女勇者・魔王「「こうなったら本気でヤるしかない」」(53)


○●○ 魔王城 ○●○

扉 バターン!!


魔王「………む。 何奴?」

女勇者「…ようやく、見つけた! ここが魔王の玉座!!」

魔王「ほう。 人間の女か……、何しにきた」

女勇者「貴方が魔王ね!?」

魔王「いかにも。俺が魔王で間違いないが…。 ふっ、お前はなんだ? 生け贄にでもだされた娘か?」

女勇者「~~っ! 似たような物だけど、私は勇者よ!」

魔王「勇者…?」

女勇者「そうよ!」キッ


魔王「は… はは、ははははははははは!」

女勇者「な、何がおかしいの…!?」

魔王「こんな小娘が勇者だと!? なんの力も! 覇気も! 闘気すらも感じぬこの小娘が!?」

女勇者「っ」

魔王「人間め、ついに血迷ったか! それとも、供物でも捧げたつもりなのか!!」

女勇者「…そう、かもしれない。でも、私はそんなつもりできたわけではないわ!!」

魔王「倒しにきた、と? 本気で言うつもりか? おまえなど、俺が魔力を解放するだけで一瞬で…」

女勇者「もちろん、必要があれば剣を交える! でも、まずは魔王! 今日は貴方に聞きたいことがあってきたのよ!」

魔王「ふ……、なるほど? 討伐だけが方法ではないとでもいうつもりか…」


女勇者「あまり油断しないほうがいいわ。…答え次第では、あなたを斬るのも本気よ!」

魔王「ほう、度胸だけは認めてやろう。まあ、それができるとも思わぬがな…」ククク

女勇者「それは、どうかしらね…?」

魔王「ふん…よいだろう。 所詮なんの脅威もない相手だ。 愛玩動物にするように、少しくらい戯れてやってもよいぞ」ククク

女勇者「幸運なことだけれど、ありがたくはないわね」

魔王「だが俺に何を聞く? 聞いたところでなんとする?」

女勇者「魔王…」

魔王「……なんだ?」

女勇者「貴方…… 貴方は…」

魔王「ふふ… どうした。臆せず、申してみろ」

女勇者「お、女は 好き!?」

魔王「はっ?」


女勇者「答えなさい!!」

魔王「……貴様、馬鹿にしているのか?」

女勇者「そんなつもりはないわ。私は真剣よ!」

魔王「では、お前ごときが、色香を対価に何か俺から引き出そうとしているのか?」

女勇者「ふざけないで! 私は色仕掛けなど使うつもりはないわ! 早く質問に答えて!」

魔王「……」

女勇者「どうなの……?!」


魔王「……くだらんな」

女勇者「くだらない…?」

魔王「女? 確かに楽しむこともあるが、俺にとっては数ある余興のひとつに過ぎん」

女勇者「では、貴方は女好きではない、ということね?」

魔王「本当にくだらぬ。そんなものにうつつを抜かすほど暇ではない。まったく、何を聞くかと思えば…興醒めもいいとk…


女勇者「や…」

魔王「や?」


女勇者「やったあああああああああああああ!! よかったあああああああ!!!」ウワーイ!

魔王「……は?」

女勇者「魔王が色狂いな答えをするようだったら、本当にどうしてくれようかと思って!!」

魔王「……斬るつもりだったのだろう?」

女勇者「斬れるかどうかなんてわかんないし、そういうのも悩んで、もう禿げあがるとこだったよ!」ヘナヘナ…

魔王「……ずいぶんとつまらぬことで真剣に悩むのだな、人間のメスは」

女勇者「メスってゆーなー!!」プンプン

魔王「おい、キャラクター」

女勇者「だって、なんか緊張抜けちゃって…」テヘヘ


魔王「……それで? そのような事を聞いて、お前はなんとする?」

女勇者「はっ。そうだった!」ガバッ

魔王「……?」

女勇者「いい、魔王!? よく聞いて、一度しか言えないわ!」カツ、カツ、カツ…

魔王「ふん、何を……。 やはり打倒宣言か? それとも…」



女勇者「魔王! お願い、たすけてっ!」ダキッ

魔王「えっ」タジッ



女勇者「お願い、はやくっ! ほんとにもう時間がないのっ」

魔王「ちょっとまて、貴様、何を…」


女勇者「と、とりあえず貴方のこのマントの中、いれさせてねっ!」バサッ

魔王「おいやめろ、抱きつくな! なんのつもりだ!?」

女勇者「一回しか言わないって言ったでしょ! 時間がないの! とにかくお願いだから私を守って!!」モゾゾゾ

魔王「いや、おまえ それでも本当に勇……」



扉 バターン!!


?「勇者ァァァ!」

魔王「~~~~~っ 今度は何者だ!」

?「てめぇ!? 何者だ、どっから沸いてでた!」

魔王「魔王城の玉座に乗り込んできてその言い草、いい度胸だ! 誰のセリフだと思っている!!」

?「魔王城… 玉座だと? ここが?」

魔王「知らずにこの最奥まで来たとは言わせぬぞ!!」


?「へへへ… そりゃ知らなかったなぁ。すまねえこった」ニヤニヤ

魔王「貴様…これ以上の容赦はできぬぞ」

?2「まあまあ…」スッ

魔王「……ちっ、もう一匹いたか」

?2「ここは魔王城の最奥…そして玉座…でしたか」

魔王「そちらの方は、少しは人の話をきいていたようだな」

?2「ええ。そして…お話を聞く限り判断できるのは…」


?2「貴方が、この城の城主…。 魔王、ですね?」

魔王「ああ。いかにも… 俺が“魔王”だ」


?「へぇ…」ニヤ

?2「ふふ…魔王、ですか…」クス


魔王「お前ら。魔王の御前でのその態度…後悔しても遅いぞ」


?2「ふふ…これはいいです。 勇者さんが探し求めていた方に、ついにお会いできたとは」

魔王「勇者……? 小娘のことか?」ピク

?「!! そうだ! 貴様、ああ、魔王!! 勇者を見なかったか!?」

魔王「無礼者に、答えてやる気は無い」

?2「おっと、これは僕とした事が失礼…。僕は魔術師と申す者」

魔術師「そしてあそこのデクノボウが武道家です、どうぞお見知りおきを…」フフ

武道家「んなことはどうでもいいんだよ! 確かにあいつはこっちに走っていったんだ!! 隠しだてすっと、タダじゃ…」

魔王「ふん…。 よいだろう。お前らの言う勇者というのは……」


魔王「ここにいる、コレのことかっ!!」バサァッ

女勇者「ひゃっ!!」ビクッ


魔術師「勇者さん!」

武道家「勇者!」


女勇者「うっ…。 ひ、ひどいよ魔王! 助けてっていったのにぃ!」ポカスカ

魔王「誰が助けると言った? 殺してやってもよいが、貴様相手に助けてやるような義理はない」

女勇者「ごもっともだけどっ! 女の子が困ってるときは助けるのが男ってもんでしょ!」グスグス

魔王「はっ! 笑止! そのような人間の真似事に付き合うつもりはない」

武道家「てんめぇ……魔王! 勇者を泣かせやがったな!」

魔王「な、泣かせた?」

魔術師「魔王さん、許しませんよ。僕の勇者さんを泣かせた罪、万死に値します!」

魔王「いや、まて。おまえら、こんな事で泣くような勇者に何かもっと他に…」


女勇者「魔王のばかあああ」ポカスカ、グスグス

魔王「おい!? お前もやめろ!!」


武道家「テメー! 俺の勇者と いちゃついてんじゃねぇ!」イラッ

魔術師「見せ付ける気ですか!?」ムカムカ

女勇者「やぁんっ、あいつらがくるよぉ! 魔王たすけてえ!」ギュー

魔王「~~~っ なんなんだお前らは!!!」


武道家「オラァァァァァ! 魔王、死にさらせぇぇ! 格闘奥義『超爆裂弾』ッッ!!」ダッ、ダガダガダガ!!

魔術師「では僕も!! 極大殲滅呪文『業火』ッ! 喰らいなさい!」

魔王「ちょっ!? 待て、いきなり……」サッ バサァッ!!!


シュカカカカ…
シュワァァァァ……


武道家「な…!?」

魔王「今…何をした?」ニヤリ

武道家「弾いた!? 違う、当たってない!?」

魔術師「ぼ、僕の呪文が効かないなんて…!?」


魔王「……ふん。そんな小手先の武術と魔術、この俺にあたると思うのか?」クク


女勇者「すごおい! 魔王、かっこいい!!」ギュッ♪

魔王「ああ……まだ居たのか。小さくて、くっついてるのを忘れそうだな、お前…」

女勇者「えへへ、魔王つよいっ! あいつらにも遅れを取らないなんて、やっぱり魔王のとこにお願いにきて正解だったよ!」

魔王「……ちょっとまて。もしやお前、あいつらから守れといっていたのか?」

女勇者「そうだよっ!」

魔王「あれはお前の仲間なのでは?」

女勇者「な、仲間だとおもってたけど、大間違いだと気が付いたんだよ!!」

魔王「…は?」


武道家「……おい魔王! いつまで勇者を抱いてるつもりだ?! いい加減にその手を離しやがれ!」

魔王「おかしなことを言うな! 俺は指一本触れていないわ、こんな小娘!!」

魔術師「では、その首に絡みついてる麗しいものは一体なんだというのです!!」

魔王「こいつが勝手にしがみついてるのだ! ええい、離れろ!」ブンブン

女勇者「は、離さないもんっ」ムギューー!


魔術師「なっ、なんという役得…じゃない。貴方のような穢らわしい存在が近づいていい方じゃないのですよ!」

魔王「近づいてきたのもこいつからだ!」

武道家「てめぇ、さっきから馬鹿にしてんのかぁぁっ!!」

魔王「それはこっちのセリフだぁぁっ!!」

魔術師「ちょっとくらい勇者さんに求められたからって、いい気にならないでくださいね!!」

魔王「どうでもいいから話を聞けぇぇっ!!」


女勇者「ねえ魔王っ、お願いっ! 私を連れてここから逃げて!!」

武道家&魔王「「なっ」」


魔術師「勇者さん?! 血迷ってはいけません! 貴女が選ぶべきはこの僕です!!」

武道家「なんだとてめぇヘボ魔術師! さっきからおまえこそ調子のんな!!」

魔術師「文句あるなら受けてたちますよ、脳筋さん!」


魔王「おい、ちょっとまておまえら…何をいきなり!」

武道家「んだと魔術師ィィィ!!オラァァァァァァ! 秘義!『神の鉄槌』ィィ!!」

魔術師「そんなものっ! 秘術『神の結界』ッ!!」

武道家「『連弾』ッッッ!!」ドガカガガガガガッ

魔術師「くっ!これは……『飛翔』!!」ヒュッ、シュパーーーン!

武道家「テメェ! 逃げるのか!!」


魔王「~~~~っ本気で迷惑だ! 明らかな総力戦を仲間内でするなっ!」

武道家「うっせえ!! 弾かれたくなければさがってろ!! 『神速絶技』!破!!」

魔術師「怪我をしてもしりませんよ!! 『無限防壁』!!絶!!」

魔王「しかも俺に攻撃したときよりも威力が上がっているではないか!!」


女勇者「さあ魔王、今のうちに逃げよう!!」グッ

魔王「お前も仲間なら止めろ!!」イラッ

女勇者「止められないよあんなの!!! 『転移』っ!!」シュパァァァァ!

魔王「うあっ!?」ガクンッ


武道家「あっ! 勇者ぁぁッ!!」

魔術師「勇者さん! 甘いです、逃がしませんよ!」

女勇者「お願いだからもう私の事は探さないでぇぇーー……! ぇぇーー…! ぇぇー…!(エコー)」


武道家「勇者ぁぁぁぁっ!」

魔術師「勇者さんんんんっ!」


―――――――――――


○●○ 世界の果て ○●○


ヒュパンッ!


魔王「!?!?!」ガクン

女勇者「やった! 過去最長距離だわ、さすが魔王の魔力!!」グッ

魔王「俺の魔力を勝手に使うな!! むしろどうやった!」

女勇者「さあっ! 魔王、一緒に逃げよう!!」グッ

スパコーーーーン!!

女勇者「いっ、いったぁぁぁぁぁい!!」

魔王「剣を抜く暇すらも惜しかった。素手でよかったな、まだ死なずに済んだ」

女勇者「そういう問題じゃないでしょ!? 何するの魔王!」

魔王「おまえこそなんのつもりだ、勇者っ!! こんなところまで…!!」

女勇者「言ったでしょ! 魔王に私を助けてほしいの!」


魔王「お前は勇者じゃないのか!?」

女勇者「勇者だよっ! ちゃんと王国の所属証明と勇者紋章もってるよ!」

魔王「そうじゃないだろう!?」

女勇者「なっ、なによぅ…!」タジッ

魔王「お前が勇者なら! この俺……魔王を倒しに来たのではないのか!?」

女勇者「しないよ、そんな勿体ないこと!!」キッパリ!!!

魔王「WHY!?」

女勇者「勇者に匹敵する力を持つのは魔王だけなんだよ!?」

魔王「だからこそ勇者は、魔王を討ち取るために存在するのではないのか!」

女勇者「……っ」


魔王「……ふん、ようやく自覚したか」


女勇者「…無理に巻き込んで悪かったとは思ってるわ。でも、お願い。きいて、魔王」

魔王「……なんだ」

女勇者「確かに私は、魔王を倒せと命令された」

魔王「そうだろうな」

女勇者「でもね… 魔王は私一人じゃとても倒せるとも思えなかったの」

魔王「ほう?」

女勇者「私は、女だし…… ただの武器防具屋の娘で。そこまで自分に自信がなかったの…」

魔王「ふん…、いまさら殊勝ぶるか。やはり色仕掛けでも仕掛ける気なのか?」

女勇者「違うのっ!」

魔王「……まあいい。こんなところまで連れてこられて、どうせすることもない。魔力を連続使用するのも気鬱だ」

魔王「少しならば聞いてやろうではないか」フイッ

女勇者「…ありがと、魔王」ニコッ


魔王「ふん。魔王相手に愚痴などと。冥土の土産にしては豪勢なことだな、勇者」

女勇者「まだ死ぬつもりはないよ。魔王に守ってもらうし、きっと大丈夫」

魔王「はっ、好きにほざいているがいい…」

女勇者「……座ろっか」

魔王「勝手にしろ」

女勇者「……うん」

魔王「………」


女勇者「……私は最初、啓示を受けて王国から旅に出たわ」

女勇者「最初は、ただのスライムにも苦戦したの」

魔王「本当にただの村娘のレベルだな」

女勇者「うん…そう。 ただの、村娘だったの」


女勇者「でも、旅に出たからには敵を倒さなくては殺されてしまう」

女勇者「旅を続けるには、強くなければならない」

女勇者「私ひとりじゃ不安だけど…強い仲間がいれば、きっとできる」

女勇者「そう信じて、世界を旅しながら強い仲間を探してきたの…」

魔王「……無駄なことを。そんなことをしたところで、俺を倒せるはずが…」


女勇者「そうなのーーー!! 無駄だったのーーー!! 超後悔してるーー!!」ウワァァン!

魔王「おい、テンション」ハァ・・・


女勇者「はぁ…だってぇ」

魔王「戦う前から敗北宣言か?」

女勇者「ううん。本気で仲間と力を合わせられれば……、あなたにも勝てるかもしれないわ」

魔王「ははははは。いい度胸ではないか、さきほどまで助けを請うて泣いていた女が」

女勇者「だ、だってぇ」


魔王「では力を合わせて、倒せばよいではないか。俺に媚びいる必要などなかろう」フン

女勇者「その、仲間が強すぎて…。 なんていうか次元跳んで、嗜好が偏ってる人ばっかで…」

魔王「……?」

女勇者「とてもじゃないけど、力を合わせるとか無理だし…」ブツブツ

魔王「は……? 仲間の話をしているのではないのか?」

女勇者「な、なんかね。みんなして変態なの」ボソッ

魔王「……?」

女勇者「しかも強いの。もう私一人じゃ逃げられなくて……どうしていいかわかんなくて…」ウルウル

魔王「WHAT?」

女勇者「んっと……。 た、たとえばね。その…あの…//」

・・・・・・・


○ 女勇者の回想 ○


女勇者「はぁ~…。 今日はつかれたね、魔術師君!」

魔術師「そうですね、勇者さん。今日は連戦でしたから」

女勇者「ごめんね? 無理に 魔術村から君を連れ出した挙句、いきなりこんな…」

魔術師「いえ。勇者さんのお役に立てていれば、嬉しいです」

女勇者「えへへ! すっごく大助かりだよ! ありがとう!」ニッコリ

魔術師「……ふ。勇者さんのその笑顔ほど 強い魔術を見た事がありませんよ…」ボソリ

女勇者「?」キョトン

魔術師「…そうだ。せっかくですから、もっとお役に立ってみせましょうか?」ニコリ

女勇者「えっ? そんな、無理はしなくていいよ!」

魔術師「いえ。是非、やらせてください」


女勇者「んー… じゃあ、お願いしようかな。 何をするつもりかよくわからないけど、よろしくね、魔術師君!」ニパー

魔術師「ふ。お任せください勇者さん!!!」スタッ!

女勇者「? 魔術師くん?」


魔術師「では早速ッ! 秘術『極限回復』ッ!」シュワアアア

女勇者「ひゃぁっ! ん、なにこれ!? すごい、身体がポカポカして…!!」

魔術師「か・ら・のー…、 『気力UP、3倍』!」

女勇者「あああっ! なんだかすごくキモチが昂ぶる!!」ゾクゾク!

魔術師「仕上げは 『俊敏、2倍』!!!」

女勇者「んんんっ! 感覚が尖っていくよぉ!!」ブルッ!


魔術師「というわけで、その状態でマッサージをさせていただきますね」サワサワ

女勇者「ああっ、まって、だめ、脚さわられただけで、なんだかすごく!!!」

魔術師「もーみ もみもみ」

女勇者「ツ、ツボを的確についたらイヤァァァァァァ!」ビクゥゥゥ!

魔術師「ふふふふふ、さあ気持ちよくなってきたでしょう! ここは内臓疲労によく効きますからね!」

女勇者「あああああっもうらめえええええ!! 血が流れちゃうぅぅぅ!!!」


――――――回想おわり――――――


女勇者「み、みたいな?」

魔王「まったく意味がわからない」

女勇者「で、でもっ! 胃のあたりがきもちよくなってるスキに、写真取ったり、匂いをかいだり、こっそりあちこち舐めたりもするんだよあの人!!」

魔王「それは……さすがにちょっと気色悪いな…」


女勇者「ぶ、武道家は…武道家で…もっとこう、直接的で…」

魔王「あいつもなのか…」


○ 女勇者の回想 ○

女勇者「武道家くん! 手加減なしで、打ち合い! よろしくね!!」チャキッ!

武道家「ああ。まあ、怪我させない程度に相手してやるよ」ニヤ

女勇者「言ったなぁ~ えいっ! いくよ! 覚悟!!」ダッ!

武道家「ハハハ! 甘い甘い! 勇者は甘いんだよッ!」ダッ、ドガッ!!

女勇者「!! っつ~~… い、一瞬で倒されるなんてぇ…」

武道家「おら。どうだ、組み伏された姿勢から、起き上がれるか?」グッ

女勇者「や、やってみる!」グッ

武道家「まだまだー」

女勇者「~~~~~っ」グググググ

武道家「……ひょーい」ストッ

女勇者「うひゃぁっ!」スカッ


武道家「あははははは。 まあ、まだまだだな。力をいくらいれたって解けるもんじゃねぇよ、こういうのは」

女勇者「武道家くん! い、いまのやつ! 私にも教えて!!」

武道家「え…… って、組みワザのことか? 本気か?」

女勇者「うん! おねがいっ」キリリッ

武道家「足とか、おっぴろげるような体勢になったりすんぞ…?」

女勇者「っ。 で、でも。きっと知っておくだけでも、すごく役に立つと思うの!」

武道家「はは…」

女勇者「お願い…! 教えてください!」ペコリ!

武道家「勇者は、真面目で一生懸命で。本当におまえは仕込みがいがあるよな」

女勇者「え?」

武道家「おい、勇者」壁ドン!

女勇者「!!」

武道家「逃げてみろよ」ジッ

女勇者「え、えっと…武道家、くん?」


武道家「………ああ。本当に勇者は、甘いな…」フッ

女勇者「ぶ、武道家くん。まって、どうしたの?」

武道家「……チッ。まあ、今日はこのくらいにしといてやるぜ!」プイッ

女勇者「……武道家くん…」

武道家「じゃあな。あんまりスキみせてんじゃねえよ、ばーか」

女勇者「うん、わかった。 だからとりあえず、こっそり脱がせた私のベルトは返してくれる?」

武道家「ギクリ」

女勇者「武道家くんに貸すと、なんかやたら伸びきってたり変なロウソクの跡ついてたりするからヤなんだよね……」ボソ

武道家「き、気のせいじゃないか?」

女勇者「一昨日くらいに、部屋から『女王様ァァッ!』って聞こえてきたけど?」シラー

武道家「」


―――――――回想 おわり――――――


女勇者「ってかんじで…結局、まともそうに見えても、ドあつく危ないんだよね、なんか…」

魔王「oh」


女勇者「しかもほんとに、二人とも強いの…」

魔王「なんというか…なんでそんな変態を集めたのだ」

女勇者「強さこそ正義、みたいなところがちょっと…」

魔王「……正義を語るつもりはないが、節穴のようだな、お前の目は」

女勇者「うん、でも強さは本当に折り紙つきだよ?」

魔王「ほう…まあ、そうだな。なかなかの攻撃力はありそうだった」

女勇者「私じゃ、本気出されたら抵抗しきれないよ」ハァ…

魔王「憐れんでやってもよいが…。お前も勇者なら、何かないのか、抵抗手段は?」

女勇者「得意魔法は、さっきみたいな転移術かな。さっきのやつのほかにも、仲間のほうだけをぶっとばす 『バシルーラ』とk…」


シュパアアアアアアアッ

魔王「うぁ!?」

女勇者「あっ」


バシュウウウウウウウウウウウ!


○●○ 魔王城 ○●○


シュパン!!


魔王「っ!」スタンッ!

魔術師「!? ……魔王!?」

魔王「はっ!? 何故俺は一人でここに!?」


武道家「てめえ! 今のは…勇者のバシルーラだな! 間違えようもねえぜ!!」

魔王「! あの馬鹿勇者、うっかり俺相手に発動させやがったのか…」

魔術師「勇者さんがバシルーラを使うとき… それは貞操の危機を感じたとき!!」

武道家「はっ!! 貴様、勇者に何しやがったぁぁぁぁ!!!!」


魔王「もうなんか ほんっっっと こいつら面倒くせえ……」ハァ


魔術師「…魔王さん。覚悟はいいですか?」

魔王「覚悟だと?」

魔術師「勇者さんに何をしたかはわかりませんが…こうなった以上、総力戦でいきます。もう許して置けませんッ」キッ!

魔王「ほう?」

武道家「ああ、俺もさっきみたいに かわさせたりはしねえぜ…」ニヤリ

魔王「ふっ、それでこそ魔王対勇者パーティ戦というもの……。望むところだな」ニヤリ

魔王(まあ、肝心の勇者がいないが)


魔術師「ぼんやりしていると、こちらから行きますよ! 先制、『守備力低下5倍』!!」

武道家「いくぜ! 心技一体ッ『THE・荒舞竜――12連攻撃』!!!!」


魔王「フンッ!」スラッ…

ジャキン!! ガギンガギンガギンガギンガギンガギンガギンガギンガギン!!!


武道家「な…なんだと!? 俺の打突の全て、剣一本で受け止めただと!?」

魔王「ふはははは。こんなもの」

魔術師「くっ、こうなったら…」

魔王「ああ…魔術師とやら、後悔するのだな。 先ほど、まず一番初めに、攻撃力を落としておかなかったことを――!」

魔術師「!?」


魔王「 魔王剣『一閃』 」ユラッ… 


シュッ… スパッ


武道家「なっ!! 服が…服だけを切り落としただと!? 防御姿勢なのにか!?」

魔術師「オ、オリハルコンの杖が!! なんと強靭な剣でしょう!!」

魔王「何、余興だ。そちらばかり先に手駒を見せて来たのでな…フェアでなかろう?」


魔術師「こ、これは…!」

武道家「強い…!? なんて無駄のない動きだ!!!」


魔王「俺を誰だと思っている。 さあ、次だ…いくぞ? よく、“見て”おけよ」ニヤリ

魔術師「!」


魔王「 幻術『 影 』 」ブオン…

ス…… スススススス…


武道家「な… 魔王が… 何人も…?」

魔術師「くっ、なんて魔術! どれも実体のような魔力と気を感じます! これではどれが本物か…!」

魔王(複数)「「「 何、すべてを倒せばよいだけのことだろう…? 」」」

武道家「ああ…そうだなぁ、やってやるよ…!!」ニヤッ

魔王(複数)「「「 全ての俺の 攻撃をかわせるのなら、な 」」」


魔王(複数)「「「 召喚 『紫電』 」」」

魔術師「な… 雷を、召喚した…?! これは!!! あぶない!!!」


武道家「くそっ!! おい、魔術師!! 結界で守れ!! 俺も同時防御をする!!」

魔術師「なっ…! 失敗したら揃って道連れですよ!?」

武道家「バラであの攻撃をかわせるとは思えねえ!!」


魔王(複数)「「「 ははははははは!! 集まったところで、かわせるはずもないがな!!! この雷が落ちるとき、おまえらは消し炭だ!! 」」」


魔術師「くっ…それしかないようですね…! わかりました! 僕が上部に、重複結界を張ります!」

武道家「じゃあおれは、威力分散と補強をする! 癪だか、しっかり息あわせろよ!!」

魔術師「生きて! 必ず!!」

武道家「勇者に会いに行くんだ!!!!」


魔王(複数)「「「 くだらん… 死ね 」」」


魔王(複数)「「「 降雷 」」」


シュパアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ドガアアアアアアアアアアン!!!


モワアアアアアアアア……

シュワワワワ……

魔王(複数)「「「 ……ふむ、もうよいか 」」」

シュッ… ボワン



魔王「さて。黒煙がのぼっているが… ふふ、さぞ不味そうなステーキが焼けていることだろう」


?「い、いた…! いったぁい……っ!」


魔王「?」

女勇者「いったーーーーーーーーーーーーいいいいいいい!! 何!? 今の!?」

魔王「ゆ、勇者?!」


魔王「おまえ…… いつのまに、ここに?」

女勇者「ル、ルーラで飛んできたんだよ! 私だけの魔力じゃ何回もルーラ繰り返さなくちゃいけなくて…」

魔王「ああ、それでこんなにもタイムラグが…」

女勇者「ようやく到着したと思った瞬間に、なんかすごいビリビリが…!?」


魔術師「……勇者、さん?」

武道家「おまえ、まさか… 俺たちの代わりに、アレを受けたのか!?」

女勇者「アレ??」


魔術師「魔王の、雷です!! とてつもない威力だったはずなのに…ご無事なのですか!?」

女勇者「カミナリ? え、もしかしてさっきのビリビリ… 魔王の、雷術だったの…?」


魔王「……俺は、魔と雷を属性に持つ。よく、耐えたな…流石は勇者ということか」ニヤリ

武道家「そうか…勇者も、光と雷の属性だ! それで耐性防御が効いたんだな!?」


女勇者「魔王の…雷…」ブルッ


魔王「ふ… ふははは!! まさかあれに耐えられるやつが居るとは。だが、次はないぞ」

女勇者「な… なくなんかない!」

魔王「いいや、ないさ。今度こそ…消し炭に、してやる」ニヤ… 


パチパチパチ… ビリビリビリ…


女勇者「あ…ああっ…」ブルブル…

魔王「ふ… いい顔だな、勇者…」ニヤ


女勇者「うん! ほんとたまらない! 喜んで!!! ガンガン雷落としてぇ魔王っ!!」


魔王「は?」


魔術師「ああッ!?」


武道家「何だと!?」


女勇者「私、雷を使うけど… 他に雷使うヒトなんてみたことないし…。どれだけ痛いのかなって不安だったの…」トローン

魔王「い、痛いだろう?」

女勇者「うん… ビリビリして、心を打ち射抜かれるようで、とっても…キモチイイ//」ウットリ

魔王「なんだ…その恍惚の表情は…」

女勇者「魔王、お願い… もっと、打って?」ペターリ

魔王「や、ちょ、まて なんだかお前も…」

魔術師「くっ…女勇者さんはドS属性だと思っていたのに…まさか真性の超ドMだったとは!」

武道家「くそぉぉぉ!! 女王様練習までしてたのに!!!」

魔王「えっ… え?」

女勇者「魔王… ね? 早く、お願い… 私を射抜いて…?」ウワメヅカイ―


魔王「~~~~~~~~~~~~っ」


魔術師「こうなっては…仕方ありません。みんなで協力して、勇者さんを気持ちよくしてあげましょう」

武道家「あ、ああ…。 雷は 勇者のほかは魔王にしか使えねえ。くやしいが…」

魔王「ちょっとまて? 何をようやく仲間意識を芽生えさせているのだ、貴様ら!!」

魔術師「貴方に教わりましたからね! 息を合わせるという素晴らしさを!!」

武道家「俺たちは、よき好敵手!! お互いに昂めあおうぜ! …っと、ハハ、高めあおうの間違いだな!!」ハハハ!

女勇者「魔王を選んでやっぱり最高によかったぁ…っ」トロン

魔王「」


女勇者「ちゃんと、私も魔王のことキモチヨクしてあげるからね・・?」

武道家「なら、俺がしっかり固定しておいてやるよ… 俺の最強特技は“拘束”だ」

魔術師「僕は“支援魔法”が得意なんですよ…フフフ」


魔王「お、おい… おまえら」


勇者パーティ「「「 さあ 楽しい魔王戦のはじまりだ 」」」

―――――――――――――――――――――

変態しか居ないのか…


○●○ 数年後 ○●○


子供「ねーねー それで、どうなったのー?」

母親「神族戦争の始まりね。魔王は助けを求めて女神の元へ走ってきたのよ」

子供「神様のところに? 魔王が?」

母親「勇者が魔に願うくらいだもの。魔王だって神頼みくらいするわ」

子供「女神様と魔王はどうなったの?」

母親「勇者一行との戦争…を避けようとして、天に昇ったのだけどね」

母親「勇者は転移が得意だったから、天界まで追いかけていって、そこで大戦争が起きて」

子供「天界追放?」

母親「天界追放」ハァ

バサッ…

父親「おい、ちょっといいか」

母親「あなた…」


母親「ふふ、ちょうど イイトコロを話してたのよ」

父親「イイトコロだと?」

母親「あのときのあなたの話。とっても可愛かったわぁ、うふふ」

父親「おいやめろ、何を言う」

母親「 『女神とやら、どうか頼む! 俺を助けてくれ!』って、ひざまずいちゃって」クスクス

子供「えー? パパがー?」

父親「や、やめろやめろ! そんなの俺じゃない!!」

子供「パパって強いんじゃないの?」

父親「強いぞ。強いがな、人間っていうのは怖いんだ」

母親「なんなのかしらね、あの一致団結したときの異様な上昇能力」

父親「なんかもうバロメーターの上がり方がバグのレベルだよな」


母親「人間ってこれだからいやよ。その癖にやたら弱ぶるし」

子供「お母さんは、人間嫌いなの?」

母親「お母さんが好きなのはお父さんだけよ」

父親「……本当に、人間なんか相手にするもんじゃないって よくわかった。女神のがよほどマシだな」

母親「フフフ、そういうことにしておいてあげるわ」

父親「~~~っ はっ! そうだ!」

母親「どうしたの? あなた」

父親「ああ、またアイツらが迫っているようでな。 ここもそろそろ危ないかもしれぬ」

母親「え? また…?」

父親「引越しの準備をしよう。まったく…」

母親「本当にしつこいのね、あの子たち… 確かあっちはあっちで 子供だって作ってたでしょう?」

父親「ヘンタイってのは怖いな。 向こうの子供たちがそれぞれヘンタイで無ければいいのだが……」

子供「…ん? あれぇ?」パチパチ…ピリピリ…


父親「どうした、娘」

母親「…あら? 娘ちゃん… それ、雷じゃ…」

子供「わぁ! 雷だあ! パパみたいに、雷つかえるようになったよ!!」パチパチ!

母親「まぁ! すごいわ、娘ちゃん! 今夜はお赤飯ね!」

父親「……ちょっとまて、俺の雷は “紫電”だ。これは…」

母親「…き、金色ね」

父親「…お前に似て、光属性のようだな?」

子供「ねえねえ、私、光と雷の属性なの? なんだかそれってまるで…」

父親「………勇者、だな」

母親「ええ。勇者の才能ね…」


父親「……どうしたらよいものか」ガックリ

母親「こ、こっそりどこかに隠れ住みましょう!」

魔王「だ、だがおまえ、仮にも勇者の才能を…」

母親「アッチの勇者に見つかったら、この子まで狙われてしまうわ! 百合勇者とか嫌よ!!」

父親「そ…、そうだな。確かに、もう勇者とかそういうことを言っていられる状態じゃない」

母親「でしょう!?」

父親「こうなったら小さな村とかにひっそり隠して…!」

母親「普通の村娘として! 育てましょう!」

父親「ああ! 必ず! 勇者から守るんだ!!」


子供「………あれ? なんだかそれって…?」

―――――――――――――――――


○●○ 一方 勇者パーティ ○●○

女勇者「わあーっ すごい、すごいよ、魔術師Jr!!」

魔術師Jr「父さんの魔力と、母様の雷…」

女勇者「ふふ。まるで、“魔王”みたい…」ナデナデ…

魔術師Jr「ええ。魔と雷の属性です、この才能があれば、実際に魔王にだってなれますよ、母様」

女勇者「たまには私にも雷うってねぇ…」ウットリ

魔術師「ふふふ、僕と勇者さんの遺伝子…なんて素晴らしいのでしょうか」

武道家「ふん、そんなもの」

武道家子「魔Jrくん、かっこいいー♪」

武道家「おいおい、娘よ…」

武道家子「私、魔Jrくんのこと組み伏せたくなっちゃうっ 一生懸命守ってあげるね」ダッ

魔術師Jr「ああ、芳しき四の字固め」ギリギリギリ


武道家「ふ、勇者に似て 真面目で一直線で 好きなものには迷いが無い… ナイスだ娘!」

魔術師「いいから息子を解放してください、武道家子さん」


魔術師Jr「武道家子さん。せっかくなので、世界征服でも一緒にしましょうか?」

武道家子「うんっ! 魔術師Jrと一緒なら なんでもいいよ!」ニッコリ!

魔術師「ふふふふ、さすが僕たちと勇者さんの子供ですね」

武道家「こりゃあ将来は大物だなあ、はっはっはっはっは」


女勇者「……勇者の子供が 魔王になって世界征服かー…」

魔王「魔王の子供が 勇者になって、隠れ潜むのか……」



女勇者「どうにかもう一度、魔王の雷術は味わいたいし…。丁度いいから…」

魔王「どうにかこの娘だけは守ってやりたいし…。関わりたくないが…」



女勇者・魔王「「こうなったら本気で、ヤ(犯・殺)るしかない…かな」



―――こうして、魔王対勇者の熾烈な争いの火蓋は 切って落とされた

―――勝利は、一体 誰の手に


続くと嫌。

面白かった

魔王の嫁は女神か?
勇者に勝ち目がない件について

読みやすいし面白かった

乙乙!

おつ

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