響「自分は混ぜてからタレかけるぞ」 (39)

春香「え? 混ぜるのが先なの?」

響「うん」

春香「なんで?」

響「いや単純に、その方が粘り気が増すからさー」

ガチャッ

千早「何の話?」

春香「あ、千早ちゃん。響ちゃんの粘り気が増すっていう話だよ」

千早「!?」

響「春香ァ!」

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千早「何だ、納豆の話だったのね」

響「まったく、春香は説明が雑すぎるぞ」

春香「えへへ、めんごめんごー。てへぺろっち!」

響「反省しろ」ムギギ

春香「い、いひゃいいひゃいひびひひゃん。ほっへひっひゃらひゃいへ……」

千早「…………」パシャッ

春香「ち、千早ちゃん! 何写真撮ってるの!」

千早「……やめてちょうだい。どうせ似合わないって思ってるんでしょう」

春香「いや、そりゃそういう行動はね!?」

響「千早。とりあえず後でグループトークにシェアしといてね」

千早「安心して我那覇さん。もう既読11に達したわ」

春香「皆暇すぎでしょ!?」

響「で、話を納豆に戻すけど」

春香「そうそう、聞いてよ千早ちゃん。このはいさいったら先に混ぜるって言うんだよ!」

響「誰がはいさいか」

千早「そう。まあそれははいさいなりの流儀なんじゃないかしら?」

響「……ぐすっ」

千早「冗談よ我那覇さん。よしよし」ナデナデ

響「あ、頭撫でたらそれで済むと思ったら大間違いだぞ……」

春香「と、言いながらも満更でもなさそうな響ちゃんであった」

響「春香もキートン山田氏の声で言わない! しかも微妙に似てるし!」

春香「でも私は普通にタレかけてから混ぜるなあ。千早ちゃんは?」

千早「私もそうね。というか、先に混ぜるというより、後にタレをかけるという発想が無かったわ」

春香「あー。確かにそうかも。まず最初にタレかけたくなるもんね」

響「そこをぐっとこらえて先にまぜまぜすると美味しくなるんだぞ」

千早「……まぜまぜ」

春香「……まぜまぜ」

響「り、リフレインしなくていいから!」

千早「でも、タレを後にするか先にするかだけでそんなに味が変わるものなの?」

響「うーん。そりゃまあそこまで劇的には変わらないけど」

春香「気持ちの問題?」

響「いや、一応科学的根拠もあるみたいだぞ」

千早「そうなの?」

響「うん。納豆は混ぜれば混ぜるほど粘り気が出て旨味が増すんだけど、タレの水分はその粘性の邪魔になるらしいんだ」

春香「へー」

千早「我那覇さん凄いわ。まるで納豆博士ね」

響「え、えらいまた安直なネーミングだな……」

春香「ふふっ。えらいえらい」ナデナデ

響「あっ。だ、だからぁ……」

千早「…………」パシャッ

響「ち、千早ぁ! 何撮ってるの!」

春香「ナイスだよ、千早ちゃん! 既読数は?」

千早「12よ、春香」

響「だからなんで皆そんなに暇なの!?」

千早「でも混ぜれば混ぜるほど旨味が増すのなら、重視すべきはタレの投入時期よりもむしろ混ぜる回数なのではないかしら」

春香「それは一理あるね」

響「うん。それはそうだぞ。多く混ぜたらその分だけ旨味は増すからな」

千早「じゃあ具体的には、何回くらい混ぜたらいいのかしら?」

春香「回数っていうよりは時間じゃない? 私は30秒くらいは混ぜてる気がする」

千早「30秒って結構長いわよね」

響「うん。それだけ混ぜたら相当ねばねばになるよね」

春香「……ねばねば」

千早「……ねばねば」

響「だ、だからなんでリフレインするんだ!」

千早「リフレイン」

響「えっ」

春香「リフレイン」

響「な、なんだよ二人して」

千早「いえ別になんでもないわ。ねえ春香」

春香「うん。なんでもないね。千早ちゃん」

響「ま、まさか……」

千早「…………」

春香「…………」

響「……誤用……?」

千早「…………」

春香「…………」

響「な、なんで黙るのさ二人とも!」

千早「ところで納豆を混ぜる回数の話だけど」

響「ここで話戻さないでよ!」

春香「千早ちゃん。回数じゃなくて時間だって」

千早「ああ、そうだったわね。まあ、どっちでもいいのだけれど」

春香「あー! 千早ちゃんが春香さんをぞんざいに扱ったー! 千早ちゃんが春香さんをぞんざいに扱ったー!」

千早「なんで二回言うのよ」

春香「大事な事だからだもんっ!」プイッ

千早「ごめんね春香。機嫌を直してちょうだい」

春香「ふーんだ。千早ちゃんなんか知らないももんが!」ツーン

響「…………。(目の前の茶番は死ぬほどどうでもいいけど、自分が誤用してたのかどうかはものすごく気になるぞ……)」

千早「ほら、春香。さっきの春香の写真でも見て機嫌を直して」スッ

春香「なんでそれで私の機嫌が直ると思うの!?」

千早「ふふっ。まるでゴム人間みたいね。このほっぺの伸び具合」

春香「拡大しなくていいよ! ていうか千早ちゃん微塵も反省してないよね!?」

響「…………。(そうだ。今のうちにスマホでぐぐって確かめよう)」コソコソ

千早「悪かったわ春香。今度からはタレを後で入れるようにするから」

春香「いや私も前派だからね!?」

響「…………。(『リフレイン 意味』っと)」

千早「そう。春香は前派だったのね」

春香「うん。一応言っとくけど、納豆のタレの話だけどね」

千早「他に何があるというのよ」

春香「千早ちゃんは油断ならないからね」

響「…………。(『同じ言葉を繰り返すこと』『反復すること』……なんだ、合ってたじゃないか)」ホッ

千早「でも大事なのはタレの投入時期よりも混ぜる回数だと思うのよ」

春香「それさっき聞いたよ」

響「ふふっ。千早ったらうっかりさんだな」

千早「あらごめんなさい。ついうっかりリフレインしてしまったわ」

響「えっ」

春香「そっかぁ。リフレインしちゃったんなら仕方ないね」

響「えっ」

千早「…………」

春香「…………」

響「な、なんで誤用じゃなかったのに自分が責められてるみたいになってるの……」グスン

春香「ごめんね響ちゃん。今度から後でタレ入れるようにするから」ナデナデ

千早「ごめんなさい我那覇さん。次から私もそうするわ」ナデナデ

響「うぅ……すぐこうやって頭を撫でてうやむやにするのはやめてほしいぞ……」

春香「でも大事なのはタレの投入時期よりも混ぜる回数だよね」

千早「奇遇ね春香。実は私もそうなんじゃないかと思っていたのよ」

響「……もうツッコまないもんね」プイッ

春香(かわいい)

千早(かわいい)

千早「でも春香。回数というよりは時間なんじゃないかしら」

春香「え、あ、うん。それさっき私が言ったけどね」

千早「え?」

春香「いや、え? じゃなしに」

千早「ん?」

春香「いや、ん? じゃなしに」

千早「え? なんだって?」

春香「うわああん! 千早ちゃんがラノベ主人公ばりに私を煽ってくるよー! 助けて響ちゃん!」

響(なにこれちょうめんどくさい)

千早「でも春香。30秒ってちょっと長すぎるんじゃないかしら」

春香「そうかな? まあ確かに厳密に時間計ったことはないけど」

千早「だって30秒もあったら50メートルくらいは優に走れてしまうもの」

春香「いやもっと走れるよ! 足どんだけ遅いの千早ちゃん!」

千早「つまり実際には30秒も経っていない……春香が納豆を混ぜている時間は私が50メートルを走るのに要する程度の時間、せいぜい7~8秒程度の時間しか経っていないってことなのよ」

春香「なるほど! 千早ちゃん頭いいね」

響「いや春香が馬鹿なんだと思うぞ」

春香「でも確かに7~8秒くらいでも結構混ぜられるよね」

響「そうだな。それに短い時間の方が速いスピードで混ぜられるしね」

千早「混ぜる速度も関係あるのかしら?」

響「いや、速さはあんまり関係ないんじゃないかな」

千早「じゃあ何で言ったの。我那覇さん」

響「え、いや、特に深い考えはなかったけど……ただ、段々頭がぼーっとしてきて、自分でもなんかよく分からない感じに……」

春香「ダメだよ響ちゃん。もっとちゃんと自分を持たないと」

響「いや、春香。そうは言ってもさ」

響「……自分、春香とこの話始めた時からずっと納豆混ぜてるし……」ネバネバ

春香「何言ってるの響ちゃん」

春香「……それは私だって同じだよ」ネバネバ

響「……うん」

響「そうだったね、ごめん」ネバネバ

春香「いや、いいよ」ネバネバ

響「…………」ネバネバ

春香「…………」ネバネバ

千早「…………」

春香「っていうか!」

千早「どうしたの春香。手が止まってるわよ」

春香「じゃなくて!」

千早「えっ」

春香「なんでもっと早くツッコんでくれないの!? 千早ちゃん!」

千早「えっ」

響「そうだぞ千早! 千早が事務所に来た時にすぐツッコんでくれてたらこんなことにはならなかったのに!」

千早「そう言われても」

春香「…………」

響「…………」

千早「『ああ、二人はお昼に納豆を食べるのね』としか、思わなかったから」

春香「…………」

響「…………」

千早「…………」

春香(あ、終わりなんだ)

響(でも自分、千早のこういうところ結構好きだぞ)

千早「まあでも、これだけ混ぜたのだから二人ともさぞ美味しい納豆になったんじゃないかしら?」

響「そうだな……っていうか、なんかもう原形が何だったのかよく分からなくなってるけどな……」

春香「うん……なんかもう驚きの白さって感じだよね、これ……」

千早「もはや豆要素がほとんど見当たらないわね」

響「…………」

春香「…………」

響「……あ、自分はタレを入れなきゃ」ピッ

春香「ああそっか、響ちゃんはここで入れるんだね」

響「そうそう」

千早「でも大事なのはタレの投入時期よりも混ぜる回数じゃないかしら」

春香「それはもういいよ!」

千早「ええ、そうね。回数じゃなくて時間だったわね」

響「ごめん千早、もうツッコむ気力が無い」

春香「! 美味しい!」

響「うん! なんかいつもよりすごく美味しく感じるぞ!」

春香「これは、ご飯が、進みますぞ!」ハフハフッ

響「うんうん! 進みますぞ!」ハフハフッ

千早(なんで微妙にムッ○っぽい話し方なのかしら)

春香「はいっ。千早ちゃん」

千早「……えっ」

春香「あーん」

千早「え、で、でも春香。流石に納豆はちょっと……」

春香「早く早く! 糸が垂れちゃう!」

千早「わ、わかったわよ。もう……あーん」パクッ

春香「どう?」

千早「……! 美味しい!」パァッ

響「…………」パシャッ

千早「……え?」

響「口から糸を垂らした千早の笑顔」

千早「えっ。ちょ」

春香「既読数は?」

響「13」

千早「おかしいでしょう!?」









ζ*'ヮ')ζ<本作品はこれにて終了となります。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

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