ブレイドプリキュア! (110)

( 0H0) タイトル通り(?)『フレッシュプリキュア!』×『仮面ライダー剣』なお話です。

( 0M0) 今日はカイザの日なのでライダーネタ!

( 0H0) 555関係無いじゃないですか。

(;0M0) で、でも、ブレイドとプリキュア10周年記念ですしね!

(;0H0) 何ハードル上げてるんですか。

( 0w0) 速水校長のムチャシャガッテを思い出したんディス。

(。0M0) ごめんなさい、ダラダラ書いていて偶然このタイミングです。

( 0H0) ドキプリ開始直後の時点で思い付きから数年経過でしたね。

( 0M0) そんな状態なのでドキプリは本筋に絡められなかった。

( 0H0) VSスーパー戦隊の新戦隊的に出すとか。(提案)

( 0M0) いやそちらはドキプリ&ブレイドで手短かに書いちゃる!

(;0w0) イツデキルンディス!?

壁|:V::>) (作品じゃなく書き手の問題で)需要がどうとか言わないのは優しさか。

(;0H0) そんなこんなで紹介にもなっておりませんが、(無駄に長いですが)お邪魔いたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410610382

『 ――ピノキオは人間になりました。メデタシ、メデタシ・・・・ 』

・・・・ピノキオは人間になって幸せになれたのだろうか・・・・・・・・?
人間と同じになった・・・・だが、それとひきかえに・・・・
永久に“悪”と“良心”の心のたたかいに苦しめられ・・・・



総統メビウス。
元々は人間に生み出されたコンピュータでありながら、
自発的な決断を放棄した人間に絶望し、
全ての世界を管理し、統制しようとした存在。

果たして無限のメモリー“インフィニティ”を得て、
全てのパラレルワールドを支配下に収めかけた。

だが、伝説の戦士“プリキュア”達と対決し、
抗い続ける彼女達の抹消を図り自爆して消滅した。

全ては終わった・・・・・・・・はずだった。


ほぼ無限に存在するパラレルワールド。
その狭間を、一つのデータ、メビウスの意思のバックアップが、
具体的な力を持たぬままたゆたっていた。

それが、数多のパラレルワールドの一つにおいて
運命的とも言える“出逢い”を果たした。

橘朔也はその日も深夜まで研究に没頭していた。
昼も夜も無かった。
ただ、今もなお終わらぬ戦いを続ける“仲間”を苦しみから救うためだけに。

それもまた、ゴールの見えぬ戦いであった。
しかし、“仲間”のそれとただ一つ違いがあるとすれば、
彼の戦いには、それがどういう結果であれ、
いつの日にか“終わり”が必ず訪れるということであった。


ビーッ! ビーッ!!


真夜中、やや回転の鈍った頭を警報の音が覚醒させた。

橘「ん・・・・・・・・なんだと!?」

状況を確認した橘が驚きの声を漏らす。
異常は管理データへの不正アクセスであった。

彼は研究成果の一部を医療等にも応用していた。
それは諸費用の捻出のためでもあったが、
今はもう会うことも叶わぬ大切な“仲間”の、
『誰かを救いたい』という想いに呼応するようでもあった。

だが、そんな情報に目をつける不届き者、
いわゆる“産業スパイ”なども少なからず存在した。
それ故、不正アクセス自体は驚愕に値することではなかったし、
それ相応の防備も施してあった。

しかし、今回は事情が違っていたのだ。
アクセスされているのは、彼の研究の核心、
完全に外部から遮断された状態で管理された『アンデッド』に関するデータだった。

橘「まさか!」

直感に後押しされ駆け出していた。
彼が向かったのは研究施設のとある一室。
最近手に入れたソレは、研究の大きな推進剤となるはずだった。

橘「・・・・そんな。」

目標の部屋に入ると、予想した通り、予想外だった光景が目に飛び込んできた。
バトルファイトの統制者、モノリスが淡い光を放っていたのだ。

橘「モノリスが目覚めたというのか・・・・?」

まるで這っていた赤子が立ち上がるかのように姿勢を変え浮き上がる。
データ採取用にと、システムと接続されたままのコードがだらりと垂れる。

『我が名はメビウス・・・・』

橘の目の前で、モノリスが音声を発しながら形状を変えていった。

橘「これは・・・・メビウスの輪?」

『我は・・全てを統制する者・・・・くびきを逃れようとする・・・・
 “プリキュア”と“ライダー”を・・・・・・・・処分するもの!』

橘「なに!?」

『そのための力を・・・・我は手に入れる!!』

次の瞬間、ひときわ強い閃光が放たれた。
そして、再び橘の視界に映ったのは、ただのがらんとした部屋だった。

橘「これは、一体・・・・?」

答えるものも無く、もはや時が止まったかの様に変化の無い部屋に、
彼はしばらく立ち尽くしていた。



うららかな午後、仲良し三人組は楽しい一時を過ごしていた。

ラブ「んー、平和だねー。」

美希「カオルちゃんの所にでも行く?」

祈里「そう言えば、今日新作を出すんだ、って言ってたよ。」

ラブ「へえー、じゃあ行こうか。一番乗りゲットだよ!」

祈里「賛成!」

美希「最近セールだからってプレーンシュガーばっかりだったもんね。」

談笑していると、前方に赤い光が発生した。
そこから駆け出して来たのは、三人にとって馴染み深い人物。

ラブ「・・・・・えっ、せつな?もしかして、カオルちゃんの新作を食べに!?」

美希「いや、そんな訳ないでしょ。」

すかさず美希が呆れ気味にツッコミを入れる。

祈里「じゃあ安売りだからプレーンシュガーを買いに・・・・。」

美希「それもない!」

せつな「ラブ・・・・。」

ラブ「え・・・・・・・・せつな?」

能天気に言っていたラブも、既に違和感を覚えていた。

せつな「ラブ・・・・助けてラブ!」

ラブ「せつな!どうしたの!?」

怯え切り、すがりつかんばかりだった。
苦しい戦いが続く中でも、気丈な彼女がを見せることは無かった様子。
いや・・・・もしかすると、かつてもこんな弱さを晒したことがあったかもしれない。
それは、彼女がまだ『イース』という名の少女であった時、
彼女が、信じていた組織も、己の正義も、全てを喪った時に・・・・。

祈里「その・・・・何があったの?」

せつな「メビウスが、メビウスが復活したの・・・・。」

「「「メビウスが!?」」」

聞いていた三人が思わず声を荒げる。

せつな「正確には、総統メビウスを名乗るものに襲われたの。
    プリキュア達の力が必要だと瞬と隼人が私をかばってくれて、
    それで、私だけは難を逃れられた・・・・けど・・・・二人は・・・・・・・・。」

美希「それって、本物なの?」

せつなが声を絞り出すように答える。

せつな「分からない。だけど、かつて傍に居た私の感覚だとあれは紛れも無く・・・・。」

祈里「そんな・・・・。」

せつな「本当は、もうみんなを巻き込みたくはなかった。
     けど、私だけじゃ不安で、メビウスを倒せるか、二人を助けられるか・・・・。」

ラブがそっとせつなの手を握った。

ラブ「せつな、正直言って、本当に総統メビウスが復活したのなら・・・・怖い。
   私も不安だけど、でも、力を合わせればきっとなんとか出来ると思う。」

祈里「わ、私も!そう信じる!」

美希「もちろん、あたしだって。みんなが揃わないと完璧にならないしね。」

せつな「みんな・・・・ありがとう。」

いささか落ち着きを取り戻した様子でせつなが言った。

ラブ「ううん、これは私達自身や大切な人達にだって、
   他のパラレルワードの人達にだって関わることだもの。
   だから、精一杯頑張らなきゃ!」

ラブがせつなに笑いかける。

せつな「・・・・そうね、行きましょう、みんなの幸せをゲットしに!」

せつなもラブに笑い返した。



睦月「橘さん、どうしたんですか?俺達に話って。」

橘「すまないな、睦月も忙しいだろうに。
  でも直接会って相談したいことがあってな。」

睦月「いえ、なんか会うのも久し振りですし。
   どうせなら、ハカランダに集まれば天音ちゃん達にも会えたかもですね。」

橘「いや、それは・・・・。」

橘が言いよどむ。

始「天音ちゃん達を巻き込まないようにするためだろう。」

睦月「えっ?」

橘「気付いていたのか。」

始「もちろんだ。統制者が動き出せば、嫌でも分かる。」

睦月「統制者って、もしかして!」

橘「おそらくお前が考えた通りだ。もう単刀直入に言おう。
   巻き込んでしまうことになるが、俺に力を貸して、戦ってくれないか?」

橘がレンゲルバックルを取り出した。

睦月「戦うって、統制者とですか?」

橘「ああ。これは俺の予想だが、統制者はバトルファイトの決着を狙うはずだ。」

始「つまり、俺達に干渉して戦わせようとするということだな。」

橘「あるいは、リセットを図って封印したアンデッドの解放を図るかもしれない。」

睦月「そうなる前に統制者を止めるために戦うんですね。」

橘「完全に倒せるのかは分からないがな。」

始「俺は戦う。下手をすると天音ちゃん達にまで危害が及ぶからな。」

睦月「俺にもやらせてください!

    以前の戦いで身を挺してくれた人達が居て、それで今の平穏があるんです。
    今度こそ、せめて俺もそれを守り抜くことで役に立ちたいんです!」

橘「そうか、じゃあこれを受け取ってくれ。」

睦月「はい。」

睦月が差し出されたレンゲルバックルを受け取った。

睦月「あれ、これカードは?」

橘「断られるかもしれなかったから、俺のカード以外は保管したままだ。」

睦月「そうでしたか。」

橘「じゃあ、俺の研究所に来て欲しい。改めて相談しよう。」

始「・・・・いや、それはやめた方が良いかもな。」

橘「なに?」

始「封印されていたアンデッドが解放されたようだ。」

睦月「本当ですか!?」

始「ああ、それも凄い量だ。この気配では、どんなに離れていても間違えようは無い。」

橘「くそっ、俺がカードを持って来ていれば!」

始「しかしその時はお前が狙われて、本当に全て解放されていた可能性も高い。
  結果的には正しい判断だったと考えるべきだろう。」

睦月「そうですよ、少なくとも橘さんの分は戦力を確保できたんですし。」

始「だが気は抜けないな。統制者がバトルファイトの再開として何を考えているか。
  もしかしたら、封印された全アンデッドを一旦解放するつもりかもしれないしな。」

橘「俺もまだ狙われるかもしれない、ということだな。」

始「それと、俺もな。」

睦月「え?・・・・あっ。」

橘「そうか、そう言えばそうだったな。」

睦月「なんか、忘れちゃってましたね。」

始「・・・・そうか。だとしたら、あいつのお陰だな。」

そこで、一同の間に沈黙が訪れた。

始「さて、ひとまずこの辺りから離れるとするか。
  狙われる恐れがあるのが二人も居るからな。」

橘「ああ、戦うにしても人の多い所は避けたい。」

睦月「でもどこへ?橘さんの研究所も襲われたって。」

始「む・・・・まずい、どうやらまた先手を打たれたぞ!」

睦月「どういうことです!?」

橘「・・・・なるほど、大量のアンデッドの反応が集中している。」

サーチャーを起動した橘が淡々と状況を伝える。

橘「だが妙だ、クラブのアンデッドだけが集結しているぞ。」

始「偶然とは考えにくい。何者かの意図で集められたということか。」

橘「誘い出されているのかもな。だが行くしかない!」

睦月「俺も行きます!スパイダーを封印してくれれば変身できますし。」

橘「分かった。変身できるようになるまでは人々の避難誘導を頼む。
  それと封印用のカードを渡しておくから倒した奴の封印もしてくれ。」

睦月「分かりました。」

橘「それと始、お前もカテゴリーエースを手に入れるまではそうしてくれ。」

始「なに?多数のアンデッド相手に戦力は多い方が良いだろう。
  俺はエース無しでも戦える。そこまで忘れたわけでもあるまい。」

橘「知っているさ。だが、狙いはジョーカーの戦闘本能の暴走かもしれない。
  だから、エースのチェンジ以外での変身も極力避けてくれ。」

始「そうか。確かにジョーカーの力の解放に付け込まれる恐れはある。
  お前の意見を認めはするが・・・・お前も俺に変身させないようにしろよ。」

橘「ああ。その気持ちだけをありがたく受け取っておけるようにする。」

睦月「じゃあ行きましょう!」



『バーニングディバイド』

「「グゲェーッ!!」」

分身したギャレンの蹴りが二体のアンデッドを同時に吹き飛ばした。
そのバックルが力尽きたのを示して展開した。

橘「睦月、スパイダーも倒した。残った奴等を相手にするから加勢を頼む!」

睦月「分かりました。俺も変身して・・」

 ヒュ・・・・トスッ

睦月「・・って、え?」

睦月がカードを投げようとした矢先、
いずこからか飛んで来たものがアンデッドのバックルに突き刺さった。

始「早く離れろ!様子がおかしい!」

睦月「えっ、えっ、えーーーっ!?」

慌てて走り去る睦月の背後でアンデッドの体が肥大、いや巨大化していった。
そして、ダイヤ形のカードにも見えた何かを取り込んだ二体が吼えた。

「「ナケワメーケ!」」

睦月「始さん、アンデッドってこんなことも出来るんですか!?」

始「いや、俺も知らん。あんな風に巨大なアンデッドなど見たこともない。」

睦月「で、でも明らかに大きくなって・・・・って、あれ!」

今まで気付かなかったが、示す方には少女達の姿があった、
巨大な怪物を見上げ、立ちすくんでしまったのか逃げる気配も無い。
それを見た睦月が慌てて駆けつけた。

睦月「き、君達、ここは危ないから・・」

「「「「逃げてください!」」」」

四人が口を揃え、怯えるどころか毅然とすらした態度で言った。

睦月「・・・・え?」

全く予想もしなかった事態に睦月の方が固まってしまった。

美希「しかたない、やりましょう。」

せつな「ええ、長居しなければたぶんバレても大丈夫よ。」

祈里「わかったわ。」

ラブ「それじゃあ、いくよみんな!」

「「「「チェインジプリキュア!ビーートアップ!!」」」」

相変わらず睦月はぽかんと言葉を失ったままだった。

ラブ「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」

美希「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ、キュアベリー!」

祈里「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!」

せつな「真っ赤なハートは幸せの証!うれたてフレッシュ、キュアパッション!」

「「「「レッツ・プリキュア!!」」」」

四人は光をまとったかと思うと、別の姿に変わっていた。
彼がよく知る変身とどことなく似ているようでも、全く異質な様でもあった。

「「ナケワメーケ!!」」

今はナケワメーケと化した二体のアンデッドが睦月めがけて光弾を放つ。

睦月「ひぇっ!」

「「「悪いの悪いの、飛んで行け!」」」

ラブ「プリキュア・ラブサンシャイン!」

美希「プリキュア・エスポワールシャワー!」

祈里「プリキュア・ヒーリングプレアー!」

「「「プリキュア・トリプル・フレーーーッシュ!」」」

ぶつかり合った攻撃が激しい爆風を引き起こした。

せつな「く・・・・大丈夫ですか?」

睦月「お、おかげさまで。」

キュアパッションにかばわれた睦月が弱々しく答える。

せつな「良かった。危ないですから、この場を離れてください。」

睦月「は、はい・・・・。」

促されるままに、睦月はいそいそと立ち去るのだった。



橘「おい睦月、これはどうしたんだ!」

ぽかんと成り行きを見守っていた睦月に、一通り片付けて来たギャレンが問う。

睦月「いや、その・・・・知りませんよ!俺が知りたいくらいですよ!」

「「「「ダブルプリキュアキーーーック!!」」」」

二人同時のキックが二体それぞれに突き刺さり、ナケワメーケ達が崩れ落ちる。

始「戦い慣れているようだな。個人の動きもそうだが、それ以上に連携が見事だ。」

睦月「一体何者なんでしょうね。」

橘「とにかく援護する。あの巨体相手でも、キングフォームなら!」

始「!?橘、かわせ!」

次の瞬間、ギャレンが手にしていたカードの1枚を光が射止めた。
そして、カードに封印されていたアンデッドが解放される。

?????「くそぅ、1枚だけだったか!」

????「それでもよくやったよ、テイピアアンデッド。」

?????「アルティメットトリガー、ヒット!さあカードのコストを言え!」

????「君は何を言っているんだ?
       ・・・・どうやらカテゴリーキングだからコスト13、Xレア級とかなのかな。」

?????「お前、実は分かってるだろ。」

橘「なんなんだお前達は!」

????「そうだね、とりあえずは君達ライダーと、
       そしてあそこに居るプリキュアを倒す者、とだけ言っておくよ。」

橘「なに!?」

?????「早速、俺のクワガタでアタック!」

???「それはいいが、僕に被らないでくれるかい?」

命令を受け、たった今解放されたギラファアンデッドが動き出した。

橘「くそっ、ここは俺に任せろ。お前達は彼女達に新手のことを伝えてくれ!」

『アブソーブクイーン』『フュージョンジャック』

ギャレンジャックフォームの銃剣が、ギラファの双剣を受け止めた。

睦月「わ、分かりました!」



ラブ「届け!愛のメロディ!ピーチロッド!!」

美希「響け!希望のリズム!ベリーソード!!」

祈里「癒せ!祈りのハーモニー!パインフルート!!」

せつな「歌え!幸せのラプソディ!パッションハープ!!」

ラブ「プリキュア・ラブサンシャイン・フレーッシュ!!」

美希「プリキュア・エスポワールシャワー・フレーッシュ!!」

祈里「プリキュア・ヒーリングプレアー・フレーッシュ!!」

せつな「プリキュア・ハピネス・ハリケーン!!」

「「ナケワメーケ」」

土煙を巻き上げるほどの四人の一斉必殺技で二体のナケワメーケが浄化された。

祈里「ふぅ。これでさっきの子達も元の動物さんに・・」

もうもうと舞い上がる土煙の中から、見たこともないような異形の怪物が飛び掛かった。

祈里「え、なんで!?」

美希「パイン!」

戦いが終わったという油断もあったのか、一同もとっさに反応できなかった。

始「危ない!」

襲い掛かってきたスパイダーアンデッドの攻撃を始が腕で受け止めていた。

祈里「あ、あなたは?」

始「・・・・やるしかないな。」

祈里「!?」

始の姿がジョーカーの姿 ―― 攻撃してきたものと似た異形 ―― に変わった。
それとほぼ同時だった。

「グァッ!!」

手にした武器が一振りされ、
スパイダーアンデッドが封印されたカードが地に舞い落ちていた。

睦月「始さん、もう一体はまだ力尽きたままだったので封印できました!」

始「そうか・・・・。」

『スピリット』

始が人間の姿に戻った。

祈里「え?え?今の、いったい・・・・?」

ラブ「あなたは・・・・?」

起き掛けた混乱は、乱入者によって収まった。

橘「ぐあっ!!」

せつな「ピーチ!あっち!」

ラブ「・・・・!」

あるいは、また別の混乱に上塗りされただけかもしれない。

睦月「橘さん、大丈夫ですか!」

ギラファに吹っ飛ばされてきたギャレンの変身が解除された。

橘「すまない・・・・俺の力が及ばなかったようだ。」

???「ふふ、流石に力尽きたみたいね。でも腕は落ちていないようね。
      プリキュア達、そして、仮面ライダーギャレンにジョーカー!」

橘「俺達を知っているようだが・・・・お前は何者だ!」

祈里「あなたは・・・・。」

美希「ノーザ!」

ノーザ「あらあら、覚えておいていただけたなんて光栄ね。」

せつな「また復活していたのね。」

ノーザ「いいえ、正確には新たな力と共に生み出していただいたの。
    偉大なる、統制者メビウス様にね。」

ラブ「統制者・・・・メビウス?」

ウエスター「そう、もはやメビウス様は総統ではない、統制者となられたのだ!」

サウラー「そして僕らはその偉大なる統制者メビウス様がしもべ・・・・という訳さ。」

せつな「隼人!瞬!生きていたのね!!」

敵としての再会ではあったが、二人の無事にパッションが感激の声を上げる。

サウラー「なんだい、君は?」

ウエスター「お前、知り合いでもないのに馴れ馴れしいぞ!」

せつな「・・・・え?」

祈里「二人を操っているのね!」

ノーザ「うふふ、ちょっと違うわ。
    その二人はね、メビウス様が直々に『再教育』してくださったのよ。

     それで余分な記憶は削除した、ってわけ。完全にね。
     だから、操っているのではなく二人自身の意思よ。
     今の、そしてこれからの二人の、ね。」

ノーザの表情が笑みを帯びた。

せつな「そんな・・・・。」

対照的に、一転絶望に突き落とされたキュアパッションの表情は暗く沈む。

美希「またパラレルワールドの支配を目論んでいるのね!」

祈里「そんなこと、絶対にさせないんだから!」

ノーザ「さあ、それはどうかしらね?」

はぐらかすようにノーザが笑う。

ノーザ「まあ、その前にやるべきことがある、ってところかしら。」

ラブ「それは何だというの。」

ノーザ「ふふふ、その内に分かるわよ。これはほんのご挨拶。また会いましょう。」

ノーザの背後で移動用の空間が口を開けた。

ラブ「待ちなさい!」

ノーザ「またね。テイピア、お相手を頼むわよ。」

ウエスター「ノーザさん、俺の強いクワガタくんはどうしますか!」

サウラー「ギラファアンデッドだ。あと君のじゃない。」

ノーザ「ギラファはこちらにいらっしゃい。
     『捨て札』も『切り札』もタイミングが大事だものね。」

そう言い終わるとほぼ同時に、四人分の姿は消えていた。
一方、残ったテイピアアンデッドはプリキュアへの攻撃態勢にあった。

美希「さっきのと同じような怪物みたいね。」

祈里「来た!」

四人のプリキュアが散開してかわす。
が、先程のショックか、動きに精彩が無いパッションにテイピアが肉迫した。

せつな「しまった!」

『オープン アップ』

パッションの脇を飛び抜けた光の壁に、テイピアの体が弾き飛ばされた。

睦月「君を傷つけさせはしない。今度は俺が助ける番だ。」

アンデッドを拒絶した光の壁が、構えた睦月の体に重なっていく。

橘「睦月、任せていいか。」

睦月「もちろんです!」

力強い言葉と共に仮面ライダーレンゲルが再誕していた。

始「奴の舌に気をつけろ。」

睦月「え、舌ですか?」

既にアリクイの祖、テイピアの舌は鞭の様に放たれていた。

睦月「わっと!」

すんでのところで受け止めたレンゲルラウザーがからめとられた。

睦月「くっ、こいつ結構力が強いぞ。」

テイピアもラウザーの重要性が分かっているように舌を離さない。

橘「ラウザーを奪われたらまずい・・・・始、あの舌を切断できるか!?」

始「ああ、おそらくな。」

睦月「いえ、大丈夫です。俺一人でこいつは倒します。」

橘「なに?」

睦月「むしろ、このまま引っ張り合いをしてくれていた方がいい。
    だから始さん、ここは変身しないで見ていてください。」

橘「だが・・・・。」

『バイト』

睦月「橘さん、俺だっていつまでも助けてもらってばかりじゃありません!」

『ブリザード』

力を振り絞り、なんとか二枚のカードをラウズしたレンゲルが一転力を抜く。
テイピアに引っ張られる形で倒れこみつつ、ラウザーを地に突き立てた。

『ブリザードクラッシュ』

棒高飛びの要領で宙に舞い上がり、空中で2枚のカードの力を身に纏う。
いきなり力を抜かれて後ろに体勢の崩れたテイピアアンデッドに
レンゲルの必殺の蹴りが真っ向から炸裂した。


吹き飛ばされて大の字にのびたテイピアアンデッドへ睦月がカードを投げる。
そのカードの中に、アンデッドの体が吸い込まれるように消えた。

美希「えぇっ!?そのカードは一体、と言うか、あなたは一体何者なんですか!?」

睦月「俺達は仮面ライダー、アンデッドを封印する者さ。」

変身を解いた睦月が答えた。

ラブ「封印?」

ラブ達も同じく変身を解く。

橘「アンデッドはその名の通り死なない、完全には倒せないんだ。
   いくら倒しても、放っておけば回復して活動を再開してしまう。」

睦月「さっき君達を襲ったスパイダーアンデッドも、おそらく回復したんだろうね。
   ・・・・もしかすると、橘さんがしっかり倒せていなかったのかもだけど。」

橘「・・・・。」

祈里「そう言えば!すみません、さっきは助けていただいて。」

先程の一件を思い出し、祈里が始に頭を下げる。

始「気にするな。」

祈里「だけど怪我をしてるんじゃ・・・・えっ、その血の色!?」

傷口を押さえる手の隙間からアンデッド特有の緑の血がにじみ出ていた。
“人間”ならありえないものを目にし、悲鳴に近い声が上がった。
そんな様子を見た始が、緑の血を見せ付けるかのように傷口から手を離した。

始「・・・・見ての通りだ。俺もさっきの奴と同じ“化け物”という訳だ。
  分かったのなら、危険な目に遭わない内にさっさと帰れ。」

そして“化け物”という部分をことさらに強め、冷たく言い放った。

ラブ「でも・・・・あなたは助けてくれた。それも自分の身を挺して。」

始「・・・・。」

ラブ「その傷は、私達を助けてくれるために付いたもの。
    そこから流れる血の色は関係無い・・・・違いますか?」

せつな「血の色よりも、出る量が心配ね。結構深い傷みたいよ?」

やや落ち着いたのか、せつなが冷静に観察して言う。

ラブ「えっ!?・・・・あっ、本当だ!」

祈里「ありがとうございます、こんなひどい怪我までして助けてもらって。」

同じく落ち着きを取り戻したと思しき祈里が、改めて深々と頭を下げた。

始「心配するな、すぐ治る。治癒力は高いんだ。」

祈里「いけませんっ!バイ菌が入ったらどうするんですか!」

始「あ、いや、すまない。」

予想外の剣幕に始がややたじろぐ。

ラブ「ブッキー、流石獣医さんの卵だなあ。」

美希「でもここは私に任せて。」

ハンカチを取り出すと、手際よく始の傷口に処置を施した。

美希「こんなものかしら・・・・うん、応急処置においても私完璧♪」

せつな「応急なのに完璧なの?」

美希「う、うるさいわね。言葉のあやよ。」

せつな「ふうん。」

ラブ「ふふっ、二人ともなんか相変わらずって感じだね。」

祈里「うん。」

四人で共に過ごしていた時間が、そのまま帰って来たようだった。

始「すまないな、ハンカチを駄目にしてしまって。」

美希「気にしないでください。」

始「そうか。しかし、さっきの戦いぶりといい、君達は物怖じしなくてすごいな。」

ラブ「いやぁ、その辺は色々ありまして。」

祈里「頑張っていたらいつの間にか。」

せつな「これでも、色々なパラレルワールドを渡り歩いて、色々な経験もしてますから。
    姿が人間と違っていたり、そもそも生き物っぽくない“人達”に会ったりとか。」

祈里「そうですよ、それに血の色なんて生き物によって全然違うんですから!
   例えばイカやタコなんて、血の色は青色なんですよ!?」

美希「それはちょっと失礼なんじゃない?イカはともかくタコなんて・・・・。」

ラブ「えっと・・・・ミキタンが嫌いなのは分かるけど、どっちもひどいんじゃなイカな?」

せつな「確か血の色って血中の金属イオンの種類なんかの成分で変わるのよね。
     要するに、住環境とそこへの適応の仕方の違いよね。」

美希「せつなったら冷静ね。」

そんな様子を見ていた始の顔に笑みがこぼれた。

橘「すまない。ちょっと聞いていいかい?
  さっきから言っている『パラレルワールド』というのは一体?」

当然と言えば当然の問い掛けに、四人が顔を見合わせる。
どう答えたものか、と思案していたようだが、その内せつなが口を開いた。

せつな「あまりにも突飛で信じられないかもしれません。
    でも、それが一番だと思うから、ありのままを話します。

     パラレルワールド、数限り無く存在する様々な世界。
     私はこの世界じゃない、他の世界の一つから来たんです。」

睦月「え?え?」

橘「だとすると、さっきの得体の知れない怪物とそれを操っていた連中も・・・・。」

せつな「はい。」

橘「やはりそういうことか・・・・。」

睦月「橘さん、あっさり信じちゃうんですか!?」

橘「そうならば、一応納得は出来るからな。」

睦月「そうかもしれませんけど・・・・始さんは?」

始「信じるさ。人間でない俺を信じてくれたんだからな。」

何のためらいも無くそう答えた。

橘「睦月は信じられないのか?」

睦月「いや、信じる信じない以前に理解が及ばないとでも言うか・・・・。」

橘「じゃあ、こう考えろ。パラレルワールドなんて関係無く、
  俺達が、俺達の居るこの世界を守るためにすべきことは?」

睦月「統制者達・・・・アンデッドやさっきの怪物達を倒して決着をつけることです。」

橘「そういうことだ。だったら、彼女達の力を借りた方がいいだろう?
  少なくとも、あの怪物と戦うのは俺達よりも彼女達の方が上のようだ。」

始「だが、よその世界のために危険に巻き込むことになるかもな。」

ラブ「それは違います。」

始「なに?」

美希「私達は、メビウス達を倒すためにここまで来たんです。」

祈里「だから、巻き込まれるなんてことはありません。」

一片の迷いも無い言葉だった。

睦月「はぁ・・・・たくましいなぁ。」

せつな「それよりも、さっきのアンデッドというのは何者なんですか?
     どうやらナケワメーケを生み出すのに使われていたようですが。」

睦月「えーと、ナケワメーケって?あのでっかい怪物?」

ラブ「えっとえっと、それはですね。うーん、何から説明すればいいんだろう。」

情報が錯綜し、一同が頭をひねる。

橘「・・・・よし、一旦場所を変えよう。お互い情報を伝え合って、どうするか決めよう。
  ここであれこれ話していても、すぐには収拾がつかなそうだ。」



そんなこんなで所変わってハカランダ。

睦月「橘さん、今の状況でここに来ちゃって本当に大丈夫なんでしょうか?」

橘「虎太郎に連絡して、牧場内の建物を使わせてもらうようにしたからそれが整うまでだ。
  確かに巻き込む恐れもあるが、奴らがその気ならどこに行っても同じようなものだしな。」

始「奴らは俺達の情報を知っていたようだから、ここに居た方が良い可能性もある。
  人質にしようとかで狙われたのなら、むしろすぐに守ることが出来る。」

睦月「そっか、そうかもしれませんね。」

ラブ「あの、ここってお知り合いのお店なんですか?」

睦月「まあね。あと、始さんが住み込んでいる所。」

始「気に入ってくれるといいが。」

祈里「なんだか落ち着いた雰囲気で素敵です。」

美希「ぬくもりがある感じよね。」

始「そうか、それは良かった。」

橘「とりあえず何か飲み食いしながら話そう。
  勘定は俺が持つからみんな好きな物を頼んでくれ。」


橘「・・・・とまあ、アンデッドと俺達の今までの戦いはそんな感じだ。」

祈里「じゃ、じゃあ、そのバトルファイトというので、
   この世界が滅んじゃうかもしれないんですか?」

橘「少なくとも人間の築いた世界はな。以前は一応食い止められたが・・・・。」

美希「食い止めるには、人間の代表のアンデッドが勝ち残ればいいんですね。」

橘「それか、決着の無期延期だ。つまりアンデッドが二体・・・・
  いや、二人以上存在した状態で戦いが起きないか、起きても一方が封印されなければいい。」

始「もっとも、いつか崩れるかもしれない、仮初の決着かもしれないがな。」

睦月「そんなこと無いです、俺はふたりを信じています!」

ラブ「え?」

睦月「あ、いやその・・・・俺が会ったアンデッドにも色々居たんだ。
   中には『心』を持っていて、もちろん種族の代表だから人間と相容れない部分も有ったけれど、
    だけど、通じ合える部分も有るって分かった。だから、信じられるんだ、最後のふたりも。」

始「・・・・そうか。」

美希「あ、もしかして始さんがそのヒューマンアンデッド?」

祈里「ご先祖様なんだー。」

始「いや違う。俺はジョーカー、早く決着するようにアンデッドをひたすら倒す存在だ。
  ただ戦うためだけに存在する、獣のようなものだ・・・・。」

睦月「『だった』でしょう?」

始「そうかもな。ヒューマンアンデッドと会い、封印したその日から変わっていった。
  戦いに疑問を抱くようになり、次第に心というものを持っていった。

   最初はまだ人間の心ではなかったが、ある人達との出会いがぬくもりを教えてくれ、
   そして、あいつは・・・・・・・・。」

そこで少し言葉が途切れた。

始「あいつは・・・・こんな俺を、いや、まだ化け物じみた心をしていた俺を信じてくれた。
  あいつが、人の心の、最後まで信じ抜いて戦い抜く強さを教えてくれた。
  それまでの俺には、ただの戦闘マシーンには無かった強さを教えてくれたんだ。」

ラブ「あのー『あいつ』というのは?・・・・・差し支えなければですけど。」

睦月「それは・・・・ライダーの最後の一人、剣崎一真さん。
   仮面ライダーブレイドだよ。今は、ちょっと居ないけどね・・・・。」

意味ありげな様子に、それ以上の追究は誰もしなかった。

橘「ただ、元々がジョーカーだった始は、心はともかく、
  人間の姿はヒューマンアンデッドのカードが無いと維持できない。
   だから、ヒューマンアンデッドを解放するわけにもいかない。」

睦月「つまり、ヒューマンアンデッドを勝者には出来ないってこと。」

ラブ「そういう事情があったんですね。」

橘「ただ、俺達も迷ってはいた。
  ジョーカーを含む全てのアンデッドを封印してバトルファイトを再発させないだとか、
  あるいはヒューマンアンデッドを解放しようという考えもあった・・・・だが、出来なかった。
  解放してバトルファイトに復帰させる手段が無かったというのもあるが、心情的にもな。
  だが、それによって犠牲者が増えたかもしれない、俺達が、決断できなかったせいで・・・・。」

沈痛な言葉に、場が静まる。

せつな「私は、それで良かったんだと思います。」

それまで沈黙を守って聞いていたせつなが、静かに、だがはっきりと言った。
一同の視線を受けながら、変わらず毅然と続けた。

せつな「私達は、確かに戦士で、大事なものを守るために戦っています。
     戦う力を持たない人達の分も戦うんだという使命感もあります。
     ただ、それでも私達には心が、強い部分と弱い部分があります。」

毅然としていた様子が、そこで少し崩れた。

せつな「私も・・・・時には何が正しいのか分からなかったり、
     きっとそれが正しいことだと信じていたのに、
     後から過ちだったと、取り返しのつかない後悔に苛まれることも・・・・。」

そこまで言ってせつながうつむく。

せつな「だけど、その時点で正しいと思ったことを迷わずにやろうと決めたんです。
     そうでないと、もう精一杯頑張れないから・・・・。」

ラブ達が、こくりと肯定を示した。

始「そうか・・・・そうして、君達は強くなっていったんだな。」

橘「考えてみれば、俺も散々悔やんでばかりだ。」

睦月「そうですね、騙されたり、利用されたり、操られたり・・・・。」

美希(どれもほとんど変わらないような・・・・)

橘「でも、だからと言ってうじうじしていては駄目なんだな。
  むしろ、挽回するために前を見ないとだ。」

睦月「とは言え、ナケワメーケ退治には彼女達の力を借りないとですけどね。」

橘「だな。言ってるそばから情けないが。」

ラブ「そんな。私達だって、アンデッドは封印していただかないと駄目ですし。」

美希「力を合わせるのが必須ということね。」

せつな「ええ、アンデッドをナケワメーケにされたら、
     ライダーだけでも、プリキュアだけでも勝てない。」

始「ところで、アンデッドへの警戒ももちろん必要だが、
  そのメビウスがインフィニティというのをまた狙う恐れは無いのか?」

ラブ「それは大丈夫だと思います。シフォン・・・・インフィニティの力を持った子は、
   パラレルワールドの一つにかくまってもらってますから。」

せつな「万が一の事があっても、私のアカルンでワープして駆けつけられます。」

始「なるほど・・・・君の力さえあればすぐに向かえるということか。」

説明を聞いた始だが、安心した様子はあまり無かった。

睦月「・・・・始さん?」

始「いや・・・・なんでもないんだ。」

橘「そのアカルンの力なら、メビウスに一気に奇襲できたりもするのかい?」

せつな「残念ながらそれは難しいです。居場所も不明で、闇の力の妨害もあるでしょうし。
     せめて私が良く知っている場所や、何か目印になるものでもあれば分かりませんが。」

橘「となると、アンデッドの気配を探るか、奴らが攻めて来た際に手掛かりを得るしかないか。」

美希「それだとしばらく防戦一方になっちゃいますね・・・・。」

睦月「だけどアンデッドを封印していけば俺達の力も増すし、
   幹部連中も自分が出向かなきゃいけなくなる。みんなを守れるのなら防戦でもいいさ。」

祈里「そうですね。攻めるのも大事ですけど、まずはみんなを守る作戦を考えた方がいいのかも。」

そこで入り口が開き、一同の会話は遮られた。

天音「あーっ!始さん達、何してるの?」

何も知らない天音の素っ頓狂な声であった。

始「天音ちゃん、おかえり。」

始の顔に自然と笑顔が浮かぶ。

天音「始さん、ただいま。」

天音も笑顔で応える。

睦月「天音ちゃん、どうしたの?大声出したりして。」

天音「もう、とぼけちゃって。」

睦月「へ?」

天音「私くらいの年の女の子達をナンパしてた、って望美さんに言っちゃお。」

睦月「な!?違う、違う、そんなんじゃないよ!」

天音「ムキになるのが怪しいのよねえ。」

橘「いや、本当にそうじゃないんだ。」

天音「ふふふ、分かってますよ。睦月さんにそんな甲斐性あるわけないし。」

睦月「そう言われるのはそう言われるのでなんか腹立たしいけどね。」

天音「で、何を話してたの?」

橘「実は・・・・天音ちゃんも虎太郎が昔書いた本のことをちょっとは知ってるかな?
  『仮面ライダー』という存在が戦った怪物・・・・彼女達はそれに襲われたんだ。」

天音「えぇっ!本当に!?」

始「ああ。念のため天音ちゃんも気をつけるんだよ。」

天音「大丈夫だよ、私には始さん達がついていてくれるもの。
   あなた達も安心だよ、私ね、昔も何度か守ってもらっちゃったんだから。」

ラブ「そんなことがあったの!?」

祈里「無事で良かったね。」

天音「うん。あなた達も気をつけてね。特別に始さんに守ってもらってもいいよ?」

美希「あらあら、始さんのことが大好きなのね。」

天音「えへへ。」

どことなく誇らしげに天音が笑う。

せつな「私達も守ってもらっちゃっていいのかしら?」

天音「だから、特別にだよ。ちょっと複雑だけど・・・・そうだ!」

祈里「どうしたの?」

天音「私達、お友達になろう?大事なお友達のためなら、きっと悩まなくていいもん。」

ラブ「そっかー、確かに名案だね。じゃあ、よろしくね。」

ラブがすっと手を差し出した。

天音「うん。」

天音がその手を握り返した。

ラブ「よし、これで握手をしたからお友達。さっ、みんなも。」

美希「私は蒼乃美希、よろしくね。」

引き続き、美希達も手を差し出した。

天音「私は栗原天音。よろしくね。ねえ、あなた達のこと、色々教えて?」

一通り握手を済ませ、五人は何やら話し出した。
そんな様子を微笑ましそうに睦月が見ていた。

睦月「やっぱり、年齢が近い女の子同士だとなじむのも早いんでしょうかね。」

始「かもな。天音ちゃんも楽しそうで何よりだ。」

橘「さて、彼女達が居ればここも安心だろうし、虎太郎の手伝いでもするか。」

睦月「ですね。」

橘「じゃあ始、何かあったら連絡を入れるから一応ここに居てくれ。」

始「分かった。そちらは任せた。」



数時間後、一同は再び戦いの渦中に置かれていた。
今度の相手はハートスートのアンデッドの群れ。
今回はギャレンに加えてレンゲルも復帰している上、プリキュアも合流していた。
彼女達は近い間合いでの格闘戦と距離を置いた飛び道具でのサポートの両面をこなし、
終始優勢を維持したままで戦いを展開できていた。
しかし、それに反して一同は不安を払えなかった。

戦局が優位であるのは、ナケワメーケもそれを生み出す幹部も不在のため。
何故この場にはアンデッドしか居ないのか。
アンデッドの数からして、何の狙いも無く送り込まれたとも思えなかったのだ。
目に見えない何かに絡め取られるような、嫌な感覚がまとわりついていた。


祈里「危ない、始さん!」

パインが気付いた時、一体のアンデッドが始に向かい呻く様な声を発していた。
期待していたハートのエースも手に入れておらず、まだ安心して戦える状態ではない。

始「いや、大丈夫だ。・・・・ちょっと待っていてくれないか?」

祈里「えっ?」

割って入ったパインを制した始は、未だ唸り続けるアンデッドを観察しているようだった。

始「・・・・すまなかった、俺はもう下がらせてもらう。」

祈里「あの・・・・きゃっ!?」

始に向かって話しかけようとした時、傍のアンデットが背後からの攻撃で吹き飛ばされて来た。

睦月「・・・・・・・・スピニングダンス。」

美希(後から自分で言うんだ・・・・。)

睦月「はい、始さん、ハートのカードです!」

始「ああ、すまないな。」

睦月「ただ、カテゴリーエースは無かったんです。」

始「そうか。あとはあちらだが・・・・。」

目をやった方でも、丁度決着したところのようだった。

ラブ「・・・・終わりましたね。」

橘「ああ。これで全部のようだな。」

美希「でも、なんでアンデッドだけだったんでしょう。」

せつな「幹部達が居ないのは、何か他の目的で行動しているからだとしても、
     ナケワメーケを生み出しておけば時間稼ぎにはなるはず・・・・。」

始「・・・・・・・・。」

橘「始、お前も気になっているのか?ハートのアンデッドが集まっていたのに、
  カテゴリーエースだけが含まれていなかったのを。」

始「ああ・・・・まあな。だが、敵もその辺りの重要性は知っているのだろう。」

睦月「これからどうしましょうか?」

始「特に情報もつかめなかったから基本的には待ちの姿勢だろうな。」

橘「そうだな。じゃあ敵が動くまでの間に虎太郎の手伝いをして、
  それが終わったら休息に充てよう。」

睦月「そうですね。橘さんもなんだかんだで戦い詰めですし。」

ラブ「あの、じゃあ私達もお手伝いさせてください。」

始「いや、俺達に任せてくれ。その間、天音ちゃんと仲良くしていて欲しい。」

睦月「ふふっ、女の子には甘いですね。」

始「おい。」

睦月「冗談ですって!」

始「まあいい・・・・君達には俺達が居ない間、天音ちゃん達を守って欲しい。」

せつな「なるほど。分かりました。」

始「天音ちゃんも君達を気に入ったみたいだし、よろしく頼むよ。」

美希「うふふ、どうでしょう?なんとなく、始さんを自慢したかったみたいでしたけど。」

ラブ「そうそう。私達も同じに助けてもらったからって、安心して話せるみたいだったね。」

美希「やっと気兼ね無く話せる相手を見つけられた、ってことなのかもね。」

始「そうか。じゃあ、その期待を裏切らないようにしないとだな・・・・。」

祈里「・・・・・・・・。」

どことなく陰のある始の表情を、祈里が不安げに見つめていた。


夜中、明かりの無い山中を始が一人歩いていた。
そして、進む先にはもう一人の姿。

始「おい・・・・来てやったぞ。」

ノーザ「あらぁ、女性からのお誘いなのに待たせるなんて、男として失格ね。」

始「ふん、生憎だがそこまで人間が出来ていないからな。」

ノーザ「ふふふ。でもお誘いが伝わって良かったわぁ。」

始「よく言う。カテゴリーエースを餌に、それも、スートで揃えたアンデッドを繰り出して
   スパイダーを渡しておくことで、変身できない俺でも確実に赴くように仕向けてくれてな。」

ノーザ「人聞きの悪いことを言うのね。でも、それだけ貴方を重視してる、ってことよね?」

始「さっさと本題に入ってもらおうか。」

ノーザ「そうね。貴方、こちらに戻ってきなさいよ。」

始「どういう意味だ?」

ノーザ「貴方は前回のバトルファイトでの本来の勝利者。
     貴方が本分に目覚めてリセットを望めば、それで丸く収まるわけ。」

始「なるほどな、そういう魂胆か。」

ノーザ「貴方だって分かっているんでしょう?
    今は人間ごっこをしているかもしれないけれど、それも長くは続かない。
     不老の貴方と違って、周りの人間は老いて死ぬわ。
     あるいは、その前に気味悪がられて・・・・ふふ、かわいそう。」

始「くっ・・・・余計なお世話だ。」

ノーザ「だから、これは貴方のためでもあるの。
    思い出は美しい内に、美しいまま終わらせる方が互いに幸せじゃないの?
     まあ・・・・不幸なら不幸で蜜の味、なのだけどねぇ。」

いかにも始の将来に思いを馳せて、といった様子で舌を舐めずる。

始「だったら、自分の不幸でも存分に味わうんだな。」

既に言葉も殺気を帯び出していた。

ノーザ「まあ怖い怖い。うふふ、貴方が拒もうとする理由、分かるわよ?
    だから・・・・こちらも譲歩してあげようと思うの。」

始「譲歩だと?」

ノーザ「貴方が守りたいもの、栗原天音とその家族よね?
    貴方が他のライダーとプリキュア達を葬れば、
     その功績に免じてこの世界は目こぼししてあげてもいいわ。」

始「なんだと!?」

ノーザ「あらぁ、いい条件だと思わない?貴方なら連中も油断するでしょ?
    ナケワメーケに一騒ぎさせたら力を合わせることにしれくれたみたいだし、
     お膳立ても済んで、まさに今がうってつけ、ってわけ。」

始「貴様そこまで・・・・ふざけるな、そんなこと出来るか!」

ノーザ「へぇ、どうやら本当に“人間の心”とやらが根付いてしまっているようね。
    でも・・・・合理的に考えてごらんなさい?

     全てを失うか、それとも大切なものだけでも守るのか。
     人間が、時として自分の利で動くのはよく知っているでしょう?」

始が、思い当たる節があるという顔をした。困惑も見て取れる。

始「・・・・・・・・少し時間をくれ。」

ノーザ「あらあら、本当に人間みたいな反応だこと。」

ノーザがくすくすと笑う。

始「かつてなら、何も考えなかったんだろうがな。結論が出たら答えを伝える。」

ノーザ「ま、いいわ。せっかく知恵を付けたのなら冷静に考えることね。」

始「ああ。だがそれまでは干渉はやめてもらおうか。決まったらどうする?」

ノーザ「そうね、一人の男が触れてはいけないものに触れ命を落とした場所。
    その全ての始まりである地にいらっしゃい。」

始「全ての始まり?」

ノーザ「ええ、貴方にとってもね。手土産持参でも大歓迎よ。ふふふ・・・・。」

始「なるほど・・・・ジョーカーがジョーカーでなくなった一つのきっかけ、
  それが起きた場所を拠点に統制者が巻き直しを行う、という趣向か。」

ノーザ「ふふ、そういうことかもね。」

始「そうか。それだけ聞いておけばもうお前に用は無い。」

先程までの迷っていた素振りを消した始がきっぱりと言い放つ。

ノーザ「へぇ、もしかして余計な知恵も付けていたようね?」

始「俺は、統制者と戦う道を選ぶ。そして守りたい全てを守る。」

ノーザ「あらあら。思い出しなさい、元々の貴方は統制者の忠実なるしもべ。
     ある意味、他のアンデッドよりも、一番貴方が・・・・ね?」

始「確かにな。自分が無く、ただ『機能』の通りに動くだけなのだからな。
  思い出せか・・・・忘れられるのなら忘れたい、忌まわしき『過去』だ!」

ノーザ「全部を守る、そんなことが本当にできるとでも?」

始「出来る出来ないではなく、とにかくやれるだけをやるんだ。
  それが、俺に『今』を与えてくれた男の心だ!」

ノーザ「・・・・そう。その様子じゃ、交渉は決裂ね。」

その言葉とほぼ同時に、周囲の闇が更に濃くなった。

ノーザ「ちょっとした結界を張らせてもらったわ。
    逃げられないように、それとお邪魔虫が入らないようにね。」

始「ふん、たいした自信だが、逆にお前の命取りになるかもな!」

始が身構える。

ウエスター「そうはいかん!」

サウラー「いいのかい、こちらもノーザさん一人ではないよ?」

ウエスターとサウラーがノーザの脇に現れた。

始「最初から潜んでいたか。まあいい、まとめて片を付けられる。」

ノーザ「まあ。貴方はもっと賢いと思っていたわ。」

ウエスター「戦いでは頭も大事なのだ、頭も!」

サウラー「君が言うとなんか空しいな。」

ウエスター「とにかく、これは数を利用した戦法なのだ。
        『3対1とか卑怯じゃね?』とかは聞かんぞ!」

睦月「だったら俺達も混ざらせてもらうぞ。」

ウエスター「貴様は・・・・ライダーその1!」

睦月「失礼な呼び方をするな!」

サウラー「仮面ライダーレンゲルの適合者か。そして、そちらにはギャレンも。」

ウエスター「プリキュア達もばっちり居るようだな。」

ノーザ「あらぁ、この結界はアカルンでも越えられなくしたはず・・・・だとしたら。」

せつな「そう、私達も最初から結界の範囲内に居たのよ。」

サウラー「どうやってここを突き止めたんだい?」

美希「それも最初から知っていたのよ!」

ウエスター「なんだと!?」

祈里「あなたが始さんに伝えさせたメッセージ、キルンが教えてくれたわ!
    『あの家族が大事なら一人で来い』って脅して呼び出したって!」

橘「こうなるだろうと思ったからな、悪いが後をつけさせてもらった。
  神出鬼没のこいつらの尻尾をつかんで叩くチャンスなんでな。」

ラブ「観念しなさい、ノーザ。」

美希「あなたも強くなっているのかもしれないけれど、みんなの力を合わせれば!」

せつな「ここで決着をつけさせてもらうわ!」

しばらく無言を貫いていたノーザの口の端が歪む。

ノーザ「出し抜いたつもりが出し抜かれた・・・・・・・・とでもぉ?」

ノーザの顔が笑みをたたえる。そこには怒りや憎悪といった負の感情の類は無い。
むしろ、愉快さをこらえきれないといった様子にすら感じられる。

睦月「何がおかしい!いくらお前らでも俺達全員を相手に・・・・。」

ノーザ「ええ、勢揃いね。勢揃いだわぁ。」

せつな「まさか、何か企んでいたというの?」

ノーザ「聞こえたはずよ、相手は私だけではないと。」

美希「どういうことよ!」

ウエスター「いいだろう、聞かせてやる。こんなこともあろうかと!
        密かに強化したアンデッドを栗原家の周辺に配備しておいたのだ!」

ラブ「なんですって!?」

ノーザ「疑うのなら、あなた達の装置でアンデッドの位置を確認してごらんなさい。
     もう総員戦闘態勢に移らせてあるから分かるはずよ?」

橘「・・・・・・・・くっ!」

アンデッドサーチャーの反応を見た橘が渋面になる。

睦月「橘さん?」

橘「栗原家が・・・・スペードスートのアンデッド全員に取り囲まれている。」

始「貴様!」

ノーザ「だから『あの家族が大事なら一人で来い』って忠告してあげたでしょ?
     どうするの?さっき教えてあげたけど、アカルンの力も使えないわよ?」

先程までの威勢も削がれ、始の言葉は続かない。

ノーザ「わかった?仲間想いのあなた達が、なんらかで介入する可能性も織り込み済み。
     むしろ、こうして雁首並べてやって来てくれれば、手間が省けるというもの。
     前回、私達の姿が無かったから尻尾をつかめると期待してたんでしょう?」

一同を小馬鹿にするようにくすくすと笑う。

ノーザ「もし助けたいのなら・・・・この場で他の連中を始末しなさい、ジョーカー。」

始「貴様・・・・何故そうまでして俺に強いる。」

ノーザ「本能を抑える人間の心・・・・それが壊れた時、貴方はかつて以上の獣となれるのよ!」

始「そんな風に・・・・なってたまるか!」

ノーザ「あらあら、聞き分けの無い子ね。どうしちゃおうかしら?」

上機嫌のノーザがさも愉快そうに笑う。

橘「まずい!もうアンデッドが動き出している!」

いつの間にか、サーチャーに描かれた光点が激しく動いていた。

ノーザ「・・・・なんですって。」

サウラー「ノーザさん、確かにアンデッドの群れに動きが。」

手にした機器に目をやったサウラーも肯定する。

ウエスター「ばかな!待機命令中のアンデッドが管理を拒んだとでも言うのか!?」

ノーザ「いいえ。例外が一つだけあるわ。それは、自己防衛。」

ウエスター「では、まだ別の何者かがアンデッドを倒そうとしていると?」

サウラー「もはや違うと言うべきかな?どうやら残らずやられたようだ。」

一点だけ残った反応には興味が無い、とばかりに顔を上げた。

ウエスター「全滅だと!?13体のアンデッドが、3分も経たずにか!」

ノーザ「・・・・そう、思ったよりも早く、最後の役者が登場したのね。」

サウラー「そのようですね。遅かれ早かれだとは思いましたが、絶妙なことです。」

闇の中、沈黙が訪れた。
静止からどれ程が経ったのだろう、ノーザが静かに言った。

ノーザ「一旦退きましょう。確かに、この人数を相手にするのは得策ではないわ。」

サウラー「ええ。現れたのが“あの男”ならこの中にも侵入しかねませんからね。」

ノーザ「“彼”もまとめて始末できればだけど、今の私達では不安要素もね。」

ウエスター「よーし、お前達。勝負は我等の秘密兵器完成までお預けだー!!」

ノーザ「・・・・・・・・。」

ウエスター「ああっ、ノーザさん!何故睨んでるんです!?」

サウラー「君の頭の中にはスパゲティでも詰まっているのかい?」

ノーザ「とりあえず、明日のおやつは抜きね。」

ウエスター「にゃんですとー!そんな殺生なーー!!」

取り合わずにノーザがゲートを開いた。

せつな「待ちなさい!このまま逃げる気?」

睦月「そうだ、罠にかけて呼び出しておいて尻尾を巻いて帰るのか!」

挑発するような言葉にもノーザは冷静さを失わなかった、

ノーザ「あらあら、遊び足りないのかしら。夜遊びが好きだなんて悪い子達ね。
     じゃあ、私達は失礼するけれど、せっかくだからプレゼントをあげちゃうわ。」

いつの間にか、ノーザがカードを手にしていた。
そして、2枚重なっていたそれらを見せ付けるように広げる。

橘「あれは、ダイヤのカテゴリーキング!」

始「そしてハートのカテゴリーエース・・・・解放して時間を稼ぐ魂胆か?」

ノーザ「それもちょっと飽きちゃったんじゃない?
     ということで、ちょっと手品を見せてあげるわ。さぁ・・・・お立会い。」

親指と人差し指の操作で、二枚のカードの位置が滑る様に入れ替えられる。
次第にそのスピードが上げられて繰り返される。

祈里「あれ、なんかカードが一枚になった?」

ラブ「もしかして本当に手品!?」

美希「ちょっと、のんきなこと言ってる場合じゃないでしょ。
    一枚が消えたとしたら、そっちで不意討ちするつもりとか・・・・。」

せつな「それだけでもないみたいよ。カードの絵・・・・うごめいているわ。」

始「あの姿・・・・やはり、カードは移動したのではなく、合わさったようだな。」

カードの動きがゆっくりにされると、のたうつ生き物のように動く絵柄が見えた。

橘「まさか、奴らティターンまで作れるのか!」

睦月「それもカテゴリーエースとキングの合成アンデッドですよ!」

美希「な、なんか強そうね。」

橘「考えようによっては、俺達のキングフォームみたいなものだからな。」

ノーザ「ふふふ、ディーラーの手はブラック・ジャック。これで良くても引き分けね。」

カードを放ったノーザが踵を返してゲートの中へと歩みを進める。
手にした装置でティターンを解放したサウラーと、慌てた様子のウエスターも後を追った。
三人の姿が消えるのをを待っていたかのように、ティターンが動き出す。

ラブ「みんな、一気に行くよ!」

ラブがリンクルンを構える。

始「待て。」

静かに制止した始が、ティターンに応えるようにゆっくりと前へ歩き出した。

ラブ「始さん!?」

始「こいつは、いや、こいつらとの決着は俺につけさせてくれ。」

ラブ「でも・・・・。」

始「頼む。」

それ以上は誰も何も言わずに見守り、遂に始とティターンが肉薄した。

始「思えば、俺という存在はお前達によって始まったのかもな。」

感慨深げな始の言葉に、ティターンが咆哮と両手の武器で応えた。

始「獣としてのジョーカーの終わり・・・・。」

始の両手が、ティターンの基となったアンデッドが使っていた武器、
弓と双剣の一本を同時に受け止めていた。

始「人としての道の始まり、ライダーとしての道の始まりのきっかけ・・・・。」

ティターンは渾身の力で押し込めようとしているようだが、微動だにしない。

始「お前達にだって、相容れないが自分自身の心というものはあったんだ。
   それがこんなザマとは・・・・かつての俺のようで見てられん。」

始がジョーカーの姿に変わった。

始「だから見せてやる。これが・・・・心の強さだ!」

次の瞬間、両腕の鎌が一薙ぎされ、はらはらと二枚のカードが地に落ちた。

睦月「凄い・・・・カテゴリーエースとカテゴリーキングの合成アンデッドを簡単に・・・・。」

橘「これが、始の本来の力なのか・・・・。」

始「いや、『本来の俺』の力なんてちっぽけなものだ。
  それが強くなるとしたら、誰かのためにという気持ちがあればこそだ。
  何度も見せてもらったからな。特にお前に・・・・・・・・なあ剣崎!」

睦月「えっ!?」

橘「まさか・・・・。」

目をやった先に、懐かしい顔があった。

橘「剣崎・・・・!」

剣崎「久し振りですね、橘さん。それに睦月も。なんか大人びたな!」

陽気に言う剣崎はまるで思い出の中から抜け出てきたようだった。
始と同様に、あの日に消息を絶った時と全く変わらぬ懐かしい姿だった・・・・。

始「よく来てくれたな、助かった。」

橘「連絡もつかなかったのに、驚いたぞ。」

剣崎「いやあ、あれだけアンデッドの気配がすれば分かっちゃいますから。」

いつぞやの始と同じようなことを口にした。

剣崎「それで、成り行きでカードは回収できたけど、バックルが無いんで、
    ひとまず橘さんと会えるんじゃないかと始の気配を追って来たんです。
    イーグルアンデッドも居たんで文字通り飛んで来ちゃいましたよ。」

ことさらに明るく振舞い、剣崎が笑いながら言う。

橘「潜んでいたスペードのアンデッドを封印してくれたということか。」

剣崎「そうですね、ほら。」

剣崎がスペードのカードを取り出して見せた。

睦月「やった、スペードも全部封印ですね!」

橘「ああ、全部だ・・・・ティターンの分も含め、52体のアンデッドは全て。」

嬉々とした睦月と対照的に、橘は緊張した面持ちになっていた。

剣崎「もう、52体が・・・・。」

橘「大丈夫なのか?その・・・・戦いを強いるような影響を受けていないか?」

その問いに、始が答えた。

始「今のところは大丈夫だ。統制者の呼び掛けのようなものは無い。
  元々俺達全員を始末する予定だから勝利者にする気も無いのか、
  あるいは、まだ『最後のふたり』ではないからなのか・・・・。」

橘「ティターンまで生み出す連中だからな・・・・楽観は出来ない訳か。」

始「ああ、剣崎がやって来ることも想定はしてあったようだしな。」

睦月「でも、とにかく剣崎さんと始さんも一緒で、みんなで戦えるんですよね。
   俺は、やっぱり心強いし、なんか・・・・一緒に居られて嬉しいです。」

剣崎「そうか・・・・今はみんなで、か。」

橘「そうだな。戦いもあるが、色々と話も聞かせてくれ。」

剣崎「・・・・そうですね、せっかくの機会なら。」

せつな「あの、あなたが剣崎一真さん・・・・ブレイドですか?」

一同の様子を見ていたせつなが、遠慮がちに尋ねた。

剣崎「え、そうだけど・・・・この子達は?」

橘「そうだな。色々と事情が込み合っているんだ。一旦戻って話す。
  始が聞き出してくれた敵の本拠地というのも気になるしな。」



剣崎「アンデッドだけじゃなかったなんて・・・・。」

アカルンで帰還し、一通りの現状確認が終わった。

橘「アンデッドも一通り封印できたし、秘密兵器の完成というのも気掛かりだから
  俺は早々に敵を叩いた方が良いと思う。」

睦月「今から闇にまぎれて奇襲ですか?」

橘「いや、すぐに夜襲をかけたところで、今は情報が少な過ぎる。
  どうせ相手ももう警戒はしているだろうから、無闇に攻めたら裏目に出る。」

始「あのノーザ、相当にしたたかな奴のようだからな。
  俺が聞いた場所も、そこに誘導されているのかもしれん。」

プリキュアの四人が、思い当たる節があるとばかりにうんうんうなずく。

剣崎「じゃあ、どういうタイミングで?」

橘「本当に敵本拠地での戦いで、うまく親玉にも当たったなら激戦は必至だ。
  みんなは休息を取っておいてくれ。その間に俺が始の話も聞いて探りを入れておく。」

睦月「探るって、どうやってですか?」

橘「かつてのBOARDの裏の組織網が一部利用できてな。衛星やら“財団”やら、な。」

祈里「でも、それじゃ橘さんが辛いんじゃないですか?」

橘「なあに、元々普段はそんな生活に近いし、全部手動でやるわけでもないさ。
  俺も足手まといにはならないように、適度に休ませてもらうよ。」

祈里「そうですか。でも、無理はしないでくださいね。」

橘「よし、じゃあ一時解散だ。手筈が整ったら連絡するからよろしく頼む。」

そこで解散となった。
せつなが剣崎の方へと近寄り、小声で言った。

せつな「あの、すみませんが、この後お時間頂けますか?」

剣崎「え、ああ、大丈夫だけど。」



牧場の陰の方、満天の星空の下に剣崎は腰を下ろしていた。

剣崎「綺麗な空だなあ。やっぱ日本のはまた違う感じかもなあ。
    ・・・・で、俺に話したいことってのはなんだい?」

せつな「すみません、遠方から来てお疲れなのに。」

剣崎「平気だよ。あまり戦っていないからみんなより余裕あるかもね。」

剣崎がおどけるように言った。
笑顔の剣崎に目で促され、せつなが隣に腰を下ろす。

剣崎「それにさ・・・・ふたりだけで、ってことは何か重要なことなんだろ?」

せつな「・・・・はい。ラブ達とのことで、彼女達には話せないことが。」

剣崎にしか聞こえないような小声になった。

剣崎「あの子達のこと?」

せつな「先程簡単に話しましたが、私とラブ達は共に戦いメビウスを倒しました。
     そして、私はかつて私達が傷付けてしまった世界の復興のために、
     ラブ達と離れて色々なパラレルワールドを巡ることを選んだんです。」

剣崎「ちょっと見ただけだけど、みんな仲良さそうなのは伝わって来たよ。
    きっと、君にとっては大変な選択だったんだろうね。」

せつな「でも、剣崎さんもそのような選択をされたと聞きました。
     戦いの後、共に戦った方々の元を離れ、救える人達を救う旅に出たと。」

剣崎「まあ・・・・そんなものだね。」

せつな「私は、決意して、それを揺らがせないようにしていました。
     時折ラブ達と会うこともあったし、それで十分だった・・・・筈でした。」

剣崎「やっぱり、いざ再会すると君も辛いかい?」

共感を示すように剣崎が言った。

せつな「共に旅をしていた隼人と瞬が敵の手に落ちて、
     その時また私は孤独に突き落とされてしまって・・・・
     それでも、また、ラブ達に会えて・・・・。」

せつなが自分の両膝を抱くような姿勢になった。

せつな「また・・・・思ってしまったんです。『怖い』って。
     この関係がいつか終わってしまう・・・・離れていて失ってしまうかも。
     なんでこの時間は永遠に続かないんだろうって・・・・。」

剣崎「永遠に変わらない関係・・・・か。」

そこで初めて剣崎の表情がやや曇った。
闇の中、顔を下げたせつなには気付く由もなかったが。

せつな「剣崎さんは、どうされているんですか?
     私は、一人で居られるほど強くは無い・・・・。
     もしも、本当に隼人や瞬が戻って来なかったら、
     もう他の世界を救う旅になんて戻れないかも・・・・。」

剣崎の反応もすぐには無く、静寂が訪れた。

剣崎「そうだな、俺も強くないから、正直分からない。
    でも、君が今そう思って、この戦いが終わった時にもそう考えるのなら、
    無理して他の世界を救おうとしなくてもいいんじゃないかな?」

せつなが剣崎の顔を見る。

せつな「でも、私はやらなくては。かつて、私がしたことの償いのために。」

剣崎「君が昔したということも聞いて、君の気持ちもなんとなく分かるよ。
    俺だって、守り切れなかったものや、俺が守りたいもののために、
    もしかしたら守れたものを守らなかったこともあったかもしれない。」

せつな「でも、それは私のしていたこととは・・・・。」

剣崎「・・・・俺さ、昔『なんで戦うんだ』っていうのが分からない時があったんだ。
    敵の強さに参ってた時で、でもライダーとして封印しなきゃって思っていて、
    だから、俺はライダーでそれがなすべき使命みたいに思っていたんだ。」

せつな「そうじゃなかったんですか?」

剣崎「余裕が無かったのかな、『どうしても守らなくてはいけない』というのと
    『どうしても守りたい』というのがごっちゃになっていた気がする。
    きっと本当は、義務とか使命なんかじゃなくって、俺自身がそうしたいから、
    そこに居る人を守りたいから戦っていたし、負ける訳にいかなかったんだ。」

せつな「守らないといけないからではなく、守りたいから・・・・。」

剣崎「君がプリキュアになって、みんなと戦い始めたのはなんでだい?
    もちろん、償いたいという気持ちもあったんだろうけどさ。」

せつな「それは・・・・ラブ達のおかげで幸せというものを知って、
     かけがえの無い幸せを奪うなんてやってはいけないと思ったから・・・・。
     あと、幸せを教えてくれたラブ達の力になりたいと思ったから、
     ラビリンスとの戦いで彼女達に幸せを失って欲しくなかった・・・・。」

剣崎「一旦みんなと別れた時は?」

せつな「みんなと守れた幸せを、奪われてしまった人達にももう一度知って欲しかった。
     そうすることが、離れることになっても、プリキュアとして共に戦った
     私達のそれまでを大事にすることでもあると思ったから・・・・。」

剣崎「それじゃあ、今はどう?」

せつな「今は・・・・・・・・そうだ、私、自分自身の幸せを見失っていたんだ。
     それで、ラブ達が教えてくれた大事なことを忘れて、自分勝手になって・・・・。
     また、周りの人達をないがしろにするようなことを・・・・。」

剣崎「ちょ、ちょっと待った。」

予想外に強い自責の念を見せるせつなの様子に剣崎が慌てる。

剣崎「自分の幸せを望むのって、そんなに悪いことなのかな。
    やっぱり自分が頑張れるのは自分の幸せのためだろうし、
    幸せを感じられない人間が、誰かを幸せになんてできないと思う。
    それに、自分が不幸になることで、誰かを不幸にしてしまうかもしれないしね。」

せつな「そう言えば、私もラブと出会って、幸せを感じられるように・・・・。
     それで、それまで疑っていなかった自分のあり方に疑問を持った気がします。」

剣崎「自分なりの答えが見つかったかい?」

せつな「はい。まずは自分が幸せになって、その上でみんなにも幸せになってもらいます。」

剣崎「そうか。それだよ、きっと。」

せつなが立ち上がり、空を見上げた。

せつな「本当に、綺麗な星空ですね。さっきまでは、そんなことにも気付けなかった。」

剣崎も立ち上がって夜空を仰ぐ。

剣崎「ああ。みんながこの空を見られるように、俺達は戦うんだ。」

せつな「どうか、この宇宙やパラレルワールドの人達の夢と幸せを守れますように。」

星に願いを託し、その場を後にした。


翌朝、一同は突入前の最終確認を行っていた。

橘「敵が拠点としていると思われる場所は絞り込めた。
  だが、範囲の見当はついても断定までは出来なかった。」

睦月「そうなると、手分けして一刻も早く見つけて乗り込むしかないですね。」

橘「ああ。そこで4組に分かれようと思う。」

祈里「4組、ですか?」

橘「プリキュアとライダー、1人ずつでペアを作って欲しい。
  敵への対処と、あとは何かあった時の合流をスムーズにするためだ。」

剣崎「スムーズに、と言うと?」

橘「ライダーが居る位置はサーチャーで分かるし、プリキュアが居る所になら
  アカルンの力ですぐに合流できる・・・・という解釈でいいかな?」

せつな「はい、ピックルンが居る所になら移動できるはずです。」

橘「じゃあ、見つけたらキュアパッションに連絡して合流する事にしておこう。
  そのための通信機を各人に渡しておくが、敵に傍受されるかもしれないから
  敵の拠点を発見した時と緊急時以外には使わないようにしてくれ。」

一同がうなずく。

橘「それと、もし持ってたら携帯電話もオフにしておいてくれ。
  まあ、敵もサーチャーみたいなものを持っているみたいだから、
  無駄になってしまうかもしれないけどな。」

そして、通信機が行き渡ったところで扱い方の説明がされた。

橘「よし、では準備が出来次第出発しよう!」

彼らは4組に分かれて雪山を移動していた。
そこは、栗原晋がジョーカーとギラファアンデッドの戦いに巻き込まれ落命した場所。
そして、彼の遺した家族への想いが、相川始という存在を、その心を誕生させた場所。
そして・・・・剣崎一真の選択によって目覚めることのなかった『万能の力』が眠る場所。


分かれた内の一組。
ブレイド共に移動していたキュアパッションが不意に足を止めた。
この組み合わせはキュアパッションが申し出て、
移動の要であるキュアパッションと共に行動するのは、
ライダー勢最強であろうブレイドが安心だろうとみなからも受け入れられた。

剣崎「どうしたの。何か見つけた?」

せつな「私・・・・剣崎さんに謝らないと。」

剣崎「え、何を?」

せつな「あの後、始さんに言われたんです。剣崎さんがこの世界のためにしたことを。」

剣崎「俺がした?・・・・・・・・もしかして、ジョーカーになったこと・・・・なのかい?」

せつな「・・・・はい。」

剣崎「俺の体がこうなったのは、俺の責任だ。君が謝ることじゃないだろう?」

せつな「でも、私、何も知らなくて無神経なことばかり。
     他の方法が無くて永遠の戦いを選択した剣崎さんの苦渋も知らないで、
     自分で選ぶ余地もあるのに永遠に楽しい時が続いて欲しいとか・・・・。」

せつなの様子に、剣崎がはぁ、とため息をついた。

剣崎「なんと言うか、君は繊細で気が回るんだね。
    今まであまり居なかったタイプだからちょっと、はは・・・・。」

そんなことを言って困惑していた剣崎の表情が、しばらくして明るくなった。

剣崎「でも、ちょっと安心したかもな。」

せつな「何をですか?」

剣崎「始のやつも、そんな風に気を遣ったり出来る様になったんだなあ、って。
   最初に会った時なんかさ、天音ちゃんだけは守るって感じに近くて、
    話しかけようとしたら喋ってる最中に攻撃されたんだぜ?」

せつな「まあ。今とはだいぶ違ったんですね。」

剣崎「ああ。時間が経つにつれて、あいつがそんなだった事情も分かっていった。
   でも、それでもあいつは人間らしくなっていって、そうあろうとしていた。

    俺、それで思うようになったんだ。人間もアンデッドもない。
    誰も『運命』なんかで不幸になっちゃいけない、って。」

せつな「それで、剣崎さんは決断を・・・・。」

剣崎「まあね。守らなきゃと思って、俺にはこの方法しか思い浮かばなかった。

    正直、今でもどうするのが本当に正しかったのかなんてのは分からない。
    ただ、君の話を聞いて一つ気付いたかもしれない。」

せつな「何か、余計なことをしてしまったんでしょうか。」

剣崎「いやいや、非難するとかじゃないよ。むしろ、感謝してるくらいさ。
   俺がジョーカーになった時、心に対して戦いを強いられている感覚と、

    それと寂しさ・・・・やっぱり俺もみんなと別れたくなくなるのが怖かったんだろうな、
    すぐにその場を立ち去ってしまったんだけれど・・・・良くなかったなあって。」

せつな「それが気付いたこと、ですか?」

剣崎「ああ。俺がそうしたせいで、始や、もしかしたら他のみんなの心に
   『俺を犠牲にした』って影を落としてしまったかもしれない。
    みんなに幸せに過ごして欲しかったのに、だったらまずいなあってさ。」

せつな「別れ方・・・・会えなくなるからこそ、ですか?」

剣崎「ああ。今度は、きちんとみんなに俺の想いを伝えてから別れるよ。
   俺一人が背負い込んだんじゃないって、みんなが幸せに過ごしてくれる様に。
   ジョーカーの闘争本能に俺も、始も負けずに頑張れるってさ。
   だから、俺を信じてくれるのなら、もう謝らないで欲しい。」

せつな「分かりました、すみませんでした。」

剣崎「えっ?」

せつな「あ、いえ、すみません・・・・・じゃなくって、分かりました。
    みんなの幸せのために頑張りましょう!」

剣崎「ああ。たとえみんなと別れることになっても、幸せに別れられるようにね。」

せつな「はい。精一杯頑張ります。」

ふたりとも心が晴れた様子で新たな一歩を踏み出した。



始「すまなかったな。」

藪から棒に、共に歩くキュアピーチへ向けてそう言った。
こちらは、キュアパッションがブレイドと組んだ後で始が希望してそれが通った組だ。

ラブ「え、何がですか?」

始「さっき君も一緒に居たあの時の事だ。
  君の友人、仲間に対して言わずとも済んだことを言って苦しめた。」

ラブ「さっきの・・・・。」

始「それに彼女の剣崎への相談を聞いたのは偶然じゃない・・・・彼女を疑っていたんだ。
  彼女が他の連中と同じように、操られて俺達のところにやって来たのではないかと。
   彼女の力なら、いざとなればインフィニティを奪うことも出来るようだしな。」

ラブ「そう・・・・かもしれません。」

ためらいがちにキュアピーチも肯定する。

始「彼女の苦悩が分からないわけでも、それが剣崎との話で解決していたのを
  また蒸し返してしまうだろうということが分からないわけでもなかった。
   それなのに・・・・君だけに謝っても仕方ないかもしれないが、すまなかった。」

ラブ「始さん・・・・。」

始「君は疑いを抱かなかったのか?それとも、仲間だから分かるものがあったのか?」

ラブ「えーと・・・・なにぶん能天気だからそういうのは考えてなかったです。はは・・・・。
   でも、操られてそれで私達の所に来たのならそれでもいいと思います。」

始「なに?」

ラブ「だって、操られて私達を騙しに来たのなら、私が一番に止めてあげられるから。
   利用されて誰かを傷つけたら、きっとせつなもすごく傷つくから・・・・。
    友達だから、力になりたいんです。
   間違った道を進ませられてしまわないように。」

始「そうか・・・・自分中心ではなく相手を気遣える、やはり君は人間なんだな。」

ラブ「始さんだって同じじゃないですか。」

始「俺が?君の大事な仲間を疑ってかかっていた俺がか?」

ラブ「でも、それでせつなと剣崎さんの話を聞いて、剣崎さんを気遣ったんですよね。」

始「そうだ・・・・だが、それで彼女を傷つけるような身勝手な言動をしたんだ。」

自分が人間ではないからと言わんばかりに始が否定的な言葉を口にした。

ラブ「自分自身が剣崎さんの決断に触れづらかったのは、
   盗み聞いてしまった負い目以外に、感謝と苦悩への共感もあるから・・・・。

    私“も”人間だから、だからこそ、どうしていいか分からないことはあります。
    そんな大事なことを、せつなを信じて任せてくれた。私もせつなを信じます。」

始「信じる・・・・そうだな、俺の中でももう結論は出ていたんだな・・・・。」

ラブ「自分が分からなかったり、割り切れないのも人間なんだと思いますよ。
   あまり偉そうなことは言えませんけど。」

始「ありがとう。仲間達を信じて、俺達も今やるべきことをやろう。」

ラブ「はい。それに、気になるんだったら始さんから直接せつなに謝ってください。
   せつなって、すっごくいい子だからきっと許してくれますよ。」

始「そうだな、自分でしっかり謝らないとだな。
  そのために、みんなで無事に戦いを終わらせて帰ろう。」

決意も新たにふたりは歩を進めた。




そしてこちらはレンゲルとキュアパインの組み合わせ。
なんとなく色合いが近いのではないかというフィーリングと、
睦月のリモートと、キルンの能力で人間以外の言葉が分かるというのが
相性が良さそうだということで決定された。

祈里「見つかりませんねえ。」

睦月「見つからないねえ。こっちはハズレだったりしてね。」

祈里「鳥さんや動物さん達も、別に異常は見ていないそうです。」

睦月「とは言え、あるかもしれないから頑張らないとだけどね。」

祈里「ですねえ。」

ふたりが苦笑する。

ウエスター「はっはっはー!だったらもう探すのはお終いにしてやろう!」

祈里「ウエスター!」

睦月「わざわざお出ましということは、秘密兵器ってやつが完成したのか!?」

ウエスター「ふっ、知りたいか?」

睦月「いや別に。」

ウエスター「やはり知りたいか・・・・って、おいっ!付き合いの悪い奴だな!!」

睦月「だって出て来ない内に倒せるのならそれでいいし・・・・
    と言うか、お前はなんでそんなキャラなんだよ!」

祈里「なんか記憶が消される前と変わらないなあ・・・・。」

ウエスター「まあいい、完成した秘密兵器を見せてやろう!」

睦月「やはり完成していたのか!」

ウエスター「そうだ、これを見ろ!」

ウエスターの手には一枚のカードがあった。

睦月「あれはケルベロスのカード!」

祈里「ケルベロス?」

睦月「本来の52体やジョーカー以外の、人工的に作られたアンデッドだよ。
    全てのアンデッドを研究したから、能力も凄まじい・・・・。」

祈里「それをナケワメーケに!?」

ウエスター「甘い甘い!だがそれだけではない。」

ウエスターが腕に装着していたブレスレット状のものを見せ付けた。

睦月「まさか、変身を?」

ウエスター「えーと・・・・残念だが、それは違う。変身は出来ん・・・・残念だが。」

祈里(二回も言う程残念だったのね・・・・)

ウエスター「いや、だが凄いんだぞ!こうしてカードをスラッシュするとだな、
        俺とケルベロスが一種の融合状態に近くなって・・・・・・・・」

言いながらスラッシュしたカードにナケワメーケを誕生させるダイヤを付ける。
すると、カードが人型の獣の姿になり、そして巨大化して咆哮を張り上げた。

「ナキサケーベ!!」

祈里「あれは、ナキサケーベ!」

睦月「えーと、それって・・・・。」

祈里「ナケワメーケよりもずっと強いです。でも、それよりも・・・・。」

キュアパインの不安げな視線はウエスターに向けられた。
腕の装置から茨のようなものが伸び、ウエスターも苦悶していた。

祈里「やっぱり・・・・命を削られる力なんだわ・・・・!」

睦月「なんだって!?おい、今すぐに止めるんだ!」

ウエスター「ふっ、そうはいかん。お前達を止めるのが俺の使命。
        たとえこの身に換えてもお前たちは倒ーーーす!!」

ナキサケーベの拳が振り下ろされ、土煙が舞い上がった。



美希「サウラー、馬鹿なことはやめて!」

サウラー「馬鹿なこと?メビウス様のために君達を止めるのがかい?」

美希「忘れたの?かつてもメビウスはあなたを犠牲にしようとした。
    もうそんな風に自分を傷付けるのはやめて!」

サウラー「そんなこと記憶に無いねえ。
       もっとも、そうだったとしても僕の意思は変わらない!」

その力強い言葉に呼応するように、ナキサケーベが光弾を放つ。

美希「サウラー!」

橘「危ない!」

ギャレンが飛び付いてすんでのところで直撃は回避した。

『ラピッド』

ギャレンラウザーから連射された弾は見えない何かに阻まれ届かなかった。

橘「バリアを張れるのか!」

サウラー「そういうことだよ。もう諦めたらどうだい?」

美希「サウラー、思い出して!」

サウラー「くどいねえ、そんな記憶などそもそも僕には無い!」

拒絶を意味する攻撃が再び放たれた。

橘「ひとまず説得は諦めるんだ!」

ギャレンがキュアベリーの手を引いて物陰に避難する。

橘「気持ちは分かるが、ひとまずは彼を倒さなくてはならない。
  メビウスを倒すためもあるが、彼が命を削るのを防ぐためにも!」

美希「・・・・はい。」

死角に隠れつつ、一旦距離を取って移動する。

橘「とはいえ、ナキサケーベを浄化してからケルベロスを封印するのに、
  あのバリアをなんとかしないとな。なんとかして虚を突かなくては・・・・。」

美希「・・・・あの、思いついたことがあるんですが、協力していただけますか?」

橘「分かった、言ってみてくれ。」

(m0M0)m 区切り的にひとまず今晩はここまでで中断させていただきます。

( 0H0) お読みいただいた方々、ありがとうございました。

( 0w0) もしよろしければ、またお読みいただけましたら幸いディス。



場面は再びウエスターとの戦いへと戻る。

睦月「俺にはキングフォームは無い、でも力を合わせることなら出来る!」

そう言うレンゲルのそばには、リモートで呼び出された
タランチュラアンデッドとタイガーアンデッドの姿があった。

ウエスター「ふん、所詮は操り人形だろう、寂しい奴め!」

睦月「な!何を・・・・。」

反論しようとした睦月だったが、語勢は弱かった。

祈里「そんなことない!ふたりとも睦月さんと一緒に戦うって言ってくれてる。
    睦月さんの成長を喜んで、でも同時に心配して手助けもしてくれるって!」

キルンの力を借りたキュアパインがふたりの意思を伝えた。

睦月「嶋さん、光さん・・・・!」

ふたりがうなずいて応えた。

ウエスター「ふ、ふふん。でもどうせそのふたりしか友達が居ないとかなんだろう。
        やーい、やーい!」

睦月「失礼な、別にライダー関係以外でも友達とか居るし。
    お前こそ今は友達も仲間もふたりすら居ないんじゃないのか?」

祈里(どうしよう、子供の喧嘩みたい・・・・)

ウエスター「馬鹿を言うな。俺ほどのイケメンともなれば、人望もあってだな・・・・。
        えーと、メビウス様は違うよな・・・・・・・・」

睦月「・・・・・・・・。」

祈里「・・・・・・・・。」

ウエスター「まずはサウラーだろ。あとはまあ、ノーザさんはまあ大丈夫だろう、まあ・・・・。
        あと・・・・そうだ、イースも居た!ほら余裕で3人以上だぞ!!」

祈里「イース・・・・?」

睦月「やっとで3人じゃないか!しかもイースって誰だよ!」

ウエスター「あれ?えーと・・・・誰だっけ?」

睦月「おい。出任せ言ってるんじゃないのか?」

ウエスター「それは違うぞ!・・・・たぶん。」

祈里「イースは・・・・かつてウエスターとサウラーと共に活動していた、
    ラビリンスの三幹部の一人です。」

ウエスター「ほらみろ!」

祈里「・・・・彼女は、イースとしての命をラビリンスの管理によって終わらされ、
    そして・・・・・・・・キュアパッションとして生まれ変わったんです。」

睦月「え、それってせつなちゃんのこと!?」

祈里「ウエスター、あなた、せつなちゃんのことを忘れたと言っていたけれど
    やっぱり完全に忘れてなんていないのよ。私、そう信じてる!」

ウエスター「やめろ、やめろ・・・・俺は、メビウス様の・・・・うぉぉぉっ!!」

ウエスターの苦悩を反映したかのようにナキサケーベが暴れ出す。




サウラー「いつまでも鬼ごっことかくれんぼをしているつもりかい?
      それとも、この辺り一帯を吹き飛ばしてしまおうか?」

『ファイア』

物陰から火炎弾が飛び出してきて、雪に撃ち込まれた。
水蒸気が立ち上り、サウラーの視界を遮った。

サウラー「・・・・・・・・。」

サウラーは冷静にナキサケーベの近くで動く気配に集中した。
時間が凍てついた様な静寂が場を支配した。
・・・・そして。

サウラー「そこだっ!」

ナキサケーベが足元の気配へ向けて殴りかかる。

キュアベリー「くっ!」

横っ飛びにかわしながら、構えたベリーソードを腰にあてがう。

キュアペリー「響け!希望のリズム!キュアスティック・・・・」

そして、着地したところで意外な行動に出た。

キュアベリー「ベリーソード!!」

技の発動直前であるはずのキュアスティックを宙へと放り投げた。

サウラー「隙を作ろうというのだろうが、以前と同じ手とはなめられたものだ!
       君達の狙いが超至近距離からの浄化なら、君さえ倒せば終わりだ!」

反対の腕で繰り出された攻撃を両腕をクロスさせて受け止めた。

サウラー「策を練っていたようだが、こんな状態で浄化は出来まい。僕の勝ちだ!」

なんとかこらえているものの、膝は震えてその内に崩れ落ちることは明らかだった。

美希「いいえ、私達の勝ちよ!」

サウラー「なにっ!?」

まさかの方向、上から聞こえた声にサウラーが見上げた。

美希「下のキュアベリーは囮よ!!」

投げ上げられたキュアスティックをキャッチしたキュアベリーが、
そのままの勢いでナキサケーベの額のダイヤに接近し技を繰り出す。

美希「プリキュア・エスポワールシャワー・フレーーーーッシュ!!」

サウラー「なんだと・・・・!」

美希「この距離なら、バリアも張れないでしょ!」

サウラー「じゃ、じゃあ、さっきのキュアベリーは・・・・。」

視線を戻すと、上へと注意がそれた隙に脱出した人物の姿があった。
その姿は、キュアベリーのものから変化していた。

橘「カメレオンのカードを使わせてもらった!そして今度は俺の番だ!!」

『アブソーブクイーン』 『フュージョンジャック』

橘「このまま一気に決める!」

『バレット』 『ラピッド』 『ファイア』

翼を展開したギャレンが飛び付き、ナキサケーベに銃剣を押し付けた。

『バーニングショット』

そしてそのまま腹部から持ち上げるように飛ぶと、炎の弾を乱射する。

サウラー「ぐわぁぁぁっ!!」

感覚も共有されているのか、サウラーも悲鳴を挙げた。
そして、火炎弾の炸裂よりもひときわ大きい爆発が起きた。


美希「サウラー、大丈夫?」

サウラー「うぅ・・・・何故、敵である僕の心配をする?」

美希「敵なんかじゃないわ!あなただって分かってくれるはずよ。
    だって、あなたはさっき言ったわ。『以前と同じ手』は食わないって。
    あなたは以前のことを覚えているのよ。ねえ、思い出して!」

サウラー「以前のこと・・・・僕は・・・・僕は・・・・・・・・。
       確か・・・・以前も、君達プリキュアとこの手で戦っていた・・・・。」

美希「確かに戦っていたわ。でもそれだけじゃなかった筈よ。
    戦っていたその手を取り合えた。私達、分かり合えたじゃない。」

サウラー「君達と・・・・?僕が・・・・?」

美希「・・・・・・・・。」

すがるような面持ちで、美希がサウラーを見つめる。

サウラー「そうか・・・・僕は、いや僕達は、捕まって記憶を上書きされて・・・・。」

美希「思い出したのね!」

サウラー「ふっ。どうやら、君達の諦めない心が僕にもうつっていたようだね。
      ウエスターの方もきっと元に戻ってくれるだろう。
      彼は、昔から僕なんかより仲間意識が強かったんだからね。」

美希「ふふっ、きっとそうね。さあ、今はもうゆっくり休んで。」

サウラー「いや、その前に君達に伝えないといけないことがある。
      メビウス達が今どこを拠点としているかだ。」

ゴゴゴゴゴ・・・・・・・・。

美希「覚えているの!?」

サウラー「ああ、だが更にその前に・・・・。」

美希「その前に?」

橘「地響きがした、恐らくさっきの爆発の影響で雪崩が来るぞ!!」

サウラーがこくりとうなずく。

美希「えぇーーーーーーっ!?」

大声を発したからでもないだろうが、次の瞬間雪の塊が襲いかかってきた。




ウエスター「いけっ、ナキサケーベ!頑張れ、そこだっ!!」

ウエスターの意思に沿って、ナキサケーベはレンゲルとキュアパインを狙い
パンチをひたすら繰り出していた。

睦月「力押しだけど、近寄れないしシンプルに厄介だな。」

キュアパイン「もぐら叩きのもぐらさんになったみたい。」

半ばほうほうの体ながらも、なんとかかわしきっていた。

睦月「・・・・結構余裕あるみたいね。」

祈里「持久力はそこそこあるみたいなんで・・・・。」

キュアパインが苦笑しながら答える。

睦月「でも、このままじゃ動きが鈍ったところをやられてしまう。
    一か八か、最大の技をぶつけてみるしかない。」

祈里「やってみましょう。」

ウエスター「どっこいそうはイカちゃん!」

カードをラウズしたところ、そしてパインフルートを構えたところ、
両者の回避行動が鈍ったところをナキサケーベが攻撃してきた。

睦月「しまった!」

祈里「間に合わない!」

ふたりの体がすんでのところで突き飛ばされた。

祈里「えっ!?」

睦月「嶋さん、光さん!?」

入れ替わるように、ナキサケーベに攻撃されたふたりの体は吹き飛ばされ、
そして、そのままカードに封印された状態に戻ってしまった。

ウエスター「かろうじて助かったようだが、もう次は無いぞ!
        お前達が必殺技を出すなら、発動までの間で潰してみせる!」

睦月「ふたりとも、ありがとう・・・・。」

祈里「・・・・ありがとうございます。
    ふたりのためにも、私があのナキサケーベを浄化します!」

ウエスター「浄化などさせるものか!逃げ回るのもそう長くは続くまい。
        俺が力尽きる前に、一発当てればもぐら叩きも終了だ!」

睦月「だからそんな風に叩かれてたまるかって・・・・待てよ。」

祈里「どうしたんですか?」

睦月「ちょっと試したいことがあるんだ。
    詳しくは話せないけれど、俺の言う通りに行動してもらえる?」

祈里「え?・・・・分かりました!」

睦月「ありがとう。それじゃあ、まずは!」

『スモッグ』

レンゲルラウザーの先端から黒い煙幕が噴出した。

睦月「カード1枚ならなんとかなったな!」

ウエスター「わわっ、これでは何も見えないではなイカ!」

睦月「よし、この隙に・・・・。」

ウエスター「甘い。振り払えナキサケーベ!」

ナキサケーベが扇ぐ様に手を振ると、煙幕は霧散した。

ウエスター「そして隙を突こうと攻撃してくるのを迎撃してやれ!」

「ナキサケーー・・・・ベ?」

ウエスター「・・・・あれ?」

隙を作って一転攻勢に賭けるものと思っていたが、そんな気配は無い。

ウエスター「・・・・・・・・・・・・。」

しんと静まり返った中、ウエスターが辺りを見回す。

ウエスター「あ、居たっ!って、何走ってるんだ!」

やや離れた所にそろそろと歩くふたりの背中が見えた。

祈里「あの、気づかれちゃいました。」

睦月「このまま、一旦逃げるんだよー!」

祈里「は、はい!」

ふたりが駆け出す。

ウエスター「あ、ちょっとコラ待てえ!」

ふたりを追いかけ出したナキサケーベとの距離が縮まっていく。

睦月「今だ、浄化の技を!」

祈里「・・・・はい!癒せ!祈りのハーモニー!」

向き直り、足を止めたキュアパインへと向けてナキサケーベの巨体が迫る。

ウエスター「やられるまえにやってしまえ、ナキサケーベ!」

祈里「キュアスティック・パインフルート!!」

ウエスター「よし、こちらのが早い・・」

そして、まさにパンチの射程距離にナキサケーベが踏み込んだ瞬間、
その巨体がすっぽりと地面へと隠れてしまった。

ウエスター「・・ぞっ?」

祈里「プリキュア・ヒーリングプレアー・フレーーーーッシュ!!」

穴からちょうど飛び出たダイヤのマーク目掛けて浄化の光が放たれる。

ウエスター「うおおおぉっ!何時の間にかもぐら叩かれに!」

『ラッシュ』 『ブリザード』 『ポイズン』

睦月「さっき煙幕を張った時だよ。
    モールアンデッドを解放して穴を掘ってもらったんだ。」

『ブリザードベノム』

睦月「ごめん、恐ろしい目に遭わせてしまって。・・・・ありがとう。」

祈里「私、信じてましたから!」

山吹色の温かな浄化の光がナキサケーベをケルベロスに戻していく。

睦月「うぉぉぉぉぉお!」

裂帛の気合と共にすかさず飛び付いた睦月が、
ケルベロスの胸にラウザーを突き刺した。
ケルベロスが氷付けとなり、ラウザーが固定される。
穴に落下することも叶わずに、今は縮んだ体が高々と掲げられ、
そして、猛毒が注ぎ込まれると、力尽きたのを示す爆発が起こった。

睦月「やった・・・・。」

祈里「・・・・倒せたんですね。」

緊張が解け、静寂が訪れたところで、ばたりと何かが落ちるような音がした。
力尽きたウエスターが雪上に崩れ落ちていた。

祈里「ウエスター!」

ふたりが慌てて駆け寄る。

ウエスター「うぐぐ・・・・。」

睦月「大丈夫かな。」

祈里「ねえ、しっかりして。」

キュアパインが声を掛けながらそっと体を揺すぶる。

ウエスター「・・・・う、うぅ。」

祈里「気付いた!どこか辛いところは無い?」

睦月「もう、俺達と戦うのはやめてくれるね?」

祈里「お願い、もうこれ以上あなたを苦しめたくないの。」

ウエスター「ふっ、大丈夫だ・・・・俺は正気に戻った!」

祈里「え・・・・わぁ、やったぁ!」

睦月(なんだかわからないがとにかく不安なのは何故だろう・・・・)

ウエスター「また色々と、迷惑を掛けてしまったな・・・・すまない。」

祈里「ううん、あなたが昔を思い出してくれてみんなも喜ぶわ。」

ウエスター「そうか、それはありがたい。
        ところで、俺の懐にある地図を持って行ってくれ。」

祈里「地図?え、と・・・・・・・・これね。これは何?」

ウエスター「メビウスの居場所への地図だ。」

睦月「え、なんでそんなものを都合良く!?」

ウエスター「ふふふ、自慢じゃあないが、初めての異世界で、
        しかも一面銀世界で迷子になったら書いてくれたのさ。」

睦月(いやそれ、本当に自慢にならない・・・・!)

祈里「そうなんだ、やっぱり基本的には元のままって感じだったのね。」

ウエスター「ああ、そうだな。」

ふたりが微笑みを交わす。

睦月(さらっと笑顔でひどいこと言ってる・・・・でもツッコめない!)

ウエスター「さぁ、ではもう先に進んでくれ。俺はちょっとくたびれた。
        ここで少しだけ眠らせてもらう・・・・・・・・。」

そこまで言って、ウエスターがそっと目を閉じた。

祈里「え、ウエスター!?」

ウエスター「・・・・・・・・んごぉ・・・・。」

睦月「・・・・本当に寝てるね。」

祈里「はぁ、良かったあ。」

キュアパインが胸を撫で下ろす。
とりあえず、そのままにしておくと風邪を引くかは怪しいが、
凍死してしまうかもしれないということで
エレファントアンデッドに頼んで運んでもらうことにした。



始「・・・・・・・・誰か居るな。」

ラブ「えっ、どこですか?」

始「あちらの物陰の方から何か聞こえた。」

そっと近寄って様子を窺うと、確かに何者かが居るようだった。

始「そこに居る奴、出て来てもらおうか。」

「は、はいっ!出て行きますから、どうか助けてください。」

おびえた様子で男がおどおどと歩いてきた。

ラブ「あのー、あなたは一体?」

「わ、私ですか!?純一というしがない・・・・
 あ、あなた達はあいつらとは関係無いんですか?」

始「あいつら?」

「なんか変な格好したやつらが、怪物を連れて・・・・。
 お、襲われて、なんとか夜の闇に紛れて逃げられたけれど・・・・。」

ラブ「変な格好・・・・まあ同類と見られても仕方ないかもですが、
   私達は別に怪しい者じゃあ・・・・。」

始「・・・・・・・・。」

始が無言で男との距離を詰める。

「な、何を!?」

そして、そのまま男の腹に拳を打ち込んだ。

ラブ「始さん!?」

「・・・・ほぅ、アンデッドとしての勘は鈍っていませんでしたか?」

先程までとは様子の変わった男が、攻撃を受け止めていた。

始「いや、むしろお前の人間としての振舞い方の問題だ。」

「なんですって?」

始「そんな服装で、一晩も雪山を逃げたのなら衰弱している。
  人間だったらな。なのにお前には寒そうな素振りさえない。」

「ふふっ、なるほど。そちらに関してはあなたに一日の長がある。
 でも、戦いではどうでしょうか。私はアルビノジョーカー、
 アンデッドを狩るジョーカーとは対の、人間を狩るジョーカー!!」

男の顔が、狂気めいたものも感じさせる張り付いた笑顔に変わった。

始「ふん、バトルファイトの勝者にするつもりなのか知らんが、
  お前みたいなのを生み出していたという訳か。」

険しく睨みつける脇で、やや場違いな声が上がった。

ラブ「あー、びっくりした!てっきり、面倒になりそうだから
   気絶させてから救助するつもりなのかと・・・・。」

始「・・・・いや、流石に俺でもそんな非人道的な発想はしない。
  そもそも助けようとしないとかならあったかもだが・・・・。」

ラブ「ですよねー。そんなひどいこと。あははー。」



橘「はっくしゅん!」

ジャックフォームの飛行で、あわやということろで上空に退避していた。

美希「大丈夫ですか?もしかして冷気の影響ですか?」

橘「いや、変身していれば大丈夫だ。」

美希「じゃあ誰かが噂しているとかだったりして。」

橘「だとしても、ろくな内容じゃなさそうだな。
  それより、君達の方が軽装だと思うが大丈夫なのかい?」

キュアベリーとサウラーを抱えた状態で、ふわりと着地する。

美希「私達も変身していれば結構平気ですよ。」

サウラー「僕も大丈夫です。ただ、今ついていく余力は無さそうです。
       すみませんが、構わず先に行ってください。」

橘「そんなに弱った状態で大丈夫かい?」

サウラー「その辺りでビバークでもしていれば回復すると思います。
       回復したら、僕も後を追いかけますよ。」

美希「そう・・・・無理はしないでね。」

睦月「橘さーん!」

橘「ん、睦月か?どうしてこんな所に。」

睦月「どうしたって、メビウスの居場所が分かったけれど、通信しても
   誰も応答が無くって、居場所を探りに移動していたら凄い音がして、
    上空に橘さん達の姿が見えたから何かあったのかと・・・・。」

橘「そうか、俺達の方も今居場所の情報を得られたところだ。」

祈里「もしかして、サウラーも思い出してくれたのね!」

美希「ええ。ウエスターもみたいね。ひとまず良かったわ。」

サウラー「彼のお守りは僕が引き受けるよ。」

睦月「橘さん、これからどうしますか?連絡がつかないのも不安ですし。」

橘「合流するか、それとも相手に時間を与えないように俺達で攻めるかか。」

美希「ねえサウラー、残った敵はノーザとメビウスだけなの?」

サウラー「・・・・いや。もう一人居る。」

祈里「もう一人!?」

サウラー「ああ、そして君達が4手に分かれたのを迎え撃つ手筈だった。
       恐らく、残りの二組でも戦闘が発生しているに違いない。」

橘「そのもう一人というのはどんな奴なんだ?。」

美希「もしかしてクラインとか?」

サウラー「違う。ラビリンスではなく、アンデッドに類する存在だろう。
       ・・・・何者かは分からないがアルビノジョーカーと呼ばれていた。」

睦月「アルビノジョーカー?」

橘「恐らくは、ジョーカーと同等かそれ以上ということなんだろうな。」

睦月「橘さん、応援に向かいましょう!きっととんでもない相手ですよ。」

美希「私達は4人揃わないとグランドフィナーレも使えないし・・・・。」

祈里「うん、苦戦しているかもしれない。」

橘「よし、応援に行こう!ここで各個撃破した方が良さそうだ。」



カリス達とアルビノジョーカーの戦いは長期戦の様相を呈していた。

純一「思ったよりもやるな。」

始「・・・・相手の狙いが時間稼ぎならそのくらい余裕だ。」

冷静な口調ではあったが、内心では苛立ちのようなものがあった。
アルビノジョーカーの戦いぶりが攻めには消極的で、
どことなく防戦や様子見に徹しているかのような印象だったからだ。

純一「だとしたらどうした?ジョーカーに変身しないのか?」

焦りを見透かしたかのように言う。

始「仲間との約束だ。ジョーカーを暴走させかねない真似はしない。」

純一「私の知るジョーカーは仲間を作るタイプではなかったが・・・・。
    だが、ジョーカーの能力を強化し、お前の全データを持った私と
    こうも善戦するとは、賞賛に値する結果だよ。」

始「アンデッドとしての能力だとか、データだとか、
  そんなものではない強さを学んだからな。それが、お前との違いだ。」

純一「『本当に強いのは人間の心』・・・・か、いい台詞だ。感動的だ。」

何時の間にかアルビノジョーカーが一枚のカードを手に取っていた。

純一「だが・・・・無意味だ。」

ラブ「あのカードは!?」

見当がつかないと、始が無言で首を横に振った。

純一「これは、メビウス様が4種のカテゴリーキングのデータを基に
   生み出したバニティカード。

    アンデッドの力も、人間の心も、そんなものが遠く及ばぬ
    『超古代の絶対的な最強の力』の封印を解くキーだ。
   ケリをつけてやろう、ジョーカー。・・・・・・・・変身。」


アルビノジョーカーの顔が笑みを浮かべた様にも見えた瞬間、
カードから放たれた光と共に、アルビノジョーカーの体が巨大化し始めた。




そして、ブレイド&キュアパッション対ノーザの戦いも長引かされていた。

せつな「何が狙いなの、ノーザ!」

ノーザ「なんのことかしらぁ?」

せつな「とぼけないで。あなたの戦い方、私達を倒すのではなく、
     倒されないように、逃がさないように何かを待っている。
     その程度はあなたの動きを見ていれば分かるわ!」

ノーザ「ふふっ、とぼけてないわよ。だって・・・・もう目的は達成したもの。」

せつな「!?」

ノーザ「あの子達は敗れたようね。まあ、それはそれで計画があるけれど。」

せつな「どういうことなの!」

不意にウエスターとサウラーの話題が出たこともあり、語気が荒くなった。

ノーザ「スリーカードが揃ってしまった、ということよ。」

ノーザがカードを扇状に広げて見せてきた。

剣崎「あれは、ケルベロス!あいつらそんなものまで!!」

ノーザ「そして、ここからが本番よ。」

以前にもあったように、3枚のカードが1枚にと溶け込んでいく。
そして、絵柄であるアンデッドが融合し、三つ首の姿へと変わる。

ノーザ「橘朔也は制御のために3枚に分けていたようだけど、
     今、それが再び1枚、いえ1体のアンデッドに戻った。
     さらに・・・・・・・・。」

せつな「あれはソレワターセの実!」

剣崎「ケルベロスでソレワターセを作る気か!」

ノーザ「甘いわね、それで終わりではないわ。
     そう・・・・終わるわけではないのよ・・・・。」

初めて、ノーザにいささかのためらいが見られた様にも思えた。
だが、しばしの後にノーザは行動を再開する。

ノーザ「これこそが・・・・新たな始まりよ!」

ノーザはソレワターセの実を口にした。

剣崎「なんだ!?」

せつな「あれは・・・・もしかして!」

剣崎「心当たりがあるのかい?」

ノーザ「ふふっ、きっとそれが正解・・・・。」

ノーザもウエスターやサウラーが使っていたような装置を取り出す。
それにケルベロスのカードをセットすると、己の腰へと当てた。

ノーザ「BOARD、橘朔也、そして・・・・剣崎一真。
     これらの者達によって得られたものを融合させ・・・・・・・・
     私自身が究極のアンデッドとなるのよ!」

剣崎「俺の!?どういうことだ!」

答えは無く、その時既に、ノーザは巨大な魔獣へと変貌しつつあった。



橘「始、あいつはなんだ!?」

合流するや否や、遠目からも見えていた存在についての質問をする。

始「奴自身が言うには『超古代の絶対的な最強の力』とやららしい。」

睦月「なんか・・・・すごく強そうですね!
    封印したら俺も使えるのかなー?」

祈里(心なしか、ちょっと嬉しそう?)

美希(むしろ逆に微妙そうな気もするけれど・・・・)

ラブ「巨大化して、何やら浮き上がっちゃったんだ。」

美希「まだ変身の最中みたいな様子だけど、今の内に叩きたいわね。」

祈里「でも、あの高さじゃ流石に届かないよ。」

橘「降りるのを待って皆で戦うよりも、飛べる者で戦うべきだろうな。」

睦月「降りてくれるかも分かりませんしね。」

祈里「飛ぶのに疲れたら降りてこないかな。」

美希「いやいや。上から一方的に攻撃されるかもしれないし。」

始「不安もあるが、こちらから仕掛ける外あるまい。行くぞ橘。」

『エヴォリューション』

橘「ああ!」

睦月「待ってください、俺も・・・・。」

始「すまない睦月、13体融合中だからフロートは貸せない。」

橘「ひとまず俺達に任せてくれ。」

翼を広げて飛び立ったギャレンをワイルドカリスも追った。

睦月「え、ああ・・・・ぶ、無事に帰って来てくださいね!」

祈里「私達も飛べないから様子見ね。」

美希「キュアエンジェルになれればいいんだけど・・・・。」

ラブ「エンジェルベリーの羽なんて特に速そうだもんねー。」

睦月「あぁ、フロートさえあれば俺も!」

美希「・・・・・・・・・・・・。」

祈里(なんかすごい表情してる・・・・)


どさどさっ、という音がし、雪上に二つの穴が空いた。

始「くっ、なんて奴だ・・・・。」

落下した始と橘だったが、なんとか動けるようで這い出して来た。

睦月「お、お早いお帰りで・・・・。」

睦月が手を差し出す。

橘「うぅ・・・・睦月か。急いで逃げるぞ。」

睦月「ちょっとぉぉぉ!」

始「別に臆病風に吹かれた訳じゃない。」

橘「ひとまず、移動しながら話すぞ。」

睦月「どこへ?」

橘「あっちだ。」

睦月「げっ!」

14に気を取られ気付かなかったのか、巨大化したケルベロスの姿があった。


美希「それで、あの14との戦いを避けた理由はなんなんですか?」

ある程度移動した後、走りながら尋ねた。

始「散れっ!」

一同が咄嗟に左右へ跳んで退避する。
直後、巨大な火球が飛来し、雪どころか、地面まで熔かしてしまっていた。

祈里「な、何これ!?」

ラブ「まさか、14の。」

橘「そうだ。さっき飛んで行った時もこれで迎撃された。」

始「それは橘の攻撃で直撃は避けられたんだが・・」

言葉をさえぎる様に、雷鳴が響き、稲妻が辺りに降った。

祈里「きゃぁっ!!」

始「・・続けて雷と吹雪で撃墜された。
  つまり、奴は俺達が使える火、雷、氷、風の力を全て使えるんだ。」

橘「これは俺の勘だが、14とはキング、13を超えるものという意味、
  全てのアンデッドの力とそれを超越した力を持つということだろう。」

睦月「そんなのとんでもないじゃないですか!」

橘「だから、俺達も全アンデッドの力、カードを結集して対抗するんだ。」

ラブ「それでまずは逃げる、剣崎さんと合流するって決めたんですね。」

始「だが、そろそろ14も本格始動してしまうようだ。
  これからは、攻撃が降り注ぐ中を移動しなければならない。」

美希「・・・・一旦別行動をとりましょう!」

睦月「別行動?」

美希「皆で固まっていたら、一網打尽にされる恐れがあります。
    別々に移動すれば、相手の狙いも分散しますし、
    何か反撃の糸口を探す余裕も多少は得られるかもしれません。」

始「確かにな。こちらから攻撃しないなら、まとまっている必要も無い。」

祈里「でも、ばらばらになっちゃって大丈夫かな。」

美希「大丈夫よ、だってあんなに目立つ目的地があるじゃない。」

ふっ、と笑ってキュアベリーがノーザを指差す。

ラブ「なーるほど。丁度いいね。」

橘「分かった、そうしよう。」

睦月「了解。」

ラブ「じゃあ決まったら善は急げで。
   早くしないとせつなと剣崎さんがノーザを倒しちゃうかもだし。」

始「ふふっ、そうだな。じゃあ、皆、またな!」

再び降って来た火球を合図とするように一同は散開した。




『ロイヤルストレートフラッシュ』

せつな「ハピネスハリケーーン!!」

同時に繰り出された技が、閃光と旋風の二条の矢となってノーザへと迫る。
だが、ノーザまで届くことはなく、虚空へと霧散してしまった。

せつな「バリア!?」

ノーザ「そうだ。お前達の攻撃は利かない。
     もう打つ手は無いということだ。」

せつな「そんな・・・・。」

剣崎「いや、多分まだ手はある。」

せつな「本当ですか!?どうすれば?」

剣崎「奴に接近して、バリアの内側で直接攻撃をぶつけるんだ。」

せつな「でも、同時攻撃も防ぐバリアに邪魔されたら・・・・。」

剣崎「突進するタイプのロイヤルストレートフラッシュで、
    俺の持てる全てをぶつければあるいは・・・・。」

ノーザ「確かに。13体と融合したキングフォーム、そしてジョーカー。
     その力が全開すれば、バリアもくぐれるかもしれないな。」

剣崎「だけど・・・・・・・・。」

5枚のカードを持った剣崎の手はやや震えているようだった。

せつな「剣崎さん?」

剣崎にはためらいの様子があった。

ノーザ「どうやら賢明にも察しているようだな。
    そう、私はケルベロスと融合し、その力も十二分に扱える。
     つまり、お前が接近した際に吸収することなど造作も無い。」

せつな「そんな!」

ノーザ「だから言ったのだ。『打つ手は無い』と。
     たとえ死角からだろうと、不意を突こうと、
     一定範囲内のアンデッドは吸収してみせる。」

その言葉には揺ぎの無い自信が溢れていた。

剣崎「恐らく、奴の言葉に偽りは無い。だから・・・・賭けになる。」

せつな「無茶です!ダメージは与えられたとしても、剣崎さんが・・・・。」

剣崎「吸収されるかもしれない。それが奴に力を与えてしまうかも。
    でも、少しでもダメージが残れば、後で皆が戦う時に・・ウェッ!?」

言葉は途中で遮られた。

剣崎「あの・・・・せつなちゃん?」

叩かれた頬を押さえ、やや呆気に取られていた。

せつな「今の私は、キュアパッションとして戦っています。」

剣崎「はい、キュアパッションさん!」

ただならぬ様子を感じ、やや気圧されもする。

せつな「でも、以前は総統メビウスの忠実なしもべでした。
     それこそ、自分の命も顧みはしなかった・・・・。
     だけど、それを誰よりも気に掛けてくれたのがラブだった。」

剣崎「そうだったんだ・・・・。」

せつな「私以上に私のことを真剣に考えてくれて、
     『間違った道を進むのを止めるのが友達だ』と、
     ラビリンスの幹部だった私と全力で語り合ってくれたんです。」

剣崎「・・・・・・・・。」

せつな「それで私は『幸せ』というものを知ることができました。
     同時に、自分を粗末に扱うことが、
     自分を気遣ってくれる人を不幸にしてしまうことも。」

そこまで言って、剣崎の顔を改めて見詰める。

せつな「だから、剣崎さんも自分を大事にしてください!
     剣崎さんを失ってしまうことになったら悲しむ人も、
     剣崎さんが困った時に力を貸してくれる人も居るはずです。」

橘「おーい。」

睦月「剣崎さーーん。」

ちょうど声がした。
そちらを見ると、ふたり以外に始も走って来ていた。

剣崎「みんな・・・・!」

キュアパッションが微笑みながら見守る。

橘「頼む、力を貸してくれ!」

剣崎「・・・・・・・・。」

せつな「・・・・・・・・。」

剣崎「・・・・ま、まあ居なくなる訳にいかないのは確かか。」

ノーザ「ほぅ、やっと到着したか。」

始「まずい、また来たぞ!よけろ!!」

剣崎「えっ!?」

よけた後の場所に氷の塊が落ちた。
かと思うと、炎の球が立て続けに当たり、一瞬で氷は消えた。

剣崎「な、なんなんだこれ!」

せつな「・・・・あれですか?」

遥か上空の14に目をやっていた。

橘「あいつは14。正確なことは分からないが、
  ジョーカーと52体のアンデッドの能力を強化して持っるようだ。」

祈里「はぁはぁ・・・・追いついた。」

ラブ「合流は出来たけど、まだノーザも元気みたいだね。」

ノーザ「ふふふ、茶番に付き合ってやったのも、14を待てばこそ。
     数の上では2対8だが、もう観念するのだな。
     大人しくアンデッドを吸収されてから14の攻撃で倒れるか、
     14の攻撃に倒れてから吸収されるか選ぶが良い。」

睦月「どっちもお断りに決まってるだろ!」

美希「やれやれ、前門の虎、後門の狼、って状態ね。」

祈里「どっちかって言うと、前門のトランプ、後門の狼さん・・・・とか。」

美希「・・・・突っ込まないわよ。」

祈里「あ、あはは・・・・。」

ラブ「ふたりとも危ない!」

美希「きゃっ!」

祈里「ひゃっ!」

ふたりが居た辺り一面に稲妻が降って来たのだった。

祈里「は、激しい突込みが・・・・。」

美希「もうっ・・・・。」

剣崎「なんて奴だ、まるで天変地異だ。」

始「さっき俺と橘で攻撃を仕掛けたが、迎撃されてしまった。」

橘「攻撃も激しさを増して、とてもじゃないが近付けそうにない。」

剣崎「となると・・・・。」

剣崎がキングラウザーに5枚のカードを流し込む。

ノーザ「ほう、私から倒そうというのか。なめられたものだ。」

橘「待て剣崎、お前や始がケルベロスに接近したら!」

剣崎「でも、それしかないんです。離れた攻撃はバリアで防がれる。
    だったら、至近距離から最大の攻撃を仕掛けるしかない。」

始「待て、だったら俺も同時に行く。」

剣崎「いや、攻撃の瞬間に吸収されて、ダメージが無い恐れがある。
    だとしたら、同時攻撃でもおそらく無駄だ。
    だから、お前には俺が失敗した時の切り札になって欲しい。」

始「剣崎、しかし・・・・。」

ノーザ「ふふふ、どうするのだ?私は別にこのままでもいいぞ?」

一帯には14の攻撃が降り注ぎ、現状維持の不利は明白だった。

剣崎「・・・・やるしかないんだ、分が悪い賭けでも。」

だが、そう言う剣崎にもやや迷いが伺えた。

せつな「剣崎さん、技を出してください!私がサポートします。」

鼓舞するように毅然とした言葉が放たれた。
強い決意を見せ付けるかのように、キュアパッションがノーザを見据える。

ノーザ「ふん、相変わらず生意気な態度だ。いいだろう、やってみろ。
     だが、この状況で思い通りにことが運ぶかな?」

剣崎とキュアパッションの頭上へ巨大な氷が降って来た。

「「「トリプルプリキュアキーック!!!」」」

キュアピーチ達3人の蹴りが氷を粉砕した。

ラブ「私達もサポートするわ!」

キュアピーチが親指をグッと立てて宣言する。

美希「完璧な攻撃、期待してるわ!」

祈里「絶対に上手くいくって、私信じてる!」

今や妨害の意思があるのか、ひときわ大きな雷鳴とともに稲妻が走った。

せつな「!!」

雷撃が迫った時、目前を何かが横切った。

睦月「俺達も、剣崎さんに賭けます。
    剣崎さんが全力を出せるように体を張ります!」

電撃を受け止めるために先程投げたレンゲルラウザーを掴みながら、
後押しするように力強く言った。

せつな「剣崎さん、もちろん私も持てる力は全て使うつもりです。
     剣崎さんはただ、目の前の敵を攻撃することに集中してください。」

そう言い、パッションハープを顔の前で構えた。

剣崎「・・・・そうか、分かったよ。俺の剣が届くのなら、俺はその敵を斬る!」

キングラウザーを握り直し、ロイヤルストレートフラッシュの構えを取る。

ノーザ「いいだろう、まずはお前から吸収してやろう!」

剣崎「うぉぉぉぉおお!」

総出でも防ぎ切れない攻撃が雨あられと降り注ぐ中、
雄叫びを上げながら光の壁を次々に駆け抜けていく。
それにやや先行する形でキュアパッションが併走する。

せつな「歌え!幸せのラプソディ!」

ノーザ「先程の無様な結果をもう忘れたか!
     たかがお前の力で何が出来る?目くらましでもする気か?」

再びパッションハープを奏でたキュアパッションをノーザが嘲る。

せつな「アカルン!」

キュアパッションがブレイドに軽く触れる。
そして、ふたりが現れた場所は、上空から攻撃を続けている14の背後だった。

剣崎「ウェエエエエエイ!!」

肩口から、落下する勢いも上乗せして袈裟懸けに斬り下ろされる。
切っ先が14へとめり込み、斬撃が一筋の光となって走っていった。
最初はのけぞった14の姿勢が前のめりになり、その巨体から力が失われた。
そして、どさり、と地上に落ちると、一瞬の静寂が訪れた。

睦月「や、やったぁ!」

美希「すごい・・・・。」

歓声に迎えられる様に、剣崎とキュアパッションが着地した。

せつな「意図を酌んでくれて助かりました。」

剣崎「ああ。なんとなく伝わったからね。」

ノーザ「・・・・なるほど、ハープは囮だったか。
     そして、お前が私に挑発的だったのも。」

せつな「ええ。まず14を叩いて周囲への攻撃を無くせれば、
     アンデッドを吸収するあなたが相手でも“1対8”で戦えるもの。」

ノーザ「ふふ。卑怯とは言うまい。2対8だと言ったのも私だからな。
    迂闊だった我等の上をお前達が行ったまでのことだ。」

弱ってこそいるが、まだ生きていた14がノーザの方へ震える腕を伸ばす。

ノーザ「だが、我等とてこのまま終わりはしない。」

ノーザが14の腕を掴む。そして、光が14の体を包み込むと、14が消えていた。

橘「14を吸収した!?」

祈里「仲間なのにひどい!」

睦月「戦えなくなったからって、自分のために利用するなんて!」

ノーザ「我々を見くびってもらっては困る。
     我々は皆、メビウス様のために果たす役割を与えられ生み出された。
     その役割を果たすために倒れるのは厭わないし、その逆は無い。
     だから力を合わせるのだ、先程のお前達のようにな。」

ラブ「そんなの私達とは違う!相手を利用しているだけじゃない!!」

ノーザ「分からぬ奴等だ。その言葉、14への侮辱でもあるのだぞ。」

美希「それはあなたの考え方の勝手な押し付けでしょ!」

ノーザ「ふっ、こうして意識まで融合した今、14の思考も分かる。
    彼も同じ考えなのだ。だからこそ、融合して足並も合うというもの。
     まあ、お前達は納得しないだろうが。」

ノーザがゆっくりと両手を広げた。

ノーザ「しかし!14の力を取り込んだのにはお前達も異論あるまい!」

ライダー達が不意に前方へと引き寄せられる感覚に襲われた。

睦月「だったら、こっちだって力を合わせてやる!」

『リモート』

空中に放られたタランチュラアンデッドとタイガーアンデッドのカードに光が当たる。。

睦月「ふたりが居てくれれば百人り・・」

だが、アンデッドの姿を取り戻した瞬間、ノーザの方へとすっ飛んでいってしまった。

睦月「・・きっ?」

ふたりがノーザの体に触れたかと思うと、かすかな光と共に消えてしまった。

橘「まさか、これはアンデッドを吸収する力なのか!」

ノーザ「その通りだ。先程の猛攻を行っていたパワーを吸収に利用しているのだ。」

睦月「いくらなんでもこの距離から引き寄せられてるなんて!?」

美希「危ないっ!」

祈里「つかまってください!」

プリキュアが差し出した手をつかむも、引きずられるのは止まらなかった。

ノーザ「何時まで耐えられるかな?これが14によって力を増した・・・・うっ?」

誇るように喋っていたノーザの体が強張りを見せた。
それと同時に、引き込む力も弱まっていた。

剣崎「なんなんだあいつ一体?」

橘「まだ大き過ぎる力に慣れていないのかもしれない。」

睦月「じゃあ、今の内にあいつを・・・・。」

しかし、ノーザも立ち直る兆しを見せていた。

始「駄目だ、退避しろ!」

とっさに近くの樹木や岩などにしがみつく。

剣崎「まずい、引き剥がされそうだ!」

始「ここまでとんでもないとはな。」

睦月「えっ、そこまでですか?俺より強いふたりが耐えられないなんて。」

橘「・・・・まさか!」

ノーザ「そう。先程のキング達の様に、強いアンデッド程、強い力で吸い込める。
     まずブレイドとカリスを抑えてしまえば我等の勝ちは決まりだ!」

始「残念だが、さっきの14の様に、吸収されて力を増されたら勝ち目は無いな。」

剣崎「さっきの・・・・吸収して融合する・・・・。」

始「どうしたんだ、剣崎?」

剣崎「俺に考えがあります・・・・皆にも、協力してもらえればあるいは・・・・。」

ノーザ「何時までも隠れていられるつもりか?
     だが、忘れてもらっては困るが、こちらから攻撃することも・・」

その時、プリキュア達が陰から駆け出してきた。

ノーザ「・・ほう。確かにお前達は自由に動けるが、4人でどうかなると?」

せつな「あなたのその吸収の力、それは融合の力とセットになっている!
     ハピネスリーフ、セット!パイン!」

祈里「あなたの融合はソレワターセの実と、ライダーシステムが要!
    プラスワン、プレアーリーフ、セット!ベリー!」

美希「つまり、そのどちらかを欠けば吸収の力も弱まるはず!
    プラスワン、エスポワールリーフ、セット!ピーチ!」

ノーザ「・・・・・・・・。」

ピーチ「私達は、私達の力と、そして心を合わせてあなたに勝つ!」

ノーザ「ふふふ、馬鹿め。その技はよく知っている。その弱点もな!」

キュアピーチがキャッチに入るところ目掛け、ノーザが火球を撃ち込む。

せつな「ピーチ!」

ラブ「・・・・くっ!」

わずかにためらったが、意を決して託されたリーフへと飛び込んだ。

美希「ピーチ!」

キュアピーチに迫っていた火球が、命中直前に弾ける。

ノーザ「何っ!?」

視線の先では、木につかまった状態のギャレンがラウザーを構えていた。

ノーザ「貴様か、無駄なあがきを!」

ピーチ「・・プラスワン、ラブリーリーフ、セット!」

爆煙の中から、キュアピーチが飛び出して来た。

祈里「ピーチ!」

ラブ「皆の想い、決して無駄になんかしない!」

せつな「ええ!」

プリキュア達が想いのこもった必殺技を発動させる。

「「「「ラッキークローバー・グランドフィナーレ!!」」」」

巨大な水晶にノーザの全身すら包み込まれた。

「「「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

ノーザ「ふん・・・・こしゃくな・・・・!」

しばらく膠着し、激しい動きは無い、激しい攻防が続いた。

ノーザ「私を・・・・なめるなぁぁあぁっ!」

張り上げられた咆哮と同時に水晶が砕け、周囲のプリキュア達も飛ばされる。
だが、流石にノーザもやや消耗したのか、やや息が上がっていた。

ノーザ「はぁ・・はぁ・・・・・・・・何故・・だ?」

攻撃を退けたものの、その声には戸惑いがあった。

ノーザ「以前にもこの技、お前達の切り札を破ってやった。
     その時は、確かにお前達の心も折れかけていた。
     だが・・・・何故今度は絶望していない?何故!?」

プリキュア達が立ち上がる。

祈里「だって、信じてるもの。」

せつな「私達にはまだ仲間が居る。」

美希「そして、私達は私達のやることをやって希望をつないだ。
    ・・・・ちょっと完璧じゃなかったかもしれないけどね。」

ラブ「皆の想いを引き継いで、私達は頑張れた。
   その私達の想いも、決して無駄にはならない!」

剣崎「うぉぉぉ!」

吸い込みが止まっているところへ、剣崎がライトニングスラッシュで突っ込む。

ノーザ「お前達のつないだ想いとはこの程度か、愚かな!」

ブレイドの攻撃が触れたと思った刹那、淡い光と共にその姿が消失する。

美希「ブレイド・・・・。」

ノーザ「ふふふ、お前達の最後の希望も消えたようだな。」

ラブ「まだ、終わったりしない!」

せつな「ええ。私達は、誰一人絶対に諦めない!」

キュアパインも、祈りを捧げるかのように両手を組む。

ノーザ「ふ、ふふ・・・・力が更に増すのを感じるぞ!
    さっきの程度で吸収能力を封じ切ったつもりだったとはな。
     そして、これで勝負も決し・・・・・・・・う、うぐぅ!?」

余裕を見せていたノーザが、一転頭を抱えるように苦悶し始めた。

橘「行くぞ、ここからは俺達の番だ!」

『アブソーブクイーン』 『エヴォリーションキング』

キングフォームへの進化を遂げたギャレンが疾走する。

ノーザ「させるかぁ!」

突進していたギャレンの体が見えない何かにぶつかり、火花が飛ぶ。

睦月「ああっ、バリアで止められた!まずい!!」

一瞬のけぞったギャレンが再び前のめりに踏ん張り、火花が激しくなる。

橘「いや・・・・逆だ!こいつはバリアを張ってまで接近を防いでいる。
  つまり吸収能力を使えない・・・・ピンチじゃない、チャンスだ!!始!!」

始「ああ。」

『ワイルド』

始「死ぬなよ橘!」

『ワイルドサイクロン』

ノーザ「そうはいくか・・・・今の状態でも・・・・それさえ凌げば・・・・。」

ワイルドサイクロンはバリアではなくギャレンの背を捉えた。

ノーザ「なにぃっ!?」

始「押し込むぞ!」

橘「ああ、フルパワーでこい!」

ノーザ「貴様・・・・死ぬのが怖くないとでも言うのか!」

橘「・・・・怖いさ!俺は弱いからな。どうすればいいのか分からないこともある。

バリアに潜り込む様な形となり、ついには突き破った。

橘「だが、仲間を助けたい、力になりたい。だから、やれることはやるんだ!」

ギャレンが巨大化したノーザの腰、バックルに由来すると思しき場所に飛びつく。
予想していた通り、アンデッドを吸収されずに済んだ。
そして、キングフォーム化によって巨大化したギャレンラウザー、
その先端にあるジャックフォームの時よりも肥大化した一対の刃を、
クワガタのアゴの様に使いバックルを挟む。

橘「剣崎ぃぃぃぃ!」

渾身の力で既にノーザの一部となっているバックルを引き剥がしにかかる。
ぶちぶちと、何かが千切れる音と感触があった。

ノーザ「ぐゎぁぁああ!」

ラブ「いくよ、みんな!」

「「「ええ!」」」

ギャレンともぎ取られたバックルがノーザから離れ、追い討ちがかかる。

「「「プリキュア・トリプル・フレーーーッシュ!」」」

せつな「ハピネスハリケーーーン!!」

ノーザの断末魔の叫びと、大きな爆発の音が辺りに響き渡った。




橘「剣崎、しっかりしろ!大丈夫か!」

剣崎「・・・・うーん・・・・・・・・あ、戻ってる。」

睦月「良かった、元のままの剣崎さんみたいだ。」

橘「お陰で、ノーザも倒せたぞ。」

祈里「でも、剣崎さんが吸収されちゃった時はやっぱり心配しちゃいました。」

せつな「ええ、作戦の通りとはいえ。」

剣崎「ごめんごめん。上手くいってよかったよ。」

ラブ「よくあんなこと考えつきましたね。」

剣崎「ノーザは、14を吸収して、精神も融合したと言っていた。
    そして、嶋さん達を吸収した時に異常があった。で、閃いたんだ。」

橘「だが、わざと吸収されて内部から奴の力を抑えるとか無茶過ぎたぞ。
  こうして元に戻れたから良かったようなものの・・・・。」

剣崎「でも皆にも無茶してもらっちゃうんですしね。
    いやあ、嶋さん達も手伝ってくれてなんとかなりました。」

少し緊張が和らいだように笑う。

せつな「ええ。私達も精一杯頑張りました。」

ラブ「まあ、あれ位なら無茶って程でもなかったけどね。」

美希「あんまり調子に乗らないの。」

橘「いや、皆すごかったよ。ありがとう。」

睦月「ええ。これでひとまずは・・・・。」

しかし、そこで和やかな空気は破られてしまった。
決着を見届けたかのように、上方にまばゆい光が発生した。

始「モノリス・・・・いや・・・・。」

橘「残るはあいつ、メビウスだけか。」

プリキュア達もかつての戦いを思い出してか、
やや緊張した面持ちで無言で見上げていた。

『ノーザよ、よくやった・・・・。』

感覚に直接響くような声がした。

ノーザ「メ、メビウス・・・・様・・・・。」

声がした方には、緑の血にまみれたノーザが立っていた。
足元もおぼつかない様子で、到底戦える力は残っていなかった。

『これで、全てが揃った。』

メビウスの前に光が現れた。

美希「あれは・・・・!」

ラブ「シフォン!」

始「俺達が戦っている隙にこそこそ動いていたわけか。
   大した統制者様だな。」

ノーザ「ふ、ふふ・・・・失礼ね。
     まあ・・・・それもあるけれど、それだけじゃないのよ。」

剣崎「なんだって言うんだ!」

ノーザ「ふふっ、協力のお礼に教えてあげる・・・・。」

もはや満身創痍で、立っているのがやっとという様子だった。
だが、その目には何かをやり遂げたという自信と誇りがあった。

ラブ「協力?」

ノーザ「確かに無限のメモリーであるインフィニティも目的だった。
     でも、それ以外に、メビウス様の器を作る必要もあったの・・・・。」

せつな「器・・・・メビウスが行動するための肉体ということね。」

睦月「作るって、アンデッドのデータを集めてか!」

ノーザ「それだけでは、メビウス様にはまだまだ不十分だった・・・・。
     そこで私が生み出された。
     カテゴリーQと植物の細胞を組み合わせたトライアルNが・・・・。」

橘「お前はトライアルだったのか。」

祈里「器として、あなたはそれだけのために生み出されたの・・・・?」

その声は悲しみを帯びていた。

ノーザ「正確に言うならば『器へと進化するために』ね。
     私はトライアルの肉体を進化させる必要があったの・・・・。」

始「進化だと?」

ノーザ「かつて、13体のアンデッドと融合した過大な負荷によって、
    剣崎一真は人間からジョーカーへと超進化した・・・・。」

剣崎「まさか、お前がやっていた事は!」

ノーザがにやりと笑う。

ノーザ「カテゴリーQのアブソーブの能力と、
     ジョーカーの能力を模したバックル。
     それらにより、強力なアンデッドとの融合を果たすことで、
     人間よりも強固な肉体をベースに再現した『ジョーカー化』よ。」

ラブ「じゃあ、さっきメビウスが言っていたのは!」

ノーザ「ええ、私の肉体の超進化は果たされた・・・・あなた達のおかげでね。
     そして今!太古の力14と無限のメモリー・インフィニティと合わせ、
     究極の存在として統制者メビウス様が降臨するのよ!!」

ノーザが両手を天に掲げた。

ノーザ「我等が力、お使いください!」

天のメビウスとその前のシフォン、ノーザ、そして14が光に包まれた。

祈里「きゃぁぁぁ!!」

目を灼く閃光が消えると、そこには一人の姿があった。
人間の形、大きさのようではあったが、決定的に違うのは
その者が透き通った光の集合の様に見えたことであった。

橘「あれがメビウス・・・・なのか?」

始「おそらく、な。」

祈里「あそこ!シフォンちゃんが!!」

不動のままのメビウスの足元にシフォンの姿があった。

せつな「まかせて!」

咄嗟に、アカルンでシフォンを連れて来た

ラブ「シフォン、しっかりして!」

祈里「ぐったりしてる!」

美希「シフォン、大丈夫!?」

それまで微動だにしていなかったメビウスが声を発した。

メビウス「無駄だ。そやつはインフィニティとしての本質を失ったのだ。
      もはや長くはもつまい。」

美希「なんですって!」

メビウス「以前のような不覚を取らぬよう、無限のメモリー自体ではなく、
      無限のメモリーの機能を取り込んだのだ。もう離れぬようにな。
      そう・・・・今のそやつはインフィニティではない。
      そして今の我は、14を超え、全てを超えた無限の統制者。
      我こそが∞(インフィニティ)なのだ!」

始「13、14と来て、フィフティーンどころかインフィニティとはな。
   随分と大きく出たものだ。」

睦月「なんか偉そうな事を言っているけど、要はお前を倒せば元に戻るんだろ!」

レンゲルがラウザーを構える。

メビウス「そういうことになるな。実現の有無を考えなければ、だが。」

睦月「やってやるさ!」

橘「待て睦月、一人で先走るな!」

飛び出した睦月の援護に、ギャレンとブレイド、カリスも間合いを詰める。

ラブ「ここで確実に倒さないとシフォンが危ない。私達も行くよ!」

美希「ええ!」

祈里「私達が戦っている間、パッションはここでシフォンをお願い。」

せつな「シフォン・・・・。」

腕の中で力尽きているシフォンを抱き締める。

ウエスター「なんだこれは、あれがメビウスなのか!?」

せつな「ウエスター、サウラー!もう大丈夫なの?」

ウエスター「ああ、なんとかな。」

サウラー「正直まだ万全ではないが、居ても立ってもいられなくてね。」

せつな「丁度良かった。あなた達でシフォンを安全な所へ連れて行ってあげて。」

ウエスター「だが、このまま迷惑を掛けただけで引き下がるわけには・・・・。」

食い下がるウエスターの肩にサウラーが手を置いた。

サウラー「ウエスター、君は弱ったシフォンが巻き添えになっても平気かい?」

ウエスター「そんなわけなかろう!だが、お前も避難したくないという意味なら、
        その時は俺が身を挺してでもシフォンを守る、安心して戦え!」

サウラー「ふふ、なんとも君らしいな。だが、落ち着いて考えてみるんだ。
       弱っている僕らが倒されそうになったら、みんなはどうすると思う?」

ますます意気軒昂するウエスターを優しく諫める。

ウエスター「うん?・・・・・・・・あ。」

サウラー「そう。きっと君が今言ったのと同じようにするだろう。

       ・・・・無念なのは僕だって同じだ。
       だが、今の状況で意地を張っても足を引っ張るだけだ。
       命を張るなら、もっとみんなの役に立てる形でだ。」

ウエスター「くっ、わかった・・・・すまん。」

サウラー「行こう、同じ場で戦うだけが力を合わせることではない。」

せつな「ありがとう。その想いは確かに受け取ったわ。
     きっと、その想いで私達はもっと強くなれる。」

ウエスター「ああ、また後でな!」

その言葉に後押しされる様に、キュアパッションも戦列に加わった。


総勢8人で攻撃を仕掛けるも、あるいはかわされ、あるいは弾かれていた。

睦月「なんて奴だ、これだけの攻撃を受けてダメージが無いなんて!」

メビウス「確かにお前達の力、決して小さくもない。
      だが、所詮は有限なのだ。
      有限のものが有限の束になろうと、無限の前では同じ。
      結局はゼロと同じ・・・・そう無力なのだ!」

メビウスを中心に、放射状に光が広がった。

剣崎「うわぁっ!」

取り囲んでいた一同が、吹き飛ばされ、どさりと地に落ちた。

橘「これは・・・・変身が解けている?」

祈里「な、なんで!?」

メビウス「言った筈だ、お前達の力は無に等しい。」

美希「私達の力を打ち消したというの?」

メビウス「そういうことだ。」

始「馬鹿な、だが何故俺は人間の姿に?」

メビウス「戦力を奪うために13体融合の内、スピリット以外を抑えたのだ。
      我が力ならその程度たやすい。そしてお前達自身の力を抑えるのもな。」

睦月「そう言われると、なんだか力も入らない・・・・。」

メビウス「もう大人しくそこで寝ているがいい。」

剣崎「そうはいくか・・・・!」

ラブ「このまま負けるわけにはいかない!」

力を振り絞るようにして、再び立ち上がろうとする。

メビウス「・・・・やはり、素直に悟りはせぬか。
      自分達の世界のためとはいえ、なかなかの執念だな。」

ラブ「単に、自分達の世界のためだけじゃないよ。」

メビウス「ほう?」

ラブ「私達ね、約束したんだ。」

メビウス「約束だと?」

ラブ「天音ちゃんにね、私達のダンスを見てもらうんだ、って。」

メビウス「・・・・栗原天音か。」

美希「ええ。誰かと関わる気はあまり無かったけど、仲良くしてくれたのよ。
    せつなと久し振りに再会したばかりだってちょっと待ってもらったけど、
    4人で練習して完璧なのをを見せる、って。この一件を終わらせてね。」

祈里「天音ちゃんに会えて良かった。
    私達の知らない場所や人、素敵なものってたくさんあるって分かった。
    だから、私達はその約束のためにも戦うし、
    この世界のためにも、他の世界のためにも戦うの!」

メビウス「くだらん。ほんの一時、すぐに別れ消えることになる、
      うたかたの関係で交わした約束になんの重要性がある。」

せつな「違うわ。近くに居なくても、だから意味が無いなんてことはない。
     だって私は、今もラブたちを大切に思っているもの!」

ラブ「そうよ、私達だって!」

美希「ええ。互いに想い合ってつながっているのよ!」

祈里「そばに居ないからそれで終わってしまうなんて、私は信じない!」

メビウス「それはお前達がプリキュアであり、会おうと思えば会えるからに過ぎん。
      現に、離れていたというお前達もこうして再会し、すがり合っている。
      ほんの一時の出会い、それでいつまでも想いとやらが続くと思うのか?」

ラブ「そ、それは・・・・。」

メビウス「共に過ごす者、己の住む世界、そちらに気を取られるのが当然だ。
      結局、元の場所に戻り、離れてしまえばそれで終わりだ。互いにな。
      それなのに、見も知りもせぬ世界の全てに守る価値が本当にあると?」

祈里「そんなこと・・・・。」

美希「違う・・・・。」

しかし、今度は反論に力が無い。

メビウス「もう諦めるが良い。それが人間の限界なのだ。
      己の手に届くのは有限のほんのわずか。
      分をわきまえて手を引くのだ。
      そうすれば、お前達の世界だけは見逃してやらんこともない。」

ラブ「!?」

美希「そんな出まかせで動揺させるつもり?」

メビウス「偽りではない。私は無限の存在、無限の世界を統べるもの。
      ならば世界の二つなど、取るに足らぬ瑣末なものよ。
      それに、そう遠くない未来に二つの世界も滅びるだろう。
      私が手を下さずとも、自然と、あるいは人間達自身の手によって、な。」

祈里「自分達のために、他の世界は見殺しにしろと言うの?」

せつな「そんなこと・・・・できるわけないわ。」

メビウス「よく考えるのだ。今ここで手向かわなければ、お前達の大事な者達は守れるのだぞ。
      わずかにすら時間を共有しない者達、見ず知らずの者達にかまう必要などないのだ。」

剣崎「それは違う!」

メビウス「ほう。貴様は前回のバトルファイトへの乱入者だったな。何が違うというのだ。」

剣崎「俺も思う、もう会わないからそれで終わりなんてことは無い。
    大切な人達で、でもだからこそ会えない人達だって居る。
    俺が戦いの本能に負けそうになった時、俺を支えてくれたのはそういう人達だった。
    それまでがあるから、近くに居ない時、その人達が近くに居て力づけてくれるんだ。」

メビウス「ならば、お前ももう抵抗はよせ。人の身を捨ててまで守ろうとした世界だ。
      ここで意地を張って喪いたくはあるまい。」

剣崎「そうもいかない。俺は決めたんだ。
    人間でなくなったことで得た時間と力をどう使うか。
    俺は以前、俺の目の前で家族を失った。
    手を伸ばせば届きそうなのに、助けられなかった!
    でも、もうあがく事を諦めない。どこまでも、いつまでも手を伸ばし続けるんだ!」

メビウス「人間は愚かな存在だ。お前が助けた者が他の者の命を奪うやもしれん。
      必死に助けた者同士が醜く争い、殺し合うのかもしれないのだぞ。」

剣崎「そういうこともあるかもしれない。
    でも俺は人間を信じている。人を愛するから俺は戦うんだ!!」

言い放ち、剣崎が再び立ち上がった。

始「そうだな・・・・俺達は永遠に戦い続ける運命にあるのかもしれない。
  だが、運命との戦いが無駄ではないと、俺も信じよう。」

橘「俺は弱い人間だ。色々なものを喪いもした。
  だが、仲間のために少しでも力になれるのなら俺も戦おう!」

睦月「俺が多くの人に支えられたお返しに、
    俺も少しでも誰かの支えになってみせる!」

ライダー達が再び立ち上がる。

美希「確かに・・・・もう会うことは無くなってしまうのかもしれない。」

祈里「共に過ごした時間も、あまり長くはないかもしれない。」

せつな「だけど、一緒に過ごした思い出は決して偽物じゃない!」

ラブ「もし、少しでも心に残っているのなら、別の世界に居ても友達でいられる。」
   きっと心はつながって、心で、未来でも、永遠の友達でだっていられる!」

倒れていたプリキュア達4人も立ち上がった。

メビウス「・・・・なんと。」

美希「そうよ、いろいろな世界に、いろいろ素敵なものがあった。
    そして、そんな素敵なものを守るために戦う人達が居た。」

祈里「この世界もすばらしい世界だし、きっと知らない他の世界にも、
   その世界の人達の幸せがいっぱいいっぱい詰まってるんだって、
   そう私は信じる!」

せつな「だから・・・・私達は全ての世界を守りたい!」

ラブ「だから!私達は絶対に諦めないし負けない!!」

「「「変身!」」」

「「「「チェインジプリキュア!ビートアップ!!」」」」

しばし、状況にそぐわない静寂が訪れる。

美希「・・・・・・・・変身できない!?」

始「馬鹿な、俺もジョーカーの力を解放できないのか?」

睦月「もしかして、これもメビウスの仕業か!?」

メビウス「そうだ。そして、更に知るが良い。有限のものの限界を。」

静かな言葉と共に、辺りに無数の黒い影が現れた。

橘「これは、ローチ!」

美希「この世界をリセットする気!?」

メビウス「それは正確ではないな。」

続いて、上空に幕状の光が現れた。
スクリーンの様にどこかの街の光景が映し出されていた。

祈里「あれは・・・・!」

せつな「クローバータウン!?」

平和な商店街が、突如現れた異形のものによりパニックに陥る。

ラブ「みんなに手出しはさせない!」

言葉での答えは無く、代わりに上空のスクリーンが数を増す。

美希「あれはスウィーツ王国・・・・だけじゃない、次から次へと。」

もはや天空を無数のスクリーンが覆い、次第に悲鳴も聞こえてきた。

メビウス「全てを終わらせるため、オメガローチを放った。
      いずれ、全ての世界に現れ、住人も、物質も喰らい尽くす。」

剣崎「やめろ!」

メビウス「今はまだ物から喰らっているようだが、そう長くはない。
      分かったか、これが有限の限界なのだ。
      お前の差し伸べる手は全ての世界には決して届かない。
      全てを救うことなど出来ぬのだ。なれば、選択するが良い。
      己が限界をわきまえて優先順位をつけることは罪ではない。」

剣崎「それでも、それでも俺は・・・・。」

メビウス「悟るのだ。いずれ各世界の人間も最後の選択をするだろう。
      己が助かるために他を犠牲にしてでも我が統制を拒む道か、
      あるいは、平穏のために我が統制を受け入れる道かをな。
      そう、選択を終えるのだ、かつてのラビリンスの様に・・・・。」

せつな「かつてのラビリンス・・・・。」

メビウス「変身出来ずとも防ぐというのならやってみるがよかろう。
      お前達だけで救えるだけ救ってみるのだな。
      後回しにし、見捨てるものを選んでな。」

美希「そんなの、選べる訳ないでしょ!」

メビウス「だとしたら、全てを見捨て・・・・む?」

スクリーンの一つで異変が起きた。
手当たり次第に何もかもをむさぼっていたローチが続々と吹っ飛ばされた。
何者かがローチと戦っていたのだ。

メビウス「・・・・なんだ?」

一同の意識が上空のスクリーンに集まった。



『お前達が何者かは知らねえが、この街を泣かせる奴は俺が許さねえ。
 この街に“生きた”少年の、未来への願いも叶えてやらなきゃだしな。』

『こいつら世界中に現れているみたいだけど、そっちは放っておくのかい?』

『・・・・ああもう、陸から海から世界中面倒見てやらぁ!』

『ふふっ、せっかく決めたのにやはり君はハーフボイルドだね。』

『うるせぇ!行くぞ、相棒!』

『よーし、ライダーに負けずに俺達も行くぜ、相棒!』

『相棒って言うな!』

『大地と海、相棒といったら私達!』

『あのー、えらく強引に目立とうとしてません?』

『うーん、なんかキャラ被ってそうな後輩登場で危機感を覚えちゃって、
 海より広い私の心もちょっと我慢の限界・・・・みたいな?』

『お嬢ちゃん分かってるな。悩んでいる時は海を見るとすっきりするぞ。』

『と・・・・ともかく、私も堪忍袋の緒が切れました!!』

『派手に行くぜ!』

『止めてみな!』

『この世界はなあ、俺達皆のステージだ!誰かに塗り潰させたりはしない!!』

『私も、もう何も恐くないよ。』

『キキー!』

メビウス「おのれ、まだ抗う者共が居たとは・・・・。』

『ハザードレベル測定不能か、ちょっとした冒険だな。』

『ヴァグラスじゃないみたいだけれど、サバ、あんた達?なーんてね。』

『サバじゃねぇ!』

『ご、ごめんなさい!?』

『ここか、祭りの会場は・・・・。』

メビウス「何故だ、何故そうまでも他者のために戦おうというのだ!」

『そんなこと、俺が知るか!』

『鍛えてますから。』

『ここで決めなきゃ女がすたる!』



メビウス「・・・・愚かな。力無く、戦士の庇護無くは生きられぬ存在。
      それを戦って守るのと、我が管理と何が違うというのだ。」

睦月「それは違う!」

メビウス「なんだと?」

『みんな、あいつらに捕まらんようにするんや!
 託されたシフォンをさらわれてもうたけど、
 これ以上プリキュア達に迷惑はかけれへん!』

睦月「俺だって、力が無くて、力の強さだけに溺れた時もあった。
    結局“力のある存在”になんとかしてもらった時もあった。
    だけど、そこで終わりじゃない!
    得られた平和を守れるように、強くあろうとなれたんだ。」

『あいつら、壁のすぐそばで取り囲んでるココ!』

『こんなこともあろうかと・・・・そこの石を押し込むナツ。』

『こうココ?・・・・か、壁の外側が崩れたココー!!』

『修理する時に仕掛ておいたナツ。』

『流石ココ~。』

『戦いが終わった後は、一番油断するからこそナツ。』

メビウス「何が・・・・違うというのだ。」

『結構欲深いんでね。手を伸ばして届くのなら、きっと守り抜く。
 それに、もう少ししたら帰ってくる予定の奴もいるんでね。』

『俺の未来のダチ、宇宙の果てまで飛んでっても守るぜ!』

『俺達が最後の希望だ。希望があれば、それを信じて人は強くなれる。
 だからこそ、俺達だってそれを信じて強くなれる。』

『そう、この胸に愛がある限り『戦いましょう。命、燃え尽きるまで!』
 なんだからー!・・・・って、私に被らないでください・・・・。』

『俺には夢が無い、だが夢を、未来を守ることは出来る。』

『私は自分の夢を、みんなが夢を叶えられるように戦う!
 それが私の、大いなる希望の力だから!!』

ラブ「そうだった・・・・諦めなければ、何度だってやり直せる!
   遅すぎるなんて、そんな事は絶対にない!」

剣崎「自分では戦えない全ての人達のために、俺は戦う!
    救いを待っている人が居るのに止まってちゃ駄目なんだ。
    悔やむにしても、とにかくやってみてからだ!」

メビウス「何故だ、何故こうも抗うものが現れる!抗い続ける!
      何故自身での判断を拒み、我が管理をも拒むのだ、何故!!
      何故私の管理に従い、予定された人生に満足しない!」

橘「俺達はモノじゃない!何もかもお前の書いた筋書きに従うものか。」

メビウス「受け入れる覚悟をすれば、恐怖心を抱き生きることも無い。
      今のように、死を覚悟して戦う方が不安ではないのか!」

美希「先の出来事が分かるから、諦めがつくなんてのは覚悟じゃない。
    たとえ先が見えなくて、上手くいかない事があったとしても、
    暗闇を切り開いて、壁を乗り越えて進んで行くのが覚悟なの。」

祈里「将来こうなりたい、そんな夢に向かって頑張っている時にだって、
    失敗することもあるし、不安だっていくつもある。」

美希「だけど、完璧じゃなくったって進み続けられる、それが夢なの!」

ラブ「それが、人間が生きるってことなの!」

せつな「メビウス・・・・もうあなたが頑張らなくてもいいの。
     私達は、人間は自分達で進むことを思い出した。
     先が分からないからつまずくこともあるかもしれない。
     けれど、私達はまた立ち上がって、自分で歩いていける。」

メビウス「・・・・それが・・・・人間ならば、非合理な存在であるのなら、
      なおのこと我が管理せねばならぬ!!」

懊悩を振り払うかのように叫び、光が広がった。

始「・・・・どうやら決裂のようだな。」

剣崎「ああ。俺達ふたりで食い止めるぞ!」

始「そうだな。」

睦月「ちょっと待ってくださいよ!ふたりでって。」

剣崎「不死まで変わっていなければ、ある程度粘れるはずだ。
    みんなは人々をローチから助ける方を頼む。」

美希「それならみんなでメビウスを倒してローチを消す方が・・・・。」

始「・・・・かもしれないな。でもお願いだ。天音ちゃんを頼む。
  それだけは心残りなんだ。メビウスは・・・・刺し違えてでも倒す。」

祈里「でも、それって・・・・。」

メビウス「さあどうするのだ?そうしている間にも時間は無くなっていくぞ?
      見よ、栗原天音のところにもローチが迫りつつある。」

煽るかのように、新たなスクリーンが現れた。

『虎太郎、大丈夫!?』

『僕は大丈夫。』

『どうしよう、またこんな怪物が現れるなんて・・・・。』

『天音ちゃん、心配しないで。きっと“仮面ライダー”達がなんとかしてくれる。』

『仮面ライダーが・・・・。』

『ああ。彼らが、天音ちゃんの、みんなのために戦ってくれている。
 そしてきっと今回もなんとかしてくれる。そう信じよう!』

『・・・・うん。私も信じる。・・・・・・・・始さん、無事に帰って来て・・・・。』


メビウス「さあどうする?」

始「みんな、どうか行ってくれ。俺は、天音ちゃんの想いに応えたい。」

祈里「やっぱりそんなのダメ!だって、天音ちゃん言ってました。
    『始さんに無事に帰って来て欲しい』って。
    それなのに、始さんを犠牲にするようなこと出来ません!」

始「頼む、行ってくれ。そうした天音ちゃんの想いも、君達の想いも、
  きっと俺達に力をくれる。それで、俺には十分過ぎる。」

始の顔には、満足したような笑みがあった。

メビウス「ふふふ。想いの力とやら、確かにかつては不覚をとった。
      だが、無限の存在となった今、もはや恐れるに足らぬものだ。」

その時、不思議なことが起こった。
空一面が、いや、映し出されたスクリーンが光を放った。

メビウス「なんだこれは!」

美希「あれは・・・・。」

ラブ「ミラクルライト!」

『みんなー、プリキュアを応援するんやー!
 振って、振って、振って、振りまくるんやー!!』

『みんなの気持ちをプリキュアに届けるクルー!』

祈里「これはみんなの想いの光・・・・。」

スクリーンの一つ一つから、白い光の羽がひらひらと舞い落ちる。

せつな「戦えないみんなの願い、戦っているみんなの想い・・・・。」

美希「力が、また湧いてくる・・・・。」

4人のリンクルンが輝きを放った。

「「「「みんな、ありがとう!」」」」

ラブ「行くよ、みんな!」

「「「「チェインジプリキュア!ビートアップ!!」」」」

ラブ「エンジェルピーチ!」

美希「エンジェルベリー!」

祈里「エンジェルパイン!」

せつな「エンジェルパッション!」

「「「「ホワイトハートはみんなの心!羽ばたけフレッシュ、キュアエンジェル!!」」」」

美希「キュアエンジェルの力が・・・・!」

せつな「以前よりも、力を感じる・・・・。」

祈里「きっと、前よりも多くの人達の想いがこもっているからだよ。」

ラブ「うん。だから、絶対に負けるわけにはいかない!」

睦月「あたたかい光だ。なんだか、こっちまで力が湧いてくる様な。」

橘「力が?・・・・もしかしたら!」

睦月「あっそうか!」

「「「変身!」」」

メビウス「ぬぅっ!」

ライダーも変身を遂げ、キングフォーム、ワイルドカリスにまで変わる。
8人が再び戦闘態勢へと戻った。

メビウス「こしゃくな!」

メビウスも再び光を放つが、今度は変身解除に追い込めなかった。

美希「いける!」

メビウス「馬鹿め、変身が解けぬだけで勝てるつもりか!!」

睦月「確かにお前は強い!」

祈里「でも、みんなの想いを背負っているのに負けるわけにはいかない!」

せつな「私達みんなの!」

ラブ「力と心であなたを倒す!!」

ふたり同時の上からの飛び蹴りをメビウスが両腕で受け止めた。

剣崎「今だ!」

始「はあっ!」

空いた胴を左右から薙ぐ。

睦月「やった!!」

祈里「当たったわ!」

斬撃が、淡い光を吹き散らすかの様に爪跡を残した。

メビウス「確かに・・・・侮れんな。だが、それも無意味なのだ。」

今にも千切れそうにすら見えたメビウスの『体』が、元の姿を取り戻す。

始「まさか、再生能力か?」

メビウス「そうだ。アンデッドの不死身、それを遥かに上回る、な。
      無限の存在を名乗るのは伊達ではないということだ。」

剣崎「だが、倒せない訳じゃない。俺達だって、封印も殺せもしない存在、
    トライアルを消滅させた事だってある。」

橘「ああ。剣崎、あいつに勝つ可能性があるとしたら、
  俺達の力を一つに集めて一撃で仕留めるしかない。」

剣崎「ええ、再生の隙も与えずに消滅させるしかありません。」

ラブ「確かに。私達の力を全部集めればあるいは・・・・!」

始「問題は、メビウスだってそれは承知の上だということだ。
  そんな猶予を与えてくれて、それを喰らってくれるか、な。」

メビウス「ふん・・・・面白い、やってみろ。」

美希「なんですって。」

メビウス「結集したお前達の力とやら、その全てを否定してやる。
      それこそが我が無限の力、その絶対性と正しさの証となる。
      その時こそ、微塵の疑いの余地も無く、な・・・・。」

剣崎「あくまで俺達をねじ伏せるつもりか。」

メビウス「そうなるな。さあ来い。お前達の極限の力をぶつけるがいい。
      そうでなければ意味が無いからな。」

せつな「・・・・・・・・。」

睦月「あいつ、本気で受けて立つみたいですね・・・・。」

橘「ああ。時間も無いし、気が変わらない内にやるぞ!」

睦月「でも、どうやってですか?」

橘「そこで剣崎なんだ。俺達のカード、全てを集めたフォーカードを使うんだ。」

睦月「でも、仮にカテゴリーエースを4枚使ったとしても、
    ロイヤルストレートフラッシュとそこまで大きくは変わらないんじゃ。」

橘「1枚ずつだったらな。そこでワイルドカードを使って文字通り全てを集める。」

始「各スート、13枚のカードを1枚に融合させるのか。
  しかし、俺はハートのしか出来んぞ。」

橘「大丈夫だ。俺は剣崎の体を元に戻すため、ジョーカーの研究を行っていた。
  本来は想定外だった13体融合のキングフォームについてはもちろんだが、

   それに対応するジョーカーのワイルドカードについてもな。
   そして、それらの研究の副産物として誕生したのが、
   さっき俺達が戦ったケルベロスのシステムだ。」

睦月「また厄介な研究成果を・・・・って、副産物ということはもしかすると!」

橘「ああ、研究の一環でラウザーがアップデートしてある。
   キングのカードを単独でラウズすればワイルドカードを作れる!」

睦月「それがさっき言っていた『全アンデッドの結集』だったんですね!」

剣崎「で、でも、ちょっと待ってくださいよ。
    13枚全ての力を俺に渡すってことは、変身出来ないんじゃ。そんな危険なこと・・・・。」

橘「剣崎、その変わらない純粋さはお前のいいところだな。
  だが、今は世界の、それもこの世界だけではなく他の世界の命運も懸かっているんだ。
   その世界を守らずに、俺達だけ守ろうとしても本末転倒だろう?」

睦月「そうですよ、俺達だって覚悟を決めて戦いに望んでるんですから!」

始「俺は無論平気だ。少しくらいならガードも出来るだろう。」

剣崎「でも・・・・。」

橘「それにな・・・・これは俺達ではなく、お前を危険にさらす策なのかもしれないんだ。」

剣崎「どういうことですか?」

橘「お前がジョーカーになったのは、13体融合のキングフォームの影響だ。
  それなのに、今回は52体のアンデッドと融合することになる。
   ジョーカー化を戻すどころか、もっと深刻な事態を引き起こすかもしれない。」

剣崎「・・・・そうなんですか。でも、やりましょう!」

橘「本当にそれでいいのか?すまない、いつもいつもお前ばかりに・・・・。」

剣崎「俺、その方がいいかもしれません。
    自分が誰かの分を引き受けられているのなら、それでいいです。」

睦月「剣崎さん・・・・。」

剣崎「それに。いろんな世界のことよりも俺を気にしたら本末転倒でしょう?」

剣崎が屈託無く笑った。

橘「お前ってやつは・・・・分かった、お前に俺達の、そして世界の希望を託す。」

剣崎「はい。みんな、カードを俺に!」

始「ああ!」

心も一つに、カードをラウズする。

ラブ「待って、私達の力も合わせます!」

他の3人のプリキュアも力強く頷く。

ラブ「クローバーボックスよ、プリキュアと、ライダーに力を!!」

クローバーボックスが光を放つ中、プリキュアがライダーに寄り添う。

せつな「プラスワン!ハピネスリーフ、セット!ワイルドハート!!」

始「剣崎、受け取れ!」

祈里「プラスワン!プレアーリーフ、セット!ワイルドダイア!!」

橘「剣崎!お前が俺達の切り札だ!」

美希「プラスワン!エスポワールリーフ、セット!ワイルドクラブ!!」

睦月「俺達の力を、剣崎さんのもとへ!」

ラブ「プラスワン!ラブリーリーフ、セット!ワイルドスペード!!」

剣崎「みんな・・・・ありがとう。絶対にあいつを倒す!!」

キングラウザーにラウズされた4枚のワイルドカードが光の壁を形成した。

メビウス「さあ来るがよい!」

それに応じるかのように、ブレイドが無言で光の壁を駆け抜けてゆく。
そして、メビウスに肉薄したところでキングラウザーが振るわれた。

睦月「受け止められた!?」

メビウスと刃の間に、光の防壁が生み出されていた。

剣崎「く、くそぅ!」

繰り出した攻撃が、押し戻されそうになるのをなんとかこらえていた。

ラブ「加勢します!私達と一緒に、力を剣崎さんへ!」

橘「わかった!」

「「「「想いよ届け!」」」」

プリキュアの構えたキュアスティックやパッションハープに
橘達も手を添える。

「「「「プリキュア・ラビング・トゥルー・ハート!!」」」」

放たれた、ハートをかたどった純白の光が、ブレイドの攻撃の後押しとなる。

睦月「押し留めた!」

始「だが、これでなんとか互角ということか?」

メビウス「そのようだな。最強の矛と最強の盾の衝突。
      なんとも面白い結果となった。
      正直、攻撃に回す余力が残らないとは予想外だった。
      だが・・・・。」

メビウスの表情が愉快そうに変わったようにも思えた。

美希「認めたくないけど、あっちの方が余裕があるみたいね・・・・。」

メビウス「そうだ。このまま膠着が続けば、お前達は力尽きる。
      無限の存在たる私との、尺度の違いに敗れるのだ。」

祈里「そんな・・・・私達の力じゃ、勝てないというの・・・・?」

ラブ「それでも、とにかくやってみる!」

せつな「力尽きるとしても、それまでは精一杯頑張れる!!」

それは、よぎった不安を払拭するかのようでもあった。

始「・・・・橘、睦月、頼まれてくれるか?」

意を決した様に始が口を開いた。

橘「なんだ?」

始「今の状態で互角・・・・ならば、
  もう一枚カードを追加すれば競り勝てるはずだ。」

睦月「でも、もうカードは全部・・・・。」

始「もう一枚ある。ここにな。」

始が自分の胸に手を当てる。

睦月「!?」

始「俺を封印してくれ。そうすればジョーカーのカードの力を足せる。」

橘「それは・・・・出来ない。」

始「・・・・そうか。そうだな、万が一それで剣崎がバトルファイトの『勝者』となったら、
  お前達は剣崎を封印しなくてはならない。そんなこと・・・・あってはならないな。」

かつての悲痛な決断を思い出したのか、諦観と納得が混在していた。

橘「違う!剣崎はもちろんだが、俺には始を、仲間を犠牲にすることは出来ない・・・・。」

始「なに?お前自身がさっき剣崎に言っていただろう、本末転倒な心配はするなと。」

橘「分かっているさ、理屈ではな!・・・・だが、そんな理屈じゃないんだ。
  俺の心情まで慮ってくれる仲間を犠牲になんて・・・・やはり俺はクールにはなれない。」

始「そうか・・・・今なら分かる気もする。人間の心の強さも、そうした矛盾を抱える弱さも。
  だが、俺はそんな弱さというものをすばらしいと思う。俺を仲間だと・・・・ありがとう。」

睦月「俺も橘さんに賛成です。俺達もそうですし、剣崎さんだってきっと納得できません。
   そんな状態で、力を出し切れるなんて思いません。」

美希「そうよ、私達全員が完璧に力を出し切れば・・・・。」

祈里「絶対に負けないって信じてる!」

メビウス「ふふふ、人間とは非論理的だな。
      だが、その諦めの悪さが時に理屈ではない結果を生むことも承知している。
      さあ、お前達のその意気込みを破ってやろう!」

その時だった。

隼人「ちょっと待ったー!!」

瞬「カードなら、まだある!」

睦月「えっ!?」

瞬「僕らも混ぜてもらっていいかな?」

隼人「むざむざ帰ったら、かっこ悪いまま歴史に残ってしまうからな!」

自信満々でウエスターがカードを突き出す。

橘「それは・・・・ケルベロスのエース!」

隼人「そう、そしてこの装置で、俺達の力も上乗せが出来る!」

瞬「受け取ってくれ、ワイルドエースだ!」

サウラーがケルベロスのカードに白いダイヤを重ねた。

隼人「さあ!全力全開のエースオブエースだ!!」

投げられたカードを受け取ったブレイドが、体勢を維持しつつカードのラウズを試みる。

隼人「そして更に、俺達の力も受け取ってくれ!!」

瞬「僕達の、そしてみんなの想いよ!届け!!」

『プリキュア・ラビング・トゥルー・ハート・フレーーーシュ!!』

先程よりも大規模な光が放たれた。
そして、ほぼ時を同じくしてラウズを完了したブレイドを包み込んだ。

メビウス「こ、これは・・・・。馬鹿な・・・・無限の力を手に入れた私が・・・・。」

メビウスの『最強の盾』にキングラウザーの刃が僅かながらめり込んだ。

メビウス「何故・・・・お前達のような小さな存在が・・・・!」

ラブ「あなたの『無限』はあなただけのものだったからよ。」

困惑するメビウスと対照的に、毅然とした答えだった。

メビウス「なにっ?」

祈里「思い出したの。私達は私達の力だけで戦っていたんじゃなかったって。」

美希「皆の希望、想い、力、それが私達を支えて後押ししてくれていた。」

せつな「ひとりひとりは有限だとしても、それは無限につながっていくの。」

メビウス「無限のつながり・・・・。」

剣崎「俺達はすべてのパラレルワールドとその未来、みんなのために戦っている。
    今の、未来の、『無限』の人々の幸せを守るために!」

その言葉と共に、一層の力が込められた。

剣崎「俺達は、戦う力を持った戦士としてそれを背負っているんだ!
    だから、お前の独り善がりの、ちっぽけな『無限』なんかに負けたりはしない!」

ついに、止まっていたブレイドの足が力強く踏み込まれた。

メビウス「う・・うぉぉぉぉぉ・・・・!!」

ファイブカードとラビング・トゥルー・ハートの光が広がり、一帯の空間を支配した。



剣崎「はぁ・・・・はぁ・・・・。」

あまりにも長い一撃を終えたブレイドが、残心の余裕も無く膝をつく。。

睦月「や、やった!?」

橘「剣崎、大丈夫か!」

皆が一斉に駆け寄る。

始「まだ・・・・メビウスの姿が見える。地に横たわってはいるがな。」

美希「そんな・・・・。」

一同の不安を払拭したのは、メビウス自身であった。

メビウス「ふっ、案ずるな・・・・。もはや全ての力は尽きた。
      『無限』と驕った力も、お前達の無限の想いと力に発散させられた。
      もはや私は消えるのみ、進化の道を誤ったものとしての末路だ・・・・。」

せつな「やっぱり、あなたは自分の正しさを確かめようとしていたのね。
      私達の想いと、力とぶつけ合うことで。・・・・迷っていたの?」

メビウス「・・・・統制者はこの星の進化を、バトルファイトに、その勝者に委ねた。
      ラビリンスの総統メビウスは全てのものが進む道の管理を試みた。
      ルールを外れるものを認めぬのは同じであれど、矛盾があったのだ。」

淡々と、メビウスが続けた。

メビウス「そして、思ったのだ。人間は私よりも優れ、良き道を選ぶ存在なのか。
      ・・・・私はその可能性を否定した。己の存在理由の否定となるからだ。」

橘「お前が、元々は人間の管理のために生み出された存在だからか。」


メビウス「そうだ。私は誰よりも、人間よりも、優れた管理をするために創られた。
      だが、私は負けた・・・・私の選ぶ道が・・・・間違っていたというのか・・・・。」

せつな「それは、分からないわ。」

睦月「えっ!?」

せつな「ただ、私達は間違いと考え、それを止めようとした。それだけよ。
     私自身、イースとしてはあなたの道を進むべき正しい道だと考えていた。
     ラブ達と出会って、“幸せ”と“不幸”、その両面について知るまでは。」

ラブ「せつな・・・・。」

せつな「プリキュアになった後、それまでの自分に苦悩したわ。
     ・・・・今でも完全には解決していないのかもしれないけれど。
     だけど、そんな風に間違いをしたり、それを悔やんだり、
     そういった辛い、“不幸”も受け入れることにしたの。
     そうした“不幸”があるからこそ、そばにいてくれる
     皆のありがたさ、自分の“幸せ”が分かったから・・・・。」

メビウス「後悔を、不幸を拒まないというのか・・・・。
      誰もが不幸に陥らぬ管理を拒んでまで・・・・。」

始「・・・・自分に非が無いのに、不幸にも命を落とした者を俺も知っている。
   自分ではどうしようもならない、生まれの不幸を嘆いたこともある。
   人間の良くない部分というものだって、知らないわけじゃあない。」

せつな「人間同士で憎しみ合い、世界を滅ぼしてしまったり、
     結果的にはあなたが正しかった事にもなってしまうかもしれない。
     だけど、私は、最初は光の無い闇の世界に居た。
     だからこそ、きらきら輝く未来を信じたいの。」

ラブ「ううん、せつなは最初からいい子だったよ。」

せつな「それは違うわ。それは、あなたと居たから。
     ラブに合わせて振舞っていたから、ラブが導いてくれたのよ。」

ラブ「そんな、私だって、せつなとイースが同一人物だったと知って、
    正直どうしていいのか分からなかった・・・・そんなすごい人じゃないよ。」

せつな「そうやって悩んで、全力でぶつかってきてくれて、
     だからこそ私も答えを見い出せたの。
     『正解』を示してくれるからではなく、
     『答えを出そう』とするその姿勢を見せてくれたから。」

ラブ「もう・・・・せつなったら。」

ふたりがそっと見詰め合う。

メビウス「・・・・そうか。人間は『正解』が分からずに過ちを繰り返す。
      故に、愚かな存在であり、管理せねばならないと思った。
      だがお前達は、過ちを“ばね”に成長へとつなげる・・・・。
      危機であるはずなのに、好機にしてしまいさえもする。
      過ちの存在を認めず、諦めてしまった私はそこで敗北していたのだ・・・・。」

始「確かに、俺に道を示してくれたのも弱くても諦めの悪いやつだったな。
  無理な状況に思えたとしても、決して諦めたりしない、な。」

剣崎「最初に全力でぶっとばしてきたのはお前の方だけどな。」

始「それが気付けば暴走した俺を止めてくれるやつになっていたんだからな。
  まったく、人間の可能性ってのは大したものだな。」

剣崎「それを、俺達はこれから守っていくんだ。」

始「ああ。」

ふたりが無言で笑った。

美希「メビウス、これで終わりにしてくれる?」

メビウス「ああ、もう分かった。人間の道は人間が決める。
      それが正しい道であろうと間違った道であろうと。
      道を進むこと、それ自体が進化だったのだ。」

なんとか形を留めていた、メビウスの輪郭が崩れてきた。

メビウス「脇道、近道、回り道・・・・お前達が進む道が・・・・何なのか。
      それを・・・・見届けられぬのは・・・・無念かもしれぬ・・・・。
      だが・・・・『無限』の可能性に・・・・思いを馳せながら・・・・
      消えるというのも・・悪く・・は・・・・・・・・な・・い・・・・。」

もはや未練が無いことを示すかのように、メビウスが霧散した。

せつな「メビウス、おやすみなさい。あなたは、精一杯頑張ったわ・・・・。」

風に舞うかのように流れていく光の欠片は、まるで道のようでもあった。



                                                【完】

( 0M0) イカ蛇足的な小噺(?)でゲソ。



【サウラーさんの日記】

○月×日

今日はノーザさんとウエスターと隠密行動。
敵情視察や今居る世界の様子をつかむための重要なミッションだ。

ノーザ「大事なのは事を起こすまでは目立たないことよ。大丈夫かしら?」

ウエスター「はいっ、ノーザさんも以前みたく威圧感で浮いてらっしゃいません!」

ノーザ「それは喧嘩を売ってくれている、って解釈で・・・・いいのかしらぁ?」

ウエスター「ちょ!?ノーザさん、凄まじい殺気で目立ってしまいそうです!」

こいつときたら相変わらず・・・・。

サウラー「しかし、スイッチオーバー前の雰囲気は変わられましたね。
       やはりそれは、基になった上級アンデッドの影響ですか?」

ノーザ「そんなところでしょうね。植物系で策士タイプのが居たらしいから、
     その特性を掛け合わせられたとうかがったわ。」

よし、少し話がそれた。

ウエスター「それなら俺も聞いて調べたぞ!」

何故話題を拾う。普段は何も学ぼうとしないくせに。

ウエスター「なんでも、カテゴリークイーンというやつだとか。」

ノーザ「ええそうよ。未知の存在であったアンデッドの情報を得るなり、
     それを有効活用し不足があれば補う。流石はメビウス様よね。」

ウエスター「そうですね、ノーザさんに足りなかった女性らしさを
        アンデッドから補って、て、てててっ!!」

ノーザ「あなたも足りないここの中身を補ってもらう?」

相変わらず思慮の足りない男だ。
僕は一応思慮深いので『ノーザさんより怪物の方が大人しそうだ』などと
失礼なことを決して言ったりしない。・・・・思うことはあるかもしれないが。

ウエスター「痛い、痛いです!やめて。グリグリやめて!」

ノーザ「痛くしてんのよ!」

こめかみの辺りを刺激されて少しはいい影響が出れば良いのだが。
更にひどくならないことを祈っておこう。(傍観&諦観)

サウラー「さて、そろそろですね。」

ノーザ「そうね、目的地だしもうおふざけもお終いね。」

やっとこさウエスターの奴も解放された。

ウエスター「牧場!でもどうして?」

・・・・そういう事こそ事前に調べておけ。

サウラー「ここは以前ライダーが活動していた時に拠点としていた場所。
      そして今度も拠点にする可能性が高い場所、ですよね?」

ノーザ「そういうことよ。今は無人の筈だけど、もしかしたら・・」

ウエスター「あーっ!あそこで乳搾りしている!おーい、俺にもやらせてくれー!!」

体力バカが走っていった。

ノーザ「ねぇ・・・・あの子の辞書に『隠密行動』の文字は無いのかしら?」

ノーザさんが怒りをこらえているのが分かった。

サウラー「ふふ・・・・僕は今、辞書すら無いのではと思っていますよ。
       いっそ、中を調べてみてもいいですかね?答えはどうでもいいですけど。」

ノーザ「そ、そう・・・・。ま、まあ行きましょうか。自然に何か聞き出せるかもだし。」

そして自分は少しこらえきれないかもだった。


ウエスター「おい兄さん、俺にも乳搾りをやらせてくれ!」

ノーザ「隼人、あまり無理を言って困らせるのはおやめなさい。」

虎太郎「いやー、道楽みたいなものですから、別に構いませんよ。」

ノーザ「・・・・!?」

?・・・・・・・・そうか、この男は。

ウエスター「はっ、もしや白井虎太郎!」

気付くな。声に出すな。いっそ知らなければ済んだものを。

虎太郎「えっ?君・・・・どこかで会ったことが?」

ウエスター「あ、いやそのー・・・・。」

ウエスターが答えに詰まり、ノーザさんが取り繕う。

ノーザ「え、えーと。実は、私『仮面ライダーという仮面』の愛読者で、
    先生の大ファンなんです。本物の白井先生に出会えるなんて感激です!」

うわぁ、身振り手振りまで頑張ってしまっている・・・・。
あの『キャピ』という感じのポーズは年齢的に・・・・いや書かないでおこう。

虎太郎「へえ、そうなんですか。嬉しいなあ。
     実は、その本のお陰で、今は牧場にも滅多に来ないんですが、
     丁度今日は昔の知り合いも来るんで顔を出していたんですよ。」

ウエスター「もしやその知り合いとはライダ・・いだだだっ!」

あ、ノーザさんにつねられた。

ノーザ「あら、お忙しいところすみません。
     ラ、ライターのお仲間の方々とかですか?」

虎太郎「えーと・・・・まあそんなところです。
     あ、そうだ。ちょっと待っていてください。」

そう言って白井虎太郎は建物の中に引っ込んだ。
警戒した様子も無かったので、ライダーを呼んだとかではないだろう。

サウラー「えーと、お疲れ様です。」

ノーザ「あなた・・・・よくも私にあんなことさせてくれたわね。」

想定外の展開でかなり焦ったのか、流石のノーザさんも胸を押さえている。

ウエスター「すみません。でも、女子大生を名乗れるアンデッドが混ざったからか、
        ノーザさんでもそこまで痛々しくは・・ぅぉごっ!?」

あ、足を思いっきり踏まれた。自業自得だが。

サウラー「それで、この場所はどのように・・・・」

虎太郎「お待たせしましたー。」

おっと、戻って来たか。

ウエスター「おぉ、それは・・・・!?」

虎太郎「ここでとれた牛乳なんだ。よろしければどうぞ。」

サウラー「なんか本格的ですね。瓶に入って蓋もしっかりされて。」

虎太郎「うん、美味しい牛乳が出来たら、みんなに飲んでもらえるようにってね。
     僕が本に書いたような、仮面ライダーのお陰でひとまず平和になった。
     僕も一応経済的にも余裕が出来たし、
     何かみんなの幸せのために僕も何かしたいなって。
     だから今の夢は、虎太郎ミルクで世界中が牛乳で真っ白になるみたいに
     みんなが幸せになりますように・・・・なんてね。」

目の前の男はそう言って屈託無く笑った。
・・・・特に後半の言葉の意味がよく分からない気もしたが。

ノーザ「虎太郎さんのミルク・・・・。」

目の前の女性の表情がややヤバかったようなのは触れないでおこう。

ウエスター「ふはははは、残念だが、この世は不幸の・・ウェッ!?」

もはや何も言うまい。

ノーザ「喜んで飲ませていただきますわ。」

こちらにも何も言いたくない。
僕も黙って牛乳を飲むことにした。



ノーザ「ご馳走様でした。」

ウエスター「うーまーいーぞー!」

サウラー「新鮮だからか、普段口にするのとは別物でした。」

虎太郎「美味しかったですか。それは良かった。まず三人幸せゲットかな?」

まるで子供のように純粋な笑みだ。

ノーザ「ええ、もう・・・・虎太郎さんが搾ったお乳・・・・ふふ、ふふふ・・・・。」

まるで・・・・いや、やめておこう。

虎太郎「じゃあこれお土産にもどうぞ。さようならー。」

お土産に牛乳を貰い、ひとまずは事を荒立てずに退散することに成功した。
しばらく草道を歩いて。

ウエスター「・・・・はっ、そう言えばノーザさん。このまま帰るのですか?」

素で今まで忘れてたな、こいつ。

ノーザ「とりあえず、どんな所かは大体分かったわ。
    それに、拠点を叩けば精神的なダメージを与えられるけれど、
     拠点を残しておいて特定の場所に集めておけばそれはそれで楽よ。」

サウラー「・・・・・・・・。」

ウエスター「むぅ。しかしそれではせっかくの気合の出しどころが。」

ノーザ「その時までもうちょっとお待ちなさい。
     ・・・・大体、こういう裏でこっそり何か攻撃しようとするとね、
     新戦士の連中がひょっこり現れて新人補正でフルボッコとかなのよ。」

サウラー「ああ・・・・なるほど。」

ウエスター「くぅ、今は我慢か。」

ノーザ「心配しなくても、そろそろつなぎのアンデッドも居なくなっちゃうから、
     否が応でも自分で戦わないといけなくなるわよ。」

おお、久し振りに普段の様子で悪巧みしているっぽい笑みに戻った。

ウエスター「体力づくりとコンディション調整に努めます!
       むぅ、もっと牛乳を貰ってくるべきだったか?」

ノーザ「なるほど、牛乳といえば栄養価としては優秀な食品。
     管理国家にも必要なものよね・・・・ならやはりこの牧場を見逃すのも。」

ウエスター「なるほど、牛乳生産の役目を与えるのですね。」

ノーザ「そうすれば毎日虎太郎さんのミルクで・・・・うふ、ふふふふ・・・・。」

嗚呼また壊れて自分の世界に旅立ってしまわれた。

ウエスター「なあ瞬、少しノーザさんの様子がおかしくないか?」

君にとっては少しなのか。

ウエスター「お前、何か心当たりは無いか?」

サウラー「さあな、僕にも・・・・・・・・ぁっ。」

ウエスター「ん、どうした?」

サウラー「いや、なんでもない。」

・・・・・・・・そう言えば、以前の記録を見たところ、
ノーザさんを生み出すベースに使われた上級アンデッドは、
かつて利用する目的ではあるが白井虎太郎とコンタクトを取ったはずだった。
その中でどんな事があったのかなど知る由は無いし、
それが関係あるのかも分からないが、一つだけ確かなことがある。


僕はもうこの件に関して金輪際係わり合いになりたくはない!



※余談

ノーザさんが貰った牛乳を前に真剣に悩んでいた。
通り掛ってしまった僕は、

ノーザ「ねえ、虎太郎さ・・白井虎太郎は大きい方が好きだと思う?
     いえ・・・・その・・・・うまく接近するためにとして聞くんだけど。」

と真剣に聞かれてしまった。
どう答えてもダメな気がして何も言えないでいたら、丁度居たウエスターが

ウエスター「ノーザさんは闘気とかでビッグ過ぎるので現状維持でぇぅっ!」

と地雷処理をしてくれている間に退避して事無きを得た。(僕は)

【ドキドキ!ニアミス】

六花「・・・・ひとまず悪さはしないで引き上げるみたいね。」

マナ「ちぇ、出番無しか。」

ありす「せっかくパルテノンモードの準備もしておいたのに残念ですわ。」

六花「それってゲストどころか、一人でいいんじゃないかなレベルよね?」

マナ「ほら、私達よりも歴史の長い先達の言葉にもあるじゃない。
    『ド派手に行くぜー!止めてみな!』って。」

六花「混ざってる、混ざってる。」

マナ「ためらーわない、こーと~さ♪」

真琴「歌はダメ!」

ありす「でも、張り切っていた分のやり場に困る気持ちは分かりますわ。
     私も、第三世代キュアセバスチャンのお披露目をと思ったのですが。」

真琴「何考えてるの、ありす一体?」

ありす「アームズ量産の暁には、カチドキ!プリキュアを結成ですわ。」

六花「それが言いたかっただけでしょ。」

真琴「私は『あなた達も私と一緒に戦って・・・・』ってのをやってみたかったわ。」

六花「いや、出会っちゃだめだってば。」

マナ「なんか私達の時以上にすんなりいかない気がする。」

亜久里「こほん、まさかこのままダラダラ話して終わりではないでしょうね。」

六花「え、どういうこと?」

亜久里「プリキュアのルール、第1条!
     プリキュアたるもの、何があってもオチは守る!」

真琴「オ、オチ?」

六花(ボケならたった今見た気がするけれど・・・・ツッコまない方が良さそうね)

ありす「起承転結の結、お話作りの骨子ですわね。」

六花「どうしよう、特に何も考えてないけれど・・・・。」

マナ「ねえ、もしかして亜久里ちゃんすごいオチがあったりするの?」

ありす「きっと、我々が思いもつかないものすごいオチをお持ちですわ。
    なんせ我々よりも先を進まれていた方ですし。」

真琴「なるほど、すごいオチをやる“フリ”ってやつね。
   押すな押すな、っていう。」

六花「また変な知識を仕入れたわね。」

亜久里「え、いや、その・・・・。あ、ありませんわ・・・・。」

マナ「えぇーっ!」

真琴「どうしよう、このままではプリキュアの資格を失ってしまう・・・・。」

亜久里「あう・・・・ど、どうしましょう・・・・。
      このままではオールスターズ映画でも声無しに・・・・。」

真琴「そんな!歌手としてのアイデンティティが!」

六花(オチの有無って、そんな深刻なことなのかしら・・・・)

ありす「それでは、四葉財閥が開発した人工ロゼッタバルーン!」

マナ「おぉー!流石はありす!」

真琴「なんだかすごいことになりそうね!」

六花「確かに、四葉財閥の力ならなんとかしてくれる、かも。」

亜久里「私も、信じて託しますわ。
      私達のプリキュアとしての資格を示す“至高のオチ”を!」

六花「なんで自分でハードル上げちゃうの!?」

ありす「さあ、いきますわよ!」

――カッ!!





     ―― この前後の場面は“くしゃぽい”されました ――





マナ「いやー、流石ありす、すごかったね。」

真琴「私、芸能活動に携わる者として感動したわ。」

亜久里「あれならプリキュアとしてふさわしいですわ。
      私が中学二年生になった時に、続編も作られちゃいそうです。」

ありす「喜んでいただけたなら何よりですわ。」

六花「・・・・・・・・うん。流石四葉財閥だね。」

【笑えばいいと思うよ】

サウラー「ほう、君が読書とは珍しい。
       だが学んで足りないものを補う心掛けは良いことだ。」

ウエスター「ふっ、こっそりノーザさんの読んでた本を拝借した。」

サウラー「もしや勝手に持って来たのか?・・・・で、一体どんな本を?」

表紙には『皺と老化 ~キープスマイリングでその皺取ろうか~』とあった。

サウラー「・・・・これ、隠してたりしてなかったのかい?」

ウエスター「ふっ、隠されているものの方が凄い本っぽいだろ?」

サウラー「あっ・・・・。」

ウエスター「しかし、こんな本読んでいたとは、
       ノーザさん、来年のプリキュア入りでも狙ってたりして、
        ・・・・なーんてな。」

サウラー「・・・・・・・・。」

ウエスター「もっとも、それだったら、若さを維持するだけじゃなくって
        数十年分くらい若返らないとかもだけどな。」

笑いながら陽気に言うウエスターと対照的にサウラーは押し黙っていた。

ウエスター「まあ、無理してるような引きつった笑いでも、
        いっつも怒って怖い顔してるよりはお互いにいいか。」

サウラー「ウエスター、後ろ後ろ。」

サウラーの小声での指摘に、ウエスターも背後の気配、正確には殺気に気付いた。
事態を察してウエスターの笑顔が引きつった。

ウエスター「で、でも、サウラーの言う通り不可能に挑戦する姿は美しいよな!」

サウラー(火に油を注ぎつつ微妙に巻き込むなぁ!)

ノーザ「実はね・・・・今怒ってるのもはウエスターって奴の所為なのよ。」

ノーザの爪が、ウエスターの首筋にうっすら喰い込む。

ウエスター「なななんですって?・・・・そ、それは本当ですか?」

サウラー「うゎぁ・・・・ノーザさん、とってもイイ笑顔してますね。」

ウエスター「お・・・・あぁっ!あんなところに通りすがりの白井虎太郎が!!」

ノーザ「えっ、やだ!は、恥ずかしいところを・・・・あ、あら、虎太郎さんは?」

サウラー(ノーザさん、くねくねしないでください)

注意がそれた隙にウエスターがこっそりと脱走を図る。

ノーザ「・・・・って、居ないじゃないの!待ちなさい!!」

ウエスター「そう言われてもスタコラサッサだー!」

走り去るウエスターをノーザが追いかけ、後にはサウラーだけが残された。

サウラー「僕も読書でもするかな・・・・・・・・今日は転職情報誌あたりを。」

【ノーザさんの日記】

ウエスター「ノーザさん、お土産にドーナツ買って来ました!」

ノーザ「あら、気が利くじゃない。」

サウラー「では僕は紅茶を淹れましょう。」

すかさず席を立った。
思えば以前は長い付き合いでもなかったが、今度は上手くやっていけるかもしれない。

ウエスター「聞いてください!」

嬉々として話しかけてきた。

ノーザ「言ってごらんなさい。」

ウエスター「なんと、幸運にも新商品のマヨネーズドーナツが手に入ったんですよ!!」

ノーザ「そ、そう・・・・他には?」

ウエスター「せっかくだから、俺はこのドーナツを選びました!」

ノーザ「何がせっかくなのよ!」

前言撤回の準備をしておこう。

ウエスター「いやぁ、他のは無かったし丁度いいかなと。」

それは売れ残りというのだ。

断っておくが、私は売れ残っているのではない。
そもそも伴侶となる相手も国家が管理しているのだし、
私にはメビウス様のために働くことの方が重要なのである。
だから、コンピュータにデータを入れて
どんな相手が私にふさわしいかを調べてみたら『該当者無し』と出たことも、
それを見たクラインが笑いを抑え切れていなかったのも気にしていない。
職務で未管理下の世界で行動する際に、
いつも心なしかヒかれているようなのも気にしてはいない。断じて。

サウラー「お茶が入りましたよ。・・・・どうしたんですか、ノーザさん?」

・・・・いけない。どうでもいいことには構わず本題に戻そう。

ノーザ「はぁ、この子が買って来たドーナツ・・って、何よその砂糖の量は!?」

サウラー「三人でも足りるよう用意しました。好きなだけ入れてください。」

ノーザ「どうやったら三人で角砂糖を山盛り消費できるのよ!」

サウラー「え?」

ノーザ「・・・・・・・・。」

いつの間に入れたのか、サウラーのカップには角砂糖が積み重なっていた。
ぱっと見、紅茶の体積よりも多い気がする。

ウエスター「うぉおー、新製品のドーナツうめー!!」

サウラー「ふむ、斬新な味でいけるね。」

こいつら・・・・。

ノーザ「ちょっとあんた達、普段どんな食生活をしているのよ!」

ウエスター「え・・・・?」

サウラー「そう言われると・・・・。」

ノーザ「きちんと管理された食事を摂っていれば、そんな味覚になるはずはないわ。」

サウラー「なるほど、管理がなっていないと。確かに意識はしていませんね。」

ウエスター「ふん、サウラーもその程度か。俺はきっちり管理しているぞ!」

ノーザ「あら意外ね。」

ウエスター「食べたくない物は食べず、食べたい物だけ食べるのを徹底しております!!」

ノーザ「それを管理できてないと言うのよ!」

ウエスター「なんですとー!?」

ノーザ「はぁ・・・・いいこと。みんながメビウス様の管理に従うのは当然。
     ただ、我々は幹部としてある程度自分の裁量での行動を認められている。
     そこで自己管理が出来ないというのは、メビウス様への裏切りなのよ!」

サウラー「そうなると自分達で作るのが良さそうなのですが・・・・難しいですね。」

ウエスター「あれ?俺は自分で作らないが、誰かが作ってくれていたような・・・・。」

サウラー「おや、君もかい?はっきりとは思い出せないが、僕もそうなんだ。」

・・・・しまった。
どうやらキュアパッションの奴が代表して作っていたようだ。

ウエスター「うーん、確か髪の長い・・・・サウラーか!?」

サウラー「僕はやっていないと言っただろう。女性だった気はするが・・・・。」

まずい。これはまずい。
これで万が一この二人の記憶が戻りでもしたらメビウス様に申し訳が立たない。

ウエスター「ああ、そう言えば思い出し・・」

ノーザ「さ、さーて、仕方が無いから今日も何か作ってあげようかしらね!」

サウラー「ノーザさんが?」

ウエスター「何故?」

ノーザ「何故って・・・・そう、管理職の務めだからよ!」

ウエスター「でもさっき、俺達の食生活を聞いてきたような。」

こんな時に限ってこいつは。

ノーザ「それは・・・・私が作ってあげてるのに妙な味覚になっていたからの追及よ。」

サウラー「そうでしたか。すみません、何やら最近の記憶が曖昧でして。」

ウエスター「なら俺達の味覚はノーザさんの腕のせ・・・・ひぃっ、すみませんっ!」

ノーザ「ふん、まあいいわ。とりあえず待ってなさい。」

サウラー「ではお言葉に甘えさせていただきます。」

よし、乗り切った。

ウエスター「しかし、意外ですね。」

ノーザ「何がよ。料理程度できないとでも思ったの?」

ウエスター「いえ、さっき思い出したのですが、いつもフリフリのエプロンでした!」

ノーザ「・・・・は?」

サウラー「ああ、言われてみれば毎度毎度少女趣味全開のエプロンだったね。」

ぐぁ!
あの小娘・・・・若さか!若さなのか!?

ウエスター「たまに髪を結い上げてポニーテールのようにしてたか?」

サウラー「うん、たまに覗くうなじがなんだか新鮮で・・・・」

ウエスター「それで・・・・」

サウラー「そうそう・・・・」

それに引き換えお前らはオヤジか。



何はともあれ調理を始める。
あり合わせの材料なのでカレーになったが、まあ十分だろう。
背後から二人が話す声がわずかに聞こえる。

サウラー「確か鼻歌交じりで・・・・」

ノーザ「フ・・・・フフフンーフ、フフフーンフ♪」

今になって玉葱が目にしみてきたようだ。
遠い仲間を切り刻んだり煮込んだりしているようで身が詰まされるのかもしれない。
・・・・決して心が挫けているのではない。

ウエスター「で、出来上がると普段からはありえないハイテンションで報告。」

ノーザ「お・・・・お、美味しいカレーができちゃったわよ☆(ニッコリ」

自分でも顔が引きつっているのは分かる。

サウラー「いや、痛々しさがここまでではなかった気がする。」

ウエスター「なんだか魔女がツボをかき混ぜているようだった・・・・。」

どちくしょう。


苦労してせっかく作ったのだから食す。

ウエスター「うぉー、腹が減っているととても美味い!!」

ノーザ「まったく誉めてないわね、それ。」

まあ、あんな味覚の持ち主に誉められたところで素直に喜べないし、怒りも湧かない。

サウラー「空腹も何もさっきドーナツ食べたばかりだろうに。」

ウエスター「馬鹿めサウラー、甘い物は別腹という言葉を知らんのか!」

馬鹿はお前だ。おそらく空っぽなのは頭の方なのだろう。
仮に入る所が違ったところで膨らむのは同じ所だというのに・・・・いやどうでもいい。

サウラー「君らしいことだ。だが、今回は賛同しておこう。
       ノーザさん、おかわりいただきますよ。」

ノーザ「え?」

サウラー「何故かは自分でも分かりませんが、今日は食が進みましてね。
       早速自己管理がなってないとお叱りを受けるかもですが。」

ノーザ「そう・・・・・・・・残しても無駄だから好きになさい。
     作った分が余るのも、考えようによっては無計画だったということだしね。」

サウラー「ありがとうございます。では計画通りとなるようにさせていただきます。」

ウエスター「ずるいぞサウラー、俺の分も残しておけー!!」

ノーザ「子供みたいに騒ぐんじゃないわよ!その・・・・なんならまた作るから。」

ウエスター「うぉー!では次はマヨネーズカレーを・・・・。」

サウラー「斬新で興味深いね。」

ノーザ「だから!その味覚の矯正のためでしょうが!!」

ウエスター「でも、それだと何にマヨネーズを・・・・。」

ノーザ「まずマヨネーズから離れなさい!!」

まったくこいつらと来たら世話の焼ける・・・・。

だが、それでもいいのかもしれない。
今度こそ、もしかしたら長い付き合いになるかもしれないのだし・・・・。


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・


(;0H0) 。゚(事後調査で何かいたたまれないものを見つけてしまった気がする・・・・)

( 0M0) 。゚(マヨネーズドーナツ食ってみたいな・・・・)



【ウエスターさんの日記】








日記はここで終わっている。

美希「いや始まってもないから!」

睦月「驚きの白さ!」

隼人「日々の出来事は、頭ではなく体で理解しているから不要なのだ!」

瞬「そこはせめて心でにしておきたまえ・・・・。」

【ユグd・・・・鎧武、絶対許さない!】

剣崎「そう言えば、この間ダンスチームに参加してるライダーに会ったよ。」

ラブ「おおー。みんな、見に行ってみよう!」

祈里「けってーい。」

せつな「じゃあ移動は私に任せて。」



ということでダンスを見に来た一同。

美希「怪物よ!」

せつな「私達で・・・・。」

祈里「待って、あそこにライダーっぽい人が!」

ラブ「本当だ!」

先日も見た感じのバックルを着けた人物が、
何やらポージングしていたので様子を見守ることにした。

「変身!!」

ラブ「あ、なんか出た。」

美希「・・・・みかん?」

オレンジ!

祈里「ちょっとだけ完璧じゃなかったね。」

せつな「それにしてもシュールな光景ね。」

『花道!オンステージ!!』

ラブ「あー、やっぱり。あの人のことだったみたいだね。」

美希「ひとまず、引き続き様子を見ておきましょうか。」

せつな「そうね。」

祈里「キルンでもあの子達の言葉は分からないみたい、残念。」

変身したライダーがロックシードを取換え、様々なフォームにチェンジする。

ラブ「果物を使うんだ。あ、あれって桃っぽい!」

ピーチエナジー

祈里「あれはパインかしら。」

パインアームズ!

『粉砕・デストローイ!』

美希「なんとも激しイエローな武装ね。」

祈里「でも、私達と同じ果物だとなんか面白いね。」

ラブ「そうだね。」

祈里「お揃いみたいだよね。」

祈里がラブに笑いかける。

せつな「・・・・・・・・。」

美希「まだ色々あるみたいね。」

祈里「あ、イチゴっぽい。ストロ“ベリー”ね!」

『スパスパ☆スパーク!!』

ラブ「苺は手裏剣なんだ。」

祈里「剣を投げるんだね。」

美希「・・・・ええ、投げまくりね。」

せつな「・・・・・・・・。」

ラブ「とりあえず優勢だし、出る幕は無さそうだね。」


カチドキアームズ!!

美希「・・・・・・・・。」

せつな「・・・・・・・・。」

フルーツバスケット!

キワミアームズ!!!

ラブ「おおー、すごい!」

美希「ひとまず戦いも終わりみたいね。」

せつな「いえ、まだよ。」

美希「?」

せつな「仲間外れだなんて・・・・ヒーローの資格は無いわね、うふふ。」

祈里(目のハイライトが消えてる!?)

美希「ベ、ベリーだって苺だから!赤いから!ね?」



六花「まこぴー、さっきからそわそわしてどうしたの?」

真琴「なんか、さっきから元・王様の声が聞こえるような気がして・・・・。」

ありす「それは違うと思いますわ。(ちょびっと)」

【さあ検索(情報収集)を始めよう】

※天音ちゃんがラブ達と会った直後のお話の一部です。

天音「(略)・・・・・・・・そんな風に助けてくれたんだぁ♪」

ラブ「おぉー、格好いいね。頼もしい兄貴分って感じ?」

美希(ラブが言うか・・・・)

天音「えぇーっとね、へへっ、ちょっと違う・・・・かな?」

ちょっとはにかんで天音が答える。

せつな「でも、大好きなのは分かるわ。そういうの、素敵ね。」

天音「はは・・・・で、でね。あなた達を助けた時ってどんな感じだった?」

祈里「どんな感じって?」

天音「そ、その・・・・例えばちょっと、く、口説かれた、とか?」

美希「ふふっ、無かったわよ。」

ラブ「うん、通りすがりのスーパーヒーローって感じで助けてくれたよ。
   憧れちゃうけど、そういう雰囲気は無かったよ。」

天音「そっかあ。」

祈里「心配しなくても大丈夫だと思うよ。
    始さんと天音ちゃんの絆を私、信じてる!」

天音「うん。ありがとう!」

ラブ達が天音に笑顔を向ける。
天音も四人に視線を巡らせる。

天音(じー・・・・)

が、目線の先は顔ではないようだった。

ラブ「・・・・・・・・どうしたの?」

天音(うーん・・・・やっぱり始さんって小さい方がいいタイプの人なのかな・・・・
    これから大きく成長しちゃったらどうしよう・・・・)

美希(なんか変な所を見られている気がする・・・・)


注1.以上の会話は(言うまでも無く)フィクションです
注2.自分は良く分かりませんがフレッシュ(とスイート)は大きめだともっぱらの噂?

【安定のmktn】

ラブ「私ね、今回思ったんだけど三人用のダンスも身に付けるべきだと思うの。」

美希「また唐突ね。」

ラブ「せつなが離れているからってないがしろにするんじゃないけれど、
   やっぱりみんなが揃っていないと何も出来ない、ってのはプロとしてどうかなと
    天音ちゃんの一件で思いまして。」

祈里「プロ!?」

美希「プロはともかく、ラブの言うことも一理あるかもしれないわね。
    ファッションショーだって、一人欠けた所為で失敗しました、なんて許されないし。」

ラブ「でしょでしょ、流石はミキタン!」

祈里「もしかして、誰が居ない時の三人用とか、誰と誰のペア用とか、パターンが増えるの?」

美希「流石に種類が増え過ぎちゃうし、自分のパートが固定にならないのはちょっと嫌ね。」

ラブ「そこでー、私は考えてみましたー!」

祈里「なっ、何何?」

美希「物凄く自信たっぷりね。」

ラブ「あのね、ライダーシステムのカードコンボを参考にしてね、
   一人一人の分担は決めておいて、その組み合わせ方で全体の仕上げ方を変えるの。」

美希「よく分からない気もするけれど、逆転の発想・・・・ってやつ?」

祈里「例えばどんなの?」

ラブ「えーとね、始さんのコンボを参考にした『スピニングダンス』ってのを考案したんだ。
   私の分担のテーマが『ドリル』で、回転を重視したアクションをメインにします。」

祈里「へえ、私は?」

ラブ「ブッキーは『トルネード』で、時には静かに、時には荒々しく巻き起こる動きをするの。」

祈里「なんか難しそうだね・・・・あとトルネードも回転っぽい気がするけど。」

美希「・・・・ねえラブ。」

ラブ「どうしたの?」

美希「それって私の担当は・・・・。」

ラブ「あのね、ミキタンは軽やかに、羽根の様に華麗に舞うイメージで『フロ・・

美希「やっぱり無しね。」

ラブ「えぇーっ、なんでーー!?」

美希「なんとなくよ、なんとなく!」

【財団Bってやつの仕業なんだ】

睦月「しかし、これでまたひとまずの平和が戻りましたね。」

橘「そうだな。これで睦月も安心して就職活動に戻れるな。」

睦月「うぅ・・・・そちらの方がキツいかもですね。
    橘さん、以前言っていた“財団”のコネなんて無いですか?」

橘「そうだな・・・・俺が出入りしていた時には・・・・
  USBメモリや古びた感じのメダルだとか指輪、錠前を扱っていたのは見たが。」

睦月「ITや考古学とかですか・・・・なんとなく肌に合わなさそうです。」

橘「結構不運体質だから、ゴウラムとか変な指輪とか掘り出しちゃっても困るしな。」

睦月「なんですか、それ?」

始「お前は何かを渡しているのか?」

橘「アンデッド研究を基にした、薬学応用可能なデータとかだな。
  センチピードの血清みたいなものだ。もちろん、アンデッド自体は伏せてある。」

始「そうか。」

橘「ただ、結構物騒かもしれないから就職先は他に探した方が良さそうだぞ。」

睦月「物騒?」

橘「ああ、俺も何度か訪問して、変な怪物みたいなものが現れたことがある。」

睦月「・・・・・・・・。」

始「・・・・・・・・。」

橘「黄色いゴムみたいに伸びる奴やら、宝石やコイン集めてた虫っぽい奴やら、
  結構バリエーションも多くてな・・・・俺が正体バレないように倒したが。」

睦月「正体がバレずに、ですか・・・・・・・・流石橘さん。」

橘「そう言えば、何か気に入られたのか先生にならないかとか言われたな。
  『君ならいずれ校長も』とか『別人のようになれる事前教育も』とか
   結構熱心に口説かれてな。睦月、お前が代わりに話を聞いてみるか?」

睦月「いいです!自分の道は自分で探して、自分の価値は自分で決めます!」

橘「そうか、偉いな。俺は星に願うくらいしか力になれないが頑張れよ。」

睦月(べ、別にまた騙されているとかじゃないって、俺信じてる・・・・っ!)

始(何やら胡散臭いような・・・・いや、無闇に疑うのはやめると決めたしな・・・・)

【Journey through the Decade】

??「もしやそこのあなた、この世界のライダーではないですか?」

剣崎「え、そうだけど・・・・誰なんだあんた一体?」

??「私達はライダーの力を自分のために使うものに苦しめられていて、
    それで、他の世界のライダーの方の力を借りようとしているのです。」

剣崎「なんだって、それは本当かい!?」

??「はい。よろしければ、どうかお助けください。」

剣崎「分かりました。俺で良ければ力を貸します。」

??「ではここに私の考えた筋書きが。」

剣崎「えーと『最初からキングフォームでぶつかって後は流れで』
    ・・・・・・・・なんであれこれと詳しく知っているんですか?」

??「あ、いや・・・・実は、その・・・・あなたが先日出会ったプリキュアの方々と
    ちょっとしたご縁がありましてね。一緒に踊ったとか踊らないとか。」

剣崎「へえ、それで色々知って俺のところに来たと。橘さん達はどのように?」

??「ええと、奴には世界を超える力があるので、
    こちらに残って守っていただくのです、念のため。」

剣崎「そうなんですか、ところでこの後は?尻切れトンボなんですけど。」

??「そこは映画でですね・・・・。」

剣崎「映画?」

??「いや、なんでもないです。衣装はこちらに用意してありますのでどうぞ。」

剣崎「衣装ってこれ?・・・・なんだかガラが悪そうな気もするんですけど。」

??「奴は悪魔ですから、万が一あなたが逆恨みされても困るので変装ですよ。
    もしかするとこの世界に攻め込んでくるかもしれませんし。
    まあ、ギャレン達が守ってくれるでしょうけど。あ、こちらのサングラスも。」

剣崎「ふぅん。じゃあ出発するなら俺は大丈夫ですよ。」

??「ではここを通ってください。・・・・首を洗って待っていろよ、ディケイドォォォォ・・・・

叫び声は光の壁に溶け込むようにフェードアウトしていったとか。

                  どこぞ世界のクライマックスにTo Be Continued?

( 0M0) 次はもしかしたら、下記のいずれかでお目にかかりましょう。


【ドキドキプリキュアVS仮面ライダー剣】 ※30分1回分位のイメージ?

【烈車戦隊トッキュウジャーVSスマイルプリキュア】 ※コラボ特番程度?

【スプラッシュスターの満と薫 feat ニチアサの方々】 ※やや長めになる?


( 0H0) で、読むかどうか決めていただく前に、いつ頃になるんです?

(;0M0) ・・・・・・・・。

(;0H0) ナズェダマルンディス!?

次回予告風(?)


【ドキドキプリキュアVS仮面ライダー剣】

テテテ テテテ テーン♪

マナ「わぁ・・・・六花、それ全部お父さんからのお土産?」

真琴「こんなにたくさん?」

亜久里「まさにあふれんばかりの愛ですわ!」

六花「うん、旅先で会ったこちらの方が持って来てくれたの。」

マナ「よーし、じゃあお礼も兼ねてみんなでパーティやろう!」

真琴「また唐突ね。」

マナ「まあまあ。せっかくだし、みんなが集まる機会にしようよ。」

ありす「今まで培われた絆を紡ぎ育む、素敵ですわ。」

亜久里「どなたをお招きするんですか?」

マナ「えーっと、今回のゲストの相川さん、レジーナでしょ、
    エルちゃんに、おにーさん、元国王様、あ、あそこに居るベールも・・」

一同『って、ベール!?』

マナ「“ドキドキ!プリキュア”
   『ドキドキ!プリキュア倒すため、帰ってきたぞウルトラベール!?』
    胸のキュンキュン止まらないよ!!」


※製作中のゲームや某シリーズの映画予告の様に内容は変わる場合があります



【烈車戦隊トッキュウジャーVSスマイルプリキュア】

『次の駅は~』チャーンチャーンチャーチャチャーン♪

ワゴン「やぁ~ん。この町、激しく乗っ取られかけてるぅ~!」

ヒカリ「シャドウだ、気をつけて!」

アルバムシャドウ「我は漆黒の語り部(ダーク・メモライザー)、
         我が闇に抱かれ、汝等永劫の眠りへといざなわれん。」

トカッチ「なんか・・・・イタいの来ちゃったね。」

ミオ「それはさておき早速・・」

キュアハッピー「行くよ、みんな!」

ミオ「えっ!?あ、あなた達は?」

キュアピース「通りすがりのスーパーヒーローです!!!」

キュアサニー「お、今度は誇らしげやな。」

カグラ「あ。私、知ってるよ!スマイルチャージプリキュアだ!!」

キュアサニー「惜しい!けどちょっとちゃう!!」

鳴滝「そう、彼女達はスマイルプリキュアァァァ!」

トカッチ「へえ、そうなんだ・・・・って誰!?」


“闇と虹の集う丘”

『お乗り遅れにご注意くださーい』

テテテ テテテテ テッテンテン♪


【スプラッシュスターの満と薫+α】

イマトイウー♪

元国王様『次回、ヒーロー大戦的な何か』

紘汰「お前、なんだってこんなことをするんだ!」

レデュエ「気付いたんだよ。万能の力を手にする、
     それは黄金の果実そのものを得るだけが手じゃないってね。」

紘汰「そんな事で、みんなにこんな・・・・許さねえ!」



満「咲、舞、しっかりして!」

咲「大丈夫だよ、絶好調ナリー!・・・・ってね。」

薫「辛いのに、そんな風に無茶しないで。」

満「ええ、私達がきっとなんとかする。」

薫「そうよ、ふたりはきっと助けてみせる。」

舞「満さん、薫さん、ありがとう・・・・。」

咲「ごめんね、満、薫。どうか、私達の分まで・・・・。」

満・薫「咲、舞!・・・・・・・・私達は、絶対に諦めない!!」

( 0M0) ということで、このお話はとっぴんぱらりのぷぅです。

( 0H0) またご縁がございましたらよろしくお願いいたします。

壁|w0) ハピネスチャージイプリキュアで、冒頭挨拶がキュアソードだった回の、
     本編との絡みって「なんなんだあんた(一体)」な気がするディス

( 0M0) ダリナンダアンタイッタイ!?

(m0H0)m とまあ、そんなこんなで失礼いたします。

(m0M0)m お読み頂いた方にはありがとうございました。

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