ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」 (954)

プーアル「やったじゃないですか、ヤムチャ様! ようやく仕事が決まりましたね!」

ヤムチャ「そ、そういう言い方はやめてくれよ……」

プーアル「ヤムチャ様は、悟空さんやベジータさんと違って、もう前線には立ってないし」

ヤムチャ「だから、やめてくれよ……」

プーアル「全く……ピッコロさんや天津飯さんだって、頑張っているのに、ヤムチャは様は半隠居生活みたいになっちゃって……」

ヤムチャ「す、すまん……」

プーアル「このまま、ズルズルズルズル、引きこもっちゃうんじゃないかと、僕心配してたんですよ? 本当にお仕事が決まって良かったです!」

ヤムチャ「もう、やめろっ! 弱くてなにが悪いっ! 言っておくが、これでもまだ俺はそこらの格闘家よりかは強いんだぞ!? ただ、孫達が化け物なだけなんだ!」

プーアル「とにかく、早速オファーのあったプロレス団体に行ってみましょう! さぁ、今日からヤムチャ様も社会人です!」

ヤムチャ「ベジータだって働いてねぇんだ! あまり、俺ばかり責めるなよ!」

ーーー


ヤムチャ「ここが、プロレス団体かぁ……」

プーアル「な~んか、こじんまりとした団体ですねぇ」

男「ガハハ! お前がヤムチャか! よく来てくれたな!」

ヤムチャ「……ん?」

プーアル「あっ……なにか、ムキムキで身体中に傷のある人がやってきましたね?」

男「私がこの新団体『ストリートプロレス』のチャンピオン兼現場監督のザンギエフだ! よろしくな!」

ヤムチャ「あっ、ども……よろしくおねがいしま~す……」

プーアル「ザンギエフさんですね! よろしくお願いしますっ!」

ザンギエフ「ガハハ! ヤムチャ君! 君には期待してるよ!」

ザンギエフ「ガハハ! では、早速道場を案内しよう! 着いてきたまえ!」

ヤムチャ「は~い」


ザンギエフ「お~いっ! お前ら、練習一時中断しろ~! オファーしてたヤムチャ君がやってきてくれたぞ~!」

ヤムチャ「今日から、このストリートプロレスでお世話になりますヤムチャです! 皆さん、よろしくお願いしますっ!」

ザンギエフ「一部の連中は、営業やらなんやらで、今ここにはいないが……まぁ、今いるメンバーだけでも紹介しよう」

ヤムチャ「あっ、はい。よろしくお願いします……」

ザンギエフ「お~い! まずは、ベガにバイソン! お前ら、ヤムチャ君に挨拶をしろ~!」


ベガ「……ふむ。ヤムチャ君、よろしく」

バイソン「ガハハ! ヤムチャ君、よろしくな!」

ヤムチャ「あっ、ども……」

ザンギエフ「ベガ君は、うちのナンバー2だ!」

ヤムチャ「へぇ~、ザンギエフさんがトップで、この人がナンバー2と……」

ベガ「私もいつかは、ザンギエフさんみたいに、客を呼べるようになりたいものだ」

ザンギエフ「ガハハ! だったら、もっと頑張るんだな! ベガ!」

ベガ「……はっ! 精進します」

ヤムチャ(ベジータと違って謙虚な人だな。この人とは、仲良くやれそうかな?)

ザンギエフ「ベガ君は、ヒール軍団を作って、私の邪魔をしようとしている! ……と、いう設定だ!」

ヤムチャ「……設定?」


バイソン「そして、俺がそのヒール軍団の一員! バイソンだ! ヤムチャ君、よろしくな!」

ヤムチャ「あっ、ども……」

バイソン「今は席を外しているけど、他にバルログや、サガットなんて奴もいるんだぜ? 仲良くしてやってくれよな!」

ヤムチャ「バルログさんに……サガットさんですね……わかりました」

バイソン「……で、監督、どうするの? ヤムチャ君は俺達、ヒール軍団に入るの? それともベビーでやるの?」

ザンギエフ「う~む、そこだがなぁ……リュウ君とケン君のパートナーにして、ベビーにしてみようと思っている」

バイソン「え~!? あいつら、性格悪いぜ? 俺達、ヒール軍団で仲良くやりましょうよ?」

ザンギエフ「いやぁ……一応、格闘シュートスタイルで、合いそうじゃん? 彼らは、空手スタイルでやってるんだし……」

バイソン「きゃ~、バイソンちゃん、心配~! ヤムチャ君が、汚れちゃわないか、バイソンちゃん心配~!」

ザンギエフ「ま、まぁまぁ……何かあったら、俺がなんとかするから……なっ……?」


ヤムチャ「バイソンさんも、謙虚ないい人そうだな。な~んか、仲良くやれそうな気がしてきたぞ!」

ベガ「……ヒールは人がよくないと出来ないからな」

ヤムチャ「……ん?」

ベガ「いや、何でもない……忘れてくれ……」

ザンギエフ「さて、じゃあ次は……お~い! 春麗、ちょっとこっちにこ~いっ!」

春麗「……」

ヤムチャ「あっ、女性の方もいるんですね?」

ザンギエフ「我がストリートプロレスには、女子部もあるっ! 他にも何名かいるが……どうやら、席を外しているようだな……」

ヤムチャ「ど~も、自分、ヤムチャといいます。 よろしくお願いしますっ!」

春麗「……」

ヤムチャ「……ん?」

春麗「想像してより、不細工なのね? あんた」

ヤムチャ「……えっ?」

春麗「まぁ、うちの団体の足引っ張らないように頑張ってね? じゃあ、監督……私、練習に戻ります」

ヤムチャ「えっ、えっ……? もう、挨拶おしまい……? 僕、もっと女性とお喋りしたいよぅ」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」

ザンギエフ「全く……困った奴だ。ヤムチャ君、すまない……」

ヤムチャ「あっ、大丈夫ですよ! ブルマやランチさん以外の女性と話す事なんてないので、何か新鮮でした!」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」

ザンギエフ「彼女は春麗。 我が団体では、女子部のベビーをしてもらっている」

ヤムチャ「……あの~?」

ザンギエフ「ん、どうした?」

ヤムチャ「さっきから、言ってる『ベビー』って何の事ですかねぇ?」

ザンギエフ「おう、すまんすまん……専門用語なんて使ってもわからんよな! 『ベビー』とは『ベビーフェイス』の事だ!」

ヤムチャ「……ベビーフェイス?」

ザンギエフ「まぁ、平たく言えば『正義の味方』って事だな! そして、ヒールは『悪者』という事だ」

ヤムチャ「……ふ~ん」

ザンギエフ「だから、うちの団体で言えば、最初に話したベガ君達が『悪者』で……さっの春麗が『正義の味方』いうわけだ!」

ヤムチャ「えっ!?」

ザンギエフ「どうした、ヤムチャ君? そんなに驚いて」

ヤムチャ「さっきの、ベガさんとか、バイソンさんとかって、悪い奴なんですか!?」

ザンギエフ「彼らは『ヒール』だからな」

ヤムチャ「僕は凄く、謙虚でいい人そうに見えましたよ? あの人達、悪い人なんですか!?」

ザンギエフ「……う~む。そこが、プロレスの難しい所でな」

ヤムチャ「……はぁ?」

ザンギエフ「まぁ、ヤムチャ君もそのうちわかるだろう! 最初に色んな事を詰め込みすぎるのはよくないからな!」

ヤムチャ「はぁ……?」

ザンギエフ「今はとにかく、うちの団体の人間の名前と、その設定をしっかり覚えてくれ! プロレスはそこが一番重要だからな!」

ヤムチャ(名前を覚えろってのはわかるんだけど……設定って何だ、設定って)

ザンギエフ「よ~し! じゃあ、メンバー紹介を続けようか!」

ーーー

ザンギエフ「どうだ? うちのメンバー事は覚えてくれたか?」

ヤムチャ「え~っと……幼馴染タッグチームのガイルさんと、ナッシュさんでしょ……?」

ザンギエフ「彼らは女性人気の高いタッグチームだぞ? ヤムチャ君も負けるなよ!?」

ヤムチャ「え~っと……それと、野生児のブランカさんに……ヨガの達人、ダルシムさん……」

ザンギエフ「プロレスには笑いの要素も必要だ。 彼らは私達が出来ないそういう部分を補ってくれるプロだ」

ヤムチャ「う~ん……なんか、覚え事いっぱいですねぇ? 設定って、なんですか? 設定って」

ザンギエフ「よ~し! 次で、最後だ! 最後に照会ずるのは、リュウとケンだ!」

ヤムチャ「リュウ……? ケン……?」

ザンギエフ「お~い、リュウ! ケン! オファーしてたヤムチャ君がきてくれたぞ! そんな所でサボってないでこっちにこいっ!」


リュウ「……」

ケン「……」


ヤムチャ「あっ、ども。ヤムチャです。よろしくお願いしま~す」

リュウ「……誰、こいつ?」

ヤムチャ「……ん?」

ザンギエフ「おい……リュウ、ヤムチャ君に失礼だぞ? 折角、オファーを受けてくれたのに」

ケン「ヤムチャ……? あっ! 俺、こいつの事、知ってる!」

ヤムチャ「えっ、 マジで? 君、俺の事知ってるの? じゃあ、サインあげようか? ねぇねぇ、サイン欲しい?」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」

ケン「こいつさぁ、セルゲームの時、何もしないでバカ面下げて、見てた奴だよ!」

ヤムチャ「……えっ?」

ケン「それでさ、セルJrにぼっこぼこにされて、泣かされてた奴だよ!」

リュウ「あっ! そういや、いたいた! こいつ、腕折られて泣かされてた!」


ヤムチャ「おい、待て! 腕を折られたのは天津飯だ! それに俺は泣いてねぇ!」

ケン「なんで、こんな奴呼ぶんだよ! サタン様呼べよ! サタン様を!」

リュウ「うちの団体、そんなに金ねぇの? 俺をチャンピオンにしねぇからじゃねぇの?」

ケン「こんな奴、いらねぇよ! 帰れよ、てめぇっ!」

リュウ「お前、うちの団体に何しに来たんだよ!」


ザンギエフ「お前ら、いい加減にせんかああぁぁぁっ!」


ケン「!」ビクッ

リュウ「!」ビクッ

ザンギエフ「……折角、ヤムチャ君がオファーを受けてくれたんだぞ? ヤムチャ君に失礼だろう?」

ケン「……」

リュウ「……」


ザンギエフ「……それに、ヤムチャ君はお前と同じ軍団に入るんだ。これからは、仲間なんだから、しっかりしろ!」

ケン「はぁ!?」

リュウ「こいつ、俺達『空手軍団』に入るのかよ!? いらねぇよ、こんな奴!」

ザンギエフ「待て待て、落ち着け……」

ケン「俺達の会場人気、知ってるのかよ!? なんで、わざわざ今更、こんな奴入れるんだよ!?」

リュウ「お前、監督の立場利用しすぎじゃねぇのか? なぁ、ザンギエフ?」

ザンギエフ「まぁ、待て待て……お前達の今日の試合はシャドルー軍団との抗争だ……」

ケン「だから、なんなんだよ」

リュウ「話、逸らしてるんじゃねーよ」

ザンギエフ「お前達は、ストーリー上、負けてもらう事になっている……だが、お前達の会場人気は本物だ……」

ケン「……」

リュウ「……」

ザンギエフ「お前達を無駄に負けさせる事はしたくない……だから、ヤムチャ君を呼んだんだよ?」

ケン「あぁ……なぁ~る程……」

リュウ「そういう事……ね……?」

ザンギエフ「試合の内容はお前達に任せる。勿論、ヤムチャ君の使い方も、だ……」

ケン「なぁ~んだ……監督もわかってんじゃねぇか!」

リュウ「そういう事なら、有り難く使わせてもらうぜ? 監督さんよぉ?」

ザンギエフ「お前達の試合は第五試合。時間は20分目安にしてある。20分が来たら、負けてくれ」

ケン「は~い」

リュウ「了解~」

ザンギエフ「では、リュウ、ケン……それに、ヤムチャ君……今日は頼んだぞ?」


ヤムチャ「僕、話があまりわかってないんだけど、大丈夫ですかねぇ?」

ケン「いいってよ、いいってよ。 お前は俺達に任せておけばいいからよ?」

ヤムチャ「はぁ……?」

リュウ「じゃあ、とりあえず、打ち合わせだけしておこうか? 俺、飯食いに行きたいからさ?」

ヤムチャ「……打ち合わせ?」

ケン「……どうする、リュウ?」

リュウ「そうだなぁ……じゃあ、ようやくこいつの出番が回ってきたと思ったらさぁ……?」

ケン「うんうん」

リュウ「こいつ、何もできず、いきなりボコボコにされちまうってのは、どうよ!?」


ヤムチャ「……ん?」

ケン「うおっ! いいねぇ! それ、面白そうっ!」

リュウ「なっ!? だろ? だろだろ?」

ケン「それで……負けたこいつを、俺達が励まして、っと……」

リュウ「女性の悲鳴がキャ~っ! 会場人気がドーンっ! ってな?」

ケン「じゃあ、それで行こう! よしっ、打ち合わせお終いっと! リュウ、飯食いに行こうか!?」

リュウ「そうだな! 今日は肉食うか! 肉!」

ヤムチャ「えっ……? ちょっと、ちょっと……?」


ケン「じゃあ、しっかやれよ! ヤムチャ君よぉ!」

リュウ「鳴り物ルーキー君には、期待してますからよぉ!」


ヤムチャ「えっ……? 何の話だったんだ? 俺、何もわかっちゃいないぞ?」

数時間後ーー


プーアル「ヤムチャ様! これが今日の予定仕合だそうです! ちゃんとヤムチャ様の出番もありますよ!」

ヤムチャ「おい、プーアル……俺、今日入団したばかりだぞ……? そんな奴がいきなり試合に出て大丈夫なのかよ?」

プーアル「それだけ、ヤムチャ様が期待されてるって事じゃないんですかね?」

ヤムチャ「……そういう事なのかねぇ?」

プーアル「まぁ、頑張りましょうよ、ヤムチャ様! せっかくお仕事決まったんですから!」

ヤムチャ「うん、そうだな! じゃあ、自分の出番を確認するか! え~っと……ん……?」

プーアル「……あれ? ヤムチャ様、どうしたんですか?」

本日の予定試合


第一試合(10分決着)
◯コーディ ー ガイ ×

第二試合(10分決着)

×ブランカ ー ソドム◯

第三試合(15分決着)
◯春麗 ー さくら×

第四試合(15分決着)
◯ナッシュ _ Tホーク
ガイル フェイオン×

第五試合(20分決着)
リュウ サガット
ケンーバルログ
×ヤムチャ バイソン◯

第六試合(30分決着)
×ベガ ー ザンギエフ◯

やっぱりずれまくりじゃねぇか! くそっ!
もういい! 今日は寝る!

専ブラ使えばプレビュー見れるから修正しながらレスできるで
つか、試合描写なしかよ

>>25
こんな感じでいいか?

本日の予定試合

第一試合(10分決着)
◯コーディ ― ガイ ×

第二試合(10分決着)
×ブランカ ― ソドム◯

第三試合(15分決着)
◯ 春麗  ―  さくら×

第四試合(15分決着)
◯ナッシュ ― Tホーク×
  ガイル     フェイロン

第五試合(20分決着)
×リュウ  ― サガット◯
  ケン      バルログ
 ヤムチャ   バイソン

第六試合(30分決着)
×ベガ   ― ザンギエフ◯

>>28
予定って書いてあろうが

>>30
え?じゃあこの○×は?
この(台本)通りに進行するってことか

ヤムチャ「なんじゃこりゃ!?」

プーアル「ヤムチャ様、どうしたんですか? そんなに驚いて」

ヤムチャ「どうしたもこうしたもねぇだろが! プーアル、この予定表見てみろよ!」

プーアル「え~っと、どれどれ……ん……?」

ヤムチャ「これ、もう勝敗が決まってるじゃねぇか! どうなってるんだよ!?」

プーアル「あれ、本当だ! ヤムチャ様にデカデカとバッテン印がつけられていますね」

ヤムチャ「なんだコレ! 印刷ミスにしても、あまりに失礼すぎるだろっ!」

プーアル「……予想とか?」

ヤムチャ「……は?」

プーアル「いや、だから……この人が負けて……この人が勝つんじゃないかって予想とか……」

ヤムチャ「だから、俺は弱いけどそこらの一般の格闘家なんかよりかは、まだ強いんだって!」

プーアル「……じゃあ、どういう事なんでしょうねぇ?」

ヤムチャ「とにかく、ザンギエフさんに聞いてみよう! 基本的に、あの人言ってる事、わかんねぇんだよ!」

ーーー


ヤムチャ「あの……ザンギエフさ~ん!?」

ザンギエフ「……どうした、ヤムチャ? もう、第一試合は始まってるぞ? あまり、うろちょろするな」

ヤムチャ「あの、ザンギエフさん……この予定表の事なんですがね……?」

ザンギエフ「……それがどうした?」

ヤムチャ「これ、僕の所にデカデカと×印がつけられてるけど、どういう事なんですかねぇ?」

ザンギエフ「……見ての通りだが?」

ヤムチャ「……は?」

ザンギエフ「お前が、負けるんだよ。 バイソンにフォールを取られてな」

ヤムチャ「……はぁ?」

ザンギエフ「……おっ? 第一試合が終わったみたいだな?」


「お~っと、ここでコーディ選手の逆エビ固めで、ガイ選手がギブアップ! コーディ選手の勝利ですっ!」


ザンギエフ「……8分か。 2分足りてないな。 仕方ない、春麗達に試合を伸ばしてもらおう」

ヤムチャ「……」

ザンギエフ「お前にも、あれと同じ事をしてもらう」

ヤムチャ「……はぁ?」

ザンギエフ「予定表の所を見てみろ? 第一試合のコーディとガイの、勝敗はどうなっている?」

ヤムチャ「えっ……? それは……コーディの勝ちになっています……」

ザンギエフ「……試合の決着時間は?」

ヤムチャ「10分……決着と書いています……」

ザンギエフ「今の結果を見てみろ。 試合時間は10分に満たない8分だったが、コーディの勝利で試合が終わっただろう?」

ヤムチャ「……えっ?」

ザンギエフ「彼らはその通りにやり切ったんだよ。 これがプロレスだ」

ヤムチャ「ちょ、ちょっと、待って下さいよ!」

ザンギエフ「……どうした?」

ヤムチャ「じゃあ、俺にもわざと負けろって言うんですか!?」

ザンギエフ「……その通りだ」

ヤムチャ「これって、格闘家なんでしょ!? こんな風に、始めから勝敗が決まっているなんて、これって八百長じゃないですか?」

ザンギエフ「八百長ではない。プロレスだ」

ヤムチャ「なぁ~んで、俺がそんな真似しなくちゃいけねぇんだよ! こっちは腐っても、格闘家だっての!」

ザンギエフ「今のお前は、我が団体所属のプロレスラーだ。契約はもう、済んでいるんだからな」

ヤムチャ「……はぁ?」

ザンギエフ「とにかく、現場監督の俺の発言には従ってもらう」

ザンギエフ「ちなみに、お前はどう負けるつもりなんだ?」

ヤムチャ「……はぁ?」

ザンギエフ「そこに、書いてあるだろう? 今日の第五試合は、お前の負けで決着する。お前はどう負けるつもりなんだ?」

ヤムチャ「いや……いきなり、そんな八百長しろって言われても……俺……」

ザンギエフ「リュウ達と打ち合わせをしたのではないのか?」

ヤムチャ「いや……あの、二人……何、言ってるかわかんまま、飯食いに行って……」

ザンギエフ「チッ……! あの馬鹿、プロレスの仕組みすら説明してねぇのかっ……!」

ヤムチャ「それで……そのまま戻ってこなくて……」

ザンギエフ「仕方ない、今すぐバイソンと打ち合わせして来いっ! あいつらなら、なんとかしてくれるだろう!」

ヤムチャ「……えっ?」

ザンギエフ「早くしろっ! 第五試合まで時間がねぇんだっ!」

ーーー


ソドム「拙者のラリアットをお見舞いするでござる

ブランカ「……ウガ?」

ソドム「でええぇぇぇやぁぁぁっ!」

ブランカ「……エレクトリックサンダー」

ソドム「あばばばばばばばば」

観客「wwwwwww」


サガット「モニター越しじゃなくて、生で見たかったな」

バルログ「ブランカさん、上手いですね。 凄く、観客の笑いをとってる」

バイソン「ソドムさんのリアクションも上手いんじゃね? あの人、第二試合にしてるのは勿体ないよ」


コンコン


バイソン「……ん?」

ヤムチャ「あの~?」

バイソン「あれ? ヤムチャ君じゃない、どうしたの?」

サガット「あっ、この方が新入りのヤムチャさん? 自分はサガットと言います。よろしくお願いします」

バルログ「私はバルログと申します。 本日の試合はよろしくお願いしますね」

ヤムチャ「あっ、自分はヤムチャと申します……よろしくお願いします」

バイソン「……で、こんな楽屋にまで何の用?」

ヤムチャ「いやぁ……なんか、ザンギエフさんが打ち合わせしてこいって……」

サガット「そうだな。ヤムチャ君のムーブも知らないんだし、打ち合わせは入念にしておいた方がいいな」

バルログ「私はルチャ系ですからね。 一歩間違えれば、大怪我に繋がります」

バイソン「じゃあ、打ち合わせしようか? ヤムチャ君はどういう風な展開がいい?」

ヤムチャ「いや、あの……」

ヤムチャ「あの……今から、俺達八百長するんですよね!?」

サガット「八百長じゃねぇよ」

ヤムチャ「でも、俺、負けなきゃいけないんでしょ!?」

バルログ「その用に決められていますからね」

ヤムチャ「じゃあ、八百長じゃないですか!? これって、格闘技なんでしょ?」

バイソン「……あれ? もしかして、ヤムチャ君ってプロレス始めて?」

ヤムチャ「はい、プロレスはやった事ないっす……」

バイソン「う~ん……困ったなぁ……じゃあ、何処から説明しようかなぁ……?」

ヤムチャ「……はぁ?」

バイソン「試合まで、時間もないし、簡潔に説明するよ」

ヤムチャ「……はぁ」

バイソン「先ず、今日の試合、ヤムチャ君にはわざと負けてもらう。それは決定事項。もう、変えられない」

ヤムチャ「……でも、それって」

バイソン「そうだね、八百長だね。でも、それは決まった事。仕方ない」

ヤムチャ「……」

バイソン「君には不本意な事かもしれないけど、君がこの団体と契約した以上は、そうしてもらう」

ヤムチャ「……なんで、こんな事に」

バイソン「……でも、負け方にも色々な負け方があるよね?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「例えば、相手をギリギリまで追い詰めたけど、一瞬の隙を疲れて負けちゃった」

ヤムチャ「……」

バイソン「相手と互角の勝負をして、僅差の勝負で負けてしまった」

ヤムチャ「……」

バイソン「強い相手と戦って、何もできずに、ボロボロにさせられて負けちゃった」

ヤムチャ「……」

バイソン「さぁ、ヤムチャ君はどれが一番いいと思う?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「どんな負け方をしたら、今日、ここに集まってくれているお客さんは、一番盛り上がると思う?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「君はただ、負けるだけじゃないんだ。君の負けで大きな価値を作ろう」

ヤムチャ「負けに価値なんて、あるのかよ……」

バイソン「とにかく、今からそれを皆で打ち合わせしよう! リュウ君達には、何か言われてないの?」

ヤムチャ「あっ、そういえば……」

バイソン「何か指示があったの?」

ヤムチャ「何もできずに、ボコボコにされろって、言ってたような……」

バイソン「……えっ?」

ヤムチャ「それで、俺達が慰めて、女性人気がどうとかこうとか言ってたような……」


サガット「……酷ぇ」

バルログ「……美しくない」

バイソン「なんだよ、それ! あいつら、自分の事しか考えてねぇじゃんっ!」

ヤムチャ「あ~、俺……そういう、あの人達にいい格好させる為だけに呼ばれたの?」

バイソン「ダメだ! そんな負け方は絶対にダメだよ! これからのヤムチャ君が潰れちゃうよ!」

ヤムチャ「な、なんすか……急に熱くなっちゃって……」

サガット「……ヤムチャ君、何か必殺技とかねぇの? ちょっと、ムーブ見せてよ」

ヤムチャ「ムーブ……? 何、言ってるかわかんないすけど、必殺技ならありますよ? 狼牙風風拳って奴が」

バルログ「ほ~う……素敵な名前ですねぇ。是非、見せて頂きたいです」

ヤムチャ「でも、どうせ俺、負けなきゃいけないんでしょ?」

バイソン「いいから、いいから! 早く見せてよ!」


ヤムチャ「もう、面倒臭いなぁ……じゃあ、狼牙風風拳っ……! ホワチャアッ!」

サガット「凄ぇっ!」

バルログ「美しいっ!」

バイソン「凄い凄いっ! 凄く格好いいじゃん、それ!」


ヤムチャ「えっ……? そうっすか……? なんか……照れちゃうなぁ……」


サガット「それ、やったら絶対、会場盛り上がるじゃん!? それ、やろうぜ!?」

バルログ「そうですね。 きっと、これからのヤムチャ君も期待されるでしょう」

バイソン「じゃあ、20分ぐらいになったら、ヤムチャ君がその技してよ!?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「後は、僕が上手い事して、なんとかするからさぁ!? ねっ?」

ヤムチャ「……でも、結局負けるんでしょ、俺?」

バイソン「いいから、いいからっ! 騙されたと思ってやってみなよ! 試合が終わったら、絶対プロレスの楽しさがわかるからさぁ!?」

ヤムチャ「……」

そしてーー


プーアル「ヤムチャ様っ! ナッシュさんが、フェイオンさんから3カウントとりましたよ!」

ヤムチャ「うん。だって、ここに書いてあるもん。知ってる……」

プーアル「次がヤムチャ様の試合ですよ! 頑張って下さいねっ!」

ヤムチャ「頑張って負ければいいの? バカじゃねぇの?」

プーアル「……それにしても、ヤムチャ様の仲間の二人、遅いですねぇ? もう、始まっちゃいますよ?」

ヤムチャ「……何、してるんだろ。あの二人」


リュウ「うわぁ……危ね、危ね……遅刻ギリギリっ……!」

ケン「まぁ、間に合ったから、いいじゃねぇか! いや~、ちょっとのんびり遊びすぎちまったな!」


プーアル「あっ! 戻ってきましたよ!」

ヤムチャ「……この二人、大丈夫かねぇ?」

リュウ「お~い、新入り……」

ヤムチャ「……ん?」

ケン「今から、俺達の入場だけどよ? お前はしばらく、そこで待っておけ」

ヤムチャ「えっ……? 俺、試合出ないんですか?」

リュウ「バーカ! 俺達が先に行って……マイクで、お前を呼ぶから……」

ケン「おめぇはそのタイミングに合わせて出てこいって、話だよ」

ヤムチャ「ふ~ん」

リュウ「おめぇは、余計な事するなよ!? 全部、俺達の言う通りにしておけっ!」

ケン「絶対、格好つけたり、気取ったりするんじゃねぇぞ!? お前は俺達のおまけなんだからよぉ!?」

ヤムチャ「……」

ーーー


ダン「さぁ、試合はいよいよ、第五試合……空手軍団対シャドルー軍団……因縁のスペシャルマッチですっ!」


ワー、ワーワー


ダン「女性の皆様、お待たせしましたっ! 我らがヒーロー……」


キャー、キャーキャー


ダン「リュウ、ケン選手の入場ですっ!」


キャー、キャーキャー


リュウ「今日こそは、シャドルー軍団を絶対に倒すっ! なぁ、ケンっ!」

ケン「あぁっ! 俺達の力を合わせれば、絶対にできるさ、リュウっ!」


キャー、ステキー

今日はこの辺にしておこうか
絶対言葉足らずの部分が何処かにあるとは思うけど、プロレスDisるSSじゃないので
その辺は生温かい目で見てね

実況「さー、華やかな声援に包まれ、今リュウ選手とケン選手が入場しております!」


キャー、キャーキャー


リュウ「俺は俺より強い奴に会いにきたっ!」


リュウー、カッコイイー


ケン「あまり、熱くなりすぎるなよ、リュウ!」


ケンー、ステキー


実況「さー、リュウ選手、ケン選手……今、リングインっ! 場内大歓声ですっ!」

実況「……ん? おっと、ここでリュウ選手がマイクを握りました。どうしたんでしょう?」


リュウ「皆、聞いてくれっ!」

ザワザワ……ザワザワ……

リュウ「最近、俺達はシャドルーとの抗争で、いい結果を残せていない……」

ソンナコトナイゾ-! リュウ、ガンバレ-!

リュウ「……だがっ! それは、奴らがいつも三人がかりで、卑怯な手段を使っているだけだからだ!」

ソウダソウダ-! シャドルーハヒキョウダ-!

リュウ「正々堂々と勝負をすれば……俺達は絶対に勝つ!」

ソウダソウダ-!

リュウ「だからっ! 今日はそんな奴らに勝つ為に、秘策を用意してきたっ!」

ナンダ、ナンダ……?

リュウ「……皆には言ってはいなかったが、俺達の師匠は他にもまだ、弟子を持っているんだ」

ザワザワ……ザワザワ……

リュウ「今日は、俺達の弟分にあたる、三番弟子を連れてきたっ!」

オーッ! オーッ!

リュウ「実力はまだ俺達には遠く及ばないが……だが、これでこっちも三人っ! シャドルーに対抗する事が出来るぞ!」

オーッ! オーッ!

リュウ「さぁっ、紹介しよう! 皆、暖かい声援で迎えてやってくれ! ヤムチャ、お前の出番だっ!」


プーアル「あっ! ヤムチャ様、呼ばれてますよ? このタイミングで入場するんじゃないですかね?」

ヤムチャ「……えっ? 俺、あいつらの弟弟子なの? 違うよ、俺の師匠は無天老師様とか、界王神様だよ」

プーアル「いや、でも呼ばれてますって……! とにかく、ヤムチャ様、入場して下さいっ!」

実況「お~っと、これは驚きだぁ! なんと、空手軍団に新メンバー加入か!?」

ヤムチャ「おいおい……こりゃ、いったいどうなってんだよ……」

実況「お~っと! 初登場で緊張しているのでしょうか!? ヤムチャ選手、なんだかたどたどしいですっ!」

ヤムチャ「うわっ……すげぇ、お客さんいるじゃん……」

実況「さぁ! 三番弟子であるヤムチャ選手の入場ですっ! いったい、どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!?」

ヤムチャ「と、とりあえず……リングに行けばいいのか……あそこで戦うんだよな……」


ワー! ワー!


実況「暖かい歓声に包まれながら、今っ! ヤムチャ選手、リングイ~ンっ!」


ワー! ワー!


ヤムチャ「お、おいおい……この人達の前で、俺、八百長しなきゃいけねぇの……?」

リュウ「ヤムチャっ! よく来てくれたな! 待ってたぞっ!」

ヤムチャ「待ってたって……打ち合わせ通りじゃないすか……」

ケン「……余計な事、言うんじゃねぇ」ボソッ

ヤムチャ「……えっ?」

ケン「……マイクを持ってんのはリュウなんだ。後は、リュウに任せてお前は黙っておけ」

ヤムチャ「……えっ? えっ?」

リュウ「さぁ、ヤムチャっ! 今日、ここでお前が師匠から学んだ成果を見せるんだっ!」

ヤムチャ「いや、だから……」

ケン「……だから、黙ってろって。緊張してる感じに見えて、丁度いいんだからよぉ?」

ヤムチャ「……えっ? えっ?」

リュウ「さぁ! 今日の試合は三人の力を合わせて必ず勝とうっ!」


ワー! イイゾー!

ーーー

ダン「続きましては……プロレス界から世界征服を狙う……シャドルー軍団……」

ダン「サガット選手、バルログ選手、バイソン選手の入場ですっ!」


サガット「……」

バルログ「……」

バイソン「……」


ブー、ブーブー


実況「さぁ、先程の声援とは打って変わって、大ブーイングだっ! 悪の組織、シャドルー軍団の入場ですっ!」

ブー、ブーブー


バイソン「うるせぇ、クソアマっ! ブーイングばかっりしてんじゃねぇぞ! この馬鹿がっ!」

ヤムチャ「……ん?」

バイソン「お前らはちょっと、イケメン見ただけで、す~ぐチヤホヤするんだな!?」


実況「お~っと、バイソン……いつものように、お客さんに噛み付いていますっ! 大丈夫でしょうかね、あの女性」


女「バイソン、すきっ歯でブサイクwwwww」

バイソン「なんだと、てめぇコノヤロっ! だったらてめぇの歯も抜いてやろうか!? えぇ!?」

女「バイソン、ブサイクーwwwww」

バイソン「この野郎……てめぇ! ちょっとこっちに来いっ! おめぇの歯も抜いてやるよ、コラっ!」


ヤムチャ「バイソンさん、何してるの……? あんた、そんな人じゃなかったじゃん!」

バルログ「フ……バイソンおやめなさい……」

バイソン「でも、バルログ……このアマがよぉ……?」

バルログ「彼女は……本当の美しさが理解できない、センスのない人間なのでしょう……」

女「バルログ、キモいよ~wwwww」

バルログ「いいえ、わかっていないのは、あなたです……世界で一番美しいのはこの私……」


実況「お~っと! ナルシストのバルログ……また、今日も入場中に格好をつけております!」


バルログ「美しい私を差し置いて……あんな野蛮な方に夢中になるなんて……少し、センスを磨いた方がよろしいのではないですかね?」

女「だからバルログ、キモいってwwwww」

サガット「……お前ら、その辺にしておけ」

バルログ「……ん?」

バイソン「でもよぉ……サガット、このアマが……」

サガット「フン、好きに言わせておけ……帝王はゴミになど、興味がないわ……興味があるのは勝利の味だけよ……」

バルログ「フ、サガットらしいですね……では、本日も美しく勝利を頂くとしましょう……」

バイソン「よかったなぁ、クソアマ! お前、サガットのおかげで、命拾いしたじゃねぇか!」

女「アハハ、バイソン頑張ってねぇ~」

バイソン「今更、おべっか使ったってもう遅ぇよ! 次、会場で見かけたらも~っと、酷い事してやるから、覚悟しておけよ!?」

女「わかった~! じゃあ、また来るね~!」

実況「さぁ、今ようやくシャドルー軍団がリングインっ! 本日も試合前から大暴れでございますっ!」


ヤムチャ「あれ……? ケンさん、バイソンさん達ってあんな人達でしたっけ……?」

ケン「……お前はもう黙ってろ」


ダン「それでは、本日の第五試合……30分一本勝負を行いますっ!」


ヤムチャ「……あれ、30分? 20分じゃなかったっけ?」

ケン「もう、お前は黙ってろ……20分決着だからよぉ?」


実況「さぁ! 今、試合が始まります! さて、この30分一本勝負! 試合の結末はどうなってしまうのでしょうか!?」

実況「では、解説の元さん、よろしくお願いしますっ!」

元「はい、よろしくお願いします」

実況「今回の試合、元さんはどういった点に注目されます?」

元「やっぱり、三番弟子の……え~っと、ヤムチャ君? でしたっけ?」

実況「はい、その通りです」

元「彼がどのようなファイトスタイルなのかが、一つの大きなポイントになりそうじゃないですかね?」

実況「そうですね! ヤムチャ選手の動きに注目して見ていきましょう!」

元「まぁ、三番弟子なんだし、先発で出るのは彼なんじゃないの?」

実況「シャドルー軍団の先発は……バイソンですっ……!」


バイソン「……」


実況「そして、空手軍団からは……ん? おっ……? おぉっ……?」


リュウ「……」


実況「リュウです! 先発はリュウが出ますっ!」

元「……あら、予想外れちゃったね」

ケン「おい、新入り……?」

ヤムチャ「……はい?」

ケン「とりあえず、お前はこのコーナーサイドでずっと立ってるだけでいいから?」

ヤムチャ「……はぁ」

ケン「18分ぐらいになったら、俺がお前にタッチするから……それまでは、ここでずっと待ってろ」

ヤムチャ「それだけで、いいんですかね……?」

ケン「まぁ、リュウがやられてる時とかは、『頑張れ~!』とか……リュウが勝ってる時は『いいぞ~!』とか……そういう声出ししておけばいいから」

ヤムチャ「なるほどなるほど……」

ケン「後は、細かい事が来たら、その場で指示がするから……まぁ、臨機応変に対応しろや」

実況「さぁ……今、試合開始のゴングが鳴らされようと……」


バイソン「おらぁっ!」ガスッ!

リュウ「……ぐっ!」

バイソン「おらおら! このクソボケっ! ちょっと顔がいいからって、調子乗ってんじゃねぇぞっ!」ガスガス

リュウ「……ぐっ! ぐっ!」


実況「お~っとっ! ゴングがなる前にバイソンの奇襲攻撃だっ!」

元「……これはいけませんね」

実況「今、慌ててゴングが鳴らされますっ! さぁ、この試合どうなってしまうのでしょうっ!」


カーン!

ケン「おいっ! 何やってんだ、コラっ! 卑怯だろっ!」


バイソン「へへ、知るかよ……このバーカ! おらっ!」ガスガス

リュウ「……ぐっ! ぐっ!」


ケン「……おいっ! おめぇも声出せって!」

ヤムチャ「あっ、そっか……! ちょっと、バイソンさん! 卑怯っすよ! ルールは守りましょうよ!」

ケン「……バカっ!」


リュウ「……ぐっ!」


実況「おぉ~っと! ここで、リュウたまらず場外にエスケープ!」

元「一度、仕切り直そうという事ですね」

ケン「リュウ、大丈夫かオイっ! 俺が行こうか!?」

リュウ「……いや、大丈夫だ。 俺に任せてくれ」

ケン「よしっ! じゃあ、気合入れて行ってこいや!」

リュウ「あぁ!」


実況「さぁ、リュウここで再びリングイ~ンっ!」


バイソン「へへへっ! おいっ! 今からこいつをぼっこぼこにしてやるから、よ~く見ておけよ!?」


ブー、ブーブー


実況「なぁ~んと、ふてぶてしい態度! 会場からはブーイングの嵐です!」

元「どういう教育を受けてきてるんでしょうね、彼は」

実況「さぁっ! 仕切り直して、今試合が始まりますっ!」

バイソン「へへへ、いくぞオイっ!」

リュウ「……来いっ!」


ヤムチャ(これ、いつ声出しが来るかわかったもんじゃないな……気ィ抜けねぇや……)

ケン「……おい、新入り」

ヤムチャ「あっ、どうしたんですか?」

ケン「今のはさぁ、声が小さかったからよかったけど、相手にさん付けとかはやめろ。俺達は勝負してるんだから」

ヤムチャ「あっ……すんません……」

ケン「とにかく、お前が思いつく限りの、薄汚い言葉で相手を罵れ。バカでも、ボケでもなんでもいいからよぉ?」

ヤムチャ(ベジータの真似とかすれば、いいのかね?)

ケン「それと、声……小さすぎ。もっと腹から声出せ」

ヤムチャ「……小さかったっすか?」

ケン「あのね……俺やリュウだけに声が聞こえても、意味ねぇの」

ヤムチャ「……ん?」

ケン「会場のお客さんに、聞こえるように声を出すんだよ」

ヤムチャ「……会場のお客さん?」

ケン「別に、リュウ励ましたって、意味ねぇじゃねぇか。どうせ、この試合はお前が負けるんだからよぉ?」

ヤムチャ「……そうっすね」

ケン「でも、お客さんは知らねぇんだ。おめぇはそれを煽るんだよ」

ヤムチャ「はぁ……」

ケン「……ほら、リュウが優勢だぞ! おめぇ、やってみろや!」


リュウ「はっ! たぁっ! せやっ!」ガスガス

バイソン「……ぐっ! ぐぐっ!」

あれ?ケンいい奴じゃね?

>>90
ちょっとね、プロレスの仕様が悪くて右往左往するヤムチャさん書いて、後で説明するつもりだったんだけど
どうやら、イライラさせてるみたいだから展開変えてる

こいつの悪い奴設定は変えない 今は仕事上の上司なだけと補足しといて

ヤムチャ「リュウさんっ! いけぇっ! そのままやっちまえっ!」

リュウ「任せろっ! はぁっ! たぁっ!」ガスガス

バイソン「……ぐっ! ぐぐっ!」


ヤムチャ「……こんな感じっすかね?」

ケン「……ダメ。もっと煽れ。もっともっと!」

ヤムチャ「……も~う」

ケン「いいからやれって……薄汚い言葉を使ってよぉ!」


ヤムチャ「いけぇ~! そんな奴、ボロ雑巾にしちまえ~!」

リュウ「任せろっ! はぁっ! たぁっ!」ガスガス


実況「さぁ! お返しと言わんばかりのリュウの猛攻! バイソン、防戦一方です!」

ヤムチャ「いけぇ~! そのままやっちまえっ!」

ケン「……よし、もういいぞ」

ヤムチャ「……えっ?」


リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !


実況「さぁ! 場内から溢れんばかりのリュウコールだっ! リュウ、まさか、ここで決めてしまうのか!?」


リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !


リュウ「よしっ! このまま決めるっ……! いくぞっ……!」

バイソン「!」


実況「おぉ~っと、あの構えは!?」

元「リュウ君の必殺技の、真・昇龍拳ですね」

>ヤムチャ「……も~う」

かわいいおにゃのこの声で脳内再生されたんだがw

バイソン「……ぐっ! まずいっ!」

リュウ「……くっ!」


実況「ここでたまらず、バイソン場外にエスケープっ! 今度はバイソンが場外へ逃げますっ!」

元「……まぁ、一度間を取りにいったんでしょうね」


ブー、ブーブー


実況「場内からは大ブーイングっ! 私が、お客さんの気持ちを代弁しましょう! 真・昇龍拳が見たかったっ! この歯抜けっ!」

バイソン「うるせぇっ! 好き勝手言ってんじゃねぇよ! この野郎っ!」

実況「おぉ~っと、バイソン、本部席の我々に噛み付いてきています! 一体、どういった教育を受けてきてるのでしょう!?」

元「……あんたが、偏った解説するからじゃないの?」

ケン「……まぁ、あんな風によぉ?」

ヤムチャ「……ん?」

ケン「お客さんを上手い事煽れって事だ……」

ヤムチャ「……はぁ」

ケン「おめぇ、格闘技やってたかもしれねぇけど、こりゃプロレスだ」

ヤムチャ「……」

ケン「プロレスはプロレスなりのルールがあるの……わかった?」

ヤムチャ「……べ、勉強します」

ケン「……ったく、入団するなら、それくらい覚えてこいや。面倒臭ぇ」

サガット「何をやっている! バイソンっ!」

バイソン「あっ……す、すんません……」

サガット「もういいっ! 俺が出る! 交代だ!」

バイソン「わ、わかりました……」


実況「おっと……バイソン、ここでサガットにタッチして交代です。 次はサガットが出ます!」


サガット「フン……帝王の力を見せてやろう……」

リュウ「望む所だ! かかって来いっ!」

ケン「……おい、新入り?」

ヤムチャ「あっ、また、声出しっすか?」

ケン「いや……多分、もうすぐバルログが俺達の所に突っ込んでくるからよ?」

ヤムチャ「……へ?」

ケン「あそこからダーって、走ってきて、俺達に蹴りを喰らわせると思う」

ヤムチャ「……何で分かるんですか?」

ケン「……だから、それがプロレスなのっ!」

ヤムチャ「……で、その蹴りを避けずに喰らうって事っすか?」

ケン「お~、ちょっとはわかってきたみてぇだな! 蹴り喰らったら、そのまま大ダメージ喰らったふりして、暫く場外で寝ておけ」

ヤムチャ「……わかりました」

ケン「俺がいいって言うまで、絶対に起き上がるんじゃねぇぞ? わかったな?」

ヤムチャ「……は~い」

>ヤムチャ「……は~い」

ヤムチャやる気ねぇw

サガット「いくぞ、リュウっ!」

リュウ「こいっ! サガット!」

サガット「うおおっ! タイガーっ!アッパー……」

リュウ「それならこっちは……昇竜拳だっ!」


実況「おぉ~っと! あの構えはっ!」

元「タイガーアッパーカットと、昇竜拳……お互いの得意技のぶつかり合いですね……」


サガット「……フ」ニヤリ

リュウ「!」

サガット「甘いっ! タイガーニー!」ドゴッ


実況「いやっ、屈んだのはフェイントだっ……! これはタイガーニーだっ! サガットのタイガーニーがリュウに炸裂~っ!」

元「どてっ腹にいいのもらっちゃいましたね」

リュウ「ぐっ……うおぉ……」ヨロヨロ


実況「おおっと! これはダメージが大きそうだ! リュウ、かなり苦しんでますっ!」


サガット「よしっ……うおおっ!」


実況「そしてサガットが、リュウを自軍コーナーへと、降り投げたぁっ!」

元「……これ、ちょっとマズいかもしれませんね?」


ケン「……おいっ! 来るぞっ!」

ヤムチャ「えっ……?」

バルログ「ヒャオッ!」


実況「おっと! バルログがトップロープを飛び越えてリングの中へっ!」


バルログ「……ヒョォオオオ」ダダッ


実況「そして、バルログは……そのまま、ケンとヤムチャの元へ突っ込んでいったぁ~!」

元「あ~、これ分担作戦ですね」


バルログ「ヒャオッ! ヒャオッ!」シュッ、シュッ

ケン「……ぐっ!」

ヤムチャ「いて」


実況「おぉ~っと! ドロップキック二連発! 華麗な空中殺法でケンとヤムチャをけちらしたぁ~!」

元「いや~、いいフォームしてますよねぇ」

実況「おぉ~っと、大変だいつの間にやら、バイソンもリングに入ってきていますっ!」

元「あ~、これ三対一ですねぇ」

実況「リング上にはリュウ一人! レフェリーも必死に制しようとしていますが、そこは悪の軍団! そんな事など、お構いなしだっ!」


ダン「ちょっと……三体一だから……やめなさいって……」アタフタ

サガット「試合権利は俺にあるだろうがっ! 俺がここにいる事になんの問題があるんだよぉ!?」

ダン「じゃあ……他の二人に、言うからさぁ……?」

サガット「うちのメンバーにアヤつけんじゃねぇよ! 言いたい事があるなら、大将の俺に言えやっ!」

ダン「あんた、滅茶苦茶じゃねぇか!」


バルログ「ヒャオッ! ヒャオッ!」ガスガス

バイソン「おらおらっ! くたばりやがれ、リュウ!」ガスガス

リュウ「ぐっ……うっ……」

実況「これはリュウ、大ピンチっ! 場内からはブーイングの嵐だっ!」

ブー、ブーブー


バイソン「へへ、ブーイングが気持ちいいぜぇ、おい」ガスガス

バルログ「勝利こそが一番美しいのです……過程などは問題ではないのです……」ガスガス

リュウ「ぐっ……! うっ……!」


実況「いや~、憎たらしいっ! 実に憎たらしいっ! 解説の元さん、これどう思います!?」

元「う~ん、とりあえず、ケン君と……ヤムチャ君だっけ……? 助けに行った方がいいんじゃない?」

実況「しかし、ケンとヤムチャは、先程のバルログの攻撃で大ダメージっ! 二人は動けませんっ!」


ケン「ぐっ……ううっ……」

ヤムチャ(……ダメージなんて受けてねぇよ。好き勝手、言ってやがるな、あの解説)

観客「ケン、立って~! リュウがピンチだよ~!」

ケン「ぐっ……ううっ……」

観客「おいっ! おめぇも立てよ! 兄弟子のピンチを何とかしやがれっ!」

ヤムチャ(だって、起き上がっちゃダメって言われてるんだもん……)

観客「ケ~ンっ! しっかり~!」

ケン「くそっ……うおおっ……!」ヨロヨロ


実況「おっ!? ケン起き上がったぞっ!?」


ヤムチャ(おっ……って、事は俺も起き上がっていいのかな?)チラッ

ケン「……」ギロッ

ヤムチャ「!」

ケン「うおおぉっ! リュウっ! 今、助けに行くぜぇっ!」

ヤムチャ(何だよ、今のは怖い目は! よくわかんないけど、とりあえず、このまま寝ていた方がいい気がする……)

とりあえず、今日はこの辺で
プロレス知らない人にはわかりにくい内容になったかも知らんけどすまんね

実況「さぁ! ここでケンが復帰だっ! 捕まっているリュウの元へと駆けつけますっ!」


バルログ「サガット! 後ろっ……!」

サガット「……ん?」

ケン「うおおおぉぉぉっ!」ガスッ

サガット「……ぐっ!」


キャー! ケーン!


ケン「てめぇら、好き勝手にやってんじゃねぇぞゴルァっ!」

サガット「くっ……このクソ餓鬼が、舐めやがって……!」

サガット「バルログっ! バイソンっ! こいつも纏めてやっちまうぞっ!」

ケン「上等だっ! かかってきやがれっ! 纏めて相手にしてやるよっ!」

バルログ「生意気な……いきますよ、バイソンっ! ヒャオッ!」ガスッ

バイソン「あぁっ! ちょっと顔がいいからって、調子に乗ってるんじゃねぇぞっ!」ガスッ

ケン「ぐっ……! くそっ、空手軍団舐めんじゃねぇぞゴラァっ!」


実況「さぁ! リング上は滅茶苦茶になっておりますっ! この戦い、一体どうなってしまうんでしょうか!?」


サガット「小僧、舐めやがって……貴様は、この帝王が直々にとどめを刺してくれるわ……」ワナワナ

リュウ「おい、サガット……待てよ……」

サガット「……ぬ?」

リュウ「ケンが頑張っているんだ……俺だって、こんな所で倒れてちゃいけない……」

サガット「……こいつ」

リュウ「お前達の好き勝手にはさせないっ……! はぁっ!」ガスッ

サガット「ぐっ!」


実況「おぉ~っと! ケンの気合が伝わったのか!? ここでリュウも復活っ! 行けっ! シャドルー軍団に制裁を与えてしまえっ!」


リュウ「うおおぉぉっ!」

サガット「舐めてんじゃねぇぞゴミがぁっ! うおおぉぉっ!」

ケン「リュウっ! やっちまうぞっ!

リュウ「あぁっ! わかっているっ! ケンっ!」


バイソン「上等だコラっ! お前ら纏めてやってやるよっ!」

バルログ「シャドルー軍団の恐ろしさ……その身で味わいなさいっ……!」

サガット「お前らは、今日ここで潰してやるっ! うおおおぉぉっ!」


実況「さぁ、リング上は大乱戦っ! 両者入り乱れての大乱戦でございますっ!」

元「う~ん……これ、早く一体一に戻さないと、危ないよ? レフェリー、何してるのかな……?」


ダン「おいっ! お前ら、いい加減にしろよっ! ちゃんと試合しやがれって!」

実況「いや~……しかし、こういった戦いもプロレスの醍醐味なのではないですかねぇ、元さん?」

元「あっ、そういう事じゃなくてね……?」

実況「ん……? と、言いますと……?」

元「ヤムチャ君だっけ……? 彼がまだ、復帰してないじゃない? これ、二対三じゃない?」

実況「あっ、確かに……! 今、リング上にいるのは、リュウ、ケンの二人とサガット、バルログ、バイソンの三人っ!」

元「ねっ? リュウ君達に不利な状況でしょ? あの、二人も冷静になって、一体一の状況をちゃんと、作らなきゃ」

実況「もしくは、早くヤムチャに復帰してもらい、三対三の状況を作るか!」

元「だから、レフェリーの彼も、早く止めなきゃ……こういう事はさぁ……?」

ダン「お前ら、いい加減にしやがれっ! この試合、無効試合にしてやろうか!? ノーコンテストにするぞ!?」

サガット「わかった、わかった……二人を引っ込めてやるよ、だからノーコンテストは勘弁してくれ、なっ?」

ダン「だったら、早く試合権利を持ってねぇ奴は下がりやがれっ!」


バルログ「フッ、では大人しく従いましょうか……」

バイソン「まぁ、結構ボコボコにできたしな……へへ、まぁここらが潮時か……」

ケン「おいっ! おめぇら舐めてんじゃねぇぞっ!」


ダン「ケンっ! お前も下がれっ! 今、試合権利を持っているのはリュウとサガットと二人だっ!」

ケン「うるせぇっ! 今更引っ込みがつくわけねぇだろっ! こらっ!」

ダン「ノーコンテストにするぞ!? いいのか!? 下がらないとこの試合はノーコンテストだっ!」

ケン「ぐっ……! く、くそっ……わかったよ……」

実況「さぁ、ようやくここで、両者収まったでしょうか。 おっと、ここでサガットがバルログに交代します」


サガット「……バルログ、次はお前が行け。 あんな死に損ない、倒すのはもう楽勝だろう」

バルログ「では……私が、美しく勝利をいただきましょう……」

リュウ「……来いっ!」


ダン「おい、ケン……お前は、外に倒れてる奴をなんとかしてやれよ……」

ケン「……ん?」

ダン「ほら、あいつ……いつまで伸びてんだよ? 怪我とかしてるんじゃねぇのか……?」

ケン「しまったっ……! ヤムチャっ……! 大丈夫か!」

観客「おいっ! 新入りっ! 何、やってるんだよ!」

ヤムチャ(聞こえない……聞こえない……)

観客「早く起きろよ! 何やってんだ!」

ヤムチャ(だって、今起きたら、絶対怒られるぜ? 俺、あいつベジータそっくりで、苦手なんだよ……もう、刺激したくねぇよ……)


ケン「おいっ! ヤムチャ、しっかりしろっ!」

ヤムチャ(おっ……? もう、いいのかな?)

ケン「おいっ、起きろっ! ヤムチャ、しっかりしろっ!」

ヤムチャ(もう、いいのかねぇ? これ?)ムクッ

ケン「くそっ、バルログの野郎……汚ぇ、不意打ちしやがって……こいつはまだ、慣れてねぇんだ……あんな事されても対応できねぇよ……」


ドンマーイ! ツギハシッカリー!


ケン「あぁっ! まだまだ、俺達はこれからだっ! 安心してくれ! 今日は必ず勝つっ!」


キャー! ケン、カッコイイー!

ケン「よし! ヤムチャ、じゃあ戻るぞ! いつでもリュウにタッチできるように準備しておけっ!」

ヤムチャ「はい……わかりました……」

ケン「……声が小せぇ」ボソッ

ヤムチャ「わ、わかりましたっ……! つ、次こそは頑張りますっ!」

ケン「よし、ヤムチャっ! その意気だっ!」

ヤムチャ「は、はいっ……!」


観客「新入り、次は頑張れよ~! 今の所、いいトコなしだぞおめぇ!」

ヤムチャ(うるせぇな……俺は指示された通りにちゃんとやってんだよ……)

ケン「……まぁ、とりあえず、お疲れ」

ヤムチャ「……あっ、どもっす」

ケン「もうちょっと、ダメージ喰らった振りしててもいいぞ? 俺を見習え、俺様を……」

ヤムチャ「……あの~? ちょっと質問、いいっすかねぇ?」

ケン「……なんだよ?」

ヤムチャ「今の行動に、何の意味があったんですかね? 俺、ずっと伸びてる振りしてましたけど……」

ケン「……おめぇは、本当に素人なんだな? なんで、こんな奴が第五試合なんだよ」

ヤムチャ「す、すいません……」

ケン「この試合……俺達の負けで試合は終わるだろ……?」

ヤムチャ「そうですね。僕の負けで試合が終わりますね」

ケン「おめぇじゃねぇよ……俺達だよ」

ヤムチャ「……俺達?」

ケン「だから、今……負ける為の理由を少しずつ作ってるの……」

ヤムチャ「……理由?」

ケン「お前が伸びてたせいで、俺とリュウの二人で、三人相手にして……そりゃ、ダメージ喰らっても仕方ねぇだろ……」

ヤムチャ「……」

ケン「……と、お客さんはそう思うわな?」

ヤムチャ「……な、なる程」

ケン「そういう事を……少しずつ、少しずつ積み上げて……試合を作っていくの。それがプロレス」

ヤムチャ「ただただ、負けりゃあいいってもんなんじゃないんですね……」

ケン「まぁ、今日のおめぇは、指示された通りにあっさり負ければいいからよ? 余計な事は考えなくていいから」

ヤムチャ「は、はい……! わかりました……!」

バルログ「ヒャオッ!」

リュウ「……ぐっ!」


実況「さぁ! 決まったぁ! バルログのスイングDDTっ! 流れるような動きで、リュウの脳天をマットに叩きつけていきますっ!」

元「……う~ん」


バルログ「ヒョオォォッ!」


実況「そして、その場で一回転してからのボディプレスっ! いやぁ、なんという身体能力だっ!」



ダン「ワンっ……! ツーっ……! ス……」

リュウ「……ぐっ!」


実況「カウントはツーっ! 2.85でございますっ! リュウ、なんとかこれを返していきますっ!」

元「……ちょっと、リュウ君が捕まってる時間、長いよね?」

元「なんだかんだ、言ってねぇ? シャドルーは上手いと思いますよ?」

実況「ほ~う、元さん……それは、どういった所を?」


バルログ「バイソン……次は貴方が行きなさい……」

バイソン「おうっ! 任せておけっ! あんな死に損ない、ボコボコにしてやるよっ!」


元「ほら、今度はバイソン君が出てきたけどさぁ?」

実況「ここで、バルログはバイソンにタッチして交代っ!」

元「シャドルーはなんだかんだで、上手い事交代して、それぞれスタミナを回復させながら、やってるじゃん?」

実況「なるほど!」

バイソン「おらおらっ! この糞がっ!」ガスガス

リュウ「ぐっ……! ぐっ……!」

ケン「リュウ、こっちだっ! お前は一度休めっ!」

リュウ「ぐっ! ケ、ケンっ……!」

バイソン「させねぇよっ! この野郎っ!」


実況「おぉ~っと! タッチをしに行こうとしたリュウを、バイソンがロープに振ったぁ~!」

元「ねっ? タッチさせてもらえてないでしょ? ちょっと、リュウ君のスタミナが心配だねぇ」


リュウ「……ぐっ!」

バイソン「……へへ、いくぜぇ。オイ」ニヤニヤ

実況「そして、ロープから帰ってきたリュウに……!」


バイソン「おらぁっ! 死ねぇっ!」ドゴォッ

リュウ「……がっ!」


実況「決まったぁ~! バイソン式、アックスボンバーっ!」

元「……あれ、完全に拳で殴ってますよね?」

実況「本人はアックスボンバーだと、言い張っていますが断じて違いますっ! あれは完全に拳で殴っているだけの反則技ですっ!」

元「……一応、肘は曲げて型は作ってるんだね。彼もよく悪知恵が働くもんだね」

実況「さぁ! リュウはリングの中央にダーウンっ! ここまま決まってしまうのかっ!?」


バイソン「へへ、よし……このまま終わりにしてやるぜぇ……」

リュウ「……」

実況「さぁっ……! バイソンがのっそのっそとトップロープに登り……」


バイソン「へへ、リュウ……これで終わりだ……」


実況「さぁっ! 出るか出るかっ! バイソンのダイビングヘッドバッドっ!」

元「……いやっ! ケン君が動いたっ!」


ケン「させるか、てめぇっ! この野郎っ!」ドゴォッ

バイソン「何っ……! しまった……! ぐあっ!」


実況「おぉ~っとっ! ケンの蹴りでバイソンを迎撃っ! これは流石のバイソンも大ダメージかっ!?」

元「……ケン君、よく見てましたね」

実況「そして、そのままバイソンはコーナーポストから、転げ落ちたぁ!」

元「これ、チャンスですよ。 ここで、一度代わった方がいいですね」

実況「しかし、リュウも大ダメージを受けております! さぁ、ここで交代できるか!?」


リュウ「ぐっ……ケンっ……」


実況「這いずりながらも、ケンの元へと! 一歩、また一歩と近づいていきます!」


リュウ「……ケ、ケン」

ケン「リュウっ! もう少しだっ! こっちに来いっ!」


実況「さぁ! ケンも必死に手を伸ばし、リュウも待ちますっ!」


リュウ「ケン……後は、任せた……」パシッ

ケン「あぁっ! よくここまで頑張ったっ! あとは俺に任せておけっ!」パシッ


実況「さぁっ! ここで、タッチが成立~! 試合権利はケンへと移りますっ!」

元「おっ、バイソン君も起き上がりましたよ?」

今日はこの辺にしておこう
昨日はお休みしてゴメンネゴメンネー

ケン「よくも好き勝手にやってくれたじゃねぇかっ! オラオラオラっ!」ガスガス

バイソン「……ぐっ! うぐっ!」


実況「さぁっ! ケンの蹴りっ! 蹴りっ! そしてまた、蹴りっ! バイソンを滅多打ちだぁ~!」


ケン「オラオラっ! ここからは好き勝手にはさせないぜっ!」ガスガス

バイソン「……ぐっ! くそっ! この野郎っ!」


リュウ「ケンっ! いいぞっ! そのままやっちまえっ!」

ヤムチャ「お、おっと……ケンさ~んっ! いいっすよ~!」

ケン「任せろっ! このまま決めてやるぜっ! オラオラオラっ!」ガスガス

ケ・ン ! ケ・ン !


実況「さぁっ! 場内からは、溢れんばかりのケンコールっ! ケン、この声援に応える事が出来るかっ!?」


ケン「よしっ……! くたばれっ……! この歯抜け野郎がっ!」

バイソン「てめぇ、あまり調子に乗ってると……」

ケン「……うおおぉぉっ!」

バイソン「何っ! しまった……!」


実況「お~っと……!? ケンのあの構えはっ……!?」


ケン「竜巻旋風脚だぁ!」ドゴォッ

バイソン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」


実況「出たぁ~! ケンの竜巻旋風脚っ! バイソンにクリィィィンヒットォっ!」

実況「そのままバイソンは吹っ飛んでコーナーポストに激突だぁ!」


バイソン「……ぐっ!」

サガット「チッ、バイソンっ! 何をしている! 奴らを調子に乗らせるな!」

バイソン「ぐっ……! わ、悪ぃ……」

サガット「……交代だっ! 俺が出るっ!」パシッ


実況「さぁ、ここでバイソンはサガットにタッチして交代だぁっ!」

元「……いやぁ、もうちょっとだったのにねぇ。惜しかったね」


サガット「この帝王の力っ……! 思い知らせてやるっ!」

ケン「うるせぇっ! こっちは鬱憤が溜まってんだっ! いくぞオイっ!」

サガット「何っ……!? こいつ、早いっ……!」

ケン「オラオラオラっ! 空手軍団舐めんじゃねぇぞ、ゴルァっ!」ガスガス

サガット「くっ……! ぐっ! くそっ!」


実況「いやっ! だが、ケンの勢いは止まらないぞ!? サガットにも、蹴りの嵐だっ!」

元「いいですね。 このまま押し切っちゃいましょう」


ケン「オラァっ! オラオラっ! 舐めてんじゃねぇぞゴルァっ!」ガスガス

サガット「……くっ! くそっ!」


実況「さぁっ! ケンの大暴れは止まらないっ! いいぞっ! このまま決めてしまえっ!」

リュウ「……おい、新入り?」

ヤムチャ「あっ、はい……また、声出しっすか?」

リュウ「声出し…… なんだそりゃ? そうじゃなくてよぉ……」

ヤムチャ「あれ、違うんですか……」

リュウ「……お前、ミサイル技、何か持ってる?」

ヤムチャ「ミサイル技……? なんですか、それ……?」

リュウ「……って、事はねぇんだな」

ヤムチャ「あっ、えっと……何か、すいません……」

リュウ「いいよいいよ……じゃあ、バイソンになんとかしてもらうから……」

ヤムチャ「……はぁ」

リュウ「まぁ、今からリング上で、色々と巻き起こるけどさぁ……?」

ヤムチャ「……はぁ」

リュウ「おめぇは、余計な事しなくていいから、その場でずっと待機しておけ」

ヤムチャ「ま、また……待機っすか……?」

リュウ「……何? 文句でもあるの?」ギロッ

ヤムチャ「い、いえいえっ……! 滅相もないっ……!」

リュウ「そしたら、バイソンがお前に、攻撃仕掛けにくるからさぁ……?」

ヤムチャ「は、はい……」

リュウ「……お前、それ喰らったら暫く場外でやられた振りしとけ」

ヤムチャ「ま、またっすか……?」

リュウ「……文句あんの?」ギロッ

ヤムチャ「いえっ! わ、わかりましたっ!」

ケン「うおおぉぉっ! オラッ!」ガスガス

サガット「……ぐっ! くそっ!」

ケン「お前もだぁ! いくぞっ! 竜巻旋風脚っ!」ドゴォッ

サガット「ぐ、ぐわああぁぁっ!」


実況「さぁっ! またも、ケンの竜巻旋風脚が炸裂~! サガットは吹っ飛んで、大きくダーウンっ!」


ケ・ン ! ケ・ン !


ケン「お~うっ! 皆、見たか! 正々堂々と戦えば、空手軍団がこんな奴らに負けるわけねぇんだよっ!」


実況「さぁ、場内からの声援にケンもアピールしながら応えておりますっ! これが空手軍団の真の実力だぁ!」

元「……油断しちゃダメっ! バルログが動いているよ!」

実況「……ん?」

バルログ「フッ、戦いの最中に隙を見せるとは……美しくありませんね……」


実況「おっと、おっと……! バルログがいつの間にやら、コーナーポストに昇っているぞ!?」


ケン「このまま決めてやるからよぉ!? 皆、俺達の力をしっかり目に焼き付けておけやっ!」


実況「ケンは気づいていないっ! ケンは気づいていないぞっ!? このままでは危ないっ!」

元「一対一の戦いならともかく……隙を見せたら、すぐ動いてくるからね、シャドルーは……」


ケン「よ~し! じゃあ、今からとどめを……」クルッ

バルログ「……フッ」

ケン「しまったっ……! バルログの野郎っ……!」

バルログ「気づくのが少し遅かったようですね……ヒャオォッ!」


実況「バルログが跳んだああぁぁぁぁっ!」

バルログ「ヒョオォォォッ!」

ケン「ぐっ!」


実況「決まったぁっ! バルログのミサイルキック~っ! コーナーポストに最上段からのドロップキックをケンにぶち当てた~!」

元「……いやぁ、本当、フォームはいいですよねぇ?」


ブー、ブー


実況「場内からは大ブーイングでありますっ!」

元「そりゃ、あんな闇討ちみたいな事をしちゃ、そうなりますよ……」


バルログ「フッ……何故、ブーイングをするのですか? 私の美しいフォームを見れて光栄のはずでしょう?」


実況「おぉ~っと、ナルシストのバルログ、またも格好をつけておりますっ!」

バルログ「さぁ、ブーイングではなく……美しい声援を私に送りなさい……」


キャー、キャー


バルログ「そう、それでいいのです……ようやく、あなた方も私の美しさを理解したようですね……」


キャー! リュウー! イケー!


バルログ「リュウ……? 何故、彼の名前を今……も、もしや……!」クルッ

リュウ「……バルログ、戦いの最中に隙を見せるのはよくないんじゃないか?」

バルログ「し、しまったっ……!」

リュウ「これはお返しだっ! いくぞっ! ミサイル竜巻旋風脚っ!」


実況「さぁ! バルログが格好をつけている間に、コーナーポストに昇っていたリュウが今……跳んだああぁぁぁぁっ!」

リュウ「たああぁぁっ!」

バルログ「……ぐっ!」


実況「さぁっ! リュウのミサイル竜巻旋風脚が炸裂っ! バルログを吹っ飛ばしたぁっ!」

元「コーナーポスト最上段からの竜巻旋風脚ですからね。これは効くでしょう」


リュウ「まだだっ! まだ、終わっちゃいないぞっ! 立てっ、バルログっ!」

バルログ「うっ……ううっ……」ヨロヨロ


実況「そして、ダウンしたバルログを引きずり起こして……出るか出るか出るかぁ!?」


リュウ「うおおぉぉっ! 昇竜拳っ!」ドゴォッ

バルログ「……ガッ!」


実況「出たぁ~! 昇竜拳っ! これは決まったかぁ!?」

元「えぇ、ダメージ大きいと思いますよ? バルログ君もたまらず、場外にエスケープしますね」

リュウ「ケンっ! 今がチャンスだっ!」

ケン「よしっ! 合体技だっ! リュウ!」


実況「さぁ、リュウとケンがサガットを引きずり起こし……出るか出るか出るかぁ!?」


サガット「うっ……ううっ……」ヨロヨロ

リュウ「いくぞっ! ダブルっ!」

ケン「昇竜拳っ!」

サガット「……ガ、ガハっ」


実況「出たぁ~! ダブル昇竜拳っ! 二人の合体技がサガットに炸裂だぁっ!」

元「いいですねぇ。このまま決めちゃいましょう」

リュウ「よしっ! 後はスリーカウントをとるだけだっ!」

ケン「よしっ! これで俺達の勝ち……」

バイソン「……うおおおぉぉぉっ!」ダダッ

リュウ「……何っ!?」

ケン「……バイソンっ!?」


実況「いやっ! バイソンがまだ、残っていた! バイソンが一直線に突っ込んできたぞっ! これはマズいっ!」


ヤムチャ(おっ……? 来るのかね? そろそろ、来るのかね?)

バイソン「舐めてんじゃねぇぞ!」ドゴォッ!

リュウ「……ぐわっ!」

バイソン「この野郎っ!」ドゴォッ!

ケン「……がっ!」

バイソン「さっきから、好き放題やりやがって……おめぇもだよぉ! うおおぉぉっ!」


実況「さぁ! バイソンが二人をなぎ倒して……次はコーナーのヤムチャも蹴散らしに行ったぁ!」

元「……凄い、ラフファイトしてますよね。ああいう時のバイソン君って強いんですよ」


バイソン「うおおおぉぉ! おめぇもだよぉ!」

ヤムチャ(お、おおっ……きたきた……)

バイソン「だあぁぁぁっ! くたばれぇぇっ!」ドゴォッ!

ヤムチャ「いて」


実況「さぁ! バイソン、ラフファイトであっという間に三人を蹴散らしたぁ! リュウは大ダメージでたまらず、場外にエスケープっ!」

元「あ~、これ……また捕まっちゃいそうですね……」

バイソン「サガットっ! 大丈夫かっ!」

サガット「ぐっ、助かったぜ……悪かったな……」

バイソン「このクソバカを今から、やっちまいましょう! 二人でよぉ!?」

サガット「あぁ、小僧……覚悟するんだな……」

ケン「うっ……ううっ……」ヨロヨロ

バイソン「……おらぁっ!」ガスッ

ケン「……ぐっ!」

サガット「……ふんっ!」ガスッ

ケン「……ぐあっ!」


実況「さぁ! リング上ではケンが、サガットとバイソンの二人に捕まってしまったぁっ! これはマズいぞっ!」

元「……シャドルーって、本当、卑怯な作戦上手いよね」

ヤムチャ「……」

観客「おいっ! 起きろっ! 三番弟子!」

ヤムチャ(なるほどねぇ……)

観客「ケンがピンチじゃねぇかっ! 早く助けに行きやがれっ!」

ヤムチャ(こうやって……今度はケンさんがダメージ喰らったって事にしてるのか……)

観客「早く助けにいけよ! 負けちまうぞ、お前らっ!」

ヤムチャ(この人達、ただ八百長してるんじゃなくて……色々やってるんだね……)

観客「おいっ! 聞いてんのか! おいっ!」

ヤムチャ(……ん、待てよ?)

観客「おいっ!」

ヤムチャ(じゃあ、俺の負けはどうなるんだ……? この人達、負ける為に色々としてるのに、俺には何もするなって言ってたよな?)

今日はこの辺にしておきます

サガット「……ふんっ!」ガスッ

ケン「……ぐっ!」

バイソン「オラオラァ!」ガスガス

ケン「……ち、ちくしょう」


実況「さぁっ! 卑怯二人掛かりでケンを滅多打ちに! ここで終わってしまうのか、ケンっ! いやっ! きっと、そんな事はないっ!」

元「……苦しい状況とは思いますが、なんとか踏ん張ってもらいたいですねぇ」


サガット「バイソンっ! 合体技だ、いくぞっ!」

バイソン「おうっ! 任せて下さいっ!」

ケン「!」


実況「おぉ~っと! ここで合体技だぁ~! 二人掛かりでケンを高々と持ち上げたぁ~!」

サガット「……おおぉぉぉっ!」

バイソン「……うらああぁぁっ!」

ケン「ぐ、ぐわあああぁぁぁっ!」


実況「出たぁ~! ダブルブレーンバスターっ! ケンの身体をマットへと叩きつけるっ!」


サガット「よしっ! バイソンっ! とどめだっ!」

バイソン「……うっすっ!」

ケン「うっ……ううっ……」ヨロヨロ


実況「さぁっ! サガットがケンを引きずり起こし……その間にバイソンはロープへと走ったっ! 来るぞ来るぞ来るぞっ!」


バイソン「おらあぁぁっ! ケンっ! 死ねぇぇぇっ!」ドゴオォォッ

ケン「……ガッ!」


実況「出たぁ~! バイソン式、アックスボンバー! 何度も言わせていたただきますが、これは反則技でありますっ!」

元「……ケン君、危ないねぇコレ」

実況「ケンは大きくダーウンっ! このまま、決まってしまうのかっ!?」

サガット「……フンっ!」ググッ

ケン「……ぐっ!」


実況「さぁ、そして! 間髪いれずにサガットのSTF! S・T・Fでありますっ! 関節技でケンの身体をギリギリと絞り上げていきますっ!」


サガット「オラッ! 早くギブアップしろ、ゴラァっ!」

ケン「ぐっ……! 誰がてめぇらなんかに……」

サガット「だったら、もっと締め付けてやるよ、オラッ!」ググッ

ケン「……ぐ、ぐわああぁぁっ!」


実況「さぁ、STFでケンの身体を絞り上げていきますっ! おそらく、今のケンの顔、足、そして腰には激痛が走っているんでしょうねぇ、元さん?」

元「……サガット君は長身で手足も長いからね。 ちょっと、この関節技は解きにくいよねぇ」

サガット「オラオラっ! 早くギブアップをしやがれっ!」グイグイ

ケン「ぐっ、ロープまで……ロープまで逃げるんだ……」


実況「さぁ! それならば、ケンはロープブレイクで逃げようと関節技を受けつつも、ロープまで必死に逃げます!」

元「まぁ、サガット君みたいな体格の人間にあんな関節技をかけられたら、そうやって逃げるしかないよね?」

実況「えぇ。プロレスのルールでは、関節技を受けている時にロープに触れれば、かけている方は解かなければ反則になってしまいますからね」

元「……でも、サガット君、外してくれるかなぁ? だって、あの人ルール守ってないじゃん?」

実況「いや~! まぁ、そこはレフェリーがなんとかしてくれるんじゃないですかねぇ?」

元「……あのレフェリーの人も大丈夫なの?」


ダン「おいっ! リュウ! バルログっ! お前ら、怪我とかしてねぇか? 大丈夫なら、早く自軍コーナーに戻れよ!?」


実況「……ん?」

元「……ほら? あの人、何処見てるのよ? なんで場外見てんのさ?」

ケ・ン ! ケ・ン!


実況「さぁ、会場からはケンコールだっ! 私にはお客さんの声援がまるで『ケン、もう少しでロープブレイクだよ!』と言っているように聞こえるっ!」


ケン「ぐっ、もう少しだっ……」

サガット「……くそっ、こいつ、しぶといな」

ケン「よ、よしっ……これでロープブレイクだ……」


実況「さぁ! これで、ロープブレイクだっ! ケンがロープに手を伸ばすっ!」


バイソン「……へへ、残念」ググッ

ケン「ぐっ!」


実況「何ということだっ! ロープに伸びようとしたケンの手を、バイソンが非情にも踏みつけましたっ! これではケンはロープに逃げる事ができませんっ!」

元「……なんで、バイソン君をまず止めないのよ? レフェリー、何してるのよ?」


ダン「お~いっ! リュウにバルログ~! お前ら、大丈夫なのかぁ~?」


実況「あ~! レフェリー、そこじゃないっ! あなたは見るのはそこじゃないっ! あなたの背後の非情な行為を見て欲しいっ!」

バルログ「へへ……」グリグリ

ケン「……ぐっ!」

サガット「オラっ! オラっ!」グイグイ

ケン「ぐ、ぐわあぁぁ……」


実況「さぁ、こうしてる間にも、ケンの体力は奪われていきますっ! 元さん、これどうしましょう?」

元「……そりゃ、やっぱり、レフェリーが止めるしかないでしょう? 反則なんだし」

実況「だが、レフェリーは気づいていないっ!」

元「じゃあ、リュウ君と、え~……ヤムチャ君。彼に、なんとかしてもらわなきゃ」


ブー、ブー


実況「さぁっ! 会場からはシャドルーへの大ブーイングだっ! ケン、大ピンチですっ!」


サガット「オラオラっ! 早くギブアップしやがれっ!」

ケン「ぐっ、くそっ……このままじゃ……」

観客「おいっ! 三番弟子っ! 何やってんだ!」

ヤムチャ(俺は、何もするなって指示されてるし……多分、リュウさんがやるんだろうね……)


観客「リュウ! ケンがピンチだよ! 助けに行ってっ!」

リュウ「う、ううっ……」ヨロヨロ

ダン「おい、リュウ! やっと起きたか?」

リュウ「!」

ダン「怪我がねぇんだったらよ、早く自軍コーナーに戻って……」

リュウ「おいっ! レフェリー! お前、何見てんだよ!」

ダン「……えっ?」

リュウ「あいつら、また汚ねぇ手を使いやがって……ケン、待ってろ! 今、助けに行くぞっ!」

ダン「おい、リュウ! なにやってんだ!? 試合権利のない奴はリングに上がるんじゃねぇよ!」


実況「さぁ! ここで、ようやくリュウが復帰っ! ケンへ助けにと、リングへ上がったぁっ!」

リュウ「お前らまた、汚い手を使いやがってっ!」

バイソン「なんだよ! オラッ! やんのか、リュウっ!」

ケン「よし……ロープを掴んだぞ……」

サガット「それがどうした……? ロープを掴んだからって、この帝王がやめるとでも思ったのか……?」


ダン「……おぉっ! なんじゃこりゃぁっ!?」


リュウ「いい加減にしろぉっ! バイソン! 卑怯だぞっ!」

バイソン「知らねーよ、バーカ! 勝てばいいんだよ、勝てば!」


ダン「おいおい、リュウにバイソン! お前らは試合権利を持ってねぇんだから、とりあえず下がれって!」


サガット「フンッ! うおおぉぉっ!」

ケン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」


ダン「おいっ! サガット! お前も何やってんだよ! これ、ロープブレイクだから、離せって! 早く離せっ!」


実況「やぁ~っと、レフェリーが気づきました! 騒動を収めようと、必死になっております!」

元「まぁ、騒動起こしてるのは、シャドルーの三人だけなんだけどね」

ダン「サガットっ! お前、反則負けにするぞっ!」

サガット「わかったよ、わかったよ……ほら、やめたから、これでいいだろ?」

ケン「ぐっ……」


ダン「それから、リュウっ! バイソンっ! お前らは下がれっ! 従わねぇなら、ノーコンテストだっ!」

バイソン「へいへい、わかりました~っと」ニヤニヤ

リュウ「……くそっ!」

ダン「ホレっ! 場外で倒れてる、バルログとヤムチャも、自軍コーナーに戻らせろっ! お前らの試合はどうしていつも荒れるんだよぉっ!」


実況「さぁ、ここでようやく、落ち着いたでしょうか? リング上に、ケンとサガットの二人を残して、両者引き下がります」

元「……レフェリーも苦労してるんだね」

リュウ「おいっ! ヤムチャ! しっかりしろっ!」

ヤムチャ(おっ……きたきた……)

リュウ「おいっ! ヤムチャ! 起きろっ!」

ヤムチャ(おっ、合図が来たな……よし、起きよう……)ムクッ

リュウ「ヤムチャ……大丈夫だったか?」

ヤムチャ「くそっ……すいませんでしたぁっ! リュウさん!」

リュウ「気にするな、まだ試合は始まったばかりだっ! これから取り返すぞ!」

ヤムチャ(……始まったばかり? あれ、そういや今、何時だ? これ、後何分続けるんだ?)


観客「そうだ! そうだ! ここから、巻き返せよっ! 空手軍団っ!」


リュウ「あぁっ! 任せろっ! 必ず俺達は勝つ!」

ヤムチャ(やべぇ……後何分だ? 20分に負けろって言われたのに、今何分たってるか、全くわかんねぇ!)

リュウ「よし、ヤムチャ! 戻るぞ!」

ヤムチャ(……何処かに時計とか、ねぇかな?)キョロキョロ

リュウ「……キョロキョロしてんじゃねぇよ、バカ」ボソッ

ヤムチャ「あっ……! す、すんません……」

リュウ「……とりあえず、お疲れ」

ヤムチャ「あの~? リュウさん……?」

リュウ「……あぁ? 何だよ?」

ヤムチャ「これ、今……何分ぐらいたってるんですかね……?」

リュウ「お前、たった20分だぞ? それくらい体内時計を持っておけっての」

ヤムチャ「す、すいません……」

リュウ「ったく、なんでこんな奴が第五試合なんだよ……まぁ、今は17分ぐらい……って、所かな?」

ヤムチャ「えっ……! もう、17分もたってるんですか!?」

リュウ「多分、次の攻防が終わったら、お前の出番がくるからよ? 準備しておけよ」

ヤムチャ「な、なんか……急に緊張してきた……」

リュウ「……大丈夫だっての。お前は何もしなくていいんだからよぉ?」

ヤムチャ「……えっ?」

リュウ「お前は……何も出来ずに負ければいいって、最初に行っただろ?」

ヤムチャ「……あの、でもですねぇ?」

リュウ「……あぁ?」

ヤムチャ「今まで、皆さん……負ける為に、色々と理由作ってたじゃないですか?」

リュウ「……そうだね」

ヤムチャ「リュウさんが三対一で大ダメージ受けたり……ケンさんが二対一で大ダメージ受けたり……」

リュウ「……うん」

ヤムチャ「俺の時は、そういうのってないんですかね……?」

リュウ「そもそもさぁ……?」

ヤムチャ「あっ、はい……」

リュウ「お前、そういう攻防出来るの? 俺達みたいな、負ける理由を作る為の攻防って、出来るの?」

ヤムチャ「あっ、いや、それは……俺、プロレス初めてなんで……」

リュウ「じゃあ、余計な事、言うんじゃねぇよ。 黙って負けろよ」

ヤムチャ「でも、それじゃあ、俺 、凄ぇ弱くて格好悪い奴に思われませんかねぇ?」

リュウ「おめぇはそういう役目で来たの!」

ヤムチャ「……えっ?」

リュウ「おめぇはただの俺達の引き立て役なんだよ!」

ヤムチャ「!」

リュウ「おめぇ、格闘仲間の中で、一番弱いんだろ!? そういう話聞いてんぞ!?」

ヤムチャ「いや、一応……下にはチャオズがいます……」

リュウ「誰だよそれ、知らねぇよ! いつもいつも、負けて格好悪い事、してんだろ!?」

ヤムチャ「……は、はい」

リュウ「だったら、それと同じように負けてこいや! 格闘で結果出せねぇ癖にプロレスでいい格好しようとすんなや!」

ヤムチャ「……す、すいません」

サガット「……オラッ!」ブンッ

ケン「……ぐわぁっ!」


実況「さぁ! 自軍コーナーにケンを振り投げて……」


サガット「うおおぉぉっ! タイガーニーっ!」

ケン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」


実況「出たぁ~! 串刺しのタイガーニー! コーナーマットと膝の強烈なサンドイッチ!」


サガット「よしっ! バイソン、とどめは譲ってやるよ……」

バイソン「うっす! 美味しくいただきますっ!」

ケン「く、くそっ……負けてたまるかよ……」


実況「さぁ! サガットはバイソンにバイソンに交代します! ケン、このピンチしのげるか!?」

バイソン「よ~し、これでとどめにしてやる……」ブンブン

ケン「うっ……ううっ……」


実況「さぁ、バイソンが大きく手を振り回して……アピールしています」

元「あれは、ショートレンジバイソン式アックスボンバーだね……反則だけど」


バイソン「うおおおっ! アックスボンバーっ!」ブンッ

ケン「!」


実況「ついに決まって……! いやっ! ケン、避けたっ!」

元「……ケン君、よく見てましたね」


バイソン「何っ……!? こいつ、まだそんなスタミナが残ってやがったのか!?」

ケン「うおおぉぉっ! だああぁぁっ!」


実況「そして、ケンの張り手が炸裂~! カウンターの強烈な一打だっ!」

元「深追いしちゃダメですよ……ここは、一度態勢を整えた方がいいと思います」

バイソン「おっ……おおっ……」クラクラ


実況「バイソン、大ダメージ! 大きく、よろけていますっ!」


リュウ「ケンっ! こっちだっ! 一度下がれ!」

ケン「あ、あぁ……すまない……」ヨロヨロ

リュウ「次はヤムチャ……! お前が行けっ!」

ヤムチャ「!」

ケン「ヤムチャ……任せたぞ……」

ヤムチャ「!」


実況「さぁ、ここでケンはヤムチャに交代だぁ! ヤムチャ! 三番弟子の力はどのようなものなのか!?」

元「そうですね。 初めて見る選手ですからね。期待しましょう」


リュウ「……いいか? わかってんな?」ボソッ

ケン「……余計な事して試合潰すんじゃねぇぞ?」ボソッ

ヤムチャ「あっ……いや、でも……」

今日はここまでにしておきます
だいたいこの時間にやります

ヤムチャ(……なぁ~んか、急にやる気なくなってきちゃったなぁ)

バイソン「おっ……おおぉっ……次はこいつか……」


実況「さぁっ! ここで新入りのヤムチャ選手がリングインっ! はたしてどんなファイトを見せてくれるのかっ!?」

元「やっぱり、空手スタイルなんですかねぇ? とにかく、期待しましょう」


ヤムチャ(……そりゃ、俺は確かに弱いよ。でも、一般の格闘家よりかは強い自信は、まだあるぞ!?)

バイソン「……くっ、来やがれっ! この野郎っ!」

ヤムチャ(なんで、俺がこんな奴らの為に、八百長なんてしなきゃいけねぇんだよっ! 俺に得なんて一つもねぇよっ!」

バイソン「よしっ! 行くぞっ! このクソガキめっ!」

ヤムチャ(……うるせぇよ。早く来いよ。もう、ちゃっちゃと終わらせてぇからよ)


実況「さぁ! これは両者、間合いを測っているのでしょうかねぇ!? 元さん」

元「そうだねぇ……まだ、どんなスタイルかわかってないし、バイソン君も攻めにくいよねぇ」

バイソン「お~しっ! 一発で決めてやるから、覚悟しろよぉ!?」

ヤムチャ(……はいはい。一発で決められてやるよ)

バイソン「この俺様の一撃必殺技……ギガトンブローで……」

ヤムチャ(……しかし、よく喋る人だね。 さっさと決めればいいのに)


実況「いやぁ! 間合いを測っている両者の緊張感がこちらにも伝わってきそうですねぇ! 元さん!」

元「そうだね。 ヤムチャ君はどんな技、使うんだろうね?」


バイソン「よ~し、覚悟しておけよ! このクソガキがぁっ!」

ヤムチャ(その台詞、二回目じゃねぇの? バイソンさん、何やって……あれ……?)

バイソン「おめぇをギッタンギッタンの……ボ~コボコにしてやるよぉっ!」

ヤムチャ(あっ……! そういえば、打ち合わせっ! 確か……俺、打ち合わせしたよ、この人と!)

バイソン「『新人潰しのバイソン』なんてのも、ハクがついていいかもな! ガハハハっ!」

ヤムチャ(これ……俺に、いい所を作らせてくれる為に……攻撃待っててくれてるんだっ!)

ヤムチャ(……だったらっ!)シュッ


実況「おぉ~っと! ヤムチャが構えたぞっ! 何だ、あの構えは!? 見た事ないぞっ!?」

元「珍しい型してますね? 彼の必殺技なんでしょうか?」


ケン「おい……あいつ、なんかやり始めたぞ……?」

リュウ「……何、やってんだよ。 勝手な事はするなって、言ったのによぉ」

バイソン(ふぅ……ヤムチャ君、やっと気づいてくれたか……変な間が出来ちゃう所だったよ……)


ヤムチャ「いくぞっ! これがっ! 狼牙風風拳だっ!」 ホワチャアっ!」シュッ

バイソン「……えっ?」

ヤムチャ「ハイっ!」

バイソン「……ガッ!」

ヤムチャ「ハイッ!」

バイソン「……グッ!」

ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」

バイソン(や、やば……これ……マジで死ぬ……)


オー! スゲー!アイツ、スゲェゾー!


実況「うおおおぉぉっ! 何だこの技は! 何だこの技は!」

元「……おぉ、素晴らしい連続攻撃ですね。 空手軍団、いい秘密兵器持ってましたね」

実況「秘密兵器ヤムチャっ! 激しい連続攻撃でバイソンを滅多打ちだっ! お客さんの大声援も後押しするっ!」


ヤムチャ「うおおおぉぉっ!」

バイソン(ヤバい……マジで、ヤバい……)


ヤ・ム・チャ ! ヤ・ム・チャ !

ヤムチャ(おぉ、凄ぇ声援……何か気持ちよくなってきたぞ……)

バイソン「ガッ……ぐっ……」


実況「さぁっ! 止まらない止まらない止まらないっ! ヤムチャの連続攻撃は止まらないぃっ!」


ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」

バイソン(グッ……! 耐えろっ……! バイソンっ! 試合をぶっ壊すわけにはいかねぇんだっ……!)ヨロヨロ

ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」

バイソン「うおおおぉぉぉっ!」

ヤムチャ「……ん?」

バイソン「調子に乗ってんじゃねぇぞっ! 足元がお留守だゴラァっ!」ガッ

ヤムチャ「……い、痛ぇっ! 弁慶蹴るのは酷いでしょうっ!」


実況「おぉ~っと! これはローキック……でしょうか? バイソンがなんとか連続攻撃から、抜け出したぁっ!」

元「……バイソン君の蹴りって珍しいですよね? よっぽど、追い詰められてたんじゃないですか?」

ヤムチャ「がっ……ちくしょう……」

バイソン「……とどめだ」クルッ

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「……ギガトンブロー!」ドゴオォォォッ

ヤムチャ「……あっ」クラッ


実況「決まったああぁっ! バイソンの一撃必殺技っ! ギガトンブローっ!」


ヤムチャ(な、何だよ……最近の格闘家って、強ぇんだなぁ……完全にもらっちまったよ……こりゃ、ダメだ)ヨロヨロ

バイソン「……ヤムチャ君、ごめんね」

ヤムチャ(俺……ここまで弱くなっちまったのかな……あっ、ダメ……もう意識なくなるわ……)バターンッ


実況「おぉ~っと! ヤムチャ、ダーウンっ! 流石にこの技は耐えられないっ!」


サガット「……バルログ! 行くぞっ!」

バルログ「ええっ! 行きましょうっ!」

バイソン「レフェリー! フォールだっ!」

ダン「よしっ……! ワンっ……ツー……」


実況「さぁ! そのバイソンがフォールに入ったぁっ! これはスリーカウント決まってしまうのかっ!?」


リュウ「……おい! なんなんだよ、今のはよぉっ!」

サガット「リュウ……まだ、試合中だっ! 落ち着けっ!」

ケン「おめぇら、何か余計な事を……」

バルログ「ケン! 落ち着きましょう! まだ、お客さんの前なんですから……」


実況「さぁ! カットしようとしているリュウとケンを、サガットとバルログが妨害っ! これは助けに行けないっ!」


ダン「……スリーっ!」


実況「そして、ここでスリーカウントっ! バイソンのピンフォールで試合は決着ですっ!」

リュウ「……おい、おめぇらコイツに何か吹っかけただろ?」

サガット「……リュウ、俺達ジョバーにも、信じられる道って物ぐらいあるんだ」

ケン「……踏み台ごときが語ってんじゃねぇぞコラ」

バルログ「踏み台にだって生きる道はあります……私達はそれを彼に伝えました……」

ダン「……そういう事はリングで話すなって。 ほら、楽屋で話せよ。 お前らはとっとと退場しやがれ」

バイソン「結果的にシュートになった事は反省している……今、ヤムチャ君は本気で伸びている。 手当してやってくれ」


実況「おお~っと! 何を言っているんでしょうかねぇ? リング上ではリュウ、ケンの二人がシャドルーにつっかかっています!」

元「まぁ、そりゃあれだけの力を持った弟弟子だもんね。つっかかりたくもなるでしょう」


サガット「よし、バルログ、バイソン……退場しよう……」

バルログ「……はい」

バイソン「リュウ……ケン……ヤムチャ君の技での盛り上がり見ただろう? しっかりマイクで締めてやってくれよ……」


実況「さぁ! ここでシャドルー軍団が退場! 本日もやりたい放題しての一試合でしたっ!」

ダン「オイ…… とりあえず、そいつをなんとかしろ……」

リュウ「……」

ケン「……」

ダン「……おいっ! この後にはメインイベントも控えてんだよ。 時間かけんな」

リュウ「ちっ、ケン……やるぞ……」

ケン「……あぁ」


実況「今、兄弟子の二人が弟弟子を介抱していますっ! いやぁ~、涙ぐましい光景ですねぇ、元さん!」

元「でもね、彼はいい技持ってたんだから、これからだよ! これから!」

実況「え~、そうでしたね~! あの怒涛の連続攻撃! あれの技名が気になったりしますねぇ?」


リュウ「おい、カス……寝てんじゃねぇよ……」

ケン「早く起きろよ……手間かけさせんじゃねぇよ、タコ……」

ヤムチャ「……」ピクピク

ヤムチャ「……うっ、ぐぐっ」ムクッ

リュウ「……やっと、起きたか」

ケン「手間かけさてんじゃねぇよ……」

ヤムチャ「あれ? バイソンさん達は……? あれ、試合はどうなったんだ……?」

リュウ「……終わったよ」

ケン「……帰ったよ」

ヤムチャ「あっ、そっか……俺、バイソンに殴られて……あっ、負けたのか……」


実況「お~っと! ようやく、ここでヤムチャが起きました!

元「いやぁ、無事で良かったんじゃない? いいのもらってたからねぇ」


ヤ・ム・チャ ! ヤ・ム・チャ !


ヤムチャ「……ん?」

実況「おぉ~っと、ここでヤムチャへの大声援っ!」

元「いやぁ~! 期待の新人だと思うよ! お客さんもきっと、それわかってるんだろうね」


ヤムチャ「何で、俺の名前、そんなに呼んでるんだよ……俺、負けたんだろ……?」


観客「空手軍団~! 三番弟子やるじゃねぇか~!」

観客「次は勝てよ~! 楽しみにしてるからよぉ~!」

観客「新人~! おめぇ、凄ぇ技持ってるじゃねぇか! 後、ちょっとだったな!」


ケン「……チッ」

リュウ「……レフェリー、マイクを貸してくれ。 締めて終わらせるよ」

実況「おっと……ここで、リュウがマイクを握りました」


リュウ「皆……今日は本当にすまないっ……!」

ソンナコトナイゾー! ツギハガンバレー!

リュウ「……だが、皆! 見ただろうっ! このヤムチャが俺達の軍団に加わってくれたんだ!」

ヤムチャ「……へ?」

オー! ソウダソウダー!

リュウ「今日は、奴らの好き放題にされたが……次は違うっ! 必ず、この三人で勝つ!」

ワー、ワー

リュウ「最後に……ヤムチャ……」

ヤムチャ「……ん?」

リュウ「お前の必殺技の名前を……皆知りたがっている……皆に教えてやってくれないかな……?」


オー! オー!


実況「おぉ~っと! 必殺技の名前が発表されるようです! いやぁ、元さん、気になりますねぇ!?」

元「あんた、ちょっと騒ぎすぎだよ。 ヤムチャ君がマイク握ったんだから、大人しく聞こうよ」

ヤムチャ「あ~、あ~、あ~っと……」

ケン「……余計な事してんじゃねぇよ」

ヤムチャ「あっ、すんません……」

ケン(あ~、マイク持ってやがるから、余計な事言えねぇよクソ……)


クスクス、クスクス


実況「ヤムチャ選手、初マイクですね!? たどたどしいです!」

元「結構、真面目な子みたいだね」


ヤムチャ「……俺の! 必殺技の名前は、狼牙風風拳だっ!」


オー! スゲー!


実況「必殺技の名前は『狼牙風風拳』! いやぁ、いい名前じゃないですかねぇ、元さん!」

元「そうだね、センスいいんじゃない。僕、横文字の名前はあまり好きじゃないからね」


リュウ「……よし、もういいぞ。マイクよこせ」

ヤムチャ「……えっ、いや、まだあの」

ケン「……うるせ、黙ってろ」

リュウ「この技さえあれば……きっと、シャドルーにも対抗する事が出来るっ……!」

ソウダソウダー!

リュウ「だから、次は必ず勝つ……! 皆、俺達を信じて、応援してくれっ!」

オー! オー!


ダン「……よし、そろそろ締まっただろ。そろそろ、休憩時間に入るから退場しやがれ」


リュウ「……チッ」

ケン「……くそっ」

ヤムチャ「あっ、はい……わかりました……」


実況「さぁ! ここで空手軍団が退場します! いやぁ、しかしこれからのシャドルーとの抗争がどうなるか、気になりますねぇ?」

元「そうだね。でも、ヤムチャ君が思ったより、いい選手だったからね……空手軍団も、勢いつくんじゃないかな?」

実況「えぇ! その勢いでシャドルーをぶっ倒して欲しい物ですね! それではこの辺りで第五試合の中継を終了しま~す!」

観客「お~い! 新人! 次は頑張れよ~!」

ヤムチャ「あっ、はい……ありがとうございます……」

観客「シャドルー倒せよ~!」

ヤムチャ「あっ、はい……わかりました……」

観客「お~い! もう一回、あの必殺技、見せてくれよ~!」

ヤムチャ「えっ……? ここでですか……? どうしようかな……?」


リュウ「……調子に乗んじゃねぇ」ボソッ

ヤムチャ「……えっ」

ケン「……早く退場しろ、ボケ」ボソッ

ヤムチャ「あっ……すんません……」

ーーー

プーアル「ヤムチャ様! お疲れ様でした!」

ヤムチャ「お、おう……」

プーアル「どうしでしたか、始めての試合は?」

ヤムチャ「う~ん……な~んか、よくわかんねぇんだよなぁ?」

プーアル「?」

ヤムチャ「いや、何か……俺、負けたのに、色々声援もらってさぁ? あれ、ベジータだったら、絶対『ゴミが』とか言ってたぜ?」

プーアル「そういうのがプロレスなんじゃないんですかね?」

ヤムチャ「……そういうのが? まぁ、悪い気はしなかったけどさぁ?」


リュウ「……調子に乗ってるんじゃねぇ! この糞がぁっ!」ドゴォッ

ヤムチャ「えっ……? ガッ……!」

プーアル「ちょ、ちょっと……! ヤムチャ様に何をするんですか!」

リュウ「あれだけ、勝手な事はするなって言っただろがっ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐっ……!」

ケン「おめぇ、自分の役割わかってんのかっ! このカスが!」ガスガス

プーアル「ちょ、ちょっと……! ヤムチャ様が死んでしまいます!」

リュウ「おめぇが、一番目立ってどうすんだよ! おめぇはおまけって言っただろが!」ガスガス

ヤムチャ「……ぐっ、ぐっ!」

ケン「お前、次あの技やったら、殺すからな!? 覚えておけよ!」ガスガス

リュウ「……ったく、まぁ今日はこの辺で勘弁しておいてやるよ」

ケン「……気分直しに飲みに行こうぜ? あ~、今日の試合は最悪だったぜおい」


プーアル「ヤ、ヤムチャ様っ……!」

ヤムチャ「……うぅ」

プーアル「ヤムチャ様! 大丈夫ですか! ヤムチャ様!?」

ヤムチャ「くっ……なんで、俺がこんな目に……もう試合は終わったんじゃねぇのかよ……」

プーアル「ヤムチャ様! しっかりして下さいっ!」

ヤムチャ「プ、プーアル……もう、俺はダメかもしれない……」


プーアル「あっ! 第六試合が始まったみたいだ! もうちょっと近くに行って見てみよ~っと!」

ヤムチャ「おい、待て! こっちは死にかけてんだぞ!? なんで第六試合なんか呑気に見てんだよ!」

プーアル「……それだけ口が聞ければ大丈夫です。 ヤムチャ様は丈夫なんだから」

ヤムチャ「……最近、プーアル冷たいよね」

ーーー


ザンギエフ「ふんがぁっ!」

ベガ「ぬっ……ふんっ!」

ザンギエフ「甘いっ! ダブルラリアットだぁ!」

ベガ「……ぐっ!」


プーアル「うわぁ、やっぱり大きい人戦うと迫力がありますねぇ? ホラ、僕達の中で大きい人って16号さんぐらいしかいないから」

ヤムチャ「あれも、負ける理由を作る為の攻防なのかね……?」

プーアル「ヤムチャ様何ですか、それ?」

ヤムチャ「プロレスには、そういうのがあるんだって……」

プーアル「……はぁ」

ヤムチャ「……まぁ、でもどっちが有利なんだろ? お互い、同じぐらいのダメージなんじゃねぇのかな、アレ」

バイソン「あっ! ヤムチャ君、こんな所にいたんだ!」

ヤムチャ「あっ、バイソンさん……」

バイソン「何、してんの? 勉強中?」

ヤムチャ「あっ、まぁ……そんな感じっす……」

バイソン「勉強もいいけどさぁ? 反省会もしようよ」

ヤムチャ「……反省会?」

バイソン「今日の試合の反省会……ヤムチャ君、酷かったんだからね?」

ヤムチャ「あぁ……さっき、それでリュウさんとケンさんにボコボコにされましたよ……」

バイソン「ねっ? だからさ、今から反省会行こう! 反省会!」

ヤムチャ「……反省会って何処に行くんですよ?」

バイソン「近所の居酒屋抑えてあるから……ほら、行こう!」

ヤムチャ「居酒屋って……ザンギエフさん達、まだ試合してますよ? いいんですか?」

バイソン「いいんだよ、後片付けは若い子達がするし……それに、女の子も呼んでるんだから……飲みに行こうよ!」

ヤムチャ「よしっ! バイソンさん、反省会をしに行きましょうか!」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」

今日はここまで
多分がっつり試合を書くのはもうないと思う

このスレでこんな事を書くのは無粋だが
スト2キャラの戦闘力ってどの程度なのかな?
サタンよりは強いだろうが、初期悟空(戦闘力10)より強いとは思えない…
初期ヤムチャぐらいなのかな?

居酒屋ーー


バイソン「うお~っすっ! ヤムチャ君連れてきたぞ~!」

サガット「おう! じゃあ、早速歓迎会をしようか!」

バルログ「さぁさぁ、ヤムチャ君も座って座って」

ヤムチャ「ねぇねぇ、それより女の子は何処? ねぇねぇ?」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」


さくら「……」

ヤムチャ「おっ? 女の子発見っ! なかなか可愛い子じゃん!」

バイソン「彼女はストリートプロレス女子部の……」


さくら「あんたねぇ! 何考えてるっすかっ!?」

ヤムチャ「!」ビクッ

さくら「いきなり、バイソンさんにシュート仕掛けるなんて信じられないっすよ!」

バイソン「ま、まぁまぁ……さくらちゃん……俺は大丈夫だったし……」

さくら「一歩間違えれば大怪我だったっすよ!」

サガット「まぁまぁ……その反省会で集まったんだからさぁ……そんな言い方しなくてもいいじゃん……」

さくら「あんた、バイソンさん潰す気っすか!?」

バルログ「まぁまぁ……さくらちゃん……」

さくら「あんた、わかってるんですか!?」

ヤムチャ「えっと……あの、俺、何か悪い事したんですかね……?」

さくら「シュートと仕掛けたじゃないっすか!? どういうつもりなんですか!?」

ヤムチャ「えっと……シュートって、何ですかね……?」アセアセ

さくら「……えっ?」


バイソン「ほらね……ヤムチャ君には悪気はなかったみたいだし、仕方ないよ……」

サガット「……まっ、プロレス初心者だしね」

バルログ「これから、勉強して……プロレスの仕組みをヤムチャ君に教えていきましょう」


さくら「マジっすか……マジで知らなかったんすか……」

ヤムチャ「あ、あの……このお嬢さん、もしかして、同業者ですかね……?」

さくら「あっ、そういや、自己紹介がまだっすね」

ヤムチャ「あっ、はい……」

さくら「自分は女子部で、ブッカー兼ジョバー担当している、さくらっす!」

ヤムチャ「ブッカー……? ジョバー……?」

さくら「ヤムチャさん、プロレス初心者なんだから、今日はみっちり指導しますよ! 覚悟するっす!」

ヤムチャ「ちょっと! バイソンさん、女の子来るって、こういう事だったんですか!?」

バイソン「いや~、女子部の話を聞いてみるのも勉強になると思ったからさ、さくらちゃんも呼んだんだよ」

ヤムチャ「なんだよ……折角、ブルマとランチさん以外の女性と触れ合う機会ができたと思ったのに……結局、プロレスかよ……」

プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」

さくら「とにかく……ヤムチャさんはプロレス初心者なんだから、この飲み会でプロレスのノウハウを徹底的に詰め込んでもらうっす!」

ヤムチャ「……も~う」

サガット「まぁまぁ、酒飲みながらで、いいからよ? 楽にやろうぜ!」

バイソン「ほら、ヤムチャ君、ビールついであげるよ。 ほらほら」

バルログ「君はプーアル君ですか……? 私がついであげますから、ほら、飲んで飲んで……」

プーアル「あっ、僕お酒飲めないんでプーアル茶でお願いします!」


ヤムチャ「……プーアル馴染んでんじゃねぇよ」

さくら「え~、じゃあ、先ずはヤムチャさんの一番の問題点、シュートについて学んでもらうっす!」

ヤムチャ「そうだよ、シュートって何かわかんねぇんだよ……まぁ、この際だから、勉強しようかね……」

さくら「おっ! いい心がけっす! 勉強熱心な人は伸びますよ~?」

ヤムチャ「……どうも」

さくら「先ず、今日の試合で理解はしていると思うっすが、プロレスには勝ち負けが最初から、決まってるっす」

ヤムチャ「そうっすね」

さくら「ヤムチャさんは以前、格闘技やってたんすよね?」

ヤムチャ「……一応、まだ現役なんだけどね」

プーアル「何、言ってるんですか……隠居生活送ってるじゃないですか……」

ヤムチャ「プーアル、うるせぇぞ!」

さくら「え~っと、ヤムチャさん、確か天下一武道会とか出た事あるっすよね?」

ヤムチャ「あっ、ありますよ! ベスト8に入った事もありますよ!」

さくら「その時の試合は……プロレスみたいに勝ち負けは決まってなかったすよね?」

ヤムチャ「そうっすね……あれは、真剣勝負でした」

さくら「その、真剣勝負の事をシュートと言うっす」

ヤムチャ「……ほう」

さくら「真剣勝負はそれでいいもんなんっすが……真剣な分、例えば五秒で決着がつく事とかもあるっすよね?」

ヤムチャ「あ~、そういや……予選での悟空やベジータの試合はそんなのばかりかなぁ……」

さくら「プロレスは勝ち負けが決まってる分、試合内容を自由に作れるっす」

ヤムチャ「……ほう」

さくら「勝ち負けが決まっている中で……より、ドラマティックに……より、お客さんが盛り上がるように、試合をするのがプロレスっす」

ヤムチャ「ただの八百長じゃないんだね……プロレスって……」

さくら「格闘家の人は、結構この部分が理解できなかったりするんすよ……でも、ヤムチャさん、結構見込みあるじゃないですか!」

ヤムチャ「……そう?」

ヤムチャ「……でもさぁ?」

さくら「……どうしたっすか?」

ヤムチャ「俺、今日、ちゃんと八百長したよ? 言われた通りに負けたよ? その、真剣勝負のシュートしてないじゃん」

さくら「……はぁ」

ヤムチャ「……あれ? 何、その溜息」

さくら「ヤムチャさん……最後に連続攻撃、バイソンさんにしたっすよね?」

ヤムチャ「あぁ、狼牙風風拳ね……でも、あれもバイソンさんに言われた通りにやったよ?」

さくら「あれ……連続で、バイソンに打撃を浴びせる連続攻撃ですよね……?」

ヤムチャ「そうだよ」

さくら「ヤムチャさん……バイソンの何処に攻撃仕掛けたっすか……?」

ヤムチャ「顔」

さくら「……」

ヤムチャ「あ……後、顎!」

さくら「なんでそんな人間の急所ばかり狙うんすか!?」

ヤムチャ「そ、そういう技なんすよ、アレは……!」

さくら「それは真剣勝負でしょうが! 真剣勝負だったら、いくらでも顔や顎狙っても構わないっすっけど、これはプロレスっすよ!」

ヤムチャ「いや、でもそれじゃあ、ダメージ全然なくなるよ?」

さくら「だから、ダメージ与えなくていいんっすよ! これはプロレスなんだから!」

ヤムチャ「な、何……行ってんだよ、この子……」

バルログ「……ヤムチャ君」

ヤムチャ「あっ、どうしたんですか……バルログさん……」

バルログ「試合中……私は貴方にドロップキックを仕掛け、場外に突き落としましたよねぇ?」

ヤムチャ「あっ、ハイ……リュウさんを、三人ががりでやる前ですよね……」

バルログ「私は、その時。。あなたの何処に攻撃をしましたか?」

ヤムチャ「え~っと……確か、胸板にきたかな……?」

バルログ「そうです、胸板です。貴方にダメージを与え、場外に突き落とすのなら、私の顔に攻撃を仕掛けるでしょう」

ヤムチャ「……えっ」

バルログ「しかし、私はあえてです……あえて、貴方の筋肉でダメージが軽減されるであろう、胸板に攻撃をしかけたのです」

ヤムチャ「……あっ、はい」

バルログ「ヤムチャ君はそれでも、ちゃんと私からダメージを喰らった振りをしてくれたではありませんか」

ヤムチャ「……あっ!」

バイソン「流石によぉ……? 今日は何とかなったけど、一年の半分くらい、あの技食らったら、俺もいつかは死ぬと思うわ」

ヤムチャ「……半分?」

バイソン「ヤムチャ君……試合は明日もあるんだよ? 明後日も、明々後日もだ」

ヤムチャ「はぁ!?」

バイソン「うちの団体は一年で150試合はするからな。 まぁ、三日に一回は試合があると思っていいよ」

ヤムチャ「そんなに、試合するんですか? 天下一武道会は年一ペースですよ?」

バイソン「そりゃ、あんだけ人の急所を狙って……真剣勝負してるんだったら、それぐらいが限界だよ」

ヤムチャ「……」

バイソン「ヤムチャ君だって、毎日毎日、天下一武道会に出てたら、身体が壊れちまうだろ?」

ヤムチャ(そんなの喜ぶの、ベジータぐらいじゃねぇのか)

バイソン「プロレスってのは、相手にダメージが最も残らないやり方で……それでも、真剣勝負と変わらないように見える戦いを見せなきゃいけないんだよ」

ヤムチャ「……なるほど」

バイソン「今日のヤムチャ君の攻撃は、プロレスの攻撃じゃないよ……真剣勝負の攻撃だったよ……」

ヤムチャ「……す、すいません」

バイソン「いや、まぁ……それはお互い様だけどね」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「ほら、俺だって……弁慶蹴ったしさぁ……ヤムチャ君の顔面にいいのいれたじゃん?」

ヤムチャ「……あっ、はい」

バイソン「流石に、こっちは死にかけてるのに、相手に寸止め……みたいな器用な真似なんて出来ないよ……」

ヤムチャ「……すんません」

バイソン「いや、まぁ、最初にちゃんと説明してなかった俺達も悪かったんだけどね?」

ヤムチャ「あっ……いや……」

バイソン「ヤムチャ君は格闘家だったみたいなんだし、最初に説明するべきだったよ……」

ヤムチャ「そ、そんな事ないっすよ……」

バイソン「そのせいで、リュウ君とケン君にも怒られたみたいだし……本当、ごめんね?」

ヤムチャ「……ん?」

ヤムチャ「いや、その二人に怒られたのは、その事じゃないですよ?」

バイソン「……ん?」

ヤムチャ「なんか……俺は目立っちゃいけない、とか言ってましたけど……それはどういう事なんですかね?」


バイソン「……あの野郎」

バルログ「……我々、ジョバーの事とことん舐めているようですね」


ヤムチャ「あれ、あれ……? これってどういう事なの?」


さくら「……」

サガット「……さくらちゃん、俺は言うべきだと思う。 ヤムチャ君がこの団体に呼ばれた理由を」

さくら「いや、でも……ヤムチャさん、プロレス初心者みたいだし……」

サガット「それでも、第五試合でやっているんだ。 知る権利はある。 それにヤムチャ君だって、いつかは気付く」


ヤムチャ「?」

今日はここまで
この手の内容の所は絶対に言葉足らずの部分があると思うけど、本当にごめん

>>244はストーリー中に出せる所があれば出してみるよ
ほぼ100%全員ヤムチャ以下の戦闘力だけど、プロレス的な強さを見せれたらいいなとは思う

ヤムチャ「え~と……皆さん、何か俺に隠してるんですか……?」

さくら「……」

ヤムチャ「何かあるんだったら、言って下さいよ! 俺、またあの二人に殴れるの嫌ですよ!」

サガット「……ヤムチャ君、先ずは試合形式の事から説明しよう」

ヤムチャ「……ん?」

サガット「今日の俺達の試合は、全部で六試合あったよね?」

ヤムチャ「あぁ、そうっすね……六試合ありました……」

サガット「ヤムチャ君が出た試合は五番目……つまり、第五試合だ」

ヤムチャ「……ほぅ」

サガット「いきなり、説明してもわからないだろうから、第一試合から順々に話していこう」

ヤムチャ「あっ、はい。よろしくお願いします……」

サガット「先ず、第一試合……これは、プロ野球で言う所の二軍戦みたいなものだ」

ヤムチャ「……二軍戦?」

サガット「あぁ、コーディとガイは最近身体が出来たばかりでな。主に、うちの団体にはこんな若い選手がいるんですよ……と、お客さんに知らせる為にやっている」

ヤムチャ「……ほぅほぅ」

サガット「……当然、お客さんの入りも少ない。会場の席が半分ぐらい埋まればいい所だ」

ヤムチャ「えっ、半分……? そんなに少ないんですか?」

サガット「まぁ、早い時間だと、まだ仕事中のお客さんや、仕事が終わったけど、まだこちらに向かっている最中のお客さんもいるからね」

ヤムチャ「なるほど」

サガット「仕事終わりに会場に来たら、一番楽しみにしていた試合が終わっていた……なんて事になったら、お客さんも納得できないだろう?」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「そして、次に第二試合……これは、前説や余興みたいなものだ」

ヤムチャ「余興……?」

サガット「今日の試合はブランカさんと、ソドムさんだったが、彼らにはプロレスとはこういう感じなんですよ……と、お客さんに教える為の試合をしてもらっている」

ヤムチャ「それは、普通に戦うのとはまた、違うんですかね?」

サガット「まぁ、お笑いマッチなんて呼ばれたりもするがね」

ヤムチャ「……お笑いマッチ?」

サガット「やっぱり、この時間帯もまだ会場に到着出来ないお客さんがいたりするんだ」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「そんな中で、第二試合が一番よかった……なんて、事になったら申し訳ないだろ?」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「だから、第二試合では、お笑い要素などに重点をおいた試合をする事になっている」

ヤムチャ「お笑いって……そんな事できるんですか……?」

サガット「あぁ、勝敗の決まっているプロレスだからこそ、出来る事だな。 真剣勝負の最中には、そうそう面白おかしい事は起きないだろう?」

ヤムチャ「……そうですね」

サガット「だけど、プロレスなら、その面白おかしい事を意図的に起こす事ができる。 第二試合はそういう事などをして、笑いをとっていく試合だ」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「第三試合……この辺りから、お客さんも会場に到着し始める」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「……という事で、ここからが通常の試合の始まりだ」

ヤムチャ「普通に……って、言っても勝敗決まってるんですけど……戦うんですね……」

サガット「あぁ、今日の場合は、春麗とさくらちゃんだったな……」

ヤムチャ「そうっすね」

サガット「まぁ、うちの団体の場合は、第三試合は大抵、女子部の試合になっている」

ヤムチャ「……ほう」

さくら「……どうせ、女子部は第三試合止まりっすよ」ボソッ

ヤムチャ「……ん?」

サガット「まぁまぁ、さくらちゃん……大きな試合とかになると、第四試合になる事もあるんだけどね……」

ヤムチャ「……はぁ?」

サガット「まぁ、天下一武道会で言う一回戦みたいなものかな? 試合しっかりしているんだけど……メインではない……そんな感じだ」

ヤムチャ「ふ~む」

サガット「そして、第四試合……ここから、俺達はここから会場を盛り上げていかなければならない」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「天下一武道会で言う所の準準決勝みたいなものかな?」

ヤムチャ「……さっきの試合より、重要な試合って事っすね」

サガット「あぁ、この辺からは、チケットを買ったお客さんは到着して、会場も埋まり始めるからね」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「天下一武道会の場合なんかは、勝ち残った人間同士が戦う……なんて、自然に盛り上がる形になっているけど、うちの場合は違う」

ヤムチャ「ほ~う……じゃあ、どうするんですか?」

サガット「ここで、人気レスラーや、ベルトの権限を使い始めるんだ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「今日の第四試合は、ナッシュ・ガイル組対T・ホーク・フェイロン組みだっただろ?」

ヤムチャ「そうでしたね」

サガット「この試合は、タッグチャンピオンベルトを賭けた試合となっていたんだ」

ヤムチャ「……ほ~う」

サガット「早い話が、うちの団体で一番強いタッグチームは誰だ? なんて、決める試合だな」

ヤムチャ「……な~る程」

サガット「普通に戦うよりも、もっと盛り上がるような試合を作る為にあるのが、ベルトだ」

ヤムチャ「なる程ねぇ……」

サガット「そして、第五試合……これは、天下一武道会で言うなら、準決勝だな」

ヤムチャ「今日の俺達の試合でしたね」

サガット「あぁ、この頃になると、もう会場も満員だ」

ヤムチャ「あぁ~、そういや、お客さん、沢山いましたねぇ?」

サガット「だから、さっきの第四試合よりも、もっと盛り上がるような試合にしなければいけない……」

ヤムチャ「……って事は、あの試合を何かベルトとか、かかってたんですか?」

サガット「……いや、あの試合にはベルトはかかっていない。あれはただのスペシャルマッチだ」

ヤムチャ「じゃあ、さっきの試合より、盛り上がないじゃないですか!?」

サガット「……そこで、使われるのが、人気レスラーという訳だ」

ヤムチャ「……人気レスラー?」

サガット「まぁ、リュウやケン……それに俺達、シャドルー軍団の事だな」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「うちの一番人気選手はザンギエフさんだ……そして、二番目はベガさんだ」

ヤムチャ「そうっすね。そう言ってましたね」

サガット「そして、ナンバー3は……リュウとケンなんだ……」

ヤムチャ「えっ!? あの、二人そんなに人気あるんですか!? 性格悪いっすよ、あの二人!」

サガット「まぁ、リングではベビーだからね……ほら、マイク握ってる時とかだけはちゃんとしてただろ?」

ヤムチャ「そういえば、そうでしたね……」

サガット「うちのお客さん達はリュウやケン達だけを目当てに来ているお客さんもいる。だから、第五試合に選ばれたんだ」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「そして、ベルトかかっていない、試合でもそういう人気の試合にする為に……俺達ヒール軍団がいるんだ」

ヤムチャ「……ん? どういう事っすか?」

サガット「ヤムチャ君……プロレスはさっき、一年で150試合すると言っただろ?」

ヤムチャ「そうっすね……多いですよね……

サガット「ただ、150試合……勝っただの、負けただのしていれば、いつかはお客さんも飽きて、離れて行ってしまう……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「……だから、その150試合の中にドラマを作るんだ」

ヤムチャ「……ドラマ?」

サガット「リュウ君とケン君はナンバー3の実力を持っている……という、設定だ」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「だが、しかしうちの団体では、ナンバー3ではない。ナンバー3はこの俺だ」

ヤムチャ「強さ的には、サガットさんがナンバー3なんですね」

サガット「いや、お客さんはそう思ってはいない」

ヤムチャ「……え、なんで?」

サガット「俺が反則を使ったり、一対一での試合でも、バイソンやバルログを助けを借りる卑怯な男だからさ」

ヤムチャ「そ、そんな事……自分で言っていいんですかね……」

サガット「俺の汚い手段のせいで、いつもいつも、俺に寸前で負けてしまっている」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「きっと、お客さんは、『今日こそサガットに勝て!』なんて思いで、俺達の試合を見ているだろうな」

ヤムチャ「……」

サガット「これがドラマだ。こうやって、150試合の戦いで、ドラマを作っていくんだ」

サガット「リュウ君が俺の汚い手段を受けながらも、俺に勝てば、リュウ君は晴れてナンバー3になるだろう?」

ヤムチャ「そうですね……」

サガット「最初から、勝ち負けが決まってるプロレスだとしてもだ」

ヤムチャ「……ほ~う」

サガット「これは、年間150試合もあり、勝敗が決まってるプロレスだから、できる事なんだ」

ヤムチャ「……なる程」

サガット「チャンピオンや、メインイベンターになるレスラーにはそれぞれのドラマがあり、それぞれの生き様があるんだ」

ヤムチャ「なるほどねぇ……」

サガット「リュウ君とケン君は、ベルトをかけないで第五試合……ナッシュ君とガイル君は、ベルトを賭けているのに第四試合……」

ヤムチャ「……」

サガット「その違いは、彼らの方が俺達シャドルー軍団と抗争しているというドラマがあり、お客さんもそのドラマの続きを見たがっているからなのさ」

ヤムチャ「はぁ……あの二人って凄かったんですねぇ……」

サガット「少し、話が逸れたな。 そして、最後の第六試合……メインイベントだ……」

ヤムチャ「ザンギエフさんとベガさんの試合ですね」

サガット「これは最後の試合だ。天下一武道会で言えば、決勝戦だ」

ヤムチャ「……と、いう事は一番盛り上がる試合にしなきゃいけないという事ですね」

サガット「そうだ。お客さんにはいい気持ちで帰ってもらいたいからな。 カラオケに行った時だって、最後に歌った曲が一番印象に残るだろう?」

ヤムチャ「あ~、確かに……ベジータいつも、料理の奴締めで歌いやがるからなぁ……もう、覚えちまったよ……」

サガット「今日の場合は、シングルのベルトを賭けた試合だ。早い話が、うちの団体で誰が一番強いのかを決めるベルトだな」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「そして、戦っているのは、団体設立からこの団体を守っている一番人気のザンギエフさんと……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「俺達、悪の軍団のボスで二番人気のベガさんだ」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「人気もドラマも、そしてベルトもかかっている試合だ。 この試合はうちの団体で出来る、今ベストの試合だろう」

ヤムチャ「なるほどねぇ……プロレスいろいろあるんだなぁ……」

サガット「……さて、ヤムチャ君」

ヤムチャ「……ん、どうしたんですか?」

サガット「今日の君の試合は第五試合だったよね?」

ヤムチャ「あっ、そうっすね……」

サガット「実はこれは殆ど特例なんだ」

ヤムチャ「えっ……? どういう事ですか……?」

サガット「さっきも言ったが、デビューしたてのコーディやガイは第一試合だ」

ヤムチャ「……ほぅ」

サガット「プロレスに触れた事もない……ましてや、ドラマも持っていない人間を第五試合に起用して……」

ヤムチャ「……」

サガット「一試合、二試合だけなら、ともかく……君はうちの団体と契約したんだ」

ヤムチャ「そうですね」

サガット「これからの150試合で、どうなるかわからないのに、最初からそんなに責任重大な試合を任せるなんて、普通はしない」

ヤムチャ「……って事は」

サガット「……」

ヤムチャ「俺、めちゃめちゃ期待されてるって考えていいんですかねぇ! コレ!」

サガット「……ヤムチャ君には申し訳ないないが、そうではない」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「恐らく……うちの団体の抱えてる事情に、ヤムチャ君は巻き込まれてしまったんだと思う……」

ヤムチャ「えっ、えっ……? それって、どういう事ですかね……?」

今日はここまでっす

さくら「サガットさん……それ以上は……!」

サガット「さくらちゃん、彼にも知る権利はある」

さくら「でも……万が一、それでヤムチャさんが、プロレス嫌になっちゃったら……」

サガット「……では、自分が何の為に負けているのかもわからずに、ジョバーをさせるのか?」

さくら「そ、それは……」

サガット「これは、ヤムチャ君には知る権利がある。さくらちゃんだって、同じジョバーじゃないか」

さくら「……」

サガット「……話そう。ヤムチャ君はきっと、受け入れてくれる」

さくら「……」

サガット「……だから、話そう」


ヤムチャ「えっ、えっ……? 何か、深刻な話なんですかね……?」

さくら「ヤムチャさん……第六試合、メインイベントの話っす……」

ヤムチャ「あっ、はい……」

さくら「メインイベントは一番盛り上がる試合にしなければいけないっすよね?」

ヤムチャ「そうですね。だから、一番人気のザンギエフさんと、二番人気のベガさんっすよね」

さくら「その通りっす。今日の試合はその二人だったっす」

ヤムチャ「はい」

さくら「今日、ザンギエフさんはベガさん相手にチャンピオンベルトを防衛したっす」

ヤムチャ「そうっすね。ベルト賭けてた試合だったそうですもんね」

さくら「……じゃあ、明日の試合はザンギエフさんは誰と戦えばいいと思うっすか?」

ヤムチャ「……明日?」

ヤムチャ「え~っと……明日は……」

さくら「二番人気のベガさんは使えないっすよね? 今日、対戦したばかりなんっすから」

ヤムチャ「……使えないの?」

さくら「チャンピオンベルトを賭けた試合が……いつもいつも、同じカードの組み合わせじゃ、お客さんは飽きてしまうっす」

ヤムチャ「え~っと……じゃあ、三番人気のリュウさんか……実力三番手のサガットさんって所?」

さくら「そうっす。 そういうカードを組まないといけないっす」

ヤムチャ「おっ、なんだなんだ! 俺もちょっとはプロレスがわかってきたぞ!」

さくら「……でも、そうなるとまた問題が起きるっす」

ヤムチャ「……問題?」

さくら「今日の試合はザンギエフさんと、ベガさん……一番人気と二番人気の選手の試合っす」

ヤムチャ「……ほぅ」

さくら「それがザンギエフさんと、リュウさん……一番人気と三番人気の選手の試合になってしまうと……」

ヤムチャ「あっ! なるほど! 見に来てくれるお客さんが減っちゃうんだ!」

さくら「その通りっす……これはリュウさんだから、まだマシな方っすが……」

ヤムチャ「……」

さくら「ザンギエフさんの対戦相手が四番人気のケンさんや、五番人気のサガットさんになってしまうと、もっとお客さんは減ってしまうっす」

ヤムチャ「……なるほどねぇ」

さくら「まぁ、そこは150試合の中で、様々なカードを作らないといけないから、多少は妥協しなきゃ仕方ないんすが……」

ヤムチャ「……ほう」

さくら「そうなると、ザンギエフさんばかりが、ベルトを持っている事になるっす」

ヤムチャ「……ん?」

さくら「ベガさんから防衛して……リュウさんから防衛して……サガットさんから防衛して……また、ベガさんから防衛して……」

ヤムチャ「……おうおう、何かローテーションになってるねぇ?」

さくら「……これじゃあ、ベルトにドラマができないっす」

ヤムチャ「……でもさぁ?」

ヤムチャ「プロレスって勝ち負けが決まってるんでしょ? だったら、ザンギエフさんも負ければいいじゃん」

さくら「……」

ヤムチャ「ザンギエフさんが負けて、ベガさんとかにベルト渡せば、ローテーションになってるのは解決するんじゃないの?」

さくら「……ヤムチャさん」

ヤムチャ「……ん?」

さくら「じゃあ、ベガさんは……その次の試合、誰と戦えばいいっすか……?」

ヤムチャ「え~っと……リュウさん……?」

さくら「……そうっすね。リュウさんしかいないっすね」

ヤムチャ「おっ! 俺も、なんだか冴えてきたなぁ!」

さくら「……でも、そうなるとお客さんはどうなるっすか?」

ヤムチャ「……えっ?」

さくら「ベガさんとリュウさん……つまり、二番人気と三番人気の選手の試合になってしまうっす」

ヤムチャ「……それって、お客さんはやっぱり、来なくなっちゃうの?」

さくら「うちの団体はザンギエフさんの人気がずば抜けてるっす……このカードより、ザンギエフさんと、バルログさんや、バイソンさんの試合の方が、お客さんは入るっすね……」

ヤムチャ「……うわぁ」

さくら「これが、弱小団体の最大の欠点っす……どうしてもワンマンの試合になってしまうっす」

ヤムチャ「……なるほど」

さくら「ザンギエフさんは、ベルトから離れる事が出来ないっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「どうしても、メインイベントや、ベルトの絡む試合にはザンギエフさんを出さざるを得ないっす」

さくら「ザンギエフさんは150試合……殆ど、全ての試合に出ているっす……」

ヤムチャ「……頑丈な人なんですね」

さくら「……そうでもないっす」

ヤムチャ「……えっ?」

さくら「いくら、プロレスで相手にダメージが残らない戦いをしてるからといっても、頭から落ちたりする技を年間150試合近く受けるんすよ?」

ヤムチャ「……」

さくら「少しずつ、少しずつ……ダメージは蓄積されていくっす……」

ヤムチャ「……そうなんだ」

さくら「ザンギエフさん、実は身体、パンク寸前なんっすよ!?」

ーーー


ザンギエフ「ぐっ……! くそ、首が回らんな……」

ベガ「……大丈夫ですか?」

ザンギエフ「なぁ~に、これはチャンピオンベルトを持っている者の宿命だ……一生爆弾と付き合っていくさ……」

ベガ「無理はなさらずに……」

ザンギエフ「……あぁ」

ベガ「ところで……明日のメインはどうなさるんですか? やはり、リュウ相手ですか……?」

ザンギエフ「いや、豪鬼を助っ人に呼んだ……奴なら人気もあるだろう……」

ベガ「……ギャラの方は大丈夫だったのでしょうか?」

ザンギエフ「……それは、言うな。 弱小団体の宿命だ」

ベガ「……」

ザンギエフ「……リュウがお前とメインを張れる様になるまで、成長してくれればいいんだがな」

ベガ「……そうですね。サガット達に、伝えておきます」

ザンギエフ「……頼むよ。俺もいつまで持つかわからん」

ーーー

さくら「……今、うちの団体に必要な事。それは若いリュウさんの人気を上げる事っす」

ヤムチャ「……リュウさんの?」

さくら「仮に、リュウさんの人気がザンギエフさんと同じくらいまで上がれば、ベルトを持てる人間が増えるっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「ザンギエフさん対挑戦者……リュウさん対挑戦者……メインイベントで色々な構図が作れるっす」

ヤムチャ「……」

さくら「お互い、150試合フルなんて、無茶なスケジュールを組まなくても、団体を回す事が出きるっす」

ヤムチャ「……なるほど」

さくら「若いリュウさんに、頑張ってもらわないと、歳とってるザンギエフさんとベガさんが、いつまでたっても、無茶な試合する事になるっすよ!」

ヤムチャ「……でもさぁ? それだったら、リュウさん、とっととサガットさんに勝てばいいんじゃないの?」

さくら「……」

ヤムチャ「サガットさんが実力三番手なんでしょ? サガットさんに勝てば、リュウさんは実力三番手になって人気が出るんじゃないの?」

さくら「……」


サガット「……ヤムチャ君、事はそう簡単じゃないんだ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「年間150試合もしているんだ……俺とリュウの試合はトータルで五分五分程度になるようには調整している」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「俺は反則や汚ない手段使って五分五分だから、リュウ君の実力は俺より上……だと、お客さんは理解している……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「しかし、リュウ君はそこまでなんだ……サガットより強いが、ベガさんと戦う器ではないと、お客さんは思っている……」

ヤムチャ「……えっ? なんでですか?」

サガット「それは、俺達にもよくわからない……プロレスラーの永遠のテーマかもしれないな……」

ヤムチャ「……えぇ~?」

サガット「だが、さっき言っただろう? チャンピオンになる人間には生き様が求められる、と……」

ヤムチャ「あっ、言ってましたね……」

サガット「リュウ君が150試合の中で、俺達シャドルー軍団とドラマのある抗争を見せて……どんなにいい試合を見せたとしても、だ……」

ヤムチャ「……」

サガット「お客さんがリュウ君にかける声援は『次はベガを倒せ』ではなく『よく、サガットを倒した』なんだ……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「今のリュウ君には、何かが足りない……小さく纏まってしまっているんだ……」

ヤムチャ「……」

サガット「そこで、テコ入れとして……ヤムチャ君が呼ばれたというわけだ……」

さくら「本当……! 申し訳ないっす……!」


ヤムチャ「えっ、えっ……? ちょっと待って……?」

サガット「……」

ヤムチャ「……って事は、俺が始めての試合で、重要な第五試合ってのも」

さくら「……リュウさんの為っす」

ヤムチャ「おいおいっ! ちょっと待てよ! 俺、関係ねぇじゃん、なんでそんな事……」

サガット「例えば……三番弟子で弱い君を、俺達の卑怯な反則攻撃から身を挺して守る……なんて事を続けたら、何かが変わるかもしれない……」

ヤムチャ「俺、そんな役目で呼ばれたの!? なんだよ、それっ!」

さくら「ヤムチャさんっ! 本当に、申し訳ないっす!」

ヤムチャ「そんな、役目……俺じゃなくていいじゃねぇかよ! そっちの団体の奴にやらせろよ……」

さくら「い、いや……あの、ヤムチャさん……?」

ヤムチャ「あぁっ!?」

さくら「ザンギエフさんが……昔のヤムチャさんの天下一武道会のビデオを見たんですね……」

ヤムチャ「あん……? いつのビデオだよ、それ……」

さくら「え~っと、シェンさん……? って、人と戦ってた時の試合で……」

プーアル「あっ! それはまさしくヤムチャ様の黒歴史!」

さくら「その、ヤムチャさん……おちんちん蹴られて……酷く苦しんでだじゃないっすか……」

ヤムチャ「!」

さくら「それ見たザンギエフさんが『ガハハハハ! こいつのやられっぷりはいいっ! 実にいいっ! 勝敗の決まっているプロレスにピッタリだ!』なんて言って……」

ヤムチャ「何年前の話だおいっ! そもそも、誰がそんなビデオ残してたんだよ!」

バルログ「でも、今日のヤムチャ君のやられっぷり、なかなかよかったですよ? 始めてとは思えないです」

バイソン「……まぁ、アレは本気伸びてたからね」

バルログ「いえいえ、ほら……場外でやられて時とか……なかなか上手かったと思いますよ?」

バイソン「あぁ、そういや、アレは上手かったなぁ……うん、始めてとは思えないやられ方だったな……」


プーアル「えぇ! ヤムチャ様は普段から、やられまくってますから! 昔、栽培マンって敵がいたんですけど、ヤムチャ様はその時……」

ヤムチャ「プーアル黙ってろオイっ!」


バルログ「ヤムチャ君、ジョバーの資質あると思いますよ? 折角、契約したんだから頑張りましょうよ」

バルログ「そうだよ、俺達ジョバー軍団で頑張ろうぜ?」


ヤムチャ「……ジョバー? なんですか、それ?」

今日はここまで
言葉不足の所多いとは思うけど、本当ごめんね

サガット「ジョバーというのは、負け役の事だ」

ヤムチャ「……負け役?」

サガット「あぁ、うちのエースはザンギエフさんだが、次期エースはリュウ君だ……」

ヤムチャ「……そうですね」

サガット「そのリュウ君を、エースにする為に、リュウ君に負ける役が必要になるだろ?」

ヤムチャ「リュウさんに負けて……その、ドラマを作っていくわけですね……」

サガット「そうだ。今日の試合で俺達は勝ったが、大舞台……重要な試合になると、俺達は絶対に負けなきゃいけないストーリーが組まれる」

ヤムチャ「リュウさんに、ドラマティックな勝ち方をさせて……人気を出す為にっすか……」

サガット「 そうだ。ジョバーが負けて……エースにドラマを作ってやるんだ」

ヤムチャ「ん……? じゃあ、俺がジョバー……つまり、負け役になるって事は……」

バイソン「まっ……今日みたいな試合が繰り返されるって事だな……」

ヤムチャ「……えっ?」

バルログ「リュウ君とケン君が我々シャドルーに負けるのではなく……ヤムチャ君が足を引っ張って、我々に負けるというストーリーが繰り返されるでしょう……」

ヤムチャ「おいおい、待てよ! なんで、俺がそんな目に……」

サガット「……それがジョバーの役割りだからだ」

ヤムチャ「なんで、そんな嫌な仕事を俺に押しつけるんだよ! そんなの、あんたらの団体の人間にやらせりゃいいじゃねぇか!」

サガット「……」

ヤムチャ「いくら俺が格闘技で結果出ねぇなんて言ってもなぁ! こんな汚れ仕事押しつけるんじゃねぇよ! 俺は便利屋じゃねぇんだよ!」

サガット「……ヤムチャ君、ジョバーは確かに、エースにはなれない」

ヤムチャ「わかってんなら……」

サガット「だが、ヤムチャ君が思っているような汚れ仕事でもない」

ヤムチャ「……はぁ?」

サガット「例えば、天下一武道会の予選で負けてしまったとしよう……それなら、そこで終わりだ。一度の負けで全ては終わってしまう。一年後の天下一武道会をまた待たなければならない」

ヤムチャ「……」

サガット「だが、これはプロレスだ。年間150試合の中でドラマがある……負けても、次や、その次が何度でもやってくるんだ」

ヤムチャ「……」

サガット「ジョバーはエースではない……だが、ドラマはある……150試合の中でエースの踏み台になりながらも、自分のドラマを作ればいいんだ」

ヤムチャ「……はぁ?」

サガット「ヤムチャ君、俺はジョバー……負け役だ……」

ヤムチャ「……そうっすね」

サガット「だが、俺はこの団体のお客さんから、指示されている。俺の人気はナンバー5だ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「大きな大会では必ずリュウに負けている……だが、お客さんはその俺の負けているドラマを見てくれているんだ」

ヤムチャ「……」

サガット「もっと、言えば……二番人気のベガさんだって、ジョバーだ」

ヤムチャ「えっ……? ベガさんも……?」

サガット「あぁ、ベガさんはここ一番の試合の時は必ず、ザンギエフさんに負けている……だが、リュウ君は俺より、指示されている」

ヤムチャ「……」

サガット「それは、ベガさんが、プロレスの中でドラマを作っているからなんだ」

さくら「……自分も、ジョバーっす」

ヤムチャ「……えっ?」

さくら「自分はサガットさん達みたいにヒールじゃないけど、女子もジョバーをやってるっす」

ヤムチャ「……」

さくら「自分の設定は、格闘技始めたばかりの女子高生が、頑張って戦うって設定っす」

ヤムチャ「……うん」

さくら「だけど、ここ一番の大舞台ではいつもエースの春麗さんに負けてしまうって設定っす……」

ヤムチャ「……そうなんだ」

さくら「自分が頑張って……『最近さくらは強くなってきたな』なんてお客さんが思ってきた所で春麗さんに負けて……」

ヤムチャ「……」

さくら「『やっぱり、ナンバーワンの春麗は強いな!』なんて、思わせるのが、自分の役割りっす……」

ヤムチャ「……」

さくら「でもっ……! 自分は女子部で二番目の人気を持ってるっすよ!」

ヤムチャ「……えっ!」

さくら「大きな試合ではいつも負けてるけど……自分は150試合の中で頑張って、ドラマを作ってるっす!」

ヤムチャ「……」

さくら「お客さんは、それを見て自分の事を指示してくれてるんっすよ!」

さくら「いきなり、プロレスの仕組みを聞かせれて……しかも、負け役をやれだなんて、ヤムチャさんには理解し辛い事だと思うっす……」

ヤムチャ「あ、あぁ……」

さくら「だけど、負け役にだってドラマはあるんすよ! プロレスは戦いの中でドラマを作っていくもんっす!」

ヤムチャ「……」

さくら「ヤムチャさん、まだ来たばっかりじゃないっすか! なにもドラマ作ってないじゃないっすか!」

ヤムチャ「……うん」

さくら「ヤムチャさんの役割りは、負けてリュウさん達の足を引っ張る事っすけど……」

ヤムチャ「……」

さくら「150試合の中で、それを続けていけば、きっとそこにはドラマが生まれるっす!」

ヤムチャ「……ドラマ」

さくら「ジョバーでも輝ける事は、自分達が保証するっす! そりゃ、ナンバー1じゃないけど……必ず輝けるっす!」

ヤムチャ「……」

さくら「だから、ヤムチャさん……お願いっす! 無茶な事、言ってると思うけど、この団体でやってみて欲しいっす!」

プーアル「……ヤムチャ様、さくらさん、必死に頼んでるみたいだけど、どうします?」

ヤムチャ「……う~ん」

プーアル「……ヤムチャ様?」

ヤムチャ「とりあえず……やってみるかねぇ……?」

さくら「本当っすか!?」

ヤムチャ「続けてれば……なんとか、なるんでしょ? その、ジョバーってヤツ……」

プーアル「ヤムチャ様、珍しく前向きじゃないですか! どうしたんですか?」

ヤムチャ「だってさぁ……ここで、俺やめたら……本当に今日の一試合、ただ八百長しに来ただけじゃん……」

プーアル「確かに、そうなりますねぇ……」

ヤムチャ「こっちは腐っても格闘家だよ? 八百長みたいな真似は出来ないよ」

プーアル「でも、今日、ちゃんと八百長したじゃないですか?」

ヤムチャ「まだ、よくわかんないけどさ……? プロレス格闘技とは違う何かがあるんでしょ? 今日のは八百長じゃなくて、プロレスなんでしょ?」

さくら「……そうっす!」

ヤムチャ「だったらさぁ……まだ、よくわかんないけど……プロレスの仕組みがもうちょっとだけわかるまで、やってみるよ」

さくら「ヤムチャさんっ……! ありがとうございますっ!」

サガット「ヤムチャ君、俺からも礼を言う……ありがとう……!」

ヤムチャ「いやいや、サガットさん……やめてくださいよ……」

バルログ「では、ヤムチャ君の我々ジョバー軍団の加入を祝って……」

バイソン「そうだな! 乾杯でもするか! よし、皆、グラス持ちやがれっ!」

さくら「そうっすね! 乾杯しましょう、乾杯っ!」


ヤムチャ「……」

プーアル「あれ? ヤムチャ様、どうしました? ボケーっとしちゃって……」

ヤムチャ「いや、なんかこの人達……」

プーアル「?」

ヤムチャ「負け役みたいな嫌な事してるはずなのにさ……明るいんだなって思ってさ……」


バイソン「よ~しっ! では、乾杯の音頭はこのバイソン様がしてやろうではないか!」

さくら「ちょ、ちょっと……! バイソンさん、なんで乾杯の音頭するのに、脱ぐ必要があるんすか……!?」

バルログ「バイソン、美しくありませんよ……いや、マジでマジで……」

ダン「おうおう! や~ぱり、こんな所にいたか、ジョバー軍団よぉ」

サガット「あっ、ダンさん……お疲れ様です……」

ダン「リュウとケンは、もっと綺麗なお姉ちゃんのいる店にいってやがるぞ? それに春麗だって、ホストクラブだ……」

サガット「……春麗、ホストクラブなんかに行ってやがるのか」

ダン「お前らも、もっといい所で飲めよ? プライドまで負け犬になっちまったら、おしまいだぞ!?」

サガット「いえ……プライドだけは、奴らに負けない自信はありますよ……」

ダン「まっ、わかってんなら、いいよ! あっ、姉ちゃ~ん! 俺にはいつもの焼酎頂戴~!」


プーアル「あれ? なんか、新しい人がやってきましたよ? あの人も、ジョバーの方なんですかね……?」

ヤムチャ「あれ……? あの人、何処かで見た事あるような気がするなぁ……え~っと、何処だったっけ……?」


ダン「あっ、そうだ! おい新入り! ヤムチャ、おめぇだよ、おめぇ!」

ダン「おめぇよぉ! 何やってんだよ! バイソンにシュート仕掛けてんじゃねぇよ!」

ヤムチャ「あっ、すんません……さっき、皆さんから聞かされました……」

ダン「俺もリング上で大変だったんだぞ!? 余計なハプニング起こすんじゃねぇよ!」

ヤムチャ「えっ、リング上……? 何、言ってるんですかね……?」

ダン「おめぇらの、試合中ずっといただろが! ちゃ~んと仕事してただろが!」

ヤムチャ「あっ……! 思い出した……!」

プーアル「ヤムチャ様、思い出したって……何をですか……?」

ヤムチャ「この人、ダメレフェリーの人だよ! ほら、リング上にいたいた!」

ダン「おい、待て! 誰がダメレフェリーだコラっ!」

ヤムチャ「だって、あんた……サガットさん達が反則攻撃してた時とか、ただオロオロしてただけじゃん!?」

ダン「……なぁ、サガット? こいつ、本当にプロレス知らねぇの?」

サガット「……はい、そうです。 申し訳ありません」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「ったく、面倒臭ぇなぁ……あのなぁ? ヤムチャ君よぉ……?」

ヤムチャ「ん……?」

ダン「今日の試合……ちょっと、サガット達に都合のいい事が起きすぎだったとは思わなかったか?」

ヤムチャ「……へ?」

ダン「公平に裁くはずのレフェリーが……三人ががりで、攻撃してる時に限って、何にもしなかったりよ?」

ヤムチャ「……」

ダン「でも、ケンがリング上にやってきたら、急にしっかりと仕事するんだ……おかしくねぇか?」

ヤムチャ「……そりゃ、あんたがダメレフェリーだから」

ダメ「ケンが二人がかりでやられてる時もそうだ。後ろで、卑怯な事が行われているのに、俺は場外の二人ばっかり気にしてるんだ」

ヤムチャ「……」

ダン「ちょ~っと……サガット達に都合のいい様になりすぎじゃねぇか? 俺はそこまで無能じゃねぇぞ?」

ヤムチャ「えっ……って事は、もしかして……」

サガット「その通りだ、ヤムチャ君……レフェリーのダンさんも、プロレスをしているんだ」

ヤムチャ「えっ……! レフェリーが……!」

サガット「ダンさんの場合は俺達とはまた違う。俺達は勝ち負け決まっている試合の結末に合わせて、試合の攻防を繰り返すだろ?」

ヤムチャ「……はい」

ダン「俺の仕事その攻防が自然な流れになるように、サポートするって事だ」

ヤムチャ「……へぇ」

ダン「今日の試合は、サガット達の勝ちで決まっていたんだ。格闘技のレフェリーだったら、あんな反則攻撃はすぐにでも止めただろう」

ヤムチャ「そうっすね……」

ダン「だが、これはプロレスだ。サガット達が何の為に反則攻撃をしているのかを……プロレスのレフェリーである俺は見極めなきゃならない」

ヤムチャ「……ほう」

ダン「サガット達は、反則攻撃のおかげリュウ達に勝てたというドラマが欲しいんだ……だったら、俺はそれを止めてはいけねぇだろ?」

ヤムチャ「な、なるほど……」

ダン「プロレスってのは、選手だけじゃねぇよ。俺だって、戦ってるんだよ」

ヤムチャ「……なるほど」

ダン「まっ、俺はお前らと違って、脚光は浴びれねぇけどね! レフェリーの辛い所だな!」

ダン「でも、ヤムチャ……おめぇはいいもん持ってると思うよ? 頑張れよ?」

ヤムチャ「本当っすか……?」

ダン「レフェリー生活十年続けてる俺が言うんだ。間違いねぇよ」

ヤムチャ「あ、ありがとうございます……!」

ダン「まぁ、でも……まだ、荒削りだな……そこは勉強した方がいいな……」

ヤムチャ「あっ……すいません……」

ダン「実況のキャスターも、解説の元さんも……おまえのフォロー困ってたみてぇだぞ? あんまり、あの二人困らせるんじゃねぇよ」

ヤムチャ「えっ……? 実況……解説……?」

サガット「……ほら、リングサイドで俺達の実況を解説してる二人がいただろ?」

ヤムチャ「あっ、はい……いましたね……」

サガット「あの人達も同じだ。 リング上で戦う選手ではないが……ダンさんと同じように、プロレスの勝敗決まっている部分や、俺達が意図的にしている行動の本質に触れずに、格闘技の試合と同じように解説してくれているんだ」

ヤムチャ「な、なんか……プロレスって凄く、大掛かりなんですねぇ……」

サガット「まぁ、そうだな……だが、大掛かりだからこそ、大きな物が生まれるんだ」

ヤムチャ「……」

サガット「一つの試合を作る為に、これだけの人間が動いている」

ヤムチャ「……」

サガット「ただの八百長だったら、ここまではしないよ」

ヤムチャ「……はい」

サガット「勝ち負けが決まっている試合を……どうやって面白くするか……どうやってそこにドラマを作るか……」

ヤムチャ「……」

サガット「……それがプロレスだ」

ヤムチャ「……なるほどねぇ」

サガット「ヤムチャ君も頑張ってくれよ?」

ヤムチャ「あっ……! はいっ! わかったっす!」

サガット「でも、確かに……ダンさんの言う通り、ヤムチャ君はまだ、荒削りだな……」

ヤムチャ「……えっ? そうっすか?」

サガット「必殺技の狼牙風風拳はよかったが……それ以外はまだまだだな……」

ヤムチャ「うっ……」

サガット「……よし、明日、道場で俺達が指導してやろう!」

ヤムチャ「えっ……! 嘘!? 特訓!?」

サガット「何を嫌がっているんだ……そんな事では、これから試合で、いつかボロ出るぞ?」

ヤムチャ「も~う……俺はベジータと違って、そんなに特訓好きな方じゃねぇのに……」

今日ここまでっす

翌日、道場ーー


サガット「よしっ! ヤムチャ君、早速特訓を始めようか!」

ヤムチャ「でも、特訓って何をするんですか? 俺、仲間内では弱いけど……それでも結構、強い方っすよ?」

プーアル「ヤムチャ様……悟空さんや、ベジータさんの前で、その台詞言えます? ヤムチャ様は雑魚なんです! 自覚して下さいっ!」

ヤムチャ「うるせぇな、プーアル! だから、それは孫達が化物なだけで……」

プーアル「……はいはい、わかりましたわかりましたっと」

ヤムチャ「プーアルさぁ……? 最近、冷たすぎない? もうちょっと、優しくしてくれてもいいんでねぇの?」


サガット「……確かに、ヤムチャ君の言う通りだと、思う。おそらく、ヤムチャ君はこの団体で一番強いだろうな」

プーアル「えっ……? 嘘だっ! 絶対嘘だっ!」

サガット「実は俺やバイソンも、レスラーになる前に、天下一武道会に参加した事がある……」

ヤムチャ「えっ、そうなんですか?」

サガット「俺はムエタイとして、バイソンはボクサーとしての出場だ。自分の力が何処まで通用するか知りたくてな……」

プーアル「それで、結果はどうだったんですか?」

サガット「お互い、本戦に残る事など出来なかったよ、予選敗退だ」

ヤムチャ「……へぇ」

サガット「ベスト64か……はたまた、ベスト128か……まぁ、散々な結果だったさ」

プーアル「……そうなんですか」

サガット「その試合を見ていた、ベガさんや、ザンギエフさんにスカウトされて、俺達はレスラーになったという訳さ……」

ヤムチャ「……はぁ」

サガット「ベスト8に残った、ヤムチャ君が、ベスト64やベスト128から、教わる事など、何もないだろうな」

サガット「だが……それは、真剣勝負……つまり、シュートの場合の話だ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「昨日の試合でわかっただろう? プロレスは、真剣勝負とは違う……プロレスには、プロレスの戦い方があるんだ」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「ヤムチャより、実力はない俺だが……それでも、プロレスの戦い方は心得ている……君の力になれるだろう」

ヤムチャ「はい、そうっすね。俺、昨日バイソンさんに酷い事しちゃったみたいだし……」

サガット「あぁ、だからそんな事が二度と起こらないように、今日はプロレスの戦い方を学んでもらう!」

プーアル「……でも、プロレス様の戦い方って、どんな感じなんですか?」

サガット「……先ず、派手さだ。見た目の派手さが要求される」

サガット「俺は、ムエタイだから、蹴りが得意だが……ヤムチャ君、真剣勝負の場合、相手の何処を狙って攻撃する?」

ヤムチャ「え~っと……やっぱり、顔とか……わき腹辺りっすね……」

サガット「そうだ、その通りだ。相手の急所を狙うのが基本だ」

ヤムチャ「はい」

サガット「だが、プロレスではそんな事をしてはいけない……まぁ、一発逆転なんて、ドラマを作りたいのなら、別だがな……」

ヤムチャ「あ~、そうっすね……試合がすぐ終わっちゃいますもんね? ドラマ作ってる時間がなくなっちゃいますよ」

サガット「だから……相手のダメージの軽減されるであろう場所を狙うんだ」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「そして、同時に技を食らっている方にも、技術が要求される……」

ヤムチャ「……技術?」


サガット「一度、実践してみよう。バイソン! 少し、付き合えっ!」

バイソン「うっす!」

バイソン「オラオラっ! かかって来やがれ! サガットの糞ボケがっ!」

サガット「……フンっ!」シュッ

バイソン「……ぐっ!」

サガット「……」

バイソン「くっ……てめぇ、舐めやがって……」

サガット「……フンっ!」シュッ

バイソン「……ぐぐっ!」

サガット「……」

バイソン「ぐっ……くそっ、くそっ……」ヨロヨロ

サガット「うおおぉぉっ! 連続で行くぞっ! うるあぁぁぁっ!」シュッ

バイソン「ガッ……! ガッ……! ガガッ……!」


ヤムチャ「おいおいおい……バイソンさん、大丈夫なのかよ? 試合前にこんな事してていいの?」

バイソン「とまぁ、こんな感じ? ヤムチャ君、わかった?」

ヤムチャ「……あり? バイソンさん、何でそんなにケロっとしてるの?」

バイソン「そりゃ、サガットが俺の太腿ばかり、狙っててくれるからだよ」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「今のは、俺のテクニックというより、バイソンのテクニックだな……」

バイソン「顔や、脇腹を狙ったら、一撃で決まっちまう……だから、サガットは太腿に攻撃を仕掛けてくれたんだ」

サガット「だが、太腿に攻撃をしても、普通の真剣勝負では、決まったりはしないだろう?」

ヤムチャ「……そうっすね」

サガット「だが、連続で攻撃をしたらどうだ? ダメージが軽減されるであろう太腿でも、何発も何発も喰らえば、ダメージが蓄積されてくるように見えないかな?」

ヤムチャ「……なるほど」

バイソン「サガットはそういう事をしようとしてたんだ……だったら、攻撃を受けてる俺は、その意思を感じとって、付き合わなきゃならねぇ」

サガット「ヤムチャ君も、必殺技の狼牙風風拳で……急所を狙うなと言われただろう?」

ヤムチャ「あっ、はい……」

サガット「勿論、急所を狙わなければ、相手を倒す事は出来ない……だが、それは真剣勝負の場合だ」

ヤムチャ「……はい」

サガット「ヤムチャ君が、狼牙風風拳で相手を倒すという意思を持って、急所を狙わずに攻撃すれば」

バイソン「俺達は、その意思を感じとって、例えダメージがなくても、ダメージを受けるという訳だ」

ヤムチャ「……なるほどねぇ」

サガット「だが、これは逆の場合もそうだぞ?」

バイソン「俺達がヤムチャ君に攻撃をする時、どういうつもりで、攻撃を仕掛けているのかを、ヤムチャ君は考えなければいけねぇ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「大きなダメージを与える意思を持って、攻撃しているのか……それとも、小さなダメージを与える意思を持って攻撃しているのか……」

バイソン「基本的にダメージはねぇ攻撃だけど、ヤムチャ君は、状況状況に合ったやられ方をしなくちゃいけねぇって事だ」

ヤムチャ「う、うわぁ……難しくなってきたぞ……」

サガット「まぁ、ヤムチャ君は、空手スタイルみたいだし……基本的には、俺達が上手くやられて、試合の攻防をリードしてあげるよ」

ヤムチャ「あっ、ありがとうございます……」

バイソン「とにかく、急所さえ狙わなきゃいいからよ? そこだけは注意してくれよな?」

ヤムチャ「本当……昨日はすいませんでした……」


サガット「よし、打撃攻撃はヤムチャ君ならきっと大丈夫だろう! なんたって、狼牙風風拳があるんだからな」

ヤムチャ「まぁ、なんとなくっすけど……わかりました……」

サガット「次は投げ技だ。スープレックス技を教えよう!」

ヤムチャ「……スープレックス技?」

サガット「ヤムチャ君、真剣勝負の試合なら……攻防はパンチや蹴りがメインだろう?」

ヤムチャ「そうっすね」

サガット「何故なら、一番効率的だからだ。 相手を掴んで、放り投げて……そんな事をするなら、二三発殴った方が手っ取り早い」

ヤムチャ「ごもっともっす」

サガット「だが、これはプロレスだ。非効率的な攻撃でも、そこに意思があれば、相手は攻撃を喰らうのを待っていてくれる」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「格闘技の試合では出来ない……見た事もないような、派手なスープレックスで、相手を倒したいという意思があればな」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「スープレックス技の魅力はここだ。とにかく、派手で盛り上がる。だから、ヤムチャ君にも覚えてもらいたい」

ヤムチャ「なんか、俺に技を教えてくれるんですか!?」

サガット「あぁ、ヤムチャ君には、ボディスラムとバックドロップを覚えてもらう」

ヤムチャ「あれ……?」

サガット「ん、どうした……?」

ヤムチャ「俺、プロレス詳しくないんですけど……ボディスラムとバックドロップって……聞いた事ある気がしますね」

サガット「あぁ、基礎中の基礎技だ」

ヤムチャ「!」

サガット「先ずは、ボディスラムから覚えてもらおう。ボディスラムとは、相手を持ち上げて、落とす……ただ、それだけだ」

ヤムチャ「おいおいおい! 今更、基礎っすか!?」

ーーー


ヤムチャ「……持ち上げて」

バイソン「……う、うおっ!」

ヤムチャ「……落とす!」

バイソン「……ぐっ!」ドシーンッ


サガット「いいぞ。なかなか飲み込みがいいじゃないか」


ヤムチャ「バイソンさん、大丈夫っすか?」

バイソン「受け身とっているから、平気だよ? とにかく、この技を完全に自分の物にしよう! ほら、続けて続けて!」

ヤムチャ「う~ん……じゃあ……よっと、持ち上げて……」

バイソン「うおっ……う、うおおっ……!」

ヤムチャ「……落とすっ!」

バイソン「……ぐっ!」


サガット「よし、いいぞ! 完全に自分の物にするまで、続けるんだ!」

ヤムチャ「……サガットさ~ん」

サガット「ん、ヤムチャ君……どうした?」

ヤムチャ「この技……凄く地味っす……」

サガット「……」

ヤムチャ「こんな技で盛り上がるんですかねぇ? もっと派手な技、教えて下さいよ」

サガット「……基礎ができんと何も出来ん」

ヤムチャ「いや、俺、結構センスある方ですって……だって、天下一武道会ベスト8ですよ? ベスト8」

プーアル「ヤムチャ様、調子に乗りすぎです」

サガット「……ヤムチャ君、何故君のボディスラムが地味なのか教えてやろう」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「君のボディスラムが地味な理由……それは、そこに何の意思もないからだ」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「君はどういうつもりで、バイソンにボディスラムをかけている?」

ヤムチャ「えと……それは……」

サガット「バイソンにどれくらいのダメージ与えているつもりなんだ?」

ヤムチャ「えっと……えっと……」

サガット「そのボディスラムは、今君が使える技の中で、何番目に強いんだ? 狼牙風風拳より強いのか? 弱いのか?」

ヤムチャ「いや……流石に、狼牙風風拳よりかは弱いと思いますけど……」

サガット「今の君は、教えられた事を何の意思も持たずにしているだけではないのかい?」

ヤムチャ「……」

サガット「それじゃあ、プロレスは出来ない……少し、手本を見せてやろう……」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「俺のボディスラムは、基礎技ではない」

ヤムチャ「いや、この技って基礎技なんでしょう?」

サガット「普通の人間使えばな……だが、俺は見ての通り長身だろう?」

ヤムチャ「そうっすね……」

サガット「つまり、他の人間が使うボディスラムより、高い位置から落とす形になるという訳だ」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「つまり……俺のボディスラムは、他の人間のボディスラムより、大きなダメージの攻撃である」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「という、意思を持って、俺はボディスラムをしている。 ただの基礎技にも関わらずだ」

ヤムチャ「……」

サガット「実際に見てくれ。よし、バイソン! 行くぞっ!」

バイソン「うっす!」

サガット「うおおおぉぉっ!」グイッ

バイソン「う、うおおっ……!」

サガット「……バイソン、くたばれ」

バイソン「おっ……おおっ……! うおっ……!」

サガット「うるああぁぁぁ!」


ドシーンッ!


バイソン「……ぐがっ!」


プーアル「わっ、凄いっ! ヤムチャ様のとは全然迫力が違いますっ!」

ヤムチャ「……うるせぇよ。まぁ、確かに、何かが違うわ」

サガット「俺の場合は、少し持ち上げた状態でタメを作ったりしている」

ヤムチャ「……あ~、そういや、バイソンさんを抱えてる時間、長かったっすね」

サガット「落とす時にも、少し勢いをつけているな。 そうした方が迫力が出るからな」

ヤムチャ「……じゃあ、俺もそういう事をしてみたら、いいんですかね?」

サガット「……そうとも限らん。次はバルログのボディスラムを見てみよう」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「おい、バルログ! バイソンにボディスラムをしてくれ!」


バルログ「わかりました……バイソン、よろしくお願いします……」

バイソン「うっす!」

バルログ「ヒャオっ!」シュッ

バイソン「……うおっ、おおっ」

バルログ「ヒャオっ!」ドスン

バイソン「おっ……だっ……!」


ヤムチャ「うわっ! 何だ、アレ!? 早っ!」


バルログ「……ヒョオオオッ!」


プーアル「あれ? バルログさんが、そのまま流れるような動きでコーナーポストに登りましたよ?」


バイソン「おいおい待て! バルログっ! ムーンサルトはやめろっ! 試合があるんだからよぉ!」

バルログ「……わかってますよ。私のボディスラムはここまでがムーブです」

サガット「……とまぁ、あれがバルログのボディスラムだ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「俺は長身から、叩きつけて大ダメージを与えるボディスラムだが……」

ヤムチャ「……ほう」

バルログ「私の場合、必殺技のムーンサルトプレスに繋げる、繋ぎの技として使用しています」

ヤムチャ「……繋ぎ?」

バルログ「えぇ。ムーンサルトプレスはダウンしている相手にコーナーポストから、バク宙をして、ボディスラムを仕掛ける攻撃ですからね」

ヤムチャ「……ほうほう」

バルログ「ムーンサルトプレス使うには、相手をダウンさせる必要があります。その為のボディスラムなのです」

ヤムチャ「……なるほど」

バルログ「私の場合はとにかく、スピード重視しています。メインの攻撃はムーンサルトプレスなのですからね」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「素早いボディスラムから……流れるような動きで、私の必殺技のムーンサルトプレス……この一連の動作が、よりスムーズに行われる事を重視しています」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「同じボディスラムでも、ここまで違いが出るんだ」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「ダメージ優先の……俺のボディスラム……」

バルログ「スピード重視の……私のボディスラム……」

ヤムチャ「……」

サガット「お互い、自分の体格や、ファイトスタイルに合わせて、一番自分に合ったボディスラムを作っている」

ヤムチャ「……なるほどねぇ」

バルログ「だから、ヤムチャ君も、自分のオリジナルのボディスラムを作りましょう。同じ技でも、どう使うかで、レスラーの個性になりますからね」

ヤムチャ「基礎技だと、思ってたのに……奥が深いんっすねぇ……」

バルログ「そんな事ありませんよ。偉大なレスラーは、チョップ一つで、会場が大熱狂するように工夫してたりするんですよ?」

ヤムチャ「え? チョップの一つで!?」

サガット「まぁ、とにかく、何事も基礎だ。ヤムチャ君オリジナルのボディスラムを、バックドロップを今日作ろう!」

ーーー


ヤムチャ「うおおおぉぉっ……!」

バイソン「……ぐっ!」


バルログ「サガット……どうですか……?」

サガット「う~む……悪くはないんだが……」

バルログ「そうですよね……何かが足りないですよね……」

サガット「……まぁ、暫くは打撃メインにしてやるしかないだろうな」


プーアル「皆さんっ! 本日の試合予定表、ザンギエフさんからもらってきましたよ!」


サガット「おっ、プーアル君、ありがとう」

バルログ「プーアル君はいつも気が効きますね」

プーアル「ほらほら! ヤムチャ様も見て下さいよ!」

ヤムチャ「どうせ、俺負けるんでしょ。俺、知ってるよ」

プーアル「文句を言わないっ!」

本日の予定試合


第一試合(10分決着)
×コーディーガイ○

第二試合(10分決着)
×ダルシムーソドム○

第三試合(15分決着)
×ローズー春麗○

第四試合(15分決着)
×E本田_ナッシュ
ロレント ガイル○

第五試合(25分決着)
ヤムチャ バルログ
ケンーサガット
× リュウ ベガ○

第六試合(30分決着)
○豪鬼ーザンギエフ×

今回は文章だけでわかり辛かったかもしれないね
試合表が毎回ズレるのはご愛嬌にしておいてくれ
それと明日の更新はお休みします 次は明後日更新で

色々とすまねぇね

>>370
バルログさん…
コーナーからボディスラムは危険っす
あと40時間くらいか…

>>379で指摘を受けましたが


バルログ「えぇ。ムーンサルトプレスはダウンしている相手にコーナーポストから、バク宙をして、“ボディスラム”を仕掛ける攻撃ですからね」


バルログ「えぇ。ムーンサルトプレスはダウンしている相手にコーナーポストから、バク宙をして、“ボディプレス”を仕掛ける攻撃ですからね」

ですな
映像がなく文字だけで説明しなきゃならないのに、この手の間違いは本当に申し訳ない
なるべく、わかりやすくなる様に努力するつもりだけど、それでもプロレス知らない人には「これってどんな技だろう?」って箇所が出てくる所もあると思う

そういう時は雰囲気でなんかやってるんだな……なんて生温かい目で見てもらえれば嬉しい
そんじゃ、ぼちぼちシコシコやっていきます

サガット「……ふむ」

バルログ「これは……」

バイソン「そうか……豪鬼さんをゲストに呼んだのか……」

ヤムチャ「おっ、なんだなんだ! 今回は俺が負け役じゃねぇじゃんっ! リュウさんに×印ついてるぞ、おいっ!」

サガット「……やはり、ザンギエフさんの身体の調子は」

バルログ「えぇ、早く……リュウ君の人気を上げなければ……」

バイソン「豪鬼さんも、3試合か4試合が限度だろ……うちの団体には、そんなに金はねぇからな……」

ヤムチャ「……ん、あれ? 皆さん、何の試合を見てるんですか? 自分の所を見ましょうよ」

サガット「おっ、それもそうだな。ヤムチャ君の言うとおりだ。今は目の前の試合に集中しよう」

ヤムチャ「今日は俺、負け役じゃないんですね!」

バルログ「……ヤムチャ君?」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「貴方は負け役ではありませんが……自分の役割を忘れないで下さいね?」

ヤムチャ「えっ、役割って……どういう事っすか?」

バイソン「実力ナンバー3のリュウは、実力ナンバー2のベガさんには勝てねぇだろ?」

ヤムチャ「はい」

バイソン「だから、今日の試合は、リュウが負け役で……ベガさんが勝ち役って訳だ」

ヤムチャ「そうっすね。リュウさんに×印ついていて、ベガさんに○印ついてますもんね」

バイソン「だけど、ヤムチャ君……自分の役割を忘れてはいけない……君は何の為にリュウ達とタッグを組んでいるんだ?」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「……今日の試合のヤムチャ君の役割を説明しよう」

ヤムチャ「あっ、はい。お願いします……」

サガット「今日の試合、リュウ君はベガさんに負ける……だが、ナンバー3がナンバー2に負けるだけの試合をする訳ではない」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「君がリュウ君の足を引っ張り……そのせいで、リュウ君はベガさんに負けてしまうんだ」

ヤムチャ「えっ、それって……もしかして……」

サガット「お客さんに『ヤムチャ君がもっと、強かったら、リュウ君はもしかしたらベガさんに勝てたかもしれないんじゃないか?』と、思わせる事……」

ヤムチャ「……なんだよ、やっぱりそうなるのかよ」

サガット「それが、ヤムチャ君の今日の試合の課題だ」

バイソン「まぁ、ジョバーってのは、そういうもんだ」

バルログ「これから、ドラマを作っていけばいいんです」


ヤムチャ「まぁ、結局の所……昨日みたいにやられてばいいんですね……」

サガット「まぁ、そうだな……コーナーで待機している時に攻撃を仕掛けたら、昨日の様にやられたふりをしていてくれ」

ヤムチャ「また、俺……なんにもしねぇのかよ……」

サガット「そうでもないぞ? 昨日と違い、ヤムチャ君には大きな仕事がある」

ヤムチャ「……えっ、何ですかそれ?」

サガット「今日の試合の先発はヤムチャ君で出てくれ。こっちはバルログが出る」

ヤムチャ「えっ!? 俺が先発!?」

バルログ「えぇ、昨日はヤムチャ君自身が負けてしまいましたけど、今日はリュウ君の負けですからね」

ヤムチャ「……はい」

バルログ「何処かで、ヤムチャ君が足を引っ張る事になった原因を作っておく必要があります」

ヤムチャ「なるほど……」

バルログ「先発通しの戦いの後、スタミナ切れになってしまい、リュウ君達を助けに行けなかったという事にしましょう」

ヤムチャ「じゃあ、俺はバルログさんと戦った後、ずっと疲れた振りしておけばいいんですね?」

バルログ「そうですね。そうしたら、後はバイソンに仕掛けてもらいます」

ヤムチャ「……へ? バイソンさんに?」

ヤムチャ「今日、バイソンさん、試合に出てませんよ?」

バイソン「あぁ、いやいや……俺はセコンドで出るからよぉ?」

ヤムチャ「……セコンド?」

バイソン「あぁ、俺達シャドルーは反則軍団だからよ」

ヤムチャ「……自分で言うのはどうかと思いますが」

バイソン「俺がセコンドにつけば、3対3の戦いが3対4になるって訳だ!」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「俺が上手い事掻き回して、リュウ達は反則のせいで負けてしまったって理由を作るからよ? ヤムチャ君は俺達に任せてくれや」

ヤムチャ「わ、わかりました……」

バイソン「俺は、セコンドで荒らすのも仕事だからな! 今日も試合に出ずにお休みって訳じゃないんだぜ?」

サガット「試合まで時間がある。とにかく、バルログとの攻防を今は徹底的に打ち合わせしよう」

バルログ「そうですね、25分の試合だから……最低、5分は私とヤムチャ君だけの時間が必要です」

ヤムチャ「5分間……俺がバルログさんと戦い続けるって事ですか?」

バルログ「えぇ。それだけではありませんよ? 5分間経った時に、ヤムチャ君はやられる寸前になっていなければいけません」

ヤムチャ「えっ……! ちょっと待って下さいよ! 難しくないですか、それ!?」

バイソン「慣れれば、アドリブで出来るんだけどな……まぁ、ヤムチャ君には、まだ早いかもな……」

サガット「とにかく、試合開始から5分間は二人で戦うんだ。その5分間をどうするか……今、ここで打ち合わせしよう」

ヤムチャ「……ちょっと、今日の試合、不安になってきたぞ」

バルログ「5分さえ耐えれば、後は私達がフォローします。 だから、この5分間の攻防の、パンチやキック……一発足りとも抜けないように、覚えて下さいね?」

ヤムチャ「う、うっす……! 頑張ります……!」

そしてーー


ガイル「……サマーソルドキックっ!」

本田「ぬ、ぬわあああぁぁぁっ!」


実況「さぁ! これはカウンター気味に完全に決まったかっ!? ガイルのサマーソルドキックで本田を迎撃っ!」


ガイル「……レフェリー、フォールだ! カウントを!」

ダン「おうよっ! ワンっ……! ツーっ……! スリーっ!」


実況「決まったぁ! ここでスリーカウントっ! ナッシュ・ガイル組! ベルトを防衛しましたぁっ!」


プーアル「ヤムチャ様! ガイルさんがスリーカウントをとって、勝ちましたよ!」

ヤムチャ「え~っと、俺がボディスラムをして……そしたら、バルログさんが……え~っと、え~っと……」ブツブツ

プーアル「……ヤムチャ様?」

ヤムチャ「バルログさんがロープに行ったら……俺はやられた振りをしておくんだったよな……」ブツブツ

プーアル「ヤムチャ様! 聞いてるんですか!?」

ヤムチャ「うるせぇっ! プーアル! 今、確認してるんだよ! ちょっとは集中させろっ!」

プーアル「もう、ヤムチャ様の試合ですよ!」

ヤムチャ「……えっ!? もう、俺達の試合の番、来ちゃったの!?」

ヤムチャ「マジかよ、早ぇなぁ……というか、リュウさん達、まだ来てないのに……」


リュウ「危ね危ね……また、遅れちまったよ!」

ケン「まぁ、ギリギリ間に合ったんだから、いいじゃねぇか!」


プーアル「あっ、話をしてたら、来ましたよ」

ヤムチャ「……本当だ」


リュウ「おい、新入り……おめぇ、今日は大人しくしておけよ?」

ケン「おめぇ、また昨日の技やったら、殺すからな?」

ヤムチャ「あっ、はい……わかってます……」

リュウ「……ったく、今日は俺が負け役かよ。面倒臭ぇなぁ」

ケン「おい、リュウ……じゃあ、こいつ、どうやって使うよ?」

リュウ「おい、ヤムチャ? お前、今日の試合、どうするんだ?」

ヤムチャ「あっ……サガットさん達に先発で出ろって言われました……」

リュウ「……あぁ、先発? おめぇ、またいい格好しようとしてんじゃねぇだろなぁ?」

ヤムチャ「いや、大丈夫っす……5分間でやられるようにって、みっちり打ち合わせしたんで」

リュウ「ふ~ん……で、その後はどうするつもりなの?」

ヤムチャ「バイソンがなんとかしてくれるって、言ってましたけど……」

リュウ「あっ、そういう事ね……なぁ~んだ、わかってるじゃん、お前」

ケン「踏み台は踏み台らしくしてりゃあ、いいんだよ! おめぇも勉強熱心みてぇだな!」

ヤムチャ「あっ……どうも……」

ーーー


ダン「さぁ、試合は第五試合……空手軍団対シャドルー軍団……今日も波乱の一試合の幕開けでございますっ!」


ワー、ワーワー


ダン「女性の皆様、お待たせしましたっ! 我らがヒーロー、空手軍団っ……!」


キャー、キャーキャー


ダン「リュウ選手! ケン選手! ヤムチャ選手の入場ですっ!」


キャー、キャーキャー


リュウ「昨日の借りを必ず返してやるぞ、シャドルー軍団っ!」

ケン「今日は奴らの親玉が出るんだっ! ここで必ず、ぶっ倒すっ!」

ヤムチャ(……俺も、何か言った方がいいのかぁ?)


キャー、カッコイイ-!

実況「さぁっ! 空手軍団の入場であります! いやぁ~! 華やかな声援が羨ましいっ! 私もあんな声援をかけて頂きたいものですっ!」

リュウ「今日は必ず勝つ! 俺達の戦いを見ていてくれっ!」

実況「まずは、リュウ選手! 本日も気合十分でございますっ!」

ケン「ベガ……俺達の力を、見せてやるっ……!」

実況「そして、次にケン選手! いやぁ~、打倒ベガに燃えているんでしょうかね? 私、何か瞳の奥にギラギラとした物を感じるような気がします!」


オーイ! ヤムチャー! キタイ、シテンゾー!

ヤムチャ「あっ……ども……」

実況「そしてそしてそして! 何と言っても、空手軍団の秘密兵器、ヤムチャ選手っ! 先日の試合では素晴らしい技を見せてくれました!」

ヤムチャ(5分間は、俺一人で、この人達に……格闘技とはまた違う……でも、盛り上がるような戦いをしなくちゃいけねぇのか……)

実況「さぁ! 今日こそはシャドルーを倒せ、空手軍団っ! 今、リングインしましたっ!」

ヤムチャ(やべぇ、大丈夫かな……? 不安になってきたぞ……)

ダン「続きましては……プロレス界から世界征服を狙う……シャドルー軍団……」

ダン「ベガ選手! サガット選手! バルログ選手の入場ですっ!」


ベガ「……」

サガット「……」

バルログ「……」

バイソン「……」


ブー、ブーブー


実況「さぁ! 大ブーイングに包まれながら、シャドルー軍団の……おおっと! バイソンの姿があるぞ! 何故、バイソンの姿がここに!?」

ーーー


実況「さぁ、いつものように、お客さんに噛みつきながら、シャドルー軍団がリングインしましたが……」


ダン「おい、バイソン? おめぇは今日、試合がねぇだろが? 何で、ここにいるんだよ?」

バイソン「セコンドだよ、セコンド! 別に試合には参加しねぇよ!」

ダン「お前ら、いつもそうやって、なんか仕掛けるだろ! とっとと帰れよ! これは3対3の試合なんだからよぉ!」

バイソン「だから、セコンドだって言ってんだろが! ボクシングのセコンドが何か邪魔してんのか!? ちゃんと、一対一の試合にしてんだろが!」


実況「いやぁ……レフェリーのダンに早速何か、つっかかってますねぇ……」


バイソン「何もしねぇって言ってんだろがっ! それとも何か!? セコンド禁止ってルールがプロレスにはあんのか!?」

ダン「いや、まぁ、そういうルールはねぇけどよぉ……」

バイソン「だったら、いいだろが! ここで見てるだけって言ってんだろがっ!」

ダン「わかったわかったよ……セコンドにいてもいいけどよぉ……試合の邪魔だけは絶対にするんじゃねぇぞ!?」

バイソン「わかってるって! バイソンちゃん、ルールは守る子なんだから!」

実況「さぁ、では解説の元さん、よろしくお願いします!」

元「はい、よろしくお願いします」

実況「いや~、シャドルー軍団がセコンドにバイソンを引き連れてきたんですが……元さん、どう思われます?」

元「……う~ん、難しい所だよね」

実況「……と、言いますと?」

元「彼らは反則ばかり使っているから、やっぱり何処かでバイソン君が動いてくるのかもしれないから、バイソン君の動き注意したいんだけど……」

実況「そうですよねぇ! 空手軍団はバイソンの動向にも、注意しなければなりません!」

元「でも、案外、何も仕掛けてこない……かも、しれない……」

実況「……ほう?」

元「バイソン君ばかりあまり気にしていると、試合の集中力が疎かになっちゃうからね」

実況「……なるほど」

元「そうやって、空手軍団の集中力を掻き乱してやろうという作戦なのかもしれない……」

実況「なる程!」

元「どっちにしろ……バイソン君があの場所に存在するという事は、一つ空手軍団に不利な状況になっちゃったかもね」

ベガ「よし、バルログ……行け……」

バルログ「任せて下さい……私が美しく勝利手にしてみせましょう……」


実況「さぁ! シャドルー軍団の先発はバルログです!」

元「まぁ、あの三人の中なら、そうなりますね」


リュウ「……さっさと行って来い。ほれ」

ケン「……おめぇ、いい格好したらぶっ殺すからな? わかってんだろな?」

ヤムチャ「う、うっす……!」


実況「さて、対する空手軍団の先発はヤムチャだ!」

元「まぁ、三番弟子だしね。前回のリベンジ、見せてもらいたいものだね」

実況「さぁ! この試合、どういったものになってしまうのでしょうか!? 今……ゴングが鳴らされ、試合開始ですっ!」

今日はここまでっす

バルログ「さぁ、ヤムチャ君……いきますよ……」

ヤムチャ「くっ……来やがれっ……!」


実況「さぁ、 試合開始ですっ! 今、両者が間合いをじわりじわりと測っておりますっ!」


バルログ「……フッ」

ヤムチャ(蹴りだ……先ずは、蹴りが来る……だから、俺は……)


実況「さぁ! バルログはヤムチャを中心に円を描くような動きで慎重に間合いを測っております! さぁ、どう動くか!」


バルログ「……ヒャオっ!」シュッ

ヤムチャ(来たっ!)


実況「先に仕掛けたのはバルロク! バルロクが動いたぁ!」

ヤムチャ(……くっ!)


元「おっ? 上手く、避けましたね?」


バルロク「次は足元ですっ! ヒャオっ!」シュッ

ヤムチャ(これは……ジャンプして、避けるっ……!)


実況「おぉ~っと、バルロクはまだ仕掛けているぞ!?」

元「でも、上手く対応してますね? いいんじゃないですか?」


バルロク「ジャンプして避けるとは、なかなかやりますね……しかし、体勢が崩れてますよ?」

ヤムチャ「!?」

バルロク「次は投げ技ですっ! ヒャオっ!」


実況「おぉ~っと! バルロクが強引に掴みかかったぞ!? これは投げ技か? 投げ技を見せるのか!?」

ヤムチャ(バルログさんが掴みかかってきたら……俺は、そのまま後ろに下がって……)ヨロヨロ

バルログ「くっ……待ちなさいっ……!」

ヤムチャ(そのまま……もつれたままの状態で、ロープまで下がるっ……!)


実況「おぉ~っと! ここで、ロープブレイクです! 投げられかけた所を、ヤムチャ、なんとかロープまで逃げました!」


バルログ「……チッ、ロープまで逃げましたか」

ヤムチャ「レフェリーさん……? これ、ロープブレイクでしょ? ほら、やめさせてよ、コイツ……」


ダン「おうっ! バルログ、ロープブレイクだ! 一旦、リングの中央に戻りやがれ!」

実況「さぁ! ここで、一旦仕切り直しです! 両者、リングの中央に戻ります!」


バルログ「……チッ!」

ヤムチャ(よ、よしっ……! これで……いいんだよな……?)


パチパチ……パチパチ……


実況「さぁ! 両者のクリーンファイトに、お客さんから拍手が沸き起こります! いやぁ~、こういうクリーンな試合はいいものですねぇ!? 元さん」

元「そうだね。シャドルーも、変な事せずに、こういう試合してたらいいのにね」


ダン「よしっ! 仕切り直して……試合スタートだっ! ファイっ!」

バルログ「フッ……来なさい……」

ヤムチャ(次は……確か、俺の番だったよな……?)

実況「さぁ! 今、試合仕切り直され、再び両者が間合いを測っておりますっ!」


バルログ「……」

ヤムチャ「……」


実況「しかし、元さん……? 今のヤムチャの動きはいかがでしたでしょうか?」

元「あっ、うん。なかなかよかったと思うよ? バルログ君の動きに、見事に対応してたよね?」

実況「いやぁ~、そうですよねぇ!? ハイキックがきたら、屈んで! 水面蹴りにはジャンプして! 私も素晴らしい対応だったと思います!」

元「やっぱり、空手スタイルだから、打撃攻撃への反応はいいのかね……?」


ヤムチャ(よ、よしっ……! 行くぞっ……!)

バルログ「!」


実況「おぉ~っと! ここで、ヤムチャが仕掛けたぁ~!」

ヤムチャ「おらあっ!」シュッ

バルログ「……ヒャオっ!」


実況「先ずはヤムチャのハイキックっ!」


ヤムチャ「うるぁっ!」シュッ

バルログ「……甘いっ! ヒャオっ!」


実況「そして次は、水面蹴りぃっ!」


ヤムチャ「……体勢が崩れてるぞ、この野郎っ! おらぁ! ぶん投げてやるっ!」

バルログ「!」


実況「おっと! ここで体勢が崩れたバルログを掴みにかかったっ! ヤムチャがスープレックスを仕掛けにいったぞ!」

バルログ「……くっ!」ヨロヨロ

ヤムチャ「逃げんじゃねぇよ! ぶん投げてやるって言ってんだろがっ!」


実況「おぉ~っと! だがしかし、ここで、ロープブレイク! バルログ、なんとかロープまで逃げましたぁ!」


バルログ「……ヤムチャ君、ロープブレイクですよ? 離していただけると有り難いのですが」

ヤムチャ「……え、えっ?」

バルログ「ほら、レフェリー……早く彼を止めて下さい……反則攻撃なんて醜い試合を、私はしたくありませんからね……」


ダン「おいっ、ヤムチャ! ロープブレイクだっ! 離して、リングの中央に戻りやがれっ!」

実況「さぁ! 今度はバルログが、ロープブレイクで逃れます!」


バルログ「……フッ」

ヤムチャ「……」


パチパチ……パチパチ……


実況「クリーンなファイトに、お客さんも拍手で応えます! しかし、元さん……今の攻防、なかなか見応えのあるものでしたねぇ!?」

元「そうだね」

実況「バルログが仕掛けた攻撃に対して……ヤムチャは、それくらいの攻撃は俺にだって出来るんだ! などと言わんばかりの勢いで攻撃をしていきます!」

元「やっぱり、空手スタイルだからね。蹴りとかは得意なんじゃない?」

実況「だがしかし! バルログもなんのその! 俺だって、それぐらいの反射神経はあるんだ! と言わんばかりの勢いを見せます!」

元「バルログ君は、身体能力高いからねぇ?」

実況「いやぁ~、シャドルー軍団、珍しくクリーンな試合をしていますねぇ? 元さん」

元「う~ん……まだ、始まったばかりだからね……」


ダン「よしっ! 仕切り直して、試合スタートだっ! ファイッ!」

バルログ「……フッ、ヤムチャ君」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「なかなか、いいものを持っているみたいですね……貴方、美しいですよ?」

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「私、貴方となら……美しい試合を出来るかもしれません……他の醜い連中では出来ないような試合をね?」

ヤムチャ「は、はぁ……?」

バルログ「今日は……よろしくお願いしますね……?」サッ

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「……どうしました? 握手ですよ。握手」


オー!オー!


実況「おぉ~っと! これは、どういう事だ!? バルログが、ヤムチャ選手に握手を求めています!」

元「珍しい事もあるもんだね……本当に、シャドルーは、今日はクリーンで戦うのかねぇ?」

実況「今の攻防で、バルログはヤムチャの中に、認めるものがあったという事なんでしょうかねぇ? 元さん?」

元「う~ん……まぁ、いい蹴りはしてたとは思うけどね……何か、怪しいね」

バルログ「……どうしました? 握手ですよ、握手」

ヤムチャ「あっ……はい、わかりました……」スゥー


実況「さぁ、ヤムチャが、バルログに手を伸ばす……ここで両者の握手が……」


バルログ「……バカめっ!」

ヤムチャ「……んっ?」

バルログ「お前のような汚らわしい者に……この私が心許すとでも思ったかっ! ヒャオっ!」バチーンッ


実況「おぉ~っと! やはり、これは罠だったかっ! 手を差し伸ばし、無防備になったヤムチャに、バルログの強烈な張り手が炸裂~!」

元「……バルログ君が、あんなクリーンファイトするなんて、おかしいと思ってたんだよ。油断を誘う為のまき餌だったって訳だね」


ヤムチャ「おっ……おおっ……」クラクラ

バルログ「このカスがぁ! ヒャオっ!」

ヤムチャ「!」

実況「決まったぁ! バルログのドロップキックです!」


バルログ「まだまだ、いきますよっ! ヒャオっ!」

ヤムチャ「……ガッ!」


実況「そして……ダウンしているヤムチャにフラッシングエルボー! 強烈な肘打ちをお見舞いだ!」


バルログ「このカスがっ! 醜いんだよ! 私を見習って美しくなるんだっ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……!」


実況「そして、ダウンしているヤムチャにストンピングの連打連打だっ! ヤムチャの身体を何度も何度も踏みつける!」

リュウ「バルログ! 卑怯だぞ!」

ケン「てめぇ、汚ねぇ手段使ってんじゃねぇぞゴラ!」

バルログ「汚い……? 何を言っているんです……騙される方がマヌケなのです……」グリグリ

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」


実況「おぉ~っと、これはコーナーのリュウもケンも黙っていられないっ! か~なり、ヒートアップしております!」

元「……まぁ、そりゃ、弟弟子があんな卑怯な事されちゃねぇ」


リュウ「……この野郎! バルログっ!」

ケン「てめぇ、もう勘弁ならねぇ……」

バルログ「おっと……! 試合権利のない人間はリングに上がっては、いけませんよ? そうですよねぇ、レフェリー?」


ダン「おう、そうだ! リュウ、ケン! お前らは試合権利ねぇんだから……リングインしたら、反則だからなっ!」

リュウ「……くそっ!」

ケン「……この野郎」


バルログ「今、試合権利を持っているのは……この美しい私と……そして、このゴミですっ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」


リュウ「……ちくしょう」

ケン「……クソが!」


バルログ「あなた方は……そこで、このゴミがやられているのを黙って見ていなさい……」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……!」


実況「先程のまでのクリーン試合は何処へ行ってしまったんだぁ! やはり、シャドルー軍団はシャドルー軍団! 卑怯な連中の集まりだったぁ!」

ブー、ブーブー

実況「会場からはブーイングの嵐っ! 卑怯なバルログにブーイング浴びせられますっ!」


バルログ「フッ……本物美しさがわかっていない方ばかりですね……ヒャオっ!」ガスガス

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「だがしかし! バルログはそんな事などお構いなしだっ! ヤムチャストンピングの連打連打っ!」


バルログ「ヒャオっ! ヒャオっ!」

ヤムチャ「ぐっ……! ぐぐっ……!」


リュウ「くそっ! ヤムチャっ! しっかりしろ!」

ケン「おいっ! もっと、踏ん張れってっ! 立てよ、ヤムチャっ!」

ヤ・ム・チャ! ヤ・ム・チャ!


ヤムチャ(……おっ?)


実況「さぁ! 場内からはヤムチャコールだっ! ここはなんとかヤムチャに踏ん張って欲しいっ!」


ヤムチャ(確か……バルログさんは、ヤムチャコールが沸き起こるまで、倒れておけって言ってたはず……)

バルログ「ヒャオっ……! ヒャオ……!」ガスッ

ヤムチャ(俺を踏みつけるのも……連続で踏みつけずに……間を開けて踏みつけてくれているよな……)

バルログ「ヒョォォッ……ヒャオっ……! ヒョォォッ……ヒャオっ……!」ガスッ

ヤムチャ(だから、これは……このタイミングで起き上がれって……指示してくれてるんだな!)

バルログ「フッ、そろそろくたばりましたかね……ヒャオっ!」ガスッ

ヤムチャ(……よしっ! なら、このタイミングで)ヨロヨロ

バルログ「……ん?」

実況「おぉ~っと、ヤムチャが、何とか立ち上がったぞっ!」


バルログ「……タフですねぇ。そういうゴミは、美しくありませんよ?」

ヤムチャ「……くっ!」


オー!ヤムチャー!


ヤムチャ(よしっ……! ここから、打ち合わせの攻防再開って訳だな)

バルログ「フン、来なさい……とどめをさしてあげましょう……」

ヤムチャ「……今度はこっちの番だっ! 行くぞっ! バルログっ!」


イケー! ヤムチャー! ヤッチマエー!


ヤムチャ(よしっ……! お客さんも俺の事、応援してくれてんだっ……! だったら、今日の練習の成果を見せてやるっ!)

バルログ「……来いっ!」

ヤムチャ「うおおおっ! 行くぞっ! バルログっ!」

今日はここまでっす

ヤムチャ「だああっ! その脳天にぶち当ててやるぜっ!」シュッ

バルログ「……甘いわっ! そんな攻撃など!」


実況「さぁ、ヤムチャのハイキックっ! だがしかし、これは上手く屈んで避けられますっ!」


ヤムチャ「……だったら、足元はどうだ! うおおぉぉっ!」シュッ

バルログ「……フンっ!」


実況「お次は水面蹴りっ! 体勢の崩れたバルログの足元を狙いますが、これも上手く飛んで避けられます!」


バルログ「……フン、そんな遅い攻撃など私には当たりませんよ?」

ヤムチャ「うおおおぉぉっ! もう一丁っ!」

バルログ「!」


実況「おおっと、吠えた! ヤムチャが吠えたぞ!?」

ヤムチャ「もう一丁、ハイキックだっ!」

バルログ「……くっ!」ヨロッ


オー! イケー!


実況「一度でダメなら、もう一度! これはヤムチャの蹴りのコンビネーションだっ!」

元「いいですよ、いいですよ。バルログ君も、流石に体勢が崩れてきています」


ヤムチャ「次は水面蹴りだっ! おらおらっ! 避けてみろやっ!」

バルログ「……ぐっ! くそっ!」ヨロヨロ


イケー! オセー! ヤムチャー!


実況「次は水面蹴り! さぁ、バルログ、間一髪避けた! という所でしょうかね?」

元「いいですよ、いいですよ。バルログ君、結構慌ててますね」

バルログ「……くそっ!」

ヤムチャ「よし、今度こそは……成功させてやるぜ……」

バルログ「……何?」

ヤムチャ「そんだけ、避けて体勢が崩れてるんだ……今度はロープブレイクで逃がしはしねぇぞ……?」

バルログ「……こいつ!」

ヤムチャ「うるぁっ! 今度はこそはぶん投げてやるっ!」ガシッ

バルログ「!」


実況「掴んだっ! ヤムチャがバルログを掴んだぞっ!?」


ヤムチャ「うおおぉぉっ! ボディスラムだああぁぁぁっ!」ググッ

バルログ「……ぐっ!」

ヤムチャ「……」


実況「さぁ、ヤムチャが強引にバルログの身体を持ち上げて、落としていきました!」

元「まぁ、上手い具合にダウンをとれたね」


ヤムチャ(……あれ?)


実況「さぁ、ここから、ヤムチャっ! ここから、どう責めるっ!」


ヤムチャ(……あれ、おかしいなぁ? 打ち合わせでは、ここで盛り上がってるお客さんを煽れって言われたのに)

バルログ「……」

ヤムチャ(何で、お客さん、シーンとしてるの? 俺、派手な投げ技見せたじゃん? さっきまで、声援送ってくれてたのに、どうしたのかね?)

ヤムチャ(あれ……? おかしいな……?)キョロキョロ

バルログ「くっ……くそっ、ヤムチャ……」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「……」パクパク

ヤムチャ(ん……? バルログさん、何か言ってる……?)

バルログ「つ……ぎ……の……こ……う……ぼ……う……」

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「え……る……ぼ……し……か……け……て……」

ヤムチャ(あれっ、俺、勘違いしてる!? ひょっとして、打ち合わせの攻防間違った!?)

バルログ「は……や……く……!」

ヤムチャ「う、うっすっ……!」

ヤムチャ「うおおぉっ! うるあぁっ!」ドシーンッ

バルログ「……ぐっ!」


実況「さぁ、ここでエルボードロップを落としていきます! 自分の体重を全て肘に乗せての攻撃だぁっ!」


ヤムチャ「レ、レフェリー……! カウントお願いしますっ!」

ダン「おうっ! ワン……! ツーっ……!」


実況「そして、そのまま体固めへと持ち込んだぁっ!」


バルログ「くっ……!」グッ


実況「だが、これはカウントツー! バルログ、余裕を持ってこれを返していきます!」

ヤムチャ(えっと……やべぇ、テンパってきたぞ……俺、何か間違ったのかな?)

バルログ「……舐めやがって、この醜い男が」


実況「さぁ! バルログが立ち上がった!」


ヤムチャ(えっと……確か、この後はバルログさんがローリングソバットを仕掛けてくれるはず……だよな……?)

バルログ「このゴミめっ! ヒャオっ!」シュッ

ヤムチャ「おっ……ぐあっ!」

バルログ「このゴミが! ヒャオっ! ヒャオっ!」シュッ!

ヤムチャ(よかったよかった……あってる、あってる……それで、次はバルログさんがロープに走って……)


実況「さぁ! バルログのローリングソバットを、連続でヤムチャにぶち当てていきますっ!」

バルログ「ヤムチャ君……寝たままでいて下さいね……」ボソッ

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「……フンッ!」ググッ

ヤムチャ「うおぉっ……うおおっ……! 何だ、これ……聞いてねぇぞ……」


実況「さぁ、今度はバルログがヤムチャを掴んで……!」


バルログ「……ヒャオっ!」

ヤムチャ「……いでぇっ!」


オー! スゲー! ハエー!


実況「出たぁ~! 高速ボディスラムっ! そして、バルログはそのまま、コーナーポストへと登ったぁ!」


ヤムチャ(ちょっと待って、ちょっと待って……何が起きてるのコレ……? え~っと、とにかく寝たままでいろって、言われたよなぁ?)

バルログ「……フッ」


実況「さぁ、バルログがコーナーポストに登ったぞ! 来るのかっ! 来るのかっ!」


ヤムチャ(ちょっと待って、ちょっと待って……ひょっとしてバルログさん、あそこから、俺の上に飛んで来るの?)

バルログ「……ヒョォォッ!」


実況「さぁ! バルログが飛んだあぁぁっ!」


ヤムチャ(何か、ムーンサルト……なんとかって言ってたよなぁ? いくらなんでもさぁ……あんな所から来たら……)

バルログ「ヒャオッ!」ドンッ

ヤムチャ「……ガッ!」


実況「出たぁ~! ローリングセントーン! コーナーポストからの強烈なダイビング攻撃っ!」


ヤムチャ(ぐえっ……そりゃ、あんな所から、大の男が落ちてきたら……い、痛ぇ……)

バルログ「フッ、皆さん、私の美しい攻撃を見ましたか……?」


ブー、ブーブー


実況「おぉ~っと! ナルシストのバルログっ! またも、格好をつけている! お客さんからは、大ブーイングだ!」


バルログ「いつまで経っても、わからない方々ですね……まぁ、いいでしょう……」

ヤムチャ(ぐえ……く、苦しい……息が……)

バルログ「私の美しい勝利を、その瞳に焼き付けておきなさい……」

ヤムチャ(何が、どうなってんだよ……あんな所から、飛び降りてくるなんて……絶対、打ち合わせにはなかったぞ!?)

バルログ「……2カウントで返してっ!」シュッ

ヤムチャ「……えっ?」


実況「さぁ、ここでバルログがフォールに入ったぁ!」

ダン「ワン……! ツー……!」

ヤムチャ「……おおっとっ!」

バルログ「……そのまま、やられたふりで、交代して下さいっ!」

ヤムチャ「……えっ?」


実況「さぁ、カウントツーで、ヤムチャが返していきますっ!」


バルログ「ちょっと、ダンさん……カウント、遅くありませんでしたか?」

ダン「いやいや、そんな事ねぇよ……普通だよ」

バルログ「いやっ! 絶対、遅かったですっ! 今のカウントは遅かったです!」


実況「おぉ~っと、バルログがレフェリーに突っかかっていますね?」

元「いや、でも今のは間違いなく2カウントでしょ?」

リュウ「おい、ヤムチャ! 一度、下がれっ!」

ケン「こっちだ! 俺にタッチしろっ! 早く!」

ヤムチャ(お、おぉ……何かよくわかんねぇが……交代しろって言われたし……交代しておこっと……)


実況「さぁ、その隙をついて、空手軍団は選手交代! 試合権はヤムチャから、ケンへと移ります!」


ケン「よっしゃっ! 次は俺の出番だっ! 行くぞっ!」

バルログ「……ぬ?」

ケン「へへ 、そんな手負いの状態で大丈夫かい? あんたも、交代した方がいいんじゃねぇの?」

バルログ「人がレフェリーと話している間に……卑怯な方ですね……」

ケン「なぁ~に、言ってんだ、お前は」

バルログ「まぁ、私は……貴方のような醜い男に興味はありません……サガット、よろしくお願いします」


実況「さぁ、ここで、シャドルーも交代します! 試合権はサガットとへと移ります!」


サガット「フン、リュウじゃなくて、貴様がこの帝王と戦うのか……?」

ケン「リュウにはベガをやってもらわなきゃいけねぇからな……おめぇぐらい、俺一人で相手してやるよ」

サガット「フッ……自惚れの強い小僧だ……」


実況「さぁ! 試合はケン対サガットの戦いへとなりました! 両者、交代して、試合は一度、振り出しへと戻りますっ!」

ケン「いくぞ! オラっ!」

サガット「……こいっ!」

ケン「……おらぁっ!」バスッ


実況「さぁ、先に仕掛けたのはケンっ! 逆水平チョップをサガットにお見舞いだぁ!」


ケン「オラオラっ! 連続で行くぜっ! オラオラオラっ!」バスバス

サガット「……フン」


実況「さぁ! 連続でお見舞いだぁっ! サガットの胸板に、容赦無くぶち込んでいくっ!」


サガット「ひ弱な体格で、よく頑張るな……小僧……?」

ケン「……あぁ?」

サガット「本物の、チョップを教えてやるよ……勉強するんだな……」

ケン「……えっ?」

サガット「……うおおぉぉっ!」バシーンッ

ケン「……ぐあっ!」


実況「おぉ~っと、ここでサガットの逆水平チョップ! 会場に凄い音が鳴り響きました!」


サガット「チョップとは、こうやって打つんだよ? 勉強になったかな……?」

ケン「ぐっ……くそっ……!」

サガット「ほれほれ……勉強の成果を見せてみろ……俺と同じような威力のチョップを打ってみろよ?」クイクイ


実況「おぉ~っと! ここでサガットが不敵に挑発だ!」


ケン「くそっ、舐めやがって……おらぁっ!」バスッ

サガット「う~ん……ケン君、違うよ……チョップの打ち方はそうじゃない……」

ケン「……ぐっ」

サガット「こうやって、打つんだよっ! うおおぉぉっ!」バシーンッ

ケン「……ガッ」

サガット「どうした? もう、終わりか?」

ケン「……舐めんじゃねぇよ、クソが」

サガット「ほぅ、勉強熱心じゃないか……いい心がけだ……」

ケン「うるせっ! 舐めんじゃねぇっ! うおおぉぉっ!」バスッ

サガット「だから、そうじゃないって……こう打つんだって、言ってるじゃないか……うおおぉぉっ!」バシーンッ

ケン「……ぐあっ!」


実況「さぁ、両者のチョップ合戦ですっ! どちらが先に、相手に致命傷を与える事が出来るのか!?」


ケン「……くそっ! 舐めんじゃねぇっ! おらぁっ!」バスッ

サガット「違う違う……そうじゃない……うおおぉぉっ!」バシーンッ

ケン「う、うおっ……」ヨロッ

実況「おっと……! 少し、ケンがよろけたか!?」


ケン「く、くそっ……! おらぁっ!」

サガット「……うおおぉぉっ!」


実況「少し、私にはケンが押されているように見えますっ! 元さんは、どう思われますか?」

元「……うん、やっぱり、ケン君が押されているよね」

実況「ほう!」

元「やっぱり、あれだけの体格差があるからね……サガット君は長身で、打ち下ろすような型にもなってるしね……」

実況「さぁ、ケンっ! この体格差を力で打ち砕く事が出来るのかっ!」


ケン「……うおおぉぉっ!」

サガット「フン、違う違う……そうじゃない……こうするんだっ!」バシーンッ

ケン「うおぉっ……おっ……おっ……」ヨロヨロ

ケン「……く、くそっ」

サガット「ほれ、打ってこいよ? それとも、もうスタミナ切れか?」

ケン「くっ……舐めやがって……」

サガット「おやおや……もう、スタミナ切れか……ひ弱な小僧だな……」

ケン「……くそっ!」

サガット「では、勉強会はお開きにして……とどめを刺してやるとしようか!」

ケン「……えっ?」

サガット「……うおおおぉぉっ!」ググッ

ケン「何っ……! う、うわっ……! くそっ……!」


実況「おぉ~っと! サガットが掴んだぞっ! そして高々とケンを持ち上げたぁ~!」

これ1スレでおさまるか?

サガット「俺のボディスラムをくらえぇぇっ!」

ケン「ぐっ……! うっ……! くそっ!」

サガット「うおおおっ! 死ねえええぇぇっ!」ドシーンッ

ケン「ぐ、ぐあああっ!」


キャー!ケーン!


実況「出たぁ~! サガットのハイアングル・ボディスラム! これはケンに大ダメージだっ!」

元「サガット君の場合、長身から叩きつけるボディスラムになりますからね。これは効くでしょう」

実況「会場から、女性の悲鳴が沸き起こるっ! サガット、容赦ありませんっ!」


サガット「フン……帝王に挑むのは、まだ早かったようだな……」

ケン「ぐっ……く、くそっ……!」

今日はここまでっす

>>465
試合削るとか言ってたのに、試合ガッツリ書いてるし、100%無理だろうね
最悪3スレ目ぐらいまで伸びる気がする

一応、SS速報への引越しも視野に入れてるけど、おーぷんで始めた事だから、なるべくおーぷんで終わらせたいなとは思ってる

サガット「おらぁっ! もう一丁っ!」

ケン「!」


実況「さぁ! ダウンしているケンに対してギロチンドロップっ! 巨体がケンの身体をおしつぶすっ!」


ケン「……ぐっ、くそっ」

サガット「フン、口程にもない小僧よ……これで、とどめにしてやるか……」


実況「さぁ、サガットはダウンしているケンを引きずり起こし……さぁ、何をしかけるかぁ!?」


サガット「……おらぁっ!」ブンッ

ケン「う、うおっ……」


実況「ここでケンをロープに振ったぁっ!」

ケン「う、うおおっ……」

サガット「……よしっ! 決めてやるっ!」

ケン「!」

サガット「……うおおぉぉっ!」グイッ


実況「さぁっ! ロープから帰って来たケンをカウンターで、抱え上げ……そしてそしてそしてっ……!」


サガット「おらあぁぁぁっ!」ドシーンッ

ケン「……ぐあっ!」


実況「そのまま叩きつけるっ! カウンターのパワースラムっ! 会場にどでかい音が鳴り響きますっ!」


サガット「レフェリー、フォールだっ! カウントを取れっ!」

ダン「おうっ!」


実況「そして、そのままケンを体固めへ! カウントが数えられますっ!」

ダン「よしっ……! ワンっ……!」

ケン「……舐めんじゃねぇっ!」グイッ

サガット「……何っ!?」


実況「おぉ~っと、これは早いっ! なんと、ケン、カウントワンで返しましたっ!」


ケン「調子に乗ってんじゃねぇぞっ! この野郎っ!」

サガット「……こいつ」


実況「おぉっと! ここで、ケンが気合を入れたっ! まだ、スタミナは十分と言った所でしょうか!?」

元「そうだね。返すの早かったしね」


ケン「舐めてんじゃねぇぞ、この野郎っ! 行くぞ、サガットっ!」

サガット「このガキ……」

ケン「おらぁっ!」シュッ


実況「さぁ! ここで、ケンの蹴りだぁ! 鋭い蹴りをサガットにお見舞いします!」


サガット「……さっきのチョップよりかはマシな蹴りだな。だが、甘い」

ケン「……」

サガット「よし、今度は蹴りの勉強会だ……本物の蹴りはこう打つんだよぉっ!」シュッ

ケン「……ぐっ!」


実況「さぁ! お返しと言わんばかりのサガットの蹴りがケンに炸裂しますっ!」


サガット「勉強になったかな……? ほれ、打ってきてもいいんだぞ?」

ケン「その余裕ぶった態度が……気に食わねぇな……おらぁっ!」シュッ

サガット「……ぐっ!」

ケン「おっと……今度は、ちょっとは効いたみたいだね……? 俺は、チョップより、蹴りの方が得意なのよ」

サガット「……チッ、舐めやがって」

サガット「おらぁっ!」シュッ

ケン「ぐっ……くそっ、今度はこっちの番だっ!」シュッ

サガット「ぐぐっ……こいつ……オラァっ!」

ケン「ガッ……! くそっ……舐めんじゃねぇぞっ! オラァっ!」


実況「さぁ! 激しい激しい蹴りの打ち合いだぁっ! どちらが先に相手に致命傷を与える事が出来るのかぁっ!」


サガット「……オラっ!」

ケン「ぐぐっ……! くそっ…… 舐めんじゃねぇぞっ! オラァっ!」

サガット「……ガッ!」ヨロッ

ケン「へへ、どうしたの……? 次はあんたの番だぜ? それとも、スタミナ切れ……かな……?」

サガット「く、くそっ……! こいつ……」


実況「おぉ~っと! サガットの動きが止まったかっ!?」

ケン「よっしゃっ! 連続で行くぜっ! 決めちまうぞっ!」

サガット「……何っ!?」


イケー! ケーン!


ケン「オラオラオラっ! サガット、どうしたぁっ!」

サガット「ぐっ……くっ……! こ、こいつ……!」


実況「さぁ! ケンの連続の蹴りっ! 蹴り蹴り蹴りィ!」

元「……いいですよ。サガット君の怯んだ隙につけ込んじゃいましょう」


ケン「オラオラっ! まだまだ行くぜっ! オラっ!」

サガット「ぐっ! くそっ……」ヨロヨロ


実況「さぁ! 流石にこれだけ連続で喰らえば……サガットも耐えられはしないか!?」

元「ケン君は、体格差を数打つ事で埋めてますね。これはいいですよ」


ケン「これで……とどめだぁ……!」シュッ

サガット「しまった……! ぐあっ!」

実況「さぁ! サガット、ダーウンっ! ケンの蹴りの前に倒れたぁっ!」


ケン「よっしゃっ! まだまだ行くぜっ!」

サガット「ぐっ……くそっ……!」

ケン「くたばれ、眼帯野郎ォっ!」

サガット「!」


実況「そして、ここで……エルボードロップっ! 強烈な肘を落としていく!」


ケン「今度は……おめぇがロープに行く番だ……ほれ、起きやがれ……」

サガット「……うっ」ヨロヨロ

ケン「ほれ……行って来い、おらぁっ!」

サガット「う、うおっ……!」


実況「さぁ! そして、ダウンしたサガットを引きずり起こし……ロープに振ったぁっ!」

サガット「う、うおっ……!」

ケン「へへ、待ってたぜ……? サガットちゃんよ?」


実況「さぁ、ロープから帰ってきたサガットに……おっと! ケンのあの構えはっ……!」

元「……ケン君、狙ってますね」


ケン「行くぞっ! 昇竜拳っ!」ドゴォッ

サガット「……ガ、ガッ!」


実況「決まったぁ! ケンの昇竜拳っ! サガット、ダーウンっ!」

元「ロープから、返ってきた所にカウンターの昇竜拳ですからね……これは、ダメージ大きいでしょう」


ケン「よしっ! レフェリー! カウントだっ!

ダン「おうっ!」


実況「そして、ケンがフォールに入ったぁっ! ここで決まってしまうのかっ!?」

ダン「よしっ! ワンっ……!」

サガット「……うおおおぉぉっ!」グイッ

ケン「な、なんだと……!?」


実況「おおっと、なんという事でしょう! これは驚きです! サガット、なんとカウントワンで返していきますっ!」

元「うわぁ、早いね……いいの決まった思ったのに……」


ケン「こいつ……」

サガット「小僧、舐めた真似をしやがって……この帝王を本気で怒らせたようだな……」ワナワナ

ケン「……こ、こいつ」

サガット「お前は今日ここで、必ず殺してやるぞっ!」


実況「おおっと! サガットが吠えたっ! なんという迫力だっ! これはサガット、キレたんでしょうかねぇっ!?」

ヤムチャ「……あの、リュウさん?」

リュウ「……ん、どうしたの?」

ヤムチャ「リュウさんと、ケンさんって……サガットさん達と、いつ打ち合わせしたんですか?」

リュウ「……はぁ?」

ヤムチャ「今してる、ケンさんとサガットさんの、攻防も打ち合わせしてるんですよね? いつ、したんですか?」

リュウ「……んなもん、してねぇよ。ありゃ、アドリブだよ」

ヤムチャ「……えっ? あれ、アドリブなんですか!?」

リュウ「そりゃそうだよ。 打ち合わせなんかしたって……お客さんのノリが合わねぇ事だってあるんだからよ?」

ヤムチャ「……ノリ?」

リュウ「まぁ、でもおめぇは、まだアドリブできそうにねぇからな……打ち合わせして……その通りにやっておけや」

ヤムチャ「……はぁ」

リュウ「今日のは良かったんじゃねぇか? いい具合にケンにバトンを渡せたよ」

ヤムチャ「……え~っと、どういう事ですか?」

リュウ「バルログとの攻防……上手く盛り上がりきった所で、ケンに交代したじゃねぇか?」

ヤムチャ「え~っと……あれ、最後の方、バルログさんが、打ち合わせにない事してたんですけどね?」

リュウ「……そうなの? じゃあ、バルログがアドリブ入れたんだ?」

ヤムチャ「……何で、そんな事したんでしょうかねぇ?」

リュウ「アドリブ入れなきゃ……盛り上がりないようなノリだったんだんじゃね? おめぇがヘマしたんじゃねぇの?」

ヤムチャ「あの……盛り上がりって、どういう事ですかね……?」

リュウ「……お前は何にも、わかってねぇんだな?」

ヤムチャ「す、すいません……」

リュウ「ほれ……ケンとサガットの攻防を見てみろよ……」

ヤムチャ「……ん?」


サガット「うおおぉぉっ!」

ケン「ぐっ! う、うおっ!」


実況「さぁ!サガットがケンを高々と持ち上げて……!」


サガット「うおおおぉぉっ!」ドシーンッ

ケン「……ぐっ!」


実況「出たぁ~! ブレーンバスターっ! ケンの身体容赦無くマットに叩きつけるっ!」


ケーン! ガンバッテー!


リュウ「ほら……ちょっとずつ、激しい攻防になってきてるだろ?」

ヤムチャ「……そ、そういえば」

リュウ「いきなり、アレやっても、盛り上げらねぇよ。アレをやる為には……その前の攻防がいるからな」

ヤムチャ「えっと……蹴りとかの事ですよね……」

リュウ「そうそう、そうやって徐々に大きな攻防のやり取りを作って……お客さんのテンションが最高潮になった時に……」

ヤムチャ「……ふむ」

リュウ「次の選手にタッチして、少しクールダウンするわけだな」

ヤムチャ「……クールダウン」

リュウ「この試合のメインは俺とベガなんだからな? 一番ヘボのお前とバルログが、ケンとサガット為に試合を盛り上げて……」

ヤムチャ「……ヘ、ヘボ」

リュウ「ケンとサガットは……メインの俺とベガの為に、また盛り上げるんだよ」

ヤムチャ「……ふむ」

リュウ「俺とベガは、お互い無傷の状態で始まるけど……お客さんは、試合開始の時より、高いテンションで見てくれるわな?」

ヤムチャ「……なるほど」

リュウ「アドリブ入れたって事は……交代ぎわに何か、お前盛り下がるような事、したんじゃねぇの?」

ヤムチャ「……え~っと」

リュウ「おめぇはヘボだから、いいけどよぉ? 俺とケンの試合潰すんじゃねぇぞ? わかってんのか?」

ヤムチャ「す、すいません……」

リュウ「……ったく、ザンギエフの野郎、何でこんな奴、うちのチームに入れたんだよ」

ヤムチャ「……そりゃ、あんたが小さく纏まってるからだよ。俺だって、もっと違う人とやりたかったよ」ボソッ

リュウ「……あぁ? なんか、言ったか?」

ヤムチャ「い、いえっ……! 何も言ってませんよぉ~!」

リュウ「?」

サガット「……タイガーニー!」ドゴッ

ケン「ぐはっ……!」


実況「さぁ、タイガーニーが、ケンのどてっ腹に炸裂~!」


サガット「よしっ……! 次はロープだっ! うおおぉぉっ!」

ケン「うおっ……」


実況「そして、ケンをロープに振ったぁ~!」


サガット「よしっ! これで、決めてやるっ! うおおぉぉっ!」

ケン「!」

サガット「うおおおぉぉっ! ラリアットだぁっ!」

ケン「うっ……! おっとっ……!」

サガット「……何っ!?」


実況「おっと、サガットのラリアットをかわしたぁっ!」

ケン「こっちが決めてやるよっ! おらぁっ!」ガスッ!

サガット「……ぐあっ!」


実況「無防備になったサガットの背後から、ケンのラリアットっ! サガット、ダーウンっ!」


ケン「よっしゃ、よっしゃ! いい感じだっ! このまま決めてやるからよぉ!」


実況「ここで、ケン! フィニッシュ宣言っ! 手を叩いてお客さんにアピールしますっ!」


ケン「とどめは、ミサイル竜巻旋風脚だっ! こいつは、蹴り技で仕留めるっ!」


ケ・ン! ケ・ン!

ケン「よしっ! じゃあ、行くぞっ!」


実況「さぁ、ケンがコーナーポストに登って……ん……?」


バイソン「おいっ、ケンっ! おめぇ、ぶっ殺してやるっ!」

ケン「……バイソン」


実況「おおっと……バイソンだ! バイソンが何か、ケンに言っていますねぇ?」

元「う~ん……ケン君、コーナーの上にいるからね……今、あんまり余計な事はしてほしくないんだけどね……」


バイソン「おめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞっ! ちょっと降りて来いっ! この野郎っ!」

ケン「……試合終わったら、相手してやるから、黙ってろよ」

バイソン「何だと!? 舐めやがってっ! 今、ここでやるぞっ! とにかく降りてこいっ!」


ブー、ブーブー


ケン「……おめぇ、このブーイング聞こえねぇのか? おめぇは邪魔だから、引っ込んでろよ」

バイソン「……何だと、この野郎っ!?」


実況「さぁ、バイソンに大ブーイングっ! 一体、バイソンは何がしたいんですかねぇ?」

元「……危ないっ! サガット君が!」

実況「……ん?」


ケン「とにかく、お前は引っ込め、バイソン……おめぇは邪魔なんだよ……」

バイソン「へへ、じゃあ、下がってあげますよ……それより、おめぇ自分の心配した方がいいんじゃねぇか?」

ケン「……はぁ?」

リュウ「ケンっ! バイソンは囮だっ! サガットを見ろっ!」

ケン「囮……? まさかっ……!?」クルッ

サガット「……コーナーポストで仲良くお喋りか? 呑気なものだな?」

ケン「……サガットっ!」


実況「おぉ~っと! ケンがバイソンに気を取られていた隙に、サガットが起き上がり、ケンに近づいていたぁ!」

元「バイソン君は囮だったんだね……ケン君の気を引いて、サガット君が起き上がるまでの時間稼ぎをしてたってわけだ」


サガット「そこから、投げたら……痛そうだよなぁ……」

ケン「お、おいっ……」

サガット「でも、面白そうだよなぁ……お客さんの悲鳴とか聞こえそうだよなぁ……」

ケン「……て、てめぇ」

サガット「……おらぁっ!」

ケン「……ぐっ!」


実況「さぁ、先ずはサガット……ボディブローでケンの動きを止めます……」


サガット「よ~し、ケン君……じゃあ、ケン君、行きましょうか……?」

ケン「や、やめろっ……!」


実況「さぁ、サガットがケンを掴んで、セカンドロープ……いやっ! トップロープまで登ったっ!」


サガット「うおおおぉぉっ!」

ケン「う、うわああぁっ!」


実況「さぁ! トップロープからの雪崩式ブレーンバスター! これは、ケン、コーナーに昇った事が仇となってしまったか!?」

ドーンッ


ケン「……ぐがっ!」


キャー! ケーン!

実況「さぁ! これはケンに大ダメージっ! 場内から悲鳴があがりますっ!」


サガット「フン……こりゃ、終わったな……」


ブー、ブーブー

実況「そして、悪ぶれるそぶりもないサガット対して、場内からは大ブーイングっ!」


ダン「おいっ、サガットっ! お前、卑怯な事をしてんじゃねぇよ!」

サガット「おいおい、ちょっと待てよ……俺は起きたら、コーナーでケンが何か動きが止まってたから、ラッキーだと思って、投げただけだよ」

ダン「おめぇはバイソン、仕掛けたんだろがっ!」

サガット「俺は関係ねえってっ! そういう事はバイソンに言ってくれよ」

ダン「じゃあ、バイソンっ! お前、余計な事すんなって最初に言っただろが! あぁ!」

バイソン「違うんすよ……事情があったんっすよ……」

ダン「……あぁ!?」

バイソン「あいつが先に、コーナー昇った時、俺に向かって『お前の仲間もお前と同じように歯抜けにしてやる』って言ったんっすよ……」

ダン「……ケンが先に仕掛けたのか?」

バイソン「それで、俺……歯抜けの事、コンプレックスだから、ついカッとなって……すいませんでしたっ!」

サガット「ほら、ケンが先に仕掛けたんじゃねぇか? うちのバイソンは被害者じゃん?」

ダン「そ、そうなのかね……?」


リュウ「ケン、こっちだっ! 俺に代われっ!」

ケン「うっ……ううっ……リュウ……」

実況「さぁ! またも、シャドルーはレフェリーと揉めていますっ! ケン、この隙に交代できるか!?」

バイソン「とにかく、これからは大人しくしておきます! 本当、すんませんでした!」

サガット「ほら、うちのバイソンも反省してるからさ? 勘弁してくれよ?」

ダン「……じゃあ、次はケンから仕掛けれても我慢しろよ!? 絶対だぞ!?」

バイソン「うっす! わかりましたっ!」


ケン「うぅ……リュウ……後は任せる……」

リュウ「レフェリー、こっちを見ろっ! タッチ成立したぞっ! 試合権は俺だっ!」

ダン「……おっ、本当だ」


実況「さぁ! ここでタッチが成立っ! 試合権はリュウへと移りましたっ!」


リュウ「サガット……今日こそはお前を倒してやるっ……!」

サガット「フッ……面白い……」

ベガ「……サガット、私が出よう」

サガット「……ん?」


ザワ……ザワ……


実況「おぉ~っと! ここで、ベガが動いたっ! 手を伸ばし、自分に交代しろとサガットにアピールしておりますっ!」

元「まぁ、サガット君はケン君との戦いでダメージも受けているし、ここはベガ君が出た方がいいね」

実況「会場がざわめいておりますっ! リュウ対ベガの対決だっ! ここでシャドルーのボスを仕留める事が出来るかぁ!?」


リュウ「……ベガ」

ベガ「サガット……交代だ……私が行く……」

サガット「……わかりました。ベガ様、お願いします」


実況「さぁ! ここでタッチして交代だぁっ! ついにベガが動きますっ!」

今日はここまでっす

プロレス分かんないんだが、これはシャドルーがレフェリーと揉めてるのはわざと交代の隙を作ってるってことでいいのか?

リュウ「ベガ、 行くぞっ!」

実況「さぁ、 リュウが構えたっ! 気合十分だぁっ!」


ベガ「フン、雑魚め……来るがよい……」

実況「一方、ベガは余裕の表情っ! 腕組みをしたまま、構える事なくリュウに対しますっ!」


リュウ「……その余裕の表情がいつまで持つかな? いくぞ、うおおおぉぉっ!」ダッ

実況「さぁ、先に仕掛けたのはリュウ! ロープに走ったぁっ!」


ベガ「……来るがよいっ!」

実況「そして、ここでようやくベガも構えたっ! ロープの反動をつけて返ってくるリュウを迎え撃つ!」


リュウ「うおおぉぉっ! ショルダータックルだああぁぁっ!」ドスッ

ベガ「……ぬぅんっ!」

実況「さぁ! ロープの反動をつけたリュウのショルダータックルっ! だが、ベガこれを耐えますっ!」


リュウ「タックル勝負だっ! ベガ、次は貴様が来いっ!」

ベガ「面白い……その勝負、受けてやろう……」


実況「さぁ、次はリュウがベガを誘いますっ! そして……ベガがロープに走ったぁっ!」


ベガ「行くぞ、リュウっ! うおおぉぉぉっ!」

リュウ「……来いっ!」

ベガ「ショルダータックルだああぁぁっ!」ドスッ

リュウ「……うるあぁっ!」


実況「さぁ、お次はベガのショルダータックルがリュウに炸裂っ! だが、リュウこれを耐えますっ!」


リュウ「そんなもんかぁっ! 全然効いてねぇぞっ!」

ベガ「……ほぅ」


リュウー! イケー!

リュウ「ベガっ! 行くぞっ!」

ベガ「面白いっ! 受けてやろうっ!」


実況「おっと、ここで、今度は両者、ロープへと走ったっ!」


リュウ「うおおぉぉぉっ!」

ベガ「……ぬおおおぉぉぉっ!」


実況「そしてそしてそして……両者がロープの反動をつけての……!」


リュウ「おらあああぁぁぁっ!」ガシーンッ

ベガ「……うおおおぉぉぉっ!」ガシーンッ


実況「ショルダータックルのぶつかり合いだぁっ! リングの中央で両者が激しくぶつかり合うっ!」

リュウ「全然効かねぇなっ! ベガっ!」

ベガ「それはこっちの台詞だ! 小童が!」


実況「さぁ、リュウが吠えるっ! ベガも吠えるっ! 両者が激しく火花を散らしているっ!」

ワー、ワーワー


リュウ「よし、ベガ……いくぞっ! 本番はこれからだっ!」

ベガ「受けてやる……来いっ……!」


実況「さぁ、ここで両者が組み合ったぁ! ここから、どういった攻防を見せるのか!?」

リュウ「おらっ!」

ベガ「ぬんっ……! 甘いっ……!」クルッ

リュウ「……何っ!?」


実況「さぁ、ベガがリュウの背後をとったぞ!?」


ベガ「……よし、このまま」

リュウ「そうはさせるかっ……! おらぁっ!」クルッ

ベガ「……何っ?」


元「……いやリュウ君、冷静です。上手く切り返して、背後を取り返しましたね?」

実況「おっと、今度はリュウが、ベガの背後を取り返したっ!」


リュウ「このまま、投げてやるっ……! 行くぞっ!」

ベガ「……フン」

リュウ「……うおおおぉぉっ!」


実況「さぁ! リュウがバックドロップを仕掛けたぁっ!」

ベガ「……ぬぅんっ!」クルッ

リュウ「……な、何だと!?」


実況「おぉ~っと、これは驚きですっ! なんと、ベガがバク宙をして、リュウのバックドロップから逃れましたぁ!」

オー! ベガ、スゲー!

元「リュウ君の投げるタイミングに合わせて、自らバク宙をして逃れたんだね……やっぱり、あの人凄いね」


リュウ「な、なんて奴だ……」

ベガ「……いつまでも、地べたに這いずっているんじゃないよ」

リュウ「……何?」

ベガ「フンっ!」

リュウ「……ぐっ!」


実況「おっと、ここで体勢が崩れているリュウに対して、スタンディングのスライディングキック!」

元「……バックドロップで体勢が崩れてたからね。あのタイミングであんな攻撃されちゃ、どうしようもないよ」

実況「さぁ、リュウにダメージを与え……次にベガは何を仕掛けるか!? んっ……?」


ブー、ブーブー


リュウ「ううっ、くそっ……んっ……?」

ベガ「……フフ」スゥー


実況「おぉ~っと、ここでベガは挑発をしていますっ! ゆっくりと、首を掻っ切るポーズをして、リュウを挑発しておりますっ!」

元「あんな事しちゃダメだよ……いっぱい、お客さんもいるのに……」

実況「場内からは大ブーイングっ! ベガは完全に舐め切っていますっ!」

リュウ「……舐めやがって」ワナワナ

ベガ「舐められるのは弱いからだ。 私が本気を出せば、お前など、ものの5秒で終わってしまうからな……」

リュウ「うおおぉぉっ! ふざけるなぁっ! ベガっ!」

ベガ「……んっ?」


実況「おっと、おっと! リュウが怒ったぁっ! ベガに仕掛けますっ!」


リュウ「空手軍団の力を見せてやるっ! はっ、たっ! でぇやぁっ!」

ベガ「ぬ……? おっと……ぐっ……!」


実況「さぁ、リュウの蹴り蹴り蹴りィ! リュウの怒りの蹴りが、ベガに襲いかかりますっ!」

元「ベガ君の挑発で、リュウ君、怒っちゃったみたいだね? 余計な事、しちゃったんじゃないかな?」

リュウ「はぁっ!」

ベガ「お、おっとっ……!」

リュウ「だぁっ!」

ベガ「ぬ……ぐおっ……!」

リュウ「……だああぁぁぁっ!」

ベガ「……ぐ、ぐがっ!」


実況「さぁさぁ! リュウの蹴りがベガに突き刺さるっ!」


リュウ「よしっ! 行くぞっ!」

ベガ「……何っ!?」

リュウ「うおおおぉぉぉっ! 昇竜拳っ!」ドゴォッ

ベガ「……ぐがっ!」


実況「さぁ、決まったぁっ! 昇竜拳だぁっ! ベガ、ダーウンっ!」

元「いいの決まったと思いますよ? このまま決めちゃいましょう」

実況「お、おっと……ここで、ベガ場外へとエスケープしますっ!」

ベガ「くそ……少し、遊びすぎたようだな……」ヨロヨロ

サガット「ベガ様、大丈夫ですかっ!?」

バルログ「あの醜い餓鬼め……私達のベガ様に……」

ベガ「いや、大丈夫だ……お前達はコーナーに待機しておいてよい……」


実況「さぁ、シャドルー軍団も慌てて、ベガの元へ駆け寄りますっ!」


リュウ「おいっ、 ベガっ! 何をしている!? とっととリングに上がって来いっ!」

ダン「……お~い、そうだぞ。勝負はリングの上でしやがれ。リングの上でよぉ?」

ベガ「そう言うな……いいのをもらったんだ……少し、休ませろ……」ウロウロ


実況「おぉ~っと、ベガ……ここで、少し長い間をとっていますねぇ?」

元「う~ん、いいの入ったと思ったのに……勿体無いねぇ?」

ベガ「……」ウロウロ

リュウ「おい、ベガっ! いつまで、休んでいる! とっととこっちに上がれっ!」

ベガ「……そういうな。もう少し、休憩だ」

リュウ「くそっ……こいつ、何やってやがる……」


ケン「おいっ! レフェリー! もう、場外カウントとっちまえよっ! あいつ、戻ってこねぇぞ!?」

ダン「おう、そうだな……よしっ! 1……! 2……!」


実況「さぁ、ここでなかなかリングに上がらないベガに対して、場外カウントが取られますっ! 20カウント以内に戻って来なければ、ベガは反則負けですっ!」

ベガ「……」ウロウロ

実況「おっと、だが、ベガ……焦る素ぶりすら見せていないっ! これはどうした事だ!?」

元「……何、考えているんでしょう?」

ダン「3……! 4……!」


ベガ「……おい、バイソン」

バイソン「ベガ様、どうしましたか?」


実況「おっと、ここでベガが場外にいるバイソンに近づいたぞ!?」

元「……うわぁ、何かやってますね」


ベガ「……」ヒソヒソ

バイソン「あっ、はい……なるほど……そういう作戦ですね……」


実況「おっと、ここで、ベガがリュウを指差し、バイソンに何か指示しているっ! 指示をしているぞ!?」

元「……何する気なんだろうね。ちょっと、怖いね」


リュウ「……」

ダン「6……! 7……!」

ベガ「……」ウロウロ


実況「さぁ、ここで、ベガはバイソンとは反対側のリングサイドに回ります!」

元「リュウ君から見たら……正面にベガ君……そして背後には、バイソン君がいる形になりますね……」

実況「これ、何か、狙っているんじゃありませんかねぇ?」

元「……そうかもねぇ?」


ケン「おい、レフェリー! 今、あいつ、バイソンに何か指示してやがったぞ! バイソンを止めろよ!?」

ダン「ちょ、ちょっと待てよ……今、場外カウントとってんだからよぉ!? 8……! 9……!」

実況「さぁ、カウントが進んできましたが……」


リュウ「……くっ」チラッ

バイソン「へへ……」ニヤニヤ


実況「リュウは仕切りにバイソンを気にしている様子! 何時も振り返り、バイソンの動きも警戒します!」

元「……まぁ、そりゃ、今も仕掛けてきそうな雰囲気だからねぇ」


ダン「10……! 11……!」

ベガ「……フフ」


実況「おっと! 一方、場外にいるベガは、腕組みをして余裕の表情だっ!」


元「20カウント以内にリングインしないと負けになっちゃうのはベガ君だけど……ベガ君が動くタイミングで、恐らくバイソン君も動いてくるからね……」

実況「えぇ、そうでしょうね。なんせ先程、指示してましたからね……」

元「逆を言えば……20カウントに達する前の何処かで……必ず仕掛けてくるって事だよ……これじゃあ、どっちが不利なのかわからないね?」

リュウ「……くっ!」チラッ

バイソン「……へへ」

リュウ「……くそっ!」チラッ

ベガ「……フフ」


実況「確かに! リュウはベガとバイソンの動きをかなり警戒しています! 交互に両者の動向を確認していますっ!」

元「……ああいうのって、結構神経使うんですよ」


ダン「12……! 13……!」


リュウ「……くっ!」チラッ

バイソン「……へへ」

リュウ「……くそっ!」チラッ

ベガ「……フフ」


実況「さぁ! ベガはまだ、戻らないっ! どのタイミングで仕掛けてくるのかっ!?」

ダン「14……! 15……!」


リュウ「……くそっ」チラッ

バイソン「……へへ」

ベガ「……今だっ!」スッ


実況「おぉ~っと、ベガが動いたっ! ベガが動いたっ! 素早い動きでリングインっ!」

元「危ないっ! リュウ君、バイソンの方、警戒してるよ!?」


ケン「おいっ、リュウ! 来たぞっ! ベガが動いたぞっ!」

リュウ「……何!?」

ベガ「フ、作戦勝ちだな……おらっ、ダブルニープレスっ!」ガスッ

リュウ「……ぐあっ!」


実況「おぉ~っと、ここでベガの奇襲攻撃っ! 一瞬の隙をついてのダブルニープレスだっ! 早い早いっ!

リュウ「……ぐっ!」

ベガ「バイソンに気を取られすぎたな……おらぁっ!」ドゴォッ

リュウ「……ぐああぁっ」


実況「さぁ、ここで、フットスタンプっ! 高い高いジャンプをしてからの踏みつけだぁ!」


ケン「くそっ……! レフェリーっ! だから、バイソン止めろって言っただろがっ!」

ダン「おいっ! そうだぞ、バイソン! おめぇ、余計な事すんなってさっき言ったよなぁ!?」


ベガ「よし……スリーパーホールドで、呼吸を止めてやろう……苦しむがいい……」ググッ

リュウ「ううっ……ぐっ……」


実況「そして、ベガのスリーパーホールド! リュウの喉元を締め付けますっ!」

バイソン「ダンさん、違うんっすよ! 俺は何もしてませんよ!?」

ダン「……あぁ!?」

バイソン「ベガ様は、俺に『会場内にトンボがいる』って教えてくれただけなんすよ!?」

ダン「おめぇ、なんか指示されてたよなぁ!? リュウに指示してたよなぁ!?」

バイソン「だから、リュウの近くにトンボがいたんですよ! 本当ですよ!」

ダン「……おめぇなぁ?」


ベガ「フン、リュウ……死ね……」ググッ

リュウ「ガッ……ガガッ……!」


実況「おっと、元さん? ベガのスリーパーホールド……ちょっとチョークの様な形じゃありませんかね?」

元「あっ! あれ、チョークだよ! 何やってんの、反則だよ!」

ダン「おめぇ、さっき何もすんなって言ったよなっ!?」

バイソン「だから、何にもしてないですって!? 勝手にあいつが勘違いしてただけですって!」

ダン「おめぇはもう、退場にして……」

ケン「おい、レフェリーっ! そんなバカと話すんな! ベガがチョークしてるぞ!? あのスリーパー、チョークだおい!」

ダン「……えっ?」


ベガ「フフ……どうだ……? 苦しいかな……?」ググッ

リュウ「ガッ……ガガッ……」

ダン「おい、 ベガっ! 何やってやがるっ! それ、反則じゃねぇかっ! やめろおい!」


実況「おっと、ここでレフェリーが気づきました! ベガを必死に制してます」


ダン「や~め~ろって! 離せよ! オイっ!」グイグイ

ベガ「まだ、大丈夫だって……後、5秒……5秒だけ……」

リュウ「ガッ……ガガッ……」

ダン「いい加減にしやがれっ!」

ベガ「……わかったよ。やめてやるよ、ホレ」

リュウ「……うっ、ううっ」


実況「さぁ、ここでようやく、ベガが技を解きます」


ダン「普通に試合をしろっ! 普通によぉ!?」

ベガ「そうだな……正々堂々と試合をしよう……ほら、リュウ君、立ちなよ……」

リュウ「……く、くそっ」ヨロッ


実況「さぁ、リュウも立ち上がりましたが……これは、少しキツそうですねぇ?」

元「そうだね……反則攻撃で随分、苦しめられたからねぇ」

今日はここまで

>>513
好きに想像してくれたらありがたいかな?
偶然なのか、計算かわからないのもプロレスの面白さだと俺は思うから

ケン「……おい、新入り?」

ヤムチャ「……はい?」

ケン「そろそろ、リュウ助けに行く準備しようか?」

ヤムチャ「えっと……どうしたら、いいんですか? 俺、もうずっとここに待機してろってバルログさん達に言われてるんですけど……」

ケン「……バーカ、別に何もしなくていいよ。 この試合は後は、リュウとベガに任せるから」

ヤムチャ「……へ?」

ケン「この試合はリュウが負けるんだけどよぉ? その間、俺達が何もせずに待機してるのは、おかしいだろ?」

ヤムチャ「……はい」

ケン「だから、リュウを助けに行こうとして……失敗した……なんて、やり取りを作っておく必要があるの」

ヤムチャ「え~っと……難しそうですねぇ……?」

ケン「リングの中に入る振りだけでいいよ。後は何とかしてもらうから」

ヤムチャ「……へ?」

ケン「俺のタイミングに合わせて、ロープをまたいで……そこで止まれ。絶対に動くんじゃねぇぞ?」

ヤムチャ「あっ、はい……わかりました……」

ベガ「フンっ! フンっ! はぁっ!」ガスガス

リュウ「うっ……!」


実況「さぁ、少しベガが押しているでしょうか? リュウ、防戦一方です」

元「やっぱり、さっきのスリーパーでスタミナ奪われちゃったからねぇ……」

実況「流石、ベガと言った所でしょうか? いやぁ~、汚い手段が上手い上手いっ!」


ベガ「……ぬぅんっ!」

リュウ「……くっ!」


実況「おぉ~っと! ベガが掴んだぞ!? 何を仕掛けるのかぁ!?」

ベガ「……はぁっ!」ドーシンッ

リュウ「……ぐっ!」


実況「出たぁ~! 高速ブレーンバスターっ! 素早い動きで、リュウを投げますっ!」


ベガ「フッ……よし、貴様の足を壊してやろう……」

リュウ「……くっ」


実況「さぁ、そしてベガがリュウの足を掴んだぞっ! 何を仕掛けるのかぁ!?」

元「……おそらく、足4の字固めでしょうかね?」


ケン「よし、ここだっ! 行くぞっ!」

ヤムチャ「……は、はいっ!」


実況「おっと! ここで、ケンとヤムチャが動きました! そうはさせないと、リュウを救出に向かいます!」

元「リュウ君、今ピンチだからね……早め早めの行動の方がいいよね」

バイソン「ヘイヘイっ! お前ら、何をしてんだよぉっ!」

ケン「……止まれっ!」

ヤムチャ「……んっ?」ピタッ

バイソン「おいおい! レフェリー、よく見てくれよっ! 試合権利のない奴がリングに入ろうとしてるぞオイっ!」


実況「おぉ~っと、バイソンが何やら、レフェリーに言っている模様ですっ!」


バイソン「ヘイヘイっ! これ、反則じゃねぇのか!? レフェリー、ちゃんと仕事してくれよ!」

ダン「お、おぅ……確かにそうだな……ケン、ヤムチャ! そこで、止まれ! お前達は試合権を持ってねぇだろが!」

ケン「おいおい、待てよ! これはカットだよ! 何で、止めるんだよ!?」


実況「おぉ~っと、ここでレフェリーが、ケンとヤムチャの二人を制します!」

ダン「ケン……よく見ろ。まだ、ベガは技をかけていない……」

ケン「……あぁ?」

ベガ「……」ピタッ

リュウ「……ううっ」


実況「さぁ、ベガもコーナーの二人が気になっている様子……リュウの足を捉えたまま、動けませんっ!」


ダン「カットなら、大目に見てやるが……ベガはまだ、技をかけてはいない……ここでのリングインは、認められないぞ?」

ケン「もう、技かける直前じゃねぇかっ!? よく、見てみろよ、 アレ!」

ダン「……よく見るのはお前だ。ベガはリュウの足をとっているだけだ。まだ、技はかけていない」

ベガ「レフェリー……そいつらを、しっかり抑えておいてくれよ? 私も安心して、技に入れないからな……」


実況「さぁ、これではベガも動けないかっ!? なかなか、技に入る事ができませんっ!」

ケン「ほら、自分で言っているじゃねぇか! 技、かけるってよぉ!?」

ダン「だったら、技がかかってから、入れ。 そうしたら、リングインを認めてやる」

ケン「かかってダメージ食らってからじゃ、遅ぇだろがっ! とっととリングインさせろっ!」

バイソン「ヘイヘイ! レフェリーさ~んっ! こいつ、退場にしちゃった方がいいんじゃねぇの~?」

ケン「うるせぇっ! バイソンっ! お前は黙ってろっ!」

バイソン「あぁっ!? 何だ、喧嘩売ってんのか!? よし、降りてこいっ! やってやるよ!」

ダン「バイソンっ! おめぇは余計な事を言うなっ! ケン、お前もだっ! 煽るな!」


実況「さぁさぁ……コーナーにいるケンが、少しヒートアップしているようです」

元「なぁ~んか、バイソン君が煽ってるからね……」


ベガ「……フッ」スッ

リュウ「……うっ」


実況「おっと、ベガがリュウの足から、手を伸ばし素早く起こしたっ!」

元「あれ……? 4の字固めにいかなかったね?」

実況「そして、そのまま、自軍コーナーの方に振り投げたぁっ!」


リュウ「……ぐっ!」

ベガ「……行くぞっ!」


実況「リュウを自軍コーナーに貼り付け……そして、そのままベガが走ってきたぁっ!」


リュウ「!」

ベガ「うおおおっ!」ゴスッ

リュウ「……ぐあっ!」


実況「出たぁ~! セカンドロープを踏み台にしての、シャイニングウィザードっ! 強烈な膝をリュウの側頭部に叩きこむっ!」

ベガ「サガット! バルログっ!」

サガット「……了解」グイッ

バルログ「フッ……わかりました……」グイッ

リュウ「……何っ!?」


実況「おっと、ここでサガットとバルログがリュウの腕と首を掴んだっ!」

元「あら……サガット君達がいる事を計算して、自軍コーナーの方に投げたんだね……」


ベガ「これはこれは……なかなか素敵なサンドバックの完成じゃないか……なぁ、リュウ?」

リュウ「……く、くそっ」

ベガ「何発耐えれるかな……? 行くぞっ! リュウっ!」

リュウ「!」

バイソン「ケン、 降りてこいよっ! 勝負すんぞっ! おいっ!」

ダン「バイソンいい加減にしろぉ! お前は大人しくするって、さっき言っただろが!」

バイソン「こいつが喧嘩売ってきたんすよ!? 悪いのはこいつじゃないっすかっ!?」

ケン「喧嘩を売ってきたのはおめぇだろがっ! ん……?」

ダン「いいからいいから……とにかく、二人共落ち着けって……」

バイソン「いいや、収まりつかねぇっすよ! ダンさん、俺にこいつとやらせて下さいよっ!」

ケン「おい、レフェリーっ! こいつの事はもういいっ! それより、後ろだっ! 後ろを見ろっ!」

ダン「……んっ?」クルッ

ベガ「ハハハっ! 素敵なサンドバッグだな、オイっ!」ガスガス

リュウ「ぐっ……ぐっ……」

サガット「ベガ様、次は俺にやらせて下さいよ。こいつ、なかなか蹴りがいがありそうです」

バルログ「サガットの次は私にやらせて下さい。私も痛めつけてみたいです」


ダン「な、何やってやがるんだ……あいつら……」

バイソン「ヘイヘイ、ダンさん! 俺にケンとやらせて下さいよ! ねぇねぇ、許可下さいよ?」

ダン「バイソン、おめぇ、しつけぇぞっ!

ケン「おいっ! こんな奴に構ってんじゃねぇよ! とにかく、あいつらを止めやがれっ!」

ダン「お、おう……そうだな……」


実況「さぁ! コーナーで、ケンとバイソンに気を取られていたレフェリーがようやく気づいたぁ! シャドルーの反則攻撃を止めに、対角線のコーナーへと向かいますっ!」

元「も~う、チンタラチンタラ……レフェリー、もっと早く走りなさいっ!」


ダン「おいっ、お前ら何やってんだよ! 聞いてんのかっ! やめろってっ!」

ベガ「ハハハ、どうだっ! もう、お終いか、リュウ!」ガスガス

リュウ「……ぐぐっ」

ダン「いい加減にしろぉっ!」グイッ


実況「さぁ、今レフェリーが、身体を張って、ベガとリュウの間に割って入り、制止します」

元「でも、レフェリーも大変だよねぇ? あんな、怖そうな人を止めなきゃいけないんだからさぁ?」


ダン「お前ら、いい加減にしろよっ! 反則負けにしてやろうか、あぁっ!?」

ベガ「わかったわかった……やめてやるから……反則負けは勘弁してくれ……」

ダン「だったら、ちゃんと試合をしろぉ! わかったなっ!?」

ベガ「まぁ、こいつはもう、虫の息だ……反則など使わなくても、もう十分だろう……」

リュウ「うっ……ううっ……」ヨロヨロ

ベガ「よし、とどめにするか……なぁ、リュウ?」

実況「さぁ、ベガが……リュウをリングの中央運んで……ロープに振ったぁっ!」


リュウ「……ぐっ!」

ベガ「……とどめは、勿論この技だ」


実況「そして、ベガも反対側のロープへ走り……これは、来るのかぁ!?」

元「……サイコクラッシャーアタック狙ってますね」


ベガ「とどめだ、 死ねっ! サイコクラッシャーっ!」ゴオオォォォッ

実況「出たああぁぁぁっ! サイコクラッシャーアタックっ!」


リュウ「……やはり、決め技はそれでくるだろうと思ってたぞ。 読んでたぞ、ベガっ!」

元「いやっ……! リュウ君、何かしようとしてますよ!?」

ベガ「……何っ!?」

リュウ「うおおおぉぉっ! 昇竜拳っ!」ガスッ

ベガ「ぐがっ……こいつ、何処にそんな力がまだ残っていたというのだ……」


実況「おぉっと! 昇竜拳だ、昇竜拳っ! リュウがサイコクラッシャーアタックと昇竜拳で返したっ!」

元「走り込んで、勢いつけてからの昇竜拳ですよ、昇竜拳。しかも、カウンター気味に決まりましたし……これ、いいですよ!?」

実況「さぁ、ベガ、ダーウンっ! リング上で大の字ですっ!」


リュウ「……うおおおぉぉっ! 空手軍団の力を見せてやるぞ、ベガっ!」


オー! リュウー! イケー!

実況「さぁ、リュウが吠えたっ! リュウはまだまだ死んではいないっ!」

リュウ「よしっ……! 起きろ、ベガっ!」

ベガ「……ううっ」ヨロヨロ


実況「さぁ、リュウがベガを引き起こし……! どうするどうする!?」


リュウ「……うおおおぉっ」グイッ

ベガ「……ぬっ」


実況「そして、持ち上げたぁ! これはブレーンバスターだっ!」


リュウ「うおおおっ……おらああぁぁっ!」ドーンッ

ベガ「……ぐがっ!」


オー! イイゾー! リュウー!

実況「さぁ、長い長いタメ作っての……垂直落下式ブレーンバスターっ! ベガの脳天がマットへと突き刺さるっ!」

元「いいですよ、ここまま決めちゃいましょう」

リュウ「次はミサイル竜巻旋風脚だっ! 行くぞっ!」

実況「おっと、これはミサイル竜巻旋風脚を狙っているのか!? リュウはコーナーポストへと昇ります」


サガット「……野郎、やらせるかっ!」

バルログ「えぇ! ベガ様を助けましょうっ!」

ケン「ヘイヘイ、レフェリーっ! あいつら、邪魔しようとしてるぞ!? あれ、ルール違反なんじゃねぇの!?」

サガット「……ケンっ!」

バルログ「余計な事を……」


ダン「サガット、バルログっ! お前ら試合権持ってないよなぁ!? だったら、タッチがされるまでは、そこで待機だ!」

サガット「ちょっと、待てよ……じゃあ、ここで黙ってベガ様がやられるのを見てって事か!?」

バルログ「ダンさんっ! ここまま黙って見てろって言うんですか!?」

ダン「フォールが入ったら、カットに行ってもいい。もしくは、関節技を仕掛けられたらだ! それまでは、そこで大人しくしておけっ!」

実況「さぁ、シャドルー二人をレフェリーが抑えています。 そして、リュウはコーナーポストでじっと待ち……」


ベガ「うっ……ううっ……」ヨロヨロ

リュウ「……」

ベガ「くっ、少し、いいのをもらってしまったようだな……」

リュウ「……」

ベガ「くっ、それより、リュウは何処に行ったんだ……? リング上に……いないではないか……?」キョロキョロ


サガット「ベガ様、後ろですっ!」

バルログ「コーナーポストの上ですっ!」


ベガ「後ろ……コーナーポスト……? ま、まさか……!?」クルッ

リュウ「……うおおおぉぉっ!」


実況「さぁ! リュウが飛んだぁっ!」


リュウ「ミサイル竜巻旋風脚だあぁぁっ!」ズガッ

ベガ「……ぐ、ぐわあああぁぁっ!」

リュウ「よし、フォールだっ! レフェリー行くぞっ!」

ダン「よし、きた!」


実況「さぁ、リュウがフォールに行こうとしますっ!」


サガット「させるか、この野郎っ!」

バルログ「ベガ様、今行きますっ……!」


実況「だが、ここでシャドルーの二人もリングインだっ! カットに走ります」


ケン「おい、リングに入れっ! 俺の真似してるだけでいいからよぉ」

ヤムチャ「えっ……あっ、はい……わかりました……」


実況「おっと、だがここでケンとヤムチャもリングインっ! カットさせないようにと、シャドルーを妨害します!」

サガット「おい、ケンっ! そこをどけっ!」

ケン「うるせぇ、行かせるかよっ! ヤムチャ、お前はバルログを止めやがれっ!」

バルログ「くっ、ベガ様……今、行きますっ……!」

ヤムチャ「お、おっと……!」


実況「さぁ、空手軍団が、身体張ってシャドルーを止めますっ! そして、ここでカウントが入ったぁっ!」


ダン「ワンッ……!」

オー! イイゾー!カラテグンダンー!

ダン「ツー……!」

ソノママ、キメチマエー!

ダン「……スリ」


ベガ「……ぬ、ぬぅんっ!」グッ

リュウ「……何っ!?」

ベガ「うっ……くっ、危なかったな……」

ダン「カウントはツーだっ! カウントツーだぞ、おいっ!」


実況「おぉ~っと、カウントツー! 2.98でしょうかぁ!? 寸前の所で、ベガが返しましたっ!」

ザワ……ザワ……

実況「ベガの底力に、場内がザワついておりますっ!」


ベガ「よし……おい、サガット、バルログ……早く、下がれ。コーナー待機していろ……」

サガット「……しかし、ベガ様」

バルログ「大丈夫なのですか!?」

ベガ「そこに、お前達いたら交代出来んだろうが! すぐにコーナーに戻るから……交代の準備をしておけ……」ヨロヨロ


実況「しかし何とか、返したベガも、大ダメージを受けている模様! かなり、フラついております」

元「……ここを逃さず、リュウ君が仕留められるかでしょうね」

なんか重い?
まぁ、今日はここまで

実況「さぁさぁ、両軍、コーナーに引き下がり……リング上には、リュウとベガの二人、ですがっ……!」


ベガ「くっ……ううっ……」フラフラ

リュウ「……ここがチャンスだ。交代させる隙を与えずに、ベガを仕留めるっ!」


実況「か~なり、ベガはダメージを受けている模様っ! フラついておりますっ!」

元「リュウ君の大技ラッシュをくらってしまいましたからね……これ、ベガ君も危ういんじゃないですか?」


サガット「ベガ様、こっちですっ! 俺に交代して下さいっ!」

バルログ「私も出る準備は出来ていますっ! ベガ様っ!」

ベガ「よ、よし……サガット、お前に交代するとしよう……」フラフラ

リュウ「……逃してたまるかっ! はぁっ!」

ベガ「……何っ!?」

リュウ「はぁっ! たぁっ! でぇやぁっ!」ガスガス

ベガ「ぬっ……くっ、くそっ……!」


実況「さぁさぁ、リュウの蹴りのラッシュだっ!」

元「ここで、サガット君達に交代されちゃマズいからね。一気に攻めちゃわないと」


リュウ「はぁっ! だあぁっ! うおおぉぉっ!」ガスガス

ベガ「くっ……サガット……! もう、少しだというのに……」

リュウ「……サガット達には近づけない! 吹っ飛ばしてやるっ!」

ベガ「……何っ!?」

リュウ「うおおぉぉっ! 竜巻旋風脚っ!」ズガアァァッ

ベガ「ぐ、ぐわああぁぁっ!」


実況「ここで竜巻旋風脚だぁぁっ! ベガを吹き飛ばすっ!」

ベガ「……ぐっ!」

リュウ「起きろ、ベガっ! これでとどめにしてやるっ!」

ベガ「うっ、ううっ……」フラフラ


実況「さぁ、ダウンしたベガを引き起こし、リュウが背後をとったぁっ! ここで、決めてしまうのかっ!?」

元「……ドラゴンスープレックスですかね?」


ベガ「ぐっ、くそっ……! 投げられはせんっ……! 投げられはせんぞっ……!」

リュウ「しぶとい奴め……だが、これで終わりだっ……!」

ベガ「くっ……! ぬぅおぉぉっ……!」


実況「さぁ、ベガも必死に堪えますっ! 行け、リュウ! ドラゴンスープレックスを決めてしまえっ!」

ベガ「このままでは、投げられてしまう……こうなったらっ……!」

リュウ「……うおおぉぉっ!」

ベガ「……ふんっ!」ガスッ

リュウ「!」


実況「おぉ~っと、なんという事だぁっ! ここで急所蹴りです! 背後をとっているリュウの股間を、ベガが蹴り上げましたぁっ!」

元「リュウ君が投げる為に踏ん張れば、どうしても大股を開く事になるからね……でも、よく狙えたもんだね」


ベガ「くっ、手こずらせやがって……」

リュウ「うっ、ぐぐっ……ベガ……卑怯だぞ……」ブルブル


実況「さぁ、これは苦しいっ! 男としては苦しい攻撃だぁ! リュウもかなり苦しんでいますっ!」

ダン「おい、ベガ……? お前、今リュウの股間を蹴ったよなぁ!?」

ベガ「知るかぁっ! 勝てばいいのだ、勝てばっ!」

ダン「おめぇ、開き直りかよ……あのなぁ!?」

ベガ「サガット、ここで決めるぞっ! 行けっ!」

サガット「わかりましたっ!」


ケン「……サガットが来るぞ? わかってんな?」

ヤムチャ「……了解です」

サガット「うおおおぉぉっ!」


実況「さぁ、ここで分担作戦ですっ! サガットが、コーナーにいる二人を襲い、場外へと落としますっ!」

ダン「おぉ……えらく、派手に落ちたなぁ? お~い、ケン大丈夫かぁ~?」

ベガ「バイソン、お前もだっ! 私を助けてくれっ!」

バイソン「うっすっ!」


実況「おぉ~っと、おぉ~と! ここで、バイソンがコーナーポストに昇ったぁっ!」

元「やっぱり……バイソン君、動いてきたね……」


バイソン「へへ、よ~し……今から、バイソン様のダイビングヘッドバッドでリュウの野郎を……」

リュウ「バイソン……お前、卑怯だぞ……」ブルブル


ブー、ブーブー

実況「場内からは大ブーイングだぁっ! 引っ込め、この歯抜け野郎引っ込んだ! なんて、お客さんの声が聞こえるような気がしますっ!」

ダン「ブーイング……? って、おいっ! なんで、バイソンがそんな所にいるんだよぉ!」


バイソン「おらあぁぁっ! リュウ、死にやがれえぇぇっ!」ドーンッ

リュウ「……ぐっ!」


実況「なぁ~んという事だっ! 試合に参加していないバイソンが、リュウにダイビングヘッドバッドを仕掛けましたぁ!」


バイソン「ベガ様っ! 俺は場外の二人を抑えておきますっ! だから、こいつを始末して下さいっ!」

ダン「おい、バイソンっ! おめぇ、何やって……」

バイソン「うおおぉぉっ! ケンもヤムチャも、ぶち殺してやるぜぇぇっ!」


実況「さぁ、バイソンはリング外に出て、大人しく……いや、違うっ……! 違うぞっ!」

元「うわっ……場外のケン君と、ヤムチャ君を襲いに行ったみたいだね……」

ダン「おい、ベガっ! おめぇら、何やってやがる!?」

ベガ「すまない、レフェリー……間違えてしまった……」

ダン「……あぁ!?」

ベガ「私はバルログに、助けてくれと指示をするつもりだったのだが……間違えて、バイソンの名前を呼んでしまったようだ……」

ダン「……はぁ!?」

ベガ「ほら、バルログに……バイソン……お互い、頭文字が『バ』で似ている名前だとは、思わないかね?」

ダン「何でそんな間違いをしちまうんだよぉっ! おめぇはバカかっ!」

ベガ「今、バイソンは勘違いしている……申し訳ないが、バイソンを止めてきてもらいたい……」

ダン「……おめぇはなぁ!?」

ベガ「……ほら、ヤムチャが襲われているぞ? これは、大変な事態だ」

ダン「……あぁ?」

バイソン「オラオラ、ヤムチャっ! こっちに来やがれっ……!」

ヤムチャ「痛ぇ、髪、引っ張んなって……! 何処連れて行く気なんだよ……」

バイソン「お客さんに……おめぇのやられっぷりを……見てもらうんだよ……」

ヤムチャ「……えっ?」


実況「さぁ、場外ではケン対サガット! そして、ヤムチャ対バイソン! ……おっと、バイソンがヤムチャを鉄柵の外に連れ出しているぞ?」

元「ちょっと、ちょっと……何処、連れて行く気なの……? お客さん、危ないよ?」


バイソン「……場外でボディスラムするから、大袈裟に痛がってね?」ボソッ

ヤムチャ「……へ?」


ダン「お、おいっ……! バイソン、何やってやがる……お客さんが、危ねえじゃねぇか、あんな所行ったら……」

ベガ「……レフェリー、悪いが行ってもらえないか? お客さんが怪我でもしたら、大変だ」

ダン「ちくしょうっ……! 何やってんだ、あのバカは……手間取らせやがって……!」

バイソン「おら、 死ねっ! ヤムチャ!」グッ

ヤムチャ「う、うおぉぉっ!」


実況「おぉ~っと! バイソンが、場外でヤムチャを担ぎ上げたぁっ! まさか、あそこで投げるのか!?」

元「ダメだよ、あそこで投げちゃ……マットも引いてないし……ただの硬い床だよ!?」


バイソン「おらああぁぁっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……ガッ!」


ブー、ブーブー

バイソン「ハハハ! なぁ~に、言ってやがる! お前ら、こんな目の前で、投げ技見れたんだぞ!? どうだ、迫力あっただろ!?」


ヤムチャー! ダイジョウブー?

ヤムチャ(ダ、ダメ……ここ、床が硬い……マジで、これ痛い……)

バイソン「おいおいっ! ブーイングばかりだなぁ! シャドルーファンはいねぇのかぁ? どっかにいねぇのかよ?」

ブー、ブーブー

バイソン「おっ? なんだ、なんだ? シャドルーTシャツ着てるお客さんが目の前にいるじゃねぇか!? おめぇは、センスあるなぁ、おいっ!」

男「うっす! 自分はシャドルーファンっす!」

バイソン「よ~し! じゃあ、兄ちゃんの為に……もう一発、レスラーの投げって奴を見せてやろうかな!?」

ヤムチャ(えっ……? 嘘っ……? もう一回、俺投げられるの!?)

男「うっすっ! 見たいっす! よろしくお願いします!」

バイソン「よ~し! じゃあ、兄ちゃんのリクエストに応えて、もう一発投げをプレゼントだっ!」


ブー、ブーブー

ヤムチャ(ダメだよ、バイソンさん……! ここで、もう一発は絶対ダメだって!)

ダン「おい、バイソンっ! おめぇ、何してんだよぉっ!」

オイ、ダン! ハヤク、コイツヲトメロ!

ヤムチャ(おっ……ダンさんが来たぞ……? こりゃ、天の助けかな?)

ダン「おめぇ、こんな所で暴れてんじゃねぇよ!」

バイソン「何、言ってんすか……お客さんリクエストっすよ。リクエスト」

ダン「やるなら、リングの中でやれやっ! そもそも、おめぇは今日の試合に参加してねぇだろっ!」

バイソン「いやぁ……それは、ベガ様から、指示があったから……」

ダン「あのなぁ……? どうやら、ベガは……」

オーイ! レフェリー! リングミロー!

ダン「……ん?」クルッ

バルログ「ベガ様、パイプ椅子を持って来ましたよ……さぁ、これを使って、こいつをやってしまいましょう」

ベガ「御苦労……しかし、よく二つも持って来れたな……」

バルログ「えぇ、丁度目の前にシャドルーTシャツを着たカップルがいましたのでね……お借りさせていただきましたよ……」

ベガ「どうせ、強引にぶん取ってきたのだろう……まぁ、いい。ファンサービスってヤツだ……」


実況「おぉ~っと、バルログがパイプ椅子をリング上に持ち込んでいるぞぉ!?」

元「ちょっとちょっと……あんなもの使っちゃ、危ないよ……」


バルログ「では……リュウ、覚悟はいいですか……?」

ベガ「……とどめを刺してやる」

リュウ「……くそっ

バルログ「……ヒャオっ!」ガスッ

リュウ「……うっ!」

ベガ「……フンッ!」ゴスッ

リュウ「ガッ……!」


実況「さぁさぁ! リュウ上では、リュウがパイプ椅子攻撃で滅多打ちだっ!」

元「……酷い事するねぇ」


ベガ「……バルログっ! スイングDDTを仕掛けろっ! 狙いは勿論ここだっ!」コロン

バルログ「なるほど……よし、行きますよ……ヒャオッ!」ドーンッ

リュウ「……グッ!」


実況「さぁ、リングに上にパイプ椅子を敷いてのスイングDDT! リュウの頭が、硬い硬いパイプ椅子に突き刺さりますっ!」


ダン「あいつら……リングで何やってやがる……くそっ……!」

ベガ「……フンッ!」グッ

リュウ「……ぐっ!」


実況「さぁ、そしてベガのフットスタンプ!」

元「ダウンしてるリュウ君の下にはパイプ椅子があるんでしょ? あれは痛いよ……」

実況「……おっと、ここでようやく、レフェリー戻ってきたか!?」


ダン「おいっ! 何してやがるっ! こんなもん、使うんじゃねぇよ!」


実況「今、レフェリーが、パイプ椅子をリングの外に、やってますねぇ……」

元「……あんなもの、リング上にあっちゃいけないからねぇ」


ベガ「ナイスタイミングで戻って来たな、レフェリーよ……これから、私の決め技でこいつにとどめを刺す……」

ダン「……あぁ?」

ベガ「……しっかり、カウントをとってくれよ?」

ダン「おめぇらなぁ……」

バルログ「……ヒャオッ!」

リュウ「……グッ!」

ベガ「……フンっ!」


実況「さぁ、バルログがリュウをロープに振ったぁ! そして、ベガも走ったぁっ!」


ベガ「……とどめだ」

リュウ「く、くそっ……」

ベガ「うおおぉぉっ! サイコクラッシャーっ!」ゴオオオォォォ

リュウ「……ぐわあああぁぁっ!」


実況「決まったぁ~! サイコクラッシャーアタックっ! そして、ベガがフォールに入りますっ!」


ベガ「どうした、レフェリー!? カウントだっ!」

ダン「……」

バルログ「何をしているのです!? カウントを取りなさい!」

ダン「チッ……! ワンっ……!」


実況「そして、ここでレフェリーがカウントを取りますっ!」


サガット「おらおらっ!」

ケン「……ぐっ!」


ダン「……ツーっ!」


バルログ「オラオラァっ!」

ヤムチャ(痛ぇって……まだ、背中が痛いんだよ……)


実況「ケンとヤムチャは、場外でサガットとバイソンに捕まっている! これでは助けに行けませんっ!」


ダン「……スリーっ!」


実況「そして、ここでスリーカウントっ! 試合が決まってしまったぁっ!」

今日はここまでっす
もう600いってしもうたか
これからはちゃんと試合削ります

ベガ「これで、私達の勝ちだ……」


ブー、ブーブー

実況「さぁ、勝利したのはシャドルー軍団のベガですが……場内からは大ブーイングでございますっ!」

元「……そりゃねぇ」


ベガ「フン、勝てばいいのだよ、勝てば……オイっ! サガット、バイソンっ!」


サガット「おっ、どうやらベガ様が勝ったみたいだな……じゃあ、ケン、そろそろ勘弁してやるよ……」

ケン「……ぐぐっ」

バイソン「おめぇも、助かったなぁ? えぇ?」

ヤムチャ(なんだよなんだよ……今日はマジで痛かったぞ、おい……)

実況「さぁ! ここで、リング上に、シャドルーが大集結っ!」


ベガ「……フッ」

サガット「これがシャドルーの力だっ! 次はザンギエフをぶち殺してやるっ!」

バルログ「フッ……美しい我々を褒め称えなさい……」

バイソン「おらっ、 男ってのはなぁ! 顔が良けりゃあ、いいってもんなんじゃねぇんだよぉっ!」


ブー、ブーブー

実況「さぁ、だがしかし、大ブーイングだ! 大ブーイングっ! シャドルーの勝利にお客さんも納得のいかない様子です!」


ベガ「いつまで経ってもわからん客達だ……まぁ、いい。そろそろ退場するとしようか……」

実況「さぁ! 今、大ブーイングの中、シャドルー軍団が退場しております!」


ブー、ブーブー


サガット「うるせぇ、おいっ! どっちが勝ったか、一目瞭然だろうが!?」

バルログ「うるさい方達ですねぇ……」

バイソン「おいっ! 何か、文句あんのか、この野郎っ! この試合は俺達の勝ちだ! 俺達のよぉ!」

ブー、ブーブー

ベガ「もうよい……行くぞ……」


リュウ「おい、待て! シャドルー!」

ベガ「……ん?」


実況「おぉ~っと! ここでリュウがマイクを握ったぞ! リング上から、シャドルーに向かって吠えたぁ!」

リュウ「……こんな物で、空手軍団が終わってと思うなよ?」

ベガ「……ふむ」


キャー!リュウー!


リュウ「汚い手段ばかり、使いやがって……」

ベガ「……騙される方が間抜けなのだ」

リュウ「お前……本当は、俺達が怖いんじゃないのか……?」

ベガ「……何?」


オー! リュウー!


リュウ「俺達と正々堂々と戦う事が怖いから……そんな、汚い手段ばかり、使っているんだろ? なぁ、ベガ?」

ベガ「……」

リュウ「正々堂々と来いよっ! まだ、俺は戦えるぞ、オイッ! ほら、もう一本勝負だ! こっちにこいよっ!」


実況「おぉ~っと! ここで、リュウが誘っていますっ!」

観客「おぉ~い、 ベガ~! 戦ってやれよ~!」

ベガ「……ふむ」

リュウ「どうしたぁっ! ベガ、かかってこいよ!」


実況「さぁ、ベガっ……! どうする……!?」


ベガ「……フッ」スーゥ

リュウ「……ぬっ?」


実況「おぉ~っと! ここで、ベガが首を掻っ切るポーズして……」


ベガ「フッ……サガット、バルログ、バイソン……退場するぞ……」

サガット「……そうですね」

バルログ「……フッ」

バイソン「負け犬の遠吠えなんかに付き合う程、こっちは暇じゃねぇんだっての!」


実況「おぉ~っと! ここで、シャドルー軍団はリュウに構わず、退場しますっ! ベガはリュウの挑発をあっさり、受け流したぁ!」

リュウ「……くそっ!」

ケン「気にするな、リュウ……次のチャンスを待てばいい……」

ヤムチャ(え~っと……俺も何か言った方がいいのかねぇ……?)


実況「さぁ、ここでリング上に、ケンとヤムチャも合流! おっと……ケンがマイクを握ったか……?」


ケン「皆、聞いてくれっ!」

オー! オー、オー!

ケン「シャドルーのボスって言ってもよぉ……? なぁ~んて事はねぇ、ただの反則野郎じゃねぇか!」

オー! ソウダソウダー!

ケン「あんな奴……次の試合では、必ずぶっ飛ばしてやるぜっ! だから、次の試合を待っててくれっ! 次は必ず、勝つ!」

オー! イイゾー!

ケン「俺達の力は皆が一番よく知ってるはずだっ! なぁ、そうだろ、皆!?」

ワー、ワーワー!


実況「さぁ、ここでケンのマイクアピール! シャドルーへのリベンジを、お客さんの前で、誓いましたっ!」

ケン「よし、そろそろ、退場するぞ……」

ヤムチャ「……あっ、はい」

リュウ「……くそっ!」


実況「さぁ、ここで空手軍団も退場します!」

元「でも、リュウ君……ちょっと納得いってないみたいだねぇ……?」

実況「……ん?」


ケン「次は必ず勝つ! 約束するぜっ!」

ケーン! ガンバレー!

ヤムチャ「あっ……自分も頑張ります……」

オメェ、アノ、ヒッサツワザツカエヨー! ナニ、ヤッテンダー!

リュウ「くそっ……ベガの奴め……」

リュウ、ドンマーイ! キニシナイデネー!


実況「おっと、そうですね……やはり、かなりベガに苛立った物を感じているんでしょうか?」

元「……まぁ、そうかもしれないね」

実況「という事は……これからの、空手軍団とシャドルーの抗争から目が離せない事になりそうですね!? さぁ、という事で、第五試合の中継はこの辺りで、お別れしたいと思います!」

ーーー


プーアル「ヤムチャ様、お疲れ様でした!」

ヤムチャ「おう……プーアル、今日は疲れたよ……」

プーアル「何、言ってるんですか? 働いたのは最初の5分だけでしょう?」

ヤムチャ「あのなぁ……? バイソンさんにやられて大変だったんだぞ? 見てなかったのかよ?」

プーアル「えぇ……? そんな所、ありましたっけ……?」


リュウ「……ったく、なんで俺が負け役なんだよ。こいつにやらせろよ、こいつに」

ケン「……まぁまぁ、いいじゃねぇか? これで、ベガとの因縁が出来ただろ。次、挑戦できるって」

リュウ「……くそっ、おいっ! 新入りっ!」

ヤムチャ「……ん?」

リュウ「おめぇ、もっと足引っ張れよ!」

ヤムチャ「……えっ?」

リュウ「おめぇが足を引っ張らねぇと、俺が弱ぇ奴に思われんだろが、バカが!」

ヤムチャ「えっ……いや、俺……今日はちゃんとしたと思うんですけど……」

リュウ「生意気な事言ってんじゃねぇよ! おめぇは俺達の踏み台って事、わかってんのか!?」

ヤムチャ「えっと……なんか、すいません……」

リュウ「……こいつ、使えねぇよ。なんだよ、こいつ。もっと、足引っ張れっての」

ケン「まぁ、今日はあの技使わなかったし……まだ、マシだったんじゃねぇの?」

リュウ「当たり前だよっ! あの技、使ったら、ぶっ殺すに決まってんだろがっ!」

ケン「まぁまぁ……とりあえず、飲みに行こうぜ? 試合は終わったんだからよぉ?」

リュウ「そうだな……ったく、次からはもっと、足引っ張れ! このバカ!」

ヤムチャ「あっ……すんません……」

プーアル「なぁ~んか、あの二人……感じ悪いですよねぇ……?」

ヤムチャ「……そうだよねぇ」

プーアル「サガットさん達とは、大違いです」

ヤムチャ「……俺も、あっちのチームに入りたかったなぁ」

プーアル「あの人達、本当に人気あるんでしょうか?」

ヤムチャ「いや、でも……リング上では、キャーキャー言われてたよ?」

プーアル「ふ~ん……おっ、ヤムチャ様? どうやら、第六試合が始まったみたいですよ?」

ヤムチャ「おっ……? そういや、豪鬼さんって人が出てるんだよな? 昨日の会話に、出てこなかった人だけど……どんな人なんだろ?」

ーーー


ザンギエフ「……ぐおおぉぉっ!」

豪鬼「……ぬぅんっ!」

ザンギエフ「……何っ!? こいつ、早いっ!」

豪鬼「……殺っ!」

ザンギエフ「しまったっ……! ぐわああぁぁっ!」


ヤムチャ「うわっ……なんだ、あの動きっ……!?」

プーアル「片足立ちのまま、あんな移動できるもんなんですね!? どうなってるんでしょう?」

ヤムチャ「あれ、恰好いいなぁ……俺も、やってみようかなぁ……?」

プーアル「……格好つけたら、またあの二人に怒られますよ?」

ヤムチャ「大丈夫だって……試合ではやらないよ……よっと、こんな感じかな……?」スゥー

プーアル「あれ、あれっ……? ヤムチャ様、大丈夫ですか?」

ヤムチャ「うおおっ……やべぇ……あいたぁっ!」ドシーンッ

プーアル「……何やってるんですか。派手にこけちゃって」

バルログ「おっと、ヤムチャ君……探しましたよ。こんな所で、ずっこけて何してるんですか?」

ヤムチャ「あいててて……あっ、バルログさん……」

プーアル「ヤムチャ様、馬鹿だから、あの豪鬼さんって人の片足移動真似しようとして、派手に転んだんですよ」

バルログ「あぁ、アレ格好いいんですよねぇ……真似しようとしたんですか?」

ヤムチャ「難しいっすね……?」

バルログ「でも、あれは豪鬼さんのオリジナルのムーブだから、真似したら怒られますよ?」

ヤムチャ「……ムーブ?」

バルログ「えぇ、あの片足移動は、豪鬼さんのオリジナルの技なんですよ。 攻撃を避ける専用の……オリジナルの技です」

ヤムチャ「……あれも、技なんですか?」

バルログ「プロレスってのは、動作を大きく見せないと盛り上がりませんからね……飲み会に誘おうとしたんですが……豪鬼さんの試合は勉強になりそうだし、ちょっと見ていきましょうか?」

ヤムチャ「……そうっすね」

居酒屋ーー


サガット「遅ぇよ、 バルログっ! 何やってたんだよ!」

バイソン「ヤムチャ君、一人連れてくるのにどれだけかかってんだよぉ! 正座しろぉ! 全裸になって正座しろぉ!」

さくら「バルログさん……バイソンさん、もうボトル一本開けちゃいましたよ? こんなので反省会できるんっすか!?」


バルログ「申し訳ありません、ヤムチャ君と豪鬼さんの試合を見ていたもので……そのついでに、ダンさんの仕事が終わるのも待ってたんですよ」

ダン「おい、ついでって何だ! ついでって! 俺はキャリア長ぇんだぞぉっ!」

ヤムチャ「う~ん……ザンギエフさんも、豪鬼さんも……凄い試合してましたねぇ……」

バルログ「……勉強になりましたか?」

ヤムチャ「あの投げ技、凄かったです! ファイナルアトミックなんとかってヤツ! あれ、俺もやってみたいっす!」

ダン「なぁ~に、言ってんだ、新入り! おめぇは、ボディスラムをなんとかしろ! ボディスラムをよぉ!」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「……ダンさんの言う通りだ」

バイソン「その事で……なんとかしようって、さっきまで話し合ってたんだよ……」

さくら「ヤムチャさん、今日も反省会っすよ! まだまだ、プロレスの事を勉強してもらうっす!」


ヤムチャ「……俺、なんかやっちゃった臭いんですかね?」

バルログ「……試合中、何か変わった事はありませんでしたか?」

ヤムチャ「変わった事……? え~っと……あっ! そうだ、そうだ!」

バルログ「……」

ヤムチャ「バルログさん、俺に打ち上わせになかった、攻撃したでしょ!? あれ、痛かったんっすよ!」

バルログ「……そうです」

ヤムチャ「なんであんな事、したんですか!? 俺、一瞬息が出来なくなったんですからね!」

バルログ「それでは……説明をしましょうか……」

今日はここまでっす

バルログ「試合には、順序というものがあります。今日の試合では、ベガさんが、リュウさんからフォールを奪いましたよね?」

ヤムチャ「そうっすね」

バルログ「しかし……いきなり、ベガさんのサイコクラッシャーアタックを出してはいけません」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「ウルトラマンが、スペシウム光線を始めに使いますか? 仮面ライダーは、ライダーキックを始めに使いますか?」

ヤムチャ「……使いませんね」

バルログ「そうです。あれは、とどめの一撃に使うからこその必殺技なのです。我々がプロレスでしている技も同じです」

ヤムチャ「……同じ?」

バルログ「ベガ様ならサイコクラッシャーアタック……リュウ君だったら、真・昇竜拳……それぞれ、オリジナルの必殺技を持っています」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「この技は、決まれば一撃で相手を仕留めるという意思を持って、我々は使っています。技を受ける方も、同じです。これが決まれば、もう立てないという意思を持って、攻撃を受けています」

ヤムチャ「試合前に……サガットさんが言ってましたね……」

バルログ「……ですから、この技を使う前には、この技を使う為の攻防が必要になってきます」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「ベガ様の場合は、ダブルニープレス……リュウ君の場合だったら、昇竜拳や竜巻旋風脚ですね」

ヤムチャ「……なんか、皆さん、色々な技を持ってるんですねぇ」

バルログ「この技は、相手を痛めつけるという意思を持っての攻撃です。攻撃を食らう方も、また同じです」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「一撃必殺技のサイコクラッシャーアタックを仕掛ける為に……ダブルニープレスなどの攻撃で、相手を体力を奪う……と、いう感じですかね?」

ヤムチャ「……ほうほう」

バルログ「しかし、この技も先程と同じように……いきなり、仕掛ける技ではありません」

ヤムチャ「……ほう」

バルログ「今日の試合だったら……リュウ君の場合は、ショルダータックルの打ち合い……ケン君の場合だったら、蹴りやチョップの打ち合い……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「そして、私とヤムチャ君の場合だったら……蹴りの避け合いという攻防がありましたよね?」

ヤムチャ「最初のヤツですね」

バルログ「蹴りやチョップの攻防を見せて……お客さんの期待を煽って……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「ダブルニープレスや、昇竜拳などの攻防を見せて、お客さんをヒートアップさせて……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

バルログ「お客さんの盛り上がりが最高潮に達した時に……必殺技を使って、試合を決めるのです」

ヤムチャ「……ほう」

バルログ「……ここまでは、わかりましたか?」

ヤムチャ「あっ、はい……強い技を使う為には、下準備がいるって事ですね?」

バルログ「そうです。最初にサイコクラッシャーアタックや、真・昇竜拳使ったら、すぐに試合が終わってしまいますからね」

ヤムチャ「はい」

バルログ「さて、では試合の流れもわかった所で……今日の全体的な試合の流れを見て見ましょう」

ヤムチャ「……全体的?」

バルログ「最後に戦ったのは……ベガさんと、リュウ君ですよね?」

ヤムチャ「……そうっすね」

バルログ「この二人は……先程言った、流れの通りに試合をしていました」

ヤムチャ「え~っと……どういう順番だったかな……?」

バルログ「ショルダータックルの攻防から始まり……ダブルニープレスや昇竜拳のやり取りがあって……」

ヤムチャ「あ~、確かに……そうだったそうだった……」

バルログ「……ラストにサイコクラッシャーアタックで決着という訳です」

ヤムチャ「……ラストは俺、場外にいたから、あんまり覚えてないんですけどね」

バルログ「では、その前のサガットとケン君の攻防を思い出してみましょうか?」

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「サガットとケン君の攻防は、どんな感じで始まりましたか?」

ヤムチャ「え~っと……あっ! チョップの打ち合いでした!」

バルログ「そうですね。 チョップや蹴りの打ち合いでした。では、その次は……?」

ヤムチャ「え~っと……確か、あっ、そうだっ! 確か、サガットさんがコーナーの上からケンさんをぶん投げたんだ!」

バルログ「そうですね。相手を痛めつける為の攻防です。サガットは、ケンに雪崩式ブレーンバスターをしましたね」

ヤムチャ「あれも、痛めつける為の攻防なんですね。 じゃあ、サガットさんは、他に必殺技があるんだ」

バルログ「さて……では、その次のサガットとケンの攻防はどうでしたか?」

ヤムチャ「へ……? どうって……アレの後、タッチして交代しませんでしたっけ?」

バルログ「そうです、ここがポイントです」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「サガット達は、必殺技の攻防をしていません」

ヤムチャ「……」

バルログ「何故、しなかったかというと、必殺技の攻防をすれば、試合が決まってしまうからです」

ヤムチャ「……ほう」

バルログ「そんな事をすれば、ベガさんとリュウ君は試合に出ないまま、試合が終わってしまいますからね」

ヤムチャ「ほ~う……なるほど……」

バルログ「次に、必殺技を使えば、決まってしまう……という、ギリギリの状態で、交代する事によって……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「試合の決着をつけずに……ベガさんとリュウ君の、攻防に繋げたというわけですね」

ヤムチャ「あ~、そういや……リュウさんが、言ってたなぁ……お客さんが高いテンションで見てくれるとか……」

バルログ「では、私とヤムチャ君の攻防を振り返ってみましょう」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「私達も同じ様に、試合の決着をつけないように、サガット達の攻防に繋げないといけませんよね?」

ヤムチャ「……そうですね」

バルログ「相手を痛めつける攻防で、終わらせたまま、交代しなければいけません」

ヤムチャ「ふむ」

バルログ「まず、最初のやり取りは、どうでしたか?」

ヤムチャ「これは、覚えてますよ! 蹴りの避け合いです!」

バルログ「そうです。ヤムチャが君が蹴りを仕掛け、私が避け……私が蹴りを仕掛け、ヤムチャが避けましたよね?」

ヤムチャ「ここまでは、打ち合わせ通りでしたよ!」

バルログ「次は、相手を痛めつける為の攻防です。何が、ありましたか?」

ヤムチャ「え~っと……」

ヤムチャ「先ず、バルログさんが、俺に握手を求めてきて……ビンタして……」

バルログ「……」

ヤムチャ「それで……踏みつけまくったでしょ?」

バルログ「そうです。私はヤムチャ君を痛めつけてますね」

ヤムチャ「それで……俺が、起き上がって……え~っと、バルログさんに蹴り仕掛けて……」

バルログ「……」

ヤムチャ「それで、俺が……ボディスラム仕掛けたら……」

バルログ「……そこです」

ヤムチャ「……ん?」

バルログ「そこで……問題が起きたんですよ……」

ヤムチャ「へ……? あれ、あそこボディスラムじゃなかったですっけ!?」

バルログ「打ち合わせでは、ボディスラムでしたよ。ただ……」

ヤムチャ「……ただ?」

バルログ「ヤムチャ君、あの時のお客さんの反応、覚えています?」

ヤムチャ「えっ……? いや、ちょっと覚えてないっす……」

バルログ「ヤムチャ君が、私に蹴りを仕掛けた時……大声援が起きてましたよねぇ?」

ヤムチャ「え~っと……」

バルログ「私にやられてピンチだった、ヤムチャ君が……反撃に出たんです。ヤムチャ君の蹴りが出る度、お客さんは、大きな声でヤムチャ君を応援してましたよ」

ヤムチャ「あっ、そうなんだ……そこまで、見てなかったなぁ……」

バルログ「そこで、私を痛めつける為に……ボディスラムを仕掛けるというのが、当初の予定だったんですが……」

ヤムチャ「そうですよねぇ!? やっぱり、ボディスラムで合ってますよねぇ!?」

バルログ「ヤムチャ君がボディスラムを仕掛けたら時……お客さんの声援がピタッと、止んだんですよ……」

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「あれでは、次の痛めつける攻防には、いけません……」

ヤムチャ「えっ、えっ……? どういう事っすか!?」


サガット「少し、あの時、焦ってなかったか? 俺には、随分雑なボディスラムに見えたが……」

バイソン「もっと、グイっと、上げなきゃダメだよ!? グイッと、グイグイッとっ!」

ヤムチャ「え~っと……俺、ちゃんと投げましたよ!? 何が、いけなかったんですかね!?」


バルログ「……う~ん」

サガット「……う~ん」

バイソン「……う~ん」

ヤムチャ「いや、ちょっと……皆さん……!? 俺、間違ってないんすよねぇ? 何が悪かったんですか?」

ダン「おい、ヤムチャ?」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「おめぇが、バルログにボディスラムを仕掛けた時……実況と解説の二人はなんて言ってたか知ってるか?」

ヤムチャ「……えっ、なんて言ってたんですか?」

ダン「ヤムチャが強引に持ち上げて……落とす……そう、言ったんだよ」

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「おめぇは、ボディスラムを仕掛けてるつもりかも、しんねぇけど……名前すら、呼ばれてねぇんだ」

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「ちなみに……サガットのボディスラムは、ハイアングル・ボディスラムなんて言われてたぞ?」

ヤムチャ「……」

ダン「バルログのは、高速ボディスラムだ」

ヤムチャ「……」

ダン「実況や、元さんが、そう言うって事は……お客さんも、そう思ってるって事だよ」

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「おめぇの、ボディスラムは、相手を痛めつけるレベルまで達してねぇんだよ」

ヤムチャ「だから、お客さんの声援が止まったのかな……?」

ダン「お客さんの声援が止んだって事はよぉ?」

ヤムチャ「……ん?」

ダン「お客さんは、その後にバルログを痛めつける為の技するんじゃねぇかって、待ってたんじゃねぇかな?」

ヤムチャ「……そうなのかな?」

ダン「実際、俺はおめぇ達の打ち合わせに参加してねぇけど、そう思ったしな。ダウンしてるバルログに……何か、大技仕掛けると思って、準備してたよ」

ヤムチャ「……」

ダン「プロレスってのは、大技でも60点の見栄えじゃ、意味ねぇんだよ。 簡単そうな技でも、120点の見栄えにしねぇといけねぇんだ」

ヤムチャ「……はい」

ダン「持ち上げて落とす……で、完成じゃねぇ。持ち上げて落とすを、どう格好良く見せるかだよ。バイソンだって、それわかってるから、硬い床におめぇを持ち上げて落としたんだろが」

ヤムチャ「……」

ダン「あんなチンケな投げを見るために、お客さんは集まってくれてるんじゃねぇんだぞ?」

ヤムチャ「は、はい……」

バルログ「……という訳で、相手を痛めつける攻防まで、いかないまま、ケン君とサガットに交代する事になりました」

ヤムチャ「……はい」

バルログ「知り切れ蜻蛉のような形で、二人に交代したら、お客さんも盛り上ってしまいますからね」

ヤムチャ「……だから、打ち合わせにない事をしたんですか」

バルログ「えぇ、あまり経験のないヤムチャ君を引っ張っても、ボロが出そうですし……幸い、私はルチャ系ですからね」

ヤムチャ「ボロって……まぁ、確かに出そうだけど……」

バルログ「素早く、華やかな技をして、盛り上げる事は得意です。私のコーナーポストからの攻撃で、お客さんを盛り上げた後……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「ケン君とサガットの二人に、試合を始めてもらったという事です」

ヤムチャ「……そういう、理由があったんですね」

サガット「……こういう打ち合わせの内容が変わる事は日常茶飯事だからな」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「自分達の中では、盛り上がるはずだったが……思ってたより、会場は盛り上がらなかった……なんて事は、よくある話だ」

ヤムチャ「……はぁ?」

サガット「そういう時は、お客さんの反応を伺いながら、アドリブを入れる事だってある」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「今回は、何も知らないヤムチャ君が巻き込まれる形になってしまったな……悪かった……」

ヤムチャ「い、いや……そんな事……」

サガット「……だが、こういう事も、よくあるという事は覚えておいてほしい」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「プロレスとはお客さんとの戦いだ。なんせ、対戦相手との試合結果は始めに決まっているんだからな」

ヤムチャ「そうっすね……」

サガット「だからこそ……俺達は、お客さんが、一番盛り上がるような試合をしなければいけないんだ……」

ヤムチャ「……」

サガット「お客さんが求めているタイミングで、大技を仕掛け……お客さんが求めているタイミングで試合を決着して……お客さんの声は試合中でも耳を傾けていなければならない」

ヤムチャ「……」

サガット「まぁ、経験を積めば、アドリブも効くようになるんだがな……まぁ、しばらくは俺達がフォローしよう」

ヤムチャ「う、うっす……!」

今日はここまで
ちょくちょく言ってるが、この手の部分は絶対言葉足らずの部分があると思う
だけど、生温かく見守ってくれ

プロレス知らない2回戦目のヤムチャにアドリブ求めるのは酷
それより、リュウケンが団体戦下手くそなんが問題
ケン→リュウのシングル連戦でしかない
シャドルー側の動き見るに>>1の技量不足ってわけでもなさそうやし
今後のリュウケンの成長も期待大やな

てか、ザンギエフさんvsベガさんも見たいのだが…チラッ?チラッ?

プーアル「そういや、僕最後の方、見てなかったんですけど、ヤムチャ様は最後の方、何をしてたんですか?」

ヤムチャ「……あのなぁ? 俺、頑張ってたんだぞ?」

プーアル「だって、リング上でベガさんとリュウさんが戦ってたんですよ? 普通、そっちを見ちゃいますよ」

ヤムチャ「プーアル謝れ! 俺と、バイソンに謝れっ! 俺達、頑張ってたんだぞ!」

バイソン「いやいや、ヤムチャ君……プーアル君の言う通りだよ。普通はリングで戦ってる人間を見ちまうもんだよ」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「プーアル君、俺達は場外で戦ってたんだ。場外のお客さんの目の前でな」

プーアル「お客さん、危なくないんですか? 大丈夫なんですか?」

バイソン「まぁ、その辺は気を使ってやってるから大丈夫だよ。折角、会場に来てくれたお客さんだから、やっぱり迫力のあるもん見てもらいてぇしな」

ヤムチャ「……迫力って、どういう事ですか?」

バイソン「まぁ、プロレスってのは、リングの上で戦うもんだ。だが、会場は広い」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「最前列にいるお客さんならともかく……後ろの方にいるお客さんには、豆粒のような大きさにしか、見えねぇ事だってある」

プーアル「そうですね」

バイソン「だから、俺達は派手な技をするんだ。派手な投げをしたり……コーナーから、飛んで攻撃したり……」

ヤムチャ「……ほうほう」

バイソン「それだったら、後方にいるお客さんだって、一発ですげぇ技をしてるってわかるだろ?」

プーアル「そうですね」

バイソン「派手な技ってのは、そういうもんだ。一番後ろで見てるお客さんも、凄いと思うような見栄えの技にしなければいけねぇ」

ヤムチャ「……俺のボディスラム、もっと派手にしなきゃいけねぇのか」

バイソン「だが……アプローチの方法は他にもある。 後方のお客さんが遠くてわからねぇなら……こっちから近づけばいいんだよ」

バイソン「俺はヤムチャ君を、鉄柵外に連れ出し、お客さんの目の前まで行って戦っただろ?」

ヤムチャ「はい」

バイソン「アレ、お客さんは、どう思ったかな?」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「豆粒のような大きさにしか見えない、戦いだったのに……突然、目の前で俺とヤムチャ君が戦いを始めるんだ。僅か1メートルの距離でな?」

ヤムチャ「……ほうほう」

バイソン「リング上では、試合が決まりかけている……だが、目の前では、僅か1メートルの距離で大男が二人、戦っているんだ。こりゃ、パニックだよ」

ヤムチャ「……ほうほう」

バイソン「場外乱闘ってのは、そういう為に使うんだよ。お客さんにより近くで戦いを見てもらう為にな」

ヤムチャ「だから……あんな、遠くにまで連れ出したんですね」

バイソン「あぁ、戦うのはリングの上だけじゃねぇって事だ。まぁ、反則だけどね」

ダン「でも、そういう理由でやってるなら、俺は場外カウントゆ~っくり、とってやるぞ! ヤムチャ、お前も見習えよ!」

ヤムチャ「あっ……はい……」

サガット「俺達はヒール軍団で、反則技を使って、相手を苦しめる……という、設定だ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「勿論、ダンさんもその事はわかっている。だから、俺達の反則技が成立しやすい様に、協力してくれている」

ダン「おう、そうだぞ! 感謝しろよ、おめぇら!」

サガット「反則技で、相手を不利な状態にして、ダメージを与えて試合の流れを作ったり……場外に連れ出したりして、交代を妨害したりな……」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「……だが、リュウ君達はどうだ?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「彼らは、ベビーという縛りがある分、反則技は使えない……正義のヒーローが、反則技を使えば、それは正義のヒーローじゃないからな」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「クリーンなファイトでここまで人気が出たのはいいが……そのせいで、伸び悩んでいるんだと、俺は思う……」

ーーー


ザンギエフ「……ベガ、明日はお前がメインだ」

ベガ「私と豪鬼さんの試合が、メインイベントですか」

ザンギエフ「あぁ、豪鬼となら、客入りも大丈夫だろう……」

ベガ「……リュウとの、抗争はどうするんですか?」

ザンギエフ「暫くはサガット達と試合を組んでおく……結局、試合を作ってたのは、お前やサガットだろう?」

ベガ「……そうですね」

ザンギエフ「お前に負けて、声援をもらってるようじゃ、まだまだだ……ブーイングを浴びるぐらいまでにならんとな」

ベガ「……確かに」

ザンギエフ「ヤムチャを加えたのに……奴らは、何も変わってはいないではないか……」

ベガ「しかし、明後日の試合はどうするのですか……? 豪鬼さんと戦うのは……リュウですか? それとも、サガットですか……?」

ザンギエフ「う~む……サガットに組ませたいのだがなぁ……だが、やはりリュウだろうなぁ……」

ヤムチャ「サガットさんと、リュウさんって、実際の所、どっちが強いんですか?」

サガット「ん……? それはだな……」

バイソン「ガチで強いのは、リュウだな! アイツは昔、空手で結構いい所まで行ってたらしいし!」

サガット「……くっ!」

バルログ「会場人気でも、リュウ君です。彼の方が華やかな技を持ってますしね」

サガット「……痛い所を」

ダン「だけど……上手いのは、サガットだな。リュウに足りないのはそこだよ」

ヤムチャ「……上手い?」

ダン「あぁ、今日はこういう流れで試合を作りましょうとか……試合の攻防をリードしていく能力だ」

ヤムチャ「……はぁ」

ダン「サガットは、技は地味だけど……試合の流れを左右する攻防を作るのが、上手ぇからな」

ヤムチャ「何か……よくわかんなくなってきたぞ……」

サガット「まぁ、その辺は経験だな。ヤムチャ君にも、覚えてもらわなければいかん」

ヤムチャ「……また、勉強っすか?」

サガット「ヤムチャ君が今、使える技は、狼牙風風拳と、ボディスラムと、バックドロップの三つだけだろう?」

ヤムチャ「あっ、そうっすよね……三つだけって、何か寂しいですよね……何か、他にも技を教えて下さいよ!」

ダン「バーカ! 何、言ってんだ! ボディスラムもまともにできねぇ癖に!」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「あぁ、技のレパートリーを増やした所で、技を使いこなせなければ、意味がない」

ヤムチャ「……そうっすか」

サガット「ヤムチャ君には、この三種類の技と、パンチや蹴りだけで、試合を作る事を覚えてもらう」

ヤムチャ「……えぇ!?」

サガット「それが上手さだ。明日、道場で付き合おう。また、特訓だ」

ヤムチャ「ちょっと、待って下さいよ……俺、特訓はそんなに好きな方じゃないのに……」

プーアル「ヤムチャ様、文句を言わない!」

今日はここまでっす
今日は本当に言葉足らず!

>>648
リュウケンがメインに行けない理由としては、そこを理由に書いてたんだけど、今回それを上手く書けたかどうか
ただ、俺としてはリュウケンが下手ってよりシャドルーが上手いつもりで書いていた

プロレス初心者でこのSSを読んでくれてる人達にも説明すると、要は、プロレスの種を知らないお客さんを盛り上がるのは勿論
プロレスの種を知ってるお客さんにも、凄ぇって思わせるような事が出来ないと、いいレスラーにはなれないって事かな?

この辺を俺が語らずに上手い具合にストーリーに組み込みたかったんだけど、ちょっと難易度高かったわ
尚、明日の更新はお休みします。ごめんなちゃい

翌日、道場ーー


サガット「さぁ、今日も特訓だ」

ヤムチャ「……う~っす」

サガット「……バルログ、準備は出来ているな?」

バルログ「えぇ、準備オッケーですよ?」

ヤムチャ「ん……? バルログさん、何してるんですか?」

サガット「今から、ヤムチャ君には、俺と蹴りの打ち合いの攻防をしてもらう」

ヤムチャ「……ほぅ」

バルログ「それを遠くから、私がビデオカメラで撮ります」

ヤムチャ「……なんで、また?」

サガット「今、バルログがいる位置は、観客席の位置……つまり、お客さんの目線だ」

ヤムチャ「……ほう」

サガット「自分でやっている動きと、お客さんから見た時の動きの違い……それを見れば、自分の問題点がわかるんじゃないかな?」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「では、行くぞ……? お互い蹴りの打ち合いで、徐々にダメージが蓄積されていくという攻防だ。準備はいいな?」

ヤムチャ「う、うっす……!」

サガット「……オラァっ!」

ヤムチャ「……くっ!」

サガット「ほら、次はヤムチャ君の番だ……こいよ……」

ヤムチャ「よしっ……! おらぁっ……!」

サガット「……ぐっ!」

ヤムチャ「よ、よしっ……! 次はサガットさんの番ですよ?」

サガット「よし、俺の番だな……オラアァっ!」

ヤムチャ「ぐっ……よ、よしっ……! 次は、俺の番だな……おらぁっ!」

サガット「ぐ、ぐっ……!」


バルログ「……」ジーッ

ーーー


サガット「よし、じゃあ、今の攻防を映像で確認してみようか……」

ヤムチャ「結構、自分ではいい感じにやってたと思いますよ?」

バルログ「では、早速見てみましょうか……はい、どうぞ……」

ヤムチャ「おっ、どれどれっと……んっ……?」

サガット「……」

バルログ「……」

ヤムチャ「アレ……? なんか、サガットさんに比べて……俺の動きが地味なような……」

サガット「……と、まぁこれがお客さんから見た、ヤムチャ君だ」

バルログ「……思ってたより、地味でしょう?」

ヤムチャ「あれ……? 何がいけねぇんだ、これ……?」

バイソン「もっと、オーバーにやらなきゃいけねぇよ! オーバーによぉ!?」

ヤムチャ「そ、そうっすよね……」

サガット「……ヤムチャ君は、まだプロレスやる事に抵抗があるように見えるかな?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「何処か、格闘技風の蹴りに見えるな……相手の急所を素早く仕留める……そんな蹴りに見えるよ」

ヤムチャ「そうかも……しれませんね……」

バルログ「格闘技でダメージを与える技なら、それで構いませんが……これは、プロレスです。大ダメージを与えるなら、より派手で大きな動きが必要とされます」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「どうせ、俺達は避けねぇんだ! 動きを溜めれば溜める程、強そうに見えるからよ!」

ヤムチャ「……溜める?」

バルログ「少し、お手本を見せましょうか……バイソン、よろしくお願いします」

バイソン「おう!」

バルログ「例えば……これはトラースキックという技ですが……」

ヤムチャ「……ふむ」

バルログ「相手を蹴る前に、少し体制を屈めて……」ググッ

ヤムチャ「……ふむふむ」

バルログ「そのまま、身体を伸ばす勢いで、相手の高い位置を蹴りますっ……!」スパーンッ

バイソン「……ぐ、ぐわっ」

ヤムチャ「……おぉ!」

バルログ「普通の蹴りより、強そうに見えるでしょう? この技は色々と応用が効きますよ?」

ヤムチャ「……応用?」

サガット「連続技の中に、仕込んだり……相手が起き上がるタイミングに合わせて、溜めを作ったりな……」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「格闘技だったら、隙を与えず攻撃をする事が一番いいだろうが、これはプロレスだ。隙があったとしても、相手は待っていてくれる」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「意図的に技に入らない事で、同じ技でも見栄えが変わってくるという訳だ」

ヤムチャ「なるほどねぇ……」

ヤムチャ「よし……溜めて……」ググッ

サガット「……うむ」

ヤムチャ「……蹴るっ!」スパーンッ

バルログ「おっ、いい感じじゃないですか?」

ヤムチャ「おっ、そうっすか?」

バイソン「ヤムチャ君、ボディスラムとはえらい違いじゃねぇか!? 打撃技はセンスあるんだね!」

ヤムチャ「……それ、投げ技にはセンスないみたいじゃないですか」

サガット「暫くは、トラースキックがヤムチャ君の必殺技だな。次は、トラースキックをもっと有効に使える場所を作ってみよう

ヤムチャ「……有効って、どういう事ですか?」

バイソン「ヤムチャ君の今、使える技は、狼牙風風拳と、トラースキックと、ボディスラムとバックドロップだろ?」

ヤムチャ「はい」

バルログ「お客さんの目線から見た派手さでは、狼牙風風拳が一番……そして、二番目はトラースキックです」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「つまり、俺達に大ダメージを与えるには、狼牙風風拳か、トラースキックを使う必要がある……と、いう事だ」

ヤムチャ「……なるほど」

サガット「ヤムチャ君のトラースキックは派手だが……多用しすぎると、技に説得力がなくなるだろう」

ヤムチャ「……説得力?」

サガット「あぁ、強そうな技を使っても、相手に全くダメージがない……なんて事だったら、おかしい話だろ?」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「だから、その技は、相手を痛めつける攻防の、ここ一番という時に使う事にしよう」

ヤムチャ「……って、事は」

サガット「……どうした?」

ヤムチャ「俺、昨日の試合で、ボディスラムやった後、何かするんじゃないかって思われてたんですよね?」

サガット「……そうだな」

ヤムチャ「そういう所で使えばいいんですかね?」

サガット「うむ、いいな……ボディスラムで相手を投げて……起き上がりのタイミングに合わせて、相手に当てる……それなら、説得力も出そうだ」

ヤムチャ「おうおう、なんかいい感じになってきたじゃねぇか! ちょっと、やってみたいっす! バイソンさん、付き合ってもらってもいいですか?」

バイソン「おうよ! 任せておけっ!」

ヤムチャ「じゃあ、バルログさん……ビデオ回してもらってもいいですか!?」

バルログ「はいはい、わかりましたよ。では、始めて下さい……」

ヤムチャ「うっす!」

ヤムチャ「持ち上げて……」

バイソン「おっ、おおっ……」

ヤムチャ「……落とすっ!」

バイソン「……ぐっ!」

ヤムチャ(後は、起き上がるタイミングに合わせて……溜めてっ……!)ググッ


サガット「……む?」


バイソン「くっ……おっ……おおっ……」ムクッ

ヤムチャ「……おらぁっ!」スパーンッ

バイソン「……ぐわぁ」


バルログ「……」ジーッ

ーーー


ヤムチャ「よっしゃ、よっしゃ! どうですかね!? 早速、チェックしてみましょうよ!」

バルログ「はいはい、巻き戻すので、待っていて下さいね……よっと、できましたよ?」

ヤムチャ「よ~し、早速見てみるか! おっ、おおっ! 凄ぇ、いいじゃん! 俺、格好いいじゃん」

バイソン「お~、想像してたより、いい感じになってるじゃん! なぁ、バルログ!?」

バルログ「えぇ、ここから見てても、いい出来だったと思いますよ?」

ヤムチャ「よっしゃ! トラースキックはモノにしたんじゃねぇか!? やっぱり、俺センスあるじゃねぇか!」


サガット「……ヤムチャ君、ちょっと待ってくれ」

ヤムチャ「……ん、どうしたんですか?」

サガット「悪いが、狼牙風風拳の構えをしてもらいたい……」

ヤムチャ「えっ、どうしたんですか……?」

サガット「俺の思い過ごしかもしれない……まぁ、とりあえず、構えてくれ……」

ヤムチャ「え~っと……はい……」シュッ

サガット「よし、次はトラースキックだ……構えてくれ……」

ヤムチャ「何なんですか、いったい……も~う……」ググッ


バルログ「……あっ」

バイソン「……あっ」

サガット「やはり、そうか……」


ヤムチャ「あれ、どうしたんですか? 俺、何かやっちゃいました……?」

サガット「ヤムチャ君の、狼牙風風拳に入る時の構えと、トラースキックを溜める時のモーションが似てるんだ」

ヤムチャ「……へ?」

バイソン「サガット、よく気づいたな? 確かに、似てるから変えた方がいいわ、これ」

ヤムチャ「え~っと……似てたら、問題でもあるんですかね……?」

バルログ「そりゃ、ありますよ。トラースキックをしようとして、お客さんが狼牙風風拳すると思ったら、どうなると思います?」

ヤムチャ「え~っと……それは……」

サガット「折角のトラースキックが台無しだ。なんだ、狼牙風風拳じゃねぇのかよ……なんて、お客さんはガッカリするだろうな」

ヤムチャ「マ、マジっすか!?」

サガット「自分がこの動きをしたら、この技に入るんだ……と、いうのをしっかりしておいた方がいいな。モーションは変えた方がいい」

ヤムチャ「じゃあ、溜める時の構え……変えてみます……」

サガット「うむ、身体で覚えた方がいいと思う。デビュー戦での狼牙風風拳は強烈だったからな。お客さんはきっと構えをまだ覚えているだろう」

ーーー


ヤムチャ「よし、溜めて……」ググッ

バルログ「ダメです、ヤムチャ君! また、癖が出てますよ!」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「ほら、自分の構え見てみなよ……最初のに戻ってるじゃん……」

ヤムチャ「あっ……しまった……」

バルログ「う~ん……ちょっと、試合まで時間がないのに、困りましたねぇ……」

ヤムチャ「やっぱり、いつもこの構えで戦ってましたからね……いきなり、違う構えしろって言われても……」

サガット「……だが、お客さんが狼牙風風拳だと、勘違いしてしまったら大変な事になるぞ?」

ヤムチャ「そうっすよね……リュウさんとケンさんにも怒られそうだし……なんとかしなきゃ……」

バイソン「とにかく、数こなして練習だよ! 身体で覚えよう!」

ヤムチャ「うっす!」


プーアル「皆さん! ヤムチャ様の練習に付き合って頂いてありがとうございます! ザンギエフさんから、今日の予定表もらってきましたよ!」

サガット「おっ、プーアル君、ありがとう。 早速、見てみるか」

プロレスってどこで放送してるの?

本日の予定試合


第一試合(10分決着)
×コーディ ー ソドム◯

第二試合(10分決着)

◯ブランカ ー ディージェイ×

第三試合(15分決着)
かりん ー キャミイ
×さくら 春麗◯

第四試合(15分決着)
ヤン ー ガイル ×
◯ユン ナッシュ

第五試合(20分決着)
ヤムチャ バイソン×
ケン ー バルログ
◯ リュウ サガット

第六試合(30分決着)
×ベガ ー 豪鬼 ◯

今日はここまでっす
試合表はご愛嬌

>>679
深夜にやってるのもあるけど、大体はCSに追いやられてるね
ニコニコなんかでも、中継してるよ

ヤムチャ「おっ、なんだなんだ。今日は俺達の勝ちじゃん!」


サガット「おっ、ソドムさんは第一試合に行ったのか」

バルログ「いいんじゃないですかね? あの人、第二試合だけじゃ勿体無いですよ」

バイソン「そうだな! あの人上手いからな!」


ヤムチャ「あの~、皆さん、いつもいつも何処見てるんですかねぇ?」

サガット「いや、ヤムチャ君、これは重要な事だぞ?」

ヤムチャ「……へ?」

バルログ「ソドムさんが第二試合から、第一試合に行くって事は……何かドラマがあったという事です」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「これから、ソドムさんと試合をやる機会があったら、俺達もまた違う接し方をしないといけないだろ?」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「団体の人間が、どういうドラマを作っているのかを、確認するのも大切だ。なんせ、俺達は戦ってそのドラマの一部になるんだからな」

ヤムチャ「なるほど」

プーアル「……あの~?」

サガット「……ん、どうした、プーアル君?」

プーアル「以前、サガットさんは、第一試合が二軍戦……若手の紹介の為の試合で、第二試合は前座……お笑いマッチって言ってましたよねぇ?」

サガット「おう、そうだな。プーアル君、よく覚えてるじゃないか」

プーアル「このソドムさんって人は、若手の方なんですか?」

サガット「いや、ソドムさんはキャリアが長い方だ。若手ではない」

プーアル「じゃあ、どうしてそんな方が第一試合の、若手の紹介の試合に?」

サガット「ほら、第一試合が、いつもいつも若手対若手の試合じゃ面白くないだと? これは、ソドムさんを使って、違った試みをしようとしてみようという事なんだよ」

プーアル「……違った試み?」

サガット「若手のコーディやガイが……ベテランのソドムさんと戦ったら、どこまで通用するのかな? なんて、お客さんも期待してるのではないかな?」

プーアル「……なるほど」

サガット「ソドムさんは、第二試合でお笑いマッチを担当していた方だが……実際、上手い人だしな」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「お笑いマッチ以外でも、しっかりしたプロレスが出来ると判断されての第一試合への移動だろう」

プーアル「……ふむふむ」

サガット「実際、第一試合で若手と戦うベテランってのは、自分の格を下げずに……若手にも見せ場を作ってやるという、高い技術が要求される」

ヤムチャ「なんか、難しそうですねぇ……」

サガット「第二試合で、そういうソドムさんの上手さを感じたから……じゃあ、お笑い以外のソドムさんを見せてみよう、という事でここになったんだろう」

プーアル「へぇ~、ちょっとソドムさんの試合、よく見てみようっと」

ヤムチャ「あっ、俺も俺も!」

サガット「ソドムさんは第一試合で、今度はお笑いじゃないプロレスをする事になる」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「その試合で、お客さんがソドムさんをもっと見たいなんて感じたら……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

サガット「恐らく、ソドムさんは第三試合や、第四試合に行く事になり、ナッシュやガイル達と争う事になるだろう」

ヤムチャ「タッグのベルトに挑戦出来るようになる……って、事ですか……」

サガット「そして、そこでお客さんが認めるような試合や、ドラマを作れれば、第五試合……俺達と戦う事になるだろうな」

ヤムチャ「ソドムさんが、空手軍団に入るんですか?」

サガット「そうかもしれないし、俺達シャドルーに加わるかもしれない……」

ヤムチャ「……ふむ」

サガット「はたまた、ソドムさんも軍団を作って、空手軍団対シャドルー対ソドムさんの軍団という、三つ巴の抗争が始まるかもしれない」

ヤムチャ「……ほうほう」

サガット「まぁ、ソドムさんの実力なら、すぐに第三試合や第四試合には上がれるだろう。そこで、どういうタッグチームを作って、お客さんがどういう反応をするかだな」

ヤムチャ「……なるほどねぇ」

サガット「まぁ、ソドムさんの話はこの辺りにしておこうか……俺達の試合の話をしよう」

ヤムチャ「あっ、そうっすね」

サガット「今日は、リュウの勝ちだな」

ヤムチャ「……これ、サガットさん越えって事でいいんですかね?」

サガット「いや、負け役はバイソンだろう? 俺を越えるなら、俺からフォールをとらなければいけないよ」

ヤムチャ「あっ、じゃあ、まだなんっすね……」

サガット「まだ、そこまでリュウは認められてないからな……俺を越えるには、まず俺と一対一の試合をして……」

ヤムチャ「そこで、サガットさんに勝つ、と……」

サガット「いや、その後だ……勝った後のお客さんの反応だな」

ヤムチャ「……反応?」

サガット「勝って、お客さんがリュウの事を認めないと、ベガさんには挑戦出来ないだろう……この辺がプロレスの難しい所だな。ただ、勝つだけじゃダメだ」

ヤムチャ「う~ん……まだ、俺にはよくわからないっす……」

サガット「とにかく、今日の試合の打ち合わせをしようか……こういう時にリュウ達がいればいいんだけどな……」

ヤムチャ「あの二人……いつも、何処かに行ってますからねぇ……」

サガット「……ったく、試合のケツ、どうしたんだよアイツら」

ヤムチャ「えっ……? だから、リュウさん達が勝つんでしょう?」

サガット「それは、わかってるよ……だが、どう勝つかだ……」

ヤムチャ「……へ?」

サガット「圧倒的に勝つのか……五分の勝負で勝つのか……それとも、不意打ちの様な勝ち方をするのか……」

ヤムチャ「ほうほう……」

サガット「基本的に俺達が勝つ時は、汚い手段を使って、不意打ちの様な勝ち方をするから、大目に見てやっていたが……全く、あの野郎……自分の時ぐらい打ち合わせに参加しやがれ……」

ヤムチャ「あはは、まぁまぁ……」

バイソン「でもよぉ、サガット? あの二人の事だから、やっぱり圧倒的に勝つ事がしてぇんじゃねぇか?」

バルログ「えぇ、恐らく、次に豪鬼さんと戦うのはリュウですし……そんな気がします……」

サガット「……そういう時こそ、何か違う事をしなきゃいけないだろう。 今のリュウで豪鬼さんと戦ったってある程度は見えている」

バイソン「まぁ、そうだけどよぉ……」

バルログ「まぁ……我々が引っ張って、なんとかしましょう……」

サガット「……チッ!」

ヤムチャ「え~っと、え~っと……とりあえず、俺はどうしたらいいんですかねぇ……?」

サガット「うむ。ヤムチャ君は、先発で出てくれ……こっちはバイソンが出る……ヤムチャ君はどうしたい?」

ヤムチャ「……へ?」

バイソン「最終的に負けるのは俺なんだからよぉ! そっから、逆算して攻防を決めるんだよ!」

ヤムチャ「……逆算?」

バイソン「あぁ、最初にヤムチャ君と戦って、ダメージを受けて、そのダメージを引きずるままになっちまったとか……」

ヤムチャ「……ふむ」

バイソン「それとも、ヤムチャ君は何も出来ずに俺にやられて……俺はケンやリュウから、ダメージを喰らう展開にするとかな?」

ヤムチャ「なるほど……何処かでバイソンさんを痛めつけておく必要性があるって事ですね」

バイソン「ヤムチャ君はどうしたい? ヤムチャ君は技受けてばかりだから、今日ぐらい活躍してもいいんじゃねぇの?」

ヤムチャ「う~ん……俺も、新しい技覚えたし……活躍したいのは、山々なんっすけどね……」

バイソン「じゃあ、最初に俺を痛めつける? ヤムチャ君が有利になる攻防する?」

ヤムチャ「い、いやぁ……俺、あの二人にいい格好するなって言われてるんですよ……? それに、人気を上げなきゃいけないのは、俺じゃなくてあの二人でしょ?」

バイソン「……」

ヤムチャ「だから、俺……何も出来ず、やられますよ……俺、あの二人苦手なんですよ……」

バイソン「……」

バルログ「……」

サガット「……ヤムチャ君は、それでいいのかい?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「どうした? さっきまでは楽しそうに、トラースキックの練習をしてたではないか?」

ヤムチャ「いや……そうっすけど……」

サガット「リュウやケンの人気を上げなければいけないのは、こっちの団体の事情だ。ヤムチャ君の本心は違うのではないか?」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「新しく覚えた、トラースキックを……お客さんの前で披露して……盛り上げてみたい……それが本心ではないのかね?」

ヤムチャ「いや、それはそうっすけど……でも、俺、格好いい事するなって言われてるし……」

サガット「……なら、リュウやケン達にもっと、格好良い所を作ってやればいい」

ヤムチャ「……えっ?」

サガット「ヤムチャ君に格好良い所を作って……リュウやケン達にもっと格好良い所を見せる……そんな、展開を作ればいい」

ヤムチャ「……そんな事出来るんすか?」

サガット「ヤムチャ君、これはプロレスだ……それが出来る……俺達はそういう為なら、いくらでも技を受けてやる」

バイソン「……ヤムチャ君、どうする? 俺は、いくらでも技を受けてやるぜ?」

バルログ「私だって受けますよ……リュウがバイソンから、フォールを奪う時……私を止める人間が必要になるでしょう」

サガット「ヤムチャ君次第だ……俺達が、試合をリードしてやってもいいが……ヤムチャ君にリードされてもいい……自由に決めてもいい」

ヤムチャ「……」

バイソン「……どうする?」

バルログ「……ヤムチャ君次第です」

サガット「ヤムチャ君も三試合目だ……そろそろドラマを作り始めてもいいんじゃないかな……?」

ヤムチャ「……」

ヤムチャ「俺、やってみたいっす」

バイソン「……おっ?」

ヤムチャ「俺がバイソンさんに、ダメージを与えてみたいっす」

バルログ「……フッ」

ヤムチャ「バイソンさんが、フォールされてるのを、助けに行こうとしたバルログさんを……トラースキックで止めてみたいっす」

サガット「……よし」

ヤムチャ「今日は、場外でずっと寝ていたくないっす……寧ろ俺が、そういう事を、サガットさん達にやってみたいっす」

バイソン「そうだよ、そういう汚い手段も使っていかねぇといけねぇんだよ! プロレスはよぉ!」

バルログ「ヤムチャ君もらしくなってきましたね」

サガット「よし、じゃあ打ち合わせをしよう! ヤムチャ君が動きやすいように、俺達がサポートしてやる!」

ヤムチャ「うっす!」

そしてーー


ユン「……はあぁぁっ!」

ガイル「……ぐがっ!」


プーアル「ヤムチャ様! ユンさんがガイルさんから、3カウントをとりましたよ!」

ヤムチャ「……そうだな、次が俺の番だな」

プーアル「ヤムチャ様、頑張って下さいね!」

ヤムチャ「プーアル……今日は俺、格好いい所、見せるからさぁ……? しっかり見ててくれよ?」

プーアル「はい、期待してますよ! ……でも、程々にしとかないと、またあの二人に怒られますよ?」

ヤムチャ「大丈夫だって! 狼牙風風拳は使わないからさぁ? 俺のトラースキックを見ててくれよ!」

プーアル「期待してますよ、ヤムチャ様!」


リュウ「おっと、危ね危ね……また遅刻ギリギリだ……」

ケン「まぁ、今日は圧倒的に勝ってよぉ? 気分良く飲みに行こうぜ!」


プーアル「……おっ、二人が来ましたね」

ヤムチャ「……そうだな」

リュウ「おい、新入り……おめぇ、今日はどうするつもりなの?」

ヤムチャ「俺が先鋒で行って……バイソンさんにそこそこのダメージを与えます」

ケン「……おめぇが出来るの?」

ヤムチャ「大丈夫っす。みっちり、打ち合わせしましたから」

リュウ「まぁ、サガット達と打ち合わせしたんだったら、大丈夫だろ……」

ヤムチャ「俺がバイソンさんにダメージを与えたら……タッチされたバルログさんから、攻撃を受けてダメージを受けます」

ケン「……で、俺に交代するのね?」

ヤムチャ「そうです。後は、お二人が格好いい所を見せて下さい」

リュウ「おうおう……なんだ、おめぇもわかってきたなぁ? そうだよ、それでいいんだよ。てめぇの身の程をわきまえればなぁ!」

ーーー


ダン「さぁ、試合はいよいよ第五試合……今日こそ因縁に終止符をうてるか……空手軍団対シャドルー軍団の対決です!」


ワー、ワーワー!


ダン「女性の皆様! お待たせしましたっ! 我らがヒーロー、空手軍団……」


キャー、キャーキャー


ダン「リュウ選手! ケン選手! ヤムチャ選手の入場です!」


ワー、ワーワー


リュウ「よしっ! 行くぞケンっ!」

ケン「あぁ! 行くぞリュウっ!」

ヤムチャ「……うっしゃあ! 俺もやってやるぜオイっ!」

実況「さぁ、空手軍団の入場です! まずはリュウ! 今日こそはシャドルーを倒せっ!」

リュウ「よしっ! 行くぞっ!」


実況「次に、ケンっ! 今日も黄色い声援を浴びての入場だっ!」

ケン「見ておけっ! 今日は俺の格好いい姿を見せてやるぜ!」

実況「そして、最後にヤムチャ! いや~、今日のヤムチャ選手は、一段と気合が入っておりますっ!」

ヤムチャ「うるあぁっ! 今日こそはやってやるぞっ!」


リュウ「……どうしたんだ、こいつ?」

ケン「……余計な事する気じゃねぇだろなぁ?」


実況「さぁ、空手軍団が今、リングイ~ンっ!」

今日はここまで

また、試合をフルで書いてしまいそうな気もするが……
仮にダイジェスト風になってしまっても勘弁してくれ

ダン「続きましては……プロレス界から世界征服を狙う……シャドルー軍団……」

ダン「サガット選手! バルログ選手! バイソン選手の入場です!」


ブー、ブーブー


バイソン「ヘイヘ~イ、リュウ君、ケン君、ヤムチャ君~! 今日もボッコボコにしてやるからよぉ!」

バルログ「貴方達の醜い姿を……お客さん達にしっかりと見ていただきましょう……」

サガット「……フッ」


ブー、ブーブー


実況「さぁ、シャドルー軍団の入場です! リングに上がってもいないのに、早速挑発をしています! いやぁ、今日は酷い! 実に酷い!」

バイソン、カエレー

バイソン「うるせぇ! 俺は顔がいい奴をボコボコにするのが趣味なんだ! 黙ってろっ!」


バルログ、キモイー

バルログ「キモい……? 美しいの間違いじゃありませんかね……? 何を言っているんです、貴方達は……」


観客「サガット、おめぇはよぉ……!」

サガット「ん、どうした……? そこの君よ……この俺に、何か言いたいのか? よし、言ってみろよ……?」

観客「……えっ?」

サガット「……おい、どうしたゴラァ! 言いたい事があるなら、はっきり言えやゴラァ!」

観客「うっ……!」

サガット「どうしたゴラァ! おめぇは、俺を応援しようとしてたんじゃねぇのか! 男だったら、しっかり『シャドルー頑張れ』って言ってみろやぁ!」

観客「うっ、あの……頑張って下さい……」オドオド

サガット「よし、それでいい! じゃあ、おめぇの為に、あいつらボコボコにしてきてやるから……しっかり、俺達の活躍を目に焼き付けておけやぁ!」


実況「さぁさぁ、今日もシャドルー軍団は、お客さんに噛み付きながらの入場です! そして、シャドルー軍団……今、リングイ~ンっ!」

実況「さぁ、それでは解説の元さん、よろしくお願いします」

元「はい、よろしくお願いします」

実況「いやぁ、本日も始まってしまいましたねぇ……空手軍団とシャドルー軍団の抗争が!」

元「そうだね。でも、まぁ、今日はボスのベガ君がいないみたいだし……」

実況「そうですね。今日のシャドルー軍団は、サガット、バルログ、バイソンの三人です!」

元「空手軍団がここで、勝って……次にベガ君と戦う時の為に勢いをつけてもらいたいもんだね」

実況「そうですね! 空手軍団には、ここらで勢いをつけてもらいたいです!」

元「この前の試合で、リュウ君はベガ君に悔しそうな思いをしてたじゃない……?」

実況「あぁ、先日の試合でベガにやられて、リュウはかなり悔しがってましたねぇ!?」

元「あのベガ君に対する怒りは……今日の試合では、とりあえず、抑えておいてね……?」

実況「ベガに対する怒りは……ベガに直接ぶつけろという事ですね!?」

元「そうそう、やっぱり直接対決の時に使わないとね。こんな所で使ってたら、勿体ないよ」

実況「なるほど! では、空手軍団! そのベガを引きずり出す為にも……今日の試合は、是非勝ってくれっ!」

サガット「よ~し、バイソン、お前が先発だ!」

バイソン「よ~し、よ~し! 任せておきやがれ!」


実況「さぁ、シャドルーの先発は、バイソンです!」


リュウ「……よし、行ってこい」

ケン「……ほれ、ちゃっちゃといけ、ちゃちゃっと」

ヤムチャ「……うっしゃ! いくぞ、オイっ!」


実況「対する、空手軍団の先発はヤムチャ!」

元「……今日、ヤムチャ君、気合入ってるみたいだね」

実況「さぁ、先ずはヤムチャ対バイソン……どういった試合になるんでしょうか!?」

ヤムチャ「……よしっ!」

バイソン「……ヤムチャ君?」

ヤムチャ「……ん?」

バイソン「……オラァっ!」ガスッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「おぉ~っと、いきなりだ! いきなりバイソンの奇襲攻撃っ!」

元「……だから、ゴングが鳴ってからやりなさいよ。反則じゃないの」


ダン「おいっ! バイソン、何やってるんだ!?」

バイソン「ハハハ、早速間抜け面の完成だな! よ~く、似合ってるぜ、ヤムチャ君!」

ヤムチャ「……ぐっ」ヨロヨロ


実況「おぉ~っと、バイソン高笑い! 悪びれる素ぶりすら、見せていませんっ!」

ブー、ブーブー


バイソン「ハハハ、 ブーイングが気持ちいいなぁ!」

ダン「おめぇは、毎回毎回、反則しやがって……」

バイソン「騙される方が間抜けなんですよ、騙される方が!」

ダン「あのなぁ……? ちゃんとゴングが鳴ってから……」


実況「早速、バイソンがレフェリーと揉めています! 早いぞ、バイソン!」

元「まだ、試合も始まってないのにね……これは、間違いなく、反則の最短記録だね」


バイソン「そもそもゴングを鳴らすのが、遅いんっすよ! 俺のいきり立ったこの気持ちがちょっと、前に出ちゃっただけじゃないですか!」

ダン「……あのなぁ?」

ヤムチャ「いや、ダンさん……もういいっすよ……試合、始めましょうよ?」

ダン「……ん?」


実況「おっと……ここで、ヤムチャがレフェリーを制します!」

ヤムチャ「この人、バカだからさぁ……? そんな注意しても、聞くような人じゃないですよ……」

バイソン「……あぁ?」

ヤムチャ「それより、もう、ゴング鳴らして試合始めて下さいよ」

ダン「……おめぇ、大丈夫なのか?」

ヤムチャ「大丈夫っす! ゴング鳴らして下さい」


実況「おっと、ヤムチャは落ち着いているぞ!? ゴングを鳴らしてくれとレフェリーに指示しているのか!?」

元「バイソン君は、相手のペースをかき乱すのが得意だからね……そうだよ、一旦落ち着くのはいい事だよ」


バイソン「……この野郎」

ヤムチャ「……ダンさん、よろしくお願いします」

ダン「よし、じゃあ、ゴング鳴らせ! 試合開始だっ!」


実況「さぁ、ここでゴングが鳴らされました! 今、試合開始ですっ!」

ヤムチャ「よっしゃ、 行くぞっ!」パチパチ

バイソン「来やがれっ! この野郎!」


ヨーシ、イケー! ヤムチャー!

実況「さぁ、ヤムチャが二度三度手を叩き、お客さんを煽っていきます!」

元「落ち着いて、自分のペースに持ち込んで行ってますね……いいですよ」


ヤムチャ(俺は、トラースキックでバイソンさんに、ダメージを与えて交代しなければならない……)

バイソン「……」


実況「さぁ、今、ヤムチャがバイソンを中心に円を描くような動きをしながら、慎重に距離を測っております!」


ヤムチャ(トラースキックは俺の必殺技……お客さんが期待した瞬間に見せなければいけない……)

バイソン「……」

ヤムチャ(お客さんが期待した瞬間……つまり、それは今みたいに、お客さんが俺に声援を送っている瞬間だ……)


ヤムチャー! イケー!


ヤムチャ(打ち合わせで、トラースキックを打つ場所は決めたけど……上手く、そこにお客さんの声援を持ってこれるかがポイントになる……)

バイソン「……」

ヤムチャ(……って、サガットさんは言ってたよな。とにかく、今日は周りを冷静に見よう)

ヤムチャ「よしっ、行くぞ!」

バイソン「!」

ヤムチャ「うるあぁっ! 喰らえぇっ!」シュッ


実況「ここで、ヤムチャが仕掛けた! ヤムチャのハイキックだ!」


バイソン「……フンっ!」ガッ


実況「だが、これをバイソンはブロック! 上手く防御したぁ!」

元「うん、肩で上手く防御したね」


ヤムチャ「……くそっ!」

バイソン「おいっ、どうした! そんなもんかぁ!?」

ヤムチャ「……くそっ! オラァ!」シュッ

バイソン「……フンっ!」ガッ


実況「さぁ、ヤムチャがもう一度仕掛けたが……これも同じようにブロックされてしまう!」

バイソン「ヘイヘイ、どうした! ヤムチャ君よぉ!?」

ヤムチャ「……くっ!」

バイソン「なんだ、今の蹴りはよぉ!? 蚊トンボでも落としてんのか、あぁ!?」

ヤムチャ「……くそっ!」


実況「おぉ~っと、これはバイソン、余裕です! 大きく手を開き、自分には効いていないとアピールしております!」


ヤムチャ「くそっ……もう一発っ!」シュッ

バイソン「フンっ! どうしたぁ、おいっ!」ガッ


実況「さぁ、またしても、ヤムチャの蹴りがブロックされてしまったぁ! バイソン、奴はただの歯抜け野郎ではない!」

ヤムチャ「……だったら、この野郎」ダッ

実況「おっと……? ここで、ヤムチャがロープに走ったぞ!?」

ヤムチャ「よしっ、行くぞっ……ぶっ飛ばしてやる……!」

バイソン「ヘイヘイ来いよ! もやしっ子ちゃんよぉ!? 今度は何だ、タックルか!?」

ヤムチャ「その通りだよ……うおおぉぉっ……!」


実況「さぁ、ヤムチャがロープの反動をつけての……」


ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」ドスッ

バイソン「……フンっ!」


実況「ショルダータックルっ! だが、バイソン、これも耐えるっ!」

バイソン「どうしたぁ! そんなもんかぁ!?」

ヤムチャ「……うるせぇ、舐めてんじゃねぇよ! もう一発だっ!」

バイソン「面白れぇ、来いよっ!」

ヤムチャ「……うおおぉぉっ!」


実況「さぁ、再びヤムチャがロープに走ったっ! 一度でダメならもう一度っ! 再びバイソンに仕掛けるっ!」


ヤムチャ「うるあぁっ! ショルダータックルだあぁぁっ!」ドスッ

バイソン「ぐっ……おっと……」ヨロッ


実況「おっと、おっと! 少し、バイソンがよろけたか!?」

元「いいんじゃないですか? 効いてますよ、コレ」

ヤムチャ「どうしたぁ、オイっ! 効いてんじゃねぇか、この野郎!」

バイソン「……まぐれ当たりで、嬉しそうになりやがって」

ヤムチャ「しゃあぁ! もう一発だ!」


実況「さぁ、ヤムチャが気合を入れたっ! そして、再びロープに走るっ!」


ヤムチャ「……うおおおぉぉっ!」


ヨーシ! イケー、ヤムチャー!


ヤムチャ「喰らえっ……! ショルダー……」

バイソン「そう何発も喰らってやると思うなよ!? このクソ餓鬼めっ!」

ヤムチャ「……えっ?」

バイソン「うるぁっ! アックスボンバーだっ!」ガスッ

ヤムチャ「……グガッ」


実況「おぉ~っと! ここで、バイソンのアックスボンバーだっ! ロープから返ってきたヤムチャにカウンターのアックスボンバーをくらわせたっ!」

元「……ちょっと、ヤムチャ君の攻めが単調になりすぎちゃったね。バイソン君は狙ってたよ、きっと」

実況「さぁ、カウンター気味のアックスボンバーをくらい……ヤムチャ、大きくダーウン!」

元「……そういや、今のアックスボンバーはちゃんと肘をぶつけてたね」


バイソン「余裕ぶって、調子に乗りやがって、このクソ餓鬼が……俺はおめぇみてぇな奴が、一番嫌いなんだよぉ!」

ヤムチャ「くっ……くそっ……」


実況「さぁ、ここで、ダウンしているヤムチャに、バイソンがゆっくりと近づいていきますっ!」

今日はここまでです

バイソン「……おらぁっ!」ガスッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「さぁ、バイソンがヤムチャを大きく踏みつけます!」


バイソン「……調子に乗ってんじゃねぇぞ、この野郎! えぇっ!」

ヤムチャ「!」


実況「おっと、ここでマウントポジションっ! バイソンはヤムチャの上にのしかかり、抑えつける!」


バイソン「おめぇは黙ってやられてればいいんだよっ! こうやってなぁ!? オラオラァっ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」


実況「そして、ヤムチャにパンチの連打連打だっ! ヤムチャも懸命にガードをするっ!」

バイソン「オラっ! 死ねっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……くっ」

バイソン「……ガードしてんじゃねぇよっ! ホラ、手ぇどけろっ!」ゴスッ

ヤムチャ「ぐぐっ……」


実況「さぁ、バイソンのラフ殺法! ヤムチャ、なんとか耐え凌げるかっ!?」

元「何発かいいの入ってるからね……ちょっとマズいね……」


バイソン「オラオラっ! 死ね、このクソ餓鬼がっ!」ガスガス

ヤムチャ「くっ……くそっ……!」

ダン「おい、バイソン! 拳はやめろっ! 拳で殴るのはよぉ!」

バイソン「……あぁ?」

ダン「拳で殴るのは反則だっ! やるんだったら、肘をを使えっ! ここでよぉ?」チョンチョン

バイソン「……あぁ?」


実況「おっと、レフェリーが自分の拳と肘を指差し、バイソンに何か言っておりますが……」

元「……バイソン君、拳で殴ってるからね。反則だよ。プロレスだったら、肘でいかなきゃ」

実況「おっと、おっと! これはラフ殺法とでも言えばいいのでしょうか!?」


ダン「わかったな、バイソン!? 肘だっ! 肘でやる分にはいいが……拳でだったら、反則だ!」

バイソン「俺に指図すんなやゴルァ! 知るかよ、そんな事はよぉっ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」


実況「だがしかし、バイソン! レフェリーの制止も聞かずに構わず拳でヤムチャを殴り続ける!」

バイソン「オラオラ、どうだ!? おめぇはこうやって黙ってやられてればいいんだよぉ!」ガスガス

ヤムチャ「ぐっ……くそっ……」


ブー、ブーブー

実況「さぁ、ラフ殺法で攻めているバイソンに、会場からはたまらずブーイング! だがしかし、バイソン、容赦ありません!」


バイソン「オラオラ、舐めやがって、この野郎……調子に乗ってんじゃねぇぞっ!」ガスガス

ヤムチャ「うっ……くそっ……」

ダン「バイソンいい加減にしろっ! お前、反則負けにするぞ!?」

バイソン「拳で殴るのは反則なんだな……? だったら、違う攻め方したら、文句ねぇんだな!?」

ダン「あぁ、拳で殴らなければ、オッケーだ!」

バイソン「……だったら」ググッ

ヤムチャ「うっ……ぐっ、ゲホっ……」


実況「おっと、ここでバイソンがヤムチャを首を締めたっ! ラフ殺法が、どんどん過激になっております!」


バイソン「オラ、 このまま死にやがれっ……!」

ヤムチャ「ガ、ガガッ……」


実況「さぁ、首を締めたまま、ヤムチャの頭を何度もリングに叩きつける! これはヤムチャもピンチか!?」

元「……結構、スタミナ奪われてると思うよ。何とかしなきゃ」


ダン「おい、バイソン! おめぇ、何やってんだよ!?」

バイソン「拳で殴るのが反則なんだから……こうやって、首締めてんじゃねぇかっ!? 見りゃわかるだろっ!」

ダン「おめぇ、そういう事じゃねぇだろうが! とにかく、やめろっ! 本当に死んじまうぞっ!」

バイソン「こっちは殺す気でやってんだよぉ!? 邪魔すんじゃねぇ!」ググッ

ヤムチャ「ガッ……グッ……ゲホっ……」

ダン「もういいっ! とにかくやめろっ……! いいから、やめろっ……!」

バイソン「何だ、てめぇ!? 邪魔してんじゃねぇぞ!?」


実況「おっと、この攻撃には、流石にレフェリーも身体を張って、制します」

元「うん。そもそも拳で殴るのが反則だったしね」


ダン「ほら、離れろっ……! 一旦、落ち着け……バイソンっ……!」グイグイ

バイソン「何で止めんだよ、糞が! おいっ、邪魔してんじゃねぇよ!?」

ヤムチャ「うっ……ううっ……」

ダン「いいから、落ち着け、バイソンっ! あのなぁ……?」

バイソン「あぁっ!?」

ダン「拳で殴るのも……首を締めるのも、反則だ! おめぇ、知ってんだろが!」

バイソン「あいつが俺を舐めた態度を取ったから、思い知らせてやっただけだよ! なんか、文句あんのか!?」

ダン「……だからといって、反則を使っていい理由にはならない。 一旦、頭を冷やせ」

バイソン「あぁ!? 誰に向かって文句言ってんだ、ゴルァ! なんだったら、おめぇからぶっ飛ばしてやろうか!?」

ダン「お、おいおい……ちょっと待てよ……俺は関係ねぇだろが……」


実況「おっと……バイソン、かなりヒートアップしている模様です。バイソンの怒りはまだ収まらないか!?」

元「……おっ」


ヤムチャ「うっ……くそっ……」ムクッ

バイソン「おめぇは、俺の邪魔しただろ!? だったら、俺の敵なんじゃねぇのか、えぇっ!?」

ダン「ま、待てよ……俺はレフェリーだよ……中立の立場だから、落ち着けって……」

ヤムチャ「ううっ……くそっ、好き勝手にやりやがって……」ヨロヨロ


実況「おっと、ここでヤムチャが立ち上がったぞ! 足元はフラついているが……これは、大丈夫なのか!?」

元「まぁ、かなりスタミナ削られたみたいだしね……でも、これチャンスじゃないですか?」


バイソン「中立の人間がなんで、俺を止めんだよ! おめぇ、邪魔したじゃねぇか!?」

ダン「だから、おめぇが反則技を使ったのがそもそもの問題でな……」

ヤムチャ「この野郎……好き勝手にしやがって……」


実況「さぁ! ここで、ヤムチャがレフェリーと揉めて、ガラ空きになっているバイソンの背後に狙いを定めたっ!」

元「チャンスっ……! 行けっ……! 行けっ……!」

ヤムチャ「……うるああぁぁっ!」ドスッ


実況「さぁ! これはドロップキックか……? ヤムチャの飛び蹴りが、ガラ空きになったバイソンの背中を捉えたっ!」


バイソン「ガッ……! うおっ……!」

ダン「お、おいっ……! バイソン、こっちに倒れこんでくんじゃねぇよ! う、うわぁっ!」


実況「さぁ、バイソンを背後からの飛び蹴りで、ダウンさせるっ!」

元「あれ……? 今、レフェリーの人、巻き込まれなかった……?」


バイソン「いてぇ……くそぉ……なんだ、なんだ……?」

ヤムチャ「……おらあぁぁっ!」ドスッ

バイソン「……グガッ!」


実況「さぁ、そしてエルボードロップ! うつ伏せに倒れたバイソンの背中に、強烈な肘を突き立てる!」

ヤムチャ(ここからだ……ここから……)

バイソン「ううっ……くそっ……」ムクッ


実況「さぁ、ここでバイソンが起き上がったが……少し、ダメージを受けてしまったか……?」


ヤムチャ(ここから……盛り上げなければいけない……大丈夫だ……きっと出来るはず……)

バイソン「……この野郎、不意打ちか? 汚ぇ奴だな、おめぇはよぉ」

ヤムチャ「……うるああぁっ! 行くぞ、バイソンっ!」

バイソン「……あぁ?」


実況「おぉ~っと! ヤムチャが叫んだ! 吠えたっ! まだまだ、ヤムチャは死んではいないっ!」

ヤムチャ「……うるあぁぁっ!」シュッ

バイソン「くっ……!」


実況「ヤムチャのハイキックっ! だが、これはバイソン、ブロックっ!」


ヤムチャ「うるあぁっ! もう一発っ!」シュッ

バイソン「バカの一つ覚えだな……ったく……ん……?」

ヤムチャ「うるあぁっ! ミドルキックだっ!」

バイソン「しまった……! フェイントか……グッ……!」


実況「おっと、これはミドルキックだっ! バイソンの脇腹に突き刺さったっ!」

元「ハイキックから、変化しましたね」


ヤムチャ「どうだっ!?」

バイソン「うっ……くそっ……」ヨロッ


オー!イイゾー! ヤムチャー!

実況「おっと、バイソンが少し、フラついたか!?」

ヤムチャ「よしっ……! ぬんっ……!」グイッ

バイソン「くっ……うおっ……」


実況「さぁ、そしてここでヤムチャがバイソンを持ち上げて……」


ヤムチャ「……うるあぁっ!」ドシーンッ

バイソン「……ぐわっ」


実況「強引に落としていったぁ! 荒々しいボディスラムだっ!」


ヤムチャ「よしっ……!」

実況「おっと……? ここで、ヤムチャが少し体制を低くして構えたぞ? これは、何か狙っているのか!?」

元「う~ん……? そうなのかなぁ?」

ザワ……ザワ……

ヤムチャ(大丈夫……歓声ではないけど……やっぱり、反応があるって事は……大丈夫なはずっ……!)

バイソン「うっ……ううっ……」


実況「さぁ、ヤムチャが、冷静にバイソンの動きを観察しているっ! 一体、何を狙っているのか!?」

元「多分、起き上がりのタイミングに合わせて……何か仕掛けるつもりなんじゃないかな……?」


バイソン「……ううっ」ムクッ

ヤムチャ(よしっ! 今だっ……!)ググッ

バイソン「……んっ?」


実況「おっと……! ヤムチャが動いたぞっ!?」

ヤムチャ「……うおおぉぉっ!」スパーンッ

バイソン「な、なんだと……?」


実況「おぉ~っと! これはトラースキックだっ! バイソンの起き上がりのタイミングを見計らって、ぶち当てたぁ!?」

元「いいですよ! 起き上がりのカウンター気味に入ったし……いいの入りましたよ!?」

実況「バイソンも大の字ですっ! 確実に急所を捉える、ヤムチャのトラースキックだぁ!」


バイソン「ぐ、ぐはぁ……」バターンッ

ヤムチャ(ど、どうだっ……!?)

オー! ヤムチャー! イイゾー!


ヤムチャ(よ、よしっ……!)

バイソン「……ぐっ」

ヤムチャ「よしっ……次はフォールだっ!」


実況「さぁ、ここで仕留めるか!? ヤムチャがフォールに入ったぁ!」


ヤムチャ「レフェリー! カウントをお願いしますっ!」

バイソン「……」

ヤムチャ「あれ……レフェリー……? カウント……」

バイソン「……」

ヤムチャ「あれ……? レフェリーが……いねぇぞ……?」キョロキョロ


実況「おっと、これはどういう事だ!? レフェリーがリング上にいない! レフェリーがいないぞ!?」

ダン「いてて……くそっ……バイソンの野郎……」

観客「おい、何やってんだよ! カウント取りに行けよ! 何、やってんだ!?」

ダン「ちょっと待て……頭、打ったんだ……ちょっとだけ待ってくれ……」


実況「おぉ~っと、 レフェリーは場外にいました! しかし、どうしてあんな所にいるんでしょうねぇ、元さん?」

元「え~っと……さっきのヤムチャ君のドロップキックの時だね」

実況「……ドロップキックの時?」

元「バイソン君が前のめりで倒れて……レフェリーを巻き込んでしまったの。そのせいで、彼は場外に落下しちゃったんだね……」

実況「おっと、そういえば……少し、頭を抑えてますね……大丈夫なんでしょうか……?」


観客「おい、何やってんだ! 早くリングに上がれっての!」

ダン「よし、よし……おぉっ、もう大丈夫だ……! よしっ、行くぞっ!」

実況「さぁ、ここでレフェリーが、リング上に戻ります!」


ヤムチャ「何処行ってたんっすか! 早くカウントして下さいよ!」

ダン「お、おう……悪いな……よしっ! カウント取るぞっ!」


実況「さぁ、ここでようやくレフェリーがカウントを取ります!」


ダン「ワンっ……! ツーっ……!」

バイソン「……フンッ」グッ

ヤムチャ「……うおっと!」

ダン「カウントはツーだ! ツーカウントだっ!」


実況「おっと……少し、バイソンに回復の時間を与えてしまったか? カウントツーでバイソンは返していきます!」

元「レフェリーがすぐカウントいければねぇ……ちょっと、勿体なかったね」

今日はここまでっす

うおおおおおおお!!!
レフェリー巻き込んでなきゃ終わってたー!!!

ところで、拳がダメで肘がOKな理由知ってたら試合後にでも解説よろです
どう考えても肘のが凶器やろ

ちな、猪木のは拳ではなくて指(第二間接)だからOKだそうです;

バイソン「くっ……」ヨロヨロ


実況「さぁ、何とかバイソンが立ち上がった、が……」

元「うん。結構ダメージが残ってるみたいだね。チャンスだよ」


ヤムチャ「よしっ……! ここがチャンスだ、行くぞっ……!」

バイソン「くそっ……舐めやがって……」

ヤムチャ「……うおおおぉぉぉっ!」バシーンッ

バイソン「……ぐっ!」


実況「さぁ、ヤムチャが張った、張ったぁ~! 胸元にキツい逆水平チョップをお見舞いだぁ~!」


ヤムチャ「次は蹴りだっ! うおおおぉぉっ!」シュッ

バイソン「……ぐっ!」フラッ


実況「そして、お次はミドルキックっ! いいぞ、バイソンが苦悶の表情を浮かべているっ!」

ヤムチャ「……次は持ち上げて」ググッ

実況「そして、ヤムチャが掴みにかかったっ!」


ヤムチャ「……うおおおぉぉっ!」

バイソン「くっ、この野郎……させるかよ……」グイッ

ヤムチャ「ん……? う、うおっ……」


実況「おっと、ここでバイソンが耐えます! ヤムチャの頭を脇の下に抱え、スープレックスにいかせませんっ!」


ヤムチャ「お、おいっ……この野郎っ……」

バイソン「うおっ……くそっ……くそっ……」ヨロヨロ


実況「おぉ~っと、そして二人はもつれるようにコーナーの方へ!」

サガット「バイソン、こっちだっ!」

バルログ「早く、来なさい!」

バイソン「おうっ……!」ドスッ

ヤムチャ「……ん?」


実況「さぁ、そのままバイソンは自軍コーナーの方へとヤムチャを引き連れて戻りました」


バルログ「そのまま、抑えていなさいっ! 次は私が行きますっ!」

バイソン「おう、バルログ……頼んだぜ……」

ヤムチャ「……えっ?」


実況「おっと、ここでバルログが強引にタッチします! ここで試合権はバルログに移った! バルログがリングインっ!」

バイソン「よし、バルログ……やってくれ……」

バルログ「えぇ、しっかり、抑えつけておいて下さいよ……」

ヤムチャ「おい……ちょっと待てよ……離せよ……」

バルログ「……ヒャオっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……痛ぇっ!」


実況「おっと、おっと! ここで、バルログがヤムチャのガラ空きになった脇腹に、エルボー攻撃を喰らわせる!」

元「バイソン君が、まだヤムチャ君を押さえつけてるからね……連携攻撃だ」


バイソン「よし……いいぞ、バルログ……やっちまえっ……!」

ヤムチャ「おいっ……ちょっと、待て……離せよ、この野郎……」

バルログ「……ヒャオっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……痛ぇっ!」

バルログ「……ヒャオっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……ぐっ!」ガクッ


実況「おぉ~っと! ヤムチャが片膝をついた!」

元「う~ん……バイソン君をいい具合に追い詰めたんだけどね……上手く逃げられて、捕まっちゃったね……」


バルログ「よし……そろそろ、いいでしょう。バイソン、貴方は下がって、休みなさい……」

バイソン「おう、後は任せたぜ、バルログよぉ!」

ヤムチャ「うっ……くそっ……」

バルログ「……さぁ、ヤムチャ君、こっちへ来るのですよ」

ヤムチャ「うぅ……くそ……リュウさん、ケンさん……」ヨロヨロ


実況「さぁ、そして……ここで、バルログがヤムチャを引き連れて……ロープ際へと移動するぞ……」

元「ヤムチャ君、苦しそうですねぇ……手を伸ばしてリュウ君と、ケン君に交代したそうにしていますよ」

バルログ「……ヒャオっ!」

ヤムチャ「……ん?」


実況「おぉ~っと、ここで、バルログがセカンドロープに飛び乗りっ……!」


バルログ「……ヒョオオオォォっ! ヒャオっ!」

ヤムチャ「えっ……えっ……うおおっ……おおおっ!」


実況「そのままロープの反動を利用した、スイングDDTだっ! ヤムチャの脳天がマットに突き刺さるっ!」


バルログ「……よしっ! とどめを刺してあげましょう! この私の美しい技でね?」

ヤムチャ「ううっ……くそ……もう、ダメだ……」バタッ


実況「さぁ、そして大の字にダウンしているヤムチャを尻目に……バルログがコーナーポストの方へ移動します!」

バルログ「……フッ」

実況「さぁ、バルログがコーナーポストの上で、決めているっ! 格好をつけているっ!」

元「凄いですね……あんな、不安定な場所でよくあんなポーズして、バランス取れますよねぇ……」


バルログ「さぁ、ヤムチャ君……早く起き上がりなさい……美しいショーの幕開けです……」

ヤムチャ「ううっ……くそっ……」


実況「慎重にヤムチャに狙いを定めているっ! だがしかし、そんなに格好をつけなくてもいいのではないか、バルログ!」

元「……ほら、バルログ君、ナルシストだから」


ヤムチャ「ううっ……」ムクッ

バルログ「……フッ、いいですよ。起き上がりましたね」

ヤムチャ「ううっ……くそっ……もうダメだ……ここはケンさんに交代しよう……」フラフラ

ヤムチャ「ううっ……ケンさん……」ヨロヨロ

リュウ「おいっ!」

ケン「ヤムチャぁっ!」

ヤムチャ「わかってます……今、交代しますから……」ヨロヨロ

リュウ「そうじゃねぇっ!」

ケン「後ろだ、後ろっ! バルログを見ろっ!」

ヤムチャ「……えっ?」

バルログ「フッ……ヒョオオオォォッ!」シュッ


実況「バルログが跳んだああぁぁっ! 交代しに行こうとコーナーへ戻ったヤムチャの背中を狙い撃ちだああぁぁっ!」

元「コーナーの対角線上まで、飛んでますよ!? あんな勢いついたミサイルキック喰らったら……」


バルログ「ヒャアアァァオッ!」ドスッ

ヤムチャ「うおおおぉぉっ……! ぐああぁぁっ!」


実況「鋭いミサイルキックがヤムチャの背中に命中っ! ヤムチャは、そのまま吹っ飛んだあぁっ!」

元「あっ……でも、リュウ君達の元に近づけましたね? 幸か不幸かは、わかりませんけど」

バルログ「フッ、どうでしたか……私の美しいミサイルキックは……」

ザワ……ザワ……

バルログ「おっと……今回はいつものブーイングではないのですね……だがしかし、もっと声援を送っていただきたいものです……」


ケン「……よし、ヤムチャ、次は俺が行くっ! お前は休んでろ!」

ヤムチャ「うっ……ううっ……」


実況「おっと、ここでケンが強引にヤムチャにタッチ! 試合権利はケンへと移ります!」

元「……吹っ飛んだ位置が幸運だったね」


ケン「オイっ、バルログ! 次は俺が相手だっ!」

バルログ「……ん?」


実況「さぁ、ここで交代した、ケンが今、リングインしようと……いや、おっと! これは!」

ケン「よっと……」ヒョイッ

バルログ「……何!?」


実況「ケンが一度、トップロープの上に飛び乗り……」


ケン「よっとっ……飛び技使えるのは、おめぇだけじゃねぇんだよ!」

バルログ「くっ……醜い者めが……出しゃばった真似を……」


実況「そして、ロープの反動をつけて……飛んだああぁぁっ!」


ケン「うるああぁぁっ! ミサイル竜巻旋風脚だああぁぁっ!」ズガーッ

バルログ「ぬっ……ぐ、ぐわあぁっ……!」


実況「これはスワンダイブ式のミサイル竜巻旋風脚っ! バルログの正面から、ぶち当てたぁっ!」

元「いいですね。シャドルーに傾きかけた嫌な流れを、払拭できたんじゃないですかね?」

バルログ「……ぐぐっ」

ケン「ヘイヘイヘイ! 行くぞ、オイっ!」


オー! イケー! ケーン!

実況「さぁ、ケンがお客さんを煽っていきます! この声援もケンの力へとなるかぁ!?」


ケン「よっしゃっ! バルログ、立てやコラっ!」

バルログ「……ううっ」ヨロヨロ


実況「さぁ、ダウンしているバルログを起こして……そのまま、担ぎ上げるっ……!」


ケン「……うおおぉぉっ!」グイッ

バルログ「くっ……くそっ……」


実況「さぁ、ケンはバルログ高々と持ち上げたぁっ! ここから、どうするっ!?」

ケン「うるあぁぁっ! ファルコンアローだっ!」ドスーンッ

バルログ「……ぐっ!」


実況「さぁ、そのまま前へと落としていった、ファルコンアローっ! バルログの背中がマットへ叩きつけられるっ!」


ケン「よし! レフェリー、このままフォールだ!」

ダン「よしきた、任せろっ!」


実況「さぁ、そしてそのままフォールへ! 今、カウントが取られますっ!」


ダン「……ワンっ!」

ケン「よし、このまま……ん……?」

ダン「……ツーっ!」

ケン「う、うおっ……!」バッ


実況「おっと、どうした事でしょう? ケンがバルログのフォールを、自らときました!」

ダン「おい、何かやってんだよ、ケン……今のはおめぇが勝手にフォールといたんだぞ? 俺、悪くねぇぞ……?」

ケン「おい、レフェリー……あっちのコーナー見てくれよ……?」

ダン「コーナー……? ん……?」

サガット「……」

ダン「お、おいっ……! サガット! おめぇ、なんでそんな所に昇ってんだよ!?」


実況「おっと、コーナーの上にはサガットがいました! 何か狙っているんでしょうかねぇ?」

元「……多分ね。あのままケン君が技とかなかったら、あそこから跳んできて、何か技を仕掛けてきただろうね」


ダン「おい、サガット、降りろっ! そんな所に昇るんじゃねぇっ!」

サガット「……わかった、素直に降りようか」


実況「ここで、サガットはコーナーポストから、降りますっ!」

元「シャドルーは、ピンチになるとすぐ動いてくるからね……フォールに行く時は、そういう所も気を使わないといけないよね」

ダン「よし、ケン……もう大丈夫だ……試合を続けていいぞ……」

ケン「……チッ、今ので決めれたのによぉ」

バルログ「うっ……ううっ……」ムクッ

ケン「……バルログ、起きちまったじゃねぇかよ」


実況「さぁ、ここでバルログが立ち上がったぁ!」

元「でも、ダメージは受けてるみたいだねぇ」


ケン「まぁ、いい……こんな、死に損ない……倒すのは楽勝だろ……」

バルログ「ううっ……くそっ……くそっ……」

ケン「よっしゃあ! 行くぞ、バルログ!」


実況「さぁ、ケンが仕掛けたぁ!」

今日はここまで

>>756
言葉足らずになるとは思うけど、挑戦してみるよ
ただ、あくまで個人的見解にはなると思う

ケン「オラオラオラオラァっ!」ガスッ

バルログ「くっ……ううっ……」


実況「さぁ、ケンが蹴り蹴り蹴りィ! 蹴りのラッシュだ!」


ケン「オラっ、どうしたぁっ! バルログ、そんなもんかぁ!?」ガスッ

バルログ「くっ……くそっ……」

ケン「ほれ、脇腹がお留守だぞ!? うるあぁっ!」

バルログ「何っ……ぐっ……!」


実況「さぁ、これにはバルログも防戦一方だ! ケンの激しい蹴りのラッシュ!」

元「おっ、今いいの入ったんじゃないですかね? ケン君、いい感じですよ」


ケン「オラオラァ! どうしたどうした、バルログさんよぉ!?」ガスガス

バルログ「うぅ……ケン君……もう勘弁して下さい……」

ケン「……あぁ?」


実況「おっと、これはどうした事か!?」


バルログ「もう、私の負けです……貴方達、空手軍団の力はよく、わかりました……」

ケン「お、おい……おめぇ、いきなりどうしたんだよ……」

バルログ「お願いです……もう、許して下さい……私、これ以上、もう戦えませんよぉ!」

ケン「な、なんだ……こいつ……」


実況「おっと、なんという事だ!? なんと、バルログが命乞いをしています! ケンの前で跪き、命乞いをしています! これは、どういった事なんでしょうか!?」

元「う~ん……さっきの蹴りが、いい所に入っちゃたのかな……?」

バルログ「実は、私……本当は空手軍団に入りたかったんです……」

ケン「……あぁ?」

バルログ「しかし、私には病気の妹がいましてね……シャドルーに人質にとられているのです……」

ケン「……おめぇ、妹とかいたっけ?」

バルログ「妹が人質に取られているから……私は、好きでもないシャドルーで戦うしかないのです……」

ケン「……ふ~ん」

バルログ「ケンさん! どうか、私の妹を助けて下さい! シャドルーを倒して……私と妹を助けて下さいよぉ!」

ケン「そうか……おめぇ、そういう理由でシャドルーに……」

バルログ「……フッ、隙あり」ニヤッ

ケン「……ん?」


実況「おっとおっと! バルログが動いたぞ!?」

バルログ「……えい」プスッ

ケン「……ぐわあああぁぁぁ!」


実況「おぉ~っと、これは、サミング! 目潰しだ! バルログがケンの瞳に目潰しを仕掛けたぁ!」


ケン「ぐっ、うわあぁ……目が……目が……」

バルログ「……病気の妹? なんだ、それは。アホか」


実況「ケンは瞳を抑えて、かなり苦しんでおります!」

元「そりゃそうだよ……目を突かれたんだから……も~う、変に情けをかけちゃ駄目だよ、あんな人に……」


バルログ「フッ、目をやられて……苦しんでいる貴方の姿……素敵ですよ……」

ケン「くそっ……この野郎……」


ブー、ブーブー

実況「会場からは大ブーイング! そりゃそうだ! しかし、いいのか、バルログ!? 今のお前の姿は間違いなく格好よくないぞ!?」

バルログ「フッ、大丈夫です……今から、格好いい姿を見せますから……ヒャオっ!」

ケン「ううっ……くそっ……バルログの野郎……」


実況「おっとおっと! バルログがロープに走ったぞ!?」


バルログ「……ヒャオっ!」シュッ

実況「そして、セカンドロープに飛び乗り……跳んだあぁぁ!」


バルログ「……ヒョオオオっ!」ドスッ

ケン「……ぐっ!」


実況「そして、一回転をして、ケンの上へと背中から落ちる! ローリングセントーンっ! ケンにダメージを与えますっ!」

バルログ「……まだまだっ!」

実況「おっと、バルログはその勢いのまま、起き上がり……今度は逆側のロープへと走ったっ!」


バルログ「連続でお見舞いです……いきますよ……ヒャオっ!」

実況「そして、またもセカンドロープに飛び乗って……バルログが跳んだぁ!」


バルログ「……ヒョオオオっ!」ドスッ

ケン「……ぐ、ぐわあああぁぁっ!」


実況「ローリングセントーン二連発っ! バルログが縦横無尽にリング上を駆け巡るぅ!」

元「間髪入れずに大技のラッシュを仕掛けてきたね……バルログ君、やっぱり身体能力は凄いね」

バルログ「どうでしたか、お客さん……? 私の美しい攻撃は……」


ブー、ブーブー

実況「さぁ、バルログが両手を広げて大アピールっ! だが、会場はブーイングの嵐だ!」

元「そりゃそうだよ……だって、目潰ししてんだもん、彼……」


ダン「おいおい、バルログ……お前、さっきケンに目潰ししなかったか?」

バルログ「えっ、目潰し……? してないですよ……私がそんな醜い、反則技を使う訳ないでしょう……」

ダン「……お前なぁ?」

バルログ「大丈夫ですって……ほら、今から、ちゃんと戦いますから……ダンさん、邪魔しないで下さいよ……」

ダン「……反則技は使うんじゃねぇぞ?」


実況「さぁ、レフェリーがバルログに警告をしているようですが……」

ケン「……ぐっ、ううっ」

実況「やはり、先程の攻撃で大ダメージを受けたのでしょうか!? ケンはまだ苦しんでおりますっ!」

ヤムチャ「……あの、リュウさん?」

リュウ「……ん、どうした?」

ヤムチャ「今日は、ケンさんとバルログさん……チョップの打ち合いとかしないんですかね……?」

リュウ「……はぁ?」

ヤムチャ「いや、技を出す前には、そういう攻防して……お客さんを煽るんでしょ? 今日は二人、いきなり大技から入ってません?」

リュウ「……あのなぁ? お前が最初にバイソンとそういう形式の試合作ってねぇだろが?」

ヤムチャ「……へ?」

リュウ「どのタイミングでチョップの打ち合いするんだよ? 今からするのか? それで、お客さん盛り上がるのか、えぇ?」

ヤムチャ「え~っと……どういう事ですかねぇ……?」

リュウ「……ったく、この前の試合は、お前がケンに変わるタイミングで、同時に相手も交代しただろ?」

ヤムチャ「はい」

リュウ「今日は、どうだ? 同時に交代したか?」

ヤムチャ「え~っと……いや、バイソンさんがバルログさんに変わって、俺とちょっと戦いました」

リュウ「それで、ケンに交代したよな?」

ヤムチャ「……はい」

リュウ「同時の交代ではない……スタミナを少し、消費した人間と……スタミナ万全の人間の試合になるって事だ」

ヤムチャ「……ほうほう」

リュウ「今日は、前の試合と違って、25分決着じゃなくて、20分決着なんだ……何処かで5分の時間を削らなくてはならねぇ」

ヤムチャ「……ほうほう」

リュウ「そんな中、ちんたらチョップの打ち合いしてる時間ある? 大技から始めて……相手のスタミナを奪って交代させて、最後の人間に繋がなきゃいけねぇだろ?」

ヤムチャ「……なるほど」

リュウ「今日は、間髪入れずに、大技のラッシュをする試合なんだよ……そもそも、試合作ったのおめぇじゃねぇか……」

ヤムチャ「……へ、俺が?」

リュウ「……それよりさぁ?」

ヤムチャ「何ですか?」

リュウ「おめぇ、ドロップキックの時に、バイソンに背後から攻撃しただろ?」

ヤムチャ「あっ、はい……バイソンさんに、そう言われました」

リュウ「今日は、見逃してやるけど……次からはするなよ?」

ヤムチャ「……えっ、どういう事ですか?」

リュウ「汚ぇ手段は使うなって言ってんの。やるんだったら、正面から蹴れ。正面から」

ヤムチャ「……正面から?」

リュウ「あいつらは、ヒールだから、不意打ちでも構わねぇけどよぉ……俺達はベビーなんだよ。卑怯な手段、使っちゃいけねぇだろうが!」

ヤムチャ「……あっ、はい」

リュウ「おめぇ、自分の立場考えろや! バカとつるんで、変な戦い方覚えてるんじゃねぇよ!」

ヤムチャ「え~っと……す、すんません……」

バルログ「ヒャオっ!」

ケン「……ぐっ!」


実況「さぁ、バルログの高速ブレーンバスター! 少し、ケンがやられている時間が長くなってきました!」

元「う~ん……あの、サミングから流れ変わっちゃったねぇ……」


バルログ「さぁ、ケン君……起きなさい……そして、走りなさい……」

ケン「ううっ……くそっ……」ヨロヨロ


実況「バルログが、ケンを引き起こし……そしてコーナーへ振ったぁ!」


ケン「……ぐっ!」

バルログ「……ヒャオっ!」


実況「そして、バルログも突っ込んできたぁっ! 串刺しのバックサンドエルボーがケンに突き刺さるっ! コーナーと肘との強烈なサンドイッチ!」

バルログ「さぁ! ケン君……コーナーで私のサンドバッグへとおなりなさいっ! ヒャオっ!」バシーンッ

ケン「……ぐっ!」


実況「さぁ、ここでコーナーに張り付いたケンに対して、逆水平チョップっ! コーナーマットを背にしているケンには、逃げ場がありませんっ!」


バルログ「連続でいきますよっ! ヒャオっ! ヒャオっ!」バシーンッ

ケン「ううっ……! ぐっ……!」


実況「さぁさぁ、逆水平チョップを、二連発……そして、三連発! ケンに連続で打ち込んでいきますっ!」


バルログ「フッ、やられている貴方の姿……なかなか美しいですよ……」

ケン「……ちくしょう。舐めんじゃねぇぞ」

バルログ「口だけは達者ですねぇ……もう、反撃する力も貴方には、残っていないでしょう……」

ケン「へへ、そりゃ、どうかな……? 空手軍団の底力……舐めてたら、痛い目に合うぞ?」

バルログ「……何?」

ケン「うおおぉぉっ! いつまでも、やられてると思うなよ! 行くぞっ!」

ケン「うおおおっ! 疾風迅雷脚っ!」ズガッ

バルログ「何……!? ぐわあぁっ!」


実況「おっと、ここでケンがいったぁ! 回し蹴りをバルログの脳天にブチ当てたぁ!」

元「疾風迅雷脚ですね!」


ケン「うるああぁぁっ! ここで、仕留めてやるぜぇっ!」

バルログ「ぐっ……ううっ……ぐぐっ……!」


実況「さぁ、ケンの疾風迅雷脚っ! 回し蹴りの連打で、バルログを押し込んでいくっ! バルログはもうリングの中央まで、押し込まれたぁ!」


バルログ「ぐぐっ……おおっ……」ヨロヨロ

ケン「まだまだだぁ! 向こうのコーナーまで、運んでやるぜぇ! オラオラオラっ!」


実況「さぁ、ケンの疾風迅雷脚は止まらない! 止まらないっ! まだまだ、バルログを押し込んでいくっ!」

ケン「オラオラオラオラっ!」

バルログ「こ、こいつ……まだ、こんな力が残っていたのか……」ドンッ


実況「さぁ、ついにバルログがコーナーまで追い詰められたぞっ!」


バルログ「何……!? ここは、コーナーか……」

ケン「うおおぉぉっ……! フィニッシュっ……!」

バルログ「何……!? しまった、逃げ場がない……」

ケン「うるああぁぁっ!」スガァッ

バルログ「……ぐわああぁぁ!」


実況「そして、ここでフィニッシュ! 竜巻旋風脚がバルログに突き刺さったぁ!」

元「いいですよ。コーナーまで、回し蹴りの連打で押し込んで……逃げ場のない状況へ持ち込んで竜巻旋風脚でフィニッシュ。いい連続攻撃ですね」

実況「我々はケンの意地を見たっ! ケンの必殺技の疾風迅雷脚で形成逆転か!?」

今日はここまで

バルログ「ううっ……」バターン

実況「さぁ、バルログ、ダーウンっ! リング上で大の字だ!」

元「よしっ……決めちゃいましょう!」


ケン「ううっ……くっ……」フラフラ

実況「おっとおっと! だがしかし、ケンの脚元もフラついているぞ!? これは、フォールへ行けるのか!?」

元「ケン君っ……! 頑張ってっ……!」

実況「疾風迅雷脚で最後の力を使い果たしてしまったか!? おっと……!」


ケン「くそっ……後少しだってのに……もう、スタミナが……」バターン

実況「おっとおっと! ケンもここでダウンしてしまったぁ~!」

ダン「おいっ、ケンっ! バルログっ! おめぇら大丈夫か!?」

実況「さぁ、ここでレフェリーが両者を見回しております!」

元「お互い、起き上がれない程のダメージ受けてるんだし……10カウント決着になっちゃうのかねぇ……?」


ケン「……ううっ」

バルログ「……ううっ」


ダン「よし、カウント取るぞ! 1……2……!」

実況「さぁ、ここでレフェリーが、カウントを取り始めます! ケンとバルログ……どちらが先に立ち上がるのかぁ!?」

リュウ「ケン! あと少しなんだっ! しっかりしろっ!」

ヤムチャ「ケンさんっ……! 立って下さいっ……!」


実況「さぁ、コーナーにいる、リュウとヤムチャも、必死にケンに声をかけるっ!」

ケ・ン ! ケ・ン !

実況「さらに、会場のお客さんからも大ケンコールだっ! さぁ、ケン! この声援に応えられるか!?」

ケン「わかってるよ……今、立ち上がるから……ちょっと、待ってろや……」ググッ

実況「おっと、ここでケンが、動いたぞ!? 立ち上がれっ! さぁ、立ち上がるんだ、ケンっ!」


サガット「……バルログ、 何をしている! 早く立てぇ!」

実況「おっと、ここでサガットが叫んだぞ!?」

元「……寡黙なサガット君が、あんな風に感情出すなんて珍しいね?」

バルログ「くっ、サガット……貴方の声で目が覚めました……ありがとうございます……」ムクッ

実況「おっと! 先に立ち上がったのは、バルログ!」

バルログ「うぅ……ケン……」ヨロヨロ

実況「そして、フラつきながらも、ケンの元に歩み寄り……」


バルログ「ヒョオォォ……ヒャオッ!」ドスッ

ケン「……ぐっ!」


実況「ケンにエルボードロップをお見舞いだぁ!」

バルログ「はぁはぁ……これが私に出来る精一杯です……サガット……後は任せますよ……」ヨロヨロ

実況「さぁ、そしてフラついた足取りで、サガットへと交代しに行く!」

バルログ「サガット……任せました……」

サガット「よしっ……! 後は、俺が決めるっ……!」


実況「さぁ、ここでタッチが成立っ! 試合権はバルログからサガットに! サガットが今、リングインしますっ!」

元「このタイミングで、ケン君もリュウ君に交代したいよね」


リュウ「ケン、 こっちだ! 早く来いっ!」

ケン「あぁ……わかってるぜ、リュウ……」


実況「さぁ、ケンは這いずるように移動しながら……リュウの元へと歩み寄ります!」


サガット「フン……簡単に逃がしてやると、思うなよ……?」

サガット「……フンっ!」グイッ

ケン「ぐっ……うおおぉぉっ……!?」


実況「おっと、サガットがケンの足を取った! ケンの足を捉え、自分の胸元に抱え込むように捉えたっ!」


サガット「足を壊せば……もうチンタラ逃げる事は出来んだろう……なぁ、ケンよ?」

ケン「ぐっ、くそっ……離せ……離しやがれっ……!」

サガット「うおおおっ! フンっ……!」グイッ

ケン「!」


実況「さぁ、そしてケンの足首を締め上げる! アンクルホールドだっ! これはスタンディングのアンクルホールドだっ!」


サガット「……うおおぉぉっ!」グイッ

ケン「ぐ、ぐわあああぁぁぁっ!」

サガット「オラオラァ! どうしたぁ、ケンっ!」グイグイ

ケン「ぐっ……ううっ……!」

サガット「片足取られちゃ逃げられはしないだろう! おめぇはここで終わるんだよぉ!」

ケン「ぐっ、くそっ……舐めた事、言ってんじゃねぇぞ……」

サガット「舐めた事、言ってんのはどっちだ! うおおおぉぉっ!」グイッ

ケン「ぐ、ぐわああぁぁぁっ……!」


実況「さぁ、サガットが締め付ける締め付けるっ! ケンの足に狙いを定めた関節技だ!」

元「……キツいですね。サガット君は長身だから、ケン君殆ど宙づりみたいな状況になってますね……これは逃げにくいですよ……」


サガット「……オラァ! 早くギブアップしろや!」

ケン「ふざけんじゃねぇ……そんな格好悪い真似、出来るかよ……」

サガット「だったら、自分からしたくなるように締め付けてやるよ! オラァっ!」グイッ

ケン「ぐ、ぐわああぁぁぁっ……!」

実況「さぁさぁ、ケンの足に、どんどんダメージが蓄積されていきます!」

元「なんとか、ロープまで逃げたいけど……あの体制じゃ、ロープまで行くのも難しいからね……」


サガット「オラ、ケンっ! 得意の足を潰されたら、お前はもう終わりなんだよ! もう、無駄だから早くギブアップしやがれ!」

ケン「ぐぐっ……舐めてんじゃねぇよ……それに、足は二本あるんだぜ……?」

サガット「……はぁ?」

ケン「おめぇごとき……片足残ってりゃ十分だぜ……ボケっと突っ立って……狙いもつけやすいしな……?」

サガット「……減らず口だけは、達者な男だ」

ケン「減らず口じゃねぇ……こっちの足が残ってるんだよぉ! オラァ!」シュッ

サガット「ん……? う、うおっ……! 何っ……!?」


実況「おっと、ここでケンがサガットの顔面を蹴ったぁ! 捉えられていない方の足を使って、慎重に狙いを定めて、サガットの顔面に蹴りをぶち当てたぁ!」

元「いいですよ! サガット君、たまらず、手を外しちゃいましたね!」

実況「いいのが決まったかぁ!? サガット、ダウンします! ケン、なんとかアンクルホールドから逃れました!」

サガット「……ぐっ、くそっ」バターン

ケン「ちくしょう……好き勝手やりやがって……足、痛ぇな、コレ……」

リュウ「ケン、大丈夫か!? 俺に変われっ!」

ケン「あぁ、悪いがそうさせてもらうぜ……いい所譲ってやるんだから……決めろよ、リュウっ!」

リュウ「……勿論だっ!」


実況「さぁ、ここでケンはリュウへとタッチします! 試合権利はリュウへと移ったぁ!」


リュウ「……行くぞ、サガット!」

サガット「……ううっ」


実況「さぁ、そしてリュウはダウンしているサガットに近づいたぁ!」

リュウ「……はぁっ!」ドスッ

サガット「……ぐっ!」

実況「先ずは、エルボードロップっ! ダウンしているサガットに、強烈な肘をお見舞いだぁ!」


リュウ「まだまだぁ! もう一発行くぞ……! うおおっ!」ドスッ

サガット「……う、うぐっ!」

実況「そして素早く起き上がり……今度はジャンピングしてのエルボードロップだ! 今度は勢いをつけて肘を落としていく!」


リュウ「……もう一発っ! うおおぉぉっ!」

サガット「うっ……く、くそっ……」

実況「さぁ、リュウがロープへと走ったっ!」

リュウ「……だああぁぁっ!」

サガット「……ううっ」

実況「さぁ、ロープの反動をつけて、勢いをつけてからの……」


リュウ「……でりゃああぁぁっ!」ドスッ

サガット「……う、うぐっ!」

実況「エルボードロップっ! サガットに確実にダメージを与えていきます!」


リュウ「よしっ! このまま、決めるぞっ! うおおっ!」

オー! イケー! リュウー!

実況「リュウの間髪入れない連続攻撃、エルボードロップ三連発だぁ! そして、ここでリュウが気合を入れたぁっ!」

リュウ「起きろっ! サガットっ!」

サガット「……ううっ」ヨロヨロ


実況「そして、ここで、ダウンしているサガットを引き起こし……リュウが背後を捉えましたぁ!」


リュウ「……ドラゴンスープレックスで、仕留めるっ!」

サガット「くっ、させるか……させてたまるかよ……」


元「……ドラゴンスープレックス狙ってますね」

実況「だが、サガット! これを踏ん張る! 堪えて、スープレックスにいかせませんっ!」


サガット「くそっ、離せ……離しやがれ……!」

リュウ「……うおおぉぉっ!」グイッ

サガット「……う、うおっ!」


元「……よしっ! いったっ!」

実況「さぁ、ここでサガットの身体が持ち上がったっ!」

リュウ「ドラゴンスープレックスだあぁっ!」ドスーンッ

サガット「……ぐわぁっ!」


実況「リュウが巨体をぶん投げる! サガットの脳天をマットに激しく突き刺すっ!」


リュウ「……レフェリー!」

ダン「おうよ、 任せろっ! カウントとってやるぜ!」


実況「さぁ、そして、そのまま固めたぁ! 今、レフェリーがカウントを取ります!」


ダン「……ワンっ!」

リュウ「……よしっ!」

ダン「……ツーっ!」

バイソン「……うおおおぉぉっ! させるかよっ!」


実況「おっと、ここでバイソンが走った!」

ダン「……スリ」

バイソン「……うるぁっ!」ゴスッ

リュウ「……ぐっ!」

ダン「カウントはツーだ! ツーカウントだっ!」


実況「ギリギリです! 実にギリギリです! なんとか、バイソンのカットが間に合いました!」


バイソン「おい、サガット! しっかりしてくれよ! なんだったら、俺がこいつをやってやるからよぉ!?」

サガット「……うぅっ」

ダン「おい、バイソン……カットが終わったんだったら、とっとと戻りやがれ……」

バイソン「わかってるよ、俺に指図すんなや! おい、サガット……俺はコーナーでいつでも待ってるから……しっかりしろよ!?」

サガット「ううっ……すまない……」

なんだか投稿されねぇな
まぁ、今日はここまで これが後で5回ぐらい投稿されてたらおっかねぇな

実況「さぁ、寸前の所でバイソンがなんとかカット! 今、バイソンが大人しく、自軍コーナーへと戻っています」

元「う~ん……ケン君と、ヤムチャ君、ちょっと出遅れちゃったね……」

実況「そうですね」

元「まぁ、でもケン君は足をやられてるし……ヤムチャ君だって、バルログ君にダメージをもらって、疲れてるからね……仕方がないって言えば仕方がないんだけどね……」

実況「確かに! コーナーにいるケンとヤムチャは随分、辛そうにしていますね!?」

元「でも、それはシャドルーのバルログ君も同じ……ほら、さっき助けに来なかったでしょ?」

実況「おっ……? そうですね。バルログも随分と辛そうな表情をしています」

元「バイソン君のスタミナがちょっと回復しちゃったかな? 一歩、遅れをとっちゃったね」

実況「なるほど! だがしかし、ここでリュウがサガットを決めてしまえば、問題はないっ!」

リュウ「……サガット! 起きろっ!」

サガット「……ううっ」フラフラ


実況「さぁ、ここでリュウがサガットを引き起こした!」


リュウ「よし、たあぁっ! うるぁっ! でやぁっ!」ガスガス

サガット「ぐっ……うっ……くそっ……」


実況「さぁ、そして、蹴り蹴り蹴りィ! 蹴りのラッシュだっ! 確実にサガットを追い詰めていくっ!」


リュウ「よし、サガット……とどめにしてやる……ロープに行ってこいっ……!」ブンッ

サガット「……う、うおおぉっ!」


実況「さぁ、そしてここでサガットをロープに振ったぁ!」

元「……昇竜拳ですかね?」

サガット「ぐっ、この帝王が……この帝王が……こんなカスに……」

リュウ「……よし、カウンターで決めてやるっ!」グッ


実況「さぁ、リュウが構えた! 昇竜拳だっ! 昇竜拳を狙っているっ!」


サガット「舐めるな……この帝王を舐めるなよ、小僧……」

リュウ「……いくぞ、サガット!」


キャー! イケー! リュウー!


リュウ「うおおおっ! 昇竜拳っ!」

サガット「……舐めるなっ! タイガーアッパーカットだっ!」


実況「おっと、おっと! リュウの昇竜拳に対して……サガットもタイガーアッパーカットでぶつかったぁ!」

サガット「ガッ……グハっ……」

リュウ「何だと……!? ぐわぁっ……!」


実況「おぉ~っと、これは相打ちだ! 両者、相打ちだっ!」

元「……サガット君、意地見せたねぇ。自爆覚悟でタイガーアッパーカットでぶつかってきたよ」

実況「両者の得意の必殺技のぶつかり合いは、相打ちに終わったぁ! 両者、ダーウンっ!」


リュウ「うっ……くそっ……」

サガット「これが……帝王の意地だ……小僧め……」


ダン「おい、 おいっ! お前ら大丈夫か!? 10カウントとろうか!?」

ケン「リュウ、立ちやがれっ!」

ヤムチャ「リュウさんっ!」

リュウ「ううっ……」


バルログ「サガット、立って下さい!」

バイソン「おい、サガット! しっかりしてくれよ!」

サガット「ううっ……わかっている……わかっている……」


実況「さぁ、リュウとサガット……先に立ち上がるはどちらだぁ!?」

リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !

実況「勿論、会場からは、リュウコール! さぁ、リュウよ! 先に立って、サガットをぶちのめしてくれぇっ!」

サガット「……くっ!」ムクッ

実況「おぉ~っと! だがしかし、先に立ち上がったのは、サガット! サガットだっ!」


サガット「くっ、くそっ……随分とダメージを受けたしまったな……」ヨロヨロ

リュウ「……くっ」

サガット「少し……スタミナの回復の時間を、取らないとな……よし、リュウ! 起きろっ!」


実況「さぁ、そして……フラついた足取りでリュウの元に近づき、引き起こしたぁ!」


サガット「……オラァっ!」グイッ

リュウ「……ぐっ!」


実況「ここで、コブラツイスト! サガットは、コブラツイストをリュウに仕掛けますっ!」

実況「さぁ、サガット、お得意の関節技! リュウの脇腹にダメージを与えていきます!」

元「サガット君は、自分の長身を利用した関節技が得意だからね」


サガット「オラっ……オラっ……!」グイグイ

リュウ「……ぐっ!」


実況「さぁ、ジワリジワリと、リュウを痛めつける! ここで、リュウを決めてしまうのかっ!?」

元「いや、多分……決める気はないと思うよ……?」

実況「おっと……それは、どういう事ですか?」


ダン「リュウ、ギブアップか!? ギブアップするのか!?」

リュウ「いや、大丈夫だ……この程度の技なら、問題はない……今、振りほどく……」

サガット「……まぁ、頑張ってくれやリュウ」

元「サガット君は多分、スタミナ回復をするのが狙いじゃないのかな?」

実況「ほう……スタミナ回復……」

元「ほら、左手のクラッチも入れてないし……決めるまでの威力のコブラツイストではないよ、アレ」


リュウ「くっ、離せ……離しやがれ……」

サガット「ふぅ……汗が目に入って、痛ぇな……」ゴシゴシ


実況「おっと、その左手で、サガットが汗を拭っているのでしょうか? 確かに、何処か余力を残しているような技に見えますねぇ?」

元「必要最低限の力で、リュウ君に技をかける事によって……自分のスタミナを回復しながら……あぁ、やってリュウ君にダメージを与えているワケだね……」

実況「なるほど!」

元「やっぱり、体格が大きい分、かけられてる相手は逃げにくいからね……僕が、ああいう事やろうとしても、多分すぐ逃げられちゃうよ。上手いね」


リュウ「くそっ……離せ……離しやがれ……」

サガット「……おう、まぁ頑張れやリュウ。その間、こっちは休ませてもらうぜ」

リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !

実況「さぁ、会場からはリュウコールだ! リュウよ、このままではサガットの思う壺だ! なんとかしてくれ!」


リュウ「……おい、サガット。いつまで、技かけてんだよ? 早く、離せよ?」ボソッ

サガット「……」

リュウ「何で試合終盤で、こんな地味な技使ってんだよ……盛り下がるじゃねぇか……」ボソッ

サガット(そろそろ、いいかな……?)

リュウ「おい、聞いてんのか……早く離せって……」


リュウー! シッカリシロー!

サガット(よし……頃合いかな……?)チラッ

ヤムチャ「!」

リュウ「くそっ……離せ……離しやがれ……」

サガット「……ふぅ」ゴシゴシ


実況「さぁ、リュウがサガットに捕まっている時間が長くなってきました! サガットはスタミナ回復を狙っている! 再び汗を拭って、余裕の表情だ!」


ヤムチャ(サガットさんが、俺を見ながら、汗を拭った……これは、サインだ……)

ケン「サガットの奴、長ぇな……なんで、あんな地味な技、長々とやってんだよ……」

ヤムチャ(……よしっ! いくぞっ!)

ケン「……ん?」


実況「おっと、おっと! ここでヤムチャがリングインっ!」

元「そうだね、助けに行っちゃいましょう!」


ケン「おい、バカっ……! おめぇ、勝手に動いてんじゃねぇよ!」

ヤムチャ「うるああぁぁっ!」ガスッ

サガット「……ぐっ!」

リュウ「……えっ!?」


実況「さぁ、ここでヤムチャが、サガットに一撃をお見舞いして、サガットから救出っ!」

元「ヤムチャ君のスタミナも回復してきたようですね。バルログ君と、バイソン君……出遅れましたね」


サガット「くっ、この野郎……邪魔しやがって……」ワナワナ

ヤムチャ「うるせぇ、この野郎! 行くぞコラっ!」

サガット「……ん?」


実況「おっとおっと! 素早い動きで、ヤムチャがサガットの背後を掴んだ!」

ヤムチャ「うるああぁぁ! バックドロップだぁ!」

サガット「……う、うおっ!」ドスッ


実況「さぁ、荒々しいバックドロップっ! 強引な体制でサガットを背中から落としていったぁ!」

元「サガット君、折角スタミナ回復の時間を作ってたのに、これでパーですよ。残念でしたね」


ヤムチャ「リュウさんっ! ここで決めて下さいっ! 俺はあいつらを止めますっ!」

リュウ「おめぇ……何、勝手な事して……」


ヨーシ! リュウー! チャンスダー!


ヤムチャ「……よしっ! いくぞ、バルログ! バイソン! うおおぉぉっ!」

実況「さぁ、ここで分担作戦っ! ヤムチャがコーナーにいる、バルログとバイソンの元へと、突っ込んだぁ!」

ヤムチャ「うおおおっ! 先ずはお前からだ、ナルシスト野郎っ!」

バルログ「……甘いっ!」

ヤムチャ「うおっ……何っ……!?」


実況「おっと……これは、分担作戦失敗か!? ヤムチャの攻撃を、バルログがかわしたぁ!」


ヤムチャ「この野郎……逃がしてたまるかよ……」

バルログ「くっ……しつこいですね……醜い者めが……」


実況「だが、まだヤムチャは行くっ! バルログに掴みかかったぁ!」

元「おぉ……危ない危ない……縺れるようにして、状況に落ちましたね……」

実況「これは、分担作戦成功と言ってもいいのか……? だがしかし、バイソンはまだ残っているぞ!?」

バイソン「あの糞野郎……こうなりゃ、俺も場外でタコにしてやる……」

サガット「……うおおおおぉぉぉっ!」ムクッ


実況「おぉっと! ここで、サガットが怒号と共に起き上がったぁ! かなり、怒っています!」


サガット「この帝王に舐めた真似をしやがって……ヤムチャとか言ったな……あいつだけは許さんぞ……」ワナワナ

実況「おっと、サガットはリング上にいるリュウではなく、場外にいるヤムチャを見ている模様です!」


サガット「バイソン、交代だ! リング上ではお前が戦えっ!」

バイソン「えっ……? お、おう……わかった……」

サガット「俺は、舐めた真似をしてくれた……あいつを……殺すっ!」


実況「おっと、ここでサガットはバイソンに交代です! リュウには目もくれず、場外のヤムチャを追いかけに行ったぁ!」

元「……相当、さっきのバックドロップを喰らったのが、屈辱的だったみたいだね」

バイソン「よし……行くぞ……」

リュウ「おい、バイソン……お前ら、あいつに何か、ふっかけたんだろ……?」

バイソン「……もう少しで、試合が終わる。その事は、後で話そう」


実況「さぁ、リング上ではリュウ対バイソン! そして、場外では、ヤムチャが戦っている!」


バルログ「いきますよ……? 貴方のような、醜い者は……場外でダウンしているのが、お似合いです!」

ヤムチャ「上等だゴラァっ! かかってこいや!」

バルログ「ヒョオオォォ……ヒャオッ!」

ヤムチャ「うおっ……早っ……ぐっ……!」

バルログ「……場外は、マットと違って痛いですよ? ヒャオッ!」ドスッ

ヤムチャ「……ぐっ!」


実況「おぉ~っと! 解説の私……一体、何処を解説していいのかわかりませんっ! 場外でバルログがヤムチャにDDTを仕掛けた!」


ヤムチャ「ぐっ……うおっ……マットと違って、凄ぇ痛ぇ……」

バルログ「出しゃばった真似をするから、そういう目に合うのです……」

ヤムチャ「……ううっ」

サガット「おいコラ、そこの兄ちゃんっ! 椅子貸せや! 暫く、立って見ておけ!」


実況「おっとおっと、ここでサガットがパイプ椅子を持って……ヤムチャに狙いを定めている……! これは、ヤムチャ……場外で不味い事に、なってしまったか!?」

サガット「この野郎……舐めた真似をしやがって……死ねぇっ!」ゴスッ

ヤムチャ「……ぐっ!」

サガット「オラァっ! もう一発っ!」

ヤムチャ「……ぐわああぁぁぁっ!」


バルログ「お嬢さん……私にも、パイプ椅子を貸して下さい……申し訳ないですが、暫く立って見ていて下さいね……」

ヤムチャ「……ううっ」

バルログ「さぁさぁ、ヤムチャ君……貴方の醜い姿を皆さんに見ていただきましょう……ヒャオッ!」ゴスッ

ヤムチャ「……ぐわああぁぁぁっ!」


実況「おぉ~っと! 場外でヤムチャがパイプ椅子で滅多打ち! ヤムチャがピンチです!」

元「まぁ、でも試合権利は持ってないからね……極端な話、ヤムチャ君がやられても……リュウ君が勝てばいいんだよ……」

今日はここまでっす

リュウ「うおおおぉぉっ!」ドスーンッ

バイソン「……ぐっ!」


実況「さぁ、一方、リング上ではリュウが優勢だ! バイソンをブレーンバスターで落としていきます!」


サガット「……オラァっ!」

バルログ「……ヒャオッ!」

ヤムチャ「ぐっ……ううっ……」


ケン「おいおい……あのバカ、何やってやがる……勝手な事しやがってよぉ……」

リュウ「くそっ、サガットの野郎……バルログの野郎……試合ぶち壊してんじゃねぇよ……仕方ねぇっ……!」

リュウ「おいっ! ケンっ!」

ケン「……ん?」


実況「おっと、リュウ上のリュウがケンに声をかけたぞ!?」


リュウ「ヤムチャが捕まっている! ケンはヤムチャを助けに行ってやってくれっ!」

ケン「えっ……? あっ……そ、そうだな……」


実況「そして、場外にいるヤムチャに指を指したぁ! 助けに行ってやれとケンに指示を与えますっ!」


リュウ「ケン、こいつは俺が決める、大丈夫だ! だから、お前は……ヤムチャを助けに行けっ!」

ケン「お、おうっ……! わかったぜ!」


実況「リングの事は自分一人に任せろと言わんばかりの勢いだぁ! そして、ケン……今、ヤムチャの救出に向かったぁ!」

サガット「オラァっ! この糞がっ!」

バルログ「醜い者め……ヒャオッ!」

ヤムチャ「ぐっ……! ぐわぁっ……!」

サガット「この糞餓鬼が……帝王に舐めた真似をしやがって……ん……?」


ケン「おらあぁぁっ! 何やってんだ、てめぇっ!」ガスッ

サガット「……ぐっ!」

ケン「勝手な事してんじゃねぇぞ、この糞がっ!」

サガット「チッ、ケンも来やがったか……上等だ……バルログ、お前はその雑魚を痛めつけ続けろっ! 俺は、先ずこいつを始末する!」


実況「さぁさぁ! ここでケンがヤムチャに合流だぁっ! ピンチの弟弟子を、兄弟子は助ける事が出来るのでしょうか!?」

リュウ「ったく、どうなってんだよ……そろそろ決めねぇと……」

バイソン「……ううっ」

リュウ「うるぁっ! 昇竜拳っ!」

バイソン「……ぐわあぁぁっ!」


実況「さぁ、リング上ではリュウ対バイソン! ロープから返ってきたバイソンに、必殺技の昇竜拳をお見舞いだぁ!」


サガット「おらぁっ! ケン、行くぞっ!」

ケン「おめぇ、勝手な事してんじゃねぇぞ、この糞ボケが!」


バルログ「ヒャオッ……! ヒャオッ……!」

ヤムチャ「ぐっ……ぐぐっ……」


実況「そして場外では、ケン対サガット! ヤムチャ対バルログ! これは大乱戦! 大乱戦でございます!」

元「……あっ、リング上のリュウ君、見なよ!? ほらほら!」

実況「……ん?」

リュウ「これで、フィニッシュだっ! 行くぞっ!」ググッ

バイソン「……ううっ」ヨロヨロ


実況「おぉ~っと! あの構えは……!? 真・昇竜拳……真・昇竜拳かぁ!?」


ケン(よしっ……リュウ、決めに行ってくれたか……これで終わりだ……)

サガット「不味いっ……! バイソン、今助けに行くぞっ……!」

ケン「おっと……させるかよっ……!」ガシッ

サガット「ぐっ……! 何をする……離せ……離しやがれっ……!」


実況「ケンがサガットに、しがみついて、リングインを妨害しております! さぁ、リュウ! ここまま決めてしまえっ!」

元「……バルログの方は、どうなんだろ?」

ヤムチャ「……ううっ」

バルログ「……不味いっ! あの構えは!」

ヤムチャ「くそっ……でも、二対一じゃなくなったから……ちょっとは楽になったかな……」ムクッ

バルログ「バイソンっ! 今、行きますよ!?」


実況「おっと、バルログがバイソンの救出に走るっ!」

元「でも、ヤムチャ君も立ち上がってるし……! なんとかしてもらわないと……!」

実況「さぁ、ヤムチャ! ここで底意地を見せろっ! 弟弟子の底意地を見せるんだっ!」


ヤムチャ(よしっ……! ここで、バルログさんにトラースキックを当てて……ダウンさせるんだな……)シュッ

バルログ(ヤ、ヤムチャ君……! ちょっと……それ、狼牙風風拳の構えですよ……!? なんで、こんな大事な時に癖出しちゃうんですよ……!?)

ヤムチャ「……んっ?」


実況「おぉ~っと! ここでヤムチャが構えた! これは狼牙風風拳だっ! あの連続攻撃! 狼牙風風拳の構えだっ!」

元「行けっ……! 行けっ……! 仕掛けちゃえ!」

ヤムチャ(……やべぇ、やってしまった!)

観客「おっしゃ~、 行け~! ヤムチャ~! バルログを止めろ~!」

ヤムチャ(う、うわぁ……完全にやっちまったよ……周りの声がスローモーションのように聞こえるよ……)

観客「デビュー戦依頼、その技使ってねぇだろ!? 目の前で見れるなんて光栄だぜ! ヤムチャぁ! 行けっ! 行けっ!」

ヤムチャ(やべぇ……これ、トラースキックやってる場合じゃねぇだろ、絶対……どうしよどうしよどうしよ……)

バルログ(もういいっ……! 狼牙風風拳で来なさいっ! ホラ、ホラっ……早く、早くっ……!)

ヤムチャ(バルログさんも、戸惑ってるよなぁ……どうしよどうしよ……でもっ……)

観客「オラァっ! ヤムチャァ! 決めろぉっ!」

ヤムチャ(こんなに盛り上がってるこの人達の期待を裏切る訳にはいかねぇよな……だから……)


実況「さぁ、行けぇっ、ヤムチャァ! これが三番弟子の底意地だぁっ!」

ヤムチャ「うおおおぉぉっ! 狼牙風風拳だぁっ!」

実況「行ったぁ! ヤムチャが仕掛けたぁ!」

リュウ「うおおっ! 真・昇竜拳っ!」ズガァッ

バイソン「……ぐわああぁぁっ!」

リュウ「よしっ……レフェリー……フォールだ……」


実況「リング上ではリュウの真・昇竜拳が炸裂だぁっ! リュウはフォールに入った! これで決着か!?」


ダン「おい、リュウ、バイソン……やべぇぞ……? 場外でヤムチャが暴れてやがる……」

リュウ「……えっ?」

バイソン「……えっ?」

ダン「カウントは遅めにとってやる……だから、後はお前らがなんとかしやがれ……」

リュウ「おい、それって……どういう事……ん……?」


ヨーシ! ヤムチャー! イケー!


リュウ「……ヤムチャ?」

ヤムチャ「ハイっ! ハイっ! ハイハイハイっ!」

バルログ「ぐっ……! ううっ……! くっ……!」


リュウ「……あの、糞バカ」

ダン「よし、行くぞっ……! ワンっ……!」


実況「さぁ、レフェリーがカウントに入ったっ! そして、ヤムチャは狼牙風風拳でバルログを止めているっ!」


ダン「……ツーっ!」


サガット「くっ、ヤムチャ君……バイソンっ! ダメだ、返せっ! ここで決められるんじゃねぇ!」

ケン「あの糞バカ……あの技はやるなって言っただろう……くそっ、どうする……? 不味いぞ、これは……」


ダン「……スリ」

バイソン「リュウ君、ダメだっ……! ここは、一度、やり直そうっ!」グイッ

リュウ「あの、糞野郎っ……!」

ダン「カウントはツーだ! カウントツー!」


実況「おぉ~っと! これは驚きです! なんと、バイソンが真・昇竜拳を返しました! 実に驚きです!」

元「でも、空手軍団に有利な状況は、変わらないよ? バイソン君、ピクリとも動いてないみたいだし……」

実況「今のが、正真正銘、最後の力だったんでしょうか!? そうであれば、いいのですが!」


ヤムチャ「ハイっ! ハイっ! ハイハイハイっ!」

バルログ「ぐっ……ううっ……うおっ……」ヨロヨロ


実況「おっと……場外のヤムチャの狼牙風風拳はまだ、続いているぞ!?」


ヤムチャ「うおおおぉぉっ……! これで……フィニッシュっ!」

バルログ「……ぐわああぁぁっ!」バターンッ


実況「そして、ここで、フィニッシュっ! バルログを完膚無きまでに叩きのめしたぁ!」


ウオー! ヤムチャー! イイゾー! スゲー!

実況「秘密兵器ヤムチャ! お客さんから、大声援! 大声援でありますっ!」

ヤムチャ「……よ、よしっ!」

バルログ「……ううっ」

ヤムチャ(やべぇ……これ、後でリュウさん達に、めちゃくちゃ怒られるんだろうなぁ……)


ケン「ヘイヘイっ! ヤムチャの次は、俺だぜ! 皆、こっちに注目だ!」

ヤムチャ「……ん?」


実況「おっと……ここで、場外でケンが、大きく手を叩き、アピールしています。どうしたんでしょうか……?」


ケン「……うるぁっ! サガット、行くぞっ!」ググッ

サガット「……ぬっ?」


キャー! イケー! ケーン!

実況「おっとおっと……! ケンのあの構えは……もしかして……もしかするのかぁ!?」

ケン「行くぞっ! 神龍拳っ!」ズガアァァッ

サガット「ぐっ……ぐわああぁぁっ!」


実況「決まったぁ! ケンの神龍拳っ! 神龍拳だっ! 場外でサガットにぶち当てたぁっ!」


サガット「う、ううっ……」バターンッ

ケン「どうだっ! これが、空手軍団の実力だっ!」


キャー! ケーン! カッコイイー!

実況「これには、流石のサガットも大ダーウンっ! おぉ~っと、そして、ここでケンがリュウに指を指したぁ!」


ケン「ラストは勿論、リュウだぁっ! リュウっ! さぁ、決めちまえっ!」

リュウ「……」


オー! リュウー! イケー! キメロー!

実況「さぁ、ここでケンがリュウを指名したぁ! 次は、リュウの番だ、これは!」

リュウ「……チッ、バイソン、起きろっ! 行くぞっ!」

バイソン「……ううっ」ヨロヨロ


実況「さぁ、そして、リュウがバイソンを引き起こしっ……! 構えたっ!」


リュウ「はぁっ! 真空竜巻旋風脚っ!」ズガガガッ

バイソン「ぐっ……ぐぐっ……! うおっ!」


実況「出たぁ~! 真空竜巻旋風脚だっ! これはバイソンを完全に捉えているっ!」


リュウ「……はああぁぁぁっ!」

バイソン「ぐっ、ううっ……うおおぉっ……」


ヨーシ! キメロー! リュウー!

実況「回っております、回っておりますっ! いつもより、多めに回っております! さぁ、これで決着かぁ!?」

リュウ「……フィニッシュっ!」ズガァッ!

バイソン「……ぐわああぁぁぁっ!」

リュウ「よし、レフェリー……フォールだっ!」


実況「さぁ、完全にバイソンを捉えたリュウの真空竜巻旋風脚! そして、リュウがここでフォールに入りますっ!」


ダン「よし、カウントだっ! ワンっ……!」

キャー、キャーキャー!

ダン「ツーっ……!」

キャー、キャーキャー!

ダン「……スリーっ!」

ワー、ワーワー!


実況「決まったぁ! ここで、カウントスリー! 決着だぁ! リュウの真空竜巻旋風脚で試合は決着です!」

元「いやぁ、良かったですね。空手軍団の大技の連携で、今日はシャドルーを完膚無きまでに叩きのめしましたね」

実況「完全勝利! 完・全・勝・利でありますっ! バイソンだけではなく……場外にいる、サガットとバルログも今日は動けませんっ!」

今日はここまで

リュウ「よっしゃっ! 俺達の勝ちだっ!」

実況「さぁ、ここでリュウがリング上でガッツポーズ! 高々と拳を突き上げガッツポーズだ!」


ワー、ワーワー!


リュウ「よし……ケン、ヤムチャ! 退場だっ!」

ケン「おうっ!」

ヤムチャ「……う、うっす!」


実況「さぁ、そしてケンとヤムチャと共に、今退場しますっ!」


リュウー! ヨカッタゾー! ツギモカテヨー!

リュウ「あぁ! 任せておけっ!」

ケーン! カッコヨカッタゾー!

ケン「おう、 これが空手軍団の力だ!」

ヤムチャー! オマエモ、ヨカッタゾー!

ヤムチャ「う、うっす……! ありがとうございます……」

実況「一方、負けたシャドルー軍団は……まだ全員、大の字……惨めだ! こりゃ、実に惨めだ!」


バルログ「……ううっ」

サガット「……くそっ」

バイソン「……ぐぐっ」


ザマーネーナ! シャドルー!


バルログ「……くっ、くそっ」

サガット「ううっ……バイソン……バルログ……大丈夫か……?」ムクッ

バイソン「……ぐぐっ」


実況「おっと、ここでようやく、サガットが起き上がったかぁ!? 今、バルログの元へ行き……そしてバイソンの元へと駆け寄ります!」

サガット「……バイソン、起きろ」

バルログ「しっかりして下さいっ!」

バイソン「……ううっ」ムクッ


実況「さぁ、ようやく、バイソンも起き上がった!」


バイソン「くっ、サガット……バルログ……すまねぇ……」

サガット「気にするな……次の試合で、必ず復讐してやる……」

バルログ「えぇ、次は……容赦しませんよ……もっともっと、反則攻撃をしてやりましょう……」

バイソン「おぉ、そうだな……次は必ず、復讐してやるからよぉ……覚えておきやがれ!」

サガット「よし、そろそろ、帰るか……次だ……この怒りは次に繋げよう……」


実況「さぁ、ここでシャドルー軍団が退場! フラついた、足取りで退場しています! いやぁ、惨めなもんですねぇ!」

元「あの人達、悪い人だけど……実況の貴方が、そういう言い方するのは、あまりよくないと思うよ?」

実況「さぁ、本日の試合は空手軍団の完全勝利! 完・全・勝・利で終幕でございます!」

元「うん」

実況「だがしかし、だがしかし、だぁ~がしかし……! 空手軍団の戦いはまだまだ終わってはいないっ!」

元「うん、そうだね」

実況「シャドルー軍団には、まだ大ボスの……ベガの存在が残っております!」

元「今日の勝利がね……次の勝利に繋げる勝利……そういう戦いになってたら、いいよね」

実況「空手軍団とシャドルーの抗争は、まだまだ続きそうだっ! 一体、どうなってしまうのでしょうか!?」

元「これからの戦いが楽しみだね」

実況「さぁ、残念ながら、ここらでお時間でございます! という事で、第五試合の中継はこの辺りで終了させていただきま~す!」

ーーー


プーアル「ヤムチャさん、お疲れ様でした!」

ヤムチャ「……」

プーアル「今日のヤムチャ様、珍しく格好良かったですよ!? あんな、戦いするの何年振りですか!?」

ヤムチャ「……」

プーアル「隠居生活送ってたヤムチャ様が、昔の様な姿に戻ってくれて……もう! 僕、感動でちょっと泣きそうになったんですよ!?」

ヤムチャ「……」

プーアル「ねぇ、ヤムチャ様、聞いてるんですか!? あの、練習したキックも格好良く決まったじゃないですか!?」


リュウ「……オイ、コラっ! この糞ボケがぁ!」ワナワナ

ヤムチャ「!」

リュウ「てめぇ、勝手な事しやがって……この野郎、歯ぁ、食いしばれっ!」

ヤムチャ(やべぇ……! やっぱり……そうなるよなぁ!?)

リュウ「……おらああぁぁっ!」

ヤムチャ(やべぇ……きた……きたっ……!)


ケン「……リュウ! 待て、落ち着け!」ガシッ

リュウ「……あぁ!? なんで、止めんだよ、ケン!」

ヤムチャ(ん……? アレ……?)

ケン「今、こいつをここで殴るのは不味い! この後には、出番も控えてだろが!」

リュウ「……」

ケン「下手に、怪我でもされちゃ……大変な事になっちまう……お前が怒るのは、わかるけど……落ち着けっ!」

リュウ「……でも、こいつがよぉ!?」

ケン「いいから、落ち着け! 殴るんだったら、後で殴れって言ってるんだ! とりあえず、今は落ち着け!」

リュウ「……チッ!」

ケン「お、おう……落ち着いたか……?」

リュウ「……メインイベントが、終わりに近づいたら、声掛けろ。俺は控え室で休んでおくからよぉ」

ケン「お、おう……わかった……お前は、休んでおいてくれや……様子は俺達が見ておくから……」

リュウ「……ったく、糞がっ!」ガチャンッ


プーアル「う、うわぁ……ビックリしたぁ……ヤムチャ様、ひょっとして、何かやらかしちゃったんですか……?」

ヤムチャ「う、うん……やらかしちゃった……」

ケン「はぁ……とりあえず、リュウは収まってくれたかな……ったく、勘弁してくれよ……」

ケン「……おい、新入り?」

ヤムチャ「は、はいっ……!」

ケン「おめぇ、リュウの事、あまり怒らせるなよ……アイツは、ガチでも強い奴なんだぞ?」

ヤムチャ「す、すいません……」

ケン「アイツがガチでキレたら……俺だって、止められねぇよ……おめぇ、死んじまう所だったんだぞ……?」

ヤムチャ「あの、本当……今日は、マジですみませんでした……!」

ケン「『マジですみません』って何だよ……マジですみませんって……だったら、おめぇの普段の『すみません』は本気で謝ってねぇのか?」

ヤムチャ「あっ、いや……」

ケン「普通にすみませんって言えよ、普通によぉ……? おめぇ、舐めてんのか……?」

ヤムチャ「あっ、あの……すみません……」

ケン「まぁ、いいや……そもそも、お前、何で怒られてるかわかる……?」

ヤムチャ「あっ、はい……俺が狼牙風風拳をしたからですよねぇ……?」

ケン「俺達、あの技は使うなって言ったよなぁ? 何で、お前、指示聞かなかったの?」

ヤムチャ「あの……それは、トラースキックと、狼牙風風拳の構えを間違えてしまって……」

ケン「……はぁ?」

ヤムチャ「あの状況で、トラースキックを出したら……サガットさん達が、お客さんがガッカリしてしまうって言ってたから……そのまま……」

ケン「ちょっと待て、ちょっと待て……話が見えねぇな……どういう事だ……?」

ヤムチャ「……えっ?」

ケン「そもそもお前……今日、結構変わった事してたよなぁ? サガット達とどういう打ち上せしたんだ?」

ヤムチャ「えっ……? あっ、それは……」

ケン「控え室では、リュウが、ブチ切れてるからよぉ……? ここで話そうぜ?」

ヤムチャ「そうですよね……今、戻ったら、火に油を注ぐ事になりそうですし……」

ケン「そうだよ。だから、ここで話そうぜ? サガット達との、打ち合わせの内容、聞かせろよ」

ヤムチャ「え~っと、何処から話せばいいんだろうなぁ……」


プーアル「……あの~?」

ケン「……ん、どうした? というか、おめぇ誰だ?」

プーアル「あっ、僕、ヤムチャ様のマネージャーの、プーアルといいます! お話、長くなりそうなんだったら……僕、何か飲み物とか、買ってきましょうか?」

ケン「あっ、マジで? プーアル君、気が効くじゃん。だったら……悪いけど、小銭渡すから、スポーツドリンクか何か買ってきてくれない?」

プーアル「はい、わかりました、スポーツドリンクですね? それじゃあ、ちょっと、行ってきます!」

ケン「おう、ありがとね。 それじゃあ、よろしく頼むよ」


ヤムチャ(プーアル、何でそんなに馴染むの早いの!?)

ケン「え~っと、じゃあ、打ち合わせの話だよ……打ち合わせの話……」

ヤムチャ「あっ、はい……」

ケン「最初の、バイソンとの攻防から……バルログにやられて交代するまで……あれは、打ち合わせ通りだよな?」

ヤムチャ「あっ、はい……そうです……」

ケン「え~っと……じゃあ、次のリュウがサガットに、コブラツイストをしてる時に、カットに行ったのは……?」

ヤムチャ「あれも、打ち合わせっす」

ケン「あっ、あそこは、アドリブじゃなくて、打ち合わせなんだ?」

ヤムチャ「はい、サガットさんが、俺の方を向きながら汗を拭ったらサインだから……乱入してこいって、指示されてました」

ケン「そうなんだ……へぇ……」

ヤムチャ「そのまま、サガットさんにバックドロップをした後……バルログさん達に、攻撃をしに行けと言われました」

ケン「へぇ……あのバックドロップも、指示されてたんだ……」

ヤムチャ「それで、バルログさんと、場外にもつれるようにして、降りた後……パイプ椅子でボコボコにされろと……」

ケン「ふ~ん……あの騒動、けしかけたのは、サガット達って訳だったのか……」

ヤムチャ「しばらくボコボコにされてたら……ケンさんが、助けに来るから……それで、一対一の状況を作ろうと、言われました」

ケン「……へ?」

ヤムチャ「ケンさんは、アドリブでそういう事が出来る人だから……打ち合わせにいなくても、必ず、自分から動きにきてくれる……って、言ってましたよ?」

ケン「……」

ヤムチャ「俺も、本当にそうなるか心配だったんですけどね……でも、本番は、ケンさんが本当に来てくれてビックリしましたよ!?」

ケン「お、おう……まぁ、俺はおめぇみたいに指示待ち人間じゃねぇからな! そういうアドリブは得意だよ!」アセアセ

ヤムチャ「……ん?」

ケン「……何、見てんだよぉ!? その後は、どう指示されたてたんだ、早く言えよ!」

ヤムチャ「サガットさんとケンさん……バルログさんと俺の戦いを、場外でしていたら、リュウさんはリング上でバイソンさんを決めに行っていると、言ってました」

ケン「……あいつら、結構、計算してるんだなぁ」

ヤムチャ「そしたら、バルログさんがバイソンさんを助けに行くので……俺はそのバルログさんを、トラースキックで食い止めるってのが、当初の予定だったんですけど……」

ケン「……予定?」

ヤムチャ「……俺、そこで間違えて、狼牙風風拳の構えしてしまったんですよ」

ケン「……ほう」

ヤムチャ「お客さんも狼牙風風拳、期待してたみたいだし……俺、テンパっちゃって……」

ケン「って事は……お前のアドリブは、あの狼牙風風拳だけって訳か……後は、サガット達の指示と……」

ヤムチャ「はい……そのまま、狼牙風風拳をやっちゃいました……すいませんでした……」

ケン「ふ~ん……まぁ、流石にサガット達も、場外なんかで、大技やれだなんて、馬鹿な指示は出さねぇか……そういう事だったのね……」

ヤムチャ「本当、すいません……俺の狼牙風風拳と、トラースキックの構え方が似てるらしくて……本当に、あの技はやる気はなかったんですよ!」

ケン「う~ん……これまた、最悪なタイミングで、アドリブしちまったもんだね……」

ヤムチャ「……すいません」

ケン「まぁ、結果的には、良くなったけど……俺も、いい所見せれたし……」

ヤムチャ「?」

ケン「あ~、でも……やっぱり、リュウは、怒るだろうなぁ……そりゃ、怒るよなぁ……」

ヤムチャ「あれ……? ケンさんは、あまり、怒ってないんですかね……?」

ケン「ん……? あぁ、俺は 結果的に出す予定のなかった、神龍拳出せたし……儲けたって言えば、儲けたけどさぁ……?」

ヤムチャ「?」

ケン「やっぱり、リュウは必殺技、潰されたんだからさぁ……? そりゃ、キレて当然だと思うよ……?」

ヤムチャ「あれ……? 俺が、狼牙風風拳出した事にキレてるんじゃないんですか……?」

ケン「引き金となったのは、ソレだよ。 まぁ、おめぇ、バカみてぇだし……説明してやるよ……」

ヤムチャ「あっ、お願いします……」

ケン「リュウは、自分の必殺技の真・昇竜拳で、バイソンを仕留めにいっただろ?」

ヤムチャ「はい」

ケン「これで終わりだ。試合のシメだよ。ラストに大技を出して、試合を決める……そういうもんだろ?」

ヤムチャ「……はい」

ケン「でも、そこで終わった後に、おめぇが必殺技をしちまったんだよ。『ねぇねぇ、僕も僕も! 僕の必殺技も見てよ!』なんて、突然割り込んで来るわけだな?」

ヤムチャ「いや、俺は……そういうつもりは……」

ケン「……あのタイミングで出しちまうって事は、そういう事なの! 故意であれ、事故であれな!」

ヤムチャ「あっ、はい……すいません……」

ケン「そんなもん、試合として成立しねぇだろうが……おめぇの割り込みで、試合が終わっちまうんだからな?」

ヤムチャ「はい……すいません……」

ケン「だから、あぁいう時は、必殺技の攻防をやり直さないといけねぇ……」

ヤムチャ「……やり直す?」

ケン「あぁ、俺のおかげだぞ……? 我らながら、天才的なアドリブだったと思うよ、アレは……」

ヤムチャ「……アドリブ?」

ケン「おめぇは、それでパニくって見てなかったと思うけど……多分、バイソンが攻防をやり直す為に、カウントツーで返したんだよ」

ヤムチャ「……はぁ」

ケン「だから、再び、必殺技の攻防の繰り返しだな……バイソンに、必殺技を与える為の下準備をしなきゃいけねぇ……」

ヤムチャ「……ふむふむ」

ケン「だけど、バイソンはもう限界だ……何たって、リュウの真・昇竜拳を喰らってるんだからよぉ?」

ヤムチャ「……ほぅ」

ケン「必殺技を喰らった、人間が……また普通に立ち上がって……リュウと攻防を繰り返すって事になったら、おかしいだろ?」

ヤムチャ「……はい」

ケン「なんとか、バイソンの死にかけてる状況を維持したまま……再び必殺技をしなきゃならねぇ……こりゃ、面倒臭ぇ、攻防を作らなきゃならなねぇな?」

ヤムチャ「なんか、俺のせいで……すいません……」

ケン「だがしかし、そこはこの天才ケン様だ! 見事、その攻防を作ってやったぜ!」

ヤムチャ「……へ?」

ケン「おめぇが、狼牙風風拳をした後……俺は、お客さんの注目を仕掛けて、サガットに技仕掛けてただろ?」

ヤムチャ「あっ、なんか、派手な技してましたね」

ケン「ありゃ、俺の必殺技、神龍拳だ。俺の使える技の中で、一番の攻撃だ」

ヤムチャ「……ふむ」

ケン「リュウの真・昇竜拳から、お前の狼牙風風拳……お客さんの目が、色々な場所に移動してる中で、俺は自分に注目を集めて、必殺技をしたってわけだ」

ヤムチャ「……ふむ」

ケン「そして、最後にリュウに指を指した……『ラストは勿論、リュウだぁ!』なんて、格好良く叫びながらな?」

ヤムチャ「……ほうほう」

ケン「俺が、あの数分間の間に、たった一人で、リュウに必殺技を使う為の下準備をしたって訳だな!」

ヤムチャ「……ふむ」

ケン「お前……そして、俺と、順々に必殺技を使って……リュウに注目を集めた……順番からしたら、勿論次はリュウがやる番だ……」

ヤムチャ「……なるほど」

ケン「それで……リュウは真空竜巻旋風脚を出して……上手い事、試合をシメたってわけだな」

ヤムチャ「なんか、俺の失敗のせいで……迷惑かけてすみませんでした……」

今日はここまで

ケン「正直、俺には儲けた展開だったよ。美味しかった」

ヤムチャ「……儲けた?」

ケン「あぁ、俺は使う予定のなかった、神龍拳を出して……お客さんに恰好いい所を見せれたんだからな?」

ヤムチャ「あっ、はい……」

ケン「しかも、相手は格上のサガットにだ。リュウは、サガットに勝つ試合が組まれる事もがあるが……俺の場合だったら、相手はバルログだ」

ヤムチャ「ケンさんはバルログさんなんですね」

ケン「俺が個人でサガットに勝つ試合なんて、なかなか組まれるもんじゃねぇ。当然……サガット相手に神龍拳を出すチャンスも滅多にこねぇ」

ヤムチャ「神龍拳出したら……勝っちゃいますもんね……」

ケン「だが、おめぇのミスのおかげで、今日はサガットに神龍拳を出すチャンスが生まれたんだ」

ヤムチャ「……なるほど」

ケン「ひょっとしたら……ケンも、サガットに勝つ事が出来るんじゃないか? って、お客さんは期待してくれるようになるわな」

ヤムチャ「……ほうほう」

ケン「……だが、リュウの場合はどうだ?」

ヤムチャ「……えっ?」

ケン「リュウの場合は……相手は格下のバイソンだ……」

ヤムチャ「……バイソンさん」

ケン「おめぇのミスで、真・昇竜拳を喰らったバイソンが……耐えてしまう事になってしまったんだよ」

ヤムチャ「……あっ?」

ケン「リュウの一撃必殺の真・昇竜拳を耐えたんだぞ? しかも、相手はザンギエフやベガではなく……格下のバイソンだ」

ヤムチャ「……それって、やばいっすよねぇ?」

ケン「やべぇなんてもんじゃねぇよ! 『リュウの真・昇竜拳を耐えるなんて……バイソン強くなったのかな?』なんて、思われたらどうするんだよ!?」

ヤムチャ「そ、そうっすよね……すいません……」

ケン「バイソンの株上げるだけだったら、まだマシだけど……『あれ? バイソンを必殺技を使っても仕留められないなんて……リュウ弱くなった?』なんて、思われたら、もっと大変だよ!」

ヤムチャ「あちゃ……そりゃ、リュウさん怒りますよね……」

ケン「当然だよ! 結果的に一番強い必殺技の真・昇竜拳で決めるんじゃなくて……二番目に強い真空竜巻旋風脚で決める事になったんだからな! リュウが怒るのも、当然だよ!」

ヤムチャ「う、うわぁ……やべぇな……どうしよう……」

ケン「まぁ、二三発は覚悟しておくんだな……後で、ぶん殴られるよ、きっと……」

ヤムチャ「いやいやいや……ケンさん、ちょっとかばって貰えないですかねぇ? 事故だったんだし、勘弁して下さいよ!?」

ケン「俺に出来る事は、いい保険屋を紹介する事ぐらいだな……おめぇ、保険入ってるか? 紹介してやってもいいぞ?」

ヤムチャ「いやいやいや……それ、殴られる前提で話が進んでるじゃないですか……殴られないようにして下さいよ……」

ケン「仕方ねぇだろ、おめぇがやらかしたんだからよぉ!? あっ、言っておくけど、歯は守れよ? おめぇもバイソンみてぇに歯抜けキャラになりたくねぇだろ?」

ヤムチャ「いやいや、ちょっと……! ちょっと……!」


プーアル「ケンさ~ん、ヤムチャ様~! 飲み物買ってきましたよ~!」

ケン「おっ……プーアル君、ありがとね。あれ……? 自分の分も買って来てよかったんだよ? なんで、二本だけなのよ?」

プーアル「自販機プーアル茶がなかったんですよねぇ……ウーロン茶ならあったんですが……」

ヤムチャ「プーアル、馴染んでるんじゃねぇ!」

プーアル「ところで、ケンさん……今日は飲みに行かれないんですか?」

ケン「あぁ、終わったら飲みに行くよ。でも、今日は用事があるからさ……ここで豪鬼さんとベガの試合が終わるのを待ってるんだよ」

プーアル「……用事?」

ケン「あぁ、ほら……今、豪鬼さんとベガが戦ってるけど……あの試合、豪鬼さんが勝つだろ?」

プーアル「そういう風に書かれてましたねぇ」

ケン「ラストの試合が……自分の団体の人間の勝利じゃなくて……ゲストの勝利で終わっちまうんだ。お客さんはどう思う?」

プーアル「そりゃ、ガッカリしてしまいますよ。理想は、ザンギエフさんやリュウさんの勝ちで終らせるのがいいんでしょうが……豪鬼さんと、ベガさんなら、まだベガさんが勝った方が気持ちがいいんじゃないですかね?」

ケン「ほ~う……プーアル君は、こいつと違って、よくわかってんだな……」

プーアル「あれ、そうですか? えへへ、なんだか照れちゃいますねぇ……」

ヤムチャ「……もう、プーアルがプロレスしたらいいじゃん。俺を養ってくれよ」

ケン「だから、お客さんをガッカリさせない為に……俺達空手軍団が、残ってんだよ」

ヤムチャ「空手軍団って事は……俺も、何かしなくちゃいけないんですか?」

ケン「おめぇは突っ立ってるだけでいいよ。実際に、やるのはリュウだから」

ヤムチャ「……リュウさん?」

ケン「あぁ、豪鬼さんがベガに勝ったら……リュウがリングに上がって、豪鬼に挑戦表明をするんだよ」

ヤムチャ「……挑戦表明?」

ケン「あぁ『そのベルトは次の試合で必ず俺が取り戻す……だから、豪鬼……勝負だぁ!』なんて、言ってな?」

ヤムチャ「……ほうほう」

ケン「そしたら、お客さんも『おっ? 今日は負けたけど、次の試合では、勝てるかな?』なんて、期待した状態で帰ってくれるだろ?」

ヤムチャ「……なるほど」

ケン「まぁ、俺達はそのリュウの付き添いだな……リュウが個人で行くより……空手軍団として行った方がインパクトはあるだろ」

ヤムチャ(あっ……だから、サガットさん達、今日は飲み会のお誘いに来ないのかな?)

ケン「おめぇは、余計な事するんじゃねぇぞ……? これ以上、リュウを怒らせたら……俺、本気で知らねぇからな!?」

ヤムチャ「大丈夫っす……! わ、わかってます……!」

ーーー


ベガ「くそっ……くそっ……このベガが……!」

豪鬼「ぬんっ……! 百鬼襲っ……!」

ベガ「何っ……! こいつ……早っ……」

豪鬼「ぬんっ……! 百鬼豪砕っ!」

ベガ「う、うおっ……ぐわああぁぁっ!」


ケン「豪鬼さんも、そろそろ大技出してきたな……そろそろ、時間だし、リュウ呼んでおくか……」

ヤムチャ「そうっすね」

ケン「よ~し、新入り……じゃあ、おめぇ控え室のリュウ、呼んでこいや」

ヤムチャ「えっ、俺がですか!?」

ケン「なんだよ……おめぇ、俺に命令する気か? あぁ?」

ヤムチャ「い、いやぁ……ほら、リュウさん俺にキレてるみたいですし……ケンさんが行った方がいいですよ……この後の挑戦表明に影響出ちゃいますって!」

ケン「俺だって嫌だよ! 今日のリュウは怖ぇもん! 怒らたのはお前なんだから、お前が責任とれよ!」

ヤムチャ「ジャンケンしません……? ジャンケンで決めません……?」

ケン「……あのなぁ?」

プーアル「……僕、行ってきましょうか?」

ケン「……えっ?」

ヤムチャ「おっ……プーアル、行ってくれるのか……?」

ケン「プーアル君、大丈夫か……? あいつ、怒らせたら止められねぇんだぞ?」

プーアル「大丈夫ですよ! ヨイショして、機嫌を損なわないそうに呼んで来たらいいんですよね? 僕、そういうの慣れてるんですよ!」

ヤムチャ「へぇ、プーアルって、そういう事に慣れてるんだ……でも、それって何処で覚えたの? 俺、知らねぇぞ」

ケン「だったら……悪いけど、プーアル君に頼んでみようかな……? お願い出来るかな……?」

プーアル「はい、任せておいて下さい! それじゃあ、僕行ってきます!」

ケン「……控え室にリュウ呼びに行ってくれたけど、大丈夫かねぇ?」

ヤムチャ「う~ん……わかんないっす……」

ケン「わかんないって……おめぇのマネージャーだろうが。そもそも、おめぇが引き起こした事なんだし、ちょっとは心配しろよ」

ヤムチャ「あっ……はい……」


リュウ「……」ガチャッ


ケン「……おっ?」

ヤムチャ「……あっ、来たっ!」

リュウ「……おい、ヤムチャ」

ヤムチャ「は、はいっ……!」

リュウ「プーアル君に免じて……今日の所は勘弁しておいてやる……だが、次やったら、本当にぶっ殺すぞ?」

ヤムチャ「……えっ?」

リュウ「わかってんのか……? 返事ぐらいしろや?」

ヤムチャ「あっ、はいっ! 本当、今日はすいませんでしたっ!」

リュウ「よし……じゃあ、後は挑戦表明するだけだな……おめぇは大人しくしておけよ」

ヤムチャ「はい、そうさせていただきます!」

リュウ「試合は終盤まで進んでるみたいだな……もう少しか……」


ケン「……おぉ」

ヤムチャ(なぁなぁ、プーアル何言ったの? お前、この人に何言ったの? 何で、こんなに信頼得てるの?)

プーアル(……僕は、ヤムチャ様とは違うんです! ヤムチャ様も、もっとしっかりして下さいよ!)

ーーー


ベガ「ううっ……くそ、くそっ……」

豪鬼「……ぬぅんっ!」


実況「さぁ! 豪鬼がベガの背後を、ガッチリ掴んだぁ! このまま決めてしまうのかぁっ!」


ベガ「この、ベガが……このベガが……こんな奴などに……! こうなったら……!」

豪鬼「……ぬぅおおぉぉっ!」


実況「これを、ベガ踏ん張って耐えるっ! 投げられまいと、必死に耐えるっ!」

元「ベガ君の動き……何かを狙ってるような気がしますねぇ……?」


ベガ「過程などはどうでも良い……! 今、重要なのは勝利だ……! 勝利なのだっ……! だからっ……!」

豪鬼「……ぬっ?」

ベガ「……貴様のその急所を、蹴り飛ばしてやるっ! うおおおっ!」

豪鬼「!」


元「……やっぱり! あの人、急所蹴りを狙ってたね!?」

豪鬼「……ぬぅうううんっ!」スーッ

ベガ「……何っ!?」


実況「おぉ~っと! だがしかし、これは豪鬼読んでいたぁ! ベガの急所蹴りに合わせて、阿修羅閃空でバックステップっ!」

元「ベガ君の動きに合わせて、とっさにロックを外して、バックステップだからね……凄い判断力してますよね、あの人……」


ベガ「こ、こいつ……なんて奴だっ……」

豪鬼「……殺っ!」ググッ

ベガ「何っ……!?」


実況「さぁ、そして、ここで豪鬼が構えたっ! ここで行くのか!? 決めてしまうのか!?」

豪鬼「滅殺豪昇龍っ……!」ズガァッ

ベガ「ぐ、ぐわああぁぁっ……!」


実況「決まったぁ、滅殺豪昇龍っ! 背後を確認したベガの振り向きざまに……カウンター気味にぶち当てたぁっ!」


豪鬼「ぬぅんっ……! フォールだっ!」

ダン「よしっ! 任せろっ!」


実況「そして、豪鬼がフォールに入ったぁ! これで試合は決着か!?」


ダン「ワンっ……!」

ワー、ワーワー

ダン「ツーっ……!」

ワー、ワーワー

ダン「……スリーっ!」

キャー! キャーキャー!


実況「決まったぁ! ここで試合は決着ですっ! 豪鬼の滅殺豪昇龍で、スリーカウント! 豪鬼がベルトの防衛に成功しましたぁ!」

今日はここまで
試合の長さは、実はこのくらいが理想だったりする
重要じゃない試合はこんな感じになっても、勘弁してくれ
重要な試合はがっつり書く

ーーー


実況「さぁ、今……フラついた足取りでベガが退場して、豪鬼にベルトの贈呈式が行われていますが……元さん?」

元「ん、どうしましたか……?」

実況「私の心境を正直に話してみてもいいですかねぇ!?」

元「あっ、はい。どうぞ……」

実況「いやぁ、やはりシャドルーのボスであるベガにベルトが渡ってしまうのは、私個人としてはあまり好ましくないのですが……」

元「やっぱり、ベルトはいい人が持っていてもらいたいもんね。その気持ち、分かるよ」

実況「しかし、だったらベルトを持つのが、他団体の豪鬼……と、なりますとね?」

元「……うん」

実況「私、なんだか複雑な思いに駆られるんですよ……この団体『ストリートプロレス』の力はそんなものか、と豪鬼に見下されてるような気がしてなりません」

元「……う~ん」

実況「いやぁ、なんだか私、複雑です! ……元さんは、どう思われます?」

元「……まぁ、僕も同じ意見だね」

実況「……そうですよねぇ、元さん!?」

元「だって、ベガ君の悪人っぷりは置いておくとしてね……ザンギエフ君と、ベガ君……強い人が連続で負けてるわけじゃない?」

実況「はい、そうです!」

元「やっぱり、この団体で実力を持ってる人達が……あぁ、やって他団体の実力持った人間の、豪鬼君にやられていたら、悔しいもんはあるよ……」

実況「そうですよねぇ! 豪鬼……こいつはとんでもない、強敵が現れました!」

元「10年若かったら、僕もザンギエフ君達の敵討ちに行ったよ? だけどさぁ……僕、もう歳だから……」

実況「いやいやいや! 元さんはまだお若いじゃないですか!? 見た目なんて、私と全く変わりませんよ!?」

元「……君、ヨイショ下手だねぇ?」

実況「いやいやいや! ヨイショだなんて、とんでもない! なんせ、元さんは……ん……?」

元「……あれ、どうしたの?」

リュウ「……」

キャー、リュウー!


実況「おぉ~っと、ここでリュウです! リュウが姿を現しました!」


ケン「……よし、ヤムチャ。お前も行くぞ」

ヤムチャ「……うっす」

キャー! ケーン! カラテグンダーン!


実況「そして、ケンにヤムチャも登場だぁ! 空手軍団が揃って、現れましたっ!」


豪鬼「……ふむ」

リュウ「……」ツカツカ


実況「さぁ、今……リュウはリングに向かって、歩みを進めて行きます! その視線の先には豪鬼っ! ジッと豪鬼を捉えている!」

実況「さぁ、今、リュウ……そして、ケンにヤムチャ……空手軍団がリングに上がります!」


豪鬼「……ふむ」

リュウ「……」

豪鬼「……フッ」


実況「さぁ、リュウが豪鬼をジッと睨みつけている! そして、豪鬼はそのリュウを見て、不敵な笑みを浮かべているっ!」


ワー、ワーワー


リュウ「……」ジーッ

ダン「お、おい……リュウ、どうしたんだよ……おめぇ、試合終わって帰ったんじゃねぇのか……?」

豪鬼「レフェリーよ、良い……この小僧の要件はわかっておる……マイクを貸してくれないか……?」

ダン「えっ……? お、おう……わかったよ……」


実況「さぁ、ここで豪鬼がマイクを手に取ったぁ! 場内が静まりかえります!」

豪鬼「うぬの要件はわかっておる……」

リュウ「……」

豪鬼「それは、このベルト……そうだろう……?」ヒラヒラ


実況「さぁ、ここで豪鬼がベルトを掲げます! ベルトを掲げて、目の前にいるリュウに見せつける!」


豪鬼「我に怯えずに、挑戦表明をしてくる人間がまだいたとはな……少しは、根性のある人間が、この団体にもいたようだな……」

リュウ「……ありがとよ」

豪鬼「……だが」

リュウ「?」

豪鬼「うぬには、まだ早い……我にはまだ勝てん……」ニヤニヤ


ブー、ブーブー

実況「おぉ~っと、豪鬼! かなり、リュウを見下しております! 会場からは大ブーイングだ!」

豪鬼「そこにいるお友達と共に……大人しく帰るんだな……無理に死に急ぐ事もなかろう……」

リュウ「……」

豪鬼「……レフェリー、こんなもんだ。 マイクを返そう」

ダン「お、おう……」


ブー、ブーブー

実況「さぁ、ここで豪鬼のマイクアピールは終わったぁ! 大ブーイングっ! 勿論、会場からは大ブーイングでございます!」


ダン「……だってよ? おめぇはまだ、早いってさ? どうする、リュウ?」

リュウ「あぁ……悪いが、俺にもマイクを貸してくれ……俺も言いたい事はあるさ……」

ダン「……あいよ。ホレ、マイクだ。受け取れ」

リュウ「……あぁ」


ザワ……ザワ……

実況「おっとおっと……今度はリュウがマイクを握り返した! さぁ、何を言うんだ、リュウっ!?」

リュウ「あんたの、言うとおり……俺があんたに挑むのは、まだ早いかもしれない……」

豪鬼「身の程をわきまえている人間は、長生き出来るぞ……いい、心がけだな……」

リュウ「……だが、そんな事は関係ないっ!」

豪鬼「……ぬっ?」

リュウ「そのベルトは俺達の団体の物だ……俺達が必死で価値を作り上げて来たベルトなんだ……だから、そのベルトは俺達が守らなければならないっ!」

豪鬼「……ほぅ」

リュウ「だから、今ここに、ケンやヤムチャがいる……二人だって、そのベルトが俺達の団体の手に戻る事を望んでいる……」

豪鬼「……ほう」


ケン「……あぁ、そうだ!」

ヤムチャ「え~っと……そ、そうっすっ……!」


リュウ「俺達空手軍団だけじゃない……ザンギエフや……そして、シャドルーのベガやサガットだって、それは望んでいる事だ!」

豪鬼「……」

リュウ「そして、何よりも……今、ここにいる会場の皆だって……そのベルトが、俺達の手に戻る事を望んでいるんだっ!」


ソウダー! イイゾー! リュウー!


豪鬼「……ほう」

リュウ「これは、俺だけの戦いではないっ……! 皆の想いがつまった戦いなんだ!」


ワー! ワーワー!

実況「そうだ! その通りだ、リュウ! そのベルトを取り戻すのは、我々全員の願いであるんだ!」

元「しかし、リュウ君立派だねぇ……敵対しているシャドルーの想いまで、考えてあげてるんだからねぇ……」

実況「まぁ、シャドルーも悪人揃いですが……やはり、ベルトを取り戻したいという想いは同じでしょうからねぇ! その想いを背負えるのも、リュウの強さなのではないでしょうか!?」


リュウ「……そして、何より」

豪鬼「……」

リュウ「俺は俺より強い奴に会いに来たっ!」


ワー! ワーワー!


リュウ「次の試合では、必ずそのベルトを取り戻す……忘れるんじゃねぇぞ、豪鬼っ!」

豪鬼「……フッ」


ワー! ワーワー!

リュウ「……ダンさん、以上だ。マイクを返すよ」

ダン「おう……まぁ、レフェリーの俺がこんな事言うのもなんだけどよぉ……? 頑張れよ、リュウ!」

リュウ「あぁ、だがダンさんは、変に気を使わなくていいからな! 俺は、正々堂々と、奴を倒す!

ダン「バーカ、誰に物を言ってんだよ、個人的な感情とレフェリングは別だよ、別!」

豪鬼「レフェリーよ……マイクを貸してもらっていいか……? 我もまだ、この小僧に言っておきたい事がある……」

ダン「……えっ? あっ、はい」


実況「おっとおっと……豪鬼が再び、マイクを握りましたねぇ? どうした事でしょうか?」


豪鬼「小僧よ、貴様の気持ちはわかった……その挑戦……受けてやろう……」


ワー、ワーワー

実況「おっと、豪鬼が挑戦表明を受けましたぁ! 次の試合は豪鬼対リュウですっ!」


豪鬼「だが、一つ、言わせてもらおうか……うぬは青臭いな……」

リュウ「……何?」

豪鬼「友情……想い……願い……フハハ、なかなか面白い事を言うではないか? 貴様の言う『強さ』とは、そういう事なのか?」

リュウ「そうだ……強さとは、そういう事だ……」

豪鬼「そんな者は、ただの世迷い言だ……真の強さとは、そんな甘ちょろい物ではない……」

リュウ「……何?」

豪鬼「……貴様には永遠にわからん事だろうな」

リュウ「……」

豪鬼「我が次の試合でそれを見せてやる……格闘家の『本当の強さ』という物をな……」

リュウ「……」

豪鬼「首を洗って待っておけ……うぬとの試合……楽しみにしてるぞ……?」ニヤリ

リュウ「……」

豪鬼「それじゃあ、そろそろ退場させてもらおうか……ほら、レフェリー……マイクを返すよ……」

ダン「お、おう……」


実況「さぁ、不気味な言葉を言い残し……豪鬼は退場します! 豪鬼の『真の強さ』……それは、一体どのような物なんでしょうか!?」

元「う~ん……豪鬼君はあっちの団体でも、結構一匹狼でやってるからねぇ……やっぱり、リュウ君みたいな考えは合わないんじゃないの?」

実況「あぁ、そうですよねぇ……そもそも豪鬼は、たった一人でこの団体に乗り込んで来てますからねぇ?」

元「やっぱり、孤独に戦う人と……リュウ君みたいに仲間の想いを背負って戦う人の違いなんじゃないかな? でも僕、リュウ君みたいな考え方好きよ?」

実況「これは、次の試合も目が離せない事になりそうですね!? さぁ、残念ながら、ここらでお時間となってしまいました! 本日の『ストリートプロレス』の中継はここまでです! 実況は私と……」

元「解説は私、元でお送りしました」

実況「次回のストリートプロレスも……必ず見て下さいね!? それでは、さようなら~!」

ーーー


豪鬼「……これで、良かったのか?」

ベガ「えぇ、ありがとうございます……」

豪鬼「まぁ、確かに……リュウ君がヒールでやるのもいいかもしれんな……」

ベガ「……豪鬼さんには、お手数かけます」

豪鬼「いや、私も歳でな……最近、自分の後継者が欲しいと思ったりするのだよ……」

ベガ「そんな……豪鬼さんはそんな事ありませんよ……」

豪鬼「フッ、気を使わんで良い……私もザンギエフも、そしてお前も……抱えてる爆弾の数は数えきれないだろうに?」

ベガ「……はい」

豪鬼「リュウ君の試合は、何度か見ておる……伸び悩んでいるみたいだな……」

ベガ「……えぇ」

豪鬼「次の試合で結果を出せれば……私の殺意の波動スタイルの後継者にしてやろう……」

ベガ「……ありがとうございます」

豪鬼「恐らく私の最後の仕事になるだろうな……私も自分の団体では、いつ第二試合に落とされる身分なのかわからん……」

ベガ「……そんな、豪鬼さんは」

豪鬼「うちの団体は、若い連中が育ってきておる……だったら、こっちの団体で若手育成をしてみるのも、悪くない……」

ベガ「……」

豪鬼「現場監督にはある程度、話は通してきておる……まぁ、上手くいった時は……トレーナーとして、私を雇ってくれ……」

ベガ「……はい」

ーーー


リュウ「……よしっ、終わったな! ケン、飲みに行くか!」

ケン「おう。お前、豪鬼さんとの試合、どうすんの? 何か、プランでもあるの?」

リュウ「なぁ~に、いつも通りやるよ。折角のメインイベントなんだからさ、好きにやらせろよ。最近、役立たずの面倒ばかり見てるから……いい所、見せれてねぇんだよ……」

ケン「ま、まぁまぁ……」

リュウ「おかげでバイソンを、真・昇竜拳で仕留められなかったしよぉ……? あっ、何か思い出したら、腹立ってきたぞ……?」

ヤムチャ「……えっ?」

リュウ「……おい、ヤムチャ! おめぇ、やっぱり一発殴らせろ!」

ヤムチャ「いやいやいや……ちょっと、待って下さいよ! ちょっと、ちょっと……!」

リュウ「何、口ごたえしてんだ、コラ! オラ、歯ぁ、食いしばれっ!」


プーアル「まぁまぁ、リュウさんリュウさん……こんな出来損ない、殴る価値もありませんって……抑えて下さいよ……?」アセアセ

リュウ「プーアル君がそう言うんだったら……まぁ……」


ヤムチャ「……プーアル? ねぇねぇ、プーアル、プーアル?」

リュウ「じゃあ、ケン……飲みに行くぞっ! メインイベントの前祝いだ!」

ケン「おう、明日はいい試合しろよ! 俺も、期待してるからよぉ!?」

リュウ「任せておけって、任せておけって! いつもみたいにやれば……俺の人気なら間違いないからよぉ!?」

ケン「よっしゃ、じゃあ、飲みに行くか!」


プーアル「お二人……行っちゃいましたねぇ……?」

ヤムチャ「ちくしょう。何が友情パワーだよ……だったら、俺も飲みに連れて行ってくれよ……」

プーアル「ヤムチャさんはヘマばっかりするから、認められないんですよ……だから、Z戦士の皆さんも誘ってくれないんですよ?」

ヤムチャ「傷つく事、言わないでくれよ……あ~ぁ、俺も友達欲しいなぁ……」

プーアル「……ヤムチャ様、今日はとことん、みっともないです」

ダン「おぉ~い、ヤムチャ~! おい、ヤムチャ~!」

ヤムチャ「……ん?」

プーアル「あっ、ダンさん! お疲れ様です!」

ダン「おう、レフェリーの俺は、全試合に出なきゃいけねぇから、今日も疲れたよ……」

ヤムチャ「ダンさん、ご苦労様です」

ダン「ヤムチャ……おめぇ、リュウとケンに、飲み会連れてってもらえなかったのか? 情けねぇ奴だな?」ニヤニヤ

ヤムチャ「……大きなお世話っすよ」

ダン「ったく、情けねぇな……仕方ねぇな……俺が飲み会連れて行ってやるから……機嫌直せよ?」

ヤムチャ「……へ?」

ダン「あぁ、何だぁ、 遠慮してんのか? おめぇ、先輩の誘いを断るなんて、いい根性してるなぁ……あぁ?」

ヤムチャ「……俺を飲み会に誘ってくれてんですか?」

ダン「今の会話のやり取りの何処に、バスケットボールをするお誘いがあったんだよ? おめぇはバカか!」

ヤムチャ「何で、バスケットボールなんですよ……」

ダン「どうせ、サガット達とも、反省会しなきゃいけねぇだろ? 終わったら、お前誘って合流しろって、頼まれてたんだよ」

ヤムチャ「……サガットさん達が?」

ダン「リュウとケンはさ……気難しい野郎だから、あまり落ち込むんじゃねぇぞ?」

ヤムチャ「……えっ?」

ダン「おめぇは、頑張ってるよ! 三試合にしては、よくやってる方だよ! だから、そんな奴がそんな腑抜けた顔してんじゃねぇ」

ヤムチャ「あっ……はい……!」

ダン「まぁ、飲みに行こうぜ? 仲良く……ジョバー軍団で飲もうぜ! 俺達は仲間なんだからよ!」

ヤムチャ「……仲間?」

ダン「そうだよ……一緒にこのストリートプロレスを盛り上げていかなきゃいけねぇ仲間だ! ホレ、だから今日も飲み会で反省会だ、行くぞっ!」

ヤムチャ「……」

プーアル(ようやく、ヤムチャ様が前向きに歩き始めてくれました……)


プーアル(Z戦士の中で、一番弱いヤムチャ様は、卑屈になって……どんどん落ちこぼれになっていって……)


プーアル(でも、プロレス団体に就職して……また、あの時と同じように……前向きに戦う姿のヤムチャ様が見れるようになりました……)


プーアル(今は、世界も平和になって、争いは起きないし……仮に悪い奴が来たとしても、悟空さんやベジータさんがなんとかしてくれるはずです……)


プーアル(だから……弱いヤムチャさんの戦う場所は……ここが、正しいのかもしれませんね……)


プーアル「ヤムチャ様! 次は、『俺はプロレス団体に就職して頑張るぞ!』ですよ! わかりましたか!?」

ヤムチャ「お、おい……プーアル、何言ってるんだよ……? とりあえず、お前も来いよ……ほら、飲み会行くぞ……?」

ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」


ーー完

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