菫「死神さん」 (125)


12月23日。


白糸台高校学生寮の一室。



すぅぅぅぅ―――――

?「迎えに来たよ」



菫「えっ!?」びくっ






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410613859



菫「って!!?何だと思ったら渋谷か?いきなり後ろから声を掛けられたから、驚いたじゃないか……」

ドキドキ…


?「……………」


菫「それに人の部屋に断りもなく入るのは、些か礼節を欠いているぞ」


?「……………」


菫「どうした渋谷?何を黙っている。何か私に言う事があるのではないか?」


?「私は渋谷と云う者ではない」


 



菫「はっ?何を言っているんだ?お前はどう見ても、白糸台高校2年麻雀部の渋谷 尭深にしか見えないが?」

尭深?「………………」

菫「………確かに黒のスーツ姿で、いつものお前の出で立ちではないが……容姿はどう見ても渋谷 尭深そのものだろうが?」


尭深?「だから私はその渋谷 尭深ではない。それに私をよく見てみろ」

菫「よく見ろって…どう見ても渋谷にしかm―――――――!!!?」ビクッ

菫「……ほ…ほんの少しだが……身体が透けている……?」

尭深「そうだ。これで私が違う者であると分かっただろう?」

菫「では…アナタは一体何者なんだ……?というか人なのか?もしかしてCGとかいうやつか?」


尭深?「どちらも違う―――――」




尭深?「私は死神№428号――――――」




死神№428号「私は……君の魂を霊界に迎えに来た者だ―――――――」




 



菫「はっ!?ど…どういう事なんだ…?その……ん?済まない。そう言えばアナタの事をなんて呼べばいいのかな?」

死神№428号「私の事か?死神でも、№428号でも…何だったらその私に似ているという、渋谷 尭深でもいい」

菫「そうか……なら―――――」



菫「死神さん」



菫「―――――いや…それだと少し怖いな…よしいっその事、『尭深さん』と呼ばせてもらおうか」

尭深(死神さん)「分った……君がそう言うのならそれでいい」

菫「それでh―――――」

尭深(死神さん)「その前に…その尭深と言う者も、この建物に住んでいるのか?」

菫「ああ…この部屋の一つ上の階に住んでいる」

尭深(死神さん)「そうか……――――――」


すぅぅ………


菫(消えた!?)はっ

菫「おっおい待てっ――――――」



 


…。

すぅぅぅ…

尭深(死神さん)「驚いた…確かに私の合わせ鏡の様な容姿だったな」

菫「やっぱり…見に行ってたのか。おい…渋谷には何もしてないだろうな?」

尭深(死神さん)「心配するな。危害は何も与えていない」

菫「そうか。それならいいのだが……いや彼女の部屋を無断で除いただけで、充分プライバシーの侵害になると思うのだが」

尭深(死神さん)「細かい事は気にするな。それに私の姿が見えるのは私に近しい者か、【君の様】なものだけだ」

菫「……そうか」



尭深(死神さん)「流石にいきなりの事で混乱しているだろうから。それでは、今回の件について説明させてもらおう―――――」



 



――――――。


菫「それは…本当なのか?」


尭深(死神さん)「ああ。君は…弘世 菫の天数はあと14日で止まる」


尭深(死神さん)「これは決定事項だ」


菫「14日…ちょうど始業式の前日か……アナタの言う事が本当なら、私は高校最期の三学期を迎える事が出来ないのか……」

尭深(死神さん)「そういう事になるな…その間、やり残した事をしてもいいし、何もせず普段通りに過ごしてもいいだろう」


尭深(死神さん)「第三者に明確な危害を与える行動以外なら、何をしようと構わない。私がいう事ではないが……」

菫「もしその第三者に危害を加えようとしたらどうするんだ?」


尭深(死神さん)「その時は、少し早いが私の役目を執行させてもらう。その許可は得ている」

菫「そうか……あと、私はどういう最期を迎えるんだ?病死か、それとも……」

尭深(死神さん)「その時は―――――」

すぅぅっ―――


菫「!?お…大鎌が……突然出てきた……?」




尭深(死神さん)「この【収穫の大鎌(ハーベストサイズ)】で魂を刈らせてもらう事になる」



 



菫(…………ハーベスト……)うーむ

尭深(死神さん)「見た目はこんなだが、大丈夫だ。苦痛は全く無いし、一瞬で終わる。魂を収穫された事に気付かない位に……」

尭深(死神さん)「死因としては、原因不明の突然死になるだろう…強いて言えば痛みの無い心臓発作と言うところだろう」

菫(……前にこんな設定の漫画を、読んだ気がするな……)うーむ

菫「そうか…しかし――――」

尭深(死神さん)「しかし…何だ?」

菫「いや、こんなところも後輩に似ているなと思ってな」ふふ…

尭深(死神さん)「?」


菫「あと…もう一ついいかな?」

尭深(死神さん)「ああ構わない。私に答えられる事なら何でも答えよう」

菫「もし私が死ぬ事を拒否して、予定の日までに死ななかったらどうなるんだ?」

尭深(死神さん)「その時は、私は君の担当を外れる。その後――――」

菫「もしかして助かるの―――――」



尭深(死神さん)「君は。ファイナルデッドという映画のシリーズを知ってるかな?」



菫「済みませんでしたーーー!!!」



 



尭深(死神さん)「それにしても、妙に落ち着いているな。自身の死を告げられたのであれば、もっと取り乱したりするものだが」

菫「正直に言って…まだ全然実感がわかないんだ。身体自身は健康だと思うし、それにあまり死について深く考えた事もないしな」

尭深(死神さん)「そうかそれに、私の事が信じられないというのもあるだろうな」

菫「それだったらいいのだが……」

尭深「違うのか?」

菫「……私には、アナタの表情(かお)と目をみて、私にはアナタが嘘を吐いてる様には思えないんだ」


尭深(死神さん)「…………そうか…確かに君みたいな者もいたな……しかし…私についても何とも思わないのか?君からすれば幽霊、妖怪の類いみたいなものだろうに」

菫「アナタはさっきも言った様に、私の後輩に似ているんだ]

菫「だから、その…親近感みたいのが湧いて、あまり驚いたり怖かったりしないのかもしれないな」

尭深(死神さん)「……確かに私のあの娘はいろいろ似ている様だしな……」ふむ


 
――。

尭深(死神さん)「――――それで君は、残された時間をどうするんだ?」
菫「…………そうだな……」




――――。


通話中。

菫「そうですか。それでしたら、はい。それでお願いします。では」

ピッ


尭深(死神さん)「一通り説明したので私は消える。消えるといっても常に君の近くにいるので、用のある時に呼んでくれればいい」

菫「……………」

尭深(死神さん)「心配しなくても君の私的な時間に、私は干渉しないし…すぐに慣れる」

菫「そうか…分った」


尭深(死神さん)「では一旦、私は消えよう――――――」

すぅぅ……


菫「…………さて―――――――」



 



12月24日。



淡「では。これより前虎姫クリスマス会をはじめマース!!」

パァン!!


照「…………ケーキ美味しい」もぐもぐ

誠子「それにしても…まさか全員揃うとは…てっきり何人かは抜けるかと思っていたんだけど……」

尭深「…………お茶おいしい」ずず…


淡「私は亦野先輩…もとい亦野部長が、私と二人っきりが良いって言ってくれたら。そーしたんだけどなー?」しれっ

誠子「おまっ…//////大星。そういう事は冗談でもやめろよ?//////」かぁぁ

淡「冗談じゃないもん……」ぼそっ

誠子「ん?何か言ったか?」

淡「何も言ってませーん…………………ヘタレ……」

誠子「おいっ今度はしっかり聞こえたぞ?」

淡「ふーんだ」ぷいっ


菫「ふふ…亦野が部長の新体制になって、この五人で集まるのは久し振りだが、こうしてたまに集まるのも、なかなかいいものだな」

照「……ケーキおいしい」もぐもぐ


 


誠子「宮永先輩はプロ入りが決定して、弘世先輩も、もう推薦で大学に合格したんですから、もう少し麻雀部に顔を出してくれてもいいんですよ?」

菫「私と照はもう引退した身だからな。私達がいない方が、部長(おまえ)にとってもやり易いいだろう?」

誠子「それは…正直に言わせて貰えばそうですけど……でも、たまにだったらいいですよ?」


菫「…………そうか。では行けたら、顔を出させて貰おうかな」

誠子「はい。お待ちしてます」

照「…………ケーキ美味しい」もぐもぐ


尭深「…………………」

淡「もー。みんなそんな堅っ苦しい事言ってないで、今日は楽しみましょうよ!!」

誠子「別に堅っ苦しい程でもない気もするけど。新エースもそういっている事ですし、今夜は楽しみましょう!では改めて―――――」


誠子・尭深・淡・菫・照「「「「「かんぱーい!!」」」」」



 



―――――。


尭深「……………」じ…


菫「ん?どうした渋谷?私の顔に何か付いてるか?」

尭深「いえ…そうではないのですが……何処となく、浮かない顔をしてる気がして…もしかして何かあったんですか?」

菫「!!…………いや…特にないよ」

尭深「そうですか…ならいいのですけど」

菫(鋭いな…顔に出している心算はないのだが……)

尭深「それで先輩は、明日からご実家に帰られるのですか?」

菫「いや…その前にどうしても一度行ってみたい所があってな、そこに行ってから実家に帰ろうかと思っている」

尭深「そうですか……」ずず…


菫「そう言えば照。お前はどうするんだ?実家に帰ったりするのか?」

照「うん。年末年始は実家に帰って、お父さんや妹といろいろ話し合おうと思ってる」

菫「そうだな。プロになったら中々帰る訳にもいかなくなるだろうしな。時間はあっても好機を逃したら、もう元に戻らなくなる事もあるしな」

照「うん。私もそう思ってる」

菫「お節介かも知れないが、お前が妹さんとの関係が元に戻ることを祈ってるよ」

照「うん。ありがとう菫」



 


淡「ねーどうですか?亦野センパイっ。ほらほらミニスカ淡サンタですよー?」

誠子「ん?お前何時の間に着替えてたんだ?」

淡「むー何ですかその反応は、せっかく先輩の為に着替えてきたのに……」

誠子「ああ。すまんすまん。うん似合ってる。とっても可愛いよ」にこ

淡「!!えへへーそうですかー。世界一可愛いよ!ですかー////////」テレテレ…

誠子「いや…そこまでは言ってないけどな」


菫「……いつの間にあの二人は、あんなに仲が良くなったんだ?」

尭深「インターハイの後ですね。先輩たちが引退した直後くらいからだと思います」

菫「そうなのか……」

照「ケーキ美味しい」もぐもぐ

菫「あの二人にはまだ沢山の時間がある。だが卒業したら其々の道を往くんだ。その限られた時間の中で出来る事、やりたい事をしていきたいものだな……」

尭深「……そうですね」

照「菫……妙に達観したこと言うね」もぐもぐ


菫「ふふ…そうだな。少々分った様な口を叩いてしまったな。だが。ケーキを食べながら喋るのはやめろ。そしてケーキはしまえ。てる太郎」

照「!?」

菫「ふふ…冗談だよ」

照「菫が冗談云うなんて…………何か起こる前兆なんじゃ……しかも意味不明且つ面白くない」

菫「私もたまには冗談くらい言うさ。そして、意味不明且つ面白くないは余計だ。てる太郎」



尭深「………………」



 



―――――。


誠子「それでは宴も竹縄では御座いますが、これにて先代虎姫のクリスマスパーティーを終わりたいと思います」


誠子「それでは皆さん。良いお年を!!」


菫・照・尭深・淡「「「「よいお年を!!!」」」


照「じゃあ菫。また来年」

菫「ああ。照も元気でな。プロの世界でも、周りを照らす様な存在になってくれよ」

照「?何か今の云い方、今生の別れみたい。しかも上手い事言ってない」

菫「はは…すまん。まだ3学期もあるというのに、もう卒業したかの様な気分になってしまっているな」

照「変な菫…………」



 


尭深「……弘世先輩」

菫「ん?どうした渋谷」

尭深「やっぱり今日の先輩はどこかおかしいです。何かあって、もし私に出来る事が有れば、どんな事でも言って下さいませんか?」

菫「そうか…確かに今の私は少しおかしいかも知れないな。心配かけて済まない。どうも最後だから少々感傷的になってしまったらしい」

尭深「先輩……」

菫「だが…大丈夫だ。それよりも、お前も亦野と同様に来年は虎姫を、白糸台麻雀部を引っ張っていく立場になる。期待しているぞ」

尭深「はい。頑張ります……」

菫「ああ。よろしく頼む」

尭深「あの…あともう一ついいですか?」

菫「ん?まだ何かあるのか」

尭深「先程、どこかに行かれるって言ってましたけど……」

菫「ああ。進路も決まっているし、少し旅をしてみようと思っているんだ」

尭深「旅…ですか……?」

菫「ああ。急に思い付いてな。そう思ったら、どうしても行ってみたくなったんだよ」

尭深「そうなんですか……いい旅行になるといいですね」


菫「有り難う。それではな渋谷。よいお年を」


尭深「先輩も…よいお年を……」




 

こんな感じのお話で
書き込みも少し不定期気味になると思いますが
よろしくお願いします

それでは。




12月25日。


ガタンゴトン…


菫「尭深さん。いるのだろう?ちょっと出てきてくれないかな」


すぅぅ……

尭深(死神さん)「どうした?何か用なのか?」


菫「いや…用と言う訳ではないのだが、流石に少々暇でな。今この車両には私しかいないから、丁度、話し相手にいいと思ったんだ」

尭深(死神さん)「そうか…確かに他に乗客がいた時に私と話していたら、独り言を言っている様にしか見えないからな」

菫「そうだな。駅でアナタと話していた時の、ほかの乗客の反応を見て、本当に他人には見えないという事が分かったし……」

尭深(死神さん)「私は本来【見えざる者】であるからな。それに人間にとって、私の様な存在は見えないに越した事はない」

菫「…………そうだな。なあ…尭深さん。やはり私は、アナタの言った日に死ぬ事になるかな…急な変更とかはないのか?」

尭深(死神さん)「残念だが、変更はない。君の命日は変わらない…もう決まった事だ」

菫「…………そうか…やはりな。いや…済まない。変な事を聞いてしまったな」

尭深(死神さん)「………………」


――――――

尭深(死神さん)「……それにしても随分と遠い所まで来たものだな」

菫「ああ。それでも、どうしても、ここに一度来てみたかったんだ―――――」



 



――――――。


ざっ…

菫「やっと着いたな……」ふぅ…



玄関。


菫「あの…済みません……」

従業員「はい。いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」

菫「あの…予約していた弘世です」


従業員「弘世様…………はい。承っております」






従業員「いらっしゃいませ!ようこそ松実館へ!!」





菫「お世話になります」ぺこり



 



―――――。


仲居「こちらのお部屋になります」

菫「分りました。ありがとうございます」

仲居「ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」



――。


菫「………ふむ…勢いで来てしまったが。さて…どうしたものか」

菫「取り敢えずお茶でも飲むか……ん?尭深さんいるのか?」


すぅぅ

尭深(死神さん)「勿論だ。それでどうしたんだ?」


菫「いや…もしかしたら、尭深さんはお茶を淹れるのが上手いのかと思って……」

尭深(死神さん)「?何を言っているのかよく分からんな。第一、そんなティーバッグにポットの湯を淹れるだけなのに、上手いも下手も無いだろう」

菫「はは…そういえばそうだ」

尭深(死神さん)「大体君はこんな遠くまで何w――――」



こんこん


?「お客様。失礼させて頂いてもよろしいでしょうか?」

菫「……どうぞ」



 



がちゃ。


?「失礼します」

菫「!!!」


?「やっぱり…今日の宿泊名簿に載っていた弘世さんって、白糸台の弘世さんだったんですね」

菫「ああ……」


?「覚えてますか?お久しぶりです。当旅館でお手伝いをさせて頂いている。松実 宥と申します」


菫「ああ。もちろん覚えていたさ」にこ



 



――――。


宥「それにしても本当にびっくりしました。本当にあの弘世さんだったなんて……」

菫「私もつい一昨日まではここに来るなんて、思いもしなかったよ……」

宥「?確かに…ご予約も一昨日の夜だったみたいですし…でもどうして……ってそんな事よりも…大丈夫なんですか?こんな時期にご旅行なんて」

菫「こんな時期?ああ…受験とかか……」

宥「ええ。そうです」

菫「有り難い事に、私はもう終わっているんだ。推薦で大学に合格したんだよ」

宥「そうなんですか……」

菫「貴女も…もう終わっているのだろう?」

宥「いえ…一応は進学を希望しているのですけど、まだ色々どうしようか、はっきりとは決まってないんです」

菫「そうなのか?確かに実績は今年一年とはいえ、貴女ほどの打ち手なら。引く手数多とは言わないまでも、幾つか手を上げる所がありそうなもの
なのに」

宥「確かに幾つかの学校から、お話はありました……ですけど…どうしても決めかねて、全部お断りしてしまったんです」

菫「勿体無い話な気もするが…自分の進路なんだから、自身で納得できる選択をしたいのも判る」

宥「……あの…弘世さんの通われる大学は、どんなところなんですか?」

菫「ああ…私の大学は――――――」



 



宥「―――――そうなんですか。でも、あそこって確か凄いランクが高かった様な気が……」

菫「まぁ肝心の麻雀部自体は無名なんだが……でも、学校からこれから強くしていこうっていう気概も感じたし、あそこでもう一度頑張ってみようかと思ったんだ」

宥「そうですか……」

菫「ん?どうしたんだ松実さん?」

宥「い…いえ何でも。でも弘世さんは、とてもいい大学生活を送れそうで羨ましいです」

菫「…………そうだったら、どんなに……」ぼそ…

宥「弘世さん?どうかなされました?」

菫「い…いや何でもない…何でもないんだ……」


 



宥「?…………それにしても進路が決まっているとはいえ、どうして当館に?」

菫「いや…インターハイの時に貴女のご実家が旅館を営んでいると聞いてな。ぜひ一度、訪ねてみたいと思っていたんだよ」

宥「……あのそれって…………もしかして私にもう一度会いたいって――――?////////」かぁぁ

菫「!!?//////い…いや……それはだな……」かぁぁ


宥「ふふ…旅館目的だとしても…どちらにしても嬉しいです。あの弘世さん。お食事はこのお部屋にお運びすれば宜しいですか?」

菫「……ああ。そうしてくれると有り難い。女一人で大広間で食事するのは流石にな……」

宥「分りました。では18時半に、こちらのお部屋にお持ちしますね」

菫「ああ。よろしくお願いする」

宥「承りました。それではお食事のお時間まで、当館自慢の温泉にでも入って御寛ぎ下さいませ」

菫「ありがとう。そうさせてもらうよ」


宥「それでは―――――」


がちゃ。



菫「―――――さて…そうだな、せっかくここまで来たんだし、温泉に入らないとな……」



 



――――。


大浴場。



ちゃぽんっ…


菫「ふぅ…流石に温泉地だけあっていい湯だな、ここまで来た甲斐があったな……」


――。

菫「……そうだな…………尭深さんいるかな?」


すぅぅ…

尭深(死神さん)「どうした?何か用か?」


菫「いや…せっかくここまで来たのだし、尭深さんも入ったらどうだと思ってな」

尭深(死神さん)「私が温泉に?」

菫「ああ。入れない事もないんだろ?もしかしてその上下の黒スーツは脱げない仕様になっているとか?」

尭深(死神さん)「そんな事はない。それに…紙風船より感触はないが、これでも一応…この世界の物質に触れる事も出来る」

菫「それならいいのではないか?」


尭深(死神さん)「分った…ではお言葉に甘えさせてもらおう……」

しゅる…


菫「……………」まじまじ


尭深(死神さん)「どうした?私の軀を凝視したりして、ナニか付いているのか?」

菫「いや…付いているというか……その身体付きも、渋谷にそっくりだなと」ほぉ…

尭深(死神さん)「そうか。確かにあの娘と私は、よく似ているからな……」



 


――――。


尭深(死神さん)「それにしても…君がこんな所まで来た理由が、まさかあの娘に逢う為だったなんてな」

菫「!!い…いや……それはだな…インターハイで対局して…正直どんな人か気にはなっていたんだ……それに一人旅と云うものも一度してみたかった。と言うのも本当だ//////」あせあせ

尭深(死神さん)「そうか……」

菫「…………それに……もう…したい、やりたいと思っても…出来なくなって終うからな……」

尭深(死神さん)「……………」

菫「そう思ったら、急に行動力が湧いて来て、居ても立っても居られなくなって、勢いでここまで来てしまったんだ」

尭深(死神さん)「そうか……」

菫「でも……最期の最後で何もしなくて、後悔もしたくなかったし、来てよかったと思っている」

尭深(死神さん)「…………そうか……」


 


尭深(死神さん)「一つ訊くが…君はあの娘……松実 宥の事はどう思っているのかな?」

菫「!!///////いや…どう思ってるのかって……それは…その……だな/////」かぁぁ

尭深(死神さん)「……ん?君はもしかして人間の世界で俗にいうヘタレというモノなのか?」

菫「そっそんな事はない!!ただ…正直分らない……私が松実 宥さんに抱いているこの気持ちがどんなキモチなのか……」

尭深(死神さん)「…………そうか。ただ君の様に…そんな君の事を想っている者も、もしかしたらいるのかもしれないないな……」

菫「えっ!?それって…どういう……?」

尭深(死神さん)「いや…特に意味はない。何となくそう思っただけだ」

菫「そうか…ただアナタの様な人が私を想ってくれていたとしたら、それはそれで光栄な事だな」

尭深(死神さん)「!!………//////な…何を言っているんだ君は?私は……【死神】だぞ」



 


尭深(死神さん)「…………そう…私は死神……」

菫「ん?どうしたんだ。そんな難しい顔をして?」

尭深(死神さん)「……もう一つ訊いてもいいかな?」

菫「別に構わないが。急にどうしたんだ?」

尭深(死神さん)「君は……私に対して普通に接しているが、何も思う所がないのか?」

菫「思う?何をだ?」

尭深(死神さん)「その…私に対して、怖いとか…憎いとか……私は君に死を宣告したのだぞ?」

菫「確かにそうだが…だが、私の運命を決めたのはアナタではないのだろう?今さら何を言ってるんだ?」

尭深(死神さん)「それは…そうだが…」

菫「なら私が貴方に対して何も思う事はない。寧ろ伝えて来てくれて感謝している所もあるくらいだ」

尭深(死神さん)「!!……君は…優しい人なのだな……」


 



菫「そんな事はないさ…ただ、みっともない八つ当たりだけはしたくないだけだ。それに……」

尭深(死神さん)「それに…何だ?」

菫「アナタはやはり私の後輩によく似ているからかな、不思議と怒りや憎しみの気持ちが、どうしても湧いて来ないんだ……」

菫「それにアナタを見ていると……」


すっ…

尭深(死神さん)「あっ……」

なでなで


尭深(死神さん)「なっ何を……!!?」

菫「そのまん丸な頭を見ていると無性に撫でたくなってしまうんだ。まぁ流石に渋谷本人には出来なかったが……」

尭深(死神さん)「―――――っ!!///////」

なでなで

尭深(死神さん)「あっ――・・~~~~---ッ//////」

菫「……ふむ…本当に殆ど触った感触がないんだな…ふふ、もどかしいものだな」


尭深(死神さん)「………………」



――――。


菫「……さてそろそろ上がろうか?幾らいい湯でもこれ以上入っていたら、流石に逆上せてしまうからな」

尭深(死神さん)「そ…そうだな……上がった方がいいな……」


ざばぁ……

――――
―――
――



 
 

今回はここまでです
それでは



―――――。



菫さんが宿泊している部屋。



菫「さて…そろそろかな」


コンコン


?「お客様。お食事をお持ちいたしました」

菫「そうですか。どうぞ」


ガチャ…

宥「失礼します。すぐに御用意致しますね」

菫「ああ。ありがとう」

かちゃかちゃ…


菫「やっぱり老舗旅館の料理だな、すごく美味しそうだ」

宥「はい。当館の自慢の料理をご堪能ください。あと…コレを……」すっ


菫「ん?これはケーキ?」


宥「今日はクリスマスですから、特別にご用意させて頂きました。当館の…いえ私個人からのサービスです」

菫「サービスって…貴女から?」

宥「はい」にこ


 


菫「ありがとう。でも…これは私一人では食べ切れそうもないな……」

宥「そう思って……」

すっ

菫「ん?お膳の上に…ご飯とおかずが……」

宥「あの…お邪魔でなかったら、私と一緒にお夕食を摂ってはくれませんか?」

菫「えっ?貴女と?」

宥「はい…もしお邪魔でしたら、すぐ下げますので……」

菫「いや…別に構わない。いや寧ろ、貴女とこうやって話をしてみたかったんだ。是非、私と食事をしてほしい」

宥「ありがとうございます。弘世さん―――――」



 



――――。


菫「…………」

宥「そうしたんですか?お口に合わないですか?」

菫「…………いや美味しい。美味しいのは大変結構なのだが……」

宥「なんです?」

菫「その…私が懐石料理で、貴女が普通の食事をしているというのも……」

宥「私、ハンバーグ好きですから全然大丈夫ですよ?」

菫「いや…そういう事では……」

宥「弘世さんはこの旅館のお客様ですから、何も気兼ねなどしなくてもいいんですよ。それに私が旅館のお料理を食べる訳にはいきませんから」

菫「そうか…お食事はお母さまが作られたのかな?」

宥「いえ。これは私が作ったんですよ。実は母はもう随分前に他界してるんです」

菫「!!そっそれは悪い事を聞いてしまった。済まない。赦してほしい」

宥「いいんですよ。ですからウチの食事は私と玄ちゃ…妹で交代で作っているんです。従業員さんの賄いも、たまに作ったりしているんですよ」


 



菫「そうなのか…それにしても、料理されているだけあって、とってもおいしそうだな。そのハンバーグ」

宥「そうですかっ?もしよかったら、一口食べませんか?」

菫「いいのか?」

宥「ええ。もちろんです」にこ

菫「では……」

宥「ちょっと待って」

すっ

宥「はい。あーんして下さい///////」

菫「えっ!?///////」

宥「いいから。あーんして下さい//////」

菫「わ…分った/////////」あーん

ぱく

菫「……………////////」もぐもぐ

宥「どうですか。美味しいですか?」

菫「…………とっ……とっても美味しいです……//////」かぁぁぁ

宥「ふふ…良かったです」にこ



 



―――――。

菫「ご馳走様」

宥「お粗末様……って、ふふ…弘世さんのお料理は、私が出したものじゃないですけどね」ペロ

菫「!!//////」ドキッ

宥「どうしました?少しお顔が赤くなってますよ」

菫「い…いや何でもない。お鍋料理食べてあったまったのかな?///////」ははは…

菫(今の松実さんの仕草に思わずドキッとしてしまった……)どきどき

宥「じゃあケーキを食べましょうか?」

菫「ああ。そろそろ頂こうかな」


宥「では…メリークリスマス!!」

菫「メリークリスマス!!」


 


―――――。

宥「昨日は麻雀部の皆とクリスマス・パーティをして……」

宥「今日も…しかも弘世さんとクリスマスを迎えられるなんて、思いも依らなかったです」

菫「そうだな…私も昨日は部の連中とやって、今日は松実さんと祝えるなんて、思いもよらなかった……」

宥「ふふ…私たち似てますね」

菫「そうだな…特にイヴを特定の人とじゃなくて部の連中と言う所なんて特に」

宥「そうですね」ぷっ


菫「ははは」

宥「うふふふ」


宥「でも今日は…二人っきりでしかも弘世さんと、クリスマスを過ごせて嬉しいです」

菫「嬉しい?」

宥「はい。弘世さんはやっぱり、私なんかと過ごすなんて……嫌ですか?」

菫「い…いや。そんな事はない!嬉しい…私も嬉しいよ///////」

宥「うふふ…良かったです。少し安心しました」ほっ


 


――――。


宥「でも…少し弘世さんが羨ましいです」

菫「私が…羨ましい?」

宥「だって…もう進路も決まって…こうして旅行もできるんですから」

菫「そうか…まだ大抵の高3…特に受験組はまだ進路が決まっていないだろうからな……こんな所を視られたら怒られてしまうかな」はは…

宥「いえ…私はもう『どうしたいのか』を決められたのが羨ましいんです…一応進学はしようとは考えてはいるんですけど、まだ自分はどうしたいのかも判らなくて……」

菫「そうか……私はもう…自分がどうなるのかも知っているしな…………」

宥「弘世さん?」

菫「いや…貴女にはまだ、たくさん時間があるんだ、これからじっくり考えて決めてもいいんじゃないかな?」

宥「はい。そうですね」



 



宥「あっそうだ。弘世さん。明日はどうされるのですか?」

菫「ここは観光地ですし、明日はゆっくりこの辺りを、回ってみようかと思ってます」

宥「…………それでしたら、私と一緒に回りませんか?ガイド付きの方が、観光にも何かと便利だと思いますよ?」

菫「その申し出は大変ありがたいのだが……貴女はその…受験生だし、私にかまけている時間もないんじゃ……」

宥「大丈夫ですよ。これでも私は外に出ない分、家でしっかり勉強してますから。もう地元の大学だったら、もう何もしなくてもどこだって受かる自信はあります」えへん

菫「ほう…それはすごいな……」

宥「でも弘世さんの大学は……それでも難しいかもしれないですけどね」


菫「はは…そんな事はないと思うが。そうか…それだったら是非、明日はお願いしようかな」

宥「はい。こちらこそお願いします」にこ


 


―――――。

すぅぅ…

尭深(死神さん)「少しいいかな?」


菫「ひゃっ!!」びくっ

菫「吃驚した…尭深さんか……そうか、見えないだけで、常に私の傍にいるんだったな…忘れてたよ……」

尭深(死神さん)「………………驚かせて済まない。一つ訊きたい事があるのだが……」

菫「ん?何を訊きたいんだ?」

尭深(死神さん)「……君はあの娘と随分と親しくなった様だが……その…君は…あの娘の事が好きなのか?」

菫「ぶっ!?いや…そ…それは……////////」あせあせっ

尭深(死神さん)「正直、そうだとしたら、恋愛感情を抱くのは余りお勧めしないな。だって君は―――――」

菫「…………アナタにも意地悪なところがあるんだな……いや、寧ろ私を気遣って忠告してくれているのか……」

尭深(死神さん)「……………………」

菫「心配しなくても、確かに私は彼女の事が気になっているのは確かだが、それ以上ではないよ……ましてや恋慕の情を抱く事など、もう出来ない
事くらいは分っている・……」

尭深(死神さん)「…………そうか…いや。つい出過ぎた事をしてしまった。残された時間をどう使おうが、君の自由なのに……」

菫「…………もう、いいかな?今日は疲れたから寝る事にするよ」

尭深(死神さん)「そうか…では失礼する」

すぅぅ…


菫「…………おやすみ―――――――」



 



――――――――――――――。


次の日。


宥「ここは脳天大神っていう神社で、学業向上のご利益があるそうですよ」

菫「そうなのか……」

宥「ええ。今日は人が少ないですけど、少し前にはお祭りをしていたんですよ」

菫「それはちょっと見てみたかったな」

宥「……でも弘世さんはもう、受験終わってるんですよね……」

菫「私はそうだが、松実さんにとってはいいんじゃないかな?」

宥「はは…そうですね。ごめんなさい。実は私がちょっと来たかったんです……」

菫「はは…構わないさ」




―――


宥「…………この吉野山からの眺めは、吉野の観光スポットの中でも一番なんです」

菫「確かに…いい眺めだな」


宥「それからですね――――――――」


――――
―――
――


 


取り敢えず前回、描き切れなかったところだけですが
書き込まさせて頂きました

それでは。




―――――――。


松実館。



菫さんの宿泊している部屋。


夕食後。


菫「ありがとう。今日は松実さんが案内してくれたお蔭で、とても観光を楽しむ事が出来たよ」

宥「喜んで頂けて、私も嬉しいです」にこ

菫お蔭で…………いい思い出が出来たよ」



菫(そう…最期に貴女に逢えてよかった……もう思い残す事も――――――)



宥「あの弘世さん……」

菫「何かな?」





宥「…………どうして楽しいと口では言ってくれているのに、こんなにも哀しい顔をされているのですか?」




 



菫「――――――えっ!?」

菫「い…いや……それは……そんな事は―――――」

宥「何かあったんですか?」

菫「…………………………」

宥「おかしいとは思ったんです。幾ら進路がもう決まって、時間があるといって、急に東京からこんな処まで一人で来られるなんて、やっぱり少し考え難いですから」

菫「それは―――――」

宥「とても大事な事を…とても大変な事を、貴女はたった一人で抱え込んでいるのではないですか?」

菫「違う!違う!!違う!!!私はっ…ただ……ただ―――――――」

菫(駄目だ!…………今まで必死に抑え込んで来たのに、隠して来たのに…これ以上は――――――)

宥「……………………」

すっ……

菫(えっ!?両手を拡げて…………)

宥「弘世さんもうが我慢しなくてもいいんですよ。さあ遠慮なんてしないで、私の胸に飛び込んで来て下さい」

菫「松実…さん……」

宥「私にはこれくらいの事しか出来ないですけど……それでも少しなら弘世さんを慰められると思うんです」


菫「松実さん…………」



宥「私はこれでも……お姉ちゃんですから」にこ



 
 



菫(ああ…駄目だ…この人の前だと私は――――――)


菫「――――――!!松実さん!!!」

がばっ――――!!

ぎゅううぅ……


菫(――――幼い子どもの様に素直な自分になってしまう――――――)


宥「今まで本当によく我慢してきましたね。でも…私といる時まで我慢しなくてもいいんですよ」にこ

なでなで


菫(あったかくて…柔らかくて……ああ…もう駄目だ……今まで必死になって防いでいたものが、堰を切った様に溢れ出てくる…………)

ぽろ…


菫(―――――私は…私は……今まで努めて平静をを装ってきた……そうする事で死の恐怖から逃れようとしていた……でも私は本当は―――――――)


ぽろぽろ…



菫(本当はまだ死にたくない!!死にたくなんてないんだ――――!!!!)


 
菫(死ぬなんて…死んじゃうなんて……やだよ―――――――――)

ぽろぽろぽろ…



菫「ああ…あああ……ああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!」

宥「………………」なでなで


――――
―――
――





 



宥「どうですか?少しは落ち着きましたか?」なでなで

菫「……ああ。ありがとう……」ごしごし

宥「ふふ…少しでもお役に立てられて良かったです……」なでなで

菫(ああ……この人に膝枕されて…頭を撫でてもらうだけで…なんて心が安らぐんだ……)ぎゅっ…

宥「理由はやっぱり言えないんですか?もしかしたら少しくらいは、お役に立てるかもしれないと思ったのですが……」

菫「…………済まない。これだけは言えないし、言ったとしても、人に解決して貰える様な事ではないんだ」

宥「……分りました。ごめんなさい。しつこく訊いてしまって…人に言えない事なんて当たり前にあるのに……」

菫「私こそこんな事までして貰っているというのに、本当に済まない」

宥「いいんですよ。私が好きでさせて頂いたのですから……」


菫「……あの松実さん……」

宥「はい。何ですか?」なでなで

菫「重ねて済まない。あの…//////もう少しこのまま、膝枕してもらってもいいかな……///////?」

宥「はい。もちろん。弘世さんの気の済むまで、私を使ってください」にこ

菫「ありがとう……」ぎゅっ…

宥「……………」ふふ…

なでなで






尭深(死神さん)(………………………………………………………………)



――――――
――――
―――
――



 
 





翌日。


松実館の玄関。


菫「昨夜は恥ずかしい所を見せてしまい。本当に申し訳けなかった」ぺこり

宥「いいんですよ。それで弘世さんの気持ちが少しでも楽になったなら、私としてもこんなに嬉しい事はないです」

菫「ありがとう。貴女の御蔭で、本当に心が軽くなった様な気がするよ」

宥「そうですか。うん。弘世さんの今の御顔、昨日に比べて…憑き物が落ちたみたいに、晴やかに見えますよ」にこ

菫「貴女には本当に感謝している。本当に…本当にここに来てよかった」

宥「そう言って頂けると本当に嬉しいです。あの弘世さん……」

菫「ん?何かな?」

宥「また。私と……お逢いしてくれますか?」


菫「…………………」

――


にこ



宥「………………」


――



菫「それじゃあ。もうそろそろ、いかないと。それじゃあ松実さん」

宥「はい。当館のご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


菫「ありがとう。では……」

すたすた



宥「行ってらっしゃいませ!!」






宥(…………さて……)



宥(今日から猛勉強しないとね。うんっ!!)ぐっ



 

  

少しですが追記させて頂きました
それでは。




その夜。


白糸台高校学生寮。


菫「よし。準備はこれくらいでいいかな……」

菫(奈良から直接、実家に帰ってもよかったけど、やはり一度ここに戻らないと落ち着かなくなってしまったな……)

菫(自分でも驚く位に、この部屋に愛着を持っていたんだな……)

菫(もうすぐ…卒業したらここを出る事になるのか……いや…もう卒業までどこでないか……)


菫(終の棲家……か……)

菫(さて…感傷に浸ってないで、実家に帰って…家族に『挨拶』しないとな―――――――)


コンコン…


菫「ん?誰だ?」


ガチャ…


?「いきなりお邪魔して済みません先輩」


菫「尭深さ……………いや…お前は渋谷か?お前、もう帰ったんじゃなかったのか?まぁいい。玄関で立ち話もなんだし、取り敢えず入ってくれ」

尭深「?…………いいんですか?別に大した用事で、お伺いした訳ではないんですけど……」

菫「いや。構わないさ」

尭深「……では。お邪魔します」



 


菫「まさか、受験を控えた3年生以外が、まだ残っていたとは思わなかったよ」

尭深「課題を終わらせてから、実家に帰ろうと思って……」

菫「そうか…それで、何の用で来たんだ?」


尭深「あの…クリスマスの時の先輩がずっと気になっていて……いつも通りに見えてたんですけど、でも…時折、表情に陰りが在る様に見えて…それで心配になって……」

菫「そんなに…私の事を気にしてくれていたのか……」

尭深「でも…そしたら、先輩、急に旅行にいかれてしまって……」

菫「そうか…心配させて済まなかったな。だが、もう大丈夫だ、どうだ渋谷。今の私はそんなに心配そうに見えるか?」

尭深「いえ…今の先輩は…どこか吹っ切れた様な……いえ、何かの覚悟を決めた……そんな顔に見えます」

菫(…………こいつは、私の事がよく見えているんだな……)

尭深「先輩にとって。とてもいい旅行だったみたいですね」

菫「ああ。とてもいい旅だったよ」

尭深「……………そうですか……」


 



菫「渋谷。そこまで分っているなら、私がもう大丈夫だって判っただろう?心配かけて済まなかった。でも…心配してくれてありがとうな……」

すっ…

なでなで

尭深「あっ……////////せ…先輩……何を――――////////」

菫「いや…実は前々から、お前の頭を撫でてみたいとは思ってはいたんだ」

尭深「ど…どうして……///////」

菫「いや、撫でたくなる様な頭の形をしているから……」

尭深「…………そうですか……」

菫「ん?いや済まない。嫌だったか?」

尭深「いえ…嫌じゃないです……もっとなでなでしてくれてもいいんですよ?」

菫「そうか…では遠慮なく―――――」すっ…

なでなで

尭深「――――――――――//////////」きゅーん



 



―――――。


菫「それじゃあ。私はもう実家に帰るが、渋谷。お前も早く課題を終わらせて、ご両親に顔を見せてやれ」

尭深「はい」

菫「『何時までもあると思うな親と金』って諺もあるくらいだしな。会える時に合っておいた方がいいぞ?」

菫(私そうする様に…………)

尭深「……はい。でも…少し大袈裟じゃないですか?」

菫「はは…確かにそうだな。まあ、何にせよ早く帰るに越した事はない。ご両親も喜ばれるだろうしな」

尭深「そうですね」


――。

菫「―――――ではな。渋谷。改めてよいお年を」

尭深「弘世先輩も良いお年を―――――」


――――
―――
――



 
 



―――――――。



私は、実家に帰り両親や家族に挨拶を済ませ、始業式の前日まで実家で過ごした。


そして今…私は、再び白糸台の学生寮の自室に戻っていた。


今日が私の…人生最後の日。

尭深さんが…死神さんが、私の魂を…命を収穫する日…………。



菫「ふぅ…何だかんだでやはりここが一番落ち着くな…いつも間にかここが、実家以上に自分の家になってしまったな……」

私は勉強机の椅子に腰掛けると、ため息交じりにどこか、しみじみと呟く。


菫(遺書を書く事が出来ないのは残念だが、致し方ないな……)



遺書を書いてしまうと、自身の思いの内を遺族に残せるが、自殺と判断されてしまうと、多方面に影響が出てしまうので、どうしても書く事が出来ないのが心残りだった。


 



ここは大人しく不自然な心臓発作で、突然死になるしか選択肢が、私には残されてなかった。

実家ではなく寮の自室(ここ)を最期の場所に決めたのは、一番落ち着く場所だったし、万が一にも自分の死ぬ瞬間を、両親や家族に見せるわけにもいかなかったからだ。

菫(願わくば、次にこの部屋を使う人に幸があってほしい)

この部屋も、【いわく付】になってしまうが、それはしょうがないと諦めて貰うしか無い。


菫(しかし…最期だというのに、自分で言うのもなんだが、妙に心身共に落ち着いているな…やはり松実館に行って正解だったな……)

本当に松実さんには感謝の念しかなかった、もうお逢いする事が出来ないのが残念だ。


照やほかの麻雀部の人たちにそれとなく挨拶をして、私はこうしてある種の達成感を感じながら、椅子に深く腰掛け、瞑想をするかの様に目を瞑って、最期の時を迎えようとしていた。



すぅぅ……

尭深(死神さん)「……………………」

菫「ん?尭深さんか…まだ日付が変わる頃には、少し早い気もするが……もうその時なのかな?」



  



尭深(死神さん)「……………」

菫「そんな怖い顔をしなくても大丈夫だ。私はもう、とっくに覚悟は出来ている」

尭深(死神さん)「そうか……」


どこか無感情な口調で呟くと、尭深さんはあの大鎌を取り出し振り上げる。


菫「……………………」

私は少し唐突な気もしたが、再びそっと目を閉じる。

ここまで来たら、もうじたばたしても始まらない。

まだ…たった18年の人生だ。心残りが無いとは決して言えないが、涙や恐怖はすべて松実館に置いてきた。と、思う。

この時の私は、もう何かを悟ったかの様に、心が穏やかというか、自身の全てが凪の様な状態になっていた。


尭深(死神さん)「…………」


菫「………………ん?どうした?やらないのか?焦らされると、いい加減…私も焦れてくるのだが……」


凪の様になっていたつもりだったが、何時まで経っても何も起こらない事に、いい加減焦れてきて、私は尭深さんに、寧ろ催促するかの様に声を掛ける。



尭深(死神さん)「…………君は…それでいいのか?」



 


菫「えっ?どういう――――」

尭深(死神さん)「君はこのまま、大人しく私に魂を刈られてもいいのかって聞いているんだ!!」

菫「何を今更…?そんなに声を荒げて。私の命が今日までだって伝えに来たのは、アナタだろうに……」

尭深(死神さん)「怖くないのか?命が惜しくないのか?なぜ君は、この状況でそんなに平静でいられるんだ?」

菫「確かに、正直言って怖くない訳が無い。だが、そんな感情の殆どは、泪と一緒に松実館に置いて来たよ」

尭深(死神さん)「…………あの娘の所為か……」

菫「所為って…彼女の包容力と優しさのお蔭で、心が落ち着いて、安らいで、この現実を受け入れられる様になったんだ。彼女には感謝の念しかないよ」

尭深(死神さん)「君の様な子どもが、そんなに達観した様な事を……君はもう命が惜しくはないのか!?」

菫「アナタこそ今更何を言っているんだ!?それは…命は惜しいし、まだずっと生きたいと思っているに決っている。アナタもあの時の私の様子を見たのだろう?」

尭深(死神さん)「それなら―――――」

菫「だけど、それでも私は覚悟を決めて、アナタの仕事を全うさせてやろうと思っているのに……それなのにアナタは、こんな事言い始めて…………」

尭深(死神さん)「そ…それは……」

菫「これでは主張があべこべで、本末転倒ではないか!?もういい加減にしてくれ!!」



尭深(死神さん)「―――――!!この分からず屋め……もういいっ!!ちょっと待っててくれ」

すぅぅ…



菫「消えたっ――――っておいっどこに行ったんだ!?全く…訳が分からないよ…………」




 
 



――――。


ガチャ…

?「………………」


菫「やっと戻ってきたか…さぁ早く、もたもたしていると日付が変わってしまうぞ……」

?「………………」


菫「ん?……って透けてない!?服もスーツじゃないし……本物の渋谷か…………?いや…やはり尭深さんか?」


尭深(死神さん)「…………よく分かったな……」

菫「付き合いは決して長くないが、ずっと一緒にいたんだ。アナタと渋谷の気配の違い位は分る心算だ」

尭深(死神さん)「…………そうか……私だって判るか……」

菫「だが…渋谷の軀を乗っ取って何をするつもりだ?前に私の後輩に危害を加えるな。と言ったはずだぞ?」

尭深(死神さん)「…………危害を加える気はない…それに彼女も……」

菫「本当だろうな?」

尭深(死神さん)「ああ。彼女とって危害を被るという事には決してならない。その事だけは信じてほしい」



 



菫「……軀を乗っ取られただけで、充分な損害だと思うが……判った、アナタを信じよう」

尭深(死神さん)「ありがとう」

菫「それで…どうして渋谷の軀を乗っ取ったりしたんだ?」

尭深(死神さん)「…………もう一度聞く。君はそれでいいのか?」

菫「……いい加減しつこいぞ?どうせ私の命運は変わらないのだろう?だから……もう、覚悟できているし、自分の運命も受け入れている―――」


尭深(死神さん)「―――――――」



菫「そうしたいのは本来なら私のはずなのに…どうして私ではなくアナタが――――――」




尭深(死神さん)「――――――」

ぽろぽろぽろ…






菫「アナタが―――――泣いているんだ?――――――」




 



尭深(死神さん)「……君は馬鹿だ大馬鹿だ…どうして…どうしてこんな理不尽な事を受け入れられるんだ……助かりたいって言わないんだ!!」

ぽろぽろぽろ…

菫「だから何を言っ―――――」


尭深(死神さん)「――――もし…君の命が助かるとしたら……どうなんだ?」


菫「……まだ生きられるなら、その方が良いに決っている。当然だろう」




尭深(死神さん)「…………そうか…なら――――――君は生きろ」




菫「はっ!?な…何を言って……?」

尭深(死神さん)「私が君を死なない様にする方法があると言っているんだ」


菫「だから…何を……そんな事が出来るなら最初からそうして―――――」


尭深(死神さん)「それには条件があるんだ」

菫「条件…?何をすればいいんだ?」


尭深(死神さん)「なに…簡単な事だ…………」






尭深(死神さん)「……君の魂の代わりに、私の存在が消えるだけでいいのだから…………」





 

今回はここまでです
ではまた。



菫「えっ!?」

尭深(死神さん)「それが君が助かる唯一の方法だ」

菫「そんな……そんな事…出来るわけが……」

尭深(死神さん)「私は…本当はこんな事はをするのが嫌だった……」

尭深(死神さん)「だが、この仕事が私に与えられた唯一の使命だったから…それでも今まで務めてきた。だが…もう…いいんだ……」

菫「いいんだ…って、自分の存在が消えてしまうのだろ?そんなのは駄目に決まってるだろ」

尭深(死神さん)「もう…いいんだ……私はこんな事はもうしたくないんだ――――」

尭深(死神さん)「これは君の運命でありと同時に、私にとっての神査でもあったんだ」

菫「しん…さ……?」

尭深(死神さん)「ああ。私に様な死神の使命に遂行切れない者は、こうやって君の様なケースの者に憑いて、その適性を査定される」

菫「……そうだったのか…そんな事が……」

尭深(死神さん)「そして…使命を全う出来ない死神は、憑いた者の代わりに死神不適格者として、その存在を消される事
になる……」

菫「えっ!?」


尭深(死神さん)「当然だろう。その為だけに私は主に造られ、存在しているのだから―――――」



 



菫「…………そんな……いや…だからって自分自身をを粗末にしては駄目だ!」

尭深(死神さん)「……いいんだ…私は君の代わりに消える…………だから…その代り君にシテ貰いたい事があるんだ」

菫「してもらいたい事?」

尭深(死神さん)「うん。その…私と―――――――」

菫「…………………」ゴクリ…





尭深(死神さん)「キ…キスしてほしい―――――――/////////」





菫「!?」


菫「キ…キスって……『あの』キスの事か……?」


コクン…

尭深(死神さん)「……………うん……////////」かぁぁぁぁ




 



菫「ど…どういう事なんだ……?その…私と…キ…キスしたいだなんて……///////」

尭深(死神さん)「……………///////」(俯き)

菫「そうか…何かの冗談だろ?こんな時に冗談なんて少し不謹s―――――」

尭深(死神さん)「冗談なんかじゃない!たかがキスくらいで命が助かるなら、安いものだろう!?」

菫「済まない…軽はずみな事を言った。だが、アナタはその安い事で、私の代わりに存在が消えてもいいのか?」

尭深(死神さん)「いいんだ…私は死神でいる私が嫌なんだ……仕事を全うする度に…強く胸が締め付けられるんだ…はは…肉体なんてないのにな……」

菫「尭深さん……」


尭深(死神さん)(それに…何時からだろう?……いつの間にか私は―――――)じ…

菫「尭深さん?」

尭深(死神さん)「それに私は君の事を…………いや…何でもない…………」

ふりふり…

菫「私の事を…何だ?」

尭深(死神さん)「何でもないと言っている!!」ぽろ…

尭深(死神さん)「……そうだ!まだ若い君の命を奪う事が忍びない……だけだ…………」ぽろぽろ…

菫「そうか……やはりアナタは―――――」

ぎゅっ――――

尭深(死神さん)(ふわぁぁぁ……急に抱きしめられて―――――////////)



菫「――――アナタは死神でいるには優しすぎる……」

すっ


 



尭深(死神さん)(あっ…私の頬に手を当てて――――///////)

菫「だから、私の為にこんなに涙も流して……」

すっ

尭深(死神さん)(私の涙を拭って―――――//////)

尭深(死神さん)(優しいのは私ではなくて…君の方だ。だから私は―――――)

菫「分った…だが渋谷は…この軀は渋谷のモノだし……」

尭深(死神さん)「…………大丈夫だ。この娘も君の――――いや…彼女なら、君の命が助かるなら喜んでこれくらいの事はするだろう」

菫「しかし……」

尭深(死神さん)「…………あと…最初に君の前に現れた時に、期日が過ぎたらどうなるかって話……あれは嘘だ」

菫「嘘?」

尭深(死神さん)「ああ。君を【その気】にさせる方便てやつだ」

菫「……………」

尭深(死神さん)「そして…さっきも言ったが。本当は期日が過ぎれは、君の代わりに……私が消えるだけだったんだ」


  


菫「そうだったのか……」

尭深「私は…確かに何もしないでも、君の命を永らえさせる事が出来る……」

尭深(死神さん)「そして…それと同時に君の命を刈り取る事も出来る……そして私は君の命を選んだ―――――」

菫「尭深さん……」

尭深(死神さん)「こんな事を君に言ってしまうのは、卑怯なのかもしれない、躊躇わせてしまうかもしれない……」

菫「…………」

尭深(死神さん)「でも…それでも私は…君に……君にだけは私と云う存在が確かに在った事を覚えていて欲しいんだ……」

菫「尭深さん……」


尭深(死神さん)「…………それでも…それでも君は、私の最後の願いも聞き入れてはくれないのか?」



 



菫「…………分った…本当にいいんだな?」

尭深(死神さん)「ああ。私にとっても、渋谷 尭深にとっても。後悔はない」

尭深(死神さん)「それに人命救助の場合は、接吻の内に含まれないからな?」


菫「そうか……ありがとう…………」

すっ…

尭深(死神さん)「………………」

すっ…



ちゅっ…



菫・尭深(死神さん)「……………………………」


すっ…


尭深(死神さん)「…………ありがとう。弘世 菫。これで私は―――――――」

尭深(死神さん)(もう…これで全てから解放されるんだ……………そして…願わくばもう一度君に―――――――)



すぅぅぅぅ……



 
 



菫(!!?消え―――――)

菫「尭深さん!!」

ぎゅうぅっ…

尭深(死神さん)「あっ……////////」

菫「願わくば人としてのアナタと出逢いたかった……」

菫(もしそうだったら…私はアナタを―――――――)

尭深(死神さん)「嬉しい…私もだ……」



すぅぅぅ…

尭深(死神さん)「ありがとう……」にこ

尭深(死神さん)(最期にその一言が聴けて良かった…これで私は――――――)



すぅぅぅぅ…・・・・…・―――――・…・・・  ・・・   ・



菫(消え…たのか……………)

尭深(……………………)

ガクン――――

菫「あっ!?」さっ

がしっ

菫「尭深さ―――――渋谷!!」




 



――。


尭深「……………弘世…先輩?」

菫「ああそうだ。私だ」

尭深「ここは…先輩の部屋……?」

菫「ああ」


尭深「―――――――そうですか……」

すっ

菫「渋谷?」


すくっ

尭深「……………………済みません。失礼しました。すぐ出ますので……」

すたすた

菫「おいっ。もう大丈夫なのか?」



尭深「はい。大丈夫です。それに少しやる事がありますので……失礼します」


バタン


菫「渋谷………………尭深さん…………」


菫「ありがとう―――――――――」じわ…

ぽろ…ぽろ…




 



――――。



そして日付が変わっても、私が死ぬ事は無かったし、少なくても私の感覚的には、何も起こらなかった。

今となっては確かめ様もないが、本当に尭深さんが…私の身代わりになってくれたのだろうか?


何もなければ、尭深さんが使命を全うしていたら、私は死んでいたのか…どうかすらも判らない。


尭深さんと云う存在が…本当に存在していたのかでさえも―――――。



私はあのヒトと共にいた日々が本当であったのだと思うと同時に、幻であってほしいと思う自分もいた。



そう…だってあのヒトはもう――――――。




そして私は高校を無事に卒業し。大学に進学した――――。



――――――――
―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――




 



おしまい。



と言いたいところですが、もう少しだけ続きます
出来れば今日中に書き込みたいと思います

それでは。

死神さん「お前は大学生になる前に死ぬぞ!」
菫「な、なんだってー!!!」
菫「ならせめて痛みを知らず安らかに逝くために奈良に行ってくるか」
死神さん「東京に戻ってからで悪かったが実はお前の魂を収穫したくないからやっぱりお前死なないわ」
菫「な、なんだってー!!!」

こんな感じか
尭深と死神さんの深層思考がリンクしてて自分がどの程度思われているのか知りたいからやったとかならわからんでもないような気がしないでもない




翌年四月。


大学のキャンパス。


宥「もう桜が咲いて…散り始めてる……もう東京(こっち)に来て一年か……早いものですね」

菫「ああ。そうだな…本当にあっという間だった気がするよ」

宥「ふふ…そうですね」

菫「それにしても、一年前の入学式でアナタの姿を見た時は本当にびっくりしたよ。てっきり地元の大学に進学すると思ってたから……」

宥「弘世さんと松実館でお逢いしてから、どうしても弘世さんと同じ大学に通いたくて、頑張って勉強したんですから」

菫「はは…まさか私を追っ掛けて来てくれるとは思いもしなかったよ」

宥「ご迷惑でした?」

菫「そんな事はない。寧ろとても嬉しいと思っている」

宥「良かった…そう言ってくれて私も嬉しいです」




 




宥「でも…あの時……弘世さんがウチの旅婚にお越しになられた理由を聴いた時は、吃驚しました」

菫「あの時は理由が理由だけに話せなかったが……まさか信じてもらえるとは思ってなかったよ……」

菫「嗤われるか、おかしな目で見られるかのどっちかと思っていたから……」

宥「確かに…にわかには信じ難い話でしたけど、私は信じます。だって―――――」

宥「弘世さんがあんなに真剣な表情(かお)で話してくれた事ですから。例えどんな理由であったとしても信じない訳にはいきません」


菫「松実さん……」



 
 



宥「あの…弘世さん……」もじもじ

菫「ん?どうしたんだ?」

宥「そのですね…私たちもここで再会して…一年の間、一緒にいて……お互いの事をたくさん知る事が出来たと思うんです」

菫「確かにそうだな。貴女の色々な事を知る事が出来たし、私の事も知ってくれたと思う」

宥「ですから…もうそろそろ―――――////////」

菫「もうそろそろ?」


宥「私と正式にお付き合いしt――――――」





?「ちょっといいかな?」

すたすた


菫・宥「「!?」」





?「…………どうやら間に合った様だな……」ふぅ…




 



菫「渋谷!?」

宥「………………」

菫「……お前…もしかしてウチの学校に進学したのか?――――って……いや…この【感じ】は…まさか…………もしかして尭深さんか?」

尭深(尭深さん)「!!……よく分かったな。さすが私の弘世 菫だ」にこ

宥「……………」

菫「アナタはあの時に…消えて終った筈……なのにどうして…と言うかその軀――――」


すぅぅ

尭深「はい。私の軀です」


菫「!?今度は本物の渋谷か?一体これは……?」

尭深(尭深さん)「それはだな…あの時……私の存在が消えそうになった時に、彼女が私の前に現れて、私を受け入れてくれたんだ……」

菫「それって…渋谷自らが取り憑かせたっていう事なのか?……………でも良かった…アナタが存在し(いき)ていて……本当に嬉しいよ」にこ

尭深(死神さん)(…………まったく…この者は………相変わらず…だな…………)

宥「…………………」


 
 



尭深(尭深さん)「……それで私は…一時的に存在を残す事が出来た」

尭深(尭深さん)「もし彼女がいなかったら…そしてもし彼女と私が近しい存在でなかったとしたら、憑依することも適わずに、私の存在はあの日の内に消えて終っただろうな」

菫「そんなことが…ん?一時的って……?」

尭深(尭深さん)「私の存在は、これから時間をかけて、少しづつ彼女の魂と同化していき、やがて純粋な一つの存在になる」

菫「それって…渋谷が渋谷でなくなるという事なのか?」

尭深(尭深さん)「そういう事になるな……」

菫「そんな渋谷はその事を知っているのか!?」


すぅぅ…

尭深「はい。それを知った上で、私はこのヒトを受け入れました。このヒトが私とよく似ていると思ったから」


尭深「あの時…この人と一緒になった時は薄らでしたけど…どこかもう一人の自分に出逢ったかの様な気がして……」

尭深「そしてこのヒトが私から離れた瞬間に、その思いはより強く、確信に変わり…このヒトを受け入れようと思ったんです」

尭深「ですから……多分、完全に同化したとしても、私はあまり変わらないと思います」

菫「渋谷……」


  



すぅぅ…


尭深(尭深さん)「そう…彼女はとても私と似ている……君の事を想う気持ちもな」

菫「えっ!?それってどういう……」


尭深(尭深さん)「私も彼女も…フタリとも……君の事をお慕いしている……と云う事だよ」

菫「!?」ドキッ

宥「………………………」

菫「し…渋谷…それって本当なのか……?]

尭深「……………はい////////」こくん…

尭深「高校の頃からずっと……――――――////////」

菫「!!/////////」


すぅぅ…

尭深(尭深さん)「ふふ…そういう事だ。私たち二人に想われて、君は幸せ者だな。そういう事だか
ら、今日から君と私たちはステディな交際w―――――――」


宥「あの…ちょっと言っている事が、おかしくないですか?」



 



菫「松実さん!?」

尭深(尭深さん)「おかしい?何がだ?」

宥「弘世さんの気持ちも訊かないで、余りに一方的過ぎますよ?それに私だって……弘世さんに膝枕して元気になって貰ったんですから」

宥「それに私の胸にむしゃぶりついて、泣いている弘世さんをいい子いい子したんですからね」

菫「!!///////そっそれは―――――///////」かぁぁぁ

宥「覗いていたんですよね?私たちから見えない事をいい事に」

尭深(尭深さん)「うっ―――――!!」

尭深(尭深さん)(―――――確かに……だが!!)

尭深(尭深さん)「ふんっ。私だって、彼女と…弘世 菫とキスをしたんだからな」ふふん

菫「!?」ぎくっ

宥「!!!?ひ…弘世さん…それって本当なんですか?」わなわな…

菫「いや…それはその…キスをすれば助けてくれると言われて……」もごもご

尭深(尭深さん)「自分が助かりたいが為【だけ】に、私の…彼女の唇を奪ったというのか!?」

菫「いや…その……あの時のアナタの事が、その…少なからず愛おしく思って………//////」もじもじ



 



宥「弘世さん!?」

菫「いやっ!違うんだ松実さん…それはその――――」

尭深(尭深さん)「何が違うっていうんだ?酷いと思わないか尭深?」


すぅぅ

尭深「そうです…私の……ファーストキス……////////を…【私の初めて】を奪った責任を取って下さい。先輩/////////」


菫「そっそれは――――その…あの場合は…ノーカンで…………」あたふた…

宥「もうっ弘世さんはっきりして下さい!私と渋谷さん―――――」


すぅぅ…

尭深(尭深さん)「ふふん。私たちを選べば暫くの間。一人で2粒分美味しく味わえるぞ?」

菫「!?」ドキッ


 



尭深(尭深さん)「ふふ…それに、何時か私たちが一つになった姿……《新しい渋谷 尭深》は君にとっても、とても魅力的な存在になるだろうな」


菫(!!ひ…一人で2粒分……それに新しい渋谷……)ゴクリ…

尭深(尭深さん)「ふふ…随分と欲しそうな貌をしているぞ?」

菫「……そ…そんな…事は…………」


宥(!?すっ菫ちゃん!?)

宥「そっそんな言い方は狡いです!それだったら私はす…弘世さんを毎日…包み込む様に、こ…心も身体も、めいっぱいあったかくして差し上げますから……//////」かぁぁ

菫「!?松実さん!?////////」

菫「……う…うう…………私は……その……」たじたじ



 



すぅぅ

尭深「……このままでは埒が開きませんね。もう…この際ですから、ヘタレてないではっきりして下さい。私と松実さん―――――」


宥「そうですっ。ヘタレた態度なんて取ってないで、はっきりと決めて下さい。私と渋谷さん――――――」


菫「うう……そ…それは……………」



宥「弘世さん」

尭深「弘世先輩」

ばっ!×2

ぎゅっ×2

菫(うっ!?////////二人が私の左右の腕に、それぞれに抱き付いて―――――//////////)



尭深・宥「「もうっ―――――」」







宥・尭深「「どっちにするの!?」」




おしまい。


 
 
 

これでおしまいです。

お話的に特に盛り上がるところも無い内容なのに
何故か予定の倍くらい長くなってしまいましたが
どうにか終わらせる事が出来て良かったです。

ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom