女子高生探偵's博麗霊夢の事件簿『恋話日記殺人事件』 (118)

霊夢「他校の演劇部の合宿?」

アリス「そうよ。八雲学園の演劇部の合宿で、山奥にある学園所有の施設に3日間泊まり込むの。
私、その演劇部の人達の衣装作りに関わってて、部長さんから合宿の誘いがきたのよ。」

霊夢「八雲学園……合宿……ね。
でも、なんで私に付き添いを頼んでくるの?私よりも魔理沙の方が適役なんじゃない?貴方も、彼女がパートナーの方が良いでしょ?」

アリス「もう頼みに言ったわよ。どうせ霊夢もそう言うと思ったから。
でも彼女、同じ日に約束があるらしいのよ。」

霊夢「約束?あの暇人に用事があるなんて……何かしら?」

アリス「さぁ?私もそこまでは……。
ただ、魔理沙も『八雲学園の演劇部関連なら、きっと霊夢が助けてくれる』って言ってたわ。」

霊夢「え?それ、魔理沙が言ってたわけ?」

アリス「ええ。でも、一体どういう意味なの?霊夢、演劇部の人達と知り合いだったりするの?」

霊夢「……いいえ。全く知らないわ。」

アリス「ひょっとして、幻想高校探偵部員として、八雲学園演劇部に興味があるってことなの?」

霊夢「………」

アリス「もしかして、3ヶ月前に自殺した部員のことを……」


霊夢「合宿はいつ?」

アリス「え?あ、来週の土曜からだけど……」

霊夢「貴方以外の他に私達の高校からの参加者は居るのかしら?」

アリス「私以外の裁縫部員で十六夜さんと美鈴さんが参加する予定よ。後、森近先輩も。演劇部の脚本作りを手伝うらしいわ。」

霊夢「霖之助も?
そう……分かったわ。私も一緒に行くわ。」

アリス「ホントに?いいの?」

霊夢「何よ?私に付き添いを依頼してきたくせに、もう邪魔者扱いする気なの?」

アリス「い、いや……別に……」


霊夢「ま、それに、これも幻想高校探偵部員の仕事。依頼がきた以上は、しっかりこなさないと……ね?」

アリス「………」

霊夢「……何よ?私の顔をじっと見て……」

アリス「いや……。やっぱり、霊夢はカッコいいわね。」

霊夢「はぁ?いきなり何よ?」

アリス「うふふ。別に~♪」

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パチェ「霊夢。」

霊夢「あら部長?何かしら?」

パチェ「貴方、何か私に隠してない?」

霊夢「……別に。」

パチェ「そっ。なら探偵部の部長として、貴方の隠し事を推理でもしてあげようかしら?」

霊夢「推理って……どうせもう気付いてるんでしょ?部長も魔理沙も……」

パチェ「まぁね。最近貴方が部室のパソコンである個人のブログを調べているのは知ってるわよ。」

霊夢「……ええ。それが何か?」

パチェ「“小傘の恋話日記”。」

霊夢「………」

パチェ「小傘……。八雲学園演劇部の元部員。いえ、亡き部員。
3ヶ月前に部室で首吊り自殺をはかった女子学生。彼女が生前までネットに投稿してた日記……。」

霊夢「部長。」

パチェ「……何かしら?」

霊夢「恋する少女って可愛らしいですよね。」

パチェ「……そうね。恋は、女の子を一番輝かせるから……」

霊夢「部長も分かるんですね?そういう女の子の気持ち……。経験無いのに。」

パチェ「何か言ったかしら?」

霊夢「いえ。なんでも……」


パチェ「……霊夢。貴方にはパートナーがいるんだから、いざというときは頼りなさいよ。」

霊夢「部長。私は大丈夫だから……わざわざ部長の手伝いなんて……」

パチェ「私じゃないわよ。」

霊夢「え?」

パチェ「ま、せいぜい楽しんできなさいな。」




こあ「パチュリー様?先程のはどういう意味なんですか?」

パチェ「なにがかしら?」

こあ「霊夢さんに、パートナーを頼れ……って。」

パチェ「ああ。あれね。
霊夢が合宿に行く同じ日に、魔理沙も用事があるらしいのよ。
しかも霊夢と同じ3日間。」

こあ「え?それって……」

パチェ「本来なら、私も3日間用事を作るべきなのかもしれないけど……。
そんな露骨なことをしたら霊夢が怒るでしょうし……」

こあ「で、でも大丈夫ですか?2人だけって……」

パチェ「あら?まるで何かよくない事が必ず起こるって言いたげね?こあ。」

こあ「………。今日、嫌な夢を見たんです。」

パチェ「そっか。やっぱりね。やっぱり起きるのね……」

こあ「いえ、私の予知夢も外れる時は外れますし……」

パチェ「いいえ、必ず起きるわ。なにせ、偶然にもウチのエース部員が2人も関わるのだから……」

こあ「あはは……エース部員ですか……最初から4人だけの部活なんですけどね。」

パチェ「少数精鋭って言いなさい!」

一日目am11:00~玄関前~

アリス「凄い……おしゃれな館……」

霖乃「流石と言ったところかな。八雲学園で昔から使われてる歴史ある洋館らしいからね。」

咲夜「……まぁまぁですね。
古い建物のわりに外観がしっかりしてるのは認めますが……私達のお屋敷には適いませ」

美鈴「うわぁ~オシャレ~!お嬢様のお屋敷並み!いや、それ以上ですね!!
私もこんな館に住んでみたいなぁ~♪」


咲夜「……美鈴。ちょっと来なさい。」



アリス「………。咲夜さん、なんか怒ってる?」

霖乃「彼女は自分の仕えてる屋敷に誇りを持ってるからね。
ちょっと美鈴さんとは感覚に違いがあったのかな……」




魔理沙「……こーりんと……二泊三日間の旅行……って聞いたのに……」

霖乃「あはは……だから魔理沙。僕はただ、暇だったら旅行に付き合ってって言っただけで……」

魔理沙「ふざけるなよ!!合宿なら合宿ってちゃんと言えよ!!
新しいパジャマとか、下着とか!!全部せっかく揃えたのに!!」


霖乃「……わざわざ下着まで新しいのにしなくても……」

魔理沙「そりゃあ!!乙女の嗜みだから当たり前だろ!!
……好きな男に旅行に誘われたんだから……」

霖乃「……え?最後、何て言ったんだい?」


魔理沙「なんでもないやい!!!」



霊夢「………あんた、探偵部員でしょ?」

魔理沙「だからどうしたんだぜ!?」

霊夢「なら、こんぐらいの結末、予測しなさいよ。
あの唐変木が2人で旅行なんてロマンチック演出するわけないでしょ。」


魔理沙「………」

霊夢「魔理沙?」

魔理沙「希望を持って……」

霊夢「はぁ?」

魔理沙「希望ぐらい持ったっていいだろ!!
花の女子高生が!!恋い焦がれる夢を持つことすら!!この世界では許されないって言うのかよ!!?」


霊夢「……このバカ……」

輝夜「あ~はっはっは!よぉ~くいらして頂けましたわね!幻想高校の皆さん!」

鈴仙「ようこそ。八雲学園の伝統ある合宿場に。」

てゐ「我々、八雲学園高校生徒会役員一同。皆さまを歓迎いたしますわぁ~。」



霊夢「うるさい声ね……なんなのよ一体……」

輝夜「鈴仙。どうやら第一印象は上手くいったようですわね?」

鈴仙「もちろんですお嬢様!お嬢様の美貌、美声に!皆さん釘付けですよ!」

輝夜「ふふ……さぁ!凡人高校の愚民学生ども!私の美貌にひれ伏しなさいな!!」


霊夢「あ゙?何言ってんのあんた?寝呆けてんの?」

輝夜「あら?貴方が幻想高校探偵部のお方ですわね?
確か、霊夢さん……だったかしら?」

霊夢「ちっ……私のこと知ってんのかよ……」

鈴仙「最近、かなり頭のキレる女子高生探偵が居るって、我が校でも有名ですし。」

てゐ「万引きから殺人に至まで、かなりの事件を解決してるそうですねぇ~。
先日は、小学生誘拐事件を解決したとか……」

輝夜「まことに素晴らしいですわっ!!貴方、輝いてますわ!」

霊夢「はぁ?」

輝夜「民を救うは君主の為すこと!人々を救う貴方の姿は、まさに一国のエンペラー!!」

霊夢「な、なによそれ……大袈裟な……」

輝夜「光栄だわ!私以外の君主の素質を持つ者に出会えるなんて!!」

霊夢「……ど、どうも……」



アリス「霊夢が押されてる……」

咲夜「あの方、褒め言葉には弱いですからね……」

美鈴「いや……あれって褒めてるんでしょうか……?」


魔理沙「……その巷に流れてる女子高生探偵の逸話。確かに半分は霊夢のだけど、もう半分はあたし、魔理沙様のなんだけどなぁ……。
なんか、面倒臭そうだから、このまま黙っとくのが良策だぜ!」



輝夜「……ん?あら貴方!!巷で噂の金髪女子高生探偵ですわね!!?」

魔理沙「……げっ……こっち来た……」

一日目pm11:30~玄関ホール~

鈴仙「改めまして。私は八雲学園高校の2年生、生徒会書記の鈴仙です。」

輝夜「伝統ある八雲学園高校生徒会会長!高等部3年の蓬莱山輝夜ですわ!!」

てゐ「同じく八雲学園小学校生徒会長のてゐです。」

アリス「え!?小学生!?」

咲夜「凄く大人びた雰囲気の小学生ですね……」

美鈴「そうですね~。しかも隙がない。
ウチのお嬢様と違って、物静かでおとしやかだし……」

咲夜「美鈴。ちょっと来なさい。」


アリス「あ、また咲夜さん達がどこかに……」

霖乃「咲夜さんは自分の仕える主人を誇りに思ってるから……ね。」



霊夢「幻想高校2年、博麗霊夢。」
魔理沙「同じく2年。霧雨魔理沙だぜ!」

アリス「同じく2年、アリス・マーガトロイドです。八雲学園演劇部の衣装作りの手伝いに来ました。」

輝夜「あら!貴方がでしたの!
貴方の試作品をウチの部員に見せて頂きましたけど、あれは素晴らしかったですわ!!輝いてましたわ!」

アリス「えっ!?ど、どうも……」


霖乃「3年の森近霖乃助です。演劇部から、脚本作りの依頼を受けました。」

輝夜「そうだったのですか!貴方の脚本!私も読ませて頂きましたわ!!
まだ途中までのものでしたけど、素晴らしかったですわ!輝いてましたわ!!」

霖乃「へ?そ、そうかい……?」

輝夜「特に主人公があの場面であの様な発言をなさる場面が絶妙!!!」

霖乃「え!?あ、あはは。そこを突かれるとはね~。あそこには僕も、3日間演出に悩んでさ……」



アリス「……あの輝夜って方。第一印象はあれだったけど、意外と褒めるところは褒めてくれるんだね……」

鈴仙「もちろんです!お嬢様は素晴らしいお方ですから……」

てゐ「外観はちょっと歪んでますけど、わりとガチで立派な方ですからぁ~。安心して下さいぃ~。」


霊夢「……あんた、ちょっと言葉に毒が混ざってるわね。」

てゐ「私ははっきり言う時ははっきり言いますからぁ~。」

永琳「お帰りなさいませ。お嬢様。」

輝夜「ご苦労ですわ。永琳。」


アリス「うわぁ……綺麗な人……」

輝夜「私の家の使用人かつ本合宿での食事などの段取を担当する永琳ですわ。」

永琳「どうぞ、よろしくお願いします。
何かあれば、すぐ私にご申し付け下さい。」

霖乃「は、はは……どうも……」


魔理沙「げっ!こーりんの好きそうなタイプ……大人の……女性!!
しまった!こんなところに障害があったなんて……」

霊夢「独り言ならもっと静かに言いなさいよ。」

魔理沙「けっ!どんなに大きな声で呟こうと、どうせこーりんの耳には聞こえてないんだぜ……」


霖乃「ん?僕のことを呼んだかい?魔理沙?」

魔理沙「なんでもないやい!」



聖「あらあら、元気な声が聞こえますね~♪」

霖乃「ひ、聖さん!!」

魔理沙「げっ!!もっとこーりん好みの女が出てきやがった!!?」

聖「はじめまして。八雲学園演劇部部長、3年の白蓮聖です。」

霊夢「はぁ?この人、学生だったの?
……の割りには、」

アリス「大人な雰囲気が凄い……魅力的……」

美鈴「うわぁ~♪綺麗な方ですね!咲夜さん!!」

咲夜「……私は、別に……」

美鈴「まぁ、咲夜さんは大人な女性より、お嬢様みたいな可愛らしい系が好みですもんね。」

咲夜「美鈴!貴方は相変わらず口が減らないようね!!」


魔理沙「………」


霖乃「ひ、久しぶりですね!!聖さん!」

聖「その説はご迷惑をかけました。
わざわざ私達の為に、素晴らしい作品を……」

霖乃「い、いえ!!僕は書くのが大好きですから!」


魔理沙「………」

霊夢「あらぁ~、霖乃助があんなにあわふためくなんてね……。」

魔理沙「………ない」

霊夢「ん?」

魔理沙「負けないぜ……負けてたまるかよ……」

魔理沙「聖さん!」

聖「ん?あらあら、元気で可愛らしいお方ですね~。」

魔理沙「うっ……か、可愛らしいだなんて……」


霊夢(何照れてんのよ!お世辞に決まってんでしょ!)

魔理沙(はっ!?……危ない危ない……危うく相手のペースにのるとこだったぜ!)

魔理沙「あたし、幻想高校2年霧雨魔理沙だぜ!よろしくだぜ!」

聖「あら~、貴方が魔理沙さんですね~!
老婦人からひったくりを行った不届き者を追い掛けて何キロも走ったり、はたまた密室事件を解明したという巷で話題の美少女探偵ですね!」

魔理沙「へ?あ、ま、まぁな……」

聖「お会い出来て光栄ですわ。魔理沙さん。」

魔理沙「………//」

魔理沙(ヤバい!この人の笑顔………ヤバ過ぎる!!こーりんじゃなくても、魅入ってしまう……)



霊夢「……このバカ……」



星「何やってるんですか?部長。」

一輪「姐さん?早くホールで練習を……」

聖「あら、皆。ちょうどいいわ。幻想高校の方々がいらしたわよ。」


ナズ「ふむ。では、彼女らが話に聞いてた方々なのかい?」

ムラサ「なるほど。そっちの赤いリボンの人が名探偵さんかな?」

霊夢「あら?何よその言い方?」

ムラサ「いや……雰囲気がね。なんか1人だけ殺伐してる様な感じだったから……」

霊夢「……悪かったわね。これは私の癖みたいなものだから……。周りに流されない、私だけの場の風をつくるのが……」


ナズ「……ふふっ。面白いお方だ。」

聖「貴方達。自己紹介を。」

星「副部長の寅丸星。高校2年です。」

一輪「2年生、雲居一輪です。」

ナズ「中等部2年、ナズーリン。よろしく。」

ムラサ「村紗水密、高校2年。よろしく。」

聖「まだまだ部員は大勢いますが、本合宿に参加したの彼女達だけです。
近々、部員全員での合宿を計画してますがね。」


鈴仙「あくまで計画段階ですけどね。まぁ……この館なら広いですし、多少の人数でも可能でしょうけど……」

輝夜「しかし、その様な大所帯での合宿を認めるの些かかと。
それに前例を作ってしまっては、後々良くない傾向が生まれる可能性もあると、先生方からは不評で……」

ムラサ「全く……こういう時だけ、会長さんは真面目になるんだから……」

聖「村紗さん。その様な言い方は駄目ですよ。」

てゐ「そうそう。会長だって、一応先生達の前で粘って交渉してたんですよ~。
『私の素晴らしい計画に不可能なんかありませんわぁ~!』ってさ。」

霊夢「ああ、それじゃあ一生、先生達の許可なんておりないわね。」

アリス「これで全員ですか?合宿に参加する人達って……」


聖「はい。私達の高校からは私達演劇部と生徒会の皆さま。以上ですよね?永琳さん。」

永琳「いえ、まだ二方いらっしゃる予定です。」


聖「あら?まだ誰かいらっしゃるのですか?」

鈴仙「あ、はい。合宿直前に付き添いを希望された方々が……」



文「どうも~♪八雲高校新聞同好会で~す♪」


星「うわぁ……来た……」

ナズ「あのゲスか。」

聖「あらあら、文さん。久しぶりですね。」

文「どうもどうも。演劇部の皆さん。合宿とは、部活に熱心で熱いですね!青春ですね!!」

聖「あの~、本日は一体どういったご用件で?」

文「もちろん!学園一の美貌である聖さんの演技をカメラにおさめる為に参上したまでです!」

美鈴「……あの方知ってる。八雲高校の元新聞部員ですよ。」

霊夢「ええ。かなり骨のある輩らしいわね。」

魔理沙「同学年のパンチラを全部カメラにおさめた変態野郎であり……」

霊夢「校内で発生した事件はとことん追究する鬼記者……ね。」

美鈴「ええ。でも、新聞部内でのいざこざが原因で退部したらしいですけどね。」

霊夢「いざこざの発端は?」

美鈴「確か……」



星「いい加減にして下さいよ。文さん。」

文「はい?」

星「また例の件で私達に近づいてきたんでしょ?」


美鈴「あの文さんって、演劇部の自殺した女の子の件をずっと調べ続けてたみたいで。学園側から新聞部に禁止令が下った後も1人でずっと……。
それで、他の新聞部員との間に亀裂が出来て……」


文「いやいや!私はあくまで皆さんの部活動を取材しにきただけなんですって!」

ムラサ「……そう言って、ウチの1年生達に付きまとうの、マジで勘弁してくれない?」

一輪「姐さん!この人には帰って貰いましょう!」


聖「え?でも……」

星「確かに、こんなのが居たら、練習の邪魔ですよ。」

霊夢「大した嫌われ様ね。さすがは記者。」

文「ん?どういう意味ですか?博麗霊夢さん。」

霊夢「なんの後ろめたさもないのなら、カメラの前でも堂々演技をしてればいいのにね。そうでしょ?」


ムラサ「!?」
一輪「!!」
ナズ「ほぉ~……」

文「さすがは巷で人気の名探偵さんですね。」

霊夢「何よ、今の言動のどこに褒める要素があったって言うのよ?」

星「後ろめたいこと……か。確かに、私達にだって何か責任はあるかもしれませんけど……」

ナズ「どうだろね。自殺する奴が心弱いだけじゃないかな?」

霊夢「何?」

星「ナズさん!」

ナズ「あいつのせいで、私達演劇部は学校中から白い目で見られた。部員はどんどん離れて行くし、先生達は助けてくれなかった。
そんな中で、聖部長が頑張って建て直してくれたんだ。」

聖「………」

ムラサ「ま、ホントにね。。暗黒時代をさ迷ったよね。私達……。」

一輪「でも、姐さんと一緒に頑張ってきたからこそ、また部員達が集まってきたんです。」


聖「私は何もしてません。
ただ、私についてきてくれた皆さんと一緒に、やりたいことをやっていただけですから……」


霊夢「………」

文「……まぁ、私もその辺は同情しますけどね……。」

ナズ「あんたは変な噂に流されることなく、私達を中傷する様な行為は一切しなかった。そういうところは感謝してるさ。
ただ、あんたはしつこ過ぎるんだよ。いい加減に私達を解放してくれない?あんたの自己満足からさ……。」


霊夢「………」
魔理沙「………」



早苗「文さ~ん!機材はこれだけで十分ですか~?」


星「!」
一輪「!!」
ムラサ「!」
ナズ「……」

聖「早苗……さん!?」

文「あ、ご苦労様です。早苗さん。」

鈴仙「早苗さん!貴方、何故ここに!?」

早苗「はい。私、先日に新聞同好会へ入会したんです。まぁ、同好会員は私と文さんだけですけど……」

聖「………」

ムラサ「嘘でしょ……何なのよ?この合宿……」

ナズ「………」


魔理沙「おい、鈴仙さん。明らかに場の空気がおかしくなったんだが……」

鈴仙「いえ……私達も文さんがパートナーに誰を連れてくるかまでは聞いていなかったのですが……」

輝夜「……鈴仙。この状況はさすがにまずいのかしら……?」

鈴仙「何とも言えません。早苗さんまで来るとなると……」

てゐ「魔理沙さん。早苗さんは自殺した小傘さんの親友だった人です。」

早苗「はい。よろしくお願いします。皆さん。」


ムラサ「………。
部長。私、気分が悪いので、部屋に戻ります。」

星「部長も、今夜はもう休みましょう。明日の朝からはまた練習をやるんですし……」

聖「え、ええ。そうですね。」


早苗「ええっ!?もうお眠りになるんですか?
そんなぁ~……まだまだ夜は長いんですし……」



霊夢(……なんなの?こいつ。)


鈴仙「早苗さんは小傘の親友で、自殺に関して演劇部を最も非難してたのは彼女なんです。」

輝夜「あの方は、小傘さんの自殺の原因が演劇部に関係していると主張していましたからね。」

アリス「自殺の理由が演劇部内って……一体何が……?」

咲夜「部活内で自殺したくなる様な揉め事と言ったら、恐らく“いじめ”でしょうね。」

アリス「え?あんな仲良さそうな部活内でいじめが……?」

魔理沙「あり得なくもないんじゃないか?
さっきの様子だと、小傘ってのは、部活内では対して好かれてなかった様だしな。
さっきだって、小傘ってのが自殺したことに関して、残念そうな素振りを誰も見せてなかったぜ?」


霖乃「……そんなはずは……」

魔理沙「え?」

霖乃「……いや、なんでもないよ。」


鈴仙「早苗さんは演劇部の人達を目の敵にしてます。文さんとは比べものになりません。」

輝夜「……文さんが、もう演劇部の付け回しを止めようと思ってると我々に相談してきました。
それで、最後に合宿を取材したいとおっしゃったので、私達は同行を許可したのですが……」

てゐ「あの野郎……、余計なのを連れて来ましたね……」


文「早苗さん。あんまり突っ掛かったら駄目ですよ。
取材はスピーディーばかりではなく、あくまで慎重に……です。」

早苗「ええ、ちゃんと心得てますよ。」

永琳「この館は4階建ての西館と5階建ての東館という2つの建物から主に成り立っています。1階部分ではそれぞれの館の南側と北側から1本ずつ渡し廊下がでています。2つ廊下と2つの建物に挟まれた真ん中のスペースは中庭となっています。」

霊夢「中庭ってのには、どこから出入りが出来るの?」

永琳「北の渡り廊下に出入口があります。
東館の1階は先程皆様がお喋りになっていたホールとなっています。テーブルなどがおかれており、奥にはキッチンが完備されていますので、食事などは東館1階ホールにて準備させて頂きます。
一方、西館の1階は演劇などに使えるイベントホールとなってます。
東館のホールの真ん中にある階段を上れば、2Fから5Fまでの宿泊スペースに繋がっています。
一方、西館のホールの両端にある階段を上れば、2Fから4Fまで宿泊スペースとなってます。」


魔理沙「なるほど。それで、私達はどこに泊まればいいんだぜ?」


永琳「皆様は東館の4、5Fの客室をご利用下さい。こちらがルームキーです。」

霊夢「ルームキーのスペアはあるの?」

永琳「いえ。マスターキーが1つあるだけです。
マスターキーは私が東館ホールで補完していますので、何かあれば1Fまで下りて来て下さい。」

霊夢「つまり、貴方はずっと東館の1Fに居るってことね?」


永琳「はい。陽が登ってる間はずっとホールにいますし、夜もホール端にある仮眠室で休んでいますので。」


アリス「そうですか。お疲れ様です。」

永琳「いえ、お気になさらず、皆様はゆっくりお休み下さい。」


霖乃「……魔理沙。」

魔理沙「なんだ?こーりん。」


霖乃「ちょっと話があるんだ……」

美鈴「うわぁ~。窓の外って中庭になってるんですね~。
あ、あっちに西館の客室の窓が見える。客室同士が中庭を挟んで向き合ってるんですね~♪」

咲夜「ベッドも……結構良い質のを使ってるのね……」

美鈴「えっと……スマホはっと……あった!
写メ撮って、お嬢様達に送ってあげよ~♪」


咲夜「……美鈴。」

美鈴「ん?どうか?しました?咲夜さん。」


咲夜「貴方には期待してるわよ。美鈴。」

美鈴「え?」

咲夜「この合宿……何があったかは知らないけど、かなり険悪なムードになってるっぽいの。
あの明るい笑顔の演劇部部長やうるさかった生徒会長さんも、かなりそのムードに押されている。

だから、このムードをぶち壊すのは、貴方のその能天気さだけなのよ。」


美鈴「へぇ~。……なんか、若干酷い言い回しがあった感もしますが……。
でも、せっかくの楽しい合宿なんですから、皆には笑顔になって欲しいですよね。」

咲夜「ええ、そうね。願わくば……ね。」

《続く》

登場キャラの簡単な設定

《前提》東方プロジェクトキャラを使用してますが、全員人間です

・幻想高校勢

博麗霊夢…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

霧雨魔理沙…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

アリス・マーガトロイド…幻想高校2年。裁縫部所属。八雲学園演劇部の衣装作りをしている。

十六夜咲夜…幻想高校1年生。裁縫部部長。

紅美鈴…幻想高校1年。咲夜の友人。

森近霖乃助…幻想高校3年。文芸部所属。八雲学園演劇部の台本作りをしている。


・八雲女子学園勢

聖白蓮…八雲高校3年。演劇部部長。

寅丸星…八雲高校3年。演劇部副部長。

村紗水密…八雲高校2年。演劇部所属。

雲居一輪…八雲高校2年。演劇部所属。

ナズーリン…八雲中学2年。演劇部所属。


蓬莱山輝夜…八雲高校3年。高等部生徒会会長。

鈴仙(イナバ)…八雲高校2年。高等部生徒会書記。

てゐ…八雲小学校6年。小等部生徒会会長。


射命丸文…八雲高校2年。新聞同好会所属。

古風谷早苗…八雲高校2年。新聞同好会所属。多々良小傘の友人。


多々良小傘…八雲高校2年。演劇部所属。ネットブログ『小傘の恋話日記』の作者。合宿より3ヶ月前に部室で首吊り自殺をはかる。


・その他

永琳…輝夜の家に仕える使用人。合宿メンバーの世話係。

ミスティア…料亭の出張料理人。合宿メンバーの料理係。

魔理沙「で?話ってなんだよ?」

霖乃「この合宿に魔理沙を呼んだ理由を話しておこうと思ってね。」

魔理沙「そっか。まー、さっきのやり取りを見てたら、まさに私や霊夢向けの合宿だってのが理解出来たけどな。」


霖乃「八雲学園の演劇部と僕は、もう1年ぐらい交流があるんだ。
元々、演劇部所属で台本担当だった子が僕の書いた作品を気に入って、その子に頼まれて台本作りを手伝う様になったんだ。」

魔理沙「誰だよ?そいつ。さっきの中に居たのか?」

霖乃「いや、合宿には参加してないよ。
生きていたなら、きっと参加してただろうけど……」

魔理沙「まさか、例の自殺した小傘って学生のことなのか?」

霖乃「そう。彼女を通じて、聖さんや他の部員との交流が始まったんだ。」


魔理沙「じゃあ、こーりんは小傘ってのがどんなヤツなのか知ってるんだな?
なら教えてくれ。その小傘と他の部員との間で何かなかったのか?」


霖乃「僕も知らないんだ。彼女が部員達とどういう事があったかは……。
ただ、彼女が自殺した後にとある噂を聞いたんだ。小傘ちゃんが、ネット内で少しかわったブログを書いてたって……」


魔理沙「ブログ……?それって、あの恥ずかしいことばっか書かれた日記のことか?」

霖乃「知ってるのかい!?」

魔理沙「ああ。最近、霊夢がその日記について調べてたみたいだから……」

霊夢「………」


コンコン

アリス「霊夢。起きてる?」

霊夢「アリス?ええ、起きてるわよ。夜はなかなか寝つけないからね。」

アリス「そっか……。なら、ちょっとだけお話しない?」

霊夢「お話?なんか用でもあるの?」

アリス「違うの。ただ……なんか寂しいから、ガールズトークの相手が欲しいかな……ってね。」

霊夢「そういうのこそ、魔理沙の役目だと思うわ。私は何も面白いこと言えないし。」

アリス「いいの!別に面白くなんかなくても……」


霊夢「……はぁ。しょうがないわね。」

アリス「この近くに温泉とかあるらしいの……。だから、帰りに皆で寄ってかない?」

霊夢「温泉か……。私はパス。魔理沙はそういうの好きかもしれないけど、私は大浴場とか苦手だから……。」

アリス「え?でも、さっき永琳さんに聞いたけど、この館には共用の大浴場以外にお風呂が無いって言ってたわよ?」

霊夢「みたいね。私の部屋にも備え付けバスなんてものはない様だし。
でもさっき咲夜達の部屋を見に行ったらあそこだけ簡易シャワーがあったの。
だから後で使わせて貰うわ。」


アリス「そっか……私もそれを使わせて貰おうかしら……。」

霊夢「なに?やっぱりあんたも大浴場は苦手なの?」

アリス「出来れば、お風呂の時くらいは1人で居たいし……。
いや、霊夢とか魔理沙とならいいんだけど……」

霊夢「そっか。まぁ、咲夜達なら頼めば部屋を貸してくれるわよ。とくに、あの美鈴が居るんだから。あいつは馬鹿みたいにお人好しだし。
……ああ、アリスって美鈴みたいなタイプの方が苦手なんだっけ?」

アリス「昔はそうだったけど……最近は慣れてきたから……。多分、魔理沙や霊夢達の次に話易い人だと思う。」

霊夢「そう。確かに昔に比べたら、だいぶ人との接し方に慣れてきてるみたいだしね。」

アリス「ええ。だから聖さんも、この前会った時は大らかで親しみ易い人だなって思ってたのにな……。」

霊夢「あー、あれね。確かに最初見た時は優しいお母さん的なオーラを出してたわね。
もっとも、最後にやってきた緑髪の女子学生を見てから顔色が悪くなってたけど……」


アリス「はぁ……。やっぱり難しいなぁ……。他人と付き合って行くの……」

霊夢「だからって、また“人形部の幽霊部員”に戻ったりしないでよ。
次やったら、マジで警察に突き出すからね。」

アリス「またその話をするの?ホント、霊夢は容赦ないわね……」

霊夢「ふふ……。かなりな前科なのに、こんな感じで軽く話せるなんてね。ホント、あんたも私もかわったわね。
でも、またあの時みたいに無茶したら許さないから。」

アリス「大丈夫よ。いざというときは貴方達を頼るから。今回みたいに……」


霊夢「今回みたいに……か。
ま、今回ばっかしは、私にも合宿に来たい事情があったからね。」

アリス「そういえば、部室で聞きそびれたけど、やっぱり霊夢は演劇部の自殺した部員について何か調べてたの?」

霊夢「そうね。別に内緒にする必要もないか。
実はね、貴方に合宿の話をされる前から、私は既に依頼を受けてたのよ。」

アリス「依頼って……誰から?」

霊夢「この手紙の主からよ。」

アリス「何よ?この手紙……。」


『幻想高校探偵部の皆さんへ
どうしても相談したいことがあります。このままでは私だけでなく私の大切な方にも被害が及んでしまいます。
どうか、私に力を貸して下さい。
八雲高校2年多々良小傘』


アリス「これ……小傘さんの手紙?」

霊夢「手紙を書いたのはその小傘って女子生徒でしょうね。
ただ、実際に私の所に送ってきたのは別人の様だけど。」

アリス「え?どうして分かるの?」

霊夢「手紙は封筒に入れられて、私の家に郵送されてきたの。
アリスから依頼を受けたあの日からちょうど1週間ぐらい前に。封筒に押されてた日付印もその二日前だったわ。」


アリス「そっか。送ってきたのが最近なら、既に亡くなってる小傘さん以外が郵送してきたことになるわね。」

霊夢「そうね。ただ、手紙自体は小傘が生前に書いたものかもしれないわよ?
何者かが最近になってそれをわざわざ私に送り付けてきただけかも……。」

アリス「でも、一体誰が?」


霊夢「知らないわよ。誰がこの封筒を出してたかを街中の郵便局に一々聞いたって埒あかないし、どうせ無人のポストに投函したんでしょうね。
それとも警察に持って行って指紋でも調べてみようかしら?馬鹿馬鹿しい。」


アリス「でも、なんか不気味じゃない?死んだ学生が書いた手紙が送られてくるなんて……」

霊夢「そうね。しかも、それから間もなく、その小傘が居たっていう演劇部の合宿の誘いがくるなんて……偶然にしては大したものよね。
そうは思わない?アリス。」

アリス「え!?ちょ、ちょっと待ってよ霊夢!!
私はこんな手紙知らないわよ!大体、小傘なんて娘もつい最近名前を聞いたばっかだし!!
わ、私じゃないから!手紙を出したのは!!」


霊夢「ちょ!?何よいきなり!?なに必死に弁解してるのよ?
私は別に貴方が差出人だなんて言ってないわよ!」

アリス「あ……ごめんなさい。なんか霊夢の言い方が……あの時の口調に似てたから……。」

霊夢「はぁ?たった1回、あんたの悪事を暴いただけっていうのに、もうそんなトラウマになってしまたってわけ?」

アリス「あ、悪事って……」

霊夢「全く、全校生徒の恐怖の的にもなった幽霊部員さんが、随分とひ弱になったものね。しっかりしなさいよ。
私は手紙を貰ってから合宿に参加、の流れが都合が良過ぎるって言っただけよ。
確かに合宿に誘ってきたのはアリスだけど、だからと言ってアリスが差出人と断定は出来ないわ。なんせ、アリスは先に魔理沙を誘ってたんだし……」


アリス「あ……そうよ!私が霊夢を誘ったのは魔理沙に断られたからだし……」

霊夢「まぁ、魔理沙に断られるって展開まで予測してたなら、話は別だけどね……?」

アリス「……霊夢の意地悪。」

霊夢「ふふ。怪しいことはとことん疑ってかかる。これが探偵の性ってやつなのよ。」

コンコン

文「ごめんくださ~い。幻想高校探偵部の博麗霊夢さ~ん?いらっしゃいますか~?」

アリス「!」

霊夢「この声は、あの新聞部員?」

アリス「新聞部員……。霊夢、私は自分の部屋に帰るから……」

文「裁縫部のアリスさんも一緒に居られるんですよね?お二方にお話をお聞きしたいんですが……」

アリス「っ!?」

霊夢「どうやら向こうもかなりのやり手みたいね。
はいはい、今ドアを開けますよっと……」


文「はい~♪失礼しま~す♪」

早苗「夜遅くにすいませ~ん♪」

霊夢「……全く、こんな時間に他人の部屋を訪問してくるなんて……。
いくら新聞記者だからって常識ぐらいは考えなさいよ。」

文「いやぁ~。女子高校生ともなれば、夜中に皆で女子トークは欠かせませんよね!」

霊夢「な~にが女子トークよ?私達になんの話をさせたいわけ?」


アリス「………」

文「あらあら、そちらの方はかなり構えていらっしゃいますね。」

アリス「別に私は……」

文「安心してください!私はあくまで八雲学園の記者です!
他校で起きた出来事に関してはあまり興味がないので!」

アリス「………」

早苗「文先輩。余談はここまでにしときましょうよ……」

文「そうですね。実際、私達が聞きたいのは幻想高校の名探偵でも幽霊部員さんのことでもなく、あの森近さんという男子学生についてですから……」

アリス「なっ!?」

霊夢「全く、私達のことは調べ尽くしたからもう情報なんて要らないってこと?」

文「あははは。いえ、私達はあくまで新鮮なネタを欲しているので……」

早苗「森近さんに彼女はいらっしゃるんですか?」

霊夢「さあ?毎日引っ付いてる女なら居るっちゃ居るけどね……」

文「ですが、魔理沙さんと森近さんは付き合っていないんですよね?」

霊夢「知らないわよ。本人達に聞きなさい!」


早苗「そうですか。では次の質問です。
森近さんから小傘さんに関して何か聞いた話はありますか?」

霊夢「無い。2人が知り合いだって話も聞いたことすらないわ。」

アリス「いいえ、森近先輩が八雲高校の女子と街のカフェで話しているのなら結構目撃されてたけど?」

霊夢「そうだったの?」

アリス「ええ。大したことじゃなかったから、特に魔理沙や霊夢の耳には入れなかったけど……」

霊夢「なんでよ?」

アリス「森近先輩が魔理沙の彼氏だったなら真っ先に報告したわよ。
でも、正式にはそういう関係じゃないんだし、先輩が女子と会うのを一々報告してたらキリがないでしょ?」


早苗「そうですか。恐らくその時森近さんが話していた相手が、私達の高校の小傘さんだったんでしょうね。」

霊夢「どうしてそうなるのよ?」

早苗「小傘日記ってブログは知ってますか?」

霊夢「小傘日記?それって恋話日記のこと?」

文「その通りです。私達の高校では、小傘さんが自殺した後に話題になったんですよ。
小傘さんが謎の日記をつけていたって……」

早苗「ブログはほぼ毎日更新されてて、主に小傘さんが彼氏との出来事を書いているっぽいモノなんです。」

アリス「モノっぽい……ってどういう意味なの?」

《一日目pm12:50~410号室》

霖乃「恋話日記はタイトルの通り、小傘ちゃんの恋に関する出来事などが毎回書かれていてね……」


魔理沙「ああ、あたしも少し拝見したんだが……なんつ~か、ちょっとイってる内容だよな……」

霖乃「ああ。内容の半分以上が小傘ちゃんの好きな人に対する気持ちなどで埋め尽くされているからね。」

魔理沙「好きって言葉はもちろん、『像ほどの大きなバラの花があったなら、大好きな貴方と一緒に花ビラに包まりたい』とか、
『何もない砂漠の上で、ただ全身で貴方の体温を感じてみたい』とか……。
どんだけメルヘンな内容だよってもんだな。」

霖乃「小傘ちゃんの大好きな人に対する気持ちが赤裸々に書かれているからね。」

《一日目pm12:50~E308号室》

霊夢「恥ずかしい日記よね。さっさと閉鎖した方がいいわよ。こんなの……」

文「ええ。しかも、中には18禁すれすれなネタまでありますし……」

アリス「え!?そんなのまであるの?」

霊夢「え~と……どのページだっけ?
……あ、これだったかな?一緒にお風呂入ったとかいう話。」

文「いえいえ、一緒にベッドインした話まで赤裸々に描かれています。
あまりの生々しい表現に、私も読んでて興奮しちゃいましたよ。」

アリス「……ひょっとして、最近霊夢が学校の休み時間にいつも携帯端末を眺めてるのって……」

霊夢「ああ。最近はね、この日記の過去記事を全部洗ってたから……」

早苗「へぇ……熱心な探偵さんなんですね。」

霊夢「そうね。依頼されたからにはちゃんとこなさないと……ね?」


文「依頼?誰かが霊夢さんに調べて欲しいと依頼したのですか?」

霊夢「まぁ……私の内にある探偵の本能に依頼されたってところかな?」

文「ああ、好奇心ってことですね?」

早苗「さすがは名探偵さんですね~。」

アリス(……何?今のやりとりは……)

《一日目pm12:52~410号室》

魔理沙「うわぁ~、マジで恥ずかしい内容ばっかだな……。
よくこんな文章書けるよな……彼氏が見たら怒るんじゃね?」

霖乃「どうして怒るんだい?」

魔理沙「え?だってさ、恋人仲をこんなにも赤裸々にネットに暴露されたら、さすがに世間の目が……」

霖乃「そうだね……。確かに恥ずかしいよね。その日記に登場してる小傘ちゃんの好きな人が自分だってバレたら……ね。」


魔理沙「ん?どういう意味だよ?」

霖乃「その日記のどこにも、小傘ちゃんの好きな人が誰かを特定出来る具体的なことが一文字も書かれていないんだよ。」

魔理沙「え!?そうだったのか!?確かに、好きな人を花や動物に喩えたりの抽象的な表現ばっかだったとは思うけど……」

霖乃「小傘ちゃんは日記に全く書かなかったんだ。好きな人を特定される様な表現を……。
例えば自分の誕生日については記載してるけど、好きな人の誕生日を祝ったなんてのは全く書かれてない。」

魔理沙「な、なるほど……誕生日を祝ったって書いたら、日記の日付から彼氏の誕生日を特定されて、本人特定に繋がる可能性があるもんな。」

霖乃「ああ。小傘ちゃんはその辺かなり徹底してる様だね。」

魔理沙「となると、彼氏を特定するには多々良小傘の私生活を洗ってみるしかないな。
こんだけ恋愛話を書けるんだから、恐らくその彼とは日常的に交流しているはず……」


霖乃「いや……彼女の身近にはそれらしき人は居ないみたいなんだ。」

《一日目pm12:52~E308号室》

文「私達の取材の結果、傘さんと付き合っている様なお方は居ませんでした。」

霊夢「へぇ~。なら、日記の相手は誰なのよ?」

早苗「分かりません。少なくとも、私達の高校は女子校ですし、他校の方ではないでしょうか?」

文「あるいは近所に住む同年代の男性、いや歳が離れている可能性も……。
あらゆるルートを通して探ってみましたが、彼女が付き合っていたと確信出来る証拠は出なかったです。

ただ、1人を除いては……」

早苗「小傘さんが部活動の合間に幻想高校の森近という男子生徒と頻繁に会っているという情報を得たのです。」

《一日目pm12:55~E410号室》

魔理沙「はあ!?多々良小傘の付き合ってた男がこーりんだったって!?」

霖乃「ああ、八雲高校ではそう噂されてるんだ。
僕は彼女と頻繁に会っていたから……」

魔理沙「え!?ちょっと待てよ!だってお前!別にただ台本作りを手伝ってただけだろ!?」

霖乃「も、もちろん!!小傘ちゃんとはただ話をしていただけだよ!
……でも、もしかしたら向こうはそう思っていなかったのかもしれない……」


魔理沙「な、なんだよそりゃ?こーりんが自意識過剰なだけなんじゃないのか?」
霖乃「これを見てくれ。」


『12月25日18:00
今日はクリスマス。聖夜の天使は私達を祝福してくれるかな?でも、私にはそんな天使達よりも早く別の天使が舞い降りた!
私の贈り物は大したものじゃなかったけど、あの人の返してくれた笑顔は最高でした!私だけに微笑んでくれる天使様は、私の世界を隅々まで癒してくれます!』


魔理沙「これがどうかしたのか?」

霖乃「この内容、僕のことかもしれないんだ……」

魔理沙「はあ?なんでだよ?」

霖乃「クリスマス、僕は確かに彼女から日頃のお礼にってプレゼントを貰ったんだ。」

魔理沙「それで?天使の様な満面の笑顔でそれを受け取ったのかよ!?そんなに嬉しかったのか!?」

霖乃「え?ま、まぁ……。どうしていきなり怒るんだい?」

魔理沙「べ、別に怒ってなんかないけどさ!!
だ、大体!!そんなの、こーりんの自意識過剰なだけじゃないのか?こーりん以外にもクリスマスプレゼントを貰ったやつがいるかもしれないじゃんか!」

霖乃「……なら、この記事はどうだい?」

『2月15日19:00
昨日はバレンタインデーでしたよね?だから私はあの人にチョコを渡しました。恋人として当然の義務です!
私は頑張って作りました!最高に頑張りました!そして最高の力作が出来ました!あの人はびっくりしてくれるかな?どうかな??

箱を渡してあの人はゆっくりと開きます。私の最高傑作!それを見たあの人の顔は、今年一番の笑顔でした!その笑顔を見た私の感動の涙は流した汗の何倍分にも相当するものでした!この涙で日本にもう一つ巨大な湖を作っちゃうかも?
でもその湖は、あの人の笑顔の太陽ですぐに干上がっちゃう……!ああ、私はなんて無力なのだろ……』


魔理沙「……後半何書いてるのかさっぱりなんだが……」

霖乃「バレンタインデーの日、僕は確かに小傘ちゃんからチョコを貰ったんだ。」

魔理沙「だから?どうせ義理だろ!」

霖乃「手作りチョコだったよ……」

魔理沙「まぁ、最近の市販のチョコは手作りっぽい見た目だし……」

霖乃「……凄く甘かった。」

魔理沙「はあ?」

霖乃「頭が痛くなるくらいに凄く甘かったんだ!そのチョコレート……」

魔理沙「なるほど、そんなに美味しかったんだな……小傘ちゃんの愛情たっぷりチョコは……」

霖乃「逆だよ。甘過ぎて涙が出るくらいの……酷さだった……
思い出しただけで……気分が悪くなる……くらい……ヤバい、腹痛が……」

魔理沙「はあ!?お前、いくらなんでもそんな……」
霖乃「彼女、小傘ちゃんは実はチョコが苦手なんだ。だから調理中に味見がうまく出来なかったらしくて……。
でも彼女はプロフィールに料理好きと書くくらい料理熱心で、どうしてもオリジナルの味を作りたかったらしいんだ。」


魔理沙「それで……?そのチョコを食べたこーりんはどうしたんだよ?」

霖乃「彼女が渡してきた時にその場で食べたから、不味いなんて言えなくて……」

魔理沙「それでめいいっぱいの笑顔を返したのかよ……」

霖乃「いやだって……彼女が頑張って作ったものだし……そう思ったら自然と笑顔になって……。」

魔理沙「優し過ぎだろ……だから他校の女子なんかにすぐに惚れられるんだよ……」

霖乃「面目ない……」


魔理沙「ん?あれ?ちょっと待てよ?
仮にこの日記に書かれてる笑顔の素敵な恋人ってのがこーりんだとしたら……。
日記には恋人とキスしたり一緒に寝たりした描写まであるんだが………
こーりん。お前まさか……!?」


霖乃「い、いやっ!僕は別に彼女とそんな仲にはなってないんだ!
ただカフェとかで会話をしたり台本作りを手伝ったり……」

魔理沙「じゃ、じゃあこの日記の内容はなんなんだよぉ!?」

霖乃「それは……多分……」

《一日目pm13:00~E308号室》

霊夢「妄想日記?」

文「はい。私達の学校ではそう呼ばれてました。
森近さんに片想いをした小傘さんの妄想日記って……」

早苗「小傘さんは元々文芸部員で小説やポエムを書くのが好きでしたから……」

霊夢「なるほどね……。確かに、やたらファンタスティックな表現も多いし。」

『4月15日pm19:00
砂嵐に揺れる髪!じんじんの太陽にさされても砂の海に立つ凛々しい背中!!
私の憧れ!私の全て!!あの人が立てば、どんな砂漠も草木が芽生え、生命の動きが溢れだす!!
ああ……世界にはどんな砂漠があるんだろうか?ユーラシアのゴビ砂漠?アフリカのサハラ砂漠?
砂漠は虚しい……無の世界。でも貴方さえ居てくれれば私は生きていける!何もない砂漠の上で、ただ全身で貴方の体温を感じてみたい!!』


アリス「うわぁ~……ファンタスティックというよりファンタジー……?」

霊夢「後、一緒に翼竜に乗って青空を旅したいとかも書いてたわね。」

早苗「……もはや発想が厨二ですね……」


霊夢「まぁ、でもいいじゃん。こういう日記書いてるんだから、人生が楽しそうで……」

文「ええ。あくまで片想いの妄想日記ですけどね。
まーしかし、書き手は既に死んでますけどね……」


霊夢「しかし霖乃助が恋人……か。小傘ってのは男を見る目がないのね。」


文「む?どうしてそう思ったのですか?」

霊夢「まあ、なんとも言えないんだけど。
小傘ってのは演劇部内のいじめで自殺したんでしょ?その大好きな霖乃助に助けを求めることもなく……」


早苗「そうですね。森近さんがどんなお方か詳しくは知りませんが、小傘さんが助けを求めていれば森近さんには何か出来たのでしょうか?」


霊夢「さあね。ただ、人間1人で解決出来ることなんてたかがしれてるわよね。
いじめなんてなおさら、誰かの助け無しにはどうしようも出来ないからね。」

アリス「……そうよね。その通りだわ。」

《pm13:05~E410号室》

魔理沙「しっかしこの小傘って凄いよな。
この日記って自殺する前日にも投稿されてたんだろ?自殺する様な精神状態でも好きな人に対する愛だけは書き続けれたんだな。
ほとんど妄想だけど……」


霖乃「そうだね……。彼女、自殺する少し前に会ったけど、僕には何も話してくれなかったんだ。
悩み事があるなら相談してくれれば良かったのに……」

魔理沙「………こーりん?まさかそれに責任を感じてるのか?」

霖乃「もし彼女の好きな人が僕だったとして、現実の僕は彼女に何もしてあげられなかったんだ。
彼女の……自殺にまで繋がる様な悩みにすら、気付いてあげられなかった……」

魔理沙「い、いや、それは違うだろ!!気付けなかったこーりんが悪いんじゃなくて、助けを求めなかった多々良小傘の方が……」


霖乃「いいんだ、魔理沙。僕は別に懺悔してるつもりなんかじゃないんだ。」

魔理沙「こーりん……。なら、一体どうするんだ?」

霖乃「彼女の自殺にまでおいやったその原因を突き止めたいんだ。」

魔理沙「演劇部内のいじめ……か?」

霖乃「僕は聖さんとも何回も話したことがある。あの人は、部長として小傘ちゃんを大切にしてたし、小傘ちゃんも聖さんのことを部長として尊敬してたんだ。
だから、いじめなんてあるはずがないんだ!きっと………」


魔理沙「なるほどな……。あたしはそれを調べればいいんだな?」

霖乃「僕の手伝いをして欲しいんだ。
僕の……大事な後輩を守れなかったことへの償いの手伝いを……」


魔理沙「そっか。分かったぜ!そういうことなら、あたしに任せとけ!!」


霖乃「ありがとう。君はホント、頼りになるね。」

魔理沙「あ、その前に1つ質問いいか?」

霖乃「なんだい?」

魔理沙「もし多々良小傘がこーりんに告白してたら、こーりんは多々良小傘と付き合ってたのか?」

霖乃「いや……どうだろね。彼女の日記を見てたら、こんなにも愛してるくれる女の子を好きならないわけがない、とも思えはしたけどね。
でも、断ってただろうね。」


魔理沙「ん?なんでだよ?こんな可愛らしい女子をふるなんで、賢明とは思えないんだが……。
そ、それとも、こーりんはやっぱりもっと大人な女性が好みなのか……?」

霖乃「別にそういうわけじゃないんだ。彼女が好みかどうかの問題じゃないんだ。」

魔理沙「じゃあ、なんなんだよ?」

霖乃「それは今は言えないな。」

魔理沙「はあ!?なんでだよ?」

霖乃「はは……まあ、いずれ近いうちに教えるからさ。」

魔理沙「……訳が分からないぜ……」

《pm13:10~東館3階廊下~》

早苗「文先輩。少しいいですか?」

文「ん?どうかしました?」

早苗「あのアリスって人、ひょっとして何かあるんですか?なんか人形部の幽霊部員って……」

文「ああ、幻想高校でちょっとした事件があったんですよ。
詳しくは知りませんが、学生達が洋風人形の姿をした輩に次々と襲われて怪我を負わされたって事件がありましてね。
その犯人ってのがあのアリスさんらしいんです。それで、霊夢さんがそれを推理したとか。」

早苗「え?あんな優しそうな人がどうして他人を襲ったのですか?」


文「幻想高校には人形部って廃部した部活があったそうです。それで、その部室に飾ってあった人形を被害者達が盗んだんですよ。
その人形にはプレミアがついていてネットでは高額で売買されてた。つまり被害者達は金銭目的で窃盗を行ったんです。
それを知ったアリスさんが、人形を取り返す為に被害者を襲っていった。実はアリスさん、大の人形好きで廃部した人形部の部室にも何度もお忍びで人形を見に訪れてたそうなんです。
暴行事件を起こした理由も、ただその盗まれた人形を部室に戻したいだけだったとか……」


早苗「なるほど、でもだからって被害者を襲うこともないんじゃ……」


文「アリスさんは人形は好きなのですが、あまり人間は好きじゃないんですよ。
だから、被害者を説得するとか、先生や警察に相談するなどの選択肢よりも先に自力で取り返すことにした……といったところですね。」


早苗「……それで、やっぱりアリスさんは警察に逮捕されてしまったのですか?」

文「いいえ。アリスさんは霊夢さんに犯人だって白状したのですが、霊夢さんが探偵部員以外にそのことを伝えなかったそうで。」

早苗「どうしてですか?アリスさんは犯罪を犯したのに……」

文「そりゃあ、霊夢さんが意外と優しいお方だからじゃないですか?
きっと犯行動機を聞いて、アリスさんに同情したんですよ。
幸い、被害者達も数週間で完治しましたし。」


早苗「優しい……あの霊夢さんがですか?」


文「ええ、恐らく。
まーそれに、犯人を晒さなかったことで、幻想高校では人形を盗む不届き者は人形部の幽霊部員に襲われるって怪談じみた話が出来上がりました。
そのおかげで先生達が人形をちゃんと管理する様になって、再び人形が盗まれるといった事は起きてないそうです。
つまりは有終の美。終わり良ければなんたらですね。」


早苗「そっか……そういう結末もあるんですね。」

文「ええ。ホント、幻想高校には優秀な探偵等がいて羨ましいですね。」


早苗「しかし、どうして文先輩はアリスさんが犯人だって知ってるのですが?
だってそれは公になってないんですよね?」

文「それ機密事項ですよ。早苗さん。
記者の人脈をあまく見ないでください。」

《続く》

《二日目am08:00~東館ホール》


霊夢「あ~……眠い。」

永琳「おはようございます。食事の準備は既に出来ておりますよ。」

霊夢「ん~……あ。ありがと……」


アリス「霊夢。昨夜は眠れなかったの?」

霊夢「え~?多分6時間以上は寝れたはず~……」

咲夜「霊夢さんは寝起きが悪いんです。私達の屋敷に泊まった時も、朝はこんな感じでしたし。」


美鈴「おっはよぉ~!!いい朝ですね!GOODモーニング!!」

霊夢「うるさい……朝っぱらから……」


文「おやおや~?女子高生名探偵さんは朝に弱いのですか~?
巷のファンもビックリですね~♪」

霊夢「記事にするつもりだったら覚悟しときなさいよ……」

文「おー怖い怖い。」


輝夜「あ゙~!えいり゙~ん!コーヒー持ってきで~。」

永琳「おはようございますお嬢様。少々お待ちを。」

鈴仙「会長~。大丈夫ですか~?」

輝夜「らいびょうぶ~!いつものことだじぃ~。」


咲夜「……あちらにもっと酷いのが居ますけど……。
あれって寝起きが悪いというより……」


てゐ「はい。会長様は昨晩一睡もされていないんです。」

アリス「え?どうしたのよ?」

美鈴「すいません。ソースないですか?私、目玉焼きはソース派なんです!」

咲夜「ひょっとして、一晩中何かやってたんですか?」

てゐ「ええ、まあ……」

アリス「まさか、演劇部の人達に関しての……」


文「生徒会長さんは重度のネトゲ中毒なんですよ。
多分昨晩も持ち込んだノーパソで楽しんでたのでしょうね。」

アリス「……はい?」

てゐ「いえ、会長は準備万端ですからね。デスクトップごと持ち込みました。」


輝夜「ネット内では世界6000万人のユーザーの中で3位の成績を持つアーミーですわよ!!」

鈴仙「会長~!カッコいいです!」

輝夜「愚か者!私のことは軍将と呼べー!」

美鈴「すいませ~ん!蜂蜜とかありますかぁ~!?私、朝はハニートーストが習慣なんです!」


霊夢「うるさいわね!食事中ぐらい静かにしなさいよ!!!」


ナズ「一番うるさいのは君だってんの。全く。」

星「会長。そんなんで、私達の演技練習の見学なんて出来るんですか?」

輝夜「あはは~大丈夫大丈夫!西館ホールの客席って寝心地最高だからぁ~あははは……えーりーん!コーヒーまだぁー?」


星「……端から居眠る気なんですね。全く……」

ナズ「ま、その方がこちらとしても練習に精が出せますね。」


美鈴「あのー!食後にチョコレートアイスとか……」

咲夜「アンタいい加減にしなさい!さっきから図々しいわよ!」

ミスティ「はい、アイスをお持ちしました。」

美鈴「うわぁ~♪綺麗にデコレーションしてますね~♪美味しそ~♪」

ミスティ「うふふ。貴方みたいな笑顔の素敵な人に感謝されると、こちらも腕のふるいがいがありますね。」

咲夜「どうもすいません。友人が無神経で……」

ミスティ「いいのいいの。私も嬉しいんだから。」


鈴仙「ご無沙汰してます。ミスティアさん。本日も私達の為におこし頂きありがとうございます。」

輝夜「ゔ~?ああ、女将さ~ん!お疲れ様ですわ~!」

ミスティ「うふふ。相変わらずね、会長さんは。」


星「ミスティアさん。今日もよろしくお願いします。」

ミスティ「ええ。私も暇さえあれば、皆さんの演技を拝見しに行くわね。」

星「はい!是非とも!」

ミスティ「うふふ。そういえば部長さんは?まだお眠りですか?」

星「あー、はい。昨晩は遅くまで色々あったので……」

ミスティ「そう……彼女、お味噌汁が大好きみたいだから、とっておきのを用意したの。
早く感想を聞きたいわね~。
あ、後あの娘もまだ起きてないのかしら?」


ナズ「あの娘?誰のことかな?」

ミスティ「あの可愛らしい娘よ。確か、小傘ちゃんだったかしら?」

星「………」
ナズ「……」


文「あやや……ミスティさん。その、小傘さんは……」

聖「おはようございます。ミスティアさん。」

ミスティ「あら、おはよう。部長さん。」

聖「本日も私達八雲学園演劇部の為にお食事を用意して頂き、誠にありがとうございます。

ミスティ「いえいえ、気にしないで下さい。
若い皆さんの為に料理をふるえて、私も楽しいです。」

聖「はい。では早速頂かせて貰いますね。
ナズさん、星さん。一輪さん達も起こしてきて貰えるかしら?」

ナズ「承知。」


星「部長。その……」

聖「いいから。後は私に任せて。」

星「……すいません。」


霊夢「……へぇー。頼りになる部長さんね。」



聖「おはようございます。皆さん。」

霊夢「おはよう、部長さん。」

聖「おはようございます、霊夢さん。それに他の皆さんも。
今日は1日、西館ホールで練習をしたいと思いますので、皆さんも是非見にいらしてください。」

咲夜「私達はホール端の部屋で衣装作りを行いますね。ね?アリスさん。」

アリス「ええ。よろしくお願いします、咲夜さん。」

美鈴「んじゃあ、私はどうしようかな?何もすることないんじゃ、この辺の山を冒険してこようかな?」


永琳「あまりオススメしません。この辺りの山は開発が進んでいませんし、急な崖も多いです。」

鈴仙「よろしかったら、美鈴さん。館の清掃を手伝って貰えませんか?
来月の本格的な合宿に向けて空き部屋なども綺麗にしておきたいので。」

霊夢「本格的な合宿?」

鈴仙「はい。演劇部や合唱部、軽音部やブラバン部などの合宿が既に控えています。
私達生徒会一同は、それらに向けて館の清掃や視察をする為に訪れたのです。」


永琳「毎年、この館は何十人もの生徒達でにぎわってます。長い部活は2週間以上滞在したこともありました。」

霊夢「へぇ~。じゃあ、貴方達がこの館に来たのは2回目どころじゃないのね?」

鈴仙「はい。私達はもう何度も訪れています。演劇部の方々も。」

聖「ここは静かで空気も良いですから。落ち着いて練習にはげめるのですよ。」


鈴仙「後、この東館の地下にある大浴場も綺麗なんですよ?」

霊夢「大浴場……私は入らなくてもいいわ。」


聖「そんなぁ!是非ともご一緒に入りましょうよ!」

霊夢「いや、いいから。私は部屋にある簡易シャワーを……」

聖「それは駄目です!合宿はお風呂も込みなのです。」

霊夢「いや、ほら、私は付き添いだし……」

聖「ささ、ご一緒に参りましょう!」

霊夢「え?ちょ!?今行くの!?」

聖「はい!練習前に気分を整える為に必要不可欠です!」

グイッ!

霊夢「ちょ!?放して!駄目だって!?うわっ!?何よこの怪力!?」

鈴仙「聖さんは意外と力持ちですからね……」

美鈴「ほぉ~。朝風呂とはなかなかやりますね。
私も是非!」

聖「はい。皆さんも後でいらして下さい。」

霊夢「放して~!放せ~!」



アリス「あ、あのぉ、私は……」

永琳「はい。部屋のシャワーでよければ。ボディーソープはお持ちですか?」

アリス「は、はい。自分のがありますから……ありがとうございます。」

輝夜「ん?貴方もお風呂が苦手なの?」

アリス「あ、いえ。私はただ……その……」

輝夜「……いいえ、言わなくても分かりますわよ。
思春期、ですわよね……」

アリス「……はい?」

輝夜「あんのボインボインと一緒のお風呂とか、マジで勘弁して欲しいですわね!
あの女も、こっちの気持ちを分かっててわざと言ってるのよ!!」

アリス「え?あ、いや、別に胸が小さいのが恥ずかしいとかじゃなくて……」


輝夜「ねー?てゐ。」

てゐ「そうですね~。」

鈴仙「会長~……。確かに聖さんはもの凄いお方ですが、女性の魅力は胸だけじゃないですし!」

輝夜「ふん。準巨乳のくせして、私の気持ちなんて分かるものですか!
私達は格付けしあうのよ!あの肉の塊一つで、女性の地位は宇宙と地上ほどの差がつくのよ!
……ええ、たかだか胸の大きさで……」


てゐ「そんなことはありません。胸は1ステータスに過ぎません。
他のところでは、会長様は聖様に圧勝しています。」


輝夜「なるほど、てゐ。それで、それは具体的にはどういったところなの?」

てゐ「どんなスカートでもはいるガリガリな腰周りの細さ、放置され過ぎて日本人形もビックリするほど長い髪、よく分かんない輝きを放つ黒い瞳、そして溢れだす月花美人、百花繚乱な気品さです。」


輝夜「てゐ!!貴方、私のことをこんなにも理解してくれてるなんて!!
貴方は私の一生の友達ですわ~!!」

てゐ「ありがとうございます。私は結婚するまでは、ずっと輝夜様の傍についていきます。」


アリス「今のは褒めてたの?」

鈴仙「あははは……てゐちゃんはちょっと口下手だから……」

アリス「まぁ、会長さんは素材は凄まじいぐらいに良いとは思うけど。」

鈴仙「はい!そうなんです。
今の徹夜明けの会長は仕方ないですけど、お父様と一緒にディナー会に参加してる会長は凄いんですから!パーティの中でも一段と輝く会長のお姿に、何人もの男性が虜にされてきたのです!」


アリス「へぇ~。あれがね~。人はみかけによらないのね。」

てゐ「なんだかんだで、会長は建前作るのが上手いからね~。
まあ、鈴仙もかなりのもんだけど。」

鈴仙「こ、こらぁ!!てゐ!」

アリス「?」

文「聞きたいですか?実はあの鈴仙さんのご家族は地元でも有名な幹部組員……」

鈴仙「文さん。ご一緒にお風呂なんていかがかしら?」

文「いえ、私も簡易シャワーを……」

鈴仙「あら、では私もご一緒に。」

文「いえ、私一人で……」

鈴仙「いえいえ、私もご一緒に。」

文「いえ……その……」

《二日目pm08:30~東館1F廊下》


ミスティ「あ……部長さん……」

聖「あらあら、ミスティアさん。今回のお味噌汁はとても美味しかったですよ。」

ミスティ「そう……それはよかったわ……」

霊夢「?」

ミスティ「その……先程は!何も知らずに失礼な事を言って、本当にごめんなさい!」

聖「はい?一体何のことでしょうか?」

ミスティ「いえ……その……。
とにかく、今日は頑張って下さい!」

聖「?」


早苗「おはよーございます。聖先輩。」

聖「さ、早苗さん!?」

早苗「あれ?ひょっとして、もう朝ご飯は終わっちゃったのですか?今朝のメニューはどうでした?」

聖「……お、おはようございます。」

霊夢(……まただ。また部長さんの顔色が一気に……)

ミスティ「あ、あの……私はこれで……」

早苗「はい。私も後ほど食事に向かいます。」



聖「………」

早苗「いやぁ~、先程はびっくりしました。」

霊夢「何がよ?」

早苗「いえ、久しぶりに親友の名前を聞きましたから。」

聖「え?それって……」

早苗「ミスティアさんに小傘は来ていないのかと聞かれたんですよ。」

聖「あ……」

霊夢「そういやさっきホールでなんだかんだで話さなかったから……」

早苗「……かなりショックを受けてましたよ。ミスティアさん。」

霊夢「あんた……なんて言ったの?」

早苗「はい、ただ一言、『彼女は死にました』と言いました。」

霊夢「それだけ……?」

早苗「ええ、それだけです。」


聖「………」

早苗「あれ?ひょっとしたら、『彼女は自殺しました』って言っちゃったかもしれませんね。」

聖「……!!」


早苗「あー、いや、どっちでしたっけ?
まぁ、どっちでもいいんですけどね。どちらも間違ってはないですから……」

聖「……あ、あの。私達はこれから、お風呂に向かうので……」

早苗「あ、そうなんですか。朝からお風呂だなんて、聖さんがお風呂好きって情報は本当だったんですね。」

聖「……え、ええ。その通りです。
文さんからお聞きになった情報ですね?」

早苗「いえいえ、小傘から聞きましたよ。」

聖「え……?」

霊夢「……」

早苗「あ、もちろん生前にですよ。
部長さんに大浴場に無理矢理連れてかれたって、顔を赤くして言ってましたよ。」

聖「……その…」


早苗「世話焼きだけど、大らかで憧れの部長だって、小傘は嬉しそうでした。」


聖「………」

霊夢「あんた、多々良小傘のなんなの?」

早苗「はい。私は小傘の親友です。」

霊夢「自分で多々良小傘の親友を名乗るなんて大したものね。」

聖「霊夢さん……」

霊夢「さっきからニヤニヤしながら、よくもまぁ軽々と小傘のことを話せるわね?」

聖「やめてください……霊夢さん……」


早苗「友人だから話せるんですよ。だって、私は何もないですから。
誰かさん達と違って、後ろめたいことが何もないからこそ、堂々と簡単に話せちゃうんです。“自殺した”小傘のことを。」


聖「………」

霊夢「あ、そう。あんたの言いたいことは大体理解できたから、まずそのムカつく笑顔をやめなさい。」

早苗「私は常に笑顔がモットーなんです。
『笑顔は作るものじゃない。感じたままをただ素直に表現する。自分の心に素直になれば、自然と笑顔になれるのだから……』ですよね?部長さん。」


聖「!?」

早苗「私のこの笑顔は私の今の素直な気持ちの表れなんですよ?
ほ~ら、私はこんなに笑顔なんです。分かりますよね?私が貴方を、演劇部部長さんを責めているわけじゃないってことが……。
私は貴方に怒ったりしていないってことが。」


聖「………」

早苗「デスヨネ……ブチョウサン……」




『……部長!言われた通りにしたら、こんなに笑顔が上手になったんですよ?ビックリしましたか?驚いてくれました?


ネー……ブチョウサン……ワタシノエガオハドウデスカ?




聖「やめて!!!やめてください!!」

霊夢「!!」


聖「うっ!………ゲホッ……ガァ……ウェッ……」

霊夢「部長さん!!しっかりして!」

早苗「……あらあら?せっかく食べた朝御飯をもう出しちゃうんですか?
それとも、私のお話でお腹がいっぱいにでもなりました?」

霊夢「アンタね!どういうつもりなの!?」

早苗「うふふ。どうして怒るんですか?私は何もしてないじゃないですか?
ただ、私は笑顔を見せただけじゃないですか?笑顔作りのプロである演劇部部長さんに評価してもらおうと思って……」


聖「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」


早苗「あらら?こちらの方は逆に謝罪をしてきましたね。
おかしいなぁ~。私は別に怒ったりしてないのに。
一体誰に謝ってるんですか~?」


聖「ゲホッ……ゲホッ……ごめんなさい……こ……が…」


一輪「姐さん!」
星「部長!大丈夫ですか!?」

霊夢「早く!早く来て!」

一輪「何があったんですか!?」

霊夢「突然吐き出したわ!しかも意識が錯乱してるみたい!何か持病とかあるの!?」

一輪「いいえ、姐さんは別に……。」



早苗「あら、お二方も。おはよーございます。」

星「……早苗!なんでお前がここに居るの!?」

一輪「貴方、ひょっとして姐さんに何か!?」

早苗「いえいえ誤解です!私はただ偶然居合わせたお二人とただお話をしていただけです。
ですよね?霊夢さん。」


星「そうなの!?霊夢さん!」

霊夢「……ええ。確かに嘘は言ってないわ。」

早苗「はい。私は嘘なんて言いませんから。」

霊夢「あの女はただ、満面の笑顔で多々良小傘の話をしていただけよ。」

一輪「小傘さんの話を!?」

星「!?どういうつもりだ早苗!!お前……!」

早苗「わ、私はただ一方的に話してただけで、そしたら部長さんが勝手に吐いちゃっただけなんですって。」

星「……どうなのっ!?」

霊夢「そうね。死んだ学生の話を満面の笑顔で軽々喋って、部長さんの顔をこれでもかって覗きこんでたわね。」

早苗「れ、霊夢さ~ん。そんな言い方酷いですよ~。まるで私が悪いことをしたみたいじゃないですか~?」


霊夢「別に~。私は嘘なんて言ってないも~ん。」

早苗「え~?でも、物理的に何かしたわけじゃないし~。勝手に吐いたのは部長さんの方ですよ~?」


星「……消えろ……」

早苗「はい?」

星「今すぐ私達の前から消えろ!!この……小傘の亡霊がっ!!」

一輪「!?」

霊夢「はあ!?あんた何を……」



早苗「……何言ってるんですか?」

星「……くっ…!」

一輪「星……聖の前でそんな発言……」

霊夢「大丈夫よ。部長さんはとっくに気を失ってるわ……」


早苗「貴方達は目がおかしくなったのですか?
私は早苗ですよ?それ以外の何者でもありません。」


星「………」


早苗「……ああ、分かりました。貴方達には見えるんですね?小傘が……」

一輪「………」


早苗「そうですか。小傘が見えてるんですね。
残念ながら、私はまだ見たことがないんですよ。自殺してから、小傘の姿を……。
だから、うらやましいですね~。
小傘は今、どんな顔をしてます?やっぱり、あの可愛らしい笑顔ですか~?」


星「……行こう。一輪。」

一輪「星。でも……」

星「あんな頭のイカレた女と話してたら、私達までおかしくなってしまう……聖みたいに……」

霊夢「……あんた達……」

星「霊夢さん。お騒がせしましたね。また後でお詫びをしますから。」

一輪「失礼します。」



早苗「………」


霊夢「……なるほどね。昨晩、部長さんがあんたの顔を見た瞬間に顔色を悪くしてた理由が分かったわ。
あんた、もう何度もこんな感じで聖さんにちょっかい出してたのね?」


早苗「霊夢さん。私は何か悪いことでもしましたか?」

霊夢「いいえ。貴方は何もしていない。
確かに部長さんが勝手に精神を崩しただけよね。」

早苗「そうですよね。私は別に部長さんに危害を加えてはいません。部長さんが勝手に傷を負っていってるだけなんです。」

霊夢「………本気でそう思ってるの?」

早苗「はい。私はそう思ってます。
……ああ、別に私だけじゃないと思いますよ?こういう考え方をしてるのは……」

霊夢「何?」

早苗「だって、そうですよね?
別に包丁で差したわけでもないし、屋上から突き落としたわけでもない。
ただ、私がさっきやったみたいに言葉を投げ付けたり、笑顔で見下したり、台本に悪口を書いたり、ゴミ箱の中身を机の上にぶちまけたり、時には服とか下着とかも切り刻んだり……」


霊夢「……なるほどね。確かにそれはキツいわね。」

早苗「ええ。でも、首を吊ったのは本人ですから。
部室の天井からワイヤーを吊して自殺。遺書代わりにボロボロになった台本が足元に置かれてたそうです。」


霊夢「ワイヤーで……自殺?」


早苗「ふふふ。霊夢さん、貴方には私は誰に見えます?」

霊夢「私には、満面の笑顔が気に障る早苗にしか見えないわよ?」

早苗「ですよね~?でも、演劇部の方々には、私は別の誰かに見えてるらしいんです。
しかも死んだ元部員に……」

霊夢「……それは御愁傷様ね。」

早苗「ですよね~?だからさっき部長さんを傷つけたのは私、東風谷早苗じゃないんですよ?
部長さんは私じゃなく、小傘を見ていたのだから。」

霊夢「そうね。確かに、部長さんはあんたに小傘の面影を感じていたみたいね。」

早苗「ええ。だから、私じゃないんですよ?犯人は……」

霊夢「は?何がよ?」

早苗「もし、部長さんや演劇部の人達が死ぬ様な事になっても、殺したのは私じゃないんです。
私じゃなくて、“小傘の亡霊”が犯人なのです!」


霊夢「………。」

早苗「これだけは覚えておいて下さいね、霊夢さん。
なにせ、貴方はこれから一緒に合宿をするのですからね。死んだ部員の亡霊と、それに怯える罪人達と共に……」


霊夢「……ええ、肝に銘じておくわね。」

早苗「はい。よろしくお願いします。名探偵さん。」


霊夢「でも、その亡霊が殺すのは、本当に演劇部員達なのかしら?」

早苗「はい?どういう意味ですか?」

霊夢「何故貴方はそう決めつけてるの?亡霊が誰を襲うかなんて、亡霊本人にしか分からないんじゃない?」

早苗「なるほど、そうですね。でも、安心してください。少なくとも、私や霊夢さんには見えてませんから。亡霊なんて。
先程も言いましたが、私は見たことがないんですよ。演劇部員が何度も見ている大親友の亡霊を……一度たりとも……」


霊夢「そっか。それは悲しいわね……」

早苗「はい。とても悲しいです。」

《二日目am09:00~西館328号室》


ナズ「先輩。聖さんから目を離すなとあれほど言ってたのに……」

星「ごめん……朝見たときは、調子良さそうだったから……」


聖「……はぁ…はぁ…」


一輪「息が荒い……苦しそうね。
何か嫌な夢でも見ているのかしら……」

ムラサ「……せっかく、最近調子良くなってきたから、合宿で気分でもかえてもらおうかなと思っていたのに……」

星「どうして、なんであの女が合宿にくるのよ……」

一輪「生徒会側も、文さんが誰を連れてくるかは把握してなかったみたい。他の新聞部員がくるものだと思ってたそうよ。」


星「……このままじゃ、聖が駄目になってしまう……」

ムラサ「今すぐ早苗を追い出そう!生徒会の奴らに言えば……」

一輪「それでも、これからもずっと私達に付きまとってくるんですよね?あの娘……」


ナズ「……小傘の次は、早苗の番か。」

星「ナズ!!そういう言い方はやめてください!」

ナズ「でも間違ってないだろ?私達は貧乏くじばかり引かされてる。
このままじゃ、演劇部解散も時間の問題だね……」



ムラサ「いや、そんなことはないさ。」

星「村紗……?」

ムラサ「私達が諦めたら終わりだよ。聖は……今の聖には、もう“何も”出来ないんだから……」

星「………」


ナズ「私は最後まで付き合うよ。演劇部員としてね。」

一輪「ええ。私も。姐さんの為なら……」


星「………」


星「部長……いや、聖……」


星「私は、貴方を絶対に悲しませたりはしないから………」



聖「………」

《続く》

《注意》
リアリティを出すために作品内の時間をリアルタイム表示しようかなと思ったけど諦めました
明記時間がたまに間違ってたりしますけど、スルーしてください


早苗の黒いキャラ崩壊はごめんなさい


オペラ坐館は見た記憶はありますが、ネタは忘れました。
犯人がぶつかったフリをして仮面を窓から捨ててた様な……
そして雨の中、首を釣られてた子は軽くトラウマ

《二日目am11:00~東館309号室》


文「私に何か様ですか?霊夢さん。」

霊夢「小傘が自殺した件について詳しく知りたいのよ。」

文「あやや……。いきなりですね。やっぱり貴方も気になるんですね?」

霊夢「ええ。新聞部員、あんたならかなり詳しく調べてるんでしょ?」

文「まー、そうですけど。
ただ、記者にも守秘義務というものがありまして……」

霊夢「いいわよ。あんたからは何も言わなくてもいい。」

文「へ?」

霊夢「ただ、私の質問に答えてくれればいいわ。大体は予想がつくから。」

文「あややや……出来るだけ軽いのでお願いしますよ。」


霊夢「小傘ってのは、部活内で孤立してたの?」

文「うう……恐らくそうです。」

霊夢「どうして?」

文「えーと……なんて言うか……」

霊夢「小傘は脚本作りを担当してたらしいけど、演劇には参加してなかったの?」

文「いえ……してなかった……というより、出来なかったというか……。
でも、結局してしまった……とか……」


霊夢「そういう内容をバラしたら、演劇部員達に怒られるの?それとも……」


文「あー!!もう分かりました!全部言いますよ!」

霊夢「そう。良かったわ。」

文「実は……私もよくは知らないんですよ!
演劇部員や生徒会、或いは他の新聞部員達には何でも知ってるかの様に振る舞ってますが、本当は何も知らないんです!
演劇部内がどんな風になっていたのか、そもそもイジメが本当にあったのかすら……」


霊夢「何一つ分からないわけ?そんなはずないでしょ。
少なくとも、小傘と他部員の関係くらい……」

文「それもよく分かりません。
ただ、演劇部は聖さんを中心にとても仲の良い部活だったはずなんです。小傘さんが自殺するまでは……」


霊夢「そう。でも、なんか腑に落ちないわね。イジメが起きていた証拠はなくても、不仲な雰囲気ぐらいはあるはずよね?」

文「無理です。先生方や生徒会が裏で話してるのを盗み聞きましたが、それらしい跡は何もなかったそうです。
イジメはあくまで噂なんです。小傘さんが部室で首吊りをはかったから、その様な噂が流れただけです。」

霊夢「そう……。じゃあ、どうして今の演劇部員達は小傘を嫌ってるの?」

文「一つに小傘さんが自殺したせいで、演劇部に不穏な噂ができて部活動の縮小化や大半の部員が辞めてしまったことが原因ですよ。
皆さん、小傘さんが自殺したせいで酷い目にあわされたのだと思ってます。

或いは、小傘が自殺する前から小傘のことが嫌いだったから今もなお嫌いってだけかもしれませんがね。」


霊夢「そっか……もういいわ。演劇部部員と小傘の関係については……」

文「あやや……お役に立てなくてすいませんでした。」


霊夢「じゃあ、今度は小傘の死の状況について教えて貰える?」

文「はい。それなら詳しく調べてますよ。」

霊夢「まず、小傘が自殺していた部室についてお願い。」

文「八雲高校部活棟にある演劇部の部室です。小傘が首を吊っているのを、日没間近に巡回していた警備員が見つけました。」

霊夢「小傘の死亡推定時刻は?」

文「警察の調べではその日の夕方です。」

霊夢「なら、その日は部室で部活動は行われていなかったの?」

文「はい。この日部活はお休みだったそうです。」

霊夢「だけど、部活棟には他の部の学生達が居た?」

文「はい。新聞部やブラバン部やオカルト研などが活動してました。」

霊夢「特に部室から叫び声や物音は?」

文「無かったそうです。」


霊夢「なるほど。じゃあ次、小傘の遺体について詳しく。」

文「目立った外傷もなく、ただ首を絞められた跡があった様ですね。これは首吊りによるものでしょう。
首には天井から吊された細い鉄線がまかれ、服ポケットには財布とスマホ。」

霊夢「そう。他の荷物はどうしたの?」

文「近くにカバンが置かれていました。後、床に台本が落ちていた様です。」

霊夢「台本……それについて詳しく分かる?」

文「はい。実は私、実物を写真におさめてるんです。中身についても詳しく撮ってます。」


霊夢「ナイス。見せてくれる?」

文「はい。これがファイルです。」

霊夢「……つか、なんでそんなものを合宿に持ってきてるのよ?」

文「幻想高校の探偵さんが来ると聞いてたので、役に立つかなと思って……てへっ♪」

霊夢「あ、そう。まー実際役に立ってるけど。」

文「表紙はかなりボロボロでしたね。」

霊夢「ええ。まるで強く握りしめられたみたいね……」

文「もしかしたら、首を吊る瞬間も手に持っていたとか……」

霊夢「なにそれ?台本をあの世まで持っていくつもりだったってこと?」

文「うーん、でもこの台本を作ったのは小傘さんでしたし、あり得なくもないんじゃないですか?」

霊夢「そっか。そういえばそうだったわね。
というか、この台本は小傘の物なの?演劇に使うなら、同じ台本を部員全員が持っているはずよね?」

文「え~と、恐らく小傘さんのです。
中に小傘さんが書いたと思われるコメントがありますし。」

霊夢「どれ………。
台本の中身、台詞の前後に添字がいっぱい書いてるわね。
中には台詞を書き直してるのもあるわね。」

文「練習の間に気に入らない台詞などは変更してたそうです。」


霊夢「台詞だけじゃなく、その時の動作についても詳しく書いてるわね。
特に“王子”とか役の下には舞台上での立ち位置とかも詳しく書いてるわ。
この王子ってのが小傘の役なの?」


文「えーと……王子役は星さんだったはずです。」

霊夢「そっか。なら、小傘の役はなんだったの?」

文「確か、お姫様の前に現れる魔法使いの少女だったはず……」

霊夢「どれどれ……。あ、これね。
台詞がかなり書き直されてるわね。」

文「ええ。台本完成後も、かなり台詞にこだわっていたのでしょうね。」



霊夢「………。なんでこの台本を持って、小傘は自殺をしたのかしら?」

文「さぁ?自殺する人の考えなんて私達には分かりませんよね。」


霊夢「………」

霊夢(何?この当てが外れた感……。
……おかしいわね。私は何かに期待してたはずなのに………)


早苗『台本には悪口を書かれ……」


霊夢「………。新聞部員。」

文「あやや。私は新聞同好会ですよ?もしくは、気軽に文とお呼び下さい。」

霊夢「文。この台本の全ページには目を通したの?」

文「え?はい、まあ……。」

霊夢「セリフの添え書きとかじゃない、普通におかしな事は書かれてなかった?」

文「はい?具体的には?」

霊夢「……悪口とか。小傘の……」

文「はぁ……別にそう言った内容は無かったと思いますよ?
ていうか、台詞以外に書き込みのあったページは全部そのファイルにおさめていますし……」

霊夢「……そう。分かったわ。もう十分よ。ありがとう、文。」

文「はい。名探偵様のお役に立てたのなら、記者としては本望です。」


霊夢「記者として長生きしたいのなら、私みたいなのとは縁を切ることね。」


文「そういえば霊夢さん。一つだけはっきりしてることがあるんです。」

霊夢「え?何がよ?」


文「小傘さんは自殺する1週間前から学校にも来なくなっていましてね。
恐らく何かあったのでしょう。」

霊夢「そう。自殺の兆候は既に出てたってこと?」

文「後、これは誰もが話したがらないんですけど、ちょうどその頃にネットの有料サイトに小傘さんによく似た少女の凌辱動画が投稿されたのですよ。
もちろん本人かはどうか分かりませんけど。」

霊夢「……それが無関係とは到底思えないんだけど。」文「はい。私も確認しましたが、顔はよく映ってませんでしたし、少女の声もえげつない叫び声ばかり上げていたので小傘さんかどうかは微妙ですね。
しかし、本当に気分の悪い動画でした。小傘さんではなかったにしろ、恐らくガチの凌辱動画だと思われます。
そのせいか、サイトでは既に消されてますけど、落としたのなら私のパソコンにありますよ。見ますか?」


霊夢「結構よ。その事実を聞けただけで十分。
あんたも、そんな動画をいつまでも持ってたって後味悪いだけでしょ?」

文「はい。その内消しますよ。」

霊夢「しかし、それが小傘なら自殺の動機に繋がるかもしれないけど……。
何かその話だけ浮いてない?」

文「はい?」

霊夢「部活内でのイジメが自殺の要因だったはずでしょ?
なんでいきなり凌辱事件にまで飛ぶのよ?」

文「あやや、霊夢さん。名探偵様の貴方にしては、随分初歩的なところでつまずきましたね?」

霊夢「どういう意味よ?」

文「女同士のイジメはえげつないと言われますがね、一番効果的なのはやはり男による凌辱なのですよ。」

霊夢「……その発想、どこから来たの?」

文「記者としての経験談からですよ。女子校って、ヤバい時は本当にえげつないんですよ?」

《二日目am11:45~東館516号室》

魔理沙「何も分からないのかよ!?」

輝夜「あー、もう!!だから、私達にも分からないんですわよ!」


霊夢「失礼~。相方が世話になってるみたいね。」

てゐ「あ、会長。もう1人の探偵さんも来ましたよ~。」

輝夜「全く……こっちは寝不足解消の昼寝途中だというのに……早く寝かせて貰えないかしら?」


魔理沙「霊夢。お前は何調べてんだ?」

霊夢「小傘と演劇部員との関係よ。」

てゐ「そうですか~。やっぱり気になっちゃいますよね~。今朝のいざこざをお見になったら……」


輝夜「多々良小傘さんは演劇部の一部員。それ以外は私達も知りませんわよ?」

霊夢「部活内でのイジメについては何か知らないの?」

輝夜「さぁ?今の演劇部の小傘さんに対する態度を見れば可能性はありますが、小傘さんの自殺前にそういった事実があったかは確認出来なかったですわ。」


魔理沙「んなハズあるかよ!お前らちゃんと仕事してんのかよ!?」

輝夜「失礼ですわね!鈴仙達と学内中を調べましたわよ!もちろん、聖さんや演劇部員達も!
でも、何一つの形跡も見つかりませんでしたのよ!?小傘さんが自殺したって事実以外に、演劇部には何の汚点もありませんでしたのよ!!」


霊夢「そんなの有り得るの?部員が自殺した部活がまともなものだなんて思えないんだけど……」


輝夜「そう思ってる様な人達が、必要以上に聖さん方を吊し上げて、おかげで演劇部は廃部寸前にまでおいやられたのですわよ?」

霊夢「………」

てゐ「特に東風谷早苗さん。あの方が一番激しかったですね~。」


輝夜「私達生徒会には何も出来ないわ。小傘さんの自殺は残念だけれど、今の状態で演劇部を責めるわけにはいきませんのよ。
分かって頂けたかしら?」

魔理沙「……ああ。もういいぜ……」

霊夢「そちらの事情は分かったわ。随分、苦労してる様ね?」

輝夜「ん?何がですか?」

霊夢「生徒会として、1人の生徒の自殺の究明も大事だけど、だからと言って根拠の無いデマで部活熱心な部を崩壊させるわけにはいかないものね……」


輝夜「あら、私達の苦労を理解してくれてるのね?」

霊夢「そうね。本当に大変よね。私にそんな二面性は耐えられないわ。」

輝夜「ええ。大変よ。
ありがとう、心配して下さって。でも、貴方達もこんな案件に首を突っ込む必要なんてないのよ?あくまで、他校の出来事ですし……」


魔理沙「いや、そういう問題じゃないんだ。
もうここまで来たら、引き返すわけにはいかないんだぜ。」

霊夢「私も同じよ。私も……ここで終わらせるわけにはいかない。」


てゐ「あら~、アツい探偵魂ですね~。」

輝夜「全く、私はこういった面倒が大嫌いなのに、世の中には物好きが居るものですわね。」


霊夢「そりゃそうよ。」
魔理沙「んなの、当たり前だろ!」

霊夢「依頼を受けた以上、」

魔理沙「探偵は引き下がれないんだぜ!」


霊夢(私の依頼者は多々良小傘。いや、生前の彼女の意思。)

魔理沙(こーりんがあたしに依頼してきた内容だ。案件はかなり複雑みたいだが……)

霊夢(手紙を送ってきたのが誰かは分からないし、もしかしたら私はハメられてるのかもしれない……けど!!)

魔理沙(必ず解明してやるぜ!!この事件の真実を……)


輝夜「てゐ~。私は後4時間は寝るから、永琳に昼食をとっておく様に言っといてね~。」

てゐ「分かりました~。生の物は少なめにしておきますね~。お休みなさいです~。」

《二日目am12:00~東館308号室》


霖乃「……」

『次のニュースです。3日前に長野県内の無職の男が自宅で首を吊っていた事件についての続報です。
男は自宅で細い鉄線らきしもので首を吊っているところを、男の部屋から漂う異臭を調べにきたアパートとの管理人によって発見されました。男は死後2日以上経っていたものとみられています。

県警によりますと、男には窃盗や暴行などの前科があり、事件直前にも違法アダルトサイトの運営に関与していたとして、県警の捜査を受けていました。

警察は、男は自殺したものとみて捜査をしています。

また、同じ町に住む男子大学生が5日前に今回と同様に鉄線で首吊り自殺をした事や、1週間前にも同じように自殺をしていた元暴走族の男について、警察は3つの事件に関連性がないものと調べています。』



霖乃「………」

『続いては、本日の天気についてお知らせします……』


魔理沙「こーりん。ちょっといいか?」


霖乃「ん?魔理沙、どうかしたかい?」

魔理沙「霊夢もこーりんに話を書きたいだとさ。」

霊夢「いいかしら?少しで済むから……」

霖乃「あ、ああ。構わないよ。」

霊夢「貴方は彼女の脚本作りを手伝っていたのよね?小傘自身はその演劇に参加してたわけ?」

霖乃「あー、確かに彼女は恥ずかしがり屋なのか出演を嫌がっていたね。
でも聖さんのすすめで結局出演していた様だけど……」

霊夢「そう。役とかはどんなの?主人公級とかも持っていたの?」

霖乃「その辺りは何とも言えないな。何故なら彼女の作る演劇に主人公級以外の登場キャラが居なかったからね。」

魔理沙「どんな脇役にも個性を与えて、観客の脳裏に登場人物全員の顔が刻まれる様に演出していたそうだぜ。」

霖乃「そういうことさ。彼女の演劇にモブキャラなんて存在しないんだよ。」

霊夢「なるほど。じゃあ、練習態度とかはどうだったか具体的に分かる?」

魔理沙「部長の指示には従うし、他部員にも気を遣うかなり良い奴だったらしいぜ。」

霖乃「ああ。聖さんが教えた事を次の日にはマスターしてきたそうだ。
当然、台本は自分どころか他の全てのキャラのも丸覚えしていたらしい。」

霊夢「それは凄いわね。もう台本なんていらないじゃん。」

魔理沙「ああ。だから、小傘は一度も練習に台本を持って来なかったそうだぜ。」

霖乃「それも凄いよね。練習中に台詞や舞台周りを変更した場合でも、彼女は全部頭で覚えれてたらしい。

自分の分の台本は作ったはいいが家に持って帰って棚にしまったきり二度と見てなかったそうだよ。」


霊夢「大した記憶力ね。私もそんな特殊能力的なのがあったらいいのにね。」


魔理沙「さてと、霊夢。」

霊夢「ん?」

魔理沙「小傘が自殺した時に台本が近くに落ちていたのは知ってるか?」

霊夢「ええ。部室の床に落ちてたそうね。
台詞に書き添えをしまくった台本が……」

魔理沙「ああ。そうだな、霊夢。つまり、こいつはただの自殺じゃないぜ!」



霊夢「ええ、そうね。
まー、証拠にしては寂しいわね。せめて動機を知りたいわ。」


魔理沙「全くだぜ。だが、生徒会の奴らですら演劇部の中で何があったかは分からないらしいし……」

霊夢「なら、本人達から聞き出すしかないわね。」

魔理沙「そういうことだぜ!」


霖乃「魔理沙、本気でそう思ってるのかい?」

魔理沙「間違いないさ!小傘が自殺する様な奴じゃないってことは、こーりんもよく知ってんだろ?」

霖乃「でも、僕には……………とても、そうは思えないんだ。
小傘ちゃんや聖さん、それに他の部員達を1年間見てきたけど、皆本当に仲が良かったはずなんだ。
それなのに、“部員の誰かが小傘ちゃんを殺した”なんて、僕には信じがたいことなんだけど……」


魔理沙「こーりん。多分、この殺人は突発的なものだったんだと思うぜ。
普段の演劇部内では起こるはずのない事、それが起こっちまったんだ。」

霊夢「それも解明できたらいいけど……。
殺人衝動なんて、犯人自身にしか分からないからね~。」


霖乃「……2人とも。」

魔理沙「ん?」
霊夢「何よ?」


霖乃「……頼んだよ。」

魔理沙「おうっ!頼まれたぜ!」

霊夢「頼まれるまでもないわね。
これは、私に依頼された案件だから……」

《二日目pm00:45~西館ホール》


アリス「部長さんの様子はどう?」

星「例の衣装を着て、もうすぐ来るようです。目を覚まされてから、気分も良い様ですし。」

咲夜「あの方、早苗さんだったかしら、彼女は今どこに?」

星「鈴仙さんと一緒に東館の清掃をしています。
西館には来させないようにすると、鈴仙さんが言ってました。」


咲夜「……早苗さんが何をしたかは知りませんけど、いくら何でも反応がオーバー過ぎじゃありませんか?」

星「………」

アリス「咲夜!?」

咲夜「自殺した部員というのも、貴方達に何の落ち度もないならば、堂々としていれば良いのでは?」

星「始めこそは私達も無視し続けていました。
でも誹謗や中傷は止むことはなく、それどころか変な憶測も生まれて、周りの私達に対する目は酷くなる一方でしたよ。」


咲夜「それは同情するわよ。でもそれが自殺者を生んだ部活に課される責任ってものでしょ?」

星「厳しい意見ですね。
まー、部長もそう言ってましたけど。
それに、今はもうそういった事を言う輩は消えましたからね。
まだ文の様な熱心な新聞部員とか、或いは東風谷早苗みたいな奴もいるけど。」


アリス「……そっか。聖さん達は頑張ったのね……」


咲夜「ええ。それは分かりましたが、話を逸らさないでください。」

星「……と、言いますと?」

咲夜「私が聞きたいのは、どうして貴方達があの早苗に対してだけ、あんなに過剰な反応をするのかってことなのだけれど?」

星「別に私達、そのようなことは……」


咲夜「昨晩、文さんが来たときと早苗さんが来たときとではだいぶ反応が違ってたじゃないですか。
部員の自殺を掘り返してくる輩って意味では同じはずよね?
じゃあ、どうして早苗さんにはあんなに引けをとってるの?」



魔理沙「あたしらにも聞かせて欲しいな~。その話。」

アリス「霊夢!それに魔理沙も!?貴方やっと起きたの!?」

魔理沙「おはようアリス!あたしら女子高生名探偵'sを放ったらかして先走るなんて、案外隅に置けない奴らだぜ。」

アリス「ば、馬鹿!!別に私は……」

咲夜「私達はただ、今後付き合っていく者同士、悩みを共有出来ればと思って……」

星「申し訳ありません。他校の人達に要らぬ世話を焼かせて……」


霊夢「ええ、別にいいわよ。私達は慣れてるから。
ねぇ?アリス。咲夜。」


アリス「………」

咲夜「ま、霊夢さん達と一緒に居れば、毎度のことですからね。」

星「そっか。私達は決して慣れたくないけどね。
合宿だって、ただ部長達と練習がしたかっただけですしね……」


魔理沙「んで、その肝心の部長さんはどうなったんだよ?」

星「部長は……」


聖「待たせてごめんなさい~!やっと準備が出来たの~!」

星「部長!そのお姿は……!?」

霊夢「へぇ~。」
魔理沙「ひゅ~。大したものだぜ~。」

アリス「うわぁ~……綺麗……」

咲夜「あの衣装をこんなにも着こなすなんて……」

聖「どうかしら?星。ちゃんと中世欧州の女性貴族になりきれてるかしら?」

星「あ……その……」


聖「星?」

星「は、はい!似合ってますよ!!」

聖「うふふ。ありがと。」

星「完璧ですね!スカートの裾も程よいですし、腰回りもピッタリで……」

聖「あら~?良いのは服だけなの?」

星「い、いえ!!もちろんそれを着こなす聖様も……!!」

聖「星。今は部活中ですよ?ちゃんと部長って呼ばないと駄目ですよ?」

星「……ぶ、部長……。御美しいです。」

聖「ふふ、ありがとう。貴方の気持ちがよく伝わるわね。だって、そんなに顔を赤らめながら言ってくれるんですもの。」


星「……あ、あはは……」


霊夢「あれは凄いわね。なんていうか……」

魔理沙「生まれてもった輝き、才能なんだろうな。」


アリス「私……あの人を初めて見たときから、絶対にこの衣装が似合うと思ってた……」

魔理沙「ああ、アリスの衣装、凄く良く出来てるぜ。」

アリス「ええ。でも、まさか私の衣装がサブになっちゃうなんて……」



一輪「姐さん。台詞合わせをやりましょう。」

聖「ええ。そうですね。一輪も着替えてきたらどうですか?」

一輪「私のは、次の合宿までお預けでいいですよ。
副部長やナズの衣装もまだ完成してないですし、私も今日は制服でいいです。」



魔理沙「やっと練習を始める様だが、どうする霊夢?」

霊夢「まぁ……後でいいんじゃない?私達の話なんか、別に急ぐ必要なんてないのだから。」

《二日目pm02:00~西館ホール舞台裏》


ムラサ「4番ライト点けてみて。」

てゐ「はい。」


ムラサ「明かりが強過ぎ。もっと弱く……そうそう、そんな感じで……」


魔理沙「おー!スゲー設備だな!?」

ムラサ「そりゃそうよ。この舞台はガチもんだからね。
八雲高校の部活合宿ときて、ここ以上に設備が整ってる場所なんて他にない。」


魔理沙「お前は演劇部の演出家ってところか?」

ムラサ「たしかに今の演出家はこの私よ。ホントはもっと濃い人材がいるんだけど、そいつは今ミュージカル部で忙しいから。」

魔理沙「ミュージカル部?そんなのもあるのか?」

ムラサ「いわゆる演劇部もどき。分かるでしょ?
演劇部を辞めていった奴らの受け皿ってやつね。合唱部やダンス部を辞めた奴らも参加してる寄せ集め。
特に演劇部とは系統がもっとも似てるから、ライバル同然。」


魔理沙「つまり、前の演出家はライバル部に引き抜かれたんだな?」

ムラサ「確かにそうなるわね。いや、そうせざるをえなかった。
そいつはとにかく舞台をやりたかっただけなの。でも、小傘の件で私達が部活動自粛を余儀なくされたから。
それでも最後まで残ってくれたんだけど、ミュージカル部が演出の手伝いを頼んできた時に、部長が受けることをすすめたのよ。
演劇部が活動出来ない間はミュージカル部で演出家をつとめたらって。」

魔理沙「ふぅ~ん。で、結局どうなったんだ?」

ムラサ「部長の指示には従ったが、そいつも部長に憧れてる1人だから。
次の演劇部の合宿には参加してくれることになってるの。」

魔理沙「へぇー!良かったじゃん。」

ムラサ「ええ。段々、戻りつつあるのよ、私達の演劇部に……」


魔理沙「……それでも、戻らないものがあるんじゃないのか?」

ムラサ「小傘のことを言いたいんなら、私に言っても無駄よ。
私は聖を輝かせたいだけの演劇部員。聖以外には興味ない。聖以外には、聖の輝きの助けになるものだけあればいいと思ってるの。」


魔理沙「じゃあ、小傘の死は……?」

ムラサ「どうでもいい。誰が死のうが生きようが。
小傘に何があったかは知らないし、自殺だってんなら同情するけど、部活動縮小の原因になったことに関しては、素直に怒りが沸いたわね。
聖の邪魔を、いや聖を輝かせようとする私の邪魔をするんなら、誰だろうと許さない。
早苗に会ったら伝えといて。」


魔理沙「お前……それの意味分かってんのか?」


ムラサ「もちろん、私達は早苗が邪魔なのよ。だから言っといて。
次何かやったら、ただじゃおかない。」


魔理沙「………まぁ、早苗に関してはしょうがないな。
しかし、聖の邪魔になるんなら何でも排除するんだよな?」

ムラサ「ええ。」


魔理沙「ならひょっとして小傘も邪魔になったりしたのか?」


ムラサ「いや、どうかな……」

魔理沙「ん?」

ムラサ「あれはあれで良かったんじゃない?
小傘と聖が競演してるのは普通に良かった。聖の神々しさに対して、地上に咲く孤高の花みたいな小傘の可愛らしさも悪くなかった。」

魔理沙「……まさか、そこで小傘を褒めるとはな。」


ムラサ「確かに。他の奴らと違って、私は小傘のことを素直に気に入っていたから。ホントに……」

魔理沙「なら、最後に1つだけ教えてくれよ。」

ムラサ「何?」

魔理沙「お前らにとって、小傘という演劇部員の恐ろしかったところを教えてくれ。」


てゐ「………」


ムラサ「……分かった。教えるから、こっちに来て。生徒会のおチビさんに聞かれたくないから。」

魔理沙「ああ……」


ムラサ「それについてだけど……」

魔理沙「……」

ムラサ「これ以上のくだらない詮索で、私達演劇部の再出発を邪魔しないでくれる?」

魔理沙「なら、さっさと全部を終わらせた方がいいぞ。お前らにはまだ果たしてない義務があるはずだ。」

ムラサ「言った通り。小傘の件は私に話しても無駄。無論、部長を含む他の部員相手でもね。」

魔理沙「……このまま逃げ続ける気かよ。」


ムラサ「……さ、この話はもうお終いにしようね。私は部活に戻らせて貰うわ。
おチビさん。次のプログラムを……」

てゐ「は、はい!!」


魔理沙「そっか。なら、“他の奴”をあたってみるぜ。」

ムラサ「そうだ、魔理沙。」

魔理沙「ん?なんだよ?」

ムラサ「今日の聖は輝いている。久々の舞台だからかもしれないけど、あの衣装の効果もかなりあるはずよ。
衣装を作ってくれた人達、アリスだったかな、礼を言っておいて。ありがとう、って。」

魔理沙「あ?ああ。てか、自分で言えばいいだろ?」


ムラサ「ええ。いずれは言うつもりだから。それも伝えておいて。」


魔理沙「はぁ?なんだよそりゃ?」

ムラサ「私も、意外と人見知りなのよ。」

《二日目pm05:30~東館ホール》

ナズ「チェック。」

てゐ「!!」

ナズ「まだ逃げるのかい?いい加減に諦めたらどうだい?」


てゐ「…………」


霊夢「失礼。あんた達の部長とかとはどうしてる?」

ナズ「部長は今、入浴中さ。生徒会の鈴仙殿や君の友達達も一緒だよ。」

霊夢「はあ?なんでまた……」

ナズ「部長は裸の付き合いが好きだからね。目が合った奴は全員誘っていったよ。」

霊夢「……何か変な部長さんね……」

ナズ「別に変ではないよ。ただ、裸同士なら心を開いて向き合えると、あの方は思っているんだ。
名探偵殿。君は今朝、部長から積極的にお風呂を誘われてたそうだね?」


霊夢「ええ……まぁ、そうだけど。」


ナズ「部長は君とも話したかったんだろうね。心と心で向き合って……」

霊夢「……私は勘弁して欲しいけど……」


てゐ「……うぁあ~ん!!降参です~!」

ナズ「ようやくかい?勝負は10手以上も前からついていたというのに……」

霊夢「チェスは好きなの?随分手慣れてる様だけど。」

ナズ「ふふ。君も一戦どうだい?目で見るより、その手で体感した方がよく理解出来ると思うよ?
チェス盤の上で為す術もなく、ただただ延命の為に逃げ回るたげの駒置き作業の虚しさは……」


霊夢「悪いけど、パス。私は麻雀とかの方が好きだから。」

ナズ「そうかい?麻雀は私も好きだが、あいにく牌を持ってきていないんだよ。……ボリボリ」


てゐ「あーっ!!またチーズスナックを食べてる~!!
駄目ですよ~!生徒会の備品であるチェス駒をチーズ菓子を食べた手で触れたら!!」

ナズ「オーバーだね。そう簡単に付きはしないよ。君だってニンジンスナックを食べながら駒を触ってたじゃないか?」


てゐ「ニンジンは良い匂いだからいいんです~!」


霊夢「……ニンジンが良い匂いって……」



輝夜「あら、霊夢様。それにナズ様にてゐちゃん。おはようございます。」


霊夢「……え?」
ナズ「……ん?」

てゐ「会長様。おはようございます。」

輝夜「ええ。今日も元気ですね?てゐ。
……あら?チェスをなさっているのですね?」

てゐ「はい。会長様もどうですか?」

輝夜「いえ……。またの機会にしましょ。
今は少し身体を動かしたい気分なので、少々館内を散歩してきますね。」


てゐ「あ、なら私も一緒に行きますよ。」

輝夜「あら、一緒に来てくれるの?
そうね。2人の方が楽しいものね。霊夢様もご一緒にどうですか?」


霊夢「え?い、いや……私は別にいいから……」

輝夜「あら~、残念ですね。もっと霊夢様ともお話したかったのですが……。
でも、合宿はまだまだ長いですもの。そういった機会はまたありますよね?」

霊夢「え、ええ。そうね……」

輝夜「では、それはまたということで。ナズさんもまた後ほど。
じゃあ、行きましょうか?てゐ。」

てゐ「はい!会長様~♪」



霊夢「……あれって会長……よね?」

ナズ「ああ、そうだね。」

てゐ「会長!良かったらどうぞ~♪」

輝夜「うわぁ~♪ニンジンスナックですね~♪私も大好きです~♪」


霊夢「なんなのあれ?随分毒が抜けてるというか……別人?」

文「あやや……どうやら会長様は聖人化した様ですね。」

霊夢「はぁ?どういう意味よ?ていうか、いきなり現れたわね、あんた。」

文「昼寝などで寝不足を解消したばかりの会長様は比較的毒が抜けてるんですよ。
しかし、先ほどのは更にその上を行ってます。恐らく、今の会長様は賢者モードなのですよ。」


霊夢「賢者モード?つまりどういう意味?」


ナズ「おやおや、名探偵ともあろうお方が情けないね。」

霊夢「はぁ?どう意味よ?」

ナズ「決まっているじゃないか。会長さんは発散したのだよ。毒を全て……」

文「いやぁ~、あの会長さんがあそこまで聖人へと変身させる“自慰行為”とはどれほどのものなのか気になりますね~!」


霊夢「ああ、そういうことね。
人は見かけによら……いや、あの会長さんなら何でもありか。」

文「噂では、最近はS系ロリ娘のエロ漫画や同人誌などがメインのオカズだそうです。少し前は男の娘系にはまってたとか……。
会長様は2次元厨なのですよ。」


霊夢「そんな情報は要らない。つか、あの天使みたいなおっとり笑顔の裏にそんな趣味が……。」



ナズ「ま、いいじゃないか。私はいいと思うよ。あの毒の抜けきった会長は私も好きだよ。
八雲高校生徒会の名に恥じない、ウチの部長をも上回りかねない神々しさだからね。」


文「ちなみに、会長様はお父様と行く晩餐会などにも聖人化してご参加なさってるそうですよ?」


霊夢「ああ、なるほど。確かにあの会長さんなら、男共も骨抜きになるわね……」

美鈴「霊夢さ~ん。ち~っす♪」

霊夢「あら、どうしたの美鈴?その荷物は……」

美鈴「近くに川があったので、色々釣って来ましたよ。」

霊夢「川?釣ったって……釣具はどうしたわけ?」

永琳「私のを貸しました。私も釣りにも興味があるので。」

霊夢「貴方も一緒に行っていたの?仕事の合間に美鈴の面倒までみてもらって悪いわね。」

永琳「いえいえ。美鈴さんのおかげで館内の清掃が早く終わりました。
午後は皆さんも練習に集中しておられましたし、ちょうど暇を持て余しておりまさた。」

霊夢「だからって、わざわざ暇人に付き合ったげる必要はないのに……」


美鈴「あ~っ!そんな言い方するのですか?
なら霊夢さんには釣りたての鮎とか分けたげませんからね!」

霊夢「別に鮎なんて要らないけど、わるかったわよ。ついつい本音が出ちゃったのよ。」


美鈴「それって酷くないですかぁ!?」

霊夢「ごめんって。わざとじゃないのよ。」


ナズ「清掃が午前中に終わってたのなら、早苗はどうしてるんだい?」

永琳「早苗様も一緒に釣りをしてましたよ。」

美鈴「あの人、意外と良い人ですよね。釣りも初心者にしてはのみ込みがよかったし。」

ナズ「意外と……か。私達はその逆だったけどね。」

美鈴「え?」

ナズ「君達は私達に強くあたってくる早苗の姿を先に見たから、普段は大人しい早苗が意外に感じたのだろ?
私達は逆だよ。普段は大人しい早苗が、あの日から私達に……」


霊夢「どうして、早苗は貴方達に強くあたってくるのかしらね?」

ナズ「私達が友人を自殺においやったと思ってるからだろうね。」

霊夢「へぇ~。でも、貴方達には落ち度はないんでしょ?」

ナズ「ああ。私達には心当たりはないね。」

ミスティ「美味しそうな魚ですね~。こんなにどうしたんです?」

美鈴「釣って来たんですよ。今日の晩飯にしようと思って……」


永琳「こんにちは、ミスティアさん。」

ミスティ「はい。今晩も料理を作らせて頂きますね。」

美鈴「うわぁ~♪ミスティアさんの料理!楽しみだなぁ~♪」

ミスティ「うふふ。ありがとうね。
ホント、貴方は笑顔が素敵ね。あの娘みたいに……」

美鈴「あの娘?」

ミスティ「あ、いや……その……」


ナズ「………小傘か…。」

ミスティ「い、いえ!!その……ごめんなさいね!一々口にしちゃって……。」

ナズ「大丈夫だよ。別に気にしないから。」

ミスティ「……じゃ、じゃあ、私は厨房に……」

永琳「あ、はい。どうぞ。」



美鈴「……小傘さんは、随分可愛らしい笑顔の持ち主だったんですか?」

ナズ「さぁね。部長に笑顔の秘訣を直伝されてたりはしてたし、多少は技術を持ってたのかもね。」


美鈴「へぇ~。私も見てみたかったなぁ~。」

ナズ「それなら部長の演技を見てくれればいい。
あの人の笑顔は素晴らしいからね。」

美鈴「小傘さんのよりもですか?」

ナズ「もちろんさ。」


霊夢「美鈴。あんた、それ無意識でやってるの?」

美鈴「え?何がですか?」

霊夢「小傘のことに関して、ナズから上手く情報を聞き出すつもり……で聞いたんじゃないの?」

美鈴「え?いや、別にそんなの考えてませんよ。
ただ純粋に小傘さんがどんな人なのかが気になっただけです。
昨日今日の話題の中心人物ですからね。」

霊夢「ふぅ~ん。まぁ、あんだけ騒がれたら、普通の人でも気になるか……」

美鈴「では、私はこれで、後で早苗さんや永琳さんとお風呂に行く予定ですので。」


ナズ「小傘……大した奴だよ。死んでもなお、騒動の中心になり続けるんだからね。」

霊夢「そうかしら?今回のは小傘というより早苗が中心だと思うんだけど。
それとも小傘に関する何かがまだあるっていうの?」


ナズ「………ふふ。君は根っからの探偵だね。
悪いが、これ以上詮索しても何も出やしないよ?」

霊夢「そうだと良いわね。」

《二日目pm10:00~東館ホール》


霊夢「アリス?貴方まだこんな所に居たの?」

アリス「霊夢に魔理沙?貴方達こそ何をしているの?」

魔理沙「話を聞きに行こうと思ってね。演劇部の奴らに……」

アリス「そう。私はもう少し衣装の改良をしたいの。
昼の練習で聖さんが着たことで、色々と問題点が分かってきたの。」

魔理沙「完璧な衣装だったと思うが、なんか問題点があるのかよ?」

アリス「ええ、色々とね。やっぱり今日着てもらって正解だったわ。早い段階で気付けたし。」


霊夢「そう。咲夜は?」

アリス「夕食の後は別行動してるから、多分自室じゃないかしら?」


永琳「紅茶をお持ちしました。どうぞ。」

アリス「あ、ありがとう。」

永琳「いえ。ご苦労様です。」

アリス「そちらこそ、私なんかに構わないで、休んで下さって結構なのよ?」

永琳「お気になさらず。私の仕事でございますから……」



霊夢「ま、アリス。あまり夜更かししないようにね。」

魔理沙「さっさと寝るんだぜ!アリス。」

アリス「あ、うん。そっちもね。」

《二日目pm10:20~西館3階廊下》


霊夢「どの部屋だったかしら?」

魔理沙「たしか322号室だったはずだぜ。」

霊夢「おっけ。なら、早速行くわよ。」


コンコン

霊夢「失礼~。寅丸星。霊夢だけど、ちょっとお話いいかしら?」

魔理沙「………」



…………

霊夢「あれ?留守なの?」

魔理沙「ちょっとどいてくれ。」



ガチャッ


魔理沙「ありゃ?鍵は空きっぱなしだな。」

霊夢「そっか。なら居るのかしら?」


ギギギ……

霊夢「暗っ……明かりもつけつないなんて……」

魔理沙「暗くてよく分かんねーが、人の気配は全くないな。他の奴の部屋に行ってるのか?」

霊夢「……そっか。なら、次点をあたってみる?」

魔理沙「ああ。ナズの部屋なら324だ。」


霊夢「324……あっちか。」


コンコン

霊夢「ナズーリン。居るの?」


ガチャッ

ナズ「おや、探偵さん。何のようだい?」

霊夢「少しお話いいかしら?出来れば、星さんとも一緒に……」

ナズ「は?先輩も?なら部屋にでも行って呼んで来たらどうだい?」

魔理沙「部屋には誰も居ないみたいだったぜ。そっちには居ないのか?」

ナズ「ん?この部屋には居ないが……。
本当に自室に居なかったのかい?」

魔理沙「ん?ああ。まぁ、鍵が開いてたから部屋の中は見たんだが……。まあ、ドアから先には入ってないぜ。」

ナズ「ドアの鍵が開いてたのかい?なら寝てるんじゃないかい?
先輩は早寝タイプだし、今日は久々にガチ練習をしたから疲れてるはずだよ。」


霊夢「寝てる?そんな雰囲気はしてなかったけど……」

ナズ「どれ。見に行ってみるか。」

《二日目pm11:00~西館322号室》

ガチャッ

ナズ「先輩。寝てるのかい?」


魔理沙「やっぱり、人の気配なんてしないぜ。」

ナズ「暗いね。電気をつけてくれる?」

霊夢「ええ。」


カチッ

ナズ「失礼するよ。先輩。」

霊夢「寝てるの~?だったらごめんね~。」


魔理沙「……ん?おい、鍵が机の上に置きっぱなしだぜ?」

霊夢「そうでしょうね。本人は部屋に居るんだから……」

魔理沙「居たのか?」


ナズ「ベッドで寝ている様だね。やっぱり、疲れがたまってたようだ。」

魔理沙「ちっ。話があったのに、今日はもう無理か。」

ナズ「すまないね。明日にしてくれるかい?」

魔理沙「しゃあねーな。行こうぜ、霊夢。」


霊夢「………」


星「・・・・」


霊夢「寅丸星。起きて貰えないかしら?」

ナズ「霊夢殿。悪いが今日は…」

霊夢「起きなさい。寅丸星!」



魔理沙「霊夢?どうしたんだよ、いきなり……」

霊夢「………」


………サワ…

霊夢「……脈がない……」


魔理沙「は?今何て……」

ナズ「脈?脈って……」


霊夢「死んでるわね。寅丸星は……」

ナズ「……何?何を馬鹿言ってる。先輩はただベッドで寝ているだけだよ。なあ?」


魔理沙「ど、どいてくれ霊夢!」



ナズ「なあ?先輩は寝てるんだよね……?」

魔理沙「……首元に細い紐状の物で絞められた後があるぜ。
多分、絞殺だな。」

霊夢「肌が冷たい。布団も。死後数十分は経ってる?」



ナズ「……本当なのかい?」

霊夢「部屋の窓は鍵が掛かってるし。犯人は鍵の空いたドアを普通に使ったのね。」

魔理沙「なあ、ナズーリン。最後に寅丸星と会ったのは……」


ナズ「本当に……本当に先輩は死んでるのか?」

霊夢「ええ。明らかに、殺されてるわ。」

ナズ「…………そうか。先輩……死んだのか……」


霊夢「ええ。そして、犯人は屋敷内に居るわね。」

ナズ「………」


魔理沙「霊夢。とにかく警察を……」

霊夢「待って。先に他の部員達を呼んできましょう。ナズーリン、行きましょう。」

ナズ「え?あ、ああ……」

《二日目pm11:15~西館322号室》

一輪「ナズ~?どうしたのよ、こんな時間に……」

ナズ「………」

一輪「……ナズ?」


聖「霊夢さん?あの、星さんの部屋で何か……」

霊夢「いいから来て。」

聖「……?あら、星さんはお休み中なの?」

霊夢「いいえ。寅丸星は寝てなんかいないわよ。」

聖「……え?」



ナズ「先輩は……死んでるそうだよ……」


聖「……はい?」

一輪「ナズ?貴方、今何て言ったの?」

ナズ「だから……先輩は死んでるって……」

一輪「………ナズ。貴方にしては上手な演技ね。特にその青ざめた顔が迫真だわ。
普段の練習でもそれぐらいのことをやって欲しいわね~。ねぇ?姐さん?」


聖「………星?貴方、寝てるのよね……?」

一輪「あ、姐さん?い、いやですねぇ~。姐さんまで顔が本気に……」



聖「……星?ねぇ、星?」

霊夢「無駄よ。その冷たい手を握れば分かったでしょ。寅丸星はもう……」

聖「……!!た、助けなくちゃ……!!」

霊夢「はぁ?」

聖「星!!今助けますから!!」

霊夢「ちょ!?何やってんのよ!?」


聖「スゥ~……フゥーッッ!!」

霊夢「無駄よ!人工呼吸なんかやったって…」

聖「動いて!!動いて!!星!!」

霊夢「やめなさい!それ以上遺体を傷付けたら……!!」

聖「放してください!!星を!!星を助けさせて!!」

霊夢「このっ!!あんた達!見てないで手を貸しなさい!!」

一輪「……さ、さすがは姐さん……は、迫真の演技ですね!」

霊夢「いつまで言ってんのよ!!これが演劇に見えるって言うの!?」

一輪「……し、死体役の星の演技も……な、中々ですね……」

ナズ「…………」


霊夢「くそっ!!魔理沙!早く来なさいよっ!!」

魔理沙「霊夢っ!!」


霊夢「魔理沙!村紗は!?」

魔理沙「駄目だ!いくら呼んでも、村紗の部屋から返事がない!」


一輪「……村紗?」

ナズ「えっ!?」


聖「……村紗……?村紗がどうしたの!?」

魔理沙「霊夢!!どうする!?確か永琳がマスターキーを……」

霊夢「ええ。永琳さんを呼びに行きましょう。」


聖「む、村紗にも………村紗にも何かあったのですか!?」

霊夢「いいから!あんたも来なさい!ナズ達も!
とにかく皆で永琳の所まで行きましょう!」

ナズ「い、いや……私達は……」

霊夢「こんな状態の部長さんは放っておけない、もちろんあんた達もよ!!
これが殺人事件っていうのなら、大体分かるでしょ!?自分達の立場が……」


ナズ「……あ、ああ。」

一輪「わ、私達が犯人役ってことですね……」

魔理沙「それだけじゃないぜ。
もしかしたら、次に狙われるのは……」

《二日目pm11:40~東館ホール》

霊夢「アリス!」

アリス「霊夢!!良かった!来てくれて!」



輝夜「全く……誰が回線を切ったんですの!?」

鈴仙「私のも駄目です。完璧に壊れてます……」


魔理沙「なんだなんだ?何かあったのか?」

霖乃「魔理沙!君達のは大丈夫かい!?」

霊夢「大丈夫って……何が?」

咲夜「先ほど判明したのですが、私達皆の持ってる携帯が使えなくなってるんです!」

てゐ「私にいたっては端末自体がなくなったんです!一体誰がこんなことを!?」

美鈴「私のガラケーすら壊れてますね。
電池切れってわけでもないし……」

鈴仙「私も、替えの電池を入れても効かないです!」

文「しかも、館の電話線も使えなくなってるみたいなんですよ。」

輝夜「携帯が使えないんじゃ、修理も呼べないですわ!もう!!どうすればいいんですの!?」



アリス「霊夢!貴方達のは平気なの?」

霊夢「………。後で調べるわ。
それよりも、皆集まっててちょうど良かったわ。」

アリス「え?何が……?」

霊夢「永琳さんは居る?」

永琳「はい。いかがなさいましたか?」

霊夢「今から全員で西館の322、そして320号室に行くわよ。」

咲夜「え?どうしてですか?」


聖「………」

ナズ「……」

一輪「え~と……」

早苗「どうかしました~?皆さん。」

文「早苗さん!」

聖「………」


早苗「なんだか騒がしくて寝れないんですけど……。
あら?部長さん。今朝方ぶりですね。」

聖「こんばんは。早苗さん。」



早苗「………え?」

霊夢「早苗、悪いけど今は面倒事は勘弁して。」

早苗「……いえ。部長さん?」

聖「………」


早苗「……部長さん、私を見てるのですか?小傘さんの影ではなく、私、早苗を……」



ナズ「……この人殺し。」

早苗「え……?」

ナズ「君なんだろ?先輩をやったのは!?
首を絞め殺すというのも、小傘の死へのあてつけってところかい?」

早苗「え?何を言ってるのです?さっぱり分からないんですけど……」


聖「早苗さん。」

早苗「は、はい?」

聖「行きましょう。星の所に……」

早苗「あ、はい??えーと……」


霊夢「理由なら後で話すから。皆も一緒に来て!」

《二日目pm11:55~西館3F廊下》


アリス「……!!」

咲夜「そんな……本当に……?」


美鈴「……くっ!」

文「………」

輝夜「……てゐ!!こっちへ!あっちに行っては行けません!」

てゐ「会長。別に私は死体ぐらい……」

鈴仙「会長!!あ、あれ、あれって……そんなぁ……」

輝夜「言わなくてもいいです!だから……貴方もこちらへ……」

鈴仙「会長!星さんが……星さんがぁ……!!」



永琳「霊夢様。これは……」

霊夢「永琳さん。マスターキーを。
320号室の鍵を開けてくれるかしら?」

永琳「は、はい。」



早苗「……ほ、星さん?」

聖「………」


ナズ「どうだい?早苗?」

早苗「え……?」

ナズ「首を絞められて死ぬ。まさに小傘の死を連想させるね。
これが君の復讐なのかい?私達が受けるべき、小傘の死の報いなのかい!?」


一輪「………」


早苗「……ふふ。」

ナズ「!?」

早苗「何を言いだすかと思えば……。
これのどこが小傘の報いになってるって言うんですか?」

ナズ「な、なんだと……?」

早苗「あなた方は、小傘がどんな気持ちで、どんな辛い思いで過ごしてきたのか、それらを全て知る義務があるんですよ?
それらを放ったらかして、勝手に死なれては、困りますよ。死ぬのでしたら、ちゃんと義務を果たしてからにして下さい。」


一輪「……この……この女は……!!」

ナズ「こいつが犯人だよ。こいつ以外に犯人なんか居ないよ!」


魔理沙「………」


霖乃「……魔理沙。星さんの死はやっぱり、小傘さんと関係が?」

魔理沙「関係ないわけないだろ……。明らかにこいつは……」

霊夢「ヤバいわね……」

魔理沙「霊夢!?村紗はどうだった!?」

霊夢「部屋には居ないし、鍵も無かったわ。」

聖「一体、村紗はどこに行ったのですか!?」

霊夢「分からない。館内の他の部屋を探してみるしかないわね。
永琳さん、手伝って貰える?」

永琳「分かりました。」


早苗「……ひょっとして、村紗さんが犯人かもしれませんね。」

ナズ「はぁ!?何を言ってるんだ君は!?」

早苗「村紗さんと星さんは同じぐらい部長さんに対する忠誠心が強かった。
聖さん関係の事柄で星さんと対立していたのでは?」

聖「!?」

ナズ「その戯れ言は何を根拠に言ってるんだい?」

早苗「以前だって、ロミジュリを演じるにあたって村紗さんと星さんのどっちがロミオ役をやるかで、部活内を総割れにする勢いで争ってたじゃないですか?」


文「しかし、あういうのは日常茶飯事ですよ。村紗さんも、一々そんなことで……」

早苗「でも、今回は久々の演劇。ちょっとした事でも大きなことに発展したのでは?」


聖「村紗が……そんなことをするわけないです!!
おかしなことを言わないで下さい!!」

霊夢「!!」

魔理沙「うおっ!?怒ると迫力あるな……」

アリス「あんな温厚そうな人が怒るなんて……」


早苗「……まー、別にいいですけどね。どうせどっかに隠れてるんですよ。」

霊夢「そうであって欲しいわね。
寅丸星が殺された以上、生きてるかどうかも怪しく感じるのだから……」

《二日目pm12:40~東館204号室》


霊夢「じゃあ、夕食の後から誰も村紗を見てないのね?」

聖「ええ……私も。」

一輪「星とは話ながら部屋に行きましたけど、村紗は先に部屋に向かったものだと……」

霊夢「じゃあ、村紗水蜜はひょっとしたら……」


ガチャッ

永琳「……村紗様!?」

魔理沙「おい!しっかりしろ!おい!」


霊夢「居たの!?204号室に!?」

魔理沙「ああ……ドアを開けたらすぐ倒れていたぜ。」

永琳「………駄目です。死亡してからだいぶ時間が経ってます。」


聖「村紗!返事をして!!」


一輪「………」

ナズ「……これを、君ら探偵達はどう見てるんだい?」

霊夢「館内で起きた殺人、殺されたのは2人とも演劇部員。」


聖「村紗!村紗!!……貴方もなの……?」


永琳「目立った外傷はありません。首筋に細い紐で絞められた跡、その周りを爪で引っ掻いた跡があります。」


霊夢「2人とも絞殺か。偶然なのかしら……ね?」


アリス「霊夢!村紗さんは?」

霊夢「駄目だった。」

咲夜「じゃあ、貴方達の携帯は?使えたの?」

霊夢「携帯ね……。魔理沙、あんたはどう?」

魔理沙「……いつの間にか無くなってたぜ。夕食の後から見てなかったと思うが……」

霊夢「そう。私のもなくなってるわ。机の上に置いてたのに。
貴方達のは?」


ナズ「私のは食事の後から見ていないよ。なくしたと思っていたが。」

一輪「私のはありましたけど、やはり壊されていました。」


霊夢「そっか。一応、星のスマホも見てみたけど駄目みたいだったわ。」


アリス「じゃあ!警察は……?」

霊夢「呼べないわね。全く……面倒なことになったわね。」

《二日目pm01:00~東館ホール》

輝夜「永琳。貴方のはどうなの?」

永琳「私のも駄目でした。」

てゐ「殺人事件の起こった館で警察は呼べない。
大変な事態ですね。」

鈴仙「会長……私、気分が悪いです……」

輝夜「しっかりしなさい!貴方がこんな所でバテてたら、演劇部の方達にしめしがつきませんわよ!」

鈴仙「……無理です……同年代の、しかも同じ学級の人の死体なんか……」



霊夢「携帯、外傷は全くないのに……。水没でもさせられたのかしら?」

魔理沙「傷一つないんじゃ、使えないのに気付いてもただの電池切れって思っちまうよな。」

霊夢「なら、思ったよりも前の時点で壊されてたのかもしれないわね。
それに携帯を壊された人と盗まれた人とで分かれるてるのも気になるわね。」


魔理沙「ああ。あたしと霊夢、こーりん、てゐ、会長、ナズのが盗まれてるみたいだ。
星もムラサも壊さてる派だったぜ。」

霊夢「そして、皆食事の時までは持っていたのよね?携帯を……」

魔理沙「ああ、そのはずだぜ。
まぁ、私は部屋に置きっぱなしにしていたが……」

霊夢「霖乃助もそうなの?」

霖乃「え?あ、ああ……」



霊夢「となると、夕食の間に盗まれたのかしら。」

早苗「ごめんなさい。私の推測は外れてましたね。」

ナズ「謝ればいいってものじゃないがね。」

聖「……反省してください。」

早苗「はい。でも、残念でしたね。村紗が犯人ならこの事件は終わってたのに………ですよね?」

ナズ「なっ!?」


一輪「星……村紗……。
次に殺されるのは……やっぱり私なのですか……?」

聖「一輪!何を言ってるんですか!?」

早苗「さぁ~?誰が殺されるんでしょうね~?」


ナズ「……どうせ君なんだろ!?先輩や村紗を殺したのは……」

霊夢「それなんだけど。村紗の殺されてた204号室は鍵が掛かってた。ルームキーは部屋に落ちてたから、マスターキーが無いと部屋の開けしめは出来ないわね。」


ナズ「つまりは密室だったってことか……」

魔理沙「いや、窓の鍵は掛かっていなかったからな。」

霊夢「窓から外に出れば中庭に出られるわ。
中庭から館には渡り廊下へを通って戻ってこられる。」

魔理沙「2階の窓からなら飛び降りても大して危険じゃないだろうし、ロープを使えば難しくはないんじゃねーか?」


霊夢「そうね。それについては調べる必要があるわね。
美鈴。咲夜。来てもらえる?」

美鈴「は、はい!」

咲夜「分かりました。」

文「あ、村紗さんの現場に戻るんですね?私もいきますよー!」


魔理沙「村紗が最後に目撃されたのは夕食の時。つまり村紗水蜜が殺害されたのは、夕食の終わった7時半以降か。
後は、星の殺害時間が問題だな。」

鈴仙「会長……私達はどうなるんでしょうか……?」

輝夜「心配いらないわ。私達の携帯は使えないけど、朝になればミスティアさんがいらっしゃるから。
その時に警察を呼んで貰いましょう。」


ナズ「先輩とは8時頃まで部屋で話をしていた。」

一輪「私も、夕食から戻ってくる時以降、星には会ってません。」


魔理沙「つまり、寅丸星は8時過ぎまでは生きていたんだな。」


早苗「その人達の話が真実なら、ですけどね。」

ナズ「どういう意味だい?」

早苗「犯人は自分に不利な証言なんてしませんよね?」

ナズ「……正論だが、一々癪に触る発言だね。」


魔理沙「8時以降……。そしてあたしらが死体を発見する10時半までの間か。」

永琳「夕食の片付けを終えて、ミスティアさんをお見送り以降、私はずっとこの1Fホールに居ました。」

魔理沙「なら、誰が渡り廊下を使っていたかとか分かるか?」

永琳「そうですね。8時以降も広間は常に人が行き来してました。まず、てゐ様と美鈴様がテレビを見ていました。」


てゐ「はい。一緒にアニメを見てました。9時近くまで。
でも、美鈴さんも私もずっと広間に居ましたよ。永琳さんも。
そういえば途中でアリスさんと一輪さんも広間にやってきてましたよね?」

アリス「あ、うん。衣装の話をしてた。」

一輪「でも、私達はその後……」


永琳「てゐ様達が自室へと戻られる少し前に、アリス様と一輪様は西館に向かわれました。」

アリス「西館ホールにある聖さんの衣装を取りに行ってたのよ。」

魔理沙「アリス。西館から戻ってきたのはいつ頃だ?」

アリス「え?え~と……」

永琳「9時30分頃です。」

魔理沙「なら、アリスは西館に30分以上は居たんだな……」

アリス「うん。西館ホールで改良を済ませようと思ったんだけど、結局広間まで持ってきたの。」

魔理沙「一輪はその間どうしてた?」

一輪「私は、アリスさんとはホール前で別れたので。ずっと自分の部屋にいました。」


魔理沙「となると、2人とも西館におけるアリバイは無しか……」

アリス「魔理沙?今の本気で言ってるの……?」

魔理沙「だって事実だろ?」

アリス「ふざけないでよ……なんで私が犯人扱いなのよ!?」

一輪「貴方は!!私が犯人だって言うのですか!?私が星を殺したって!?」


魔理沙「アリバイが無いってだけでさすがに犯人扱いはしないさ。
ただ、犯人にもっとも近い容疑者であることには違いないだろ?」


アリス「……魔理沙……」

魔理沙「まぁ、アリスがそんなことする奴じゃないのは、私もよく知ってるから……」

早苗「そうですか?アリスさんならやりかねないのでは?」

アリス「!!」

魔理沙「どういう意味だよ……?」

早苗「だってアリスさんは以前…」

文「早苗さん!それに関しては秘密事項です!」


早苗「いいえ、事件なんていきなり起こせるものではありません。
過去に類似した経験を持ってる人の方が起こせやすいはずです。」


アリス「……ち、違う……今回は私じゃない!!私はも変わったの!あの頃とは違う!」

早苗「人間がそんなに簡単に変われるわけないじゃないですか。
サイコパスは潜在してるんですよ。永遠に……」


アリス「魔理沙!!私は!私は違う!!」

魔理沙「ああ、分かってる。分かってるから……。
とりあえず早苗。余計なことは言わなくていいから。」


早苗「……別に余計なことではないですよ。警察だって、まず前科持ちを疑いますし。」


魔理沙「一輪やナズーリンに部長。もちろん西館にずっと居てアリバイの無いお前らも容疑者だ。」


ナズ「……私が、先輩殺しの犯人扱いなんてね……」

聖「………」


永琳「いえ。もう一方居ますよ。」

魔理沙「ん?まだ西館に居た奴がいるのかよ?」


霖乃「……僕もだよ。魔理沙。」

魔理沙「こーりん!?お前も西館に!?」

永琳「西館地下には書庫があります。森近様はそれを利用なさりたいと、西館に向かわれました。」

魔理沙「時間は!?何時ごろだ?」

永琳「てゐ様達と入れ違いに下りていらして、アリス様が戻ってくる少し前には上がっていかれました。」

魔理沙「つまり25分間西館に居たんだな。」

霖乃「ああ……だけど、僕は書庫の本を見てて、何冊か選んで自分の部屋に持って帰っただけだよ。」


ナズ「だがその間はずっと1人だったんだね?
なら、アリス殿や私達と同じでアリバイ無しだね?」

霖乃「だ、だけど僕はやってないよ!魔理沙!」


早苗「犯人が自分でやりました、なんて言うはずないですよね?魔理沙さん。」

魔理沙「……クソ!とにかく犯人は西館にいたお前ら5人の中だ!
……ウチの高校の奴が2人も入ってるがな。」


早苗「永琳さん自身にはアリバイがあるんですか?貴方が嘘を付いてる可能性は?」

永琳「そうですね。森近様が出ていかれて戻ってこられるまでの間に霊夢様とてゐ様、お嬢様らが下りてきてます。」

てゐ「はい。私も飲み物を貰いに下りてきましたよ。確か、9時15分でしたっけ?」


魔理沙「会長さんは何時に下りてきたんだ?」


輝夜「9時20分過ぎ。私は夜食を調達しに来たのですわよ。」

永琳「霊夢様は9時5分から7分てゐ様は9時12分から15分。お嬢様は9時19分から21分まで広間におられました。」


魔理沙「……よく覚えてるな……」

永琳「はい。お嬢様に仕える従者ならば、これぐらいの記憶力は同然です。」


魔理沙「まぁ……なら永琳さんには無理だな。
ただでさえランダムに下りてくる東館メンバーに対して、しっかり応対してるんだし。
仮に上手く間の時間が使えも10分も無いんじゃな。西館の322号室まで走って殺人を犯して戻ってくるのは不可能だな。」


早苗「では、やはり犯人はこちらの5名に絞られましたね?」


ナズ「本当に私達の中に居るんだろうかね?」

魔理沙「何?」

ナズ「何かのトリックで、東館に居た奴が上手く遂行したんじゃないのかい?
特に、早苗。一番怪しいのは君だよ。」


早苗「あらあら、トリックですか?
なら、ナズーリンさんは既にそのタネに気がついたのですね?」

ナズ「いや、私にもまだ分からないよ。
でも、トリックは確かにあるんだよ。いずれ明らかになるだろうね。」

早苗「……何故です?」

ナズ「何故なら、犯人は君だからさ。」


早苗「……ナズーリンさん。私は逆に貴方を疑いますよ。
先輩のこと、本当は嫌いだったのでは?」


ナズ「それこそ検討違いだよ、早苗。私はあんな頼りない先輩でも、一応尊敬してたのだからね。」


聖「ナズーリン……」

ナズ「部長。私は絶対に犯人を許さない。
早苗。お前の化けの皮を必ず剥いでやる!!」


早苗「………」


魔理沙「とにかく、今は霊夢達が戻ってくるのを待っていよう。
皆、この広間からは出ないでくれよ。」

《二日目pm01:15~東館204号室》

霊夢「しかし、村紗水蜜は何故この部屋に?」

文「さぁ?ここは空き部屋、というより本合宿では東館2Fフロアは全室空き部屋でしたから、基本誰も居ません。」


霊夢「殺人を起こすにはもってこいの場所か。特にこの部屋は廊下の突き当たりだからね。
階段を上り下りするだけの人にはドアすら見えない。」

文「部屋のルームキーは盗まれてたみたいですね。
まぁ、食事中は永琳さんも厨房を行き来して忙しかったようですし、管理室にあるのを隙を見て盗みだすのは容易ですよ。」


霊夢「そうね。とりあえず、犯人が実際にこの窓を使って密室を行き来出来たのかを試してみないと。」



咲夜「美鈴。どう?」

美鈴「う~ん。意外と高いですね~。この館、1Fの天井が高いですから。
2階からっていっても、普通の建物の3階よりも高い場所です。」

咲夜「何とか壁を張って中庭まで降りられないかしら?」


美鈴「う~ん………あ、雨水を流すパイプがありますね!これを上手く使えば………」


霊夢「犯人が村紗を殺して、部屋の内側から鍵を掛けた後、窓から中庭に脱出したのなら犯行は可能なんだけど。」

文「村紗さんは7時半以降から誰も会ってませんからね。」

霊夢「ええ。でも、何でわざわざ窓から出たのかしら?鍵を使えば部屋の外からでも閉めれるし、鍵なんて捨てればいいのに……」

文「ふむふむ。謎は深まりますね。」

美鈴「はぁ……はぁ……。
おーい!咲夜さ~ん!上手く降りられましたよ~!」


咲夜「ご苦労さ~ん!
霊夢。次はどうします?」


霊夢「美鈴!今度は登ってきて貰える!?」

咲夜「え?」


美鈴「ええっ!?本気ですか霊夢さん!?」


霊夢「ええ!もちろん、出来る様ならでいいわよ!」

美鈴「え~……?で、でも、さすがに縄とかないと登るのは無理なんじゃ
降りるのだって一苦労でしたし……」


咲夜「美鈴!無理しないでいいのよ!!貴方は渡り廊下から館に戻ってきて!!」


美鈴「べ、別に無理とかじゃないですよ!咲夜さん!!私だって……これぐらい!!」

咲夜「ば、馬鹿っ!!美鈴!危ないわよ!?」

美鈴「は、犯人に出来て、私に出来ないわけがないです!!
咲夜さん!見てて下さいよ!!うおおおおっ!!!!!」


咲夜「め、美鈴!!?」



霊夢「部屋のドアの下からルームキーを投げ入れれないかしら?」

文「この隙間はギリギリじゃないですかね?」

霊夢「……ええ、ダメみたいね。鍵は余裕で通るけど、鍵に付いてるルームナンバーの書いたプレートが大きくて通らないか。」

文「となると、犯人はやはりあの窓から中庭に……?」

霊夢「あの体力馬鹿が一苦労する壁を降りていって?」


咲夜「きゃーっ!?美鈴!!」


霊夢「となると、犯人自身も命懸けの犯行だったのね。」


咲夜「霊夢!美鈴が落ちたわ!!」


文「犯人はかなり運動神経の良い輩なのでは?」

霊夢「かもね。咲夜。美鈴を救助しに行くわよ。新聞部員も来なさい。」

文「……って、霊夢さんクールですね?お友達が壁から落ちたのに……」

霊夢「まぁ、大丈夫でしょ。美鈴なら……」


咲夜「全く、怪我でもしてお嬢様の屋敷の仕事が出来なくなったらどうするつもりなのかしら!?
私の責任になるのに……!!」


文「……不憫な方ですね……美鈴さん……」

《二日目pm01:40分~東館ホール》


美鈴「痛たたた……」

鈴仙「あ、あの、大丈夫ですか?」

美鈴「は、はい。慣れてますからね。上手く花壇の柔かな地面に落ちましたし。」

永琳「無茶はお止め下さい。通路の石の上に落ちてたら……」


霊夢「ええ。ただじゃ済まなかったでしょうね。」


咲夜「この馬鹿!!怪我でもしたらどうするつもりだったのよ!?」


美鈴「さ、咲夜さん……私のことを心配して……」

咲夜「屋敷での仕事に支障が出たらどうするつもりだったの!?貴方の上司である私の責任なのよ!?」

美鈴「………」



魔理沙「まぁ、でも降りるだけなら何とかなったんだろ?」

霊夢「ええ。ある程度の運動神経は必要だけど……」

魔理沙「なら、犯人は村紗を殺して部屋に鍵を掛けて中庭に出たんだ。そして渡り廊下の入り口から館に入ってきた。
ここまでなら、東館の奴らにも犯行が可能だな。永琳がホールに居たのは8時以降。
つまり夕食の終わった7時30分の後に村紗を201号室に呼び出して殺す。中庭を通って8時までに東館に戻れば永琳に見つからずに済むからな。」


霊夢「ええ。でも、8時以降は永琳が居た広間は通れないから、東館の人達に星を殺すことは出来ない。
やっぱり犯人はあの5人の中にいるはずね。」


魔理沙「演劇部部長、ナズーリン、一輪。そしてアリスにこーりん。」



霊夢「まぁ、2つの殺人の犯人が同一人物だったらの話だけど……」


早苗「そんなの決まってるじゃないですか。」

霊夢「早苗……」

早苗「犯人は演劇部員を2人、しかも絞殺ですよ?
明らかに犯人の狙いは演劇部。もちろん、動機は小傘絡み……」

霊夢「……と思わせるつもりでわざと絞殺してるのかもしれないわね。」

早苗「……も、もちろんその線もありますけど……」

魔理沙「だけどよ、霊夢。アリスはともかく、残りの4人が小傘絡みの動機ならあり得るぞ?」

霊夢「そうね。仮にも演劇部員同士、小傘の死に関して恨み辛みがあったのかも。そして霖乃助は……」

早苗「小傘の思い人……ですもんね。」

魔理沙「……でもそれは、小傘の片想いで……」

早苗「さぁ?どうでしょうか?
私は小傘の日記を見て、メルヘンチックだなとは思いましたが、時々見られる表現の生々しさには驚いてたんですよ。
ただの妄想なんかではなく、恋人との実体験を書いてるんじゃないかって……」

魔理沙「い、いや!!こーりんはそんなの知らないって……」

早苗「そんなの嘘付いてるだけで、本当は肉体関係もあったんじゃないですか?
魔理沙さんには話してないだけで……」


魔理沙「……お前……!!」

霊夢「まぁ、けど霖乃助に動機が無いとは思えないわね。」

魔理沙「霊夢…!」

霊夢「別に恋人同士じゃなくても、小傘とは実際に友人関係だったんでしょ?。しかも結構相談しあってたみたいだし……」

魔理沙「あ、ああ。そうだよ。こーりんはあくまで、友人の無念を晴らすために……」


早苗「でも、日記に自分のことをあんなに沢山好きだって書いてくれてたんですよ?
例え昔は好きでなく恋人関係で無かったとしても、日記を見た後で霖乃助が小傘に好意を抱く可能性はあるんじゃないでしょうか?」


霊夢「……否定は出来ないわね。」


魔理沙「………。
だ、だからって、こーりんが殺人を犯すわけないけどな……」

早苗「ならアリスさんがやったのですか?」

魔理沙「だから!!誰がやったかなんてまだはっきりは……!!」

早苗「魔理沙さん。身内には優しいんですね?」

魔理沙「っ!?」

早苗「霊夢さんは例え身内相手でも淡々と犯人像に照らし合わせて探ってるのに、魔理沙さんは先ほどから感情的に否定してばっかですね?」

霊夢「……痛いとこ突かれたわね。」


魔理沙「ああ……全くだぜ。あたしの心にナイフが刺さったぜ。」

霊夢「あんたの話じゃないわよ。」

魔理沙「え?」


早苗「あ、ひょっとして霊夢さんは自覚してるんですね。
自分が身内にすら手を緩めない冷淡な探偵だって……」

霊夢「………」

早苗「でも霊夢さんは優しいんですよね?だってアリスさんには……」


霊夢「早苗。さっきから何を言ってるのか分からないんだけど……。
アリスがどうしたの?」

早苗「え?いや……アリスさんは……」

霊夢「アリスは普通の女の子よ?
ただ、つい最近まで他人を頼るってことを知らなかっただけ。」

早苗「……でも、今は霊夢さん達を頼ってるんですね?」

霊夢「私達もアリスには何度も助けて貰ってるわ。
だから、ただ頼られる存在じゃない。互いに協力しあう仲……」

魔理沙「それを友達って言うんだろ?霊夢。」

霊夢「……そんなダサい呼び方はやめなさい!仲間で良いのよ!仲間!!」



早苗「……互いに頼って……頼られる関係。
それが……友達?本当の……友達?」


霊夢「何?こんなの復唱して……。今更教訓なんかにならないでしょ?」

早苗「……いえ、別に……」


霊夢「とにかく、魔理沙!容疑者5人には注意するわよ!」

魔理沙「ああ。小傘の死への復讐だっていうのなら、また演劇部員の誰かが殺されるはずだな!」


霊夢「しかも3人とも容疑者扱い……。
さて……どうしようかしらね?」

早苗「……そうですね。演劇部の人達がターゲットですもんね。

……今の演劇部員達は小傘の亡霊なんかじゃなくて、小傘の無念を晴らせまいと実在する犯人に狙われてるんですよね?

……うふふ。ホント、面白いですよね………ねぇ?小傘。」

《続く》



登場キャラの簡単な設定
《前提》東方プロジェクトキャラを使用してますが、全員人間です

・幻想高校勢

博麗霊夢…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

霧雨魔理沙…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

アリス・マーガトロイド…幻想高校2年。裁縫部所属。八雲学園演劇部の衣装作りをしている。

十六夜咲夜…幻想高校1年生。裁縫部部長。

紅美鈴…幻想高校1年。咲夜の友人。

森近霖乃助…幻想高校3年。文芸部所属。八雲学園演劇部の台本作りをしている。


・八雲女子学園勢

聖白蓮…八雲高校3年。演劇部部長。

(死)寅丸星…八雲高校3年。演劇部副部長。西館322号室にて絞殺される。

(死)村紗水密…八雲高校2年。演劇部所属。東館204号室にて絞殺される。

雲居一輪…八雲高校2年。演劇部所属。

ナズーリン…八雲中学2年。演劇部所属。


蓬莱山輝夜…八雲高校3年。高等部生徒会会長。

鈴仙イナバ…八雲高校2年。高等部生徒会書記。

てゐ…八雲小学校6年。小等部生徒会会長。


射命丸文…八雲高校2年。新聞同好会所属。

古風谷早苗…八雲高校2年。新聞同好会所属。多々良小傘の友人。


(死)多々良小傘…八雲高校2年。演劇部所属。ネットブログ『小傘の恋話日記』の作者。合宿より3ヶ月前に部室で首吊り自殺をはかる。


・その他

永琳…輝夜の家に仕える使用人。合宿メンバーの世話係。

ミスティア…料亭の出張料理人。合宿メンバーの料理係。 朝と夕方のみ館に訪れる。

《三日目am02:30~東館ホール》


聖「霊夢さん!私は一輪さんやナズの近くに!」

霊夢「容疑者5人には分かれて貰う。こーりんとアリスは魔理沙の横に。
部長さんは美鈴、咲夜と一緒に。」

美鈴「ん?私でいいんですか?」

霊夢「ええ。私はナズーリンを。文と永琳さんは一輪の横に。」

文「ええっ!?私もですか?」

霊夢「まあ、あんたは横に居るだけでもいいから。」


アリス「霊夢。これは何をしているの?」

霊夢「演劇部員達の護衛と同時に容疑者として身柄を拘束させてもらうわ。貴方や霖乃助もよ。
容疑者それぞれに合わせた采配で。」

アリス「合わせた采配?」

霊夢「ええ。もし5人の中の誰かが殺人犯で強行手段に出た時に、担当者達にはすぐに押さえつけてもらう。
部長さんは意外と体育会系だから美鈴咲夜コンビに。
ナズーリンは私1人で十分。
一輪も永琳さんが居れば十分でしょ。」

アリス「私と森近先輩は?」

魔理沙「他のやつらと違ってお前らは次の被害者になる可能性が低いから2人セットに出来る。
アリスが犯人ならこーりん、こーりんが犯人ならアリスが私と一緒に犯人を止めるんだよ。」

霖乃助「なるほど、やはり僕達も容疑者扱いなんだね……」

魔理沙「そう言うなって。どうせすぐに容疑は晴れるから。」


霊夢「そういうこと。皆、分かったかしら?」

輝夜「あの……私達はどうしたら?」

霊夢「会長さん、鈴仙にてゐは早苗と一緒よ。
早苗、この意味が分かるわよね?」


早苗「私も容疑者扱いってことですね……?」


霊夢「ええ。でも、早苗だけじゃないわ。
皆、自分のグループ以外の人には極力近付かない様にして。
朝になって警察を呼ぶまで、広間でこの6グループに分かれた状態で過ごして貰うから。」


てゐ「つまり徹夜でお互いを監視し合う……ですね?」

鈴仙「……私、殺人犯を止められるかどうか……。
しかも犯人は私達の誰かなんですよね……?」

輝夜「しっかりしなさい!貴方達はただ自分の身の安全を考えていなさい!
早苗さんの同行は私が監視しますから……」

早苗「会長さん1人で大丈夫ですか~?犯人が私を狙ってきたら、その身をていしてちゃんと守ってくださいよ?」

輝夜「あら~?霊夢さんのおっしゃった言葉が聞こえなかったのですか?
貴方が演劇部員さん方に危害を加える様なら、私は容赦しないと言ったのです。
まー、仮に他に犯人がいて貴方を襲う様なら、私がちゃんと犯人に鉄拳制裁しますから、ご安心を。」


てゐ「会長、武術とかやってらしたんですか?」

輝夜「ええ。ドイツ軍人の暗殺体術を毎日イメージトレーニングしてるわ!」


早苗「……。ま、いざというときは身代わりにすればいいですね……」



ナズ「君1人で私のガードがつとまるのかい?」

霊夢「心配いらないわ。私、こう見えて喧嘩は強いから。」

ナズ「相手がウチの部長でも同じことが言えるのかい?あの方も結構なものだぞ。」

霊夢「何?あんたは部長さんが犯人だと思ってるの?」

ナズ「私はさっきから言ってる様に早苗が犯人だと思ってる。
……いや、実際はどうなんだろうね……。」

霊夢「え?」

ナズ「早苗はさんざん私達を苦しめてきたさ。昨日もそうだった。
だが、それらは全部あの笑顔と意味深な言葉による間接的なもの。それがいきなり殺人をしでかすなんてね……」


霊夢「早苗が貴方達を恨んでるって事実がある以上、あり得ないことではないわね。」

ナズ「いや、3ヶ月近くアイツと戦ってきた私だから分かるんだ。早苗は、人殺しなんかしない。
あくまで相手が自殺しかねない程、精神的に追い込むだけだ。」


霊夢「……確かにね。でもだからと言って、そんな根拠のない勝手な考えで早苗は白だなんて思わないで。
あんたがどんだけ信用してようと、他人はいつでも裏切ってくるから。」


ナズ「……君はどうなんだ……?」

霊夢「はぁ?」

ナズ「西館で先輩を殺すことが出来たのは私達5人だけじゃない。
先輩は、私が死体を見つける数分前まで、実は生きていたんじゃないか?」


霊夢「え?何言ってんの?あの時西館には他の演劇部員や私達以外には………?」

ナズ「そう……君達も居た。私が死体を見つける直前まで、西館に……」

霊夢「……だから何なの?私達にも殺せたって言いたいわけ?」

ナズ「君達は先輩の首を締めて、死んだのを確認してから、私の部屋に来た。
何も知らない私は君達と一緒に先輩の部屋で第一発見者となった。」


霊夢「あんたね……私達がそんなことをする輩に見えるの?」

ナズ「名探偵だろうが、私には関係ない。君達はあくまで昨日初めて会った赤の他人だ。
君達がどんな人間かなんて、私には分からない……」

霊夢「ふ~ん。じゃあ、この中で一番殺人を犯しそうなのが私達って言いたいわけ?」

ナズ「……分からない。そんなこと私には分からない。
誰が殺人犯だなんて……。それとも君には分かるのかい?」

霊夢「そりゃ私にも分かんないけどさ……。ただ、気になるのは村紗は東館なのに、何故星は西館で殺されたのかしら?
いや、というより……」


ナズ「私にはもう分からないんだ。
ただ、先輩を殺した奴が今は私を狙ってる……。

やっぱり早苗がやったのか?いや、鈴仙も疑わしい。会長も……。
ひょっとして、これは生徒会共の策略なのでは……?なら、永琳さんもグルなのでは?」


霊夢「ナズーリン?私の話聞いてる?」

ナズ「森近とかいう奴は小傘の彼氏だし……そういえばアリスとかいう奴も……殺人犯になれるのかもしれない……。
美鈴って奴も……咲夜って奴も……たまに私達のことを睨んでなかったか?」


霊夢「ちょっと?あんたさっきから何を言ってるの?」


ナズ「……聖。あの人は先輩のことを大切にしてた。いや、先輩だけじゃない、私や他の部員のこともだ!

………もちろん、小傘のことも。
……まさか、聖は小傘のことで先輩を……?」


霊夢「ナズーリン!さっきからぶつぶつ何言ってるのよ!?」


ナズ「………霊夢殿。」

霊夢「……?」

ナズ「君はどうして私の横に座ってるんだい。」

霊夢「どうしてって……そりゃあ……」

ナズ「この組み合わせを決めたの君だったね……。私の隣を選んだのも君……。」

霊夢「推理をするにあたって、あんたが一番相談相手になると思ったからよ。
あんた、意外と頭がきれるし……」

ナズ「そうか……そういうことだったのか……。」

霊夢「ちょっと、あんた!よく見たら顔色がだいぶ悪いじゃない!大丈夫なの?」

ナズ「やめろ!近付くな!!」

霊夢「!?ど、どうしたのよ?いきなり……」

ナズ「分かっていたさ!次に狙われるのは私なんだろ……?」

霊夢「……そんなの、犯人にしか分からないわよ。」

ナズ「いや、私だ!私なんだ!
だからこうして、君は私の隣りに来たんだ……。
グループ分けだの護衛だのとか言って、邪魔な奴らを皆排除して……」

霊夢「なっ!?」

ナズ「……私を殺すんだろ?先輩や、村紗を殺した様に……」

霊夢「いい加減にしなさい!なにを根拠に言ってんのよ!?」

ナズ「来るな!それ以上私に近寄るな!!」


霊夢「ナズーリン!それ以上言ったら怒るわよ!
あんたさっきから滅茶苦茶よ!疑心暗鬼になりすぎてる!」




ナズ「……死にたくない……」

霊夢「……え?」

ナズ「死にたくない……霊夢。私はこんなところで死にたくないんだ……。
私は生きて、先輩を殺した犯人を突き止めたいんだ………」

霊夢「あ、あんた、その目、まさか泣いてたの?いつから?」


ナズ「……殺さないでくれ……頼む……」

霊夢「………」


ナズ「……嫌だ……殺さないで……死にたくないよぉ……」

霊夢「……まさか、あんたが泣き出すとはね……」

ナズ「怖い……先輩を殺した犯人がこの中に居る……私は殺されてしまう………
嫌だ……嫌だよぉ……」

霊夢「泣くんなら、もっと声を上げて泣いた方がスッキリするわよ?」

ナズ「……先輩は泣き虫だったが……私は……違う……
……こんな姿……部長達に見られたくない!」

霊夢「そっか。ならもっと縮こまって泣きなさい。私の陰に隠れていいから……」

ナズ「……それで、人に見られない様に私を殺すのかい……?」

霊夢「また私を怒らせたいの?それとも大声で「ナズちゃんが大泣きしてる~」とでも叫んであげようか?」

ナズ「…………」


ギュッ

霊夢「ん?何よ?」

ナズ「……腕に抱き付かせて……」

霊夢「別に構わないけど。それで不安が解消されるなら……」

ナズ「……この状態なら、いざという時に……」

霊夢「いざという時は安心して。
さっきも言ったでしょ?私は喧嘩強いから。犯人をボコボコにする。」


ナズ「その時は……私も……先輩の仇を……」

霊夢「はいはい。そのへっぴり腰で、犯人の頭をふんずけてやればいいわよ。」

ナズ「………」


早苗「あらあら~……うふふ。」

ナズ「ひぃっ!?」

霊夢「早苗!あんた、どうして!?」

輝夜「早苗さん!洗面所ならこっちですわよ!?」


早苗「……可愛い顔ですね~?うふふ~♪」

ナズ「く、来るな!!やめろ!!」

霊夢「早苗。早くあっちに行って……」

早苗「ナズーリンちゃん、星さんが死んでから随分ひ弱になっちゃったんですね?
さっき私に怒鳴ってたのも余裕の無さを隠す為の空元気だったのですね?」


ナズ「……そ、そんなことは……」

霊夢「普段はしっかりしてただけで、ナズも年相応の女の子ってこと。
寅丸星や村紗の死にショックを受けてるだけよ。血の通った人間なら当然の反応でしょ?」


早苗「そうですね~。でも、今のナズーリンちゃんの泣き顔を犯人が見てたら、多分次に殺すのを貴方に決めるでしょうね。」


ナズ「!!」

早苗「弱りきった貴方を追い詰めて、こんなにも可愛い泣き顔をグシャグシャに出来るんですよ~?
貴方達を苦しめたい犯人にとっては最高ですよね~♪」


ナズ「……い…嫌だ……助けて!助けてくれ霊夢!!」


霊夢「早苗。気が済んだなら、さっさと消えなさい!」

早苗「うふふ~。まぁ、霊夢さんが守ってくれるのなら百人力ですよね~。
ではでは~、私が帰ってくるまでに生きてたら、また会いましょ~♪」



霊夢「……確かに早苗は犯人じゃないかもね。
ただ、あいつは楽しんでる。この連続殺人を……」


ナズ「……ああ……楽しいんだろね……」

霊夢「……ホント、しっかりしなさいよ。犯人が来たら、先輩の仇をうつんでしょ?」

ナズ「………ああ……先輩の仇……ね……」


霊夢「全く………」


ナズ「霊夢……。」

霊夢「何よ?」

ナズ「君って……なんだか先輩に似てるね……」

霊夢「は?それって褒めてるの?」

ナズ「……い、いや、やっぱり先輩とは違う……か。」

霊夢「はぁ?全く、なんなのよ……」

ナズ「……いや、なんでもない。
それより、犯人の目星はついたのかい……?」

霊夢「容疑者5人は怪しいけど、正直微妙なのよね。」

ナズ「……何か気になるところでも?」

霊夢「東館で殺された村紗についてはホントに疑問だらけね。
なんで犯人は殺害後にわざわざ窓から出ていったのかしら?」


ナズ「……そんなの、捕まえた後で犯人に聞けばいいだろ……?」

霊夢「それに村紗を殺すにあたっては永琳さん以外全員に犯行可能。
なのに、星を殺した犯人は永琳さんのおかげで容疑者を5人にまで絞れた。
本当にこの5人の誰かが犯人なら、どうして容疑者が絞られる様な犯行にしたのかしら?」


ナズ「……それだけ、先輩を殺したかったんじゃないのか?」

霊夢「焦ったっていうの?1時間前に村紗を上手く殺した犯人が?」


ナズ「……私はもう誰が犯人でも驚かないよ……。
早苗が犯人だっていうのなら、多分トリックか何かがあるのだろうし……」


霊夢「……。永琳に見つからない様に、西館に行く方法があれば可能かもしれないわね。」


ナズ「中庭はどうなんだい?部屋の窓から上手く中庭に下りれたら、そのまま西館へ行けるんじゃないかい?」

霊夢「私達の部屋は3階か4階だからねー、かなり厳しいんじゃない?
あの外壁を下りていくのは難しいし、逆に上るとなるとそれこそ命懸けね。
犯人がよっぽど運動神経良いのなら可能かもしれないけど……」


ナズ「ああ、あの美鈴って奴ですら、途中で落ちたんだったね。
確かにキツそうだね。」

霊夢「まぁ、2階からならまだなんとかなるかもね。ロープとか使えば……」

ナズ「2階には誰も泊まってなかったんだっけ?」

霊夢「ええ。2階は空き部屋ばかりよ。だから、村紗殺しの現場に使われたのでしょうね。」


ナズ「つまり、2階のどの部屋も使えなかった?」

霊夢「そうね。204だけは、事前に鍵が盗まれてたみたいだけど、後の部屋の鍵は管理室で永琳さんが見張ってたから使えないわ。」


ナズ「なら、その鍵の盗まれてた204号室は使えば……?」

霊夢「いや、だって村紗を殺した後にドアの鍵は掛かってたのよ?
使えるわけ……」

ナズ「……どうした?霊夢殿。」


霊夢「……そっか、鍵を掛ける前なら使えたんだ。中庭への入り口として。
なら、204号室を通れば8時以降でも永琳さんに見られずに西館に行ける。」

ナズ「……東館の奴にも犯行が可能……?」

霊夢「……いや、でもそれだと帰りはどうするの?
外壁をなんとか登って204号室に戻ってそのまま東館に入ったとしたなら、どうやって204号室の扉の鍵を閉めたのかしら?
私達が村紗の死体を見つけた時は扉の鍵はしまってたし、鍵は部屋の中にあった。つまり、犯人は部屋の鍵を使わずに扉を施錠した……?」


ナズ「……なるほど。つまり、部屋の扉を鍵を使わずにしめれたならば、東館の者達にも先輩を殺せたと?」


霊夢「ええ……アリバイの完璧な永琳さん以外、皆が容疑者になるわね。
ただ、だからといって貴方達5人の疑いは晴れないわよ。貴方達なら204号室を通る必要すらなかったのだから……」


ナズ「……ああ、私達が最重要容疑者には違いないね……」


霊夢「ただ、もしこの推理が正しいなら、で犯人が何故村紗をわざわざ204号室で殺したのかも分かるわね。
村紗を殺すにあたってただ一目につかない殺害現場を必要としたから204号室を使っただけじゃない。
むしろ、広間を通らずに星を殺しに行く為の道として204号室を使いたかったのよ。」


ナズ「なるほど。しかし、犯人は何故そんな面倒なことを……?」

霊夢「あたかも西館の連中にしか星を殺せなかった様に仕組んで、東館に居た自分を容疑者から外すため。
あるいは、西館の者達に罪を着せるためかもしれないわね。」

《三日目am03:30~?》

星『ナズ……ナズ!』

ナズ『どうした?先輩。』

星『ナズこそ、居眠りなんて珍しいね。昨日は夜更かしでもしてた?』

ナズ『ああ……ちょっとね。部活動と学業の両立は意外と厳しいんだ。』

ムラサ『宿題かい?ここに持ってくれば、私達が片付けてあげるのに。』

ナズ『それじゃあ宿題の意味がない。そんなだから、君達は成績が微妙なんだよ。』

ムラサ『成績なんて知らないね。私は部活さえ出来ればいい。』

星『私も、皆と過ごせる時間さえあればいいから……。ナズは違うの?』

ナズ『……わ、私だって……そうだけどさ……』

ムラサ『小傘もそうよね?』

小傘『─────。────。』


星『へぇ~、小傘は最近成績伸ばしてるんだ。凄いね~!』

ナズ『先輩だって頑張りなよ。このままだと、演劇部が頭悪い奴の集まりだと思われてしまう。』

星『はいはい。』

ナズ『全く、小傘もこんなのに合わせて放課後を無駄にする必要はないんだよ?』

小傘『────!!────。────!』

ナズ『全く……君はホントにお人好しなんだから……』

《三日目am03:45~?》

ナズ『先輩……?』

星『……ナズ……』

ナズ『今日、部活は休みなんだろ?こんな時間に部室で何かしてたのかい?』

星『……いいえ。別に……』


一輪『ナズ。星はどうしたの?』

ナズ『先輩なら慌てた様子で帰っていったよ。
一輪達はなにをしてるんだい?』

ムラサ『昨日部室に忘れ物をしたからね、取りに良くついでだよ。』

ナズ『そうかい。私も行くよ。』

一輪『ナズも忘れ物?』

ナズ『……ああ、まぁね。』



……あの日、明らかに先輩の様子が変だった。
その原因が部室にあるんじゃないかと、私はそう思った。何故かは分からない。
ただ、私の顔もまともに見ずに走って帰る先輩の姿を見てから、ずっと嫌な胸騒ぎがしていた……



ムラサ『それで、聖はどう……?』

一輪『かなり後悔してるわね。小傘にしたことを……』

ムラサ『……まぁでも、小傘はそこまで気にはしてなかったみたいだよ。あの後話をしたんだけど……』

一輪『……でも、まさか姐さんが、あんなに取り乱すなんて……』

ナズ『あの人は演劇一筋だったからね。仕方ないんじゃない?』

ムラサ『そうは言ってもね………』


喋りながら、私達はいつも通り部室へ歩いて行った

部室の鍵をあけて、扉を開ける


……全てはそこから始まった……あの日の私達の部室から……
夕陽がさしこむ部室の中、誰かが倒れていた


ムラサ『え?何……?』

一輪『ちょ、ちょっと!!貴方!どうしたの!?』

部屋の中央に横たわる彼女の首には鉄線が巻かれていた
ピクリともしない彼女を見て、私達は一瞬で状況を把握した

……人が殺されていた


そう……その死体こそが……小傘……


ムラサ『ナズ!しっかりしなさい!ナズ!!』


……え?

一輪『ナズ!?ナズ!!起きて!ナズ!!』

……あれ?どうなってるの……?

ナズ『……なんで?なんで“私”が……?』


なんで……?なんで、“私”が殺されてるの……?首に鉄線を巻かれて……?


あれ?3ヶ月前のあの日、部室で死んでたのは小傘のはず……。
それを見つけた私達は………。

なのに……なんでだろう?何故私が部室で殺されてるんだ……?



『………苦しい……』

ナズ『!!』

『死にたくない……助けて……ナズーリン……助けて……』

ナズ『だ、誰だ君は!?なんで私と同じ姿で……』

『私は………なずーりん……』

ナズ『……え?』

なず『私は死ぬんだ……殺されるんだ……先輩達を殺した犯人に……』

ナズ『……先輩を殺した、犯人……?』

なず『ああ……今、君の後ろに居る……』

ナズ『私の……後ろ……?』


私の……後ろ……?


なず『そうだよ。ナズーリン。次は君が死ぬ番だよ。』





霊夢「ナズ?」

ナズ「……」

霊夢「どうかした?ボーっとして……」

ナズ「……あれ?ここは……合宿中……?」

霊夢「ん?……ああ、あんた寝てたのね。
通りで静かだと思ったわ。」


ナズ「……そうか。さっきのは……夢だったのか……」

霊夢「何?なんか面白い夢でも見てたの?」

ナズ「ああ……夢の中に先輩が出てきたんだ……」

霊夢「星が?死んだ人を夢に見るなんて、よっぽど死がショックだったのね……?」

ナズ「いいや……私が見たのは……」

霊夢「……何?」

ナズ「先輩との思い出だったよ。あの人はホント、頼りないお方だったよ。」

霊夢「へぇ~。見た目は真面目そうだったけどね。」

ナズ「ああ……往生際もわるいし、ドジばっかだったけど、凄く優しい方だったよ。
それがいとも簡単に殺されるなんてね……」

霊夢「………」


ナズ「……次は、私の番か……」

霊夢「はぁ?」

ナズ「……死んだ先輩は、もう私を守ってはくれない……。
なら、私はどうすればいいんだ?私は犯人に殺されてしまうのかい?」

霊夢「またその話?だから、そん時は私が犯人を……」


ナズ「それを言うのなら、君が犯人でない確証を示してからにしてくれ。」

霊夢「……全く。いいわよ、私のことなんか信用しないで。
どうせ私も、貴方のことを信用してないから。」

ナズ「何?どういう意味だ?」

霊夢「星が殺された理由、貴方には心当たりがあるんじゃない?」

ナズ「ないね。強いて言うのなら、演劇部自体への恨みとか、或いは……」

霊夢「犯人は明らかに小傘絡みの復讐をしている。だから寅丸星が最初に狙われたんでしょ?
演劇部云々なら、部長の聖白蓮が最初に狙われててもおかしくないはず。」

ナズ「そんなの、犯人の気まぐれだろ……」

霊夢「……もういいわ。貴方達に自白を強要しても無意味みたいだしね。
……例え他の部員達が殺されようともね。」


ナズ「……何を聞きたいのか分からないけど、私が何か喋ったら、先輩は生き返るとでも言うのかい?
違うだろ?私が今更何をしようが、もう先輩は……」

霊夢「なら、早苗じゃないけど、次は本当に貴方の番かもしれないわね。
気をつけなさい。」


ナズ「……君まで私を脅す気かい?」

霊夢「私は早苗とは違うつもりよ。
あんたに死なれたら困るからね。探偵とか他校の学生とか関係ない。誰かが死ぬのなんて、間近で見たくないのよ。」


ナズ「……なら、私を助けてくれる?」

霊夢「ええ。だから、出来れば隠し事はなしにして欲しいわね……」

ナズ「………」

……ブルルル……


霊夢「……ん?ちょっと待って!」


魔理沙「霊夢!今、振動音が?」

霊夢「ええ……携帯のバイブ音……かしら?」


ナズ「れ、霊夢?どこへ行くんだ……?」

霊夢「……私から離れないで。服を掴んでていいから、一緒に居なさい。」

ナズ「あ、ああ……」


アリス「携帯って……ひょっとして魔理沙の盗まれたやつ?」

魔理沙「いや……分からない。霊夢のかもしれないぜ。」


霊夢「皆!耳を澄まして!出来るだけグループを崩さない様に、音のなる方に向かって!」



……ブルルル……


霊夢「……こっちからする?」


咲夜「霊夢!こっちからもするわよ!?」

永琳「こちらからもいたします。」

美鈴「あ、あっちからもしますね!」

輝夜「向こうからもしますわよ?」

ナズ「…霊夢、こっちからもするよ?」


霊夢「……ちょっと!皆!!グループを崩さない様にって……」



………バチッ!!


霊夢「!?」
魔理沙「!?」

「えっ!?何よ!?真っ暗!?」

「停電!?」

「ナズ!!一輪!どこですか!?返事をなさい!!」

「会長!!暗い!怖い!!嫌だぁああ!!」

「鈴仙!!落ち着きなさい!どこにいるのですか!?」


ナズ「くそっ!?霊夢!どこに行ったんだ!?霊夢!!」


霊夢「ナズーリン!?こっちよ!」


ナズ「霊夢!部長!一輪!!
……嘘だろ……どこだよ霊夢!!霊夢!!!」


「永琳さん!非常灯は!?」

「手元にはありません!停電が配電盤関係なら、すぐに非常電源に切り替わります!」

「一輪!!ナズ!!返事をして!!」

「咲夜さん!?大丈夫ですか!?部長さんも!」

「ちょっ!?美鈴!!どこ触ってるの!?」

「姐さん!無事ですか!?」

「早苗さん!?どこへ行かれたんですの!?早苗さん!」

「ナズ!!ナズ!!返事をして!ナズ!!!」

霊夢「ナズーリン!どこ行ったの!?返事をして!!」


「……暗いですね。こんなに暗かったらどこを目指せばいいか分かりませんね。
ナズーリンさんは道に迷ってるのかもしれませんよ?」


霊夢「あんた!早苗ね!?くだらないこと言ってんじゃないわよ!!」

「道に迷われた可哀想なナズーリンさん。気付いた時には、小傘のところにたどり着いてるかもしれませんね。」


「会長!!助けてください!会長!!」

「鈴仙!安心なさい!私が来たからには……!!」


「こーりん!アリス!無事か!?」

「きゃっ!?魔理沙!いきなりどうしたの……!!」

……バン!


魔理沙「……灯りが点いた?」

永琳「非常電源に切り替わりましたね。やはり回路が古いせいか、時間がかかりましたけど……」



輝夜「大丈夫でしたか!?鈴仙……」

アリス「……あ、あの~……私、アリスですけど……」

輝夜「……え?」

魔理沙「ん?会長さん。何アリスに抱き付いてんだ?」

輝夜「………ゴホン。
大丈夫でしたか?アリスさん。」

アリス「え?あ……はい。」

輝夜「よかったですわ。
他校の方とはいえ、我が学園の合宿に参加されている皆さんを、生徒会長である私が守らねばなりませんからね。」


アリス「え?あ……ど、どうも……」


輝夜「ええ。よろしくってよ。」


魔理沙「アリス。大丈夫か?」

アリス「あ、うん。ただ、ちょっと……」

魔理沙「?」

アリス「会長さんの抱き方、なんか優しくて温かくて、ちょっと良かったかな……」

魔理沙「ア、アリス……お前、ついにそっち系に……」

アリス「は、はぁ!?ち、違うわよ!!」



てゐ「さっすが会長~。助けを求む鈴仙よりも、他校の生徒を優先だなんて~!」

鈴仙「会長様ぁ~!私怖かったですぅ~!!」

輝夜「ごめんなさい!鈴仙!私は生徒会長だから、皆を守らなければならなかった!
だからといって、貴方を見捨てる形になってしまって……!!」


てゐ「会長が会長らしいこと言ってますね~。明日は雪が降るんですね~?」

聖「ナズっ!ナズっ!!」

霊夢「永琳さん!こっちに来て!!」

永琳「いかがなさいました!?」


霊夢「ナズの脈が止まってる!早く、処置を!!」

永琳「分かりました!!今すぐに……!」


魔理沙「霊夢!なにがあった!?」

霊夢「電気がついたら、ナズが倒れていたわ。」

魔理沙「なんだと!?暗闇で襲われたのか!?」

霊夢「……ナズの首筋を見て。」

魔理沙「鉄線が巻かれてる……?絞殺か!?」

霊夢「まだ殺とは決まってないわ!息が止まって数分も経ってない。まだ……間に合うかも…!」


永琳「霊夢さん!AEDを持って来て下さい!!」

霊夢「分かった!今行く!
魔理沙、後は任せた。私の手のひらはこの通り、“跡”なんてないわよ。永琳のは私が調べておくから……」


魔理沙「……ああ。分かったぜ。」


聖「ナズ!ナズ!!」

一輪「ナズ……お願い!返事をして!!」


魔理沙「皆!永琳以外はこっちに来てくれ!」

聖「嫌です!ナズを!ナズを見捨てるわけにはいかない!!」

魔理沙「いいから!ナズーリンは霊夢や永琳に任せておけば大丈夫だ!」


咲夜「部長さん!こっちに……」

美鈴「霊夢さんが居るのなら大丈夫ですって……」

聖「……ああ……ナズ……!」


魔理沙「じゃあ、皆!手のひらを掲げてくれ。それを横の奴らと確認しあってくれ!」


アリス「魔理沙!こんな時に一体……」

魔理沙「いいから!早く見せてくれ!」


咲夜「美鈴?手のひらが真っ赤よ?どうしたの?」

美鈴「え?これは、あの……咲夜さんを必死で掴んでましたから………」


魔理沙「皆に見て欲しいのは、手のひらに細い線状の跡が残ってないかを確認してもらいたいんだ!」

魔理沙「皆に見て欲しいのは、手のひらに細い線状の跡が残ってないかを確認してもらいたいんだ!」

アリス「線状の後……?」

早苗「なるほど。鉄線の後のことですね?」

アリス「鉄線って……」

霖乃「ナズさんの首に巻かれてる鉄線だね。
人の首を締めようとして鉄線を強く握れば、手のひらに後が残る。推理作品では定番だね。」


魔理沙「その通り。だが、皆の手には跡が残っていないみたいだな。
つまり、鉄線を握りしめても跡が残らない様に、犯人は手袋か何かをしていたということになる。
指紋が必ず残る様な手袋をその辺に捨てるのは自殺行為だ。つまり、犯人はまだその手袋を持ってるはずだ!」


早苗「つまり、今度は身体検査ですね?」

魔理沙「ああ。まずはお前からな。」

早苗「え~っ!?最初は4人の容疑者さん達からじゃないんですか~!?」

魔理沙「疑わしいは先ずから。早苗の次は一輪、聖の順な。
咲夜は私と一緒に検査を手伝ってくれ。
それ以外の奴らは他の奴が怪しいことをしないか見張っててくれ。」


咲夜「……にしても、ナズーリンさんが狙われるなんて……」

早苗「まー、でも犯人からすれば計画通りなんじゃないですか?」

咲夜「え?」

早苗「暗闇の中で奇襲するんですよ?
本当に成功させたいのなら、演劇部の中で最も身体が小さい非力なナズーリンさんが好標的ですよ。」


咲夜「そんな……殺しやすいから犯人はナズーリンさんを!?」


魔理沙「……確かにな。
最初に星や村紗を狙った理由は分からないが、この場合ならナズを狙うのが最善だろ。」

早苗「もしかしたら、犯人は最初からナズーリンさんをこんな感じで殺すつもりだったのかもしれませんね。
ナズーリンさんは演劇部の中で一番用心深いですから、こういう強行手段が一番の良策かと。」



咲夜「魔理沙。手袋も無いし、特に変わったものも無いわよ。」

魔理沙「なら、もう早苗はいい。次は一輪と部長さんな。」

聖「ナズは……あの娘は星が居ないと駄目な子なんです。」

魔理沙「あんな大人びてるのにか?」

聖「星は実は少しおっちょこちょいで頼りない人なんです。
ナズはそんな星をずっとサポートしてきてくれました。星や皆の手前では泣き言を一つももらしません。

でも、随分前に星が舞台機材で大怪我をした時、ナズは人前では平然を保ってましたけど、裏では大泣きしてました。」


魔理沙「大した奴だな。あの歳で、周りを気にして感情を隠すのかよ……」


聖「星が死んでからのナズは、明らかに無理していました。
早苗にもいつも以上に突っ掛かっていましたね。多分、内心は不安に満ちていたのでしょうね……」

魔理沙「誰だって身近な奴が死んだら正気でなんていられないさ。
咲夜。一輪はどうだった?」

咲夜「……ハンカチぐらいですね。他には何も……」


魔理沙「こっちもハンカチぐらいだな。
とりあえず、そのハンカチは机の上に置いとけ。次はこーりんとアリスだ。
咲夜、こーりんを調べてくれ。」



アリス「魔理沙、私は……」

魔理沙「心配すんなって。犯人が見つかれば、アリスの潔白もすぐに証明される。」

アリス「……ええ。そうね。」

魔理沙「まぁ、今すぐにってわけにはいかないかもしれないがな……」

アリス「……え?」

魔理沙「この事件の犯人はかなり計画的に動いてるはずなんだ。
星達が殺されたことで、私達全員は互いに監視し合う為にこの広間で夜を過ごすだろうと、犯人には予測出来ていた。
そして事前に広間のあらゆる所に携帯を隠しておいたんだ。後はアラームか何かで一斉に鳴らして、グループでかたまってた私達を散乱させた。」


アリス「……私達がバラバラになったのを見計らって、停電にして、ナズーリンさんを襲ったってことね。」


魔理沙「そんな犯人だ。まさか、身体検査で証拠が見つかる様なへまなんて……」

アリス「でも、なんか雑じゃないかしら?」

魔理沙「え?」

アリス「携帯が鳴ったからって、皆がグループを離れて散開するとは限らないんじゃない?
それに停電の中を奇襲するのもかなり大胆、というより無鉄砲じゃないかしら?」


魔理沙「確かにな。」

アリス「犯人は何か焦ってたんじゃない?
理由は分からないけど、どうしてもこの夜の間にナズーリンさんを殺したかったんじゃないかしら?」


魔理沙「そうは言うがな、かと言って……」


咲夜「魔理沙!!」

魔理沙「なんだ?どうかしたか?」



美鈴「動かないで下さい!」

霖乃「ち、違う!僕はそんなもの知らない……」

咲夜「彼の上着内側ポケットの中に、これが入ってたわ。」


魔理沙「……皮製の手袋……か。」

文「記者としての経験から言わせてもらいますけど、この状態で警察が来たら森近さんは即逮捕ですよ?
星さん殺しのアリバイも無い上、証拠の手袋まであるのですから……」


アリス「皆落ち着いて!!森近先輩がこんなことするわけないじゃない!
美鈴!そうでしょ!?」


美鈴「……魔理沙さん。私も、森近さんが犯人だとは思いません。
……ですが、森近先輩は軟禁すべきだと思います。」
魔理沙「!!」

咲夜「犯人である確率が一番高いのですから、当然の処置です。魔理沙さん、違いますか?」

アリス「魔理沙……」

魔理沙「……くそ…」


一輪「……姐さん、どうします?」

聖「……霖乃助さん。」

霖乃「は、はい!」

聖「……やはり、小傘の件なんですね?」

霖乃「え……?」

聖「私達が……私が……小傘ちゃんを……あんな風にしたから……」

一輪「姐さん!落ち着いて下さい!姐さん!!」

聖「私が……私がもっとしっかりしてれば……小傘ちゃんも、星達も死なずに済んだ!
私が悪いんです!!私が………」


一輪「姐さん!もういいですから!!
魔理沙さん!姐さんを別のところに連れて行っても……?」

魔理沙「……近くにある永琳さんの部屋になら、構わないさ。」

聖「ごめんなさい!!ごめんなさい!!小傘ちゃん!星!!村紗!!ナズーリン!!……それに、霖乃助さん……」


霖乃「………」

霊夢「そう。霖乃助が手袋を……。」

魔理沙「一応他の奴の持ち物も調べたが、特に何も見つからなかったぜ……」

アリス「霊夢!どうしよう!?霊夢!」


魔理沙「霊夢……ナズーリンは?」

霊夢「助からなかったわ。」


霖乃「……」

霊夢「まー、霖乃助が犯人だって言うんなら、それでいいわ。
今はとりあえず……」

魔理沙「霊夢!そりゃどういう意味だよ!?」

霊夢「美鈴、咲夜、アリス。霖乃助を見張ってて。
他の皆は広間を探してくれる?どこかに携帯電話があるはずだから。」

てゐ「え~?連続殺人の犯人と一緒の部屋のままなんですか~?」

霊夢「大丈夫よ。咲夜と美鈴が見張ってるし。
そこらの男なんて比にならない強さだから。」

魔理沙「……霊夢、行くって……どこに?」

霊夢「演劇部員達に会いに行くのよ。
あんたも来なさい。」



アリス「……森近先輩。」

霖乃「……」

美鈴「あの、犯人扱いされてるのに、なんでずっと黙ってるんですか?」


霖乃「魔理沙や霊夢はそう思ってないみたいだから。
彼女達がきっと、僕の無実を証明してくれるはずだよ。」


鈴仙「……あんな温厚そうな男性が犯人だなんて……」

輝夜「人はみかけによらないんですのよ。」

てゐ「会長がおっしゃると説得力ありますね~。」


永琳「……。皆様、何か飲み物でもお持ちしましょうか?」

アリス「あ、私も手伝いましょうか?」

輝夜「いえ、あなた方はここに。鈴仙、行って来なさい。」

鈴仙「は、はい。」

美鈴「………」

霖乃「美鈴さんは、案外僕を疑ってたりするのかな?」

美鈴「私は探偵じゃないですし、森近さんが犯人とは思いません。
ただ、殺人犯が許せないだけです。」

咲夜「美鈴、貴方が熱くなっても何も始まらないわよ。」

美鈴「分かってます!
森近さんも!犯人じゃないっていうのなら、もっとそれらしい振る舞いをして下さい!!」

霖乃「……ごめん。」



輝夜「随分その方の肩を持つんですのね?」

アリス「当たり前でしょ。森近先輩が犯人なわけないじゃん。」

輝夜「何故です?」

咲夜「私達の知る森近さんという人は殺人なんて犯すわけがない、と思ってるからです。
他校の貴方には共感し難いでしょうけど……」


輝夜「なるほど。では、私も同意見で、我が校の生徒達を庇いますわね。
早苗さんはもちろん、文さんに鈴仙、てゐ、それに演劇部の方々……。
私も彼女達を永く見てきましたので、この様な殺人を犯すわけがないと確信が持てますわ。」



美鈴「……そっか。犯人はこの中に居るんですよね……。森近さんじゃなかったとしても、犯人は……」


てゐ「未知の恐怖が具現化したというのに、あまりに非現実的ですよね。
今まで日常を共に過ごしてきた人が殺人犯になるなんて……」


文「むしろ、誰しもがなりかねない存在なんですよ。殺人犯っていうのは……」

霖乃「………」


早苗「森近さん……。」

霖乃「……君が早苗さんだね。なんだかんだで挨拶が遅れたね。」

早苗「私の方こそ。小傘からは色々聞いてます。」

霖乃「僕の方も、小傘ちゃんがよく君のことを話してたよ。」

早苗「……森近さん。貴方は小傘と、どんな関係なんですか?」

霖乃「違う学校とはいえ、大事な後輩だったよ……」

アリス「………」

輝夜「………」

てゐ「だから、小傘さんの仇で星さん達を……?」

《三日目am04:10~東館1F管理室前》

一輪「霊夢さんに魔理沙さん。何か用ですか?」


霊夢「ええ、部長さんは?」

一輪「部屋の中で眠ってます。姐さんに何か?」

魔理沙「いや、なら一輪で構わない。なぁ?霊夢。」

霊夢「……一輪。こんな時に悪いけど、多々良小傘の死について聞きたいことがあるの。」


一輪「………」

霊夢「小傘は部室で自殺したのは知ってるわよね?」

一輪「ええ。放課後の部室で首を吊ってたのを発見された……ですね。」

霊夢「小傘がどうして部室に居たのか、分かる?」

一輪「知りません。自殺場所に部室が良いと思ったんじゃないですか?」

霊夢「私はそうは思わない。ひょっとして小傘は誰かに会うために部室に居たんじゃない?」

一輪「え……?」


魔理沙「新聞部員に聞いた話だが、小傘の死体の近くには台本が落ちてたらしいな。」

霊夢「だけど、小傘は練習に台本を持参したことが一度もない。何故なら彼女は台本を丸暗記してたから。」


一輪「……なら、その日は偶然持ってきてたんですね。」


魔理沙「台本の中身は小傘の書き添えがいっぱいだった。
特に、寅丸星が演じる役に至っては、舞台配置なども詳しく書かれてた。」


一輪「星が演じる役に……?」

霊夢「あの台本は小傘のものじゃないわ。
恐らく、寅丸星の台本よ。正確には、小傘が書き直して星に渡そうとしてた台本。」


一輪「……だから何なんですか?」

霊夢「もし小傘があの部室で星に台本を渡そうとして訪れていたとすれば……?」


一輪「それは貴方達の推測に過ぎません!私達はあの日の放課後、小傘には会ってません!
あの娘が勝手に部室で……」


霊夢「……“私達”は……か。
つまり、あの日の放課後に貴方は星や他の部員達と一緒に居たのね?」

一輪「……それは……」

霊夢「……一輪。貴方も寅丸星や村紗水蜜、ナズーリン達と一緒だったんなら、貴方も多分犯人に殺されるわよ。」


一輪「………」


霊夢「貴方の言う通り、私は推測でしか物事を話せてないわよ。
でも、犯人の目的だけははっきり分かるわ。強いて言うなら、犯人が何故星達を殺したかったかって気持ちもね。」


一輪「……失礼します。」

魔理沙「往生際の悪い奴らだな。他の部員が死んだって言うのに、まだ隠し通す気かよ……」

霊夢「……いや、一輪には例え他の部員達が死んでも隠し通さなければならない理由があるのよ。」

魔理沙「なんだよ?そりゃ……」


霊夢「………」




ガシャン!!


アリス「先輩!先輩!!」

魔理沙「なんだ!?どうした!?」

霊夢「!!」




《三日目am04:30~東館管理室》

聖「……一輪……?」


一輪「姐さん、大丈夫ですか?」

聖「……ごめんなさい。」

一輪「………」

聖「私のせいで、星や村紗、それにナズまで……」


一輪「姐さんは何も悪くないです!!
自殺した小傘がいけないんです!!」


聖「……そう……“自殺した”小傘ちゃんが……」


一輪「姐さん……姐さんだけは、やめないで下さい!演劇部を……」


聖「……小傘や星達にあれだけの迷惑をかけた私に、もう演劇部を続ける資格なんか……。
いえ、もう生きることすら許されない……」

一輪「駄目です!!姐さん!姐さんが今ここで諦めたら……!!
私達の!!……星達の気持ちを考えて下さい……」


聖「………」

《三日目am04:30~東館ホール》


アリス「先輩!」

咲夜「森近さん!!しっかりしてください!!」



魔理沙「なんだよ!?どうしたんだ!?」

咲夜「森近さんがいきなり倒れたんです!」

魔理沙「なんでだよ!?どうした!?おい!!」


永琳「……駄目です。息を引き取られました。」

魔理沙「……なんだと……?」

霊夢「いきなり倒れたの!?何か飲まなかった!?」


美鈴「……コーヒーを……皆で飲んでて……」

霊夢「コーヒー!?誰がそんなの用意したの!?」

永琳「……私が……。眠気覚ましにと思って……」


魔理沙「……嘘だろ……こーりん……。
おい……返事をしろよ……」


霊夢「他に身体に異常を感じる人は居る!?」

咲夜「……いえ。」

てゐ「私達は普通に美味しく頂きました。」

早苗「てことは、森近さんのコーヒーにだけ毒でも入ってたのでしょうか?」


霊夢「……コーヒーを配ったのは誰?」

鈴仙「私です。」

霊夢「……砂糖とか、ミルク、スプーンは誰が?」

アリス「砂糖は私がいれたわ。」

てゐ「スプーンは私が渡しました。」

輝夜「最初にスプーンを持ってきたのは私ですわ。」

霊夢「……いや、もういいわ。どうせコーヒー配った後も皆動き回ってたんでしょ……。」


文「そうですね。ここに居る全員に、森近さんのコーヒーに毒をいれるチャンスがありましたね。」

美鈴「ちょっと待って下さい!なんで誰かが毒をいれたことになってるんですか!?」


咲夜「……霊夢、どういうことなの?」


霊夢「………。
理由は分からないけど、誰かが毒をいれたのよ。霖乃助のコーヒーに……」

早苗「……もちろん、その誰かには霖乃助さんも含まれているんですよね?」


霊夢「………」

アリス「早苗さん?何を言ってるの……?」

早苗「つまり、連続殺人犯が犯行を暴かれたすえの自殺ってことですよ。」


魔理沙「………ふざけるなよ……」

早苗「ん?」

魔理沙「こーりんが犯人なわけないだろ!!自殺なんてあってたまるかよ!!
犯人によって罪を着せられて殺されたんだよ!!」


霊夢「………」


咲夜「……霊夢。広間で携帯を1つ見つけたわ。」

霊夢「そう、私のじゃないわね。誰のか分かる?」

てゐ「あ、それってナズーリンさんのですよ。」

霊夢「そう。なら、まず救急車、そして警察を呼んで。
そしたら、私や魔理沙の携帯にかけてみましょう。」

魔理沙「……なんなんだよ……霊夢……」

霊夢「何?」

魔理沙「こーりんが死んだっていうのに!さっきから淡々と……!!」

霊夢「……悪かったわ。」

魔理沙「……謝んなよ……なんでそこで謝るんだよ……」

《続く》



登場キャラの簡単な設定
《前提》東方プロジェクトキャラを使用してますが、全員人間です

・幻想高校勢

博麗霊夢…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

霧雨魔理沙…幻想高校2年。探偵部所属。巷で話題の女子高生名探偵。

アリス・マーガトロイド…幻想高校2年。裁縫部所属。八雲学園演劇部の衣装作りをしている。

十六夜咲夜…幻想高校1年生。裁縫部部長。

紅美鈴…幻想高校1年。咲夜の友人。

(死)森近霖乃助…幻想高校3年。文芸部所属。ナズーリンの死亡後に、犯人として軟禁される。その中、毒の入ったコーヒーを飲み死亡した。


・八雲女子学園勢

聖白蓮…八雲高校3年。演劇部部長。

(死)寅丸星…八雲高校3年。演劇部副部長。西館322号室にて絞殺される。

(死)村紗水密…八雲高校2年。演劇部所属。東館204号室にて絞殺される。

雲居一輪…八雲高校2年。演劇部所属。

(死)ナズーリン…八雲中学2年。演劇部所属。東館の1F広間で起きた停電騒動の最中に絞殺される。


(死)多々良小傘…八雲高校2年。演劇部所属。ネットブログ『小傘の恋話日記』の作者。合宿より3ヶ月前に部室で首吊り自殺をはかる。


蓬莱山輝夜…八雲高校3年。高等部生徒会会長。

鈴仙イナバ…八雲高校2年。高等部生徒会書記。

てゐ…八雲小学校6年。小等部生徒会会長。


射命丸文…八雲高校2年。新聞同好会所属。

古風谷早苗…八雲高校2年。新聞同好会所属。多々良小傘の友人。


・その他

永琳…輝夜の家に仕える使用人。合宿メンバーの世話係。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月12日 (日) 04:03:42   ID: 50AX-_vb

続きはよ

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