関裕美「私のプロデューサーさんは」 (46)

・ざりがにPのオマージュです。本人ではありません
・Pがざりがにです。


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関裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)


「えっと、君が関裕美ちゃんだね。よろしくお願いします」

裕美「はいっ、よろしくお願いします!」

P「よろしくお願いします」

「……あれ、プロデューサーさんはどちらに……」

P「ここですよ、ここ……裕美、拾ってくれ」

「……?」

裕美「あっ、Pさんまた落ちてる……」ヒョイッ

P「すまないな裕美」ヨイショッ

「!」

P「裕美の肩が一番乗り心地がいい」

裕美「それって……褒められてるのか、よく分かんないな」

P「かなり褒めてる」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(アメリカザリガニ……らしいです。この前Pさんが言ってました)


「は、初めまして……えっと、裕美ちゃんのプロデューサーさん、ですよね……?」

P「はい。CGプロのPと申します。裕美、名刺出して」

裕美「うん……どうぞ」スッ

「あ……どうも」スッ

P「貸してくれ」

裕美「うん」スッ

P「えっと……○○さんですね、今日はよろしくお願いします」

「は、はぁ……」

P「裕美、返すよ」チョキンッ

裕美「あっ!また名刺切っちゃった……」

P「……すまん」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(Pさんがざりがにに見えるのは、私だけじゃないみたいです)


――――


木場真奈美「Pはいるかい?」

P「はい、ここにいますよー」

真奈美「……どこだ?」

P「ここです」バタバタ

バサバサ

真奈美「ああ、そこか」ヒョイッ

P「ありがとうございます、真奈美さん。ちょっと困ってました」フゥ

真奈美「ちゃんと言ってくれよ?資料に埋もれていたら私だって見つけられないかもしれないからな」ハハハ


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(身長……ううん、体長は15センチくらい。時々資料に埋もれます)


真奈美「そうだ。Pに話があるんだが……今日の夜は空いているかい?」

P「ええ。今日の仕事はもうすぐ終わりそうです」

真奈美「よかった。久しぶりに飲もうじゃないか」

P「いいですね」

真奈美「君のためにスルメも沢山買ってきた。ちょっと付き合ってくれないか」

P「スルメ!」

P「……もちろんです。すぐ仕事終わらせますね」フンスフンス

真奈美「ありがとう。気長に待っているよ」

P「俺はテナガじゃないですけどね」ハハッ

真奈美「スルメには食いつくようだがな」ハハハ


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(好きな食べ物はやっぱり、スルメです)


――――


P「丁度いい。裕美、助けてくれ」

裕美「どうしたの、Pさん……?」

P「柚に捕まった」

喜多見柚「へっへーん♪Pサンはスルメ大好きだもんねー」ブンブン

P「やめて柚、落ちる」プラーン

裕美「柚ちゃん、Pさん可哀想だよ?」

柚「えー?もう少しいいでしょ?ねっPサン?」

P「柚が楽しいなら悪くはない」

裕美「でも、落ちちゃうよ?」

P「……柚。仕事があるから離してくれ」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(時々、釣られます)


柚「仕方ないなぁ……はいっ」ヒョイッ

P「!」ガシッ

裕美「Pさん?」

P「柚、待って。スルメごと離すんだ」

柚「えー……だってPサン、スルメがあったらお仕事しないでしょ」

P「い、いや、その……」

裕美「悩んじゃった」

P「えっと、えっと……善処する、たぶん、きっと……」

柚「……どうしよっか、裕美チャン?」

裕美「Pさん、お仕事終わるまでスルメは我慢してね?」

P「ひどい……」グスッ


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(私達以上に喜んだり悲しんだりするけど、ざりがにです)


――――


裕美「ど、どうしたのPさん!?」

P「ん、裕美か……」カタッ

裕美「顔……ううん、全身真っ青だよ!?」

P「たまにこうなる。今日のご飯がサバだったからだな……」カタッ

裕美「大丈夫なの?」

P「ああ。支障はない……」カタッ

P「……」カタ……

裕美「?」

P「裕美、どうやったらキーボードって上手く打てるんだろうな……」ハァ

裕美「う、うん……」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(事務所にざりがには一匹……一人だけなので、時々大変そうです)


池袋晶葉「聞いたぞ、P。君のためにキーボードを作ったから試してくれ」

P「分かった……ありがとう晶葉」

裕美「ありがとう、晶葉ちゃん」

晶葉「礼には及ばんよ。どうだ、P?」

P「おお!押しやすい!ありがとう晶葉!」カタッカタッ

晶葉「そうか。それは良かった」

P「あはは……ごめんな、二人とも……俺、ざりがにだもんな……」ズーン

裕美「!」

裕美「わ、私はざりがに、好きだよっ!」アワワッ

晶葉「そ、そうだぞ!それにざりがにの独創的なフォルムは格好いいと思う!」アタフタ

P「そ、そうか……!?ありがとな、ありがとなぁ……!」グスッ


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(サバを食べて青くなっている時は、気持ちも沈んじゃうみたいです)


――――


首藤葵「……」

P「……」ジリジリ

葵「逃げちゃだめっちゃ、プロデューサー」ズイッ

P「やだ。目が怖い」

葵「大丈夫、ちゃんと調べてきちょるから」

P「何を」

葵「ざりがにの調理ほ」

P「!」ダッ

葵「あっ!待つっちゃプロデューサー!」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(時々、調理されそうになります)


裕美「Pさん?どこにいるの?」

P「裕美、ここだ!助けてくれ!」ジタバタ

裕美「あっ!」


葵「あはは……捌いてみたくなって、つい」

P「やめてくれ。死んじゃう」

裕美「そうだよ葵ちゃん。ダメだよPさんをいじめたら」

葵「い、いじめてないっちゃ!ただ、料理人としての血が……」モジモジ

P「……いいよ。気にしてない」

葵「本当!?」

P「でも俺を捌くのはやめてくれ。市場で買ってきたやつならいいから」

裕美「いいの!?」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(時々、本当にざりがになのか……分からなくなります)


――――


綾瀬穂乃香「……」モクモク

柚「!」

裕美「ダメだよ、柚ちゃん……」コソコソ

P「そうだぞ柚。集中してるんだからいたずらはよくない」コソコソ

柚「いいからいいからっ♪」コソコソ


穂乃香「……」モクモク

柚「……ぐさぁーっ!」トンッ

ぴにゃこら太「うっ!」

柚「!?」ビクッ

穂乃香「ぴにゃさんっ!?大丈夫!?」

ぴにゃこら太「み、みぞおち入った……」プルプル

柚「!!?」


裕美(穂乃香さんのプロデューサーさんは、ぬいぐるみです)

裕美(時々柚ちゃんが間違って、ぐさぁーします。痛そう……)


P「……おう、お疲れぴにゃ」

ぴにゃこら太「お疲れ様です、Pさん」

P「ぴにゃも大変だなー」

ぴにゃこら太「あはは……僕は柚ちゃんにしか狙われませんけどね」

P「俺なんてこの前、葵に捌かれそうになったよ」

ぴにゃこら太「大変ですね……僕も忍ちゃんにぬいぐるみと間違えられて、ブサイクブサイクって」ハハッ

P「……お互い大変だな」

ぴにゃこら太「仕方ないですよ」

P「ぴにゃ、今日は飲みに行くか」

ぴにゃこら太「お伴します」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(時々、他のプロデューサーさんとお酒を飲みに行くらしいけど……どこに行くんだろう?)


――――


高垣楓「プロデューサーさん、プロデューサーさん」ヒョイッ

P「どうしました楓さん。つままないでください」

楓「ふふっ、飲んでませんよ?」

P「そうじゃなくてつまみ上げないでください」

楓「まあ、まあ……プロデューサーさん、お風呂は好きですか?」

P「それなりには……熱すぎると茹で上がっちゃいますけど」

楓「では、お風呂に入りましょう」

P「えっ」

楓「一緒に入ります?」

P「遠慮します。俺、これでも男です。ざりがにですけど」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(お風呂、入るんだ……でもそうだよね、ざりがにって川のいきものだし……)


裕美「Pさん、どこにいるの?」

P「裕美、こっちだ」

裕美「?」キョロキョロ


裕美「あれ……?」

楓「裕美ちゃん、ここですよ、ここ」スッ

P「やあ」ザバッ

裕美「Pさん!?」

P「お椀のお風呂は気持ちいい」フー

楓「ふふっ……いいダシ、取れたかな」

裕美「……えっ?」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(お風呂はぬるい方が好きみたいです。熱すぎると茹で上がっちゃうし……)


――――


裕美「あれ、Pさん?」

P「」

裕美「Pさん!?大丈夫!?」

P「」

裕美「ど、どうしよう……黒くなったまま動かなくなっちゃった……!!」

P「」

裕美「えっと、救急車、じゃなくてえっと……!」


P「……あれ、どうした裕美?」

裕美「……えっ?」

P「あっ!いけね、抜け殻捨てるの忘れてた!恥ずかしい!」


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(……時々、脱皮します)


裕美「むぅ……」ムスー

P「ごめん、ごめんってば」

裕美「本気で心配したのに……」プイッ

P「抜け殻捨てるの忘れてただけなのに……」

裕美「……Pさん、死んじゃったのかなって、思って……」グスッ

P「裕美……」

裕美「Pさん、人間じゃないし……ざりがにだし……」

P「……うん」

裕美「もしかしたら、すぐに死んじゃうのかなって……!」ブワッ

P「……ごめんな、裕美」

P「俺はどこにも行かない。裕美がアイドルを続ける限り、絶対に死なない」

裕美「うん……Pさんっ……うあぁぁぁぁぁぁ……」ボロボロ


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(……私の大好きな、とっても大切な……たった一人の、ざりがにです)


――――


裕美「……」グスッ

P「……ライブお疲れ様、裕美」

裕美「うん……」

P「派手に転んだな。痛くなかったか?」

裕美「大丈夫、だけど……」グスッ

P「失敗くらいあるさ。気にしないでいいって柚も言ってくれたろ」

裕美「でも……私が転んだから、柚ちゃんが慌てちゃって……」

P「裕美……」


P「……大丈夫だ、裕美。次がまたあるだろ」

裕美「P……さん……?」グスッ

P「……失敗したって、生きていればやり直せる」


P「もう、ずっと昔の話だけどさ」

P「……俺の兄さんはな、俺の目の前でナマズに食べられたんだ」

裕美「!」

P「兄さんは、油断して川底で遊んでた俺を、かばって食べられたんた」

P「弟は川辺で遊んでた子供たちに釣り上げられて……どうなったかは、分からない」

裕美「P、さん……」

P「あいつ、俺よりもずっとスルメが好きだったからな。掴んだら離さなかったんだ」

P「危ないぞって言ったんだけど、糸を切って逃げるから、大丈夫だって……」

P「それっきり……」ジワッ

裕美「……」


P「……でも、裕美は違う」

P「一度失敗したって、大丈夫だ」

P「生きてる限り、また次がある。次頑張って、成功させればいい」

裕美「うん……!」グスッ

P「……まあ、さっきの話は嘘だけどな」

裕美「えっ?」

P「兄さんからはこの前手紙が届いた」

P「いい人……いいざりがにを見つけたらしい」

裕美「……?」ポカン

P「弟は今、地元近くの朝市で働いてる」

裕美「え、えっと……?」

P「……泣き止んだな、裕美。ご飯食べに行くか。奢るよ」

P「柚や真奈美さんも待たせてるし、早く行こう」

裕美「う、うん……?」


P「……大丈夫だからな、裕美」

P「生きていれば、やり直せるんだから」


ガチャッ

P「遅くなってすみません、真奈美さん、柚」

真奈美「ははは、気にしなくていいよ」

P「迎えまで頼んで……申し訳ありません」

真奈美「Pは運転できないからな。それくらいは私が手伝うよ」

P「……いつもありがとうございます、真奈美さん」


柚「お疲れ様っ、裕美チャンっ!」

裕美「う、うん……お疲れ様、柚ちゃん」

裕美「……」

裕美(……よしっ!)


裕美「Pさん!今日はどこに食べに行くの?」

P「おっ、元気になったな!どこでもいいぞ!」

柚「はいはーいっ!柚はお寿司がいい!」

P「うっ……エビはやめてくれ……なんか俺に似てて嫌だ……」

真奈美「よし、決まりだな。それじゃあ行くぞ」


――――


裕美(私のプロデューサーさんは、ざりがにです)

裕美(体長は15センチくらいしかなくて、お仕事は大変そうです)

裕美(晶葉ちゃんが作ったキーボードがないとパソコンは上手く使えないし)

裕美(車はいつも真奈美さんに運転してもらってます)


裕美(好きな場所は、私の肩の上だそうです)

裕美(巨人の肩の上に乗ったみたい……って、私達はみんな、巨人みたいだそうです)


裕美(スルメが大好きで、お酒を飲むお姉さん達とよく取り合いをします)

裕美(時々茹でられそうになったり、捌かれそうになって大変みたいです)

裕美(サバを食べると身体が青くなって、ちょっとのことでもへこんじゃいます)


裕美(……でも、私のプロデューサーさんは)

裕美(大好きで、かけがえのない、たった一人の――)


裕美「ねぇ、Pさん!」


P「どうした。緊張して……なさそうだな。いい笑顔してる」


裕美「私、ライブ頑張るから……ちゃんと、見ててね!」


P「ああ、ちゃんと見てるからな……すまん裕美、もうちょっと机を前に」


裕美「……これで、大丈夫?」


P「ああ。これで特等席だ」


裕美「えへへ……それじゃ、行ってきますっ!」


P「……行ってらっしゃい。頑張れよ」





裕美(私のプロデューサーさんは)


裕美(世界で一番かっこいい、ざりがにです)



以上で終わりです。

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