芦花「さて、ここに夢のアイテムがあります」(28)




がらがら~・・・・



水上「あっ、お疲れ様ですー」


風間「おう。なんも疲れてないがな」


水上「いやいや~、今日部室来るの少し遅かったし、先輩の事だからまた面倒ごとに巻き込まれたんじゃないかと思いまして~」


風間「ちょっと高尾に捕まってな」


芦花「じゃじゃーん。イフボックス~♪」


風間「じゃあ帰るわ」


芦花「説明しましょう。このイフボックスとは『もしも何々だったらー・・・』という夢を叶える超画期的かつ前衛的衝撃的な悩殺プリティマイルドアイテムなんです!」


風間「後半の説明のせいで全てが行方不明になったわ!つか、つっこんじまったじゃねえか!!」芦花「さて、ここに夢のアイテムがあります」



芦花「ややっ!これはこれは風間さんじゃありまんせかぁ!奇遇ですね」


風間「聞くからに面倒くさいオモチャじゃねえか」


水上「あれれ~?先輩はそんな夢のプリティアイテムを信じちゃうんですかー」


風間「信じちゃいねえよ!どうせお前らの事だから、無理矢理こじつけて事実でも作ろうとか姑息な手でも仕込んでいるんだろ!!」


芦花「ひ、ひどいです・・・ピロロン♪風間さんの好感度が便座カバーの1つ下にランクダウンしました。よって、風間さんの代名詞【闇夜を駆けるハムスター】の名も剥奪されました」


風間「お前にとっての便座カバーの好感度なんか知らないし、俺はそんなダサい代名詞で呼ばれたことなんか一度もない!!」


水上「ほらほら、ヒマワリの茎と葉の水分を搾り濾過した水だよ~」


風間「嘘つくな!つかハムスターじゃねえっての!いやハムスターだからってヒマワリの種を食べるだけで、茎と葉の水分を欲しがってるってわけじゃねえよ!」



水上「【水を統べる堕天使】の私が嘘をつくわけないでしょう」スタッ


風間「なんでお前の代名詞はそんなかっこいいんだよ!!」


芦花「はいはーい!私のは【初夏の魔術師】です!さぁ蝉よ・・・鳴き叫べ・・・・命を燃やせ !」ファサ


風間「なんてツッこめばいいか分かんねえよ!!単なる儚い蝉時雨じゃねえか!」


芦花「はい!ということでイフボックスを使いますか」


水上「いえーい♪」


風間「は?」


芦花「さぁさぁ風間さんも!」


風間「帰るわ」



芦花「・・・・・はぁ・・・」


風間「なんだよ、その溜め息は。俺はお前らの面倒事に巻き込まれたくないだけだ」


芦花「あぁ、誠に残念です。あっ、いえ、これは風間さんに言っているわけじゃないんですよ?私はただ世の中にはこういう逃げ腰な人間がまだ居たのか。という事に対して残念だと言ったんです」


風間「っ!」ピクッ


芦花「世界は勝敗を決める事が多いです。オリンピックなり試験なりバーゲンなり・・・・自らの力を発揮し、周りを認めさせる。それが自分を魅せる為の言わば戦い。いやぁ、そんな事が主流となった時代・・・・まだ逃げ腰な人間が世の中にいたんですね。はぁ・・・ほんとガッカリですね」


風間「~っ!!」プルプル


水上「ふふっ」ニコニコ


芦花「あっ、いえ。何度も言いますが、別に風間さんの事を言っているわけじゃありませんからね?寧ろこれは私の独り言として捉えて良いです。臆病者が存在する世の中に失望したという、とある女子高生の独り言ですから」


風間「うおらぁぁ!!やってやんよ!俺は負け犬じゃねえって証明してやるっ!!」ドーン



芦花「・・・・・・・・・ちょろい」ボソッ


水上「・・・・・・・・ホントにちょろい」ボソッ


風間「んで、何をすれば良いんだよ!?」


芦花「あ、はい。まずイフボックスの受話器を取ってください」


風間「取ったぞ」ガチャ


芦花「そして普段電話をするような形をとって『イフイフ~?』と言ってください」


風間「はぁ!?んな恥ずかしい事・・・・・・くそっ!い、いふいふ///?」


『あ?なんだぁ?悪戯電話か?風間この野郎ボケカス死んで詫び』


風間「」ガチャン!


芦花「ああっ!なんで電話を切っちゃうんですか!」



風間「おい・・・あの土属性のキチガイは何処にいる?共犯なんだろ、はよ吐けよ。つか、これはアレだろ。俺に恥ずかしいこと言わせてワラワラwとかしたいだけだろうが!」バン


水上「やだ・・・先輩ったら大胆です・・・・///」


風間「ただ壁を殴っただけだ!憧れのシチュエーションでもなんでもねぇ!文字だけで絵が見えねえからって適当なこと吐かすなっ!!」


芦花「ワンモアチャンスです!もう1回やってください!」


風間「やるわけねえだろ!俺は帰る!」


水上「はぁ・・・やはり最近の不良系男子高校生はチキンが多いというのは事実だったんですね」


風間「イフイフ!!」ガチャ


『・・・・・・・』



風間「イフイフ!」


『・・・・・・』


風間「おい・・・」


芦花「風間さん風間さん!もしもを願ってください!」


風間(そういや何も考えてなかった。どうする・・・『中が普通の人間だったら』か『船堀が困らない世界』か・・・・・)


水上「『もしも水上が俺の妹だったら』なんて、どうかな?」


風間「願わねえよ、んなこと!つか願わなくても、お前は勝手に妹ぶってるじゃねえか!」



芦花「いえ、そこは『もしも芦花たんが俺にフォーリンラブだったら』ですよね!ど、どうでしょうか・・・困りましたね、どうも///」モジモジ


風間「それだけは無い。というか俺は一度もお前のことを、たん付けで読んだことねえし、最悪の展開しか想像できないわ!」


芦花「・・・・・・。じゃあ闇の世界を希望で・・・?」


風間「もしも船堀が困らない世界だったら」



ジリリリリリリ!!!



風間「うおっい!?な、なんだいきなり!?」


水上「あーあ、これで先輩とは本当の妹にはなれなくなっちゃいました」


風間「どんな経緯があろうと俺はお前は実兄妹になる事なんて不可能だ」



芦花「あーあ、これで風間さんとは・・・・・。
・・・・・・・・・・はぁ・・・」


風間「言えよっ!?残尿感あるだろ!」


芦花「ざ、残尿感なんて・・・破廉恥極まりないです///」


風間「ああ゛あ゛あっ悪かっ 『ふえぇ・・・』 ・・・・ん?」



『・・・な、なんですかぁ。私なんかしちゃいましたかぁ?』

『いんや~、別に何もないが、兎に角来い』

『は、はいいぃ!!』



風間「なんか受話器越しに不安要素しかない声が聞こえたんだが」


芦花「ほほう。イフボックスには録音機能がありましたか」



風間「遠回しに俺の事を不安要素とか言ってんじゃねえよ!つか、いきなり船堀困らせてんじゃん!俺の願い聞き届けてねえし」


水上「しかし先輩。軟水は喉越し抜群ですが飲み過ぎるとお腹が緩くなります。気を付けて下さいな」


風間「なんの話だよ!?てか水でも何でも飲み過ぎると腹が緩くなるのは普通だ!!」


水上「だ・・・だ?だから、風間先輩は水を甘く見る傾向があるんです」


芦花「す・・・、好きな人が出来きました・・・///」


風間「なんでしりとりしてるんだよ!?完全に気付かなかったわ!」


水上「芦花先輩にも春ですかぁ。良いですね、春。水が美味しい時期です」


風間「水に季節なんかねえよ!」



芦花「まぁ現在進行系で今は夏なんですけどね。良いですね、奏でましょう。集いし蝉のレクイエムを・・・(ブワァ)」


風間「単なる蝉時雨じゃねえか!二度も同じツッコミさせるなっ!つか効果音の(ブワァ)って何!?何が起きたんだよ!?」


水上「暑いですね。こういう日にはキンキンに冷えた天然水で足を浸かせるととても気持ちいいです!」


風間「話聞けよ!ツッコミ損じゃねえか!」


芦花「じゃあエアコンつけます?」


水上「んんーっ・・・?風間先輩の労働で十分です~」


風間「俺は団扇を仰ぐ労力などお前に費やすつもりはないからな?」



水上「ふふふ・・・ご冗談を~♪」


風間「冗談にしても笑える程価値はない会話だな」


水上「とか何とか言いつつも仰いでくれる先輩は文乃ちゃんの生まれ変わりですか」


風間「文乃ちゃん誰だよ」


芦花「ぴろりろりん♪」


風間「はっ!?なんだ、今の効果音は」


芦花「文乃ちゃんに『くたばれよ。by.風間』ってメールした音です」


風間「だ、か、らッ!!誰だよ!?文乃ちゃんって!!何より俺は文乃ちゃんに『くたばれよ』なんて一言も言ってねええ!!」


水上「B組の文乃ちゃんと言えば分かりますよね?そうですよ、あの文乃ちゃんですよ~」


風間「さも当たり前に知っているかのような口調で話すな!?一応言っとくが俺は知らないからな!」



芦花「なんと!このご時世、恋の文乃ちゃん伝説を知らない人間がいるなんてっ!!」


風間「・・・・・・・・。い、一応な。一応、見たことあるかもしれないから、どんな髪型してるか教えてくれないか・・・?」


芦花「『ぴ』でしたっけ?『ぷ』でしたっけ?」


風間「ぴ?ぷ?何が言いたい?」


芦花「そうだ。『ぽ』です」


風間「は?何のことだ」


芦花「髪型は風間さんのドM心をエキサイティングさせるポニーテールですね。お下劣極まりないです最低です風間さん」


水上「やーい、風間先輩のエロスエロス~」


風間「『ぴ』か『ぷ』は、迷うとこなのか!?いや、待て!そんな事はどうでもいい!それよりも俺はそんな奇奇怪怪な性癖は持ち合わせてない!序でに水上もやめろ!」




ガラガラ~っ!!



千歳「おい社会のクズ」


風間「・・・・・」


水上「風間先輩、呼ばれてますよ?」


芦花「風間さん、無視はいけませんよ?」


船堀「はわわ・・・」


風間「俺かよ!?」


千歳「ここに人間界のゴミと呼ばれる人種がお前以外に誰がいる」


風間「罵倒がヒートアップしてるぞ!つか扱いひでぇ!」



芦花「私は、風間さんがいくら世の中の廃棄物と呼ばれようと一生共に過ごせると誓えますよ・・・///」


風間「俺はそんなに社会に必要とされてないのかよ!つか、そんな風に思っている奴と一生一緒にいるなんて俺が酷だわ!」


船堀「あ、あのぅ・・・これはどういう状態なのですか・・・・?」


風間「ほら、また船堀を困らせてからに!お前らは何が目的なんだよ!早く船堀に教えてやれ!別に俺がこの状況をいち早く知りたいが為じゃねえからな?」


芦花「何を言っているんですか、かじゃましゃん。かじゃましゃんがイフボックスでそう望んだんじゃありませんか」


風間「は?だから船堀を困らせるなって・・・」


船堀「!!」



水上「かじゃましぇんぱいがその願いを出した時点で巻き込まれて・・・・それこそが困惑の原因なのではないでしょうか?」


風間「おい、今自分達が諸悪の根源だと認めたよな!?というか何だよ、その矛盾は!にっちもさっちもいかねえなぁ!」


船堀「かじゃましゃん・・・」


風間「待てよ・・・。お前らナチュラルに俺の名前をディスって悠々と遊んでんじゃねえよ!?船堀も合わせなくていいんだよ!」


千歳「ほれ、船堀さんとやらを困らせたくないんだろ?早く困らせなくさせろよ」


風間「ほら来たよ!お前らの無理矢理こじつける無茶ぶり感!そういうとこホント嫌い!!」


芦花「・・・・き、嫌い・・・ですか・・・・?」


風間「ん?あぁ、嫌いだな」


芦花「・・・・・・うぅっ・・・」ポロッ


風間「嘘泣きバレバレだぞ」



芦花「ひぐっ・・・風間さんに嫌われてしまいました・・・・・・もう夢も希望もお菓子もありません・・・ぐずっ・・・・」


風間「お菓子は余計だな」


千歳「夢も希望も余計だ。こんな風間には夢も希望も無いからな」


風間「てめ、このやろ」

芦花「う、うぅ・・・うわぁぁん・・・・・」


水上「あー、風間先輩が芦花先輩を泣かしたー」ワイワイ


千歳「いーけないんだー、いけないんだー。センセーに言ってスタンガンあててもらおー」ヤンヤヤンヤ


風間「て、てめえら・・・ここぞとばかりに・・」


船堀「風間さん!!」


風間「お、おう?」



船堀「謝って下さい!!」


芦花「びえーん」チラチラ


風間「は、はぁ!?どう見たってあいつらが悪いだろ!つか、あいつチラチラこっちを指の隙間から覗いて」

芦花「うわぁぁぁああん!私は悲しいです!!とても泣いちゃってますぅぅう!!!」


船堀「!!」


風間「普通泣いてる奴が泣いてる事言わねえよ!どんだけ主張が激しいんだ!」


船堀「風間さん!!!わ、わわっ私が困っちゃいますよっ!?あぅ・・・い、良いんですか!?」


風間「船堀ぃ!?どうした!?この常識外の空気に感染したのか!?」



船堀「困らせたくないん・・・・ですよね?」


風間「うぐ・・・・」


芦花「『芦花たんきゃわわ☆マジ俺の嫁!だいしゅきでふ』と言ってくれれば私の涙も納まりが付くと思いますうえーん」


風間「そんな事絶対に言わねえからな!?つか泣いてないだろ!!」


水上「芦花先輩可哀想ですよ。ああ、やっぱりウチの井戸水は美味しいです♪」ゴクゴク


千歳「早く覚悟決めろよ、時間が無駄だ」


大沢「そうだぞー。早く泣き止ましてやれ。うるさくて眠れやしない」


風間「ああっ!もう!なんだよ、もう!!つか先生がいたのかよっ!?仲裁しろよ!寝るなぁ!!」



芦花「うえうえうえーーん」


船堀「風間さんっ!!」


風間「・・・・・・・」


水上「先輩・・・・覚悟決めてくださいよ」


風間「・・・・う、あ・・・あのさ・・・・・」


芦花「なんですかうえーん?」


風間「・・・頼む。少しは易しくしてくれ・・・・・」


千歳「ヘタレがっ」


水上「ヘタレですね」


大沢「すぅ・・・すぅ・・・・むにゃむにゃノーパソとノーパンは似てるむにゃ・・・」



芦花「はぁ・・・仕方ないですね。なら『愛してる』だけで許してあげましょう。・・・・・・・あっ!うわーん!」


風間「・・・・・なんで俺がこんな目に合わなきゃならないんだよ。てか今泣き忘れてただろ」


船堀「や、やっぱり私が原因なのでしょうか・・・」


風間「はぁ・・・・ちょっとこっち来い」


芦花「はい!!ついに勇気を決してく 『愛してる』 れたの・・・・でしゅ・・・ね・・・・・・・・はくぅあぅ///」ボンッ


風間「これでいいだろ。じゃあ俺は帰るからな」


芦花「あわはわあ///」ジタバタ


水上「はいはーい!次は私にもお願いしまーす!」


千歳「私は土下座されてもお断りだ」


風間「じゃ、船堀またな」



船堀「え、ええっ!?もう帰っちゃうのですか?」


風間「悪いのか?」


船堀「も、もう少し色々話した-・・・い、いいえ!な、なななっなんでもありません///!!」


風間「え、は?何が言いたいんだよ」


船堀「いえそのあのえっと・・・・はうぅ///」


風間「保健室行くか?」


船堀「違うんです!ですから、あの・・・ですね///」アウアウ



芦花「あ~れれぇ~?おかしいなぁ?」ニヤニヤ


水上「これは事件の匂い・・・」ニヤニヤ


千歳「ペロッ・・・これはっ!船堀が困っている!?」ニヤニヤ


芦花「ということで我々は散解!!」dash


千歳「いざ鳥取へ!」dash


水上「カルキっ!!」water



・・・・。



風間「あいつら急にどうしたんだよ・・・嵐のように消えてったな」



船堀「そ、そそそっそうですね!まるでどんぐりがお池にはまってドジョウにこんにちわするように!あれ?私何を言って」

風間「熱でもあるのか?」ピタリンコ


船堀「ひゃあっ///」


風間「お、おい!?本当に大丈夫か?なんならあそこで熟睡してる一応教師を起こすけど」


船堀「本当に、だ・・・大丈夫でしゅ///」


風間「・・・・・・。・・・はぁ・・・・・・・」


船堀「・・・えっ」


風間「お前も之江と同じだな。タフを装ったって無駄だ。熱があるなら早く言えよ。強がりを見せるのは、ゲームで子供相手に本気を出して負けそうになる大人のすることだぞ」ダッコ


船堀「///」



風間「だから別に強がったって子供だけしかそんなの騙せれないからな。よし、しっかり掴まっとけ」


船堀「は、はぃ・・・///」


風間「んじゃ、少し急ぐから揺れるぞ」



がらーん・・・



~窓~


之江「うわぁ・・・兄貴逆にスゲエよ」


水上「之江っちも相当風間せんぱ・・・お兄ちゃんに愛されてるね」


之江「ないない。というか、あんた妹じゃないから。なんで言い直した?」



高尾「~~っ!!」プルプル


之江「ひいっ!?って、いたんすか!?」


水上「高尾先輩お疲れ様です」ニコッ


高尾「あ、あのさ・・・・あのイフボックスって使っていい・・・///?」


水上「ふふふ・・・・どうぞどうぞ」ニコニコ


高尾「やっ!べ、別に風間との事を願おうとか考えてないわよ!?そのゴニョゴニョ・・・///」


水上「あっそういえば・・・その前に船堀先輩がアレを使っていたような・・・・」


高尾・之江「ええっ!?」



おわり

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