タミ「夕焼けレモン」 (7)


マチちゃんは最近よく笑うようになった。
なるちゃんやヤヤちゃん達と仲良くなって
よさこい部の活動が順調なのもある

でもやっぱり一番の理由は

「ねえマチちゃん」

「なに?」

書類の束を軽快に捲る細い指に、小さな花が咲いている

サリ先生と色ちがいの

ひまわりのついた黄色い指サック

「…なんでもない」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411664672


いったいいつ頃から意識しだしたのか、ずいぶんと昔のような気がしてもう覚えていないけれど

私は、マチちゃんのことが好き

少し低めで落ち着いた声も、
ゆるくはねる栗色の髪も
何かあるとすぐに相談に乗って、助けてくれるところも、
スカートからのぞく綺麗な足も
スラリと伸びた、その指も。


私はふたりが仲直りすることを願っていたはずなのに
今は仲良くしているところが苦しくてならない

もともと積極的に話しかけてくれることはなかったけれど、
テスト期間ということもあって、
最近は生徒会の事務的な話しかしていない

「タミ」

「なに?マチちゃん」

「今度の全校集会のことなんだけれど…」

…ほら、やっぱり


「…っ」

聞こえないくらいの声がしたあと
バサバサと紙が落ちる音

「…ごめんなさい、絆創膏ある?」

「今、持ち合わせなくて」

「そう…」

最近よさこいに身が入らないのも
勉強が進まないのも


全部、マチちゃんが悪いんだからね


「んっ」

「タミ!?なにしっ…」

傷がしみて、痛そうに逃げようとするマチちゃん。

でもね、私が指をはなしても後ろは壁で、横は机で

きっと逃げられない 逃がさない。

奪った指サックを伸ばして、両方の親指を止める

大事なものだもん

強く引っ張ったら壊れちゃう

これでもう動けない、かな

「タ…」

あ、怒った顔もやっぱりかわいい

「…大好きだよ、マチちゃん」


初めてのそれは、ふわりとレモンの香りがした




このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom