デスノーパン(255)

【第一部】

男「ノートに名前を書かれた女はノーパンになる…」

男(これは誰のいたずらだ…。全く、世の中には暇をもて余している奴がよほど多いと見える)

男(…)ペラペラ

男(ルールまで結構作り込まれてるな)

男(……はあ)

男(馬鹿馬鹿しい。帰ろう)

自宅

男(……ふうん)

・このノートに名前を書かれた女性は40秒でノーパンになる

・日付、時間、原因まで指定することができる。対象を操作できるのは名前を記載してから23日間。それ以上は対象を操れないため、ただ40秒でノーパンになる。

・男性の名前を書いた場合、その対象はパンツになる。

男(これ以外にも細かいルールがいくつも)

男(こりゃ覚え切れないな)

男(……馬鹿馬鹿しい、勉強に専念しなきゃいけない。世界史をやろう。模試は近いからね)

男(…)カリカリ

男(……、)カリカリ

男(デスノーパン、か)

男(ふ)



男(予備校に行かなければ)

男(……)トコトコ

キャハハハ!キャハハハ!

『でさー、昨日髪切ったんだけどー!』

『うそー超似合ってるのにぃ』

『絶対今の方が可愛いってー!!』

男(あそこにいる女も)

男(あの女もあの女も、あの女もあの女もあの女も)

男(どいつもこいつもノーパンになった方が世の中のためと思える奴らばかり)

コンビニ店内

男(……結局試せなかった)

男(まあ、彼女らの名前は分からなかったんだし…)

男(…ん?外……)


不良「おいおい待ってくれよ姉ちゃん」

『ちょ、ちょっと追いかけ回すのやめてくれませんか』

不良「俺、シブタクって言うんだ。よろしく 」


男(シブ、タク…)

男(……!)

男(このノート、女性でなく男性の名前を書けば、対象はパンツそのものになるんだったな)

男()ゴクリ

男(……い、今しかない)

男(シブタクから考えられる名前を片っ端から書くか)

【渋井丸拓男】


男(シブタクから考えられる本名…いくつも別のパターンの名前や漢字を書いたから間違いなくヒットするはずだ)

男(……、)

男(さあ)

男(どうなる!?)


不良「ねえねえ」

『だ、か、ら……しつこいって』

不良「?」

『しつこいって言ってるだろうがァァ!!』バキッ

不良「ぐああああ」ヒュウウウ…


男「!」

プップー!

男(蹴り飛ばされた不良の地点にトラックが…… !)

ドガーン!!!!

キャーキャー!ワーワー!

ザワザワ

男「し、死人に対してデスノーパンの効果は得られない…!」

男「あの女…何てキック力だ」

男「そしてそのキック力を生み出す、素晴らしいケツ」

男「」ムラムラ

男「ま、待て。人が死んでるんだ。そんなことを考えてる場合じゃない」

警察官「君、ちょっとこっちに来て」

『い、いやっ。彼がいやらしい目付きで近付いてきたのがいけないんじゃない、死んで当然よ!』

警察官「いいから。事情は後で聞く」

『私は名門、南高のh院a子よ!無礼は許されないわ』

男(!!)

男(あの美ケツ…いや女、わざわざ自らフルネームを)ニヤリ

男(…)カリカリ

警察官「いいから…!」

『いやァ、離して!』


男(30、31…)ムラムラ

男(32、33、34…)ムラムラムラムラムラムラムラムラムラ

男(35、36、37、……ええい、こうしちゃいられない!)

男(今すぐ女のスカートをめくりにッ!!)タ ゙ダッ



『だから、離してよ!!』

警察官「話は向こうで聞くから!……ん?」



タタタタタタタッ

男「ちょ、ちょっとそこの人!!スカートに……うーんとそうだな、ガムが!ガムがくっついていますよおおおおおおおおおおお」タタタタタタタッ


『え、ウソ、どこ?』

警察官「な、何だ君はッ」


――38、39


男「う、う、」

男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」


ペラッ


――40

自宅

男「鼻血が止まらない」ドドドド…


男(……)スッ

男(……このノート)

男(本物だ)

男(しかし理性が吹き飛んだせいであやうく捕まるところだった・・・。直前に突風が吹いてくれて助かった。言い逃れは容易い)

男(が、まだだ。もともとノーパンだった可能性だって、否定はできない)

男(それでも、もしも本物なら……)

男(世界中の女性の顔と名前さえ把握できれば、僕は…)

男(新世界の、神になれる)

男(まずは、生放送でテレビ出演している芸能人を狙うのが早い)

男(そうと決まったら、)


――気に入ったようだな


男(……ん?)

男(今、誰か僕に話しかけなかったか)

男(気のせいか…)


――後ろだ


男「う、うわァ!!?」

男「……な、馬鹿、な、…」





男「………………パンツが…喋ってる…………」

パンツ「よう」

男「……………………………、」

男「……」

男「お、お前……。何者だ」

パンツ「俺か?俺は…」

パンツ「――パンツだ」

男「………………………………、」

パンツ「どうした。驚きのあまり言葉が出ないのか、人間。それとも、俺が怖いか?」

男(怖くはねえよ…ひたすら気持ち悪いよ。 ビジュアル的に気持ち悪いよ。浮いてるし喋ってるし男性用のブリーフだし)

男「い、いや……」

男「待ってたよ。パンツ」

パンツ「ほう」

男「このノートを取り返しにきたのか」

パンツ「ふふん。いや、そのノートはもうお前のものだ。好きに使うといい」

男「……お前は、何なんだ。どうして人間の言葉が話せる」

パンツ「俺はパンツ界からやってきた、人間界のパンツとは異なるパンツだ。そのノートに触れた者以外は俺を見ることはできない 」

男「人間界のパンツとは異なるパンツ…」

男(…どういうパンツ?)

男「なぜこのノートを人間の手に渡るよう仕向けた。何か目的があるんだろう」

パンツ「ほう。よく分かったな。その通りだ、そのノートは意図的に人間界に落としたんだ。誰かが拾ってくれるように。とりわけ、お前のような面白い変態の手に渡ることを願ってな」

男「落とした?……なるほど。目的は?」

パンツ「面白いから」

男「…」

パンツ「毎日毎日同じことの繰り返し。今やパンツ界のパンツ共はただ死にたくないがために生きているだけ。これといってやりたいこともない。人間でいう、家族、友達、恋人といった類いの、他者との関係性もない。要するになにもすることがないんだ」

男「死にたくないがために生きているだけ? 」

パンツ「そのデスノーパンに書かれた人物は一生ノーパンだ、今後死ぬまでパンツを履けない体質になる。無理やり履かせてもそのパンツは消滅してしまう」

パンツ「その人物が死ぬまでに履くであろうパンツの枚数×10日が、パンツ界のパンツの寿命に加算される訳だ」

男「つまりお前は、その腐った毎日から抜け出したくて、こんな真似を」

パンツ「そういうことだ」

男「ふ、ふ。面白いよパンツ」

男「僕も、この毎日毎日同じことを繰り返すだけの腐った日々からどうにか脱出したくて、いつも美少女の尻を遠くから眺めていたんだ」

パンツ「ちょっと繋がってないなそれは」

男「そして!世の男…いや、女は分かっていない。パンツという憎たらしい物の存在価値の無さを!!」

男「パンツ!お前に裸ワイシャツの良さが分かるか?僕には分かる。見ろ、そのジャンルのエロ本だけでタンスの中はこの通りいっぱいだ!!」ガラッ

パンツ(うわすげー。気持ち悪い)

男「僕は前々から思っていた。女性の尻ほど美しい物はこの世に存在しない。そしてそれを隠そうとするパンツは、悪でしかない。女性の魅力を半減させる、悪なる存在だ。それがパンツだ」

パンツ「すげー言われよう」

男「そして僕はこういう結論に至った」


男「――世界から、パンツを無くしてしまえばいいと」


パンツ(すげー結論だ)

男「僕は毎日勉強に明け暮れた。いずれこの国のトップに立ち、日本…いや、最終的には世界からパンツを抹消させる、神にも等しき存在になるために・・・」

パンツ(そんな動機で勉強する奴は世界を見渡してもお前だけだ)

男「が、僕だっていつまでも子供じゃない。そんなことは現実的には厳しい。薄々、そんな残酷な事実に気づき始めていた」

パンツ(気付くのが遅え)

男「これは運命なんだよ。そうとしか思えない。このノートさえあれば、僕の野望は果たされる!」

男「ッハハハハハハハハハハハハ!ノーパンんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!」

ガチャ

妹「お兄、ちゃん…?」

男「………………………………妹」

妹「………………………………」

男「ノーパ」

バタン!!

男「ン…って……」

男「……ふ、は」

男「ははははははははは」

男「ふふふふふ」

男「終わりだ」

パンツ「大丈夫か?」

男「大丈夫じゃない。問題だ」

パンツ「妹、どうするんだ?」

男「あいつは後でどうにかする・・・」

男「……僕は今この瞬間、大切なものを失うことで吹っ切れた」

パンツ「ほう」

男「面白い、何か刺激を欲しがっていたよな。パンツ」

パンツ「ああ」

男「ならば見せてやるよ。世界中の女性が誰一人としてパンツを履かない、神聖なる新世界を」

パンツ「ククッ!」

パンツ(こいつでよかった)

パンツ(こいつは…面白ッ!!)




~デスノーパン~

翌朝 自宅

パンツ「何してるんだ?」

男「ノートの検証だよ。どこまで効果を及ぼせるのかを試す」




【a田h実】

1月26日12時50分。

男に向かって「話があるの。放課後に三階の生徒会室まで来て」と言い、16:00に言葉通り生徒会室まで行く。

男が入室した途端にスカートを脱ぎ捨て「こんなものは、いらねえええええええええええええ」と力の限り叫び、そのまま退室、廊下を脇目も降らず全力失踪しながら「ボンバーイェッ、ボンバーイェッ」と咆哮、近付いてくるものがいる場合は全員殴り飛ばす。殴り飛ばせない場合、恥じらいを見せ、少女性を発揮しつつ涙ながらに「こっち…見ないでください」とかわす。

邪魔する者を全て振り切ったら、二階の放送室に「幕張メッセ、ソフトクリーム!」と声を上げながら飛び込む。

直後にマイクを取り、校内全体に放送が行き渡るよう手を加えたら「ノーパンんんんんんんんんんッ!イェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」と力の限り咆哮。

それから校庭へ脱走。16時15分、校庭のド真ん中でノーパン化。

【n野a菜】

1月26日7時30分に起床。

着用しているものとは別に予備のスカートを普段の荷物に加え、他はいつも通りの身支度を済ませて登校。

同日13時00分、男に向かって「心配しないで、世界ノーパン化計画のために私も力になるわ」と言い放ち、16時15分、予備のスカートを持ち、校庭まで走る。

校庭中央でノーパン状態の女子生徒を確保、そのまま体育倉庫へ連行。

その女子生徒に「世界ノーパン化計画は始まったばかりよ。あなたはその先駆者として選ばれた人間なの。誇りに思いなさい」と慰めの言葉をかけ、そのままノーパン化。

後に女子生徒へ予備のスカートを渡し、そのまま二人で職員室まで謝罪。

パンツ「…。聞こう」

パンツ「何書いてんの?」




男「これくらい、本来ならば起こり得ない事をしてもらわなければノートの効果に基づいた行動なのかどうか確証が持てない」

パンツ「……。(完全に遊んでるだけだろ…)」)

パンツ「このお前に対する言葉は怪しまれるんじゃないか」

男「リスクは負うだろうが、何らかの事情でその人間に言葉がかけられないようなら、そのノートの指示は不可能と断定されて40秒ノーパン化になってしまう。事情を前もって把握し大人しくしている僕にそうしてもらった方がいい」

パンツ「この声掛けは、ノートの効果が発動してることを確認するためって事か 」

男「ああ」

教室

キーンコーン…

『ようやく四限終了、昼休みだー』

『お前さっきの問い分かった?』

『受験と関係ない科目はからっきし…』

ワイワイ

男(もうすぐ12時50分…)

パンツ「きたぞ」

男(!)

h実「…………」

男「な、何」

h実「話があるの。放課後に三階の生徒会室まで来て」

男「…分かった」

h実「」トコトコ

パンツ「な?」

男(ああ。一語一句のズレもない。デスノーパンは絶対だ) ニヤリ

パンツ「またきたぞ」

男「!」

a菜「」トコトコ

男「…」

男「ちょうどいいところに。a菜さん。五限の現代文、課題を忘れてきちゃったんだけど…ノートを貸してくれないかな」

a菜「心配しないで、世界ノーパン化計画のために私も力になるわ」

男「何言ってるの?」

a菜「」トコトコ

男「ちょ、ちょっと…」

男(デスノーパンで操っている間は人形のような状態という訳だ。コミュニケーションが取れない)

パンツ「そういうことだ」

放課後

パンツ「放課後ってやつがきたんじゃないのか。時計の短針も4に近付いてるぞ男」

男「ああ、分かってるよ」ガタッ

『え、何。どうしたの?』

男「あ、いやごめん。独り言。それじゃあまた明日」

『おう、また明日』

女「お、男くん」

男「……ああ。女さん」

女「えっと、その、この後…」

パンツ「お?」

男「ごめん、今急いでるから」ダッ

女「あっ…」

廊下


パンツ「ずいぶんと冷たいじゃないか男。さっきの奴、結構可愛かったじゃないか」

男「パンツに人間の容姿の良し悪しが分かるのか。それと、外では極力話しかけるな。僕が怪しまれる。お前はノートに触れている僕以外の誰にも見えていないんだから。……見えていたら見えていたで、余計怪しまれるけど」

パンツ「俺とお前のコミュニケーションは言葉に出して交わさずともテレパシーみたいに心の中でやり取りできるんだぜ」

男「そういう…」

男(そういう情報は小出しにするな、始めに言え)

パンツ「いやだって面倒だし」

生徒会室前

パンツ「もうすぐ午後四時だぞ」

男(ああ、分かってるよ)

男「」ドキドキ

パンツ「……緊張してるのか」

男「ど、うして」

パンツ「だってこれから女子がお前の目の前でパンツを晒すことになるんだぜ?……あ、お前まさかデスノーパンにあんなパンツ見せるような設定にしたのってパンツが見たかっ」

男(パンツの分際でパンツパンツうるさい、気が散る黙ってろ!)

パンツ「はいはいパンツパンツ」

男(……行くぞ)

パンツ「わくわく」


ガラッ

――16:00

生徒会室

h実「…………」

男「……」

h実「…………」

パンツ「……。h実って奴、結構かわ」

男(だから黙ってろパンツ!お前に人の容姿の良し悪しが分かってたまるか)

パンツ「結構ムッツリスケベなんだな、お前…」

男(僕のクラスは女子のレベルがたまたま高かっただけで、決して美少女の尻を拝みたいがために実験台にした訳じゃ)

パンツ「始まるぞ」

男(!……)

h実「…………」

男「…………」

パンツ「――!」

男「――!」ゴクリ

h実「」スッ

男「!」

h実「」スルッ

男「!!!」

h実「」スルスルッ

男「!!!!!!??」

パンツ「ちょっと鬱陶しいぞお前」

h実「」バサッ



男「……………………、」

男「ぬ、」

男「ぬ……」

男「脱い…だ…………」

h実「」タタタタタタタッ!!!

ガラッ!!!

男「――追うぞパンツ!真偽を確かめにッ!!」ダッ!

パンツ「尻を拝みにだろ…」

男「」タタタタタタタッ




廊下

h実「ボンバーイェッ!!!ボンバーイェッ!!!」タタタタタタタッ!!!

『なっ!?……a田さんどうしてそんな格好で廊下を』

バキッ!!!

『ぶるァアァァッ!!!』ドサッ

h実「ボンバーイェッ!!!ボンバーイェッ!!!」

体育教師「ちょ、ちょっと待ちなさいa田さん!」

ガシッ

h実「!」



パンツ「お。捕まっちまったぞ」
男(計算通りだ。この時間帯、廊下の見回りをしているのは奴の場合が多い)タタタタタッ
男(だからこそ、デスノーパンにはああいう記載をしておいたんだ…)



h実「こっち…見ないでください」カアアアアッ

体育教師「なっ」ドキッ

スッ

体育教師「あっ、こらa田!待て!!」

h実「ボンバーイェッ!!!ボンバーイェッ!!!」タタタタタタタッ!!

放送室

「幕張メッセ、ソフトクリーム!!!!」

ドガンッ!!!

『わ、わああああああ!!』

『誰だ放送室の扉を蹴破ってくる不届きな輩は!?って……なァア!!!?』

『ぱ、パンツ……』

『ど、どうしたa田さん!?ソフトクリームに行きたいのかっ幕張メッセが食べたいのかっ』

『落ち着け逆だ!』

バシッ

『あ、マイク……、』

教室

男「」ハアハア

パンツ「追わなくていいのか?」

男「尻…事実を目で確認したいのはやまやまだが、校内全体に、という設定にしておいたからそこまで深追いすることはない。ここにいれば充分だ」

パンツ「?」


――ブツッ、ブウウン…


『お。校内放送』

『な、何か騒音が聞こえてこないか?』

『おい廊下が騒がしいぞ』


――ブツツッ























――ノーパンんんんんんんんんんッ!イェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

パンツ「おおおおうるせー。これか」

男(いやまだだ…)



『な、い、今のって…』

『h実!?』

『な、何事だよ、』

ガタッ

『え、あの…n野さん!?』

『スカートなんて持ってどうするの?』


男(よし。デスノーパン、効いている)


a菜「」タタタタタタタッ!

『ちょ、ちょっとa菜!』

『どこ行くのn野さん!』

『お、おいお前ら外を見ろ!!』

『パンツをさらけ出しながら校庭の中央まで突っ走ってる女子がいるぞ!?』

『あれは…h実!!』

『何してるのあの子おおおおおおおおおおおおおお』

『控えめなa田さん…が』ガタリ

『お、おい死ぬな!あれは幻だ、何かの間違いだって!』



男(よしここまで確認したなら体育倉庫の裏側までダッシュだ!)タタタタタタタッ

パンツ「ええ?また走るの?俺は浮いてるし疲れないからいいけど…」

体育倉庫裏側

ワアアアアアア……!!!

パンツ「校舎の方が何やら騒がしいぞ男」

男「……、……、……」ソワソワ

パンツ「落ち着かないな。どうした」

男「どうしたもこうしたもあるか。今頃、校庭の真ん中でh実さんは…あ、あ、あああああああああ」

パンツ「落ち着け男、尻見たさに校庭に向かえば、この事件でお前は怪しい生徒として目を付けられるんじゃないのか?」

男「分かってる、分かってる、」

パンツ「口動いてるぞ」

男(わわ分かってる、分かってるよ…)

タタタタタタタッ!

男(来た!h実とa菜さん!)

h実「ど、どどどどどどどどどどd」

h実「どうなってるの!!!?」



パンツ「大パニックに陥ってるぞ」
男(意識が戻ったんだ。そして、彼女には操られていた間の記憶がない。当然の反応だろう)



a菜「世界ノーパン化計画は始まったばかりよ。あなたはその先駆者として選ばれた人間なの。誇りに思いなさい」

h実「ふぇえ!?」




男(……よし)
男(デスノーパン。本物だ!)
パンツ「倉庫の裏にまわったのはこれを確認するためか」




男「…さて」

パンツ「おい」

男「デスノーパンの実証も終えたことだし、ひとまず自宅へ…」

パンツ「おい」

男「何だよ」

パンツ「口、動かすな」

男「そこまで神経質になる必要なんて…。第一ここには誰も」

男「……………………、」

男「」スッ








女「だ。誰と、何を、話してるの……」

男「…………、」

女「男…くん……」

パンツ「…」


パンツ「あーあ」

夜、自宅

女「お、お邪魔します…」

パンツ「どういう意図があってこいつを自宅に招き入れたんだ男。懐柔でもするつもりなのか」

男(少し黙ってろ、今策を考えているんだ…)

パンツ「へいへい」

母「男ー、遅かったわね。ご飯は…まあ!」

妹「お兄ちゃん遅かっ……え?」

男「……変な勘違いするなよ。ただのクラスメイトだ」

女「そ、そうです。男くんとは本当に何でもなくて…」

妹「あ、そう。なの…。へえ」

母「今、お茶、出すわね」

女「いえいえ、本当にお構い無く…」

男「近々テストがあって、色々と急なんだ。集中したいから…」

母「あー…はいはい。分かったわ。ごゆっくり」

妹「むー」

母「妹」

妹「はあい…」

男「僕の部屋、こっちだから」

女「は、はいっ」

自室

男「早速本題なんだけれど…」

男「どこからどこまで聞いてたの?」

パンツ「ククッ。浮かれすぎたな男。詰めが甘いからこんな状況を招く」

男(少し黙ってろって言ってるだろ)

女「で、デス…で、す……」

男(……ああ。そういうキャラクターだったかこの子は)

パンツ「お前と違って誠実ないい子じゃないか」

男(…)

女「です、の、ノーパンが…どうって……」カアアアアッ

男「ふうん」

女(ど、どどどどどどどどd)

女(どういうこと!)

女(まさかこんなきっかけから男くんの家にくることになるなんて)


男「ねえ」

女「はいっ」ドキッ


男「どうして僕をつけ回していたの」

女「そ、そんなんじゃなくて…」

女「校庭にh実さんが…凄い格好で現れて、a菜もどうしてかスカート持って無言で教室を飛び出して……皆が騒がしい中……男くん一人が冷静で。でも男くんも飛び出して行っちゃうから…気になって」

男(自然に歩いて出ていけばよかったか)

パンツ「だから浮かれすぎたなって言ってるだろ」

男「どうして気になったの」

女「それは、その、えっと…」

パンツ「ククッ。こいつお前に気があるみたいだぜ?」

男「…………、」

男(そうか。そこを利用すればいい)

男「女さん」

女「へ?」






チュッ…

パンツ「ひゅう…」

女「……………………………あ、あ」

男「この件については誰にも言わないでね。二人だけの秘密だから」

女「ひ、みつ。……は、い…」カアアアアッ

男「それじゃあ、送るよ」

女「い、いいいいいいいです。帰れます、一人で」

男「なら、いいんだけど」

女「お邪魔、しました」

男「うん」

パンツ「もう帰らせちまうのか?」

男(時間帯が時間帯だ。あまり長居させると家族に勘違いされるだろ)

パンツ「テスト勉強じゃなかったのかよ」

男(どうとでもなるよ)

女「お邪魔しました…」

母「次来るときはもっとゆっくりしていきなさいね」

妹「……」

男「それじゃあ」

女「はい」

パタン

男(パンツ。デスノーパンは、破ったページに名前を書いても、同じ効果があるんだよな)

パンツ「ああそうだな。同じように女性の名前を記せばノーパンになるし、男性の名前を記せばそいつ自身がパンツになる」

男(なら駒は今の内に増やしておいても損はない。彼女ならきっと力になってくれる…)

パンツ「ククッ。抜かりねえな男」

母「ねえ男…」

男「本当にただのクラスメイト」

妹「本当に?」ジトー…

男「しつこいぞ…」

翌朝

パンツ「おはようだ男」

男「……んー」ボーッ

男「なあ。パンツって睡眠をとるのか?」

パンツ「とる奴もいるしとらない奴もいる。どっちにしろ何ら自身に影響はないけどな。退屈のあまりそうする奴が増え始めてるってだけだ。ちなみに俺は寝ない」

男「僕が寝てる間はどうしてるの」

パンツ「人間界の観察」

男「……なるほどね」

パンツ「今日はどうするんだ?また学校って所に行くのか」

男「今日は日曜日。学校は休みだ。ノートを試すにはもってこいの、丸々一日時間の取れる、日曜日」

パンツ「今日は何を試すんだ。そんなに試したいことがあるのか」

男「当たり前だ。世界中の女性をノーパンにするには、まず最低限このノートを使いこなす必要がある。試さなければいけないことはいっぱいだ」

パンツ「いっぱいあるのは見たい尻だろ」

男「まあね」

パンツ「いまいちお前のキャラが掴めないな…」

男「そりゃ結構」ポチッ

パンツ「うおっ、何だよこれ」

男「本当に人間界観察できてるのか?……テレビだよ、テレビ。箱の中に人間がいるとか言うなよ」

パンツ「箱の中に…」

男「違う。別の場所のものを映し出す機器…とでも言えばいいのか」

パンツ「はあーなるほどな」

パンツ「確かにこの手段を使えば簡単にノートの実験ができるな。どうして初めからそうしなかったんだ?」

男「ノートに関して半信半疑だったことと…まずは小規模での実験から始めようと思っていたこととで半々ってところかな。学校の件で嫌というほどノートが本物ということを思い知らされたからね、もう本格的な段階に移っていいだろう」

パンツ「はああ。考えてるもんだなあ。よくその小さな頭からポンポンと考えが出てくるもんだ」

男「……お前に至っては頭そのものがないだろ」

パンツ「ん?あるぜ」

男「え?」

パンツ「…」

男「…」

パンツ「冗談だ」

『?キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

――プツッ



男「……これで四局目だな」

パンツ「すぐに放送中止になっちまうんじゃあ尻が拝めないな」

男「生放送してる局は今のところここまでか…ふう」

パンツ「何か分かったことあるのか?」

男「いくつか。やはりデスノーパンで対象となる人間の行動を操るのには限界がある。例えば三分でイギリスまで渡りノーパン化。これは物理的に不可能」

パンツ「もし可能だったとしてもわざわざ日本からイギリスまで飛んでパンツ消滅って悲しくなってくる話だな」

男「人を巻き込むようなノーパン化も駄目。つまりノートに書いた人間以外のパンツを脱がそうと思ったらその指令は不可能と判断されて40秒でノーパン化」

パンツ「なるほど」

男「当面の目標は名や顔の知らない女の情報を簡単に得ることだが、操作できる範囲がこれほど限定されているのなら困難を極めるな。これじゃ、せいぜい校内の女子生徒を全てノーパンにする程度がせいぜいだ。それもいいけどね」

男「目先のノーパンハーレムにとらわれて世界のノーパンハーレムを見失ってはいけない」

パンツ「……そうだな」

男「操作されてる間の記憶も飛んでいる。だからどうして自分がノーパンになっているのか混乱状態に陥ってる女が大半」

パンツ「それはこの前にも確認したな」

男「この部分が非常に好都合だ。記憶を保たれていては下手な操作ができないからね」

パンツ「うん」

男「世界中の女性の顔と名前を得る方法……何か無いものか」

パンツ「何かデータバンクみたいなものがあればいいんだけどな」

男「そんな言葉よく知ってるな」

パンツ「パンツとバンクの響きが似ているからな」

男「はは。なるほど」

男「パンツ…バンク……」

男「顔、名前、データバンク…」

男「それだ!」ガタッ

パンツ「ああ?」

ガチャ

パンツ「どこ行ってたんだ?」

男「父さんの部屋だよ」

パンツ「父さん?」

男「僕の父さんはね、警察官なんだ。それも…警察庁刑事局局長。重要な役職に就いている。父さんのパソコンには、日本警察のデータ情報がいくらか載ってる」

男「……犯罪者の、顔と名前だ」

パンツ「おお…やったじゃねえか。それにしてもそんな重要な物を家に放置とは頼りない奴だなお前の親父は」

男「そんなことないよ。データは厳重過ぎるほどのセキュリティロックがかかってる」

パンツ「なら駄目じゃん」

男「僕はもう解いた。全てね」

パンツ「……やるじゃん」

パンツ「なら、もう女性限定だが犯罪者という犯罪者を片っ端からノーパンにしちまえばいいって訳だな」

男「……なあパンツ」

パンツ「何だ?」

男「人間って奴はどうも順応性だけには長けているみたいなんだ」

パンツ「……あ?」

男「つまり、むやみやたらに世界中の女性をノーパンにしてしまえば、もうそれが当たり前のものとなってしまい、新たな文化が生み出されてしまう」

パンツ「それがお前の望む新世界じゃないのか」

男「違う。違う」

男「お前は何も分かっちゃいない。ノーパンの何も分かっちゃいない!!」

パンツ「いやだって俺パンツだし」

男「お前には萌えという人間界の文化を叩き込んだ方がいいようだな」

パンツ「どういうことだ」

男「パンツをはいていないことで恥じらってしまう情動にかられるからこそノーパンに価値が生まれるんだよ。分かるか」ギロリ

パンツ「あーうん。多分」

男「多分じゃ駄目なんだよ」

パンツ「じゃ絶対」

パンツ「……で、つまり?」

男「ノーパンによる恥じらいを保ったまま世界中の女性をノーパン化するならば、ノーパンへの恐怖心を植え付けた方がいいという訳だ」

パンツ「なるほど」

男「つまり、このデータバンクはその恐怖心を植え付けるための手段には必要不可欠」

男「人は罰を恐れて法を守る。――ならば?」

男「人は罰(ノーパン)を恐れて法を守る――どうだ?」

パンツ「…」

パンツ「…」

パンツ「いいと思うぞ。俺パンツだけど」

男「だろうっ。とすれば、とりわけ罪の重い女性犯罪者のパンツを永久消滅させていけば、ノーパンへの恐怖心は保たれ、恥じらいもまた保たれ、よりよい新世界の実現へと向かえる」

パンツ「萌えってやつは難しいな」

男「今度エロゲ貸してやるからそれで学べ」

数週間後

カリカリ…

男「ふう…」

パンツ「お前は本当に勤勉というか…よくここまで」

男「手記でなければ意味が無いんだろ?そしてこのノートを公に晒す訳にもいかない」

男「僕一人で世界をノーパンへと導く必要がある」

パンツ「なるほど」

パンツ「……なあ男」

男「何だ」

パンツ「俺はお前が寝ている間だけ世界…人間界を見て回っている。それこそ。ここ日本のまるっきり裏側までだ」

男「それで?」

パンツ「今お前は何千人と世の女性犯罪者をノーパン化させている。世界もそれに気付き始めてる。要するに」

男「盛り上がってるってことか」

パンツ「ああ」

男「まあ…」バサッ

パンツ「何だそりゃ」

男「新聞だよ。見ろ、救世主ノーパン神伝説」

パンツ「ノーパン神…」

男「もう世界は確実にその存在に気付き始めている。その通りだ、それでいい。それこそ僕が望んだ展開」

男「インターネットもまた然り。ノーパン神は、既にひとつの宗教として君臨しつつある」

パンツ「すげーなノーパン」

男「新聞、ネット、そして…」パチッ

『――救世主ノーパン神伝説!今週は突如として世界に舞い降りた新たな神の存在について、徹底的に議論したいと思います!』

ピッ

『ノーパンねえ。いいよねえノーパン。あれはねえ、パンツをはいていない状態に羞恥心を』

ピッ

『いますよ、絶対!ノーパン神様は!現に、突如ノーパン化してしまう人間は重い罪を犯した咎人ばかり…………』


男「まあこんなところだろう。メディアも馬鹿で単純だからな。思惑通り、こうも簡単に盛り上げてくれる」

パンツ「すげーなノーパン」




――ブウウンッ

男「ん?」

――ブツッ、ブツッ

パンツ「おい男。てれび?の調子が」

男「ああ。どうしたのかな」

――ザザザザザザザザ!!!!!

――パッ



男「!?」

『私はfbi最高司令官シマ・s・パンツァー』

『通称sです』



男「……fbi、だって?」

男「世界は既にノーパン化を食い止めるべくfbiを動かしているのか!?」

パンツ「ククッ。すげーなノーパン」


『よく聞け。これまでに約8000人ほどの女性犯罪者のパンツ消滅が相次いでいる』

『世はそれを救世主ノーパン神などと祭り上げているようだが……』

『貴様のやっていることは、』




『――悪だ』

男「悪――だと?」

『この放送は日本全域を通して行っている。これまでの経緯から推理し、貴様が日本にいると踏んでいるからだ』

『そう。私達fbiは、必ず貴様の存在を明らかにし、神の名の剥奪と共に、貴様を牢獄という地獄へ突き落とす』

『犯罪者への裁きはノーパンで行うべきではない。それでははしたない』

男「何を、言ってるんだ。こいつ…」

『いいか。世は、まさに』

『――大いなる縞パン時代へ向かいつつある』

男「縞…パン……」






男「縞パン……………、」

男(その発想はなかった)


『見せないエロス。模様からくるエロス。密着度からくるエロス。控えめなエロス。程よいエロス。ああエロス』

『女性の尻はパンツによってその魅力を二倍にも三倍にも引き上げる。パンツにはそういった力がある』

『だが貴様は、あたかもノーパンが全世界における共通の最萌として認識し、極めて自己中心的な裁きを行ってきた。この罪は何よりも重い』



男「ふ。ふ、は、」

男「はははははははははははは!!!!」

男「おけけけけけけけけけけけ!!!!!!」

男「何を言っている!?まるで理解ができないぞs!それは人語か?どこの言葉だ!!?」

男「僕が、悪。ふふ。ふざけるな」

男「僕はね。世のノーパン神崇拝者が不必要な恐怖心にかられないよう男性犯罪者は裁かないことにしていたんだ」

男「何しろそいつ自身がパンツになってしまうというのは、少し度が過ぎている。己の姿がパンツになってしまうなど、生き恥晒しもいいところだ」

パンツ「…」

男「が。お前とは分かり合えそうもない。新世界に存在する人間として、不適合と判断する」

男「よってお前を――裁く!!」カリカリ

【シマ・s・パンツァー】

男「ふ、間抜けすぎるぜs……全世界が君の醜態を目の当たりにする瞬間だ。ノーパン神に逆らうとこういう罰が与えられるという、見せしめのね」


『――うっ、な、何だ!!?』

『か、身体が…』

『う…うわああああああああ!』

『(ポン!!)』

男「ふ」ニヤリ

男「はははははははははははははははははははははははは!!!!!!!」


――ブツツッ、


『――驚いたな……。まさか、本当に、現実に、こんな現象が起こり得ようとは』





男「何!!?」

『そのシマ・s・パンツァーを名乗る男は本日に死刑を控えていた重犯罪者だ。そしてこの私sの囮として、顔と名前を公にした。本物の私はもちろん名は違うし、顔を晒す気も毛頭ない』

男「こいつ…既に裁きには顔と名前が必要なことまで推理を進めている……。さすがは世界最高峰の探偵ってところか…」

パンツ「探偵?」

男「そうだ。通称sの名で思い出した。奴はfbiの最高司令官なんかじゃない。世界最高峰として知られる本名も姿も不明な、そう。探偵だ。当然、その所以に足る頭脳も持ち合わせているんだろう…」

『先ほど全日本同時中継と銘打ったが、これは人口の集中する関東地域のみにしか放送されていない』

男「!」

『そしてどうやら貴様……いや、お前をnと命名しよう。nの裁きには大きく分けて二つ。女性の場合はパンツの永久消滅。男性の場合は姿そのものが、永久かどうかは知れないところだがパンツになってしまう。この線が正しいと思われる』

『何故なら貴様……nの裁いた重犯罪者の中には、今このように姿をパンツに変えたケースが数十件だが起きていたんだ。国によっては顔や名前が分かっているのに性別を区別しにくい人間がいることを知らなかったらしい。もしくは、実験として意図的に行ったのか。いずれにしても、nの裁きはこの二つ』

男「…………、」

パンツ「ククッ。頭の切れる奴だ。nだってよ、ノーパンのnって訳だ」

『何が正義か何が悪か。そんな議論は人々にやらせておけばいい。だが……』

男「!」

『これは、ゲームだ。勝敗を決する、sとnのゲームだ』

男「ゲーム…」

『今、仮説を含めても、私は、裁きには顔と名前が必要なこと、日本の関東地域に潜伏していること、性別により裁かれ方が変わってくるなど、ここまで推理を進めた。貴様を牢獄行きにするのも時間の問題だ』

『そう、このゲームは勝利を手にした側が正義の称号を得られる。パンツはあるべきか、ないべきか』

男「無い方がいいに決まっているだろうs……、いいだろう、ふふ。受けてたってやろうじゃないか」

パンツ(顔も名前も知らない者同士が戦い、勝った方が世界の正義……。ウヒョー!やっぱり人間って、面白ッ!!)


男「僕が」
『私が』




「『――正義だ!!!』」

日本警察本部

s「どうも…私がsです」

y神「y神だ」

m木「m木です」

a沢「a沢です」

m田「m田ッス」

i出「i出です」

s「救世主などと持て囃されているnの力を恐れ、多くの者が捜査を断念した中、あなた達という強い正義感を持った人間がここに残り、n逮捕に尽力してくれることに私は限りない感謝の気持ちを送りたい」

y神「いやいや。私たちはただnを捕まえたい、その気持ちだけでここにいる。共に頑張ろう、s」

i出「それにしてもs。あなたの洞察力や分析力など飛び抜けた頭脳、そして行動力、とても素晴らしい能力をお持ちだ。これまでの推理に至る過程、考えを聞きたい」

s「堅苦しい言葉遣いは結構ですよ。それに私には大した能力はありません。ただ、許せないのです。世の女性犯罪者をノーパンにするなど、万死に値する愚行に愉悦を抱き神を気取っているnがね。私はそのnを何としても捕まえたい。ただ、その一心でここまでやってきただけです」

s「時代は縞パンです。それは、どうしても譲れない」

y神「うむ。うむ」

m木「……」

s「で、推理過程でしたね。ワタリ」

ワタリ「はい」

s「簡単な話ですよ」

ワタリ「…」

a沢「彼は?」

s「ああ…。僕の助手…パートナーといったところです」

ワタリ「準備が整いましたs」

s「モニターに回せ」

ブオン

『?キャアアアアアアアアアアア!!!!』

m木「これは…」

s「考えるまでもなくノーパン化現象ですね。先週に放送された番組での出来事です。他にも…」

ブオン

『…………それでは次のコーナーは…ん、や、いやああああああああ!!!』

ブオン

『…………今週のゲストは、hさんです、どうぞー。……あれ、どうぞー。ん?どうしたのかね。あ、ただいま(ブツッ』

m田「放送事故頻発ッスね…」

s「これらの番組は当然、全て生放送です。能力の実験の結果を実際に目で見て確かめるには最も手軽な手段です」

s「これらは全て関東の地域で放送されたものです。が、しかしその程度で身元が割れるようなことをnがするとは思えない。ミスリードの可能性だって考えうる。真偽を確かめるためにもあの全日本同時中継と銘打った、受刑者を囮にする策を打って出ました。この段階だからこそできたことです」

m田「この段階?」

y神「まさか、nもfbiを揺るがすような展開になるとは思わなかったのだろう。少し派手にやり過ぎたってことだ」

i出「おかげで途方もないように思えた捜査範囲を関東に縮めることができた。それと同時に、これは奇怪現象でなく人間の仕業だということも」

s「正確には人間が引き起こした奇怪現象ですね」

m田「で、でも引っ越しちゃえば何てことないんじゃ。でなくともこっそり移住したり…」

a沢「ばか野郎。相手は世界最高峰の探偵s率いるfbiや日本警察だぞ。日本内部の細かい動きなんかお見通しってことくらい分かるだろう」

s「しかし、以降これほどボロを出すような手は打たないでしょうね。相手が私たちであると発覚したからには。ですが僅かなほころびを見落とすつもりもありません。既に何百人もの捜査員を関東の地域に派遣させています」

m木「何百…」

y神「そこまで踏み出してしまっていいのだろうか…もしや私たちは本当にミスリードに引っ掛かってしまい、実はnの潜伏先は外国なんてことも」

s「あり得ない話ではありません。が…」

s「私はあの行為にどうも人間味…いえ、もっと言ってしまうならば子供臭さを感じてならないのです。nは容易く挑発に乗り、そして囮……偽sをパンツにした。あの高い知能からは考えにくいほどの。良いニュアンスならギャップ、悪いニュアンスなら本性。あの行為を私はミスリードとは思えない。それすらも演技だとしたら、これから先の捜査は想像以上に困難になるでしょう」

i出「前々から思ってたんだが、どうしてsはそこまでnを高く買っているんだ。今のところ、奴はsにやられっぱなしのように見えるんだが」

s「裁き方がですね…巧妙なんですよね」

m木「裁き方?」

s「はい」

s「今は仮にnの能力を“ノート”と定義していますが、それは顔と名前が必要なことから推測できる“記録性”に基づくイメージに最も結び付きやすいものが“ノート”なので、そう呼んでいるだけです。それがアルバムでも単語帳のようなものでも、あるいは電子方面でデータベースでも何でも構いません」

s「奴はそのnの力……“ノート”を実験的に使っていることは既に確定事項です。何故ならば、」

s「あなた達は今に至るまでの人生で、女性のパンツが自然に消滅、それも何千件と相次ぐような事件を耳にしたことがありますか?ないでしょう。この件は、まさに“突然”にして起こったのです。それなら、その力を手にした、あるいは生み出したのはここ最近の話と言えます」

s「その最近手にした、生み出した力、それも女性をノーパンに、男性に至っては姿そのものをパンツにしてしまうといった世にも奇怪な力を、何らかの目的がありそのために使いこなそうとしているならば犯罪者達が実験台として使われていることにも納得がいきます」

y神「重犯罪者とはいえ実験台…一生ノーパン……ゆ、許せん」

s「ワタリ。y神さんに縞パンを」

ワタリ「はい」スッ

y神「あ、ありがとう。とても落ち着く」スーハー

m木「……」

s「して、その巧妙な裁きの手口なんですが…どうもその“力”――“ノート”には何らかの制約、ルールが存在する気がするんです」

m田「ルール?」

s「先ほどから仮説仮説と申し訳ないのですが、nは対象の人間を“操作”する力をも持っていると思うのです」

i出「に、人間を…操るのか?」

s「はい。でなければ何かと行き詰まるんです。いえ、こうすれば様々な推測に一つの筋が通る…ワタリ。モニターへ」

ワタリ「はい」

ブオン

m田「これは…赤い液体…血?か何かで壁に描かれた紋様の写真」

a沢「遺言書さながらの手紙の写真なんかも…」

y神「これらの写真は?」

s「はい。これは、nの裁きにかけられた女性犯罪者がノーパン化するまでに至った情報の数々です。この赤い紋様が描かれている壁…特別何かを表している暗号のようには思えない。手紙もまた然りです。こういった意味不明な行動の後にノーパン化してしまう犯罪者以上に、圧倒的に数を占めているのがやはり、ただノーパン化する人々」

s「この事から、ただノーパン化した犯罪者は実験の失敗例、そして意味不明な行動をしてからノーパン化した人間は実験の成功例。そんなところでしょうね」

y神「じ、実験の成功例…。同じ人間なのに……!」

s「ワタリ。縞パンを。フローラルの香り付きだ」

ワタリ「はい」スッ

y神「すまない。落ち着く…」スーハー

m木「……」

a沢「これだけ意味の分からない行動からは、確かに操られてると考える他ないな」

s「そして何より重要なことが一つ」

y神「な、何だ」

s「nを絞り込むに当たって充分に判断材料になりうる、貴重な推測です。おそらくnは…」



男(警察関係者、と推理されている可能性が高い)

パンツ「どうしてだ?」

男(僕が実験台に使った女性犯罪者の多くは一般には公開されていない人間が多数ということ…それともう一つは、デスノーパンで操作された結果はテレビのように手軽に確認の取りようがないということ。つまり、その結果含め、警察内部の情報を取得できる人間に焦点が当てられるのは至極当然という理屈さ)

パンツ「ただでさえ関東に操作範囲を絞られてるってのに余裕だな男。何か具体的な策はあるのか」

男(策はないが、駒の当てなら今のところ。それに焦ってボロを出してはならない、向こうは何よりそれを狙っているのだから)

パンツ「駒…あの時お前の家にきた女のことか」

男(ああ。僕は彼女を“第二のn”として使うつもりだ)

パンツ「しかし最近知り合った特別深い関係でもない奴にそんな重要な役割を押し付けていいのか」

男(大丈夫だ。彼女には素質がある。必ず世界ノーパン化計画の素晴らしさに気付いてくれるはずだ)

パンツ「俺は裏切る可能性も考慮しとけって話をしてるんだぜ?」

男(そうならないための下積みを、今からこうしてしようとしてるんだろ)

パンツ「ククッ」

パンツ「デートねえ」

水族館

男「……」

女「ご、ごめんなさいいいい」

男「ああいいよいいよ、今きたところだから」

パンツ(これがいわゆるお決まりってやつか。ククッ)

男「ずいぶんとお洒落してきたね。学校にいる時とはまるで別人だよ」

女「そ、んな。こと…」カアアアアッ

男「まず向こうから見ていこうか」

女「は、はい」

パンツ「今日も存分に楽しませてもらうぜ男」






男「……それじゃあ、とりあえず休みたいしお茶でもしようか」

女「うんっ。い、いや…はいっ…」

男「別に畏まらなくても。僕たち同級生なんだし」

女「こ、こう話さないと落ち着かなくて…」

男「ふうん。まあ、いいんだけど」

パンツ「ククッ」

男「それじゃあどこか適当な喫茶店に…」

パンツ「クククッ」

男「……」

パンツ「ククククッ」

男(……どうしたパンツ。何がおかしい。いつになく上機嫌じゃないか)

パンツ「男。俺はsの味方でもnの味方でもない。だがな、俺は新世界の創造とやらに興味、好奇心を抱いてる。お前は面白い。だからこうして、ノートのルール抜きにしても、俺は喜んでお前に憑いているつもりだ」

男(……何が言いたい)

パンツ「だから俺は気が向けば、お前の計画進行の助けにもなってやるつもりだ。……なあ男、」

男(何だよ)

パンツ「さっきから…」


パンツ「――さっきからお前らを後から尾行している人間がいる」


男「……!?」

男「…」バッ




捜査員「…………」

男(あ、の。捜査員……ッ)

パンツ「…」

女「どうかしましたか、男くん…?」

男(あの捜査員……、)


男「いいケツしてやがる…!」


パンツ「ククッ」

女「え?」

男「い、いや。あ、あそこにあったよ、あそこでひとまず休憩しようよ。何飲みたい?」

女「わ、私は…アイスラテで…」

男「オッケー。じゃあ、奢らせてもらうよ」タタタ

女「そんな。悪いですっ」タタタ



捜査員(女)「何か今…悪寒が」

喫茶店

女「あのイルカさん…凄く可愛かったです…」

男「女さんは動物が好きなの?」

女「大好きですっ」

男「じゃあ犬と猫、どっちの方が好き?」

女「猫さんです!」

男「あ、そうなの」

女「小さい頃に犬に噛まれたことがあって…それ以来トラウマに…」

男「僕なんか猫に引っ掛かれて、その傷が未だに痕になって手の甲に残ってたりするけど断然猫だなあ。……ほら」

女「ほ、本当です…。うっすらと傷痕が…」

男(……、)チラッ




捜査員「…………………………………」ジーッ


男(すんっごいこっち見てるけど。彼女は尾行の心得を知らないのか…?)

パンツ「ノーパン化させちまえばいいじゃねえか」

男(馬鹿言え。それは今この状況で最もしてはならないタブーだ。彼女はもしかしなくてもfbiの回し者って線が妥当だろう。ならここで彼女をノーパン化させるのは駄目だ。僕がnだとわざわざ向こうに教えることになるだろ)

パンツ「あ、そっか」

男(そう。女性犯罪者以外に対して、僕はもう気軽にデスノーパンを使えなくなってしまったんだ。まだまともに一度でさえ尻を拝んでないというのに)

男(あの捜査員、どうやり過ごすべきか。逆に利用してやるか?操作さえできれば…いや、まず第一に名前が分からない。どうすれば…)

捜査員「……………………………」ジーッ




男(……………、)

女「お、男くん…」ボソッ

男「どうしたの」

女「誰か、あの向こう側の席から私たちをずっと見てる人が……」

男(バレてるじゃねえか。バレてるじゃねえか世界のfbi捜査員)


捜査員「………………………………」ジーッ


男「き、きっと仲睦まじい僕たちを見て苛立ちを隠せないんだよ彼女は。多分、独身かバツイチなんじゃないかな」

女「そ、そうですよね。ええ?いえ、仲睦まじいだなんてそんな…」



捜査員(何か今…気に障るようなことを言われた気がするわ)

男(何としてもあの独身捜査員の名前を知り、そして操ることで逆に向こう側の情報を得たい。父さん、または父さんのpc経由では獲得できる警察内部の情報には限界があるからね)

男(何よりも、日本警察のほとんどはnに対して反抗的な態度を見せないと聞く。n逮捕よりも自分の身の安全を優先する輩が多かったんだろう。だからこそfbiまでもが日本国内で捜査を始めている)

男(つまり今この状況、日本警察員のどれほどがn捜査に加わっているのかということと、fbiがどこまでその捜査を進めているのかということ。ここが気になる)

男(僕が今関東地域を脱するのは容易い。が、実の父親が日本警察の重職に身を置いていることと、s率いるfbi包囲網を考えてみれば、そんな愚策は絶対に取れない。今形成を逆転、巻き返すには、あの捜査員を使って、このピンチをチャンスに変えなければならない)

パンツ「男」

男(!)

パンツ「パンツの目のことは、話してなかったよな」

男(パンツの、目?お前…頭大丈夫か。パンツに目は無いぞ。ああいや頭すら無いのか)

パンツ(男……真面目な話だ。そしてこの話はお前にとっても決して悪い話じゃない)

男(何だ一体…)

パンツ「ノートの契約者は、自分のパンツの半分をパンツに捧げることで、相手の名前と人生で穿くパンツの枚数を見ることができるパンツの目を宿すことができる」

男(ま、待て。パンツパンツよく分からない。それにちっとも真面目じゃない)

パンツ「ノートに名前を書かれた女性は一生ノーパンだろ?パンツと“パンツの目”を契約した人間は、一生ハーフパンツになる」

男(ハーフパンツ?ハーフパンツってあの…)

パンツ「違う。人間界でいうハーフパンツとは異なる」

パンツ「その人間が穿いたパンツは、ちょうど縦に真っ二つにした片側のみの形状に一生なってしまう、ということだ。それはどんなパンツを穿いてもそうなってしまう」

男(…………、)

男(マジ?)

パンツ「どうだ?」

男(いやいや、どうだ?じゃねえよ。その一生ハーフパンツってことはつまり…)

男(あの部分も半分だけ常に見えてしまうって訳だよな)

パンツ「そんなもんズボンでも何でも隠せるじゃないか」

男(冗談じゃねえよ!お前…そうだな、銭湯って分かるか)

パンツ「ああ…あの浴場か」

男(例えば男四人で銭湯に行くだろう。するとな、まずはその浴場…風呂に入るために着替えなければいけない。男四人でだ)

男(して僕がそのパンツを残り三人の眼前に晒してみるとだ。どうなる?)

パンツ「パンツが、縦真っ二つになってる」

男(となるとあの部分はどうなってる?)

パンツ「半分だけ見えてる」

男(大問題じゃないか!!!!!!)

パンツ「じゃダメか」

捜査員「……………………………」ジーッ

女「男くん…?」

男(考えろ。パンツの目なしに捜査員の名前を知り、デスノーパンで操り警察内部の情報を得る策を)

男「……、……、」

男「…」

男「よし、次は近くのテーマパーク、遊園地にでも行こう。無性に観覧車に乗りたい気分なんだ」

女「か、かかか観覧車ですかっ」カアアアアッ

男「いいよね。ほら行こう」ガタッ

女「はいい…っ」ガタッ

男「お会計お願いします」

『はい、1680円ですー』

男「はい」

『ありがとうございましたー!』

男「出るよ、女さん」

女「はいっ」

男「…………」トコトコ

男「」スッ…

トサッ…

捜査員「あ。落としましたよ、財布…」

女「男くんっ」

男「あ、ああ!」

男「これは、どうも」

男「」ニヤリ

とある場所

「へえ。なるほどこれがnって奴の力の正体……デスノーパンか」

パンツ「ああ。お前はそれをnのように世界を変えるための力に使わないのか」

「…」

「はっきり言って」

「くだらねえな」

パンツ「ふん。まあそんなところだろう。常人がそのノートを手にしたところで出てくる感想は」

「でもこれ、nのように派手なことはせずにこそこそ使ってりゃ、誰と対立することもなく、自分の性欲満たすためだけに使い放題ってワケだ?ハハハハハハハ、こいつぁいい。好きなだけ使わせてもらうヨ」

パンツ「……」

「文句はねーのかよ」

パンツ「ない。お前の好きなように使え」

「へいへい」

パンツ界

パンツ「おい聞いたかよ。もう三体もパンツが人間界に降り立ったっちゅう話」

パンツ「らしいな。まあここにいても不毛~な毎日がいたずらに過ぎていくだけだもんよ~?」

パンツ「何やら刺激を欲していたのやもしれぬ」

パンツ「まあそんな奴もいたけどな。えーと、確か人間界でいう男物のブリーフパンツの奴は、いかにもそんな理由で地上に降りたって話だ」

パンツ「残りの二体は」

パンツ「さあね。訳ありそうなのもいたけどぉ」

パンツ「お前は行かないのかよ」

パンツ「馬鹿馬鹿しい。めんどくせーよ」

パンツ「ま、」



パンツ「そうだよな…」

日本警察本部

s「40秒なんです」

i出「なぜ40秒になるんだ?」

s「女性犯罪者に対して、奇怪な現象が起こったという事実に気づき始めたのが300人を越えてから。100未満の時から知らせはあったんですけどね。馬鹿馬鹿しいいたずらだと思っていました」

s「裁きにあった犯罪者が500を越えた頃、私が動かざるを得なくなりまして……いくらか検証を行いました」

y神「な、何をしたんだ」

s「それまでに裁かれた犯罪者から取った統計を見ますとね…罪の重い人間を優先してノーパン化させていたんです」

s「ならば、まずはこちらからこの現象の謎を暴くべく、犯罪者を前もって観察下に置く必要があった」

m田「なるほど、そこで特に罪の重い人間を集めてノーパン化現象を目で見て確かめた、と」

s「そうです。そしてそのノーパン化に至るまでが実に様々でしてね。大きく分けると二つ。先ほどの通り、ただ40秒でノーパンになる者と、ノーパン化前に妙な行動を見せる者」

s「それでこの40秒です。およそ200人に全く同一の兆候が見られたのでほぼ間違いありません」



s「裁きの対象になった人間がノーパン化する前は、無意識的に、必ず“顔を赤らめるんです”」

y神「何ぃ…。み、見たい……!いやいや、ゴホン。ノーパンなど断じて許せん、けしからん」

m木「……」

ワタリ「映像記録がありますが」

y神「!!そ、それをっ見せ」

s「見せなくていい。彼女らにも人権がある」

ワタリ「はい」

y神「その通りだ。見せる必要はない」

a沢「それにしても仮説とは言え、少ない手がかりでほとんど未知だったnの能力を…そこまで分析していたとは。さすがは世界最高峰の探偵か」

i出「問題は警察関係者の点だ」

m田「この日本警察に…と言ってもn捜査に関してはほとんどが身を引いたけど、世にも恐ろしい異能者が潜んでると思うとゾッとしますね」

s「あくまで可能性を提示しただけです。ですが、こうも一般公開されない犯罪者ばかりを次々と裁く様子から見るに、その線はかなり濃厚だと言えます。ハッキングの可能性も考慮しましたが、やはり結果は望んだようにはいきません」

a沢「関東に潜伏。40秒ルール。性別ルール。顔と名前が必要。警察関係者。挙がってきたな、これだけあればn逮捕もそう遠くはない…」

i出「で、まず数百人もの捜査員の派遣に出たはいいが…向こうはボロを出すだろうか」

s「出さないでしょうね」

m田「へ?」

a沢「なっ…、それじゃ何のために」

s「牽制の意が大きいところですが…一番の目的としては、nの技量を確かめること」

i出「確かめる?」

s「はい。この包囲網に引っ掛かれば、おそらくnは能力を駆使してこの窮状を切り抜けることが予想されます。そして、仮説の中でも最も可能性の薄い“対象の操作”ですが……。もしそんなことが出来るならば、そう。私なら…」



s「その捜査員を逆に利用し、こちら側の情報を得ようとしますね」

遊園地

男「何だかんだ色んな所で遊んじゃったね」

女「もうふらふらです…」

男「締めくくりは、楽しみにしてた観覧車だ」

女「はいっ。で、でも…」


捜査員「…………」


男「大丈夫。僕に任せて、良い方法があるから」

女「良い方法?」

パンツ(おっ。ついに使うのかデスノーパンを。楽しみだなこりゃ)

男(途中余計な口を挟んだりするなよ)

ダッ!!!

女「ひゃっ!?」

男「な、」

男「ひ、ひったくりだ!か、返せ僕の財布をっ」タタタタタッ

『…………』タタタタタッ!!

捜査員(!ひったくり…)

男「そ、そこの綺麗なお姉さんっ、そいつを捕まえてください!引ったくりです!」

捜査員(綺麗なお姉さん!)キョロキョロ

捜査員(私しかいないっ!!)ダダダッ!



『…………!』

捜査員「待ちなさあああああああああい」ドドドド

『っ…、』

ガシッ

『ぐ…』

捜査員「人の物を盗るのはいけないことよね。もう観念しなさい。さあ、早く彼の財布を」

『…………、』スッ

捜査員「そう。良い子ね」

男「すみませんー!どうもありがとうございまし…あっ」タタタタ

捜査員「き、奇遇ね」

男「これは再びどうも…。どうやらあなたは僕の財布に縁があるようで」

捜査員「そうなのかしらね」

男「あの体裁き、凄いですね」

捜査員「い、いえ…」

『……!』シュッ!!

捜査員「あっ!」

『…………』タタタタタッ!!

男「あ、あいつ…性懲りもなく」

女「やっと追い付きましたああ」タタタタ

男「女さんはここで休んでて、僕と彼女はあいつを追う!」

捜査員「え、いや私一人で」

男「何を言ってるんですか。僕も恩を返さなきゃいけない。盗まれたのはあなたも財布ですか?」

捜査員「そう…ね」

男「なら早く捕まえましょう!」ダダッ

女「え、えええっ?」

男(これは賭けだ。本当に財布ならリスクを負った意味がない…!)タタタタタッ

男「……」タタタタタッ

『…………』タタタタタッ

男(……見えた。手に持っている物は…………、よし!)

男(ビンゴだ!)

『きゃっ』ガッ

ズザーッ

捜査員「転んだ!」タタタタッ




男「捕まえた…」

『…………、』

男「二度までも人の物を盗るなんて…。さあ、早く彼女の財布を返せ」

『……』スッ

男「ん?これ…」

捜査員「あ、それは」タタタ

男「身分証明……こ、これはっ、」

捜査員「っ、そ、そうなの。私…」

男「fbiの…。これは、驚き、ました」

捜査員「……、」

男「…………」

男「いや、すみませんでした」

捜査員「はい?」

男「“財布と言われた”もので…つい反射的にあなたの私物を目にしてしまって……」

捜査員「あ、ああ。いいのよ別に。とっさの事で混乱していたから、私も財布だとばかり勘違いしてしまって」

男「体力があるはずだ。正義感もある。何より綺麗なお方だ。とても魅力的な女性です。二度も助けられて…、その…」

女「つ、捕まえましたかああああ」タタタタタッ

男「……彼女がいなければ、あなたに心動いていたかもしれません」

捜査員「な、何を言い出すの。もう…」

捜査員「でもこれで、イーブンね。恩なんて感じなくていいのよ。彼女、大事にしてあげてね」

男「はい…」

捜査員「じゃあ、私はこれで」

男「どうも、ありがとうございました」

捜査員(あの子がnということは…流石にあり得ない。次を当たりましょう)

女「捕まえられて良かったです…」

男「まったくだよ。とんだハプニングだったね」

パンツ「ククッ。まんまと名前を獲得って
訳か。抜け目ないお前のことだから、ちゃんと身分証明の名前の欄、見たんだろ?ラッキーだったな」

男(ラッキー?まあ、盗んだものがfbi捜査員の証明書だってことはな)

パンツ「ああ?……ああ、お前あの引ったくり…いつの間に」

男(トイレでね。バイト先の店長の…娘さんだよ。なるべく自分とは縁遠い人を使わせてもらったけど、やはりリスクはリスクだからね。やや強引だったけど、良しとしよう)


【s木m空】

2月23日17時45分、○△園にて、観覧車前にいるカップルの男の財布を強奪。
そのまま逃走、付近にいる黒服長身の女性に捕まり、数十秒間大人しくした後に、その女性の私物から最も盗みやすいな物を奪い、可能であればそこから再び逃走。可能でなければ、悪あがきとしてそれをカップルの男に投げつける。
20日後の21時に自宅にてノーパン化。
もし何も奪えなかった場合も、同様に20日後21時に自宅にてノーパン化。


男(本当に強引だったな…)

【二部へ続く】

【第二部】

とある中学校

キーンコーン…

n(2)(……なあ)

パンツ「どうした」

n(2)(本当にお前は誰にも見えちゃいねえんだよな)

パンツ「そのノートに触れられるようなことさえなければ、お前以外の誰にも私の姿は見えないし、声も聞こえない」

n(2)(ああそうかい)

パンツ「ところで、この群衆は何なんだ。ほとんどがお前と同様の年齢に見えるが」

n(2)(学校ってやつだよ。んなことも知らねえのか?)


※n(2)=二人目のn

パンツ「私はパンツ界からきたパンツだ。人間界の常識など知るところではない」

n(2)(……じゃあもうひとつだけ質問だ。お前は男…いや、オスか。メスか)

パンツ「お前は私の姿が何に見える」

n(2)(ああ?質問を質問で返すんじゃねえよ)

パンツ「いいから」

n(2)(…………。女性用の、下着だ)

パンツ「つまり、そういうことだ」

n(2)(やっぱりメスかよ)

教師「――で、ここは、英文法まとめノートの92頁を…」

n(2)(…………)

パンツ「お前、真面目に授業受ける気あるのか?」

n(2)(パンツに説教されるいわれはねえよ)

パンツ「先ほどから全く関係のない方向に意識を集中してるように見えるんだが」

n(2)(!)

パンツ「好いてる娘でもいるのか?」

n(2)(う、うるせえッ、授業中くらいは黙ってられねえのかしばくぞテメエ!)

パンツ「こんな人格破綻者でも一応そんな心があるんだな」

n(2)(…………)

n(2)(だから、黙ってろ)

パンツ「ならこのノート、あの娘に使ってしまえばいいものを」

n(2)(な、ばば馬鹿か?ちったぁ常識を考えてからものを言えよ)

――――でもこれ、nのように派手なことはせずにこそこそ使ってりゃ、誰と対立することもなく、自分の性欲満たすためだけに使い放題ってワケだ?ハハハハハハハ、こいつぁいい。好きなだけ使わせてもらうヨ。

パンツ(……)

パンツ「ああ。その通りだな」



パンツ(ノートは、デスノーパンには、古くからこんな一説がある)

パンツ(ノートが何らかの事情で人間界に渡った時、そのノートは拾われるべき人間の元に拾われる、と)

パンツ(第一のnたる男には出会ったことすらないが、何となく奴の元にデスノーパンが渡った理由は分からなくもない)

パンツ(何しろ、世界最高峰の探偵と生死をかけたゲームを繰り広げているらしいと、世間ではもっぱらの噂だ。あの中継からしばらくが経ち、未だ尚、世界の女性犯罪者はデスノーパンによって裁かれ続けている)

パンツ(世界最高峰の探偵を敵に回している上で、そいつは裁きの手を止めていない。となると、そいつはおそらくとんでもなく知略に富んだ賢い人間で、壮大な目的、悲願を達成するためにさぞデスノーパンを最大限に活用していることだろう)

パンツ(だが…この子はどうだ。まだ、まだ中学二年という幼い年頃の上に、二重人格という人間界では相当に大きいハンデを背負いながらも必死にもがき生き続ける、けなげな人間でしかない)

パンツ(神は、なぜこのような子に、人間にデスノーパンを)

休み時間

友人「おおっすn(2)。最近顔色が変じゃねえか?保健室にでも行って休んだ方が」

n(2)「平気だよ。最近テレビから目が離せなくなっちまって、夜更かしすることが多くなっちまった」

友人「おっ。いけねえなそりゃ。そういや、お前部活入ってなかったよな?それなら授業に遅刻しないように…」

n(2)「お前の勧誘は、もうとっくに懲りたぞ。廃部寸前の新聞部だろ?何度も断った通り、入らねえっての」

友人「あれ。バレたか」

n(2)「ったく…」

娘「ねえn(2)くん、今日の放課後は空いてる?」

n(2)「あ、ああ?あ、空いてないこともない…」

友人「…」

友人「!」

友人「あのさ娘ちゃん、こいつを新聞部に誘おうと思ってるんだけどなかなか首を縦に振ってくれないんだよ。どうにか娘ちゃんの言葉でこいつを部に引っ張ってきてくれないかな」

n(2)(!)

娘「ええー?いつも暇そうにしてるのに?」

n(2)「娘って…新聞部なわけ?」

娘「そうだよ」

娘「最近ね、潰れかかってた新聞部が復活の兆しを見せてるのよ。どうしてかっていうとね、突如として現れたn…救世主ノーパン神さまの存在がメディアを一気に騒がせているからなの」

n(2)「!……」

娘「それでnに関するありとあらゆる情報をまとめることはもちろん、私たち新聞部でnとsの対立について真相を解き明かそうと考えているところなの。どう?面白いと思わない?」

友人「お前、そういや、n肯定派だったっけ?否定派だったっけ?」

n(2)「肯定派だけど…」

友人「ああそうなの。俺は否定派なんだけどさ、まあこの際そんなもん関係ねえよ。俺ら厨房がいくらノーパンが正義か縞パンが正義かなんて考えたところでどうしようもないもんな」

n(2)「情報をまとめるなら、そりゃインターネットで調べりゃいくらでも考察サイトや口論に明け暮れる輩の集う掲示板なんかが山のように出てくるし、テレビを見りゃnに関する討論番組なんか毎日ほとんどの局でやってる」

n(2)「新聞も然りで、nの記事ばかりが目立つ。けどよ、その新聞部のたかだか厨房たちが、んな独自に考えた推理なんて、くだらなくて誰も目にしねえと思うぜ」

友人「だ、か、ら、俺たちで独自に極秘調査をしちまおうってわけ。さながら、少年探偵団みたいな感じでさ。そうして何か重要な手がかりが掴めれば、皆の注目も集まるし、興味本位から入部希望者も増える。な?どうだよ?」

n(2)「極秘調査ったって…どうするんだよ。警察ですらお手上げ状態だってのに」

娘「それがね、それがね、私のお姉ちゃんの通う高校でね、あったんだって。奇怪な事件が」

n(2)「奇怪な事件って…まさか」

娘「そう。ノーパン化現象」

n(2)「そりゃあつまり…その高校には重犯罪者がうじゃうじゃひしめいてたってことになるのか」

娘「失礼ね。お姉ちゃんの通う高校はちゃんと頭のいいところで、犯罪者なんか一人だっていないわ」

n(2)「? nの裁く人間は犯罪者のみって聞いたけど、違うのか?」

n(2)「……!ああ…」

友人「そうだよ、そのあたりの疑問を足がかりに極秘調査しようってこと」

娘「どういうことかその高校から、それに関する情報の一切が隠蔽されてるのよ。もうまさしく何かありそうじゃない?ぷんぷんにおうわ」

n(2)「その隠蔽されてる情報をどうやって掴んだんだよ。……まさかその姉貴がってこと?」

娘「私のお姉ちゃんは無事。お姉ちゃんの友達がよく家に遊びにくるんだけどね、その人の友達がどうやらノーパン化されちゃったらしくて、ふとnの話で盛り上がったときにこっそり教えてくれたの。しかも聞いたところによると、そのお姉ちゃんの友達の友達、ノーパン化しただけじゃなくて、その直前にパンツを公衆の面前にさらけ出しながら大暴走したって話なの。ねえ、気味悪くない?」

n(2)(しかし趣味悪いことしてんなあ、nも…)

友人「そ、その話は俺も初耳だぞ」

娘「これくらい興味のそそる話じゃないと乗ってくれないじゃない。ね、n(2)くん。一緒に捜査してくれるよね」

自宅


男(…)

パンツ「どうした男、何か引っかかることでもありそうだな。お前がそういう顔をしてる時は、そういうことを考えてるってことなんだろ?」

男(……)

パンツ「そうか、さっきのことで何かミスをやらかしたな。せっかく独身捜査員の名前を獲得して警察内部の情報を探れそうになったって矢先に、面倒くせえことになったな」

男(………)

パンツ「なあ。聞いてるのか、男。ここまで清々しいくらいに無視しなくたっていいじゃねえか。俺は何より退屈が嫌いなんだ」

男(…………)

パンツ「男ー男ー男ー」

男「」ギロリ

パンツ「な、何だよ。分かった黙るって」

男(どんなに完璧なダムだって、針の穴のようなヒビから決壊が起こる可能性すら想定の範囲に入れておかなくてはならない)

男(s…警察内部にはまだ知られていないであろう情報だ。そして僕も、まだまだ隠蔽が甘かった)

男(〝nの裁く人間は犯罪者〟これは周知の事実であるし、変えてはならない絶対的ルール。なぜならば、法を守らなければノーパン化してしまうという〝罰〟の意識を根底に植え付けておかなかれば、ノーパンによる羞恥心は消えてなくなってしまうからだ)

男(だからここまで8000もの女性犯罪者を罪の重いものからコツコツと裁きに裁いてやってきたわけだ)

男(その中に、何の罪もないノーパン化する人間が出てきたとなると、相当に大きなヒントを与えてしまうことになる。これはまずい)





――女「今日は楽しかったです」

――男「そんな。無理しなくていいって、面倒事に巻き込まれて、せっかくの初デートだったのに。散々だったろうに…」

――女「た、確かに面倒事といえば面倒でしたけど、私自身はなにも怖い思いもしなかったですし、怪我もありませんし、あの尾行から男くんは私を助けてくれました。そしてその面倒事で大変な思いをした以上に、今日という日を私は思いきり楽しめました」

――男「そ、そう」

――男(時々、この娘はいきなり饒舌になりだすよな)

――女「それと、初デートの時にこんな話をするのも何かと思って伏せておいたんですけど…」

――男「ん。何?」

――女「最近…」

――女「私の家に友達が遊びにくるんですけど……。あ、ええと、これは最近でなくて前からなんですけど」

――女「最近というのも、私には妹がいまして」

――男「妹」

――女「はい、その妹と私の友達が近頃になって急に話し込むようになったんです。でも私をその話の輪になかなか入れてくれなくて」

――女「ある時に、ひっそりと、悪い気持ちはしましたけど…その二人の会話を盗み聞きしまして、」

――女「その二人の会話で、頻繁に〝ノーパン〟という言葉が出てきたんです」

――男「!……」

――男「今やnとsの対立は、メディアのおかげですっかり世間の話の種、誰だってそんな話をしていてもおかしくないよ。僕の回りも本当に毎日毎日…」

――女「い、いえ。そうではなくて」

――女「その二人の会話から察するに、多分、いえ間違いなく…」

――女「a田h実さんについて盛り上がってるんです」

――男「a田…h実……。!」

――男(ノートの実験台に使った女か)

――男「a田h実さんが、どうかしたの?」

――女「そのa田h実さんが、その、犯罪者でもないのに、ノー…パンに、なってしまったじゃないですか」

――男「……ああ。奇妙なことにね。どうしてか、いや…よりによってうちの生徒が」

――女「そのa田h実が、ええと…」

――女「…」

――男「話しにくいこと?」

――女「い、いえ。話します」

――女「ノーパン化したその日から、男くんのことが気になってるみたいで…」

――男「気になってる、というのはつまり…」

――女「……、」

――男「そういうこと、か」

――男「で、それが?」

――女「わ、私。本当にバカで、いつもどこか抜けてて…要するに間抜けで、何を考えてもいつもそれが外れてしまうんですけど」

――女「確認しておきたいことがあって」

――男「……何」

――女「私は、男くんが好きです。前からずっと好きでした」

――女「きっかけがきっかけとはいえ、そのずっと好きだった男くんに、急にここまで近づけたことは凄く嬉しいんです」

――男「…」

――女「でも時々思うんです」

――女「どうしてこんなに急に近づけてしまったんだろう」

――女「まともに話したこともなかったのに」

――女「体育倉庫裏で、男くんを目撃したあの時」

――女「体育倉庫には、そのa田h実さんと、n野a菜さんがいました」

――女「二人は犯罪者でなく、紛れもなく一般人で」

――女「その二人の様子を盗み見るように男くんは裏に隠れてました」

――女「そこを目撃してしまった私を家に招き入れて」

――女「……、」

――女「あの、その………、キス、は、何か誤魔化してしまうかのような気がしてならなくて」

――女「a田h実さんはあの日から、本当に、急に男くんに執心と聞きます」

――女「も、もし私も、そんな…そんな、この感情が、意識が、もしかしたら偽物で、」

――女「急に私と男くんがこんな関係になれたのも、ひょっとしたらa田h実のことと何か関係があって、」

――女「その、男くんが、その隠したい何かで、私と、その、あれ?私…何が言いたいんだっけっ。ええと…」

ギュッ

――女「きゃっ」

――男「大丈夫」

――女「え?」グスッ…

――男「〝大丈夫〟なんだ、女さん」

――男「いいかい女さん…いや、女」

――男「僕はnなんだ」

――女「えっ」

――男「僕がn。ただそれだけのことだよ」

――女「……男くんが、あの世間を騒がせている、世界最高峰の探偵sと互角に渡り合う、救世主と謳われてる、あの…」

――男「」ゴソゴソ

――男「」スッ

――女「それは…ノート……?」

――男「そう。ノートだ。ただし普通のノートじゃない」

――男「これがnの力の正体なんだ。このノートに名前を書かれた人間は、男性ならば姿がパンツになり、女性ならばノーパンになってしまう、世にも奇妙な力を宿すノート。これなんだ」

――女「…………!」

――男「このノートはまだ分かってないことの方が多い。もしかしたらそのa田h実さんが僕に好意を寄せるようになったのも、これが引き金になったのかもしれない。それはこれから試してみるけど、その推論は間違いなく正しい」

――男「君が僕を思ってくれるのは、間違いなく君の心によるものだよ。決してノート…nの力によるものじゃない。その証拠に女はパンツを穿いているだろう」

――女「…」カアアア…ッ

――男「……穿いています、ですか?」

――女「…………はいっ」

――男「」ホッ

――パンツ「ククッ。デリカシーの欠片もないやつだ」

――男「で、だ」

――男「そのa田h実について、二人はどこまで」

――女「……あ、あ、」

――男「そうだよ。そういうこと。僕がnである以上、ノーパン化させてしまったa田h実を手掛かりに何かと嗅ぎ回られては困るんだ。知っての通り、僕はsと戦ってる身だ。この世界を変えるために。なら当然のこと、誰にも正体を知られるわけにはいかない。……その、」

――男「女以外には、ね」

――男「君は特別だから」

――男「僕はその新世界の神に、君は女神になるんだ」

――女「男、くん…」

――男(……。ふう…これなら、安心か。ここまで虜にさせておけばもう大丈夫だ。これから先、この女は良い駒になる。予定よりずいぶん早いタイミングだったけど、まさかそこまで思いを寄せてくれているとは…それもずいぶん前からという話だ。好都合だ。神は僕に味方しているらしい)

――男(……だがそれと同時に面倒事まで)

――男「女」

――女「あ、はい。そうですね、二人についてでしたよね」




――男「そうか…。もしかするとa田h実は過去に犯罪を犯した人間であること。それと、唐突に、それも何の脈絡もなく好意の対象になった男…僕に、何か秘密が隠されているのではないかということ。とにかく探偵ごっこでもしているかのように、好き勝手に色々考えているって訳だ」

――女「はい…」

――男「……、」

――男「となると、その妹さんに注意を払わなければいけないな。誰に言いふらすか分かったものじゃない。……いや、女子中学生か……。例え秘密であったとしても、三分と保たずに誰かへ話すような生き物だ。もう自慢気に推理を別の人間に繰り広げていても不思議じゃない……くそ」

――女「あの、その前に、そのノーパン化させてしまった生徒のいる、当の私たちの高校は大丈夫なんでしょうか」

――男「既に手は回した。漏れることはない。うちの学校からは、ね」

――男(くそ。どうする。こうなれば犯罪者以外もノーパン化する方針を今から作れば…)

――男(いや駄目だ、ノーパンによる恥じらいがない世界なんて、イチゴどころかケーキそのものがないショートケーキと同じようなものだ。意味がない。どうにかして隠し通すしかない)

――男(まず手を打つべきは、その妹の周囲の環境。家族と、学校)

――男「そういえば、どうしてわざわざその妹さんは女に隠れて、その友達と話を」

――女「その、ええと…」

――男「今度は、話しにくい?」

――女「は、はい。でも、話します」

――男「ありがとう」

――女「私は、時々、恋愛的な相談事で妹と話したりするんです」

――男「……なるほど。で、もしかすると僕に何かこの件について秘密があるかもしれない可能性から考慮して、その僕に好意を寄せる女には黙っておいたと。妹さんの気遣いってことだ」

――女「は、はい(頭の回転早い…)」

――男「両親には」

――女「あくまで私の目の届く範囲ですけど、そういった話はしてません」

――男「なら、そっちに気を使う必要はないな。その両親から女に渡る可能性も考えて黙っているんだろうから。100パーセントではないけれど」

――男「その妹さん、何か習い事は」

――女「いえ、特には」

――男「友達は多い方?」

――女「普通だと思います」

――男「なら調べるとしたら、その妹さんの通う中学校だ。主なコミュニケーションの場はそこに限られる。近い家に手を打つから、とりあえず今日はここまで」

――女「は、はい。あの、ごめんなさい、初デートの帰りに何だか色々」

――男「いや。むしろ色々助かったよ、ありがとう」

―――
――



男(ただでさえ世間の興味、好奇心はnとsに向けられている。そしてまだ妹さんは中学生だ。もうかなりの人間に話していることが予想される)

男(そうなるとまずい。使える隠蔽の手段としてはデスノーパンしかないが、多人数に情報が漏れたとすると、いくら操作する力があろうが隠しきれるはずがない)

男(……、)

男(…………、)

男(………………!)

男(つい先ほど入手した、fbiの人間の顔と名前)

男(そうだ、fbi。これを利用すればいい)

男(いくらただの一般人を操っても限界がある。が、fbiの人間を使えば…あるいは、どうにかなる活路が見出だせるかもしれない)

パンツ「ククッ。何かひらめいた顔だな」

男「……よく観察してるんだな、お前も」

パンツ「そいつはどうも。で、どうするんだ。次はどんな面白いことをするんだ」

男「パンツの考える通りだよ」

男「入手したfbiの人間…独身捜査員を使う」

新聞部

友人「情報封鎖…か……」

娘「fbiが、こんな何の変哲もない中学校に情報封鎖なんて、おかしくない?」

n(2)(早速勘づいたなn……。流石だぜ。それにしてもどこから?そしてfbiの人間まで手中にするなんて…本当おっかねえよ、本家n様は)

娘「ねえどう思う?」

n(2)「う、わ」ドキッ

娘「?」

n(2)「顔、近えよ」

娘「あら、ごめんなさい。よく言われるの」

n(2)「……」

娘「nが情報漏洩に気付いたんだと思わない?」

友人「あるいはそれを恐れたか、ってところか」

n(2)「あのよ。言っとくが、相手はあのnだぜ?下手に足突っ込めば行き着く先は、一生ノーパン。友人、お前に至っては人間ですらなくなる」

娘「……、」

友人「っ」

n(2)「悪いことは言わねえ」

n(2)「これ以上の詮索は止めにしておけ。痛い目を見ない内にだ」

娘「……いえ」

娘「私は、やる」

n(2)「!」

友人「お、おい…」

娘「もし。もしもよ」

娘「私のお姉ちゃんとnに何か接点があったらと思うと、怖いの」

友人「どうして…接点なんか」

娘「犯罪者以外にノーパン化現象が起こった事例として、こんなものが挙げられてるわ」ガサッ

n(2)「この記事…あの生放送事故の件か」

娘「そう。そしてそのターゲットになった人達はいずれも犯罪に手を染めた過去を持たない。もちろん軽犯罪も。知っての通り、これらの件で様々な憶測が浮上したわ」

友人「実験台ってやつか」

n(2)「nは半ば神格化されてるようだから、そんな非人道的な行為をするはずがないって馬鹿もそこそこにいるらしいけどな」

娘「そう。そんな人達はただの馬鹿。常識的に考えて、nの立場にもなってみなさいよ。そんな妙ちくりんな力を手にしたら、まず誰かに試したくなるのも普通じゃない。それが好奇心ってものよ。そこで止まらないから常軌を逸してるんだけど」

n(2)(そこで止まらないから常軌を逸してる…か。驚いたな、どうやら俺はまだ常識人の範疇に含まれるらしいぜ。お笑いだな。きっとそのnの方がまともに人間してることには違いねえのによ)

n(2)(もし俺が暴れちまった時は…おそらくこのノートを使うんだろう。そうなっちまったらこの二人にも俺の正体を晒すことになる)

n(2)(だがそれは、nの力…ノートの正体が明かされたら、の話だ。もしかするとこの二人はそこまでたどり着いちまうかもしれねえ。そうなる前に止めるべきなんだ)

n(2)(……いや何言ってんだ俺。馬鹿か。もういいだろ。いい加減にしろ。俺もnと同類だ。好奇心だけで留まるはずがねえ。きっと二重人格がどうなんてアホな話じゃなく、きっと俺は俺のままでもこのノートを使う時がくる)

n(2)(だからこそこのノートを未だ捨てず大切に取っておいてるんだ)

n(2)(俺は何がしたい)

n(2)(どうしてノートを大切に隠し持つ)

娘「ねえ聞いてる?」ズイッ

n(2)「っ!近いっつうの!!」

娘「怒ることないじゃない…」

友人「なあ、本気かよ…」

娘「私は本気よ。ただ、この事はn(2)くん以外の誰にも、もう話さないことにするわ」

娘「口は災いの元よ。n(2)くんに話したことが発端とは思わない。でも、もうこんな状況よ。nはきっと鋭い。これ以上に妙な噂を広げてしまったら逆に、n(2)くんの言う通り私の身が危うい。少しは自重するつもり。でも、推理は止めない」

娘「a田h実のことも気になるし、a田h実と同じ高校に通うお姉ちゃんの身も心配だもの」

友人「それで接点があるかもしれないって訳か。大丈夫だって、もうその高校は落ち着きを取り戻してるし、何よりその姉貴はノーパン化されてないんだろう」

娘「そうだけど…それでも気になる。a田h実が、何の脈絡もなく唐突に好意を寄せる相手。そのタイミングがノーパン化現象と同一の理由。そして、それらの謎が行き着く先にある、nの力の正体」

友人「それにしてもなあ…一生だぞ。一生ノーパン。怖くないのか」

娘「怖いに決まってるじゃない。でもね、そこまで踏み切りたいと思うのにも理由があるの」

n(2)「ただの好奇心じゃねえのか」

娘「あのね…」

娘「よくお姉ちゃんから恋愛相談を持ち掛けられるんだけど」

友人「何だよ、突然」

娘「――そのお姉ちゃんが好意を寄せる相手と、a田h実が好意を寄せる相手は同姓同名なの」

n(2)「!」

友人「ええっ!?」

n(2)「なるほど…それで〝接点〟か」

友人「け、けどさ、いやねえよ、だって」

娘「そう。お姉ちゃんはノーパン化してない。だから、これはただの杞憂。そのはずなの。でもね、怖いの」

娘「大好きなお姉ちゃんが、あのnともし万が一関わっていたらと思うと……!」

n(2)「…」

友人「その姉貴の友達の言うことがデマでないのなら、時期から考えても、生放送事故より先にノーパン化現象の起きたその高校に…」

友人「nがいても、何ら不思議じゃない――か」

娘「…………、」

娘「そうよ」

n(2)「止めとけ」

娘「止めない。お姉ちゃんが心配」

n(2)「それでも止めとけ」

娘「止めない。絶対!」

娘「二人が踏みとどまっても、私はやる」

娘「nの正体を暴く」

男の通う高校

n(2)(……はあ)

パンツ「何だ。渋っていた割りに付き合うんだな」

n(2)(当たり前だ。二人が何かヘマをやらかしたら俺としても気分悪いしな)

パンツ「唯一の友達と、片思いの娘だしな」

n(2)(……ち。もう黙ってろっての)

n(2)(ま、もっとも…)

n(2)(本家n様の面を拝みたいってのが一番の理由だけどな)

友人「一番小さなサイズの制服調達したのはいいけど、それでもまだダボダボだぞ。大丈夫か、やっぱりバレるんじゃないか」

娘「バレないバレない。とりあえず、放課後の時間帯を選んだのは良いとして、nが帰宅部の可能性だって無くはないわ。鐘と同時に急ぐわよ」

n(2)「そもそも学生の線だって薄いんだぞ…。たまたまこの高校の生徒を利用したってだけの話かもしれない」

娘「でもその線にしたって、実際に確かめないことにはどうしようもないわ」

キーンコーンカーンコーン…

娘「行くわ」

教室

キーンコーンカーンコーン…

男(さて…)

パンツ「なあ。前々から思ってたんだが」

男(ん?)

パンツ「部活動ってのはもうしなくていいのか。それとも、nとしての活動が忙しくて放棄してるのか」

男(もう受験シーズンだからね。部活動は引退だよ。まあ、パンツの言う通りnとしての活動が多忙を極める。続けていたとしても、時間を作るためにどうにかしていたかもしれないな)

パンツ「ふうん」

女「男くん……わっ!?」

パンツ「いい加減に慣れてくれよ。気持ちは分かるがな。あまりにもこいつが早く慣れちまっただけに、人間相手とはいえ拒絶反応示されると少しへこむ」

男(パンツもへこむんだな)

女(ご、ごめんなさい。本当に、いつも男くんの傍にいるんですね)

パンツ「ルールだからな」

男「……言われたことはしてくれた?」

女「できました。ちゃんと」

男「よし。ありがとう」

校舎

ガヤガヤ…

友人「着いたはいいけどさ。ここからどうするの?」

娘「もちろんnを探すわ」

n(2)「何百人、生徒がいると思ってんだよ。無理だろ」

娘「まずa田h実から探り出す。昨日ね、お姉ちゃんの友達から写メ送ってもらったから顔はバッチリ把握してる。クラスも聞いた。さあ、急ぎましょう」

友人「手際が良いなあ…」

n(2)「……、」

n(2)(nは本当に学生なのか…?)

n(2)(デスノーパンは対象を操作する力がある。裁かれ方…例えば時間帯なんかから年齢を割り出すのは難しい)

n(2)(頭も良いと聞く。高校生って線はやっぱり薄いよな…)

2年教室

娘「あの…a田h実、さんですよね」

a田「……何ですか。あなた達」

n(2)(…予想はしてたが、沈んでんな相当)

友人(元はきっと明るい性格だったんだろうに。制服だけど、下だけはジャージを着てる。ということは、ノーパン化を食らったa田h実本人と見て間違いない)

娘「お伺いしたいことがあるんですけど、よろしいですか?」

a田「ふざけないでっ!! あなたも…あなた達も…私を犯罪者呼ばわりするの?もう…止めてよ…こりごりなのよ!来週には、もう転校することになってるの。本当はもうこの学校にも来たくないけど、友達がいるから…。だけど、もう見ず知らずの下級生とは顔も合わせたくないの」

n(2)(転校…。多分、それもnの仕業…)

n(2)(いや、どちらにしろその選択をするのが利口…いや当然か)

娘「お願いします!身内に危険が降りかかろうとしてるかもしれないんですっ。どうか、どうか、話だけでも…」

a田「話すことなんて無いわ。それじゃあ」ガタッ

娘「もし質問を聞いてくれれば、私からもk下さんについて知ってる限りのことを教えます」

a田「!」

n(2)(k下…?)

友人(誰だ?それ)

a田「知、らない。k下くんなんて…どうだって、いい」

娘「あなた、来週には転校するんでしょう?なら、最後に知っておくべきことがあると思います。それにこれは、あなたにとってきっと嬉しい情報のはずです。……いえ、必ず、です」

a田「!」

a田「……、……、」

a田「…………分かった。後で図書室に来て」

n(2)(!)

友人(やった!!)

日本警察本部

y神「一体誰がそんな指示を出した!? 早急に探し出せ!!!」

『し、しかし。どういう訳か、見事なまでに情報が綺麗さっぱり消えておりまして。探しようがないと言いますか』

y神「ふざけるな!そんな大きな指示をした人間ならばすぐに足が掴めるに決まっているだろうが!とにかく絶対に見付けろ、分かったな!?」

『い、一応、引き続き調査を続けたいと思います……失礼しました』

ガチャ バタン

s「大きく出ましたね」

i出「関東地区の小学校、中学校、高校、大学に……大規模の情報封鎖命令。それも、やはりと言うべきか、nに関する事」

a沢「撤回は難しいな。この件に関する日本の条例は堅いからな…」

m木「情報封鎖令を出した人間の足取りが掴めない、巧妙なやり口です」

s「この事から推理するに…」

s「nはやはり関東区域にいる、それも学生である…」

s「と思わせようとする罠…」

s「……に見せようとする罠」

s「あるいは、その両方の可能性を提示することで、私達を混乱させようと……もっとも薄い線ならば、これは全くの無意味な行為…つまりはフェイク、ミスリード……」

m田「ど、どういう事ッスか」

s「情報封鎖令を出したということは、常識的に考えれば、何かしら、特に私達に知られればまずい情報が漏れてしまい、それを…そう……仮説であった〝対象の操作〟か何かの手段によってfbiの人間を利用し、その情報を隠蔽しようとした」

a沢「まあ確かに常識的な線だな」

s「ただ、本当にそうなのかどうかを考えるより、この手を打って出る必要性が発生したことと、『〝関東区域に存在する人間〟〝学生〟という推論をされても一向に構わない』とn側が暗にメッセージを送っていることの二つに着目するべきであると考えられます」

s「もしかすると、私達以外に、独自にnを探っている人間がいるのかもしれません。でなければ、私達が何もせずじっとしている間にこうもボロを出すとは思えない」

y神「し、しかし…大量の捜査員を派遣したはずだ」

s「何度も言わせないで下さい。nはその程度で追い詰められるような間抜けではないんです。いいですか?nは史上最悪の兵器を使役する、史上最悪の犯罪者なんです」

m木「……!」

s「話が戻りますが、この封鎖命令に関してはフェイク・ミスリードの可能性は希薄であると思われます。あくまで、いつものように個人的見解なおかつ仮説ではありますが」

i出「なぜ?」

s「関東に住む学生という線をわざわざさらけ出すこの行為は、それが嘘であれ事実であれ、『そう思われていい』という一種の挑発なんです。……ですが」

s「ただの挑発ならば、わざわざ小学校から大学までをカバーしなくてよかったと思うんですよねえ…」

s「そしてその挑発行為とは別のもうひとつの着目点である、〝この手――情報封鎖令を打って出る必要性の発生〟です」

s「もしnが必死に情報隠蔽しようと打って出た策が〝これ〟ならば、おそらく派遣した捜査員でなく、nの身近に、例えば……nの裁いた、ノーパン化させた人間がいるとして、その人間が犯罪者でない一般人と仮定した時。こういうようなケースになれば何としてでも揉み消さなければならない」

a沢「つまり、そういうようなケースなんかが発生したからこそ、この情報封鎖が発令されたと考えられ、無意味なフェイクやミスリードとは考えにくいと」

m田「普通に考えれば、あまり動かない方がボロが出ないですもんね」

s「その仮定が当たっている場合は、様子見しているだけでどんどんと手掛かり、ヒントが沸いて出てくるので万々歳な気がするんですが…」

s「あまりに大きく動いてるだけに怖いですね」

y神「何がだ?」

s「そうやって指を加えてじっとしている間に、nがハイリスクを伴ってまで得ようとしている〝何か〟を手にするその瞬間がです」

図書室

パンツ「それにしても慎重だな」

n(2)(あ?何が)

パンツ「さっきこの高校の制服に着替える時、荷物にあったノートから一頁を破って制服の胸ポケットにしまってたじゃないか」

n(2)(……そりゃあ慎重にもなる。nがいる可能性が少なからずあるんだ。もしも対峙した時…、自分の身を守るにはこれしかないからな)

パンツ「ノート…の切れはしを見せることで、お前の正体がバレて逆に危険に晒されるってことになるんじゃないか」

n(2)(だから、これは緊急時のためのものだ。俺だって馬鹿じゃない。そんな簡単にホイホイだすような真似はしねえよ)

パンツ「ならいいが…」

n(2)(……前から思ってたが、お前…)



娘「――ズバリ聞きます。nの正体に心当たりはありますか?」

a田「ありません。あったら、とっくに警察にでも叩き込んでいるところです」

娘「何か最近、恨みを買うようなことをした覚えはありますか?」

a田「……ありません」

娘「nに対しては肯定派ですか?否定派ですか?」

a田「こんな目に会わされたんだから、否定側に決まってるじゃない」

娘「では…」

a田「ねえ、ちょっといい加減にしてよ。何を訊いてくるのかと思えば、そのくらい、被害者当人の私が考えてないはずがないじゃない」

娘「しかし…」

a田「何?いい歳して探偵ごっこでもやってるの?こっちは人生を狂わされた人間なのよ、少しはこっちの気も察してほしいわ。――大体、あなた達、ここの生徒じゃないでしょ?もしかしたら高校生ですらないんじゃない?」

娘「!」

友人「!」

a田「どこから持ってきたのか知らないけど…その制服、二期前の先輩達までが着てたものよ、それにしては声や背丈から見ても先輩って風には見えないし」

n(2)(それ見ろバレた…)

娘「わ、私達は紛れもなくこの高校の生徒です。この制服は借りたもなので…」

a田「どうして?何の理由で借りたの?自分の制服は?」

娘「く、クリーニングに……」

a田「……」

a田「はあ」

a田「馬鹿馬鹿しい、帰る」



男「――まあ、ちょっと待ってあげなよa田さん」



娘「!」

友人(?誰だ)

n(2)「?」



パンツ「ククッ…」

パンツ「…」

パンツ「――おっ!?」




男「っと……。ん?何、どうした」

a田「え?……え?な、何ですか」

男「え、あ、いや。何でも」

男「それよりa田さん。この子らはどうやら隣町の中学校の生徒みたいなんだ、そんな所からはるばる来てくれたんだし、軽くあしらうのは可哀想だよ」

a田「…でも」

パンツ(2)「…………、」

※これよりn(2)に憑くパンツの表記をパンツ(2)にします

n(2)(……おいどうした。さっきから何か様子が変だぞ)

パンツ(2)「ああ、いや…」

パンツ(2)(ここでn(2)に…こいつが……こいつが本物のnと教えることは簡単だ。が……余計な混乱を招く。言わない方が…。これは偶然か?計算なのか?計算だとすれば、このシチュエーションでn(2)にnの正体を教えるのはnの計算内…いやそれはないか…?計算だとするならnはn(2)の正体を把握していることになる…いつ?どうやって?これは…………)

a田「……隣町の中学生って、どういう事?」

男「ああ。それはね、」

パンツ「ク。ク。クククッ」

男(さっきからうるさいぞパンツ…今まさに計画の実行中なんだ、静かにしていてくれ!)

男「脱ぎ捨ててあったらしいんだよ、屋上に見慣れない制服がさ。それがどうも隣町の中学校のものらしくて」

a田「な、何で隣町の中学生がわざわざこんなところに…」

男「誰かが情報隠蔽してるみたいだけど、それにしたって完璧じゃない。どこからか情報が漏れて、こうして興味本位からnのいるかもしれないこの高校に足を運ぶ人間が出てきたっておかしくない」

a田「あ、あなたまでそんな馬鹿げたことを」

男「だってそうなるでしょう。この学校に犯罪者がいることは考えにくい。ならどうしてnに裁かれた人間と同一の現象が起こる人間が出てくるのか…。誰だって調べたくもなる」

友人「俺たちと同じ考えを持った人がいるなんて…」

n(2)「いや。当然の話だろ。むしろこの高校の生徒全員がそう考えてたっておかしくない」

n(2)(ま、あの狡猾なnのことだ。それがダミーだって可能性の方が高い)

パンツ(2)「気を、付けろ」

n(2)(? 何に)

パンツ(2)「今は、これしか言えない」

n(2)(は? …。……)

男「三人で来たのかな?」

娘「はい、私達三人で、探偵団なんです。さっき結成したところです」

男「ぷ。は、ははは」

n(2)「笑われてんぞ」

友人「俺たち探偵団だったんだ」

男「いや。なかなか勇ましいじゃない、面白いよ君たち」

男(全くもってお笑いだ。杞憂だったのか、三人のみで行動してるとは。つくづく神は僕に味方しているようだ。はははははは)

パンツ「…………」

パンツ(2)「…………」

パンツ(2)(全く…自らノートを下界に落とし、人間と接触しているパンツというのが…まさか…あなたとはね……)

パンツ(2)(王よ)

『何っ。n様に逆らう人間だって?』

『ふざけるな!追放だ追放!』

『縞パン派風情がこの学校に何の用だァ!?』

『待てっ、まずは奴らに俺が痛い目に合わせてやる!』

――バタバタバタ!!

友人「おいっ、何か沢山きたぞ!」

男「! まずい、nを心酔してる一種の宗教団体だ。逃げた方が」

n(2)「おいおいもう一部じゃそんな輩もいんのかよ…聞いてねえぞ」

娘「と、とにかく逃げないと」

男(ち…、面倒なことになってきたぞ、このままじゃ計画に支障をきたす…何とかしないと)

女「た、たたた大変です!!」

娘「!!お姉ちゃんっ」

女「あっ、娘…」

男(……まずいっ)

『おい貴様らここから出てけ!!』

『n様に逆らう者に報いを!』

『n様万歳!ノーパン万歳!』

ドドドドドド……!!

n(2)「おわっ」ドンッ

ヒラリ…

n(2)(! やばい、デスノーパンの切れ端がっ)




――――パシッ!

男「お、おい。落としたよ君……」

男「――――――ッ!!?」ドクンッ




パンツ(2)「……、」

男(な…………ッ!?)

パンツ「ククク。ククククククッ!!ククククククククククククククク!!!!」


友人「おい何やってんだ!? さっさととんずらこくぞ!!」

n(2)「あ、いや、えっと…」


娘「ねえ、お姉ちゃん、これ!…」

女「は、早く逃げて…」


『おいお前らっ、早くここから出ていけ』
『待てだからまずは俺に殴らせろッ』
『こいつら見ねえ顔だぞ、もしかしたら』

ワーワーワー!!



男(………………パンツッ!?)

パンツ(2)「…」

男(パンツ?なぜ?この紙切れ…まさか、あいつが、あいつも)

男(――nの力を持つ者)

男(このガキが?どういうことだ?ノートは一冊じゃないのか?他にも存在するというのか?何冊?人間界には何冊ノートが存在する)

男(そもそもノートはパンツが気まぐれで落とした物じゃないのか?でなければ、こんな奇怪な力、とっくに世間で騒がれていてもおかしくない)

男(いや考えろっ。僕のように、皆が皆、こうして派手に力を行使している訳じゃない。ならば最初から僕が勘違いしていただけでnの力を持つ者は僕以外にも多く存在するというのか?)

男(待てそんなことを考えてる場合じゃない。計画に支障をきたしているんだ、ずれた歯車を修正しなければ)

男(その前に、デスノーパンに触りパンツを目撃した僕はこの場合どんな反応が正しいんだ?考えろ、考えろ、考えろ、この数秒で考えろ!!)

バタバタバタ……!!
ワーワーワー!!!

ドンッ!!

男「痛ッ!」

フラッ…ガツッ!!

男「……がっ」ドサッ

女「男くん!!」タタタッ

友人「おいヤバイぞ、あの人今頭を強打して…」

男「あ…れ。パンツが…浮いてる……」

男「」チラッ

女「……?」

女「!」

女「な、何寝ぼけてるの男くんッ!逃げなきゃ!!」

男「パン…ツが浮いて……」

n(2)(ぎ、ギリギリセーフ…か。早い内にここから脱出しねえとっ。そしてもうこの高校には来られねえ、一人にでもデスノーパンに触られちまったのなら…いやこの高校はおろか…この町にも……)

a田「ね、ねえ!何であなた、k下くんのこと…!」

娘「い、今はそんな場合じゃ」

男(a田…h実……)

男(二人目のデスノーパン所持者…)

男(女の妹…)

男(nの秘密を握る人間は三人のみ…)

男(……、……、……、……、)

k下「おいお前らっ過度な暴力行為は控えろとあれだけ!」

『り、リーダー!?』

男(――!)

男(これだ!)





男「おい聞けn信者共!!a田h実のノーパン化は転校の口実に過ぎず、実際は自らパンツを捨てた痴女だ!」

a田「な、何をッ」

『ああ? 何だ、お前』

男「だがその精神はnへの信仰心に基づくものだ!だが、世間のn信仰はまだ根が浅く、自らパンツを捨てる行為はまだ白い目で見られる対象として受け取られるのがこのご時世だ!転校は、そんな後ろめたい性的な悪癖を晒してしまったこの学校から逃げるためだ!」

男「a田は、お前らのリーダー…k下を好いているっ。n信仰団体のリーダーであるk下なら自分を理解してくれるのではと考え、リスクを背負ってまでk下の情報を得ようと、k下と繋がりのある他校生を連れてきた、今がその状況だ!分かるか!?」

『なっ』

『k下さんを慕う生徒だったのか?』

男「そうだ、つまりお前らが今この子達を追い払えば、nを信仰する彼女が求めたk下の手がかりを失うことになるっ」

『そ、いつは…ちっと酷な話だよな』

『k下さんを慕う人間に悪い奴はいねえ…ここは見逃してやるべきじゃねえのか』

『少し焦りすぎだ、nを信仰する人間が下劣であれば、nの品位を損なうことになる』


パンツ「ククククッ!! お得意のでまかせか」

パンツ(2)(これが…nか…。なるほど)


a田「ちょ、ちょっと…なんてこと…を」

k下「そういう訳、だったのか」

a田「ち、違う!今のは」

k下「まあ、その、何だ。俺も…悪い気は、しないよ」

a田「……」

a田「えっ」


男(a田の心中は噂から知っていたが、k下の想いは最近になって調べがついたところだ、人と人との繋がりは大切だな、全く)

パンツ「その繋がりをお前は計画進行の駒に使ってるんだから質が悪い……ん?お前まさかk下の登場は計算…じゃないか。どこからどこまでがお前の動かす茶番になってるのやらな」

友人「そういう訳だったんだ…でもいつから他校のk下さんなんかについて調べていたんだ?」

娘「……」

友人「娘、ちゃん?」

男「それとそこの三人は、教室まで来るんだ。色々と話さなきゃいけないこと、あるだろう」

n(2)「……従うぞ。ひと騒ぎ起こしたんだ。謝罪のひとつでもしなきゃいけねえだろ」

友人「そ、そうだな」

女(……娘、)

娘「…………ええ、そうね」

男(一番のイレギュラーは、二人目のnの存在だ)

男(敵対する人間か、味方する人間か、見定めをしなくてはならない)

男(それと元の計画とを同時進行だ)

教室

男(おいパンツ。もちろんあのガキ…二人目のnに憑いているパンツは、お前のことが見えているんだろう。なら、向こう側のnは、僕のノートに触れずして僕の正体を知るすべがある。その辺り、パンツ達はどうなんだ。皆、お前のように中立的なのか)

パンツ「向こうのパンツが、ノートの所持者にお前の正体を教えるのかどうかって話か?分からねえな。人間と同じだ。パンツも様々だな」


n(2)(ノートの切れ端に触れたってことは、あいつは俺の真横でふわふわ浮かんでる女性用パンツの姿が見えてるってことになる。その割りに平然としてるが…まさかな、さっきの転倒が引きずってるだけとは思うが)

パンツ(2)(今この状況…私は黙っているべきだろう。おそらく)


男(犯罪者以外で罰が下ったイレギュラーは、関東地区で生放送された番組に出演していた芸能人のみ、ということにしなければならない)

男(それを除くイレギュラーを知る人間への対処は…その情報を揉み消す策は…そう)

男(――焦点を当てるべきは情報を知る人間ではない。『情報そのものを変えてしまえば』いい)

男(だがその情報改変は、第二のnには意味がない。ノートの…nの力の正体を知る者をノートの力で欺くのは難しい)

男(しかし、だ)

男(この会合はピンチであると同時に、チャンスでもある)

男(このnは、第二のnとして利用価値がある)

男(が、手なづけるとなると…さすがにどう出ればいいのか検討もつかない。中学生のガキ、程度しか情報がない。むしろ、相手が欺いてくることへの警戒すら必要だ。そうだ、もし僕の名前を書かれるような事態に陥れば、その瞬間…ゲームオーバーなのだから)






――男「できる?」

――女「で、でも…実の妹を、なんて…」

――男「…」

――男「大丈夫。デスノーパンによるノーパン化・パンツ化は、ある道具によって無効化することができるとの話だ」

――女「そ、そんなことができるんですかっ」

――男「パンツの話が本当なら、ね。今僕はそんな手段を持ち合わせてはいないから、すぐには助けることはできないけれど、いずれ…必ず救って見せるよ。一段落ついたら…必ず、だ。僕を信じて。だから、今だけ、新世界を創造するために、僕の一番大切な君の、大切な妹をノーパン化させてしまうことを許してくれ」

――女「…………」

――女「は、い。分かりました」

――男「ありがとう」ニヤリ

――男「それならばまず、情報の漏れた範囲…規模が知りたい。そしてnの秘密を握る…おそらくは中学生達の〝情報そのものを改変〟させることでこの危機的状況を打開してみようと思うんだ」

――男「よって、情報の発信源である君の妹を操ることで、漏れなく、漏れなくnの秘密を知る人間をこちらに引き寄せたい。そうしてしまえば、後は僕の口車に乗せることで事なきを得る」

――女「な、なるほど」

――男「君にいくらか力…ノートを渡す。だから、それを用いて君の妹を操作してほしい」

――女「男くんじゃ駄目なんですか?」

――男「駄目だ。君の妹を操作するにあたって、まず彼女らの手掛かりとしてa田h実を利用しなければならない。となれば、a田の顔を知る必要だってある。順当に考えるならば、君の友達ルートだ。君の友達からa田の情報を妹に発信させる。そういった細かい動きを設定するなら、実の姉であり、a田の友達と交友関係にある君がノートを使った方が確実なんだ」

【娘】

2月25日、18時00分。
姉に、友達からa田h実の顔写真を貰ってきてほしいと頼み、その画像データでa田h実の顔と名前が一致するところまで記憶する。

2月26日、16時45分。
nの情報を与えた人間全てを集め、放課後のチャイムと同時に○△高校の校舎へ侵入するよう誘導する。極力nへの捜査意欲が高まるよう、知っていること、また知っていることから考えられる推測をあらかた述べ、些細な会話にも応対するよう自然な態度を演じる。

17時50分、二年教室にいるa田h実を見付け出し、k下の情報を餌にし図書室まで連行する。
18時00分、思い付く限りの適当な質問を並べ、後は場の状況に合わせながら尚自然な態度を装い、二十日後の20時に、自宅のトイレでノーパン化。



――女「これで、よし」

【独身捜査員】

2月24日、16時00分
fbiの権限を利用し、関東地区にある小学校・中学校・高等学校・大学に対して、nに関する情報の一切に封鎖命令を出す。
この際に、出来る限り、自らが情報封鎖の発令者だということが誰にも漏れないよう、あらゆる手段を駆使する。

2月25日、9時00分
再びfbiの権限を利用し、○△高校2‐a組に所属するa田h実の情報を隠密に取得。
さらにその権限を用いて日本国内の学生から、a田h実ともっとも容姿の似る人間のデータも取得。
情報ロック、パスワードをかけ、送信元が割れないように→〒※■◇@ゞ〇~々.comまでそのデータを添付したメールを送信。

20日後、自宅のトイレにてノーパン化。

【h川y子】

2月25日、10時00分
用事があると身内の人間に伝えた後、最も最短時間で到達できるような交通手段を用いて○△県○△市○△町まで来る。

2月25日、17時00分
〇△二丁目、○△公園のブランコ付近にある茂みに隠されている、○△高校女子生徒の制服を入手し、そのまま○△園の3fにて一夜を過ごす。

2月26日、18時30分
○△高校の校庭まで足を運び、上は制服、下は下着一枚という格好でトラックを一周回った後に、誰にも捕まらないようその校庭から脱し、そのまま帰宅。

後の二十日間、自然な振る舞いを見せつつ、二十日後の19時、自宅のトイレにてノーパン化。



――男「これでよし」

―――
――


男(そうだ、情報そのものを改変させてしまえばいい)

男(a田h実はどういう訳かnの裁きの対象になっている、という疑惑がある。そして、この高校の生徒以外にそれを知られてはまずい、そこから漏れ出した情報から自然、挙げられる容疑者に、この高校の生徒である僕が含まれてしまう可能性が生じる)

男(ならば、a田h実は、nの裁きに合ったのではなく、先ほど説明したように、〝ノーパン化したのではなく自ら脱ぎ捨てた。また、そういう人間性を持っている人間である〟ということ、a田h実は、そういう人間であると、何かしらの状況的証拠を示しつつ証明しなければならない)

男(それはa田h実、本人を操るのがもっとも手軽な手段だが、実験段階で既に彼女はノーパン化させてしまっているためそれができない。なら、変装でもそっくり人間でも何でもいい、そういった手段で〝a田h実が下着を身に付けているシチュエーション〟がどうしても必要になる)
[newpage]
男(そこで、独身捜査員のfbi所属という利点を最大限活用し入手した、a田h実の容姿に酷似する人間のデータだ)

男(間近で見る訳じゃない、そう、この教室から、グラウンドにいる彼女を目視すればいい。10分後の18時30分に彼女…日本中の学生から探しだしたa田h実にもっとも容姿の近い人間h川y子を、下着を身に付けていると誰から見ても一目瞭然の状態で視線を集めれば、a田h実はノーパン化したのではなく、特殊な性癖を持つ人間として周囲の認識は変わる)

男(そうなればこっちのものだ)

男(〝a田h実はnの裁きを受けノーパン化した〟という情報が〝a田h実は少し変わった人間〟という情報に書き換えられる)

男(デスノーパンの人を操作する力を最大限、いや強引に活用した――情報隠蔽策だ)

男(これでa田h実の情報がfbi…sに渡る可能性は無くなる)





娘「! ねえ、校庭を見て!」

友人「どうし…うわっ!?」

n(2)「何だあの露出狂は…」

男「あれは…」

娘「a田h実!!」

男「そう――a田h実だね」ニヤリ

友人「え、ってことは…」

n(2)「彼女はnに裁きを下された人間じゃなかった…そうなるな」

娘「…………、」

男「何か早とちりをしたみたいだね」

娘「そ、その、ほ…ほら…っ」

友人「おう」

n(2)「俺もかよ…」

娘・友人・n(2)「ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございませんでした」

女「まず私に相談してくれればよかったのに…」

娘「お姉ちゃん…。だ、だって、もしかしたらって思ったら怖くて」

娘「a田h実はひょっとするとnの手中で、そのa田h実が好意を寄せる相手が、お姉ちゃんの相手と同一人物で…そして……あれ?」

男「いいよ、もう何も気にしない」

男「終わったんだよ、全部。何もかもが勘違い、早とちりだった。そうだろ?」

n(2)「…」

n(2)「……」

n(2)「……………、」

パンツ(2)(? 何を食い入るように見つめてる…?)

n(2)「――――!!」ドクン

パンツ(2)「! しまった、a田h実の下着か!」

男「え?」

女「へ?」

n(2)「く、く」



n(2)「――――ヒャッははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

友人「う。わ、あ」

友人「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

友人「身体が!身体が!!」



男・女「――!?」



娘「な、な、何っ、これ…いや……ッ」

娘「あ」

娘「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

男(こ…れは……ノーパン…違う……)

男(……パンツ化している。それも、女性である女の妹まで)

女「い…いやっ!!!?」

女「娘!娘!!娘!!!」


娘「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃァァアアアアアアアアアアアアア――…」

友人「何だよこれぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」



――――ポン!!!

男「……」
女「……」

n(2)「……」


友人「」
娘「」


男「どういう事だ」
女「どういう事ですかッ!?」

n(2) 「ふ、ひ」

n(2) 「ひひひ」

n(2) 「――その様子じゃ本家n、オメー、何も知らねーみてェだなあ?あン?」ニヤリ


男(人が…変わったみたいだ)

女「これはあなたの仕業なんですね!?」


n(2) 「あァァ? ……ふひひ、ァァ、ああ」

n(2)「そうだ。俺がやった」

ガシッ


女「離して下さいッ!! 私の妹をパンツにしたのはこいつです!」

男「待て止めろ! 相手はnだ!」

女「うう…ぐ……」


n(2)「お前は甘えぇーなァn。見ていてあまりにもイライラしてくるから俺が処理しちまったじゃねえか。お得意の頭脳で回りくでェ事してるようだけどな、んな地道にやってたらキリがねえとは思わねえのか?あ?」

n(2)「オメーは世界ノーパン化計画を企ててんだろ?なら情報隠蔽なんざ面倒くせえ事してる暇があンなら、一人でも多く裁きを下しちまえばいいんだ。だよなァ?」


男「……僕が理想とするノーパンハーレム世界は、ノーパンによる恥じらいがあって初めて成り立つ。むやみやたらにノーパン化を進めれば、それはもう新しい文化として普遍的なものになってしまう。それじゃ駄目なんだ。だからノーパン化という罰意識を植え付けるために犯罪者から裁いてるんだ」

n(2)「ふうん。グズなりに考えがある訳だ」

男「お前…女の妹をどうやってパンツにした。デスノーパンに名前を書かれた人間は、女性ならノーパン化、男性ならパンツ化、そういうルールなんじゃないのか?」

n(2)「……ち。面倒だな。オメーが説明しろ」

パンツ(2)「…………」

女「そこに、いるんですか?」

男「ああ。……向こう側に憑いているパンツだ」

パンツ(2)「…そこの女の子にもノートの切れ端を触れさせてやってくれ」

n(2)「はいはい。そらよ」ポイ

女「わっ」

女「!……」

女「どう…も」

パンツ(2)「どうも」

n(2)「テメーに憑いてるパンツも見せろ」

男「……分かった」スッ

パンツ「ククッ。はじめまして」

n(2)「初めましての宜しくさんだ、クソッタレ」

パンツ(2)「無駄と分かって言うが、少しは口を慎め。彼はパンツ界の王だ」

男「!」

パンツ「まあ、特別言う意味もなかったしな。黙ってた」

女「あの…」

男「そうだ、聞きたいことがある」

男「ノートの効果は、女性ならばノーパン化、男性ならばパンツ化。それがルールだったんじゃないのか?使い手によって力に差があるのか?……それと、デスノーパンは地上…人間界に何冊も存在するものなのか?」

パンツ(2)「使い手によって力に差が出るというよりは…使い方によって力に差が出るといったところか」

パンツ(2)「眼の契約に関してはお話しになられましたか」

パンツ「敬語は止めにしろ気色悪い。眼に関しては、必要そうなシチュエーションでちゃんと話しておいたぞ」

パンツ(2)「そうですか…いや。そうか」

パンツ(2)「しかし、契約の全貌は明かしてないと?」

パンツ「何しろハーフパンツすら全力で拒否されたからな」

男「契約の全貌?」

パンツ(2)「パンツの半分を捧げることで契約者は〝眼〟を手にするが…」

パンツ(2)「パンツの全てを捧げることで…要はデスノーパンの契約者本人が一生ノーパンになることで…」

パンツ(2)「性別問わず、ノートに書いた名前の人間をパンツにする力を得る」

男「なっ!?」

女「……!」

パンツ(2)「それとデスノーパンはな、そもそも数百年に一度、人間の手に渡ることがあるかないか、という位の話だ。100パーセントとは言い切れないが、そう何冊も存在はするはずがない」

男「なるほど」

男「なら…目的は?」

男「パンツを全て捧げてまでそんな力を手にしたんだ。目的がないとは言わせない」

n(2)「目的だァ? そうだなァ」

n(2)「面白いから」

男「!……」


――パンツ「面白いから」


男(全く…まるであの時のパンツみたいな展開だ)

女「面白いからって理由で!私の妹をパンツに……ッ」

n(2)「あーあーピーピーうるせェな。よう、そちらのパンツの王様よ、あんた契約者にデスイレイザー渡してねーのかヨ」

男「デス…イレイザー?」

パンツ(2)「デスノーパンの効果を打ち消すことのできる消しゴムだ」

女「!!」

男「デスノーパンの効果を打ち消す……?」

パンツ(2)「百日に一度しか使えないがな」

パンツ「いやあ、そういう便利な物与えちまったらつまらなくなると思ったらからさ。……ほらよ」ポイ

男「これが…」

娘「……あれ? 私…」ボーッ…

女「娘!」ガバッ

娘「お、姉ちゃん?」

n(2)「蘇生のショックでここ数日の記憶はぶっ飛んでるはずだぜ?幸いしたなァ、n」

男「…」

男「確かにお前の力なら簡単に情報を隠蔽できる。が…」

男「やり方が少し荒っぽいな。気にくわない」

n(2)「別にお前のやり方に合わせて使ってる訳じゃねえんだから知ったこっちゃねーな。……んん、そうだ、こりゃあ面白えぞ」

男「何、だ」

n(2)「オメー、俺と組まねぇか?」

男「なっ!?」

パンツ「ククッ」

n(2)「聞くところによると、他人の事を荒っぽいだの言ってる割りにテメー自身も、俺よりよっぽど派手な使い方をしたせいで、あの世界最高峰の探偵sに目をつけられ、今も互いに顔も名前も知らねえのに、どっちが先にくたばるのか戦ってるらしいじゃねェかよ」

男「……ああ。そうだ」

男「だが人間をパンツにしてしまうような手段に出るのは極力避けてる」

n(2)「そーれーがー甘えってんだよ」

n(2)「それとも何か?今回の件……a田h実の件のように、ちょっと漏れ出た情報を隠蔽するのにこんなしち面倒くせぇ事を、これから何度も何度も繰り返してくってのか?決着が付く前に、テメーそれじゃあお迎えが来ちまうゼ?」

男「けど…僕には……」

n(2)「だーかーらー、非情になりきれない甘ちゃんのお前に代わって、この俺がオメーの手駒になって障害物をねじ伏せてやろうつってんだろうが」

男(これは、あまりにも美味すぎる話だ。何か、裏が…)

n(2)「何か裏があるとでも思ってンだろ? 違えんだよなア、分かってねえよお前は。そこのパンツの王様になら分かってもらえそうだけどな」

パンツ「ククッ。そうだな」

n(2)「お前にはその無駄に回転の早い頭がある。そして俺には無敵の能力がある。この二つがあれば、それこそテメーの言うノーパンハーレムの実現にグッと近付くだろうが。分かんねえの?そりゃご馳走だ、馬鹿みてぇに面白い話じゃねえか」

n(2)「なァ…俺は退屈が苦手なんだ。それと面倒もだ。せっかく俺から手駒になってやろうって膝まずいてやってんのによ、この好機を逃す手はねェだろ?そうだよな?n」

男「……しかし」

男「例えば、お前が僕を利用している可能性も否めない。そちらの方こそ、僕をいつでもパンツ化できる力を持っているんだろう」

n(2)「ああー、所有者同士の契約についても知らねえのか」

男「所有者同士の契約…?」

パンツ(2)「人間界にデスノーパンが二冊以上存在するケースはこれまでにない。自然、所有者同士の契約は未だかつて成立した事例がない」

パンツ(2)「が…この、歴史的瞬間なら。そう、その契約は成立するだろう」

パンツ(2)「所有者とそれぞれの憑くパンツの、二人と二体が揃って初めて成り立つ契約だ」

パンツ(2)「その二人が契りを結べば、双方ともデスノーパンに契約相手の名前を書いても、その効果は適応されない、というものだ」

男「そんなものが…」

パンツ「よくそんなもん覚えてるな。すっかり忘れてたぞ、俺は」

n(2)「当然、俺はその契りを結んでやってもいい」

男「……、……、」

n(2)「なあ、これは二度とないチャンスだぜ? ここまではsにやられっぱなしなんだろ? この契りを結べば一気に巻き返せる、形成逆転のチャンスだぜ? どうなんだよオイ」

男「…………、」

n(2)「sに勝ちてえんだろ? ノーパンハーレムの世界を築くんだろ?」

n(2)「なあ…そうだろ――相棒」

男「…………、」

男「……、」

男「…」

男「分かった」

パンツ「ククッ!!」

女「男くん…」

パンツ(2)「本当に…いいんだな? 契りによるデメリットの作用なんかは一切無いが、とはいえ一度結べば取り消せない絶対的な契約だ」

男「ああ、構わない」

男「やろうじゃないか、共に」

男「新世界の創造を」

日本警察本部

s(急激に、男性被害者数が増え始めている)

s(統計から見ても、まるで別人のnが存在し、代わりに裁きを行っているかのよう。何か吹っ切れたのか…?それとも力に何か変化が?焦燥からか?)

s(今までのnの行動から考えられる私の推理、そのことごとくを破り、裏をかき、欺き、上手い具合にノーパン化を進ませている。それも恐ろしいスピードで)

s(…………、)

s(とにかく…)

s(これまでとやり方が違う。今のnは非情だ。手段を選ばない)

s(私も…そろそろ動き出すべきかもしれません)

ガサッ

s(様々な資料や推理から絞られた、nの容疑者リスト…)

s(その中でも特に目を引いた人物…)

s(可能性としては2%未満…)

s(が、他の容疑者は1%にすら及ばない)

s(先手必勝ですね…やってみましょう)

s(まさか私自身が動き出すことになるとは…)

s(直接対決です)

【三部へ続く】

【第三部】


「どうやら、二人のnは契りを結んだようね」

「男性犯罪者のパンツ化も厭わない、そして必要に迫られれば女性をもその姿をパンツへと変貌させる…。永遠に」

「え?私はどうしたいって?」

「ううん。傍観してようかと思ったけど。この展開の面白さ。輪に加わらない手はないと思うのよ」

「それでね。女性の私としても、ノーパンハーレムなんて品のない世界になるのは、正直嫌なの」

「だから紡ごうと思うのよ。二つの世界を」

「ねえ。面白いと思わない?」

「こちらの世界でもノートを使うのよ」

「何なのかしらね。ノートって。普遍的なものに、世界最凶の力を宿らせることは、神様の嗜好なのかしら」

「そうは思わない?」



「――ねえ、リューク」

大学

『新入生代表――男』

男「はい」ガタッ

パンツ「おっ。すげ」

『同じく新入生代表――縞山シタギ』

縞山「はい」ガタッ

男(こいつだったのか…。入学試験時に妙な格好をしていた、ふざけた態度の受験生……)

男(だが、僕と同様に、試験を満点で突破した、一見野性的ではあるものの、その実賢い……或いは勉強のできる人間)

男(もしかすると、sの人物像もこんなものなのかもしれないな)

男(有り得ないが、仮に、こいつがsだとしても)

男(今の僕には二人目のnも付いている。恐れるものなど…)

縞山(男。nである可能性は2%未満。だがお前はどうにも完璧過ぎる。あの中で最も何かを感じさせる人間だった)

縞山(私が本当にsであろうが、そうでなかろうが、『nの可能性を持つ人間とsの可能性を持つ人間が対峙する』というシチュエーションは、それだけで疑う側としては価値が生まれる)

縞山(そう……。この行為は、)

パチパチパチ……

縞山「男くん」

男「何?」

縞山「警察庁y神局長の息子さんであり、そしてその父に負けない変態性と正義感を持つ、文武共に極めて優秀な人間」

男「!……」

縞山「そんなあなたに、ひとつ面白いことを教えて差し上げようかと思うのです。ただ、この情報は誰にも漏らさないでくれるよう約束してもらえればの話なのですが…」

男「?…。……、うん。いいよ。誰にも言わない。何?」

縞山(最大の攻撃であると同時に、防御でもある)

縞山「――私は」

縞山(これでお前は私に手が出せない)

男宅

男「くそっ!やられた!!」ドンッ!

男「んんんんんくそっっ!!!やられたッ!!!!!!!!」ドドンッ!!

男「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ソイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」ドドドドドドドドドッドド!!!!!!!!

パンツ「とりあえず落ち着けよ」

男「これが落ち着いていられるかぁ!くそが!まさか…まさか…」

――縞山「私がsです」

男「ソイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」ドドドドドドドドドッドド!!!!!!!!

パンツ「荒れてんなあ」

数時間経過



男「――ァァァァァァッァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」ドドドッドドッドドドドドドドドドッドドドドッドッド!!!!!!!

パンツ「…」

男「はあ、はあ」

パンツ「…」

男「ぜい、ぜい」

パンツ「…」

男「」ガラッ!

パンツ「!おいお前、その裸ワイシャツ関連のエロ本が詰まったタンスから…まさか…」

男「」スッ

パンツ「ティッシュ!ティッシュまで用意するのか!!待て、そうなると」

男「」クワッ!!!

パンツ「馬鹿おま――」

~しばらくお見せできません~

男「ふう…ふう…」

パンツ「……終わったか?」

男「ああ。もう部屋、入っていいぞ」

パンツ「」スッ…

パンツ「しかし、お前がこれほどまでに荒れるなんて、随分と珍しいこともあるもんだな」

男「…。ああ、そうかもね…。僕はsをなめていたよ。まさか、直接こちらに歩み寄ってくるとは思いもしなかった」

パンツ「デスノーパンでパンツにしちまえばいいじゃないか」

男「駄目だ。独身捜査員の頃から何度も言ってるだろっ。そう気軽に使ってしまえば足が付く。迂闊には手が出せない」

男「それにあいつが本物のsだという確証はどこにもない。囮でもいいわけだ。やられた。実に有効な手だ…」

パンツ「しかしsも大した奴だな。まだ憶測とはいえ。もうnであるお前に目を付けたんだから」

男「……ああ。見くびっていた。これじゃ、nが何人いようが事態は良いようには何も変わらない」

ピンポーン

男「…ん」

パンツ「客みたいだな」

男「今はそんなことより…」

プルルルルル

男「!」

男「二中か」

パンツ「フタナカ…。ああ、二人目のnか」

ピッ

『オイいるんだろn。開けろ。話したいことがある』

男「お前は……どっちの『お前』だ」

『アン?』

『……』

『テメーの考えてる通りだと思うぜ』

男「分かった。今行く…」

二中「……」

※(第三部以降は、n(2)の表記を『二中』に変更します)

二中「しっかし、本がぎっしりだな。流石は東大生か。これが優等生の部屋って奴だ。それもモデルルームみてえな片付かれっぷりときたもんだ」

男「住所は確かに教えたが…。お前がここに来るのは初めてになるな。何かあったのか」

二中「オメエ、sを名乗る人物と出くわしただろう」

男「……。!」

男「その含みのある言い方からすると、会ったのか。お前も」

二中「こっちは転校生だって『設定』のsだ。何のつもりかは知らねえが…」

男「何のつもりか、だと?」

男「どう考えを転ばそうが、こちらに疑いを持って接近してきたこと以外には何も考えられないだろう」

二中「違え。何故俺達に目を付けたのか。そういう意味での『何のつもりか』だ」

男「ポジティブな考え方で行けば、僕たち含め、それ以外の、疑いをかけている人物らそれぞれにsを名乗る、言わば分身…囮…偽sを配置し、nと思しき人間を炙り出すための策に打って出た。そういうことだろう」

二中「悪ぃ線で行くとどうなる?」

男「もうあちら側で、一応の目星が付いてしまった」

男「そしてその予想は、見事、僕とお前に的中。事態は明らかに劣勢に立たされていると見ていい」

二中「どうすんだ。言ったよな。俺はオメエの手駒でしかねえ。考えるのは男、オメエの仕事だぜ」

男「そんなことくらい分かってる…。今は…そう、まず」

男「sなのか?nなのか?の探り合いの状況を、」

男「sの始末へと持っていく。それが理想と言えば理想の形だ」

男「事実上、こちらに『nの力を持つ者』は、女を含め三人。パンツとの契約者は僕とお前で二人だ。デスノーパンで、例えば、前のfbiの回し者であった独身捜査員の件の用に、利用するに有効な人物を操り、一時的にこちら側の勢力として扱う」

男「お前の性別を問わないパンツ化は、あくまで緊急時に用いる手段だ。そして、手駒として操るにも、その操作期間はノートのルールにより23日間まで。それを過ぎれば『ノーパン化現象』が起きる。その情報を隠蔽するにも手間が掛かりすぎる」

二中「つまり誰かを操りsを出し抜くような手は早々使えねぇと。そういうことか」

二中「…なあ本家n」

二中「何がゴールだ」

男「勿論、ノーパンハーレムを築くこと」

二中「そう。なら、わざわざパンツ化させることはねぇ。奴にノーパンの魅力を教えてやりゃいいんだ」

男「無駄だ。奴の縞パンにかける情熱は、常人のそれとは次元が違う。それに、それとなくノーパンの魅力について熱弁してしまえばそのときが最期だ。nの疑いはますます濃厚になるだけだ」

二中「どうしてそこまで言い切れる」

男「奴は『けいおん!』の大ファンらしい」

二中「なるほど」

男「それに、お前にしては随分と消極的な案を出すんだな。お前らしくもない」

二中「展開がつまんなくなってきたからな。面白いから力を貸してやってるだけだ。それを忘れんなn」

パンツ「ククッ」

男「改めて思う。お前らはそっくりだ…」

男「極力リスクを避けつつ、ノートの力で形成を逆転するのなら、安直な話、パンツの力を借りればいいが…」チラッ

パンツ2「無駄だ。パンツにも掟がある。例えば、パンツの力で、名前を直接契約者に教えるなどの行為はパンツ界の掟により罰が与えられる」

男「そうなる」

二中「八方ふさがりって訳だ。白旗を揚げるか?」

男「つまらない冗談ほど非生産的なものもないぞ二中」

二中「分かった分かった」

パンツ「こんだけ便利なノートがあるってのに、何を迷ってるんだ男」

男「だからお前は……。パンツが人間を裁くのと、人間が人間を裁くのを同じ次元で考えるな。それに、ノートだって万能じゃない。…!」

男「そうだ…。万能じゃ、なかった」

二中「なんだぁ?」

男「覚えてるか。a田h実は、ノートの使用後、明らかに僕に対する態度が急変した。好意の眼差しだ。異性に対するそれだ」

男「が、a田の好意を寄せる相手は、k下だったはずなんだ。これは、単純に二人の人間に好意を持ったと考えていいのか」

男「それとも、ノートによって、使用者の僕が好意の対象になることは、他の…この件の場合、k下への好意が消えることには繋がらないのか」

パンツ「どうだったっけか」

パンツ2「いや…。好意の対象は塗り替えられるはずだ。ノーパン化した女性は、ノートの使用者に好意を持つ、そういう作用がノートにはある」

男「ふうん…」

男「……、」

男「…」

男「は?」

男「何だそれ!?おいパンツ聞いてないぞ!!!」

パンツ「聞かれなかったし…」

男「ま、待て。そうなるといくつかの疑問が浮上してくる」

二中「まった疑問かい。尽きないねえ」

男「ノーパン化した女性が、ノートの使用者に好意を持つ」

男「まずひとつ。a田は、当然、僕がnだということを知らない。しかし、k下のことはひとまず置いて、僕に好意の目を向けた。つまり、『使用者の正体を知らない場合』に、『僕の存在を目視などの手段で認識した時に初めて好意を持つ』のか。もしくは『ノーパン化した女性は、僕に好意を持つ作用から、僕という存在をノーパン化した時点で知ってしまうのか』」

男「ふたつ。『使用者と所有者』の違いだ。例えばパンツは僕に憑いていることで、ノートの所有権は僕ということになっている。だが、他者に、破いたノートの切れ端を渡して、力を使役させることも可能となっている。この場合、好意の対象は、所有者である僕に向かうのか。使用者である者に向かうのか」

男「みっつ。ノートに名前を書かれれば、女性はノーパン化。男性はパンツ化。男性は、人としての生命活動が行えなくなるわけだからいいとして…、女性は、好意の対象が『同姓』になりうるのか」

パンツ「細けえなあ…」

パンツ2「一つ目の疑問に対しては、前者が正しい。お前を知らない人間は、結局好意の対象は塗り変わらないまま終わる」

男「知らないとは、どの程度を差す?例えば、道中、突然、僕とノーパン化した女が出会った時、急に女は豹変し僕に対して好意をむき出しにするのか。もしそうなら、nの正体を知られないよう、僕は外出する際には仮面でも被るか、それでも無意味なら車など、交通手段は相当限られ、最悪、外には出られない」

パンツ2「そこまでの心配は無用だ。ノーパン化した女は、ふたつめの問いに対する答えも含めるが、『顔と名前を認識した場合のみに限り、所有者に対して』好意を持つ」

男「三つ目は?」

パンツ2「同姓にも作用は通じる。関係はない。先に言ったとおり、ノーパン化以前に好意を寄せる人間がいても、その好意の対象が塗り変わるくらいだ。性別など、デスノーパンの前には何の意味も持たない」

二中「っひょー。そそるねえ。女同士ってのも」

男「これで最終目標は、より崇高なものへと昇華した訳だ」

パンツ「どういう訳だよ」

男「お前…。幾らなんでも想像力の欠如も甚だしい。よく考えてみろ」

男「全世界の女性(※ただし美少女に限る)が、恥じらいをそのままに、ノーパン化した状態で、この僕へ好意を寄せ、その全てが僕へと集約される様は、まさしく新世界……、いや、天国以外にはもはや言い表しようもなく、そこに君臨する僕は、言い表すならば神の」

二中「気になるのはa田のk下に対する好意が、ノートに名を書き込まれノーパン化した後にも続いた…その一件になんのか」

男「被せるな!!」

男「台詞を!!」

男「被らせ」

パンツ2「そんな事例は聞いたこともないからな。何ともいえないが、ひとつ言えるのは、おそらくその現象についてはノートの不備によるものでは絶対にないと、それだけだな」るな!!」

男「おい!!!台詞!台詞が!!」

パンツ「うるさいぞお前」

男「それにしても、a田h実など、ノートの実験台の一人に過ぎない存在だった。それが、女の友達と、女の妹の二人の繋がりから、そのa田の存在に焦点が当てられ、僕の高校、とりわけ、a田の好意対象であり、女と接点を持つ僕にまで疑いが到達し、二中含む新聞部三人に対しての火消しに凄まじい手間が掛かった」

男「そして、ここにきて、疑念がまたそのa田にたどり着く。ふざけた話だ」

男「奴は、僕の物語中において、脇役、モブキャラもいいところだったのに。しつこくも僕の前に壁として立ちふさがる。どこまでも邪魔くさい女だ…」

パンツ「尻見たさに廊下を全力で駆け抜けたくせに。しかも結構可愛い人間だったような」

男「やかましい!!全ては過去ッ!!!!」

二中「過去ッ!?」

パンツ2「少し、a田h実への、ノートの記載を見せてくれないか」

男「え、ええ…。あれを?」

パンツ2「でなければ話が進まないが」

男「…。……。………分かった」

【a田h実】

1月26日12時50分。

男に向かって「話があるの。放課後に三階の生徒会室まで来て」と言い、16:00に言葉通り生徒会室まで行く。

男が入室した途端にスカートを脱ぎ捨て「こんなものは、いらねえええええええええええええ」と力の限り叫び、そのまま退室、廊下を脇目も降らず全力失踪しながら「ボンバーイェッ、ボンバーイェッ」と咆哮、近付いてくるものがいる場合は全員殴り飛ばす。

殴り飛ばせない場合、恥じらいを見せ、少女性を発揮しつつ涙ながらに「こっち…見ないでください」とかわす。
邪魔する者を全て振り切ったら、二階の放送室に「幕張メッセ、ソフトクリーム!」と声を上げながら飛び込む。

直後にマイクを取り、校内全体に放送が行き渡るよう手を加えたら「ノーパンんんんんんんんんんッ!イェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」と力の限り咆哮。

それから校庭へ脱走。16時15分、校庭のド真ん中でノーパン化。




二中「お前これどんな気持ちで書いた?」

男「とってもわくわくしてたさ!!!」

パンツ2「操作がいささか強引か…?」

パンツ「そこ、真面目になるとこじゃないぞ」

パンツ2「これじゃ手掛かりにはならないな」

男「見せ損かよ」

二中「で、sの対策はどうすんだよ。あまりふざけてる場合でもねえだろうが」

パンツ「それとa田の謎で、直面してる問題は二つだな。頑張れよ男」

男「他人事のように…」

二中「考えるのはオメエの仕事だろ」

男「…」

男「まずは…」

男「当然、s優先だ。そして対策だ」

男「まず第一に、あの縞山と名乗る人物が偽sであるための確認を取りたい」

二中「縞山?そっちのsもそう名乗ってんのか」

男「!」

女宅

女「『僕の通う大学に、sを名乗る縞山という人物が現れた』…」

女「『そちらにもsを名乗る者が出てくるかもしれない。現状、証拠が出ないよう、特に分け与えたノートの数頁は、sに限らず他人にの手に触れさせるような場所へは絶対に置かないこと』…」

女「『常に細心の注意を払って』…」

女「うう。こんな事務的な長文メールじゃなくて、もっとお付き合いする男女らしい、何かな、ときめきのある、そんなやり取りがしたいです…」

女「でも今は、sと名乗る人が接触してきてる緊急事態」

女「我慢我慢…」

ピンポーン

女「?誰だろう」

娘「お姉ちゃん、お客さん」ガチャ

女「私に?誰?」

娘「ええと」

娘「縞田って人」

――バサッ!!!

バササッ!!!!




リューク「久し振りだな人間界も」

リューク「上空から見る限りは、ニョキニョキ生えてるでかいビル、蟲のように蠢く車の数々、それ以上に数多いニンゲン……。何も変わっちゃいねえな」

リューク「人間界とはいえ、世界線が違うし、ちょっとは面白い代わり映え様でもお目にかかれるかと期待してたんだがな」

リューク「あいつの頼みだしなあ。来ない訳にもいかないし」

リューク「少しは面白いことがあればいいんだが…」

リューク「例えば数百年前の、あの時みたいに」

リューク「退屈しのぎができりゃあなあ…」

リューク「なあ…月……」

リューク「ここにもお前みたいな奴はいると思うか?新世界の神になるだの騒ぐ奴が、いると思うか?」

リューク「懐かしいよなあ…なあ…」

リューク「月」




「例えばの話だ」

「運命を輪と捉え、あらゆる物事は、定められた所へと導かれていく、そう考える」

「――なんてクソッタレなことはさておいて、だ」

「今からお前が死ぬことで、神は世界に再誕する」

「『この』世界は、『あの』世界と、あまりにも似すぎているんだ。それは何故か」

「こちらの神が失われたからだよ」

m木「さ、さっきから何を言っているのかが分からない…」

「あっちの世界の輪を修復するには、こっちの世界で『しなくてはならないこと』の達成と『起こってはいけないこと』の阻止、このふたつが必要不可欠なんだ」

「sがnに、死を与える。これは駄目なんだ。なあ、分かるだろ?」

m木「は…なせっ」ジタバタ

――――パァンッ!!

「……、」

m木「」

メロ「けっ」




「ええ。大丈夫そうよ」

「ええ、だって仕方なかったもの、大目に見てよ。彼がそんな策に出るなんて、思いもしなかったの」




――男「――おい聞けn信者共!!a田h実のノーパン化は転校の口実に過ぎず、実際は自らパンツを捨てた痴女だ!」

――a田「な、何をッ」

――『ああ? 何だ、お前』

――男「だがその精神はnへの信仰心に基づくものだ!だが、世間のn信仰はまだ根が浅く、自らパンツを捨てる行為はまだ白い目で見られる対象として受け取られるのがこのご時世だ!転校は、そんな後ろめたい性的な悪癖を晒してしまったこの学校から逃げるためだ!」

――男「a田は、お前らのリーダー…k下を好いているっ。n信仰団体のリーダーであるk下なら自分を理解してくれるのではと考え、リスクを背負ってまでk下の情報を得ようと、k下と繋がりのある他校生を連れてきた、今がその状況だ!分かるか!?」

――『なっ』

――『k下さんを慕う生徒だったのか?』

――男「そうだ、つまりお前らが今この子達を追い払えば、nを信仰する彼女が求めたk下の手がかりを失うことになるっ」

―――
――



「私はk下に好意を寄せる一般の高校生、ということだった」

「しかし彼は、私をノートの実験台に使った。予想外よ。他にも綺麗な子は沢山いたと思うのだけれど」

「それまでは何とかなった。k下の『設定』については知られないままであれば、それでよかったから」

「転校もするつもりだった」

「でもギリギリ間に合わなかったみたいね」

「また。そう、二度目。その場しのぎの駒として利用されちゃった。新聞部三人との会合。その三人を逃がさないよう、n信仰集団の騒動を止めるために。私はk下が好きという『噂』を、『駒になりきる』ために『真実』にせざるを得なかった」

「彼は多分、もう『脇役』だったはずの私に不信感を抱いてる」

a田「動くなら、今ね」ニコリ

【第3.5.1部】



日本警察本部

y神「――m木が何物かに射殺された!?」

i出「そん…な…馬鹿な」

m田「……n、だ」

m田「もうn以外に考えられないッスよ!!とうとう奴は人の命をッ!!!!」

a沢「落ち着け!考え方が安直過ぎる。確かにその線は、充分に考えられるが…」

m田「m木さんが、命を奪われた、緊急事態なのに…。随分、冷静ッスね。それって人としてどうなんスかね!?」

i出「お前っ。a沢はなあ!…」

m田「何スか!?『こういう時こそ冷静であれ』ッスか!」

y神「静まらんか!!!」

y神「今はs不在の時だ…。そんな時に、我々が取り乱してどうする」

m田「……。すみません」

a沢「俺もすまなかった」

m田「いえ、僕が悪かったっす…」

i出「…、それにしても、誰が」

y神「それを考えるのはsの役目。私たちにできるのは、捜査、その一点のみだろう。sの判断材料を増やすため、手掛かりをひとつでも多く掴むことだ。分かるな」

m田「そうッスね…」

a沢「じゃあ、俺は早速現場まで足を運ぼうかと思います」ガタッ

i出「同行する」

y神「くれぐれも気をつけろ。nの信仰者である可能性だってあるんだ」

【第3.x.1部】



?(…)

?(ノート?)

?(death note?)

?(直訳で、死のノート)

?「『これは死神のノートです』……ぷっ」

?「how to use……。全部英語か。面倒だな」

?「『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ』……ははは」

?(ったく病んでるな。なんで皆こういうくだらないのが好きかな。不幸の手紙から全然進歩しちゃいない…)

?「――ただいま」

【第3.0.0部】



――バサッ!!!バササッ!!!!!



「――はぁあ!?何それっ」

リューク「ククッ面白いことになってきたな」

「……。リューク。それをネットスラングで言えば、『俺得』って言うらしいわ。覚えておきなさい」

リューク「へええ。どういう意味だ?」

「個人的に得を感じている時に用いられる俗語よ」

リューク「ほー。そりゃ面白だな」

「…。あなたの『面白い』の基準が分からなくなってきたわ」

リューク「で、どうすんだ」

「ふたつの世界を紡ぐつもりが…、完全に、あちら側の世界に取って食われようとしているわ」

「少し世界線を渡ろうかしら。悪戯っ子を食い止めるために」

【第3.7.2部】


女宅

縞田「どうも」

女「えっと…」

縞田「初対面にもかかわらず、急に現れた私を中へお招きいただいてもらい誠に恐縮です」

女「大学の…先輩、なんですよね」

縞田「ええ。そう、不躾ながらいきなり自宅へお邪魔させていただいたのは、サークル勧誘のことなんですが…」

女「入学当日の生徒にここまで熱心に勧誘なんて、凄いですね。どうぞ」コト

縞田「あ、お茶まで。すみませんね…」

縞田「我がサークルの勧誘チラシを受け取ってくれる人は、極少数なんです。うちの大学の料理サークルはどうも不人気のようで。困ったものです」

女「どうして私の家が分かったんですか?」

縞田「何としてでも、我が料理サークルを盛り上げていきたい。そのためにはどんな手段だって取る。まあ、そういうことです」

女(こ、答えになってない…)

縞田「とりあえず、話だけでも軽く聞いてやってください。長くは居座りません。何しろ迷惑がかかりますでしょうから」

女「はあ…(既にかかってるような……)

縞田「それで、まず料理サークルの何が楽しいかを語りますとね――」

女(…)

女(似てる…)

女(男くんのメールを読んでそう間もない頃にこの人が来たからそう思うだけかもしれない)

女(『縞田』と『縞山』……。確かに似てはいるけど、s程の人だったら、きっと『sかもしれない』なんて疑念の一切を想起させないよう、偽名にしても、もっと工夫したものにするはずです)

女(『sを名乗る人間は複数いる』、男くんはそう言ってました)

女(なら、そう名乗らない場合は、sという可能性を欠片も考えさせないよう、徹底した準備を整えた上で私の前に現れる)

女(そして名乗る場合は、あの手この手で、こちらを揺さぶってくる。けど縞田さんは、sを名乗らない。何か言葉で引っ掛けてくるような素振りもないあるのは、ただ勧誘に対する情熱の在りよう、それだけ)

女(考えすぎかもしれません)

女(それでも、例え一般人でも当然、ノートに触れさせる訳にはいきません)

女(私にはパンツは憑いてません。それでも、男くんには迷惑はかけられませんから)

縞田「――さて、前フリの割に長々とすみません」

女「いえ。私も、入るサークルには頭を悩ませていたので。とても参考になりました」

縞田「そうですか…。それは良かった」

縞田「……。静かですね。今、お一人なんですか?」

女「もうすぐ母が帰ってくる時間だと思いますけど…」

縞田「…。なるほど」

縞田「」スッ

ピンポーン

女「あ、少し待っててくださいね」

縞田「分かりました」

タタタタ…

縞田(……、)

縞田(設置期間は、一週間ほどでいい)

縞田(手段は選んでいられない。これは命を懸けた勝負)

縞田「」スッ

中学、新聞部

ワーワー…

娘「…」

娘「進級して初日なのに。うちの野球部は熱心ね…」

娘「……」

娘「二中くん、最近部活来なくなっちゃったな…」

娘「友人くんも。もう学校すら長らく来てない。行方不明って…。何かあったのかしら」

娘「何か危ないことに巻き込まれたのかな…」

娘「…」

娘「どうしてこの部室には、私一人しかいないの…」

娘「何か忘れてることがある。絶対」

娘「しかも、特定の期間」

娘「いくつも約束をすっぽかしちゃって、もう何度友達に怒られたことか…」

娘「病院にも行ったけど、特別以上はない、どこの病院も結果は同じ」

娘「何より気になるのはお姉ちゃん」

娘「絶対、隠し事をしてる」

娘「それも、大きな隠し事。そしてそれは、どこか私に負い目のようなものを含んでる」

娘「最近部屋に入れてくれなくなったし…」

娘「最近よ」

娘「最近に、色々おかしくなった」

――知りたいかよ

娘「…」

娘「……え?」

娘「だ、れ」

――このことは他言無用だ。それを絶対に約束するのであれば、今お前が抱く疑問のおおよそには応えてやれると思う。

娘「え?え?」

娘「聞き覚えのある、ような。この声…、」

――さあ、どうするんだ。早く選べ。

――ただ、知りたいのであれば、その際は自らへの危険もそれ相応に覚悟しろ。

――でなきゃ、今度は

娘「こ、んどは」



――命を落とすぞ

娘「…」

娘「……」

娘「ええ、覚悟してやるわよ」

――お前ならそう言うと思ったよ。

娘「お前って…。私を知ってるの?」

――いいか。よく聞け。

娘「え?」

――悲鳴を上げるなよ。

娘「う、うん」

――じゃあ、後ろを向け。

娘「…」ゴクリ

娘「」フッ




「……よう」

娘「……………………………、」

娘「!!!!?」

娘「パ…」

娘「パンツ!?」



『――沈黙を続けるsの様子を見ると、怖気づいたんでしょうねえ。もはや時代はノーパンへ向かっていると言って過言ではないでしょう』


プツッ


独身捜査員「……」

独身捜査員「n信仰派の人間も随分と増えたものね…」

独身捜査員「どの局もこんなことばかり」

独身捜査員「メディアは腐っていく一方ね」

独身捜査員「nは犯罪者しか裁かない――か」

独身捜査員「そんなもの、真っ赤な嘘なのに」

独身捜査員「もう、動き出す時期なのかしら」

独身捜査員「失った記憶。そしてパンツ」

独身捜査員「私という存在は、nのミスなのかしら」

独身捜査員「それともs、そんな事実は、とっくに気付いてるの?」

独身捜査員「…。行きましょう。fbiへ」



「見ーつけた」タッ

メロ「……あ?誰だ、お前」

「正体は秘密。そんなことより、好き勝手やってくれるじゃない」

メロ「誰だか知らんが、何やらお前からは死神のニオイがするな…。気味が悪い」

「まるで犬っころね。その鼻も。獰猛なところも」

「でも私はそういう男、嫌いじゃな――」


――パンッ!パンッ!パンッ!!!


メロ「退け。メス豚に付き合ってるほど、俺は暇じゃねえ」スタスタ…

メロ(死神のニオイ…。ちっ。早くも嗅ぎ付けられたのは俺の方って訳だ。急がねえと面倒なことに)





「――巻き込まれてるのはこっちなんですけどお?」

メロ「――ッ!?」

「…。さすが、nと並んで頭のキレる男ね。私が無傷なところを見たその一瞬に私の正体について八通りもの可能性を思い浮かべるとは」

メロ「ふ。n?あんな変態と一緒にするな」

「そのnじゃないわ。あなたの知るnよ」

メロ「!…」

メロ「……、」

メロ「思考を読むのか。お前、死神か?」

「あれ。急に殺気が失せた。器用な男」

メロ「質問に答えろ」

「こんな見目麗しい死神がどこにいるのかしら?」

メロ「死神なら化けるくらい造作もないだろう。多分だがな」

「アタリだけど、私は死神じゃないってば」

メロ「俺の邪魔をするか」

「うーん。あまりやんちゃが過ぎるならね。そうでなければ、あなた一人がいくら暴れたところで、多分『xの世界』にも『yの世界』にも何ら影響はないしね」

メロ「っ。yの世界は既に完成したのか?」

「お。『どうしてそれを知ってる』とは聞かないのね。不毛な会話がなくて快適で助かるわ」

メロ「その会話をする気はあるんだろうな?」

「あるある。答えは、ノー。でも、その答えがイエスになるよう頑張ってる子猫ちゃんもいるみたいだけどね」

メロ「!この世界線には一体どれほどのバケモンが集ってんだ。嫌になるな…」

「あれえ。見方によっては、あなたもそのバケモノの一人でしょう?」

メロ「いずれ人に戻るだろう。俺の野望が果たせるならな」

「それでnのお手伝い?懸命ねえ」

メロ「手伝ってはいねえ。利用してるだけだ。帰るためにな」

「夜神月に勝ちたいの?」

メロ「!」

メロ「……。いや」

「うーん。複雑すぎて思考がよく読めない。ちゃんと言語化してよ」

メロ「さっきお前『巻き込まれてる』って言ったよな?つまり、影響こそ無に近かれど、俺の目的はお前にとって都合の悪い部分もあるってことだ。なら、お前にも同様に目的がある。そうだろ?」

「私は『xの世界』と『yの世界』を紡ぐの」

メロ「紡ぐ!?だと…」

メロ「お前…誰だ。下手すると死神よりやばそうだな」

「だぁから、秘密。まあ、今回は警告と、あなたの心情の機微を伺いにきた、そのふたつだけだから」

メロ「お前の目的からすれば、確かに俺はお邪魔虫だ。始末しないのか?」

「死んでいる人間は私でもどうしようもないわ」

メロ「そうかよ。良いことを聞けた」

「m木をやったみたいだけど。それが何に繋がるの?」

メロ「sを惑わすだけさ。俺の存在は、奴には暴けないだろう。そして奴の推理力なら……仮にもあの『lに対応する』この世界線の人間だ、nは全く関係がないことくらい、すぐ見抜けるだろう。だからこそ、確実に混乱を誘える」

「なるほどねえ」

メロ「もう少し戯れに付き合ってもらおうか」

「いいよ?」

メロ「ふたつの世界を紡いで何がしたい。或いはなぜ世界を紡ごうとする」

「世界線っていうのはねえ、ひとつの『時間軸』に平行して存在する無数の世界を差すの」

メロ「!なるほど…」

「あれ?まだ何も言ってないのにもう分かっちゃった?流石ねえ」

メロ「それはさぞ、『面白エ』んだろうな」

「ええ、きっと」

「もういいかしら。『元』人間」

メロ「お前は巣の中で必死に働くアリを観賞でもしてる気分なんだろうがな」

メロ「油断してると、痛い目を見るぜ」

「……」

「楽しみにしてるわ」

【3.x.2部】


『さあ!早く!』

『殺してみろ』

『どうしたできないのか』

『……。どうやら私は殺せないようだな』

「きっと今一番ほっとしてるのはl自身だ。くくっ」

『殺せない人間もいる。いいヒントをもらった』

『お返しといっては何だがもうひとついいことを教えてやろう』

?「!?」

『この中継は全世界同時中継と銘打ったが、日本の関東地区にしか放送されていない』

?「!……」

『時間差で各地区に流す予定だったがもうその必要もなくなった。お前は今日本の関東にいる』

「くくっ。やるなlのやつ」

【第3.2.1部】


「例えばの話だ」

「運命を輪と捉え、あらゆる物事は、定められた所へと導かれていく、そう考える」

「――なんてクソッタレなことはさておいて、だ」

「今からお前が死ぬことで、神は世界に再誕する」

「『この』世界は、『あの』世界と、あまりにも似すぎているんだ。それは何故か」

「こちらの神が失われたからだよ」

m木「さ、さっきから何を言っているのかが分からない…」

「あっちの世界の輪を修復するには、こっちの世界で『しなくてはならないこと』の達成と『起こってはいけないこと』の阻止、このふたつが必要不可欠なんだ」

「sがnに、死を与える。これは駄目なんだ。なあ、分かるだろ?」

m木「は…なせっ」ジタバタ

――――パァンッ!!

メロ「――ぐ、あッ」フラッ

a沢「m木に何のようだ貴様!!」

m木「た、助かりました…」

メロ「ちっ。尾行がいたのか…」

a沢「分かっているのか?ここは日本だぞ。見たところ日本人ではなさそうだな。とにかく、お前は銃刀法違反、殺人未遂で」


――パァンッ!!!


a沢「……なっ」

m木「!!?動けないはずじゃ…」

メロ「悪いな。もう俺は何百年も前に死んでいるんでね。鉛球だろうがミサイルだろうが傷ひとつ付かない」

m木「ば、化け物か…」

a沢「逃げ、」

メロ「逝け」チャキッ


――パァンッ!!!

メロ「例えばの話だ」

メロ「運命を輪と捉え、あらゆる物事は、定められた所へと導かれていく、そう考える」

メロ「――なんてクソッタレなことはさておいて、だ」

メロ「今からお前が死ぬことで、神は世界に再誕する」

メロ「『この』世界は、『あの』世界と、あまりにも似すぎているんだ。それは何故か」

メロ「こちらの神が失われたからだよ」

m木「さ、さっきから何を言っているのかが分からない…」

メロ「あっちの世界の輪を修復するには、こっちの世界で『しなくてはならないこと』の達成と『起こってはいけないこと』の阻止、このふたつが必要不可欠なんだ」

メロ「sがnに、死を与える。これは駄目なんだ。なあ、分かるだろ?」

m木「は…なせっ」ジタバタ

メロ(終わりだ。悪いなm木)ググッ…

メロ「――!?」ハッ

m木「!!!――――――、」

m木「……っ?」

メロ「な、んだ」

メロ「俺は今、何。何が起きた。同じことが二度」





――――パァンッ!!!!!

m木「」ドサッ…

メロ「?……?」



a田「――邪魔して悪かったわ」



メロ「!誰だ、お前」

a田「a沢が現れれば、あなたはa沢も殺していた。そうなれば、歯車が狂いだす。時流が乱れる。だから、修正した。それだけよ」

メロ「?……!」

メロ「…お前は」

a田「邪魔するつもりはないから。じゃあ、引き続き『あなたの野望』を達するべく、せいぜい暴れてちょうだいね」スウ――…

メロ「!――待ちやがれっ」チャキッ!

メロ「…………、」

メロ「無駄撃ちか」スッ

a田「分かってるじゃない」スウ――…

フッ…

メロ「…」

メロ「ちっ。踊らされてるのか、俺は」

メロ「いや…、」

メロ「化け物に先を越させるか」タタタタッ…

【第三部】

死神界


死神「ぎゃははははははは!!!何だこれどうなってんだ面ッッッ白え!!!ぎゃはははっはははははは!!!!!」

死神「人間界でこんな面白いことやってんのは実に数百年ぶりじゃねえかオイ」

死神「まぁたリュークの仕業か?」

死神「ちょうど下界に行ってるところを見たぞ」

死神「いや、あいつは頼まれごとがあるとかで降りたらしい」

死神「頼まれごと?」

死神「僕もそれ聞いた」

死神「この時間軸は確か…」

死神「――――――――だったはずだぜ?」

死神「……え」

死神「マジで?」

死神「じゃあ、この一連、全てを作ったのって…」

死神「……だよ、な」

死神「なるほどなあ。こりゃいい退屈しのぎにもなるわ」

死神「一人訳知り顔でいるんじゃねえよ。話せよ。何がどうなってんだよ」

死神「ばあか。それじゃあネタバレになっちまうだろうが。俺は聞かねえからな。ネタバレするならよそでやってくれ」

死神「じゃ、じゃあヒントでいいよヒントで」

死神「カカッ。オメー頭悪ィからなあ」

死神「何をどう面白がればいいかも分からねえんだろ?ギャギャギャギャギャッ」

死神「……。あいつらはああ言うけどさ。頼むよ」

死神「……。ひとつ言えるのは」

死神「様々な目的を持つ存在が入り乱れているが…」

死神「結局全ての中心はあの二人ってことだ。その二人が全てを決める」

死神「二人って?」

死神「ええ?」

死神「いやお前、さすがにそれはねえよ…」

【第3.9.3部】

とあるホテル

s「……、」

s(カメラ・盗聴器を仕掛けた家は三件)

s(男。女。二中)

s(この三人を黒と見ているものの…)

s(結局は消去法)

s(三人の内、誰か一人でもnである可能性が6パーセント未満)

s(三人の内、誰か一人でもnに関わっている可能性が17パーセントほど)

s(問題はどう残りを埋めるか…)

s(プライベートはカメラと盗聴器が)

s(それ以外は『彼ら』が)

s(期間は一週間)

s(揺さぶりも入れていきましょう)

s(待っていろ、n)

s(必ず貴様を捕まえてみせる)

~完全監視一日目~

大学のトイレ


――ドンッ!!!



男「…………っ!!!」

パンツ「最近荒れ気味なのはもう充分分かったからさ。そろそろ物に当たるのは止しておいた方がいいぞ」

男(はあ、はあ。これが当たらずにはいられるか…)

男(くそ、つくづく先手を打たれ続けている。何たることだ、この僕がっ)

男(ほぼ24時間、全神経が、正体を隠し続けることで磨り減っていく。精神攻撃と言っていい。ストレスも溜まる)

パンツ「でも、間一髪、仕掛けられた後に、フタナカとの密談がばれなくて済んだじゃないか。部屋のドアに仕掛けた、ドアノブ・シャー芯トラップのおかげだな。入室の痕跡から、お前の頭の回転の速さでどうにかカメラと盗聴器の存在に気付けたんだ。良かっただろ」

男(それは『最悪のパターン』を免れただけの話だっ。良いことなんかひとつも起きてやしない!)

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