【安価】勇者「オレとお前で」 魔女「魔法習得ね」【2スレ目】 (655)





●このスレは、勇者と魔女が『安価魔導書』で打倒魔王を目指すSS……の、2スレ目になります。


1スレ目↓

【安価】勇者「オレとキミとで」 魔女「魔法習得ね」
【安価】勇者「オレとキミとで」 魔女「魔法習得ね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404706169/)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



※一日のうちに【魔法】の複数投下は不可

※こちらから安価の指定はしないため、好きなタイミングで【魔法】を書き込んでください。

※不定期更新




【魔法】例)

○27『GeSxHwdA0』
  呪文効果:重力を操作する魔法
  習得条件:魔女の命令に勇者が丸一日従う


<重要>

◎魔法の「呪文効果」と「習得条件」の2つを書き込む

◎「習得条件」には必ず「勇者」と「魔女」が参加する



・「>>27に書き込まれた魔法」は「安価魔導書の27ページに載っている」として扱う

・「魔法を書き込んだコメントのID」が「GeSxHwdA0」の場合、魔法の呪文は「GeSxHwdA0」となる




・「魔女」というのは「魔法使いの女の子」という意味

・魔法は「習得条件を共に満たした魔女」が「勇者のすぐ傍にいる時」しか使えない



・本スレでも、よろしくお願いします!!




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1409145106




★ここまでの主要な登場人物 概略



勇者
・セドサル王国の勇者として、両親と妹のいる実家を出て、王城に暮している15歳の少年。
・城に住み込んでから9年間ずっと、身の回りのことはメイドが、修行は武闘家が面倒見てきた。
・最近、魔女のことが気になりはじめているらしいが、彼自身も鈍感なのでどうしようもない。
・『……約束するよ。誰も死なせないし、みんなずっと一緒にいよう』

魔女
・王国お抱えの魔法使いとして『安価魔導書』を読み解き、魔法習得に励む15歳の少女。
・家族や親類は魔物に殺されており天涯孤独。それからどうやって生きてきたのかは謎に包まれている。
・自分や他人の感情にはかなり鈍感で、恋愛感情というものを理解していない節がある。しかも不器用。
・『……これが家族なんだ。なんか、すごく羨ましいなって思った』

メイド
・セドサル王城に仕え、勇者の身の回りの世話を任されている16歳の少女。
・ずっと共に育ってきた勇者を慕っているが、勇者には姉のようにしか思われていないことが悩み。
・家事万能、器量良し気立て良し、おまけにわがままボディという女子力の高さ。でも思い込みが激しい。
・『勇者様っ! あ、あの、私……私、勇者様のことが……!!』

妖精
・『安価魔導書』の魔法で勇者と魔女の血液から生み出され、現在は小学生サイズの妖精。生後16日目。
・勇者のことはパパと慕うが、魔女に対してはネグレクトされたことを根に持っているので冷たい。
・勇者の人懐っこさと魔女の不器用さを色濃く受け継いでいるので、扱いが難しい。
・『べ、べつにいいけどねっ! 暇だったから、パパの相手してあげても、いいよ……///』

僧侶
・ラートルム教会で神父見習いとして働く、治癒術に長けた15歳の少年(?)
・やることなすことがことごとく裏目に出る性質で、今日もどこかで誰かをブチギレさせている。
・時折フラっと賭場に出入りしては、朗らかな笑顔で札束を抱えて帰ってくる。もちろん全額寄付。
・『ううん、悪いことはしてないよっ!? これは、ちょっと賭場で一発当てて……///』

騎士
・見た目は小学生にしか見えないが、名家の貴族であり王国最強の剣術使いでもある19歳の少女。
・魔王討伐遠征メンバー候補に選ばれたものの、勇者の独断で落とされる。そのため彼を憎悪していた。
・小人をこっそり飼っているが、それは自分よりも小さい人間が嬉しかったからでは決してない。
・『くるルルルゥゥァァアアアアッ!!』

小人
・ボロ屋敷に隠れ住んでいる小人族の少女で、たくさん集まっている小人族のうちの1人。
・小人たちのせいで幽霊屋敷と噂されていたその屋敷を調査に来た騎士に見つかり、飼われていた。
・勇者のファーストキスの相手であり、じつはお互いにそのことを結構気にしている。
・『……き、騎士おねえちゃんが、そう言うなら……///』

武闘家
・勇者の師匠であり、『王国最高戦力』『武神』などと呼ばれ恐れられている17歳の少女。
・病弱すぎるせいで1日3時間しか動けず、1日3分しか戦えず、1日3秒しか本気を出せない。
・弟子への教育方針は、『やっべ、これ死ぬんじゃね? くらいでちょうどいい』らしい。
・『ふふ、すまない。咳かと思ったら喀血だったんだ』

商人
・レアアノス商会会長の一人娘にして、商会幹部を務めている15歳の少女。
・カリスマ溢れる大人の雰囲気だが、純粋すぎてどんなことでも信じてしまう天界メンタルの持ち主。
・勇者が告白した初めての女性であり、彼をなにかと家に連れ込み親に会わせようとしてくる。
・『告白なんて生まれて初めてだったの。とても嬉しかったわ』






・セドサル王国の姫にして、公の場へ滅多に姿を現すことのない引きこもり気味な16歳の少女。
・とても頭が切れる上に冷酷さを併せ持つが、ぽやっとした性格のせいで掴みどころがない。
・親友であるメイドの恋を応援しているが、勇者の鈍感さとメイドの臆病さに手を焼かされている。
・『うふふ。敵になってから対処するようじゃ、三流だけどね~』

盗賊
・魔物によって滅ぼされた盗賊団唯一の生き残りの、褐色の幼女。
・現在は彼女が意識不明に陥っているため、肉体の健康を維持するために魔物が体内から操っている。
・体内の魔物は、姫との契約によって、ある程度の自由と身の安全が保障されている。
・『なにしてんのよ……キスするんだから、目ぇ開けてんじゃねぇわよ』

剣士
・勇者に絶望し、王国を飛び出して、女であることも人間であることも捨てた15歳の獣人少女。
・人間だった頃に魔王と出会い、数多くの忌まわしい魔法によって肉体改造を受けてしまい……
・獣化のモチーフはライオンだが、雌なのでパッと見は猫にしか見えないことを気にしている。
・『テメェらは俺様の真の姿、真の力でもって、八つ裂きにしてやるッ!!』

遊び人
・本編未登場。
・勇者が幼い頃、世話になったという遊び人の少女。
・王様の方針によって、勇者に女性の扱いに慣れさせるため雇われたらしい。
・勇者は昔お世話になって以来、現在は交流がないようである。

忍者
・セドサル王国郊外に佇む、ウルタル忍者屋敷の十二代目当主であるらしい、黒ずくめの人物。
・身長は約1メートル、全身くまなく黒布で覆っており、低く抑えた声のせいで性別も年齢も不明。
・勇者と魔女に頼られた際にも親切に対応してくれた人格者、のはずなのだが……
・『事こうなれば……もはや……  生かしては返せぬぞ』

王様
・セドサル王国の国王にして、勇者に『安価魔導書』に関する任務を授けた初老の男性。
・当時7歳の姫とチェスをした際、キング以外の駒を全部取られて以来、怖くて目を合わせられない。
・最初はハーレム路線にする予定ではなかった筆者が、男キャラの扱いに非常に困っているらしい。
・『機は熟した。ついにお主に動いてもらう……期待しておるぞ』

魔王
・本編未登場





★前スレで修得した魔法一覧


『kehl/TySO』傷を癒す魔法
 (治癒能力はそこそこ)

『DEfhjt+t0』分身を生み出す魔法
 (1~3体まで)

『+cridnAa0』外見年齢を操る魔法
 (10年単位で)

『WKLmDMDO0』ステータスを上げる魔法
 (特に筋力)

『lHeHMq8t0』存在感を消す魔法
 (姿や声を消す。触れられればわかる)

『QzLSDaHL0』妖精を生み出す魔法
 (使用者の血で生み出す)

『nWH8bEgTO』電撃を生み出す魔法

『OWmamHZi0』打撃を撃ち出す魔法
 (使用者の打撃力に依存)

『YXpSvsCP0』光を操る魔法
 (少量の光を操る)

『9MdEwAXc0』風邪を引かせる魔法

『PQHxyF+n0』小人にする魔法
 (対象者の身体を自在に縮小する)

『WxN0tWY00』植物を操る魔法

『PETnxi4F0』花を咲かせる魔法

『JIJdQPEB0』結界を張る魔法
 (ドーム型のバリア)

『qtBtNTow0』魔法の効果を高める魔法
 (勇者と魔女が同時に、対象とする呪文を唱える)

『e9bO2M2/0』冷気を操る魔法

『MsInpXCF0』爆弾を生み出す魔法
 (投擲用の小型爆弾)

『3YVIWflK0』熱感覚を操る魔法
 (実際に熱は生み出せない)

『M8vNIwtA0』性別を操る魔法

『jH8yi4SjO』風を身に纏う魔法

『d9YTlIoW0』障壁を生み出す魔法
 (好きな形状のバリア)

『lX9hbCcyo』干渉を阻む魔法
 (勇者と手を繋いているあいだ魔女が完全無敵)

『8/ggmZ8ro』予知夢の魔法
 (75%の確率で)

『ozSGML1Ho』邪心を斬り払う魔法
 (勇者の剣に斬られると邪悪な心を失う)

『8Bpv30Gj0』飛行の魔法





★前スレで出た魔法一覧(1/2)


『XkyiD10Lo』水を操る魔法 『JMYmPCuy0』火球を撃ち出す魔法 『vumtQOEb0』体勢を変更する魔法 『kehl/TySO』傷を癒す魔法 『DEfhjt+t0』分身を生み出す魔法 『7pGSqLiqO』匂いを操る魔法 『+cridnAa0』外見年齢を操る魔法 『WKLmDMDO0』ステータスを上げる魔法 『lHeHMq8t0』存在感を消す魔法 『XnrwNHEjo』判断能力を高める魔法 『xgxGFhQ/0』空間移動の魔法 『GfcyF95h0』災厄を消し去る魔法 『VWXWEoyH0』炎を操る魔法 『OoJYxE4g0』雑魚を葬る魔法 『WwYbdn1SO』未来を見通す魔法 『QzLSDaHL0』妖精を生み出す魔法 『oW1I5rV80』精神の状態異常を防ぐ魔法 『nWH8bEgTO』電撃を生み出す魔法 『VqIQRI8B0』服装を変える魔法 『OWmamHZi0』打撃を撃ち出す魔法 『OTRJgjE50』思考を読み取る魔法 『1tBBM1070』壺を落とす魔法 『jEo05dN50』電撃を撃ち出す魔法 『YXpSvsCP0』光を操る魔法 『ymVndAK80』異界の生物を呼び出す魔法 『5W+SMgXto』麦茶を操る魔法 『XdHQdz760』装備品を取り寄せる魔法 『9MdEwAXc0』風邪を引かせる魔法 『PQHxyF+n0』小人にする魔法 『WxN0tWY00』植物を操る魔法 『4Xa7Zzj20』ワインを生み出す魔法 『PETnxi4F0』花を咲かせる魔法 『/1Abzi150』依存度を高める魔法 『OgM+L2p90』魔力を授ける魔法 『qM63jdog0』外見を入れ替える魔法 『FoC1zajD0』従僕を召喚する魔法 『Yz8Vpy6SO』運気を高める魔法 『KjhRniHH0』怪物を生み出す魔法 『0a/sPwqJ0』兎を料理させる魔法 『uUsFoat4o』猫を召喚する魔法 『i739vICK0』卵を生み出す魔法 『crWFKVMQ0』卵の状態を変える魔法 『JIJdQPEB0』結界を張る魔法 『jstDb1aRO』コピー生物を生み出す魔法 『+/K7Z9laO』消滅させる魔法 『ayuDK62E0』幽体を引き抜く魔法 『qtBtNTow0』魔法の効果を高める魔法 『CTuFtePC0』闇を操る魔法 『qWYVNFyQ0』刃に変える魔法 『0qdJjRpz0』時間を操る魔法 『yQhen/T80』精神年齢を下げる魔法 『e9bO2M2/0』冷気を操る魔法 『ETxynF+d0』魅了する魔法 『zVfEmc/20』テレパシーの魔法 『ywBTQehb0』闇を司る魔法 『ytxSOc1a0』物体を情報に変える魔法 『kI4fEc1DO』世界樹の実を取り出す魔法 『7CjKEx1b0』無呼吸になる魔法 『NhvuM90AO』消耗を回復する魔法 『MsInpXCF0』爆弾を生み出す魔法 『bqPLgDM/O』嘘を実現する魔法 『zlVmdz1DO』好感度を読み取る魔法 『PqW0bdn60』速度を操る魔法 『lALjY1M60』大爆発を起こす魔法 『cTVydyGH0』魔力を撃ち出す魔法 『iQf8fDTM0』飛翔の魔法 『HR4bQxsQ0』光を司る魔法 『3YVIWflK0』熱感覚を操る魔法 『QqD9fIfT0』異世界を観測する魔法 『hthihEgZ0』感情を操る魔法 『rPKk7y+o0』加護を与える魔法 『xXlzjP6J0』残虐性を高める魔法 『JOUj9e480』鬼になる魔法 『Ts4pFP/W0』魔法を創造する魔法 『suG4ays+o』認識をずらす魔法 『CRhkZwhc0』失笑させる魔法『5jg49LR+0』光を撃ち出す魔法 『CRhkZwhc0』笑わせる魔法 『M8vNIwtA0』性別を操る魔法 『jH8yi4SjO』風を身に纏う魔法 『zYANZvok0』名前を変える魔法 『RUaHN5dt0』魔法を生み出す魔法 『eiR80jH90』腕力を高める魔法 『bezVyZld0』光線を撃ち出す魔法 『061kPHE60』瀕死で蘇生させる魔法 『nN9eNYxk0』未来を占う魔法 『GB+mwCO10』魔物を混成する魔法 『XZTLHl+n0』爆笑させる魔法 『C02/ke4d0』前兆を知る魔法 『5yn3we+eo』真空を操る魔法 『HbO6dzrK0』気温を遮断する魔法 『LJm7tjZa0』汚れを消す魔法 『xSm3YIft0』月に移動する魔法 『d9YTlIoW0』障壁を生み出す魔法 『7DvFmRei0』大爆笑させる魔法 『2Ve5U03k0』雷を操る魔法 『ShkDrvRwo』菓子作りが上達する魔法 『j4aoknxr0』水を司る魔法 『Flt2vX/DO』気性を穏やかにする魔法 『spC6NqOf0』隠された道を知る魔法





★前スレで出た魔法一覧(2/2)


『I2d5RBQ0』獣人になる魔法 『TNzN6UZs0』なにかを起こす魔法 『YNYL086d0』諦念操作の魔法 『MnZr5MVH0』願いを叶える魔法 『iQrFADSD0』飛竜を呼び出す魔法 『7bIAWYqBo』飲食物に回復能力を付与する魔法 『AtYPaK1g0』聖剣を生み出す魔法 『2nOqv9p/0』習得条件を無視する魔法 『sYjBFC330』衣食住を確保する魔法 『ZDcKCPBQ0』時間逆行の魔法 『HCyehH1x0』疲労軽減の魔法 『JwVzQGJn0』向きを操作する魔法 『g9JSzTM00』障害物を破壊する魔法 『FvPLm3Aj0』魔物になる魔法 『NR/Tq9wZ0』信頼を力に変える魔法 『6QfPQQgB0』瞬間移動の魔法 『eCuvysX30』音楽で体調を操る魔法 『xnKHYrOY0』異世界の自分を呼び出す魔法 『Pb0Ky9OBo』月光で傷を癒す魔法 『VoO2XviP0』嘘を信じさせる魔法 『Afb+2hdDO』牛になる魔法 『lX9hbCcyo』干渉を阻む魔法 『mPzgyewt0』品格を高める魔法 『/HOcoDNo0』記憶改竄の魔法 『0dU8R8a20』鳥になる魔法 『XlcU/D1S0』魅力を高める魔法 『8/ggmZ8ro』予知夢の魔法 『jkz85nIn0』時間の経過速度を操る魔法 『ozSGML1Ho』邪心を斬り払う魔法 『jreLL9Jx0』好感度を数値化する魔法 『MdzvbNna0』日光を生み出す魔法 『Pe3fiouQ0』風を操る魔法 『9rw8oM2i0』ラッキースケベの魔法 『R/uoF/c+0』対消滅の魔法 『8q9BPwFB0』風を司る魔法 『PupJl6Pg0』無酸素運動の魔法 『HMewCnvM0』霊魂を操る魔法 『7nadcFxa0』食べ物を生み出す魔法 『7CcCgV0u0』蘇生の魔法 『lYfgFF4I0』奴隷化の魔法 『KX6EzHVN0』透視の魔法 『ChqfI0qv0』潜在意識を自覚する魔法 『ZOdDLr8x0』眠らせる魔法 『7xvIn+Zk0』気分を高める魔法 『B0kl+JYI0』足元を保護する魔法 『hVVVR2G7o』解呪の魔法 『8Bpv30Gj0』飛行の魔法 『ZMbqpj/g0』白色を操る魔法 『5F8vwg0b0』羽根を展開する魔法 『ONdNKs260』料理が上達する魔法 『HrOvfUfro』人魚を呼び出す魔法 『Sh7g0MHDO』邪悪な魔法を反射する魔法 『MNTm3Nj50』瞬間移動の魔法 『vgoR4aV6o』水中で会話する魔法 『SSTUZnpL0』完全治癒の魔法 『6QNanvIKo』魔力を増幅する魔法 『hW3IYKMR0』魅了の魔法 『wT7OwIzk0』日光を遮断する魔法 『b6tQzPAWo』映像を記録する魔法 『0eAPutmz0』性通念を操る魔法 『NDvqz+tK0』連想を操る魔法 『ig0nZkbM0』体型を操る魔法 『BNtWzVY7o』武装解除の魔法 『Ko+DzM8L0』性格変換の魔法 『fiCm+JtTo』魔法の発動を延期する魔法 『8UNXJNrb0』女子力を高める魔法 『B0qgc1LDO』ツボを突く魔法 『aGCwVN6Do』生物の動きを止める魔法 『4/pA9hhN0』性欲を高める魔法 『w2z53jQSO』刃を生み出す魔法 『qWhoaUsF0』状態を戻す魔法 『I5hlVQtt0』幻覚を生み出す魔法 『pnZccOKPo』兎になる魔法 『XReeiNGw0』感覚を接続する魔法 『qfmTmP0A0』切断力を高める魔法 『MUO3u41q0』時間を切り離す魔法 『eMH97zhk0』相殺の魔法 『yh1ahCEz0』夢を操る魔法 『QYxPPzRpo』弱点属性を知る魔法 『pbRdcKoe0』淫乱にする魔法 『XITtFsM90』感情を読み取る魔法 『aKI9mG1jo』酔わせる魔法 『FREth+3r0』爆発を操る魔法 『PhLU77ta0』大衆を魅了する魔法 『1F25iZWro』天馬を呼び出す魔法 『8KN1EWVU0』知人を呼び出す魔法 『VfbHtz9T0』キャンプ道具を生み出す魔法 『wC+mUcXR0』再会の魔法 『L2sqZ8+l0』魔法を反射する魔法 『9+UInZKJ0』鎧を装備する魔法 『iobNPS3c0』秘め事を暴く魔法 『ZDUpjKlF0』打撃を斬撃に変える魔法 『MHHfeZrW0』物体を取り寄せる魔法 『dpkaGXrEo』空間を炸裂させる魔法 『JkQU5ukGo』拳を硬化する魔法 『Af4Xa5vT0』世界を生み出す魔法 『VSGZzITq0』力を強める魔法 『nHycezsi0』魔物を呼び出す魔法 『pW+NnEBU0』限界突破の魔法 『Zxqlahll0』隠れたものを見つける魔法 『GIcFiEeS0』魔力の制御能力を高める魔法 『BV19N8IT0』本性を暴く魔法 『G7SECGUGo』記憶力を高める魔法



これはひどい・・・。

それでは本スレでも、よろしくおねがいします!!




―――セドサル王国・ユノシュバラ闘技場・試合場―――



『さぁ、さきほどの試合の勝者、武闘家が重態のため棄権ということで……』

『大会の進行上、この準決勝・第六試合が、本大会の実質の決勝戦となります!!』



『さきほどの準決勝・第五試合では、歩く大災害の2人がぶつかったため大変なことになりましたが……』

『ご安心ください! 今回の選手は、観客席を吹っ飛ばしたりは致しません!』

『本当にご安心を!! 避難しなくて大丈夫です! みなさん落ち着いてください!』





勇者「……試合場の形が変わってんじゃねーか!! なにやってんだ師匠たちは!?」スタスタ



『さぁここで西門から入場してきたのは、先刻熱い試合を演じてくださった勇者様だーっ!!』

『先ほどは、セドサルの英雄に恥じない男らしい戦いを見せてくれましたが……!』

『今回はどのような戦いを我々に魅せてくれるのか!!』



魔女「勇者、負けないでね!」


勇者「わかってる。負けられない戦いには、負けないよ」





剣士「これは……隕石でも落ちたのか?」スタスタ



『そして東門から入場してきたのは、全身を甲冑で覆い隠した謎の剣術使い、剣士!』

『どうやら王国支給のフルアーマー装備ではなく、闘技場支給の甲冑に着替えたようですが……』

『あれでは恐らく、防御性能は段違いに低下しているはずです! これはなにかの作戦なのでしょうか!?』





勇者「獣化しなくてもいいのか?」


剣士「そっちこそ、素手で戦った方が強いんだろ?」


勇者「オレは、お前の目指した剣の道で戦うつもりだ」


剣士「俺様も、人間だった頃の“ケジメ”をここでつける!」




勇者「いくぞ、剣士っ!!」チャキッ


剣士「かかってこい、『勇者』!!」チャキッ





『両者、剣を構えました! それでは試合を開始したいと思います!』

『準決勝、本選第六試合……改め』


『決勝戦―――始めッ!!!』 』





勇者「うおおおおおっ!!」ブンッ


剣士「はあああああっ!!」ブォンッ


 ガキィィンッ!!




『両者、開始早々に剣をぶつけ合い、鍔迫り合いだーっ!』

『どうやらパワーもテクニックも伯仲している二人のようです! これは熱い展開となりそうだ!!』





勇者「これ、独学なんだよな?」ギリギリ

剣士「まあな。でも獣人になってからは、魔物相手に実践で腕を磨いてたが」ギリギリ

勇者「荒削りだけど筋は良い……って、うちの師匠なら言うと思うぞ」グッ

剣士「そりゃどうもッ!!」ブォンッ


 ガキィィンッ!!





剣士「戦いの勘と、動体視力、そして筋力は獣人としてのものだから、かなり強化されてる」

剣士「この動き、人間について来れるか?」ヒュンッ


 キィンッ ガキィンッ キンッ


勇者「剣術でもスピードでも、お前は騎士に追いつけてなかったじゃないか」

勇者「それにお前の動きは、もうだいたい慣れたよ!!」ブンッ


 ガッキィインッ!!


剣士「……っ!?」ヨロッ





『今までの戦いは剣術闘技大会としてはむしろ異常でしたが……』

『ここへきて、ようやく正統派の剣術勝負がなされています!!』

『両者一向に引かない、剣技の応酬! 果たして先に膝をつくのはどちらとなるのかーっ!!』





剣士「……俺様をここで始末しておいた方が、後々のためだと思うぞ」

勇者「なんだよ、急に」

剣士「俺様は魔王軍の四天王……どうあってもテメェとは相容れねぇ」

勇者「オレはお前を斬ったりしない」

剣士「俺様は膝をついたって、腕を切り落とされたって、負けを認めねぇぞ」

勇者「……めんどくさいやつだな」





剣士「殺されなきゃ、止まらない……止まれないんだ」

勇者「それでも殺さない。オレはセドサル王国に選ばれた『勇者』だからな」

剣士「……はぁ? 『勇者』なら、なおさら俺様を……」

勇者「『勇者』だから、セドサル国民を手にかけたりはしない! 絶対に!!」

剣士「……っ!!」





剣士「俺様は……魔物で……」

勇者「お前が僧侶くんへの攻撃をやめた瞬間から、もうお前は、オレの守るべき人間になった」

剣士「……っ」

勇者「国民を幸せにするのが、『勇者』の義務だ。だからお前のことも幸せにする」

剣士「なら―――証明してみせろッ!!」ダンッ





勇者「―――」ユラッ


剣士「!? それは……!」


 ヒュンッ!!


 ガギギギギギンッ!!



剣士「ぐっ、ぅおおおっ!?」ズシャッ


勇者「本物には遠く及ばないけど……まぁ、上手く行ったほうか」





『い、今のは……本選第一試合で騎士が見せた、超高速剣技!?』

『いつの間に習得していたのか、その技で一瞬にして剣士を地に叩き伏しました!!』

『剣士の持っていた剣もはるか遠くに吹き飛ばされ……これでは戦いを続けることは不可能でしょう!』



勇者「オレの勝ちだ。約束通り、オレの言うことには従ってもらうからな」チャキンッ



『勇者様も剣を収め、試合場を後にすべく歩き出しました! どうやら試合が終わるよう―――おや?』





剣士「まだ……俺様は……」

剣士「止まれない! 止めれないんだよッ!!」

剣士「アタシはぁぁああああああああ!!」メキメキッ!!



勇者「……獣化!?」



 ダンッ!!


剣士「勇者ぁぁあああああああああああッ!!!」ヒュンッ



勇者「……っ!!」





 ズダンッ!!


    ケイハゲキサイテンザンコウ
勇者「勁破撃摧貼山靠ッ!!」




剣士「―――ッッッ!?」ドッパァァアンッ!!


 ヒュゥゥ…


 ドサッ





『おおーっと! なんだ今の技はーっ!?』

『体当たり……に見えましたが、肩、いや背中で……? 背後からの奇襲を、剣を抜くことさえなく一蹴!!』

『勇者様に触れた剣士が、冗談みたいな吹っ飛び方をして、10メートル以上も先に落下しました!』

『身に着けていた鎧や服も消し飛んで……おや? あの身体は……』



勇者「……ほら、これ着ろ」バサッ


剣士「……かッ……ぐぅ……」ピクピク





勇者「オレの相棒の魔法使いはな、わりと大抵のことはできる」

勇者「肉体の時間を10年巻き戻して、お前が獣人になる前に戻すこともできるし」

勇者「どうしてもって言うなら、性別を男に変えることだってできる」

勇者「邪心を払うこともできるし、お前のために新しい魔法だって習得するから」


勇者「……だから、そんな捨て鉢になるなよ。止まらなくてもいいから、オレたちと一緒に歩いて行こう」ナデナデ



剣士「…………っ」コクッ





『これは……試合、終了……でしょうか? どうやらそのようです!』


『試合終了ーっ!!』


『この瞬間、本大会の優勝者が決定しました!!』



『本大会優勝者は、我らがセドサルの英雄、勇者様だーっ!!!』


 ワァァアアアアアアアアアアア!!!

 パチパチパチパチッ!!





―――ユノシュバラ闘技場・医務室―――



僧侶「お疲れさま、剣士ちゃん」ニコッ

剣士「……僧侶ちゃん」

僧侶「すぐに治すから、待っててね。そしたらいっしょに、お祭りに行こうね」パァァ…

剣士「……うん」





勇者「師匠直伝の、シヴァロス道場に伝わる奥義を3発も食らって……なんでオレより元気なんだよ」グッタリ

魔女「ほら、勇者も動かないで」パァァ…


騎士「攻撃をかました勇者の方がぐったりしてるってのも妙な話よね」


勇者「だから拳は使いたくないんだ! 魔力の消費半端ないし、撃った部分は死ぬほど痛いし!」

魔女「それでいつも剣を使ってるんだね……」





魔女「で、どうするの? えっと……剣士だっけ?」

剣士「……。」

魔女「人間に戻すとなると、5歳くらいの女の子になっちゃうけど」

剣士「いや、いい。俺様は、このままで……」

魔女「人間に戻れるんだよ? そのままでいいの?」

剣士「……まだ戦いたいんだ。今度は……なにかを守るために」

魔女「……ふぅん」





僧侶「いいんだよ、魔女さん。剣士ちゃんはこのままでも十分可愛いもんね」ギュッ

剣士「こ、こらっ!」///


勇者「見せつけてくれるなぁ。もしかして2人って……そういう関係?」


僧侶「え? ―――あっ!?」/// バッ

剣士「はぁ? 違うって。ただの幼馴染だよ。だいたい俺様たちは2人とも、おん……」

僧侶「あーっ! あーっ!! なんでもなーい! なんでもないよね、剣士ちゃん!?」グググッ…

剣士「もがっ!?」





魔女「ふぅん。でもどっちかって言うと、僧侶くんの方が女で、剣士の方が男っぽいよね」

勇者「そうそう。ところで剣士は、どうして自分のことを“俺様”って言うんだ?」


剣士「それは、自分が女だってことがコンプレックスだったのと、獣王としての威厳を……」


僧侶「でも変だよぉ。昔みたいに“アタシ”って言ったほうが可愛いと思うなぁ」

剣士「いや、それを言うなら僧侶ちゃんの“ボク”こそおかしいだろ。なんでおん……」

僧侶「うわーっ! わーいっ! なんでもないよーっ!? えっへへへーっ!!」ググググググッ!!

剣士「ふもがっ!? し、しぬ……!?」ジタバタ





勇者「もう一つ質問なんだけど、なんで剣士は、僧侶“ちゃん”って……」


騎士「勇者。元気になったなら、さっさと師匠のお見舞いにでも行ってきなさいよ」ベシッ


勇者「痛っっったいッ!! なにすんだよ!?」ヒリヒリ

騎士「ほらほら、魔女も早く。武闘家は、シヴァロス道場に運ばれたらしいわよ。顔見せてきなさい」グイグイ

魔女「え、ちょっ……!」



僧侶(ありがとう! ありがとう騎士ちゃんっ!!)グッ


騎士(“ちゃん”はやめろっつってんだろーがぁぁああああ!!)



需要がありそうなら出そうとも考えています!


が、とりあえず性別を気にせず恋愛感情もなく、仲良くふざけて遊べるというポジションに、
じきに剣士をあてようと考えています。


男友達の果たすべき役割は、たいてい他のキャラがやってしまっているので、
様子を見ているといった感じでしょうか……

まだ確定ではありませんが、動かし方に悩んでいた重要キャラを男にしてみたら、
無駄に生き生きと動き出してくれたので、しばらく頭の中で自由にさせてあげて様子を見たいと思います。

それと、このスレで喩えとして挙げられる作品やキャラが、今のところ1人もわかっていないため、
あんまりアドバイスなどが反映できていなかった申し訳ないです。。。

それでは最後までまったりお付き合い、よろしくお願いします!




―――セドサル王国・シヴァロス道場―――



 ドタドタドタ… ガララッ


勇者「師匠っ!!」ドタドタ


武闘家「……勇者くんか。よく来たね……げほっ」ムクッ


勇者「ああもう、布団から出なくていいですよ。寝ててください、ほら」グイグイ



魔女(うっ……! なにこれ、部屋中血まみれ……!?)





勇者「相変わらず鉄臭い部屋ですね。それで、身体の具合は?」

武闘家「大したことはないさ。僧侶ちゃ……僧侶くんに治療してもらったからね」

勇者「そうですか……だけど、ほんとに無理はしないでくださいね!?」

武闘家「無理なんてしてないさ……ごほっ」

勇者「してますよ! そんなに弱るくらいなら、あんな大会、負けたってよかったのに……」

武闘家「……負けるわけにはいかなかったんだ、絶対にね」

勇者「え……?」

武闘家「げほっ、ごほっ……いや、こちらの話だ、気にしないでおくれ」





勇者「ねぇ魔女……なにかこう、師匠に役に立つ魔法とかってないの?」

魔女「えっと……ないことはないっていうか」

勇者「あるの!?」

魔女「でも、前にも武闘家さんに見せたことがあるんだけど……」ペラッ


○614『SSTUZnpL0』
呪文効果:一日に一度だけ、対象のどんな病気や傷でも完全に回復する
習得条件:勇者と魔女で人工呼吸をする


勇者「どんな病気でも!? それなら……!」

武闘家「だが、それを使用することが良いことかは、わからないんだよ……けほっ」

勇者「え?」





武闘家「知ってのとおり、私はいくつもの種類の病気を、それこそ無数に併発しているんだ」

勇者「は、はい……でも、どんな病気でも治せるのなら……」


武闘家「私の身体は、医者が見てもどうして生きていられるのかがわからないような奇跡のバランスを保っている」

武闘家「だから、もしもこの魔法が……げほっ、ごほっ……すべての病気を“同時に”治すことができないのであれば……」

武闘家「結果的にこの魔法を使ったことで、私のただでさえ短い余命よりも、さらに早く死ぬこともあるかもしれない」


勇者「えっ……」





魔女「魔法の効果を高める魔法っていうのもあるんだけど……それも、どこまで高まるかはわからないし」


武闘家「だから、もしも私の身になにか重大な事態が発生した時、最後の手段として……」

武闘家「この魔法を使おうと、魔女ちゃんと話していたんだよ」

武闘家「それに人工呼吸というのは、要するにキスだからね。そう簡単にはできないだろう」


勇者「……」





勇者「……師匠らしくないじゃないですか」


武闘家「え?」


勇者「いつもの師匠なら、人工呼吸くらいさっさとやってしまえって言うじゃないですか」

勇者「それこそ、心肺停止くらいさせてでも!」


武闘家「え、いや、さすがにそこまではやらないよ……」


勇者「なんで今まで黙ってたんですか! なにをそんなにビビってるんですか!」

勇者「もし明日にでも師匠になにかあったらどうするんですか!?」


武闘家「……」





勇者「魔女、そこに寝て」

魔女「……え?」

勇者「いま、この魔法を習得しよう」

魔女「…………。」


武闘家「お、おい、勇者くん……あのね、魔女ちゃんにとってはファースト……」


魔女「じつはね……まだ、さっきの魔法の習得条件は、全部満たせてないんだよ」


勇者「え?」

武闘家「……?」





魔女「闘技大会で勇者が優勝する……それだけじゃ、あの魔法は習得できないんだよ」スタスタ


勇者「……えっと、それは……?」


魔女「勇者が優勝したら、魔女がご褒美をあげること……そこまでが、条件なんだ」グイッ



 チュッ



勇者「―――っ!!?」/// カァァ




武闘家「……っ」ズキッ





魔女「……ぷはっ」


勇者「……う、えっ、な、なにを……!?」



魔女「優勝おめでとう。かっこよかったよ、勇者」ニコッ



勇者「~~~っ!?」/// ボンッ


魔女「人生初キス、だから……それに、こういう感情って、あんまり、よくわからないんだけど……」




魔女「……け、けっこう、悪くない気持ちかもね」///





・・・・・・



勇者「よし、人工呼吸もこなしたし……これで師匠にもしものことがあったときも、安心してくださいね!」



武闘家「……」モゾーン



勇者「あの、師匠……? なんで布団を被って丸くなってるんですか? 出てきてくださいよ」


武闘家「やだ」モゾッ


魔女「な、なにか怒ってます? なに拗ねてるんですか?」


武闘家「……怒ってないし。……拗ねてないし」モゾモゾ





勇者「え、えっと……まぁ師匠もたまにはこういう時もあるだろうし、そっとしておこうか!」



武闘家「……今度死ぬまで修行するから」モゾッ



勇者「“死ぬほど”じゃなくて“死ぬまで”!?」


魔女「ど、どうしたんですか、武闘家さん……? なんで急に……」

魔女「今までだって際どい習得条件を勧めてきたりしたじゃないですか」


武闘家「……」ピョコッ


魔女「あっ、顔だけ外に……」



武闘家「……笑えよ」グスッ


魔女「なにをっ!?」


わかりづらくてすみません。

人工呼吸が初キスはちょっとアレ → まずキス → そのあと人工呼吸(描写割愛) → 師匠拗ねる




―――セドサル王城・王城前広場・ミスコン特設ステージ―――



勇者「ほー、これがミスコン会場ね。オレあんまり城から出させてもらえなかったから、初めて見たよ」

魔女「私も初めてだったけど……ねぇ、やっぱり出るのやめない? そんな大した魔法じゃないんだし……」

勇者「おいおい、オレだってさっき頑張ったんだから、魔女も頑張ってくれよ」

魔女「……まぁ、そうだよね」

勇者「ミスコンに参加すれば、魔法は習得できるんだっけ?」

魔女「いや、出るだけじゃダメで……」ペラッ





○180『7CjKEx1b0』
  呪文効果:水中で息をしないで活動できる
  習得条件:勇者も投票に参加する水着ありのミスコンで、魔女が3位以内に入賞する


○613『vgoR4aV6o』
  呪文効果:対象は30分間、水中でも呼吸と会話が出来るようになる
  習得条件:魔女が勇者の選んだ衣装でミスコンに参加し、3位以内に入賞する


勇者「これ、なにが違うんだ?」

魔女「アタシ的には、水中で会話ができるってところが重要」

勇者「なんで?」

魔女「会話ができるんなら、水中で呪文を唱えられるってことでしょ?」

勇者「ああ、なるほど。それはたしかにすごいかも」





勇者「っていうか、えっ、オレが衣装選ぶの!?」

魔女「武闘家さんに引きずられて参加予約に来た時、いくつか衣装を下見したから……」

勇者「ああ、その中からオレが選べばいいってこと?」

魔女「まぁそうなんだけど……その、結構衣装がさ……」///

勇者「?」





 ザワザワ…


勇者「ん? なんだ、やけにオレたち見られてないか?」

魔女「……あっ!」

勇者「どうしたの、魔女?」

魔女「M8vNIwtA0」


 ポゥンッ!!


女勇者「うぇっ!? なに!? なんで!?」





魔女「今までと違って、『勇者』は有名になっちゃったんだよ? 闘技大会優勝までしちゃってさ」

女勇者「あっ……そっか、そうだった。今までと同じようには外を出歩けないのか……」

魔女「勇者はセドサルの英雄で、しかも強いし見た目も結構イイし……ファンクラブとかできるよ、きっと」

女勇者「見た目って……王様とかメイドさんとかに言われて、身だしなみに気をつけてるだけだけど」

魔女「とにかく。これから外出するときは変装しないと、騒ぎになりかねないよ」

女勇者「うわー、めんどくさ……」ガクッ





―――ミスコン特設ステージ・衣装小屋―――



女勇者「……なんか、どれもこれも露出激しくないか?」

魔女「だよねっ!? そう思うよね!?」

女勇者「これとか……うわぁ、もう丸出しだろ。王城前広場でのイベントに、こんな衣装用意するなよ……」

魔女「一応、例年の優勝者の写真がそこに並んでるけど……」

女勇者「あ、これ見る限り、露出度は関係ないみたいだな。まぁ、服を含めた全体を評価するんだろうしね」





女勇者「ふぅん、これが歴代の『ミス・セドサル』ねぇ……」ジー

魔女「……勇者的には、どの女の子が―――」



女勇者「なーんだ、これなら余裕で魔女が優勝しそうだね」



魔女「―――」

女勇者「ね、魔女。そう思わない?」クルッ

魔女「……///」プイッ

女勇者「あれ、魔女? なんで無視? 泣くよ?」





・・・・・・


女勇者「あー、ズボンずり落ちてくるし、胸痛いし……ここの服貸してもらおうかなぁ」

魔女「それがいいかもね。露出少ないのも、あるにはあるし」

女勇者「あ、でも元に戻ったときに面倒かな……」

魔女「少なくとも人前では元に戻れないんだから、そんなの気にしなくていいよ」

女勇者「それもそうか……。じゃあ、どれにしようかなーっと」キョロキョロ





魔女「これでいいんじゃない?」スチャ

女勇者「よかねーよ。水着だよ」

魔女「じゃあこれは?」

女勇者「紐だよ」

魔女「もう、わがままだなぁ」

女勇者「魔女さん、あなたの衣装の決定権はオレにあるってこと、忘れてません?」

魔女「これとか露出が少なくて可愛くて、いいんじゃないかな」キリッ

女勇者「うん、懸命な判断だね」ニッコリ





・・・・・・


女勇者「ど、どう、かな……///」モジモジ

魔女「うん、いいんじゃない? なんならミスコンに出てみる?」

女勇者「も、もう受付は終了したんじゃなかったっけ……?」

魔女「ちっ……」

女勇者「舌打ち!?」



妖精「あーっ!! 魔女さんだー!」





魔女「よ、妖精ちゃん!? え、どうしてここに……」

妖精「だって、ほら」クルッ


メイド「あ……その、ええっと……」///


魔女「え、まさかメイドさん……」

メイド「も、もしかして魔女さんも……?」///

魔女「……まじでか」





女勇者「妖精もメイドさんについて来たんだ。それじゃ、しばらく一緒にいようか」ナデナデ

妖精「……」パシッ

女勇者「……え、あれ? よ、妖精? どうしたの?」

妖精「おばさん、だれ? 馴れ馴れしいんだけど」ジロッ


女勇者「―――」ピシィ…!!





魔女「あっ、妖精ちゃん、その人は……!」


女勇者「びぇぇえええええんっ!」ダダダッ


魔女「あ、待って勇者!」

妖精「……勇者? えっ!? あの人がパパ!?」

魔女「今は魔法で姿を変えてるけど……うん、あれ勇者」


妖精「わーっ!? パパごめんなさーいっ!! おねがい、待ってーっ!?」ヒューン





・・・・・・



妖精「ねー、パパ、ごめんなさい……。妖精が悪かったから、機嫌直してぇ……?」ナデナデ

女勇者「え、ちょっとなに言ってるかわかんない。ぜんぜん怒ってないし。絶好調だし」ツーン



魔女「拗ね方まで師匠譲りなんだ……」

メイド「勇者様にとって、武闘家さんはお母さんみたいな存在ですからね」

魔女「ふぅん。じゃあメイドさんは?」

メイド「…………お姉ちゃんですが、なにか……ッッッ!?」

魔女「な、なんでキレるの!?」





妖精「ねぇ、パパぁ……」グイグイ

勇者「つーん」ツーン

妖精「……ぱぱぁ」ジワッ

勇者「!!」


 ギュッ!!


妖精「ふぁっ!?」///

勇者「……ごめん、妖精。ちょっと大人げなかった」ギュゥゥ

妖精「パパ……!!」///





 ムニュッ


妖精「むむっ……! お、おっきい……!!」モミモミ

勇者「ちょ、妖精……?」///

妖精「魔女さんよりぜんぜんおっきいね! パパのほうがママみたい!」ニコッ



魔女「―――」ピシィ…!!



勇者「あはは、オレがママかぁ……たしかに無駄に大きいけど、メイドさんには劣るな」ポイン

メイド「う、あ、あの、勇者様……?」///





勇者「あ、ごめん……今のはデリカシーなかったね」

メイド「いえ、そういうことではなく……えっと、後ろ……」

勇者「後ろ?」クルッ


魔女「……」ニッコリ


勇者「魔女? どうしたの?」

魔女「表出ろ」

勇者「え?」


魔女「表出ろ。戦争じゃ」


※名前の表記は「勇者」ですが、今後しばらく勇者は女の子のままです。




・・・・・・



勇者「……ま、魔女、この服なんてどうかなっ……?」ニコッ

魔女「そんな服着れない」プイッ

勇者「え、いや、べつに露出は多くないけど……」

魔女「そのような服は、おっぱいの大きい勇者さんがお召しになればよろしいのではないでしょうか」

勇者「なにその口調!? ……ま、魔女もべつに、ちっちゃいってほどでもないんだからさ! えっと、普通くらいだよ!」

魔女「……ッ」ピキピキ

勇者「あ、あれ……? 魔女? 魔女さん?」





メイド「ゆ、勇者様! 勇者様はしばらく、外の空気を吸ってきてください! ねっ?」クイクイ

勇者「えっ……」


メイド(魔女様のご機嫌は私が取っておきますので、勇者様は少し時間を潰してきてください)ヒソヒソ

勇者(ご、ごめん、お願いね、メイドさん……)ヒソヒソ

メイド(おまかせください!)ヒソヒソ





―――ミスコン特設ステージ裏―――



勇者「はぁ……がんばって勉強したのに、女心はよくわからん……」トボトボ


妖精「パパ~! 妖精もついてく!」ヒューン


勇者「妖精……。もう、妖精の言葉で、魔女がめっちゃヘコんじゃったんだぞ?」

妖精「ふへへ、いい気味だね」ニヤリ

勇者「あれ!? この子意外と悪い子だった!?」

妖精「えへへ、うそうそ♪ でも魔女さんって、そういうの全然気にしないのかと思ってたのになぁ」

勇者「多分、妖精の言葉だから傷ついたんだと思うよ。それにもしかしたら、妖精がオレのことをママって呼んことがショックだったのかも」

妖精「?」





勇者「だから妖精が魔女のこと、ママって呼んであげたら機嫌が直ると思うんだけどなぁ」

妖精「んー。ママかぁ……」

勇者「まだ魔女のこと、怒ってるの?」

妖精「怒ってるっていうか……メイドお姉ちゃんのことをずっとママだと思ってたから、なんか魔女さんじゃしっくりこない感じなの」

勇者「ああ……なるほどなぁ。でも魔女もそれは、すごく反省してるからさ。妖精、お願い!」

妖精「むぅ~、パパがそういうなら、とりあえず、1回だけ呼んでみてあげる」

勇者「そうしてあげて。何度か呼んでるうちに、しっくりくるかもしれないしね」

妖精「はーい!」

勇者「よしよし、妖精はえらい子だぞー」ナデナデ

妖精「えへへぇ」///





 クイクイ


勇者「……ん?」クルッ


盗賊「やっ」フリフリ


勇者「『やっ』じゃねーよ。なにシレッと城の外に出てるんだよお前」

盗賊「姫の命令よ。物騒なのが国内に入り込んでる可能性があるから、メイドを守れって」

勇者「……もしかして剣士のことなのかな? どうやってわかったんだ……?」

盗賊「あの女がなに考えてるかなんて、わかるわけねぇわよ」

勇者「……まぁ、それもそうか」




勇者「っていうか、オレがオレだってわかるんだな」

盗賊「お前がそこの妖精に泣かされてるとこを、隠れて見てたからね」

勇者「……で、オレになにか用か?」

盗賊「メイドに付き添ってるんだから、べつに用がなくてもここにはいるけど……」チラッ


妖精「……?」フワフワ


盗賊「まぁいっか。そうね、お前に用があるわ」

勇者「魔王に関することでも話す気になったか?」

盗賊「だから、そんなの漏らしたら殺されるわよ。それに四天王って言っても、そんな大したこと知らないし」





勇者「じゃあなんの用なんだよ?」

盗賊「お前、このミスコンで誰に投票するつもりなの?」

勇者「えっ……誰って……」

盗賊「外からお前らの話を聞いてた限りだと、あの忌々しい魔女もミスコンに参加するんでしょ?」

勇者「ああ。まぁ嫌々みたいだけどな」

盗賊「それならお前が、メイドと魔女、どっちに投票したって、どっちかには確実に角が立つじゃねぇのよ」





勇者「角が立つって……大袈裟じゃないか? たかがミスコンの順位なんて、そこまで気にはしないんじゃないのか?」

盗賊「ミスコンの順位は気にしないでしょうけど、お前からの投票は気にするに決まってんじゃねぇのよ」

勇者「……まぁ、たしかにオレも逆の立場だったら、気にはなるけど」

盗賊「あの二人……いや、あの血も涙もない魔女はともかくとして……」

勇者「……。」

盗賊「少なくともメイドは、お前からの投票がもらえなかったら、きっと泣くわよ」

勇者「えっ……」







盗賊「それで、もう核心を訊いちゃうわけだけど……お前、メイドと魔女、どっちの方が好きなわけよ?」







勇者「どっちが……好き?」


盗賊「べつにチクったりはしないから、ぶっちゃけなさいよ。それとも、どっちも嫌い?」

勇者「好き嫌いで言うなら、もちろんどっちも好きだけど……」

盗賊「じゃあ仮に、魔女かメイドのどっちかに告白されたりしたら、どうするの?」

勇者「こ、告白って……うーん、現実味がないけど、でも、受け入れるんじゃないのかな……?」

盗賊「ふぅん? ま、断る理由もないし、そんなところよね」





盗賊「つまり、お前はべつに、自分から積極的に告白したいほど好きな人はいないわけね?」

勇者「いや、だってさ……オレは魔王を倒すために旅に出るんだぞ? 生きて帰れないかもしれないじゃないか」

盗賊「だから告白しないわけ?」

勇者「そりゃ、そんな残酷なことは……な。もちろん生きて帰るつもりではあるけど」

盗賊「……要するに、世界より大切な人を作るのが怖いわけ?」

勇者「その表現は……かなり的確かもしれない。思い残す人がいたら、いざって時に、あと一歩が踏み出せないかもしれない……」





盗賊「だけど、思い残す人がいるからこそ、踏み出せる一歩だってあるかもしれないじゃねぇのよ」

勇者「たしかにそれはあると思う。でもそれは、自分が生き残るための一歩だと思うから」

盗賊「話には聞いてたけど、『勇者』ってのはめんどくさい立場なのね」

勇者「自分が死ぬ覚悟はできてる。世界のために、どうしても死ななきゃいけない時に死ぬのも勇者の使命だから」

盗賊「……じゃあ、少なくとも帰ってくるまでは、色恋沙汰には興味ないわけ?」

勇者「興味がないなんて言わないけどさぁ……」





盗賊「ウジウジしてんじゃねぇわよ、ハッキリしねぇわね! 男ならスパッと決めろ!!」

勇者「……そうだよな、男らしくない……。よし、決めた!」

盗賊「恋愛するか、しないかを?」

勇者「いや! オレはミスコンを見て、投票したいと思った人に投票する!!」

盗賊「うーん……まぁ、そうね。思惑とか遠慮とか抜きで……それがある意味で一番か」

勇者「多分迷うだろうけど、票は一票だからな。確実に結果は出るだろう」





盗賊「ちなみに、評価基準を訊いても良いかしら?」

勇者「えっと……フィーリングとしか言えないかな」

盗賊「なにかあるでしょうよ、女の子のこういうところが好きとかってのが」

勇者「んー……あ、笑顔……かな?」

盗賊「笑顔? ふぅん、なるほどね」





盗賊「おっけーわかった。じゃ、そういうことで」ヒラヒラ

勇者「あ、盗賊ちゃん」

盗賊「ん?」

勇者「なんか、ありがとな。喋ってるうちに、自分の考えが整理できた気がする」ナデナデ

盗賊「触んな」ベシッ

勇者「つれないな」

盗賊「こちとら四天王だっつーの。『勇者』のお前とは水と油よ」





妖精「……ね、パパ」グイグイ

勇者「うん?」

妖精「妖精も、旅についてく。いいでしょ?」

勇者「絶対にダメ。なにがあろうと天地がひっくり返ろうと、そんなことは絶対に許さない。断固として」

妖精「でも……」

勇者「ちゃんとメイドさんとお留守番しててね。妖精が待ってると思ったら、オレも頑張れるから」

妖精「……うん。ぜったい、帰ってきてね」

勇者「うん。約束するよ」ナデナデ





盗賊「ハッ、無責任な約束ねぇ。魔王様と四天王を舐めすぎよ」

勇者「まんまと捕まった四天王が言うと、説得力があるな」


盗賊「うぐっ……わ、私は、そもそも四天王の中でも戦闘タイプじゃないし……!」

盗賊「それに上位種のドラゴンに寄生して襲ってれば、こんな王国壊滅だったっての!!」

盗賊「ちょっと勇者に寄生して暴れてやろうとか、余計なことを考えてなければ……」


勇者「まぁ、魔女があんな攻撃をしてくるとは思わないしな」

盗賊「そうよ、なんなのよ、あの冷酷無比の女は! 仲間に電撃かますだなんて!」グスッ





盗賊「……だけど、四天王の戦闘タイプは格が違うわよ。特に、『獣王』なんてとんでもないんだから」

盗賊「馬鹿みたいな魔力にものを言わせた、馬鹿みたいな攻撃力と防御力。そして凶暴性」

盗賊「あいつと最後に会ったのはだいぶ前だけど……堅物な性格で、裏切り者は絶対に許さないってタイプのヤツだったわ……」

盗賊「そしてもう一体、四天王の戦闘特化が―――」


勇者「なぁ、獣王って、もうこの王国に来てるぞ?」


盗賊「……は?」





勇者「闘技場近くで事件があったの聞いてないのか? 姫様が懸念してた侵入者って、きっと獣王のことだぞ」

盗賊「え、えっ……!?」

勇者「全力で挑んだけど、たしかに馬鹿みたいな防御力だったな。あれだけ攻撃を受けてもピンピンしてるんだから」

盗賊「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 獣王が、この王国に……?」

勇者「一応、今はあっちも爪を引っ込めてくれてる状態だけどな。そろそろこの辺りに来てるんじゃないか?」キョロキョロ


 ダキッ


勇者「……え?」

盗賊「~~~っ!!」プルプル





勇者「盗賊ちゃん?」

盗賊「た、たすけて勇者ぁ……ぜ、ぜったいあいつ、裏切り者の私を殺しに来たんだぁ……!!」ギュゥゥ

勇者「ち、違うって。見た感じ、裏切り者は許さないって感じじゃなかったし」

盗賊「ぜったいそうよ!! な、なんでそんなのほったらかしてんのよぉ! ちゃんとぶっ殺しなさいよぉ!!」

勇者「そう言われても……ある意味、オレも見逃してもらったようなものだから。あんなの勝てっこないって」

盗賊「やだぁ……私あいつと会ったことあるから、ぜったい匂いでバレる……! 殺される……!!」

勇者「えー、そんなことはしないと思うけどなぁ……」


勇者(っていうか、多分こいつが言ってる獣王って、剣士が倒したっていう先代の獣王だよな……?)





勇者「じゃあもしも獣王が、盗賊ちゃん……というか、お前を殺そうとしたら、守ってあげるから」ナデナデ

盗賊「ほ、ほんと……?」パァァ

勇者「そのちっちゃい体は盗賊ちゃんのものだから、殺させるわけにはいかないだろ? だからどのみち守るってば」

盗賊「ほんと? ぜったいよ?」ウルウル

勇者「約束するから。ほら、いっしょに行こう」

盗賊「うん……」ギュゥゥ


妖精「むむむっ……そこはあたしのポジションなのに~……!」メラメラ



・・・・・・





―――ミスコン特設ステージ・衣装小屋―――



勇者「魔女、メイドさん」スタスタ


メイド「あら、勇者様―――、って、その姿は……?」


勇者「あはは……気にしないで」

妖精「……」ギュゥゥ

盗賊「……」ギュゥゥ



魔女「……ゆ、勇者、あのさ―――」


勇者「魔女、さっきはごめん! ……ねぇ、やっぱり魔女が嫌ならさ、ミスコンは出場するのやめる?」


メイド「……えっ?」

魔女「!」





勇者「たしかに面白い呪文だけど、オレたちが水中で活動するようなことも、そうそうないだろうしさ」

魔女「…………そういうこと」ボソッ

勇者「え?」

魔女「うん、わかった。ミスコンはキャンセルするよ」


メイド「ま、魔女様……?」


魔女「私はミスコン終わるまで、どっかうろついてるから……じゃあね」スタスタ





勇者「ちょ、魔女っ! ならオレも……」

魔女「勇者は投票しなくちゃダメでしょ。残ってなよ」

勇者「は? ……あっ! いや、そういう意味じゃないって! べつにメイドさんに投票するためとかじゃないよ!」

魔女「だから、いいってば。気にしてないよ」


妖精「ねぇパパ、魔女さんはミスコン参加しないほうが、パパも嬉しいんじゃないの?」


メイド「ちょ、妖精ちゃん……!?」





妖精「だって、さっきの話って、どっちを応援するかで迷ってたんでしょ? 魔女さんがやめたら、迷わなくていいんでしょ?」


魔女「……!」


勇者「いや、だから純粋に良いと思ったほうに投票するって決めたんだから、もう迷ってはいないんだよ」

妖精「あれ、そうなの?」


メイド「……魔女様、勇者様は、そんなズルいことは考えませんよ」ニコッ

魔女「……。」





勇者「でも魔女って人前に出たがるタイプじゃないしさ」

勇者「俺は師匠とは違うし……さっきは出場しろって勢いで言ったけど、どうしても嫌なら、べつに無理にとは言わないよ」

勇者「ミスコンはやめて、適当に屋台見たら城に帰ろう」ニコッ


魔女「…………」





魔女「ごめん。やっぱり、出るよ……ミスコン」

勇者「え? 無理しなくても……」

魔女「ううん、無理とかじゃない。それに、もう魔法習得も関係ない」

勇者「?」

魔女「なんでもない。とにかく、今のも、さっきのも、……ごめんね、勇者」

勇者「いや、オレの方こそ……」





妖精「パパ、仲直り?」

勇者「うん。妖精のおかげかな。ありがとね」ナデナデ

妖精「えへへぇ」///

魔女「……」

妖精「ママもよかったね、仲直りできて」

魔女「うん……」


 ……。


魔女「……えっ!? 今……ええっ!?」///

妖精「なんでもなーい」プイッ





メイド「…………。」


盗賊「ちっ、余計なことを……とか思ってる?」ヒョコッ

メイド「ええっ!? いえ、そんなことは……!」///

盗賊「思っといたほうがいいわよ」

メイド「……え?」

盗賊「それくらい身構えとかないと、厳しい戦いになるかも」

メイド「……」チラッ





魔女「も、もう一回言ってくれる……?」

妖精「やだもーん。とりあえず一回だけ、だもん。ね、パパ?」

勇者「あはは、まぁゆっくり慣れていけばいいんじゃない?」

魔女「うぅ……せっかく呼んでもらえるようになったのかと思ったのに……」

妖精「妖精は、そんなにチョロイ女じゃないのよっ」

勇者「どこでそんな言葉を……」



メイド「……」



・・・・・・





・・・・・・



勇者「これっ! これとかどうよ!?」

魔女「ええー……ほ、ほんとにコレ……?」

勇者「え、あんまり乗り気じゃない!? いいじゃんコレ!」

魔女「黒のドレスローブ……こんな上品そうな服は、アタシには合わないんじゃ……」

勇者「いいや、絶対に似合うね! オレの見立てに間違いはない!!」





魔女「……その妙な自信が逆に不安だけど……まぁ、もう時間もないし、これにするよ」

勇者「よし、じゃああっちのメイク室に行って! ちゃんと可愛くお化粧してもらうんだよ?」

魔女「お化粧なんて……したことないけど」

勇者「それじゃあそろそろオレは観客席に行ってるから。魔女の変身、楽しみにしてるからね!」

魔女「う、うん……」///





・・・・・・


勇者「……ん?」スタスタ


盗賊「勇者!」トテテ


勇者「あ、盗賊ちゃん、どこ行ってたの?」

盗賊「ん。これ投票用紙ね」ピラッ

勇者「ああ、これを取りに行ってくれたのか。ありがとね、盗賊ちゃん」ナデナデ

盗賊「撫でんな」ペシッ

勇者「ふぅん、金色かぁ。無駄に豪華な投票用紙だね」

盗賊「…………。」





勇者「メイドさんは、もうメイク室に行っちゃったのかな?」キョロキョロ

盗賊「もう待機所に行ってるんじゃねぇかしら」

勇者「そっか、もう着替えもメイクも終わったんだ。早いなぁ」

盗賊「……。」

勇者「それにしてもメイドさん、大丈夫かな。結構自分が注目されるのって苦手なタイプなんだけど」

盗賊「そうなの?」





勇者「うん。前に式典で司会進行を任されたことが一回あったんだけど、緊張でガチガチでさ。あれは酷いもんだったよ」

盗賊「ふぅん……でも今回は心配いらねぇわよ。なんせ『3人がかり』だからね」

勇者「3人がかり?」

盗賊「役割分担よ。『容姿』と『勇気』と『知恵』のね」

勇者「……??」

盗賊「ま、見てのお楽しみよ。それじゃ、その投票用紙は無くすんじゃねぇわよ」スタスタ

勇者「どこ行くんだ? そっちはミスコン参加者の待機所だぞ?」

盗賊「お構いなく。外で妖精が待ちわびてるわよ」ヒラヒラ

勇者「……なんだ?」





―――セドサル王城前広場・ミスコン特設ステージ―――



『さぁさぁ今年も【ミス・セドサル】を決定する美の祭典がやってまいりました!!』


『今年も例年通り、王国中の美女や美少女が集結しております!!』

『参加受付と同時に行われる容赦なきふるい落としによって、参加希望者の約9割以上が涙を呑みました!』

『美に自信を持つ彼女たち10名! その頂点に選ばれるのはたったの1人!』



『ご来場の皆さん、もう待ちきれないでしょう!? 私もです!』

『ではさっそく1人目の参加者をお呼びしましょう! エントリーナンバー012、ヴァー商店街の看板娘―――』





勇者「なんかあの司会の声、聞き覚えがあるんだよなぁ……」

妖精「?」

勇者「それはともかく、受付時にも選考とかやってたのか。まぁ、あんまり人数多すぎてもダレるしな」

妖精「みんなこれに出たいんだね?」

勇者「名誉なことだからね。就職にも意外と有利に働くし」

妖精「ほぇー、そうなんだ?」

勇者「しっかし……さすがに、ここに残ってる人はみんなレベルが高いなぁ……」

妖精「でもでも、メイドお姉ちゃんとか魔女さんのほうが美人さんだよね?」





勇者「身内の贔屓目を抜きにしても、そうだと思うよ。2人とも、王国に顔で選ばれたところもあるしな」

妖精「そうなの?」

勇者「魔女はよく知らないけど……侍従ってのはお城の顔だからね。外見の審査も厳しいらしいよ」

妖精「へぇ~、さすがメイドおねえちゃん!」キラキラ

勇者「……まぁメイドさんが働きだしたのは7歳で、オレはずっといっしょだから……見慣れすぎててよくわからないけど」





・・・・・・


『さぁ、いよいよ大詰め! 紹介を控えた参加者は、残り2名となりました!!』

『エントリ―ナンバー096……おおっと、こちらは現在セドサル王城に住んでいるとのこと!』

『経歴の多くは謎! トラソルザ魔法学校を、魔法を一度も使わずに飛び級で卒業! 現在15歳!』

『ミステリアスな麗しの魔法使い……【魔女】!!』



 スタスタ…



魔女「……。」





勇者「―――っ」ゴクリ…

妖精「わぁ……きれい……」///





『こ、これは美しいっっっ!!! 妖艶な黒のパーティドレスに身を包んでおります!』

『上品さと魔法使いらしさを兼ね備えたドレスを、見事に着こなしている!』

『それでは自己紹介をお願いします!』



魔女「えっ……もう全部言われちゃいました……」



 ドッ!! ワハハハハッ!!





『こ、これは失礼しました!』 

『えー、それでは趣味や特技などをお聞かせ願えますでしょうか!?』


魔女「趣味……は、えっと、しいて言うなら、魔法の勉強……です」

魔女「特技は、古代文字の解読とか、魔法回路の読み取りとか……まぁ、魔法関係です」


『なるほど~、それではなにか、魔法などを見せてもらえますでしょうか?』


魔女「あ、今は道具がないので……」


『おっと、これは失礼しました!』






『それでは最後、観客の皆さんに、なにか一言お願いします!』


魔女「えっと、なるべく三位くらいにはなりたいと思っているので……できれば投票おねがいします」


『おおっとぉ、この場で露骨に投票をお願いしたのは、歴代参加者でも初めてかもしれません!』


魔女「あ、すいません! やっぱり今のはなしで!!」///


『しかし謙虚です! 三位どころか、優勝候補と言っても過言ではないほどの美しさ! 開票に期待です!!』

『それでは魔女さん、ありがとうございました!』


魔女「あっ、どうも……」トテトテ





 ガクンッ


魔女「ふぎゃ」ドテッ!!



 ドッ!! パチパチパチパチ…!!


『おおっと、ドレスの裾をふんずけて転んでしまいました! 可愛らしい悲鳴が漏れる!』

『ぶっちぎりの容姿だけでは満足せず、最後まで観客サービスを忘れない! 素晴らしい! これは歴代きっての逸材です!』




魔女「~~~っ」/// スタスタスタ…!!






妖精「なんか、いつもの魔女さんと違ったね?」

勇者「ああいうたくさんの人に注目されるのに慣れてないんだな。オレも闘技場ではあんな感じだったよ」

妖精「でもでも、すっごいきれいだったね! やばかったね!」キラキラ

勇者「そうだね、やばいくらい綺麗だった……」///

妖精「あたしもあんな風になれるかな?」

勇者「きっとなれるよ。ママの子供だからね」ナデナデ

妖精「えへへぇ、そっか」///





『さぁ、ついに次が最後の参加者です!』

『エントリーナンバー099、こちらもセドサル王城に住んで……いえ、セドサル王城で働いているようです!』

『なんとなんと、先刻の闘技大会優勝者である勇者様を、幼い頃よりずっとお世話してきた専属侍従!』

『神の子に仕えし侍従……『メイド』!!』



 スススッ…


メイド「……。」ペコッ




勇者「あ、あれ……!? メイドさん、着替えてないのか? いつものメイド服じゃないか……」

妖精「でも、今の紹介でメイド服以外が出てきても困るよね」

勇者「そ、それもそうか……」





『ではメイドさん、自己紹介をお願いします!』


メイド「はい。私はセドサル王城にて勇者様にお仕えしております、メイドと申します」ペコッ

メイド「私のようなものがこういった表舞台に立つのは僭越ではございますが……」

メイド「本日はどうしても出場したい理由がありますので、ご容赦ください」


『出場したい理由……ですか? それはお聞かせしていただいてもよろしいのでしょうか……?』





メイド「大したことではございません。動機としては、ごくありふれたものです」

メイド「9年間片思いをしている方が、今日この場所へ来ている……それだけです」



 オオオオォォォォォォォ!! パチパチパチパチッ!!




勇者「―――っ!?」





『おおっと、これは衝撃の告白ッ!! 想い人に見てもらうためだけに、この場所へ立ったということです!』

『しかし、9年間ですか……9年…………おや? たしか勇者様にお仕えしたのが……?』ガサゴソ

『ほほう、なるほど!!』


メイド「伝統あるコンテストにおいて、このような真似は冒涜と批判を受けるとも思いましたが」

メイド「どうか、ご容赦ください」ペコッ





『いえいえ、過去にもそういった参加者は何人かいましたが……』

『しかしほとんどの場合、そのような参加者には票が集まらない傾向にあります!』

『大抵は0票か、あるいは1票という結果が多く……』


メイド「すべて、承知の上です」


『……なるほど、それでは私の方から言うことはなにもありません! 良い結果を祈っております!!』


メイド「……」ペコッ


 スタスタ





勇者「―――」



メイド「……」クルッ



勇者「!」



メイド「……」ニコッ


 スタスタ





妖精「ねぇ、パパ……今のって」

勇者「……ああ」

妖精「ど、どうするの? メイドお姉ちゃん、0票じゃかわいそうだよ……」

勇者「同情では投票しないって、さっき盗賊ちゃんと約束した。それじゃあもっと惨めだから」

妖精「……でも」

勇者「オレは投票したいと思ったほうに……好きな方に投票する。それが覚悟を決めたメイドさんへの礼儀だよ」

妖精「……。」





『それではすべての参加者の紹介が終わりました! これから投票に移ります!』

『皆さん、お手元の投票用紙にエントリーナンバー、または名前、そして理由を記入して投票してください!』

『投票用紙の裏面には、それぞれの参加者のプロフィールなども記されておりますのでご参考ください!』


『それでは、投票タイムです!!』




勇者「……」カキカキ


妖精「も、もう決まってるんだ……?」


勇者「ああ」


妖精「…………。」





―――ミスコン特設ステージ裏―――



 チュッ  ゴボゴボッ…


盗賊「……ぷはっ。お疲れ、メイド」


メイド「……」/// カァァ


盗賊「まったく、緊張しすぎよ。私が入ってなかったら、告白どころか自己紹介さえできてなかったじゃねぇのよ」

メイド「ご、ごめんなさい……失神しないようにするのが精いっぱいで」シュン

盗賊「もう後戻りはできないけど……まさか後悔してんじゃねぇでしょうね?」

メイド「こ、後悔なんて……でも、もしダメだったら……」ガクッ

盗賊「これでダメなら、いつでもダメでしょ。私たちを信じなさいな」

メイド「……そ、そうですよね……もうちょっと、頑張ります……」ヨロッ





魔女「……メイドさん」


メイド「あ……魔女、様……」

魔女「さっきのって……そういう、ことだよね……?」

メイド「……はい」

魔女「そ、そっか……なんとなく、そんな感じはしてたけど……」



メイド「魔女様。もし私が選ばれるようなことがあった時は、私を祝福してくださいますか?」



魔女「……えっ」





メイド「代わりに、と言ってはなんですが……もしも勇者様が魔女様を選んだ時は……」

メイド「私も素直に身を引いて、魔女様を応援します」ニコッ…


魔女「……メイドさん」

魔女「えっと……アタシ、あんまりそういうのわかんないけど……」

魔女「うん、わかった。メイドさんの言うとおりにするよ」


メイド「……ありがとうございます」





・・・・・・



『それでは投票の時間を締め切らせていただき……、開票の時刻となりました!!』


『個別の票数や順位は、あとで問い合わせに応じてお知らせいたしますが……』

『さっそく、最も会場の票を集めた、栄えある美の頂点! 【ミス・セドサル】を発表したいと思います!!』

『ドラムロール、カモン!』



 ドルドルドルドルドルドル……



『【ミス・セドサル】は……』


 ジャジャンッ






『エントリーナンバー096、魔女―――っ!!』




魔女「えっ!?」/// ビクッ



 ワァァアアアアアッ!! パチパチパチパチッ!!






『いやぁ、おめでとうございます! 貴女こそが、今もっとも我が王国で輝いている女性だ!!』


魔女「は、はぁ……ええっと、うれしいです」


『遠慮がちにはにかむ姿もキュート! それでは投票用紙に書かれた、投票理由を読み上げていきたいと思います!』

『まず圧倒的に多かったのが、魔女さんの容貌の美しさですね。単純明快にぶっちぎりで美しかった!』

『それから、謙虚な姿勢やドジっ娘要素、天然っぽいところが可愛い……などなど』

『とにかくあらゆる要素が万遍なく評価された結果でしょう。魅力を惜しみなくすべて発揮できたということですね』





『魔女さんには、【ミス・セドサル】に贈られる数々の特典を進呈いたします!』

『レアアノス商会傘下の商店での無期限特別優待サービス!』

『さらに、スポンサー各商会から目玉商品を1年分!!』

『そして……500年続くタナドナ工房の13代目当主が鍛えし、超貴重な特殊魔法金属製の優勝トロフィー!!!』


魔女「あ、ありがとうございます……」





『今のお気持ちはどうですか!?』


魔女「ゆ、優勝なんて……ちょっと、信じられません」


『だいたい歴代優勝者の方も同じようなことを仰いますが、これは事実! 純然たる事実です!!』

『改めて、優勝おめでとうございます!! 皆様、今年度【ミス・セドサル】に大きな拍手を!!』



 ワァァアアアアアッ!! パチパチパチパチッ!!!!



魔女「……っ」/// ソワソワ





『そして今年は特別に、王城から特別賞が授与されるようです!!』


 ザワザワ…


『セドサル王国の現国王様のご息女であらせられる、姫様より……』

『勇者様が、神聖なる魔導書に選ばれた、この素晴らしき年を記念して!』

『セドサルのヒーローである勇者様が、投票に参加してくださいました!!』


 ワァァアアアアアアアアアアア!!!



勇者「え、えっ……なんだこれ!?」





『というわけで、なにか賞品があるわけではありませんが……しいて言うなら賞品は名誉!!』

『勇者様が選んだ女性を【ミス・ヒロイン】として表彰したいと思います!!』

『そのため、勇者様にはあらかじめ、金色の投票用紙に記入していただきました!』





勇者「あっ……!! 盗賊ちゃんが持ってきたあの紙って……!?」///


 グイグイ


勇者「……ん?」

盗賊「勇者、こっち来て。いそいで」グイグイ

勇者「ちょっ、ちょっと……!?」





『それでは発表します! 勇者様に選ばれた、栄誉ある【ミス・ヒロイン】は……!!』



 ドルドルドルドルドル…… ジャジャンッ







『エントリーナンバー099、メイド―――っ!!』




メイド「―――っ!!」///




 ワァァアアアアアアアアアアア!!! パチパチパチパチッ!!!







『おめでとうございます、メイドさん! 見事、貴女は勇者様に、もっとも美しい女性だと認められました!!』


メイド「あ、あぁぁ……!?」/// プルプル


『ちなみにメイドさんの票数は、“1票”!! ……勇者様からの投票が、唯一の得票でした』

『メイドさん……今のお気持ちはどうですか?』


メイド「ぁ、ありがとう、ございますっ……!! 勇者様ぁぁ……!」/// ポロポロ





『メイドさん、舞台袖を見てください! 勇者様が……』


メイド「えっ!?」/// クルッ


 勇者「……」フリフリ


メイド「勇者様……、勇者様ぁ!!」ダッ


 ダキッ





メイド「ゆうしゃさまぁ……ありがとうございますぅ……!!」ポロポロ

勇者「メイドさんは、オレのこと弟みたいに思ってるのかと思ってたよ」ナデナデ

メイド「ずっと……ずっと好きでしたっ……!」

勇者「……ありがと。すごく嬉しい」ギュッ


『勇者様の投票理由は……「かけがえのない人だから」でした!! 素晴らしい! 美しい!!』




『それではこれにて、コンテストは終了とさせていただきます! 皆様、栄誉ある二人に、今一度大きな拍手を!!』


 ワァァアアアアアッ!! パチパチパチ…!!





―――ミスコン特設ステージ裏―――



魔女「……」フラフラ


魔女「あっ……」ヘタッ


魔女(なんで……こんな……)

魔女(アタシは、勇者といっしょに……魔王を倒すパートナーとして……)



魔女(勇者はアタシを1人にしないって約束してくれた……)

魔女(……きっと勇者は恋人がいても、その約束を守ってくれる……勇者の優しさは、よくわかってる)

魔女(それは、よくわかってるのに……)





魔女「どうして、こんなに……」ギュゥゥ…

魔女「……胸が痛いの……?」


魔女(そっか……やっと気づいた……)

魔女(アタシも……)



魔女「……ひっく……ぐすっ……うぅぅぅ……!!」ポロポロ





―――ミスコン特設ステージ脇・放送室前―――



 ガチャッ


姫「うふふ、ありがとね~。それじゃあ司会さん、お疲れさま~」ニコッ



盗賊「……よくもまぁ、あんなえげつない計画を思いつくものね」



姫「あ、盗賊ちゃん。盗賊ちゃんも、指示通りに動いてくれてありがとね~」ニコッ

盗賊「メイドの台詞だけじゃなくって、司会の台詞も、このミスコンの進行自体も、お前の台本だったってわけ?」

姫「うふふ、人聞きが悪いな~。わたしは親友のために最善を尽くした……それだけだよ~?」ニコニコ





盗賊「思えば、この会場に魔女の味方が一人も来ていなかったのも、計画通りなわけ?」

姫「なんでもかんでも、わたしのせいにされちゃうのは困るな~」


盗賊「もしも勇者が魔女を選んだら、どうするつもりだったのよ?」


姫「うふふ、とても高い確率でメイドちゃんを選ぶと踏んだから、計画を実行に移したんだよ~」

姫「勇者くんはああ見えて、結構男の子だからね~。いくら姉のようだと言っても、メイドちゃんを意識してないはずがないもの」

姫「それに義理深くて優しい性格だからね~。2週間ちょっとの魔女ちゃんが、9年のメイドちゃんに勝てるはずないでしょ?」





盗賊「……愛は時間じゃない、とか言う輩もいるけど?」


姫「もしも魔女ちゃんが先に告白してたら、勇者くんは受け入れてたかもしれないけどね~」

姫「そうさせないために、先手を打ったんだよ~。そろそろ勇者くんも魔女ちゃんに、本気で熱を上げちゃいそうだったから」

姫「うふふ、愛の横奪は最も罪深いからね~。断頭刑だよ~」クスクス


盗賊「……。」





盗賊「これでもし、魔女が魔法習得に消極的になったらどうすんのよ? 王国としてはマズイんじゃないの?」

姫「うふふ、盗賊ちゃんもわかってないな~」

盗賊「?」


姫「……女の子の愛のためなら、世界の1つや2つくらい、壊しちゃってもいいんだよ」ニコッ


盗賊「―――っ」ゾッ





姫「まぁそれに、これくらいで魔女ちゃんがへこたれるとは思えないな~」

盗賊「……どういうこと?」

姫「むしろ自分の気持ちを自覚しちゃった分、もしかしたらもっと手ごわくなったかも?」

盗賊「……。」

姫「大事なのはここからだよ。……もちろん、刃向かうなら、ゆっくり優しく押しつぶすけどね~」

盗賊「……私を捕えた、憎きあの女を……ここまで気の毒だと思ったことはねぇわよ」




姫「うふふ。私の目の黒いうちは、メイドちゃんに『負け』はないよ~♪」


盗賊(腹の黒いうちは、でしょ……とは口に出さない。自殺願望はないからね)





―――セドサル王国・ケリアドリー通り―――



勇者「お城のお仕事は大丈夫なの?」

メイド「はい! 姫様が計らってくださったみたいで、お祭りを楽しんでくるようにと」

妖精「夜まで帰ってくるなって言ってたよ!」

勇者「そっか、それはよかった。今日はまだ、いろんなイベントがあるからね」

メイド「今日はいっぱい楽しみましょう」ニコッ

勇者「うん!」ニコッ

妖精「はーいっ!」ピョコッ



盗賊「……」チラッ



魔女「………………。」トボトボ





勇者「魔女? 大丈夫?」クルッ


魔女「っ!!」ビクッ


勇者「やっぱり人前に出るのは疲れるよね。メイドさん、どこか休憩できる場所を探そう」

メイド「えっと、それでしたらあちらに……」


魔女「き、気にしないで……大丈夫だから」スタスタ


勇者「あっ……」

メイド「魔女様……」





勇者(盗賊ちゃんが言ってた、『角が立つ』ってヤツなのかな……)

勇者(それに、浮かれてメイドさんと話しすぎてたかも。これじゃ疎外感を感じさせても仕方ないよな)


メイド(やっぱり、魔女様も勇者様のことが……。祝福しろだなんて、残酷だったかな)

メイド(だけどそれでも、私は勇者様と結ばれたい……ずっと我慢してきた想いが、やっと実ったんだから……)キュッ


 スタスタ…


魔女(最悪だ……勝手に嫉妬して、雰囲気を悪くしてる。こんなんだから、アタシは一人ぼっちなんだ)

魔女(2人とも、私を仲間はずれにしようだなんて、思ってるはずないのに……)


魔女(でも……やだよ、勇者……。そんな幸せそうな顔しないでよ……)ウルッ





商人「あら、勇者じゃない」


勇者「あっ……!? しょ、商人さん!」


商人「それから魔女と……たしか、メイドだったかしら?」


メイド「は、はい! お久しぶりです、商人様」ペコッ

魔女「……。」ペコッ





商人「そして、あなたたちは、初めましてね」チラッ


妖精「う、うん……はじめまして」

盗賊「……。」プイッ



商人「久しぶりね、勇者。フフフ、しばらく会えなくて寂しかったわ」

勇者「ご、ごめん。いろいろ忙しくて」

商人「そう。忙しかったのなら仕方ないわね。元気そうでなによりだわ」

勇者「……商人さんも、相変わらずみたいだね」





勇者「商人さん、1人なの?」

商人「ええ。屋台の様子を見に来たのよ。このケリアドリー通りの屋台も、わたしたちレアアノス商会の管轄でね」

勇者「へぇ、そうなんだ? 様子を見にっていうのは?」

商人「それが、なんでも数時間前、この辺りで謎の3人組が暴れていたそうなの」

勇者「……。」

商人「特に武闘家っぽい男が、周りへの被害も考えずに相手を屋台に叩き付けてたらしくて、おかげで大損害よ」

勇者「…………。」





商人「勇者はなにか知らない?」

勇者「ナニモシラナイ」

商人「フフフ、そうよね。勇者がそんな野蛮人どもと関わりがあるはずないものね」ドヤァ

勇者「モチロンダヨ。ハハハ」

商人「ところで、どうして女の姿をしているの?」

勇者「ナントナクダヨ。ハハハ」





商人「ああ、そういえば。魔女、ミスコン優勝おめでとう」

魔女「えっ」ビクッ

商人「あのミスコンはレアアノス商会がメインスポンサーなの。だからコンテストの結果もわたしの耳に入ってきたのよ」

魔女「……そ、そっか」

商人「この屋台もレアアノス商会の管轄だから、『ミス・セドサル』の特待を受けられるわよ」

魔女「……べつにいいよ、そんなの」

商人「あら、そうなの? フフフ、遠慮しなくていいのに」





商人「そしてあなたは、『ミス・ヒロイン』だったかしら?」

メイド「え、は、はいっ!」

商人「王城が急にそんな特別賞を作ったと聞いて驚いたけど……なんでも、勇者に告白したのよね?」

メイド「う、あ、そうです……はい……///」カァァ

商人「それで、今はめでたく恋人同士というわけなのね」

メイド「こ、恋人……!?」///





商人「あら、違ったのかしら?」


勇者「ううん、違くないよ」スッ

メイド「ゆ、勇者様……?」///

勇者「メイドさんは、オレの恋人だよ」

メイド「~~~っ!!」/// ボンッ!!



魔女「……っ」ズキンッ





商人「フフフ、妬けてしまうわね。勇者から最初に告白されたのは、わたしだったというのに」


メイド「―――えっ」ピクッ

勇者「ちょっ……!? 語弊のある言い方しないでよ、商人さん!!」///


商人「けれど、事実でしょう? こんなことなら、あの時に首を縦に振っておくべきだったかしら」


勇者「え?」





商人「好きなのよ、あなたのことが」ドヤァ



勇者「―――え」

メイド「……っ!?」


魔女「!!」


妖精(わぁ、パパってモテモテだなぁ……)///

盗賊(ちょっ……なんなのよソレは!? 勇者に変な虫くっつけたら、私が怒られるんだけど……!!)ハラハラ





商人「フフフ、だけど仕方ないわね。商業界は早い者勝ちが鉄則だもの」

勇者「え、あの……」

商人「だけど勇者、わたしとこれからも友達でいてくれるかしら?」

勇者「そ、それはもちろん! 商人さんさえ良ければだけど……」ホッ

商人「ありがとう、勇者」ニコッ





商人「……それから、ミスコン告白事件のことを聞いたお父様が、勇者に話があるって」

勇者「ごめん、その日はちょっと用事が(白目)」

商人「フフフ、安心して。日程は勇者に合わせると言っていたわ」ニコッ

勇者「ワー、アリガトー(裏声)」





商人「そう、恋人ね……。でも、これくらいならいいかしら? 前からやっていたんだし」ギュッ

勇者「ちょっ、商人さん!?」///


メイド「しょ、商人様……!? あの、は、離れてくださいっ……!」ワタワタ


商人ん「フフフ、メイドが妬いているわ。かわいいわね、勇者?」

勇者「う、うん……かわいい」///


メイド「かわっ……!? そ、そんなこと言っても、ご、ごまかされませんっ……///」ニマニマ



魔女「…………。」





魔女(なにそれ……なんで、そんなに強いの……? あなたは泣きたくならないの?)

魔女(友達でいてくれるなら我慢できる。傍にいてくれるなら耐えられる。アタシもそう思ってたけど……)



魔女(これからもずっと、勇者は誰のものでもなく……だけど私の隣にいてくれるんだって)

魔女(そんな根拠もなにもないことを、当たり前みたいに考えてた)





魔女(だけど勇者はもう、メイドさんのもので……もう手に入らなくて……)ズキ…


魔女(きっとアタシの知らないところで、2人はあの光る木の公園にデートとか行ったりするんだ)ズキズキ

魔女(アタシと2人っきりでいる時も、ふとした瞬間にメイドさんのことを考えてたりするんだ)ズキズキズキ

魔女(これから先、メイドさんしか知らない勇者が、どんどん増えていくんだ)ズキズキズキズキ


魔女(そんなの……)





勇者「―――ん? ……ま、魔女っ!?」



魔女「え?」ポロポロ



魔女「あ、あれ……なにこれ、おかしいな……」ゴシゴシ

勇者「どうしたの? 大丈夫……?」ポン

魔女「やさしくしないで……」ボソッ

勇者「え?」





魔女「8Bpv30Gj0」


 フワッ…


勇者「飛行の呪文……!?」


魔女「ア、アタシ、城に帰ってるから……」フワフワ


勇者「ちょっ、魔女!」

メイド「魔女様!?」


魔女「ばいばいっ!」ヒューン





勇者「……魔女、どうしたんだろう」

メイド「……。」


盗賊「勇者とメイドがイチャついてるのを見てるのが辛かったんでしょ」


勇者「え……」

メイド「やっぱり、そうですよね……」


盗賊「別れるつもりがないなら、放っておきなさい。今あいつに必要なのは、言葉じゃなくって時間よ」





勇者「……」

メイド「……」


妖精「……魔女さん、泣いてたね」

商人「それだけ勇者のことが好きだったんでしょうね」


盗賊「魔女を気にかけすぎて、祭りを楽しめなかったと知ったら、きっと余計に思い詰めるわ」

盗賊「勇者。メイド。お前たちはせっかくの初デートなんだから、思いっきり楽しんどきなさい」



メイド「そうですね……気の毒ですけど、だからって、勇者様の隣を譲りたくなんて、ないですし……」キュッ

勇者「……わかった。ありがと、盗賊ちゃん」ナデナデ

盗賊「撫でんな」ベシッ


>>209
メイドさんが舞台上で告白したことに対して、勇者がメイドさんに投票した。
そのこと自体が、メイドさんの告白を受け入れた(恋人になった)……という演出のつもりでした。すみません。

最近、描写不足を謝罪することが多い気がします。


>>213
逆に、姫が本気を出せば、魔女を最下位に、メイドを2冠にすることもできました。


予定では魔女とメイドの立場が正反対だったんですが……姫が勝手に暴れたせいで、予定が狂ってしまいました。
頭の中でキャラを野放しにすると、こういうことがあるので危険です……




・・・・・・



勇者「…………。」


メイド「ゆ、勇者様。闘技大会から、なにも食べていませんよね? もう夕方ですが、お腹は減っていませんか?」

勇者「あ、うん……そういえば、ちょっと減ったかも……」

メイド「それでしたら、どこかで休みながら、軽いお食事にしましょう」ニコッ

勇者「うん……そうだね。そうしよっか」

メイド「…………勇者様」





盗賊「ちょっと勇者! 魔女のことは気にするなって言ってるでしょ!!」ベシッ

勇者「……っ、ご、ごめん」

盗賊「今は目の前のメイドに集中しなさいよ!」

勇者「そう、だよな……うん……ごめん」


メイド「……。」





 スタスタ…



騎士「あら、あんたたち。ここにいたのね」



勇者「あっ……」

メイド「騎士様……」


騎士「なによ、なんでそんな辛気臭い顔してんのよ?」

騎士「あれ……魔女はどこに行ったの?」キョロキョロ


勇者「そ、それは……」


騎士「さっき、黒い服の女が空を飛んでたって話を聞いたんだけど……もしかしてそれって魔女?」


勇者「!!」





勇者「向かったのは、城の方角?」

騎士「え? 違うわよ、あっちの……王国郊外の方らしいわね」

メイド「……えっ!?」

騎士「な、なによ? 城に向かってたら魔女だったの? だったら、他に誰が空なんか飛ぶってのよ?」

勇者「…………」





メイド「勇者様は、魔女様のことが心配なんですよね」

勇者「……そ、それは」


メイド「隠さなくても大丈夫です。もしも勇者様が魔女様とお付き合いされていて、私が落ち込んでいたら……」

メイド「きっと勇者様は、魔女様を置いて、私のことを心配してくださったはずです」


メイド「……私は、勇者様のそういう優しいところが、好きになったんですから」ニコッ


勇者「……メイドさん」





メイド「魔女様の向かった先に、心当たりはありますか?」

勇者「うん……多分、あっちの方角に行ったのなら、あそこしかないと思う」

メイド「それでは、急いでそちらへ向かいましょう」ニコッ

勇者「……ありがとう。メイドさん……」


盗賊「……」





勇者「ごめん、オレ、ちょっと行ってくる! 騎士さん、妖精をよろしく!」


騎士「ちょっ、なに勝手に……」

妖精「騎士……お姉ちゃん?」

騎士「おねっ……!? か、可愛い子ねっ!!! それはもう、とても可愛い子だわっ!!! 任せときなさい!!」/// フンス



勇者「ありがとう、よろしく!!」ダッ

メイド「……」ダッ



盗賊「……チッ」ダッ





―――セドサル王国郊外・ケレスピア公園―――



魔女「うっ……ひっく、ぐすっ……」ポロポロ


魔女(どうして、こんな場所に来ちゃったんだろ……勇者との初デートで来た、この公園に……)

魔女(勇者のことを思いだしたら、余計に辛くなるだけなのに……)

魔女(周りはカップルばっかりなのに1人で泣いて……アタシはここでも、みんなに迷惑かけてる……)





魔女(……アタシ、いつからこんなに弱くなったんだろ。前は1人でいたって、全然苦には感じなかった)

魔女(だって、それが普通だったから。むしろ、誰と一緒にいても『この人じゃない』としか思わなかった)

魔女(それなのに、いつの間にか、勇者はアタシの隣に当たり前みたいな顔して並んでて……)

魔女(アタシもいつしか、それが当たり前だと思って……)





魔女(こんなに辛いなら、ずっと1人でいればよかった……!)

魔女(誰も信頼しないで、誰も近くに寄せつけないで……周りの人間を駒みたいに考えてれば……)

魔女(一度、この甘さを知っちゃったら、もう1人になんか戻れない……そんなことになったら、死んじゃうよっ……)

魔女(寂しい……寂しいよ、勇者ぁ……)

魔女(また勇者に抱きしめてほしい……一緒に買い物して……いろんな場所に連れて行ってもらいたい……!)





魔女(また、もう一度……でも、メイドさんがいる限り、それはもう、二度と……)

魔女(……メイドさんが、いる限り……)



  「だったら、殺してしまえよ」ザッ



魔女「っ!?」ビクッ


魔女(なっ……!? こいつ、いつの間にアタシの隣に……!?)





  「メイドがいなければ、お前は幸せになれるんだ。メイドさえいなければ……」

  「だったら、殺してしまえばいい」


魔女「な、なにを……アンタ、いったい誰!?」


魔女(見ているはずなのに、焦点が合わないみたいな……まるで存在がきちんと固定されていないかのような……)

魔女(男か女か、子供か老人か……それさえもわからない……なんなの、こいつ!?)


  「誰? こいつ? おいおい、酷い言い草だな」

  「私は、誰よりもお前に近い存在だというのに」


魔女「……は?」





  「私は、お前そのものだよ。元々1つの存在だったと言えばいいのかな」

魔女「……なに、言ってるのよ」

  「私のことなんて、どうだっていいではないか。それよりも、お前は今の状況に満足しているのか?」

魔女「今の、状況……?」

  「愛する勇者を横取りされて、おめおめと逃げてきた情けない現状に……だよ」

魔女「……っ」





  「魔女っていうのは、古来より我が儘で、傲慢な生き物だ。どうしてだかわかるか?」

魔女「……」

  「それはな……なんでもできるからさ」

魔女「どういう、こと?」

  「なんでもできるからこそ思い上がり、なんでもできるからこそ、我が強くなる」

魔女「……アタシは、魔女じゃ……」

  「お前は魔女なんだよ……人間じゃない」

魔女「なに、言って……ア、アタシは……」





  「ククク。魔女なら、人間1人を事故に見せかけて殺すことくらい、造作もない」

  「記憶を書き換えて、人間関係を無理やり自分に都合のいいように上書きしてしまうこともできる」

  「感情を支配して、愛し合う恋人を破局に追い込み、それから自分に惚れさせることだってできる」

  「あるいはそうだな……殺した相手の姿に成り代わって、そいつの代わりに人生を謳歌することもできるだろう」


  「どれでもいい。メイドにやってしまえよ」


魔女「ア、アタシは、そんなこと考えてない……! メイドさんだって、9年間我慢して、やっと勇者と……」





  「なら、お前だけがずっと我慢していくのか? これからずっと、幸せそうな2人を指をしゃぶって見ているのか?」

魔女「……そ、それは……」

  「いい加減認めろよ……良い子ぶるな。自分の黒い感情に対して、素直になれ。お前はメイドを憎んでいるんだよ」

魔女「違う、そんなことない……! アタシは……!!」

  「いつか我慢の限界が来る。そしてつい、あの女を手にかける……必ずな。早いか遅いかの違いでしかない」

魔女「そんなこと……あるはず……」

  「言っただろう。私はお前自信。私の言葉は、お前の言葉だ」






  「お前から大切なものを奪ったあの女を……殺してしまえ」



魔女「―――」







勇者「魔女っ!」


メイド「魔女様!」





魔女「―――っ!?」ビクッ






勇者「やっぱりここにいたんだ……魔女」

メイド「はぁ、はぁ……よ、よかった」ハァハァ



魔女「なんで、2人がここに……」

魔女「っ!!」クルッ


魔女(……いなく、なってる……)





魔女(いや、もしアレが、本当にアタシの心なら……アタシ自身なら)

魔女(アタシは……メイドさんのことを……)ザワッ


魔女「……」



メイド「……魔女様」



魔女(アタシは……!!)ザワザワッ






メイド「勇者様……私たち、別れましょう」


勇者「え?」




魔女「………………は?」



はぁ!?




勇者「メイドさん……?」


メイド「……」


魔女「な、なにを、言ってるの……?」



メイド「……魔女様がいなくなってから、勇者様はずっと上の空でした」

メイド「私が勇者様を奪ってしまったことで、これから先ずっと、魔女様は今のように塞ぎこんでしまうでしょう」

メイド「ですから、これから先ずっと、勇者様は魔女様を気にかけて、先ほどのように心から笑えなくなってしまいます」

メイド「……勇者様は、そういう人です。優しすぎる人なんです」ニコッ…





メイド「私が隣を歩いて、共に生きたかったのは……愛しているのは」

メイド「いつものように明るくて、前向きで、笑顔の素敵な勇者様です」

メイド「今のままでは……私が告白したことで、勇者様から笑顔が消えるのであれば……」

メイド「恋人になっても、意味がありません。それは私が、勇者様を縛り付けているのと変わりがありません」



メイド「ですから一度、別れましょう……勇者様」





勇者「メイドさん……」


メイド「そ、それに、私も納得いきませんしねっ!」

メイド「きっと勇者様は、魔女様が先に告白していても、首を縦に振ったでしょうし……」

メイド「ただ、一番早く告白した……それだけなのですから」

メイド「それで本当に愛し合っているだなんて、私も自信をもって言えません!」


魔女「……。」





メイド「でしたら、勇者様が魔王を倒した、その時に……」

メイド「勇者様が本当に愛した女性を、我々の中から選んでください。私や、魔女様……それから、商人様もですか?」

メイド「そこで勇者様が決めたことでしたら、誰も文句のつけようはありません。早い者勝ちではないのですから」

メイド「どんな結果でも受け入れて、恨みっこなしです! その時こそは、私も遠慮なんてせずに、絶対に譲りません!」


メイド「魔女様……それで、よろしいですか?」ニコッ



魔女「…………え、えっと」





魔女「メ、メイドさんだって、9年も、待ってたって……言ってたでしょ……」

魔女「それに、アタシは、べつにそんな……そこまで……」

魔女「祝福するって、約束も、したんだし……」


魔女「だから、アタシは……」



魔女「アタシ……は……」





 ダキッ


勇者「うわっ」ヨロッ

魔女「…………っ!!」ギュゥゥ



魔女「ごめんなさい……ごべんなざい……っ!!」ポロポロ

魔女「ふ、ふたり、が……せっかく、結ばれたのに、アタシ……!!」


魔女「でも、ヤダ……ヤなの……!! 勇者が好きで、どうしようもないのっ……!!」ギュゥゥ

魔女「ごめんなさい……!! きらいにならないで……アタシを、捨てないでぇ……!!」ポロポロ





メイド「……魔女様」



魔女「勇者ぁ……メイドさん、ごめんなさい……!!」グスッ

魔女「でも……1人にしないで……ひっく……もう寂しいのはヤダよぉ……!!」ギュゥゥ

魔女「ぐすっ……死んじゃいそうなくらい、寂しくって……アタシ……!」

魔女「良い子にしてるから……!! なんでも言うこと聞くから、だから……アタシを捨てないでくださいっ……!!」ポロポロ


勇者「……」ギュッ


魔女「……っ!!」ビクッ





勇者「魔女はもう、1人じゃないだろ。みんなもいるし……それに、恋人ができても、オレは魔女を蔑ろにはしないよ」

勇者「約束したでしょ、魔女をもう1人にはしないから」ナデナデ

勇者「だから、みんなのところへ一緒に帰ろう。みんな心配してるから、ね」ニコッ


魔女「……は、はいっ……!」ギュゥゥ


勇者「今日は楽しいお祭りだよ。だから、今のうちに泣けるだけ泣いちゃおうか」

勇者「そしたら、あとでちゃんと笑おうね」ニコッ






魔女「うわぁぁぁああああああんっ!!」ギュゥゥ


勇者「……よしよし」ナデナデ






メイド「…………。」


盗賊「そんな泣きそうな顔するくらいなら、余計なことするんじゃねぇわよ、バカね」スッ

メイド「盗賊ちゃん……ごめんなさい……私、みんなの頑張りを、無駄に……」

盗賊「お前が自分で決めたことなら、私も文句はねぇわよ。姫だって、お前の性格なんてお見通しでしょうしね」

メイド「……ここで一歩譲れちゃうっていうのは、私の想いなんて、その程度ってことなんでしょうか……」

盗賊「なに言ってんのよ。『その程度』どころか、『それほどまでに』って感じよ」

メイド「……!」





盗賊「誰よりも、自分よりも、勇者の気持ちを優先したんでしょ? まったく、勇者以上のお人よしね」

メイド「……。」

盗賊「……お前にそこまで愛されてる勇者は、ほんと幸せ者よ」

メイド「盗賊ちゃん……」

盗賊「だけどっ! ここでカッコつけたからには、絶対に負けんじゃねぇわよ? いいわね!」プイッ

メイド「……はい、もちろんですっ!」ニコッ





・・・・・・



勇者「魔女、もう大丈夫?」

魔女「うん……ほんとにごめんね、勇者。それにメイドさんも、せっかく……」グスッ

メイド「ふふ、いいえ。これからは抜け駆けなしの、正々堂々で勝負ですよ、魔女様」ニコッ

魔女「……うん。あと、それから……」

メイド「?」

魔女「魔女“様”っていうのは、もうやめて。それに……アタシも、メイドさんのこと、呼び捨てで呼びたい……んだけど」///

メイド「……ふふ。はい、構いませんよ、魔女ちゃん」ニコッ

魔女「あ、ありがと……メイド」/// カァァ





勇者「せっかく勇気を出して告白までさせたのに、オレのせいで……オレからも、ちゃんと謝らなくちゃ。ごめんなさい」

メイド「い、いえ、そんな……とんでもありませんっ!」///

勇者「それから、オレのことをずっと気にかけてくれてありがとう。普段は恥ずかしくて言えないけど、ずっと昔から、感謝してるよ」

メイド「ゆ、勇者様……!!」/// パァァ



勇者「いつもありがとう、メイド」ニコッ

メイド「~~~っ!?」/// ボンッ!!


魔女さんこっちです




勇者「良かったらオレのことも、呼び捨てで呼んでほしいな。メイドさんは侍従というより、もう家族みたいに思ってるから」

メイド「………………ゆ、勇者」///

勇者「なに、メイド?」

メイド「―――ッッッ!!」/// ドッキーンッ!!



メイド「盗賊ちゃん、盗賊ちゃんっ!!」/// バシバシ

盗賊「な、なによ……!? ちょっ痛い……!」

メイド「私、今日まで生きててよかった……!!」/// フンス

盗賊「……お前、生きてて楽しそうね」





・・・・・・



魔女「あっ……安価魔導書が反応してる。新しい魔法を習得したみたい」

勇者「え?」

魔女「そうだ、勇者に報告してなかったヤツも含めて、今ちょっとまとめてみるね」ペラッ





○051『OoJYxE4g0』
  呪文効果:半径約十五メートルの範囲にいる、勇者と魔女よりも弱い敵を全滅させる
  習得条件:勇者と魔女が初めて出会った日から起算して半年以内に強い信頼関係を構築する


○091『/1Abzi150』
  呪文効果:対象を魅了して極度に依存させる
  習得条件:勇者か魔女が誰かに告白などをしてその気にさせておきながらあまり構わず、勇者と魔女が目の前で仲良くする


○343『5yn3we+eo』
  呪文効果:対象の恋愛感情や近い未来の死が旗として見える
  習得条件:勇者が、魔女を含めた3人以上から恋愛感情を向けられる


○391『2nOqv9p/0』
  呪文効果:この魔導書の呪文のうち1つだけ、習得条件を無視して発動することができる
  習得条件:安価魔道書の呪文を30種類 習得する


○491『jreLL9Jx0』
  呪文効果:対象は自分に対する周囲の好感度と信頼度が数値としてわかるようになる
  習得条件:魔女の関与するところで、勇者が女性に愛の告白をされる


○804『wC+mUcXR0』
  呪文効果:しばらくのあいだ勇者と魔女が互いの居場所を正確に感知できる
  習得条件:勇者と魔女が強い絆で結ばれる


○847『9+UInZKJ0』
  呪文効果:対象に鎧を装着する
  習得条件:鎧を着た敵と戦って、鎧を脱がす


○995『pW+NnEBU0』
  呪文効果:勇者と魔女が一度だけ、限界を超えた力を発揮する
  習得条件:勇者と魔女が互いの合意の上でキスする


○1213『YzF/fmPG0』
  呪文効果:ガラスを通して、知人の様子や行ったことのある場所を覗くことができる
  習得条件:魔女に勇者への独占欲が芽生える





勇者「うわっ、一気に習得したなぁ……!」

魔女「今日は他にも4つ習得したから、今のところだけでも13種類だね」


メイド「ちょっ、ちょっと待ってください! これっ、995ページ……!」


勇者「ああ……うん。それは、えっと……」

魔女「勇者がメイドに告白される前に、ちょっとね」///





メイド「ずるい! 私だって、盗賊ちゃんに操られてる時にしか……」

魔女「じゃあ、今しちゃえば?」

メイド「……え!?」///

勇者「ちょっ……!?」///

魔女「恋人になったりもしたんだし、記念に1回くらいやっとけば?」

メイド「そ、それは……えっと、また今度ということで……」/// カァァ


まじょはせっきょくさをてにいれた!


あのP4のシャドウみたいのは何だったのか


なんか言いたくないけどメイドさんが物語に振り回されててなんかなぁ……
この展開はいくらなんでも「制作側の都合です」レベルで……魔女派だけど納得できない
あと>>268
黒魔女は今後も出てくるだろう




勇者「そ、それじゃあ、そろそろみんなのところに戻ろうか。きっと心配してるよ」

魔女「うん……みんなにもいっぱい迷惑かけちゃったし、謝らなくちゃ」

メイド「妖精ちゃんも、とても心配してましたよ」

勇者「魔女の居場所が分かったのは、騎士さんのおかげだしね」

魔女「……お礼も言わなくちゃね、だね」





魔女「……今回のことで、はっきりと自分の気持ちに気がついたよ」

魔女「それから、アタシは1人じゃないんだってことも、心配してくれる人がいるんだってことも、改めてわかった」

魔女「魔王を倒したあとで、もしも勇者がメイドさんのことを選んでも……今度はきっと、祝福できると思う」ニコッ


メイド「魔女さん……」





魔女「それから、勇者」

勇者「うん?」


魔女「好きだよ。大好き。愛してる」/// ニコッ


勇者「なっ……!?」///

魔女「へへっ」/// ニコッ


メイド「……むぅ。手ごわくなりましたね、魔女さん……」





勇者「……ん?」


盗賊「…………」ジー


勇者「盗賊ちゃん、みんなのところに戻るよ?」スタスタ

盗賊「あ、うん……わかった」

勇者「魔女のことジッと見つめて、どうかした?」

盗賊「い、いや、べつに……なんでもねぇわよ」

勇者「……?」





盗賊(さっき、勇者とメイドが駆けつけた一瞬に感じた、あの魔力……)

盗賊(そしてその直後に魔女が発した、あの魔力……)

盗賊(……もしかして、魔女は……)



魔女「ふふふ……アタシには、勇者とのエロい習得条件という切り札もあるんだよねぇ」

メイド「だ、だめですっ! そんなの反則です! エッチなのは認めませんっ!!」///



盗賊(まさか……ね。そんなハズないか)

盗賊(こんな場所にいるはずねぇものね)


呪文効果:バスト、ウエスト、ヒップを自由に変えることができる魔法
習得条件:勇者が魔女のバスト、ウエスト、ヒップを触ったり揉んだりする


文句じゃないが『5yn3we+eo』ってこれじゃ生存フラグとか落とし穴フラグとかそういうフラグが見れないじゃないでかー、やだー
一応、恋愛フラグと死亡フラグ以外にも提要するように書いたはずなのに……

>>269
今までのメイドさんの性格を考えるとそうでもなくね?
個人的にはむしろ、姫様の書いた筋書きのままに抜け駆けしようとした事の方が違和感が強かったから順当だと思ったけど。

>>277
じゃあ「もし魔女が>>214で言ったように付き合っていたら同じ展開はしたか」と聞いたら同じことをしたとはっきり言える?
なんか魔女にくっつけようとして少し無理な展開をしているように感じる。これで最終的にハーレムでもメイドさんがかわいそうな気が……
個人的な意見だが、心の闇を解放しようとして、勇者の笑顔で一歩とどまってそのまま心の闇を心に残す展開でもよかった




―――セドサル王国・ケリドアリー通り―――



メイド「―――というわけでして、私と勇者……様の関係は、一度リセットということになりました」



騎士「はぁ!? え、あんた、なにやってんのよ……」

商人「それは随分とまた、思い切ったものね。……わたしとしては嬉しいことだけれど」

妖精「メイドお姉ちゃん……いいの?」


メイド「ふふ、いいんです。勇者様や周りの方々の気持ちを押しのけてまで手に入れた歪な関係なんて……」

メイド「……心優しい勇者様が葛藤に苦しむ姿を見るために、告白したわけではありませんから」

メイド「私が本当に欲しかったのは、遠慮も気後れもない、忌憚なき愛なのです」





メイド「それに、もしも最終的に私が選ばれなかったとすれば……」

メイド「つまりそれは、あのまま私と付き合い続けることが、勇者様の気持ちを押さえつけていたということですから」

メイド「やっぱり、不意打ちの抜け駆けではなく……勇者様に決めて頂くのが、一番良いと思ったんです」


騎士「なんていうか、あんたって損な性格ね……そういうところ、ほんと勇者に似てるわ」

騎士「綺麗事も結構だけど、もうちょっと汚い生き方しても罰は当たらないわよ?」


メイド「ふふ、これが私ですので。メイドは綺麗好きでなければ務まりません」ニコッ





騎士「ここまで開けっぴろげに愛されてちゃ、もう鈍感じゃ逃げられないわね、勇者?」チラッ

勇者「ど、鈍感……? 鈍感って?」

魔女「そうだよ。アタシも自分の気持ちに気がついたんだから、勇者も……ね」ギュッ

メイド「ま、魔女ちゃん……! そういう過度なスキンシップは……」///

魔女「せっかくメイドがくれたチャンスだもん。恥も外聞も捨てて、猛アタックしちゃうよ!」フンス





騎士「魔女が抱き付いてない方……勇者の右腕は空いてるわよ?」

メイド「そ、それでは勇者様が歩きづらくなってしまいますから……」///

騎士「……マジメねぇ」

商人「フフフ、それならわたしが、失敬してしまおうかしら」ギュッ

勇者「うわっ!?」///

メイド「しょ、商人様ぁーっ!?」///

妖精「パパはあたしのなのーっ!!」ムギュッ

勇者「もがっ!?」

メイド「妖精ちゃんまで!? そんな抱き付き方をしたら、前が見えないでしょう!?」///





魔女「ところでメイドは、勇者のことを呼び捨てにするのはやめたの?」

メイド「そ、それは2人っきりの時だけにしておきます……立場もありますし、まだ少し恥ずかしいので……」///

魔女「……そっか」

メイド「それよりみなさん、一旦勇者様から離れて―――」



盗賊(今のところはメイドがアドバンテージぶっちぎってそうだけど……)

盗賊(メイドも早くアタックかけられるようにならないと、後々厳しくなってくるかもしれねぇわね)

盗賊(その辺りは、姫と要相談かしら……)





僧侶「あ、みんなだっ!」

剣士「ほら、俺様の嗅覚に狂いはないだろ?」フフン

僧侶「ほんと、すごいね!」サワサワ

剣士「耳を触るなっ!!」///


騎士「あ、僧侶と剣士……」





僧侶「えへへ、さっきぶりだね、騎士ちゃん! あれ……えっと、勇者さんは?」キョロキョロ

騎士「あそこの、3人がかりで押さえこまれてる女が勇者よ」

僧侶「ええええっ!? な、なにがあったの!?」

騎士「まぁ、なんていうか……修羅場よ」

僧侶「修羅場!?」





剣士「ん? ……そこのチビ、なんか変な匂いがするな……海の……」クンクン

盗賊「えっ…………ああっ!? お前、その魔力……まさか獣王!?」

剣士「なんだ、俺様のこと知ってるのか? っていうかテメェ、よくよく魔力を感じてみれば、魔物か」ザワッ


盗賊「ぴぃっ!? きゃああああっ!?」ダッ


剣士「あっ……」

僧侶「もう、剣士ちゃん! 怖がらせちゃダメでしょ!」

剣士「ご、ごめん僧侶ちゃん」シュン





盗賊「獣王が、わ、私を殺しに来たぁぁぁ~!! た、助けてよぉ、勇者ぁ!!」ギュゥゥ

勇者「ふが、もがっ!?」


メイド「と、盗賊ちゃんまで……! み、みなさん一旦離れてくださーいっ!!」/// ワタワタ


騎士「あーあー、どんどん収拾付かなくなっていくわねー」

騎士「とりあえず……なんかムカつくから勇者をちょこっと斬っとこうかしら」シュラッ


メイド「騎士様!? 後生ですので、これ以上ややこしくしないでくださいっ!?」



・・・・・・


魔女とメイドの立場が本来逆だった……という件なのですが、
本来の予定では、メイドが『ミス・セドサル』となって、魔女は2位。(魔女は無愛想なので)
でも魔女には勇者の票が入っていて(メイドは知らない)、
魔女「3位以内には入れたし、勇者の票が入ったからまぁいっか」///
などと納得し、ハーレム続行……というストーリーでした。(姫様はノータッチで、誰かの告白イベントもなし)

ですがそれでは面白くないと直前で思い直し、
ハーレム物でも抜け駆けする人がいたっていいじゃない! と冒険してみたかったのと、
そろそろ鈍感鈍感言われる勇者くんが可哀想になったので、『停戦協定』を結ぼうと思い至り、
こういった流れとなりました。

出来心で大きく舵を切ったせいで、いろいろと物議をかもしてしまう結果となってしまい申し訳ございませんでした。




・・・・・・



剣士「だからぁ、こう構えんだよ。こう」グイッ

勇者「こう?」

剣士「そうそう、そんで、両目で遠近を、片目で照準を合わせるんだ」ズイッ

勇者「ふむふむ、なるほど」

剣士「もっと体を乗り出したほうが良いぞ。俺様が押さえててやるから」ギュッ

勇者「おっ、ありがと」


僧侶「…………」





僧侶「あの、剣士ちゃん……」


剣士「んぁ? どうかしたか、僧侶ちゃん?」

勇者「?」


僧侶「あの、2人とも近すぎるっていうか、なんていうか……」///


剣士「……? 俺様は勇者に射的を教えてるだけだぞ?」

勇者「うん。オレ不器用だから、こういうの苦手で……助かるよ」ニコッ

剣士「へへっ、気にすんな」ニッ





僧侶「そ、それはいいんだけど……なんていうか、剣士ちゃんが後ろから抱き付いてるみたいな格好じゃない?」///


剣士「ん? もしかして勇者、イヤか? 闘技場の銭湯で体は洗ったんだけど……」クンクン

勇者「イヤじゃないし、イイ匂いだよ? むしろ剣士は大丈夫なのか?」

剣士「俺様はそんなの気にしないぞ」

勇者「じゃあ、問題ないな」

剣士「ああ、大丈夫だな」


僧侶「ぜ、全然大丈夫じゃないよぉ……!」///





剣士「しゃーねーだろ? 女どもが揃って浴衣をレンタルしに行っちまったんだからよ」

勇者「オレと僧侶くんは男だし、獣人の剣士はあんまり肌を露出できないし、こうして時間を潰してないとな」

剣士「今の勇者は女そのものだけどな。首筋から雌の匂いがするぞ」スンスン

勇者「ひゃっ!?」

剣士「胸も立派なもんぶら下げやがって……生意気な奴め」モミモミ

勇者「んっ……ばか、やめろってぇ……!」/// ピクッ


僧侶「うぅぅ~~~っ、みんな、早く帰ってきてよぉ……!」///





剣士「もしかして僧侶ちゃん、妬いてんのか?」ニヤッ

僧侶「ふぇっ!?」///

剣士「なるほどねぇ、ま、その気持ちはわかるよ。なんせ、昔からずっと……」チラッ

僧侶「ち、ちがうよっ!? ちがうったらぁ!!」/// ブンブン


勇者(そういえば僧侶くんと剣士は幼馴染の男女なんだよな……やっぱりそういう関係なのかな?)





剣士「よし勇者、あれを狙え。……そんでお前から僧侶ちゃんにプレゼントしてやれ」ヒソヒソ

勇者「え、なんで……?」

剣士「僧侶ちゃん、ああいうの好きなんだよ。いいから俺様の言う通りにしろ。そんでとにかく当てろ、いいな」ギュッ

勇者「……わかった」スッ


 パンッ


僧侶「あっ……!」





勇者「おお、やった! やっと当たった!!」///

剣士「やったじゃんか、勇者」

勇者「ありがと剣士!」グッ

剣士「へっ、気にすんな」ガシッ

勇者「でも、なんであのぬいぐるみを?」

剣士「僧侶ちゃんがチラチラ見てたんだ。ほら、あげてやれ」ヒソヒソ

勇者「あ、ああ……わかった」





勇者「はい、僧侶ちゃん……これ」スッ

僧侶「え……? こ、これ、ボクに……?」///

勇者「よかったら、もらってよ。もしかして、こういうの好きじゃない?」

僧侶「え、あ……ボク、男だし、こういう可愛いものは……え、えっと……!」


 ギュッ


僧侶「あ、ありがと……大事にするね」/// ギュゥゥ

勇者「うん」ニコッ





・・・・・・



魔女「どう……かな?」///

メイド「へ、変じゃありませんか?」モジモジ

商人「……」ドヤァ

妖精「パパ、かわいい!? かわいい!?」フワフワ

騎士「ほら妖精ちゃん、あんまり人前では空飛ばないの」グイッ

盗賊「……」プイッ



勇者「おお~っ、圧巻だな!」

僧侶「わぁ、みんな綺麗だねっ!」

剣士(よくわからん)





勇者「とりあえず言えることは、『ミス・セドサル』と『ミス・ヒロイン』のせいで注目浴びまくってるってことか」


魔女「あっ……」

メイド「……忘れていました」///


商人「そろそろミスコンの結果や写真が出回ってる頃だものね。2人の認知度もなかなかのものになってるはずよ」

騎士「あんまり近づかないでおこうかしら」


盗賊「……お前たち2人もそこそこ有名なお嬢様だし、どっちも大概だと思うけど」





盗賊「……それに空飛んでるのとか、猫耳もいるし」チラッ


妖精「?」フワフワ

剣士「猫じゃねぇよ、獅子だよ!!」クワッ


盗賊「ひぅ!?」コソッ

勇者「剣士」ジッ

僧侶「剣士ちゃん?」ジッ


剣士「……ごめん」シュン





・・・・・・



勇者「妖精、ほっぺに綿菓子ついてるよ」ヒョイッ

妖精「えへへぇ」///

勇者「可愛い浴衣だね」ナデナデ

妖精「そうかな!? やったぁ!!」ギュッ

勇者「おっとっと」ギュッ





騎士「この子、ほんと可愛いわね……!」ハァハァ

勇者「小さいから?」

騎士「そうだけど、なんかその言い方は他意を感じる!! べつにこれは、コンプレックスの裏返しとかじゃないからね!?」

勇者「はいはい。騎士お姉さんは大人で母性が強いから、弱い子とかちっちゃい子とかをほっとけないんだよな」

騎士「わ、わかってるじゃない……♪」///





・・・・・・



僧侶「やったぁ♪ また一等賞だぁ!」ピョンピョン

剣士「相変わらずだな僧侶ちゃん……そろそろ勘弁してやろうよ」




盗賊「……っ」チラチラ

勇者「やっぱり怖い?」

盗賊「怖いっていうか、えっと、その…………うん」ギュッ

勇者「剣士は悪いやつじゃないよ。確かにメチャクチャな強さだけど、優しいし」

盗賊「メチャクチャな強さってだけで怖いじゃねぇのよ……」

勇者「そんなことないよ。オレの師匠は多分獣王より強いけど、全然怖く……あれ、おかしいな……魔王より怖いぞ?」ガタガタ

盗賊「ほらやっぱりっ!」ジワッ





勇者「でも大丈夫。剣士は襲って来たりしないし……もしなにかあってもオレが庇うから」

盗賊「……うん」ギュゥゥ

勇者「よしよし……」スッ


勇者(あ、撫でると怒るんだった。危ねっ)ピタッ


盗賊(……なんで今に限ってやめんのよ)プイッ



商人「……」ジー





勇者「ん? 商人さん、どうかした?」

商人「その子……もしかして、ウィツィワシ盗賊団の子?」

勇者「えっ……! 商人さん、この子のこと知ってるの!?」

盗賊「!」

商人「以前、騙されてうっかり盗賊団のアジトに金平糖を届けに行ったんだけど……」

勇者「なにをどう騙されたらそんな状況に!?」





商人「その時、門前払いどころか門前処刑されそうになってたわたしのところへこの子が来て、助けてくれたのよ」

商人「どうやら金平糖を食べてみたかったらしいのだけれど」

商人「ええっと……」ゴソゴソ

商人「これがその金平糖よ。覚えてない?」スッ


盗賊「いや、私はこの子の身体を借りてるだけで……」チラッ



盗賊「―――っ」ドクンッ!!





盗賊「っ」フラッ

勇者「と、盗賊ちゃん!?」ガシッ

商人「大丈夫かしら? 具合でも悪いの?」

盗賊「……今、一瞬だけ、この子の意識が浮上しかけたみたい」フラフラ

勇者「まさか、金平糖や商人さんを見て、眠ってた意識が……!?」

盗賊「……もしかすると、そのアジトとやらに行けば、『この子』も完全に目を覚ますかもしれねぇわね」





商人「よくはわからないけれど……とりあえず、これを食べてみてはどうかしら?」スッ

勇者「そうだね。なにかいい結果になるかも」

商人「それじゃあ……あーん」スッ

盗賊「……あ、あーん」


 パクッ


盗賊「……」ガリゴリ





勇者「どう? なにか変化はあった?」

盗賊「……いえ、特には。味自体には大した思い入れはなかったのかもしれねぇわね」

勇者「商人さんのことが好きだったのかな?」

盗賊「どうかしらね」


商人「よくはわからないけれど……盗賊ちゃん、おいしいかしら?」


盗賊「……まぁ、そうね……おいしいんじゃないかしら」プイッ

商人「そう。それはなによりだわ」ドヤァ





―――セドサル王国・ヘズロイ広場―――



魔女「……」ガチガチ



妖精「魔女さん、がんばって!」フリフリ

勇者「ファイトー」フリフリ


騎士「ねぇ、魔女はあんなところでなにをやらされるの?」

メイド「なんでも、『ミス・セドサル』はこの日暮れの広場で踊り子をしなければならないそうでして……」


勇者「それと、魔法も習得できるしね」ピラッ



○782『PhLU77ta0』
呪文効果:周囲にいる人間を魅了する
習得条件:魔女が勇者や大衆の前で踊り子をやる





僧侶「魔女さんって、踊りはできるの?」

勇者「多分だけど、できないだろうなぁ……でも心配いらないよ」

騎士「なんでよ?」

勇者「歴代の『ミス・セドサル』だって、みんな踊りが堪能だったわけじゃない。むしろ下手な人の方が多かったらしいんだ」

盗賊「つまり下手でも、美人ならそれはそれで盛り上がるんでしょ?」

勇者「そういうことだな」





魔女「……///」ヒョコヒョコ


 ワハハハッ カワイイ!! コッチムイテー!




騎士「……たしかに、そういう愛され方はしてるみたいね」

勇者「そもそも魔女は、ミスコンでも天然かましたりドジっ子かましたりしてたから」



メイド「私も踊れとか言われたらどうしようかと思いました……」

盗賊「祭りの運営はそうしたかったみたいだけど、姫がやんわり断ったそうよ」

メイド「姫様ありがとうございますっ!!」///





・・・・・・



魔女「死にたい。とても死にたい。速やかに」プルプル


勇者「そんな落ち込まないでも……すごく可愛かったよ、魔女」ポン

魔女「ほ、ほんと? かわいかったっ?」///

勇者「え、う、うん」

魔女「じゃあ……うん。それならいいや」///

勇者「お、おう」///



騎士「現金なヤツねぇ」

メイド「……むぅ」プクッ





―――セドサル王国郊外・ディアリス河川敷―――



勇者「……ごめん、お待たせ」スタスタ

魔女「……」スタスタ



騎士「結構交渉に時間かかったわね。……で、どうだったのよ? 花火は作らせてくれるって?」


勇者「いや、さすがにぶっつけ本番の素人に扱わせるのは危ないから無理だってさ」


商人「まぁ、順当ね。うっかり手違いで地上で炸裂なんてしようものなら、どれほどの被害になるか知れたものではないもの」





僧侶「じゃあ、さっき言ってた魔法は諦めるの?」

勇者「それなんだけど……これを見てみるとさ」



○772『FREth+3r0』
呪文効果:好きな形で好きな規模の爆発を起こす
習得条件:勇者と魔女で花火を作る



勇者「打ち上げ花火を作れとは書いてないんだよね」

僧侶「え、それって……」

魔女「うん。だから小さくて簡単な花火を作らせてもらったんだ。それに余ってたのをもらったりしたから……」ドッサリ

勇者「花火大会が始まるまで、これで遊ばない?」ニコッ





・・・・・・



勇者「それ、点火!」カチッ


 ブシュゥゥゥゥ…!!


メイド「わぁ、綺麗ですね!」

騎士「でも既製品と比べると、さすがに見劣りするわね」

勇者「あはは……オレは丁寧だけど不器用で、魔女は器用なのに雑だからなぁ」ブシュゥゥ

魔女「雑じゃないし……」ムスッ





 パチパチ、パチッ…


妖精「……わぁぁ」/// キラキラ

盗賊「……っ」/// キラキラ


勇者「もしかして妖精と盗賊ちゃんは、花火見るのって初めて?」

妖精「うんっ! すっごいきれいだね!!」///

盗賊「話には聞いたことがあるけど……これが線香花火なのね」ジー





メイド「お二人も、やってみてはどうですか?」ニコッ


勇者「そうだね。ほら、これ持って」スッ

妖精「やったーっ!」

盗賊「あ、熱くない……?」ビクビク

勇者「大丈夫だって」クスッ





勇者「よし、じゃあ火をつけるよ」カチッ


 パチパチパチッ パチパチッ


妖精「すごーい! パチパチしてる!!」///

盗賊「わぁ……!」/// キラキラ


勇者「こういうのもあるよ」カチッ


 ピュゥゥゥッ… パパンッ!!


妖精「ピカピカが飛んでった! 妖精もやりたい!」///

盗賊「わ、私も……!」///


勇者「よし、いっぱいあるから好きなのを選んでな」ニコッ

メイド「ふふっ」クスッ





剣士「とりゃー、二刀流だ!」ブシュゥゥ


僧侶「け、剣士ちゃん、危ないよぉ!」ワタワタ


騎士「ふんっ、相変わらず全然太刀筋がなってないわね」ブシュゥゥ

剣士「むっ……言ったな騎士センパイ?」ブシュゥゥ


僧侶「ちょ、ちょっと騎士ちゃんまで……!?」


剣士「くらえっ!!」ブシュゥゥ

騎士「……!」ブシュゥゥ


 スパパパパパンッ!!





僧侶「き、綺麗だけど……! 綺麗だけど危ないってば2人とも!!」///


剣士「熱っ!? アッチィ!!」ブシュゥゥ

騎士「これくらいの火花、避けながら戦いなさいよ」ブシュゥゥ

剣士「無茶言うな!」ブシュゥゥ



僧侶「もう、やめてってばぁ……!」





僧侶「……やめないと」パァァ



 ズシッ…!!



剣士「うぎゃっ!?」グシャッ



騎士「え……?」


僧侶「剣士ちゃん……危ないのは、めっ、だよ?」


剣士「わ、わかったから魔法止めて僧侶ちゃん……体が地面にめり込んでる……」グググッ





・・・・・・



商人「人が集まってきたわ……そろそろ時間ね。勇者、移動しましょう」

勇者「え? ここからでも十分見えるんじゃない?」

商人「そうだけれど、この祭りの運営を実質取り仕切っているのは、レアアノス商会なのよ?」ドヤァ

勇者「……?」

商人「つまり、特等席を用意してあるってことよ。さぁ、みんなで行きましょう」ニコッ





・・・・・・



 ヒュルルル… パァアンッ!! ドパンッ!! パラパラパラ…



妖精「わぁぁ!! でっかーい! すごい!!」///

メイド「綺麗ですねぇ……」///

盗賊「……っ」/// コクコクッ



剣士「孤児院時代は遠くから音だけ聞こえてたけど……こんなすごいもんだったんだな……」

僧侶「しかも、こんなに近くで見られる機会なんて、そうそう無いよっ」///





魔女「アタシも初めてまともに見たかも……」

騎士「あんた、セドサル出身じゃないの?」

魔女「違うよ。……王国から離れた、小さな村で生まれたの」

騎士「ふぅん……」

魔女「まぁいろいろあって、今は王国に転がり込んでるけど」





騎士「ふふ……それにしても、ああいう大きなものを見てると安心するわ」

魔女「え、どうして?」

騎士「あれに比べたら、人間なんてみんなちっぽけだからよ。たかが1メートルなんて誤差よ、誤差」

魔女「……コンプレックスは根深いね」





勇者「ありがとう、商人さん。……でも、こんなに大勢を急に、特等席に呼んでも良かったの?」

商人「問題ないわ。『勇者様御一行』に文句をつける輩はいないもの」ドヤッ

勇者「う、うーん……なんか特権濫用って感じもするけど」

商人「それにあの子たちをご覧なさい。あんなに喜んでくれるのなら、花火だって本望でしょう」

勇者「あはは、そうかもね」クスッ






 ヒュゥゥゥ… ドォォンッ!!

   パァアンッ!! パラパラパラ…



魔女「ねぇ、勇者……」


勇者「なに、魔女?」


魔女「来年もこうやって……またみんなで祭りに来ようね」


勇者「ああ。次は師匠も、姫様も、うちの妹とかも連れて来て……もっとたくさんで来よう」ニコッ


魔女「……うんっ!」/// ニコッ



 ドパァァアンッ!!  パラパラパラ…

  ヒュルルル… パパンッ!! パァァアンッ…






―――セドサル王城・勇者の私室―――



勇者「―――また来年も、か……」



勇者(そのためには、魔王を倒さないとな)

勇者(魔王……か。どんなヤツなんだろう。山のような巨人とか、巨竜とか……)

勇者(どんなヤツでも、必ず勝たないといけない。きっと厳しい戦いになるとは思うけど)


勇者(それでもみんな無事で……笑って帰れる最後にしたいな)グッ





―――セドサル王城・廊下―――



魔女「……」コソコソ


メイド「魔女ちゃん?」


魔女「っ!!」ギクッ


メイド「枕を持って、どちらまで?」ニコッ

魔女「……あはは……ちょっとトイレに」

メイド「トイレなら、お部屋にありますよね?」ニッコリ

魔女「……ええっと」





魔女「勇者と添い寝をしに行きますが、なにか?」シレッ

メイド「ひ、開き直りましたね……。そんなのダメです!」

魔女「そんなのダメじゃないもーん。そんな法律ないもーん」

メイド「子供のようなことを……!」


魔女「……じゃあ、メイドも一緒に寝る?」


メイド「…………はい?」





魔女「メイドなら、アタシいいよ。3人で寝ようよ」

メイド「え、えっと、でも、その……!?」///

魔女「ふぅん、イヤなんだ?」

メイド「イヤではありませんけどっ!!」///

魔女「どっちみちアタシは勇者の部屋に行くから……だったらメイドは『監視』に来れば?」

メイド「か、監視……?」

魔女「アタシたちが変なことにならないように、近くで監視するの」

メイド「……。」





メイド「そ、そうですね……えっと、私は勇者様のお世話係なので、監視しないといけませんねっ」///

魔女「一晩中立って監視してるの?」

メイド「……も、もっと近いところで監視しますっ」///

魔女「そっか。じゃあメイドの枕を取りに行ったら、一緒に勇者の部屋に行こっか♪」

メイド「し、仕方ありませんね……! やむをえません!!」/// フンス





―――セドサル王城・姫の私室―――



盗賊「……ってなわけで、勇者とメイドの関係はリセットになったわ」

姫「そっか~。うふふ、報告してくれてありがとね~」

盗賊「……怒ったりしねぇの?」

姫「怒る? どうして?」

盗賊「だって、お前がせっかく手を回して成功させた計画を破綻させられて……」

姫「計画を破綻? なんの話をしてるのかな~?」

盗賊「え?」





姫「なにか誤解があるみたいだけど……計画は『順調』だよ?」ニコッ

盗賊「……は?」


姫「うふふ、メイドちゃんの優しさのおかげで、チェックメイトは延期になっちゃったけど……」

姫「でもベストなタイミングは、やっぱり魔王を倒した後だからね~」

姫「メイドちゃんは一番理想的な提案をしてくれたよ。あんまり魔女ちゃんを刺激するのは好ましくないしね~」

姫「……藪をつついて竜が出たら、手に負えないから」


盗賊「…………。」





姫「どうして魔王は、剣士ちゃんを四天王にしたんだと思う?」

盗賊「……は? なによ突然……どうしてって……」

姫「ただの人間を獣王レベルに強化できるのなら、獣王を強化したほうがいいんじゃないかな~?」

盗賊「そんなの知らねぇわよ……強化の条件に、偶然マッチしたんじゃねぇの?」

姫「『偶然』……ね。そうだといいね~」ニコッ

盗賊「な、なによ、その含みのある言い方は……」

姫「……。」






姫「魔王は、この王国にいるかもしれない」



盗賊「―――」






姫「下手をすれば、このセドサル王城の中に……ううん、もっと言えば―――」

盗賊「ちょ、ちょっと、なに言って……!?」



姫「…………。」



姫「うふふ、冗談冗談。かわいいな~、盗賊ちゃんは」ニコッ

盗賊「…………はぁ。お前が言うと、冗談に聞こえねぇわよ……」ガクッ





姫「冗談ついでに、またお願いがあるんだけど……いいかな~?」

盗賊「……なによ?」


姫「1つめは、武闘家ちゃんが回復したら、すぐにわたしの部屋に呼び出すこと」

姫「2つめは、今度勇者くんといっしょに、盗賊ちゃんが発見されたアジトに行ってみること」


姫「そして3つめは……」




姫「今すぐに、魔女ちゃんの部屋から『安価魔導書』を盗んできてほしいの」ニコッ





―――セドサル王城・勇者の私室―――



○491『jreLL9Jx0』
  呪文効果:対象は自分に対する周囲の好感度と信頼度が数値としてわかるようになる
  習得条件:魔女の関与するところで、勇者が女性に愛の告白をされる



勇者「これって……昨日習得した呪文だっけ?」

魔女「そうそう。これでね、勇者のことを好きな人を調べるの!」ピラッ



○763『XITtFsM90』
  呪文効果:対象が他人からの感情の機微に敏くなる
  取得条件:勇者に恋愛感情を抱いている女性全員を確認する



勇者「……この呪文って必要? 魔王とか旅に関係あるの?」

魔女「もう、いいから調べるの! アタシにとっては重要なんだからぁ!」





魔女「じゃあ早速だけど、アタシたちの関係を数値化するよ?」

勇者「数値化って……どんな感じになるんだ?」

魔女「それは今から実際にやってみるからね。じゃあいくよ?」



魔女「jreLL9Jx0」



勇者「……ん? 魔女の頭の上に、文字が浮かんで……」

魔女「勇者はこれから人の顔を凝視するたびに、自分に向けられてる好意と信頼が見えるようになったよ」

勇者「えっと、魔女からオレへの数字は……?」


 『 好感度8 信頼度8 』





魔女「数字はどれくらい?」ソワソワ ///

勇者「えっと、好感度が8で、信頼度も8……だってさ」

魔女「うそっ!?」

勇者「え……なに? これは低いの? 高いの?」

魔女「最高値が10だから、高いは高いけど……8じゃあ、普通の恋愛感情だよ!」

勇者「恋愛感情……じゃあ、オレが言うのもなんだけど、妥当なんじゃ……?」





魔女「違うんだよ! 8じゃあ、その辺のカップルの数字と同じだって言ってるの!」

魔女「アタシ、勇者がいなくなったら、辛くて寂しくって死んじゃいそうだったのに……!」

魔女「これじゃあ数字が低すぎるよ! なんかの間違いっ!!」///


勇者「そうは言ってもなぁ……。じゃあ、オレから魔女への数字は?」


魔女「あ……うん、じゃあ、やってみるね……」



魔女「jreLL9Jx0」





魔女「えっと……あ。頭の上に文字が……」ジー


 『 好感度7 信頼度8 』


勇者「どうだった?」

魔女「……低いっ!! ……わけではないけどぉ……わかってたけど、恋愛感情はないんだ……」シュン

勇者「え、数字は? どれくらいだったの?」

魔女「まぁ恋愛感情を抜けば、最大レベルの好意ではあるから……パートナーとして気は許してくれてるって感じかなぁ」

勇者「あの、数字は……」

魔女「でもやっぱり全体的に低い気がする! こうなったら、他の人のところにも行ってみよう!!」グイッ

勇者「ちょっ、だから数字はどうだったんだよーっ!?」





―――セドサル王城・廊下―――



魔女「……あ、いたっ!!」トテテ



メイド「……魔女ちゃん?」クルッ

妖精「あ、魔女さんだ」

盗賊「……ふん」プイッ





勇者「おお、ちょうどいい感じに」スタスタ



メイド「勇者様っ」///

妖精「わぁ、パパだぁ♪」ヒューン

盗賊「……。」チラッ チラッ




魔女「うわーぃ、数字を見なくてもわかる、この好感格差……」ガクッ





メイド「好感度と信頼度を、数値化ですか……」

妖精「えへへ、あたしがいちばんパパのこと好きだよ?」

盗賊「……悪趣味な遊びね」


魔女「まぁまぁ。それじゃあ見てみなよ、勇者」

勇者「ん、わかった。えっと……」ジー






メイド『 好感度10 信頼度10 』

妖精『 好感度7 信頼度9 』

盗賊『 好感度5 信頼度7 』






魔女「さ、さすがメイド……なんていうか、ぶっちぎってるね……どうやら魔法はおかしくなかったみたい」

妖精「おかしいよっ! なんであたしが7しかないのっ!?」

魔女「多分だけど、まだ妖精ちゃんは子供だからね。精神的に幼いと、数字が低くなるのかも?」

妖精「納得いかなーいっ!!」プンスカ


魔女(……あれ? っていうことは、アタシの数字が思ったより低かったのって……)





勇者「好感度10って、すごい……んだよな?」

魔女「……すごいっていうか、やばいよ。『貴方のためなら死ねます』って感じ」

メイド「……っ」///


勇者「信頼度10っていうのは?」

魔女「……『なにがあっても味方でいます』って感じ」

メイド「~~~っ」///





勇者「好感度5っていうのは、普通くらいなのか?」

魔女「ううん、数字は-10から+10までの21段階だから、十分高いよ。仲の良い友達くらいかな」

勇者「……そうなの?」チラッ


盗賊「し、しらない」プイッ


勇者「いやぁ、なんか嫌われてるかもって思ってたから、素直に嬉しいよ」ナデナデ

盗賊「な、撫でんな……」///





メイド「盗賊ちゃん、いつの間にやら勇者様と打ち解けていたんですね」ニコッ

盗賊「ち、違ぇわよ! 私は、相手の意識を押さえつけないで身体を乗っ取ったら、心が同調しちゃうのよ!」

メイド「えっと……?」

盗賊「つまり、よく身体に入ってるお前が、勇者ラブすぎて、私まで、その…………そ、そういうことっ!!」///

メイド「あぅ……な、なんだかごめんなさい……」///





勇者「……」///

魔女「よかったね、勇者」ジトッ

勇者「な、なんだよその目は……」


魔女「……せっかくだから、アタシも見とこっかな」ジッ




メイド『 好感度6 信頼度8 』

妖精『 好感度4 信頼度7 』

盗賊『 好感度-2 信頼度-5 』






魔女「…………。」

勇者「どうだった?」

魔女「……まぁ、こんなもんだよねって感じ」

勇者「?」

魔女「よ、妖精ちゃんからの評価も、ちょっとずつ上がってるはずだしっ……」





妖精「ねぇねぇ魔女さん! パパからの好きって、わからないの!?」

魔女「ううん、わかるよ、やってみる?」

妖精「みるっ!」

メイド「あ、あの、私も、その……」///

魔女「うん、もちろん! ……アンタは?」

盗賊「わ、私はいらねぇわよ。結果なんてわかってるし」プイッ

メイド「まぁまぁ、そう言わずに」ニコッ

盗賊「う……」





魔女「jreLL9Jx0」


メイド「……っ」ドキドキ ///

妖精「♪」ワクワク

盗賊「……」チラッ





勇者『 好感度9 信頼度9 』

メイド「……っ!!」///



勇者『 好感度8 信頼度7 』

妖精「……えへへぇ」///



勇者『 好感度6 信頼度6 』

盗賊「……あっ」





メイド「あの、どっちも9でした……」///

魔女「……9!? ……えっと……8で並の恋愛感情だから、9は……ラブラブ夫婦かな……」

勇者「えっ!?」///

メイド「らぶっ……!?」///


妖精「好感度8だった! ねぇ、これ結婚できるっ!? できるよねっ!?」///

魔女「妖精ちゃんのそれは、多分、親としての娘への愛情だと思うなぁ……」

妖精「え~っ? ……うーん、まぁ、いっか。えへへ」ニコッ





勇者「盗賊は?」

盗賊「……両方3よ」

勇者「えっ! そんなに低いのか!?」

魔女「低いかな? そもそもが魔物で、しかも四天王なんだから……3でもかなり高いほうでしょ」

勇者「うーん、もうちょっと信頼してるつもりなんだけど……そう思い込んでただけなのか」



メイド「もう、盗賊ちゃんってば」クスッ

盗賊「……」プイッ





―――セドサル王国・ヴァー商店街―――



勇者「あ!」


僧侶「あれ、勇者さん? 魔女さんも……こんにちわ」ニコッ

剣士「おー、お前らか」


魔女「こんにちわ」

勇者「こんにちわ、僧侶くん、剣士。一緒だったのか」

剣士「ん、まぁな。それより勇者お前、相変わらず外だと女の姿なのな?」

勇者「し、仕方ないだろっ! 『勇者』は普通の人間とは違うっていうことにしとかなきゃいけないんだから!」///





魔女「じつは、勇者に対する好感度と信頼度を、魔法で調べてるの」


僧侶「好……感度……?」


勇者「まぁ、そういう習得条件の魔法があってさ。それで商人さんに会いに行く途中だったんだけど……」

魔女「僧侶くんは男だし、剣士は勇者との恋愛なんて無縁っぽいし、別にこの2人はいいんじゃない?」

勇者「そうだけど、やっぱり友達からの評価は気になるよ」

魔女「ま、そう言うと思ったよ」


剣士「好感度、ね」チラッ

僧侶(……あわわわっ!!)///





勇者「じゃあ早速……」ジー


僧侶「ちょ、ちょっと待っ……むぐっ!?」

剣士「丁度いい機会だろ、僧侶ちゃん」グッ

僧侶「ふぇ、ふぇんひひゃんっ!?」///




僧侶『 好感度8 信頼度10 』


剣士『 好感度5 信頼度6 』






勇者「あれ……? 男からの好感度も、7を超えるのか? 8って恋愛感情じゃなかったか?」

魔女「え?」

勇者「好感度は8で、信頼度なんて10だぞ?」


僧侶「―――っ」ドキッ ///


魔女「おかしいな……いや、でも大親友くらいの好感度で、7だから……」

勇者「それってつまり……!」


僧侶「え、あの、ちがっ……!!」///





勇者「そんなにオレのことを友達だと思っててくれたのか!」ダキッ

僧侶「ふぇっ!?」///


剣士「っ」ズコー


勇者「いやぁ、唯一の男友達に嫌われてたらどうしようかと思ったけど、まさかこんなに親しみを感じてくれてたなんて!」ギュゥゥ

僧侶「あ、あわわっ!?」///


魔女「……でも、いくらなんでも高すぎるんじゃない?」


僧侶「そ、それはっ!! ずっと教会で『勇者様』を慕ってたから、それでだよ……! うん、間違いない!」///

僧侶「ほら、信仰っていうのは神への愛だからねっ! 勇者さんを慕うのも、信仰だからっ!!」





魔女「信仰かぁ……うーん、それなら、この信頼度も納得……なのかな?」

勇者「なんでもいいじゃんか、仲良くて悪いことはないだろ? ね、僧侶くん?」

僧侶「そ、そだね……あはは」ホッ



剣士「……はぁ。やれやれ」


剣士(こりゃあ、俺様が介入しないと、進展はなさそうだな)





剣士「ちなみに、勇者から俺様たちへの好感度ってのは、どんなもんなんだ?」

魔女「見てみる?」

僧侶「え、あ、えーっと……」アセアセ

剣士「んじゃ、頼む。こっちだけ見られたんじゃ不公平だからな」

魔女「じゃあ……」



魔女「jreLL9Jx0」






勇者『 好感度5 信頼度5 』

僧侶「好感度が5で、信頼度も5……?」



勇者『 好感度6 信頼度5 』

剣士「好感度が6で、信頼度が5だな」




僧侶「ええっ!? ちょっ、なんで剣士ちゃんのほうが高いの!?」

剣士「え、いや、そう言われてもなぁ……」





僧侶「ずるいずるいっ!! ボクのほうが前から知り合いだったのにぃ~!!」ポカポカ

剣士「えっと、ごめん……?」

僧侶「うぅ~、ボクなんて、ドブ糞ゴミ虫だもん……生きてる価値ないもん……」シクシク

剣士「……僧侶ちゃんが隠し事してるからじゃないか?」


勇者「隠し事?」ピクッ


僧侶「ああっ!? いや、隠し事っていうか、あの……、もう、剣士ちゃん!?」///

剣士「ま、時間の問題だと思うけどなー」


勇者「……?」キョトン





・・・・・・



勇者「あっ、あそこに……!」

魔女「商人さん! それと……」



商人「あら勇者、今日も可愛らしい姿ね」ニコッ

騎士「……またそんな格好して」



勇者「好きでしてるんじゃない!」///





勇者「騎士さんも一緒だったのか」スタスタ

騎士「悪い?」ジッ

勇者「え、いや、悪かないけど……もしかして、機嫌悪い?」

騎士「……」チラッ


勇者「?」ボイン


騎士「半分よこせっ!!」クワッ

勇者「なにを!?」

魔女「残りを半分はアタシによこせ!」クワッ

勇者「だからなにを!?」





商人「ところで勇者、わたしになにか用かしら?」

勇者「あ、うん、そうなんだ。じつはお願いがあって」

商人「お願い? フフフ、勇者のお願いなら、どんなことでもお安い御用よ」ドヤッ

勇者「そんな大したことじゃないんだけど……商人さんからの好感度を知りたいんだ」

商人「……好感度?」キョト





・・・・・・



商人「……なるほどね、そういうこと。もちろん良いに決まっているわ。さぁどうぞ」

魔女「ついでに騎士さんも一緒にやっちゃえば?」

騎士「え……まぁ、べつに騎士ちゃんもいいけどね」

勇者「それじゃあ早速……」ジッ



商人『 好感度7 信頼度10 』

騎士『 好感度7 信頼度8 』





勇者「……あれ?」

魔女「どうかした?」

勇者「商人さんの好感度が7なんだけど……たしか恋愛感情って……」ヒソヒソ

魔女「ええっ? 好感度7じゃ、恋愛感情とは言えないはずだけど」ヒソヒソ


商人「……?」


魔女(……もしかしてアタシとか妖精ちゃんと同じで、精神年齢の問題なのかな?)

魔女(それとも、男から遠ざけられて育ってきたお嬢様だから……?)





商人「なにか問題でもあったかしら?」

勇者「え、いやいや問題はないよ! 結構好感度も高くて、嬉しいよ。ありがとう」

商人「フフフ、それはよかったわ」ドヤァ



騎士「騎士ちゃんはどうだったのよ?」

勇者「ああ、騎士さんも商人さんと同じくらいだったよ。好感度は商人さんと同じ数値だし、信頼度も……」

騎士「…………は?」

勇者「え?」





騎士(しょ、商人って、勇者に告白まがいのことしたんじゃなかったっけ……!?)

騎士(というか、いつもべたべたしてるし、さっき2人で話してた時も勇者ラブって公言してたし……!)

騎士(それと同じってことは、騎士ちゃんも―――い、いや、ありえない! ありえないからっ!)/// ブンブン

騎士(たしかに闘技場で『恭順の誓い』をやっちゃったけど、それは騎士としての従属の誓いであって……)

騎士(も、もしかして無意識!? 無意識で勇者のこと……な、ないない! それはないって……!)///





勇者「あの、騎士さん?」


騎士「はひゃいっ!?」/// ビクッ


勇者「顔、赤いけど……大丈夫?」

騎士「だだだだいじょうぶよっ! 今朝も牛乳3リットル飲んできたし!!」///

勇者「それは大丈夫なのか!? 下痢になりそうだけど!!」


騎士「……っていうか、呼び捨てでいいってば」


勇者(あ、そういえばそんなこと言ってたっけ。……でもさん付けの方が喜びそうだしなぁ)





商人「お役には立てたかしら?」

勇者「うん、ありがとう。助かったよ」

商人「フフフ、それはなによりだわ。また今度、うちに遊びに来て頂戴」

勇者「……あー、うん……ソウデスネ」ダラダラ



騎士「騎士ちゃんの数字は、きっとなにかの間違いよね……そうよ、そうに決まってるわ」ブツブツ





魔女「せっかくだし、2人も勇者からの好感度を見とく?」


商人「勇者からの好感度? それはとても興味あるわね」

騎士「ん~……じゃあ、一応……」


魔女「それじゃあ……」



魔女「jreLL9Jx0」





勇者『 好感度6 信頼度6 』

商人「あら、文字と数字が……どっちも6ね」



勇者『 好感度7 信頼度8 』

騎士「……好感度7と、好感度8? これ、上限と下限はどれくらいなのよ?」





魔女「好感度7に信頼度8!? それ、アタシと同じじゃん! どういうこと勇者!? メイドさんならまだしも!!」ユサユサ

勇者「そんっ、なこと、言われ、てもっ……!!」ガックンガックン

魔女「ずっと一緒にいたアタシと、なんでこの子が同値なの!?」

勇者「さ、さぁ……多分、闘技場で直接対決したり、四天王である獣王相手に共闘したりしたからじゃないか……?」

魔女「アタシも四天王の水魔相手に共闘したよ!」

勇者「あれはオレに電撃かましただけだろ!!」

魔女「ぐぬぬ……!」





商人「わたしはあんまり高くはなかったようね」

魔女「いやいや、会ったばっかりで6なら、かなり高いよ」

商人「……でも、もう少し頑張ってみないといけないかしら」ボソッ

魔女「?」




騎士「……6でもかなり高いのね……」///





―――セドサル王国・シヴァロス道場―――



勇者「師匠!」トテテ


武闘家「ん、ああ、勇者くんかい。いらっしゃい」ムクッ

勇者「ああもう、寝ててくださいってば」グイッ

武闘家「そうだね……今日はそうさせてもらおう。昨日の今日で、まだ本調子ではないのでね……げほっ」

勇者「大丈夫なんですか? なにかあったら、隠さずすぐに言ってくださいね?」

武闘家「ああ、わかっているさ……ごほっ……勇者くんは心配性だね」





魔女「ねぇ勇者、武闘家さんは体調悪いみたいだし、さっさと済ませて今日は帰ろう」

勇者「そうだね。それじゃあ、早速……」


武闘家「済ませる? 私になにか用事かい?」


魔女「今、勇者へのみんなの好感度と信頼度を魔法で調べてるんです。すぐに終わるので安心してください」

武闘家「……好感度と信頼度…………ちょっ!? それはマズ―――げほっ、ごほっ!!」ビチャッ

勇者「師匠!? 大丈夫ですか!?」フキフキ

武闘家「血はいいから……そ、そんなことよりっ!」

勇者「そうですね、さっさと済ませちゃいます」ジッ

武闘家「ち、違っ……!」





武闘家『 好感度10 信頼度10 』




勇者「え……どっちも、10……?」

魔女「嘘っ!? メイドと同じで、両方とも最大値!?」




武闘家「う……ぁ、なぁ……!?」/// カァァ





勇者「……あ、えっと……」

魔女「…………武闘家さん」



武闘家「……だ」ボソッ



勇者「え?」



武闘家「今日限りで、キミをシヴァロス道場の門下より破門する!!」





魔女「ちょっ……!?」

勇者「な、なんでですか!」


武闘家「なんでもだっ!! もう二度と道場の敷居を跨ぐんじゃない!! ……げほっ、ゴホッげほっ!!」ビチャッ


勇者「師匠!」スッ


武闘家「近づくなっ!!」


勇者「っ」ビクッ


武闘家「げほっ、ゲホッ…………もう帰るんだ……二度と顔を見せるんじゃない」


勇者「そんな……」

魔女「な、なんでですか! そんな、いいじゃないですか、好きだって……」





武闘家「う、うるさい! わ、私は……ごほっ……」ジワッ

勇者「……師匠」ギュッ

武闘家「や、やめなさい! 触るんじゃ、ない……」ググッ…

勇者「イヤなら“勁破”で吹っ飛ばしてください」

武闘家「そんなこと……できるはずないだろう……」





武闘家「……ずっと隠してきたのに……こんな、こんなところで……!」ジワッ


魔女「どうして……別に好きでもいいじゃないですか」


武闘家「……良いわけがないだろう。私のような、死にぞこない……いや、生きぞこないが」

武闘家「勇者くんは優しい子だ。げほっ……私のような人間にでも、好意を向ければ好意を返してくれる」

武闘家「だけど、どうせじきに死ぬ私からの好意なんて、迷惑なだけだ」

武闘家「だから嫌われるつもりでシゴいたりして、無理やり突き放したりしたのに……」





勇者「……魔女、師匠にも魔法をかけて」

魔女「jreLL9Jx0のこと? ……うん、わかった」


武闘家「……?」



魔女「jreLL9Jx0」






魔女「武闘家さん、勇者の顔をジッと見てください。そうしたら、勇者からの好感度と信頼度が見えますから」

武闘家「……こんなの、なんの意味が……」

魔女「勇者が、見てほしいみたいですよ」

武闘家「……。」ジッ



勇者『 好感度8 信頼度10 』



武闘家「……好感度8と、信頼度10……? これって……」

魔女「好感度8は、“愛情”レベルですよ。恋人とか、家族への愛情。それに信頼度は最大値です」

武闘家「え……」


魔女「アタシにだって7なのに……まぁ、何年もずっと一緒だったんだもんね……」





勇者「どんなにシゴかれたって、師匠を嫌いになるわけないじゃないですか」

武闘家「……勇者くん」

勇者「今さら嫌いになれって言われても無理ですよ。師匠とメイドさんは、もう家族だと思ってますから」

武闘家「家族……」

勇者「師匠の病気だって、ぜったいオレがどうにかします。だから……死にぞこないとか言わないでください」

武闘家「……」

勇者「師匠は死なせません。オレと、ずっと一緒に生きてください!」





魔女「……勇者、それプロポーズみたいだよ」

勇者「えっ!? あっ……!」///


武闘家「……ぷっ。ふふ、あはは……」


勇者「師匠?」

武闘家「もしも私の病気が完治しようものなら、魔女ちゃんもメイドちゃんもぶっとばして、勇者くんを手に入れちゃうかもね」

魔女「えっ!?」





武闘家「ふふ、冗談さ。……だけどもう、開き直ったよ」

武闘家「私は勇者くんのことが、大好きだ。キミは私にとって、生きている意味そのものなんだよ」

武闘家「キミを守るためなら、この命を差し出すことも惜しくない。本当に、それくらいの想いだ」


勇者「……師匠」


武闘家「もちろん、余命幾ばくかという、こんな病身で勇者くんと結ばれようだなんて思わない。そこはもう、ずっと昔に諦めてるんだ」

武闘家「だけど……せめて死ぬまでは、キミを好きでいることを許しておくれ。そして、死ぬ時くらいは傍にいてほしい」


武闘家「それでもう、なにもかも……死すらも、怖くはないんだよ」ニコッ





勇者「……っ」ギュッ

武闘家「……キミは本当に、優しい子だね」ギュッ

勇者「師匠を死なせたりなんて、ぜったいしませんから……!」ギュゥゥ

武闘家「……ありがとう。私もキミを死なせたりなんて、絶対にしないからね」



魔女「……!」

魔女(安価魔導書が反応してる……。魔法を習得したみたいだね)





○924『iobNPS3c0』
  呪文効果:対象が現在最も知られたくないと思っていることを読み取る
  習得条件:勇者と魔女が、知り合いの隠していることを知る


○1302『9LqSJWus0』
  呪文効果:手で触った人や物の情報を知ることができる
  習得条件:勇者と魔女が、人の隠している秘密を知る



魔女(武闘家さんの隠していた恋心を知っちゃったからか……)

魔女(あーあ、また手ごわい人が増えちゃった。家族同然……か)

魔女(……勇者も罪な男だよね)





武闘家「―――」ピクッ

勇者「?」


武闘家「……出ておいで。今の私は機嫌が良いから……そう怯えることはないよ」ギロッ



 シュタッ



勇者「あ……!」

魔女「アンタは……」



忍者「さすがでござるな。完全に気配を断っていたつもりでござったが……」スタスタ





武闘家「生物である以上、気配を消し去ることなんてできるはずもない」

忍者「……成程」

武闘家「見たところ、私の攻撃による傷は完治しているようだね。……キミ、本当に人間かい?」

忍者「さて、拙者はそのつもりでござるが」

武闘家「今日はなんの用かな? 解答次第では、今度こそ……」ザワッ


忍者「……」





 ザッ


忍者「先日の一件については、真にかたじけない! この通りでござる!」バッ



武闘家「……は?」


勇者「ど、土下座……?」

魔女「どうなってるの……?」



忍者「武闘家殿には大いに誤解を与えてしまったようでござるが、そもそも拙者に勇者殿を殺害するつもりはなかったのでござる」



武闘家「なんだって……? どういうことだい?」





忍者「詳しくは語れぬ。ただあれは……「勇者殿を殺害」というのは、そのままの意味ではなく、ものの喩えでござる」


武闘家「……要領を得ないな」


忍者「拙者が身を置いている立場というものが、複雑につき……このような説明になってしまうのでござるが」

忍者「ともあれ、拙者に勇者殿に対する敵意や殺意はないということは理解していただきたい」


武闘家「……」





勇者「あの、師匠……これはどういうことですか?」

武闘家「……さてね。とりあえず、彼の我々に対する好感度を調べれば、真偽はわかるんじゃないかな?」


忍者「……!」


武闘家「嘘じゃないと言うのなら、構わないだろう?」


忍者「……是非もない」





勇者「じゃあ……」ジッ

魔女「……よくわかんないけど」ジッ

武闘家「……。」ジッ




忍者『 好感度9 信頼度10 』

勇者「……え!?」



忍者『 好感度8 信頼度8 』

魔女「はぁ!?」



忍者『 好感度7 信頼度7 』

武闘家「……うん?」





忍者「……。」



勇者「え、これ、本当に……?」

魔女「むしろ異常なくらい高いんだけど……」

武闘家「これは、どういうことだい?」


忍者「拙者の立場からは、なんとも」


武闘家「……」





武闘家「……もしも勇者くんに敵対するようなことがあれば、その時は、今度こそ全力で叩き潰すよ」


忍者「承知致した」ペコッ


勇者「な、なんでこんなに数値が高いんですか……? 忍者さん、前にオレたちと会ったことあります?」


忍者「……」チラッ

忍者「……さて、どうでござろうな。それではこれにて、御免」ヒュンッ


魔女「あっ……! 行っちゃった……」

勇者「……今回は分身じゃなかったんだな」


武闘家「……」





武闘家「……彼の思惑はわからないが、2人とも、くれぐれも油断はしないことだ」


勇者「は、はい……」

魔女「油断なんてできませんよ……数値が高すぎて逆に怖いですし」


武闘家「まぁ、キミたちになにかあれば、私が護るがね」ニコッ


勇者「……それじゃあそのためにも、今はゆっくり休んでくださいね。ほら、横になってください」グイッ

武闘家「う、うん……」///



魔女(……武闘家さん、女の子の顔してる……)ジー





―――セドサル王城・小会議室―――



魔女「おっかしいなぁ……まだ『XITtFsM90』が習得できてないだなんて」

魔女「まだ勇者のこと好きな人がいるんじゃないの? 誰を誑しこんだの!? ええい白状しろー!」


勇者「そうは言われても……もう心当たりなんてないって」


魔女「むぅ……まだ調べてない女の人っていたっけ?」

魔女「あ、勇者の家族とか!」





勇者「それは恋愛感情とは違うだろ?」

魔女「そりゃそっか」

勇者「ああ、そういえば遊び人さんとかは調べてないけど……」

魔女「勇者が小さい頃お世話になったっていう?」

勇者「うん。でもほんの短い間だけだったしなぁ。それにあれっきりまったく会ってないし……」

魔女「ん~、それじゃあ、なんとなく違そうだね」





勇者「あ、もしかして姫様とか?」

魔女「それだ!」

勇者「でも、姫様とはほとんど喋ったことないんだけどなぁ。前に魔女と一緒に、姫様の護衛で顔を合わせたときは、ほんとに久しぶりだったし」

魔女「そういえば、お久しぶりですとか言ってたっけ。じゃあ、姫様でもないなら……」


魔女「……あっ」





勇者「なに? 誰か思い当たる人でもいるの?」

魔女「……勇者、闘技場で大活躍したよね? 騎士を傷つけずに倒したり、剣士を圧倒したり」

勇者「活躍かぁ。まぁ、そうかな。……え、まさか!」

魔女「うん……もしかして、あの闘技大会を見てた誰かが勇者に一目惚れしたとか?」

勇者「えええええっ!? じゃあ、それって、確かめようがなくないか!?」

魔女「そういうことになるね……」

勇者「……骨折り損かよ」ガクッ





勇者「でもまぁ、今まで知らなかったみんなの気持ちも知れたし、無駄ではなかった……かな」

魔女「そういうことにしとこっか。あ、それから……」

勇者「うん?」

魔女「今はアタシの数値はイマイチだけど、今にきっと、アタシに振り向かせて見せるからねっ!」ニコッ

勇者「ぅ、お、おう……」///





―――アトルム樹海―――



勇者「…………」ザッ ザッ

魔女「…………」ザッ ザッ

商人「…………」ザッ ザッ

盗賊「…………」ザッ ザッ



勇者「商人さん……正直に言ってほしい」

商人「フフフ、なにかしら。わたしは生まれてこの方、一度も嘘をついたことがないわよ」ドヤッ

勇者「……多分商人さんのことだから、本当に一度も嘘をついたことがないんだろうね……」

商人「ええ、もちろんよ」ドヤヤッ

勇者「それならこの質問にも、正直に答えてほしい。決して怒ったりなんてしなから」

商人「任せてちょうだい」






勇者「……道、迷った?」



商人「ええ、もうまったく道がわからないわ」ドヤッ






魔女「わからないわじゃないよっ!! 商人さんが『道はきっと覚えているから任せてちょうだい』って言ったんでしょ!?」

商人「怒らないって言ったのに……」

魔女「話を逸らすなーっ! どうすんのこれ!? もう小一時間樹海をグルグルしてるけど!」


盗賊「……。」バッ

商人「盗賊ちゃん……?」


魔女「な、なによ?」





盗賊「……空を飛ぶ魔法だってあるんだから、そんなに怒鳴るんじゃねぇわよ。わざと迷ったってわけじゃねぇのよ?」

魔女「うっ……」


勇者「盗賊ちゃんの言う通りだよ、魔女。商人さんを責めてもどうにもならないんだから」

魔女「……ごめん」シュン


商人「……ありがとう、盗賊ちゃん」ニコッ

盗賊「べつに」プイッ





盗賊(身体が勝手に動いて、庇っちゃった……なんでだろ)

盗賊(それにしても……ったく、どうしてこんなことに)



………………

…………

……





―――セドサル王城・姫の私室―――



姫「前にも言ったと思うけど、そろそろ勇者くんとか商人さんを連れて、盗賊ちゃんのアジトに行ってみてくれないかな~?」


盗賊「はぁ……べつにいいけど、どうしてそんなことしなくちゃいけねぇのよ?」

姫「うふふ、それはまだナイショだよ~。でも最終的には盗賊ちゃんのためにもなることだから、気合入れてがんばってね~」ニコッ

盗賊「またなんか企んでるみたいね……」ジトッ

姫「うふふ~」ニコニコ





盗賊「……ま、お前を敵に回してイイことなんてなさそうだし、おとなしく従っておくわよ」スタスタ

姫「ありがとね~。あ、それからもう一つ」

盗賊「あん?」クルッ

姫「盗賊ちゃんも勇者くんのこと、好きになってもいいからね?」ニコッ

盗賊「…………は?」

姫「うふふ、それじゃあがんばって~」フリフリ

盗賊「……?」



…………

……





―――アトルム樹海―――



勇者「でも、王国までは空を飛んで帰れるにしても、樹海のアジトを空から探すなんてできないだろうし……」

盗賊「なんか便利な魔法はねぇわけ?」

魔女「うーん、どうだったかな……少なくともどこにあるかもわからないアジトは探せないと思うけど」

勇者「それじゃあ、商人さんの記憶だけが頼りってわけか……」

魔女「記憶力が良くなったり、記憶を書き換えるような魔法はあったと思うんだけどなぁ。でも忘れた記憶は……」


商人「……。」シュン


盗賊「……」チラッ





盗賊「……―――っ!!」ドクン…!!



勇者「盗賊ちゃん? どうかした?」

盗賊「いや……えっと、でも、そんなはずは……」

勇者「?」

盗賊「こんな場所に来た覚えはないのに、なんとなく……道に、見覚えがあるような」

勇者「!」

魔女「もしかして、その肉体の……“盗賊”の記憶が……?」

盗賊「今までそんなことはなかったけど……まさか感情だけじゃなくって、記憶まで流れ込んできてる……?」





勇者「と、とにかく、見覚えがある方向に向かって、ちょっとずつ進んでいこう!」

魔女「そうだね! そうすれば、商人さんも思い出すかもしれないし!」


商人「偉いわ、盗賊ちゃん。金平糖をあげる」ナデナデ

盗賊「べ、べつにいらねぇわよっ」

商人「はい、あーん」

盗賊「……あーん」

商人「フフフ」ニコッ

盗賊「……」ガリゴリ





・・・・・・



 ガサガサッ


勇者「おっ、ちょっとひらけた場所に出たな」

魔女「……というか、木が倒れてたり岩肌が削れてたり……前にここで、なにかがあったみたいだね」

勇者「盗賊ちゃん、この場所は見覚え……」チラッ


盗賊「―――」


勇者「……盗賊ちゃん?」





盗賊「こ、この、場所は……」ドクンッ…

盗賊「うぅっ……!」フラフラ


商人「盗賊ちゃん、もういいわ。あとはわたしに任せてちょうだい」ギュッ

盗賊「……?」

商人「前に来た時と随分景色が変わってたから、一瞬気がつかなかったけど……」スッ



商人「……あそこにある洞窟が、アジトの入り口よ」





―――ウィツィワシ盗賊団アジト―――



 コツ、コツ…



魔女「YXpSvsCP0(発光魔法)」パァァ



勇者「……!」

魔女「!」


商人「魔物に襲われたという話は……本当のようね……」キョロキョロ

盗賊「―――」ドクン…





勇者「ところどころの壁に、抉られたりしたような痕が……これは、ひどいな」

魔女「魔王軍に襲われた……か。たしかに普通の魔物ではなさそうだね」

勇者「どうして?」

魔女「こんな樹海に魔物なんて生息したがると思う?」

勇者「……なるほど、言われてみれば」

魔女「こんな陰気なところを好むのは、お尋ね者か亡霊くらいのものだよ」

勇者「……食べられそうな草木も果実も見当たらない、痩せた森だもんな。動物も寄り付かないか」

魔女「だからこそ盗賊団のアジトとしては適していたんだろうけど……」

勇者「それで王国は、襲ったのは魔王軍って判断したわけか」





盗賊「……っ」フラフラ

商人「盗賊ちゃん、大丈夫?」ギュッ

盗賊「え、ええ……。ったく、“盗賊”の意識が疼いて仕方ねぇわね」

商人「その身体の子が、目を覚ましそうなのかしら?」

盗賊「なにか大きなきっかけがあれば、おそらくは……」




商人「盗賊ちゃんは、その子の身体に居候しているという話だったわね?」

盗賊「……まぁね」

商人「なら、もしその子が目を覚ましたらどうするつもりなのかしら?」

盗賊「さぁ? 今度こそ殺されるかもしれねぇから、逃げる準備はしとくべきかしら?」クスッ

商人「そんなこと、勇者がさせないと思うけれど」

盗賊「…………さぁ、どうだかね」プイッ





勇者「もう少し奥まで探索してみよう。なにか有益なものが見つかるかもしれないし」

盗賊「ハッ、この盗賊団が隠してたヘソクリでも探してみる?」

魔女「不謹慎だよ」ポコッ

盗賊「いだっ!?」


商人「……もしかして、ここを襲ったっていう魔王軍がまだ残っていたりはしないかしら?」

勇者「む……それは、どうだろうな」

魔女「ここを襲ってから今までずっと? さすがにそんなことするメリットはないんじゃない?」





商人「けれど、魔王軍がここを襲った理由も判明していないのよ?」

商人「だからなにか、わたしたちには思いもよらないような思惑で、残っている可能性もあるんじゃないかしら?」

商人「食糧は……幸い、この盗賊団の人たちが蓄えていたものとか、あるいは、盗賊団の人たちそのものとか?」


勇者「……およそ考えたくない最悪のパターンだけど、そういう可能性も考慮しておいた方がよさそうだな」

魔女「うん……“盗賊”の目覚めるタイミング次第では、すごくイヤな展開になるかも」

盗賊「……そしたら余計なものを見てこの子が壊れる前に、私が意識を乗っ取って庇ってやるわよ」

勇者「ああ。そのときは頼むよ、盗賊ちゃん」ポンッ

盗賊「……ん」コクッ





・・・・・・



勇者「かつて人が住んでた名残は随所に感じるけど……生き物の気配はないな」

魔女「そもそも“盗賊”が城に回収されてたってことは、このアジトにセドサルの兵団が派遣されたかもしれないんだよね」

勇者「それなら残ってた遺体とかも回収されてるか。そういえば姫様が、盗賊ちゃんは“唯一の生き残り”って言ってたもんな」

魔女「良かったのか悪かったのか……」

勇者「……。」





盗賊「―――」フラフラ


商人「盗賊ちゃん? どこに行こうとしているのかしら?」

勇者「え……あっ、盗賊ちゃん、勝手に動いたら危ないよ!」

魔女「アタシたちから離れないで!」


盗賊「……あそこ……あの横穴」フラフラ


勇者「……? あそこになにかあるのか?」

魔女「もしかして、“盗賊”の……」





―――ウィツィワシ盗賊団アジト・盗賊の小部屋―――



盗賊「……ここは……“盗賊”の自室だわ」フラフラ


勇者「藁に布をかけてあるのが、簡易ベッドなのかな? たしかに子供用って感じのサイズだな」

魔女「アジトのほとんど一番奥の部屋だね。だからこの子だけ、辛うじて助かったのかな?」


商人「あら、ベッドの枕元に……金平糖が」



盗賊「―――」ドクンッ…





商人「これ、以前わたしがここに届けたもののようね。ほとんど食べてあるけど、まだちょっとだけ残ってるわ」


盗賊「………………。」



魔女「……もしも魔王軍の襲撃時にも、肌身離さず持ってたなら……」

魔女「この金平糖の“残留思念”を読み取れば、ここで起こった事件の真相がわかるかも」


勇者「残留思念?」


魔女「この魔法だよ」ピラッ

○1302『9LqSJWus0』 手で触った人や物の情報を知ることができる





魔女「ただし、もしそうなら“盗賊”にもう一度辛い記憶を思い出させることになっちゃうけど……」

盗賊「このまま目覚めないよりは、ずっといいわよ」

魔女「……だね」



魔女「それじゃあ、みんなで金平糖の袋に触れて。一斉に魔法をかけるよ」スッ

勇者「……」スッ

商人「……」スッ

盗賊「……」スッ


魔女「いくよ―――」



魔女「9LqSJWus0(サイコメトリー)」キュィィン…!!





―――ウィツィワシ盗賊団アジト・過去―――



団長「……誰だぁ、テメェは? あの女の遣いか?」


商人「レアアノス商会幹部、商人よ。以後お見知りおきを」ドヤッ

団長「……どうやってここを嗅ぎ付けた? なんの用だ?」

商人「この金平糖を頼んだのはそちらでしょう? わたしはこれを届けに来ただけよ」スッ

団長「ふざけてんのか? 盗賊団が菓子なんざ頼むかボケッ!!」バシッ

商人「あっ……」ポロッ





団長「この場所を知って、まさかタダで帰れるとは思ってねぇだろうな?」

商人「もちろんタダではないわ。商人として、きちんとお代は頂くつもりよドヤァ

団長「……よほど死にてぇと見えるな」ピキピキ


 カサッ


商人「あら?」

団長「あっ、こら盗賊!! んなもん拾うんじゃねぇ!!」



盗賊「っ!!」/// ビクッ





商人「……もしかしてその子が金平糖を頼んだのかしら?」

団長「だから頼んでねぇって言ってんだろ!!」


盗賊「……あ、あ、あの、これ、なんですか……?」


商人「それは金平糖といって、甘いお菓子よ。食べ物なの」

盗賊「あまい、おかし……!」///


団長「毒でも入ってるかもしれねぇ、さっさと捨てろ」

盗賊「え……」





商人「失礼ね。レアアノス商会の看板を背負っている以上、取り扱う商品の品質管理には誇りを持っているの。毒の混入なんてさせないわ」

団長「怪しさ満点のテメェが言っても説得力がねぇんだよ!!」

商人「でも、その子は信用してくれたみたいだけれど?」

団長「は?」


盗賊「……」モグモグ


団長「なにやってんだバカ! さっさと吐き出せ!!」ポコッ

盗賊「ひぅ!?」





商人「吐き出す必要はないわ。その金平糖、わたしにも1つちょうだい?」スッ

盗賊「え……あ、えと、はい……」スッ

商人「あむっ」ガリボリ


団長「……!」

盗賊「……!」


商人「ほら、ね。毒なんて入っていないわ」ドヤッ

団長「……」ギロッ


商人「盗賊ちゃん、美味しかったかしら?」ニコッ

盗賊「……は、はい、あの、あまくって、おいしい、です……///」

商人「フフフ、当然ね。レアアノス商会の品質は王国一だもの」ドヤァ





団長「……結局テメェは、なにをしに来たんだ」

商人「何度も言わせないでちょうだい。商人がわざわざこんなところまで足を運ぶのだから、商売に決まっているわ」

団長「……チッ。この場で処刑してやろうと思ったが、こいつに免じて勘弁してやる。おら、金だ」チャリッ

商人「!」

団長「釣りはいらねぇからとっとと失せろ。俺の気が変わらねぇうちにな」スタスタ


盗賊「……っ」トテテ…



商人「まいどあり」ペコッ





・・・・・・



団長「……盗賊」チラッ

盗賊「は、はひゃいっ……!?」/// ビクッ

団長「うめぇか、それ?」

盗賊「う、ぁ、はいっ……! あ、あまくておいしい、です……」

団長「そうか」

盗賊「あ、あの、おとーちゃんっ」///

団長「あ?」





盗賊「え、えと、その……おかし、かってくれて……ありがとう、ございましたっ……」/// ペコッ

団長「……チッ」ナデナデ

盗賊「ひゃっ!?」///

団長「そういや、初めてだったな。ちゃんと何かを買い与えてやったのは」

盗賊「おとーちゃん……?」

団長「……いや、なんでもねぇよ」スタスタ

盗賊「?」





―――ウィツィワシ盗賊団アジト・盗賊の小部屋・過去―――



 ズガァァアアンッ…!!



盗賊「ひっ、ひぅ……!!」カタカタ


団長「と、盗賊っ……! よかった、ここにいたか……!」ヨロッ


盗賊「おとーちゃん!」ダッ

団長「すまねぇ……すまねぇ、盗賊……」

盗賊「ひ、ひどいけがしてます……! にげましょう、おとーちゃん!」

団長「他の奴らを置いて逃げられるかよ……それに、こんな急ごしらえのアジトに避難路なんざ用意してねぇ」

盗賊「じゃ、じゃあ、かくれて……」

団長「すまねぇ、盗賊……だが俺ぁ、この“仕事”を終えたら、お前を真っ当に育ててやるつもりだったんだぜ……?」

盗賊「……おとーちゃん?」





団長「本当だ……あのアホ女から、その菓子を買ってやった時に、決めてたんだ……本当に、足を洗うつもりだった……」

団長「あの“仕事”で入ってくる大金でお前を、陽の当たるところに連れ出してやるつもりだったんだ……」

団長「……だが、両手じゃ足りねぇくらいの悪事を働いてきた俺にゃあ、その資格はなかったらしい」

団長「城の秘宝はヤツらに奪われちまうだろう……“仕事”は失敗だ……終わっちまった……もう、全部」

団長「盗賊……俺ぁ、これからも、お前の父親代わりを務めてやりたかったが……ここまでみてぇだ」

団長「お前だけでも、生きてくれ……」スッ


 ズガッ!!


盗賊「…………お、とーちゃ……」ドサッ


団長「お前はヤツらの姿を見ていない……それにまだガキだ。だからもしかしたら、見逃してもらえるかもしれねぇ……」ヨロッ

団長「……すまねぇ、盗賊……すまねぇ……」スタスタ


盗賊「……とぉ……ちゃ……」ポロッ


 トサッ…





―――ウィツィワシ盗賊団アジト・盗賊の小部屋・現在―――



 キュィィイインッ!!



勇者「―――っ!!」ビクッ


商人「団長さん……盗賊団から足を洗おうとしていたのね。それで、盗賊ちゃんと真っ当に……」

魔女「“仕事”ってなんだろう? それから、“ヤツら”とか“秘宝”とか、意味深な言葉ばっかり出てきたけど……」


盗賊「―――おとーちゃん」ボソッ


勇者「……盗賊ちゃん?」





盗賊「おとーちゃん……!!」ポロポロ


魔女「まさか、意識が……!?」

勇者「!」

商人「!」





盗賊「ゴボッ―――そうみたいね。今ので完全に、この子の意識が覚醒したようだわ」


勇者「……そっか」

盗賊「どうする? 私はしばらく引っ込んでようか?」

勇者「……どうするのが、いいんだろうな」

盗賊「知らねぇわよ。……ただ、今この娘は天涯孤独で、誰も頼れる人がいないってことは確かね」

勇者「!」

盗賊「だから……安心するまで傍にいてやればいいんじゃねぇかしら?」

勇者「……そう、だな。ありがとう、盗賊ちゃん」

盗賊「紛らわしいから、私のことは水魔って呼びなさいよね。……じゃ、引っ込むわよ。ゴボボッ―――」





盗賊「―――あ、れっ……?」ハッ

勇者「っ」ギュッ

盗賊「え、あ、えっ……!?」///

勇者「……今度は俺たちを、新しい家族だと思ってほしい」ギュゥゥ

盗賊「…………っ!!」ジワッ





商人「盗賊ちゃんの目を覚まさせることには成功したけれど……謎は深まるばかりのようね」

魔女「……このままこの洞窟に残ってるものを片っ端からサイコメトリーしていけば、なにかわかるかもしれないよ」



 「いや、おぬしらはあまりこの件に深入りするでない」ザッ



魔女「!?」クルッ

商人「!!」クルッ





魔女(こ……子供!? 妖精ちゃんよりさらに小さい子供が、どうしてこんなところに!?)

商人(あの着物……かなり上等な一級品のようね。どこかの貴族かしら? 黒くて長い髪も相まって、まるでお人形のようだわ)ジッ



勇者「……な、んで……ここに……!?」



魔女「えっ? 勇者、この子と知り合いなの?」

勇者「知り合いというか……いや、でも……なんで昔と、まったく外見が変わってないんですか……!?」






勇者「遊び人さん!!」



遊び人「久方ぶりじゃな、勇者。わらわのことを覚えておったか」ニコッ



申し訳ありませんが、プロットや魔法一覧表、呼称表などのデータがパソコンごと消し飛びました。
ややおかしなところがあるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします・・・。




魔女「え……遊び人さんって……勇者が前に言ってた……?」

勇者「ああ……でも、あまりにも“そのまま”すぎる……歳をとってないなんて……。どういうことなんですか?」

遊び人「……いろいろあったのじゃ、いろいろな。それよりもおぬしら、なぜこのようなところへ?」

勇者「それは……姫様に、ここへ行けば、盗賊ちゃんの意識が取り戻せるかもしれないって……」

遊び人「……あやつの差し金か。まったく、余計なことを……」

勇者「え?」





遊び人「まぁよい。外まで案内しよう。付いてくるがよい」トテトテ

勇者「は、はい……」

魔女「ちょっ、勇者! あの子供、ほんとに信用できるの!?」

勇者「オレにもよくわかんないけど……でも、あれはきっと遊び人さんだと思う。声も話し方も、昔とちっとも変わってないし」

魔女「……でも、ずっと姿が変わらないなんて、まるで……」

勇者「……オレは遊び人さんを信じるよ。何かあったら、オレがどうにかするから」

魔女「勇者……」

遊び人「……」クルッ





遊び人「あの頭でっかちと脳筋に囲まれて、こんなにも立派に育ったのは……ひとえにメイドのおかげじゃろうな」ニコッ

勇者「え……」


遊び人「わらわも、使命を果たしたらまた勇者に会いたいと思っておったよ」

遊び人「それまでは顔を見せないつもりだったのじゃが、よもやこのようなことになろうとはの」トテトテ

遊び人「こうなっては、いつでも同じことか。……では今度、折を見て王城へ顔を出す。待っておれ」ナデナデ


勇者「う、あ、はい……!」///


遊び人「あやつの命でここまで来たと言ったな。ならばあやつに伝えるのじゃ。『あまり粋がるな』とな」

盗賊「ゴボッ……あの姫が、他人の言うことなんて聞くとは思えねぇわよ」

遊び人「いいや、聞く。わらわの言葉ならな」

盗賊「……?」





遊び人「では今度こそゆくぞ。ついてくるのじゃ」トテトテ


勇者「……」

 クイッ

勇者「ん?」クルッ


盗賊「……あ、あの、その」ビクビク


勇者「水魔……いや、盗賊ちゃんか」

商人「転んだらいけないわ。手を繋いでいきましょう」ニコッ

勇者「そうだね。さ、盗賊ちゃん」スッ

盗賊「は、はい……///」ギュッ





―――アトルム樹海―――



遊び人「帰り道はわかるかの?」

勇者「はい、多分。最悪空を飛んで帰れますし」

遊び人「そうか、今は『安価魔導書』が王国にあるのじゃったな」

魔女「……? 『安価魔導書』はセドサル王国の秘宝でしょ?」

遊び人「む? なにを言っておるのじゃ?」

魔女「?」



遊び人「セドサル王国の“秘宝”は、『安価魔導書』ではないぞ?」



魔女「……は?」

勇者「え?」





遊び人「というよりも、むしろ……。おぬし、まったくなにも覚えておらぬのか?」

魔女「え……なにを……?」

遊び人「……なるほど、そういうことか。今はそうなっておるのじゃな」

勇者「なに、言ってるんですか……? 遊び人さん、なにか知ってるんですか!?」

遊び人「……このウィツィワシ盗賊団が滅ぼされた理由にも繋がることじゃ」

盗賊「……!!」ビクッ





遊び人「特におぬしら“4人”は事件の中心にいて、誰よりも知る権利がある。じゃが、わらわはおぬしらに、真実を知ってほしくはないのじゃ」

勇者「……なにか、まずいことなんですか……?」

遊び人「可愛い弟分に、汚いものを見せたくはない……ただそれだけのことじゃ」

勇者「!」

遊び人「ずっと会っていなくとも、遠くにいても……わらわはあの阿呆2人やメイド同様、おぬしを見守っておるよ、勇者」ニコッ

勇者「……。」

遊び人「どうしてものっぴきならない状況となれば話す。それまでは、おぬしらの成すべきことに集中するのじゃ」





魔女「……」コソッ

勇者「魔女……その魔法は使わないでくれ。今は遊び人さんに従おう」

魔女「……!」ピタッ

遊び人「では、わらわはもう行くとしよう。近いうちに城を訪ねる……また5人で話そうぞ。その時まで、さらばじゃ」スタスタ

勇者「はい! お元気で!」

遊び人「……」ニコッ





・・・・・・



魔女「……『iobNPS3c0』を使えば、遊び人さんが隠してたことを知れたかもしれないのに」

勇者「遊び人さんが知らせなくていいと判断したんだ。きっと今は、そのタイミングじゃないんだよ」

魔女「ずっと会ってないのに、随分信用してるんだね? なーんか、ヤな感じ」ジトッ

勇者「そう突っかかるなって。今度王国で会ったときにでも、また聞いてみよう」

魔女「……うん」


魔女(本当に信用できる人なのかどうか……次に会ったとき、いろんな魔法を使って確かめればいいか)





商人「それよりも、盗賊ちゃんの面倒は王城が見てくれるのかしら?」

盗賊「……っ」ビクッ

勇者「あ……どうなんだろう。今まではメイドさんが面倒見てくれてたけど」

魔女「っていうか、姫様がいろいろ使いっぱしりにしてたよね。盗賊ちゃんが目覚めた以上は、さすがにもう無理だろうけど……」

商人「盗賊ちゃんが、誰について行きたいかで、決めればいいんじゃないかしら」

勇者「んー、でもさっき目が覚めたばっかりで急にそんなこと言われても、困っちゃうよね?」

盗賊「え、あ、あの、私、ちょっとだけ、みなさんのこと、知ってて……」モジモジ

勇者「え?」





盗賊「ゴボボッ……どうやら意識が完全に覚醒する以前から、私の意識を通じてボンヤリとだけど、いろいろと見てたみたいよ」

勇者「そうなのか。……じゃあ、誰と一緒にいたいっていうのはある?」

盗賊「ゴボッ……あの……その……///」チラッ

商人「?」

勇者「もしかして、商人さんといっしょがいい?」

盗賊「は、はい……ま、前から、知ってる人、なので……ご迷惑じゃなければ……」

商人「迷惑だなんて、そんなはずはないわ」ドヤッ

盗賊「……///」パァァ





魔女「それじゃあ、中に入ってるのはどうするの?」

盗賊「ゴボボッ……べつに我が身可愛さに言うわけじゃねぇんだけど―――このガキと、コイツを」チラッ

商人「?」

盗賊「2人きりにしといて、大丈夫だと思う?」

勇者「……大丈夫じゃないな。誰かが監視してないと、いろいろ大変なことになりそうだ」

魔女「……それもそうだね」

盗賊「ってなわけで、もう少しだけこの娘の中に入っておくわ。まぁ、どうしても信用できないって言うなら―――」

勇者「信用はしてるよ。2人をよろしくな、水魔」ナデナデ

盗賊「―――っ、……う、うん」/// プイッ

商人「……なんだか失礼なことを言われていた気がするわ」ムムム





―――セドサル王城・姫の私室―――


姫「そっか~、盗賊ちゃんの意識が戻ってよかったね~」ニコッ

勇者「はい。でもこれで、水魔を姫様が操ることは難しくなりましたね。普段はレアアノス商会にいますから」

姫「うふふ、大丈夫だよ~。あの子にやってもらいたいことは、もう全部終わったから~」

勇者「……なんでもかんでも、お見通しってことですか」

姫「そんなことはないよ~」ニコニコ


魔女「じゃあ今日、アタシたちが遊び人さんと出会うっていうのも予定通りだったんですか?」


姫「……遊び人?」ピクッ





勇者「ああ、そうそう。ウィツィワシ盗賊団のアジトで、遊び人さんと出会ったんですよ」

魔女「なんだかアジト強襲について、いろいろ知ってそうな口ぶりでしたけど、結局なにも教えてくれませんでした」

姫「……そ、そう……」

勇者「姫様? なんだか顔色が……」

姫「う、ううん、大丈夫だよ~……」

勇者「近いうちに城を訪ねるから、また5人で話そうって言ってましたよ」

姫「えっ!?」

勇者「?」





姫「ご、5人って……?」

勇者「数年前のメンバーじゃないですか? オレ、メイドさん、師匠、姫様、遊び人さん」

姫「………………そ、そっか~……」プイッ

勇者「今から楽しみです! それじゃあ、オレたちはそろそろ失礼します」

姫「う、うん……おつかれさま」

魔女「あれ、勇者。遊び人さんから姫様に伝言なかったっけ?」

勇者「ああそういえば」

姫「っ」ビクッ





勇者「……『あまり粋がるな』、だそうです」


姫「――――――。」


勇者「それじゃあ、今度こそ失礼します」ペコッ

魔女「失礼しました」ペコッ


姫「…………う、うん……おつかれさま」ニコ…


魔女(こんな笑顔の引きつった姫様、初めて見るな……)

勇者(そういえば昔から、なぜか姫様と遊び人さんって……)





―――セドサル王城・勇者の私室―――



勇者「魔女、なに見てるんだ?」

魔女「んー、こないだ習得した魔法。これ使えば、アジト強襲の謎が解けたかもしれないのになーって」ピラッ



○1496『MeBgNGLJ0』
  呪文効果:その場に残った残留思念から、過去の出来事を映し出す
  習得条件:勇者と魔女に関わりがある者の何かを復活させる



勇者「ああ、盗賊ちゃんの意識を復活させたから……。でもあの件は、遊び人さんから教えてくれるまで待とうって言っただろ?」

魔女「うん……でも、なんだか胸騒ぎがするんだよね……」

勇者「まぁ確かに、オレ達の知らないところで、なにか大きなことが起こってるみたいな、不穏な空気だよな」





魔女「本当にアタシたちには関係ないのかな? 魔王とは関わりのない事件なのかな?」

勇者「……どうなんだろうな。でも関わりがあったとしても、遊び人さんは意地悪で教えてくれないわけじゃないだろうし……」

魔女「もう、勇者! 遊び人さん遊び人さんって……そんなにあの子が好きなの!?」

勇者「はい!? いや、そういうわけじゃ……」

魔女「……もう。こうなったら、『ラブラブ習得条件リスト』から……」ペラ、ペラ

勇者「なんだその不穏なリストは!?」

魔女「よぉし、今日はいっぱいいろんな魔法を習得するから、覚悟してね、勇者♪」ニッコリ

勇者「……お手柔らかにな」

魔女「……」プイッ

勇者「おいなんで目を逸らした!」





・・・・・・



○059『OTRJgjE50』
  呪文効果:対象の思考を読む
  習得条件:勇者と魔女が1時間見つめ合う



勇者「なぁ、ずっとこうしてるだけでいいのか?」

魔女「そう。こうやってベッドで寝っ転がりながら、見つめ合ってるだけ」

勇者「1時間、だっけ? なにもしなくていいとはいえ、これはこれで辛いものがあるよな」

魔女「そうかな? おしゃべりしてればすぐに達成できるよ。だから時計を見たりしないでね。最初からになっちゃう」

勇者「習得条件が達成できたかどうかは魔女がわかるんだよな?」

魔女「そうそう。だから勇者は、アタシのことを見つめていればそれでいいの」

勇者「あ、ああ……」





勇者(……よくよく考えてみれば、魔女ってオレの事好き……なんだよな)

勇者(最初は魔王討伐のための同僚って感じで、魔女もそう思ってただろうけど……)

勇者(魔女は今まで、あんまり楽しいことのない人生だったのかもしれないな。故郷がなくなって、それからも魔法の勉強漬けで……)

勇者(だから、オレたちとの普通の日々が……)


勇者「……」ナデナデ

魔女「わっ!?」///

勇者「あ……ごめん」

魔女「い、いや、いいけど……急だったからびっくりしちゃった」

勇者「うん、なんか、急にそうしたくなってさ」

魔女「……そ、そっか」///





勇者「魔女って、昔の事は覚えてないんだよな?」

魔女「うん、そうだよ。はっきり覚えてるのは、魔王の配下がアタシの故郷を焼いてるところだけ」

勇者「……そっか」

魔女「あ、でも、その故郷っていうのが、アタシにひどい事ばっかりするところだったんだよ。だからあんまり悲しくはないかな」

勇者「いじめられてたのか?」

魔女「なんか、そういうのとは違ってたような気がするけど……だいたいそんな感じ。なんていうか、生まれてきた事を祝福されなかったっていうか」

勇者「!」





魔女「だから最初、アタシは勇者に嫉妬してたんだと思う。勇者は国全体から祝福されて生まれてきたから」

勇者「……」ナデナデ

魔女「わっ、また……」///

勇者「誕生日は覚えてる?」

魔女「えっ……アタシの? ううん、覚えてない……」

勇者「じゃあ、いつでもいいか。魔女がこの国に来た日でも、この城に来た日でも、今日でも……」

魔女「え、え……」

勇者「今度の魔女の誕生日には、みんなでお祝いしような」

魔女「!!」

勇者「生まれてきてくれてありがとうって、みんなが思ってるよ。だから知り合いを呼んで、パーッと盛り上がろう!」

魔女「……うんっ!」





魔女「あっ……!」

勇者「どうかした?」

魔女「この前のお祭りって、勇者の生誕祭だったんだよね!?」

勇者「ああ、まぁ、そうだけど……」

魔女「……おめでとうって、言ってない」

勇者「なんだ、そんなことか」

魔女「そんなことじゃないよ! だって、誕生日は1年に1回だけなんだよ!?」

勇者「じゃあ、つまり毎年あるってことじゃないか」

魔女「え?」





勇者「また来年言ってくれたらいいよ。それまで、楽しみにしてるからさ」

魔女「あ……来年……」

勇者「そう、来年」

魔女「……ふふっ……そうだね。それじゃあ来年は、盛大にお祝いしてあげるから、覚悟しといてね!」

勇者「うん、楽しみにしてるよ」ニコッ


魔女(来年ってことは……確実に、魔王討伐の旅には出た後のはず)

魔女(それでアタシが勇者の誕生日を祝えるって事は、つまり……)


魔女(……でも、できれば……生きて一緒にいるだけじゃなくって―――特別な関係だったら、もっと嬉しいな……)キュッ





・・・・・・



魔女「―――あ」ピクン

勇者「もしかして、終わった?」

魔女「うん、そうみたい」

勇者「やっとか……ずっと同じ体勢で寝てたから、肩が凝っちゃったよ」

魔女「アタシは、もうずっとこのままでも良いくらいだったけど」

勇者「え……?」

魔女「なんてね。それより、はい!」

勇者「……飴?」





魔女「うん、飴。これを2人で同時に舐めきると、魔法を習得できるよ」

勇者「え……1つしかないけど、これをどうやって2人で同時に舐めきるんだ?」

魔女「……」ニコニコ

勇者「……えっ、あっ! いやダメに決まってるだろ!!」///

魔女「えぇー?」

勇者「つまりそれって、そういうことだろ!? アウトだよ!!」

魔女「でも、前にもキスしたじゃん」

勇者「そ、それとこれとは話が別だろ……しかも、なんかそれ、普通にするより余計にやらしいじゃんか……」





魔女「アタシとはやらしいことしたくないの? ほら、自分で言うのもなんだけど、なかなか整った顔じゃない?」パクッ

勇者「ちょ、なんで飴食べたし!? やらないからな!?」バッ

魔女「いいじゃん、ちょっとだけ! これは魔法習得のために仕方ないことなんだから!」ガシッ

勇者「ち、ちなみにそれ、どんな魔法なんだよ!?」ググッ…

魔女「お菓子作りの腕が上がる」ググッ…

勇者「いッらねぇ!! 魔王討伐にクソの役にも立たねぇ!!」

魔女「わかんないじゃん! お菓子が世界を救うかも!!」

勇者「魔女って意外とパワーあるな!? なんでこんな場面で過去最高のガッツを見せるんだよ!?」

魔女「ほら観念して! おとなしくキスさせ…………ん?」クルッ


メイド「……。」ニッコリ


魔女「……アタシが思うに、この国の政治には重大な欠点があると思うんだよ。というのも……」キリッ

勇者「無理だよ!!」





・・・・・・



魔女「……ガッツリ怒られてしまった」シュン

勇者「そりゃそうだろ……」

魔女「メイドだって勇者とキスしたことあるのに!」

勇者「いや、あれは水魔が中に入ってたし、緊急事態だっただろ」

魔女「ああー……そういえば。だからメイドも余計に怒ってたのかな」

勇者「それはわからないけど」

魔女「勇者もメイドにキスくらいしてあげたら?」

勇者「え?」





魔女「メイドにはすごくおっきな借りがあるし、不公平だしさ。まぁお互い好感度が高いから、歯止めが効かなくなりそうで怖いけど」

勇者「そ、それはない!」///

魔女「でもほんとに、遠慮せずにしちゃっていいからね? もしメイドが求めて来たら、だけど」

勇者「え、えっと……」

魔女「むしろ、あのメイドが勇気出したんなら、それを拒んだりはぐらかしたりしたら許さないからね?」

勇者「……お、おう」

魔女「ふぅ。……さて、じゃあさっきの続きを」パクッ

勇者「お前さてはまったく反省していないな!?」





―――セドサル王国・ヴァー商店街―――



○824『L2sqZ8+l0』
  呪文効果:呪文を使用者に反射する
  習得条件:勇者が魔女に鏡を買ってあげる



魔女「勇者、これこれ! これがいい!」

勇者「なんだ、鏡を買えなんて言うから、てっきり姿見とかのデカくて高いやつを買わされるのかと思ったよ」

魔女「べつに鏡ならなんでもいいからね。それにこれ、小さくても可愛くて、部屋に飾れそうだし」

勇者「魔女の部屋は結構質素だからな。こういうのがあれば、もうちょっと華やかになるかも」

魔女「ふんっ、女子力無くてごめんね」

勇者「ああいや、そういう意味で言ったんじゃなくて……」





魔女「べつに、気にしてないって。女の子らしくとか、そういうの全然わかんないし」

勇者「……でも魔女、オレが買ってあげたぬいぐるみを枕元に置いてるだろ?」

魔女「え……うん、まぁ」

勇者「これからさ、魔女の部屋にいろいろ増えていくと思うし……大事なもので部屋がいっぱいになったら、その頃には今よりもっと女の子らしくなってるよ」

魔女「……そう、なのかな」

勇者「そうだって。だから今まで通りでいいんだよ。オレだって、べつに男っぽくなろうとして男やってるわけじゃないし」

魔女「そういえば、勇者の部屋には思い出の品でいっぱいだよね」

勇者「メイドさんとか、師匠とか、あと遊び人さんと姫様にも、昔はいろいろもらったりしたから」

魔女「そっか……そういうの、素敵だね」

勇者「うん、良いもんだよ。魔女もこれから、思い出を作っていけばいいよ。この鏡は、その第一歩だね」

魔女「……うん」///





・・・・・・



○606『ONdNKs260』
  呪文効果:使用者の料理の腕が格段にアップする
  習得条件:勇者と魔女が食事中にお互いに「あーん」をする



魔女「ほら勇者、あーん」スッ

勇者「ま、魔女……マジでやるの?」

魔女「もう、ここまで来てヘタレないでよ」

勇者「でもさすがに人の目もあるし、恥ずかしいって……」///

魔女「今の勇者は女体化してるんだから、恥ずかしがることなんてないでしょ」

勇者「うぅ……そうだけど」

魔女「……それに前、僧侶くんと男同士でイチャイチャしてる時にもやってたじゃん」

勇者「あ、あれはそういうのじゃないだろ!?」///





魔女「それよりほら。はい、あーん」スッ

勇者「あ、あーん」///

魔女「どう、おいしい?」

勇者「ま、まぁ……」

魔女「そう♪」

勇者「……なんていうか魔女、かなり吹っ切れたよな。前に手を繋いだまま生活する習得条件をやった時は、いろいろ恥ずかしがってたのに」

魔女「あの時は、自分の気持ちがわからなかったからね。だけど今は、はっきりわかる」ジッ

勇者「う……」





魔女「今までこんな感情知らなかった。だから一人で生きていけてたのに……勇者がアタシを弱くしたんだよ?」

勇者「……弱くは、なってないよ。きっと、魔女は強くなってる」

魔女「そう、かな……だったらいいな」

勇者「……あーん」スッ

魔女「!」

勇者「お互いにっていうのが、習得条件なんだろ?」

魔女「う、うん……あーん」パクッ

勇者「……美味しい?」

魔女「わ、わかんない……」///





―――セドサル王国・勇者の私室―――



 ガチャッ



魔女「お、お待たせ……///」モジモジ



勇者「え……? なんでワンピース? 着替えたの?」

魔女「へ、変かな……?」

勇者「いや、いつもは魔法学校の制服だから……目新しかったっていうか」

魔女「うん、まぁ、気にしないで……」///

勇者「……?」

魔女「そ、それより! ベッドに腰掛けて! 早く始めよっ!!」グイグイ

勇者「あ、ああ……」





○692『pnZccOKPo』
  呪文効果:魔女がバニーガール衣装となり、一時的に高い聴力を得る
  習得条件:勇者が魔女を膝枕して、耳掻きをする



勇者「……よし。じゃあ、魔女」ポフッ

魔女「う、うん……お邪魔します」ゴロン

勇者「なんか顔赤くない?」

魔女「き、気のせいだから! 大丈夫だから、早く始めて!」/// モジモジ

勇者「うん、それじゃ」サワッ

魔女「ひぅんっ!?」/// ピクン





勇者「……」カリカリ

魔女「んっ、うぅ……」ピクピク

勇者「もしかして魔女って……」カリカリ

魔女「ふぇ……?」

勇者「結構、くすぐったがり?」

魔女「わ、わかんないけど……なんか、ゾワゾワする」

勇者「ならもっと優しくやってあげないとな」カリカリ

魔女「そ、それはそれで、なんかむず痒い感じが……!」///





勇者「魔女の耳の中、全然きれいだね。もしかして最近耳掃除した?」

魔女「……さすがに勇者に耳垢見せたくないもん」

勇者「べつにオレはなんとも思わないけど、女の子だもんな」

魔女「うん……」

勇者「家族以外の耳掃除するなんて、初めてだよ」

魔女「アタシだって、他の人に耳掃除してもらうなんて初めて」

勇者「親にはしてもらったことないの?」

魔女「昔の事はあんまり覚えてないから……。可愛がられてたような気はするんだけど」

勇者「じゃあ、きっとやってもらってるよ」

魔女「そう、かな……」





勇者「うん。オレも家を出るまでは親にやってもらってたし」

魔女「……あれ? じゃあ家を出てからは?」

勇者「まぁ、その、メイドさんに……」

魔女「……ふーん」

勇者「よし、右耳はおしまい。フーっ!!」

魔女「ひゃわあっ!?」ビクッ!!

勇者「あはは、大げさだなぁ…………あれ?」チラッ

魔女「―――っ!!」バッ!!





勇者「あー……」

魔女「み、見えたっ!?」///

勇者「いや、見えてない見えてない。っていうか飴キスをせがんだくせに、今更パンチラくらいで恥ずかしがられても」

魔女「……ぱ、パンチラっていうか……///」モジモジ

勇者「え?」

魔女「は、反対も早くやって!」クルッ

勇者「う、うん……」





魔女「勇者、なんか耳掃除慣れてない?」

勇者「あー、たぶん妹のをやってあげたりしてたから、それでかな」

魔女「へ~」

勇者「俺が城に召集された時、妹は2歳ちょい前だったんだけど……2年くらいして実家に帰ったら「誰?」って言われちゃってさ」

魔女「まぁ、そりゃそうかもね。だけど妹ちゃんとは結構仲良さそうじゃなかった?」

勇者「妹に忘れられたのがショックで、それから1年くらいは毎週末に家に帰って、一日中遊んであげてたから」

魔女「ふふ、お兄ちゃんとして頑張ってたんだ?」

勇者「兄というよりは、親戚のおじさんみたいだけどな。その甲斐あってか、やっとオレを知らない男の人とは思わなくなったみたいで」

魔女「だけど今は家に戻ってないの?」

勇者「妹も大きくなったからね。家にいても邪魔だろうし、今年はまったく帰ってないな。魔女を家に連れてった時くらいか」

魔女「そっか、だからあんなに勇者にベタベタしてたんだ。でもそんなんだと、また忘れられちゃうよ?」

勇者「うーん……まぁ、魔王討伐の旅に出れば、どっちにせよ……」

魔女「え?」





勇者「はい、これでおしまい。フーっ!!」

魔女「うにゃあ!?」ビクッ!!

勇者「これで習得条件は達成かな?」

魔女「い、いちいち耳に息かけないでよ……」///

勇者「ははっ、うにゃあだってさ。魔女の弱点を発見したかも」ニヤ

魔女「むっ! 耳に息吹きかけられたら誰だってビックリするよ! ほら、勇者にもやってあげる!」グイッ

勇者「ちょ、やめろって! ごめんごめん、悪かったよ!」ググッ…

魔女「なんで抵抗するの!? おとなしく耳を出せー!」グッ

勇者「うわ、ちょっ、落ち……!!」ズルッ

魔女「きゃっ!?」ズルッ


 ドシーン!!





勇者「いてて……魔女、だいじょう……ぶ……―――」

魔女「えっ、あ!? あああああああああああああっ!?」/// バッ!!

勇者「な、なんでワンピースの下に……!」///

魔女「~~~っ!!」/// バシバシ!!

勇者「痛い痛い! ごめん、わざとじゃないんだって!」///

魔女「そ、それはわかってるけどっ!! み、み、見たなぁ!? 責任とれぇ!!」/// ジワッ

勇者「そんなむちゃくちゃな……! っていうかなんでノーパン……」///

魔女「習得条件だもん……習得条件だもんっ!! うわぁぁああああんっ!!」ダッ

勇者「ま、魔女ーっ!?」



○647『BNtWzVY7o』
  呪文効果:対象の装備をランダムに一つ外す
  習得条件:勇者には内緒でワンピースのみを身に付けた魔女が呪文を一つ習得する



魔女「武闘家さんに言いつけてやるー!!」


勇者「それはマジで死ぬッ!!!!」ダッ!!





―――セドサル王城・勇者の私室―――



魔女「ご飯にする? お風呂にする? それとも……ア・タ・シ?」



勇者「………………は?」



魔女「~~~っ!!」/// ボンッ

勇者「顔真っ赤にしてうずくまるくらいならやるなよ……えっと、たぶん習得条件なんだよな?」

魔女「……うん」/// コクッ

勇者「そのエプロンは?」

魔女「メイドさんに借りた……」





勇者「なんていうか、よく頑張ったね。えらいえらい」ナデナデ

魔女「同情すんな……」クスン

勇者「前までの魔女なら、絶対こんなことしなかったよね」

魔女「……勇者が、ちょっとはドキッとしてくれるかなって思って……そしたら「は?」ってなんだし!!」ベシベシ

勇者「ご、ごめん、いきなりだったから……。でもドキッとはしたよ! エプロン姿も似合ってるし!」

魔女「……ほんと?」

勇者「うん、ほんとほんと!」

魔女「……じゃあ、ゆるす」ゴシゴシ

勇者「お、おう」





魔女「で、どれがいいの?」

勇者「え……もしかして、ほんとに用意してあるの?」

魔女「うん、それも習得条件のうちだから」

勇者「そうなんだ……あれ、魔女って料理できたっけ?」

魔女「……その失礼な質問はスルーしてあげるよ。……ほら、お昼に習得した呪文だよ。「あーん」ってやつ」

勇者「ああ、料理が上達する魔法!」

魔女「そう、それ。だからちょっとはマシになってると思うよ。……よかったね、木炭食べずにすんでさ」

勇者「あ、あはは……」





勇者「えっと、じゃあお風呂も入れてくれたの?」

魔女「ううん、露天風呂の手配をしたの。べつの習得条件のために」

勇者「今日はほんとに習得条件のオンパレードだね……」

魔女「まぁ、まとめてやっちゃったほうが楽でしょ?」

勇者「さっきの新婚3択は、実際に準備しておくまでが条件なんだよね?」

魔女「うん」


勇者「じゃあ、“アタシ”を選んでも、準備オッケーなの?」


魔女「え……!? ……ぅ、あ、それは……その……///」カァァ


勇者「わ、顔真っ赤…………痛ってぇ!? ごめんなさい冗談ですっ!! ご飯でお願いします!!」





・・・・・・



魔女「はい、お待たせ」コトッ

勇者「おお~! すごい美味しそうだね!」

魔女「そ、そうかな……?」///

勇者「うん! それじゃあ……あれ? 魔女の分は?」

魔女「あ、えっと……料理が上達しても、勇者の分を作るだけで精一杯で……」

勇者「え!? じゃあ、ご飯ないの?」

魔女「あ、でも大丈夫だよ。さっき習得条件を満たした、この呪文で……」





魔女「sYjBFC330」


 ポゥンッ


勇者「おおっ! 料理が出てきた!」

魔女「他にも、お風呂とか布団も出てくるよ」

勇者「……布団ねぇ」ボソッ

魔女「っ……///」カァァ

勇者「まぁいいや。それじゃあ魔女の手料理、食べていいかな?」

魔女「うん、めしあがれ」

勇者「いただきます」スッ





 パクッ


魔女「ど、どう?」

勇者「う……」

魔女「……っ」ドキドキ


勇者「うまい!! すごく美味しいよ、魔女!」


魔女「……!!」/// パァァ

勇者「安価魔導書の魔法とはいえ、ここまで上達するのか……じつは魔女、もともと料理は上手かったりして」

魔女「そ、それはどうだろ……。でも、喜んでもらえてよかった」ニコッ

勇者「これならいくらでも食べられちゃいそうだよ!」パクパク

魔女「えへへ……そ、そうかな」/// テレテレ



魔女(勇者ったら、こんなにがっついて……そんなに急いで食べることないのに)

魔女(なんだろ、これ……胸が……)キュッ


魔女(……料理、勉強してみようかな)





―――セドサル王国・アテヤ温泉・脱衣所―――



魔女「はい、ここで問題です!」

勇者「え? ……っていうか、なんで脱衣所までついて来るんだ?」

魔女「それは、このためだよ!」ピラッ



○563『KX6EzHVN0』
  呪文効果:対象は物質を透視できるようになる
  習得条件:勇者が魔女の下着の柄・色を三回以内に当て、答え合わせをする



勇者「し、下着!?」

魔女「そう。あ、ちなみに色と柄は上下で揃えてるからね」

勇者「これ、答え合わせってつまり……」///

魔女「アタシもちょっと恥ずかしいかなって思ったけど、もうその下も見られちゃったし、今更かなって」ジトッ

勇者「う……ごめんってば」

魔女「まぁ不可抗力だし、根に持ってないよ。それより、アタシは今、どんな下着を履いてるでしょうか?」





勇者「うぅん……魔女の下着……ねぇ」ジー


勇者(今まで魔女の下着を見たことって……なかったはずだよな?)

勇者(いや、前に一度女装した時、魔女の新品の下着を借りたことがあったな。たしかあの時は、無地の黒だったような気がする)

勇者(けどオレに見せたのはフェイクで、魔女って意外とファンシーな趣味してるし、いつもはくまさんパンツだったりするのかもしれない)

勇者(服装はいつも魔法学校の制服だし……想像できないな)


勇者(……いや、待てよ?)





勇者(魔女はあらかじめ、ここでこうしてクイズを出題するつもりだったんだろう)

勇者(つまり、俺に当てさせるためのパンツを履いてるんじゃないだろうか?)

勇者(柄は“無地”! そして色はシンプルに、黒か白のどっちか! それしかない!!)


勇者「よし、わかったぞ!」


魔女「え、ほんとに?」



勇者「ああ! 正解は―――無地で黒の下着だ!!」



魔女「!!」





魔女「……す、すごいね……一発正解」/// ピラッ

勇者「よしっ! ……いやよしじゃねぇ! こんなしょうもないことに全力で頭を使ったのは初めてだよ!!」

魔女「なんでわかったの?」

勇者「むしろ魔女がわかるような下着を選んだんだろ?」

魔女「う、うん……まぁ、そうだけど。勇者が見たことあるアタシの下着って、これしかないもんね」///

勇者「は?」

魔女「え?」





勇者「……ああっ! それ、よく見たら、オレが前に履いてた奴じゃないか!?」

魔女「え、今気づいたの!?」///

勇者「てっきり、すぐ捨てたのかと思ってた……」

魔女「じゃあ、なにを根拠に当てたのよ……」


勇者(……全然見当違いな推理だった……とは言えない)


勇者「というか、今魔女は、オレが履いてたパンツ履いてるんだな」/// プイッ

魔女「え、あ、うん……そ、そだね」/// モジモジ





勇者「え、えっと……そろそろ温泉入らないかっ!?」///

魔女「う、うん! じゃあ……」シュルッ ///

勇者「ちょっと待てぇぇええええ!!」

魔女「?」ビクッ

勇者「なんでここで脱ごうとしてるんだ!? 魔女は女湯だろ!?」

魔女「この温泉、混浴だよ?」

勇者「え?」

魔女「しかも今夜は、アタシたちの他にお客さんはいないから……二人っきりだよ」///


勇者「……へ?」





―――セドサル王国・アテヤ温泉―――



 カポーン…



○402『Pb0Ky9OBo』
  呪文効果:月光を強力な癒しの光に変える
  習得条件:勇者と魔女が満月の見える露天風呂に二人きりで入る

○1014『XzFy2Bve0』
  呪文効果:周囲の温度や湿度を操る
  習得条件:勇者と魔女が一緒に風呂に入る



勇者「……こんな習得条件もあったんだな」

魔女「今までは恥ずかしくて言えなかったけどね」

勇者「だけど、こういうのは良くないというか……」///

魔女「いいじゃん、水着も着てるんだし」

勇者「うーん……」ブクブク

魔女「まったく、勇者も意外とウブなんだから」


勇者(魔女が“ミス・セドサル”だから問題なんだよ……)





勇者「それにしても、今日は満月だったんだな」

魔女「うん、その辺りはちゃんと考えてあるよ。せっかくだし、いっぺんに済ませたいでしょ?」

勇者「……まぁ、心臓に悪いしな」

魔女「どういう意味?」

勇者「い、いや、なんでもない。それより……なんか、近くないか?」///

魔女「そんなことないよ♪」ススー

勇者「い、いやいや、近いだろ」ススー

魔女「ねぇ、勇者。アタシの身体って、そんなに魅力ないかな?」

勇者「……え?」





魔女「メイドと違って胸が小さいから、アタシはダメなの?」

勇者「そんなことは……ないでしょ。胸のサイズなんかで、良し悪しは決まらないよ」

魔女「でもせっかくなら、いっしょにお風呂入るのはメイドがよかったでしょ? たぶん水面に浮いちゃうよ、メイドのあれ」

勇者「う……」///

魔女「ほらやっぱり!」

勇者「い、いまのは違うから!」///

魔女「……ねぇ勇者、こういう魔法もあるんだよ?」



○1276『FACYKB1x0』
  呪文効果:対象のバスト、ウエスト、ヒップを自由に変えることができる
  習得条件:勇者が魔女のバスト、ウエスト、ヒップを触ったり揉んだりする



勇者「んなっ!?」///





魔女「……勇者」

勇者「いやだめだろさすがにこれは!」

魔女「ダメじゃないよ。合意の上だもん」

勇者「合意でも、そういうのは……。ほら、騎士さんにも、そのままの自分でいいんだって説得したことあったじゃないか」

魔女「むぅ……勇者は堅物だね。メイドさんのためとかだったら、迷わず揉んでたくせに」

勇者「ま、魔女はそのままで十分魅力的だから! さすがは“ミス・セドサル”って感じ!」

魔女「調子いいなぁ。勇者、忘れてるだろうけど、こっちには“魅了の魔法”だってあるんだよ?」

勇者「え?」

魔女「ふふ……こんな状況で使ったら、いくら勇者でも、辛抱たまらなくなっちゃうよね?」

勇者「や、やめろよ!?」

魔女「……まぁ、これは最終手段だけど。―――じゃあ、次はこれね」



○1477『6fFthK7r0』
  呪文効果:キスした生物の心身を完全に支配する
  習得条件:魔女が勇者の体にキスマークをつける





勇者「!!」///

魔女「これは普通に役立つ魔法だし、断る理由はないよね?」

勇者「う、うぅん……でもなぁ」

魔女「あんまりわがまま言ってると……」スッ

勇者「わ、わかったわかった!」

魔女「わかればよろしい」

勇者「あ、じゃあせめて、オレを女にしてくれ!」

魔女「ええー? それじゃあムードないじゃん……」

勇者「そんなムードは要らん!!」

魔女「まったくもう……M8vNIwtA0」


勇者「んっ」ポゥン


魔女(うわぁ、おっぱい浮いてるし……海パンもずり落ちてる)





魔女「じゃあ……いくよ?」

勇者「……ちなみに、どこにするつもりなんだ?」

魔女「どこがいい?」ニコッ

勇者「えっと……首とかだとバレそうだし……腕とかでいいんじゃないか?」

魔女「却下」

勇者「……肩」

魔女「却下」

勇者「……鎖骨」

魔女「よしきた」

勇者「……なんて欲望に正直な奴……!」





魔女「じゃあ、準備はいい? いくよ?」スッ

勇者「……うん」/// ドキドキ


勇者(わーっ! 女の身体とはいえ、ほぼ全裸で魔女と抱き合ってる……!)///


魔女「ん」チュッ


 チュゥゥゥ…!!


勇者「―――っ!?」/// ゾクゾク





魔女「ぷはっ」


勇者「……ど、どう? 習得条件は達成できた?」///

魔女「あー、いや、あんまし痕になってないから……もっかい」

勇者「ええ!?」

魔女「位置が悪いのかな? もっと上……」チュゥゥ

勇者「~~~っ!?」/// ゾクゾク





・・・・・・



魔女「勇者、大丈夫?」


勇者「……ちゃ、ちゃんと一発で決めてよ……///」クタッ


魔女「ごめんごめん。結局何回もリトライして、キスマークだらけになっちゃったね」

勇者「……メイドさんとか師匠に見られたらどうするのさ」

魔女「あはは……」





魔女「それに、こんなけしからんもの見せつけて!」モミッ

勇者「うひゃあっ!? な、なにやって……」///

魔女「元は男のくせに、やらしい身体しちゃってさ! 当てつけか! このぉ!」モミモミ

勇者「んっ……ちょ、やめっ……」/// ピクン

魔女「勇者が揉まないなら、アタシが揉んでやる! ほらほら!!」

勇者「あはははっ!? く、くすぐったいから……! あ、ちょっ、パンツ脱がすなバカ!! こ、このやろっ!!」モミッ

魔女「ひゃっ!?」///





勇者「そんなに揉まれたいかこいつ! ならお望み通りに揉み倒してやるっ!!」モミモミ

魔女「ちょ、しょこはぁ……!? あはははっ!!」/// バチャバチャ

勇者「女の身体とはいえ勇者だ、力では敵うまい! 参ったか、このぉ!」コチョコチョ

魔女「WKLmDMDO0」

勇者「なっ、うおおっ!? 筋力強化か!? 魔法はずるいだろ!!」ググッ

魔女「ふはは、なんとでも言うがいい! 勝てばいいのだ!」モミモミ

勇者「わぁあっ、やめろーっ!?」///





―――セドサル王国・アテヤ温泉・脱衣所―――



勇者「はぁ、はぁ……///」クタッ

魔女「す、すっかりのぼせちゃったね」フラフラ

勇者「おかげさまでね。……って、なにやってるんだ?」

魔女「勇者の脱いだ服、持っといてあげるよ」

勇者「え、自分で持ってくからいいよ」

魔女「ううん、勇者はこれから両手が塞がっちゃうからね」

勇者「え?」





・・・・・・



○1456『OQEgXQv80』
  呪文効果:対象の重量を操る
  習得条件:勇者が魔女をお姫様抱っこして外から城へ帰る



魔女「だ、だいじょうぶ? 重くない?」

勇者「大丈夫だってば。伊達に鍛えてないし、魔女なら5人くらいイケるよ」

魔女「そ、そっか」///

勇者「ステルス魔法を使ってるとはいえ、こんな人混みでお姫様抱っこって、なんか照れるな……」

魔女「ふーん、でも照れるのは、これからだと思うなぁ」

勇者「え?」

魔女「セドサル王城には、王国外周に張られてるのと同じ探知結界が張ってあるらしいから」

勇者「?」

魔女「姿を隠して入城したら、あっという間に王国兵が駆けつけて大騒ぎになっちゃうってこと」

勇者「じゃあステルスなしでお姫様抱っこしてるのを、門番とか王城の人たちに見られるの!?」

魔女「そういうこと。次の日、噂になってたら照れちゃうなぁ~♪」

勇者「うぅ……メイドさんに見つからなきゃいいんだけど」





―――セドサル王城・勇者の私室―――



勇者「……まぁ案の定、メイドさんに見つかったわけだけど」ガクッ

魔女「妖精ちゃんにまで見られるのは誤算だった……すごい目で見られた……」ガクッ

勇者「それは自業自得だよ!」


魔女(それに、さりげなく勇者の着てた服を盗もうとしたのに、メイドに会っちゃったせいで失敗しちゃったし)

魔女(メイドに渡す前に、靴下だけでもくすねとけばよかった……)

魔女(まぁ、あとでこっそり勇者のパンツでも盗めばいっか)



○928『MHHfeZrW0』
  呪文効果:離れた物体を魔女の手元へとワープさせる
  習得条件:魔女が勇者の衣類を勇者にばれないように盗む





・・・・・・



○669『fiCm+JtTo』
  呪文効果:次に唱える呪文を発動しない。指を鳴らしたとき、詠唱なしで発動する
  習得条件:勇者が魔女の歯を丁寧に磨く



勇者「この魔法は、どういう意味があるんだ?」

魔女「アタシたちが離れてないと意味がない魔法とかがあるんだけど、それのためだね」

勇者「?」

魔女「たとえば、離れ離れになったアタシたちが合流するっていう魔法があったとする。でもその魔法って、どうやって使うの?」

勇者「どうやってって……あっ! そうか、魔法はオレと魔女が近くにいないと発動できないから……」

魔女「そう。魔法が使える状況なら、そもそも そんな魔法を使う必要がないんだよ」





魔女「だけど遅延魔法があれば、アタシたちが近くにいる時に発動しておいて、それを延期。離れてから指を鳴らせば……」

勇者「……なるほど、そういうことか」

魔女「まぁそれ以外でも、戦闘中にアタシたちが離れちゃったときでも攻撃したり防御したりできるし、サポート特化の魔法だね」

勇者「で、それを習得するためには……」

魔女「うん。はい、アタシの歯ブラシ」スッ

勇者「じゃあ……いくぞ?」

魔女「よろしくね」ゴロン





勇者「やさしく丁寧にやるけど、もし痛かったりしたら言ってくれよ?」シャコシャコ

魔女「んっ……」

勇者「10年くらい前に妹の歯磨きをしてやった気がするけど……さすがに勝手が違うな」

魔女「んむ……く、くひゅぐったい……」///

勇者「ちょっとがまんしてな。ああでも、なんかこれ……ちょっと楽しいかも」

魔女「?」

勇者「こう言っちゃなんだけど、征服感っていうのかな……普通はこんなこと、幼児相手にしかやらないだろ? それをやってあげてるっていうのがさ……」


魔女(そ、そう言われると、なんか死ぬほど恥ずかしい……!!)/// カァァ





勇者(それに、これは言わないけど……)

勇者(女の子の……それも美少女と言っていい魔女の口の中を好き勝手弄ってるっていうのが、なんとも……)

勇者(塗れ光ってる口の中が……いや、余計なことを考えるのはやめよう)


魔女「ゆ、ゆーひゃ」

勇者「なに?」

魔女「しょ、しょんにゃにみりゃれると、はじゅかしぃ……」///

勇者「……うん」ジー


勇者(……なに言ってるのかはわかんなかったけど、なんかすごい可愛かったな)

魔女(見られると恥ずかしいって言ってるのに、なんでもっとジッと見つめてくるの……!?)///





・・・・・・



魔女「くちゅくちゅ、ぺっ」


勇者「はいおしまい。魔女、お疲れさま」

魔女「うん……勇者もね」

勇者「さすがに今日はもう、魔法習得はおしまいかな?」

魔女「ふふ、甘いなぁ。まだあるんだよね、これが」

勇者「まだストックがあるのか!? 恐るべし、『ラブラブ習得条件リスト』……!」

魔女「アタシはわりと奥手だからね。先延ばしにしてきた習得条件はまだけっこうあるよ」





勇者「もうけっこう魔法も習得したし、仲間もいるし、案外ドラゴン討伐とかもできるかもしれないな」

魔女「ちゃんと作戦練ってこっちから奇襲すれば、単体のドラゴンくらいならイケると思うよ」

勇者「もうそんな段階まで来てるのか」

魔女「こっちには魔王軍四天王がいるしね……。ドラゴンなら獣王1人でいけるんじゃない?」

勇者「あー……あの魔力なら普通に真正面から殴り倒しちゃいそうだから困る」

魔女「っていうか四天王なんだから、実際にドラゴン軍団相手に無双できるんだろうね。ほんと、敵には回したくないよ」

勇者(……僧侶くんに感謝だなぁ。今度パフェ奢ってあげよっと)





・・・・・・



○632『wT7OwIzk0』
  呪文効果:局地的に日光を遮断する
  習得条件:勇者と魔女が真っ暗な密室で寄り添いあう



勇者「……よく考えたら、オレたちって出会ってまだ2週間ちょっとしか経ってないんだな」

魔女「そうだね。でもアタシはずっと前から「まだ3日しか経ってない」とか「まだ1週間しか……」とか思ってたよ」

勇者「すごく内容の濃い日々だったもんな」

魔女「大変なこともあったけど、勇者に会う前よりも、ずっと楽しいよ。なんていうか、「生きてる」って感じがするの」

勇者「オレも魔女に会ってから、「生きた心地」がしてるよ」

魔女「そうなの?」

勇者「うん。師匠との修行がなくなったからね」

魔女「ふふっ、もう……勇者ってば」





勇者「でも実際、毎日が楽しいよ。魔王のことを忘れそうになるくらいに」

魔女「魔王……か。いつかは絶対に、魔王を倒しに行かなくちゃいけないんだよね」

勇者「ああ。いつまでもこの日々は続かない」

魔女「……今日が、ずっと続けばいいのに」

勇者「そうだね……それが一番良いんだけどな」

魔女「……」ギュッ

勇者「魔女?」





魔女「アタシのこと見つめて。抱きしめて。……習得条件だから」ギュッ

勇者「あ、うん……」ギュッ

魔女「瞬きもしないで。ずっと、アタシのこと見て……アタシが良いって言うまで」ジッ

勇者「……うん」ジッ


魔女「…………」

勇者「…………」



魔女「あと、さ……終わっても……すこしだけ、このままでもいい?」ギュゥ

勇者「……うん。好きなだけこうしてよう……こうしてられるうちに」





・・・・・・



魔女「ね、勇者。寝た?」


勇者「……」スヤスヤ


魔女「前に勇者の家でいっしょに寝た時は、全然眠れなかったって言ってたのに……」

魔女「もしかして、安心してくれてるのかな?」


魔女「……さて、そろそろ……///」ドキドキ



魔女「……えっと、たしか30秒だったよね」ギシッ



 チュッ






―――セドサル王城・勇者の私室―――



 チュンチュン…




メイド「………………。」



勇者「んん……むにゃ」スヤスヤ

魔女「ゆーしゃぁ……」スヤスヤ



メイド「お二人がいっしょに眠っているのはともかくとして……」

メイド「この、首筋の、赤い痣は……」


メイド「…………そんなことされちゃうと、いくら私でも……」



メイド「ムキになっちゃいますよ?」



まだ二週間かよ……数か月ぐらいたっているかと思ってたわ




・・・・・・



魔女「勇者、見て見て! 昨日習得した魔法だよ」ピラッ

勇者「え?」




○059『OTRJgjE50』
  呪文効果:対象の思考を読む
  習得条件:勇者と魔女が1時間見つめ合う

○173『ETxynF+d0』
  呪文効果:対象を魅了してメロメロにする
  習得条件:勇者と魔女が一日イチャイチャデートをする

○392『sYjBFC330』
  呪文効果:ご飯、お風呂、布団が用意される
  習得条件:魔女が勇者に「ご飯にする? お風呂にする? それとも私?」を全力でやる

○402『Pb0Ky9OBo』
  呪文効果:月光を強力な癒しの光に変える
  習得条件:勇者と魔女が満月の見える露天風呂に二人きりで入る

○563『KX6EzHVN0』
  呪文効果:対象となる物質を透視する
  習得条件:勇者が魔女の下着の柄・色を三回以内に当て、答え合わせをする

○606『ONdNKs260』
  呪文効果:使用者の料理の腕が格段にアップする
  習得条件:勇者と魔女が食事中にお互いに「あーん」をする

○632『wT7OwIzk0』
  呪文効果:局地的に日光を遮断する
  習得条件:勇者と魔女が真っ暗な密室で寄り添いあう

○647『BNtWzVY7o』
  呪文効果:対象の装備をランダムに一つ外す
  習得条件:勇者には内緒でワンピースのみを身に付けた魔女が呪文を一つ習得する

○669『fiCm+JtTo』
  呪文効果:次に唱える呪文を発動しない。指を鳴らしたとき、詠唱なしで発動する
  習得条件:勇者が魔女の歯を丁寧に磨く

○672『aGCwVN6Do』
  呪文効果:勇者と魔女以外の生物の動きを一度だけ、30秒間止める
  習得条件:魔女が、寝ている勇者に30秒間口づけする





○692『pnZccOKPo』
  呪文効果:魔女がバニーガール衣装になり、一時的に高い聴力を得る呪文
  習得条件:勇者が魔女を膝枕して、耳掻きをする

○824『L2sqZ8+l0』
  呪文効果:呪文を使用者に反射する
  習得条件:勇者が魔女に鏡を買ってあげる

○928『MHHfeZrW0』
  呪文効果:離れた物体を魔女の手元へとワープさせる
  習得条件:魔女が勇者の衣類を勇者にばれないように盗む

○1014『XzFy2Bve0』
  呪文効果:周囲の温度や湿度を操る
  習得条件:勇者と魔女が一緒に風呂に入る

○1085『ONdNKs260』
  呪文効果:対象を強力な引力で引き寄せる。もう一度唱えれば斥力で弾き飛ばす
  習得条件:勇者と魔女が抱き合いながら瞬きせず、数分間見つめ合う

○1276『FACYKB1x0』
  呪文効果:バスト、ウエスト、ヒップのサイズを自在に変えることができる
  習得条件:勇者が魔女のバスト、ウエスト、ヒップを触ったり揉んだりする

○1369『xm/byT9p0』
  呪文効果:視線を送った非生物をしばらく空間に固定する
  習得条件:勇者と魔女が、このまま時が止まってしまえばいいのにと感じる

○1456『OQEgXQv80』
  呪文効果:触れている対象の重量を操る
  習得条件:勇者が魔女をお姫様抱っこして外から城へ帰る

○1477『6fFthK7r0』
  呪文効果:キスした生物の心身を完全に支配する
  習得条件:魔女が勇者の体にキスマークをつける





勇者「ちょっと待て! いつの間にオレの服を盗んだ!?」

魔女「勇者が起きる前に、ちょろっとね」テヘペロ

勇者「オレが寝てる間にキスしたのか!?」

魔女「ごちそうさまです!」テレペロ

勇者「あと、オレは魔女の胸や尻を揉んでない!」

魔女「でもさ、習得してるってことは揉んだんでしょ? あの温泉でのどさくさで」ニヤニヤ

勇者「ぐぬぬ……!」



メイド「なにを揉んだのですか?」



勇者「うわっ!? め、メイドさ…………ん……?」

魔女「そ、その、格好は……?」


メイド「久しぶりの、私服です♪」クルッ





メイド「―――勇者様。 本日は私と、デートしてくださいますか?」ニコッ



勇者「…………。」

魔女「…………。」




勇者・魔女「「ええええええええええっ!?」」



>>625
延々何スレもやるつもりはありませんので、劇中1年経過を待たずに、折を見て話を畳みに行きたいと思っています!


まとめメモが消失したため、達成していた習得条件の見落としなどがありましたら申し訳ございません。。。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom