トレイン「不吉を!」凛「届けにきたにゃ!」【BLACK CAT×ラブライブ】 (116)


※以下に注意※

・キャラ崩壊
・設定崩壊
・思いつき

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408978425



【トレインのアジト】

リンス「それで、星の使徒――――グリードが今どこにいるか分かったわ」

スヴェン「本当か!?」

リンス「クロノスからの情報だから、信頼度は高いわよ」

スヴェン「奴は今どこに……?」

リンス「『ジパング』」

トレイン「こりゃまた遠いなー」

イヴ「じぱんぐ……確か、高い科学技術を持った国だよね」

スヴェン「その通りだ。おまけに警察力も高い。わざわざ潜伏先に選ぶような場所ではないはずだ……」

トレイン「姫っちよく知ってるなぁ~」

イヴ「トレインが知らないだけ」


リンス「話を戻すわよ。なんで奴がジパングにいるかというと……同志を探すため、らしいわ」

トレイン「同志……新しいタオシーか?」

リンス「そう。どうやら今のジパングには、タオの素質を持つ人で溢れているらしいの」

リンス「それは若く、体力があり、精神力が強く、揺るがない意志を持つ――――」





リンス「スクールアイドルよ!!」



                           .


スヴェン「……」ポカーン

トレイン「姫っち、知ってるか?」

イヴ「……知らない」

リンス「ぐっ!! とにかく!」

リンス「そのスクールアイドルをグリードは狙っているのよ! クロノスは、特に『アライズ』『ミューズ』というグループに監視をつけてるみたい」

トレイン「ん、ミューズ……?」

イヴ「石鹸?」

リンス「なんでそこで私を見るのよ……」



トレイン「いや、どっかで聞いた気が……するんだよなぁ」

スヴェン「待てよ。ジパングといや確か星の使徒の……」

トレイン「ああ~~!! それだ!」

イヴ「トレインうるさい」

リンス「いきなり大声出して何よ? どうしたの?」

トレイン「実は昨日、キョーコからメールがあって……」


(※時系列的にはトレインが大人に戻り、スイーパーズカフェに行くまでの間のお話です)


 【昨日・ジパング】

キョウコ「オバ様お久しぶりでぇす!!」

穂乃果母「あらキョウちゃんじゃない! 可愛くなったわねぇ。今穂乃果呼んでくるからちょっと待っててね!」

ホノカ~! キョウチャンヨ~! オリテラッシャイ!
エ、キョウチャン!?ドタドタ

穂乃果「キョウちゃん!! 久しぶりだね!」

キョウコ「ホノちゃん久しぶりぃ!」イェイ!

穂乃果「中学校の卒業式以来だよね? 懐かしいなぁ~! 今日はどうしたの?」

キョウコ「実は、クロ様に饅頭を送ろうと思って!!」

穂乃果「クロ様? ……う~ん、どこに送るの?」

キョウコ「海外!」

穂乃果「海外!? それは無理だよ腐っちゃうよ!」

キョウコ「ええっ!! せっかくクロ様に喜んでもらえると思ったのにぃ……」ショボーン

穂乃果「(ハリウッド俳優とかかな……クロ様)」




穂乃果「ウチのは防腐剤使ってないから……ゴメンねキョウちゃん」

キョウコ「ホノちゃんのせいじゃないよぉ。でも、クロ様に喜んでもらいたかったなぁ」

穂乃果「(キョウちゃん落ち込んでる……そうだ!)キョウちゃん!」

穂乃果「私たちのライブ、見に来てよ!」

キョウコ「ライブ?」

穂乃果「私ね、いまスクールアイドルやってるんだ! 海未ちゃんとことりちゃんも一緒だよ!」

キョウコ「ウミミにトリちゃん懐かしい! 昔はよく四人一緒に遊んだねぇ」

穂乃果「うんうん。それで、もし良かったら……少しでもキョウちゃんが元気になって欲しいって思って」

キョウコ「ありがとうホノちゃん! なんて名前のアイドルなの?」

穂乃果「私たちは、μ'sだよ!」


【再びトレインのアジト】

スヴェン「つまり、その『ミューズ』のメンバーとキョウコが知り合いなのか?」

トレイン「ああ。『一緒にライブ見に行きましょー!』とか言ってたが、こんな形で実現するとはなぁ……」

スヴェン「ん? それってお前……」

トレイン「行くぜ、不吉を届けにジパングまでよ」


トレインたちはこの時、勘違いしていた。
スクールアイドル……歌って踊る、煌びやかなスター。それがトレインたちの思い描く「アイドル」だった。
ジパングのスクールアイドルはその概念を根本から揺るがす存在であることを、彼らはまだ知らない――――。


【ジパング】

トレイン「おおお~! すっげぇ、ここがジパングか!」

イヴ「トレイン子供みたい」

スヴェン「ありゃ子供じゃなくてただの馬鹿だから放っておけ」

トレイン「見ろスヴェン! 美味そうなモンがたくさんあるぞ!」

スヴェン「ジパングは物価がたけぇんだよ! いきなりガッつくんじゃねぇ!」

トレイン「腹が減ったら死んじまうっつーじゃねぇかよスヴェン」

イヴ「ただの馬鹿……」

スヴェン「それより、早くキョウコに連絡したらどうだ? 待たせてるんだろう」

トレイン「そうだった! メールメール、っと……」

  着信:18件
 メール:40件

トレイン「……」

スヴェン「どうした?」

トレイン「いや、なんでもねぇ……」


  ◇

トレイン「キョウコは空港の外で待ってくれてるらしい」

スヴェン「それなら、早く行ってやったほうがいいな」

トレイン「にしてもこの国、本当に犯罪するのが難しそうだな。ハーディスを持ち込むのも一苦労だったぜ」

スヴェン「お前はまだいいじゃねぇか。俺のアタッシュウェポンケースはスイーパーライセンスがあっても持ち込み不可だった」

トレイン「ありゃ盛りだくさんだからなぁ」

イヴ「ねぇ…時間は?」

スヴェン「ああ、無駄話してる暇は無かったな。行くか」

トレイン「おうよ」


  ◇

キョウコ「クロ様~~~~~~~~~~~~!!!」

トレイン「うるせぇ!!」

キョウコの突進をヒラリと躱すトレイン。
キョウコはそのまま壁とキスをした。

キョウコ「うう、久しぶりに会えたのにクロ様ヒドイ……」

トレイン「そんな時間は経ってねぇだろ!」

キョウコ「いちじつせんしゅーってヤツですよぉ」

トレイン「はぁ? なんだそれ?」

イヴ「ジパングの諺で、一日で季節が千回巡るほど長く感じるって意味。分かる?」

キョウコ「イヴイヴ!」

スヴェン「再開を祝うより、今は『ミューズ』についてだ」

キョウコ「オジサマもぉ、お久しぶりですぅ」

スヴェン「オジ……!?」



――――μ'sはですねぇ、キョーコの幼馴染がやってるスクールアイドルなんですよぉ!
ホノちゃんっていうんですけどぉ……あ、ホノちゃんだけじゃなくてウミミやトリちゃんもいるんですけどぉ……

え、そんな話はどうでもいい?
うーんクロ様がそう言うなら……

とにかくですね、μ'sは予選を突破した今大注目のスクールアイドルなんですよ!
もう少し早くジパングに来てくれたら、クロ様も一緒にライブ見に行けたんですけどぉ……
でもまた今度あるって言ってたんで、その時は一緒に応援しましょうね!クロ様!

――――え? グリードさんがですか?
特にそんな感じはありませんでしたけど……相当強い人が出てこない限り、ウミミがいれば大丈夫ですよ!


トレイン「ウミミって……女子高生だろ?」

キョウコ「え? クロ様ってもしかして、スクールアイドルのこと知りません?」

トレイン「まぁ……名前だけしか聞いてねぇな」

キョウコ「だったら、直接見たほうが話が早いですよぉ~! 行きましょう!」

トレイン「どこに行くんだよ?」

キョウコ「UTXです!」


【UTX学園】

キョウコ「見てくださいクロ様! あれがA-RISEです!」

トレイン「アライズ……?」

スヴェン「クロノスが監視してるスクールアイドルの一つだ。覚えとけそんくらい」

トレイン「わりーわりー!」

キョウコが指差した先には、UTX学園に掲げられた大きなモニターがあった。
どうやらそこで、A-RISEの動画が流れるらしい。
そしてトレインたちが着いてすぐに、音楽が流れ始める。A-RISEが登場した。
音楽に合わせ機敏に体を動かし、美しい歌声を披露する。

スヴェン「……ただのアイドルだな」

イヴ「うん」

トレイン「スヴェンに姫っち。よく見ろ、何かがおかしいぞ……」

キョウコ「さっすがクロ様! 気付いたんですか?」

トレイン「なんとなく違和感が……!?」

トレイン「――――そうかよ。アレは」



トレイン「演武、だな」


                                       .


スヴェン「どういう意味だトレイン」

トレイン「そのまんまの意味さ。確かに、普通に見てればただのダンス……でもその細かい所作にはちゃんと戦闘が意識されてやがる」

スヴェン「なんだと!?」

トレイン「明らかに戦闘を前提にした動きをダンスに組み込み、しかもそれで平然と喝采を受けるなんて……意味がわかんねーぞキョーコ」

キョーコ「つまりですねー……」

このジパングでは、大戦のトラウマによって国家が強い力を持つことにアレルギーがあった。
近年増加する大型犯罪や組織犯罪には、すでに警察のみでの対処が出来なくなってもその症状は続いた。
そして国家が苦肉の策として推進したのがスイーパーの奨励である。
スクールアイドルとは、若者に掃除屋の仕事を啓蒙するための官営行事なのだ。
そしてスクールアイドルを名乗れるのはスイーパーライセンスを持つ者に限られる。
ただ純粋にアイドルを目指す少女であっても、それは変わらない。彼女たちは皆、掃除屋なのだ。

キョウコの話を纏めると、このようになった。


トレイン「スイーパーズ・アイドルってわけか……」


キョウコ「皆弱っちいですけどね~」

トレイン「じゃあそのウミミってのは、なんで強いんだ?」

キョウコ「なんか、キュードーの家元?師範? そういうトコの子供なんです」

トレイン「弓のマスターの家系ってことか」

スヴェン「こりゃリンスに一杯食わされたぜ……確かに若くてタフでエネルギッシュだ、スイーパーともなれば」

イヴ「グリードも、それを狙ってる……」

スヴェン「ああ。タオシーを前にすれば簡単に拉致されるだろうな」

トレイン「そして、十中八九クロノスも一枚噛んでるだろうぜ」

スヴェン「若い人材を合法的に育成し、その中でも優秀な人物を引き抜くためか」

トレイン「そういうこと。まぁこうやって見てる分にはただのアイドルなんだけどなぁ」

イヴ「うん……」

トレイン「ん~~? 姫っち、もしかしてやりたい? アイドルやりたいのかよ?」

イヴ「ッ! そんなことない」

トレイン「強がんなよぉ。フリフリの衣装着て踊っちゃったりしようぜー!」

キョーコ「キョーコもクロ様にさんせー!」

イヴ「え!? ちょっと待っ」

キョーコ「あっちに可愛い服屋さんがありますよーー!」

トレイン「よし! スヴェンお父さん、金!!」

スヴェン「んな金ねぇっていってんだろうがーーー!!」



とりあえず今日はここまで。
よくわからん方向に進んだなぁ……

スイーパーライセンスは16歳からでしたっけ?
とりあえずスクールアイドルには難易度の低い準ライセンスとかライセンス二級みたいのが交付されてる設定です。


あと、ブラックキャットは原作しか知りません。アニメとか小説とかと設定が食い違ってもご容赦。


凛「もう訓練は嫌にゃー!」

海未「いけませんよ凛! スイーパーたるもの、銃くらい扱えなくてどうするんですか!」

ことり「アイドルとしてはどうなのかな……」

にこ「仕方がないじゃない、スイーパーライセンスがないとスクールアイドルできないんだから」

海未「その通りです! 私たちはアイドルである以前にスイーパーなんですよ」

凛「凛はダンスの練習の方が好きだよ……」

絵里「それはそれ、これはこれよ。しっかり練習しましょう」


真姫「万が一の時にも、銃の扱いはしっかり覚えとかないと駄目デショ」

花陽「万が一……」

希「スイーパーに義務はないんやで。ウチらはそもそも二級ライセンスやし」

絵里「携行の許可される銃器は政府からの支給品、弱装のゴム弾……誰も私たちに本気で犯罪者を取り締まって欲しいなんて期待してないわ」

花陽「うん、そうだよね」

海未「いえ。やはりスイーパーとしては公共の秩序を……」クドクド

にこ「そんなこと、にこどっっっうでもいいわ。アイドルがしたいから取っただけで、スイーパーなんかしたくないのよ」


穂乃果「みんなーーーーー!」ガチャ!


海未「穂乃果、遅刻ですよ」

穂乃果「ごめんごめん! 実はキョウちゃんから連絡がってね……」

海未「キョウコからですか?」


絵里「キョウコって確か……」

希「前にライブを見に来てくれた子やね」

ことり「うん! ことりたちの幼馴染なんだ~。高校は別々になっちゃったけど」

にこ「それで? どうしたのよ」

穂乃果「うん! 実はね、キョウちゃんの知り合いにプロのスイーパーさんがいるんだって!」

真姫「それホントなの?」

穂乃果「キョウちゃんは嘘なんかつかないよ! それでその人がたまたま、ジパングに来てるらしくて」

花陽「外国の人?」

穂乃果「どこの国の人かは分からないけど……言葉は通じるみたいだから安心して!」

海未「これから私たちと話すことが前提みたいな言い方ですね……」

穂乃果「そうなんだよ! キョウちゃんが、私たちにそのスイーパーさんを紹介してくれるんだって!」


絵里「ハラショー! つまり、その人に教官になってもらうわけね!」

にこ「ラブライブは『楽曲ポイント』と『スイーパーポイント』の合算で争われる……これでスイーパーポイントを稼げそうね」

凛「ど、どんな人なのかにゃあ……筋肉モリモリマッチョマン?」

花陽「ううう……そんな人、コワイに決まってるよぉ」

穂乃果「ええっとね、キョウちゃんが言うには――――」


  『クロ様はすっごいカッコよくて、すっごい優しくて、すっごい強くて、時々子供で、キョーコの王子様で……』


穂乃果「――――らしいよ!」


 ◇

トレイン「ここがオトノキか……」

スヴェン「ああ。キョウコが言うにはいつも屋上で練習してるらしい」

イヴ「こ、ここは……」

トレイン「どうした姫っち?」

イヴ(い、言えない……! 女子高にスヴェンじゃ犯罪者扱いされちゃうなんて言えない!)

スヴェン「しかし女子高か。まずは守衛に声をかけて……スイーパーライセンスだけで入れるもんなのか?」

トレイン「スヴェンはおっさんだから無理だろ~」

スヴェン「なんだとテメェ!」


イヴ「スヴェン。あそこに守衛さんいるよ」

スヴェン「お、でかしたぞイヴ! おいトレイン、ふざけるんじゃねぇぞ?」

トレイン「へーへー」キラリ


スヴェン「ふぅ……」

スヴェン「むっ!」キリッ


スヴェン「突然申し訳ありませんが、私スイーパーをやっているスヴェン・ボルフィードという者です」

守衛「はぁ……」

スヴェン「実はここに移り住んできたばかりで、今日は娘に学校を見学させたいと思いお邪魔しました」

守衛「娘さん、ですか?」

スヴェン「ええ。……ああ、弟もおりますが、彼もスイーパーライセンスを持っているのでご信頼に足ると思います」

守衛「弟さん? どこに?」

スヴェン「え? いや私の後ろに……」


スヴェンが振り返ると、そこにトレインの姿は影も形もなかった。
イヴがただひとり、スヴェンを見つめ返している。

スヴェン「ど、どこにいったんだ!?」

イヴ「退屈だからって。あっち」

イヴの指差した方向は、校舎を指していた。学校の塀はトレインにとって障害にならない。

スヴェン「なにぃ!? あいつ……!」

イヴ「トレイン一人じゃ何するかわからないから、私が捕まえてきてあげる」

スヴェン「あ、おいイヴ待て!」


そしてイヴまでもが、スヴェンの前から姿を消す。

スヴェン「……」

守衛「あの」


スヴェン「あ、はい。なんでしょう」

守衛「弟さんどころか、娘さんも見当たらないんだけど。あんた本当に見学に来たのか?」

スヴェン「いやこれはその」

守衛「なんか怪しいな。ライセンスを偽造してこの学校に侵入しようとしてるんじゃないのか?」

スヴェン「そ、そんなことは決して!」

守衛「悪いことをする奴はだいたいそう言うよ。まったく変質者は怖いねぇ。帰った帰った」

スヴェン「俺が変質者だと!?」ガタッ!

守衛「ひっ! な、なんだよ! 警察呼ぶぞ!」

スヴェン「警察!? いやそれは」

守衛「うるさい黙れ変質者! 学院の生徒たちには指一本触れさせないぞ!」

スヴェン「うがああああ! トレインあのヤローーーーーー!!」



  ◇

トレイン「今頃スヴェン、どんな顔してんかなー」ニシシ

学校の敷地内を、人目を避けて移動するトレイン。お手の物である。

トレイン「さすがに校舎内に入ったらバレるだろうなぁ。外壁をつたって屋上まで行くか」


トレイン「っよ、っほ」

小さなとっかかりに指を掛けては、身軽に壁をよじ登る。

トレイン「っしょっと」

壁を蹴り跳躍し、瞬く間に屋上に近づく。

トレイン「っでラストっと!」

そして屋上のへりにを握り、体を持ち上げた。
ひょい、と顔がへりから出る。


トレイン「ん?」

凛「へ?」

たまたま前屈していた少女と、目があった。


凛「……」

トレイン「……」

トレイン「!」ニヤリ

凛「!?」


トレイン「にょはははは!!」バッ

凛「ふにゃああああああ!?」ビクッ!

腕に力を込め、勢いよく飛び出すトレイン。それを目で追った凛は驚愕する。
人間あんなに跳べるの!?手だけで!?
そしてμ'sメンバーの前にスタッと着地すると、トレインはなにか勝ち誇ったように笑っている。
一同が呆然としている中、なんとか声を出せたのは皆より先にトレインを目撃していた凛だった。

凛「へ、変質者にゃあああああああああ!!」

トレイン「断じて違う!」


トレイン「俺の名前はトレイン・ハートネット! スイーパーだ!!」

凛「嘘だよ絶対!」

トレイン「なにぃ!?」

穂乃果「ちょっと待って!」

海未「ほ、穂乃果! 近づいてはいけません!」

穂乃果「もしかして、キョウちゃんの言っていたスイーパーさんですか?」

トレイン「ん? キョウチャン……キョーコか!」

穂乃果「そうですキョウコちゃん! じゃああなたが『クロ様』ですね!」

トレイン「クロ様っておいおい……。まぁとにかく、俺様がそのスイーパーだぜ」

海未「まだ信用できません! 穂乃果、本人と確認できる何かを、キョウコから聞いてはいませんか?」

穂乃果「えぇ? うう~ん……黒髪だし、首輪してるし……あ、タトゥーもあるよ!」

海未「不吉を呼ぶサーティーンのタトゥー……」

穂乃果「そうそう!」

真姫「特徴も一致してるし、この人がその『クロ様』で間違いなさそうね」

花陽「なんか思ってたのと……」

にこ「違うわね……」

トレイン「にゃははは!」



絵里「失礼だけど、あまり強そうには……」

希「見えんなぁ……」

トレイン「ほほう。じゃあ特別に俺様の腕をみせて……」


イヴ「トレイン!」


トレインを追って外壁をつたってきたイヴが、ようやく屋上にたどり着く。

穂乃果「すごく綺麗な金髪……」

絵里「誰かしら?」


トレイン「遅かったな姫っち。まだまだだぜ」

イヴ「むっ……。とにかく、スヴェンが困ってるから早く戻って」

トレイン「お、そうか……そうだ!」キラーン!

イヴ(またロクでもないことを思いついた顔だ……)


トレイン「スイーパー『ミューズ』に依頼だ! 姫っち……あの女の子を捕まえろ!」

ことり「ええっ!?」

真姫「ちょっと、どういうことよ!?」

トレイン「姫っちは手強いぜ? 気合入れていけよ」

絵里「つまりこれは、テストってことかしら?」

トレイン「そゆこと!」


イヴ「トレイン、何を!?」

トレイン「それと姫っち。スイーパー目指すんなら、ジパングの女子高生くらい怪我させずに取り押さえられなきゃ話になんねーぞ」

イヴ「!!」

トレイン「じゃ! 俺はどっかから見てるんで!」

そう言ってトレインは校舎内に入っていった。それをイヴも急いで追っていく。


花陽「行っちゃった……」

穂乃果「ええっと、どうしよっか?」

海未「あの黒猫さんの言う通りにするしかないでしょう」

凛「凛とキャラが被ってるよ……」

希「強烈だったね」

絵里「とにかく今は、あの女の子を捕まえましょう!」


今日は以上です。読了感謝!

いまさらだが
グリードじゃなくてクリードだろ

>>48
oh...これは致命的なミス
ハガレンの再放送が悪いんや……

これからは修正します


トレインは絶妙な距離を取りつつ、イヴから逃走する。
遊ばれている――――イヴは少し苛立っていた。

トレイン「?」

何かに気づいたトレインは、当てのない逃走をやめ確かな目的地に向け走り出す。

イヴ(どこかに行こうとしてる……?)

トレインはとある部屋のドアの前で立ち止まると、それを勢いよく開け中へ入っていた。
イヴもそれに続く。ドアは開け放たれたままで難なく中には入れた。
しかし、その中にトレインの姿は無かった。どこかへ忽然と消えてしまっている。

トレインの代わりに、その部屋にあったものは――――


イヴ「お饅頭と、チーズケーキ?」


~~~数分前~~~

穂乃果「じゃあ、あの子を捕まえよーーー!」

海未「待ってください穂乃果!」

穂乃果「せっかく意気込んだのに……どうしたの海未ちゃん?」

海未「闇雲に追っても捕まえるのは無理です。あの女の子も相当、手練のように思えました」

希「確かに。カードもウチそう告げとる」

海未「まぁそれは置いておいて」


海未「とりあえず、チームを組みましょう」

真姫「チーム?」

海未「ええ。一度見失ってしまった以上、分散して探さねばなりません。ですが、1人きりでは戦力が足りません……」


海未「ゆえに、チームを組んで事に当たりましょう!」

にこ「いいんじゃない?」

絵里「私も、それがいいと思うわ」

海未「では僭越ながら、私がチーム分けをさせてもらいます――――」

   ◇


 ~~~現在~~~

真姫「――――このチームで何かできるとは思ってなかったけど、まさか部室に来てくれるとはね」

ことり「トレインさんが入ってきたときはビックリしたけど、すぐ窓から出て行っちゃったね」

真姫「あの飛び降りも十分ビックリしたわよ……」

穂乃果「とにかく! これで海未ちゃんを見返せるよ!」

にこ「いや海未の判断は妥当だと思うけど」


部室でイヴを待ち受けていたチームは、真姫・ことり・穂乃果・にこで構成される。
海未がこのチーム分けを行った理由は

・にこ、真姫はスイーパーの訓練に本腰を入れていなかったため、戦力面に不安がある
・ことりは荒事に不向きなため、低評価にせざるを得ない
・上記三人の期待度低チームに加えて全体の能力が低下せず、かつそれなりにリーダーを務められる穂乃果

ということからであった。基本的にツーマンセルで行動する形を取ろうとしたが、この四人を更に分割しては戦力として見込めないからだ。
例外的な、四人一組だった。

ことり「でもこの作戦……上手くいくかなぁ?」

穂乃果「大丈夫! ひっさびさに穂乃果、すごい悩んじゃったもん!」

にこ「穂乃果の作戦だから心配なのよ」


 【穂乃果の! 『まずは胃袋をつかむ』作戦!】


①穂乃果自慢のお饅頭を用意するよ! ことりちゃんには一番美味しいと思うチーズケーキを用意してもらう!

②真姫ちゃんに『ある程度痺れるけど全く安全な薬(名称不明)』も持ってきてもらう!

③ターゲットはスイーツを食べたくて仕方がない! でもそれは、なんと毒(痺れ薬)入り!

④ターゲットは怪しむけれど、すかさずにこちゃんが持ち前のスマイルパワー(ゴリ押し)でスイーツをオススメするんだ!

⑤そうすればもう、ターゲットは欲望に抗えない! 穂乃果、悪い女……。

EX.お饅頭、チーズケーキの二種類を用意することで、和スイーツ好きも洋スイーツ好きも狙えるんだ!


にこ「……ってこれ私の扱いが明らかにおかしいじゃない!?」

ことり「ふぅ、こういうこともあろうかとチーズケーキ持ち歩いてて良かった~♪」

穂乃果「さっすがことりちゃん!」

にこ「聞きなさいよ!」

真姫「にこちゃんなら大丈夫よ。きっと上手くいくわ」

にこ「ま、真姫?」

真姫「にこちゃんのスマイルパワーに抗える人なんていないもの。絶対大丈夫。絶対に大丈夫だからはやくあざといアイドルポーズでわた(ryターゲットを篭絡するのよ。さぁはやく。やっぱりちょっと待ってカメラカメラ」

にこ「oh shit! >>1はにこまき推しだった!」


穂乃果「とにかくにこちゃん! あの女の子が部室から出て行っちゃう前にはやく!」

真姫「セカサナイデ! あ、もういいわよ」

ことり「真姫ちゃん……」

にこ「うぐっ。まぁこうなったら仕方がないわ! 私のとっておき見てなさいよ!」

穂乃果(どうせにっこにっこにーなんだよね……)

ことり(どうせにっこにっこにーなんだろうなぁ)

真姫(なんでもいい)






イヴ(声、大きい……)

※穂乃果チームは机の下にいます


にこ「いっくわよーー!」

勢いよく机の下から飛び出るにこ。テレビの辛口審査員でも満点をつけたくなる、最高の笑顔を浮かべて――――


にこ「にっこにっkイヴ「……バレてるよ?」


にこ「……」

真姫「……」

ことり「……」

穂乃果「なんで!?」


穂乃果「なんで!? どーして!?」

イヴ「……」

穂乃果「こんなに美味しそうなんだよ!?」

イヴ「……」イラッ

イヴ(――――この人たちが悪いんじゃない。こんな遊びに付き合わせるトレインが悪いの)

イヴ「じゃあ、あなたが食べてみせて?」

穂乃果「えっ……」


そう言ってイヴは部室から出て、トレイン捜索を再開した。


穂乃果「作戦が失敗したなんて……」ガクリ

ことり「穂乃果ちゃん……」

にこ「元々穴だらけじゃないの。まぁ期待されてないチームらしく? ここで潔く諦めましょ」

真姫「なんだかにこちゃんらしくないわね」

にこ「だってにこにーはスーパーアイドルであってスーパースイーパーなんか目指してないのよ」

穂乃果「くそーー! こうなったらヤケ食いだー!」

真姫「!? ちょっと穂乃果そのお饅頭!!」

穂乃果「むぐっ!?」バタッ

ことり「ほのかちゃーーーーーん!!!!」


✩穂乃果チーム・・・リタイア




イヴ(あれでスイーパーなんて……あと五人いたけど、大したことなさそう)

イヴは廊下を走っている。
トレインの性格なら、一足先に敷地内から出るなんてことはしないはずだ。そう考えて、イヴは今も校舎内を探索していた。


???「あ、見つけた!!」

???「ええっ!? ううっ……私たちだけで本当に大丈夫かなぁ?」

???「大丈夫! かよちんと凛のコンビネーションがあれば無敵だにゃ!」

花陽「凛ちゃん……! うん、頑張ろう!」

凛「いっくにゃーーー!!」

キリのいいところで夜食タイム
一時間もしないうちに再開すると思います


イヴ「!!」

凛「……ここから先にはいかせない」

イヴ(トレインに似てる人だ……)

イヴの前に立ちふさがったのは、凛一人だけだった。今のところ、それ以外に人影はない。

凛「先手必勝!」

無策にも真っ直ぐ向かってくる凛。
トランス能力を使うまでもなく、いなせばそれで終わりの単純な動きだった。
イヴの5m前までは。


イヴ「えっ!?」

凛「にゃ!」シュパッ

一瞬、視界から凛が消える。
目にも止まらぬ速さで凛は地面に伏せたかのような低姿勢へと移行した。

イヴ(上下の移動は人間の目にとって不得意って前に読んだ本に書いてあった……でも一瞬とはいえ、見逃すなんて!)

イヴ「くっ!」

すぐに目線を下にずらし、凛を視界に捉えようとする。

凛「甘いにゃ!」サッ!

両手両足を床につけた状態から、凛は軽やかに跳躍した。
そして廊下の窓側に飛び、次は壁を蹴ってイヴに向かう!

イヴ「なっ!?」

イヴ(まるでトレインみたいな……ううん、猫そのものだ!)


凛「ここ!」

イヴ「くっ」サッ

なんとか凛の突撃を避ける。

凛「なんの!もう一回!!」

イヴ「ふっ」サッ

凛「また!?」


凛の動きに初めこそ困惑したイヴだったが、慣れてしまえばどうということはない。
スピードこそ大したものだがパワー不足。そしてそのスピードさえ、イヴが身を置いてきた世界では遅い部類に入る。
所詮はただの、運動の力が高いだけの女子高生。
次の動きも見切る!


凛「かかったにゃ」


イヴ「!?」


時間は遡る。


~~~μ's作戦会議~~~

海未「ということで、穂乃果とことり、にこ、真姫は四人でチームを作ってもらいます」

穂乃果「もう海未ちゃん! 絶対に見返してあげるよ! 頑張ろうね、皆!」

ことり「うん!」

海未「はいはい。では次のチームですが、凛と花陽。あなた達でツーマンセルを組んでください」

凛「やった! 一緒だねかよちん!」

花陽「うん! 凛ちゃんと一緒なら安心だよぉ」

海未「そうですね。凛は普段の訓練こそ真面目にやりませんが、その身軽さ・スピードは正直驚嘆ものです」

凛「海未ちゃんに褒められた!?」

海未「私をなんだと思ってるんですか……。まぁ天性の才能だけでそこまで動けるあなたが訓練すれば、もっと強くなると思いますが」

凛「凛、あんまりスイーパーって感じじゃないから……」

海未「……とにかく。持ち前のスピードを活かして下さい」

穂乃果「意義あり!」

海未「却下します」

穂乃果「ヒドイ!!」

海未「冗談です。しかし時間がないので手短にお願いします」

穂乃果「花陽ちゃんも、穂乃果チームに入れてなきゃダメじゃない? 花陽ちゃんそんなに強かったっけ?」

海未「はぁ……。確かに花陽は人と戦えるような正確ではありません。なので対人格闘訓練ではあまり目立ちませんですが……」

穂乃果「だったら」

海未「忘れたんですか、穂乃果。花陽は――――」


 ◇


  ◇

花陽「ご、ゴメンなさい!」ガラッ!


イヴは誘導されてた。
凛は自分の動きが早いうちに見極められると知っていた。その上で、見極めたからこそ避ける動きは最も理に適ったものになるだろうとも予想していたのだ。
その動きの先に花陽を待機させ、イヴがそのポイントに来たら捕まえさせる。
経験や知識ではなくセンスのみでこの作戦を考えた凛は、生まれるところが違えば戦闘の天才になっていたかもしれない。

とにかく、イヴはいまそのポイントにまんまとおびき寄せられたのだ。
それは教室のドアの前。閉められたドアの向こうに待機していた花陽が、勢いよく飛び出してくる。


イヴ「!?(しまった!)」

花陽「えいっ!」ガシッ

イヴ「…………え?」

花陽「えっ?」

イヴ(抱きつかれた、だけ……?)


そう、イヴはいま後ろから花陽に抱きつかれただけである。
てっきり地面に組み伏せられ関節でも極められるかと思っていたが、あまりに平和的すぎて拍子が抜けてしまった。

イヴ(トレインの言っていた『捕まえろ』ってこういうこと?)

しかし、トレインは出て来ない。
彼がこちらから目を外してどこか遠くを逃走しているとは考えづらい。恐らくどこからか見ているはずだ。
なのに止めに入らないということは、まだこの依頼は終わっていないということ。
つまり、この花陽のホールドではダメだということだ。

イヴ(良かった、これで終わりじゃなくて……。この人が勘違いしてるのは可哀想だけど……!?)


違和感。

イヴ(この人の細腕から逃げるなんて簡単なのに……簡単に振りほどける『はず』なのに!!)

イヴは身動き一つ取れなかった。
ものすごいパワー。同世代の女性よりかは筋力があるはずのイヴがどんなに力んでも、ビクともしない。


凛「どうかにゃ? かよちんのパワーは?」

花陽「ゴメナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

イヴ「なん……っで! くっ……!?」



凛「かよちんはね、その外見からは想像できないけどとっても力持ちなんだ!」

花陽「は、恥ずかしいよぉ……」

凛「猫のような凛のスピードと、米俵を軽々担ぐかよちんのパワー! これが合わさった最強のコンビネーションにゃ!」

花陽「リンチャン!? 言わないでよぉ///」

イヴ「……」


完全に驕っていた。
相手はただの女子高生だと、そう思っていた。
しかし同じ年代のキョウコという存在、そしてそれよりもさらに年下である自分自身がいるのだ。
このような能力を発揮する女子高生がいると、なぜ考えられなかったのか。

イヴは悔しく思う。
最初から全力で挑んでいれば、結果は変わった。しかし今は、完全に相手に上を行かれている。
ここで本気を出しても、それは「試合に勝って勝負に負ける」というヤツだった。


イヴ「……それでもっ!」

凛「この期に及んで、まだ何かする気かにゃ?」

花陽「り、凛ちゃん……。私はいつまでこうしてればいいのかな?」

凛「もう終わるよかよちん! さぁ、凛のスピード殺法で気を失うにゃ!!」

花陽「身動きできない人に超スピードのヒット&アウェイなんて、さすが凛ちゃん!」

凛「えへへ~///


イヴ「あなた達に、捕まるわけにはいかない」

花陽「え?」

小さな声で、イヴはゴメンなさいと呟いた。
次の瞬間。

花陽「きゃあああああああ!?」パサッ

凛「かよちん!?」


花陽の制服が突然千切れ、素肌があらわになる!
いや千切れるというにはその切り口があまりに鋭い。まるで最初からそのような布地であったかのよう――――。

イヴの持つ「トランス」能力。
体内のナノマシンで体を変化させ、武器にしてしまうことのできる超科学の力。
イヴは今その力を使い、髪の毛の一束、その先の方をナノサイズの刃物に作り替えていた!
花陽の体に傷一つつけることなく、器用に服のみを裁断する。

凛「ななな、何が起きたの!?」

イヴ「あなたも。……ゴメンなさい」

凛「ひえ!?」シュパパ

そして凛の制服も、花陽のそれと同じ末路を辿った。
二人はその場に座り込み、晒された肌をなんとか隠そうと四苦八苦している。

イヴ「これが本当の戦いだったら、私は負けてた。見くびってゴメンなさい」

凛「そ、そんなことはいいから早く服を!」

花陽「りりり、凛ちゃんも脱がされちゃったの!?」

イヴ「…………」

凛「にゃ?」

イヴ「あと、服のこともゴメンなさい」


イヴはその場から逃げ出した。


凛「にゃああああああああああ!!」

花陽「オイテカレチャッタノォ!?」


✩りんぱなチーム・・・リタイア


  ◇

希「穂乃果ちゃんたちも、凛ちゃんのチームも負けちゃったみたいやな」

絵里「あら、それもカードが教えてくれたのかしら?」

希「そういうこと。多分次は、ウチらのとこかな」

絵里「分かったわ。希は戦闘に参加しないでいいわよ」

希「えりち?」

絵里「あなたは優しいから……。それにそもそも、参謀って前線にでないじゃない?」

希「あ~。つまりウチは密かに暗躍する名参謀ってこと?」

絵里「そういうこと。私はその忠実なる戦闘員ってとこね」

希「えりちは戦闘員っていうより、猛将って感じやけど」

絵里「女子高生にそんなアダ名つけないでよ、もう」

希(戦闘員もどうかと思うけど)

絵里「とにかく、あなたはよくやってくれたわ。おかげで大分、相手のことも分かったし」

希「気をつけてな、えりち」

絵里「ええ。私は負けないわ」


✩NEXT BATTLE!→のぞえりチーム
     

今日はここまで。
読了感謝!


【スイーパーアイドルμ'sのまとめ】

穂乃果…大体失敗、時たま大成功する作戦を閃く。チームをまとめる能力が高い。実は参謀タイプ。

ことり…スイーパーとしては使えない。メンバーの後方支援に徹する。

真姫…お薬担当。それ以外はスイーパーとしてあまり適正がなく、ことりと似た立ち位置にいる。

にこ…メンバーを引っ張っていく、切り込み隊長的な役割。μ'sの中ではそれなりに射撃能力に長けていたりする。

凛…μ'sのスピードスター。その速度と変幻自在な動きは、割と通用するレベル。

花陽…ゲッター3。というのは冗談だが、パワーは恐るべきものである。一般人ならば押さえ込める。

海未…???

絵里…???

希…???


トレインは最初からずっと、イヴを見ていた。
どのように立ち回るのかを大体は面白がり、時々は真剣になりながら観察していたのだ。

トレイン(最初のチームは予想通りだったが、次のチームは中々どうして)

トレイン(そして次のチームも、ただの女子高生には見えねぇな……)


木に登り、教室の中を見つめる。
そこにはイヴの到来を待つ絵里の姿があった。ただ無策に待ち続けているわけではない。
希の指示である。
どこから情報を仕入れているのか分からないが、希には全幅の信頼を寄せている。
遠からず、この教室へやってくるだろう――――。


ガラッ


絵里「来たわね……」



――――イヴが教室に入ると、その中央で絵里は腕を組み立っていた。
机や椅子は、律儀に端へ寄せられている。


絵里「ハラショー。さすが希ね。時間もぴったり」

イヴ「待ち伏せ……ですか」

絵里「ええ。あなたに恨みはないけれど、ここで捕まえさせてもらうわ」

イヴ「私たちが争う理由なんて……」

絵里「あら? 私にはあるわよ」

イヴ「え?」

絵里「私は、本気でスイーパーを目指してるの。もちろん、穂乃果たちとアイドルをやっているのも楽しいわ。でも、この学校を救うにはやっぱり、スイーパーとして活躍するしかないと思うの」

絵里「スイーパー育成は官営事業。正直アイドルよりか、確実性が期待できる。だから私は必死に訓練した」

絵里「一流のスイーパーになるためにね。そしてそこに、超一流って噂のスイーパーがやってきた……師事したい、と思うのは当然でしょ?」

イヴ「もう、油断はしません」

絵里「凛たちの時は油断があった……それがない今、私に勝ち目はないって、言いたいのね?」

イヴ「分かっているなら……!」

絵里「あまり舐めないでもらえるかしら。花陽も凛も、天性のモノを磨くことなくただ持っていただけの女の子。でも私は違う」

絵里「私は! このバネのような筋肉と! 努力を怠らなかった!」


絵里「その成果をみせてあげる」


イヴ「!」

絵里が突進してくる。
そのスピードは凛を僅かに下回るが、力強さが段違いだった。
凛を素早い燕に例えるのなら、絵里は猛禽の類だろう。それほどまでに、彼女は自信を練り上げている。

絵里「フッ!!」

姿勢が崩れる。
いや崩れたのではない。意図的に低くなった。これはつまり、タックルの予備動作!!

イヴ「やらせない!」

イヴの両足を刈り取ろうと迫る絵里。イヴはそれを拳を振り下ろして止めようとする。

絵里「甘い!」

もはやふたりの間に距離はない。
イヴの拳はもう絵里の頭にめり込もうとしていた。しかし絵里はタックルの姿勢からいきなり上を向く。
そしてイヴの拳を紙一重で躱すと、そのまま腕をとって地面へと投げつける。

イヴ「ジュードー!?」

長い髪の毛をクッションに変え、なんとか直撃を避ける。
しかし絵里は腕を取ったまま関節技に移ろうとしていた。

イヴ「やらせない!」

なんとか身をよじり、絵里の支配下から抜けようとする。力を込めた右腕を強引に振り回し、なんとか関節を極められないよう暴れた。
すると、絵里のホールドが一瞬緩む。これは好機!と思ったイヴは思いっきり右腕を引いて、絵里の支配から右腕を取り戻した。

絵里「だから、甘いって言ったでしょう!」


 ◇

トレイン(あの動き……!まさか)

トレイン(姫っち、そんなに強引に関節から逃げようとするな! 他のところがガラ空きに……!!)

トレイン(あーあ、掴まちまった。しかしあの女子高生……)


トレイン(あれは、サンボか。それもスポーツじゃない。コンバット・サンボだ!)


トレイン(あいつ軍人なのか!?)



 ◇

イヴ「ぐぅ……」ミシミシ

絵里「さぁ降参なさい。完全に極めたわ」グッ

イヴ「あうっ!!」


一瞬だった。イヴに馬乗りになった絵里はイヴの右腕を自由にさせる。
そしてそのまま、イヴを仰向けからうつ伏せにし、より反撃しづらい位置で関節技をやり直したのだ。
今度は左腕。しかも完全に極まっている。強引に外そうとしたのなら、間違いなく関節を壊してしまうだろう。


絵里「お祖母様がね、この武術を修めていたのよ」

絵里「今の私はそのスキルの10分の1も持ってないけど……」

絵里「これぞ大ロシアの力、ってところかしら?」

イヴ「くっ……」


イヴ(この人、強い……! 純粋な体術なら、私より全然凄い!)


絵里「痛めつけるのは趣味じゃないの。参った、って言ってもらえるかしら?」

イヴ「い……いやっ」

絵里「強情ね」


イヴ(遠距離で攻撃できてたら……! ここにきてまだ、侮ってた!)


接近戦で、さっきのように服を切断して終わらそう。イヴはそう考えていた。
まさかここまで手玉に取られるとは思ってもいない。


イヴ(この至近距離でナノスライサーを使うと、この人を傷つけちゃうかも知れない……!)

イヴ(なら、髪の毛を拳に変化させて殴りつけるしかっ)

 ――――『ジパングの女子高生くらい怪我させずに』

イヴ「っ!」


いくら加減しようとも、当たり所が悪ければ骨折しかねない一撃。
それは、できない――――。


絵里「その顔、決心がついた?」


イヴ「――――はい」

絵里「そう、良かった。それなら」

イヴ「勝たせて、もらいます」

絵里「……折るわよ?」

イヴ「あなたに……出来ますか?」

絵里「……」


本当に折るわけではない。しかし、それに近いような激痛を与えなければ、この子は絶対に降参しない!
ごめんなさいと、心中で絵里は呟く。そして力を込めた。


絵里「えっ!?」



ビクともしない。
超パワー? いやそんなものではない。関節とは、単純に力のみで抗える技術ではないのだ。
ならば一体――――!?


絵里「なに……これ」


関節が……いや関節だけではなく、左腕のほとんどが、光沢を帯びている。
明らかに人間の皮膚ではない。
金属。
その質感は、金属のそれ!


イヴ(可動部があるから、関節が痛い……だったらいっそ、可動部を『なくす』!)


最低限の力で、脆い可動部を破壊する関節技。
しかしそれは可動域があることを前提にしている。その可動域を超えるからこそ、関節技は技足り得る。
だがそれは消失した。いまここにあるのは、ただ鋼鉄の塊だ。
そんなものを破壊出来るだけの力が、絵里にあるわけもない――――!!


絵里「どういう……ことよ!」

イヴ「!!」


明らかな動揺。
それを見逃すイヴではなかった。

イヴ「はっ!」


ロデオのように暴れ、なんとか絵里を自分の上から落とす。
すぐに体勢を立て直し、左手を元に戻した。
絵里もまだ困惑しているが、その闘志は衰えていない。


絵里「いまの……なんだったのかしら?」

イヴ「……ごめんなさい」

絵里「謝ることじゃないわ。凄いわよアレ。びっくりしちゃった」

イヴ「もう、近づけさせません!」

絵里「あら。嫌われちゃったみたい」


もはや、絵里は脅威ではない。
拳が届く範囲より外に出れば、イヴは絵里を倒す絶対の自信があった。これは傲りではなく、正当な現場判断だ。
絵里もなんとなくそれを理解しているようだが、まだ諦めの色は見えない。


絵里「降参、なんて私はしないわよ?」

イヴ「そうだと思います」


絵里(さて。啖呵を切ったはいいけど、どうしようかしら……)

絵里(あの子は恐らく――――信じられないけど――――変身、できるんでしょうね。しかもある程度状況に合わせ自由に)

絵里(詰んでるようなものじゃない、これ)

絵里(サンボはあくまで対人格闘。あんな特殊能力者と戦うための技術じゃないのに全く……でも)


絵里「やれることをするしか、ないじゃない!」


突進。乾坤一擲。届け。あと数歩。この数歩で。
届く。届く。届く。届く。

絵里「と……」

もう少し。手を伸ばせばそこに。あとは打撃。関節はもう無意味。
打撃さえ。打撃さえ!

絵里「届けえええええええええええええええええええ!!」


わずか、数センチ。
そこで絵里は、意識を失った……。



希「……優しいんやね」

イヴ「!?」

希「ああ待って。ウチは戦う気はないよイヴちゃん」

イヴ「……そうですか」

希「えりちをあそこまで近づかせてから、髪の毛をトランスさせて首筋に手刀。しかもえりちを傷つけないようこの上なく優しく。大したもんやね」

イヴ「こうでもしなければ勝てませんでした」

希「『トレインさんの言いつけ』を守りつつ?」

イヴ「……」

希「ごめん、ちょっとイジワルやったか。とにかく、ウチは君に手を出さんよ」

イヴ「ありがとうございます」

希「最後にひとつだけ」

イヴ「はい?」

希「海未ちゃんは……《本物》や。凛ちゃんどころか、えりちだって足元にも及ばない」

希「君も本気でやらんと……危ないよ?」

イヴ「なんで私に、そんなことを?」

希「なんでやろーなー。強いて言えば、『えりちに勝ったお前が負けるところを見たくない!』ってとこかな」

イヴ「よく分かりません」

希「ええんよ、それで」

短いけれど今日はこれにて!
読了感謝。



日は傾き、廊下はすでに夕焼けに染まっていた。
タイムリミットは定められていないが、あまり遅くなってはトレインが飽きてしまうだろう。
そろそろ、最後の一人を捕まえなくては。
この「鬼ごっこ」に少し嫌な記憶を思い出しながら、イヴは廊下を歩く。
その瞬間。

イヴ「!?」

殺気。
しかも攻撃のその瞬間まで存在を気取らせないような、上質なもの。
とっさに右腕をトランスさせ盾を作り、飛来する「なにか」に備える。そのコンマ数秒の後、それはイヴを襲う。

ピタタタタ!

イヴ「これは……?」

盾に(というか腕に)なにか張り付いている。
それは先端が吸盤になっている、矢であった。殺傷能力がないことは一目瞭然である。

 『それなら、本気でやっても大丈夫ですからね』

どこからか声が聞こえる。
廊下の奥だろうか。太陽が角度を落としているせいで、最奥は目視するには厳しい明度となっている。

 『こうしませんか? あなたがそれを、生身に一発でも喰らえば負け。本物の矢に見立ててもらいます』

イヴ「……私が勝つには?」

 『ここまで辿り付き、私に一撃を加えられれば、負けを認めます』

イヴ「それは」

 『そうですね。私が圧倒的不利です。あなたは盾を構えたまま前進すれば良いのですから。ですが』




 『あなたが私に一撃を加えられるとは、思いませんから』


イヴ「!!」

 『怒らせるつもりはありませんでした。ですがこの勝負、受けてもらえますよね』

イヴ「きっと、後悔しますよ」

 『してみたいものです』

イヴ「……行きます!!」


その声が言ったとおりに、盾を全面に構え走り出す。
直線的にしか攻撃できない弓矢では、こうしてしまえば体に当たることはない。
両者の距離は、僅かしかない。


海未(やはり、そう来ますか……)


海未はこれまでのことを思い返していた。
μ'sの初ライブ。高校入学。どれも楽しい思い出。特にμ's結成の時は、本当に嬉しかった。
しかし。
何かがずっと、物足りなかった。

いまでこそμ'sの良き先輩である絵里は、そういえば最初は辛辣なことを言っていましたっけ――――。

『お遊びにしか見えない』と。
確かにそうだ。本気ではあったけれども、真にプロのレベルと言えるものでは到底なかっただろう。
だからこそ絵里はそう言ったのだ。

だがそれは、μ'sのアイドルとしての面のこと。
もう一つの面――――スイーパーアイドルとしてのμ'sにおいて、海未は絵里と同じことを思っていた。
つまり、彼女たちのスイーパーとしての力量は『お遊びにしか見えない』と。

幼少の頃からスイーパー……いやイレイザーとしての教育を受け、武道を修めてきた海未にとって、ただ身体能力の高い凛や少しサンボを齧った程度の絵里は、正しくお遊びのレベルであった。

無論、その環境に満足はしていなかった。皆も、スイーパーであるよりもアイドルであろうとした。そして自分も。
この平和なジパングでイレイザーなどもはや形骸化している。将来自分が始末屋になることもないだろう。
ただの惰性。長い歴史が廃業を認めなかっただけであって、園田家が再び裏社会に出ることはない。

しかし何故だろうか。この胸の高鳴りは。
強敵。噂に聞く『不吉を呼ぶサーティーン』の仲間。それと相対する自分。
腐り切るのを待つだけだった戦闘技術が、いま全力で稼働している。

この瞬間、園田海未は初めての戦いに興奮していた。


海未(盾のカバーはほぼ体の全て……しかし!)

狙いを定め、矢を放つ。

イヴ「ッ!!!」

足元。盾と床の間に見える僅かな隙間に弓矢が入る。
あまりにも精密な射撃。

イヴ(まるで……トレインみたい)

自分の左足に張り付いた吸盤を見て、イヴはそう思った。

 『はい。一撃当てました。これで私の勝ちですね』

イヴ「……これを、本物の矢に見立てているんですよね」

 『そうです。あなたの左足は負傷しました』

イヴ「じゃあ、左足を使わなければいいだけ……!」

 『まぁそうですが。しょうがないですね、認めましょう』

そうでなくては。
まだまだ、続けなくては。

イヴ「やっ!」

イヴは突然、窓に身を投げれる。ガラスが砕き散り、彼女の小さな体は空中に放り出された。

海未「!?」


海未(脱出を図った? しかし左足が使えない状況でこの高さから飛び降りるなんて……不可能です)

海未(えっ?……なるほど、そういうことですか)


海未「まるで天使、ですね」


海未の目線の先には、純白の翼を広げ空を飛ぶイヴの姿があった。

海未「くっ」

狙いをつけようとするが、中空のイヴは物凄い速度で飛び回る。その三次元的な動きに翻弄され、中々狙いが定まらない。
そしてそのまま、高い空から羽を畳み急降下する!

海未「なっ!?」

真っ直ぐ、海未に向かい猛禽のごとく襲いかかる。
矢が間に合わない。
このままでは。

イヴ「はっ!」

窓ガラスを割り、廊下に侵入するイヴ。
そのまま海未めがけ、刃のない剣にトランスさせた右腕を振り下ろした。


弓矢使いのアドバンテージである距離を殺した。
勝利は確定した。そう思えた。

イヴ「えっ!?」

イヴの剣は、弓に取り付けられた模造刀によって受け止められていた。

イヴ(これはなに……?)

海未「流石のスイーパーといえど、この武器には面食らったみたいですね」

イヴ「くっ……一体……」

海未「これは『はず槍』。近接戦闘のできない弓に付けられた、護身用の武器です。故に戦闘能力は低いですが――――」

弓の両端に付けられた模造刀。はず槍。
近接では無謀である弓の最終手段として用いられ、決して主戦級の武器ではなかった。
しかし多くの戦国武将が愛用した記録があり、武器としてはメジャーである。


海未「私の弓術は、近接戦闘も想定していますので」

弓をくるりと回し、受け止めていたのとは反対の槍をイヴに向ける。
振り上げる一撃。
イヴはこれを髪の毛を硬質化させることで避ける。

海未「瞬時にその反応……流石という他ありません!」

イヴ「ハズヤリ……やりづらい!」


距離をとれば再び矢の餌食。
しかし近接でも変幻自在なはず槍に翻弄されてしまう。
どうすれば!!

イヴ(この人を傷つけないで倒すなんて……出来るの!?)

海未「どうしました? 本気で来てください!」

イヴ「くっ!」

海未のはず槍での攻撃を、右腕の剣でなんとか凌ぐ。
正直に言えば、この時点でイヴは海未を楽に倒せた。刃を用いれば、海未の獲物は簡単に壊せるからだ。
しかしこの乱戦の中では、そのまま海未を傷つけてしまう可能性が高い。
なのでここは、あの弓がなにか硬い――――そう、オリハルコン製のようなものと仮定して戦うしかない。


イヴ「これなら!」

海未「甘いですよ!」


いくつもの拳にトランスさせた髪の毛の乱舞。
それを難なく躱す海未。


海未(大きな技には必ず隙が……出来る!)


イヴの銅ががら空きになる。
それを見逃す海未ではなかった。

海未「はああ!!」

渾身の力で、槍を叩き込む!



イヴ(しまった!)

負ける。このままでは負ける。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。

どうしよう!!!


それは無意識での出来事であった。
イヴがこれまで身を置いてきた戦闘で、すでに条件反射的に体は行動してしまうようになっていた。
身の危険に対して然るべき、生存本能であった。故に、イヴに責任を求めるのは難しい。

とにかく。
イヴは極薄の刃――――ナノスライサーを展開させ、海未の弓をバラバラにしてしまった。

イヴ「!!」

海未「ぐぅっ!?」

鮮血が滴る。
僅かであったが、海未の左手を切ってしまった。
運が悪ければナノスライサーによって左手首から先が無くなっていただろう。イヴならば流石にコントロール出来るであろうが。

海未「まさかこんな隠し技を……」

イヴ「ごめんなさい!!」

海未「どうして謝るのですか? あなたは全力で私に応えてくれた。とても嬉しいですよ」

イヴ「でも……」

海未「とにかく、一撃加えられたのですから私の負けですね」

イヴ「……」

海未「そんな顔しないでください。手加減して倒されるよりはとても気分がいいんですから」


トレイン「そうだぜ姫っち!」

イヴ「トレイン!? 一体今までどこに……」

トレイン「ずっと見てたさ。そしてそこのキュードーガールが、かなりの実力者ってことも分かった」

海未「……トレイン=ハートネット。まさかあなたのような伝説に褒めてもらえるとは思いませんでした」

トレイン「ああ。中々良かったぜ? 俺様の1/1000くらいには」

海未(褒めてない……のでは?)

イヴ「トレイン。私……」

トレイン「ん? ああ……依頼は守れなかったみたいだな」

海未「ちょっと待ってください。この子に全力を出してもらえないほど、私は弱くありません。馬鹿にしないでください」

イヴ「……」

トレイン「……」

海未「誰がなんと言おうとも、この子の勝ちです。この傷は私の未熟さが付けた傷です」


トレイン「……スヴェンとそりが合いそうだなぁ」


トレイン「今回のことで姫っちを咎める気はねーって。むしろウミミちゃんみたいなのがいる方がイレギュラーだからな」

海未「う、うみみ!?/// キョウコですね……全くあの子は!!」

トレイン「ナハハハハ! とにかく屋上に集合だ! じゃあ先に行ってるぜ姫っち、ウミミ!!!」シュタッ

海未「その名で呼ばないでください!!!」


トレインは猛ダッシュでふたりの前から消え去る。
海未とイヴだけが、ポツンとその場に残された。


海未「えーっと」

イヴ「……ウミミ」ボソッ

海未「やめてください!!」

イヴ「」ビクッ

海未「あ……ごめんなさい。私は園田海未。海未でいいですよ」

イヴ「ウミ……さん。さっきはゴメンなさい。左手大丈夫ですか?」

海未「こんなの、傷のうちに入りません。でももし申し訳なく思うなら――――そうですね、名前を教えてください」

イヴ「えっ?」

海未「名前ですよ。あなたの名前が知りたいんです」

イヴ「……イヴ、です」

海未「可愛い名前ですね。よろしくお願いします、イヴちゃん」

イヴ「///」



 ~~~屋上~~~

トレイン「よーし揃ったな!」

穂乃果「へ~! イヴちゃんっていうんだ! 可愛いねぇ~!」

ことり「お人形さんみた~い!」

花陽「本当にキレイ……」

トレイン「静かにしろい!!」

絵里「ダー!!」

にこ「軍人みたいになってる……」

希「ほら、えりちって形から入るタイプやん?」


トレイン「とりあえず全部見せてもらった! 結論から言うと、予想以上だぜ!」

穂乃果「おお~!」

真姫「私たちのことじゃナイデショ……」

トレイン「猫っぽい動きとか怪力とかコンバット・サンボとか、見てて飽きなかったぞ~」

真姫「ほら」

ことり「元気出して、穂乃果ちゃん」

トレイン「あー。お前らのは内容は置いといて、発想はなかなか良かったと思うぞ?」

穂乃果「え!?」

トレイン「それぞれが最も得意とするものを組み合わせて活用する。チームワークとしてはこれ以上ないってくらいだ」

にこ「私はゴリ押し得意なんかじゃないわよ!!」

トレイン「内容は本当に腹抱えて笑ったけどな! やば、思い出すと……ワハハハハハハ!!!」

穂乃果「もう! トレインさんひっどーーい!!」

飯中断


トレイン「キョーコからも言われてるし、特別に俺様が面倒見てやる」

海未「本当ですか!?」

イヴ「トレイン……?」

トレイン「まぁまぁ姫っち落ち着け。ちゃんと考えがある」

真姫「? なにヒソヒソ話してるの?」

トレイン「なんでもない! さてじゃあ明日から」

 「トレインンンンンンンンン!!!!」

トレイン「!?」

スヴェン「見つけたぞ……」

穂乃果「誰!?」

にこ「変質者!?」

凛「トレインさんよりそれっぽい!!」

スヴェン「違う!! 俺はスイーパーだ!」

絵里「スイーパー?」

希「そう言われれば、トレインさんより渋いね」

ことり「渋さだけじゃ分からないんじゃないかな……」



スヴェン「おいトレイン! お前……分かってるだろうな」

トレイン「……何のことか分からないにゃー」

凛「にゃ!?」

スヴェン「あの後俺がどれだけ守衛に絡まれたか分かってるのか!? それもこれも……」

イヴ「……私がトレインを追わなければ良かった」

スヴェン「え? ああいやそれもそうだが……」

イヴ「私のせいで、スヴェンが困ったんだよね?」

スヴェン「そ、それはだな」アタフタ

穂乃果「眼帯のおじさん!」

スヴェン「おじ!?」

穂乃果「イヴちゃんが何をしたのかは知りませんけど……可哀想だよ!」

スヴェン「いや俺は別にイヴを……」

希「こんな小さな子に、そんなキツい口調で言わんでもなぁ」

スヴェン「うっ……」

にこ「こんくらいの歳はそーなるもんよフツー」

トレイン「そーだそーだ」

スヴェン「おいこらトレイン!! てめぇ!!」

トレイン「ふはははは! あとは任せたぞミューズ!!」

スヴェン「逃げるなこらーーーーー!!!」


~~~その夜~~~

スヴェン「全く元気なお嬢ちゃん達だったな……」

トレイン「面白かったろ?」

イヴ「トレイン」

トレイン「ん? どうした姫っち」

イヴ「なんであの人たちのコーチを引き受けたの? 星の使徒から守るだけなら、別にそこまでしなくても」

トレイン「それはだな、姫っち。殺気だよ」

イヴ「殺気?」

トレイン「あの時――――俺が一人で屋上に行った時だ。そんときに、すげぇ殺気を向けられたんだよ」

スヴェン「……あのお嬢ちゃんたちからか?」

トレイン「間違いねぇ。誰かまではわからなかった。一瞬で消えちまったからな」

イヴ「ちょっと待って」


イヴ「それはウミさんだと思う」

トレイン「ウミっちか……確かにな」

スヴェン「誰だ?」

イヴ「イレイザーの家系で育てられた、弓矢使いの人」

スヴェン「なんだよそれ……」

トレイン「神秘と伝統の国ジパングだからなぁ」

スヴェン「まぁこれで、トレインに向けられたさっきの出処が分かったな」

トレイン「いや、そうでもねぇよ」

イヴ「どうして?」

トレイン「あの時俺は――――」





  「確かに殺気を向けられた。『二箇所』からな」




                                       .



スヴェン「ってことはお前……」

トレイン「ああ。少なくともウミっちレベルの使い手が、あの中にもう一人いたんだ」

イヴ「そんな……」

トレイン「姫っちは全員と会ってはいるが、向こうが全力を出したって絶対には言えないだろ? 能ある鷹ってやつだ」

イヴ「じゃあもうミューズの中に」

トレイン「ウミっちみたいに元々相当の使い手だった、って可能性は無くはない」

スヴェン「そりゃあそうだが、確率としては低いな。クロノスか星の使徒、恐らくどちらかがすでに潜入してるってのが妥当だろう」

イヴ「あの人たちの中に……」

トレイン「誰かはわかんねぇけどな。こりゃ厄介だぜ」

スヴェン「だからコーチを引き受けたってわけだな。万が一に備えて」

トレイン「ああ。そこからクリードにつながるかも知れないしな」

イヴ「ミューズの中に、クロノスか星の使徒が」

信じられない。
あの温かく優しい人達の中に、私のように血に濡れたことのある人が混じっているなんて。
なに食わぬ顔で、あそこに加わっているなんて――――!


トレイン「明日からは忙しくなるぜ」

スヴェン「スパイ探しか……確かに骨が折れる」

トレイン「いんや?」

スヴェン「じゃあ何が忙しいんだよ」

トレイン「あんたが女子高生と戯れるなんて、気苦労が絶えねぇんじゃねぇかなーってよ!」ゲラゲラ

スヴェン「うるせぇ黙っとけ!!」

イヴ「スヴェン……頑張って」

スヴェン「お前ら俺が紳士ってこと忘れてるだろ!?」

今日は以上です。読了感謝!

スイーパーアイドルμ'sのまとめ】

穂乃果…チームをまとめる能力が高い。司令官向き。

ことり…メンバーの後方支援に徹する。

真姫…いわゆる衛生兵的立ち位置。

にこ…メンバーを引っ張っていく、切り込み隊長的な役割。μ'sの中ではそれなりに射撃能力に長けていたりする。

凛…μ'sのスピードスター。その速度と変幻自在な動きは、割と通用するレベル。

花陽…細腕からは想像できない、恐るべきパワーの持ち主。一般人ならば押さえ込める。

海未…弓使い。小さい頃から武術を叩き込まれた、スイーパーアイドルμ'sにとっての絵里的存在。

絵里…コンバット・サンボの使い手。ナイフを持った程度の犯罪者なら楽に無力化できる。大ロシア万歳。

希…μ'sの参謀。深い思慮と直感的判断を併せ持つ名参謀になりうる。

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