男「そうだ メイド、雇おう」(369)

両親が事故で死んだ。悲しいことだが仕方ない…

問題は別にある。遺産だ

男「結構な金と、この屋敷」

男「金のほうは…一生遊んで暮らせるかは分からんけど、当分は仕事しなくて済みそうだ」

男「でも屋敷はなぁ。いくら住み慣れた家とは言え、一人じゃ寂しいよな…」

男「どうすっかなぁ」ピッ

tv『こちらアキバの名物、メイド喫茶では…』

男「…メイド喫茶ねぇ。さすが魔都・闘恐(とうきょう)なんでもありだ」

男「……あ」

男「そうだ メイド、雇おう」

男「………」カキカキカキ

男「…うん…いいんじゃないか。これなら分かりやすくていいぞ…」スッ

男「よしじゃあ早速、外に繰り出すぜ!」


男「すいませーん。誰かメイドやりませんかー」

通行人「なにあれー」

通行人「きめぇ」

通行人「セクキャバ行けよ」

男「そういう意味じゃねぇよ。看板見りゃ分かるだろーが」

通行人「あほらし」

通行人「やるわけねーよ」

男「くそー…」

?「あの」

男「?」

?「雇ってくれるんですか?その…メイドとして」

男「!」

男「ああ、うん。真面目な方ね」

?「雇ってください」

男「……話とか聞かないの?」

?「え?」

男「……」


取り敢えず屋敷に連れていった


?「ここで働くんですか…」

男「そうそう」

?「やります」

男「募集しといてなんなんだけどさぁ、もうちょっと躊躇え」

屋敷内

男「とりあえず面接しようか、そこ座って」

?「はい」ギシッ

男「名前は?」

?「女です」

男「女さんね。歳はいくつ?」

?「20です」

男「年下か…学生?」

?「いえ…」

男「仕事してたの?」

?「仕事というか、母の手伝いを」

男「何してたの?」

?「薬品研究の手伝いです」

男「へーそりゃすごい。じゃあその研究が一段落ついたとか?」

?「それが、先日母が亡くなりまして」

男「あーそう…なるほどなるほど…すごくシンパシィ感じる」

?「母がいないんじゃ研究も出来ませんから、新しく職を探してまして…」

男「ところがなかなか仕事が見つからなかったわけだ」

?「はい」

男「そうだよなー今どき仕事なんてそう簡単に見つからないよなー」

?「……」

男「採用」ビシッ

?「はやっ」

男「うそうそ。もうちょっと色々伝えとかないとな」

男「えーとまず、住み込みで働いてもらいます。ok?」

?「はい」

男「あと給料ね…」

?「看板には『要相談』って書いてありましたが…」

男「うーん。実は相場というか、基本的になんぼ払えばいいのかよく分からんのよ」

?「はぁ」

男「だから好きな額言ってみて」

?「好きな額…」

?「……」

男「さすがに決めらんないか」

?「2000万」

男「ん?」

?「年収2000万は欲しいです。月収で言うと…150万以上」

男「お前マジか?」

?「マジです」

男「搾れるだけ搾る気か。ふ、ふーん…」

男(年収2000万だと…どこのエリートだよ)

男「も、もう一度考え直さないか?」

?「いえ、よーく考えましたから」

男(こいつ目が本気だ)

男「まけてくれ」

?「…どうしましょうね」

男「1500万は?」

?「2000万」

男「1600」

?「2000」

男「1700」

?「じゃあ1900でいいです」

男「1800!」

?「…じゃあ休暇下さいね」

男「うん…よし…分かった…分かった!やってやろーじゃんか!」

?「やとってやろーじゃん、でしょう」

男「その代わり徹底的にこき使ってやるからな…」グヘヘ

?(最悪、ダルマにでもされなきゃいいや)

メイド 女 20歳(ただし身分証明書の類を見ていないので偽りの可能性アリ)

身長165cm 体重48kg(嘘かもしれない)
スリーサイズ 測ってないけど全体的に細い

特徴
無愛想 金髪(染めたのかな?) 可愛いけど性格悪そう
結構がめつい(浪費癖あるかも) 私服ダサい

経歴
高卒→研究所員の母の手伝い→メイド(new!)

ご所望の給料
年収1800万(月収だと150万。ボーナスねだられたらどうしよう)


?「なんですかこの頭悪そうなメモは」

男「えっと…プロフィール…?」

?「まぁ、いいでしょう。よろしくお願いします」

?「……旦那様?」

男「御主人様、だ」

?「はいはい…御主人様」

こんな感じでやっていきます
先のことは特に考えてません

メイド「あの、メイドって何したらいいんです?」

男「えー…」

男「そりゃアレだいわゆる『家事』だ」

メイド「だから具体的に何をすればいいんですか」

男「掃除だろ」

男「洗濯だろ」

男「買い物もしてもらうぞ」

男「料理はできるか?」

メイド「…ま、まぁ多少なら」

男(大丈夫かオイ)

男「じゃあまず家の中を見て回って、何がどこにあるか覚えろ」

メイド「はい」スッ

男「三階は何もないけど、まぁ一応見ておけよ」

メイド「はい」スタスタ

男「……」

男(冷静に考えてこんな…簡単にメイドが雇えて大丈夫なのか?)

メイド「ご主人様」ヒョコ

男「ん?」

メイド「すいません飾ってあった高そうな壷、割っちゃいました」

男「大丈夫じゃねーなお前!」

男「あのさぁ今日はもう一旦帰っていいよ」

メイド「?」

男「着替えとか用意しないといけないだろ」

メイド「ああそういうことですか」

男「明日から住み込みで働いてもらうぞ」

メイド「分かりました」

男「枕変わると眠れなかったりするし」

メイド「お気遣いどうも。じゃ失礼します」

男「おう」

男「さて、アレを用意しないとな」

男「どこに行けば売ってるんだろう」

男「amazonのほうが確実か?いや明日届くか分からんしな」

男「うーん……どうしようかなぁ」


メイド(住み込みか…何が要るかな)

メイド(下着、歯ブラシ、コンタクト、目薬、あといろいろ…)

メイド(着替えは…いらないか。たぶんあれがもらえるだろうし)

翌日

メイド「おはようございます」ガチャ

男「うおー!早いって!」

メイド「なんで玄関で正座してるんです?」

男「いや宅配便待ち」

メイド「なにを頼んだんです?」

男「べ、別になんでもいいだろ」

メイド「メイド服ですか」

男「!?」

メイド「やっぱり…」

男「いやだってそれだけは最低限必要だと思って」

メイド「分かってます…私もそう思ってましたから」

メイド「一緒に待ちましょう」スッ

男「……いやお前まで正座せんでも」

一時間後

男「来たぞメイド服ー!」バーン

メイド「すごいすごい」パチパチ

男「いいか、これ来たらお前はいよいよ本格的にメイドだ」

男「首輪を付けられた大型犬のようにおとなしくなるしかないのだ!」

メイド「分かってますよ」ゴソゴソ

メイド「……!」ピタッ

男「どうした?」

メイド「な、なんですかこの…小さな布切れ…」

男「見りゃ分かんじゃん。パンツだよ」

メイド「こんなの履けませんよ」

男「なんだよせっかく選んだのに。レビュー5つ星のやつだぞ」ブーブー

メイド「……わ、分かりましたよ」

男「あ、あとこのガーターベルトも忘れずにな」

メイド「………」

メイド「着ましたよ」

男「おーいいじゃん。くるんってしてみ」

メイド「こうですか」クルンッ

男「いいよいいよーじゃあ次はスカートたくしあげてみようか」

メイド「何様のつもりですかご主人様」

男「すいません調子に乗りすぎました」

メイド「でもなんか、これ着てると自分でもすごくメイドな気分がします」

男「服装は大事だからな」

メイド「私一応私服も持ってきてたんですが」

男「昨日着てたみたいなダサいやつはやめろ」

メイド「……しまむらのセールで500円だったんですよ」

男「もうちょっとオシャレに気を遣え!」

男「じゃお前とりあえず掃除しとけ」

メイド「とりあえずって」

男「俺は部屋にいるからな、なんかあったら呼べよ」

メイド「部屋で何を?」

男「……仕事だよ」

メイド「宝くじが当たったから、仕事しなくていいんじゃないんですか」

男「宝くじじゃなくて親の遺産だっての」

男「まぁ仕事…しなくていいんだけどな。今やってる分はやりきらないと」

メイド「……?」

男「じゃよろしく」スタスタ

メイド「なんのことですかね」

メイド「……」シーン

メイド「確かにこんな閑散とした屋敷…一人でいるのはちょっと寂しいかもしれませんね」スタスタ

メイド「……」パタパタ

メイド「そんなに…汚れてないんですけどね…」パタタタ

メイド「……」ピタッ

メイド「…もしかしたらこれはものすごく楽な仕事かもしれない…!」

メイド「よし…頑張りますか」パタパタ

30分後

メイド「……」

メイド「…もう…もうパタパタ飽きた…」

メイド「何か他の…そうだ、窓拭きを…」

ゴシゴシ…

メイドはすぐに理解した。この仕事は全然楽ではない

掃除とは自分との闘いだ!

1時間後

メイド「きょ…極限まで綺麗にしないと…いけない気がする…!」ゴシゴシ

男「おうメイドちゃんとやってるかー」

メイド「やってますよ…」ゴシゴシ

男「ピカピカじゃん。偉いぞメイド」

メイド「!……ど、どうも」

メイド(まさか褒めてもらえるとは)

男「でさぁ、掃除は一旦やめにして」

男「買い物行ってきてくれ」

メイド「なに買えばいいんですか」

男「食材」

メイド「献立は?」

男「お前が決めるんだ」

メイド「えっ…」

男「得意料理作ってくれよ。なんかあるだろー」

メイド「え…ええっと…」

男「金はこの封筒に入れておくから、好きなもの買ってこい!」

メイド「は、はい…」

メイド(参ったな…)

メイドはほとんど料理などしたことがなかった

メイド(うーん…どうしようか)

そして献立など考え付かぬままフラフラとスーパーに入っていた

主婦「あらやだ奥さん、あの人メイド服なんて着てるわよ」

主婦「変わってるわねー」

メイド(しまった…)

メイド「とりあえず安いものたくさん買い込んで、何を作るかは戻ってから決めよう…」スタスタスタ


男「さて…メイドのやつ、何を買ってくるかな」

男「考えてみりゃ女の子の手料理なんて食ったこと無いもんなぁ」

男「ちょっと期待しちゃうよ」


ガチャッ

男「えっもう帰ってきた?」

メイド「……」

男「卵…安かったのか」

メイド「はい…」

男「それで、他には?」

メイド「…ありません」

男「……卵だけ」

メイド「…はい」

男「……」

メイド「……」

男「あのさぁ」

メイド「…はい?」

男「得意料理は?」

メイド「特にないです」キッパリ

男「…そうか。ないのか」

メイド「すいません…」

男「まぁ…うん…とりあえず卵で…なんか作ってみろよ」

メイド「はい…頑張ります」

ジュウウウウ…

男「これは…目玉焼きでいいんだよな?」

メイド「はい…」

男「ちょっと…いやだいぶ焦げ目が目立つけど…まぁ食べれるよな」ヒョイ

ザャリッ

男「!?」ガタッ

メイド「ど、どうしました?」

男「目玉焼きの食感じゃねぇよこれ!」

メイド「うっ」ズキッ

男「し、白身(焦げて黒いけど)の端のほうだから味がよく分からないな…黄身はどうだろう」モグモグ

男「苦い!おかしいだろこれ!!」

メイド「ううっ」グサッ

男「なんだこれネオ卵か!?」

メイド「そんなの知りませんよ…」

男「料理ができないのは…しょうがない」

メイド「……」ショボーン

男「でもこのままじゃさすがにキツい…要勉強だな」

メイド「…はい」

男「レシピ本とか買うか…」

メイド「そんなのにお金かけるなんて馬鹿馬鹿しい。クックパッドで十分ですよ」フンッ

男「何でちょっと偉そうなんだよ」

メイド「ちなみにご主人様の好きな料理はなんですか」

男「うーん…」

男(わりとなんでも好きだからなぁ)

男「オムレツかな」

メイド「!」

メイド「卵たくさん買ってよかった…練習します」

男「お、おう」

男(まずは簡単な料理から…だな)

男「おい、そういえば風呂掃除はしたか?」

メイド「いえ、まだです」

男「やっといて」

メイド「はい」スタスタ

ガチャ

メイド「…ひ、広い!」

メイド「風呂なんて一人入ればそれでいいのに。なんでこんなに広いんだろう」ボソッ

男「それはだな」ヒョコッ

メイド「!」ビクッ

男「お前みたいなメイドも一緒に入るためだよ!アハハハハハハ!!」

メイド「なるほど」

男「えっ?なにその反応…」

メイド「ご主人様は私と一緒にお風呂に入りたいんですね」

男「いやあの精一杯のセクハラのつもりだったんだけど」

メイド「いいですけど、胸は使いませんよ」

男「ごめん!俺が悪かった!だからその冷静な対応やめて!」

メイド「冗談ですよ」

男「お、おう…」

メイド「でもそのくらい覚悟の上でメイド始めましたから」

男「そ、そうか…じゃあマジで…」

メイド「各種サービスは別料金ですよ」

男「ソープ嬢じゃねーか!つーかよよくそんなこと知ってるな!」

メイド「……」ゴシゴシ

男「……」

メイド「なに見てるんです…」ゴシゴシ

男「いや様になってるなぁと思って。お前実は他所でメイドやったことあるんじゃないか?」

メイド「あるわけないでしょう」

男「そっか…まぁあれだけ料理が下手だと普通は雇ってもらえないよな」

メイド「おっと泡で手が滑ったー」ブンッ

男「スポンジ!?」ベチャッ

メイド「次に料理下手って言ったらそのスポンジ口の中に突っ込みます」

男「ううっ…じ、事実だろうがよ…」

メイド「ですがなるべく…ご主人様の口に合うものが作れるよう頑張ります…」ゴシゴシ

男「頼むぞマジ」

男「よし風呂掃除も終わったな、次はこっちだ」スタスタ

メイド「……」トコトコ

男「はいここ…綺麗に掃除しろよ」

メイド「二階の廊下…さっき床掃除しましたよ」

男「…床じゃなくて壁。つーかここに掛かってる『絵』の額縁を綺麗にするんだ」

メイド「10枚以上ありますよ…全部ご主人様のですか?」

男「そう…俺自慢のコレクションだ!例えばこれなんて3年前にローマで…」ペラペラ

メイド「あ、掃除の邪魔なんで向こうで喋っててください」

男「お前嫌い」グスン

メイド「絵はよく分かりませんね…」ゴシゴシ

男「ん?」

メイド「何でこんなものにお金かける人がいるんでしょう」フキフキ

男「ふん…考えるものじゃねーんだ、感じるものなんだよ芸術は」

メイド「はぁ」ゴシゴシ

男「まぁ料理も芸術…お前にセンスがないのは明らかだけどな」

メイド「……」イラッ

メイド「おっとこの一番高そうな絵を落としてしまいそうだー」

男「やめろぉぉおおおおお!!!!」

メイド「でも私、絵の才能はあると思うんですよ」ゴシゴシ

男「ほう?」

メイド「幼稚園のころ、母の日に絵を描いたらお母さん泣いて喜びましたから」フキフキ

男(大半の母親はそうすると思うが)

メイド「はい、額縁全部拭き終わりました」

男「よし…じゃあちょっと休憩だ」

メイド「そんなに疲れてませんよ」

男「いいからいいから…せっかくだからよ」

男「はいっ画用紙!お前の描いた絵を飾ってやろう!」バンッ

メイド「何で描く必要があるんですか」

男「いや…いい思い出になるじゃん?」

メイド「お絵描きの仕事 時給1000円」

男「払わねーよ!」

メイド「うーん…何をモデルにしようか悩みますね」スタスタ

男「俺がモデルになってやろうか」

メイド「結構です」

男「だよね」

メイド「……ん」チラッ

メイド「外に猫がいます」

男「お、あれ描くのか?」

メイド「でも途中で逃げられたら困るので気を引いててください」

男「俺がやるの!?」

メイド「別に描かなくてもいいんですよ」

男「分かった分かった!」ダッ

男(つーかなんでいつの間にか立場変わってんだ…)

猫「ふにゃーご!」

男「ごろにゃーん!(迫真)」

メイド「……」カキカキ

男(メイドのやつ、ちゃんと描けてるのか?)

猫「フシャッ!」ビシッ

男「いてて!いてててて!」

メイド「………うん…よし」パタン

メイド「描けました」

男「おおー見せてみ見せてみ」

メイド「題して『猫とご主人様と私』」

男(どっかで聞いたようなタイトルは置いといて、見たまま描いたならお前はいないだろ…)

男「!!!」

メイド「どうです?なかなか上手に描けてるでしょう」ドヤッ

男「センスがないどころじゃなかった…お前にペンを持たせちゃいけなかった…」

メイド「!?」

投下終了
どんな絵かはご想像にお任せします…

明日は時間あるので、なるべくたくさん書けるようにします

ドボボボボボボボ…

男「……ふぅー…いい湯だな」

男「しかし…」

男「…疲れたぁ………」


男(まさかメイドを雇って、雇う前より苦労するとは)

男(いやまぁ最初だから仕方ないっちゃ仕方ないけどな)

男(まだまだ色々教えなきゃならんし、任せっきりにするのはずっと先だろうな…)

男(とにかく今日は早く寝て…)

メイド「ご主人様お湯加減どうですか」コンコン

男「ん?おおちょうどいいよ」

メイド「そうですか。じゃあちょっと上げますね」

男「いやちょうどいいっつってんじゃん…」

男(こういう少しトボけたとこにも早く慣れんとな)

メイド「ご主人様」

男「……今度はなんだよ?」

メイド「アイスがありますからお風呂上がりに食べましょう」

男「お、おう…」

男(アイスなんて買ってたのか。意外と気が利くな)


数分後

ガチャッ

男「ふー…サッパリした」ゴシゴシ

メイド「次、私入りますね」パタン

男「おう」ゴシゴシ

男「さて、アイスってどれのことかな…」

男「…!こ、これは…」

男「メイド!おいメイド!」ガチャッ

メイド「!」ビクッ

男「あ…入って…なかった…のか…」

男(メイド服まだ脱ぎかけか…危ない危ない)

メイド「い、いきなりなんですか…」ササッ

男「!そうだ!机の上に置いてあったアレはなんだ!?」

メイド「たまごアイスのことですか?」

男「たまっ…」

男「………」

男「そうか…お前にとってのたまごアイスは『凍らせた生卵』なのか」

メイド「え…違うんですか…」

男「バカ野郎たまごアイスってのはなぁ!形状がたまごに似てるってだけで、生卵なんて使ってねーんだよ!」

メイド「知りませんでした…」

男「まったくふざけたことを…」

メイド「……」ジワッ

男「えっ…」

メイド「…お風呂入りますから…閉めてください」クルッ

男「あ、ああ…悪い」ピシャン

男(あれ…泣いて…俺が泣かせた…???)

男(い、言い過ぎたか…!!)

男「すまんメイド!この卵はちゃんと食うから!」ムシャムシャ

男「不味…冷た……」キーーン

メイド「………」ガチャ

メイド「……」ゴシゴシ

シーン……

メイド「…ご主人様?」

メイド「いない…?」

メイド「まさか怒って出ていったんじゃ…」

男『何がたまごアイスだ!ふざけわがって!こんなもん食わせるメイドと一緒にいられるかよ!』

メイド「はぁ…バカだなぁ私…」

男「ただいま」ガチャ

メイド「ご主人様!」

男「お、もう出てたのか…いやー疲れた疲れた」

メイド「どこに行ってたんですか…」

男「ん…駄菓子屋」

メイド「は…??」

男「買ってきてやったぜ」バサッ

メイド「あ…」

男「本物のたまごアイスだ!いやー駄菓子屋って日が沈んでもやってるものなんだなぁ」

メイド「わ、わざわざ買って来なくても…」

男「なんだよ。俺は自分が食いたくて買ったんだぞ」

男「せっかく二つ買ったのに…要らないって言うなら両方食っちまおうかな」

メイド「た、食べます、私にもください」

男「………ほら」ポイッ

メイド「!」パシッ

男「さっきはキツい言い方して悪かったよ…ごめんな」

メイド「冷たいっ!冷たいっ!」アタフタ

男「おおいっ!聞いてねーのかよ!?」

男「うん…うめぇうめぇ」チューチュー

メイド「そういえばこんなんでしたね…」チューチュー

男「最後に食ったのいつだろうな…」チューチュー

メイド「私はまだ小学校入る前くらいだった気がします。お父さんによく買ってもらいました」チューチュー

男「そんだけ前ならそりゃ凍らせた卵も出てくるわけだ」チューチュー

メイド「わっ…」ドピュッ

メイド「顔にかかった…そういえばこんなんでしたね」ドロドロ

男(うおおおおおおおありがとうアイスたまご!!)

メイド「……?」チューチュー

男「ふわぁ…眠…」

メイド「もう寝たらいいじゃないですか」

男「やだよ、この映画最後まで見てーもん」

メイド「……最後、この人死んじゃうんですよ」

男「え?」

メイド「ヒロインがお調子者の黒人と結ばれて終わりです」

男「ネタバレすんじゃねーよこの野郎!」

メイド「これで最後まで見る必要なくなりましたね」ニコッ

男「…お前すっげームカつく!」ムスッ

メイド「……やっぱりそうですかね」

男「……お、おいまた泣くんじゃないだろうな」

メイド「泣きませんよ…泣きませんけど…」

男「なんで急にそんなショボーンとしちゃったんだよ」

メイド「…いえ、ちょっと」

男「ネタバレしたお前が悪いんだぞ…」

メイド「それは…すいません。そういうの嫌がる人もいること忘れてました」

男「大抵の人は嫌がるよ普通」

メイド「昔のことを思い出しまして」

男「……昔のこと?」

メイド「……昔っていうか、中学の頃のことですけど」

男「なになに?」

メイド「そんな期待されても…嫌な思い出ですし…」

男「……そうか。じゃあ無理に聞かないけど」

メイド「私…いじめられてたんです」

男「結局話すんかい!」

男「…って、んん?」

男「いじめられてたの?お前が…?」

メイド「はい」

男「なんでよ」

メイド「…私この金髪、地毛ですから…チャラチャラしてるとかなんとか言われまして」

男「んんん!?地毛なの!?それ!メリケンみてーだな」

メイド「母がアメリカ人です」

男「お前ハーフだったのかよ!!なんでそういうこと言わねーんだ」

メイド「聞かなかったじゃないですか」

男「まぁそうだけど」

男「で、ハーフだから生まれつきその色なのに、染めてるとか言われていじめられたんだ」

メイド「そうです…そのせいで何をしても私ばかり咎められて」

男「なるほどな、そりゃキツいわ…」

メイド「…中学卒業までどうにか耐えましたけど、高校には行きませんでした」

男「ちゅちゅちゅ中卒!!」

男「ハーフで中卒とは…次々と衝撃の事実が判明していくな…」

メイド「それからずっと、母の研究を手伝ってたんです」

男「はぇー…そんでそのお袋さんが亡くなったから俺のとこにいるわけか」

メイド「やっぱり中卒っていうのはまずいですか…?」

男「そんなのどーでもいいけど」

メイド「……え?」

男「お前はもう俺のメイドなんだから、昔のことなんて関係ないよ」

男「中卒っつってもまぁそんなに頭使うようなことはないだろうし」

メイド「…いいんですか…?」

男「良いも悪いも、もう雇っちゃってんだから」

男「一日使ってみていろいろダメなところが分かったけど」

男「それでも十分やる気は感じたし」

男「別によほどひどいヘマやらかさねー限りは辞めさせたりしないって」

メイド「はぁ…」ポカーン

男「じゃ、俺もう寝るわ…映画もオチ分かっちゃったしな…誰かさんのせいで」ボソッ

メイド「あ、あの…」

男「ん?」

メイド「私…あの…明日からもっと頑張ります」

男「…ったりめーだろ、給料分きっちり働いてもらうからな」

男「……じゃ、おやすみ」スタスタ

メイド「……」テテテッ

男「………?」クルッ

メイド「……」ピタッ

男「…なんで着いてくんの?」

メイド「え…寝るんですよね?」

男「おう…寝るよ」

メイド「私はメイドだから当然一緒に寝るんですよね?」

男「……」

男「遅かれ早かれそうなるとは思ってたが…まさか初日からとは…」

メイド「え?おかしなこと言いました?」

寝室

メイド「大きなベッドですね」

男「ああ」

メイド「ここで寝るんですか?」

男「お前はな」

メイド「お前はなって…ご主人様はどうするんです」

男「部屋に布団敷いて寝る」

メイド「こんなに大きいベッドがあるのにですか?しかも寝室もう一個ありましたよね?」

男「こんなに大きいベッドがあるのに、しかも寝室がもう一個あるのに、なぜか我が家はみんな布団で寝るんだよ」

メイド「でもメイドとしてはご主人様のすぐ近くで寝たほうが良いんですが…」

男「…だったらベッドの横に布団敷いて、そこで寝るよ」

メイド「ダメですよ。私が寝てるベッドの下に斧を持った男がいたら、ご主人様が真っ先に殺されます」

男「どこの都市伝説だよ」

男「お前、俺と一緒に寝たいの?」

メイド「いや…その…」

男「お前、実はすでに夜伽のことまで考えてたのか…!なんてはしたない!」

メイド「よとぎってなんです?」

男「なんだ違うのか…じゃあなんで一緒に寝たいなんて…」

メイド「……ひ、一人で寝るのは嫌だからです」

男「……」

男「……は?」

メイド「い、いつもはクマちゃんと一緒に寝てるんですけど、ここに持ってくるの忘れちゃったんです」

男「ガキかお前は!」

メイド「ダメですか…」

男「……」ウーン

男「…まぁ、デメリットがあるわけじゃないし、別にいいか…」

メイド「ありがとうございます」

男「いいか、そりゃ俺も男だから、気の迷いでお前に襲い掛かるかも知れんぞ!」

メイド「そのときはそのときに考えるとします」

男「ったく…じゃあ寝るから電気消して」

メイド「小さい電気は?」

男「?」

メイド「小さい電気。オレンジのやつ」

男「だからガキかお前は!」

男「…好きにしなさい」ドサッ

メイド「ではお言葉に甘えて…」パチッ

男「……おやすみ」

メイド「はい、お休みなさい」

男(あーダメだ思ってたよりずっと疲れてるな…これならすぐ眠れそうだ…)

フワッ

男(ん?)

メイド「………」ギューッ

男(…だ…抱きついて…)

メイド「…うーん…クマちゃん…」スヤスヤ

男(ふざっけんな眠れねぇだろうがぁああああああああああ)


翌朝

チュンチュン…

メイド「おはようございますご主人様。お陰さまで昨日はよく眠れました」

男「そりゃよかった…こっちもお陰さまで寝不足…」

メイド「?」

たった一日の話に一週間かかるとは…
テキトーにやりすぎました。反省してます
次回更新分の話はもう考えてあるので、多少はマシになるかと…


なお今回の話に出てきた『たまごアイス』はもう生産終了しているそうです
あと生卵を凍らせても何も良いことなんてありません。念のため

メイドを雇って3日目の夜

メイドのプロフィール(一応、履歴書のつもり)に書けそうなことが増えた

男「……」

メイド 女 20歳(干支が即座に言えたので嘘ではないはず)

身長165cm 体重48kg(計ったらなんとピッタリだった)
スリーサイズ 不明(ブラのサイズはbらしい)


男「まぁここまでは特に目ぼしい情報はない」

男「問題は…」チラッ


特徴


男「………」

二日前(たまごアイス騒動の翌日)


メイド「……」パタパタ

男「ぎゃああああああああああああ」

メイド「…!」ビクッ

男「うわああああああああヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ」ドタバタ

メイド「ご主人様…部屋で何してるんですかね」

男「メイドぉおおおお助けてくれええええええ」

メイド「…助けてくれって……」

メイド「はいはい今行きますよ…」スタスタ


男の部屋

メイド「どうしたんです」ガチャ

男「はっはっはっはばばばばっばばばっ」アタフタ

メイド「は?」

男「ハチが!!」

ブーーーン………

メイド「……」

メイド「……」グイッ

男「うおっ」

バタン

メイド「マジでどうしたんです…あれ」

男「さ、さっきリフレッシュしようと窓を開けたら、いきなり飛び込んできて…」

メイド「なるほど…」

男「この黄色と黒の凶悪な組み合わせは…」

メイド「ええ…一目で分かりますよ…」

メイド「日本原産、本国最悪の殺人生物…オオスズメバチ!」

男「なぜそんなカッコいい言い方した」

メイド「よく刺されませんでしたね」

男「慌てて上着を頭から被ったんだ」

メイド「スズメバチの前で一番やっちいけないことは大声で騒いだりすることです」

男「向こうから入ってきといて何か腹立つな!」

メイド「そして黒い服を着た人間を見ると興奮して襲いかかってくる可能性があります」

男「あっやべぇ今黒い服着てるよ」ドキッ

メイド「ノープロブレム」バサッ

メイド「メイド服のほうが黒いですから」

男「なんでエプロン取ったんだよ」

メイド「捕まえます」

男「はぁ!?」

メイド「いいですかご主人様、今から簡易の防護服を作りますよ」

男「ええっ!?」

メイド「今から言うものを用意してください…」

男「俺が!?」

男「持ってきたぞ…!」ドタドタ

メイド「……」

男「どうすんだよぉ…」

メイド「まず、肌を見せたらアウトです。刺されますからね」

男「おう」

メイド「だから腕や手を完全防御しなきゃいけません」

メイド「上着&手袋は隙間が出来やすい。なので」スッ

ビィーーッ

メイド「サランラップを服の上からひたすら巻き付ける!指の先まで!」

男「…大丈夫なのか?」

メイド「サランラップならハチが入る隙間なんて絶対にできません」グルグルグルグルグルグル

男「顔はどうするんだ?」

メイド「そう…顔には巻けません。息ができなくなりますから」

メイド「だからこれを持ってきてもらったんです」バッ

男「ざる…!」

メイド「ざるを仮面のように装着すれば、ハチは入り込めないし且つ呼吸には困りません」

男「どうやって装着するんだよ」

メイド「…そこまで考えてませんでした」

男「おい!?どうするんだよ!」

メイド「あっそうだ、その上着貸してください」

男「えっ?」

メイド「フード付いてますね、これで後頭部をカバーしましょう」

男「だからざるはどーすんだ?」

メイド「フードと合体させます。ガムテープで」フード→()←ざる

男「いやだったらサランラップもガムテープでよかったんじゃないか」

メイド「剥がすとき痛いじゃないですか」

男「……」

メイド「あとは首にもラップ巻いて…よし、肌は全部隠れました」

男「すっげぇ間抜けなビジュアル!」

男「でも捕まえる方法はあるのか!?」

メイド「エプロンで絡めとります」

男「無理だろ!」

メイド「最悪ラップでどうにかして…」

男「おいおいおい!本当に大丈夫なんだろうな!」

メイド「…行けますって!無事捕まえたら結婚しましょう!」スッ

男「おい洒落にならんフラグ建てはやめろ!」

メイド「開けますよ!飛び出してくる危険がありますから、下がってください!」グッ

男「ひぃっ!」

メイド「来い!スズメバチ!」ガチャッ

シーーーン


メイド「……」

男「……」

メイド「普通に出てったみたいですね…」

男「なんだよそれ…」グッタリ


その後、業者さんに巣を発見してもらい

駆除してもらいました

メイドの対処法は怒られそうなので、業者さんには伝えませんでした

現在

男「結論!」


特徴
危険を省みずスズメバチを捕まえようとするバカ
しかもその方法があまりにテキトーすぎるバカ
主人の危険を省みないメイドの屑


男「こいつ常識ないからか、すぐ暴走するな…」

メイド「なに書いてるんです?」

男「いやなんでも」サッ

時間がないので思い付きで書きました

ハチの捕獲方法も全部デタラメです
絶対に真似しないでください


本来、今日書くつもりだった話は次回に持ち越します
新キャラ(人外)登場予定です!

乙乙
新キャラとかいらない…いやまあ好きに書いて欲しくはあるけども


新キャラいらなくね?
面白かったらいいけど……

メイドを雇って4日目の朝

男「…あのさぁ…あれじゃん…その…まだ4日目じゃん」

メイド「……」グテー

男「なんでそんなダラけてんの?三日坊主か?」

メイド「三日坊主だなんてそんな…違うんですよ」

メイド「ただ気付いてしまったんです」

男「何に…」

メイド「毎日毎日、同じところを掃除する意味があるのか?と…」

男「……」

メイド「料理や洗濯、風呂洗いは分かります。毎日必要ですからね」

メイド「でも掃除!普段使ってないような部屋を、毎日キレイにする必要ってありますか?」

男「……」

男(なんて言えばこいつは…納得するだろう)

男(この手のは必要性を主張しても…あまり意味ない気がする)

男「……じゃあ例えば、今日は掃除しなかったとしよう」

男「すると翌日は今日の分含めて、二倍キレイにしなきゃいけないんだぞ」

男「そんなのめんどくさくないか?」

メイド「別に一日放置したからと言って、二倍汚くなるはずはありません」

男「…では三日掃除しないとどうだろう」

メイド「……」

男「四日目…五日目…ついには一週間!果たしてお前の掃除量はいったいどれだけ増えているのか…」

メイド「うっ……」タラー

メイド「ま、まぁ仕事ですからね、仕方ない仕方ない…やりますよ」

男「よく言った!それでこそメイドだ!」

メイド「じゃあ新しい掃除道具を買いましょう」

男「はぁ�・?」

メイド「たまには気分を変えて別の掃除道具を…」

男「気分を変えてーならワックス掛けでもやってろよ」

メイド「いや…その…そういうのとは少し違うんです…」

男「お前なぁ、新しい掃除道具ってなぁ、なに使ったってやることは変わらねーんだぞ」

男「効率が劇的に変わる魔法の箒でもありゃ別だけど、そんなものはないんだ」クドクド

男「大体、今使ってるやつだってそこそこ良いものだろうが」ガミガミ

メイド「ううっ…」

男「ま、気分を変えたいってんならちょうどいい」

メイド「?」

男「今日はゴミ捨ての日だ。さぁ行ってこい」ゴミゴミ

メイド「だからそうじゃなくて…」シクシク

男(まぁ確かに、部屋の大半はそこまで頻繁に掃除する必要なんてないんだよなぁ)

男(なんでもかんでもやらせりゃいいってもんじゃあないか)

男(一つ一つをしっかりこなせるようになったら無駄な作業はやらせないで…)

男(……掃除道具か。金ならあるんだから、別に買ってやってもいいかな)

男(モチベーション維持のためにもアリっちゃアリだな、うん)


ガチャ

メイド「ご主人様ー!!」

男(お、帰ってきたか…)

メイド「すごいものを見つけましたよ」

男「ん?なんだ、魔法の箒があったのか?あるわけねーってのに」ヒョコッ

男「!?」

メイド「これです…」ゴロゴロ

ゴロゴロゴロゴロ

男「な、なんだ…その…」

男「スターウォーズのr2d2みたいなフォルムの…黒いのは…」

メイド「お掃除ロボット・ルンバくん」

男「絶っっ対に違う!!!」



男「ふーん…ゴミ捨て場においてあったのか」

メイド「車輪がついてたからここまで持ってこれましたけど…かなりの重量ですよ」

男「中に何か入ってるのか」

メイド「少なくとも外見だけってことはなさそうです」

男「…怪しいな…」ゴソゴソ

シャコッ!!

男「うわっ!何か出てきた!」

r2-d2で言う、腹の辺りが開いた

メイド「シャッターみたいなのが開いたんですね」

男「…なんかボタンがあるけど、押していいのか?怖ぇーよ」

メイド「ビビってるなら私が押します」ポチッ

男「おい!?」

シーーーン

メイド「あれ、反応しない」

男「ほらな、動くわけねーよ。壊れてんだよ」

男(でもこういう機械ってのは大体、長押ししないと起動しないんだよな)

メイド「長押ししたらどうなりますかね?」グッ

男「おまっ」

ピコーン

メイド「!」

男「お、音が」

キュイイイーーーーン

『指紋ヲ認識シマシタ』

ウィイイイイイイイン、ウィイイイイイイイン、ウィイイイイイイン

男「アームが出てきた…」

メイド「やっぱりロボットじゃないですか」

プシュウウウウウウウ…

『マスターネームヲ登録シマス』

男「マスターネーム?なんだそりゃ」

メイド「メイド!」

男「は?」

『メ・イ・ド…登録完了』

男「は?は?」

『ハジメマシテ、マスター。家庭用事汎用マシン・mhmデス』

男「家庭用事汎用マシン?エムエイチエム?」

メイド「これはこれは…マジですごいものを見つけたのかもしれません」

mhm『マニュアルヲ起動シマスカ』

男「マニュアル?取説か?よし起動しろ!」

mhm『………』シーン

男「あれ?」

メイド「起動してください」

mhm『了解』

男「メイドがマスターになっちまったのか…!」

メイド「ふむふむ…なるほど…」

男「おい、何が書いてあるんだ?」

メイド「使い方ですね」

男「俺にも見せろよー」グイグイ

メイド「痛たたた…やめてくださいよご主人様」

男「なになに…マスターに危害を加える者を感知すると…攻撃用アームで…」

男「撃…た…い…?」

mhm『排除シマス』ウィーーン

男「ぎゃあああああああああ!!」メシメシ…

メイド「な、なるほど」

男「」チーン

数分後

男「要するにこいつは『家事なんでもできますスーパーマシン』なんだな?」

メイド「そういうことです」

男「そんで、マスターであるお前の命令しか受けない、と」

メイド「ええ」

男「………」

男「つまり、メイドのメイドか」

メイド「そうなります」

男「…ま、これで少しはお前の仕事も減りそうだな。よかったじゃん」

メイド「いや本当に…助かりますよ」

男「で、今そいつは…」

メイド「お掃除してます」


mhm『……』コロコロ…


男「…お、こっち来た」

mhm『マスター、全フロアノ清掃、完了イタシマシタ』

メイド「えっ、もうですか、さすがロボットは仕事が早いなぁ」

mhm『待機モード二移行。次ノ命令ヲインプットデキマス』

メイド「…次の命令?じゃあ、窓拭き…」

mhm『了解』コロコロ…

男「…おい、メイド…」

メイド「さ、最初ですから、何が出来るのか調べないと…」

男(…しょせんはロボット。できないこともたくさんあるか)


ところがmhmは、男とメイドの予想を遥かに上回る万能マシンだった

窓拭き

mhm『………』ゴシゴシ

男「アームの先が雑巾になってる…」


洗濯

mhm『……』サラサラサラ

メイド「ちゃんと目盛りの通りに洗剤を入れてる…」


風呂洗い

mhm『……』シャカシャカシャカ

男「浴槽を洗いながら床とタイルを磨いてやがる…!」


料理

mhm『塩胡椒・少々』パッパッ

mhm『ネギヲ小口切リ』トントントン

mhm『溶キ卵投入』ジュウウ

メイド「腕、何本あるんですか…」

男「……」モグモグ

男「うめぇええええ!なんだこのチャーハン!」

メイド「す、すごい…ロボットってこんな、料理まで出来るんですか」

男「料理のデータベースまで内蔵されてんのか?どこかのメイドとは大違いだな」

メイド「そうですよ私なんて頭空っぽで……って酷い!」

mhm『次ノ命令ヲインプット…』

メイド「食器洗いを」

mhm『了解』

男「…便利だな」

メイド「便利ですね」

男「最初からこれ一つあればよかったな」

メイド「え…」

男「……メイドさ、お前今日…なんかした?」

メイド「………!」

男「今朝のゴミ捨てだけだよな…」

メイド「ふ、布団!布団キレイに整えてきます!」

mhm『ベッドメイキングハ既二完了シテイマス』

メイド「あ、あれ?頼みましたっけ…」

男「……」

男「お前がマスターでよかったなぁ」

メイド「ど、どういう意味ですか…?」

男「俺がマスターだったら、お前が必要なくなっちまうからなぁ」

メイド「………そ、そうですかね」

男「……もう寝るわ」ガタッ

メイド「あ、じゃあ私も…」スッ

男「いいよ。お前、一人で寝るのが怖いんだろ」

メイド「はい。だから一緒に…」

男「ロボがいるじゃん」

メイド「」ガーン

男「…おやすみ」スタスタ

メイド「待って…待ってくださいよご主人様…」アタフタ

mhm『………』ウィーーーン

メイド「そんな……」


男「……全く、便利な時代だよ」スタスタ

男「自動でなんでもできるお手伝いロボットなんてあるんだからな」スタスタ

男「……『あれだけのもの』の存在を、今の今まで知らなかったって、普通おかしいだろ」ガチャッ

男「文明の利器…今なお進化し続けている『パソコン』!」

男「こりゃ調べるしかねーよな!」カタカタ

[家庭用事汎用ロボット mhm] [検索]

カチッ

男「………」

男「…ウィキ…あんじゃん…あれ?もしかして有名なのか?」

男「どれ…『家庭用事汎用ロボット・mhm』とはマベニコーポレーション製の家庭用ロボットである」

男「…マベニコーポレーション?有名な会社じゃねーか。大学の友達が一人、内定もらって大喜びしてたぞ」

男「ってことは『mabeni・housekeeping・machine』でmhm…かな」

男「えっと…システムは…まぁなんとなく分かってるからいいか…」

男「お…?」


20xx年 x月x日 試作モデルが公開


男「……試作だと?最新情報が試作の公開?」

男「…なんでウチに試作モデルがあるんだよ」

とりあえずここまで
後半に続きます


>>96
>>98
情けない話、新キャラでも出していかないと、どうもネタがないのです
もちろん主軸は男とメイドの話ですが、これからどういう流れになるのかはまだ分かりません…

今日も仕事なのか?
お前の書くss面白いんだらはやくかいてくれ

>>120
今日の夜更新しますよー
毎日更新はありえないと思ってください…

チュンチュン…

男「……zzz」

チチチ

男「…ん…?…ムクッ

男「なんで机…あっれ…なんだっけ…」

男「…ああそっか…昨日調べものしてて…そのまま寝ちゃったのか…」

男「いかんいかん…もう9時だ…メイド起こしてくれなかったのかよ」

男「おーいメイドー」スタスタ


メイド「………」スヤスヤ


男「ソファーで寝とる…」

ウィーン

男「…!」ハッ

mhm『………』カチャカチャ

男「お前ロボなのに…コーヒー淹れたりすんのか」

mhm『………』カチャカチャ

男「無視すか」


メイド「うーん…」ムニャムニャ

男「!…やっと起きたか、おいメ…」

mhm『オハヨウゴザイマス、マスター』ウィーン

男「うおっ」

メイド「あ…ルンバくん…じゃなかった、mhmか」

mhm『コーヒーデス、ドウゾ』スッ

メイド「コーヒー…?頼んでましたっけ」

mhm『イイエ』

メイド「ロボットなのに気が利きますね…でも私コーヒーは極限まで甘くしないと飲めないんですよ」

mhm『失礼イタシマシタ。スグニ片付ケマス』

メイド「あ、いいです。そこに置いといてください」

mhm『カシコマリマシタ』

男「おいメイド…なんでソファーで寝てたんだ?」

メイド「……ご主人様が一緒に寝ないって言ったんじゃないですか」

男「…じゃあ、なんで起こしてくれなかったんだ」

メイド「昨日は頼まれませんでしたから」

男「……あのなぁ、昨日頼まなかったからって、いつもは起こしてくれてるじゃねーか」

メイド「ご主人様は私なんていらないんでしょう」

男「……」ムッ

メイド「……顔洗ってきます」スタスタ

男(くっそ…あいつ、怒ってんのか…)スッ

男「……」ゴクッ

男「あ、ついコーヒー飲んじまった…」

男「……」ゴクッ

男「……う、美味い…」

メイド「……」バシャバシャ

mhm『マスター、タオルヲドウゾ』ウィーン

メイド「あ、どうも」ゴシゴシ

メイド「さて…とりあえず朝ご飯を…」

mhm『オムレツヲ用意シマシタ』

メイド「え…?頼んで…ませんよね」

mhm『召シ上ガラナイノデシタラタダチニ廃棄シマス』

メイド「いや、食べますよ、食べます」

メイド「食べたら廊下の掃除をしないと…」

mhm『完了済ミデス』

メイド「……え?」

mhm『清掃活動ハ4:28ニ完了シマシタ』

メイド「頼んで…ない…」

mhm『マスターノ就寝中ニ済マセマシタ』

メイド「………」ゾッ

メイド「えっ…と…」

メイド「……洗濯…洗濯はまだやってませんよね?」

mhm『…タダチニ行イマス…』ウィーン…

メイド「ちょっ…そうじゃなくて…」


男「……仕事、全部取られちまったか」スッ

メイド「!」ビクッ

男「…万能だな」

メイド「……た、頼んでないことも、勝手に…」

男「…気が利くロボットなんて素敵じゃないか」

メイド「…だけど…あれはいくらなんでも…」

男「度が過ぎる」

メイド「………」

男「ま、お前のためになることしかやらんようだけどな…俺の朝飯は作ってねぇし」

メイド「…私が今から作ります…」

男「……頼むわ」スタスタ

男「……」モグモグ

メイド「……」パク…

男「…ご馳走さま」スッ

メイド「……あの、おかわりとか…」

男「いらん」

メイド「…そうです、か…」

男「…別に意地悪で要らないっつってるわけじゃねーぞ」

メイド「…はい」

男「……部屋にいるから」ガチャ

バタン

メイド「………」

mhm『食器、片付ケマスカ』

メイド 「いいです…自分でやります」

ジャブジャブ

メイド「……」ゴシゴシ

メイド「……はぁ」カチャッ

メイド「今日の仕事、おーしまい…」

メイド「……」

mhm『………』コロコロコロ…

このロボットは何をするにも私よりずっと上手にこなす

私は必要ない

でも私がいないとこのロボットは働かない

私が何もせずにいることが、ご主人様のためになっている…

メイド「……」ジワッ

なんて惨めな…

コンコン

男「…ん」

ガチャ…

メイド「失礼します…」

男「……なんだ?」

メイド「……」ギュウ

男「…なんだよ、マッサージでもしてくれんのか?」

メイド「……私はロボにできないことをします」シュルッ

パサッ

男「…おい」

メイド「私の体を好きに使って…」

男「ふざけんな!」バシンッ

メイド「!?」

メイド「……な」ヘタッ

男「……エプロンを着けろ」

メイド「…う…」

メイド「うううぅ…ううううう…」ポロポロ

男「……バカやろー…お前の仕事は…そんなことじゃないだろ」

メイド「……だって…ロボットが全部…やってくれるから…」

男「……ダメだ…」

男「…お前がちゃんと働くんだ…」

メイド「…もう…私じゃ役に立てませんよ…」

男「…それでも…それでもな…」

男「…俺のメイドはお前だけだ」

メイド「……っ」

男「俺のために働け!」

メイド「……はい…!」

メイド「……」タタタタタ

mhm『雑巾ガケハ必要アリマセン。完了済ミデス』

メイド「いいんです、私がやりたくてやってるだけですから」

mhm『……了解…』ウィーン

メイド「…あなたのほうが優秀みたいですけど…」スッ

メイド「……」ギュウウウウ…

ボタボタボタ

メイド「私がやらなくていい理由にはなりませんから…」ヒリヒリ

男「水が冷たいか?」

メイド「……そりゃ、冷たいですよ」

男「だったらもっと頑張らなきゃな」

メイド「…ええ。そうですとも」

メイドは一日、ロボットが済ませた家事をまるまるやり直した

意味があったかどうかは重要ではない

やらねばならない仕事だから、やったのだ


男「…あとは晩のおかず買ってきてくれ。俺の分と、欲しいならお前の分も買ってきな」

男「今日初の意味ある仕事だぞ」

メイド「…はい」

mhm『……』


メイド「行ってきます」ガチャ

mhm『………』ウィーン

メイド「え?なんで着いてきてるんですか」クルッ

mhm『荷物持チヲ手伝イマス』

メイド「……ま、いっか…」

スーパー

メイド「さすがに中に入れるのはまずいか…」

メイド「そこで待っててください」

mhm『了解』ピタッ


数分後

通行人「……!」ガッ

通行人「痛って!足引っ掛かった…」

通行人「なんだよこれ、邪魔だな…!」

mhm『……』


メイド「お待たせしました…さ。帰りましょう」

mhm『荷物ヲ渡シテクダサイ』

メイド「いーですいーです。ひとつしかありませんし、そんなに重くありませんし」スタスタ

mhm『…了解』コロコロ…

メイド「最近は暗くなるのが早いですね」

ヤンキー1「ねーねーお姉さん、買い物帰り?」

ヤンキー2「俺らと遊ばない?」

メイド「…はい?」

ヤンキー3「やべー金髪じゃん!超可愛いし」

ヤンキー1「車乗りなよ」

メイド「いや、あの…これ、ナンパ…?」

ヤンキー2「ほら、早く早く」グイッ

メイド「ちょっ…離してくださ
いっ…」

ヤンキー3「ダイジョーブだって、明日の朝には帰してやるから」グイグイ

メイド「ホントにっ…やめてくださいよ…!!」

mhm『…マスターニ危害ヲ加エル対象3人ヲ捕捉…』ウィーン

mhm『排除シマス』ピピッ

ぶわあっ…

ヤンキーズ『………!!?』

メイド「ろ、ロボ…!」

mhm『……』ウィーンウィーンウィーン

ヤンキー2「な、なんだよこれ…!暗くて見えねーぞ!」メキメキ

ヤンキー3「浮いてる浮いてる!なんかに持ち上げられてんぞ!」ジタバタ

ヤンキー1「クッソ…そのゴミ箱みてーなのか!」ゴソゴソ

ヤンキー1「オラァッ!!」ゴキンッ

mhm『……』ゴンッ

ヤンキー2「出た!メリケンサック!」

ヤンキー3「いいぞ!ぶっ壊しちまえ!!」

ヤンキー1「オラオラオラオラ」ゴカッバキッベコッ

mhm『……』ジ…ジジジ…

ヤンキー1「オラ!オラ!」ドゴッガギッ

メイド「や、やめて!やめてください!!」

mhm『………』シュウウン…

パッ

ヤンキーズ『うおっ!』ドテッ

ヤンキー1「やっと離れたか…なんなんだよこれ…」

ヤンキー2「姉ちゃんもう許さねぇからなぁ」

ヤンキー3「こっち来いや!」

メイド「い、いい加減にっ……」

警官「コラァッ!何やってる!!」チャリンチャリン!!

ヤンキー1「やべぇっ警察だ!逃げろ!」ダッ

ヤンキー2「早く乗れ!」

ヤンキー3「よしっ」バタンッ

ブロロロロロ…

警官「待てーっ!!」

警官「逃げたか…署に連絡だ…」

メイド「はぁ…はぁ…」ペタン

警官「き、君、大丈夫かい?」

メイド「大丈夫…です…」

メイド「…!」ハッ

メイド「ロボ…!」


男「……メイドのやつ遅いな」

男「まさか道に迷いでもしたか?」

男「いやいやロボットが着いてってそれはあり得ないか」

ガチャッ

男「!遅かったじゃねー…」ヒョコッ

男「!!」

メイド「ご、ご主人様…」ズルズル

男「お前それ…どうしたんだ…?」

メイド「ロボが…ロボが…」


男「そうか。悪い奴らに絡まれて、ロボが壊されちまったのか…」

メイド「どうしよう…直りますかね…」

男「俺には直し方なんて分からん…」

男「今から調べて、頼れそうなところがあったら明日…」

メイド「……ロボ…」

男「…とりあえず、部屋に持ってくぞ……」

男「…[ロボット 修理]…こんなゆで分かるかな…」カタカタ

男「お…結構いろいろあるぞ…!」カチッ

男「……」チラッ

mhm『』シーン…

男「……ロボットのクセに、気を利かせ過ぎなんだよ」

男「…でも、ありがとな。メイドのこと助けてくれて」

mhm『』

男「よくできたやつだよ、お前」

メイド「……」ズキッ

メイド「痛た…どさくさ紛れに腕ケガしてた…」

男「……」スタスタ

メイド「…ご主人様」

男「……怖かったか?」

メイド「…ロボがいなかったら泣いてたかもしれません」

男「そっか…そうだよな」

メイド「…ご主人様。ロボットのこと、ちょっと不気味だと思ってましたけど」

メイド「…あんなので壊れちゃったら、嫌ですよ。私」

男「………うん」


mhm『』シーン……

翌朝

男「………ん」モゾッ

メイド「……」スヤスヤ

男「……あれ」

男「…ロボットがない。壊れてたはずのロボがいない!」ガバッ

メイド「…えっ!?」パチッ


男「……部屋のドアが開いてる」スッ


シーーーン…


メイド「物音はしませんね…」

男「…とりあえず、見てみるか」

男「……二階にはいないな」

メイド「掃除してた跡はありますよ」

男「…でも、明らかに昨日より雑になってる」

メイド「………」

男「一階にいるのか?」スタスタ

メイド「あ……」


そこには、今までの掃除で溜めてきたゴミと

複数のアームがはみ出した状態のロボが

階段を転げ落ちたように散らばっていた


男「…ロボ…」

メイド「………」

男「いつの間にか…俺らが寝てる間にロボは起動して…掃除をしてたんだろうな」

メイド「……」

男「だけど階段辺りで…たまたま落ちてしまったのか、それとも『保たなかった』のか…」

男「完全に…壊れちまった。今度はもうダメだろう」

メイド「……」

男「……ロボットが勝手に起動するなんて、あり得ないはずなんだけどな」

男「…こいつは特別によくできてるみたいだから…」

男「最後の最後までお前のために一生懸命、働いてたんだ…」

メイド「……私」

メイド「…ロボットのご主人様なのに…」

メイド「…『お疲れさま』って…言ってあげられなかった…」ジワッ

男「……俺も、もうちょっと感謝してやらないと、いけなかったな」

ロボットが撒き散らしたゴミを片付けて、一段落ついたあと

きっと俺より辛いだろうに、メイド
がコーヒーを容れてくれた

口に含んだ瞬間に、昨日の朝、ロボットが容れたコーヒーの味を思い出して

ほんの少し、カップの縁が滲んで見えた

男「よいしょ…よいしょ…」ズルズル

男「よいしょぉっ」ズズッ

メイド「ホントにいいんですか」

男「…じゃあお前、こいつを元いたゴミ捨て場に戻すか?」

メイド「……」

男「この部屋は誰も使わないけど。ここにロボを置いておけば、きっといつでも綺麗なままだ」

男「オブジェにはちと不格好だけどな…」

メイド「…そうですね」

バタン



mhm『……』

mhm『マスター…ガンバッテ…』

ロボ編おわり

次回、新章開始ッッ!!

ロボの件で、メイドにも心境の変化があったのだろう

ずいぶん真剣に仕事をするようになった

メイドとしての強い自覚を持つようになった

しかしそれでもメイドはメイドである…


男「今日でお前が来て7日…一週間だな」

メイド「もう一週間ですか?」

男「まだ一週間だよ」

メイド「……」

男「……」

メイド「ま、まぁ何日経とうが仕事には関係ありませんね」

男「もうちょっと上達してもいいんけどな…料理とか料理とか料理とか」

メイド「…今日はずいぶん責めてきますね…」

男「当たり前だ…そろそろ給料のこと考えなきゃいかん」

メイド「きゅきゅきゅ給料!!」

男「…今の仕事量で月に150万なんていくらなんでもボリすぎだと思うんだ」

メイド「なっ…契約を取り消しにするつもりですか!?」

男「いやいやっそうは言ってない!ただ、月給150万なんてバカにならん金額だ!それに見合った働きはしてもらいたいなぁと…」

メイド「…これでも結構頑張ってるつもりなんですけどね」

男「………」

男(しかし世間一般のメイドってのはどのくらい働くものなのか…)



メイド『今日のお料理はマガモのソテーですわ』

メイド『お背中洗いましょうか?…胸のスポンジで』

メイド『あら?眠れないのでしたら…私がお相手を…』


男「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃこれなら150万でもなんぼでも出すぜー!!」

メイド「ご主人様が壊れた…」

男「…と、とにかく!…精進しなさいよと言う話だ」

メイド「はーい。分かりましたー」スタスタ

バタン

男「…ホントに分かってんのかぁ……?」

メイド「あっ!」

男「…どうした?」ガチャッ

メイド「100円みっけー!」ピカーン

男「…あっ!お前それ、俺のだぞ!」

メイド「落とし物には名前を書いてくださいねー…というわけでこれは私のです」

男「こ、このー…」グヌヌ

男「…まぁいいや。100円くらい…」

メイド「…くらい!?なに言ってるんですか!100円を泣く者は100円に泣くんですよ!」

男「逆だ逆」

メイド「ひゃっほー!ラッキー!」

男「100円であんなにはしゃいじゃって…そんなにいいものかね?」

メイド「お金はあればあるほどいいんですよ」

男「お前結構がめついよな…」

メイド「がめつい?そういうのはこれを見てから言っていただきたい」バッ

男「?エプロンのポッケ…?」ヒョコ

キラキラキラ…

男「なっ…なんだこの硬貨の山!」

メイド「ぜーんぶこの家に落ちてたやつです。意外とあるものですね」

男「返せー!」

メイド「嫌ですよー!」

男「お前なー仮にもメイドが!我が家の財産を奪おうだなんて!よくもそんなことができるな!」

メイド「ざ、財産…奪う…!?」グサッ

男「こういうのって犯罪になるんじゃねーの!?」

メイド「はんざい…」ガーン

男「なーんて…」

メイド「返します…返しますよぉ…」シクシク

男「いや冗談だって!なんか俺がカツアゲしたみたいになってんじゃねーか!!」

メイド「でも結構な額ですよ。2000円近いです」

男「いいよいいよ。やるよお前に」

男(あっそうだ。これから給料は家の中に隠して、こいつに探させてみようかな…?)

メイド「そうだ。じゃあこのお金でコンビニ行って、何か買ってきます」

男「おう買ってこい。俺チョコプリンな」

メイド「チョコプリンですね…分かりました。行ってきまーす」スタスタ

バタン


男「………」

男「そういえばあいつ、外出するにもメイド服のままか。さすがに上からコートは来てるけど」

男「その辺の人に怪しまれたりしないのか…?」

男(もしかして俺は、近所の人に『メイド好きの変態野郎』なんて思われてるんじゃ…!?)


このとき俺は気づいていなかった…

その辺の人どころか、もっと恐ろしい組織に目をつけられていたことに!

20分後

メイド「ご主人様買ってきましたよー」ガチャッ

男「お、ありがとよ」

メイド「あと手紙が来てました」

男「一緒に置いといて」

メイド「はーい。じゃあ私一階にいますからね」

男「おう」


メイド「一個300円のスペシャルシュークリーム…こんな贅沢していいんでしょうか!?」ドーン

メイド「ああ…興奮して手が震える…落ち着いて、落とさないように…」ソーッ

男「おい、メイド!」

メイド「!!!」ビクーッ

ベチャッ

メイド「ああーっ!シュークリームがぁっ!!」

男「さっきお前が渡したこの手紙!」

メイド「手紙よりシュークリーム!」

男「お前宛だぞ!」

メイド「私宛!?それがどうし…」

メイド「えっ?」

男「厳密に言うと、俺の名前の下にメイドって書いてあるんだ」

メイド「誰からですか?」

男「jma」

メイド「イエモンの曲?」

男「それは『jam』な。そうじゃなくて、jma(ジェイエムエー)だよ」

メイド「なんですかそれ」

男「さぁ…」

メイド「…とりあえず封筒開けてみては?」

男「それもそうだな」

男「お…紙が入ってるぞ」

メイド「そりゃそうでしょう…」

男「読むぞ…なになに…」

男『メイド様に「プロメイド試験」への参加権をお送りいたします』

男『日本メイド協会(japan maid association)』

メイド「…プロメイド試験?」

男「なんだこれ…イタズラか?」

メイド「裏にも何か書いてありますよ」

男「あ、ホントだ」ペラッ

男「試験場までのアクセスマップ…それと日時…」

男「明日じゃねーか!?」

メイド「ええええええ!?」

男「当日はご主人様ご同伴の上お越しください…」

メイド「………ちょっとなに言ってるか分からないですね」

男「日本メイド協会…本当にそんなのあるのか?ちょっと調べてみるか」


男の部屋

男「ふむふむ…『日本メイド協会』は存在するが、それは『nihon maid association』であり『japan maid association』ではない…」

メイド「別物なんですか」

男「さらに、日本メイド協会(nma)のサイトには『プロメイド試験』なんて書いてない」

メイド「じゃあやっぱりイタズラなんですかね?」

男「しかしアクセスマップの住所をグーグルマップで調べると」

男「なにかそれらしい建物はある。名前が出てないけどな」

メイド「……」

男「どうする?」

メイド「…どのくらい遠いところなんですか」

男「うーん…電車で一時間くらいかな」

メイド「…行ってみます?」

男「まぁ何もないなら何もないで…ちょっと遠い散歩だと思えば」

メイド「しかし明日とはまた急ですね…」

男「試験って言うくらいだから普通はもっと余裕があると思うんだけどな…」

メイド「たまたま私のところに来るのが遅かったとか…」

男「…この手紙の主は、メイドのいる家をしらみ潰しに探して、片っ端から送ってるのかもな」

メイド「ええー…何者なんですかいったい」

男「さぁ…」



メイド「これと…あとこれと…」

男「まだ起きてるのか」

メイド「明日の準備をしてるんですよ」

男「準備って…何がいるとか聞かされてないぞ。向こうが用意してるんじゃないのか?」

メイド「女の子にはいろいろあるんですよ」

男「いや関係ないだろ、それほとんど俺のだし」

メイド「でもちょっと、遠足みたいでワクワクしません?」

男「そうかぁ…?」

メイド「興奮して眠れません」

男「どんだけ期待してるんだよ」

メイド「だってプロメイド試験ですよ?もう意味分からなすぎて逆に楽しみですよ」

男「確かに意味分からんな…メイドにプロとかあるのかよ」

メイド「全国からたくさんのメイドが集まってくるかもしれません」

男「それはちょっと楽しみかも…」

メイド「ご主人様、あんまり他のメイドにデレデレしちゃ駄目ですよ」

男「えっ?お、おう…分かってる分かってる」

メイド「じゃあおやすみなさい」zzz…

男「眠れるんじゃん」

翌朝

メイド「………」ボサーッ

男「…ぶふっ!」

メイド「笑わないでくださいよ…!」

男「だってお前…すっげー寝癖!」

メイド「…普段はこんな風にならないのに…なんで?」

男「夜中すげー寝返り打ってたからなお前」ナデナデ

メイド「……?」

男「……」パッ

ピョコンッ

男「は、は、跳ねすぎだろぉ!」ゲラゲラ

メイド「遊ばないでくださいよ!」

メイド「電車、何時でしたっけ?」

男「えーと9:40だな」

メイド「まだまだ時間ありますね…早く寝癖直さないと…」セッセッ

男「そんなの気にするなよ」

メイド「誰がどう見ても変じゃないですか…」セッセッ

男「…知ってるか?プロ棋士の羽生義治さんは昔、いっつも寝癖つけてたんだぜ」

メイド「…関係ないでしょうそれ!」セッセッ

男「俺はその髪型も可愛いと思うけどなぁ」

メイド「……ホントですか?」ピタッ

男「ら、ライオンみたいでな…うっ、くふふふふ!!!」

メイド「笑わないでくださいってば!」

メイド「な、なんとか元に戻りました!」

男「ちぇっ。つまんねーの」

メイド「今、何時です?」

男「9:20」

メイド「あと20分しかないじゃないですか!」

男「いや俺もう支度すんだから」

メイド「あわわわわ、どうしようまだ朝ご飯食べてない」

男「俺だって食ってねーよ」

メイド「ご飯食べないで試験受けるのはまずくないですか?」

男「駅でなんか食えばいいよ」

メイド「……じゃあ行きましょう!」キリッ

男「はいはい」

電車

男「ふー…なんとか間に合ったな…」

メイド「ギリギリでしたね」

男「お前が『荷物重い』とか言ってモタモタしてるからだろ」

メイド「いやホントに重かったんですよ。予想以上に」

男「…なに入れてきたんだよマジで」

タタン…タタン…タタン…

メイド「こうやってご主人様とお出掛けするのははじめてですね」

男「そうだな。俺は基本的に外出ないからなぁ」

メイド「ひきこもりはよくないですよ」

男「だって寒いし」

メイド「私だって寒いですよ」

男「…特にこの…絶対領域の部分とかな」ピラッ

メイド「ちょっ!?」

男「よし、○○駅だ。降りるぞ」

メイド「ここから乗り換えですか」

男「一回、外出ないといけないんだよ。そんときに飯食うか」

メイド「そうですね」


そば屋

男「ここにするか」

メイド「えーうどんがいいですー」

男「文句言うなー」

ガラッ

\ありがとうございましたー/

男「ん…?」

?「…行くよ。シンク…」スタスタ

?「はい、お坊っちゃま」スタスタ

男「……」

男(姉弟か…?いや、今の『お坊っちゃま』ってのは…)

メイド「どうしたんですか…早く入りましょうよ」

男「…そうだな」

店主「はいいらっしゃい」

男「えーと、かき揚げそばひとつ。…お前どうする?」

メイド「一番高いのどれですか?」

店主「海老天そばの(大)です」

メイド「じゃあそれで」

店主「はいかしこまりました」


男「…お前、大なんて食えるのかよ」

メイド「ご主人様のおごりなんでしょう?だったら高いの食べておかないと」

男「こいつ…」

店主「はい、かき揚げそばと海老天そばです」ゴトッ

男「おー旨そうだ。じゃ、いただきます」パキッ

メイド「いただきまーす」パキャッ

ずずずず…

男「うん…うまいわこれ…温まる」モグモグ

メイド「海老が二匹入ってる…(大)ってそういうことか…」

男「お、よく見たら壁にいろいろサインが掛かってるぞ」

メイド「あ、ホントですね」

店主「ええ、それね。有名な方もたまーにいらっしゃるんですよ」

男(そばにしては高めだし、もしかして結構有名な店なのかな)

メイド「さっき出てきた人も高そうな服着てましたね」

男「…まさかな…」ずずっ

男「ごちそうさま…」

メイド「ごちそうさまでした」

ガラッ

店主「ありがとうございました」


男「…よく食ったなお前」

メイド「美味しかったです」ニコッ

男「……」ジッ

メイド「…なんですか?」

男「なんかデートしてるみたいだ」

メイド「…えっ!?」

男(お、照れてる?)

メイド「ご主人様デートしたことあるんですか!?」

男「どういう意味だオイ」

二本目の電車

メイド「…なーんにもありませんね」

男「田んぼしかないな」

メイド「ホントにこんなところでプロメイド試験なんてやってるんですかね」

男「うーん確かに、メイドとかそういう華々しいものとはかけ離れてるよな」

男「グーグルマップで見たろ?会場もろ山の中だぜ」

メイド「やっぱりイタズラですかね…」


次は○○駅、終点です…

駅前

『プロメイド試験会場行きバス』


男「マジかよ」

メイド「まさかバスが用意されてるなんて…」

男「と、とにかく乗ろうぜ」

メイド「は、はい…」

運転手「ん?お客さん『めーど試験』受けるだか?」

メイド「はい」

運転手「んじゃあんた達で最後だべな」

男「最後って…何人くらいいるんです?」

運転手「18人。あんたみたいな付き添いの方入れたら、もうちょっといるけどなぁ」

男「…なんだ、ずいぶん少ないな」

メイド「もっといるかと思いましたね」

運転手「んじゃ後はもう来ないだろうし、出発するべや」ピーッ

運転手「はい、着きましたよー」

男「こ、こんな山の中をぐんぐん進んでくとは…」

運転手「…めーどちゃん、頑張ってな」

メイド「どうもありがとうございます」ペコッ

プシュー…


男「さて…ここだな…」

メイド「ですね…」


『jma本部』


男「……普通わかんねーよ」

メイド「…ですね」

『プロメイド試験編』前編・おわり

次回が中編になるか、後編になるかはまだ分かりません量的に


多少ネタバレになりますが、これだけは事前に伝えておきます…
・名前の付いたキャラが出てきます
・某漫画キャラを思いっきりパロったのが出てきます

以上2点が苦手な方には申し訳ありませんが、そういう展開を予定してます…

受付係員「招待状はお持ちでしょうか…」

男「はい」スッ

受付係員「……確認しました。入り口を入ってすぐ右に『控え室』がございます。放送があるまでそちらで…」

男「控え室ね…」スタスタ

メイド「……」キョロキョロ

男「なにキョロキョロしてんの」

メイド「いえ、誰もいないなーと思いまして」

男「確かに…俺らを運んできたバスと、車数台。少なくともメディア関係者が来てたりはしないわけだ」

メイド「はぁーそりゃそうですよね」

男「お前もしかして、テレビ出れると思ったのか?」

メイド「おおお思ってませんけど!でもニュースでちょっとは触れられそうじゃないですか!?」

男「確かにネタになりそうだ」

控え室

男「ここだな」

メイド「失礼します」カチャ…

メイド「!」ギョッ!!

バタン

男「おいなんで閉めた!?」

メイド「いや…一度にたくさんの視線が刺さって…」

男「ビビってんじゃねーよお前は…」ガチャッ

ギロッ

男「……うっ」ビクッ

男(なんだよこいつら全員メイドか?…いや男もいるな。こいつらが『ご主人様』か)

メイド「ね?ね?ちょっと怖いでしょう?」ビクビク

男(間違いなくこいつが一番頼りねぇ)

メイド「空いてる場所あります?」

男「この机だ。ほら名前書いてある」ドサッ

メイド「私この荷物をどこかにしまっておきたいんですけど…」キョロキョロ

メイド「あ、ロッカー…」ガチャ

?「ちょっと?」

メイド「は、はい?」

?「そこは私のロッカーよ」

メイド「え?あ、すいません…」バタン

?「まったく…」

メイド(き、キレイな人だなぁ…こんな人も参加してるなんて…)

男「おいメイド、俺の上着もそのロッカーに入れといてくれ…あれ?」

男「あんたさっきそば屋にいたよな?」

?「…だったら、なにかしら」

男「いや別に何ってわけじゃないけど…」

男「縦巻きツインテールに巨乳…『いかにも』はビジュアルだなぁ」ボソッ

?「…は?なんですって?」

男「あーいや思わず口に出ちゃっただけで…」

?「シンク!何を騒いでいる?」

男(…シンクって名前か…?)

シンク「何でもございませんお坊っちゃま。このメイドとその主人らしき男に絡まれただけですわ…」

?「ふん…下郎が」

男「げ…下郎…だと…!」カチン

男「このガキ…!」

?「ガキだと…?」

メイド「ちょ…ご主人様!なにしてるんですか!」

男「はっ…!」

メイド「ダメですよ子供とケンカなんて!大人げない!」

?「子供…?」

男「…そうだな。いや悪かったよ君…小学生かな?」

シンク「あなたたちさっきからよくもお坊っちゃまのことを子供だなんだと…!」

シンク「このお方はマベニコーポレーションの次期社長よ!」

男「ふーん…マベニコーポレーションの…」

男「……マベニコーポレーション!!??」

メイド「?マベニコーポレーションってなんですか?」

男「…あのロボを開発した企業だ」

メイド「え!?」

マベニ「ロボ…?mhmのことか?」

男「そう!そのmhmに世話になったんだよ俺たちは」

マベニ「まだ一般家庭への販売は取り扱っていないはずだけど」

男「ウチのメイドが試作品を拾ってきたんだよ」

マベニ「試作品?…シンク」

シンク「はい…五週間前にお坊っちゃまが廃棄なさった…と記憶しております」

マベニ「…ああ、そうだ…そうだった」

マベニ「いらなくなったからその辺のホームレスに譲ってやったんだよ」

男「…ホームレスに?じゃメイドは、そのホームレスが捨てたのを…」

マベニ「まったく…ホームレスなら大切に使ってくれるんじゃないかと思ったんだけどな」

メイド「あんな良いものを捨ててしまうなんて」

マベニ「細かな調整が難しくてね…よく出来てはいたが、むしろ出来すぎていた」

マベニ「なんせこのシンクの思考をプログラムとして搭載していたかはね」

男「メイドの思考を…!?」

マベニ「結果、優秀すぎるロボットができてしまったわけだ」

メイド「……」ポカーン

マベニ「…ふ…庶民には分からないか」

男「庶民…!」

マベニ「ちょうどいい、君たちにも見せてあげよう…」

マベニ「我がメイド、シンクの完璧性を!」

メイド「マベニ…君!」

マベニ「…なにかな」

メイド「目に物を言わせてやりますよ」

シンク「プッ…」

マベニ「…くくっ」

メイド「な、何がおかしいんですか…!」

男「…えーっと…あれだ…」スッ

男「…目に物を『見せる』が正しいんだ」ヒソヒソ

メイド「……っ」カァッ

男「…だがまぁ…よく言ったぞメイド」

男「『このメイドはどこに出しても恥ずかしくない立派なやつです』と…俺も胸を張ってそう言えるようになりたいからなぁ」

男「よーしやるぞ!メイド!」

メイド「……はい!」

ピンポンパンポーン

男「お?」

『まもなく試験開始時間です』

『ご自分のナンバーをご確認の上、会場へ移動してください』

『各「ご主人様」もご同伴願います』

メイド「…ナンバー?」チラッ

no.18

メイド「18番です」

男「おk」

メイド「じゃあ試験場に…」

男「…俺まで着いてく必要あんのかな?…メイドの試験だぞ?」

メイド「確かに…」

マベニ「…行こう、シンク」スタスタ

シンク「はい、お坊っちゃま」

男「…い、行くぞメイド…」シブシブ

メイド「あ、結局行くんですね」


試験会場


男「……いや…会場ってこれ…」

メイド「体育館…?」

係員「こちらを胸に付けてください」スッ

メイド「18番のプレート…」

係員「まずは開会式です。ご主人様方はこちらの席で観覧を…」

男「…かっ…開会式ぃ!?」

係員「ええ」

男「試験…だよな?」

係員「皆さま方がご想像している試験とは少々異なるかもしれません」

男「あ、そうすか…」

メイド「…じゃあご主人様、見ててくださいね」スタスタ

男「おう」

男(俺らの想像する試験とは違う…)

男(なるほど言われてみれば…いや言われてみなくても…ここ…)

男(試験会場っつーか…学校の体育館とかそういう感じだし)

男(開会式…なんかすげー茶番の臭いがしてきた)

『それでは開会式を開始します…まずは日本メイド協会会長のお言葉を…』

会長「……」ザッ

メイド「……」

会長「えー…おはようメイド諸君…わしは…我々『日本メイド協会』は…世界で初めての『プロメイド制度』を導入することにした…」

会長「よって君たちにはその採用制度の実験として…この試験に参加してもらうことにしたのだ」

会長「試験的な採用試験じゃな」

メイド「……」

会長「…全国の『ご主人様』の要請に24時間いつでも駆けつけられる究極のメイド」

会長「それらを組織化し、管理すること」

会長「それこそが日本メイド協会の目標である」

会長「まぁとにかく、君たちのメイドとしての実力を、ここで計らせてもらおう…というわけだな」

会長「では以上!」

男(あのおじいさん…会長の言いたいことは分かった…だけど)

メイド(今の話ってつまり…)

男(あいつには関係ないってことじゃ…?)

メイド(私には関係ない…?)

『続いて…メイド紹介です』

男「…は?」

ッパーーーーーーン!!!!

実況『さァー出場メイドの紹介ですっ!今回は我々日本メイド協会が!全国を巡り巡って極上のメイドを探してまいりましたァー!!』

実況『それでは紹介しますッ』


男「…全国から探してきたぁ…?」

マベニ「彼らも相当長い期間準備をしてきたようだね」

男「…マベニ!」ギョッ

マベニ「君のメイドも彼らの眼鏡にかなうメイドだったというわけか」

男(…そうかぁ?)

『次のメイドはno.11!なんとあのマベニコーポレーションの御曹司専属のメイドです!』

『その名はシンク!!頭脳明晰!運動神経抜群!超一流大学からの推薦を断り、主の下で一生を過ごすことを誓った、メイドの鑑です!』

『今回の優勝候補は間違いなく彼女でしょう!』

男「おい今あいつ優勝っつったぞ!」

マベニ「試験とは名ばかりさ。実質これは大会だ」

男「大会って…」


シンク「………」

シンク(お坊っちゃま…マベニお坊っちゃま…)

シンク(見ていてくださいませ…このシンクめがメイドの頂点に立つ瞬間を)

シンク(私はお坊っちゃまのために…必ずやプロメイドになってみせますわ)

マベニ「おや、君のメイドが出てきたよ…」

男「お!」

実況『続いてはno.18!他のメイドの参加が一ヶ月前から決まっていたのに対し、このメイドはつい昨日参加が決定しましたー!』

実況『経歴一切不明!まったく無名のメイドです!しかしその凛とした表情には期待せずにいられないーッ』

男「…なんかすげー期待されてるな」

マベニ「ふっ…面白いじゃないか」


実況『以上!18名ですッ!』

実況『…と言うのが、本来の予定でした』

男「…?」

ザワザワザワ…

実況『しかしッ今回なんと!土壇場というか、いえ全然間に合っていないのですがッ』

実況『我々はその迫力に負けましたッ!急遽参戦を許した19人目!』

実況『どう見ても男ッ!その肉体はメイドのそれではあり得ません…ッ』

実況『地上最強のメイドッ!!no.19…メイ次郎だァアアアアアアア!!!』

シーーーーーン……

スッ…


メイ次郎「お邪魔」ズチャ…



男「なんだあいつッ…!!」

マベニ「協会側はいったい何を考えてる…?」

メイ次郎の元ネタは…分かる人なら説明はいらないでしょう…範馬勇次郎です

ごめんなさい。悪ふざけが過ぎました

メイド(な、なんですかこの人…)

シンク(ふぅん…凄いのが来たわね)

メイ次郎「……フンッ」


実況『場内が一気に不穏な空気に包まれました…が!なんせ初のプロメイド試験!何が起きるかは誰にも分かりません!』

『それではメイド諸君…張り切っていきましょう!』

『第一回プロメイド試験!スターーートッ!!!』


ワアアアアアアアアアアアア!!!


男「ワアアアア…ってスピーカー…そんなに湧くようなもんじゃないだろ」

マベニ「……机を並べ始めたぞ」

男「…え?」

実況『まず一次試験はペーパーテストです!10題の計算問題を解いてもらいます!』


メイド「…え?計算問題…?」


『小学校レベルから一流大学で取り扱うような難題まで!極上の問題を取り揃えております!さぁさぁ皆さま席にお着きください!』


シンク「ま…最低限そのくらいはやらないと試験と呼べないものね」


男「や…やべぇ…中卒のあいつにできるわけがない…!」

マベニ「そもそも中卒にメイドが務まるのか…?」


『試験時間は60分!電卓の使用はもちろん禁止です!』

『それでは、試験開始!』

カリカリカリカリ…

実況『さぁ各メイドが一斉に問題を解き始めました!右から順にno.1、2、3、4、5…』

マベニ(シンクなら特につまづくことなくいけるだろう)

『…10、11、12、13、14…』

男(あーあ…メイドはダメだろうなぁ…問題見ただけで諦めたのかなぁ…なんかよそ事してるし…)

男「…え?」

『15、16、17……あーっと!?18!no.18!なんということでしょうか!!』


メイド「……」パチパチ


『そっ…そろばんです!いつ用意したのか、そろばんを使っています!!』


男「!?」

男「おいィ?ちょとsyレならんしょこれは…」バッ

『ご主人様が思わず飛び出すこのアクシデント!予想外すぎます!』

メイド「……あっご主人様」パチパチ

男「あっ、じゃねーよ何やってんだおまえぇえええ!」

メイド「こう見えて私、小学校の頃にそろばんをやってたんです…」パチパチ

男「いやこれテストだから!そろばん使っちゃダメだから!」

メイド「ルールはたしか『電卓の使用は禁止』だけだったと思いますが…」パチパチ

男「うわっ素で屁理屈言いやがった!」

実況『たっ確かに我々もそろばんの使用までは考えていませんでした!しかし自力での計算をしなければ、それは即失格です!』

男「ほら見ろ!」

メイド「ええーっ!」ガーン

会長『待てい!』

会長『ただ言われたことをやるだけではメイドとして三流!』

会長『真のメイドは、要求されたことのその上を!自らやっていかなければならない!』

会長『そろばんを使用することによる計算のスピードアップ!これはメイドとして実に当然の行為じゃ』

男「いやその理屈はおかしい」

実況『か、会長が認めてしまっては我々も認めざるを得ません!よってそろばんの使用を許可します!』

男「な、なんでそうなる!これはどう考えても反則だろ!」

メイド「…♪」パチパチ

男「そもそもなんでそろばんなんて持ってるんだよ!」

メイド「あの大荷物は伊達じゃないってことです」パチパチ

男「ええい!」バシッ

メイド「あっ!返してくださいよ…!」

男「いいか『ご主人様の命令』だぞ!そろばんは使うな!」

メイド「…分かりましたよぉ」

男「ポケットにでもしまっとけ!」

メイド「…くすん」ゴソッ

男「まったく…」スタスタ

マベニ「君んとこのメイド、ホントに大丈夫なのか」

男「う、うるせーな…マベニ君のメイドこそどうなんだよ!」

マベニ「シンクか?見れば分かる」


シンク「……」カリカリ


男「?…普通に解いてるな」

マベニ「もう全部解き終わって、二週目に入ったよ」

男「二週目!?」


メイド「…ええっとこの問題は…」カリカリ…


男「大丈夫じゃ…ないよなぁ…」

実況『…60分経ちました!試験終了です!』

実況『採点は直ちに行います…皆さまは一度控え室にお戻りください』


控え室

男「メイドー!」

メイド「ごっごめんなさいぃ」

男「これで失格になってたらどうするつもりだったんだよ!」

メイド「だって私そんなことになるとは思わなくて…」

男「お前いろいろと常識が欠けすぎだろ!」

メイド「つ、次から気を付けます…」


シンク「あらあら…可哀想に」クスッ

マベニ「シンク、お前は出来たのだろうね」

シンク「勿論ですわ。ちなみに…」

シンク「そろばんひとつじゃどうにもならない問題ばかりでしたけれど…」

実況『お待たせしました!採点処理が済みましたので直ちに会場へ移動してください』

実況『第二試験を開始します…』

男「第二試験か…不安すぎるな」

メイド「どんな試験なんでしょうね…」

男「試験の内容よりお前が何をやらかすかが心配なんだ…」

試験場

実況『先程のペーパーテストの結果で皆さまを二組に分けることになります』

『まずは上位2名!…というか満点の2名です』

『一人目は…no.11のメイド…シンク!』

シンク「ふふっ」

メイド「おおー…」

パチパチパチパチパチパチ

マベニ「当然…だね」

マベニ(しかしもう一人…誰だ?)


実況『二人目は…我々も大変驚きましたが』

実況『no.19、メイ次郎!!』


男「はぁっ!?」

マベニ「なにっ…?」

メイ次郎「この程度の問題で何が測れる…温すぎるわッッ」


実況『まさかのダメ出しです!』


男「あのおっさ…いやメイド…あんなナリでメチャクチャ頭いいのか…?」

マベニ「なるほど確かにあの男…いやメイドからは上流の者の匂いを感じる……」


実況『3位、4位も同じ点数…9点です』


マベニ「…なぜ耳を塞いでいる?」

男「…メイドの点数知りたくない…」


実況『…そして最下位はno.18!4点です…』

男「ほらやっぱり…」

マベニ「………」

実況『それではこちらのボードをご覧ください。今の結果を元に、各メイドをaチームとbチームに分けました』

男「お…メイドはaチームだ」

マベニ「シンクはbチームか」

男「……ってうわ、メイ次郎もaチームじゃねぇか…」


実況『なお、以降の試験結果はポイントとして加点されていきます』

『最終試験終了時のポイントに応じて、プロメイドになれるかどうかが決まるのです!』


男「これさぁやっぱ試験じゃないよね」

実況『第二試験は早押しクイズです。正解すればポイントが入ります』

男「早押しクイズ!?」

実況『さぁまずはaチームの皆さま、解答席に座ってください…』


メイド「わー…テレビとかで見るのと同じだ…」

メイド「…!?」ハッ

メイ次郎「………」ぐにゃあ…

メイド(こっ…この人が隣…!?)


男「気のせいか?メイ次郎の周りが歪んで見える」

マベニ「ぼ、僕にもそう見える」

実況『早速参りましょう、第一問はこちらについての問題です!』

パッ

メイド「……掃除機?」

『そう!メイドなら必ず一度は使ったことがあるであろうこの掃除機』

『世界で初めて真空掃除機が作られたのは1868年とされています』

『そして初めて「電気式真空掃除機」が作られたのは1901年!実に100年以上も前なのです!』

男「ほー…」

『では問題!イギリスのブース氏が開発したその掃除機の名前はなんでしょうか!』

男「は!?」

マベニ「まさかこんな難しい問題を出してくるとは…」


メイド(世界初の電気掃除機の名前…?だ、ダイソンとか…?)

メイド(こんなの分かるわけ…)


ゴシャアアアアアアン!!!

メイド「ひぃっ!?」ビクッ


男「!?」

マベニ「な…何が起きた…!?」


実況『は…!?こ、これは…』

『メイ次郎の解答ボタンが…いえテーブルが潰れています…!意味が分かりません!』


メイ次郎「チッ…強く押しすぎたかッ…!」


実況『まさかッ!?いやっそんなことはあり得ませんッ!』

『ボタンを押す力が強すぎて!テーブルごとぶち抜いてしまったなど!そんなことはあり得ませんッッ』

『は、ハイスピードカメラの映像を見てみましょう!』


男(なんでそんなもんがある)

実況『問題を読み終えて2秒…まだ動きはありませんっ…』

『3…4…5秒…あっとここで!腕が挙がりました!』

『ボタンに手が触れました…が、光りません!この瞬間、すでにボタンがクラッシュしています!』

『そのままの勢いでテーブルまで潰していく�・�・ッ!!!』

『……ボタンもテーブルも…跡形もなく消えてしまいました…』

『腕を挙げてからこの間実に0.8秒!!信じられません…!』


男「なんて腕力だ…」

マベニ「…しかしこれは」


実況『ボタンが作動していないので解答権はありません!』

『そして同時に!押すボタンそのものがなくなってしまったのですから、クイズへの参加は不可能になりました!』

『したがって第二試験、メイ次郎の最下位が確定しましたッ…』

メイ次郎「実況貴様ッッ!!」

実況『ヒィッ!!』

『わ…分かりましたッ!せめて今の問題の解答権だけは認めます…』

メイ次郎「…それでいい…」スッ

実況『では解答をッ』

メイ次郎「puffing billy」

メイド「パッ…?」

実況『世界最初の電気式真空掃除機はpuffing billy…』

ピンポンピンポーン!

『素晴らしいッ!正解ですッ!』


男「マジかよッ…!?」

男(いや、でもメイ次郎はこれ以降解答できない…最大の敵が消えた)

男「メイドッ!ここからが本番だ!」

メイド「……」ガクガク

男「ああっ…ダメだビビってる!」

マベニ「隣であんなことされたら誰だって怯えるさ」

男「メイドー!頑張れよ!お前ならやれる!」

メイド「ひゃ…ひゃい…」ガクガク


実況『気を取り直していきましょう第二問!』

『q.2 ベタやネオンテトラ。観賞用に熱帯魚を飼っている家庭は少なくありません』

『しかし皆様の大きなお屋敷ではそんな小魚は似合わないのではないでしょうか!?』

『さぁ問題です!『生きた化石』と呼ばれる世界最大の淡水魚の名前はなんでしょう?』

男「!」

男(生きた化石…最大の淡水魚!聞いたことがあるぞ…)

男(たしかそう…ピラルクだ!)

男(メイド…これ知ってるか…!?)


メイド「……」ピンポーン!

男「!…押したっ!」

実況『no.18早いです!さぁ答えをどうぞ!』

メイド「……シーラカン」

ブブーッ!!

『残念!シーラカンスは海水魚です!』

メイド「だって生きた化石って言われたら普通それが浮かぶじゃないですか…」

男「ダメかぁ…」


ピンポーン!

『はいっno.10!』

メイドno.10「ピラルク!」

ピンポンピンポーン!

『正解です!』

メイド「ピラ…ルク…?」

男「ピラニアの仲間かぁ…とか考えてるぞあの顔は!」

マベニ「僕に言われても困る…」


メイド「次…次こそは…!」

実況『第三問!皆さんはディズニー映画って見ますか?』

『1964年公開の映画『メリー・ポピンズ』はディズニー作品の中でも代表的なものですね』

男「聞いたことはあるけど見たことないな…」

『では問題です。この映画で使われた、英字34文字の長ーいタイトルで有名な楽曲の名前は?』

男「英字34文字って…そんな曲あるのかよ?」

メイド「……」ピンポーン!

男「えっ!?」

『またしてもno.18!答えをどうぞ!』

メイド「愛のままにわがままに僕は君だけを…」

ブブーッ!!

『ぜんっぜん違います!』

男「つーかそれ日本の曲!」

ピンポーン!

実況『今度は…no.3!どうぞ!』

メイドno.3「supercalifragilisticexpialidocious!(スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)」

ピンポンピンポーン!

『正解です!』

男「スーパー…なんだって?」

メイド「…????」プシュー…

男「いかん!俺でさえ聞きとれなかった呪文のような言葉に、メイドの頭がショートしてる!」


そんなこんなでメイドは一問も当てられないまま

第四…五…六…七問まで終了

しかしここでついに、メイドが答えられそうな問題がやってきた!

実況『第八問…』

メイド「……」グッタリ

男(あーあ…分からなすぎてグッタリしてるよ…こりゃもう無理か)

実況『オオスズメバチ!世界規模で見てもこんなに凶悪な虫はなかなかいないでしょう!』

メイド「……!」ピクッ

男(!)

『なのにこいつは日本に生息しています!恐ろしいッ!』

男(スズメバチっていやぁ、この間メイドが…!!)

『さて問題!日本にはオオスズメバチを含め、何種類のスズメバチが生息しているでしょうか?』

メイド「……!」バッ

メイド(日本のスズメバチの種類…)

メイド(…落ち着いて思い出そう…えっと…たしか…)

ピンポーン!

実況『no.18…またですか?…いや、まぁいいでしょう…』


メイド「……18種類!」 キリッ


ピンポンピンポーン!

実況『せ、正解…です…!』

メイド「やった…!」

男「おおおおおすげぇ!!よくやったぞ!!」


そして全10問が終了!

結果、偶然にも各メイドが一人一問ずつ答えたので

ポイントはまったく同じになっていた!

控え室

男「いやーメイドよくやった!」

メイド「やりました!」

男「スズメバチの問題が出たからもしかしたら…と思ったけど、まさか本当に正解するとは…」

メイド「昔よく、昆虫図鑑を読んでたんです…虫には自信ありますよ」ドヤッ

男「ええっと…一問正解で5点か。じゃあみんな5点じゃん」

メイド「でも0点じゃなくてよかったですよ…」

男「お、そこのデカいテレビでbチームのクイズも見れるのか…」

男「!!」


実況『no.11シンク!また正解です!これで5問連続正解!!』


男「……マジ?」

頭がマトモに働かなくなってきたので、切ります


ホントはクイズ10問全部用意したかったんですが、面倒なのでやめました…

メイ次郎の元ネタ知らない人も、こういう『規格外のやつ』だと分かってもらえればそれで十分です

実況『bチーム第二試験・終了です!aチームと比べてえらくスピーディな展開でした!』

『結果はッ…なんとなんとなんと!予想外なことに!』

『メイドno.11、シンクの単独10問連続正解!クイズの鬼がここにいたッ!!』

『では第三試験の準備を行いますので、控え室にお戻りください!』


ざわざわざわ…


男「たっ…単独で全問正解って…クイズの鬼なんてもんじゃねぇ…ヤラセじゃねーのか!?」

メイド「少なくとも私に分かった問題はありませんでしたね」

マベニ「ヤラセじゃあないよ」スタスタ

シンク「あのくらいなんて事ないわ…」スタスタ

男「…マベニくん!シンク!」

シンク「私の知識量を侮らないほうがいいわよ」

男「妖怪wikipediaめ!」

メイド「なに言ってんですか…?」

男(クソッこれはしかし…最終的にポイントが多かったほうが有利なんだろうが)

シンク…50点
aチーム全員…それぞれ5点
シンク以外のbチーム…みんな0点

男(既にシンクとそれ以外の全員でものすごい差があるぞ…あーaチームでよかった)

男「メイド!次に何をやらされるか分からんが、ここで結果を出せなきゃヤバいぞ」

メイド「はぁ……でもあれですよね、さっきからメイドらしいこと全然やってませんよねぇ」

男「そういう方向性なんだろ…次は『跳び箱』とか『タイピング』とかやらされても不思議じゃない」


『お待たせしました。第三試験の準備が完了しましたので、まずはaチームから移動してください』


男「来たな…よし、行くぞ」

メイド「…はい!」

スタスタ…

会場

男「こ…これは…ビニールシート…?」

メイド「テカテカしてますよ」

男「まさか…」


実況『第三試験、使っていただくのはこちら、メイドのマストアイテム「雑巾」であります!』

『ただしこのビニールシートはローションで満たされてヒジョーに滑りやすい!』

『こんな状態で80mの雑巾掛けをやってもらいます!』

『先着順に加点され、トップはなんと30点!さらに!一度も転ばなければたとえビリでも15点追加です!』

男「…ってことは最大で45点!これならシンクに一気に迫れる!」

メイド「………」

男「…なに嫌そうな顔してんの」

メイド「嫌ですよ…だってこれ…お笑い芸人とかがやるやつでしょう。恥ずかしいですよ」

男「こいつ…一丁前に恥じらいだけは持ちやがって…」

実況『なおご主人様方には!こちらゴール側で待機していてもらいます!メイドたちのスカートの中を見せないための配慮です!』

男「いや転倒したらどっちみち見えそうだけどな…」スタスタ

『各メイド!雑巾を持ってスタート地点に!』

メイド「…うう…やりたくない…」ブツブツ


ぐにゃ�・…


メイド「!!」ハッ

メイ次郎「クス…雑巾掛けなんて初めてだぜ」

メイド(この人がいたああああああ)


実況『それでは位置に着いて!』

メイドたち「………」サッ

『よーい…』

メイド(やりたくない…)

男(頑張れよ…マジで!)

『ドンッ!!』

メイドたち「!」ダッ!!

『さぁ各メイド、一斉にスタートを切りました!』

メイドno.6「……あっ!」ツルッ

メイドno.14「きゃっ!」ドテッ

『早くも何名か転倒しています!この時点ですでにボーナス点は貰えません!』

男「メイドは…!」

メイド「……」のろのろ…

男「遅っ!あいつやる気ねぇな…!?」

『さぁ転倒しながらも各メイド進んでいきます!…そんな中若干2名、気になるのが…』

『no.18!まるで亀の歩みのようにスロー!しかし下手に焦って転倒するよりも確実かも知れません!』

『そして…メイ次郎はなぜか動こうとしません!雑巾を持ったまま直立不動です!』

男「はぁ?」

『これはいったいどういうつもりなのでしょう!?』

メイ次郎「……」

メイ次郎「もういいだろう…」

メイ次郎「決着(お)わらせるぜッッ」スッ…

実況『これは……ッッ!!これはまさか…!?』

メイ次郎「……」グッ

メイ次郎「……」ググッ


『まッ間違いありませんッ!これは投球フォームですッ!!』

男「投球フォームって…野球じゃないんだぞ!?」


メイ次郎「………ッッ」ミキ…ミキ…

バリイッ!!!


『あーッッと!あまりに力みすぎて、メイド服の背中が破れてしまいま…!!??』

『なッ…これはなんだッ!!背中の筋肉が……!!!』


男「まるで…鬼の貌のように…」

メイ次郎『邪ッッ!!!!!』ブンッ!!!


実況『投』


男「」


メイド「」


実況『げ』


パァン!!!!


実況『……た………?』

メイド「……今なにかが横切ったような…」

メイド「ってえええ!?いつの間にかローションがついてる!!転んでないのに!!」


男「…え?今…え?」


実況『…速い!瞬速(はや)い!音速(はや)い!速すぎます!あり得ませんッ!』

『不覚にも私!実況という立場でありながら!投げてから壁にぶつかるまでを見ていませんでした!!』

『いいえ!これはまさに目にも止まらぬ速さなのです!瞬間的な速さなら新幹線以上かも知れませんッッ』

男「う…嘘だろ…」

メリッ…

男「雑巾が壁に突き刺さってる…」


実況『しかしッこのパフォーマンスはいったい何を意味してるのでしょうか!?』

メイ次郎「……ああ?」

実況『どのメイドも固まってしまいました!こんなもの見せられたら当然です!』

『しかし!試験の進行には関係ありません!さぁメイ次郎はここからどうするッ』



メイ次郎「キサマッッ!!!」


実況『ヒィイイイイイイイ!!!』

メイ次郎「今のじゃ物足りねぇっていうのか…もう勝負は着いたはずだぜ」

『勝負は着いた…???』

『ま…まさか…こういうことでしょうか??』

『雑巾は誰より早くゴールまでたどり着いた。だから勝ちだ…と…?』

メイ次郎「その通りだ……」

『通りませんそんな無茶苦茶!雑巾は投げるものではなく掛けるものです!』

『現にローションはまったく綺麗になってな…』

『いッッ…!?』

ピカアアアアアア…

実況『なっ…』

『信じられません!雑巾を投げただけなのに!ローションが綺麗になっています!』

『これはどういうことだァーッ!?』

男「…隣にいるメイドが…転倒してないはずなのにローションまみれになってる…」

男「…まさか!」

『まさかこれは風圧!?雑巾の風圧で、ローションを吹き飛ばしたのでしょうか!?』

『いえ!拭き飛ばした!とでも言いましょうか!』

『本人は動いていませんが!雑巾だけがゴールインし!なおかつローションは綺麗になっている!』

『予想外です!すぐに協議に入ります!』

ざわざわざわ…

メイド「……」ポカーン

男(ボーッとしてないで今のうちに進んでおけよっ!)

実況『協議の結果…』

『メイ次郎は1位、30点!プラス転倒なしで15点!計45点入ります』

男「おいおいおい!?」

『ただし!この1位は例外とします』

『つまり、残りのメイドからもう一人1位を出します!』

『さぁ各メイド、試験を再開してください!』

男「…もう一人…まだチャンスはあるか!?」

男(メイドっ…!!)

メイド「……」ペタン

男(!?なんで止まってんだよ!)

メイド「あーあ…せっかく転ばないようにやってたのに、台無しですよ…もうドベでいいや…」

男(…とか思ってんのかあいつ…!!)

実況『さぁ転倒しながらも着実に進んでいるのはno.7!次いでno.10!』

男「くそっ…もう無理なのか!?」ダンッ

ジャラッ

男「……ん?」ゴソッ

男「…小銭…さっきの蕎麦のお釣り…ポケットに入れっぱなしにしてたな…」

男「……100円玉か…そうだ…これで…」


『おっと先頭が入れ替わりました!no.10!ゴールまで残り10mです!』


男「……ああっ小銭を落としてしまったー」ボソッ

男(頼むっ)ポイッ


チャリーン…

チャリーン…


メイド「……」

メイド「…ん!」ピクッ

メイド「…今の…音は…」キョロキョロ


キラーン


メイド「!あの輝きは…間違いない…!」


実況『さぁもうゴール目前だ!残り6m…5m…4m…』


メイド「うおりゃああああああああああ!!!」ドドドドド!!!


『!?』


メイド「お金お金お金お金お金お金お金お金お金!!!」ドドドドド!!!


『なんとここに来てno.18!凄まじい速さで突っ込んできました!!』

キラーン

メイド「もらったああああああ!!!」バッ

ヒョイ

メイド「え?」

男「悪い…これ俺のなんだ」

メイド「……!」ガーン


実況『なんということでしょう!no.18、そのままゴールしてしまいました!』

『1位です!さっきまでずーっとドベだったのに、突然走り方を思い出したのか猛烈な加速!』

『さらに!メイ次郎の投球の風圧で飛び散ったローションが付いてはいますが!転倒は一度もしていません』

『よって得点は30+15点です!』


男「いよおおおおおおっし!!!」

メイド「???」

そして

『第三試験終了!!想像以上にハチャメチャな試験でした!!』

『特にメイ次郎とno.18!この二人はそれぞれ別の意味で強烈です!』

『それでは控え室にお戻りください!次はbチームの試験です』


控え室

男「やったなぁメイド!いやマジで!最高だよお前!」

メイド「いや私もよく分からないまま終わっちゃったんですけど」

男「まさかあそこまで速いとは思わなかった!」

メイド「だってお金が落ちる音がして…」

男「しっかし大声で『お金お金お金お金!』って…その辺の恥じらいまでは持ってないのか」ハハハ

メイド「お金…」

男「……」

メイド「お金…」ジッ…

男「…分かった!やるから!恨めしげに見てくるのやめろ!」

メイド「♪」

マベニ「……なかなかやるじゃないか。1位はさすがに予想外だったよ」

メイド「……ど、どうも」

シンク「だけど随分…メイド服が汚れちゃったみたいねぇ」クスッ

メイド「こ…これは汚されたんですよ!私のせいじゃなくて!」

シンク「私は華麗に勝って見せるわ…転倒もなく、不正もなく、それでいてスピーディに!」

男(…もしこいつが完璧にやったら、さらに45点プラスで計95点)

男「…いや。もういい。ウチのメイドはよくやったんだ」

メイド「…どうでもいいですけどご主人様…あのメイ次郎って人、本当に人間なんですか?」

男「それな、たぶん悪魔だよアレ…」

実況『さすがno.11!余裕の1位です!計45点獲得!!』

男「マジでやるんだもんなーあいつ!あー嫌だ嫌だ!」

メイド「……」

男「でもこれで…順位は」

1位 no.11シンク 95点
2位 メイ次郎 46点
2位 no.18 46点
3位以降 28点�・3点

男「うん、化け物二人相手にここまで来るとは思わなかったし、上々だな!」

シンク「誰が化け物ですって…?」

男「うわああああああああ戻るの早ぇーよ!」

メイド「凄いですねシンクちゃん!本当に宣言通りの1位なんて!」

シンク「し…シンクちゃん…!?」

シンク「…ま、当然よこのくらい」

マベニ「しかしここに来ていきなり『雑巾掛け』急にメイドらしいことをやらせてきたね」

男「ってことは次もか…?」

マベニ「…何が来るか、だいたい予想は着くだろう?」

男「え?いや全然分からんわ」

メイド「ゴミ捨てとかですかね?」

マベニ「…期待した僕が馬鹿だったか」


ピンポンパンポーーン

男「お、来たか!」

『お待たせしました。第四試験の準備が完了しました』

『調理室に移動してください』

男「今度は調理室か…」

男「…………」

男「って 調 理 室 !!??」

調理室

男「……」ガクガク

メイド「ご主人様…どうしたんですかさっきから」

男「…いや…だってさぁ、調理室ってことは…」


実況『さぁ皆さん!現在の時刻は12時は40分を回ったところです!』

『そろそろお腹が空いたのではないでしょうか!!』

『というわけで第四試験は「料理」です!』

男「うわああああああああああああああやっぱりぃいいいいい!!!!」

『なんと今回は審査員として!三人の料理人にお越しいただきました!』

『まずは知る人ぞ知る高級料亭「きゅうじ」のオーナーシェフ!』

『そして中華料理の達人・陳シェフ!』

『さらに三ツ星レストラン「セルヴィーレ」のオーナーシェフ!』

『この三人を呼ぶのに当協会の予算は一気に飛びました!』

メイド「みんなテレビで見たことありますよ」

男「ヘースゴインダネー」

実況『それでは今回作ってもらう料理を発表します!』

男(そうだ!料理次第ではまだなんとかなるかもしれん!例えば、そう…)

男(卵料理なら希望はある…!)

『こちらです!』バッ

「カニ玉」

男「っしゃああああああああああああああ!!!」ガッツポーズ!!

『あなたさっきからうるさいですよ!』

男「すいませんでしたァ!!」バッ

男(よーしやったぞ!まだ神は俺たちを見捨てちゃいない!)


『色んな食材が用意されています!もちろん足りなくなることはありませんのでご心配なく!』

『aチームの皆さんはそれぞれの番号の調理場についてください』


メイド「………」

実況『開始前に1分だけ、ご主人様からのアドバイスを受けることができます!』

『なお料理開始後、ご主人様方、そして審査員の方々には一度退室していただきます!』

男「じゃあ料理の様子は見られないのか」

『えー、ではアドバイスタイムです!』


男「…メイド!よかったなぁ!カニ玉だぞ!卵料理だ!」

メイド「ふーん、カニ玉って卵料理なんですね」

男「……はい?」

メイド「私、食べたことありませんよ」

男「………」

男「は?」

男「いや…え?カニ玉だぞ?一度も食べたことない?」

メイド「たぶんないです。小さい頃に食べたかも知れませんけど、記憶には残ってません」

男「…見たことくらいは…あるよな…?」

メイド「ちょっと想像できないです」

男「……」ブワッ

男「嫌な汗が止まらん…ふと近くの木を見たらスズメバチの巣がぶら下がっていた時のような衝撃…!」

メイド「…あの…大丈夫ですか?」

男「いいか…時間がないから、簡単にどんなのか説明してやる!カニ玉ってのはなぁ…」

男「…平べったい卵焼きにカニが入ってるの!で上にあんがまんべんなくかかってて、あとオマケに豆が散らしてあった!」

メイド「ずいぶんアバウトですね…」

男「…まぁ俺も滅多に食わんし、まして作ったこともないからな」

男「だがモノ自体はそんなに難しい料理じゃねぇはずだ!今言ったこと繰り返してみろ!」

メイド「平べったい卵焼きにカニが入ってて上にあんがかかってて豆が乗ってる」ペラペラ

男「よし!完璧だな!じゃああとは気合いで乗りきれ!」

『一分経過!ご主人様方は直ちに退室してください!』

男「頑張れよ!」

メイド「頑張ります」

バタン…

メイド「卵焼き…カニ…あん…豆…」ブツブツ…

『それでは調理開始です!』

ゴワアアアアアアアン

メイド「銅鑼うるさっ…」

メイド「…えーと…まずは卵ですね…それからカニ…」スタスタ

メイド「卵は…このくらいあればいいかな…いや失敗するかもしれないし、もうちょっとあってもいいか…」ゴソゴソ

メイド「カニは…いろいろありますねぇ。どれがいいかな」

メイド「……あっ、これ美味しそうですね」ガシッ

メイド「よし、残りはあとで…」スタスタ


調理室前廊下

男「大丈夫かなあいつ…いや、大丈夫だろ!」

男「あいつだって家に来てから毎日料理してるし、なんだかんだで『食えるもの』作ってるし」

男「そろそろ積んだ経験が芽を出してもいいんじゃないかな!?」

男「おっ!なんかだんだん楽しみになってきた!」

30分経過

実況『5…4…3…2…1…』

ゴワアアアアアアアン!!

メイド「だからうるさいですって…」

『調理終了です!お疲れさまでした!』

『では蓋を被せてください!』

メイド「……」ガッ

メイド「蓋が小さいなぁ。この中華鍋でいいか」カポッ

『それでは!ご主人様方、そして審査員方に入ってきてもらいましょう!どうぞ』

ガラッ

ぞろぞろ…

男「……」チラッ

男(ん?あいつなんで中華鍋ひっくり返してんだ…??)

実況『番号が若いメイドから順に、披露していただきましょう!』

no.2「どうぞ!」パカッ

ふわぁー

男(はぁーいい匂いだな…カニ玉ってこんなに美味そうなものだっけ?)

no.2「ご主人様方もどうそ召し上がってください!」

男「……」パクパク

男「…うめぇ!そうだよこれだよ!メイドの料理っていうのはこうじゃないと!」

『それでは審査員方からコメントをいただきましょう!』

きゅうじ『ふんわりと卵が溶け…そしてそこから細かな野菜の食感が繋がる。非常によくできていると思いますよ』

陳『うーん、少し餡の味が薄いかナ?でもこの優しい味わいは日本人にしか出せないネ!素晴らしいヨ!』

セルヴィーレ『オオ…とても上品な風味…隠し味にカニ味噌入れたのかい?incredibile!!』

『大絶賛です!!それでは得点をどうぞ!』

きゅうじ『9』 陳『7』 セルヴィーレ『8』

『24点!いきなりの高得点ですね!』

そんなこんなで10人中8人のカニ玉を食べる…

男「一口ずつとは言え、ちょっとキツくなってきたな」

男「しかし次は…」チラッ

メイド「……」ニコー

男「あの笑顔…さぞかし自信があるんだろうな」


実況『さぁ続いては!第三試験「雑巾掛け」で驚異の逆転劇を見せたno.18です!』

『蓋を開けてください!』


メイド「はいっ!」パカッ


実況『!?』

きゅうじ『!?』

陳『!?』

セルヴィーレ『!?』

男「!?」

実況『こ…これはなんだぁっ!?』

メイド「カニ玉ですよ?」

『か…カニ玉…なるほど確かにカニの脚が見えています』

『しかしこのカニの脚!なぜ殻ごと入っているのでしょうか!?』

メイド「自分で殻を剥いて食べることで美味しさが増すかなー…と」

『それは個人差がある気がしますが…いやしかしこのカニ玉?なぜか真っ黒です!何が乗っているのでしょうか!?』

メイド「あんですよ?」

『黒い餡…??』

男「……もしかして」

餡(あん)…?くずだまり。葛餡。あんかけ


? ゆでた小豆などに砂糖を混ぜて、さらに煮てねったもの。こし餡、つぶ餡などがある


男(そっちじゃないっ…!!)

実況『で、では…この周囲に散らしてあるのは…?』

メイド「豆です」

『…なんの豆です?』

メイド「ピスタチオ!お父さんが昔よく食べてたんですよね」

『ピピピピスタチオッ!?しかもこれまた殻ごと入っているー!!』

男(…普通は…グリーンピースだって…)

『ええーっと…』

『と、とにかく!食べていただきましょう!』

きゅうじ『こ…これは…カニがまるごと入っている…』

メイド「しかも特大サイズのです!」

陳『あんかけの餡はあんこじゃないアル…』

メイド「私はつぶ餡派です!」

セルヴィーレ『ピスタチオって堅いんだよ…せめて殻から取ってほしいよ』

メイド「カニ同様!自分でやるから美味しいんです!」

男(…せめて、何らかの化学反応を起こしスパーク!して、美味しくなってることを祈る…)

審査員『いただきます』

パクッ


きゅうじ『グワイーーーンギャオギャオギャオッ!』

陳『ベモッキューーンキンキン!ゴリゴリッ!』

セルヴィーレ『ガュゥンガュゥンゴオオオオオッ』


実況『!?審査員方が一斉に、言葉になっていない何かを発しました!!』


審査員『……』ガタガタ

審査員『』ガクッ


実況『気絶ゥー!!?』


男(…終わった…何もかも…)

メイド「気絶するなんてそんなに美味しかったなんて…!」

男「絶対違う…!」

メイド「あ、そうだ」

メイド「皆さんもどうです?」クルッ

メイドたち『え……』

メイド「カニの身はまだぎっしり詰まってますよ」ニコッ

メイドたち『……』ゾッ


メイド「…一口…ね?ね?」

メイドたち『いやあああああ!!』

メイド「ほら、そう言わずに…」

パクッ

メイドたち『アッジュゥアハアエアアアアアアアアアア!!!』

男(地獄絵図だ…!)

メイド「ご主人様も、ほら」スッ

男「うわっ!こっち向けんなお前!!」

メイド「えっ…」ガーン

メイド「…そうですよね…ご主人様は私の料理嫌いですもんね…食べませんよね…」

男「……うっ」

男「ちょ、ちょっと待てメイド!」

メイド「…なんですか」


男「お前味見した?」


メイド 「えっ?」ギクッ


男「…その反応…まさか…」

メイド「い、いやだってほら、皆さんに食べてもらうんだから、少しでも減らさないようにしたっていうか…」

男「食ってみろよ。今ここで」

メイド「………」

男「………」

メイド「ひーーん!!ご主人様がいじめるぅー!」

男「テメー自覚してやがったな!?」

メイド「わ…私もおかしいと思ったんですよ!あんこを和菓子以外に使うなんて珍しいなーって!」

男「当たり前だバカ!」

メイド「でっでも!卵は上手に焼けたんですよ!?」

男「こんなにあんこ乗ってたら台無しだよ!」

メイド「じゃあほら!上のあんこ避けたら食べられますよね!?」スクッ

男「やめろ!怖い怖い怖い!」

メイド「はい、あーん」スッ

男「ぐ…ぐ…ぐ……」

男「もうどうにでもなれー!」パクッ

メイド「……どうですか?」

男「……」モグモグモグ

男「……」ブワッ

メイド「えっ!?泣きます!?そんなに美味しくなかったですか!?」

男「…うめぇよ…」

メイド「え?」

男「うめぇよ…卵は…お前こんなに…こんなに上達してたのか…」

メイド「……そ、そんなに喜んでもらえるなんて…嬉しいです」

男「だがそれ以外は絶対に食わんぞ!」

メイド「(´・ω・`)」


審査員『うぅ…』

実況『!審査員方が目を覚ましたようです!コメントをいただきましょう!』

きゅうじ『たとえば君がその昔…幼き頃…美味しい料理をほとんど食べたことがない貧しい子供だったとしよう…でも死ね』

実況『辛辣です!まさかの暴言が出ました!』

陳『中華料理家の私にとって最大の侮辱ネ…もう二度と日本でカニ玉作らないヨ』

実況『中華の達人の心をズタズタにしてしまいました!』

セルヴィーレ『正直…ボクは料理の底というものをまだまだ知らナーイ…だけどこれは…料理のひとつの完成形だと思うノネ、悪い意味で』

実況『褒めてる体でめちゃくちゃ貶してます!語尾もおかしくなってしまったようです!』

メイド「ひ、ひどい!そこまで言わなくても!」チラッ

男「いや俺はフォローしねぇよ」

実況『それでは得点を…お願いします!』

きゅうじ『0』陳『0』 セルヴィーレ『0』

実況『0点!ぶっちぎりの最低点です!』

メイド「」

男「そらそうよ」

実況『…すでにお三方、満身創痍の状態ですが…最後にメイ次郎の作ったカニ玉がございます!』

メイ次郎「……」スッ

『………皿の中は空っぽですが…?』

メイ次郎「シャドークッキングで作った『エア』カニ玉だ…」

『シャドーならシャドーで、料理の光景を見ていなければ見えるものも見えませんッ!!』

メイ次郎「実況キサマッッ!!」

『ひぃっ!今日三度目!?』

メイ次郎「メイ次郎のカニ玉…食えるぞ。食う方法がひとつだけある」

メイ次郎「それは?”作らせる”」


『!?』


メイ次郎「嫌がるメイ次郎の首根っこひっつかまえ無理矢理作らせる」

メイ次郎「拒否するなら引っぱたき、張り倒し、服従するまでブン殴り続け作らせる」

メイ次郎「嫌も応もない。生木を割くがごとく無理矢理だ」


『……得点不可能とみなしますッ』

メイ次郎「……フンッ」

控え室

男「……」ズーン…

メイド「ご、ごめんなさいご主人様」

男「…いや、もういいよ」

メイド「ところでご主人様…他の皆さんのカニ玉見てて思ったんですけど」

メイド「あれって芙蓉蟹(フーヨーハイ)とそっくりですね」

男「同じだよ!」

今回はここまでです

次回、最終試験!

一ヶ月近く待たせてしまってすいません
クリスマスの話を書こうと思ってた頃が懐かしいです

第四試験「料理」が終了

残りは最終試験のみとなった!

そして現在の順位は・・・

1位 no.11シンク 115点






10位 no.18 46点

メイド「10位……!」ガーン

男「一気に下がったなぁ…」

メイド「しかもシンクちゃんはまた1位」

男「…雑巾掛けに料理…この流れだと次も家事系か?」

マベニ「いやここは僕たちの裏をかいてくるかもしれない」

男「うぉお!ビビるからいきなり話しかけてくるなよ!」

マベニ「ひょっとしたら次の試験によっては…」

シンク「ご主人さま…私は負けませんわ」

マベニ「……そうだね」

ピンポンパンポーン!!

男「…来た!」

『お待たせしました。最終試験の準備が完了しました』

『会場へ移動してください』

メイド「最終試験…」

男「ああ」


試験場

男「こりゃいったいどういうことだ?」

メイド「リングじゃないですか」

実況『さぁ!さぁ!ついに最終試験ですよ皆様!』

『驚くことなかれその内容は「ボクシング」!やはりメイドたるもの、体を張ってご主人様を守らなくてはいけませんからね!』

男「……」

男「ボクシング…やったことある?」

メイド「あるわけないでしょう…」

男「だよな」

『…出場選手19名でのトーナメント式です!優勝した選手は+100点!その時点で1位確定です!2位は50点、次いで3位は25点が与えられます!』

男「もうダメだこれ」

『では各チーム、くじ引きを…あれ?』

『aチームの皆さまはどちらへ?』

男「え?」

メイド「?」クルッ

シーーーン

メイド「…私たち以外に来てないですね」

男「いや、アイツはいるな」


メイ次郎「……」ズズ…


男「まーた空間が歪んで見える」

メイド「他のみんなはどこに行っちゃったんですかね…?」

実況『…えー、ただいま入った情報ですと』

『aチームのメイドたちはトイレに篭ってるようで』


男「トイレ?」

実況『なんでもさっき(第四試験)カニ玉を食べたせいだとか』

男「……」


メイド『皆さんもどうです?』


男「ああ…そりゃツイてなかったな」チラッ

メイド「?」

男(俺は卵のとこしか食ってないから助かったのか?)

実況『と言うわけですので、最終試験、まずはaチーム』

『no.18 対 メイ次郎!』

メイド「えっ」

男「終わった…」

メイド「ボクシング…ですよね」

男「ああ」

メイド「勝てると思います?」

男「よく漫画とかで『1%でも可能性があるなら諦めない』的なセリフがあるが…ゼロじゃダメだ諦めろ」

メイド「……」

メイド「あのー私棄権しようと思うんですけど」


メイ次郎「チッ!!!!!!」


メイド「…!?」ビクッ

男(ただの舌打ちがめちゃくちゃデカいんすけど)


メイ次郎「やりやがったかッッ」

メイド「あ、あの…どうしたんですか?」

メイ次郎「フン…ご主人…皿割っちめェやんの」

メイド「は…?」

メイ次郎「聴こえねぇか…」

メイ次郎「ちょっくら片付けてくるぜ」スタスタ

実況『ちょ…最終試験はこれからですよ!?』

メイ次郎「そんなものはお前たちだけでやっていればいい…俺が出ちまったらキャッツ・ファイトは見れねぇぜ」

実況『~~~~~ッッ』

メイ次郎「あばよメイド」シュンッ


メイド「聴力も人間離れしてるんですかね?」ポカーン

男「つーか瞬間移動ッ!?」

実況『エーと…メイ次郎が棄権したということで…』

『aチーム!no.18の勝利です!』

メイド「えええええええええええ!!??」

男「おいおいおいおいおい!!!」

実況『さぁそれでは続いてbチームの試合を…』

男「!!」

男(そうだ…もしかしたらbチームで残るのがすごく弱いやつかもしれない)

男(そうすればまだ優勝もありえる…!!)

男(もしかしてメイ次郎、そのために試合放棄して勝ちを譲ってくれたのか…?)

男「んなわけないか…さてbチームの試合を見てよう」

こうしてbチーム9名の試合が開始

くじ引きの結果により、シード権を得たメイドもいたが

結果だけ言うと……


実況『ノックアァ~~ウッ!!またしてもno.11シンクのko勝ちです!』


シンクが残った!


男「やっぱりそうなるのか…!」

マベニ「別に逃げてもいいよ」

メイド「!」

マベニ「そういう『腰抜けメイド』がいたっていいじゃないか」

メイド「腰抜け…!?」

シンク「……」ニヤニヤ

メイド「…そ、そーやって煽ったって、私は…」

男「やれメイド!」

メイド「えっ!?」

男「試合に出るんだ!」

メイド「いやでも…」

男「お前らが凄いのは認めるが…」

男「いいか『俺のメイド』を腰抜けだなんて誰にも呼ばせない!」

メイド「……!!」

>>315
頭に抜けがありました


男「…なぁやっぱ今から棄権しないか?」

メイド「そうしたいのは山々なんですが」

シンク「……」ジッ

メイド「さっきからシンクちゃんが『棄権したらぶん殴る』みたいな視線を送ってくるんですよ…」

男「くっ…」

男「やれメイド!」

メイド「えっ!?」

男「試合に出るんだ!」

メイド「いやでも…」

男「お前らが凄いのは認めるが…」

男「いいか『俺のメイド』を腰抜けだなんて誰にも呼ばせない!」

メイド「……!!」

マベニ「ふーん…威勢だけはいいようだけど」

マベニ「ま、期待してるよ…行こうかシンク」クルッ

シンク「はいお坊ちゃま」スタスタ

男「くっそー…イヤミな奴らだな」

メイド「あ、あの、ご主人様…」

男「…悪いな、勝手なこと言って」

男「でもよーなんか…お前がバカにされてるの見てて腹立ってきたんだよ」

メイド「……」

男「実際お前はダメなとこばっかで、あんま役に立たないけど」

男「でも腰抜けだとは思ってない」

男「だから…せめて一発、あいつに食らわせて。それでお前が腰抜けじゃないって見せてやれよ」

メイド「…はい!」

実況『さぁ!ようやくこのときがやってまいりました!最終試験・最終試合!!』

『それでは早速!入場していただきましょう!』


プシューッ!!

『まずはaチーム・no.18!第一試合、第二試合ではほとんど結果を出せませんでしたが、第三試合で凄まじい爆発力を発揮!さらには一度も戦わずにこの場に上がるという強運の持ち主です!!』

メイド「ふぅーっ…」

男「……運があるんだかないんだか」


『続いてはbチーム・no.11シンク!no.18とは対照に、その圧倒的な実力一つでここまでのし上がって来ました!得点は既に100を超えております!先ほどまでの試合はすべてko勝ちでしたが、今回はどうなる!?』

シンク「楽勝よ」

マベニ「見たところ素人のようだけど…まぁ油断はしないことだ」

実況『グローブを』

メイド「……」スチャッ

男「似合わないなーお前」


実況『では行きましょう…レディー』

『ファイッ!!』

カーン!!

シンク(速攻で仕留める!!)バッ!!

メイド「……!」

シンク「終わりよっ!」シュッ


がっ!


実況『おーっとこれは!シンクの先制攻撃がno.18の顔面を捉え…』

『てない!』

シンク「……なっ」

シンク「なぜガードを!?」

メイド「くぅっ……」ビリビリ

シンク(こいつ、どう見ても素人なのに…!即座に反応できるはずが…)

男「ふっ」ニヤニヤ

男(シンク…お前の試合はバッチリ見てたぜ…そして三試合すべて、お前はいきなり頭を狙ってきた)

男(そりゃーメイドに教えときゃならんわなぁ)

メイド(ご主人様の言ったとおり、顔面を狙ってきた…)

メイド(でも、ガードってこんなに難しいなんて思わなかった)

『さぁしかしシンク選手!このくらいでは止まりません!』

シンク「このっ…!」シュッ

バシッバシッ!!

『ひたすら攻めるー!』

男(キツいだろうが、これしかない)

男(素人のメイドができることは一つ、とにかくガードを固めることだ)

男(あいつのスタミナが切れれば、あるいは勝機が…!)

ガッ

メイド(と、とにかく防ぐ…!)

ビシッ

メイド(スタミナが切れるまで…)

バシッビシッボコボコ


『まだまだ止まりません!!』

メイド「うう……!」

男(耐え切れないか…?)

ピタッ

メイド(…止んだ?)

シンク「わざわざ顔面ばかり狙う必要はなかったわね…」

メイド「?」

シンク「ふっ!」ドスッ

メイド「……っ」ヨロッ


『強烈なボディーブローだああああ!!』

男「マジかよ…!」

メイド「…ううっ」ザッ

『おっと!なんとか踏みとどまりました!ですがダメージは深いようです!』

メイド「はっ…はっ…」

男「だ、大丈夫かよ!」

メイド「やばいです…」

男「そうだろうな…よし、もういい!よくやった!」

メイド「なに言ってるんですか!まだ続けますよ!」バッ

シンク「……!!」

男「え…ちょっ!」

メイド「くっ…うぅ…」ガッガッ

『no.18!一応ガードのつもりなんでしょうか!?ほとんど喰らってしまっています!』

男(このままじゃダメだ…なにか…なにか作戦を…)

男「め、メイド…」

シンク(こいつ…さっさと倒れなさいよ…!)

男「…頑張れ!」

メイド「…頑張りますよ…!」ググッ…

メイド「てやあああああ!!」ブンッ

『!渾身のアッパーが…』

シンク「……」ヒョイ


『外れたああああああああ』

男「外れ…って…」

男「おい、今のは喰らう流れだろ!」

シンク「な、何よ流れって!?」

メイド「っ…」ヨロッ

ガシャッ

『外した拍子にバランスを崩したのか!倒れそうです!』

男(今なにか落ちた音がしなかったか?)

メイド「うわっ…」ヨロヨロ

シンク「!!」

ぽふっ


『no.11シンクのたわわな胸が…おっぱいがクッションになりました!』

メイド「や、柔らかい…」

シンク「…!」ブチッ

シンク「ふざけないで!!」シュッ!!

グラッ

シンク「え?」

メイド「!?」

男「あ?」

ドサッ

シンク「」

『て…転倒しました!殴ろうとした瞬間突然バランスを崩し…しかも頭を打ったせいで気絶してしまいました』

『スリップです!』


メイド「な、なんで…?」

男「お、おい、それのせいじゃないのか?」


『!シンク選手の足元に何かが落ちています』

『そ、そろばんです!!no.18が第一試験で使用していたものです…!』


男「お前あのとき、ポケットに押し込んでただろ!」

メイド「動き回った拍子に落ちてたんだ…」

『これは反則です!no.11、反則負けですっ!!』

メイド「ち、違うのに…」

男(…まぁこいつの場合前科があるから…)

「反則だろうが反則じゃなかろうが」ユラッ

メイド「え?」

シンク「私の勝ちは確定よ!!」ブンッ

メイド「!!」ゴッ

『し、シンク選手、もう起き上がってました!そして一撃!』

メイド「」ドサッ

『今度はこっちがダウン!そしてこの様子ですので…』

『ノックアウト!試合終了です!!』


男「…負けたかぁ」

メイド「」グッタリ

最終試験も終了しました
次回で長かった(長くなってしまった)メイド試験もおしまいです

年内の更新は難しそうなので、また来年お会いしましょう

タタン…タタン…タタン…

メイド「………ん」

メイド「……?」パチッ

男「お、やっと起きた」

メイド「ご主人様…あれ…?」

タタン…タタン…

メイド「なんで電車に」

男「メイド試験は終わったんだよ。これは帰りの電車」

メイド「はぁ」

メイド「なんで私寝てたんですか?全然覚えてないんですけど…」

男「最後、ボクシングで…シンクから強烈なのもらって気絶してたんだよ」

メイド「あー…全身あちこち痛いですよ」ズキズキ

男「………」チラッ

メイド「…なに見てるんです?」

男「…え?いや、ちょっとな」

メイド「その袋に何か入ってるんですね?」

男「……」

メイド「見せてくださいよ」

男「えー?どうしようかな�・」

メイド「……あ!そこの田んぼに黄金のカカシが!」バッ

男「えっ!?」クルッ

メイド「隙あり!」サッ

男「し、しまった…こんな小学生みたいな手に…」

メイド「何が入ってるんですかぁ�・?」ゴソゴソ

キラーン

メイド「…?」スルッ

メイド「なんですか、これ」

男「なにに見えるよ?」

メイド「銀…メダル」

男「おうそれだ」

メイド「何のメダルです?」

男「えーっと…『日本メイド協会』主催第一回メイド試験の2位入賞を祝して授与された名誉ある銀メダルだ」ペラペラ

メイド「誰が2位?」

男「お前が2位」

メイド「……えっ?」

男「96点で2位だ」

メイド「だって私、ボクシングで反則負けにされたはずじゃ…」

男「……まぁほら、他のメイドは最終試験に参加すらできなかったし」

メイド「でも反則負けじゃ得点はもらえないんじゃ?」

男「いいんだよ!とにかくこれはお前のメダルだ!」


男『なぁちょっと待ってくれよ…確かにそろばん持ってたのは反則だけど、落ちたのはわざとじゃないんだ』

実況『そうは言われましても決まりは決まりですからね…』

会長『しかしのう、あの健闘ぶりを見るに彼女も本気でやっておった。そのメイドとしての強い気持ちを無下にするのも協会的にはまずい…』

会長『よって、彼女は普通に負けたことにしよう』

男『…あ、ありがとうございます!』


男(…実はこんなやり取りがあったんだけどな)

メイド「へぇ…いいんですかね、こんな立派なの貰っちゃって」

男「メダルなんてなかなか貰えないぞ。大事にしろよ」

メイド「これいくらで売れますかね?」

男「お前いま言ったこと聞いてた?」

タタン…タタン…

メイド「それじゃ気絶してる私をわざわざ運んでくれたんですか」

男「そりゃ置いてくわけにはいかないし」

メイド「わざわざ迷惑かけてすみません」

男「まぁバスもあったしそんなに苦労はしなかったけどな」

男「…お、そうだ。帰る前にシンクが…」

シンク『結果としては勝ったけれど、あんな卑怯な手を使うメイドだとは思わなかったわ!』

シンク『次に会ったときは覚悟しておきなさいよ!』

男「ってカンカンに怒ってたぞ…もう会わんと思うが」

メイド「あわわわわ…」

男「だけどマベニ君は」

マベニ『…結果はあんなだったけど、なかなか面白い試合だったよ』

男「って褒めてたな」

メイド「ふっ…当然ですよ!」

メイド「なんせご主人様があんなに一生懸命応援してくれたんですからね」ニコッ

男「そ、そんなに必死になった覚えはねーよ…」

メイド「なに言ってるんですかぁ�・!ご主人様、まるでヒーローショーを見てる子供みたいに大きな声で『頑張れ!』って言ってましたよ!」

男「……その場のノリってやつだ。本音じゃないからな」

メイド「そういうのツンデレって言うんですよね」

男「違うっ!」

タタン……タタン……

男「お…そろそろ乗り換えだな」

プシュー……

メイド「…そういえば少しお腹が空いてきました」

男「まだ4時だぞ?」

メイド「だってお昼ごはん食べてないじゃないですか」

男「俺は食ったよ…恐怖のカニ玉一口だけ」

メイド「そんなに不味かったんですか」

男「いや俺は卵のとこしか食べなかったから平気だけど…他の連中は全員腹下したからな」

メイド「そんな、テロじゃないんですから」

男(こいつ、ボクシング無戦勝の理
由が分かってねーな…)

メイド「でも…」

メイド「今度また挑戦したときは、ずっと美味しいの作りますから」

男「…期待しないで待ってるよ」

男「ただいま…」ガチャッ

メイド「はぁーお家の中も寒いですねぇ」

男「そうだなぁ…」

男「じゃあメイド、ちょっと早いけど風呂だ」

メイド「はい?なんですって?」

男「ん?風呂沸かしてくれって…」

メイド「沸かして『ください』でしょう?私は銀メダリストですよ?ちょっと態度を改めたほうが…」

男「……」イラッ

男「いきなり調子に乗んなよ!お前はメイド!俺は主人!その関係に変わりはねーよ!!」ガシッ

メイド「むぎゃあああ痛いれふ!冗談に決まってるじゃないですかぁあああ!」ムギギギ

男「ったく」パッ

メイド「ほ、頬っぺに穴開くかと…」ズキズキ

男「銀メダリストって自覚があんなら!これからはもっとしっかり俺のために働けよ」

メイド「…はーい」

ちょっと物足りないかもしれませんけど、メイド試験編おわりです

もちろんこの話はまだ続きますよ

次にいつ投下できるのか分からないので、もう少し更新します

ザアアアアアアアアアア…


メイド「うわーすごい雨…」

男「そんな日もあるさ…あぁこの番組面白えーなぁ!」

メイド「洗濯物は室内で干さないと…」スッ

男「洗濯……」チラッ

男(白のレース付きの…俺が最初に用意したやつか)

メイド「!今、洗濯物の下着見たでしょう!」

男「た、たまたま目に入っただけだよ…!」

メイド「そんなに見たいなら言ってくださいよ」

男「え、見せてくれるの?」

メイド「一回1000円でね」ニヤリ

男「なっ…!ぼったくりじゃ…」


ピシャアアアアン!!!

男「ほあああああああああ!!!???」

メイド「!」ビクッ

男「か、か、雷だあああ!」

メイド「確かに大きい音でしたけど、そこまで怖がらなくても…」

男「きゅ、急だったからな…!」


ドシャアアアアアアアアン!!!


男「あばばばばばばばばばばばばば」

メイド「今のはかなり近くに落ちましたね…」


パッ

男「ふぁっ!?」

メイド「電気が…!」

男「うわあああああああああ何も見えねぇよぉおおおお!」

メイド「停電ですね」

男「もう終わりだああああああああああああ」

メイド「…大袈裟すぎません?さっきから」


ゴロゴロゴロ…ドーン!!


男「うぎゃあああああああああ」

メイド「…雷怖いんですか?」

男「こここ怖いよ!当たり前だろ!だって人が死ぬんだぞ!!」

メイド「家の中にいたら死にませんよ…」

男「あのなぁ!雷ってのは樹に当たっても、その真下か半径4m以内にいる奴には『側撃雷』ってのが必ず当たるんだぞ!!マンガに書いてあった!」

メイド「いやだから家の中にいれば平気ですって」

男「め、メイド!急いでブレーカー上げてこい!」

メイド「場所が分かりませんよ…ご主人様が行ってください」

男「こんな暗い中行けるかよ!」

メイド「じゃあ懐中電灯とかありません?」

男「この屋敷のどっかにあるはず!」

メイド「どっかって…」

男「場所は覚えてないから、自力で探してこい!」

メイド「そんなこと言われたって、この広い屋敷を一人で探してたら時間がかかりますよ…」

メイド「ご主人様、一緒に探しましょう」

男「お、俺はいいよ…」

メイド「じゃあこの真っ暗なリビングで一人、雷の恐怖と戦ってるんですね?」

男「うっ…」

男「分かったよ!俺も探すから!」

男「……」ソロソロ

ピシャアアアアアアアアアン!!

男「ぎゃあああ!」ビクゥ

メイド「だから怖がりすぎですって」スタスタ

男「だってお前、雷だぞ!しかも…雷だぞ!?怖くねーのかよ!」

メイド「平気ですよ…って言うか、ご主人様が怖がりなだけでしょう」

男「怖がりじゃないし!雷と、あと虫だけだ!」

メイド「幽霊とかは平気なんですね?」

男「ああ、それは平気だな…ほら、俺の中の幽霊のイメージは絵本の『おばけのてんぷら』だから…」

メイド「そうですか…」

男「あっ、お前さては『おばけのてんぷら』知らねーな?」

メイド「…どうでしょう…読んだことあったかな…」

男「あれはいいぞ!昔よく図書館行って読んでたなぁ…。話の内容は…」

男「…ウサギがな、眼鏡かけたウサギが…そもそもなんでウサギが眼鏡かけてるんだろうな!」

男「まぁいいや。ウサギがてんぷらを作るんだけど、間違えておばけを揚げちゃうんだよ…それでそのてんぷらを…」

男「あれ?食べるんだっけ?どうするんだっけ?」

メイド「知りませんよ」

ピシャアアアアアアン!!!

男「ヴぁああああああああ!!??」

メイド(うるさいなぁー…)

男「お、お前は怖いものないのかよ?」

メイド「怖いもの…ですか?雷も虫も幽霊も、だいたい平気ですけど…」

男「なにかあるはずだろ」

メイド「うーん…」

メイド「あっ、私はあれがどうしてもダメですね。ぬいぐるみの目」

男「ぬいぐるみの目…?」

メイド「ほら、あの生気のない瞳がこちらをじっと見据えてくるあの感覚がどうしてもダメで…」

男「ごめん、たぶんほとんどの人は共感できねぇと思うわ」

メイド「そうですかね?同じこと思ってる人が必ずいるはずですよ」

男「ぬいぐるみってどんなの?」

メイド「私がとくに怖かったのはメスライオンのぬいぐるみでしたね」

メイド「あの…人間でいう白目の部分がちゃんのあるぬいぐるみがダメなんですよ」

男「…やっぱり分からんわ」

メイド「ところで懐中電灯はどの部屋にあるんです?」

男「はっ!つい本来の目的を忘れてどんどん進んでた!」

男「でもなぁ…確かこの一階のどこかにあったと思うんだよ」

メイド「どっかって、それだけじゃ分かりませんよ…ただでさえ真っ暗で何も見えてないのに…」

男「そうだな…真っ暗で何も…」スッ

サワサワ

メイド「ひぅ…っ!!?」

男「見えてな…」パシッ

メイド「……」グリン

男「いだだだだだだ!!捻られてる!捻られてるよ俺!!」

メイド「そんな風に触られたら…見えなくても場所は分かりますよ」グググ

男「ごめん!ごめん!ふざけただけだから!!」

メイド「まったく…」パッ

男(…「ひぅ…っ!」いい声だな。『暗闇だと感度が上がる』って噂はアレ本当だったのか)

メイド「どこにあるんですかね…」スタスタ

男「言葉通り手当たり次第だもんなー…せめてマッチかライターがあればよかったんだが、これも場所が分からんしなぁ」

メイド「他になにか明かりになるものってありませんかね」

男「ちょっとググってみようか」スッ

メイド「普通にあるじゃないですか!スマートフォン!!」

男「あ、そっか…」


パッ

男「最大まで明るくすれば、使えんこともないな」

メイド「でも、どの部屋探してもありませんよ」

男「うーん…二階か?それとも三階?」

メイド「だったら相当面倒ですね」

男「いやこういう大事なものは一階にしまってあるはずなんだけどなぁ…」

メイド「あと一階で探してないところは…?」スタスタ

男「玄関の方だ」スタスタ


ゴロゴロゴロ…ドドーーーン!!!


男「オアアアアアアアアアアア!!」ガシッ

メイド「ちょっ…!いきなり抱きつかないでくださいよ!!」

男「かみかみかみかみかみなりが…」

メイド「噛みすぎ!やれやれ…ご主人様って案外女々しいんですねぇ」

男「うるせぇ!そんなご主人様を優しくサポートするのがメイドだろ!」

メイド「…それもそうですね」

メイド「じゃあ、手とか繋ぎます?」スッ

男「…!お、おう」スッ

ベタ…

メイド「おかしいでしょうその手汗!」

男「だって怖いんだよぉおおお!!」

メイド「あ」

男「?」

メイド「ブレーカー…」

男「……」

ガチャンッ

パッ

男「やっと戻ったー!」

メイド「はぁ…まったく…」

男「いやーまさか冬なのに雷とは、驚いたなぁ」

メイド「私はご主人様の豹変っぷりに驚きましたよ」

男「まぁいいや…テレビの続きだ!」ピッ

男「……あ」

メイド「…どうしたんですか」

男「いや…その…」

男「…懐中電灯…テレビのすぐ隣に置いてあったわ」

メイド「……」

男「……」

メイド「普段、すぐ視界に入るものほど、必要な時には見つかりづらいものですよね…」

男「ホントにな…」

即席ネタですのでここまでです

最初のほう読み返したら、メイドが今よりずっとクールな感じだったので…

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