男「霊は見えても除霊は下手くそ」(84)

~深夜 山奥の廃村~

女「…」

夕方から穏やかに降り始めた雪が村を包む。
女は村の中央に1人佇み空を見上げる。

女「あ゙ぁぁ~」

女「…」

ザッ…ザッ…ザッ…

何かが村に近づいてくる。

女「!?…」サッ…コソコソ…

ザッ…ザッ…ザッ…

女「…人?」

男「うぅ~寒…もう辺りは暗いし、ここで朝を待つか…」

男「おじゃまします」

男は一軒の廃屋に入った。

女「(一体何しに…)」スススッ…コソ~ッ

男「…相変わらず寒いけど、屋外よりはましか…」

女「…」ジィ~ッ

男「ん?どちらさま?」

女「ひゃっ…!」ヒュッ…

女「(私のこと…見えてる!?)」

男「こんばんは」…ヌッ

女「ひゃあっ…!」ビクッ

男「あっすいません…驚かせてしまって…よければ中へどうですか?」

女「は…はい…(あなたの家じゃないのに…)」

~~~~~

男「いや~雪ですね」

女「えぇ…」

男「冬は日が暮れるのも早くて…仕事で山に入って、あっという間に夜でしたよ~」アハハ…

女「は…はぁ…」

男「あ…見知らぬ男と話してもつまらないですよね」

女「いえっ…そんなことは…いきなりこんな所で人に会うなんて思わなくて、ちょっとビックリしてしまって…」

男「あっ…そっか、そうだよね」

女「だからその…お話するのは別に嫌とかじゃなくて…」

男「やさしいんですね、女さんはどうしてここに?」

女「…えっと…(なんで私の名前…どうしてと言われても…)」

男「…なにか複雑な事情ですか?」

女「えぇ…そんな所です…」

男「女さんは普段なにしてるの?」

女「…えっと…お散歩とかですかね」

男「そっか、いいね。冬はちょっと寒いから大変そうだけど…」

女「冬でもへっちゃらですよ?雪が積もった朝なんて嬉しくなって思わず外に出ちゃうんです」…エヘヘ

男「友だちは?」

女「…友だち…」

男「…」

女「冬は暖かい季節に比べて少なくなってしまうんですが、鳥さんや…」

男「…人の友だちは?」

女「うっ…」

男「…お父さん、お母さん、村の人たちは?」

女「…」

男「さみしくない?」

女「…さみしくなんて…」

男「女さん…ずっとここに1人で居るんだよね?辛くない?」

女「…あなたは…一体…」

男「女さん、もういいんだよ?今までお疲れ様」ニコッ

女「…」ウルウル…ポロッ

女「…何が…で…すか?」ポロポロ
男「仕事はもう終わりにして帰るべき所に帰らなくちゃね」

女「あなたは何を言っ…なんで私…泣いて…」グスッ

男「…この村のこと、大好きだったんだよね?」

女「…」ポロポロ

男「昔、この村で病が流行ったね。女さんもその病にかかって…」

女「…グスッ…」

男「村の話し合いで人柱を用意する事になって、女さんは自らその役目を受けて…ね…」

女「全部…知っていたんですね」ポロッ

男「女さんはやさしくて責任感がとっても強い人だったから、村が廃れた今もなお、大好きなこの村を…守り続けた」

女「…ヒック…グスッ」

男「それでもやっぱり1人は寂しくて、女さんは悪霊になりかけていた…」

女「…祓いに…来て下さったんですね…」ポロッポロッ

男「いいや」

女「…えっ?」

男「祓いはしないよ、祓うってのは女さんの都合は無視して強制的に追い出すことだからね、それはしたくない」

男「女さんには自分で納得して成仏してほしい、そうして生まれ変わって第2の人生を歩んでほしいと思ってる」

女「…」

男「今まで寂しい思いをしてきたんだ、次の人生では友だちいっぱい見つけて、楽しく過ごしてもらいたいなって…」

女「ありがグスッとう…ござヒックいます…」

女「私…この役目を終える時が分からなくて…あなたにお疲れ様って言われて…肩の荷が下りました」

女「そろそろいきますね…本当に…ありがとうございました、さようなら…」ゴシゴシ…ニコッ…スウッ

男「…はぁ…寒い中、ここで一泊か…にしても我ながらクッサかったな…本当は祓えないのに…」

小さい頃からそういうモノが見えた。

妙に勘がよかったり、周囲で不可思議な現象が起こるので、他人からは本当に見えているのだと信用はされてた。

小学生の頃は寺へ通わされて、一通りの霊に対抗する術を学んでいた。

~放課後 帰り道~

猫「ニャ~」スススッ

男「(あっネコ…ガリガリだ…)」

猫「ニャ~」スリスリ

男「(足にスリよってきてるのに感覚がない…)」

男「(しお…お寺からもらったしお…)」ガサゴソ…パサッ…

猫「ニャウ?」

男「…きかない」…ガ~ン

猫「ニャ~ニャ~」スリスリ

男「(…お腹…空いてるのかな…給食のパンが…)」ガサゴソ…スッ

猫「ニャ~!!」ハムハム

男「(食べてるけど、食べてない…)」

猫「ニャン!」スゥ…

男「(消えた…)」

お寺での除霊方法は何を試しても無駄だった。

~別の日 帰り道~

男「なんまいだ~なんまいだ~」ブツブツ

霊「…なにしてるの?」

男「おきょう、となえてる」

霊「あ~ムリムリ…」

男「…」ゴソゴソ…バッ!

霊「なあにそれ?」

男「お寺からもらったおフダ!あくりょ~たいさん!!」グググッ

霊「クスッ…アハハハ」

男「笑うな~!」

霊「ごめんごめん」ナデナデ

男「うぅ…」

霊「…ねぇ…私…ここに居たら迷惑かな?」

男「クラスの友だちが言ってた…赤い屋根の家の前の街灯の下で女の人の霊が出るって、怖いから登下校に使えないって…」

霊「あ~そっか…ごめんね…」
霊「…あのさ、ボクに1つお願いしていいかな?」

男「?」

霊「そこの家のチャイムを鳴らして、家の人が出てきたら…」
霊「○○山の古寺の裏の崖の下、右手に髪の毛を握っているから、警察に調べてもらってって伝えて欲しいんだ…出来るかな?」

男「それっイタズラだよ?」

霊「そうイタズラ、男の子ならそれくらい出来るよね?もしかしてできないの~?」ニヤニヤ

男「でっ出来るもん!」ムッ…ダッ…タッタッタ…

ピンポーン

霊「…ありがとう」スゥ…

ほう

これは期待する④

前の方見たな

はよ

>>19
去年のクリスマスに思いつきで書いたssのネタ引っ張って来てます
前回のは短かったので今回は少し長めに書こうかなと



小学生の頃は割と怖いもの知らずで自分から霊に近づく事が多かった。

学校に伝わる七不思議は全部嘘だった。

クラスのみんなは幽霊には怖いイメージがあって七不思議にも怯えてた。

七不思議は全部嘘だよって言うとみんな安心した顔をして、学校から七不思議の噂は消えていった。

七不思議に関係ない霊は普通に居たんだけど、みんなを怖がらせると思ったから言わなかった。

中学に上がると、好き好んで幽霊には近づかなくなった。関わるとキリがないから。

中学校の七不思議のいくつかは本当だった。

中学生にもなるとクラスのみんなは、幽霊に対して怖いもの見たさみたいな好奇心が生まれてた。

クラスのみんなから、その手の話を持ちかけられる事がしばしばあった。

~入学式~

「新入生入場!」パチパチパチ

男「(あれ…あの先輩だけ制服が違う)」スタスタ

先輩「…」パチパチパチ

男「(新年度だし、転校生かな…)」

~夏 教室~

友「なぁなぁ、やっぱ夏なんだしさ、怖い話とかしようぜ!」

男「いや、興味ないけど…」

友「男がそれ言う?」

男「俺には夏も冬もないしさ」

友「男はそうだろうけど、俺らには夏にそういう話して涼しくなろうみたいのがあるわけでさ~!」

男「…」

友「…この学校の七不思議…知ってるか?」ゴクリ

男「ん…まぁそれなりに」

友「なぁなぁ、あれってほんとなの?ほんとなの?」

男「(…暑苦しい)」

男「ウソだよ、全部ウソ」

友「えっ…」

男「あれだよ、どうせ友と同じように、夏暑いからって歴代の先輩たちがそれなりのを作ったんだよ」

友「え~!?マジか…」ガ~ン

男「残念だったな」

友「ちぇっ…つまんないな~、放課後に男と解明しようと思ったのに…」

男「ほら、用が済んだら行った行った」シッシッ…

友「え~なんか冷たくね?」

男「夏だし、冷たいくらいがちょうどよくね?」

友「…う~、マネすんな」スタスタ

先輩「付き合ってあげなくてよかったんですか?」

男「面倒だからね、というか先輩がそれ言うんですか?」

先輩「私は構わなかったですよ?毎年のことなので」

男「…」

先輩「やっぱり夏は暑いですし、少しでもみんなに涼しくなって貰えるなら、私頑張っちゃいますよ?」エッヘン

男「…もしかして夏はいつもより多く、ああいうことやってたりします?」

先輩「えぇ!それはもう積極的に、求められたらシてあげないとです」

男「…はぁ」

~春 図書室~

男「本返しにきました」

委員「はい」

男「次の授業で使う本を何冊か借りたいのですが」

委員「分かりました、案内しますから、お探しの本を教えてもらえますか?」

―――――

委員「このあたりの棚に全部あると思います、え~っと、これと、これと…」スッ…スッ…

男「(あっあの先輩が居る…入学からしばらくたつのに、まだあの制服…)」ジィ…

先輩「…」チラッ

男「(あっ…目が合った…)」ドキッ…サッ…

委員「あと一冊…夏目漱石の吾輩は猫…」キョロキョロ

先輩「…」スタスタ

男「(こっちに来てる…)」

先輩「…」キョロキョロ

先輩は2人の後ろの棚で本を探し始めた。

先輩「…あっ…これ!」
男「ん?」クルッ

トサッ!!

委員「ひゃっ!!」ビクッ…クルッ

委員「あっこれ…」フルフル

男「(…あ…そういう…)」チラッ…

先輩「…」ニコッ

男「…」ペコ

委員「時々…あるんですよね」

男「そうなんですか」

委員「こんなことがあるから図書委員てみんなやりたがらなくて…」

男「大変ですね」

委員「私ジャンケン弱くて…任期は一年間だしそれまでは我慢しようって…」シュン…

先輩「…」シュン…

男「…あ~でも、そんなに怖がらなくていいと思いますよ?」

委員・先輩「?」

男「もしあなたが幽霊で、人を怖がらせようとするなら、どんなことします?」

委員・先輩「?」

男「わざわざその人が探してた本を床に落とします?」

委員・先輩「…!」

男「本を探して困ってたから探すのを手伝ってくれたって思えますよね?」ニコッ

委員「…」コクン
先輩「…」コクンコクン

男「こういうことはやっぱり怖いですけど、優しい幽霊だと思えば…ね?」

委員「はっはい!」キラキラ
先輩「…」キラキラ

キーンコーン

男「あっ予鈴…行かないと…本お借りします、それじゃこれで!」タッタッタ…

期待

いいね

~授業中~

先輩「~♪」フンフン

男の机の前でしゃがんで机にあごを乗せて男を見ている。

男「あの…授業中なんですけど…」

ノートの隅に書き込む。

先輩「お構いなく、静かにしてますから」キリッ

男「(集中できない…)」

―――――
キーンコーン

先生「はい今日はここまで」

先輩「今日も1日お疲れさまでした、また明日ですね!」

男「…ん(静かにしてるって言ったのに、ずっと話しかけてきてた…)」グッタリ

~次の日 数学~

先生「それじゃ始める~」

先輩「は~い!男さん、今日も1日よろしくお願いしますね」ニコニコ

男「…」

~音楽~

男「~♪」

先輩「男さん歌うの上手ですね!!」

男「~♪」

先輩「私もこの歌好きなんですよ?~♪」

~理科~

男「…」ガサゴソ

先輩「わっ!色が変わりましたよ!?男さんすごい!青から赤色に!!」

男「…」

~給食~

先輩「あげぱん…」…ゴクッ

男「…」モグモグ

先輩「…」

~放課後~

ガヤガヤ

先輩「…」…ズ~ン

男「…」チラッ

先輩「…」…ズズ~ン

男「はぁ…無視したの謝ります…ごめんなさい」

先輩「…ん」

男「ん?」

先輩「…あげぱん」シクシク

男「そっちか!!」

~屋上~

先輩「おいひい…」モグモグ

男「…放課後、職員室行ってあげぱん残ってますか?って聞く人の気持ち分かります?」

先輩「しゅいましぇん」ゴクン

先輩「ごちそうさまでした、男さん、わざわざ私のためにありがとうございました」ペコ

男「…」

先輩「男さん?」

男「無視したこと…ごめん」

先輩「気にしてないですから大丈夫ですよ?無視したのも理由あってですよね?」

男「小さい頃から見えてたから、今はなるべく関わらないようにしてて…」

先輩「それでいいんだと思います」

男「えっ?」

先輩「悪い霊だといけませんし、男さんが霊と話していたら周りの人が怖がってしまいますし、生きている人は霊にあまり関わってはいけないんです」

先輩「私は今までだって無視されてるようなもの…他の方には怖がられていますし…男さんに無視されたとして、いつも通りの日常に戻るだけですから」

男「…」

先輩「私の方こそ、近付いてしまってごめんなさい…明日からはまた…」

男「無視されるの…怖がられるの…辛くはないんですか?」

先輩「霊ですから…仕方ないかなって…男さんは見える人だから、その無視は故意的なものなのでちょっぴり辛いですけど、それも仕方ありません」

男「もし…先輩がよければ昨日、今日みたいに話かけて下さい」

先輩「…えっ?」

男「近くに人が居るときは言葉を返せないかもしれないですけど…」

どうやって食べてるのか

男「話かけてきてる時の先輩、すごくイキイキしてるように見えて…霊には関わったらいけないって分かってるのに、今日近付いて来たのも話がしたいと思ったからですよね?」

先輩「それは…私が実は悪い霊でイタズラしようとしてイキイキと…とか」

男「少しは考えましたよ?でも昨日、今日の感じならそれはないかなって、あと入学式のとき先輩を見てるんです」

男「悪い霊って礼儀正しく列の先頭に立って笑顔で拍手して入学生を迎えるんですか?」

先輩「…見てたんですか///」モジモジ

男「先輩はとても優しくて親切で…他の人からはおせっかいになっちゃってますけど…悪い霊には思えないんです」

男「まぁもし悪い霊でイタズラされたら、またそれなりの対応すればいいかな…なんて」

先輩「あっ…私は…」

男「分かってますよ」ニコッ

男「他の人から無視される、怖がられるのは仕方ないかもしれないですけど、仕方ないで片付けても、辛くないわけではないですよね?」

先輩「…男さん」

男「ちょっとでも先輩の気が紛れるなら、これからも話しかけてきて下さい、もしかしたら昨日みたいにちょっとずつでもみんなの誤解を解けるかもしれないですし」

先輩「…」ウズウズ…ダキッ

男「!?ちょっ…先輩?」

先輩「ありがとうございます!」

男「うっ…先輩…苦しい…(ポルターガイスト…)」

先輩「はっ…すみません…嬉しくて…つい…//」

先輩は校門まで見送ってくれた。少し離れた所で男が振り返ると先輩は楽しそうに手を大きく振った。

先輩「(ふぅ…思わず抱きしめてしまいました…男さん…苦しいって言ってたけど、そんなに強くしてしまったのかな…)」

男「うぅ…具合悪い…」フラフラ

男「(霊の良し悪し関係なく、霊力が強い霊に触れると…)」

男「(入学式のとき、他の生徒と区別がつかなかった…本を落としたり、普通にパンを食べてたから霊力は強いんだと注意してたけど…)」

男「(まさか抱きつかれるなんて…)」

男「これからちょっと大変かも…」ハァ

>>44
(ポルターガイスト…)は間違いなので抜いて下さい

文才ないので誤字脱字、読みにくい所あるかもですが、補完お願いします

"金縛り"かな
面白い、支援支援

そんなことはいいからはやく続きを書くのだ

なんかまひる思い出して悲しくなった

~次の日 教室~

先輩「おはようございます!男くん」

男「…」

先輩「男くん?」

男「…机」

教室に入ると隣の席に先輩が座ってた。

隣に居た生徒は別の空席に座り友人たちと話をしていた。

先輩「…一緒に授業受けたらダメですか?」シュン

男「…周りが気付かないなら問題ないかもしれないですけど…」

先輩「それなら見ての通りです!さぁ男くんも座って座って!」

男「あと男くんて…」

先輩「同級生なのに他人行儀はおかしいじゃないですか」

男「…」

~一年目~

先輩とはずっと一緒に過ごした。
いつでも笑顔だった。

登下校では必ず校門前まで来て出迎え、見送ってくれた。

給食があげぱんの日は、どうしても食べたいようで、余ってるのを持ってきて美味しそうに食べていた。

気がかりの触れられることについて…

一番身近で学校生活を送っていれば当然のように接触はあって、そういう時は先輩に悟られぬよう必死で耐えた。

~二年目~

相変わらず一緒に過ごす日々。

給食があげぱんの日、余ってるのを取りには行かず物欲しそうな顔をして、こちらを見るのだった。

半分にちぎって先輩に片方を差し出すと目を輝かせて嬉しそうに食べるのだった。

「半分でいいの?前みたいに余ってるのを取ってくれば丸々一個食べれるのに」と聞くと

「これがいいんです」とよく分からない事を言っていた。

触れられることについて…

二年目になればより接触は増えると覚悟していたけれど、それとは逆に少なくなった。

一年目で耐えていた事を悟られてしまったのかもしれない…

先輩に真意を聞くわけにもいかず、自分の方から

「2人だけの時は手をつなぎませんか?」と提案した。

先輩は一瞬戸惑いの表情を見せたが、そのあとすぐ穏やかに微笑んで

「はい」と答えた。

~三年目~

…先輩に以前の元気はなくなった。

給食があげぱんの日、いつものように半分差し出すと美味しそうに食べるのだった。

「ごちそうさま」と先輩が手を合わせても、手元には半分のあげぱんが残っていた。

放課後、屋上で先輩に渡すのが三年目のやり方だった。

隣の席は左右共に同級生が座っていた。

触れられることについて…

先輩は人や物に触れることが出来なくなった。もちろん自分が先輩に触れる事も。
また姿を常に見せることも難しくなったらしい。姿を全く見ない日が時折あった。

日々弱々しくなる先輩に、その理由を聞いてみたいと思ったけれど、怖くて聞くことが出来なかった。

先輩はずっと笑顔でいたから。

~三年目 夏の終わり 放課後~

友「う~暑い…」

男「あ~そ~だな~」

友「…お前はいっつも、つれない返事だよな」

男「あ~そ~ですか~」

友「今日で水泳の授業終わったんだぜ…?」

男「あ~そ~だな~」

友「名残惜しいだろ…」

男「あ~そ~だな~」

友「…それやめろ」

男「ん~?」

友「この暑さなら、もう二週間いけるだろ」

男「別にいい…風邪引く」

友「いや引かないね」

男「…友はそうだよな」

友「?…!バカにするな~!!」

男「バカにすんなって言われたらスマンとしか言えんな」スマン

友「…うぅ~帰る!!」ダッ…

男「あっ…俺も帰るか…」ガサゴソ

先輩「…」

~校門~

男「それじゃまた明日」

先輩「…あの…さっきの話」

男「友の?」

先輩「はい…それでお願いがあって…」

男「いいよ?出来ることならだけど」

先輩「その…今日で最後だから…今から…男くんと…プール…入りたいなって…」モジモジ

男「…えっ?」

先輩「男くんと…プール…」

男「いや…聞こえてたけど」

先輩「ダメ…ですか?」

男「…先輩がいいなら、いいですけど」

先輩「いいです!男くん!行きましょう!」グイッ

男「!?」

先輩…まさか

~プール~

先輩「着替えてくるので男くんも準備お願いしますね」

男「…先輩…水着って…」

先輩「管理室に予備があるんです!ほら!!」

男「…」

先輩「さぁ急いで着替えちゃいましょう!男くんはそっちの更衣室ですからね?覗いちゃダメですよ?」

男「覗きませんよ」

先輩「…それはそれでなんか悲しい…」ボソッ

男「なにか言いました?」

先輩「いえっなんにも」プイッ

~更衣室~

男「(…久しぶりに触れた…先輩すごく元気だった…)」

男「(…あれ…そういえば具合が悪くならない…なんで…)」

コンコン

先輩「男く~ん!着替えるの遅いよ~?早く早く~!」

男「あっ…すいません!すぐ行きます!」

先輩「も~私先行ってるからね~」

男「(突然だったから成り行きで来ちゃったけど、先輩とプールって…)」スタスタ…ガチャッ…パタン

男「…お待たせしました」ドキドキ

先輩「…水着…どうかな…?」モジモジ

男「いつも制服の先輩しか見たことないから…ちょっと新鮮というか…素敵だと思います」ドキドキ

先輩「すごく嬉しいのに、なんだかちょっと恥ずかしい…//」モジモジ

男「しゃ…シャワー浴びて泳ぎましょうか」アセアセ

先輩「は…はい!そうですね!」アセアセ

夕方でシャワーの水はいつにも増して冷たかった。

先輩は平然とシャワーを浴びていた。

白い肌に長い黒髪がまとわりついて、最後に髪をかきあげ、こちらを見つめられた時、先輩はいつもより大人びて見えた。

でもプールに入ってはしゃいでいる時は小さな子どものようだった。

日が暮れるわずかな時間を2人でめいっぱい楽しんだ。

空が夕焼けで赤く染まると、先輩は泳ぐのをやめ、水に浮いて空を見上げていた。

先輩は寂しげな顔をしていた。

声をかけると、空を見上げたまま「もう夏も終わりですね…」と言った。

先輩の顔から一滴の雫が流れ落ちてプールに還っていった。

男「…そろそろ出ましょうか」

先輩「えぇ」

制服に着替え、1つの飛び込み台に2人で座り、手をつないでプールを眺めていた。

遠くでヒグラシの声が聞こえる。

先輩「今日は久しぶりに楽しかったです。あっ…毎日が楽しかったんですけど、今日は特に!」

男「それはよかった」

先輩「…それで…ちょっとはしゃぎすぎて疲れてしまいました。今日はこのまま休みますね…お見送り出来なくてごめんなさい」

男「気にしなくていいよ、また明日ね」

先輩「えぇ…また明日…」ニコッ…スウッ

手をつないで、体を寄り添っても具合が悪くはならなかった。

ただただ、久しぶりに触れられたことが嬉しくて、そしてなぜか切なかった。

次の日、学校を休んだ。

風邪を引いたから。

今まで無遅刻、無欠席、風邪を引いてても登校してた。

でも今日は休んでいいかなって思ったから休んだ。

次の日、学校に行った。

先輩は居なかった。

次の日も、次の日も、

先輩は姿を見せなかった。

突然の別れだったけど、妙に納得していた。

給食があげぱんの日、屋上に半分を置き、手を合わせた。

~卒業 校門~

「―それじゃあ写真取りま~す」パシャッ

~~~~~~

友「卒業だな~ついに…」

男「そうだな」

友「…三年間つれないな…お前…」

男「それでも三年間無理矢理絡んで来てくれてありがとな!」

友「…それ感謝してるのか?」

男「…」

友「黙るなよ…まぁさ、三年間楽しかったよな!お疲れさん!」ポン

男「あぁ!おつかれ!」ポン

友「へへっ、それじゃあな!」

男「おう!」

男「(…さて…帰るか…)」

校舎に背を向ける。

「男くん」

名前を呼ばれた気がして振り返る。

頬に一瞬だけ柔らかな感触があった。

「ありがとう」

聞き覚えのある懐かしい声が耳元で聞こえた。

男「こちらこそありがとう。楽しかったよ。先輩も卒業おめでとう」

男はそう言って校舎を後にした。

やだ切ない

泣いた

これは良ss


まだこの先の話も書こうと思ってます。

思いつきで書いてるのと、ちょっと忙しいので更新はかなり遅れるかもですが…

>>70
待ってる

まーだかな

舞ってる

高校生活が始まった。

高校では霊が見えることは誰にも言わないでおこうと決めた。

平凡な高校生活。
まぁ今までも平凡だったけれど。

各々がそれぞれの過ごし方で高校生活を満喫しているようだった。

ただ1人だけ…気になる生徒が居た。

いつも席で本を読んでいる女の子。
本を読んでいない時は机に伏せて寝ていた。

彼女なりの高校生活の過ごし方なのだろう。

男子たちからは、話しかけづらい印象を持たれていた。

女子たちからは、割と人気があった。

理由としては、不用意に人を近付けさせようとしない、その雰囲気がカッコよくて素敵なんだそうだ。

彼女は占いをしていた。
それも彼女が女生徒から慕われる理由の1つだったのだと思う。

よく当たるとの評判で、他のクラスの生徒や先輩が相談に訪れるほどだった。

男「(人を近付けさせようとしない雰囲気ねぇ…)」チラッ

彼女は机に伏せて寝ている。
彼女の背中には黒い人の形をした影が覆い被さっている。

男「(絶対によくないモノ…だよな…)」

彼女の周りには入れ替わり立ち替わりで色んなモノが見えた。

宙に生えた両腕が彼女の首を絞めていたり、ヘビが巻き付いていたり、恨めしそうに彼女を見つめる人の霊は毎度のことだった。

彼女は平然としていた。

男「(見るこちらとしては、心地が悪い…)」

男「(憑かれやすい人は見てきたけど、女さんの場合、1つ1つの質がヤバい…)」

男「(声かけてみるか…)」ハァ…スタスタ

男「あの…女さん」

女「ん…ん~?どうしたの男くん」

男「寝てたのに起こしてごめんね、今大丈夫かな?女さん占い得意って聞いて…占って欲しいなって思って…」

女「うん…いいけど…何を占えばいいのかな?」

男「こ…ここだとちょっと話しづらいから別の場所に移動出来ますか?」チラチラ

近づくまで分からなかったけど、黒い影には目があって、こちらを睨んでいた。

女「そう。それじゃあ場所を変えましょう」カタッ…スタスタ

男「…」スタスタ

「おい…あいつ女さんとどっか行くぞ!?」ヒソヒソ
「占い頼んでたみたいだよ?」ヒソヒソ
「占いに興味あるなんて意外だな…というか女さんと話がしたいだけじゃね?」ヒソヒソ

~空き教室~

女「それで、何を占って欲しいの?」

男「えっと…(とっさに声かけたから、思いつかない…)」

女「もしかして私と話がしたかっただけなのかな?」ニコッ

男「!!」ドキッ

女「ふふっ…さっき他の男子たちが教室出るとき言ってたから、そうかなって意識しちゃった」

男「…一応それが正解です」

女「うん。まぁ分かってたけどね」

男「?」

女「…これでしょ?」チラッ

背後の黒い影を一瞥する。

男「…見えるんですか…」

女「えぇ。ちなみに男くんが見える人だってことも知ってたよ?」

まってた

俺も一人でさみしそうにしてる美少女幽霊とお話したい



こない…

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