勇者「フンッ! フンハッ! フンハァッ! ゼアァ!」(21)

静かなる海。
しかし、波の上に浮かぶこの商船に、危機が訪れていた。

海賊「運が悪かったな、商人さんたちよォ!」

海賊「金品を置いてけ! さもなくば皆殺しだ!」

船は四方を海賊船に囲まれ、逃げ場はない。
こちらに乗り込んでこようとする賊は、刃物や銃をちらつかせ、商人たちを脅す。
抵抗も空しく、ついに賊が投げて寄越したロープで海賊船との間に橋渡しがされ、青ざめる商人を見て賊たちが顔に下卑た笑いを浮かべた、その時である。
海賊船団の内の一隻が、突然轟音を立てて真っ二つに折れた。

勇者「紙の様に脆い船だな。少しつついただけでこれとは」

波間から現れたのは一人の男。
異様なのはその出で立ちだ。
男は半裸だった。全身の筋肉を惜しげもなく晒している。
片手で二つに折れた船を宙に持ち上げていく。
海賊たちにはわかる。あれは深海の魔物だ。船を海に沈めると言う魔物の具現だ。

勇者「船などいらぬ!」グシャァ

海賊「え、ちょ」

勇者「私は勇者。そして彼らは私の仲間――」

海賊たちは異変に気が付いた。
波は穏やかだった。しかし、遠くの方から何かが聞こえるのだ。
やがて、賊の一人が上擦った声をあげた。
何事か、と尋ねる仲間におびえた様子の彼は震える指で水平線の向こうを指さす。
海賊たちは見た。
迫りくる黒い影。あれは。
津波だ!

マッチョ「――ハァッ!」ザバァ

マッチョ「ゼヤァァァアッ!」

マッチョ「ハイッ! ハイイイィイッ!」ザバザバ

マッチョ「フゥゥゥゥゥゥウウウウウ」

マッチョ「オラァ! オラァア!」

マッチョ「フゥフゥフゥフオオオ!」

マッチョ「シュッシュッシュッ――」

光る汗。筋肉。
海から1000を超える数の肌色の群れが海賊船めがけてクロールしてくる!

勇者「――武闘家だ」

海賊「おもかじいいいいい! おおおおもおおおかああじいいいい!」

海賊船団は航路を転じて波から逃れようとした。
しかし、船が向きを変えるよりも早く、高波と化したマッチョの集団が海賊たちに襲い掛かる。

マッチョ「フンハッ!」

海賊「――は、はなせ! はなせえええうわあああああああ!」

甲板に降り立ったマッチョは賊を腕の中に捕らえると、そのまま波の間に消えていく。
仲間が連れ去られる光景を見て慌てて逃げ出した者は、白波の下から跳びかかって来たマッチョに脚を掴まれ、海中に引きずり込まれた。一瞬の出来事だった。

海賊「クラーケンだ! 魔物クラーケンだ! うわさは本当だったんだ――」

マッチョ「フゥーーフゥーー」

海賊「来るな! 来るな! ――いやだあああああああガボガボボボ!」

混乱に陥る船の上。海賊たちは一人、一人と姿を消していく。
マッチョの腕はシーサーペントのようにしなやかな動きで賊たちの胴に巻き付いて離さない。
泣き叫ぶ賊が引きずり込まれた後には海面に白いあぶくが浮かび上がるが、やがてそれも波の中に消えてなくなる。

海賊「やべえぞ! やべえ! もう無事なのは俺たちの船だけだ!」

海賊「ちくしょう! こんなところでやられてたまるか! 俺たちは逃げるぞ!」

勇者「逃がさぬッ!」

海賊「ちょ、うわああああああああ!」

勇者が海賊たちに飛び掛かり、剣を振りまわして抵抗する彼らを次々になぎ倒していく。
拳の一撃に倒れ甲板にからだを強かに打ち付けた賊たちは、自分に覆い被さる影に気が付いた。マッチョだ!
悲鳴をあげて逃げようとするがもう遅い。マッチョは腕を賊たちの胴に絡みつかせる。
あわや、これまでか。自分たちも仲間と同じように海の藻屑となるのか。



しかし、それはその時は来なかった。
海賊たちはマッチョに運ばれ、一か所に集められる。

マッチョ「フゥ、フゥ」

マッチョ「ハァ、ハァ――」

海賊「な、なんだよ……」

海賊たちの周りを、全裸の男たちが一列に並び、腕を組みながら見守っている。
いったい何が行われようと言うのか。

勇者「よし。最初は君がいいようだ」

勇者が腕を上げると、マッチョたちが四人ほど前に進み出、海賊の一人を立たせた後、四つん這いで尻を突き上げた体勢に押さえ込んだ。

海賊「なんだ!? おい、何する気だ!?」

賊は暴れるが、びくともしない。
やがて、五人目のマッチョが歩いてきて、怯える賊のズボンと下着を脱がす。

マッチョ「フンヌッ! フンッ、フンッ」

海賊「な、やめろ! おい! お前ら助けろ! やめろおおおおおおお」

マッチョは剥き出しになった尻に顔を近づける。
そして、まるで犬の様に、尻の穴や陰嚢を丁重に舐め上げていく。
ぬめりと陰部に嫌な感触が迸る。
賊の背中に悪寒が奔る。
ぞわぞわとした。
鼻息が当たっていてくすぐったい。気持ち悪い。
ただそれだけだ。痛みなど無い。尻や陰嚢を舐めまわされる、ただそれだけだ。

海賊「やめろ! まじで、やめろよ! 殺すぞ! 殺すぞ!」

喚き、暴れる賊に対し、マッチョはあくまでも丁重に尻を舐め上げていく。

勇者「彼らは君に挨拶したいらしい」

今まで尻を舐めていたマッチョが顔を離し、立ち上がる。
そして、勇者たちの所に戻ると、腕組みをして前を向いたた。
やっと終わったか、と海賊は安心するが、違った。
マッチョの中から、また別の奴が歩いてくる。

海賊「え、え――おわりだって、おわり――」

マッチョが顔を尻につっこんだ。
舐めだす。海賊は叫ぶ。
ぬめりと舐め上げられる。
陰嚢を口に含まれしゃぶられる。
ぞわぞわと気持ち悪い感覚に悩まされる。
こいつらが何がしたいのはわからない。
とにかく気持ち悪い。
抵抗しようにも尻を突き出した体勢のまま動けない。
しかしそれだけだ。痛みも何もない。気持ち悪いだけなのだ。

勇者「君に挨拶してるんだ」

海賊「いつまでやるんだよ!」

マッチョが口を離し、仲間の所に戻り腕組みする。
そして、別の一人が前に歩み出てくる――

海賊「もういい! もういいだろ!」

まだ続くのか。まだ続くのか!
地獄だ。尻を甘噛みされ、太ももに髭を擦りつけられ。
マッチョがさらに一人、二人――
彼らはただ挨拶をするだけだ。
尻の穴や陰嚢を舐めるだけなのだ。

海賊「おい、おい……」

マッチョ「ハフッハフッ」

マッチョは立ち上がり、元の場所に戻り、腕組みをする。
代わりのやつが歩いてきて、尻に吐息がかかる。

マッチョ「フンッ」

海賊「キモチワルイ……キモチワルイ……」

マッチョ「フゥー」

陰嚢に生暖かい息を吹きかけられる。ぞわっとした。
口に含まれ、暖かい感触と舌の動きにぞくりとし。
そして解放される。
マッチョが立ち上がった束の間、入れ替わりに他のやつが賊の尻に顔を埋めた。

海賊「」

やがて、10000人目のマッチョが尻から顔を退かすと、すでに賊は真っ白に燃え尽き、甲板の上に力無く倒れこんだ。
マッチョたちはみな腕組みして前を見ていた。

海賊たちは目の前で起きた惨状に身を震わせていた。
勇者は賊を見下ろし、頷く。

勇者「よしよし。次はだれに挨拶するんだい――よし、君が良いな」

海賊「ひいいいい!」

マッチョ「フゥーーフゥーー」

そして、マッチョたちが海賊の一人を四つん這いにさせる――

マッチョ「ハァッ! ハァッ!」

マッチョ「フゥ! フウウウゥ!」

海賊「ひゃああああああああ! やめてええええええ!」




商人たちは船の上で、その惨状を青い顔で見守っていた。
悲鳴をあげる海賊。
単調に尻を舐めるだけのマッチョ。
そして、真っ白になって倒れた者は、筋肉たちに担がれ海の中へ消えていく。


やがて、日が沈むころ、空っぽになった船だけを残し、彼らは海の深みへ姿を消してしまった。



くぅ~疲れましたw これにて完結フンハッ!
フンッ! ハァァァァアッ! ゼヤァァッ! ハァ!







※勇者「フンッ! フンハッ! ヘリャアッ!」は先にまとめられてたけど、俺の書いたものではないです。
マッチョシリーズは2作目でピーク、そしてこの3作目でネタ切れなので、もう書きません。というかもうこんなの書きたくないです。
正直あそこまで受けるとは思わなかったので、また暇つぶしに何か書いたら投稿します。

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