比叡「カレーを作ります!」 (26)

※ ドラマCD? 公式4コマ? 知らない子ですね

※ 料理画像はありません。なので空腹を気にせずお読み下さい

※ あれこれ書いてますがそんな目新しい技術はありません。比叡カレーや新作カレーを期待している方は悪しからず

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とある鎮守府の執務室 20時


比叡「どうでしたぁ? 比叡カレーの感想は…?」

提督「…………」

比叡「感想…感想聞かせてよー!」

提督「…………その前に、一つ聞いていいか」

比叡「? ええ、はい」

提督「比叡カレーじゃない……一般的なカレーって作れるのか」

提督「ええ! 何てったって御召艦の回数は海軍でもトップタイですから!」

金剛「Wao! 比叡のカレーデスか! 是非ワタシも食べたいデース!」

提督「うわっ!? 金剛いつの間にここに……!」

榛名「榛名も比叡お姉様のカレー、是非御相伴に預かりたいです!」

霧島「そうね、けれど今から食べてしまうとバルジが増設されてしまうのが困り者ね」

金剛「なら明日のディナーは比叡のカレーで決まりデース!」

霧島「それなら問題はありませんね。比叡姉様、楽しみにしています」

榛名「では明日はお夕食前にしっかりお腹を減らす為に、張り切って出撃します!」

提督「え、ちょ、待って」

金剛「イエーイ! テートクぅ、明日は私達が出撃するネー。比叡はクッキングの準備させてあげてホシイネー」

霧島「では出撃シフトを組み直しましょう。正規空母の皆さんと作戦会議をしなくては」

比叡「……比叡はこんな素敵な姉妹を持って幸せです! 明日は気合! 入れて! いきます!」

金剛「それじゃあテートク、明日をお楽しみにネー。グッナーイ☆」

提督「…………口を挟む隙もなく行ってしまった…………電撃戦のお手本の様な状況だ……」

提督「いや待て、このカレーは比叡の前じゃとても言えないけど、お世辞にも美味いとは……」

提督「……艦娘と人間の味覚が違うって事はないよな……間宮羊羹や大和アイスも、大分甘みが強いけど俺が食べてもちゃんと美味いし……」

提督「まさか、実は美味かったって事は……」

提督「うほぉあぁああ、ダメだ、これは違う……! 今まで食べた事がない味だ……! しょっぱくて生臭くて、少なくともこれを俺はカレーと認識出来ない……!」

提督「金剛達は比叡のカレーが不味いのをフォローしようとしてたのか…? いや、あの様子は本当にカレーを楽しみにしてるみたいだ。……となると、一体どう言う事なのか判らない……」

提督「……となると、比叡がカレー作ってる所を見学しておこう……もしおかしな事があったら、一応口出しとか出来る程度には自炊できるし……」

とある鎮守府の厨房 翌日の18時


比叡「さぁ~て比叡、夕食準備するよー!」

比叡「司令もお仕事の後なのに見学に来てくれて、比叡感激です!」

提督「お、おう」

比叡「それでは今日の材料です! 今日のリクエストは一般的なカレーと言う事ですので、五人分のチキンカレーを作ります!」

比叡「材料はジャガイモ人参玉葱! それから朝締めの鶏丸ごとです!」

提督(早速爆雷投下来てるッ!?)

比叡「この鶏を捌いたものがこちらです!」

提督「三分クッキングかッ!」

比叡「司令、勝利の為には綿密な前準備と下ごしらえが必要なんです!」

提督「……いやそれは確かにそうだが。で、今日はどの部位を使うんだ? モモか? それともムネ?」

比叡「はい! 今日は司令だけではなくてお姉様や妹達にも作りますので……それぞれのカレーに合う部位を使っていきます!」

提督「? え、それぞれのカレーって……」

比叡「はい、カレーと一口に言っても味付けや種類は千差万別です。そもそも何をどうしたらカレーと言えるのか、何をどうしなかったらカレーではないのか、そんなの比叡には判りません!」

比叡「ですが私の身近な人達がどんなカレーが好きなのかは、比叡には判ります!」

比叡「さーて! 司令には、恋も! 戦いも! 負けません! 調理開始です!」

提督(すげえ立派な心がけだ……それでどうしてあんなカレーが出来上がるんだろう)

比叡「ではまず、下ごしらえを終えた野菜をオリーブ油でどーんと炒めます!」

提督「あ、タマネギは狐色になるまで炒めない派なのか」

比叡「はい、最近のルーはそんな時間掛けなくても美味しくなる様に調合されてますから。ちなみに強火で炒めながら水分が無くなったら補給して十分間炒めても、弱火で飴色になるまで炒めるのと同じ効果があるんですよ」

提督「……ルー使うのか」

比叡「ええ、技術の進化はすごいものです。必死にスパイスを調合しなくても、御家庭で簡単に美味しいカレーが作れちゃうんです」

比叡「あの戦争の時は、あってもカレー粉止まりでしたからシェフが懸命に作っていたんですよ」

比叡「でも、そこにちょっと手を加えて食べる人の好みに合わせるのは私の腕の見せ所です」

提督「へー……」

比叡「例えばお姉様はご飯よりもパン派ですし、榛名はあんまり辛いのはダメなんです。霧島は逆にどーんと辛くて普通の人にはオススメできないカレーが大好きだって知ってました?」

提督「金剛がパン派だってのは知ってたけど、霧島の好みまでは知らなかったな」

比叡「私もこの鎮守府にいる全員の好みまでは把握してないし、皆の好みに合ったカレーを全員分作るのはムリですから、皆に出す時は皆が大体美味しいと思うだろうカレーを出します。そう言う時に、カレールーは偉大な発明だなあって本当に思うんです」

比叡「辛口と中辛と甘口の鍋を用意して…後はお好みで味を調整出来る様に、スパイスや調味料を置いておけば皆喜んでくれます!」

提督「はー…まあ炊き出しの時もカレーや豚汁は大定番だしなぁ」

比叡「ですが五人分くらいなら、ちょっと調理工程を変えるだけで好みド真ん中のカレーを作れちゃいます!」

提督「なるほど、で、そこからどうするんだ」

比叡「まずまとめて炒めた野菜に鶏がらや野菜の切れ端で取っておいた出汁を足して、15分ほど中火で煮ます」

提督「おお本格的」

比叡「さて、ここからそれぞれの好みに対応したカレーを用意します。お姉様はイギリス風スープカレー、榛名にはリンゴや野菜のスムージーを足した甘口寄りの中辛、霧島には思い切った辛口。提督の分は、ヨーグルト漬けの鶏肉を使う酸味の利いたカレーで行きましょう」

提督「ふむふむ」

比叡「さてお姉様のスープカレーは、素揚げした季節の野菜にカレーを掛けるのでスープだけ取ります。そこにこちら、イギリスで最もポピュラーなC&Bのカレー粉を入れて味を調えて……ここで私の秘密兵器ですッ!」

提督「何ィーッ!!? そ、それは……ッ!」

比叡「はい! 太田胃散です!」

提督「太田胃散ってお前、なんでそんなものを!?」

比叡「太田胃散は生薬をブレンドしたものです! シナモン、フェンネル、ナツメグにクローブに陳皮、どれも香辛料としてスタンダードで、辛味を足さず香りを付けるには打って付けなんですよ!」

提督「……マジで?」

比叡「ここ最近、暑い夏からいきなり涼しくなってきたので私達や司令も身体の調子を崩しやすくなってます。金剛型の長女であるお姉様には、この比叡特製スープカレーを召し上がって頂いてより一層の御活躍を祈願します!」

提督「……おお、なんかえらく香り高くなったな……ちょっと洒落た店のカレーっぽくなってきてないか?」

比叡「風味も栄養もバッチリ! 大泉洋のスープカレーにだって引けは取りません! 提督にはテーブルで食べる時までお預けと言う事で、味見は比叡が致します! さて続いては榛名のカレーです!」

提督「フードプロセッサーか……これでスムージーを作るんだな」

比叡「はい、技術の進化はとっても素晴らしいです。昔は擂粉木で摩り下ろすか、さもなくばぎゅーって搾ってどうにかするしかなかったんですけれど、今はざく切りにした野菜をプロセッサーに入れて上から押さえれば……はい出来上がりです!」

提督「今入れた野菜は?」

比叡「旬の野菜なら大体何でもいいです。今回はほうれん草と小松菜をかなり多めのベースにしつつトマトにリンゴにニンジン、それから缶詰の桃を入れてみました。普通に飲んでも美味しいですよ」

提督「じゃあせっかくだから一口……うん、ほうれん草が強いけど美味い」

比叡「これを中辛のルーを入れた榛名の分の鍋に入れて……適当な時間火を通しておくんですが、これではやや甘過ぎるので、隠し味を少々」

提督「そこで焼肉のタレか。もう驚かないぞ」

比叡「入れなくても榛名好みの味なんですが、やっぱり季節の変わり目で体調を崩しやすい時期なので、ちょっと気持ち程度にスタミナを付けて欲しいのと……甘みに走りすぎるとそれはそれで味のバランスが崩れるので、辛味と酸味を足す事で味の調和を図ります」

提督「じゃあこれでフードプロセッサーはいらないな。洗っていいか?」

比叡「ああ、ちょっと待って下さい。最後の仕上げに必要なので」

提督「……おい、それは……」

比叡「はい、バナナです! これで榛名専用やや甘口スムージーカレーの完成です!」

提督「さっき甘みに走りすぎると味のバランス崩れるって言ってなかったか!?」

比叡「はい、バナナを入れなければ焼肉のタレでなくてもウスターソースで十分なんですが、今回は最後の仕上げにバナナペーストを入れるのでパンチのある焼肉のタレを選びました。完成直前にバナナをカレーに混ぜる事で、スムージーを入れてやや薄まったとろみを足すと同時に、コクと甘み、そしてバナナのほのかな甘い匂いを追加します」

比叡「せっかくスムージーカレーを作るので、ひき肉を使ってキーマカレー風にしようかとも思ったんですが、せっかくなのでもう一手間加える事にしました。肉はつみれにしますが、歯応えを出す為にやげんをみじん切りにして混ぜた上で炭火で香ばしく焼いたものを食べる直前に乗せて出します」

提督「……流石に今まで食べた事のないカレーだぞ」

比叡「全部のカレーはちょっと多めに作ってありますから、是非御試食して頂いて感想を教えて頂きたいです! さて、霧島の辛口カレーですが……」

提督「これはオーソドックスなカレーだなあ」

比叡「ジャワカレーの辛口が霧島の好物なんですよ。霧島は「タバスコは酸っぱい調味料だと感じる様になってからが本番です」と言う位に辛味マニアなので、ここから色々辛さを追加していくんですが」

提督「そりゃタバスコの原料は酢と塩と唐辛子だけとは言え、やや人間…じゃないな、艦娘やめた発言じゃね?」

比叡「意外と多いらしいですよ、タバスコが辛いを通り越した人種は。で、そんな霧島のカレーには太田胃散ではなく、こちらを」

提督「七味唐辛子か……」

比叡「読んで字の通り、唐辛子に複数の香辛料を調合したものですね。唐辛子がメインであれば七種類である必要も無く、決まったブレンドもないんです。この場合の七は「7」ではなく「多い」を意味する数字ですから」

提督「へー、まるでカレーみたいだな」

比叡「そうですね、それこそ牛丼のつゆだくに七味唐辛子を掛けて更にウコンを振ったら立派なカレーと言えるかもしれません」

提督「いやそのりくつはおかしい」

比叡「今度一度やってみましょう、もしかしたらカレーの部類に入ると認識するかもしれません」

提督「俺は入らない方に賭ける」

比叡「それはさておいて、今回は唐辛子、山椒、生姜、麻種、胡麻、陳皮、紫蘇で作った霧島が贔屓にしている七味唐辛子を使います。これ結構辛いけれど香りが良くて美味しいんです。私もうどんやそばを食べる時は一振りだけ気をつけて使います。で、これを……気合! 入れて! 入れます!」

提督「うわぁーっ! 比叡選手思い切って入れたー!?」

比叡「正直、こればかりは味見するのを比叡も二の足を踏んじゃいます……! ここはじゃんけんで、味見をするかしないかを決めると言うのはどうでしょうか……!」

提督「いい事を考えた、ここはいちかばちかのぶっつけ本番で霧島に食べて貰うのはどうだろうか」

比叡「何たる英断! 霧島は見捨てます! ですが、このカレーに霧島はタバスコや関西秘伝のどろソースを掛ける可能性が高いので、用意はしておきます……!」

提督「うわぁ、明日の朝大変なコトになるんじゃないか霧島」

比叡「あんまり辛いのが行き過ぎると胃腸に悪いから、程々にしてほしいと姉妹一同頼んでるんですが……敵戦艦との殴り合いに備えて闘争本能を高めるのにも必要らしくて……」

提督「改二になってからより殴り合いに磨きが掛かってたと思ってたが、霧島の拳は唐辛子で磨かれてたんだな……」

比叡「普通の艦娘には明らかに危険領域に達している辛味マニアなんですけれど、普段は出汁の効いた薄味料理が好みなんですよね……」

提督「極端から極端だな……まあそれも霧島らしいっちゃらしいのか」

比叡「さて最後、提督のヨーグルトカレーです。ヨーグルトを入れるとやや辛味が和らぐので、その分を見越して辛口のルーを使います」

提督「うーむ、ヨーグルト使ったカレーってのは食べた事無いんだよな…」

比叡「カレーと乳製品の相性は非常にいいんですよ。煮る時に牛乳を混ぜたり、食べる直前にチーズを混ぜたりするのは聞いた事があるでしょう」

提督「そうだな、大体のカレー屋でチーズのトッピングってあるもんな」

比叡「ヨーグルトにカレー粉を初めとしてニンニクやタマネギを混ぜたマリネ液に漬けた鶏肉を焼くと、はいタンドリーチキンの出来上がりです」

提督「あーあー、タンドリーチキンって聞いた事があるな。あれってヨーグルトに漬けてたのか」

比叡「はい、ヨーグルトに漬けておくと乳酸菌の働きなどで非常に肉が柔らかくなります。市販の無糖ヨーグルトを、肉全体が浸かる程度のタッパーに入れておきます。冷蔵庫の中に半日入れておけば安全確実ですが、時間が無い場合は常温で一時間置いておけばOKです。今回は手羽元を使いますが、ヨーグルトの効用で骨からすっごい肉離れが良くなるんですよ」

提督「ほうほう。で、手羽元を漬けたヨーグルトはどうするんだ」

比叡「それはもう、カレーの中に手羽元ごと全突っ込みです」

提督「行ったな……」

比叡「ヨーグルトカレーは大分と酸味が強いカレーになります。疲れてる時には非常に美味しいんですが、代わりにものすごく足が早くなるので作り置きするカレーではありません。その日のうちに食べるか、残りは冷蔵庫に入れて早々に食べてしまわなければならないのが玉に瑕、と言ったところでしょうか」

提督「……で、比叡が用意してるそいつらは……」

比叡「はい、せっかく酸っぱいカレーですので、いっそ酸味を強調する事にします。調味料は好み次第でどんなものを使ってもいいんですが、今回はお手軽にケチャップとレモン汁で酸味を足します」

提督「……おお、入った……もう想像が出来ない感じがする……」

比叡「で、これで程々に火を通した所で……」

提督「……うん、カレーだな。いい匂いがする。これで皿によそうんだな」

比叡「いえ、ここで比叡カレーは最後の一手間をかけます。よいしょっと」

提督「タライに一杯の氷水なんかどうするんだ」

比叡「はい、このたっぷりの氷水の中に、カレー鍋をどんと突っ込みます! この時鍋の中に水が入らない様に気を付けて下さい!」

提督「うわ! せっかくの熱々のカレーに何をするだァーッ!?」

比叡「提督は作りたてのカレーと一晩寝かせたカレー、どちらがお好みですか?」

提督「え? んーまあ……そりゃ、寝かせた奴の方が味が馴染んで美味いよな」

比叡「一晩寝かせた、と言いますが、あれは正確に言えば「カレーの具に味が染み込んだ」と言う方が正確だと比叡は考えます」

提督「……ほう。で、熱々のカレーを鍋ごと冷やすのはどう言う事なんだ」

比叡「で、寝かせると言うのは正確に言えば「カレーが冷めていく時に具材に味が染み込んで行く」過程を経たって事なんです」

提督「……あ! つまりカレーを冷やすことで、一晩寝かせる状況を作ってるって事か!」

比叡「この方法はカレーに限らず、様々な煮物で応用できます。大量の氷水でより早く、より冷たくする事で味の染み込みが強くなるんですよ」

提督「あーあーあー、なるほどなぁ……」

比叡「で、氷水に入れながらお玉で鍋の中を掻き回し、十分に冷えた所でもう一度温め直せば……はい! 比叡カレーシリーズの出来上がりです! それでは、司令室へ配膳です!」

比叡「提督は作りたてのカレーと一晩寝かせたカレー、どちらがお好みですか?」

提督「え? んーまあ……そりゃ、寝かせた奴の方が味が馴染んで美味いよな」

比叡「一晩寝かせた、と言いますが、あれは正確に言えば「カレーの具に味が染み込んだ」と言う方が正確だと比叡は考えます」

提督「……ほう。で、熱々のカレーを鍋ごと冷やすのはどう言う事なんだ」

比叡「で、寝かせると言うのは正確に言えば「カレーが冷めていく時に具材に味が染み込んで行く」過程を経たって事なんです」

提督「……あ! つまりカレーを冷やすことで、一晩寝かせる状況を作ってるって事か!」

比叡「この方法はカレーに限らず、様々な煮物で応用できます。大量の氷水でより早く、より冷たくする事で味の染み込みが強くなるんですよ」

提督「あーあーあー、なるほどなぁ……」

比叡「で、氷水に入れながらお玉で鍋の中を掻き回し、十分に冷えた所でもう一度温め直せば……はい! 比叡カレーシリーズの出来上がりです! それでは、司令室へ配膳です!」

 とある鎮守府の執務室 19時

提督と金剛姉妹「いただきまーす!」

金剛「オーゥ! やっぱり比叡の作るカレーはオイシイネー!」

比叡「有難うございますお姉様!」

榛名「わぁ、スパイスの香りの中にすっごい野菜が沢山! つくねも香ばしくて榛名、感激です!」

比叡「お代わりもあるから一杯食べてね!」

霧島「辛っ! でもこの辛さが最高です! 比叡お姉様、どろソースありますか?」

比叡「う、うん」

提督「……ヨーグルト入りのカレーって食べた事が無かったけど、えらく美味い……。手羽元もさっき火を通したばかりなのに、軟骨までするりと骨から離れる……」

比叡「それぞれのカレーも用意してありますので、小皿に取り分けて食べて下さいね!」

提督「おお…スープカレーは確かに色んなスパイスが効いててエスニックな感じがする…。太田胃散パネェ」

提督「スムージーカレーは見た感じより遥かに野菜感満載だな…! バナナが入るとか言われた時はどうなるかと思ったけど、意外とカレーとバナナって合うな……」

提督「辛ッ!? 辛いッ!! 何これ、たった一口で死ぬほど辛いッ!」

霧島「あああ提督、そんなにいきなり食べるから! 私の分は御自分のカレーにちょっと入れてアクセント程度にしないと…!」

比叡「こんな事もあろうかとラッシーを用意しておきました! 口に含んで舌の上でしばらく置いて辛味を和らげて下さい!」

提督「……お、おう……エラい目に合った……ああでも、辛さが無くなれば結構イケるな……七味唐辛子が入ってるせいか、なんか和風っぽい香りが最後に残るんだな」

金剛「ふふぅ提督ー、比叡のカレーはどうネー。オイシイデショー?」

提督「そうだな、どれも十分に美味いな……これが晩御飯に出てくるんなら、楽しみなんだが……じゃあ昨日のカレーは一体どう言う事なんだ。正直、昨日のカレーと今日のカレー、同じ料理人が作ったとは到底思えないぞ?」

比叡「あ、はい……昨日は、シーフードカレーを作ったんですが……隠し味に入れたイカの塩辛が、ちょーっと量が多かった様で……シーフードとの相乗効果で生臭さが際立ってしまったのが原因じゃないかと……」

提督「イカの塩辛ぁ!? カレーの匂いも味も凌駕されてたと思ったらそれか!」

比叡「試作した時は上手く行ったんですが、その時もうちょっといけるかなーと思って、調子に乗ってたくさん入れたのに煮込みが足らなかった様で……あ、残ったカレーはルーと煮込み時間を足して比叡が美味しく頂きました」

提督「なんだよ美味かったのかよ! 俺に出す前に味見してくれよ!」

比叡「……提督はー、何をしても怒らないから好きなのねー……」

提督「イクのモノマネしても許しません!」

金剛「マーマーテイトクゥー、比叡を許してやってほしいネー。比叡がカレーにこだわるのには理由がアリマース」

提督「理由って何だよ」

比叡「海軍では毎週土曜にカレーを作ってたのは御存知ですよね」

提督「ああ、自衛隊になってからは金曜になったのも知ってる」

比叡「あの戦争の時は我が軍は段々劣勢になって行き、拡大した戦線を維持することも出来ず、補給も滞り整備も行き届かない箇所が増え、それでも日本を守る為に出撃しました……」

比叡「私もお姉様も霧島も志半ばで轟沈し、四姉妹の中で辛うじて生き残った榛名も大破着底して終戦を迎えました……」

比叡「国を守る為に作られたのに力及ばず散ってしまったのに、どう言う訳か艦娘の身体に生まれ変わり、二度と会えるはずの無かった姉妹や仲間にもう一度出会えるだけでも、幸福の極みでした……」

比叡「私達だけではなく上層部でさえ「八月には敗北してしまうだろう」と考えていたのが、大勢の提督や艦娘達が集結し、各地に泊地や基地が建造され、今はMI作戦成功どころか本土奇襲艦隊も撃退し、補給線も磐石の態勢で維持できています……」

比叡「燃料も弾薬も足りないなんて事は無く、いつも整備は行き届いて、妖精さん達が一生懸命作ってくれた46cm砲を姉妹揃って搭載して、一航戦の皆さんと出撃してボロボロになりながら新しい仲間を見つけ出して、皆揃って基地へ帰投する……」

比叡「こんな! 幸せな日が来るなんて! 比叡、思っていませんでした!」

比叡「カレーも、栄養を考えて決まった材料で作るだけではなく、様々な材料を使って試作して、新しいカレーを作り出せます! 今朝出撃したお姉様や妹達や仲間達が間違いなく帰ってくると信じながら、今夜振舞うカレーの準備が呑気に出来ます!」

比叡「だから比叡はカレーを作ります! 勢い余って失敗もしてしまいますけれど……ううっ、新しいカレーを作ることが、私にとって幸せの象徴なんです! ……う、う、うぇぇぇえぇぇん……」

金剛「Oh比叡、そんなに泣いちゃせっかくのプリティフェイスが台無しネー。榛名や霧島だけじゃなくてテートクも釣られて泣いちゃってマース」

提督「な、泣いてなんかない……」

金剛「ハーイテートクぅ、チーンしちゃうデース」

提督「知らなかった、比叡が、そんなに、カレー作りに、思いを込めてたなんて……」

榛名「うう…比叡お姉様のカレーは涙無くして食べられません……」

霧島「比叡お姉様のカレーを食べる度、またこのカレーを食べる為に生きて帰ろうと、決意を新たにしているんです……」

提督「そうだったんだな、比叡……! 俺、頑張るよ……お前達だけじゃなくて他の艦娘達も誰一人欠かさずに、戦い抜いてみせる……!」

金剛「フフゥ、テートクと金剛型シスターズの絆が深まったのを感じるネー。ところでテートク、一つオネガイがあるんだけど、いいかナー?」

提督「おうなんだ、俺に出来る事なら何でも聞いてやるよ……!」

金剛「Oh! さっすが私の見込んだテートクデース! それじゃ、これから比叡が新しい比叡カレーを作った時、私達と一緒に試食をオネガイしちゃうネー!」

提督「…………え?」

金剛「もっちろん、タダでだなんてケチくさいコト言わないネー! 比叡がミステイクしそうな時は、あんまり差障りのない程度にセクハラしても姉である私がOKしちゃいマース! 無論私も、ちょっとだけ時間や場所を弁えなくてもオッケーネー!」

比叡「え、えぇっ!? お、お姉様、一体何を……」

榛名「は、榛名でいいのなら、お相手しましょう!」

霧島「わ…私も、想像以上につっつかれても大丈夫です!」

提督「……ハメられた!? これが噂のハニートラップならぬカレートラップ!?」

金剛「オーケーオーケー、今レディらしからぬジョークを口にしそうになったけど頑張ってブレーキかけたネー。見てもらった通り、比叡のクッキングの腕は確かだけれどちょくちょく情熱が暴走しちゃったりするから、私達がブレーキ役しなくちゃいけないんデース」

榛名「私達もあんまりに常軌を逸している時は止めに掛かるんですけれど、ストッパーは一人でも多い方が……」

霧島「目を光らせているつもりでも、こっそり持ち込んだ食材を入れたりするので……」

提督「ちくしょう! ああそうかならしょうがねえな! いいよ判ったよ、俺もお目付け役になってやるよ! その代わり比叡は今までとは比べ物にならないくらい突っつき回してやるからなちくしょう!」

比叡「ひ、ひえぇぇええぇ!?」

金剛「イエーイ! これからもヨロシクねテートクぅ!」

とある鎮守府の金剛型部屋 20時

金剛「フフぅ、これでミッションコンプリートネー。比叡は後片付けしてるからあと三十分は帰ってこないネー」

榛名「お姉様、本当にこれで大丈夫なのでしょうか……」

金剛「イエース! ワタシの作戦はバッチリネー! 『比叡カレーの犠牲者ゲフンガフン試食役を増やしてワタシ達のダメージを減らそう作戦』と見せかけた、『金剛型ハーレムでテートクを囲い込んで戦後はハッピーに暮らしちゃう大作戦』の第一弾は大成功ネー!」

霧島「比叡お姉様のカレーの毒見役、と言う理由をつけて、私達へのボディタッチを増加させようと言うのは目の付け所がいいと思います。提督はあれで意外とそんなに私達にセクハラをなさらないですし…」

金剛「ワタシ達三人はともかくとして、比叡はちょーっとワタシラヴが行き過ぎてるのが姉の目から見ても心配ネー…。ここは比叡へのスキンシップを増加させ、テートクには思い切って比叡を押し倒すくらいの勢いを発揮してもらわなければ困っちゃうネー」

榛名「ですがお姉様、そんなに上手く行くのでしょうか……正直、提督はあまり好色な方でもないですし、良くても私達の中から一人選ばれれば御の字かと……」

金剛「こぉの敗北主義者がー! 歯ぁ食いしばるデス榛名ァー!」

霧島「出ましたー! 金剛お姉様の当たったら大破か轟沈確実だけど当てる気のない左フック!」

榛名「ああっ……! 申し訳ありません金剛お姉様…!」

霧島「そこから流れる様な榛名の古典少女マンガ風よろめきが決まったー!」

金剛「Hey霧島、今日もマイクパフォーマンスはバッチリネー! いいデスカ榛名、テートクもなんのかの言って立派な成人男性デース! 確かにこの鎮守府にはライバルも多いですけど、だからと言ってトンビにあぶらげ掻っ攫われるのを指咥えて見てるとか金剛型どころか艦娘の名折れもいいところネー!」

金剛「戦わずして負ける、それがイヤだからあの戦争で私達は戦ったし、今だってテートク争奪戦を諦める気もアリマセーン! 戦後に四人揃って生き残って、テートクと私達姉妹で未知なる戦後を生きる野望くらい持っていいはずデース!」

榛名「……でも提督が、一夫多妻を拒んだらその時はどうすれば……」

金剛「そん時ゃ恨みっこナシのタイミング次第デース! でもそんな事がない様に、金剛型が一致団結して掛からなければならないネ! ワタシはテートクLOVE勢のトップと自負してるけれど、三人の妹達とハッピーに暮らしていく野望を捨てた事なんて一度もないデス! ワタシはとーってもワガママだから、テートクは手に入れる、妹達も手に入れる! それがワタシのドリームネ!」

霧島「お姉様……霧島、その言葉だけで戦い抜いていける気がします! いざとなれば金剛お姉様の為に身を引く覚悟も決めてましたけれど…事ここに至ってはお姉様の野望達成の為、全力を尽くす所存です!」

金剛「YES! それでこそワタシの妹デス! 榛名はどうなんデス、ワタシ達に気を遣わない率直な意見が聞きたいネー!」

榛名「は……榛名も、お姉様達も霧島も提督も、みんな大好きです! みんなで一生懸命、平和な世界で暮らしたいです!」

金剛「イッエェェェス! ならばワタシ達のやる事はただ一つ、金剛型全員まとめてテートクと既成事実を作ってケッコンカッコカリ通り越して幸せな家庭を作るコトデス! テートクのハーレムじゃなくて、私達それぞれがそれぞれを侍らせる次世代型ハーレムデース! さあ明日から忙しくなるネー! 金剛型ー、ファイッオー、ネー!」

霧島「ファイッオー!」

榛名「ファ、ファイッオー!」

とある鎮守府の執務室 12時


比叡「今日の比叡カレーは! ビストロスマップのレシピを参考にしたカレーうどんです!」

提督「ほほー、普通のうどんとカレーが別の器で出てくるのか」

比叡「うどんの出汁は京都風のややあっさりめにしていますが、代わりにカレーを伸ばしている出汁は結構強めに利かせてあります。まずうどんはあっさりと頂いて、気分次第で麺をカレーに付けて召し上がってください。お好きな段階でカレーをうどんに入れてしまってもよし、カレーをご飯にかけて食べてもよしな臨機応変カレーです! お好みで温泉卵もどうぞ!」

提督「ご飯も食べたら炭水化物が多いのはご愛嬌だな!」

比叡「でも食べちゃうんですよね、カレーの魔翌力はものすごいです!」

提督「ところでカレーうどんって、食べてると汁が跳ねるじゃん。特にほら、俺の制服って真っ白なんだが……」

比叡「カレーうどんが跳ねるのは、麺を啜る時に麺に付いているカレーの飛沫が跳ねるのが原因なんですよ。鞭の原理と言いますか、啜って振り回された麺からカレーが耐えられず離れて飛び散るから、どれだけ気をつけてもカレーが跳ねるんです。日本人特有の現象と言ってもいいですね、他の国の方々は麺を啜りませんし、ましてやカレーうどんなんて食べませんから!」

提督「誰が上手い事言えと。それよりもカレーが跳ねない方法急募」

比叡「手っ取り早い方法なら、上着を脱いでエプロン掛けて食べて下さい。腕に飛び散っても拭えばいいだけです」

提督「身も蓋もない手っ取り早い方法だな」

比叡「近くにエプロンがなければ、一口分ずつ麺をれんげに乗せて、れんげからゆっくり啜って食べるとまあそう滅多な事では跳ねないかと。それで跳ねる場合は……生まれの不幸を呪って頂くしかないかと思います」

提督「躾が悪ければどんな手段取っても無駄だって言い切りやがったぞ可愛い顔して」

比叡「やだ提督、そんなに褒めないで下さい! 私照れちゃいます!」

提督「褒めてねえよ!」

榛名「……こうして司令室の扉の隙間から二人の様子を見てはいるのだけれど……」

霧島「……うーん、金剛型の提督争奪レースは、どうにも比叡お姉様が一歩リードしている様に思えます……」

榛名「そうね霧島、二人ともあんまり自覚が無いと言えばそうなんだけど、イチャイチャと言う擬音を使ってもいい光景ね」

霧島「これは油断していると比叡お姉様の一人勝ちと言う可能性も有り得ますね」

榛名「比叡お姉様のケッコンカッコカリもそろそろだし……」

霧島「……うん、ここは私達も幾らか打って出る事にしましょう」

榛名「私達の戦いはこれからだ、と言っておくべき?」

霧島「縁起でもない決意表明はやめて下さい。ならば攻めの一手とばかりに扉をばーん!」

提督「うわビックリした! 何だよ二人ともいきなり!」

霧島「カレーのいい匂いがしたので御相伴に預かりに!」

提督「赤城みたいな事を言うんじゃないよ!」

比叡「もうしょうがないなあ、うどん温めるからちょっと待っててくれる?」

榛名「じゃ、じゃあせっかくだから榛名も御相伴に預かります!」

金剛「ヘーイ! 私の可愛い妹達でもヌケガケは許さないネー!」

提督「なんだなんだお前らー! 執務室は集会場じゃねえんだぞー!」


オチもなく終われ

金剛型が全員可愛いから書いた反省はしていない。

当鎮守府の比叡は「油断して味見をしなかったり、その場の思いつきで食材や調味料を足したりするので時々シャレで済まない大失敗が発生するけど基本は料理上手」と言う比叡です。

ビスマルクに改三が来る事だし、金剛型にも改三が来る事と一航戦に改二が来るのを祈願しつつこれにて終了とさせて頂きます。

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