真「ありがとうございます…」 (26)

P「真!誕生日おめでとう!!!」

雪歩「おめでとう!真ちゃん!」

真美「いやー…サプライズいつバレるかヒヤヒヤしてたよー!」

亜美「真美なんていつポロっといっちゃうかわからなかったもんねー!」

真美「なにおー!?亜美だってー!!」

律子「はいはい二人ともそこまで!真だって戸惑ってるでしょ?」

伊織「そうねぇ。この伊織ちゃんの完璧な演技は見破れないでしょうけど?」

響「そんなこと言ってるけど伊織、自分達が誕生日の話題出しちゃった度に大袈裟なリアクションしてごまかしてたぞ」

真「あはは…全然気づかなかったよ…ありがとう!みんな!」

…みんなごめん。
もう何日も前から気づいてたよ…。

二週間ほど前だろうか。

事務所内がやけに静かで、そして会議室が騒がしかった。

耳をすましてみると、誕生日だのサプライズだのが聞こえてきた。

…ああ、ボクのか。
しかしプロデューサーの声、大きすぎじゃないかなぁ。

それじゃ普通に分かっちゃうんだけど…。

まあ、そういうところがプロデューサーらしいんだけどね。

…なになに?
朝イチで事務所に集合して、ボクを待ち、入ってきたところへクラッカーをねぇ。

…これ以上はやめておこう。
何だかボク、めちゃくちゃ悪い事してる気分だ。

翌日。

「おっはようございまーす!」

いつものように事務所へ入る。

一瞬、皆の顔が強張った、気がした。

「お、おはよう真ちゃん!」

雪歩がいの一番に挨拶を返してくる。

目が、泳いでる。

勘弁してよぉ…もう。

プロデューサーもプロデューサーで、パソコンから全く顔が見えない。

若干皆よそよそしい。

ボク、この生活二週間もやらなきゃいけないのか…。

三日後。

「暑いのぉ…」

美希が事務所のソファに寝転んでる。
オマケにお腹を出して。

律子に注意をされてはいるが、気持ちは分かる気がする。

事務所のエアコンが壊れたせいで、しばらくは扇風機生活なのだ。

「美希は情けないなー。自分へっちゃらだぞ?」

響は沖縄出身だし、まあある程度は慣れてたりするのかな。
あくまでボクの固定観念だけどさ。

いやそれより、貴音さんだよな。

何で汗一つかかないんだろう。

ライブの時はかいてたけど。

…ああ見えて体重、ボクとそんなに変わらないんだよなあ。

体脂肪とかどれくらいなんだろう。

「せめてテレビで涼しいもんでもやってないかしら」

伊織がテレビをつける。
丁度ニュースがやっていたようだ。
かき氷とかの専門店とかがいいなあ。

『本日、○○さんの誕生b』ブツン

……。

「……さ、さあコンビニでアイスでも買ってこようかしら!!」

「そ、そういえばプロデューサーがもうすぐあずさを連れて帰ってくるからここここコンビニに寄ってもらえばいいぞ!!」

……一応、二人ともドラマとかCMとかやってたんだよね?

五日後。

「んっふっふ~。亜美隊員。例の件なんですがねぇ?」

「…ふむふむ。それはいいですなぁ。真美隊員?」

真美と亜美が何かコソコソ話をしてる。

…自意識過剰ってわけじゃあないけれど、多分ボクの事なんだろうなあ。

チラチラこっち見てくるし。

…気まずいなあ。

「~」
「…!」

ああ、聞きたい。
聞いちゃいけないけれど、聞きたい。

聞いちゃダメだ聞いちゃダメだ聞いちゃダメだ聞いちゃダメだ聞いちゃダメだ聞いちゃダメだ…!

「…ね、ねぇ二人とも…」

「「!!!」」

あ、地雷踏んじゃった…。

「どどどどどうしたのまこちん!?」

「べべ別にまこちんのことは話してないよ!?」

…うん、分かったよ。分かったから。

「ちちちょっと真美!」
「な、何でも無いんだよぉぉぉっ!」

…もしかしてボクって、性格悪かったりして…。

ごめんよ、二人とも。

一週間後。

社長が話しかけてきた。

「ああ菊池君!おはよう!」

「社長、おはようございます!」

いつも思うけど、社長って普段なにやってるんだろう。

たまにしか見ないからわかんないや。

…何だか、皆が注目してる。
ボクじゃなくて、社長に。

…これってもしかしたらもしかする?

「いや~…それにしても、765プロが活躍してはや一年だねぇ…」

「そうですね。何だかあっという間です」

「うんうん、私も鼻が高いよ!…時に菊池君?」

「…はい?」

「ついに菊池君もじゅうな「社長!!!この書類なんですが!!」

「え、ええ?どうしたのかね秋月君…」

律子が社長をほぼ無理矢理引っ張って連れていった。

あ、やっぱり社長はボクのサプライズは知らないんだ。

多分、演技が出来ないとか思われたんだろうなあ。

…こんなこと思っちゃダメなんだろうけど、皆も結構バレバレなんだよなあ。

もしボクが会議室で聞いてなかったら、こんな風にならなかったかな?

…ならなかった、かな?自信が無いや…。

腹パンされて涙目でお礼を言う真かと思ったのに

>>7
腹パン要員は幸子で十分です(白目

そしてボクの誕生日三日前。

ついに社長までがよそよそしくなっていた。

どうしてかなぁ。
まあ皆嘘がつけないってことなんだろうなあ。

…何だか、微笑ましささえ感じる。

「おはようございます」

貴音さんがゆったりと事務所に入ってくる。

そういえば唯一、貴音さんだけが自然とボクに接している。

色々すごいよなあ、貴音さん。

何でもこなしそうな雰囲気あるし。

それに比べて小鳥は…。

「ピヨピヨピヨ…」

今日は事務所にボクと小鳥しかいなかった。

小鳥の逃げたい、早く逃げたいという感情がかなり伝わってきていた。

貴音さんが来て助かったのか、一息ついていた。

小鳥も一応元アイドルじゃなかったっけ?

…まあ、演技をするのと嘘を貫き通すのは別だろうし。

でも別に悪い事してるわけじゃないのになあ。

むしろボクの方だよなあ。悪い事しちゃってるの。

「真、どうかしたのですか?」

「あ、貴音さん。…いや、何でもないよ」

「そうですか?何か元気が無いように思えます」

…元気はある。
ただ、精神的に、ね。

後三日の辛抱だし、ここでボロを出す訳にはいかない。

…サプライズを隠している皆。

それを知っている事を隠すボク。

「…なんのコントだよう…」

サプライズ二日前。

「うっうー!真さん!おはようございまーっす!」

やよいがボクの所へトテトテと駆け寄ってくる。

可愛らしいなあ。
これで家庭ではお姉さんキャラなんだからなあ。

ギャップ萌えってこういうことかな?

やよいにはまだわからないんだろうなあ。

「おはよう!じゃああれ行こうか!」

「うっうー!ハイ!」

「「ターッチ!!」」

「イェイッ!」

ボクもやよいみたいにこういうの持っておきたいなあ。

まっこまっこりーん!

…は、封印されたんだっけ。雪歩に。

「そういえば今日は真さん、私の番組にゲストで来てくれるんですよね!」

「そうそう!お料理さしすせそだよ?やよいちゃんと言えるかなぁ?」

「えっ!?えっと、さししゅしぇ…」

言えてな~い。可愛いなあ。

「今日は何作るんだっけ?」

「うっうー!スポンジケーキで…」

「あ…」

「………お菓子ですー!!」

…後二日だ。二日の辛抱なんだ!

前日。

何だか事務所がピリピリしている。

誰かが発言する度、皆が注目する。

あの貴音さんも、誰かが発言すると目を見開いたりしている。

もう喋れないよ…。

プロデューサーに至ってはもう眼鏡が真っ白になって見えない。

某少年探偵みたいだ。

今日を乗り切れば、何とかなる。

…そう思っていた時期が、ボクにもありました。

一番の地獄は、明日だった。

そして、現在。

皆がやっと、やっと開放できたと言わんばかりにボクに声をかける。

勿論、皆に悪気は無い。
むしろ、好意の塊。

でも、正直、うらやましい。

ボクがそっち側だったらどれだけ喜べただろうか。

いや、嬉しくない訳がない。

とっても嬉しい。

でも、半端じゃなくもどかしい。

もしここで分かってた、なんて言ったら、どうなるんだろう。

皆、ショックで立ち直れなくなるのかな?

…それだけは、なんとしても避けなければ。

ボクは気づいてなかった。そう思えばいいだけなんだから。

とにかく笑おう。笑って少しでも楽しく過ごそう。

早く終わってくれなんて思っちゃダメだ。

皆がボクの為に綿密に計画を立ててくれたんだから。

それに、ボクが聞いたのは途中までじゃないか!

ボクのわからない事だってやってくれてるはずだよ!

もしかしたらプレゼントは、とんでもなくビッグなものだったりするかもしれないし。

例えば、そう!ボクがお姫様になる舞台とか!

「真!聞いて驚くなよ?お前のプレゼントは、これだ!!」お姫様衣装

「」

「これを着て、舞台に立ってもらうぞー!!!」

「「おめでとー!!!」」

ボクって、神様に恨まれるような事、したっけ?

いや、欲しいものが手に入ったんだ!喜ぶべきじゃないか!

お姫様になれるんだぞ!?

お姫様扱いしてもらえるんだぞ!?

最高のプレゼントじゃないか!!

「真ちゃん…そんな、泣くほど嬉しいなんて…!!」

そうだ、嬉しいんだ!
ボクは今喜んでいるんだ!

決してもどかしさと苦しさで泣いてるんじゃないんだ!

だから泣いてもいいんだ!!

「…ありがとう…ございます…!!」

皆は悪くない。
ボクが悪かったんだ。

「そ、それでプロデューサー。相手の王子様役って…?」

「私よ」

千早かよ!!!!!

千早かよ!!!!!!

なんでだよ!!!!!

「ち、千早なんだ…あはは」

「なんたって今回の舞台は、765プロ主催の特別ライブだからな!観客も皆お前のファンだぞ!」

「真のファンクラブ会員の人達がほとんど買っちゃったみたいだからね」

律子がドヤ顔で話す。

「そ、そうなの?…あ、ありがとう」

ボクのファン、か。

それって、皆女の子だよね…。

舞台当日。

「いやー…。やっぱまこちんのファンって」

「女の子ばっかだねぇ…」

そうだろうね。
大方予想出来たよ。

いいんだ。
いてくれるだけありがたいと思わなきゃ。

「真、ごめんな。…結局、ファン層に合わせて役を変更してしまった…」

「いえ、いいんです!気にしなくて下さい!」王子様衣装

プロデューサーがどんよりしながら話している。

…こうなることは、予想出来たから。気にして、ないよ。

「でも、やっぱり真は真なのね」

お姫様衣装の千早が観客を見て、ボクを見て言う。

…どういうことだろう?

「…こんな所で言うのもなんだけど」

「?」

「…たまには怒ってもいいんじゃない?」

「…」

もしかしなくても、千早は気づいてたのか。

…というより、千早はさしてサプライズとかに関して発言してなかったなあ。

「…でも、皆ボクの為に頑張ってくれたんだし」

「やることなすこと裏目に出てるのに?」

「いいんだ…ボクの事を大切にしてくれてるって証拠なんだから」

そうと思わなきゃ、やってらんないし。


「…貴方の誕生日なんだから、少しくらいワガママ言えばいいじゃない」

…ワガママ、か。

「…言っても、いいのかなぁ…」


少しだけ微笑んだ千早を見て、少しだけ安心した。

少しくらい、いいよね?

「それじゃ、やってみましょう?」

そうすると千早はボクの手を取って、皆がスタンバイしている控え室を抜け出した。

「ちょっと!千早と真は!?」

「あら~?さっきまで一緒だったのだけれど…」

「…!ち、ちょっと皆!あれ!」

「…!!ど、どうしたんだ?千早も真も…」

「…プロデューサー、真から少し話があるそうです」

「…?」

「ぷ、プロデューサー。その、ボク…」

「…」

「ボクの誕生日、なんですよね?」

「…」

「だから、ボクのワガママ、聞いて下さい!」

「…真…」

千早の提案。
それは本番直前で、ボクと千早の衣装を交換すること。

…これくらいなら、良いよね?

「…真」

「は、はい?」

プロデューサーの目が少しだけ泳いでいる。

というより、ボクの顔を見ようとしない。

「どうしたんですか?」

…なんか、皆もいたたまれないというか、そんな感じでいる。

「…その、な?」

「…?」

「む、胸が…ちょっと…」

「…え?」

…え?

…………あ。

「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!」

「…うう」

結局、衣装交換作戦は失敗に終わった。

たった3cmの違い。

それだけでも、恥ずかしいことになるのだなと痛感した。

プロデューサーは必死にボクをなだめ、皆はとにかく観客をなだめていた。

結果を言ってしまえば、めちゃくちゃ。

まあ、パニックにならなかっただけ良しと思わなきゃならないかな。

…だけど、千早のあの冷たい瞳は絶対忘れないだろうなあ。

「いいのよ。気にしてないわ。もう忘れたもの。貴方の衣装の胸の箇所がパッツンパッツンすぎてちくb「忘れてよ!!!」

…しばらくは、千早には逆らえないかもなあ。

「真。あれから色々考えたんだが…迷惑かけちゃったな」

あの事件から数日後、ボクを迎えにきたプロデューサーが車の中で話した。

「いいんですよ。気持ちは伝わりましたから!」

「いや、俺は結局、真の気持ちよりファンを優先してしまったんだ。…プロデューサー失格だよ」

「…もう。すぐにそういうこと言うんだから…ほら、前見て下さい!」

「ホントにごめんな。今更だけど、真が望むことなら何でもやるから」

「…何でも?」

「ああ。俺にできることなら何でもやるよ」

何でもって言われると困るんだけどなあ。

いきなりパッとは出てこないよ。

…そうだなあ。

「じゃあ、一つだけ約束してください」

「何だ?」













「…皆の誕生日は、もっとちゃんと考えてあげてくださいね」

まっこまっこり~ん?

実際サプライズってどっかでバレるよな

俺誕生日祝ってくれたの親くらいだけど

>>25
泣いた

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