芳佳「501に響く狼の悲しき遠吠え」 (58)

夜 宮藤の部屋

芳佳「疲れたぁ。もう寝ないと。あ、今日は満月なんだ。綺麗……」

ワォォォォォン

芳佳「……え?」

ワォォォォン……ワォォォォン……

芳佳「この声……なんだろう……。遠吠え……?」

オォォォォン……!!

芳佳「結構、近くにいるみたいだけど……どこだろう……」

オォォォォォ……!!!

芳佳「外……じゃない……基地の中……!?」

ワォォォォォォォォン!!!!

芳佳「ひっ!?」

芳佳「ど、どうして……基地の中から聞こえるのぉ……」

ワォォォォォォン!!!

芳佳「どうしよう……!! と、とりあえずベッドの中に……!!」モゾモゾ

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翌朝 食堂

シャーリー「おはよー」

ルッキーニ「おっはよー!!!」

ペリーヌ「朝から元気ですわね」

芳佳「うぅ……ねむい……」

リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの? 寝不足?」

芳佳「ああ、うん。昨日、全然寝付けなくて……」

リーネ「大丈夫?」

芳佳「う、うん……なんとか……」

エーリカ「じゃ、私と一緒にお昼まで寝る?」

芳佳「え? いいんですか?」

エーリカ「もっちろん」

バルクホルン「いいわけあるか!! 宮藤もハルトマンの甘言に乗るな」

芳佳「あ、すみません」

エーリカ「別にいいじゃん。宮藤も寝不足だって言ってるんだしさ」

バルクホルン「自己管理が出来ていないだけだろう。自業自得だ」

芳佳「ごめんなさい。そうですよね……」

エーリカ「今までも寝付けなかったことってあるの?」

芳佳「いえ、昨夜が初めてでした」

エーリカ「なんかあった? 悩みならトゥルーデが親身になってきいてくれるよ」

バルクホルン「お前は聞いてやらないのか」

エーリカ「私がきいてもいいのー?」

バルクホルン「……宮藤、何か原因でもあるのか?」

芳佳「あ、えっと、バルクホルンさんは聞いていませんか?」

バルクホルン「何をだ?」

芳佳「遠吠えです。昨日の夜それが聞こえてきて……」

ペリーヌ「……」ピクッ

シャーリー「ペリーヌ。顔に出すな」

ルッキーニ「うじゅっ」

芳佳「え? ペリーヌさんも昨日の遠吠え聞いたの?」

ペリーヌ「は? 話かけないでくださいな」

芳佳「えぇぇぇ!? どうして!?」

エーリカ「そっか。宮藤はまだ……」

バルクホルン「やめろ、ハルトマン」

芳佳「え!? なんですか!? 何か知っているなら教えてください!!」

バルクホルン「宮藤」

芳佳「は、はい!!」

バルクホルン「知らなくてもいいことがこの世には多くある」

芳佳「え?」

バルクホルン「そういうことだ、宮藤」

芳佳「ど、どういうことですか!?」

エーリカ「宮藤。知らない方がいいこともあるんだよ。生きているとね」

芳佳「え……あの……」

バルクホルン「さ、朝食を食べろ。時間はないぞ」

エーリカ「はぁーい」

芳佳「ちょ、ちょっと待ってください!! なんで隠すんですか!? 教えてくださーい!!」

シャーリー「宮藤、もう忘れたほうがいい。きっと夢だったんだよ」

芳佳「夢じゃないです!! 私、ずっと起きてましたから!! 間違いなく!!」

ルッキーニ「おいしー!」

ペリーヌ「ですわね」

エーリカ「トゥルーデのもらっていい?」

バルクホルン「答えが分かっていて訊いているのか。いい度胸だな、ハルトマン」

芳佳「えぇぇ……」

リーネ「芳佳ちゃん……」

芳佳「あ、リーネちゃんは!? リーネちゃんも昨日の遠吠え聞いた!?」

リーネ「うん。聞いたよ」

芳佳「やっぱり!! あれって狼の遠吠えみたいだったよね?」

リーネ「……芳佳ちゃん、この話はしちゃダメみたいだから」

芳佳「どうして? なにかあるの?」

リーネ「私もよくわからないの。でも、誰もこの話には触れたくないみたいで」

芳佳「そうなんだ……」

リーネ「きっと私達にとって都合の悪いことなんじゃないかな。あの遠吠え」

芳佳「でも、基地内に狼みたいなのがいるってことなのに、危ないよぉ」

リーネ「これまで実害が出たって報告はないみたいだけど……」

芳佳「放っておいても平気ってことなの?」

リーネ「多分……」

芳佳「うーん……そうなのかなぁ……」

バルクホルン「宮藤、リーネ。いつまで下らないことで喋っている。早く食べろ」

芳佳・リーネ「「りょ、了解!!」」

シャーリー「これうまいなー」

ルッキーニ「だね!!」

ペリーヌ「水のおかわりがいるかたは?」

エーリカ「おいひぃ」

バルクホルン「……」モグモグ

芳佳「……はむっ」

格納庫

芳佳「でも、気になるよね」

リーネ「遠吠えのこと?」

芳佳「リーネちゃんの言うとおり私達にとって都合が悪いことなら尚更教えてくれてもいいと思うんだけど」

リーネ「うん。何かの拍子に知っちゃったら、どうしていいのか分からないもんね」

芳佳「それと遭遇したあとの対処とかも分からないんじゃあ、危なくて夜トイレにいけないよ」

リーネ「そうだね……」

芳佳「うーん……どうして……」

美緒「おい。訓練の準備は済んだのか?」

芳佳「あ、ちょっと待ってください。リーネちゃん、背中押すね」

リーネ「う、うん、お願い」

美緒「しっかり体は解しておけよ。何が原因で怪我をするかわからんからな」

芳佳「はい!」グググッ

リーネ「ふーん……!!」

美緒「ふむ」

芳佳「ねえ、リーネちゃん。坂本さんには訊いたことある?」

リーネ「え? ないよぉ。バルクホルンさんたちにも訊きにくいことだから……」

芳佳「坂本さんなら教えてくれるかも」

リーネ「や、やめたほうが……」

美緒「何をしているんだ。手を休めるな」

芳佳「あの! 坂本さん! 聞きたいことがあります!」

美緒「言ってみろ」

芳佳「昨日、遠吠えを――」

美緒「訓練だ!! 訓練を始めるぞ!!」

芳佳「え!? ちょっと待ってください!!」

美緒「どうした!?」

芳佳「遠吠え――」

美緒「さっさと走れ!!」

芳佳「えぇぇぇ!?」

美緒「なんだ!! 文句があるのなら走る距離を倍にするぞ!! それでいいのか!!! 宮藤!!」

芳佳「よ、よくありません!!!」

美緒「では走れ!! いけぇ!!!」

芳佳・リーネ「「りょ、りょうかぁい!!!」」

美緒「はっはっはっはっは」

芳佳「や、やっぱり、何かあるんだ。あの遠吠え……」

リーネ「み、みたいだね……」

美緒「はっはっはっは!!」

芳佳「……リーネちゃん、調べてみない?」

リーネ「え!?」

芳佳「分かってる。坂本さんが隠すぐらいだもん。とてつもない秘密があるから、私達には教えたくないんだと思う」

リーネ「だったら……」

芳佳「だけど、どうしても気になるの。このままだと私、夜一人でトイレにいけないから」

リーネ「私が付いて行ってあげるよ?」

芳佳「そんなのダメ! リーネちゃんだってゆっくり寝たいでしょ? だから私、絶対にあの遠吠えの謎を解明する!」

リーネ「芳佳ちゃんと一緒にトイレに行くのはなんでもないんだけど……むしろ嬉しい……」

通路

リーネ「でも、どうやって調べるの? バルクホルンさんたちも口を閉ざしてるし」

芳佳「エイラさんはどうかな? リーネちゃん、エイラさんに遠吠えのこと聞いたことある?」

リーネ「ううん。私が初めて遠吠えを聞いた翌朝はエイラさんとサーニャちゃんがいなかったから」

芳佳「そうなんだ。エイラさんとサーニャちゃんなら絶対に知ってるよね。夜間哨戒してるから、そのときに聞いてるはず」

リーネ「そうだろうけど、教えてくれるかどうかは……」

芳佳「正体までは教えてくれなくても遭遇したときの心構えぐらいは教えてもらえるかも!!」

リーネ「だといいけど……」

ミーナ「ふんふふーん」

芳佳「あ、ミーナ隊長。こんにちは」

リーネ「こんにちは」

ミーナ「はい、こんにちは。訓練は終わったの?」

芳佳「はい。午後から射撃訓練がありますけど」

ミーナ「そう。がんばってね」

芳佳「そうだ。ミーナ中佐は知ってますか? 夜中に基地内に響く遠吠えのことなんですけど」

ミーナ「え、ええ……まぁ……」

芳佳「やっぱり聞こえますよね! あの狼みたいなすごい遠吠え!」

リーネ(狼……ミーナ中佐……)

ミーナ「んー……」

リーネ「あっ!?」

芳佳「え? なに、どうしたの、リーネちゃん?」

リーネ「あ、えっと……その……」

ミーナ「……宮藤さんとリーネさんはそれを調べてどうするつもりなのかしら?」

芳佳「気になるからです!!」

ミーナ「そう……気になるの……」

リーネ「い、いえ!! 気になりません!! 全く!! 全然!! 少しも!! 微塵も!!」

芳佳「リーネちゃん、どうしちゃったの?」

リーネ「も、もう行こうよ!! 芳佳ちゃん!! 訓練の時間だよ!! ほら!!」グイッ

芳佳「わわっ!? まだお昼ご飯も食べてないのに!? リーネちゃん!! まって!! 引っ張らないで!!」

ミーナ「……」

リーネ「はぁ……はぁ……はぁ……」

芳佳「はぁー……つかれたぁ……。リーネちゃん、急に走りだすからびっくりしちゃったよ」

リーネ「ご、ごめんね、芳佳ちゃん……」

芳佳「でも、本当にどうしちゃったの? 様子が変だよ?」

リーネ「……私、気が付いたの」

芳佳「何が?」

リーネ「遠吠えの正体……」

芳佳「えぇぇぇ!? なに!? なんなの!?」

リーネ「……きっと、ミーナ中佐なんじゃないかな」

芳佳「えー? あははは、どうしてそうなるのー? 変なリーネちゃんっ」

リーネ「狼の遠吠え、なんだよ?」

芳佳「うん。そうだね」

リーネ「狼……なんだよ……?」

芳佳「狼がどうかし……え……でも……そんなこと……」

リーネ「坂本少佐やバルクホルンさんたちが隠そうとするのも納得できないかな?」

芳佳「待って。もしそうならどうして隠すの? 言ってくれてもいいのに」

リーネ「私たちの隊長が夜中に遠吠えするなんて奇行でしかないから」

芳佳「そっか。そんな姿をわざわざ新人に見せることもないよね」

リーネ「うん。場合によっては幻滅しちゃうこともあるかもしれないし」

芳佳「……バルクホルンさんの言うとおり、知らない方がよかったね」

リーネ「うん……」

芳佳「よし! 忘れた!! リーネちゃんは!?」

リーネ「え!? あ、わ、私も忘れたよ!!」

芳佳「だよね!!」

リーネ「うん!!」

芳佳「さ、リーネちゃん。食堂に行こう。そろそろお昼ご飯だよ」

リーネ「そうだね。もうお腹空いちゃった」

芳佳「私もぉ。色々運動したもんね」

リーネ「そうだね」

芳佳「今日のお昼ご飯はなにかなぁ」

食堂

ペリーヌ「あら、お疲れ様、宮藤さん、リーネさん」

芳佳「ペリーヌさんも今からごはん?」

ペリーヌ「見れば分かりますでしょう」

リーネ「それなら一緒に食べましょう」

ペリーヌ「はいはい」

エイラ「ふわぁぁ……。おはよー」

芳佳「おはようございます。エイラさん」

エイラ「私の分も頼む」

リーネ「はーい。今、持っていきます」

ペリーヌ「ご自分でお取りになったらどうですの。後輩は召使ではありませんわよ」

エイラ「うるさいなぁ。リーネも快く引き受けてくれたんだからいいだろぉ」

ペリーヌ「あのですね……」

リーネ「い、いいですから、ペリーヌさん。どうぞ、エイラさん」

エイラ「悪いな」

ペリーヌ「まったく。宮藤さん、リーネさん。こういう人を規範しないように」

芳佳「あははは……」

リーネ「は、はぁ……」

エイラ「こっちは夜間哨戒明けなんだぞ。もっと労われないのかよぉ」

ペリーヌ「サーニャさんほどではありませんでしょう」

芳佳「そういえばサーニャちゃんはまだ寝ているんですか?」

エイラ「ああ。私は常勤だから早く起きたんだ」

リーネ「大変ですね、エイラさん。生活が一番不規則だし」

エイラ「ま、全部サーニャのためだかんなぁ。苦にはならない」

芳佳「すごいですね。私なんてちょっとしたことで眠れなくなって大変です」

エイラ「ん? 宮藤、疲れてるのか? なんかあったのか?」

芳佳「あ、いえ! なんでもないですから!!」

リーネ「そ、そうです! 芳佳ちゃんはなんていうか見た目よりも繊細なんです!!」

芳佳「え!? どういうこと!?」

エイラ「ふぅん。まぁ、昨日はミーナ中佐が吠えてたからなぁ。仕方無いな」

ペリーヌ「なぁ……!?」ガタッ

エイラ「なんだよ? 黙ってメシ食えよ」

リーネ「エ、エイラさん!?」

エイラ「あー?」

芳佳「それ、言ってもいいんですか!?」

エイラ「なにが?」

ペリーヌ「ちょっとエイラさん!! その話は秘匿にするという暗黙の了解がありますでしょう!?」

エイラ「秘匿って宮藤もリーネも知ってるんじゃないのか?」

リーネ「ま、まぁ、その……」

芳佳「ついさっき知りましたけどぉ」

エイラ「なら、問題ないんだなっ」

ペリーヌ「あります!! そう簡単に喋っていいことではありませんわ!!!」バンッバンッ

エイラ「いいだろ、別に。中佐が遠吠えするぐらい。毎日してるわけでもないしさ」

ペリーヌ「毎日ではないから問題なんですの!!」

芳佳「あ、確かに。私は昨日初めてきいた……」

エイラ「中佐も何が楽しいんだろうなぁ、あれ。時々やってるけど」

ペリーヌ「想像もつきませんわね」

リーネ「どうして遠吠えをするのかは分からないんですか?」

エイラ「しらねー。そんなの本人に訊くしかないけど、誰か訊ける奴いるか? なぁ」

芳佳「それはいないと思いますけど」

エイラ「だろ? だから今後も分かることはないんじゃないか?」

リーネ「ですね……」

ペリーヌ「では、食事にしましょうか。午後も軍務が待っていますし」

芳佳「……ちょっと待ってください。どうしてミーナ隊長が遠吠えをしているのか誰も知らないってことですか?」

エイラ「だからー、誰が中佐に「どうして夜中に吠えるんですか?」なんて聞けるんだよ。少佐ぐらいだろ」

ペリーヌ「その少佐もきっと正直に話すことはないでしょうし」

エイラ「だろうなー。私も前に聞いたけどはぐらされたからなぁ」

芳佳「どうして話してくれないのか、考えたことありますか?」

エイラ「え? 真剣に考えたことはないけど」

芳佳「もし、ミーナ隊長が病気だったら……?」

ペリーヌ「びょ、病気……!?」

エイラ「その可能性はあるな。結構溜めこんでるみたいだし」

ペリーヌ「ハルトマン中尉やシャーリーさんやエイラさんが原因の筆頭ですわね」

エイラ「なんでだー!!」

リーネ「でも、病気なら芳佳ちゃんに言うんじゃないかな?」

芳佳「私の魔法じゃあ、無理なのかもしれないよ」

リーネ「そ、そんなことあるの!?」

芳佳「精神的なことだったりすると私の魔法は無力だから」

リーネ「そ、そっか……」

芳佳「ミーナ隊長が毎日の忙しさで限界がきたときに、遠吠えをしているのかも」

エイラ「そういうこともあるかもなぁ。でもさ、それで日々の疲れとか鬱憤を発散できているならいいんじゃないか?」

芳佳「だけど、ミーナ隊長は時々遠吠えをしているんですよね?」

エイラ「してるなー。月に一回はしてるんじゃないか?」

ペリーヌ「言われてみれば、そうですわね。月に一度だけとはいえ定期的に遠吠えが聞こえるような気がしますわ」

芳佳「月に一回もそんな行動を起こしているなんて、異常だと思うんですけど……」

リーネ「なら、やっぱり病気……」

ペリーヌ「エイラさんの所為ですわよ。どうするおつもりで?」

エイラ「なんで私の所為なんだっ」

ペリーヌ「貴女がいつもいつもサーニャさんのことでトラブルを起こしているからでは?」

エイラ「私はサーニャとトラブルを起こしたことは一度もないぞ」

ペリーヌ「違います!! サーニャさんに関することで他の方とトラブルを起こしているでしょうと言っていますの!」

エイラ「それはサーニャのことを悪くいうどこかのツンツン眼鏡が悪いだけだろー」

ペリーヌ「な、なな、なんですって……!!」

リーネ「や、やめてください!! こんなときに!!」

ペリーヌ「も、申し訳ありません……」

エイラ「なぁ遠吠えすることでリフレッシュできている可能性はないのか?」

芳佳「今も定期的に発作を起こしているのなら、いつかミーナ隊長は倒れちゃいますよ……」

エイラ「え……そうなるのか……?」

芳佳「なるかもしれません」

エイラ「うぇ……そんなこといわれても私にできることなんて……なんかあるのか……?」

ペリーヌ「ミーナ中佐に心労を与えないことしかありませんわね」

エイラ「具体的にどうしろっていうんだよ」

ペリーヌ「そんなの命令を素直に聞けばいいでしょう」

エイラ「私は従ってる。聞いてないのは中尉とかルッキーニとかだろ」

ペリーヌ「サーニャさん絡みでは命令無視をも辞さないではないですか」

エイラ「お前だって少佐が絡むと中佐のこと無視するじゃないか」

ペリーヌ「誰が無視などしますか!!」

リーネ「ま、待ってください!! そもそもペリーヌさんとエイラさんが原因かどうかもはっきりしませんよ」

ペリーヌ「そ、それもそうですわね」

エイラ「だよな。私が迷惑をかけているなんてありえないんだな」

ペリーヌ「どの口が……」

芳佳「あの、原因をこっそり調べてみませんか? 原因さえ分かれば私達でもなんとかなると思いますし」

エイラ「えー? どうやってだよぉ?」

芳佳「それは……。どうしようか、リーネちゃん」

リーネ「うーん、ミーナ中佐の言動を監視するしかないかも」

エイラ「中佐を監視って……」

ペリーヌ「また無茶なことを。そんなことわたくし達にできるとでも?」

芳佳「無理なの?」

ペリーヌ「あのカールスラントの英雄、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐を監視するなんて不可能ですわ」

エイラ「だな。絶対に途中で気付かれて、注意されて、営倉行き確定だな」

芳佳「えぇぇ!? そんなぁ!! ペリーヌさん!! どうにかして気付かれないようにできないかな!?」

ペリーヌ「できるなら501を背負って立つ大エースになれますわ」

芳佳「なら、ハルトマンさんに協力を!!」

エイラ「中尉がそんなことに協力してくれるかぁ? ミーナ中佐の怖さを一番知ってるのに」

芳佳「うっ……。で、でも、ミーナ隊長のことも心配ですし……」

リーネ「ミーナ中佐をずっと監視するんじゃなくて、ミーナ中佐を見かけたときだけ観察するのはどうかな?」

芳佳「見かけたときだけって?」

リーネ「食堂とかハンガーとか、あとは廊下とかで見かけたら、ミーナ中佐の言動を気にかけるの」

ペリーヌ「まぁ、それなら監視とは言えませんし、ミーナ中佐が不審に思うこともないでしょうけど」

芳佳「流石、リーネちゃん!! それで行こう!!」

エイラ「ま、わかったら教えてくれ」

芳佳「何言ってるんですか、エイラさん。エイラさんも協力してください」

エイラ「えー?」

芳佳「ミーナ隊長を見かけたら、どんなことを言っていたのか、どんなことをしていたのかメモしてくださいね」

エイラ「メモって書けるものを持ってないときだってあるぞ」

芳佳「常に持っていてください」

エイラ「マジかよぉ」

芳佳「ペリーヌさんもお願い!! ミーナ隊長の命に関わることかもしれないから!!」

ペリーヌ「そ、そう言われると、断われるものも断れませんけど……」

芳佳「リーネちゃんも」

リーネ「勿論っ。まかせて」

芳佳「ありがとう!」

エイラ「で、原因が分かったらどうするすんだ?」

芳佳「それは分かったあとに考えましょう。まずは調べることが大事ですから!!」

ペリーヌ「それしかないですわね。……行きましょう」

訓練場

美緒「構え。……撃てぇ!!」

リーネ「……っ」バァァン!!!

芳佳「おぉー! リーネちゃん、すごーい」

ミーナ「坂本少佐」

芳佳・リーネ「「……!!」」ピクッ

美緒「どうした?」

ミーナ「訓練中にごめんなさい。今、上層部から連絡があってね」

美緒「予算の件か。全く」

芳佳・リーネ「「……」」ジーッ

ミーナ「そうなの。こちらの意見は全然聞いてくれないのに向こうは好き勝手に注文してくるのだけはやめてほしいわ」

芳佳・リーネ「「……」」ジーッ

ミーナ「……視線を感じるのだけど」

美緒「ん? おい、宮藤、リーネ。手を休めるなよ」

芳佳・リーネ「「了解!!」」

格納庫

ペリーヌ「さ、飛行訓練の時間ですわ。急ぎませんと」

ミーナ「シャーリーさん!」

ペリーヌ「……!!」ピクッ

シャーリー「はいはい?」

ミーナ「なんて恰好で整備をしているの? 服を着なさい。男性職員もいるんですよ」

シャーリー「でも、暑いんですよね」

ミーナ「……早く着なさい」

シャーリー「イエス、マム」

ミーナ「もう」

ルッキーニ「うじゃぁ……あついぃ……」

ミーナ「ルッキーニさん!! 服を着なさい!!!」

ルッキーニ「あにゃ!? ごめんなさーい!!!」

ミーナ「はぁ……何度同じ注意をさせるの……」

ペリーヌ(シャーリーさんとルッキーニさんの改善されない生活態度に辟易している様子……っと)

通路

エイラ「そろそろサーニャを起こしにいくかー」

ミーナ「ハルトマン中尉」コンコン

エイラ「おっ」ピクッ

ミーナ「ハルトマン中尉。……ハルトマン。……フラウ」

エイラ(中尉がいつものように寝坊してるのか。寝坊っていってももう昼過ぎてるなぁ)

ミーナ「すぅー……。ハ! ル! ト! マ! ン! お! き! な! さ! い!」

エイラ「うぇ……すげー怒ってるな……」

エーリカ「なにぃ……トゥルーデなら今は監視任務でしょ?」

ミーナ「だから私が貴女を起こしにきたの。訓練はどうしたの?」

エーリカ「ふわぁ……もうそんな時間だっけ……? ありゃ、ホントだ」

ミーナ「……早く着替えて訓練を始めなさい」

エーリカ「今日はおやす――」

ミーナ「はい? 今、なんて?」

エーリカ「じょ、冗談だって……冗談……」

夜 食堂

ミーナ「ふぅー……」

芳佳「……」

ミーナ「……何か用かしら、宮藤さん?」

芳佳「い、いえ! なんでもありません!!」

ミーナ「そう……」

リーネ「ミーナ中佐、すごく疲れてますね」

ペリーヌ「今日見ただけでも中佐は心の疲労をいくつも重ねていましたから」

エイラ「中尉のことですっごく怒ってたぞ」

ペリーヌ「シャーリーさんとルッキーニさんに対してもかなりのものでしたわ」

芳佳「私とリーネちゃんが見たときは軍の上層部のことで苛立っているみたいだった」

ペリーヌ「今日一日だけでも相当ですわね。月に一度ぐらい発狂しなければ自我を保てないのかもしれませんわ」

リーネ「そ、それってかなり病んでるってことじゃぁ……」

芳佳「このままにしておいたら遠吠えする回数も多くなってくるかも……」

ミーナ「はぁ……水でも飲みましょう……」

リーネ「まだはっきりとはしませんけど、ミーナ中佐が遠吠えする一因は……」

ペリーヌ「軍上層部はどうにもならないとしても、みなさんの生活態度はなんとかすべきですわ」

エイラ「特に中尉とかルッキーニとかな」

芳佳「エイラさん。私達だって知らないところで迷惑をかけているかもしれませんよ?」

エイラ「えー? そんなことあるかぁ?」

芳佳「自分のことって意外と自分自身が一番分かってないですから」

ペリーヌ「宮藤さんにしては良いことをいいますわ」

エイラ「そんなこと言い出したら、不安になるじゃないかぁ」

ペリーヌ「わたくしたちの一挙手一投足全てが奇行の要因である可能性もありますもの」

リーネ「その辺りは本人に聞いてみないことにはなんとも言えませんね」

エイラ「本人に……」

ミーナ「んぐっ……んっ……んぐっ……ぷはぁ……! おいしい」

エイラ「リーネ、ちょっと聞いてきてくれ」

リーネ「無理です!!」

ペリーヌ「今、できることをするしかないですわね。みなさんを集めて事情を話したほうがいいですわ」

ブリーフィングルーム

芳佳「――と、いうわけなんですけど」

シャーリー「あの遠吠えってあたしたちの所為だったのかよ」

リーネ「そ、それはまだ……」

エーリカ「ま、薄々気が付いていたけどね。こればかりはミーナ本人が乗り越えるべき壁だから」

バルクホルン「何を言っているんだ!! 今日もミーナに叩き起こされたお前が言うな!!!」

芳佳「ハルトマンさんとバルクホルンさんはミーナ隊長が遠吠えしているところを直に見たことはありますか?」

バルクホルン「直接はないな。ミーナの自室から聞こえてくるのは知っているが、覗き見る勇気も問う勇気もない」

ペリーヌ「昔から遠吠えはしていましたの?」

エーリカ「向こうではなかったかなぁ。こっちに来てからし出した気がするけど」

芳佳「や、やっぱり……!!」

エーリカ「仕方ないよ。隊長だから」

バルクホルン「貴様は罪悪感の欠片もないのか!!!」

ルッキーニ「芳佳ぁ。遠吠えの回数が増えると中佐はどうなっちゃうのぉ?」

芳佳「場合によっては倒れちゃうかも。あれはきっとミーナ隊長のSOSサインだと思う」

ルッキーニ「え、えすおーえすだったんだぁ!!」

シャーリー「確かに今日も昨日も一昨日もミーナ中佐には怒られたけど、いつものことだし慣れてると思ってたんだけど」

エーリカ「だよね。ミーナは既に無我の境地に達しているはず」

バルクホルン「達していないから遠吠えをしているんだろう……」

エイラ「とりあえずさ、暫くは中佐の言うことを素直に聞いた方がいいと思うぞ。私やサーニャは問題ないけどな」

サーニャ「私、ミーナ隊長に迷惑をかけていない自信がないわ……」

ルッキーニ「でもでも、中佐っていつも私が寝てるときに来るからどうすることもできないよ?」

バルクホルン「ミーナに何かを言われる前にどうにかしろ」

芳佳「一か月だけ意識してみませんか? それでミーナ隊長が遠吠えをしなかったら解決ですし」

エーリカ「一緒だと思うけどなぁ」

バルクホルン「ハルトマン……」

エーリカ「うそうそ」

ルッキーニ「えー? 好きなところで寝ちゃだめってことー? やだー」

シャーリー「中佐一人のためにあたしたち全員が犠牲になるっていうのはどうなんだ?」キリッ

美緒「……そうか」

ルッキーニ「おぉぉぉ……」

シャーリー「いてぇ……リベリオンジョークなのにぃ……」

美緒「素晴らしい考えだな。私もミーナの遠吠えはどうにかできないものかと思っていたところだ」

芳佳「坂本さんはミーナ中佐の遠吠えを直接見たことってあるんですか?」

美緒「遠吠えするたびに様子を見ているに決まっているだろう」

バルクホルン「どんな様子なんだ?」

美緒「狼そのものだと言ってもいいほどの美しい遠吠えだ。月を仰ぎ見るようにして体を反らしているからな」

エーリカ「え!? なにそれ!?」

美緒「狼が遠吠えする姿をみたことないか?」

エーリカ「あ、あるけど」

美緒「まさにあのままだ」

エーリカ「……トゥルーデ」

バルクホルン「どうした?」

エーリカ「私、真面目に生きることにした」

バルクホルン「それがお前の贖罪だな」

ルッキーニ「そ、そんなことになってたんだぁ」

シャーリー「今から謝罪して済むことじゃない。中佐のために命すらも投げだす覚悟で任務をこなすしかない」

ルッキーニ「命も!?」

エイラ「お、すごいな。今までのシャーリーからは絶対に聞けない台詞だ」

ペリーヌ「坂本少佐。ミーナ中佐のケアなどはされなかったのですか?」

美緒「私なりに努力はしてみた。デスクワーク後は風呂にいくよう勧めたり、マッサージをしてみたり」

ペリーヌ「マッサージですか」

美緒「ああ。肩、腰は勿論、腕、足、背中、顔、胸、揉めるところは全て揉んでやった」

ペリーヌ「な、なんて……うらやましい……!!」

芳佳「胸もですか!?」

美緒「うむ。当然だ」

リーネ「えぇぇ……!!!」

美緒「どうしたリーネ、顔が赤いぞ」

エイラ「どんな感じだったんだろうなぁ、なぁ、サーニャ?」

サーニャ「し、しらない……」モジモジ

バルクホルン「そ、そこまでしても効果は芳しくなかったわけか」

美緒「結果は知っての通りだ。緩和させることもできなかった」

バルクホルン「済まない少佐。本来なら同郷である私とハルトマンがすべきことだったのに」

美緒「気にするな。バルクホルンは最近まで他人に気を遣う余裕がなかったことは知っている」

バルクホルン「面目ない。これからはミーナのために尽力することを誓う」

エーリカ「私も出来る限りのことはするよ。まさかそこまで追い詰められているなんて思わなかった」

リーネ「うーん……」

芳佳「リーネちゃん、なにか気になるの?」

リーネ「え? あ、うん。狼が遠吠えするときってどういうときだったかなって。本で読んだことあるんだけど忘れちゃって」

芳佳「そうなんだ」

バルクホルン「いいか! 私も含め、ここにいる全員が力を合わせなければミーナの状態は回復することはないと思え!」

エーリカ「了解!!!」ビシッ

シャーリー「つまりあたしはちゃんと服を着てユニットの整備をしたらいいんだろ?」

ルッキーニ「あたしは部屋で寝ればいいんだよね?」

美緒「……人として当たり前のことをするだけで解決というのも悲しいな」

翌日 格納庫

ミーナ「……」

芳佳「シャーリーさん!! ルッキーニちゃん!!」

シャーリー「おぉう……」ゴソゴソ

ルッキーニ「うにゃ!」ガバッ

ミーナ「あら?」

シャーリー「お疲れ様です!!」

ルッキーニ「うじゅっ!」

ミーナ「え、ええ」

芳佳「ミーナ隊長! 怪我をしたらいつでも言ってください! すぐに治療しますから!」

ミーナ「ありがとう、宮藤さん。嬉しいわ」

シャーリー「ミーナ中佐! ストライカーユニットに不満があるなら言ってください! ピーキーにします!」

ミーナ「結構です」

ルッキーニ「あたし寝てないよ!」

ミーナ「見れば分かります」

別の日 廊下

ミーナ「……あら?」

バルクホルン「ミーナ!?」

ミーナ「またフラウが起きてこないのね」

バルクホルン「いや、もう起きるはずだ! ハルトマン起きろ!! ミーナが来たぞ!!」ドンドン!!!

ミーナ「私も協力――」

エーリカ「おはよーございます!!」

ミーナ「え……」

バルクホルン「ほら、何も問題なかっただろう」

エーリカ「ミーナ、今から訓練始めるから、安心してよ」

ミーナ「え、ええ……気を付けてね……」

バルクホルン「行くぞ、ハルトマン!!」

エーリカ「えい、えい、おー」

ミーナ「……」

ミーナ「まぁ、真面目なのはいいことよね」

別の日 食堂

エイラ「なんだと!! もう一回言ってみろ!!」

ペリーヌ「何度でも言いますわ!!」

サーニャ「ケンカしないで」

リーネ「ペリーヌさん、駄目ですよぉ」

ミーナ「何を騒いでいるの?」

エイラ「うぇ!?」

ペリーヌ「しまった……!!」

ミーナ「事情を説明してもらえるかしら?」

エイラ「いや、なんてことないって。どっちが大声を出せるかで競いあっていただけなんだな。な、ペリーヌ?」

ペリーヌ「は、はい! そうです、そうです。ケンカなんてしていません。わたくしとエイラさんは親友ですので」

エイラ「そうだなー。ペリーヌ、大好きだぞー」

ペリーヌ「はぁい、エイラさーん」

ミーナ「……なら、いいけど」

リーネ「あはは……」

別の日 大浴場

ミーナ「ふぅ……」

美緒「疲れているようだな、ミーナ」

ミーナ「え? ええ、まぁ……」

ペリーヌ「わたくしと坂本少佐でマッサージをいたしますわ」

ミーナ「え? いいの?」

美緒「ああ、勿論だ」

ペリーヌ「はい!」

ミーナ「なら、お言葉に甘えようかしら」

美緒「任せてくれ」

ペリーヌ「わたくしは足をおもみしますわ!」

美緒「どこがいい? 胸がいいか?」

ミーナ「な、なにいってるの!? それは部屋でだけ……」

美緒「いつもしていることなのに何を恥ずかしがることがあるんだ。はっはっはっは」

ペリーヌ「……」ギリッ

別の日 廊下

ミーナ「……」

シャーリー「あ、中佐」

エイラ「おつかれー」

ミーナ「ええ、お疲れ様。あの、シャーリーさ――」

シャーリー「任務がありますので!! 失礼します!!」

エイラ「私も。任務で忙しいなぁー」

シャーリー「何言ってるんだよ、エイラ。世界の空を守ることがあたしたちの役目だろ」

エイラ「だなっ!」

ミーナ「エイラさん?」

エイラ「大丈夫だ! ルッキーニもサボってないから!!」

ミーナ「それは知っているのだけど」

シャーリー「お! まずい! 時間が迫ってる!! いくぞ!!」

エイラ「了解!」

ミーナ「……誰がここまでみんなの意識を高めてくれたのかしら」

一ヶ月後 夜 ブリーフィングルーム

バルクホルン「あれから早一ヶ月が経過したわけだが誰もミーナを困らせていないだろうな?」

シャーリー「してないって。ルッキーニなんてもう中佐が近づいてくると素早く起きて違う場所に移動してるぐらいだしさ」

ルッキーニ「徹底的にやったー」

エーリカ「私もミーナの負担にならないように、ミーナが来たら行動を開始するように心がけてたよ」

美緒「それはいいことなのか」

エイラ「まぁ、全員中佐に迷惑はかけていないのは間違いないわけだろ」

ペリーヌ「ここ最近はミーナ中佐が怒鳴っているところはみておりませんわね」

芳佳「坂本さんから見てどうですか?」

美緒「普段と変わりがないとも言えるが、ペリーヌの言うとおり何かに苛立っている様子はなかった」

シャーリー「よかった、よかった。これで一安心だな」

ルッキーニ「にゃはっ。夜トイレにいけりゅー」

バルクホルン「一応言っておくが継続的にしないと意味はないからな」

サーニャ「はい。がんばります」

リーネ「うーん……もしかしたら……」

廊下

ミーナ「あら……?」

バルクホルン「本当に分かっているんだろうな、お前たちは」

シャーリー「へいへい」

エーリカ「承知してまーす」

バルクホルン「不安だ……」

ミーナ「……みんなして何か会議でもしていたの?」

ルッキーニ「あにゃ!?」

エイラ「あ、いや、べつに、なぁ?」

ペリーヌ「え、ええ。特になにも」

ミーナ「……坂本少佐?」

美緒「気にするな。規律に反することはしていない。私とバルクホルンがいるのだから信用してくれ」

バルクホルン「ああ。ミーナはこれからもそのままでいてくれ」

ミーナ「そ、そう……」

芳佳「それじゃあ、おやすみなさい。ミーナ隊長」

宮藤の部屋

芳佳「はぁー。今日も疲れたぁ。早くねよっと。あ、満月だ。綺麗……」

ワォォォォォン!!!

芳佳「え!?」

オォォォォォオン!!!!

芳佳「ど、どどど、どうしてぇ……!?」

ワォワォォォォォン!!!

芳佳「ひぃぃ……!! と、とりあえずベッドの中に!!!」モゾモゾ

ワォォォォォォン!!!!

芳佳「ど、どうして……ミーナ中佐……。何がいけなかったんですか……」ガクガク

ドンドン!!

芳佳「ぎゃぁ!?」

リーネ『芳佳ちゃん! 起きてる!?』

芳佳「え!? リーネちゃん!! どうしたの!?」

リーネ『ミーナ中佐のところに行こう!! 私達、間違ってたんだよ!!』

廊下

ワオォォォォォン!!!!

芳佳「ま、間違ってたってどういうこと!?」

リーネ「狼がどうして遠吠えをするのか調べてみたの」

芳佳「そ、それで?」

ワォォォォォォン!!!!

リーネ「遠吠えは遠く離れた仲間とコミュニケーションを取る為にする行動なんだけど……」

芳佳「ミーナ隊長には私達の他にも狼の家族が……!?」

リーネ「私も最初はもしかしたらって思ったんだけど、でもね、他にも遠吠えをする場合があるの」

芳佳「なんなの!?」

ワオォォォォォォン!!!!! オォォォォォォオン!!!!

リーネ「寂しいときとか構ってほしい時も狼は遠吠えするんだって」

芳佳「え……」

リーネ「思い出して芳佳ちゃん。私達がこの一か月間、どうしてきたのか」

芳佳「わ、私達はミーナ隊長に迷惑をかけないように……いろいろ……かんがえて……」

バルクホルン「何をしたんだ、言ってみろ」

エーリカ「どうして私が悪者なのー!?」

美緒「シャーリー、ルッキーニ、エイラ。心当たりは?」

シャーリー・ルッキーニ・エイラ「「ないっ!」」

美緒「そうか……」

ワォォォォォォォン!!!! ワンワオォォォォン!!!

サーニャ「だったら、私しか考えられない……」オロオロ

エイラ「サーニャが一番有り得ないって。そもそもこの一か月、サーニャは殆ど中佐と喋ってないじゃないか」

サーニャ「そういえばミーナ隊長と話したのはブリーフィングのときぐらいだったわ。あとは食堂で一度だけ……」

エイラ「だろ? サーニャが原因ってことはまずないんだ」

バルクホルン「ハルトマンしか思い当たる節はないぞ」

エーリカ「ルッキーニだってあやしいじゃん!!」

ルッキーニ「ぶぅー!! あたしはずっと逃げ回ってたから!! あたしじゃないぃ!!」

美緒「おい、ルッキーニ。それは聞き捨てならんぞ」

ワォォォォォン!!!! ワンワーン!!!

ペリーヌ「とにかく、坂本少佐。ミーナ中佐の様子を見に行かれたほうがよろしいのでは?」

美緒「そうだな。行ってくるか」

芳佳「ま、待ってください!!」

美緒「宮藤……」

芳佳「みんなで行きましょう!!」

美緒「全員で? しかし大所帯で突入すればミーナがどうなるか……」

ルッキーニ「こわいよぉ」

エーリカ「噛みつかれるかもしれないよね」

バルクホルン「……否定はできないな」

リーネ「あの!! ミーナ中佐はただ寂しいだけなんだと思います!!」

シャーリー「寂しい?」

エイラ「なにいってんだよぉ」

芳佳「思い返してください。この一か月、ミーナ隊長に迷惑をかけないように意識しすぎて避けていませんでしたか?」

バルクホルン「む……」

リーネ「必要最低限の会話だけしかしてもらえなかったら、誰だって寂しくなると思います」

美緒「つまりこの遠吠えはミーナが抱える寂寥感を表したものなのか」

ワンワーン!!! ワーン!! ワァァァン!!

エーリカ「なんか、泣いてない?」

芳佳「私達、無意識にミーナ隊長を無視していたんじゃないですか?」

シャーリー「そんなつもりは……」

ルッキーニ「う、うん。あたしが逃げ回ってたのは中佐を怒らせたくないからだったし」

芳佳「きっとそれがダメだったんだよ」

ルッキーニ「そんなぁ……」

エイラ「なら今までの遠吠えはなんだったんだ? 今までも寂しかったから遠吠えしてたっていうのか?」

ウゥゥゥゥ……ワァァァン……

エーリカ「やっぱり泣いてるよ、これ」

芳佳「今までのは……」

サーニャ「わかる気がする」

エイラ「サーニャ?」

サーニャ「私達は誰もミーナ隊長の辛さや苦労をあまり考えてなかったわ……誰もミーナ隊長のことを分かろうとしていなかった……」

バルクホルン「だから、今までもミーナは寂寞の想いを遠吠えで……」

美緒「ふむ。私でも埋められない心の侘しさがあったのか」

ウゥゥゥ……ワォォォン……!!!!

芳佳「行きましょう!! ミーナ隊長のところへ!! 全員じゃないと絶対に救えません!!!」

バルクホルン「私たちはミーナに頼りすぎていたかもしれない」

エーリカ「トゥルーデ……」

バルクホルン「手が空いていないからとハルトマンを起こさせたりもしてしまったからな。私の役目なのに」

エーリカ「そこなんだ」

シャーリー「あたしも思えば怒られてることに感謝したことなんてないもんなぁ」

ルッキーニ「シャーリー……」

シャーリー「行くぞ、ルッキーニ」

ルッキーニ「あいっ」

エイラ「うーん、私は……」

サーニャ「エイラ、言えなかったことを言いに行きましょう?」

エイラ「……ダナっ」

ミーナの部屋

ミーナ「はぁ……もう一鳴き……」

美緒『ミーナ!! 坂本だ!! 入るぞ!!』

ミーナ「美緒!? え、ええ、どうぞ!」

美緒「大丈夫か、ミーナ」ガチャ

ミーナ「ごめんなさい。いつもいつ――」

芳佳「ミーナ隊長!!」

リーネ「ミーナ中佐!!」

ミーナ「えぇ!? 宮藤さん!? リーネさん!?」

バルクホルン「ミーナ!! 今まですまなかった!!!」

エーリカ「ごめーん、ミーナに甘えてばっかりでぇ」

ミーナ「トゥルーデとフラウまで……!?」

シャーリー「ちゅうさー!! あたしやっとわかりました!! 中佐の温もりを!!」

ルッキーニ「ママー!!」

ミーナ「な、なんなの、あなたたちぃ!?」

ペリーヌ「申し訳ありません。ミーナ中佐はいつも身を削るような想いをしていることを失念していました」

ミーナ「え? え?」

エイラ「別にさ、中佐を避けていたわけじゃないぞ。私たちも中佐のことを気遣っていただけでさぁ」

サーニャ「ごめんなさい。ミーナ隊長の辛さを少しも理解できていませんでした」

ミーナ「そ、そう。ありがとう、サーニャさん」

美緒「ミーナ。私も含めて、お前という存在の大きさが見えていなかった。居て当然だとどこかで考えていたのかもしれない」

ミーナ「あ、うん……」

美緒「これからは心を入れ替えると皆も言っている」

芳佳「ミーナ隊長は独りじゃないです!!」

リーネ「私達がいます!!」

バルクホルン「寂しいと感じたなら遠慮せずに言ってくれ、ミーナ」

エーリカ「そうだよ。私がいつでも添い寝してあげるのに」

ミーナ「あの……」

シャーリー「信じてください、中佐!! あたしたちのことを!!」

ミーナ「……ええ!! 信じるわ!! だって、掛け替えのない家族ですもの!!!」

ルッキーニ「うにゃー!! ちゅーさー!!」ギュゥゥゥ

芳佳「ミーナたいちょー!!!」ギュゥゥゥ

ミーナ「こ、こら。もう、手のかかる子たちね」

美緒「はっはっはっは。ミーナ、苦労をかけてしまっていたようだな。私がもっと早く気がついていれば……」

ミーナ「いいのよ。別に」

リーネ「良かった……本当によかった……」

バルクホルン「何でも言ってくれ。今までできなかったこと、いや、やろうとしなかったことを私はしよう」

ミーナ「トゥルーデ、ありがとう」

バルクホルン「やめてくれ。礼をいうのは私のほうだ」

ミーナ「うふふ。そう」

エーリカ「ごめんね、ミーナぁ」

ミーナ「はいはい。別に怒っていないでしょう」

サーニャ「ミーナ隊長。これからも精一杯がんばりますね」

エイラ「もう中佐に苦労はかけないかんな」

ミーナ「ええ。嬉しいわ。ありがとう。それよりももう夜も遅いし、部屋に戻りなさい」

美緒「そうだな。そろそろ戻るか」

シャーリー「はぁーい」

ルッキーニ「ミーナ中佐ー、おやすみぃー」

芳佳「おやすみなさーい!!」

ミーナ「ええ、おやすみなさい。……美緒はこっちね」グイッ

美緒「なに?」

バルクホルン「何かあるのか?」

ミーナ「色々とね。うふふ」

エーリカ「ふぅん。じゃ、あとはよろしくね、少佐」

美緒「ああ。任せてくれ。もうミーナを悲しませるようなことはしない」

ペリーヌ「……」ギリッ

エイラ「いくぞー、ペリーヌ」グイッ

ペリーヌ「うぐぐ……!!!」

サーニャ「ふわぁぁ……。あ、夜間哨戒に戻らないと」

リーネ「うーん……」

芳佳「リーネちゃん?」

リーネ「え?」

芳佳「まだ何か気になるの?」

リーネ「えっと……うーん……」

芳佳「なんでも言ってよ。それで一緒に考えよう」

リーネ「そうだね。……あの、バルクホルンさん、ハルトマンさん」

バルクホルン「なんだ?」

エーリカ「んー? なぁに?」

リーネ「ここに来る前まではミーナ中佐は遠吠えをしていなかったんですよね?」

エーリカ「ああ、うん。そうだけど?」

バルクホルン「501という特殊すぎる環境の所為だろうな。ミーナの心は強いと思い込んでいたから気付くことが……」

リーネ「坂本少佐はミーナ中佐が遠吠えをする度に心配してマッサージをしていたっていってましたよね?」

エーリカ「そーだね。全身揉んでたんだろ? そんなことできるのは世界中探したって少佐ぐらいだね」

リーネ「……ちょっと聞いてみませんか?」

バルクホルン「何を聞くんだ?」

ミーナ『美緒、ここもお願いできる?』

美緒『ここか?』

ミーナ『あ……んっ……そう……そ、こ……』

美緒『ふっ……ふっ……』

ミーナ『あぁ……みおぉ……もっとぉ……』

美緒『そんなに気持ちいいか。私の肩揉み』

ミーナ『月に一度はこれがないと困るもの』

美緒『そうなのか』

ミーナ『そうよ。だから、私はいつも……その……』

美緒『ふんっ!』

ミーナ『あぁんっ』

エーリカ「……ねぇ、トゥルーデ?」

バルクホルン「言うな」

芳佳「あの……もしかして……」

エイラ「中佐の遠吠えって少佐を呼んでただけじゃないのか?」

バルクホルン「言うなと言っただろうが!!」グイッ

エーリカ「私じゃないのにぃ!!」

サーニャ「これは……」

ルッキーニ「中佐と少佐、なにしてるの?」

ペリーヌ「ぐぬぬぬ……!!!」

リーネ「でも、遠吠えで呼ぶなんて不自然ですよ。きっと違います。はい」

芳佳「リーネちゃん……」

エーリカ「なら、こう考えればいいんじゃない。ミーナが本能的に呼んだって」

エイラ「発情期かよぉ」

バルクホルン「お前ら、言いたい放題だな……」

シャーリー「なぁ、サーニャ。あたしがわかった中佐の温かみってなんだったんだろうな」

サーニャ「わかりません」

芳佳「あの、バルクホルンさん」

バルクホルン「……言っただろう、宮藤。世の中、知らないほうがいいこともあるとな」

芳佳「あ、そうですね」

翌朝 食堂

ミーナ「はい、美緒。朝食よ」

美緒「すまないな」

ミーナ「いいのよ。ふふっ」

芳佳「(そういえば、遠吠えが聞こえた翌日のミーナ隊長、機嫌がよかったね)」

リーネ「(あれだけマッサージされたらリフレッシュもするよ)」

シャーリー「なぁ、ルッキーニ。あたしは何を分かってたんだろうな」

ルッキーニ「しらにゃい」

エーリカ「おはよー、エイラ。サーニャはぐっすり? 疲れてなかった?」

エイラ「別に特別疲れてる様子はなかったな」

ペリーヌ「ぐうぅぅ……しょうさぁ……!!」

エイラ「そんなに悔しかったらお前も遠吠えしたらいいじゃないか」

ペリーヌ「……!!」ガタッ

エイラ「ホンキにすんなよぉ」

バルクホルン「……」

後日 夜

芳佳「今日は綺麗な三日月……」

ワオォォォォォン!!!!

芳佳「え!? まだあれから一か月経ってないのに!?」

エーリカ『宮藤!! 大変だ!!』

芳佳「ハルトマンさん!? 開いてますよ!」

エーリカ「早くきて! トゥルーデが遠吠えしてる!」

芳佳「え……」

エーリカ「ほら、早く!! トゥルーデを救えるのは宮藤だけだから!!」

芳佳「……とりあえずベッドの中に」モゾモゾ

エーリカ「えぇー。私の親友を正気にさせてよぉー。怖くて夜トイレにいけないじゃん」

芳佳「知りません!!」


ワオォォォォォン!!!! ワンワン!!!


おしまい。

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