小五郎「…じゃあ、お前も食っていくか?」新一「ん、いーけど」 (37)

11年前


路地裏



タッタッタッ…



男「はぁっ、はぁっ…!」


目暮「観念しろ!もう逃げられんぞ!」


男「へっ、なにが逃げられないだ!どんどん離されてるくせによ!」


目暮「よしっ……いまだ毛利君!」


小五郎「はっ!」バッ

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男「なにっ!挟み撃ちだとぉ!!ちくしょう!!」キラン


目暮「毛利君危ない!!」


男「どけぇ!!」ダダダッ


小五郎「よっ」ガッ


男「なっ……」





小五郎「すぅりゃぁあっ!!」ドゴォッ



男「がっ…は…!!」

小五郎「ふーっ………逮捕する」


男「はぁ…はぁ…はぁ…!」


小五郎「よかったなぁ、罪に殺人が加わらなくてよ」



目暮「毛利君!大丈夫かね!」


小五郎「はっ、警部殿!見ての通りピンピンしております!」


目暮「……ふぅー、そのようだな

   まったく君の一本背負いをまともに受けたそいつのほうが心配なぐらいだよ」


小五郎「ナハハハハッ、警部殿もご冗談がきついですなぁ!」



男「」グッタリ



目暮「(…本音なのだがね)」



……

毛利宅




小五郎「で、そいつが大型ナイフで俺の顔を刺そうとしたのに合わせて、俺は瞬時に懐に入り…」


英理「……」


小五郎「腕をとって、そのまま下に流して……どっしーん!と投げたわけだ

    警部殿からもお褒めの言葉をいただいてなぁ!」


英理「……」


小五郎「いやぁー、お前にも見せてやりたかったよ!
    お前の投げも上達してはいるけど、まだまだなところがあるからなぁ」

英理「ねえ、あなた…」


小五郎「あん?なんだ、気に障っちまったか?
    …ま、まあ短期間で教えてやったにしては中々見所があると思うぞ、お前は」











英理「そろそろ強行犯係から別の部署に移れないかしら…?」





小五郎「なっ…!何を言うんだ英理!いいか、俺はこの仕事を…!」


英理「仕事の事で口を開けばナイフだの、拳銃だの、同僚が入院しただの……危ない事ばかりじゃない」


小五郎「英理…?」


英理「前の火災犯係のときは、そこまで危ない話なんて聞かなかったのに…

   冷静に考えて?
   蘭ももうすぐ小学校よ、今のままだったらあの子が卒業するまでにあなたの身がもたないわ」


小五郎「……」

英理「刑事に危険はつきものとはいえ、あなたは流石に酷使されすぎよ

   少しくらいのわがまま、目暮さんだって聞いてくれるはずだわ」


小五郎「…俺はあの人を尊敬している、一緒に仕事がしたいんだ」


英理「……」


小五郎「認めたくねーけど、俺はそんなに出来はよくない…だが、警部殿はそんな俺を信頼してくれているんだ

    だから、体を張る事で少しでも役に立ちたいんだよ」


英理「……」


小五郎「本当にお前達には迷惑かけてる、わりーなとは思ってるよ…けど」


英理「……あなた」


小五郎「すまないが…今の俺に強行犯以外は考えられねぇ」

英理「……」


小五郎「分かってくれ、英理」





英理「……ふふ、あはははっ」


小五郎「?」




英理「あははっ…ごめんなさい

   実はあなたの本音が聞いてみたくて、ちょっと演技したのよ」


小五郎「はぁ~?」


英理「分かってるわよ…あなた強行犯係になってから活き活きとしてるもの、
   それを辞めてくれだなんて本気で言うつもりないわよ」


小五郎「……かぁーっ!

    ったく…お前が演技だなんて有希ちゃんに変な影響でも受けちまったのか~?」


英理「あなたにはバリバリ働いてもらわないとね、生活は安定してきているけど
   私も弁護士としてデビューしたら、自分の事務所をこの近くにでも持ちたいしね」

小五郎「おいおい…前も言ったけど、そんならここのビルに作りゃいいじゃねーかよ」


英理「あら、妻をそばに置いておきたい気持ちは分かるけど、私だって外に出て挑戦とかしてみたいのよ」


小五郎「ばっ!ち、ちげーよ!そうしたほうが…その、色々面倒くさくないだろうって、なぁ…」


英理「ふふふ、考えておくわ…あ、でも」


小五郎「?」





英理「あなたの事が心配なのは、本当だから」

小五郎「お、おう……」


英理「……」


小五郎「……し、しかしあれだな、蘭のやつ遅ぇーな」


英理「そうね…今日は優作さん達と遊園地へ出かけているから少しは遅くなると思ってはいたけど…」




ピンポーン




英理「あ、話をすれば…きっと優作さんよ」




ガチャッ




有希子「こんばんは~」

英理「あら、有希子!」


小五郎「おお、有希ちゃん!」


新一「こんばんは…」


有希子「新ちゃん、もうちょっとお行儀よくしなさい」


英理「いいのよ、ところで蘭はどこかしら?」



有希子「ああ、それがね…阿笠博士が家庭用の『立体プロジェクター』っていうの?

    その試作品を作ってもってきたのよ、優作が頼んでいたらしいんだけど

    それで映画を観ようっていったら、蘭ちゃんが…」



英理「ああ、なるほど…自分も観たいって言い出して、観終わる頃には時間も遅くなるだろうし、
   仕方ないから有希子の家に泊まっていくという話になったわけね」

有希子「そうなの、うちは蘭ちゃんが来てくれるならいつでも大歓迎なんだけどね」


小五郎「いや~、それでもすまんな有希ちゃん…それに電話でもよかったのに」


有希子「まあ、なんかちょっとね…それに今観ている映画もラブロマンスで新ちゃんが観たがらなくって、

    『あんなのを流してる間は家にいたくない』ってぐずるもんだから少し外に連れ出したかったの」


新一「ぐずってねーし…」


有希子「こら、新一」


英理「でも有希子の家なら私達も安心だわ、一晩だけどよろしくね

   じゃああなた、ご飯にしましょうか」












英理「今日は 『 私 が 腕 に よ り を か け て 作 る 』 からね♪」









小五郎「いぃぃっ!?」


有希子「あ、あら?なにかのお祝いだったの?」


英理「まあね、今日はこの人が強盗犯を逮捕する大手柄を立てたっていうから」


有希子「へぇ、そう……あは、あはは…」


英理「折角だからちょっとあがっていく?」


有希子「へ?い、いいいいいやいやいや!私もほら、そろそろ戻ろうかなーって思ってたし」

有希子「(あぶないあぶない…英理は高校の家庭科実習のときでも変な味付けにこだわってたからなぁ…

     そのせいで一度口に運んだら忘れられない料理を知らずに作り上げてしまう…


     『舌殺しの妃(キラークイーン)』なんてあだ名を陰でつけられてたぐらいだもの…


     あれも小五郎君がみんなの身代わりになって食べてたのよねぇ……

     しかもなに?今日はそんな英理が腕によりをかけるって……)」












新一「どうしたの母さん、別にご飯を食べていくぐらいいいじゃない」

新一「じゃあ俺だけ残ってもいい?」


有希子「!!??」


英理「あら、じゃあ新一君は大丈夫なの?お母さんと戻らなくても」


新一「うん、変な映画観るよりはいいよ」


有希子「あ、あわ…あわわわ…!」ガタガタガタ


小五郎「……ボウズ」


新一「?」






小五郎「……じゃあ、お前も食っていくか?」


新一「ん、いーけど」



有希子「こっ、小五郎君!?」


英理「あら嬉しい、ますますはりきっちゃうわ♪」


小五郎「(ま、ますます…!?)」


英理「じゃあ有希子、食べ終わったらそっちまで送っていくからね」




有希子「あ……あ……!」




バタンッ

英理「~♪」カチャカチャ





小五郎「ボウズ…」ボソッ


新一「?」


小五郎「すまんな…」


新一「??」








有希子「(ごめんね新ちゃん…何も出来ないお母さんを許して…!)」ブロロロロ…


英理「できたわ!」





  シュウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・

      ゴゴゴゴゴゴ……


   オ オ オ オ オ……






小五郎「~~~~っ!!」




新一「(なんだろあの黒い物体…

    それにあれクリームシチューなのかな…なんで魚の頭が浮いてるんだ?


    あと、あの緑色の物体もなんだか気になる…抹茶か何かかな?)」

英理「どうぞお二人さん」



小五郎「い、いただきます…」

新一「いただきまーす」



   ゴゴゴゴゴゴ…




小五郎「……んっ!」パクッ


新一「(お、黒いのからいった)」





小五郎「ッ?! ~~~~~~~~~~~~ッッッッッ」ドンドンッ





新一「!?」

英理「あら、慌てて食べちゃダメよ」




新一「(なっ…なんだよあのリアクション!ま、まさか蘭の母さんって……!!)」




小五郎「(こいつはすげぇー攻撃だぁぁぁーー!!!!)」


小五郎「(から揚げらしいが、まず衣が死んでる!!
     真っ黒こげになってくたばってる!!

     そんで、中身!!

     冷てーし、どろどろしたのが噛むたびに出てきやがる!!

     俺はいま何を口にいれたんだ!?)」





英理「どう、そのから揚げ、新鮮なのを使ったのよ」



小五郎「(新鮮っつーか、これじゃ生だろうが!!それにこのどろどろの正体はもしかしてゴマ油か!?

     どうやったらから揚げの中身にゴマ油が入れられるんだよ!!)」

新一「ひっ、ひぃぃ~…!」


英理「新一くんも遠慮しなくていいのよ?」



新一「はっ…はい…」



新一「(どっ、どれだ…どれが一番まともなんだ…?!)」



新一「……こ、このクリームシチュー貰おうかな~」



英理「あら、サンマの牛乳煮込みのことかしら?」



新一「(名前からしてダメだぁーー!!)」



……

工藤邸



『このローマの思い出は決して忘れないでしょう…』




蘭「わぁ~、きれー」



阿笠「いやはや、本当にオードリーは美しいのう…わしの青春じゃったわ」


優作「ええ、本当に美しい…世界一の美女と言われても納得ですね」


阿笠「おや?本当は世界で二番目、と言いたいのではないかな?」ニヤニヤ


優作「ははは…からかわないでくださいよ、博士」




蘭「…もう、新一も一緒にみればよかったのに」


……

毛利宅




英理「もう、あなたったら食べてる途中で眠るなんて行儀が悪いわよ」



小五郎「」



新一「(しょうがないって…

    おじさんは俺よりずっとたくさん食べてたし

    あの緑の物体……ほうれん草とアスパラガスのムースケーキに手をつけなくて本当にラッキーだった)」




英理「きっと疲れていたのね……あ、新一君」


新一「ふぁ、ふぁい?!」




英理「チョコレート食べる?」


新一「え…う、うんうん!」

英理「うふふ、じゃあちょっと待っててね」



新一「(よ、よし!何が出てくるかと思ったがチョコレートなら大丈夫だ!

    それを食べて、お腹がいっぱいになって眠くなったふりをして早く家に帰ろう!)」





英理「はい、どうぞ」



新一「わぁい、チョコレー…………ト…?」





   ゴ ゴ ゴ


    ゴ ゴ ゴ…




英理「市販のチョコをホワイトも抹茶もカカオ99%も色々溶かして、
   隠し味をちょこっと入れてから固めた、おばさん特製のチョコレートよ

   あ、隠し味は勿論秘密ね♪」





新一「」






新一「(らぁぁぁぁぁーーん!!俺が悪かったぁぁぁーーー!!映画一緒に観させてくれぇぇぇぇーーー!!)」



チョコレートと格闘しながら工藤新一は考えた


「蘭はどうやってこの料理と戦ってきたんだろうか」と


そして、それは高校生探偵になってからも、江戸川コナンになってからも解けない謎として

彼の心に残った




なお、この事件の翌日、毛利小五郎は疲弊した体に鞭をうって出勤、

ガッツマンを計8本飲みながら職務にあたった

この様子を見た同僚から一時期


「『冴』えない顔をして『栄』養ドリンクを『8』本も飲んだ男」


略して「サエバ」とあだ名されるようになったが、

それはまた別のお話




おしまい

くぅ疲

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