アルラウネ「おなか減りました」少女「こ、こないでっ!」(93)

モンスターと人間が共存する、ポケ○ンやデジモ○的な世界のお話。

エログロリョナスカetc注意

キーンコーンカーンコーン

教師「ホームルームはおわり。みなさん、気をつけて帰ってくださいねー」

ざわざわ

少女「ついに今日……えへへ」

巫女「少女ちゃん、ニマニマしてどしたの?」

少女「ふぇっ!? わたし、そんな笑い方してた?」

巫女「うん、ちょっと待つと……」

少女「……」ニマニマ

巫女「ほら」

少女「わかんないけど……そっかあ、笑っちゃってたかぁ……」ニマニマ

巫女「何か良いことあったの?」

少女「わかんないかなあ、誕生日から1ヶ月たったんだよー」ニンマリ

巫女「……あ! 今日、少女ちゃんのところにモンスターが来るの!?」

少女「そういうこと。うふふふー」ニマニマ

巫女「いいなー。私なんて誕生日12月だもん。モンスターが来るのなんて、来年になっちゃうよ」

少女「巫女ちゃんの誕生日、24日だっけ?」

巫女「そうそう。人に憶えてもらいやすいけど、誕生日とクリスマスのプレゼントが一緒になるのは避けられないんだ」

少女「巫女ちゃんちの神社、クリスマスツリーに短冊付けてるよね」

巫女「ハァ……最後はそれを護摩でお焚き上げするの。近所の教会とお寺から白い目で見られるから、お父さんにあれやめてって言ってるんだけどね……で?」

少女「はい?」ニマニマ

巫女「そんな良い笑顔が止められないなら、よっぽど良いモンスターを貰えるんでしょ?」

少女「うーん、実はまだ知らないの」

巫女「へ? 4年生の誕生日にモンスターとの相性をチェックして、適正の高いモンスターが送られてくるんじゃないの?」

少女「そうだよ」

巫女「選考の途中経過をリスコンで見たりするんだよね?」

少女「そうらしいね」

巫女「らしいって、リスコン持ってないの?」

少女「え? 持ってるよ?」

巫女「ちょっと貸して」

少女「その、モンスター制御ってアプリだよ」

巫女「これが噂の……私のリスコンにはまだインストール出来ないんだよね……あれ?」

少女「ね?」

巫女「マイモンスターがNODATAって、どういうこと?」

少女「わかんない。でも、モンスターは配送されましたってメールが来たし。もう家に届いてるんじゃないかな?」

巫女「いや、おかしいでしょ。少年くんだって、モンスターが届く前から、『ファイヤドラゴンかシャドードレイクのどっちかが来るんだぜ!』『ファイヤドラゴンに決まったぜ!』とか言ってたじゃない」

少女「それは、そうだけど。でも、楽しみが増えるのも良いんじゃない?」

巫女「ああそう……うーん」

少女「どうしたの?」

巫女「あっちの方↑の一番上にある文章が不穏すぎて……ハァ」

少女「ど、どっちの方よ?」

巫女「少女ちゃん」ガシッ

少女「な、なに?」

巫女「その……幸運を祈ります」

少女「お、おう。まかせと……け?」

巫女「しかしまあ今日も飽きずに校庭で……」

少年「いくぜライバル! 今日こそ決着だ!」

ライバル「望むところだ!」

少年「いっけええ! ファイヤドラゴン! フレアブレスだ!」

ライバル「頼むぞッ! サンダーライガー! アークバーストだ!」

ちゅどーん

巫女「……ああいう年頃の男の子に、危ないおもちゃを与えたらどうなるかは分かってるのに、いままで大きな事故がないのも、このアプリが万全だからなんだし」

少女「そうね。これでモンスターに言うこと聞かせるんだもん」

巫女「なら大丈夫か。問題は敵とか出てきて以降ね。それまでは落ち着いていよう」

少女「敵? んー……ふふ」ニマニマ

巫女「あしたからはモンスターと一緒に来るんでしょ?」

少女「そうだよ。うふふふー、楽しみ」ニマニマリ

巫女「……心配」

………………
…………
……

生花店を営む少女の家。

少女「ただいまー」

母「おかえり。モンスター届いてるわよ」

祖母「少女ちゃん、もうそんな歳になったんだねえ」

少女「へぇ、スイカくらいのボールなんだ……ここで開けて良い?」

母「店で開けちゃダメだよ。休眠カプセルは中から水や火が出ることもあるから、お風呂場でやるの」

少女「そうなんだ。開けてくるねー」

祖母「はじめが肝心なんだから、しっかりとモンスターに挨拶するんだよ」

少女「はーい」トタトタ

母「……大丈夫かしらねえ、ひとりで」

祖母「なに、私らも最初のモンスターとはひとりで向き合ったもんさ」

母「それは……そうですけど」

お風呂場

少女「水や火が出る……かあ」

少女「そういえばアプリの説明でも、お風呂場で開ける事って書いてあったね」

少女「……えと『休眠カプセルは、いろいろな種類のモンスターにとって、それぞれ居心地の良い環境が保たれ、モンスターはその中で眠っています』」

少女「ふむふむ『休眠カプセルを開けるときは、水や熱気が溢れる事がありますから、入っているモンスターごとに適したカプセルを開ける場所があります。なお、以前はどんなカプセルもお風呂場で開けることが推奨されていましたが、電気系やガス系モンスターの登場以降は、カプセルを開ける場所は、モンスターごとにカプセルに表示されることとなりました』」

少女「確かにお風呂場で電気モンスターなんて出たら感電しちゃうし、お風呂場は毒ガスが充満しやすいよね……ええと、わたしのカプセルはー……あれ?」

少女「なにも書いてない……うーん」

少女「水があふれるならお風呂場だよね。火が出ても燃えるような物ないし。それに今は床乾いてるから電気も大丈夫。ガスは……窓開けとけば良いか」ガラガラ

少女「よし」ドキドキ

少女「せーの……えいっ!」

かぱっ

少女「……」チラッ

???「……みゅ?」

少女「え? ……おんなのこ?」

???「あなたが私のマスターですか?」

少女「うわああっ!?」

???「え、ふぇっ!? ええええっ!?」

少女「も、モンスターがしゃ、しゃしゃ、しゃべった!?」

???「モンスターじゃありません。アルラウネと申します」

少女「あ、名前があるのか。えと、よろしく。わたしは少女」

アルラウネ「少女さんですね。あなたが私のマスターですか?」

少女「そうだよ。ほら、リスコンにも……うーん、やっぱり表示されてないか」

アルラウネ「かまいません。少女さん、あなたが私のマスターであることは、電子端末を介さなくても私が心に刻めばそれで良いのです」

少女「そうなの?」

アルラウネ「はい。……こうして、手の甲を差し出してくださいませんか?」

少女「ん、こう?」

アルラウネ「ありがとうございます。マスター……我が血肉と骨と魂を、そのすべてが尽きるまで、あなたに捧げます」チュッ

少女「なんか、恥ずかしいね」

アルラウネ「これから、よろしくお願いしますね。マスター」ニコッ

少女「あぁー……もう、かわいいなあ」

アルラウネ「ふふ、ありがとうございます……」ケホッ

少女「大丈夫?」

アルラウネ「マスター、申し訳ございませんが、お水をいただけませんか?」

少女「いいよ……って、お風呂場のシャワーで水をかけるのはあんまりだね。台所に行こっか」

アルラウネ「はい」

廊下

少女「あのさ……アルラウネ?」トテトテ

アルラウネ「はい、何でしょう?」ニュルニュル

少女「変な音してるけど、そのスカートの中って、私みたいに足になってるの?」

アルラウネ「いいえ。根と、それから変化した触手で歩いています」

少女「そっか。人間に似ているのは上半身だけみたいだね……はい、ここが台所だよ」

アルラウネ「わぁ……はじめて見る物ばかりです」

少女「いたってフツーの台所だけどねー……はい、お水」コトッ

アルラウネ「ありがとうございます。いただきます」しゅるるん

少女「うえっ!? 蛇!?」

アルラウネ「失礼しました。これは私の食事用の触手です」

少女「あ、そうなの? いいよそのままで。お水飲んで」

アルラウネ「では、失礼しまして」ちゅるるる

少女「スカートから出てる管が、水を吸い上げてるのって……独特な眺めだなあ」

アルラウネ「……ぷはっ ごちそうさまでした」

少女「おかわりいる?」

アルラウネ「ありがとうございます。もう足りました」

少女「そうなの? そういえばアルラウネ、あなたってどんな物食べるの?」

アルラウネ「食べ物、ですか?」

少女「リスコンにあなたの情報が出てないから、分からないんだよ」

アルラウネ「お水は毎日このくらいいただければ足ります。養分はたまに地面に根を下ろして取るので」

少女「へえ、そうなんだ」

アルラウネ「あとはお日様です。日光浴できれば充分です」

少女「この家でいちばん日当たりのいい場所はお店かな……そうだ、お母さんたちに会ってよ」

アルラウネ「それはぜひ!」

花屋

少女「というわけで、この子がわたしのモンスターです」

アルラウネ「はじめまして、お母さま、お婆さま」

母「あら、あらあらあら!」

祖母「これはかわいい子だねえ……お花みたいだ」

アルラウネ「うふふ、ありがとうございます」

少女「見ての通り、わたしの家は花屋なんだ。アルラウネってお花っぽいし、植物のモンスターなら似合うよね」

母「そうだね。立派な看板娘になってくれるよ」

少女「看板娘って、わたしがいるじゃない」

祖母「もうすこしおしとやかじゃないとねぇ……ねえ、アルちゃん?」

アルラウネ「ええと……ふふふ」

少女「こら、笑ってごまかすな」

(´・ω・)ノ 眠いので今日は終わるよ

翌朝 始業前の教室

少女「……というわけで、この子がわたしのモンスターです。はい、ご挨拶して」
アルラウネ「はじめまして、アルラウネと申します」

クラスメイト♀「きゃー! かわいー!」
アルラウネ「か、かわいいだなんて、そんな……///」

クラスメイト♂「言葉喋るのかー。人間の女の子みたいだな」
アルラウネ「はい。いろんな言葉を教えてくださいね!」

巫女「……少女ちゃん、なんでこの子は話せるの?」

少女「カプセルから出たときから、フツーに話せたよ。 ね?」

巫女「うーん……うううーん」

少年「なあなあ、少女のモンスター見たか?」
ライバル「見たよ。あれだけ大騒ぎになれば嫌でも気づくさ」

少年「強いのかな? どんな技使うんだろ?」
ライバル「その、すぐバトルしようとする癖を直せ。それに、女子はあまりバトルしないだろ」

少年「わかってるって、でも気になるだろ?」
ライバル「……まあな」

少年「ん? ファイヤドラゴン、どうした?」
ファイヤドラゴン「ムシュー……フシュー……」ブルブル

ライバル「お前もか? サンダーライガーも昨日の夜から様子が変なんだ」
サンダーライガー「……グルルル」ブルブル

少年「ほら、落ち着けって」ポンポン
ファイヤドラゴン「フシュルル……」

ライバル「怯えているというより、武者震いのようだな」ナデナデ
サンダーライガー「ウゥー……」

放課後

キーンコーンカーンコーン

少女「さて帰るか……あれ? 巫女ちゃんどこ行くの?」

巫女「ぎくっ! なな、なんでもないわよ?」

アルラウネ「どうしてそんなにあわててるんです?」

巫女「なんでもない、なんでもないったら……ちょっと少女!」

少女「ぬわっ!? なに?」
巫女「あなた、昨日コイツに何かされなかった?」ヒソヒソ

少女「何かって、なに? お花屋さんの手伝いならしてくれたけど?」
巫女「そう……まあ、まだ安全みたいね」チラッ

アルラウネ「はい?」ニコッ
巫女「ッ!」ビクッ

巫女「えっと、まだアルラウネちゃんは活動し始めたばかりなんだから、無理させちゃだめよ?」
少女「無理って?」

巫女「激しい運動とか、体力を消耗するような事はさせちゃダメッ!」
少女「わ、わかったよ」

アルラウネ「巫女さんはお優しいんですね」ニコニコ
巫女「そうじゃないわよ。いい? 少女に変な事してみなさい。水切りにしてウチの神様の生け贄にするんだから」

少女「巫女ちゃんちの神社って、夏祭りで牛を生け贄にしているよね」
巫女「そうそう、由緒正しき南米式だから……って、そうじゃなくて」

巫女「とにかく二人とも、今日はすぐに帰って大人しく光合成でもしてなさい」

少女「なんかわかんないけど、巫女ちゃんがそう言うなら。帰ろっか?」
アルラウネ「はい、マスター」

少女「じゃーね、巫女ちゃん」スタスタ
アルラウネ「失礼します」ニョロニョロ

巫女「マスター……か」

学校からの帰り道

少女「巫女ちゃん、どうしてあんなにあわててたんだろ?」
アルラウネ「私の事を気にされていたようですが」

少女「べつに恐い事しないけどね。少年くんとかライバルくんのモンスターのほうがよっぽど危ないもの」
アルラウネ「……ええ、そうですね」

???「少女ッ! とうとう見つけたわ!」

アルラウネ「あのお召し物、マスターと同じ学校の方でしょうか?」
少女「……だれ?」

???「あたしだあたし! スケ番だッ!」

少女「すけば……ああ!」ぽむっ
アルラウネ「お知り合いですか?」

少女「たしか、わたしたちの学年で一番早くモンスターもらって、
しばらくはモンスターバトルが一番強かったんだけど、
6月にライバルくんにヤキ入れようとしてボッコボコにやられて、
7月に少年くんに八つ当たりしようとしてギッタンギッタンにやられた子だよ」

アルラウネ「なるほど」

スケ番「ムキー! そこまで詳しく知ってるなら、なんですぐにわからねえんだっ!」

少女「だって、学校新聞で見た写真じゃ、声とかよくわかんないし。クラス違うし」

スケ番「ぐぬぬ、舐めやがって! バトルだ少女ッ!」

少女「えっ! なんで!?」

スケ番「新聞の文章は良かった。負けたけど、あたしのバトルの華麗さをきちんと書いていたからね。でも、写真が良くなかった。それにこのご時世、動画も撮らなくちゃいけない」

新聞部員「取材させてもらいます」
写真部員「カメラなら任せて!」
コンピューター部員「動画撮ってばらまくよー」

少女「え? え? えええ!?」

スケ番「そして特訓を終えたこの日に、あんたが新しいモンスターを連れてきた。あんたは馬鹿っぽいし、モンスターも弱そうで、相手にはちょっと不足だけど、ちょうど良い肩慣らしだよっ!」

アルラウネ「はあ、なるほど」
少女「どういうこと?」

アルラウネ「つまり、少年さんやライバルさんに雪辱を果たすために特訓したは良いのものの、いきなり本人たちに再戦するのは恐いから、モンスターを持ったばかりでバトルに不慣れな少女さんと私を狙った……と」

スケ番「あ……ぐ」
アルラウネ「威勢が良い割には、ずいぶんと小ずるいマネをするのですね。スケ番さん?」

スケ番「うるっせええ! 良いからバトルだ!」
アルラウネ「望むところです」

少女「ちょちょ、ちょっと! 何言ってんの」
アルラウネ「この方はマスターを侮辱した。ここで退くわけには参りません。マスターご命令を」

少女「え、えっと、その……無理しないでよ?」

???「合意とみてよろしいですね!?」

少女「こんどは誰? そしてドコ?」

???「ここです、ここ。ポストの中……よいしょっと」

少女「あれ? リスコンが……あなたはまさか、公式戦の審判さん!?」

審判「はい! 誰が呼んだかミスター審判! 常に公平なジャッジマン! あなたの公式審判でございます!」

スケ番「あたしとコイツのランクマッチだ。ルールは通常!」

審判「1on1ランクマッチですね! 両者、対戦するモンスターをどうぞ!」

スケ番「よし……来い! ワーキャット!」
ワーキャット「にゃ!」スタッ!

少女「女の子の格好のモンスター……かわいいけど、強そう!」
アルラウネ「問題ありません。おまかせください」しゅるるん

審判「モンスターの気絶か戦闘不能、もしくはトレーナーによる降参宣言をもって敗北といたします」

審判「それでは! READY……GOッ!」

新聞部員「さあ、始りました、放課後通学路での路上バトル! 実況はワタクシ、新聞部員でお送りします」

少女「なんかはじまってる!?」

新聞部員「なお現場撮影は写真部員、ネット中継はコンピューター部の提供でお送りします……おーっと、さっそく! スケ番のワーキャットが仕掛けたあ!」

ワーキャット「にゃあっ!」ズバッ!

アルラウネ「くっ、思ったよりも……」

新聞部員「ワーキャットの連続ひっかき! これは速い!」

ワーキャット「にゃっ! にゃにゃにゃー!!」ザシュッ! ズバッ! ズアッ!

新聞部員「ワーキャットの連撃に、アルラウネ防戦一方か!? 削られた細かな葉っぱが飛び散っているー!!!」

少女「あわわわ……や、やっぱりもうやめ……」

アルラウネ「まだまだです! 見てください!」

新聞部員「おやおや? これはどうした事だ! あれだけの連撃を受けているにもかかわらず、アルラウネにダメージが見られません」

ワーキャット「にゃ? にゃー?」

スケ番「悩んでるんじゃない! 撃ち込めばそれだけダメージは蓄積する! 速攻で行っけええ!」

ワーキャット「にゃっ! フーッ!」ズバババッ!

新聞部員「出たー! ワーキャットのラピッドスラッシュ! 連続ひっかきとどう違うのかはわかりませんが、これは痛い!」

アルラウネ「……っ!」ビシッ ザシュッ!

少女「アルラウネ!」

スケ番「もらったな……」

新聞部員「速い! 速い速い! 元南部小4年、最強の名は伊達じゃない! これは一気に決まるか!?」

ワーキャット「にゃー! にゃっ! ……にゃ?」ハァ……ハァ

アルラウネ「さすがに……すこし痛いですね」

新聞部員「耐えたーッ! なんと言う事だ、アルラウネ、あの猛攻を耐えましたッ! そしてワーキャットは息が上がっているー!」

スケ番「な、なんで……なんで倒れねえんだよ!」

アルラウネ「確かに素晴らしい速さです……でも、所詮は猫のひっかき」

スケ番「んだと!?」

アルラウネ「私は見ての通り、花と樹木のモンスターです。花は弱い、すぐに折れる。でも、どんな風雪にも年月にも耐えるのも樹木です。こんな、猫のひっかき傷では……」ブンッ

ワーキャット「にゃっ!?」

アルラウネ「花は散らせても、大樹は折れません!」

少女「アルラウネ、あなた、肌が……」

新聞部員「なんとアルラウネ、肌と触手の一部を木質化させて、ワーキャットの斬撃を受け止めていたっ!?」

スケ番「そんな……」

アルラウネ「降参をおすすめします。あなたは私に勝てません」

新聞部員「こ、これはー! 前代未聞の、モンスターから相手トレーナーへの勝利宣言だあっ!」

スケ番「……」

新聞部員「速攻と斬撃が信条のワーキャット、これは相手が悪かったか!?」

スケ番「な……じゃねえ……」

コンピュータ部員「やばいよ、視聴者数が多すぎ……くそ、もう1台サーバー拡張だ」

スケ番「なめんじゃねえよ……」

アルラウネ「……」

スケ番「なめんじゃねえよッ! クソモンスター! こうなりゃヤケだ! やっちまえワーキャット!」

ワーキャット「にゃっ!?」フルフル

スケ番「命令だッ! やっれえええ!」

ワーキャット「にゃ、にゃあああ!」タッ!

アルラウネ「ッ! しまっ……逃げてっ!」

少女「え? あ……」

……スパッ

新聞部員「おっとー!? これはいけません! 故意によるトレーナーへの攻撃だ!」

アルラウネ「少女っ!」ブンッ!

ワーキャット「にゃっ!?」ヒュッ……スタッ

審判「ブレイク!」

新聞部員「審判、スケ番に注意です」

写真部員「うわー……痛そう」パシャッ

コンピュータ部員「やばいなあ、中継に年齢制限つけないとかな」

アルラウネ「大丈夫ですか?」

少女「うん、腕を少し切っただけ」

アルラウネ「……少し、染みますよ?」シュワッ

少女「っ、痛っ!」ピクッ

アルラウネ「……」

少女「アルラウネ?」

アルラウネ「審判さん、この勝負、相手モンスターを気絶か戦闘不能、もしくはあいてトレーナーに降参宣言をさせた方の勝ちでしたよね?」

審判「そうです。降参しますか?」

アルラウネ「まさか。手加減抜きで参ります」にゅるるん

スケ番「手加減抜きだと!? どこまであたしを馬鹿にしやがる! 行けっ! 斬撃がダメならむしってやれ!」

ワーキャット「にゃ! にゃああ!」

新聞部員「再び速攻! 一気に飛びかか……」

アルラウネ「それっ」しゅるるっ!

ワーキャット「にゃっ!?」

新聞部員「飛びかかれない! アルラウネ、ワーキャットを絡め取ったー!」

ワーキャット「に゛ゃ!? ぐにに……」ジタバタ

アルラウネ「ふふ、暴れても無駄です……そぉれ」ぽふん

ワーキャット「にゃ? はふにゃ……」とろーん

新聞部員「おっと? これは植物系モンスターの得意とする神経毒か!?」

アルラウネ「これとぉ……」ぱふん

ワーキャット「にゃふぅ」とろりん

アルラウネ「こっちとぉ……」さらさら

ワーキャット「にゃふ!? けほけほ……は、はにゃあー???」くらくら

アルラウネ「あ、これはおまけです」しゅるるん

新聞部員「アルラウネ、自らの蔓をワーキャットの口にねじ込んだぁ!?」

ワーキャット「んぷっ!? んく……んっく……けはっ……」とろ……ぽたっ……ぽたっ……

アルラウネ「ふふふ、もうこんなに……」しゅるる

新聞部員「アルラウネどうしたぁ? せっかく捕まえた相手を、みすみす解いてしまったー!」

ワーキャット「にゃ……にゃ……ぁ……」ぽたっ……ぽたっ……よろよろ……

スケ番「ワーキャット!」

ワーキャット「にゃ……ぁ……」ピクピクッ……ひくんっ

スケ番「ワーキャット、痛むのか?」ナデナデ

ワーキャット「にゃ……にゃふ……」とろっ

スケ番「テメエ……何しやがった!」

アルラウネ「べつに、気を落ち着けさせて、酩酊させて、少し眠気をくわえただけです」

スケ番「酩酊……マタタビみたいなもんか」

ワーキャット「ふにゃあぁ……にゃふ」

アルラウネ「ふふ、やっぱりトレーナーは、ご自分のモンスターが大切なんですね」

スケ番「あたりまえだ! あーあ、完全に酔っ払っちまって……」

アルラウネ「その愛が、ふふふ……命取り」

スケ番「へっ? ……んむっ!?」

ワーキャット「にゃーん んちゅ」

新聞記者「こ、これは!? まさかの……え、ちょ……」

スケ番「やめ、ワーキャッ……んぷっ」

ワーキャット「にゃん♡ ちゅーちゅっ」

アルラウネ「トレーナーにかけられた愛の大きさは、モンスターが一番わかっているんですね」

新聞記者「どうしたのでしょう! ワーキャットがスケ番の服が脱がせております」

スケ番「て、てっめえ! こいつに何した、なにを……ひゃんっ!?」

ワーキャット「にゃー」モミモミ

アルラウネ「何って、さっき申し上げましたとおり、リラックスと酩酊と安眠を……」

スケ番「嘘つけ! それでこんな……あ、こら、やめ、そこさわっ……んああっ!?」

ワーキャット「にゃーにゃん」はむはむ

アルラウネ「ああ、そうそう。忘れてましたが、発情の蜜をたーっぷりと」

スケ番「はつじょっ!? っはぁ♡ や、やめワーキャット……このヒトデナシ!」

新聞記者「なんという非道な戦術なのでしょう! しかし効果は抜群の模様だ!」

アルラウネ「ヒトデナシって……ふふふ、私、モンスターですよ?」ニコニコ

スケ番「ら、らめ……そこ吸っちゃ……ふぁ♡」とろ……

ワーキャット「にゃぁ……ちゅるる……」

新聞部員「じ、実況も、もはや不要かと思われますが、ワーキャット、その……スケ番のスカートの中に頭を突っ込んでいるー! これは戦闘どころではないか!?」

審判「どうしますか? 降参しますか?」

スケ番「も、もう♡ たたかえな……んぷっ!?」チュパ……

ワーキャット「ちゅろれろ~ んにゃむにゃむー」

新聞部員「こ、これは厳しい! ワーキャット、キスをしながら露出した片胸とスカートの中、スケ番の両足の間を執拗に責め立てるー!!」

アルラウネ「新聞部員さん……吹っ切れましたね」

スケ番「んんっ!? んぅ……んっ♡ んんんんー♡♡♡」ビクビクン!

ワーキャット「にゃふぅ……にゃ♡」チュプッ

スケ番「ひうぅ!? まっれ、いまいっらばっか……あああっ!!!」

ワーキャット「にゃんにゃん にゃーん♡」チュプ クリ ニチャ クチュ ヌップヌップ

審判「……」ズイッ

新聞部員「おっと、審判前に出た! これはさすがに……!?」

審判「……」じーっ

新聞部員「止めない! 審判止めません! モンスターはまだ気絶もしておらず、トレーナーは息をするのもやっと、そしてもちろん……」

スケ番「ひあああぁあ! こわれ……あああ! だめえええ!」プシッ

ワーキャット「にゃんにゃん ちゅるるるー♡」

新聞部員「そしてもちろん、ワーキャットは戦闘の真っ最中! かっこ意味深かっことじ! ゆえに審判止めない! 止められない!」

審判「はい、けっして見たいというわけではありません」

新聞部員「だそうです。いかがですか? 解説のアルラウネさん」

アルラウネ「そうですね。ルールの隙間を狙った、アルラウネの攻撃が見事に決まりましたね。いや、たいしたもんです」

新聞部員「しかし、まさかワーキャットにこれほどのタチの才能があるとは思いませんでしたね。あ、スケ番またイきました。痙攣しております」

アルラウネ「序盤のスピードをご覧になっておわかりの通り、身体能力が大変高いので、一度組み敷かれたらヒトの力では押し返せません。狩りの時には、腕の中で暴れる獲物の反応を良く察知し、効果的な処置を施す能力にも長けています」

新聞部員「ワーキャット、完全にスカートの中に頭を潜り込ませております。スケ番、もうほとんど反応がありません。アルラウネさん、つまりワーキャットは、狩りの時に手早く獲物の首を噛み切ったり、太い血管を切って失血死させやすいように、相手の反応を良く察知する、獲物の反応への観察眼が鋭いと言う事ですね?」

アルラウネ「おっしゃるとおりです。そのため、こうした擬似的な性交の行為においても、相手の反応から弱点となる部分と効果的な愛撫を最短時間で見つけるのです」

新聞部員「なるほど、たしかにスケ番の反応を見ていると、弱点を、一気に責め尽くされて、反応する間もないままに、通学路のアスファルトの上で痴態を晒しているようですね。あまりの反応に、彼女も一服盛られたように思えてしまいますが、アルラウネさん、アルラウネはトレーナーには何もしていないのですよね?」

アルラウネ「はい。先ほどの少女さんへの攻撃に大変怒っていたようですが、だからと言って直接手をくだすような事はしないようですね……おや?」

新聞部員「おっと!? ここでスケ番! とろけきった目を半開きにして……気絶の模様です。そして!?」

ワーキャット「にゃふぅ♡」イソイソ

新聞部員「持ち帰った!? 自分のトレーナーを軽々と担いで、ワーキャット、いそいそとお持ち帰りだああ! これはどう出る!?」

審判「モンスターの逃亡! 戦闘継続が不可能と判断し、少女さんの勝利といたします!」

新聞部員「勝ったああああ! トレーナー歴1日の少女が、同3ヶ月とはいえベテランのスケ番を破りました!」

アルラウネ「ふふふ、やりましたよ、少女さん」

少女「う、うん……」

新聞部員「流れるような試合展開でしたね、いかがですか? 解説のアルラウネさん」

アルラウネ「アルラウネは初めてのバトルとの事でしたが、安定感がありましたね」

新聞部員「対して破られたスケ番ですが……あっちのほうも破られないように祈るばかりです」

アルラウネ「そうですね」

アルラウネ「少女さん、どうしました?」

少女「も、もう……何が何だか……」フラ……フラ……

アルラウネ「少女さんはずいぶん疲れているようですね。無理もありません」

新聞部員「初めてのバトルでしたからね。トレーナーの負担も大きいでしょう。それでは今日のバトル中継はこのあたりで。またお目にかかりましょう」

アルラウネ「さあ、余計な道草で時間を使ってしまいました」

少女「今のをそれで片付けるの!?」

アルラウネ「はい。だって今日もお店のお手伝いがあるんですから……傷はまだ痛みますか?」

少女「あれ? ……もうふさがってる」

アルラウネ「傷薬がお体に合ったようで何よりです。さ、帰りましょう」ニュルニュル

少女「そうだね」テクテク

新聞部員「……す、すごい物を見てしまった。これは良い記事になりますね」

写真部員「……」グッスシ

新聞部員「どうしたんです?」

写真部員「さっきの植物モンスターに、メモリー消されたぁ……」

新聞部員「なんだって!? でも、ネット中継は!? すごい反響があったでしょう!?」

コンピュータ部員「未成年シャットアウトで途中から中継切られた……タイムシフトも公開禁止だって」

新聞部員「げぇっ! ……し、しかし! 記事にすれば良いんだ! ……ん? ポケットに何か?」カサッ

~~~
少女さんがスケ番さんに勝った、それ以上の事を伝えないでくださいね?
アルラウネ
~~~

写真部員「もし、あれやこれやと記事にしたら……」

新聞部員「……」ゾゾッ

コンピュータ部員「……お蔵入りだな」

新聞部員「……そうですね」

きょうはここまで
おやすみなさい

少女の家

少女「ただいまー」

アルラウネ「ただいま帰りました」

母「おかえり少女。おかえりアルちゃん。おばあちゃんが台所でお芋蒸かしるから、店出る前に食べてらっしゃい」

少女「はーい。おいもーおいもっ」トテトテ

アルラウネ「おいも……あれ?」フラッ

母「おっとと、どうしたの?」

アルラウネ「いえ、少し……お水をいただけませんか?」

母「お水? そこの花桶に使い終わった切り花用のが入ってるけど……」

アルラウネ「申し訳ありません……いただきます」しゅるるるっ……ちゃぷん

母「ああ、ほら。そう急ぐからスカートの裾がめくれちゃってるよ。その水で良いのかい? なんなら新しいのを……」

アルラウネ「いえ、こちらをいただきます」ちゅるぅ〜 こくん こくん

少女「アルラウネ、どうしたの?」トテトテ

母「ずいぶん喉が渇いているみたいなの、花桶の水を飲み切っちゃうわ」

アルラウネ「……」ちゅるる……ずぞぞっ

少女「飲んじゃったね」

アルラウネ「あの、もう少しいただけませんか?」

母「かまわないけど……そうだ。こっちはどう?」

アルラウネ「これは?」

母「花束を長持ちさせるための、つまりは肥料入りの水よ」

アルラウネ「肥料ですか? ……いただきます」ちゃぷん

母「どうかしら?」

アルラウネ「なんでしょう……とっても好ましい感じがします」

少女「好ましい?」

アルラウネ「はい。身体に染みこんでいくような、力が湧いてくるような、そんな感じです」ちゅるるる〜

少女「おいしいってこと?」

アルラウネ「おいしい……そうなのかもしれません」ちゅるるる……ずぞぞっ

母「すごいねえ、お水をバケツ二杯飲んじゃった。良いおやつだったわね」

アルラウネ「はい。おやつ、ごちそうさまでした。少女さんもお芋召し上がって来てください」

少女「うん。アルラウネも行こ?」

アルラウネ「私はここにいます……お店の入り口、お日様が当たって気持ちが良いんです」

少女「そうなの? じゃあ、食べてくるね」トテトテ

アルラウネ「……」

母「どうしたの? 疲れてるようだけど」

アルラウネ「帰り道でマスターの……初めての試合をしたんです」

母「その様子だと、勝ったみたいね」

アルラウネ「でもちょっと、張り切りすぎました」

母「あまり無理しちゃダメよ?」

アルラウネ「……はい」ニコッ

台所

少女「ただいま、おばあちゃん」

祖母「おやおや、おかえり。ついでにおさつも蒸かしてあるからお食べ」

少女「うんっ いただきまーす……」モグモグ

祖母「大きいから、少し大味かもねぇ」

少女「そんなことないよ、おいしいよ」

祖母「そう……初めての試合はどうだった?」

少女「んむぐっ!? えほえほっ! な、なんのこと!?」

祖母「モンスター同士のバトルしてきたんじゃないのかい?」

少女「そ、そうだけど……」

祖母「相手は誰だい? どうだった? 勝ったかい? 負けたのかい?」ズイッ

少女「お、おばあちゃん、そんな乗り出さないでよ。えっと……相手はスケ番ちゃんだよ」

祖母「スケ番ちゃん……ああ、2丁目のお屋敷の子かい。たしか猫人のいい子を連れてるねえ」

少女「なんでそんなに詳しいの?」

祖母「ほほほ、これでも少女ちゃんくらいのころには、町いちばんのトレーナーだったんだよ。免許を返上しても、モンスターのことは誰よりも知ってるつもりさ」

少女「そ……そうなんだ」

祖母「アルちゃんが無事に帰ってきたから、勝ったんだね」

少女「うん。なんで分かるの?」

祖母「猫人は速さと手数がすごいけど、攻撃が軽いのさ。普通でカミソリ、鍛えたら日本刀……でも、日本刀で薪割りはできないだろう? たぶん、アルちゃんが肌を樹皮にして受け止めて、猫人の動きが鈍ってきたところでしびれ粉かまたたび粉でもかがせて、それで終わりだね」

少女「すっごい、その通りだよ! ……ちょっと違うけど」ボソッ

祖母「ん? どこか違ったのかい?」

少女「ううん。なんでもない。おいもおいしー」モグモグ

祖母「それにしてもわからないねえ……」

少女「どうしたの?」

祖母「ヒトの言葉を話すモンスターなんて、私は見たこともなかったよ」

少女「でも、たまにテレビで言葉を話すモンスターが出るじゃない」

祖母「あれは無理矢理に話させてるのさ。モンスターがヒトの言葉をしゃべるわけないからね」

少女「そう……なの?」モグモグ

祖母「あっちではヒトと同じように口をきくとは言うけれどね。モンスターはみんな、あっちから連れてくるときに、しゃべれなくなっちまうのさ」

少女「じゃあ、どうしてアルラウネはしゃべれるの?」

祖母「さあねえ……でも、きっとあの子は特別なんだよ。大事にしてあげるんだよ」

少女「うんっ」

夜 少女の部屋

少女「くー……すー……」……zzzZZZ

アルラウネ「ん……なんなんでしょう」

アルラウネ「この、満たされない感じ……ううぅ」

少女「すぴー……くかー……」……zzzZZZ

アルラウネ「マスターがなんだか……美味しそうな香りに」クンクン

アルラウネ「……よく寝てるのに、起こしたらかわいそうですね」

アルラウネ「お水を飲みたい……お店で昼間にいただいた……」

アルラウネ「すこしだけ……すこし……」ニョロニョロ

少女「ぐー……すー……」……zzzZZZ

ガチャ……バタン

翌日 学校

巫女「それで、お店の肥料全部飲んじゃったの!?」

アルラウネ「ううぅ……はい」

少女「飲み始めたら止まらなくなっちゃったんだって。お母さんもあきれてたよ」

巫女「そりゃあ、怒りも軽く通り越しちゃうよね……でもさアルラウネ」

アルラウネ「はい、なんでしょう?」

巫女「あなた、お水と太陽と、すこしの土があれば十分じゃないの?」

アルラウネ「そのはずなんですが……むこうにいた頃は、こんなにお水を飲んだことも、肥料をいただいたこともありませんでした」

巫女「もしかして、うーん……少女ちゃん、リスコン見せて?」

少女「リスコン? はいどうぞ」

巫女「このマイモンスター画面、少女ちゃんが自分で入力したんだよね?」

少女「そうだよ。アルラウネにかざしても、ぜんぜん反応がないんだもん」

巫女「つまりアルラウネちゃんは未登録のモンスターって事……じゃあ、どうしてここにいるの?」

少女「さ、さあ?」

巫女「それに、マスターってトレーナーのことでしょ? なんで登録されてないのにアルラウネちゃんは少女ちゃんをトレーナーだと認識して、言うことを聞くの?」

少女「あ、それはさ、はじめて会ったときに、手の甲にキスしてもらったから……かな?」

アルラウネ「はい。あれが契約の印ですから」

巫女「ちょい待って。なに? なんて言ったの?」

少女「手の甲にキス?」

巫女「違う、アルラウネちゃん」

アルラウネ「契約ですか?」

巫女「……おーまいがー」

巫女「えー……ちょ、どーしよ、どうしよう」アタフタ

少女「なに、オタオタしてどうしたの?」

巫女「ちがいます、これはアタフタしてるんです。それはいいとして……どうするの!?」

少女「どうするって、何を?」

巫女「モンスターと契約するなんて、ひいおばあちゃんの時代が最後なんだよ!?」

少女「へー……そうなんだ。最近の人がモンスターと契約しなくなったのは、リスコンができたせい?」

巫女「逆。契約があまりにリスクが高かったから、焦って別の手段を開発したの。それがリスコンとアプリ……モンスターを服従させるプログラムね」

少女「リスクが高いって、どういうこと?」

巫女「そのままの意味よ。モンスター、本来はこの世界にいない魔人、魔獣、精霊たちと、物理学の実験で最初のコンタクトが取れてから、150年くらい。
最初は宗教じみた儀式……結局昔からあった儀式も、その多くがこの世に迷い込んだモンスターを封じ込めたり従わせるための物だったんだけど、そういうオカルトチックな契約をモンスターと交わして、それで言うことを聞いてもらってたの」

少女「社会の授業でやったよね。最初はブラックホールだっけ? なんかそういうの作ろうとしてたんだよね。でもブラックホールはできなくて、かわりにモンスターのいる『あっち』と交流できるようになったって」

巫女「そう。モンスターの持つ不思議な力は、人間の社会に役立ってくれた。飢えも貧困も戦争も病気も、ぜーんぶモンスターたちが解決してくれた。でも、モンスターのために命を削る人も多かったの」

少女「命を削る?」

巫女「どの文化でも、昔からの言い伝えに登場する悪魔や妖怪って、約束や言葉にとっても正直だった。あっちの生き物たちがこっちにいるのは、つまり宇宙の法則をぐいっとねじ曲げてこっちに来てるからなんだけど、こっちに来るためにも、また留まるためにも、言葉や道具で世界の法則をごまかして、いろいろ制限を設ける必要があったのね。
神社のしめ縄とか、宗教的な境界は全部、モンスターをこっちの世界に留まらせておくためのものだったと言っても良いくらいなの」

少女「それがどうして、命を削るって話になるの?」

巫女「まあ待って。モンスターをこっちの世界に留めるためには、道具や契約でこの世界に縛り付けるのもひとつの手なんだけど、そうするとモンスターの力ってすっごく弱くなっちゃうの。
そこで、言葉や交流でモンスターをこの世界に留まらせようって考えた人たちが、昔からの儀式をもとに契約を作り出した。モンスターごとに契約の方法は変わるけど、神社の境界がモンスターと土地を結びつけるものだとしたら、人とモンスターの契約は、主となる人と従となるモンスターを結びつけるってことだった。
そして、モンスターと契約した人はその力を貸してもらう代わりに、モンスターがこの世界に留まるための手助けをしないといけないの」

少女「手助けって、どんな?」

巫女「契約をした時点で、モンスターにとって契約者は特別な存在になるわ。手助けっていうのは、モンスターがこっちの世界にとどまる理由作り……って言えばいいかな? たとえば契約者と話すとか、契約者に触れてもらうとか、そういうこと」

少女「なんだ、それなら簡単じゃない。命なんて……」

巫女「でも、力の強いモンスターほど、契約者に求める手助けは強くなるの。吸血鬼は契約者の血を、アラクニドは契約者の髪を、肉や骨、目玉や心臓を欲しがるモンスターも居たらしいわ」

少女「えっ!? し、心臓!? そんなのあげたら死んじゃうじゃない」

巫女「死んでも良いから強大な力が欲しい、命と引き替えに復讐を果たしたい、そういう願いでモンスターにすがる人も多かったみたいね……モンスターとの交流が始まったばかりの頃は、そういう滅茶苦茶な人がたまに出て、ひどい事件にもなったみたい。
でもモンスターの力はもう社会に広まっちゃってて、手放すことも無理だった。だから、ヒトは自分たちの肉体を代償とする代わりに、神社やお守りの代わりにコンピュータとチップを使って、モンスターを使役する手段を作り出した。それがコンピュータとモンスター制御プログラム……私たちのリスコンとアプリね」

少女「……ちょい待って」

巫女「はい、どうぞ」

少女「つまりわたしは、アルラウネに心臓を食べられちゃうの!?」

巫女「そうじゃないけど、そうかもしれない。代償はモンスターごとに違うから。ねえ、アルラウネちゃん?」

アルラウネ「はい……ただ、私は自分がマスターからどんな代償をいただけば良いのか分からないんです」

少女「そうなの? 何か欲しいものとかない?」

アルラウネ「お水と日の光と、ちょっとの土さえあれば、私はあちらでは満足していましたから。しいて言えば、お水と肥料……でしょうか?」

少女「お水と肥料ねえ……たしかに、うちにはいっぱいあるけど」

巫女「そうだ、ためしにアルラウネちゃん、お水を飲むときの触手、出してくれる?」

アルラウネ「はい。これでいいですか?」にゅるるんっ

少女「やっぱり蛇みたいだよね」

巫女「この触手って、歯や牙はあるの?」

アルラウネ「ありませんよ? 液体を吸い上げるための管ですから。先端の口を閉る力もそれほど強くありません」

巫女「そうか、よし、少女ちゃん、この触手に指を入れてみなさい」

少女「えっ? まあ、いいけど。こう?」つぼっ

アルラウネ「んっく……あ」ピクン

巫女「どう?」

アルラウネ「ちょっとびっくりしましたけど、大丈夫です」

巫女「少女ちゃんは?」

少女「べつに、痛くも痒くもないよ。ちょっとはむはむされてくすぐったいかな?」

アルラウネ「はぁ〜……少しだけですが、満たされる感じがします……」

巫女「やっぱりね」

少女「なんでこの指はむはむで満たされるんだろ?」

巫女「なんていうか、その……///」

少女「どうして照れてるの?」

巫女「つまり、契約者とモンスターは、深い交流をすればするほど、モンスターはこの世界に留まる力が強まるの。手もつないでみたら?」

少女「こう?」にぎっ

アルラウネ「あ……これ……良いです。満たされます」にぎにぎ

巫女「ま、そういうこと。少年君とライバル君は、この学校でもいちばん強いくらいなんだけど……」

少年「ファイヤドラゴン! 今日のバトルはがんばったな!」ナデナデ
ファイヤドラゴン「ムフー……ふしゅるるー」

ライバル「サンダーライガー……バトルで泥が跳ねたな。ブラシかけるぞ」サッ サッ
サンダーライガー「ゴロゴロゴロ……」

巫女「いっつもベタベタしてるもんね」

少女「トレーナーとモンスターの仲がいいと、たしかに強いよね」にぎにぎ

巫女「そう、だから、ひいおばあちゃんのころは男の子はメスのモンスターと、女の子はオスのモンスターと組むのが一般的だったらしいの。リスコンが主流になってからは、まったく見られないけどね」

少女「ん? 今の話と性別って関係あるの?」にぎにぎ

巫女「う……まあ、それは置いておいて……深い交流と言えば……」

ダダダダダダ バアンッ!

少女「なにごとっ!? あ……」

スケ番「少女! てめえこのヤロー!」ツカツカツカ

少女「な、なな、なに!?」

スケ番「いや、アルラウネか、お前でも良い。あ、あいつをなんとかしてくれえっ!」

少女「あいつって?」

ワーキャット「にゃにゃにゃにゃーん♡」

アルラウネ「あら、こんにちは」

スケ番「あ、あいつ、一晩中したくせに、学校に来てもまだやりたがるんだよ!」

少女「やるって何を? モンスターバトルを?」

巫女「夜のモンスターバトルかなあ?」

少女「そんな物騒な。そもそも暗かったら見えにくいし……あ、猫目だと有利なのか」

スケ番「バカ言ってんじゃねえ! んぐわ!?」

ワーキャット「ふー にゃっと!」ひしっ

巫女「あ、つかまっちゃったわね」

スケ番「バカ、放せ……このっ!」
ワーキャット「にゃーにゃにゃ にゃん にゃー♡」

アルラウネ「……っ」///
ファイヤドラゴン「っ!?」///
サンダーライガー「っ!?」///
その他モンスター達「っ!?」///

スケ番「え……ちょ……じゃれてくるのは分かるけどよ、おいアルラウネ! コイツなんて言ったんだよ!?」

アルラウネ「ふぇっ!? え、ええと……そのぉ……///」モジモジ
スケ番「わかった、耳貸すから言ってくれ」

アルラウネ「はい、あのですね……」コショコショ
スケ番「うん…………へっ!?」///

アルラウネ「で……昨日は……、……ずっと……」コショコショ
スケ番「え、えええ……」///

アルラウネ「……で、……で、……なんだから、もう気にすることないのにって」///
スケ番「お、おい、そんなこと言ってんのかよ!?」///

アルラウネ「そうですよね?」
ワーキャット「にゃーん」コクコク

スケ番「ち、ちが……違うからな! おまえら! 私はぜんぜん、そういうのじゃないからな!」

ワーキャット「にゃーにゃん」ナデナデ スリスリ
スケ番「あー もうよせよ!」

巫女「ねえ、少女ちゃん」

少女「なに?」

巫女「こう言ってみて? ……」コショコショ

少女「ん? うん スケ番ちゃん?」

ワーキャット「にゃんにゃんにゃん♡」ナデナデスリスリ
スケ番「撫でるな! もう、なんだよ」

少女「ええと、昨晩はお楽しみでしたね?」

スケ番「な……ななな……//////」カアァ

スケ番「お、おぼえてやがれーッ!!!」ズダダダダダ バンッ!

ワーキャット「にゃーん」スタタタタッ

ざわざわ

クラスメイト♂「少女すごいな。スケ番をたった一言で追い払ったぞ」
クラスメイト♀「昨日、スケ番ちゃんをバトルで負かしたって本当だったんだ……」

ざわざわ

少年「おい少女、今のなんだ? 何かの呪文か?」

少女「え、なんなんだろう?」

巫女「いわゆるセクハラね。今日に限っては超効果的だったみたいだけど」

少年「セク……なに?」

ぽかっ

少年「いってぇ!? なにすんだよライバル!」
ライバル「まあまあ、それより少女さん。アルラウネは他のモンスターとも、人間とも言葉が話せるんだね」

少女「そうみたいだね。ね?」
アルラウネ「はい。モンスター同士はたいがい言葉が通じますし、私はヒトとも話せますよ」

少年「そりゃすげえ! なあ、ファイヤドラゴンに、俺のことどう思ってるか聞いてみてくれよ」

アルラウネ「いいですよ……ねえ、ファイヤドラゴンさん?」

ファイヤドラゴン「ふしゅるる……むしゅー……」

少年「……な、なんて言ったんだ?」

アルラウネ「コホン……少年は勇気と友情に溢れ、正義を愛する男だ。我は少年という盟友を得たことを誇りに思う」

少年「お……おお」///

アルラウネ「ただしひとつ。夜寝るときは腹に肌掛けをかけろ。夏とは言え風邪を引くぞ……ですって」

クラスメイト♂「……」プッ
クラスメイト♀「……」ピクピク

少年「こ、このやろ……余計なこと言うなよ」

ライバル「つぎ、いいかい? 僕のことをサンダーライガーに聞いてくれないかな?」

アルラウネ「はい、もちろん……おねがいします、サンダーライガーさん」

サンダーライガー「グルルル……ゴアウ……」

ライバル「……」ドキドキ

アルラウネ「ええと……戦いの時、知略と機転に富んだライバルほど頼もしい仲間はいない。我が最高の友だ……と」

ライバル「なるほど、ありがとうな」ナデナデ
サンダーライガー「がうがう」

アルラウネ「それと、人間は野菜も食べないとダメだ。特にピーマンを残すな……だそうです」

ライバル「なっ……」///

クラスメイト♂「以外と……アレなんだな」ヒソヒソ
クラスメイト♀「かわいい……でもそれが良い」ヒソヒソ

少年「ううぅ……嬉しいような」///
ライバル「いや、恥ずかしだろ」///

ファイヤドラゴン「むしゅるるー」
サンダーライガー「がおがおー」

クラスメイト♂「ねえ、僕のモンスターも通訳してよ」
クラスメイト♀「あ、わたしもわたしも!」

アルラウネ「は、はい、いいですよね? 少女さん?」
少女「もちろん。どうぞ」

わいわい

巫女「……」

巫女「……」

巫女「……」

巫女「……あ、つづきます」

今日はここまで
おやすみなさい

一週間後の深夜 少女の部屋

少女「……くかー」……zzzZZZ

アルラウネ「むぅ、夜はヒマです」

少女「くー……すぴー……」……zzzZZZ

アルラウネ「動物は眠らないといけないから、大変ですよね」ナデナデ

少女「くふふ……むにゃむにゃ……」……zzzZZZ

アルラウネ「よく寝てる……さて、今夜も、いただきますね。マスター」

にゅる……しゅるるるんっ!

………………
…………
……

……
…………
………………

朝 
チュンチュン……チチチ

少女「ううーん、やめ……ロープで縛んないで…………はっ!?」

アルラウネ「あ、おはようございます」にゅるにゅる

少女「おはよ……あのさあ、寝てる間にツタで絡みつくのは良いけどさ」

アルラウネ「はい」にゅるにゅる

少女「ここまでする!? 雁字搦めにもほどがあるでしょ! ラピュタの飛行石になった気分だよ!」

アルラウネ「ペンダントですか?」

少女「ちがうちがう。ラピュタの中にあった大きなやつ」

アルラウネ「ああ、ムスカ大佐が木の檻をこじ開けて発見したやつですね」

少女「そうそう……わかったらツタをはずしなさい」

アルラウネ「かしこまりました」しゅるるるんっ

少女「そんな急に……擦れて……あっ」

アルラウネ「マスター、いかがなさいましたか?」

少女「……な、なんでもない! なんでもないってば!」

アルラウネ「そうですか」

トントン

母『少女、起きてる? 朝ご飯出来てるわよ』

少女「はーい、いまいくー」

朝の食卓

母「おはよう」

祖母「おはようね」

少女「おはよー……おお! 卵焼きだ!」

母「ちょっとお塩が足りないから、醤油たらして食べてね」

少女「はーい いただきまーす ……んむ、おいしい!」

アルラウネ「本当においしそうですね」

少女「んぐんぐ……あれ? アルラウネも食べたい? っていうか、食べ物食べれたっけ?」

アルラウネ「いえいえ、マスターが美味しそうに召し上がっているのを見て、本当に美味しそうだなと思っただけでして……」アセアセ

少女「なんでそんなにあわてるのよ……んむんむ」

祖母「うんうん。仲良くなってよかったよかった。アルちゃんがうちに来てからもう一週間経ったんだねえ」

アルラウネ「そうですね。最初の何日かはご迷惑おかけいたしました」

母「気にしないで良いのよ。花屋なんだから、肥料なんていくらでも仕入れりゃいいんだから」

祖母「そういえばアルちゃん、来たばかりで肥料をたくさん食べたけど、それからはぜんぜん食べないじゃないか。遠慮してるのかい?」

アルラウネ「いえ、私はマスターにこう……」しゅるるるんっ

少女「はむぐっ!?」

アルラウネ「ツタを巻き付かせているだけで、なんだか満ち足りてしまうんです」

母「へぇ……そういうものなんだねえ」

アルラウネ「もちろん、お水はたくさんいただいてますけど」

祖母「一日にバケツ3杯くらいどうってことないさ。ねえ、少女?」

少女「うん、そうだね。それはいいから、雁字搦めはやめてっ!」

アルラウネ「こ、これは失礼しましたっ!」

母「巻き付いてるだけでお腹がいっぱいになるのはうらやましいねえ」

少女「こっちは良い迷惑。朝起きるとぐるぐる巻きなんだよ?」

祖母「そんなに嫌かい?」

少女「嫌だよ。今日なんて、大きなクモに捕まって、頭からガブってされる夢見たし」

アルラウネ「それは災難でしたね」

少女「あんたのせいでしょ!」ペシペシ

母「ほらほら、ふざけてないで早く食べちゃいな! 巫女ちゃんもうすぐ来ちゃうよ!」

少女「え、もうそんな時間!? いそげいそげ!」ましまし

アルラウネ「……おいしそうですね。本当に」

少女「ん? なにか言った?」

アルラウネ「いえ、べつに」

学校 朝のホームルーム前の教室

ざわざわ

少女「みんなどうしたんだろ? なにかあったのかな?」

巫女「うん……朝から 騒がしいわね」

アルラウネ「モンスターを持ってる方々が集まってるようですね……あら?」

クラスメイト♀「あ、おはよう少女ちゃん。大丈夫だった?」

少女「え、なに? なんかあったの?」

クラスメイト♀「ついにこの街にも来たんだって。黒いゴーストが!」

巫女「あの、凶悪なモンスター使いの、黒いゴーストっ!?」

少女「知っているのか!? 巫女ちゃん!」

巫女「というか、なんで少女ちゃんは知らないの?」

少女「だって、モンスター興味ないし。ひどいモンスターバトルをする人だっけ?」

巫女「そう。隣の街で、小学生はおろか、中学高校、警察のモンスターまで相手に暴れ回てるらしいの」

少女「つまり不良ってこと?」

巫女「そうでもないらしいの。黒いゴーストが最初に狙ったのが隣町の不良グループなんだって」

クラスメイト♀「最初はいい人だと思われてたんだけど、結局は無差別にモンスターとトレーナーを襲うやばいヤツだったんだよね」

少女「うぇー……通り魔みたいだね」

クラスメイト♀「そんなところね」

巫女「でも、どうして黒いゴーストが来たってわかるの?」

クラスメイト♀「うちの生徒が襲われたの。モンスター持ってる人たちがあっちで話してるから、行ってみたら?」

少女「そか、ありがとね」

巫女「私も私もー」

ライバル「……つまり、相手の顔はわからなかったんだね?」

スケ番「らしいな。真っ黒なマスクをつけてたってさ。歳はあたしらと同じくらいに見えたらしい」

少女「おはよー みんな、おそろいで」

アルラウネ「おはようございます」

少年「おう、来たか。これで4年のトレーナーは全員だな」

巫女「15人? この倍は居たでしょ?」

ライバル「残りは全員、黒いゴーストに襲われたんだよ。モンスターはみんな重傷で入院中。トレーナーは看病でモンスターにつきっきりか、ショックで寝込んでるかだ」

スケ番「クラブ活動や習い事の帰り。夕方を狙われたんだってさ」

少年「しかも普段バトルしない連中ばっかり襲いやがった。頭おかしいぜ」

ライバル「おかしいかもしれないが、大人しいトレーナーばかりを狙うのは、相当用意してる証拠だぞ。厄介な相手だ」

少女「そか。わたしはお店の手伝いで早く帰るから、襲われなかったのかな」

スケ番「バーカ、あたしに勝ったからに決まってるだろ」

少女「え? なんで?」

少年「おまえ、リスコンのトレーナーランキング見てないのか?」

ライバル「まあまあ。結局少女さんは、スケ番さんとのバトルしかしてないんだし、アルラウネもリスコンに登録できないんだろ? 仕方ないさ」

少女「このアプリ、ランキングなんてあったんだ」

スケ番「そうそう。ウチの学区では少年とライバルがぶっちぎりの同格で1位。あたしが4位だ」

少女「へえ、そうなんだ……あ、わたしのリスコンでもランキング見れる。ええと3位は……あれっ!?」

巫女「あれ、少女ちゃん3位なの!?」

スケ番「あのクソ審判が、少女の圧勝判定出しやがったからな」

ライバル「ともかくそのランキングの、下の方のトレーナーから襲われてるんだ」

少女「陰湿だなあ」

少年「だろ!? だからこうして、対策を話してんだ」

クラスメイト♂「対策って言っても、早く家に帰るしかないんだよなあ」
クラスメイト♀「それか、クラブで遅くなる人は、集まって一緒に帰るとか……」

スケ番「まあ、あたしらがボディーガードをするのも手かなって思ったんだけどさ」

少年「でも正体がわからないからなあ……黒いゴーストの使うモンスターがだったら、オレとファイヤドラゴンもちょっとやばいしな」

少女「黒いゴーストの使うモンスターって、わかってないの?」

スケ番「黒い霧と一緒に現れるんだってさ。相手が見えないうちにやられるんだと」

ライバル「それに、どのモンスターも、弱点となる相性の技で倒されてるんだ。だから、黒いゴーストは複数犯、もしくは複数のモンスターを扱っているかもしれない」

少女「モンスターをたくさん持つなんて出来るの?」

ライバル「専用の免許を持てばそれなりの数のモンスターを同時に使っても良いらしいけど、それにしたって数が多すぎるんだよ。タイプの異なるモンスターが20体。そのどれもが、相性最悪の技で倒されてる。少なく見積もっても、10種類のモンスターを引き連れてる事になっちゃうんだ」

少女「10体!? そんなムチャクチャだよ」

少年「だろ? そんな行列があったら、絶対に誰かが気づく。でも、もちろんそんな目撃情報は無い。ワケがわかんねえよ」

ライバル「だからこそ、ゴーストなんて呼ばれてるんだけどね」

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