焔「忍者伝説?」 (104)




※忍者SSデス。スレイヤーではありません。
※クロスオーバー作品デス。なるべく両者の良い所を取り入れられればなと思っております。
※そういうのが苦手ならば"戻る"推奨願います。
※それではドウゾ。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410972663

―――後悔は無い。


「なんだよてめえ…ふざけるんじゃあねえよ! 俺との勝負はどうなるんだよ!!」


―――自分の選んだ道だ。


「テメエ一人で勝手に結論づけて勝手に納得してるんじゃねえ!!」


―――我が信念に殉じる事が出来るのならば…。


「おい、起きろよ…目を開けろよ…おい!!!」


―――悔いなど……、


―――?


―――"誰"だ?


―――"私"を呼ぶのは、一体…?



暗闇の向こうから、何かが自分を手招きしているように感じ…。
おもむろに目を開かば、そこには―――。




闇と光、陰と陽、善と悪。
コインの表と裏のように付かず離れず、けれども決して相容れぬ関係。

"善忍"と"悪忍"。
2つの相反する勢力に属した忍達の戦いは、この21世紀となる現代に置いても。
何ら変わる事無く。


―――ギキィィィン!!!


焔「今日こそ決着をつけてやるぞ飛鳥ぁ!!」

飛鳥「させないよ、焔ちゃん!!」


葛城「今日の為に鍛えに鍛えたんだ、堪能しやがれ日影ぇ!!」

日影「(はぁ…メンドーくさいやっちゃなあ)」


詠「"お金持ち"さん、今宵こそ地に塗れて頂きますわ…!」

斑鳩「くっ、攻撃が…重い…!」


雲雀「あ、あの。どうして手をわきわきさせていらっしゃるんでしょう…?」

春香「ん~ん?別に何も無いわよぉ…さあ、楽しみましょうねえ…」


柳生「―――っ。あの女、雲雀に何を…っ!」

未来「くらぁ!アタシを無視するとはいい度胸じゃないのよコノー!!」


善忍を養成する國立半蔵学院の生徒達と。
相対するは秘立蛇女子学院の悪忍の精鋭達。


5忍と5忍、秩序か力か。
各々の信条をかけた戦いは一進一退の攻防を繰り広げられていたが。

ここ最近は。


詠「貰いましたわ!これで…最後です!!」グワッ

斑鳩「―――!!」


4人「「「「―――斑鳩(さん)!!!!」」」」


その均衡が、大きく変わって来ていた。


―――ガキィィィン!!


響く重音、煌く白刃。
さしもの斑鳩も、体勢を崩した状態で敵の攻撃を受けては致命傷は必死。
だが。


詠「―――!!」
斑鳩「―――!!」


詠の大剣は斑鳩の身体から微妙に"逸らされ"。
斑鳩もまた倒れ付そうとしていたその身をギリギリで"支えられて"いた。



―――共に、真横から乱入した"何者"かの手によって。





焔「ちっ…また、"アイツ"か!!」


"乱入者"を良く知る焔の表情が忌々しげに歪む。


BGM:https://www.youtube.com/watch?v=lO5JaBuRvoY


???「………、」

斑鳩「……あっ」


斑鳩の窮地を救いし者の、その姿は黒。
頭から爪の先まで、闇に溶け込むような漆黒の意匠が施された鎧を着込んだ"何か"。
男なのか女なのか、いやそもそも人間であるのかすら妖しい風貌。

名前すらも彼女達は知り得ていなかった。
ただ、解っている事は一つだけ…。

"彼"もまた自分達と同じ"忍"であり。


―――自分(飛鳥)達にとって心強い"味方"であること。
―――自分(焔)達にとって油断ならぬ"敵"であること。


それだけだった。





日影「―――!」
未来「―――!」
春香「―――!」


正体は解らずとも強敵であるという事だけは"身に染みて"理解している蛇女側の忍達は、"そいつ"の姿を確認した瞬間に目の色を変える。
しかし。


詠「こ、この…きゃあっ!!」

黒い忍「……、」


鍔迫り合いによる硬直を何とかせんと動き始めた詠は、持っている大剣ごと投げ飛ばされ。


未来「詠おねーちゃん!?やったわね、こいつ…!」ジャキッ!!


片腕が斑鳩で塞がっている今の内に吹き飛ばしてやろうとガトリングを向けた未来には。

―――ビスン!


未来「きゃっ!しゅ…手裏剣!?だけど一発だけじゃこいつの発射は…!!」


―――ビスン!ビススススススン!!!


未来「でええええっ!増えたあああああっ!!??」


数十にも及び"分裂させた"手裏剣で武器を使えなくし。



日影「―――、」


背後から強襲する日影には。


日影「(?…手応えあらへん…これは…!)―――ごふっ!?」


分け身を使い、返しに鳩尾に一発。


春香「(今の内に!)これでも喰らいなさ…!(チクッ)―――"ちくっ"?」


懐から劇薬を取り出そうとした己の掌を見れば、うっすらとした流血。
更には。


春香「―――っ、、、」クラリ


急激な眠気が意識を閉ざす。
見れば、手に握られていたのはフラスコではない。


春香「ま…マキビ……シ……」


黒い忍「………、」フラスコポイー


ご丁寧に眠り薬を塗ったマキビシとすり替え無力化する。


焔「づええりゃあああああああっ!!!」


最後に残った炎が刀を取り出さば。

―――ギギィィン!!

こちらも2つの短刀で応戦する。



焔「何故だ!!いつもいつもいつもいつも…どうして私達の邪魔をする!?一体何が目的なんだ貴様は!!!」

黒い忍「………、」


咬み殺さんばかりの殺気にも、黒い忍は無言。
喋れないのか、それとも喋る気がないのか。


焔「こいつめ!こいつめ!こいつめ―――!!!」

黒い忍「………、」


―――キン!キン!!ギイィィィン!!

"彼"は飽くまでも淡々と悪忍からの攻撃を捌くだけ。
永劫にも続くかと思われた剣戟は、しかし。


詠「焔さん!!」


焔「―――!」


振り向けば、気絶した日影と春香を抱え込んだ詠と未来。


焔「(時間切れか…くそう!!!)」

焔「勝負は…預けておくぞ…!」ボソッ


???「………、」


刀を仕舞い、煙玉を使ってこの場よりの撤退を図る焔達。
黒い忍も去るならばそれ以上追う気が無いのか、短刀を鞘へと収めた。



葛城「……、」
斑鳩「……、」
雲雀「……、」
柳生「……、」
飛鳥「…あ、あのう…」


黒い忍「………、」ジロ…


飛鳥「い、いつもありがとうござ…」


黒い忍「―――――――――、」シュン!!


飛鳥が礼をいう間も無く、黒い忍は一瞬で姿を消してしまった。





飛鳥「…"また"、消えちゃった…」



"彼"が飛鳥達の前に姿を現したのはほんの数週間前。
蛇女との戦いが激化し始めた頃だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


焔『殺(と)ったぞ!!半蔵の孫ぉ!!』

飛鳥『あっ―――!!』


―――キィイィン!!


飛鳥『……え?』

焔『な、何だ……!?』



黒い忍『……………………………、』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それが始まり。
以来、名も目的も解らぬままに、黒い忍は飛鳥達の手助けをしては何も言わずに去るといった形がパターン化していた。

不気味とまではいかないが、気にはならないと言ってはウソになる。

何とか正体を掴もうと幾度となく追跡をしたり、痕跡を探ったりしているのだが尻尾一つ掴めてない。

忍マスターの自分の祖父である半蔵に聞いても、教員の霧夜先生に尋ねても「知らん」「解らん」の一言。

過去の記録にも情報が乗って無いというのだ。

善忍でも悪忍でも無い、"正体不明の忍"。







飛鳥「一体、誰なんだろう……?」




――――――…。







―――シュタッ……!!




黒い忍「………、」キョロキョロ

黒い忍「………、」フー


黒い忍「………、」









ぴんぽんぴんぽーん♪


コンビニ店員「はぁい!お客様いらっしゃい……ま、せ……!?」


黒い忍「………、」ヌ~ン


店員「ひいっ!!ご、強盗…!?」

コンビニ店長「―――あ、はい。毎度いらっしゃいませ、"いつもの"でございますね?」

店員「え"…っ?(毎度!?)」


黒い忍「………、(コクリ)」


店長「はいこちら、ジャソプとコケ・コーラシックス、アーモンドチョコ。合計で666円でございます」


黒い忍「………ピッ(千円出す)」


店員「(ジャソプとコケコーラとチョコ!?しかもちゃんと金払ってるし!!)」

店長「はい、ではこちらがおつりになります。―――ありがとうございました!」」


黒い忍「……、」ペコリ


ぴんぽんぴんぽーん♪




店員「…店長、今のお客(?)…」

店長「そういえば君は初めてだっけ?いつもここでジャソプとか色々買って下さるお客さんなんだよあの人(?)は」

店員「……じょ、常連なんす、ね…」

店長「ちゃんとお金も払ってくれるし、いいお客さんだよ。ちょっと無口だけどね」

店員「……へぇ…」


店員「(転職した方がいいやもしれん)」





黒い忍「――――――、」シュタタタタタタタタタ!!


―――???



黒い忍「―――、」シュタッ!!


???「…お前か、ご苦労。"例のモノ"は?」


黒い忍「―――、」スッ


???「おお、いつもすまんな。では…どれどれ…」

???「…………………、」

???「…………………おい。」


黒い忍「―――?」


椅子に座った人物は、黒い忍の眼前に白い箱を投げて寄越した。


???「次に行く事があったらソレを忍ばせて来い。擦り傷切り傷への効能は世界で6本の指に入るスグレモノだ」



黒い忍「…………、」


???「…何。"そんな回りくどい事をするならば自分で行けばいいのに。"だと?」

???「阿呆、潜入だけならまだしもそんな事まで出来たら苦労はせんわ!あいつの前に出るとどうしても憎まれ口が先に出てしまって如何ともな…」


黒い忍「…………、」


???「何だその哀れみの目は…まあいい、くれぐれも俺からのモノと気取られるなよ?」


黒い忍「…………、」コクン


???「ならいい。…それでは次のお楽しみ、と…株式なんぞやってると身動きが取れんで困る…」

???「ううむ、やはりNA●UTOはいい。心が躍るようだ…!俺も忍者を志ざす者として必殺技の一つや二つ程編み出すべきかもしれん…」


黒い忍「…………、」


???「"編み出した所で戦闘力が上がるのか。"だと?いーんだよこういうのはノリだノリ!!」


黒い忍「…………、」


???「何、"乗った所でまた地面に頭をメリ込ませるのがオチでは。"だと?」

???「……………。」

―――ガッチャーン!!!


???「―――テメエ!!本職だからって言っていい事と悪い事があるわ!!誰のおかげで復活出来たと思ってやがる!!」

???「もう許さねえ、そこに直れ!この間生み出した鎖鎌殺法の実験台にしちゃる!!」ジャラリ!!


黒い忍「…………………………、」


>くろいしのびは ぶんしんさっぽうを つかった!


黒い忍「―――、」
黒い忍「―――、」
黒い忍「―――、」
黒い忍「―――、」
黒い忍「―――、」
黒い忍「―――、」


>にんじゃが ひとり にんじゃが ふたり…。
>なんと くろいしのびは 6たいに ふえた!


???「ゲェー!!ちょっとまてお前、ソレは幾らなんでも…!!」


黒い忍「……ジヒハナイ……」





???「アイエエエエエエエエエエエエエエーッ!!??」




ここではないどこかの話。
嘗て、伝説の白い機械忍者に対抗すべく作られし黒い機械忍者有り。
いずこから伝えられし技術かは不明ながら、絶大な力を以て白き忍に肉薄したその黒き機忍の名は。




―――"零影"と名付けられた。





―――俺は!
―――6位で!!
―――鎖鎌で!!
―――町内なんだよおおおおおおっ!!??


―――ドシュッ!メキャッ!!ガシュッ!!バキッ!!!モッチャ~ン………。






侍女1「…ねえ、"また"村雨ぼっちゃんの部屋からよ…」ヒソヒソ
侍女2「…斑鳩お嬢様に家督を奪われてからずっと…おかわいそうに…」ゴニョゴニョ






村雨「……あれ?大きな星が付いたり消えたりしてる…彗星かな?いや違う違うな…彗星はもっとパーっと動くもんなあ…」ピクピク


零影「……………、」チキン


主を失い放浪する機忍が刀を置いたのは、忍の家系であるのに何故か忍の才能がカケラもない"自称"エリート忍者。
果たして村雨は、仮初とはいえ"彼"の主足り得るのか?
目覚めた彼は何を求め彷徨うのか?


村雨「………チクショウ………やっぱり欲しいなあ"飛燕"……」グスグス


零影「……………、」


"付いて行く人選を間違えたかもしれん"
零影の内なる何かがそんな事を考えてるうちに。


今宵はこれにて終幕となる。

終わりデス。短時間で考えたクロスオーバー故ガバガバですわい。
村雨お兄様が好きです、でも零影サンはもっと好きです。それだけでした。

…多分飛影サンじゃ力を貸してくれなさそうにコンプの塊であるお兄様。
でも零影サンなら…?
故にお兄様も立派な忍者。頑張れお兄様、いつか忍者Lv9になれるように。(零に何掛けても零だけど)

それではこれにて。

―――俺と零影が初めて出会ったのは1ヶ月程前。

義理の妹である斑鳩に会う為、半蔵学園へ潜入した時だった。
数々の罠を掻い潜り、何とか斑鳩の私室に潜り込む事は出来たのだが…。


村雨「―――いつもお前はそうだ…!そうやってしたり顔でいながら、腹の底では俺を嘲笑っていたんだろおおおおおっ!!」


斑鳩「お兄様、それは…!」


村雨「黙れえええええええええ!!」


―――ジャラリ!!


斑鳩「……っ!」


村雨「どうだ、これでも子供の頃は町内鎖鎌大会で6位にな…った…?」


手から放った鎖が斑鳩の腕に巻き付き、更にそれが俺の家に伝わる宝刀"飛燕"に触れた瞬間。



―――ドクン…!




村雨「(う……??)」


目眩にも似た感覚が俺を襲った。


村雨「(な、何だこれは…!?)」

それは誰の記憶だったのか。

―――宇宙空間で激突する赤い光と青い光。
―――黒い装束と白い装束。
―――両者は刀で、手裏剣で、火砲で。
―――互いの技を惜しげもなく披露し、凌を削っていた。
―――それは、2体の忍者による激闘の記録。

その戦いを覗いている内に。


黒い忍『………………!』


片方の忍者と、何故が目があった気がして。


村雨「(だ、誰だお前は…!?)」


黒い忍『……………、』


村雨「(何を言ってる…聞こえないぞ…もっと…!!)」


"ソイツ"の事を知りたくて、手を伸ばした瞬間。



斑鳩「…さようなら、お兄様…!」クイットナ


村雨「―――えっ?」

村雨「ゲェー!!すっかりこちらの事を忘れてたぁー!!」ヒュウウウウウウ…


その行動を悪あがきと勘違いした義妹の手によって、哀れ俺の身体は真っ逆さま。


村雨「(流石は俺の義妹だと言いたいとこだがこの体勢若干マズいんじゃねーの俺ぇー!!)」


先程の後遺症の所為か若干身体が痺れている。
下は水路だが、受身も取れぬ状態で落ちると…余り想像したく無い末路になりそうだ。


村雨「(こんな時こそ鎖鎌―――斑鳩の腕に巻きつけたまんまだったぁー!!)」


アカン。
もう水路は目の前だ。
どうあっても落ちる。
運良く助かれば良いがそうならなかったら明日の朝刊の見出しはこうだ。


―――鳳凰財閥の長男、水死体で発見される。


村雨「(嫌だああああああっ!!末路もそうだが…!)」


このままでは斑鳩が俺に手をかけた事になってしまう。



村雨「(そうなると3重の意味でシャクだ!!ええいチクショウめ、神様仏様…!)」


恥も外聞も無く心の中で普段は絶対信じない(俺を忍者にしてくれなかったので)神仏へ祈りを捧げた。
しかし、現実とはかくも無情なモノで。


村雨「(ああああああああ!やっぱ駄目だ!もうぜってえ神様なんて信じねえ!!)」


いっそ諦めてしまおうかと思った、その時だった。


黒い忍「――――――、」


刹那、何故か瞼に浮かんだあの忍の姿が思い起こされ…。

死の瞬間の走馬灯だったのか。
追い詰められた最後の灯火だったのか。
今はもう思い出せないが。

兎に角も、俺は…。

腹の底から思い切り。

―――ソイツの名を、叫んだ。



村雨「"零影"ええええええええええええええええええええっ!!!」






―――カタ…カタ…カタ…!!


斑鳩「…?飛燕が突然震えて…どうして?」

斑鳩「………、」

斑鳩「…お兄様?」


何故か斑鳩は兄が落ちていった穴が気にかかり。
そしてその底では。


―――バッシャアアアアアアアアン!!


村雨「…っっッッッ!! はあっ…はあっ…はあっ…!!」

村雨「………お、"お前"……!!」



零影「……………………………………………、」キュピーン



それから脱出途中で出会った半蔵様から俺が"真に目指すべき道"についてつらつらと説かれたりしながら家へと戻り。
で、今では…。




―――プルルルルルル…。


村雨「(ガチャ)―――俺だ。…ふむ、それで?…ふむ、ふむふむ…解った任せろ」


―――ガチャン!


村雨「零影ェ!零影は居るかあ!!」パンパン


零影「…………………、」ススッ


村雨「鳳凰財閥(ウチ)の株の買い占めを企んでるヴァカが居やがるそうなんで仕置き仕れ!!」


零影「………、」コクリ


村雨「後それから!貧民街を無理矢理地ならししようとしていやがる連中もだ!!あすこはいつか俺の手で金の成る木にしちゃるっつーのに勝手な真似はさせん!!」


零影「………、」コクリ


村雨「あん?"処分はいかように。"だと?そんなもんお前の好きに…いや…と言いたい所だが一つだけ」

村雨「"コロシ"はナシだ」


零影「………、」



村雨「"何故か"って、そりゃお前。悪党には悪党の裁かれるに相応しい"場"っつーのがある」

村雨「俺達ゃ忍(お兄様だけ自称)であって殺人者でも、ましてや殺し屋でもない。無益な殺生は俺も望まん」

村雨「解ったか?」


零影「………、」コクリ


村雨「解ったのなら任せた!俺はデイトレードと修行とセミナー講習で忙しい故な!!
   ええと今月は"ツンとデレの妙技、冷めた兄妹の絆を取り戻すには"か…」

村雨「…あ、そういや大学での論文の表題提出もあったか…どうするか?
   以前から考えていた"店舗運営のノウハウ"にでも手を出すか?だが逼迫している店舗もこの辺には中々なあ…」ブツブツ


零影「……………、」


村雨「親父に頼るのもシャクだな…。いっそ貧民街の浮浪者にでも金を握らせて就職させてしまうか?だが無理矢理というのもな…」


零影「……………、」ボソ


村雨「……あん?"いっそ金勘定だけ考えて生きる生活にシフトしたら如何か。似合っているし。"だと?」

村雨「………………、」



―――ガチャーン!!


村雨「テメーそりゃあ俺に忍の才能が無いって暗に言ってんのかコラァ!!」ジャラリ!!


零影(空蝉)「――――――」


村雨「あの野郎逃げやがった!!帰ってきたら覚えてやがれ!!!」

※なお、返り討ちに合う模様。



―――ドスン!バタン!!ガチャン!!!



鳳凰財閥当主(斑鳩と村雨の父)「……"アレ"はまた暴れておるのか……」フゥ…

侍女1「は、はい…申し訳ありません、旦那様…!」

当主「…いや、よいのだ。全てはワシの不徳と致す所よ…」ハァ…

侍女2「(おいたわしや、旦那様…)」


※財閥の方々は村雨が零影とつるんでいるのを知りません

こうして街には「悪い事をしていると現れ仕置きする黒い忍の噂」がまことしやかに流れるのでした…。
アニジャ情報戦とか指令とか、忍以外のスキルはSランクなのにね…。

しかしバレた時の事を何も考えてない辺りが若さ。

それでは本当に寝ます。サヨナラ!!


タイトルから飛影見参!!が脳内再生余裕でした
イルボラの出番はあるのかな

>>32様。

ヒント:零影には中の人が居ます。「主を失った」=零影の中の人は主と…

なるほど、uxの設定か
ランカスレイヤーならぬ斑鳩スレイヤーになる可能性が?

本日分投下します。

>>34
アイエエエ!!アニジャ、アニジャナンデ!?
別のモノをスレイする予定ではありますので、斑鳩=サンは爆発四散はしません、ハイ。

鳳凰財閥(ウチ)の家系は代々優秀な忍を生み出してきた…まあ、所謂エリート様ってトコだ。
だからいずれは俺も家を継いで立派な忍者になる。
そう信じて疑わなかった。

だが運命ってのは残酷なモンで出来ているらしく。

そんな所の長男に俺を生まれさせておきながら、俺に忍の才能を寄越さなかった。
このままでは家系が絶えてしまうという事で、親父は親戚筋に娘を一人養子に出させた。


斑鳩「…………………、」


それが、義妹となる斑鳩だった。

"陰気なヤツ"。

それが、初めて面通しをした時に抱いた感情。

"こんなヤツが"、"こんなヤツに"。

次々と黒い感情が渦を巻く、それは嫉妬か憎しみか。

それとも…。


―――ピピピピピピピピピピ……ピッ!


村雨「………夢、か」ネムネム


時刻は早朝、また今日も1日が始まる。



村雨「…着替えねば」


制服を探せば。


零影「…………、」スッ

村雨「………おう」


スッと手渡され。


村雨「時計と鞄…」

零影「………、」バサッ

村雨「………おう」


文具、ノート、書類は全て揃っている。


村雨「それじゃあ行くか…(ぐううぅぅ~っ)」

零影「………、」スッ

村雨「………おう」


その手にはどっから持って来たのか湯気立つトーストとコーヒー。



村雨「……………、」

村雨「俺は朝は和食派なんだが?」

零影「……………、」


―――バッシャーン!!


村雨「―――あちい!?テメエこの野郎!!制服にコーヒー溢しやがったな!?軽い冗談だと言うに!!」

零影「………………………、」チキン


村雨「解った、解ったから短刀を抜き放つな。お前目線が変わらないから割と洒落になってねえんだよ」

零影「……………、」スチャ

村雨「(全く、忠誠心があるんだか無いんだか訳解らんなコイツは)」


こちらの命令は大概拒否せずそこそこの事はやってくれるので、重宝するにはするのだが。
余り無茶ばっか言ってるとさっきみたく反抗される。
尤も、脅し程度のもので零影も俺も大して気にしてないが。


村雨「(そういえば、俺は零影のことを何も知らんな…)」


急にそんな事を思った。
零影が目覚めてからこっち、コイツを使って色々する事しか考えてなかったというのもあるが。



零影「………………、」


コイツ自身も自分の事は殆ど喋らない。
や、元々喋る機能は無いようなのだが、何故か俺には言葉が解るのだ(ほぼ断片的にだが)。


村雨「(………まあ今は良いか)」


黙っていることをあれこれ詮索する趣味は無い。
話す時がくれば自然と話してくれるだろうし、今は取り敢えずこのままで。



零影に対する妙な信頼感と共に、俺は部屋の扉を開け放つ―――。




村雨「(ま、大学に着いたからってどうだってワケじゃあ無いんだがな)」


親父が用意した帝王学専門の超偏差値の大学。
周りの人間は俺を含めて皆セレブ。
きっとここを卒業したら財閥やら企業やらで続々と手腕を発揮する面々なんだろうなというのが雰囲気で見て取れる。

俗世間一般的に言うならば、"勝ち組"というヤツで。

そんなどちらかと言えば恵まれた環境にありながらも。


村雨「……………(つまらん)」


俺の目には周りの景色は皆セピア色にしか映って無かった。
授業が楽しくないとか、友達が一人もいないからとかそういうワケでは無い。
寂しくなんかない。無いったら無い。
ただ…。


村雨「(このままここを卒業したとして、果たして俺はそれで本当に満足なのだろうか…)」


"夢"を諦めたままで…。


―――チカッ、チカチカッ…。


村雨「(ん…?)」


視界の隅に光る何かを感じて、窓の外に目を向ければ。


零影「………………、」ヌ~ン


―――チカ、チカチカチカ!


壁に張り付き、刃で光を反射している零影。
断続的に発光させているソレは、モールス信号か。



村雨「("昼食はどうしますか。"か…)」ゴソゴソ


そういえばもうそんな時間かなどと考えながら、取り出した手鏡で返答を返す。


村雨「("か・い・し・め・ろ")」

零影「…………、」



零影「…………、」コクリ



―――シュタタタタタタタタタタタタ…!

―――お昼時。


村雨「愉悦うううううううううう!!」ムッシャムッシャ!

村雨「はっはっは!購買の人気パンはスタートダッシュ時において勝っている我等が全て確保よ!!」

零影「…………、」

村雨「どうだ愚民共!昼食を一緒に摂るというのであれば譲ってやるのにやぶさかでは―――」



一般生A「購買のパン売り切れてるらしいぜー?」
一般生B「マジかよ。じゃあ学食でいいんじゃねえ?」
一般生C「この大学全てにおいて高水準だから何処でも旨い食事が出来るのが強みだしな~」

―――アハハハハハハ…!



村雨「………………、」ムッシャムッシャ

零影「…………、」


村雨「…………食べるか?」

零影「………、」フルフル


腹は膨れたが、言い様のない虚しさに包まれた。




―――キーンコーンカーンコーン…!


村雨「…さて、講義も終了したし帰るか…」ゲップ


朝食の時といい、暫く小麦製品は見たくも無い。


村雨「零影―――!!は、居ないんだったなそういや…」


数日前、鳳凰財閥(ウチ)の株式にちょっかいを掛けてきた"ある企業"。
表向きは出版流通を取り扱っているように偽装しているが、その実。
妙な兵器やら資材やらを密輸・密売するシンジケートを取り仕切る黒も黒、零影も真っ青な程にブラックな企業だったのだ。

こちらの規模を理解しない身の程知らずのチンピラ企業であるなら放置しておこうかとも考えたのだが、こうもあからさまにに喧嘩を仕掛けられたのと。
自分のツテで色々探りを入れてみた所、"妙な点"が幾つか見つかった。

用途不明金の流出が数件…それだけなら仄暗い企業であるならばどこでもやっている事だったが、問題はその金額だ。
現時点で判明しているだけでもかなりの額となっており、戦争でもするのか?という疑問が芽生えた程だった。




村雨「(親父は表立って何かしようとはしてないみたいだが…)」


どうにもきな臭い匂いがするので、調査がてらやばかったらぶち壊してこいと零影に命じた、その実行日が今日の夜。
首謀者は殺害せず確保してこいと厳命しているし、零影の実力ならばそこら辺は上手くやってくれるだろう。


村雨「(いずれ俺のナワバリとなる地域で勝手な真似はさせん…!)」


くしゃり!と。
手の中のコーヒー牛乳のパックが音を立てて歪む。


村雨「…………、」

村雨「………また、染みになってしまった………」


己の所業に少々メッソリする村雨であったが、この時彼は気づいていなかった。

零影に潜入を命じた企業…通称「二迅製薬」。

彼の企業の怪しさを、他に狙っている者達が居る事(チョット予定外でもアイツなら大丈夫だんべ?等と慢心してそっち方面は手を抜いていた)を。
しかもそれは。

―――半蔵学院。


霧夜「―――斑鳩。"例の兵器会社"絡みの件はどうなっている?」


斑鳩「…はい、ターゲットは今宵本社へと戻るそうなので私達全員で確保に動きます」


霧夜「そうか。目的は飽くまでも"ターゲットの確保"だ、くれぐれも頼むぞ」

霧夜「特に―――"蛇"も彼を狙って動き出しているようなのでな」


斑鳩「…解りました」

斑鳩「……………、」


霧夜「…どうした?何か気にかかる事でもあるのか?」

斑鳩「………い、いえ…失礼します…」


―――パタン…。


霧夜「(例の"黒い忍"の事、か…。さしあたって、現時点では害は無いと判断されるが、さて…)」

霧夜「(…俺は俺で動き出す時なのかもしれんな…)」


―――蛇女子学園。


鈴音「…という事で、潜入先に半蔵の手の者が障害として現れる可能性は極めて高いと思われるが…やれるか?」


焔「当たり前だ、私達は…」


鈴音「―――"例の黒い忍"が現れたとしても、か?」


焔「………!」


鈴音「"道元様"は捨て置いて良いと申しておられるが…蛇女きっての精鋭が外部の忍にいつまでも後手に回っているというのは些か以上に体裁が悪いのでな」


焔「…問題は無いさ。いつまでもやられっぱなしでいられる程"悪忍"は甘くは無い…!」


鈴音「…そうか、それならば良い」

鈴音「(しかし、こう敗北を重ねているにも関わらず上からの警告は一切無し…どうなっている?」




誰も彼もが村雨(と零影)にとって、大変馴染み深い方々であるのだった…。



村雨「―――ぶえっくしょい!!…いかん、濡れた所為で風邪引いたか?」


前半戦終了となります。村雨兄さん、アンタちょっとセコいよ!!

後半戦はロボ戦という名の「テーレレー♪テーレレー♪テッテレレッ♪」などといったBGM合戦と。
零影の方のボツネタとなる"例の下僕たち"の活躍を考えております。

後友人に「零影と村雨の関係がいまいち解らん」と突っ込まれたので、一言で言うならば。
ド○えもん(零影)とのび○君(村雨)みたいな…?
但し知恵と財力があるの○太君ですが。

それでは今回はこれにて。

何かサイトに繋がらなかったなで遅れましたが、本日分投下デス。

―――その夜。(株)二迅製薬正門前。


焔「…それで、結局こうなるワケか…」

詠「………………、」
日影「……………、」
未来「……………、」
春香「あらあら…、」


飛鳥「こ、こんばんは…。焔ちゃん」

斑鳩「…………、」
葛城「…………、」
柳生「…………、」
雲雀「……はうぅ」


日影「………ストーカーか?」

葛城「いや、なんでそうなんだよ!?」

詠「…そちらの裏を掻こうと、敢えて正門から向かってみたのですけれど…」

柳生「…奇遇だな。俺達もそうしようと思ってた所だ」

未来「だからって、こんな偶然アリなの…?」

雲雀「な、なんだかごめんね…ワザとじゃないんだけど…」

春香「…私達、ここの社長さんに用があるだけなのよねえ?」

斑鳩「…それはこちらとて同じことです。ターゲットの保護を優先せよとの指令を承っておりますので」


一同「「「「「………………、」」」」」

ピリピリと空気が張り詰めたように冷たくなってゆく。
そこに手を挙げるは。


日影「…なぁ、提案があるんやけど聞いて貰えへん?」


一同「「「「―――?」」」」


日影「お互い用があるんは同じなんやろ?だったら…」

日影「―――ここで勝負して、勝った方がターゲットを戴くっちゅうんは?」シャキン!!


葛城「へぇ…面白いじゃないか。その提案、乗った」ジャキン!


焔「まぁ、ここでウダウダしてても仕方無いのも確かだしな…」

飛鳥「……!!」


詠「"お嬢様"方…今日こそ粉砕してさしあげますわ」

斑鳩「そう易々とはさせません…!」


雲雀「ひ、ひばりも…頑張りますっ!」

春香「(うぅ~ん…気合を入れた顔もまた素敵ねえ…)」



未来「なるべくなら早めに降参して欲しいんだけど?どうせそっちは"あの黒いヤツ"を呼ぶ事になるんだし~」

柳生「…余り俺達を舐めるなよ?」

未来「…それはこっちの台詞よ。いい加減"アイツ"には頭にきてんだから、ここらで挽回しないと後が無くなるのよこっちは」

未来「仲良しこよしでヌクヌクしてる"善忍"(そちらさん)とは違ってね…!」


焔「――――、」
春香「―――、」
詠「――――、」
日影「―――、」


葛城「そりゃあご愁傷様。…だけど"アイツ"の事はアタイ達だって訳が解らないんだよ。八つ当たりは止めて欲しいねえ」

斑鳩「私達は飽くまでも私達の力で敵を退けるツモリです…!」


焔「…はん。まあ、どっちだっていいさ。…敵は全員倒すのみ」

焔「それじゃあ―――やろうか、善忍共!!」


飛鳥「―――!」
斑鳩「―――!」
葛城「―――!」
雲雀「―――!」
柳生「―――!」


焔によって口火を切った両者の戦いは、互いに最初の一撃を繰り出すべく一歩を踏み出す―――。



―――ジリリリリリリリリリリ…!!!


―――前に、けたたましく鳴り響いたサイレン音に何事かと停止した。


日影「…何や?」ピタリ

詠「ビルの方からのようですわね」


斑鳩「まさか、私達の襲撃がバレたのでしょうか?」

葛城「にしちゃあ、こちらに警備員とかが来る様子は無いぜ?」


春香「…未来!」

未来「お任せあれ春香様!!」

懐から取り出すは、未来手製の盗聴キット。
相手の通信機の周波数に合わせれば、立ち所に無線を傍受する事が出来る優れもの。
無論、二迅側の周波数は予め入手済みである。

未来「ええとあれそれこうしてこうで…ん?」

機械をいじくる視界が急に暗くなり、顔を上げれば。


善忍&悪忍ズ「「「「「……………」」」」」ジ~ッ




未来「くらぁ!!春香様達ならわかっけどなぁんでアンタ等(善忍)まで聞き耳立ててんのよぉ!!!」

柳生「…いちいち突っ込むな。心の狭いヤツだ」

未来「誰の胸が狭いですって!!!」グワッ!!

雲雀「…誰もそんな事言ってないような…」

春香「未来、ここはフェアに行きましょう。聞かせてあげて頂戴」

未来「…むぅ、春香様がそう言うなら…ちょいちょいっと」



―――ザー…ザザ…ザー……!
―――ブツン。





警備員1『……ザザザ……こちらアルファワン。アンノウンは現在東館に移動中。何としてもここで食い止めろ!!』

警備員2『社長から銃の使用許可が出た、これでアンノウンの好きにはさせないぜ!』

警備員3『…ん?おいでなすったぞ…!!撃て撃て撃てーーー!!!』

―――ズガガガガガガガガ…!!!

警備員4『やったか!?』

警備員5『…いや。健在…アンノウンは健在!!こうなれば近接戦闘…グワーッ!!』


―――ズキャッ!ズシャッ!バキン!!
―――ツツー……。

警備員6『アルファチーム!?どうしたアルファチーム!!…クソッ。以後の指揮系統はブラヴォーチームが引き継ぐ!!』

警備員7『敵の武器は…なんだあれは!?カタナと手裏剣とヤリとマキビシと…まるで"忍者"だ!?!?』

警備員8『落ち着けバカモノ!忍者など居ない、いいな!?ヤツは唯のテロリストだ!!』

警備員9『東館通路の隔壁を下ろせ!それでヤツは袋のネズミだ!!』


―――ズゴゴゴゴゴゴーン!!!

警備員10『何だぁ!急に隔壁が吹き飛んだぞぉ!?』

警備員11『シット!ミサイルまで持ってやがるのか!?―――う、ウワアーッ!!!』

警備員12『全警備員に告ぐ!敵は"黒い鎧を着た忍者"だ…黒い鎧を着た忍者だあー―――!!!』



―――バキャッ!
―――ツー、ツー、ツー……。







一同「「「「「「……………………、」」」」」






―――えっ?―――





無線を切った飛鳥達は勝負を一時中断し、大急ぎで正門より企業内部へ突入した。
そこで彼女達の目にしたモノは。


焔「………酷いモンだな」

詠「そ、そうですわ、ね…」

硝煙の匂いがそこかしこに立ち込め、血を流して通路に倒れ伏す人、人、人…。
戦争でも起こったかと錯覚しそうな程の地獄絵図が広がっていた。
まあ、ある意味では"戦争"という表現は実に的確なのだが。


斑鳩「裏では兵器を取り扱っていると聞いてはいましたが、こうまで露骨に使うだなんて」

柳生「……それだけヤツラにとっての"敵"が強大過ぎたという事だろう」


銃器を容赦なく使用した事から、襲撃に対して相当の警戒をしていたに違いない。
不幸なのは、相対した敵の戦力を見誤ったという点だが。

…誰がそれで彼等を責められるというのだろうか。


未来「…"アイツ"の件、半蔵は預かり知らないだなんて話。本当なんでしょうね?」ジロリ

葛城「ひつっこいなあ。知ってたらこうやって一緒に踏み込んでないっつーの」

未来「じゃ何が目的だってーのよ」

葛城「知るか!こっちが聞きたいぐらいだよそんなもん!!」




警備員「…ううう…」ピクピク

春香「…頭部への衝撃に伴う経度の脳震盪…取り敢えずこの場に居る全員は命に別状は無いみたいよ」

飛鳥「よ、良かった。何だかホッとしました」

雲雀「ど、どうもです春香さん…」

日影「…やけえ」



日影「…これ、引き起こしたん当の本人は何処行ったん?」




飛鳥達がロビーで話している頃。
その零影はというと。




零影「………………、」

―――ガチャッ!!



………がら~ん………。



零影「……………。」

零影「…………、」キョロキョロ

―――パタン…!




警備員13「アンノウン、20階フロアを行ったり来たりしています!」

警備員14「一体何が目的なんだヤツは…!?」




―――道に迷っていた…。


―――社長室。



???「ううう…何をやっているんだ役立たず共め…!」



襲撃の報が警備員から発せられ数時間。
監視モニターに視線を移せば、22階で警備員をモノともせずに蹴散らす漆黒の影。


???「高い給料を払って、リスクを承知で銃の使用も許可したというのにこれでは何にもならんではないか…!」


椅子に座る中年の男性、"二迅製薬社長"は苦虫を噛み潰した表情になりながら背もたれに身体を放り出す。


社長「しかもあの黒い忍者は…"あのお方"の言っていた…」


てっきり眉唾物の類だとばかり思ってタカをくくっていた。
だが今宵ソレは現実となって己の身に降りかかろうとしている。


社長「どうしてこうなった…偽装は完璧だった筈なのに…」


幾ら懊悩しようが現実は変わらない。
再びモニターを見れば、黒い忍びは24階にまで来ており、己の部屋がある25階までは後1フロアという所まで迫っている。

辿り着いたら、アイツは私をどうするのだろうか?
[ピーーー]のか?捕まえるのか?それとも…。


社長「(だ、ダメだ…!どちらに転んだとしても私は破滅だ!!)」

社長「こうなったら…」


唾を飲み込んだ社長が徐に机を開けると、そこには赤いボタンが一つ。

社長「………、」

それはある意味起死回生の一手となり得るが、下手すれば自ら死刑執行へのサインとも成りうるべき代物でもあった。


社長「どうする?押すか、それとも……」


座して死を待つか、最後の徒花か。
ぐるぐるぐるぐると思考をループさせていたら…。

―――社長室。


???「ううう…何をやっているんだ役立たず共め…!」


襲撃の報が警備員から発せられ数時間。
監視モニターに視線を移せば、22階で警備員をモノともせずに蹴散らす漆黒の影。


???「高い給料を払って、リスクを承知で銃の使用も許可したというのにこれでは何にもならんではないか…!」


椅子に座る中年の男性、"二迅製薬社長"は苦虫を噛み潰した表情になりながら背もたれに身体を放り出す。


社長「しかもあの黒い忍者は…"あのお方"の言っていた…」


話を賜った当初は、眉唾物の類だとタカをくくっていた。
だが今宵ソレは現実となって己の身に降りかかろうとしている。


社長「どうしてこうなった…偽装は完璧だった筈なのに…」


幾ら懊悩しようが現実は変わらない。
再びモニターを見れば、黒い忍びは24階にまで来ており、己の部屋がある25階までは後1フロアという所まで迫っている。

辿り着いたら、アイツは私をどうするのだろうか?
[ピーーー]のか?捕まえるのか?それとも…。


社長「(だ、ダメだ…!どちらに転んだとしても私は破滅だ!!)」

社長「こうなったら…」


唾を飲み込んだ社長が徐に机を開けると、そこには赤いボタンが一つ。

社長「………、」

それはある意味起死回生の一手となり得るが、下手すれば自ら死刑執行へのサインとも成りうるべき代物でもあった。


社長「……どうする?押すか、それとも……」



座して死を待つか、最後の徒花か。
ぐるぐるぐるぐると思考をループさせていたら…。




―――ガチャッ!



焔「社長室はここかああああああっ!!」

飛鳥「は、早い!!早いよ焔ちゃん!!」



社長「―――うわあああああああああああああああああっ!!!!!」


―――カチッ。



社長「―――あ」

焔「―――うん?」

飛鳥「―――へ?」



驚きの余り、ボタンを深く押し込んでしまった。





―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。



零影「…………?」

突如、ビル全体を揺るがす振動に零影は制止し。




警備員15「た、隊長。これは…!?」

警備員16「た、退避いーっ!!総員負傷者を回収して退避しろー!!!」




―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


斑鳩「これは…!」

未来「え?何々?何が始まんの!?」

春香「この振動…地下から…?」

柳生「もたもたしてる場合じゃなさそうだぞ、この揺れの大きさは…!」

雲雀「で、でも…まだ飛鳥さん達が上に!!」

葛城「…あたしが…と言いたいとこだけど、寝ている警備員も放っておくわけにもいかねえしな…無事に逃げられると信じるしかないよ」


階下では、異常事態に兎に角も気絶している警備員を担いで撤退を始める善忍&悪忍ズ。
その際。


―――カタ、カタカタカタ…。



斑鳩「……??」



愛刀飛燕が2、3度揺れ動いた気がしたが、気の所為だろうか?




―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


社長「お、押してしまった押してしまった…もう駄目だお仕舞いだ…」ブツブツ

焔「……?(こいつ…)」


焔達の目的は眼前の社長の排除だったのだが、その妙な怯え様に思わず刀に掛けた手を止めた。


飛鳥「お、落ち着いて下さい!何が駄目なんですか?何が起こるんですか!?」

社長「ち、地下…!」



焔「―――地下?」
飛鳥「――地下?」





抽象的過ぎて何が何やら。
もう少し具体的な事を聞こうとしても。

―――ビシ、ビシシシシ…。

部屋の壁面に亀裂が入り始めた。
どうやら崩落まで時間がなさそうだ。


飛鳥「し、しっかり捕まって下さい…!」

焔「おい、そんなヤツ放って…!」


何とかして蹲る社長を抱えて脱出しようとした。

その時だった。


BGM:飛影見参!!



―――シュタタタタタタタタタタタタタ…!!



―――バタン!!―――



焔「―――は?」
飛鳥「――ひ?」

零影「……………、」


部屋に飛び込んで来た零影は、呆ける3人を抱えると。
窓を突き破って夜空に飛び出した。



飛鳥「きゃ―――!」
焔「うわっ―――!」



轟々とする風、飛び交う瓦礫が頬を掠めがらも、一気に…。




斑鳩「これで怪我人は全員ですね!?」

未来「…なんでアタシ達まで手伝わなきゃいけないわけ?」ゼェゼェ

詠「まぁ、放っておくわけにもいかないというのは同意ですし」

日影「メンドーやなぁ…」


何とか警備員達を抱え込み外へと脱出した斑鳩以下8人の忍達。
一拍遅れて。



―――ズゴガガガガガガガガガガ…!!



崩落が始まり、あっと言う間に瓦礫の山へと変わっていく二迅製薬ビル。
と、同時に。



―――ズドオォォォォォン!!



地面に激突する4つの影。




葛城「な、なんだなんだぁっ!?」

雲雀「あ、飛鳥ちゃん!?」

柳生「焔のヤツも一緒か」

春香「見慣れない人も居るわねぇ…?」



焔「つつつつつ…無茶しやがってからに……」
飛鳥「はらほろひれはれ…」
社長「――――――、」ピクピク


零影「……………、」シュタッ





未来「あああああああああああああああああっ!!アンタああああああああああああああ!!!」



零影「…………?」クルリ

零影「…………、」

零影「…………、」ペコリ

未来「あっこりゃどうもご丁寧に…。ってちがああああああああああうっ!!」

柳生「(…アイツ意外と面白いな)」


未来「ココであったが百年目!積年の恨み晴らしてくれる!!喰らえ今日の為に編み出した新必殺―――」


零影「………!」ズアッ!


未来「へ?ちょ、ちょっと待って幾らなんでもアンタそんな急に…!!きゃっ!?」


零影は、徐に未来に突進すると武器を構えさせる間も無くその体を思い切り突き飛ばす。
そこに。



―――ドゴオオオオオオオーン…!!!



未来「―――えっ?」



どこからともなく飛んできた火砲に晒され、零影の姿が爆風に掻き消える。




日影「……何や?」


その異変に日影が、いの一番に気付いた。
崩落したビルの方、未だ噴煙に包まれた方向に"何か"が居る。


???「……………、」ギュピーン


煙が晴れるとそこに居たのは、全身を真っ赤に染めた人間大の"何か"。
その手には鎌らしき武器が握られており、口に相当する部分からは、たった今発射したと見える火気の硝煙が燻っている。


春香「……傀儡?」


春香が耳をすませると、"何か"の各部からは"キリキリキリキリキリ…"と無機質な音が。
しかも。



???「……………、」
???「……………、」
???「……………、」
???「……………、」

………。


一体だけではない。
奥から数体…否。数十体にも及ぶ同じ姿形の傀儡が次々に出現する。



葛城「んな…!んて数だよこりゃあ…!」

斑鳩「これが全て傀儡だと…?」


焔「―――――――おい」グイッ!
社長「―――うぶっ…!」

飛鳥「ほ、焔ちゃん!?」


焔は気絶している社長の胸ぐらをつかんで引き寄せた。


焔「…あれは、お前らが作ったのか?」

社長「うぐぐぐぐ…!そ、そうだ…"さるお方"から技術提供を受けて…万一の時にはアレで"零影"を始末しろと…!!」

焔「…"零影"?」

社長「あ、あの黒い鎧を着た忍者の事だ…し、知らないのか…?」



一同「「「「「……………、」」」」」



"零影"。
それが、今まで自分達に関わってきたあの黒い忍の本名か。
名を知る機会に恵まれたのが、よもやのここでとは。




焔「…他に知っている事は?」グイイッ!

社長「うぐ…ほ、他のことは何も知らん…本当だ!」

春香「さっき貴方は、"さるお方"と言っていたけれど…?」



社長「―――!?そ、それは…」

社長「い、言えんそれだけは…それだけは…!」



余程に恐ろしいことを想像したのか。
社長の顔面は蒼白となり、ガタガタと震えだした。


葛城「おい、尋問もそのくらいにしとけよ。でないと…」



赤傀儡達「「「「「「……………………」」」」」」



ブゥン…!
瞳と思しき黄の光が複数、こちらを射抜くように光る。



雲雀「な、何か空気が重いような…」

斑鳩「友好の雰囲気では無さそうですね…」

葛城「んなもん見りゃ解るっつーの」


焔「止められ無いのか?」グイッ!

社長「うぐぐ…!む、無理だ!一度動き出すと敵対する物全てに攻撃するようプログラムされている!ここでは停止させられん!」

日影「…難儀なやっちゃな」



赤傀儡1「…ギギギ…」
赤傀儡2「…ピピピ…」
赤傀儡3「…ガガガ…」



傀儡達が、手鎌を焔達に向け振り上げた。

次の瞬間。




―――ズバッッッ!!



赤傀儡1「ピ…ピピピ…」

赤傀/儡1「ピピ……ピ………」ズズズ…



―――ズゴオオオオオン!!



傀儡の一体が正中線から真っ二つに割れたと思いきや、爆散。





一同「「「「「――――――!!」」」」



瞠目する一同であったが、唯一焔だけが。


焔「…ま、そうだろうな」


何処か納得したように溜息を漏らす。



社長「な、何だ…?一体、何が…?」

焔「…"次"があるならお前の上に伝えておけ―――」



―――あんなモノで止めをさせるようなヤツであれば。
―――私達も苦労はしてない。




零影「……………………………、」キュピーン





赤傀儡達「「「―――!?」」」



いつからソコに居たのか、傀儡達の中心に現れた零影は。
所持する二振りの刀を。

思い切り振るった。



赤傀/儡2「ガピ…!」
赤/傀/儡3「ガガガ…!」

赤傀儡4「…!」



無論それで全ての傀儡を屠れるワケもなく、無傷の数体から手鎌が飛び交うが。





零影「―――、―――、―――、」シュシュシュン!



零影には掠りもしない、跳んでは現れ―――。



―――シュバッ!



赤傀/儡5「ガギ…!?」



現れては、また跳ぶ。
変幻自在の動きで次々と傀儡を葬る零影。





社長「…ぐ。こ、こうなればヤケだ!!"シャーマン"ども、何としてもソイツを葬り去れ!!!」



資金を注ぎ込み作り上げた傀儡の不甲斐なさに激昂したのか、社長は身体を押さえ付けられているにも関わらずに声を張り上げた。



シャーマン6「―――!」
シャーマン7「―――!」
シャーマン8「―――!」



その激が引き金となった赤傀儡…"シャーマン"は口内や膝から火炎やミサイルを繰り出し零影を追い詰めようとする。
だが逆に。



―――円月手裏剣で頭部を吹き飛ばされ。

―――マキビシランチャーでミサイルを迎撃され。

―――どこから取り出したか、三叉槍で火炎を散らされ。

―――脚部の連装ミサイルで爆砕させられた。




零影「………………………、」


葛城「お、おい。アイツ何か、いつもより"キレ"てないか?」


今まで自分達が相対していた時より、攻撃に容赦が無くなっているように感じた。
どこがどう、というのはハッキリとは分からないのだが…。
傀儡人形が相手だからだろうか?


零影「……………………、」


言葉を発さず、表情も見えない現状でそれを知ることは(村雨も居ないので)不可能に近い。


シャーマン9「――― !」
シャーマン10「―――!」
シャーマン11「―――!」


だが敵もさるもので、倒しても倒してもアリの如く地面から這い出て、一向に数が減る様子がない。



焔「…おい?」グイイッ!
社長「ぐええ…!ち、地下のラボがまだ生きているんだろう…だ、だが停止させようとしても無駄だぞ…入口はあの通り…だ」


息も絶え絶えに社長が指差した先には瓦礫に埋もれた元・本社ビル。


詠「…加勢、した方が宜しいのでしょうか?」

焔「……」


詠の提案に焔は無言。
"そんな義理は無い"と切って捨てるは容易いが、万一零影が破れる事があればあの数十にもなる傀儡がこちらに雪崩込んで来るは自明の理。

焔「(…どうする?)」

自問する。
動くか、それとも静観か。


飛鳥「……!」グッ


どうやら善忍達は動く事に決めたらしい。
ならば、と焔が口を開きかけ―――。




零影「…………………………、」ピタリ



焔「―――?」
飛鳥「――?」


急に零影の動きが止まった。
抵抗を諦めたのか?…いや違う。
"彼"は徐に、短刀の鍔付近を口に相当する部分に近づけ…。



―――ブオオォ~~~~~~~~ッ!!



甲高い、角笛のような音が辺りに鳴り響く。
数秒後。


―――ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!


突然の地鳴り。
地震か?と身構えるがどうやらそうでは無いようだった。



日影「…なんや、あれ?」


日影が示した方向を見やると…。
土煙を上げながらこちらに走ってくる"何か"の影が一つ。

遠目から豆粒大だったソレは、物凄い速度と共に巨大化して行き…。
減速せぬままに、敵陣に突っ込んだ。



シャーマン達「「「―――!?」」」



勢いの余波に巻き込まれたシャーマンの内何機かが吹き飛ばされ、戦闘不能となる。





???「…………………、」ヌ~ン


出現したのはシャーマンと同じく人間を模した形でありながらも頭部に独特な、牛のような鬼のような二本"角"の意匠が施された緑色の傀儡。



???「………!」

シャーマン12「ピガー!?」
シャーマン13「ガピー!?」



間髪入れず緑傀儡は豪腕を振りかざし、近場のシャーマンを粉砕する。
どうやら敵ではないようだが、とするとコレは零影の協力者(?)という事だろうか。
などと考えていたら。



零影「…………!!」キュピン!

???「………!!」キュピーン!





その推量を肯定するかのように。
否、"それ以上"の驚くべき事が起こった。



???「…………、」

―――ギュイィィン!


それは一瞬の事だった。
緑傀儡が静止したかと思いきや"胸"に当たる部分が突然開きのように"バカッ!"と開け放たれ。


零影「―――!」


その内部に、同じく変形した零影がスッポリと収まったのだ。



全員「「「「「「―――は?」」」」」」




変化はそこだけに留まらず。
零影を内包した緑傀儡は更に一瞬で…二足歩行の人間型から逆行するように、四足歩行の獣―――正しく"牛"という表現がピッタリ来る―――へと変貌したのだ。







―――烈火牛合身―――




―――獣魔・烈火牛!!!―――








獣魔翌烈火牛「ぶもおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


合体を完了させた零影もとい、"獣魔翌烈火牛"は猛る闘士を宣言するかの如く嘶く。



シャーマン軍団「「「「「…………!!!!」」」」」



その気合に充てられたかのように投げつけられた鎌が、次々に獣魔翌烈火牛に突き刺って行く。
図体が大きくなった所為で避けられなかったのか?
否。


獣魔翌烈火牛「ぶもおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」


"避ける必要が無い"のだ。
刺さったかに見えた鎌はその実、烈火牛の装甲に傷一つ付けていない。



シャーマン軍団「「「………!!」」」


ならばと内蔵火器に切り替えようとするが。


獣魔翌烈火牛「――――――!!」


烈火牛は零影の時と比べても遜色ない軽やかさでそれを回避し、お返しとばかりに蹄の部分で顔面ごとシャーマン達を踏み潰して行く。



シャーマン14「ピピー!!」
シャーマン15「ガガー!!」
シャーマン16「ビビー!!」



隙を見て何とか遠方へ逃れる事が出来たシャーマン達は踏み付けられている味方諸共烈火牛を破壊せんと火砲を発射する。



獣魔翌烈火牛「ぶもおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


それを察知した烈火牛が嘶くと、その背中より突撃砲やミサイルが装填された砲身が出現し。
それらを、シャーマン達に向け雨霰のように叩きつけた。


シャーマン17「ガガガー!?」
シャーマン18「ピギー!??」
シャーマン19「ギゲー!!?」


火砲による火球か、シャーマンの誘爆による火球か最早判別不能な程の爆発の嵐。
…ビル内部で繰り広げられた戦いが遊戯のように思える戦闘…否、蹂躙が繰り広げられていた。
そして。


獣魔翌烈火牛「――――――!!!」


最後のダメ押しとばかりにその巨体を翻し、跳躍した烈火牛は。
目下で固まるシャーマン達と、"その向こう"を同時に打ち砕かんと。



背中の装備に同時に火を灯した。





日影「―――焔さん。あれ、アカンで」



ポツリと日影から齎された情報に、蜘蛛の子を散らすように少女達は逃げ出した。
そして。


獣魔翌烈火牛「―――ぶもおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


渾身の嘶きの後に放たれた一斉射撃。

ミサイル、グレネード、レーザー、ビーム、火炎、電撃…傍から見れば色取り取りの幻想的な風景にも取れるその一撃によって。




ビル周辺に群がるシャーマン達は愚か、地下の製造ラボに至るまでの一切合切が灰塵に帰する事となった…。


全ては終わり。
後に残されたのは。

嘗て"二迅製薬であったであろう"残骸の一部と。


焔「……生きてるか?」
詠「…はい、何とか…ですけれど…」
未来「…うわ、うっそでしょうコレ…」
春香「見事に何も残って無いわねえ…」
日影「…目ぇがチカチカしよる」


斑鳩「こ、こちら側は…?」
柳生「俺とひばりは無事だ…」
雲雀「ありがと柳生ちゃん…」
飛鳥「かつ姉とわたしも平気です…」
葛城「うぅ~、まだ耳がキンキンしやがる…」

破壊より無事に逃げ切る事が出来た少女達と。






社長「………………、」ブクブクブクブクブク

今にも昇天しそうな程に憔悴しきった、"元"二迅製薬社長のみ。



焔「…………。」


零影の姿は何処かに消えていた(死んではいないだろうが…)。
飛鳥達も互いの無事を確認しあっている為こちらに注意を向けていない。
…忍務を果たすなら今しかない。

焔「……おい」

考えて、社長の肩に手をかけようとした瞬間。

―――ガバッ!

何を思ったか社長が焔に抱きついてきたのだ。


焔「…!な、何を…!?」



社長「助けてくれ助けてくれ助けてくれ助けてくれ助けてくれ…」ブツブツブツ

最初はソレを、唯の命乞いだと断じようとしたが、どうも様子がおかしい。




社長「お、お前達"も"忍者なんだろう?頼む、金なら幾らでも出すから…俺を護ってくれぇ…!!」

焔「……"さるお方"というヤツからか?」


深い事情まで知っているワケじゃない。
先刻からぶつぶつ言っていたキーワードを絡めてカマをかけただけだが、効果は覿面だった。


社長「そ、そうだ!"あのお方"は失敗を許さない…!」

社長「ヤツラにか―――…がああっ!?」

焔「!?」


喋ろうとしていた社長の表情が苦悶に歪んだ。
一瞬の硬直―――そして、弛緩。


焔「おい…?おい!!??」

春香「……ダメね、死んでいるわ」


春香が近寄り脈を図るが、最早社長は一切の生活反応を示して居なかった。
身体を裏返せば、首筋には一本の細い"針"のようなモノ。

そしてその奥では。



シャーマン「………ピ、ピピピ…」バチバチ


―――クチフウジ、カンリョウ…―――

―――ビガッ…!?―――



零影「……………、」チキン



結局、この夜の忍務は。


半蔵側はターゲットを殺害されたことによる忍務失敗。
蛇女側は結果的には成功したが、押収すべき情報の前にことが終わってしまったが為に同じく失敗となり。


周辺の地域には。
地面の液状化によるビルの崩落と、その影響に伴ったガス爆発という情報規制が成され。


その全てを、闇へと葬られた。


だが、それで。



―――プルルルルルルル…!



蠢く闇の濃度が薄れた訳では、決して無く。





―――ガチャリ。


???「私だ。…ああ、二迅製薬の件はそれでカタを着けた。隠蔽、ご苦労…」

???「なあに、複数あるラボの内の一つが無くなっただけだ。差して気にしてはおらぬさ」

???「うむ。…うむ、それではな…」


―――ガチャン。




???「…………ふむう」


???『映像はご覧になられましたでしょうや?』


???「…"お前"か。この目で見るまでは些か半信半疑だったが…アレが零影か」


???『左様で御座います。アレの性能は必ずや貴方様の野望の手助けとなりますでしょう』


???「"伝説の超パワー"…こうなってみれば興味が沸かぬというのもウソになるが、さて…」


???『焦りは禁物でございます。アレは一体では決して有用とは成りえませぬ故』


???「貴様が提言しておった"もう一体"の方か。経過はどうだ?」


???『まずまずといった所でしょう。もうじき雛形が出来上がります』


???「後は"魂"が入れば、か。その為にも"オロチ"の目覚めを急ぐ必要があるか」


???『御意に。…幸いに、"器"となりえそうな人形にも幾つか目星がつきそうですな』


???「図らずともあの零影めらのおかげでな…ククククククククク…」



闇は、新たな闇の囁きを受け深く静かにその濃さを増して行く…。


一方、その頃。



村雨「―――んなんじゃこりゃああああああああああああああああっ!?」



村雨「"二迅製薬本社ビル深夜の謎のガス爆発!?周辺一帯は更地と化す"とな!?」

村雨「てめえ零影、確かに仕置きして来いと命じたがここまでしろと誰が言った!?バレたら…」



零影「…………………、」



村雨「(…………何だ?)」

おかしい。
いつもならこの時点で"何か文句あんのかこの野郎"的なあれやそれが起こる筈なのだが。




零影「……………、」

よくよく見れば反応も鈍い。
常在戦場がモットーの零影とは思えない程に。



村雨「(何かあったのか?)」

というか確実にあっただろう。
帰参してからこっち、起こりえた事について一言も口を交わそうともしないのだ。
何か"嫌なモノ"でも見たのだろうか。



村雨「(コイツに限って嫌なモノとかあるのかがそもそも疑問だが)」

零影「……………、」

村雨「(…まぁ、言いたくないならそれでもいいが…)」


バレるとやばそうだが、証拠は全て更地になっちまってるから大丈夫だろうし。←斑鳩達とブッキングしている事を知らない。


村雨「…俺は先に大学に行っている。後から来い」


―――パタン。


零影「……………、」


一人部屋に残された零影は、ただ無言でその場に座り続けた。
それは気を使ってくれた主に対しての礼か。
それとも懺悔の念か。



零影「………………、」



どちらにせよ、仮面の奥の感情は覗く事は出来そうになかった。

ドーモ、シャーマン=サン。ゼロカゲ=デス。オヒサシブリ…。

今回の物語はこれにて終了です。
初登場零影の三つの下僕の一体、烈火牛。
爆竜と対を成すというので射撃専用のイメージで書いたのですが、やりすぎたか…。

何故か零影の前に現れたシャーマン達。
水面下で動く陰謀に零影(と村雨)はどう立ち向かって行くのか。

次回から新章となります、が、次の下僕何にするべか…。

それではこれにて。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom