グリーン「ジョウト地方、か」(71)

—ワカバタウン・ポケモン研究所—

「ようこそ、グリーン君」

明るく俺に話しかけてくる若い研究者
この人、ウツギ博士は、このジョウト地方では一番有名なポケモン博士らしい
ジジイほどではないだろうがな

「初めましてウツギ博士。すみません、到着が遅れてしまって」

天候やら船やらの都合なんて俺様の知ったことではない
が、相手が博士である以上、下手な態度はとれないため形だけ謝る

「それは大丈夫、全然問題ないよ! ・・それよりもこちらが謝らないといけないんだ」

「どうかしましたか?」

初対面の相手に非常に申し訳なさそうな顔をする
一体、この博士は何をやらかしたと言うのだろうか?

「君に譲るはずだったポケモンが三匹いたんだけどね・・。一匹は君に頼むはずだった用事を代わりに受けてくれた子にあげて、一匹は盗難にあって、一匹しか残ってないんだ」

「・・問題ないですよ」

本当になんの問題もない
そもそも俺は最強の・・強いポケモンたちを連れているのだから

「そういって貰えるとありがたいような寂しいような、だね」

ウツギ博士が苦笑しながら続ける

「それでも高レベルのポケモンで低レベルのポケモンを捕まえるのは大変だろう? 心機一転して新しいポケモン達と旅をするのも楽しいと思うんだ」

なるほど、それでジジイはジョウト地方の図鑑集めを始める前にここに寄れと言ったのか

「・・そうですね、今までのパーティはジジイに預けてやってみます」

面白いじゃねーか、受けてやるよ
そしてまた強いパーティを作って今度こそ本物のチャンピオンになってやる

「よかった、じゃあ君の新しいパートナーはこのチコリータだ」

そう言って博士がモンスターボールからポケモンを呼び出す
全く知らないポケモンに出会うとなると否が応でも胸が高鳴る

「チコー!!」

「・・・・え」

思わずそんな声が漏れる

「・・えらく可愛いポケモンですね」

なんとか取り繕えた、だろうか?

「うん、可愛いだろ?」

この博士は俺がどんなポケモンを好んでいるのか理解していないらしい
俺が欲しいのは強くカッコいいポケモンだ
こんな女々しいポケモンをパーティに入れて戦う? あり得ないね

「・・ちなみに盗まれたのはどんなポケモンだったんですか?」

盗まれたポケモンを奪い返した方が良いのではないかと考える

「盗まれたのはワニノコっていうポケモンでね、写真は・・ほらこういうポケモンだよ」

ああ断然こっちの方が良い
恐らく進化すれば強くカッコいいポケモンになるだろう
しかし一度受け取ると言った手前、このチコリータを捨て置くこともできない

「チコリータ、ありがとうございます。もしワニノコを盗んだ犯人を見つけたら俺が責任を持って取り返しますね」

とりあえず、そうとりあえずはこのチコリータを受け取ってコイツでワニノコを取り返す

「うん、お願いするよ。じゃあポケモン図鑑完成の旅、頑張ってね!」

現在の手持ちポケモン
チコリータ♂ Lv.5 性格:おだやか 特性:しんりょく
たいあたり なきごえ

—29番道路—

「さて・・、この辺りで目新しいポケモンは・・」

コラッタ、ポッポ、この辺りはカントーでもよく見るポケモンだ

「お、アイツは・・?」

見慣れないポケモンに図鑑をかざす
どうやらオタチというポケモンらしい
・・図鑑のために捕まえるだけで十分だな

「いけ、チコリータ」

「チコー!」

強そうでないことは不満だが、記念すべきジョウトのポケモン一匹目をゲットだ

「体当たり・・だ?」

なにやらチコリータの様子がおかしい
いやチコリータだけじゃなく、相手のオタチの様子もおかしい

「・・まさかオタチと仲良くなったのか?」

二匹のポケモンがじゃれ合っている
飼われたポケモン同士ならば決して珍しい光景ではないが、野生のポケモンとトレーナーのポケモンでこんなことは初めて見る

「チコー!」
「オター!」

・・興が削がれた、という感じ
俺は強く、さらに強くあろうとするのに、このチコリータにはそんな気概は一切感じない
本当に全く、俺様には相応しくないポケモンだ

「・・なあチコリータ。お前、そのオタチと旅したいのか?」
「チコ!」

肯定、だろうか?
・・アイツならばコイツが言っていることも分かるのだろうが、俺にはさっぱり分からない

「・・なあオタチ。お前は俺たちと一緒に旅したいか?」
「オタ!」

ただはしゃいでいるだけのように見える
俺の問いに肯定を返しているわけではないと思う

なのに

「そうか、分かったよ。じゃあついてきな」

そう言ってモンスターボールを投げる
・・オタチが一回で捕まったのは単に運が良かっただけだろう

現在の手持ちポケモン
チコリータ♂ Lv.12 性格:おだやか  特性:しんりょく
たいあたり なきごえ はっぱカッター

オタチ♂   Lv.11 特性:やんちゃ  特性:にげあし
たいあたり まるくなる でんこうせっか

—ヨシノシティ手前—

・・そろそろここでのレベル上げも限界だな
チコリータ達の様子を見て、先に進むことを決める

「ん? あのポケモン・・」

行く先でポケモンバトルをしている少年たちがいる
その一方が使っているポケモン、あれはワニノコではないだろうか?
もしかするとアイツが窃盗犯かも知れない

「俺の名前はシルバー。世界で一番強いポケモントレーナーになる男さ」

負けたくせに世界で一番強くなる、か
・・はは、笑っちまうね

「おい」

負けたところだからと言って見逃す道理もない
ワニノコをどこで手に入れたか、問いつめなければ

「・・なんだお前?」

「お前が使ってたポケモン、ワニノコだろ?」

「なんだお前もトレーナーか。丁度良い、お前も俺が最強のトレーナーになるための」

俺の話を聞けと言いたいが、それ以上に

「お前、今負けたところじゃねーか。そういうことはポケモンを回復させてから言え」

「ぐっ・・」

なんだろうか
コイツからワニノコを奪い返すつもりのはずだったのだが

「バトルならお互い回復したら受けてやるよ」

なぜポケモンバトルを真正面から受けようとしているのだろうか

「さて、お前の望み通りバトルするか」

「フン」

まともに返事をしないとは生意気な奴だ

「いけ、ワニノコ」

やはりワニノコか
チコリータを出せばレベルやタイプ相性を考えても絶対勝てるだろうが

「行ってこい、オタチ」

それでは面白くないからな

「ふん、弱そうなポケモンだな」

ああ全く同意する
だが、

「そのセリフは撤回してもらうぜ。オタチ、電光石火」

「オー!」

「な!」

この辺にいるオタチとはレベルが違うんだ
当然、覚えてる技も野生のオタチとは違う

「くっ、ひっかくで返り討ちにしろ」

「勝負あったな」

「クソッ、オタチすら倒せないなんて・・」

ああ、せいぜい悔しがれ
それが・・

「レベル上げが足りないんだよ、もっと戦うこったな」

「・・そうだ、コイツが弱かっただけだ。俺が弱いわけじゃない」

なにをアドバイスしてるんだ、俺は
コイツからワニノコを奪い返す、そのつもりだったんだろう

「お前が弱いわけでも、ましてやワニノコが弱いわけでもない」

「ただ、俺様が最強なんだよ」

なんでわざわざ発破をかけるようなことを言っているのだろうか

「クソッ」

—31番道路—

結局、アイツにワニノコのことを問うことはしなかった
悪い奴では・・あるだろうが、トレーナーとしては熱心で、なにより才能があるように感じたから、だろう
あのまま育てばきっと強いトレーナーになる

プルルルプルルル

「? ああ、ポケギアか」

慣れない機械を取り出す

「もしもし?」
『やあグリーン君、旅は順調かい?』

「ウツギ博士ですか。ええおかげさまで今は31番道路で修行中です」

『そうか安心したよ。さっそく本題に入るけど、グリーン君、君はポケモンの卵を見たことがあるかい?』

ポケモンの卵? そんなものは聞いたことがない
ポケモンがどうやって産まれるか、は全くの謎だとジジイも言っていた

「いいえ、聞いたことすらないです」
『そうか、君ほどのトレーナーでもやはり見たことがないか・・』

何故ウツギ博士はそのようなことを聞くのだろうか?

「まさか、見つかったんですか? ポケモンの卵が」

『いや、まだ確定したわけではないんだけどね・・それらしい卵を見つけたって知り合いに渡されたんだ』

ポケモンの卵らしきもの、だと?
それが本物ならば大発見だ
誰にも言ってはいないが研究者を目指している俺としては見過ごせない

「本当ですか、俺もそれ見せてもらって良いですか!?」

『いや、すまない。すでに君と同じように図鑑集めをしている少年に渡してしまったんだ』

「図鑑集めをしている少年?」

俺の知る限り、俺以外でそんなことをしている人間は一人しかいない

『ああいやレッド君のことではないよ。どうやら先日オーキド博士がその子のことを見込んで図鑑を渡したらしくてね』

あのクソジジイ、と思う
それはつまり、俺を信用していないってことなんだろう

『オーキド博士が君を信用していないってわけじゃないと思うよ。ただ、彼にも才能を感じたから、そしてそれをしてもグリーン君も認めてくれると思ったから、だから渡したのだろう』

・・心を読まれたようで気に食わない

「そうですね。・・あ、そういえば」

ワニノコの件を思い出す

「多分、研究所のポケモンを盗んだと思う奴に会いましたよ、シルバーとか言う」

『グリーン君も見たのかい!?』

「も?」

『いやね、さっき言った子もそのシルバーって子に会ったって言ってね』

どうやら既に知っていたことらしい
伝えるまでもなかったか

『そっか、報告ありがとう。君たちのおかげで人相も分かったし、早く解決できそうで助かったよ』

解決?
それはつまりアイツが逮捕されるってこと、だろう

「・・盗まれたのは俺が貰うはずだったワニノコだけ、なんですよね?」

『うん? そうだよ』

「・・その被害届、取り下げてもらえませんか?」

『どういう風の吹き回しだい?』

「シルバーと勝負したんです。・・確かに彼はポケモンを盗みましたが、決して悪い奴には見えなかったので」

・・嘘だ
奴のことは悪い人間だと思ってる

「できれば俺自身が話をつけて、ちゃんとウツギ博士に謝らせたいんです」

そんなこと、全く思っていない
ただ、俺はアイツに興味があるだけだ
強いトレーナーになるだろうから

『うーん・・とは言え窃盗は犯罪・・いやしかし・・・・』

『うん、そうだねオーキド博士の孫、いやすまない。ポケモンリーグチャンピオンのグリーン君が言うことだ、信じよう』

「はは、チャンピオンだなんてやめてください。元、ですから」

それもたった一瞬の称号だ
一度もその座を守ることができなかった、惨めさの証だ

『いやいや、君の実力は本物だよ』

「ではこれで」

これ以上、その話をされても不愉快だ

『うん、また何かあったら連絡するね』

—キキョウシティ—

随分レベルが上がったな、と思う
この町のジムリーダーハヤトは飛行タイプ使いだ
チコリータ、いやベイリーフがタイプ相性で不利な分、レベルを上げるのが妥当な戦略だろう

現在の手持ちポケモン
ベイリーフ♂ Lv.17 性格:おだやか  特性:しんりょく
たいあたり リフレクター はっぱカッター どくのこな
(なきごえ→リフレクター)

オオタチ♂  Lv.15 性格:やんちゃ  特性:にげあし
たいあたり まるくなる でんこうせっか

「・・これくらいで十分か」

—キキョウジム—

「おーっす、未来のチャンピオン! このジムのハヤトは」
「おっと、俺様にそんな助言は必要ないぜ。ハヤトは飛行タイプの使い手、だろ?」

「おーっす・・」

ジョウト地方でもこの手のアドバイザー? がジムにいるんだな
お節介なことだ

「ふん、生意気な挑戦者だな。お前なんか俺だけで十分だ! 行け、オニスズメ!」

「はっ、その勢いだけは認めてやるぜ。行け、ベイリーフ!」
「なっ!」

ふん、バッジを持たない挑戦者だと思って油断したな

「リフレクター! そして体当たりだ!」

「くっ、耐えろオニスズメ!」

無駄だ、ポケモンのレベルが違う
何より、トレーナーとしての格が違う
お前にはそのオニスズメより強いポケモンは扱えないんだよ

・・・・

「完敗だ・・」

項垂れるトレーナーを無視して先に進む

「挑戦者か」

「ああ、お前がこのジムのリーダー、ハヤトか」

「そうだ、おれがキキョウポケモンジムリーダーのハヤト!」

「世間じゃ飛行タイプのポケモンなんか・・」

・・面倒くさそうな奴だな

「俺はそんな風にタイプで括ったりしねーぜ、俺自身ピジョットを愛用してたこともあるしな」

「すまない、そうだな。元チャンピオンのグリーンには無用の講釈だったな」

知ってる人は知ってるもんだな、嬉しいね

「元チャンピオン相手なのだから、本気のパーティで戦わせてもらおう」

「ちょっと待て。俺はカントーのバッジも全部置いてきたし、ポケモンも全部新しく手に入れたポケモンばかりだ」

「ちょっと強い初心者が来た程度に思ってくれ」

実際にはちょっとではないが

「・・そうか、良いだろう。行け、ポッポ!」

「いってこい、ベイリーフ!」

「チクショウ、流石だな・・」

「お互い本気のパーティで戦っていたら分からないさ」

「ふん、思ってもないことを」

・・ああ、そんなこと絶対に思わない
俺様は強いのだから、相手が本気だろうが俺様が勝つ
それだけのことだ

「・・。ま、確かにウイングバッジは頂いたぜ。バイビー」

キキョウシティ一帯の目新しいポケモンは恐らく全て捕まえただろう
ウパー、メリープ、レディバ、イトマル、ホーホー、ノコッチ・・

しかしどのポケモンも俺のパーティには相応しくない

「ベイ?」
「オオタチ?」

・・こいつらも本当ならば全く相応しくないがな

「そろそろ、新しいパーティメンバーが欲しいな」

そう呟く

次の町、ヒワダタウンのジムリーダーは虫タイプの使い手だ
ハヤト同様、ベイリーフでは相性が悪い
だからこそ、次のジムまでに三匹目の仲間、いやメンバーを見つけたい

—ヒワダタウン—

現在の手持ちポケモン
ベイリーフ♂ Lv.25 性格:おだやか  特性:しんりょく
こうごうせい リフレクター はっぱカッター どくのこな
(たいあたり→こうごうせい)

オオタチ♂  Lv.22 性格:やんちゃ  特性:にげあし
ほのおのパンチ まるくなる でんこうせっか のしかかり
(たいあたり→ほのおのパンチ)

結局、ヒワダタウンまでの道中で俺様のパーティに相応しいポケモンを見つけることはできなかった
ここまでで新規に捕まえたポケモンはハネッコだけ
進化によって新規に図鑑登録されたのはヌオー、ポポッコ、モココ、レディアン、アリアドス、ヨルノズク
どれも俺のパーティには相応しくない

苦肉の策としてオオタチに技マシンを二つ使った
一つは虫対策としての炎のパンチ、もう一つは一致技兼麻痺狙いののしかかり
ノーマルタイプの技など最終的に使う予定もないし、炎のパンチはスロットの景品だ
なくなろうが困りはしない

ヒワダのジムリーダー、ツクシとのバトルは炎のパンチでワンサイドゲームだった
・・カントーから持ち込んだ技マシンを使ったことを少し申し訳なく思う

「ん? あれは・・」

町からウバメの森に抜ける道で二人の少年が戦っている

「・・・・・・俺は弱いヤツが大ッ嫌いなんだよ」
「一人一人は弱いくせに集って偉そうにする奴ら、絶対に許せない」
「弱いヤツがウロチョロしてると目障りだからな」

あの声、あの後ろ姿、記憶にある

「あいつ、シルバーか」

どうやらまた負けたらしい
はは、負けたわりに言うことだけは一人前だな
勝った方の少年が呆気にとられている
それはそうだろう、負けた奴に弱いなんて言われる筋合いはない

「また遊んでやるか」

ジム戦で溜まったストレスをぶつける良い相手を見つけたと思う

「よお」

「なんだ? ・・またお前か」

俺に負けたくせにお前呼ばわりか、相変わらず生意気だ

「久しぶりに会ったんだ、勝負しようぜ?」

「・・生憎、今は勝負する気分じゃないんでな」

ああ、そうかまだポケモンを回復してないのか

「少しはポケモンを気遣えるようになったか」

「・・・・」

無視しやがった
・・まあいいか

アイツはトレーナーとして成長しているようだ
・・俺はどうだろうか?

ステータスや相性の悪さを無理なレベル上げと理不尽な技構成で補う
これで強いポケモンだと、強いパーティだと、強いトレーナーだと言えるのだろうか

「・・しばらくベイリーフとオオタチのレベル上げはやめるか」

そうと決まればやはり新しい手持ちポケモンが必要だ

—ウバメのもり—

トキワの森みたいだな、と思う
出てくるポケモンはキャタピー、トランセル、ビードル、コクーン、パラス
どれもカントーで見られるポケモンばかりだ
・・パラスはトキワの森にはいなかったか

ふと顔を上げると、見たことのないポケモンが木の上でざわついているように見える
どうにかしてアイツらを木から落とす方法はないものか・・

「なんだ兄ちゃん、もしかして木の上のポケモンが欲しいのかい?」

「え? あ、ああ。どうにかしてアイツらを落とせないものかと思ってな」

「それなら丁度良い、俺が兄ちゃんのポケモンに頭突きを教えてやるよ」

頭突き? なぜ頭突きなんだ?

「分からないって顔してるな。こういうポケモンが集る木に頭突きをかますとポケモンがびっくりして落ちてくる、って寸法さ」

「へえ、なるほどね。じゃあオオタチに教えてもらえるか? 忘れさせるのは・・のしかかりでいい」

・・結果から言うと新しく捕まえられたポケモンはエイパムだけだった

というか、頭突きをしたらエイパムが落ちてきて捕まえようとすると逃げる
気を取り直して改めて頭突きをするとまた同じエイパムが落ちてくる

木を変えたりもしたが、それの繰り返し
最後はエイパムが満足したのか特に抵抗せずモンスターボールに収まった

本当はあのカブトムシみたいなポケモンを捕まえたかったんだが・・


現在の手持ちポケモン
ベイリーフ♂ Lv.25 性格:おだやか  特性:しんりょく
こうごうせい リフレクター はっぱカッター どくのこな

オオタチ♂  Lv.25 性格:やんちゃ  特性:にげあし
ほのおのパンチ まるくなる でんこうせっか ずつき
(のしかかり→ずつき)

エイパム♂  Lv.10 性格:わんぱく  特性:にげあし
ひっかく しっぽをふる すなかけ

—コガネシティ—

この街の人間はどうにも訛りが強い
どこか聞き覚えのある訛りだが、一体どこで聞く機会があっただろうか

「お、グリーンやないか?」

「ん? ・・ああ、ここはマサキの故郷だったのか」

思い出した
やけに馴れ馴れしい訛りはマサキと同じなのだ

「懐かしいのー、あんさんはジョウトでもポケモンを集めとるんか?」

「ああ、またジジイに頼まれてな」

「ほんならちいと家にきいや。良いものやるさかい」

良いもの?

「図鑑集めに関係あるのか?」

そうでなければ意味はない

「多分、な。まあ見るだけの価値はあると思うでー」

「・・なんだこれ?」

目の前のあまりの光景に、そんな言葉が出る

「いやなあ、時代を超えてポケモンを通信するためのタイムカプセルっつうシステムを開発しとったんやが・・」
「その調整中に大量のタマゴが送られてきたんや」

「一体なんのタマゴなんだ?」

「それが分かれば苦労はせーへん。しかしこの前に会った少年が持ってたポケモンのタマゴらしきもの、とそっくりやからな」
「きっとポケモンのタマゴなんやないか、と思ってな」

ジジイが図鑑を渡した奴ももうここまで来てるのか
確かにトレーナーとしての腕は確かなのかもしれないな

「少年の話ではポケモンと一緒に旅することがタマゴを孵化させるのに良いらしゅうてな」
「であれば、ワイがこうして抱え込んどるよりも、信頼できるトレーナーに譲った方がええやろ、って話や」

「・・じゃあ貰うよ」

適当にタマゴを見繕う

「おー、なんぼでも持っててくれてええで! こんな仰山あってもワイも困るでなあ」

そんな沢山貰ったら俺のパーティがタマゴだらけになるだろう

「いや一個でいい。・・そうだな、これ」
ガタッ

不意にすぐ横にあったタマゴが目に入る

「・・とこれの2つを貰うよ」

なんとなく
本当にただなんとなくこのタマゴを貰うべきだと思った
・・何を言っているんだろうな

現在の手持ちポケモン
ベイリーフ♂ Lv.25 性格:おだやか  特性:しんりょく
こうごうせい リフレクター はっぱカッター どくのこな

オオタチ♂  Lv.25 性格:やんちゃ  特性:にげあし
ほのおのパンチ まるくなる でんこうせっか ずつき

エイパム♂  Lv.15 性格:わんぱく  特性:にげあし
ひっかく しっぽをふる すなかけ バトンタッチ

タマゴ
なにがうまれてくるのかな? うまれるまでまだまだかかりそう

タマゴ
ときどきなかでうごいているようだ うまれるまでもうちょっとかな?

「さて・・」

一息ついて今後どうするか考える

「エイ?」

コイツをボックスに預けようとしたらひどく抵抗された
敢えなくこうしてパーティに加える羽目になった

「・・ますます俺様に相応しくないパーティになってるな」

溜息が出る

「とりあえずはコイツのレベル上げをしながらタマゴの孵化に専念するか・・」

ベイリーフとオオタチはレベルを上げすぎてしまったからな
ジムリーダーと対等に戦える程度のレベルに抑えなければならない

「ふう・・エイパムのレベル上げはこんなものかな」

「エイパーム♪」

嬉しそうな顔をしてやがる
俺がどんな気持ちでお前を育ててると思ってるんだか

「ん?」

ピキッ!

「・・タマゴが!?」

ピキピキッ・・・・パリィッ!

「ブーイ」

「イー・・ブイ?」

「ブイ?」

なんとなく懐かしい
なんとなく、ではないか
イーブイは・・俺が最初に貰ったポケモンだ

「はは、本当にポケモンのタマゴだったんだな」

イーブイ♂  Lv.1  性格:おくびょう 特性:きけんよち
ねがいごと なきごえ たいあたり しっぽをふる


「ねがいごと・・?」

イーブイがそんな技を覚えた記憶はない

「ジョウト地方では覚える・・とかだろうか?」

ポケモンがレベルアップで覚える技は地域によって違う、らしい
・・詳しい人間に訊いてみるか

『はいウツギです』

「もしもし、グリーンです」

あまり率先して話したい相手ではないが、
"ジョウト地方のポケモンに詳しい人"
この条件に当てはまるのはこの人しか思いつかなかった

『タマゴから孵ったイーブイがねがいごとを覚えていた?』

「はい。それでジョウト地方ではイーブイがねがいごとを覚えることがあるのか確認しようと思ったんですが」

『んー、僕が知る限り、イーブイがねがいごとを覚えるという例はないね』

「・・そうですか」

『しかしそれは野生のイーブイに限った話だ。タマゴから産まれてきたポケモンには何か特別な要素があるのかもしれない』

『僕の方でもポケモンのタマゴについて本腰を入れて調査してみるよ。連絡ありがとう』

結局、なぜこのイーブイがねがいごとを覚えているかは分からずじまいだ
・・タマゴから孵ったポケモンは特殊な技を覚えていることがある
今はそれくらいに思っておくか

—コガネジム—

「いけ、イーブイ」

「ぶ、ブイ!?」

・・もの凄くビクついていて面白い

「戻れイーブイ、代わりにいけエイパム」

経験値のために出しただけだが、どうやらこのイーブイはかなり臆病らしい

・・・・

エイパム一体で戦うのがここまでしんどいとはな・・
かと言ってベイリーフとオオタチは未だに周りより高レベルだ
・・はあ

「ジムリーダーへの挑戦はもう少し後にするか・・」

ビシッ

「ん? こっちのタマゴも孵るか?」

ビシシッ!!

「ルリー!」

「お、おお? このポケモンは?」

図鑑をかざす

「へえ、マリルって言うのか。・・また俺のパーティには似合いそうもない奴だな・・」

マリル♀   Lv.1  性格:きまぐれ  特性:そうしょく
はらだいこ アクアジェット れいとうパンチ ねむる

「見た目はともかく、技は即戦力級だな」

当面はマリルとイーブイのレベルを上げてこの2体を主軸にコガネジムを突破するか
エイパムは戦闘に全く向かないし

「・・イーブイは何に進化させようかね」

「ブイ?」

サンダース、はアイツだけで十分だ
となるとシャワーズかブースターだが・・今は石の持ち合わせがない

「ま、レベルを上げながら考えればいいか」

「ブイ♪」

分かってるような返事をしやがる

現在の手持ちポケモン
エイパム♂  Lv.23 性格:わんぱく  特性:にげあし
みだれひっかき しっぽをふる すなかけ バトンタッチ

ベイリーフ♂ Lv.25 性格:おだやか  特性:しんりょく
こうごうせい リフレクター はっぱカッター どくのこな

オオタチ♂  Lv.25 性格:やんちゃ  特性:にげあし
ほのおのパンチ まるくなる でんこうせっか ずつき

イーブイ♂  Lv.18 性格:おくびょう 特性:きけんよち
ねがいごと なきごえ たいあたり しっぽをふる

マリルリ♀  Lv.20  性格:きまぐれ  特性:そうしょく
はらだいこ アクアジェット れいとうパンチ ねむる

—コガネジム—

「さて、ジムリーダーアカネ、勝負だ」

「ゆうとくけどうち、めっちゃ強いで! いってきーな、ピッピ!」

「イーブイ、しっぽをふるだ」

「ほんならこっちは往復ビンタや!」

意外とダメージが大きい
残りHPは6、7割だろうか

「戻れイーブイ。交代だ、マリルリ!」

「ルリ!」

「アンタ、見た目に似合わずかわいーポケモン使うな!」

言うな・・
俺が一番気にしているんだ

「ふん、冷凍パンチ!」

「往復ビンタ!」

思ったよりは固い、いやこっちの火力不足か?
しかしマリルリはイーブイより固い
もう一度冷凍パンチを打てばマリルリの勝ちだ

「これはうちが不利やね・・。ピッピ、指を振る!」

な・・! なんてギャンブルしやがる、この女!!

「ピッピぃぃぃ!」

「これ・・は、はねる?」

びっくりさせやがって・・

「・・アチャー」

「マリルリ、もう一度冷凍パンチだ」

「かんにんなあ、ピッピ。しゃあない、ミルタンク頼むで!」

なんだこのポケモンは?
体格の良さから見て耐久の高いポケモン・・か?
いや、あの重量感、パワーも相当のものだろう
・・マリルリで仕留めることは厳しいだろうな

「くっ、戻れマリルリ」

代わりに誰を出すべきか・・

「・・行ってこい、エイパム」

こいつですなかけをして勝機を掴む!

「ミルタンク、踏みつけや!」

!!

「レベルはこっちの方が上だってのに、なんて火力だ・・」

半分近く削られた
だがあと2回は行動できるはずだ

「エイパム、すなかけだ!」

「ミルタンク、メロメロ!」

速い!? そしてメロメロだと!?

「くっ、エイパム、なにやってる! すなかけだ!」

「ミルタンク、ころがる!」

・・一度もすなかけを当てられなかったか

「・・よくやった、エイパム」

まずい、本当にまずい

ころがるを2連続で決められた
つまり、次のころがるが成功すれば威力は120だ
これはふみつけよりもまずい・・

ベイリーフやオオタチを出したくないというのもある
が、出したとしても怪しいのではないかと思う

毒とリフレクターでジリ貧
という手はあるだろうがベイリーフがどれほど耐えられるか分からない
メロメロがある以上、こちらの行動は半分近く制限される

唯一メロメロで行動を制約されないのはマリルリだが・・
ピッピ戦での消耗を抜きに考えても、ダメージ合戦は不利・・だろう

素早さも、エイパムが抜かれた以上オオタチ以外は間違いなく先制される

・・

「いけ、ベイリーフ! 毒の粉だ」

ころがるを当てられたが、毒で確実にHPを削る
こちらはまだエイパムしか倒れていない
あとは粘るだけで勝てる・・はずだ

「ミルタンク、メロメロ! そんでまたころがるや!」

芸がない
いや有効打がない、とみるべきか

「ベイリーフ、リフレクター! そして交代、イーブイ」

・・これでとりあえずターンを稼げる、はず

「イーブイ、なきごえだ」

「ブイ!」

「ミルタンク、ミルクのみ!」

回復技だと・・やられた
いや、それならばもう一度だ

「イーブイ、なきごえ!」

これでリフレクターの効果は切れるがダメージは半減のままだ

「ミルタンク、ふみつけ!」

「ぶいっ・・」

「イーブイ!」

さすがに半減したとはいえころがるとふみつけを耐えるのは無理か・・

「・・ありがとう、イーブイ。もう一度出番だベイリーフ」

だがおかげで分かったことがある
毒と耐久のジリ貧ではミルクのみのある向こうが有利だ
・・万が一急所に当てられてはリフレクターもなきごえも意味がないからな

ならば奴が回復する直前に重い一撃をぶち当てればいい
俺の手持ちで一番デカイ一撃を

「ミルタンク、メロメロ!」

「ベイリーフ、リフレクター! そして戻れ!」

リフレクターはただの壁だ
しかし次のポケモンに活路を繫げるための要で、・・次への信頼か

「いけ、マリルリ!」

「はん! そのマリルリ程度の力じゃウチのミルタンクは倒せんよ! ふみつけ!」

ああ、さっきのピッピへの攻撃を見てればそう思うだろうな
だがなきごえとリフレクターで威力が落ちた攻撃もコイツにはささりはしない

「マリルリ、はらだいこだ!」

「! なるほどね、それで次の一撃でとどめをさそうって寸法やね!」

「でも残念ながら、ウチのミルタンクの方が速いんや。ミルタンク、ミルクの」
「マリルリ、アクアジェット!」

「ルリ!!」

・・・・

「・・・・わーん!!」

なんとか勝った、か
エイパムが相手の力をはかり、ベイリーフとイーブイが火力を落とし、マリルリで仕留める

・・なんとも俺様らしくない戦い方だ
俺様ならそれぞれのポケモンがエース級で、それを相手によって使い分ける
こんな弱っちいポケモンではそんな戦い方はできない、か

ん? ボールが光ってる?

「ブーイ・・」

「おい、イーブイ、出てきて大丈夫なのか。って・・これは」

「フィ?」

進化、した? 石を使わずに? だが・・

「なんだ、このポケモンは?」

「・・エーフィやね。キミ、ポケモンに好かれてるんやな」

さっきまで泣いてた奴が何事もなかったかのように

「エーフィはな、イーブイがトレーナーのことを大好きだとなる姿らしいで」

「・・さっきのバトルではマリルリに繫げるためにやられちまったのにか」

「そういうところにちゃんと意識を向けられる、真摯なトレーナーだって分かってるんやろ」

ふん・・、そんなのはコイツの勘違いだ

「・・もう7つか」

ジムバッジを数える
よくもまあこんなポケモンで戦ってきたものだと思う

プルルルプルルル

「はい、もしもし?」

『あ、グリーン君かい? ラジオ、聞いたかい!?』

やけに慌ててるな、ラジオがどうしたのだろうか?

「いえ、どうかしましたか?」

『そそ、それが、コガネシティのラジオ塔がロケット団に占拠されたらしいんだ!!』

「ロケット団!?」

そんな馬鹿な
ロケット団はアイツが、レッドが壊滅させたはずだ
いやしかしウツギ博士がそんな冗談を言うはずもない

『そうなんだよ!! そそそれで、ゴールド君がラジオ塔に向かっちゃって・・えっと・・どどどどうしよう!? どうすればいいんだろう!?』

「落ち着いてください。ロケット団の一人一人は決して強くありませんから、そのゴールド君、というのがちゃんとしたトレーナーならなんの心配もいりません」

そうだ、落ち着いて対処すればいい
所詮は雑魚の集まりだ
ラジオ塔はそのゴールドとか言う奴に任せる

『・・今ここにロケット団の復活を宣言する! ・・サカキ様ー! 聞こえますかー?』

これか・・ウツギ博士が言っていたラジオ、というのは

「はん、相変わらずトップだけの組織、ということか」

であれば、サカキさえ現れなければ自ずとこの事件は収束するはずだ

「サカキの居場所か・・」

それが分かったらジュンサーさんも苦労はしない、か

「今から情報収集、ってわけにも行かないよな」

事は一刻を争う
悠長なことはしていられない

「・・だったらサカキが現れそうな場所に待ち伏せか」

—???—

「・・キサマは」

「へへ、やっぱりここに現れたか。俺様の読み通りだな」

ロケット団のかつてのボスサカキ
そしてトキワシティの元ジムリーダーサカキ

「隠されているとは言え、このジムにはお前が残したものが沢山あるもんな」

例えばペルシアンやサイドンやダグトリオ

「ふん・・しかしこの隠し通路まで見つかっているとはな」

「考えれば当然だろ。レッドとの戦いが終わった直後、突如として姿を消したんだ」

「この部屋に隠し通路がありますって言ってるようなもんだぜ」

さて、あとはコイツをジュンサーに突き出すだけだが・・

「捕まれと言って素直に、はいそうですか。ってタマでもないよな」

「当然」

「んじゃまあ、トキワシティの元ジムリーダーと現ジムリーダー、どっちが強いか。今ここでハッキリさせようじゃねーか!」

現在の手持ちポケモン <ジムリーダー仕様>
ナッシー♂  Lv.55
リーフストーム トリックルーム さいみんじゅつ サイコキネシス

ギャラドス♂ Lv.52
りゅうのまい こおりのキバ おんがえし たきのぼり

カイリキー♂ Lv.56
かみなりパンチ ストーンエッジ じしん ばくれつパンチ

ウインディ♂ Lv.58
りゅうのはどう ほえる しんそく フレアドライブ

サイドン♂  Lv.58
かみなりのキバ じしん ストーンエッジ メガホーン

ピジョット♂ Lv.60
おんがえし ふきとばし オウムがえし エアスラッシュ

「ナッシー、行ってこい!」

「ナッシーか・・、ではドンカラス」

なんだ、このポケモンは?
これも・・ジョウト地方で新しく見つかったポケモン・・なのか?
いや、今はそんなことはどうでもいい、とりあえず奴を倒す事が先決だ

「ドンカラス、悪巧み」

「ナッシー、催眠術!」

「カァー!!」

効いてない!? こいつ、眠らない特性か!?

「く、戻れナッシー。・・一か八か、頼むぜカイリキー!」

「悪の波動」

助かった、か?
いやまだ気は抜けない
飛行技を持ってればそれで終わりだ

「シャドーボール」

勝った!

「カイリキー、かみなりパンチ!」

「ドンカラスはまだ倒れていないぞ、シャドーボール」

「カイリキー!!」

なんて固さだ・・いやギリギリか?

「行けピジョット、エアスラッシュでトドメだ」

ドンカラスが倒れる

「ふむ・・ガルーラ」

ガルーラか・・ならこちらの方が速いな

「ピジョット、おんがえし」
「不意打ち」

! 先制技か
・・だがその程度の威力ならば痛くない

「もう一度、おんがえしだ」

よし、これでガルーラは戦闘不能だ

「これでお前は2体ダウン、俺はカイリキーがダウンしただけ、だな」

地面のエキスパート相手にナッシーとギャラドスを無傷で温存できているのはありがたい

「・・いけ、カバルドン」

・・また見た事のないポケモンか
しかもアイツが登場した途端フィールドが砂嵐になりやがった
見た目から察するに、鈍足物理型、だろうか?

「ピジョット、エアスラッシュ」

「・・怯み狙いか、悪くない」

「もう一度、エアスラッシュ!」

「ストーンエッジ」

流石に耐えられない、か・・

「よくやったピジョット。ギャラドス、出番だ、竜の舞」

「ふむ、ストーンエッジ」

痛いダメージ、だが・・

「攻撃力の上がった滝登りで終わりだ!」

これで残りのポケモンはこちらが4体、サカキが3体
ギャラドスが手負いなのが辛いが・・

「相変わらず、腕が立つようだな・・ガブリアス」

コイツも地面タイプ、なのか?
見るからにドラゴンタイプ、も持ってるよな
であれば・・

「ギャラドス、氷のき」
「ガブリアス、逆鱗」

速ッ

「ギャァア!!」

「ギャラドス!!!」

なんて速さだ!?
こっちは一度竜の舞をして・・

「チッ、スカーフか」

「良い眼をしている」

「なら行け、サイドン」

逆鱗の発動回数は二〜三回
速さで勝てない以上、物理耐久の高いサイドンで削れるだけ削る

「サイドン、地震!」

逆鱗一発で約半分削られた・・がこっちも地震でほぼ半分削れた
ダメージ合戦は僅かに有利ってところか

「もう一度地震だ!」

・・残りHPギリギリ、だな

「ガブリアスまでも・・か」

「・・・・降参だ」

「あ?」

「ガブリアスがやられた以上、君に勝てるポケモンはもういない、と言っている」

・・終わった、のか?

「本当の事を言うと、ここに戻ってきたのはロケット団復活のためではないんだがな」

「はあ?」

「君の予想通り、ここに置いてきたポケモンたちを回収に来たのは事実だがね」

「・・じゃあ俺は骨折り損ってワケか」

「そう悲観するものではない。かつての最強のジムリーダーの本気を前にして勝利したんだ。良い自信になったろう」

「・・元から俺様は最強なんだよ」

「ふん、口が減らないな」

—フスベシティ—

図鑑完成状況
捕まえた数<ジョウト>:94

ジョウト地方の図鑑もおよそ完成、だろうか?
対戦したトレーナーが見た事ないポケモンを使うたびに交換したり捕獲場所を尋ねてきた
こうしてジョウト地方を回ったのだから恐らく全て捕まえられただろう
・・結局サカキが使ったポケモンは見つける事ができなかったのが気がかりだが

せっかくフスベシティまできたんだ
最後のジムリーダーを倒してカントーに戻るか・・

—グレンじま—

ここは変わらないな
考え事をするにはここが良い

誰もいない
何も変わらない
ただ風と潮だけが流れる場所

結局、ポケモンリーグに挑まなかったな
・・まあいいか、どうせ俺のパーティは最強じゃない

ポケモンリーグにレッドがいるわけでもない

そういえば・・あれ、なんだったんだろうな

『キングドラ、竜の息吹!』

『マリルリ、冷凍パンチ!』

『・・ずいぶんとタフね、そのマリルリ』

あのときは、てっきりマリルリが固いのかと思ったが
結局、マリルリはダメージらしいダメージは負ってなかったな

「もしかすると、まだ誰も知らないタイプ相性がある・・のか?」

「あの」

あん? なんだ人が考え事をしてるってーのに

「誰だお前?」

どこかで見たことがあるような、ないような少年だ
・・どことなくレッドに似ているような

「ポケモントレーナーってことは見ればすぐに分かるけどな・・」

俺か?

「俺の名前はグリーン」

チャンピオンになった男さ・・まあ少しだけだったけどな・・・・

レッドのヤローに邪魔されちまったからな・・

ところでお前、何か用か?

俺と戦いたいのか? ・・わりぃが今、戦う気分じゃねーんだ

見ろよ、この有り様・・

火山がちょっと噴火したら町ひとつなくなっちまった

ポケモン勝負で勝った負けた言っても自然の身震い一つで俺たちは負けちまうんだ・・・・

まあいいや

俺はトレーナーだからな

強い奴がいたら戦いたくなるんだけどな

お前、俺と戦いたければトキワのジムに来いよ

そのとき相手してやるぜ

—トキワジム—

「・・強かったな。アイツ」

「あれなら確かにジジイからポケモン図鑑を渡されるのも納得だぜ」

はー・・
俺様のパーティは最強じゃなかったんだなー

コガネでも実感したが、
俺様のパーティは個々のポケモンがエース級であっても連携がない

コンビネーションと言いつつ、タイプ相性の補完以外なにもしていない

「おい」

あん?

「シルバーじゃねーか。やっぱりお前もここまで来たか」

「まさかお前がジムリーダーだったとはな」

「おいおい、まだお前呼ばわりか」

「そもそもお前は俺に名乗っていない」

そうだったか?

「そうかい、では改めて・・」

「トキワジムリーダーのグリーンだ。タイプにこだわりはないが最強にはこだわるぜ」

「ポケモントレーナーのシルバー。・・最強になるのはオレだ」

ああ、なるほど
今になって気付いた

コイツは俺に似てるんだな
最強のポケモンを従える事が最強のトレーナーだと思ってたんだ

そして、もうそれが最強になるための手段ではないということに気付いている
そんなところまでそっくりだ

強いポケモンもいる
しかし弱いポケモンもいる

そんななかで俺たちは強いポケモンだけを選び、強くなった気でいた

だから気にかかってたのか

・・コイツなら良いトレーナーになれるだろうな

だが俺もトレーナーだ

相手を認めたからと言って、勝ちを譲るわけではない

俺はコイツの一歩前でコイツの壁であり続けよう

「クソッ、まだ勝てないのか!」

「はっ、まだまだお前自身の腕が足りねーよ」

俺自身も、な
お前は少し前の俺を映す鏡だ

「・・また挑みにくる! 俺はお前にも、絶対に勝つ!」

"も"?
・・そうか、アイツにも良いライバルがいるってことか

そうだな、俺もいい加減レッドに勝たないといけないからな

「悪いが、トキワジムリーダーグリーンはこれで終わりだ」

「はァ?」

そりゃあいきなりこんなこと言われればそんな顔にもなるよな
だが俺はもうレッドやゴールドに負けたままでいられるほど腑抜けでもない
今度こそ、最強のパーティを作り上げてアイツらを倒す
そのためにはこんなところでジムリーダーをやってるわけにはいかねーんだよ

「最強のトレーナーの座、俺様が奪い返さなきゃならないねーからな! バイビー!」

疲れたから終わり

地の文形式のSSをこの間散々こき下ろしたけど、書く分には楽しいわ
読める代物が書けなさすぎて伏線らしきものも全部ぶんなげだけど

誰かこんな感じの構想で読める形に書き直してくれないかなー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月27日 (土) 11:33:57   ID: QVJGakHT

うん…これやめるのもったいないよ…。

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