双葉杏「めんどくさいのはきらいなんだってば」 (20)

双葉杏(17)
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杏「あー……」


杏「……うー」


杏「おぉー…………」


杏「……寝苦しいっ!」

きらり「あっ、杏ちゃんおはゆー☆ ご飯できてるにぃ?」

杏「きらりか! 寝てる杏にこんなあっつい毛布かけたのは!」

きらり「うぇへへ、ごめーんね? でもでも、そろそろおきなきゃ遅刻しちゃうゆ?」

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諸星きらり(17)
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杏「別にいいよ、めんどくさい……」

きらり「杏ちゃん、おつかれ? むむー、どしたー?」

杏「暑いのは嫌いなの。外に出たって汗かくだけだしさー、おやすみでいいんじゃない?」

きらり「杏ちゃん、いっつもそーやっていうけど、ちゃんとお出かけしてくれるでしょー? きらり、知ってるにぃ☆」

杏「……うっさい。仕事なんかさー……もー……」

きらり「うんうん、えらいえらい☆」

杏「……なんで撫でるのさー。なんか、杏ががんばってるみたいじゃんか」

きらり「杏ちゃんはいーっつも頑張ってるゆ? それは皆も知ってゆから、だいじょーぶ☆」

杏「そ。まぁ……いいや、朝ごはんなに?」

きらり「んーとねー、きらりんとくせー! 浅漬け☆」

杏「渋い」

杏「意外と悪くないね、これ……」

きらり「でしょでしょー! うぇへへ、おいしー?」

杏「だから悪くないって。はぁ、お茶が美味しいから今日は休みにしよう!」

きらり「うんうん、お仕事が終わったらいーっぱいきゅーけーしようね☆」

杏「本当にきらりは人の話を聞かないな」

きらり「聞いてるゆ? 杏ちゃん、ほんとはみんなとのお仕事がたのしみー☆ って思ってるんでしょー?」

杏「そ、そんなわけ……」

きらり「んー?」

杏「……そんなわけ、ないでしょ。ふんだ」

きらり「うんうん。じゃあ、お着替えしてー、しゅっぱーつ! だにぃ☆」

杏「ごちそうさま。仕方ないなー……」

杏「あー……暑い……」

きらり「杏ちゃん、のるー? のっちゃうー?」

杏「そんな目立つことするわけないでしょ、だいたいただでさえ暑いのにくっついたら溶けるよ」

きらり「にょっ、溶けちゃうの?」

杏「そうだよ。そのままアスファルトに染み込んで海に流れるんだ……ああ、杏は貝になりたい……」

きらり「貝になっちゃったらお仕事できないゆ?」

杏「だから仕事したくないんだって」

きらり「そしたら、みんなにも会えないから……きらりも寂しいにぃ……?」

杏「……まぁ、貝になっても潜って探しに来そうだよね。きらりもプロデューサーもさ」

きらり「探してほしーの?」

杏「しーらないっだ」

きらり「とーちゃーく☆」

杏「あぁー……もうこれだけでひと夏ぶんは働いたよね、帰ろう。もしくは近くの喫茶店でアイス食べよう」

きらり「もーすぐPちゃんも来ちゃうゆ? おでかけはまたあとで、ねっ?」

杏「……仕事かー」

きらり「うん。おしごと。たのしーよね?」

杏「別に……そんなことないって。きらりはいっつも話を聞かないんだから」

きらり「そーお? 杏ちゃんも、素直じゃないにぃ?」

杏「杏はいいの、めんどくさいの嫌いだし」

きらり「にょ、なら本当のこと言えばいいと思うゆ?」

杏「ほんとうのこと、のほうがめんどくさいの」

きらり「そーなの?」

杏「そうなの……ん? 来たかな」



ガチャッ

P「おはよう、2人とも来てるかー?」

きらり「Pちゃん! おっはゆー☆」

杏「はいはい、おはよー……おかげさまー」

P「おいおい、あんまりきらりに面倒かけるなよ?」

杏「きらりが来たいっていうから許可してあげてるだけなんだからねっ」

きらり「そーそー! 杏ちゃんといっしょにくるのとぉーってもたのしいんだゆ?」

P「……まぁ、2人がそれでいいならいいんだけどな」

杏「そういうこと。はぁー、じゃあいこっか」

きらり「うん! しゅっぱーつ☆」

杏「ねぇねぇ、後ろで寝てっていい?」

P「おいおい、それで仕事できるのか……?」

杏「大丈夫、大丈夫。いまちょっと寝不足なだけだからー……」

P「杏が寝不足っぽくなかったことなんてあったか?」

杏「あるよー。たまーにだけど、ね、きらり」

きらり「んー……」

杏「げっ、きらりにまで裏切られたー。うえーん、これはしょっくだー。おやすみにしよー」

P「はいはい、おやすみな。30分ぐらいだけど、タオル後ろに入ってるからお腹にかけてだな」

杏「お母さんじゃないんだからさ……ん、おやすみー……」

きらり「おやすみー☆」

P「……まぁ、仕事中に言い出さなくなったのは成長か?」

きらり「そーそー。杏ちゃんはえらいんだゆー?」

杏(……聞こえてるってば。あぁもう、むずがゆい)

きらり「それでね、それでねー☆」

P「へぇ、それは――」


杏(たのしそーにおしゃべりしちゃって……ふーん)


杏(だいたい、寝不足が悪いんだ。ギリギリ落ちたのが痛かったし、ムキになるなんてらしくないし)

杏(ゲームすらめんどくさいんだから、仕事だって……)

杏(そもそも、2人とも楽しそうだけど……)

杏(……やめよ、めんどくさい)


杏(タオル、あったかい……)

――――

――


「――んずちゃん、あんずちゃーん☆」

杏「ん、んー……? あー、朝ごはん……?」

P「なに寝ぼけてるんだ、もうすぐ着くぞー」

杏「……なんだ、プロデューサーか」

きらり「きらりもいるゆー?」

杏「そうだったね、あー……仕事だー……」

P「ほら、クシ。きらりにやってもらうか?」

杏「いや、平気だって。まぁやりたいっていうなら止めないけど?」

きらり「ここがぺこーってなっちゃってゆー……なでなでしたらなおゆ? うぇへへー、よしよーし☆」

杏「……手グシもまぁ、嫌いじゃないかな。ふわぁ……あぁ、ねむ……」

P「飲み物かってあるぞ、ほれ」

杏「うん、ありがと。さーて……んー……よしっ。やるかー」




杏「そりゃあ、またらいしゅー……」

きらり「おっつおっつばっちし☆」

スタッフ「ありがとうございましたー! すみません、それで来週の撮影なんですけれど」

杏「げ、撮りだめ? うわー……もうつかれたー……」

きらり「杏ちゃん、でもここでがんばったらおやすみもらえるゆ?」

杏「……いいや、ないね。ぜーったいない。ほら、プロデューサー悪い顔してこっち見てるし」

きらり「にょ? あ、ほんとだ……Pちゃーん☆」

杏「いやいや、手ふってどうするのさ」

P「……」フリフリ

杏「向こうもなんか答えてるし、あぁもう……いいよ、衣装はー? 着替えなきゃ、あぁめんどくさい……」

――――

――


杏「どっと疲れた……」

きらり「おつぁーしゃー☆ ねぇねぇPちゃん、みてた、みてたー? 杏ちゃんも、きらりんもー、いーっぱいがんばったゆ☆」

P「みてたとも、よかったぞ! ほら、杏もお疲れ」

杏「同情するならやすみをくれー……」

P「いいぞー」

杏「ほーら、やっぱりろくでも……えっ」

P「うん?」

きらり「ねっ! 杏ちゃん、いいことあったにぃ? うぇへへー、いっしょにおでかけすゆ? しちゃうー?」

P「最近頑張ってくれてたしな。休みが多すぎるのもダメだがそれなりに休めるようにはしておくよ」

杏「う、ウソじゃない? 休みだけど、それはド田舎でキャンプをするからさーとかない?」

P「ないない。信用ないな……」

杏「じゃあ本当に休みなんだ……おぉ、休みだ……だらだらし放題……!!」

きらり「杏ちゃん、うれしそー☆ どーしよ? いっしょにおでかけすゆ? しちゃう? やっちゃうー?」

杏「わざわざ休みに出かけなくったってお仕事でいやってぐらい外に出てるじゃん。家でいいよー……」

P「2人は本当に仲いいなぁ。良きかな、よきかな」

杏「……おっさんくさい」

P「ウソだろ……」

きらり「Pちゃん、だいじょぶだにぃ? えーっと……よきかなー☆」

杏「きらりが言ったらかわいいけどさー……うん、やっぱりプロデューサーはダメだね」

P「ヘコむなぁ……と、おいといて。そういうわけで来週は3日ぐらい完全にオフにしておくからな」

杏「3日! ……いや、でもたった3日か……悩むなぁ」

きらり「杏ちゃんとおでかけしてー、杏ちゃんとごろごろしてー……あと1日?」

杏「毎日来る前庭なんだね、まったく……」

きらり「いやー?」

杏「……嫌じゃないよ。別に、好きにしたらいいじゃん。いつものことだし」

きらり「それじゃあー、なにしよー☆ うっきゃー! たっのしみぃー☆」

杏「できればめんどくさくないことがいいなぁ。料理は食べるだけでいいよ」

きらり「でもでも、杏ちゃんの作ったクッキーはとぉーってもおいしかったゆ?」

杏「あれはまぁ、杏も寝ることに関してはプロだからね。生地を寝かせるぐらいお茶の子さいさいだよ」

P「へぇ、杏が料理ねぇ……似合わないなぁ」

杏「知ってるよーだ。べー」

P「そのベロにぺちっとな」

杏「ひぁっ!? な、なにこれスースーする!」

P「フィルムタイプの口腔ケア剤。簡単に言うと溶けるブレスケアだな」

杏「あー……うぅー……したがつめたい……ハッカよりもキツいじゃん……」

きらり「Pちゃん、めっ☆」

P「あぁ、お詫びにアメをやろう。ごめんごめん」

杏「……ハッカだし」

P「今なら甘く感じるんじゃないか?」

杏「やっぱりすーすーする……あんまり美味しくないんだけど」

P「律儀だなぁ……まぁ、それはおいといて。料理をするなんて意外だな」

きらり「杏ちゃんはすっごーくがんばってるんだゆ? ひとりでもだいじょーぶ☆ って言えるようにお嫁さんのしゅぎょーもしちゃうの!」

杏「まぁ、杏も女子だしね……なにその目」

P「いや、本当に思いもしなかった単語がポンポン出て来るからびっくりしてるんだ」

きらり「だから、お料理もー」

杏「お湯を沸かすのと、食べる時間を守るのぐらいはするよ」

きらり「おそうじもー」

杏「もっこもこのフリース着てゴロゴロすればほこりってとれるよね」

きらり「おせんたくも!」

杏「ほっといたら洗濯槽の中で乾かない?」

P「なにひとつできてない……!」

杏「なにおう、これでも進歩してるんだからね? ね、きらり」

きらり「……うん☆」

P「今の間はなんだ」

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