伊織「春香に告白された?」 (22)

P「んだけど、俺はどうすれば良いと思う?」

伊織「はぁ?何で私にんなこと聞くのよ」ペラ…

P「いや、困ったことがあったら、とりあえず伊織に聞いとけば大丈夫だって評判だから…」

伊織「どっから流れて来たのよ。その評判…」

伊織「ま、他のアホ共に相談するよかは万倍賢明な判断だけどね」サラッ

P「だろ?頼むよ、伊織が好きなオレンジジュース半ダース分注文したから~」グイグイッ

伊織「何よそのハンパなケチり方…ってスカートを引っ張るなっての!」スパーン!

伊織「はぁ…仕方ないわねぇ。話くらいは聞くだけ聞いてあげるわ」

P「流石はいおりん心がデコい!」

伊織「ぶっとばすわよ。で、いつそんなことになったワケ?」

P「一昨日の春香のラジオ収録の後、帰り道の公園で好きだって言われた」

伊織「公園って…まぁ春香らしいか」

伊織「それで、その時アンタは何て答えたの?」

P「細かい台詞は覚えてないが『突然で驚いてる。気持ちの整理をしたいから考えさせてくれ』みたいなことを言ったハズだ」

伊織「またテンプレね…。ていうか、それ言われる時って大体断られるパターンだけど」

伊織「アンタはどういうつもりでそれを言ったのよ」

伊織「春香のこと、好きなの?」

P「好きだよ。そりゃあ」

伊織「はぁ?じゃあ何でそんな無駄な間を置いてんのよ」

伊織「さっさと抱き締めてキスの一つもかます位の甲斐性も無いワケ?」

P「いやだってさ、いきなりOKしてがっついてるみたいに思われたら嫌じゃん?」

P「軽い男というか。即OK出来る程、普段から私達のこと女としてみていたんですか!?この変態!!準ロリコン!!みたいな」

伊織「分からないじゃないけど…。そっちが告って来といてそれ言われたらはっ倒しても文句言われないでしょ多分」

P「可愛い女の子なら誰でもOKするんでしょ!?とか言われたら否定しづらいだけになぁ…」

伊織「一応否定はしなさいよ。目の前のそいつぶん殴った後で良いから」

伊織「…で、結局何が困ってんのよ?一昨日ってことはもう二日経ってんでしょ?」

伊織「考える時間には十分なんだから、さっさと『改めて考えてみて気付いたんだ、俺本当はずっと前から春香のこと―』」

伊織「みたいなしょーもない台詞言ってやって、春香のアホを喜ばせてやんなさいよ」

P「いや…まぁそうなんだけどな…」ポリポリ

伊織「なに?多分ここ数日、生殺しでロクに寝られても無いんだろうから」

伊織「さっさとラクにして――「千早にも、告られたんだよ」

伊織「は?」

P「昨日。好きだ、付き合って欲しいって」

伊織「……誰に?」

P「千早」

伊織「」

伊織「アンタマジで後出しでざけたこと言ってんじゃないわよ…」

P「俺全然悪く無いけど面目無い…」

伊織「相談の難易度がブラザーズの1-1からサンシャインのモンテ村のアレ位に上がってるじゃない」ハァ…

P「あぁあのモンテに投げられるやつな。話しかける方向微調整するのが凄くダルい」

伊織「リコタワーとかのアレもポンプ無しだと大概キッツいわよね。視点変えながら操作出来ないってのよ」

  あははははは

伊織「で…アンタはそれにどう答えたの?」

P「安定の一手」

伊織「死ぬのを先延ばしにしただけでしょうが…はぁ、めんどっくさいわねぇ!」ガシガシ

伊織「一個デカい問題としてあるのは」

P「うん」

伊織「千早が春香のことを知っててやったのか否かってことよね」

P「……………」キリキリ…

伊織「考えたくないのは分かるけど、アンタは当事者でしょーが」ハァ

伊織「告白の時の千早の様子で、何か察せられるとこは無かったの?」

P「って言われてもなぁ。千早は感情があんまり表に出にくいタイプだし…」

伊織「チッつっかえないわねぇボンクラのガラス玉は」

伊織「37度2分には気付く癖に、なんでそんな瞭然くさいのが分かんないのよ」

P「俺だって動転してたんだからしょうがないだろ…あ」

P「そうだ。だから多分千早は知らない筈…」

伊織「なんでよ?」

P「春香の告白が終わった後、俺言われたんだよ」

P「恥ずかしいからこのことは誰にも秘密。お互い絶対誰にも喋っちゃ駄目だって」

伊織「だから千早も知らないはずって?甘いわね」

伊織「公園なんて誰が聞いてるか分からないんだし、親友なんだから事前に相談してた可能性も……ていうか」スッ

P「?」

伊織「じゃあ私巻き込んでんじゃないわよ…!!」ネクタイギュギュギュッ…!!!

P「ぐええええええ」

P「げほっげほっ。しょーがないだろ、状況が状況なんだから俺一人の力じゃ…」

伊織「別に律子でもあずさでもよかったでしょうが全く…」

伊織「ハァ…とりあえず、千早の真意は知っておかないと面倒そうよね」

P「だよなぁ……伊織」チラッ

伊織「嫌よ本気でめんどくさい…ていうか怖い。アンタが自分で聞けばいいでしょーが!」

P「無茶言うなよ…。俺が聞いたらどっちの場合でも、その後待ってるのは地獄でしかないだろ…」

P「『それがどうかしたんですか?』とか言われたらどうしてくれるんだ」ガクガク

伊織「言わないでしょ流石に…。いや、無くも無いか」ウーム…

P「だろ?頼むよ伊織この通り!」ペコッ(会釈)

伊織「うざい。…実際私から聞くのも無理あるでしょ、別に特別仲良い訳でも無いし……」

P「大丈夫大丈夫。察しキャラの伊織なら『…なんか今日はいつも以上に辛気臭い顔だけど、どうしたの?話くらいなら聞いてあげるわ』」

P「的なこと言えばどうにかできるって」

伊織「その不快なモノマネ止めろ」ギロリ

P「ごめん」

伊織「人に妙な属性付けてんじゃないわよ。大体わざわざ干渉しにいくのも私のキャラじゃ…」

P「あと一応言っとくが、絶対に俺が伊織に相談したことは漏らさないでくれよな。今後の信用に関わる」

伊織「なに勝手にやる方向で話進めてんのよ!!ここまで来といて保身に走るな!!」

P「ここまで来たって言っても、俺全然悪くないだろ…流されるままに来ただけだぞ?」

伊織「それが駄目だってハナシなんでしょ。八方美人で誰にでも良い顔してるからそうなるのよ」ハッ

P「…伊織にそれ言われるとな」ハハッ…

伊織「…………」

伊織「ていうかそもそも、アンタはどうしようと思ってるのよ?」

P「どうって?」

伊織「春香のこと好きだって言ったわよね。だったら千早はフるしか無いんだから――「いや、それは違う」

伊織「あん?」

P「俺は千早も好きだ」

P「いや帰らないでくれって…!」ズルズル…

伊織「離しなさい。これ以上アンタの与太話に付き合ってあげる義理は無いわ」

伊織「何なの?ハーレム王でも目指すつもり?」ギロリ

P「そういうことじゃなくてだな…。だって、不公平だろ?」

伊織「不公平?」

P「俺くらいの歳になってくると特になんだが」

P「絶対にこの人と付き合いたい!他の人なんぞ一切視野に入らない!…なんて程、特定の人を好きになるなんてそうは無いんだよ」

伊織「はぁ」

P「でも可愛い彼女が欲しいとは恒常的に四六時中思っているから」

P「彼女が居ない時に、ちょっと良いなと思ってる娘から告白されれば、まずOKする訳だ」

P「付き合ってから育む愛もあるとかそんなノリでな」

伊織「地雷踏むリスクも相当に高そうなノリだけどね。それで?」

P「この説を今回のケースに当て嵌めると」

P「今彼女居ない俺は、良い子だなぁと思っている春香に告白されれば」

P「この際アイドルとプロデューサーの関係云々を無視すれば、断る理由は無い」

伊織「どの際よ。…で、それは相手が千早でも同じことだって言いたいワケ?」

P「然り」

P「仮に千早が先に告白して来たとしたら、俺はそれを受け入れていたと思う」

P「たかが順番の遅い早いで結果が変わるのは不公平だと思うんだよ」

伊織「そうかしら。『早い者勝ち』ってのは十分世の真理だと思うわよ?」

伊織「ルールに則ることは前提だけど、スピードで勝負が決まるならむしろ公平なくらいじゃない。私達のライブのチケットも基本そうなんだし」

P「う……」

伊織「今回にしたって、アンタが春香の告白に即OKしていたとしたら」

伊織「千早は振るのが筋だと思うわよ。実際はアンタの無駄な引き延ばしの所為で、同着セーフみたいになったけどね」

伊織「まぁ引き延ばしたからこそなのかもしれないけど…」ボソッ

伊織「ま、要はこの状況はアンタの自業自得」

伊織「『先着順』って言い訳が使えなくなったんだから、精々悩み苦しむことね」

伊織「どっちを選ぶのか、或いはどっちも選ばないのか…案外、両取りを狙ってもあの2人なら上手く行くかもしれないわよ?」フフッ

P「流石にそんな不誠実な真似はしねーよ」

P「……まぁ2人共が望むんならやぶさかじゃないが」

伊織「その場合じきにアンタ要らなくなりそうだけどね。小鳥の餌のスパイスなんてアンタにお似合いじゃない」クスクス

P「うっせ。…けど、ありがとな伊織」

P「伊織と話したお陰で、頭の靄が晴れた気がするよ」

伊織「…そ。じゃあ私はお役御免ね」スクッ

伊織「今日はもう家で休んでるから、結論が出たら私に電話してきなさいね」スタスタ

P「……伊織」

伊織「何よ。まだ何か――  




      「――お前は、どうするんだ?」




  

伊織「…………」じっ

P「俺は今から、二人に告白の返事をしに行く」

P「二人を呼び出して…そこで、選ぶつもりだ」

伊織「…………だから――だったの?」

P「あぁ。伊織はさっきあぁ言ったが、やっぱり俺は勝負はフェアであるべきだと思う」

P「悔いを残さない為に。だから春香に告白された時……こうしようと、思ったんだ」

伊織「――残酷なことね」

伊織「ねぇ、アンタは運命って信じる?」

伊織「前世からの巡り合わせなり何なりで、この世に産まれ落ちた瞬間――結ばれるべき相手は定められている」

P「信じない。そんなのは自分を騙す為の後付けで」

P「全部…自分で創って行くしかないもんだろう」

伊織「そう。でも、私はこれでも浪漫主義者なのよ」



   「だから私は―――」


        
    

  
 
   
  ――パタン  タタタタタタッ!――




千早「…春香?」

春香「―――臆病者……」ボソッ



        <了>

おしまい

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