戦士「…」
　　　（出て行くつもりが。俺になにか用があるのか）
　　　「どうしたというんだ」ｸﾙｯ

勇者「わーこっち向いちゃだめ！　あっち向いたまま聞いてっ！」

戦士「あ、あぁ…すまん」
　　　（コイツがこんなに慌てている姿は初めてだ…）

勇者「あのね…ボク、だましてたわけじゃなくて…」

戦士「…あぁわかっている。女であることを隠すのには何かわけがあったのだろう」
　　　「俺は問いただすつもりはないし、他言もしない」
　　　（気にはなるが）

勇者「ほんとう……？」

戦士「本当だ」

勇者「誰にも言わない？」

戦士「あぁ。黙秘する」

勇者「女勇者だからってバカにしない？」

戦士「男女隔たりなく接することを心がけている」

勇者「ボクの、仲間でいてくれる…？一緒に旅を続けてくれる？」

戦士「それが俺の使命だ。どうであれ、お前に付き従う覚悟は出来ている」

勇者「……」
　　　「はぁ～～良かった」ﾎｯ
　　　「ボクもう終わっちゃったかと」

戦士「……ところで、もう行っても良いか」

勇者「あっ、ご、ごめんね呼び止めちゃって」

戦士「いや、大丈夫だ」ﾌﾞﾙｯ
　　　「少し冷えてしまったので、先に戻って寝ることにする」

勇者「…ねぇ」
　　　「入る…？一緒に」

戦士「…！」

勇者「ゆっくり温泉入るつもりで来たんでしょ？」
　　　「お酒まで持ってきて…」

戦士「…その」
　　　（タオル一枚で酒をもって立ち尽くすとは、間抜けな格好だ）

勇者「ごめんねボクが占領しちゃって」

戦士「謝る必要はない」

勇者「入っていいよ。この時間、混浴らしいから何もおかしいことないし…」

戦士（なにを言っているんだコイツは）

勇者「ボクに気を使わなくていいよっ」
　　　「ちょっと恥ずかしいけど、ボクたち仲間だよね？」

・・・

戦士（結局言われるままに入ってしまった）

勇者「……」ﾁﾗｯ　
　　　「ぁ…ぅ…」

戦士（若い女と入るというのは思った以上に気まずいな）
　　　（なにか和やかになる話題でもあれば良いのだが…そういえば！）

戦士「勇者」

勇者「…？　なに？」

戦士「お前はずいぶん子供っぽい可愛らしい下着をつけているんだな」

勇者「え゛！？」

戦士「不思議におもったものだが、お前が女子であるというなら至って普通の事なのだろうな」

勇者「うぇうっ！？　な、なにをいきなり…」

戦士「誰かが風呂に入っていることはわかったのだが、お前である確信がなかった」
　　　「他の宿泊客かもしれんからな。一応脱衣所で衣服を調べたんだ」

勇者「そ、そんなの報告しなくていいから…///」

戦士「間違いなくお前のものだった」

勇者「も～～～っ！！///　忘れてよそんなのっ！！」ﾊﾞｼｬｯ

戦士「うっ」
　　　（なぜ怒られた…）

勇者「やっぱりボクが女だからってバカにしてるでしょ！」

戦士「いやっそういうつもりでは！」
　　　「むしろ女の身でありながら過酷な旅に身を投じようとするお前を尊敬している」

勇者「…ほんと？」

戦士「ああ。こんな白く細い体で…」ｶﾞｼｯ

勇者「あ゛っ///」

戦士「……すっ、すまん」

勇者「叫びそうになっちゃった」

戦士「すまん」

勇者「お酒飲まないの？」

戦士「あ、あぁ。もう十分に体は温まっているのでやめておく」

勇者「じゃあボクに少しだけ注いでくれる？」

戦士「飲める歳なのか？」

勇者「当たり前でしょ。成人したから勇者として旅に出たんだよ？」

戦士（こいつの国での成人は一体いくつだったか…）
　　　「まぁいいだろう」

ﾄｸﾄｸ…

戦士「これだけにしておけ」

勇者「ありがとう」
　　　「ンクッ、ンクッ…」

戦士「あっ、そんなに一気に飲むのはよした方がいい」

勇者「はふぅ…」
　　　「うーん、喉の奥あつい」

戦士「…飲み慣れてはいなさそうだな」

勇者「夜風が気持ちいいね」

戦士「あがるか？　上がるときは言ってくれ。目をつぶっておく」

勇者「…そんなに気を使わなくてもいいのに」
　　　「いままで通り、といってもまだ出会って数日だけど…。ボクのことは男として接してほしいな」

戦士「そうもいかないだろう。嫁入り前の娘の裸体を見ていいわけがない」

勇者「真面目なんだね…」

戦士「俺にはそれしか取り柄がない」

勇者「でも見ていいよって言ったら見るでしょ？」

戦士「見ないから安心しろ」

勇者「触っていいよって言ったら触るでしょ？」

戦士「触らないから安心しろ」

勇者「…」ﾋﾟﾄｯ
　　　「ふぅーーー」

戦士「ッ！　お前さては酔っているな」

勇者「えへへっ、さっきボクの下着をからかったお返ひだよっ！」

戦士「あれはからかったわけでは…」
　　　「やはり酔っている。もう上がった方が良い」

勇者「よって、ないよ～～」ｸﾗｸﾗ

戦士「ハァ」
　　　「部屋に帰るぞ。一気に飲むから一気に酔いが回ったんだ」

勇者「たてませーん」
　　　「つれれってー」ｸﾞｲｸﾞｲ

戦士「クッ」

その後俺は手探りでコイツの体を拭き、手探りで服を着せ、なんとか部屋まで連れ戻った。

-男部屋-

勇者「zzz」

戦士「む…脱衣所の低い梁に頭をぶつけてしまった…」
　　　「散々な目にあったな」

勇者「うぇぅ…ｚｚｚ」

戦士「女であることを偽るのに、どんな理由があるかは知らない」
　　　「だが俺はお前の旅を応援しているし、これからも支えていこうと思う」
　　　「がんばれよ」


戦士（だがたくさん問題が発生してしまった）
　　　（俺はこいつの秘密を守りきれるのだろうか）
　　　（このことは僧侶たち他の仲間にも秘密にしなければならないのだろうか）　
　　　（そしてこれからさき風呂や部屋割りはどうする…）

勇者「えへへ…zzz　がんばろうね…zzz」

戦士「また明日考えるか」