やよい「かちかち山」(54)

原作のことを知りあまりにも衝撃的だったので感化されただけのssです。
閲覧注意。胸糞・暴力的描写・キャラ崩壊あります。
可愛いやよいを求めて来たという人は絶対に見ないでください。本当に、絶対に、見ないでください。
それでも見るという方は自己責任で…

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。

小鳥「なんで私がおばあさん役なんですかね」

p「いいじゃないですか、小鳥さん」

小鳥「へっ、プ、プロデューサーさん!?」

p「俺だって20ちょいなのにおじいさんですよ」

小鳥「ま、まぁ…悪くないかも…ですね!」

p「?」

おじいさんとおばあさんは、山奥の小さな家で二人仲良く暮らしていました。

おじいさんは、家の近くに自分の畑を持っていました。

p「おばあさんとの生活は、この畑にかかっているんだ」

p「頼むぞ~育ってくれよ、千倍くらいに」

その日、おじいさんは畑でせっせ、ぱらぱらと種を撒いていました。

p「ふぅ…これで全部かな」

種まきを終えると、おじいさんは満足して家に帰っていきました。

おじいさんがいなくなると、畑に近づく影が一つ。

やよい「うっうー! 種がいっぱい落ちてますっ」

それは、山に住んでいるたぬきでした。

やよい「持って帰ってみんなで食べよーっと」

なんと、たぬきはおじいさんの撒いた種を全部ほじくりかえして、持っていってしまったのです。

小鳥「芽、出ませんね…」

p「おかしいな…」

それからしばらく経ったある日のこと。

おじいさんはいつまで経っても芽が出ないことを変に思い、おばあさんと一緒に畑を調べてみることにしました。

p「そっちはどうですか?」

小鳥「こっちもです、一つも残ってません」

p「種がない…?」

この前、あんなに一生懸命になって畑にたっぷり撒いた種です。

それが一つも残ってないなんて、そんなことあるはずがありません。

p「…よし」

おじいさんはもう一度種を撒いて、それを見張ることにしました。

おじいさんが見張りを初めてから数日、ついに犯人が姿を現しました。

やよい「あっ、また種が落ちてます!」

たぬきは畑の土をほじくり、次々と種を拾っていきます。

やよい「えへへ、いっぱいです!」

ついに、畑に撒いた種のほとんどがたぬきに取られてしまいました。

小鳥「ひどい…」

p「こらっ、たぬきめ!」

おじいさんは自分の畑が荒らされるのを見て、いてもたってもいられず飛び出していました。

やよい「はわっ!?」

たぬきはびっくりして逃げようとしましたが…

やよい「あ…」

手からは拾った種がぽろぽろ。

p「よし、捕まえたぞ! このたぬきめ!」

やよい「う、うぅ…」

それに気を取られて上手く走れず、おじいさんに捕まってしまいました。

やよい「あぅ…」

たぬきは、おじいさんの家にあった大きな丸太に縛りつけられました。

小鳥「おじいさん、どうするんですか?」

p「俺はまた畑に種を撒きなおしてきます、おばあさんはこいつを…」

やよい「うぅ…」

p「…たぬき鍋にでもしてください」

小鳥「は、はい…」

そう言うと、おじいさんは種を持って畑に戻っていきました。

おばあさんはそんなおじいさんの背中を見送ると、言われた通り鍋の準備を始めました。

小鳥「よいしょっと」

おばあさんは野菜を切って、次々と煮えた鍋に入れていきます。

野菜が煮えたら、たぬきもあの中に放り込まれるのでしょう。

やよい「うーっ、うーっ」

たぬきは逃げようと体を動かしますが、大きな丸太はびくともしません。

小鳥「こら、動かないで」

やよい「縄がきつくて痛いです…ほどいてください」

小鳥「駄目よ。そんなことをしたら、逃げるでしょ?」

やよい「逃がしてください…死にたくないです…」

小鳥「けど…」

やよい「弟や妹が、お家でお腹を空かせてるんです」

たぬきはしおらしく、お願いします、逃がしてください、とおばあさんに懇願しました。

小鳥「やっぱり、駄目よ。逃がしたらまた種を拾いに行くでしょう?」

しかし、おばあさんは聞き入れてくれません。

やよい「なんで拾っちゃ駄目なんですか…?」

小鳥「畑には作物が育たない。そうなったら、私達は食べるものもない」

小鳥「こっちだって、あなたに種を食べられたら生きてはいけないのよ」

たぬきの疑問に対し、おばあさんは丁寧に答えました。

やよい「ごめんなさい…そんなこと、知らなかったんです…」

たぬきはごめんなさい、ごめんなさいと謝罪を続けます。

小鳥「………」

そんなたぬきのとっても愛くるしい姿を見て、おばあさんにも仏心が出てきます。

小鳥「もう、種を食べたりしない?」

やよい「はい。もう、畑の種は食べません…」

小鳥「なら、逃がしてあげる。おじいさんに見つからないようにするのよ?」

やよい「はい…! ありがとうございます!」

おばあさんは、たぬきの縄をほどいてあげることにしました。

小鳥「はい、ほどけたわよ」

やよい「うっうー!」

小鳥「それじゃ、山にお帰り」

やよい「はいっ! ありがとうございます!」ガルウィーン

たぬきは、おばあさんに礼を言って立ち去ろうとします。

しかし、縛られていて足下がおぼつかないたぬきは、踏み出そうとしてバランスを崩してしまいました。

やよい「はわっ」

さらに、自分が縛りつけられていた丸太を足に引っ掛け、転んでしまいます。

小鳥「だ、大丈夫? たぬきちゃん」

やよい「うぅ…」

しかし、それだけで終わりではありませんでした。その衝撃で、丸太が倒れ込んできて…

小鳥「へっ…!?」

ぐしゃっと、おばあさんの頭を潰してしまいました。

やよい「え…」

小鳥「………」

丸太の下敷きになったおばあさんの頭からは、どくどくと血が流れています。

やよい「あ、どかさないと!」

たぬきは重い丸太を必死になって押します。

その甲斐あって丸太をどかすことはできましたが、おばあさんは動きません。

やよい「こ…これ、どうしよう…」

そのうち畑仕事を終えたおじいさんが帰ってくるでしょう。

こんな場面を見られたら、怒り狂って自分のことを殺しにくるに違いありません。

やよい「あわわ…」

たぬきがおばあさんの遺体をどうにかしようと辺りを見回すと、ぐつぐつと、鍋が煮えていました。

やよい「あっ、いいこと思いついちゃったかも!」

p「ただいま」

おじいさんが種を撒き終わって帰ってくると、おばあさんの姿も、たぬきの姿もありません。

家の中には、火のかかった鍋が残っているだけでした。

p「火をつけっぱなしでどこかにいくなんて、不用心だなぁ」

そんなことを呟きながら、おじいさんは鍋を覗き込みました。

肉のたっぷり入った汁はぐつぐつと煮えていて、その香りが鼻をくすぐります。

ちょうど畑仕事を終えたおじいさんのお腹は、ぐうぐうと鳴っています。

p「どれ…」

いつもならおばあさんがよそってくれるのですが、いないのなら仕方ない。待てそうにありませんでした。

p「美味い美味い。ちょっと肉が固いけど。煮込みすぎかな?」

お腹の空いていたおじいさんは、お椀の中身をがつがつとかき込んでいきます。

三杯目の汁を飲み干すと同時…

やよい「あっ…おじいさん」

ヒョコッ、と戸の外からたぬきが顔を出しました。

p「…え?」

p「なんで、お前がそこにいるんだ…?」

やよい「それは…」

p「おばあさんは…どこに行ったんだ…?」

やよい「おばあさんですか…えっと…そこです」

p「………は?」

たぬきが指差したのは、まだまだできたてで、湯気が立ち上っている鍋でした。

やよい「えっと…動かなくなったので、入れちゃいました」

おじいさんはその言葉を耳にして、その意味に気づくと箸とお椀を落としました。

p「う…」

p「うわあああああああああああああ!!」

やよい「はわっ!?」

たぬきはおじいさんの悲鳴にびっくりして、そそくさと逃げ出してしまいました。

p「ま…待て…」

おじいさんはたぬきを捕まえようと、手を伸ばします。

しかし、畑仕事の帰り、この出来事によるショック、さらには嘔吐し体力を奪われたおじいさんにはたぬきを追いかける力は残っていませんでした。

それから数日…

最愛の妻を失い、その肉を食べさせられたおじいさんには何かをする気力が残っていませんでした。

畑に行くこともなく、たぬきを捕まえに行くでもなく。ただ、ぼうっと壁を見つめているだけです。

p「………」

どん、どん、と戸が叩かれます。

まるで抜け殻のようになってしまったおじいさんの元に、誰かが訪ねてきたのです。

p「………」

おじいさんがそれにも反応せずじっとしていると、来訪者は勝手に戸を開けて、家の中に入ってきました。

伊織「ちょっとアンタ、畑が荒れ放題じゃない! 何やってんのよ!」

p「うさぎか…」

伊織「うわっ!? な、何…どうしたの!? そんなに痩せて…」

おじいさんを訪ねてきたのは、近くの山に住んでいるうさぎでした。

うさぎは、おじいさん夫婦と仲がよく、いつも畑仕事を手伝っていたのです。

>>12
ちょっと訂正
>p「ま…待て…」
p「ま…待て…うっ、おえぇ…」

家の中には蠅がたかった鍋…あちこちにぶち撒けられた嘔吐物、そして乾いた血液。

そして、一人何もせず座っているだけの痩せこけたおじいさん…明らかに、普通じゃありません。

伊織「何かあったの…? おばあさんは?」

p「…実は…」

おじいさんは、うさぎに全てを話しました。

たぬきに畑を荒らされたこと、一度捕まえたが逃げられたこと…そして、おばあさんを殺され鍋にされたこと…

伊織「そう…」

うさぎはおじいさんの話に、一言だけ返します。どう声をかけたらいいのか、わからないといった様子でした。

p「俺はもう何もできない…」

おじいさんは涙を流すことなく、ただ震えていました。もはや、涙も涸れてしまったようです。

伊織「…わかったわ」

p「え…?」

伊織「このうさぎちゃんが、悪いたぬきを懲らしめてあげる」

おばあさんにとてもかわいがられていたうさぎは、敵討ちをしようと決心しました。

伊織「よいしょ、よいしょ…」

うさぎは、山で薪を拾い始めました。

やよい「?」

すると、その様子が気になってたぬきがやってきます。

やよい「うさぎちゃん、何してるの?」

たぬきはうさぎに話しかけてきました。おじいさんがあんなことになっているのに、何事もなかったように過ごしています。

そんなたぬきの様子に苛立ちましたが、うさぎはぐっと抑えました。

伊織「あら、たぬき。見てわからない? 薪を拾ってるのよ」

やよい「なんで?」

伊織「今年の冬は寒くなりそうだから」

やよい「もう春だよ?」

伊織「この話ではこれから冬なのよ」

伊織「そんなわけだから、たぬきも薪集めておいた方がいいんじゃない?」

やよい「うーん…」

伊織「ま、別にいいわよ。いらないんなら、このうさぎちゃんが全部拾っちゃうから」

そう言うと、うさぎはまた薪を拾い始めました。

もちろん、一匹のうさぎが拾える量など高が知れていて、山に転がってる枝を全部拾うなんてことはできません。

うさぎは口からでまかせで、焦るようなことを言っているだけです。

やよい「はわっ、それは困るかもっ」

しかし、たぬきはそれにまんまと乗っかってきました。

伊織「………」

しめしめ、馬鹿なたぬきだ。これなら、簡単に騙せるな。

うさぎは、薪を拾い始めたたぬきを見て、そう思いました。

やよい「いっぱいとれましたー」

伊織「そうね」

そして、二匹は充分な量の薪を拾い終わりました。

やよい「でも、これ両手じゃ持ちきれないかも…」

伊織「それなら…」

うさぎは枝で背負子を作って運ぶことをたぬきに提案しました。

やよい「わぁ、これならいっぱい運べるね!」

たくさんの薪を背負ったたぬきは、自分の住処に帰ろうと歩き出しました。

やよい「あれ? うさぎちゃんもこっちなの?」

伊織「…ええ、そうよ」

やよい「えへへ、じゃあ一緒だね!」

伊織「………」

うさぎは、そんなたぬきの後ろを着いていきます。

やよい「ふ~んふ~ん♪」

たぬきは呑気に鼻歌を歌いながら、道を歩いていきます。

伊織「………」

うさぎは懐からチャッ○マンを取り出し、引き金を引きました。

カチッ、カチッ…と音が鳴りますが、なかなか火は出てきません。

やよい「あれ、なんか音がするよ?」

伊織「ここはかちかち山だから」

やよい「この山って、かちかち山っていうの?」

伊織「ええ、そうよ。こういう音が聞こえるからかちかち山って言うの」

やよい「そうなんだ。うさぎちゃん、物知りだね!」

伊織「え、ええ…」

たぬきは、うさぎのでたらめ話をあっさりと信じ込んでしまいました。

そうこうしているうちに○ャッカマンに火が灯り、うさぎはたぬきの背負っている薪に近づけました。

やよい「あれ? 音が変わっちゃった」

薪につけられた火は、ぱち、ぱちと音を鳴らします。

伊織「これはぱちぱち鳥の鳴き声ね」

やよい「ぱちぱち鳥?」

伊織「近くにぱちぱち山という山があって、そこに住んでるの」

やよい「へぇ…」

そうこうしているうちに、たぬきの背中全体に火が燃え広がっていきました。

やよい「はわっ!?」

そうなると、流石のたぬきも自分の背中が燃えていることに気づきました。

やよい「熱いです~っ!!」

燃える薪を背負ったまま、ばたばたと手を振り回しながら走り回っています。

伊織「………」

その姿を見たうさぎは、流石にかわいそうだ、と思いました。

やよい「ひぃ~っ」

伊織「ほら、たぬき! 背中出しなさい!」

やよい「は、はいっ」

たぬきがうさぎの言う通り背中を向けると、うさぎは薪を背負子ごと無理矢理引きはがしました。

しかし、たぬきの背中には火がまだ点いたままです。

やよい「熱い、熱い」

たぬきはゴロゴロと転がって、背中に点いた火をもみ消そうとしました。

伊織「きゃっ!?」

すると、転がったたぬきがうさぎの足下にぶつかりました。

薪を持ったうさぎにはたぬきの姿が見えず、避けることができなかったのです。

うさぎは火の点いた薪を持ったまま、近くの崖を転がり落ちてしまいます。

伊織「ちょっと、たぬ…痛っ!?」

立ち上がってたぬきに文句を言おうとしたうさぎの足に、鋭い痛みが走りました。

見ると、尖った木の根がうさぎの右足の甲を貫き、顔を出していました。

不運にも落ちたところに根っこが地面から突き出ていて、刺さってしまったのです。

伊織「い…痛い! 痛い…!!」

継続的に与えられる刺激に、うさぎは耐えられずしゃがみこんでしまいます。

伊織「…あ?」

ふと、うさぎは近くに落とした薪の、煙の量が多くなっていることに気づきました。

振り向いて見ると、火が、木に燃え移っているではありませんか。

伊織「いっ…嫌っ…!!」

うさぎは必死になって、そこから逃れようとしました。

しかし逃げようともがけばもがくほど、根っこはうさぎの足に深く食い込んでいきます。

伊織「ああああああ!! ああああああああ」

うさぎは逃げることもできず、火はどんどんと大きくなります。

身動きのとれないうさぎは、木ごと生きたままその身を焼かれました。

不幸中の幸いか、火は森にまでは広がらず、木が一本焼けるだけに留まりました。

やよい「だ、だいじょーぶ…うさぎちゃん…?」

伊織「………」プスプス

やよい「うさぎちゃん…?」

しかし…当然、その木の根元にいたうさぎは生きてはいません。

やよい「うぅ~、返事がありません」

たぬきを焼こうとしたうさぎは、逆にたぬきに焼き殺されてしまいました。

浩司「うあ、すっげー!」

かすみ「こんがり焼けて美味しそう…」

やよい「みんな、残さず食べるんだよ」

バリ、バリ、ボリ、ボリ…

そしてその遺体は巣に持ち帰られ、たぬき一家に骨まで食べられてしまったのです。

そんな一家の食事風景を見ていたのは、たぬきに殺されたうさぎの、お姉さんでした。

お姉さんうさぎは、帰りの遅い妹うさぎを探し回っていたところ、煙が上がっているのを発見し、たぬきの後をつけていたのです。

響「なんて奴だ…許せない! 自分が懲らしめてやる!」

お姉さんうさぎは、妹の敵討ちをしようと決心しました。

しかし、妹うさぎはうさぎさん姉妹の中でも一番のしっかり者でした。

その妹うさぎがあんなことになったとなると、簡単にはいかないかもしれません。

響「あ、そうだ! あいつ、背中を火傷したんだよね…それなら!」

お姉さんうさぎは、自分の住処に帰って準備をすることにしました。

次の日、たぬきは食べ物を探しまわって山を歩いていました。

やよい「う~っ、背中がひりひりしますーっ」

火傷した背中は、まだ痛むようです。

響「どうしたんだ、たぬき」

そんなたぬきの前に、朝から待ち伏せをしていたうさぎが現れました。

響「背中を火傷したのか…それなら、いいものがあるぞ」

うさぎは、懐から一本の瓶を取り出しました。

やよい「なんですか、これ?」

響「これはコーレーグースっていう沖縄の薬だ、どんな傷もこれをつければ治るんだぞ」

もちろん、嘘です。コーレーグースは調味料であり、薬などでは決してありません。

コーレーグースはソーキそば等の沖縄そばの薬味として使われ、非常に辛く刺激が強い調味料です。

やよい「塗ってください、お願いします!」

たぬきはうさぎの言葉を信じ、背中を向けます。

響「ゴクリ…」

うさぎは、目の前に向けられたたぬきの染み一つない白い肌に目を奪われました。

いえ、違いました。黒い毛です。黒い毛がびっしり生えています。たぬきなので。

響「っと、いけないいけない…」

ともかく、うさぎはたぬきの背中にコーレーグースを伸ばして塗りたくりました。

やよい「はぁー…」

塗り終わった瞬間は、たぬきも気持ちよさそうな声を出していましたが…

やよい「~~~~っ!!?」

すぐに、鋭い刺激が背中を襲いました。

やよい「わっ、ひりひりします~っ!!」

響「し、染みるってことは効いてるって証拠なんだ!」

やよい「そうなんですかっ!?」

そう言うとたぬきは文句一つ言わず、うめき声を上げながら背中を襲う刺激に耐えました。

やよい「痛いです…」

痛みにのたうち回っているたぬきの姿を見て、うさぎにもだんだんと罪悪感が芽生えてきました。

響「よ、よし。仕上げに水で落とすぞ」

もういいだろう、そう思ったうさぎはたぬきを走って近くの湖まで連れて行き…

やよい「ふーっ…すーすーします」

響「………」

一緒に湖の中に入り、背中のコーレーグースを流してあげました。

やよい「ちょっとよくなった気がします! ありがとうございました!」ガルウィーン

水から上がるとたぬきはうさぎに向かって深々と礼をしました。

響「え、えっと…うん」

自分を責めるどころか礼を言うたぬきに、うさぎは戸惑います。

妹の仇のはずなのに…

うさぎには、目の前にいるたぬきがあの妹を殺して食べたたぬきが同一動物だと認識することが出来ませんでした。

やよい「あれ?

そんな時です。たぬきが、あることに気がついたのは。

やよい「うさぎさん、血が出てます」

響「ん? あ、ほんとだ…石にひっかけたのかな」

やよい「あ、じゃあ…」

響「あっ!?」

たぬきはうさぎから瓶を奪い取り、言いました。

やよい「私がお薬、塗ってあげますね!」

響「え…いや、たぬき! そんなことしなくていいから!」

それを聞いて、コーレーグースが何かを知っているうさぎは慌てて、たぬきから遠ざかろうとしました。

響「痛っ…」

しかし、傷がついた足が痛みだしてその場に尻餅をついてしまいます。

やよい「じっとしててくださいね」

響「ちょ、ちょっと待…」

うさぎの静止も聞かず、たぬきは瓶から液体を手に出して傷口に刷り込むように塗り始めました。

やよい「ぬりぬり~っと」

響「う…うぎゃあああああああ!」

コーレーグースは唐辛子などから作られた調味料です。

たぬきは火傷した皮膚に塗られただけでしたが、傷口に直接刷り込まれたりしたら、ひとたまりもありません。

うさぎは悲痛な叫び声を上げました。

やよい「染みるってことは、効いてるってしょーこです!」

しかし、たぬきは構わずに何度も何度も塗り付けます。

響「うーあー…」

しばらく塗っていると、原因はわかりませんが、うさぎはだんだんと痛みがなくなってきたようです。

響「あ…頭が…クラってきた…」

しかし、うさぎは今度は仰向けに倒れ込んでしまいます。

やよい「あう、変なびょーきなんでしょうか…」

様子がおかしいうさぎを見て、たぬきはどうにかしようかと考えを巡らせます。

やよい「そうだ!」

たぬきはなんとコーレーグースの瓶を逆さまにし、うさぎの口に付けたのです。

響「んぐっ!?」

やよい「飲んでください!」

響「んーっ! んーっ!」

コーレーグースは一滴で食べ物の味を変えてしまうような強烈な調味料です。大量に摂取するようなものではありません。

仰向けで力も入らないうさぎは、それを無理矢理飲ませ続けられました。

やよい「ほら、もっと」

響「あ…ぐ…」ピクッ ピクッ

響「………」

やよい「うさぎさん…?」

うさぎはあまりの痛さと辛さ…それと諸々のショックなどで死んでしまいました。

やよい「うぅ~、返事がありません」

たぬきに唐辛子を食べさせ懲らしめようとしたうさぎは、逆にたぬきに唐辛子を喉に詰められて殺されてしまいました。

かすみ「わぁ、いい匂い!」

長介「ねーちゃん、これどうしたんだ!?」

やよい「うふふ、ないしょ!」

バリ、バリ、ボリ、ボリ…

そしてその遺体は香味焼きにされ、たぬき一家に骨まで食べられてしまったのです。

千早「これは…」

そんな一家の食事風景を見ていたのは、たぬきに殺されたうさぎの、妹です。

妹と言っても、最初のうさぎさんの姉で、お姉さんうさぎの妹ということで…要するに真ん中のうさぎさんでした。

真ん中うさぎは、姿が見えない姉や妹うさぎを探し回っていたところ、香味焼きの匂いに釣られてたぬきの住処に辿り着いたのです。

千早「我那覇さんが殺されるなんて、なんてこと…この分だと、水瀬さんも…」

………

千早「姉さんが殺されるなんて、なんてこと…この分だと、妹さんも…」

真ん中うさぎは、姉妹の敵討ちをしようと決心しました。

千早「二人を殺したたぬき…あの可愛い見た目…一筋縄ではいかないわね」

真ん中うさぎはどこかズレていますが、それなりにしっかり者でした。

作戦を練ると、自分の住処に帰って準備をすることにしました。

次の日、たぬきは食べ物を探しまわって、今度は昨日来た湖に来ていました。

やよい「ここなら、お魚さんいっぱい獲れるかも!」

しかし、一向に魚は釣れません。

やよい「どうしよう、これじゃ晩ごはんが…」

そんなたぬきのところに、昨日の夜から準備をして待ち伏せていたうさぎがやってきました。

千早「お、おはよう、たぬきさん」

うさぎは作戦や寝不足のせいか緊張していました。

やよい「あっ、うさぎさんです。おはようございます!」

たぬきはそんなうさぎに対し、屈託のない笑顔を向けてきました。

こんな子が、姉妹を殺しただなんて…何かの間違いでは? うさぎの心が少し揺らぎます。

やよい「えへへ、最近うさぎさんとよく会うから嬉しいかも」

千早「………」

しかし、うさぎはその言葉を聞いて、たぬきに食べられた姉妹のことを思い出していました。

千早「たぬきさん、魚が釣れないの?」

やよい「はい、そうなんです…」

先程からたぬきの様子を見ていたうさぎは、さっそく作戦の実行に取りかかります。

千早「それなら、いいものがあるのだけれど」

やよい「え? なんですか?」

千早「こっちよ」

うさぎが連れて行かれた先にあったのは、木で作られた白い小さな船と、泥で作られた黒い大きな船でした。

やよい「わっ、すごいです!」

千早「これに乗って湖の中央の方まで行けば、魚が獲れると思うわ。たぬきさんに、一隻貸してあげる」

やよい「いいんですか?」

千早「ええ。二つあっても、両方に乗ることはできないでしょう?」

千早「こっちの方が大きい船に乗るといいわ。魚がたくさん乗せられるから」

うさぎはさりげなく泥船を勧めました。

やよい「え、それなら、うさぎさんが大きい方に乗った方が…」

しかし、たぬきは遠慮しているのか乗りたがりません。

千早「木の質感が好きなの。だからこっちに乗るといいわ」

それでもうさぎは言葉巧みに泥船を勧めました。

やよい「でも…」

千早「たぬきさんは毛皮が黒いから、黒い方に乗るといいと思うわ」

うさぎはひたすらに泥船を勧めました。

やよい「それなら…」

と、たぬきはついに折れ、泥の船に乗り込んで湖に出ます。

うさぎはその後を追って、木の船に乗りました。

訂正
>千早「こっちの方が大きい船に乗るといいわ。魚がたくさん乗せられるから」
千早「こっちの大きい船に乗るといいわ。魚がたくさん乗せられるから」

やよい「えへへ、いっぱい釣れます!」

湖の中心部あたりまで来ると、大漁大漁! たぬきは次々と魚を釣り上げ、船の上に乗せていきます。

千早「はぁ…可愛い…」

うさぎはと言うと、そんな愛くるしいたぬきの姿を船上から糸を垂らしながら眺めていました。

しかし、そんな楽しい時間も長くは続きません。

やよい「あれ…?」

たぬきは、自分の乗っている船がだんだんと溶けていることに気づきました。

泥で作られているのです、水の上に出てしまえば当然そうなるでしょう。

やよい「う、うさぎさん…!? この船、なんかヘンです…」

千早「………」

やよい「そ、そっちに乗せてください!」

千早「………」

たぬきは慌てて助けを求めますが、うさぎは何も言わず泥船が沈むのを見ているばかり。

やよい「あっ、お魚さんが…」

船に水が入ってくると、釣り上げた魚が次々と逃げていくではありませんか。

たぬきは魚を捕まえようと手を伸ばしますが、ぬるぬるした体は手では掴めずするすると抜け出してしまいます。

そして、そんなことをしているうちに…

やよい「わーっ!!」

ついに船は溶け、たぬきは湖の上に投げ出されました。

やよい「あっ、ううっ」

魚に気を取られていたたぬきは泳ぐ準備ができていません。

今にも溺れそうです。

やよい「あっぷ、あっぷ」

千早「………」

そんなたぬきの姿を見て、うさぎは良心の呵責に苛まれました。

千早「たぬきさん、もう悪いことはしないと誓う?」

やよい「えっ?」

うさぎは、たぬきにチャンスを与えることにしました。

心を入れ替え、もう悪いことをしないと誓うならば、助けてあげよう、と。

千早「誓う?」

やよい「ちか、ちかいますっ!」

たぬきは水中で手足をバタバタさせながら、そう言いました。

千早「なら、助けてあげる。掴まって、たぬきさん」

やよい「あ…」

うさぎが船の上から伸ばした手を、必死だったたぬきは強い力で引っ張ります。

千早「!?」

その力の強さたるや、ズルッ、とうさぎが船の上から落ちてしまうほど。

たぬきはなんとか船に上がり、その場に倒れ込みます。

それと入れ替わるように、うさぎは湖へと引きずり込まれました。

千早「がふっ、げふっ…!」

うさぎは溺れていました。

落ちた時に、水を飲み込んでしまったのです。

千早「たっ、たす…助けて…!」

うさぎはもがきながら、船の上のたぬきに助けを求めます。

やよい「ぜー、ぜー…」

しかし、先程まで溺れかけていたたぬきは船で横になったまま大きく呼吸をしているばかり。

うさぎの声も、耳に入りません。

千早「うが、う…」

そしてとうとう、うさぎは水の中で息絶えました。

千早「………」プカ…

やよい「あれ…うさぎさん…?」

そして、たぬきが気づいた頃に目にしたのは、水の上で波に揺れているだけのうさぎの姿でした。

やよい「うぅ~、返事がありません」

たぬきを溺れさせようとしたうさぎは、逆にたぬきに溺れさせられ殺されてしまいました。

浩三「うーっ、ぶーっ」

浩司「ねーちゃん、まだー?」

やよい「できたよ、はい!」

サク、サク…

そしてその遺体は肉を削ぎ落とされ、パイにされてしまいました。

その次の日のことです。

いつものように、たぬきは食べ物を探して歩き回っていると、民家を見つけました。

やよい「あぅ…」

畑のおじいさんとおばあさんの家です。

たぬきは、自分が捕まって殺されそうになったことを思い出していました。

やよい「………」

あれから、どうなったのか気になったので、おじいさんに見つからないよう窓からこっそりと覗くことにしました。

p「………」

家の中では、おじいさんが何もせず座っているだけ。

やよい「…?」

微動だにしないおじいさんを妙に思ったたぬきは、戸の方に回って家の中に入ります。

やよい「あ、あの…」

たぬきは恐る恐るおじいさんに話しかけます。

返事はありません。

やよい「おじいさん…?」

今度は近づいて、耳元で話しかけてみました。

やはり、返事はありません。

やよい「おじいさん!」

たぬきは、思い切って揺さぶりながら声をかけましたが、やはり結果は同じ。

やよい「うぅ~、返事がありません」

おじいさんは何もせず…衰弱しきって死んでいました。

やよい「うーん…」

食べ物を探していたたぬきは、おじいさんの遺体を持ち帰って鍋にすることにしました。

おばあさんと同じように。

たぬきがおじいさんの体を引きずって家の外に出ると、畑が目に入ります。

そういえば、この畑には種が撒かれているはずだ。一緒に持ち帰ろうかという考えが一瞬頭をよぎり…

やよい「あ…」

そこでたぬきは、おばあさんとの会話を思い出していました。

小鳥『畑には作物が育たない。そうなったら、私達は食べるものもない』

小鳥『こっちだって、あなたに種を食べられたら生きてはいけないのよ』

小鳥『もう、種を食べたりしない?』

やよい「………」

そして、真ん中うさぎの言葉も。

千早『たぬきさん、もう悪いことはしないと誓う?』

やよい「駄目だよね、やっぱり」

たぬきは、畑の種を取らずに帰っていきました。

季節が過ぎ、作物が育とうとも、たぬきがその畑に手を出すことはありませんでした。

おしまい

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