「生きているってなんだろう・・・」(17)

「生きることに何の意味があるのだろう・・・僕にはわかんないや・・・」

 

少年がつぶやく。黄昏時に一人さみしく路地を歩きながら。

 

賑やかな繁華街の裏にあたるその通路は、何一つ気配を感じない、

 

地獄のような静けさがあった。

 

少年は人々から避けられる。帰路はすべてその通路を通らなければならない。

 

人間とも出会うこともなくただひたすら歩く。

「生きるって楽しいの?生きることに何か誇りがあるの?生き続けるのに何か目的はあるの?」

 

少年は尚も歩く、疲れることもなくただひたすら歩く。

 

目的はただ帰ること。果てのない旅から帰ること。

 

旅にゴールはあったのだろうか。初めは人間に接してもらったこともあった。

 

今となってはその姿は殺人鬼とたとえられるほど避けられている。

 

もう間もなく、少年は帰る。

 

「お兄さん、ここに来るなんて珍しいね!」

 

一人の少女が少年に話しかけた。

 

彼女は少年が怖くないのだろうか。

 

無愛想な少年に彼女は満面の笑みを浮かべていた。

 

「君・・・こんなところにいたら危ないよ?いつ何が起こるかわからないのに・・・」

 

「いいの、私はここしか居場所ないから」

生きてるってなんだーろ♪
生きてるってなーに♪

おにぃーちゃーん!



じゃ無いのか

悲しみが潜む彼女の笑顔が少年にとっては不思議だった。

 

彼女は生きていることを楽しいと思わないらしい。

 

彼女は生きることをやめ、生命のその先へと向かいたいようだった。

 

「君・・・ここにいると死ぬかもしれないんだよ?それなのにどうしてここにいるの?」

 

「だって・・・みんなが嫌いだもん・・・みんな私がいなくなっても悲しまないから」

 

彼女の笑みはまだ消えない。

「どうして?家族も探してるよきっと」

 

「そんなことないよ、ほら、耳を澄ませてよ」

 

 

 

アイツハキョウモカエッテコナカッタナ

 

ドウセドコカデアソビホウケテルノヨ シンパイスルダケムダヨ

 

バカヲイウナ アイツヲシンパイスルヨユウナンテナイサ

 

アハハハハハハ……

「・・・・・・なんかごめん・・・」

 

「別に、もう気にしてないし・・・・・・ぶっちゃけお兄さんを待っていたんだから」

 

「え?なんで僕を待っているの?僕なんか待っていたところで何もないよ?」

 

「だって・・・お兄さん・・・私とおんなじ感じがするから・・・最初あったときお兄さんも全然嫌がらなかったもん」

 

彼女の笑みの中には一粒の涙が混ざっていた。

 

親の愛情を失ってまで尚も笑顔を絶やさない彼女に、少年から少し微笑みが漏れていた。

 

生きているってなんだろう、生きることに意味はあるのだろうか。

 

そう考えている少年の束の間の休息だった。

彼女と少年は意気投合するかのように3時間は話していた。

 

学校のこと、友人のこと、家族のこと、親戚のこと、自分のこと。

 

体罰のこと、虐めのこと、虐待のこと、一人ぼっちなこと。

 

すべてを話し終えたとき彼女の笑顔は薄れていた。

 

「私ってもう誰からも愛されてないの、だからもう人と接するのはもう嫌なの。」

 

「じゃあ僕はどうなの?僕と接するのは嫌じゃないの?」

 

「うん・・・なんだかお兄さん・・・初めて優しくしてもらったんだ・・・生まれて初めて・・・」

 

「・・・そっか・・・」

「今ならわかるよ・・私お兄さんが好きなんだもん・・・・ずっとこうして一緒にいたいんだもん・・でも・・・・・」

 

彼女は悲しむ、涙をこらえれず、ただ感情が表にむき出される。

 

人間と接するのを拒む少年はその気持ちがひしひしと伝わってくる。

 

気が付けば彼女の顔を隠すように抱きしめていた。

 

少年にとって、そして彼女にとって初めて他の温もりを感じ取った瞬間であった。

 

泣いている彼女を見て少年もまた涙をもらっていた。

 

初めての感情に戸惑いを隠せない。しかし、どうも涙を止めることができなかった。

「・・・だめだよね・・・私は・・・私はお兄さんと一緒になることは・・・ダメなんだよね・・・」

 

「・・・・・・ごめん・・・」

 

「でもこれだけはお願いさせて!私のそばを離れないで!私が死んで魂になっても・・・生まれ変わっても・・・」

 

「・・・・・・・・・・・約束する」

 

「うん・・・・・・ありがとっ」

 

彼女の笑みはおそらく生涯で二度と見ない姿だろう。

 

少年は接吻を軽く交わし、彼女の頭を撫でた。

>>4
青い犬は出ないです

「お兄さん・・・目が赤いんだね・・・」

 

「そうなんだ・・・気づいてると思うけど・・・もう人間じゃないんだ・・」

 

「大丈夫、私も人間じゃないから」

 

「そっか・・・じゃあもうこの世界いらないね」

 

「うん、あなたさえいれば私はもう何もいらない!」

 

「じゃあ・・・・・・この世界にさようならだ」

 

少年が指から鳴らした音は反射してしばらく鳴り響いた。

 

1分ほど鳴り響いた後、すべてを取り払うかのように無音になった。

 

さっきまで賑やかだった繁華街は静けさを取り戻し、気配も何一つ残っていなかった。

 

この世界はたった今、ただ二人だけしかいなくなった。

 

「最後にこんな天使な君に会えてよかったよ」

「私もよ、幸せにしてね。」

 











 











「死神さん」

fin

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