妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 (721)

兄「へ、へえ……良かったじゃないか……」

妹「うん」

兄「……ええと、それで?」

妹「……別に」

兄「あ、ああ、そう……」

妹「うん」

兄「……」

妹「……」

兄(いや……だから、何?)

~翌日~

妹「兄さん、その人と付き合うことになった」

兄「マジでか。そっかぁ……」

妹「……」ジ――

兄「ん?どうした?」

妹「……別に」

兄「あ、ああ、そう……」

妹「うん」

兄「……」

妹「……」

兄(いやだから……それがどうしたの?)

~翌朝~

妹「兄さん、一緒に学校行こ」

兄「え?あ、ああ、別にいいけど……彼氏はいいのか?」

妹「……」

兄「……」

妹「……大丈夫」

兄「その間はなんだ、その間は」

妹「別に……」

兄「最近お前ちょっと変だぞ……まあいいけど。ホラ、学校行くぞ」

妹「うん」

テクテク…

~登校中~

兄「彼氏とはどうだ?うまくいってるか?」

妹「……うん。そこそこ」

兄「まあまだ付き合ったばかりだからな。いきなりラブラブってのは難しいだろうな。なんたってお前だし」

妹「……」

兄「あんまり無愛想にすんなよ?ただでさえ口数が少ないんだからな。言いたいことはちゃんと言って、甘えてしまえ」

妹「……甘えた方が喜ぶの?」

兄「まあな。そっちの方が、頼られてるって感じがするし。男は嬉しいもんだぞ」

妹「……」

兄「だからちゃんと、彼氏と色々話してだな――」

妹「……兄さん。手、貸して」

兄「――へ?手?」

妹「いいから」

兄「あ、ああ……別にいいけど……」

妹「……」……ギュッ

兄「……?どうしたんだよ、いきなり手なんて握って……」

妹「……寒いから」

兄「……今は夏だぞ、妹よ」

妹「……チッ」

兄「なぜ舌打ちする」

妹「別に……早く行こ」

兄「え?――お、おい!引っ張るなって!」

テクテク…

~学校~

テクテク…

兄「それにしても珍しいな。お前から一緒に通学するの言い出すなんて。どうしたんだ?」

妹「別に………あ」

兄「ん?どうした?」

妹「……」

女子生徒「――せんぱーい!」

兄「――ん?ああ、おはよう」

後輩「おはようございます!……あれ?今日は妹ちゃんと一緒ですか?」

兄「うん。まあね。――ほれ、妹よ。同級生のお迎えだぞ」

妹「……」

後輩「あ、妹ちゃんおはよう!」

妹「……」ペコリ

兄「なら、俺もう行くから」

後輩「はーい!――妹ちゃん、行こ!」

妹「……うん」

テクテク…

~放課後~

兄「――さあて、と。帰るか」

妹「――兄さん」

兄「うおっ!ビックリした……。なんでお前が俺のクラスにいるんだよ。勝手に入ってきたらダメだろ」

妹「……委員長に、許可貰った」

兄「……そ、そう……で?どうした?」

妹「……一緒に帰ろ」

兄「え?」

妹「……」

兄「……あ、ああ。別にいいけど……」

兄(下校まで言ってくるなんて……ほんと珍しいな……)

妹「兄さん、行こ……」

兄「……あ、ああ……」

テクテク…

~帰り道~

兄「――なあ、何かあったのか?」

妹「……え?」

兄「い、いや……登下校を誘って来るなんて、本当に珍しいからな。なんか、言いたいことがあるのか?」

妹「……別に」

兄「……ホントに?」

妹「……」サッ―

兄「目を逸らすな、目を」

妹「……チッ」

兄「だからなぜ舌打ちをする」

後輩「――せんぱーい!」

兄「ん?――おお、後輩か。今帰りか?」

後輩「はい!先輩も兄妹揃って仲睦まじくお帰りですか?」

兄「まあな」

妹「……」

後輩「――いやあ、まいっちゃいましたよ!」

兄「ハハハ!そりゃそうだろうな!」

後輩「はいー。困ったのなんのって!」

兄「違いないw」

妹「……」

兄「……?」

兄(なんか、さっきから黙ってるな……友達なのに……)

後輩「あ!それでですね――!」

妹「――兄さん」

兄「――な、なに?」

妹「……」ジッ―

後輩「……?」

妹「……先、帰ってる……」

タタタ…

兄「え?――お、おい!」

兄(……いや、ホントになんなの……)

~自宅~

妹「……兄さん」

兄「ん?」

妹「聞いていい?」

兄「何をだよ」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……おい」

妹「……はっ」

兄「話題振っておいて考え込むな。まずは考えて、それから口を開け」

妹「……チッ」

兄「だからなぜ舌打ち」

~1時間後~

妹「――兄さん、聞いていい?」

兄「ずいぶん時間かかったなおい」

妹「……聞いて、いい?」

兄「よっしゃ。なんでも来い」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……おい」

妹「……味噌汁とコーンポタージュ、どっちが好き?」

兄「…………は?」

妹「どっちが好き?」

兄「さんざん時間かけたのが、その質問?」

妹「うん」

兄(いや、うんって……)

妹「……」ジッ―

兄「分かった分かった。答えるから、そんな恨めしい目で見るな」

妹「……チッ」

兄「……俺としては、コーンポタージュの方が好きかな」

妹「……そう」……シュン

兄「でもまあ、二つ並んで出されたら、味噌汁を取っちゃうんだろうな。なんというか、慣れ親しんだ味って感じだし」

妹「……そう」……パァー

兄「今日は一喜一憂が激しいな」

妹「……別に……」

兄「で?それがどうかした?」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……おやすみ」

兄「おい」ズルッ

妹「……」テテテ…

兄「……いったいなんなんだよ……」

~翌朝(休日)~

妹「――兄さん」

兄「……んん?」

妹「買い物行こ」

兄「やだ」

妹「……」……シュン

兄「俺は今日は一日寝るつもりなの。外には出たくないの」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……たこ焼き将軍のマヨだく揚げたこ食べる?」

兄「地の果てまでお供いたしましょう」

妹「……よろしい」ニコッ

この>>1って着ぐるみ妹の人?

~街中~

テクテク…

兄「で?何を買うんだ?」

妹「……さあ……」

兄「いやいやいやいや」

妹「……」

兄「……もしかして、ノープラン?」

妹「……チッ」

兄「図星かい。どうすんだよ……」

妹「……たこ焼き食べる」

兄「報酬が目的に変わるわけだな」

妹「いえす」

兄「まあ、別にいいけど……」

テクテク…

>>28
ちがう

~たこ焼き屋~

兄「――はぁ~。やっぱたこ焼き将軍のマヨだく揚げたこはさいこうだわぁ……」モグモグ…

妹「……」モグモグ…

兄「さあて……今から何を――」

??「――あれぇ?」

兄「ん?」

妹「……!」

後輩「やっぱり~!先輩達じゃないですか~!」

兄「おお!後輩ではないか!」

後輩「妹ちゃん、こんにちわ!」

妹「……ども」

後輩「兄妹でお出かけですか?」

兄「まあな。――あ、ちょうどよかった。ちょっとトイレ行ってくるから、妹見てて」

後輩「あ、は~い!」

妹「……いってらい」

兄「うい」

タタタ…

後輩「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……ねえ、妹ちゃん」

妹「……んん」

後輩「その……どう、だった?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……兄さんは、味噌汁が好きだって」

後輩「え?」

妹「……」

後輩「……妹ちゃん、それって……」

兄「――すまんすまん!お待たせ!

後輩「――ッ!」

妹「……」

兄「……ん?どうかしたのか?」

後輩「い、いえ……」

妹「……」

兄「……?」

今日はもう寝ます
続きはまた明日

兄「――ところで、後輩はなんでこんなところに?」

後輩「買い物ですよ。ちょっと欲しいCDがありまして」

兄「へぇ……なんて言うCD?」

後輩「仲島一郎の、“蛍の船”です!」ドドーン!!

兄「……もしかして、やっぱり演歌?」

後輩「そうですよ~。演歌は私の、ソウルミュージックなんです!!」ドドーン!!×2

兄「……ハハハ……」

兄(……相変わらず、変わった奴……)

妹「……」ジッ――

兄「――」ペチャクチャ

後輩「――」ペチャクチャ

妹「……」

妹「……兄さん」

兄「うん?どうした?」

妹「私……帰る」

兄「へ?」

後輩「え?」

妹「……じゃ。後輩ちゃんを、よろしく……」

兄「お、おお……」

後輩「ま、待ったね~!」

妹「……」ペコリ

スタスタ…

兄「……なあ後輩」

後輩「は、はい?なんですか?」

兄「あいつ、なんかあったのか?」

後輩「え?」

兄「いやな、最近ずっと、様子が変なんだよ」

後輩「……」

兄「なんか、知らないか?」

後輩「……いえ……特には……」

兄「そっか……」

後輩「……」


テクテク……

後輩「……二人っきりになっちゃいましたね」

兄「そうだなぁ」

後輩「こうして二人で歩くのって、いつ以来でしたったけ?」

兄「ええと……中学の時じゃないか?妹と遊ぶために家に来て、帰りが遅くなった時だろ」

後輩「……そっか……あれが、最初で最後だったんだ……」

兄「こんな変な奴で悪いな。もっとイケメンなら良かったんだろうけど 」

後輩「そ、そんなことないですよ!……だって先輩、凄く優しいじゃないですか」

兄「それこそ、そんなことないけどな」

後輩「ほ、ホントですよ!」

後輩「……覚えてますか?あの時……帰るのが遅くなったあの日、玄関を開けるなり、父と母が激怒してて……」

兄「……ああ、そういえばそうだったな。まさに、鬼の形相だったのを覚えてる」

後輩「まあ、連絡をせずに遅くなった私がわるいんですけどね。――そこで先輩、一緒に謝ってくれましたよね」

兄「……まあな。遅くなったのは、俺んちにいたのが原因だったし」

後輩「二人で一生懸命謝って、父と母に許してもらえて……そのあと先輩、私に笑顔を見せてくれました。
――あの顔は、心から安心出来ました。……そして……」

兄「……?」

後輩「……――そして、とてもズルかったです……」

兄「なんだよそれ」

後輩「……なんでもありませんよ。なんでも……」

兄「?」

後輩「……それより、今からどうしますか?」

兄「……そうだなぁ……」

後輩「映画、見に行きませんか?」

兄「う~ん……」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……やっぱり、妹ちゃんが気になりますか?」

兄「え?……ああ、うん。ちょっとな。様子が変だったし」

後輩「……」

兄「まあ、あいつなら大丈夫だろ。今頃家に着いてるだろうし」

後輩「……」

兄「様子が変な理由は、よく分からんがな……

テクテク…

後輩「ん?どこに行くんですか?」

兄「……映画」

後輩「え?」

兄「見に、いくんだろ?」

後輩「……は、はい!」

テクテク……

すまん
急だが文体変える

夕方を迎えた街は、それまでとは違う景色を作り出していた。
歩く人々は忙しなく、車やバイクは少しだけ足早に走る。
それぞれにそれぞれの帰るべきところがあり、そこへと向かっているのだろうか。
思うことは人それぞれかもしれない。それでも、人々の思いとは裏腹に、飛び交うカラスはただ鳴き声を空に響かせ、夜の訪れを知らせていた。

そんな街の片隅にあるとある民家。層二階建ての一般的な住宅。その二階の窓際の部屋の中で、彼女は膝を抱え座っていた。

「……」

灯りもつけず、カーテンが締められた薄暗さが漂う空間の中、俯き口を閉ざす彼女。 普段から口数は少ないが、その表情には、普段とは違う影を落としていた。
胸の中にあるのは、張りめぐる糸のような様々な想い……常識、葛藤、不安、苦悩……それは、色々な名前があるもの。

「……兄さん……」

絞り出すように出たその言葉は、彼女の胸を更に締め付けた。

カーテンの隙間からは黄昏の光が射し込まれ、彼女の顔をオレンジ色に染める。
その光に照らされた黒い瞳は、僅かに揺れていた。
か弱く、儚く、ゆらゆらと……。

とりあえず書いたけど、セリフだけのとどっちがいい?

お前このスレの構ってちゃんだろ?
妹「クソ兄貴……」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1411727428/l50)

>>56
違う

じゃあ中間くらいのセリフ多めで書いてく

夕暮れの中の街角で、兄と後輩は横並びに歩く。
笑顔を向け会う二人は、話に花を咲かせていた。

「――いやぁ、映画面白かったな」

「はい!アクションがもう最高でしたね!」

「なんか、最後に続編を匂わせる感じがあったな」

「続きがあるなら、ぜひ見たいですね」

「そうだな……」

「……」

ふと、沈黙が流れる。しかし決して重いものではなく、どこか柔らかく、どこか心地よいものだった。

「……今日は、本当にありがとうございました」

「あ、ああ。こっちこそ楽しかったよ」

「なんか、妹ちゃんに申し訳ないですね」

「ううん……まあ、途中で帰るって言ったのはあいつだし、別にいいだろ」

(……帰りにケーキでも買って帰るか……)

「……あの、先輩」

「うん?」

「え、ええと……」

話しかけたものの、なかなか言葉が続かない。それでも彼女は、胸の前で手を握りしめ、意を決したように切り出した。

「……また一緒に、映画を見てくれますか?」

「え?どうして?」

「……え?あ、その……嫌だったら……」

「い、いや違うんだ。ごめん、誤解される言い方だった。――もちろんいいよ」

「――!ホントですか!?」

「うん。ホント。……ただ、改まって聞くことでもないんじゃない?」

「そ、そうですか?」

「うん。出掛けるのはいつでも出来るし。妹も喜ぶだろ」

「い、妹ちゃん、ですか……」

「うん」

「……先輩」

「うん?」

「……やっぱり、ズルいです……」

「???」

それから二人は自宅へ帰る。
心なしか、後輩が落ち込んでいるようにも見えた兄は、ただ首をひねっていた。

なんか中途半端だな
セリフだけに戻します

~自宅(夜)~

妹「――兄さん」

兄「うおっ!?」

妹「驚きすぎ」

兄「気配を消していきなり後ろから声をかけるなよ。心臓に悪い。止まるかと思ったぞ」

妹「……チッ」

兄「おいこら。その舌打ちはなんだ」

妹「……」

兄「……で?どうした?」

妹「……楽しかった?」

兄「え?」

妹「あのあと……」

兄「あ、ああ……楽しかったよ」

妹「そう……」

兄「……」

妹「……」

兄「……?」

妹「……」

兄「……まだ何か言いたそうだな」

妹「……」ピクリ

兄「ほら、言ってみろよ」

妹「……」

兄「……」

妹「……こ……」

兄「……こ?」

妹「……コーンポタージュは、どういうところが好き?」

兄「こ、コーンポタージュ?」

妹「うん」

兄(またそれか……)

妹「……」ジッ――

兄「……そうだなぁ……」

妹「……」ジッ――

兄「……やっぱりコーンポタージュは、あのどろっとした中にある滑らかな口当たりが好きだな。なんというか、安心感のある、期待を裏切らない感じ。あれが好き」

妹「……そう」……ショボン

兄「……?」

妹「……じゃあ、味噌汁は?」

兄「う~ん……味噌汁は、一品料理にはなりにくいな。ただ、ご飯と一緒に食べれば、これ以上ないくらいの強力なタッグになれる。
コーンポタージュは美味しいけど、あれは単品として食べるからな。協力プレイが出来る味噌汁は、やっぱり好きだな」

妹「……そう」……パァー

兄「今日も一喜一憂が激しいことで」

妹「それほどでも……」

兄「それで?それがどうした?」

妹「……?」

兄「ここまで解説させたんだ。そろそろ、その意味を教えてくれよ」

妹「……それは……」

兄「……それは?」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……おやすみ」

兄「待たんかい」

妹「……」ペコリ

タタタ…

兄「話を聞かんかい!……まったく、なんなんだよ……」

~数日後~

妹「――で、――が――」

兄「ん?話し声?」

妹「……うん……そう……」

兄(ん?妹?)

兄「何してるん――」

妹「――」ブチッ

兄「いや急に消す必要ないだろ。電話だったんだろ?」

妹「……キョウハホシガキレイデス」

兄「分かりやすい誤魔化しご苦労。だが妹よ。まだ昼間だぞ

妹「……チッ」

兄「誰からだったんだ?」

妹「……」

兄「いや言いたくないならいいんだけど……」

妹「……」

兄「……ていうか、お前最近変だぞ?どうしたんだよ」

妹「別に……」

兄「別にって……説明になってないぞ」

妹「……」

兄「何かあるなら言ってみろ。解決するかは分からんが、話くらいなら聞けるぞ?」

妹「……」

兄「……俺も心配なんだよ。何か悩みがあるんじゃないかって。
なにしろお前は、俺の大切な、い――」

妹「――ッ!兄さん!」

兄「――ッ!?な、なんだよ!?」

妹「……」

兄「……」

妹「……コーンポタージュ、好きでいてよね」

兄「……は?」

妹「……」タタタ……

兄「……」

兄(……あいつが、あんなに大声出すなんてな……)

~学校~

兄「……ええと……あ、いたいた。――おーい!」

後輩「え?――あ、先輩」

兄「急に呼び止めてごめんよ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

後輩「聞きたいこと……ですか?」

兄「そうそう。……ここじゃああれだから、ちょっといい?」

後輩「は、はぁ……」

スタスタ……

~校舎裏~

後輩「――妹ちゃんが、ですか?」

兄「そうそう。このところ、様子が変なんだよ」

後輩「……そう、ですか……」

兄「なあ、なんか知らないか?」

後輩「……」

兄「……?」

後輩「……すみません。分かりません……」

兄「……そう、か……」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……あ、あの、先輩……」

兄「ん?」

後輩「今度、妹ちゃんに聞いてみます。それとなく……」

兄「そう?そうしてもらえると助かる。――じゃあ、よろしくお願いしていいか?」

後輩「はい……」

兄「じゃあ!頼んだよ!

タタタ……

後輩「……」

~放課後~

妹「……」

後輩「……妹ちゃん?」

妹「……後輩ちゃん……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……一緒に、帰ろ?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……うん」

~帰り道~

テクテク……

後輩「……」

妹「……」

テクテク……

後輩「……あのさ……」

妹「……うん……」

後輩「応援、してくれるって、言ってくれたよね?」

妹「……うん」

後輩「それについては、凄く嬉しかったんだ。妹ちゃんに背中押してもらえて、私……」

妹「……」

後輩「……でもさ、妹ちゃん……もしかして……もしかして、だけど……」

妹「……」

後輩「……妹ちゃん、お兄さ――」

妹「――明日の休み……」

後輩「――え?」

妹「……一緒に、でかける?」

後輩「……え?先輩と?」

妹「うん」

後輩「……う、うん……」

妹「じゃあ明日、昼の1時に駅前で……」ダッ――

後輩「――あ!ちょ、ちょっと待っ――!」

妹「……」

タタタ……

後輩「……妹ちゃん……」

~翌日~

兄「――え?風邪ひいた?」

妹「うん……」

兄「よりにもよって今日とはな……。父さん母さんもいないし……」

妹「大丈夫。寝れば治るから」

兄「そういうわけにもいかないだろ。後輩と出掛けるのは中止して……」

妹「……それ、ダメ」

兄「なんでだよ」

妹「なんででも。私が悪いみたいだし。後輩ちゃんと出掛けて」

兄「そうは言ってないだろ?ただ――」

妹「だったら行ってきて。お願い」

兄「いやでも……!」

妹「――行ってきて」

兄「……」

妹「……」

兄「……分かったよ。行ってくるよ」

妹「……うん」

兄「ただ、無理すんなよ?キツかったら、すぐ電話しろよ?」

妹「うん。分かった……。――楽しんで」

兄「あ、ああ……」

~妹自室~

妹「……」

妹(……今頃、二人で楽しんでるのかなぁ……)

妹「……」

妹(……ホント、私ってバカみたい……)

妹「……」

妹(もし……もし二人が付き合って、結婚したら……後輩ちゃんを、お姉ちゃんって呼ばなきゃいけないのかなぁ……)

妹「……」

妹(……)

妹「……ラジオ、聞こ……」カチッ……

DJ「――というわけで、リクエスト曲いきましょうか。◯◯市の、ペンネーム“芋娘”さん……」

妹「あ……」

妹(私のだ……ようやく読まれるんだ……なんか、嬉しい……)

DJ「曲はこの曲――どうぞ……」

https://www.youtube.com/watch?v=T-yemSc3VdI&feature=youtube_gdata_player

妹「……こんな時に……」

妹(……こんな曲、採用しないでよ……)

妹「……」

妹「……」

妹「……グスッ……グスッ……」

妹「……兄さんの……バカ……」

妹「……」

妹「……んん……」

妹(……いつの間にか、寝ちゃったんだ……)

妹「……あれ?」

妹(……おでこに、タオル?)

――ガチャ

兄「――ああ、起きたか。気分はどうだ?」

妹「――え?ええ!?」

兄「なんだよ。すっとんきょうな声だして」

妹「なんで兄さんがいるの!?もう2時半だよ!?」

兄「断ったんだよ。後輩に電話してさ」

妹「な、なんで!?」

兄「はぁ?病気のお前残して、遊びなんか行けるかよ。向こうも快くOKしたぞ?」

妹「そ、そんな……どうして……」

兄「……よく分からんが、とりあえずは元気そうだな」

妹「……」

兄「お粥……作ってくるから、寝てろよ」

妹「で、でも――!」

兄「――寝 て ろ」

妹「……う、うん……」

兄「まったく……」

――ガチャ
スタスタ…

妹「……」

~夕方~

妹「……兄さん?」

スタスタ…

妹(……返事がない。どこ行ったんだろ……)

「――、――」

妹「……ん?テレビの音?」

兄「……」スゥ…スゥ…

妹「……テレビ見ながら、寝ちゃったんだ」

兄「……」スゥ…スゥ…

妹「……」

妹(……風邪なんて、引いてないのに……ホント……)

兄「……」スゥ…スゥ…

妹「……兄さんの、バカ……」

兄「……」スゥ…スゥ…

妹「……でも――――」ボソボソ

「――、――」

~翌朝~

妹「――兄さん」

兄「はいはい。学校行くぞ」

妹「……うん」

兄「なぜか分からんが、お前もすっかり昔みたいに戻ったよな

妹「……昔?」

兄「そうそう。昔はよく、俺がどこに行くにしてもついてきて。置いてくとすげえ泣いてた」

妹「……」

兄「まあ、最近はそれもなくなってたけどな。高校生にもなれば当然だけど」

妹「……知りたくもないことを、知ったし……」

兄「……なにそれ?」

妹「色々。常識とか」

兄「……なんか、哲学的だな」

妹「兄さん。言葉の選択ミスがちらほらと」

兄「やかましい。――ほら、行くぞ」

妹「うん……」

スタスタ……

~通学路~

スタスタ……

後輩「――先輩!おはようございます!」

兄「ああ、後輩。おはよう。昨日は悪かったな」

後輩「いえいいんですよ。……妹ちゃん、具合は大丈夫?」

妹「うん」

兄「まあ、こう見えて丈夫だからな、こいつ」ナデナデ

妹「に、兄さん……。恥ずかしい……////」

兄「頭撫でるくらいいいじゃねえか」ナデナデナデナデ

妹「うぅ……////」

後輩「……」

~学校~

後輩「……妹ちゃん」

妹「……うん?」

後輩「ちょっと……いいかな……」

妹「……?」

後輩「大したことじゃないんだけど……確かめておきたいんだ」

妹「……うん」

スタスタ……

~裏庭~

後輩「……ごめんね、こんなところに連れてきて」

妹「ううん。大丈夫」

後輩「……それでね、聞きたいことがあるんだ」

妹「……うん」

後輩「先に言っておくけど、正直に答えて。その答えは、きっと妹ちゃんの本気の答えだから、バカにしたり、貶したりなんかしない。
でも、正直に答えてくれないと、私達、どっちもダメになると思う」

妹「……うん」

後輩「……じゃあ、聞くよ?」

妹「……」

後輩「――お兄さんのこと、どう思ってるの?」

妹「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……兄さんは、兄さん」

後輩「――ッ」

妹「どれだけ時間が経っても、どれだけ環境が変わっても、それが唯一の真実。これまでも、これからも、何も変わらない。
――たとえ、私が何を想っても……」

後輩「……妹ちゃん……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……ごめん。今は、こんなことしか……」

後輩「……ううん。ありがとう、妹ちゃん……」

妹「……でも、一つだけ……」

後輩「……?」

妹「――兄さんは、味噌汁が好き。コーンポタージュよりも……」

後輩「……え?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……ごめん。何でもない……」

後輩「あ、うん……」

妹「……もう、行くね」

タタタ……

後輩「あ――……」

後輩(……妹ちゃん……)

~自宅~

妹「――旅行?」

兄「そうそう。父さんがな、懸賞を当てたらしい。3名までご招待だって」

妹「……」

兄「ただ、父さんも母さんも仕事で行けないみたいだから、俺とお前で行ってこいと」

妹「……二人……きり……」

兄「まあ、せっかく3人まで行けるんだ。後輩を誘ってやれよ」

妹「……」

兄「いつもお前が世話になってるからな。言っといてくれよ?」

妹「……それ、いつ行くの?」

兄「日付はこっちである程度決めれるみたいだぞ」

妹「……チッ」

兄「……?」

妹「……分かった。言っとく」

兄「……???」

~旅行当日(電車)~

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

後輩「――旅行に誘ってくれて、ありがとうございます!」

兄「いやいや、いつもこいつが世話になってるからな」

妹「……」ジト…

兄「……なんだよ、その目は」

妹「……別に」

後輩「……」

兄「……よく分からんが、せっかくの旅行だ。楽しく行こうや」

妹「……うん」

後輩「そ、そうですね」

兄「……」

兄(……なんだかなぁ……)

~旅先~

兄「――やっっっっと、ついたなぁ……!」

後輩「電車で数時間って、やっぱり疲れますね……」

妹「遠すぎ……。旅行先を決めた兄さんに、責任がある」ジト…

兄「うっ……。ま、まあ、いいじゃないか。見ろよ、この景色。見渡す限りの山!山!!山!!!
最高じゃねえか!」

後輩「うわぁ……本当に……」

妹「……山しかない……」

兄「……ハハハ……」

兄(……もしかして、選択ミス?)

~山道~

ザッザッザッザッ……

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

ザッザッザッザッ……

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

ザッザッザッザッ……

兄「……」

妹「……ねえ、道合ってる?」

後輩「……さっきからずっと山道を……」

兄「大丈夫だ。たぶん絶対合ってる」

妹「憶測と確信を一緒に言われても……」

後輩「……引き返しますか?」

兄「だ、大丈夫だって!」

ザッザッザッザッ……

~旅館~

後輩「本当に着いた……」

妹「奇跡……」

兄「ほら言わんこっちゃない。道合ってたじゃねえか。謝罪を要求する」

後輩「入り口、こっちかな」

妹「兄さん、早く入ろ」

兄「お、お前ら……」

スタスタ……

後輩「なんか、凄く趣がありますね」

妹「うん……古くさいとも言う」

兄「老舗ってことだろ?ネット上では、☆5つを叩き出しまくってたところだ。期待は裏切らんよ」

妹「……それ、いい意味で?」

兄「当たり前だ」

トトト…

女将「――まあまあ、遠いところをわざわざ。さっそくお部屋に案内しますね」

兄「あ、ああ……ども……」

兄(うわ……超美人……)

後輩「……」ムッ――

妹「……」ムッ――

スタスタ……

~客室~

兄「……さてと。ゆっくりするかな……」

妹「……」スクッ

兄「ん?どこ行くんだ?」

妹「……お風呂」

兄「いきなりだな……」

妹「温泉来たんだし……」

スタスタ……

後輩「あ、待って妹ちゃん!私も行く――!」

スタスタ……

兄「……」

兄「……」

兄「……やれやれ。ちょっと強引ではあったけど、なんとか二人を連れてこれたな。
――これで、仲直りしてくれるといいけどな……」

~温泉~

――――カポーーーン……

妹「……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……い、いいお湯だね……」

妹「うん……」

後輩「疲れがとれそうだね……」

妹「うん……」

後輩「……」

妹「……」

――カポーーーン……

後輩「……ねえ、この前の続きなんだけどさ……」

妹「……」

後輩「お兄さんが言った、味噌汁が好きってのは……」

妹「……そのまんま。兄さん、味噌汁が好きって」

後輩「……妹ちゃん、どうするの?」

妹「……?」

後輩「――……お兄さん、好きなんでしょ?」

妹「――――」

――――カポーーーン……

後輩「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……兄さんだし、ね……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……その言い方、ちょっと卑怯だよ」

妹「……」

後輩「私は気持ちを伝えたのに、妹ちゃん、逃げてばっかり……」

妹「……」

後輩「……そんなの、ズルい。妹ちゃんの気持ちって、そんなに隠さないといけないことなの?」

妹「――ッ!――当たり前じゃない!」

後輩「――ッ!」

妹「普通おかしいでしょ!?そんなの!言えるわけないでしょ!?」

後輩「……」

妹「後輩ちゃんと違って、私は何も出来ないの!口にすることも!腕を組むことも!
――それが、常識なの!!」

後輩「……妹ちゃん……」

妹「……」

――カポーーーン……

後輩「……妹ちゃん。私は、おかしいとは思わないよ」

妹「……」

後輩「だってお兄さん、とっても優しいもん。だから、私が妹ちゃんの立場でも、同じ気持ちになってたと思う。
私はそれを笑ったりしないし、嘘とも思わないよ」

妹「……後輩ちゃん……」

後輩「……でも、私も引くつもりはないから。
――だから、もう一度聞くね?……妹ちゃんは、どうするの?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……」

妹「……受けて立つ」

後輩「……うん!これからは、友達であり、ライバルだね!」

妹「うん……」

――カポーーーン……












~男湯~

兄「……」

兄(……人の気も知らないで……)

~客室~

兄「――いやぁ……食った食った」

妹「兄さん、お茶……」ソッ……

兄「お!サンキュー!」

後輩「でも、本当に美味しかったですね」

兄「そうだろそうだろ。ネットの下馬評も、なかなか当てになるだろ?」

妹「……チッ」

兄「なぜ舌打ち」

妹「……」スクッ

兄「お?風呂か?」

妹「……」コクリ…

スタスタ……

後輩「……」

兄「……ん?後輩は行かないのか?」

後輩「え?……あ、はい……」

兄「……?」

TV「――、――」

兄「……」

後輩「……」

TV「――!―!」

兄「……」

後輩「……なんか、静かですね」

兄「え?あ、ああ。そうだな。周りに建物が何もないからな」

後輩「自然豊かなところですしね」

兄「ああ……そうだな……」

後輩「はい……」

兄「……」

後輩「……」

TV「――、――……」

後輩「……あの……先輩?」

兄「ん?どした?」

後輩「……先輩と妹ちゃん、仲がいいですよね……」

兄「え?……まあ、そりゃ兄妹だしな」

後輩「……でも、普通はこんなに話したり遊びに行ったりしないですよ?」

兄「そんなもんなの?その普通ってのが分からないし……」

後輩「はい。そんなものです。……それに……」

兄「……?」

後輩「――先輩と妹ちゃん、あまり、似てないですよね……」

兄「……」

後輩「顔の形が違いますし……あと、性格も身長も。二人並んでたら、あまり兄妹には見えないですよ?」

兄「――……まあ、そりゃそうだろうな……」

後輩「え?」

兄「……妹はな、母さんの連れ子なんだよ」

後輩「――」

後輩「……え……あ、あの……」

兄「……」

後輩「……どういう、ことですか?……って、聞いてもいいんでしょうか……」

兄「ああ、別にいいよ。……よくある話だよ。俺を産んだ母さんは、小さい時に他界してな。それで、父さんの再婚相手が、今の母さんなんだ。
妹は、その母さんの前の旦那さんの子供なんだよ」

後輩「……」

兄「もちろん、俺にとっては、二人とも本物の母さんなんだ」

後輩「……何か、すみません。込み入ったこと聞いてしまって」

兄「いやいいんだよ。別に気にしてないし、それに、後輩はそれを人に言って回るような子じゃないってのも分かってるし」

後輩「も、もちろんです!……あ、あの……」

兄「……?」

後輩「……妹ちゃん……妹ちゃんは、そのことは?」

兄「……知らない……と、思う。なにせ、父さんと母さんが再婚したのは、まだ妹が赤ん坊の時だからな。俺が知ったのも、押入れの奥にあったアルバムをたまたま見たのをきっかけに、父さんから聞いたことだし。そのアルバムも、またしまいこんだ。
妹が、知ることは難しいと思う」

後輩「そう…なんですか……。妹ちゃんには言わないんですか?」

兄「うん。まだ、ね。いつか言うべきことだとは思うけど、それはもっと先のことだろうな。あいつ、ああ見えて泣き虫だし。無駄に傷付けることもないだろ」

後輩「……」

後輩「……あの、先輩」

兄「ん?」

後輩「……もしですよ?もし、妹さんがそれを知って、兄妹の間柄以上の気持ちを抱いたら……どうするんですか?」

兄「……」

後輩「……」

兄「……さあね。そん時にならないと分からないな」

後輩「……そう、ですか……」

兄「――ただ、一つ言えることは……」

後輩「……はい」

兄「……あいつは、あいつってことかな」

後輩「……よく、分かりませんが……」

兄「それでいいんだよ。それで」

後輩「……」

妹「……」……ガラッ

兄「――おお。上がったか」

妹「うん」

後輩「お、おかえり妹ちゃん。お風呂、どうだった?」

妹「……?さっき入った時と同じ。いいお湯だったよ」

後輩「そ、そう……」

妹「……?」

後輩「――じゃ、じゃあ、今度は私が入ってきますね!」

タタタタ…

妹「……??なんか、変……」

兄「……」

兄「ちょっとGEOにPSP買ってくるわ」

妹「じゃあついでにこのDVD返しといて」

兄「おう」

GEO「いらっしゃいませー」

兄「ダンクシュート」

GEO「お客様、返却BOXにダンクしないでください」

兄「スマブラください」

GEO「うりきれです」

兄「そうですか」

GEO「そうですね」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……風呂、どうだった?」

妹「……うん。良かった」

兄「ふ~ん……男湯はけっこう広かったからな。女湯も広かったか?」

妹「うん」

兄「そっか……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……ん?」

兄「…?どうした?」

妹「……兄さん、いつお風呂入ったの?」

兄「……へ?」

妹「私と後輩ちゃんがお風呂から上がって、兄さんずっと一緒にいたでしょ?」

兄「……そ、そうだっけ?」

妹「うん、そう。……兄さん、いつ入ったの?」

兄「……ええと……」

兄(……ヤバい。まずった……)

妹「……ねえ。いつ入ったの?」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……もしかして……」

兄「……」

妹「……もしかして、私達が温泉に入ってる時に……?」

兄「―――ッ!!」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……私達がお風呂に入った時に、入ってたの?」

兄「……ええと……」

妹「確か、男湯は女湯の隣だよね?」

兄「……」

妹「……じゃあ……じゃあ、もしかして……」

兄「……」

妹「……私と、後輩ちゃんの話を―――」

兄「―――ッ!!」

ガラッ――

後輩「――ああ!いいお湯だった!」

妹「――ッ!」

兄「――ッ!お、おかえり!」

兄「温泉どうだった!?」

後輩「え?え?」

兄「なら、今度は俺が入ってこようかな!」

妹「……兄さん」

兄「さぁて!温泉が楽しみだ!」スタスタ…

ガラッ――

タタタ…

後輩「???」

妹「……逃げた……」

~男湯~

――――カポーーーン…

兄「……」

兄「……」

兄「……はぁ」

兄(完全にまずったな……)

兄(……さすがのあいつでも、感付いただろうな……)

兄(……)

兄(……)

兄(……せっかく、今まで気付かないフリしてたのにな……)

兄(……ホント、まいったな……)

――――カポーーーン……

~客室~

妹「……」

後輩「……」

妹「……後輩ちゃん」

後輩「なぁに?」

妹「兄さん、私達の話、聞いてたのかも……」

後輩「……え?」

妹「……」

後輩「……聞かれたとして……どうするの?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……別に」

後輩「……」

妹「兄さんの性格を考えるなら、知ったからと言って何かするわけがない。――あいつはあいつ……兄さんなら、そう言うと思う……」

後輩「……」

後輩(あ―――その言葉……)

妹「……」

後輩「……やっぱり、兄妹だね……」

妹「……?」

~客室~

ガラッ――

兄「……ただいま」

妹「おかえり」

後輩「お帰りなさい!」

兄「……」

兄(なんか、普通だな)

妹「……お風呂、よかった?」

兄「え?あ、ああ。俺で最後だったみたいだし、ほぼ貸し切りだったぞ」

妹「そう……」

後輩「先輩、お茶飲みます?」

兄「あ、もらおうかな」

後輩「はぁい」

コポコポ……

兄「……」

兄(……怪しいくらいに、普通だな……)

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

兄「……さて、そろそろ寝るか……」

妹「うん」

後輩「はい」

ゴソゴソ……

兄「電気消すぞ」

妹「うん」

後輩「はぁい」

カチカチ

兄「……おやすみ」

妹「おやすみ」

後輩「おやすみなさい」

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

兄「……」

兄(……なんで何も聞いてこないんだ?風呂場で色々考えたんだけどな……)

兄(まあ、流してくれるならそれに越したことはないけど……)

兄(……)

兄(……兄妹、か……)

妹「……」

妹(……たぶん兄さんは、私達がお風呂にいたときに、隣にいたんだ)

妹(……やっぱり、聞かれたよね……)

妹(……)

妹(でも、何も言ってこないし。なんでだろ……)

妹(……やっぱり、妹だからかな……)

後輩「……」

後輩(……先輩も妹ちゃんも、同じこと言ってたな……)

後輩(やっぱり、二人とも兄妹っていう立場をわかってるみたい。兄として、妹として……)

後輩(……)

後輩(……でも、本当にそれだけなのかなぁ……)

~深夜~

兄「……うぅん……」

兄(……眠れない)

妹「……」ムクリ…

兄(……あれ?)

妹「……」スクッ

スタスタスタ…
――ガラッ

兄「……こんな時間に、どこに行くんだ?」

兄「……」

兄「……仕方ないなぁ」…スクッ

スタスタ…
――ガラッ

~廊下~

スタスタ…

兄「……ありゃ?どこ行ったんだあいつ?」

スタスタ…

兄「……ん?温泉の暖簾が出てる?」

兄(……そうか。ここは、深夜遅くまで入れるんだったな……)

兄「……目も覚めたし、あいつも見つからないし……入るかな……」

スタスタ…

~温泉~

スタスタ…
――ザブゥゥン…

兄「――いやぁ!貸し切りみたいでいいなあ!夜入る風呂もいいもんだ!」

――――カポーーーン……

兄「……あれ?確か、夕方に入った時はここに仕切りがあったはずだけど……」

???「……」スーッ

兄「……!誰かいる!?」

???「――ッ!?だ、誰!?」

兄「あ!!すみま――――――ん?」

???「――――あ」

兄「……」

妹「……」

兄「ええええええ!」
妹「―――ッ!!」

兄「な、なんで……!!」

妹「兄さんが、ここに!?」

兄「……もしかして……!」

妹「……もしかして……」

兄・妹「「混浴!?」」

――――カポーーーン…

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……こっち向かないでよ、兄さん」

兄「わ、分かってるよ……」

妹「……まさか、混浴になってたなんて……」

兄「……それに全然気付かない俺達って……」

妹「それ以上言わないで……泣けてくるから……」

兄「……らじゃ」

――――カポーーーン…

妹「兄さん…私ね…?」

兄「……ん?」

妹「私、兄さんのこと好きだったんだよ」

兄「……あぁ」

妹「でもね、味噌汁は味噌汁なの。 一品料理として並ぶことはないし、並んだところで手にとられることはない」

兄「…それは」

妹「だから私…いや、味噌汁はね? 誰かを引き立てるために、応援するためにそこに並ぶの。 そうなっているんだよね常識って」

兄「…お前はお前だ……何も変わらない、そうだろ?」

妹「そうだね……でも周りは変わっていくんだよ、兄さん」

兄「――ッ………なあ、妹」

妹「……」

兄「俺な、お前に隠してたことがあるんだ」

妹「……え?」

兄「この場を借りて言わせて貰うが俺、実は」

















兄「お前の彼氏と突きあってるんだ」

妹「」

まで想像したSS支援

兄「……そう言えば……」

妹「……?」

兄「彼氏とはどうなんだ?」

妹「え?」

兄「最近、なんか会ってなさそうだったからな。うまくいってるのか?」

妹「……彼氏?」

兄「そう。彼氏」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……ああ、別れた」

兄「ちょっと待てぃ」

兄「なんなんだよ、今の間は」

妹「……溜め」

兄「なんのためだよ。……お前、彼氏の存在自体を忘れてたみたいだったけど……」

妹「……」ギクリ

兄「なんだよその反応。……もしかして……」

妹「……」

兄「……彼氏、いなかったのか?」

妹「……ソンナコトナイヨ」

兄「片言になってるぞ」

妹「……チィッ」

兄「舌打ちすんなよ。図星かい」

妹「……」

兄「……なんでそんな嘘ついたんだよ」

妹「……」

兄「……」

妹「……その……」

兄「うん」

妹「……兄さんの反応、見たかった……」

兄「俺の?なんで?」

妹「……もし私に彼氏が出来たなら、兄さん、どういうこと言うのかなって……」

兄「……要するに、実験だったと……」

妹「……」

兄「……あのなぁ。そんなつまらない嘘付くなよ。お前に彼氏が出来ようが出来まいが、何も変わらないだろ」

妹「……」

兄「……」

妹「……兄さんの……そんなところ、嫌い」

兄「……え?」

妹「目、閉じてて」

――ザバァッ

兄「う、うわっ!いきなり上がるなよ!」

妹「……バカ兄さん……」

スタスタ…

兄「……」

~廊下~

スタスタ…

兄「……」

兄(そんなこと言ってもな……)

兄(……無茶、言わないでくれよ……)

兄「……ん?月明かり?」

兄「……」

兄「……ちょっと、風に当たるか……」

スタスタ…

~中庭~

兄「……」

スタスタ…

後輩「――こんなところにいたんですか……」

兄「……あれ?こんな時間にどうしたんだよ……」

後輩「それは、こっちのセリフです。目が覚めたら先輩いませんし……」

兄「ああ……ちょっと、な」

後輩「……隣、いいですか?」

兄「え?あ、ああ。別に聞かなくてもいいよ」

後輩「……じゃあ、お言葉に甘えて……」

スタスタ…

兄「……」

後輩「……」


兄「……」

後輩「……先輩……」

兄「ん?」

後輩「ええと……その……」

兄「……?」

後輩「――……月が、綺麗ですね……」

兄「え?あ、ああ。そうだな。とっても綺麗だ」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……あの……妹ちゃんのことですけど……」

兄「うん?妹がどうした?」

後輩「……やっぱり、言った方がいいと思います」

兄「……何を?って、一応聞いておこうか」

後輩「二人の、関係のことです」

兄「……」

兄「……」

後輩「なんか、妹ちゃんだけ知らないってのは、変だと思います」

兄「……そうかな……」

後輩「妹ちゃんは、先輩が思っている以上にしっかりしてます。先輩が妹ちゃんを気にするのは分かりますが、少しだけ過保護な気がします」

兄「……」

後輩「……それに、本当は先輩も気付いているんじゃないんですか?妹ちゃんが、先輩を―――」

兄「――言うな」

後輩「……!!」

兄「……確かに、卑怯かも知れない。知らないフリをしたり、自分しか知らないことがあったり……。――でもな、ことは、そんな簡単なことじゃないんだよ」

後輩「……」

兄「俺は兄貴で、あいつは妹……それが今の形だし、俺達の形なんだ。誰が何と言おうが、誰が何を想おうが、それは変わらない……変わらないんだよ」

後輩「……」

兄「……ごめんな。あの話は、聞かなかったことにしてくれないか?頼むよ……」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……分かりました……」

~翌朝~

兄「――さあて、帰るか」

妹「……」

後輩「……」

兄「……なんか、元気ないな」

妹「別に……」

後輩「そ、そんなことないです!」

兄「そ、そう……」

兄(……なんか、色々とんでもない旅行になったな……)

兄「……とりあえず、帰ろう」

妹「うん」

後輩「はい」

スタスタ…

兄「……」

兄(……なんだかなぁ……)

~数日後の朝食~

兄「……いやしかし、久々の温泉も良かったよな」

妹「……」

兄「心なしか、肌もスベスベになった気がするぞ」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄(き、きまずい……)

妹「……兄さん」

兄「ん?」

妹「……今日、帰りは遅い?」

兄「い、いや、別に……」

妹「そう……今日は、早く帰って来て」

兄「別にいいけど……どうした?」

妹「――話、あるから……」

兄「……話?」

妹「帰って話す。――いってきます」スタスタ…

兄「お、おい!」

兄「……」

兄「……なんだよ、話って……」

~昼休み~

後輩「……」

妹「……」

後輩「……そっか。先輩と……」

妹「うん。……この前は、ありがと」

後輩「ううん。それはいいんだけど……」

妹「大丈夫。早いか遅いかの違いだっただろうし」

後輩「……で、でもね妹ちゃん。先輩は―――」

妹「――分かってる。兄さんらしい」

後輩「……」

妹「……」

~夕方~

兄「――ただいま~」

シーーン―――

兄「……誰もいないのか……」

スタスタ…

兄「……」

兄(……話って、なんだろうな……)

――ガチャリ

妹「――おかえり」

兄「――うおっ!……ビックリした……いるなら返事くらいしろよ」

妹「……うん」

兄「……」

妹「……お茶、飲む?」

兄「え?あ、ああ……」

妹「うん。ちょっと待ってて……」

スタスタ…

兄「……」

妹「……はい」

コト…

兄「お、サンキュ」ゴクゴク…

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……私ね……」

兄「う、うん……」

妹「……全部、聞いたんだ」

兄「……何を?」

妹「私と、兄さんのこと……」

兄「……後輩からか?」

妹「……」コクリ

兄「――……そっか……」

妹「……」

兄「……」

妹「……もしかして、後輩ちゃんのこと、怒ってる?」

兄「……少しな。ただ、それはいずれ知ることではあったからな。それが、今だったってだけのことだろ」

妹「そう……」

兄「……とにかく、そういうことだ。隠すつもりもなかったんだけどな。結果として、秘密にしてたことについては謝る。……すまなかった」

妹「……うん。それはいいんだ。父さんも母さんも何も言わなかったしね」

兄「あまり言いたくないみたいなんだよ。だから、問い詰めたりしないでくれよ?」

妹「それはしない。安心して」

兄「……助かるよ」

妹「ねえ、兄さん」

兄「なんだ?」

妹「……私と兄さん、血が繋がってないって知った時、どう思った?」

兄「どうって……ああ、そうなのか、くらいかな。正直、あまり実感湧かなかったし」

妹「……私はね、嬉しかったんだ」

兄「……嬉しい?」

妹「兄さんは兄さんだけど、血は繋がってないし。今まで思ってたのが、強ち間違いじゃなかったって分かって、ね。普通じゃないけど、普通のことだったんだって……」

兄「……お前――」

妹「――待って。今は、黙ってて……」

兄「……分かった」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……私……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……私……兄さんのこと、好きだよ」

兄「……」

兄(……くそ……)

兄「……」

妹「……」

兄「……兄として……じゃないよな……」

妹「……うん」

兄「……」

妹「……」

兄「……それを俺に言って、どうするんだ?」

妹「別に……ただ、私の気持ちを聞いて欲しかっただけかも……」

兄「そうか……」

妹「……」

兄「……」

妹「……私、部屋に戻るね……」

兄「え?あ、ああ……」

妹「じゃ……」

スタスタ…

兄「……」

兄「……」

兄「……俺に、どうしろって言うんだよ……」

~翌日(放課後)~

テクテク…

兄「……」

兄(今朝、顔も合わせずに行ってたな……)

兄(……俺の返事を、待ってるのか?)

兄(それって……スゲエ酷なんだけどな……)

スタスタ…

後輩「――先輩……」

兄「……あ」

後輩「ちょっと、時間いいですか?」

兄「……奇遇だな。俺もお前に、用があったんだ」

後輩「……」

兄「……」

~公園~

後輩「……そうですか。妹ちゃんが……」

兄「ああ。……後輩から聞いたって」

後輩「……すみませんでした。勝手なことをして……」

兄「まったくだよ。……ホント、まいったよ……」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……一つ、言い訳をしていいですか?」

兄「……ああ」

後輩「……妹ちゃんは、苦しんでいたんですよ。兄と妹という関係……頭では分かってても、気持ちは落ち着かないような。常識と本音が入り混じってて、頭の中でこんがらがってて……」

兄「……」

後輩「……なんか、見てられませんでした。――それに、とても自分が卑怯のように思えて……」

兄「卑怯?」

後輩「妹ちゃんが踏み出せないでいるのに、私だけ踏み出すことが、です。だから、私は妹ちゃんと、フェアな立場になりたかったんですよ」

兄「フェアな立場って……」

後輩「……私も、先輩が好きです。大好きなんです」

兄「……」

後輩「……でもこれは、先輩も気付いていたんじゃないんですか?」

兄「そんなことは……」

後輩「……」

兄「……」

昨日はすまんかった
殺人的忙しさだったから無理だった
今日は書きなぞる

兄「……それ、答えないとダメか?」

後輩「……答えられるなら……」

兄「……」

後輩「……」

兄「……ええと――」

後輩「――やめときます」

兄「え?」

後輩「それは、また今度聞かせてもらいますね」

兄「……」

後輩「とにかく、私達の気持ちは伝えました。あとは、先輩次第です」

兄「……」

後輩「……それでは、私は帰ります」

スタスタ…

兄「……」

~自宅~

兄「ただいま」

妹「……おかえり」

兄「……何してたんだ?」

妹「お茶飲んでた」

兄「そ、そうか……」

妹「うん」

兄「……」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……今日さ、告白されたんだ」

妹「……後輩ちゃん?」

兄「ああ」

妹「……良かったね」

兄「あ、ああ……」

妹「……それで?」

兄「い、いや……別に……」

妹「そう……」

兄「あ、ああ」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄(……なんか、反応が鈍い……)

~自室~

兄「……」

兄(何か期待してたわけじゃないんだけどな……)

兄(なんだろ、あの淡白さは……)

兄(……何考えてんだよ、俺。妹は、ごく普通の反応しただけじゃないか……)

兄(……妹として、普通の……)

――コンコン

兄「ん?開いてるよ」

ガチャ――

妹「――兄さん」

兄「お、おお。……どうした?」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……」ゴクリ…

妹「……勉強、教えて」

兄「は、はい?」ズルッ

~妹自室~

兄「……で、これがこうなる、と……」

妹「……なるほど」

兄「……」

妹「……」カリカリ…

兄「……なぁ」

妹「……なに?」

兄「お前さ、もともと分かってたろ」

妹「……そんなことない」

兄「嘘つけ!俺の適当な教え方で熟知出来るほど、高校の数学は甘くないんだよ!」

妹「……チィッ」

兄「舌打ちしやがった……」

妹「……」

兄「だいたい、お前は成績いいじゃねえか。こんな初歩的なことにつまずくはずないだろうに……」

妹「……私にも、苦手なことくらいある」

兄「だとしてもだな……」

妹「もういいでしょ?――早く、次」

兄「……ったく。頭悪い俺への当て付けかよ」

妹「……兄さんは被害妄想が酷すぎる……」カリカリ…

兄「……」

妹「……」カリカリ……

兄「……」

妹「……」 カリカリ……

兄「……なあ」

妹「……なに?」カリカリ……

兄「さっきから、俺いらなくないか?」

妹「……ソンナコトナイヨ」カリカリ……

兄「片言かよ」

妹「……教えてくれたじゃん」

兄「ああ教えたさ。基礎中の基礎をな」

妹「だったら問題ない」

兄「――だが、お前が今やってる問題は、応用中の応用だ。難易度高過ぎて俺には分からんぞ」

妹「……基礎があればこその応用……」

兄「基礎教えたくらいじゃその問題は解けねえよ!……そこは、選ばれし者の境地だ」

妹「……チィッ」カリカリ……

兄「また舌打ちしやがったよ……」

妹「……兄さんは謙虚過ぎる……」カリカリ……

兄「……」

妹「……」カリカリ……

兄「……」

妹「……」カリカリ……

兄「……なあ」

妹「……なに?」カリカリ……

兄「あのさ……」

妹「うん……」カリカリ……

兄「……近くね?」

妹「……」カリカリ…………ピタッ

兄「こんなにくっついて勉強する必要ないだろ」

妹「……兄さんの温もりに触れた時、私の頭脳は目覚め……」

兄「待て待て待て待て。お前はいつの間に中二病になったんだ? 」

妹「……今しがた」

兄「突発性すぎだろ。……だいたい、もはや俺は空気になってるんだが?」

妹「……神社には狛犬というものが……」

兄「守り神かよ」

妹「……ハンバーグにはミックスベジタブル……」

兄「添え物かよ」

妹「……その昔、手に終えないほどの悪行を重ねた人がいて……」

兄「ならず者かよ。もうわけ分かんねえぞ」

妹「……」

兄「……とにかく、もう俺は必要ないだろ。部屋に戻るわ」スクッ――

妹「――ッ。待って――」

――ガシッ

兄「……!」

妹「……」ギュッ……

兄「な、なんだよ……」

妹「……」

兄「……」

妹「……嫌」

兄「……い、嫌?」

妹「……ここにいて」

兄「……!」


妹「……なんで彼氏なんて嘘をついたか……」

兄「……え?」

妹「兄さん、前に聞いたよね?」

兄「あ、ああ……」

妹「……」

兄「……」

妹「……兄さんを、とられたくなかったから」

兄「……え?」

妹「後輩ちゃんから言われたの。兄さんと仲良くなれるように、協力してほしいって……」

兄「……」

妹「そんなこと言われたら、うんってしか言えないでしょ?……でも、兄さん、とられたくなかった……」

兄「……それで、告白されたなんて言ったのか?」

妹「……そう言えば、兄さんは私を見てくれるって思った」

兄「……」

妹「……だから――」

兄「――」スクッ

妹「……!」

兄「……今日は、もう寝ろよ」

妹「……え?」

兄「……部屋、戻る……」

スタスタ…

――ガチャ

妹「……兄さん……」

~兄自室~

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……くそ……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……」

兄「……寝るかな……」

――パチッ……

~数日後(放課後)~

スタスタ……

兄「……」

兄(……あれから、ろくに話してないな……)

兄(……なんなんだよ。どうしろって言うんだよ……)

兄(……俺に、そこまで求めないでくれよ……)

兄「……」

スタスタ……

~自宅~

兄「……ただいま」

――シーーン……

兄「……誰もいない、か……」

兄「……」

兄「……テレビ、見るかな……」

ピッ――

TV「――、――」

兄「……」

TV「――!――!ワアアア……」

兄「……つまんないな」

ピッ

兄「……ふぅ」

兄「……」

兄「……兄妹、か……」

――ガチャ!!

???「――頼も~!!」

兄「――ッ!?な、なんだ!?」

???「あれぇ?ちょっと!誰もいないの!?」

兄「こ、この声は……まさか……!!」

???「誰もいないなら勝手に入るよ!!――お邪魔~!!」

スタスタ……!!

兄「ま、マジかよ……!!」アタフタ―!

――ガチャ!!

兄「――ッ!」

???「……お?……おおおお?――おおおおお!!??」

ダダダ――!!

兄「――ッ!?」

???「――いるなら返事くらいしろ!!」

バキィッ――!!

兄「ぐはぁっ!!」バタン!!

???「まったく……教育し直すよ?」

兄「……いきなり飛び蹴りしといてそれはねえよ!!」

???「うるさいなぁ……美人のお姉さんがせっかく遊びに来たのに……」

兄「いきなり何の用だよ!――従姉!!」

従姉「よっ!久しぶりだね、兄!」

従姉「ていうか、相変わらず呼び捨てだね。一応私の方が年上なんだけど?」

兄「ほんと、“一応”な。年だけくって、中身は中学の時からまったく変わってねえけど。
ほんと、年だけ――」

バキィッ――!!

従姉「……殴るよ?」

兄「……そういう言葉は、殴る前に言うべきかと、お姉さま……」

従姉「……それにしても、叔父さんと叔母さんは?あと、妹は?」

兄「父さんと母さんはまだ仕事だよ。妹は……学校から帰ってない

従姉「ふ~ん。ってことは、今は兄だけか……変なことしないでよ?」

兄「誰が。俺だって、相手くらい選ぶ権利が――」

バキィッ――!!

従姉「……殴るよ?」

兄「……だから、脅しは殴る前に言えと……」

兄「……てか、なんでいきなり来たんだよ。仕事は?」

従姉「ああ。辞めた」

兄「はぁ!?辞めた!?」

従姉「そうそう」

兄「な、なんで!?」

従姉「いやね、上司のおっさんがとんだエロジジイでね。やれ食事に行こうとか、やれ二人で出張しようとか、ほんと面倒だったんだよね」

兄「……それで?」

従姉「うん。お尻触ってきたから、側頭蹴りして辞めてやった 」

兄「マジかよ……。よく捕まらなかったな……」

従姉「まあ、向こうは積年のセクハラと痴漢行為があったからね。蹴り一発じゃ足らないくらいだよ」

兄「……相変わらず、武闘派で……」ゴクリ……

兄「で?わざわざ従姉の武勇伝を聞かせに来たと?」

従姉「まさか。そんなんじゃないよ」

兄「じゃあ何しに来たんだよ。単純に遊びに来たにしては、やけに荷物が多いじゃないか」

従姉「うん。しばらくここに住むから」

兄「……は?」

従姉「よろしく~」ヒラヒラ

兄「はあああああ!?」

従姉「そんなあまりに嬉しいからって、歓喜の叫びをしなくても……」

兄「これは驚愕と絶望の叫びだ!!――なんでここに住むんだよ!」

従姉「う~ん……なんでって言われても…………花嫁修業?」

兄「は、花嫁!?結婚すんの!?」

従姉「そうそう。もうすぐね」

兄「ま、マジかよ……初耳だぞ。……相手はどんな奴?」

従姉「いやいや、なに他人事みたいに言ってんの」

兄「……へ?」

従姉「――あんたと結婚するに決まってるでしょ?」

兄「………………は?」

従姉「よろしく~」ヒラヒラ

兄「…………はああああああああああ!!??」

兄「……」

従姉「兄も幸せ者だな。こんな美人と結婚できるしな。うん」

兄「……」

従姉「まあまずは高校卒業が先だな。就職はなんとかなるだろ。最悪私が働いて、兄が専業主夫でもいいしな」

兄「……」

従姉「嬉しくて声も出ないか。そうだろうそうだろう」

兄「呆れて絶句してんだよ!!」

従姉「呆れる?なんで?」

兄「なぜ理由が分からないんだよ!驚きすぎて心臓3回くらい止まったぞ!」

従姉「……兄、それはきっと、トキメキだ」

兄「んなわけあるか!どんだけポジティブなんだよ!」

兄「まったく……数年ぶりに会ってこれかよ。なんの冗談だよ

従姉「……冗談?」

兄「会社まで勢いで辞めちまってよ。これからどうするんだよ」

従姉「……あのさ、もしかして、覚えてないの?」

兄「あ?なにをだよ」

従姉「……ふぅ~ん……」

兄「……?なんだよその目は」

従姉「べっつに~」

兄「なんだよ」

従姉「なんでもないって。それより、みんなが帰るまで、お風呂入らせてもらうわ」スタスタ……

兄「お、おい!」

従姉「……覗かないでよ?」

兄「覗くかよ!」

従姉「フフ……」スタスタ……

兄「……」

兄「……なんなの、いったい……」

~数時間後~

妹「……ただいま」ガチャ――

従姉「――お!?帰ってきたか!!」ダダッ――

兄「あ!おい従姉!」

ダダダダ――

従姉「――おっかえりーー!!」

妹「―――ッ!?」ビクッ

従姉「いやあ久しぶりだね!私のこと覚えてる!?」

妹「……い、従姉…さん……」

従姉「そうそう!いやあ懐かしいね!全然変わってなくて、お姉さん嬉しいよ!」ナデナデ

妹「うぅ……うぅ……」

兄(……完全に怯えてるな……)

妹「……なぜ従姉さんがここに?」

従姉「私?もちろん、ここに住むためだよ!」

妹「……え?」

従姉「聞いて喜べ!親戚のお姉さんから、義理のお姉さんに変わるのだよ!」

妹「……!」

兄「こらこら。妹に変なことを刷り込むな。勘違いしてるだろ」

従姉「ええ……だって、事実じゃん」

兄「俺がいつ従妹と結婚したんだよ!」

従姉「ぶー……」

妹「……」

兄「ってことだ。分かってると思うが、勘違いすんなよ」

妹「……」

兄「……?どうしたんだ?」

妹「……まだ、諦めてなかったんだ……」ボソ…

兄「え?」

従姉「……」ニッコリ

妹「……」

兄「???」キョロキョロ

妹「……部屋、戻る」スタスタ…

兄「お、おい!」

タタタ…

従姉「……」

従姉「……ふ~ん。そういうことか……」

従姉「――妹、全部知ったんだ……」

~夜~

従姉「――いやぁ食った食った。叔父さんも叔母さんもいい人で良かった~」

兄「……」

妹「……」

従姉「ん?二人とも、どったの?」

兄「……ありえねえ……なんで家に住ませるんだよ……」

妹「……悪夢……」

従姉「まあ叔父さんも叔母さんも人がいいからね。ちょっと真剣にお願いすればこんなものよ」

兄「……ちょっと、外でジュース買ってくる……」スクッ

従姉「私のも買って来て~!」

兄「やかましいわ!」

スタスタ…

従姉「やれやれ……」

妹「……」

従姉「……」

妹「……」

従姉「……で?どうなの?」

妹「……?」

従姉「知ったんでしょ?兄とのこと」

妹「……」

従姉「そう警戒しなくていいって。――昔のことでしょ?」

妹「……」スクッ

スタスタ…

従姉「ありゃりゃ。すっかり嫌われてるなぁ……」

従姉「……」

従姉「……まあ、それも仕方ないか……」

~翌日(学校)~

後輩「――え?従姉さん?」

妹「……うん」

後輩「その人が、妹ちゃん達の家に?」

妹「うん。しばらく住むって」

後輩「……あの……後輩ちゃん?」

妹「……?」

後輩「……従姉さんは……どちら側の従妹になるの?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……母さん側の方……」

後輩「……それじゃあ……」

妹「うん……」

後輩「……」

妹「……後輩ちゃん」

後輩「……なに?」

妹「協力、して」

後輩「……え?」

妹「従姉は、かなり手ごわい」

後輩「……」

妹「協力しなきゃ、撃退できない」

後輩「……何かあったの?」

妹「……」

後輩「……」

妹「……とにかく、協力して」

後輩「……」

妹「……」

後輩「……うん。分かった」

妹「……ありがと」

~自宅~

兄「……ただいま」

従姉「おおお!おかえり~!」

兄「……夢じゃなかったのか……」

従姉「何バカなこと言ってんの。――ほら。さっさと行くよ」グイッ

兄「ちょ…!引っ張んなよ!……って、どこへ?」

従姉「デートに決まってるでしょ?デート」

兄「で、でーと!?」

従姉「ほらほら!お姉さんを案内しなさい!」

兄「な、なんで俺が……!!」

従姉「いいからいいから!行くよ!」グイグイ

兄「ま、待てったら!」

従姉「はい、いってきま~す!」グイグイグイグイ

兄「わ、分かった!分かったから!せめて着替えさせろおおおおお!!!」

~街中~

スタスタ…

兄「……なあ」

従姉「うん?」

兄「どこ行くんだよ」

従姉「そうねえ……とりあえず、映画とかは?」

兄「今からかよ。夕ご飯、間に合わないだろ」

従姉「ああ、それなら大丈夫。叔母さんに、今日は兄と外食するって連絡しといたから」

兄「は!?いつの間に!?」

従姉「兄が着替えてる間にだよ。“不肖の息子をよろしく”――だってさ」

兄「誰が不肖の息子だよ。……あんのオバハン……!!」

従姉「いいじゃん。もう母親公認じゃん。このまま最後まで突っ走って――」

兄「待て待て待て待て。俺の主張はどこですればいいんだよ」

従姉「んん……脳内?」

兄「つまりは発言するな、と」

従姉「もう、別にいいでしょ?今日は驕ってあげるから」

兄「……その言葉、嘘偽りないだろうな?」

従姉「お姉さんを信じなさい」

兄「よっしゃ。こうなりゃやけ食いしてやる。俺の夕食を奪いやがって」

従姉「うんうん。やっぱ男の子はたくさん食べなきゃね~」

兄「よく言うよ……」

スタスタ…

スタスタ…

兄「……なあ、やっぱ映画とか止めねえか?」

従姉「え?なんで?」

兄「そういうのは、彼氏と行けよ。いるんだろ?」

従姉「……いないよ」

兄「嘘付け。言いたくはないが、従姉は“外見は”いいじゃねえか。彼氏の一人や二人、あっさり見つかるはずだろ?」

従姉「言葉じりに悪意を感じるけど……まあ、一応ありがとうって言っておくわ。でも、本当にいないんだよね~」

兄「なんでだよ」

従姉「なんでって言われてもね……」チラリ

兄「なぜ俺を見る」

従姉「べっつに~。……ホント、忘れてるみたいね……ボソ」

兄「……?」

従姉「……言い寄って来る男はいたのはいたよ?でもね、なんか、見るからに下心丸出しで来てるんだよね。飲みに誘うけど、酔わせて~って魂胆が丸見え」

兄「……それ、けっこう危ないんじゃないか?――男の方が」

従姉「まあね。結局飲みに行っても、早々に潰れちゃうんだよね。私の酒の強さ、普通は知らないからなぁ」

兄「従姉はビールをつまみに焼酎を飲んで、口直しにワインを飲むような奴だからな。そこらへんの奴が飲み勝てるわけもない。……そいつ、さぞや無念だっただろう」

従姉「あのさぁ……少しは私の心配をしたら?」

兄「必要ないだろ。従姉は、一人でも生きていけるだろうし」

従姉「……そんなこと、ないんだけどな……」

兄「……え?」

???「―――あれ?先輩?」


兄「ん?」

従姉「ん?」

後輩「こんなところで何をしてるんですか?」

兄「げっ!後輩!……と……」

妹「……」

兄「……!」

兄(マジかよ……)

後輩「ええと……先輩、その人は……?」

兄「え?あ、ああ、これは……」

従姉「これ呼ばわりとは失礼ね。フィアンセに向かって、それはないんじゃないの?」

後輩「フィ、フィアンセ!?」

兄「状況をややこしくするなよ。……後輩、これ、俺の従姉なんだ」

後輩「い、従姉?……そっか、この人が……」

妹「……」

兄「……?」

従姉「……」

従姉(……ふーん。この子、兄の後輩か……)


兄「……」

従姉「……」

後輩「……」

妹「……兄さん」

兄「……うん?」

妹「こんなところで、何してるの?」

兄「なにって……」

従姉「……私と、デートしてるの」

後輩「で、デート!?」

妹「……」

兄「こらこら。そんな冗談より、自己紹介が先だろ」

従姉「ぶ~……。――初めまして。兄の親戚の、従姉です」

後輩「は、はい!初めまして!あ、あの、私、先輩の同じ学校の後輩です!よろしくお願いします!」

従姉「こちらこそ、よろしくね、後輩ちゃん」ニコッ

後輩「……!」

後輩(……うわぁ……この人、綺麗……)


妹「……従姉、もうすぐ晩御飯の時間だけど?」

従姉「え?ああ、私達はいいの。ご飯食べて来るから」

妹「……何?」

従姉「ちゃんと叔母さんにも許可取ってるから大丈夫。――ってことで、行こっか、兄」グイッ

兄「え?――お、おい!」

ズルズル…

後輩「……」

妹「……」

後輩「……妹ちゃん」

妹「……うん」

後輩「確かに、手強そうだね……」

妹「……彼奴の力は、こんなもんじゃないよ」

後輩「……」

妹「……」

~帰り道~

スタスタ…

従姉「……もう。結局ご飯食べて帰るなんて……」

兄「しょうがないだろ。映画館、上映までかなり空いてたし、見たい映画は人がいっぱいだったし……」

従姉「それに!兄!ちょっと食べ過ぎじゃないの!?」

兄「やけ食いって言ったはずだが?いやー、ゴチソウサマでした」

従姉「うぅ……失敗した……」

兄「ただ、食い過ぎて苦しくはあるな」

従姉「……なら、ちょっと休んでく?そこに公園あるし」

兄「え?でも、もう遅いしな……」

従姉「いいからいいから。缶コーヒーくらい買ってあげるから」

兄「あ、ああ……」

スタスタ…

~公園~

従姉「……こうやって二人で公園来るのって、小学生以来かな」

兄「あ~……そういえば、そうかもな」

従姉「うん。あれから、ずいぶん時間たったね……」

兄「そうだな。……あんときの従姉って、確か今じゃ考えられないくらい大人しかったよな」

従姉「……」

兄「凄く泣き虫で、甘えん坊で……そのくせ、遊ぶとすげえ笑ってた。なんか、不思議だったな」

従姉「……小学生の時さ、私、イジメられてたからね」

兄「……え?」

従姉「学校のリーダー格の女子からね、目を付けられたんだ。話しかけても無視されて、物を隠されて、覚えのないことを先生にチクられて……まったく、散々な毎日だったよ」

兄「……」

従姉「今はそんなことないし、同窓会の案内も送られてくるんだけどね。……ただ、未だに怖くて、一度も行ったことないんだ……」

兄「……知らなかったな」

従姉「当然よ。親にも話してないことだし。……当時の同級生以外でこのことを話したのは、兄が初めてだよ」

兄「……ごめん。なんて言ったらいいか分からない……」

従姉「いいよ。……それに、兄は十分私を助けてくれたし」

兄「え?」


従姉「あの時の私、いつも一人だったんだ。地獄みたいな学校生活と、それを隠す家での生活。誰にも本当の笑顔を見せることが出来なくて、毎日辛かったな」

兄「……」

従姉「でも、兄だけは私と遊んでくれてたじゃん。容赦なく遊びに誘ってきて、容赦なく私を泥だらけにしてくる。……だけど、決まって私に笑いかけてくれた。学校で向けられる、下卑た笑じゃなくて、本当の、太陽のような笑顔を向けてくれた。
――それが、本当に嬉しかった……」

兄「……そうだっけ?」

従姉「そうそう。……でも、さすがに小学生の女の子相手に相撲をさせるのはどうかと思ったけどね?」クスクス

兄「あ、あんときは俺も小学生だったし、仕方ないだろ!」

従姉「ごめんごめん。からかっただけだって。……でも、そういうところに、私は救われてたんだと思う」

兄「……なんか、恥ずかしいな……」

従姉「照れなくていいって。……でも、考えたら、その時だったんだよね。人生最悪の時に、人生最高のことがあるなんて、なんか不思議だね……」

兄「……どういうことだ?」

従姉「……クス」

兄「……?」


従姉「……さて、そろそろ帰ろうか」スクッ

スタスタ…

兄「え?あ、ちょっと!」

従姉「……続き、聞きたい?」

兄「聞きたいって言うか……そこまで話したら、気になるだろ?」

従姉「……じゃあさ、約束してよ。全部話したら、約束、守ってくれるって」

兄「……言ってることが支離滅裂なんだが……」

従姉「いいから。約束して?そしたら、全部話してあげる……」

兄「……」

従姉「……」

兄「……ええと――」

従姉「――なぁんてね。嘘。冗談だよ」

兄「……え?」

従姉「ほら。遅くなっちゃうでしょ?今日は帰ろ?」

兄「あ、うん……」

従姉「……心配しなくても、そのうち話してあげる。きっと、ね……」

兄「……」

従姉「――それじゃ!家に向かって、レッツゴー!!」

スタスタ…

兄「……」

兄(……なんなんだ?いったい……)

スタスタ…

~自宅~

従姉「――ただいま~!」

兄「……普通に従姉が“ただいま”という違和感……」

従姉「こら兄!帰ってきたら“ただいま”でしょ!」

兄「母親かよ。……ただいま」

タタタ…

妹「……おかえり」

従姉「よっ!妹ちゃん!ただいま!」

妹「……」

妹「……」

妹「……」

妹「……おかえり」

従姉「溜めに溜めたねぇ……」


兄「……なあ妹。風呂湧いてる?」

妹「うん。みんな入ってるよ」

兄「そっか。――従姉、先入れよ」

従姉「え?」

兄「従姉も一応女だからな。レディーファーストってやつだ」

従姉「……」

妹「兄さん……もうファーストじゃない」

兄「細かいことはいいんだよ。……ほら、入れよ」

従姉「……とか言って、私が入った後の風呂でよからぬことを……」

兄「するかよ!入らないのか!?」

従姉「うそうそ。冗談だよ。じゃ、おっさき~」ヒラヒラ

スタスタ…

兄「まったく……」

妹「……」ジッ――

兄「ん?どうした?」

妹「……兄さん。どこ行ってたの?」

兄「どこって……普通に飯食っただけだけど?」

妹「……」ジッ――

兄「な、なんだよ……」

妹「……うん。嘘は言ってないみたい……安心……」スタスタ…

兄「……」

兄「……しょうがねえなぁ……」

~居間~

TV「―――!―――!」ワアアアア…

兄「……」

妹「……従姉、ちょっと兄さんに近付きすぎ」

従姉「そう言う妹だって、なんでそんなにくっついてんのよ」

妹「……妹特権」

従姉「だったら私はお姉さん特権」

妹「お姉さんじゃない。従姉」

従姉「何言ってんのよ。歳が上ならみんなお姉さんじゃない」

妹「……ぐぬぬ……」

従姉「む~……」

兄「――だあああああ!暑苦しい!!」ガバッ

兄「なんだよさっきから!俺を挟んでケンカしてんじゃねえよ!」スクッ

妹「兄さん、どこへ?」

兄「あ?部屋に戻るんだよ。落ち着いてテレビも見れやしない……」

従姉「私を置いて行く気!?」

兄「その気その気。がっつり置いて行く気」

スタスタ…

妹「……従姉のせい」

従姉「んや。妹のせいだね」

妹「……ぐぬぬ……」

従姉「む~……」

バチバチ…!!

兄「……どうぞ朝まで頑張って」スタスタ…

~兄自室~

兄「……はぁぁぁぁ……」ドカッ

兄「なんなんだよ、あの二人……」

兄「……」

兄(……まあ、俺のせいではあるんだろうけど。まったく、なんでこんな男がいいのやら……)

兄「……」

兄(……そう言えば、従姉が言ってたあれって……)

――じゃあさ、約束してよ。全部話したら、約束、守ってくれるって――

兄(……あれ、どういう意味だったんだろうな。約束を守ることを約束って……わけわかんねえな……)

兄「……俺、なんか約束したのか?」

兄「……」

兄「……」

兄「……思い出せん……」

兄「だああああ!なんだかすっげえイライラする!」

兄「……はぁ」

兄(何約束したんだよ、俺……)

~学校~

兄「――はぁぁぁぁ……」

後輩「どうしたんですか?大きなため息を吐いて……」

妹「……従姉」

兄「そう、それ。なんかもう勢いがね。こっちの都合お構いなしに常時フルスロットルだから、疲労が半端ないんだよ」

妹「……」コクリ……

後輩「パ、パワフルな人ですからね……」

兄「……」

兄(……パワフル、か……。ほんと、昔のあいつからすれば、想像も出来なかったな……)


兄「……ん?んん?」ゴソゴソ…

妹「……?」

後輩「先輩、どうしたんですか?」

兄「…………弁当忘れた」

妹「……ドジ」

兄「お、俺の飯……」ガクリ

後輩「あ、あの……私のでよければ……」

ザワザワ…!!
ザワザワ…!!

兄「ん?」

妹「……?」

後輩「あら?なんだか騒がしいですね……」

兄「正門の方からみたいだけど……」

妹「……気になる」

兄「そうだな。……見に行くか」

後輩「はい」

スタスタ……

~正門付近~

ザワザワ……!!
ザワザワ……!!

兄「……なんだぁ?この騒ぎは……」

妹「……人、たくさん……」

後輩「なんか、みんな目が輝いてますね……」

兄「……芸能人でもいたのか?」

???「――あ!いた!おーい!」

兄「……」

妹「……」

後輩「……どこかで、聞いたことがある声ですね……」

兄「……」

妹「……」

???「あれぇ?聞こえないのかなぁ……おおおおおおいぃ!!」

後輩「……こっちに向かって、更に叫んでますよ?」

兄「……」

妹「……」

???「――うおおおおおおおおいいぃぃ!!!」

兄「……」

妹「……」

後輩「せ、先輩、あの人……」

兄「――目を合わせるな」ザッ――

妹「即時撤退……」ザッ――

後輩「え?え??」

???「待たんかぁぁぁぁい!!」

ダダダダ――!!

兄「――ッ!」

妹「き、来た――!」

ズザザザザ……!!

従姉「――なんで無視するのよ!!」

兄「……やっぱ、従姉か……」

妹「……悪夢……」

従姉「疲れた顔するなぁぁ!」


ザワザワ……
ザワザワ……

従姉「酷いじゃない!私と分かって逃げるなんて!」

兄「そりゃそうだろ。見てみろ周りを」

ザワザワ……
ザワザワ……

兄「これだけ人が集まってたら、好奇の目に晒されること必至だったから撤退したかったんだよ。てか、あんた何しに来たんだよ」

従姉「何しにとは失礼ね!――あんたの弁当、持ってきてやったのに」プラプラ

兄「――!なんと!グッジョブだ従姉!おかげで助か――!」

従姉「――だぁめ」ヒョイッ

兄「あ!?なんでだよ!」

従姉「わざわざ持ってきたんだよ?言葉が足りないんじゃないの?」

兄「そ、そうだった……。――ありがとうございました、麗しきお姉様。おかげで助かりました」

従姉「うむ、よろしい」

従姉「はい、これ」

兄「ありがとう!助かった!」

従姉「まったく……世話のかかる旦那さんだね」

『だ、旦那さん!?』ザワザワ……!!

兄「……ちょっと従姉。こういうところでそういう発言は止めてくれ。いらぬ誤解が……」

従姉「なぁに照れてんのよ。――私とあなたの仲じゃない……」

『私とあなたの仲!!??』ザワザワザワザワ……!!

兄「だーかーら!止めろっての!」

従姉「はいはい」テヘッ

妹「……」

後輩「……」

従姉「……じゃあ、私は帰るから」

兄「あ、ああ。ありがとうな」

従姉「いいって。じゃあね」タタタ…

兄「……」

兄(わざわざ届けるあたり、優しいんだけどな。このまま帰さず、ジュースくらい奢ってもよかった気が――)

従姉「――早く帰ってきてね!あなた!」

『あ、あなた!?』ザワザワザワザワ……!!

兄「早く帰れ!!!」

~屋上~

兄「……ほんと、エライ目に遭ったよ……」

妹「兄さん、囲まれてた……」

後輩「あれだけ綺麗な人に、あんなこと言われてましたし……みんな興味津々でしたね」

兄「従姉め……嫌がらせかよ……」

妹「……」

後輩「……なんか、羨ましいな……」

兄「……え?」

後輩「先輩と従姉さんの関係ですよ。従姉さんと話すとき、先輩、すごく自然体でいるような気がして……」

妹「……」

後輩「なんて言うのかな。うまく言えませんが、なんとなく、私なんかじゃ入り込めないような……先輩と従姉さん、二人だけの空間があるような、そんな感じでした」

妹「……」

兄「……え、ええと……」

後輩「……すみません、変なこと言って。――私、先に教室に戻りますね……」タタタ…

兄「あ、おい!」

兄「……」

妹「……私も、戻る」スタスタ…

兄「え?あ、ああ……」

兄「……」

兄「……なんだよ、あいつら……」

~自宅~

兄「ただいま……」

タタタ……

従姉「おお!おかえり!」

兄「あ、ああ……」

従姉「今お茶いれるからさ。座ってなよ」

兄「あ、ありがと……」

従姉「♪~」

兄「……あ、あのさ……」

従姉「ん?なに?」

兄「従姉さ、なんでここにいんの?」

従姉「なんでって……そりゃもちろん、兄と……」

兄「誤魔化すなよ。前も言ったけど、従姉はほこそこ美人だし、男勝りな行動力もある。彼氏なんてすぐ見つかるだろ。こんなとこいないで、さっさと結婚相手見つけろよ」

従姉「相変わらずところどころ引っ掛かるけど……まあいいや。ごめんね。そういうの、パス」

兄「パスって……」

従姉「いやだって、私が好きなのは兄だけだし」

兄「だから、そういう冗談は――」

従姉「――冗談だと思う?」

兄「……え?」


従姉「……」

兄「……」

従姉「……なんてね。まあそれは置いといて、それは私の勝手だからさ。見逃してよ」

兄「え、ええと……」

従姉「じゃあ、ちょっと買い出し行ってくるね」タタタ……

兄「あ、ああ……」

兄「……」

兄(……冗談、だよな……?)

~妹自室~

妹「……」

――従姉さんと話すとき、先輩、すごく自然体でいるような気がして……――

――先輩と従姉さん、二人だけの空間があるような、そんな感じでした――

妹(……やっぱり、後輩ちゃんもそう思ってたんだ……)

妹(兄さんと従姉……私にはない二人だけの関係、思い出……)

妹(……私、嫉妬してる?嫌な女だな……)

妹「……」

――コンコン

妹「……はい」

従姉「……妹ちゃん、ちょっといい?」

妹「――ッ」

従姉「少し、話したいんだけどさ……」

妹「……――どうぞ……」

従姉「じゃあ、入るね……」

――ガチャ

妹「……」

従姉「……」


………………バタン


従姉「……ここに入るの、久々だなぁ……」キョロキョロ

妹「……」

従姉「妹もすっかり女の子なんだね。時間の経過を思い知るよ」

妹「……そんな話、しに来たの?」

従姉「……まさか。もう分かってるよね?――のこと」

妹「……なに?」

従姉「そう身構えなくていいって。私も別に、食って掛かろうってわけじゃないし。ただなんとなく、妹の気持ちを聞こうと思って」

妹「……」

従姉「――兄のこと、好きなんでしょ?兄妹とかじゃなくて」

妹「――うん」

従姉「……ずいぶんはっきりと言えるようになったね」

妹「あの頃とは、色々違うし」

従姉「けっこう。――ただ、私も“あの言葉”を訂正するつもりはないからね。覚えてる?」

妹「……忘れたことない。忘れれない」

従姉「まあ、そうだろうね。私も若かったからねえ……

妹「……」


妹「……つまりは、宣戦布告しに来たと?」

従姉「そんな挑発的なものじゃないよ。ただ、妹、まだ変わってないのかなぁって思って」

妹「……それを確かめて、どうするつもり?」

従姉「どうもしないよ。妹が何を想ってても、結局のところ、私には関係ないし」

妹「……その言葉、どう見ても挑発してる」

従姉「そうかな?まあ許してよ。こういう性分なんだ」

妹「……」

従姉「……ただ、忘れないでよね。妹のその気持ち……それを思うには、相当な覚悟がいることを、ね……」

妹「……分かってる」

従姉「まあ、それは私も同じなんだけどね……」

妹「……」

従姉「とにかく、話はそれだけ。お邪魔したね」スクッ

妹「……」

従姉「……じゃあ、お休み……」――ガチャ

妹「――従姉」

従姉「……?」

妹「私は、あの時とは違う。――負けないから」

従姉「……それで、いいんじゃない?」クス…

妹「……」

従姉「……じゃあ、今度こそお休み……」ガチャ……

妹「……」

妹「……絶対、負けない……」

~街外れ~

トボトボ…

兄「――はああぁぁ……」

兄「なんなんだよ、あいつら。なんか、急にギスギス度が2倍か3倍になったぞ……」

兄「とても家にいられねえよ……」

兄「……」

兄「……昔は、もっと仲良かったはずなんだけどな……」

兄「……」

トボトボ……

兄「……ん?あれは……」

後輩「……」スタスタ…

兄「後輩?なんでこんなところに……。――おーい!」タタタ……

後輩「……え?先輩?こんなところでどうしたんですか?」

兄「ちょっと散歩にな。それより、後輩こそこんなところで何してんだ?」

後輩「ええと……ちょっとこっちに用事がありまして……」

兄「用事?」

後輩「は、はあ……」

兄「……?」


兄「……もしかして……」

後輩「……?」

兄「……もしかして、人には言えないようなことをするために……?」

後輩「ち、違いますよ!」

兄「だ、だよな……後輩に限ってそんなことは……」

後輩「……でも、人にあまり言いたくないってのは、あるかもしれませんね」

兄「――ッ!それはつまり……法に触れるようなことを……!?」

後輩「してません!」

兄「わ、分かってるよ。冗談だよ冗談」

後輩「もう……」


兄「で?本当は何してたんだ?」

後輩「……」

兄「まあ、言いたくないなら無理には聞かないけど……」

後輩「そんなわけじゃないんですけど……ちょっと恥ずかしくて……」

兄「そ、そうなのか?」

後輩「はぁ……なんでしたら、一緒に行きますか?」

兄「行くって……どこへ?」

後輩「来れば分かりますよ。どうします?」

兄「そうだな……ちょうど暇だったし、連れてってくれよ」

後輩「わかりました!」

スタスタ…

~保育園~

兄「……ここは……隣町の保育園?」

後輩「はい」

兄「こんなところで、何をするつもりなんだ?」

後輩「はい、実は―――」

子供「――あ!お姉ちゃんだ!」

子供「お姉ちゃん!」

ワアアアアアアアア…
ダダダダダダッ――

兄「うおっ!?なんだ!?」

子供「お姉ちゃん遊ぼ!」

子供「早く早く!」

後輩「うん、ちょっと待ってね。――先輩、私ちょっと先生たちに挨拶してきます」

兄「あ、ああ……」

後輩「少し待っててくださいね」タタタタタ…

兄「……」

子供「お兄ちゃん?」

兄「え?な、なに?」

子供「今日は、お兄ちゃんも遊んでくれるの?」

兄「へ?」

子供「違うよ!この人は、お姉ちゃんの彼氏さんなんだよ!」

子供「え~!?そうなの!?」

ガヤガヤガヤガヤ…

兄「……」

兄「……最近の園児って、進んでるんだな……」


後輩「――待ってよー!」

子供「お姉ちゃんが来た!」

子供「逃げろ逃げろ!」

ワアアアアアアアア…

兄「……」

先生「――こんにちは」

兄「え?――あ、ああ……こんにちは」

先生「ええと、後輩さんと同じ学校の方……でいいのかしら?」

兄「はい、まあ……」

先生「今日は来てくれてありがとうね。ゆっくりしていって」

兄「ありがとうございます……」


兄「……あの」

先生「ん?」

兄「後輩は、いつも来てるんですか?」

先生「ええ。毎日というわけじゃないけど、頻繁に来てはこうして子供達と遊んでくれてるのよ」

兄「へえ……」

先生「子供達もすっかり懐いてしまって、来るたびにああなの。追いかけて追いかけられて、一緒に歌を歌って……子供たちは、きっと後輩さんのことを見抜いてるんだね」

兄「見抜く?」

先生「子供ってね、思った以上に敏感なのよ?少し落ち込んでたり嬉しいことがあったら、真っ先に言ってくるのよ。“先生、何かあったの?”って。曇りない心って言うのかな。なんか、分かっちゃうみたいなのよ」

兄「そうなんですか……」

先生「だから、こうして子供達に懐かれる後輩さんは、きっと綺麗な人なのよね。綺麗ってのは、心のこと。もちろん見かけも可愛らしいんだけど、それ以上に内側が綺麗なのよ。
だから子供達も安心して笑顔を向けれるし、背中を追えるのよ」

兄「……」

先生「……そして、きっとあなたもいい方ね」

兄「……そんなことないですよ」

先生「謙遜しなくていいのよ。だって子供達、あなたを見た瞬間話しかけたでしょ?それが、なによりの証拠よ」

兄「……はぁ」

先生「……まあ、とにかく今日はありがとうね。――先輩さん……」

兄「……あれ?俺、名乗りましたっけ?」

先生「フフ。いつも後輩さんから聞いてましたし。あなたのこと」

兄「は、はぁ……」

先生「それじゃあ、私は仕事に戻りますね。――後輩さんと、仲良くね……」ニコッ

スタスタ…

兄「……」

兄「……何か、誤解されてね?」

~夕方~

スタスタ…

兄「――すっかり遅くなったな……」

後輩「すみません先輩。一緒に来てもらって……」

兄「ああ、それはいいんだよ。俺も楽しかったし」

後輩「そう言ってくれると私も嬉しいです。……先輩、子供達に大人気でしたね」クスッ

兄「後輩ほどじゃないよ。それに、あれはただ単に遊具か何かと思われてる感があったぞ。追いかけまわされしがみ付かれ……子供って、パワフルだな……」

後輩「だから大人気なんですよ。子供達、本当に楽しそうでしたし」

兄「……ところでさ、どうしてあの保育園に行ってるんだ?」

後輩「……夢、なんですよ」

兄「夢?」

後輩「はい。私、保育園の先生になりたいんです。だからああして、子供が好きなので」

兄「へえ……なら保育園訪問は、さしずめ現場実習ってところか」

後輩「そういう固い感じではないんですが……でもやっぱり、楽しいですね。ああして子供達と接していると、毎回思うんです。ああ、私はやっぱり保育園の先生になりたいって。
もちろん楽しいだけじゃないのは分かってます。先生になれば大変なことも多いとは思いますが……それ以上に、なりたい気持ちが強いんです」

兄「……そっか。なれるといいな。保育園の先生……」

後輩「はい!私、頑張ります!」


兄「……」

後輩「……あ、でも、あんまり人に言わないでくださいね?恥ずかしいですし……」

兄「ああ、それは分かってるけど……。――なあ、飯食いに行くか?」

後輩「え?」

兄「今日は驕ってやるよ。なんか食べに行こうぜ」

後輩「い、いいんですか?」

兄「大丈夫大丈夫。夢を追っかける後輩への、心ばかりの援助だよ。後輩が食べたいのに連れてってやるよ」

後輩「……ありがとうございます!」

兄「じゃあ、さっそく行くか」

後輩「はい!」

スタスタ…

なんか悪いがおごるの漢字が間違ってる可能性

>>291
すまん
書き溜めしてないから、書きこんでそのままレスしてるんだよ
細かい誤字は脳内変換で頼んます

~自宅~

カチ……カチ……

妹「……」

従姉「……」

妹「……兄さん、遅い……」

従姉「そうだね……何してるんだか……」

妹「……まさか……」

従姉「……女?」

妹「……」

従姉「……」

妹「……」スクッ

従姉「……」スクッ

妹「……従姉、なんで立つ?」

従姉「……そういう妹こそ……」

妹「……」

従姉「……」

妹「……」

従姉「……」

妹「……」ダダッ――

従姉「……」ダダッ――

ダダダダダダッ―――

――――ガララッ!!!

~商店街~

後輩「――すみません、先輩。すっかりご馳走になってしまって」

兄「いやいいんだよ。飯奢るくらいでそんなに恐縮された方が困るぞ」

後輩「はぁ……」

兄「それに、言葉が違うぞ?年上から奢られたら、すみませんじゃないだろ?」

後輩「……そうですね。――ありがとうございました、先輩」

兄「そうそう。その言葉」

後輩「……先輩、私、頑張りますね」

兄「保育士になるのか?後輩ならきっといい保育士になるよ。俺が保証する」

後輩「ありがとうございます。……ですが、私が言ってるのはそれだけじゃないんです」

兄「え?」

後輩「――“色々”、ですよ」クスッ

兄「色々?」

後輩「はい。色々です」

兄「……よく分からんが、とにかく頑張れよ!」

後輩「はい!」

兄「まあ、今日は遅いから、家まで送るよ」

後輩「そんな……悪いですよ……」

兄「気にすんなよ。これは俺のワガママなんだからな」

後輩「……分かりました。でしたら、お願いしますね」

兄「オッケー!」

スタスタ…

~自宅付近~

タタタタタ…

妹「……」タタタタタ…

従姉「……」タタタタタ…

ズザザ…!

妹「……従姉、兄さんいた?」

従姉「いない。いったいどこに行ったんだか……」

妹「……」

従姉「……」

妹「……まさか……」

従姉「……今晩は、女と……」

妹「……」

従姉「……」

妹「……兄さん、許さない……」メラメラ…!!

従姉「帰ってきたら、たっぷり話を……」メラメラ…!!

スタスタ…

兄「………何してんだ?こんなとこで……」

妹「―――ッ!!現れたな!」

従姉「――兄!!見つけた!!」

兄「……へ?」


妹「兄さん……」

従姉「今まで何してたのよ……」

兄「何って……ちょっと後輩と飯を……」

妹「――ッ!」

従姉「――ッ!」

兄「な、なんだよ……」

妹「……兄さん?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……詳しく、聞かせてもらおうか……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……お前ら、怖いんだけど……」

妹「問答無用……」ガシッ

従姉「言い訳なら、自宅で聞こうじゃない……」ガシッ

兄「な、なんだよお前ら!引っ張るなよ!おい!」

ズルズル……

いきなり質問で悪いけど、お前らツンデレ要素っているか?

>>302
もらおうか
むしろお願いします(切実)

つまらん質問すんなよ







お願いします(土下座)

>>303->>305
承知

~翌日(夕方)~

兄「――ふぁぁあああぁぁ……」

妹「……兄さん、大きな欠伸……」

兄「眠いんだよ……おかげで授業中居眠りして怒鳴られるし……」

従姉「どうせ夜更かしでもしたんでしょ?自業自得よ」

兄「誰のせいだよ!昨日夜遅くまでどこで何をしてたとか尋問しまくったくせに!」

妹「……チッ」

従姉「さ、テレビでも見よ」

兄「お、お前ら……!」ワナワナ…


――ピンポーン


兄「……ん?」

妹「……客人?」

従姉「こんな時間にか?」

ピンポーンピンポーンピンポーン…!!

兄「せっかちなお客さんだな……はーい」タタタ…

妹「誰だろ、こんな時間に……」

従姉「まったく、非常識にも程があるね」


兄「――お、お前は……!!」

妹「……ん?兄さん?」

従姉「なんだろ……行ってみようか」

タタタ……


兄「……」

タタタ……

妹「兄さん、どうしたの?」

従姉「大声出してどうしたんだよ……ん?」

???「――やっぱりここにいたのか……やっと見つけたよ」

従姉「げげっ!!何であんたがここに!?」

兄「……従姉のその反応……やっぱりこいつは……」

従妹「――家に帰るよ、姉ちゃん……」

従姉「い、従妹!?」


兄「そうか……やっぱ従妹か……」

従妹「……兄、気安く呼ばないでくれない?だいたいアタシは、こんなところに来るつもりは……」

兄「――いやぁ!懐かしいな!」

従妹「……へ?」

兄「何年ぶりだよ従妹!こんなに大きくなって!」ナデナデ

従妹「――ッ!さ、触るんじゃないよ!」バッ

兄「なんだよ従妹。俺を忘れたのか?」

従妹「そんなわけないだろ!アタシは、アンタが大っ嫌いなんだよ!」

兄「相変わらず冷たいなぁ従妹は。親戚だろ?」

従妹「だから!気安く呼ぶな!そもそもアタシは……!!」

妹「……従妹……」

従妹「はっ――!」

妹「……久しぶり」

従妹「――妹さん!」

ダダダダッ
―――ガシッ!

従妹「会いたかったよ妹さん!」スリスリ

妹「い、従妹……苦しい……」

兄「……相変わらず、妹ラブなんだな……」

従妹「……」


兄「それにしても、本当に懐かしいな従妹」

従妹「だから気安く呼ぶなよ!兄!」

兄「冷たいなぁ。昔あんなに遊んだ仲なのに……」

従妹「あれは妹さんと遊んでたんだよ!」

兄「こらこら。言葉遣いが悪いぞ?確か、今中学生だろ?もう少し穏やかな口調に……」

従妹「余計なお世話だよ!」

妹「……従妹、何しに来たの?」

従妹「え?――ああ、そうだった!」

従姉「……」

従妹「姉ちゃん、家に帰るよ」

従姉「い、いや……私は……」

従妹「つべこべ言わない!お父さんもお母さんも待ってるんだからね!」

兄「……待ってるって……どういうことだ?」

従妹「うるさい!部外者は黙ってろよ!」

兄「部外者って……凹むぞ……」

妹「……従妹、事情説明して?」

従妹「妹さん……分かりました」

兄「……おい」

従姉「……」

~居間~

兄「……で?用件はなんだよ、従妹……」

従妹「アンタに呼び捨てにされたくないんだけど……まあいいや。
――その理由、姉ちゃんに聞けば?」

兄「え?」

妹「従姉に?」

従姉「……」

従妹「なんだ。何も話してないんだね。――結婚のこと」

兄「け、結婚!?」

妹「―――!」

従姉「け、結婚なんてしないよ!」

従妹「まだそんなこと言ってるわけ?いい加減諦めたら?」

従姉「そんな親が勝手に決めた相手なんかと、結婚するわけないでしょ!?」

従妹「勝手に決めないと、姉ちゃんいつまで経っても結婚なんてしないだろ……」

従姉「わ、私は……!!」

従妹「――兄が好き。分かってるよ、言いたいことは」

従姉「だったら――!」

従妹「……あのね姉ちゃん。相手はいいとこの御曹司だよ?姉ちゃんに一目惚れしてくれたから、こんな話になってるのに……。せっかく掴める幸せを、みすみす逃すわけ?」

従姉「……」

従妹「分かったら、さっさと家に――」

兄「――ちょっと待った」

従姉「――ッ!」

兄「……」


従妹「……なんだよ、兄」

兄「……なあ従妹、お前、従姉の今の状況、何とも思わないのか?」

従妹「……別に」

兄「――……そうか……」スクッ

従妹「な、なに?」

妹「……兄さん?」

従姉「……」

兄「……従姉、行くぞ」グイッ

従姉「え?――キャッ!」

スタスタ……

兄「……」

従姉「ちょ、ちょっと兄!行くってどこへ!?」

兄「……そんなもん決まってるだろ?」

従姉「え!?」

兄「――お前んちだよ」

従姉「――ッ!?ちょ、ちょっと兄――!!」

――ガララッ!!
ピシャッ――!!

従妹「……な、なんなの、いったい」

妹「……あ~あ」

従妹「……?」

妹「ああなった兄さん、止めれない」

従妹「……え?」



スタスタ……

兄「……」

従姉「ちょっと兄!行ってどうするの!?」

兄「叔父さんと叔母さんに、話をする」

従姉「え!?」

兄「嫌なんだろ?俺の家に来た理由も、それが原因なんだろ?」

従姉「そ、それは……」

兄「……俺さ、思い出したんだよ、お前との約束……

従姉「……え?」

兄「バカみたいだな、俺。今の今まで、すっかり忘れてたよ。従姉がどんな気持ちで俺の家に来たのか……全然分からなくてさ」

従姉「……」

兄「――だから今、約束を守るんだよ」

従姉「……兄……」

兄「……」

従姉「で、でも、どうするの?」

兄「……」

従姉「……」

兄「……俺に、考えがある」

従姉「考え?」

兄「ああ。それはな――」

スタスタ……

~従姉実家~

従姉「……ちょっと兄!やっぱり止めようよ!」ヒソヒソ……

兄「今さら何言ってんだよ!大丈夫だって!」ヒソヒソ……

従姉「ほ、ホントに?」ヒソヒソ……

兄「ああ。絶対大丈夫!……たぶん」ヒソヒソ……

従姉「た、たぶんってなにさ!」ヒソヒソ……

兄「ええい!グダグタ言ってないで行くぞ!」ヒソヒソ……

従姉「あ!ちょっと――!」ヒソヒソ……


――ピンポーーーン


???「――はぁ~い」

――ガララッ

???「……あら?従姉……と、兄ちゃん?」

従姉「……」

兄「……ご無沙汰してます、叔母さん」


叔母「ほんとに久しぶりね~!……で、どうしたの?」

兄「はい、実はお話があって……ほら、従姉」

従姉「う、うん……」ズイッ

叔母「従姉……」

従姉「……お、お母さん……あのね……」

叔母「……」

従姉「……け、結婚のことなんだけど……」

叔母「……うん……」

従姉「……わ、わた、わたわた……私……」アタフタ

叔母「……?」

従姉「わ、わわ、わた……」アタフタアタフタ

兄「……まったく……」ズイッ

叔母「……兄ちゃん?」

兄「……従姉の結婚の話、なかったことにして下さい」

叔母「……え?」

兄「叔母さんには黙ってましたが、実は俺たち……」

従姉「……」

叔母「……?」

兄「……俺たち……――付き合ってるんです」

叔母「………………へ?」

従姉「~~~~ッ/////」

~従姉実家(居間)~

兄「……」

従姉「……」ビクビク

叔母「……」

叔父「……それで?どういうつもりなのかな?兄くん?」

兄「……どうもこうも、そのままの意味です。俺と従姉は付き合ってます。だから、勝手に結婚を進められたら困ります」

叔父「……従姉、それは本当なのか?」

従姉「え!?そ、その……」

叔父「……」

兄「バカたれ!ちゃんと合わせろよ!」ヒソヒソ……

従姉「わ、分かってるわよ!」ヒソヒソ……

叔父「……どうなんだ?」

従姉「……そ、その通りよ。私と兄は、つ……つつ……つ、付き合ってるの……!」

叔父「……」

従姉「……は、恥ずかしくて死にそう……」ヒソヒソ……

兄「踏ん張りどころだぞ?もっと頑張れ」ヒソヒソ……

従姉「う、うん……!」ヒソヒソ……


叔母「……ねえ従姉。本当に、兄ちゃんのことが好きなの?」

叔父「……」

兄「……」――ドン

従姉「ひ、肘で突っつかないでよ!わかってるから!」ヒソヒソ……

従姉「……オホン」

従姉「ほ、本当に好きよ!もう好きすぎて、毎日一緒にいたいくらい!片時も離れたくないくらい!もうとんでもなく好き!大好きなの!!」

兄「……OK従姉、少し落ち着こうか。やりすぎだ」ヒソヒソ……

従姉「そ、そんなこと言ったってぇ……!」ヒソヒソ……

兄「もっと普通でいいんだよ!」ヒソヒソ……

従姉「……はぁ……もういっそ一思いにトドメさしてよ……」ヒソヒソ……

兄「しょうがねえなぁ……」ヒソヒソ……


兄「……ということです。叔父さん。僕らは、愛し合ってるんです。だから、もう一度言います。
――結婚を、取り消して下さい」

叔父「……」

叔母「……」

従姉「……/////」

従姉(もう、誰か殺して……)

叔父「……兄くん、キミの話は分かった」

兄「それじゃ……」

叔父「――だが、悪いが、キミに従姉を幸せに出来るとは、到底思えない」

叔母「……」

兄「……」

兄(……どストレートかよ……)

叔父「キミは、自分の言ってることの重みが分かってるのか?子供のキミにはまだ分からないだろうが、結婚は、生易しいものではない。
それまで赤の他人だった男女が、最期の時まで添い遂げるんだぞ?
気持ちだけが先行し、現実から目を背けて結婚すれば、そこには離別しか残らないものだ」

兄「……」

叔父「……兄くん。私は、キミのことは嫌いではない。だが、キミはまだ若すぎる。
自分の力で生きることすら出来ないキミが、気安く愛を語り、他人の結婚を否定するには、些か社会的能力が低すぎるんだよ」

従姉「と、父さん!なにもそこまで――!」

兄「――いいんだ従姉。……叔父さん、続けて下さい」

叔父「……もし仮に、キミが本当に従姉を好きなら、身を引くのも一つの手だと思う。
私は、従姉の幸せを心から願っている。添い遂げるだけが愛の形ではない。従姉が本当に幸せになるように背中を押すことも、立派な愛の形なんだよ。
――結婚は、ママゴトじゃないんだ」

叔母「……」

従姉「父さん……」

兄「……」



兄「……叔父さん。一つ聞きたいんですが……」

叔父「……なんだ?」

兄「従姉の幸せを心から願っている――今、そう言いましたよね?」

叔父「……それが?」

兄「じゃあ、もう一つ質問です。――今回の結婚について、当事者の従姉は嫌がってます。
それについて、どう思うんですか?」

叔父「……キミと同じように、従姉もまだ若い。幸せが何なのか、よく分かっていないのだろう。
だからこそ、私は親として、この結婚を成就させたい。
その先には、きっと従姉の幸せがあると信じている。――いや、確信してるんだよ」

兄「……それは、本心ですか?」

叔父「無論そうだ」

兄「……」

叔母「……」

従姉「……」

叔父「……」

兄「……その言葉が本心だというのは分かりました。これで俺も、気兼ねなく言えます。
――ふざけんな」

叔父「――ッ!!」

叔母「――ッ!?」

従姉「あ、兄!?」


兄「……従妹の幸せ?ふざけたこと言わないでくださいよ。それは、叔父さんの幸せでしょ?幸せに決まってるって決め込んで、自己満足にふけってるだけでしょ?」

叔父「……!」

兄「従姉の幸せは、従姉が決めるもんだ。どれだけ本人を想ってても、仮に世間的にそれが幸せと呼ばれることだとしても、本人がそうじゃないなら、それはただの“幸せの押し売り”なんじゃないんですか?」

従姉「……兄……」

叔父「……子供のお前に、何が分かる!」ガタッ

叔母「あなた……」

叔父「親が子供の幸せを願って何が悪い!それが親心だ!お前には分からんだろ!」

兄「確かに俺には分かんねえよ!分かんねえけど、それは親心なんかには思えないんだよ!自分のワガママを親心なんて言葉で隠してんじゃねえよ!そんなの、卑怯だろ!」

叔父「お、お前―――!!」

兄「本人の気持ちを無視して、そんなもんが幸せなんて言えるかよ!それで本当に幸せになるかよ!
――従姉の人生は、従姉のものだろうが!」

従姉「―――!」

叔父「だ、黙れ―――!!」

従姉「――父さん!」

叔父「―――ッ!?」

叔母「……従姉……」

兄「……」

従姉「……」


叔父「……従姉……」

従姉「……父さん……父さんの気持ちは、本当に嬉しい。私のことを想ってるのもよく分かった」

叔父「……」

従姉「……でも、私、自分の幸せは自分で見つけたい。自分の足で歩いて、自分の目で見て、自分の心で決めたい。それが、私を育ててくれた父さん、母さんへの恩返しだと思うから……だから……」

叔父「………」

叔母「……」

従姉「……だから、私は、兄と幸せになる。この人なら、きっと私は幸せになれる。父さん、母さん……私、幸せになるから……」

叔父「……」

叔母「……」

従姉「……」

叔父「……分かった……もう私からは、何も言わない……」

叔母「……従姉……幸せになってね……」ウル……

従姉「うん……!」

兄「……」

兄(……従姉、すげえ演技だな……。……でもこれ……結婚の挨拶になってね?)

~帰り道~

スタスタ…

兄「……よかったな。叔父さん分かってくれて……」

従姉「う、うん……」

兄「……」

従姉「……」

兄「……け、結婚の話、なくなってよかったな……」

従姉「う、うん……」

兄「……」

従姉「……」

兄「……なあ……」

従姉「……な、なぁに?」

兄「……従姉、なんか、変じゃね?」

従姉「そ、そんなことないけど……」

兄「……ホントに?」ズイッ

従姉「――ッ!!い、いきなり顔近づけないでよ!!////」

兄「……なぁに顔赤くしてんだよ……」

従姉「そ、そんなことないって!ホラ!さっさと帰るよ!」

スタスタ…

兄「お、おい!」

兄「……」

兄「……なんなの、いったい……」

~自宅~

兄「……ってなわけで、結局従姉の結婚は取り消しになったんだよ」

従妹「……フン」

妹「……兄さん、ちょっと無謀すぎ」

兄「まあいいじゃねえか。結果論で言えば、全部うまくいったんだからな。――なあ、従姉?」

従姉「う、うん……」

兄「……」

妹「……」

従妹「……」

従姉「……え?な、なに?」

妹「……兄さん、何した」ヒソヒソ…

兄「なんもしてねえよ。向こうの家を出てから、ずっとこんな感じなんだよ」ヒソヒソ…

従妹「お前が怒らせたんだろ、どうせ」ヒソヒソ…

兄「どうせってなんだよ。俺なりに一生懸命頑張ったんだぞ?ブチ切れる叔父さんと言い合ったりして……」ヒソヒソ…

妹「……もしかして……」ヒソヒソ…

従妹「……まさか、な……」ヒソヒソ…

兄「……なんだよ二人とも。自分達ばっかり状況把握みたいな顔するの止めてくれよ。俺にも教えろ」ヒソヒソ…

妹「……やだ」ヒソヒソ…

従妹「自分で考えろ」ヒソヒソ…

兄「うわ……冷た……」ヒソヒソ…

~庭~

従姉「……」

スタスタ…

兄「――何してんだ?」

従姉「え、ええ!?あ、兄!?」

兄「そんなに驚くことないだろ。不審者かよ、俺は」

従姉「ご、ごめん……」

兄「……で?何してたんだ?」

従姉「え?あ、ああ……ちょっと外の風に当たりに……兄は?」

兄「俺?従姉の姿が見えたから、様子見に」

従姉「そ、そうなんだ……////」

兄「なぜ赤くなる……」


従姉「……」

兄「……」

従姉「……」

兄「……」

従姉「……ありがとね」

兄「ん?」

従姉「今日のこと」

兄「ああ……。なんだよ藪から棒に。らしくねえぞ?」

従姉「私だって、お礼を言うことくらいあるわよ」

兄「そっか……。でも残念。お前が礼を言う必要はないな。何しろ俺は、叔父さんを怒らせただけで、何もしちゃいない。
――最後に叔父さんを言い伏せたのは、従姉の言葉だろ」

従姉「んん……でもやっぱり、ありがと」

兄「なんだよそれ」

従姉「いいから!――素直に言葉受けてよ」

兄「へいへい」


従姉「……ねえ、兄」

兄「ん?」

従姉「あの時の、約束なんだけど……」

兄「……ああ、ちゃんと覚えてるよ」

従姉「……忘れてたくせに……」

兄「……」ポリポリ

従姉「……でも、ちゃんと思い出したんだね」

兄「まあな。あの時、あの公園で泣いてた従姉に言ったことだろ?」

――何かあったらすぐに来て。何とかするから――

――……ホント?――

――うん。約束する――

――……じゃあ、約束……――

従姉「……今考えたら、かなりませてたよね。子供なのに何とかするとか……」

兄「まあ、特に考えがあったわけじゃないからな。でもあの約束があったから、従姉、俺の家に来たんだろ?」

従姉「……そうなんだけど……当の本人が忘れてるとは思わなかったけど……」

兄「……」ポリポリ


兄「でも、ホントよく覚えてたよな。子供のころの約束なのに」

従姉「……ホント言うとね、最近まで忘れてたんだ。でも、ふと思い出して……」

兄「……お前も、人のこと言えないじゃないか。そんな覚えてるか分からないような約束で、俺んとこに来たのか?」

従姉「まぁ、正直当てにはしてなかったけどね」

兄「………おい」

従姉「でも実際、こうして何とかしてくれたし。ホント、感謝してるよ」

兄「……そっか……」

従姉「……」

兄「……」


従姉「……そうだ。もう一つ忘れてた約束、あったよね」

兄「あれ?そうだっけ?」

従姉「うん。……今度は、そっちを守ってもらおうかな」

兄「……どんな約束?」

従姉「フフフ……結婚」

兄「…………は?」

従姉「結婚の約束。昔したでしょ?」

兄「いやいやいやいや。そんなのしてないだろ。うん、してない。……あれ?してないよな?」

従姉「ホントに?また忘れてるだけじゃないの?」

兄「……もしかして、適当に言ってないか?」

従姉「さあ……どうでしょ」クスッ

兄「記憶の刷り込みかよ。あぶねえあぶねえ」

従姉「フフフ……」

兄「まったく……。で?これからどうするんだよ」

従姉「……そうね。まだ考えてない。どうしよっかな……」

兄「……会社を辞めたのは、本当なんだな……」

従姉「まあね。結婚させられそうになった相手ってのが、その会社の社長の息子だったし」

兄「そりゃ気の毒に」

兄(……そう言えば、相手の男ってどう思ってるんだろうな……)

従姉「……とりあえず、これからのことは明日からゆっくりと考える。今日は、ゆっくりと月を見てたいから」

兄「……そうだな……それでいいと思う」

従姉「うん……」

~翌日~

従姉「―――ってことで、今日からしばらくここに住むから!」

兄「……」

妹「……」

従妹「……」

従姉「……なんなの、その目は。何か言いたげね」

兄「質問……」

従姉「何かな?兄くん?」

兄「……ゆっくり、考えるんじゃなかったのか?」

従姉「そうそう。ゆっくり考えるのよ。――ここで」

兄「なぜここで……実家帰れよ」

従姉「嫌よ。だってここに住みたいし」

兄「子供かよ」

従姉「だってここなら、ゆっくり出来るじゃない。……あ、アルバイトくらいしたいかな。ずっと家にいるのもあれだし」

兄「……ノリが完全にフリーターだなおい」


妹「……従姉」

従姉「何かな?妹くん?」

妹「……いつまで、ここにいるつもり?」

従姉「そんなの決まってるじゃない。これから考える」

妹「決まってないのを決まってると言うとは……」

従姉「細かいことは気にしないの。まあそのうち、やりたいことも見つかるだろうから気にしないで」

妹「気にしたくはないけど、うるさいから気に止まってしまう」

従姉「うるさくしないから!大丈夫だから!お姉さんを信じなさい!」

妹「……既にうるさい」


従妹「姉ちゃん!」

従姉「何かな?従妹くん?」

従妹「こんなとこにいないで、さっさと帰ろうよ!」

従姉「やだ」

従妹「姉ちゃん!」

従姉「これは私の意志なの。私が、ここにいたいの。だから帰らない」

従妹「何でだよ!姉ちゃんには、帰る家があるだろ!?もう逃げる必要もないんだろ!?」

従姉「それは……」チラッ

兄「……俺に助けを求めるなよ」

従姉「えへへへ……////」

妹「……」

従妹「……そういうことかよ。もういい!」ダッ

従姉「あれ?どこ行くの?」

従妹「帰るんだよ!じゃあな!」

ダダダダッ
――ガチャン

妹「……姉妹揃って、騒がしい……」

従姉「しょうがないなぁ……」

兄「……」

~路地~

スタスタ…

従妹「……」

従妹(なんだよ姉ちゃんのやつ……なんであんな奴がいいんだか……)

従妹「……」

スタスタ…
――ドガッ

男A「――いてっ!」

従妹「……」スタスタ…

男B「おい!ちょっと待てよ!」

従妹「あ?なんだよ」

男A「お前俺に当たっただろ!詫び入れろ詫び!」

従妹「広がってバカみたいに歩くから悪いんだろ」

男A「何だと!?」

男B「このガキ!!」――ドン

従妹「キャッ!――何押してんだよ!」

男A「うるせえ!ムカつくんだよクソガキ!」

従妹「ヒッ――!」

???「――待てよ!」

従妹「――ッ!?」

男A「……あ?」

男B「……誰だよ」

兄「……」

従妹「……あ、兄……?」


兄「……悪いな、そいつの知り合いなんだ」

男A「そうかよ。コイツ、俺にぶつかりやがったんだ」

兄「それは悪かった。こいつ素直じゃないからな。俺が代わりに謝るよ。それで勘弁してくれよ。じゃないと……」

男B「……な、なんだよ……」

兄「……後悔するぞ?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

男A「……ほ、ほう……どう後悔するんだよ……」

兄「知らない方がいい。知った時には、俺にもどうなるか分からないからな……」

男B「な、舐めんじゃねえよ!!」ズイッ

男A「こっち来やがれ!!」ズイッ

従妹「マズい……!兄!いいからどっか行けよ!」

兄「……仕方ねえな……」スッ


男A「……!!」

男B「……お、お前……!!」


ピッピッピッ……


兄「――あ、もしもし?警察ですか?」

男A「――ッ!?」

兄「はい……ちょっと男に絡まれてまして……あ、そうそう。そいつら、女の子も襲ってたんですよ」

男B「――ッ!?」

兄「はいもうボコボコにされそうなんですぐ来てください。めっちゃ急いで来て下さい。とんで来てください。サイレン鳴らして来てください」

男A「お、お前何言ってんだよ!」

兄「――ああ!男が武器を手にしました!俺死にそう!死にそうかも!」

男B「お、おい!やべえって!」ダッ

男A「ああ!逃げるぞ!」ダッ

ダダダダダ――

――ピッ

兄「……ふっ。口ほどにもない……」

従妹「……あんたに助けられたと思うと泣けてくるな……」


兄「ケガはなかったか?」

従妹「あるわけないだろ。いちいち聞かなくていい」

兄「相変わらず冷たいな……」

従妹「フン……」

兄「……」

従妹「……」

兄「……そういえばさ――」


――ウゥゥゥゥンン……


兄「……ん?」

従妹「……サイレン音?」

――ウゥゥゥゥンン……!!

従妹「なんか、近付いてきてるんだけど……」

兄「……あれぇ?」

――ウゥゥゥゥンン!!

従妹「……あんた、まさか……」

兄「……従妹……」

従妹「な、なに?」

兄「――逃げるぞ!」ダッ――

従妹「え?え?ちょっと!」ダッ――


ダダダダダ――!!

従妹「あんたバカだろ!?なんでホントに通報してんだよ!」

兄「そっちの方がホントっぽく見えるだろ!」

従妹「嘘の通報は捕まるんだぞ!?」

兄「嘘じゃないだろ!」

従妹「だったらなんで逃げんだよ!」

兄「なんとなくだ!」

従妹「ホントバカ!正真正銘バカ!」

兄「うるせぇ!黙って走れ!」

従妹「もう!バカ過ぎぃぃぃ!!」

ダダダダダ――!!

~公園~

兄「はあ……はあ……」

従妹「はあ……はあ……」

兄「……こ、ここまで来れば、大丈夫だろ……」

従妹「……ホント、アンタに借を作られたと思うと泣けるよ……」

兄「そう言うなって……まあ、無事で良かったよ」

従妹「……無事って言うのか?これ……」

兄「ハハハ……」ポリポリ

従妹「……」

兄「……」

従妹「……なんで、あそこにいたんだよ」

兄「え?」

従妹「アンタ、家にいたじゃねえか。なんで外いるんだよ」

兄「ああ、そういうこと。お前に、用があったんだよ」

従妹「アタシに?」

兄「そうそう。――ありがとな、従妹」

従妹「……は?」


従妹「なんのことだよ」

兄「お前、教えてくれたんだろ?従姉のこと。従姉の性格を一番知ってるのはお前だからな。大方、どうせ言えてないって思って、わざわざ俺んちに来たんじゃねえの?」

従妹「……んなわけあるか。アタシは、アンタのことご大嫌いだからな。妹さんに会えるのは嬉しいけど、それ以上にアンタと会うのは御免だ。
――まあ、姉ちゃん迎えにいかないといけないから、仕方なく来ただけだ」

兄「そうか?だったらなんで一人で来たんだ?
居場所分かるなら、叔父さんと叔母さんをつれてきた方が、従姉を家に帰しやすくなるだろうに」

従妹「……それは……」

兄「それにさ、思い出したんだよ。従姉と約束した時、お前、一緒にいたじゃねえか。ホントのとこ、お前、約束のこと覚えてたんじゃね?」

従妹「……考え過ぎだ。バカ」

兄「……そうかい。それなら、そういうことにしててやるよ。
――ただ、それでも言うぞ。ありがとな」

従妹「……フン」


兄「それにしても……」

従妹「……?」

兄「お前さ、言葉使い悪いけど、案外優しいよな」

従妹「……は?」

兄「いやいや、昔からそうだったんだけど、改めて思ったよ。だからこそ、お前のこと嫌いになれないんだよな。
――そういう姉ちゃん思いのとこ、俺は好きだぞ?」

従妹「――ッ!?な、何言ってんの!?」

兄「なに後退りしてんだよ。せっかく褒めてんのに」

従妹「ほ、褒めなくていいから!バカじゃないの!?////」

兄「お?照れてんのか?なんだ、お前でも女の子らしい反応するんだな」

従妹「て、照れてない!!////」

兄「まあまあいいじゃねえか。そういう照れ性なとこ、けっこう可愛いぞ?」

従妹「な――ッ!?」ピシッ

兄「……?」

従妹「~~~~ッ////」プルプル

兄「……どうしたんだ?」

従妹「……バ……」

兄「バ?」

従妹「――バカァァァァ!!!」ダッ――

兄「うおっ!?」

従妹「うわぁぁぁぁん……!!」

ダダダダダダ…………

兄「……なんだよ、いきなり……」

~自宅~

従姉「――はい兄。あ~ん……」

兄「……」

妹「……」

従姉「もう!口開けないと食べれないよ!?」

兄「……いや、自分で食べるから」

従姉「せっかくこうしてるのに!?」

兄「うん。自分で食べる」

従姉「ムキィィ!兄のイジワル!」

妹「……うるさい」

――ピンポーーーン

兄「ん?客か?」

妹「誰だろ……」タタタ……

従姉「もう……私達の時間を邪魔しないで欲しいよね」

兄「なぜ俺に同意を求める」

妹「……従妹、どうしたの?」

兄「……ん?」

従姉「……従妹?」


妹「何か用事?従姉に会いに?」

従妹「い、いや……そういうわけじゃないんですけど……」ポリポリ

妹「……?」

スタスタ……

従姉「……あんた、何してるの?」

従妹「ね、姉ちゃん……」

従姉「連れ帰ろうってなら、無駄だからね。私、ここにいたいし」

従妹「そ、そうじゃねえよ!」

従姉「はぁ?じゃあ何しに来たのよ」

従妹「そ、それは……」

スタスタ……

兄「なんだなんだ?やけに騒がしいな……」

従妹「――ッ!あ、兄!!」

兄「よう従妹。どうしたんだよ」

従妹「そ、その……ええと……」

兄「……?」

従妹「――こ、この前は、ありがとよ!」

兄「へ?」

従妹「……お、お礼、言えてなかったし……」

兄「……なんだ、そんなことか……」


兄「別に言わなくて良かったのに」

従妹「うるさい!黙って聞いとけ!」

兄「それ言いに、わざわざ来たのか?」

従妹「……」

兄「まあ、とりあえず上がれよ。茶くらい出すからさ」

従妹「そ、そこまで言うなら……」

スタスタ……

妹「……」

従姉「……」

妹「……これは……」

従姉「……春だねぇ……姉として喜ぶべきか、私個人として嘆くべきか……」

妹「……従姉は帰るべき

従姉「却下」

妹「……」

従姉「……」

~学校~

後輩「――先輩?どうしたんですか?」

兄「……え?」

後輩「なんか、物凄く疲れてますよ?」

兄「……そう見える?」

後輩「はい。もうはっきりと」

兄「ああ……ちょっと最近落ち着かなくてな」

後輩「……家、ですか?」

兄「そうそう」

兄(毎日あんなんだから、落ち着く暇もないし……)

~自宅~

兄『……』

妹『……』

従姉『……何であんたがここにいるの?』

従妹『あ、アタシは姉ちゃんを家に連れ帰るために……!』

従姉『その割には、毎日来てご飯食べて帰るだけみたいだけど?』

妹『……従妹、説明と行動が一致してない』

従妹『ご、ご飯くれるって言うから!』

兄『まあまあいいじゃねえか。飯も賑やかに食べた方が美味しいし。な?従妹?』

従妹『――ッ!こ、こっち見んなよ!////』

兄『えええ……』

従姉『……これは、重症ね……』

妹『……敵、補足……』

従妹『ちょ、ちょっと姉ちゃん!妹さん!』バン!

兄『ちょっと落ち着けよ従妹。ご飯中にいきなり席立つなって』

従妹『こ、こっち見んなって言ってるだろ!!////』

兄『えええ……』

妹『……従妹、まるで別人……』

従姉『……ホント、重症だね……』

~学校~

兄(――毎日こんなんなら、疲れて当然かもな……)

後輩「……先輩?」

兄「――え?な、なに?」

後輩「……先輩、さっきから乾いた笑みしか出てないですよ?」

兄「そ、そうかな……」

後輩「はい」

兄「ハハハ……」

後輩「……」

~放課後~

妹「……兄さん、帰ろ」

後輩「先輩、帰りましょ」

兄「おお、そうだな」

スタスタ…

兄「……ん?」

妹「……む?」

後輩「……?どうしたんですか?」

兄「……い、いや……あの正門にいるのって……」

後輩「正門?」

妹「……従妹」

後輩「え?」

従妹「……」


従妹「――あ!兄!妹さん!」タタタ…

妹「……」

兄「よぉ。どうしたんだよ、こんなとこに……」

従妹「え!?ええと……ちょ、ちょっと近く通りかかって……」

兄「近くって……確かお前の中学、隣町じゃなかったっけ?」

従妹「う、うるさい!こっち見んな!////」

兄「えええ……」

妹「……むむ」

後輩「……」

従妹「……ん?誰?そいつ……」

兄「え?ああ、この子は後輩。妹の同級生で友達だ」

従妹「……ふーん……」

後輩「……あ、あの……はじめまして……」ペコ

従妹「……ハジメマシテ……」

後輩「……」ビクビク

従妹「……」ジロジロ

~帰宅道~

スタスタ…

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

従妹「……」

兄「……」

兄(お、重い……)

妹「……従妹、今日も来るの?」

従妹「え?あ、はい。今日も姉ちゃんを説得しようかと……」

妹「……説得とは?」

従妹「ですから、家に帰るようにですよ」

兄「……」

兄(んなもん、まともに話したことないだろって、ツッコんでいいのだろうか……)

後輩「……」


後輩「……あ、あの……従妹さん?」

従妹「……あ?」ギロリ

後輩「――い、いや……」ビクッ

兄「何睨んでんだよ。怯えてるだろ?」

従妹「う、うるさい!そんなつもりはないんだよ!」

兄「いやいや、目が怖かったぞ」

従妹「うるさいうるさい!こっち見んなよ!」

兄「えええ……」

妹「従妹。後輩ちゃんは私の友達。粗相はダメ」

従妹「あ、はい……」

後輩「……」

従妹「……で?なに?」

後輩「い、いや……大したことないんですけど……」

従妹「……?」


後輩「従妹…ちゃんは、従姉さんの……?」

従妹「え?妹だけど?」

後輩「そ、そうなんだ……」

従妹「……?」

兄「姉妹なのに全然違うから、びっくりしてんだよ」

従妹「……そんなに違うか?」

兄「ああ。てか、単純にお前がパワフル過ぎるんだけどな。もっとも、ある意味じゃ従姉も十分パワフルだけど」

従妹「……何気にバカにしてないか?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

妹「従妹。どうどう……」

従妹「あ、はい……」

兄(魔物使いかよ……)


従妹「……おい兄」

兄「……なんだよ」

従妹「この後輩とかいう女とは、どういう関係なんだよ……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……は?」

従妹「だから!こいつとはどういう関係なんだよ!」

兄「ど、どうって……」

妹「……」

後輩「……」


従妹「……」

兄「……ええと……」

従妹「……いや、いい。やっぱ聞かないでおく」

兄「そ、そっか……」ホッ…

従妹「後輩……だったっけ?今から、兄んちに行くのか?」

後輩「……え?」

従妹「行くのか?行かないのか?」

妹「……」

兄「ちょ、ちょっと従妹……お前何言って――」

後輩「――行きます」

兄「……へ?」

従妹「……上等……」ニッ

スタスタ…

兄「お、おい!」

妹「……兄さん。帰ろ」スタスタ…

兄「え?いや、ちょっと……」

兄「……」

兄「……」

兄「……従妹……当然のように俺んち行くんだな……」

~自宅~

兄「……」

妹「……」

後輩「……」

従妹「……」

従姉「……で?結局また家に来たんだ……」

従妹「なんだよ、その冷たい視線は……」

従姉「べっつに~……」

妹「……従姉、ちょっと落ちついて」

後輩「……」

兄「ま、まあまあ……とりあえず、ご飯まで時間あるから、なんかしてようぜ」

妹「……何する?」

兄「そうだな……ベタに、トランプでもどうだ?」

従妹「……本当にベタだな」

兄「うるせえ!文句があるなら帰れ!」

従妹「も、文句なんてあるか!」

従姉「……じゃあ、ババ抜きでもする?」

後輩「そ、そうですね……」

~居間~

兄「――よっしゃ!上がり~!」

妹「……ぐぬ……」

従姉「くっそ~!兄が一抜けかぁ……」

後輩「先輩、強いですね」

従妹「……ババ抜きの場合、強いというか悪運が強いというか……」

兄「やかましい!……じゃ、俺はソファーにいるから、頑張れよ~」ヒラヒラ

妹「……くやしい……」

従姉「……」

後輩「……?従姉さん、どうしたんですか?」

従姉「……いや、兄が座ってるソファーって、確か二人用だったよな……」

従妹「それがどうしたんだよ」

妹「……今抜ければ、横並び……」

後輩「―――ッ!!」

従妹「―――ッ!!」

従姉「……そういうこと」

妹「……」

後輩「……」

従姉「……」

従妹「……」

妹「……絶対、負けられない」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「私も、負けません」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「あなたたち、私に勝てると思ってるの?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「絶っっ対……勝つ!!」ゴゴゴゴゴゴゴ……


妹「……私のターン……」

従姉「……来な、妹……」スッ――

妹「……」

妹(……従妹の手札は3枚……後輩ちゃんが4枚で、従妹は2枚……そして私も2枚……私が揃う確率は低い……でも……)

従姉「……」ニッ

妹(……従姉のこの表情……もしや、ババ持ち?だとしたら……どっち……)

従姉「……ほら、早くしなよ……」

妹「……チッ」

妹(……とりあえず、手を動かして探りを入れてみるか……)スッ

従姉「…………………ニッ」

妹(――ッ!こっちじゃない!こっちだ――!!)バシッ――!!

従姉「……」

妹「――ッ!?」

妹(バ、ババ!?まさか……!!)

従姉「……ふっ」

妹(は、謀られた――!!クソ――!!)


従姉「次は、私の番だね……」

後輩「……どうぞ」スッ

従姉「……」

従姉(とりあえず、ババは妹に送ったから、ここは何も考えずに取ってみるか……揃えば、私の勝ちだしな……)

後輩「……」

従姉「……これにしよう」スッ――

後輩「……」

従姉「……チッ」

従姉(揃わず、か……そうそう上手くはいかないか……)

後輩「……ほっ」


後輩「……で、では……」

従妹「……ギロリ」スッ

後輩「……」

後輩(こ、怖いよ~!睨まないでほしいな……)

後輩「……ええと……」

従妹「……早くしな」

後輩「う、うん………これ」スッ

従妹「……」

後輩「――ッ!やった!揃った!」ポイポイ

従姉「――ッ!」

妹「動いたか――ッ!」

従妹「クソ……!!」


従妹「じゃあ、アタシだね……妹さん」

妹「……ばっちこい」スッ

従妹「……」

従妹(……妹さんのさっきの表情からすると、おそらくババを引いたはず……だとしたら、この3枚のうち1枚にババが……)

妹「……」スッ

従妹「――ッ!?」

従妹(ま、真ん中を一段高くした!?心理戦のつもりか……!!)

妹「……」

従妹(どれだ……どれがババだ……)

妹「……」

従妹(妹さんの性格を考えるに、おそらくはアタシの裏の裏をかいてるはず……。私は今、無意識に真ん中のカードを嫌がった。だとするなら、左右のどちらかを引けば……)スッ

妹「…………ニッ」

従妹「――ッ!?」

従妹(この笑みは――!?……い、いや落ち着け。これこそ、妹さんの策略だ……!!)

妹「……」

従妹(――妹さん!すみません!!)バシッ

妹「…………………甘い」

従妹「――ッ!?」

従妹(ば、ババァァァ!?う、裏の裏の、更に裏をかかれたのか……!!)

妹「……」ニッ

従妹(……妹さん……さすがです……)ガクッ

従姉・後輩(あ、絶対ババ引いた……)

~1時間後~

兄「――ふぁぁぁあああ~……って、もうこんな時間か……」

兄「あいつら、やけに静かだな……何やって―――」

妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……マジかよ……まだやってるよ……」

兄(どんだけ白熱してんだよ。てか、ババ抜きってこんなに長期戦になるものなのか?)

兄(……こいつら、スゲエな……)

兄「……」

兄(……んんん……熱戦に水を差すのもあれだし、ジュースでも買って来るか……)スクッ

スタスタ…

妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

~さらに30分後~

従妹「――や、やったああああああ!!揃ったああああ!!」

妹「―――ッ!?」

後輩「えっ――!?」

従姉「し、しまった――!!」

従妹「アタシの、勝ちだッ!!」

妹「……む、無念……」ガクッ

後輩「残念です……」ガクッ

従姉「そんなぁ……」ガクッ

従妹「悪いね。じゃあ、おっさき~♪」タタタ…

スタスタ………ピタリ

従妹「……な、なあ……アタシも、終わったんだけど……」

従妹「……」

従妹「……」

従妹「……兄、横……座っていいか?/////」

従妹「……」

従妹「……?兄?」チラッ

従妹「……」

従妹「……」

従妹「……って!!いねえのかよおおおぉぉぉ……!!」ガクゥゥゥッ

~更に30分後~

兄「……いやぁ……立ち読みしてたらすっかり遅くなったな……」

妹「……」

後輩「……」

従姉「……」

兄「……どったの?なんか、通夜みたいな雰囲気に……」

妹「……兄、ご愁傷様」

後輩「先輩、逃げた方が……」

従姉「ま、空気読めなかった兄の自業自得だろうね……」

兄「え?え??」


ゴゴゴゴゴゴゴ……


兄「は――ッ!?」

従妹「……お帰り……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「お、おお……ただいま……」

従妹「……どこ行ってたんだ?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「ええと……ちょっとコンビニに……」

従妹「へえ………何も言わず、ね……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「そ、それは悪かったけど……」

兄(……そんなに一緒に行きたかったのか?)


従妹「さて……どうしてくれようか……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……と、ところでババ抜きはどうだったんだ?」

従妹「アタシが勝ったよ。――アンタの次に、ね……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「そ、そっか……なら、これ」

従妹「……プリン?これ、何?」

兄「賞品。少し高めだから、ありがたく食せ」

従妹「……く、くれるのか?」

兄「そうそう」

従妹「……あ、ありがと……」パァァァ

妹「……おそるべし」

後輩「あの従妹ちゃんを……」

従姉「ううむ……我が親戚ながら、感心するな……」

~2週間後~

スタスタ…

妹「……次は、塩と醤油……」

兄「まだ買うのかよ」

妹「家に足りないもの多い。最近消費激しいし……」

兄「……まあ、そりゃそうだろうな。何しろ、同居人が増えた上に、毎日その妹まで来てるし……」

妹「……後輩ちゃんも来てる」

兄「まあな。……まったく、家長たる父さんがあの調子じゃな」

妹「……娘が増えたみたいって、はしゃいでた。ちなみに、母さんも……」

兄「ハハハ……」

妹「……ちなみに、母さんはお嫁さん候補とか言ってた……」

兄「……笑えねえよ……」

スタスタ…


妹「……あ」

兄「どうした?」

妹「……」

兄「……ポスター見てんのか?どれどれ……」

『町対抗野球大会開催!選手求む!』

兄「……野球大会?お前、野球とか興味あったっけ?」

妹「……ポスターの下の欄……」

兄「下?」

『なお、MVPに選ばれた選手には、温泉ペア宿泊券プレゼント!』

兄「……以外と太っ腹だな……」

妹「……」

兄「……どうしたんだ?」

妹「……私、出る」

兄「……は?」

妹「さっそく登録してくる」

兄「いやいや、お前野球なんて出来るのかよ」

妹「大丈夫………昔、巨人の星の再放送見てたから」

兄「まったく自信の根拠になり得ない答えだな……」

妹「……MVP……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

~後日(球場)~

オッサン「――いやぁ!今日は本当にありがとう!君達みたいな若い人がいた方が、何かと有利だしな!」

兄「なんで俺まで……それに……」チラッ

妹「……なぜ、こうなった……」

従姉「それはこっちのセリフよ。なんで妹がいるのよ……」

妹「……MVP……」

従姉「……考えることは一緒ってわけね……」

兄「……はぁ」

オッサン「ええと……君達、同じチームだからね?」

妹「……分かってます」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「試合は勝ちますよ。勝たないとMVPに選ばれないし……」ゴゴゴゴゴゴ……

オッサン「……ね、ねえニイチャン。この二人、仲悪いの?」

兄「……気にしないでください」

オッサン「そ、そう?」


オッサン「大丈夫かなぁ……。――あっ!」

兄「……?どうしたんすか?」

オッサン「……敵チーム……隣の街の連中だよ……」

兄「……あれが……」

ザッザッザッ――

敵「……今日も、勝たせてもらいますよ」ゴゴゴゴゴゴ……

オッサン「なぁに。それはこちらのセリフですよ……」ゴゴゴゴゴゴ……

敵「それは無理だ。何しろこちらには、強力な助っ人がいますしね……」

オッサン「助っ人……?」

敵「フフフ……」

ザッ――

???「――こいつらに勝って、MVPに選ばれればいいんだな……?」

???「そういうことみたいです……」

兄「……おいおい」

妹「……なんと……」

従姉「……ホント、考えることは一緒ね……」

オッサン「……?知り合いなの?」

兄「はぁ……まぁ……」

従妹「――あれ?」

後輩「――先輩?それに、妹ちゃんに従姉さん?」

兄「……嫌ってほど、知り合いっす……」


童貞ヒキニートキモヲタの妄想劇いつまで続くんだ?

>>411
知らね
適当に書いてるし


妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴ……

兄「……」

オッサン「……ね、ねえ、あの4人、大丈夫?なんか、今にもケンカしそうなんだけど……」

兄(……いや、もうしてるんだけどな。視線の殴り合い的な……)

兄「……まあ、いつものことなんで……」

オッサン「そ、そう?」

兄「構わずとっとと始めて下さい。そっちの方がいいです」

オッサン「わ、分かった。さっそく始めようか……」

妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴ……

しかしこの>>1のSSを見てると童貞の妄想力って凄いなって思う
ここまでだと相当こじらせてるだろww


『――プレイボーール!!』

兄「俺達の先行か……で、相手ピッチャーが……

従妹「……」ザッ――ザッ――

妹「……従妹……」

従姉「これは……マズイね……」

兄「マズイ?」

従姉「うん。従妹、運動系は強いのよ。特に球技は、得意中の得意だからね。だからたぶん……」

従妹「――どぉりゃぁぁああ!!」

ビュオン――!!
――バシィィィィッッ!!

オッサン「――ッ!?」

『ス、ストラァァァイク!!』

従姉「……並み以上にこなしちゃうんだよね……」

妹「……速い……」

兄「いや、無理だろ……」

従妹「フフフ……」ゴゴゴゴゴゴ……

>>420
そんなに褒められたら照れます////


『――ストラァァァイク!!バッターアウト!!』

兄「……とまあ、あっという間に2アウト、と……」

妹「……次、私」スクッ

兄「え?妹なの?」

妹「……不満?」

兄「い、いや……不満ってわけじゃないんだけど……」

妹「……」

兄「……」

妹「……大丈夫。秘策がある」

兄「……秘策?」

妹「とりあえず、任せて」

兄「あ、ああ……」

妹「……じゃ」スタスタ……

兄「……大丈夫なのか?」


妹「……」ザッ――

従妹「……妹さん。アタシ、手加減しませんから」ゴゴゴゴゴゴ……

妹「……こい」ゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ザッ――

妹「……」

従妹「――どぉりゃぁぁああ!!」

ビュオン――!!
――バシィィィィッッ!!

『ストラァァァイク!!』

妹「……」

兄「やっぱ速ぇなぁ……こりゃ、無理だろ……」


従妹「フフ……アタシの球、どうですか?」

妹「…………ひどい……」グスッ

兄・従妹「へ?」

妹「こんなに全力で投げるなんて……従妹ちゃん、私怖い……怖いよ……」グス……グス……

従妹「ええ!?あ、ああ!す、すみません!」

妹「ぐす……ぐす……」

従妹「だ、大丈夫です!軽く投げますから!」

ポォォォイ……

後輩「――従妹ちゃん!ダメ!」

従妹「……へ?」

妹「――かかった……!!」ギラッ!!

ブオォォン――!!
――ガキィィィンン!!

従妹「なっ――!?」

ダダダダダダ――!!
――ズザザザザザ!!

『スリーベース!!』

後輩「妹ちゃん!体育は得意なんだよ!」

従妹「だ、騙しましたね……!!」

妹「ふっ……」ニヤリ

兄「…………汚ねぇ」


オッサン「何はともあれ、チャンスだ!!」

兄「そっすね」

オッサン「ここで4番が打てば、先制点だ!」

兄「そっすね」

オッサン「なら、頼んだよ!――兄くん!」

兄「そっすね」

オッサン「……」

兄「……」

オッサン「……」

兄「……は?」

オッサン「頼んだよ!兄くん!」

兄「いやいやいやいや!なんで俺!?」

オッサン「オーダー表に、そう書いたし」

兄「それがおかしいでしょ!ついで参加の俺が4番とか、どんだけ不安定なチームなんすか!」

オッサン「キミなら大丈夫だ!行ってこい!」

兄「……マジっすか……はぁ、どうなっても知らないですよ?」トボトボ……


兄「……よぉし……こぉぃ……」

従妹「……アンタ、やる気ある?か」

兄「安心しろ。全くない」キッパリ

従妹「……はぁ……アンタって……」

兄「どうでもいいから、さっさと投げてくれよ。早くベンチに座りたい」

従妹「ホントにやる気の欠片もないんだな……分かったよ」

兄「ほらほら。早くしろ」

従妹「いちいち言わなくても……いいって!!」

ビュオン――!!
――バシィィィィッッ!!

『ストラァァァイク!!』

兄「OK!ナイスピッチング!」

従妹「……調子狂うなぁ……」


――バシィィィィッッ!!

『ストラァァァイク!!ツー!』

従妹「フフ……」

従姉「こら兄!!真面目にやれ!!」

兄「真面目にしたって打てるかよ!!」

従妹「そうそう。アタシの球、手も足も出ないだろ……」

兄「ついでに口も出ないよ。……それはそうと、お前すげえな」

従妹「そ、そう?」

兄「うん。従妹がスポーツするの、初めて見るけど……ここまでとはな」

従妹「は、初めてだっけ?」

兄「ああ、初めてだ」

従妹「……!////」カァァァ

兄「……?あと1球だろ?早く投げろよ」

従妹「――ッ!こ、こっち見んなよ!////」

兄「……は?」

従妹「だから!こっち見んじゃねえよおおおお!!」ビュオン――!!

兄「へ――?」

――ドキャアアア!!!

兄「ぐぼぁっっっ!!!」

従妹・妹・後輩・従姉「あ……」

『で、デッドボール!!』

兄「……う、うぉ……」ヒュー……ヒュー……

従妹「……その……大丈夫か?」

兄「……し、死んだ……」


兄「……痛い……」

従妹「わ、悪かったよ……!」

兄「いや、もういいんだけどさ……」

従姉「――ここで、私の出番とはね……」ザッ――

従妹「……姉ちゃん……!」

従姉「あらかじめ言っておくね。――アンタは、私には勝てないよ」

従妹「へ、へえ……言ってくれんじゃん……」カチン

従姉「フフフ……」

従妹「……いいさ。アタシの球……打てるもんなら、打ってみ――!!」ザッ――

従姉「――従妹!兄が見てるよ!!」

兄「は?」

従妹「え"っ――!?////」

スポッ――
――ヒョロォォォ……

従姉「いただき――!!」

ブオォォン――!!
――ガキィィィンン!!

従妹「――ッ!」

従姉「作戦成功!!走れ走れー!」ダダダダ――!!

従妹「ひ、卑怯だ!!」

兄「……おっしゃる通りで」タタタタ……


兄「……初回から5点……なんだかんだで大量得点だなぁ」

従姉「私の作戦のおかげだね」

妹「……従姉、策士」

兄「……策士って言うのか?俺が見てるって言いまくっただけじゃねえか」

従姉「だからこそなの。従妹を見てよ」

兄「従妹?」チラッ

従妹「――……ぜぇ……ぜぇ……////」

後輩「……従妹ちゃん、大丈夫?」

従妹「……あ、兄……絶対許さない……!!!」メラメラ

兄(なぜ俺?)

妹「効果は抜群のようだ……」

従姉「さ!このまま畳み掛けるよ!!」

「おおおおおおおお!!!」

兄(……なんだかなぁ……)


従姉「――さて、ピッチャーは任せなさい!

兄「大丈夫かよ」

妹「……従姉もまた、球技得意」

兄「血は争えないってことね」

従姉「……さて、最初のバッターは……」

ザッ――ザッ――

従妹「……姉ちゃん……許さない……!!」ゴゴゴゴゴゴ……!!

従姉「従妹、ね……」

従妹「――こぉぉおおおいぃ!!!」

兄「……すげえ気迫……」

従姉「……」

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……従妹、兄の前でいいとこ見せ――」

後輩「――タイム!!」

従姉「……って、へ?」

後輩「ちょっと待って下さい」タタタタ……

兄「なんだぁ?」

妹「……後輩ちゃん?」


従妹「な、なんだよ後輩!」

後輩「いいから。耳、貸して」

従妹「……ん?」

後輩「……従妹ちゃん、先輩が見てるよ?」ヒソヒソ

従妹「――ッ!?だ、だからなんだよ!アタシは別になんとも――!!////」カァァァ

後輩「――だから、いいとこ見せたいでしょ?」

従妹「はっ――!////」

後輩「先輩にカッコいいところ見せたら、きっと、声をかけてくれるよ?先輩、そんな人だし」ヒソヒソ

従妹「……お、おぅ……////」ヒソヒソ

後輩「先輩が見てるなら、チャンスだよ!頑張って!」ヒソヒソ

従妹「……わ、分かってるよ!でも、アタシは別に……!////」ヒソヒソ

後輩「うん、分かってるから。ちょっと話したかっただけ。じゃあね」ヒソヒソ

タタタタ……


従姉「……もう、いい?」

従妹「う、うん……////」チラッ

兄「……?」

従姉「……さぁて従妹。兄の前で、いいとこ見せれるかしら?」

従妹「――ッ!////」

従姉「……」ニヤリ

従姉(もらった――!!)ザッ――

ビュオン――!!

兄「はやっ――!!」

従妹「……!」

従妹(あ、兄――!!)

ブオォォン――!!
――ガキィィィンン!!

従姉「えっ!?」

ヒュン――バシィンン!!

従姉「キャッ!!」

敵オッサン「おおお!!ピッチャー返し!!」

ダダダダ――!!
ズザザザザザ!!

『ツーベース!!』

従妹「……よし……!!」

兄「……」

従妹「……////」チラッ

兄「……ナイスバッティング!」

従妹「……!う、うん……!」パァァァ


従姉「……いたたた……」

タタタタ……

兄「おい、大丈夫か?」

従姉「うん、なんとかね……」

兄「……手に当たったのか?」

従姉「うん……」

兄「見せてみろよ」ギュッ

従姉「――!!ちょ、ちょっと――!!////」

兄「動くなって……」

従姉「……う、うん……////」

兄「……うん。ホントに大丈夫そうだ」

従姉「だ、だから言ったでしょ!///」

兄「なぁに赤くなってんだよ。頼んだぞ、ピッチャー」タタタタ……

従姉「あ――!……う、うん……////」

後輩「……」ニッ


従姉「……じゃ、じゃあ、改めて……」

後輩「……」ザッ――

兄「後輩か……」

従姉「よ、よし……まずはここを打ち取って……」ザッ――

後輩「――手、握ってもらって良かったですね」ニコッ

従姉「――ッ!?////」

スポッ――
……ヒョロォォォ

――ガキィィィンン!!

後輩「やった!!」ダダダダ――!!

従姉「し、しまった!」

兄「……おいおい」

妹「……ほんと、姉妹だね……」

~9回裏~

妹「……17対16……」

後輩「……一応、先輩達のチームがリードしてますね……」

従妹(く、くそ……!!)

従姉(あ、兄さえいなければ……!!)

兄「ううむ……泥試合」

従姉・従妹「誰のせいだ!!」

兄「誰のせいだよ……」

従姉・従妹「……」

妹「……とにかく、決着間近」

後輩「私達の打順は8番からか……」

兄「……従妹に回るな……」

従妹「……よぉし……!!」メラメラ


兄「ま、頑張れよ従妹」

従妹「え?」

兄「今日のお前、大活躍だからな。いけるんじゃね?」

従妹「ほ、ほんとか?」

兄「ああ。ホントだ」

従妹「////」

従姉「ちょっと!私も活躍してるんだけど!」

兄「従姉の場合、やり方が卑怯過ぎるんだよ。従妹の方が正当法じゃねえか」

妹・後輩「……」

従妹「……兄……」

兄「ん?」

従妹「……」

兄「……?」

従妹「……あ、アタシ……頑張るから……!////」スタスタ……

兄「……?お、おお……」


『――ストラァァァイク!!バッターアウト!』

従姉「……これで、2アウト……」

妹「あと一人……」

兄「ここで、従妹か……」

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

兄「試合終了か、延長か……」

従姉「試合終了よ。終わらせる」

従妹「……やってみな……」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……言うじゃない……」ゴゴゴゴゴゴ……


従姉「――うりゃぁぁああ!!」

ビュオン――!!
――バシィィィィッッ!!

従妹「……!」

後輩「は、速い……」

妹「終盤にきて……」

兄「ほんと、すげえな……」

従姉「フフフ……」

従妹「……チッ」

従姉「……」ザッ――

従妹「……」ザッ――

従姉「――うりゃぁぁああ!!」

ビュオン――!!

従妹「――ッ!」

ブオォォン――!!
――――ガキッ!!

『ファール!!』

兄「おいおい……」

妹「……タイミング、バッチリ」

後輩「……」

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……」ザッ――

従妹「……」ザッ――

従姉「――うりゃぁぁああ!!」

ビュオン――!!

従妹「――うぉおおおお!!」

ブオォォン――!!


――ガキィィィィィィンンン!!!


従姉「なっ――ッ!?」

妹「――!!」

後輩「」――!!

兄「お?」

ヒュルルル……

――ポチャン

オッサン「さ、柵超え……」

敵オッサン「……ってことは!!」

『ホームラン!!』

従妹「いぃよっしゃぁぁああ!!」

従姉「……」ガクッ

妹がいないからこんな妄想でハァハァできんだろうなぁ
もし妹が居てこれ書いてるなら相当気持ち悪い
童貞こじらすとこうなる


タタタタ……

従妹「……み、見てたか?」

兄「おお。見てたぞ。すげえじゃねえか」

従妹「……////」カァァァ

タタタタ……

兄「……」

兄(……あれ?)

タタタタ……タン!!

敵オッサン「よくやったね!これで延長だ!!」

後輩「凄いです!従妹さん!」

従妹「フフン」

ワアアアアア

兄「――お~い!従妹~!」

従妹「……?」

兄「ベース!踏み忘れてるぞ~!」

全員「え?」

>>448
うん
俺結婚してるから大丈夫

平日の昼間っぱらから妹がどうのこうのでハァハァしてる童貞ニートだろww
見栄張るなよww
従姉妹とか登場人物が女ばっかで妄想膨らませてるのもいかにもキモヲタっぽい

>>451
ホントなんだけどな
ちなみに、嫁からも「妄想練りすぎwww」と笑われました
まあ、信じるか信じないかはあなた次第ってことで
別にどうでもいいし

俺「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

妹「うわぁ…」

従姉「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………

従妹「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………


妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 - SSまとめ速報
(http://open2ch.net/p/news4vip-1411836340-454.png)

予想通り荒らしに来たか
くだらん奴やなぁ

変なの沸いたからしばらく消えます

妹「兄さん、今日告白された…//」
妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 - SSまとめ速報
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妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 - SSまとめ速報
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妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 - SSまとめ速報
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後輩
妹「兄さん、今日告白された」 兄「」 - SSまとめ速報
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このSSの登場人物のスペック一覧

>>454
本作品の主人公
2年浪人して大学へ進学した大学1年生、大学ではオタサーに所属している
アニメオタクで週に3回は秋葉原へ通うほどのオタっぷり
女性とお付き合いしたことはないが本人曰くギャルゲで恋愛の練習はしているからいつでも準備万端とのこと
3つ離れた妹がおり非常に溺愛している。

>>456
本作品のヒロイン
17歳で高校2年生の可愛い女の子、学校ではBL同人同好会の部長を務めるBLが大好きな腐女子
非常に甘えっ子でいつも兄に寄り添っている、髪の毛につけているオレンジ色のリボンが特徴

従妹>>457
兄妹の従妹で妹と同級生
ワンパクっ子で近所の子供達に懐かれている
顔が細長く通称ナスビと呼ばれている

従姉>>461
兄妹の従姉で高校3年生
オカッパでメガネをかけているがクリクリとした可愛い目が特徴的な女の子
コンプレックスは豚鼻、最近彼氏ができたらしく少し垢抜けてきている
通称ジャイ子

後輩>>464
妹の後輩で同じBL同人同好会に所属する高校1年生の少し暗い女の子
今流行りの困り眉や青白い唇に痩せこけた頬で病弱系女子をアピールしており流行には敏感
この歳では珍しい円形脱毛症で本人は非常に悩んでいる
帽子を被っていることが多く学校でも特別に帽子の着用が許可されている
通称カッパ
地味だが本作品で重要な存在となっていく、その辺も注目してお楽しみいただきたい

以上のことを踏まえながらお読みください


オッサン「……ってことで、審議の結果……」

敵オッサン「……あ、アウトになっちまった……」ガクッ

従妹「はああああ!?」

兄「……ま、ベース踏み忘れてるしな」

妹「当然の結果」

後輩「残念ですけどね……」

従妹「諦めなよ、従妹」

従妹「な、納得出来ねえええ!」

オッサン「ま、まあ、何はともあれ、危ないとこだったな」

兄「……ん?従妹がアウトってことは?」

従姉「……ってことは?」

後輩「……3アウト?」

妹「……試合、終了」

全員「……」

兄「……なんか、しまらねえ終わり方だなオイ……」


妹「勝ちは、勝ち」

兄「ま、それはそうだな」

従姉「とりあえず、前提クリア。……あとは……」

後輩「……MVP」

従妹「ちっくしょおおお!!」ウガー

タタタ……

オッサン「――おーい!MVPが決まったぞー!」

兄「来たか」

妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

オッサン「ええとな、MVPは……」

妹(……こい)

従姉(こい……!!)

オッサン「MVPは……兄くんだ!」

妹「――ッ!?」

従姉「なっ――!?」

後輩「えっ――!?」

従妹「嘘だろ――!?」

兄「………………へ?」

オッサン「いやぁ、従姉ちゃんと妹ちゃんかなぁって思ったんだけど、何だかんだで敵チームを一番惑わせてたのは兄くんだったし」

兄「……マジかよ」

オッサン「……ってことで、これ。温泉の宿泊券ね」

兄「は、はあ……」


兄「……どうすんの、これ……」

妹「……兄さん、これ、ペアのチケットだから……」

兄「んなもん分かってるよ。どうすっかな……」

妹「……」ズイッ

後輩「……」ズイッ

従姉「……」ズイッ

従妹「……////」ズイッ

兄「ペアってのがな……家族招待とかなら良かったのに……」

妹「……」ズイズイッ

後輩「……」ズイズイッ

従姉「……」ズイズイッ

従妹「////////////」ズイズイッ

兄「――あ、そうだ!決めた!」

4人「――ッ!」

兄「――父さんと母さんに、プレゼントするか!二人とも、喜ぶぞ!」

4人「…………………………は?」

~数日後~

兄「……なあ、いい加減機嫌直せよ」

妹「……」ムスッ

従姉「……うるさい」ムスッ

兄「……はぁ。俺がもらったやつだし、どう使おうが俺の勝手だろうに……」

従妹「そりゃそうだけど……」

後輩「……ねえ?」

兄「ねえ?ってなんだよ」

妹「……それで?父さんと母さんは?」

兄「あ、ああ……そのまま、4、5日旅行楽しむってさ」

妹「……そう」


従姉「……ってことは、叔父さんも叔母さんも、しばらくいないってこと?」

兄「ま、そうなるな」

妹(……これは……)

従姉(……チャ~ンス……)

従妹「……」

後輩「……」

兄「安心しろ。飯なら金もらってるから大丈夫だ。とりあえず今日のご飯は――」

従妹「――兄」
後輩「――先輩」

兄「な、なんだよ……」


従妹「……」ジッ――

後輩「……ど、どうぞ……」

従妹「……アタシ、しばらくここに泊まるから」

兄「……は?」

後輩「わ、私も泊まりたいです……」

兄「なんでいきなり?」

従妹「そ、そりゃもちろん……い、妹さんと姉ちゃんがいるからだからだ!////」

兄「なぜ赤くなる……」

従妹「う、うるさい!////」

後輩「私も……その……////」モジモジ

兄「……はぁ、まったく……。――別にいいよ」

従妹「――!ほ、ほんとか!?」

後輩「いいんですか!?」

兄「ああ。いいよ」

従妹「よっし……!」

後輩「やった……!」

妹「……チッ」

従姉「……これは、騒がしくなりそうだね……」

兄「いや、お前が言うなよ

~食卓~

兄「……」モグモグ

妹「……」モグモグ

従姉「……」モグモグ

従妹「……」モグモグ

後輩「……」モグモグ

兄「……なんか、重くね?」

後輩「そ、そうですか?」

兄「そうだよ。なんか、いつもと違うぞ」

従妹「……そんなことないだろ」

兄「いやいや、ほんとに。サファリパークのライオンエリアに放置された気分だ」

従姉「……どんな例えよ……」


妹「……兄さんは過敏すぎる」

兄「そ、そうかな……。――あ、醤油取って」

妹「――ッ!」バッ
後輩「――ッ!」バッ
従姉「――ッ!」バッ
従妹「――ッ!」バッ

――ガシャーン!!

兄「……誰が醤油を吹っ飛ばせと言った」

妹「……みんな、邪魔」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「先輩のお世話なら、私がしますよ?」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「あら、先に醤油に手を伸ばしたのは私なんだけど……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「アタシを差し置いて、何勝手なことばっか言ってんだよ」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……結局片付けは俺かよ……」カチャカチャ

~居間~

TV「――、――」

兄「……あんまり面白いテレビないなぁ」

妹「……DVD、見る?」

兄「え"!?」

従姉「お!いいねぇ!」

後輩「賛成です!」

従妹「さすが妹さん!」

妹「じゃ、持ってくる……」タタタ……

兄「……お前ら、知らねえぞ?」

後輩「……?何がです?」

兄「いやな、あいつの言うDVDってのは……」

タタタ……

妹「……お待たせ」バラバラ

従姉「おお!いっぱいある!……って、ちょっと……」

後輩「こ、これ……」

従妹「……!!」

妹「『悪霊の餌食』、『呪われし廃屋』、『遺恨』……どれにしよう……」ガサガサ

兄「……だいたい、オカルトホラーなんだよ……。大好きなんだよな、妹……」


『――キャアアアアアアアアアアア!!』

従妹「キャアアアアアアアアアアア!!」

妹「……うるさい」

従姉「従妹、こういうのホントに苦手なんだよね」

後輩「意外です」

従妹「う、うるさい!」

兄「なあ、怖いなら見なきゃいいだろ?」

従妹「こ、恐くなんかない!全然大丈――!!」

『――ウオオオオオオ!!』

従妹「――キャアアアアアアアアアアア!!」

妹「こ、鼓膜が……」

兄「……そのうち、超音波の怪光線出るんじゃねえか?」

従妹「あ、兄!!アンタ――!!」

『キャアアアアアアアアアアア!!』

従妹「ウギャアアアアアア!!」

従姉「……ダメだこりゃ」

後輩「ですね……」

~1時間後~

兄「……やっと終わったか」

従姉「……し、死ぬかと思った……」

妹「……何度従妹の超音波をもらったことか……」

後輩「み、耳が……」

従妹「ア、アタシは悪くないからな!!」


――ピンポーン……


従妹「――ッ!?はビクッ

――ピンポーン……ピンポーン……

兄「……こんな時間に客か?」

従姉「で、でも、もう夜の11時だよ?」

後輩「……普通、来ませんよね……」

妹「……不審」

――ピンポーン……ピンポーン……

従妹「……!!」ガタガタ

兄「……しゃあねえな……」スクッ

妹「……兄さん?」

兄「出ないわけにはいかないだろ」

従妹「や、やめとけよ!危ないからさ!」

兄「ただの客だろ?ちょっと行ってくるよ」スタスタ……


妹「……」

後輩「……」

従姉「……」

従妹「……」

妹「……DVDの展開に、似てる……」

従妹「――ッ!?」

後輩「た、確かに……」

従姉「……確か、ここで最初に応対した人が、怪人に……」

全員「……」

妹「……死亡フラグ」ボソッ……

全員「……」

全員「……」スクッ

ダダダダダダ……!!


兄「……なんでお前らまで来てるんだよ」

妹「……別に」

従妹「ア、アンタが心配とか、そんなんじゃないんだからな!」

兄「はいはい……なら、開けるぞ?」

従姉「……」ゴクリ……


――ガチャッ


兄「――どちらさん……」

妹「――ッ!」

従姉「こ、これは――ッ!?」

後輩「――ッ!」

従妹「な――ッ!?」



警察「――あ、夜分遅くすみません。実は、この家から凄まじい悲鳴が聞こえたとの通報がありまして……。
何か、心当たりはありませんか?」

全員「……」


従妹「……もう、死にたい……」ズーン

妹「……どんまい」

兄「ま、まあ気にすんなよ。生きてりゃ悲鳴で通報くらいあるだろ」

従妹「うわああ!言うなああ!」

従姉「我が妹ながら情けない……」

後輩「ま、まあ女の子らしくていいじゃないですか」

兄「そうだな。従妹にもそういう面があるってことだな。見直したぞ」

妹「兄さん、言葉の使い方が間違ってる」

従妹「う、うるさいうるさい!うわああああ!」ダダダ……!!

従姉「ありゃ~……涙目なってたよ」

妹「……兄さん、えげつない」

兄「俺かよ!」

後輩「後で謝った方がいいですね」

従姉「だね。……ってことで兄、ガンバッ!」

兄「お前ら……!」

~妹部屋~

――コンコン……

兄「……従妹、いるか?」

従妹「……いねえよ」

兄「なんだ……やっぱここか……入るぞ?」

従妹「……勝手にしろよ」

――ガチャ……

従妹「……なんの用だよ」

兄「い、いや……さっきのことだけど……」

従妹「……それ以上言ったらぶっ飛ばす」

兄「違うって。……その、ちょっとからかい過ぎたっていうか……悪かったな……」

従妹「……」

兄「……」

従妹「……いいよ。アンタのそういうとこ、前からだし……」

兄「そ、そっかな?」

従妹「うん。そう。……昔っからそういうところ、大嫌いだったし」

兄「……」ポリポリ


従妹「アンタさ、昔っからそうだよね。自分じゃまったく気付いてないのに、周りを巻き込んでいく感じ」

兄「そ、そっかな?」

従妹「私が妹さんと遊びに来たのに、アンタがいると妹さんはアンタばっかり見てたし。私がどれだけアンタを嫌っても、アンタはいつも笑顔向けてたし。皮肉も嫌味も、てんで効きやしない。いっつも明るく接してきて……」

兄(き、記憶にない……)

従妹「……今だってそう。アタシが凹んでて、こうなってくれたらとか思ってたら……何も考えずに、また来て……。
――ホント、そういうところ、大っ嫌い……」

兄「わ、悪い……」

従妹「……まったく、アンタってホントにしょうがないね。……しょうがないから、許してやるよ」

兄「……?あ、ありがと……」

従妹「……」クスッ

兄「……ん?」

従妹「……?なんだよ」

兄「い、いや、今、笑っただろ?なんか、女の子らしかったぞ。そっちの方がいいじゃん」

従妹「―――ッ!!」

兄「もっと笑えよ。ブスっとしてるよりよっぽどいいぞ?」

従妹「~~~~ッ!////――やっぱり、嫌いだああああああああ!!」

従妹「」


~居間~

兄「……さて、時間も遅くなってきたし、そろそろ寝るか」

後輩「そうですね」

妹「……みんなの寝床は?」

兄「そうだな……。とりあえず、妹の部屋に1人だろ?で、俺の部屋に2人」

従妹「ふ、2人!?」

従姉「……兄の、変態……」

兄「違えよ!俺がここで寝るんだよ!で、俺の部屋で誰か2人が寝る!そういうことだよ!」

妹「……兄さんの部屋で?」

後輩「誰かが?」

従姉「寝る?」

従妹「//////」

兄「とりあえず、妹と後輩が一緒に……」

後輩「――ジャンケンしましょう」

兄「………へ?」

従姉「……後輩ちゃん。兄が妹の部屋で寝るようにってよ?」

従妹「そ、そうだぞ!ア、アタシが、兄の部屋で……ね、ねね、寝るから……////」

妹「……私の部屋、貸してあげる」

従姉「え?」

妹「だから、私が兄さんの部屋で寝る」

後輩「……そうしましょうか」

従姉「じゃ、ジャンケンしましょう!」

従妹「クソッ――!!」

兄「……どうでもいいけど、早く決めてくれ……」


妹「……」ゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴ……

兄「……早くしろ」

妹「……私、グーを出す」

後輩「――ッ!?」

従姉「……そう来たか……」

従妹「……乗ってやろうじゃん……!」

兄「……じゃあ行くぞ?――最初はグー……」

従妹「……ジャン……」

従姉「……ケン……!!」

4人「――ポン!!」

兄「……全員チョキかよ……」

後輩「……妹ちゃん?グーじゃなかったの?」

従姉「……妹の一人勝ちになるところだったのにね」

従妹「……危ない危ない……」

妹「ぐぬぬ……」

兄「……だから、早くしろ」

妹「……」

ごめん、ちょっと待ってて
今魔道杯中で落ち着かない

~1時間後~

兄「……おい。まだか?」

妹「……まだ」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「なかなか決まりませんので……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「ちょっと待っててよ」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「すぐ終わらせる……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……いや、全然終わってないから……」

妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴゴ……

兄「……しゃあねえな……」


兄「……妹、後輩、ちょっと手を出せ」

妹「……む?」

後輩「なんですか?」

兄「いいから。広げてみろ」

妹「……?」

後輩「これでいいですか?」

兄「OKOK。――従姉、従妹。ピースサインしてくれ」

従姉「は?」

従妹「なんでだよ……」

兄「早くしろよ」

従姉「なんなの急に……」

従妹「ったく、仕方ねえなぁ……」

兄「――はい、ポン」

4人「は?」

兄「はい、従姉と従妹の勝ち。よし、寝るぞ」

4人「………………は?」

~兄部屋~

従妹「……良かったのかなぁ」

従姉「まだ気にしてるの?兄がいいって言ってるから、それでいいじゃない」

従妹「……でも、妹さん、すごい目で見てたんだけど……」

従姉「……まあ、あの怒り様はね……。でも、兄もなだめてたし」

従妹「……」

従姉「……?どうかした?」

従妹「……ねえ、姉ちゃん。……兄のこと……そ、その……」

従姉「……」

従妹「え、ええと……」

従姉「……うん。好きだよ」

従妹「……!」

従姉「それがどうかした?」

従妹「……どんなところが?」

従姉「ううん……そうだなぁ……」

従妹「……」


従姉「……兄ってさ、むちゃくちゃじゃない?やることなすこと、全部こっちの都合なんてお構い無しだし」

従妹「……あ、それわかる」

従姉「でしょ?w……ほんと、こっちの気持ちなんて考えもしないで、無茶ばっかりして……」

従妹「……」

従姉「……でもさ、それでも、兄ならなんとかしてくれるって思えるんだよね。見た目頼りないのに、なぜか頼っちゃうんだよね。
……それで、不思議となんとかしてくれるし」

従妹「……うん」

従姉「なんかさ、よく分からない奴なんだよね、兄って。私の方が年上なのに、全然自然に接してきてさ。遠慮なしに口出ししてさ。
……たぶん、私は、そんな兄に手を引っ張って欲しいんだと思う。ずっと“お姉ちゃん”だったからかもだけど、そんな兄に甘えたいんだと思う。きっと」

従妹「……」

従姉「――従妹も、同じなんじゃないの?」

従妹「――ッ!?」


従妹「わ、私は別に……!!」

従姉「隠さなくていいって。ここには、私のあなたしかいないし。誰にも聞かれてないし、誰にも言わない。姉妹でしょ?」

従妹「……」

従姉「……」

従妹「……よく、分かんないんだよ……」

従姉「……自分の気持ち?」

従妹「うん。なんて言うのかな……アイツのこと、大嫌いだったのに、ずっと素っ気なくしてたのに、笑って話しかけてくるんだよ。前までそんなのどうでもなかったのに……今じゃ、そんな顔見てると何だか気分がよくなるんだ。心の奥がキューっと締まって、息苦しくなって……それでも、なんとなくあったかくて、悪くない気分で……」

従姉「……」

従妹「こんなの、初めてなんだ。だから、よく分かんないんだよ……」

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……それはね、従妹……」

従妹「……うん……」

従姉「きっと、素敵なことなんだと思うよ。あなたも、人並みに女の子ってことなんだよ」

従妹「……そっかな……」

従姉「うん。きっとそう。お姉ちゃんも嬉しいよ。従妹にも、そんなことを思える日が来たことがね」

従妹「……ありがと、姉ちゃん……」


従姉「……さて、そろそろ寝ようか」

従妹「う、うん。そうだね」

従姉「ええと、ベッドか床か……」

従妹「……どっちかが、兄のベッドで……」

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……なら、私が――」
従妹「……じゃあ、アタシが――」

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……姉に譲ろうって気持ちはないの?従妹?」

従妹「……姉ちゃんこそ、可愛い妹に譲ろうっていう謙虚さはないのかよ」

従姉「……」

従妹「……」


従姉「……仕方ないわね……」スッ

従妹「決めるか……」スッ

従姉「……何回勝負?」

従妹「……そうだな……」

従姉「……じゃあ、先に10回勝った方がベッドってことで……」

従妹「……じゃあ、すぐ終わるな……」

従姉「……」ゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴ……

従姉「……グー、出すわ……」ゴゴゴゴゴ……

従妹「……なら、パー出す……」ゴゴゴゴゴ……

従姉「……」ゴゴゴゴゴ……

従妹「……」ゴゴゴゴゴ……

2人「――ジャンケン!――ポン!」

従姉「……アイコ、か……」

従妹「……チッ」

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……パー……」

従妹「……グー……」

2人「……ジャンケン……!!」

~数時間後~

従姉「……」

従妹「……」

従姉「……こ、これで……」

従妹「……9勝9敗ずつ……」

従姉「……ね、ねえ……」

従妹「……なに?」

従姉「思ったんだけど……2人で寝ればよくない?」

従妹「……そ、その手があったか……」

従姉「そ、そうしましょ……」

従妹「……うん。さすがに、眠い……」

――バタン

従姉「……」スウ…スウ……

従妹「……」スウ…スウ……

~翌朝~

兄「……どうしたんだ?二人とも……」

従姉「……え?」

従妹「……なんだよ」

兄「……いや、凄まじく顔色悪いぞ……」

妹「目の下のクマ、凄い……」

従姉「い、いや、ちょっと寝不足で……」

兄「寝不足って……何してたんだよ……」

従妹「な、なんでもいいだろ!」

兄「いや、別に怒らなくても……」

後輩「……妹ちゃん、これって……」

妹「うん。……壮絶な、取り合いしたんだね」

従姉・従妹「ふあぁあ~……」

>>1
しばらくほっときなよ
バカはしばらく止めないだろうし
また日を改めて来てよ

>>608
じゃあ、そうする
お休み~(-ω-)

お、消えてる

~夕方~

妹「ただいま……」

後輩「おじゃまします」

兄「おう、おかえり」

妹「……従姉は?」

兄「ああ、部屋で寝てる。よほど眠かったんだろうな。死んだように寝てるよ。ちなみに、従妹もちょっと前に来て寝てるよ。まったく、姉妹揃って仲がいいもんだな」

後輩(……ってことは……)

妹(……邪魔がいない……)キラーン

兄「……まあ、とりあえず買い物行ってくる。妹は掃除頼むよ」

妹「……分かった。後輩ちゃんは?」

兄「ええと……そうだなぁ……」

後輩「……あ、あの……」

兄「ん?」

後輩「……か、買い物!お手伝いします!」

妹「……!」

兄「え?あ、ああ……別にいいけど……」

後輩「ありがとうございます!」

兄「じゃあさっそく行くか」

後輩「はい!」

スタスタ……

妹「……」

妹「……や、やられた……」



~商店街~

スタスタ……

兄「ええと……次は味噌と醤油と……」

後輩「調味料、けっこうなくなってたんですね……」

兄「ん?ああ、まあな。最近消費が激しいし」

後輩「あ……す、すみません……」

兄「いやいや、そういう意味じゃないんだよ。嫌味みたいな言い方して悪かった。もともと残り少なかったからな。たまたまだよ」

後輩「は、はい」

兄「……あ、ここだ。すみませーん!」

店主「はいらっしゃい!……お?兄くんじゃないか」

兄「また味噌買いに来ましたよ。親方の味噌、最高ですし」

店主「嬉しいこと言ってくれるねぇ!よぉし!今日もサービスしちゃおうか!」

兄「おお!いつもありがとうございます!」

店主「いいってことよ!ちょっと待ってな!」スタスタ……

兄「……ここの親父さん、おだてたら凄く気前よくサービスしてくれるんだよ」ヒソヒソ……

後輩「なるほど……生活の知恵ですね」ヒソヒソ……


店主「――お待たせ!はい、これ!」

兄「おお!山盛り!ありがとうございます!」

後輩「す、凄い量ですね……」

兄「ほんとだな。これも全て、親方の漢気の賜物だな。ホントに男の中の男だよ、親方は」

店主「よせよぉ。照れるだろぉ。――よぉし!今日は漬物もサービスするよ!」

兄「マジっすか!よっ!日本一!」

店主「や~め~ろ~よ~(悦)」

後輩(せ、先輩、凄い……)


店主「しかし、兄くんもニクいねぇ」

兄「……?何がです?」

店主「その子だよ、その子」

後輩「私……ですか?」

店主「そうそう。そんな可愛らしい彼女なんて連れちゃって~」

兄「…………へ?」

後輩「――ッ!////」

店主「うん!でもお似合いだな!とっても似合ってる!」

兄「あ、あの……親方……」

店主「ああいい!皆まで言うな!二人で買い物なんて、もう“らぶらぶ”じゃないか!」

兄「いや、そうじゃなくて……」

後輩「/////」

店主「……彼女さん。兄くんのこと、どうか宜しくね。兄くんは、とってもいい奴だよ。きっとアンタを、幸せにしてくれるからさ」

兄「……」ポリポリ

後輩「……はい。そうですね。私も、そう思います」

店主「ハハハ!今日はやけに暑いねぇ!」

後輩「フフフ」

兄「……」

兄(……どうすんの、この流れ)

~帰り道~

スタスタ……

兄「……」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……」

兄「……悪いな。荷物持たせて」

後輩「い、いえ……これくらい……」

兄「しかし、ただでさえ山盛りだった味噌が、一気に2倍になったぞ」

後輩「凄いですよね、あの店長さん」

兄(果たして、経営は大丈夫なんだろうか……どう考えても赤字だぞ……)

兄「……それにしても、後輩も凄いな。初対面で、あそこまで親方をノセるなんてな」

後輩「そうですか?普通に話してただけですけど……」

兄「いやいや、凄い盛り上がってたじゃないか」

兄(……まあ、盛り上がりすぎて結婚の話までされてたけど。飛躍させすぎだよ、親方……)


後輩「……私ですね、ホントは、不安だったんですよ」

兄「……不安?」

後輩「はい。……妹ちゃんはいつも一番近くにいて、従姉さんは自然に先輩と接して、従妹ちゃんはあんなに積極的になれて……」

兄(なぜ従妹?)

後輩「私なんか、みんなの足元にも及ばないくらい小っちゃくて、みんなの足元にも及ばないくらい鈍くて……。
ホント言うと、半分諦めてたんですよ、先輩のこと」

兄「……」

後輩「……でも、今日で改めて思いました。私、みんなには負けません。私は、私なりに頑張ってみます。
――だって……」

兄「……?」

後輩「……だって、店長さんに頼まれましたしね、先輩のこと」クスッ

兄「……そ、そうだった……」

後輩「……先輩、そろそろ帰りましょ。妹ちゃんが、待ってますよ」

兄「あ、ああ……」

スタスタ……

兄「……」

兄(……俺って、酷い奴なのかもな……。期待させるだけさせといて、ズルズル先伸ばしにして……。
こんな俺の、どこがいいんだろうな……)


スタスタ……

兄「……」

後輩「……」

兄「……なぁ、もういいんじゃねえか?」

後輩「……え?」

兄「俺は見ての通りの男だよ。お前の気持ちにも答えず、ズルズル待たせてばかりいる。全部先送りにして、今の自分を守ろうとしてるような……そんな、卑怯な奴だよ」

後輩「……」

兄「俺なんかに構うなよ。お前なら、もっと上を狙えるだろ?性格もいいし、気もきくし……俺なんかのために立ち止まってるなんて、すげえもったいねえよ」

後輩「……」

兄「……」

後輩「……それは、“断り”ってことですか?」

兄「……好きにとってくれよ」

後輩「……」

兄(……また、逃げたな、俺。ほんと、最悪だな……)


後輩「……ダメですよ。そんな曖昧なことで終わらせちゃ」

兄「……え?」

後輩「先輩……先輩は、きっと勘違いをしてますよ。先輩は、自分が思ってるような、卑怯な人じゃないです」

兄「そ、そんなこと……」

後輩「そうですよ。先輩は、いつも人のことを考えれる人です。現に、今もこんなにも私のことを考えてくれてますし。
……そんな人だから、私も待つことができるんですよ」

兄「後輩……」

後輩「先輩、顔を上げてください。前を見てください。先輩に、そんな顔は似合いません。どこまでもまっすぐに前を向いて欲しいんです。
そんな先輩だからこそ、私は……ううん、私だけじゃない。妹ちゃんも、従姉さんも、従妹ちゃんも、みんな先輩の背中を見てるんですよ」

兄「……」

SSしえん

1000までに終わるか不安


兄「……お、俺……」

後輩「いいですよ。今はなにも言わなくても。先輩は、今のままの先輩でいいんです。
時間がかかっても、先輩なら、必ず答えを出してくれます。私は、それを待ってますから。先輩の隣で……」

兄「……ごめん……」

後輩「謝らないでください。なんか、先輩をいじめちゃった感じになりますし」

兄「そ、そうか……ありがと、な……」

後輩「はい!」

兄「……とりあえず、帰るか……」

後輩「そうですね。すっかり遅くなっちゃいましたし……」

兄「……すこし、走るか」

後輩「はい!先輩に、付いていきますから!」

兄「――じゃあ、行くか!」

後輩「はい!」

タタタタ……

~自宅~

兄「……ただいま」

ダダダ――!!

従妹「遅いぞ兄!いったい何してたんだよ!」

兄「おお、従妹。起きてたのか」

従妹「とっくの昔にな!――そんなことより、何してたんだよ!後輩さんと!」

兄「ただの買い物だよ」

後輩「ええ。“ただの買い物”、ですよ」ニッコリ

従妹「――ッ!こ、こいつ……!」

兄「……そんなことより、顔洗ったか?もうすぐ飯だぞ」

従妹「あ、当たり前だろ!」

兄「そうか……あと、寝るときくらい着替えろよ。制服、しわだらけになるぞ?」

従妹「――ッ!み、見たのか!?」

兄「そりゃそうだろ。お前が寝てるの、俺の部屋だぞ?荷物くらいとらせろよ」

従妹「~~~~ッ!!!/////」

兄「……?どうしたんだ?」

従妹「……う、うわあああぁぁぁん!」ダダダダ……!!

兄「……なんなの、いったい……」

後輩(先輩、さすがです……)

~居間~

ガチャ

兄「ただいま」

妹「……おかえり、兄さん、後輩ちゃん」

後輩「ただいま、妹ちゃん」

従姉「……あんた、さすがだね。ご立腹の従妹を、こうも簡単に撤退させるなんてね……」

兄「なんのことだよ」

従姉「別に~」

兄「……?」

妹「……兄さん、お腹空いた」

兄「え?あ、ああ。すぐ作ろうか」

後輩「あ、今日は私が作りますよ、先輩」

兄「え?いいよ別に」

後輩「いいですから。作らせてください」

兄「そ、そう?じゃあ、お願いしようかな」

後輩「はい!」

妹(……積極的すぎる)

従姉(こりゃ、なんかあったね……)

>>649
終わるとは思うけど
どうだろ


後輩「じゃあさっそく、ご飯を――」

ダダダ――!!

従妹「――ちょっっと待ったぁ!!」

後輩「え?」

兄「……なんだぁ?」

従姉(……あ、復活してる)

妹(立ち直り、早い……)

従妹「その飯作り、ちょっと待った!」

後輩「……ええと……」

兄「なんだよ従妹」

従妹「飯は、アタシが作るよ!」

後輩「……え?」

兄「……なんでそうなるの」


後輩「え、ええと……」

従妹「……」

兄「……なあ従姉。従妹は、料理は大丈夫なのか?」

従姉「さあ……」

妹「未知数……」

従妹「出来るって!!」

兄「……ほんまかいな……」

従妹「だから、アタシが作るから!」

後輩「で、でも……私も、作りたいです」

従妹「――ッ!」

妹「……解説の従姉さん。これをどう見る?」ヒソヒソ…

従姉「そうですねぇ……。従妹からすれば、まさかの反撃といったところかと」ヒソヒソ……

妹「なるほど……」ヒソヒソ……

兄「……何をこそこそ話してるんだよ」

妹・従姉「別に」

兄「あ……そ……」


後輩「……」

従妹「……」

兄「……もう、二人とも作ればよくね?」

後輩「……わかりました」

従妹「……受けてたつ……!!」

兄「じゃ、頼むよ」

後輩「はい……」

従妹「任せとけ……!!」

妹「……これは、料理対決?」

従姉「だね。私は作れないから、今日は解説かな」

兄「……いや、料理くらい覚えろよ」

従姉「やだ」

兄「……」

~台所~

妹「……まずは従妹の先攻」

従姉「次に控える後輩ちゃんに対して、如何に印象に残せるかがポイントですね」

兄「なんの競技だよ」

妹・従姉「別に」

兄「……」

従妹「――うぉりゃぁぁぁあああ!!」

ズタタタタタタタ……!!

妹「こ、これは……!」

従姉「は、早い!高速包丁捌き!人参があっという間に細切れに……!」

後輩「……!」

兄(……皮、剥いたっけ?)

従妹「――どぉぉおりゃぁぁぁああ!!」

ジャージャー!!

従姉「もう炒めに入った!素材がフライパンで踊ってる!」

後輩「……!!」

兄(……今、人参の葉の部分が見えた気が……)

従妹「――とどめだぁぁああ!!」

兄(誰に対してだよ)

ドボボボボ……!!
ザッザッザッ……!!

妹「ぉぉ……」

従姉「豪快!豪快な味付け!完全に目分量!」

後輩「……!!!」

兄(……今、確かサラダ油入れなかったか?)


従妹「――ほら!できたぞ!」コトッ――

兄「こ、これは……!」

妹「なんというか……」

後輩「う、うん……」

従姉「……黒い塊にしか見えない」

従妹「さあ!食ってみろ!」

兄「待てぃ。このダークマターはなんだ?」

従妹「あ?アタシ風野菜炒めだよ」

兄「いやいやいや。野菜の原型がないんだが?」

従妹「そうそう。斬新だろ?」

兄「ああ斬新だ。思わずこの場を逃げ出したくなるくらいに」

従姉「……さて、いよいよ……」

妹「試食……兄さん、どぞ」

兄「ちょっと待て。解説者は食わねえのかよ」

妹「うん」

従姉「ボクシングの試合だって、解説者が判定することはしないでしょ?」

兄「いや、これ晩御飯……」

従妹「いいから食えよ!」

妹「さ……」

従姉「どぞ……」

兄「……お前ら、覚えとけよ……」


兄「……じゃ、じゃあ……いくぞ?」

従妹「おう!」

後輩「……」ゴクリ

従姉「……妹、バケツと胃薬用意してて」

妹「抜かりない。既にここに」スッ

従妹「そんなのいりませんよ!――ほら兄!早く食べろよ!」

兄「……」プルプル……

兄(く、くそ……手が震えやがる……!)

従妹「……」

後輩「……」

兄「――ええい!ママよ!!」バクッ!!

従姉「た、食べた……!」

妹「……兄さん、成仏してね」

兄「……!」

妹「……」

従姉「……」

後輩「……」

従妹「……」

兄「……おい、従妹」

従妹「な、なんだよ……」

兄「お前、料理したことあるのか?」

従妹「た、たまにはするぞ!」

兄「そ、そうか……なんでこれがうまいんだよ……」

妹・従姉・後輩「え"――ッ!?」


従妹「ほ、ほんとか!?」

兄「ああ。うまいよ。……実に不思議だが……」

従妹「//////」

後輩「う、嘘……」

妹「……従姉、解説」

従姉「……たぶん、手当たり次第入れた調味料が、奇跡的なバランスで化学反応を起こしたのかも。
いずれにしても、私達は今、奇跡を目の当たりにしてるのかもね……」

後輩「せ、先輩……大丈夫ですか?」

兄「ああ。大丈夫だ。……今のところは……」

従妹「見たか!これがアタシの実力だよ!」


妹「……これは驚きの展開」

従姉「まさかあの暗黒物質が、美味いとはね……」

兄「ていうか、お前らも食べたら?」

妹・従姉「遠慮しとく」(即答)

兄「……」

従妹「フフン……」

後輩「……次は、私の番ですね……」ゴゴゴゴゴゴ……

妹「おお……後輩ちゃんが、燃えてる……」

従姉「これは……期待大ね……」

従妹「……」

妹「兄さん、今日告白された」
兄「好きだ」
妹「えっ」
兄「上書きしてやんよ」
妹「なにするの」
兄「」
妹「!」
兄「」
妹「あっ」
兄「」
妹「いっ」
兄「うっ」

後輩「……じゃあ、いきます」

従妹「……」

後輩「……」テキパキテキパキ……!!

従妹「……!!」

兄「こ、これは……!」

従姉「凄い……!」

妹「なんという手際……!」

後輩「……」テキパキテキパキ……!!

兄「……と驚いてはみたものの、まあ予想通りだよな」

従姉「まあね。見た目通りと言うか……強いて言えば……」

妹「……主婦」

従妹「……!」

後輩「――出来ました!」

兄「おお!早い!」

従姉「ううん、それだけじゃない……!」

妹「……美味しそう」

従妹「……!!」

後輩「少し、緊張しましたけど、うまく出来たと思います」

兄「味噌汁に煮付け……和風か。いいな」

従姉「煮付けって、こんな短時間で出来るものなの?」

後輩「圧力鍋を使えば、ちゃんと味が染み込みますよ」

妹「……まさに、主婦」

従妹「……!!」


兄「さて、実食だけど……まあこれは安心だろ」

妹「うん。安定してると思われる」

従姉「面白味に欠ける気もするけど」

兄「いや、飯に面白味を求めるなよ」

従妹「……」

後輩「……先輩…… 」

兄「わかってるよ。――いただきます」パクリッ

妹「……」

従姉「……」

後輩「……」

従妹「……」

兄「……ん。うまい」

後輩「ほんとですか!?////」

従妹「……!!」

従姉「……まあ、そりゃそうよね」

妹「予想通り」


妹「さて、いよいよ……」

従姉「判定の時……」

従妹「……」ゴクリ

後輩「……」ゴクリ

兄「……なあ、どうしても判定しなきゃいけないのか?」

妹「当たり前」

従姉「お約束だし」

兄「どこの料理マンガだよ……」

従妹「……」ゴゴゴゴゴゴ……

後輩「……」ゴゴゴゴゴゴ……

妹「……さ、兄さん」

従姉「……判定を」

兄「うぅ……」


――プルルルル。プルルルル……

兄「――あ!電話だ!俺ちょっと出てくる!」タタタ……

妹「……チッ」

従姉「逃げたか……いいところで……」

従妹「……命拾いしたな」

後輩「……従妹ちゃんがね……」

妹「……ほんと、後輩ちゃんが燃えてる」

従姉「なんだかんだで、この二人仲いいよね……」

――ガチャ

兄「……」

後輩「あ、おかえりなさい」

兄「あ、ああ……」

妹「……兄さん、なんか変」

従妹「……なんかあったのか?」

兄「ああ。――従姉、すぐ家に帰れ」

従姉「……え?」

兄「……お前の部屋が、荒らされたらしい」

~従姉自室~

従姉「……何、これ……」

妹「……部屋の中、無茶苦茶」

従妹「ひでえ……窓割って入ったみたいだな……」

後輩「誰が、こんなことを……」

兄「……おい、この写真を見ろ」

従姉「それがどうかした?」

兄「なんか、気付かないか?」

従姉「え……?」

妹「……従姉の顔だけ、ズタズタに切られてる」

後輩「確かに、そうだね……」

兄「……」


兄「……おい従姉。しばらく、俺んちにいろ」

従姉「え?」

兄「父さんと母さん、叔父さんと叔母さんには、俺から話しておく」

妹「……兄さん?」

兄「これ、たぶんお前への私怨だろうな。ちょっといくらなんでも危険だし、この家にいると危ないだろ」

従姉「う、うん……」

後輩「……」

兄「後輩、従妹、お前らは家に帰ってろ」

従妹「アタシは嫌だぞ」

兄「おい」

従妹「アタシだって、姉ちゃんが心配なんだよ」

後輩「……私も、一緒にいます。人数が多い方がいいでしょうし……」

兄「……仕方ねえな」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの   2014年10月31日 (金) 00:24:19   ID: ktghNPzr

いや、こういう頭使わないで見るラブコメ好きだわw
なんかニヤニヤとまんねぇwwwww

2 :  SS好きの774さん   2015年06月19日 (金) 01:09:56   ID: ACwhGpp-

続きは??

3 :  SS好きの774さん   2015年08月13日 (木) 16:08:35   ID: z0CzXjWD

従姉と従妹いなくても良かった気が…

4 :  SS好きの774さん   2015年11月10日 (火) 18:32:51   ID: lNlghKG_

もう分岐させて全員のエンドが見たい

5 :  SS好きの774さん   2016年03月10日 (木) 13:11:56   ID: qe_L9G5L

俺が男だったら選べなくて自殺しそう

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