男「下着が盗まれた」 (53)

男「家を出る前に昨日干した洗濯物を入れとこう」
男「あれ…?」


男「下着が、ない」

男「洗濯物取り込んだら下着がなくなってたんだ」
同僚「なんで」
男「さあ」
同僚「風かなんかで飛んでったんじゃない?昨日風吹いてたし」
男「なのかなぁ…」
男(風で飛んでったにしてはパンツだけなくなってんだよな…)

男「ここの所雨が続いて外に干せなかったからな。布団もシーツも久々にふかふかした匂いだ。今晩これで寝るのが楽しみだな!」
男「あれ…?」
男「下着が、ない」

男「また下着がなくなった」
同僚「洗濯し忘れたんじゃなくて?」
男「ああ」
同僚「洗濯機のなかに入れっぱなしなんじゃ?干したつもりが、実は違ってたみたいな」
男「なのかなぁ…」

男(同僚に言われて確認して見たけど、パンツは入っていなかった…)

男「あっ。また無くなってる」
男(先週も先々週もやられて、今週もまたやられた…)
男「お気に入りの柄だったのに…」
男「あれ? ポストに何か入ってるな。…下着泥棒出没!洗濯物を干す時は注意して下さい」
男(マジか)

男「お気に入りの柄ものが盗まれた」
同僚「盗まれた?なくしたとかじゃなくて?」
男「盗まれたんだ」
同僚「何故わかる」
男「俺の近所で下着泥棒が出てるらしい」
同僚「下着ドロって、普通女物の下着だろ」
男「うーん、そうなんだよなぁ。普通はそうなんだよなぁ…」


男(近所では女物の下着がやられてるのに、なんで俺だけ…)

男「また下着を取られた」
男「これでもう4着目だ。こうも続けて盗まれると、買い換えるのもバカにならないんだぞ」
男「なにか対策を練らなければ」
男「同僚、同僚」
同僚『今何時だと思ってる』
男「下着泥棒対策って何すればいいと思う?」
同僚(人の話を聞け)
同僚「警察に相談すれば。お前の家から近いんでしょ?」
男「そうか!それもそうだな!」
同僚(バカか)

男「下着が盗まれたんです」
警官「え?ナニが盗まれたって?」
男「下着です」
警官「……」
男「本当ですって!」
警官「確かに何件か盗まれたという報告は上がっていますが…」
警官「男物も盗まれてるというのはちょっと…」
男「いや、でも確かに盗まれたんです」
男「最初は風のせいかなって思ってたんですけど…」
男「干す度にパンツだけが無くなってるんです」
男「一度二度なら気のせいかもしれませんが、ここ数週間、必ずパンツが無くなるんです!」
警官「はぁ」
男「あっ。その顔は信じてませんね」
警官「いやいや、別にあなたが嘘をついてるだなんて思ってませんよ」
警官「ただ、男性物の下着が盗まれるというケースはそう無い物ですから…」

男「ですが、下着泥棒は私の近所に出没してるんですよ?」
警官「うーん、男性の被害の届けがあなただけではねぇ…」
警官「対策としては部屋干ししていただくか、トラップを仕掛けるというところでしょうか」
警官「私も夜間の見回りは強化しますので」
男「そうですか…」

男「100均で防犯ブザーとか買って作って見たけど、こんなのに引っかかる奴いるのかなぁ…」
同僚「で、犯人は見つかったの?」
男「いや、しばらく雨続きだから室内干しなんだ」
同僚「ふーん」
男「なんだよ、その目は」
同僚「お前の下着を盗む奴って…実はお前の事好きなやつだったりしてな」
男「はぁ?」
同僚「よくあるじゃん。好きな人の身につけている物が欲しいから盗むとかさ」
男「だとしても下着はねーだろ」
同僚「もし可愛い女の子が盗んでたらどうする?」
男「いや、普通に警察に突き出すだろ」
同僚「なんだ。つまらん」
男「お前は何を期待してるんだ」
同僚「下着ドロから始まる出会いみたいな」
男(バカか)

男「何日も続いてた雨も上がって、とうとうこいつを使う時が来たか」
男「一応、トラップがばれないように作っては見たけど」
男「一体どんな奴が下着を盗んでるんだ…?」

男(……)
男(……………)

男(なんか俺、ドキドキしてる…?)

同僚『もし可愛い女の子が下着を盗んでたらどうする?』

男「………」
男「いやいやいや」
男「んなわけないだろ」
男「仮に、可愛い女の子だったとしても、下着を盗むような変態なんだぞ?」
男「第一、盗んでいるのが女だとは限らないだろうし」
男「………」

ビーッ! ビーッ!
男「!!来たな!」
男「観念しろ下着泥棒!」
男(一体どんな奴なんだ!男か?女か?)
?「キャッ!」
男「あっ、おいちょっと待て!!」
男「くそ、逃げられたか」
男「でも、今の声…」
男「…女?」

同僚「女の声だった?」
男「ああ。部屋の明かりを消してたから、暗くて姿はよく見えなかったが…」
同僚「じゃあ可愛いかどうかはわからない、か」
男「というか、女が男の下着を盗むなんてことあるのか?」
同僚「うーん、前にも言ったけど好きな人の物だったりしたら盗むかもね。あるいは、嫌がらせか、はたまたカモフラージュか」
男「嫌がらせ?てか、カモフラージュって」
同僚「例えば男が振った女が腹いせに盗んでるとか」
男「俺、彼女いない暦27年だけど」
同僚「え、嘘」
男「ほんと」
同僚「いやーないわー。私でもいたことあるのに、彼女いたことないとかないわー」
男「うるせえよ、ほっとけよ」
同僚「ごめんごめん、そう怒るなって」

男「もう一つのカモフラージュって?」
同僚「あー、多分だけど、本命は空き巣で下着はカモフラージュってパターン」
男「空き巣?!」
同僚「最近の空き巣は部屋を荒らさずに盗むから、気がついたらヘソクリが!通帳が!って時間が経ってから気づくみたい」
男「やばい。俺、パンツ貯金してんだけどもしかして空き巣なのかな!」
同僚(パンツ貯金ってなんだよ)

書き溜めなくなったのでここからちょっと遅くなります


男「…で、一応部屋の中は確認したんですが、金目の物は何も取られていなかったんです。パンツ貯金も無事でした」
警官「そうですか(パンツ貯金ってなんだよ)」
男「ただ、空き巣では無いってなると、犯人の目的が一体なんなのかがわからなくて…」
警官「そういえばあなたのお家はコープスリップでしたね?」
男「え?あ、はい」
警官「確認ですが、お部屋は確か2階ですよね?」
男「ええ…」
警官「うーん、女性が2階によじ登って下着を盗みますかねぇ」
男「……」
警官「いや、もちろんあなたの証言を否定してるわけではないですが、目撃承認が一人だけでは…」
男(結局証言を疑ってるじゃねえか)

男「そういうわけで、一晩付き合って欲しいんだ」
同僚「いやいやいや」
男「いやいやいや」
同僚「なんで私」
男「長い付き合いじゃないか」
同僚「5年間同じ会社の同期ってだけだろ」
男「犯人捕まえるならもう一人いた方が心強いし」
同僚「私女なんだけど」
男「頼むよ同僚!お前しか頼れるのいないんだ!」
同僚「…仕方ないな。まあ、私もその物好きな犯人の顔を見て見たいし」
男「!! ありがとう同僚!」
同僚「ちなみに気になってたんだけど、パンツ貯金ってなんなの?」
男「その名の通り、パンツのための貯金だけど」
同僚「意味わからん」
男「いや、俺バーバリーとかアルマーニとかのコットン素材の穿いてるからさ。肌かぶれやすいし、柄もいいの多いし」
同僚「…ああ、だからパンツ貯金」
同僚(もっと他のにお金かければいいのに)
男「おかげで被害総額2万近いよ」
同僚「もっと安くて肌触りがいいの買えばいいのに」
男「柄が気に食わない」
同僚「わがまま言うな」

男「違う!こだわりだ!」

男「よし、下着を干したぞ」
同僚「どうせ干すなら全部安物を干せばいいのに」
男「それが不思議と盗まれるのは干したパンツの中で一番いい物が盗まれるんだ。だからいつも通りで行く」
同僚「おまえのパンツ、ブランド物ばっかりだからな」
同僚(どんな人物がパンツを盗んだのか大体検討着いてきた…)

同僚「……」
男「……」
同僚「……」
男「……」

男(犯人を油断させるために電気を消してるけど…)
男(今日は同僚がいるんだよな…)
男(なんか俺、下着泥確保にかこつけて同僚を連れ込んでるみたいじゃね?)
同僚(犯人を油断させるために電気を消してるけど…)
同僚(男の部屋で、二人きりでいて…)
同僚(頼まれたとはいえ、誰の家にでも着いてくる女に思われてないかな?)

同僚「ねえ男」
男「ん?」
同僚「男ってさぁ、なんで彼女いないの」
男「は!?」
男(え、何。なんでそんな話?)
同僚(気まずい空気壊すために話題振って見たけど、なんか話題のチョイス間違えたかも)
同僚「いや、男って小物とか割とセンスいいし、顔もまぁまぁ普通だし」
男「まぁまぁ言うな」
同僚「彼女の一人や二人いそうなのになー」
男「彼女が二人もいたら問題だろ…」
男(いや、そういう問題じゃなくて!なにこれ、なにアピール?)
同僚(流石にパンツにもこだわってるのはびっくりしたけど)
同僚「なんていうかさ、勿体無いよね。仕事も出来るしさ、話とかもよく聞いてくれるし」
男「うーん…」
男(同僚そこまで言われるとなんか照れるよな)

同僚「あ」
男「え、なに、」
同僚「しっ!なにか聞こえる!」

?「……! …!」
??「……、…よ!」
?「でも…!」

男「…女の声?」
同僚「んー…」
男「なんか言い争ってるみたいな」
同僚「だね」
男「…犯人って、2人組だったのか。しかも、女の」
同僚「うーん…」

ビーッ ビーッ ビーッ
??「あっ!ヤバ!」
?「もうっ!だから言ったのに!」
??「捕まる前に逃げるわよ!」
男・同僚「待ちなさい!」
泥棒「「!」」
男「今度は逃げられないよう、はさみうちさせてもらったよ」
同僚「観念することだね。下着泥さん」
??「くうぅ…!」
?「ご、ごめんなさい…」
男「いったいどんな女が男の下着…を…………?」

少女「ごめんなさい!許してあげて下さい!兄が盗んだ下着はお返ししますっ」
男「え?」

少女「その…ええと、その紙袋の中にあるあなたの下着を、私の兄が盗んでいたんです。その事に気がついたのは先々週で…」
男「お、お兄さん(?)が俺の下着を…?」
少女「はい…夜遅くにジョギングするって言って。ただ、先々週の時は何時もより早く帰ってきて、その時の兄の顔が真っ青でした。
なにを聞いてもはぐらかすから“これは何か隠してるな”って」
同僚「それで、お兄さんの部屋を探って見たら“それ”があったと」
少女「その通りです…」
男「なあ、そのお兄さん(?)って…」
少女「………あちらのがそうです」

釜子「なによっ!化け物を見るような目でジロジロみないでよね!」

男「はぁ…これが俺のパンツを……あぁ……」
同僚「なんて顔してんの」
男「いや、だってさぁ…だって!」
同僚「まぁ、そうだろうなとは予想したけど」
男「気づいてたのか!?」
同僚「確証はなかったけどね。ブランド物が盗まれてるなら転売の線もあったし」
同僚「まあ、使用済みの男物のパンツなんて一部にしか需要がないけどね」
男「はあぁぁ……」

少女「兄の物ではない下着は全部紙袋の中にあります。男さんの物ではない下着はありますか…?」
男「全部俺のです。柄もブランドも、盗まれた数通りです」
男(本当に、本当にありがとうございました。色々な意味で!)
同僚「ねぇ、あんたの下着しかないってことはさぁ」
男「やめろいうな」
同僚「そこのお兄さんは男のことが好きだから盗んだってこと?」
釜子「お兄さんって言うなブス!そうよ!あたしはそこの男さんに一目惚れして、男さんの身につけていた物が欲しくて盗んだのよ!」
同僚「ぶ、ブス…!?」
男「うわあああああ!」

少女「ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!自分の立場わかってるの!?男さんと同僚さんにちゃんと謝って!」
釜子「なんでよ。好きな人の物を欲しがってなにが悪いのよ」
少女「欲しがるのと実際に行動に移すのじゃ訳が違うでしょ!?男さん、本当にごめんなさい!」
男「ああ、うん…」
同僚(これはだいぶダメージ受けてるな)
少女「兄の代わりに私が謝ります!本当に申し訳ありません!盗まれた下着が使えないのなら弁償しますから!どうか今回の事は!」
男「ああ、うん…」
同僚(だめだ、これは)

同僚「まあ、男が男に下着を、しかもソッチ系の人に盗まれるっていうのはかなりくるんだろうね…」
同僚「こっちとしてはしかるべき所に出たいのだけど。被害総額もそう低い物じゃないし」
少女「厚かましいお願いをしているのはわかっています。でも、それでも今回の事は…」
男「…うん、いいよ」
同僚「男」
男「そっちのお兄さんが盗んだ下着分のお金を弁償してくれれば、警察には言いません」
少女「あ…ありがとうございます…!」
男「ただ、それは妹さんに免じてそうするだけです。もしお兄さんが俺の所以外にも同じことをしたら今回の事を報告させていただきます。それでいいですね?」
少女「はい!私が兄によく言い聞かせます!」
男「うん。お兄さんも、もうこんな事はしないで下さい。ほんとの事をいうと、下着が盗まれる度にすごく怖かったし、気持ち悪い思いをしたから」
釜子「わかっ…わかりました。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」
同僚「……」

同僚「ねえ男」
男「なに」
同僚「警察に突き出さなくてよかったの?すっごい真っ青な顔してたじゃん」
男「……うーん、なんていうか、下着が盗まれるっていう、しかも男にやられるのって初めての経験だったし、すごく気持ち悪かったけどさ」
男「俺のことが好きで盗んじゃったのは本当かもしれないし」
男「出来心でやっちゃうことって、大なり小なり俺らにもあるじゃん?」
男「今回のことを反省して、二度とやらないならいいよ。もう忘れたいし」
男「次やったら容赦無く警察に突き出すけどな」
同僚「ふうん…」
男「いやー、しかしあれだな。下着盗まれた女の人の気持ちって、こんなだったんだなー」
同僚「“あんたの事が好きな人が盗んでるかも”っていうの、当たってたな」
男「相手が男だとは思わなかったけどな」
同僚「男性が性的被害に合う時代なんだねぇ」
男「いままで表にでなかっただけで、昔からあったと思うけどな」
同僚「性犯罪の被害者はか弱い女性だけ、ってわけでも無いのかもなぁ」

男「もうこんなのは勘弁だな」
同僚「それはこっちの台詞。付き合ってやったんだから今度ちょっといい居酒屋でも奢ってよ」
男「はいはい。……」
同僚「? なに、人の顔見て」
男「いや、同僚っていま彼氏いなかったよなって思って」
同僚「2ヶ月前に別れたばかりってこの間言ったと思ったけど?喧嘩売ってる?」
男「いやいや、さっき暗くした部屋の中で話してて思ったけど、俺同僚のことちょっといいなって思ったっていうか」
同僚「はぁ?」
男「だってほら、俺のことセンスいいとか褒めたじゃん」
同僚「そうだっけ?」
男「そうだよ」
同僚「いやー私はお断りだわー」
男「なんでっ」
同僚「タイプじゃないし。それに、ちょっといいなって思ってるのって吊り橋効果でしょ」
男「そんなことない!…多分」
同僚「アホらし。じゃ、もう帰るわ」
男「え、ちょっと待って。こんな夜遅いのに帰るの?」
同僚「こんな夜遅いから帰るの。じゃ、また明日ね」
男(タイプじゃない…俺のこと勿体無いとか言っといて…チクショー!)
同僚(いいなって言われて、ちょっとどきっとしたとか、言えないよなぁ。あーあ)



おわり。

最後にフラグみたいなのを混ぜたりして。

お付き合いありがとうございました。

初めて立てたssを、読んでくださりありがとうございます。
下着にまつわるエピソードもちょいちょい投稿されて、やっぱり事実は小説よりも奇なりだなぁと思いました。

続編はどうでしょうね。気が向いたら書きたいなぁとは思います。

それではこれにて失礼いたします。

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