【艦これ】提督「記憶…?」湾港棲姫「ソウシツ…?」 (176)

湾港ちゃんに拾われちゃった(記憶喪失)提督のお話です。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411837081


吐息が聞こえる。

次第に覚醒していく意識の中、初めに認識出来たことはそれだった。


「ここは…」


見慣れない風景だ。

この状況についてなんとか思い出そうとするが


「…ッッ!」


頭に激痛が走る。

痛みから逃れるため、大きく息を吸い吐く、息を吸い吐く。


「はぁはぁはぁ…」


何度かその動作を繰り返し次第に痛みは収まっていった。




改めて周りを確認すると隣に誰か寝ているのが分かった。

椅子に座って頭をこちらに預ける形で眠っている。

正直心当たりがない。


長い髪の女性だ。

年齢は20前後といったところだろう。

この様子から察するにずっと傍にいてくれたのだろうか。



「ンッ…」



どうやら目を覚ましたようだ。



「!!  ___ガ____デ、イ___!!」



こちらを確認し慌てた様子で跳ね上がる。

ジェスチャー交じりで話しかけていた。



「___テ____ガ____カ?」




だが、言語が日本語と異なるのか、全く分からない。

遠い国に来てしまったのだろうか。



「すまない…言葉が理解出来ない。どうやら言語が異なるようだ」


一松の望みをかけて返事をする。

もしかすると、私がヒアリングできないだけで相手にはこちらの言葉が分かるかもしれない。



願いが届いたのか。

何度も頷き納得した表情を見せる。


そして、こちらの様子を伺っているのか

首を傾げつつ、一言、喋ってくれた。



「チュー、スルカ?」



私が知っている言語と近い何かだろうか。

だが、一つ分かった事がある。

何所か遠い場所に来てしまったようだ。

いや、もしかすると目の前の女性は、

恋人か、あるいは家族、夫婦の間柄なのか?


思い出そうとするがまたあの激痛が走る。



「あッ……クッ……!!」


「ダ、ダイジョウブカ??」



再度、呼吸を整える。

息を吸い、吐く。

やがて痛みは治まってきた。



そして気付いた。

詳しくは思い出せないことに気付いた。という事だろうか。

私は---自分の名前さえ、思い出せない。




「私は…」


「ド、ドウカシタノカ? イタイトコロアルカ?」


「思い出せないんだ、何者なのか。自分も名前さえも」



「アナタノナハ……テイトクダ……」


「提督か、ありがとう」


気のせいだろうか。

女性が一瞬、悲しそうな表情を浮かべたような気がした。



「キオクガナイノカ…?」


「ああ、本当に申し訳ない」


「ナゼ、アヤマル?」



キョトン、そんな風な表情を見せる女性だが、

逆に私も困惑してしまった。

そこまで親しい関係では無かったのだろうか?



「貴方の事も、忘れているんだ」



女性が考える素振りを見せ、しばらくすると納得したような表情を見せる。



「ソ、ソウカ。カナシイナ」


「私と貴方はどんな関係だったんだ?」


「アイダガラ…」


「ずっと看ていてくれたようだったので、恋人かそれなりに親しい関係かと思ったのだ…」


「コイビト…? イッタイナンダソレハ?」



一般用語が通用しない、予想以上に事態は悪い。


恐らくだが、記憶を失うの私は、先程の彼女が話していた言語で

コミュニケーションをとっていたのかもしれない。

それならば納得できる。


「…失礼する。気を悪くしたならすぐ辞める」


「?」


女性がまたもや首を傾げる。

正面から改めて見ると、かなり顔が整っている部類だ。

白い肌も美しい。




彼女に近づき、その柔らかく女性らしい躰をそっと抱きしめた。



彼女の表情を見ると、

どこかボーットしているが、瞳が少し潤んでいた。


「…」


そして自然に髪に手が伸びていた。

美しい銀色に輝く髪をゆっくりと撫でる。

私は、この感触を知っている。

懐かしささえ感じられる。



「----ッ!!」


ドン、という軽い衝撃。



「マ、マテ! マテ!」

「アイダガラ、ワカッタ!!」



彼女の表情は、耳まで真っ赤に染まっていた。



「オマエトワタシハ」

「ケッコンカッコカリダ! ケッコカッコカリ!」



「そうか、よかった」


言葉のニュアンスの違いがあるが、婚約かそれに近い仲なのだろう。

また少し、頭に痛みが走ったがすぐに止んだ。



「オマエ、イタクハナイノカ? カラダ」


「痛みは…ないな」


「ソウカ、ナラヨカッタ」



そこで初めて見た。


彼女の笑顔。



忘れてしまった自分を強く殴りたい気持ちと、

次こそは絶対に忘れてなるものかと意地を張る今の私の気持ち。


過去と今、どちらも共通しているのは、

彼女の笑顔を守りたいという事だろう。



「…ゴホン」


「?」


思わず見惚れてしまったが、話を続けよう。



「君の名前を教えてくれ」

「コウワン、セイキ」

「湾港棲姫か」



今度は忘れまい。



「此処は何所だろう、また私の家も知っているかい?」

「ココハ、ワタシノイエ」

「アナタノイエハ…ナクナッタ」



いきなり衝撃の事実を知らされる。

どういう事だ? 無くなった?



「火事か何かか?」


「…ソウダ」


「ダカラ、ココニスメ」


「いいのか?」

「イイ」

「私は記憶を失っている。君の知っている私とは違うかもしれない」

「カマワナイ」



彼女と視線がぶつかる。

正面からじっとこちらを見つめてくる。



「シンジテル」

「そう、か」


無垢な瞳をぶつけてくる彼女。

嘘偽りは感じられない、澄んだ紅い瞳だ。


「なら、甘えさせて貰う」

「ありがとう」

「ウン」



「ココデ、ネロ」

「さっきの部屋、か」

「まさか、1つのベッドで寝るのか?」

「ソウダ」

「…以前からそうしていたのか?」

「ハジメテダ」

「ダガ、メガサメタラスルトキメテイタ」



心配、してくれているのだろうか。

短い時間だが分かったことがある。

彼女は言動と行動がちぐはぐだ。

知識としては知っているが経験がない、そんな印象を受ける。


「…わかった」



隣から規則正しい吐息が聞こえる。

彼女は寝付きが良くすぐに眠ってしまった。



私はというと正直、全く眠くならない。

先程まで、ずっと眠っていたようなものだし、当然か。


「…」zZZ



無防備な寝顔だ。

信頼されているのだろう。

勿論、今の私ではなく過去の私を。

…辞めておこう、思考がナーバスになってしまう。



これからどうするか。

それを考える方が建設的というものだ。

いつまでも彼女に頼りっきりという訳にはいくまい。

どうやったら記憶は戻るのだろう。

果たして簡単に戻るものなのか。

戻らない場合、まず解決すべき問題は。

そうだな、言語の問題が一番か。

いや、それにしても---

しかし---


***


**


*




真夜中のとある一室。

2人男女が眠りについていた。



だが、時間がたち目が覚めたのか1人が立ち上がる。

闇の中でも一際、美しく目立つ髪を持つ女性。

彼女---港湾棲姫がもう1人の人物---提督に近づく。



「テイトク」



提督の傍でゆっくりと腰を下し、

提督の頭を膝に乗せた。



「ドウダ、ヒザマクラ、ダ」

「オトコノロマン、ナンダロ」

「フフフ」



繊細な手つきで提督を撫でる。

指先に触れるその存在を壊してしまわないように、

優しく撫でていく。



「…モウ」

「ハナレタリシナイ」

「ハナサナイ」

「ワタシガ、マモル」


彼女の目に、光る物が見える。

雫が一粒流れ落ちた。



「ワタシガ…」

今更ながらタイトルがわんこちゃんになっている事に気付く。
ご覧の方いましたら気付いてもスルーしてくださいませ



「___ウェ____バ__ダ__」

「__ッタ___ナ__ヨ____」


話し声が聞こえる。

段々と意識が覚醒していく。

何時の間に眠っていたのだろう。




上体を起こし伸びをする。

周りを見渡すが、

隣で眠っていたはずの港湾棲姫の姿がない。



やはりこの話声の主は港湾棲姫か。

もう一人は誰なのだろう。



「____カ___」


「ホッ___ウ___ダイ____カ?」


「___パイ____ナ___マモ____」


「___ッタ」



静かに音のするほうに近づく。

音としては聞こえるが

何を喋ってくるかは理解できなかった。



「___ナ」

「___ン」



会話が終わったらしい。

こちらに向かってくる気配がする。

慌てて隠れようとするが、場所が見つからない。

ガチャリ。

扉が開き、目の前の人物と目が合う。

湾港棲姫ではない。



ドクン。

圧倒的なプレッシャーを感じる。



黒のイメージ。

港湾棲姫が白なら、目の前の女性は黒のイメージだ。

女性にしては高身長でモデルのようなスレンダーなスタイルの女性。

黒のワンピースを着ている。



「メガサメタカ」

「テイトク…!」


ドクン。

何故だか分からない。

だが、こいつを目の前にすると胸がざわつく。

記憶を失う前に、何かあったのだろうか。



「すまないが、君も私を知っているのか」

「ホウ…」

「ホントウニキオクガナイカ」



疑う目つきでこちらを探ってくる。

心臓を鷲掴みにされているようだ。



ポタリ。

冷や汗が流れ落ちるのを感じた。

どうやら私は目の前の存在に対し、

相当緊張しているらしい。



「マア、フカイナカダッタ」

「トデモイッテオコウ」



クククと怪しく笑う女性。

答えになっていない答えを残し去って行く。



彼女が去った方向を睨みつつ息を整える。

激しく脈をうっていた心臓が、

ようやく落ち着きを取り戻した。



「……ク! テイトク!!」


響く港湾棲姫の声。


「すまない、少しぼんやりしていた」

「さっきの女性は一体、何者なのだ?」

「ワタシノ、ナカマダ」

「そうか」



港湾棲姫と関わりがあるなら、

面識があっても可笑しくはないか。

可笑しくはないが…。



「ソレヨリモ」

「ゴハン」



大きな胸を、さらに得意げに主張し胸を張る。

何やら匂いがすると思ったら朝食を作っていたのか。



「ハンバーグ、ダ!」


「好物だ、よく分かったな」


「モチロン!」



恋仲だけあって、

私の好物は把握しているらしい。

正直、嬉しい。



「タベロ!」

「有り難く、頂戴しよう」

「いただきます」



ガリッ


嫌な音がした。

よく見ると裏にビッシリと焦げ目があり、

咀嚼する度、口の中でガリガリと音がする。



「オイシクナイカ…?」


「料理は慣れていないのか?」


「ハジメテダ」



病み上がりの私に気を遣ったのだろう。

慣れない料理をさせてしまったか。

…今度からは私が作ってみよう。



「気持ちは嬉しい、ぞ?」

「ウゥ…」




「私はどういう仕事をしていたのだ?」


食事が終わり後片付けも終え一息ついた頃。

これからの事について話をするため、話題を口した。



黙る港湾棲姫。

だが、しばらくして口を開く。



「イエナイ」

「何故だ?」

「…アブナイ、カラ」

「記憶喪失と関係しているのか…?」



コクリ。

港湾棲姫が頷く。



暗い表情をしていたのか。

港湾棲姫がこちらを気遣う。


「キニスルナ」

「ワタシヲタヨレ」

「…わかった、なら何か手伝える事はないか?」



さすがに恋仲とはいうものの、

ずっと世話になるわけにはいかない。



だが、働くにはハードルが高かった。

その為には、この国の言語に対応しなければならない。

思い出すのが先か、どちらになるかな。



「記憶を思い出す事が最優先にはなるが」


記憶を思い出す。

そのワードに反応したのだろうか。

悲しそうな表情を浮かべる港湾棲姫。



以前の私は、

どれほど彼女に心配を掛けていたのだ。

自分の事ながら腹が立つ。



「テツダエルコト」

「マッテロ」


何かを思い出したように

出ていく湾港棲姫。

手に何かを抱えすぐに戻ってきた。



「コレ」



何やら機械のようだが。

ラジオのような機械だろうか、

状態はボロボロだ。




無意識のうちに、

手を伸ばしそれを持ち、確認する。



---私はこれを直せる。

何故だか分からないが直感した。

そして、機械に触っていると胸が高鳴るのを感じる。

ワクワクする。



「ナオセルカ?」

「恐らく」

「ヨカッタ」



どうやら私は機械弄りが好きらしいな。

本職ではないようだが。



「知っていたのか?」

「フフ、オマエノコトハ。ナンデモシッテイル」


自分の事のように、

胸を張り満足そうな笑みを浮かべる湾港棲姫。



少しくすぐったい気持ちになった。



固まった筋肉を解すため体を伸ばす。

心地よい刺激が体を駆け巡る。

体の反応に満足し椅子に腰掛けた。



ギィ。

背もたれに体を預け、

何もない天井を見つめ深呼吸をする。


「ふぅ」


機械弄りを行っているとき、

不思議な感覚だが物と対話している気分になった。

何処を直した方が良いのか。

何所を弄れば良いのか。

訴えかけてくる。

それがなんとも心地良い。

この感覚が記憶を失う前からなのかは分からないが。



「スゴイ、モウオワッタノ」

「このくらいなら、な」



港湾棲姫が帰宅後、早速直した機械を見せた。

やはりラジオのようだったが、

但し、電波が届かないのであまり役にたちそうにはない。




彼女にラジオを手渡す。

だが、とりあえず触れてみたものの、

どうすればよいのか分からない様子だ。

ラジオをツンツンしていた。



「ちょっと貸してくれ」

「ウン」

「ここを回すと」



ジ、ジジジ、ジジジー。


電波がないため音は拾えないのか。

雑音だけが響いた。

だが、それでも彼女には衝撃だったようだ。



「スゴイ、スゴイヨ! テイトク!!」

「うむ、ただ電波が拾えないのであまり有効活用は出来ないかもしれない」

「ヨクワカラナイガ。ウゴイタ、ソレダケデスゴイヨ!!」



予想以上の反応だった。

ここまで喜んでくれたのは嬉しい。

頑張った甲斐があったというものだ。



「テイトク」

「なんだい」

「アンナイシタイ、トコロガアル」




「ココダ」

20分程歩いただろうか。

どうやら目的地についたらしい。


「チョットマッテテ」


倉庫のようだ。

かなり大きい。

一般的なスタイジアムぐらいはあるだろうか。


次に目についたのは扉の高さ。

50m以上あるのではないだろうか。


「でかいな」


そのスケールに圧倒される。

何か彼女が操作したのだろうか。


ゴゴゴゴゴ。


重々しい音を響かせながら

大きな扉は開いた。


「コッチダ」

「わかった」



「すごい、な」


まず目の入ったのは

物、物、モノ、もの----。

種類、大小さまざまであるが、

物が溢れかえった光景が目の前に広がっていた。



共通として言えるのは

ほとんど壊れているように見える。


しかし、この光景に胸が高鳴った。

人にとってはガラクタと評されるばかりかもしれないが、

私には宝物のようにキラキラして写った。



さらに奥にも空間があるようだが、

大きな壁で仕切りられており、

先が見えない。


「これは一体?」


「…ウミデ、イキバヲナクシタモノタチダ」


なるほど。

よく分からない。

が、それは些細な問題だ。

本当に気になっているのは一つだけ。



「自由にして良いのか?」

「モノヨルケド」

「シュウリハ、コチラカラオネガイスルトコロダッタノダ」



彼女の言葉により、一気に気分が高揚し興奮した。



「勿論だ!! その依頼引き受けよう」



気付けば彼女を抱きしめていた。

勢いのままやってしまったらしい。

冷静になって距離を置く。



「コホン」

「す、済まない」

「イ、イイヨ」


少し赤らんだ彼女の表情。


ほんの数刻前まで大量の物資に興奮していたが、

今は彼女の恥ずかし気な表情に釘付けになっていた。

我ながら現金なものだと思うが、これは仕様がないだろう。



「ヨロシクタノム」

「ああ、任された」

突っ込み所が満載だと思いますが、
気にしたら負けという言葉がありまして。

次あたりにほっぽちゃん登場予定です。
あと彼には機械弄りの他にもういっこ頑張ってもらいます。



今日は晴れだ。

それも晴天。


日の光を浴びながら散歩をしていた。

別に暇という訳ではない。

ずっと部屋にこもっていると体が腐る。



ちなみに今日は思考を凝らしてある物を作ってみた。

子供のオモチャみたいなものだが。

港湾棲姫の驚く顔は見れるかもしれない。

想像すると少し楽しくなった。


さて、戻るとしよう。



困った。

何がというと目の前の存在に、だ。



「_____ガ___!!  ス___キヌガ!!!」



戻ったは良いが、

幼女が1人、玄関の前で立ち往生していた。

見た目からすると6歳前後だろうか。


港湾棲姫の知り合いなのだろうか。

こちらの存在を認識した途端に

大声で怒鳴ってきた。



「_____ネエ___! ___テキ__ヌガ!」


「___サナイ!!」



険しい表情をしているが、

言葉が分からない。



間違いなく良い感情は持たれていないだろうが、

せめてもの誠意を表すため、

体勢を低くし目線を合わせる。



「すまない、私はその言葉が分からないんだ」



幼女が何度も頷き納得した表情を見せた。

なんだかデジャヴを感じるな。

思い出した。

港湾棲姫と同じ反応だ。



「コ、コホン」

「コ、コレデイイカ?」


おお。

言葉が通じるぞ。

幼女の頭を撫でる。



「うん、ちゃんと話せてる。偉い」

「エヘヘ」



こんな歳でバイリンガルとは恐れ入る。

私も頑張らなくては。



「ッテ、チガウ!!!」



そうだ。

兎に角、目の前の幼女は客人だ。

持て成さねばなるまい。



「少し待っててくれ」

「エ? ウン」



今日作ったあれを。

先にこちらの客人に見せる事にしよう。

決して港湾棲姫が気に入るか、

先に反応を確認したいからじゃないぞ。




出来た。

完成品を持ち幼女の下へと戻る。


「どうぞ」

「?」


”わたあめ”を差し出す。


息抜きついでに製造機を作ってみたのだ。

簡単に出来るものだしな。



幼女は困惑した表情を浮かべていいた。

この国ではあまり有名ではないのかもしれない。


「失礼」


一掴みして食べる。


「こうやって食べるのだ」

「ウ、ウン」


同じように一口だいの大きさに千切り

口許に運ぶ。



「__ナ__!!」

「オイシイ!」

「オモシロイ、タベモノ」

「美味しいだろう」

「わたあめ、というのだ」

「ワタアメ!」



表情が明るくなった。

やはり子供は笑っている顔が一番だ。

それに港湾棲姫に出しても問題は無さそうだな。



「ッテ、ソウジャナイ!!!」




「すまない、口に合わなかったか」

「チガウケド…」



言いかけた言葉を飲み込み、

頭をブンブン振り回す幼女。



「モウーー!!  ウルサイ!!」

「オコッタゾ!」


「_____コ________ウ!!!!」



幼女が叫んだ瞬間。


「グルアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


異形の生物が現れた。

いや、生物なのか一瞬では判断しかねた。

半身生身、半身機械。

生物と機械が融合したような姿をしている。



「___ヨ! _______ビ!」



少女が異形の生物に命令を下す。


そして



「ーーーー!!」



瞬きする間もなく

私の目の前に異形の生物が現れた。

早すぎて全く反応出来ない。



「ガウッ!!!」



喰らうためか、噛み砕くためか。

生物が大きく口を開き。

私の体に迫る。



目の前が、真っ暗になった。



*

**

***



湾港棲姫は家路を急いでいた。

北方棲姫が来る。

突然の連絡だった。

仲間に教えて貰えなかったら気付かなかった。

あの子はいつも唐突だ。

帰ってきていたのなら事前に教えてくれれば良いのに。

提督と問題を起こしてなければ良いけど。




家にたどり着く。

いつも通り扉を開けようと近づく。

だが。


「?」



何やら騒がしい。

誰か来ているのだろうか。

扉を開ける。



「港湾棲姫、おかえり」


いつも通り提督が迎えてくれた。

だが、いつもと違う光景もあった。



「テートク、ハヤクメシ!」

「もう少し待ってなさい」

「ガウッ♪」



上から北方棲姫、提督。

そして一際異彩を放っている存在が。

北方棲姫の武装か?


「ナニガ、ドウナッテイルノ…」



時を少し遡る。


***

**

*


目の前が真っ暗になった。

が、何も起こらない。


「……?」


ペロッ。

気を抜いた瞬間、

湿った感触が顔全体に広がった。



「!?」



言葉を発する事が出来ない。


ペロペロ。

その感触がまだ続く。

幼女も事態が呑み込めていないのか、

ポカンとしていた。


「チ、チガウ。ソイツハテキダ!!」


相変わらず視界は占領されているが、

手伸ばし目の前の存在に触れる。

撫でてみた。


「クゥ~ン♪」


もしかすると、

こいつは私に懐いているのか。

顎も撫でてみた。


「キュイ♪」


心地よさそうな声が響く。

間違いないようだ。

やはり懐かれている。

原因は全く見当もつかないが。


「ド、ドウシタ」

「ソイツヲカミクダクノダ!」

「ハヤククエ」

「ガウ!」


首を振り嫌がる様子を見せる。

ずっと見ていると、段々可愛く見えてくるから不思議だ。


「イウコトヲイキケーーー!!!」


しかし、私を食えか。

食べても美味くはないと思うが。

腹が減っているのなら何か作ってやるか。

食べられてしまうのは勘弁だからな。



「飯を作る」

「ひとまず飯を食べてから話をしないか」

「ハァハァハァハァ」


息を整える幼女。

説得に疲れたらしい。


「ショウガナイナ、ワカッタ」

「ボウッ♪」

「但し、君はさっきわたあめを食べたので少な目だな」

「エエエエエエエ!?!?」

ド変態憲兵どもが湧いてますね。
どうしたらいいのか分かりません(いいぞ、もっとやれ)
なのでヲ級ちゃんに対応してもらう事にして。

すいません、今日はこの辺で。
彼がもいっこ頑張るっていってた所までは書けませんでした。
次あたりに書ければと思います。ではでは。


■北方棲姫とお勉強

件の幼女---北方棲姫の来訪から数日が経った。


彼女は港湾棲姫と姉妹のような関係らしい。

大切な姉に変な虫がついている。

その噂を聞き私を目の敵にしていたようだ。


誤解は未だ溶けてない。

何故なら


「テートク」


毎日、監視?されている。

私には遊んでいるようにしか見えないが、

本人曰く監視らしい。


「オイ」


ちなみに現在、私の膝上を占領中である。

些か作業し辛いが、

大きな問題ではないので好きにさせている。



「ムシスルナ!」



ムニュ。


頬をつままれる。



「いみゃはしぎょとちゅうなにゃだ」


「ナニヲイッテイルノダ!」



笑いながら文句を垂れる北方棲姫。

文句があるのならその手を離してほしい。



「アハハハハハ」

「フゥ、ショウガナイナ」


ひとしきり笑った後、

私の頬は無事解放された。


「ナニヲツクッテイルノダ」

「完成までもう少しまってくれ」

「エー」

「もう少しなのだ」

「ワカッタ」



聞き分けの良い子供は好きだぞ。



作業に戻る。

大まかな流れを意識しつつ、

作業工程を頭の中でイメージする。

よし、

これなら直せそうだ。



もうこんな時間か。

時計を確認するとお昼になっていた。


そして小さいお姫様は眠ってしまったようだ。

まだ日が高いとはいえ、このままでは風邪をひきそうだ。

移動のため、抱え込もうとするが

起きてしまったようだ。


「ウゥン」

「すまない、起こしてしまってか」

「ダイジョウブ…」


「お昼を準備するからもう少し休んでおくといい」

「ヤッタ!」

食事中。



「ウマイ!」

「卵焼きだな」

「タマゴヤキ、ウマイ!」


北方棲姫はご飯を食べている最中は笑顔だ。

機嫌が良い。



実は北方棲姫に頼み事があるのだ。

タイミングを見計らっていたが、

やはり食事中が良さそうだな。



「北方棲姫」

「ン~♪ ナンダ」

「頼みたいことがあるのだが」

「オ、オツカイカ!?」



目をキラキラしている。

予想外の反応だった。

しかし、残念ながらお使いとはちょっと違う頼み事だ。



「私に言葉を教え欲しい」

「コトバ?」

「イマシャベッテルジャナイカ」

「違う、君達の国の言語だ」

「____ガ____ホ」

「コレカ?」

「そうだ」

「勿論、タダとは言わない」

「?」



北方棲姫の前に四角い黄色い物体を出す。

べっこう飴だ。



「コレハ?」

「べっこう飴というお菓子だ」

「フーン」

「こら、今食べようとするな。食後にしなさい」

「ムゥ」



膨れっ面になる。

まあ、これは渡すタイミングが悪かったな。

私が悪い、反省だ。



「ジャア、ハヤククウ!」

「ちゃんとゆっくり噛んで食べるんだぞ」

「ハーイ」


食後。


「ヨイショ」


席を立ち、後かたずけを始める。

何も言わずとも、その行いをする北方棲姫の姿に感動を覚える。

この子は素直で良い子なのだ。

何所に出しても恥ずかしくない。



「ドウカシタノカ?」



自分を見つめる視線に気付いた北方棲姫が

私に問いかける。



「北方棲姫は偉いな、後片付けがちゃんと出来るのだから」

「エヘヘ、エライカ!」

「ああ、良い子だぞ」



頭を撫でる。

気持ちよさそうに体を預けてくる。


が。待て。


しまった、当初の目的を忘れる所だった。

先程の話を進める為、2人で片付けを始めた。



片付けも終え北方棲姫と寛ぐ。

先程の話を再開した。



「このべっこう飴はなはな」

「この前のわたあめみたいなお菓子だ」

「マジカ!」



嬉しそうなでなによりだ。

あの時も美味しそうに食べていたからな。



「しかも包み紙で包めば持ち運べるぞ。小さいからな」

「ソトデモタベレルノカ??」

「ああ」

「コレ、クレルノカ!」

「勿論、作り方だって教えるぞ」

「ホーーーーー!」



だが、食べていいのは1日3個までだ。

健康に良くない。



それと。



「この事は港湾棲姫に秘密にして欲しいのだ」

「オネエチャンニ?」

「そうだ」

「?? ウン、ワカッタ」

「頼りにしているぞ、先生」



先生。

その単語に反応したのか。

目を輝かせる北方棲姫。



「マカセロ!!」



それから北方棲姫と勉強会が始まった。

港湾棲姫に秘密にしたいのは、

彼女を驚かせたいという私の我儘だ。

どんな反応をしてくれるだろうか。


わんこちゃんにお披露目までいけるかと思ったんですが一旦ここまで。
ほっぽちゃんはやっぱ可愛いですね。

あとヲ級ちゃんをいじめるクソ提督が居て不安でしたが、
ちゃんとした憲兵さんも居たようです。安心しました。
それでは私は先程ちっちゃいサイズの黒紐パン拾ったのでXXXX、
いや、お届けしてきます。お疲れ様でした。

勉強中。


北方棲姫は意外と教えるのが上手い。



「湾港棲姫の事はどう呼べば良いのだ」

「_ダ_デ__」

「コレダ」



子供ゆえの表現なのか、

それとも彼女が工夫してくれているのか。



「_ヂ_デ__」

「こうか」

「チガウ」

「_ダ_デ__」

「ソウダ」



簡単な言葉。

それに直球で分かりやすい表現が多い。

何より教えてもらう立場としては有り難かった。

だが気を付けねばいけない所もある。



「北方棲姫よ」

「ナンダ」

「"湾港棲姫"と"姉"、先程の言葉の意味はどっちだ」

「オネエチャンダ」

「…"湾港棲姫"で頼む」



私が湾港棲姫をお姉ちゃん呼ばわりしたら、

色々とマズイだろう。

勉強中。



「キョウハ」

「キキトリノ、カクニンダ」

「はい、先生。よろしくお願いします」



北方棲姫の目が輝く。

先生呼ばわりされるのが最近のお気に入りらしい。



「!!」

「テスト!テスト!」

「ココ、テストニデルゾ」

「はい」



満足してもらえたようでなにより。


「フフ、センセイ」

「デハ、イッテクル」

「ああ」



湾港棲姫の傍に行く北方棲姫。

2人の会話内容を聞き取るというのが今日の課題だ。



「__ダ」

「____ツ?」

「_キ」

「___ガ___ッン?」

「__!?」

「__ア! コ_ボ」



なるほど。

前よりはずっと聞き取れるようになったな。


会話が進むにつれ、

港湾棲姫の表情がどんどん赤みを帯びていく。


うむ。












うむ。

良いぞ頑張れ、北方棲姫。



北方棲姫が戻ってきた。

「ドウダ、キキトレタカ?」

「ああ、そしてよくやってくれた」


感謝の思いを込めて頭を撫でる。


「フフン」

「ヨシ、アメ、クレ!」

「今日の分は渡しただろう、駄目だ」

「エー」


それとこれとは話は別、おねだりしても駄目だ。

飴は1日3つまで。

■港湾棲姫にお披露目


「コホン」


緊張しているな。

いかんぞ、私。


「イソゲ、オネエチャンクルゾ!」

「わかった」


コツコツ。

湾港棲姫の足音。

彼女が彼--提督に近づいていく。



「テイトク、ハナシトハナンダ」

「ああ、すぐにすむ」

「ウン」



だが、話しが始まらない。

提督が緊張しているためか、

少し雰囲気が固くなる。


そして、

彼女が何かを察したのか表情を強張らせる。

顔色も段々青ざめていく。




が何を思ったのかは分からない。

だが。

提督は彼女の方を見ておらず、表情に気付けてない。



よし。

せっかく北方棲姫にずっと協力してもらったのだ。

頑張らねば。




深呼吸をし精神を落ち着かせる。

息を吸う。

息を吐く。

その動作を繰り返す。



「ガ_シ_」

「エ?」



少し違う。



「私」



お。

これだ。


港湾棲姫の目を正面から見つめる。

驚きと、困惑が混ざった表情を見せている。

待たせて申し訳ない。

私は存外、臆病な人間のようだ。



「私、湾港棲姫、大切」

「ずっと一緒、居たい」


ちゃんと伝わるだろうか。



「…え?」

「私、過去、記憶が無い、でも湾港棲姫、大切」

「宜しく」



つたない言葉遣いだろうが。

思い込めて話す。



「………」



しばらく時が止まる。


だが無事、伝える事が出来たようだ。


彼女の表情が崩れる。



「はい…」



彼女の目に光るものが見えた。

それでも満面の笑みを見せてくれた。



「はい…はい……」



何度も頷いてくれた。

そっと彼女を抱きしめる。




記憶はまだ思い出せない。

思い出す。

それに恐怖を覚える事もあるのだ。

今の私は、もしや消えるのではないかと。



だが、それでも。

今、彼女と一緒にいるのは私なのだ。

過去の私ではなく今の私だ。

今、彼女と時を刻んでいるのは私なのだ。



いつか過去の私が蘇ったとしても。

この記憶は私のものだ、羨ましいだろうと。

そう蘇った私に言ってやりたい。

ざまーみろ、と。


そして二度とその手を離すなと。


正直、今回の文章を読み返すたびに悶絶する気がします。
まぁ深海語(?)が喋れるようになったので、
次回以降、深海基地に出向いていきます。
何人か深海娘勢と会わせる予定ですが安価で1人募集します。
見てくださった方、ありがとうございました。

1つ↓

安価ありがとうございます。
ヲ級ちゃん出しますね。
レ級ちゃんも元々出演予定でしたのでその内、登場させてあげたいと思います。
ありがとうございました。

■提督、初めての深海


「提督、来てほしい場所がある」



あの日。

倉庫に案内してもらった時と同じような状況だな。

もう遠い昔のように感じる。



「何所だ?」

「私の、職場かな」

「良いぞ」

「…」



しばらく無言が続く。

何か言いづらい事があるのか。

少し空気が重く感じる。

彼女は俯きがちでこちらから表情は見えないが。



「明日からはそっちで働いてもらう…かもしれない」

「構わない」



即答する。

むしろ、

彼女と一緒の所で働けるなら喜んで行こう。



「あり…がとう」

「ああ、気にするな」



本当に気にするなよ。

港湾棲姫。



*

**

***


「歓迎するわ」


港湾棲姫に案内され、

目の前にはいつかの女が立っていた。


「私の名乗りがまだだったわね」

「戦艦棲姫よ」


ドクン。

以前と同じく、

この女からは謎のプレッシャーを感じる。



「貴方にやってもらったものは色々と興味深いものがあるし」

「改めて」

「よろしくお願いするね」


ゾクリ。

港湾棲姫には申し訳ないが、

やはりこいつとは一生分かり合える気がしない。


「ああ、こちらこそ宜しく頼む」


それが精いっぱい、私が言えた台詞だった。


***

**

*



「あっちが……で、こっちが……」


あの女に挨拶したの後、

今は港湾棲姫に施設の案内してもらっている。



「しかし広いな。ここは」

「うん、気を付けないと迷子になる」

「ふっ」



港湾棲姫が迷子か。

少し見てみたいな、涙を浮かべていそうだ。



「何か失礼なこと考えてる?」


「そんな事はない」



何故バレた。

若干怒った表情の港湾棲姫。


「注意してくれてありがとう。さすが北方棲姫のお姉ちゃんだ」

「ふーん」


どうやらフォローはうまくいかなかったらしい。


「ん?」



とある扉の前。

強い気配に惹かれて立ち止まる。



「どうしたの?」

「ここは?」

「工匠」



なるほど。

私に一番馴染み深くなる場所かもしれないな。


不思議と惹かれる。

そして。


特に考えもせずに扉を開いてしまった。

迂闊にも程がある。

後から後悔する事になるが遅かった。



ガラッ。


「「「「「「がうっ!!」」」」」」


黒い塊が一斉に体を覆い被さる。

よく見ると一体一体が北方棲姫と一緒にいた

あの機械のような生物、あるいは似たような雰囲気を感じる。


「むっ……!?」


「提督!?」


黒い塊の隙間からだが、

港湾棲姫が慌ててるのが見える。


「「「「「「ペロペロ」」」」」」」」


痛みはない。

噛まれたりはしていない。

甘噛みはされてるように感じるが、

命に別状はないようだ。


しかし。

何故懐かれるのか、理由はさっぱり分からない。


「「「「「「ペロペロ」」」」」」


また唾液だらけになってしまった。

上の子らに載っている奴等が落ち着くのを待った。


「お、お願い」

「て、提督を離して~!」


彼女が慌てる様を他人事のように見つめながら。



***

**

*



「大変だった」

「迷惑かけたな」


なんとか解放された。

まだ後ろの方で騒いでるやつらがいるが。



「案内はこれで終わり」

「ありがとう」


ここが明日から私の職場か。


うん。


まぁ飽きる事は無さそうだな。


港湾棲姫のためにも頑張らねば。


■ヲ級、変なやつに出会う。


空を眺めるのが好き。

でも皆には内緒。

秘密を知っているのは


「ヲォ~」

「ん、お腹すいたの?」

「ヲ」



この子と。

今は近くにいないけど艦載機の子達ぐらい。



「はい」


「ヲ!」



飴をあげる。

仲間内で流行っている食べもの。

今まで味覚に対して興味を無かった分、

最初食べたときは衝撃だった。


ちなみに、作っているのは最近うちにやって来た人。

わたあめ仙人だとか、おやつの伝道師とか呼ばれている。

喋ったことないけど。



「ヲ!ヲ!ヲ!」


「どうしたの?」



この子が指す方を見る。

艦載機の子達が一塊になって空中飛行していた。

見ないと思ったら。

あの子達、何やってるんだろう。


「ヲ!」



え?

は?

へ?

え?


よく見るとあの子達の上に人影が見えた。

上に載っている人は…誰?

段々近づいてくる。

うっすらとだが顔が見えた。



そうだ。

噂のわたあめ仙人ってたしか、あんな感じだったような…。


って。

一直線でこちらに向かってきてる。

それもすごい速度で。

ぶ、ぶつかる!!



「きゃーーーー!!」


*

**

***


「すまないな、手伝ってもらって」


「ギャオ~」

空も飛べるこの子達に助っ人をお願いした。



チョコレート。


すべては北方棲姫との会話が原因だった。

チョコレートの何たるかを話していたら作ってほしいとねだられた。

仕事があるので断ったのだが。

噂が流れるのは早いと言うか。

何時の間にか話が広がり、

作らざる終えない状況になってしまった。



しかし、戦艦のやつめ。

興味ないフリをして実は一番興味あったのではないか。

いの一番に採りに行くように命じたのもアイツだった。


「ギャッ!」

「ん?」

「どうしたのだ」



さすがに疲れが溜まったか?

いや、違ったようだ。



「ギャオッス!!」

「あそこか?」


この子達が指す方向を見る。

何やら人影のようなものが見えた。



ふむ。

どうやらこの子達の主らしいな。



「なるほど」

「そういえば君たちに助っ人をお願いしたことを伝えてないな」

「あそこへ向かってくれるか」

「ギャウ!」×10


任せておけか。

頼もしいな。


「では行こう」


「ャオ!」×10



***

**

*

一旦終わり。夜に再開します。
ヲ級話が終わるとこまで投稿予定。

「すまない、勢いをつけすぎた」


な、なんなのこいつ。


「ヲ」


私の相棒。

いつも私の代わりに喋ってくれる。

頼りになる。

初対面の人は怖い。

しかもこの人、なんか変。



「む?」


「よしよし」


頭を撫でられる。

正確にいうと私の頭じゃないけど…。


「だがヲ太郎に話しているのではないのだ」


え?

ヲ、ヲ太郎!?

え? 誰の事!?



「君に話しかけているのだ」

「確かヲ級だったか?」


なんか色々バレてるーーーー!!



「もしかして伝わってないのか?」

「な、なんのよう」

「お、大丈夫だったか」

「まだ勉強中の身なのですまない」



何の事だろう?

よく分かんない。



「コホン」

「まず、君に謝らないといけない事があってな」

「君に何も言わずにこの子達に手伝いをお願いをしていたのだ」

「すまなかった」


こんな事言われるとは思わなかった。

礼儀正しい? 良い…人なのかな?


コクッ。

声には出さず頷く。


「許してくれるのか?」


コクッ


「ありがとう」

「ちなみに命令を出したのは戦艦棲姫だからな」

「あやつにも文句を言っておいてくれ」


あ、あの人の命令なんだ…。


「それから」


スッと何か箱状の物を差し出された。

これは…?


「お詫びだ」

「たこ焼きという食べ物だ、少しは腹も膨れる」


途端に周りの子達が騒ぎ出した。


「ヲイチ、ヲジロ、ヲサブ、ヲシロ!」

「慌てるな」

「「「「ヲキュゥ~…」」」」

「ちゃんと君たちの分も残してある」

「キュイ!」


変な名前が聞こえた気がしたけど、

無視した。



「それでは失礼する」

「あ、うん」



行っちゃった。

嵐みたいな人だった。


でも大丈夫。

きっともう会う事はない。

……かなぁ?


残念ながら、

私の願いは敵わなかった。


「失礼する」


またヲイチ、ヲジ…

…違う。

艦載機の子達を連れて空飛んでる。


「お、また会ったな」


私は会いたくなかった。



「まあ丁度よかった」

「ヲ級、君は空が好きなんだろ?」


な、なんでバレてるの。

顔が赤くなったのを感じた。


「な、なんで」

「この子達に聞いたのだ」

「別に恥ずかしがる必要もないだろう」



ゴソゴソ。

提督が何やら物を差し出してきた。


「絵を描いてみないか?」

「絵?」


紙と…なんだろう。

様々な色のチューブみたいのがある。


「これは絵を描くための道具だ」

「絵ぐらいは見たことあるだろう?」

「うん」

「湾港棲姫の部屋にあった。チューしてるやつ」

「…それは後で確認する」


コホンと咳払いする提督。


「少し言い直そう、空を描いてみないか?」

「空?」

「…難しそう」

「ふむ、簡単だ。手本を見せてやろう」


10分ほどたっただろうか。

書き終わったみたい。


「どうだ」


え?

これが空?

線がぐちゃぐちゃ…。

とても空には見えない。



「これを手本にすると良い」


ムカ。

この人の自称絵モドキを見てたら、

描きたくなってきた。

私の空を馬鹿にされた気がするし。

絶対に間違いなく何をどうやってもこれより上手く描ける。



「わかった、やる。絵描く」

「あなたより、私の方がきっと上手い」

「ほう」

「では、勝負するか」

「判定は?」

「この達にしてもらおう」

「わかった」


見てろよー。


3枚ほど絵を描いた。

3対0で私の勝ち。

全勝。




「余裕」

「むむむぅ」



くやしい?

くやしい?

ふふん。

やった。

勝っちゃった。

えへへ。



「では最後の勝負をしよう」

「余裕」

「勝負内容は」

「うん」

「どっちが先に帰れるか、だ」



「え」





「では始めるっ!」


「ずるい!」


そっち空飛べるしズルイ!

ヲイチ、ヲジロ、ヲサブ、ヲシロも全力だしているし…。

がんばるよっ、ヲ太郎!!


「ヲッ!!!」


変な人にあった。

提督というらしい。


「ヲ級、絵を描いたの?」


コクッ。

湾港棲姫が私の絵を見ていた。

ちょっぴり恥ずかしい。


「綺麗な青空ね」

「ん…? これは空飛ぶたこやき?」


自信作。

初めて書いた私の宝物。

絵を描くのは楽しい。

それを教えてくれたのだけは

感謝してあげるよ。


提督。

終わり。このたこ焼きが後のヘルキャットです。(大嘘)
しかしおかしいな、ヲっきゅんを天然清楚クールキャラにするつもりが
アホの子みたいになった。そして酷いネーミングセンス。

まだ登場は先の予定ですが、
秘書艦(深海じゃなくて艦娘)を安価で決めさせていただきたいと思います。
※ヤンデレ?化する可能性高い&あまり良い扱いでは無い予定です。
ちなみに再来週、遅くても今月一杯で完結目指してます。

それでは長文失礼しました、見てくださった方、ありがとうございます。
寝ます。

安価1つ↓

安価ありがとうございます。
では時雨でいかせてもらいます。

「ゆっくり、ゆっくりと近づこう」

「ヲ!」



やたら破壊力のある攻撃をしてきおって。

あれが当たったらたまらん。



「うええええええええええええん」

「おい」

「ううぇえええええええええええん」

「ええいっ、泣きやめ!」


ハンカチを差し出す。

反応がないので手の中に収める。



「うぅぅぅぅぅ」

「これで鼻をかめ」

「びゅっふぃーーーーーーーーーーー!!!」

「…」

「…落ち着いたか?」

「ご、ごめんなさい」


「君は確かレ級だよな」

「何故、泣いていたのだ」


「ひっく」

「うんとね、実は…」



レ級が決心し語り始める。

と同時にレ級の臀部と同化している生物が。

提督にすり寄ってきた。


「レッ!」

「うん? 君と会うのは初めてだな」

「レ!」

「そうかそうか」



「僕、弱くって皆に馬鹿にされるんだ」

「攻撃当てるのへたっぴだし」




「レッ~♪」

「ここが気持ち良いのか?」

「レッ!」


話を聞いてるのか居ないのか。

傍から見ても微妙な状態でレ級は話を続ける。


「動きもにぶちんだし」

「弱いし」

「戦艦なのに」

「背ちっこいし」

「おっぱいちっさいし」



「ヲ~…」

「ヲ太郎はさっきやっただろう、我慢するんだ」

「ヲ!」

「偉いぞ」

「レ~♪」

「うむ、君も良い子だな」



「…」

「ん?」

「はなぢをきいいてよおおおおおおおおおおお」



両手を掲げるレ級。

何かを感じ取ったのか。

提督がヲ太郎に指示を出す。



「ヲ太郎、後ろに下がれっ!」

「ヲッ!?」



ドオオオオオオオオオオオオン!!!



レ級の両拳が水面にぶち当たる。

その瞬間。

衝撃が提督とヲ太郎に襲い掛かった。


「はぁはぁはぁ」

「…」



何て馬鹿力だ。

無茶苦茶にも程がある。



「ヲ~」

「すまない、助かったよ」

「ヲ!」



咄嗟の警告だったが

瞬時に対応してくれたヲ太郎を労う。

さて。

レ級か、こいつの力は末恐ろしいものがあるな…。



「レ級よ」

「うぅぅ」

「悪かった」

「だが」

「最後の悩みは港湾棲姫に聞いてくれ」


「は"い"…」

「ってちゃんと聞いてたんじゃないかあああああああ!!!」

「うわああああああああああああああああああんん」


「だから落ち着け」

「う”ん”」



レ級が落ち着くまでしばらく待つ。


「もう大丈夫か?」

「うん…」


「弱いとか言っていたが、それでイジめられてるのか?」

「うっ…そういうわけではないけど…」

「無理に強くなる必要はないだろう」

「ぼ…ぼくは」

「レ!」

「何やらこの子も言いたいことがあるようだが」



こちらの言葉に反応したのか。

頷く動作を繰り返す。




「え」

「おっちゃん、この子のいう事が分かるの?」

「なんとなくだが」



おっちゃんとは失礼な奴だな。

私はそんなに歳はいってないぞ。

…多分。



「私に何を聞いてほしいんだ」

「おっちゃんって提督でしょ?」

「そうだ」

「悩みをなんでも解決してくれるって有名な」

「いやそれは違うな、別人だ。他をあたってくれ」

「え”」

「じゃあな」

「まって!!」

「人違いだ、諦めろ」

「ま”ってよおおおお!!」



「どうしても強くなりたいんだ!」



後ろから声が聞こえるが、

聞こえない振りをする。

私が気に掛ける事でもないだろう。


「ヲ~…」

「ヲ太郎、気にするな」


構わず進むよう伝える。



「あの人を…」

「大切な人を守るために!」



思わず振り返る。

レ級がまっすぐな瞳でこちらを見つめいた。

相変わらず瞳が潤んでいるが。

その言葉だけは力強く響いた。



「…気が変わった」

「え?」

「ついてこい」

「へ?」

「おいてくぞ」

「う、うん!!」

今日中に一気にラスト付近までもってきたいところです。
レ級の尻尾のあの子の名前考えてましたが思いつきません…。
どなたかアドバイスを…!良いのがあれば是非採用させていただきます。


レ級を連れて我が家に帰宅。



「戻ったぞ」

「ヲ~」

「おかえりなさい」

「おかえり、そしてヲ太郎かえして」



上から港湾棲姫とヲ級だ。

そしてヲ級が文句を言ってきた。



「事前に言ったであろう」

「こんなに長い時間とは聞いてない」

「むぅ」

「ヲ~ヲ~!」



喧嘩しないで、か。

喧嘩をしているわけではないのだが。

ヲ太郎は優しいな。



「ヲ太郎がそういうなら」

「すまない、心配掛けたな」

「ううん、大丈夫」

「ご飯に、しましょうか」


タイミングを見計らったのか。

港湾棲姫が切り出した。


「作ってくれたのか、ありがとう港湾棲姫」

「ふふ、いえいえ」

「まぁその前に紹介したい奴がいる」



「しょ、紹介!?」

「ま、ままさか、愛じ……」

「あ、あぁ…」

「ちょっと!? 港湾棲姫!?」




紹介という単語に過剰反応する港湾棲姫。

後ろの方で何か呟いているが。

紹介する人物…レ級の傍に寄っていたため、よく聞こえなかった。



「知っていると思うが、レ級だ」

「こ、こんばんは。港湾ねーちゃん、ヲ級」



「あら、レ級の事だったの」

「レ級、久々」

「う、うん」



「今日はどうしてこっちに?」

「提督に」

「提督に?」

「無理矢理連れてこられた」

「…」

「…」



涙を目に浮かべ訴えるレ級。

なんだ?

怪しい雰囲気になっているような。



「提督…」

「少し、お話があります」



港湾棲姫。

いつもの可愛らしい笑顔はどうした。

今日は少し怖いぞ。



「待て、何か誤解している」

「詳しい話はお聞きします」

「2人ともご飯を先に食べてて」

「うん」

「わ、わかりました」



ズルズル。

引きずられ見慣れた寝室に入っていく。

最後に見えたの。

ニヤリと笑うヲ級。

そして心配そうにこちらを見つけるレ級の姿だった。


レ級よ。

そんな目で見つめる前に早く誤解を解いてくれ。



*

**

***


入浴中。


騒がしい所だな~。

でもなんだか面白かった。

水で顔をバシャバシャ洗いながら先程の出来事を思い出す。

提督は少しやつれた様子だったが、

あの後なんとか落ち着きを取り戻して、皆でご飯を食べた。



それにしても。

これが噂のお風呂なんだ!!

話には聞いてたけど。

こんなに気持ちいものだとは思わなかった。

ご飯も美味しかったけど、

僕的には今日の一番の衝撃はこのお風呂だね。



「お風呂って気持ちいいねーー」

「レ!」



よしよし。

この子も気持ち良いみたいだ。



「そういえば、僕に言いたいことがあるって提督が言ってたけど」

「レ~?」



惚けたように首を傾げる。

誤魔化してるの?

一言、文句を言うとした時だった。



ガラガラ。



「レ級よ、湯加減はどうだ」


提督が入って来た。



え?


え?え?え?


開いた口が塞がらない。

いや頑張って閉じようと。

声をあげようとしてもうまく声にならない。

口をパクパクさせる。

なんだか間抜けだ。

って、じゃなくて!!



「レ級、背中を洗ってくれ」


なんて言われても。

すぐに反応できない。


「?」

「どうしたのだ? 早くしてくれ」

「は、はい」



ってなんで返事しちゃったの!?


「それで洗ってくれるといい」

「は、はい」



タオルだろうか。

何かが手渡される。

動揺しすぎて何が何だか分からない。


心臓がバクバクいってる。

こ、これって悩みを解決するかわりに。

へ、へんな事されちゃうのかな?

こんなの聞いてないよーーーー!!



「そこのやつを使ってくれ」

「は、はい」


タオルに液体をしみこませる。

決意して提督の方を向く。


うわ。

おっきい背中…。



「うむ、なかなか上手いもんだな」

「へ?」

「うむ、気持ち良いぞ」

「え!?!// あ、ありがとうございます…」

「もう背中は大丈夫だ」



や、やっと解放されるかな?

そ、それとも…。



「レ級も洗ってやろうか」

「ぶーーーー!?」

「? どうしたんだ?」

「い、いや、いい!! さっき洗ったから」

「そうか、なら大丈夫だな」




立ち上がる提督。

湯船の水温を確かめお湯に浸かる。




「ふぅ…」

「入らないのか?」



こ、心の準備が…。


「裸の付き合いというやつだな」


確かにそうですが…。


「ここは女だらけだし」


知ってます…。


「男は肩身が狭いだろう」


そうなんですか…。

いや、分かりません…。


「お互いな」


はい?

>>122で胸の話してるのは忘れた。ってことにしてください(土下座
書いてて思い出しました…。



数秒ほど意識が飛ぶ。

が。

改めて自分の体を見返す。

大事な部分は…。

この子がカバーしてるから見えない、まぁいい。

だけど。

上の方は!



スカッ。


うん、確かに小さいけどさ…。

小さいけどね。

でも普通、間違えるかな、そこ!?


講義の意味を込め、

提督をにらみつける。



「ふぅ」


って全然こっち見てないし…。

滅茶苦茶寛いでるね。

僕のドキドキを返してほしい。



「レ級よ」

「なんだよ」



少しぶっきらぼうに答える。

なんだかすごい疲れた。



「君の、守りたい人というのは誰だ?」


少し、提督の雰囲気が変わった。

そういえば話したっけ。


「聞いても大丈夫か?」

「うん…」


僕の大事な人。



「南方姫様…南方棲戦姫っていうんだ」

「南方棲戦姫…」


顎に手を伸ばし考える提督。

知り合いなのかな?


「姿は見たことあるな、話をした事はないが」

「そっか」


「綺麗な人だよ」

「それにすごい優しい」

「いつも泣いてる僕を慰めてくれるし」

「でも、悔しいんだ」



横目で提督を見る。

黙って話を聞いてくれている。



正直、この話自体は気持ち良いものでもないし。

人に話したことは無い。

だから話をするか少し戸惑ったけど。

意外なほどすんなり言葉が口から出ていく。



「僕が守ってあげたい」

「そうか」

「…僕が頑張らないと、彼女が代わりに傷付いてしまう」

「気にしないでっていつも言ってくれる」

「けど」

「やっぱり僕が彼女を守りたい」

「だから、僕は強くなりたいんだ!」


「…そうか」

「よく話してくれたな」


ドキリ。

無表情で冷たい印象のある人だけど。

すごく優しい笑顔だった。



それからしばらく2人でお風呂に浸かった。

会話はほとんどしなかったけど。

不思議と心地よかった。



「では、私はあがるとしよう」


わかった。

そう返事しようとした瞬間だった。



バッシャーン。


うわぁぁ!?

頭から突然水を掛けられる。

ビ、ビックリした…。


「何すんのさ!」


「ははは」

「気合入れだ」


頭をガシガシ撫でられる。

ちょっと痛い。

でも悪くない、かな。



「明日からはスパルタだからな」

「う」

「そう気張るな、では先に失礼する」

「うん」



ボーッと。

去りゆく提督の背中を眺めていた。


「明日は頑張るかなぁ」

「レ!」

■提督、色々頑張る。



「今日のも色々あるわね、気に入ったわ」

「うむ、期待に応えられて何よりだ」



提督と戦艦棲姫。

2人の間に、様々な機械が転がっている。

提督が修理した数々の品。


「…でも、もっと面白くなりそうな物が、あるでしょう?」



ふぅ。

見せつけるよう大袈裟に溜息を吐く提督。



「戦艦棲姫よ、アレは今の私では無理だ」

「そうかしら? 貴方なら出来ると思うけど」

「無理なものは、無理。だ」

「そう…でもあまり時間はないの」

「私は気が長いほうだけど」

「我慢の限界、というものがあるわ」



沈黙が続く。

だがお互い視線は逸らさない。

先に沈黙を破ったのは提督だった。


「…ああ、肝に銘じる」


「それと、もう一つ」

「レ級が貴方の所で世話になっていると聞いたわ」

「そうだな」

「期待しているわ」

「期待に答えれるかは分からんが」

「努力はする、さ」

「では、レ級を待たせているのでな」

「これにて失礼する」

「そう」


出口へと向かう提督。

だが、何かを思い出したように振り返る。



「忘れていた」

「土産だ、舐めると気分が落ち着くぞ」



提督から戦艦棲姫へ。

小さな袋を軽く放るように投げ渡す。



「甘いのはあまり好みではないわ」

「知っている、騙されたとおもって食え」

「ではな」


バタン。

提督が部屋から出て行った。


「なかなか、うまくいかないものね」


先程提督から受け取った包みを開け、

口許へと運ぶ。


「美味しいじゃないの」


甘いのが好みじゃないのを知っているって?

そう。

ふと口許に手が触れる。

そこで自身の口許が歪んでいることに気付き驚愕する。


あの男の影響を受けている、とでも言うのだろうか。

あり得ない。

だが、もしそうだとしたら。


「…潮時かしらね」



***


「提督! 遅いよ!」

「すまない、待たせたな」

「まぁ、戦艦棲姫との用事ならしょうがないけど」

「レ!」

「よしよし」


いつも通り。

レ級一緒にいるこの子を撫でる。


「レ級よ、この子の名前は決めたのか?」

「う、まだだよ」


まだ、か。

この子の名前が無い、という事で

考えてくるように頼んでいたのだが。


「ううん、何も考えてないわけではなかったんだ」

「ずっと考えて考えて」

「提督に付けて欲しいなって思ったんだ」

「私がか、良いのか?」

「うん!」

「レ!」

「うむ」

「少し考えさせてくれ」



ヲ太郎達のことを思い出すな。

よし、素晴らしい名前を付けてあげねば。

1時間経過


「ね~」

「提督の少しってどれくらいなのー?」

「ええいっ、うるさい」

「もう少し待て」

「お仕事、大丈夫なのかな…」

「気にするな、こちらの方が大事だ」

「は~い…」

5時間経過


「よし!決めたぞ!」

「もう5時間以上悩んだよ…」

「仕方ないだろう」

「それで名前は?」

「レー助。とはどうだろう」



レ級とこの子の反応を伺う。

なかなか反応がない。

どうしたものか。

少し悩んでいると急に2人が抱き付いてきた。

この子の方は、正しくは舐めてきた、だが。



「レ!」

「うん! さいっこーに良い名前だと思うよ!」

「ありがとう!」

「レッキュ~♪」

「そうか、気に入ってもらえてよかった」

「では、これからもよろしく頼むぞ。レー助」

「レ!」




「それで、今日は何するの?」

「昨日と同じだ」

「え~…今からかぁ、しかもまた雑用?」

「雑用ではない、立派な仕事だ」

「提督のお仕事を手伝ってるだけのような…」

「僕、本当に強くなるの~?」

「なる、最後まで信じろ」

「それに今日も飯はご馳走してやろう」

「本当!? やったー!!」

「レッキュ~ンー!!!」



そうかそうか。

喜んでくれるか。



「ああ、風呂も入っていくといい」

「そ、それは今日は、良いかな。あはは」

「? そうか」

「うぅ…」

「熱いのが苦手だったか?」

「この前は気持ちよさそうにしていたと思ったが」

「気持ち良い!?」

「そ、そういう事じゃないんだよ!!」

「う、う、ううう」

「うわあああああああああああああんん!!!」




「…」

レ級のやつめ。

超スピードで何所かに去って行った。

サボりか、覚えてろよ。

ひとまず終わり。以前ラスト付近までとかいってましたがごめんなさい、出来ませんでした。
深海側はあと1人か2人(空母棲姫、中間棲姫あたり)を出して人数は増えない予定です。
尻尾ちゃんについてはレー助を採用させていただきました。他にも意見くださった方、ありがとうございます。

ちなみにお風呂についてはレー助がしっかりガードしててなんとかバレてません。という事にしてつかぁさい。
いつか色んな部分が成長して狼狽える提督とか書いてみたいですが。
しかしレー助は♂なのか♀なのか…。

■提督、空母棲姫と出会う。

深海基地。



うーむ。

歩く。

ピタピタ。

歩く。

ピタピタ。



うーむ。

先程からずっと付きまとわれているな。



振り返る。

サッ。

うっすらと影しか見えなかったが、

確かに人影が見えた、すぐに物陰に隠れたようだ。

だが、隠れてきれていないようだ。

髪が見えてるぞ。

ふむ。



コツコツ。

その場で足踏みして足音を響かせる。

そして隠れてみる。


「あら」

「どこに行ったのかしら…」


ふふ、うまくいったぞ。


「おい」

「!?」



「何をしているんだ」

「…」

「別に散歩をしていただけよ」

「そうか」

「そうよ」

「では、さらばだ」

「ええ」


歩く。

ピタピタ。

歩く。

ピタピタ。


「…おい」

「…」

「何の用だ、要件を話せ」

「…」


しばらく沈黙が続く。


「私が、分からない…?」

「何?」

「…」

「すまない」

「え…」



青ざめる空母棲姫。

その様子を見て焦りすぐにフォローする。



「いや、まて」

「な、に…」

「期待に応えられるわけではないが…」

「私は記憶を一部無くしているのだ」

「え…?」


「記憶喪失…?」

「まぁそうだな」

「そう……」

「すまない」

「私の知り合い、だったのか?」

「…いえ、違うわ」


違ったか。

気になる反応だが…。


「まぁ会ったことはないが、名前は知っている」

「空母棲姫だろう?」

「そうよ、ええ私は空母棲姫だわ」




「だけど、貴方がその名で私を呼ばないで」


声が小さく、提督まで届かない。

「ではな」

「ええ、さようなら」


そう言い去って行く提督の背中を見る。


「記憶喪失…ね」


でも…


「あの子が隣にいないのは、チャンス、なのかしらね」


■提督、皆で寛ぐ。

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