美少年「ボクに逆らうと…殺すよ?」ニコッ マッチョ「!」ゾクッ(25)

ここは悪の組織のアジト──

圧倒的な強さとカリスマ性を誇るボスの下、

大勢の構成員たちが、日々悲願である世界征服に向けた準備を進めている。





まもなく、組織を支える三人の幹部による定例会議が始まろうとしていた。

一人目、美少年──

美少年「さぁ~て、次は何して遊ぼっかなぁ」

ボスの息子である少年。
まだ幼いが、ボス以上の才能を秘めており、実力はすでに幹部No.1である。



二人目、女幹部──

女幹部「うふふ……世界征服は遊びじゃないのよ?」

怪しげな魔力をまとった妖艶な女性。
戦闘力だけでなく頭脳も明晰であり、組織のブレーンとして活躍する。



三人目、マッチョ──

マッチョ「ケッ、ガキはお気楽でいいぜ!」

巨体と怪力が自慢の大男。
生身で戦車を相手にしても力負けしない豪傑だが、粗暴なのが玉にキズ。

女幹部「さて……今日の議題は最近現れた政府直属の『ヒーロー』についてよ」

マッチョ「ヒーローか……」

マッチョ「まだ手合わせはしてねぇが、ウチの上級兵もやられたらしいじゃねえか」

女幹部「ええ、要人襲撃を試みていた兵士たちが撃退されたわ」

マッチョ「いったい何者なんだ?」

女幹部「おそらく……政府が長年育成してきた対テロなどの切り札よ」

女幹部「アタシたちの組織が侮れないと分かって、投入してきたんでしょうね」

美少年「ボク、新しい遊び相手ができて嬉しいなぁ~」

美少年「警察や自衛隊の人じゃ、弱すぎて物足りないもん」

女幹部「とにかく、慎重に作戦を練って──」

マッチョ「作戦? んなもん必要ねぇよ! オレ様が出ればそれで済む!」

マッチョ「東の都市あたりで部下を率いて暴れりゃ、ヒーローの方からやってくるだろ!」

マッチョ「そこを一気にブッ叩く!」

美少年「ダメだよ、そんなの」

マッチョ「なんでだよ?」

美少年「だって……東の都市にはボク行きつけのオモチャ屋があるんだ!」

美少年「マッチョさんが暴れて、壊されたら困るもん!」

マッチョ「……は?」

美少年「それにさ、せっかく新しい遊び相手ができたんだ」

美少年「一気にやっつけちゃったらもったいないよ」

美少年「もっとじっくり遊んであげようよ!」

マッチョ「あぁ!? オモチャだの遊び相手だの、なに下らねえこといってやがる!」

マッチョ「ったく、これだからガキはよ……」

マッチョ「オレ様はオレ様のやりたいようにやるぜ! 指図されんのは嫌いだからよ!」

女幹部「ちょ、ちょっと……」

美少年「ふうん……そんなこというんだ、マッチョさん」

美少年「ボクがやめてっていってるのに……」

マッチョ「当たり前だ! なんでお前のいうことを聞かなきゃならねぇんだ!」

マッチョ「いっとくが、ボスの息子だからって──」

美少年「…………」ゴゴゴ…

マッチョ「?」

美少年「ボクに逆らうと……殺すよ?」ニコッ

マッチョ「!」ゾクッ…

マッチョ「ひ、ひいい……!」

マッチョ「す、すまねぇ……! ゆ、許してくれぇっ!」

マッチョ「悪かった! お前に逆らう気なんてこれっぽっちもなかったんだ!」

美少年「マ、マッチョさん!?」

マッチョ「だから命だけはぁっ!」オドオド…

美少年「マッチョさん、落ちついて! 冗談だよ! ごめんね? ね?」

マッチョ「殺さないでくれえっ! うわぁぁっ!」ガタガタ…

美少年「殺さないよ! 殺さないから……ね?」

マッチョ「……ホント?」チラッ

美少年「ホントだよ、マッチョさん! だって……ボクたち仲間じゃないか!」

マッチョ「だけどお前が本気出したら、オレ様なんて一瞬で……」

美少年「そんなことないって! マッチョさんだって強いじゃない!」

美少年「ほら、自信持って……ね?」

マッチョ「じゃあ……なんで『殺すよ?』なんていったんだよ……」

美少年「そ、それは……」

美少年「実はこないだ、女の人たちに──」



女構成員A『あの……笑顔で“殺すよ?”っていってくれませんか?』

美少年『え、どうして?』

女構成員B『お願いします!』

美少年『よく分かんないけど、そこまでいうんなら……』

美少年『殺すよ?』ニコッ

女構成員A『キャ~、ステキ!』

女構成員B『とってもかっこいいです! ゾクゾクしちゃいました!』



美少年「──って褒められたんだ」

美少年「それで……やってみたんだよ」

美少年「ボクがこういったら、マッチョさんも喜んでくれて」

美少年「ボクのいうことを聞いてくれるんじゃないかって……」

マッチョ「今の話、本当だな? ウソじゃないんだな?」

美少年「ホントだよ! ボクを信じて!」

マッチョ「う~ん……ウソっぽい……」ジロ…

美少年「マッチョさん!」

美少年(ダメだ、どうすれば信じてくれるんだろう……)

美少年(このままじゃ、マッチョさんが自信をなくしちゃう!)

美少年(──そうだ!)

美少年(『殺すよ?』っていったらマッチョさんが怯えちゃったんだから……)

美少年「マッチョさん……生かすよ?」ニコッ

マッチョ「!」

マッチョ「ぐははははっ!」

マッチョ「なるほど、『殺すよ?』の反対に『生かすよ?』か!」

マッチョ「おもしれえ奴だな!」

マッチョ「よぉ~し、抱きしめてやる!」ギュッ…

美少年「わっ! 苦しい!」

マッチョ「お前がもっとガキの頃には、よくこうして抱きしめてやったが──」

マッチョ「さすがにもう嬉しくもなんともねえか!」

美少年「…………」

美少年(マッチョさんの腕……すごく太いのに優しくボクを包んでくれてる)

美少年(マッチョさんの胸板……ぶ厚くて、お父さんみたいに頼もしい)

美少年(マッチョさんの匂い……トレーニングの汗の匂いが心地いいや)クンクン…

美少年「…………」ギュッ…

マッチョ「おい、どうしたんだ? そろそろはなすぞ」

美少年「マッチョさん……」

美少年「ボク、マッチョさんのこと大好きだよ」

マッチョ「おう、オレ様もだよ!」

美少年「だからボク……将来はマッチョさんと結婚する!」

マッチョ「え……!?」

美少年「世界征服したら、結婚しようね、マッチョさん!」

マッチョ「…………」

マッチョ「悪いが、それはできねえ……」

美少年「え、なんで!? ……どうしてさ!?」

マッチョ「お前はボスの息子……いってみりゃ将来のボスだ」

マッチョ「いや、お前はいずれボスを超えるだろう」

マッチョ「そんなお前と、部下であるオレ様がくっつくわけにはいかねえ」

美少年「いいじゃない、そんなの!」

マッチョ「それに……オレ様とお前は男同士だ」

美少年「それはそうだけど……でもボク、マッチョさんが好きなんだ!」

美少年「マッチョさんのこと考えてると、ドキドキが止まらないんだよ!」

マッチョ「ダメだ……!」

美少年「どうして!?」

マッチョ「オレ様には彼女がいるんだ。ぶっちゃけ、結婚も考えてる」

マッチョ「だから……お前と一緒にはなれねえんだ……」

美少年「!」ガーン

美少年「……やだ!」

美少年「ボク、ずっとマッチョさんのたくましい筋肉に憧れてて──」

美少年「ずっとマッチョさんと結婚したかったんだ!」

美少年「マッチョさんが結婚してくれないならボクは……死ぬよ?」ニコッ

マッチョ「バカヤロウ!」

ドゴォッ!

美少年「うあっ!」

マッチョ「組織の幹部ともあろう者が、軽々しく死ぬなんていうんじゃねえぜ!」

美少年「ご、ごめんなさい……」

マッチョ「……いや、オレ様も殴ってすまなかった。つい手が出ちまった」

マッチョ「お前もオレ様を殴れ」

美少年「え、でも……」

マッチョ「いいから殴れ! 手加減すんなよ!」

美少年「分かったよ……えいっ!」

ズドォンッ!

マッチョ「ぐえええっ!」

マッチョ「が、がはっ……」ゲホッ…

美少年「だ、大丈夫!?」

マッチョ「平気だ……ナイスパンチ」ニッ

美少年「よかった……」ホッ…

マッチョ(とんでもなく重いパンチだった……アバラが折れてやがる)ズキッ…

マッチョ(へへ……さすがボスの息子だぜ……!)

マッチョ「いいか?」

マッチョ「お前の気持ちってのはおそらく、近所のお兄さんへの憧れみたいなもんだ」

マッチョ「いつかもっと大人になったら……お前も本当の恋愛をする日がくる」

マッチョ「だから死ぬなんていうな!」

美少年「うん……」

マッチョ「それにたとえ結婚はしなくても、お前とオレ様は仲間だ! な?」

美少年「うんっ!」

マッチョ「ほれ、なでてやる」ナデナデ…

美少年「えへへ……」ニコッ





「おい、お前ら」

マッチョ&美少年「!?」ゾクッ…

女幹部「さっきからアタシを無視して、なに野郎同士でメロドラマしてやがる……」

マッチョ「す、すまねえっ!」

美少年「あわわ……ごめんなさいっ!」

女幹部「いいか? 今度また会議中にこんなことしたら、二人まとめて──」

女幹部「殺す……!」

マッチョ&美少年「…………」ゾゾゾッ…

マッチョ(やっぱり『殺すよ?』なんかより──)ガタガタ…

美少年(『殺す』の方が、ずっと怖い!)ガタガタ…






おわり

補足

元ネタは腐女子あるあるネタです
(多分なんかのアニメの美形キャラのセリフ)

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