ほむら「魔法番長あきら☆マギカ !!」 (406)

「彼等」がいつ・どこで誕生したかは誰も知らない。
彼等は哺乳類に限り無く近い生態でありながら、それとは全く別の生物である。

地球が生まれて46億年。他の全ての生物はその年月の中で「進化」という名の妥協を重ね続けてきたが、彼等は違った。
彼等は史上最強の力で食物連鎖の頂点を極め続ける事で進化を拒否し、限りなく不死身に近い肉体を以って環境への適応さえも拒み続けた。

彼等が進化を拒み続けたのには理由があった。
進化した彼等の力はあまりにも強大であり、一度その力を解放すれば一日と掛からずに地球が死の星と化してしまうからだ。
彼等の先祖はそれを本能で理解し、「進化の遺伝子」を封印する事で地球との共存を可能にしてきたのだ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409747827

また彼等は太古より畏怖と崇拝の対象として世界中の様々な神話・伝説の中にその姿を残し、6500万年前の恐竜絶滅や文明・帝国の滅亡、世界大戦など人類が幾度も経験した「節目の時」に人類の前にその姿を現し、歴史の裏で人類に「裁定」を下してきた。その「裁定」とは「生存」「滅亡」の二択。
それら全てが人類の為か、それともただの気まぐれかは分からない。ただ分かっているのは…人類の存亡は彼等の意思で決まるという事だ。

金剛番長か……懐かしいな

ある者は言う。
「彼等は既に完成された『究極生物』である」と。
「彼等は『神』になれる」と。

神の領域に到達できる可能性を秘めたその生物の名を、人々は『金剛類』と呼んだ。

☆1撃目!! 魔法少女現る!!☆

--謎の空間--

??「(……ここは…どこだ…?)」

朦朧とした意識の中、目を覚ます一人の漢。意識がはっきりとしないせいか視界がぼやけてよく見えない。

??「(俺は…生きてるのか…。よし…これでなんとか…『スジ』を通せるってもんだ…。だが…ここはどこだ…?)」

起き上がって周囲の状況を確認しようとしたその時、漢は自分の身体の異常に気付く。

??「(身体が…動かねえ…!!)」

死闘のダメージが残っている為か、地獄の業火に焼かれた為か…。首以外が殆ど動かない。
自分の身体を確かめてみると全身が火傷・打撲・出血でボロボロになっていた。

??「(骨も…あちこち折れてやがる…)」

深呼吸をして落ち着くと再び状況の把握に務める。

>>3
七つの大罪のアニメ化が決まったのを知ってからなんか書きたくなりました。
勢いで建てたが後悔はしてない!

期待しかねえよ
続きはよ

??「(この世のものとは思えねえ…まるで絵画みてえな空間…。それに…不気味な気配だ…。早く立たねえと…!)」

気力を振り絞り上体を起こそうとしていると、漢の周囲を「何か」が取り囲んだ。

謎の生物「♪♪♪♪♪♪」シャキン シャキン

今の漢の目ははっきりとは見えないが、大まかな形や数くらいならなんとか見えている。十数体はいるようだ。


??「(毛玉みてえな頭部に…蝶の羽
みてえな脚(?)…。それに真っ黒なハサミ…。どこかの『番長』の用意した生物兵器か?それにこいつら…!)」ググググッ

漢は先程より更に必死に起き上がろうとする。その理由は謎の生物が敵意…否、殺意を自分に向けている事を察知したからだ。

謎の生物「♪♪♪♪♪♪」

??「(これは…ドイツ語の歌?ますます不気味だぜ…!)」

歌を歌いながらジリジリと距離を詰める謎の生物。

??「(まずい…!)」

必死に起き上がろうとするが身体が思うように動かない。謎の生物が今まさに襲い掛かろうとした瞬間…



パァン

謎の生物1「!?」ボン

??「(なに!?)」

一発の銃声が鳴り響き、一匹が断末魔と共に静かになった。

??「(生物の気配が…消えた?)」

…が、銃声は一発では終わらなかった。

パァン

謎の生物2「!?」ボン

パァン

謎の生物3「!?」ボン

パァン

謎の生物4「!?」ボン

………
………
………

銃声は謎の生物の気配が全て消えたところでようやく鳴りを潜めた。

>>7
感謝感激!
ありがとうございます!

ズゥゥゥゥン

敵の気配が消えた事で気が抜けた漢は同時に力も抜け、3メートルはあろうかという巨躯が地響きを上げて床に倒れ込んだ。

??「(助かったぜ…。それにしても…今の毛玉はどこに行っ…)」

???「あなた生きてるの!?」

突然耳に飛び込んできた女の声。
どうやら漢に向かって叫んでいるらしい。漢は声の方向に目を向けると…

???「ごめんなさい…。私がもっと早く気付けばこんなことには…。ごめんなさい…!」

何やら怪しげな服装の少女が走って来ていた。
その少女は漢の身体が謎の生物によって傷付いたものだと思ったらしく、目に涙を浮かべてしきりに謝罪の言葉を繰り返していた。だが…

???「……ってその身体はなに!?人間じゃないの!?」ジャキッ

涙ながらに漢へ接近した少女は漢の異常な巨躯に驚いて思わず銃を彼に向けて構えてしまった。

??「知った…ことか…」

???「は?」

??「………」

???「……まあ、人間じゃなきゃあいつらが襲うわけもないか。まさかこんな大男が現実にいるとは思わなかったけど…」

少女は少々呆れた顔になりながらも安心した様子で自己完結すると銃を下ろした。

???「それにそんな口が聞けるなら命の心配はなさそうね。この辺りの使い魔は片付けたからしばらく寝てなさい。もう少しで結界も消えるはずだからその後で迎えに来てあげる」

??「待て…」

???「…なに?」

??「薄暗い上に…距離感の掴めねえ空間で…動く標的に対する精密連射…。それに…その脚力…。学ランも鳳凰の刺青もねえが…お前は…番長か…?」

???「番長?何を言ってるのかわからないわ。じゃあね、私は急いでるから」タッ

少女は一方的に話を打ち切るとそのまま奥へと走って消えていった。

???「(どうして…どうして私はあの男にかまってしまったの?今までなら無視して素通りしてるはずなのに…。
イレギュラーのせいで出遅れてしまった…。どうか間に合って!)」タッタッタッタッ

??「(あの服装…『念仏番長』の言ってたコスプレってやつか…。何者かはわからねえが…なんて悲壮な目をしてやがる…。何を犠牲にしてでも…必要なら人も殺しかねねえくらいの覚悟…。こいつは…ただ事じゃねえな…。
それに…助けられた恩…返さなけりゃスジが通らねえぜ…!!)」ガバッ

漢は自分の身体の怪我も忘れて飛び起き、少女の元へ走っていった。

??「(こっちか!)」クンクン

漢が謎の少女の匂いを目指して走っていると、先程漢を襲おうとした謎の生物が再び現れた。今度は数は少ないが問答無用で正面から飛び掛かってきた。

??「邪魔だ!」ドゴン ドゴン

漢は足を止めて右拳と左拳を交互に振るい、数体を纏めて吹き飛ばす。生物は地面に叩き落とされると潰れてそのまま消えてしまった。

??「(拳が軋みやがる…まだ骨折が治ってねえな。普段ならとっくに治ってるってのに…。これが『代償』ってことか。
それにしても…殴っただけで煙のように消える生物なんてありえねえ。だが殴った感触から考えても幻じゃねえのは確かだ。
そういやあの女、さっき『使い魔』とか言ってたな。それと関係があるのか?)」

グニャァァァ

何度か謎の生物と接触した後に突然謎の空間が歪み始め、数秒後には歪みも消え去りどこかの屋内に姿を変えた。

~CDショップ 改装中エリア~

??「(あの不気味な空間が消えた…。元に戻ったってことか?毛玉みてえな奴の気配も消えたな)」

??「(…よし、いた!)」

???「(間に合わなかった…!)」

走っていると間も無く謎の少女が資材の山の上で立ち止まっている後ろ姿が目に飛び込んできた。

??「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい。今回はあなたに譲ってあげる」

???「…私が用があるのは…」

??「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの」

資材の山で隠れて姿は確認出来ないが、誰かと会話しているようだ。声から察するにかなり若く、しかも会話に混じった小さな声から相手側は二三人はいる事が分かった。

???「(『見逃がす』?女が物騒な会話してやがる…。それに…『魔女』?わけがわからねえ)」

??「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

???「………(くっ…!)」スタッ タッタッタッタッ

謎の少女は無言で踵を返すと険しい顔で歯噛みしながら資材の山を飛び降りて漢のいる方向に走ってきた。

???「!?」ビクッ

??「変な女、ずいぶん怖い顔してるな」

???「あなたその身体で動けるの!?」

??「動ける程度には治ったからな」

???「そんな簡単に治るわけないでしょ!!それに通り道には使い魔がいたのにどうやってここまで来たの!?」

??「使い魔ってのはあの毛玉みてえな奴だよな?あれはやたら襲ってきやがったんで全部殴り飛ばした」

???「な…殴り……?あなた何を言ってるの?」

??「もう一度聞くがお前は本当に番長じゃねえんだな?」

謎の少女の言葉を無視して漢が質問すると……

???「何度も言わせないで。知らないって言ってるでしょ?そもそも番長っていつの時代の話よ。時代錯誤も甚だしいわ。
しかも最初に学ランがどうとか言ってたけど女の子が学ランなんて着るわけないでしょ。バカじゃないの?
さっきからわけのわからないことを言ってるけどあなたは何者なの?」

同じ質問に腹を立てた謎の少女は苛立ちを隠そうともせず辛辣な言葉を漢にぶつける。しかし漢は気にせずに更に質問を投げ掛ける。

??「それはこっちのセリフだ。武装して異常に強え変な女…。番長じゃなかったらなんだってんだ?
それにさっきの不気味な空間…お前は結界って言ったな。その結界の中にいた使い魔って奴のこともよく知ってるみてえだな。どういうことだ?」

???「………」

??「それにここはどこだ?地球は無事みてえだがこんな完璧な形で建物が残ってるなんて…少なくとも日本では絶対にありえねえ。まさかあの日から何年か経過して復興したのか?」

???「………」

??「………」

漢が質問を返すと謎の少女は時間が止まったかのように硬直し……

???「は????」

気を取り直すとリアクションの下手な芸人かと思うような反応を返してきた。

???「ちょ、ちょっと待って。『地球が無事』ってどういうこと?あなた頭でも打ったの?」

??「……話がかみ合わねえな。東京を中心に地球全体で天変地異が起こったじゃねえか。それが止まった日から何年経ったんだって聞いてんだが」

???「………」

??「………」

???「……悪いけどあなたの空想に付き合っている暇はないの。動けるなら自分で病院に行って身体のついでに頭も診てもらいなさい」

明らかに不機嫌な顔で話を打ち切ってその場を経とうとした謎の少女だったが……

??「待て!!」

???「!?」ビクッ

漢は即座に引き止め、謎の少女は漢の大声に驚きつつも再び顔を向ける。

??「お前は何を背負ってんだ?ガキのそれとは思えねえ覚悟をしてる目…。そんな目をした奴は放っておけねえ」

???「……あなたには関係無いわ。さっき起こったことも全て忘れ…」

??「知ったことか!!」

???「!?」ビクッ

??「恩は何があっても返す!それがスジってもんだ!」

???「わ、私は誰とも関わりたく…」

??「お前…わざと人を遠ざけてるな?過去に何があったか知らねえが強がるのはよせ。
人間が一人でやれることなんてたかが知れてる。だが仲間がいれば何でもやれる。仲間がいることで生まれる力もあるんだ」

???「……!!」プルプル

仲間の大切さを説く漢のその目を見た途端に謎の少女は俯いて肩を震わせた。

???「わかったようなこと言わないで!!」

金剛「そんなつもりはねえ。俺は…」

???「仲間なんて邪魔なだけよ!だから私はもう誰にも頼らないって決めたの!だから私に構わないで!だから私を…惑わせないで…」

金剛「それは本心なのか?」

???「………」

金剛「沈黙も答えだぜ」

ほむら「み、見透かしたつもり!?気持ち悪い…!もう私に話しかけないで!」

??「ああ、わかった。お前は誰にも頼らなくていい」

???「……そう。わかってくれたならそれで…」

??「だから勝手にお前を助ける」

???「!!…いい加減に…」

??「知ったことか!!!」

???「!?」ビクッ

??「お前に助けられた恩をまだ返してねえ!さっきも言っただろ!」

???「か…勝手にしなさい!私は忠告したわよ!」スタスタ

??「ああ、勝手にさせてもらうぜ」

--夜 市街地--

???「……いつまで付いてくるの?」スタスタ

??「俺の勝手だ」スタスタ

???「…ふん!」スタスタ

??「どこまで黙る気だ?変な女」スタスタ

???「はあ……」

謎の少女の後を無言で付いていく漢。彼女はあまりにもしつこい漢に呆れ果て…

???「わかったわ」クルッ

金剛「ん?」ピタッ

足を止めて金剛に振り向いた。

ほむら「話くらいは聞いてあげるから付いてきなさい。あなたの巨体は街の中じゃ目立ちすぎるわ。ただでさえ怪しすぎる格好なんだから」

??「おう」

--廃棄区画 廃ビル--

???「ここなら大丈夫よ」

??「人は住んでねえみてえだがずいぶん立派なビルだな。勝手に使っていいのか?変な女」

ほむら「さっきから『変な女』って失礼な男ね!」

??「そうか、悪かったな。だが充分変な女だぜ」

???「……まあいいわ。自己紹介もまだだったしね。
私の名前は暁美ほむら。あなたは?」

??「焔(ほむら)……」

ほむら「…どうしたの?ボーッとして」

??「いや、女にしちゃ珍しい名前だと思ってな。心に秘めた激情の炎…いい名前だ」

>>24補足
一番下にこれを入れ忘れました。

???「(…とは言ったものの私の部屋に連れ込んだら間違いなく目立って変な噂が立つし…。こんな大男を匿える場所なんてあそこくらいしか…)」

ほむら「……どうも。(私の名前を褒めてくれたのは…あなたで二人目ね…)」

金剛「俺は金剛 晄(こんごう あきら)だ。よろしくな、ほむら」

ほむら「さっそくだけど本題に移るわ。何を聞きたいの?」

金剛「聞きてえことは山ほどあるが今のところは…お前の正体、昼間起こった出来事の詳細、そしてお前の覚悟の理由だ」

ほむらはしばし目を閉じて考え込むとゆっくりと目を開けて答える。

ほむら「…いいわ、一つずつ答えてあげるから落ちついてよく聞いて。一つ目だけど、私は……」

そして金剛はほむらから俄には信じ難い一言を告げられる。

ほむら「『魔法少女』よ」

金剛「魔法…少女?まるで漫画の世界がそのまま飛び出したみてえな話だな」

ほむら「ええ、普通は誰でもそう思うでしょうね。でもこうして実際に見たんだからそれが現実だってもう分かってるでしょ?」

金剛「まあな。それで具体的にはどういうもんなんだ?」

ほむら「ある生物に願いを叶えてもらう代わりに契約して魔法の力を与えられ、魔女と戦う運命を背負わされる…それが魔法少女よ」

金剛「望んで闘ってるわけじゃねえってことか。だがそりゃあ少しおかしい話だな」

ほむら「…え?どういうこと?」

金剛「簡単な話だ。一つは願いを叶えて魔法少女になったとしても闘う必要がねえってことだ」

ほむら「!?」

金剛「極端な話、闘うのが怖いなら逃げりゃいい。
仮に敵を倒すことで何か得られるにしても、本当に命を賭けてまで得る価値があるのかどうかも疑問が残る。そうなるくらいなら最初から願いを叶えてもらう時に頼めばいいだろうしな。
となると自分の意志で闘うってよりは強制されて…あるいは必要に迫られて闘ってるって考えるのが自然だ」

ほむら「そ、それは魔女や使い魔から人を守るために…」

金剛「関係ねえな。それは必要に迫られたわけじゃねえ。仮に本当にそうだったとしてもさっき言ったとおり逃げりゃいいんだからな」

ほむら「………」

金剛「もう一つはその願いを叶える生物にどんな得があるのかってことだ」

ほむら「…!!」

金剛「普通に考えりゃ願いを叶えてやってそれで終わりなんてのはありえねえ。ってことは願いを叶えてやった魔法少女に何かしてもらうってことだ。
仮にそれが闘うことだとしたら、さっき言ったとおり逃げる可能性もある以上は博打になっちまって効率が悪い。
ってことは…これもさっき言ったことだが、なんらかの形で強制あるいは必要に迫られる状況を作っている可能性が高い。
もしその生物がそういう状況を作れない、あるいは作る必要がないとしたら願いを叶えて魔法少女を生むこと自体になんらかの得があるってことになる」

ほむら「(す、鋭い…!)」

金剛「ほむら、お前はどうなんだ?」

ほむら「……あとで話すわ」

金剛「そうか。じゃあ次だ。
お前は魔女と闘うのが運命って言ってたが…なら昼間の不気味な空間は魔女の仕業だってのか?」

ほむら「二つ目の説明になるけど…。
あれは魔女の作った結界。魔女は結界を作ってそこに隠れて、迷い込んだ人間を襲うの。あなたはそこに迷い込んだのよ。そして魔女の使役する毛玉のような生き物…『使い魔』に襲われてケガを…」

金剛「………(ケガはそいつに襲われてできたもんじゃねえんだがな)」

ほむら「…どうしたの?」

金剛「なんでもねえ。その使い魔って奴…。魔女の舎弟みてえなもんか」

ほむら「ま、まあそれでいいわ」

金剛「要は魔女も使い魔も片っ端からぶっ飛ばしちまえばいいってことだな?」

ほむら「そう。あなたが使い魔を素手で倒したって話が本当なら戦力として期待できるわね。
あとは私が何のために戦ってるか、だったわよね。私はある人を助けるために…魔法少女にならせないために戦ってるの。それが私にとっての全てよ」

金剛「闘いの運命を背負わせたくねえってことか」

ほむら「………ええ」

金剛「そいつはお前が結界のあった場所で誰かと話してる時に話し相手と一緒にいた奴らの中の誰かか?たしか話し相手に『私が用があるのは』って別の奴に用があるようなことを言ってたよな」

ほむら「…ええ」

金剛「お前の覚悟が尋常じゃねえことはわかってる。だがどうしてそいつにそこまで入れ込む?」

ほむら「…言えないわ」

金剛「……まだ信用されてねえみてえだな」

ほむら「そうじゃない!…言えないの。でも…時が来れば必ず言う。だから今は…」

金剛「………」

ほむら「………」

ほむらが黙り込むと金剛は無言でほむらをジッと見つめた。
ほむらも最初は金剛を見つめていたが、耐え切れなくなって視線を落とし、顔を伏せる。

ほむら「一番大事なことを隠してる相手の言うことなんて…信じられるわけがないわよね…。やっぱりこのことは忘れ…」

金剛「ほむら、信じるぜ」

ほむら「…く、口だけならなんとでも言え…」

金剛「何があっても俺はお前を信じる。だからお前も俺を信じろ」

金剛は強く真っ直ぐな瞳でほむらを見つめる。ほむらは自分の顔が紅潮し、目頭が熱くなるのを感じた。そして……

ほむら「……あれ?」ポロポロ

気付くと涙が溢れ、頬を流れ落ちていた。嗚咽により溢れ出る涙は拭っても拭っても止まらなかった。

ほむら「…みっともないところを見せてしまったわね。ごめんなさい」グスッ

数分後やっと落ち着いたほむらは涙を拭い去ると、先程と同じく冷静な表情に戻った。

金剛「小せえことは気にするな。溜まってたもんがあったんだろう。これで少しは気が晴れたか?」

ほむら「ありがとう…。でもごめんなさい…。こんな私を信じてくれたあなたでも今はまだ…」

金剛「今は言えねえってんなら言わなくていい。ただし俺が力になれることがあるならいつでも頼れ」

ほむら「……ありがとう。その言葉だけで気が楽になったわ」ニコッ

金剛「フッ…やっと笑ったな。さっきみてえな暗い顔よりそういう笑顔の方が子供らしいってもんだ」

笑顔を見せたほむらを見て、金剛も安堵の笑みを浮かべた。

ほむら「そ、そんなことより今度はこっちの質問の番よ!」///

金剛「そうだな。お前が俺の質問に答えたなら俺もお前の質問に答えるのがスジってもんだ」

ほむら「改めて聞くけど…あなたは何者なの?あの時は慌てててあっさり流したけど冷静に考えたらあなたのような巨大な人間なんてどう考えてもおかしいわ」

金剛「そうだな…。今から話すことは確証がねえが…いいか?」

ほむら「今更ね。あなたが信じてくれたなら私も信じる。それがスジ、ってものなんでしょ?」

金剛「ありがとよ。
…結論から言うと俺は『この世界の人間じゃねえ』んだと思う」

ほむら「…いきなり話が飛躍したわね」

金剛「だな。俺もそう思う」

ほむら「…それでその根拠は?」

金剛「まず俺が魔女の結界にいた理由だ。俺は迷い込んだんじゃねえ。多分『飛ばされた』んだ」

ほむら「…どういうこと?」

金剛「気付いたらそこにいたんだ。
俺は魔女の結界に飛ぶ前は地上から数千kmの地下にいた。もし仮に運良く地上まで吹き飛ばされたにしても屋内に落ちるなんて物理的にありえねえ。それにあれは…」

ほむら「一応念のため確認したいんだけど…本当のことを言ってるのよね?」

金剛「当たり前だ」

ほむら「……話の腰を折って悪かったわね。で、あなたはどうしてそんな地底深くに行ったの?」

金剛「地球と喧嘩しにだ」

ほむら「頭が痛くなってきたわ……」

金剛「そこで内核(コア)を全力でぶん殴った時に俺と内核のエネルギーが衝突してな。変な光に包まれて意識を失ったあと、気付いたらあそこにいたってわけだ」

ほむら「ツッコミ切れないわね……」

金剛「理由は他にもある。お前が天変地異を知らなかったこともそうだが…。
お前を追いかけている時に街中をザッと見ると俺の知っている日本文化と違ってこの街はずいぶん未来的になっていた。たかが数年でこれ程劇的に変わるなんてありえねえ。ましてやあれだけの大災害だ。復興だけでも数年じゃ済まねえはずだ。
それに見滝原市なんて場所も聞いたことがねえ。
そしてここの人間の骨格は明らかに俺の知ってる人間とは違い過ぎてるんだ(特に輪郭が)。
そこで俺は『ここは俺のいた世界じゃないんじゃねえか』って考えたんだ」

ほむら「ムチャクチャすぎる…。信じられないわ…って言いたいけどあなたが嘘を言う人だとは思えないし…。何よりあなたという存在自体がこの世界の常識を覆してるのよね。
だから信じるわ。今はとりあえず、だけど」

金剛「ありがとよ」

ほむら「次の質問ね。あなたが言ってた『番長』ってなんなの?普通は番長って言ったら昔にいた不良グループのリーダーってイメージだけど…あなたの言う番長ってまるで超人みたいな言い方よね」

金剛「平たく言やあそれで合ってるぜ」

ほむら「……あなたってどこかの戦う学生塾にでも入ってたの?」

金剛「なんだそりゃ」

ほむら「…最早ツッコミは無用だったわね。具体的にはどういう存在なの?」

金剛「それはだな……」

………
………
………

ほむら「日本国家再生を掲げて次世代の支配者を決めるための、殺しを含めたあらゆる手段が許される東京23区での命がけのバトルロイヤルが『23区計画』…。
そして23区計画を凍結して、東京以外の46道府県の代表者を同じ方法で選出してその代表者たちで日本を破壊してから作り直す『ダモクレス計画』…。
その候補として日本政府にスカウトされて特殊な訓練と実験を施された結果、人間を遥かに超えた身体能力を得たのが『番長』。番長は年齢・性別の区別がなく、そのシンボルとして自分の好きな意匠を施した学ランを着て片翼の不死鳥の刺青を入れている……でいいかしら?」

金剛「ああ、それでいい。もう少し詳しく言えば番長って呼び名は組織内での通称で、超人的な身体能力だけじゃなく様々な分野の才子がその能力を戦闘や戦術に組み込める段階にまで伸ばしてるのもいる。俺みたいに訓練や実験を受けてねえのも一部いるけどな」

ほむら「訓練も実験も受けてないのに使い魔を生身の素手で倒せるあなたってどんな化け物よ……」

金剛「俺の家系は『金剛類』って生物らしい」

ほむら「本当に人間…てゆーか哺乳類ですらなかったのね…」

金剛「…で、俺はその計画を止めるために番長として戦ったんだ。首謀者である親父、そして兄貴の目的を阻止するためにな」

ほむら「肉親と殺し合いをしたっていうの!?…あなたはそんな辛い戦いを一人で…」

金剛「そいつはちょっと違うぜ。
最初は一人で戦ってたが成り行きでなにも知らねえ普通の奴が付いてくるようになったり敵だった番長が仲間になってな。そいつらと行動してるうちに初めて仲間の大切さに気付いたんだ。
それに俺一人じゃあの戦いは生き残れなかった。仲間がいたからこそ戦い抜けたんだ」

ほむら「(金剛は孤独な戦いを信念を持って戦っていたらいつしか仲間が支えてくれるようになった…。私は…同じことを繰り返しているうちに仲間を…人を信じられなくなって…!)」

金剛「…お前がまだ仲間ってのにためらいがあるのはわかってる。だがもう一度信じてみてくれ。俺は何があってもお前を裏切らねえ」

ほむら「(私は金剛と正反対…。だから私には…)」

金剛「…すぐに返事ってのは無理か」

ほむら「………」

金剛「他に聞きたいことはあるか?」

ほむら「……2人の目的は阻止できたの?」

金剛「ああ。だが……兄貴が死んだ」

ほむら「!!」

金剛「………」

ほむら「あなたが手にかけたの?」

ほむらの質問に顔を険しくし、黙り込む金剛。しばしの沈黙の後に口を開くと…

金剛「………ああ」

昼間の大声を出した漢と同一人物とは思えない小さな声で肯定した。

ほむら「あなたのお父さんとお兄さんは日本を再生しようとしていたんじゃないの?」

金剛「計画を発動したのは親父で兄貴もそれに賛同して番長として参加していたが、兄貴が自分の目的のために親父を半殺しにして計画を乗っ取ったんだ」

ほむら「どうしてお兄さんはそんなことを…」

金剛「ガキの頃の俺たち兄弟は助けを求める人がいれば自分を犠牲にしてでも助ける母さんを俺も兄貴も誇りに思っててな。その頃の兄貴は俺より甘えん坊で誰よりも母さんを愛してたんだ。
だからこそ紛争の巻き添えで死んだ母さんを『偽善者』と蔑んだ日本人を…母さんの命を奪った世界を憎んだ。そして計画を乗っ取って世界の全てを破壊し、自分が愛せる世界に作り変えようとした」

ほむら「世界を破壊…。それほどまでに深い憎しみが生まれるなんて……」

金剛「だが俺は母さんのために泣いてくれる人もいるってことを知ってな。だからこそ俺はそんな人たちのために…母さんの愛した世界を守るために兄貴を止めなくちゃならねえと思ったんだ」

ほむら「あなた…見た目の割りにとても優しいのね。見直したわ」

金剛「一言余計だ」

ほむら「最後にもう一つだけいい?」

金剛「ああ」

ほむら「あなたは辛くないの?肉親を失って…大切な人たちと離れ離れになって…戻れる保証もないのにこの世界でたった一人なのよ?」

金剛「……不安が無いって言やあ嘘になる。
母さんと兄貴を失った現実は消えねえ。だが約束を果たさなくちゃならねえし、仲間が無事かどうかも気になってるからな。だからこそ俺は戻ることを諦めたりはしねえ。母さんが愛した世界のために…兄貴が俺に託した『明日』のために…仲間のためにもな」

ほむら「……!」プルプル

金剛の返答を聞いた途端、ほむらが身体を震わせ始めた。

金剛「…どうした?」

ほむら「あ…あなたは…」

金剛「…?」

ほむら「もし…そんな辛い現実をやり直せる方法があるなら…やり直したいって…思う…?」

金剛「思わねえな」

ほむら「……え?」

「答えなんて決まってる。
大切な人を失った悲しみは何よりも辛い。それをなかったことにできるなら、やり直して幸せへと導けるならその道を選ぶに決まってる。金剛も大切な人を失ったならその気持ちは同じはず」
ほむらはそう考えていた。

これは質問ではない。確認だった。
同意してくれる人が欲しかったから。心の痛み・悲しみを共有する人がいるという安心感が欲しかったから。
「彼はきっと自分と同じだ」と考えた。それを確認したいだけだった。
確認したら全てを話そうと思った。全てを吐き出して心を軽くしたかった。
しかし金剛はほむらとは違った。即答で…一言でほむらの全てを否定したのだ。

ほむら「ど、どうして!?人間なら誰でも『あの時ああすればよかった』って思うことがあるでしょ!?それが大切な人を失ったなら尚更よ!!なのに…どうして…」

金剛「たしかに思ったことだけなら全くないわけじゃねえ。
だが人生は逃げられねえ選択の連続だ。そして選ばなかった方の答えは永遠にわからねえ。選んだ方もそれが正しいかどうかわからねえ。だがその選択によってその人間は…人生は作られていくんだ。
だからもしやり直す方法があってもそれはやっちゃいけねえ。やっちまったら人生の選択に意味がなくなっちまう。それまでの全てを否定することになっちまうんだ。
母さんと兄貴が死んだのはたしかに悲しいことだ。俺の選択によっては二人は助かったかもしれねえ。だが俺は二人の想いを…遺志を無駄にしたくねえ。俺は二人の全てを背負って生きてえんだ」

ほむら「……私…間違ってるのかな…」ポロポロ

不意にほむらの頬を再び涙が伝う。

ほむら「大切な人のためでも…やり直したいって思うのはダメなのかな…」

ほむらは両手を顔で覆って涙ながらに呟いた。

金剛「……わりい。言いすぎたみてえだな。
これは俺が自分で思っているだけだ。お前はお前の考え方でいい。
だがこれだけは言っとくぜ。『次がある』って思って目の前の選択を軽く考えてたら必ず後悔することになる。『次はない』って思って選択には常に全力を注げ。そうすりゃ必ず前に進める」

ほむら「(私にはあなたが…眩しすぎるわ…)」

金剛「………」

ほむら「私は…あなたみたいにはなれない…。私より絶望的な状況で一人きりなのに…前を向けるあなたのようには…」

金剛「俺は一人じゃねえぞ」

ほむら「え?一人じゃないって…どういうこと?」

金剛「お前がいる」

ほむら「!…な…なんでそんなに…私を…」プルプル

金剛「お前は俺を助けてくれた。俺はお前を助けてえと思った。だから俺たちはもう仲間だ。それ以外の理由がいるか?」

ほむら「あなたは…っ」ポロポロ

ほむら「……あなたは強いのね。身体だけじゃない。心も私よりずっと…」グスッ

金剛「俺は自分を強いなんて思ったことはねえが…強いとすれば俺一人の力じゃねえ。想いを託してくれた人、そして仲間がいたから強くなれた。想いや仲間と共に歩む『明日』が俺に力を与え、突き動かしてくれたんだ」

ほむら「愛する家族を失っても…帰る場所を見失っても…託された想いと大切な仲間が背中を押してくれる…。それがあなたの強さなのね。
私も…強くなれると思う?」

金剛「想いと仲間が一緒ならどこまでもな」

ほむら「……ありがとう。でも残念でならないわ…。もっと早く…」ボソボソ

金剛「ん?何か言ったか?」

ほむら「な、なんでもないわ」

金剛「そうか。じゃあ辛気くせえ話はここまでだ。大事なのはこれからどうするかだからな」

ほむら「…あなたって後悔って言葉を知らなさそうなくらい前向きね」

金剛「それは褒めてんのか?」

ほむら「ふふっ、お好きな方でどうぞ」

金剛「なんだそりゃ」

金剛「しかし困ったな。この世界じゃどうやって生活したらいいかわからねえ。すぐにバイトでも見つかりゃいいんだが…」

ほむら「それなら心配しなくていいわ。しばらくは私が工面してあげる」

金剛「そいつはありがてえが…大丈夫なのか?」

ほむら「心配いらないわ。これからたっぷりと協力してもらうんだからこれくらいお安いご用よ」

金剛「何から何まですまねえな」

ほむら「ええ、任せて。じゃあこれから食べる物と生活に必要な物を持ってくるから大人しくしててね」

金剛「ああ、頼む」

ほむらは話を終えると急ぎ足でビルを後にした。

ほむら「(不思議なものね。もう誰にも頼らないって決めたはずなのに…。『今回』は彼のせいで間に合わなかったっていうのに…。もう一度だけ人を…彼を信じたいと思ってる私がいる。こんな気持ち…初めてだわ)」

この後ほむらは生活に必要な物をビルへ持ち込んだ…が、それは人間一人で運べる量ではなかった。

金剛「こんな大量の物をどうやって持って来た?」

ほむら「秘密よ。追い追い教えてあげるわ」

金剛「………」

この日ほむらは金剛に物を引き渡し次第、自宅へ帰っていった。



金剛「(…とんでもねえことになっちまったな。『別の世界』、『魔法少女』、『使い魔』、『魔女』…漫画の中に飛び込んじまったみてえな話だ。
フッ…。こんなの『あいつ』が聞いたら『フツーじゃない!』って叫んでクビを突っ込みそうだな。
……みんな、無事でいてくれ……)」

金剛は自分の世界の仲間達の身を案じながら眠りに入るのだった。

☆1撃目!! END☆

以上で1撃目終了です。
ここは導入部分でつまらない話が多いと思ったので一気にまとめて投下しました。
次からはペースが落ちます。

ここまで読んで下さってありがとうございました!

☆2撃目!! 魔法少女VS魔女☆

--翌朝 廃ビル-

ほむらは登校前に金剛の怪我の具合を見に廃ビルを訪れた。

ほむら「あきれた回復力ね…。いくら回復が早いっていっても一日で完治するようなケガじゃないと思ったんだけど…」

金剛に学ランを脱いでもらって身体を見てみると火傷も裂傷も痣も無く、最初から怪我などしていなかったかのように筋骨隆々の肉体美を覗かせていた。

金剛「むしろ遅えくらいだ。いつもはこの程度なら数分で治る。それに骨折が治りきってねえから完治ってわけじゃねえ。(左胸あたりの肋骨は…特に遅えな)」

ほむら「…あなたの世界の人間ってみんなあなたみたいな化け物なの?」

金剛「俺の身体は特別だ。まあ、身長(たっぱ)だけなら俺と同じくらいのとか俺よりでかいのが割といるけどな」

ほむら「やっぱり化け物だらけじゃない…」

金剛「それより今日は用があるんじゃなかったのか?」

ほむら「ああ、それは学校が終わったらね。私は多分夜までここを外すけど大人しくしててね。まだ完治してないなら無理しなくてもいいから」

金剛「まさか一人で闘いに行くんじゃねえだろうな」

ほむら「今日は大丈夫なはずだから心配しないで」

金剛「…ならいい」

ほむら「そうだ、言い忘れてた。私が戻ったら今後のことを話し合いましょう。正直言って時間の余裕はあまり無いからなるべく今日中に詰めたいの」

金剛「おう」

ほむら「じゃあ行ってくるわ」

金剛「無理はするなよ」

ほむら「ええ……ありがとう。行ってきます」

金剛「(『はず』、か)」

ほむらは足取りも軽く通学路を走って雑踏へ消えていった。

--夕刻 廃ビルの外--

この日は特にやる事も決まっていなかったので夕刻まで眠っていた金剛。目が覚めると外の風を浴びて気分を切り替える。

金剛「(さすがにヒマだな。暗くなる前に少し周辺の散策でもするか)」

元々人通りが少ないが、夕刻ともなればベッドタウンのように静かになるこの廃棄区画。金剛は人の気配に注意しながら気晴らしも兼ねて周囲の状況把握の為に歩く事にした。
しかし、数分程歩いていると早速こちらに向かってくる女性を発見してしまった。

金剛「(運が悪いな。仕方ねえ、戻るか)」

金剛は仕方なくビルに戻ると、せめてもとビルの屋上から景色を眺める事にした。

金剛「ん?あれは…」

屋上に上って離れた隣のビルを見ると先ほど出くわした女性が見えた。その女性は目が虚ろになりフラフラとおぼつかない足取りでビルの縁に向かって歩いている。

金剛「まさか…。おい!止まれ!」

しかし女性は金剛の呼びかけに気付いた素振りすら見せず歩みを進める。

夜なのにやたら忙しくて投下の間隔が長くなってしまうので、切りが悪いですが今日はここまでにします。

次は土曜か日曜にします。
失礼しましたm(_ _)m

金剛「くそっ!」ダダダダ ダンッ

声では止められないと判断した金剛は即座に走り出し、隣のビルへと飛び移った。
しかし時既に遅く、金剛が辿り着く前に女性は縁から身を投げてしまう。

金剛「くっ!」ダンッ

パシッ

金剛は着地の勢いを止めずに更に足を蹴り出し、落下する女性を優しく抱き止めた。
だが当然落下の勢いは止まらない。

金剛「(この高さと落下速度はまずい…!こうなったら『これ』を使うしか………!?)」

体勢を立て直しながら地面を見ると、そこには黄色を基調としたドレスのようなコスプレをした少女が身構えて何かをしようとしていた。

ーーーーーーーー
後に黄色いコスプレの少女はこう語る。

??「女性が落ちてくるのが見えたと思ったら、その後を追うように落ちて来た男性がその女性を抱きかかえる姿が目に飛び込んできました。
最初は正義感の強い方が無謀な救出を試みて失敗したんだと思ったんです。
私はもともと女性を助ける気でしたし、助ける人数が2人になったところで苦にはなりません。ですから普段通り慌てずに魔法を展開しようとした…その時です」
ーーーーーーーー

金剛「どけ!!!」

??「!?」ビクッ

ーーーーーーーー
??「一般人なら誰がどう考えても助かる余地がない状況ですよ?おかしな話ですよね。当然そんな言葉を聞き入れる理由はありません。私は気にせずそのまま魔法を展開……できませんでした。
『何故』…ですか?そうですね…。冷静な今だからこそ言える事ですが…『逆らえなかった』んです。
うまく言えませんが…『そうしなくちゃいけない』と感じたというか…ううん、『この人なら心配ない』…かな?そんな風に感じたんですよ、多分。
…話を戻しましょう。その時に考えるより先に身体が先に動いて二人を引っぱって全力で下がったんですよ。
その直後です。巨人さんの目付きが力強くなった瞬間に……」
ーーーーーーーー

金剛「荒殴零猛怒(アラクレモード)!!!!」ボコンッ

ピカッ

??「(え!?)」

ーーーーーーーー
??「はい、全身です。全身が黒く染まったんです。同時に一瞬で巨大化しました。文字通り身体が大きくなったんですよ。大雑把に見ても2倍以上です。
その姿は例えるなら……鬼。黒い鬼神です。とても人間とは思えないような迫力でした…といってももともと人間離れした巨体でしたけど(笑)
しかもその瞬間、魔女や使い魔の魔力にしか反応しないはずのソウルジェムが光ったような気が…まあ、気のせいだとは思いますけどね」
ーーーーーーーー

ズドオォォォォン

??「(危ない!)」ビシビシビシッ

ーーーーーーーー
??「鬼と化した巨人さんはそのまま着地しました。ええ、当然すさまじい衝撃でした。何かが爆発したかと思いましたよ。破片もものすごい勢いでこちらに飛んで来ましたけど、私が全部払い落としたので私たちにケガはありませんでした。
そうそう。その時広範囲に地響きと轟音が拡がったみたいで、近所では爆弾テロだの局地的な地震だの大騒ぎになったらしいです」
ーーーーーーーー

???「ははは…。く、黒いハ○クかよ…」

???「こ…怖い…」

マミ「二人とも下がって!ここは私に任せ……」

金剛「フウゥゥゥゥ……!!」ギロッ

マミ「!?」ビクッ

ーーーーーーーー
マミ「巨人さんが着地して深ーーーーく息を吐きながらゆっくりと立ち上がると、こっちを睨んできました。
すると私は…いえ、私たちは全員その眼光に気圧されて固まってしまいました。『ああ、これがヘビに睨まれたカエルなんだ』って覚悟を決めてしまうほどに。
あまりの恐ろしさに抵抗を諦めてへたり込みそうになった……その時でした」
ーーーーーーーー

金剛「お前ら…ケガはねえか…」ググググッ

??「……え?あ、はい…」

ーーーーーーーー
??「いえいえ、心の余裕なんてありませんでしたよ。つい反射的に返事をしただけです。巨人さんの身体が元に戻ったことで恐怖心が薄れたおかげでもあるんですけどね。
でも殺されると思った相手に気遣われるなんて思わなかったので、返事をした後は沈黙してしまいまして…。でもその沈黙も長くは続きませんでした」
ーーーーーーーー

金剛「そう…か…。だったら…この人を…安全な場所に…」ハアッハアッ

??「は、はい!」

ーーーーーーーー
??「息を切らしながら女性を私に引き渡してきたんです。やっとやるべきことを思い出した私は三人で女性を運びました。
その後ビルに戻ると巨人さんが倒れていまして…」
ーーーーーーーー

??「だ、大丈夫ですか!?」

金剛「気にするな…少し寝りゃ回復する…」ハアッハアッ

??「で、でも…」

???「マミさん、この人(?)のことも心配ですけど魔女の方も…」

金剛「ま…じょ………魔女だと!?」ムクッ

マミ「!?」ビクッ

ーーーーーーーー
マミ「ええ、それはもうびっくりしましたよ。軽く2m以上はある巨体が飛び起きたんですから。
でもそれ以上に驚いたのは魔女のことを知っているような反応です」
ーーーーーーーー

金剛「コスプレ女…。お前は魔女と戦う魔法少女って奴だな?」

マミ「ど、どうしてそれを…」

金剛「…やっぱりな。おい、そこのピンク髪…」

???「は、はい!」

金剛「お前も…魔法少女か?」

マミ「!?」

???「い、いえ…。憧れてはいるんですけど…まだ…」

金剛「そうか…」

マミ「(こ、この人まさか…!)」

???「あたしは?あたしには聞かないの?」

金剛「魔法少女がこんな場所に現れたってことは…この近くに魔女がいるのか」

???「(無視かよ)」

マミ「…え?」

金剛「…このビルの中から匂うな。飛び降りた人からも同じような匂いがしてるってことは魔女がその人に何かしたってわけか」

マミ「に、匂い!?そんなものでどうやってそこまで…」

金剛「お前は引っ込んでろ。俺が片付けてきてやる」

マミ「……今、なんて言ったの?」

金剛「魔女は俺が倒すって言っ……」

マミ「『レガーレ』!!」ババッ

金剛「うおっ!?」バターン

ーーーーーーーー
マミ「只者じゃないということはわかっていました…というか人間かどうかすらも怪しい感じでしたからね。なにせあの巨体に加えて変身しましたし。思わず地面に縛り付けて拘束してしまったんですよ。
…いえいえ!女性を助けていただいたことは忘れてませんでしたよ!ただ…冷静に考えたら魔法少女でもない人が変身したり、魔法少女や魔女を知っている上にソウルジェム無しで魔女の居場所を察知できるなんて明らかにおかしいでしょう?だから嫌な予感がしたんです。
この時は巨人さんが何か良からぬことを企んでいるのではと勘繰ってしまったんですよ。あまり魔法少女の悪口は言いたくありませんが…あの時はそれまでの暁美さんのようにあまりいい印象を受けなかったので…」
ーーーーーーーー

金剛「てめえ…何を…」グググッ

マミ「悪いけどお断りするわ。あなたはそこでジッとしててちょうだい」

???「マ、マミさんいいんですか?わたしはあの人(?)が悪い人(?)には見えないんですけど…。女性を助けてくれましたし…」

???「そうっすよーマミさん!あの黒いハ○クみたいな人(?)があたしたちの味方になれば心強…」

マミ「敵の敵が味方だとは限らないのよ。あの女性を助けてくれたのは感謝するけどそれだけじゃ信用できないわ。行きましょう、二人とも」

金剛「ぐっ…。おい!待て!」グググッ

マミ「帰ってきたら拘束を解いてあげるからそれまで大人しくしててね…って言っても動きたくても動けないと思うけど」タッタッタッ

?????「……本当にもう一人いるとはね」

???「キュゥべえ、なにか言った?」タッタッタッ

キュゥべえ「なんでもないよ。それより魔女の結界はすぐそこだ。マミがいるから大丈夫だと思うけど油断しないで!」

???「う、うん!」

ーーーーーーーー
マミ「…今思えば本当に失礼なことをしてしまったと反省しています。
それまでのことがあったとはいえ、巨人さんを信用するべきでした。そうすれば私もあんな思いをせずに……」
ーーーーーーーー

今日はここまでにします。
次は一週間以内に投下します。

ちなみに個人的に好きなキャラは念仏番長と悪矢七です。

マミの拘束魔法により身動きが取れなくなっていた金剛。身動きが取れないのは拘束が思いの外強力であった事、そして……

金剛「(荒殴零猛怒でも…ヒビだらけの骨には効いたぜ…。そのせいでうまく力が入らねえ…。素のままだったらやばかったな…)」

???「あきれたものね」

金剛が拘束魔法に四苦八苦していると、タイミングを見計らったかのように遠くから声が聞こえてきた。

金剛「ほむらか!」

ほむら「今日一日くらいは大人しくしてくれると思ってたんだけど?」

金剛「そんなことよりあいつらだ!早く行かねえと…!」グググッ

ほむら「あなたってジッとしてるのが苦手なタイプみたいね。貼り紙でもして注意を促すべきだったかしら?」

金剛「おい!俺の話を…」

ほむら「それなら心配いらないわよ」スウッ

ほむらが手を触れるとリボンは音も無く切れ、静かに消え去った。

金剛「…慣れたもんだな。よし、行く…」

ほむら「必要ないわよ。彼女は…巴マミは強いわ。あなたもこの拘束魔法だけで彼女の強さがわかる…」

金剛「知ったことか!!」ダダダダッ

ほむらの話を遮ると、金剛は結界の入り口のあるビルの中へ一目散に走っていキレ…

ほむら「……どこまでも勝手な男ね!」ダダダダッ

続けて憎まれ口を叩きながらほむらも金剛の後ろを追い掛けていった。

--薔薇園の魔女の結界 通路--
結界の中は一本道になっており、金剛は迷う事無く疾走していく。

ほむら「(この魔女は前回はここにはいなかった…。やっぱり今回は何かが違う。それにしても…)」ダダダダッ

金剛「ちっ!早く追いつかねえと!」ダダダダッ

ほむら「(速い…!魔法少女の身体能力でも離れないように付いていくだけで精一杯だなんて…!)」

金剛「ほむら!付いてくるなら遅れんなよ!」

ほむら「勝手なこと…言わな…」

飛行使い魔「!!」ヒュンヒュン

金剛「!?」ズザーッ

二人が結界の中を走っていると程なくして飛び回る幽霊のような使い魔が現れて行く手を塞ぎ、金剛は思わずブレーキを掛ける。

金剛「(前と違う使い魔か!)」

金剛「オラァ!」ドゴッ ズガッ

金剛が拳や足を振るうと、使い魔は次々と弾かれるように吹き飛んで消えていく。その様子をほむらは目を丸くして見つめていた。

ほむら「(し、信じてなかったわけじゃないけど…実際に目にするとやっぱり驚くわね…)」パンパン

金剛「(鉄なみの硬度の頭に加えて…フワフワ飛んで狙いづれえな。毛玉の奴よりやりにくいぜ)」

何とか襲い掛かる使い魔を蹴散らしていく二人だったが次第に襲い掛かる数が増えていき、捌き切れなくなっていった。

金剛「チッ、めんどくせえ!」ドゴドゴドゴッ

ほむら「(援護したいけど周りの使い魔を撃ち落とすのに精一杯で援護できない…!なんでこんな大量の使い魔が来るのよ!)」ズダダダダダダダダ

金剛「(さっきまでベレッタとデザートイーグルを使ってたのにいつの間にかミニミ軽機関銃に持ち替えてやがる。火器を精製する魔法ってことか?
いや、それより早くほむらを助けねえとな)」

2人は使い魔を迎撃しながら互いの危機を察知し、助けに入ろうとしていた。

金剛「(こんなことになるくらいなら離れて走るんじゃなかっ…)」

ところが………

ザクザクザクザク

金剛「ぐっ!」ガクッ

突然金剛の両足に謎の痛みが走る。下半身を見ると足には数十本の黒いハサミが刺さっていた。

ほむら「金剛!」

金剛「(飛んでる使い魔に気を取られすぎたか…!)」

金剛は予期せぬダメージで膝を突いて体勢を崩してしまい、その隙を突いた使い魔が大挙して押し寄せていった。

金剛「ちっ!」ググググッ

金剛が急いで立ち上がろうとしたその時……

ほむら「(このままじゃ金剛が…!こうなったら!)」フッ

金剛「!?(消え…)」

ドバババババーーーーン

金剛「!?」

数発のほぼ同時の爆発音と共に何かの破片が飛び散り、金剛に大挙した使い魔の半数以上が一瞬で消し飛んだ。

金剛「(一瞬しか見えなかったがあれはたしか…。
以前まで多くの軍隊で使用されていた『M26手榴弾』に代わって現在米軍等一部の軍隊で使われている手榴弾!M26手榴弾と比べて破壊力・殺傷力・効果範囲が大幅に上回っている『M67破片手榴弾』…通称『アップルグレネード』!
ほむらの奴、あんな物まで……ほむらはどこだ!?)」

手榴弾に驚いて失念していたが、金剛はほむらが自分の目の前で「消えた」事を思い出した。

ほむら「危ない!」

金剛「!?」

どこからか聞こえてきたほむらの叫び声と同時に数十体の使い魔が金剛に襲い掛かる。

ほむら「(金剛と使い魔の距離が近すぎてもうアップルグレネードも使えない…!)」

ゴンゴンゴンッ

金剛「ぐっ!」

捌き切れなかった使い魔が次々と頭突きを繰り出すと、鈍い音を立てて金剛へぶつかっていく。

金剛「(き、効く…!)」

ミサイルの直撃すらもほぼノーダメージで耐え切る無敵の肉体を持つ金剛だったが、骨の完治していない今はこの程度の攻撃も連続で喰らえば身体の芯に響くようなダメージとなってしまっていた。

ほむら「小型に気をつけて!」

小型使い魔「○*☆$?!」シュルルル

金剛「!!」ギチギチギチギチ

金剛が頭突きで怯んでいる隙に小型の使い魔数体が合体して黒い蔦に変身し、金剛の身体を絡め捕って地面に押さえ付けてしまった。だが金剛は辛うじて倒れ込まずに膝を突いて耐えている。

ほむら「(まずい!動きを封じられたら次は…!)」

ほむらの予想通り金剛を囲んでいた使い魔数体ずつが合体し、一斉に襲い掛かろうとした。が、その時……

金剛「オォォォォ…!!」ブシュッ ギシギシギシギシ

ほむら「(た、立ち上がった!?)」

金剛は雁字搦めになりながらも足からの出血を物ともせず立ち上がると……

金剛「フン!!」ボンッ ブチブチブチブチ

ほむら「(しかもパンプアップだけで上半身の蔦を…!!)」

金剛「フッ!」ガシッ ブチブチブチブチ

上半身の拘束が解けると続けて下半身の蔦を手で引き千切る。

全身が自由になると両腕を小さく引き……

金剛「苦零?魔神狼(クレイジーマシンガン)!!」ゴガガガガガガガガッ

大型使い魔「!?!?」ボボボボボンッ

両腕で目にも止まらぬ拳の弾幕を張り、金剛を襲った大型の使い魔は纏めて煙のように消え去った。

金剛「(『サソリ番長』…。お前の技を借りたぜ!!)」

金剛「…これで一息ついたな」

ほむら「う…嘘…でしょ…」

人間離れした巨体とはいえ、魔法を使えず武器すら持たない人間(?)が大量の使い魔を身体一つで全滅させる…。自分の理解を超えた金剛の戦闘力にただただ驚愕するしか無かった。

ほむら「(こんなの…ありえない…)」

金剛「思ったより時間を食っちまった」ズボズボズボズボ

金剛は足に刺さったハサミを抜きながらほむらに振り向き……

金剛「行くぞほむら。使い魔が多いみてえだから俺から離れるなよ」ダダダダッ

ほむら「え?ま、待ちなさいよ!」ダダダダッ

話し掛けられてやっと我に帰ったほむらは、慌てて金剛を追い掛けていった。

今日はここまでにします。
次は日曜日までに投下する予定です。

金剛「次から次へとしつけえ!」ドガッ

再び移動を開始してからも度々襲って来る使い魔を排除しながら二人は走り続けていた。

ほむら「(武器すら使わずにパンチとキックだけで使い魔を倒して…筋力だけで使い魔の拘束を解いて…合体した使い魔も一瞬で全滅…。
それに昨日から思ってたけどひどいケガも短時間で治る回復力…。どれも魔法少女と遜色ないと言っていい能力だわ)」

金剛はほむらの前を走っており、彼が正面の使い魔を蹴散らしていたのでほむらは殆ど使い魔を相手にせずに済んでいた。

周辺の使い魔を一掃してから再び走り出す2人。しばらく走ると金剛は分かれ道の前で突然立ち止まる。

金剛「ほむら、あいつらがどっちに向かったかわかるか?結界の中は魔女の匂いがきつくてうまく匂いを追えねえんだ」

ほむら「ええ…。案内するから…あなたは…私の後ろを付い……」ゼエゼエ

金剛「………」ガシッ

ほむら「え?」

金剛はほむらの言葉を遮り、ほむらを右手で鷲掴みにする。そして……

金剛「休んでろ」チョコン

ほむら「な……」///

一言告げて自分の肩の上に乗せてしまった。ほむらは何故か顔を真っ赤にしている。

ほむら「お、下ろして!自分で走れるわ!」バタバタ

金剛「無理すんな。そんなに疲れてたら何かあった時にとっさに動けねえだろ?お前は休んで行き先を指示しろ」

ほむら「そ、それはあなたも同じでしょ!?さっき使い魔に足を刺されたし骨だってまだ治ってないって…」バタバタ

金剛「知ったことか!!」

ほむら「!?」ビクッ

金剛「無理すんなって言っただろ!」

ほむら「で、でもあなただって無理したら…」

金剛「…足はもう出血が止まったから問題ねえ」

ほむら「………」

金剛「それにお前くらいの体重なら俺にとっては綿毛みてえなもんだ。だから気にすんな」

ほむら「……レディーに体重の話を振るなんて失礼な男ね」

金剛「レディーって年か?」

ほむら「ふふっ…さあ、行くわよ」

金剛「おう!」

ほむら「(そういえばさっき魔法を使ったせいで少し『濁った』わね。まあ、これくらいなら大丈…)」

ドクンッ

金剛「……!!」グラッ

走り出そうとした瞬間に突如金剛の身体が揺らぎ、前のめりに倒れかかった。

金剛「くっ…!」

ほむら「だ、大丈夫!?やっぱり私も降りて…」

金剛「少しめまいがしただけだ。気にすんな」

ほむら「……本当に大丈夫なの?」

金剛「身体の丈夫さが取り柄だって言っただろ。先を急ぐぞ」

ほむら「……ええ、わかったわ」

その後も度々襲ってくる使い魔を蹴散らしながら2人は奥へ奥へと進み、やがて最奥部へと辿り着く。

--魔女の結界 最奥部--

金剛「…どうやら間に合ったみてえだな」

ほむら「…そうね」スタッ

扉を開けると大きく開けた空間に2人は辿り着き、そこでは既にマミが降り立って魔女を睨んでいた。
魔女の周囲にはこれまでに出て来た全種類の使い魔が魔女を守るように留まっている。

金剛「あのスライムみてえな身体に薔薇の茂みみてえな顔と蝶の羽を付けた化け物が魔女だな」

ほむら「……やっぱり魔女も見えるのね」

金剛「どういうことだ?」

ほむら「本来は使い魔も魔女も魔法少女かその資質を持つ人間以外には見えないのよ」

金剛「なるほどな。だからこいつらとは魔法少女しか闘えないのか」

ほむら「それがなんであなたには見えるのか気になるけど…今はどうでもいいわね」

金剛「そういうことだ。よし、行…」

ほむら「待って!」ガシッ

金剛「なに?」

ほむら「様子を見ましょう」

金剛「どうしてだ?」

ほむら「彼女は強い。一人でも勝てるわ」

金剛「どうしてそんなにあいつらとの接触を拒む?魔法少女にしたくねえ奴がいるってんならまずは事情を説明して説得なり協力なりしてみりゃいいじゃねえか」

ほむら「………」

金剛「…質問を変えるか。お前が魔法少女にしたくねえ奴ってのはあのピンク髪の奴だな?」

ほむら「!?な、なんでそれを…」

金剛「勘だ。…とは言っても本当はあいつはとっくに魔法少女だと思ってたんだがな。
あいつは俺に似た何かを持ってる気がしたってのが一番の理由だ」

ほむら「………」

金剛「これも勘なんだが…。あのピンク髪は魔法少女になったらとんでもねえ強さになる気がするんだがお前はどう思う?」

ほむら「………」

金剛「答えちゃくれねえか。
仕方ねえ、今はお前の言葉を…コスプレ女の強さを信じてやる」

ほむら「…ありがとう」

金剛「だが俺が危ねえって判断した時はお前がなにを言っても助けに行くからな」

ほむら「…うん」

金剛「(コスプレ女とピンク髪…。ほむらが仲間を拒む理由もこいつらにあるみてえだな)」

マミが足元に漂う小型の使い魔を踏み潰すと魔女が睨み返し、戦闘態勢に入る。マミはそれに全く動揺を見せず、落ち着いて両手でスカートをたくし上げるとスカートの中から二本のマスケット銃が現れて地面に突き立てられ、それらを手に取り応戦態勢を整える。



★魔法少女・巴マミVS薔薇園の魔女・ゲルトルート★

FIGHT!!

ブオン ズゥゥゥゥン

魔女が自分の座っていた巨大な椅子をマミへ放り投げるとマミは後方宙返りで回避し……

マミ「喝ッ!!」ドバァァァァン

ほむら「!?」

着地と同時に両手に持ったマスケット銃を椅子に撃ち込み、跡形も無く消し飛ばしてしまった。
一方魔女は椅子を投げるのと同時に舞い上がって飛行を開始しており、距離を取って隙を窺っている。

金剛「巨体とはいえあのでけえイスを軽々と放り投げるとはやるじゃねえか。だが『剛力番長』に比べりゃまだまだだな」

ほむら「………」

金剛「それにしても…あのマスケット銃はなんだ?まるで砲撃じゃねえか。ほむら、あのマスケット銃も魔法なのか?」

ほむら「………」

金剛「…おい、どうした?」

ほむら「…え?あ、ああ。あれが彼女の攻撃魔法よ。精製した時に込められた魔力の量に比例して威力が変わる銃なの」

金剛「まだ余裕のある顔を見るにまだ本気じゃねえな。全力を出せばこんなもんじゃねえってことか」

ほむら「(おかしい…。おかしいわ…)」

金剛「(それに偶然にも念仏番長と掛け声が同じなのか。奇妙な縁を感じるぜ)」

マミは余裕のある表情を崩さずに被っていた帽子を手に取り、それを横に振り抜くと数十丁ものマスケット銃が同時に出現。ここからはマミの時間である。

マミ「喝ッ!喝ッ!喝ッ!喝ッ!」ズキュン ズキュン ズキュン ズキュン

マミは飛んで逃げる魔女へ射撃を開始するが、魔女は身体をうねらせながら巨体に似合わぬ高速飛行で次々とこれを回避。流れ弾は壁に当たると小さなクレーターを出現させた。

金剛「今度はやたら数が多い上に、威力は数の割に低くねえな。しかも単発のマスケット銃を持ち替えながらの射撃で間隔が1秒もあかねえほどの連射…。
相当の場数や訓練がなくちゃあんな芸当はできねえ。大したもんだ。(だが逆を言えば…そうならざるを得ないほどに戦ってきたってことだ)」

ほむら「………」

金剛「それをあの魔女…でかいのになんてスピードだ」

ほむら「ありえない…ありえないわ…」ブツブツ

金剛「ん?さっきからどうした?」

ほむら「…なんでもないわ」

金剛「………」

今回はここまでにします。
次回は木曜日までに投下を予定しています。

魔女は射撃を蛇行して回避しながら徐々に飛行速度を上げ、準備されていたマスケット銃を撃ち尽くしたのを見計らってマミへ突進してきた。

マミ「(速い…けどこれくらいなら!)」タンッ

マミが一瞬早くステップで体当たりを回避。マミが擦れ違いざまに反撃を試みようとした瞬間……

ゲルトルート「!!」ボッ

ドバァン

マミ「くっ!!」ズシャァァァァッ

ほむら「!?」

魔女の通り過ぎた場所から衝撃波が発生しマミを吹き飛ばした。だが…

マミ「(更に速く…!)」ジャキッ

マミは踏ん張って転倒を防ぎ、咄嗟に体勢を立て直して銃を構える。

金剛「あれはソニックブーム!
魔女の野郎…マミが跳んでそれ以上方向転換できなくなったのを見計らって音速を超える速さまで加速しやがった」

ほむら「(な…なんなのこれ…。ありえない…)」

マミ「どうやらこの程度の手数じゃ当たりそうにないわね。それなら…」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

金剛「(なんだ?あのコスプレ女、急に気配が変わりやがった)」

マミ「これでどう!?はっ!!」バババババババババッ

マミが掛け声と共に右腕を大きく横に振ると、彼女の周囲に数百挺のマスケット銃が出現した。

ほむら「な、なんて数…!」

金剛「これがあいつの本気ってことか。
一発であの威力ならこの数を撃てば下手すりゃ」この場所も危ねえな」

マミ「これなら逃げられないでしょ?
さあ、往生の時間よ!『パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ』!!」

ズドドドドドドドドドドドドドドッ

マミが魔女へ手を翳すと数百挺ののマスケット銃が一斉射撃を開始した!



ドドドドドドドドドドドドドドンッ

ほむら「きゃっ!!」

まるで爆撃の如き轟音が空間内に響き渡り、音がほむらの元へ到達するとほむらは思わず耳と目を塞ぐ。

数十mに拡がったマスケット銃の大群から発射された弾が着弾すると着弾点が木っ端微塵に吹き飛び、爆炎が辺りを焼き払い、破片が弾丸のように弾け飛んだ。
それと同時に……

金剛「!!」スッ バサッ

ほむら「え?」

ほむらに大きな影が覆い被さり、更に……

ブオオオオッ

謎の風切り音と共に……

金剛「フン!!!」ブボッ

金剛の掛け声がほむらの耳に飛び込んできた。

………
………
………

ほむら「……あれ?」

金剛「まるで砲撃の雨じゃねえか。たしかに人間業じゃねえな。さすがは魔法少女ってことか」

銃撃…否、砲撃の雨が止み辺りが静かになるとほむらは呆気に取られ、金剛は学ランを着ながら淡々とマミを分析していた。

ほむら「なんで…?私たち…あれに巻き込まれたはずなのに…」

金剛「俺が防いだ」

ほむら「は????」

金剛「俺が防いだっつってるだろ」

ほむら「…どうやって?」

金剛「扇いでだ」

ほむら「…なんで学ランを脱いだの?」

金剛「学ランで扇ぐためだ」

ほむら「…学ランで何を扇いだの?」

金剛「爆風と爆炎と破片だ」

ほむら「…学ランでどうやって?」

金剛「特別なことはしてねえ。学ランを振り回して遠心力をつけてから全力で振り抜いて風を起こしただけだ」

ほむら「…あなた、魔法は使えないのよね?」

金剛「使えると思うか?」

ほむら「ならどうやったら学ランなんかであんなものを跳ね返すほどの風を起こせるのよ!」

金剛「今説明しただろ!技術的に難しいことじゃねえ!」

ほむら「そういう意味じゃな…いえ、もういいわ…。また頭が痛くなってきた…」

マミ「(これならさすがに当た…)」

シュルルル

マミ「え?」

マミの周りを飛び回っていた小型の使い魔がいつの間にかマミの足元から身体に纏わり付き、金剛を襲った時のように黒い蔦に変化してしまった。

マミ「(しまった…!)」

更に空間に漂っていた煙が激しい突風により払われると、その中から魔女が姿を現した。

ブンッ

マミ「喝ッ!喝ッ!」ズキュン ズキュン

吊るし上げられ振り回されながらもマミは冷静に魔女のいる方向へ攻撃するが、狙いが定まらずに弾が逸れたのか虚しく空を切って地面に落ちていき、着弾点を中心に広範囲にヒビが入った。

ほむら「(巴マミ…!)」

金剛「いけねえ!」シュタッ

耐え兼ねた金剛はとうとう下へ降り立ち…

ほむら「金剛!私も…」

金剛「お前はそこで待ってろ!」ダダダダッ

ほむら「なっ…」

ほむらを残して魔女の元へ向かって行ってしまった。

ブオォォォォン

その後蔦は更に勢いを増し、そのままマミを壁に向けて叩きつけようと大きくしなった。

金剛「(間に合え!!)」ダンッ ガシッ

マミ「!?」

???「あ、あの人(?)は!」

???「黒いハ○ク!」

金剛は間一髪でマミを受け止めたが……

ドゴォォォォン

金剛「ぐおっ!」

ドシャァァァァン

二人はそのまま壁に叩き付けられ、その衝撃で壁は直径10m以上ものクレーター状に陥没。壁がガラガラと音を立て、破片が雨霰のように降り注ぐ。

金剛「(あの蔦…掴んで振り回す速度はかなりのもんだ…。手早く解かねえとなかなか厄介だな…。俺の時は…俺が重すぎて振り回せなかったってことか…)」ガラッ

マミ「あなた…私の拘束魔法をどうやって…!いえ、『そういうこと』ね。わかったわ」

金剛「どういう…意味…」

グンッ

マミ「!?」

???「ああっ!」

???「マミさぁぁぁぁん!!」

ほむら「と、巴マミ!!」

金剛「!!」

会話の最中に蔦は再び動き出し、マミは壁に叩き付けられた時と遜色無い勢いで振り回され、魔女の目の前にぶら下げられるとピタリと動きを止めた。

魔女は勝ち誇るかのようにマミに顔を近付けた。その瞬間…

★金剛番長・金剛晄 参戦 魔法少女・巴マミ&金剛番長VS薔薇園の魔女・ゲルトルート★

FIGHT!!

ドガァン

マミ「!?」

ゲルトルート「!?」ヨロッ

魔女の顔面に「何か」が直撃。あまりの衝撃に魔女の巨体が僅かによろめく。

マミ「(今のうちに…!)」シュル スパッ

この隙にマミは首元のリボンを外すと魔力で硬質化させて刃物と化し、遠隔操作で自身を絡め取っていた蔦を切り裂いた。

???「砲弾!?マミさんの攻撃なの!?」

???「違う!あれだ!」

一人が指を差したその先には……

金剛「オラオラァ!!」ブンッ ブンッ

自分が叩き付けられて崩れた壁の破片を魔女へ投げつける金剛の姿があった。

ゲルトルート「!!!」ヒュンヒュン

金剛「ちっ、バカでけえのにすばしっこいじゃねえか」

???「あのでっかい破片…どう見てもわたしたちの胴体くらいの大きさはあるよね…」

???「それを目に見えないスピードで投げてる…。なんだよあの化け物…」

金剛「オラオラオラオラ!!」ブンブンブンブン

ゲルトルート「!!!!」フワッ

魔女は金剛の投石を回避しつつ再び舞い上がろうとしたその時……

マミ「巨人さんのせいで格好よくキメるタイミングを逃しちゃったけど…」

スルスルスルスル

地面のヒビから何故か静かにリボンが上に向かって伸びてきた。次第にヒビが広がって伸びてくるリボンが増え……

マミ「待たせたわね!」

ビキビキビキビキ バァァァァァァァァン

ほむら「!?」

シュルルルルルルル ギチギチギチギチ

地面を突き破って昇る大瀑布となったリボンは空間内にいた魔女と使い魔全てを飲み込み、それぞれを繭のように包み込むと……

マミ「これで一網打尽ね。無駄撃ちしなくて済むわ」

空間内は誰もいなくなったかのように静かになった。

金剛「(振り回された時に撃った2発は『外れた』んじゃなくて『外した』のか。これのための布石だったわけだ。戦術も並じゃねえな。
しかもあれほど大規模な魔法にもかかわらず俺だけ束縛を避けるとは魔法のコントロールもなかなかのもんだ)」

ほむら「こんなの知らない…見たことない…。私の知ってる巴マミじゃない…」ボソボソ

金剛「(しかもあんな大量のリボンで埋め尽くされたら誰も逃げられねえな。それに中で動いて抵抗する音も聞こえねえってことは全く動けねえほど完璧に固めちまってるってことだ。
あれは万全な状態の俺でも素のままじゃ抜けるのは難しいな)」

マミ「惜しかったわね。もう少しでトドメを刺せたかもしれないのに。でも…」

金剛「(コスプレ女の気配が変わった!来る
…絶対の自信を持つ『何か』が!!)」

マミ「これで終わりよ!!」

リボンを手に取って振り回す。するとリボンがどんどん伸びて渦を巻き、それまで使っていた物の数倍のサイズのマスケット銃に姿を変えた。その大きさは最早銃ではなく、砲と言った方が相応しい程である。

マミ「そこの巨人さん。そんなに近くにいたら……」

金剛「ん?」









マミ「命の保証はできないわよ」

金剛「……!?」

マミ「あの世は年中無休よ。行って私と戦った愚かさを後悔するがいいわ…………」

魔女が包まれた繭に銃口…否、砲口が向けられると別れの言葉と共に巴マミ最大最強の一撃が放たれる!!








マミ『ティロ・フィナーレ!!!!』カッ






ドガァァァァン

着弾点から何本もの閃光が奔るとその後の爆風と衝撃波が魔女の周囲にいた使い魔を消し飛ばしてしまい、爆風が空間全体を包み込んだ。

ほむら「(つ…強い…。この巴マミは強すぎる!!)」」

マミ「……ふう」

空間の端から煙が晴れていくと次第に着弾点の様子が見えてくる。
そこにはまるで隕石が落下したかのような巨大な窪みが姿を覗かせた。

???「やったぁ!」

???「(マミさん…かっこいい…)」

三人はマミの勝利を確信し、マミ本人も緊張を解いた。その時だった。

ゴアッ

マミ「…!!」

爆煙の中から上へ飛び出す巨大な物体。それは勿論……

ゲルトルート「!!」フワッ



マミ「嘘…。私の…ティロ・フィナーレが…」ガクッ

全身に裂傷や焼け爛れた痕があり動きが若干鈍ってはいるものの、それを意に介する様子も無く空に浮く魔女を見て膝が崩れるマミ。

マミ「(もうティロ・フィナーレは撃てない…。私は…勝てない…)」

ゲルトルート「!!!!」ヒュン

それを好機と見たのか、魔女は止めと言わんばかりにマミへ向かって突進を開始した。

???「マミさん!」

???「逃げてぇ!」

マミ「(ダメ…逃げられない…)」

逃げるどころか最早立ち上がる時間も無い。
本人すらも回避を諦めていた…が、一人はマミが諦めるより早く動いていた。

今日はここまでにします。
次は日曜日か月曜日までにと予定しています。

そういえば七つの大罪のキャストが発表されましたが、メリオダスとキングの声が個人的にあんまりイメージに合わないなーと感じた今日この頃…。

マミの良さが全く見えてこないな だいたい魔女の近くに縛っておいてたら殺されるかもしれないのに
ばっかじゃないの

>>136
メダリオスは確かにイメージと違った。キングはおっさん姿の時にどう変わるかでまた印象が変わってくると思う。
バンはビックリするほどマッチしてた

そんな事言ったらほむらだって驚いてるだけで棒立ち
いる意味分からんし

原作でもマミの良さなんてなかっただろいい加減にしろ!

>>137
言っている意味がよく分かりません

>>138
福山潤に変態モードのおっさんの演技ができるのか気になるところです

>>139
ほむらは「あまりにも衝撃的な事が目の前で起こり過ぎてどうしたらいいか分からなくい状態になっている」というのを表現したかったんですが、上手く表現できませんでしたね。すみません。

>>140
それはよく聞く話ですが、マミってそんなに太ってるかなぁと個人的には思います。ほむらと杏子は(相応の理由があるとはいえ)否定できねぇw

>>143
難癖つけたり発言の粗探しして叩くのが目的でコメントするのもいるからあえて応えたいと思うの以外はこの書き込みも含めてスルーを推める。

>>145
了解です。助言ありがとうございます。

ーーーーーーーー
後に巴マミは当時の状況をこう語る。

マミ「恥ずかしながらあの時はティロ・フィナーレで魔女を倒せなかったことにショックを受けすぎて身体が言うことをきかなくなったんです。あれで倒せないとなると魔力を使いすぎた私にはもう有効なダメージを与える手段がなかったものですから。でも巨人さんは……」
ーーーーーーーー


ドスッ

マミの眼前に飛び降りた金剛はその勢いを利用して地面に足を突き刺し身体を固定。そして……

マミ「(きょ、巨じ…)」

ズドン ブワァァァァッ

マミ「きゃっ!」ゴロン

衝突音が鳴り響いたかと思うと続け様に突風が発生し、マミはひっくり返って後ろに転がってしまう。

マミ「(痛たたた…。な、なにが起こ…)」

起き上がりながら転がって来た方向へ目を向けると……

マミ「う…」

ほむら「受け止めてるーーーー!?」

金剛「がはっ!」

魔女を受け止めた金剛は、受け止めたダメージによって吐血するが……

金剛「お…おおお…」メキメキメキメキ

マミ「(しかもそのまま持ち上げて…)」

金剛「おおおお!!!」ゴワッ

ドガァァァァン

ゲルトルート「……!!」ガラガラガラ

ほむら「(ブレーンバスターで投げ落とした!?)」

ゲルトルート「!!!」バタバタ

投げ落とされて仰向けに倒れた魔女は反転して起き上がろうとするが、金剛は……

金剛「フッ!」バンッ

マミ「(巨人さんが今度は跳び上がった!まだなにかする気なの!?)」

金剛「斧王流印爆屠(フォール・インパクト)!!!!」ズンッ

ゲルトルート「!?」メコッ

マミ「」

羽ばたこうとする魔女の脳天に黒鉄色に染まった左の拳鎚を打ち下ろし……

金剛「血鋭芻鞭怒羅武(チェイス・ペンデュラム)!!!!」ドズッ

左の拳鎚の上から更に右の拳鎚を叩き付ける!!

ゲルトルート「!!?」ゴキャッ

バコン

ほむら「」

金剛「(剛力番長…お前の技を借りたぜ!!)」スタッ

???「す…すごい…。あんなに体格差があるのに魔女を放り投げて…」

???「ハンマーパンチの二連撃で魔女が地面にめり込んだ…。魔女よりあいつの方がよっぽど化け物じゃん…」

ーーーーーーーー
マミ「魔女は地面にめり込んだまま痙攣してほとんど動かなくなりました。
信じられますか?自分の何倍も大きい相手を素手で…というか生身で叩き伏せるんですよ?まるで特撮映画でも見ているような気分でしたよ」
ーーーーーーーー

ほむら「(ど…どういうこと!?使い魔ならまだしも魔力の込められた武器でないと魔女に有効なダメージは与えにくいはずなのに…!)」

マミ「ど、どうして!?私のティロ・フィナーレさえものともしない魔女の身体に…素手で…!」

金剛「俺の拳骨はティロ・フィナーレより痛てえ!!それだけだ!!!」

ほむら・マミ「え"ーーーーーーーー!!!?」

???「さやかちゃん!ミサイルみたいな威力のティロ・フィナーレより痛いゲンコツってなに!?」

さやか「知らねーよ!てゆーかあたしに聞くなよ!」

金剛「…だがまだ倒しちゃいねえみてえだな。なかなか頑丈な奴だ」グイッ

金剛は口周りの血を拭いながら魔女を睨み付け…

金剛「それなら…」スッ…

魔女の生存を確認するなり静かに両腕を上げていく。

金剛「おい、お前」

マミ「わ、私?」






金剛「下がってろ」

マミ「…!!」ゾクッ ザザザザッ

ーーーーーーーー
マミ「ビルから女性が飛び降りた時と同じで本能が呼びかけてくれたんですよね。でも前と違ったのは今回は『怖かった』っていうことです。
直感したんですよ。『今、この人の前に出たら死ぬ』って。この時ばかりは尻もちを突いたまま慌てて下がっちゃいました。
そして私が下がったのを確認した巨人さんの身体に変化が起こったんです」
ーーーーーーーー

金剛「オオオオ………!!」メキメキ

ほむら「(高く掲げた両腕が筋肉の膨張で何倍にも大きく…!)」

マミ「(しかもその両腕が黒鉄色に染まっていく…!)」

ーーーーーーーー
マミ「ぱっと見ですけど片腕の太さが胴体と同じくらいに見えました。筋肉ってあんなに膨らむものだったんですね(笑)
巨人さんが異常に変化した両腕をそのまま後ろに引き、それを鬼のような怖い目つきで前に突き出しながらこう叫んだんです」
ーーーーーーーー

金剛「打舞流叛魔(ダブルハンマー)ーーーーーーーー!!!!」ボッ

カッ ドゴオォォォォォォォォン

マミ「ッ!!」

ーーーーーーーー
マミ「両腕を突き出した時に『ボッ』って変な音が聞こえました。あれは多分、パンチの速度が音速を超えた音だと思います。あの不自然な構えから音速を超えるパンチを打てるなんて…やっぱり信じられません。
…で、それが魔女に当たった瞬間に光ったような気がしたと思ったら前方に巨大な衝撃波が発生しました。
その衝撃波は…なんて言えばいいのかしら…。とにかく巨大で…凄まじい威力。そうとしか言い表せられませんでした」
ーーーーーーーー

ほむら「(…あれ?魔女が…)」

マミ「(あのパンチが当たった瞬間に魔女が…消えた?逃げたの?)」

ほむら「(いえ、逃げたんじゃない…。『消し飛んだ』んだ…!なんて威力なの!?)」

マミ「(私のティロ・フィナーレとは比べ物にならない!!)」

グニャァァァァ

マミ「(これは…!)」

ほむら「(余波で結界が歪…)」

ドドドドドドドド バリィン

マミ・ほむら「え?」

ーーーーーーーー
マミ「魔法少女になってから始めて見ましたよ。結界が『破れた』んです。巨人さんが打舞流叛魔とかいう技で結界を破壊したんですよ。
そういえばこの技って名前は英語なのになぜか漢字が思い浮かんだんですよね。暴走族がチームの名前に使ってる当て字…みたいな?なんでかしら。…話が逸れましたね。
とにかく結界が壊れるなんて話は聞いたことがありません。仮に壊せてもそれにどれほどのエネルギーが必要なのかなんて想像もできないですよ…。
それを物理的な力だけで生み出せるなんていまだに信じられません!はっきり言って魔法少女より非常識ですよ!
…はっ!つい興奮してしまいました…すみません…。
……でもそれだけじゃ終わらなかったんです。打舞流叛魔の衝撃波は結界を突き破って外にまで『貫通』したんですよ」
ーーーーーーーー

--結界のあった廃ビル 屋内--

ドバーーーーン パラパラパラパラ

打舞流叛魔の衝撃波はビルの壁を消し飛ばして空へ飛んで行き、雲を掻き消して空へ消えていった。

ほむら「(あ、危なかった…)」

マミ「(衝撃波がたまたま窓の外に向かって飛び出して助かったわ…。でももし衝撃波が内側に向いていたら…)」

ほむら「(ビルが崩壊して…私たちは瓦礫の下敷きに…)」

マミ「(な…なんて強さ…!)」

ほむら「これが…番長…!!」

金剛「スジは通したぜ!!」

★金剛番長 WIN!!★

カラン カラン

金剛「ん?これは…」ヒョイ

金剛の目の前に宝石らしき謎の物体が転がり落ち、それを金剛が拾う。

マミ「やっぱり『それ』が目的だったのね…」

金剛「これはお前にとって大事なものなのか?」

マミ「…『グリーフシード』を知らないの?」

金剛「知らん」

マミ「……私だけじゃない。全ての魔法少女にとってなくてはならないものよ」

金剛「全ての魔法少女?これはなんだってんだ?」

マミ「それはお仲間に聞きなさい。
あの魔女はあなたが倒した。だからそれはあなたのものよ。わかったらそれを持って早く行きなさい」

金剛「いらん」ヒュン

マミ「っ!」パシッ

金剛がグリーフシードを投げるとマミは驚いて反射的にそれを受け止める。

マミ「…これはなんのつもり?情けならお断りよ」ヒュン

金剛「言葉のままだ」ビシッ

マミ「!?」パシッ

金剛「俺には必要ねえ。お前が持ってろ」

金剛はマミが投げたグリーフシードを受け取らずに指で弾き返した。

マミ「…何を企んでいるの?」

金剛「何も企んでねえ。俺のいらねえものを必要としてる奴がいるならそいつにやるってだけのことだ。じゃあな」スタスタ

マミ「ちょっ…ちょっと!」

???「…キュゥべえ、あの人(?)は何者なのかな?」

キュゥべえ「………(クレーターができるほどの勢いで叩きつけられても音速を超える巨大な魔女の体当たりを受けても戦闘を継続できる耐久力…。
その巨体を持ち上げて投げ落としたり地面を陥没させるほどの威力で叩き伏せる筋力…。
その魔女を一瞬で跡形もなく消し飛ばした上に同時に結界まで破壊する膨大なエネルギー…)」

まどか「…キュゥべえ?」

キュゥべえ「(魔法少女の中でもあれほどの耐久力と結界を単独・一撃で破壊できる力を持っていたのは、記録によればかつて人間から『乙女(ラ・ピュセル) ジャンヌ』と呼ばれていた魔法少女…『タルト』だけだ。
しかもその攻撃力は膨大な魔力の消費という代償を伴ってのもの。彼は魔法少女でもないのに代償なしでそれをやってのけた。もしかしたら戦闘能力だけなら彼女を超えている可能性もある。
最初は聞くに値しない空想だと思っていたけど、どうやらこれは『あの男』の話を詳しく聞いてみる価値があるようだね)」

???「キュゥべえってば!」

キュゥべえ「ああ、ごめんよまどか。ちょっと考え事をしていたんだ。なにか用かい?」

まどか「あの人(?)は何者だろうって聞いたんだけど…」

キュゥべえ「残念ながら僕は君の満足する答えを持ち合わせていないよ。正直言って僕が知りたいくらいだ」

まどか「そっかぁ。でもマミさんを助けてくれたんだし悪い人(?)じゃないよね、きっと」

キュゥべえ「それは早計だよ、まどか。現時点では敵対の意思はないようだけどこのあと彼がどうなるかは誰にもわからないよ」

まどか「そうかなぁ。わたしはそんなことないと思うんだけどなぁ」

キュゥべえ「…君は少しは人を疑うことを覚えた方がいいと思うよ」

--結界のあった廃ビルの外--

結界のあったビルを後にした金剛。歩き始めて間も無く……

ほむら「金剛番長!」

金剛「ほむら、外にいたのか…っていきなり番長なんて付けてどうした?」

ほむら「そ、そんなのどうでもいいじゃない!」

金剛「…そうだな」

ほむら「(一応あなたに敬意を表してのことなんだけど…。直接聞かれたら恥ずかしくなってごまかしちゃった…)」

金剛「(こっちでも同じ名前で呼ばれることになるとはな。不思議なもんだ)」

ほむら「それよりも!」

金剛「ん?」

ほむら「魔女の体当たりを受けた時に血を吐いてたけど大丈夫だったの!?」

金剛「ああ、見てのとおりだ」

ほむら「……そう。それならいいわ。じゃあもう一つね」

金剛「今度はなんだ?手短かに頼むぜ」

ほむら「さっきの技のことよ!なによあれ!」

金剛「ああ、あれは膨張させた腕の筋肉を硬……」

ほむら「技の説明なんていいわよ!一歩間違えたらあのビルが私たちの墓標になってたじゃない!あんなことができるなら先に言いなさいよ!」

金剛「お前こそ結界は壊れるもんだって先に言え」

ほむら「普通は壊せないのよ!」

金剛「そういうもんか。あの程度で結界が壊れちまうなら力加減がうまくできるようになるまで打舞流叛魔は打たねえ方がいいな」

ほむら「最初から素直にそう言えば………」

金剛「悪かったな」

ほむら「は???」

金剛「ん?」

ほむら「今…なんて言ったの?」

金剛「ちゃんと人の話を聞け。これからは力加減…」

ほむら「その前よ!」

金剛「『あの程度で結界が壊れちまうなら』って言ったんだ」

ほむら「………」

金剛「………」

ほむら「…あの破壊力で『あの程度』?全力じゃなかったの?」

金剛「だいたい六・七割ってとこだ。弱ってる奴にならそんなもんでいいと思ったんだがもっと抑えた方がよかったんだな」

ほむら「………」

金剛「………」






ほむら「ありえねーーーーーーーー!!!」

金剛「なにがだ」

ほむら「その力がよ!!」

金剛「ありえないも何も自分の目で見ただろ。なに言ってんだ」

ほむら「六・七割って言ってたけど実は全力だったのを見栄張ってたんじゃないの!?」

金剛「見栄を張る意味がねえだろ」

ほむら「あなた本当は魔法を使えるんじゃないの!?金剛類って実は魔法使いだったんじゃないの!?」

金剛「そんなわけねえだろ。少し落ち着け」

ほむら「だったらその身体とあの破壊力はなんなのよ!ただ強いってだけじゃ説明できないでしょ!」

金剛「知るか!!」

ほむら「………」

金剛「………」

ほむら「もういいわ…。あなたのことを聞いてると疲れる…」

金剛「だったら聞くな」

ほむら「誰のせいよ!誰の!」

金剛「お前から聞いてきたんだからお前のせいに決まってんだろ」

ほむら「頭が痛くなってきたわ……」

金剛「風邪か?魔法少女でも風邪はひくんだな。季節の変わり目は風邪をひきやすいから気をつけろよ」

ほむら「風邪と違うわい!!」

金剛「口調が変わったな」

ほむら「はぁ…もういいわ…。じゃあね…」

ツッコミ疲れてどんよりとしたほむらは諦めて帰る事にしたが…

金剛「おう。闘いがあるなら無理しねえで俺を呼べよ」

ほむら「……ありがとう。また…明日ね」ニコッ

最後には笑顔になり、二人はそのまま別れて家路に着いていった。

金剛「(ほむらにはああ言ったが…たしかにさっきの打舞流叛魔は強すぎた。どうなってんだ?
今思えばこっちの世界に来てからは回復が遅かったり荒殴零猛怒の持続時間が極端に短くなってたり俺の身体に『なにか』が起こってやがる。
できれば原因を確かめてえがその手段もねえ。それに今はほむらを助けるのが先だ。しばらくは様子見するか)」

ほむらは家路を急ぎながらその日の事…特に金剛の事を思い返していた。

ほむら「(はあ…。落ち着いた今でもまだ信じられないわ…。
私が今持っている武器でもあれほどの威力の物はない。なのに全力ならそれよりももっと強いだなんて…。
でもあの力なら…金剛番長がいれば…誰も犠牲にならずに済むかもしれない…。『あの魔女』だってきっと…!)」

今までは無明の闇の中を手探りで進むような終わりの見えない闘いを繰り返してきたほむら。
しかし、今は彼がいる。常識も道理も物理法則すらも通用しない漢が。立ち塞がる敵を不死身の肉体と魔を滅する拳で屠り去る超生物が。
その彼が自分の為に闘ってくれるのだ。
ほむらは金剛の存在に一筋の光明を感じずにはいられなかった。

ほむら「(やっと見つけた希望の光…。今度こそまどかを…。ううん、まどかだけじゃない。誰一人欠けさせないわ!
ここで終わらせてみせる…。私の長い夜を!金剛番長と共に!!)」




一方、二人の様子を遠くから見つめていた影が一つ。

????「フォフォフォフォフォ……」

その影は不気味な笑い声と共に夜の帳の中へ消えていった。

☆2撃目!! END☆

今回はここまでにします。
次回は今週中には……。

アニメの七つの大罪はどこまでやるんだろうか?どのエピソードで終わっても半端な気がします…。

☆3撃目!! 激情の炎!!☆

--翌朝 廃ビル--

この日の見滝原中学校は休みだったので、ほむらは朝から金剛の住処を訪れていた。

ほむら「じゃあ前に言っていた今後のことについての話し合いを始めるわよ」

金剛「その前に一つ質問してえんだがいいか?」

ほむら「ええ、答えられる範囲でならね」

金剛「魔法少女ってのはみんなコスプレ女みてえなすげえ力を持ってるのか?」

ほむら「……いいえ。魔法少女の能力は魔法少女としての資質と叶えた願いによって大きく異なるわ。
私の知る限りではあの子は魔法少女の中でもとても強い部類ね。そして私は…どの魔法少女よりも弱い。(だけど…それでも巴マミのあの強さはあまりにも…)」

金剛「弱いって割にはずいぶん戦い慣れてるな。それに武器を精製する魔法なんて充分すげえじゃねえか」

ほむら「あれは精製してるんじゃなくて取り出してるの。
左腕の盾は無限の広さの倉庫みたいになっててね。これに色々な武器を収納してるの。
戦い慣れてるのは…人一倍経験を積んだってだけの話よ」

金剛「なるほど。攻撃能力がないのをその魔法で補うってわけか。ビルに大量の物を持って来たカラクリもそれだったってことだな。
でもお前の魔法はそれだけじゃねえな?でなきゃ使い魔の大群に襲われた時にお前が俺の目の前から消えた理由が説明できねえ。少なくとも高速移動じゃねえだろ」

ほむら「それは秘密よ。答えられないわ。でもまあ…一つ教えてあげられるのはあなたの言うとおり高速移動じゃないってことだけね」

金剛「……そうか、わかったぜ。ありがとよ」

ほむら「…それじゃあ遅くなったけど今後のことを話し合いましょう」

金剛「おう」

………
………
………

ほむら「……だいたいこんなところかしら」

金剛「要点をまとめると『極力三人との接触は避ける』『しばらくは情報収集を中心に活動』『使い魔や魔女が現れたら逃がさないように追跡又は排除』『約一ヶ月後の大規模な戦いに備える』ってことだな」

ほむら「ええ、理解が早くて助かるわ。でも少し訂正するとその接触を避けるのはその三人だけでなく『他の魔法少女』ともね」

金剛「………」

何か言いたげに金剛は無言のままほむらを見つめる。

ほむら「まだ何か気になるみたいね」

金剛「…いや、なんでもねえ」

ほむら「言いたいことはわかるわ。申し訳ないとは思ってるけど…今はまだ話すわけにはいかないのよ」

金剛「小せえことは気にするな。無理矢理聞く気はねえからよ」

ほむら「でもこれだけは覚えておいて。私はあなたを…信じてるから」

金剛「ああ、その言葉だけで充分だ。催促したみてえで悪かったな」

ほむら「いいえ。私こそ…感謝するわ」

この日から数日間ほむらは単独行動を取っていた。
その間金剛は夕方から夜にかけて市街地を回り、魔女や使い魔の痕跡を追い掛ける事にしていた。金剛曰く「近くなれば匂いでわかる」との事で、ソウルジェム無しでも探す事が出来ると判明したからだ。
しかし魔女は一向に見つからずに専ら使い魔退治となっており、金剛はほむらに負担を掛けないように使い魔を発見したらほむらには連絡せずに一人で殲滅する事を心掛けていた。

余談ではあるが、暗くなる時間帯が多いとはいえ街中に入ると金剛の巨躯と学ランはあまりにも目立ち、巷では「三本角の鬼」「日系ハ○ク」など日毎に様々な通り名で噂されるようになった。
これが後にちょっとした騒動の発端になるのだが、それはまた別の話。

特に大事も起こらず2人が話し合った日から4日が過ぎた日……

--夜 公園--

使い魔を退治して一息吐いていた金剛。木陰でしばし腰を下ろして休憩がてら考え事をしていた。

金剛「(ここ四日、ほむらは目立った行動は取ってねえ。何日後だかにある大規模な戦いに備えるとか言う割に静かすぎる。それに三人との距離の置き方…。どうも気になるな)」

考え事をしているうちに気付けば夜がすっかり更けていた。

金剛「(だいぶ遅くなっちまったな。そろそろ帰…)」

ほむら「わかってるの?」

金剛「(ほむら?どうしてこんな場所に…。それに話し相手は…)」

噴水広場の方向からほむらの声が聞こえてきた。どうやら誰かに話し掛けているらしい。
金剛は二人に気付かれないように静かに移動し、聞き耳を立てて二人の会話を聞く事にした。

ほむら「あなたは無関係の一般人を危険に巻き込んでいる」

マミ「彼女たちはキュゥべえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」

金剛「(キュゥべえ?初めて聞…今、『選ばれた』っつったな。そのキュゥべえってのが魔法少女の素質がある奴を見定められるってことか)」

ほむら「あなたは二人を魔法少女に誘導している」

マミ「…それが面白くないわけ?」

ほむら「ええ、迷惑よ。…特に『鹿目まどか』……」

金剛「(鹿目まどか…あのピンク髪の名前か?)」

マミ「……ふぅん、そう。あなたも気付いてたのね。あの子の素質に」

金剛「(やっぱりあのピンク髪はすげえ素質があったのか。だが…)」

ほむら「彼女だけは…契約させるわけにはいかない……!」

マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?いじめられっ子の発想ね」

ほむら「………」

金剛「(ほむらがらあんなに必死になる理由がそんなものなわけがねえ。必ず他の理由がある!)」

マミ「私がこないだ魔女と戦っていた時に遠くから見学していたのはちょっかいを出すため?それともグリーフシードを横取りするためかしら?どちらにしてもコソコソしてるのは気の小さい証拠ね」

ほむら「!!……気付いていたのね」

金剛「(なに!?戦闘中にあの距離からほむらに気付いただと!?)」

マミ「気付かないとでも思っていたの?こんなの魔法少女なら誰でもできることよ……とは言ってもあなただと確信したのは今だけどね。
その程度のことで驚くようじゃたしかにライバルが増えたら大変よね」

ほむら「(くっ…)。あなたは金…あの巨人に助けられてなんとも思わないの?」

マミ「助けてもらったことには一応感謝してるわ。だけど魔女よりも遥かに強い上に正体も目的もわからない人に心を許すわけにはいかないのよ。もし心を許してあんなのに後ろから襲われたらひとたまりもないからね」

ほむら「………」

マミ「私には責任があるの。鹿目さんや美樹さん、そして見滝原の人を守る責任がね。
利己的なあなたには理解できないかしら?」

ほむら「……ッ!!」カッ

突如ほむらの気配が変わり、今にも襲い掛からんばかりの鋭い目付きになった。だが…

ほむら「……あなたとは戦いたくないのだけれど」ファサ

昂ぶった感情を抑え込むかのように髪を掻き上げながら物静かな口調で言葉を紡ぐ。

マミ「…ならもう二度と会うことの無いように努力して。話し合いだけで事が済むのは…きっと今夜で最後だろうから」クルッ スタスタスタスタ

マミはそれだけ言い残すと踵を返し、静かにその場を去って行った。

金剛「(交渉決裂、か。だがあんな調子で話したら素直に聞き入れるのは難しいな)」

ほむら「ッ!!!!」ギリギリギリギリ

またしてもほむらの様子が変わった。今度は上を向いて歯噛みしている。

ほむら「何も知らない癖に…何もわかってない癖に…!!」

金剛「(やっぱりあいつと過去に何か…)」

ほむら「ああああああああああああ!!!!」

金剛「!?」

ほむらは突然叫び出した。ひたすら叫び続けた。その叫び声は身を砕かんとする怒りを…心を押し潰さんとする悲しみを焼き尽くそうとするかの如く激しく荒々しい声だった。

金剛「ほむら!!」ダッ

ほむら「ああああああああああああ!!!!」

金剛「ほむら!しっかりしろ!」ガシッ

ほむら「!?」

金剛が肩を掴むと、ほむらは時が止まったかのように静かになった。

ほむら「………」

金剛「……落ち着いたか?」

ほむら「金剛…番長…」ギュッ

ほむらは喋り出すなり顔を伏せながら金剛の身体に抱き付く。

ほむら「どうか…あなただけは…いなくならないで…」

金剛「あたりめえだ。お前を助けるって言った以上、スジは通す。何があっても絶対にだ。だから心配すんな」ナデナデ

ほむら「金剛番長…!」ブワッ

ほむらの頬を涙が伝い、嗚咽を漏らしながら金剛に縋り付く。
金剛はほむらの涙が止まるまで静かに待ち続けた。

--深夜 廃ビル--

ほむらが泣き止むと金剛はほむらを連れて寝所へ戻った。戻るなり直ぐにほむらをベッドの上に乗せ……

金剛「今日はここで寝ろ」

ほむら「うん……」グスン

一言だけ会話を交わすとほむらは数分の内に眠ってしまった。
金剛は眠るほむらをベッドの横で見守りながら先刻のほむらの異変の事を考える。

金剛「(名前に違わねえ感情の爆発だったな…。
マミとの間にあった何かがほむらの心の傷になってるんだな。まどかって奴がその鍵…。
色々と詳しすぎるのもそうだが…この先何が起こるのかわかっているかのような言動…。まさかほむらの奴……)」

--翌早朝--

金剛「ん?もう朝か」

ほむらの事だけでなく、自分の世界の事やこれからの事を色々と考えている内に夜が明けてしまった。
朝日に照らされて明るくなった室内で、深い眠りに入っているほむらをゆっくりと覗き込む。

金剛「(こんなに明るいってのによく眠ってやがる。昨日のあれで相当疲れたみてえだな)」

ほむら「…金剛…」

金剛「(ん?…寝言か。
…そういやカーテン閉め忘れてたな。今からでも閉めとくか)」

金剛がカーテンに手を掛けようとベッドの上を通って手を伸ばした時……

ほむら「ん……」モゾモゾ

ほむらが目を覚ましてしまったようだ。

金剛「わりいな、起こし…」ヌッ

ほむら「きゃああ!!」バキッ

金剛「……いきなりご挨拶だな」

ほむら「痛った…拳が…。どれだけ硬い顔してるのよ…じゃなくて!目が覚めた時に目の前に人の顔があったら誰だってびっくりするでしょ!」

金剛「だからって殴るか?」

ほむら「そ、それは…悪かったわよ…」モジモジ

金剛「ん?今なんて言った?」

ほむら「なんでもないわよ!」

金剛「………(この様子だととりあえず昨日のことは引きずってねえようだな)」

金剛「とにかくだ。まだ学校には早えしもうひと眠りするか?」

ほむら「…ない」

金剛「ん?」

ほむらがうつむきながら呟いている。先程とは明らかに様子が違っていた。

ほむら「今日は…行きたくない」

金剛「………」

ほむら「今日はここにいさせて…お願い…」

金剛「…ああ、いいぜ。ただしちゃんと自分で学校に連絡しとけよ」

ほむら「うん…。ありがとう…」

--一時間経過--

金剛「………」

ほむら「………」

--二時間経過--

金剛「………」

ほむら「………」

--三時間経過--

金剛「………」

ほむら「………」

金剛はベッドの横で座り込み、ほむらはベッドの上で上半身を起こし、二人は顔を合わせる事も無く無言のまま時を過ごしていた。

金剛「おい、ほむら」

しかし、その沈黙を金剛が破る事となった。

ほむら「……なに?」

金剛「俺が起こしちまったせいであんまり寝てねえだろ。無理して起きてねえでもう一回寝とけ」

ほむら「……やだ」

金剛「なんでだ?」

ほむら「今度寝て起きたらあなたがいなくなってしまう気がして…不安なの…」

金剛「余計な心配はすんな。俺はいなくなったりしねえ」

ほむら「でも…!」

金剛「そんなに心配なら手錠でもかけとくか?」

ほむら「あなたには手錠どころか鎖で全身を縛り付けても意味がなさそうだけどね…」

金剛「ならどうすりゃいいんだ?」

ほむら「……じゃあ……ベッドの中に手を入れて」

金剛「?」

ほむら「早く!」

金剛「…おう」ズボッ

金剛はほむらの意図が分からず、言われるままにベッドに手を入れてみると……

ほむら「………」モゾモゾ ギュッ

金剛「ん?」

ほむら「……おやすみ」

金剛「お、おい…」

ほむら「………」zzz…

金剛「…仕方ねえ、我慢するか」

ほむらはそのままベッドに入り、金剛の手を握ると直ぐに眠りに入ってしまった。

--午後三時半 同場所--

金剛「(ん…。居眠りしちまったか…。ほむらは…まだ寝てるな)」

一晩中考え事をしていたせいで一睡もしていなかった金剛はうたた寝してしまったらしい。気付くと時計は正午を大きく回っていた。

金剛「(仲間はいらねえって強がってはいても心のどこかでは仲間を求めてんだな。この矛盾がほむらを苦しめてるってことか。なんとかしてやりてえが…根本がわからねえとどうにもならねえな)」

ほむら「!?」ガバッ

再びほむらの事を心配していると、ほむらが飛び出しそうな勢いで跳ね起きる。

ほむら「しまった…今日はたしか…!」

金剛「ん?起きたか。朝飯も昼飯も食ってなかったし今からでも何か軽く腹に…」

ほむら「今何時!?」

金剛「…午後三時半だ。どうかしたか?」

ほむら「迂闊だったわ…!」

金剛「いったい何のこと…」

ほむら「ゆっくり食べてる暇はないわ!私について来て!」

金剛「…なにかあったのか?」

ほむら「いいから早く!」ヒューン スタッ

ほむらは階段を使わずに窓から飛び降りてショートカットを行った。

金剛「あの慌てよう…普通じゃねえな」ヒューン ズダンッ

金剛も同じく窓から飛び降りてショートカットを行い、ほむらの後を追い掛けた。

ほむら「(おそらくこの後…。急がないと…!)」

金剛「ほむら!なにがあるってんだ!」

ほむら「行けばわかるわ!話しかけないで!」

金剛「(この慌てよう…なんだってんだ?)」

ほむら「(もっと…もっと急がないと…!)」

ほむらは一心不乱に走り続け、更に加速していく。同時に血相も悪くなっていき、心の中で声を張り上げた。

ほむら「(手遅れになってしまう!!!!)」



--3撃目!! END--

今日はここまでにします。
駆け足だったけどなんとか日付が変わる前に終わらせられた…。

アニメ七つの大罪スタートまであと一週間を切りました!楽しみで身悶えするぜ!

☆4撃目!! 強すぎる漢!!☆

--午後四時 病院 駐輪場--

ほむら「(間に合った…!)」ピタッ

金剛「(あれは…)」

目的地に到着したほむらは足を止める。追い付いた金剛がほむらの視線の先を見ると病院の壁に怪しげなヒビが入っていた。

金剛「…魔女の結界の入り口か」

ほむら「ええ、しかも孵化寸前の魔女のね。こんな場所で魔女が孵化したら大惨事になってしまうわ」パァァァァ

ほむらがヒビに手を翳すとそこに紋様のような光が現れた。これが結界の入り口らしい。

ほむら「急ぎましょう。時間がないわ」シュウン

金剛「…そうだな。急ぐか」シュウン

?「………」

?「どうしたんだい?」

結界の近くを通りかかった成人男女二人組。男は結界の入り口を無言で見つめる。

?「いや、なんでもないよ。どうやら気のせいだったみたいだ」

?「最近働きすぎじゃないかい?癖になってプライベートでまで気を張ってたら身が保たないよ」

?「(見間違いか?人が壁の中に消えたような…)」

?「心配するこっちの身にもなっておくれ」

?「僕のことは気にしないでくれ。それより君こそ無理したりストレス溜めたりしないでくれよ?君もお腹の子も僕にとって掛け替えのない守りたいものなんだからね」

?「ひ…卑怯だよ…。そんなこと言われたら…何も言い返せないじゃないか…」///

?「クハハ、身内からその言葉を聞くのは久しぶりだよ。仕事ではよく言われるけどね」

?「仕事で?しょっちゅうそんなこと言われて腹は立たないのかい?あたいだったら問答無用でぶん殴ってるところだよ」

?「腹が立たないどころか喜ばしいくらいだよ。だから僕はそう言う奴には皮肉を込めてこう返すのさ」

?「勿体ぶるねえ。早く言いなよ」

?「フッ…『僕には最高の褒め言葉だよ』ってね」

--お菓子の魔女の結界 通路--

ほむら「(今は闘いが始まってないことを祈って走るしかて…!)」

金剛「(これだけ慌ててるってことはあいつらに何か…)」

二人が結界の中に入ってから5分も経たない内に、目の前に二人の人影を発見する。

??「これなら魔女を取り逃がす心配も…」

振り向きながら話していた一人の言葉が途切れ……

???「…え?」

もう一人は言葉が途切れたのに動揺して思わず声が出る。後ろを振り返ると……

まどか「あ……」

マミ「言ったはずよね。『二度と会いたくない』って」

ほむら「今回の獲物は…私たちが狩る。あなたたちは手を引いて」

金剛「………(コスプレ女を前にしてるってのに冷静だな。それを気にする余裕もないってことか?)」

マミ「やっぱりあなたは巨人さんと組んでたのね。よからぬことを隠す者同士、気が合ったのかしら?」

金剛「俺は隠してたつもりは…」

ほむら「金剛番長、私に話をさせて」

金剛「……おう」

マミ「(番長?)…あら、ずいぶん素直に言うことを聞くのね。暁美さんの魔法で手なずけられちゃったのかしら?」

ほむら「違う!金剛番長はそんな…」

マミ「まあ、どちらにしてもこれではっきりしたわね。
キュゥべえを襲ったり魔女を横取りしようとする暁美さん。そして魔法少女でもないのに人外の力を持っていて暁美さんに付き従う巨人さん…。あなたたちはやっぱり信用できない」

ほむら「そんなことはどうでもいい!ここはあなたじゃ…」

マミ「美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないといけないからもう行くわね」

ほむら「その二人の安全は保証するわ!」

マミ「…信用すると思って?」パアッ

ほむら「…くっ!」ギュルン

金剛「うおっ!」ギュルン


マミが左手を二人に翳すと中指に嵌められた指輪が光を放つ。すると二人の足下から鎖の模様の入ったオレンジ色の太いリボンが飛び出し二人を一瞬で拘束する。
更にリボンの結び目に花形の錠前が出現し、二人は蜘蛛の糸に包められ捕らえられた獲物のように身動きが取れなくなってしまった。

マミ「『レガーレ・ヴァスタアリア』。私の拘束魔法の中でもとびっきり強力なものなの。無理に動けば苦しむだけよ」

ほむら「バッ、バカ…こんなことやってる場合じゃ…!」

金剛「(これは…前に喰らったのとは全く違う…!)」

マミ「もちろんケガをさせるつもりはないけど…あんまり暴れたら保証しかねるわ」

ほむら「今度の魔女は…これまでの奴らとはワケが違う…!」

マミ「おとなしくしてれば帰りにはちゃんと解放してあげる。行きましょう、鹿目さん」

まどか「は、はい」

ほむら「待っ…」グッ

ほむらが叫ぼうと前のめりになった途端……

ギチギチギチギチ

ほむら「くううっ!」

リボンは更にほむらの身体を締め上げた。

金剛「ほむら!無闇に動くな!このリボンはやべえ!」

マミ「苦しむだけだって言ったでしょ?もう一つ忠告してあげるけど、巨人さんの言う通りこれ以上動かない方がいいわ。
この拘束魔法はリボンを動かしたら動かした力と同じ力で食い込むようになってるの。無理しすぎると命に関わるわよ。
締まった分は動かなければすぐ元に戻るわ。
…そうそう。一つだけあなたを褒めておくわね。私が闘っている時に横から掠め取るんじゃなくて堂々と宣戦布告する潔さだけは嫌いじゃないわ。……じゃあね」スタスタスタ

ほむら「待ちなさい!待って!」

ほむらの必死の訴えも虚しく、マミとまどかは奥へと進んでしまった。

金剛「(この魔法…。荒殴零猛怒なら何とかなりそうだが…今使ったらしばらく使え…)」

ほむら「もう…ダメ…」

金剛は項垂れるほむらに気付き顔を見てみると、その顔は今までに見た事が無い程に絶望に満ちていた。

ほむら「このままじゃ巴マミが…」

金剛「………」

ほむら「魔女に…殺される…」

金剛「!?」

ほむら「やっと…希望が見えてきたのに…!」ギリッ

金剛「ほむら、前の魔女には勝てなかったがあいつの強さは本物だ。やり方によっては俺でもやられる可能性があるくらいにな。
それ程の実力を持ったあいつが簡単に負けるとは思えねえ。そんなに悲観することはないんじゃねえか?」

ほむら「違う!強さの問題じゃな…」グッ

ギチギチギチギチ

ほむら「ああっ!」

金剛「ほむら!落ち着け!」

ほむら「はあ…はあ…。巴マミは…ここの魔女との相性が最悪なのよ…。誰かが助けなくちゃ…絶対に勝てないの…」

金剛「!?…お前…!」

ほむら「どうして…希望を持ったらこんなことが起こるのよ…。これでもう誰も死なせずに済むと思ったのに…。まどかを助けられると思ったのに…。もうこんなの…いやだ…。誰か………」

金剛「………」



ほむら「誰か…助けて……」ポタッ



金剛「!!!!」クワッ

金剛「オオオオオオオオオ!!!!」ギシギシ

ほむら「!?」ビクッ

金剛は吼えた。力の限り吼えた。腕に、足に、全身に力を込めながら猛々しく獣の如く吼えた。

ほむら「こ、金剛番長!何をしてるの!?」

金剛「あいつを…助けに行く…!!」ビキビキビキビキ

当然リボンは金剛を押さえつけようと反発し、身体に食い込んでいく。

ほむら「そうじゃない!巴マミの言葉を忘れたの!?そんな力で引っ張ったら…!」

金剛「知った…ことか…!!」ブシュッ

ほむら「やめて!死んでしまうわ!」

それでも金剛は力を緩めない。やがてリボンで締め上げられた部分から血が噴水のように吹き出してきた。だが……

金剛「俺は…死なねえ…!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ほむら「やめてぇぇぇぇ!!」



金剛「荒殴零猛怒!!!!」ボコン

金剛は再び黒い鬼神と化した。

バツンバツン

金剛「ハア…ハア…」ガクッ

拘束魔法を力尽くで引き千切った金剛は膝を突き、元の姿に戻る。

ほむら「な、なんてムチャを…」

金剛「ほむら…。わりいがお前の拘束は安全に解いてやれねえ。このまま先に行くぜ」

ほむら「待って!」

金剛「…なんだ?」

ほむら「巴マミと…まどかを絶対に助けてあげて…」

金剛「…ほむら、拳を握れ」

ほむら「え?う、うん」ギュッ

ガシッ

ほむら「??」

ほむらが右手で拳を握ると金剛も自分の右手で拳を握り、ほむらの拳に突き合わせた。

金剛「お前の気持ちはもらっていくぜ!この拳にな!」ダダダダッ

ほむら「…ッ!」

金剛は二人の向かった方向へ振り返ると、そのまま走って奥へ進んで行った。

ほむら「(金剛番長…信じてるわ…!)」

今日はここまでにします。
これからは月曜日までを目処に投下しようと考えています。

ちなみにレガーレ・ヴァスタアリアは本来このSSで説明したものとは違う拘束魔法ですが、独自色を出す為にこういう設定にしました。

-七つの大罪のアニメを視聴した感想-
ホークの声があまりにもピッタリで思わず笑ってしまいましたwあとホークママがCGで描かれてたのにはビックリ!出番少ないのにCG使うとは金かけてるなー(笑)
でも第一話の掴みとしてはインパクトが弱いかなーと。メリオダスの攻撃のエフェクトはもっと派手にしてほしかったですね。
OPはいきものがかりでしたが、あんまりイメージに合わない盛り上がりに欠ける歌でした。NARUTO疾風伝でOP歌った時みたいなノリで歌ってくれればよかったのになー。

--お菓子の魔女の結界 最奥部--

★魔法少女・巴マミVSお菓子の魔女・シャルロッテ★

FIGHT!!

マミ「せっかくのところ悪いけど…。一気に決めさせて…」ズゴーーーーン ゴシャッ

赤い身体にピンクの袋に包まれた飴玉のような頭部と長いマントを羽織った人形の姿をした魔女はマミのマスケット銃の殴打で斜め上へ一直線に壁まで飛ばされて激突。そこへ間髪入れず……

マミ「もらうわよ!!」ズダダダダダンッ

一瞬で6連射された弾丸は全弾が魔女の身体に命中し、魔女は深手を負ったのか力無く落ちていく。



歩いて近付いたマミは魔女の頭部へマスケット銃を押し当てると…

ダンッ

躊躇い無くその引き金を引き、更に…

シュルルル

倒れた魔女の地面から多数のリボンが伸びて魔女を絡め取り、上空へ持ち上げた。

まどか「や…」

さやか「やったぁ!!」

マミ「うふっ♪」

その場にいた誰もが勝利を確信していた。当のマミ自身もそれを疑わず、止めを刺すべく巨大な銃を構えた。

マミ「(この程度の魔女なら全力は必要ないわね)」

さやか「マミさんやっちゃえー!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!!!」ドキューーーーン


弾丸はリボン状になって魔女の胴体を貫き、そのまま魔女の胴体に絡み付いて締め上げていく。
魔女の胴体は瞬く間に撚り合せた糸のように細まり、締まった分の体積が行き場を求めるように頭部が膨らんだ…と思われたその時……

ニュルリ

マミ「え?」

黒を基調として赤い斑点の付いた芋虫のような身体にピエロのような顔をした巨大な魔女が人形のような身体の口から飛び出し、マミの眼前に迫っていた。

まどか「あっ!」

さやか「ああっ!」

ガパッ

その魔女は笑顔で鋸のような角張った巨大な牙を剥き、その大口をマミに覆い被せるのだった。

★魔法少女・巴マミ 戦闘不能 お菓子の魔女・シャルロッテWIN!!★

--お菓子の魔女の結界 通路--
ガチャッ プツン

ほむら「ッ!?」スタッ

解錠音と共に切れるリボン。ほむらは慌てながらも着地する。

ほむら「(拘束魔法が勝手に…。
まさか…間に合わなかった…?それとも…巴マミも金剛番長も…死…)」



最悪の結末を想像し、しばし呆然とするほむらだったが……

ほむら「(やっぱりだ…)」ポタポタ

何かを悟るや否や無言で涙を流し…

ほむら「(やっぱり私…間違ってたんだ…)」

スタスタ

ほむら「(私は欲を出したらいけなかったんだ…。誰かを頼ったらいけなかったんだ…)」

タッタッタッタッ

ほむら「(私はもう…欲を出したりしない…。絶対に…誰にも頼らない…!)」

タタタタッ


悲しき決意と共にほむらは走り出した。
その涙は既に枯れており、まどかを救うまでは二度と涙腺を開かないと誓うのだった。

--お菓子の魔女の結界 最奥部 ほむらの拘束が解ける数秒前--

ドドドドドドドドッ

魔女がマミへ飛び掛かる直前、地響きを上げながら二人の背後から迫る「何か」。音に気付いて振り向こうとした瞬間……

ブワァッ

まどか・さやか「うわっ!?」ドシャッ

立っていられない程の風圧で倒れ込んでしまい、倒れたまま通り過ぎた「何か」の向かった方向へ顔を上げると……

まどか「(あ、あれは巨人…)」

物体の正体に気付いたまどかが心の中で呟いた瞬間……

★金剛番長・金剛晄VSお菓子の魔女・シャルロッテ★

FIGHT!!

金剛『歪劉怒斗零羅(ワイルドトレーラー)ーーーー!!!!』ドッゴォーーーーン

シャルロッテ「!!!?」ヒュンッ

メキャッ ビキビキビキビキ

重量物を金属塊に叩き付けたような鈍い衝撃音と共にその魔女はバネが縮んだ反動で跳ねるように吹き飛んで壁に突き刺さり、突き刺さった部分を中心に四方八方へ長い亀裂が走った。

まどか「い、今の…プロレスのラリアットって技だよね…。でも…右腕が前の飛んでる魔女と闘った時みたいに黒っぽくなって…」

さやか「うん…。しかも重力が横に働いて自由落下したみたいに水平に吹っ飛んでった上に…矢みたいに周りをほとんど壊すことなく壁に突き刺さった…。どんな力で殴ればあんな風になるんだよ…」

まどか「それに…一瞬だけど巨人さんの大きさがなんか前に見た時の倍くらいの大きさに見えなかった?」

さやか「どこの世紀末覇者だよ…って言いたいけどあたしもそう見えたわ…」

金剛「………」

ガラガラガラ ドシャァァァァン

程無くして亀裂の入った部分が崩壊し、魔女は瓦礫に埋まってしまった。

金剛「おい、ピンク髪…」

まどか「は、はい!」

金剛「………」ガシッ

まどか「?」

金剛が無言で「何か」を無造作に片手で掴み……

金剛「一緒に隠れてろ」ブンッ

まどか「え!?ちょっ!?」

さやか「まどか!」

その「何か」をまどかに放り投げた。

ヒューン ドサッ

まどか「痛っ…」

???「いててて……。あのハ○クヤロー!か弱い女の子が飛んでくる人なんてキャッチできるかっつーの!」

まどか「…そうだ!そんなことよりマミさんだよ!」

金剛が放り投げたのはマミだった。マミは自分が喰われたと錯覚した精神的ショックで気を失っている。

さやか「あ、そうだった!マミさん、大丈夫ですか!?」

マミ「あ…わ、私…死んで…」ガタガタガタガタ

呼び掛けにより意識を取り戻したマミだったが、青ざめた顔で身体を震わせて何か呟いている。

さやか「…マミさん?」

マミ「いやああああ!助けてぇぇぇぇ!」バタバタ

まどか「マミさん!?」

さやか「(錯乱してる…!)まどか!マミさんを押さえて!」

まどか「う、うん!」ガシッ

まどかが暴れるマミを押さえ込もうと飛び付くと…

マミ「来ないでぇぇぇぇ!」ブンッ

まどか「きゃあっ!」ズザァッ

さやか「まどか!」

マミはまどかを振り払ってしまうが…

さやか「目を…覚ませぇ!」

バチンッ

マミ「あ…」

さやか「マミさん!しっかりして!」

マミ「美樹…さん…」

さやか「マミさんは助かったんだよ!あの巨人が助けてくれたの!だから安心して!」

マミ「………」

さやかの渾身の平手打ちによってマミはようやくマミは平静を取り戻した。

マミ「どうして…」

さやか「?」

マミ「どうして巨人さんは二度も私を助けたの?
グリーフシード欲しさに魔女を横取りするわけでもない…。恩を売ろうとしているわけでもない…。
むしろ酷いことを言ったり邪魔しないように縛り付けたりした私に報復してもおかしくない…。なのに何故…?」

さやか「……マミさん、あの巨人の身体を見て」

マミ「…身体?」

マミはさやかに言われるまま金剛の身体を凝視すると…

マミ「!?(ち、血だらけ…!まさか…私の魔法を力尽くで!?)」

さやか「あの巨人がここにくるまでに何があったのかはよくわからないけど…あんなに傷付いてまでマミさんを助けようとしてるんだよ」

マミ「わ、わからないわ!そんなことをしてあの人になんのメリットが…!」

さやか「あたしはろくにあの巨人のことは知らないけど…これだけは言える。
あの巨人は打算で動く奴じゃない。でなきゃ二度も…しかもあんな身体で命懸けで人を助けるなんてできないよ」

マミ「(私は…強がってはいたけど心のどこかで本当の友達を…魔法少女の友達を求めていたのかもしれない…。だから鹿目さんが魔法少女になってくれると聞いて心から嬉しくなった…。
なのに巨人さんはメリットがあるわけでもない、知り合いでもない、義理すらない私を…)」

今日はここまでにします。

なんか思ったよりも筆が進まない…(まだストックはありますが)。

最近は個人的に「巴マミの平凡な日常」にハマってます。
自分に当て嵌まってるネタがけっこうあって笑いと同時に襲ってくる虚しさがたまらないw
あれは女より男に多いあるあるネタだと思います。

ゴバァァァァン

金剛「!?」

突如魔女の埋まっていた瓦礫が飛び散り、中から魔女が飛び出して金剛に襲い掛かっていった。

シュバッ

金剛「(速え!!)」

金剛は警戒を解かずに魔女の埋まった場所を注視していたにも関わらず、一歩も動けずに目前まで魔女の接近を許してしまった。

金剛「くっ!」

まどか「危ない!」

ガパッ

苦し紛れに金剛が左腕を出した瞬間、魔女の大口がその左腕に喰らい付いた。

まどか・さやか・マミ「ッ!」

それを見た三人は直後に訪れるであろう惨状に恐怖し、目を閉じ耳を塞いだ。

ガギィン

まどか・さやか・マミ「…え?」

直後に響き渡る謎の金属音。耳を塞いでいるのにはっきり聞こえる程の有り得ない音に驚いた三人が思わず顔を上げると……

ポタポタ

まどか「左腕が…」

さやか「喰いちぎられて…ない…」

魔女に喰い付かれた左腕は黒鉄色に染まっており、その腕から血を流した金剛が立っていた。

金剛「ぐっ…。前に出したものに真っ先に噛み付くたぁ…犬みてえに単純な奴だな…」

ガギンガギンガギン

喰い千切れない事に怒り…はたまた焦りを感じたのか、魔女は何度も金剛の左腕に噛み付く。生物の出す音とは思えない金属音を発しながら金剛の左腕は歯型だらけになり、赤く染まっていく。

金剛「とはいえ…。ほむらの思いを握った俺の技に耐えて…ミサイルも効かねえ俺の身体に歯を立てるたぁやるじゃねえか…。それならてめえはどうだ!」

金剛は左腕を咬ませたまま右腕を大きく引き……

金剛「歯ァ食いしばれ!!!」

ドブッ

シャルロッテ「!!!?」ズルッ

フワッ

さやか「(魔女を右アッパーで浮き上がらせた!?)」

アッパーで浮き上がった勢いにより左腕から口が離れると間髪入れずに竜巻のような速度で一回転し……



金剛『大邪悶怒炸糾羅(ダイヤモンド・サーキュラー)ーーーー!!!!!』

グシャッ ドバーン

黒鉄色に染まった左腕を振り抜くとダイヤモンドダストのような輝く軌跡と共に生々しい破砕音が響き、魔女の顔は下半分が砕け散りながら左に弾かれ……

グルングルン ドズゥゥゥゥン

その直後、魔女は回転しながら地面に落ちていった。

まどか「アッパーで無防備な状態にして浮かせてからあの黒い腕での裏拳…。しかもあの巨体が何回転もするくらいの威力…。今は気絶してるみたいだしこれでトドメを刺せば…!」

さやか「違う!さっきみたいに油断させて…!」

シャルロッテ「!!!」ニュルリ

瞬間、魔女の口の中から初期と同じ姿の魔女が飛び出し……

さやか「逃げて!」

金剛「ッ!!」

ドゴーーーーン ズザザザザッ

さやかの声と同時に体当たりで金剛を吹き飛ばしたが、金剛は両腕で防御して直撃を防いで転倒を免れていた。

金剛「ぐおっ!」

さやか「!?(防御はしたのに顔が苦痛に歪んでる…。まさか腕が…!)」

金剛「(ちっ、右腕が…折れたか…。やるじゃねえか…!)」

踏ん張りが足りなかったとはいえ、硬質化した両腕で防御したにも関わらずその腕を砕いた魔女に金剛は魔女の戦闘力を認めざるを得なかった。

金剛「(しかも砕き散らした顔面が元に戻ってやがる上に…体力を消耗した様子もねえ…。
この程度のダメージは…脱皮すりゃすっかり全部元通りってわけか…。『文学番長』を思い出すぜ…。だが…底は見えた…!)」

まどか「あ、あんなに大きい魔女の体当たりを受けてピンピンしてる…」

さやか「………」

まどか「でも身体が新しくなるたびに元気になっちゃうなんて…」

さやか「ただでさえボロボロの身体なのに脱皮を繰り返されてこのまま長引いたら……ってなんか魔女の様子おかしくない?」

まどか「言われてみれば…。でもあれ…」

魔女はその場から動かずに金剛を静かに睨み付けている…が、よく見てみると常に笑った表情をしていた顔から笑みが消え、微かに身体が震えているように見える。

まどか「まさか巨人さんに怯えてる!?」

さやか「まさかとは思うけど…やっぱりそうにしか見えないよ…。
そういえばあの魔女、さっき脱皮した時に噛み付かずに体当たりしてたけど…。もしかしてあいつから離れたくて噛み付くのをやめたのかな…」

金剛「おい、イモ虫ピエロ…。ビビってねえでさっさとかかって来い!」

まどか「ちょ、挑発してる…」

さやか「引っかかるかどうかはわからないけど…作戦自体は多分これでいい。見たところあの魔女は自分の身体を使った攻撃しかできないみたいだからおびき寄せるのは正解だよ。
それに持久戦でジリ貧になるよりあの巨人のパワーを活かして短期決戦で一気に決める方が勝機はある…!!」

シャルロッテ「!!!!」シュバッ

すると金剛の挑発が効いたのか魔女は険しい表情になりながら伸び上がり、牙を剥いて身体を屈めた。

まどか「ああっ!」

さやか「来る…!」

金剛「来やがれ…。次で終わりだ!!」

--お菓子の魔女の結界 最奥部入口--

ほむらは拘束が解けてから全速力で最奥部へ向かい、ようやく辿り着いた。

ほむら「はあっ…はあっ…。(せめて…まどかの契約だけでも阻止しないと…!)」ガチャッ

走り疲れて肩で息をしながら扉を開いたほむらの目には……

金剛「オオオオオオオオオオオオ!!!!」

ほむら「(金剛番長!?まだ魔女と戦っていたの!?)」

魔女に向かって猛々しく吼える金剛が飛び込んできた。

ほむら「(それに巴マミ…。まどかもまだ…。よかった…。私…まだ信じていいんだ……)」ガクン

自分の想像していた最悪の結末が杞憂だった。それに気付いた瞬間、ほむらは膝が崩れ滂沱の涙を流すのだった。

ほむらの安心も束の間、金剛と魔女の闘いは終局へ向かう。

金剛「オオオオ…!!」メキメキメキメキ

金剛が雄叫びと共に黒鉄色に染まった左腕を大きく後ろに引く…が、しかし…

ズキン

金剛「ぐあっ!!」

叫び声と共に金剛の動きが一瞬だけ止まる。先程魔女に砕かれた右腕が彼に激痛をもたらしたのだ。
この技は彼の身体に途轍もない負担を負わせる。更には身体の異変により感じる痛みが増加している為に、痛みに強い筈の彼が叫ばずにはいられない程の痛みとなっていた。

シャルロッテ「♪♪!!」シュバッ

ほむら「危ない!」

金剛「しまっ…」

ほむらが叫んだが時既に遅し。魔女は瞬きするかのような一瞬で距離を詰め、その牙を金剛の首に掛けるのだった。

ドッバァン

シャルロッテ「!?」ヨロッ

金剛「!?」

ほむら「(爆発!?)」

ところが魔女の顔面が突如爆発。

さやか「(ま、マミさん…!)」

マミ「(これが今私にできる私なりのけじめ…!!)」

さやかの隣でマスケット銃を構えたマミの姿。爆発はマミの攻撃だったのだ。
威力は顔が煤ける程度だったが、意表を突く攻撃だった為か魔女は僅かによろめいて動きが止まった。

金剛「オオオオ!!」

ドッギャーン

その刹那…人体を揺らがせる程の轟音が響き渡り、同時に衝撃波で金剛と魔女の間の地面を中心にクレーターが発生。ほむらは思わず腕で視界を覆う。

ほむら「(金剛番長……!)」

轟音が収まったところで金剛をよく見てみると、金剛の左拳が魔女の顔に減り込んでいた。

ほむら「(金剛番長のパンチが魔女の顔面に深くめり込んでる…!でも…)」

金剛「………」

シャルロッテ「………」

ほむら「(効いて…ない?)」

シャルロッテ「♪♪」ニュルリ

止まった時が刻み始めたかのように魔女が動きだし、笑みを取り戻した魔女は身体を引いて拳を顔面から引き抜くと「トドメ」と言わんばかりに脱皮して金剛に再び襲い掛かった。

ボコンッ

シャルロッテ「!?」

ほむら「!?」

……その時、魔女の顔の一部が突如空気を入れた風船のように大きく膨らむ。

金剛「イモ虫ピエロ…。これはほむらが何回味わったかわからねえ痛みと苦しみの一部だと思え…!」

ほむら「(えっ?何を言って…)」

シャルロッテ「!!!」ニュルリ

ズモッ

シャルロッテ「!?!?」

その膨らみが波を打って脱皮した魔女の身体を進んで行く。

金剛「…初めはただほむらのことを助ければいいと思っていた。だが、今は違う…」

ほむら「………」

シャルロッテ「!!!!」ニュルリ

ズモモモモモッ

シャルロッテ「!?!?!?」

魔女は脱皮を繰り返すがその波は魔女の身体から消える事無く伝わっていき……

金剛「俺はほむらと…こいつらのために……」

ほむら「(金剛番長……!!)」

シャルロッテ「!!!!!」ニュルリ

ギョルルルルッ

シャルロッテ「!?!?!?!?」

荒波となって魔女の全身を駆け巡っていく。その荒波はやがて一点に集まり……

金剛「てめえら魔女の存在を打ち砕く!!」

ボコォン

シャルロッテ「!!!!!!」

破裂寸前の巨大な風船の如く魔女の身体を膨張させる!!

金剛『蛮漢魔主陀(バンカラバスター)ーーーー!!!!!!』

ドパァァァァンッ

魔女の身体は木っ端微塵に爆散してこの世から消え去っていった。




ほむら「(私の…希望……!!)」ブワッ

金剛「スジは通したぜ!!」

★お菓子の魔女・シャルロッテ戦闘不能 金剛番長・金剛晄WIN!!★

☆4撃目!! END☆

以上で4撃目終了です。
色々加筆修正してたら火曜日になってしまいました…。



私事ですが、七つの大罪の第三話を見逃した上に容量オーバーで録画も失敗してちょっと凹んでおります…。
ディアンヌ初登場という大事なところだというのにィィィィッ!!

☆5撃目!! 彼女が守りたいものは☆

--夕方 病院 駐輪場前--

ヒュン

金剛「ここは…」キョロキョロ

魔女を倒すとその場にいた全員は吐き出されるように結界から飛び出し、結界は入口を閉じて消滅した。

金剛「…どうやら全員無事みてえだな」

まどか「あの…。ありがとうございました。もしあなたが助けてくれなかったらマミさんは…」

金剛「礼にはおよばねえ。俺はス…」

ほむら「金剛番長!」

金剛「!?」

まどか「ほむらちゃん!?」

金剛とまどかの会話に割り込むほむらの声。ほむらの接近を予想していなかった二人は思わず目を丸くする。

マミ「どうして……」

金剛「ん?」

マミ「どうしてまた私を助けたんですか?私はあなたに酷いことを言って…あんなことまでしたのに…」

金剛「俺はスジを通しただけだ。理由ならほむらに聞け」

ほむら「(な…!)」

マミ「え?」

金剛「ほむらはお前のために泣いたんだ。お前が思うほどほむらは悪い奴じゃねえ」

マミ「暁美さんが……」

ほむら「よ、余計なことを…」

マミ「あなたが巨人さんを私の助けに向かわせてくれたの?」

ほむら「それは…金剛番長が勝手に…」

金剛「俺はほむらの想いをもらったからこそその場に行けて魔女も倒せた。ほむらに感謝するんだな」

ほむら「は、恥ずかしいこと言わないでよ……」

マミ「…私はあなたのことを誤解してたみたいね。それによく思い出してみればビルにいた魔女の落としたグリーフシードを私にくれたのもあなたの意思だったのね」

ほむら「??」

金剛「(そういやグリーフシードとやらのことをほむらに聞くのを忘れてたな)」

マミ「今は言葉でしか返せないけど…今までごめんなさい。そしてありがとう。あなたのことを誤解していたわ」

ほむら「か、勘違いしないで!あなたが生きてる方が都合がよかっただけよ!」

マミ「じゃあ巨人さんの言っていたあなたの涙は嘘だったの?」

ほむら「そ、それは…」

マミ「ふふっ、その様子だと本当のようね。心配してくれてありがとう、暁美さん」スッ

ほむら「…その手はなに?」

マミ「感謝の気持ちの握手。これからは仲良くしましょう」

ほむら「まだ私はあなたを認めたわけじゃ…」

マミ「ダメ…かしら…」

ほむら「…し、仕方ないわね…」ギュッ

マミ「ありがとう!これからよろしくね!」

ほむら「よ、よろしく…」///

金剛「(これで一安心だな。心配事が一つ減ってよかったぜ)」

マミ「それと……」クルッ

ほむらとの握手を済ませるとマミは金剛に振り向く。

金剛「ん?」

マミ「助けてくださってありがとうございました。私、あなたのことも誤解してました。失礼なことばかりしてしまって本当にすみません」ペコッ

金剛「おう」

マミ「あなたが来なければ私は二度とも死んでいました。命を助けていただいて感謝してもしきれません。本当にあり…」

ポン

マミの言葉を遮って金剛がマミの頭に左手を置く。

金剛「お前が無事ならそれでいい」

マミ「…巨人さん…!」ウルッ

金剛「そろそろ『巨人』はやめろ。俺は金剛晄だ」

マミ「す、すみません!私は巴マミです!よろしくお願いします!」

金剛「おう。よろしくな、マミ」

一方その様子を静かに見守っていた二人は……

さやか「やっぱりあの巨人…じゃなかった、金剛って人は悪い奴じゃなかったんだね」

まどか「うん、そうだね。それにほむらちゃんも…。本当に…よかった…」ウルッ

???「それにしてもあの転校生がねー。最初はコスプレした通り魔でその正体はムカつく魔法少女!…かと思ったけど案外いい奴じゃん!」

まどか「と、通り魔とかムカつくとか失礼なこと言ったらダメだよ!!それにそんな大声で言ったらほむらちゃんに聞こえちゃうよー!!」

ほむら「(あなたの声が一番聞こえてるわよ)」

さやか「はいはいわかりましたー。んじゃ、あたしたちもあいさつに行きますか!」

まどか「うん!」

さやか「どーもー!」

まどか「あ、あの!」

金剛「ん?」

さやか「さっきはどうもありがとう!あたしは美樹さやか!好奇心と正義感あふれる見滝原中学二年生!よろしくね!」

金剛「………」

さやか「…あれ?なんかはずしちゃった?」

金剛「お前…。魔法少女がどんなものかを知るために二人で一緒にマミについて行って見学してたらしいな」

さやか「う、うん。そうだけど…」

金剛「これでわかっただろ。もう見学はやめておけ。俺も都合よく何度もお前らを助けられるとは限らねえ」

さやか「わかったわよ…」ブスー

まどか「そうですね…」

金剛「………」ジーーーー

まどか「…え?」

金剛はまどかを見つめるなり黙り込んでしまう。

まどか「わ、わたしの顔になにか付いてます?」

金剛「お前はたしか…まどか、だったな」

まどか「あ、もう知ってたんですね。じゃあ改めて…。
見滝原中学校二年、鹿目まどかです。よろしくお願いします」ペコリ

金剛「………」ジー

まどか「あ…あのー?」

金剛「…なんでもねえ」

まどか「そ、そうですか…」

金剛「(こいつがほむらの契約させたくねえ奴か。やっぱり他の奴にはない『何か』を感じるな。それに…胸騒ぎも…)」

ほむら「さあ、騒ぐのはそこまでにしてそろそろ行くわよ。あまり騒ぐと怪しまれてしまうわ。ただでさえ特撮の怪物みたいなのがいて目立つんだから」チラッ

ほむらが金剛を見ながら冗談めいた事を言うと…

金剛「コスプレした通り魔みてえなお前が言っても説得力ねえな」

さやか「(やべっ…聞こえてた?)」

ほむら「……あなた、そんな冗談も言えるのね」ピクピク

顔を引きつらせながら青筋を立てるほむら。しかし金剛は…

金剛「俺は冗談も嘘も好きじゃねえ」

さやか「(あたしは冗談だったんだけどな)」

ほむら「あなたそんな目で私を見てたの!?失礼な男ね!!」

金剛「見たまんまを言っただけだ」

ほむら「それが失礼だって言ってるのよ!!」

金剛「お前、意外と細かいことを気にする奴だな」

ほむら「意外ってなによ!女の子なら誰だって気にするわよ!!」

金剛「変身を解いて普通の格好に戻りゃそんなこと気にしなくて済むじゃねえか」

ほむら「そういう問題じゃないわよ!!」

金剛「さっきから声がでけえんだよ!騒ぐなっつったお前が騒いでんじゃねえ!」

ほむら「私に声を出させたあなたが悪いんでしょ!あなたが!」

まどか「くっ…」

さやか「ぷっ…」

マミ「ふふっ…」

金剛・ほむら「?」

まどか・さやか・マミ「アハハハハハハ!!」

金剛・ほむら「?」

まどか「やっぱり二人とも友達なんですね。喧嘩するほど仲がいいっていいますし」

マミ「それはちょっと違うわ鹿目さん。友達というよりは……」

さやか「恋人同士の痴話喧嘩!転校生は進んでるねー♪」

ほむら「あああああなたたち何をバカなことを言ってるのよ!」///

金剛「おい」

さやか「顔真っ赤にしちゃってかわいー♪」

マミ「これが暁美さんのツンデレのツンの部分なのね…。ツンがキツければキツいほどデレの振り幅も…!キャーーーー!!」///

ほむら「そこの二人うるさい!そもそも巴マミ!あなたはさっきは思いきり沈んでたのにどういう様変わりよ!」

金剛「おい」

マミ「あら、いいじゃない。私たちくらい年齢の女の子は恋愛話を前にしたら騒がずにいられないものよ?」

ほむら「答えになってな…じゃなくて恋愛じゃないわよ!」

まどか「(慌ててるほむらちゃん…かわいい♪)」

金剛「おい」

ほむら「さっきからなによ!うるさいわね!」

金剛「今の大声で人が集まってきた」

ほむら「それなら早く言いなさいよ!気が利かないわね!」

金剛「だから何度も呼んだじゃねえか。聞こえてるなら返事くらいしろ」

ほむら「こんなことしてる場合じゃないわ!」

金剛「(無視か)」

スッ

ほむらが盾から白いボールを取り出して上に掲げる。

金剛「(白い玉…まさか!)」

ほむら「はっ!」

ボフン モクモクモクモク

それを地面に叩き付けると辺り一面が真っ白な煙に覆われて何も見えなくなってしまう。

金剛「(やっぱり煙玉か!)」

さやか「忍者かよ!」

ほむら「さあ行くわよ!」タンッ

ほむらはそう言うなり壁を飛び越えて行ってしまった。

金剛「やれやれ…俺は二人のお守りってわけか」

ガシッ

まどか「え?」

ガシッ

さやか「は?」

金剛もまどかとさやかの身体を無造作に掴み……

金剛「二人とも暴れんなよ。行くぜ!」ダンッ

まどか「きゃっ!」

さやか「ちょっ、ちょっとぉぉぉぉ!?」

マミ「(じゃあ私も…!)」タンッ

ほむらに続いて金剛とマミが同時に飛び出していった。

今日はここまでにします。

自分としては批判的な意見であっても作品の解説であってもレスをいただけるのは嬉しいので、基本的に荒れさえしなければあーだこーだ言うつもりはありません。
読んでいただいた方に感謝の意を表して本日は失礼致します。

--夜中 廃ビル--

まどか「やっと着いたね!」

ほむら「さあ、どうぞ」ガチャ

マミ「ここ、あなたの家じゃないのよね?」

ほむら「べ、別にいいじゃない!」

五人は人目を避ける為に金剛の住処である廃ビルへ向かい、改めて話し合いの場を設ける事になった。

金剛「………」ドサッ

……が、金剛は到着するなり無言で険しい顔をしながら床に座り込む。

さやか「(そういえばこの人、あの魔女の攻撃で腕を…)」ジー

金剛「……なんだ?」

さやか「いや…その…。腕は大丈夫かなって…」

金剛「折れてたらこんな平気な顔できるわけねえだろ。気にすんな」

さやか「そ、そうだよねー。余計な心配だったね!」

金剛「(けっこう勘が鋭いな、こいつ…。うまく隠さねえとな)」




さやか「で、ここがこの人の寝床かー」

まどか「わたし、男の人の部屋に入るの初めてだよ」

マミ「ここが二人の愛の巣なのね!」

ほむら「巴マミ…。やっぱり私とあなたは相入れない運命のようね…」チャキッ

マミ「じょ、冗談だから銃を下ろしてくれる?」

さやか「でもいくらあたしたちが体重軽いからって片手で人間一人ずつ掴んでビルからビルへ飛び移るなんて…」

まどか「すごい特技だね!」

マミ「そういう問題!?」

さやか「それにしても…転校生のキャラがわからなくなったわ…」

マミ「ええ。○ンボーみたいに銃をぶっ放すのかと思ったら忍者みたいに煙玉で逃走…。和洋折衷ということかしら。変わってるわね」

さやか「ラ○ボー知ってるってあんた何歳だよ」

ほむら「私はラン○ーなんて知らないしああいう状況なら煙玉は効果的なのよ!
てゆーか巴マミ!魔法に名前を付けて叫ぶあなたの方が変なキャラしてるじゃない!」

マミ「ひどい!あれにはちゃんと理由があって…」

ほむら「どんな理由があっても魔法に変な名前を付けて叫ぶのがあなた一人だから余計に変なのよ!やーい中二病ー!」

マミ「ひどい…ひどいわ…。金剛さんだって技に名前を付けて叫んでるのに…」ジワッ

ほむら「!?」

さやか「あ、そういやそうだ!
マミさん!同じ変な趣味を持った仲間が他にいてよかったじゃないですか!」

マミ「フォローの仕方ひどくない!?」

ほむら「こ、金剛番長は違和感がないからいいのよ!」

マミ「あーずるい!開き直ったー!」

まどか「実際そうだから困るよねー。わたしもマミさんに言われるまで気づかなかったよ」

ほむら「(まどか…恩に着るわ)」

金剛「おい、バカ言ってねえでさっさと話を始めろ」

ほむら「誰がバカよ!」

金剛「呼んでもいねえのに返事してる時点で自覚してるってことじゃねえか」

ほむら「…あなた、一度痛い目に会わないとわからないみたいね…」チャキッ

金剛「頭狙ってもいいぞ」

ほむら「!?」

金剛「銃ごとき俺には効かねえ」

ほむら「バ、バカなこと言わないでよ!悪い冗談はやめなさい!」

金剛「冗談も嘘も好きじゃねえっつったろ。それでストレスが解消できるならかまわねえぞ」

まどか「(なにそれこわい)」

さやか「(あぶねーおっさんだな)」

マミ「(すごい!スーパーマンみたい
!)」

ほむら「…もういいわ…。また頭が痛くなってきた…」

金剛「あんまり無理すんじゃねえぞ。もっと気楽に考えろ」

ほむら「…フフッ」

金剛「ん?」

ほむら「空気は全然読めないのに変なところに気を使うのね」

金剛「空気くらい読めるし書けるぞ」

ほむら「漢字のことじゃないわよ!!」

マミ「あのー…。そろそろ始めたいんですけど…」

金剛「おう」

ほむら「そ、そうだったわね」

ほむら「さて、何から話せばいいかしら」

さやか「はーい!あたし聞きたいことがありまーす!」

ほむら「真面目な質問以外は受け付けないわよ」

さやか「それくらいわかってるわよ!」

ほむら「(本当かしら)」

さやか「じゃあ質問ね!転校生はこの人のことを『番長』って呼んでるけどなんで?」

ほむら「……金剛番長、どうする?」

金剛「かまわねえぞ。こいつらが信じるかどうかは知らねえけどな」

さやか「?」

ほむら「わかったわ。私から説明するわね。美樹さやか、それに二人もよく聞いてちょうだい」

さやか「『別の世界』、『23区計画』、『ダモクレス計画』…。その計画の候補者が番長…。金剛番長の一族は『金剛類』っていう生物で…。その計画をお兄さんが乗っ取って世界の破壊を…」

マミ「金剛さん…いえ、金剛番長さんはそれを止めるために番長として命懸けの闘いを…」

まどか「でも…そのために自分の家族を…お兄さんを…」ポロポロ

金剛「意外だな。こんな話を信じるのか?」

マミ「正直最初は戸惑いましたけど…」

さやか「魔法少女や魔女がいるならそういうのも有りかなーって。
金剛類って魔法少女並に非現実的だしね(笑)…って人の命が関わってる話なのに笑うのは失礼だったね。ごめんなさい」

まどか「金剛さん…。なんて辛い闘いを……」ブワッ

金剛「まどか、お前の気持ちは受け取ったぜ。だからもう泣くな」ナデナデ

まどか「はい…」グスン

金剛「…とにかくそういうわけだ。この話はこれで終わりにするぞ」

今日はここまでにします。

-今週の七つの大罪-
杭を打ち込まれて穴だらけのバンの身体は何らかの規制が入ると思ったらそのまま出て来てちょっとびっくり。
でもバンの声はこれ以上無い位にピッタリだと思います。

ほむらがまどか以外に特別な感情抱くとかありえんだろ…
>>1は本編や叛逆みたのか?もし見ていてそれならほむらというキャラを軽く考えてると思う
作者の願望がただ漏れで微妙すぎ

>>277
ほむらは信頼しているだけで恋愛感情は抱いていません
叛逆の設定は取り入れてないです

さやか「そうだ!番長といえば今日曜朝七時半からやってるスー○ーヒー○ータイムっていう特撮番組で…」

マミ「じゃあ次は私から質問してもいいかしら?」

さやか「まだあたしの話…」

ほむら「ええ、いいわよ」

さやか「えーえーわかってましたよー。オタクっぽい話は右から左だってねー」

マミ「改めて聞くけどあなたは何者なの?目的は不明だし、キュゥべえも契約した覚えがないって言ってるし、キュゥべえを襲った理由もわからない。
この前は私が憶測で悪者扱いしてしまったけど、せっかくこうして分かり合えたんだし本当のことを教えてくれないかしら?」

ほむら「そうね。話せる限りのことは話すわ」

マミ「ありがとう、暁美さん」

金剛「ちょっと待て」

ほむら・マミ「?」

金剛「キュゥべえってのは誰だ?そいつはどこにいる?」

まどか「キュゥべえは普通の人には見え…」

キュゥべえ「僕はここだよ」

金剛「!?」

キュゥべえ「君の前で喋るのは初めてだったね」

金剛「人形じゃなかったのか…」

まどか「キュゥべえが見えるんですか!?」

キュゥべえ「当然だよ。僕が選んだんだからね」

さやか「選んだ!?まさか金剛番長が魔法少女になれるとか言わないよね!?」

金剛「どう見たら俺が女に見えんだ」

さやか「例えだよ例え!」

キュゥべえ「そんなことは言わないよ。僕は彼に興味が湧いたんだ」

金剛「てめえ…」ギロッ

まどか「ひっ!?」ビクッ

キュゥべえ「まどかが怖がってるから睨むのをやめてくれないかな?」

金剛「てめえは生物か?」

キュゥべえ「無視ね…。どうしてそんな質問をするんだい?」

金剛「いいから答えろ!」

まどか「!?」ビクッ

キュゥべえ「やれやれ。気配りの利かない男だね、君は。
一応生物だよ。傷付くし死ぬこともある立派な生物さ」

金剛「………(こいつから全く感情が読み取れねえ。それに俺は『居合番長』ほどじゃねえが気配を察知するのは得意な方だ。なのにその気配すら感じなかった。そんな生物が本当に存在するのか?
感情の乏しい奴は気配が弱い傾向にあるが、こいつは弱いどころか『無』だ。まるで生物というよりは…機械。『マシン番長』を思い出すぜ)」

ほむら「………」

金剛「(それにマミは『ほむらがキュゥべえを襲った』っつってたな。
だがほむらは俺にキュゥべえと契約することで魔法少女になれるってことやキュゥべえの存在すら教えなかった。それを殺そうとしてたってことはこいつの存在もほむらの闘う理由の一つと見て間違いねえな)」

キュゥべえ「気は済んだかい?」

金剛「もう一つだ。てめえ、嘘はついてねえだろうな?」

キュゥべえ「それについては心配にはおよばないよ。僕は嘘がつけないんだ」

マミ「キュゥべえの言っていることは本当ですよ。少なくとも私に嘘をついたことはありません」

金剛「…わかった」

キュゥべえ「もう気は済んだかな?」

金剛「(たしかに機械的すぎて嘘をつけるような性格とは思えねえな。それならもっと突っ込んだ質問をしてえところだが……)」チラッ

暫しキュゥべえを睨んでいた金剛はほむらへ一瞥を投げると……

金剛「…ああ。(ほむらのためにも今は黙っとくか)」

ほむら「(ありがとう、金剛番長)」

マミ「金剛番長さんもすっきりしたことだし次へ行きましょう」

マミ「あなたはどうやって魔法少女になったの?キュゥべえ以外にも契約できる子がいるの?」

キュゥべえ「それは僕も気になってたんだ。僕の管轄では僕以外に契約できるのはいないはずなんだけど」

ほむら「……まだ話したくないわ」

マミ「…そうね。契約の理由は人それぞれだけど大抵は辛い話ばかりだものね。立ち入ったことを聞いてしまってごめんなさい」

ほむら「いえ、いいわ」

キュゥべえ「………」

マミ「でも少なくともこれだけは答えてもらうわ。キュゥべえを襲った理由は?これをはっきりさせない限りはあなたと協力することはできないわよ」

ほむら「それは……今から話すことに含まれているわ。頭の中を整理するからもう少し待って」

マミ「ええ、わかったわ」

ほむら「(さて、出たとこ勝負ね。どう説明しようかしら)」

………
………
………

ほむら「それじゃあ私の目的だけど…目的は大きく分けると二つ。一つは鹿目まどか、あなたよ」

まどか「わ、わたし!?」

さやか「意外!転校生はそっちの趣味が!!」

金剛「黙って聞いてられねえのか能天気女」

さやか「ひっでえ!」

マミ「そう言えば前に二人で話した時に『鹿目さんが魔法少女になられると迷惑』って言ってたわね。
ライバルを増やしたくないって意味じゃないなら…やっぱり『危険だから戦いに巻き込みたくない』ってことかしら?」

ほむら「ええ。端的に言うとそうなるわね」

マミ「でも前の話でも言ってたけどあなたも気付いてるはずよね?鹿目さんが魔法少女としてすごい素質を持っていることを。
数多くの魔法少女を見てきたキュゥべえが最強って言うくらいだから鹿目さんはどんな魔女にも負けない力があると思うんだけど」

ほむら「たしかに鹿目まどかは最強の魔法少女になれるかもしれない。でも強すぎる力は同時に『大きすぎる災い』も呼び込んでしまうのよ」

キュゥべえ「!!」

マミ「大きすぎる災い?どういうこと?」

ほむら「その説明の前に質問があるわ。
鹿目まどか。仮にあなたが魔法少女になったとして、自分の手の届く範囲で魔女や使い魔が人を襲っていたらあなたはどうする?」

まどか「もちろん助けるよ。人が傷付くのは放っておけないよ」

ほむら「あなたならそう言うと思ったわ。じゃあ手の届く範囲がとても広かったら?」

まどか「手が届く限りは絶対に助けに行くよ!」

ほむら「でしょうね。じゃあその場所が他の魔法少女の縄張りでも?」

まどか「縄…張り…?」

ほむら「あら、巴マミから聞いてないの?」

マミ「…そういうことだったのね」

ほむら「巴マミは察しがついたようね。話が早くて助かるわ」

まどか「ほむらちゃん、それってどういう……」

マミ「鹿目さん、それは私が説明するわ」

まどか「は、はい…」

マミ「魔法少女は基本的に単独行動で、互いに干渉を極力避けるのが常識なの。
それぞれが効率よく魔女を狩るための縄張りを持っていて、魔女がいなくならないように使い魔が人を襲うことで成長して新たな魔女になるまで放置することもあるのが実情よ。グリーフシードのためにね。
そういう理由から縄張りに入ることすら許さない魔法少女もいるわ」

まどか「そんな…」

さやか「ホントなの?マミさん」

マミ「……ええ。私みたいに使い魔も徹底的に倒してしまう魔法少女は私の知る限りでは他にいないわ。
私は以前に何度か他の魔法少女とコンビで戦ったことがあるけど、その全員が私の考え方に付いてこれなくて別れてしまったわ。そしてそれが原因で戦ったこともある」

まどか「………」

マミ「もし他の魔法少女の縄張りを荒らして戦いになって返り討ちにしたとしても、それが何回も続けば必ず恨みを買ったり魔法少女の間で縄張り荒らしとして認識されることになる。
そうなれば日常的に自分が狙われる可能性も否定できなくなる。普通の生活すらできなくなることも考えられるわ」

ほむら「そういうことよ。だから私は……」

マミ「性格上見過ごせないであろう鹿目さんを絶対に契約させないためにキュゥべえの命を狙ったのね」

ほむら「…ええ」

まどか「(どうして…。どうして魔法少女同士でそんなことを…)」

金剛「(俺と話した時にも『闘いに巻き込みたくない』って言ってたが…本当にそれだけか?ほむらの隠し事に繋がってる気がしてならねえな)」

マミ「事情はわかったわ。
私も最初は魔法少女の友達ができるって浮かれててそこまでは考えていなかったわ。それだけの可能性を鹿目さんが秘めているのは確かね。
でもそうとわかればもう私は期待したりしないしキュゥべえにも言い聞かせておく。だからあなたもこれ以上キュゥべえを狙うのはやめにしてくれるわよね?」

ほむら「……わかったわ。キュゥべえが余計なことをしない限りはもう手出ししない」

マミ「ありがとう。その言葉、信じるわ」

キュゥべえ「ちょっと待ってよ。僕の意見はどうなるんだい?」

ほむら「聞いてなかった?要はお前がまどかに何もしなければ何も起こらないのよ」

まどか・さやか「(あ、呼び捨て…)」

マミ「キュゥべえ、これはあなたのためでもあるのよ。お願いだから言うことを聞いて」

キュゥべえ「……わかったよ。僕からはまどかに何もしないよ」

ほむら「………」

マミ「あなたならそう言ってくれると思ったわ。ありがとう」

キュゥべえ「(そう…。『僕からは』、ね)」

ほむら「さて…。鹿目まどか、あなたはそんな人生に耐える覚悟はあるの?」

まどか「わ…わたし…」

ほむら「他の魔法少女の縄張りに手を出しても狙われなくなる方法がないわけじゃないわ。あまり人道的とは言えないけどね」

まどか「…それはどんな?」

ほむら「『恐怖』よ」

まどか「恐怖?」

ほむら「闘った魔法少女に恐怖を植え付けるのよ。『こいつを敵に回したら命がいくつあっても足りない』って恐怖をね。圧倒的な力で無慈悲に瀕死になるまで痛めつけて『言いふらしたら殺す』って脅せばいいのよ」

まどか「そんなこと…できるわけ…」

ほむら「ならあとは本当に殺すしかないわね、口封じに。あなたの力ならそれが一番手っ取り早くて確実よ」

まどか「そんな…」

ほむら「あなたはどうする気なの?」

まどか「………」ジワッ

ほむら「……どうやら無理なようね」

ほむら「あなたには覚悟がなさすぎるわ。半端な気持ちじゃ魔法少女との対立はなくせないし魔女との闘いも生き残れない。
巴マミのような熟練の魔法少女でさえトラブルは起こるし、一瞬の油断が死に繋がる。それが魔女との戦いなのよ?」

まどか「………」ウルウル

ほむら「憧れだけで魔法少女になれば必ず後悔することになるわ。それでも…」

まどか「もうやめて!!」

ほむら「………」

さやか「転校生…。まどかを契約させないためっていってもちょっと脅しすぎじゃない?まどかだってただの憧れだけじゃなくてマミさんのことを思っ…」

ほむら「私は事実を言っただけよ。それに巴マミから聞かなかった?『他人のためか自分のためかはっきりさせておかないと後悔する』って。
どっち付かずだと必ず後悔することになるわ。それはあなたにも当てはまることよ」

さやか「あ…あんたねえ…!」

マミ「美樹さん、落ち着いて」

さやか「でも!!」

マミ「言い方はともかく暁美さんの言うことは正しいわ。
これは魔法少女のことを改めて考えるいい機会よ。あなたもこれを機によく考えてみてほしい。『彼』のこともね」

さやか「マミさん…」

ほむら「(即興の方便だったけどうまくいったようね。
これでいいわ。嫌われようと…罵られようと…恨まれようと…誰も欠けさせずに全てを終わらせられるなら…)」

金剛「(さっきのやり取りを見てこいつらとはもう大丈夫だと思ってたが…完全に心を開くのはまだ無理か)」

キュゥべえ「(暁美ほむら…もしかして…)」

マミ「鹿目さんの話はここまでにしましょう。暁美さん、もう一つの目的の説明をお願い」

ほむら「………」

マミ「…暁美さん?」

ほむら「え?」

マミ「ボーッとしてどうしたの?」

ほむら「失礼したわね。鹿目まどかの話はこれで終わり。次はもう一つの目的の話ね」

マミ「(それ、私が言ったわよ)」

今日はここまでにします。
この話し合いはもう少し続きます。

-今週の七つの大罪-
原作同様にエリザベスが血塗れの傷だらけ…。アニメだと痛々しさが増して見えますね。
でも必死にメリオダスの役に立とうとする健気さが可愛らしいですな!

ほむら「私のもう一つの目的…。それは○月○日に見滝原市に現れる『ある魔女』を倒すことよ」

マミ「ある魔女?」

ほむら「巴マミ、あなたなら知ってるはずよ?魔法少女に口伝で伝わっている伝承……」

マミ「ま、まさか…!」

ほむら「そう。伝説の超弩級大型魔女…」

マミ「『ワルプルギスの夜』…!!」

ほむら「ワルプルギスの夜の討伐…。あなたにも協力してほしい」

まどか「ワルプルギスの夜?」

さやか「マミさん、それって?」

金剛「国や地域によって呼びに違いはあるが、それは日本での呼び名だな。
一般的には中欧や北欧あたりで毎年4月30日の夜から5月1日の深夜にかけて行われる祭りのことだ。
昔はその時間帯にサバトって呼ばれる魔女の集会が開かれて悪魔の崇拝が行われてたって言われてるな」

マミ「そう。一般的にはそういうことになってますね」

ほむら「く、詳しいわね」

金剛「そうか?」

ほむら「てゆーかあなたの世界にもワルプルギスの夜って言葉自体はあったのね…」

マミ「本来は魔法少女の間にしか伝わらないはずのものだったけど、どういうわけか一般の人に歪んで伝わってしまったみたいなの」

ほむら「もしかしたらどこかの魔法少女が一般人に話を漏らした結果なのかもね」

さやか「そんな豆知識とかいらないよー!一人だけで納得してないで説明してくださいよマミさん!」

マミ「ご、ごめんなさい。今説明するわ。
私たち魔法少女に伝わるワルプルギスの夜っていうのは史上最強の魔女の名前なの」

ほむら「その力は文字通り最強の一言。この世界に具現化しただけで自然災害を巻き起こし、並の攻撃じゃ傷一つつかない身体を持ち、ひとたび暴れるだけで数千人の命を奪う強大な力…」

マミ「具現化の周期は完全に不定期で、世界のどこに現れるかもわからないから待ち構えることもできない。
そしてどれだけ強い魔法少女でも一人では決して勝てないと言われているわ」

ほむら「そもそもこうやって詳細が口伝ではっきりと現代まで伝わっている時点で魔法少女の歴史上誰も勝てなかったって証明されてるようなものだけどね」

マミ「再び現れた時のために詳しく伝えられているんでしょうけど…いなくなるまで粘って被害を抑えるのが限界だったってことでしょうねね。
それに普通の人にはただの自然災害にしか見えないから一般人に逃げるように伝えるのも難しいっていうのも被害が大きくなりやすい要因ね」

まどか「そ…そんな強い魔女が…」

さやか「この見滝原に…。嘘でしょ…」

マミ「でも『現れる』ってどういうこと?まるでワルプルギスの夜がいつ現れるかわかってるかのような言い方に聞こえるわ。
ワルプルギスの夜は不定期で現れるのよ。予測なんてできるの?」

ほむら「ええ、できるわ」

マミ「そういえばあなた、今思えば今日の魔女のことを見る前から知っているような口ぶりだったわね。もしかして予知能力でもあるの?」

ほむら「……まあ、そんなところよ。誤差があったりするし、何でもかんでもわかるわけじゃないけどね」

マミ「でもごめんなさい。いくらなんでも簡単には信じられないわ。判断材料としてもう少し予知してくれないかしら?」

ほむら「わかったわ。こっちへ来て耳を貸してちょうだい、巴マミ」

まどか「え?」

さやか「あたしたちには内緒なの?」

ほむら「悪いわね」

マミ「もし差し障りなかったらあなたたちにも教えるわよ」

金剛「………」

ほむら「落ち着いて聞いてね。この数日以内に美樹さやかが契約しようとするわ。あなたも気づいてると思うけどあの子の慕う男のためにね」

マミ「美樹さんが…。たしかに美樹さんならいつ契約してもおかしくないわね」

ほむら「そこであなたにお願いがあるわ。あなたには美樹さやかの契約を止めてほしいの」

マミ「それは何故?私も軽はずみに契約してほしくはないけど…契約するかどうかは本人の意思に任せたいわ」

ほむら「美樹さやかは魔法少女になれば必ず不幸になるわ。男女関係がきっかけでね。
本来なら私が止めればいいのだけど、私の言葉は多分あの子には届かない。あなたにしか頼めないのよ」

マミ「……わかったわ。私からできる限りの説得はしてみる。でも力尽くで止めることはしないわ。それでいい?」

ほむら「(それが最大の譲歩か…。仕方ないわね)。ええ、それでお願いするわ」

マミ「了解したわ」

マミ「ところで今の予知だけど…。美樹さんの様子を見ていればそれは誰でも予測できるから予知とは言えないんじゃないかしら」

ほむら「それもそうね。じゃあもう一つ。
風見野市から見滝原市に一人の魔法少女がやって来るわ。それはあなたのよく知ってる人物よ」

マミ「まさか…。佐倉…さん…」

ほむら「そう。佐倉京子…あなたの後輩だった子よ」

マミ「そんなのおかしいわ!」

まどか・さやか「!?」ビクッ

金剛「………」

ほむら・マミ「………」

まどか「あ、あのー…」

さやか「話…終わりました?」

ほむら「終わったわ」

さやか「マミさん、その話…あたしたちが聞いても…」

マミ「………」

さやか「よくないみたいですね…。すいません…」

マミ「いいえ…。私の方こそ…ごめんなさい…」

ほむら「もし私の話が信じられるようになったらその時に改めて共闘の返事を聞かせてちょうだい」

マミ「……ええ、わかったわ……」

金剛「………」

ほむら「私から話すことはだいたい話したわ。他に何か聞きたいことはある?」

マミ「…金剛番長さんに一つ…いいですか?」

金剛「おう」

マミ「あなたが度々口にする『スジ』ってなんですか?」

金剛「それを聞いてどうすんだ?」

マミ「その言葉はあなたにとって特別な意味を持っているような気がしました。もしそうだとしたらその理由を知りたいと思ったんです」

金剛「そうか…」

マミの質問を聞いた金剛は顔を伏せて押し黙るが…

金剛「…あれは俺がガキの頃だった」

やがて顔を上げて静かに語り始めた。

金剛「母さんは外国で戦災の救援ボランティアをやってたんだが…紛争の巻き添えになった時に俺のせいでこの世を去った」

マミ「(金剛番長さんが親を…!?)」

ほむら「(前に話してくれた時に言ってた紛争の話…!なにがあったの!?)」

金剛「親父は国会議員の仕事で日本にいたせいで会えなかった。
でも俺たち兄妹はなんとか母さんの死に目に会えてな。その時に母さんが俺にこう言ったんだ。『一度決めた事には必ずスジを通す漢になりなさい)』ってな」

マミ「………」

金剛「俺は母さんの遺志を…世界を愛した思いを無駄にしたくなかった。
だから俺はこの世界を守りてえと思った。そして『一度決めたことは死んでも貫き通す』って決めて今日まで生きてきたんだ」

さやか「(これが…金剛番長の…)」

ほむら「(強さの秘密…!)」

まどか「(罪滅ぼしじゃない…。お母さんが好きだから…その思いを継いで…!)」ブワッ

マミ「(身体だけじゃない…。心もこんなに強い人だったのね…。私はそんな人になんて酷いことを…)」

金剛「…だいぶ砕いて話したがこんなもんだ。理解できたか?」

マミ「すみません…」

金剛「?」

マミ「辛いことを…思い出させるような失礼な質問を…。私…なんて酷いことを…!」

金剛「気にすんな。母さんはお前みてえに他人のことで涙を流せる奴がいるこの世界を愛してたんだ。
だから俺もお前を助けられてよかったと思ってる。母さんだってお前のその涙を見て喜んでくれてるだろうぜ」

マミ「金剛番長さん……!」ブワッ

金剛「ありがとよ、マミ」ナデナデ

ほむら「(私も通してみせる…。私のスジを!必ずまどかを…みんなを今度こそ!)」

ほむら「それじゃあこの話はここで終わりね。他になにかあるかしら?」

まどか「わたしはもう大丈夫かな」

さやか「あたしもー。最後にいい話も聞けたしね」

マミ「私も特には。暁美さん、金剛番長さん、今日はありがとうございました」

ほむら「じゃあ今日はここまでにしましょう。夜もだいぶ更けてきたしね」

マミ「そうね。そろそろおいとまするわ」



まどか「(ほむらちゃん…。わたしのことをわたし以上に知ってる気がする。もっとほむらのことを知りたいなぁ)」

さやか「(転校生…。明日は絶対魔法少女のことで言い負かしてやる!)」

マミ「(暁美さん…。佐倉さんのことをどこまで知っているの…?)」

こうしてほむらの秘密を打ち明けた話し合いは終わり、各自はほむらに対する様々な思いを巡らせながら家路につくのだった。



☆5撃目!! END☆

今日はここまでにします。
以上で5撃目終了です。
会話ばかり長くなってしまってすいません…。

まどマギのテレビアニメ二期って無いのかなー。又は叛逆の続きは無いのかなー。
どっちでもいいから早く来ねーかなー。
あとおりマギ新編の単行本早く出ねーかなー(単行本派なんで…)。

>>303
乙。続き楽しみにしてる


続編は『制作する』みたいな発表はあった気がしたけどその後の続報無かった気がする

所で>>302でまどかがほむらのことを呼び捨てにしてるw

>>304
OH、忙しくて慌てて直してたらちゃん付けが抜けてしまいました…。

続編楽しみだけど公式仕事しろですな。

>>297>>298の間が抜けていました。すみません。
慌てながらやるもんじゃないですね…。
ではその分を投下します。

ほむら「落ち着いてって言ったでしょ!?三人に聞こえたら意味がないじゃない!」

マミ「ご、ごめんなさい。でもそれはありえないわ。彼女は自分の縄張りを荒らす者を許さないけど他の魔法少女の縄張りに入ることも絶対にしない性格なのよ」

ほむら「だからこそよ。それが本当に起こったらワルプルギスの夜のことも信じられるでしょ?」

マミ「それは…たしかにそうね…」

ほむら「そしてあなたは佐倉京子との再会によって辛い事実を知ることになるかもしれない」

マミ「辛い…事実?」

ほむら「そう。しかもそれはあなただけでなく周りの人間にとっても辛い事実となるでしょうね」

マミ「そんな…」

☆6撃目!! 自分の意志☆

--夜 廃ビル--

ほむら「金剛番長、あなたに聞いてほしいことがあるの」クルッ

他の全員が廃ビルを去ったのを確認したほむらは先程より真剣な面持ちで金剛へ話し掛けてきた。

金剛「おう」

ほむら「その……。私の魔法についてなんだけど…」

金剛「もったいぶってねえで早く話せ」

ほむら「…さっきも言ったとおり私の予知は完璧じゃない。正直なことを言うとあなたの出現自体がイレギュラーだったし、そのせいもあってこれから先はほとんどわからないことだらけなのよ。
今の時点で確実なのは巴マミに話したことと…ワルプルギスの夜の現れる日時と大体の場所だけなの」

金剛「つまり今までの経験でわかるのは大雑把な事柄だけってことか」

ほむら「…え?」

金剛「今まで俺が現れたことがないみてえだし当然だな」

ほむら「な、何を言って…」

金剛「もう隠さなくていい。お前は『同じ時間を繰り返してる』んだろ
?」

ほむら「!!!?」

金剛「しかも繰り返すたびに大なり小なり前回とは違ったことが起こっている。そうだな?」

ほむら「な…なんで…」プルプル

金剛「ヒントがあったからな。
最初はお前と初めて会った日の翌日のお前の言葉…『今日は大丈夫なはず』って言葉が引っかかってたんだ。まるでその日に何が起こるか知ってるみてえだってな。だがこの時点ではまだ俺も疑ってはいなかった」

ほむら「………」

金剛「次はマミの話だ。お前はマミとはほとんど面識がないはずなのに戦闘力や拘束魔法の解き方を知ってたりと詳しすぎた」

ほむら「そ、それは巴マミが魔法少女の間でも有名だから…」

金剛「有名無名は関係ねえ。直に見たり喰らったり本人に聞いたりしねえとあんなに詳しく知るのは不可能だ。
今日の魔女のことなんて特にそうだ。本来はいつどこで魔女が生まれるかわかるわけがねえ。なのに日時や場所どころかその魔女の能力とマミとの相性まで知ってるとなるといよいよ普通じゃねえ…というか予知だけでそこまで詳しくわかるってのはさすがに無理がある」

ほむら「(まだ…)」

金剛「そして次はお前のあいつらとの距離の置き方だ。最初はただ群れるのが嫌いなだけかと思ってたが、観察してるうちにお前があいつらのことをよく知った上で突き放してるのがわかった。それに上辺ではそうでも心のどこかであいつらを求めてるのもな」

ほむら「(まだ…知られたくなかったのに…)」

金剛「決定的だったのは俺たちがマミの拘束魔法に捕まった時のお前の本音だ。
お前、『これでもう誰も死なせずに済むと思ったのに』って言ったろ。それを聞いて俺はお前が『何度もマミの死を見てきた』って気付いたんだ。…いや、多分マミだけでなく他の連中もそうだろうな。そうしたら同時にお前が魔法で同じ時間を繰り返してるってこともわかった。
お前が俺の目の前から消えたあれもその魔法の応用で時間を止めたってとこだろうな」

ほむら「そこまで…わかってしまったのね……」

金剛「ああ、だから…」

ほむら「幻滅…したでしょ?」

金剛「………」

ほむら「そこまで鋭いならもう気付いてるでしょ?私は…まどかのために彼女たちを…見殺しにしたこともあるのよ…!」

金剛「………」

ほむら「それだけじゃない…。まどかを惑わせるくらいならって…この手で…彼女たちの命を絶とうとしたことだって…」

金剛「…ああ。お前の覚悟を見てればそれくらいはな」

ほむら「フフッ…振り返ってみると自分で自分がおぞましくなってくるわ…。
まどか一人のためにいったい何百回彼女たちを死なせてしまったかわからない…。
誰がどうなろうと…たとえ何人死んでもまどかさえ無事ならそのままにするつもりで闘って…他に誰も死ななくてもまどかを助けられなければ時間を戻してやり直し…。まるでテレビゲームでリセットを繰り返すような感覚よ…。
懺悔の涙も枯れ果てて…後悔の念も消え去って…頭の中にあるのはまどかを救うことだけ…。
魔法少女になって時間遡行を繰り返しているうちに心も人間じゃなくなっちゃったのよ…」

金剛「………」

ほむら「あなたという今までになかったイレギュラーが現れて協力してくれたことで希望が出てきたと思ってたんだけど…こんな人で無しに協力なんてする気になんてなれないだろうし、そもそも私にそんな資格なんてあるわけないわよね…」スクッ

そう言うとほむらは顔を伏せながら立ち上がって部屋を出ようとドアに手を伸ばす。

ほむら「あなたとの関係はこれまでね。もうあなたとは二度と会わないわ。短い間だったけど今まであり…」

金剛「おい」

ほむら「……なに?」

金剛「勝手に話を進めんな。俺の話を聞け」

ほむら「聞きたくないわ!もうこれ以上私を苦しめないで!」

金剛「いいから聞け!!」

ほむら「!?」ビクッ

金剛「俺はお前を裏切らねえっつったろ!!」

ほむら「わ…私は…こんな人で無しなのよ!私が人に…頼る資格なんか…」

金剛「くだらねえ…。さっきから資格資格と……」

ほむら「な、なんですって…!」

金剛「お前は一体どうしたいんだ?」

ほむら「……私?」

金剛「資格なんて関係ねえ。お前の意志を聞いてんだ」

ほむら「…私は…」

金剛「………」

ほむら「私はまどかを守りたい。でもそのために人間じゃなくなって…数えるのを諦めてしまうほど彼女たちを死なせて…。だから私にそんな資格は…」

金剛「お前は『人間じゃない』と…『だから人との関わりを断て』と…誰かに言われたのか?」

ほむら「…違うわ」

金剛「ならお前は人間だ」

ほむら「私が…人間…」

金剛「お前、『自分がおぞましい』『これ以上苦しめないで』って言ったよな。それはお前は自分の行いに苦しんでるってことだろ。苦しんでるってことはお前がまだ人で無しじゃねえって証拠だ」

ほむら「私に…資格があるっていうの?」

金剛「資格なんて関係ねえっつったろ。
お前はマミのために泣いた。それで充分だ」

ほむら「……!!」ブワッ

金剛「それにこれも前に言ったろ。スジは通すってな」

ほむら「ありがとう…」

金剛「お前の仲間は誰も死なせねえしワルプルギスの夜は俺が倒してやる。必ずな」ナデナデ

ほむら「ありがとう…ありがとう…!」

ほむらは金剛に頭を撫でられると「ありがとう」と何度も繰り返しながら泣き崩れた。

ほむら「……泣いたら全部スッキリしちゃった。こんな清々しい気持ちは始めてだわ」

金剛「ここまでネタが上がったんだ。どうせなら全部話してスッキリした方がいいんじゃねえか?」

ほむら「…そうね。今ならあなたに全てを話せるわ」

金剛「ならさっそく頼むぜ」

ほむら「その前に約束して。時間遡行のこともだけど…今から話すことも絶対に他言無用よ。いい?」

金剛「ああ、わかった」

ほむら「あともう一つ。これはあなたにとっても辛い話になるかもしれないわ。それでも本当に…」

金剛「知ったことか」

ほむら「…そうね。あなたはそういう漢だったわね。それじゃあ始めるわよ」

今日はここまでにします。

最近おりマギを読み返しました。
やっぱり織莉子はラスボスの風格があるなぁと感じます。あと中二病っぽいところが個人的に好きです。

-今週の七つの大罪-
アニメはバンとエレインの過去話を分割して本編の中に挿入して冗長にならないようにしつつ感情移入しやすくしてますね。
削ってしまった部分もありましたが、うまくやった方だと思います。

魔法少女の身体は魂の抜けた人形のようなものである事、抜けた魂はソウルジェムとなる事、魔女の正体はソウルジェムが孵卵した魔法少女の成れの果てである事、キュゥべえの正体及び原因を作ったのがキュゥべえである事、キュゥべえは「宇宙の寿命を延ばす為」として少女を騙して契約を行っている事。
ほむらは金剛にその全てを話した。

金剛「今の話……全部本当なんだな?」

ほむら「ええ、本当よ。何から何までね」

金剛「魔女の正体が魔法少女だったとはな…。たしかにきつい話だ。お前は今までそれを一人で抱え込んでたのか」

ほむら「ええ。もちろん私もそれを知ってから最初のうちは魔女を倒すのにためらったことがあったわ。でもさっき言ったとおりそんな感情もとっくになくなってしまった。
あなたはこの事実を知っても魔女と拳を交える覚悟を持てる?」

金剛「当たり前だ。スジは必ず通す。
それに二度と元に戻れず人格も消えちまってるなら本人が望まねえことをこれ以上させねえために逝かせてやるのがせめてもの手向けだ」

ほむら「…そうよね。そうするべきよね」

金剛「ところで…。俺が今までの時間でいなかったってことらしいが、俺以外にそれまでにいなかった奴が現れたことはあるのか?」

ほむら「うん。
あなた以前にも何度かイレギュラーは現れたんだけど…結局それまでと変わらず希望が絶たれてしまった。それどころかイレギュラーが希望を絶つ原因になったことすらあるわ。
そんなことを繰り返すうちに私は仲間だけでなく他の人間やイレギュラーそのものに希望を持てなくなってしまったの。
あなたが現れるまでは再びこんな気持ちになるなんて夢にも思わなかったわ」

金剛「それを含めて何度繰り返しても全員が生き残る道が開けなかったからまどか一人に絞ることにしたんだな」

ほむら「ええ。でもそう決めてからまどかの未来は死んでしまうか魔女化するかのいずれかしか起こらなくなってしまったの。
『まどかだけでも救ってみせる』って決めてからよ?何度心が折れそうになったかわからないわ」

金剛「これからは俺が背負ってやる。この時間で全てを終わらせる。お前に二度とそんな思いはさせねえ」

ほむら「……今日ほどあなたがいてよかったと思った日はないわ。ありがとう、金剛番長」

金剛「魔女化のことで質問があるんだが…いいか?」

ほむら「ええ、どうぞ」

金剛「魔法少女としての能力が高けりゃ高いほど魔女化した時も強くなるのか?」

ほむら「そのとおりよ。特にまどかは魔女化すればワルプルギスの夜すらも上回る最悪の魔女になってしまうの。ワルプルギスの夜もそうだったけど、その両方の力は『世界を滅ぼす力』と言っても過言ではないわ」

金剛「(一個の生命体が世界を滅ぼす…だと?まるで『進化した金剛類』じゃねえか…!!)」ギリッ

ほむら「!?」ビクッ

金剛「………」ビキビキビキ

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

ほむらの返答を聞いた途端、金剛は突如歯軋りして青筋を立てながら無言で怒りを露わにしていた。
その影響か、ビル全体が微かに振動しているようだ。

ほむら「こ、金剛番長…。もしかして…私がなにか怒らせるようなことを…?」

金剛「……すまねえな。お前のせいじゃねえんだ。気にすんな」

ほむら「そ、そう。それならよかったわ。(こんな金剛番長…初めて見たわ。いったいなにに対してそんな激しい怒りを…)」

金剛「それにしてもキュゥべえの野郎…。人を騙して人生を狂わせといて『人間のためでもある』だと?
そいつはスジが通らねえぜ……!!」ビキビキビキ

ほむら「!?」ビクッ

金剛「宇宙のことはよくわからねえ。もしかしたらキュゥべえのやってることは正しいのかもしれねえ。
だが…仲間の命を弄ばれて黙ってられるほど人間はおとなしくねえ…!」

ほむら「(金剛番長…。あなたは私たちのためにそこまで怒ってくれるのね…)」

金剛「今度会ったら俺が地獄に…」

ほむら「き、気持ちはありがたいけどそれは無理よ」

金剛「…キュゥべえはそんなに強えのか?」

ほむら「いいえ、そうじゃないわ。あれ自体はなんの力もない。だけど殺しても同じ意識を持った個体が際限なく現れるから意味がないの」

金剛「言い回しがよくわからねえが…要するに何度でも生き返るってことか?」

ほむら「ちょっと違うけどそういう認識でいいわ」

金剛「じゃあお前が最初にキュゥべえを襲ったのは一時しのぎだったってことか」

ほむら「苦肉の策だけどね。でもみんなと約束してしまったからあいつを排除することができなくなってしまったわ」

金剛「その約束を破ってやれば人間関係に亀裂が入って全て台無し、か」

ほむら「悔しいけどそのとおりよ。しかもやっかいなことに巴マミはキュゥべえを信じきってるの。もし唐突に真実を知ったら十中八九錯乱するわ。
彼女は以前の時間軸では魔女の正体を知った時に…みんなを道連れにして自害しようとしたこともあるの…」

金剛「…ひとつ質問だ」

ほむら「…なに?」

金剛「お前は仲間に真実を隠したままで全てを終わらせてえのか?それともそのうち話すつもりなのか?」

ほむら「…正直なところ、このまま隠し続けるべきかどうかはまだ迷ってる…。でも…今はまだ話すべきじゃないと思ってるわ…」

金剛「話すにしてもマミを説得するのは骨が折れそうだな」

ほむら「ええ。だからお願い。今はまだ誰にも話さないでほしいの」

金剛「ああ、わかった」

ほむら「当面の目的はこれ以上魔法少女を増やさないこと、誰も死なせないこと、その上でワルプルギスの夜を倒すことよ」

金剛「おう」

ほむら「………」ジーーーー

金剛「…なんだ?」

ほむら「な、なんでもないわ。ちょっと考え事をしててボーッとしただけよ」

金剛「そうか」

ほむら「…他に聞きたいことはある?」

金剛「……今はねえな」

ほむら「私から言うことも今のところはもうないわ。それじゃあ私はここでお暇するわね」

金剛「待て」

ほむら「ど、どうしたの?やっぱり質問が?」

金剛「そうじゃねえ。俺はお前に謝らなくちゃならねえことがあるんだ」

ほむら「…わかったわ。身に覚えがないけど聞かせてちょうだい」

金剛「お前と初めて会った日に話したことだ」

ほむら「……あ、それって……」

金剛は目を細めながら顔を伏せ、数秒ほど沈黙してから顔を上げて再び喋り出した。

金剛「……初めて会った日に言っていた『辛い現実をやり直せるなら』って話はこの事だったんだな。
事情を知らなかったとはいえお前の気持ちを汲み取ってやれなかった…。わりいことしちまったな」

ほむら「……まったくよ!あれでどれだけ私が落ち込んだか想像できる?」

金剛「……返す言葉もねえ……。本当にすまなかった……」

金剛は憤慨するほむらに頭を下げて精一杯の謝意を言葉にした。ところが……

ほむら「……なんてね。そんな昔のことを気にしてたの?」

金剛「……なに?」

予期せぬ言葉を発したほむら。罵られる事も覚悟していた金剛は呆気に取られて固まってしまった。

ほむら「私はもう気にしてないわ。むしろあなたには感謝してるのよ」

金剛「………」

ほむら「あなたのおかげで希望が見えてきた。私にとってそれがどれだけの救いになったか…。
それに比べたら今更そんな話なんて『知ったことか』ってやつよ」

金剛「ほむら……」

ほむら「だから私が今言える言葉は一つだけ」

金剛「………」

ほむら「ありがとう、金剛番長」

金剛「……おう!!」

ほむら「さて、今度こそ本当に帰るわね」

金剛「ああ、だが夜もだいぶ更けた。お前なら大丈夫だろうが使い魔には気をつけろよ」

ほむら「フフッ…心配してくれてありがとう。じゃあ、おやすみなさい」ガチャ

こうして全てを曝け出したほむらは身も心も軽くなり、満面の笑みで家路を帰っていった。

金剛「(あいつにとってまどかと仲間が全てなら…もう悲しい思いはさせねえ。必ずワルプルギスの夜をこの手で…!
そしてキュゥべえ…てめえの好きにはさせねえぜ!)」

ほむらが帰った後、新たな決意を胸に抱いた金剛だったが…

金剛「(それにしても…)」

左胸に手を当てて更に考え込む。

金剛「(俺の身体に起こっている『変化』…。兄貴との闘いの後遺症とは違う気がする。どうにも胸騒ぎがおさまらねえ…)」

金剛の様子を遠くから窺う影が再び星明かりに照らされる。

????「フォフォフォフォ!本人は気づいておらんようじゃが金剛番長の身体は着実に『新たなる進化』を続けておるな。だが予測より些か遅れておるのう。
もう一押し欲しいところではあるな。ではそのために暁美ほむらよ…。その魂、朕の新たなる野望(ゆめ)のために使ってくれようぞ!」

--見滝原市街 移動中--

ほむら「(真実を知っても心変わりせず…私の全てを受け入れてくれて…持てる力を私のために振るってくれる…。
私は今度こそ本当に一人じゃないんだ!もう何も怖くない!)」

今日はここまでにします。
そろそろ書き溜めが少なくなってきて焦っております(笑)

-今週の七つの大罪-
遂に来ました!個人的に大好きなキャラのハウザーが!
次回からケンカ祭編、始まるよー!

--翌日 見滝原中学校校門前--

まどか「あ…」

さやか「げっ…」

ほむら「あら」

登校時、ばったりと三人が出会う。

まどか「さ、さやかちゃん…なんて話しかければいいかな…」

さやか「あ、あたしに聞かないでよ…」

まどかとさやかは気まずそうな顔をしながら囁き合っている。ところがほむらは……

ほむら「おはよう、二人とも」ニコニコ

まどか・さやか「!?」

満面の笑みで二人に挨拶してきた。

まどか・さやか「お、おはよう…」

ほむら「♪♪♪」ニコッ

さやか「どうなってんの…まどか…」

まどか「わたしに聞かれても…」

ほむら「早く教室に入りましょう。遅刻してしまうわ」ニコニコ

さやか「(キャラ変わりすぎだろぉぉぉぉ!!)」

その日のほむらは始終上機嫌で戸惑うまどかとさやかを気に留める様子も無く、他のクラスメイトもその変わり様に一日中騒ついていた。

--放課後 見滝原中学校校内--

まどかとさやかはホームルームを終えてほむらより後に学校を出た…が、いつもと様子が違う。
足取りは重く、話し合いに夢中で前をよく見ていない為にフラフラと覚束無い様子で、何度も人にぶつかりそうになっては謝る状態だ。

さやか「(結局…)」

まどか「(なんて声をかけたらいいかわからなくて放課後になっちゃった…)」

さやか「まどか、どう思う?」

まどか「どうって…やっぱりほむらちゃんのこと?」

さやか「うん」

まどか「そうだなぁ。なんていうか…顔がすごくスッキリした感じに見えたかな」

さやか「実はあたしもそう見えたんだ。なんかこう…『悩み事が解決して肩の荷が下りた』、って感じ」

まどか「もしかして…ほむらちゃんがわたしたちにあんなに厳しいことを言ったのも何か思い悩んで不機嫌だったからなのかな?」

さやか「いっつも何を考えてるのかわからない顔をしてたからあたしにはよく分かんないや。でも今日のあれはあたしたちが帰ってから何かあったからなのは確かだね」

まどか「ほむらちゃん…わたしたちにあんまり自分のことを話してくれないよね…。
わたしたちやマミさんのこと、どう思ってるのかな?わたしたちってそんなに信用されてないのかな?」

さやか「……あたし、帰ってから転校生の話を色々考えてたんだけどさ…」

まどか「?」

さやか「ちょっと自分の考え方が甘かったかなーって気づいたんだよ。
恭介のことはもちろんどうにかしてあげたい。だけどあんな魔女と正面切って闘えって言われるとどうしても踏ん切りがつかないんだ。闘う前からこんなんじゃ魔女と対面したらきっと足がすくんで動けなくなって…」

まどか「……わたしだってそうだよ。マミさんが脱皮する魔女にやられそうになって錯乱してわたしを振りほどいた時に思ったんだ。『マミさんほどの人でも魔女との闘いはこんなに怖いものなんだ』って…。それに…魔法少女同士の対立もわたしは…。
ほむらちゃんは魔法少女をやるには並の決意や覚悟じゃダメなんだって気付かせてくれたんだね」

さやか「マミさんにも同じようなことを言われたけど、その時はやんわりと言われたせいかその場でちょっと感情的になっただけであんまり深く考えてなかったんだ。
転校生にあそこまではっきり言われなきゃここまでじっくり考えるってことは多分しなかったよね、あたしたち」

まどか「うん」

さやか「正直まだ納得いかない部分はあるし、あたしたちをどう思ってるのかまではわからないけど…少しは認めてもいいかなって思ったんだ」

まどか「…そうだね。ほむらちゃんに歩み寄れない理由があるならわたしたちから歩み寄ればいいんだよね!」

さやか「…そういう考え方もあるか。でもまあ、その役目はまどかに任せた!」

まどか「えー!?一緒に歩み寄ろうよー!」

さやか「さーて暗い話はこれでおしまいね!それじゃまどか、なんか明るい話題よろしく!」

まどか「ええ!?いきなり振られてもすぐには出てこないよ!」

さやか「あたしの嫁のくせに情けないぞー!なんか出せー!」

まどか「無理なものは無理だよー!」

マミ「盛り上がってるわね、二人とも」

まどか「あ、マミさん」

さやか「こんにちは!」

マミ「なんの話をしていたの?」

さやか「ただの世間話ですよ!ね、まどか!」

まどか「う、うん!」

マミ「そう。それなら私も混ぜてもらいたいところだけど…」ジー

さやか「…あたしに何か?」

マミ「実はあなたと二人きりでお話ししたいことがあるの。このあと時間はあるかしら?」

さやか「すいません。このあとは用事があって…」

マミ「それは仕方ないわね。お話はまた後日…」

さやか「でも一時間くらい待ってもらえれば今日でも大丈夫ですよ」

マミ「それは助かるわ。そういうことなら今日はあなたが来るまでうちで待ってるわね」

さやか「はい!じゃあ急ぐんで失礼します!」

マミ「ええ、待ってるわ」

マミ「(多分用事っていうのは前に鹿目さんが言っていた『上条君』のことね。そしてその上条君という人に美樹さんは恋愛感情を抱いている。
今はまだ魔女のことで揺れ動いているようだけど、このままじゃいつどこで気持ちが決まるかわからないわね…。さて、どうしようかしら)」

まどか「マミさん、いきなり立ち止まってボーッとしてどうしたんですか?」

マミ「あら、考え事をしていたら足が止まってしまったわ。
それじゃあ鹿目さん、私は帰って来客の準備をしなくちゃいけないからここで失礼するわね」

まどか「はい!わたしも失礼します!」ペコリ

今日はここまでにします。
そろそろ設定補足でも入れとこうかなーと考えております(明日か明後日か明明後日には……)。

-先週の七つの大罪(漫画版)-
キングが哀れ過ぎて可哀想になってきました…と思ったらまさかのヘルブラム再登場にはビックリ仰天w
これでキングも少しは救われた感じですな。

消えたァァァァァァァァ!!
書き溜めが半分以上消えたァァァァァァァァ!!
せっかく最近スラスラ進んでたのにふざけんなァァァァァァァァ!!

只今試験終了のチャイム直前まで問題を解いている受験生のような必死こいた気分で書き直し中です……。
そういうワケで本日は申し訳程度に設定補足を投下致します……。
すいません……。

設定補足(オリジナル設定含む)

☆金剛
○原作で地球の核に飛び込んだ直後の状態で登場。死闘のダメージが残っており、特に左胸の部分が弱っている。

○ある理由から身体に謎の変化が起こり以前より強くなっているが、下がっている能力もある(理由は後々説明)。

○ほむら達を大切な仲間と認め、全てを賭けてでも彼女達の為に闘おうと心に誓っている(しかし死を覚悟している訳ではなく、生きてスジを通そうとしている)。

○自分の身体の異変に気付いており、それに漠然とした危機感を感じている。

○まどかに自分と似た「何か」を見るが、その「何か」が何なのか分からなくて若干の不安を感じている。

○意外と頭が良く、相手の思想や言動の矛盾を指摘して説き伏せたり、特定の事柄(化学薬品や武器等)に非常に博識だったりする。
しかし常識知らずな面(携帯電話のメール機能を知らない等)や言葉を解釈出来ずにそのまま受け取る面(金剛にそっくりな超デカい像を見た仲間が「似てる」と言ったら「俺はここまでバカでかくねえ」と否定する等)もある。

○何故か子供は金剛を見ても怖がらず、それどころかよく懐かれ、金剛自身も子供にはとても優しい。

○プリンが大好物で、自分で作ったり見た目とのギャップを笑われた事がある。

○常識知らずなので天然ボケをかます事が多い…というかボケる時は全て天然。

-原作でのスペック-
☆身長
作中では「3m近い」とあるが正確な数値は不明なので約3mとする。ただし場面によっては3mどころではない程にデカく描写される事がある。正に拳王!

☆体重
原作では未公開なのでここでは約300kgとする。

☆筋力
○自動車(多分リムジン)を肩に担いで散歩のように悠然と歩く。
○高さ数十m(20mくらい?)の仏像に両腕を突き刺して持ち上げ投げ飛ばす。
○解体工事用の巨大鉄球の振り子の直撃を筋肉のパンプアップだけで跳ね返し、相手に送り返す。
○墜落してきたヘリコプターを片腕でキャッチしつつ自分にぶつかりそうになったローターを歯で噛んで止める。ついでにヘリコプターに乗っていた人間三人を空いた片腕で助けた。

☆脚力
○ジャンプ力は数m。
○水上を走れる(本人曰く「右足が沈まんうちに左足を出す!!それを繰り返したまでだ!!」)。更に走りながら溺れている人間を拾える。

☆攻撃翌力
○拳圧で人を吹き飛ばす。
○石ころくらいの大きさの物体なら投げ付けられても拳圧で押し返しつつ破壊出来る。
○拳をアスファルトの地面に打ち付けて隕石が落ちた様なクレーターを作りつつ、周囲数百mに衝撃を伝播させて砕く事が出来る。
○必殺技の打舞流叛魔はミサイルの直撃すら効かないとある番長を一撃で吐血&ダウンさせ、ほんの僅かでも壊せば雪崩式に崩れ落ちてしまう巨大な瓦礫の山(直径数十mある岩も含む)を全く崩す事無く吹き飛ばせる程の破壊力がある衝撃波を発生させられる(衝撃波は出さない事も可能。ただし出す時は何かを殴らないと出ない)。

☆防御力
○空から降ってきた鉄骨数本に直撃してもノーダメージかつ顔色一つ変えない。
○並の刃物(ナイフ、ドス、槍等)なら逆にそれらの方が折れてしまう。
○ミサイルの直撃を受けても肌がちょっと焦げ付く程度でほぼ無傷。

☆回復力
○とある番長の防刃チョッキをも楽に切り裂く特製の鞭の連打で傷だらけになっても、喰らいながら傷が塞がっていって骨折や視力低下も回復可能。
○骨折箇所にダメージを受けなければ完全骨折でも10秒で完治する。
○胸のど真ん中を貫通して背中まで突き抜ける攻撃(位置的に心臓は避けているが背骨は確実に砕かれている)を喰らって一度心臓が止まってから一日以上経過してもその傷を完治させて生き返った事がある(ある番長曰く「『心臓が止まる』のと『死ぬ』のは別問題」)。

☆耐性
○ミサイルで発生した炎やとある番長の爆炎攻撃にもほぼ無傷。
○200万V程度の電圧なら我慢出来る(それでもまだ余裕があるように見えるので多分もっと高電圧でも大丈夫)。
○本人曰く「毒ごときで俺は殺せん(=毒は完全無効?)」。

☆戦闘スタイル
○基本的にはステゴロの喧嘩だが、稀に周りにある物を利用する事もある。
○必殺技は一つを除いて全て打撃技となっている。打舞流叛魔は作中で最も多用している技で、後に最強の技へと昇華した。

☆特殊能力
○北斗神拳のような技で身体が麻痺する経穴と心臓の動きを弱める経穴を突く技(その技を使った番長曰く「気合いでどうにかなるものじゃない」)を喰らっても「気合いだー!!!!」で解除可能(ただしその時血を吐いたのでかなり無理をしていた模様)。
○身体の一部を硬化させる(その部分は黒鉄色に染まる。全身のどの部分でも可能)事で攻撃翌力&防御力を大幅に強化出来る。
○荒殴零猛怒という変身技を持っている。それを使うと髪の毛が波立って全身が黒鉄色に染まり、身長が2倍以上、筋肉量が数倍(特に上半身は5倍くらいありそう)、腕の長さが2倍くらいになる(全て大雑把な目測)。その能力は凄まじく、
・ただのパンチが通常時の打舞流叛魔の約3.1倍の威力。
・跳躍力が数倍。
・変身前には耐えられなかった攻撃を喰らいながら反撃に転じられる。
・全長数十mのロボットを真っ二つに引き裂ける。
・高さが200mある塔から人間6人(しかも半分は体重100kgはありそうな体格)を抱えながら飛び降りて着地しても平気。
・戦闘ヘリ数機による20mmチェーンガンの一斉射撃でも傷一つ付かないとある番長を打舞流叛魔一撃で粉々に砕ける。
などとんでもない感じになる(とある番長曰く「腕力・敏捷・耐久、そして凶暴性…。そのすべてにおいていつもの金剛番長をはるかに超えている」)。
だが荒殴零猛怒は1分しか保たず、限界が来ると自動的に通常状態に戻った上に立っていられない程体力を消耗してしまう。
ただし限界前に荒殴零猛怒を解けば消耗を抑えられる(しかし一度荒殴零猛怒を使うと暫くは再使用出来ない)。
まどマギ世界に来てからは何故か持続時間が30秒を切っているが、疲労は少なくなっている。
○「拳に仲間の想いを握る」事で通常時でも瞬間的に荒殴零猛怒に近い力を発揮でき、蛮漢魔主陀が使用可能になる。

☆ほむら
○当初は精神状態がかなり不安定で、時々神経質になったり攻撃的・悲観的・自虐的になる事があるが、金剛と行動を共にするうちにそれらが解消されつつある。
○金剛を心底信頼しており、彼となら誰も死なせずに全てを終わらせられると信じている。
○後にあるイベントで戦闘能力が上がる予定。
○より良い武器の調達の為に武器の事を色々調べていたらウェポンマニアになってしまった。
○どちらかと言うとボケよりツッコミの方が多いかもしれない。実況・解説はあまり得意じゃないような気がする。

☆まどか
○基本的に人を疑うという考え方をほぼしない。
○ほむらにはキツい事を言われても(一時的に落ち込む事はあるが)何故か引きずらず直ぐに立ち直る。
○金剛の家族の事で心を痛めており、自分に何か出来る事は無いかと悩んでいる。
○みんなの役には立ちたいと思ってはいるが、本当に魔法少女になるべきではないのかと迷っている。
○多分ツッコミよりボケの方が多い。たまに実況する。

☆さやか
○常に明るく振る舞おうと心掛けており、場を和ませようと話題を振ったりギャグを言ったりする空気の読めるムードメーカー的存在。
○緊急時は意外と冷静で、状況の把握に努めて色々と対処しようとする。
○自分で自分を嫌っている部分があり、一人で考え込むとネガティブスパイラルに陥りやすい。
○マミの魔法少女としての心構えや金剛の強さに憧れを抱いている。
○漫画・アニメ・特撮・ゲームが密かな趣味で、広く深めの知識がある。
○ボケ・ツッコミ・実況・解説と何でもそつなくこなせるマルチ芸人。一家に一台さやかちゃん!

☆マミ
○過去の体験から言動の怪しい魔法少女や金剛のようなイレギュラーには強い警戒心と猜疑心を抱き、そのような存在を簡単には信用しない性格だったが、金剛に対する考え方を改めてからはそんな自分を恥じて先ずは信じる事から始めようと努めている。
○ベテランだけあってどんな状況でも落ち着いて対処出来るが、精神面が弱いので一度動揺するとなかなか持ち直せず、心理的な攻撃を苦手としている。
○心の弱さを克服すべく色々試したが悉く失敗し、最終的には理想の自分を思い描いてそれに近付く努力をするしか無いという結論に至った。
○他の時間軸のマミと比べると桁違いに強くなっており、魔法の性能や威力も変わっているものがある(理由は後々説明)。
○漫画・アニメが好きで、特に能力バトルものに目が無い(理由は主にカッコいいポーズを決めたり自分の魔法の応用の参考にしたりする為)。実は特撮にもちょっと興味があり、ほむらとの話し合いが終わった後でさやかが言っていた事を思い出して話を聞いてみたいと思っている。
○ほむらに中二病と言われた事を気にしており、金剛のように違和感無く技名を叫ぶにはどうしたらいいかと常日頃悩んでいる(ただしほむらは照れ隠しで言っただけで、実はほむら自身は大して気にしてない…というかもう忘れている)。
○ボケもツッコミもそこそこだ(と思う)が、彼女の真価は状況・解説にある。ベテラン魔法少女ならではの切り口で皆さんの脳に新鮮な刺激を与えます!(多分)

☆杏子
まだ出て来てないので省略。
多分ボケと実況or解説になりそう。

☆その他
○魔女
他の時間軸より遥かに強くなっており、能力も変わっているのがいます(理由は後々説明)。

○登場人物
まどマギ本編のキャラと金剛がメインですが、スピンオフ作品と金剛番長からも出演させる予定です。

○ストーリー
今はまどマギ本編に沿った流れが多いですが、後にオリジナル展開が増えて最終的には金剛番長よろしくぶっ飛んだ超展開になる予定です。

○台詞・地の文
台詞は金剛番長に合わせて平仮名を多めに使用していますが、地の文は普通に漢字を使用しています。

本日はここまでになります。

内容は大雑把に覚えてはいるのでこれ以降はなんとかペースを維持していけると思います。

とうとうすずマギ3巻が発売されましたね!
すずねの考え方が今まで自分が思っていたのとは違っていてちょっとびっくりしました。
とりあえず作者には「お疲れ様でした」と言っておきたい。

なんか眠気と怒りのせいでアホな事を書いてしまいました…。
キャラ毎の最後のあたりの項目は忘れて下さい……。

--夕方 マミホーム--

ピンポーン

さやか「こんばんはー」

ガチャッ

マミ「いらっしゃい、待ってたわ。さあ、上がってちょうだい」

さやか「それじゃおじゃましまーす」

マミはさやかを招き入れると茶の間に案内し、着席させて話しかけようとするがさやかの表情が若干固い事に気付く。

マミ「(どうしたのかしら。まさか上条君となにか…?とりあえず気持ちを落ち着かせてあげましょう)」

マミ「何もないのは味気ないから今紅茶とケーキを…」

さやか「マミさん、話って…もしかして契約のことですか?」

マミ「!!……わかっていたのね」

さやか「昼間のマミさんの態度がちょっと気になってて…。なんとなくでしたけどね」

マミ「本来はこういうことに他人が割り込むべきじゃないのかもしれないけど…。
あなたは好きな男の子…上条君のために契約しようとしてるわね?」

さやか「……はい」

マミ「これは前にも聞いたことだけど…彼のためか、自分のためか…。本当にあなたの気持ちは決ま…」

さやか「恭介はさ……」

マミ「…!」ビクッ

マミの言葉を遮って突然さやかが俯いて静かに語り始めた。マミはさやかの不気味な迫力に思わず身を固める。

さやか「昔は『天才』って言われるほどの凄いバイオリニストだったんだ。
それが事故のせいで身体が動かなくなっちゃってさ…。今でもずっとリハビリしてるけど他の部分は動いても肝心の指は全く動かないままなんだよ。今じゃもう痛みすら感じないんだって言ってた」

マミ「………」

さやか「しかもつい最近担当の医師から言われたらしいんだ。『現代の医学では指の回復は見込めない』『バイオリンを弾くのは諦めろ』ってさ」

マミ「(…ということは…美樹さんの願いは彼の指を…)」

さやか「バイオリンが好きで好きでたまらないのに弾けなくなっちゃった恭介の絶望ってどれくらいなのか…あたしには想像もできなかったよ」

マミ「(バイオリン一筋に生きてきた人が突然それを奪われる…。考えたくもないわね…)」

さやか「あたしの指はいくら動いてもなんの役にも立たないのにその指で人に感動を与えられる恭介がどうしてそんな目に会うの?こんな理不尽ってある?
できることならあたしが代わってあげたい。だけど当然そんなのは無理。そう思ったらあたしもすごく辛くなった」

マミ「どうしてそこまで彼のことを……」

さやか「……マミさんは恋をしたことある?」

マミ「……まだないわ」

さやか「だろうね。あるならそんなこと、言える訳ないもんね」

マミ「そ、それは…!」

さやか「…ごめんなさい。あたし、ひどいこと言っちゃった…。
でも…あたしはずっとだよ。昔からずっと恭介のことが好きだったんだ。恭介の笑顔と演奏が好きなんだ。それを傍らで見守るのがあたしの幸せだったんだ」

マミ「(幸せ……)」

さやか「事故が起こってからはちょくちょくお見舞いにいってたんだけど…正直なところ『好きな人が苦しむ姿なんて見たくない』って毎回思ってたんだ。恭介のためと思ってやってたことも恭介を苦しませてるだけだったって気づいた時は胸が苦しかったよ」

マミ「………」

さやか「でも今は違う。本当に恭介を助けられる。不可能を可能にする方法があるんだ。それが代償を伴う方法でも存在するってことがわかったんだよ。
あとはあたしの決断だけ。それだけで恭介は救われるんだよ。
あたしでもない、他の誰でもない、恭介のためにあたしは願いたいんだ!!」

マミ「(み、美樹さん…!)」

さやかは涙ながらに訴えるとマミはその行動に若干動揺したものの、直ぐに平静を取り戻して毅然とした態度でさやかに質問を投げ掛ける。

マミ「……その願いがあなたの生涯を変えてしまうとわかっているの?一度入り込んだら二度と抜け出せない…いつ命を落とすかわからない…なんの見返りもない…。そんな道に入り込んでしまうのよ?」

さやか「それでもかまわない…それが…あたしの意志だから!」

マミ「(なんて固い決意と覚悟に満ちた目…。もう私には…)」

さやか「………」

マミ「……そこまで考えているのなら私から言うことはもう何もないわ。差し出がましいことを言ってしまってごめんなさい」

さやか「あたしこそごめんなさい。こんな生意気なこと言っちゃって…」

マミ「いいえ。あなたの意志は決まっていたのに惑わせるようなことを言ってしまった私に責任があるわ」

さやか「それは誤解ですよ!……本当はさっきまで少し迷ってたんですよ。魔女と闘うのがまだ怖くて…。
でもマミさんと話したおかげで決心がつきました。こんなあたしのことを気づかってくれてありがとうございます」ペコリ

マミ「役に立てたのならうれしいわ。月並みなことしか言えないけど…がんばってね。私もできる限り協力するわ」

さやか「はい!その時が来たらお願いします!」

マミ「あら、もうこんな時間。美樹さん、そろそろ帰宅した方がいいわ。親御さんも心配しているでしょう」

さやか「そうですね。今日はもう帰らせてもらいます」タッタッタッ

マミ「気をつけて帰ってね」

さやか「はい!それじゃあおじゃましました!」

バタン

マミ「(暁美さん…ごめんなさい…。私には美樹さんを止めることはできなかったわ…。
説得するつもりだったのが美樹さんに呑まれて言うべきことをほとんど言えなかった…。なんて情けない…!
だったら…それならせめて…。美樹さんを精一杯サポートするのが私の通すべきスジ…!!)」



こうして説得も虚しく契約の決意を固めてしまったさやかを見送りつつ、マミもまた密かに決意を固めるのだった。

☆6撃目!! END☆

以上で6撃目終了です。
修復が思ったより進まなくて若干困っております(笑)

-今週の七つの大罪(漫画)-
ギルサンダー・ハウザー・グリアモールの三人組の仲良し振りがあまりにも微笑まし過ぎて思わずほっこりしてしまいました。
そのせいで本来は単行本だけ買ってそれ以外は買う予定の無かった小説版(幼少期の三人組が表紙)をジャケ買いしちゃいましたw

☆7撃目!! 自分より大切なもの☆

--夜 マミホーム--

prrrrr… prrrrr…

夕食を食べ終えて一息吐いていたマミの携帯電話に届いた一本の着信。その着信の主は……

マミ「もしもし。鹿目さん、こんな時間にどうし…」

まどか「マミさん!大変なんです!仁美ちゃん…ううん、たくさんの人が首になにか付いてて…。全員でどこかに向かってるんです!」

マミ「(『魔女の口づけ』…!)」

まどか「ほむらちゃんと金剛さんにも連絡しようと思ったんですけど電話番号を聞いてなかったから連絡できなくて…。わたし…どうすれば…」

マミ「今はどこにいるの!?私がそっちに向かうから現在地を場所を教えて!」

まどか「は、はい!場所は…」

………

マミ「場所はわかったわ!急いでそっちに向かうから絶対に深追いしちゃダメよ!それと行き先がわかったりなにかあったりしたらすぐに連絡してね!」

まどか「わかりました!このまま後ろから追いかけてみます!」プツン

マミ「(かなり遠いわ…。力の限り急がないと!待ってて鹿目さん!)」パアァァァァッ

通話を終えたマミは自宅で変身し、ベランダから飛び降りて家屋の屋根を飛び移りながら全速力でまどかの元へ向かった。

マミ「(電話番号を聞くのを忘れてたなんて…。なんて単純で痛いミス…!私の失態だわ!)」

prrrrr…

マミ「(着信…!もう鹿目さんから!?)」

移動中に着信を見ると登録していない番号だった。

マミ「(紛らわしい!こんなの無視よ!)」

prrrrr… prrrrr… prrrrr… prrrrr…

マミは着信を無視して走り続けるが、着信音は一向に切れる様子が無い。痺れを切らしたマミは……

マミ「(ああーもう!面倒ね!)もしもし!間違い電話のようですからこのまま切り…」

ほむら「待って巴マミ!」

マミ「暁美さん!?どうして私の番号を知ってるの!?」

ほむら「し、調べたのよ。それよりも昨日話した美樹さやかの件だけど…」

マミ「それは後にして!今、鹿目さんから魔女の口づけを受けた人の集団がどこかに向かっているのを発見したっていう連絡があったの!場所を教えるからあなたも来て!」

ほむら「まどかが!?…わかったわ!場所を教えてちょうだい!」

………

ほむら「ありがとう!すぐに向かうわ!」

マミ「行き先がわかったら連絡するからお願いね!」プツン

--同刻 ほむホーム--

ほむら「(ここからだとかなり時間がかかるわ…。そうだ、金剛番長にも連絡しないと!)」タタタタッ

prrrrr… prrrrr… prrrrr… prrrrr…

ほむら「(出ない…!こういう時のためにプリペイド携帯を持たせて使い方も教えてあげたのになんなのよ!
こうなったら金剛番長が現場の近くにいることを祈るしかない…!)」タタタタッ

ほむらは焦りながらも足は止めず、懸命に走り続ける。

ほむら「(それにしても…金剛番長というイレギュラーに加えて巴マミが今の私に協力的になっていること自体が極めて稀なパターン…。しかもこの時間軸は今までにないタイミングであらゆる物事が進んでいる…。
それに昨日のアレで浮かれすぎてそのことについて計画を練り直すのを忘れてしまった…。そのせいでここまで後手に回ってしまうなんて私の失態だわ…!)」

--廃工場周辺--

金剛「ここは…工場か」

「とある理由」でこの場所へやって来た金剛。辺りを警戒していると……

ガシャーーン

金剛「(なんだ?)」

倉庫の窓を突き破って飛び出して来た「何か」。その正体は……

シュワァァァァ

金剛「(この匂いは…塩素ガス!市販のものでも簡単に作れて一般家庭で死亡事故を起こしたこともある毒ガスだ!
それが飛び出したってことは中にまともな誰がが…)」

???「いやぁぁぁぁ!!」

金剛「(この声…!)」

聞き覚えのある声が叫んでいる。その声の主を瞬時に判別した金剛は……

ボゴォッ!

ショートカットの為に倉庫の壁を吹き飛ばした。

???「!!?」

傀儡「グアァァァァ」ドサッ

破片を浴びた内の数人が倒れて動かなくなり、攻撃に驚いたゾンビのような人の群れは吹き飛んだ壁へ一斉に振り返る。

金剛「まどか、無事か!」

まどか「こ、金剛さん!」ウルッ

まどかは金剛が助けに来た事で安堵の涙を滲ませる。

金剛「………」ジー

金剛を見つめるまどかを余所に金剛は無言で倒れた人を見つめるが…

金剛「(なるほどな)」

何かを決意したかのような目付きになったかと思うと、突然耳を疑う事を言い出す。

金剛「こいつらを片付ける!そこでジッとしてろ!」

まどか「…え?」

金剛は魔女の口づけの事は知っている。だからこの人達が操られている事も知っている。

まどかは金剛の強さを知っている。金剛が素手で魔女を滅ぼす力を持っていると知っている。
「さっきは破片が偶然頭にうまく当たって気絶させられただけ」「あんな力を秘めた拳で直接人を殴れば一撃必殺どころか原形さえ留めない」「もし手加減して殴っても死は免れない」「金剛さんなら当然それを理解している」と考えていた。
だからこそまどかは信じられなかったのだ。

傀儡「ヴァァァァーーーー」

人の群れは金剛に警戒心…はたまた危機感を抱いたのか、まどかを無視して全員が金剛へ群がっていく。

まどか「待ってください!この人たちは魔女にあや…」

金剛「知ったことかーーーー!!!」ゴオッ

そして金剛はまどかの静止を無視して死を呼ぶ拳を無慈悲に打ち込んだ!

まどか「いやっ!!」

ピタッ

ブワァァァァッ ゴンッ

傀儡「ガァッ…」ガクッ

まどか「(す…寸止め?)」

拳が当たる寸前で停止すると激しい突風が発生。その突風に数人が吹き飛ばされ、壁に激突して力無く崩れ落ちるとそのまま動かなくなった。

………
………
………

金剛「これで全員か」

まどか「こ、拳の風圧だけで人を…」ペタン

金剛は最初の一撃から間を置かずに連続で寸止めを繰り返し、ものの10秒もかからずに触れずして全員をノックアウトしてしまった。
まどかは目の前の信じ難い光景に驚愕し、緊張感の緩みで思わずへたり込んでしまう。

まどか「(でもなんでみんなあんな簡単に…)」

金剛「やっぱり自分の意志で動いてねえせいか気絶しやすいようだな」

まどか「『やっぱり』?もしかして攻撃する前からこの人たちが気絶しやすいってわかってたんですか?」

金剛「ああ」

まどか「いったいどうやって気づいたんですか?」

金剛「俺が壁を破った時に何人か破片が頭に当たって気絶しただろ。それがありえねえことだったからだ」

まどか「?」

金剛「人間は意外と丈夫なもんでな。ひ弱な奴でも急所に直撃しなけりゃ簡単には死なねえし、頭部にダメージを受けても脳が激しく揺れるか脳自体が損傷するくらいやばいもんでなけりゃまず意識は失わねえ」

まどか「………」

金剛「つまりあの程度の大きさの破片を頭に喰らったくらいで気絶するなんて普通じゃありえねえ。だから『こいつらは気絶しやすくなってんな』って気付いたんだ。
そうと決まればやることは単純だ。直接殴ったら危ねえから触れずに拳圧でぶっ飛ばして壁に叩き付けて頭に軽く衝撃を与えりゃいい。踏ん張ろうともしねえ奴を飛ばすことくらい簡単だしな」

まどか「(拳の風圧で人を飛ばすのは簡単じゃないと思うんですけど…)」

金剛「………」

まどか「(でも状況を一目見ただけでそこまで看破して即座に対策まで練るなんて…。この人はただ身体や力が強いだけじゃない。ずば抜けた観察力・判断力もこの人の強さを支えてるんだ…!)」

金剛「聞いてんのか?」

金剛「………」クンクン

金剛は匂いを嗅ぎながら辺りを見回している。

金剛「魔女の匂いは確かにこの辺から匂ってんだが…隠れてるみてえだな」キョロキョロ

まどか「すぐ近くに魔女が?」

金剛「まどか、危ねえからお前は外で待っ…」

まどか「?」

まどかに振り向いた途端、金剛の言葉が途中で止まる。まどかがその様子に首を傾げた時…

金剛「ちっ!」ダッ

まどか「え…」

金剛がまどかを目掛けて飛び込んで行った。

バシッ

まどか「きゃっ!」ドサッ

金剛は飛び込みながらまどかに優しく手を触れると投げるようにまどかを弾き飛ばし、数m程飛んだまどかはそのまま地面に倒れ込む。

まどか「痛っ…。金剛さん、何を…」

上体を起こしながら金剛のいた方向を見ると…

金剛「くっ!」

人形型使い魔「♪♪♪♪♪」ワラワラ

金剛の後ろに炭酸の液体のような空間が拡がっており、同時にブラウン管テレビから現れた天使の輪を携えた片翼の球体関節人形のような使い魔が大量に金剛の身体に纏わり付いていた。

金剛「(関節が空間に固定されてほとんど動けねえ…!これがこの使い魔の能力か!)」

まどか「金剛さん!」

金剛「お前は…逃げ…」グニャリ

抵抗していた金剛の身体が突然半透明の液体状に変化し…

まどか「や…」

金剛「オオオオ!!」

まどか「やめてぇぇぇぇ!!」

バシュン

金剛は使い魔に身体をバラバラに分解され、まどかの眼前から跡形も無く消え去った。

今回は以上です。
年末年始は忙しくて投下し忘れてしまいました…。
しかも例によって修復もあんまり進んでないッ!

おりマギ新編発売まであともう少し!楽しみです!まどマギシリーズの悪役で大人気(?)の沙々ははたして出てくるのか…。私、気になります!

今回は以上です。
年末年始は忙しくて投下し忘れてしまいました…。
しかも例によって修復もあんまり進んでないッ!

おりマギ新編発売まであともう少し!楽しみです!まどマギシリーズの悪役で大人気(?)の沙々ははたして出てくるのか…。私、気になります!

まどか「…キュゥべえ、そこにいるんでしょ?」

キュゥべえ「なにか用かい?まどか」ヒョコッ

まどか「わかるでしょ?言わなくても」

キュゥべえ「予測はできても正解かどうかはわからないさ」

まどか「じゃあ…質問していい?」

キュゥべえ「僕が答えられる範囲でならなんでも答えるよ」

まどか「魔法少女の願いは…死んじゃった人を生き返らせることはできる?」

キュゥべえ「結論から言うと可能だ。実績もたくさんあるよ」

まどか「…そう。じゃあ…もう一つ。内容は具体的じゃなくても叶えられるの?」

キュゥべえ「それは素質によるけど君なら大丈夫だろうね」

まどか「…わかった」

キュゥべえ「でもそんなことに使ってしまっていいのかい?君ならもっと大きな…どんな途方もない望みであろうと叶えられると思うよ」

まどか「大きな望み?」

キュゥべえ「そうだね…。はっきり言って君の潜在能力は理論的にはあり得ないほどのものだ。君が力を開放すれば奇跡を起こすどころか宇宙の法則を捻じ曲げることだって可能だろう」

まどか「わたしはそんな大きなものは望まないよ」

キュゥべえ「………」

まどか「もしかしたらわたしが気づいてないだけで金剛さん以外にも今までわたしのせいで苦しんだ人がいるかもしれない。
だとしたらいつまでもわたしだけがそれから逃げてちゃスジが通らないよね」

キュゥべえ「そのスジっていうものが僕には理解できないな」

まどか「わからなくてもいいよ。わたしはわたしのせいで苦しんだ人が救われればそれでいいんだよ」

キュゥべえ「まどか、君は望むなら万能の神にだってなれるかもしれないんだ。本当にそれでいいのかい?」

まどか「もし神様になってもわたしに務まるわけないよ」

キュゥべえ「…そうかい。まあ、内容は君の自由だ。好きにするといいさ」

まどか「……キュゥべえ。わたし、契約するよ」

キュゥべえ「その言葉を待ってたよ」

まどか「………」

キュゥべえ「さあ、鹿目まどか。君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるのかい?」

まどか「わたしは…わたしに関わったことで苦しんだ人たちを…」

???「待って!!」

まどか「!?」

キュゥべえ「君は…!」

--金剛が消えた直後 ハコの魔女の結界--

炭酸の液体のような空間の中に円形に張り巡らされた複数本のメリーゴーランドと無数のブラウン管テレビ、その周辺を飛び交う使い魔、そしてそれらに囲まれて浮かぶ人影が一つ。

金剛「(ここは…どこだ…)」

人影は無重力の結界内を死んだように漂う金剛の姿だ。

金剛「(意識が…はっきりしねえ…)」

朧げな意識の中で自分の身体を見てみると、全身が粗いタッチの色トレスのように変質していた。

金剛「(身体も…動かねえ…。罠に…はまっちまったか…。まずいぜ…)」

指一本すらまともに動かせずに漂っていると、突如ブラウン管テレビに映像が映り出す。

金剛「(これは…)」

映っているのは血塗れになった全身に包帯を巻いてベッドに横たわる女性、そして髪型こそ違えど金剛に酷似した風貌の巨漢が業火に包まれている姿。その二人は彼にとって愛すべき者達であり、同時に辛く悲しい記憶として彼の心に刻み込まれた者達でもあった。

金剛「(母さん…)」

女性の名は「金剛さゆり」。金剛兄弟の母親である。
金剛兄弟を連れながら外国で内戦の被害者の救援ボランティアを行っていたが、避難所として使われていた教会へ流れ弾が命中して倒壊し、生き埋めになる。
直ちに救助されたものの既に致命傷を負っており、手当も虚しく金剛兄弟の見守る中で息を引き取った。

金剛「(兄貴…)」

巨漢の名は「金剛 猛(たけし)」。金剛晄の兄である。
母を愛し過ぎたが故に母の命を奪った世界を憎悪し、母の死後から14年に渡ってその憎悪を増幅。その最中に『ある人物』と接触したことで『世界を滅ぼせる力』に目覚め、それを機に自らが世界を破壊する計画を考案し、23区計画・ダモクレス計画を隠れ蓑にして実行を開始した。
計画は完遂目前まで進んだが、土壇場で自分と同じ力に目覚めた晄との世界の命運を賭けた死闘の末に敗北。その直後に『誰もが予想しなかった行動』を取り、凄絶な最期を迎えた。

金剛「(こんなものを見せて…俺を動揺させる気か…!)」

人形型使い魔「♪♪♪♪」ガシッ

金剛「…!!」

金剛が怒りに打ち震えていると、先程金剛を結界の中へ引き摺り込んだ使い魔が現れ、4体で彼の全身を引っ張り始めた。

ググググググッ

金剛「グオオオオオ!!」

身体がゴム人形の様に伸びていき、今回は先程とは違い物理的に身体を引き裂こうとしている。

金剛「(そ…そんなくだらねえことのために…母さんと兄貴を…!許さねえ!!)」グググググッ

金剛は激痛に耐えながら身体が変質したまま全身を緊張させ……

金剛「オオオオ!!」ドンッ

ブアァァァァッ

人形型使い魔「!?」バシュン

目が眩む程の光が全身から放たれ、奔流となった光が身体に纏わり付いていた使い魔だけでなくその周辺を飛び交っていた使い魔まで全てを消し飛ばしてしまった。

金剛「ハア…ハア…。今の力は…『あの時』の…」

ポン

金剛「………」

その直後、変質していた身体が元の姿に戻る。

金剛「魔女の野郎は…そこか!」

辺りを見回すと10数mほど離れた位置に浮く旧式のデスクトップパソコンのディスプレイのような物を発見。その中にはツインテールの少女の姿が見える。恐らくはこれが魔女だろう。

金剛「(くっ、この場から動けねえ…!)」バタバタ

足場となる物の無い無重力空間で移動するには推進装置が無くてはならないが、金剛には当然ながらそれが無い。

金剛「(何か…足場になるもの………!?)」

???「………」ヒューーーーン

金剛が移動に四苦八苦していると、何故か突然金剛の近くへ魔女が接近してきた。

金剛「(殺気…!直接殺る気か!!)」

???「………」ゴワァァァァッ

次の瞬間、ディスプレイから数十体もの使い魔が飛び出して一斉に金剛へ襲い掛かった。

★金剛番長・金剛晄VSハコの魔女 ・エリー FIGHT!!★

今回はここまでにします。
まだ修復終わってないのにこのペースを維持してて大丈夫だろうか……。



--今週のアニメ--
ワールドトリガーがやっと盛り上がる場面までやってきました!やっと実力派エリートの実力御披露目だー!
それはそれとして小南先輩が可愛過ぎて生きるのが辛い…。さすがはくぎゅキャラッッッッ!!!

金剛「(さっきの力はもう使えねえ…。ならあとは…)」グッ

人形型使い魔「………」フワッ

金剛「オラァ!」ドコッ

人形型使い魔「!?」ヒューン

金剛「………」

人形型使い魔「………」フワッ

金剛のパンチ一撃で使い魔数体が抵抗無く吹き飛ぶものの、体勢を立て直すと再び金剛へ向かっていく。
本来ならば使い魔など物の数ではない彼の力が何故通用しなかったのか?答えは簡単だ。

金剛「(ちっ、拳に力が乗らねえ…!)」ドコッ ドコッ

人間に限らず地上の生物は地面を踏み締めることで初めて本来の身体能力を発揮出来る。
しかし水中や空中等の足場が無い空間では踏ん張りが効かず、パンチを繰り出しても手打ちになってしまい、使い魔すら倒せない程度の威力になってしまっていたのだ。

ガシガシガシガシ

金剛「(しまった!)」

必死の応戦も虚しく数で押し切られた金剛は再び使い魔に捕まり、先程と同じ姿に変えられてしまう。

金剛「ぐっ…ああああ!!」

更に先程と同じく使い魔が金剛の全身を引っ張り始める…が、使い魔の数は先程とは比べものにならない。

金剛「……ぁ……」

引っ張られた部分が糸のように細まると苦痛は限界を極め、最早声すら出せない程に金剛の意識を奪おうとしていた…が、しかし…

ヒュン ズバッ

一条の蒼き閃光と共に数体の使い魔が薙ぎ払われ…

ズバズバズバズバッ

その閃光が数度現れると、纏わり付いた数十体の使い魔は瞬く間に姿を消してしまった。

金剛「(蒼い…光…)」

???「いやぁごめんごめん!危機一髪ってとこだったね!」スタッ

再び意識を取り戻した金剛が目にしたのは、青を基調としたカラーリングでビスチェのように肩を丸出しにした鎧風のトップに左右非対称のスカートが付いたものを装着しており、その上から白いマントを羽織った青い短髪の少女の姿だった。

金剛「!?…お前、さやかか!?」

さやか「へへっ、似合う?」

金剛「……さやか……」

さやか「……何を言いたいのかはわかってるよ。でも今は……」チャキッ

金剛「ああ…。話は魔女を倒してからだ!」グッ

★魔法少女・美樹さやか加勢 金剛番長&美樹さやかVSエリー FIGHT!!★

さやか「じゃあ移動するよ!」ガンッ

金剛「うおっ!?」ヒュン

さやかは金剛の背後に回り込んで彼を蹴り飛ばす。金剛が蹴り飛ばされた先には……

金剛「恩に着るぜ!やり方は手荒いがな!」ガシッ

さやか「文句言わないの!あとは自分でなんとかして!」シュン

金剛の足場となるメリーゴーランドだった。
金剛とさやかが二手に分かれると使い魔も二手に分かれて2人へ向かって行く。

金剛「さっきみたいにはいかねえぜ!」

ドゴドゴドゴドゴッ

足場を得た金剛は下半身を固定しながら拳を振るって使い魔を殴り飛ばすが…

ギシッ バキン

金剛「(ちっ、足場が脆いな。こまめに移動しねえと…)」タッ

金剛のパンチの反動に耐え切れずに足場が割れてしまう。

さやか「はっ!」ズバン ズバン

さやかは先程と同じく蒼い閃光の軌跡を残しながら飛び回り、時には地面があるかのように踏み込んで使い魔を切り裂いていった。

金剛「(やっぱり見間違いじゃねえ。あれがさやかの魔法か)」

さやかは無重力の空間を背後から蒼い光を噴射して飛行するように高速で飛び回っている。

金剛「(あの機動力…空を飛んだマシン番長を上回ってやがる。目で追いきれねえぜ)」

更に時々地面を蹴るような動きをした瞬間に足元が一瞬だけ蒼い光が弾け、数mの間合いを瞬時に詰めていく。

金剛「(初めての実戦でここまでの応用ができるのもそうだが…剣の腕もかなりのもんだ。
斬撃の速度自体は居合番長に劣るが、あの移動速度と組み合わせることによって居合番長と同等かそれより鋭い斬撃を生み出してるな)」

さやか「はぁぁぁぁ!!」ゴォーーーー

それら二つの魔法を駆使し、さやかは数十体の使い魔の攻撃を掻い潜りながら切り伏せていった。

金剛「(それに…構えこそ違うが太刀筋が居合番長と似ている…。
正直なところここまでやる奴だとは思わなかったぜ)」

さやか「はぁー!」ズババババッ

金剛「(ビルに現れた魔女の時もそうだったが…何故か俺に向かってくる使い魔の方が多いな)」ドゴン ドゴン

さやか「(よし、使い魔は蹴散らした。あとは魔女だけだ!)」ヒュン

金剛より早く使い魔を全滅させたさやかは単身魔女へ突撃していく。

金剛「待てさやか!その魔女は…」

さやか「はあっ!!」ザンッ

カンッ

さやか「いっ!?」ビリビリ

金剛「(やっぱりか!)」

……が、さやかの斬撃は僅かな傷を作った程度で造作も無く跳ね返されてしまう。

さやか「このおーーーー!!」ガガガガガガッ

キンキンキンキンキンキンッ

金剛「(ただの力任せの斬撃じゃ傷一つ付かねえか…)」ドゴン ドゴン

さやか「くっ!」ビリビリ

ドバッ

さやか「うわっ!?」ザザッ

さやかの斬撃を悉く跳ね返してさやかが怯んだ隙に、魔女は再び大量の使い魔を召喚してさやかを襲撃した。

さやか「こんにゃろーーーー!!」ズバババババッ

金剛「(攻撃能力が無いのに自ら前線に出るってことは簡単にはやられねえ自信があるからだ。
だがあの加速を加えた斬撃でもあの程度の傷だけとなると…)」ドゴン ドゴン

さやか「しつこいなーもう!」ズバババババッ

金剛「(俺がやるしかねえな)」キョロキョロ

金剛は周りの使い魔を蹴散らすと辺りを見回して「何か」を探し始めた。

さやか「(くっ…魔女に攻撃が効かない上に使い魔がジャマになって魔女に手が出せない!)」ズバババババッ

金剛「さやか!こっちに来い!」

さやか「へ!?わ、わかった!」ヒュン

隙を見てさやかは金剛の側へと駆け戻る。

さやか「どうしたの?もしかしてあの魔女を倒す方法でも思いついた?」スタッ

金剛「あれを見ろ」

さやか「あれは…」

さやかが金剛の視線の先を見ると…

さやか「地面?敵ばっかり見ながら飛び回ってたせいで全然気づかなかった…」

金剛「今から俺があそこに行く。お前はそれに合わせて魔女を俺のところにぶっ飛ばせ」

さやか「で、でもあたしの剣はあの魔女には…」

金剛「全く効いてないわけじゃねえ。それにあれはまだお前の全力じゃねえだろ?まだ不慣れな動きに戸惑ってるだけだ」

さやか「…!」

金剛「だがお前なら必ずやれる。頼んだぜ!」バガーン

さやか「あ!ちょっとぉ!」

金剛はそう言い残すと返事を待たずに飛び出してしまった。

さやか「(まったく…。返事も聞かずに行くなんて…!)」ヒュン ズバッ

人形型使い魔「!?」シュン

さやか「(こっちはデビュー戦で余裕ないの!いっぱいいっぱいだっつーの!)」ヒュン ズバッ

人形型使い魔「!?」シュン

さやか「(でも…不思議と恐怖は感じないなぁ。金剛番長と一緒に闘ってるからかな?
それに…あんな風に頼られたら…)」ズバッ

人形型使い魔「!?」シュン

さやか「応えないわけにはいかないじゃん!!」ズバババババッ

人形型使い魔達「!?」ボシュン

今日はここまでにします。
最近は何故かまどマギ本編よりおりマギやたるマギ等のスピンオフの方が楽しく感じるようになってきました。


-今週の七つの大罪-
遂に大罪の五人目!色欲の罪(ゴート・シン)の「ゴウセル」登場ッ!!
ケンカ祭り編でチラッと出て来たオタクっぽいメガネ男子がコイツでしたよ!最初はアニメオリジナルキャラかと思ったけどやたら本が好きな所を見るにもしやと思ったら!
そんなこんなでデールとの交流やメリオダス達(というかエリザベスとホーク)との出会いが原作とは全く違うアニメオリジナルの内容になっていました。
原作では描かれなかったゴウセルの一面が分かってとても楽しめましたよ!

さやか「はっ!」ズバン ズバン
さやか「はぁぁぁぁ!!」ゴォーーーー
さやか「はぁー!」ズババババッ
さやか「はあっ!!」ザンッ

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