トンボ「やっぱ食べる?」カマキリ「うん」(15)

トンボ「突然気が変わって離したりとか可能性ある?」

カマキリ「ない」

トンボ「そっか」

カマキリ「うん」

トンボ「でも失礼だとか思わない?初対面で体を貪るとか」

カマキリ「思わない」

トンボ「そっか」

カマキリ「うん」

トンボ「ついでに聞きたいんだけどほんとに離してもらえたりとかは」

カマキリ「しない」

トンボ「うん」

トンボ「鎌が食い込んで痛いんだけどちょっとだけゆるめてもらっていい?」

カマキリ「いいよ」

トンボ「いいの」

カマキリ「ちょっとだけね」

トンボ「ああ。だいぶゆるくなったね。ありがとう」

カマキリ「どっちにしろ逃がせないけどね」

トンボ「わかってたよ」

トンボ「今までもトンボ食べたことあるの?」

カマキリ「ある」

トンボ「おいしかった?」

カマキリ「なんとも」

トンボ「微妙なの」

カマキリ「そう」

トンボ「じゃあ無理矢理僕を食べなくてもいいんじゃないの」

カマキリ「食べる」

トンボ「そっか」

トンボ「カマキリってお腹に虫がいるって聞いたんだけど」

カマキリ「うん」

トンボ「いるの?」

カマキリ「いるよ」

トンボ「いるんだ」

カマキリ「いる」

トンボ「どうして追い出さなかったの」

カマキリ「追い出せないから」

トンボ「そう」

カマキリ「俺はこいつに必死度で負けたの」

トンボ「どういうこと」

カマキリ「俺もこいつも一生懸命だったってこと」

トンボ「説明へただね」

カマキリ「うん」

トンボ「ところでさ」

トンボ「君は僕を食べなきゃ死んじゃう?」

カマキリ「うん」

トンボ「食べれば生きられるの?」

カマキリ「わからない」

トンボ「だよね」

トンボ「仮に僕を食べたとしてさ」

カマキリ「うん」

トンボ「水場にいくと虫に腹を突き破られて死んじゃうんでしょ?」

カマキリ「うん」

トンボ「栄養も全部その虫にもらわれちゃうんでしょ?」

カマキリ「うん」

トンボ「その虫じゃなくてもさ」

トンボ「他の虫に食べられるかも」

カマキリ「うん」

トンボ「生き延びられたってさ」

トンボ「最後には死んじゃうんでしょ?」

カマキリ「うん」

トンボ「最後には死んじゃうんでしょ?」

カマキリ「うん」

トンボ「じゃあ」

トンボ「なんで生きようとするの?」

カマキリ「…」

カマキリ「じゃあ」

カマキリ「お前は」

カマキリ「なんで生きようとするの」

カマキリ「羽もないのに」

カマキリ「俺に食われまいと」

カマキリ「会話をしてる」

カマキリ「それはどうして?」

トンボ「ああ」

トンボ「そっか」

トンボ「なるほど」

トンボ「羽をもがれて」

トンボ「天を追放されて」

トンボ「僕はもう生き物としての存在と自分のことを思えないんだ」

トンボ「だけどちがかったんだね」

カマキリ「うん」

トンボ「僕は君に食べられて生物として死ねるんだね」

カマキリ「うん」

トンボ「ああ僕は君にみすみす食べられやしないよ。最後まであがいたらぼくはむしなんだぼくは」

カマキリ「…うん」

トンボ「ああカマキリ君」

トンボ「我が生を完全にしたる良き友よ」

トンボ「願わくは、また来世で」

カマキリ「…………」

カマキリ「さらば、愛しき過去よ」

カマキリ「願わくは、また、生物としての生と共にあらん」

自分で読み返してもきついものがあるわ
深夜のノリの思い付きは危険や

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