【オリジナル】「葵ちゃんは私の憧れです」【百合】 (21)

普通に百合SSです。
ただキャラごとに名前を決めてあるので、そういうの(痛々しいの)が苦手な人は苦笑いでお願いします。
R-18的なシーンは書かない予定です。が、ほんのちょっぴり発言だけ書いたりとかするかもしれません。その程度です。
書き溜めなしです。ではどうぞ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410873770

好きな人っていうのは誰にでもいるものではないし、ましてやその人と結ばれるなんて本当にラッキーでハッピーな事なんだろうなあって時々思う。

なんでそんな事を考えるのか、というと、もちろん私に好きな人がいるから。

けれど、それは多分叶わない恋なんだなってことを私は知ってる。

だって、私が好きな人は、たった今隣にいて、私と一緒に登校している『女の子』だから。

一応言っておくけど、私、陸吹サナも女の子。

女の子が女の子に恋をするのは、普通にヘン。

だから、この想いはきっといつまでも胸に仕舞っておいて、そのうちに消え去ってしまうんだろうな。

でも、不幸とか辛いとか、そういうんじゃないよ。

「ねぇ、葵ちゃん」

私は想い人の名前を呼ぶ。

「んー?」

その子は私の言うことはなんとなくわかってるんだろうけど、それでも嫌な顔ひとつせずに相手をしてくれる。

そんな所も、きっと私は大好き。

私の好きな人。

海風 葵ちゃん。

好きな人が目の前にいるのに想いを伝えられないって、普通は辛いのかも。

でも、そういうのは別に無くて、ただ毎日こうやって一緒に登校して、毎日一緒におしゃべりして、時々勉強を教えてもらったりしてるだけで、私はとても幸せになれる。

その行為それぞれに別に中身とか意味がなくっても、全然構わない。ただなんとなく、好きな人と一緒の時間を過ごしてるっていう実感が、私の充実感。

だから、私はあまり意味の無い事をしょっちゅう話す。

「ふふ、なんでもないよ」

こんな風に。

葵ちゃんが軽くうなずく。

「ん。」

ぱっと見、なんだか素っ気無い返事に見えちゃうかもしれない。けど、私は知ってるよ。

『ん。』の後には、『今日も元気みたいでよかった』って言葉が隠れてるの。

葵ちゃんはどっちかっていうとクールめな子だから、直接言うのはちょっと恥ずかしいのかも。

だから、相手が気付かなくても、自分が『相手が元気』っていうことをわかればそれでいい、って考えてるんだと思う。

ちょっぴり無愛想だけど、本当は皆より優しいんだ。

でも、そんな不器用なところはちょっと可愛くて、なくならないでほしいなーって思っちゃったりもする。

………なんて色々考えてると、お互いに沈黙が続いちゃったりしちゃう。

「……………」

「……………」

けど、別に気まずいっていうわけじゃなくて、ただぼーっと日常を噛み締めてるような、そんな感じの雰囲気。

今日は天気がよくて、風もさらさら吹く。毎日こんな風だったらいいなぁ。

………ふと隣を見ると、葵ちゃんの髪がそよ風になびいていた。

──少し青みがかかったロングヘアー。綺麗でつやつやしてて、朝日が髪の上を滑っていくみたいに見える。時々ポニーテールにしたりするけど、基本的にいつもロング。

見とれちゃうなぁ。

葵ちゃんはなんていうか、キリッとした美人タイプの顔をしてるから、そういうのが余計に映えるんだろうな。

「ん、そうだ」

葵ちゃんが上の方を見て言う。そしてこっちを向き、

「この前大田が言ってたんだけど………百合ってどういう意味?」

と聞いてきた。

百合──普通なら、まあ植物とかそういうのが普通な答えなんだろう。けど、それを言ってたのが大田……。

えっと、まず私たちは同じクラスで、隣のクラスに大田って男子がいるんだけど、いわゆるオタクっていうのかな。

つまり、きっとその大田が言う『百合』なら、まあそりゃあ……。

と思うけど、一応確認。

「どういう風に百合って使われてたの?」

んー。と少し考えてから、葵ちゃんが答える。

「なんていうか……すれ違う時に『お、そうだ、海風』みたいに呼ばれて、『お前ら……海風と陸吹ってさ、なんか百合っぽい感じあるよな』……みたいな言い方で、唐突に言ってきたんだ」

「あー………」

あー………。

百合。──女の子同士の恋愛とか、そういったものを指す隠語みたいなもの。

葵ちゃんはこういうのに鈍かったりするから気付いてないけど、やっぱり他の人から見るとそんな風に見えちゃうのかな。

まあ、言ったのがあの大田だし、きっとふざけ半分くらいなんだろうけど…………あとでチョップしておこう。

そしてこの場は………よし、この答えでいこう。

「んとね、百合っていうのは、そのー……女の子同士が仲よさげで、男子がちょっと入り込みにくいみたいな、そういう雰囲気のことを指してるらしいよー」

少し苦しい説明。多分間違ってはない。と思う。

それを聞くと、まあ納得したかなって感じで葵ちゃんが言う。

「ふーん」

よかった、葵ちゃんにそんな事を教え込んじゃいけないもんね。

それに、そういうことを知っちゃったら、私の気持ちに気付いちゃって、気まずくなったりしちゃいそうだもん。

シンプルに、それはいやだ。

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