杏子(24)「……魔法少女の」マミ(25)「同窓会!」(50)

──駅前的な待ち合わせ場所


杏子「よォ、マミ。随分早いじゃん?」

マミ「佐倉さん! 久しぶりねえ」

杏子「五年ぶりくらいか? くっく、変わんねえな、アンタ。……他の三人はまだみてえだな」

マミ「ふふ、佐倉さんも変わってないわね。美樹さんと鹿目さんはそろそろ来るはずよ。暁美さんはお仕事で遅れるって──ああほら、噂をすれば。鹿目さーん!」

まどか「あー! マミさーん! 杏子ちゃんも!」

杏子「おっす。……ん、どうした? ほっぺに絆創膏なんかして」

まどか「あ……うぇひひ、これね、ねこちゃんに引っかかれちゃって……」

杏子「あー、そっか、獣医やってんだっけね」

まどか「うんっ。……ところで、さやかちゃんとほむらちゃんは?」

杏子「ん、ほむらは仕事で遅れるんだと。さやかはもう来るんじゃねーか?」

まどか「そっか。うぇひひ、楽しみだなあ」

マミ(……あれ。私、早速空気……?)

──十分後

まどか「さやかちゃん、遅いねえ」

杏子「ま、あいつも忙しいんじゃねーの?」

マミ「そういえば美樹さん、今何してるのかしら?」

まどか「さやかちゃん、薬剤師になりたいみたいで。「みんなあたしが助けてやるー!」なんて言って頑張って勉強して、薬学部入ったんですよ」

杏子「げえ、高学歴」

マミ「ふふ。美樹さんらしいわね」

杏子「マミはモデル、まどかは獣医、さやかは薬剤師、ほむらは理工系の院生……ねえ。あたしだけ浮いてんなァ」

まどか「えー、そうかなあ。杏子ちゃん、ぴったりだと思うよ? 小料理屋さん」

マミ「そうね。一度行ってみたいわ」

杏子「えー、勘弁してよ。マミが来たら店のもんみんな食われっちまう」

マミ「私をなんだと思ってるのよ!?」

杏子「あーほら、来たぞバカが」

さやか「来て早々にバカ呼ばわりされたんですけど!?」

まどか(杏子ちゃん、変わらないなあ)

杏子「よ。久しぶりだな、さやか」

さやか「……ん。久しぶり、杏子! まどかとマミさんも!」

マミ「お久しぶり! 美樹さん、少し髪が伸びたかしら?」

さやか「えっへへ、分かっちゃいますかー? この美少女さやかちゃんにはロングヘアも似合うってことを証明したいなーってね!」

まどか「もう少女って歳でもないでしょ、わたし達……」

さやか「ぬわにい!? ちょーっと見ない隙に言うようになりよって……そんなまどかはこうだー!」

まどか「わっちょ、うぇひ、さやかちゃ、やめ、や、あははは! わき腹は、わき腹はだめ! あは、あははは!」

杏子「……ほんっと、変わんねえのな、あたしら」

マミ「あら。楽しくていいじゃない」

杏子「……ま、そういうことにしとくか」

マミ「ふふ。さーて! みんな揃ったことだし、お店に行きましょう?」

さやか「おーっ! ……って、ほむらは?」

まどか「はぁーっ、はぁーっ……ほ、ほむらちゃ、おひごと、お、おくれ……」

さやか「や、やりすぎた……?」

──居酒屋


マミ「ええ、五人で予約のトモエです。あと一人は遅れて──」

杏子「へーえ、こじゃれた店じゃん」

まどか「もーっ、ひどいよさやかちゃん……息できなかったんだからね」

さやか「ごめんってまどかぁ、飴ちゃんあげるから機嫌なおして? ねっ?」

まどか「……なに味?」

さやか「んとね……はい、もも味」

まどか「……次やったら怒るからね」コロン

さやか(ちょろい)

杏子「お、いいもん持ってんじゃんか。あたしにはねえの?」

さやか「そう来ると思ったわよ……ほれ、りんご味」

杏子「へへ、分かってんじゃん。さーんきゅ」コロン

マミ「もう、これからお料理が来るのよ? 早く食べちゃいなさい」

まどか「ふぁい」コロコロ

マミ「それじゃあ、席まで行きましょう。そうだ、暁美さんにメールしてあげないと……」

マミ「暁美さん、まだもう少しかかるみたい。先に始めちゃう?」

杏子「おー、そうしようぜ。腹減った」

まどか「それじゃ、飲み物決めちゃおっか。はい、さやかちゃん、メニュー」

さやか「ん、ありがとー! そだねえ、とりあえずチャイナブルーにしよっかな」

まどか「あ、わたしピーチフィズ!」

杏子「じゃ、あたしはカンパリソーダかな。マミは?」

マミ「うーん……そうね、モスコミュールにしようかしら」

さやか「よーし、それじゃあさやかちゃん、店員さん呼んじゃいますよ~?」

杏子「ボタン押すだけだろ……」

店員さん「オマタッシヤッシャー」

さやか「どもどもー。……それじゃ、一人足りないけど……!」

一同「かんぱーい!」

杏子「……くぁー、うめえ!」


店員さん「オマタッシヤッシャー」

さやか「どもどもー。……それじゃ、一人足りないけど……!」

一同「かんぱーい!」

杏子「……くぁー、うめえ!」

さやか「んんっ!? そんな一気に飲み干すようなお酒じゃないでしょ!」

杏子「いーじゃんか、好きに飲めば。んなことよりどうすんだよ、食いもんは」

さやか「あ、あたし焼き鳥食べたい! 盛り合わせでいい?」

まどか「うん、わたしはいいよ」

杏子「甘い酒に焼き鳥かよ……?」

マミ「私、この揚げチーズパイが気になるわ」

まどか「あ、おいしそう……!」

マミ「それじゃあ鹿目さん、一緒に食べましょうか」

まどか「はい!」

杏子「んー、とりあえずまたカンパリソーダでいいかな。あとレバーと砂肝二本ずつ、塩な」

店員さん「オマタッシヤッシャース」

杏子「早えなオイ!」

さやか「……いやあ、それにしたって」

杏子「あん? ──ん、ここのレバーうめえな」モグモグ

さやか「まあその、あたしらって男っ気ないなーと思ってさー?」

マミ「げっほけほごほ!」

まどか「マミさん!?」

杏子「まあ、歳は食っても魔法少女だからねえ。……そこで狼狽えてるやつは知らねえけどな?」

さやか「え、マミさん!?」

マミ「な、なな、なにもないわよ!」

杏子「本当かァ?」ニヤニヤ

マミ「……まあ、お仕事してると、そういうお話をいただくことはあるけど……」

さやか「んでんで? どうやってフったんですか? やっぱティロフィナ!?」

マミ「そんな事でフィナらないわよ! ……普通に、あなたには興味ないです、って」

杏子「……アンタ、いい性格になったな」

マミ「あ、ほ、ほら! 暁美さんからメールよ! もう駅ですって! もうすぐ来るわね!」

杏子「下手くそかよ」

まどか「わあ、ほんとですか!?」

さやか「んー? まどか、ずいぶんと嬉しそうですな~?」

まどか「ふぇ!? そ、そんなことないよぉ!」

杏子「ほむらかァ……想像もつかねーな、どんなんなってるか」

マミ「ふふ。暁美さんのことだもの、きっとすごく綺麗になってるわ」

さやか「ぐぬぬ……さやかちゃんと美人キャラがかぶっちゃうなあ……」

杏子「杞憂だな」

まどか「そうだね」

さやか「まどかまで!?」

マミ「あ、すいません、フライドポテトひとつください」

店員さん「オマタッシヤッシャース」

さやか「ん? なんか頼んだ?」

マミ「あ、私」

杏子「あー、店員さん、芋ロックで」

まどか「わたしピーチフィズおかわり!」

さやか「お? 結構飲むねえ」

ほむら「──遅れてごめんなさい。……ふうっ、駅から結構歩くのね」

まどか「あー! ほむらちゃん!」

ほむら「久しぶりね、みんな。あ、店員さん、私ブルームーン」

杏子「久しぶり。背、伸びたか?」

ほむら「ええ、まだ伸びるとは思わなかったわ」

マミ「羨ましい脚の長さね……」

ほむら「嫌味にしか聞こえないわよ」

さやか「相変わらず美人だなー……うう、不公平だぁ」

ほむら「あら。さやかだって可愛いと思うわよ?」

さやか「さやかちゃんは大人な美人になりたいのー!」

杏子「自分で『さやかちゃん』とか言ってる時点で無理だろ」

さやか「なんですとお!?」

マミ「ふふっ、それが美樹さんのいいところじゃない」

さやか「マミさん……!」

まどか「うぇひひ。……やっとみんな揃ったねえ」

杏子「そーだなー。タイミングよく酒も来たし、もっかい乾杯すっか」

マミ「そうね! それじゃあ、五人の再開を祝して……!」

一同「かんぱーい!」

ほむら「そういえば、マミはまだ魔法少女なんでしたっけ? ──あら、ここのレバーおいしいわね、お酒には合わないけど」

マミ「ええ。暁美さんはもう?」

ほむら「ただの人間よ。杏子も?」

杏子「ああ。少し前にドジやらかしちまって、仕方なくな。さやかも一緒だ」

ほむら「そう。……こうして集まってお酒を飲めるのも、あなたのおかげね。本当にありがとう、まどか」

まどか「うぇひひ……わたしのほうこそ、長い間、ごめんね……」

ほむら「謝らないで。私だって、あなたがいなければ、もうとっくに死んでいたはずだもの」

まどか「ほむらちゃ……」

ほむら「まどか……」

さやか「こらぁほむら! このさやかちゃんを差し置いて、あたしの嫁といちゃついてんじゃないわよ!」

──回想シーン、ほむホーム


さやか「……まさか、あんたの家に呼ばれるなんてね」

杏子「さて……あたしらが呼ばれたってことは、話してくれんだろ? あんたが何者なのか、目的はなんなのか」

ほむら「ええ。そのつもりよ」

マミ「……(コーヒーがにがいわ……お砂糖は……)」

ほむら「信じてもらえないという前提で話すわ。──」

…………

ほむら「」

──回想シーン、ほむホーム


さやか「……まさか、あんたの家に呼ばれるなんてね」

杏子「さて……あたしらが呼ばれたってことは、話してくれんだろ? あんたが何者なのか、目的はなんなのか」

ほむら「ええ。そのつもりよ」

マミ「……(コーヒーがにがいわ……お砂糖は……)」

ほむら「信じてもらえないという前提で話すわ。──」

…………

ほむら「──という訳で、私はこの一ヶ月を繰り返している」

マミ「……ぐすっ、ひっそんな、ことって……!」


──回想シーン、ほむホーム


さやか「……まさか、あんたの家に呼ばれるなんてね」

杏子「さて……あたしらが呼ばれたってことは、話してくれんだろ? あんたが何者なのか、目的はなんなのか」

ほむら「ええ。そのつもりよ」

マミ「……(コーヒーがにがいわ……お砂糖は……)」

ほむら「信じてもらえないという前提で話すわ。──」


…………


ほむら「──という訳で、私はこの一ヶ月を繰り返している」

マミ「……ぐすっ、ひっく、そんな、ことって……!」

杏子「……なるほどな。色々と納得がいったよ」

さやか「転校生……」

ほむら「……さっきも行ったけれど、一週間後、この街にワルプルギスの夜が来る。それの撃退に、手を貸してほしい」

さやか「ちょっと待って」

ほむら「……何かしら、美樹さやか」

さやか「今日ここに、まどかを呼ばなかったのは、どうして?」

ほむら「あの娘は優しすぎる。こんな話を聞かされたら、まどかは絶対に自分を責めるわ」

さやか「だからって……隠すのは、ちょっと違うと思う」

ほむら「……全てを明かせ、と?」

さやか「もちろん、あたしからも契約はしないように釘を刺す」

マミ「……そうね。私も、みんな話してあげた方がいいと思うわ」

ほむら「……簡単に言わないで」

さやか「もしまどかが気に病んでも、今はフォロー出来る人が三人いるんだよ? 絶対大丈夫、あたしがなんとかする。だから──ほむら、話してあげてよ。まどかに」

ほむら「!」

杏子「……そうだな。自分だけ何も知らねえってのも、結構辛いもんだぜ」

ほむら「……分かった。話すわ、全部。……でももし、まどかに何かあったら、あなたを殺すわ。……さやか」

さやか「! ……へへっ、マジなのか冗談なのかわかんないわよ!」

マミ「それじゃあ、明日の放課後、私の家にいらっしゃい。みんないたほうがいいでしょう?」

ほむら「……ありがとう、マミ」

杏子「へっ。さやか以外にひよっこが増えんのも癪だからな、あたしも手伝ってやるよ、説得」

さやか「どーいう意味よ!?」

ほむら「ふふ。──ありがとう、杏子」

マミ「あら……ふふっ。暁美さん、笑うと可愛いじゃない」

ほむら「なっ──か、からかわないで。ほら、作戦会議、始めるわよ」

杏子「下手くそかよ」

ほむら「ああもう……ほら、ワルプルギスの出現予測よ。この範囲外に出現したことは今まで一度もない」

マミ「でも、用心に越したことはないわよね?」

ほむら「ええ。だから、それぞれ少し離れて待機をしてもらう。スピードのあるさやかはここ。視野の広い杏子は少し遠いけれどここに」

ほむら「メインの火力であるマミには一番確率の高いここへ。私はいざというときには時間停止があるし、一番遠くへつくわ」

ほむら「ワルプルギスが出現したら、まず私が用意した火力をありったけぶつける。それだけで倒せればいいのだけれど、おそらくは無理」

ほむら「私が合図したら、マミと杏子はワルプルギス本体を狙って。さやかは自動回復とスピードを活かして二人の露払いをお願い。私もフォローするわ」

ほむら「奴の行動パターンとある程度の対策をまとめたから、各自目を通しておいて」

マミ(な──! こんな、詳細な資料を……!)

さやか(ほむら、一体どれだけ繰り返して……!?)

杏子「……」

ほむら「奴の強みは異常なまでのタフさと使い魔の数よ。火力だけ見れば、もっと強い魔女はいくらでもいる。だから、多少の攻撃は無視して、攻撃し続ける必要がある」

杏子「へっ、得意分野だぜ……なァ、マミ?」

マミ「ええ……いざとなったら、すぐに治してあげるわ」

ほむら「……四人揃ってワルプルギスに挑むのは、きっとこれが最初で最後。負ける訳には──いかない!」


…………

──『夜』、市街地

ほむら『出現位置はB地点より西南西に二十メーター──概ね予想通りね。みんな、マミの所へ』

さやか『了解!』

杏子『おう!』

ほむら「今回こそ──!」

『5』

杏子「なっ……ふざけた魔力だな、おい?」

『4』

さやか「っ……!」

『3』

マミ「なんて……禍々しい……!」

『2』

ほむら「──来る!」

『1』

ワルプルギス「アハ……アハハハハハハ!」

ほむら「みんな、少し下がっていて。巻き込まれるわよ」

ほむら「──時間停止!」カシャッ

ほむら「手持ちのRPG、全弾くれてやるわ!」ドドドドッ**

ほむら「──停止、解除!」

杏子「……うおッ!?」

ほむら「よし、後退した! 起爆!」

さやか「送電鉄塔が倒れた!?」

ワルプルギス「アハハ! アハハハハハハ!」

ほむら「高度が下がった所に──タンクローリーよッ!」

マミ「……ワルプルギスより、暁美さんが怖いわ……」

杏子「……同感だ」

ほむら「メインディッシュよ! 喰らいなさい、対艦ミサイル──!」

ほむら「落下地点、ドンピシャね──デザートに、十三万の地雷はいかが?」

さやか「……いや、むちゃくちゃやりすぎでしょ、ほむら……ここまで熱風来てるし」

ほむら『油断しないで! さやか、行くわよ!』

さやか『お、おうっ!』

カミテ「キャハハ!」

シモテ「ウフフ!」

ほむら「どきなさいッ! ──杏子、マミ!」

ワルプルギス「アハハ……アッハハハハハハハ!!」

マミ「オッケー! 〈レガーレ・ヴァスタアリア〉!」

さやか「動きが止まった!」

杏子「へっ──冥土の土産に、いいもん見せてやるよ」

杏子「こいつで逝っちまいなァ! 必殺、〈ロッソ・ファンタズマ〉!」

ほむら「分身魔法……!? 杏子あなた、こんな力が……!」

マミ「佐倉さん……!」

杏子ズ「そらそらそらァ! 使い魔ごとコマ切れにしてやんよ!」

マミ「私も負けてられないわ! これが私の最大火力! 〈ティロ・フィナーレ〉ッ!!」

ワルプルギス「アハハ──!!」

ほむら「効いてる──! さやか、使い魔は私に任せて、あなたも本体を狙って!」

さやか「やーっと来たね、あたしの見せ場! 〈スクワルタトーレ〉!」

マミ「追撃行くわよ! ティロ──」

ほむら「ッ! マミ、危ない!」

マミ「え──きゃあっ!」

杏子「マミ! ちっ、油断しやがって……ぐぁッ!」

ほむら『マミ! 杏子!』

マミ『いたた……ごめんなさい、油断したわ』

杏子『くそッ、よそ見しちまった』

ほむら『まだ戦える?』

マミ『もちろん!』

杏子『ああ。この程度屁でもねえ!』

ほむら『良かった。引き続きお願い!』

さやか「よくも二人を……! 許さない! 〈スパークエッジ〉!」

ワルプルギス「アハハハハハ!!」

──避難所


まどか「ほむらちゃん……みんな……」

QB「彼女達が気になるかい?」

まどか「キュゥべえ……!」

QB「そんなに睨まないでおくれよ。ところでまどか、君は彼女達がワルプルギスの夜を越えられると思うかい?」

まどか「当たり前でしょ。約束してくれた。みんな生きて帰るって……!」

QB「そうか。残念だが、約束は破られることになりそうだね」

まどか「そんな訳ない! みんななら、絶対に勝てるもん……!」ギュッ

QB「彼女は正真正銘最凶の魔女だ。連綿と繰り返されてきた歴史の中で、彼女に挑んだ魔法少女は千をゆうに超える。けれど彼女はそこにいる。この意味が分かるだろう?」

まどか「嘘だよ……みんなは……」

QB「それなら見てみるかい? 彼女達が今どうなっているのか──」キィーン

まどか「ッ!」

──市街地


杏子「ぐぅッ……ち、きしょォ……!」

さやか「げほッ……う、ぐ」

ワルプルギス「アハハ……アッハハハハハハハ!! アハ! アハハハハハハ!!」

マミ「く……魔力、が……」

ほむら「どうして……? 何度やっても、あいつに勝てない……!」

ワルプルギス「アハハ──!」ゴオッ

ほむら「くッ……杏子!」バッ

杏子「お、おい、よせ……!」

ほむら「くぁあッ!」

杏子「ほむら! ……クソ、がァ……!」

ワルプルギス「アハハハハ!」

杏子「があッ……!」

まどか「……嘘、でしょ……こんな……」

QB「事実だよ。何なら直接、その目で見届けるといい」

まどか「……ッ」ダッ

QB「──さて、僕も行こうか。ようやく契約が取れそうだ」


杏子「クソ……起き上がったら、死ぬ気がすんなァ……」ヨロ

さやか「たし、かに……!」フラッ

マミ「もう……あなた達が起き上がったら、私だけ、寝てる訳に……いかない、じゃない……!」ガクガク

ほむら「みんな……動けるなら、逃げて……」

杏子「おいおい……ここまでやって逃げるくらいなら、ハナっから戦わねえっつうの……!」

ほむら「だって、このままじゃ、みんな……死んじゃう……」

杏子「くっく……死体のあたしらに、そんなこと言う……?」

さやか「ちょ、ヤなこと、思い、出させないでよ……!」



「もういい。もういいんだよ、みんな」

さやか「──え」

杏子「バカ、お前、何しに……!」

マミ「だめ、よ……危ないから……逃げ……!」

ほむら「──まど、か」

まどか「……みんな、ごめんね。わたし……魔法少女になる」

さやか「ちょ、まどか、マジやめて……あたしがほむらに殺されちゃう……」

まどか「ごめんね、本当にごめん。でも、お願い、信じて。ほむらちゃんの今までも、そしてこれからも、絶対に無駄にしないから」

QB「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みでも叶えられるだろう」

QB「さあ、鹿目まどか。その魂を対価にして、君は何を願う?」

まどか「わたしの願いは……」

まどか「はあ……ふう……」

まどか「──全ての魔法少女を、いつでも人間に戻れるようにして!」

QB「君の祈りはエントロピーを──は?」



…………

──居酒屋


さやか「──で、ワルプルギスを一撃で倒して、すぐに人間に戻ったんだよね」

杏子「くっく、あの後のキュゥべえっつったら滑稽だったなァ」

ほむら「ふふ。『君のせいで僕は事情の説明でてんてこ舞いだよ! きゅっぷいきゅっぷい』なんて言って、しばらくは現れなかったものね」

さやか「あっはははは! なに今の、似てねえ!」

まどか「もう、さやかちゃん!」

ほむら「いいのよ、似てるって言われる方が嫌だし」

マミ「ちょっと複雑だわ……あ、店員さん、白ワインと、ナッツ盛り合わせ」

ほむら「ハーパーのロック、ダブルで」

さやか「あたしガルフ・ストリーム!」

まどか「えっと、わたしカシスミルク!」

杏子「あたしはまた芋のロックでいいや。あ、あとレバー串五本」

店員さん「ウィス」

ほむら「あ。ごめんなさい、私もレバー串五本で」

杏子「おっ、分かってるじゃねえの」

ほむら「ええ、あなたもね」

マミ「うう、私、内臓はちょっと……」

さやか「おおっと! 好き嫌いはいただけませんねえ、マミさん!」

杏子「さやかだってピーマン食わねえだろ」

さやか「うぐ! い、いや、最近は食べられるし……小さければ……」

杏子「ガキかっつーの」

まどか「うぇひひ……わたしもピーマンは苦手だな……」

さやか「ううっ、同志よ!」

ほむら(……おっきい長ネギが苦手、とは言いづらい雰囲気だわ……)

杏子「ところでマミ、最近魔女の様子はどうだい?」

マミ「ずいぶんと減ってるわ。先週なんて変身すらしてないもの」

さやか「へえ、やっぱまどかのおかげですかねえ」

ほむら「そうでしょうね。すぐに人間に戻れるのだから、インキュベーターも新たに契約は取れないでしょうし」

まどか「わたし、みんなの役に立てたかな……」

ほむら「もちろんだわ。私達どころか、世界中の魔法少女を救ったのよ、あなたは」

まどか「そこまで言われると恥ずかしいよお……うぇひひ」

杏子「しっかしまあ、キュゥべえのやつもよく叶えたよなあ、あんな願い……契約ってのはオートメーションなのかねえ」

さやか「あ、それ気になるかも。確かにキュゥべえにとっては不都合極まりないお願いだもんね」

ほむら「まあ、あいつが苦しむのは愉快ね……ふふ」

まどか「あはは……ほむらちゃん、目が怖いよ……」

さやか「さあて、さてさて……ふふふ、そろそろ頃合いですかァ?」

ほむら「……どうしたのよいきなり」

さやか「そらもうあーた、妙齢のおなごが五人もいて、しかもここはお酒の席……やることは一つでしょー?」

マミ「まさか美樹さん……始めるつもりなのね、あの禁じられた遊戯〈フォービドゥン・ゲーム〉を……」

さやか「そう! 王様ゲームだぁっ!」

ほむあん「……うわぁ」ゲンナリ

まどか(……別に禁じられてないよね……?)

マミ「うふふ……!」ワクワク

ほむら「……でも、このお店割り箸じゃないし、どうやって数字を割り振るつもり?」

さやか「ふっふふふー、さやかちゃんにぬかりはなぁい! 実は百均でトランプを買っておいたのだ」

杏子「てめえ、それで遅れたのかよ……」

さやか「取り出したるは四つのエース、そしてこのジョーカー! ジョーカーを引いたら王! くっふふふ、それじゃあ始めようか、闇のゲームを……!」

ほむまどあん(トランプなんだからキング使えば……)

さやか「よーし、みんな取ったね! 王様だーれだ!」

ほむら「……あら。ジョーカーだわ」

杏子「げえ、一発目からやべえのが引きやがった」

ほむら「どういう意味よ……そうねえ。それじゃ、ダイヤとスペード、次のゲームが終わるまで手を繋いでなさい」

マミ「わっ、私! 私スペードだわ!」

杏子「……くっ、ダイヤだ」

ほむら「……ふふ」

杏子「てめえ、今なんで笑いやがった!」

ほむら「いいえ、なんでもないわ……ふふ」

杏子「だあぁー! おいマミ、さっさと繋いでさっさと終わらすぞ!」ギュッ

マミ「えー、私はこのままでもいいのになあ」ギュ

まどか「うぇひひ、なんだかんだなかよしなんだよね」

さやか「ううう、発案者のあたしを差し置いてえ……! はい! 次々! 王様だーれだ!」

まどか「あ、わたしだ!」

杏子「ああ、今度は安心だ」

ほむら「だからどういう意味よ!」

まどか「うぇひひ。それじゃあ、クローバーさんとスペードさんは飲み物交換ね」

ほむら「クラブだわ」

さやか「げ……ほむらあんた、何飲んでたっけ……」

ほむら「バーボンね」

さやか「……ロックっすよね?」

ほむら「もうほとんど水割りよ。ほら」

さやか「うう……」チビッ

さやか「うへええ……にがからい……まずい……」

ほむら「いろんな人に失礼ね、あなた……んっ」グイッ

さやか「ああ……あたしのカクテルちゃんが一気飲みされた……」

杏子「よし、終わったな? おいマミ、離せ」

マミ「やだ」

杏子「はァ!? てめえ何言って──いってててて痛えよ! 強く握んな! あたしもう人間なんだぞ!?」

マミ「離さないもん……」グビ

杏子「ばっ……アンタ飲み過ぎだよ、な? もうよせって、おい」

マミ「やぁだ」ギュッ

まどか(かわいい)

さやか(かわいい)

杏子「……ほむらァ……!」

ほむら「なんで私に矛先が向くのよ……」

さやか「さ、さーて! 気を取り直して次行きましょー!」

杏子「おい!」

さやか「はい! 行き渡った! 王様だーれだ!」

杏子「てめえ後で覚えとけよ!?」

さやか「っしゃああー! あたし! あたし王様!」

ほむら「あ、店員さん、ボウモアのロックをダブルで。あとこのいちじくチップスを」

杏子「芋ロック……いや、ボトルと氷! あとこのクルクル髪にグレープフルーツジュース!」

マミ「だれがくるくるぱぁよぅ……」

杏子「誰もんな事言ってねえ!!」

まどか「あ、わたしレゲエパンチ」

さやか「ちょいちょーい! 聞いてよ! あたし! 王!」

ほむら「うるさいわね、さっさと命令しなさいよ」

さやか「平民の方が偉そうにすんなー! ハートとダイヤ! 髪型交換!」

ほむら「連続だわ……ダイヤよ。ハートは?」

まどか「わたしクローバーだよ」

杏子「あたしはスペードだな。……って事は」

ほむら「……嘘でしょ」

ほむら「なんでさやかはアイロンなんて持ち歩いてるのよ……!」クルクルーン

まどか「わあ……かわいいよ、ほむらちゃん!」

ほむら「くっ……不公平よマミ、あなたはおろすだけなんて……」

杏子「ま、そりゃしゃーねえだろ。さやかがストレートアイロンも持ってこなかったのを恨むんだね」

さやか「うぷぷぷ」ピロリーン

ほむら「……さやか、その写メをどうするつもりかしら?」

さやか「えー? うぷぷ、そりゃあもちろんSNSに──」

ほむら「晒してみなさい、次はあなたの首が河原に晒されるわよ……!」

さやか「ちょ……待ってマジ待って、ごめん嘘、ほんと嘘、嘘だから首絞めないで出ちゃう……!」

マミ「すう……んん……」

まどか「あれ……マミさん、寝ちゃってる」

杏子「……手、離れねえ……」

マミ「んぅ……えへへ」ギュッ

まどか(かわいい)

さやか(かわいい)

ほむら「はぁ……欠員一人でゲーム終了ね。落ち着いて飲みましょう、いい加減……」クイッ

杏子「……賛成だ」クイッ

まどか「いっぱいはしゃいだもんね……てぃひひ」

さやか「えー、騒ぎ足りないよー!」

杏子「もうてめえは一人でカラオケでも行ってこいよ……」

さやか「ヒトカラはちょっとあたしにはハードル高いよ!?」

まどか「歌うの好きなら楽しいよ?」

さやか「む、まどかはヒトカラ経験済みかー。ほむらは?」

ほむら「好きよ。順番待ちのもどかしさも選曲を間違えて空気が凍ることもなくていいわね」

さやか「へーえ……ん? 選曲を間違える?」

ほむら「ほら、アニソンとか、ね」

さやか「あー、「ネコミミ・モードで~す(はぁと」みたいな?」

ほむら「……どうしてかしらね、冷めかけていた殺意が再燃したわ」

さやか「マジでどうして!?」

ほむら「……ふう。杏子、仕事はどう?」

杏子「ま、ぼちぼちだな。稼ぎらしい稼ぎもほとんどねえ底辺職だが、食う寝るには困らねえし、客の悩みを聞いてやれるってのは思いのほか楽しいもんだ」

ほむら「懺悔室の真似事かしら。ふふ、あなたには天職ね」

さやか「そーいや杏子、あんた料理なんかできるの?」

杏子「まーね。最初はほとんど冷凍食品だったんだが、変わり者の客に教わってね。今じゃそこそこ旨いもん食わす自信があるぜ」

まどか「へー、食べてみたいなあ」

杏子「いつでも来いよ、まどかなら歓迎だ」

知久「へっくしゅ!」

詢子「んー? どーした知久、風邪かい?」

杏子「んで、そういうほむらはどうなんだい?」

ほむら「一応エネルギー開発系の研究職に就く予定なのだけれど、最近はほとんど海外の論文を読み漁ってばかりね。せっかく回復した視力がまた落ちそうよ」

まどか「エネルギー……」

ほむら「……インキュベーターの後継のようで嫌なのだけれど、事実、地球のエネルギーは枯渇しつつある。ゆくゆくは変換ロスのほとんど生じないエネルギー技術を確立させたいのだけれど、それこそ感情を使うでもしないと無理かもね」

杏子「へーえ、なんか考えてることの次元がちげえな」

さやか「ちんぷんかんぷんだぁ……」

マミ「すぅ……んん……」

ほむら「さやかあなた、薬剤師になるんでしょう? そんなんで大丈夫なの?」

さやか「……正直不安なんだよね。ほら、最近はコンビニとかでもさ、あのなんとかいう資格があれば……」

ほむら「登録販売者?」

さやか「そうそれ。それがあれば二、三類の薬は売れる訳じゃない? 調剤薬局の方も飽和気味だし、だんだん薬剤師も必要なくなってるのかなあってね」

ほむら「私は登録販売者に薬の相談はしたくないけれどね。それに調剤併設のドラッグストアなんかは、登録販売者なんかより薬剤師をよっぽど大事にしてくれるはずよ。夢なんでしょう? 頑張りなさい」

さやか「……うん。ありがと、ほむら」

ほむら「あなたが素直だと気味が悪いわ」

さやか「いい話だったのにー!」

さやか「まどかはどーお? 獣医さん」

さやか「まどかはどーお? 獣医さん」

まどか「大変だよぉ。ほら、ちょっと前からペットブームでしょ? 患者さんが増えると求められる能力も高くなっていくし……」

杏子「なんだっけ、口蹄疫とかも流行ったろ? ああいう家畜のなんやかんやも診るのか?」

まどか「ううん、わたしは臨床獣医師だから、小動物とかしか診ないの。そっちは公務員獣医師さんとか産業動物獣医師さんのお仕事なんだ」

杏子「ふうん、そうなのか」

ほむら「まどかがお仕事してるところ、見てみたいわ」

まどか「えーっ、恥ずかしいよぉ」

ほむら「ふふ。そういえば、エイミーは元気?」

まどか「うん! 昨日も一緒に寝たんだぁ」

ほむら「あら。羨ましいわ」

さやか(……どっちがだ!?)

マミ「ん……んぅ?」

杏子「あ、起きた。ほれ、手ぇ離せ」パッ

マミ「んん、寝ちゃってたのね……あら、髪がほどけ……暁美、さん?」

ほむら「……なによ」クルクルーン

マミ「……!」パアァ

ほむら「今日限りよ」

マミ「……そう」シュン

さやか「ところで、マミさんは最近お仕事どうですか?」

マミ「お仕事? そうねえ、最近は雑誌とかより通販サイトのモデルが多いかしら」

ほむら「この間テレビで見たわよ。信じられないくらい緊張してたわね」

マミ「し、しょうがないじゃない! 周りに有名人しかいないのよ?」

さやか「ワルプルギスより緊張しました?」

マミ「……そうね、正直」

杏子「……あたしらにしか伝わんねーたとえだな」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月13日 (月) 18:31:43   ID: izVpbMgn

右派素

2 :  SS好きの774さん   2014年12月15日 (月) 17:22:03   ID: Z5hKcMEY

まだ最近だから頑張って続いてんのかな?…と思ったら未完で過去スレ行きになってるじゃないか!

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