【モバマス】恥ずかしがり屋で素直な君から【神谷奈緒】 (42)


アイドルマスター シンデレラガールズ 神谷奈緒の誕生日SSです
☆ 書き溜めあり。一気に投下していきます。
☆ そこそこ長いです。

もしよろしければおつきあいください。今日中に投下しきれるかなぁ……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410877713



「ならさ,逆に奈緒がサプライズで手紙を書くとかどうかな?」


「いいね,いいね! 普段,奈緒が内に秘めてる想いを伝えちゃいなよ♪ きっとPさん,喜ぶよ」



 はじめは「はぁ? あ,あたしが手紙なんて……ガラじゃねぇーし」と思った。実際,そう言った。そんなあたしをあの2人はニヤニヤ見つめて,好き勝手なこと言ってたけど……「恥ずかしがり屋だね,奈緒は」とか「そんなこと言って,ホントは『いいな』って思ってるんでしょ~」とか……どうしてそこから「Pさんのこと大好きなんでしょ」とか「奈緒は本当にかわいいね」とか,そっちの方向に行くんだろう,凛と加蓮は。はぁ。



 そもそも,あたしが相談したのはPさんへの贈り物を何にするかだったはずだ。Pさんはバカ正直だから,バレバレなんだよなぁ……あたしの誕生日のお祝いを用意してくれてること……。Pさんと出会って何回か誕生日を迎えたけど,あの人は決まってあたしのことをお祝いしてくれる。まぁ,誰にだってそうだから,あたしが特別ってわけじゃないけど。少し嬉し……いやいや,毎年のことだし,Pさんにとっては特別なことじゃないから,そうでもねぇーし。


 とはいえ,普段からお世話になっているのもたしかだから,この機会に今年はあたしの方からPさんに何か贈り物でもできればって思ったんだ。それを相談したのが凛と加蓮。2人とも事務所は違うけど,事務所の垣根を越えたユニットの仕事でしょっちゅう一緒になる。……親友2人。



 仕事の合間のお昼休みに相談したところ,その親友の意見が“私からの手紙”だった。嬉しいのか……? 私からの手紙なんてもらって……。もっと実用的な何かの方がいいんじゃないかな。ネクタイとか……。でも,あの2人の推しようったらすごかったな。2人とも「絶対,喜ぶ」って断言してたし。あの2人の言うことだから……そうなんだろうなぁ。……でも,何を書けばいいんだ? 今日も早く寝ないといけないんだけど……とりあえず,書き始めてみるか。



―― 手紙の最初のページ


いつもお世話になっているPさんへ


 奈緒です。今日は誕生日をお祝いしてくれて,ありがとう。
 (今,手紙を書いているのは誕生日の前なので,お祝いしてくれるって信じています。もし……お祝いしてくれてなくても,そのときは気にしないで)

 こうして手紙を書くというのは慣れないけど,せっかくの機会だから私からPさんへ贈り物をしたいと思って,ペンを手に取っています。

 いつもお世話になっているので,そのお礼だと思ってください。

 Pさんにスカウトされてからだいぶ時間が経ちました。その間,ずっといろいろなご迷惑をおかけしてきたと思います。
 街中で急に声をかけられたときは驚きました。まさか,私がアイドルに!?って。絶対にありえないと思っていたので,からかいか変な勧誘にしか思えなかったことが今となっては懐かしいです。
 それでも,Pさんがあの手この手を使って誘ってきて,そこに真面目な熱意を感じたから,ついて行きました。その後,本当にアイドルの仕事が始まって……そのときは本当に可愛いかっこうが恥ずかしかったことをよく覚えています。今だって恥ずかしいんですよ。これ,大事なことですからね。




***


 昨日から手紙を書き始めたけど,どうにも何を書いていいかわからない。いや……わからないわけじゃないんだけど,なんだか……恥ずかしい気持ちになる。書いているうちに,顔が熱くなって,ペンを止めて「うぅ~~~」とうめいてしまっている。そんな自分に気づいて,ますます恥ずかしくなって……の繰り返しだ。今,昨日書いたところまで読み返してみたけど,やっぱり何を伝えたいんだか,自分でもよくわからないじゃないか。なんだか,自分じゃないみたいだし。はぁ~……。なにやってるんだろう,あたし……。



 思えば,Pさんと出会ってからはこんなことばっかりだったかもしれない。アイドルになったばかりのお仕事は本当になにもかもが新鮮で,どの衣装をみても可愛くて,周りのどの子をみても綺麗で。それに比べてあたしなんか……。だから,そういう子たちに混ざって,アイドルのかっこうをするのはすごく恥ずかしかった。似合ってないんじゃないかって心配になる。今はだいぶ慣れたけど,本当に自分がアイドルなんてできているのかは,今だって不安だ。凛や加蓮みたいな,あんな特上の美人と一緒にユニットを組んでるなんて,ホント夢みたいで……。



 アイドルをやっている自分に気づくたび,恥ずかしくなって……本当に自分がここにいていいのかなって心配になる。今,手紙を書いているときと同じような感覚だなぁ。でも,Pさんはそんなあたしにお構いなしに,どんどん仕事をもらってきてくれたっけ。あの人は本当に人をのせるのが上手い。あたしもついのせられて,恥ずかしい気持ちを抱えながら,どうにか仕事をしてきたんだ。特にアイドルになってから最初のクリスマスの仕事はひどかったな……。うっ!? 思い出したせいか,今,耳がすごく熱い。絶対,顔赤くなってるよこれ! あぁ~,もう!


 あたしのこういう恥ずかしさとかに,もうちょっと気づいてくれてもいいんじゃないか,あの人……。なんかイライラしてきたぞ。



―― 手紙の2ページ目


 覚えていますか? 私とPさんが仕事をするようになって初めてのクリスマスを。


 あの時は,本当に恥ずかしかった! あのときは半分ヤケでがんばったけど,そのときのPさんのニヤニヤ顔は忘れません。

 この前のメイドのお仕事もそうです。衣装はとっても可愛くて,お仕事は自分でも満足できるようにがんばったつもりです。でも,Pさんの趣味なんじゃないかって思うような仕事ばかりで……ああいうのはホントに恥ずかしいんだから,もうちょっとそこを汲んでくれると嬉しいです。


 はじめてのソロCDを出した時も,Pさんは私のことからかってませんでした? ピンポンを鳴らしかけたこと,忘れてませんからね! ……あと,私からの着信音,あのときの「キュッとして」にしたままマナーモードかけ忘れるのは,ホンっトに勘弁してくださいね。


 とまぁ,なんだかグチっぽくなってきちゃってますが,怒ってるのは半分ぐらいです。本当は私が恥ずかしいと感じるようなかっこうでも,からかわれているように感じるやり取りでも,それはアイドルとしての私を思ってのことなのかなぁって。だからこそ,ひとつひとつの仕事をやり遂げてこれたんだと思います。そういう意味では,Pさんに感謝しています。本当ですよ。





***


 今日はプロデューサーとケンカをした。久しぶりのケンカだったかもしれない。はぁ,やっぱりあたしが悪いのかなぁ……。



 今日は同じ事務所のまゆと一緒にファッション誌の撮影だった。やっぱりまゆは何を着ても可愛い。それを思うと,どうしても一緒に並ぶのが,自分なんかで大丈夫なのかと弱気になっちゃって……。でも,相変わらずPさんはいつもの調子。


「どうした奈緒。今日は表情が固いぞ」



「なんだ,そんなことか。奈緒だってすごく可愛いぞ」ハッハッハ


 きっと本心で言ってくれてるってわかってる。でも,手紙を書きながら今までのことを思い出してたせいかな? もしかして,からかってるんじゃないかって思って。なんとか撮影は終えたけど,あんまり良くなかったと思うし,八つ当たりみたいに帰り道でPさんに憎まれ口を言っちゃった。


「いっつも,いっつも,そんなこと言って! ホントはあたしのことからかってるだけなんじゃないのか!?」


 そしたら,Pさんは困ったような笑顔を作って「そんなことない」って言ってくれたけど,その後のあたしとPさんは言葉少なで……重い雰囲気だった。


 はぁ……。手紙……書けないなぁ……。



***


 昨日のことが気になってたせいか,元気がなかったんだと思う。けっきょく,今日はPさんに会えなかったし。だからかどうかはわからないけど,まゆが声をかけてくれた。こういう時に真っ先に元気がないことを察して,声をかけてくれるのがまゆだ。感謝してる。だから,彼女には素直に自分のことを話しちゃうのかな……話を聞いてくれたまゆはこう言ってた。



「奈緒ちゃんのPさんはとっても正直な方ですから,どれも本心だと思います……」


「でも,不安になってしまうんですよね……Pさんの気持ちが本物か。まゆも時々,すごく不安になることがあります」


「奈緒ちゃんは……もしかして,自分に自信がないんですか?」



 どうなんだろう……たしかにそうなのかもしれない。お仕事のときに可愛い衣装を着るのが恥ずかしいっていうのも,Pさんの言葉がからかってるように聞こえてしまうのも,自分に自信がないからそのままを受け入れられない……? そういうことなんだろうか。でも,今は仕事だってしっかりできてきてると思うし,昔だってそんなに自信がなかったのかな?


 普段,Pさんに対して自分が素直じゃないのもわかってるんだ。なんでだろう? …………わからないや。



 そういえば,今回の手紙だってそうだ。どうして手紙を書こうと思ったんだ? はじめは凛や加蓮に言われたからって思ってたけど,でも,なんだかんだであたしから書き始めたんだもんね。じゃあ,あたしは……Pさんに何を伝えたかったんだろう? 今までの手紙,読み直してみようかな。


………………


…………


……



 ふふっ……。なんだか恥ずかしいを通り越して,笑えてくるな。誰だよ,これ! って感じ。あはは……。


 やっぱり,あたしはPさんに文句がある。それは認めよう。だって,この手紙では正直に“恥ずかしかった”って書いてあるもの。思い返せば,からかわれたんじゃないかって思うときもたくさんあった。それも事実だから,認めちゃおう。



 でも,それだけじゃないんだ。2日前の自分だって書いてるじゃないか。“感謝しています”って。きっと,あたしが書きたいことのひとつは,それなんだよな。きっとまだまだ本当に書きたいことはあるんだよね。まだ自分でもわからないけど。


 だから……明日はしっかりプロデューサーに謝ろう。それから,ちゃんと手紙も全部書こう! それは今のあたしにとって,きっと大切なことだと思うから。



***


 朝一番にプロデューサーに呼び出された。あたしも謝るつもりだったからちょうどいいなって思ったけど,それはPさんも同じだったみたい。


「ごめんな,奈緒。俺は鈍感だからさ,奈緒が本当に気にしてたなんてわからなかったんだ」



「奈緒が可愛いって言われること,嫌いだって気づかなくてゴメン!」


「ヘレンに言われて気づいたんだ。なんでも,女性にはその人に最適な褒め言葉あるんだってな……。中には“可愛い”がバカにされているみたいで嫌いっていう人もいるって」


「だから,奈緒もきっと“可愛い”じゃイヤだったんだよな……。本当はどう褒めてほしいんだい? “綺麗”とか“色っぽい”とか? “美しい”? もしかして“世界レベル”か??」



 …………そうじゃないんだ,プロデューサー。微妙にかすってはいるけど,全然違うよ……。本当にこの人は,どこまでも純粋なバカなんだなぁってあらためて思った。


 でも,正直に言えば,あたしのことを考えてくれていたってことだから,すごく嬉しかったんだ。だから,あたしも謝ったよ。ひどいこと言ってゴメンってさ。……あと,“可愛いって言われるのも好きだよ”とも伝えておいた。すっごく恥ずかしかったけどな……。


 なんかこの前ケンカしたのがバカみたいに,2人とも笑ってた,今日は。Pさんも,お互い怒ってないことがわかってすごく嬉しそうだった。あたしも……やっぱり嬉しい。


 決めた。あたし,Pさんに向けた手紙は…………。



―― 手紙の3ページ目


 なんだか今まですごくあらたまっちゃったけど,堅苦しいのはやめにするな。自分でここで書くのもなんだけど,あたしらしくないなぁって思って……。


 ……なんていうか,Pさんにいろいろ伝えたいことがあるんだけど,それに迷ってた名残みたいなものが,これより前の文章と思ってもらうと助かります。


 ホントは書き直そうと思ったんだけど,ああやって迷っちゃうのもまた本当のあたしの姿ってことで,それを伝えたくてそのままにしたんだ。受け止めてくれると……嬉しい。


 そう。あたしはこの手紙では素直になるって決めたんだ。だから前のページまでに書いた,恥ずかしいときがあるってことも,たまにからかってるんじゃないかって思ってイラっとすることも本当。私の素直な気持ちだかんな!


 とまぁ,冗談半分,本気半分のことはもうよくて……あたし,やっぱり普段からPさんのいろんな言葉やいろんな気づかいを素直に受け止められなくて。ごめん。だから,この手紙ではできるだけ本音を書けるようにがんばるよ。まだ,ちょっと……いや,かなり恥ずかしいけど。





***


 やっぱり2日間,手紙を書かなかったことはあたしの誕生日を期限と考えると,キビシイ……。てか,なんで自分の誕生日なのに,こんなにがんばらないといけないんだ? まぁ,でも,やっぱりPさんに手紙を渡したいって気持ちは本当だ。あたしがそうしたいと思ったんだから,文句は言えないよな。疲れてるけど,がんばろう。Pさんのため。



 そうそう。今日はまたトライアドプリムスでお仕事。近いうちにやるライブの打ち合わせだった。そのとき,凛や加蓮に進捗を聞かれたっけ。“ダメです”とは言わずに,がんばってるよって答えたら,2人ともニヤニヤしてたなぁ……。そう,この2人もあたしのことからかってくるんだけど,まぁ,嫌な気持ちはしない。


 あたしの初めての大きな仕事がトライアドプリムスだった。Pさんが事務所の垣根を越えた大型新人ユニットを組むっていう企画を聞きつけて,何を思ったか,あたしを猛プッシュしたらしい。幸い,凛も加蓮も以前に仕事をしたことがあったから,仲もそれなりに良くて,最初はかなり緊張と戸惑いがあったけど,すぐに居心地のいい仲間になっていった。あの2人はあたしの自信がないことも知ってて,からかってるように見えて背中を押してくれるんだよね。まぁ,凛も加蓮もああ見えて危なっかしいところがあるから,あたしが面倒を見ることも多いから,お互いさまってやつかな。ふふっ。



 ……あぁ,そうか。やっぱり,あたし……自信がなかったんだね。凛と加蓮はそれを知ってた。まゆにだって言われたもんね。はぁ,しっかり気づいてなかったのはあたしだけだったのかな? それを認めるのが怖くて,だからあんなに恥ずかしがってたのかも。うん。でも,今は……。

…………


……


 ふふっ……。こうやって振り返って気づいたけど,あたしはPさんから本当にたくさんのものをもらってたんだなぁ……。



―― 手紙の4ページ目


 恥ずかしいけど,素直な気持ちを書かせてほしいんだ。普段からPさんの好意を上手く受け止められないってことを謝りたいってことだけじゃなくて,Pさんには伝えたいことが本当にたくさんあるからさ。


 自分で思うに,あたしが素直じゃないのって,きっと自信がないからなんだよね。それはアイドルとしてってだけじゃなくて……自分でもよくわからないんだけど。


 あたしよりも魅力的な子とか勇気のある子とかはたくさんいて……。あたしはそんなに魅力があるとも思えないし,すっごく気持ちを表現するのが下手というか,勇気がないんだと思う。自分の言葉とか気持ちが伝わらないかもって思っちゃって,それが怖いのかもしれない。


 でもね,今は大丈夫。だって,Pさんはあたしが隠しちゃってる本当の心を知ろうとしてくれて,いろんな経験を与えてくれて。その中で,いつでもあたしに「すごく可愛いよ」って言ってくれた。その行動が,その言葉が嘘とはとても思えないくらい,心からのものだって感じられたから……それが,あたしの自信になってるんだよ。ホントだからね。


 Pさん,ありがとう♪


 きっと,これからも言ってくれるよね。……まぁ,恥ずかしいものは恥ずかしいんだけどな!



***


―― 手紙の5ページ目


 Pさんからはこの何年かでたくさんのかけがえのないものをもらったと思う。アイドルとしてのお仕事だけじゃなくて,それを通じて,本当にいろんなものを……。


 恥ずかしがってばかりのあたしに,あんなに綺麗で可愛いゴシックドレスをくれて,すごく感激したんだよ。


 せっかくのクリスマスにあたしなんかと一晩中お仕事につきあってくれて,なんだかんだでとっても楽しかったし。


 初めてのライブの後,あたしの生涯でただ一人のプロデューサーでいるって約束してくれて……本当に嬉しかった。


 京都での仕事,不安で仕方なかったとき,一緒に紅葉の中を歩いてくれて,心から安心できた。


 なれない白いゴシックドレスを着てソワソワしてる隣にいてくれことも,すごく心地よくて。


 学校まで迎えに来てくれて,一緒にちょっとだけ遊んだのは,実はドキドキしてたんだ。


 ソロCDが出たときも,収録を助けてくれて,たくさん褒めてくれて,ワクワクが止まらなかった。


 メイド姿なんて恥ずかしくて仕方なかったけど,笑わないで真剣に見つめてくれたから,最後までやり遂げようって思えたんだ。


 他にもたくさんあるけど,どれも全部,言い尽くせないぐらい,本当にありがとうね。



―― 手紙の6ページ目


 アイドル活動を始めたばかりのときは恥ずかしくてどうしようもなかったのが,いつの間に嬉しさの方が強くなってたんだ。これも,Pさんが自信をくれたおかげ……かな。


 あたし,本当にPさんがプロデューサーでよかった! あたしがPさんのアイドルで本当によかった!


 トライアドプリムスや事務所の仲間たちとの思い出とか,アイドル活動してる中での楽しい気持ちとか,ファンのみんなとのライブでの一体感とワクワクとか,アイドルやる前は持てなかった自信や勇気とか,Pさんのことが大好きな気持ちとか,全部,Pさんからもらったんだ。


 だから,本当に



…………


……


 あれ? あたし,何を書いてるんだ……? “Pさんのことが大好き”??


 …………そっか。なんで,あたしがPさんに何かを贈りたいと思ったのか。この手紙で伝えたい想いはなんだったのか。Pさんに気づいて欲しかったことって。……そういうことだったんだね。

改行無しだと物凄い読み辛い



 でも…………いやいやいや! これはまずいだろ! どう考えても!! アイドルがこんな,プ,プロデューサーに対して,こういう手紙って……! いや,でも,素直になるって決めたんだし,伝えなきゃというか,伝えたい気もするっていうか……。あぁ,いや,でもダメだろ! いや,えっと……う~ん……。


 はぁ。冷静になろう。渡すのは明日。まだ焦るような時間じゃない。う~ん,どうしたものかなぁ……。



***


 結局,どうするか決めないまま事務所に来て,早くも仕事が終わる時間になってしまった。仕事を終えたあたしは事務所でPさんを待つように言われて,その通り大人しく待っている。


 手紙……。正直,本当の気持ちを全てつづった方を渡したいという気持ちもある。でも,さすがにそれはアイドルとしてマズいよなぁ……。それに,その気持ちをあたしから伝えるということ自体に思うところも実はある。だから,肝心の箇所だけぼかした手紙の6ページも別に用意している。あぁ……どっちを渡そうかなぁ。



「おっ,奈緒。早いな。もう事務所にいたか」


 あたしの葛藤なんて,まるで気づかない当事者たるPさんが事務所に来た。その顔はいつもの嬉しい知らせを持ってくるときと同じようにニヤけていて,これから誕生日サプライズだなと確信させるには十分なほど憎めないニヤつき顔だ。はぁ,まったく。後ろでちひろさんも苦笑している。



「奈緒,今日の打ち合わせはどうだった? トライアドのライブ,いいものになりそうかい?」


「今回のライブはかなり大きいですからね。Pさんも奈緒ちゃんも気合入ってるんじゃないですか」


 そりゃもちろんと,ちひろさんとPさんに宣言した。大好きなトライアドプリムスのライブ。しかも,今までにないほどの大きな規模のライブ。当然,気合いは十分だ。



「ちひろさん,奈緒なら可愛くきめてくれますよ。なんていったって,奈緒は最高のアイドルになるんですから。奈緒,俺も全力で手伝うから,絶対にいいライブにしような」


 テンションの高いPに合わせて,あたしも元気よく応える。ちひろさんが意外そうな顔をしているのは,“可愛くきめてくれますよ”に,あたしが反応しなかったからだろうか。ふふっ,その言葉,今日は心なしか素直に気持ちよく受け止められるよ,Pさん。


 それに,今,決めたよ。どっちの手紙を渡すか。やっぱり,まだあたしは“これからPさんの最高のアイドル”にならなくちゃ。だから,Pさんはプロデューサー,あたしはアイドルでなくちゃな。ちょっとさみしいけど,本当のあたしを全部見せるのはもう少し先の方がいいよね。


…………


……



「さてさて,そんな奈緒に今日はこんなものを用意しました~! ジャーン! 誕生日おめでとう,奈緒!!」


 案の定,事務所で2人きりになったタイミングで,Pさんはあたしの誕生日をお祝いしてくれた。……ムードもなにもないような渡し方がホントにPさんらしくて,好きだなぁ。ありがと。


 バレバレのサプライズをやりきった顔しているPさんに水を差さないように,驚いて喜んでみせてあげた。わかってても,嬉しかったのは本当だしね。



 さぁ,次はあたしの番だ。さいわい,今はあたしたち2人しかいない。今のタイミングで勢いに任せて渡さないと,絶対に渡せなくなる。だって,今,すごく胸がドキドキしていて,一刻も早く逃げ出してしまいたいぐらいだから。あぁ,顔が熱い! 手が震える!! 恥ずかしい!!!



「Pさん,ホント今日は……ありがとうな。その……なんだ……実は,せっかくの機会だから,あたしも……渡したいものがあるんだっ!」



―― Pに渡した手紙の6ページ目


 アイドル活動を始めたばかりのときは恥ずかしくてどうしようもなかったのが,いつの間に嬉しさの方が強くなってたんだ。これも,Pさんが自信をくれたおかげ……かな。


 あたし,本当にPさんがプロデューサーでよかった! あたしがPさんのアイドルで本当によかった!


 トライアドプリムスや事務所の仲間たちとの思い出とか,アイドル活動してる中での楽しい気持ちとか,ファンのみんなとのライブでの一体感とワクワクとか,アイドルやる前は持てなかった自信や勇気とか,全部,Pさんからもらったんだ。


 だから,本当にPさんには感謝してる! 今までありがとうね♪ そして,これからもずっとあたしの頼りになる素敵なプロデューサーでいてくれよな!


 ふふっ……本当はもっと伝えたいことがPさんにはあるんだけど,あたしってやっぱり素直じゃないからさ。上手く言葉にできないことも多いし,それに……Pさんだからこそ,先に気づいて欲しいこともあるんだ。


 ま,そういうことで,これからすぐに素直になるのは難しいだろうし,それでPさんを困らせることも多いと思うけど,もっと自分に自信や勇気を持って,素直で可愛い女の子になるようにがんばるからさ。アイドル,神谷奈緒をこれからもよろしくなっ!!






                                                  おわり

奈緒,誕生日おめでとう!
ギリギリになってしまって申し訳ないです!!


>>31さん

ご意見ありがとうございます!
たしかに,読み辛くなってしまったと反省しています。

台本式ではないときの改行の仕方なども,もっと勉強しないといけないですね……

ありがとうございました!

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