【禁書】上条「聖杯戦争、か」イリヤ「頼むわよ」【Fate】 (370)

とある魔術の禁書目録×Fate/stay night

コンマとか安価は気が向いたら使います

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409755639

初めに言っておく。

私上条当麻は本日死亡した。

俺は長すぎる入院期間を終えて留年記n…少し遅めの誕生日祝いのために居候三人を連れて焼肉屋に向かっていたはずだった。

その道中、突如として晴れていた空から俺をめがけて雷が降ってきたのだ。

俺も最初は御坂が落としてきたもんだと思って一応インデックスにオティヌスを預けた後右手を空に突き出した。

しかし、その雷は右手に触れても打ち消されることなく、そのまま―――――

―――――俺の脳を焼いた。

痛みはほんの一瞬で、しかしそれは間違いなく致命傷だった。

そして今にも泣きそうな顔のインデックスとオティヌスを見ながら、走馬灯を見る間もなく意識は途絶えた。

「――――――――――――」

薄暗い部屋に一人の少女、そして少女を見守るように二人のメイドが後ろに立っている。

少女が何か唱える毎に、その前方に魔法陣が形成され、より複雑な形を取り、その全てが光を放ちだす。

「―――、――――――――、―――――」

そして、少女が最後の詠唱を終えると同時に、魔法陣の光が部屋全体を包み

「......召喚完了かしら」

光が収まると、そこには一人の少年が立っていた。

「えっと、俺のマスターはお前ってことでいいんだよな?」

「…え?」

少女・イリヤスフィール=フォン=アインツベルンと少年・上条当麻はこうして出会った。

※一応上条さんは聖杯戦争とかの説明を受けてます

「…...セラ、リズ、どういうこと?」

「はい、おそらくですが狂化の具合が低いのかと思われます」

「へー、どうりでバーサーカーっぽくないんだ」

「あのー…」

「あ、そうね。早速だけどあなたのステータスを見させてもらうわ」

「…おう」

クラス バーサーカー
属性 中立・善
筋力 C
耐久 B
敏捷 B+
魔力 E
幸運 E-
法具 A++
保有スキル
狂化 E
直感 B-
心眼(偽) B-
先頭続行 A
法具
幻想殺し A++


「…バーサーカーとしては多少頼りないけど、少し気になるステータスね」

「でも頼りないんですね……」

「そうね…。バーサーカー?」

「どうした、マスター?」

「説明して。幻想殺しという法具について」

なるほど、ステータスには幻想殺しのことまで載ってるのか。

しかも法具として。

「だよな…。その前に、まず魔力で適当に何か作るか物体に通してくれないか?」

生前上条の右手に宿っていた幻想殺しは、触れた異能を問答無用で打ち消すという破格の性能を誇っていた。

とはいえ、世界の基準点であるという性質からか世界規模の異能には対応できないし、だから召喚されているのだが。

更に上条が危惧しているのは、幻想殺しの弱体化。

召喚された以上、この身は人間のそれとは別物である。

霊体に分類されるこの体を幻想殺しがあるにもかかわらず維持できている時点で怪しいのだ。

心当たりはなくもないが、可能性としてはかなり低い。

「分かったわ。これでいいかしら」

そうこう考えているうちに、マスターは積木を差し出した。

積木といってもそれは物理的には絶対に安定しない形を保っていて、明らかに魔力で支えられているのが分かる。

「それでいい。幻想殺しってのはつまりこういうことだ」

上条は右手で積木の一つに触れる。

すると、積木は突然支えを失ったように重力に従って地面に落ちる。

「……今、本当にただ触っただけなの?」

「ああ、この右手自体が異能を打ち消す性質を持った法具だ」

「とんでもない代物ね…。でも聞きたいことはそれだけじゃないの」

「なんだ?」

「あなた、日本人なのよね?生前西洋で何かしたことはあるの?」

そういえば、聞いた話ではここの聖杯戦争では原則西洋の英霊が召喚されるらしいな。

「そうだな…。俺一人じゃ大したことはできなかったし伝説になるほど人目につくようなことはしてないが…」

「互いの信頼を築くためよ。この自白剤を飲んでとりあえず全部言ってみて」

「…分かった。強いて言うなら―――――」
世界三大宗派の一つの実効権を握ってる黒幕の大ボスの暴走を止めるためにぶん殴ったり、世界を滅ぼした魔術師の悩みを聞いて一緒に逃げ回ったりとか(ということを長々と)
「―――――精々そのくらいだな」

「……ごめんなさい。飲ませておいて言うのもなんだけど話のスケールが大きすぎてついていけないわ」

「なんか、ごめんな…」

法具ではなく宝具だと思うのだが

「そういえば、もう一つ忘れていたわ」

「なんだ、マスター?」

「それよ。堅苦しいからイリヤでいいわ」

「イリヤスフィール=フォン=アインツベルン。それが私の名前よ」

「ああ、じゃあ改めてよろしくな、イリヤ」

「ええ、頼むわよバーサーカー」

>>9
すまぬ...すまぬ...

本日の投稿はここまでです


幻想殺しは神秘殺しちゃうしE-のような気が
後筋力Cだとエミヤよりマッチョな事に

>>12
フィアンマが神聖とか言ってたしそうなのではなかろうか
・・・エミヤよりマッチョなのはいけないな
明日あたりまとめなおす

先頭続行……なる程、常に皆の前に立っていたからですね。

上条さん幸運打ち消しているんだから幸運値は表記できないってイメージなんだよなぁ
与えられる幸運もないけど、厄日とかもない。

>>19,21
まーたやっちまった
>>20
何か納得した

!:ステータス情報が訂正されました

クラス バーサーカー
属性 中立・善
筋力 D
耐久 B
敏捷 B+
魔力 E
幸運 E-
宝具 A++
保有スキル
狂化 E
直感 B
心眼(偽) B
戦闘続行 A
宝具
幻想殺し A++

節子、それアルトリアや

上条さんをわざわざ故人にしなくても死ぬまでの記憶を持ったまま全盛期の姿で上条さんが生きてる同じ現代に鯖として召喚出来るって意味でしょ
>>26の言う通り死に様は現代じゃなくて未来の話のつもりで可能性もあるけど

まぁ全盛期が禁書本編の姿だと仮に現代の上条さんと鉢合わせした時エツァリみたいな変装魔術かドッペルゲンガーとかだと思われてややこしくなるけどさ

>>29
そこも後で書くよ
ヒントは「上条当麻」は生きてる

24 名前: ◆LEOri2ofO4QC[saga] 投稿日:2014/09/05(金) 00:10:24.01 ID:+KmaEbAmo
!:ステータス情報が訂正されました

クラス バーサーカー
属性 中立・善
筋力 D
耐久 B
敏捷 C
魔力 E
幸運 E-
宝具 A++
保有スキル
狂化 E
直感 B
心眼(偽) B
戦闘続行 A
宝具
幻想殺し A++

...いい加減続き書くわ

少しだけ投下

「さて、一通り話したし教会に行きましょうか」

「そうだな…って広っ!」

「日本じゃ珍しいらしいけどあなたがそこまで驚くほどなの?」

「珍しいどころじゃないしそもそも日本かどうか疑います!
外なんて雪降ってるし一体全体どうなってんですかイリヤさん!?」

「それは私にも分からないけどここって日本でもかなり寒いのよね。私もこの寒さだけは苦手なの。
あと口調が変になってるよバーサーカー」

「うぐっ...。とにかくまだこの空間はまだ慣れないから早く行こうぜイリヤ」

「うん、そうだね。セラ、リズ、いってきます!」

「イリヤ、いってらっしゃーい」

「いってらっしゃいませ。リーゼリット、またお嬢様をそのような名でお呼びして!
…あとでバーサーカーにもしっかりと叩き込まなければいけませんね」

寒い。下手すりゃ11月中旬のデンマークより寒い。

「ねえ、バーサーカー」

「ん、なんだ?」

「寒いから早く行きましょう。あっち側ににそれなりに暖かい道があるわ」

「お、おう…」

それ少しマシなだけで普通に寒いよな、とは口が裂けてもいえない。

というか女の子の前で弱音を吐くわけににはいかないのだ。

「そういえばバーサーカー。あなた、霊体化しないの?」

「あー、その方が魔力消費は少ないんだったか。よっ…、と?」

「どうしたの?」

「嘘だろ…?右手か!?この右手のせいなのか!?」

「落ち着いてバーサーカー。もしかして…」

「ええ、できませんとも。どうせこの私めにそんな高等な技術は扱えないですよ…」

「ああもう、しっかりしなさい。稀だけどできないサーヴァントだっているの。例えば―――」

「―――肉体が死んでいない状態で召喚された、とか」

「…え?」

ありえるかもしれないと思った。

最初の記憶。

上条当麻が病院で目覚めてあの白いシスターと会った日に、カエル顔の医者に「頭蓋骨をこじ開けてスタンガンでもブチ込んだのかい?」と告げられた。

最後の記憶。

落ちてきた雷の一部が上条当麻の脳に致命的なダメージを与え、考える暇すらなく意識を失った。

前者は例えだが、この二つはよく似ているために、もしかしたら俺は元の世界ではカエル顔の医者の手術を受けていて、運がよければまた記憶が消失するだけで済んでいるのかも―――――

「あ」

記憶が消失している?

つまりそれは、またあの最初の病室が繰り返されるということなのだろうか。

結局、上条は何かの拍子に先代の上条当麻の記憶が蘇ったり、彼と対話したりすることもなく生涯を閉じてしまった。

あらゆる人にまだ返していないものもあったのに、それは呆気なく終わってしまった。

あの訳のわからない奴から聖杯戦争の説明を受けているときも口には出さなかったが、それが本当に悔しかった。

今までは。

しかし、上条当麻は生きている。

その可能性を見出せただけで、少しだけ気が紛れた。

無責任かもしれないが、そいつに恨まれないように俺も頑張らないとな。

「どうしたの、バーサーカー?」

先ほどから黙ってしまった自らのサーヴァントを心配しながらもイリヤは歩く。

召喚時から情緒不安定で、頼りにはなりそうだが少し何かを引きずったような顔をしていた。

それを、先ほどの自分の発言で更に深みに嵌めてしまったのかと思い、心配していた。

でも、

「いや、なんでもねえよ。安心しろ、霊体化できないくらいじゃ俺の生存率は変わらないからな」

少し経って顔を上げたあとの彼の顔は、先ほどまでの曇りが晴れたようであった。

「そう、なら―――」

「イリヤ!」

イリヤの声は、上条の叫びによって阻まれ、その直後にイリヤの後ろで衝突音が響く。

何が起こったのかと後ろを振り向くと、そこには右手で槍の先を辛うじて掴む上条と

「見た目の割には戦い慣れしてるじゃねえか、坊主」

「まあな」

槍を持った全身青タイツの男がいた。

今回はここまで

つまり言いたいのは(旧約一巻から数えて)三代目上条さんがあちらの世界で誕生したということです。
アルトリアさんと違って死の間際に世界と契約するようなこともなかったので二代目の魂は英霊の座にいます。
霊体化できない理由が無理やりですがまあそれは後々回収するかもしれないです

兄貴がネタにされるのはカニファンだけで十分だ!

短いけど今日の投下いってみよー

俺は確かに右手で触れた。

しかし、槍はまだその形を保ったまま未だに右手を押しのけて俺の心臓を突き刺そうと進む。

だが、どういう仕掛けなのか幸い先ほどより押す力は弱くなっている。

それに、打ち消せないのも初めての経験ではない。

この程度でやられているようでは、そもそもこの場所に俺は存在していないはずである。

だから、この状況でどうすればいいかなど決まっている。

「う、おおおおおおおおおおおおおおおお!」

左手で槍の柄を掴み、そのまま

「チッ!」

槍ごと敵を投げ飛ばそうとして、逆に俺が転ばされた。

「一体どうなってやがる。槍の呪いが弱まったかと思えば腕力は全然ときた。
アインツベルンも妙な奴を出してきたみたいだな」

しかし、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。

立ち上がって見れば俺が一番会いたくない奴によく似た表情は消えている。

「槍…ランサーか」

先ほどの攻撃に使われた槍は明らかに宝具。

しかし打ち消しきれない上「呪い」ときた。

ならば恐らくこのランサーは神に近い存在であるはずだ。

神の扱う宝具ならば破壊までにタイムラグがあってもおかしくはない。

さらに、アレだけ触れていたにも関わらず分解しなかったということは相当の代物に違いないのだ。

「そうだ。にしてもオマエは見たところ宝具は持ち合わせてないが…狂化ランクの低いバーサーカーってところか?」

「そういうことだ」

まだ、ランサーは攻撃してこない。

この戦闘狂とも言えるような奴が攻撃してこない理由は果たしてなんなのか。

「テメェ、様子見にでも来たのかよ」

「そういうことだ。本当なら今オマエを討ち取ってもいいが、本当に不本意だ」

「令呪か。全力で戦うなとかそんなところか?」

「そうだが、どっちにしろ槍は修復しないと使い物にならねえ。ここで一時撤退させてもらうが、」

「まだ何かあるってのか」

「いいや。ただ、次会ったら殺す」

それだけ言い残して、ランサーは消えた。

「バーサーカー?」

ランサーとの戦いを終えたあと、バーサーカーは何か悔しそうな顔をしていた。

「いや、叩いた直後に負けると流石の私でも少々悔しいのですよ」

「そこまであっさり負けたようには見えなかったけど…」

「イリヤにはそう見えても俺のハートは割と傷ついてるんです!」

「なら、簡単でもいいから魔力を扱う訓練をしてみたら?」

「......え?」

「そうすればもう少し戦えるんじゃないかな?」

「え、あのイリヤさん?」

「右手のハンデ程度で諦めちゃだめよ!私のサーヴァントなんだからもう少し頼もしくなってくれないと」

「おい…」

まずい。

このままではイリヤのペースに乗せられてしまう。

確かに彼女の言っていることは正論だ。

だが、イリヤは一つ重要なことを知らない。

学園都市で能力開発を受けてしまうと脳の構造が変わり、魔術を扱うことが生命のリスクに繋がってしまうようになることを。

しかし、

「英霊になった時点でそんなこと関係ないのよ!さあ教会にとっとと行って帰ったら早速始めるわよ!」

もはや言い返せない。

言い返す材料が尽きてしまった。

そして上条当麻は、ここでイリヤのペースに逆らうという幻想(きぼう)を持つことを破棄した。

そもそも魔翌力が生じた時点で幻想殺しに吸われて終わりそう

今日はここまで

教会から帰ったら上条さんの特訓編(多分短い)だ!

>>59
私だってオリジナル設定追加は極力避けたいがそうでもしないと上条さん瞬殺されるから...

特訓編の前に少しだけ投下

森の中をしばらく歩き、上条とイリヤは冬木の街に出ていた。

「ねえ、バーサーカーは聖杯に何を願うの?」

「願いか...。俺は幸せになれればなんでもいい」

「……詳しいことは聞かないでおくわ」

「おう…」

そんな会話をしているうちに、二人は教会に辿り着いた。

「イリヤスフィール=フォン=アインツベルン、そしてバーサーカーのサーヴァントか」

「ええ」

「これで4人目か、なるほど面白くなりそうだ」ボソッ

(今笑ったのか?何か気味が悪いな…)

「ほう、あれがアインツベルンの木偶人形、そしてバーサーカーか。…ん?」

「ッ!?」

「どうしたの、バーサーカー?」

「我としたことが雑種ごときに気配を漏らしてしまうとはな」

「いや、なんでもない。用が済んだならさっさと行くぞ」

「え、ええ」

「にしてもアレは…」

「…あの気配のこと?」

「ああ、あの教会には明らかにサーヴァントがいる。恐らくはあの神父もマスターの一人と見ていい」

「あり得るわね…」

「そしてあの神父自体も相当の危険人物だと見ていいだろうな」

「ところで、バーサーカー。特訓のことは忘れてないわよね?」

「あー、おう……」

「まあ特訓と言っても私もそこまで魔術が得意なわけじゃないから心配しなくていいわ」

「それって大丈夫なのかよ」

「心配しないで。教えるのはセラだし」

「どっちにしろ不幸だ…」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「.........」

毎度ながら雑だけどここまでってことで

ギルの扱いはどうしようかな...

幻想殺しを蔵に納めたがるギル

>>71
実を言うと迷いが
というわけで今スレ初のアレを
《直後コンマ》
0~4、ギルは禁書読者
5~9、ただ単に幻想殺しが気になるだけ

よし決まった決まった


宝物庫に既にあるなんということは無かったか

>>76
要するにエクスカリバーと同じようなもんだからな
あくまで現時点での情報から考えたらだけど

とりあえずこれだけ

・幻想殺し
ランク:A++
種別:対魔術宝具
レンジ:1
最大捕捉:1人
上条当麻の生前は全ての異能を問答無用で打ち消す右手であり、全ての魔術師達の怯えと願いが集約したものであり、世界の基準点とされていたが断言するには謎が多すぎた。
宝具としての性能は多少劣化しているが他のサーヴァントもオリジナルの英霊より劣化しているのであまり関係ない。
設定上宝具ではあるが上条当麻の右手首から先の部分と同化しているために原型はないに等しいが…
また、上記のような特徴があるため「約束された勝利の剣」同様「王の財宝」には収蔵されていない。
ランクA+以下の宝具、一小節以下の魔術を打ち消し、更にサーヴァントの強制霊体化(アルトリアなど霊体化できないサーヴァントには適用されない)が可能。ただしクー・フーリンやギルガメッシュなど神性B以上のサーヴァントの強制霊体化、またその宝具を打ち消す場合にはタイムラグが生じるため実質効果はない。
ランクA++以上の宝具による攻撃は打ち消しきれず、一定以上の速度をもつ攻撃、纏められた性質の違う攻撃は打ち消すまでにダメージを受けてしまう。右手首先と体を分断するかランクEXの宝具による攻撃で無効化できるが…

とりあえず投下

「さて、では特訓を始めましょう」

上条の前に立つ者がひとり。

その名はセラ、アインツベルン城、またその主であるイリヤのメイド。

上条からしてみれば短期間だが実質的に同僚となる者である。

とはいえ今は魔術について教えられているわけなのだが。

「まずは、魔術回路についてですが」

一応生前に記憶した魔術ワードは覚えているつもりである。

しかしその中にそのような存在は入っていない。

「魔術…回路?」

「魔術を扱うための擬似神経、とでも言いましょうか。
これがなければ話になりませんが、あなたの場合は特に問題なさそうです。
総数は10本…一般人に毛が生えた程度ですが」

おい、いつ調べたんだ。

「その次に魔術回路の開き方を教えなければなりませんが、既に開いているので問題はないでしょう」

「おい、もう開いてるってどういうことだ?」

「魔術回路は生まれた直後は誰でも閉じています。しかし、個人差こそあれ何かしらのきっかけにより開き、それ以降は閉じることもありません。バーサーカー、あなたの場合はおそらく幾つもの戦いの中で勝手に開いたのでしょう」

「そんなにあっさりと…」

「こちらとしてはその方が好都合です。ですが教える前に特性を調べておく必要があるでしょう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「調べたところ、その右手の干渉力を含めるとあなたに適しているのは強化魔術のようですね」

「強化…肉体に干渉するってことか?」

「それ以外にも方法はあります。例えば…この紙を左手で触ってください」

「…かなり固くなってるな。魔力を通したってことか」

「そういうことです。強化魔術は予備動作を必要としない場合が多いのであなたのような戦法をとるサーヴァントには適しているでしょう」

「つまり、戦闘力の補助か」

「ええ。しかし今日はもう遅いので特訓は明日からとします。あなたの部屋は既に用意してあるのでご安心ください」

「そうか。晩飯の準備とか手伝うぞ?」

「いいえ、しばらくは特訓に専念していてください。
今のあなたを他のサーヴァントと渡り合えるほどに鍛えるには少々手こずりそうですので」

「……分かった。じゃあまた後でな」

何か酷いことを言われた気がするが現に今までも散々痛めつけられてきたのだから仕方がない。

上条はとりあえず部屋を確認するために城を散策することにした。

「バーサーカー、終わったの?」

「ああ、特訓は明日からだとよ」

「そう。ところで、」

あれ、何か嫌な予感がする。

「この城の部屋は全部把握しておきなさいよ。あなただって私に仕えてるんだから」

「…不幸だ」

まあ当たり前といえば当たり前だけど…。

とりあえずここまで

セラの口調が怪しいな...

身体強化は初歩中の初歩だから適性も糞もない様な……

>>86
こまけえこたあ(ry

あー未ブラ面白かった
つーわけで更新はもう少し待ってくださいな

サーヴァントとして白き女王を召喚

少しだけ投下

「じゃ、おやすみ」

「うん、また明日」

俺は、セラに早く寝るようと言われたイリヤと共に部屋に戻ることにした。

俺がもらった部屋はかなり広い。

生前の住居であった学生寮の一室と比べても2倍くらいはある。

というか、ここ自体が城なのでこれでも狭い方なのかもしれないが。

「さて、俺も寝るか……」

「……普通のサーヴァント、ね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「「ふぁああああ…」」

「お嬢様、そろそろ部屋にお戻りになられたほうがいいと思いますが」

「そうね...。バーサーカー、あなたも寝た方がいいんじゃない?欠伸がでてるわよ」

「イリヤ、お前こそ…」

「バーサーカー、あなたは今欠伸をしましたか?」

「ん?それがどうかしたのか?」

「……普通、サーヴァントが睡眠をとることはありません」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上条も、自分が規格外の存在であることは分かっている。

それでも認めたくなかったから、認めてしまったらもう後戻りできない気がしたから、普通と言い聞かせていただけだ。

しかし、今となってはそんなことを考えることもできなくなった。

何せ、俺は完全に普通から外れてしまったのだから。

怖いわけではない。

今までだって散々巻き込まれてきたのだ。

今更どうのこうの言ったところで仕方がない。

だから…

「普通じゃないなら、とびきりの規格外になってやろうじゃねーか」

今日はここまで

...だめだ、駄文が駄文になってる
もう細かいことは修行編のあとでいいか!
>>92
一瞬で終わるような聖杯戦争は書きたくないです、はい

特訓の前にほんの少しだけ投下

『はあ……』

『なんでああなっちゃったんだろうなあ…』

『この漫画の主人公みたいになりたかったのにさ』

「……」

一人の男が部屋の隅で漫画を読んでいた。

彼の名は英雄王ギルガメッシュ。

聖杯戦争のために召喚されたサーヴァントの一体であるが、他のサーヴァントと彼には違う点があった。

彼は今回の第五次聖杯戦争で召喚されたサーヴァントではない。

前回の聖杯戦争終盤に事故で受肉し、そのまま十年をこの世で過ごしてきたのだ。

しかし、今そんなことは問題ではない。

「…あのガキが。こんな雑種のどこに憧れるというのだ」

彼が読んでいる漫画が発行されたのは2007年。

しかし今は2002年である。

うん、ノリで決めてしまった>>72を忘れないうちに回収したかっただけなんだ
特訓編はギャグ成分多めになるはずだから...

鯖強化明けに一本投下

「バーサーカー、覚悟はいいですか?」

「ああ、おかげさまでぐっすり眠れたぜ」

「がんばりなさいよー」

早朝、三人は城の庭に集合していた。

これから始まるのは、情けも容赦もない無慈悲な特訓である。

「セラ、そういえばリズは?」

「リーゼリットには今準備をしてもらっています。そのうち出てくるかと」

「早速嫌な予感が…」

「では、バーサーカー。戦闘時に最も強化を優先するべきなのは体のどの部位ですか?」

「…脚か?」

「正解です。攻撃、回避、撤退...。戦闘の基本ですがその全ては脚にかかっています」

「つまり、最初の特訓は…」

「ええ、魔力による脚力の強化です」

「というわけで、まずは走り込みからです」

「いや、まだ魔力の通し方とか聞いてないこと山ほどあるんですが!?」

「気合でなんとかなるわよ。サーヴァントなんだから」

「いやそういう問題じゃないだろ!?」

「早くしなさいバーサーカー。なんなら頭の中で『速く走りたい』と100回ほど唱えてみなさい」

「そんなもんで大丈夫なのか?」

「暗示の力を舐めてはいけません。身体強化には大体それで十分です」

「なるほどな…」

「では始めますよ。この400mトラックを5周してください」

「いつ引いたんだよ!」

「位置について」

「イリヤ!?どうしたそのバリバリ体育モードの格好は!」

「よーい、ドン!」

「くそ、もうやけくそだああああああああああああ!」

なんというか、平和だ。

「……2分59秒66。時速換算で40㎞ですか」

人間の世界記録よりずっと速い。

魔力を通すことによる効果は絶大だ。

「……もしかしてまだ足りないのか」

「当たり前です。各駅停車の新幹線が200㎞以上出せるのですよ?
せめて音速の半分くらいは出せないと話になりません」

「………」

昨日自分で普通を捨てるといったのだ、もう一々愚痴を言っている暇はない。

イリヤが聖杯を手に入れるまで、どんなサーヴァントからも守らなければいけないのだ。

こんなところでくたばっていては、第二の生をくれた彼女に顔を向けられない。

「分かった。それくらいはどうにかしてやるよ」

「……ど、どれくらいだ?」

3時間後。

そこには1月だというのに汗をかき、肩で呼吸しているサーヴァントがいた。

「サーヴァントって汗かくのね」

「……今のタイムは30秒12。この国で一番早い新幹線より少し遅いくらいです」

「そうか…」

恐らく右手のせいだろうが体内で循環させることのできる魔力に限界があることが分かった。

そして、治癒魔術は使えない。

何故かは知らないがイリヤから送られる魔力は莫大だというのに、これではまるで役に立たない。

「さて、このくらいでいいでしょう」

「……え?」

「音速の半分とか言いましたがアレはあなたがやる気なさそうに見えたので大きく言っただけです」

「………………えっと、つまり」

「走り込みはここまでにしておきます。まだまだやることは沢山ありますので」

「じゃあとりあえず朝ごはんにしましょうか」

「おう、助かる」

結論。

食事が一番燃費がいい。

今日はとりあえずここまで

投稿ペース上げた方がいいのかな...
とりあえず少しだけ投下

「「ごちそうさま」」

朝食が終わると同時に、上条はメモ帳を取り出した。

「バーサーカー、何してるの?」

「セラが作ってる料理をまとめてんだ。俺が作ることになったとき分量までしっかり確認しないといけないしな」

「……にしても慣れてるわね。元の世界でも料理を作ってたの?」

「ああ、ちょうどお前と同じくらいの居候を何か月か養ってたからな……。
ここは冷蔵庫の残りや財布の中身と相談しなくてよさそうで助かったぜ……」

「……苦労してたのね」

正確には後二名いたがあいつらは食費がかからなくてよかったよ、いや本当に。

そうしていると、洗い物を終えてやってきたセラがメモ帳を上条から強奪して、しばらく眺めたあとこう呟いた。

「……あなたはなぜバーサーカーとして召喚されたのですか」

しばらく時間をおいて、特訓はまた始まった。

「次は、そうですね…。天井と壁、走るならどちらがいいですか?」

「何その二択!?でも壁でお願いします!」

「天井ですね。分かりました」

「答えたのにこの仕打ち!セラさんさっきから機嫌が悪くはないですか!?」

上条が先ほどからのセラの言動に頭を抱えていると、一昔前の体操着を着たイリヤが小声で話しかけてきた。

(バーサーカー、今はそっとしてあげたほうがいいよ。多分セラの料理係としてのプライドがかかった問題だから)

(あ、ああ。でも俺にはあの腕は真似できないと思うぞ。洋風の料理とか殆ど作ったことないし)

(そういう問題じゃないと思うんだけど…)

「お嬢様、バーサーカー。早く特訓を始めましょう」

「「ヒッ!?」」

あのセラが満面の笑みでこちらを向いている。

二人の動きを止めるにはそれだけで十分すぎた。

今日はここまで

そろそろ本編時系列に突入します
投下

あれからどのくらい経ったのか。

数日か、それとも数週間か。

とにかく、特訓の合間に三度飯を食って寝て…を何度か繰り返したはずだから一日ということはないだろう。

……とにかく、特訓は終わった。

セラに、リズに、そしてイリヤに鍛えられ、俺はようやく並のサーヴァントと同等かそれ以上の魔力の行使を可能にした。

それにより戦闘能力も確実にあがった。

英霊であるため身体に明確な変化こそないが。

そして、今の俺は何をしているかというと

「…………………………」

「バ、バーサーカー?大丈夫?」

疲れて床にぶっ倒れていた。

「どうせ一晩休めば回復するでしょう。申し訳程度とは言え狂化も作用するでしょうし」

「……そうね。というかそうでないと困るわ。そろそろ動かなきゃ厄介なことになるかもしれない」

「……イリヤ、本当にいいの?バーサーカーに何も話してない」

「……これはバーサーカーには関係のないことよ。余計な口は突っ込ませない」

その顔は、明らかにこれまでバーサーカーに向けていた表情とは違った。

「それでもってことになったら、令呪を使うことになるけど」

「……そう」

憎悪や悲しみ、躊躇いなどの感情の混ざった顔。

しかし、なぜ躊躇っているのかは今の彼女には分からないことだった。

次の朝。

上条は朝食を作っていた。

「お手並み拝見といったところかしら」

「…台所を任せた以上、中途半端な料理では許しません」

「セラ、ピリピリしてると料理が美味しくなくなる」

そして、テーブルで待つ審査員が三人。

「……これでいいのか?思えば洋食とかまともに作ったことないんだよなちくしょう」

とはいえ、そんな初心者丸出しの下手な料理など出せない。

そんなことをしたらセラがリズからハルバードを強奪して襲い掛かってきかねない。

「よし、これで出来上がりっと」

思いのほか時間がかかってしまった。

上条は急ぎつつも丁寧に皿に盛りつけていき、テーブルに運ぶ。

「できたぞ。四人前だ」

一応メニューはセラがずっと作っていた料理からバランスを厳選して考えたものだ。

完全に技を盗めたとは思わないが、自分の舌が正しければできる限り似せたものを作れたはずである。

「ふむ…私の料理を真似ましたか」

「ああ。セラもイリヤのために栄養バランスとか考えてるかもしれないしそれが一番だと思ってな」

「そうですか…」

セラは見極めるように料理を眺めたあと、上条の料理を口にした。

「…………………」

数秒ほどの沈黙。

その雰囲気に美味しそうに食べていたリズとイリヤも少しだけ手を止めた。

「……バーサーカー」

セラが咀嚼を終え、口を開く。

「はっ、なんでございましょうか!?」

その雰囲気に圧倒され、思わず土下座の体勢に移ろうとしてイリヤに止められる。

しかし、その内容は上条が想像していたものとは違った。

「これより、あなたをお嬢様をお守りする同僚として認めます」

「………え?」

「セラ、今までバーサーカーをなんだと思ってたの!?」

「見習い…いや、それ以下です」

「そこまではっきりと!?」

「もう認めたのですから問題はないでしょう。食事を続けましょう」

それでいいのだろうか。いや、納得するしかない。

何と言っても相手はセラなんだから。

「バーサーカー、話があるわ」

朝食の後片付けを終えて部屋に戻ろうとすると、イリヤが待ち構えていた。

その表情は、今までのものとは違う。

「聖杯戦争、か」

「そうよ」

特訓が始まる前、一度だけランサーのサーヴァントと戦った。

いや、あれは戦いとは呼べない。

あのときランサーが帰らなければ、俺は死んでいたはずだ。

だから、ここからが戦いだ。

「でも、それとは少し違うの。バーサーカーに連れてきてほしい人がいる」

「え?」

少し違う?もう戦争は始まろうとしているのに、そんな野暮用を済ませる暇があるのか。

「絶対に生きて連れてきて。抵抗するようなら多少は怪我をさせてもいいけど」

「おい、ちょっと待てよ」

いや、それよりも何かおかしい。

イリヤの言ったことは、つまり...。

「下手すれば聖杯戦争と無関係かもしれないそいつを生け捕りしろってことか?」

イリヤがそいつに何の用があるのかは知らない。

場合によっては令呪に干渉してでも止める必要があるかもしれないが、それ以上に。

「それじゃ、聖杯戦争のルール違反じゃねえのか」

監督役にルール違反と見なされれば、最悪の場合他の参加サーヴァントから袋叩きに遭う。

そんなことになれば、当然聖杯どころではなくなるのだ。

「なら、そうならないように気をつければいいだけ。それと、このことはバーサーカーには関係ないことだから」

しかし、イリヤは気にも留めない。

そして、イリヤは付け足すようにこう言った。

「逆らうなら令呪を使ってでも従わせるわ。あなたの仕事は簡単なんだから、手間をかけさせないで」

その表情はとても冷たい。

今日の投下分はここまで

最後に一つだけ
・士郎の襲撃方法
《安価↓三》

あと今更だけど
・戦争中の上条さんの服装
《安価↓三》
・戦闘・移動中のイリヤの移動手段(移動要塞ヘラクレスいないから代役)
《安価↓六》

見た目幼女を肩車してダッシュする黒スーツの上条さん...絶対通報されるよな
でも安価は絶対だしなあ
・イリヤの移動手段out森
《安価↓三》

HFの麻婆スタイルか
了解した

しかし上条さんが黒スーツ着るともうそっちの人にしか見えないな

投下します

夕方、二人は森を猛スピードで駆け抜けていた。

いや、正確には上条がイリヤを肩車して走っていた。

(分からねえ)

上条は走りながらイリヤの言動について考えていた。

しかし、反論はできない。

あれでもイリヤはマスターとして一流以上だ。

幻想殺しでの干渉もどこまで通用するかは分からない。

だから、今俺が自分の意志でできることは

「なあ、イリヤ」

「なに、バーサーカー?」

「回収が終わったら、そいつについて詳しく聞かせてもらうぞ」

「……ええ、分かったわ」

せいぜいこの程度だ。

冬木市内に出たので、任務の内容を再確認する。

対象の氏名は衛宮士郎。

冬木市内の高校に通っていて、半人前ではあるが魔術師である男。

そして、襲撃方法は

(直接殴って回収か…リスクが大きすぎやしないか)

イリヤは既に手を打ったと言っていたが、聖杯戦争が始まろうとしているこの街でそんな目立つ行動をとれば真っ先に他のサーヴァントの餌食になる。

今は万全だが、まともな戦闘手段を持たない二人を庇いながら戦闘するのは極めて困難だ。

それに、

「なあ、本当にこの格好で大丈夫なのか?」

「......そうはいっても学ランよりはマシだと思うわよ?」

今俺が来ているのは黒スーツだ。

これで闇に紛れる分にはいいのだが、夕方にこれでは上条の顔も合わせて明らかに怪しい。

というか黒スーツの男と彼の肩にも背の届かない少女が一緒に歩いている時点で怪しいどころの騒ぎではなく確実に通報モノである。

(…というか、わざわざこれまでつける必要あったのか?)

そして、さらに上条を怪しくするアイテムがもう一つあった。

自分の魔術を簡単に打ち消さないように右手に(そして不自然なので左手にも)嵌めた黒い手袋だ。

これでは他の聖杯戦争参加者に幻想殺しの存在をアピールようなものなのだが、イリヤ曰く大丈夫らしい。

「……暗くなるまでまだ時間があるな。もう待機しておくか?」

「そうね…前回は碌に回れなかったし今のうちに冬木の街を把握しておいた方がいいと思うわよ」

「おう」

二人が街を一周して元の場所に戻ってくるまでに、大した時間はかからなかった。

だが、既に太陽は沈んでいる。

それが意味することとは、つまり

「…………どこかでもう始めてるな」

「...............そうね」

二人の近くで戦いが起こっている。

空気の異常な重さがそれを物語っている。

このまま作戦を実行すれば、対象を回収する前に戦うこととなるだろう。

「イリヤ」

「ええ」

それでも、実行しなければならない。

明日になれば状況が好転するかもしれないが、逆に最悪の状況に陥るかもしれないのだ。

だから、今しかない。

そう思っていた時だった。

「………戦いが終わった?」

恐らくどちらかが倒れたわけではない。

新たな獲物を見つけたためにどちらかが離脱したのだ。

「一体全体どうなってやがる…」

「……バーサーカー、敵がいなくなった。待機場所に移るわよ」

「……………そうだな」

しかし、嫌な汗は止まらない。

日付が変わる前だろうか。

俺達は敢えて回り道をして対象の家に向かった。

そこは和風の屋敷だった。

一見すれば何もないかのように見えたが、足を踏み入れると同時に警報装置が一瞬だけ鳴った。

しかし、それだけ。

「……やっぱりね。ここにはまともな結界は張られていなかったらしいわ」

作戦は、警報が鳴り出てきた対象を回収する、というもの。

しかし、誰も出てきやしない。

結界が破壊されたことを警戒しているのか、それとも何か別の理由があったのか。

「仕方ないわ、隠れましょう。どのみち引っ張り出すんだから」

嫌な汗が拭えないまま、とりあえず土蔵の奥に忍び込んだ。

「ッ!?」

空気が変わった。

それはこの屋敷で戦闘が始まったと知らせる。

しかし今度はサーヴァント同士ではない。

人間が一方的に押されている。

つまり、それが意味することとは

「……どうする、イリヤ」

「……出て行って、あのサーヴァントを止められる?」

対象の死。

しかし、俺は無関係な奴が死ぬのを黙って眺めているわけにはいかない。

だから、躊躇しているわけにはいかない。

そう思って動こうとしたとき、強引に土蔵の扉が開かれた。

「チィ、男だったらシャンと立ってろ......!」

そして、聞こえてきたのはいつか敗北したサーヴァントの声。

(ランサーだと!?)

質が悪いどころの騒ぎではない。

奴が持っている槍は神の呪いそのものだ。

交戦すればほぼ確実に対象は犠牲になる。

その男を相手にして今まで持ちこたえただけで半人前という蔑称を疑いたくなるような実績である。

「そら、これで終いだ―――!」

そして、ほぼ同時にポスターを持った対象と槍を構えたランサーが土蔵に入ってきた。

「こ――――のぉぉおおおおお!」

対象はおそらく強化されたポスターを広げて槍から身を守るが、槍の衝撃で体を壁まで吹き飛ばされる。

ランサーが何か話している。

おそらく、このチャンスを逃せば対象は確実に殺される。

「ふざけるな、俺は――――」

だから、俺はイリヤの制止を振り払い二人の前に出ていこうとして

「え―――――?」

「なに………!?」

「なっ!?」

その瞬間に立ち会った。

今日はここまで

やっとこさ合流

やっぱり文章酷いな...
でも地の文消すわけにはいかないし

今回からが本編

投下

対象の胸を貫こうとする槍が軌道を大きく逸らされる。

その原因をつくった者は、すぐに姿を現した。

華奢な身体と釣り合いのとれない鎧を着た少女……恐らくは対象が召喚したサーヴァントだ。

だが、その身のみで槍をどうこうしたようには見えず、さらに先ほど聞こえたのは金属音。

それなのに、肝心の少女の獲物が見当たらない。

どこかに隠しているのか、実は腕が宝具なのか……とか無駄な憶測を広げていた。

そう、今そんなことは問題ではない。

「どう、バーサーカー?これでシロウは聖杯戦争の関係者よ?」

「………畜生」

これで、イリヤの計画に反対するための材料は尽きてしまった。

しかし、それは同時に計画の難易度が跳ね上がったことをも意味する。

あの槍を召喚直後の一瞬の判断で弾くなど、並のサーヴァントに成せる業ではない。

今首を突っ込めば、並以上の、下手をすれば最強クラスのサーヴァント二人と戦うこととなる。

この数週間で魔力の通し方をなんとか身に着けた俺では、右手で触れる間もなく圧倒されるだろう。

だから、計画を実行するためには最低でもセイバーとランサーが土蔵から出てくれることが条件なのだが、

「――――――――――」

そのときはあっさりと訪れた。

少女は、自ら土蔵の外へ追い出したランサーをいつの間にか手にした不可視の獲物と共に狩りに出た。

対象は少女を追おうとして立ち止まった。

回収するなら、今しかない。

「イリヤ、行くぞ」

「ええ」

衛宮士郎は少女と男の戦闘を眺めていることしかできなかった。

それは、恐怖で体が動かなかったからではない。

二人が、互角のせめぎ合いを繰り広げているからだ。

自分を二度も死の淵に追いやろうとした男を少女は殆ど一方的に押している。

その光景に魅入っていたからこそ、後ろから来る気配に気付くことができなかった。

出来たとして、

「がっ……!?」

今の士郎に、自身の反応速度より速く的確に急所を突くような攻撃を避けられたわけではないが。

(何が…起きて…)

先ほどと違い、直接的に殺す攻撃ではなかった。

それに殺気が感じられない。

そのことを僅かながら疑問に思いながらも、衛宮士郎の意識は確実に沈んでいった。

「マスター!」

少女、セイバーのサーヴァントが異変に気付いた頃には、彼女のマスターは既に意識を刈り取られていた。

その背後にいるのは一人......いや二人だ。

彼女が土蔵から離れていたとはいえ、気づくまでにその作業を終わらせていたとなれば、

「アサシン、といったところですか」

「違うな、そいつはバーサーカーだ」

後ろにいたランサーの声がする。

それと同時に、彼女は自分が敵を一瞬でも意識の外に置いてしまったことを恥じた。

しかし、ランサーの意識は既に半分以上バーサーカーといわれた男に向いている。

「よお。久しぶりだな、クソガキ」

言うや否や、ランサーは動いた。

セイバーもマスターを取り返すために剣を構えバーサーカーに突進する。

何故か大人しいのが引っかかるが、バーサーカーは理性と引き換えに強力な戦闘能力を手に入れたサーヴァントだ。

いくら三騎士の一角といえど、一人で突っ込んでいくのは無謀すぎる。

もっとも、ランサーの矛先が完全にバーサーカーに向いていなければセイバーの行動も無謀そのものだが。

少女の持つ不可視の刃とランサーの魔槍がほぼ同時に襲い掛かる。

「ちっ!」

それを上条はギリギリの位置で避け、士郎とイリヤの手を持ち壁を蹴り二人の間から土蔵を脱出した。

「逃がすか!」

少女がマスターを奪われまいと刃を振るう。

それを避けつつ、屋敷からの脱出方法を模索する。

少女とランサーの攻撃に対して、こちらには回避以外の選択肢がない。

ランサーにはばれているかもしれないが、幻想殺しの存在はできるだけ隠しておくべきだ。

もしかすると装備のおかげで案外誤解を招いているかもしれない。

そう考えつつも、上条はギリギリの位置で的確に二人の攻撃を躱し続ける。

しかし、それがやっとである。

それでも無理やり脱出するとしたらその方法は

「イリヤ、そいつの腕にしっかり掴まってろ」

「分かった。それでどうするつもり?」

「どうするもこうするも……もうこれしかないだろ!?」

その悲鳴にも似た叫びを合図に、二人の獲物から先ほどより魔力を持った一撃が繰り出され、

それが交差する直前に、上条は脚に魔力を集中させて屋敷の外に飛んだ。

赤い。

そんな第一印象を抱かせるような少女とそのサーヴァントは屋敷の周りを走っていた。

「凛、どうするつもりだ」

「どうするもこうするも、サーヴァントが三体もドンパチやってるところに正面から乗り込めるわけないでしょ!」

「それもそうだ。しかしそれではランサーを放置することになるが」

「多分、そのうち一体は衛宮君が召喚したんだと思う」

「なぜそう言い切れる。そもそも魔術師が学校に君とあと一人しかいないと言っていたのは君だろう」

「ランサーがやっていることは癪だけど理に適っているわ。
それを止めようとわざわざ屋敷に飛び込むようなお人よしがいるわけない。
なら、衛宮君が召喚したとしか考えられないのよ」

「なるほど、理屈はあっている。だがそれではもう一体の存在について説明がつかないが」

「知らないわよ。サーヴァントが二体いたからチャンスだとか思って乗り込んでいった馬鹿でもいるんじゃない?」

「そうか……」

二人は走る。

今も戦闘は続いている。

勘付かれないように気配を消しながら、乗り込む頃合いを見計らっている。

そのときだった。

屋敷からこちらに向かってくる気配がある。

「………凛!」

「ええ、一匹だけよ。この場で倒して、アーチャー!」

アーチャーのサーヴァントは両手に剣を持ち、気配のする方へ高く飛ぶ。

自分の仕事は逃げようとする鼠を一匹斬るだけ。

そう思っていたからこそ、敵―――その腕にぶら下がっている少年とさらにその腕に掴まっている少女を見た瞬間、アーチャーは一瞬だけ動きを止めてしまった。

そして、アーチャーが待ち構えていたのは飛んでいる敵の軌道上。

斬るには最適、しかし棒立ちするには最悪の位置だった。

結果。

どうにか二本の剣を交差させることで威力を減らそうとしたが、完全には殺しきれずに屋根を一つ越えた先の道に落下した。

「アーチャー!」

凛と呼ばれていた少女はすぐに追いついた。

「ああ、少し不意を突かれただけだ。問題はない」

アーチャーは既に立ち上がっていた。目立った傷はない。

「敵は?」

「ああ、私に体当たりをした後すぐに逃げ出した」

「ならぼさっと突っ立ってないで追いなさい!」

「落ち着け凛、私のクラスを忘れたか?」

そういうと、アーチャーは屋根に飛び移り弓と剣を取り出した。

「……どうするつもりよ」

凛は自分のサーヴァントを疑った。

普通、弓を取り出したなら次に出てくるのは矢である。

アーチャーはそんな凛を傍目に取り出した剣を矢として放つために圧縮し

「I am the bone of my sword.」

奇妙な一節を唱えた。

「『偽・螺旋剣』」

そして、その一言とともに矢と化した剣が放たれる。

それから僅かばかり時間が経ったとき、赤いサーヴァントは標的に向けてこう言い放った。

「『壊れた幻想』」

同時刻、標的はその動きを止めた。

さて、三騎士全員を敵に回してしまった上条当麻とイリヤスフィールはどうするのか?
次回に続く!

投下

「イリヤ、さっき踏んだ奴ってサーヴァントだよな」

「ええ、追いかけてこないうちに森まで逃げましょう」

上条は、イリヤと気を失った士郎を連れて逃走を続けていた。

イリヤを左腕で抱え、さらにその手で士郎の右腕を掴むという荒業。

イリヤには舌を噛まないように喋るなと告げ、上条も黙って走っていた。

楽なんだかどうなんだか分からない体勢だが、いざというときに右手が塞がっていたらどうにもならないのだ。

ともあれ、今の上条なら森までは五分もかからないだろう。

実際、上条もどこかでそんな油断をしていた。

しかし、現実とはいつだって非情なのである。

「.........!」

それは、自分の背後から危険が迫っているという警告。

そして生前の経験から、上条は振り向くよりも前に右手を背に向けた。

そして、その一瞬の動作とほぼ同時に、剣が着弾寸前で破裂した。

「チッ!」

破裂した剣はその魔力で上条たちを殺そうと襲い掛かる。

そして、上条が右手に着けた手袋を破り、内部に到達した瞬間に――――――

その猛威は甲高い音を響かせ、消滅した。

「アーチャー、どういうことよ」

凛は怒りの表情を浮かべて自らのサーヴァントを睨み付けた。

「君が倒せといったのだろう」

「衛宮君がいるなら話は別よ!あれじゃ確実に巻き込まれてるわよ……」

敵を倒そうとして、助けようとしていた人間まで殺してしまっては元も子もない。

「ああ、それだがな。どうやら通用しなかったらしい」

「―――え?」

訳が分からない。

「壊れた幻想」とは宝具を破裂させ放出した魔力で相手を負傷させる反則技だ。

見たところあのサーヴァントは大した宝具を持ち合わせていなかったし、魔術に長けているキャスターがあのような行動を起こすとも考えにくい。

「一体どうやって......」

「さあな、ただ奴は私が放つ直前に右腕をこちらに向けていた」

「どういうことよ……」

何もかもが凛の想像力を超えてしまっていた。

「つまりは、そういうことか」

「ランサー!」

「貴様、何のつもりだ」

いつの間にか、ランサーが凛の隣に立っていた。

凛とアーチャーは注意を怠っていたことを後悔しつつ警戒するが、当のランサーからは殺気が感じられない。

「安心しな。俺のマスターは殺さず生きて帰ってこいと抜かしやがるからな、今日はこの辺で引かせてもらう」

しかし、その言葉と同時にランサーから膨大な殺気が放たれる。

「ま、あのクソガキは別だがな」

そう言い残し、ランサーは走り去っていった。

その標的は、今も逃走を続ける上条当麻。

上条は途中妨害を受けながらも走り続けていた。

数週間の訓練は伊達ではない。

道でない道を通り、ついに森に辿り着いたとき、上条は再び脳内で鳴らされる警告を聞いた。

このまま走れば死ぬ。

その知らせに従い、上条は止まる。

そして、その瞬間見覚えのある槍が目の前に突き刺さった。

「チッ!」

すぐに後ろに飛びのけると、どこからかランサーが降りてきて槍を手にとる。

「よお、クソガキ」

「……こんなところまでわざわざ何の用、ランサー?」

「忘れたとは言わせねえ。次会ったら殺す、そう言ったはずだ」

途端、空気の重さが変わった。

ランサーの持つ魔槍を軸として魔力が渦巻いていく。

そして上条の直感はこう告げた、あの攻撃を受ければ確実に死ぬと。

だから、上条は動こうとしなかった。

「……じゃあな。その心臓、貰い受ける――――!」

そして、ランサーは動いた。

「―――――『刺し穿つ」

宝具の力を解放させるための詠唱。

これが完了すれば、そばを離れない上条は確実に殺される。

つまり、それが意味することとは。

「死棘の槍』―――――」

「う、おおおおおおおおおおおおおおおお!」

ランサーが詠唱を終えるのと、上条が魔力を暴発させ上空に脱出したのはほぼ同時だった。

今日の投下終了

最後にご協力ください
・セイバーがしょうぶをしかけてきた!
《直後コンマ》
1~3、着地したらランサーと同じところに
4~6、森で道に迷ってる騎士王とエンカウント
7~9、上空に脱出したところを見つかる
0、約束された勝利の剣

続きはもう少し待っとくれ...

あんまり期間空けるのもまずいので一旦投下

セイバーは森をひたすら駆け抜けていた。

しかし、その表情には若干の焦りが見え、それはマスターが奪われた焦燥感によるものだけではなかった。

(……ランサーを追って森に入ってしまったのが迂闊でした)

セイバーは道を見失ってしまった。

敵とランサーがこの中に入っていったのは確かだが、これでは奪い返すことはおろか見つけ出すこともできない。

(それにしても、あの少女は一体何だったのでしょうか)

セイバーはつい先ほど、屋敷の塀を飛び越えた後のことを思い出していた。

そこにいたのは赤い少女と赤いサーヴァントだった。

敵の罠かと思ったが、焦るまいと少しだけ会話を交わした。

どうやら少女の方はマスターのことを多少は知っていたらしく、しかし魔術師であることは知らなかったらしい。

少女はマスター救出の際こちらに手を貸すと言っていたが、まだ信用はできなかったので断っておいた。

……もっとも、今も少し後ろを尾行されているが。

(ともかく、早く撒いてしまいましょう。これ以上迷っていてはマスターの身が危ない)

そう思っていた時だった。

(……近い)

近くで先ほどの敵が行動している。

というより、敵がこちらの方に猛スピードで近づいてきていた。

恐らくだが、敵はこちらの存在に気付いていない。

そして幸い、その近くには敵を追っていたランサーはいないらしい。

つまり、今がマスターを奪い返す最高かつ恐らく最後の機会。

ならば、とる方法は一つだけ。

そこに言葉は必要なく、ただ、剣を振るえばいい。

間一髪。

その僅かな誤差でランサーの魔槍を逃れた上条は、森の上で逃走を続けていた。

「バーサーカー」

「なんだ?」

そのとき、落ちないように肩車しているイリヤが話しかけてきた。

「さっきランサーが使ってた宝具はゲイ・ボルク…...。これがどういうことか分かるわね?」

「ああ、つまりあのランサーはアイルランドの大英雄様だったってわけか。……厄介にもほどがあるぞ」

聖杯から与えられた知識によれば、ゲイ・ボルクを使うケルトの大英雄、その真名はクー・フーリン。

ならばあの槍を幻想殺しで即座に打ち消せなかったのも納得できる。

あのときランサーが真名解放していれば不意を突かれた必殺の一撃に成す術もなく消滅していたに違いない。

そんなことを考えているときだった。

「う、ぐ、」

「......なあ、イリヤ。俺はこいつに右手で触れた覚えはないんだが」

「……どう考えても効きが切れるのが早すぎるわ」

上条が左手でなんとか掴んでいる衛宮士郎が目を覚ましかけている。

それはつまり、イリヤが逃走前に士郎に掛けた睡眠の魔術の効果が切れた証拠。

その魔術は難解で、掛けられた本人は抵抗できないことから強力である上にイリヤの膨大な魔力で効果を24時間まで延長させた悪夢のような代物。

それが上条の右手なしで解除されるなど本来あり得ない。

「……!?真正面にサーヴァント!」

そのとき、上条はその膨大な魔力の持ち主を観測した。

そして、その直後、

「ッ!?」

前方10mの地点を中心に円を描くように斬撃が走り、その範囲の森が消滅した。

ひとまずここまで
アヴァロンさんには仕事してもらいました

......別に禁書三期なくて落ち込んでたわけではないのだよ?

一部訂正が
兄貴戦一回目は真名解放なんてしてなかったですね
動く描写はミスですすみません

始まるよ!(ネコアルク並のコール)

衛宮士郎は、急に夢から連れ戻されたかのように目を覚ました。

(……ここは、どこだ?)

まだ記憶は少しぼやけているが、感覚は戻ってきている。

見えるのは一面の森。

衛宮士郎は、その上にいた。

右手を堅く握られている感覚を覚えて、士郎は右手の方を向く。

そこにいたのは、二人の少年と少女。

それで士郎はようやく理解した、意識を刈り取られた後にこの二人に連れ去られたということを。

人外二人が戦っていたあの場から逃げ出しているということは、少年か少女、どちらかは人ではないのだろう。

これだけでも焦らざるを得ない状況だが、打開策が見つからない今はとにかく冷静に考えるしかない。

そう思っていた時だった。

「真正面にサ―ヴァ――!」

少年の方が叫び、呼応するかのように森がの一部が消滅した。

目の前で起こったことの意味を考えるより早く、士郎の目に一つの人影が飛び込んできた。

上条は自分の認識の甘さを悔いた。

突然の事態に驚愕し、思わず左手の拘束を解いてしまったのだ。

そして、その隙に衛宮士郎は脱出した。

「戦いから逃げるか、バーサーカーの名が泣くぞ」

「あの状況でまともにぶつかっても勝てる気がしなかった、それだけだ」

そして、再び回収するのは困難だ。

今度は、彼のサーヴァントが絶対の壁として上条たちの前に立ち塞がる。

神の力を持つサーヴァントに挑んでもなお優勢を保った規格外の少女。

その右手に触れたものなら、神の奇跡さえも殺してみせる少年。

それは互角の戦いのようにみえて、しかしそこには明確すぎる差が存在していた。

「なんせ、セイバー相手じゃ分が悪すぎるからな」

「この獲物が剣とも限らないぞ」

「さあな。ただの勘だが、俺だってランサーやアーチャーとは戦ってる。
それにランサーと渡り合える実力があるってのなら、ある程度の絞り込みはできる」

三騎士。

人外揃いのサーヴァントの中でもより優れたクラス、セイバー、アーチャー、ランサーを指す言葉であり、そのクラスで呼ばれたサーヴァントの実績は例外なく高い。

「そうか、なら――――――」

セイバーが不可視の剣を構える。

それと同時に放たれる明確な殺意が、戦闘開始の合図となった。

衛宮士郎は、何とかセイバーの後ろに転がり込んだ。

自分より小さな少女を戦わせるのは気が引けるが、今はそれどころではない。

これから始まるのは、人外同士の殺し合い。

その存在に一度殺され、更にもう一度殺されかけた俺では足手纏いになるだけだ。

そして、

「何日かぶりかしら、シロウ」

相手の少年の後ろにいる少女。

顔を見てようやく思い出したが、彼女とは何日か前に一度会っている。

それはつまり、俺が連れ去られるのは前から計画されていたということだ。

その少女は何故か俺の名前を知っていて、恐らくは俺が魔術師であるということも分かっているだろう。

そして、そんなことがどうでもよくなるくらい、その少女はただただ俺に笑顔を向けていた。

どこか懐かしさを感じるような、それでいて何か恐ろしいモノが隠れている笑顔を。

衛宮士郎は、何とかセイバーの後ろに転がり込んだ。

自分より小さな少女を戦わせるのは気が引けるが、今はそれどころではない。

これから始まるのは、人外同士の殺し合い。

その存在に一度殺され、更にもう一度殺されかけた俺では足手纏いになるだけだ。

そして、

「何日かぶりかしら、シロウ」

相手の少年の後ろにいる少女。

顔を見てようやく思い出したが、彼女とは何日か前に一度会っている。

それはつまり、俺が連れ去られるのは前から計画されていたということだ。

その少女は何故か俺の名前を知っていて、恐らくは俺が魔術師であるということも分かっているだろう。

そして、そんなことがどうでもよくなるくらい、その少女はただただ俺に笑顔を向けていた。

どこか懐かしさを感じるような、それでいて何か恐ろしいモノが隠れている笑顔を。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ランサーはマスターのいる教会に戻っていた。

「……どういうことだ、言峰。手加減は一度目だけだったはずだ」

「事情が変わった。それだけだ」

彼の名は言峰綺礼。

魔術協会から派遣された今次の聖杯戦争の監督役。

そして、影でそのルールから離反して聖杯戦争に参加するランサーのマスター。

そして、

「キャンキャンとうるさいぞ、雑種。アレは我の獲物だ、貴様に殺させるわけにはいかん」

「チッ」

前次の聖杯戦争で不慮の事故から受肉した、元アーチャーのサーヴァント、ギルガメッシュのマスター。

「そういうことだ。今後バーサーカーを殺すことは禁じる」

「……勝手にしやがれ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はここまで

そろそろステータス更新するか...

!:ステータス情報が更新されました

宝具
・幻想殺し
ランク:A++
種別:対魔術宝具
レンジ:1
最大捕捉:1人
上条当麻の生前は全ての異能を問答無用で打ち消す右手であり、全ての魔術師達の怯えと願いが集約したものであり、世界の基準点とされていたが断言するには謎が多すぎた。
この世界では「とある魔術の禁書目録」が刊行されていないため知名度は皆無であり、幻想殺しの性能も劣化している。
ただし、漫画版「とある魔術の禁書目録」自体は「王の財宝」に収蔵されているため将来何らかの形で書籍されるのは確かだ。
宝具ではあるが上条当麻の右手首から先の部分と同化しているために原型はないに等しい。
また、上記のような特徴があるため「約束された勝利の剣」同様「王の財宝」には収蔵されていない。
対魔力Aに相当し、ランクB未満の宝具の破壊、ランクA以下の宝具を使用した攻撃の無効化、サーヴァントの強制霊体化も可能。
ただし神性を持つサーヴァントやその宝具、魔術に干渉する場合はランクが高くなるほど大きな時間差が生じるため相性が悪い。

あと>>38に何か更新事項あるだろうか

この上条さん、右腕千切れたら龍王の顎発動しそうだな

>>195
しそうもなにもするんだけどね
......いやネタバレってほどじゃないでしょ?

さて、楽しみにしてるようですが竜王はもうちょっと先っつーことで

始めるよー

衝突は一度たりともない。

セイバーが的確に不可視の剣を振るい、それをバーサーカーが見切って躱す。

ただひたすら、その繰り返しだった。

それはまるで、バーサーカーがセイバーに対して有効な戦闘手段を持ち合わせていないかのように思えてしまい、

さらに、それすらも敵の罠であるかのように見えるほどバーサーカーは正確かつ無駄のない動きをしていた。

しかし、士郎が気を失う前に僅かに感じたのは人肌の感触だった。

武器を持たずに戦うスタイルなのかもしれないが、それにしても逃げることに徹しすぎている。

どこかに誘い込むわけでもなく、時間稼ぎをしているようにも見えない。

もし、罠だとすれば敵はまともな人間とも思えない。

こんな人外の化け物をそこまで計算して操っている時点で自分より格上の魔術師であることはほぼ確定している。

そして、信じたくはないが恐らくは目の前の少女がそれにあてはまるのだろう。

その証拠に、いつの間にか自分の手に浮かんでいた刻印が彼女の体にも見られた。

先日は痣だと思っていたが、召喚後はよりはっきりとした形が見られる。

この刻印が単に召喚した証であるだけなのか、他に何か意味があるのか、士郎には分からない。

「……戦う気はないのですか」

「ないな。元より争いは嫌いなんだよ」

「自分から種を蒔いたのでしょう。ならこの戦いはあなたの自業自得だ」

「……やっぱりそうなるよな」

火花を散らさない戦闘は今も続いていた。

最初は様子見程度だったセイバーも斬撃に込める魔力を次第に上げていき、今では屋敷での戦闘よりも精密かつ隙のない攻撃を放っていた。

それを、上条は右手を使わずにそれを勘付かれないよう躱し続ける。

どちらが有利でも不利でもないまま、状況は全く変わらなかった。

だが、

「……ッ!?」

「マスター、避けてください!」

「シロウ!」

「こ―――――のっ!」

それはこの二人だけが戦闘に参加していた場合の話である。

「アーチャー、当たったかしら」

「ああ、外しはしなかったが……」

木の上で弓を構えるアーチャーと、その下から様子を見る凛。

二人は先ほどまでセイバーを追っていたのだが、彼女が標的を確認し戦闘を始めたため勘付かれないよう観察していた。

状況が全く変わらないことに凛が苛立ちを見せはじめたので、アーチャーはそれを狙ってあろうことか衛宮士郎に向かって剣を放った。

凛は標的を狙いセイバーの援護をするものだと思い、それを止めなかった。

結果、アーチャーの思惑は外れ、凛の考えた通りとなった。

「何よ、まさかまた壊されたっていうの?」

剣から士郎を庇ったのはセイバーではなく標的であり、

「いや、今度は即座に叩き落とした。破壊はできなかったようだ」

「……ますます訳が分からないわ」

正直、上条の取った行動は極めて危険だった。

セイバーが一瞬動きを止めてくれたからこそ敵に背を向けていられるのであり、
そうでなければ今頃上条は下半身に永遠の別れを告げることとなっていただろう。

「……何のつもりだ、バーサーカー」

「どうもこうも、目の前で人が死んでいくのが見過ごせない質なんでな」

セイバーは今も止まっている。

マスターを攫った奴の発言は信用ならないのだろう、こちらが下手な行動に移らないように睨んだままだ。

しかし、このままではいつまでたっても泥沼の戦いが終わらない。

それどころか、アーチャー陣営が加勢して更に面倒なことになりかねない。

セイバー陣営と提携しているかと思えば、それを目がけて攻撃してきたのだ。

まだアーチャーとぶつかったのは一度だけであり、こちらの特性を理解しているとは到底思えない。

ならば、隙を突いてセイバー陣営をも潰そうとしているとも考えられる。

既に当初の目的を達成するのはほぼ不可能。

ならば、これ以上長居する理由はないがここから逃がしてくれるほど二つの陣営は甘くないだろう。

「バーサーカー、」

と、そこにイリヤの声が掛かった。

何事か、と振り返る前に第二声が聞こえた。

「『一時退避よ』」

そして、それと同時に上条は生前どうやっても得られなかった感覚を得た。

今日はここまで

さーて作者的に面倒なことが起こったぞー

さて、本日も始めていくよー

「空間転移......?」

それは魔法に近いと言われる魔術で、相当の実力がなければ発動するのはほぼ不可能とも言われる代物だった。

衛宮士郎のような素人魔術師にでも分かることだ。

「間違ってはいませんが、あれはおそらく令呪によるものでしょう」

「令呪?」

そのとき、青い少女が謎の言葉を放った。

今度こそ分からない、というよりセイバーを召喚したときから分からないことだらけだった。

しかし、少女は特に気にすることもなく話を始めた。

「令呪というのはマスターの右手にあるその紋様、あなたが聖杯戦争に参加したマスターである証であり―――」

「ちょっと待ってくれ、聖杯戦争だの何だのまだ整理ができてないんだ。それにいきなりマスターって」

「では、何と呼べば」

「……俺は士郎。衛宮士郎だ」

「衛宮……。なるほど、ではシロウと呼びましょう。私のことはセイバーで構いません」

「ああ、セイバー。それで―――」

「シロウ、下がってください!」

セイバーが言葉と共に士郎の後ろに斬りかかる。

直後、一度だけ金属の衝突音が響き渡った。

振り向くとそこにいたのは、

「こんばんは、衛宮君」

「遠、坂?」

二本の剣を持った赤い男と、見知った少女だった。

「令呪、一画使っちまったな」

「仕方ないわ。普通に逃げていたらここを割り出されるもの」

上条とイリヤは、令呪を一画使用することでセイバーとアーチャーの両陣営から逃れ、城に帰還した。

残りの令呪は二画。

つまり、後二画使ってしまえばイリヤにマスターとしての権利はなくなるということだ。

無論、上条にはイリヤを裏切るつもりも殺すつもりもないが、先ほどのような大魔術を発動させるなど令呪には多様な使い道があるのだ、到底無駄にできるものではない。

「イリヤ、おかえり」

「お嬢様、ご無事で何よりです。……バーサーカー、仕留め損ねたのですか」

そのとき、城の扉が開きリーゼリットとセラが出てきた。

「こればっかりはどうしようもないわ。なんせシロウがマスターになっちゃったんだもの」

「そうでしたか。遅くなりましたし今日は食事を済ませたらすぐにお休みになってください。
バーサーカー、貴方も支度を手伝ってください」

「分かった」

セラと上条が去った後、イリヤとリーゼリットが残った。

「イリヤ、令呪使っちゃったの?そんなことしなくてもイリヤなら」

「……嫌。バーサーカーにだけはできるだけ知られたくない」

「でも、きっとばれちゃうよ?」

「それでも、せめてそれまでは黙っていたい」

「……そう」

イリヤが上条に知られたくないことは二つ。

それは、彼女自身が聖杯の器であること。

そして、彼女が人から外れた存在であること。

今までは、特に話す必要もないから、という程度だった。

しかし、昨晩の夜にある夢を見てから、それは別の感情に変化した。

その夢とは――――――

さて、今日はここまで

最後にご協力ください
《安価↓3》
イリヤが見た上条の記憶

これから1ヶ月強のテストラッシュなので少しばかり更新速度が遅くなります

別に安価にしたこと後悔してるわけじゃないのよ?

定期報告 次回の更新はまだです

明日あたり更新します

......夢の内容書こうとしたけど長すぎるから断念した

本日の投下

......本当に少しだけでごめんなさい

結論から言うと、イリヤは辛うじて正気で目覚めることができた。

精神関係の魔術が使えないためバーサーカーから毎晩送り付けられる記憶の数々のおかげで少年、カミジョウトウマの人間性をある程度は理解していたからか。

すぐに夢だと割り切ることができたためか。

どちらにせよ、イリヤはその夢の中で自分のサーヴァントがいかに異常な存在か思い知らされた。

サーヴァント、基本的に英霊の劣化コピーである彼らの大半は過酷な生涯を過ごした者たちだ。

有名な神話の英雄などは無論だ。

しかし、カミジョウトウマはそれらと肩を並べたのかもしれない。

戦闘力だけ見ればその辺にいるような学生に毛が生えたレベルであり、当初の魔力すら操れなかった状態では聖杯戦争を勝ち抜くどころかすぐに敗退する羽目になっていただろう。

その証拠に、ランサーの手加減がなければ慣れ親しんだ森の中でイリヤは命を絶たれていたはずだ。

そこではない。

精神性が異常なのだ。

知り合い全てに敵とみなされた世界、自分の存在が全くの別人に置き換えられた世界、知り合いに食われる世界、自分の体が腐っていくのを動けずに感じさせられる世界、自分の存在だけではどうしようもない絶望によって滅ぼされた世界。

この他にも文字通り無数の世界があったのだが、一生かけても全てを挙げることなどできない。

それによって得た記憶の大半にノイズが走るほどの情報量を有し、イリヤ自身途中から精神が参って発狂してしまったためだった。

その途方もない数の絶望に耐え抜いた精神性は太古の英霊にも劣らないだろう。

ちなみに、なんとかイリヤが正気を取り戻せたのは、夢の中の全く無関係のカミジョウトウマの知人のおかげだった。

どこか人間とは違う不自然さがありながら、それでいて懐かしさすら感じさせる言葉。

そこがどんな世界だったのかは知らないが、おそらくはカミジョウトウマですら精神が参っていたのだろう。

しかし、その言葉で確かにカミジョウトウマとイリヤは救われたのだ。

その後はその後で散々だった。

黒幕と戦おうとした瞬間槍で夜空に打ち上げられ、文字通り叩き潰され、胴体を消し飛ばされ、その後はまた先ほど味わった世界を繰り返す羽目になった。

もし送り付けられた記憶のところどころにノイズが走っていなければ再び発狂するところだった。

正直、もう半分も覚えていない。

そのためか、夢の終盤あたりの展開は色々と納得がいかなかった。

まるでドラマでも見ているかのような言い草だが、本来はそうでなくてはならないのだ。

とはいえ、イリヤの精神状態に全くの問題がないかといえば、そうではない。

「全く……とんだものを見せられちゃったわね」

「お嬢様、昨日から少し様子がおかしいように思えますが」

「………なんでもない」

バーサーカーの背負ってきたものの大きさが少し分かり、イリヤは今まで知りもしなかった感情に手を伸ばした。

知られたくない、と。

彼はおそらくまだあの世界に未練があるのだろう。

当たり前だ、あの途方もない世界を通して得たのはただ一人の理解者であり、二人も三人も得られるものではない。

しかし、バーサーカーが今ここにいるということはそれを失ってしまったという証拠だ。

ならば、彼の願いは想像に易い。

そして、イリヤもその願いを叶えたいと思ってしまった。

ならばこそ、イリヤにできることはただ一つ。

この世界にただの一つも未練を残させない、それだけだった。

彼ならば、イリヤの正体を知っただけでもそれが未練になりうる。

だからこそ、そう思ってしまった。

今日はここまで
なんか滅茶苦茶なのはいつも通りだな(開き直り)

勘違いしてほしくないので今から言っておくが
このSSは上条×イリヤではない
むしろ俺は士郎×イリヤ推進派だ
いや他のルートも好きだけど
どのルートの士郎さんもイケるクチだけど

うん、そういうことです
なんだかんだ三週間以上遅れてしまい申し訳ない

投下していきます

「イリヤ、これからどうするんだ?」

初戦から数日後、朝飯(調理担当:セラ)を食っていた私上条当麻は何か違和感を覚えていた。

空気(特にイリヤを中心とした半径1m)が少しだけ重い。

更にそのせいでセラの視線が突き刺さるので最近テンションが下がりっぱなしだ。

いや、心当たりが全くないわけではないけど。

むしろ滅茶苦茶あるけど。

とりあえずそんな空気に耐えられないので俺は話題を作ろうと口を開いた。

その結果出たのは物騒な話題だったが。何やってんだ俺。

「そうね……柳洞寺はどうかしら。キャスターを放っておくとその右手があっても手に負えなくなるわよ」

「この前行ったときは目立った動きはなかったが……早めに潰すに越したことはないか」

「そういうことよ」

とりあえず空気は少し軽くなったような気がした。

会話が会話だからあんまり嬉しくはないですけどね!

前回同様暗くなる前に冬木に着いた。

森の中か夜でもなければ他のサーヴァントに襲撃される心配はないからだ。

もっとも、昼間だとしてもマスターに見つかってしまえばマークされて日が沈んだ瞬間戦いになる可能性もあるが。

「とりあえず、柳洞寺の外回りを観察しておくか」

「そうね、工房の規模が小さいなら早めに手を打てるわ」

一時間後。

そこには柳洞寺の藪の外にある見えない壁に右手をついてうなだれる上条の姿があった。

「まさかとっくに完成してたとはね……。しかももはや工房の規模に留まっていない。今次のキャスターは間違いなく相当の実力者よ」

「核を突かないとどうにもならないってことか……」

魔力も魔術も幻想殺しも寄せ付けない。

そもそもサーヴァントの不法侵入を拒んでいるようにも思えた。

大儀式でもない魔術で巨大礼装のような力を発揮するそれ自体が脅威と言えよう。

寺の敷地全てが要塞――――もはや神殿と化している。

とはいえ、抜け道を探す手間はかからなかった。

真正面、つまり参道からならサーヴァントでも容易に通ることができるからだ。

しかし、やはりそう簡単にはいかなかった。

当たり前だ、これほど用意周到な魔術師が敵に正面から殴り込みをさせるはずがない。

そして、それはすぐに姿を現した。

それは、四足歩行しているわけでもなければ生物の形をしていない化け物でもない。

つまり、人の形をした人外の化け物。

「……サーヴァントか」

「いかにも。アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」

「……そうか。キャスターはどこにいる?」

「アレなら寺の中で悪巧みでもしているだろうよ」

「なるほどな。で、お前は門番を任されてるってわけか」

「ああそうだ。あの女狐は気に入らぬが、逆らえる身でもないのでな」

「つまり、そこの山門を抜けたければ」

「私を倒すか撒くかするべきだな」

夜と同化するかのように青い英霊は真名を自ら名乗った。

佐々木小次郎。

生粋の日本人であり、西洋の術式を基盤として作られた冬木の聖杯には本来呼び出せるはずのない英霊。

それがありえるとすれば、キャスターというイレギュラーの存在が大きく関わっているだろう。

魔術に特化した英霊ならば、これほど精密な工房を作ることのできる魔術師なら、英霊の召喚も可能だろう。

無論、そのために令呪が既に発現していた他の魔術師から奪った可能性が高いが。

規定外の英霊は自らの刀を抜く。

それは神秘の欠片すら持ち合わせてはいなかった。

しかし、獲物が他にあるようにも見えず、それでいて恐らくは他のサーヴァントを退けたと思われる。

つまり、何かがある。

上条も警戒したのか、動かない。

動けば、これ以上アサシンに近づけば、即座に斬り捨てられる。

アレは危険だ。

アサシンが構えるのは神秘の欠片もない刀だが、それが上条のある記憶を呼び覚ました。

アニェーゼの情報操作により天草式と一戦交えることになった夜、上条は何の異能も持たない刀に斬られた。

しかし、今の上条はサーヴァントであり何の異能も持たない刀によって傷をつけられることはない。

それでも、直感は上条の思考に割り込んでこう告げた。

アレにはこれ以上近づくな、と。

「イリヤ」

「どうする、バーサーカー?」

状況は最悪なのかもしれない。

今日はここまで
最後にひとつだけ

《直後コンマ》
1~2、引き返す
3~4、ゴリ押し
5~6、小聖杯
7~8、キャスター
9、セイバー

今日も少しだけ投下

「ッ!?」

「バーサーカー!」

そして、それはすぐに訪れた。

上条が直感で右手を振りあげようとして、釣りあげられたかのように宙に浮くまでにほとんど時間はかからなかった。

「ふふふ。攻め入っておきながらここがどこか忘れたのかしら」

「……相変わらず趣味が悪いな」

「あらアサシン、手出しは無用よ。この子は私の獲物なのだから」

いや、確かに上条は見えない竿によって釣りあげられていた。

上条は山門の方を見る。

そこにいたのは、黒いフードを被った女性。

そして、ここにいるということは

「......キャスターか」

「ええそうよ。普段ならアサシンに任せているのだけれど、今回ばかりは私が対処すべきと判断したまで」

「そうかよ」

詰んだ。

右腕を掴まれては、右手で触れることはできない。

魔力を暴発させたとしても、このレベルの魔術師に通用するとは思えない。

このまま吊るされた鮟鱇のように斬られてもおかしくない状況である。

「一応感じ取れはしたようだけれど、なんだかんだ右腕に頼る癖は治した方がいいわね」

「なんだかんだ一番手っ取り早いのがこいつだからな」

「そう。その様子からしてこうしたのは正解だったようね」

今までの戦闘を全てどこかから見ていたのか、工房に触れられたデータから割り出したのか。

どちらにせよ、上条が今まで戦ってきた魔術師の中でも上位に位置する実力である。

「さて、アサシン。『バーサーカーを始末しなさい』」

「……覚えておけよ、女狐」

そして、どうやらここで俺の聖杯戦争は終わりを告げるようだ。

諦めるつもりはない。

そんな考えがよぎった時点で、俺の、そしてイリヤの死までもが確定してしまう。

それだけは避けなくてはいけない。

まだ、イリヤには解決しなければいけない問題が山ほどあるのだから。

「″秘技―――″」

だからこそ

「バ―サーカ―――」

「″壊れた幻想″」

「″―――燕返し″」

俺は、どうなったとしても生き残らなければならない。

今日はここまで

さて、ここからどうするかな

さーて、今日も投下

キャスターは現存する魔法使いすら凌ぐ魔術師であり、それ故に魔術の知識も豊富である。

イリヤは出生前よりアインツベルンによって調整されてきたホムンクルスであり、それ故に魔術の知識も豊富である。

その二人でさえ、目の前の現象を説明することはできなかった。

燕返し。

剣豪・佐々木小次郎が極めたとされている剣技であり、その原理は魔法を用いなければ説明すらできない代物である。

実際は、ある農民が飛び続ける燕を斬るために剣技を磨いた結果身につけた、ノータイムで三度斬るありえない現象。

間合いに入れば燕返しを受けて死ぬ、その脅威がキャスターの陣取る柳洞寺を守っていた。

そして、上条は確かに燕返しを受けた。

壊れた幻想で宝具を犠牲に払ったところで、払いきれなかった剣先は上条に向かい、絶命するはずだ。

そう、そのはずだった。

しかし、上条は生きている。

吹き飛んだ右手の断面から、見えない何かを覗かせながら。

(なによ、これ)

それは、上条が顔をあげて立っていることに対しての疑問ではない。

繧ッ繝ゥ繧ケ縲?繝舌・繧オ繝シ繧ォ繝シ
螻樊?ァ縲?荳ュ遶九・蝟・
遲句鴨縲?D
閠蝉ケ・??B
謨乗差縲?C
鬲泌鴨縲?E
蟷ク驕九??E
螳晏・縲?A++
菫晄怏繧ケ繧ュ繝ォ
迢ょ喧縲?E
逶エ諢溘??B
蠢・愍(蛛ス)縲?B
謌ヲ髣倡カ夊。後??A
螳晏・
蟷サ諠ウ谿コ縺励??A++

バーサーカーのステータス表示がおかしい。

コンピュータでなんらかのエラーがあった場合に発生するらしい文字化けという現象に酷似している。

なんらかのエラー。

そう、サーヴァントの存在そのものに莫大な力が干渉しているような、そんな不気味な現象。

目の前のサーヴァントに何が起こっているのか。

いや、そもそも、目の前にいる人型の生命体は果たしてサーヴァントなのだろうか。

分からない。

そもそも、宝具が一部破損したことによって暴走したとかそういう事態ではない。

壊れた幻想は宝具ごと破壊する反則技。

宝具のランクが高いほど威力は上がるが、それにより手持ちの宝具は失われるため、サーヴァントはまず使わない。

先日交戦したアーチャーなどは一発目で使ってきながら再び宝具を使用して攻撃してきたが、アレは例外だろう。

バーサーカーは宝具を一つしか持ち合わせていないため、壊れた幻想を使った時点で特殊能力は失われる。

聖杯戦争のシステム、サーヴァントという枠組みではとても説明できないのだ。

≪どうする?目の前の奴らはただの敵ってことでいいんだよな?≫

脳内に直接語りかけてくる声。

それは、これまでの何度かの戦いで助けられたよく分からない奴のものか。

「いや、今日はまだいい。今度斬られたときには頼むことになるかもしれねえが」

≪はいはい、今日は右手の修復だけね。にしてもまた変なことに巻き込まれてんな、お前≫

「今回ばかりは俺のせいじゃない。それより上条さんとしては一刻も早くお前の正体を暴きたいのですが」

≪そこは謎の力としてとっておいた方がいいだろ?ほら、お前のクラスメイトだった青髪の奴の本名言ってみろ≫

「誤魔化すな。つかあれはもはや禁則事項だぞ」

≪まあまあ、お前の連れがビビってるぞ。じゃあまたな≫

「……チッ」

やっぱり変な奴だ。

作為みたいなものは感じないが、なぜかガキっぽい。

それが俺の声で再生されるんだからもうたまったもんじゃない。

なんか俺の口調が少々アレになってる気がするが絶対あいつのせいだ。

今度出てきたら絶対ぶん殴ってやる。

まあもっとも、あいつはどうでもいいときにはまず出てこないんだけど。

上条はため息をつきながらキャスターに向き直る。

「キャスター、今日はこのあたりで勘弁してくれないか」

「……バーサーカー」

「……そうね。こちらも計画を練り直すのに時間がかかりそうではあるし、見逃してあげてもいいわ」

すんなり行き過ぎているような気がしたが、ひとまず交渉は成立した。

そして、上条がイリヤを説得しようと首を後ろに回した瞬間。

「そうか、イリ」

「だから、今日はこの辺で帰ってちょうだい」

二人は、見えない壁によって階段から突き落とされた。

今日はここまで

正直やりすぎたとは思っている
だが後悔はしていない

上条さんはこれから終盤にかけてだんだん鯖じゃなくなっていきます
あと壊れた幻想→中の人はもう使えません
幻想殺しが完全に宝具とは別物と化したので

かまちークロス出てたか......買わねば

酉付けるの忘れてた

生存報告ついでに少しだけ更新

「イリヤ、大丈夫か?」

寺の敷地外まで吹っ飛ばされた俺とイリヤはほぼ無傷だった。

追い出しただけで何もしなかったのは賢明だ。

下手に手を出せば自分たちがやられるかもしれない、英霊級の魔術師の理解すら超えたものを有しているのだ。

何かしら対策は練ってくるだろうが、しばらくキャスターの姿を見ることはないだろう。

試しに右手を向けると、寺の内側と外側を仕切るかのように見えない壁に阻まれる。

この様子では聖杯戦争が終わるまで柳洞寺に入ることはできなさそうだ。

「今のは割と危なかったわ。……それより、バーサーカー」

「……説明は後にさせてくれねえか。俺自身まだよく分からねえ」

そう、正直あの判断は賭けだった。

どんな理屈であいつがやってきたのかも分からない。

イリヤの様子やあいつの言葉からすると召喚時から潜んでいた類のものではないだろう。

右腕の破損がトリガーとなったのはほぼ確実とみていいが、世界の壁すら越えてくるあいつは一体何者なのか。

そして、あいつがやってきたときに俺の体が恋査のように弾け飛ぶことはなかった。

それどころか、今もじわじわとサーヴァントから別のものへと作り変えられつつある。

『俺は一体何なんだ?』

もう一生分かることはないと思っていた疑問。

それが、今になってうっすらと見えはじめようとしている。

「......そう、じゃあ帰るわよ」

「もういいのか?」

「これからシロウやリンに奇襲を仕掛けてもいいんだけど……」

「確かに、俺とセイバーは相性が悪すぎるしかといって遠坂の家にそう簡単に侵入できるとも思えないからな」

「……せっかく人が気遣ってあげようっていうのに、プライドはないのかしら」

「あそこまでまんまとやられた後にプライドもくそもあるか」

話しながら、俺たちは森のすぐそばまで歩いていた。

すでに9時は回っているのだろう、ただでさえ暗い街から三つの人影が森の暗闇に沈んでいった。

とりあえず今日はここまで
最後にご協力ください

なんで三つあるんだよ
《直後コンマ》
1~3、ギル
4~6、ランサー
7~9、アーチャー

もう一つ参考までに
・ランサーが あらわれた
《直後コンマ》
1ほど殺る気満々 9ほど親切

本日一度目の投下
いや二度目があるか分からんが

誰かにつけられている。

そのことに気付いた時には、既に背後1mまで迫られていた。

ほぼ同時か少し早く気付いたイリヤの手を左手で掴み、俺は振り返らずに走った。

しかし、その誰かは俺が止まっているように見えたと告げるかのように真正面に現れる。

「また会ったな、坊主」

「……」

その気になれば俺を確実に殺せる、相性最悪のサーヴァントがそこにいた。

「雇い主からテメエと戦うなという命令は出ているが、どうも気に入らねえ。このままケリをつけずにテメエが勝手に殺されるのは癪だからな」

おそらく、ランサーが俺をしつこく狙っているのは自慢の槍を一度破壊されかけた怒りによるものでもあるのだろう。

そして、

「令呪ではなく、ただの命令か」

適当かつ長期的な命令でも、それが令呪によるものであれば多少は縛られるものだが、おそらくそうではない。

ランサーのマスターが令呪を使っていれば色々と助かったのに。

「それでマスターの目を盗んでわざわざここまで戦いに来たってわけ?」

大した戦闘狂だと思う。

命を奪う気がなかったあいつよりよっぽど質が悪い。

「……いや、どっこいどっこいか」

「あ?」

ん?今なにか嫌なものを踏んだような

「……別に、テメエの生前がどんな大層なもんでも構わねえが」

まずい、なんか知らないけどこれはまずいぞ上条当麻。

これは令呪を使ってでも回避すべき―――

「この俺がテメエの戦った野郎とどっこいどっこいだというのなら、少しはまともに戦えるんだろうな?」

だめだ、ランサーに背中は見せられない!

その言葉と同時にランサーの姿が消える。

一々どこに消えたか判断している暇はない。

もう一度イリヤの手を掴み、右足に魔力を込め全力で後退する。

直後、ランサーの魔槍が先ほどまで俺が立っていた地面を抉った。

気にしている暇はない、今はただ逃げるだけ。

ただし今度は、魔槍に突き破られないように警戒しながら。

元々、俺とランサーでは実力差が開きすぎている。

攻撃を受ければ間違いなく死ぬし、かといって見切って躱すなど論外だ。

相手は、聖杯戦争のシステムにより多少の制限がついているとはいえどケルト神話の大英雄。

セイバーの剣技もすさまじいものだったが、それ以上と見ていいだろう。

そして、あの時令呪に縛られつつもセイバーと死闘を演じていたランサーと、今俺を殺そうと向かってくるランサーは別物だ。

そして、まっすぐ俺に迫る槍を躱そうとして、視界がブレた。

一旦ここまで

再開です

「がっ……はぁ!」

間一髪。

直撃寸前で軌道上から獲物を失った槍はそのまま空を切り、

一瞬バランス感覚を失った俺はイリヤから左手を離し地面を転がった。

それでも、ランサーを視界に捉えようとなんとか体を起こす。

しかし、

「……なんだよ、この期に及んでまだ本調子じゃねえってのか」

「っ……ごがっ!?」

ランサーの声が背後から聞こえて間もなく、頭を蹴り飛ばされる。

たったそれだけで、俺は完全に意識をとばされた。

―――蹴り飛ばされる直前、あったはずのものがいつの間にか消えてしまったかのような、違和感を覚えた。

「バ―サーカー!」

私は地面を転がり、木にぶつかって止まったバーサーカーに駆け寄った。

私自身も地面を転がって擦り傷をつくる羽目になったけど、そんなことを気にしている場合じゃない。

ここでバーサーカーが殺されては困る。

聖杯を求めて冬木の地に降りてきたというのに、こんなところで敗れてしまってはその願いが叶わなくなってしまう。

それだけは嫌だった。

私がバーサーカーの夢で苦しんだから。

その苦しみをもう二度とバーサーカーに与えたくないから。

「ねえ、バーサーカー!起きてよ、こんなところで負けてもいいの!?」

だから、私は何度でも呼びかける。

しかし、バーサーカーの目は閉じられたままだ。

「……おい、嬢ちゃんよ」

気が付けば、ランサーが気を失うバーサーカーのすぐそばに立っていた。

ハッとして意識を向けるのと同時に、殺意を持って襲い掛かってきた敵を今まで思考の外に追い出していたことを私は悔やんだ。

今、この状況でランサーと戦うことはできない。

というか、普通に考えて人間とサーヴァントが渡り合うことなどできない。

人間とホムンクルスの間に生まれた私だが、生憎と戦闘技術は身に着けていない。

それは戦闘用に調整を施され、並のサーヴァントとなら渡り合える戦闘力を有するリズの役回りだ。

魔力の生成量、貯蔵量は並外れているものの、ろくに戦闘経験のない私ではこの英霊の動きを一瞬止めることすらできないだろう。

しかし、かといって聖杯戦争を諦めるという選択肢は存在しない。

だから、最後の抵抗として交渉をすることにした。

「…………ねえ、ランサー」

「そいつは休ませてやれ。今ここでそいつに止めを刺してもつまらねえ」

一瞬、私はランサーの言葉に耳を疑った。

でも、考えてみればおかしいことでもないのかもしれない。

なんせ神話の英雄だ、万全の状態で戦いたいという願望でもあるのかもしれない。

私には到底わからない感覚だが、敵であるにも関わらず見逃してくれたことには感謝すべきだ。

「……本当かしら」

しかし、念のためにもう一度聞いておく。

帰るために背を向けた瞬間槍が飛んでくるなど洒落にならないからだ。

「……俺の雇い主は趣味が悪くてな、これまた趣味の悪い奴と手を組んでやがる」

しかし、返ってきたのはよくわからない言葉だった。

いや、ランサーは私とバーサーカーに何かを示そうとしている。

趣味の悪い連中に知られる前に帰れ、と。

「……ええ、感謝するわ。この借りが返せるといいけど」

「ふん、そこで寝てる坊主に伝えておけ。次会ったら今度こそぶっ殺すってな」

一度ランサーに頭を下げ、合図を短く口にする。

それだけで、一瞬にして私とバーサーカーは城の前に移動した。

セラとリズが今の私たちを見たら驚くだろうな。

でも、バーサーカーの身に起こっていることについては起きてから問い質すことにしよう。

それまでは、何も言わないであげる。

「バーサーカー、今日もお疲れ様」

今日はここまで
最後は小聖杯の力でジャンプしたってことでよろしくお願いします
上条さんの身に何が起こったのかは次回に説明します

ものすごく今更な話だけど当初から上条さんの設定がかなり変わってるのよね
竜王も宝具扱いにするつもりだったのにいつの間にか設定がぶっ飛んでるというか

そういえば大事なことを忘れてた
別にバーサーカー陣営がしばらく動かなくたって戦いは起こっているのですよ
《戦況判定(陣営崩壊) 安価下二~四》
1、剣
2、弓
3、槍
4、騎
5、魔
6、暗
7、狂
8、英
最大三陣営まで崩壊

崩壊するのはアーチャー陣営、アサシン陣営、AUO陣営か

おつ
続きが来てくれて嬉しいな

…ところでこれ7選ばれてたらどうなったんだろう……

>>315
完全に受肉するまでにかかる時間くらいしか変わりませんね

生存報告がてらちょっと投下

「うーん……」

少し寒いものの良く晴れた朝、俺は四畳半に相当する自室の布団の上で仰向けになっていた体を起こした。

ん?

「……………………はっ!?」

俺はランサーから逃げ回っている最中に意識を失ったはずだ。

なのになぜ、俺が生きてここまで帰ってきている?

そもそもイリヤはどうなった?

マスター不在のサーヴァントはクラススキル”単独行動”を有するアーチャーでもない限りその体を維持できない。

しかし、俺はその限りではないのだ。

そこまで考えて、考えうる最悪の可能性に突き当たったときに部屋の扉が開いた。

「バーサーカー、もう大丈夫かしら?」

どうやら最悪の可能性は回避できたらしいが、疑問は残る。

「……イリヤ、あの後はどうなった?」

「ランサーなら、あの後勝手に立ち去って行ったわよ」

「……そうか」

あの手の戦闘狂は万全の状態での戦いを望む。

ランサーはこちらが手負いだったのが気に食わなかったということか。

…………いや、生前満身創痍の俺に死なないまでも殴る蹴るの暴行を食らわせた奴がいたが。

でも、それはどうでもいい。

もし、あのとき対峙したサーヴァントがランサーでなければあの場で確実に仕留められていただろう。

それはつまり、イリヤの身に危険が及ぶということだ。

俺の体調はどうあれ、こんな事態がこれ以上続くのならサーヴァント失格だろう。

たとえ徐々に進行する受肉の影響でサーヴァントの時にはできた無茶が次第にできなくなっているとしても、だ。

特にクラススキルが失われつつあるのは痛いが、魔力がノーリスクで扱えるだけ生前よりずっとマシだ。

「そうそう、ランサーから伝言を預かっているわ」

「なんだ?」

「『次会ったら今度こそぶっ殺す』だって」

…………はあ。

これじゃしばらく森からは出られないな。

今日はここまで
しばらく森から出られないなーとか言ってますが買い物は必要なので多分昼間は街に出られるよ

ええよ

今日相棒の元日スペシャルがあると聞いてインテリ×相棒の可能性を幻視した
はいすみません早く書きます

投下

それ以降、俺の体は次第に作り替えられていった。

ここ一か月で身に着けたものが急速に失われていく感覚。

じわじわと自分の中心に迫ってくる、それでいて懐かしさを感じさせる異物。

おそらく、影響が中心に及んだ瞬間に自分をこの世界に定着させていた力の加護は完全に受けられなくなる。

破格の魔力供給が絶たれ、自前で戦わなければならないのだ。

セラの話によれば俺の魔術回路は10本。

今まで通りの無駄遣い戦法で生き残れる可能性など絶望的だ。

そもそも、すでに今まで通りイリヤの魔力を受け取ることはできない。

作り変えられている部分に負荷がかかりすぎるのだ。



言葉をどれだけ並べても、絶望的なことに変わりはない。

だから、俺は思い出すことにした。

まだ純粋なサーヴァントだった頃の動きに近づき、追い越せるように。

魔力はいらない。

体に染みつかせるだけなのだから。

昨日失ったなら探し出せる。

見つけた後に、それ以上に磨き上げればいい。

それがたとえ終わりのみえない奪い合いになろうと、俺は挫けるわけにはいかない。

上条は再び修行に明け暮れることにしたが、それでも外に出なければならないときはある。

その理由の一つは買い物である。

どこの世界でもスーパーや飲食店は昼間も開いているが、これは夜に戦場へと赴かなければならない上条などの一部のサーヴァントやマスター達には好都合だった。

「……今日は納豆が安いんだったか?」

「ああ、それよりもあれのほうがうまいぞ」

「いや、上条さんは値段を見ているのですよ…………ん?」

上条が違和感を覚えて振り向くと、そこには買い物かごを持ったアーチャーがいた。

「珍しいな。サーヴァントがこんなところで買い物をしているとは」

「お前にだけは言われたくないセリフだな」

当然、聖杯戦争の規定により二人は目立った戦闘行為に出ることはできない。

しかしそれは、敵を違った方面から見るきっかけにもなる。

もちろん、そこには和気藹々とした雰囲気など微塵も感じられないが。

「ふん。それより貴様、かごから財布を落としたぞ」

「ん?ああ、助かった」

そして、アーチャーは財布を渡す時に間違えて上条の右手に触れた。

つまり、それが示すこととは。

「…………貴様」

「(ちょっと待て!?俺には微塵も悪意などないというかむしろ不注意なのはそっちでしょうが!!!)」

「……まあいい。こちらもスキルの恩恵によりすぐに消滅することはない。時間さえあれば再契約も可能だ」

「そうか……」

「覚えておけよ」

「……なんのつもりかしら?」

「こそこそと隠れて監視などしている魔女に言われる筋合いはないな」

普段の彼女ならば、その蔑称で呼ばれた瞬間に塵も残さず消し飛ばしているところだった。

しかし、目の前の男は彼女にその行動を踏みとどまらせるほどの力を見せつけた。

そもそも、男が立っている場所からしておかしい。

なぜなら、本来そこには彼女が召喚し使役しているサーヴァントがいたはずなのだから。

「……要件はなにかしら。わざわざ私を敵に回すために来たわけでもないでしょう」

「……その口調が気に入らんがまあいい。我と手を組む気はないか」

「……どうせ私の正体も解っているのでしょう。その上での協定だというのなら考えがあると見るべきかしらね」

「……話が早い」

夜が更けていくなか、男の鎧は変わらず黄金に輝く。

今日はここまで

紅茶の件が適当だったのは申し訳ないと思ってる
だが俺にはこの局面で裏切るエミヤもわざわざルルブレに刺さられにいくアチャーも弓か凛のどっちかが野垂れ死ぬのも想像できなかったんだ

投下
>>328以降の話になります

そんなこんなで俺はしばらくアーチャーの野暮用に付き合わされる羽目になった。

事故の防止と攻撃の意志がないことを証明するために手袋をつけておく。

「なぜ最初からそうしない」

「正直邪魔だろ」

「私の感覚としては貴様の宝具は味方側からしても邪魔だと思うのだがな」

「デメリットなんて俺が治癒魔術の恩恵を受けられないのと単純な結界はすぐにぶち壊しちまうくらいだぞ」

そもそも城の結界には既に幻想殺し対策がなされてるし魔術は召喚されるまで碌に扱えなかったからな。

「……ふむ」

情報を与えすぎた、ということはないだろう。

ただ向こうも相当の切れ者らしく、限られた情報を頼りに戦略を練っているらしい。

しばらく黙ったまま歩いていたが、空気が重すぎるので思い切ってみることにした。

「そういえば、お前のマスターは今どこにいるんだ?」

「高校だ。私が口を出すことではないが通う必要があるのかは分からん」

唐突すぎた気もするけど話題ができただけよしとしよう。

「……セイバーのマスターがいることは知ってるのか?」

「生憎と今は同盟を組んでいる。私としてはアレは早々に排除しておきたいのだがな」

「その反対派のお前が嫌々ながらも組んでいる理由は何なんだよ?」

「……高校にはもう一人マスターがいる。それを倒すまでの間だけという条件だ」

スラスラと聞きだせすぎている気がいるのは気のせいだろうか?

嘘を教えられている可能性もあるのだが、なんというかこいつからは心底どうでもよさそうな感じが滲み出ている。

ともあれ、今の戦況が少しでも分かっただけよしとしよう。

話しているうちに、二人は高校の前まで歩いてきていた。

しかし、そこでほんの少しだけ違和感を察知する。

「……なあ、昼間の高校にしちゃ静かすぎねえか?」

「…………これはまずいな。外から直接察知することはできないが何者かが結界を張ったらしい」

「結界だと?」

「そうでもなければ見渡す限りの生徒が椅子から落ちてまで居眠りしているなどという現象がありえるはずがない」

「そこまで見えるのか?」

「これでも弓兵だ。とにかく、急がなければいつまで持つかは分からんな。行くぞ」

「いや、なんで俺まで乗り込むことになってんだ」

「そもそも貴様のせいで察知が遅れたのだぞ。それに今逃がして後から背中を刺されても困るのでな」

「うっ......。でも買ったものどうすんだよ。校舎が戦場になってるかもしれないってのに」

「校門の前にでも置いておけばいい。幸い今は冬場、二、三時間放置したところで腐りはせん」

そして、二人は何も知らずに乗り込む。

状況は、とんでもないことになっていた。

今日はここまで

最後にご協力ください
《戦況判定 直後コンマ》
1~3、普通にピンチ
4~6、YAMASODACHI
7~9、ライダー無双

投下します

「くそ、これじゃきりがない!」

衛宮士郎と遠坂凛、その二人は校舎の廊下を移動しながら戦っていた。

対する敵は骨を纏った怪物の集団。

厄介なことにいくら倒しても復活してくるため、二人の体力を徐々に削っている。

士郎が令呪で呼び出したセイバーとは一旦別れて行動しているため、これ以上の戦力は求められない。

そして、

「ったく、あいつに何があったのよ」

結界の発動とほぼ同時刻、凛の腕から令呪が消えてしまった。

しかし、魔術師としては凛より劣る士郎の令呪は問題なく機能したことから、結界による干渉とは考えにくい。

「ここに来るまでに襲撃されたのかもしれない。でも契約解除なんて芸当、もしできる奴がいるとしたら」

「キャスター......。となると四人もマスターがこの学校をうろついてるってわけ?」

断定はできないが、その可能性が最も高いことは確かだ。

とにかく、今この場所にアーチャーを呼び出すことはできない。

そして、今この場でもう一つ見過ごせない事態が進行している。

「とにかく、さっさとこの壁を潜り抜けてこんなふざけたことをしでかした奴をぶん殴らるわよ」

この学校に潜んでいるマスターのサーヴァントが張った、中の人間から魔力を根こそぎ奪い取る結界。

発動させたサーヴァントが全力を出せない状況にあるためか、魔術師である二人はほぼ支障なく戦闘を行えている。

ただし、高校にいる多くの生徒や教師は別だ。

彼らは結界の発動直後には既に意識を失い、魔力に変換する過程でその体を溶かされ始めている。

早く黒幕の陣営を突き止め、結界を解かさせなければ手遅れとなる。

そして、そんな気の焦りはときに慣れた動作の精度すら狂わせてしまう。

宝石を射出する手元がぶれ、見当違いな方向に飛んでいく。

「遠坂!」

そして、凛に白い猛威が襲い掛かる

そのはずだった。

突如虚空から立ち塞がるように現れた影が、辺り一面の骨を一掃した。

「間に合ったか」

現れたのは、先ほどまで凛と契約していた紅い弓兵。

「お前……キャスターに襲撃されたわけじゃなかったのか」

「助けられた礼もなしか。あとその件だが、ある意味キャスターより厄介な奴に絡まれた」

「あのサーヴァントより厄介な奴って……まさか」

「ああ、例のバーサーカーだ」



そして校舎の外側……一階にあたる場所に上条当麻はいた。

上条がアーチャーと別行動を取っている理由はというと、

「あいつが言うには、そこの教室を中心に結界が展開されているらしいが……」

敵情視察とは言われたが、おそらくは上条を囮にする気だろう。

一時的に手を組んでいるとはいえ、本来敵同士であり上条がアーチャーに危害を加えたのも事実。

だから、最も敵に近く危険な場所に放り込まれたわけである。

とはいえ、買い物に行ってたら事件に巻き込まれて死にましたなんて結果を残すわけにはいかない。

あくまで上条はイリヤのサーヴァントである。

聖杯をイリヤに渡すまでは、絶対に生き残らなければならない。

「ここか」

慎重に動いても仕方ない。

幻想殺しの性質上、俺の行動は結界を発動した敵に真っ先にマークされるはずだ。

だから、俺は躊躇なくその教室に乗り込んだ。

そして、ほぼ同時。

目の前で人の枠を外れた何者かがぶつかり合い、そのどちらかが崩れるのを目撃した。

今日はここまで

最後にご協力ください
《生存判定(ライダー) 直後コンマ》
1~3、死亡
4~6、K.O.
7~9、立てる

未ブラもねえ、fakeもねえ、とにかく新刊なんにもねえ
投下

「ひ……ぁ………」

なんなんだよ、次から次に!

ライダーに結界を発動させて魔力を蓄えさせる。

たったそれだけのはずだったのに。

なんで葛木が普通に動いてるんだよ、一般人じゃなかったのか?

いいやそれよりもライダーだ、人間の拳一発程度で沈むなよクズが!

そしてなんだよ、突然割って入ってきたガキもサーヴァントなのか?

「くそっ!」

もう知るか、こんなもんこれ以上続けてたら絶対に死ぬ!

ならもうどこだっていい、こいつらが追ってこられないような場所に逃げだして

「待てよ」

「……あ?」

状況を確認する。

倒れた方の女は……クラスは分からないがサーヴァントだろう。

かすかに息はあるようだが、よく見ると首がわりと危ないことになっている。

目隠しをしているのには何らかの意味があるのか。

しばらくは動けないようだが一応警戒しておこう。

問題は……立っている方の男だ。

スーツに黒縁眼鏡、そして高校の敷地内にいる人型の生物......となれば教師か。

見たところ人間だろうが、おそらくはあのサーヴァントを単独であそこまで追い詰めた化け物。

となると、俺はアレに勝てないだろう。

あのサーヴァントがどこの英雄なのかは知らないが、俺はただでさえ平均的なサーヴァントよりスペックは下だ。

それに、受肉の影響で体は万全でない。

となれば、戦うのはなんとしても避けたいのだ。

あちら側もこちらを観察しているようだが、殺気や敵意は感じられない。

なので俺はもう一度この教室を眺め、そしてこの空間から逃れようとするもう一つの影に気づく。

ここの学校の制服を着ているのでおそらくは生徒だろうが、どうにも挙動が怪しい。

あの男を恐れて逃げようとしたのか。

いや待て、生徒が一般人ならそもそもなぜ動ける?

あのサーヴァントが倒れると同時に結界は消えたが、それの性質上すぐに意識が戻ることはないだろう。

ならば、考えられる可能性は一つ。

そう、生徒があのサーヴァントのマスターである可能性だ。

「待てよ」

そして、気づけば俺の体は勝手に動き、生徒の肩を叩いていた。

もう少し力を加えていれば、生徒の肩を粉砕しかねないほどの力で。

「……あ?」

それほどまでに、生徒のした非道が許せなかった。

今日はここまで
《戦況判定 直後コンマ》
1~3、YAMASODACHI
4~6、柄に合わないことをするアーチャー
7~9、ライダー反撃

そもそも中盤にたどり着くのかいう不安はあるかな

投下

「ひっ」

しかし、たったそれだけで生徒は気絶してしまった。

俺の顔がそれほど怖かったのか、肩の激痛によるものか。

どのみち、叩き起こしたとしてもこれ以上話を聞くことはできないだろう。

場合によっては今後の生活に支障が出ない程度にぶん殴ろうかと思ったが、ひとまず放置するしかなさそうだ。

「お前もサーヴァントか」

殺気を放たない教師の拳が背後まで迫っていた。

辛うじて魔力の流れを読み、右手で触れるべく振り返ろうとして

“避けろ、死ぬぞ”

直感が告げた。

だから、咄嗟の判断で横に飛び退き、距離を取る。

遅れて、左腕に鈍痛が走った。

「っ!?」

何が起こったのか理解できず、左手を目の前に持って来ようとするが、できない。

左に顔を向けると、肘から先が引きちぎられかけていた。

俺は、相手に向き直る。

「……そういうお前はなんなんだ?」

「マスター、と言っておけば伝わるだろう」

分からない。

目の前の男が、一ミリたりとも。

先ほどの攻撃もそうだが、何を考えているか尻尾すら掴めない。

あの時に魔力を感知できなければ、攻撃の軌道を読むことすらできなかっただろう。

それはまるで、暗殺者。

分かっているはずなのに、目の前の男が本当に魔術師なのか、それすら見失いそうになってしまう。

「え?」

いや、おかしい。

もしそんなことがあり得るのだとしたら、それは―――――

「もう、いいか。考える時間は与えたはずだ」

気付けば、目の前の男が妙な構えをしていた。

反射的に横に飛ぼうとしたが、身動きが取れない。

見れば、両足が魔術によって拘束されていた。

この状況には何か見覚えがある。

しかし、そのときの方法はもう使えない。

しゃがんで右手で拘束を解こうとしても、その隙に俺は胴体に大穴を開けられるだろう。

何もかもが、遅すぎた。



「何をしている」

そして、先ほどまで文句を垂れ流していた声が聞こえたような気がして、

次の瞬間、目の前でありえない衝突が起こった。

目の前で何が起こっているのか理解するのに一秒ほどの時間を要した。

アーチャーの双剣と男の拳が衝突を繰り返している。

双剣が確かに拳の軌道についてきていること、そして男の拳が双剣の猛攻に対して引かないこと。

その光景に魅入られそうになり、そして今の状況を思い出す。

両足の拘束を解いたときには、二人の人外は手を止めて睨み合っていた。

男の手からは血が流れていたが、それだけ。

しばらく、俺は動くことを忘れ―――――気づいた。

「ちっ!」

振り向くと同時、窓を消し飛ばして莫大な光の塊が襲い掛かってきた。

左腕の負傷でバランスをとれずに倒れそうになるが、なんとか右手をかざす。

そして、目の前には消えた光の代わりにキャスターがいた。

「そう都合よくはいかないものね。そもそもあなたがわざわざここに足を踏み入れたのは嬉しい誤算だったのだけれど」

予想通りといえば予想通りだが、一つの疑問が浮上する。

「……あいつらは囮だったってのか?」

マスターは未熟だったものの、一陣営を誘導したとなればキャスターへの警戒レベルをさらに上げる必要があるだろう。

一瞬だけ横を見ると、倒れていたライダーは消えていた。

「いいえ、結界を張ったのはあっちの子の勝手よ。私たちはそれを利用させてもらっただけ」

「狙いは」

「さっきも言った通りよ?まあ、他にも用はあったのだけれど」

それだけ言うと、キャスターはどこかへ消えてしまった。

再びアーチャーの方を向くと、そこに教師の姿はなかった。

今日はここまで
城に戻るまでどのくらいかかるんだか

投下します

おおよそ一時間ほど話をした後、俺はようやく四人から解放された。

さっさと帰ろうと思い校門の方まで回っていたのだが、

「もうこんな時間か……って俺たちの晩飯がああああああああ」

倒れないようにしていたはずの買い物袋がひっくり返って卵が割れ、挙句の果てに大根に染み込んでいた。

アーチャーの方は見た感じでは無事そうだったが。

「…………アーチャーさん?覚悟はよろしくて?」

その時の俺がどんな顔をしていたのかは知る由もないが、俺の声で振り返ったアーチャーのマスターが若干引いていたような気がした。

「これで貸し借りがなくなったと思えば安いものだろう。だが、確かにこれはもったいないな」

発言の後半部分に割と感情が入っているあたり、料理にはプライドがあるらしい。

そういえばこいつ、こっちの方がうまいとかいって高い納豆を勧めてきたっけか。

「大丈夫か、バーサーカー」

と、そこにセイバーと話し込んでいた衛宮士郎がやってきた。

親切心はうれしいのだが敵同士だということを忘れていないかこいつは。

「ああ、問題ない。これからまた調達してくるだけだ」

「ってことは新都か?なら一緒に行かないか」

「シロウ」

「衛宮君」

「よせ、凛。そいつのそれはもう手が付けられない」

というわけで、なぜか五人でスーパーまで行くことになった。

まあ特に何もおかしいことはなかったが強いて言うならこんなことがあった。

『おい、これのほうがうまいと言っているだろう。貴様にはなぜわからん?』

『だから俺が求めているのは安さなんですよアーチャーさん話聞いてます!?』

『米はこれでいいか?』

『セイバーのマス………衛宮まで!お前ら寄ってたかって俺の財布を薄くするじゃありません!』

『衛宮士郎、貴様もなぜわからん。普通主食はパンだろう』

『聞けよ!あとうちのマスターは今米ブームの真っ最中だからな』

『なっ......!?』

『なんでそこで驚くんだ?』

なんというか、こういう話題は普通女の方が盛り上がるはずだと思うのだが、なぜかその女二人は途中でスーパーから出て行ってしまった。

なんか白い目で見られたような気がしたがこの際どうでもいい。

そして、買い物を終えた俺たちは教会の前まで歩いた。

そこで俺は四人と別れる。

今は日が沈みかけている頃。

つまり、もう少し経てば問答無用で斬りかかられかねない状況。

敵の観察が安全に行えるギリギリまで粘ったのだ。

「じゃあな。次会うときは戦うときだとは思うけど」

「そうか。お前のマスターにもよろしく言っておいてくれ」

「そうだな……」

少なくとも、今のイリヤはあいつを敵だと思っている。

それは、聖杯戦争において、ではない。

もっと複雑で、俺が土足で踏み込んではいけない問題がある。

その解決を影から後押ししようにも問題が多すぎるし、猶予だってもうそれほどない。

「どうすりゃいいんだろうな……」

立ち止まって、気づけば俺は空を見上げていた。

だから、すぐそこにある教会の扉が開く音にも、そこから次第に近づいてくる足音にも気づかなかった。

「珍しいな、バーサーカー」

思わず振り向くと、すぐそこに一人の神父が立っていた。

やたら胡散臭い雰囲気を漂わせるその男とは、以前会ったことがあるはずだ。

「…………監督役か。アンタも教会から出るんだな」

「いや、立ち話でもと思っただけだ」

以前は何故か文句を言われなかったが、サーヴァントは中立地帯たる教会に入ることはできない。

とはいえ、神父のこの行動は、この冬場にわざわざ出てくるほどの用がある、と見てもいいだろう。

「何の用だ?」

「君についてだ」

「…………気づいてやがったか」

「風の噂で君が受肉し始めていると聞いた。まさか本当だとは」

風の噂、か。

「だからどうした」

「君も召喚時に知らされているはずだ。他の六騎を潰さない限り、聖杯は現れないと。いつになるかは知らないが、君の受肉が完了するとシステムに支障が生じるのだよ」

「過去四度の聖杯戦争で聖杯を手にしたものはいないって話だろう。今回失敗するならで次回も続ければいい」

「君のマスターは御三家のアインツベルン所属だろう。先延ばしするとなっては君のマスターにとっても不都合な話ではないのか?」

「............」

こいつ、最初に会ったときから胡散臭いとは思っていたが、まさか。

「だとして、どうする?アンタがサーヴァント連れてるわけでもないだろうが」

その一言で、一瞬だけ空気が凍った。

そして、それを境に男の放つ雰囲気が明確に変化する。

上条は一度、地面を蹴った。

一瞬遅れて振動が辺りの地面に響き渡る。

そして、何かを確認すると上条は一層大きな声で話しはじめる。

「俺の受肉を知っている可能性があるのはランサー、キャスター、アサシンのみ。そのうちお前と手を組めそうな奴と言ったらランサーくらいしかいない。
……なるほどな。道理であのランサーを敵情偵察のために手加減までさせて駆り出したりしてたわけか」

「ほう。そこまで分かるか」

「まあそれはどうでもいい。監督役がサーヴァントを使役しているという明確なルール違反ってだけだ」

「……………」

「この場に証拠なんて必要ない。だから言いがかりだろうが何だろうが言わせてもらう」



「セイバー、今のは......!?」

「バーサーカーと別れたところからですね……シロウ」

「行ってみよう。何かあったのかもしれない」

「『君のマスターは御三家のアインツベルン所属だろう』……誰の言葉だ?
あいつの記憶はプロテクトが固かったせいでたったの一度しか見られなかったが、それだけでこの街で200年の間に起こったことを知るには十分だった。
ああ、思えばアンタも監督役のくせしてやたら聖杯にこだわっていたな」

「おかしいことか?聖杯を手に入れた者を見届ける。それが私の仕事だ」

「……ああそうか。なんかネジが数本外れてるような気はしてたが今ので分かった。
この街にある聖杯は第三次聖杯戦争の時点で汚染され、以降願いを歪んだ形で叶える歪んだ願望機になった。
そしてその性質は人殺しに特化したものだ。
つまり」

「私の本職なのでね。
聖杯がいかに歪んだ形で願いを叶えようと、それによって産み出されるものがあるのも確かだ。
それを祝福するのは神父として当然のことだろう」

「……そうか。
ああ、だがそれだけじゃない。
イリヤが聖杯戦争のシステムに組み込まれている。
あいつはこのまま聖杯戦争が進行すれば確実に聖杯に変化して死ぬ」

「そんなことはとうの昔に身内で決めたことだろう。
たった数ヶ月前に召喚された君が口を出したところで何かが変わるとでも?」

「……あいつは何かとんでもない勘違いをしている。
それも昨日まで笑って暮らしてた家族を憎むようなもんだし、そして本人がそれに気づいていない。
それを俺は見過ごすわけにはいかねえ。
本当なら当人たちの問題だから俺は口なんざ出さねえが、あいつらは純粋すぎるせいで気がつけないんだ。
このまま一生勘違いしたまま兄妹で殺し合うなんてのは想像したくねえ」



「……何を言ってるんだ、あいつは」

教会のそばまで走って行き、思わず飛び出しそうになり俺はセイバーに止められた。

「……シロウ。バーサーカーはシロウに伝えているのではないでしょうか」

「あいつ……!」

「どうするのですか、シロウ。あの神父は見たところ相当の戦士だ。
バーサーカーはあのまま放っておけば死ぬでしょう」

「なんだって?」

「ええ、それを見越してシロウを安全に逃がすために時間稼ぎをしている。そう見えます」

つまり、セイバーの言っていることが正しいとすれば。

バーサーカーは自分のマスターを俺に託そうとしている。

自分がここで死ぬことを見越して、俺に情報を与えてまで。

だとしたら、そんな奴を見逃すわけにはいかない。

しかし、事態はそこまで甘くなかった。

ついに、神父とバーサーカーが戦闘を始めた。

明らかに押されている。

「シロウ、退避しましょう。今はやるべきことが他にあるはずだ」

「くそっ!」

あいつの言葉は無駄にしない。

必ず、あいつのマスターを、俺の妹を、助ける。





そして、上条と神父は十分以上に渡りぶつかり合い、ある一騎のサーヴァントの命が絶えた。



【DEAD END】

これでこの話は終わりです
ありがとうございました

都合により急に話を畳むことになったので少々無理やりすぎますが(というかこの終わり方自体今日思いついたんだけど)




まあ機会があれば似たような話をまた書くかもしれないのでそのときがあればまた

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