奉太郎「やらなくてもいい事なら、やらない。(12)

やらなければならないことなら、手短に。だ」

里志「いやぁ尤もな信条だ、まったく。けどね、ホータロー、最近のホータローはそうもいかなくなってるんじゃないの?」

奉太郎「どういうことだ?」

里志「ホータローは気づいてないのか、まぁ無理もないね」

奉太郎「説明くらいくれたっていいだろう」

里志「ヒントは普段の生活に隠されているんだか自分で推理して見るのはどうだい、ホータロー」

奉太郎「別に俺はいつも推理をしているわけではない。評価を間違えないでくれ。」

里志「わかったよ。とりあえず部室にでも行こうか」

奉太郎「今日は帰って新しく本を読み始めようと思ってたんだが?」

奉太郎「ちょうど読み終わってしまったんだ。小腹も空いたし。」

里志「本のことは知らないけど、小腹見たしなら千反田さんが何か持って来てると思うよ」

奉太郎「はぁ…わかったよ」(俺の省エネ主義が…)

える「こんにちは、福部さん、折木さん」

部室に行くと、当然と言えば当然だが千反田がいた。伊原はまだきてないのか…?

里志「やあ、千反田さん」

奉太郎「なにやってるんだ?」

える「明日の英語の予習をしています。折木さんは予習はお済みですか?」

奉太郎「いや、帰ってやる予定だった、が」

里志「僕が連れてきたんだ」

える「そうですか。そうだ、折木さん、福部さん、こちらのお菓子を召し上がってください。親戚からの貰い物です」

里志がこちらを向いてにやりとした

里志「どうだいホータロー、行った通りだろう?」

千反田には聞こえるか聞こえないかの声で嬉しそうに聞いてくる

奉太郎「そうだな」

える「なんのお話ですか?」

奉太郎「俺は小腹が空いたから帰ろうとしたんだ。そしたら里志が千反田が何か持って来てると言ったから来た」

里志「確かめたわけではなかったんだけどね。でもホータロー、今回の賭けは僕の勝ちだね」

奉太郎「別になにも賭けていないぞ」

里志「気分の話さ、釣れないねホータローは」

ほっとけ。

とりあえず、俺と里志は定位置に座る

奉太郎「ところで、伊原はどうした」

える「麻耶花さんはまだいらしてませんね、どうしたんでしょう」

一瞬、千反田の目の色が変わりかけたが、なんとか大丈夫だったようだ。それはそうだ、こんなことまで気にされたらもうこいつとは関われない。

奉太郎「漫け…おっと、やめたんだったな」

える「委員会などではないでしょうか」

奉太郎「そうだな」

里志「で、どうだいホータロー」

奉太郎「何がだ」

里志「推理だよ推理」

える「え、折木さん今なんの推理をしてるんですか」

千反田の目の色が変わった。これはまずい…

える「わたし、」

奉太郎「気になります。だろ」
える「はい!」

里志「なら千反田さんにも推理する内容をお話ししよう」

える「お願いします」

里志「奉太郎が掲げている信条は知ってるよね」

える「はい。やらなくてもいい事ならやらない。やらなければならない事なら手短に。ですね」

里志「そう、でも最近その省エネ主義が綻び始めてるんだ」

える「…それはいいことなのでは」

奉太郎「よくない」

里志「まあいいことなんだけどね。でも、なぜかってのは気になるだろ?」

える「確かに、わたし気になります!」

千反田は普通の人間とは違う。なにが違うのかと言うと、まず一つ目好奇心に触れたものには「私気になります」という言葉とともに己が納得するまで謎を追求すること。もう一つは他人との距離感。「気になります」の発言とともに俺に詰め寄ってくることは多い。しかし最近は一度詰め寄るもはっとした表情を浮かべ少し距離を置いている。俺は何か悪いかとでもしたのだろうか。

里志「ホータローの名推理、楽しみだねぇ」

奉太郎「だから推理などしていないと言ってるだろ」

部室の扉が開いた。伊原が来たようだ。

里志「あれ、摩耶花図書委員は」

える「こんにちは、摩耶花さん」

摩耶花「あ、こんにちは、ちーちゃん。図書委員はちょっと抜けて来たの。それで福ちゃんちょっといい」

里志「なんだい」

麻耶花「今週末の予定。ここじゃなんだからちょっと来て」

里志「なんでここじゃダメなの?」

麻耶花「うるさいわね。早く来なさいよ」

里志「うわっ」

里志は伊原に半ば、いやとても強引に連れて行かれた。

える「麻耶花さん、嬉しそうでしたね」

俺は伊原は怒っているようにしか見えなかった。どこを見ればそんな風に見えるのかわからなかったがとりあえずそれには触れないで答えた。

奉太郎「里志は嬉しくなさそうだったぞ」

える「福部さんはいつも麻耶花さんにひどいんですよ。怒られて当然です」

奉太郎「そりゃあ毎週毎週連れ回されると辛いだろうよ」

える「そう言う、ものなのでしょうか」

奉太郎「そう言うものだ。それしかない」

える「けど、いいですねぇ。思いを寄せている方と毎週末過ごせるなんて」

奉太郎「そんなものなのか」

える「そう言うものです」

奉太郎「よくわからん」

える「ところで折木さん、推理はまだですか」

奉太郎「なんの話だ」

える「見苦しいですよ、折木さん」

そう言われてはなんだかもう逃げられない気がする。でも俺は何としてもそれだけは避けたい。省エネだ省エネ。

奉太郎「さ、里志たちもいないしまた今度でいいんじゃないか」

える「それは…でも私、気になります」

手強い。このお嬢様はどうしたら諦めてくれるのか…。諦めなくてもいい、先延ばしにさえできれば…。

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