?キモいのだが?」フフン

友「あぁ?」ギロ

男「ごめんなさいせめて仕返しに何か言ってやろうって魔が差してですね……」ペコ

男「では、行ってくる。必ず……戻ってくるからな」

友「はいはい、戻ってこなくていいから行ってこい」

男「それが戦場に赴く男にかける言葉か!?」

友「早くしねーと授業始まっちまうぜー」

男「ぬ……仕方があるまい。ではな!!」タタタ

友「………馬鹿だなぁ」


男「頼もーう」

女「あ……」

男「今日も麗しいぞ!我が伴侶よ!」

女「おはようございます」

男「調子はどうなのだ?」

女「特に問題はないですね」

男「そうか、それなら良いのだが……どうするつもりでいるのだ?」

女「付き合う事について、ですか」

男「俺は女さんが忘れてしまっても、女さんとの事は憶えているぞ!」

女「でも、寂しくないですか?」

男「全部忘れて取り残される方が寂しいのだ」

女「………」

男「そんな孤独な人生は、嫌だと思う」

女「頼っても、いいんですかね。私みたいな、欠陥品が」

男「記憶がなくなろうと女さんには感情があるのだ。欠陥品などではない」

女「………」

男「今日の放課後でもまた遊ぶのだ!どうでもいい心配事なんて忘れさせてやろうではないか!!!」

女「………うん」

男「くっくっく……ではまた太陽が頂点に達する時、会いに来るのだ」

女「お昼、ですね?」

男「昼とは違うのだ!!」

女「どっちも同じですよ?」

男「男である以上格好良い方を使いたくなるものなのだ」

女「ふふ、ではまた、お昼に」

男「昼じゃないやい!……まぁでも、うん、笑顔が可愛いので許す……それではな!」スタスタ

女「…………」

女(消えてしまう私を見てくれる人……)

女(こういう特別な存在、私なんかに、いていいのかな)

女(………憶えてないはずなのに、どこか安心する……変な人)

女(男さん……もうちょっと、日記とか調べてみよう)

女「…………」ペラ

女「………うーん」

女友「おはよ!」

女「あ、おはようございます」

女友「またまたイメージチェンジしたのかい?」

女「ああー、うん」

女友「いやー前はミステリアス系、前の前はフワフワ系、前の前の前は……まぁいいや。今回は真面目系かー」

女「変……かな」

女友「定まってないねー女ちゃん。転校してきてから定まってなさすぎて動揺するよ」

女友「……動揺しすぎって、どうよ?」

女「………」

女友「へい、笑ってもっとベイベー」

女「はは……」

女友「あ、今日はお菓子が安い日でね、買ってきたからあげるー」ガサガサ

女「ありがとうございます」

女友「そういや彼氏できたんだね」

女「え?」

女友「ほら、最近よく出入りしてる変人さん」

女「……どう……なんですかね」

女友「憎いねー憎いねー、流石お肉屋さん」

女「あの、普通の家なんですが……」

女友「つれないなー、前のミステリアスな方が乗ってくれたよー?へいへーい」

女「………」

女友「おっと、おっと、オットセイ。しまったー、課題忘れたー……ということで、私は課題に取り組みます」

女「はい、頑張って下さい」

女友「彼氏だけじゃなく私も気にかけてくれていいからね?フリじゃないよ?」

女「はい」

女「………」

女(なんとか、今までみたいにとけ込めてる)

女(とりあえずこれからは男さんと話せるように、何か話題になるような事………)

女(………私って、何が好きだったんだろ)ペラ

女(なんか……それぞれ好みが違い過ぎてどうしようもないなぁ)

女(お姉ちゃんも、何も教えてくれないし………辛い)

女(家に遊びに来てもらうのもいいかもしれませんね)

女(とりあえず、今の私が出来るように、生きていかなきゃ)

男「………」ニヨニヨ

友「気持ち悪いぞ」

男「んんん?何がかな?」

友「顔とか、顔とか……つーか存在が」

男「酷い!!!」

友「まぁその様子からすると、今回は普通に話せたみたいだな」

男「まあな。俺ほどになれば、の話だが……くくく」

友「いつにも増して気持ち悪いな。言動も相まってるし」

男「これはいつも通りの話し方なのだ!泣くぞ!」

友「男が泣くとか女々しい文句垂れてんじゃねぇよカス」

男「………」ンブブ

友「ほらまたそういう顔する、あーやだやだ」

男「ぐぬぬ……ふふん!では貴様はどうなのだ従者よ」

友「あ?」

男「言葉遣いも乱雑で、見た目にも上品さがみられないのだが?」

友「…………」

男「そ、それに、周りの人間にも威嚇に近い目で睨みつけたり、何かあればすぐ暴力ばかり振るうのである」

男「はっ、そんなヤツなどに説教や見た目に関しての事など言われたくないのだが?んんー?」ドヤァ

友「…………」

男(しまったぁああああああああああああああああああ!!!別にそこまで言うつもりはなかったぞ!ヤバいぞ!!!)

友「……んなもん俺の勝手だし、今までもそうしてきたし、今さら変える気もさらさらねぇよ」

男「………」ビクビク

友「お前な……そんな風にビビるんだったら言うなよ、みっともねぇ」

男「こ、これは異界から発せられた闇の波動に対する防御策であって、決して従者なんぞに怯えているのではないのだが?」ブルブル

友「まったく……」

男「だが、そういう貴様だからこそ信頼をおいているのだ。それに、従者ぐらいしか俺と仲良くしてくれるヤツもいないのだ……」

友「はいはい、フォローしても遅いっつの」

男「コレは本心なのだ!!」

友「大きい声出すなよ、恥ずかしい」

男「いつもの事である!!!!」バコッ

友「うっせえっつの」

男「ほら、ぶった。またぶった」

友「ほら、どうせ次の授業の準備とか何もしてねーんだろ。ノート貸すからさっさと写してこい」バサ

男「何故知っているのだ貴様……さては監視していたなっ!?」

友「監視も何も、いつもの事じゃねぇか……」

男「感謝の気持ちだけは贈っておこう。ありがとう従者よ!」

友「はいはい」

男「まぁ、貸してくれるのはありがたいのだが……丸っこい文字で丁寧に書かれたノートを見ると笑いが……ぷぷー」

友「……ぶっ飛ばすぞコラ」

男「うす、すみませんでした」

友(俺は、きたねぇ人間だ)

友(それは男も感じていることだろうし、周りがそう思ってくれても構わない)

友(言葉遣いが荒くて上品さがねぇ。威嚇、暴力は日常茶飯事……男の言うように、俺が男に対して偉そうな事を言えないのは頭の中では分かってる)

友(分かってる)

友(だから俺みたいな人間が素直になったところで、噂や悪口でボロボロになる事は想像できる)

友(実際、そうだったじゃねーか)

友(仲の良かった奴らからは見捨てられて、知らねーおっさんから金貰ってるだのビッチだの、ない事ばっかり一人歩きして……)

友(俺に関わる人間は、俺を見限って離れていく)

友「……………」

友(それなのに男は”俺は見た事のない事は信じないのだ”とか、”俺はその事実があった所でなんにも困る事などない”とか……ふふ)

友(馬鹿だよなぁ……俺と関わるだけで白い目で見られやすくなるって、分かりきってるのに……)

友(そんな男をみているうちに惹かれちまって、いつか男を傷つけるかもしれないのに、傍にいる事を望んじまった)

友(そう、俺はそうなるって分かってたのに、自分勝手に男についてきた)

友(せめて見た目だけでも真人間になろうって、受験もあったし色々変えた)

友(仕方がねーじゃん………きたねぇけど、俺だって、人間なんだ)

友(だからせめて、男だけでも幸せにしようと思った)

友(男はうるせーし、そういうのに文句ばっかりだから言わねーけど……俺は、男と一緒に馬鹿やるだけで満足だ)

友(それで、これ以上はもう望まないって決めたのに、なんで俺の気持ちは……男に好きな人ができただけでざわつく?)

友(なんで遠くに行ってしまう事に、ビビっちまうんだよ……)

友「…………あーあ」

友(憂鬱だ)

友(昨日、あったかかったなぁ。やっぱり男だし、体格もしっかりしてきてたし)

友(動揺した顔も、愛おしくて……)

友「………………」ボフ

友(ダメだ、考えすぎると結局こんな事ばっかだ)

友(ドキドキすんなボケ。顔赤くなるのもやめろ俺。男の格好良い所とかどうでもいいんだよタコ!)シュウウウウ

友「………く……」

友(好きだ、好きだ……好きだー!!!!!!!ちくしょぉおお!!!!)ガツンガツン

友(ううううう………)

友(今日はもう男の顔まともに見れねー。クソ、あんなヤツ爆発すればいいんだ)

友(幸せになって欲しいし、手伝いもするけどよー)

友(悶々と頭を抱え続けんのも、結構辛い……)

男「ふははははは!!!課題が終わったぞ従者よ!目覚めよ!寝ている場合ではないぞ!」ユサユサ

友「……わかったからあっち行け!」

男「どうしたどうしたぁ?寝不足なーのであるかぁ?」

友(いや、今恥ずかしくて顔見れねー。言わねーけど)

男「……まぁ、もし気分が悪いのであれば言うのだぞ。なんたって俺は貴様のマスターであるからなぁ!!」

友「バーカ、言ってろタコ」

友(馬鹿なのに優しいし……俺も、こんなのが好きになるなんて馬鹿だけどさ……)

友(やっぱり、男の笑った顔が見たいんだなぁ、俺)

キーンコーン

男「さて……」ガタ

友「おう、今日飯どうする?俺購買行くけど、お前は?」

男「今日はこれから女さんと話をしにいくのだ。悪いが今日はコンビニで買ってきたしな」

友「おー、そっかそっか。バシッと始末されてこい」

男「何故俺が始末される前提なのだ……まぁいい。言ってくる」スタスタ

友「…………」

友(なーんか、飯食う気失せたわ)



男「来たぞ!」

女「さっきぶりです、こんにちは」

男「くくく……こ、こん……うっす」

女「…………」

男「…………」

男(話題が見つからぬ……!俺から言っておいて!)

女(どうやって誘えばいんでしょうか……分からない事が多すぎます)

女友「やぁやぁお二方。あついねーあついねー」

男「なーんなのだ貴様、突然現れおって」

女「あ……」

女友「え?誰に話してるの?私はただこの分厚い参考書に語りかけてただけよん?」

男「?」

女「女友さん……」

女友「冗談はさておきー、どうも女ちゃんのお友達でーす。よろしく」

男「ふん、他人とは馴れ合わぬ主義でな」

女友「ああ、そう」

男「ぐぐ……」

女「あの、えと……男さん、今日ってお時間ありますか?」

男「ああ、問題ない」

女友「ふむ……よし」ススス

女「良かったら、色々話すついでに、家に来てもらおうかな、と」

男「それはいいのだが……いろいろとマズくはないのか?」

男(ほら、間違いが起きるやもしれ……いや、ないのだ……無理無理なのだ)

女「大丈夫です。それに……他の人に知られた方が生活に支障があるので……」

男「そうか、別によいぞ!ふあっはははは!!聞いておかねばならぬ事もあったしなぁ!」

女「あの、もうちょっと静かにしてもらいたいです。注目が……」カァ

男「失礼した。まぁ、なんだ……女さんの姉上にも話を聞きたかったのもあるのでな」

女「そうでしたか……あ、男さん、お昼一緒に食べませんか?」

男「え?いいの!?」

女「あ、はい」

男「はっ……!今のは素でもなんでもないぞ!ただ聞き直しただけだ!さぁ、食べようぞ!!ははは」

友(はぁ……つまんねぇなぁ)

友(ぜーんぶが色調失って、くすんだこの感じ……)

友(俺もそろそろ、誰か他のヤツ探すしかねーのかなー)

友(……他のヤツ……)チラ

ワイワイワイワイ

友(どいつもコイツも揃いも揃って、手がかからなさそうだし、付き合ってみれば楽なのかなぁ)

友「おい、そこのテメー」

「ん?」

友「お前、今何食ってんの?」

「何って、弁当だけど」

友「ふーん、なんか一つ寄越せ」

「えー……まぁいいけど、ほら、卵焼きでいい?」

友「おーサンキュ」ヒョイ

「食べるもの持ってきてないのか?」

友「買いに行かなかっただけ。ん、美味かった」

「今度は買いに行けよなー」

友「悪い悪い。なぁ、お前って彼女いる?」

「は、はぁ?なんだよ急に」

友「いいじゃん、聞かせろよ」

「……いねーよ。悪いかよ」

友「へー、格好良いのに勿体ない」

「え?」ドキ

友「ほら、結構整ってるしー、身体もガッチリしてんじゃん?」ポンポン

「そ、そうか?……へへ」

友「…………」

友(なんだろ、やっぱつまんね)ガタ

「なぁ、よかったら連絡先……っていない!」

友(ダラダラするだけだし、適当にジュースでも買ってブラついてるか……)スタスタ

友(男ももう……俺と一緒にいなくてもいいみてーだし)

友(清々するな。今まで散々面倒に巻きこんできやがったし……)

友(ホント、何のために俺がこんな学校に来たんだか)チャリン ピ ガコン

友(……何のために俺、頑張ったんだよ……馬鹿みてーじゃん)

友「…………」ムス

友(女さん、か……ちゃんと女の子っぽいし……俺もそういうのにした方がいいのか?)

友(誰だって結局見た目見た目でよぉ)

友(………男だけは、俺を見てくれてると思ってたのに)

友「………」ブンブン

友(違う!俺はただ男の手助けができれば…………)

友(また男男って……うがぁああああああああああああああああああ)ガンガン

友「…………」ゲンナリ

ガララ

男「ふっ、またこの地に戻ってきてしまったか……くくく」

友「…………」グデー

男「おい従者!戻ったぞ!」

友「…………」ダラーン

男「くっ、仕方のないヤツめ。この際呪文で目覚めさせるしかあるまい……」

男「………古の眠りの呪縛より今、我が従者を解き放たん……ふぉおおおお」ブツブツ

男「……?あの、従者ー?」

友「……んだよ」

男「ふはっ!やっと目覚めたか!!」ビシィ

友「テメーの声は耳に響くんだよ、クソ鬱陶しい」

男「これは相手の聴覚にダメージを与えて疲弊させる特殊能力であってな……と……貴様、その手はどうした?」

友「あー?なんかむしゃくしゃしてどっかにぶつけた」

男「と、とてつもなく危ないヤツだな貴様は……しかし従者よ、貴様は運がいい。なんせ俺が魔界に伝わる秘伝の塗り薬を持ってきているのだ」ゴソゴソ

友「…………」

男「ほら、手を見せろ」ギュ

友「あ」ゾクゾク

男「まったく……貴様も従者なのだから身の振り方を考えて欲しいものだ」

友「……うっせぇ、その幸せそうな脳みそ爆散させるぞ」

男「解毒、完了!!秘薬を塗布!!!」

友(そう、なんだかんだで優しくしてくれて……俺なんかに……)

男「後はこの強化装甲で守っておけば問題ない!」ペタリ

友「絆創膏じゃん」

男「強化装甲なのだ!」

友「……はいはい」

男「ふむ………ふむ?」

友「…………」ギュウウ

男「従者よ、手を離してもらいたいのだが?強く握られ過ぎてちぎれそうなのだが?」

友「だがだがうっせぇ。いいからここにいろ」

男「な、なんなのだ一体……はっ!まさか精神攻撃が外部から!?こうはしておれん!!」バッ

友「ダメだ」ギュウウウウ

男「あぁ痛い痛い痛い!ちょ、マジで痛い」

友「……………」

男「はぁ……こうなった以上仕方あるまい。気がすんだら離すのだぞ?いいな?」ガタ

友「テメーに指図されたくねぇっつの。ぶっ飛ばすぞ」ギロ

男「理不尽!!!」

男(そ、それよりなんで従者の手はこんなに細くて柔らかいのだ……?同じ人間であるのに、これは疑問である……ちょっとひんやりして気持ちいいし)

友(……俺、男の事好きじゃダメなのか?)

友(なんてな、言えたら苦労しねぇっつの……あー、やっぱなんか安心する)ドキドキ

男「………」

友「……………」

男「授業始まるのだが?」

友「うっせーな、どうでもいいだろ」

男「どうでも良くないのだ!」

友「テメーは楽しかったかもしれねーけどな」ムス

男「それはそれである!だいたい、従者も応援してくれたではないか」

友「……ホントは、応援なんて糞食らえだっつの」

男「……え?」

友「………」バコン

男「ぐはぁっ!?き、貴様何を……」

友「あははっ、騙されて固まってやんの!”……え?”とか素でびっくりしてんじゃねーよ」ケラケラ

男「ぐぐぐ……今日という今日は許さんぞ!」

友「お?やんのかテメー」

男「許さんぞ!」

友「だから、逃げ腰で凄まれてもなんとも思わねーって」

男「弱ったフリをしてマスターである俺を騙すとは……なんか……かわ、ゲフン」

友(フリじゃ、ないんだけどな。ホントに、寂しかったし……って)

友「別にからかってただけだし、動揺してんじゃねぇよ気持ち悪いな!」

男「俺が動揺だと?はっ、この世のなんであれ俺を動揺させる事などできやしない!」

友「あー?顔真っ赤にして何言ってんだテメー」

男「こ、これは違う!暑いのだが?特に他意はないのだが?」

友「あははははっ」ケラケラ

男「き、貴様……では貴様が動揺しないか、確かめてやろう」ズイ

友「……」ビクッ

男「ふふん、どうしたどうしたぁ?怖いのかぁ?」

友「顔近づけんな、ころすぞ」フイ

男「ふはははは!従者は精神の鍛錬がなってないのだ!」

友(男じゃなきゃこんな風にならねぇっつの)

友「ほう……じゃあ男さんの精神の強さ、見せてもらおうか」ビキビキ

男「あっ、グーパンはダメ。さっきの小突くとかならいいけど、ね?それはダメだよ」

友「腹にしてやるから気にすんな」

男「気にするのだが?痛いのはイヤなのだが?」ササ

「なぁ、あいつらっていつも……」ザワザワ

「……付き合ってるんじゃない?」ザワザワ

「ああやってじゃれてるのみると微笑ましいよな……」ザワザワ

友「………」プルプル

男「な、なんだか分からんが……い、今のうちに退散っ!」サササ

友(んだよ……周りの奴ら………)

友(つ、付き合ってるとか、んなわけねーじゃん。酷い事言いやがるな、マジで)ニヘ

友「は?」

男「何度言えばよいのだ。今日は女さんの家にお邪魔する予定なのだ」

友「お前。あんな状況からよくそんな話にもってけたな」

男「ふふふ、やはり俺と女さんは前世で共に生きることを誓い合った仲なのだ!!」

友「あっそ」

男「もうちょっと応援してくれてもいいではないか……」

友「はいはい応援してるよー、お幸せにー」

男「投げやりすぎるぞ!!!」

友(そっか……しかしどうすればいい?このままじゃ、どんどん遠く……)

男「はぁー、実に楽しみなのだ」

友「じゃ、じゃあ、さ」

男「ん?」

友「明日、俺んち来て、報告しにこいよ」

男「別にそのまま帰りの足で従者の家に行けるぞ?」

友「今日はダメだ」

友(いや、散らかってるし……何の準備もできてねーし)

男「じゃあ明日学校で話すのだが?」

友「それじゃ意味ねぇだろうが」

男「?……報告するだけだろう?別に学校でも……」

友「色々しにくい話とかあるだろ?今後どうするかとかも、俺んちの方が都合いいじゃん」

男「むむむ、まぁそれもそうか」

友(っしゃあ!)グッ

男「そのガッツポーズはなんなのだ……」

友「………今日失敗したら周りを気にせず制裁できるからな」

男「やめて!助けて!」

友「失敗しなけりゃ良い話だろ。男ならバシッと決めてこい」

友(できれば上手くいかずに落ち込んでる方が好都合だけどな)

男「くっくっく、俺を誰だと思っている?大の大人も赤子の如く泣きわめく、金棒持ちの鬼も真っ青天下無敵の男様なのだが?」

友「はいはい、分かってるよ」

男「ではまた明日な!良い報告を期待しているのだな!」

友「おーう」



女「……………」

男「ご機嫌麗しゅう我が伴侶よ!」スタスタ

女「あ、お疲れさまです」

男「いやー、待たせて悪かったのだ」

女「いえ、そこまで……では、行きましょうか」

男「うぬ、案内頼むのである!」

男「………」ソワソワ

女「緊張しなくても、楽にしてくれればいいですよ」

男「う、うぬ」

男「…思っていたより殺風景なのだな」

女「私は私でも、好みの違いってあるみたいですからね」

男「あー、その……前の女さんの物はどうしたのだ?」

女「気に入らない物はとりあえず収納しました」

女「でも、同じように以前収納した物の中から好きな物を出してくる予定です」

男「なるほど、大変なのだな」

女「私がこうなったのは、事故なんだそうです」

男「事故?」

女「随分と酷かったみたいです。どうしてか、生きてますが……」

女「前の学校では、こんな状態で一回過ごしてみたようです」

男「ど、どうだったのだ?」

女「分かりません、気がついたらお姉ちゃんに言われてこの学校に通ってたみたいで」

男「その、誰かから聞いたような口ぶりはなんなのだ?」

女「それは、これのおかげです」パサ

男「日記……」

女「見てもいいですよ」

男「うぬ……」ス

男「……………」パラパラ

男「”すべて忘れてしまった時に、必ずコレを読んで私を思い出すこと”」

女「記憶を失ってから色々辛い事があったみたいで、もしまた何かあって忘れてしまった時のために始めたものです」

男「な、なるほど……」

男(なんだかヘビーすぎるのだ……)パラ

男「!………あ、あの……この写真の男は?」ユビサシ

女「元彼氏、らしいですよ?もっとも、今の私ではどうなったかなんて知らないですけど」

男(二回に渡って付き合ったらしいが、その次の記憶の時に”もうついて行く自信がない、と言われた”)

女「おかしいですよね?」

男「いや……」

女「誰も覚えてない、私が誰かなんて教えてくれない、誰も私をみていない」

男「この、次のページの言葉か?」

女「……ええ、そうです。新しい私は、誰にも求められてなんていないんです」

女「だから、新しい自分が認められた気がして……好意を向けられるのが、たまらなく嬉しいんです」

男(………俺は、このままついていけるんだろうか……この人に)

ガチャ

姉「ただいま、女。………で、お前は何?」

女「お姉ちゃん……」

男「うわぁ、すっげぇ苦手な人が来てしまった……」

姉「聞こえてるぞ、クソガキ」

姉「一体何してるの?」

女「あ、あの、これはですね……」

男「………」

姉「なぁ」ガシ

男「え?」

姉「言ったよね?女に付きまとうのはやめといた方がいいって」

女「お姉ちゃん!」

姉「何?文句ある?」

女「急にそんな風に掴み掛かって、文句があるに決まってるじゃないですか」

男「いや、構わないのだ」

女「でも……」

男「くくく、男は理不尽な出来事に強いのだ」

姉「は?きっも」

男(あ、すごい傷つく)

姉「女、アンタは誰かと関わると辛い思いしかしない。アンタのためを思って、こうしてるの」

男「はっ」

姉「何?」

男「女さんの事を思うのであれば、女さんの好きなようにさせてやるのもいいではないか」

男「そう!本当に思っているのであればな!!!」

姉「何にも知らねぇガキがしゃしゃってんじゃねぇよ」ガツン

男「え……え、痛?」

女「お姉ちゃん!……男さん、大丈夫ですか?」

男「だ、大丈夫っす。理不尽はつきものっすから」

姉「悲しんで、忘れて、同じ事で悲しんで、また忘れて……」

姉「そうやって、何度も同じ苦しみを味合わせて、何かいい事でもあんの?」

男「…………」

姉「帰れ」

男「……………」

姉「帰れっつてんだろいい加減にしねぇとぶっ殺すぞガキ!!!」

女「ちょっと!」

男「いや、いいのだ。今日はお暇させていただくのだ」ス

女「ごめんなさい、私……」

男「ふふふ……気にするでない」

姉「…………」ギロ

男「か、帰りますよー。帰るから睨まんでよ……」

男「じゃあ、俺はこれで、な」スタスタ

女「………」

男「一つ言っておく。姉御、女さんを貴様が思っているような結末にさせる事など、決してない!とな」クル

男「そしてもう一つ言ってお……」クル

姉「早く帰れよ」

姉「………」

女「どうして、あんな風に酷い事するんですか?」

姉「別に」

女「男さんは私の事、色々と気に掛けてくれてて、それなのに……」

姉「今の女には分からないよ」

姉「なんと言われようと私はこのまま、こうするだけ」

女「…………」

姉「今までの過去も関係も、全部消えちゃう間はこれでいいの」

姉「元に戻るか、消えないようになれるまで誰かとの関係はアンタを蝕むだけだから」

女「でも……」

姉「今のアンタにとっては私も他人みたいな、そういう人間の一人なのかもしれない」

姉「傷つけて、苦しい思いをさせてるかもしれないけど……私はちゃんと女の事見てる」

女「………」

姉「たとえ女が全部忘れても私はちゃんと覚えてるし、何より繋がりは消えないから」

姉「それに誰よりも私が、女には幸せになって欲しいって思ってるから」




男(……やられた)

男(まさかあんな剣幕で追い出されるとは思ってもなかった)

男(こ、これじゃあ友に制裁を加えられてもおかしくないぞ……)ブルル

男「……………」

男(しかし……新しい私は誰にも求められていない……か)

男(姿形は同じでも、中身がまるっきり変わってしまう……はたしてそこにいるのは本当に俺が好きになった女さんなのだろうか)

男(好意を繋ぎ止めるのは、今までの思い出や関係……それが消えてしまうという事は、繋ぎ止める方法なんてないという事じゃないか?)

男(これは女さんを一人ぼっちにさせたくないという、同情からくる気持ちなのだろうか……)

男(…………この好きは、同情か?)

男「……違う!全く的外れだ!!!!」

男「………」キョロキョロ

男「………良し」

男「男であるなら!まっすぐ一本この想い、貫き通すのが性である!!」ビシッ

男「何が過去だ!思い出だ!!そんなもの、俺が彼女ごとすべて抱えていけば良いのだ!!」バッ

男(好意を向けられない新しい自分が嫌であるなら、俺だけでも彼女を愛そうではないか)

男(たとえ、俺の事を忘れてしまっても)

男「ふはっふははははははは!!!!」

オッサン「……」チリンチリーン

男「は…はは…………………」

オッサン「…」チリーン

男(むっちゃくちゃ恥ずかしい所見られた!!!!)ウズクマリ

男(ちゃんと人がいないか確認したのに!これじゃあ変人ではないか!)

男(俺は、男だ。ただ一人想いを通せずして、何が男だ)

男(俺の中の格好いい男なら、そうする。そうするべきなんだ)


男「たのもー」コンコン

男「…………」

ガチャ

友「うっす、今日は随分と静かじゃねぇか」

男「くくく、いつも同じ召喚の仕方では敵に手の内を明かす事になるからな……」

友「これぐらいだったら近所迷惑にならねぇからいいんだけどな」

男「ふっ、では行くぞ!」

友「はいはい……そういや、昨日ってどうなった?」

男「と、特に問題はなかったのだ」

友「特に、とかじゃあなくて、一から十まで説明しろよ」

男「普通にお邪魔して、話して、帰っただけなのだが?」

友「いーや、なんか隠してるね」

男(お仕置きは嫌だ、お仕置きは嫌だ、お仕置きは嫌だ)

男「プライベートの事であるからな、いくら従者であってもそこまでは言えんのだ」

友「……言えないような事まで話したってわけ?」

男「ま、まぁな!お互いに親睦を深め合ったのだ!」

友「お互い?」ピク

男「ふは、はは……まぁな。では気を取り直して再出発である」

友「お前、俺に隠してる事とか、ないよな?」

男「」ギク

男「はー?そんな事あるわけないのだが?心外なのだが?冗談じゃないのだが?」

友「俺に言えないような事あんのか?」

男「ないない!しつこいぞ従者!」ダラダラ

友「………そう、か……」

男(やったぜ!追い返された事を隠し通せたのだ!)

友(ずっと一緒にいた俺にも言えないような事……女さんには言ったんだ)

男「……」ビクビク

友「俺さ」

男「ひゃい?」

友「お前にしか言えねーような事、結構言ってたつもりなんだけどな」

男「そ、そうかぁ?俺も従者には隠し事はしないのだ!ふはは!!なんせ俺と貴様はそういう関係なのだからな!!!」

友「だから、つってもなんだけど俺に隠し事すんなよ」

友「な、頼む」

男「あ、あの……その……はは、ふは」

友「………」ジー

男「昨日女さんの家から叩き出されてしまったん、ごめんなさい」ペコ

友「……………は?……いや、は?」

男「ひぃいいいい!お助け!違うのだ!邪魔が入ったから仕方が無いのだ!だからお仕置きのグーパンとかナシね!俺との約束だ!!!」

友「……ぷ……なんだそんな事かよ、あはは!」ケラケラ

男「あれ?これ俺助かったの?安心して腹筋緩めていいの?」

友「♪」

男「今日は随分と機嫌が良さそうではないか」ジトー

友「あ?なわけねぇだろ」

男「今日ほど貴様が説得力に欠けるのも珍しいのだが?」

友「いちいち噛み付かねーと気がすまんのか、テメーは」

男(あ、説得力というより、脅迫力か)

友「どした?足止めて。きびきび歩かねーと遅刻すんぞ」

男「なんだかよく分からんが、貴様も変わったな、従者よ」

友「はっ、誰のせいだと思ってんだタコ」

男「地中深く太古より眠りにつきし災いの権化である……」

友「あーやめろやめろ。ダルい」

男「ダルいとはなんなのだ!ダルいとは!」

友「そういう設定っていうの?疲れねーわけ?」

男「設定などと言うな!疲れるわけないだろう!」

友(無理して背伸びしなくても、お前はちゃんと特別だっつーのに……誰に見栄張ってんだか)

男「だいたい従者も従者だぞ!主である俺がしっかりしているのに貴様ときたら俗世界のぬるま湯に浸かりおって……」

友(無理して、見栄を張る……か)

友(俺も、同じなのかな)

男「おい!聞いておるのか!」

友「あー、聞いてる聞いてる」

男「聞いてないのだ!!」ガーン

友「ま、話だったら昨日言ったように家で聞いてやんよ」

男「その話とは別の問題なのだが?従者はこのロマンが分からないのか!?」

友「お生憎様、俺は現実主義だから」

男「…………」グヌヌ

男「従者よ、肩に貴様に殺された怨霊の手が……」

友「その怨霊、お前って事でいいのか?」ニヤァ

男「やめて!」

友「じゃあまずは指からジワジワと……」

男「やめて!お願い!」

友「冗談通じねぇなぁ」

男「冗談に聞こえないから質が悪いのだ」

友「はぁ……俺が本当にそんな事するわけないだろ」

男「まぁ、そうなのだが」

友「それでよろしい」ニコ

男(アレ?)ドキ

友「…………おい、何してんだ?」

男「くくく……か、風が呼んでいる」

友「置いてくぞボケ」

男(……なぜか一瞬、従者が可愛いと思ってしまったのだ。……寝不足か?)グルグル

女「あ……」

男「む」

女「おはようございます、男さん……それと……」

男「くく、今日も日輪が世界を包む……」

友「馬鹿言ってんじゃねぇよ。おはよっす、女さん」

女「ど、どうも」

友「前に言い忘れてたわ。俺は友っての」

女「えと、ごめんなさい…友さん」

友「気にしなくてもいいよ」

男「従者が恐いから女さんが困ってるではないか」

友「あ?」

男「あああ!そういえばー、昨日は悪かったのだ」

女「い、いえ!私の方こそ、お姉ちゃんがあんな……」

男「ふ……人間風情にしては随分と危険を察知できる者であったな」

友「おいコラ」

男「あ、うす」

女「私は男さんとはこれからも仲良くしたいと思ってるので、お姉ちゃんの言う事なんて知りません」

男「くくく、そうか」

女「それで、こんな私ですけど……また付き合ってもらえますか?」

友「………」

男「ふはははは!当然なのだが?俺を小さく見過ぎなのだが?」

友「……」ズキ

女「あ、ありがとうございますっ」

男「っっっひゃっふぅ!どうだ従者よ!多少の事ではめげない精神の強靭さが成せるこの……」

友「お、おい……いいのかよ女さん、こんな馬鹿で」

男「聞いてない!」

女「はい……私、よく分からないんですが他の人と違って男さんなら、安心できるんです」

友「ふーん」

友(よく分からねぇってのに何言ってんだコイツ……)

男「顔が恐いぞ従者よ!嫉妬か?俺が幸せなのが憎いかぁ?」

友「……ちげーよ、そんなんじゃねぇ。じゃ、後はお二方でどうぞ」スタスタ

男「ぬは、ぬはは!図星だったのだ!」

女「で、では、歩きながらお話でも……」

男「そうだな、昨日は途中であったからなぁ」



友(別に……男が羨ましいんじゃねぇよ)

友(結局、昨日ダメだったってぬか喜びしてた俺が馬鹿みたいなのと……俺のになるって思ってた勝手な期待が裏切られたのと)

友(よく分からねぇのに男と付き合うって言える、女さんに嫉妬して……)

友(クソ……こんなに辛いのにいつまでも芝居で応援し続けんの、無理だ)

友(………あんなのに、渡せねぇよ)

女「男さんは友さんと仲がいいんですね」

男「仲がいいだと?冗談を言うでない」

女「でも、いつも一緒にいるみたいじゃないですか」

男「それは、アイツが我が従者であるだけであって、別に他意はないのだが?」

女「でも、友さんも男さんも、二人だと楽しそうです」

男「そ、そう?」

女「はい。だから、羨ましいなぁって」

男「羨ましいものでもないのだ。ヤツはいつも俺に攻撃ばかりしてくるし………えーと」

男(友について特に嫌な事はないのだ……)

女「私には、そういう人がいませんから」

男「それは……まぁ俺がそういう人になってやるから心配は無用なのだ」

女「………はい」ニコ


__________________________


男「今日も一日……闇の軍勢による詠唱の嵐を切り抜けたのだ」グテー

友「まったくだ。しんどいったらありゃしねー」グター

男「あ、ちなみに闇の軍勢とは教師の事であってな……」

友「それ、お前が言ったらダメなヤツなんじゃねーのかよ」

男「………しまった!!!」

友「ま、俺にはどうでもいいや。行くぞー」ガタ

男「行くってどこに行くのだ?」ガタ

友「俺んち、来るんだろ」

男「おお、そう言えばそうであったな!」

友「……なんで忘れるかね……」

男「俺今日はクッキー食いたい!」

友「はぁ?」

男「いやぁ、従者は食に関してはなかなかのセンスを持ち合わせているからなぁ」フフン

友「……ダリーしめんどいからヤダ」

男「えー」

友「だいたい、なんでもない日にわざわざ作るのが考えられないわ」

男「そうかぁ?割と作っていたではないか」

友(世間一般ではイベントがある日だったっつの。くたばれ)

男「それなのにキリスト聖誕祭の日もヴァレンターインも作らん。いつ作るのだ」

友「手間かかるからまた今度な」

友(クリスマスもバレンタインも、手作り渡すの恥ずかしいし。店のだけどさ)

男「空腹を紛らすためにも何か買ってから従者の住処へ突入する事を希望する」

友「コンビニでポテチでも買ってきゃいいだろ。ほら動いた動いた」ゲシ

男「くくく……海苔塩だ……でなきゃ許さん」

友「やだ、海苔こぼれるし」

友「おら、上がれよ」

男「くくく、時空の狭間に飲まれる時……」

友「ちっ」

男「なぜ舌打ちをするのだ!」

友「あ?したか?」

男「したのだ!!」

友「普通の人間には聞こえない言葉が聞こえるんだろ?ほら、俺じゃねーって」

男「それは……ぐぐぐ」

友「適当に座ってろ、飲み物持ってくる」

男「闇の飲料がいいのだ!」

友「ねーよ。墨汁飲ませるぞ」ガチャ バタン

男「…………」

男(ふむ……いつも玄関で立ち話ばかりだったから部屋には入った事はなかったが……)キョロキョロ

男「結構普通なのだな」

男(従者の事だからスプラッター的な何かが大量につり下げられているのを想像していたのだがな)

男(ここまで普通に女の子の部屋っぽいと落ち着かんのだ)ソワソワ

男(何よりベッドがピンク調だという事に笑いが抑えきれん……)プーククク

男「ふーむ」

男「とうっ」ピョン ドサ 

男「ふはっふはは!!従者の創造せし暗雲!!俺に乗りこなせないはずがない!!!」ボッフボッフ

男「揺れろ!そして崩れゆき消え去るのだ!!」

ガチャ

男「…………」

友「……………」

男「ハーイ」

友「消え去りたい?」

男「ノーッゥ」

友「はぁ……じゃあ始めるかー」

男「オウ」

友「次その腐った発泡スチロールみてぇな声だしたらぶっ飛ばす」

男「うす」

友「ほら、コーラ」ポイ

男「おお!これぞまさしく闇の飲料!!!!」

友(男の好きな物大体把握してるし、あるに決まってんじゃん)プシッ シュー

男「ううぬ……どこから話を進めればいいことだろうか……」プシ

友「俺は色々考え事してーから、一から説明よろしく」

男「………アレは太陽が銀色に輝頃合いの事だった……」

友(あー、普通に説明しろって言っておくべきだったな)



男「であるから、時代の先駆者である俺は……」

友「待て」

男「なんだ?今良い所なのだが?邪魔するとか頭おかしいのだが?」

友「あのさぁ、話聞いてて結構経つけど、今何の話してんだ?」

男「それは俺のこれまでの道のりの話だ!」

友「………女さんの家に行った話は?」

男「もうとっくの15分前ぐらいに終わってるのだ!」ドヤァ

友「オーケー、テメーは一回シメなきゃ分からねーみたいだな」

男「あ、ちょっとタンマ。ダメ、そっち曲がらない!痛い!アカン!!」

友「あ?オイ。いつテメーの妄想話に付きあうっつった?俺が」ギリギリギリギリ

男「いや、意外と早く話が終わって勿体ないかなーと!」

友「一回その夢の国に飛んでみるか?」パッ ギリギリギリ

男「くび!、今度は、首絞まってる!おっぱい!おっぱい!!やらかい!!」

友「……はぁ?とうとう頭狂ったか?」

男「当たっ、てる……」

友「……え?……あ」ポイ

男「あ、生きてるん」

友「…く……つか…今度ふざけたらマジでオトす」

男「………さ、流石に今回は死ぬかと思ったなー」

友「大丈夫だ。俺が死なせないから」

男「な、なんだか怖い発言に聞こえるのは俺だけなのか?」

友「で……これからどうすんの?」

男「どうするもこうするもなぁ……俺は女さんと付き合って行こうとは思うぞ」

友「俺は、やっぱりやめといた方がいいと思う」

男「その理由はなんだ?」

友「たとえ外見は変わらなくても、中身の違う人間と過ごさなきゃならなくなるんだぜ?」

友「見た目が良いから、なんて……絶対に耐えきれなくなる時がくる」

男「ふん、俺はそんな邪な考えで女さんと付き合うのではない」

男「俺が、そうすると決めたからだ」

友「やっぱり、そうか」

男「なんだ?如何にも含みがあるような言い方ではないか。嫌か?」

友「………嫌だ」

男「ふぅーう、一応、従者にも納得はして欲しかったのだがな」

友「だってよ……」

男「だってよも何もあるか!俺はそのまま気の向くまま!日に照らされようが風に吹かれようが気は一直線なのだ」

友「…………」

男「まぁいい、俺はなんとか女さんと……」

友「……好きなんだ」

男「………???」

友「俺、男の事……好きなんだ」

男「それは知っている。でなければこうして貴様と行動を共にすることはないのだ」

友「そうじゃない」

男「いやいやいや、俺も好き、従者も好き。コレになんの間違いもないではないか」

友「テメーのそういう所は大っ嫌いだけどな」

男「お?照れ隠しか?」

友「………はぁ」

男「ため息つくとか俺の幸せも逃げるからやめて欲しいのだが?」

友「じゃあ、こうする」ギュ

男「うんうん?手を繋いでどうした?俺と共に闇の領域に飛ぼうと言うのであればそうするのだが?」

友「お前さ、俺がこうしてるのに何も思わないわけ?」

男「…………?」

友「へぇ、あくまでそういう態度取り続けるんだ」

男「い、いや!なんで握りこぶしを!?ストップ俺何も悪い事していないのだ!」

友「お前、ここまでしてんだから気づいてんだろ?」

男「だからなんの事だか検討も付かないのだが?出来れば暴力は嫌なのだが?」

友「ああいいさ、暴力はしねー。でもお前が俺の気持ちに気づくまで何だってしてやる」

男「気持ちって言うのは殺意!?」

友「好意だよ、バカ」グッ

男「っ……胸ぐらを掴むでない従者よ!主に対してその狼藉は許されるものでは……」

友「…………」チュ

男「」

男(頭、押さえられてる?で、コレは?)

友「分かったかクソ野郎」パッ

男「」

友「俺がお前に……男に言ってんのはこういう事だ」

友「俺はお前が好きだし、女さんなんかにやるつもりはなくなった」

男「従者貴様……」

友「気づいてんだろ!全部!」

男「………すまない……今日は、帰る」

友「ふざけんなよ、今お前の答えを聞かせろ」

男「今は、動揺してどうしようもできないのだ……。整理する時間をくれ」

友「やだ」ガシ チュ

男「ぐっ」

友「お前が、ちゃんと分かってくれるまで俺はやめねー」

男「っ……やめてくれ」

友「やめない」

男「もういいだろ!」グイ

友「ってぇ………」

男「帰るのだ………」ス

友「………………バカ、ふざけんなよ…」

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