Fall to Sins~咎堕物語~愛乃めぐみ編(310)

ハピネスチャージプリキュア・めぐみ闇堕SSです。

一部「遊戯王」とのクロスあります。

キャラの人格変容・オリジナル設定・残虐シーンありなので、苦手な方要注意。

但し、救いの無い「BAD END」ではありません。

一旦切ってから本編開始します。
Just a moments.

いおな監督下でのプリキュア強化合宿から1週間ほどした、とある日。

ハピネスチャージプリキュアの面々はいつもの様に大使館に集まり、幻影帝国に備えつつおしゃべりを楽しんでいた。

~夕方~

めぐみ「あ。あたし、そろそろ帰らなきゃ」

ひめ「え~!もう帰っちゃうの? 」

ゆうこ「だいぶ陽が傾いてきたし、暗くなる前に帰らなきゃね」

いおな「プリキュアと言えど、夜道は危ないものね。私もそろそろお暇させてもらうわ」

ひめ「ふえ~、みんな帰っちゃうのか~。もうちょっと遊びたかったな~ 」

リボン「ヒメ、ワガママ言ってはいけませんデスワ」

ブルー「皆、それぞれの生活があるからね。友達なら、相手の時間や都合を尊重してあげることも、大切だよ」

グラさん「『親しき中にも礼儀あり』ダゼ、おヒメちゃん」

ひめ「ぷー、わかったよ~ 」

めぐみ「あたしももっとひめと居たいよ~ 」

ゆうこ「わたしも~ 」

言いながら、めぐみとゆうこはひめに抱き付き、ひめは「くすぐったいよぅ~」などと言ってじゃれ合う。

扉の前まで行っていたいおなは、呆れ半分、笑顔半分の表情でソファに引き返し、じゃれ合っている三人からめぐみとゆうこを引き剥がした。

いおな「ほら、二人とも。いつまでもふざけてないで、暗くなる前にかえるわよ」

めぐみ「やーん、いおなちゃんのいけずぅ~ 」

ゆうこ「いおなちゃんだって、本当はもっと居たいくせにぃ~ 」

いおな「そりゃあ、まあ、そうだけど…… 」

ひめ「 ! …へぇ~?いおなも私ともっと居たいんだ~?ついこの間まで、私のコト嫌ってたのに~ 」ニヤニヤ

いおな「あ、あれは、だから…お姉ちゃんやファントムのコトとか、色々気負い過ぎちゃって、ひめの話を聞く余裕が無かったからで。そのコトについては、お互いもう納得したじゃない! 」

ひめ「ふひひ♪ 冗談だよ。いおなが『もっと居たい』て言ってくれたのが嬉しくて」

いおな「もう!// 」

めぐみ「それじゃあ、今度こそ帰るね。ひめ、また明日、学校でね」

ひめ「うん!それじゃあね~ 」

ゆうこ「おやすみ、ひめちゃん。リボンちゃんと神様も、おやすみなさい」

リボン「ハイ♪おやすみデスワ~ 」

ブルー「気を付けて帰るんだよ」

いおな「おじゃましました」

「じゃ~ね~ 」

めぐみ「いおなちゃん、ひめと仲良くなったね!」

いおな「なによ急に」

ゆうこ「めぐみちゃん、二人が無事に仲直りできたのが嬉しいんだよ。最初の頃は、『いおなちゃん』の時も『フォーチュン』の時も、ひめちゃんをあからさまに嫌ってたもの」

めぐみ「そうそう。正体明かしてくれた時も、ひめのコト無視してあたしとゆうゆうだけに話し掛けてきて。正直、嬉しいよりも先に戸惑っちゃった」

いおな「…『性格ブス』とか思ったでしょ? 」

めぐ&ゆう「いや、流石にそこまでわ 」手ブンブン

めぐみ「とにかく。あたしは本当に、二人が仲良くなれたのが凄く嬉しいよ。やっぱり、みんなが笑顔で仲良しじゃなくっちゃ、ハピネスが逃げちゃうもんね! 」

ゆうこ「ケンカしていると、せっかくの美味しいご飯も、美味しく無くなっちゃうしね」

いおな「……私も、ひめも勿論だけど、貴女たちとも、ちゃんと仲間になれて本当に良かったと思ってるわ。独りでいた時からは、考えられないくらい毎日が楽しいから。ありがとう、めぐみ、ゆうこ」

めぐみ「お礼なんて言われると、ちょっぴり照れちゃうね~、ゆうゆう」

ゆうこ「うふふ。普段クールないおなちゃんからだと尚更ね~ 」

いおな「// さ、先に言い出したのは、そっちじゃない! 」

めぐ&ゆう「アハハ* 」

>>8めぐ&ゆう「アハハ♪ 」

スンマセン、また化けた。
同系統の記号でも出ないのがあるのね。

いおな「あ。それじゃあ、私こっちだから」

ゆうこ「わたしも。今日はここでお別れだね。めぐみちゃん、一人で平気? 」

めぐみ「大丈夫だよ。まだ完全に暗くなったわけじゃないし」

いおな「気を付けて帰るのよ。変な寄り道とかしないでね」

めぐみ「分かってるって、子どもじゃないんだから」

「じゃ~ね~。またあした~ 」

めぐみ と ゆうこ・いおな は十字路で別れ、それぞれ帰路に就いた。

少し歩くと、めぐみ は公園の前を通った。いつも通っている、ショートカットするまでも無い小さな公園。今日も、特に意識することも無く通り過ぎようとした。

「ーーーーーーー 」

めぐみ「……ん? 」

不意に、立ち止まってしまった。

めぐみ(なんだろ…今、誰かに呼ばれたような? )

めぐみ は辺りを見回してみる。だが、近くの道は勿論、公園の中にも、人影は見当たらない。
昼間ならば、遊びたい盛りのチビッコや、世間話に花を咲かせる奥様方で賑っている場所も、陽の沈む今の時間には誰もいない。

めぐみ「……気のせい、かな? 」

一瞬、幻影帝国かとも思った めぐみ だが、それにしては静か過ぎる。空耳だと思った めぐみ は、再び歩き出そうとした。しかし……。

めぐみ「ん? ベンチに何かある? 」

視界の隅に小物体を捉え方向転換。本来進むべきとは別の方向へ、足を踏み出してしまった。

めぐみ「何だろコレ?カード…でもプリカードじゃない……うーん、薄暗くてよくみえないなぁ」

公園のベンチに近寄った めぐみ は、ベンチの背に立て掛ける様にして落ちていた『ソレ』を、いつも落し物やゴミを拾う自然さで手に取った。
何であれ、落し物ならば持ち主がいるはず。手掛かりを得ようとカードに書かれている文字を読むため近くの園灯の下まで来た めぐみ は、そこでカードの全容を見た。

めぐみ「やっぱり、プリカードではないか。落とすはず無いもんね」

めぐみ「てゆーかコレ、誠司も昔集めてた『デュエルモンスターズ』?懐かし~、あたしも少しかじったな~ 」

めぐみ「んー、でもコレ、イラストもテキストも白紙だ。枠が黒いから、『エクシーズモンスター』なんだろうけど、、名前は…… 」

めぐみ は、カードの最上段に記された金色の文字を読み上げた。

『INo,77/Ⅲ Force of seven Sins 』
(イミテイショナリー・ナンバーズ77 フォース・オブ・セヴン・シンズ )

>>13また間違えた。

正しくは、
(イミテイショナリー・ナンバーズ・スラッシュ・スリー フォース・オブ・セヴン・シンズ)
です。すみません。

めぐみ「 長っ 」

思わず呟いた、その瞬間。

???「悪かったな……契約完了」

めぐみ「へっ?…うぁっっ!? 」
ピキィィィィィィィ…ン!『77』ヴン

一瞬の激痛。それと同時に、めぐみ の右瞳(みぎめ)に刻印が浮かぶ。

めぐみ「なに、これ…… 」

突然のコトに驚き、右瞳を押さえよろける めぐみ。左手には、カードを持ったまま。

???「案ずるな。悪い様にはせん」

頭の中で声が響く。急激に薄れていく意識の中、めぐみは声に問う。

めぐみ「だ、れ……? 」

唐突に、意識がブラックアウトした。寸前に、声が答えた。

???「一先ず眠れ。夢の中で話そうぞ」

休憩入ります。
前作の反省を踏まえ、再開は明日。

待ってる方いたらごめんなさい。

今日中に一つだけ訂正

>>14 まだ間違えてる。

完正は、
(イミテイショナリー・ナンバーズ77・スラッシュ・スリー フォース・オブ・セヴン・シンズ )
です。何度もすみません。

再開します。
>>15 からの続き

~翌朝 ~ 7:45
ピンポーン♪

誠司「めぐみー、学校行くぞー 」

朝、めぐみの幼馴染みでお隣さんでもある相楽誠司が、めぐみを迎えに来た。二人はいつも、先に支度ができた方が相手を迎えに行っている。

暫しの沈黙。ドアを開けたのは、めぐみの母だった。

誠司「あ。おばさ…っじゃなくて、かおりさん。おはようございます」

かおり「おはよう誠司くん。めぐみ、迎えに来たのよね? 」

誠司「はい、そうです。てまさか、めぐみのやつまだ寝てる、とか? 」

かおり「ううん。違うの。めぐみはもうとっくに起きてるわ。それどころか、既に出かけちゃったみたい」

誠司「え? あいつ今日、日直だったっけ……? 」

かおり「わたしが起きたときには、もういなかった。多分すごく早起きしたんだと思う。朝ご飯はわたしの分も作ってくれてて、食器も全部洗ってあったから」

誠司「普段から別に寝坊助ではないけど、そんなに朝早く起きて出かけるのも珍しいな。何か用事でもあったのか? 」

かおり「誠司くんが知らないなら、ちょっと分かんないな。鞄も制服もないから、学校には行ってるはずだけど…… 」

誠司「まあ、風邪でもないのに めぐみが学校休むなんて、まずあり得ませんよ。俺もそろそろ行ってきます」

かおり「そうよね。めぐみは、おサボリする子じゃないし。行ってらっしゃい、誠司くん。気を付けてね」

誠司「はい。かおりさんも、無理しない様に」

「行ってらっしゃーい」

小さく手を振っている かおりに、誠司も肩越しに手を振り返す。マンションを出て学校に着くまで、誠司はめぐみのコトを考えていたが、あまり心配はしていなかった。
単に早く目覚めちまっただけだろう、くらいに思っていた誠司が、そうでは無いと気付くのは、自分の教室に入って、直ぐのことだった。

ぴかりヶ丘中学校~めぐみたちの教室~

メグミ「あ。おはよう誠司。ごめんね、先行っちゃって」

教室に入った誠司に最初に声をかけたのは、めぐみだった。その表情はいつもと変わらない笑顔。僅かに申し訳無さげな色が混じっているが、間違い無くめぐみの表情だ。
ただ一つ、見慣れない小物を着けていること以外は。

誠司「お前、どうしたんだ?その眼鏡…… 」

挨拶の返事をするより先に、誠司は訊ねた。眼鏡っ娘めぐみは、今朝の早起き以上に不可解なことだった。
めぐみは、視力が抜群に良いのだから。

メグミ「あぁこれ? 今朝ちょっとね、とある子から貰ったの。伊達眼鏡なんだけどね」

メグミ「似合う? 」

小首を傾げ、指で眼鏡を摘まみながら微笑むめぐみ。
見慣れないその仕草に、誠司は思わず見惚れてしまった。顔が熱くなり、めぐみに対して今まで感じたことの無い『なにか』を感じて、鼓動が少し速くなる。

誠司(なんだよ、これ…… )

それまで経験したことの無い情動に、誠司自身が激しく動揺し、呼吸が苦しくなる。

メグミ「誠司……? 」

メグミ「大丈夫? 」

誠司「え?あ…… 」

気がつくと、めぐみは表情を変え、固まってしまった誠司を少し心配そうに見つめていた。

誠司「あ、大丈夫だよ、うん!何でも無いって! 」

メグミ「…… 」

誠司「?めぐみ……? 」

慌てて取り繕った誠司を見て、めぐみは悲しげな表情になった。そして、小さく呟く。

メグミ「やっぱり、似合って無いよね、眼鏡なんか…… 」

誠司「あっ…… 」

誠司は、しまった、と思った。

誠司( 元々、めぐみはオシャレに興味があったけど、「センスが無い」とコンプレックスを抱いてずっと諦めていた。
ひめと出会ってからは、彼女に色々と教わって少しずつ快方に向かっていたけど、いつも ひめ にリードされながらで、あまり自分から動くことは無かった。
めぐみは、まだ自分のコンプレックスを克服し切れていない。この伊達眼鏡だって、めぐみなりに勇気を出し、一歩を踏み出して着けて来たんだろう。なのに、俺が何も言わないもんだから不安になって、こんならしくない表情をさせちまった。だったら…… )

誠司「めぐみ。幼馴染みだから、ハッキリ言わせてもらうけど…… 」

メグミ「……うん、いいよ。ズバッと言っちゃってよ。『似合って無い』て…… 」

誠司「めちゃくちゃ似合ってる。ホントにスゲーかわいいよ」

メグミ「へ? 」

誠司「言っとくけど本当だぞ?マジで似合いすぎてて、一瞬ドキッとしちまった。つーか今でもドキドキしてる。俺は別に眼鏡っ娘好きでは無いし、幼馴染みってコトを抜きにしての一個人の正直な感想で、その眼鏡は良く似合ってるしかわいいよ。
幼馴染みとしても、いつもの めぐみと違って新鮮で、掛け値なしに魅力的だと思う。俺は嘘は吐かねーぞ」

一息に畳み掛けた。反論の隙を与えず、素直な気持ちを伝える。自信を無くした めぐみ にはこれが一番だと、誠司は永い付き合いの中で熟知していた。

誠司(流石に、クラス全員の前で『かわいい』とか言うのは照れる。けど、おべっかで取り繕ったってめぐみには直ぐ分かるし、『気を遣わせた』って余計に凹んじまう。めぐみが元気無くすくらいなら、いくらでも本音で絶讃してやる。多少の冷やかしは臨むところだ )

心の中で、誠司は弁解とも決意ともとれる独り言を呟いた。めぐみを元気づけるために、柄にも無く特定の女子を褒めちぎったので、気恥ずかしさを紛らわせたかったのだ。
何せ、既に周囲の生徒たちからは、冷やかし以外の何物でも無い視線やヒソヒソ声が上がっていたのだから。

メグミ「あ、あの、誠司。み、魅力的って、ホントに? 眼鏡、変じゃ無い? 」

誠司のド直球な褒め言葉に、めぐみも頬を朱に染めている。

誠司「変なもんか。本当に、凄く良く似合ってるよ、めぐみ」

未だ信じられない様子のめぐみに、眼鏡越しの瞳を真っ直ぐ見返しながら、誠司はハッキリと答えた。

メグミ「// エヘヘ。ありがとっ。誠司」

ひめ「ほーらねー!?だから言ったじゃーん。『似合ってる』って! 」

メグミ「うわぁ?! 」

照れた表情で微笑うめぐみに、ひめが叫びながらタックルかました。扉の蔭で見ていたらしい。

メグミ「ちょちょ、ひめ、危ないって」

急に飛び付かれ、思わずよろける めぐみだが、その表情は普段通り嬉しそうだった。

ひめ「ゆうこ も いおな も『似合う』って言ってんのに、めぐみってば全然信じないんだよー?それなのに誠司が言ったら直ぐ信じるって!友達三人より誠司一人のが信用上ってかー!? 」

うりゃうりゃー! などと奇声を上げて めぐみに片腕ヘッドロックと「グリグリ」をかける ひめ。めぐみも「ゴメンゴメン、いたたたた」と笑いながら呻いている。

じゃれ合う二人を見ながら ゆうこ と いおな が誠司に話しかける。

ゆうこ「めぐみちゃん、今日は朝一番に教室に来てたらしくてね。二番目がわたしで、お家が近いから、いおなちゃんも一緒に学校に来たの」

いおな「私はクラス違うから、一度自分の教室へ鞄を置きに行って。こっちの教室に来た時には、ゆうこが既に困った表情をしていたわ」

ゆうこ「ひめちゃんの言った通り、めぐみちゃんがいつに無く自信無くしちゃってて。わたしやいおなちゃん、ひめちゃんが『似合ってる』っていくら言っても信じてくれなくて」

いおな「私はまだ、めぐみとの付き合いは浅いけど、学校や街で見かけたのを含めても、あんなにドンヨリした めぐみは初めて見たわ」

誠司「そこまでか?めぐみには失礼だけど、ある意味少し見てみたいかも…… 」

いおな「やめておいた方が良いわ。幻影帝国の仕業なんじゃって思うくらい、『負』のオーラ全開だったもの」

誠司「おいおい…… 」

ゆうこ「でもね…… 」

いおなの笑えない冗談に誠司が苦笑すると、唐突に ゆうこが声のトーンを落とし、深刻な表情で『本題』に入った」

誠司「ど、どうした大森? 」

ゆうこ「うん。あんまり めぐみちゃんが『似合って無い』言うから、ひめちゃんが『だったら外しなよ! 』て言っちゃって。一瞬、めぐみちゃん泣き出しちゃうんじゃ、とも思ったんだけど…… 」

誠司「けど? 」

いおな「めぐみは、『ダメ』って、即答したのよ。『似合って無くても外せない』って。おかしいと思わない? 」

誠司「……確かに。いつもの めぐみなら、本気で『似合って無い』って思ったら周りが何と言おうと直ぐ止めてる。それに、『外したく無い』じゃ無く『外せない』って、どういうコトだ? 」

中途半端ですが、本日はここまで。

再開は、また明日です。

可能性低いけど、21時~23時ごろに少しだけ進めるかも。

いるか分かりませんが、読んでくれてる方々、気長に待っていてください。

再開します。その前に、>>1 少し訂正。
クロスしてるの、「遊戯王」だけじゃありませんでした。

>>30 の続きから

いおな「それだけじゃ無いわ。今日の めぐみ、少し異常なの」

誠司「おい、『異常』っていくらなんでも…… 」

ゆうこ「ごめんね相楽くん。わたしも同じコトを思った。そう思ってしまうくらい、今日の めぐみちゃんはいつもと違うの」

いおな らしからぬ台詞に、誠司が思わず眉を顰めると、ゆうこがキッパリと同意した。普段なら絶対に言わない様なコトを、二人が口を揃えて言っている。誠司は、二人が考えている事が分かった気がした。

誠司「まさか、幻影帝国がめぐみに何か……? 」

いおな「可能性は、否定出来ないわね」

誠司「いつもと違うって、具体的にどんな風に? 」

ゆうこ「まず、『態度』が違う」

誠司「『態度』? 」

誠司が繰り返すと、ゆうこはコクリと頷き、続けた。

ゆうこ「さっきも言ったけど、わたしと いおなちゃん、ひめちゃんの三人は、相楽くんより大分早く学校に来て、めぐみちゃんと話していた」

ゆうこ「でも実は、相楽くんが来るまで めぐみちゃん、誰に対しても無反応だったの」

誠司「無反応て、無視してたってコトか?あの めぐみが? 」

ゆうこ「めぐみちゃんの机に、本があるでしょ? 」

ゆうこは直接答えず、積まれた分厚い本を指差した。

ゆうこ「わたしが来た時からずっと、めぐみちゃんはあの本を読んでいて、挨拶すら誰にもしなかった。まるで、誰の存在も意識していないかの様に本に没頭していたわ」

誠司「単にめちゃくちゃ面白くて、集中してただけじゃ? 」

誠司「いや、それにしたって、あの めぐみが挨拶すら返さないってのは、確かに変か」

自身の問いを自分で否定する誠司に、今度は いおなが件の本を指差した。

いおな「それにあの本。後ろから少し覗いて見たら、全文『ラテン語』の本なのよ。あんなの めぐみどころか、大学生だってそうは読めないわよ」

誠司「ちょっと待った。『ラテン語』って? 」

いおな「英語やスペイン語、他にも様々な西洋語のルーツって言われている、旧い言語よ。今はもう誰も使っていないわ。せいぜい、言語学者や考古学者が研究の為に学ぶ、ていうくらいね。祖父の知人にそういう方がいて、少し教えてもらった事があるから、あの本が『ラテン語』で書かれているっていうのは分かるんだけど、流石に内容までは全く読めない」

いおな「ただ、あんな本は街の図書館の地下書庫にだって無いと思うわ。勿論古書店にだってね。何しろ、まるで新品の様にキレイすぎる。祖父の知人の先生のラテン語の本は、どれもこれもとても古くて、大抵こんなものだ、と悲しそうに仰っていたから」

誠司「つまり、偉い学者さんでも持ってない様な本をめぐみが持ってて、大学生でも読めなそうなのに没頭して読んでいた。その上挨拶も返事もしない、とそういうコトか? 」

ゆうこ「それだけじゃない。もう一つ変なコトがあるの」

誠司「まだあるのか? 」

ゆうこ「さっきも少し言ったけど、めぐみちゃん、相楽くんが来た途端に態度が変わったの」

誠司「そういや めぐみのやつ、俺には教室に入って直ぐに声かけてきたな」

いおな「あの時、私たち三人は相楽君が入ったのと別の扉から、めぐみの様子を観ていたの。正直、ショックだったわ」

ゆうこ「わたしも。多分ひめちゃんもね。めぐみちゃんの態度があまりにも……それこそ、最初の頃のいおなちゃん以上にあからさまに違ったから。理由は分からないけれど、めぐみちゃんに本気で嫌われちゃったんじゃないかって、悲しくなった」

誠司「……今は? 」

二人の表情に悲しみ以外のものを感じていた誠司は、短く問うた。それに対し、ゆうこ と いおな は一度顔を見合わせ、『いつもの様に』ひめと笑い合う めぐみを振り返った。誠司もめぐみの笑顔を見遣る。眼鏡以外に変わりの無い、『いつものめぐみ』の笑顔。視線を移さず、ゆうこが答える。

ゆうこ「リボンちゃんとグラさんが、『変なチカラを感じる』って」

誠司「変なチカラ……やっぱり幻影帝国の? 」

いおな「それは分からない。でも、
二人とも妙なコトを言うの。『禍々しいけれど、邪悪な感じでは無い』って」

誠司「それ、矛盾してないか? 」

いおな「私に言われても分かんないわ。ただ、暫く様子を観るべきだと思う」

ゆうこ「もし本当に幻影帝国の仕業だったら、下手に動くとめぐみちゃん自身が危険かも知れない。だから、凄く心配だし不安だけど、動きがあるまでは様子を観ているしかないよね」

ゆうこ「相楽くんなら、今のめぐみちゃんとも普通に話せるみたいだし、いつも以上に気に掛けてあげてくれる? 」

誠司「あぁ解った。何かあったら、直ぐ皆に報せるよ」

いおな「グラさんとリボンが、神様にも報せに行ってくれてるわ」

ゆうこ「今日は、『ハピネスチャージプリキュア』全員で、めぐみちゃんを見守ろう! 」

今日はここまで。また明日、再開です。

次のシーンから以外な人物が登場。乞うご期待!!

>>40 誤字訂正。

「以外な人物」→「意外な人物」

再開します。>>39の続きから。

始業の鐘が鳴り、いおなは自分の教室に戻った。去り際、眼が合って「また後で」と声をかけた いおなに対し、めぐみは笑顔で「うん!後でねー 」と返した。至って普通の対応だが、いおなは複雑そうな表情をし、最後に誠司をちらりと見て踵を返した。一瞬の目配せに、念押しの意味が込められていたのを、誠司は確かに読み取った。

クラスメートたちが全員着席した一瞬後に、クラス担任の和泉が教室入りし、ホームルームが始まった。その第一声で、静かな教室が途端にざわついた。

和泉「突然ですが、今日からこのクラスに、転入生が加わります」

「転入生だって」「知ってた? 」「どんなコかな」「男子?女子? 」

和泉「ハイハイ静かに!急な話で、先生も今朝学校に来てから知りました。ご家庭の事情で、連絡が遅れたそうなの。早速紹介するわね」

和泉が「入って! 」と促すと、引き戸が開き、「転入生」が入って来た。クラス中の視線が集中する。

ひめ「!? 」
ゆうこ「!? 」
誠司「!!? 」

20名ほどの生徒のうち、3名ほど他と違うリアクションを示した。

入って来た「転入生」は、少々「普通じゃない」格好をしていた。

和泉「黒板に名前を書いて、自己紹介してくれる? 」

「ハイ」と小さな声で了承した転入生は、白いチョークを手に取り、言われた通り自分の名前を書き綴って挨拶をした。

「 皇姫 星謌 」

星謌「スメラギ セイカ です。よろしくお願いします」

それだけ言って、セイカと名乗った転入生は沈黙した。感情の籠っていない、機械の様に冷たい声と飾りの無い挨拶。無表情。だがそれ以上に、転入生の姿は異様だった。

小柄な身体に纏う制服はサイズが合っていないのか、少しブカブカだ。しかし何の変哲もない学校指定の制服。
小さな顔の上半分を覆うような丸眼鏡も、どこか不釣合いだが言うほど変では無い。耳にかかる乱雑に切られた黒髪も、よくよく見ると黒檀の様に艶やかで手入れがされている。
しかしその頭の上には何故か、見慣れない、いやある意味で見慣れているモノが、ピコピコと踊っていた。

真っ白で細長い『ウサミミ』が、落ち着かなげに揺れていたのだった。

和泉「えー、それじゃあ誰か、皇姫さんに質問あるひと」

いっしー「ハイ!皇姫さんは、どこからきたんですか? 」

星謌「覚えていません」

いっしー「えっ…… 」

星謌「家族の事情で、短い期間にあちこちを転々としているので、いちいち覚えていません」

いっしー「えっ、と……そ、そうなんだ~、タイヘンだね」

星謌「…… 」

和泉「あ、と、次の質問は? 」

山崎「ハイハイハイ!スリ、」

星謌「ノーコメントです」

クラスのムードメーカー山崎の質問を、ロボットのような少女は出だしで遮った。様子見の初球ストレートをフルスイングの顔面直撃弾で打たれたピッチャーの様に、山崎は目を白黒させる。どうにか体勢を整えようと「あの、俺まだなんにも…… 」と声を出すが、無表情なウサミミ娘は「先生」とまた遮る。

和泉「なに? 」

星謌「このチョーク、貰っていいですか」

そう言って、先ほど自分の名前を書くのに使った白チョークを摘み上げた。

和泉「いい、けど。なにするの? 」

和泉が答えた瞬間、破裂音とともにチョークが消し飛んだ。否、飛び消えた。

一瞬後に、山崎が倒れた。突然の事に教室が静まり返り、誰も蘇生しない内に眼鏡でウサミミの『犯人』が話し始めた。

星謌「全員、特に男子に言っておきます」

星謌「あたし、身体小さいけど強いから。『拳法』を始め様々な格闘術をマスターしているので、下手に近ずくと冗談抜きに火傷するよ。ウッカリ加減を間違えちゃったりして」

それまで無表情だったのが、最後の台詞で豹変した。クラス中が、さっきとは違う意味で静止した。

悪魔の微笑。容貌に似合わない表情が、酷くサマになっていた。

和泉も含め、倒れた山崎を誰も介抱しようとしない。クラス全員が凍止し、自分に注目しているのを確認すると、恐ろしい笑みを湛えたまま少女は続けた。

星謌「あたしがどれ位強いか。解り易く言えば、『チョイアーク』程度なら1000対 1 でも、あたしは圧勝する。なんなら1万対 1 でも楽勝。武器使って良いんなら100万くらいは余裕で片付けられる。嘘だと思うなら他校の生徒とか集められるだけ掻き集めて、かかって来なよ。皆殺しにしたってあたしは捕まらないし」

いつの間にか微笑を消し、冷め切った表情で言い終えると少女は再び沈黙した。こんな恐ろしげな話をしながらも、本人の頭の上ではウサミミがピコピコ揺れていて、誠司はあまりのシュールさに噴き出しそうになるのを必至に堪えた。

星謌「そういう訳で。ハイッ! 」パキンッッ!!!

唐突に、ウサミミ娘が指を鳴らした。驚くほど響いた鋭音の余韻が消えると、俄かに教室内の様子が変化した。

山崎が席に戻り、和泉が授業を始めたのだ。しかも周りの生徒たちも、何事もなかった様に授業を受け始めた。

ウサミミの転入生『皇姫 星謌』は、まだ席に着いていないのに。

どうしたコトかと誠司が見回していると、和泉に注意された。教壇の横で忍び笑いを漏らしている女生徒には、まるで無関心。理不尽以前に『異常事態』を確信した誠司は、腹を抱えて笑い転げている……先ほどまでとは別人のようなウサミミ眼鏡っ娘に警戒の視線を刺した。

誠司( こいつが何者でも、今ここで動くのは、皆が危険だ )

誠司( めぐみの事も、原因は多分こいつ。何をしたか知らないけど、好きにはさせないからな )

ケヒョケヒョと大笑いしていた謎のウサミミは、誠司の視線に気付くと正面から見返し、不可解にも、ニッと笑顏で応えた。

予想外の応戦に誠司が面食らうと、星謌は「うふふっ 」と可笑しそうに笑い、鞄を拾って教室の後方へと歩き出した。

そして立ち止まったのは、あろうことか めぐみの席の背後だった。

一旦休憩。

今日はMステ無いから、21:30~23:30の間にもう少し進めます。

果たして、ウサミミ眼鏡っ娘『皇姫 星謌』の正体は?!
(読み再掲『スメラギ セイカ』)
(『 謌 』は「 歌 」の異字体です)

星謌「や!メグ。調子どうだい? 」

めぐみの席に近づきながら、星謌は快活な声を上げる。自己紹介の時とは、声も表情もまるっきり別人だ。
しかも、めぐみを「メグ」と他の誰も呼ばない愛称で呼び、当然の様にめぐみの席近くの窓を開け、腰の高さにある窓台にヒョイ、と腰掛ける。危ない!などと注意する者はいない。それどころか。

メグミ「調子って、ついさっき会ったばかりじゃないですか? 」

星謌「へ? あーそっか、メグの時間じゃまだ2~3時間しか経っていないのか。時差ボケしちゃった」

メグミ「? あたしの時間、て? 」

星謌「いやなんでもない。気にしないでっ 」

授業中だと言うのに、めぐみと星謌は周囲を憚ることなく談笑している。しかし、それを咎める者はおろか、迷惑そうにしている者すら1人もいない。

誠司( どうなってるんだ…… )

星謌「それにしても!キャラ演じるのって疲れるな~。もう立っているだけで肩凝っちゃいそうだったよ」

メグミ「だったらしなきゃイイじゃないですか? 」

星謌「やー、そういう訳にもいかないんだよねぇー。任務に関係無い他人は、極力遠避けなきゃ。邪魔だし何よりお互いに危ないからね」

メグミ「それは解りますけど、だからってあんな、悪い魔女みたいな顔しなくても…… 」

星謌「ま、ボクは実際『マジョ』だけどねぇ」

メグミ「そう言えばさっき、山崎くんに何したんですか? 」

星謌「別に?ただクラス全員を幻術にかけるための『ヒトバシラ』になってもらっただけさ。半分傀儡にしたけど、殺しちゃいないよ」

メグミ「 『ヒトバシラ』て、、でもその幻術、誠司とゆうゆう、ひめにはかかっていないみたいですよ? 」

突然名前を呼ばれ、三人は思わず振り返る。めぐみと星謌の談笑と同じく、誠司たちの行動を咎める者も、何故かいなかった。星謌は笑って答える。

星謌「そりゃそうさ。メグが『プリキュア』だってコトを知っているコにはかからないように、『式』を設定したから」

ひめ「は? 」
ゆうこ「えぇ? 」
誠司「な、んで知って…… 」

めぐみと親しげに話す転入生は、めぐみの正体を知っている。予想はしていたが、こうもアッサリと告げられて動揺するなと言う方が無茶だった。素っ頓狂な声を上げる ひめたちを面白がる様に、星謌は続ける。

星謌「だってそうじゃ無いと、後で面倒じゃん?色々とさ。だから、さっきすれ違いざまに、三人にも術をかけたんだよ」

追い打ちをかける

>>53
すみません!この言葉消したらエラー通過したのでテストしてみたんですが、なにがいけなかったんだろう?
兎に角、もう少し進めます。

ひめ「え? 術って? 」

ゆうこ「そう言えばさっき、一瞬だけ触られたような…… 」

誠司「授業中に喋ってても注意されないのは、アンタが何かしたからなのか?クラスの皆や、めぐみに何をした!? 」

誠司は立ち上がり、星謌に食ってかかる。ゆうこ と ひめ もそれに倣い、めぐみと星謌を遠巻きに取り囲む。だが、星謌はまるで顔色を変えず、楽しげに臨戦態勢の三人を眺めている。

むしろこの状況に不安を覚えているのは、誠司たちと星謌とを交互に見つめている めぐみだった。

おずおずと、めぐみが発言する。

メグミ「あの、誠司? どうしたの、恐い顔して? あたし、星謌さんには何も、酷いこととかされてないよ? 」

ゆうこ「え、星謌『さん』? 」

ひめ「なんで敬称付け? 」

星謌「あ、丁度良いや」

ぽん、と思いついたような表情になる星謌。そのまま めぐみに話し始める。

星謌「ねぇメグ。さっきから思ってたんだけどさ、敬語とか敬称付け、やめてよ。そういう風に『目上の人』扱いされるの、苦手なんだよね。そんなのは事務所の後輩たちだけで十分さ」

星謌「というかあの子らだって、あんまりボクらのコト『先輩』として扱わなかったんだよねー。アレは流石にどうかと…… 」

メグミ「あの、星謌さん? 」

星謌「と、失礼」

1人でブツブツ言っている星謌を、めぐみが引き戻す。
星謌はこほん、と咳払いを一つし、話を続ける。

星謌「兎に角。ボクはメグの指導と『安定』するまでの監視役。ちゃんとした『師匠』って訳でもないんだから、敬語なんて使わなくていいの。OK? 」

メグミ「はい。じゃ、なくて、うん」

星謌「仲間はみんな対等に。数少ない、ボクらの掟だよ。覚えておいて」

メグミ「解った。それじゃあ、星謌ちゃん、でいい? 」

星謌「モチロン。で、なに?メグ」

メグミ「結局、なんで誠司たち恐い顔しているの? 」

本日はここまで。

続きは明日、と言いたいところですが、明日は休筆します。再開は明後日。

『星謌』の正体、分かった方います?カミングアウトはもう少し後になりますので、気長に待っていてください。

では、おやすみです。

再開します。 >>57の続きから。

星謌「それは、、 」

チラリ、と誠司を見て、星謌は不敵な笑みを浮かべた。そのまま めぐみに答える。

星謌「それはこの三人が、ボクを『敵』だと思っているからさ。大事なメグに、良からぬコトをしたんじゃないか、てね」

メグミ「……は?星謌ちゃんが敵?誠司、なんでそんなコト?そんな訳ないじゃない! 」

誠司「なんでって、分からないのか?めぐみお前、今日色々変じゃないか!ひめ や大森、氷川のこと無視したり、見たことも無い『ラテン語』の本読んだり。お前の様子がおかしくなった直後に、こいつが現れた。怪しいって思うだろ、普通!? 」

メグミ「……? ? ? え、え? 」

めぐみは、何を言っているのか解らないという様な、心底不思議そうな表情をしている。

誠司「な、何だよその顔」

メグミ「いや、何って、、誠司こそ、何を言ってるの? 」

誠司「え? 」

メグミ「あたしが、ひめや ゆうゆう、いおなちゃんを無視したりするはず無いでしょ? 」

誠司「いや、だけど現に、」

メグミ「それにあたし、読書はしてたけど『ラテン語』の本なんて読んでないよ?ていうか『ラテン語』てなに? 」

誠司「何って、お前がさっき読んでた…… 」

星謌「はーいそこまで~ 」

めぐみと誠司の問答を中断し、星謌が自分に注目させた。

メグミ「星謌ちゃんっ。一体何がどうなって…… 」

星謌「メグ。今から種明かししたげるから、ちょっと黙って。OK? 」

メグミ「あ、うん」

星謌「キミたちもね。ちゃんと説明するから、静かに聴いてること」

三人「…… 」

星謌「まず、メグね。お友だち三人を無視したってのは、多分事実だよ」

メグミ「でもあたし、みんなを無視なんて、」

星謌「うん、メグはそんなつもり無かったんだろうね。でも結果的に、周りがそう思う態度をとってしまった。原因は…… 」

星謌は手を伸ばし、白く細い指先で めぐみの右眼の目尻に触れた。めぐみは一瞬驚き、突然「あっ! 」と声をあげた。星謌がニマっと笑う。

メグミ「もしかして…… 」

星謌「そっ。公園で言った『副作用』さ。どんな形で現れるかは、個々で全く違うからね。メグの場合は多分、『躁鬱的多重人格化』とそれに伴う『記憶の欠落』 」

メグミ「そううつ、、なに? 」

星謌「躁鬱的多重人格化。要するに、人格がころころ変わっちゃうってコト。しかも、見たトコかなり不定期にね。メグはまだ『生者』だから、脳に過度の負荷がかかり、人格が変わっている間の記憶がほとんど残っていない。記憶が無いから人格が変わっていたコトにも気づかない。しかも、それ以外の目立った症状が無いから、周りは余計に混乱する」

彼らみたいにね---そう言って再び誠司たちを見た星謌につられ、めぐみも振り返る。最初に誠司を、次にゆうこ と ひめを見た めぐみは、困惑と申し訳なさが混じった表情をした。謝ろうと口を開きかけた めぐみを、星謌が制した。

星謌「メグ。謝るのは後にしてくれる?先にもう一つの方も説明させてよ。その間に頭の中、整えればいいしさ」

メグミ「あ、うん。そうだね。そうする」

星謌「メグが読んでいた本には、『呪い』がかけてあるんだよ」

誠司たちに向き直った星謌は、前置きも無く話し出した。何故か急いでいるように、誠司と ゆうこは感じた。ひめが恐ろしげな声をあげる。

ひめ「ちょ!呪いって?! 」

星謌「心配しなくても、害は無いよ。『呪い』ったって、全部が全部怖いモノなわけじゃ無い。『見えなくなる』『聞こえなくなる』そんな催眠術にだってできるコトを、より強くそして長く効果を発揮させるのがボクらの『呪い』なんだ。勿論、『呪殺』なんかの荒事もできるけどね」

うふふふふ……と不気味に笑う星謌に、ひえぇぇぇぇっ……と本気でビビっているのは ひめ一人。誠司は星謌を睨みながらも、空手の構えはとっていない。ゆうこは教室をキョロキョロと見回し、腕にしがみ付いている ひめに気付くと、視線を星謌に戻して尋ねた。

ゆうこ「誰もわたしたちを注意しないのも、その『呪い』のせいなの? 」

星謌「んー、似たようなもんかな。正しくは、クラスの他のコらには『幻術』をかけてて、実際とは違う風景を見せてるんだ。このコらには、ボクやキミらが真面目に授業を受けているように見えてる。当然話し声も聞こえてない」

星謌「対しキミらは今、ボクが即席で構築した亜空間にいる。と言っても『軸』が僅かにズレてるだけなんだけどね」

誠司「『呪い』に『幻術』しまいには『即席亜空間』ときた。アンタ、マジで何者なんだ? 」

ゆうこ「それに、めぐみちゃんに言った『副作用』って、何なの? 」

ひめ「あ、あたしたちの めぐみ に、一体何してくれたのよ?! 」

キーン、コーン、カーン、コーン

和泉「はい、じゃあ今日はここまで。プリント終わらなかった人は宿題ね」

「え~~! 」「起立、礼」「腹減ったー 」「はえーよ」「ねー昨日のテレビさぁ…… 」

星謌「おっと、やっと終わったか。ゴメン、急用出来たから、続きは放課後に。じゃ! 」

半端だけど一時中断。

20:00~に再開する。

待て!とお約束の台詞を吐く暇も与えず、星謌は教室から消えた。誠司、ひめ、ゆうこが気付いた時には、めぐみ共々姿を消していた。あまりに突然のことで、三人は何が起きたのか理解できず、他のクラスメートたちに声をかけられるまでフリーズしていた。

その後、星謌とめぐみは休み時間の度に姿を消し、昼休みには いおなも加えた4人で学校中を探したが見つからず、そのくせ2~6時限目までの全ての授業に姿を見せていた。更に授業中も何故かタイミングが合わず2人と話せないばかりか、2時限目以降は『幻術』とやらが解けたのか特に誠司がよそ見で何度も注意された。

結局、星謌の言葉通り誠司、ひめ、ゆうこ、いおなの4人は放課後まで、星謌どころか めぐみとも話せず、大使館に行ったリボンとグラさんが戻らないコトも併せて、酷く悶々としながら一日を過ごした。

そして放課後。4人は真っ直ぐ大使館に向かった。学校での一部始終を、鏡でブルーが観ていただろうし、謎のウサミミ転入生のコトも、何か知っているかもしれない。口には出さずとも全員が同じ考えで、この日は運よく掃除当番なども無かった。終業の鐘がなると一目散に玄関へ行き、そこで誠司たち3人と いおなが合流してアイコンタクトだけで行き先を決定、大使館への道を急いだ。

途中、大使館まで100mほどの地点でリボンとグラさんが「サイアークの気配が出た! 」と叫びながら飛んで来た。

ひめ「あーもー!!こんな時に! 」

いおな「仕方ないわね。さっさと片付けて、めぐみを探しましょう」

ゆうこ「相楽くんは、先に神様のところへ、」

誠司「いや、俺も行く。チョイアークを引き付けるくらいならできるし、めぐみも来るかもしれない。いや、来る。来たら羽交い締めにしてでも引き止めるから、俺も一緒に行かせてくれ」

リボン「あの、ブルー様は『誠司君も一緒に』と、仰っていたデスワ」

ひめ「神様が?! 」

いおな「神様もそう言っているのなら、言う通りにしましょう。少し危険だけど、相楽君なら平気よ」

グラさん「いつも道場で、いおなと互角に渡り合ってんダ。チョイアーク程度なら楽勝ダゼ。男見せてくれヨ、誠司! 」

誠司「おう!まかせとけ!! 」

ゆうこ「それじゃあみんな、いくよ! 」

カワルンルン♪

ひめ・ゆうこ
「プリキュア・クルリンミラー・チェンジ!! 」

いおな
「プリキュア・キラリンスター・シンフォニー! 」

ひめ「天空に舞う、青き風!キュアプリンセス! 」

ゆうこ「大地に実る、生命の光!キュアハニー! 」

いおな「夜空に輝く、希望の星!キュアフォーチュン! 」

*本作ではプリキュア中でもキャラ名は「日常の名前」で表示します。

ひめ「誠司、掴まって! 」

誠司「あ、ワリィ。たのむ」

リボン「プリンセス、落とさないように」

ゆうこ「全速力で行くから、息が苦しいかも。少し辛抱してね、相楽くん」

誠司「ああ、大丈夫だ。遠慮せずにかっ飛ばしてくれ! 」

いおな「準備は良い?行くわよ! 」

バサッ、バシュバシュバシュ!ギュゥン……

~河川敷~

ナマケルダ「……む、来ましたな。やれやれ面倒臭い」

ホッシーワ「ほんっとよねぇ。ちゃっちゃと終わらせて、お菓子食べた~い! 」

オレスキー「ヤル気の無い奴は帰って構わんぞ。手柄は俺様が独り占めだ!ワハハハハ! 」


ファントム「……キサマら、クィーンミラージュ様の直々の御命令に不満があるようだな? 」ジャキッ

ナマケルダ「ッ!いえいえそんなコトは無いですぞ。『面倒臭い』は私の口癖でして」

ホッシーワ「そ、そうよ!不満な訳が無いじゃない!だからその、剣から手を離しなさいよ!ね? 」

ファントム「……フン」スッ

オレスキー( 此奴め、ミラージュ様から新しい力を与えられてから、以前にも増して忠誠心が強まっておる。やはり俺様出世の最大の障害はこいつか…… )

~河川敷上空~

誠司「いたぞ! あそこだ! 」

ひめ「ちょっとちょっと~!よりによって三幹部勢揃いじゃ~ん! 」

いおな「 ! ファントムもいる!? 」

ゆうこ「なんで今日は、あんな大勢?それに、チョイアークもものすごい数……! 」

リボン「流石にコレは、多勢に無勢過ぎマスワ!! 」

グラさん「ケド、だからって尻尾巻いて逃げるなんてことはできネェ。そうだろ?いおな! 」

いおな「ええ。たとえ相手がどんな大軍だろうと、プリキュアとして、世界を荒らす幻影帝国を見過ごすわけにはいかない。それに、多勢に無勢だって、勝ち目は充分にあるわ」

誠司「氷川の言う通りだ。幸い、向こうはまだこっちに気付いていない。このまま急降下して全員でデカイのをかませば、チョイアークは散らせる筈だ」

ゆうこ「奇襲作戦ね。不意打ちになるけど、この際仕方ないよね。元々、悪者はあっちだし」

ひめ「ィよ~し!じゃあ早速逝っくよ~! 」

リボン「ストーップ! 」

グラさん「お姫ちゃん、誠司を抱えたまま突っ込むつもりか?別の意味で逝っちまうゼ」

ひめ「おっと、そうだったそうだった。ゴメン誠司、持ってるの忘れてた」

いおな「人担いでて忘れるかしら…… 」

ゆうこ「リボンちゃんとグラさんは、誠司くんを下に降ろしたげてくれる? 」

リボン「ハイデスワ」

グラさん「しゃーねーな。ゆっくり降りるから、動かねぇでくれヨ」

誠司「2人とも、ワルイな。下に降りたら加勢する」

ゆうこ「無理しないでね」

ひめ「そんじゃ、今度こそ行っくよ~! 」

いおな「2人とも、手に力を溜めて。3人一斉に突っ込んで、同時に爆裂させるわよ! 」

ゆうこ「わたしが音頭を取るから、2人は息を合わせて。いくよ! 」

「3…2…1…GO! 」ドウッ!

~河川敷・地上~
キラーン

オレスキー「む? 」

ファントム「どうした? 」

オレスキー「今なにか光ったような…… 」

ファントム「なに、!まさかっ! 」バッ

ホッシーワ「ほえ? 」
ナマケルダ「なんですかな? 」

ゆうこ「プリキュア! 」
いおな「トリプルエクスプロージョン! 」
ひめ「インパクトバスタァーー!! 」

キュオン…ッッッ!チュドッッガーーンンッッ!!!

チョイ~チョイチョイ、チョ~イ~

ナマケルダ「むおぉぉぉ?! 」
ホッシーワ「わきゃあぁぁぁぁ! 」
オレスキー「ぐぅおおぉぉぉう!? 」
ファントム「チィィッ! 」


ひめ「ケホッケホッ、、うー煙が~」

ゆうこ「思った以上に威力出たね」

いおな「撃った方が驚くほどね。音もだけど凄まじい衝撃と爆風だったわ」

ひめ「誠司とリボンとグラさん、大丈夫だったかな~? 」

いおな「間違い無く、一緒に吹っ飛ばされたでしょうね。まあ相楽君なら平気、、だと思うけど…… 」

ゆうこ「でもこれだけの大爆発なら、チョイアークは一掃できただろうし、めぐみちゃんも気付いたかも」

「プリキュアァァ!!!! 」

3人「!!! 」

オレスキー「おのれ小娘ども!よくもやってくれたな!! 」

ホッシーワ「ドレスが泥だらけになっちゃったじゃない! 」

ナマケルダ「やれやれ。土埃を払うのも、面倒なんですぞ? 」

ファントム「プリキュアァ…… 」

いおな「 ッ、ファントム! 」

ファントム「急降下爆撃とは、仲々やってくれるじゃないか……ん? 」

ひめ「っ、なによ?! 」

ファントム「…… 」キョロキョロ

ファントム「オイ、キュアラブリーはどうした? 」

ひめ「ラブリーは、その、今日はいない! 」

ファントム「いない、だと?何故だ? 」

いおな「今日はたまたま別行動してたの。だからいない。それだけよ」

ファントム「……チッ 」

ゆうこ「答えてくれた人に舌打ちは無いんじゃないかな。どうしてラブリーに拘るの? 」

オレスキー「今日の俺様たちは、キュアラブリーを叩き潰しに来たのだ! 」

ひめ「な、え?ラブリー1人のために4人で? 」

ナマケルダ「ええ。クィーンミラージュ様の、直々の御命令でね」

いおな「1人相手に4人がかりなんて卑怯よ!! 」

ホッシーワ「よく言うわ、自分のこと棚に上げて。あたしらだってねぇ、こんなコト好き好んでやりたかないのよ」

ゆうこ「じゃあ、どうして? 」

ファントム「クィーンミラージュ様の御命令だからだ。それ以外のことは知らん」

いおな「なによ、それ。クィーンミラージュに指図されたら、どんなコトでもやると言うの?大勢でよってたかって、たった一人を潰すだなんて、そんな……! 」

ファントム「本当に知らないんだ。今朝急に呼び出され、『キュアラブリーを潰せ』と、有無を言わさず命じられた」

ファントム「確かにオレは、ミラージュ様の御命令ならばどんなコトでもしてみせる。だが、今ここにこうしているのは、ミラージュ様の御命令もあるが、それだけでは無い」

ひめ「どうゆうこと? 」

ファントム「ミラージュ様は、何かに怯えておられた。絶望と不幸の女神たるあのお方が、堪えようの無い恐怖を感じておられるのだ。俺自身も、昨夜から得体の知れぬ『何か』を感じていた」

ファントム「そこへ今朝の急な招集、そして『キュアラブリーを潰せ』との御命令。ミラージュ様をも慄かせる『何か』を、キュアラブリーが手にしたに違いない。だからこそ、この布陣を用意した。卑怯と罵られようと、ミラージュ様を脅かす存在は必ず排除する。それがオレの役目、オレの存在意義だ」

ファントム「だが、肝心のキュアラブリーが現れないのならば仕方ない」

ゆうこ「もしかして、戦わずにひくつもり? 」

ファントム「バカを言うな。代わりにキサマらを倒し、キュアラブリーをおびき出す! 」

ひめ「な!?なんでそうなるのよー! 」

ファントム「仲間を狩られて黙っているようなやつではないだろうからな。さあいくぞ、プリキュアァァ! 」

???「ちょぉっと待ったーー!! 」

今日はここまで。続きは明日です。

突如割って入った声は何者なのか?
キュアラブリー、それとも……!?
ミラージュすら恐れる謎の力、『INo,77/Ⅲ 』とは一体?!
次回、超・激・戦・勃・発!!!!!

再開する。>>77の続きから。

オレスキー「何だ?! 」

ナマケルダ「姿が見えませんな」

ホッシーワ「まさかまた奇襲!?同じ手は食わないわよ! 」


ひめ「なになになに~?! 」

いおな「今の声はどこから? 」

ゆうこ「二人とも静かに! 何かきこえる!! 」

ブオンブオンブオォォ……オ!!!

ゆうこ「この聞き慣れた音……まさかっ?! 」

ブォン、、ドギャッ!

ファントム「な!あれは、バイク?! 」

突如、巨大なバイクが土手を飛び越え現れた。プリキュアとファントムたちの中間地点に着地したバイクは、その異様にゴツイフォルムからは想像出来ないほど俊迅な動きで方向転換し、駆動音を轟かせながらファントムたちに突進した。

ファントム「チィッ! 」バッ

間一髪で躱すファントム。他の幹部たちも回避に成功したが、僅かに残っていたチョイアークどもは右往左往するばかりで、容赦無くはね飛ばされて彼方へと消えた。
バイクは20mほど疾走ると再び方向転換。再度の突進か、とファントムたちが身構えたが、無駄だった。何故なら……。

[ vehicle2, GLIDER MODE, transform! ]

機械音声が響き、バイクが変形した。

ひめ「な!!?ナニアレ?!!! 」

ひめが目を見開き驚愕の声を発する。驚くのも無理はない。ファントムたちを轢き倒そうとした巨大バイクが、瞬き一回、文字通り一瞬の内に小型の飛行機に変形した。ゆうこ と いおな も、驚きのあまり固まっている。

滑空機に変形する直前、バイクに跨っていた人物はシートを蹴って垂直跳びを披露し、機械的なギミック変形完了と同時に機上着地。自動で脚が固定され、左腕を盾を構えるように突き出し、体勢を整えた。

そして間髪入れずに右手を腰に添え、光の板状のモノを2枚出現させ、呪文のような言葉を叫び始めた。

???「 『ストロング・ウィンド』、『エクスプロード・ウィング』! 力を借りるよ! 」

???「 Power Liberation! 具現せよ、炎嵐の翼!! 『BURN OUT CROSSRAZER』!!! 」

幻影4人「グァワアアァァァア!!!! 」

プリキュア3人「キャァァァァァァ!!! 」

一撃で、河川敷は火の海と化した。

ファントムたちは避けるどころか、謎の乱入者が何をする気なのか考える間も無く攻撃され、気付けば爆炎に包まれていた。

少し離れていたプリキュアたちも、滑空機の両翼先端から『炎の翼』が現れるを視た次の瞬間には、熱い爆風と衝撃波を浴び立っているのがやっとだった。


ゴウゴウと唸る熱風が収まり、プリキュアたちが恐る恐る目を開けると、正にそれ以外の表現が浮かばないほど、文字通りにそこは『火の海』だった。対岸だけでなく、川の水まで燃えており、3人とも、背筋が寒くなるのを感じた。

プリキュア(こんなの、もし直撃したら…… )

実際に直撃を受けたファントムたちも、流石にただではすまなかっただろう。下手すれば跡形も無いかも知れない。敵とはいえあまりに酷い最期だと、プリキュアたちが思ったその時。

「ぐ、、おの、れ……っ! 」

プリキュア「!!! 」

いおな「まさか?! 」

ファントム「おのれぇぇぇぇ!!!!! 」

腹減った。一時休憩。

再開は20:00以降。

……見てるヒトいる?
いなくても書くケド。

>>82の続き。

ひめ「ファントム! まだ立てるなんて……! 」

ゆうこ「でも酷い傷。これ以上闘ったら本当に……! 」

ファントム「黙れぇぇぇ!! 」

ひめ「ぴっ!? 」

ファントム「例えこの命燃え尽きようと、オレはミラージュ様を護る。それが、オレの生きる意味!オレの唯一の存在価値だ! 」

いおな「ファントム、あなた…… 」

ファントム「ミラージュ様に仇なすものは、何であろうと全て倒す!!ミラージュ様の為ならば、オレは……! 」

???「ストップ。それ以上は死亡フラグだよ」

ファントム「 ! っ、どこだ!! 」

???「ココだ 」ブンっ

ひめ「うわ?!え?なに?今どこから!? 」

ゆうこ( 今のは、テレポート? )

ファントム「キサマァ……! 」

???「ヤレヤレ。妙に手応えが薄いと思ったら、やはり守られていたか。全く面倒な」

ナマケルダ「それは、ワタシの台詞ですぞ」

プリキュア「!!! 」

ホッシーワ「よくも、やってくれちゃったわね!高いドレスが台無しよ!! 」

オレスキー「この俺様に手傷を負わせるとは!俺様法で極刑に処してくれる!!! 」

いおな「そんな、全員無事だなんて。間一髪で避けていたっていうの!? 」

???「いや当てた。だが障壁で緩和された」

ゆうこ「障壁……バリアーってこと? 」

いおな「もしかして、クィーンミラージュの? 」

???「ハッ!即席技とはいえあんな小娘ごときに、我が攻撃が防げるものか」

ひめ「ミラージュを『小娘』って。アンタ一体、何者なのよ? 」

ひめに問われ、その者は口元を歪めた。嘲笑なのか微笑みなのか。表情が読めないのは、顔の上半分を仮面で隠しているからだ。
更に、目の前にいるのが めぐみーーキュアラブリーなのかどうか、誰も判別できないのは、奇妙に響く声と、髪型が違うため。

プリキュアは、フォームチェンジで髪型も変化する。学校での めぐみの様子と、ファントムの話とで、めぐみに何らかの異変が起きていると確信した ひめたちは、目の前の人物がめぐみ なのか、かえって判らなくなっていた。

いおな(でも、この人が何者であれ、絶大な戦闘力を備えていることは間違いない。味方なら問題無いけどもし、敵だったら…… )

???「安心しろ。我はお前たちの敵では無い。味方でも無いだろうがな」

クククッ……と不気味に笑い、謎の仮面は滞空していた滑空機から飛び降りた。フワリと小さな土煙を上げ、いつの間にか鎮火した河川敷に降り立つ。

???「 『施錠』 」

呟きと同時に左手が小さく鳴る。大型の錠前のような物体が握られていた。

ガチリ、と音がしたかと思うと、突如空間に穴が開き、変形する機械の乗り物はその穴に吸い込まれた。

空間の穴が閉じると、ファントムが仮面に問うた。

ファントム「キサマ、何者だ? 」

仮面の人物は答えず、右手に握った小物体ーー先ほどの錠前に似ているが二回り小さく、掛け金が無いーーをカチリと鳴らした。

[ TAKT ][ Wisdom Saver ]

電子音声が響き、小物体が光った。そして次の瞬間、持ち主の身の丈と同じ長さの金属棒に変化した。

ファントム( 何だ今のは? )

ひめ「アレって、武器? 」

いおな「ただの鉄棒にしか見えないけど…… 」

ゆうこ( 棒、というより、アレは…… )

ナマケルダ「ふむ。ワタシには、『 棒 』よりも『 杖 』に見えますぞ」

おもむろに、仮面の人物が口を開いた。

???「我はウォーカー。『武装道化(アーマード・クラウン) D-ウォーカー』だ」

唐突に名乗ったため、数瞬の間誰もリアクションできなかった。最初に蘇生した ゆうこも、告げられた名を鸚鵡返しにしただけ。それを受けて『ウォーカー』が補足する。

ウォーカー「無論、真名ではない。この姿で戦闘する際の仮の名。『コードネーム』のようなモノだ」

ファントム「プリキュア、では無いのか……? 」

ウォーカー「似た力も扱えるが、そのものでは無い」

ナマケルダ「アーマード(鎧を着た)と言う割には、身に付けておられるのはその、窮屈そうなスーツだけですが? 」

ナマケルダの問いに、ウォーカーは再び口元を歪める。

彼の指摘通り、ウォーカーが身に付けているのは、顔の上半分を覆う仮面と、首から下を包むピッチリとした黒いラバースーツのみ。ラブリーとよく似たピンクの髪も、踵まで届くほど長いが束ねていない。右手に握った長い棒も、両端の杭状の石突き以外は模様一つない。

要は、名乗った号とビジュアルとが、まるで噛み合っていなかった。

ウォーカー「お前たちごとき、これだけで十分なのだかな。しかし、やはり少々『華』に欠けるか」

いいだろう……そう言って、ウォーカーは金属棒を左手に持ち替え、一度下ろしてから右手を胸の前に掲げる。その手には、掛け金が無く最初の錠前より一回りだけ小さい、棒に変化したモノにそっくりな物体が握られていた。

ウォーカー「幹部3人の最期に、手向けの華を添えてやろう」

オレスキー「なにぃ!? 」

ウォーカー「『武装変身( クロス・オン ) 』! 」

ガキン、と音が鳴った。
ウォーカーの頭上に、甲冑が出現する。と同時に、電子音声が響く。

[ Shining ]

右手の物体を腰に添え、奇妙な形のベルト中央部のくぼみにセットする。再び電子音声。

[ stand by , ready? ]

空いた右手でハンドルを掴み、中央部に向けて絞るようにスライドさせる。三度目、少し長めの電子音声が響き渡る。

[ Go! シャイニングクロス! ]
[ ARCHLORD Master Clown ]

音声に並行して、甲冑が分解しウォーカーを鎧っていく。装着者を庇いながら浮遊旋回するパーツが次々と装着されていき、王冠を想わせるヘッドパーツが装着。同時に光の粒子が集って留め具になり首の後ろで髪を束ねると、最後は同じように光の粒子が集まり純白のケープを形成。

最初の音から装着完了まで、約8秒。

10秒も掛からずに、白と金の鎧を纏った『武装道化』が、その姿を現した。

先ずは謝辞をば。
昨日は再開せず申し訳ない。待ってくれていた方々本当にごめんなさい。以後、同じ事の無いよう気をつけます。

では再開。>>90 の続きから。


白と金の鎧を纏った『武装道化』が、姿を現した。

ウォーカー「改めて名乗ろう。我は『アーマード・クラウン D-ウォーカー』。運命を渡り歩く、気紛れな道化だ」

ファントム「『運命を渡り歩く』だと? どういう意味だ? 」

ウォーカー「悪いが答える義理は無い。それに、お前たちに答えても無駄だ。何故なら、」

「お前たちの運命は、ここで終わるからだ」

ファントム「なに、」

一瞬だった。ファントムやプリキュアたちが気付いた時には、3人の幹部たちは討たれていた。

ひめ、ゆうこ、いおなの3人だけでなく、ファントムですら何が起こったのか解らなかった。

プリキュアとファントムとの丁度中間点に立っていたウォーカーは、いつ消えたのか判らないほど忽然と姿を消し、突如 破砕音が響いたと思えば既に三幹部は三方へ吹き飛ばされ、瓦礫に埋まっていた。

更にはファントムも、振り返った途端 腹部に衝撃波を受け、声も出せずに対岸へ吹き飛ばされた。

プリキュア3人が唖然としているのを一瞥もせず、光速の道化は三幹部への追撃を始める。

ウォーカー「 星海より来たりて射抜け! 」
「マジック『サジッタ・フレイム』!! 」

ウォーカーが光の小板を空に掲げると、『炎の矢』が三幹部目がけて雨あられと降り注いだ。

幾つもの小さな爆発が瓦礫を粉砕し、やがて三幹部が埋まった場所は猛大な爆炎に包まれた。

ウォーカー「まだまだ…… 」

ウォーカーが手を下ろしても炎の雨は止まず、爆炎はどんどん大きくなっていく。最初から止める気が無いらしく、白い道化は更なる追撃を加える。

ウォーカー「『ライトニング・ボルテックス』! 」

三つの火柱を何本もの稲妻が襲った。炎の矢も依然降り続いている。

小さな基地 程度ならとうに更地と化しているような破壊を、たった3人の人間相手に行うウォーカーに対し、プリキュアたちは攻撃を止めてやるよう求めた。全員「いくらなんでもやり過ぎ」と口を揃える。しかしウォーカーは鼻で笑って答えた。

ウォーカー「やめない。あの雑魚どもが跡形も無くなるまで、止める気は無い」

ひめ「跡形も、て!こ、怖いこと言わないでよ! 」

ゆうこ「このままじゃ、死んじゃうよ!? 」

ウォーカー「それがどうした? 」

いおな「な……?! 」

ウォーカー「むしろ、何故『止めろ』などと言う? 奴らは『敵』だろう? 滅さぬ理由がどこにある? 」

いおな「い、いくら敵だからって、なにも、こ、殺さなくても……! 」

ウォーカー「これは『戦争』だ。話し合いで解決できるのならば、それに越したことは無い。だが、『操られているだけ』のクィーンミラージュはともかく、幹部どもにはもう、手の施しようがない。お前たち、あやつらが『人間』、『生者』だとでも思っているのか? 」

ゆうこ「どういう、こと? 」

非情な道化は、呆れた顔で溜息を吐いた。ファントムに視線を向け、プリキュアたちを見ずに話す。

ウォーカー「お前たち、自分が何と戦っているかも解って、いや考えてもいなかったのか…… 」

ウォーカー「幻影帝国の起こりは約300年前。ファントムを含む幹部どもは、その当時の人間が『サイアーク』にされ、殊更 強大な力を与えられて『マイナス進化』したものだ」

ウォーカー「つまり、奴らは本来300年前の人間で、魂を抜かれた『器』はとうに滅んでいる。浄化しても冥府に送られるだけ。そしてそれは破壊しても同じ事。
我は破壊の方が得意だから破壊する。あんな半端者ども、わざわざ浄化するまでも無いからな」

冷淡な口調で語る道化を、ひめ、ゆうこ、いおなはショックを受けた表情で見つめる。恐る恐る、ひめが訊ねる。

ひめ「ミラージュは……? 」

ウォーカー「黒幕の『器』として、肉体ごとサイアーク化されている。浄化して邪悪な力を祓えば、元の人間に戻れるだろう」

ゆうこ「本当に……? 」

ウォーカー「但し、侵食の進み具合による。何せ300年だ。心は救えても、肉体は邪悪な力と共に消滅する可能性がある」

ひめ「そんな……!! 」

ウォーカー「もっとも、肉体のホンの一欠片でも残っていれば、『錬金術』で復元し、魂を冥府から呼び戻して蘇生させられるが。正直そこまで面倒を見る気は無い。我にとって幻影帝国の殲滅は、『ついで』なのでな。今現在の戦闘も、本番前の準備運動に過ぎん」

いおな「いろいろ待って?身体を復元だとか魂を呼ぶだとか、そんなコトできるわけが、」

ウォーカー「『真法』と『科学』を融合すれば、不可能なコトの方が少ない。我らはそういう集団だ」

ゆうこ「どんなコトをしても、失われた命は絶対に、、! 」

ウォーカー「一つの力だけではな。『クローン技術』と『降霊術』とを合わせれば、『死者蘇生』なぞ簡単にできる」

ウォーカー「『真法』もまた『科学』だ。必要な『式』と『可能領域』がズレているだけ。あとは『才能』も必要だが、要は才能の無い者が才ある者を過剰に恐れ、不当に迫害した。結果、才ある者たちは隠れ『真法』は『魔法』と同一視され、歴史から抹消された。それだけだ。
理論を積み重ね『式』を構築し、任意の事象を発生させる。同じ事だ。永らく不可能と思われていたコトを可能に変える。科学で雷を作る。真法でもできる。雷という『結果』を出すまでの『過程』が異なるだけだ。300年前の人間から見れば、現代の文明こそ『マホウ』だろう」

ウォーカー「……さて、長々と語ってしまったな。どうもこの話をし出すと熱くなる。悪い癖だね☆ 」

プリキュア「え? 」

ウォーカー「っ、と。なんでも無い。それより、もうそろそろ準備運動は終わりにしよう。『本命』が来る」

言うが早いか、ウォーカーはファントムが倒れている対岸に移動し、長い鉄棒をクルクルと器用に回しながら彼に近づいて行く。

動かないファントムから3mほどの地点で、ウォーカーは思い出したように立ち止まり、棒、否『杖』を一振りして炎と雷を止めた。

ウォーカー「やはり、我と同じ『エネルギー体』だけあって、あの程度では壊しきれないか。仕方が無い」

ファントムのいる対岸へ渡った時と同じく、ウォーカーは瞬間移動で先ずホッシーワの前に行き、「レディファーストだよ」と呟いてから呪文を唱え始めた。

ウォーカー「 [ 集え光精 我が杖に 報われぬ魂に安息を 邪を祓い あるべき世界へ導け ] 【エグゼキュート・セイヴァー】 」

詠唱とともに光が杖に集束し、銘を唱えると光り輝く大鎌に変化した。

振り上げ、躊躇無くホッシーワを斬り裂く。だが墳血はせず、瞬く間に灰色の粒子となって霧散した。

ゆうこ「なに、今の……? 」

いおな「ホッシーワが、消えた? 」

ひめ「どうなったの? 」

ウォーカーのしようとしているコトに気づき、止めようと走っていたプリキュアたちが、驚きのあまり立ち止まる。

気づいていても一切気にするコト無く、ウォーカーはオレスキーとナマケルダも同様に、瞬間移動から間髪入れず光の鎌を振るい、2人の幹部を消去した。

すぐさまファントムの前に転移したウォーカーは、何故か光の鎌を解除し、杖を元の小物体に戻した。

更には鎧をも解除して、現れた時と同じ姿に戻ってしまった。

ひめ「ど、どうして?なんで?? 」

ゆうこ「ファントムだけは、見逃すのかしら? 」

いおな「なんか、そんな雰囲気でもなさそうだけど…… 」

???「そう、ファントムは消さないけど、見逃すわけじゃ無い。アイツの力は、必要だから」

ひめ「……え?なん、で…… 」

ファントム「ぐ…っ!どういう、つもりだ!? なぜ、鎧を外す、っく」

ウォーカー「『武装(クロス)』は、同時に2つまで装着できる。それを『オーヴァーコート』と呼ぶが一部、同時に装着できない組み合わせや『クロス』が在る。我が今から装着するのは後者だ。その特殊性 故に、他のどんな『クロス』とも適合できない。何せ、」

右手に握った物体を、ファントムに見えるように掲げる。

「元は、我らの最大の敵の力だからな」

[ vanity ]
[ stand by , ready? ]

[ Go . ヴァニティークロス ]
[スターベイダー.『ネビュラロード』]

白い鎧の時と全く違う、低く虚ろな電子音声が響き渡る。それだけで無く、ウォーカーが新たに纏った鎧もまた、先ほどまでとは真逆のモノだった。

黒い外装に深紅の紋様。ドラゴンを象った鎧は、ただ見ているだけで背筋が凍る、禍々しいオーラを放っていた。

ファントム「な、何だ、それは… 」

ウォーカー「説明してやる義理は無い、とさっきも言った。それに今は、二つの意味で時間も無い。
お前は消さない。『プリキュア墓場』とやらへの侵入権を、お前の『存在』ごと奪い取る」

言い終わると、ウォーカーは左手をファントムにかざし、短く唱えた。

ウォーカー「『呪縛(ロック)』」

ファントム「!?ぐっ!グアァァァ…」

ウォーカーの左手から放たれた赤黒い輪がファントムを捕らえ、次の瞬間にはファントムの姿が消えて黒い球体が輪を伴って浮いていた。

ウォーカーは左手に黒い球体を引き寄せ、握り潰す様に吸収した。一瞬だけ苦しそうに唇を歪めたが、直ぐに治まり黒い鎧を解いた。

そして、ひめたちと一緒に立っている人物に、声をかけた。

ウォーカー「さあ、こっからが本番だよ。よろしくね、メグ! 」

メグミ「うん、よろしく。星姫 」

今日はここまでになります。あ~腹減った。

再開は明日の午後です。

『星姫』は( ホシヒメ )と読み、誤字では無く意図的な呼び名です。

果たして『本番』とは?
次回、『ウォーカー』『皇姫 星謌』の正体が明らかに。
さらに、メグミが驚愕の変身を…!?
乞う、ご期待!!!!!

再開。>>101 の続き。


ここで少し、時間を巻き戻す。

???「アイツの力は、必要だから」

ひめ「……え?なん、で、めぐみがココに? 」

ゆうこ「めぐみちゃん!それに、相楽くん!? 」

誠司「ワリ、遅くなった」

いおな「よかった、無事だったのね。でも、どうして めぐみと一緒に? 」

誠司「あ、いやそれは…… 」

メグミ「誠司は『無事』なんかじゃなかったよ。完治させて来たから、あたしは遅れちゃったの」

ひめ「あー、やっぱさっきの合体技で飛ばしちゃってたか。ゴメンね誠司」

誠司「いや、もう大丈夫だ。気にすんな。めぐみが、治してくれたから」

ゆうこ「めぐみちゃんが、てどういう意味? 」

いおな「ハニーみたいな回復技でも覚えたの? 」

メグミ「みんな、ゴメンね。説明は後で。今はそれより、ううん、何よりも優先することがある」

カワルンルン♪

メグミ「プリキュア・クルリンミラー・チェンジ! 」

メグミ「世界に広がる、ビッグな愛! キュアラブリー! 」

ウォーカー「こっからが本番だよ。よろしくね、メグ! 」

メグミ「よろしく。星姫」

いおな「ほしひめ?? 」

ゆうこ「メグって呼び方、やっぱりあの人…… 」

メグミ「なんだ、気づいてなかったの? 星謌ちゃんだよ。『星姫』てのは、戦場でのアダ名」

ひめ「あの人、一体何者なのよ~!? いつの間にかファントムも消えてるし!! 」

誠司「めぐみ…… 」

星謌「詳しい話は後回しだってば」

シュン、とテレポートし、プリキュアたちの前に立つ『ウォーカー』こと皇姫 星謌。仮面を外すと、ラブリーそっくりの長いピンク髪が微かに光り、弾ける様に光の粒子が霧散してプラチナブロンドのセミショートヘアーになった。
更に、腰に着けていた奇妙な形のベルトを外すと、頭以外の全身を包んでいたラバースーツが瞬く間にめぐみたちの学校制服に変化した。

髪や服装の変化については慣れているプリキュアたちも、装備品を外しただけで大幅に変化した星謌の姿には驚き、彼女が右手で外した仮面を無言無動作で眼鏡に変形させたのを見て一層目を見張った。

星謌は眼鏡を制服の胸ポケットに仕舞い、左手のベルトを杖に変化した小物体と同じ物に変化させ、上着のポケットに入れた。そして入れ違いで反対のポケットから取り出したのは、長方形の薄い板と二つの指輪。

板はスマホより一回りほど大きく、指輪にはそれぞれ、紅と蒼の丸い輝石が嵌め込まれていた。『紅』を左手の中指に、『蒼』を右手の中指に着け、「よし! 」と呟いて めぐみに視線を向けた。

星謌「そんじゃ、いよいよ実戦。覚悟はいいかい?メグ 」

メグミ「うん、もちろん! 」

答えながら、めぐみは誠司を見た。

メグミ「絶対、護る」

誠司「めぐみ……? 」

星謌「相楽 誠司クン。今から、メグには命がけの戦いをしてもらう。ボクも一緒に、だけどね」

誠司「いきなり何だよ? 」

いおな「命がけの戦いなら、今までだってしてきたわ! 」

星謌「さっきの見てたでしょ?幻影帝国なんて、ボクらからすれば烏合の衆以下。今から現れる『敵』は、連中とは次元が違う。全ての世界を無に還そうとしている、正真正銘の『化物』どもなんだ。一瞬でも気を抜けば、冗談抜きに殺される」

ひめ「殺……!? 」

ゆうこ「そんな危険な敵なら、わたしたちも一緒に! 」

星謌「わかってる。正直手数が足りない。だから、相楽 誠司クン、キミにも戦ってほしい」

誠司「俺が?!あ、いや、戦うのは勿論いいけど、俺は…… 」

星謌「戦う意思はあるんだね? 」

誠司「いつもみんな頑張ってるのに、俺は何もできない。一緒に戦えるんなら、そうしたいってずっと思ってたんだ。でも…… 」

星謌「戦う術が無かった。ボクも、キミをプリキュアに、とかは流石にできない。けれど、こういうことはできる」

右腰に提げた箱状の物から、炎の翼や矢を放った際に見せた光の板を三つ出現させ、誠司・ゆうこ・いおなに渡した。

星謌「手にとって」

星謌に促され三人が光の板に触れると、それぞれ色の異なる楕円形の金属球に変化した。

誠司「これは? 」

星謌「誠司クンのは『グランド・コア』。ゆうこちゃんが『スカイ・コア』で、いおなちゃんのが『ワイズ・コア』。強力な機動兵器『機皇帝』のコントロール装置だよ」

ひめ「きどーヘーキ?なにソレ? 」

ゆうこ「ロボット兵器、だよね? 」

いおな「私たちに、ロボットの操縦をしろって言うの!? 」

一時中断。

22:30~再び再開。

ちょっと待ってて。

星謌「正確には、『操縦』じゃなく『制御』。『機皇帝』は元々、人類殲滅の為に造られた『大量破壊兵器』。ボクらが使う用にいくらか改修してあるけど、それでもまだ強力過ぎて、自律機動じゃ危険なんだよ。この街くらいなら、1分で壊滅かな」

誠司「いろいろツッコミたいけど、一つだけ言わせろ。俺らは中学生だ。ロボット兵器の操縦なんて、やりたくない以前にできねぇよ! 」

星謌「だから、頼みたいのは『制御』だってば。自律機動じゃ危ないけれど、人が搭乗して『制御ユニット』になれば、余計な破壊はしなくて済む。まあ、搭乗者がそういう風に動かせば、街一つくらいものの30秒で完全破壊できるけどね」

誠司「お前それ本気で言ってんのか?」

星謌「実戦前のジョークだょ。そんな恐い顔しないでって。ま とにかく、キミら三人に戦う気があるなら、『機皇帝』を使う以外に参戦方法は無いよ?ヤツらには、プリキュアの力は全く通用しないから」

ゆうこ「プリキュアの力が通じ無いなら、めぐみちゃんはなんで…? 」

星謌「それは後。もう時間無いから、手短かに説明するね」

星謌「三人に渡した制御装置は、搭乗者の『思考』や『意志』に呼応して、『機皇帝』を動かす。ボタンやレバーでの『操縦』はしなくていい。搭乗者の強い『イメージ』の通りに動くからね」

「『機皇帝グランエル』は、三体の『機皇帝』中最も装甲が厚く、搭載した火力も最強。その分 動きが鈍いから、後方支援の『砲台』って感じだね」

「『機皇帝スキエル』は、スピード特化の遊撃強襲機。兵装も軽く、高速機動と手数の多さで敵を撹乱する」

「『機皇帝ワイゼル』は汎用機。中近距離での臨機応変な戦闘が可能。積んでる兵装も三体中最も多種多様で、『戦闘の要』ってイメージ」

星謌「三人に渡した制御ユニットはテキトー。自分に合ったものと、好きに交換してくれていいよ。一応『乗り換え』もできるけど、オススメはしない」

星謌「自分が乗る機体が決まったら、機体名を呼んで、『イグニッション! 』って叫べば後はシステムが勝手に処理してくれる」

星謌「じゃ、急いでね。あと3分もしない内に来るよ! あずみ?! 」

誠司たちへの早口レクチャーを終えると、おもむろに自分の左腕に話しかけた。いつの間にか、金属の籠手が装着されており、液晶画面から声が答える。

あずみ「3秒待って…え、うそ…… 」

星謌「どしたの? 」

あずみ「敵機数、不明。推定戦力規模、『大隊』…… 」

星謌「?!え、『大隊』って、マジ? 」

あずみ「大型機を5機、捕捉。95%間違い無い」

星謌「……メグは昨夜『INo,』を手にしたばかり。狙われるには早過ぎる。てことは標的は、ボク? 」

あずみ「98%そうだと推測。応援要る? 」

星謌「……誰か居るの?今直ぐ来れるヒト」

あずみ「ゴメン、みんな出払ってる。リゲルも出てるから、私も行けない」

星謌「だよね。終わるまでに誰か来れそ? 」

あずみ「みんな、最低でも3時間は無理」

星謌「うん、わかった。ありがとう あずみ。切るね」

あずみ「死なないでね」プツン……

星謌「参ったな。ボク一人を消す為に『大隊』を寄越すなんて…… よっぽど『脅威』と認識したんだねぇ」

メグミ「星姫? 」

星謌「ダイジョウブ。予想より大分多いけど、どうにでもできるよ。とはいえやっぱ、戦力差があり過ぎるね。二人ほど、応援を喚ぼう」

星謌は再び、腰のケースから光の板を今度は二枚、出現させた。

「【双闘召喚(レギオンコール)】!! 」

星謌が叫ぶと、光の板は『真法陣』に変化し、中から黒衣の男性と、白地に赤い模様の軽装鎧を纏った女性が現れた。
星謌が二人の名を詠ぶ。

「『閃光の天剣姫 アスナ』! 」
「『蝕星の双剣帝 キリト』! 」

星謌「やあ。用件は解ってるね? 」

『アスナ』と『キリト』は無言で頷く。

星謌「んじゃ、ヨロシクね」

インチキ予告もたいがいにしやがれ!!!

とお怒りの方もいるかもしれませんが、平にご容赦を。

明日は朝から時間があるので、一気に進めます。完結まで行けるかは、まだ分かりませんが。

見てくださってる方々、どうぞ最後までお付き合い願います。

今日のところは、ここまでとさせていただきます。おやすみなさい。

再開。>>112 の続き。

メグミ「星姫、このヒトたちは? 」

めぐみが訊ねると、『アスナ』が視線を向けた。めぐみを見たまま星謌に訊く。

『アスナ』「新人さん? 」

星謌「うん。今から初陣」

『アスナ』「そう」

メグミ「初めまして。あたしは、」

『アスナ』「名乗らなくていい。聞いても無駄だから」

メグミ「へ? 」

星謌「メグ。この二人はね、『コピー』なんだ」

メグミ「『コピー』? 」

星謌「そっ。『オリジナル』の戦闘能力をそっくりそのまま複写した、『人工精霊』。自律戦闘の為に自我と思考回路は与えられているけど、感情や理性は皆無。闘うためだけに造り出された、言わば『人形』さ」

星謌「『魂』が無いから連中に侵食される心配も無いし、機械じゃないから暴走もしない。更に、『コピー』の戦闘経験値は全て自動で、『オリジナル』にフィードバックされる。でも見聞きした情報は伝達されないから、この二人に名乗っても無駄ってワケ」

『キリト』「そういうこった。俺たちのコトは、『道具』だと思えばいい。『コア』すら無いから、破壊(こわ)されても『再召喚(リコール)』すれば問題無い」

『アスナ』「盾でも囮でも、好きに使ってくれればいいわ」

星謌「ちなみにこうやって会話ができるのは、『戦闘能力』の一部として『オリジナル』の性格や口調とかも複写されてるから。ただし、戦闘に関係のある会話しかできないから、もし無視とかされても、あんまり気にしないで」

メグミ「う、ん。よく解んないけど、とにかく一緒に戦ってくれるんだね? 」

星謌「うん、そう。二人には、小型・中型の掃除を任せるよ。あっちの、」

星謌は誠司たちを指差す。

星謌「『機皇帝』で参戦してもらう三人と一緒にね」

『キリト』「了解」

『アスナ』「解ったわ」

星謌「んじゃ メグ。キミも、準備しようか」

メグミ「うん」

ひめ「ちょっとちょっと!あたしは?! 」

メグミ「ひめ は邪魔だから、どっか行ってて」

ひめ「え? めぐみ? 邪魔ってそんな、ヒドイよ! 」

メグミ「ピンチになって逃げるくらいなら、最初からいなくていい。役立たずは消えて! 」

ひめ「な、めぐ、み?どうしてそんなこと言うの? 友だちなのに…! 」

メグミ「死にたいんならどうぞ勝手にすれば? あたしは誠司さえいてくれれば、他はもうどうでもいいの」

ひめ「え……? 」

メグミ「その代わり、邪魔はしないでよ?ウロチョロして邪魔したら、あたしがアンタを殺してやる」

ひめ「……!! 」

非情な言葉で突き放され、ひめ はその場に固まる。メグミはひめ から2、3歩離れ、星謌が手にしている物と同じ、スマホに似た道具を取り出した。

星謌「手順は覚えてるね? 」

星謌の問いにコクリと頷き、メグミはまた、誠司を見つめた。

誠司「めぐみ、お前…… 」

メグミとひめ のやりとりを見ていた誠司・ゆうこ・いおな の三人は、ひめ と同じく、メグミの冷酷な台詞にショックを受けて硬直していた。

メグミが誠司に微笑みかける。

メグミ「誠司。あたしのコト、嫌いにならないでね」

誠司「めぐみ……? 」

視線を外し、微笑を消して姿勢を正す。手にした道具を胸元に構え、メグミは叫んだ。

メグミ「開け、混沌の扉!あたしに力を!! 」

「【カオスエクシーズ・チェンジ】!!! 」

一旦休憩。直ぐ再開する。


~~~~~~~~~~~~~~~

メグミ(まず、変身用のプリカードを三枚一組で第一スロットに装填)

(次に反対側の第二スロットに『RUM』のカードを、第一の下にある第三スロットに『INo,77/Ⅲ』を装填して、発動ワードを叫ぶ)

(今朝、日が昇った直後の時間に目が覚めて、お散歩してたら公園で星謌ちゃんに出会った)

(昨夜拾った変なカード、『真法』や『異世界』、いろんなコトを教えてもらった。あたしたち『プリキュア』が戦うべき、真の敵が何なのかも)

(そして言われた。最悪を超えた悪夢の未来。本当に大切なモノを守る為、あたし自身が『悪魔』になれと)

(カードが見せた夢の中で、あたしが心の底から『護りたい』『喪いたくない』と想っている人が誰なのか。自分の気持ちに、ようやく気づけた)

メグミ「家族も友達もいらない。ただ一人、誠司さえ側にいてくれるなら。誠司を護れる力が手に入るなら、あたしは、どんな咎でも背負う」

メグミ「だからお願い!あたしに、大いなる力を!」

「開け、混沌の扉!我が魂を進化へ導け! 」

「【ランクアップ・カオスエクシーズ・チェンジ】!!! 」

カードを装填したスマホ型装具ー
『EX(イクス)ドライヴァー ARTsCore』(以後、『EXAsC』)
ーを空に掲げ、全身全霊を込めて叫ぶ。

メグミの想いに応える様に、『EXAsC』のパネルが輝きを放つ。その光が空に昇ったかと思うと、轟音とともに青空に巨大な穴が開いた。

メグミは揺らめく光の塊となり、空の大穴に吸い込まれた。そして次の瞬間、爆音と衝撃が走り、大穴の向こうから惑星の様な球体が降りてきた。

いおな「なによ、アレ……?! 」

回転するリングを伴った球体の中には、目を閉じたメグミが仁王立ちの姿勢で浮いていた。

星謌「混沌統べし世界 その扉 開かれし時 古の戦姫 真の姿を喚び醒ます」

ゆうこ「え?」

誠司「どういう、ことだ…… 」

球体の中で、キュアラブリーのドレスが光子となって砕け散る。それが霧散する前に闇色に染まり、再びメグミの身体に纏われる。再構築されたドレスは、色も形も原型を留めていない、『プリキュア』のそれとは似ても似つかないモノと化していた。

アクセも同じく再構築され、明るいピンクの髪はダークマゼンタに変色し、束ねず垂れ下ろされる。

プリチェンミラーとラブプリブレスは粉々に砕けてから光子化し、再構築されず『EXAsC』に吸収された。

ドレスの再構築が完了するとメグミの顔半分、額から頬にかけて電光が走り、真紅の紋様(ライン)を刻む。

眼を開くと同時に右の瞳が闇黒色に染まり、同じ色の粒子がメグミの背に集まって二翼一対の『天使の翼』を形成する。

闇色の翼の堕天士。それがキュアラブリー、『愛乃 めぐみ』の進化した姿だった。

腕をクロスし、一拍置いて振り開く。

メグミを包んでいた球体が砕け、空の大穴も消える。暫し滞空して、街を見下ろす。その表情は、どこか清々しげだった。

メグミの進化を見届けた星謌は、微笑みながら「オメデトウ」と祝辞を述べた。

星謌「おいで、ボクの杖 」

喚びかけに応え、空中から杖が現れる。

先端に大きな星が輝く、金色の長杖。左手で握り、地面にトン、と軽く突き立てると、星謌の足元に『真法陣』が出現し昇降機の様に上昇する。『真法陣』が星謌の全身を通過すると、服装が変わっていた。

「運命を照らす、光の巫女!
道化姫 トリックスター!参☆上!!!」

星謌「なんてね♪ 」

ペロッと舌を出し、イタズラ娘の顔になる星謌。地面を蹴り、街を見下ろすメグミの元に翔ぶ。

メグミ「それが星謌ちゃん、『星姫』の本当の姿? 」

星謌「まだ『最強フォーム』ではないけどね。『トリックスター』 それが、ボクの真名だよ」

星謌「それで? キミは、『誰』かな? 」

星謌の問いに、メグミは少し考えてから答えた。

メグミ
「わたしは、『混沌の戦姫 カオスプリキュア』が一柱」

「邪悪を祓う、虐滅の殲姫
クルーエルティ・エグゾーター 」

メグミ「『キュアクルーエル』ってトコかな」

3分が随分長いな~。

皆さんそう思ってることでしょう。色々ごめんなさい。説明文が長過ぎですよね。

まだまだ続きますが、どうぞ最後までお付き合い下さい。

本日はここまでです。明日は一旦休筆して、デッキビルドします。

再開は明後日の午後です。

読んでくださってる方々、少しお待ちください。
明後日からは、今度こそ本当に開戦です。『光の道化姫』と『混沌の殲姫』の活躍、お楽しみに!!

再開します。>>124 の続き。

星謌「『キュアクルーエル』か。自ら『残虐』を名乗るなんて、仲々の覚悟ダネ」

メグミ「……敵、まだ? 」

星謌「『3分』て言ったのは半ば当てずっぽう。奴らには『気配』て物が欠片も無いから、感知がし辛いんだよ。ボクは何度も接触してるから、なんと無く感じられるけど、正確じゃない。だから、現れるまでの予想最短時間を言っただけさ」

メグミ「3分はもう過ぎてるよね」

星謌「んー、あと1分くらい、かな。多分」

星謌「そろそろ、『機皇帝』喚んだほうが良いよ」

地上に居る誠司たちに声をかける。
メグミの進化と禍々しい新たな姿を目の当たりにして、誠司・ゆうこ・いおな そして ひめは愕然と、堕天士と成ったメグミを見上げていた。

星謌に言われても動かない四人を見て、メグミは溜息を吐いた。テレポートで誠司の正面に移動し、言葉少なに『機皇帝』召喚を促す。

話をしようとした誠司・ゆうこ・いおなを眼で制し、ひめは 完全に無視して、降りてきた星謌に向き直る。

星謌「誠司クンたちだけじゃなく、メグにも武器要るね。今朝渡したヤツ、持ってる? 」

メグミ「コレ、だよね。『心珠(オーブ)』、だっけ」

そう言って、メグミは小物体を手にした。星謌が鉄棒のような杖に変化させたのと同じ物だ。メグミが側面のボタンを押すと、不思議な形の大きな銃に変化した。

星謌「ボクら『使徒』の基本装備の一つ、『真導銃剣 ヴァリュアブル・ガンセイバー』。剣モードにするには、グリップの中指辺りにあるボタンを押せば、自動でギミック変形するよっ!! 」

不意に、星謌が表情を変えあらぬ方向を向いた。

星謌「……来た」

一瞬前までの和かな表情は完全に消え、臨戦態勢 正に真剣そのものの貌つきになる。メグミも星謌が睨む方向を見るが、何も視えない。

星謌「みんな、ボクを見て。いいって言うまで、ボクから視線外さないで」

返事も待たず手を空中にかざし、呪文を唱える。

星謌「close field. 『陰裏穢土(シェード)』界現!! 」

呪文の最後に掲げた手を捻る。それと同時に風景が グルンッ、と変わった。

誠司「な、んだココ? 」

気づいた時には、全員見知らぬ場所に立っていた。

暗い。たが夜の暗さとは違う。
空には雲一つ無く、そもそも『空』自体が無いかの如く、頭上にはただ『闇』が広がっていた。
一切の光が無い闇に、血のように真っ赤な満月が異様に大きく輝いている。
風は完全に凪いでおり、周囲には物音どころか生き物気配が全く無い。
赤い月の光に目が慣れ、周辺の景色が見え始めると、星謌とメグミ以外の全員が息を飲んだ。

いおな「うそ、なんで…… 」

ゆうこ「わたしたちの街が…… 」

そこは、闇に閉ざされ廃墟と化した、『死んだぴかりヶ丘』だった。

誠司「なんだよコレ、どうなってんだ?! 」

星謌「ココは『シェード』。陰の裏の穢れた土地、陰裏穢土(おんりえど)と書いてシェード」

いおな「シェード? まさかココって、未来のぴかりヶ丘……? 」

星謌「当たらずも遠からず、だね」

星謌「月の裏側、太陽の光が当たらない面を『ダークサイド』と呼ぶ。
ココは、『世界』のダークサイド。一切の光も命も存在し無い、生まれながらにして死に絶えた世界」

ひめ「光、あるじゃん」

指差したのは血色の満月。星謌は静かに首を振る。

星謌「アレはボクらが造った人工物。気配が無い相手に、視界ゼロで戦うのは流石に危険だから。ちなみに、『スカーレットムーン』の光には EMPやジャマーが全く効かない敵のサーチ機器を狂わせる効果がある。単なる光源や飾りじゃない」

「だからなるべく壊さないでね」と言って誠司たち三人を振り返った星謌は、少しだけ元の表情に戻っていた。空間を閉じた影響で敵の出現が僅かに延びたらしく、誠司たちにその間に『機皇帝』を喚ぶよう促した。

驚愕の連続で仲々動けなかった三人だが、搭乗する機体は決まっており、星謌に促されてようやく手に持った鋼の卵にコマンドを入力した。

誠司「ワイゼル! 」
ゆうこ「グランエル! 」
いおな「スキエル! 」

三人「 イグニッション!!! 」

~~~~~~~~~~~~~~~~
異次元通路・超巨大空中要塞 バビロンのブリッジ

AI [ 『ワイゼル』『グランエル』『スキエル』の起動コードを承認 . 超次元転送スタンバイ ]

あずみ「次元座標、ロックオン。転送地点 微調整。三体の安全装置を解除。超次元転送、Go! 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
星謌「来た来た」

誠司・ゆうこ・いおなの背後に、三体の『機皇帝』が現れた。『砲台』と比喩された『グランエル』の巨大さに驚いたのもつかの間、横倒しの8の字に空いた胸部の穴が口を開く様に広がり、中から伸びた光の触手が誠司・ゆうこ・いおなを捉え、抵抗する暇も与えず機体内部に引きずり込んだ。

ひめが驚いて『グランエル』に飛びかかろうとしたが、ジャンプした途端ひめも『グランエル』に呑み込まれた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
『グランエル』内部

ゆうこ「ひめちゃん、大丈夫? 」

ひめ「ゆうこ!無事だったんだ」

ゆうこ「うん、ご覧の通り。ここが、コックピットみたい。相楽くんといおなちゃんも無事だよ」

誠司「随分強引な乗り込ませ方だな」

いおな「イキナリでビックリしたわ」

空中モニターに二人の顔が映る。

『機皇帝』の内部は亜空間になっていて、足場が無く搭乗者は浮いている。卵型の『コア』は変形して搭乗者の頭と胸部、四肢に装着されていて、身体の動きや思考に合わせて『機皇帝』を動かす。
ヘルメット型のヘッドパーツは電磁パルスで脳とリンクしており、操作の仕方や武装使用、超次元転送を使った換装など、必要な情報を随時自動でインプットする。

ゆうこは、コックピットが想像より広く、『グランエル』の装甲が『機皇帝』の中で最も厚いことを思い出し、ひめも『グランエル』の中に入れた。外に居るよりは安全だろうと思ったのだ。

ゆうこ「倒されたら、共倒れだけどね…… 」

珍しく笑えないブラックジョークを呟く。だが、ひめは『グランエル』の内部を眺め回していて聞こえなかった。

星謌「さぁて、そろそろ来るよ。て、さっきから何度も言っているけど、今度こそ本当に来るからね」

「いいかい!?ほんの一瞬でも気を抜けば、死ぬよ。ボクが『もう大丈夫』て言うまで、絶対に安心しないこと!例え敵の姿が見えなくなっても、合図するまで警戒を解くな。ヤツらに消されたら、ボクらでも『蘇生』は不可能だからね。ボクとメグ、『アスナ』『キリト』のことは気にせず、とにかく撃ちまくれ! 」

星謌「さぁ来い、『リンクジョーカー』!! 」

腹減った。充電も兼ねて一時休憩。

星謌が叫ぶと、タイミングを見計らったかの如く『敵』が現れた。

空や地面近くに赤い『魔法陣』が幾つも展開し、その中から次々と、不気味な軍勢が現れ出でる。

人型や獣型、鳥や神話に出てくる想像上の生き物の姿を模した、機械のような生物のような、正体不明のモノたち。禍々しいオーラを纏いながらも、星謌の言葉通り気配が無い。

矛盾する第一印象を与える未知の存在に、誠司が本物の危険を感じたとき、突然 星謌が「げっ!? 」と変な悲鳴を上げた。

誠司「どうした!? 」

星謌「ちょっとちょっとちょっと、冗談でしょ?! 大型5機って、よりにもよって『NE』!? 」

メグミ「『NE』?て、あの大きいやつ? 」

星謌「『ナイト・オブ・エントロピー 』。
拠点征圧用要塞級サイバーゴーレム。
まさか、ボク一人消す為にアレを5機も送り込んで来るなんて…… 」

メグミ「あのデッカいの、そんなに強いの? 」

星謌「いんや。戦闘力 自体はそんなに高く無い。ただ、アレはとんでもなく頑丈でね。一体ぶっ壊すのにもかなり苦労するんだよ。
最強の攻城兵器とは、城そのものだ、っていう言葉があってね。あの通称『NE』は、正に『動く城』。一体二体ならまだしも、雑魚を蹴散らしながら五体も、しかもこの戦力で。ちょっとこれは、大変かもね」

誠司「なんか、小さいのも思ってたより多いぞ?大丈夫なのか? 」

星謌「勝てるよ。勝てるけどすんごく大変。疲れるからヤなんだけど、『エクストリームクロス』使わなきゃなんないかも。みんな、頑張ってね」

星謌「最後に、周りの街とかは、気にせず壊して平気だから。本物の街に一切被害は出ない。キミら以外の生命体も微生物一匹いないから、遠慮せず、大暴れしちゃって! 」

星謌「そんじゃ、向こうがコッチを捕捉する前に仕掛ける。命どころか魂すらない虚ろな人形だから、躊躇せず破壊して。合図したら一斉に行くよ!! 」

「Ready , GO!!! 」

先陣は『アスナ』と『キリト』が切った。

『アスナ』「行くよ、キリト君! 」
『キリト』「おう!! 」

『二人』「スターバースト・ストリーム!! 」

疾走と同時に叫び、一秒も経たずに敵の最前列が消し飛んだ。目にも止まらぬ超速剣撃で木っ端微塵にされたのだ。

二人はそのまま敵群勢に突入し、見事な連携で次々と敵機を撃破していく。しかも、先ほどまでの無表情は何処へやら。楽しげに笑いながら、互いに撃破数を競っていた。

その様子を見て唖然とする誠司たちを星謌がテレパシーで小突き、『機皇帝』も動き出す。再三 星謌に言われた通り、ビームやミサイルを滅多矢鱈に撃ちまくる。

誠司操る『ワイゼル』はエネルギー刃を展開し、空手の動きと絡めた白兵戦を始めた。

星謌「雑魚は任せて、ボクらは大物を壊るよ! 」

メグミ「解った! 」

高速で飛行しながらビーム弾を降らせる いおなの『スキエル』を邪魔しないよう、星謌とメグミは浮遊している巨大兵器の更に上空にテレポートし、ビーム砲を射とうとしている
『NE』を『真法』で妨害する。

指輪を嵌めた左手を腰に装着された『EXAsC』の画面にかざし、電子音声の後『NE』に向ける。

[Explosion][Now!]

『NE』の頭部と発射準備中のビーム砲全てに紅い真法陣が展開し、間髪入れず爆破する。厚い装甲に守られ破壊には至らないが、ビーム砲発射は阻止されAIにもノイズが入り一時行動不能になる。

星謌はすぐさま左手を『EXAsC』にかざすと、今度は上に掲げて黄色の真法陣を出し、『NE』と近くの雑魚目掛けて雷撃を浴びせた。

[Thunderstorm][Now!]

雷鳴とともに電光が降り注ぎ、雑兵は爆砕『NE』は感電によりAIが一時ダウンした。

星謌「なんだかんだでヤツらも、半分は機械だから。水には強いけど電撃には比較的弱いんだ。ピンポイントで当てれば、だけどね」

星謌「とにかく、これでしばらくは動けない。今の内にぶっ壊すよ! 」

メグミ「OK!! 」

敵の鳥型機を真法や銃撃・斬撃で撃破しつつ、メグミと星謌は高速飛行で『NE』に接近、星謌が指し示す弱点に攻撃を叩き込んでいく。

星謌「蟹なんかとおなじで、どんな頑丈な装甲にも必ず弱い部分がある。完全破壊は諦めて、弱点だけを徹底的に撃ち続けるんだ!活動停止に追い込めば、コイツらは勝手に自爆する! 」

メグミ「了解! 」

返事をしながら、メグミは連続テレポートで敵の攻撃を躱しつつ、『NE』を四方八方から撃ち続ける。

右手に握った銃剣は今 剣モードで、メグミが振るうのと同時に刀身からエネルギーの刃が撃ち出される。

素振りと同時に銃モード時のトリガーを引くことで『真力』の刃を飛ばす『エッジショット』。一通り試してコレが一番使い易かったのだろう。実斬撃も交えつつ可能な限り『チャージショット』も撃ち、真導銃剣を早くも使いこなしていた。

星謌( やっぱり、プリキュアの『チームリーダー』は戦闘センス抜群だネ。マナやミユキ もそうだったし)

星謌もメグミと同じく、四方八方十六方からありとあらゆる真法を叩き込みながら、どこか楽しそうにメグミを観察する。

当のメグミも心なしか楽しげに見えるのは気のせいでは無いと、星謌は経験上 識っていた。

星謌「これからが楽しみだ! 」

本日はここまで。再開は明日の午後になります。

ようやく戦闘開始。でも実はまだクライマックスではありません。日常?シーンを挟んでもう一戦あります。ちなみにそっちが本当の本戦。

所々、設定や関連が不明瞭(或いは滅茶苦茶)な部分がありますが、後半や後続作品にて説明&言及していきます。
かなりストーリー数の在る長編作なのです。

あちこちの作品がクロスしてますが、ノリでは無くちゃんと設定や物語が在ります。これもいずれ。

この『愛乃 めぐみ編』だけでもかなり時間かかってますが、読んでくださってる方々どうか、見限らず気長にお付き合い下さい。

では、おやすみです。

再開。>>137 の続き。

一方、『機皇帝』で地上の雑兵を次々と撃滅している誠司・ゆうこ・いおなの三人は、操作に慣れるにつれ次第に周りを観る余裕が出てきた。

誠司「めぐみ のやつ、完全に今までと違う感じだな」

いおな「そうね。この間までは、センスは有るけど粗削りな戦い方だった。でも今は…… 」

ゆうこ「とても荒々しいけど、すごく活き活きしてる。楽しそうにも見えるわ」

ひめ「めぐみ……なんで…… 」

メグミに突き放されたショックから立ち直れない ひめ に、誠司がモニター越しに語りかける。

誠司「ひめ。めぐみは多分、ひめ のことを想って、あんなコトを言ったんだと思う」

ひめ「あたしを想ってなら、なんであんなヒドイコト言うのよ!? 」

いおな「ひめ。私も相楽君の言う通りだと思う。ゆうこ もそうよね? 」

ゆうこ「うん。聞いた瞬間はわたしも哀しくなったけれど、今なら解る。めぐみちゃんの言葉の真意」

ひめ「めぐみの、真意? 」

ゆうこ「今は戦いの最中だから、詳しくは話していられないけど」

いおな「この戦いが終わったら、きっと話してくれるわ」

誠司「だから ひめ。落ち込むのも無理ないけど、今はとりあえず、めぐみを信じるんだ。じゃなきゃ、本当に めぐみ の言った通りになっちまうぞ」

ひめ「どういう、意味? 」

ひめが訊ねた途端、『グランエル』が被弾した。主武装である左腕が破損する。

誠司「大森!! 」

ゆうこ「大丈夫! 左腕、『グランエルA(アタック)』をパージして、『グランエルA2』を超次元換装! 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
異次元通路・超巨大空中要塞 バビロンのブリッジ

AI[ 『グランエルA2』転送要請を受理。コード照合…クリア。超次元転送スタンバイ]

あずみ「『グランエルA2』転送と同時に『グランエルA』を回収。整備班は直ちに修理を開始してください」

AI[ 『GA2』転送準備完了 ]

あずみ「座標ロックオン、位置調整。『GA2』超次元換装、Go! 」
~~~~~~~~~~~~~~~~

キュィィィィ… ガシィン!!

ゆうこ「よし! 」

ひめ「スゴイ! 2秒も経ってないのに新しいのが! 」

誠司「早いな。今のが『換装』か」

いおな「『機皇帝』同士、パーツを組み換えるコトもできるそうよ」

誠司「相手や状況に合わせてお互いに武器を交換できるってコトだな」

ゆうこ「それだけじゃ無く、『合体』もできるんですって」

誠司「……こんな物造れるなんて、あいつマジで何者なんだよ? 」

メグミと二人、舞う様に戦う星謌をカメラに映して、誠司は複雑な眼差しをモニターに注ぐ。

ゆうこ と いおな も倣い、出会ってからの星謌の言動を思い返す。その端々に聞き捨てならない台詞が在ったコトを、ひめも含む四人ともが忘れてはいなかった。

いおな「あの人が何者でも、今のところは味方のハズよ。『共闘関係』の方が正しいでしょけど」

ゆうこ「めぐみちゃん のコトもあるし、他にも訊きたいコト沢山あるけれど、」

誠司「今はまず、目の前のコイツら片づけないとな」

ひめ「みんな、頑張って!!! 」

『キリト』「ジ・イクリプス!! 」
『アスナ』「マザーズ・ロザリオ! 」

爆発と見紛うほどの衝撃とともに、敵群勢の真ん中に大穴が空いた。
黒と白、二人の剣士の奥義が炸裂し、500を超える敵兵が塵と化した。
穴は閉じるどころか徐々に広がっていき、数的不利を補って余りある二人の剣士の圧倒的な強さを物語る。

誠司たちの『機皇帝』も敵兵を蹂躙し、乱戦ではあってもどちらが優勢かは明白だった。

そしてそれは、上空の戦いも同じ。

不意に『NE』の一体が姿を消し、数秒後に遥か遠方で大爆発が起こった。

凄まじい爆音と衝撃。爆心地にはキノコ雲が上り、それらは『NE』の自爆によって起こったモノだった。

メグミと星謌の絶え間無い攻撃で、とうとう『NE』の一体が戦闘不能となって活動を停止。プログラムに従い最期の反撃として自爆しようとしたのを星謌が強制テレポートで飛ばし、一つの命も道ずれにすること無く、巨大で虚ろな人形は欠片一つ遺さずに消滅した。

誠司「な、なんて爆発だ…… 」

ゆうこ「もしかして、あの大きいのの動力って…… 」

星謌 { 安心して。奴らは『核』なんて使わない、ううんそもそも持ってないよ。『核』なんかよりずっと莫大なエネルギーを、奴らは無限に保持しているから }

星謌のテレパシーが誠司たちの頭に響く。『核』に似た爆発は、敵に『恐怖』を与える為の演出だと教え、誠司たちに惑わされず戦うよう指示。残り四体はより手早く始末することを確約し、念話を切った。

一旦休憩。21:30~再び再開。

メグミ「『手早く』って、今の以上に早く倒せるの? 二人でクリティカル入れまくってようやく一体なのに」

念話を聴き、次の『NE』への攻撃を始めながら星謌に問う。『エッジショット』だけで百発近く撃ち、その全てを正確に弱点にヒットさせやっと一体。そんな相手をどうやって『手早く片づける』のか。メグミには見当もつかない。

星謌は休憩替わりに蝿蚊の如く飛び回る飛行タイプの敵兵を撃ち落としながら、徐々に『NE』から距離を取っていく。メグミにも自分から離れるよう指示し、巻き添えを未然に防ぐ。

星謌「やっぱ、使うっきゃ無いか」

面倒そうなタメ息混じりに呟き、真法で必要な物を喚び出す。

[Invoke][Now!]

星謌「超 疲れるから、使いたく無いんだけど、」

白い真法陣から喚び出したのは、最初の錠前と同じ大きさで掛け金の無い、炎のように紅いアイテムだった。

星謌「我が儘も言ってらんないよね!」

ガギン!!!と低く鋭い音が鳴り、いやにハイテンションな電子音声が戦場に響き渡る。

[ EXTREeeeeME!!!!! ]

星謌「究極の勇者よ、力を貸して!!! 」

叫んだ瞬間、紅いアイテムが巨大真法陣になり、星謌を紅蓮の焔で包み込んだ。
焔の球体はさながら小さな太陽を思わせる輝きを放ち、次第に大きくなりながら近づく敵を灰にしていく。

そして、メグミがミニ太陽の中に『何か』を見つけた途端、焔が爆散して流星の如く地上の敵に降り注いだ。

殻をブチ破るが如く焔球から現れたのは、真紅のボディに黄金の鎧、背には紅蓮と燃える焔の翼、身の丈ほどもある大剣を携えた巨躯のドラゴンだった。

星謌「時空を超えて世界を救う、最強の勇者! 究極救世龍
アルティメット・ジークヴルム・ノヴァ!! 」

『NE』にも引けを取らない巨大ドラゴンは、焔を纏った大剣を振り上げたかと思うと前触れ無くテレポートし、『NE』を一刀両断する。更にV字に斬り返し、ついでとばかりに真横の『NE』も断裁。数秒で二体の巨大兵を撃滅した。

カオス化&進化したメグミも流石に唖然とする。と同時に、『なりたて』の自分が如何に非力かを痛感した。足を踏み入れたセカイが、とんでもない『バケモノ』の巣窟なのだということも。

不安と興奮を抑え切れないメグミを尻目に、『最強の勇者』の力を纏った星謌は残り二体の『NE』もあっという間に斬り伏せ、自爆する前に焼滅。『機皇帝』の空間転移装置で退避するよう念話で誠司たちに命じ、雑兵を大剣の一振りで薙ぎ払った。

最初からそうしろよ!と言いたくなるほど、アッサリと戦いを終わらせた星謌は、巨大ドラゴンから元のーーセミショートプラチナブロンドに学校制服のーー姿に戻り、落下するように地上へ降りる。

左腕の装具から『機皇帝』を帰投させるよう指示すると、間も無く『機皇帝』は誠司たちを退機させ直後に消えた。
テレポートの逆『アポート』で誠司たちを集合させ全員に注目を指示。『退界』と呟くと『シェード』から元の世界に帰還した。

荒い呼吸をしながら地面に座り込む星謌を、誠司たちは意外そうな表情で見つめる。
短く言葉を交わし、『アスナ』と『キリト』が真法陣の向こうへ去ると、星謌は ばたりと寝転んだ。

星謌「あーもー、つっっかれた~~。コレだからヤなんだよ、『エクストリームクロス』使うの」

誠司「最後のヤツ、めちゃくちゃ強かったけど、やっぱ反動とかデカイのか? 」

星謌「そりゃーねー。仲間たちの中でも、マトモに使えるのはボク含めてほんの数人。10人居るか居無いかだからネ」

仰向けで目を閉じたまま答える星謌。その傍らにしゃがんだ ゆうこが『ハニー・ヒーリングリズム』での回復を提案する。だが断られた。

ゆうこ「どうして? 」

星謌「ボクには効かないからだよ。ボクは『人』どころか『生命体』ですらないから。『アスナ』や『キリト』とは、また違う意味でね」

目を開け、顔を覗き込んでいる ゆうこと視線を合わせると、星謌は意外なコトを言い出した。

星謌「キミん家、お弁当屋さんなんでしょ?お金は払うから、何か食べさせてょ。食事でなら、ボクも回復できるし。何より、」

ムクリと起き上がり、誠司を見てニヤリと笑む。

星謌「ボクとお話、したいデショ?」

今日はここまで。
再開は明日、じゃなくて今日の午後予定。

ようやくゴールが見えてきた。
読んで下さってる方々、もうしばしお付き合い願います。

では。

遅くなりました。再開します。>>147 の続き。

星謌の提案を受け、一行は大使館に向かった。途中ゆうこ は食材を買いに一旦別れ、メグミと居づらいのか ひめ も同行する。

大使館に着くとリボン・グラさんが出迎え、広間ではブルーが神妙な面持ちで紅茶を飲んでいた。

星謌「始めまして、守護聖霊ブルー。
『創世五神姫』が一柱 『真導のトリックスター』。星の謌と書いて『セイカ』って呼んでよ」

ブルー「始めまして。ぼくを『守護聖霊』と呼ぶ者には久方ぶりに会ったよ。なぜその呼び方を知っているんだい? 」

星謌「そう訊くってコトは、やっぱり連絡は受けて無いんだね、上の神々から」

いおな「上の?神様にも上司みたいな方がいるんですか? 」

星謌「あぁ、そうか。メグたちには自分を『神』だと言ってるんだっけ。階級詐称なんて、いい度胸してるねぇ? 」

誠司「お、おい?階級詐称って、どういうことだよ!? 」

ブルー「誤解を招く言い方をしないでくれ。ぼくはみんなを騙すつもりで『神』だと名乗ってる訳じゃない。ただ、詳しく説明することでも無いから、分かり易く言っただけだ」

星謌「別に、アンタを裁けなんて命令は請けて無いから、どうでもいいけどね。でもこの際だし、ゆうこちゃん と ひめちゃん を待ってる間に説明してあげたら?暇だし」

ブルー「……分かった」

メグミがお茶を淹れ、みんなに配る。一口飲んだ星謌が感嘆の声を漏らした。

星謌「…あ~美味しい~。『お茶』ってなんでこんな美味しいんだろうねぇ~。ボク、『日本』に来た時はこれが一番の楽しみなんだ~」

幸せそうに目を細め、ほっこりと茶を啜る星謌。意外なほど表情がコロコロ変わる謎だらけな少女を、誠司と いおな は全く掴み切れないと感じていた。

何しろ実は、星謌の頭の『ウサミミ』、仮面を着けていた時以外は常にピコピコ踊っていたのだ。

いい加減 我慢の限界だと、誠司が訊ねる。

誠司「なあ、神様の話の前に一つ訊きたい。その頭の『ウサミミ』ってなんなんだ? 」

星謌「ん~、これ?なにって言われても、見ての通りだよ? 」

誠司「いや、えっと…なんでずっと着けてるんだ?戦いの間くらい外したら…… 」

星謌「ああそゆこと?だったらムリだよ。これ別に着け耳とかじゃないし」

いおな「え?着け耳、飾りか何かじゃないの? 」

星謌「正真正銘、ボクの自前さ。ちなみに『ウサミミ』でもないよ。よく言われるけどね」

星謌「なーんか知らないけど、生まれつきなんだよねコレ。幼い頃はもっと小さくて、犬猫の耳みたいだったんだけど。成長とともにだんだん大きくなってって、今のコレになっちゃったんだ。自分で言うのもなんだけどカワイイし、邪魔にもならないから普段あんま気にしてないんだけど」

喋りながら、感覚があるコトをアピールする様に一層忙しなく『ウサミミ』を動かす。かなり自由自在に動かせるらしく、捻じり束ねてドリル角にしたり、左右をじゃれ合わせたり。
クルクルと渦丸にしてビョーンッと跳ね戻した時には、いおながツボって咳き込むほど爆笑した。

すみませんが、今日はここまでにします。眠気で集中できん。

再開はまた、明日の午後予定。スケジュールがスムーズに消化できれば午前からカモ。

ここから少し巻き気味になりますが、決して手は抜きません。
どうぞ最後までお付き合い下さいませ。

再開。>>152 の続きから。

笑いが治まらない いおな を一旦広間から退室させ、グラさんも付き添う。結局、ブルーの話を聴くのは実質リボンと誠司だけになった。

ブルー「まあ、一番重要な誠司君が居れば、とりあえず問題無い。さっきも言ったけど、本来話す必要の無い話だからね」

星謌「でも、誠司クンには、なるべく多く詳しく話しておいた方が良いんじゃない? メグがボクらの仲間になった今、誠司クンにも『運命』を選んでもらわなきゃなんだし」

ブルー「そうだね。では、始めようか」

ブルー「まず、僕の素性というか、正体について、より詳しく説明しよう」

ブルー「僕は『神』だと名乗ってるけれど、嘘ではないが正確でもない。彼女が呼んだ、『守護聖霊』というのが、僕の正しい立場だ」

ブルー「では『守護聖霊』とは何なのか。最も分かり易く言い換えるなら、学校の『クラス担任』だ」

誠司「担任? 」

ブルー「そう。人間や何らかの生物が暮らす『惑星』は、地球以外にも沢山あって、そのそれぞれに僕のような『守護聖霊』が存在する」

ブルー「僕たちは、惑星の意思そのものであり、人間が『神』と呼ぶ存在の代行者でもある。僕の『ブルー』という名は、この地球の守護聖霊が拝命する『冠名』なんだ」

ブルー「僕たちは、惑星が誕生した直後の『初代様』を除き、全員が元々 リボンやグラさんと同じ『妖精』だった。花や樹木、川海の水に岩や雲、炎にいたるまで。惑星に満ちる『命のエネルギー』が結晶して『妖精』が生まれ、永い年月をかけて魂を磨き、何段階かの進化を経て『大精霊』となる。そしてその『大精霊』の中から、『守護聖霊』を継ぐ者が選ばれる」

ブルー「妖精や精霊は、それ自体が『命の塊』だから人間などより遥かに長命だ。様々な修行によって魂を磨き力を高めれば、何千何万年と生きることが出来る。
だけど、『守護聖霊』を含め決して『不死』な訳では無い。更に進化して本物の『神』に成っても、『不老永寿』にはなるがやはり『不死』にはなれない。
だから、『守護聖霊』は惑星が死ぬまで交代を繰り返す。先代様の命が尽きる直前に『天使』が光臨し、次代の守護聖霊を指名するんだ」

誠司「一つ質問。『不老永寿』てなんだ? 」

星謌「老いることが無く寿命では死なないけど、殺されれば死ぬ。但しこの場合の『殺す』は、存在の核である『魂』を消滅させられること。いくらなんでも、『魂』消されちゃ再生とか復活のし ようが無いから」

誠司「なるほど」

半端ですが、今日はここまでにします。眠い…。

明日は一旦休筆して、土曜から再開。

読んで下さってる方々、遅筆ですみません。しばらくお待ち下さいませ。では。

再開。>>156 の続き。

リボン「つまり、ワタクシやグラさんも、将来ブルー様のような『守護聖霊』に? 」

ブルー「それは、君たち次第だよ。人間で言う『赤子』である『妖精』から、『成人』にあたる『精霊』に進化するのに、最低でも300年はかかるからね」

星謌「妖精の平均寿命は500年。長命な種族ほど、却って成長速度は遅くなるものなんだ。
ちなみに、ヒトの魂が成仏できず『ゴースト』として地上を彷徨い続けると、500年くらいで進化…この場合は『昇化』して、『精霊』に成れる。大抵はその前に、自ら成仏するか自我を保てず悪霊になるか、見境の無い四流『退魔師』に消されちゃうんだけどね」

ブルー「守護聖霊には、妖精から進化した者だけじゃなく『昇化』して精霊と成った元ヒトも就くことができる。
『惑星の全ての命を慈しみ、正しく導く』という、守護聖霊の役目を全うできるのなら、誰にでも資格はある」

星謌「もっとも、その『役目』に囚われ過ぎて、この地球に災厄を生み出したのがアンタだけどね、ブルー」

星謌の一言で、室内の空気が凍りつく。妙に喧嘩腰の星謌を誠司が諌めようとしたが、口を開く前にゆうこ と いおな、少し後ろに付いて ひめ が広間に入って来た。

ゆうこ「お待たせしました~。出張大森ごはんでーす! 」

メグミ「おかえり、ゆうゆう。いおなちゃんも。大丈夫? 」

いおな「え、ええ。さっきはごめんなさい」

星謌「あんなウケたの初めてだから、逆にこっちがビックリしたよ」

ひめ が持っている袋を誠司が預かり、ゆうこ と いおな と三人で台所へ運ぶ。ひめ も付いて行こうとしたが ゆうこ が止めた。

ゆうこ「めぐみちゃん と、きちんとお話しなくちゃ、ね? 」

ひめ「でもあたし、めぐみに嫌われて…… 」

いおな「さっきも言ったでしょう?めぐみ は、確かに変わっているけど、ひめ のコトを嫌ってはいないわ。そうでしょ?めぐみ? 」

呼ばれる前から、メグミはひめ たちを見ていた。眼鏡越しの視線は真っ直ぐ ひめ に向けられており、恐る恐るメグミを振り返った ひめ に座るよう眼で促した。

ひめ「あうぅ…… 」

逆らえないと悟ったのか、一瞬だけ誠司を見て、ひめ は大人しくソファのメグミから一番遠い席に座った。

ゆうこ「それじゃ、すぐ作ってくるから、もう少々お待ちを~ 」

ひめ「…… 」ソワソワ

メグミ「…ひめ 」

ひめ「ひゃいっ! 」

メグミ「いおなちゃん の言う通り、あたし、別に『ひめ』のコトを嫌ってなんかないよ 」

ひめ「嘘。だってさっき、あたしのコト『邪魔だ』って… 」

メグミ「うん、『プリンセス』はね」

ひめ「……へぇ?? 」

メグミ「『リンクジョーカー』との戦闘で、『キュアプリンセス』は足手まといにしかならない。だから『戦場から消えて』って言ったの」

ひめ「え、あ…? 」

星謌「戦闘開始前に、ボクがあの場の全員を『シェード』に移したでしょ?その時、ボクが何て言ったか覚えてる? 」

ひめ「え、確か『ボクを見ろ』って… 」

星謌「『シェード』に入るには、界現者の身体や衣服に触れているか、その姿を視認していなきゃいけない。誠司クンたちにボクを見るよう指示したら、ひめちゃん にも聞こえる。念話で伝えても、みんながボクを見ていたら ひめちゃんもつられてボクを見る。
つまり ひめちゃんには、あの場から退散してもらわなきゃいけなかったんだよ」

ひめ「それならそれで、もっと他に言い方が、」

メグミ「ああいう言い方の方が、ひめ は傷ついて逃げ出すかなと思ったんだよ。後で話せば解ってくれるだろうし、『リンクジョーカー』に消されるくらいなら、あたしが殺した方が蘇生ができるから」

ひめ「な……つまり、本当にあたしを、殺す気だったってコト? 」

メグミ「必要ならね」

ひめ「そんな…… 」

メグミ「でもそれは、あくまで ひめ を護るため。『リンクジョーカー』に消されたら、肉体どころか魂さえ消滅する。でも『シェード』内でなら、アイツらは『生者』は認識できても『霊体』は全く感知できない」

星謌「ボクとカオス化したメグは『生者』でも『霊体』でもなく、命持たぬ『屍者』に近い。『機皇帝』には生命反応を遮断する特性があるし、『アスナ』と『キリト』はただの人形。つまり、あの場に ひめちゃん が突っ立っていたら、間違い無く敵の集中砲火を受けていた」

メグミ「でも、ゆうゆう が ひめ を『グランエル』の中に匿ってくれたから、心配無くなったけどね」

星謌「ボクもウッカリしてたよ。自分じゃ『機皇帝』には滅多に乗らないから、2、3人は中に匿えるの忘れてた。覚えてたら、メグにあんな台詞、言わせずに済んだのに。ゴメンね、ひめちゃん。メグも」

ひめ「え?ちょっと待って、じゃああの言葉は…… 」

メグミ「いざとなったら、本当に殺ってた。でも、あたしだって辛かったよ?ひめ を傷つけるの。だけど、『リンクジョーカー』の恐ろしさと『プリンセス』との相性の最悪さを事前に識っていたから、『傷つけてでも遠ざけなきゃ』って思った」

メグミ「あたしは、ひめ を嫌ったりしない。『今のあたし』が在るのは、ひめ のお陰だから。多少優先順位変わったくらいで、嫌ってはいないよ」

ひめ「じゃあ、これからも友達で、仲間でいてくれる? 」

メグミ「あたしこそ。ヒドイこと言ったのに、まだ友達でいてくれるの? 」

ひめ「! うん、もちろんだよ! メグミはあたしの、初めての友達なんだから! 」

メグミ「ありがとう、ひめ。それと、ヒドイこと言って、ゴメンね」

ひめ「ううん、もういいよ。めぐみ、だーいすき! 」ダキツキー

メグミ「あたしも好きだよ。でもゴメン。友達はいいけど、『仲間』はもう、続けられない」

ひめ「…へ? 」

ブルー「めぐみ……? 」

メグミは、抱きついている ひめ のポケットから『プリチェンミラー』を掠め取る。

ひめ「あ、それ…? 」

メグミ「ひめ。アナタはもう、戦わなくていい」

そう言った瞬間、メグミの掌の中で『プリチェンミラー』が粉々に砕けた。

ひめ「…………………え? 」

休憩&充電。

ひめ「めぐ、み?なんで…… 」

ブルー「めぐみ、何てことを…! 」

メグミ「黙れ、元凶」

ブルー「なっ 」

メグミ「『キュアプリンセス』の役目は終わった。もうこれ以上、戦わせる必要も、意味も無い。だからプリキュアの力を奪ったまで」

星謌「元より、この世界に現存するプリキュアたちは、本来その資格も適性も無い者に無理矢理『力の源』を植え付けた量産品の『紛いモノ』だ。
アンタが自分の尻拭いの為、勝手に持ち出したモノを在るべき場所に返す。そして、アンタの身勝手と優柔不断で巻き込まれたコたちを解放する。
それが、ボクがこの世界に派遣された2つの任務の2番目さ」

ひめ「プリキュアの力を奪った?どういうこと、めぐみ?あたし、もうプリキュアになれないの? 」

メグミ「なる必要も無いよ。幻影帝国は、あたしと星謌ちゃんで殲滅するから」

ひめ「二人でだなんて、そんなの…! 」

星謌「できるさ。なんならどっちか一人、ソロでも余裕だよ。ボクはもちろんメグも既に、それくらいの『力』は有るからね」

星謌「それに、メグの『力』が安定するまで約一週間。丁度いい練習台になりそうだし」

ひめ「めぐみの『力』って、さっきのあの黒いラブリーのコト?何なのアレ、っていうか!そもそも あなた が何者なのよ!? 」

星謌「ありゃ、意識逸らし切れちゃった。話を近づけ過ぎたカナ。
というかメグ?全員揃ってからにしようって伝えたじゃん。勝手に動かないでよー」

メグミ「ごめん。ひめが抱きついてきたから、チャンスだと思って。話してからじゃ、素直に渡してくれないだろうしさ」

星謌「ま、別にいいけどね。やる事に変わりは無いし。んーでも、ひめちゃん はともかく、ブルーはどうしよっかなー? 」

メグミ「こうしちゃえば? 」

[Sealed][Now!]

左手を腰に、電子音声の後ブルーにかざし、真法陣でブルーを鏡の中へ押しやる。動作が迅速過ぎて星謌 以外誰も反応すらできず、マヌケな声をあげてブルーは鏡の中に閉じ込められた。

同時に、星謌も ひめ に顔を近づけて眼鏡をずらす。星謌の左眼を直視した ひめ は途端に虚ろな顔になり、誠司たちが戻るまでそのままだった。

メグミ「何したの? 」

星謌「幻術かけた。『写輪眼』ってのをベースにした『真眼』でね。ボクら『使徒』の殆どが、左右どっちかの眼にこの『真眼』を宿してる」

メグミ「片眼だけ? 」

星謌「大抵はね。もう片方は、自前の『覚醒真眼』を宿す為に空けてるのが大半。視力のバランス取るために真法手術を施してはいるけど。
たまーに、両眼ともこの真眼を宿してる人もいるけど、特異な才能の有るごく一部だけだね」

メグミ「ふーん… 」

星謌「この真眼にも銘があってね。『写臨眼』」

メグミ「そのまま? 」

星謌「発音は。字が違うよ。
『戦いに臨む覚悟を写す眼』」

メグミ「覚悟を写す…… 」

星謌「メグも、『本部』に来れば貰えるよ。キッカケだけ、だけれど」

メグミ「キッカケって? 」

星謌「『写臨眼』の種みたいなモノ。それを魂に組み込んで、開眼できるかどうかはメグ次第。ま、今のところ種を貰って開眼できなかった人はいないけどね。ボクら『五神姫』がスカウトしたコは特に」

メグミ「その、『本部』に行くにはまず、あたしがもっと強くならなきゃなんだよね? 」

星謌「そだね。でも心配無いよ。ぶっつけ本番、しかもその相手が『リンクジョーカー』であれだけ戦えたんだ。ボクが教えるまでも無くコツは掴んでたし、ヤツら相手に殆ど『恐怖』を感じて無かっただろ? 」

メグミ「あー、うん。あんまり。でも、ちょっとは『怖い』って思ったよ」

星謌「いいんだよ、それで。事実ヤツらは『恐怖の化身』みたいな存在だし。
『怖いモノを怖いと思わないヤツは戦場では早死にする』
『勇気』と『命不知』は別なのさ」

メグミ「難しいね」

星謌「とにかく、メグは才能も有るし、勇気や度胸、適度な恐怖心もある。これから一週間、ボクが指導すればすぐに即戦力になれるよ。
その代わり、ボクはこう見えてスパルタだよ?死に目に遭うから覚悟しな? 」

メグミ「望むところ!死んでも喰らい付くよ!」

星謌「てか一日一回は死ぬからね? 」

メグミ「えー… 」

一般人が聞いたら穏やかじゃ無い会話で、クスクスと笑い合うメグミと星謌。同じ室内に居る ひめ は相変わらず呆けており、二人の会話を全く聞いていない。

異常な空間は、誠司たちが戻るまで続いた。

今日はここまで。また明日午後再開予定。

食事フェイズの後、諸々の説明に入ります。

では。

再開。>>167の続き。

ゆうこ「お待たせしまし、た? 」

トレーに料理を載せてドアを開けた ゆうこ は、広間の状態を見て思わず立ち止まった。

誠司「うおっと! どうしたんだ、大森? 」

星謌「あ、おかえり~。早かったね」

いおな「なに?コレ。なにしてるの?? 」

テーブルの上には黒いジュラルミンケース。開いた口からはコードが何十本と伸び、ソファに座って目を閉じているメグミの全身に絆創膏に似たシールで貼り付けられている。

星謌「ごめん、ちょっとだけ待ってくれる? もう少しでインストール完了するから」

喋りながら、星謌はカタカタとキーボードを叩く。ケースの中には医療器具のような機械が納められており、画面の一つに【95%】と表示されていた。

誠司「おい、めぐみ に今度は何してんだよ!?」

星謌「ちょっと待ってってば。今話しかけないで。失敗したらメグが危ないんだからね」

誠司「?!? 」

星謌「よっし、98% クリア。あとはほっといても大丈夫、と」

ピピッ[バイオコード『アクセラレイター』インストール完了. 全システムを終了します]キュゥゥゥゥゥ…ン

星謌「メグ、動いて良いよ」

メグミ「んー。もう終わり? 」

星謌「うん。ピリピリ痺れ残ってない? 」

メグミ「大丈夫。むしろ、何にも変わってないような…… 」

星謌「これも『キッカケ』に過ぎないから。修行の中で発現するのが最善なんだけど、仲々ねぇ。単に追い込まれれば、ていう訳じゃないんだよね、コレ」

ゆうこ「あのー? 」

星謌「おっと、ゴメンね。すぐ片すから。ポチッとな」

ベタなかけ声でボタンを押すと、コードがケース内の所定の場所に引っ込む様にして収納され、バタンッとケースが閉じた。自動でロックが掛かり沈黙した黒ケースを星謌が持ち上げ、右手の指輪から出した真法陣に落とした。

星謌「この部屋で食べるの? 」

ゆうこ「うん、そのつもりで持って来たんだけど…… 」

星謌「んじゃ、テーブルキレイにするからもうチョイそのまま」

[Clean up][Now!]

星謌「右手の指輪は回復とかの『補助真法』、左手のは『攻撃真法』をそれぞれインストールしてある。基礎的な下位真法で一つの指輪に100種類、中位50種 上位なら10種までインストール可能。指輪を嵌めた手をこの『EX(イクス)ドライヴァーARTsCore(アーツコア)』の画面にかざした時に、どの真法をどんな風に行使するかイメージするだけで、インストールされてる真法を発動できる」

説明している間にテーブルはピッカピカになり、星謌に促された ゆうこ たちは食事の準備を始めた。

短いデスが、本日はここまで。

明日は休筆します。再開は火曜日。

しばしお待ちを。では。

お待たせしました。再開します。

>>170 の続きから。

星謌「良い匂い。すごく美味しそう」

ゆうこ「たくさん作ったから、いっぱい食べてね」

いおな「神様は? 」

星謌「鏡の中に居るよ」

ゆうこ「一緒に食べないのかしら」

星謌「さあ? 」

誠司「それより、さっきは めぐみ に何してたんだ!? 」

メグミ「誠司。心配してくれるのは嬉しいけど、星謌ちゃんのコト警戒し過ぎだよ。別に悪い人じゃないから、ね?仲良くしよ? 」

誠司「……っ! 」

星謌「誠司クン、よっぽどメグのこと大事なんだねぇ。この分なら、キミの『適性』も相当高そうだ」

誠司「何の話だ? 」

星謌「いずれ解るよ。いずれね… 」

星謌「今はまず、ご飯食べようよ」

誠司「食い終わったら、洗いざらい話して貰うからな」

~~~~~~~~~~~~~~~~
食事フェイズ

星謌「美味っっしー!話に聞いてた以上だよ」

いおな「誰の話? 」

星謌「ボクの仲間。偵察とか休暇で何人か来ててね、皆『大森ごはん』は最高だった、て」

メグミ「星謌ちゃん以外にも、この街に来てたんだ…… 」

星謌「今はボク一人だけどね」

メグミ「それに、休暇なんてあるんだ? 」

星謌「極々たまーーーにね。発足して日が浅いし、敵は待った無しで現れるし。『休暇』ったって、任務外の異世界観光に各々 勝手に行くだけで、召集かかったら即終了。そうで無くても、敵見つけたら闘んなきゃだし。実質、休みなんて無いよ」

星謌「おかわり! 」

ゆうこ「はーい♪ 」

メグミ「あたしも! 」

ゆうこ「はいはーい! 」

いおな「意外と食べるのね? 」

星謌「ぶっちゃけ、栄養にはならないけどね。味はちゃんと分かるし、食べた物は『真力』に変換して吸収するから、回復が速まる。無駄にはならないよ」

ゆうこ「はいどうぞ。めぐみちゃん も」

星謌「ありがとう」

メグミ「ありがと ゆうゆう」

ゆうこ「星謌ちゃんは、『魔法使い』なの? 」

星謌「まあ、平たく言えばね。正確には『導士』っていう『最上位秘術使い』なんだけど。ちなみに『魔法』じゃなく『真法』ね、ボクが使ってんのは」

ゆうこ&いおな「??? 」

星謌「字が違うんだよ。キミらが言ってるのは悪魔の『魔』。ボクのは真実の『真』」

いおな「えっと、どう違うのかしら? 」

星謌「『魔法』は、ニンゲンが『悪魔』と呼ぶ存在、『魔族』との契約によって得る『闇の秘術』。
『真法』は、人が自力で行使する『自然秘術』」

星謌「どちらも、中身とかやるコトは大体同じなんだけど。『力の源』と支払う『代価』が、大きな違いかな。『魔法』のが短期間で強大な力を得られる分、代価がかなり重い。何せ契約するのは『魔族』。ヒトの魂を試す『神の眷属』たる彼らと契るのは、並大抵の覚悟じゃ叶わないよ」

いおな「一ついいかしら?その『魔族』って、悪魔のコトなのよね?悪魔って邪悪な存在じゃあ、」

星謌「大きな間違いだよ、それ。何なら失礼ですらある。そもそも、魔族がニンゲンに悪さするのは、元はと言えばニンゲンが悪いんだ」

誠司「どういう意味だよ? 」

星謌「まず、『魔族』と『天使』ってのは同じ存在なんだ。どちらも『神の眷属』で、世界の根幹たる『闇』と『光』の化身。
両者の違いは、与えられた役割。
『天使』は、名称通り天界からの遣い=メッセンジャーであり、同時に『裁定者』でもある。
『魔族』は『堕落への誘惑者』ではなく、誘惑によって魂を試す者。
ヒトの意思や勇気、善悪への態度。『魂の本質』を試し、その後の人生や死後の逝き先などを決める。
この時、『即刻始末すべし』と判定された者を『天使』がその命を絶つ」

ゆうこ「どうしてそこで、天使さんが殺るの? 」

星謌「魔族は決して『邪悪』では無いけど、『悪の心』が強いのは確か。ニンゲンの醜さを観続けているから、ニンゲンを酷く嫌ってる。要は、先入観に囚われて判断を誤っている可能性がある。だから、先入観の薄い『天使』に一度視て貰って、本当に今すぐ始末しなきゃいけない者かどうか確かめる必要があるんだよ」

星謌「ニンゲンってのは精神構造が複雑でね。常に善悪の葛藤がある。同じニンゲン同士だって、他人の考えが理解できず苦労するだろ?たかが肌の色が違う、出身地が違う。幸せになるための宗教で戦争をやらかしたりする。百人いれば百通りの考えや『正義』がある。
『天使』や『魔族』は、ニンゲンと根本的に種族が違うんだから、簡単に分かり合える訳が無い。
だからこそ、短絡的に裁く前にキチンと見極めなきゃならない。そのための『ワンクッション』が、天使による確認なのさ」

星謌「それに、始末したニンゲンの魂を『地獄』に連行するのは『魔族』の役目なんだけど、まず『冥界』に引っ張ってくのが大変でね。肉体を失ったことで一種の箍が外れ、『悪霊』になって抵抗してくる。寿命が残ってるのに『地獄逝き』にされるのは相当な極悪人だからね、『悪霊』としての力が異常に強い。『天使』と『魔族』が共闘しても討伐しきれない場合もあるくらいなんだ」

いおな「つまり、本当に極悪人かどうかの確認と『悪霊』になった時の対策として、わざわざ『天使』を喚ぶの? 」

星謌「他にも、生き物の命を問答無用に絶つ『神器・デスサイズ』を持って来て貰って、それで直接手を下すのは『天使』の役割だね。
『冥界』と『魔界』とは別の世界だけど『魔界』と『地獄』とは同じ世界。天使は冥界には出入り自由だけど魔界には入りたがらない。責め苦に遭う亡者たちの怨嗟の声に耐えられないから。
どんな悪霊も冥界の門をくぐれば大人しくなるから、そこまでは天魔同伴。冥界から魔界までは魔族が引きずってく」

ゆうこ「冥界に入れば、っていうのは、恐いひとが居るから? 」

星謌「そりゃもう、とびきりオッカナイのがね。泣く子も黙る『冥皇ハデス』様が、門のずっと向こうから睨みつけてるんだ。
その両眼は『冥皇眼』て言って、相手の精神力や意志の強さに関係無く『恐怖』を与え、萎縮させる。実力でハデス様を超えていないと決して抵抗出来ない『神理の瞳』なんだ」

誠司「また新しい単語が出たな。何だよ『神理の瞳』て」

星謌「神様、『神族』でも最上位の力を誇る一部の者だけが開眼できる『真眼』のことさ。正直、詳しいことはボクにも分からない。ボクらは『神族』の代行者と尖兵であって、まだ『神』の域に達した者はいないからね。時間の問題だけど」

いおな「え?時間の問題ってどういう…… 」

メグミ「ごちそうさま!あー美味しかった~」

ゆうこ「あ、話しながら食べてたらいつの間にか」

星謌「完食してたね。すごく美味しかったよ。今度お店にも食べ行くね」

ゆうこ「はい♪ おまちしてます! 」

リボン「洗い物はワタクシとグラさんがしますワ。皆さんはお話の続きを」

いおな「二人で大丈夫? 」

グラさん「オレっちたちを甘く見るなよ いおな。洗い物くらいどうってこたないゼ! 」

ゆうこ「それじゃあ、お願いね」

星謌「さて。それじゃあそろそろ、『お話』をしようか。質疑応答の形式でやろう。何から訊きたい? 」

誠司「めぐみ に何した?! 」

メグミ「もお、誠司ぃ…… 」

星謌「まあまあメグ。そんだけメグを想ってるってことさ。ボクらとしては好都合だよ」

誠司「とっとと質問に答えろ! 」

星謌「はいはい、ちょっと落ち着きなって。
コホン。『メグに何をしたか? 』ボクがしたのは、戦闘用の基本装備一式を渡した。それだけだよ」

誠司「は? 」

星謌「あと強いて言うなら、ほんの少しだけ、背中を押したくらいかな」

誠司「ふざけるな!めぐみ がおかしかったのは、お前のせいなんだろ!? 」

星謌「それは、ボクには関係はあっても非は無いよ。きっかけを与えたのはボクらでも、変わったのは飽くまでメグ自身の意思なんだから」

誠司「ワケの分からないことを……!」

ゆうこ「相楽くん、少し落ち着いて。もっと具体的に細かく訊かないと」

星謌「さすが、よく分かってるね」

ゆうこ「順番に訊いていくね。まず、あなたは 何処から来たの?」

星謌「教室では誤魔化したもんね。
ボクは、ココとは違う別の世界から来た。その世界の名は『ネオ・ヴァリアン』」

ひめ「ネオ・ヴァリアン? 」

星謌「少し長くなるけど。
元々、『バリアン世界』っていう異世界があった。その世界は何千年も前に『アストラル世界』という別の世界から追放された魂が創り上げた擬似世界」

星謌「ある時、アストラル世界とバリアン世界の間に戦争が起こり、最後には二つの世界は再び一つになった。そうして生まれ変わったアストラル世界の指導者を、その世界での正式なやり方で打ち倒し、新たな皇となった者が、名を『ネオ・ヴァリアン』に改めた」

星謌「勿論、ただ世界の名を変えただけじゃない。そいつは、様々な要因で滅びかけていた幾つかの世界をアストラル世界に融合し、新たな一つの世界として再構築したんだ」

いおな「滅びかかっていた世界を『吸収』という形で救い、新しい世界を創ったっていうの!? 」

星謌「そう。ちなみに、ボクが元居た世界も、その時に吸収された。まあボクは、それより大分 前から、そいつの仲間になっていたけど」

ゆうこ「星謌ちゃんの世界も? 」

星謌「うん、まあね。今はもう平気だから、そこは気にしないで。
さて、ボクは『ネオ・ヴァリアン』という異世界から来た。次の質問は? 」

いおな「何の為に? 」

星謌「そうだよね。
ヴァリアンは、世界全てが一つの巨大かつ強力な軍隊だ。『戦闘集団』のが適切かな。住んでる者は皆『戦士』。一人一人が、最低でも『ユーラシア大陸』を消滅させるくらいの力を持つ」

いおな「た、大陸って…… 」

星謌「言っとくけどそれで最弱レベルね?ボクは全体では 上の下 程度だけど、銀河を丸ごと消すくらいの力がある。ボクらのボス、ネオ・ヴァリアンの創世者に至っては、宇宙を一瞬で消滅させるほどの力を持ってるんだ」

ひめ「もうぶっ飛び過ぎてて意味解んない」

星謌「文字通り、想像を絶する力ってことさ。
でも、それだけの力を持っていても、まだ出来ないコトはある。世界を創るも滅ぼすも思いのまま。だけど『護り、救う』のは、一人では手数が足りない」

ゆうこ「護るっていうのは、さっきのアレから? 」

星謌「アレだけならどんなに楽なコトか……。世界を滅ぼそうとしているのは、ヤツらだけじゃない。同じくらい厄介な敵がもう一種いるんだよねぇ」

いおな「さっきのは、そこまで強くなかったような…… 」

星謌「個々の力ではボクらのが強いよ。ただヤツらは数が多い。いくら狩っても無限に現れる。しかも一番の問題は『巣』が発見できないってことさ」

中途半端ですが、バッテリーがヤバイので今日はここまで。

明日 午後再開予定。

再開。>>182 の続き。

誠司「巣? 本拠地ってことか? 」

星謌「うーん、よく分かんないんだよねぇ。連中が何処から来てるのか、一体いつから存在しているのか。そもそも何故 存在しているのかさえ、神にすら分からない。行動以外の一切が謎の軍勢。それがヤツら『リンクジョーカー』」

ゆうこ「神様って、何でも知ってるんじゃないの?」

星謌「全知全能の神なんていないよ。まがいなりにも『全知神』と呼べる者なら、一個だけ在るけれど」

いおな「それって、私たちも知ってる方? 」

星謌「うんにゃ。人界の者は誰も知らないよ。神話や伝承には全く登場しないから」

星謌「『アカシックレコード』って知ってる? 」

いおな「聞いたことはあるけど…… 」

星謌「ボクらは『レコード』って呼んでるんだけど。今言った『全知神』ってのは、『レコード』を創った者。つまりは、『運命を記せし者』」

誠司「運命? 」

星謌「一個人の一生から、『セカイ』の始まりから終わりまで。全ての情報が、『レコード』には記されている」

いおな「それはつまり、運命は最初から決まっている、ってこと? 」

星謌「半分ね。並行世界って知ってる? 」

ゆうこ「わたしたちの世界とよく似た、別の世界のことだよね? 」

星謌「並行世界は無数に存在する。
それらは、『レコード』に記された『別の可能性』。あり得たかもしれないもう一つの人生」

誠司「?? 」

星謌「運命は半分は決まっている。もう半分は、人生の中での選択によって変化する。
『レコード』には、『物語の大筋』と細部や結末を決定する『選択肢』が記されていて、どんな選択をするかで『結末』が変化する」

星謌「要は、人生ってのはマルチエンディングなんだ。大まかな流れは決まっているけど、結末は最期まで確定しない。当然、ゲームと違って『リセット/リプレイ』は不可能。一度選んだ選択肢は決して取り消せない」

メグミ「時間的な『やり直し』はできないけどその後の選択次第では軌道修正できる、てコトだね」

星謌「並行世界は、『今』のキミたちが選ばなかった、別の選択肢を選んだキミたちがいる世界。
レコードに記された選択肢は、その全てが必ず実現する。選択肢の数だけ、『セカイ』は存在する。
当然、全部がハッピーエンドじゃない。バッドエンドや、もっと酷い『最悪の結末』を迎えたセカイもある」

星謌「ボクたち『ネオ・ヴァリアン』の戦う理由は、実はその『最悪の結末』に関係しているんだ」

ゆうこ「それって、最悪をハッピーエンドに変える、てコト? 」

星謌「まさか!確かに、ボクらは『レコード』へのアクセスと『改ざん』ができるけど、それで『全部をハッピーエンドに』なんてコトはしない。
やって良いのなら、みんな躊躇無くやるけどね」

いおな「それは、しちゃいけない事なの? 」

星謌「『セカイ』のバランスが崩れちゃうからね…ん? あ、ゴメン。ちょっと待って?電話…… 」

ピッ ヴンッ

???「やっほートリちゃん!今へーきー? 」

星謌「エミリん?やっほー。平気だけど、どした? 」

エミリア「あのさ、アバンス知らない?さっき『本土』に戻ったんだけど、部屋にも何処にも居なくてさぁ」

星謌「あれ?聞いてないの?
アバンスなら、まゐ と弾 と一緒に『柊 柚子』のトコ行ったよ? 」

エミリア「ふぇ?『柊… 』てあの?担当のまゐ・弾は解るけど、なんでウチのアバンスまで? 」

星謌「まゐ が引っ張ってったんだよ。ほら、『柊 柚子』のお相手って…… 」

エミリア「あー。なるほど よく解った。確かに、アバンスは適任だね」

星謌「昔のコト、未だにトラウマになってるもんねぇ。ぶっちゃけ、お相手のコを殺しちゃわないか不安なくらいだよ」

エミリア「まぁそこは、弾クンが上手く宥めてくれるでしょ。実力は互角だし、ちょっと闘ったら落ち着くよ。
とにかく、ありがとね。任務明けだし、私も手伝いに行くよ」

星謌「そ。頑張ってね!
あ、そだ。ついでなんだけどさ、ボクも訊きたいコトあんだ」

エミリア「ん?なに? 」

星謌「ジャンヌさん、今何処いるか知らない? 」

エミリア「それ、私が知ってると思う? 」

星謌「やっぱ知らない? 」

エミリア「あの人がトリちゃん以上の気まぐれ、いや神出鬼没なのは知ってるでしょ?『使徒』総召集でもかけなきゃ捕まらないような人の居場所、私が知ってるわけ無いジャン」

星謌「ナハハ、だよねー。
いや最近 全然見ないからさぁ、ちょっと気になって」

エミリア「最近どころか、『新世儀式』の時 以来一度も本土に戻ってないよ。あの時だって気づいたらもういないし」

星謌「まぁ、ジャンヌさんなら放っといても心配は要らないんだけどね」

エミリア「『ティターン』の総攻撃を受けても嗤って返り討ちにしそうだもんねぇ」

星謌「もしどっかで会ったら、『たまには本土に戻れ』て言っといて」

エミリア「近寄った瞬間にぶった斬られなきゃね…… 」

星謌「あり得るからコワイよね」

エミリア「まあ、会ったら言っとくよ。
あ、そうだ。さっき『プライム』に会ったんだけどさ、」

星謌「うん? 」

エミリア「例の『島』。近々決行だって」

星謌「ホントに!? 」

エミリア「うん。だから私も、しばらく次の任務無しにして貰ったんだ。私とアバンスもメンバーだから」

星謌「そっか。まゐ と弾 もだよね。
マナにミユキ、今ボクが担当してるメグミに、『77』最初の対象だったララちぃと千棘。そして まゐ・弾が担当の柚子ちゃん。
もう実質、最後の一人なんだ」

エミリア「だね。『島』には、同時進行してる他のトコの担当以外 総出で行くらしい。『プライム』も直接出向くって」

星謌「アズミ以外出払ってたのはその所為か、、ん?総出って、キサラとセトも? 」

エミリア「捕まりさえすれば黒竜も、って言ってた」

星謌「正気?!いやセトがいれば、まぁ大丈夫だろうけど…… 」

エミリア「遊星さんや十代クンもいるから、万一の時でも大丈夫だよ。ズィーガーやティラノ&世羅も、もう参加確定だし」

星謌「ティラノと世羅らん はともかく、ズィーガーなんて不安要素でしかないよ…… 」

エミリア「あはは… でもそれだけ、最後の一人は『危険』だってコトだよ。暴れん坊の一人や二人、いてくれた方が良いってくらいにね」

星謌「解ってるよ。ボクはただ個人的に、黒竜やズィーガーが苦手なだけさ。
連絡ありがと。アバンスと、柚子ちゃんによろしく」

エミリア「こっちこそ、ありがと。
んじゃ、またねー」

今日はここまで。また明日の午後 再開します。

再開。>>190 の続き。

星謌「お待たせ。ゴメンね、話の途中で。でも少し脱線してたから、丁度良かったかな? 」

ゆうこ「今の、星謌ちゃんのお友達? 」

星謌「まぁ、親友ってトコかな。お互い全然 別の世界からの出身なんだけど、同じ『導士』で『ネオ・ヴァリアン』創世の前から仲間で。旦那のアバンスとも気が合うから、よく一緒にいるんだ」

いおな「今の方、結婚されてるの?私たちや あなたと同年代にみえたけど? 」

星謌「高位の秘術士は歳をとり難いんだよ。第一、ボクら『ヴァリアン人』は半精霊の非生命体だから、老い や生死の概念自体通じないし」

星謌「それよか、話の続きをしよう。どこまで話したっけ? 」

ゆうこ「星謌ちゃん がこの世界に来た理由、目的を訊いて、いつの間にか運命だとかの話に… 」

星謌「あー、そうだった。
ボクがこの世界に来た目的は、メグを含む四人の人物を『スカウト』する為。勿論、ネオ・ヴァリアンの新たな戦士としてね」

いおな「スカウト… 四人って? 」

星謌「それは後で。その前に、何故 今でも強大な力を持つボクたちが、更に仲間を集めるのか。さっき言った『手数が足りない』『世界を護る』てのがその理由だよ」

星謌「『レコード』には、全ての世界の全ての情報が記されている。『レコード』を書き変えれば該当する運命をその通りに変化、或いは『歪める』ことができる」

星謌「でも、『レコード』の書き変えは それを記した者、ボクらが『神祖・ゼノン』と呼んでいる者にしかできない。できないハズだった」

誠司「だった? 」

星謌「『神族』を含め、セカイに存在する全ては『神祖・ゼノン』によって創られた。
だけど『リンクジョーカー』は違う。ヤツらは、『レコード』に記されていない上に、『レコード』への干渉が可能なんだ」

いおな「つまり、運命を自在に書き変えられる、ということ? 」

星謌「自由自在ってわけじゃない。『リンクジョーカー』の存在と力に気づいた『ゼノン』が、強力なプロテクトをかけたから。
それでも、『レコード』への不正アクセスを完全には遮断できない。だからこそ、『神族』と共に戦う戦士、即ちボクら『ネオ・ヴァリアン』が、あちこちの世界へ赴き『修正』作業を行っているんだ」

誠司「運命の修正って、それで何で、めぐみをスカウトなんかすんだよ? 」

星謌「さっき言ったよね?全てのルートがハッピーエンドじゃない。バッドエンドより更に酷い結末もあるって」

誠司「だから、それが何、」

星謌「リンクジョーカーは、『最悪の結末』をもっっと最悪な『ナイトメアエンド』に歪めている。あり得るハズの無い、最悪を超えた最悪。地獄の方が何百倍もマシってくらいの結末。
その救済方法が、被害者をボクらの仲間にする、『スカウト』すること」

誠司「まるで意味解んねぇぞ! 」

星謌「宇宙を丸ごと消し去る程の力でも、できないことはある。
その一つが、歪められた運命を『元に戻すこと』」

ゆうこ「その『ゼノン』さんにもできないの? 」

星謌「これもさっき言ったでしょ?『全知神』は在るけど『全能』はいないって。製作者にさえ解除不可能な設定を、『レコード』に付けていたんだよ。
『運命の変更は一度きり』」

いおな「どうして? 」

星謌「知らないよ、そんなの。ボクは『ゼノン』に直接会ったことは無いし、唯一会ったボクらのボス『プライム』は、ゼノン自身にも分かっていないって」

誠司「全知神なんじゃ無いのかよ」

星謌「ゼノンはレコードの製作者。ゼノン自身は、レコードに記されていない。最初から『レコード』の外の存在なんだ。
『ゼノン』のスペルは『XENON』
正体不明を意味する『X』に永遠って意味の『アイオーン』の英語表記『EON』四つの文字の間に『中立=Neutral』の頭文字『N』を置いて、続けて読むと『ゼノン』」

星謌「ゼノンは森羅万象その全てに対し中立。基本的には何もしない。
セカイの全てを自由にできるからこそ、敢えて何もしない。
だけど、放っとくわけにもいかないモノが現れた」

ゆうこ「それが、リンクジョーカー? 」

星謌「ゼノンはレコードの全てを知っている。でも自分自身については、殆ど何も知らない。ゼノン自身、『何』なのかよく解らない謎の存在なんだ」

星謌「ゼノンは、気づいたら存在していた。何も無い『無』で、ただただ存在していた。
ある時『退屈だ』と感じたゼノンは、『セカイ』を創った。何故かは解らない。なんとなく創って、ソレを『セカイ』と名付けた。
その『セカイ』に何かをーー後に『神』と呼ばれる者たちをーー創って、ただ眺めていた」

星謌「眺めていると『何か』が現れて、創ったモノを壊し始めた。
現れた『何か』は、自分が創っていないモノだった。けれどゼノンは、ソレが自分と同じモノだと解った」

星謌「解ると同時に、ゼノンはソレを憎んだ。創ったモノを壊されたからか、最初から嫌っていたのか。解らないけど兎に角ソレを排除しようとした。そうしなければ行けない気がした」

星謌「リンクジョーカーは、『ヴォイド』の化身」

いおな「ヴォイド? 」

星謌「『虚無』って意味。
時間も空間も存在しない、『セカイ』が創られる前。リンクジョーカーはここから現れる」

誠司「さっきは『巣がわからない』って、」

星謌「発見できない、と言ったんだ。そもそも、存在しない場所なんだから」

一同「??? 」

星謌「リンクジョーカー、『ヴォイド』は、存在しない存在。さっきの戦闘で、目の前にいるのにいる気がしなかったろ?連中がどういう存在なのか、ボクらにも解らないんだ。
『神祖・ゼノン』も、元はヴォイドと同じ存在。だから、ゼノン自身も自分のことが解らないし、リンクジョーカーのコトも解らない」

星謌「ただハッキリしているのは、ゼノンは『セカイ』には何もしないけど、『セカイ』を壊すリンクジョーカーは排除しようとしているってコト。つまり、セカイを護ろうとしている」

星謌「その為に力を与えられたのが、ボクらのボス『プライム』と、プライムが様々な世界を巡って集めた戦闘集団『ネオ・ヴァリアン』の『使徒』だ」

星謌「また途中説明が長くなっちゃった。
運命の変更が一度きりな理由は、ボクらには解らない。創った当者が解ってないからね。
リンクジョーカーに歪められた運命を元に戻すことはできない。歪められた時点で、変更上限に達しているから」

星謌「でも、そのまま放って置くわけにもいかない。リンクジョーカーが歪めた『ナイトメアエンド』は、言わばウィルス。
始めは軽い風邪でも、治療せずに放置していたらどんどん悪化して、下手をすれば死に至る。
世界の死とは、即ち破滅。文明とか惑星なんて次元じゃなく、全宇宙、無数の並行世界その全てが。欠片も遺さず消滅する」

ゆうこ「壮大過ぎて想像もできない…… 」

誠司「そんな大それたコトに、めぐみ がなんの関係が? 」

星謌「まだ解らない?メグの運命が、『ナイトメア』に歪められていたからだよ」

いおな「どうして、めぐみの運命を? 」

星謌「メグが、この世界、この『宇宙』の要だからだよ」

誠司「はあ? 」

ゆうこ「めぐみちゃんが、宇宙の中心? 」

星謌「中心じゃなく要。
どんな機械にも、欠かすコトのできないパーツがある。ソレを欠いてしまうと、最悪 全部がぶっ壊れる重要な部品。
森羅万象は、世界を形作り、正常に動かす為のパーツ。当然その中には、決して欠かすコトのできない『重要な部品』にあたるモノも在る」

いおな「それが、めぐみだって言うの? 」

星謌「さっきから何度も言ってるだろ?運命は半分は決まっているんだ。『愛乃 めぐみ』という個人が生まれる遥か昔から、その存在、『魂』はこの世界の要として機能していた」

星謌「だからこそ、リンクジョーカーはメグの魂を抹消する為、その未来を『ナイトメア』に歪めた。
度を超えた負荷をかければ、直接手を下さなくとも『魂』を消せる。ヤツらの『敵』である『神族』に邪魔されること無くね」

ゆうこ「めぐみちゃん一人が不幸になるだけで、宇宙全部が駄目になっちゃうの? 」

星謌「すぐにはならない。でも、『機械』と『世界』との違いは、一度外れたパーツは決して補完できないってコト。
精密であればあるほど、要一つの重要さは増していく。たった一つのパーツを台無しにするだけで、少しずつ、全体が崩壊していく」

星謌「リンクジョーカーは不滅の存在。何万年単位の作戦くらい、平気でやるさ。ヤツらには『待つ』て感覚自体ないんだから」

星謌「あと、何もメグ一人だけじゃない。他にも要となっているモノは在る。その中からメグが選ばれたのは、もう完全に『不運』としか言いようが無いね」

いおな「不運って…… 」

星謌「ゼノンがかけたプロテクトで、リンクジョーカーは『レコード』に少ししか干渉できない。要でもなんでも無い部品の運命を改ざんすることもあるくらいだ。『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』ってやつさ」

ゆうこ「めぐみちゃんは、これからどうなるの? 」

星謌「口にするのもおぞましい目に遭う… 」

ひめ「そんな!? 」

星謌「…ハズだったけど、もうその未来は無くなった」

ひめ「…え? 」

誠司「どういう、コトだ……? 」

星謌「ボクらの仲間になったから。
より厳密には、『ヴァリアン』の力を受け入れて、『未来』をリセットしたから」

いおな「り、リセット? 」

星謌「そ。致命的なバグを修正する為に、プログラムの一部を初期化して、もう一度始めから構築し直す」

誠司「もう一度言おう。
まるで意味が解らねぇぞ!! 」

星謌「要するに、メグは生まれ変わったんだ。
さっきの戦闘の前、メグが今までと全く違う、新しい『プリキュア』になったろ?あの時に、メグは『愛乃 めぐみ』の人生を生きたまま終わらせて、『メグミ』という新しい個人に転生した。
学校で、『めぐみ』の様子がおかしかっただろ?前日の夜から始めた準備の所為なんだよ、アレ」

ゆうこ「前日の夜、てもしかして、大使館からの帰り道で別れた後? 」

星謌「ご名答。メグ」

メグミ「昨夜、ゆうゆう と いおなちゃん と別れた後、公園でこのカードを拾ったの」

『INo,77/Ⅲ Force of Seven Sins』

ゆうこ「あ、それって、『デュエルモンスターズ』のカード?昔、みんなで集めてた」

誠司「あっ!! 」

いおな「ど、どうしたの相楽君!? 」

誠司「思い出した!さっきその腕ので話してた女の人。どっかで見たことあると思ったら、『リチュア・エミリア』!! 」

星謌「お、知ってるんだ?じゃあさっきの、始めの方の会話も、意味解るんじゃない? 」

誠司「アバンス、昔、トラウマ…まさか……? 」

星謌「ご想像の通り。話戻そっか。
メグが拾ったこのカードは、アストラル世界に在った『No,』っていう特殊なカードを、プライムが他の世界の力と融合して『NNo,(ネオナンバーズ)』に進化させた後、その特性や能力の一部をコピーして造り上げた『模造No,』。
オリジナルに比べかなり見劣りする『劣化コピー』だけど、人一人を強制的に転生させるには十分な性能を持っている」

星謌「学校で『めぐみ』の様子が変だったのは、この『INo,77』の力にメグの肉体と精神が適応しようと無茶な動きをしていたから。
そして、放課後までかけて『INo,77』の力に馴染ませ、上手く制御できるようになったところで、元々持っていたプリキュアの力と、魂を進化させる『ヴァリアンの力』の真髄『RUM』のカードを使って統合し、『愛乃 めぐみ』を生きたまま『メグミ』へと転生させた、ってわけ」

誠司「え、と、つまり…… 」

星謌「運命を『変える』コトができないのなら、一度『壊して』造り直せばいい。本の途中から先のページを破いて燃やして無かったコトにして、新しい物語を綴るってコト」

いおな「それって、さっきのと矛盾してるんじゃ…? 」

星謌「同じ人生をやり直す『リプレイ/コンティニュー』じゃない。
擬似的に一回死んで、新しい個人『別人』として『別の人生』を生きていく。
歪められた未来を、実現前に抹消して、新しい未来をゼロから造っていく」

星謌「レコードの半分は、最初から不確定。細部が決められないからこそ、割り込んで全てを壊す、なんてコトも可能なのさ」

今日はここまで。
明日は休筆明後日再開。

相変わらず説明文が多くてうんざりしている皆様、申し訳ありません。

シリーズの最初なので、どうしても「説明しなきゃ」という気持ちが出てしまって…。
駄文長文 平にご容赦を。

ようやく物語の中心に抵触しました。こっからは速いです。
次回作への気持ちがかなり高まってますが、まずはこの作品を最後まで書き上げます。例えレスがなくとも。

では、アデュ アデュ アデュー。

お待たせです。再開します。
>>201 の続き。

メグミ「ゆうゆう、いおなちゃん。あたしね、このカードを拾った後、夢を見たんだ」

いおな「夢? 」

メグミ「うん。少し未来に起きる出来事を、夢の中で見せて貰ったの」

星謌「全てのカードには精霊が宿ってる。正確には、『カード』は様々な異世界と繋がっている『ゲート』で、メグのような、特別な才能を持った者はその『ゲート』を開いて異世界の者を喚び出すことができる」

星謌「『No,』は、数ある『カード』の中でも特に強大な精霊を宿していて、真に力を持っているのは100枚の『オリジナル』だけ。コピーカードなら、あちこちの世界に具現しているけどね」

ゆうこ「さっき『劣化コピー』だって言ってた、めぐみちゃん のカードには、精霊は宿っていないってコト? 」

星謌「本来はね。『INo,』はただの端末で、ニンゲンに力を与え『傀儡兵』として操る為のアンテナでありコアなんだ。
でも、メグが手にした『77』は、他の『INo,』とは少し違う」

星謌「『INo,77』は全部で7枚在って、一枚一枚に『人工精霊』が宿ってる。
エミリんやボクは、『ナイトメア』に歪められた各世界の要の人物を『運命のリセット』という形で救済して回ってて、並行して仲間集めもしている」

星謌「『INo,77』に宿る人工精霊は、言わばそのアシスタント。ボクらが直接 接触する前に対象者に『INo,77』をなんらかの方法で入手させ、メグみたく夢の中とかで大体の事情を説明してもらう」

ゆうこ「どうして、直接会う前にカードを?」

星謌「メグを含む7人は要の中でも、あらゆる意味で『特殊』だからだよ。人物そのものや状況、元々の能力だったりがね」

誠司「特殊って、めぐみ はプリキュアってコト以外は普通の女の子だぞ? 」

星謌「メグが突然、姿を消したり倒れたりすると、街中の人が騒ぎ出すだろ? メグ自身も、極端なほど隠し事が苦手で、日中は必ず誰かがそばにいる。
ボクら『使徒』は、対象者とその関係者以外とはなるべく関わりたくないんだよ。いつ敵に襲われるとも限らないし、何よりボクら『ヴァリアン』は、『ニンゲン』が大っ嫌いだからね」

いおな「人間が嫌いって、異世界から来たって言うあなただって人間じゃ、」

星謌「ボクらが『ニンゲン』だ、なんていつ言った?ボクは『スピリアン』。召喚されなくても単独行動ができる『特異精霊』。さっきから言ってるだろ?ボクは『生者』じゃないって。大体、キミらだってそうじゃないか」

ゆうこ「なんのこと? 」

星謌「キミら『プリキュア』だって、『ニンゲン』じゃないだろ?まさか自覚して無かったの? 」

いおな「え、は?私たちは、プリキュアに変身できるだけで、元は普通の人間、」

星謌「ンな訳無いでしょ!呆れた。他の模造品どもはともかく、『オリジナル』の末裔たるキミらまで、自分をニンゲンだと思っていたなんて」

星謌「て、あーそういえば、マナやミユキも、最初はそうだったって言ってたっけ。転生を繰り返す中で、自分達の本来の役目をスッカリ忘れちゃった、とか」

星謌「そうか、だからキミらさっき、あんな甘いコト言ってたんだ。ようやく納得がいった」

誠司「おい、なに一人でブツブツ言ってんだ?プリキュアが人間じゃないって、どういう意味だよ? 」

星謌「ん、あーいや…これ話し出すとまた永い脱線になるから、また今度にしよう。それより今は、メグの話の続きを」

いおな「かなり気になるけど、めぐみの現状を知るのが先決ね」

ゆうこ「めぐみちゃんは、カードを拾ってどんな夢を見たの? 」

メグミ「あんまり詳しくは話したく無いな。出来れば、思い出したくも無いような、酷い未来だったから…… 」

誠司「めぐみ がここまで言うなんて、一体どんな……? 」

星謌「女の子が、死にたくなるほど絶望する『体験』なんて、そうそう多くは無いでしょ? 」

ゆうこ「まさ、か……? 」

星謌「必死に戦って守ってきたモノ達に辱められたら、それでもまだ戦い続けられるかい?他人を、希望を信じられるかい?」

いおな「ちょっと待ってよ、そんなコトって…… 」

星謌「ほらね?話を聞いただけじゃ、キミらは信じない。『めぐみ』も同じく。でも頭には残るから、挙動不審になったり、思考が鈍りもする。どこで変なのに引っかかるかわからない状態になってしまう」

メグミ「あたしの性格じゃ特にね」

誠司「確かに めぐみ は、一回悩み出すとどんどん落ち込むトコがあるけど…… 」

星謌「運命さえ歪めるリンクジョーカー。そこらのニンゲンどもの邪な欲望をブーストして操るなんて、眠りながらだって出来る。連中が寝るのか知らないけど」

ゆうこ「でも、ぴかりヶ丘にはそんな悪いヒトなんて…… 」

星謌「周りのニンゲンたちの、何を知ってるんだい?読心術すら使えないくせに。世の中 物騒な事件や卑劣な犯罪が溢れてるコトなんて、キミらだって知っているだろ? 」

ゆうこ「それは…… 」

星謌「誠司クンみたいな『紳士』なんて、それこそ絶滅危惧種。老若男女問わず、『ニンゲン』ってのは守る価値も意味も無い『害獣』なんだよ」

いおな「いくらなんでも言い過ぎ、」

星謌「全部が全部、とは言わないよ。そうじゃない人も知っているし。
でもね、キミらプリキュアが生まれたのは、そもそも『ニンゲン』がいたからなんだよ?」

今日はここまで。再開明日の午後。

先ず謝ります。昨日 再開せずごめんなさい!

これ以上は言い訳にしかならないので再開します。 >>207 の続きから。


星謌「ニンゲンがいたから、キミらプリキュアは造られたんだよ? 」

いおな「それって、どういうこと?」

星謌「うーん…これ話し出すと永いんだよね。ボクは当事者じゃないから、ちゃんとは説明できないし。
ボクらの仲間に、『マナ』っていう元プリキュアがいるんだけど、そのコに聞いた方が良いよ。何せ、『プリキュア』の始祖の生まれ変わりだから」

ゆうこ「プリキュアの、始祖?一番最初のプリキュアってこと?」

星謌「間違ってないけど、正確じゃないね。そもそも『プリキュア』ってのは、7柱の堕天使から造られた42の戦乙女たちの略称だから」

いおな「え、堕天使? それに42って、プリキュアはもっと、」

星謌「この世界のプリキュアは、殆どが『模造品』なんだって。始祖7柱と孫にあたる第3世代までの42戦姫 合わせて49の『オリジナル』の末裔、『転生者』は、メグと ゆうこちゃん、いおなちゃんの3人だけだよ」

誠司「ひめ は?さっき『四人をスカウトする』って言ってただろ」

星謌「もう一人はキミだよ、誠司クン」

誠司「は?俺はプリキュアじゃ、」

星謌「言ったろ?キミはメグをとても大切に想っている。その『想い』こそが、キミの素質であり、強さにもなる。ボクらヴァリアンの力は、『愛』でしか制御できないからね」

誠司「あ、愛って…そりゃ俺は、めぐみ のこと大切だって想っているけど、それなら ひめ だって… 」

メグミ「ひめ は駄目だよ。リンクジョーカーとは戦えない。その前に、ひめ はもうプリキュアじゃないから」

いおな「え?ちょっと、どういうこと?」

ゆうこ「ひめちゃん がプリキュアじゃないって、何言ってるの、めぐみちゃん? 」

ひめ「あ、れ?そういえば私、さっき めぐみ にプリチェンミラー壊されたような、、あれ?なんで私、普通にして……? 」

星謌「あ、幻術解けた」

メグミ「ずっと効いてたの!? 」

星謌「というか解くの忘れてた」

メグミ「妙に静かだと思ったら… 」

ひめ「あれ?私、、あれれ? 」

ゆうこ「ひめちゃん、落ち着いて」

いおな「一体どうしたの?それに、プリチェンミラーを壊されたって? 」

メグミ「ひめ は、本当はプリキュアになる資格なんか無かった。あたしや ゆうゆう、いおなちゃん と違って、本当に『普通の人』だもん。嘘つきブルーがバラ撒いた力の源を奪えば、もうプリキュアじゃなくなる。今日から一週間で、幻影帝国の殲滅とプリキュア擬きの解放をやるから、手始めに ひめ を解放してあげたんだよ」

いおな「ちょ、ちょっと めぐみ?殲滅てまか解放とか、言ってる意味が全然分からない。というか、めぐみ だけじゃなく皇姫さんの話も、あっちこっち脱線したり説明が抜けてたり、分からないことが多すぎるわ。もっとキチンと説明してくれる? 」

星謌「一から説明すると本当に長くなるんだよねぇ。でもま、言ってることはもっともだし、説明し直すね」

星謌「先ず、ボクはこの世界とは違う異世界から来た。目的は、ボクらの最大の敵『リンクジョーカー』によって歪められた『愛乃 めぐみ』の運命をリセットし、最悪の不幸→魂の消滅→この世界の完全破滅という連鎖を回避するため。

そしてその手段として、ボクらヴァリアンの力で『愛乃 めぐみ』を生きたまま転生させ、未来を白紙にした。
重要なのはメグの『魂』だけで、『愛乃 めぐみ』個人の命じゃない。『めぐみ』としての人生を途中で終わらせれば、リンクジョーカーに歪められた未来を削除でき、『世界の要』としての機能に異常が出る事態も回避できる。

でもこうなると、リンクジョーカーは今度はメグを直接狙って来る。ボクはこの世界にいつまでも居られるわけじゃないし、メグを護るのには限界がある。
だから、メグには一週間の修業の後、『ネオ・ヴァリアン』の本部に来てもらう。正式な『使徒』としてボクらと共に戦う為に。
魂さえ無事に存在していれば、『要』がどこに行こうと問題は無い。『使徒』として実力をつけ、他の世界を巡っていれば、敵に襲われはしても集中的に狙われることはない。さっきみたいな例外はあるけどね。

ゆうこちゃん、いおなちゃん、誠司クンの三人には、メグの従者として一緒に来てほしいんだ。
三人とも素質があるし、特に、メグがヴァリアンの力に適応できたのは 誠司クン、キミのお陰だ。キミには、是が非でも来てもらいたい。
子供じゃないんだから、ボクの言ってる意味は、もう解ってるだろ? 」

星謌「ボクらヴァリアンの敵は、リンクジョーカーだけじゃない。『邪神』ていう同じくらい厄介な勢力がいる。ニンゲンの邪念を形にし様々な世界に送り込む『邪神』は、一部例外を除き『プリキュア』が戦ってきた敵の大元。『邪神』に無自覚の内に加勢しているニンゲンもまた、ボクらヴァリアンにとって滅ぼすべき『敵』だ。
メグやキミらの先輩プリキュアが何故、ボクらヴァリアンの仲間になったのか。何も『洗脳』したからじゃない。気づいたからさ。『護るモノ』を間違えていたことに。

キミらにも、これから一週間かけて教えるよ。ニンゲンは滅ぶべきだと。
そして思い出させてあげるよ。キミらプリキュアの、『本当の役目』を」

星謌「メグが持っているカード、『INo,77』に宿る人工精霊は、強い自我を持っている。メグの身体を乗っ取ったりはしないけど、意識を交代して会話することができる。
今、メグは転生したばかりで、心身共に不安定な状態だ。だから誠司クン、気を付けなよ?乗っ取りはしなくても、影響は受ける。『/Ⅲ』の固有名は『Envy』即ち『嫉妬』だ。

メグはキミへの想いで、ヴァリアンの『カオスの力』を制御できた。暴走しないとは限らない。
誰にでも優しいのは良いことだけれど、度を超えると『惨劇』が起こる。メグを狂わせたくなかったら、程々に、ね」

星謌「さっきから心を覗いてると、三幹部やファントムがどうなったのかも、大分 気になってるようだね。

ナマケルダ・ホッシーワ・オレスキーの三名は、実体を形成していたエネルギーを奪って 魂を冥界に送った。邪魔だし、助からないからね。
ファントムは、ボクが喰らった。プリキュア墓場とかいう空間に入るには、ヤツの力が必要だからね」

いおな「プリキュア墓場!あそこには私のお姉ちゃんが! 」

星謌「うん、だからファントムを喰って、魂ごと力を奪ったんだ。偽神ブルーに巻き込まれたプリキュア擬きたちを見捨てるのは、流石にできない。クロスミラールームの鏡を使って扉を開くから、後で救出に行こう。

それから、何度も言うけどメグはこれから一週間、修業の為に地球各地に行って、幻影帝国とプリキュア擬きたちを狩り尽くす。キュアハニーとキュアフォーチュン以外の全てがターゲットだ。
キミらは、どうする? 」

ゆうこ「どう、って? 」

星謌「メグはもう、キミらの知ってる『愛乃 めぐみ』じゃない。己の真の姿と力を取り戻した、覚悟を決めた『戦士』だ。
プリキュア擬きたちを攻撃してその力を奪う。それが、本来無関係な少女たちを解放することになるけど、中には抵抗するコもいるだろう。
先に目障りな幻影帝国を排除して油断したトコロを一気に叩く。大ダメージで変身解除させないと、力を『奪う』ことはできないから」

ゆうこ「お話して渡してもらう、っていう方法は?何も戦わなくても良いと思うんだけど… 」

星謌「勿論、ソレが理想だよ。でも、それだとメグが変身解除しないといけない。話しても渡してくれなかったら、その時は戦って奪うけど加減できず殺しちゃうかもしれない。可哀想だし蘇生するのも面倒だし。余計な真力使うくらいなら、最初から問答無用で奪った方が、お互いリスクも少ない。怪我の治癒程度なら、大した真力使わないしね」

星謌「で、キミらはどうする?

各地のプリキュア擬きたちを狩るメグを、止める?それとも手伝う? 」

いおな「つまり、めぐみ と戦って止めるか、一緒に他のプリキュアたちを襲うか選べってこと? 」

星謌「或いは、メグとボクに同行して、メグがやり過ぎた時に諌める役でもいいよ。ボクの負担減るし」

ゆうこ「他のプリキュアを襲うって、具体的に何するの? 」

星謌「変身解除、または戦闘不能になるまで攻撃して、変身アイテムを奪う。プリカードはどうでもいい。妖精にも手は出さないよ。持つべきで無い力を奪ったらもう用は無い。

ボクは読心術を使えるから、相手がもし、話せば解ってくれるコだったら攻撃せずに話すよ。そうじゃなかったら倒す。殺さない程度にね」

誠司「そもそも何で、プリキュアの力を奪うんだ?さっき仲間を集めてるとか、」

星謌「ひめちゃん の力を奪ったのと同じ。『邪神』やリンクジョーカーとの戦いが不可能だからだよ。

邪神は悪意を、リンクジョーカーは恐怖を増大させる。生まれた時からプリキュアだったメグたち三人や、『ニンゲン』よりハイランクな魂を持つ誠司クンなら、余り影響を受けない。
でも、そうじゃない、『ニンゲン』が力を持っただけのプリキュア擬きたちは、敵の影響を強く受けてしまい、戦えないだけならまだしも操られる可能性が高い。
放置していても邪魔にしかならないのが目に見えてるから、先に始末する。
『危険な種は芽を出す前に土壌ごと焼き尽くす』が、ボクらのモットーだから」

今日はここまでにします。
また明日の午後に再開。

遅くなりました。再開です。>>216 の続き。

いおな「他のプリキュアの力を奪うなら、皇姫さん1人でやればいいじゃない。どうして めぐみ を巻き込むの? 」

メグミ「いおなちゃん。あたしはもうヴァリアンの一員で、みんなの仲間じゃない。星謌ちゃんは、ヴァリアンとして あたしと仲間になるか、する必要の無い敵対をするか選べって言ってるんだよ。
あたしはもう二度と、元の『愛乃 めぐみ』には戻れないし戻る気も無い。でも、記憶はちゃんと残ってるから、みんなを傷つけたく無いの。
いおなちゃん や ゆうゆう が、あたしたちの邪魔するのなら、戦わなくちゃいけない。そんなの嫌だから、手伝わなくていいから、邪魔しないで。お願い」

いおな「…… 」

ゆうこ「一週間経ったら、めぐみちゃん はどうなるの? 」

誠司「さっき『本部』に連れて行くとか言ってたよな? 」

星謌「一週間てのは目安だよ。メグなら、力に馴染むまで大体それくらいかなって。その間に戦闘の基礎を叩き込んで、即戦力にする。
本部に行ったら、『使徒』の号を貰って、すぐ任務に就てもらう。
『使徒』の任務は他の世界への派遣が基本。新しい任務が引っ切り無しに入るから、帰郷は滅多にできない。
と言ってもボクらは『レコード』の補助で、どの世界のどんな時代・時間点にも自由に行けるから、待ってる側はそんなに『永いお別れ』にはならないかもだけど」

ひめ「お別れって…… 」

ゆうこ「わたしと、いおなちゃん・相楽くんの三人は、ヴァリアンの一員になる『資格』みたいなものが有るんだよね?
もし、わたしたちが めぐみちゃん と一緒に行くことになったら、家族とは会えるの? 」

星謌「いつでも、ってワケにはいかないけどね。使徒はかなり忙しいし、人手も足りないから。
それに、家族を大切に思うなら、あんまり会わない方がいい。敵に目を付けられて危険だし、下手すれば自分の手で、家族を殺さなきゃいけなくなるかもしれない」

ゆうこ「…… 」

星謌「とにかく。最低でも一週間は、考える時間があるから、ゆっくり考えなよ。冗談抜きに、キミらの一生を決める事なんだ。
ボクらヴァリアンは、ニンゲンにとっては『悪魔』だし、実際殆ど悪の集団だ。
でも、ボクらは決して無理強いはしない。本音では、キミら三人には是非仲間になって欲しいけど、どうしても嫌なら、それでも良い。
ただ、メグも言った通り、せめて邪魔はしないで。ボクらだって、好きで他人を傷つけたい訳じゃない。戦いたくて戦ってるんじゃないんだ」

ゆうこ「なら、どうして? 」

星謌「戦うことでしか護れない、誰かを傷つけてでも護りたいものがある。戦う力があって、誰かが戦わなくちゃいけない敵がいる。
先ず第一にボクら自身のため。それぞれの大事なものを、大切な人を護る為に、ボクらは力を求め、自分の為に戦う。必要なことは何だってするし、邪魔するものは全て排除する。
護る為に壊す。矛盾するその意志。正義も悪も、何もかもを飲み込む混沌こそが、ボクら『ネオ・ヴァリアン』の力の源だ」

メグミ「大切な人を護る。その為に戦って、傷つけて。それでその人が喜ばないと識っていても、戦わなきゃ、傷つけなきゃ、絶対に護れないから。根本的に話の通じない敵が、存在することを知ったから、あたしは戦うと決めた。
他の誰でも無い、あたし自身の為に。誠司を護る力を欲したんだよ」

ゆうこ「めぐみちゃんは、相楽くんが好きだから、好きだって気づいたから、戦うことを選んだんだね」

メグミ「…… 」コクリ

ゆうこ「そっか。
まだ聞きたいこともあるけど、そろそろ遅いし、めぐみちゃんが大丈夫だっていうことが分かったから。
今日は、お開きにしよう?みんな」

誠司「え?でも…… 」

ゆうこ「ずっとお話聞いてて、解らない部分も多かったけど、皇姫さん…星謌ちゃんが悪い人じゃないっていうのは、なんとなく解った。
お話が解り辛いのは、何も知らないわたしたちに一から説明しようとして、一度に色々な話をするからこんがらがっちゃったんだよね。
凄く疲れて沢山食べて、人じゃないって言っても眠くはなるんでしょ?
今日はひとまず解散して、また明日から、少しずつ話し合おうよ。
めぐみちゃん と相楽くんはお隣同士だから、めぐみちゃん に何かあってもすぐ動けるし、ね? 」

星謌「あー…やっぱバレてたか」

メグミ「ゆうゆう、のんびりしてるようで意外と『切れ者』だから」

ゆうこ「星謌ちゃん。明日から、他の国のプリキュアのトコ行くんだよね? 」

星謌「そうだね。学校終わってからになるから、昼間はこの街に居るけど」

ゆうこ「なら、明日はわたしも連れて行って?めぐみちゃん と星謌ちゃん がどんなことするのか、監視じゃないけど、近くで見ていたいの」

星謌「ボクは良いけど?メグは? 」

メグミ「あたしも、良いよ。でも… 」

ゆうこ「うん、解ってる。よっぽどじゃない限り止めに入ったりしない。約束する」

誠司「大森…… 」

いおな「ゆうこ…… 」

ゆうこ「みんなは、テレビの中継を見てて。あと、できれば録画しておいて。後で見たいから」

誠司「テレビって、増子さんの番組か?何でそんなの… 」

星謌「ゆうこ、キミって思ってたよりもずっと大人だねぇ?とても他の二人と同い年とは思えないよ」

ゆうこ「解らない部分も多かったけど、解る部分も、多かったから。
もっと知りたい、話したいって思ったの」

メグミ「ゆうゆう なら、きっとすぐに仲間になってくれるよ。あたしなんかより、ずっと『賢い』から」

星謌「そうだね」

今日はここまで。

ゆうゆう のアシストで無理矢理場面を終わらせた感がありますが、赦して。

明日はまた休筆して、月曜の午後再開です。

もう読んでる方いないかもしれませんが、作品は最後まで書き上げます。 もしまだ読んでくださってる方がいたら、どうぞ最後まで気長にお付き合い願います。

遅くなりました。再開です。

星謌「んじゃ、ボクはそろそろお暇するよ。メグ、注意事項とか少しあるから、途中まで一緒に」

メグミ「あ、うん。星謌ちゃんて、今どこに」

いおな「ちょっと待って!お姉ちゃん、プリキュア墓場に行くんじゃないの!? 」

星謌「後で、とは言ったけど『この後すぐに』なんて一言も言ってないよ? 大体、救出するのは昼間のが良い」

ゆうこ「どうして?ご家族やお友達、みんな心配してると思うけど」

星謌「解ってる。でも、ファントムの鏡から出してすぐに、故郷に帰すワケにはいかない。
全員、酷く衰弱してるだろうし、先に回復させなきゃ。その間に、家族に話す心積もりと、その話す内容を一部、事前に指示しなきゃいけない」

ひめ「どういうこと? 」

星謌「プリキュアの敗北と同時に子供が行方不明になってるんだから、家族や友人は間違いなくプリキュアの正体に気づいてる。誤魔化しても仕方ないから、全員正直に話してもらう。けど、墓場から救出したのがどこの誰なのかは、絶対に秘密にしてもらわないと。
『危険なことを止めさせる』なんてお節介をする、分からず屋の親がいないとも限らないしね」

いおな「他の国のプリキュアたちは解ったけど、お姉ちゃんだけでも…他のみんなより一晩早いくらい、いいでしょう? 」

星謌「そういうことじゃない。キュアテンダーこと氷川まりあさん は、まだ救出できないよ。今、プリキュア墓場にいないから」

いおな「え、墓場にいないって、どういうこと?だって、ファントムに敗けて囚われたプリキュアたちは、全員あの空間に…! 」

星謌「昼間、ファントムたちが言っていただろう?
『クイーンミラージュは、ラブリーが得た力を恐れてる』
河川敷での三幹部の消滅と、ファントムの消失は既にミラージュに知られてる。というかずっと見られていたの、気づかなかったの? 」

ゆうこ「そういえば、なんとなく視線を感じてはいたけど…でも見ていたんなら、どうしてあの後 何もしてこないの? 」

星謌「学校で、ボクとメグ、一限以降いなかったでしょ?あの時にね、幻影帝国の領土全域を結界で封鎖して、誰も出入りできなくして来たんだ。何もしてこないんじゃなく、なーんにもできないんだよ。
魔力磁場を散らかして結界内外の通信も不可。力技で壊せないタイプの結界だし、ちゃんと『秘術』を学んでいないと解析不能で、そもそも異世界の式使ってるから、この世界の術師には理解すら不可能。
更に、結界内の魔力を徐々に吸い取って2、3日で枯渇。土地の真力も吸い尽くして死土に変えてしまう。そこまで約一週間。テレポートでも脱出不可」

ひめ「それ、ブルースカイ王国は大丈夫なんでしょうね?幻影帝国の領土は、」

星謌「無問題。結界解除すれば、吸い尽くしたエネルギー全て土地に還元されるから。『死滅大地』まで進行してても一瞬で元通り」

いおな「お姉ちゃんは… 」

星謌「ああ、そうだった。
ラブリー、メグの力に対抗する為、キュアテンダーはミラージュの力で『ダークプリキュア化』されてる」

いおな「ダークプリキュア? 」

星謌「メグの成った『カオスプリキュア』と違って、完全に闇に支配された状態。プリキュアを素材にしてる分、他の幹部なんかより遥かに強い。ひょっとしたらファントム以上かも」

いおな「そんな、お姉ちゃんが、闇に……? 」

ゆうこ「そんなこと、どうやって知ったの? 」

星謌「『超広域探知響鳴波(ハラウンド・サーチ・ハウリング)』っていうスキルがあってね。真力を波動化して展開し、広範囲の索敵をする為のものなんだけど、ボクのは地球全土が範囲内でね。テレパシーを乗せることで地球中の現状を把握できる。
疲れるから常時全力展開はしないけど、戦闘中とかはかなり広範囲に拡げてる。
一限終わってすっ飛んでったのも、キミらと話しながらこのスキルであちこち探ってる内に、幻影帝国での動きに引っ掛かって、先手打たなきゃって思ったからなんだ」

誠司「一限以降いなかったって言ったけど、二限からも授業中は居た、」

星謌「教室全体に幻術かけて、居るように見せかけてたんだよ。本当はボクもメグも、二限以降は全部サボった」

誠司「おい…… 」

星謌「ともかく、キュアテンダーは今、幻影帝国にいる。最上級幹部の待遇受けてるから、結界の中でも一週間くらいなら平気でしょ。
メグの修業を終わらせたら、仕上げに帝国の本部を叩く。黒幕を消せば、それでこの下らない戦争も終わり。後始末は、最後の責任としてブルーにやってもらう。
キュアテンダーは、ミラージュと同じく肉体ごと闇に染められているから、浄化すれば救える。なりたてだから確実に救えるよ。
なんなら、いおなちゃん が自分でやる?」

いおな「え?私に、お姉ちゃんと闘えって言うの? 」

星謌「イヤなら無理強いしないよ。ただ、キュアテンダーは元から強いらしいじゃん?ボクやメグだと、加減間違えて『壊し』ちゃうカモ」

いおな「壊す、て…? 」

星謌「そりゃまあ、物理的にっていうか~。原形留めないくらいグチャミソに…… 」

いおな「ヤメテ!!そんなことしたら、私があなたを…!!!! 」

星謌「そんじゃ、お姉さんの相手は自分でお願いね? いおな 」

いおな「う…わ、分かったわ。お姉ちゃんは、必ず私が救う! 」

星謌「ま、今のままじゃ勝てないだろうけどね。絶対に」


星謌「ま、そんな訳で。プリキュア擬きたちの救出は明早朝。キミらが学校行っている間にボクと妖精たちでやっとくよ。この大使館を使うけど、良いよね?ひめちゃん」

ひめ「え?う、うん。良いけど… 」

誠司「そういえば、ひめ がもうプリキュアになれないっていうのは、結局どうなったんだ? 」

メグミ「どうもこうも、プリチェンミラー壊したし、元々ひめ はプリキュアじゃないし。
幻影帝国との戦争はあたしと星謌ちゃんとで終わらせるから、無理に戦わなくていいよ。プリキュアでなくたって、ひめ が望むなら友達は続けるし」

本日はここまで。明日 再開しますが、時間は未定。

遅くなりました再開します。>>226 の続き。

ひめ「私が望めばって、さっき…… 」

メグミ「言い間違えた。ひめ が望む限りは、あたしは友達続けるよ。
だけど、ヴァリアンの仲間にはなれない。ゆうゆう や いおなちゃん、誠司と違って ひめ には、適性が無いから」

ゆうこ「もし、適性が無い人に その『ヴァリアンの力』を渡したらどうなるの? 」

星謌「さあ?今のところそういう例は無いから、実際どうなるんだろうねぇ。まぁ、よくある『愚か者の末路』になるんだろうけど」

メグミ「兎に角。ひめ はもう戦わなくていい。これから一週間以内に、戦争は終わる。ブルースカイ王国の復興で大変だろうけど、それまでは ゆっくりしてて」

星謌「そんじゃ、キリの良いところで今日は解散。明日の朝また来るから、よろしくね ひめちゃん」

ひめ「あ、うん…… 」

翌日 学校

誠司「それじゃ、皇姫は今 大使館に? 」

ひめ「うん。私と入れ違いに来て、リボンと一緒に元プリたちのお世話してる」

いおな「グラさんも、私が出る時一緒に出て途中で別れたから、今頃は大使館よ」

ゆうこ「囚われていたプリキュアたちの救出、ちゃんとやってくれてるんだね」

メグミ「星謌ちゃん曰く、半分 暇つぶしらしいけどね。あたしが学校行ってる間の」

ひめ「……めぐみ、ひとつ訊いて良い? 」

メグミ「ん?なぁに? 」

ひめ「なんで今日は、朝からずーっと誠司に引っ付いてんの?人前だよ? 」

メグミ「なんでって、あたしは誠司の彼女だもん。ねー? 」

誠司「ん。まぁそうなんだけど、やっぱ ひめ の言う通り人前だしさ、あんまり引っ付かれるのは…む、胸当たってるし// 」

ゆうこ「相楽くん、お顔真っ赤だね」

いおな「大丈夫?熱でもあるんじゃ」

メグミ「アハハ。今更なーに照れてるの?誠司。昨夜はもっと… 」

誠司「! こら!! 」

ひめ「昨夜?何かあったの? 」

誠司「い、いやその…… 」

ピーン
ゆうこ「ははぁ。なるほどねー。つまりこれが、『力の影響』ってヤツですか」

いおな「まさか…もしかしなくても相楽君…? 」

ギクッ
誠司「いや、あのその…… 」

ひめ「え?なになにー? 」

ゆうこ「恋愛に憧れてる割に察しが悪いね ひめちゃん」

いおな「それだけ純粋ってことなんじゃないかしら?むしろ中学生なのに分かっちゃう私たちの方が… 」

メグミ「今時それくらいは普通なんじゃない?ひめ は箱入りお姫さまだし」

ゆうこ「そうだよ~いおなちゃん。中学生で彼氏さんと一線越えなんて、今時ザラなんだし。知識があるに越したことは無いわよ」

誠司「お前ら…てか大森さん?ちょっと落ち着き過ぎのような…… 」

ゆうこ「二人がいつかそうなるのは、昔から解ってたし。自然な流れでなら良いんじゃない?あ、でも避妊とかはちゃんと、」

誠司「大森! 」

メグミ「大丈夫だよ。ヴァリアン人はいくらシても妊娠なんてしないから」

ひめ「え? ニンシン…? 」

ゆうこ「え?そうなの? 」

メグミ「そもそも非生命体の不老永寿だから、子孫残す必要もないし。感覚はあるから、ちゃんとキモチイイけどね」

誠司「// 」

ゆうこ「へー。それじゃあヴァリアンの人たちは、好きな人との子供を作れないんだ」

メグミ「いや、造れるよ。産めないだけで」

ゆうこ「 ? 」

メグミ「つまり、行為で妊娠して自然出産は出来ないけど、二人の真力ー『魂の欠片』ーから人工的に造り出すことはできる。
まあ、まだ発足したばかりで 実際に造ったカップルはいないらしいけど。
ひょっとしたら あたしたちが最初かもね、誠司~? 」

誠司「~~~~っ// 」

ゆうこ「面白いくらいに真っ赤だね相楽くん」

誠司「う、うるさいっ! 」

そんなこんなで放課後 大使館近く

メグミ「さっき電話したら、星謌ちゃんはもう準備OKだから、いつでもいいって」

誠司「大森、本気で一緒に行くのか? 」

ユウコ「相楽くんも一緒に行く? 」

誠司「いや、俺は…邪魔にしかならなそうだし」

メグミ「言っとくけど、ユウユウだって あたしを止めるのは無理だからね。誰が何人いても同じだけど」

ユウコ「そうね。でも わたしは、メグミちゃん の邪魔なんかしないよ。
昨日は、メグミちゃん が暴走したら止めるつもりだったけど。今日一日お話して気が変わった」

ひめ「え?ゆうこ……? 」

ユウコ「むしろ、メグミちゃん のお手伝いしたくなっちゃった♪ 」

いおな「な?お手伝いって…… 」

星謌「どうやら、こっち側に引き込めたみたいだね」

本日はここまで。明日の午後再開。

遅くなりました。>>234 の続きより再開です。

メグミ「あれ?星謌ちゃん」

星謌「ごめん、メグ。予想より早く幻影のが動き出したんで、迎えに来た。もうここからすぐにテレポートするから、荷物 誠司クンに預けて」

メグミ「あ、うん。分かった。ユウユウも一緒に? 」

星謌「飛んで行くには遠すぎるし、鏡は今 使いものにならないからね」

ユウコ「よろしくお願いします、星謌さま」

いおな「!? 」

ひめ「は、『様』? 」

誠司「おい、大森? お前さっきから発言が変、」

星謌「『様』は止めれって、ボク昨日メグに言ったんだけど。聞いてたよね? 」

ユウコ「どうしてもお嫌なら止めます。
でも、メグミちゃんからお話を聞いて、敬称を付けるべき方だと思ったので」

星謌「要らないよ、そんなの。敬語で話すのも無し。ホントに嫌いなんだ、堅っ苦しいのは」

ユウコ「分かった。じゃあ、星謌ちゃん。改めてよろしく」

星謌「ん。こちらこそ、よろしく。
それじゃ、早速だけど行くよ。場所はフランスの首都パリ」

ユウコ「キュアアールのホームだね」

メグミ「この前、ユウユウがヘルプに行ったトコ? 」

星謌「そんなのどうでもいいから、早く行くよ。幻影に倒される前に狩らなきゃ。
ボクの手か服に掴まって」

誠司「おい、ちょっと待て! 」

星謌「あーもー、なにっ?! 」

ビクッ
誠司「あ、いやその…大森の様子がおかしいから、」

星謌「テレビ観てて。そしたら解る。急ぐから、話は後でね。じゃ」フッ

いおな「あ、消えた……テレポート、したのかしら? 」

誠司「多分。兎に角 大使館へ」

グラさん「お、いおな に誠司、おヒメちゃん。おかえりダゼ」

いおな「グラさん。囚われてたプリキュアは? 」

リボン「既に、星謌さんが国に送り届けましたワ。あの方が調合した『マヤク』という物を入れたココアを飲んで、元気が戻った方から順番に」

誠司「おい今なんて言った、『麻薬』だって?つまりドラッグをプリキュアに飲ませたのか?! 」

リボン「あ、いえ、ドラッグではなく『真薬』即ち『真法薬』ですワ。ドラッグ並みに速効性がありよく効くことから、比喩的に『真薬』と縮めて呼んでいるそうで。
いわゆる『依存性』などの危険な副作用は微塵も無いそうなので、ご安心下さい」

誠司「…… 」

いおな「相楽君。気になるのは解るけど、今はまずテレビを見てみましょう。もう始まっているかもしれないわ」

誠司「あ、ああ。そうだな」

フランス・パリの市街地

増子「たった今、フランスのプリキュア『キュアアール』が現れ、サイアークと交戦を始めました。今のところ優勢のようですが… 」

幹部A「フン。サイアーーク!プリキュアなど叩きのめせー!! 」

サイ!アーーーク!!!!!

キュアアール「キャアッッ!!? 」

増子「あーっと!キュアアールが掴まってしまった!ピンチです! 」

キュアアール「くっ、何だか今日は、いつもより強い?でも、こんな事くらいで、負け、」

サーイアーク!!

キュアアール「キャアァァァ!! 」

増子「な、なんと!キュアアールを投げ飛ばしビルに叩きつけた!衝撃でビルが倒壊、キュアアールは瓦礫の下敷きに!大丈夫か?キュアアール!? 」

キュアアール「うぅ……っく! 」

幹部A「キュアアール!今日こそ年貢の納め時だな!サイアーク!止めを差せ!! 」

サイアーーーク!!!

メグミ「ラブリー・パンチングパンチ! 」

サイアーク!?

幹部A「なに!?! 」

増子「おーっと、今の攻撃は!? 」

カメラマン「増子さん、あっちあっち!! 」

増子「え?あ!皆さん、ご覧下さい!エッフェル塔に立っているのは!? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
いおな「え?なんで? 」

誠司「あの姿って…… 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
増子「な、な、なんと!キュアアールのピンチに、日本から心強い助っ人が登場!しかも2人!以前にもキュアアールを助けた『キュアハニー』と、彼女のチームメイトの『キュアラブリー』が、応援に駆けつけた! 」

TVの前のチビッコ「わー! 」

幹部A「キュアラブリー、だと?ファントムのヤツに倒されたのでは…まさか、あやつしくじりおったか!『プリキュアハンター』などと呼ばれながら情けない。ならば私が! 」

メグミ「独り言長過ぎ」

幹部A「っな?! ッッッグ、ハァーー! 」

増子「ラブリーの先制攻撃!強烈なパンチが脇腹にクリーンヒットォォ! 更に打ち上げた相手を… 」

メグミ「てやぁぁぁぁぁ!! 」

幹部A「ぐっほぉぅぁぁぁ?!! 」

増子「斧を振り下ろすが如き踵落としー!これまたクリティカルヒットォォォ!
そしてその間に、ハニーがキュアアールを回復!どうやら無事のようです!よかった~ 」

キュアアール「ありがとう、キュアハニー。また助けてもらっちゃったわね」

ニコ
ユウコ「気にしないで。後のお詫びの前払いだから♪ 」

キュアアール「え? 」

メグミ「ハニー! 」

ユウコ「うん!分かってる。それじゃ、キュアアール。後でね。一応言っとくけど、逃げても無駄だから」

キュアアール「え、え?キュアハニー、何を、」
~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はここまで。また明日の午後再開。
~~~~~~~~~~~~~~~~

再開します。>241 の続き。

増子「おや?ラブリーとハニーが再びエッフェル塔に。何かの作戦でしょうか」

メグミ「ユウユウ、覚悟は良い? 」

ユウコ「うん」

メグミ「一度踏み込んだら、二度と後戻りはできない。もう元の生活には帰れないんだよ。本当に良いの? 」

クスッ
ユウコ「メグミちゃん。後悔するくらいなら、最初からついてこないよ。大丈夫。もう、決めたから」

メグミ「そっか…分かった。
それじゃあ、始めようか。やり方はさっき教えたし、昨日あたしの見てたから、分かるよね?」

ユウコ「うん、大丈夫。あ、『ハニー』のプリカードは3枚を1スロットにだっけ?」

メグミ「うん そう。で、すぐ下の第2スロットに『RUM』で、第3にはコレを」

『降雷皇ハモン』

ユウコ「デュエルモンスターズの、見たこと無いカード。でも、凄い力を感じる…… 」

メグミ「昔、世界を滅ぼしかけた『三幻魔』っていうカードの1枚。力の一部を封じたコピーカードらしいけど、ユウユウの力を覚醒させるには十分な力を宿してるって」

ユウコ「そっか。コレを、3つ目のスロットにセットして、」

メグミ「あとは、唱えるだけ。
タイミングは任せるよ」

ユウコ「なら、早速イっちゃうね」

メグミ「いつでもどうぞ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
いおな「ねぇ、ゆうこ が持ってる長方形のって、めぐみ や皇姫さんのと同じ物じゃあ…… 」

誠司「ああ、間違いない。何で大森まで… 」

ひめ「まさか、ゆうこも…… 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
ユウコ「すー、はー………ん! 」

「大いなる混沌よ、黒雲切り裂く稲妻となりて、我に新たな力授けん! 」

ユウコ
「ランクアップ・カオスエクシーズ・チェンジ!」

増子「な?!なんだぁ、アレは!?エッフェル塔上空に巨大な、雷雲?キュアハニーが黄金の輝きを放ちながら、突如出現した雷雲に飲み込まれました!一体何が起こっているのでしょう!?ラブリーは動かない」

幹部A「う、グ!なにを、する気だ? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
いおな「あれって、やっぱり……!」

誠司「大森、なんで……!」

ひめ「ゆうこ…… 」

~~~~~~~~~~~~~~~~
バチッ!バチバチ…バチチチチッ……ピカッ ガシャォォォ…ン!

増子「ひゃあっ!?落雷!? 」

ザイッア゛ァァァァァグググゥゥ!!??

増子「一本の落雷がサイアークを直撃! ん?痺れるサイアークの頭上に誰か…あれってもしや? 」

バヂヂヂッ…ギュンッ!

増子「あ!エッフェル塔、ラブリーの隣に!やっぱりアレは。でも、どういうこと……? 」

幹部A「な、なんだアレは!?プリキュア、なのか? 」

メグミ「スッゴイ 電気エネルギー。大丈夫? 」

バヂヂヂヂヂヂヂ……
ユウコ「うん、全然へーき。常時帯電してるのが、わたし の特徴の一つだから。でも、やっぱり少し激し過ぎるかなぁ。もちょっと抑えるね」

メグミ「纏ってる雷、普通?の金色だけじゃなくて黒いのも混じってるね。カオスの力の影響なのかな? 」

ユウコ「どうだろうね。わたし の心を映しているのは、間違いないと思うけど」

ユウコ「それより、メグミちゃん は変身しないの?その状態からも本来の姿になれるんでしょ? 」

メグミ「あ、うん。それじゃ、」

「Resolve Execution , Valkyure! 」

幹部A「!?な、今度は何だ!? 」

増子「なんと!?ラブリーまで姿が変わった?!フォームチェンジ、にはちょっと見えませんが……ていうか、アレって本当にプリキュア?? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
いおな「全体に黒いドレス、所々に装着されたアーマー、」

誠司「それに、めぐみ は顔の右側だったけど、大森の顔 左側の赤い線模様……特徴が めぐみ のとソックリだ」

ひめ「ゆうこ のドレス、めぐみ のより鋭角的っていうか、なんかフォルムが攻撃的。あんなの、プリキュアなわけ無いよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
メグミ「名乗り、言っとく? 」

ユウコ「そだね。一応 初お披露目だし」

幹部A「お前たち、一体何なんだ!? 」

メグミ「我らは、混沌の戦姫『カオスプリキュア』」

幹部A「カオス、プリキュア、だと? 」

ユウコ「深く愛するが故芽生えた、絶望と憎悪。『狂気』を孕んだ魂に闇を纏い、世界を護るため邪悪を狩る者。『死神』って言えば、1番解り易いかな」

メグミ「末世を蹂躙す 無慈悲なる殲姫!
キュアクルーエル!! 」

ユウコ「曇天に踊る 迅雷の蜂凰!
キュアホーネット!! 」

増子「し、『死神』を名乗る、2人の黒いプリキュア『クルーエル』と『ホーネット』。以前 私が取材した時とはまるで別人。光の戦士プリキュアに、何があったのでしょうか!?この後、どうなる!? 」

メグミ「ユ、じゃない。ホーネット。さっき渡した『心珠』、持ってるよね? 」

ユウコ「うん、コレでしょ」ガキン

[ MULTIWEAPON ]
[ Variable Gunsaber ]

メグミ「それのグリップ上部に、『EXAsC』と似た形の部分があるでしょ? 」

ユウコ「似てるというかソックリね。数は少ないけどスロットもある」

メグミ「そこに新しい変身カードをセットすると、個々の専用武器に変形するんだってさ。昨日はウッカリ説明忘れてたって、星謌ちゃんが」

ユウコ「へー。ん、こうかな? 」カシンッ

[ TRANSWEAPON ]
[ HALBERD ] [ Vortex Breaker ]

増子「!?あ、アレは、武器?プリキュアが武器を!?遠目でよく見えませんが、槍のような…え? 斧槍、という武器だそうです」

ユウコ「クルーエルのは? 」

メグミ「あたしのはねぇ、」カシンッ

[ TRANSWEAPON ]
[ SWORD ] [ Exort Divider ]

メグミ「剣、だね。かなり刃渡 長いけど」

ユウコ「ロングソードってヤツかな。RPGなんかによく出てくる。それにしても、シンプルだね。装飾?が一つも無い」

今日はここまで。明日と明後日は休筆。月曜の午後から再開します。

お待たせしました。再開します。>>247 の続きから。

メグミ「そだねぇ。でも…… 」

ユウコ「 ? メグミちゃん? 」

メグミ「…うん、持ってるだけで伝わってくる。この剣 見た目シンプルな分、特殊な能力を宿してる。言葉にすると『一薙千祓』。一振りで千の邪を祓うことができる。
ホーネットの斧槍も、何か能力があるんじゃない? 」

ユウコ「うーん、特殊能力とかは無いみたい。
でも、大きさの割にびっくりするくらい軽い。100gも無いんじゃないかな。ベタな表現だけど正に『羽みたい』ってヤツ」

メグミ「ホーネットの、さっきの凄く速い動きを邪魔しないようになっているのかな。
能力だけじゃなくて、武器での闘い方も流れ込んでくる」

ユウコ「これなら、すぐに闘えるね」

メグミ「そうだね。律儀に待ってくれてるみたいだし、そろそろ闘ろうか。
ホーネット、どっち殺る? 」

ユウコ「そうだね~、さっきサイアークに手つけたから、最後までやっていい? 」

メグミ「いいよ。じゃ、幹部はあたしが貰うね」

「Ready…Fight!! 」

増子「あ?二人が消えました!どこに、」

サイアーーーグゥゥゥ?!

増子「え!?なに、」

幹部A「ぐあ!? 」

増子「こっちも?!一体何が…あ!! 」

サイ!ザィッ!サイアグァ゛ァ゛ァ゛!!

増子「速い!あまりに速過ぎて目で追えませんが、サイアークが四方八方からの攻撃で棒立ちになっている!『蝶のように舞い蜂のように刺す』とは正にこのこと!電光が閃いてはサイアークが呻き、一秒と空けず新たな電光に撃たれる!今までに見たプリキュアの中でも別次元の速さだー! 」

幹部A「く、おのれ……! 」

増子「一方ラブリー、否クルーエルは幹部と一騎討ち!以前の取材中に何度か、ラブリーが光の剣を振るうのを見ましたが、あの時とは全く違う!動きが洗練され、素人目にも分かるほど無駄も隙も無い!自ら名乗った名の通り、冷徹でどこか流麗な剣舞に幹部は防戦一方だ! 」

増子「私、長くレポーターを務めておりますが、人間 本当に優れたものを見ると却って月並みな言葉しか出ないのだと痛感致しました。
黒く染まった二人のプリキュアは、以前とは比べ物にならないほど強くなっている!
しかし、彼女たちは本当に『プリキュア』なのでしょうか?我々の知る『プリキュア』とは違い過ぎる。何が彼女たちを変えたのか?レポーター魂が疼きます」
~~~~~~~~~~~~~~~~
ひめ「あんなの、プリキュアじゃない!めぐみ も ゆうこ も、どうしちゃったの? 」

いおな「二人とも、なんだか闘いを愉しんでいるみたい…… 」

誠司「俺にもそう見える。特に大森のヤツ、さっさと終わらせられるのにワザと何発も撃ってるだろ 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
メグミ「……テレパシーって便利だねぇ」

幹部A「!?なんだ突然? 」

メグミ「アンタには関係無、い! 」斬っ!

幹部A「ぐあぁぁぁ! 」

メグミ「ホラホラ、もっと本気出さなきゃ。もう片っぽの腕もトバしちゃうよ? 」ニコッ

ゾッ!
幹部A「!こ、この、バケモノがぁぁぁ! 」

メグミ「最高の褒め言葉、頂きました~♪お礼にもっと刻んだげるよ。あははははははは!! 」

増子「ちょ、ちょっと!今の映してないでしょうね!? 」

カメラマン「す、スンマセン!急にだったもんで、ガッツリ撮っちゃいました! 」

増子「バカ!早くカメラ止めて!撮影中止!こんなの子供たちに、」

カメラマン「ま、増子さん、それが…… 」ガクガク…

増子「なに?どしたの!? 」

カメラマン「う、動けないんス、今さっきから…か、カメラも、止めれない…… 」

増子「なにバカなこと言ってんの!ふざけてないで早く、……?! 」パクパク…(な、なに?急に声が出なく…嘘、身体も動かない!?なんで……)

星謌「フフッ、便利だよね~、このカード」

『ANo,43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター』(ANo,=アーティフィシャル・ナンバーズ)

星謌「元祖『No,』をそのままコピーした大量生産品だけど、この『43番』は本当に使い勝手がいいよ。
物理的に動きを制限するサイコキネシスと違い、闇の真力で編んだ糸を相手に付ければ気付かれることも無く傀儡にできる。
どんなに屈強な人間も、『魂』を直で操られたら抵抗しようが無いもんねぇ」

星謌「確か、コレのオリジナルはララちぃのトコのお静ちゃんがマスターだっけ?会った時は気をつけなきゃね。アハハ♪ 」

「さて…… 」

増子(く…っ!だめ、全然動けない。声も……口は動くけど音が出ない。何がどうなってるの?まさか、幻影帝国の仕業?でも、こんな能力持ってる幹部なんかいたっけ? )

カメラマン「ま、増子さん、どうしたら…… 」

増子(!口は動くんだから、口パクで……!?そんな、口も、動かなくなっちゃった!?どうなってんのよ~~!! )

星謌「んふふ。だめだよ~放送止めたりしちゃあ。ちゃんと皆に見せてあげなきゃ。『プリキュア』の、本当の姿を。世界の、そしてニンゲンどもの真実をさぁ! 」

キュアアール「スゴイ……あの二人、どうやってあれ程の力を……わ、ワタシも手伝わなきゃ。元はと言えばコレはワタシの…キャアッ!? 」

ドゴーー…ン

増子(え?キュアアール……!?)

キュアアール「う、く……今の…どうして……?キュアハニー…… 」

バヂィィッ!!!

キュアアール「!?あ、キャァァァァ!!!! 」

ユウコ「あなたはジッとしていなさい。邪魔だし、後でタップリ相手してあ・げ・る・か・ら、ね♪ 」

キュアアール「ア゛、カハッ!う……キュアハニー、どうして…… 」

ユウコ「『ライデイン』」

ズギンッガカァァッ…ン!!!

キュアアール「ギャァァァァァァ!!!! 」

ユウコ「『ホーネット』って言ったじゃない。おバカさん」

星謌「あーらら、ユウコちょっと暴走しかかってるかな?適正値ではメグよりも上だったからなぁ。
にしてもなんで『ライデイン』なんて知って、いや『撃て』たんだろ?あの系統は指輪にインストールできないし、渡したばかりだから基礎真法以外入って無いハズなのに……。
ま、いいか。それよか今ので、キュアアール死んでないかな?結構キツイのをモロに喰らったような…… 」

キュアアール「………う……あ………… 」

星謌「ん~~、ギリ。かろうじて意識あるみたいだけど、プツンでドサリ寸前だね。しょうがない、ボクの監督責任だし、治癒してあげるか」
~~~~~~~~~~~~~~~~
誠司「おい、なんだよ今の落雷!?キュアアールって人 大丈夫か!? 」

ひめ「画面の端っこだったけど、思いっきり当たってたよね?! 」

いおな「直前にキュアアールが急に吹き飛んだのも…一瞬チカッと光ったし、やっぱり両方ゆうこ が……」
~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで。明日は正午前後に再開して、15時前に一旦切ります。その後は未定。

予告の時間より少し遅れましたが、再開します。>>255 の続き。

キュアアール「……… 」

星謌「おーい、生きてるかーい?変身解除されてないから、一応 生きてはいるよね。すぐ治すからね~ 」

ユウコ「あれ?治しちゃうの?星謌ちゃん 」

星謌「ユ、ホーネット。キミやり過ぎ。全身の神経焼き切れてるし火傷も酷い。常人なら間違いなく死んでるよ?もうちょい加減しな」

ユウコ「あー、ごめんなさい。そんなに強く撃つつもりじゃなかったんだけど、加減間違えちゃった。
てゆーか、なんだか力の制御が難しくて…… 」

星謌「適正値が高いと、力の成長が速いからね。慣れないと段々コントロール利かなくなってくる。
後で『調律』するから、時間貰うよ」

ユウコ「調律?音合わせ……ああ、はい分かりました。お願いします」

星謌「ん。それじゃ、このコ治すから、その間にソレ片して。メグもね」

メグミ「はーい、了解でーす」

[ Healing ][ Now! ]

星謌「そういえば、ホーネットの専用武具。それハルバードじゃないみたいだね」

ユウコ「はい?でも出した時は、」

星謌「ごめん、言い方が悪かった。単なるハルバードじゃないね、それ。『槍杖戟(アグレッシブ・タクト)』っていう特殊な杖だよ」

ユウコ「アグレッシブ・タクト?聞いたこと無いなぁ」

星謌「杖を『タクト』って呼ぶのはボクらだけだからね。
ホーネットのそれ、ハルバードにしては柄が長いしそれに比べて斧の部分が小さい。オマケにさっき、それをキュアアールに向けて呪文唱えたろ? 」

ユウコ「半分無意識だったけど」

星謌「『真法』も『魔法』も、どちらにも『杖』やそれに準ずる物が要る。魂からエナジーを引き出す『ゲート』としてね。
『アグレッシブ・タクト』ってのは、真力出力を少し犠牲にして近接戦闘にも適応できるようにした『白兵戦用杖』。『戟』ってついてるけど一応ハルバードの仲間てか親戚。プライムやアバンスが副武装にしてるけどメイン武器では初めて見るなぁ」

ユウコ「そうなの?結構使い易いよ! 」

星謌「鎗の部分は平均的な長さ。戟は基本両刃だけど『ハルバード』と同じく片刃で刃の面積が小さい。柄が長く、全長は持ち主の身長+10㎝ってトコか。それでいて羽のように軽い。うん、確かに扱い易そう。スピード特化の超速連撃型なら尚更だね。しかも一本で刺突・斬打・真法攻撃の三役。『ハニーバトン』の後継として申し分無しって感じでしょ? 」

ユウコ「ええ。ハニーバトンも良かったけど、コレは一層手に馴染む。大昔から一緒に闘ってきた『本当の相棒』って感じ」

星謌「遠・中・近距離 全対応のオールラウンダー。頼もしい従士に恵まれたね、メグ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はここまで。短いですがご勘弁を。明日も正午前後に再開します。

再開です。>>258 の続き。

星謌「なんて話してる間に、あと15秒くらいで完治するよ。そろそろ片ずけな」

ユウコ「あ、はーい!それじゃ、」タンッ

サイッ!?

ゴロゴロゴロ…ガカァァ!
ユウコ「必殺……! 」バヂヂヂヂ……

サ、サイ゛ッ!!

『雷鳴断!!! 』

ザイ゛ア゛ァァァァァグ……!!!
ドカーー……ン……。

星謌「雷を纏わせた刃で一刀両断か。シンプルだね。ま、その前に散々 電撃付きの打撃斬撃を喰らわせて痺れさせてたから、当てるの余裕だろうけど。メグはどうかな? 」

幹部A「く!自信作のサイアークを一撃で……!ここは撤退、」

メグミ「逃がさない…… 」

ゾッ
幹部A「う…!? 」

『ディヴァイディング・エンド!!』

幹部A「が?!ぐ、あ…… 」サラサラ……

星謌「わお。胴体真っ二つにしただけで灰化。『破魔の裁断者』の銘に相応しいフィニッシュアーツだね。と、こっちももう良いかな? 」

キュアアール「う、ん…あ、ワタシ……? 」

星謌「んじゃ二人とも、このコもよろ~ 」シュンッ

ユウコ「よろ~って……まいっか」

メグミ「準備運動は十分したし、本番とイキますか」ニッ

キュアアール「あ…貴女たち二人で、サイアークを?ありが、」

メグミ「お礼とかいいから、早く立ってよ。始めらんないじゃん」

キュアアール「?始める?て、なにを…? 」

ユウコ「今から、貴女のプリキュアの力を奪うの。闘って倒さなきゃいけないから、早く構えて」

キュアアール「な、なにを言っているの?プリキュアの力、奪う?どうしてそんなこと…… 」

メグミ「貴女には、プリキュアの資格が無い。持つべきでない力、身の丈に合わない力は、いずれ貴女自身を破滅させる。そうなる前に、地球中の『プリキュア擬き』から力を奪って、元の『普通の女の子』に戻すの。貴女は偶々最初だっただけ。説明しても、大人しくプリチェンミラー渡してくれないでしょ?だから闘って奪う。無抵抗の相手を攻撃するのは流石に気が引けるから、さっさと立って闘って。二人の内どっちかを選んでね」

キュアアール「え、え?全然ワカラナイ…プリキュア同士で闘うなんて…… 」

メグミ「なら、闘う理由を作ってあげるよ」ス…

キュアアール「なに?エッフェル塔が何か…」

メグミ「後で直すけどね」ボソッ

キュアアール「は? 」

『alchemic demolition』

ピシッ…ビキキキキ……ガガガガラガラガ…ッシャォォォン!…パラパラ……パラ………

キュアアール「………は? 」

増子(え?今なにが…エッフェル塔が、崩れた……?!)
~~~~~~~~~~~~~~~~
誠司「な、なにが、起きた?」

ひめ「めぐみ が、エッフェル塔に手を向けたら、急にガラガラッて…… 」

いおな「もしかして、『真法』っていうのかしら? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
キュアアール「なに、どうしてエッフェル塔が…パリのシンボルが…… 」

ユウコ「呆然として何もして来ないね。じゃ次はわたしが、」チャキ

「凱旋門を道路ごと壊っちゃいまーす」

キュアアール「はえ? 」

星謌(ホドホドにね。直すのも大変なんだから)

ユウコ「分かってるって。せーの、」

『thunderwave divide!!』

ガカァァ!ズギャガガガガガ!!!!!
「え?ギャアァァァァ!!!!」「うわ゛ぁぁぁぁ!!」

キュアアール「な!? 」

増子(なんてことを…!?あの二人、もうプリキュアじゃない!!)

ドッッッガゴガァァァァァン!!!

キュアアール「キャァァァァ!? 」

………パラパラパラ……ブッブー!パァーッ…
「うぅ…… 」「…… 」「痛い…熱い… 」「あ、脚が… 」「おおお、俺の腕がぁぁぁ!?」ワンッワンッ

カメラマン「嘘だろ…凱旋門が跡形も無く…木っ端微塵じゃねぇか… 」

キュアアール「あ…あ… 」ガクガク

ユウコ「ふ~…やっぱり加減が難しいなぁ。抑え過ぎた。道全部更地にしようと思ったのに」

星謌(むしろ破壊衝動を抑えられなくなってる…念入りに調律しなきゃね)

キュアアール「なんで…どうして… 」

ユウコ「あっれぇ~?ここまでやっても来ないの?しょうがないなぁ。それじゃ、次は貴女のお家の方角でも、」

キュアアール「ッ!う、うあ゛ぁぁぁぁぁぁ!!!」

ユウコ「お!ジャンケン、ポン! 」パー

メグミ「」グー(この間0.2秒)

ガキィィィィン!

ユウコ「やっと殺る気になったか。それでこそプリC」

キュアアール「この!プリキュアの皮を被った悪魔めぇぇぇぇ!!!」

ユウコ「アハ♪ 」

キュアアール「ウオォォォォ!!!」

ユウコ「ウフフッ。いいカオしてるぅ~!」

ズガガガガッドッガッガガガガガ

キュアアール「てりゃぁぁぁ!」

ユウコ「ホイッと」ヒョイ

キュアアール「ッ!このぉぉぉ!」

ユウコ「ンー。表情は良いんだけどねぇ。心底わたしを憎んでるって感じで。でも、動きが固いなぁ。怒ってても心の隅に躊躇いがあるんだろうね。そんなんじゃ、」フッ、ギャルンッ

キュアアール「ッ?! 」

ユウコ「やっぱり、真のプリキュアには向かないね」デコピンッ

キュアアール「キャァァァァァァァァァァァァァァ?!」

ドッゴォォォン!!

ユウコ「ワーォ。デコピン一発でこの威力。なんだか怖くなっちゃうなぁアハハハハハハ… 」

星謌(そこまでだよ、ユウコ)

ビクゥゥッ
ユウコ「ひっ…… 」

星謌(メグにトドメ差させるから、下がれ)

ユウコ「あ…ハ、イ…ごめんなさ、」

星謌( 謝んなくていいよ。どっちかと言えばボクが悪いんだし。もう正気に戻ったろ?)

ユウコ「あ…わたし、いま……? 」

星謌( よくあるんだ。力と魂との適合率が高過ぎて、ココロの箍が外れてしまい、衝動を抑えられなくなることが )

ユウコ「わたし、いつの間にか愉しんでた。傷つけること、壊すことを…いつもならこんな!」

星謌( 落ち着いて。闘いの中で興奮するのは自然なことだ。動いて頭に血が上るし、嗜虐性ってのは誰にでも多少はある。ヴァリアンの力は『愛から生じる負の感情』を源にしているから、慣れないうちは破壊衝動がブーストされ易いんだ。ユウコだけじゃ無い。だから落ち着いて )

ユウコ「あ…う… 」

星謌( メグ、聞こえてるよね?キュアアールにトドメお願い。変身解除してからじゃないと後遺症残っちゃうカモだけど、メグの破魔の力なら心配無さそう)

メグミ「分かった」

キュアアール「う、く…っ! 」

ヒュー、スタッ
メグミ「…… 」チャキ…

キュアアール「くっ!ハアッ…ハアッ…やるなら、やr 」

トスッ

キュアアール「ア…… 」

『extraforce restoration』

ピシッ…パキャァァン……

キュアアール「!?え…?」
(変身が、強制解除された?…!プリチェンミラーが、塵に… )

星謌( 上出来。街戻すから、少し待ってね )

メグミ「どうやって戻すのコレ…塔だけじゃなく街メチャクチャだよ?」

星謌( あんまりこういうことで、使いたくはないんだけどねぇ。リチャージ要るし。まあでも、そろそろ移動したいから、手っ取り早く済ませるよ )

星謌「てコトで、力貸してね、アレックス」

星謌「『EXガントレット』デュエルモード」

《該当形態に変形 . ディスクアーム展開》

星謌「先ずは素材っと。出といで、『星間竜パーセク』『限界竜シュヴァルツシルト』!」

「キュオォォォォ!」「グアァァァ!」

星謌「いくよ!ボクはレベル8の『パーセク』と『シュヴァルツシルト』でオーバーレイ!2頭のドラゴンでオーバーレイ・ネットワークを構築! 」

「時を操る竜よ!仮初めの器にその力を宿し 傷つきし時を忘却へ葬れ!」

星謌「エクシーズ召喚!顕現せよ!
『INo,ex7 銀河眼の時空竜・偽』!」
(イミテイショナリー・ナンバーズ・エクストラ・セヴン ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン・ブラフ)

「グオォォォォ!!!!! 」

星謌「早速やっちゃうよ!『時空竜』!『時空輪廻』!!! 」

『tachyon transmigration』

メグミ「眩しっナニコレ?」

星謌「辺り一帯の時間を巻き戻すんだよ。3時間ほど前まで。一々個別に直すより、丸ごと無かった事にしちゃった方が速いし楽。
本当は、暴漢に襲われた女の子を『汚された』という物理的事実ごとリセットして、本人が望むなら記憶も消して助ける為の力なんだよね」

メグミ「便利、てか随分と都合の良い力だね?」

星謌「スカウト対象がそういう目に遭うこと多いからねぇ、ボクらの場合。基本コトが始まる寸前に助けに入るんだけど、その事態を引き起こした『敵』に妨害されて間に合わないこともしばしば。そんな時に使うのがこの『時空竜』の力さ」

メグミ「でも、助けるのは解るけどどうして時間の巻き戻しなんか?その、『キタナイ』から? 」

星謌「まさか!とんでも無いよ。
そーゆー行為自体は皆、ボクだってしてることだし、第一、傷ついて絶望してるコに対して更に抉るようなコト、ボクらが考えると思う?いくら何でも、今のは失礼だよ」

メグミ「ご、ごめんなさい」

星謌「大半が『ハジメテ』のコだからだよ」

メグミ「え? 」

星謌「メグ、キミなら解るだろう?『ハジメテ』は好きなヒトに捧げたいって乙女心 。なら、時間を巻き戻す意味も理解できるはずだ」

メグミ「あ…うん… 」

星謌「ワザワザ言うまでもないよね。ボクらは『悪』だけど、『邪悪』じゃない。そこらのゴミどもと同じに見ないで。吐き気がする」

メグミ「ごめん…もう言わない」

星謌「解ればよろし」

今日はここまで。明日は午後再開。

再開します。>>269 の続き。

星謌「さて、話してる内に終わったね。ちょっとこの後、行きたいトコあるから付き合ってくれる? 」

メグミ「え?いいけど。もうここはいいの?」

星謌「ん。記憶は残してるけど街や死傷者は全員戻したし。『時空輪廻』の影響で呆けてる間にずらかろう」

メグミ「キュアアールは、」

星謌「もうどうでもいいよ。プリキュアの力は奪ったんだし、用は無い。ホーネットも行くよ」

ユウコ「うん…どこに行くの? 」

星謌「後で調律するから、そんな落ち込まないの。過ぎた事をいつまでも悔やむより、次どうするか考えな。
今からどこ行くのかは、着いてからのお楽しみ。変身は解かなくて良いよ。どうせすぐまた戦闘だから」

ユウコ「え、まだ、闘うの?今日はもう… 」

星謌「どうしても辛かったら無理しなくていいけど、変身は解除しないで。早めに慣れないと」

ユウコ「分かった…… 」

星謌「そんじゃ、テレポートするからボクに触れてて。行くよ」フッ

ブンッ(エッフェル塔前→ビルの屋上)

星謌「っと。はいとうちゃーく」

メグミ「どこココ? 」

星謌「舞網市」

ユウコ「どこかで聞いたような… 」

星謌「多分テレビでしょ。1週間前くらいじゃない? あ、いたいた」

メグミ「?誰? どこ? 」

星謌「下。濃いマゼンタの髪の女の子がいるだろ? 」

メグミ「んー?あ、あのコかな?蒼い髪留めしてる? 」

星謌「そうそう。右手首にブレスレット着けてるコ」

ユウコ「星謌ちゃんの仲間? 」

星謌「正確には仲間候補。今この時間点じゃなく、2年後にスカウトする予定」

メグミ「? よく、わかんない。今すぐじゃダメなの? 」

星謌「時期尚早。彼女は色々『特殊』でね。メグと同じ『INo,77』の対象者なんだけど、もう少し心身ともに整えてからでないと耐えられそうにないんだ。でも、身を守る手段が要るから、彼女にはボクから、プリキュアの力を授けたんだよ」

メグミ「え?あのコもプリキュアなの? 」

星謌「そだよ。紹介するから、ここに呼ぶね」(おーい!)

ピタ
???「……? 」キョロキョロ

星謌( 上、上!ビルの屋上!)

ヒョイ
???「…… 」サッ

ユウコ「あれ?気づいて見上げたけど、路地裏入っちゃった」

メグミ「建物の裏口から入るつもりかな? 」

星謌「さぁて、それはどうかな? 」

タンッタンッタンッ…

ユウコ「? 何か聴こえる…… 」

メグミ「あのコが入った路地裏から……?」

タタタタッターンックルクルクル、スタッ

???「ふう。こんにちは、星謌さん」

星謌「1週間ぶりだね。元気してた?」

???「はい、おかげさまで。上手いことやってます。そちらの二人は? 」

星謌「キミの先輩さ。プリキュアとしての、ね」

???「ああ、そうですか」

「初めまして。黒咲 瑠璃です」

メグミ「クロサキ ルリちゃん…… 」

瑠璃「まあ、もうすぐ一時的に忘れる名前なので、この世界用の『柊 柚子』って名前でもいいですよ」

ユウコ「名前を、忘れる?どういうこと?」

瑠璃「ごめんなさい、詳しいことは話せません。あまり話し過ぎると術が乱れるので」

メグミ「うーん、余計に気になるけど、訊かない方が良いなら無理には訊かないよ」

瑠璃「助かります」

メグミ「あたしたちが名乗るのはいいの?」

瑠璃「はい。プリキュアの記憶は封印しないことにしてるので」

メグミ「そっか。あたしはメグミ。プリキュアの名前は『キュアクルーエル』。こっちは親友の、」

ユウコ「ユウコです。プリキュアネームは『キュアホーネット』」

瑠璃「苗字を名乗らないってことは、このお二人が例の? 」

星謌「うん。カオスプリキュア」

ユウコ「あなた、瑠璃ちゃん、でいい?」

瑠璃「はい、好きに呼んで下さい」

ユウコ「瑠璃ちゃんも、わたしたちと同じ? 」

瑠璃「いえ、私はカオスじゃありません。今はまだ」

ユウコ「そっか…うん?星謌ちゃんが、力を授けたんだよね? 」

星謌「そだよ。言ったろ?彼女は特殊なんだ。なんせ、」

サイアークだーー!

四人「!!!! 」

星謌「やれやれ。もう少し待ってくれてもイイだろうに」

瑠璃「LDSの防衛網が破られてからの1週間、毎日現れてます。これまで手出し出来なかった埋め合わせのつもりなんですかね」

メグミ「手伝おうか? 」

星謌「いや、先ずは瑠璃一人で行ってもらおう。キツそうだったら加勢するから。必要無いだろけど」

瑠璃「これからお世話になる街ですし、勿論 闘いますよ。すぐ終わらせるので、少し待ってて下さい」

瑠璃「人前でだとチョイ照れるなぁ…コホン。でわ! 」

「プリキュア・クルリンミラー・チェンジ! 」

「蒼天に響く 救世の福音!キュアディザイア!!」

メグミ「キュアディザイア…… 」

星謌「『DESIRE=強い願い』って意味だね。瑠璃らしいよ」

瑠璃「…行って来ます。よっ」バサッ「はっ!」ドンッ!キィー……ン

メグミ「速っ… 」

ユウコ「あの翼、片一方だけ?しかも色が、なんて綺麗な蒼…… 」

星謌「空色だね。『隻翼の蒼天士』天使の翼は八枚羽が最強なんだけど、その一個下は一枚羽なんだ」

ユウコ「六枚羽じゃなくて?」

星謌「そもそも天使や魔族の翼ってのは、飛行用ではなく、かと言って飾りでもない。魂のランク『霊格』を示す『力の象徴』なんだ。
八枚羽が最強って言っても、六枚羽に進化する天使自体が稀だし、それ以上となると天界の歴史でも極僅か。その内の一人が、『堕天使ルシフェル』だ」

メグミ「ルシフェル…… 」

星謌「まその話は一旦置いといて。
六枚羽から八枚羽に進化する際、一度羽の数が最低限に減るんだ。真力を溜める為にね。
で。何らかのキッカケで魂に濃縮した真力が『超神聖』と呼ばれる爆発を起こすと、『神』の領域に至った『神天使』に進化する。
その前段階の一枚羽の天使を、『極天使』と呼ぶそうだよ」

ユウコ「それじゃあ、瑠璃ちゃんは… 」

星謌「さっき、面と向かって話して分かったろ?
彼女はそもそも『人間』じゃない。
正真正銘の『天士』なんだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はここまで。明日も午後から再開。

再開しむぁぁす!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サイアーーク!

制服組1「うわぁぁ! 」

ティオ「く!怯むなぁ!これ以上、舞網市を幻影帝国などの好きにさせるか!」

制服組2「応援が来るまで、サイアークをデュエルで足止めしろ! 」

幹部B「フン!小賢しい。人間ごときが我らに敵うと思うな!サイアークよ!一人残らず踏み潰してしまえ! 」

サイアーーーク!!

ティオ「!危ない!避けろー! 」

制服組3「う、うわぁぁぁ!! 」

キラッ…ヒュン
瑠璃「せいっ! 」←急降下キック

ザイア゛グ?!←ふっ飛ばされてビルに激突

幹部B「ぬ!現れたなプリキュア! 」

制服組1「キュアディザイア!」

制服組2「来てくれたのか! 」

瑠璃「…… 」チラ

ティオ「…!(赤馬社長から聞いている。任せてしまって構わないか?)」()内口パク

瑠璃「(コクリ)貴方たちは市民の避難を。できるだけ遠くに逃げて。巻き添え喰いたくなかったらね」

ピピッ
零児「総員、退避せよ。市民の避難誘導を最優先とする」←ディスクのモニタ越し

ティオ「全員、散開!逃げ遅れた市民を護れ!」

制服組一同「了解!!! 」

ザイ…サイア~ク……

幹部B「何をしている!さっさと立たんか!」

瑠璃「装備魔法『フリント』!ていっ! 」←札投げ

ガシーン!
サイアーーク!?

幹部B「ええい!そんな物振り解け!チョイアーク!手伝え! 」

チョイ~!

瑠璃「かかった…トラップ発動!
『グラビティ・バインド-超重力の網-』!」

ズシンッッ
ヂョイ~~!?ザイ゛ア゛ーグ!!

幹部B「ぬぐおぉぉう?! 」

瑠璃「ふんっ…ん? 」

零児「…… 」←社長室から眺めてる

ヒュッ
瑠璃「ハ~イ♪ 」

零児「ほどほどに頼むぞ 」

瑠璃「分かってますって。
装備魔法『サクリファイス・ソード』!」

メグミ「なに、あの闘い方…… 」

ユウコ「あれって、カードの力を現実に…? 」

星謌「そう。あれがディザイアの、てか瑠璃の能力。彼女は特殊なデュエルディスクさえ使わずに、カードの力を100%解放・行使できる」

メグミ「モンスターを呼び出したりも? 」

星謌「もちろん。そしてその力こそが、彼女が異世界に亡命する羽目になった最大要因でもある」

ユウコ「亡命!?あんな、わたしたちよりも年下の女の子が? 」

星謌「色々あってね。詳しいことは、2年後の、ボクらの仲間になった彼女に聞いてよ。かなりややこしくて、部外者のボクには説明は無理☆」

メグミ「…加勢は、要らなそうだね 」

星謌「彼女、ボクが初変身を見届けた直後の初陣から強くてね。ボクの知ってるプリキュアの中でもトップクラス。いきなりカオスプリキュア並の戦闘力を発揮してたからねぇ」

瑠璃「さって、待たせちゃ悪いし、ささっと終わらせますか」

幹部B「ぬ!ぐ!体が、重い!全く動け、ん!? 」

サイ?チョ~イ?

幹部B「何だ、重さが消えた…っ! 」バッ

すと
瑠璃「…… 」チャキ…

幹部B「キュアディザイア、貴様ァ…拘束を解いたこと後悔するがいい。殺れ!チョイアーク! 」

チョイチョイチョ~イ!チョイ~~!!

ス…←手をかざした
瑠璃「アンタらごとき、剣を振るうまでも無い」
キィ…ン

幹部B「!マズイ、あの眼の光は!避けろチョイ、」

チョイ!?チョチョチョ~イ!チョイチョイ~!!

幹部B「遅かったか…馬鹿者どもめ!! 」

瑠璃「潰れろ…… 」グッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
路地裏
グシャァァァッ……ヂョイーー!ヂョギグギャァァァ……

制服組1「?!なんだぁ? 」

ティオ「振り向くな見るな一生のトラウマになるぞ」

制服組2「はあ?なんだよそれどういう…… 」

ティオ「訊くな!訊いてくれるな頼むから」ガクガク…

制服組1「お、おいティオ? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
メグミ「うっわ…チョイアークたちがただの赤黒い塊に…あれってサイコキネシス? 」

星謌「ナルホド、どおりで…… 」

ユウコ「星謌ちゃん? 」

星謌「瑠璃、彼女さ。ちょっと眼つき悪かったろ?」

ユウコ「あー、うん。少し」

星謌「眼つき悪いのは元からだけどさ、一週間前よりも更に悪くなってた。こんな闘い方で毎日ヤってたら、そりゃそうなるよ」

「人殺しの眼に磨きかかるのも当然だ」


グシャ…バギ…ミシメキ…ドスン

幹部B「……チョイアークは、幻影帝国に忠誠を誓ったただの人間。不幸のエネルギーで編んだスーツで力を得ているに過ぎん。
それを知っていながら、ここまでヤるとは…どちらが悪魔か分からん、な゛…… 」←胴体真っ二つ

瑠璃「アンタ、もう飽きた。消えろ」

瑠璃
「プリキュア・ヘヴンライツ・ジャッジメント」

メグミ「あ?空から光が」

ドオォォォォッ!!!!!

幹部B「グァァァァァァァァァ!!!」

ユウコ「キャア?! 」

星謌「ッ、天空から降りる光の柱。前見たときより更に大きくなってる」

サイ…アーー……
幹部B「か…ア…… 」

ユウコ「コレって、浄化なの? 」

メグミ「なんか溶けて、いや砂になってってる? 」

星謌「破壊の本質は『分解』。原子よりも小さい素粒子レベルで分解されてるんだよ。形を奪えば、事は足りるから」

瑠璃「はい終わりっと。もうそろそろ打ち止めにして欲しいなぁ。記憶改竄に集中したいし…… 」

星謌(それなら心配要らないよ。もう4、5日で戦争終わるから)

瑠璃「!(テレパシー?)」

星謌(近くに公園があったろ?そこで落ち合おう)

瑠璃(分かりました。すぐ行きます)

瑠璃「…… 」チラ

零児「…… 」コクリ

ニコ
瑠璃「またね… 」バイバイ

10分後 公園

瑠璃「~♪ 」ペロペロ

ユウコ「アイスクリームが好きなの? 」

瑠璃「ん、、ていうか、元居た世界ではまず食べられなかったから、戦闘後はつい手が伸びちゃって」エヘヘ

星謌「都市機能はおろか国家そのものが壊滅していたら、そりゃあマトモな物食べられないよね」

瑠璃「特に私は、この力の所為で実の親にさえ捨てられましたから。兄さんがいなかったら、とっくに野垂れ死んでましたよ」

メグミ「お兄さんがいるの? 」

瑠璃「はい。と言っても、元の世界に残して来てしまったので、実質生き別れ状態ですけど」

メグミ「あ、そうなんだ。ごめん… 」

瑠璃「あ、いえ、気にしないでください。元々こうなったのは、私のミスですし。今は離れていても、そのうち会えますから」

ユウコ「随分前向きね。よく分からないけど、あなたにとってこの世界、この街は未知の場所でしょ?身寄りも無く知り合いもいない。普通に生活するのでも大変なのに、その上プリキュアまで…… 」

瑠璃「生きるのが大変っていうのは前からです。むしろ、基本的に平和なこの世界のが楽ですよ。家族も仲間もいないけど、替わりに自分のことに集中できますし」

ユウコ「本当に前向き。とても年下だなんて思えない」

瑠璃「お二人って、いくつ? 」

メグミ「あたしたち二人とも、14だけど。あ、あたしは数えでね」

瑠璃「あ、だったら私の方が年上です。私、本当は16なので 」

メグユウ「「え?!」」

メグミ「え?え?あ、小柄、なの?」

瑠璃「いえ違くて。
私、元の世界でデュエルに負けてカードに封印されたんです。
なんとか隙をついて逃げ出して、世界を移動して追っ手を振り切ったのは良かったんだけど、無理しすぎてエネルギー不足。
逃げる時に半精霊化した体を生体に戻したら、足りないエネルギーの分 幼退化しちゃって。で、この姿に」

ユウコ「…本当に大変なのね」

瑠璃「あはは…まあ一応見た目が変わってるから、見つかり難いっていうメリットはありますけど」

メグミ「もしかして、さっき言ってた時期尚早って… 」

星謌「うん、半分はコレ。もう半分は、この世界に紛れるための記憶処理が終わって、しばらくしてからじゃないと精神が耐えられないから」

瑠璃「兄さんやユートが捜しに来てくれるのがいつになるか分からないし、待ってる間にまた捕まったら逃げた意味無いし。
一時的にでも、ユートや兄さんのこと忘れるのはやっぱり辛い。皆戦ってるのに、一人で平穏に暮らすことに後ろめたさもある。
でも、私が捕まったら元も子もないし、信じてるから。必ずまた逢える。見つけ出してくれるって。
ユートと兄さんなら、必ず… 」

ユウコ「瑠璃ちゃん…… 」

星謌「本来の歴史では、瑠璃がプリキュアになるなんて決して無かった。LDSが、戦争終結まで幻影帝国の侵攻を食い止めるハズだった。
でも、瑠璃の運命をリンクジョーカーが『ナイトメア化』したことで、この舞網市全体の運命にまで歪みが生じた。
それを是正する為に、本来の干渉時点より2年も早い今この時間点から、ボクらの力や存在に触れてもらうことにしたんだ」

瑠璃「元々、闘うことには慣れてますし、単純に体を動かすのも好きなので。
それに、プリキュアになったことで、『本来の歴史』では得られなかったであろう『後ろ盾』も、割に簡単に得られましたから」

星謌「ああ、それはボクも驚いた。まさかたった一週間で『赤馬零児』の寵愛を得ているなんて…… 」

瑠璃「寵愛って、そんなんじゃないですよ。ただ、情報や技術提供をして、少し気に入ってもらったってだけです。
ありがたいことにはかわりないけどね」

星謌「ま、何はともあれ。色々平気そうで安心したよ。初陣を見届けて、それっきりだったからね。
プリキュアの記憶は、封印しないんだろ?もし困ったことがあれば、この二人を頼ると良いよ。それ伝えたくて来たんだ。様子見も兼ねてね」

瑠璃「はい。その時は、よろしくお願いします」

メグミ「こちらこそ。しばらく後になるけど、いつか仲間になるんだもん。いつでも来て」

ユウコ「お腹が空いたら是非お弁当屋『おおもりごはん』へ。たっくさんご馳走するよ!」

瑠璃「はい。機会があれば是非!」

星謌「それじゃ、ボクらもう行くね。また2年後に」

瑠璃「楽しみにしてます。その時は、デュエルしましょうね! 」

メグミ「じゃあまたね」

ユウコ「元気でね」

瑠璃「はい、また」

描写忘れてたけど、公園で合流した時点で全員変身解除してます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ぴかりヶ丘 大使館
メグミ「たっだいま~! 」

誠司「あ!めぐみ! 」

ひめ「どこ寄り道してたのよぅ~!? 」

メグミ「ゴメンゴメン、ちょっとね」

いおな「変なドラゴンが現れた直後にテレビの映像が途切れて、復活したら街は元通り、めぐみ たちはいないしで、心配したのよ?1時間も連絡すら無いし」

誠司「ちゃんと説明してもらうからな、皇姫」

星謌「ハイハイ」


いおな「つまり、その瑠璃ってコの様子を見るのに付き合っていたのね」

星謌「そ。メグとユウコは4、5日したらヴァリアン本部に来てもらうけど、号と装備貰ったらすぐこの世界に戻るから、頼れる相手として紹介したかったんだ」

誠司「昨日は、ヴァリアン本部とやらに行ったらしばらく帰れないとか言ってなかったか? 」

星謌「うん、普通はね。時期的な特例だよ」

ひめ「どういうこと? 」

星謌「瑠璃もメグと同じ『INo,77』の対象者なんだけど、同時並行でもう一人、そして最後の対象者も実行することになったんだ。そのコも、この世界の住民だからね」

星謌「並行世界ってのは、大体にして時間の流れにズレがある。ボクら『ヴァリアンの使徒』はあちこちの世界に散らばってるから、互いに時間感覚がバラバラなんだ。
ついさっき電話で話した相手からまたかかってきた。今度はさっきから50年後の時点からから。というように、過去・現在・未来が度々混線する。『時間』の絡む問題は、簡単には説明できない」

いおな「つまり? 」

星謌「メグとユウコにも、最後の一人への救済に参加してもらいたい。決行は、この世界内での時間で約2年後。
他世界への派遣任務を与えて捕まえ難くするより、この世界で『掃討任務』をこなしてもらった方が後で楽に召集できる。
よって、二人には実質2年間。この世界に留まってもらう。ごめんね勝手言って」

メグミ「あ、ううん。自分の世界に永く居られるなら、嬉しいから良いよ。ね」

ユウコ「うん。掃討任務っていうのは、例の? 」

星謌「そ、『邪魂狩り』。後でリスト渡すから、好きに殺っちゃって」

ユウコ「分かった」

誠司「なんだよ、『ジャコン狩り』って? 」

星謌「ちょっとした小遣い稼ぎさ。仲間になったら教えるよ」

誠司「……っ」

いおな「ゆうこ、訊いて良いかしら?」

ユウコ「どうして星謌ちゃんの仲間になったか? 」

いおな「…… 」コクッ

ユウコ「学校でね、メグミちゃんとお話したの」

いおな「それはさっき聞いたわ。話を聞いて、気が変わったって。どうして?何を話して、何を聞いたの?」

ユウコ「知りたい? 」

いおな「?…ええ、是非」

ユウコ「そう。それじゃあ、」スッ

[ vision ][ Now!]

ユウコ「『観せて』あげる」

いおな「え?…ッ!! 」

ユウコ「わたしも、同じモノを観せてもらった。そして思い出したの。自分のコト」

「イオナちゃん。感想は? 」

イオナ「……そうね。そうよね。こんなの観たら、思い出したら、そっちに就て当然よね…… 」

メグミ「……案外あっさりだったね」

ユウコ「当然よ。イオナちゃんだって、本質はわたしたちと同じなんだから。全てを思い出せば、偽りの心なんて消えて無くなるわよ」

誠司「お、おい氷川、大丈夫か? 」

イオナ「ええ、大丈夫。ありがとう。そしてごめんなさい、相楽君」

誠司「へ? 」

イオナ「何もかも思い出した。間違っていたのは、さっきまでの私だった。絶対に忘れてはいけないコトを、失くしてはならない想いを。ずっと忘れていたのは、私たちの方だったのよ」

誠司「おい氷川?どうしたんだよ? 」

「『幸運の女神フォルトゥナ』」

イオナ「…!」ピクッ

星謌「それがキミの真名。神代最後の大戦後、転生の道を選んだのは49柱の『初代プリキュア』だけじゃない。
『天帝ゼウス』『天空王ウラノス』『始まりの女神ガイア』『最強の戦女神アテナ』『常闇の女皇ペルセフォネ』他にも大勢の『大神』が、人の世を人として見る為 転生をした」

イオナ「…大神だけじゃない。従神や天使たちも、沢山…… 」

星謌「キミもその一人だろう?フォルトゥナ」

イオナ「……ええ、そうよ」

誠司「?!氷川…? 」

ひめ「いおな……? 」

星謌「永い永い、あまりにも永過ぎる時間の中で。幾度となく転生を繰り返し、力も記憶も、想いさえも、次第に薄れていってしまった」

メグミ「でも、完全に消えてはいなかった。だからこそ、限りなく鮮明な映像を観て、魂が全てを思い出した」

ユウコ「わたしたちより先に目覚めた皆も、まだ力を完全に取り戻した訳じゃない」

イオナ「そうね。だけどそれは、大した問題じゃ無いわ。本当に思い出さなきゃいけないコトは、完全に取り戻したもの」スッ

ひめ「あ、フォーチュンピアノ…まさか?! 」

グ…ピシ…パキャァァ…ン……

誠司「な、氷川!? 」

イオナ「星謌、さん。メグミとユウコに渡した道具、まだ持ってるわよね? 」

星謌「『千里眼』で見通してるなら、わざわざ訊かなくていいと思うけど。ハイこれ」コト…

イオナ「ありがとう。名はなんて言ったかしら?」

星謌「『EXドライヴァーARTs CORE』
『ARTs』はボクらヴァリアン流の呼び方で『真法』てか『秘術』全般の総称だね」

メグミ「気になってたんだけど、『EX(イクス)』ってどういう意味?」

星謌「『EXtra』『EXtreme』『EXtension』『EXtermination』」

ユウコ「三つ目までは判るけど、四つ目、」

星謌「『殲滅』」

メグユウ「「あ~~」」

星謌「ちなみにもう一つのちょっとゴツい方は、
『EXドライヴァーARMORED CORE』
って言って、どちらもヴァリアンとは違う異世界の戦士の力や装具を、『ヴァリアン』の力で強化・改良を施して造られた。その際のモチーフってか、改造テーマがさっきの四つで、その頭二文字がいずれも『EX』だったから読みのアレンジも加えて『イクスドライヴァー』と名付けられたんだ」

メグミ「ついでだからも一つ訊いていい?
昨日 星謌ちゃんが、ファントムを飲み込んだ時。その前に着けてたのとは全然違う鎧を着けたよね?
今思い返すと、あの赤黒い鎧からは『リンクジョーカー』と同じ感じを受けたんだけど、アレって? 」

スッ
星謌「コレだろ?コレは『ヴァニティクロス』正に、ボクらの最大の敵『リンクジョーカー』の力を宿した『クロス』だ」

イオナ「世界を滅ぼす敵の力を、利用していると言うの? 」

星謌「そんな事言って、解ってるんだろう?
力そのものに善悪は無い。結局は扱う者の想い、意志次第だと」

イオナ「…どうやってヤツらの力を? 」

星謌「話すと長いんだよねぇ」

星謌「『先導アイチ』って少年がいてね。なんやかんやあって、そのコが地球侵略を始めた『リンクジョーカー』を撃退した。
でも、それが原因で今度はアイチクンの体内ー厳密には魂ーに『リンクジョーカー』の種子が植え付けられた」

星謌「アイチクンは自分の存在ごと『リンクジョーカー』を永久に封印しようとして、一時は上手くいっていた。
でも、自らの封印を守護するようアイチクン自身が選んだ5人の番人の一人が、『リンクジョーカー』の圧倒的な力に魅せられ封印を解いてしまった」

星謌「正史ではその後、アイチクンは仲間の協力で『リンクジョーカー』の種子を小さな欠片として地球中にバラ撒き、破壊や侵略の意志を極限まで弱めた新たな世界の一部とすることで処理に成功した」

星謌「だけど、アイチクンたちは大きな勘違いをしていた。『リンクジョーカー』は、彼らが倒した分だけじゃない。
アイチクンらが打ち倒したのは、『リンクジョーカー』のホンの極一部。一個師団、いや一個大隊 程度だっただろう。一つの部隊が壊滅したから、別の部隊が違うやり方で攻め始めた」

ユウコ「それってやっぱり…… 」

星謌「そう。『運命の改竄』だ。
歪められた世界では、最終的にアイチクン自身が『リンクジョーカー』に魅了され、自らの意思で反転し世界を滅ぼさんとした」

星謌「そうなる直前。まだアイチクンが正気でいる時間点に、ヴァリアンのボス『プライム』が、アイチクンに闘いを挑んだ。
その世界での闘り方でアイチクンを倒せば、リンクジョーカーの種子は勝者の魂へと乗り換えるからね」

星謌「プライムは、ヴァリアンの力で創造した『必ず勝つ』デッキーゲームバランスその他諸々を完全無視した、そのファイトでしか使えないどチートデッキーで、その世界最強のアイチクンに何もさせずに瞬殺した」

星謌「で、アイチクンの魂を見限りプライムへ移ろうとしたリンクジョーカーの種子をあらかじめ用意していた専用の道具で逆に捕らえ、それをヴァリアンに持ち帰り徹底的に調べ上げて、リンクジョーカーの力を安全かつほぼ完全に行使できる『虚無武装(ヴァニティクロス)』を造り上げたーーてわけ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はここまで。明日と明後日休筆。
月曜の午後再開。

遅くなりました。すみません。
次レスから再開します。

…ID同じハズなのに何故こっちは誰も何も言わないのか…誰も見てないだけ?
ドMではないから叩かれるのは嫌だが、無反応ってのも悲しい…
兎に角、本編。ちょい待ち。

メグミ「リンクジョーカーの力…本当に安全なの?」

星謌「負担は大きいし、『使徒』でも特に強い力を持ってなきゃ扱いこなせないけどね。その分、リンクジョーカーの『呪縛』を完全な形で使えるし、『ネオ・ヴァリアン』発足前にボクやプライムがやってた、『ワザと虚無の力を享け、無理矢理制御する』って方法よりかは、遥かに安全だよ」

イオナ「そんな、そこまで危険なコトまでやってたの、貴方たち…私たちが、忘れていたばかりに… 」

星謌「危険は否定できないけど、ボクらが勝手にやってたコトだ。イオナが気に病む必要は無いよ」

星謌「それはそうと、イオナ。もうそろそろ平気かい?『覚醒眩み』」

イオナ「あ、ええ。もう、大丈夫よ」

誠司「なんだよ、『覚醒眩み』って? 」

メグミ「立ち眩みみたいなものだよ。忘れ、ううん『眠ってた』記憶を急に呼び覚したから、暫く頭痛が出たりするんだ」

イオナ「動けないほどではないんだけど…… 」

星謌「無理に動かす理由も無いから、話ししながら治まるの待ってたんだよ。ユウコは?聞くまでも無いだろうけど、もう立ち直ってるよね?」

ユウコ「ええ、そうね…瑠璃ちゃんの戦い方見てたら、まだマシかな~って。あはは…… 」

星謌「ま、確かに。元いた世界で『生きる為に奪う』って生活が当たり前だっただけあって、容赦無しだったもんねぇ。相手がチョイアークだから、余計にね」

誠司「チョイアークが中身人間って、本当なのか?」

星謌「ホントだよ~。そもそも、メグの『ナイトメア』って、連中が土壌みたいなもんだし」

誠司「…… 」

メグミ「星謌ちゃん、この後ってどうするの?」

星謌「ん~?そうだねー………じゃあ次は、『怪獣退治』でもやろっか?」

誠司「は?怪獣、」

…ドォーー……ン………

ひめ「……なに今の?」

ユウコ「遠くでドーン、て……」

星謌「テレビ オン」パチンッ

誠司「指鳴らして点けるなよ…」

星謌「リモコンめんどい。それよか、見てみなよ」

メグミ「…ゴジラみたいなのが暴れてる……」

星謌「『宇宙強獣』。地球以外にも、生き物が生息する惑星は幾つもある。宇宙空間を漂流する小惑星で偶発的に発生・進化する場合もあるし、その他様々な要因・原因で地球では考えられないような生物が、生まれては消えを繰り返してる」

ユウコ「アレは、どのパターン?」

星謌「暴れ方を観るに、宇宙を旅する群れから離れて地球に降りた『迷子さん』だね。不安で混乱してる」

誠司「『迷子さん』って、どうすんだよ、オイ!」

星謌「ボクらヴァリアンには、基本的に『規則』ってものがない。邪魔だし、個々の能力が優れているから必要も無い。性格は千差万別だけど、共通目的がはっきりしてるから放っといても必要に応じて結束する」

星謌「そんなボクらの数少ない『ルール』の一つ。『強獣は殺さない』」

誠司「は?」

星謌「敵が送り込んだ『邪悪獣』とかなら、問答無用で殺るけど。あの子みたいな『悪意の無い迷子さん』は、下手に殺したら後が大変だし、何より可哀想だ。なーんにも悪いコトしてないのにさ」

誠司「言ってることは解るけど、放っといたら街が!」

星謌「別に放っとくなんて言ってない。殺さない程度の攻撃で脅かして、正気に戻ったら宇宙に帰す」

誠司「だったら早く…!」

星謌「まだお茶が…… 」

誠司「ハアァ!?」

星謌「冗談だよ。みんな、行くよ」

今日はここまで。短くてスマヌ。
明日はもう一つの方を優先するので、再開は未定。遅くても土曜。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom