ミンチ「さあ蘇るのだ!この電撃でー!」ほむら「やめて!」(19)

ほむらは病院を退院し帰宅してすぐpcを開き対ワルプルギスの計画を練る。するとメールが1通届いていた。
題:友達募集
本文:当方、身寄りの無い、老い先短い、寂しい おじいちゃんです
ループ中すべての日常での出来事が全く同じというわけではないが、このようなメールが届いたことも初めてだった。ほむらはこのメールをスパムと判断しすべて読む前にゴミ箱へ入れた。

鹿目まどかとインキュベーターの接触を阻止するため、インキュベーターを鹿目家の前で仕留めまどかに警告した帰り道、ほむらは魔女の反応を探知し、ほどなく結界を発見した。
魔女の結界の中には倒れた人の姿が見えた。どうやら一般人が結界に取り込まれたようだ。生死の確認をしたいが目の前に巨大な凱旋門のような魔女が立ちふさがる。前にみたことがある、芸術家の魔女だ。

ほむらは即座に時間停止の魔法を発動、盾の中から爆弾を数個取り出し起爆スイッチを入れ一斉に投げつける。同時に倒れている人を担ぎ上げその場から急いで離れる。
時間停止の魔法が解除され魔女の至近距離で爆弾が一斉に爆発する。手製の爆弾が魔女の姿を跡形もなく消し去った。

魔女の死と共に結界が消える。周りの景色が静かな住宅街に戻ると魔女のいたところにはグリーフシードが直立していた。ほむらはグリーフシードを拾い上げてから被害者の状態を確かめた。
被害者はアロハシャツに鋭いサングラスをした老人。先程担ぎ上げた時息をしているのはわかった。ほむらは老人の顔をぴしぴしと叩きつつ意識はあるかと声をかけた。すると小さなうめき声と共に老人が意識を取り戻す。
「うーん・・・ここは一体?私は家にいたはずなのにどうして外にいるんだ?」
ほむらは老人が魔女の結界に巻き込まれていたことは話さず老人が道端で倒れていたと説明した。原因がわからないまま再び老人を一人にするのは心配と、救急車を呼ぶか老人を家に送るかと提案する。
「ありがとう、私の名前はバトーです。私は口の悪さからこの年までずっと友達ができませんでした。こんな老い先短い老人が病院に行ったってしかたがない。」
「戦車を作るしか能がない私なんかこのままさびしく死んでしまおうと思っていたところです。それよりも私を助けてくれたあなたが友達になってくれませんか。」

この様子では魔女のくちづけを受けるなりして再び危険に晒されるかもしれない、1度助けた命を再び狙われるかもしれないというのは寝覚めが悪い。ほむらはバトーと友達になることを約束した。戦車を作るというのが気になったが。
「ありがとォー、友達になった記念にあだ名で呼ばせてもらうね。なんて呼ぼうかな。」
返事1つでこの変わりようにほむらはすこしたじろぐ。しかし次に出てくる言葉に耳を疑った。
「トーシロ、うすのろ、ドンガメ、ナイチチ、ヘンタイ、ゴキブリどれがいいかな?」
!!冗談ではない、バトーはあだ名をつけるといったはずなのに出てくる言葉は罵倒そのものだった。こんな相手と友人になれるわけがない、ほむらは怒りその場を立ち去ろうとする。
「ああサースデー、私の友達はロボットのお前だけ、その私もこのままさみしく死んでしまうよ。」
その一言で一瞬踏みとどまる、悪人ではない、ただの口の悪いだけの老人なのだ、みすみす見殺しにする必要はない。
後から次々とわいてくる怒りを鎮めつつ改めてバトーからのあだ名、ナイチチを受け入れることにした。
「ナイチチ、うん、それしかないってくらいピッタリだね、ナイチチーーーーーーーーー。で、戦車だけど私の研究所に帰らないとね、私は魔法でポンとすぐ出せるようなバケモノじゃないんだから。」
微妙にこちらの立場に被るような発言にひっかかりながらもほむらはバトーの研究所へと向かった。

「いいかい、頭も体も発育の悪い中学生のナイチチでも分かるように説明してあげるとね、戦車を作るには設計して、材料を集めて」
「それから製造するわけだから、まずは戦車の設計だね。細かいところはわしがやるからナイチチはどんな感じがいいのか大雑把に決めちゃってよ。ナイチチは勉強とか計画とか苦手かもしれないけどさ。」
ほむらは対ワルプルギス用に必要な能力を考える、奴の圧倒的な攻撃力と防御力に対抗し、更に使い魔も同時に一掃できるものを。
「どうしたの?まるで準備体操で息が上がっちゃったみたいに止まっちゃったけど、ナイチチの可愛い脳みそじゃ一人で決められないんだね、学校の先輩の家でケーキでも食べながら決めればいいと思うよ。」
バトーにほむらが戦車に要求する能力、半分あてつけじみた気持ちで最強の矛と盾を持つ、を伝える。
「よくもまあこんな笑える設計を考えられるね、ところでこれを作るには材料の鉄くずが沢山必要ってわかってるよね?ナイチチが同級生のタンスひっくり返してでも集めてくるまで戦車作りはオアズケ!」
「オアズケってナイチチにはぴったりのいい言葉だね!」
材料集めよりバトーの言葉に頭がどうにかなりそうだった。

「舐めるんじゃないわよ!」
ほむらはワルプルギス打倒のため佐倉杏子と同盟を結び、美樹さやかと衝突しないよう釘をさしたのだが、甲斐なく2人は歩道橋の上で激突してしまう。
「さやかちゃんごめん!」
まどかがさやかの出現させたソウルジェムを横から奪い、歩道橋の下の車道へ投げ捨てた。
まどかの行動にソウルジェムと肉体の関係を知っているほむらは驚愕したが、すぐに時間を停止させ下を通るトラックの荷台に乗ったさやかのソウルジェムを追いかける。
一方橋の上の少女たちはさやかの体が糸の切れた人形のように崩れ落ちたことに困惑するが
「どういうことだおい、こいつ死んでるじゃねーか!?」
さやかの脈が停止していることに気が付くと困惑は狂乱に変わる。さらにインキュベーターが肉体とソウルジェムの関係について話し少女たちを突き放す。
「てめえ!それじゃああたしたちゾンビにされたようなもんじゃねえか!!」
杏子はインキュベーターの頭をつかみあげ激しい怒りをぶつける。
「何言ってるのよキュゥべえ!助けてよ、さやかちゃんを死なせないでっ!!」
「なに!?死体はどこかね?!早く見せなさい!」
まどかの叫びに答えるようにいきなり老人が現れる。
「おお、これは素晴らしい新鮮な実験材料じゃ、これなら成功するぞ!」
少女が死んでしまったというのにこのいきなりあらわれた怪しい老人は何を言っているのか。
「おじいさんやめて!さやかちゃんになにをするの!」
さやかの、まだ温かいがその温もりが失われつつある、身体を抱き寄せたまどかが泣き叫ぶ。
「ワシは死体を生き返らせる研究をしておるドクターミンチというものじゃ、天才はいつも世間には理解されないものじゃ。」
「本当?!本当にさやかちゃんを生き返らせれるの?!」
その老人の言葉は老人自身の姿も相まってとうてい信じられるものではなかったが、まどかはそれでもさやかが死んだという事実を覆そうとわずかな希望をミンチに託した。
ミンチは両手に持った電極を掲げ気合と電力を込める。
「さあ蘇るのだ、この電撃でー!!」

時間停止をくりかえしどうにかソウルジェムを載せたトラックに追いつきソウルジェムを回収したほむらが橋に戻ると、先程の状況から怪しい老人が一人加わっているのがみえた。
さやかはソウルジェムを取り戻すだけで復活する、何か余計なことが起きる前に時間を停止させさやかの手のひらにソウルジェムを置いた。
時が止まる瞬間と動き出す瞬間が普通の人間には感じ取ることは難しいが、ミンチはさやかの体に電極を当てようとした直前、彼の長年の研究と経験から違和感を一瞬で感じとる。
「なんじゃこの死体は!まだ生きとるじゃないか!」
ソウルジェムが肉体のコントロール圏内に戻り意識を取り戻し起き上がったさやかは、ほむら以外全員の驚愕のまなざしを受けながら言葉をこぼす。
「何、なんなのよ・・・」

「ソウルジェムは?さやかちゃんはどうしたの?!」
ほむらはソウルジェムの最後の秘密、濁りきるとグリーフシードに変わり魔女を生むという事実をただ冷然とまどかに告げる。
「そうだ・・・ミンチ博士、ミンチ博士ならさやかちゃんを生き返らせてくれるんじゃ・・・」
やはり誰も現実を受け入れることはできないのだ。
いい加減にしなさい、死体に電気を流して生き返らせるなど、そんなの魔法ですらあり得ない、ほむらはまどかに大声を上げてしまう。
「ご・・・ごめんねほむらちゃん、そうだよね・・・電気を流しただけで人が、い・・・生き返るなんて、いくらなんでもめちゃくちゃだよね。」
「さやかちゃん、魔女から人を守りたいって、正義の味方になりたいって、そう思って魔法少女になったんだよ?なのに・・・」
「さやか・・・チクショウ・・・」
杏子はさやかの絶望に歯ぎしりするほかなかった。

変身したほむらは盾の中から次々と鉄くずを出していく。それをバトー博士の友達ロボット「サースデー」が受け取り戦車製造マシンに放り込んでいく。
「ナイチチーーーーーーーーーーー!ナイチチがどっかから盗んだり剥いできたにせよ、ついに戦車を作る分だけの鉄くずが集まったわけだから、さあ作ろう!」
「戦車製造マシーンスイッチオン!」
戦車製造マシンが動き出す。戦車ができるまでの間ほむらはバトーに戦車の運用について質問する。燃料、弾薬、搭乗員など戦車は一人で動かせるものではないのだから。
「えー?こいつは驚いた、ナイチチってほんとバカ、でもいいさ、なんでも聞いてくれよ、だってわしらマブダチだろ?呑み込みが悪くても何度だって聞いてくれよな!」
燃料はどうするのか。
「燃料?りんごでも食うのかい?穀潰しのナイチチじゃないんだから燃料なんか必要ないよ。」
弾薬は。
「主砲やse(スペシャルイクイップメント)には弾数の制限があるけど副砲にはいくらでもあるから、弾は粗末に使えるよ。」
搭乗員。
「cユニットがほとんどやってくれるよ。これでもう何も怖くないよね!」
おかしい、自分の知っている戦車とバトーの言う戦車が同じものに思えなくなってきた。この老人は他人に暴言を振りまいてまで何を作り出すのだろうか。

「ナイチチーーーーーーーーーーー!もうすぐナイチチの考えたひどくみっともいい戦車が完成してしまうよ。」
そうバトーが言い終えると戦車製造マシンのコンベアが動き出し中から戦車が現れた。
「うっ、これは思った以上にひど・・・素晴らしい!吐き気を催す独特のスタイリング、ナイチチそっくりな小さな体、ワシはこれをナイチチ戦車と呼ぶことにするよ。」
出てきた戦車は陸上自衛隊第4世代主力戦車、10式と同じ外見をしていた。
「ナイチチはすぐ飽きるに決まってるけど、また別の戦車が作りたくなったらいつでも言ってよ。そのポンコツを潰してすぐに別の戦車を作ってあげるからさ。」
「遠慮すんなよ、だって友情は金では買えないものだろ?ハハハハ。ハハハハハハハハ。ハハハハハハハハハハハハ。」
ほむらは完成した戦車に乗り込み計器を起動させタッチパネルのコンソールから戦車性能の情報を参照する。
シャシー:type-x10改a
主砲1:195㎜バースト
主砲2:177㎜アモルフ
主砲3:ns120-sbg
副砲1:22㎜バルカン
副砲2:22㎜バルカン
副砲3:30mm機銃
副砲4:30mm機銃
se1:sトルネード
se2:エクスカリバー
se3:速射flak
se4:t-ciws
ブレード:合金ブレード
cユニット:solomon3
特殊砲弾:apfsds弾、セメント弾、りゅう弾、ロケット弾
武装、装甲、機動力、どれも現代の科学力より上回る数字を示す戦車に、ほむらはワルプルギスの夜を倒せる希望の光が見えた気がした。

「ニンゲンノ クズ ハ モウ テツノクズヲ アツメナイ ソシテ バトーハカセ マタ ヒトリボッチ ニ ナル デモ ニンゲンノ クズ ハ ナンド ヤッテモ ヒトリボッチ」
ほむらが戦車と共に研究所を去った後、サーズデーは誰に向かうでもなく、そうつぶやいた。

ワルプルギスの夜がスーパーセル現象として現われ街の住民が避難する中、ほむらは戦車に乗り込み待ち受ける。
鈍色の分厚い雲の中からワルプルギスの夜が現れると同時にほむらは砲撃を開始した。

特殊砲弾のセメント弾を装填、発射、ワルプルギスの夜は巻き起こす風でセメント弾をそらした。ほむらはひるまず第二弾を装填し発射する。
ワルプルギスの夜は再び風を巻き起こしセメント弾をそらそうとするが、x10改aの特殊能力、ホーミングヒットで強制的に命中する。ワルプルギスの夜がセメントにまみれ、その動きを格段に遅くさせた。
セメント弾の効果を確認したほむらは最大火力で一気に勝負をつけようとする。熟練の戦車のりならば一瞬ですべての搭載火器を目標にぶつけたり
cユニットのプログラムで同種の火器を連続発射できるがほむらの戦車にはその機能はない。
しかし時間停止を用いてほむらは全砲門発射を再現する。
戦車に搭載された火器すべてからおびただしい量の弾がワルプルギスの夜に向かって発射された。動きの鈍ったワルプルギスの夜はまともに火薬の嵐を全身に受ける。
すさまじい爆音が鳴りやみもうもうと立ち込める爆炎が晴れ、中のワルプルギスの夜が姿を現す。どうやら目立ったダメージは見受けられないようだ。
先ほどと変わらぬ忌々しい姿を見てほむらは舌打ちするが、まだ手が尽きたわけではない、すぐさま第2ラウンドのゴングとして195㎜バースト砲を叩き込む。

ワルプルギスの夜は手数で劣ると判断してか使い魔を呼び出し展開させる。ほむらはそれを22㎜バルカン砲で次々と砕いていく、ほむらの普段使用している銃と違い
強力なワルプルギスの夜の使い魔と言えど簡単にボロ雑巾以下にできるほどの破壊力を有していた。さらに煙幕花火でこちらの姿を覆い、一方的に使い魔を蹴散らす。
使い魔を潰されたワルプルギスの夜の次の手は火炎放射だった。鉄をも溶かす火炎をほむらの操る巨大な質量は右に左と炎の間を縫うようによけていく。
巻き上がる炎はそれでも戦車の表面を舐めるように焦がそうとするが、耐火コートを施された戦車はそれも意に介することはない。中のほむらもオートエアコンで快適に操縦している。
ほむらは次の手にロケット弾を使用した。空を飛ぶ敵に効果の高い特殊弾頭である。ロケット弾は尾を引きながらまっすぐワルプルギスの夜の中心へ向かい、直撃。
お返しとばかりにワルプルギスの夜から大量の使い魔が放たれる。ほむらは直撃を有効打とし、次弾を装填した。

「だんな様、私らも避難を始めた方がよいのではごぜえませんか?」
「何を言う、こんな時こそ新鮮な実験材料が手に入るものではないか!早く死体を探してくるんじゃ。」
「私はローラ、世界一美しい脳みそよ、おほほほほ。」
そのころドクターミンチ研究所ではスーパーセルの発生でも避難をせず研究を続けるミンチたちがいた。
「行かなくちゃ・・・街が危ないとなんだかあたしが守んなきゃってきがしてくる・・・」
「おお、お前さんも外へ行くというならイゴールと一緒に死体を探してくるんじゃぞ、なるべく新鮮なやつじゃ。」
ミンチは先日死体を発見し蘇生に成功していた。しかし成功したはいいが生前の記憶がないという。
記憶のない少女一人、行くあてもないということなのでミンチはその元死体を助手としてそばに置いていた。

ワルプルギスの夜に攻撃を加えるほど反撃も熾烈になってゆく。初めは優勢だと思っていたほむらも防御の手が回らなくなってきていた。
使い魔、火炎、巻き上げる瓦礫、それらを受け、かわし、ひき潰しワルプルギスの夜に主砲をぶち込む、魔法を使って安全を確保してもいいが、こちらが先に魔力を消耗するのも避けたい。
しかし戦車の装甲タイルの消耗も激しい。長引けばこちらが不利だ。やはりもう1度時間を停止して全砲門発射をするか・・・。
一瞬の思考でほむらは頭上から落ちてくる巨大なビルの塊に気が付くのが遅れた。とっさに時間を停止させ回避、安全圏まで戦車を走らせるが・・・。
ビルの影から戦車が抜けきる前に時間が動き出す、ほむらの時間停止魔法の限界が来てしまった。落ちてくるビルをかろうじてかわすことはできたが、これではもう攻めも守りも半減してしまう。
そしてほむらは使い魔に取り囲まれていた。このままでは突破しきれない、ここまでか、そう諦め盾に手をかけようとした時。
使い魔の絨毯に青い亀裂が走った。使い魔たちに動揺が現れたのか動きが一瞬止まる。ほむらは好機ととらえ、りゅう弾を装填、亀裂に向かって撃ち込み更に戦車を突進させた。
使い魔の包囲を抜けてから亀裂を作った原因を探しその正体に驚愕する。
そこには死んだはずの、正確には魂となるソウルジェムがグリーフシードに変わり、魔女として倒された美樹さやかの姿があった。
戦車をさやかの元へ寄せなぜ生きていると問い詰める。
「え、誰?あたしを知ってるの?」
記憶がない?他人の空似にしてはさやかの姿は魔法少女のものである、本当に生き返ったのか?そんな例はない、生き返らせる、まさかあの怪しいの一言では収まらないような老人が?!
とにかくさやかを戦車に乗せ何がさやかの身に起きたのか質問する。
「なんかあたし、ミンチ博士が生き返らせたって言ってたけど、死ぬ前の記憶がないの。」
なんということだ、死体を生き返らせるなどという夢物語がまさか本当だったとは、ではその魔法少女の姿はなんだというのか、ソウルジェムもついていないというのに。
「あたしなんだか無性にこの街を守らなきゃいけないって思えてきて、そうすると自然とこの姿になっていつもより力が出るの。」
「街をこんなにしたのはあいつなんでしょ?このドラムサヤカンちゃんが許さないからね!」
記憶喪失ではあるがとにかくさやかの力が加わった、さやかに副砲で使い魔の排除を任せ、ほむらはワルプルギスの夜に照準を定める。

「以上、見滝原市の気象情報でした。また、新たな情報が入り次第お伝えします。次のニュースです。製薬会社、ノグチケミカルの開発した新製品ですが、その開発に違法があったとして厚生労働省は・・・」
ラジオから流れるニュースではスーパーセルの勢いはいまだ衰えず勢力を増したままこちらに向かってきている。
「ほむらちゃん・・・。」
まどかには一人魔女と戦うほむらを信じ祈るのが精一杯だった。

「こんのぉ、邪魔すんなぁ!ブッ散らばれぇ!」
副砲を担当するさやかは雄叫びをあげながら22mmバルカン砲を掃射する。ワルプルギスの夜への射線がクリアになり、ほむらはseを撃ち込んでいく。
始めは無傷だったワルプルギスの夜に損傷が見えてくる。もうすぐだ、確実にダメージを与えていると判断したほむらは虎の子のapfsds弾を装填する。
撃ち出されたapfsds弾はワルプルギスの夜の歯車に大穴を開ける。会心の一発だとほむらは手ごたえを感じた。
予想以上のダメージだったのかワルプルギスの夜は動きを止める。そして今まで以上に苛烈な勢いで攻撃を繰り出してきた。終わりは近いのだろう。
ほむらはさやかの手を攻撃に回す。全弾撃ち切ってでもワルプルギスの夜にとどめを刺す作戦だ。
「このままじゃこっちもやばいよ!」
こちらの防御を無視した捨て身の攻撃は使い魔たちの攻撃も一方的に受けることになる。残りわずかとなった装甲タイルを見てさやかが弱音を吐く。
残り最後となった主砲の砲弾、祈るような気持ちでほむらは発射スイッチを押す。
高速で迫る砲弾。ワルプルギスの夜は砲弾をそらそうとするがホーミングヒットの効果で強制的に命中した。
ワルプルギスの夜が少しずつ崩れてゆく、ついに勝った、まどかを契約させることなくワルプルギスの夜を乗り越えた。
ほむらは胸の奥から熱いものがこみあげてくるのを感じた。
「まだだよ!」
さやかが叫ぶ。ワルプルギスの夜は崩れゆく中、残る力を使い再びビルの塊を巻き上げる。またあれをぶつけてくるつもりだ。
迎撃を!そう思ったほむらだったが主砲、seの残弾は全て0、副砲ではビルを迎撃するには無力、時間停止もできない。
「うおおーっ!早く逃げろー!!」
さやかに言われるまでもなく逃げるしかない。戦車を全力で飛ばす。間に合うかは神に祈るしかない。

空が青さを取り戻していた。ほむらがワルプルギスの夜を撃退したのだろう。そう思うとまどかはいてもたってもいられなくなり、両親の制止を振り切って街の中へ駆けだして行った。

「いててて、頭打ったぁー。あんたは大丈夫?」
どうやら直撃は間一髪避けたようだ。しかし瓦礫が車体を押し潰し、シャシーが大破してしまったようだ。さやかの手を借り戦車から這い出す。
足と肋骨が折れていた。
「うわっ、あんた足折れてんじゃん。」
心配ない、魔法で痛覚を遮断するし戦車に搭載した医療キットもある。さやかにそれを取り出し手当を手伝うよう頼んだ。
「ほむらちゃーん、ほむらちゃーん、どこー?」
手当を受けているとまどかの声が聞こえた。まどかも自分の勝利を確認して駆けつけてきてくれたのだ。
ほむらはすっかり力が抜けて弱弱しいが懸命に返事をする。
「ほむらちゃん、いた!やったんだね!ワルプルギスの夜を・・・え、嘘・・・なんで・・・なんでさやかちゃんが・・・」
まどかも死んだはずのさやかを見て驚き固まってしまった。無理もない。
「おーい、誰かいるのかね、おおドラムサヤカンか、死体は見つけたのかね。」
ドクターミンチもやってきた。
「これだけの災害が起きたんじゃ、お前たちだけじゃ手が足らんと思ってわしも出てきてしまった。」
「先程わしの見つけたこれも恐らく死体じゃろう、早速実験してみるとしよう。」
ドクターミンチが取り出したのはグリーフシード、まさか・・・まさかまさか・・・
「さあ蘇るのだ!この電撃でーっ!!」
やめて!!動く力の残っていないほむらの叫びを無視しミンチはグリーフシードに電流を流しこむ。
グリーフシードは孵化と同時に膨大なエネルギーを生み出す。辺り一帯を吹き飛ばし空に浮かび上がる魔女はワルプルギスの夜。

ほむらは盾の砂時計を返すほかなかった。

終わり。

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