ユミル「この部屋に入るには条件がある」クリスタ「条件?」(136)


※注意 ユミクリ・クリユミ要素とミカ→エレ要素がある


ユミル「あぁ、その条件に当てはまる奴しか入れてやらないことにした」

クリスタ「何でそんなことをするの?」


ユミル「壁外調査までの暇潰しだな」


クリスタ「ユミル…壁外調査まであと三週間だよ?そんな緊張感のないこと言って…

ユミル「だからだよ」


クリスタ「えっ?」



ユミル「三週間後、壁外調査に行って私らの同期は何人ぐらい生きて帰って来れると思う?」

クリスタ「全員生きて帰って来るに決まってるよ。誰も死なない…」


ユミル「それはお前の願望だろ?…本心からそう思ってるか?」


クリスタ「それは……」


ユミル「ま、そんな訳でさ…私だって全員生き残れればそれに越したことはないと思っている」


ユミル「だが現実はそう上手くはいかない。マルコみたいにあっさり逝っちまうかも知れない」


ユミル「私もお前も、三週間後もこうやって地に足をつけて息をしている保証はないだろ?」



クリスタ「ユミル…」




ユミル「私らのこの先の運命なんて、調査兵団に入った時点で火を見るよりも明らかだ」


ユミル「経験の浅い私らは他の兵団に入った同期より死期が早いのは確実…」




ユミル「深い意味はねぇんだ、ふと思っただけだよ。あいつらとあと何回言葉を交わせる?」


ユミル「何回同じ窯で焼いたパンを食える?なんてことをね、ぼんやりとな。だから…」

ユミル「残り少ない三週間で思い出作りでもしようかと思ってさ。勿論、私は死なないが」



クリスタ「そんなことを考えてたんだ…」


ユミル「まぁな」




ユミル(これは私のためにするんじゃない。…クリスタ、お前のために計画したんだ)


ユミル(私は死ぬ気は無いし、お前も死なせない。いざとなれば巨人の力でお前を守る)


ユミル(お前は絶対、仲間が死んだら「もっとこうしておけば良かった」って泣くだろ?)


ユミル(誰か親しい奴らの死でお前の心が壊れてしまわないように、予防線を張っておく)


ユミル(こんなに楽しかったじゃねぇか!いっぱい話しただろ?悔いなんてないよな?)



ユミル(…てな具合にだな、お前を励ますためのネタをたっぷり仕込んでおくつもりだ)



ユミル(正直、マルコが死んだ時のジャンのぶっ壊れ方を見てやべぇって思ったんだよな)

ユミル(元々自分に正直で自己の欲求に真っ直ぐな奴だったし、変わる素地はあったが…)

ユミル(だが、あんなにも人を変えてしまうのか?マルコの死でジャンは変わった)


ユミル(そして多くの仲間の死がクリスタにも影響を与えた。でなきゃここにいない!)





クリスタ「ユミル?急に黙り込んで考えごと?」


ユミル「あ、あぁ……いや、もう考えごとも終わりだ」






ユミル「紅茶とお菓子の用意はできてる。あとは人を呼び込むだけだ」



クリスタ「入室に条件を付けたのは人数を制限をして個々と深い親睦を図るためとか?」

ユミル「そそ!急に大勢で押しかけられても困るからさ。人数を減らすためにな」


ユミル「心配いらねぇよ。お茶会は今回を入れて三回ほど計画している。週一回でやる」


ユミル「条件は都度変えるから部屋に入れる奴も違う。貴重な休みを潰すことになるが…」

ユミル「お前も同席してくれるか?ちなみに私とお前は条件外だ。ホストだからな」


クリスタ「ホスト?」



ユミル「このお茶会の主催者ってことだ」



クリスタ「ホストは男性が主催者の場合に使うんじゃないかな?」

クリスタ「ユミルは女の子だからホステスだよ」


ユミル「ホステス…。な、なんか響きが嫌なんだが…あとお前も主催者側なんだからな…」


クリスタ「うん、ユミルと二人でおもてなしだね。一緒に頑張ろう」


ユミル「悪ぃな、私の我儘に付き合わせて…。お前だけが頼りだよ」ニィッ




ユミル「ちなみにこの菓子は私が用意したんだが、次からは一緒に作るか。買うより安い」

クリスタ「分かった。材料は出入りの商会の人に配達してもらえるように頼んでおくね」


ユミル「あぁ、そっちは任せた。じゃ、早速この看板を部屋の前に立て掛けてきてくれ」



クリスタ「えーっと……もしかしてこれが今回のお茶会に参加できる人の条件なの?」

ユミル「簡単だろ?これをクリアできた者だけが、この部屋に入ることを許される」


ユミル「さっきも言ったがお前は無条件だよ。大体、この空き部屋は私が借りたんだし」

ユミル「私が主催者である以上、私の意思に従ってもらう。参加者についても私が選別する」


クリスタ「それは構わないけど…この条件だと男子はほとんど弾かれちゃうけどいいの?」


ユミル「コニーなら大丈夫じゃねぇか?残りの奴らは知らんが…来週の条件は今考え中だ」



クリスタ「う~ん…ユミルがそう言うのなら……分かった!看板、部屋の前に出してくる!」

ユミル「おう!しばらく待って、誰も来なかったら二人で客引きに行こうぜ!!」




壁外調査まであと三週間


ウォール・ローゼ南区 

調査兵団兵舎内の空き部屋前にて




コニー「……何だコレ?」


ジャン「暇を持て余した冴えない104期卒の新兵どもへ?」

コニー「お茶会に招待します。部屋に入るには条件がある、条件を満たした者のみ入室可」

ライナー「以下条件、わたくしユミルとクリスタの体重を足した数字の2/3以下の体重の者」


ジャン「…」

コニー「…」

ライナー「…」



ジャン「は?」



コニー「何で招待される立場の俺らが、逆にユミルから条件を付けられてんだよ…」

ライナー「この条件だと俺は完全にアウトだな…」

ジャン「大体ユミルとクリスタの体重が分からん…。俺はギリギリセーフ…か?」


コニー「無視しようぜ…。貴重な休日をユミルと一緒に過ごすなんて俺は御免だ…」ハァ



サシャ「コニー!こっちに来ませんか?」

コニー「サシャか!?」バッ


ライナー「サシャ、お前いたのか?いつもと違って静かだったから急に声がして驚いたぞ」


サシャ「えへへっ…ユミルから頂いたお菓子に夢中になってまして…」スッ…

ユミル ペチン!「こら!割り当ては決まってんだ。てめぇの分は今手に持ってる分で終わりだ!」




クリスタ「サシャ、私の分のお菓子も食べない?」

クリスタ「ユミルもね、せっかくの機会なんだからサシャに優しく。楽しい雰囲気で!」


ユミル「チッ…お前はサシャに甘いんだよ…」





ライナー「甘くていい匂いがするな…蒸しパンか?」

ユミル「そうだ。ユミル様お手製だぞ…と言いたいところだが、外で買ってきた」


ユミル「この菓子は私のおごりだ…と言うつもりもない。参加者には少々参加費を貰う」


ジャン「金、取るのかよ……」


ユミル「ほんの少々な。それを次回の菓子代に充てる。菓子代って言うか紅茶代かな…」

ユミル「菓子も嗜好品と言えばそうなんだが、紅茶は明確に嗜好品だからな…。高い!」



ライナー「そうだな、茶葉は高いからな…上官達が飲んでいるのはたまに見掛けるが」



ユミル「おいおいライナーさんよ。分かってると思うがお前は今回、参加できないぜ」

コニー「あーーーーっ、そういや条件があるんだったな」


ジャン「何のための体重制限なんだよ…。制限しないと床が抜けるってか?」



ユミル「人を入れると菓子の減りがはえぇだろ?紅茶も。それにゆっくり話がしたくてさ」

ユミル「人数を絞るための措置だ。今回は第一回目。来週と再来週にもやる」

ユミル「その時その時で条件を変えるから…ライナー、お前にもチャンスがあるぞ!」



ユミル「この場にはいないようだが、来週の条件はベルトルさんとお前は確実に入れる」

ライナー「ほ、本当か?俺もクリスタとお茶を飲めるのか?」



クリスタ「そうだよ、ライナー。今回はごめんね…。また来週この部屋に来て欲しいな」


クリスタ「私、ライナーともたくさんお話ししたいから…」キラキラ…


ライナー「クリスタ……」




クリスタ「来週は私とユミルで手作りのお菓子を用意して待ってるからね!絶対来てね」


ライナー「も、もちろんだ!」/// デレッ




ライナー「ジャン、コニー…悪いな。何だが気持ちが落ち着かなくてな…」ソワソワ…

ライナー「今からベルトルを誘って筋トレでもしてくる!あとで何を話したか教えてくれ」




ジャン「お…おう…」

コニー「貴重な休日に筋トレって…ま、無理すんなよ!」


ライナー「任せとけ!」ダッ





ユミル「クリスタ、あんまりキラキラを出すな…特にライナーの前ではやめてくれ…」


クリスタ「キラキラ?」



ユミル「後光が差すって言うか…眩しい光線が出てるんだよ。身体中から」

ジャン「んな大袈裟な…」


コニー「高貴なオーラとか?いや、何言ってんだ俺は…」






サシャ「まだみなさん立ち話をしてるんですか?コニーもいい加減こっちに来ませんか?」

サシャ「コニーの分のお菓子、半分貰おうと思って待ってるんですから!」



コニー「仕方ねぇなぁ…。ユミル、入室するぜ。俺は条件クリアだろ?」



ユミル「あぁ、間違いねぇな。お前なら計測は不要だ。参加費は先に頂戴しとく」サッ

コニー「忘れてねぇんだな…ちゃっかりしてるぜ。お前は…」チャラッ…


ユミル「ほい、確かにな!しっかり同期と交流を深めとけよ?悔いが残らないようにな…」



コニー「はぁっ?」





クリスタ「ミカサ遅いね…」


ユミル「用事を済ませたら来るって言ってたんだけどな。もうそろそろ来るだろ?」



ジャン「ミカサも来るのか?」


ユミル「ああ。あまりに人が集まらなくてなー。午前中、声掛けに行ったんだ」


ユミル「サシャはお菓子に食いついてすぐに付いて来たんだが…」

ユミル「ミカサとアルミンはもうちょい時間掛かるから先に始めて欲しいってさ」



ジャン「アルミンも誘ったのか?」


ユミル「そうだが?あいつも紛れもない104期の同期だし、今回の条件もクリアしてる」



ジャン「お前ら二人の体重を足した数字の2/3以下の体重であれば入室可だったよな?」


クリスタ「そうだよ。ユミルったら張りきっちゃって体重計まで借りて来ちゃってた」


ジャン「これ入団式後にあった新兵の身体調査記録時に使ったヤツじゃねぇか…」


ユミル「不正が無いようにな、念には念を入れた。結構重かったから返す時手伝ってくれ」


ジャン「…」




ジャン「で、入室条件って何kg以下でクリアなんだ?」



クリスタ「それは……言えない…」



ユミル「早くそれに乗れよ!こっちで判断するからさ」


ジャン「俺はお前の体重もクリスタの体重も知らない。だが、ミカサとお茶を飲みたい」

ユミル「そうかよ。早く乗れ」




ジャン「嫌な予感がすんだよ!頼む…後生だから部屋に入れてくれ!!この通りだ!」


クリスタ「ユミルどうする?来週の条件ならジャンは入室できるよ。来週分と交換して…

ユミル「条件は条件だ。お前を特別扱いする理由も義理も無い。うだうだ言うな、乗れよ!」




ジャン「…」ジロッ

ユミル「…ふん!」プイッ





ジャン「はぁ……くっそ……」ヌギヌギ…

ソォッ… ギシッ グングングングン…



ユミル「ジャンの体重は何kgだった?クリスタ」



クリスタ「ちょっと待ってね、うん…針が止まった…。う~んと…」

ジャン(イケるか?ダメか…?どっちだ!?)ゴクッ




クリスタ「65kg…。クリアだね」


ジャン「えっ!?」


ジャン「ほ、本当か!?俺…ミカサと一緒にお茶飲めんのか?」

ジャン「ここでミカサと午後の優雅なひとときを堪能できんのか!?」/// ッシャ!



クリスタ「良かったね!ジャン。ミカサだけじゃなくて他の同期生とも楽しんでいってね!」


コニー「おぉっ!ジャン、良かったな。早くこっちに来いよ、入室の許可が下りたぞ」

サシャ「やった!ジャンも資格有りですね。早速ジャンの分のお菓子も半分貰います」スッ



ジャン「おい待てサシャ!どうしてそうなるんだよ!!ミカサが来るまで残しとけよっ!」




ユミル「さて、入室前に忘れずに参加費徴収だ。ぼる気はない、その分の価値はある」


ジャン「確かに紅茶と菓子付きでこの値段だとまぁ安い方か…お前が考えたにしちゃぁな」チャリッ



ユミル「ちょうどだな。よし、入っていいぞ」グッ



ユミル「しかし意外だった。ジャンってもっと重いかと思ってたぜ…」ハハッ

クリスタ「そうだね!男の子の体重って意外に読めないね、ユミル」ウフフッ


ジャン「俺もそう思った!女の体重って見た目からじゃ分かんないもんだな…」ニヤニヤ


ジャン「お前ら俺が思ってたより重かったんだな。いや、助かった!お前らが重くて!」







クリスタ「ユミル…」ジッ


ユミル「何も言うなクリスタ…。分かってる、あいつの入室許可は取り消しだ」ジロッ



ジャン「はっ?…な、何でだよっ!条件はクリアしてるだろっ」



クリスタ「してるけど、ホステスの私達が拒否してるんだから条件は関係ないよ?」ニッコリ


ジャン「…えっ?」






コンコン… ギギギッ…


ミカサ「遅くなった…。まだお茶会に参加できる?」

クリスタ「ミカサ!待ってたよ」


アルミン「僕もいいかな?もう16時を回ったけど…」

ユミル「いいぜ!お茶会は全員宿舎に戻るか、風呂の時間になるまではやるつもりだ」



ユミル「あっ…食事の時間は中断するけどな!」


ユミル「みんなで普段言えないことを言ったりさ、隠してきた本音をぶちまける…」


ユミル「そういう機会を設けたいと思ってこの茶会を開いた。ぜひ参加してくれ」




アルミン「お茶会という名目の親睦会みたいだね。でもどうしてこの時期に?」


ユミル「さぁてね、どうしてかな?…明日死んでも後悔しないために、かな」

クリスタ「私達は刹那的に生きているよね?言い換えれば生き急いでいるとも言える」


アルミン「うん…。そうだね」



クリスタ「みんな死ぬ気は無いけどいつかは死ぬ。その時に私達が何を考えていたのか」

クリスタ「誰か一人でも知っておいてくれたら、生まれてきた意味が、ここにいる意味が…


クリスタ「…」


ユミル「クリスタ、どうした?」


クリスタ「ううん…ごめん。少し言葉に詰まっちゃって…」





クリスタ「…誰かの、ユミルの記憶に残ってくれたら私はそれで満足しちゃいそう」


ユミル「クリスタ…」


ユミル(またそんなことを言う。相変わらずの死にたがり、雪山訓練の時から変わってない)



ユミル「死なせないからな…。絶対」


クリスタ「えっ…?」





ミカサ「せつなてき。今この瞬間を切り取って生ききるさま…」

アルミン「あと先は考えず、一時的な感情に身を任せて懸命に生きる姿のことだね」


ミカサ「何だか、エレンみたい…」


アルミン「あはは、的確な表現だ。まさに僕らのエレンはいつも刹那的だ」



ユミル「そういやお前ら用事って何だったんだ?」


アルミン「えっと…僕ら…」

ミカサ「エレンに会ってきた」



クリスタ「エレンに?旧調査兵団本部があった古城に行ってきたの?」


ユミル「確かエレンのいる旧調査兵団本部の正確な場所は伏せられているはずだが…」



アルミン「僕達は素性もハッキリしてるし、エレンの幼馴染だからね。特別待遇みたい」

ミカサ「団長の許可は得てる。私とアルミンは週に一度だけエレンに会うことを許された」


アルミン「面会時はエレンの見張り役も兼務している特別作戦班の人も同席するけど…」


ミカサ「それでも以前よりは自由がある。今日のエレンは元気そうだった」



アルミン「正確な居場所はクリスタやユミルにも言えないんだ。それは極秘扱いだから」


アルミン「僕らがこっそりエレンに会ってることは他のみんなには内緒にしててくれる?」



クリスタ「うん!内緒にするよ。絶対、誰にも言わないからね!」シーッ…

ユミル「言う必要もないしな…。お前らは幼馴染だっけ?エレンにとって特別なんだろう」


ミカサ「エレンは家族。そう、私にとっても特別な存在……。アルミンは大切な親友」



アルミン「中に入ってもいい?君が用意してくれた紅茶とお菓子、実は楽しみだったんだ」

ユミル「いいぞ!部屋の前に掲げた条件は読んだか?…と、言ってもお前らはクリアだ」


クリスタ「体重計に乗ってもらう必要はないね。ミカサもアルミンも中に入って!」



アルミン「ありがとう。席はどこでもいいの?」

ユミル「どこでも自由に座って好きな奴と話してくれ。コニーとサシャは奥にいる」



ユミル「普段付き合いのない104期生も誘ったからな、この機会に顔と名前を覚えろよ?」


クリスタ「ユミルったら偉そうに…。もう!自分だって全然覚えてないくせに!!」

ユミル「だってさ、成績や個性で目立つ所が無きゃ顔も名前も覚えらんねぇだろ?普通…」


アルミン「悪いけどこの部屋にいる104期生は全員、顔も名前も知ってるよ。僕はね」

ユミル「はっ?それ本当かよ…。お前の特技か?」



アルミン「もし彼らが壁外で行方不明になっても、同期なら誰がいないかすぐに分かる」


ユミル「お前それ私ら以外に言うなよ?あの変な上官に新兵死体見分け係に任命されるぞ」




クリスタ「変な上官?……誰のことを言ってるの?」



ユミル「あのちっこい兵長の隣にいる眼鏡をかけた男か女か分からない上官殿のことだよ」


アルミン「あぁ、ハンジ分隊長だね…って本当にユミルは名前覚えないんだ」ハァ



ミカサ「ユミルとクリスタの体重を足した数字の2/3以下の体重…」

クリスタ「えっと…何か気になることでもあった?」



ミカサ「この条件なら、エレンも参加できた。彼がいないのを少し、残念に思っただけ」


クリスタ「そうだね、エレンは今大変な状況だけど…いつかまた一緒に……」


ユミル「アルミン、ミカサ!忘れてた。参加費、ほら寄越せ。前払いだ」チョイチョイ



アルミン「あっ!そうだった……ちょっと待って……」ゴソゴソ…

ミカサ「アルミン、あなたの分も出しておくから、先に席に着いていて…」


アルミン「えっ!?いいよ、ミカサ。ちゃんと財布持ってきてるから」


ミカサ「私の分の紅茶も淹れてテーブルで待っていて欲しい。お金はあとで返してもらう」



アルミン「そっか、何か理由があるみたいだね。…じゃ、僕は先に行ってるよ」




ユミル「おい…どうしたんだ?お前らしくねーな」


ミカサ「ユミル、クリスタ…このお茶会は来週もするの?」チャラッ…

ユミル「ああ、全三回予定だ。壁外調査の一週間前までする。今日は記念すべき一回目」



ユミル「よし、二人分の参加費、確かに受け取った」ギュッ…



クリスタ「次は来週と再来週の今日開催だよ。休みの曜日が決められているから…」


ミカサ「そう…。再来週の今日、またここでお茶会を開くのね……」



ユミル「そうだが、何か問題でもあるのか?」

ミカサ「ない。むしろ好都合。このお茶会には意図があり、入室は条件を満たした者のみ」



ユミル「今朝、お前らにその意図を説明したと思ったが」



ミカサ「より深く仲間を知るためにあえての人数制限、付き合いの薄い同期との親睦会」


ユミル「一見賢そうな理念を述べてみたが、単に部屋が狭いから条件付けたってのもある」




クリスタ「ユミル…それが本音だったのね…」ガックリ…


ユミル「部屋が狭いのはどうしようもないだろ?」




ミカサ「次の開催時の入室条件はもう決まってるの?」


ユミル「決まってる。午前中にクリスタと二人で決めた」



ユミル「次は今回弾かれた奴を救済するための条件だ。お前ら次回は参加できないぞ」


ミカサ「そう…別に構わない。次週はまたエレンに会いに行く…ので、私も忙しい」



ミカサ「でも、再来週のお茶会は参加したい」


ユミル「再来週ねぇ…まだ条件、決めてないんだよな……」



ユミル「クリスタはどんな条件にしたい?」





クリスタ「私は、条件を無しにしたい…。調査兵団に入団した104期全員でお喋りしたい」


ユミル「待て待て待て、それこそ『無し』だ。こんな狭い部屋入りきらない!床が抜ける」



ユミル「大体な、それを認めちまうと仲が良い奴ばっか集まって親睦会にならないだろ?」


クリスタ「でも!今回ユミルが考えた条件だって結局仲が良い子達で集まっちゃったじゃない!」チラッ



ユミル「ま、まぁな…体重別は失敗だったか…。サシャとコニー…アルミンとミカサ…」



ユミル「他の同期達も同じ様な体格の、元から仲が良い奴ばっか集まってんなー…」


ユミル「来週の入室条件はもう少し検討する余地があるな」



クリスタ「うん…例の条件に何か別の条件を足して、なるべく固まらないようにしよう」


ユミル「そうだな…」





ミカサ「そこで提案がある」


ユミル「は?」



ミカサ「これを切り出すためにずっとあなた達の隣で話が終わるのを待ってた」



ユミル「いやいや、話が終わるっつーか、お前、今勝手に話に割り込んできただろ?」




ミカサ「ユミル、クリスタ……私はあなた達を信用している。だから話す」

ユミル「無視かよ!…ってか知らない間に信用されてたみたいだぞ?私ら」


クリスタ「ひょっとして褒められてるのかな?ど、どうもありがとう…ミカサ」




ミカサ「再来週の今日、エレンがここに…新調査兵団本部へ来る。見張りと一緒に」


ユミル「!?」

クリスタ「!?」



ユミル「おい、ミカサ…その情報、漏らしちゃマズいだろ…。超重要機密じゃねぇか…」

ユミル「よかったのか?そんな重要機密をただの同期にホイホイしゃべっちまって…」



ミカサ「私はあなた達がこの秘密を『誰にも言わない』と信じる程度には信頼している」

クリスタ「それってかなり信頼してくれているってことだよね?…私達を」




ミカサ「信頼に足る根拠は、以前の雪山訓練でダズを見捨てなかった事を思い出したから」


ユミル「はあぁあっ!?……お前、まさか性善説とか信じてんじゃねぇだろうな?」

ユミル「そんな薄い根拠で信頼されても困るわ!ダズは見捨てたかったよっ!いやホント」


クリスタ「ミカサ!あのね、ダズを助けたのはユミルなの…私は何もできなかった」ウルッ



クリスタ「彼女は口も手癖も悪くて、性格も歪んでて他人に意地悪で性根も腐ってるけど」

クリスタ「本当の彼女は素直で優しくて仲間思いで愛情深くて、純情可憐な17歳の乙女」


ユミル「おいっ!さすがにそれは盛り過ぎだ。どこにそんな女神みたいな女がいるんだよ!」



ミカサ「やはり、ユミルは女神だったのね…。ええ、前から気付いていた」



ユミル「…あれ?……いや、ちょい待てよ?今、お前……」



ユミル「私のこと、口と手癖と性格が悪くて、意地悪で性根が腐ってる…って言ったか?」

クリスタ「えっ?そんなこと言ってないけど…気のせいじゃないかな?」


ミカサ「気のせい。ユミル、あなた疲れてるのよ」




ユミル「だ、だよな?気のせいか…。私の女神が私を口汚く罵ったりするわけないもんな」


クリスタ(性格は悪くないよ、歪んでるだけ。反復失敗だよ。惜しかったね、ユミル)


ミカサ「さて、ひとしきりユミルを持ち上げたところで改めてお願いする」


ユミル「お前ら…私で遊ぶなよ……」ハァーーーッ…




ミカサ「再来週の条件、私の提案を採用して欲しい…。あなたの趣旨にも合ってるはず」

ミカサ「せっかくの機会、エレンを外す理由が無い。ひいてはこれも調査兵団のため」



ユミル「エレン…ましてや調査兵団のためにこのお茶会を開いたんじゃねーよ、馬鹿」




ユミル(大義名分なんてどーでもいいんだよ。これはクリスタのためだ)

ユミル(三週間後の壁外調査、新兵の死亡率は5割…104期は半分も帰って来れやしない)

ユミル(クリスタの心を守るために、ほんの少しでいい…楽しい思い出を残してやりたい)


ユミル(無事に私らが帰還した後、クリスタを説得して一緒に駐屯兵団への異動届を出す)

ユミル(もしうちの団長が異動を聞き入れなければ、もっと上の奴らと掛け合ってやる!)

ユミル(クリスタも私も成績上位で卒業した。優秀な人材なら駐屯兵団も欲しいはずだ)


ユミル(あいつを生死に係わる現場から逃がすためなら、身体で交渉することも厭わない)



クリスタ「ミカサ、あなたの思い通りになるか保証はできないけどその提案、聞かせて?」


ユミル「クリスタ…やめろ。聞けば情にほだされてミカサの条件を採用するに決まってる」

クリスタ「そんなこと無いって!でもミカサの話を聞く前に一方的に断るなんてできないよ」


ユミル「今のお前にその気が無くても、強くこいつに説得されたらどうせ断れねぇんだろ?」


ユミル「だから聞くな、聞くだけ無駄……って!おい、ミカサっ!!!」





ミカサ「ゴニョゴニョゴニョ…………どう?クリスタ」

クリスタ「えーーーっと…反応に困っちゃうね…。その条件はエレンとミカサ専用だよ」



クリスタ「あなた達二人以外にその条件が当てはまる104期生がいるとは思えない…」


クリスタ「悪いけど採用できない。だってこれは親睦会の意味合いを兼ねたお茶会だから」



ユミル「だってよ、ミカサ。クリスタに断られるって相当だな…。デートなら二人でやれ」


ミカサ「…」



ユミル「とにかくこの話は終わりだ!アルミンが待ってるぞ、早く席に着…

ミカサ「ならば更に条件を加えよう。それはもう、出血大サービス!」



ユミル「はぁあっ!?」




ユミル「待て!何でてめーが勝手に条件を決めてんだよ。主催者でも無いくせに…」

ユミル「大体な、お前が提示した条件って何だよ!?私はまだ聞いてねぇぞ!」



ミカサ「ゴニョゴニョゴニョ………これが追加条件。これなら私とエレンだけになる心配は無い」


ミカサ「ちなみにクリスタに言った条件はゴニョゴニョゴニョ…………」





ユミル「……」






ユミル「……黒い。この条件は黒過ぎる。クリスタじゃなくても却下するわ!」


ユミル「正直に言う、この条件に当てはまる奴を集めたくない。こっちに利点が全く無い」

ユミル「で、そいつらをクリスタに会わせたくない。ミカサ、お前とエレンは特別なんだ」



ユミル「普通に生きてたらな、そんな条件に当てはまる奴なんてそうそういねぇんだよ…」




クリスタ「…でも、追加条件は悪い条件ではなかった」


ユミル「おいっ!クリスタっ……」




クリスタ「この追加条件、来週のお茶会の時にも採用しない?ユミル」


クリスタ「だって来週の条件も今回と同じで偏りが出るってさっき話してたでしょ?」


クリスタ「それに親睦会を兼ねてるのならもっと広く仲間を集めた方が楽しいよ!」



クリスタ「ユミル、ダメなの……?」キラキラ


ユミル「くそっ!またキラキラを出しやがった。それやめろって言っただろ?」




クリスタ「あとね、ミカサが言った条件だけど、私にも当てはまる気がするの」


クリスタ「もしユミルがその条件を採用してくれたら、話すよ…。私の過去を少しだけ…」




ユミル「……話す、のか?私に」



クリスタ「うん、ユミルだけに話す。ユミルは私にとって特別だから。あなたに話したい」



ユミル「ふぅーーーーーっ…」




ユミル「やっぱ私の言った通りになったじゃねえか。お前は断れなかった」

ユミル「これでこいつの思い通りだ。私らのお茶会はミカサに乗っ取られたも同然だ」


ミカサ「乗っ取るつもりはない。あなたの趣旨からは外れてないし、私は来週参加しない」

ユミル「来週の条件だとお前は不適格だから参加しないじゃなくてできないんだよっ!」



ミカサ「ごめんなさい。私とエレンが参加できる条件を考えたらこれしか浮かばなかった」


クリスタ「でもこの条件だと再来週のお茶会はアルミンは参加できないけどいいの?」

ミカサ「アルミンは真っ当に生きているから、仕方がない。毎日話してるし不都合はない」



ユミル「クリスタ、本当にいいんだな?ミカサの条件を採用しても」


クリスタ「いいよ。誰だって真っ当に生きたいと思ってる。でも、それを許さない環境がある」

クリスタ「この世界はそういう世界なの。それに私、その条件に当てはまる人に興味があるし…」



ユミル「そうか…。お前がいいなら、私もそれでいい」





ユミル「なぁ、クリスタ…」


クリスタ「なに?ユミル」




ユミル「再来週の条件、私にも当てはまってると思うか?もしそうならお前はどうする?」



クリスタ「当てはまっていないと思う。たとえそうであっても、取るに足らないこと…」


クリスタ「ユミルはユミルだよ!何があっても、私のあなたに対する評価は変わらない」



ユミル「クリスタ……」




ミカサ「ユミルは口も手癖も悪くて、性格も歪んでて他人に意地悪で性根も腐ってる」


ユミル「はぁっ!?」




ミカサ「これがクリスタから見たユミルの評価?」


クリスタ「違うよ!素直で優しくて仲間思いで愛情深くて、純情可憐な17歳の乙女の方!」



ミカサ「そうだった、ユミルは乙女だった…。うっかりその設定を忘れるところだった」


ユミル「設定って何だよっ!てめぇが捻り出した最悪な条件を採用してやったってのにっ」




アルミン「おーーいっ!ミカサ、まだ話が終わらない?紅茶が冷めちゃってるんだけど…」

ミカサ「アルミン…もう話は終わった。今行く」



ミカサ「クリスタ、ユミル。再来週のお茶会も楽しみにしている。エレンにも伝えておく」


ユミル「へいへい、早く行けよ」



クリスタ「私達も行こ?ユミル。サシャとコニーとアルミンとミカサと…他の子とも…」

クリスタ「いい機会だから壁外調査のことも今は忘れて、残りの時間も楽しくお話ししよ?」



ユミル「あ…あぁ、そうだったな!よし、ホステスの仕事をこなしつつ私らも楽しむか!」


ユミル(そもそもの目的を忘れるところだった。こいつが楽しまなきゃ意味が無い)





サシャ「ユミルーーー!お菓子追加でお願いしまーーっす!」


ユミル「追加なんかねぇよ!黙って晩飯まで紅茶でもすすってろ!限界まで薄めてな」

ユミル「それでも足りなきゃてめぇのベッドの下に隠してある干し芋でも取って来い!」



サシャ「な、何でそのことを知ってるんですかっ!?」




コニー「思ったより楽しいな、これ。普段喋らない奴らともこの機会に割と話せたし…」


クリスタ「うふふっ、良かった!みんな楽しそうだね。企画した甲斐があったね、ユミル」

ユミル「そうだな。ジャンは……ま、来週でいっか。二週連続、ってのもつまんねぇし」



アルミン「あ、ユミル!ミカサから聞いてると思うけど、僕ら来週は来れないんだ…」

アルミン「エレンのいる古城で大掃除があるみたいでさ、ミカサと手伝ってくるつもり」


ユミル「ふぅーん…。てかお前ら来週は条件外だから好きにしろよ。私らには関係無い」


アルミン「バッサリだね…」



ユミル「そっちの事情に興味ねぇから。ちなみにお前の方は再来週も条件外。来るなよ?」


アルミン「えっ!?」






ミカサ「ふふふっ……腕が鳴る…」カタカタカタカタ…


ミカサ「あのチ…兵長にエレンがいびられていないかじっくりと観察する必要がある」

ミカサ「エレンは繊細…私に心配をかけまいと、何かあっても隠してしまう性格だから…」



クリスタ「そうなの?アルミン」


アルミン「いや……どうだろう?ミカサの思い込みだと思うけど…」


ユミル「ミカサの半分はエレンでできてるんじゃねーかな」



アルミン「えっと、脳を構成する成分的な意味で?」




クリスタ「残りの半分は何でできているんだろう…」


アルミン「多分、家族……」ボソッ


ユミル「はっ?」



クリスタ「それって結局『全部』ってこと?」


*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 



壁外調査まであと二週間 

調査兵団兵舎内の空き部屋にて(お茶会二回目)




ユミル「よし!テーブルの準備もオッケー。二回目も無事に開催できそうだ」

ユミル「菓子は前日の夜から用意できてる。初めて作ったにしては、まぁまぁの出来だな」


クリスタ「ワッフル、上手に焼けたね。時間が経ったから匂いはだいぶ消えちゃったけど」



クリスタ「うん…甘い……冷めても美味しい……」モグッ


ユミル「だろ?昨夜私も一口味見して驚いた。お前、料理上手だよ。私よりずっと」




クリスタ「…んぐっ……ケホッ……そ、そんなことないよ!ね…ねぇ、もう看板出そうよ」///


ユミル「そうだな!あっ…追加条件もちゃんと書き出したか?」


クリスタ「うん。そっちも抜かりないよ!今回もたくさん来てくれるといいね」


ユミル「あぁ…そうだな。今日もたくさん話せるといいよな。仲間や…うん、先輩方と」



ギッ…


ユミル「あれ?お前らもう来たのか?」

ライナー「おっ、おう!もうそろそろお茶会が始まる頃かと思ってな…」



ライナー「まだ…早かったか?」


ユミル「いいや、ちょうど良かった。今、看板出そうと思ってたところなんだ」



クリスタ「入って!ライナー。あと、ライナーの後ろに隠れているベルトルトも!」


ユミル「図体デカいから全然隠れられてないぞ…お前。だが、気配は無かった…さすがだ」



ベルトルト「僕はいいって言ったんだけど、ライナーがどうしてもって言うから…」オドオド


ユミル「ま、そう言わずに楽しんでいってくれよ。会費は貰うが安いもんだろ?」サッ



ライナー「その看板、これから部屋の外に出すのか?クリスタ」チャリッ


クリスタ「うん!ライナーとベルトルトは先に入ってて。お菓子もすぐに用意するから」





ベルトルト「えっと……お茶会に招待します。部屋に入るには条件がある」

ベルトルト「条件を満たした者のみ入室可。以下条件、わたくしユミルより背が高い者」



ライナー「なるほどな。先週、ユミルが言ってた俺達が入れる条件ってこれのことか…」



ユミル「前回は体重で分けたからな、今回は身長で分けた。偏ってるのは承知してる」


ユミル「ベルトルト、ほら早く参加費」チョイチョイ



ベルトルト「あっ……はい」チャラッ




ユミル「よし!確かに。クリスタ、看板は私が出すからこいつらにお茶入れてやってくれ」

クリスタ「分かった。ライナーもベルトルトも奥に座って!お茶とお菓子、用意するね」



ライナー「ん?…何だこの大きな×は…。条件を変更したのか?」


クリスタ「ミカサの案を採用したの。身長別で分けると前回より参加者が少なくなるから」

ユミル「せっかく楽しいことするなら、もうちょい門戸を開いてもいいかなって思ってさ」



ベルトルト「暇を持て余した冴えない104期卒の新兵ども…の下半分に大きな×が付いて」

ベルトルト「暇を持て余した冴えない調査兵団所属の全兵士へ…に書き直してあるね」


ライナー「お前な…わざとか?前半部分も消しておいた方がいい、悪いことは言わん!」



ユミル「あっ…やべっ!素で消し忘れてた。看板出す前で良かったわ。ありがとな」


ライナー「迂闊過ぎるぞ…お前という人間が読めん。言っちゃ悪いがお前はもっと狡猾な…

ユミル「クリスタ曰く、素直で優しくて仲間思いで愛情深くて、純情可憐な乙女らしいぞ、私は」



ライナー「…」





ベルトルト「クリスタ、紅茶美味しいよ。ありがとう」カチャッ


クリスタ「今回はちょっと値が張る紅茶を用意したんだ。香りもいいでしょ?」



ユミル「看板設置終わり。しばらく待ってこいつら以外来なかったらまた宣伝しに行く」


クリスタ「うん、分かった。って、あれ?ジャン…そんなところで何してるの?」


ジャン ビクッ



ユミル「おぉ、入れよ。お前も条件クリアだ!今回は測るまでも無い」


ジャン「ミ、ミカサは?」


ユミル「あのな、そこの看板見てないのかよ。ミカサは今回条件外だ。私より背が低いだろ?」


ジャン「!?」




ジャン「じゃ、ここにはもう用はねぇ…。何で先週、俺を入れてくれなかったんだよ!」


ユミル「主催者である私とクリスタを馬鹿にしたから入れなかった」シレッ


ユミル「ちなみに第一回目は大成功だったぞ!余興でアルミンに女の格好をさせてな…


ジャン「くそっ!もういい!!」クルッ


ユミル「待て。そう言わずに入ってけ。参加費は先週もらったから今回は半額でいい」


ジャン「はっ?」




クリスタ「先週もらったんならタダでいいじゃない……ユミル」ハァ


ユミル「菓子と紅茶で使っちまったからな、改めて徴収する。次回開催分の資金として」


ジャン「俺に参加を拒否する権利は無いのかよっ!」


ユミル「ないね」


ジャン「なっ…!」



ユミル「何故ならお前は来週の条件に当てはまらないからな。参加できるのは今回が最後」


ユミル「どうしてもと言うのなら不参加でもいいが…できれば参加してもらいたいんだ」

ユミル「ゆっくり茶でも飲みながら友人と話す機会は、これが最後になるかも知れないぞ」



ジャン「…これが…最後」




クリスタ「ジャン…」


クリスタ「ね、ねぇユミル!ジャンの参加費、私が払うからジャンを中に入れてあげて!」


ユミル「はっ!?何でお前が…」



クリスタ「だって…来週、ジャンは条件外でしょ?今回が最後のお茶会だから…」

クリスタ「ぜひ参加して欲しいの!ジャン、お願い。参加してくれないかな?」ウルウル



ジャン「クリスタ……そ、そうだな。参加…してやるか。参加費は半額でいいんだろ?」チャリッ



ユミル「いらねぇよ」

クリスタ「えっ……ユミル…?」


ユミル「お前から貰うとクリスタがあとで返しちまいそうだし、先週もらってるしな」



ユミル「入れよ。奥にライナーとベルトルさんがいる。時間の許す限り話してけ!」ニッ

ジャン「ユミル…お前……」



ジャン「あっ!今回の条件って104期だけじゃなくて調査兵団の全兵士対象だったよな?」


ユミル「そうだが」



ジャン「俺の上官、誘ってもいいか?人数まだ集まってないんだろ?」


クリスタ「もちろんいいよ!前回の壁外調査のお話も聞きたいし…良かったら連れてきて」


ユミル「連れてきてもいいが上官からは少々高めに参加費を取る。私らと給金が違うからな」



ジャン「任せとけって!そこらへんはこっちも上手くやるからさ」ニイッ


ユミル「わっるい顔してんなぁ…お前」ハハハッ



ジャン「おっ、お前ほど目つきは悪くねーよっ!!」







ライナー「クリスタ!紅茶のおかわりもらってもいいか?」

クリスタ「いいよ!あ、私が淹れるね。ベルトルトもおかわりどう?」


ベルトルト「いや、僕はもうお腹いっぱい…。ここで本を読んでいてもいいかな?」


ベルトルト「ライナーに無理やり誘われたから来たけど、今日の予定を消化したいんだ」


クリスタ「いいけど…人が来たらベルトルトも会話に混ざってね、その方が楽しいから」


ベルトルト「う、うん……分かった…」




ユミル「サシャ……お前、そこで何してるんだ?」


サシャ「ユミル、私も入れてください。参加費も、もちろん払いますから…」グスッ


ユミル「前回楽しかったもんな、気持ちは分かるが今回は…

サシャ「条件外、って言うんでしょ?」



ユミル「あ、あぁ…悪ぃ……」




ユミル「お前も測るまでも無いな。この壁にチョークで私の身長を印しておいた」


サシャ「そこに立たなくても分かってますよ。ユミルより背が低いってことくらい…」



ユミル「ふぅーーーっ…参ったな」ボリボリ…



ユミル「コニーは一緒じゃないのか?」


サシャ「用事があるそうです。私一人だけ仲間外れで手持ち無沙汰なんです」ムスッ


ユミル「お前だけじゃないって。ミカサやアルミンも今回は不参加だ。条件外でな」

サシャ「じゃ、来週の条件ならまた私、この部屋に入れますか?」



ユミル「…」


ユミル「悪い、来週も条件外だ。お前があの条件を満たしていたらこっちが人間不信になる」




サシャ「…」グスッ…



ユミル「サシャ、立て」


サシャ「へっ?」



ユミル「いいから!」グイッ


サシャ「おっ…とっとっと!……もう!何するんですかっ、ユミ…

ユミル「ざっと4cmってとこか。…不足してる身長」



サシャ「…え?」




ユミル「サシャ、お前のベッドの下によそ行き用の気取ったブーツがあっただろ?」

ユミル「ほら、訓練兵の時…トロスト区の露店でお前が衝動買いしたアレだ」


サシャ「あ~…二回ぐらいしか履いてないアレですね。あれ、バランスが悪くて…」


ユミル「それを履いてもう一度ここに来い。あの靴の踵は確かかなり高かったはずだ」

ユミル「それでもこの印に届かなかったら、靴の中敷きにハンカチでも噛ませてこい」



サシャ「ユ、ユミル…それって……もしかして…」

ユミル「待っててやるからさっさと行け!今回のお茶菓子はワッフルだぞ」



サシャ「ワッフル!…はっ、はい!今すぐ履いてきますっ」タッ…


サシャ「って!なんでユミル、また私のベッドの下をチェックしてるんですか!?」



ユミル「なんでって、同室だからに決まってんだろ?掃除してる時に見つけたんだよ!」


ユミル「プライバシーとかなんとか主張する前に、自分の領域の掃除ぐらいちゃんとしろ!」




サシャ「う゛ぅっ……分かりました…」


サシャ「プライバシーには目を瞑り、今後もユミルに部屋掃除してもらいます!」ダダッ


ユミル「おいっ!!お前なっ……」



ユミル「足、速いな……くそっ、あいつ…仕方ねぇ奴だな……は…ははっ…」ハァ…





クリスタ「ユミル」

ユミル「!?」ビクッ



ユミル「いたのか、クリスタ」




クリスタ「いた…って言うか、会話が聞こえちゃって」


クリスタ「私、ユミルのそういうところが好き」ニッコリ


ユミル「な、何だよ急に!照れるじゃねぇか……バカ…」///



クリスタ「ふふっ…ジャンとサシャが戻って来たらまた人を集めに行こう!」

ユミル「だな!今回も楽しいな。お前も楽しいか?クリスタ」


クリスタ「当たり前じゃない!調査兵団に入団してから…私、今日が一番楽しいかも」






ユミル「今日のお茶会も終わったぁーーーっ!」ノビーーーッ



サシャ「ユミル!このテーブルとイスはどこに戻しておくんでしたっけ?」

ユミル「あぁ、それライナーとベルトルトにやらせるからお前は食器洗いを頼む」


クリスタ「汚れたティーカップ、一緒に洗おう?サシャ。手分けをすればすぐに終わるよ」


ユミル「皿は比較的、汚れてないから片付けが楽だな。来週も皿が汚れない菓子にするか」


サシャ「蒸しパン、ワッフルときて…来週はなんでしょう。楽しみですね!」ジュルッ


クリスタ「来週、サシャは参加できないよ」

ユミル「今朝お前にそう言っといたはずだが…もう忘れたのか?」



サシャ「!?…ええっ……今日みたいに何とか入れてくださいよっ!」

サシャ「私、努力しますからっ!来週の条件って何なんですか?教えてください!!」




ユミル「まだ、言えねぇなぁ…」

クリスタ「でも、サシャが当てはまってないことだけは分かるよ」


サシャ「……そうなんですか」ガックリ




ライナー「後片付け手伝いに来たぞ!クリスタ、今日はお前とたくさん話せて楽しかった」

クリスタ「私も楽しかったよ、ライナー。来てくれてありがとう。しかも片付けまで…」


ライナー「いや、礼を言うのはこっちだ。で、俺は何を片付ければいい?」


ユミル「このテーブルとイスを一階の広間まで運んでくれ。終わったらまた指示する」

ユミル「ジャンとベルトルさんは何やってんだ?連れて来いって言っといただろ!?」



ライナー「今日のお茶会で話が盛り上がってな、まだ上官達に捕まってる。二次会だな…」


ユミル「そっか…じゃ、仕方がねぇな。私も手伝うから一緒に降ろすか、テーブル」


ライナー「お…おう!」





サシャ「来週の条件、ライナーは当てはまるんですか?」



ライナー「ん?」


クリスタ「ライナーにもまだ言ってないの。本当にこの条件でいいのか少し迷ってる」


ユミル「ミカサの案を採用したんだ。承諾した以上、今更できないとも言えないしな…」


サシャ「ここで言えない条件なんですか?」



ユミル「来週の看板を見てくれ。今はそれしか言えない。だがお前らは当てはまってない」


ライナー「どんな条件か知らんが、俺達は今日が最後のお茶会だったのか…残念だな」


サシャ「ハンカチ噛ませてもダメそうですね…あぁっ…私のお菓子……」




クリスタ「次回のお菓子もサシャの分はとっておくから、そんなに落ち込まないでね」

サシャ「やたっ!クリスタ…さすが私の神様です。一生ついて行きます!!」


ライナー「安い一生だな…お前」




ユミル「これ片付け終わったら余ったワッフルを分けてやる。お前らキリキリ働けよ!」






片付け終わった空き部屋




クリスタ「ライナーとサシャのおかげであっという間に片付いちゃったね」

ユミル「そうだな。なぁクリスタ、疲れてないか?」


クリスタ「疲れてないよ!…って言いたいけど、少し疲れたかな…?」


ユミル「そうか、悪いな」



クリスタ「私よりユミルの方が疲れてるよ。だって今日は両手で三人分集まったんだもの」

クリスタ「紅茶を入れたり、お菓子を出したり、文句や要望を聞いたり…よく頑張ったね」


ユミル「あんなもん屁でもないね!好きでやってんだし。それよりクリスタ…」


クリスタ「なに?ユミル」




ユミル「お前は今日、本当に楽しめたか?…同期や上官と親睦を深められたか?」


クリスタ「うん…普段喋れないような人ともお話しできた。色んな人の人となりを知れた」




クリスタ「ユミル……みんな、生きて帰れるよね?」


ユミル「作戦が上手くいけば被害は最小限にとどめることができる。理論上は…」



クリスタ「長距離索敵陣形かぁ…」




ユミル「次のお茶会が最後だ。実はまったく期待してない。ミカサのせいで消化試合だ」


クリスタ「でもエレンが来てくれるよ?あれから会うことも話すことも難しくなったから」


クリスタ「少し楽しみかな?ミカサが心配してるようなことになってないといいけど…」



ユミル「あいつ結構タフだぞ。知ってるだろ?お前に心配されるほどヤワじゃねぇよ」

クリスタ「そうだよね。フフッ…それにエレンを心配するのはミカサの仕事だったね!」


ユミル(なぁ…いつもそうやって笑っていてくれよ。何があっても強く生きるんだ)





ユミル「私にだけ教えるって言ってたな、お前の過去を。ここで聞いてもいいか?」


クリスタ「まだダメだよ。来週のお茶会の時にこっそり打ち明けるから待っていて」




ユミル「私に打ち明ければお前の心は軽くなるのか?」


クリスタ「誰かに知って欲しいとは思ってた…。言えなかったのは自分の命が惜しかったから」


ユミル「今は惜しくないとか言うなよ?」



クリスタ「私がここで生きていたことをユミルさえ覚えていてくれるなら…命なんてもういら…

ユミル「クリスタ!!」ガシッ


ユミル「次に同じことを言ったらお前の顔を引っ叩く。愛のムチを頬に一発くれてやる!」




クリスタ「ユミル…」


クリスタ「そんなこと、今まで一度もしたことないじゃない…それじゃ脅しにならないよ」



ユミル「自分の命を粗末に扱うな…。お前が死んだら泣く人間だってここにいるんだ」


クリスタ「ユミルは……ユミルは私のために泣いてく…

ギュッ


クリスタ「!?」



クリスタ「ユ、ユミル……えっと、ごめん…なさい……」ギュゥゥッ…

ユミル「もう夜も遅い、身体が冷えてきた。部屋に戻ろう…。サシャが待ってる」


クリスタ「うん…。でももう少しだけこのままでいさせて……ひっく……」グシュッ…




ユミル「分かった…。泣き止むまで抱きしめててやるから、ゆっくり泣いてろよ」


クリスタ「ありがとう…」ギュゥッ



*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 



壁外調査まであと一週間 

調査兵団兵舎内の空き部屋にて(お茶会三回目)




クリスタ「今日が最後のお茶会だね」

ユミル「三週間にわたってだもんなぁ…長かった」フゥ…


ユミル「来週の今頃は壁外へ向かう準備で忙しいだろう。この日常が嘘みたいになる」


クリスタ「そうだね。だから今日は目一杯楽しもうよ!ほら、お菓子もこんなにたくさん!」

ユミル「張り切って作ったからな!クッキー。日持ちもするし、残ってもこれなら安心だ」



ユミル「紅茶もシーナへ行けばもっと高品質な物があるんだが、今回は前回の残りを使う」


クリスタ「みんな話に花が咲いて、あまり紅茶が減らなかったから買わなくて済んだね」


ユミル「茶会の本質は菓子でも茶でもないんだよ。交流の場を提供するのが目的だからな」

クリスタ「ふふっ…ジャンもライナーもベルトルトも上官の方々に可愛がられてたっけ」


ユミル「やつら直属の上司を連れて来たからな。そういやアルミンの上司も来てたな」




クリスタ「アルミンの上司って、確かネス班長だったよね」

ユミル「名前までは知らん」


クリスタ「もう、顔と名前覚えないとダメだよっ!ほら制服を支給してくれたじゃない」


クリスタ「その時、自己紹介してもらったでしょ?」



ユミル「顔は覚えてるよ。ただ名前が出てこないんだよなぁ……多分、歳のせいだな」


クリスタ「またそんなこと言ってぇ……」ムスッ



ユミル「よし!できた。これを出すのも最後だ。クリスタ、看板を立て掛けてきてくれ」

クリスタ「うん。この条件じゃ、誰も来ないと思うけど…出してくるね」




ユミル「おっ!窓から見えるのエレン達じゃねぇか?ひふいみぃ…さすがに護衛が多いな」


クリスタ「看板、出してきたよ。あっ…ミカサだ!おーーーーいっ!!」






エレン「ミカサから話は聞いていたけど…何だよ、この部屋の前のあの看板は…」


ミカサ「あれは私が考えた条件。エレンを確実にこの部屋に入れるために必死で考えた」

エレン「あのな…俺とお前はもっと他にも共通点あるだろ?あの条件は心に刺さるぞ…」


ミカサ「あの日のことは一日だって忘れていない…私とエレンが出逢った日のことだから」



ユミル「予想はしてたが、誰も来ねぇな…。そういやエレンの護衛はどうした?」

ミカサ「すぐ来る…と思う。アルミンも、すぐに来るはず…。声は掛けてある」



クリスタ「エレンとミカサを二人きりにしてくれるなんてずいぶん信頼されてるのね」


ミカサ「私とエレンは家族だから……。どこへ行くにも私達は一緒でなければならない」

エレン「おいっ、ミカサ!勝手に決めるなよ。俺はお前の弟でもなんでもねぇんだ!」


アルミン「とか言って、姉弟喧嘩にしか見えないけどね。久し振りだね!エレン」ニコッ




エレン「アルミン!一週間ぶりだな。元気だったか?」

アルミン「うん。エレンも元気そうで良かった。ハンジ分隊長に無茶な実験されてない?」


エレン「うっ……実験の内容については箝口令を敷かれているから言えないんだ、悪ぃ」

エレン「無茶な実験も多いが、これも巨人の力を解明するのに必要なことだと思っている」


ミカサ「そう…でも、無理はしないでね。エレン…」

アルミン「そうだよ。僕らがいつもそばにいるってこと、忘れないでよ?エレン」


エレン「アルミン、ミカサ…」



ユミル「あのさ、いいところで水を差してすまないが、参加費を徴収する」

ユミル「あと入口の看板見ただろ?アルミン、お前は条件外だ。悪いが出てってくれ」




アルミン「ユミル、それがね…僕……

エルド「エレン、待たせたな。何か変わった事は無かったか?」ギッ


グンタ「あのな、エルド…何事かあったら兵長にえらい目に遭わされるぞ…」ツカツカ…


オルオ「ところで肝心の兵長はどこに行かれたんだ?」スッ


ペトラ「さっき分隊長と一緒にエルヴィン団長の所へ行ったみたいだけど…」コツコツ…


ペトラ「エレン、久しぶりに同期の子達とお話してたの?」

エレン「ペトラさん!え…えぇそうです。紹介します。こっちがクリスタ、あれがユミルです」



ユミル「初めまして、あれです。エレンのお守り…いや失礼。特別作戦班の方々ですね?」


クリスタ「ユミルっ!ふざけないのっ。初めまして…ですよね?クリスタ・レンズです」




オルオ「ふーん…こんな小さいガキが調査兵団に…」ジッ

アルミン「確かにクリスタは小さいですけど彼女は今期卒の中で10位以内の成績ですよ」


エルド「へぇ…お嬢ちゃん優秀なんだな!人は見掛けによらない。うちのペトラみたいだ」

ペトラ「ちょっとエルド!それどういう意味!?」


オルオ「甲高い声で叫ぶな。お前も優秀だって暗に褒めてるんだろ!!」


グンタ「悪いね、騒がしくしちゃって。ところで部屋の外の看板を見たんだが…」


バンッ! タッタッタッタッ…

ハンジ「エレン聞いて!エルヴィンにさ、新しい実験の許可をもらってきたよ!」



ハンジ「さぁやろう、ほらやろう!今すぐやろうよ~…ねぇ?エーレーンッ!」パアァァァッ


モブリット「分隊長、エレンは本日休暇中の身です」



モブリット「実験は明日以降、それもエレンの安全を最優先にして…まずは計画の練り直しを…

ハンジ「んもぅ!面倒くさいなぁ…モブリットは……」




ハンジ「ところで外に立て掛けてある看板、あれ何の意味があるの?何かの冗談?」アハハッ


ユミル「……詳細はミカサに聞いてください。はぁ…この状況、めんどくせ」



クリスタ「投げやりにならないでよ…ユミル」




ナナバ「お取込み中のところ悪いんだけど…クリスタ、中に入ってもいいかな?」カタン…

クリスタ「ナナバさん!どうぞ、中へ」



ナナバ「お邪魔するよ、クリスタ、ユミル。あぁ…確か参加費がいるんだっけ、いくら?」



ユミル「クリスタ…お前、ナナバさんを招待したのか?」


クリスタ「ナナバさんは条件を満たしている。今朝、準備してる時に声を掛けられて…」

クリスタ「先週参加した上官の方々から噂を聞いて、今回はぜひ参加したいって!」




ユミル「そ、そうなのか…。そうか……参加条件を満たしてるのなら別に構わないが…」



ギギッ…

リヴァイ「おいお前ら!いつまでここで油を売ってやがる。チッ…汚ねぇな…」スススッ…


リヴァイ「久々に来てみたらこのザマだ。この兵舎は埃だらけで人間の暮らす場所じゃねぇ」フゥーーッ…

リヴァイ「ここも一斉に掃除する。お前らも手伝え、そこのそばかす!雑巾を持って来い」


ユミル「そばかすって…私のことかよ……このちびっこ兵長…」イラッ





ペトラ「ち…ちびっこ兵長!?」



リヴァイ「何か文句があるのか?そばかす女」



ユミル「だぁぁあああーーーもう!お前ら全員出てけっ!!ここはな、お茶会の席なんだよっ」

ユミル「掃除だぁ?んなもん知るか!エレンとその護衛どもで勝手にやればいいだろ!?」


ナナバ「ユミル、ちょっと落ち着いて…

ユミル「うるさいうるさい!お前も出てけっ!…おい、そこのお前っ!!」ギンッ


オルオ「むぐっ……な、なんだよ。リヴァイ特別班のオルオ・ボザド様にいっぱしの新兵ごときが…



ユミル「勝手に菓子食ってんじゃねーよ!!参加費も払って無いくせに、このダボがっ」


オルオ「ダ…ダボォ?」



クリスタ「ダボってなんですか?ナナバさん」


ナナバ「さぁ…?」




エレン「ユミル!オルオさんに謝るんだ。ほら、早くっ!!」


ユミル「エレン、ミカサっ!この状況を作ったのはお前らだ!お前らも出てけよ!!」



ユミル「ひっぐ……こ、ここはなぁ…私とクリスタの……もぉ…いやだぁ……」グスッ


クリスタ「ユミル…」



ユミル「お前らのせいでめちゃくちゃじゃねぇか!!もう今日はお開きだ!全員帰れっ」

クリスタ「やだ…やだよ。ユミル、泣かないで……ほら、大丈夫だから」サスサス…


ユミル「グリズダぁ…ぐすっ……」ダキッ…





ハンジ「あらら…新兵泣かしちゃった。いっけないんだぁ、リヴァイ。やらかしたねぇ」


リヴァイ「何だと?クソメガネ。俺のせいだとでも言いたいのか?」





サシャ「見ましたよ!ユミル。こんな条件に当てはまる人なんていないですよ!!」バッ


サシャ「あ…あれ?」


ネス「おう!みんな勢揃いだな、今日はアルレルトもいるのか。早速お茶会に参加するぜ」

アルミン「ネス班長?ど、どうして?」


ネス「あと今日はこいつも連れて来たからなっ!」グイッ

シス「ネスさん、い、痛いです……」ハァ…





ベルトルト「ね、ねぇ…ユミルいる?あのさ、看板に書いてある条件なんだけど…わっ!!」


ライナー「お前な…あの条件なんだよ?あの条件に当てはまるのって俺達ぐらい…えっ?」



リーネ「ナナバ!誘われたから来たよ。あんたの可愛い部下がお茶会開くんだってね」

リーネ「ゲルガーとヘニングもこれから来るってさ!…ってあれ?なにこの人数…」




ナナバ「またタイミングの悪いところへ…」ハァ…




コニー「前回は条件外って聞いてたから行かなかったけど、今回も条件外かよ」ギギギッ


コニー「うぉっ!なんだこりゃ…リヴァイ兵長までいるじゃねぇか…」ヨロッ…

ミケ「おっと、大丈夫か?掴まれ、新兵」ガシッ




ナナバ「あれ?ミケだ。私、誘ってないんだけど…」



ニファ「分隊長!先ほど許可したエレンの巨人体への実験計画、不備があったとかで団長が…はぁっ!?」

ニファ「どうしたんですか!?こんなに集まって、何か事件でもっ…?」


モブリット「事件って言うか……ちょっとね…」ハハハハ… ハァ…





ユミル「お、お、お、お、おまえら…」




ユミル「ぜんいんん、かあぁぁぁえぇぇぇれぇぇぇぇえっっっっっ!!」バンッ!

フラッ…     パタン!



クリスタ「ユミルっ!!」



クリスタ「ユ…ル、おね…い!しっか…してっ……」





調査兵団兵舎内の処置室にて




ユミル「………あぁ……こ、ここは?さっきのは、一体…。夢だったのか?」ンンッ…

クリスタ「ユミル!気が付いたのね。良かったぁ…」ホッ


ユミル「クリスタ……あっ!エレンは?ミカサや兵長やそのゆかいな仲間たちは!?」


クリスタ「みんな大広間に移動したよ。私達のクッキーと紅茶でお茶会やってる」



ユミル「はぁ……そっか。もう怒る気力もねぇわ…」


ユミル「実戦演習後のクッキー作り、地味につらかった…。寝不足で倒れちまうなんて」

ユミル「もう条件付きはやめる…好きにやってくれ。完全に乗っ取られたな、あいつらに」


ユミル「クリスタ、お前も混じって来いよ。私はもう少しこのベッドで寝てるから」



クリスタ「ううん、ユミルのそばにいる。眠たかったらもう少し寝ててもいいよ」

クリスタ「ホステスもたった今、終わり。お疲れ様」


ユミル「あぁ、お前もお疲れ様だったな。ありがとう、クリスタ」





サシャ「ユミル、気が付きましたか?」


コニー「目の前でぶっ倒れたから心配してたんだぜ…人騒がせだな」


ユミル「お前ら…。…あぁっと、そうだ…条件は無しになった。お前らも楽しんで来い」


アルミン「ねぇ、ユミル…。その話なんだけどさ」

ユミル「んっ?」




ライナー「俺とベルトルはその条件に当てはまってるんだよ…」


ベルトルト「うん…」



アルミン「実は僕もそうなんだ」




ユミル「お前ら…それはこの場で話せるようなことなのか…?」

クリスタ「私はユミルにしか言わない」



ユミル「悪い、サシャ…あの部屋から条件を書いた看板、持って来てくれ」


サシャ「は、はい!分かりました」


コニー「俺も一緒に行くわ、ユミル少し待ってろよ」




アルミン「エレンとミカサのことはもう知ってるよね?」

ユミル「あぁ…例の事件だろ?ガキの頃の話」


アルミン「そう…ミカサとその両親が人さらいに襲われて、彼女はさらわれたんだ」

アルミン「ミカサの居場所を突き止めたエレンはミカサを助け出すために犯人を刺殺した」


ベルトルト「うぐっ…」ゲホッ



アルミン「ところが返り討ちにあい、逆にエレンが殺されそうになった時、ミカサが…」

クリスタ「うん、それあの法廷で暴き出されたんだったね。もうみんな知ってる…」


ライナー「酷いことをする人間がいるもんだな。いや、人間じゃねぇな…まるで悪魔だ」


ベルトルト「ライナー……」



ライナー「次は俺達のことを話す。俺とベルトルのことだ。五年前のあの日の出来事」

ライナー「ウォール・マリアが襲われた日、俺達は巨人から逃れるためローゼへ向かっていた」


ベルトルト「うん…えっと、でもどうだったかな?必死だったからよく覚えてないんだ」



ライナー「俺達は三人で逃げていたんだが、道中巨人に襲われて…」

アルミン「仲間が…死んだの?」



ライナー「そうだ。目の前で得体の知れない巨人に食われてな。そいつは死んだよ」

ベルトルト「ラ、ライナー…もう、やめよう。…僕は思い出したくない!」ガタガタガタ…


ライナー「落ち着け、ベルトル。大丈夫だ……ここにあの巨人はいない」



ユミル「お前ら、そんな過去があったのか…。マリア出身の奴は心の傷が深そうだな」



ライナー「あの日から心の中で自分を責め続けてきた。あいつを殺したのは俺達だと…」

ベルトルト「僕らは何もできなかった…。彼の命が消えるのを震えて見ていただけなんだ」


アルミン「仕方がないよ、普通の人間なんだから。どうすることもできなくて当たり前だ」



アルミン「僕もそう言って何度も自分に対して言い訳をしてきた。五年前のあの日…」

アルミン「シガンシナ区が襲われた日、大勢の人が食われるのを見た。逃げ惑う人々も…」

アルミン「その恐怖はローゼまで逃げてきた後も追ってきた。まだ、終わりではなかった」

アルミン「僕のおじいちゃんは王政府によるウォール・マリア奪還作戦で命を奪われて…」

アルミン「僕は、家族を守ることができなかった!そして今もあの時と変わらず無力だ」


クリスタ「違うよ!あの時と今は違う。私達は兵士になったの!巨人に対抗する力がある」


ユミル「巨人に対抗できるだって?それは誤りだ、クリスタ。思い上がるな!」


ユミル「人の力で出来る事は限られている。私らは大きな力の前では無に等しい存在だ」


アルミン「僕も思い上がっていた。トロスト区で、仲間が目の前で食われるまではね…」




サシャ「ユミルーー!持って来ましたよ。看板!」


コニー「看板取って戻る途中でジャンを拾ってきた」

ジャン「お前な…俺のこと捨て犬みたいに言うなよ…」



ジャン「今回の条件じゃ俺は入室できないって、これのことだったのか」

ジャン「俺抜きでお前らが仲良く茶を飲んでいる様子なんか見たくねぇと思ってたけど…」


ジャン「ここに来る途中で通った大広間、ありゃ一体何の騒ぎだ?エレンもいやがったし」




ユミル「条件はもうねぇんだよ。参加したい奴は参加すればいい。会場は大広間だ」



ユミル「ここまで声が聞こえてくる。あの空き部屋にいた人数より更に集まってんだろ?」


ユミル「お前ら、そっちに行ってくれ!最後のお茶会だ。存分に楽しめよ」ニイッ




サシャ「ユミル、この看板どうするんですか?言われたから持って来ましたけど…」


ユミル「どうするも何も、処分するだけだよ。私とクリスタが主催のお茶会は終わったんだ」



コンコン…

ミカサ「ユミル…具合はどう?」ギギッ…


ユミル「ミカサか、まぁまぁってところだ。ぶっ倒れて悪かった」



ユミル「大広間のお茶会なんだが、あとで私も参加する。クッキーと紅茶、残しておけよ?」

ミカサ「もう残ってない…」



ユミル「はっ?」



クリスタ「あっ!忘れてたけど…最初に集まった人達からは参加費、徴収したからね!」


ユミル「うん?」



バァァーーン!

ハンジ「良かった~!新兵の君、気が付いたんだね。ずっとこの子が看病してたんだよ?」


ユミル「あ…あぁ、えっと…すみません…。分隊長殿」



ユミル「あの、記憶はおぼろげなんですが、ぶっ倒れる前にかなり失礼なことを言っ…

ハンジ「でさぁ、君のお茶会に便乗して悪いんだけど、今から『壮行会』に移行するから」



ユミル「壮行会?」



ハンジ「あれ?君、知らないの?」

ハンジ「新しい任務に向かう人を激励するための会を『壮行会』って言うんだよ!」


ハンジ「まっ、参加者全員送られる側なんだけどね。民衆からさ」


ユミル「はあ…」




モブリット「分隊長!エルヴィン団長をお呼びしなくていいんですか?」

ハンジ「え……?誰もエルヴィン呼んでないの?あらら…人望ないね。みんな酒に夢中か」


クリスタ「さけ?私達、お酒なんか用意してませ…

ハンジ「いいのいいの!壮行会だからさ。ありったけの備蓄食料、テーブルに並べてんの」



コニー「ま、マジですかっ!俺も参加していいっすか?」

ハンジ「もっちろーん!新兵も大歓迎だよ。だってこれは『壮行会』だからね」


ミカサ「全員が主役って意味ですか?」


コニー「サシャ、行くぞ!早くしないと食い物が無くなる!俺達先に行ってるからな」

サシャ「コニー!私も行きますっ。みなさんもあとから絶対来てくださいね!」


ユミル「はいよ、先に行って私とクリスタの分も確保しておいてくれ。よろしくな」




ジャン「俺も行くか。こんな機会滅多にないしな…。備蓄食料放出なら肉も食えそうだ」

ハンジ「待って!そこの目つきの悪い君」


ジャン「はっ…?俺ですか?」


ハンジ「そうそう、君だよ!悪いけどさ、今からエルヴィン呼んで来てくんない?」

ハンジ「人手が足りなくてさ。頼むよ!これも新兵の仕事だよ、分かった?」



ジャン「は……はぁ…。分かりました…。……って何で俺ばっか…」ブツブツ…


ハンジ「モブリット!いる?」

モブリット「いますよ、ずっと分隊長の隣に」


ハンジ「良かったぁ…。じゃ、食糧庫からハムとソーセージ持って来てテーブルに並べて!」

ハンジ「あとニファには例の隠し場所からとっておきの紅茶を持って来るように言ってよ」



モブリット「その紅茶、どうするんですか?」


ハンジ「リヴァイがね、あの紅茶マズイってうるさくてさ。ちょっと黙らせたくてね!」



モブリット「とっておきの紅茶も出すべき時期を間違えると宝の持ち腐れですしね…」

モブリット「頃合いとしてはいいでしょう。『壮行会』の目玉に用意します!では」クルッ


ユミル「ローゼで買える紅茶の中じゃ、割と上質な紅茶を用意したんだけどな…」




ハンジ「ところで君!そう、そばかすの君だよっ」


ユミル「は?…私が何か」


ハンジ「君さ、名前…もう一度教えてもらっていいかな?なんか聞き覚えがあっ… チラッ

ハンジ「ん?この看板、さっきの部屋に立て掛けてあった…」


クリスタ「もう私達のお茶会は終わったので、この看板も処分するんです」




ハンジ「この入室条件って、君が考えたの?」

ユミル「いや…いえ、そこにいるミカサ・アッカーマンです。上官殿」


ハンジ「へぇぇ~…面白い条件を出したものだね、ミカサ」

ハンジ「最初に見た時は、何かの冗談かと思った。これじゃ条件にならないからさ」



アルミン「そうなんですか?」


ハンジ「一度でも壁外調査を経験した者にとっては、ほぼ全員が該当者と言えるね」



ユミル「…」



ハンジ「調査兵団所属の全兵士へ……お茶会に招待します。部屋に入るには条件がある」


ハンジ「条件を満たした者のみ入室可。以下条件、その手で人を殺めたことがある者のみ」


ハンジ「これって要はさ、人殺しの経験者しか入室を許可しないってことでしょ?」




ミカサ「はい…。私とエレンのために考えた条件でした。でも……」

ミカサ「この条件だと他の同期は集まらない。だから条件を追加し、全兵士を対象にしました」



クリスタ「全兵士が対象という追加条件、前回のお茶会の時にも使わせてもらったよね」

ユミル「身長のみを条件にすると参加する人間が偏りそうでさ。おかげで盛況だったよ」


クリスタ「ナナバさんに今回の条件を話したら、『それなら私も参加しようかな?』って…」


クリスタ「とても意外だったけど、さっきのアルミンやライナー達の話を聞いて分かったの」


クリスタ「直接人を殺めることはなくとも、自分のせいで、自分の無力で誰かが死んだら…」

クリスタ「家族や仲間を救えなかった自分を責め、まるで自分が殺したかのように感じてしまう」




パチパチパチパチ…

ハンジ「正解!よくできました」


ハンジ「ここにいる全兵士がそう思ってるよ。救えなかった仲間の死を悼み、悔やみ…」

ハンジ「それを糧に巨人を憎み、倒し…また眠れぬ夜を迎える。条件なんて無いも同然」



ユミル「そっか…そうだったのか……。誰も集まらないなんて、そんな訳なかったんだ!」



ジャン「ハンジ分隊長!」バンッ



ジャン「エルヴィン団長をお呼びしました。で、全所属兵士に招集が掛かっています」


ジャン「ミカサ、アルミン、ライナー、ベルトルト、クリスタ、ユミル!大広間へ移動する。急げ!」

ジャン「これから俺達も『壮行会』に参加する。みんなかなり出来上がってるけどな!」



ユミル「うぇ……酔っ払いが多そうだ。私はあとから行く、まだ少し目が回ってるんだ」


ハンジ「体調不良?あ、そうだ!いい薬があるんだ。ちょっと実験に付き合ってくれな…

モブリット「あんた新兵になに怪しげな薬を飲ませようとしてるんですか!」



モブリット「ほら行きますよっ!団長からの招集命令です。長話を聞いてやらなきゃ」


ハンジ「ふぅ~~っ…モブリット…いつ戻って来たの?仕事が早いね。じゃ、またあとで」




クリスタ「私はユミルと一緒に行くからみんなは先に行ってて!お願い」


ミカサ「分かった。食糧確保しているはずのサシャにも少し遅れると伝えておく」



ミカサ「行こう…アルミン。エレンが私達を待ってる!」

アルミン「そうだね、行こうか。クリスタもユミルもまたあとでね」



ジャン「じゃ、俺達も先に行こうぜ!こっそり酒でも飲むか」

ユミル「あぁ…ジャン、お前にも聞きたいことがあったんだ」


ジャン「何だよ、手短にな!俺は忙しいんだからよ」




ユミル「お前は今回の条件、自分に当てはまってると思うか?マルコの事でだ」


ジャン「マルコの事では思わねぇな…。俺が近くにいたって、何も出来なかっただろうよ」

ジャン「あいつの最期がどうだったかなんて分かんねぇし、見てないんだからそれはない」


ユミル「そうか…じゃ、お前は条件外だったんだな」




ジャン「いや、そうとも言ってない」


クリスタ「ジャンも人を殺したの?」



ジャン「覚えてるか?トロスト区が襲われてみんなガス切れで壁を登れなくなった時、」

ジャン「俺はミカサと共に仲間を先導して立体機動で本部へ突っ込んだだろ?」


ユミル「そういや、そんなことあったな…。ついこないだの話なのにもう忘れてた」



ジャン「本部へ着くまでの道程で…俺は何人仲間を見殺しにしたと思う?ユミル…」


ユミル「…」




ジャン「俺が飛び込めば、あいつらは助かったかもしれねぇ…でも俺はそうしなかった」

ジャン「ガスも人手もない中で本部へ辿り着く事だけが命を繋ぐ最後の希望だった」


ジャン「誰かが先導しなきゃならなかった。その時の俺の役目は道を作る事だったんだ」


ユミル「本当は助けたかったんだろ?…でも他の訓練兵のために道を作る方を選んだ」



ジャン「他人を言い訳にして、俺自身が助かりたい一心であいつらを見殺しにしたのかもな」



ユミル「後悔、しない…訳が無いよな。お前は自分を人殺しだと思ってる」


ジャン「へっ、別にそこまで真剣に考えたことなんかねぇよ!そう暗い顔すんな」

ジャン「みんな真っ当に生きているつもりでも、何かしら後ろ暗いところはあるんだ」

ジャン「兵士なんて因果な仕事を選んだ時点で俺達は、みんな残らず思い知るだろうよ」



ユミル「なるほど。人は見掛けによらないな…こんなに深く考えたことも無かった」

クリスタ「誰も、人なんか殺してないのにね。どうしてこんなに優しいのかな……」


ジャン「優しい?」



クリスタ「気持ちが優しいから自分を責めるんだよ…。本当は誰にも罪なんか無いのに…」


ジャン「そうなのか?……俺には分かんねぇな」



ジャン「もう行くわ!クリスタもユミルも早く来いよ。サシャに全部食べ尽くされちまう」


ジャン「待たせたな、ライナー、ベルトルト」ポンッ



ライナー「意外だったな…ジャンの告白は」

ベルトルト「うん……僕らも行こう」






ユミル「さて、また二人っきりになった訳だが…最後にお前の話を聞かせてもらおうか」

ユミル「言いたくなければ無理にとは言わない。お前が言いたくなったら聞いてやる」


クリスタ「ここでちゃんと言うよ。今日はそのつもりだったから」




ユミル「お前も人を殺したのか?」

クリスタ「うん…」


ユミル「誰を?」


クリスタ「お母さん……だと思っていた人」



ユミル「母親か…」





クリスタ「どうしてこんなことになったのか、何度考えても分からない…」


クリスタ「母は死ぬ間際に、私を見て『自分はこの子の母親ではない』と言った」

クリスタ「そして彼女の最期の言葉は『お前さえ産まなければ――』という恨み言…」



ユミル「…」



クリスタ「誰も産んで欲しいなんて、頼んでないのにね」クスッ


クリスタ「何でこの話をあなたにしようと思ったのか、その理由は自分でも分かってる」

クリスタ「この話は絶対誰にも話してはいけない話だったのに、あの条件が私の口を開かせた」


クリスタ「だって私のせいで…私が存在しているせいで……お母さんが死んだから…」

クリスタ「私が殺したようなものでしょ?だから私も人殺しだよ」




ユミル「ふぅ……馬鹿もここに極まれり、だなぁ……」

クリスタ「いいよ、馬鹿で」プイッ



ユミル「てっきりさ、『私が殺したのは私自身だよ』なんて言うんじゃないかと思ってた」



クリスタ「えっ……」



ユミル「ずっと演技してるだろ?いい人の仮面を被って、慈愛に満ち溢れた少女を演じて」


ユミル「お前は本当の自分をずっと殺してきたんじゃないのか?」




クリスタ「そんなこと、あるわけないじゃない…」



ユミル「そうか…。だが、そっちの方もいつかお前が話せる時になったら話してくれよ」

ユミル「お前の言葉、お前の気持ち…私が暇だったら聞いてやらないことも無いからさ」



クリスタ「ユミル…」




ユミル「お前のせいで母親が死んだわけじゃない」


ユミル「お前を産んだせいで誰かに殺されたとしても産むと決めたのは本人なんだから」



ユミル「あいつらもお前も、殺意をもって誰かを殺したわけじゃないだろ?」


ユミル「自分じゃどうにもできない環境に立たされ、自分の無力を知り、苦い思いをした」

ユミル「私から見て、全員その程度の認識だ。だから…お前の手は綺麗だ」




クリスタ「連日の演習でマメだらけのこの手でも綺麗なの?」ジイッ…

ユミル「あははっ!そうじゃねぇよ…。血で汚れてないって意味だ」



クリスタ「うん…」



ユミル「私らももう行くか!サシャ、ちゃんと席と食い物の確保をしておいただろうな?」


クリスタ「大丈夫だよ!大広間へ行こう。みんなと一緒に私達もお茶会を楽しもう!」



調査兵団兵舎内 大広間



 
ザワザワ…           ザワザワ…    オォォーーー   
       ワイワイ ワーーーッ                  モットヤレー!


ユミル「……本当に、全員招集掛けたんだな。あの人」



ユミル「クリスタ、サシャがいたぞ。コニーも一緒だ!ほら行け、たくさん話して来い」

クリスタ「じゃ、先に行ってるね!ユミルも早く来てね」


ユミル「あぁ…」






ユミル「エルヴィン団長」スッ



エルヴィン「君は…?」


ユミル「104期卒の新兵です。名前はユミルと言います」

エルヴィン「ユミル……。どこかで聞いたような名前だが…」



ユミル「これを団長に…」ジャラッ

エルヴィン「何だこれは…。金か?私に渡してどうする」


ユミル「今回のお茶会の参加費です。こんな大ごとになるとは思わなくて…」

ユミル「だから今日も最初にお茶を飲みに来た兵士達から参加費を徴収していました」

ユミル「私が開いたのは入室条件付きのただのお茶会。これで三回目、そして今日で最後」



エルヴィン「君がアレの主催者だったのか。噂は聞いている。少々だがね…」


ユミル「そうですか。二回目が好評だったんで、団長のお耳にまで届いたんですね」

ユミル「…で、この金は今日の『壮行会』に掛かった費用の充填に使ってください」


エルヴィン「君が計画し、実働して得た金だ。こちらとしては受け取る理由が無い」



ユミル「私は目先の小銭が欲しくてこの茶会を開いていたわけではないんです」

エルヴィン「ふむ…」


ユミル「なら、これならどうですか?」



ユミル「今回の任務が成功したら、あなたの主催でこんな会を開いてください」

ユミル「その際に掛かる経費の一部にこのお金を使ってもらえますか?」


エルヴィン「君がそこまで言うのなら受け取らないわけにはいかないね。口が上手いな」


ユミル「ありがとうございます」ニッコリ





クリスタ「ユミル、どこにいるの?」キョロキョロ…


ユミル「あっ……クリスタ……」



ユミル「すみません、仲間が私を探しているので失礼します」


エルヴィン「分かった。君も今日の壮行会を楽しんでくれ」

エルヴィン「それと、もしまた君がお茶会を開くのであれば次は私も参加したい」



ユミル「今のところ次のお茶会を開く予定はありませんが……そうだな…」


ユミル「あなたの作戦が功を奏し、目的を果たしてみなが無事に帰還することができたら」

ユミル「またみなさんとこうして楽しい時間を共有できる機会を作ることにしましょうか」



エルヴィン「なるほど、それは責任重大だな」フフッ



クリスタ「ユミルーーー?」

ユミル「し、失礼します!」ペコッ


クルッ   ダッ……



ユミル「クリスタ!サシャ!待たせたな。夜は長げぇぞ、私もいっぱい食うからなっ」



ハンジ「ふふっ……素直で可愛いねぇ、今期の新兵たちは」スッ


エルヴィン「残り一週間、もう少し長距離索敵陣形の精度を上げるための策を練る」

エルヴィン「確実に結果を出す。失敗することは許されない」



ハンジ「犠牲の出ない壁外遠征は無かった。むしろ全滅しないだけマシだったよね」

ハンジ「そのお金、楽しいことに使えたらいいね。ま、無理だけど」


リヴァイ「エレンを囮に使う以上、犠牲は確実に出る。だがやるだけのことはやる」ヌッ


ハンジ「わっ…リヴァイ!!急に出てきてビックリさせないでよ!もう」




その日の夜

調査兵団女子宿舎にて




クリスタ「サシャったらもう寝ちゃってる…」フフッ

ユミル「ありゃ食い疲れたんだな…。あれだけ食えば、死んでも思い残すことはないだろ」



クリスタ「…ユミル、今日もありがとう」

ユミル「何のことだ?」


クリスタ「内緒」



ユミル「内緒にするぐらいなら最初から言うなよ。気になるじゃねぇか…」




クリスタ「今日もたくさんの人とお話しした。顔も名前もたくさん覚えた」


クリスタ「みんな誰一人としていなくなって欲しくない人達ばかりだね…」グスッ


ユミル「なんで、鼻を鳴らすんだよ…」



クリスタ「アニやマルコもここで一緒に過ごせたら楽しかっただろうなって」

ユミル「やめろ…そういうの。気が滅入るだろ」


クリスタ「うん…」





ユミル(失敗だった……)


ユミル(何でこう悪い方向に向かっちまうんだ…。する事なす事裏目に出てる)

ユミル(ちょっと考えりゃ誰にでも分かることだろ…。くそったれ!)バンッ!



クリスタ「ひっ!…ど、どうしたの?ユミル。サシャが起きちゃう!」


サシャ「……むにゃ…むにゃ……ぐふぅ…もう、食べられません…」ダラーーッ



ユミル「顔も名前も知らない奴と今回の『壮行会』で知り合ってたくさん話したんだよな?」

クリスタ「う、うん…。ユミル、怒っちゃった?」


ユミル「いや……」



ユミル(そいつらが死んだ時、クリスタは何を思うだろう。やっぱ悲しむに決まってる)

ユミル(私がお茶会なんぞ開かなければ、今回のことも無かった)

ユミル(調査兵団の仲間でも親しくない奴の不幸ならば、さほど心に残らなかっただろう)


ユミル(最低限の交流で…104期生だけで良かったのに!ミカサの追加条件のせいで…)

ユミル(誰も死なない壁外調査は無い!こいつの心を傷つける要因を私が作っちまった)



ユミル「何のためにここまでしたんだよ……クリスタの心を守るどころか…」ハァ…



クリスタ「忘れない。誰かに何かあっても、楽しかったことは全部覚えていようと思うの」

ユミル「クリスタ…?」




クリスタ「だから…私のために、ありがとう。ユミル」


ユミル「…」




ユミル「寝るぞ…。明日も早いしな、おやすみ」ゴロッ…


クリスタ「おやすみ、ユミル。明日も頑張ろうね!」



*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** 



ほんの少し月日は流れて…


ウォール・マリア最南端

シガンシナ区壁上・開閉門にて



ユミル「すっかり騙されたな…」


ユミル「お前ら本当に人を殺してんじゃねぇか。目撃したとかじゃなくてさ」

ユミル「それも大量に……なぁ、そうだよな?ベルトルさんよ」


ベルトルト「…」




ユミル「右を向いても、左を向いても目が合うのは人殺しばかり」

ユミル「挙句に私も人を殺していたとはね」


ユミル「おっと、お前を責める気はねぇんだ。そんな怯えた目で私を見ないでくれ」



ユミル「ヒストリア、寒くないか?」

ヒストリア「寒く、ない…。ユミルと一緒なら何も怖くないから…」ガタガタ…



ユミル「おいで…」ソッ

ヒストリア「うん…」スルン… ギュッ



ユミル「すまないな…こんな遠くまで、無理やり連れて来ちまって……」

ヒストリア「大丈夫…。私はあなたとずっと一緒にいる」



ユミル「ミカサ…」フイッ


ミカサ ビクッ!



ミカサ「こ、来ないでっ!エレンに手出しはさせない!!」カタカタカタ…

ユミル「そのナイフみたいに小さくなった刃をしまえ。何もしないから…」



ユミル「エレンが起きたらそいつを抑えるのを手伝ってくれ」


ユミル「多分、めちゃくちゃに暴れるからな…お前らとエレンの身が危ない」



ユミル「ライナーの全力の一発は重かっただろう。だがあの状況では仕方が無かった」

ミカサ「仕方が無かった?ふざけるなっ!!ユミル、あなたは一体どっちの味方なの?」


ミカサ「いや問うまでも無い!…私はあなた達を殺し―――

ユミル「どっちでもない!!言うなれば、こいつの味方だ」



ユミル「最初から最期までな」

ユミル(この命を誰かに引き渡す瞬間まで…)



ヒストリア「ユミル…」


ユミル「ここはお前にとって壁内より安全なんだ。もうあそこに未来は無い」


ユミル「そして、お前を差し出さなきゃ私の命が危ないと言ったのは嘘だ」

ヒストリア「本当に嘘だったの?何でそんなことを私に……」


ユミル「そう言えばお前は私のために一緒に来てくれると思った」

ユミル「お前は私を見捨てない、と…」



ヒストリア「うん……私は何があってもあなたの味方だよ」ギュゥゥッ…






アルミン「ミカサ…水、汲んできたよ!」

ミカサ「アルミン!大丈夫だった?途中で巨人に襲われたりしなかった!?」バッ


アルミン「もう夜だからね、巨人は出なかった。それにライナーがそばにいたし…」



ミカサ「ライナー……」ギリッ…



ミカサ「こいつらはここで始末する。エレンが目覚める前に私の手で…」


ユミル「無駄だ…お前らの刃は全部折れちまってる。ここに来るまでの間に」

ユミル「それにライナーとベルトルトを殺しちまえば、もう壁内に戻る手段は無い」

ユミル「私は協力する気が無いし、エレンの未熟な巨人体では無事に戻れる保証もない」


ミカサ「エレンが起きたら、彼はそんなことは気にせずあいつらを殺す…」

ユミル「じゃ、そうならないように止めてくれよ。エレンの命を守るために…」




ユミル「お前は自分の身に何があってもエレンにだけは死んで欲しくないんだろう?」


ミカサ「くっ…!卑怯者!!」





ユミル(ベルトルトはアルミンの揺さぶりに耳を貸さず、エレンを手放さなかった)


ユミル(エレンを追ってきた仲間達を振り切り、まんまと望みのものを手に入れた…)

ユミル(ミカサとアルミンはそのままエレンを追い続け、戻る機会を逸してここにいる)




ユミル「そう言うなよ、助けてやりたいんだ…お前らも」

アルミン「どうやって?」


ユミル「それはまだ言えない」



ミカサ「ユミル、あなたとは話にならない…」チャキッ




ヒストリア「ユミルに何かしたら…ミカサ、あなたを許さない…」キッ




ライナー「話に割り込んですまんが、ユミル、クリス…ヒストリア、水を飲め」

ライナー「お前もな、ベルトル」チャプン…



ベルトルト「ありがとう…ライナー」




ユミル「私はあの最後のお茶会で言ったお前達の言葉が嘘だったとは思えないんだ」

ユミル「仲間を助けられなかったことを悔やんで自分を責め続けているって言葉がな」



ユミル「その仲間を食った私が言うことじゃないかも知れないが、罪を重ねないでくれ」




アルミン「ユミル、無駄だよ。彼らに僕らの声は届かない…」


アルミン「ベルトルトは立体機動装置を奪うために、調査兵団の仲間の一人を殺した」

アルミン「『壮行会』楽しかったよね?同じ班の先輩や上官に可愛がってもらったよね?」

アルミン「人を殺したくないって言ってたけど、大切な仲間までも嬉々として殺している!」



ベルトルト「嬉々として…?違うっ!!僕はそんな……そんなことは本当はしたく…


ミカサ「あなた達だけは絶対に許さない…私の命に替えても……今ここで殺す!!」ダッ

アルミン「ダメだっ!ミカサ…落ち着いて!!」グイッ…


ミカサ「……っ…!?」





ユミル「この世界と永劫の時の中じゃ、こいつらのした事は小さな事かも知れないな」

ユミル「到底納得できるものじゃないが、境遇を知る者としては責めることもできない」



ベルトルト「ユミル……すまない…」





ユミル「ん?ヒストリア…眠いか?眠ってていいぞ、私はここにいるから」


ヒストリア「う…うん……少しだけ、休んでいいかな…」


ユミル「あぁ…またあの時みたいに抱きしめてるから…このまま眠ってくれ…」


ヒストリア「う…ん……じゃぁ…少し…だけ…………」ギュッ…





ユミル「ライナー、お前を信用しているからな」

ライナー「あぁ……信じてくれ。ヒストリアだけは必ずこの争いから救い出す」


ユミル「そうだな、私と約束したもんな」



ライナー「だがユミル…本当にこれでいいのか?」


ユミル「それを訊きたいのはこっちだ」

ユミル「お前らはいいのか?苦労して連れて来たエレンを手放しても…」



ライナー「お前は言ってたな…」


ライナー「あの戦闘で、どさくさに紛れてエレンの首を狙った奴がいるって」

ユミル「…そうだ」


ユミル「しかも壮行会で見掛けた顔だ。人の顔を覚えるのは苦手だから定かではないが」




ライナー「壁内に戻っても、そこがエレンにとって安住の地とは限らない…」

ライナー「俺達が恐れ、欲しがっていたのはエレン自身じゃない。『座標』の力だけだ」

ライナー「もし『座標』が手に入らなければ、次に打つ手は『座標』を消滅させること」

ライナー「エレンが死ねばそれで終わり。そしてそれは壁内の人間が勝手にやってくれる」



ライナー「暴れるこいつを無理やり連れて行くのが面倒になった。持って帰ってくれ…」




ユミル「ははっ…そうだな。こいつにはずいぶんと手を焼かされたもんな…」


ユミル「だが、本音はそうじゃない。お前らはエレンが死ぬところを見たくないだけだ」


ユミル「このままエレンを連れて行けば、お前らの故郷で間違いなく食われる。私もな」


ユミル「ミカサとアルミンを殺し、エレンと私らを持って帰るのが最高の筋書きなのに」

ユミル「お前らにはそれが出来ない…。非情になり切れなかった戦士の末路は実に哀れだ」



ベルトルト「嘘じゃないんだ…僕らは本当に君達を仲間だと思っていたんだ…」ブツブツ…






ミカサ「どういうことなの?ユミル」


ユミル「エレンとお前らを帰してやる。しかし、それには条件がある」

アルミン「条件?」



ユミル「交換条件だ。『今は』こいつらに手出しはしないこと。ヒストリアにもな」


ヒストリア「ユ…ミル……」クゥ…  ムニュムニュ…



ユミル「これは私とこいつらで決めたことで、お前らはただ黙ってそれに従えばいい」



ユミル「私がいない間、ヒストリアを守ってくれ…。それも約束できるか?」


ライナー「約束する…。そしてここで三日間お前を待つ」

ライナー「だからお前も必ず戻ってくると約束しろ!ヒストリアのために」



ベルトルト「ユミル…僕も待ってる。その間、君を助ける方法を必死で考えるよ」

ベルトルト「君の中にマルセルがいるって僕は知っているから。もう失いたくないんだ」


ユミル「そこまで言われちゃ戻って来ないわけにはいかねぇな…。約束するよ」





ユミル「よし、話は決まった!少し休んだら壁内へ戻るぞ」


ユミル(ヒストリアさえ壁外へ逃がせれば私の目的は達成だ。エレンはおまけに過ぎない)



アルミン「どうやって?朝には僕らの臭いを嗅ぎつけてここに巨人が集まって来るのに」


ユミル「ちょっと…いや、かなりキツいが、これからお前ら三人を乗っけて壁内まで走る」

ユミル「途中でエレンを起こせ。頃合いで交代して次はエレンを走らせる。夜のうちにな」


ユミル「それでいいか?ミカサ。エレンを壁内に戻さなければ、全員ここで死ぬだけだ」


ユミル「私はお前らを壁内へ戻してやりたいんだよ」




ミカサ「いいわけない!…こいつらを殺してからそうすればいい」ギンッ

ユミル「殺すなら協力しない。ヒストリアを壁外へ逃がすためなら私は何だってやる!」


ユミル「そのためにはこいつらを生かしておく必要があるんだ」



ミカサ「……」チッ



アルミン「ライナー、ベルトルト。またここに戻って来るんだよね?アニのために…」

ベルトルト「そうだ……アニはっ?本当は今どこにいるんだ!?教えてくれ、アルミン!」



アルミン「生きている…。だから、殺されに戻って来てよ。僕らのために…」


ライナー「アルミン…」




ユミル「ヒストリア、おやすみ」ナデナデ…


ユミル「少しだけ…さよならだ。私のことも忘れないでくれ…」ソッ…  コトン…




**忘れない。誰かに何かあっても、楽しかったことは全部覚えていようと思うの**





ユミル「さ、行こうか。ミカサ、アルミン…それと、エレンも」


ユミル「じゃ、またな!ん…?あぁ、一つ言い忘れてた…」



ユミル「お前らは特別に無条件で入れてやるから、次のお茶会も必ず参加しろよ!」








ユミル「この部屋に入るには条件がある」クリスタ「条件?」
             
             ― 完 ―



読んでくれてありがとう

需要の無い条件一覧を置いてから寝る

一回目の条件  70kg以下で入室可(調査兵団所属の104期卒限定)
二回目の条件  172cm以上で入室可(二回目以降、所属兵士全員対象)
三回目の条件  本来の意図した意味ではそんなに集まらないはずだが…


おやすみ

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