【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★12【安価】 (1000)

・艦娘×提督の学園もの
・全然艦隊とか関係ありません
・エロ、グロといった描写があるかもしれません
・なんかドロっとしているかもしれません

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前スレ

【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの【安価】
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【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★8【安価】
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【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★11【安価】
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ヒロインまとめ(○はエンド艦娘、次回登場は不可、○付いてない子は出せます)


【1周目】

電(幼馴染)         
浜風(娘)          
あきつ(後輩)         
足柄(先輩)          
○青葉(同士)   



【2周目】

大和(管理人)       
○不知火(親友)      
飛鷹(教師)        
五十鈴(転校生)       
北上(同居人)       


【3周目】

雷(クラスメイト)       
球磨(スラッガー)      
間宮(バイト先の店長)   
○那珂(超人気アイドル) 
阿武隈(義妹)        


【4周目】

陽炎(幼馴染)        
川内(学生であり怪盗)  
卯月(妹分)         
榛名(後輩)         
○暁(妹)           


【5周目】


初春(宇宙人)
叢雲(↑のライバル)
長門(ながもん)
響(帰国子女)
山城(元カノ)

BAD。


【6周目】


千代田(義妹)
吹雪(親友)
赤城(大食いチャンピオン)
由良(後輩)
古鷹(フライフェイスとオッドアイの演劇の天才)

BAD。


【7周目】


比叡(記憶喪失・幼馴染)
○漣(家政婦)
明石(近所のお姉さん)
大井(クラスメイト)
レ級(クラスメイト)

【8周目】

○明石(義姉)
鈴谷(同居人)
文月(姉)
熊野(財閥令嬢・崩壊寸前)
白露(クラスメイト・電波)


【9周目】

○潮(従妹)
村雨(幼馴染)
鳳翔(先生)
朧(後輩)
武蔵(応援団長)


【10周目】

深雪(親友)
曙(従妹)
大鯨(母)
翔鶴(弟の彼女)
瑞鶴(弟の彼女)

BAD。


【11周目】

伊58(未亡人)
隼鷹(お嬢な同級生)
○初風(面白い同級生)
蒼龍(担任)
ビスマルク(留学生なお姫さま)


【12周目】

阿賀野(いつもニコニコガチサイコストーカー)
瑞鳳(いじめられっこ)
龍驤(陰陽師)
睦月(おなちゅー)
翔鶴(従妹で居候な部活の後輩)


いまここ。

色々あるけどとりあえず先に12週目だね

一人目>>+4

うむ

二人目>>+4

三人目>>+4

四人目>>+4

ラスト>>+4

荒潮(未来から来た娘)
雷(幼馴染)
舞風(世界有数のヒットマン)
羽黒(許嫁)
霧島改ニ(生徒会役員)


パワポケかな?

まーとりあえず安価方式だね
時間じゃなくて下○で毎度毎度その数字をずらしてみる
直下だったり下4だったり
というのはどうだろう、変わんねーかな
二刀流対策は…多数決やめるぐらいしかないね

結局好きにやるんが一番ってことかね、じゃあ下○になる…のか
とりあえず今日はここまで、瑞鳳エンド書くよ、あんま望まれてねーっぽいけどさ
お付き合いいただきありがとうございました

今日も見られなかったけど順調に負けたか
やーっとシーズンが終わったんやなって、まーここまで希望が持てるなんて幸せですわ、ええ
エピローグ前を投下



クリスマス。

誰もが、浮かれた雰囲気で街を歩く日。

「……ホワイトクリスマス、か」

「……ロマンチック、ですねー」

「…寒いな」

「……ですね」

その日は、俺達の住んでいる街では珍しく、はらはらと雪が落ちていた。

自分本来のサイズよりも少し大きなコートに身を包んだ睦月が、はふ、と息を吐く。

白い息は、空へと消えていった。

「…………………」

…言えなかった。

勇気は、出てこなかった。

何度も試みはした。

帰り道、ファミレス――機会はあった、何度も。

けれど。

「……提督くん?」

「…あ、ああ」

「…で、どーしましょーか!」

「………そうだな…どうするか」

今、俺は睦月と街を歩いている。

クリスマスの、この日に。

言い出せなくて、引きずって。

長引けば辛くなるのは、お互いなのに。

「……睦月」

「はい、どーしました?」

「…あそこの喫茶店、入らないか?」

「…おお、高そー…珍しい選択ですにゃー、提督くんにしては」

「……払いは持つよ、だから」

「んー…悪いですー、と言いたいですが、ここはお言葉に甘えちゃいますかー!」

たたっと、小気味良い足音を響かせながら、アスファルトの道路を睦月が駆けていく。

「急ぎましょーよー!クリスマスは短いんですよー!」

そして、店の前で俺に向かって大きく手を振った。

「……ああ」

そんな睦月の微笑ましい行動が。

今の俺には、何よりも辛かった。



「……ホットコーヒー」

「…睦月はー…カプチーノでお願いします」

「かしこまりました」

通されたのは、話をするにはおあつらえ向きの奥まった席。

二人がけの小さなテーブルに、向い合って座る。

「…………」

「…………」

言う事が、見当たらない。

沈黙の中に、エアコンの暖風が噴き出る音だけが響いている。

「…お待たせいたしました」

そのままただ座っていると。

湯気の立ち昇るティーカップが二つ、目の前に置かれた。

漆黒の液体に、同じく運ばれてきたミルクピッチャーを傾ける。

黒に白が混ざって、茶色に変わる。

…まるで、俺の心のようだと思った。

定まらぬ、曖昧な色。

「………」

心の中で一つ、舌打ちをして。

その液体を一口啜る。

そして、彼女の方へと向き直った。

「………睦月」

「…はい?」

「…今日呼んだのは、話をしたかったんだ」

「………話、ですか」

「…ああ」

言い淀む意味など無いのだ。

引き伸ばすのは、ただ辛いだけ。

俺にとっても睦月にとっても辛いだけ。

大きく息を吐いて、ティーカップを置く。

「…あの、な………」

『…別れて欲しい』と。

それだけを言えばいい。

理由も、正直に離せばいい。

嫌われて、責められて、それで構わない。

むしろ、そのくらいは受けて当然の罰だ。

……なのに。

…言えない。

開いた口から、言葉が出ない。

再びティーカップに伸ばしかけた手を止める。



…そんな時。

先に言葉を紡いだのは、睦月だった。

「………別れたい」

「…っ!?」

「…ですか?提督くん」

真っ直ぐに俺を射抜いた睦月の目。

丸みのある双眸は、いつにもなく真剣に此方を見つめていた。

「……睦月」

なぜ、までは言えない。

それだけで精一杯だった。

「……ホントはね、睦月、気付いてたんだにゃー」

「…提督くんが、睦月の告白を受けた時」

「いや、受けてからもずっと」

「…睦月の事…そーいう目で、見てないんだろうなって」

身体は、動かなかった。

驚きとか、色んな感情がぐるぐると回って。

脳裏には「何故?」という疑問符だけが浮かんでいて。

「……だから…睦月は」

「…提督くんを、振り向かせたかったんだにゃー」

「……ちょっとだけ、卑怯な事もしたよ?」

「…会う人皆に、付き合ってまーす!って言ってれば…提督くんの意識も変わっていくかな、とか」

「…わざと、人のいっぱいいる所で…提督くんに甘えてみたり」

「…………実らなかったみたいだけど、にゃはは…」

「…睦月、お前」

「……そのくらいわかるよー、提督くん」

「だって…睦月は、提督くんが好きだったから」

「………提督くんが、睦月の告白を断らなかった事も」

「…あれは、提督くんなりの優しさなんだろうって、すぐにわかったんだにゃー」

「にゃはは、うーむ、しかし遂にこの瞬間がやって来てしまいましたかー」

睦月が、陰っていた顔を無理矢理作った不出来な笑顔に変える。

大きな瞳に光る液体の正体は、簡単に予想が付いた。




「一…いや、二ヶ月…くらいかにゃー?」

「提督くんの、彼女だった期間は…」

「……楽しかったよ、凄く」

「…睦月、何でお前、俺を――」

責めないんだと、理由を聞かないんだと。

言おうとした言葉は、睦月の笑顔に遮られた。

「だって、睦月は提督くんが好きだから」

「だから、睦月に興味がないのもわかってたから…」

「ちょっとだけ…ちょっとだけでも、夢、見られた、だけで、幸せでぇ…っ」

その笑顔は、ボロボロで、崩れかけで。

最後まで続かぬ言葉の代わりに、大粒の涙がテーブルに落ちた。

「……だから……だから、ね」

「…提督くん、……こんな、睦月と、付き合ってくれて」

もう隠せない、涙に塗れた睦月の顔。

真っ赤になった瞳、嗚咽混じりの声。

だけど、睦月は笑った。

「…ありがとう、ね?」

最後に、とびっきりの笑顔を作って。

「ありがとう」と。

そう、言ったのだ。

「……ごめんね、支払い、してくれるんだよね」

「…お、おい……」

「…それじゃあ、任せるにゃー…よー、ふとっぱらー!」

「…睦月――!」

呼び止めた。

意味は無いのだろうと、知っていたけれど。

果たして、睦月は去っていく。

「……睦月…」

残されたのは、俺と、まだ湯気の昇るティーカップ。

睦月の前にあったカプチーノは、一切手を付けられておらず。

ただ、スプーンでぐしゃぐしゃにかき回されていただけだった。




「ありがとうございましたー……」

二人分の会計を終え、店を出る。

店員が俺を見る目は、どこか生暖かい。

きっと、走り去る睦月を見ていたのだろう。

喫茶店の扉を開ければ、先程まで降っていた雪がしっかりと積もっていた。

似合わぬ雪化粧をされたクリスマスの町並み。

その誰もを浮つかせるような景色さえも、俺の目には恨めしい。

雪に残る足跡を見つめながら、歩いて行く。

「…………なんで」

「…なんでだよ、睦月」

…なんで、俺を責めないんだ。

なんで、罵りも、怒りもしないんだ。

なんで、怒ってくれないんだ。

…責めてくれればよかった。

…怒ってくれればよかった。

そうすれば。

―そうすれば、スッキリしたのか?

…自分の声が響く。

そうだ。

怒ってくれれば、責めてくれれば。

そこで、終わったものだって思えたんだ。

「…………」

勝手だったんだ、俺は最後まで。

言わせたのだって、睦月からで。

結局、自分が楽な方へと逃げたかっただけ。

自分のしたことのケジメを、他人に求めたいただけ。

「……っと、わっ!?」

そんな考え事をして歩いていたからだろう。

慣れない雪道に、足を取られて。

前のめりに、思い切りコケる。

「…っつー…」

なんとか腕を前に出すことは間に合ったものの、強かに両手を地面に打ち付けた。

…立つことが、面倒だ。

このまま、雪の積もった地面に身体を投げ出してしまいたい。

何も考えずに、何もせずに。



…なんてことを考えたが、流石にそれはマズい。

アホなことをしてないで、さっさと家に帰ろう―と。

顔を上げて、気付いた。

「……え?」

俺の前に、差し出された手に。

その先、ピンク色の傘の下の笑顔に。

「…なーにやってんだ、ダサいぞー、提督くん」

「…瑞、鳳?」

「うん、そうだよ…って、今更名前聞かれる間柄だったのかな」

「………どうして」

病院にいたんじゃ、という疑問に、すぐに彼女は答える。

「めでたく今日付けで退院!クリスマスにギリギリ駆け込み乗車しましたっ!」

「…そう、なのか」

「…うん…提督くんは…あんまり、クリスマスを楽しんでるって空気じゃなさそうだけど」

「……それは」

「…なーんで、よりによって今日言っちゃったのさ」

「……ずっと、引き伸ばしてたから」

「……そっか」

差し出された手を握る。

俺の冷えた掌とは対称的に、暖かい瑞鳳の手。

それを支えにして、立ち上がる。

「…雪だらけ、雪だるまでも目指してたのかな?」

「……かもな」

どうにも思わぬ長い間あの姿勢で固まっていたらしい。

コートには雪がうっすらと積もっていた。

それを叩きながら、瑞鳳が続ける。

「……その様子だと」

「…睦月さんは、責めてくれなかったんだね」

「…………え?」

「…提督くんの求めた救いは、あえなく空振ったわけだ」



「…何で、それを」

「簡単だよ、だって、こういう時は責められたいもの」

全て見抜いたような口ぶりで、瑞鳳が言う。

「…責められたら、怒ってくれたらさ」

「思ってることをぶつけてくれたら、少なくとも提督くんは満足するもんね」

「…………」

「…人って、そういうものだからさ」

「…怒られたいんだよ、こういう時、自分のやったことを責めて欲しいんだよ」

「そしたら―それが、過去の事になるから」

「酷い事したなぁ、あんなに怒らせた…反省しよう、ってさ」

「……そう、だよ」

「…そうだよ、俺は―俺は、酷い事をしたのに!」

思わず、叫ぶ。

そうだ、睦月は何で俺を責めない。

あまつさえ「ありがとう」なんて――!

「…何で、お前は笑おうとするんだよ!」

「…何で、俺を責めないんだよ、怒らないんだよ!」

「……何で、そんなに」

優しいんだよ、お前は。

こんな勝手な、俺にさえ。

「……提督くん」

「…私はね、提督くんと付き合えて、とっても幸せなんだ」

「……瑞鳳?」

「…凄く、幸せ」

「嘘みたいに、幸せ」

「…いきなり、どうしたんだ?」

「…でもさ、きっと…私達の幸せって、誰かの上に成り立ってるんだよ」

あの人達も―と、瑞鳳が少し声のトーンを落として続ける。

「…私を虐めてた人達だって、それで小さな幸せを感じてたから」

「だから、ずっと続けてたんだと思う」

「………なあ、話が読めないんだが――」

「…同じ事、だよ」

「今の私の幸せは、睦月さんの想いの上に成り立ってる」

「勝手なんだよ、人間の幸せって、全部、全部、勝手なの」

「……勝手」

「…自分勝手の、自分本位の、自己満足」

「それが、私達の幸せ」




「…………」

「…だから…さ、提督くん」

桃色の、ぷるっとした、見るからに柔らかな唇。

それが、俺に触れる。

冬の風に晒されたキスは、少しだけ冷たい物だった。

「……貴方は、せめてその気持ちを忘れないで」

「過去の事なんかに、しないで」

「…睦月さんの想いを、せめて覚えてあげていて」

「勝手な幸せで、踏み躙った想いを」

「………瑞鳳」

「…と、言うわけでー!」

続けようとした言葉は、場違いな程に陽気な瑞鳳に遮られる。

そのまま、瑞鳳は俺の手を握った。

「クリスマス、楽しんじゃいましょうか!」

「……え?」

「んー、しばらく病院生活だったからねー、鬱憤がこう…色々溜ってて、もう大変なのよ」

「…まずは…うーん、そうだ!カラオケがいいなー!」

「…カラオケ、か」

「……入れんのかね、今からで」

「…どうだろ?まだそこまで混んでは無いと思うけど」

「……まあ、とりあえず行ってみるか」

「うん、そうしましょう!」

クリスマス。

慣れない雪化粧に彩られた町並みを、二人で歩く。

「…そういえば、今年はホワイトクリスマスなのね」

「そうだな、珍しい」

「ふふっ、なんかロマンチックだなぁ」

「…そうだな」

「………凄く、ロマンチックだよ」

小さなピンク色の相合傘。

それに入りきれずに、身体がはみ出しても。

握った手は、暖かかった。

こんな所でおしまい
エピローグに続きます

最近微妙に忙しい
ヒットマンで思ったというか安価見た時から思ってたけど舞風って金髪だしこれでツインテールだったら完全に○ーニャちゃんだよね
つまり提督はやすなポジ…
エピローグ投下、短いけどね



俺と瑞鳳が付き合ったところで。

世界は、劇的になんて変わらない。

冬は寒いし、12月31日の次の日は新年だ。

そんな訳で初詣だ。見事に脈絡が無い。

「……さむー」

「…しかも人多いしなー」

「…それは仕方ないよー、新年だもん」

あのクリスマスの次の日、終業式。

睦月は普通に教室に居て。

「おはようございます!」と元気良く挨拶をした。

俺にも、久々に学校にやって来た瑞鳳にも。

それが、どれだけの事なのか―俺には、想像も付かなかった。

結局、逃げてしまった俺には。

「…しっかしなぁ」

「何よー、不満そうな声出して」

「…何故浴衣じゃないのだ」

「嫌よ、新年からそんな面倒なことー」

病み上がりなのにー、と、瑞鳳が膨れる。

その頬を人差し指で付いてやると、窄めた唇から空気が出た。

「おー、ほっぺたぷにぷにだな」

「…人の顔で遊ばないの」

「別に遊んでなんか――」

「新年早々見せ付けてくれんのー、おふたりさん」


「…龍驤」

俺達の会話に割って入ってきた、これでもかと言う程に厭味ったらしい関西弁。

見やれば、声の主は苦い顔をした陰陽師。

「……あけましておめでとう」

「はいはい、おめでとさん」

「…おめでとうございます、龍驤さん」

「いやー、長続きすりゃええなー、今度は」

最後の言葉をやけに大きく強調して、龍驤が笑う。

「……そうだな、そうしたいよ」

「けっ、つまらん奴やの、言い返せや何か」

「…ウチもどーかしとったかもしれんわ、ホンマ」

「………すまん」

「……報われんな、アイツも」

「……アイツ?」

「…何でもあらへんわ……ま、アンタに抱いた興味も解消されたし、深海の奴らもあらかた片付いた」

どっちにしろその面もそろそろ見納めや―と、龍驤は俺達に背を向けた。

「お幸せに、おふたりさん」

「…そうや、あの札今度ちゃんと返せやー」

やはり、厭味ったらしい関西弁で。

それだけを言って、参拝客の人並みとは別の方向へと、龍驤は歩いて行った。


その帰り道、既に更地に近い状態となった近所の神社。

「………此処が壊されなけりゃ、あんな人混みに行くことも無かったのにな」

「…まーまー、仕方ないよ、そればっかりは」

既に鳥居やら何やらが撤去されたそこを見て、溜息を吐く。

世界は変わりはしないけれど、移ろいはするのだろう、前にも言ったように。

「…もう遊べねーのかぁ、此処で」

「ふふ、そんな歳じゃないでしょ」

「……いや…何だろうな、なんかさ」

「……なんか?」

「…わからん、此処で―なんか、あったような、そんな気がして」

言って、もう一度神社だった場所を見る。

何もない、ただの小さな石ばかりが転がる土地。

「……ん?」

その中央に、小さな石碑を見つけた。

「…ちょ、提督くん?勝手に入っちゃ…」

「いーんだって、正月から工事もしねーだろ」

張り巡らせれた黄色いロープを跨いで、石だらけの地面を歩いて行く。

石碑の目の前まで歩き、何かが刻まれているそれを見た。

「……なんだ、この札?」

よくよく見れば、石碑の中央に札が貼られている。

ぴたりと岩肌に貼り付いたそれは、とてもじゃないが取れそうに無い。

しかもその札のお陰で、石碑に刻まれた文字も読みづらくなっていて…とても迷惑である。

「提督くんってば!」

「…ああ、すまん」

「……?その石碑、なんて書いてあるの?」

「…いや…この変な札のせいでよく読めん」

「――野?…何だろ、わかんないなぁ…この神社の名前?」

「……うむ、わからん…帰って調べてみるか」

「…そうだよ、何にせよとりあえず帰ろうよー」

「そうだな、すまんかった、変な時間取らせて」

「ほんと、後でなんかおごってよー」

「…ぜんざいが家にある」

「…お雑煮がいいなぁ」

「贅沢者めっ」

ちょっぷ。

「あいたっ」

まあ、こんなもん気にしてもしゃーないか。

さっさと家に帰るべきだろう。

「さ、ぜんざいが待ってるぞー」

「…お雑煮ー」



「…………息子よ」

「…なんだ、母よ」

「…なぜこんなに険悪なのでしょうか」

「…俺も聞きたい」

食卓。

母親に彼女として瑞鳳を紹介した。

母親はうわーマジかと笑った。

いや、そこまではよかった。

そこまでは。

「……帰ってくれませんか?」

「…え、えーと…」

「…貴女は、睦月さんに申し訳ないと思わないんですか?」

「……そ、それはね、翔鶴さ…」

「気安く名前を呼ばないで下さい、不快です」

「貴女、お兄さんに何をしたんですか?」

「…あんなに、睦月さんと楽しそうだったのに」

「…だ、だからそれは…」

…胃がストレスでマッハ。

…勿論、余すこと無く全て完膚なきまでに俺のせいなのですけれども。

「なあ、息子よ」

「…なんだ、母よ」

「…今、結構聞き捨てならねーこと聞いた気がするぞ」

「……全て話します、母よ」

「…よろしい、殴る回数はその後で決める」

「…うっす」

こほん、と一つ咳払い。

「あのな、翔鶴、聞いてくれ――」

何処までも勝手な俺は。

何処までも勝手に幸せになろうとする。

その下に、色んな人の想いを踏み躙って。

仕方ないと。

そんな白々しい言葉でそれを濁しながら。

…でもさ、結局皆そんな物だろう?

その言葉は、果たして誰に向けたものだったのか。



【瑞鳳 HAPPYEND】

これが大体安価の結果だからね、しょうがないね
プロローグは遅くなるかも、全然浮かばん、というかまとまらん

あ、復活してたんか、よかおめ
出来はかなり微妙、とりあえず投下するけども
殺し屋と未来の娘って扱い難しすぎんよー



【プロローグ】


人生の目的であるとか、目標であるとか。

そんなことを聞かれたら、皆は何と答えるだろうか。

金持ち?

偉い人?

中には素敵な恋人だとか、そんなロマンあふれる回答をする人間もいるのだろうか。

まあ、それはいい。

さて、本題だが。

俺には目標も目的も無い。

勘違いしないで欲しい、別に人生を諦めて投げ出したわけじゃない。

むしろ、人生という物に敷かれたレールの上を走り続けている。

問題は、その走るレールが、余りにも満たされているということだ。

この国の人間なら一度は耳にしたことがあるであろう大企業、その長男として生まれ。

容姿端麗な両親のお陰で、十人並み以上の容姿を頂き。

幼少期から課される勉学やらスポーツやらの課題も、難なくこなしてきた。

そんな出来過ぎたレールの上を、ただ走っていた。

勿論、不満は無い。

だけれど、満足感も無い。

幸いにして、自分は優秀だったらしく。

有り余る資金で用意された一流の講師達に師事すれば、何だってすくすくと上達した。

不安も、焦燥も無かった。

その代わりに、達成感も無かった。

そんな人生。

果てしなく退屈で、満たされた人生。

「…そうそう、提督」

詮無きことを考えていた朝食の食卓で、父が何かを思い出したように言う。

母は、その隣でにこにこと笑っていた。



「はい、何でしょうか?」

「いや…お前も今年から高校2年生だろう、そろそろ恋人だなんだと考え始める頃じゃないか、とな」

「…はぁ」

その言葉に、曖昧に頷く。

興味が無いわけでは…いや、あんまり無いか。

少なくとも、女ァー!なんて程に求めちゃいない。

…その気になりゃ多分一人くらいはどうにか―つーのも、あながち強がりや妄想じゃないからかもしれないが。

「それで…だ」

食事スペースの、豪奢な扉に視線をやる。

その扉の両脇に控えていたメイドが、静かに扉を開いた。

「………………?」

扉の向こう側に立っていたのは、女の子。

見たところ同年代くらいだろうか?

自信なさげに伏せた目がちら、と此方を覗き見るように捉えた。

「…彼女は、羽黒さんと言ってな」

「見ての通り器量も良いのだが、それ以上に性格が――」

「…はぁ」

…羽黒、羽黒―といえば、そうか、聞いたことがある。

今度ウチが吸収する企業の名前だ。

それで、何となく経緯を理解した。

これも両親が俺に敷いたレールの一つなのだと。

「それでだな、ゆくゆくは結婚なんて物を目標にな――」

「…素敵な方ですね」

「そうだろうそうだろう、苦労したよ、これだけの人を探すのには」

どうやら、期待通りの返答だったようだ。

そうでしょうね、と答え、食べ終わった食器にスプーンを置く。

「…ご馳走様でした、父さん、彼女は今日から此処で?」

「ああ、部屋は2階の客室のどれかにしようと思っているんだが―そうだな、学校まで時間もあるだろうし、お前が案内してやってくれ」

「…わかりました、では、今日もお仕事頑張ってください」

「うむ、お前もしっかりな」

短く礼をして、扉の前、相変わらず俯いた羽黒に近づく。

ぴくん、と身体が跳ねて、やはり覗き見るように俺を窺った。

「行こうか」

「……は、はい…」

目は伏せたまま、頷く。

一度後ろを見て彼女が付いてくるのを確認してから、よく清掃された広い廊下へと足を踏み出した。



「…………………」

「…………………」

会話は無い。

俺の後ろを、ただ無言で羽黒は歩いていた。

それはそれで構わないのだが、視線が気になる。

頻繁に背中に刺さる、ちらちらとした視線。

そこまでするならいっそもうがっつり見てくれ。

「……………あ、あのっ!」

「……何?」

階段に足を掛けた瞬間、意を決したような羽黒の声。

俺が振り向くと、小さくしていた身体を更に縮こめた。

「…ご、ごめんなさいっ!」

「……?」

そして謝られた。どういうこっちゃ。

「…い、いえ…ず、ずっと難しい顔をしていましたから…不快に、させたのかと」

「……ああ、いや、そんなことはないよ」

どうかすれば悲痛ささえ感じ取れる声に、心の中で嘆息して、笑顔を作る。

「こっちこそごめんね、何も喋らずに歩いてて」

「…わ、私が悪いんです!ごめんなさいっ!」

「……そうだね、ちょっと遅いけど…自己紹介でもしておこうか」

「…は、はいっ!わ、私、羽黒と言います…えと、…それだけ、です…よろしく、お願いします」

先程からやけに俺に対して怯えているのが気になったが。

そもそも、今回彼女を此処に連れてきた経緯からして、彼女の意思なんて介在しちゃいないだろう。

ならばこの態度も当然かもしれない。



「…そうか、よろしく、羽黒」

「俺の事は、名前で気軽に呼んでくれて構わないよ」

「…は、はい…提督さん」

「…………まあ、良いか」

そこで丁度、階段を登り終える。

客室が並ぶ廊下を、手で示した。

「この辺が、客室だね」

「……広い、ですね」

「…そう…だね、謙遜するつもりは無いよ」

客室だけで10を超える屋敷を狭いと言ってしまうのは、流石に嫌味だろう。

さて―と、その居並ぶ部屋の、遠くに見える一番奥の部屋へと歩き出す。

「…あ、あの?」

「奥の部屋、庭がよく見えて、いい景色だから」

「……えと、いいんですか?」

「良いも何も、羽黒が一番良いと思う部屋を選んでほしいからね」

「…ごめんなさい」

「…謝らないでよ、これから―その、仲良くしなきゃいけないんだしさ」

「……ごめんなさい」

「…とりあえず、案内するよ」

俯いた羽黒を背にして、奥の部屋のドアを開ける。

彼女の気持ちもわかるが―何とも、前途多難であった。




「……結婚相手ー!?」

「そうなるなぁ」

「……それはー…何とも…おめでとう?」

「…めでたいのかねぇ」

「枯れてるわねー、なんか」

どーせ美人さんなんでしょー、とつまらなそうに隣を歩く彼女―雷が言った。

馬鹿でかい俺の自宅の近所に住む彼女とは、幼稚園の時からの付き合いである。

小学校、中学、そして今通っている地元一の名門高校でも、その付き合いは続いていた。

「ま、お前よりゃーな」

「…そーですかー、良いじゃない、びなんびじょーで」

最後の言葉をやけに伸ばして、んべ、と舌を出す。

「……そーかい、まあ…良いんだろうな」

「…元気ないわねー」

心配そうに俺を見る。

開いた眼は、どこまでも澄んでいた。

「もしかして、好きな人でもいたの?」

「…ああ、雷って娘がな」

「…ごめんなさい、生理的に無理なの」

「そりゃー残念だ、雷、振られたから慰めてくれ」

「おーよしよし、良い子ねー」

彼女は、本当に珍しい友達だ。

俺という人間と、打算無しに付き合ってくれる。

そんな人間が、どれだけいることか。

「…何かあったら、相談してね、提督くん」

「ああ、…ありがとうな、雷」

「…ううん、何も出来ないもの、それ以外」

…尤も、それをする機会は無いだろうけどさ。なんて。

その言葉は、胸にしまって歩き出した。



「…あ、見つけた、提督くん!」

「……霧島さん」

「いやー、幸先良いわね新学期から!」

「…雷、パス」

「…パスされてもー…」

人の行き交う校門。

やたら張り切っているメガネの先輩が、俺の前に立ち塞がっていた。

「今日こそは生徒会に入ることを了承して貰うわよ!」

「…雷、お前生徒会活動とか興味ないか?」

「無いわ」

「…だそうです」

「貴方に言っているの!」

朝からうるさい先輩である。

とりあえず溜息を吐いてみた。

「…絶対、貴方はその才能を何かに活かすべきなの!」

「………はあ」

ミス!ダメージは無いようだ。

人の話聞かねえなぁ、この先輩。

「しかしそれは生徒会活動ではないと思うんです」

「じゃあ、なにか部活を始めてみるとか」

「…だってよ、雷」

「…困ったら私に振るのやめてくれないかしら」

「提督くん!」

「…わかりましたって、考えときますから」

「…それはずっと前から聞いてるわ」

「考えた結果、迷い中です…むむむ」

「…凄いわ…提督くんがこんなに真剣に悩んでいるなんて…私もサポートするわね、頑張れー!」

「………わかりました、今日の所は諦めます」

「でも、絶対に貴方の才能は活かすべきよ!」

「…どーもっす」

最後に一つ言って、背を向けて霧島さんが去っていく。

それを見てから、先程よりも大きく溜息を吐いた。



「…大変ねー」

「大変だよ」

「…でもさ、何で何もしないの、提督くん?」

「…何も?」

「霧島先輩じゃないけど、部活とか…運動も勉強も何でも出来るじゃない」

「……つまんねーの」

「…つまんない?」

「…他の奴、すぐ抜かすだろうからな」

「……うーわ、……本気で言ってるのが何とも…」

「…事実だろーよ」

「……そうね、…なんか悔しいわ」

えい、と雷が力のない拳で俺の腹を殴る。

「…なんだよ」

「……腹筋力判定?」

「何じゃそりゃ」

「…さあ…とりあえず、教室行きましょ?」

「…そうだな」

見れば、時計は既に良い時間を示している。

少し急ぎ足の周りの生徒に交じるように、俺達も昇降口へと向かったのだった。



「…えー、では、転校生をだなー」

転校生がいるらしい。

まあ、それ自体は別に良い。

その一人が羽黒だったのも、驚きはしたが見た目的にそんな物なんだろうと納得もした。

だが――

「じー…………」

「……あの、何ですか?」

「あらぁ、…気付かれちゃったかしらー?」

「………」

気付くも何も。

自己紹介が終わって、隣の席に座って、それから教師がHRの話を進める間ずっとこっちを見ているのである。

気にならないほうがおかしいだろう。

「……何でしょうか?」

先程よりも少し丁寧に、平坦に言葉を告げる。

それに、荒潮―といったか、その転校生は何故か心底可笑しそうに笑う。

「…わー…聞いた通りー…すごー」

「…だから、何なんですか?」

「ううん、何でも何でもー…うふふ」

「………」

何だろうこの人。

何で俺見て笑ってるんだろう、春だからだろうか。

そうか、春だからだろうな。

そう勝手に結論づけて、一生懸命話を続ける教師へと目をやる。

「…………じー……」

…無視だ、無視。



「……貴方が依頼主?」

驚きをありありと表した顔で俺を見る少女―舞風。

どう見たって俺と同い年くらいかそれ以下にしか見えない彼女。

「ああ、そうだ」

「…ま、いーんだけどさー…いやしかしー、うーむ、最年少だねぇ」

「…驚きたいのはこっちだって同じだ」

「ん、それはよーく言われます、あはは」

学校帰り、喫茶店。

コーヒーの匂いが染み付いたそこで彼女と話しているのは、何もデートなんて色っぽい話じゃない。

そもそも、会うのも今日が初めてだ。

…というかこんなに若いなんてと死ぬほど驚いた。

「それではー、お聞きしましょうか、依頼内容を」

「ああ…」

殺し屋。それもかなりの凄腕の。

まるで現実味の無い言葉。

それが、彼女の職業。

経緯は離せば長くなるが…金の力で色々して呼んでみた、と言っておく。

その理由は勿論、殺して欲しい奴がいるからだ。

「…拘束期間が長くなっても構わないんだったな?」

「ええ、しっかりと報酬を貰えるならねっ!」

「…そうか」

ス、と懐から通帳を出す。

「…これなら、どの位だ?」

「……げ!?……いやー……これ本物?」

「ああ、全財産だ」

「いくらでもご要望にお応え致します、うん!あ、何なら踊ってみようか?」

「…いらん、というかなぜ踊る」

「趣味なものでー、と、あ、はい、内容ね内容」

「…そうだな、まず標的だが――」

敷かれたレールに沿う人生は、つまらないと思っていた。

満たされた人生など、とうに飽きていた。

流れる景色が変わるだけの時間の流れに、嫌気すら差していた。

だから、それを変えるのだ。



「俺だ」

「………は?」

「俺を殺せ、舞風」

手に持ったコーヒーカップを、舞風が取り落とす。

そんなに高い場所からではなかった物の、熱い液体が彼女の手に跳ねた。

だが、それを気にした様子は無い。

怪訝な顔で、俺を見ている。

「……じ、自殺志願者…?…冗談なら、流石に怒るよ?」

「冗談なんかじゃない、だが、条件がある」

「…条件?」

「一年後だ」

「…一年後に、俺を殺してくれ」

「……ごめん、どういうことかな?」

「どういうことも何も、そのままの意味だ」

「先に言った通り、拘束期間が長くなるが―その間の衣食住は保証してやる」

「…それは…まあ、ありがたいけど…そこじゃなくて、その」

何かを言おうとする舞風。

それを遮るように、ただ一言を漏らす。



「…飽きた」

「……はぁ?」

「…途切れさせたいと思ったんだ、レールを」

「…俺も、一度くらい必死になって生きてみたいんだよ」

「終わりが見えりゃ、変わるかもしれんだろ?」

出来過ぎたレールが、途絶えていると知れば。

俺も、少しは変わるかもしれない。

流れるだけの景色が、しっかりと瞳に映るかもしれない。

「……ごめん、意味がわからない」

「…そうだろうな、だが、お前に求めてるのは理解じゃない」

「受けるか、受けないか…それだけだ」

「…報酬の割にすっごい楽だから…そりゃ、受けるけど……いいの?」

「何がだ?」

「…貴方が死ぬ、って事だよ」

「ああ、構わない」

濃いコーヒーを飲み下して、脇に置く。

そして、笑顔を作ってやった。

「それが、俺の望みだ」

「…………わかった」

もう後戻りは出来ないらかね、と舞風が念を押す。

「…その依頼、お受けします」

此処で、決まった。

俺の余命は、あと1年。

見える景色は、変わるだろうか。

とりあえず、今は。

「…よろしく、舞風」

「………ええ」

久方ぶりに胸に溢れる、何かに対する期待という感情を味わうように。

満面の笑みで、彼女に手を差し出す。

彼女は全く理解できないと、そんな表情で俺の手を握ったのだった。



【プロローグ 終】

やっぱりキルミーでベイベーなノリのギャクコメディにすりゃよかったな
大丈夫そうならこれでやります、寝ます

突然すいません
前作の戦闘の諸式を
別ssで使いたいのですが宜しいでしょうか

今からで誰かいるでしょうか

>>380 あのような拙い物で良ければどうぞどうぞ、作品を楽しみにしております

【4月1週】


舞風「……広い」

提督「何かいるものがあったら連絡してくれ、いつでも用意する」

駅前の高層マンションの上階、清潔感溢れる部屋。

自分の為に用意されたそれを見て舞風は立ち尽くす。

舞風「………お」

提督「…お?」

舞風「踊っていい!?」

提督「…………勝手にしてくれ」

…今更なのだが。

これに任せて大丈夫だったのだろうか。

俺がカウンターで殺してしまいそうだ。

舞風「わんつーるんたー♪」

提督「……どこの民族だお前は」

広いリビングでくるくる回る殺し屋に、思わず嘆息したのであった。




直下


舞風  **0/500
羽黒  **0/500
荒潮  **0/500
雷    **0/500
霧島  **0/500


高層マンションの一室。

舞風から頼まれた物を運ぶついでに、少しだけ休憩していくことにした。

舞風「…まさか本人が来るとは思わなかったよ」

提督「なに、余計な人件費を使いたくない、それに暇だったんだ」

日用品を運ぶのにわざわざ人足なんて雇わない程の金銭感覚はある。

…両親なら雇うだろうがな。

舞風「ま、いいけどね…はいっと」

提督「おう、サンキュー」

ティーバッグのはみ出るお茶を受け取り、一啜り。

…微妙。まあいつも良いもん飲んでるしな。

飲み差しのお茶を机に置いて、話を振る。

提督「気になっていたんだがな」

舞風「うん?」

提督「お前、何歳だ?」

俺の問いに、舞風がじとっとした目で俺を見た。

舞風「レディーに年齢を聞くのは良くないよー?」

提督「…気になったんだよ、何で殺し屋なんかしてるのか」

舞風「ああ、そういう…うーん…」

少し間を置き、考えてから口を開く。

舞風「確かに…年齢で言ったら提督とあんまり変わんないかなー」

提督「だろうな、そういう風にしか見えん」

舞風「…まー…こんなお仕事やってるのは色々ありましてね…それは聞くも涙語るも涙の壮大な…」

提督「……ほう、泣きながら聞いてやるから話してみろ」

舞風「うおう、そんなに食いつかれても困るってば」

提督「久々に泣きたくなったんだ、涙ちょちょぎれるような語りを期待してるぞ」

舞風「…面倒くさいなーもう、はいはい、別にそんな大した話じゃございませんですよー」

提督「というと?」

舞風「……親の仕事継いだってだけ、本音を言うと結構かなり心から迷惑してますですね」

提督「…ふーん」

舞風「え!?折角話したのに酷くない!?」

提督「あ、いや、想像以上にどうでもいい理由だった、もっと壮大な理由付けろよ」

舞風「あたしが悪いのっ!?」

提督「当たり前だ、俺はお前に金を払ってんだぞ」

舞風「いや、そういう代金じゃないでしょ」

舞風「というか、あたしとしては提督の方が気になる、その金の使い方とかさ」

…ふむ、そういや話してなかったな、俺のことは。

>>+2

A.お前と同じ。

B.まあとりあえず本当のことを話しておく。

C.適当にでっちあげる。

A.お前と同じ。(*1.5)


提督「お前と同じ」

不味い茶を啜りながら、短く答える。

舞風「…同じ?」

提督「そう、親の金」

…といっても、あの通帳の金は親の物では無いのだけれども。

舞風「…同じ親譲りでも、全然立場が違うと思うのですがっ!」

提督「……ま、そうだな」

提督「…つっても、俺は俺で苦労してる」

舞風「……苦労ねー」

舞風「まあ、殺してくれって言うくらいだから…そうなのかもしれないけど」

提督「ああ、何でも出来るから暇すぎてな」

舞風「………むかつく、今殺したい」

提督「はは、人を殺したことはねーがな」

舞風「…そ、……そりゃ良いことだよ」

提督「……なあ、どんな感覚なんだ?」

舞風「…それ、普通聞く?」

提督「好奇心旺盛なもんで」

舞風「…猫ちゃんは死ぬよ、結構簡単に」

提督「一年後には死ぬんだ、そう焦るなよ」

舞風「……はあ…提督さぁ」

提督「ん?」

舞風「…ウザいね」

提督「はっは、俺はお前と話すのは結構楽しいんだがな」

舞風「うへー……」

提督「つーわけで、また来るわ」

空の湯のみを置き、立ち上がる。

リビングの扉に手をかけると、後ろからもう来んなという罵声が飛んできた。

とりあえず、今度はせめて茶葉を用意しておけと返しておいた。

…使用済みのティーバッグを投げられた。お茶臭くなった。



舞風→  108/500

ここまで
お付き合いいただきありがとうございました
やっぱ書くのキツいこの週



【4月2週】


提督「…ああ、羽黒」

羽黒「お、おはようございます!て、提督さん」

提督「……おはよう」

羽黒がこの家で暮らし始めてから早2週間程になるが。

未だに俺は彼女への接し方がよくわからない。

というかすぐ逃げてしまう。

羽黒「……あ、あの、学校の準備しますから!ごめんなさいっ!」

例に漏れず、今回も脱兎の如く廊下を駆けていく。

結婚なんて話はもう来年死んじゃう俺には全く関係無いのだが、あれでこの先生きのこれるかが不安である。

…まあいいか、所詮他人事だ。

俺も準備するか―と羽黒が向かった先とは逆の方向に廊下を歩き出す。

提督「………ん?」

「…………」サッ

そんな時、後ろから視線を感じた気がして振り返る。

…しかし誰もいない。

気のせいだったのだろうか?



>>+2


舞風   108/500
羽黒   **0/500
荒潮   **0/500
雷     **0/500
霧島   **0/500


雷「……むむー」

提督「……何してんだお前」

雷「あ、良いところにいた!」

提督「…あん?」

雷「この英単語の意味!」

提督「あー…これはな――」

教室の自分の机で難しい顔をしながらシャーペンをくるくる回していた雷。

どうやら、問題が解けずに詰まっていたようだ。

雷「やー、助かったわ!よ、人間辞書っ!」

提督「…凄く複雑な気分なんだが、その呼び名」

雷「褒めてるのよ?」

提督「辞書ってなぁ」

雷「ま、どうでもいいじゃない!ほらほら!」

ぱんぱんと、隣の椅子を手で叩く。

…座れというのだろうか。そこに座ってる奴と俺は話したことも無いんだが。

雷「ほーらー!」

提督「…わーったって」

余りにも理不尽に叩かれる椅子が可哀想になり、これ以上の被害拡大を防ぐために座る。

それを見て、雷は満足気に笑った。

雷「提督くん、手、出して?」

提督「…ん?…これでいいか?」

言の通り、掌を雷に突き出す。

すると、その上に彼女は何かの包装紙を落とした。

提督「…なんだこれ」

ちょっと溶け始めているその何か。うわすっげえベタってしてる。

雷「畠山牧場生キャラメル!親戚に貰ったの」

提督「…めちゃくちゃパチもん臭えな…つーか、溶けてんじゃねーか半分」

雷「……ポケットの中に入れてたのがまずかったかしら?」

提督「…お前のスカート、甘くなってそうだな」

雷「…あはは、今度はちゃんと鞄に入れてくるわね」

提督「んぐ…そうだな、機会があるかは知らんが」

…あっまい。この前食った香川うどんキャラメルよりはマシだがあっまい。

提督「……雷、お茶」

雷「はいっ」

と、受け取った水筒を勢い良く傾けて気付く。これが間接キスっぽい何かだということに。

…ニコニコ笑うこいつは気にしてないようだが…。

>>+3

A.…危機感ねぇな。

B.わかりやすく指摘してみる。

C.回りくどく指摘してみる。

B.わかりやすく指摘してみる。(*1.5)


提督「なあ、雷」

雷「?」

水筒を返しながら、言ってみる。

提督「…これは、間接キスってやつじゃないのか?」

雷「………おおー!」

雷はそれに、少し間を置いて手をぽんと叩いた。

…本当に気にしてなかったのか。

雷「んー…ま、気にしないわよ、私は別に」

雷「というかほら、今時回し飲みって普通みたいだし」

提督「…そんなもんなのかね」

雷「…あ、もしかして提督くんの方が意識しちゃった?」

雷「…ふーん、私の事そういう風に見てたんだー、このこのっ」

小さな身体を一生懸命に伸ばして肘でグリグリと頭を小突いてくる。

…何もそこまでして肘を出さなくても。

提督「…やーめーろ」

雷「ふふ、意外に乙女なのねー」

「……あ、あのー…」

雷「……?…あ、尾隣くん」

そんな中、割って入ってきた聞こえ慣れぬ声。

提督「…ああ、この席の…すまんな、勝手に占領したみたいで」

「…い、いえ…いいっす、別に…ただ、そろそろ授業なんで…」

提督「……だな、そんじゃ帰るわ、雷」

雷「おー、大儀であったー」

提督「…何故偉そうにするか」

雷「ふふー」

「………あの」

提督「…すまん、すぐ帰る」

とても迷惑そうな声に促されて立ち上がる。

だいたいそんな感じの昼休みであった。



雷→  *29/500



【4月3週】



霧島「――――」

提督「…お」

放課後、廊下を歩いていると。

生徒会役員と見られる一団が少し先を歩いていた。

提督「……そそくさっ」

とりあえず反転、少し回り道して昇降口へ向かう。

…まあ、悪い人じゃねーんだけどなぁ、あの人。

自分の価値観を人に押し付けさえしなければ、だが。

大体、生徒会なんてどうせやるのはただの雑用だろう。

そんなことに俺を巻き込むのはやめて欲しい物だ――

霧島「…あ、提督くん」

提督「…………」

…ばったり。

なるほど、生徒会の目的地も昇降口だったのね。



>>+1


舞風   108/500
羽黒   **0/500
荒潮   **0/500
雷     *29/500
霧島   **0/500

CS完全消滅、まー元々終わってたみたいなもんだけどさ じゃあの2014年 休憩します


「……………」

提督「……」

俺の視線の先。

廊下の影、微妙にはみ出ている黒髪。

なーんか最近家の中で妙に視線を感じるなと思っていたら、そんな場所に隠れてたのか。

提督「羽黒」

「…………」ビクッ

提督「…何をしてるんだ?」

「…………あぅ」

おずおずと、俺の前に羽黒が出てくる。

その姿はまるで、連行される罪人のようであった。

羽黒「……ご、ごめんなさい」

提督「…いや、気にしてはいないが…何でそんな事してるんだ?」

羽黒「…えと…それは……その、…ごめんなさいっ!」

提督「……謝られてもな」

どうにも埒が明かない。

この子と話すのは中々に難易度が高い。

提督「…ゆっくりでもいいからさ、どうしてそんな事してたのか、教えて欲しいな」

優しくそう言ってやると、それに促されて羽黒はぽつぽつと語り始めた。

羽黒「………あの、…ほんとは、…もっと、お話、したいんですけど」

羽黒「……えっと…、提督さん、私がいると…いつも、難しい顔してる…から」

羽黒「…嫌われてるのかな、って…思ったんです」

羽黒「…だから…」

提督「……ふむ」

なるほど、俺の態度にも問題があったのか。

…まあ、言われてみればそんなに楽しそうな顔はしちゃいなかったな。

うーむ――


>>+2


A.別にそんなつもりはないさ。

B.そんな事は無い、俺ももっと羽黒と話したかったよ。

C.……そうか、気を付ける。

B.そんな事は無い、俺ももっと羽黒と話したかったよ。(*1.5)



提督「…そんな事は無い、俺ももっと羽黒と話したいと思ってたよ」

提督「…生憎女性の相手がどうも苦手で、何を話していいかわからなくて…それが、ちょっと誤解させたのかもな、ごめん」

羽黒「…そう…ですか?」

提督「ああ、これからは隠れたりなんかしてないで、話しかけて欲しい」

羽黒「……ありがとうございます、あの…話、してみますね、頑張って」

提督「…まあ、頑張る様なもんじゃ無いと思うけどな」

羽黒「……それじゃあ、提督さん、そういうことで!」

提督「あ、…………おいおい」

走って廊下を駆けていく羽黒。

今話をするんじゃないのか。

…なんだかなぁ、嫌われてるのだろうかね。

提督「…ま、…別に良いか」

どうせ、長く付き合う相手じゃないし、と。

彼女が駆けていった方向とは逆へ、歩みを進めたのであった。





羽黒→  107/500



【4月4週】


やりたいことを探してみた。

すると、驚く程に何もなかった。

どんな事も、俺には魅力的に映らない。

そればかりかそんな事に気付く度に、1年は長すぎたか、などと考えてしまう。

提督「……ふむ」

雷「元気無いわねー、そんなんじゃダメよ?」

提督「なあ、雷」

雷「どうしたの?」

提督「…お前、やりたいことってあるか?」

雷「勿論!えっとね、駅前のケーキ屋の食べ放題とか、部活の県大会突破とか…あ、海外旅行も行きたいわね!」

提督「……そうか」

雷「どうしたのよほんとに?…もしかして叶えてくれるの?」

提督「…何でもない、幸せそうだな、ってさ」

雷「……?」



>>+2


舞風   108/500
羽黒   107/500
荒潮   **0/500
雷     *29/500
霧島   **0/500



提督「おい」

荒潮「……あらぁ?」

隣の席の女。

暇さえあれば此方を覗き見るそいつに、遂に苛立ちが限界まで達した。

提督「…何だ、お前は」

荒潮「何……って、何かしらぁ?」

提督「何で俺を見てる、始業式からずっとだろう?」

荒潮「あらあら~…」

飄々というか、のらりくらりというか。

俺が明らかに怒りを表しているというのに、全く気にした様子もない。

荒潮「ごめんなさいねぇ、ちょっと、色々事情があるのよぉ」

提督「…事情?」

荒潮「…そうよ~…というか、良く考えたら怒っていいのは私の方じゃないかしら…」

提督「はぁ?何言ってんだよ?」

荒潮「……何でもないの、こっちの話よ」

荒潮「…所で、…提督さん?」

提督「…ん?」

荒潮「お友達になってくれないかしら~?」

提督「……ああ?」

困惑する。

話に何の脈絡も有りやしない。

提督「…おちょくってんのか?」

荒潮「あらあら、心外ねぇ」

くつくつと、どこか馬鹿にしたように笑う女。

非常に苛立つ。

……ふむ――――


>>+2


A.アホか。

B.ずっと絡まれても面倒だからとりあえず是と答えておく。

C.無視する。

A.アホか。(*1.0)


提督「…アホか」

荒潮「あらぁ?」

提督「…お前と友達になる理由なんぞどこにも無いだろう」

荒潮「まぁ……そうねぇ、そうかもしれないわねぇ」

崩さない笑顔がどうにも癪に障る。

提督「……お前、何がしたいんだ」

荒潮「…うふふ~…当ててみて?」

提督「……もういい」

荒潮「も~、冷たいのねぇ」

とりあえずこいつは放置だ。

本当に何がしたいかわからないから、不気味ですらある。

早く席替えしないものか、なんてことを思いつつ。

その不気味な荒潮という女から視線を外したのであった。



荒潮→  *76/500

すいません、ここまでにします
内容について何かあれば、意見くれるとありがたいです
学園もので無くなるのはよくあるのですけれど、ちょっと自分で書いてて何を書きたいかもわからなくなってきました
次からは少し安価に条件を付けた方がいいのかもしれないですね
お付き合いいただきありがとうございました

まーぐだぐだ言う前に書けって事っすね、変な事言うてごめんなさい
安価はダメだなーって思ったら言わせていただくことにします
始めます、多分短め



【5月1週】


舞風「………何でいるのよ」

提督「ゴールデンウィークに友達の家に遊びに」

舞風「友達になった覚えは無いんだけど?」

提督「心の狭いことを言うなよ、あ、プリンあるじゃん、貰う」

舞風「……・せっこいことするなぁこの金持ちー…」

提督「固いこと言うなよ、住む場所提供してんだからよ」パクッ

舞風「…それ、あたしがいつも使ってるスプーンなんだけど…」

提督「すまんすまん…うーん、やっぱりうちにある高級プリンの方が美味いなぁ」

舞風「…ホントに何しに来たんじゃこのやろー!」ムキー

提督「はっは、暇潰し」

舞風「でてけー!」




>>+2


舞風   108/500
羽黒   107/500
荒潮   *76/500
雷     *29/500
霧島   **0/500



さてさて。

さてもさても。

現在地、生徒会室。

提督「ふーむ」

「……………」

「……………」

周りを見回せば、無表情で仕事をする学生たち。

書類とかをどんどん消化している。真面目なことだ、日本の未来は彼らに任せておこう。

提督「では、頑張ってくれたまへ」

小声で呟いて、扉へ向かおうと立ち上がる。

霧島「こら」

提督「ぐへっ」

その首根っこを掴まれた。くるしい。

霧島「……あのね」

提督「…いや、つっても暇っすよ、これ」

―生徒会を見学して行きなさい。

とは他ならぬ霧島さんの言で。

俺は勿論丁重にお断りをしたのであるが、普通に引っ張られてこの場所に拉致されてしまったのであった。

彼らが日本の未来を担おうがどうしようが非常にどうでもいいのだが。

とりあえず言えることは唯一つある。

こんな物を見学していても何も面白くなんてないということである。

霧島「………うーん」

俺の主張に、確かにその通りだと彼女も思ったのだろう。

眉をへの字にして、思案している。

さあ、わかったらさっさと解放してくださいよ先輩。

霧島「よしっ!」

どどん。

思案の結果何を血迷ったのか俺の目の前には大量の紙束が積まれた。何でだよ。

霧島「体験していくといいわよ、折角だから」

提督「…………」

笑顔でそんな事を言う。

凄くこの人頭おかしいと思うのは俺だけだろうか。

こんな押し付けは断固として認められない。

うーむ――――


>>+2

A.逃げられそうな状況でもないしな…、観念するか。

B.…じゃあな、日本の未来を頼んだぞ。

C.あ、これ捨ててくればいいんですね、りょーかいっすー。

A.逃げられそうな状況でもないしな…、観念するか。(*1.5)


しゃーない。

観念しよう。

紙束の一枚を手に取る。

霧島「えーと、説明を――」

提督「ああ、いらねーっす」

霧島「…え?」

提督「さっき見たんで」

周りの学生たちがやっていたように処理すればいいのだろう。

まあ、そこまで複雑なもんでもなし。

適当に紙束を消化させていく。

提督「………体験、終わりっすねー」

霧島「…え、ええ…」

ふむ、結構かかってしまったか。

なんてことを考えながら書類の束をトントンと揃え、霧島さんの前に置く。

提督「それじゃ、お疲れ様でしたー」

霧島「……お疲れ様」

今度は、止められることはない。

…ま、そうだろうな。

そうやって、離れて行くもんだ、皆。

……いいさ、その方がせいせいするから。



霧島→  *30/500



【5月2週】


羽黒「………おはようございます」

提督「おはよう」

羽黒「…………」

提督「……あのさ――」スッ

羽黒「…は、はいっ!」ススッ

提督「いや、何故下がる」スッ

羽黒「い、いえ!そんなことは!」ススッ

提督「いやいや、下がってる下がってる」スッ

羽黒「さ、錯覚ですっ!」ススッ

提督「………そうなんだろうか」

羽黒「…そ、それで…何ですか?」

提督「…何でもない」


>>+2


舞風   108/500
羽黒   107/500
荒潮   *76/500
雷     *29/500
霧島   *30/500


提督「……なあ、もう一度質問してみてもいいか?」

舞風「嫌」

提督「…まだ何も言ってないが…つーかこのお茶美味しいな」

舞風「淹れ方をお勉強致しましたのでっ!嫌味ったらしい!誰かさんのお陰でねっ!」

提督「はは、大義であった、余は満足じゃ」

舞風「……金貰ってなかったら殺してるわ、ほんと」

提督「そう、それだよ、舞風」

舞風「…はぁ?」

澄んだ色の緑茶を飲み干して、机に置く。

そしてポケットの中のハンカチで軽く口元の液体を拭い、続けた。

提督「人を殺すって、どんな気分だ?」

舞風「…………」

彼女の瞳が、鋭くなる。その切っ先が向いているのは、俺。

提督「…睨むなよ」

舞風「聞くなと言ったよ」

提督「…気になるんだよ」

舞風「なんで?」

短い言葉には、何の感情も込められちゃいない。

ただひたすらに平坦で、冷たい言葉。

提督「…それは、楽しいのか?」

舞風「…………」

視線、それが一層鋭く、激しくなる。

怖い、素直にそう感じた。

舞風「ふざけないで」

提督「…いたって真面目で、本気だよ」

提督「何が俺にとって楽しいのか―っつーのを考えた時にさ、まずやってない事ってなんだろうって思ったんだ」

舞風「それが、人殺しだとでも言いたいの?」

提督「はは、察しがよくて助かるよ――っ!?」

舞風「ふざけないで」

舞風が動いた、と思った瞬間、気道が圧迫された。

見れば、正面から彼女が俺の首を掴んでいる。

舞風「……良いもんじゃない、とだけ言っておくわ」

舞風「……それでもしたいなら、好きにしなさいよ」

提督「…ごほっ!」

それだけ言って、手を離した。

険しい顔は、崩さぬままに。

>>+2

A.……悪かったな。

B.…ああ、勝手にさせてもらう。

C.…結構手のひら柔らかいんだな。

C.…結構手のひら柔らかいんだな。(*1.0)


提督「いつつ…」

舞風「………」

首を擦る俺に、彼女はただ鋭い視線を向けるばかり。

…少し踏み込み過ぎたな、どうも。

提督「……なあ、舞風」

舞風「…何よ」

提督「お前、結構手のひら柔らかいのな」

舞風「………はぁ?」

面食らう。

そんな言葉が似合う顔。

提督「良かったらもうちょい首絞めててくれないか?」

舞風「…………あのねー」

提督「こう、手のひら全体で包む感じで」

舞風「…………」

呆れた顔で、彼女は立ち上がる。

そのまま、ひったくるように俺の目の前の湯呑みを取って、台所へと歩いて行った。

舞風「……帰れ」

提督「……はいはい」

……とりあえず、流石に誤魔化せはしないみたいで。

…しゃーない、謝っときましょうかね。




舞風→  200/500

おやすみ
お付き合いいただきありがとうございました
久保可哀想

やまぐちさんごめんなさい
始めます



【5月3週】


提督「まーいーかーぜー」

舞風「………」

提督「まいかぜさーん」

舞風「………」

提督「お美しいまいかぜさーん」

舞風「………」

提督「お美しいけれど身体の凹凸のすくながっ!?」

舞風「しっつこいっ!」

提督「…すんません」



>>+3


舞風   200/500
羽黒   107/500
荒潮   *76/500
雷     *29/500
霧島   *30/500


羽黒「………」

提督「…ふーむ」

羽黒「…?」

提督「いや…」

俺と一定の距離を保って目の前で縮こまる羽黒。

なんか小動物みたいな奴である。

しかし生憎俺は生まれてこの方小動物を可愛いとか思ったことがない。

何ならハムスターとか絶滅しても特に俺に害はない。

…ううむ、何を言おうとしたのだろうか。

羽黒「……あ、あの…?」

提督「なあ、羽黒」

羽黒「は、はい?」

提督「ハムスター好き?」

羽黒「………そ、それなりに…」

疑問を顔いっぱいに表して頷く羽黒。

すまん、俺もちょっと意味がわからん。

提督「…いや、何か…なんかさぁ」

羽黒「は、はい」

提督「羽黒、小動物っぽいよな」

羽黒「…そ、そうでしょうか…?」

提督「こう…」

言葉とともに、一歩足を踏み出す。

羽黒「……」

合わせて、無言で羽黒が一歩下がる。

提督「…まあ、こういうところが」

羽黒「…ご、ごめんなさい」

提督「別に責めてはいないけどさ…ごめん、ちょっと思っただけだから気にしないでくれ」

羽黒「…はい」

……うーむむ。

凄い勢いで会話が続かない。俺、今まで羽黒の口から謝罪とはいといいえしか聞いたことない気がする。

提督「羽黒」

羽黒「……何ですか?」

提督「お前、俺が嫌いか?」

羽黒「………えっ!?い、いえっ!そんな事は無いですっ!」

…まあ、勿論否定するよな。

さて――

>>+3

A.冗談だ、忘れてくれ。

B.正直に言ってくれていい。

C.ならば…つまり、好きって事だな?

C.ならば…つまり、好きって事だな?(*1.0)


提督「ふむ…」

羽黒「あ、あの…」

提督「ならば…つまり、好きってことだな?」

羽黒「え!?」

提督「嫌いじゃない、つまり好き、ラブってことだろう?」

羽黒「……え、あ、その…そのぅ…」

提督「はは、照れるな羽黒、遠慮せず俺の胸に――」

羽黒「ご、ごめんなさーいっ!」

くるり。だだだっ。

脱兎の如く廊下を駆ける少女。

うむ、彼女には恐らく陸上部などが向いておるだろう。

それはともかく。

提督「…いつになったらあいつと普通に会話出来るんだろうか」

ふぅ、と溜息一つ。

…よし、なんか悔しいので絶対まともに会話できるレベルまで持って行ってやろう。

そんな事を誓った俺であった。




羽黒→  122/500

201じゃなかったかな、多分今まではきっとそのはず 違ったらごめん

【5月4週】


雷「………お腹すいた」

提督「…さっき昼休みだったろ?」

雷「……たーりーなーいー」

提督「んなこと言ってると太るぞー?」

雷「…いーの、成長期だから胸に行くのよー」

提督「………胸…か」

雷「………何よー」

提督「別にそんなもんが1cmや2cmでかくなったって遠目じゃわかんねーぐほっ!」

雷「…………提督くん?」

提督「……最近殴られてばっかな気がするんだが…」



>>+3


舞風   200/500
羽黒   122/500
荒潮   *76/500
雷     *29/500
霧島   *30/500




放課後、帰り道でのことである。

荒潮「あら、奇遇ねぇ」

どこからどう見ても待ち構えていたようにみえる風の女に、声を掛けられたのは。

提督「…………」

とりあえず警戒心を剥き出しにしておく。

全力で話しかけるなオーラを出しながら隣を通り過ぎようとして。

荒潮「もう、無視しちゃ嫌よ~?」

左腕の二の腕の辺りをがっしと掴まれる。

…こいつ、見た目に反して力強いな。

提督「……何の用ですかね」

荒潮「…うふふ、偶然、よ?」

提督「そりゃあ嫌な偶然だ、それじゃあさようなら」

早口で告げて去ろうとするも、彼女の手は俺を掴んだまま。

振り払ってやろうか―と力を込める。

荒潮「もう、怒らないでよ、私はただ、貴方に話したいことがあっただけなのに」

提督「俺は無い」

視線もやらずにそれだけ言って、腕を振ろうとした、その時――

荒潮「死ぬ、なんて考えちゃダメよ?」

提督「………は?」

荒潮「…うふふ」

力が抜けた。

虚を突かれたように、彼女を見る。

その顔は、ただ微笑みを湛えていた。

………――――


>>+3

A.気味が悪い、さっさと帰ろう。

B.……どういうことだ、何が言いたい?

C.何も言わずに睨み続けてみる。

C.何も言わずに睨み続けてみる。(*1.0)


提督「…………」

荒潮「…………ふふ」

目の前の笑顔は崩れない。

どれだけ視線に力を込めても。

ただ、楽しそうに笑っている。

提督「……………ちっ」

結局、根負けしたのは俺。

視線を外して、今度こそ彼女の横を通って行く。

その、横を抜ける一瞬。

荒潮「…――ん」

提督「…あ?」

彼女が、何事かを呟いた。

慌てて振り返るも、見えたのは微動だにしない後ろ姿だけ。

提督「…………」

…一体、なんだってんだ。

本当に困った。

変な奴に目を付けられたものだ。



荒潮→  106/500



【6月1週】


「…よっしゃ!そっち行ったぞー!」

「おっけー!ってうおぁ!?」

「甘い甘い!」

提督「……………」

今日の体育の授業はサッカーである。

しかし俺はというと、コートの中どころかグラウンドの隅に座っている。

提督「…ぼっちではない」

とりあえず誰かに言い訳しておくことにする。

そう、断じてぼっちではない。

お前が入るとおもしろくねーなと言われたので落ち込んでいるだけだ。

割りと俺のメンタルって紙なんだよな。

まあそりゃ死ぬって言い出す位だしな。

提督「はあ……」

溜息を吐く。

目に入るのは楽しそうなクラスメイトばかり。

その上、流れる雲へと視線を移す。

ああ、青い。

提督「…………雲っていいよな」

雷「そうかしら?」

提督「……………」

雷「あ、はい、お水あるわよ、どうぞ」

提督「……貰う」

…自然に混じるなよ。

いつから此処に居たんだコイツは。

何か恥ずかしくなったぞ。




>>+3


舞風   200/500
羽黒   122/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

提督「悪かった」

舞風「……へ?」

お茶を出した舞風が、そのままの態勢で固まる。

その手から湯呑みを取ると、いつもと違って冷たさを感じた。

提督「…ん、水出しなのか、気が利くな」

舞風「……え、いや、何でいきなり謝ったの?」

提督「………この前の事」

舞風「この前?」

提督「……無神経な事を聞いた」

舞風「…ああ……って、まだ気にしてたの?」

提督「…むしろ、お前は気にしてなかったのか」

舞風「…まぁ、ね……ああいう質問…といっても、流石にあそこまで直接的じゃないけど…慣れてるし」

提督「……そうか、そりゃ…余計に悪かった」

舞風「…提督が素直すぎて気持ち悪い、とゆーか、もっと早く謝りなよ、どうせなら」

提督「……うるさい」

乱暴に湯呑みを傾けて、冷たい液体を嚥下する。

それは、少し暑くなった気候に慣れた身体に丁度良く染みた。

提督「……まあ…悪かった」

舞風「何回も言わないでいいよ、ホントに気にしてないってば」

提督「…そうか」

それきり、二人共黙る。

湯呑みの置かれた机を挟んで、視線も交わさずにただ座っていた。

先にそれを破ったのは、舞風。

舞風「……あの質問」

提督「…あの質問?」

舞風「…答えてあげるよ」

一体何を指しているのか―と考えて、すぐに思い当たる。

『人を殺すって、どんな気分だ?』

提督「…別に無理しなくていい、謝った意味が無い」

舞風「……怖いんだ」

提督「………」

俺の言葉を振りきって、彼女は続ける。

舞風「…怖いの、凄く怖い」

舞風「……他にも色々感情は浮かぶけど…一番強いのは、これ」

舞風「とにかくとっても怖いです―以上、参考になったかな?」

提督「………」


>>+4

A.…ああ、ありがとう。

B.…だったら、何でそんな事続けてるんだ?

C.……俺を殺すのも怖いのか?

B.…だったら、何でそんな事続けてるんだ?(*1.0)


提督「…だったら」

舞風「…?」

提督「…だったら、何でそんな事続けてるんだ?」

舞風「……前にも言ったよ、親の仕事」

提督「別に、んなもんわざわざ継ぐ義務なんて」

舞風「あるよ」

提督「……何故だ?」

舞風「あたしが、殺したから」

提督「…誰を?」

舞風「お父さんと、お母さん」

提督「……な――」

舞風「さて、っと!」

立ち上がる。

いつもと同じ様に、俺の目の前の湯呑みを持って台所へ歩いて行く。

舞風「もう一杯、飲んでいく?」

提督「………いや」

舞風「…そっか」

首を振って、俺も立ち上がる。

リビングの扉を開く前に、振り返ってもう一度彼女を見る。

丁度合った瞳は、どこか寂しそうで。

…なぜ、俺にあんなことを言ったのだろう、なんて。

そのくらいの感想しか、出て来なかった。



舞風→  276/500

ここまで
お付き合いいただきありがとうございました

ジーモ、ノーウィン……ネクスト…イヤー?規定到達のことも考えると中4で最終戦出てくるか?
始めます



【舞風―その1】


人を殺すというコト。

言葉にするのは簡単な事だ。

誰にだって出来る、簡単な事だ。

そして、この世に生きる誰もが一度はそれをしたいと思ったことがある。

だけど、それをしてしまえば異常だ。

心の中でどれだけ人の死を望んでいても、それを実行してはならない。

異常で、異端だと後ろ指を指されてしまう。

きっと、それが大多数の人間にとっての普通なのだろう。

証拠に、あたしに依頼に来る人間すらも、あたしの事を軽蔑した視線で見る。

お笑い草だ。

心の底で誰かを殺したいと思っているような人間ですらも、人殺しを指して恐ろしいなどと言うのだから。

実行したか、頼んだかだけの違いなのに―である。

だから、初めてあんな依頼者を見た。

彼は、あたしを興味深そうに眺めていた。

軽蔑するでも、侮蔑するでもなく。

ただただ、興味深そうに。

失礼で、傲慢で、無神経な男。

依頼人であり、標的。

「……そういえば、初めて人の為にお茶とか淹れたなぁ…」

美味しい、と彼は言っていた。

「………んー」

まあ、悪くない、なんて。

そんな事を思った。



【6月2週】


霧島「あ、提督くん」

提督「……うげぇ」

霧島「……嫌そうな顔しない!」

提督「…はい、なんすか」

霧島「この前、お礼も受け取らずに帰ったでしょ」

提督「この前…って、ああ…」

霧島「凄く良く出来てたわ、ありがとう」

提督「…いえ…別に」

霧島「良かったら、また手伝ってくれないかしら?」

提督「え?…いいんすか?」

霧島「…いいもなにも、お願いするのはこっちよ?」

提督「あ…いや、…まあ、機会があれば」

霧島「どーせそうやって逃げるんでしょうね、もう」

提督「はは…いえいえ、ほんとに機会があればお手伝いしますよ」



>>+3


舞風   276/500
羽黒   122/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500



提督「…………」

羽黒「…………」

羽黒が部屋に来た。

別にそれはいい。

向こうから歩み寄ってくれて俺も嬉しい。

羽黒「…………」

提督「…………」

しかし一言も喋らんとはどういう事だ。

何の為に来たのだ。

俺にへいメイドお茶淹れてくれと頼ませるためか。

提督「……羽黒?」

羽黒「ひゃいっ!?」

とりあえず話しかけてみたら跳ねた。

ぴくーんと跳ねた。

提督「…いや、何の用事なのかなー…と」

羽黒「……は、はい…あの、あの、ですね、えと」

提督「ああ、そんな無理しなくてもゆっくり――」

ははは、と紳士的に微笑みを浮かべて紅茶を傾けた、そんな時であった。

羽黒「わ、私の初めてを貰って下さいっ!」

提督「ぶーっ!?」

紳士、紅茶をテーブルに吐く。

仕方ない、こんなものジェントルマンには予想出来ない。

羽黒「あ、あの、あのっ!」

提督「ま、待て…何だ、とりあえず落ち着け、冷静になれ」

羽黒「ご、ご不満でしょうかっ」

提督「…その…そういう訳じゃあない、何というか、あー…とにかく一度落ち着いて、冷静に」

羽黒「て、提督さんっ!」

………うーむ。

この状況――


>>+3


A.…明らかに理由があるだろうし、訊き出すべきだろう。

B.…承諾したふりをしてからかってやるか。

C.……逃げるが勝ち、であろう。

A.…明らかに理由があるだろうし、訊き出すべきだろう。(*1.5)


提督「羽黒」

羽黒「は、はいっ!」

提督「とりあえず、俺の話を聞け」

羽黒「…ぬ、脱いだ方が良いですか?」

提督「……それは必要ない」

どうにも一度スイッチが入ると極端すぎる娘だ。

そこまでして脱ぎたいのか。

提督「…一体、どういう風の吹き回しだ?」

羽黒「……いえ…提督さんが、素敵だな、って」

提督「そういうのはいい、今まで、全くそんな仕草見せてなかったろう」

羽黒「……あぅ…」

提督「……羽黒」

羽黒「…お、…お父様…が」

提督「…父親?」

羽黒「……貴方と、何も、進んでないって言ったら…とても、怒って…しまって」

羽黒「………それで…出来る事は何でもやれ…と、おっしゃいましたから」

提督「………はぁ」

その話で、何となく事情は理解した。

同時に、やっぱりこの娘が体の良い道具だったということも。

羽黒「……あの…ごめん、なさい」

提督「…別に良いよ」

羽黒「でも……」

提督「大丈夫そうだ、と言っておいてくれ」

羽黒「え?」

提督「…俺は、お前に骨抜きだと、結婚を放棄するような様子は無いと…次は、そう伝えておけ」

羽黒「……いいんですか?」

提督「…良いも何も、実際にそんなつもりはない」

羽黒「………あ…」

羽黒「……ごめんなさい、提督さん」

提督「……」

羽黒「…ごめんなさい」

…こういう時。

ありがとう、と言って欲しいと願うのは。

少し、傲慢なのだろうか。

再び紅茶を傾けながら、そんな事を考えた。

…あ、テーブルクロスのシミどうしよう。



羽黒→  236/500



【羽黒―その1】


私は、何も出来ない子だった。

運動も勉強も、何も。

ずっと、誰かの足を引っ張り続けて生きていた。

その容姿だけがお前の価値だ、とお父様は常々言っていた。

…それを使う時が来たと聞いて。

やっと私も人の役に立てるのだろうかと思ったのに。

「…ごめんなさいっ!」

「ああ、良いって良いって」

またか、とうんざりした顔を浮かべる彼。

会話は続かない。

それどころか、相対することすら長く保たない。

しかし、それでも彼は私に優しくしてくれる。

何故なのだろうか―と。

その理由が、気になった。



【6月3週】


提督「……」

舞風「やっ」

提督「…何でここにいる?」

学校の校門である。

どこからどう見ても校門である。

その目の前に殺し屋は立っていた。

舞風「買い物、手伝ってよー」

提督「…別に構わんが…」

提督「…お前、何でこんな所に」

舞風「いや、一々呼ぶのも面倒だったし」

提督「…一緒に帰って噂されたら恥ずかしいだろ?」

舞風「どこのヒロインよ…」



>>+3


舞風   276/500
羽黒   236/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

多分HAPPYENDなら何かしら救われてると思う、そういうご都合主義好きだから
お風呂



羽黒「………」チラッ

提督「………」

羽黒「………」チラッチラッ

ふむ。

めっちゃ見られてる。

視線の元は、廊下の柱の影にいる小動物。

提督「……羽黒?」

羽黒「ひゃいっ!?」

びくぅ。

声を掛けて見ると、やっぱり跳ねた。

…何というか…面白い奴である。

提督「…いや…どうした、こっち見てるみたいだけど」

羽黒「…い、いえ…たまたま、通りがかっただけです」

提督「………まあ、それなら良いが」

明らかに無理がある言い訳だが、深くは追求しないでおこう。

前を向いて、もう一度歩き出す。

…振りをして、少し歩いてすぐに後ろを振り向く。

羽黒「…………」チラッ

やっぱり廊下の影にいる小動物。

提督「こら」

羽黒「…ご、ごめんなさいっ!」

提督「……別に謝らなくてもいいんだが…」

何とも、積極的なのか消極的なのかわからない奴だ。

家の中で堂々とストーカーとは。

提督「…で、何で見てた?」

羽黒「………い、いえ…えと、…」

羽黒「……て、提督さんは、こんな私にも…優しい、ですよね」

羽黒「…だ、だから…何で、なのかなって…思って、聞きたいな…って」

提督「………」

…優しい、とは。

困った。そんなつもりなど無いというのに。

正直に言ってしまえば、そうしていた方が面倒がなさそうというだけだ。

どうせ羽黒を断った所で次の結婚相手が運ばれて来るのは目に見えているし、そもそも結婚するまで俺は生きちゃいない。

まあ…はっきり言えば、興味が無いだけなのだが、ふーむ―――


>>+3


A.正直に言う。

B.まあ、結婚するんだしね。

C.気のせいだろう。

C.気のせいだろう。(*0.5)


提督「気のせいだろう」

羽黒「……気のせい、ですか」

提督「ああ、気のせいだ」

それだけ言って、今度こそ本当に背中を向ける。

提督「…それじゃあな、羽黒」

羽黒「……は、はい」

提督「……」

それにしても―優しい、か。

提督「……ふ」

思わず、その言葉に笑いがこみ上げる。

…そんな事を言われたのは、初めてかもしれないな、と。




羽黒→  277/500

ここまで
お付き合いいただきありがとうございました

鷹ちゃんもとい吉村おめでとう
今日は眠いからおやすみです

自分から話題振っといてなんだけどそういうのはやめよう
始めます



【6月4週】


幸せとはあくまで主観。

いくら周りから幸せに見えても、そんな物に意味は無い。

提督「…つまり、俺は不幸なのだ」

雷「へー」

生返事をして、ちゅー、と野菜ジュースのパックを啜る。

…微妙に青臭い。

提督「何だその態度は、まじめに聞きなさい」

雷「んー…どんまい?」

提督「……ちくしょう」

こうして、俺の悩みはいつも棄却される。

贅沢なものであるとして。

…自分の今の境遇に満足できないことが、それ程に贅沢なのだろうか。



>>+3


舞風   276/500
羽黒   277/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500



提督「なあ」

舞風「ん」

口にアイスバーを咥えた彼女が振り向いた。

その瞳は、あげないわよと雄弁に語っている。いらんわ。

提督「この前の話」

舞風「……貴方ね、ホントにあたしの事を噺家か何かだと勘違いしてるでしょ」

提督「下手に意味深なことだけ話されると気になって夜も眠れないんだよ」

舞風「…この前ソファーでぐーすか寝てたじゃない」

提督「はっは、昼寝は問題ない」

舞風「……うっざいっ」

ふっと舞風が腕を振る。

アイスバーが付着していた棒は、吸い込まれるようにゴミ箱へと入っていった。

提督「ナイスボール、どうだ、ウチで投げてみないか?」

舞風「…はぁ」

なんて軽く拍手をしてやれば、うんざりとした様子で溜息を吐く。

全くユニークな殺し屋である。

舞風「…で、何だっけ…この前の話?」

提督「ああ、そうそう…親をうんたら、ってな」

舞風「…ほんっと無神経、頭の中身を疑うわ」

提督「大丈夫、その辺の誰よりも上等だ」

舞風「…………」

今度は、溜息は無く。

その代わりに、思い切り顰め面をされた。

舞風「……まあ…いいよ」

舞風「…あたしも…誰かに話したかったから、さ」

提督「お、丁度いいじゃないか」

舞風「………」

ギロリ。

茶化すな、とひと睨み。

提督「…悪い悪い、……で、どうしたんだ?」

舞風「……うん」

話を始めようとする舞風の瞳の色が、変わる。

この前も見た、寂しげな目。

或いは、これが彼女の素なのか。

そんな事を思いながら、口が開かれるのを待つ。

随分長い間、躊躇していた風に見えた。

やがて、ぽつりぽつりと、小さく開いた穴から言葉が漏れ始めた。


舞風「…何でそんな物が続いてるかは知らないけど」

―まあ、きっと需要があるんだろうね、と苦笑いして、すぐに話を戻す。

舞風「あたしの家って、代々続く殺し屋の家系なんだって」

提督「…代々、なのか」

舞風「…うん、遡ったらそれこそ…侍とか忍者とか、そのくらいだよ」

提督「………」

何だそのファンタジーは。あたし舞風こそがラストサムライですとか言うつもりか。

…なんて口を挟んだら流石にキレそうなので自重する。嘘を言っている様子もないし。

舞風「……昔から大事なんだよ、人殺しって…職業として成立するくらいには、ね」

提督「…ああ」

普通の人間は、人を殺す勇気も度胸もなく。

だけれど、それでも他人の死を望む。

殺し屋とは便利なものだ。

実際に自分の手で殺すよりもよっぽど罪悪感も恐怖心も少ないのに、結果として同じ効果を得られる。

…まあ、この辺の観念は現代的なもので、サムライニンジャ時代の事は知らん。

舞風「…あたしもそんな家の子として、昔からいろんな技術を叩きこまれてきて…強くなって」

舞風「これでも実は結構な天才なんて言われたりしちゃってね、へへーん」

無理矢理に作った笑顔で、胸を張る。

しかし、勿論そんなものはすぐに崩れた。

舞風「……それで、家を継ぐ時にさ、ある試験があるんだよ」

提督「…そりゃ…うん、必要だろうな、そういうのは」

仮にも人を殺す職業で、失敗は許されないのだ。そういう物は当然あって然るべきだろう。

舞風「…その、内容が…」

そこで、唇を噛んで言い淀む。

…その仕草で、先の内容、試験の内容の凡そに検討が付いた。

舞風「…先代当主を、殺すこと…だったの」

提督「………」

…ああ。やはりか。

そんな言葉が、頭の隅で響く。

舞風「…それは…試験の日まで、知らされてなくて」

その光景を思い出すかのように。

途切れ途切れの短い言葉を吐き出す。

舞風「…父様と母様が、道場で待ってて…刀、持ってて…あたし、冗談だよね、って言ったのに」

舞風「でも、ふたりとも、襲ってきて…あたし、そこで……」

この先の話は、もう想像が出来る。

…辛そうに話す彼女を――

>>+3

A.…もういい、悪かった。止める。

B.……まあ、良いか。黙ったままで話を続けさせる。

C.…ほら、早く。急かす。

A.…もういい、悪かった。止める。(*1.5)


提督「…もういい」

舞風「………」

話の概要は理解した。

これ以上続けさせる意味も無い。

提督「凡そ理解した、…悪かった、こんな話を聞いて」

舞風「…ううん、…あたしも、誰かに話したかったから、いいんだよ」

提督「…そう、さっきも言ってたけど、話したかったってのはどういう事だ?」

思い出すだけでそんな風になるというのに―

こいつは、さっき確かに言った、話したかった、と。

舞風「……あの試験の意味はね」

舞風「…先代当主を超える技量を持つ暗殺者を排出する、というのは勿論」

舞風「…家族を殺させることで、暗殺者として引退するまでを一人で過ごせ―ってことらしいよ」

提督「……」

舞風「人を殺した罪悪感も、恐怖心も、全部一人で抱えられるように」

舞風「人を殺すことに、慣れるように」

提督「…じゃあ、お前は…」

舞風「……そうだね、…破っちゃった」

提督「…いや…ずっと、今まで一人で抱えてたのか、と」

舞風「え…?あ………うん」

提督「…そうか…それは…辛かったろうな、さぞかし」

舞風「………」

提督「…何だ、ポカンとして」

舞風「…驚いた、提督の口からそんなに人間臭い言葉が出るなんて」

提督「ふん、俺は優しいってこの前初めて言われた男だぞ」

舞風「自慢になってなーいっ」

舞風「…でも」

提督「あん?」

舞風「…ちょっと嬉しかった、ありがとね」

提督「アホか、ただの気持ちのこもってない同情だ」

舞風「それでも、…うん、嬉しかった」

提督「…安い女だなぁ」

舞風「なんだとこのー!」

提督「ぐぇっ!?」



舞風→  346/500



【舞風―その2】


つまり、彼は貴重な色眼鏡を持たない人間なのだ。と結論づけた。

それは、彼自身がそういう風に見られてきた経験からだろうか。

肩書きで人を判断しない男なのだと。

簡単なようで難しい事だ。

特に、あたしみたいな相手には。

だからきっと、家族―父様と母様以外の人と話していて、初めて楽しいと思えたのだろう。

「ふーんふーん♪えーと、お茶っ葉は…」

さて、今日は彼が来ると言ってたか。

そんな事を思って戸棚を探る。

「………む」

無い。

お茶っ葉は無かった。

「……頼めば、買ってきて貰えるかも、だけど…うーん」

…何となく、彼が来た時にすぐにお茶を出してあげたい、なんて。

なぜだかそんな事を思って。

「…仕方ない、買いに行きますかー」

――なぜだか。

そう、理由ははっきりしないのだった。

けれど、買い物へ向かう足取りは軽く。

思わず警戒も解いてしまう程に、浮かれていた。



【7月1週】



提督「……なあ」

雷「?」

提督「あいほーんが」

雷「……わーお」

提督「あいほーんが曲がった!」

雷「…ポケットに入れるのが悪いってネットで見たわよ?」

提督「あいほーん!」

雷「……ダメね、これは…こらー、提督くん、戻ってきなさーい」

提督「でもこんな状態になっても問題無く動く、そう、あいほーんならね」

雷「……」

提督「というCMを考えてみた」

雷「…20点」

提督「……厳しい」



>>+3


舞風   276/500
羽黒   346/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500



羽黒「あ、あの、提督さんっ、そのですねっ」

提督「………」

微妙に。結構。わりかし。

最近の羽黒は頑張っている。

それは会話を続けようとするだとか、少しでも近くに寄ってくるだとか。そんな感じで。

羽黒「……えと、…学校で、あったんですけど――」

提督「うんうん」

拙いし、言っちゃあ何だが聞いててそこまで面白い話でもない。

それでも、一生懸命に何かを変えようとする気持ちは伝わってくる。

羽黒「…い、以上、です…」

提督「ああ、なるほど…そうだな、そりゃ確かに羽黒には災難だった」

羽黒「は、はい!災難でした…」

そして、恒例というか何というか。

話が終わった後、ずい、と頭を差し出してくる。

提督「…大分纏ってたな、今日の内容は」

羽黒「……あ、ありがとうございますっ」

その頭を撫でてやると、ぱあと顔を輝かせて喜ぶのである。

思うに、相当褒められ慣れていないのだろう。

…しかし…あれだな。

小動物の可愛さがわからんと言ったことがあるが、最近考えを改め始めた。

羽黒「………えへへ」

最初はおどおどしてたのが、少し懐き始めると一気に構って欲しがる。

そんなギャップに思わずやられてしまいそうだ。

…はっ!もしかすると俺の必死になれる天職はペットショップ店員…?

羽黒「……あの…?」

提督「…ああ、すまん」

どうやら、ペットショップ店員の自分を想像していたら手を止めてしまっていたようだ。

…しかし、何故謝る必要があったのだろう。そんな事を思いつつ再び左右に手を動かす。

羽黒「……提督、さん」

提督「…ん?」

羽黒「……私、えと…こんな風に褒められるの、初めてで」

言葉がはっきりと伝わるように、ゆっくり、彼女の口が動く。

羽黒「…嬉しい、です……あの、それだけです」

提督「…………」

…………。


>>+3

A.……羽黒は可愛いなぁ!

B.……まあ、うん、気にするな。

C.……ああ、そうか。

A.……羽黒は可愛いなぁ!(*1.5)


提督「……は」

羽黒「…は…?」

提督「……羽黒は可愛いなぁ!」

羽黒「……え?」

提督「………おっと」

いかん。ジェントルマンたる俺がつい叫んでしまった。

しかし…。

羽黒「……あ、あの」

提督「…おーよしよし」

羽黒「…く、くすぐったいです」

提督「…おーよしよしよしよし」

羽黒「……あぅぅ」

提督「………」

…なるほど。

悪くないな、これも。

まあ、両親が見たら卒倒しそうな光景ではあるが。




羽黒→  341/500



【羽黒―その2】


昔から人の顔色を伺うのは得意だった。

だから、少し気を払ってみたら、簡単に気付いた。

彼の優しさの意味に。

何の事はない。

単純に、私などどうでもいいのだ。

どうでもいいから、関心が無いから、興味が無いから。

だから、優しい―いや、優しいように見える。

あの時の彼の笑みの意味を、今になってやっと理解した。

だけど、同時に。

そんな無関心な優しさですらも、欲している自分に気付いた。

誰かにあんなに優しくされた事なんて、初めてで。

だから、私は何も言わない。

偽りでも、何でもいい。

その優しさを欲したのだ。

「…あ、あの…提督さん」

「ああ、どうした、羽黒?」

彼の目は、きっと私を映していない。

…それでもいい。

それでも、その優しさが欲しい。

それだけで…それだけで、良いと思っていた筈なのに。

私に、興味を持って下さい、と。

心の片隅で叫んでいる自分が、確かにいたのだ。

疲れた 休憩
本当は羽黒は可愛いなぁ!*3にしようと思ったけど悪ノリがすぎるなと思った
梨穂子は可愛いなあ!

連取はアリです


【7月2週】



提督「…夏、か」

羽黒「……?嫌い…ですか?」

提督「…嫌いじゃない、好きでもないがな」

羽黒「私は…好き、です」

提督「…どうしてだ?」

羽黒「……皆、イキイキしてるみたいに…見えるから…」

提督「そんな事は無い、暑さで悶え苦しんでいるのをごまかすために必死で元気なふりをしているだけだ」

羽黒「……そ、そんなに穿った見方しなくても…」



>>+4


舞風   346/500
羽黒   341/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

こんな所で終わりにさせていただきます
ちょっと休むともうそのままだらーんとなっちゃうね、書き続けるべきだったんだろうね
お付き合いいただきありがとうございました




羽黒「……あの、提督さん」

提督「…ん?」

羽黒「………えっと…」

定例となった羽黒との午後のティータイム。もとい会話練習。

それも一段落したという時、珍しく彼女は何かを言いたげに此方を見た。

というのも、基本的に話すことは学校であーだ世間がこーだみたいなテンプレ会話なので、話題自体に普段は意味が無い。

まあ、そもそもが会話練習とか言っちゃう位だし。

従って、話しやすさだけを重視した話題選びを彼女は毎回している。

故にこういう風に言葉を濁す事は珍しい。

羽黒「………提督さんは」

提督「…うん」

…おお。俺のことなのか。

なるほど一歩踏み込んだ会話練習という訳か、素晴らしい。

それは社会で役に立つんじゃないかね、しらんけどさ。

なんてふざけた考えは、次に告げられた言葉で霧消した。

羽黒「…何で、そんなにつまらなそうなんですか?」

提督「………え?」

―つまらなそうだ、と。

彼女は確かにそう言った。

俺に向けて、はっきりと。

提督「……つまらなそう、って…どういう事だ?」

動揺を隠しながら、鸚鵡返しで聞き返す。

…その事を今までに俺が告げたのは、雷と舞風にだけだ。

しかも雷は、それも半分冗談みたいな物だと思っている。

なのに、羽黒は確かに見抜いたのだ。

羽黒「……貴方の、提督さんの目は」

羽黒「…私を…ううん、映る物を、見える物を、全部見てない…って、わかったんです、私」

羽黒「まるで、映画の中の世界を見るみたいに、遠くから、この世界を見てるって」

提督「……………どうしてそんな事を?」

ここまで来ると、隠すつもりも無い。

ただ、何故、と問うた。


羽黒「……私は、色んな人を見てきましたから」

羽黒「…お父様に連れられて、小さな時から、色んな人を」

羽黒「だから、人の機微を感じることだけは得意…なんです」

羽黒「……貴方が、私に興味が無いんだってことは…すぐに分かりました」

羽黒「…でも、少しして気付いたんです」

羽黒「貴方は、その視線を私だけじゃなくて――」

羽黒「どんなものを見る時にも、向けてるってことに」

羽黒「………あの、…そんな感じ、です」

提督「……なるほどなぁ」

知らず、一段声が低くなる。

羽黒といつも話している時の作った声じゃなくて、舞風と話している時のような素の声。

提督「…初めてだ、気付かれたのは」

羽黒「………そ、そう…ですか」

羽黒「……あ、あの…」

提督「ん?」

羽黒「…私も…聞きたいんです…けど…えっと…」

羽黒「……何で、ですか?」

提督「…何故、ってなぁ」

提督「…さっき、お前が言ったこととだよ、つまりは」

羽黒「私、が…?」

提督「…ああ、映画の中の世界なんだよ」

提督「俺は、脚本に沿って生きてるだけなんだ」

提督「それも、挫折も敗北も無い、とびきり三流の脚本に」

―つまらないだろう、そんな映画?

おどけた仕草を作って、羽黒に尋ねる。

彼女は、ただ押し黙っていた。

提督「……まあ、それは良い」

提督「…それで、お前は一体それを俺に伝えて何がしたいんだ?」

提督「私は人をよく見ていますってアピールでもしたかったのか?」

羽黒「…ち、違います!」

叫んで、俺の右手を両手で握る。

羽黒「私は…私は、…貴方に、見て欲しいんです!」

羽黒「…興味を、関心を向けて欲しいんです」

羽黒「……だから…えっと……あの…えと、その…」

言葉を探して、言い淀む。

……俺は――

>>+1-5

A.…わかった。

B.…とりあえず、今日はここまでだ。

C.…無理だ。

B.…とりあえず、今日はここまでだ。(*1.0)


提督「…とりあえず、落ち着け」

羽黒「…は、はいっ」

少し整理タイムを挟む。

…というかそもそも、興味を持てって言われてはいわかりましたと頷いたらそれで良いのだろうか。

そんなに簡単に自分の思考を変えられるなら、俺は今こんなに苦労していない。

まあ、何はともあれ。

提督「……よし、今日はここまでだ」

羽黒「……こ、ここまで…ですか?」

提督「保留、ってことで」

提督「…だいたい、興味なんて能動的なもんじゃないだろうに」

羽黒「……貴方は、まるでわざと興味を抱かないようにしてるみたいに見えた、から…」

提督「…抱かないようにしてる?」

羽黒「…あ、えと…あの、…そう見えた、だけ、です」

提督「…まあ、良い」

提督「…とにかく、返事は保留だ」

羽黒「……はい」




羽黒→  391/500



【7月3週】


提督「……夏休み、ですか」

霧島「そう、暇でしょう?」

提督「…忙しいです」

霧島「あら、部活も何もしてないのに?」

提督「実家の手伝いを」

霧島「全く時間が無いのかしら?」

提督「少なくとも、その生徒会主催のキャンプに着いていく程の時間は無いです」

霧島「…そ、ま、…無理強いはしないわ、空けといてくれると嬉しいってだけ」

提督「……つーか、霧島先輩以外に知り合いいないからキツいんすよ」

霧島「それなら、雷ちゃん…だっけ?連れてきても良いのよ?」

提督「……いいっす、行きませんから」

霧島「…つれないわねぇ」



>>+4


舞風   346/500
羽黒   391/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

凱旋門賞全滅やんけ

誤爆です



舞風の住むマンションの玄関、基本的に俺はそこの呼び鈴を鳴らすことはない。

なぜなら合鍵を持っているから。今まで注意もされたことないし。

まあ、今まで部屋に行くときは何かしら連絡をしていたのでそれでも特に文句を言われることも無かった。

だが、今回は異常だった。そう、異常と表現する他無いだろう。

まず玄関に扉を開けて感じたのは、鉄臭さと生臭さの混じった臭い。

そして、リビングへと続く扉のすりガラスに張り付いた赤。

流石にここで「あ、マグロの解体でもしたのかな」と思うほど築地魚市場みたいな思考はしていない。

咄嗟に姿勢を低くして耳を澄ましてみたが、特に何か潜んでいる様子は無い。

尤も、それはあくまで俺の素人判断によるものだが。

気配なんか感じ取れる程ファンタジーじゃないし、危険なのは何となくわかっていた。

それでも、この状況で舞風が全く気にならないとは言えない。

提督「…………行く、かぁ」

足音をできるだけ殺して、土足のままで廊下を歩く。

一歩、一歩と扉へ近付くたび、むせ返るような不快な臭いは強くなる。

それは雄弁に、この異常の原因はあの扉の向こう側にあるのだと語っていた。

すりガラスに染み付いた赤は、どす黒いと言っていい程に赤い。

生理的な嫌悪感を覚える色―とでも言うのだろうか。

その扉の前に立って、それを改めてマジマジと見た時に、思わず逃げ出したくなるほどの不快感を覚えた。

提督「………」

ドアノブに手を掛ける。

今なら、まだ間に合うと頭の中で警鐘が鳴っていた。

誰かを呼ぶべきではないか、自分一人で此処に入るのは危険だと。

そして、そんな恐怖や不快感と同時に。

この先を見たいという、溢れんばかりの好奇心も湧いていた。

つくづく救いようの無い人間だと、自分でも思う。

そして、勝ったのは好奇心。

ドアノブに掛けた手を、ゆっくりと、音を立てないように回す。

提督「………っ」

出そうになった声を抑える。

飛び込んできた光景は、一面に広がった赤、赤、赤。

家具、壁、天井――至る所に広がった赤。

所々に貼り付いた臓物は、それを彩る不気味なオブジェ、とでも言おうか。

どうやれば、ここまでの殺戮を行えるのだろう。

凡そ、まともな人間の行動ではない。

そして、その赤の中心には。

綺麗な金の髪を、真紅に染めた、やはり真っ赤な少女。

この部屋の何よりも赤く染まった少女が、そこに居た。



ただ、中心の少女は俺の存在には気付いてはいない。

赤く染まった躰を地面に投げ出して頭を抱え。

小刻みに震えながら、何かを呟いていた。

側には、恐らく凶器であろう刀が投げ出されていて。

ああ、マジでサムライニンジャ時代の人間じみた殺し方をしているのか。

妙に冷静な頭は、その光景を見てそんな益体のない事を考えていた。

少女に向けて、一歩を踏み出す。

まだどこか生暖かい、恐らく人だったものに包まれたリビング。

靴を履いてきてよかった、と思う。

でなければ、こんな床を歩く気などしなかっただろうから。

ゆっくりと、床の粘性の液体に滑って転けないように歩く。

しかし、気持ちは急いていた。

転がる少女の側へと寄りたくて、急いていた。

舞風「……い、……さい」

そして、ようやく彼女の声が聞き取れる程の距離へと辿り着く。

両手で護るように抱えた頭と、呟きと同時に震える躰。

舞風「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

彼女は謝っていた。

思い切り目を瞑り、この光景を見ない様にして。

虚空へ向けて、意味のない言葉を発していた。

舞風「あたしが悪いです、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

躰中を赤く染めた舞風は、この狂っている赤の空間で、正常な人間であろうとしていた。

ぽた、と天井から液体が彼女の躰に落ちる。

それが触れた瞬間、彼女は躰を家具にぶつけながら、苦しそうに呻いて床を転がった。

ぶぢゅ、という厭な音は、転がった拍子に床に貼り付いた内蔵の破片でも押し潰したのだろうか。

提督「………」

この惨状は、彼女によるものだろう。

ああ、だとしたら彼女は狂っている。

そして、正常であろうと必死に藻掻いていた。

俺は――


>>+1-5


A.そんな彼女を抱きしめた。

B.……何…やってんだ?

C.……とりあえず帰る。

A.そんな彼女を抱きしめた。(*1.5 最低値401)



提督「……」

抱いた。

血生臭い、腸の付着した彼女の躰を抱いた。

舞風「…あ、ぎっ!」

やはりというべきか、彼女は俺の腕の中で暴れる。

それでも、痛くても、抵抗されても、離さない。

狂っている彼女の躰を、思い切り抱いた。

その内に抵抗も収まり、再びごめんなさいという呟きが漏れる。

提督「……ああ」

無理矢理に彼女を包んだまま、赤い天井を仰ぐ。

発した言葉は、意味の無い感嘆。

それは、初めて俺の胸に去来した感情だった。

美しい。

彼女は美しい。

舞風という彼女は、何と美しいのだ。

狂っているのに、正常であろうとして、全てを擦り減らしながら生きている。

正常であろうとして、狂っていく。

そうだ、彼女は生きている。

真に、生というものを謳歌している。

何と美しい人間なのだ。

これこそが、俺の求めていた物だ。

手に入れられなくて、求めていた物だ。

彼女が欲しい。

この美しい彼女を、手に入れたい。

彼女を、側で見ていたい。

提督「舞風……」

真っ赤な部屋で、鉄錆の臭いに包まれて。

愛しい名前を呼ぶ。

狂っていた。

そう、狂っていたのだ。

俺も、彼女も、世界も。

赤い空と、腸の雲。

落ちる雨は、ぽたぽたと。

そんな中で、俺は笑っていた。

だって、心の底から楽しかったのだから、嬉しかったのだから。



舞風→  401/500

凱旋門賞全然じゃねえかよ レース展開もアレだったし、つーかやっぱりトレヴでござったか
今日はここまで、次は舞風3から
お付き合いいただき、ありがとうございました


【舞風―その3】


ヒト。

ヒトだったもの。

母と父だったもの。

動かない、ただの肉塊。

ダメだ。

これはダメだ。

腕を切り落とした。足を切り落とした。

ダメだ。まだダメだ。ヒトだ。これじゃヒトだ。

あたしは人殺しになっちゃう。

皮を剥いだ。骨を砕いた。肉を刻んだ。

赤が広がる。赤が、全部塗りつぶしていく。

気付けば、畳張りの道場は一面の赤。

でも、それでもダメだった。

ヒトだったものが、その残滓が、あたしをどこからか責める。

耳を塞いだ。目を閉じた。何も見えない様に。何も聞こえない様に。

「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

知らず、漏れる言葉。誰に向けたのかもわからない謝罪。

あれから、ずっと。

あたしは誰かを殺す度に、こんな事を繰り返している。

意味は無い。意味なんて、無いんだと思う。

それでも、あたしは人殺しなんかになりたくなかった。

狂っていく、歪んでいく自分を受け入れたくなかった。

誰か、こんなあたしを助けて下さい。

求めた救い。誰にも受け取られる事のない救い。

そう、受け取られる事は、無かったはずなのに。

「………舞風」

あたしの躰を抱いた男が、愛おしそうに呼んだのは、あたしの名前。

そこにいつもの厭味な調子は無い。

ただただ、愛おしそうにあたしを呼んだ。

「俺は、お前を助けよう」

「だから、見せてくれ」

「美しいお前を、俺にもっと見せてくれ」

ああ。

あった。

あたしの救いは、そこにあった。

だから、あたしも彼に手を伸ばした。

それに、彼は満足そうに唇を歪める。

そんな光景に、なんだかあたしまで楽しくなって、笑ったのだ。



【7月4週】


舞風「…ごめんなさい、取り乱して、いつもああなの」

提督「はは、気にすんなって…ああ、全く気にする必要はないさ」

提督「にしても…尾けられてただと?」

舞風「…ん…多分、そう」

舞風「…あたし…結構、有名だから、色々」

舞風「最近ちょっと…油断してたから、だと思う」

提督「…マジでニンジャ世界のノリなのな」

提督「ま、そういうことだったら話は早い、家に来い、そんなら大丈夫だろ」

舞風「え?」

提督「わからんか?側に居ろっつってんだ」

舞風「…でも…ここの片付けとか」

提督「んなもん金でどうにかなる、ほら、…ああ、とりあえず風呂でも入らねぇと流石に外出は無理だなこりゃ」

舞風「……提督」

提督「…あ?」

舞風「…ほんとに、助けてくれるの?」

提督「ああ、勿論」

舞風「…もう、一人じゃないの?」

提督「ああ」

舞風「………っ」

提督「何だ、泣くなよ」

舞風「…ごめ、さい…嬉しくて…」

提督「……わーった、わーったから、風呂、先に…」

舞風「………やだ、一人は嫌」

提督「……参った、そこで意地を張られるとは」


>>+4


舞風   401/500
羽黒   391/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

ごめんなさい、今日はここまでにさせて下さい
短くて申し訳ありません

遂に昨日本当にシーズンが終了、久保の最多勝が無かったのがひたすら残念
まあ終わりと言ってもCS、日本シリーズ、日米野球とまだまだ色々ありますが
日シリ見に行きたいけどチケット取れるか…うーむ
始めます




羽黒「……」

いつもの様に会話をしにやってきた俺の部屋。

何も言わずに俺を見る羽黒。

その視線に込められた意味は、何となくわかる。

提督「…舞風の事か?」

羽黒「………はい」

やたらとゆっくり、投げかけた問いに頷いた。

提督「…まー…つっても、なんて説明したもんか」

羽黒「……あの、彼女が何者か、というのは…その、別に良いです」

提督「…ん?」

羽黒「…私が聞きたいのは、一つだけ…です」

羽黒「何が…あの人の何が、貴方の興味を惹いたんですか?」

提督「……ああ」

会話中、いつもなら逸しがちな視線。

それが、やけに今日は真っ直ぐだった。

提督「別に、大したことじゃない」

提督「あいつに惚れたんだ、俺は」

羽黒「………何で、ですか」

彼女が、ぎゅっと唇を噛んだのが見えた。

わからんもんだ、容姿でも後ろにある金でもなく、俺自身にここまで執着するような女がいるとは。

提督「…そうだな、……なあ羽黒、お前、人を殺したことあるか?」

羽黒「……ありません…けど」

それが何だ、という目で彼女が此方を見つめる。

提督「そりゃそうだ、普通そうだろうな」

提督「じゃあ、人を殺すとしたらどんな時だ?」

羽黒「……意図が、読めないです」

再びの質問に、羽黒が怪訝そうに顔を顰めた。

何故そんな事を聞くのか、と。

提督「別に一般論でもいい、ちゃんと意味のある問答だ」

だから答えてくれ、そう促すと、彼女は少し思案するように目を閉じる。

ややあって答えを見つけたらしくその目を開いた。

小さな唇が、言葉を紡ぐ。

羽黒「………それは…やっぱり、それに足る理由がある時…だと、思います」

提督「…理由?」

羽黒「…邪魔だと思ったり、復讐だったり、色々」

提督「……なるほど」

羽黒「……それが、一体?」

今度は俺に説明しろ、と羽黒が視線で促す。



提督「…まあ、一般論だな」

羽黒「……それで良い、と言ったじゃないですか」

提督「ああ、いやいや、構わん構わん」

どうも俺の言葉が気に障ったらしく、ムッとした顔を見せる。

にしても、今日はえらく表情が豊かだな。

提督「今更言うまでも無いが、人を殺すってのは異常だ」

羽黒「…はぁ」

提督「でもその異常は、人間が人間として生まれた当初から今まで、ずっと存在してるんだよ」

提督「どの社会、どの文明でも…どれだけ技術が発展しても、変わらずな」

羽黒「………」

彼女は今度もまた、意図がわからないと顔を曇らせる。

だが、口を挟むことは無い。

ただ黙って話を聞いている。

提督「…これは、最近の社会に限った話になるんだがな」

提督「思うに、その異常は、戦争なんかでもない限り衝動的なもんだと思うんだよ」

羽黒「…衝動的?」

提督「そう、一般的に言う動機だとかそんなもんは全部後付で、全ては衝動的に行われるもんだと」

羽黒「……違うと思います、だって、計画犯罪とか…」

提督「ああ、確かにそんな物は存在する、だけどさ、考えてもみろよ、人殺しの計画を練るだけなら、この世の殆どの人間がしたことがあると思うぜ?」

羽黒「…それは、現実的に実行しようと思った物じゃないと思います」

提督「いや、ここで重要なのは『殺したい』だとか、そんな感情を抱くのは別に異常でも何でも無いってことだ」

提督「…さて、でもそんな誰もが普遍的に考える事、それを実行してしまえば異端者だ」

羽黒「それは、当然です」

提督「ああ、当然も当然、当たり前の事だな」

提督「ただ、普通それを実行した奴はその異常から逃れたがる、自らを正当だと思いたくなるんだ、自分はそんな異端者じゃない、とな」

羽黒「…その為の後付が、動機…殺したかった理由、ですか?」

提督「そう、理解が早くて助かるよ」

「殺したい程憎んでいた」「――をされて、それをずっと恨んでいた」

誰かを恨むのも憎むのも、この世に生きる多くの人間が抱いている感情だ。

いっそ、消えてしまえば――そう思うことだって、珍しくはない。

だから、本質的にはそれは殺人の理由なんかに値しやしない。

ただ、自分の異常さを誤魔化すための後付の理由でしか無いのだ。

提督「…だから、俺はあいつに惚れたんだ」

提督「あいつは異常であることを理解していた、その上で、自らの異常性を誤魔化そうとしなかった」

言い訳だけなら、彼女は出来たはずだ。

仕事で強制されただとか、何でも良い。そうやって誤魔化して生きる事も出来た筈だ。

羽黒は、訳がわからない風に俺の話を聞いている。

しかしそれでも、やはり口を挟むことはしなかった。

選択肢の順番はいつも通り、わかりにくいだろうから一応



提督「異常に向き合おうとして、狂っていくんだ」

提督「逃げられないのを知っていて、それでも自分は正常でありたくて―狂気を認めたくがないために、狂気に染まる」

提督「ああ、人間だよ、あれこそ人間だ」

提督「誰よりも正常で、誰よりも真面目な人間だ」

提督「…ああ」

―だから彼女は、美しいのだ。

嘆息するように、その言葉を吐いた。

羽黒「………」

羽黒はただ、ひたすらに黙っていた。

何を言えばいいかわからなかったのか、それとも単純に、何も言う気が起きなかったのか。

提督「……ま、別に理解も納得も求めちゃいない」

提督「…聞かれたから、答えただけだ」

それだけ言って、立ち上がろうと椅子に手をかける。

遮ったのは、彼女の声。

羽黒「………提督さんは」

羽黒「……おかしい、と思います」

提督「…ああ、そうかもな、そうだろうな」

言われるまでもなく理解しているよ、笑う。

満たされすぎて溢れてしまった心は、どこかおかしくなってしまったのだろう。

だが、それは戻せと言われて戻せるものでは無い。

羽黒「……でも…例え、異常でも」

羽黒「……それで、自分を納得させないで、下さい」

羽黒「…貴方の心の中を読むことなんて、私には出来ないです」

羽黒「…でも…普通に戻ることを、普通の幸せを求める事を諦めたら…ダメだと思います」

羽黒「…提督さん、だから――」

言葉を探すように、一句一句、区切りながら続ける羽黒。

俺は――


>>+1-5


A.それは無理だ。

B.ひとまずこの場は、羽黒の言葉を遮る。

C.何も言わずに席を立つ。

B.ひとまずこの場は、羽黒の言葉を遮る。(*1.0 最高値399)


提督「…落ち着けって」

羽黒「……落ち着いてます」

提督「…ふむ、言われてみれば」

羽黒「…とにかく、提督さんは――」

提督「……ああ、そうだ」

羽黒「…?」

提督「父親と母親には、舞風の事をなんて説明したもんかな」

羽黒「……あの?」

提督「それを考えなきゃならんのだ、というわけで今日の所はお引取り願うよ、羽黒」

羽黒「……わかりました」

納得した様子でも無かったが、彼女は渋々席を立つ。

そのまま小さくお辞儀をして、部屋を去った。

提督「……にしても、変な奴だ」

異常だとわかっているのなら。

俺のことなど、放っておけばいいのに。




羽黒→  399/500



【8月1週】


舞風「~♪」

提督「………」

与えた客間。

そこでは舞風が曲もかかっていないのに調子外れで踊っている。

何だコイツは。

舞風「る~♪…あ、提督っ」

提督「……何だそれは、なんかの召喚の儀式か?」

舞風「…ちーがーう、趣味だよっ、趣味!」

提督「…にしてはヘッタクソだなぁ」

舞風「うっさいっ!」

どぼぉ。

殺し屋の拳は以前雷に殴られた時とは比べ物にならない威力で俺の腹に。

提督「……うごっ…」

舞風「…あ、ごめん、大丈夫?」

提督「ああ…にしても、上機嫌だな」

舞風「ふふん、提督のおかげだよ」

提督「そうかそうか」

舞風「…しっかし…その厭味っぽい性格、素なんだね」

提督「お前もそのダンス趣味だったんだな、てっきりウケ狙いかとっ!?」

舞風「だーまらっしゃい」



>>+3


舞風   401/500
羽黒   399/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500


羽黒「……提督さん」

彼女の表情は重い。

言えない事を隠している。

そんな重さ。

羽黒「…前にも、言いましたけど――」

普通、それを彼女は俺に求めた。

けれど、その奥にある物は。

何故普通ではダメなのかではないだろう―と、少なくとも、俺はそう思う。

言い換えるとするのなら。

何故普通ではダメなのかでなく。

提督「―何故、私じゃダメなんですか?」

羽黒「……っ!?」

提督「……結局、お前が言いたいのはこういうことじゃないのか?」

羽黒「…何、を…言っているんですか」

提督「お前が俺の心配をしているのは、あくまで結果だってことだ」

提督「…そうだな、言うなれば…お前が俺の側にいるための理由の後付、それが俺へのその心配ってことになるのか」

提督「……順番が逆だった、ってことだよな、それの」

羽黒「…………」

今日も今日とて、変わらない会話の練習。

尤も、既にそんなものは建前でしか無かったが。

最近は、多田野俺へ対する彼女の説得劇だ。

普通に戻ろう、そんな誘いだ。

しかし、いい加減そんな物を毎日聞くのにも飽きた。

これは、その結果だった。

羽黒「……何が」

提督「…ん?」

羽黒「…何が、悪いんですか」

提督「…ほう?」

羽黒「……好きな人の興味を惹こうとすることも、好きな人を普通に戻そうとすることも」

羽黒「…全部全部、普通の事じゃないですか」

提督「普通、ね」

羽黒「…提督さんは、私が提督さんの事を好きになったって…気付いてるんですよね?」

提督「…ああ、気を遣うつもりなどないし、応えるつもりもないが」

羽黒「…………っ」

まあ、ぼんやりとは考えていたが、はっきりと理解したのは今になってだ。

やはり、言葉にされないと伝わらない物はあるな。

それにしても、好きだから、とは――――

>>+1-5

A.……何故、そんな物にそこまで拘るんだ、お前は?

B.…馬鹿らしい、本当に馬鹿らしい理由だった。

A.……何故、そんな物にそこまで拘るんだ、お前は?(*1.5 最低401)


提督「…何故だ?」

羽黒「……?」

提督「…何故、そんな物にそこまで拘るんだ、お前は?」

羽黒「…そんな物、って?」

提督「別に、俺でなくたっていいだろう」

提督「…何で、そんな物を――」

羽黒「貴方じゃなきゃ、ダメなんです」

提督「…どうして?」

羽黒「…貴方だけ、だったから」

羽黒「私を本当に見てくれたのは、貴方のその目だけだったから」

提督「……意味がわからん」

羽黒「私にはわかるから、良いんです」

羽黒「…ねえ、提督さん」

提督「……何だ」

羽黒「……貴方が、どうしても私に興味が無いなら」

羽黒「何としても、興味、惹いてみせます」

提督「…はぁ?」

羽黒「もう、説得はしません」

羽黒「絶対、私に興味を持って貰います」

提督「……どうやって」

羽黒「……それは……えと、あの…今から、考えます」

提督「…ぷっ」

羽黒「…わ、笑わないでください!真剣なんですっ!」

提督「…悪い、…いや、そうかそうか…まあ…楽しみにしておくよ」

羽黒「……本気にしてないですよね、提督さん」

提督「…いーや、本当に楽しみにしてるさ」

思わず漏れた笑い。

その理由は定かでは無かったが。

あんな自然に、普通に笑ったのは、久しぶりだった。



羽黒→   466/500



【8月2週】


提督「なあ、羽黒よ」

羽黒「……な……なん、でしょうか」

提督「何故水着なのだ」

羽黒「………な、何のことでしょうか」

提督「此処は家の中で、つまり英語で言うとインザハウスだ」

羽黒「………そ、そうでしょうか」

提督「…何故水着なのだ」

羽黒「……きょ、興味を」

提督「…まあ、何だコイツという意味では持つかもしれんが」

羽黒「……だ、ダメでしたか」

提督「………スタイルは良いと思う」

羽黒「…あ、ありがとうございます…で、いいんでしょうか」

提督「……知らん」



>>+3


舞風   401/500
羽黒   466/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

今日はここまで
お付き合いいただきありがとうございました

キャラ安価はとりあえず今までと同じにして「あ、これダメだ」と思ったら言わせて頂く形でよろしいでしょうか
その場合キャラはそのまま、関係だけ最安価、のような感じで
何だかんだあの無茶ぶりが結構好きなので

そんな不明瞭なラインで決めるな、最初からどのラインが無理か決めとけという意見が多ければまた考えます
てわけで始めます


具体的に、興味を持つというのはどういう事だろう。

なんて、今こうして羽黒の事を考えているのは、広義で既に羽黒に興味を持っているのではないか。そんな事を思った。

ただ、それが俺の気を惹くかと言えば―否、であるが。

俺が求めているのは、あの時舞風に抱いたような。一瞬で俺の全ての意識を奪っていったような。

あんな物だ。

だから――

羽黒「……そ、それでですねっ!」

提督「……」

先程から一生懸命に話す羽黒だが、申し訳無い事にその内容の半分も俺の頭には入っていない。

身も蓋もない事を言ってしまうのならば―どうでも良い。

彼女の話は、俺にとってそんな風にしか映らなかった。

勿論、意図的にそうしようとするつもりなど毛頭ありはしない。

これは、俺が俺なりに彼女の話に興味を持とうとして持てなかったという、ただのその結果だ。

羽黒「……う……えと…」

話し手である彼女は、話し始めたその最初から、俺の意識が向いていないことに気付いていたのだろう。

今話していた―確か、最近流行りの何か―話題が一段落した所で、変わらぬ態度の俺を見て言葉をつまらせた。

羽黒「………面白く、無いですか?」

提督「……ああ」

一瞬返答に迷ったが、下手に誤魔化す意味もない。

彼女は気付いているのだから、お互いのためにも言ってしまった方がいくらかマシだ。

羽黒「…ごめんなさい」

それに、彼女はただ小さく頭を下げた。

そんな健気な―健気すぎる態度に、罪悪感も少しは覚えたが、先に来たのは疑問だった。

提督「…羽黒」

羽黒「は、はい」

提督「…何で、そこまでする?」

羽黒「…それは…前も言いましたけど、好き、だから…」

提督「…それがわからん、普通…ここまでされれば、愛想を尽かすもんじゃないのか?」

羽黒「そんな事、無いですっ!」

叫ぶような声。

情けないことに、驚きに少し身体が跳ねた。

羽黒「あ……その、愛想尽かしたりなんか、全然、です」

羽黒「…私は…好きです、提督さんのこと」

言って、彼女が俺の手を握った。

暖かい、人の手。

羽黒「…貴方、貴方だけなんです、こうして、好きになったのは、今まで」

羽黒「…側にいるだけで、凄く、ドキドキして…恥ずかしくなって、でも、恥ずかしくても、それでも、近付きたくて」

上気した頬。汗ばんだ手。伝わる早い鼓動。

羽黒「………あの、私といて、少しは貴方も――」

―そんな気持ちに、なりますか。小さな声で、彼女は言った。

選択肢入らなかった


>>+1-5

A.その彼女の顔に、知らず、心の奥で動くものを覚えた。

B.その行動に、何か気恥ずかしさを覚えて思わず目を逸らした。

C.それを受けて尚、心はどこまでも平坦だった。

KENほんとすき
A.その彼女の顔に、知らず、心の奥で動くものを覚えた。(*1.5 500到達可能)


提督「…………」

目を見開いていた。

目を見開いて、彼女を見ていた。

逸らせなかったのだ。

単純に、ただ単純に、彼女を捉えた目を。

羽黒「………あの」

提督「…あ、ああ」

珍しく、言葉が濁った。

彼女の呼び掛けに遅れること数瞬、なんとか出せたのはそんな声。

提督「……そう、だな」

提督「…少しは…その」

羽黒「……提督、さん?」

提督「…何でもない」

立ち上がって振り向き、強引に彼女を視界から外す。

さっき、浮かんだ感情は。

あまりに正常すぎる高鳴りで。

俺にそんな物に対する耐性は無かったのだ。



羽黒→  500/500



【舞風―特殊1】


提督。

救いだった。

あたしの救い。

あたしの。

あたしの。

「許せない」

婚約者がいることなんて大袈裟に驚くようなことでもない。

それは別に良い。

彼の心があたしにあるのなら。

彼があたしを救ってくれるなら。

それで良い。

良かった。

なのに、動かした。

無理矢理、彼の心を動かした女。

憎かった。

あたしを一人にする女が。

殺したい程に、憎かった。

そうか。

もしかして。

あたしに依頼してくる人達は、こんな――――



【8月3週】


夏休みが終わりそうである。

といってもこの時期は名門校らしく補修だからどの道関係無いが。

雷「…わっかんないわ」

雷がノートにシャーペンを投げた。

何処までも白い数学のノート。

そんな新雪を思わせるそれに、折れた芯が落ちた。

詩的である。

雷「見てないで教えてよー!」

提督「おう」



>>+2


舞風   401/500
羽黒   500/500
荒潮   106/500
雷     *29/500
霧島   *30/500

【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★13【安価】
【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★13【安価】 - SSまとめ速報
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