女「あらしのよるに」 (14)

女「こうも寒くては寝られません」

女「ひつじをかぞえます」

女「ひつじがいっびき」

男「ひつじがにひき」

女「貴方はだれですか」

男「おおかみです。 ひつじをたべにきました」

女「食べられたらひつじは減ってしまいます」

男「ひつじが一匹」

女「ひつじが二匹」

男「食べました」

女「食べられた

女「ひつじを数えるのはやめました」

男「それでは食べるものが無くなってしまいます」

女「大きな丸のうえに悩めるひつじが七十億」

男「食べました」

女「これで悩みは無くなりましたね」

男「ハッピーエンドです」

女「ひつじを数えるのはやめました」

男「それでは食べるものが無くなってしまいます」

女「大きな丸のうえに悩めるひつじが七十億」

男「食べました」

女「これで悩みは無くなりましたね」

男「ハッピーエンドです」

女「私もひつじになりたいです」

女「ふわふわのまっしろな毛玉になりたい」

女「あと硬くてつよそうな蹄がほしい」

男「蹄は必要でしょうか」

女「立派な蹄があれば貴方を殴ることも踏むこともできるんですよ」

男「ひつじってこわい」

女「本をよみます」

男「貴方をみます」

女「あらしのよるに」

男「あなたのそばに」

女「おおかみとひつじは友達になれるのでしょうか」

男「無理でしょう」

女「ですよね」

女「今日は散歩をしてきました」

男「血の臭いがします」

女「幼い羊と野蛮な狼がいたもので」

男「なるほど」

女「食べますか」

男「食べましょう

女「静かですね」

男「僕と貴女以外に誰もいません」

女「みんなおおかみがたべてしまいました」

男「それならぼくらは 七十億とふたりきり」

女「寂しくないですね」

男「寂しいです」

女「血の臭いがします」

男「近くに狼の群れがいたもので」

女「共食いですか」

男「共食いです」

女「ひつじよりはおいしそう」

男「おおかみはいいものをたべてますから」

男「たべますか」

女「いんですか」

男女「たべましょう」

女「きょうもあらしは来ませんね」

男「あらしにきてほしいのですか」

女「あらしがくれば 狼と羊は友達になれます」

男「むりでしょう」

女「むりですか」

女「明かりがないと夜はまっくらです」

男「一寸先は闇ですね」

女「闇を抜けたさきに ひかりはありますか? 」

男「闇を抜ければ 闇さえもなくなるだけですよ」

女「おさきまっくら」

男「悩めるひつじになりました」

女「おなかがすきました」

女「ひつじになりたいです」

女「ひつじになれば くさをたべてるだけで しあわせ」

女「もぐもぐ」

男「なにをしてるんですか」

女「人生の苦さをあじわってました」

女「わたしは自由になりたかったのです」

男「とつぜんですね」

女「みんな居なくなったいま わたしはとっても自由です」

男「それはすばらしい」

女「でも 自由はとっても不自由でした」

男「それはなんとも」

女「なんともいえない矛盾です」


女「狼さんはわたしを食べないのですか? 」

男「貴方を食べれば 僕はひとりぼっちになります」

女「そういう意味ではありません」

男「はて どういう意味でしょう」

女「狼はうそつきですね」

男「ひとのころから 言われていました」

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